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特表2025-500832ブタン酸レボノルゲストレル製剤およびそれに関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ブタン酸レボノルゲストレル製剤およびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/567 20060101AFI20250107BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 15/18 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K31/567
A61K9/10
A61K9/16
A61K47/26
A61K47/38
A61P15/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535239
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022052704
(87)【国際公開番号】W WO2023114205
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,965
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514144836
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(71)【出願人】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
【住所又は居所原語表記】333 Ravenswood Avenue, Menlo Park, California 94025, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ミン
(72)【発明者】
【氏名】ブライズ, ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジア-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ルイズ, エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ケン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA31
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC17
4C076DD05F
4C076DD08F
4C076DD09F
4C076DD09X
4C076DD26Z
4C076DD37R
4C076DD46F
4C076EE23F
4C076EE23X
4C076EE32G
4C076FF16
4C076FF17
4C076FF32
4C076FF39
4C076FF57
4C076FF61
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA66
4C086NA12
4C086ZA86
(57)【要約】
より高濃度のLNGBをより小さい体積で投与することを容易にする粒径を有するブタン酸レボノルゲストレル(「LNGB」)粒子を含む製剤の実施形態が、本明細書において開示されている。開示されている製剤の実施形態は、長く継続する避妊効果を示し、皮下投与され得、このことは、他の避妊薬に関連する副作用をもたらさない自己投与可能な避妊製剤として作用することにおけるその有用性を提供する。本開示は、ブタン酸レボノルゲストレル製剤およびそれを作製および使用する方法の実施形態に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10μm~16μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;
湿潤剤と;
分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せと;
を含む、医薬製剤であって、
該ブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在し、ただし、該医薬製剤が湿潤剤と分散剤とを含む場合は、該湿潤剤と該分散剤とは2:0.1~6:0.1(湿潤剤:分散剤)の比で存在する、医薬製剤。
【請求項2】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が、12.6μmよりも大きくメディアン径15μmまでの範囲のメディアン径を有する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13μm~14μmのメディアン径を有する、請求項1または請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記製剤が前記湿潤剤と前記分散剤とを含み、湿潤剤と分散剤との比が3:0.1~5:0.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
30mg~90mgの範囲の用量のブタン酸レボノルゲストレルを投与するために製剤化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
避妊効果を少なくとも2か月間~6か月間提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
避妊効果を少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、または少なくとも6か月間提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記湿潤剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80から選択されるポリソルベート界面活性剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記分散剤が、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン;硫酸塩界面活性剤;またはそれらの任意の組合せから選択されるソルビタン界面活性剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
カルボキシメチルセルロースおよび/もしくはその塩形態;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/もしくはそれらの架橋形態;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アラビアゴム;ゼラチン;またはそれらの任意の組合せから選択される増粘剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、アミンベースの緩衝液、またはそれらの任意の組合せから選択される緩衝成分をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
パラベン化合物、フェニル水銀化合物、ベンジル化合物、芳香族化合物、ハロゲン化アルキル、またはそれらの任意の組合せから選択される保存剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13μm~14.5μmのメディアン径を有し;
前記湿潤剤がポリソルベート80であり;
前記分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである、
請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13.5μm~14μmのメディアン径を有し;
前記湿潤剤がポリソルベート80であり;
前記分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである、
請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13.7μmのメディアン径を有し;
前記湿潤剤がポリソルベート80であり;
前記分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである、
請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項16】
カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、およびベンジルアルコールをさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記乳化剤が存在しイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤である、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
12μm~15μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;
湿潤剤と;
分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せと;
増粘剤と;
緩衝成分と;
保存剤と、
を含む、医薬製剤であって、
該ブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在し、ただし、該医薬製剤が湿潤剤と分散剤とを含む場合、該湿潤剤と該分散剤とは3:0.1~5:0.1(湿潤剤:分散剤)の比で存在する、医薬製剤。
【請求項19】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13μm~14.5μmのメディアン径を有し;
前記湿潤剤がポリソルベート80であり;
前記分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンであり;
前記増粘剤がカルボキシメチルセルロースナトリウムであり;
前記緩衝成分がリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム二水和物との組合せであり;
前記保存剤がベンジルアルコールである、
請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が13.5μm~14μmのメディアン径を有する、請求項18または請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
11μm~15μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;
少なくとも1種の分散剤と;
増粘剤と;
緩衝成分と;
保存剤と、
を含む、医薬製剤であって、
該ブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在する、
医薬製剤。
【請求項22】
前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子が、11.3μmよりも大きくメディアン径14.2μmまでの範囲のメディアン径を有する、請求項21に記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記分散剤がモノパルミチン酸ソルビタンである、請求項21または22のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項24】
30mg~90mgの範囲の用量のブタン酸レボノルゲストレルを投与するために製剤化されている、請求項21~23のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬製剤を作製する方法であって、
ブタン酸レボノルゲストレルを滅菌濾過に供して、滅菌したブタン酸レボノルゲストレルを含む濾液を提供する工程;
該濾液からブタン酸レボノルゲストレル粒子を作製する工程;および
該ブタン酸レボノルゲストレル粒子と、前記湿潤剤、前記分散剤、前記乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;
を含み、該方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない、方法。
【請求項26】
前記濾液からブタン酸レボノルゲストレル粒子を作製する工程が該濾液を噴霧乾燥することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記濾液を噴霧乾燥することが前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子のメディアン径を制御する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~24のいずれか一項に記載の医薬製剤を作製する方法であって、
ブタン酸レボノルゲストレルを微粒子化して前記ブタン酸レボノルゲストレル粒子を提供する工程;および
該ブタン酸レボノルゲストレル粒子と、前記湿潤剤、前記分散剤、前記乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;
を含み、該方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない、方法。
【請求項29】
ガンマ線照射または電子線照射を使用する工程を含まない、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
対象に避妊を提供する方法であって、
請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤を該対象に注射によって投与することによって、20mg~140mgの範囲の投与量のブタン酸レボノルゲストレルを投与する工程
を含む、方法。
【請求項31】
注射が皮下注射を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
注射が筋肉内注射を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記製剤中のブタン酸レボノルゲストレルの濃度が70mg/mLである、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
対象におけるプロゲスチン関連疾患もしくはプロゲスチン関連状態を処置または予防する方法であって、
請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤を該対象に投与する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2021年12月15日に出願された米国仮特許出願第63/289,965号のより早い出願日の利益およびこの米国仮特許出願に基づく優先権を主張し、この米国仮特許出願の全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(政府の支援の承認)
本発明は、National Institutes of Health、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentによって与えられたプロジェクト番号ZHD008981-01の下での政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
(分野)
本開示は、ブタン酸レボノルゲストレル(levonorgestrel butanoate)製剤およびそれを作製および使用する方法の実施形態に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
長時間作用する避妊方法、例えば、子宮内避妊器具(IUD)は、典型的な失敗率約1%を有する。毎日の行動を必要とする方法、例えば、混合型経口避妊薬(Combination Oral Contraceptive)(COC)またはプロゲスチン単剤ピル(Progestin Only Pill)(POP)は、使用者の過誤に起因して典型的な失敗率7%を有する。米国において唯一の注射可能な製品である酢酸デポメドロキシプロゲステロン(Depomedroxyprogesterone Acetate)(DMPA)の典型的な失敗率は4%である。そのDMPAのレジメンは3か月間隔での注射を必要とする。より長い作用期間は、1年当たりより少ない回数の注射しか必要としないことによって、典型的な有効率を改善し得る。酢酸メドロキシプロゲステロンのグルココルチコイド活性に起因し得る、DMPAの使用に伴って起こり得るHIV獲得リスクの増加に関する懸念が増加している。DMPAは、体重増加に関連があり、骨密度の減少を引き起こし得、このことは、長期使用に伴う骨折リスクまたは18歳よりも若い女性における作用に対して可能性のある影響に関してFDAに黒枠警告を要求させる。注射可能な方法は、他の方法を上回るいくつかの利点を提供し、したがって、安全で有効な追加の注射可能な避妊選択肢についての必要性が存在する。
【0005】
肥満は、米国の住民が直面する主要な公衆衛生上の問題であり、静脈血栓塞栓症(VTE)についての独立したリスクであり;したがって、VTEリスクを増加させない、肥満女性にとって有効な避妊薬を開発する公衆衛生上の必要性が存在する。従来のほとんどの経口避妊薬は、合成エストロゲンであるエチニルエストラジオール(EE)を含み、これがVTEリスク増加に関連する。肥満とEEとの組合せは、VTEリスクをさらに増加させる。中程度の肥満または病的肥満、高血圧、および糖尿病などの健康状態を有する女性はEE含有避妊薬の使用を避けるように助言され得るが、妊娠に起因する彼女らのVTEリスクは、EE含有製品に関連するリスクを超えて顕著に増加する。最近紹介されたエストラジオールを含む混合型経口避妊薬はEEを含むものと比較してわずかに低いVTEリスクを有し得るが、その利点は明確には確立されておらず、忍容性およびサイクルコントロールの低さに起因してそれらは活用されていない。
【0006】
ブタン酸レボノルゲストレル(levonorgestrel butanoate)(「LNGB」)は、National Institute of Child Health and Human Developmentを含む世界中の機関と協働して世界保健機関(WHO)によって注射可能な長期作用性避妊薬として1980年代初頭以来開発中であった、ステロイド系プロゲスチンである。最初の臨床研究は、メキシコシティおよびロンドンにある2つのWorld Health Organization Collaborating Centers for Research in Human Reproductionで行われた。しかし、従来のLNGB製剤(例えば、このWHOの製剤)は望ましくない安定性の問題を示し、このことは、避妊活性および大規模製造能力を減少させる。
【0007】
高リスク状態を有する女性にとって安全であり、かつ十分な長く継続する避妊効果を示す、有効な避妊薬製品を開発することが、重要な公衆衛生上の要求である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(概要)
医薬製剤の実施形態が本明細書において開示され、その医薬製剤は、ブタン酸レボノルゲストレル粒子と;湿潤剤と;分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せとを含む。そのブタン酸レボノルゲストレルの粒径と濃度との独特な組合せが、記載される。
【0009】
本開示にしたがう医薬製剤を作製する方法の実施形態もまた開示され、その方法は、ブタン酸レボノルゲストレルを滅菌濾過に供して、滅菌したブタン酸レボノルゲストレルを含む濾液を提供する工程;その濾液からブタン酸レボノルゲストレル粒子を作製する工程;およびそのブタン酸レボノルゲストレル粒子と、湿潤剤、分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;を含み、その方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない。
【0010】
本開示にしたがう医薬製剤を作製する方法の実施形態もまた開示され、その方法は、ブタン酸レボノルゲストレルを微粒子化してブタン酸レボノルゲストレル粒子を提供する工程;およびそのブタン酸レボノルゲストレル粒子と、湿潤剤、分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;を含み、その方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない。
【0011】
対象に避妊を提供する方法の実施形態もまた開示され、その方法は、本明細書において記載されている製剤の実施形態をその対象に注射によって投与することによって、20mg~140mgの範囲の投与量のブタン酸レボノルゲストレルを投与する工程を含む。
【0012】
対象におけるプロゲスチン関連疾患もしくはプロゲスチン関連状態を処置または予防する方法の実施形態もまた開示され、その方法は、本明細書において記載されている製剤の実施形態をその対象に投与する工程を含む。
【0013】
本開示の上記および他の目標物および特徴は、以下の詳細な説明からより明らかになり、その詳細な説明は、添付の図面を参照して進行する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1Aおよび図1Bは、照射ベースの滅菌工程に曝露される前(図1A)および後(図1B)のブタン酸レボノルゲストレル(「LNGB」)粒子を示す写真画像であり、これらは、照射によりLNGBが望ましくない黄色を有するようにされることを示す。
【0015】
図2図2は、あらゆる照射ベースの滅菌工程の前のLNGB粒子の分析から得られた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のトレースである。
【0016】
図3図3は、照射ベースの滅菌工程の後のLNGB粒子の分析から得られたHPLCのトレースである。
【0017】
図4図4は、照射ベースの滅菌工程の後のLNGB粒子の分析から得られたHPLCのトレースであり、そのサンプルはNでパージした。
【0018】
図5図5は、照射ベースの滅菌工程の後のLNGB粒子の分析から得られたHPLCのトレースであり、そのサンプルはArでパージした。
【0019】
図6図6は、本開示の代表的なLNGB製剤を種々の投与経路[(i)筋肉内(「IM」)注射;および(ii)皮下(「SC」)注射]ならびに種々の濃度[(i)70mg/mL;および(ii)20mg/mL]で注射したことから得た「排卵の再開」を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
(用語の概要)
【0021】
以下の用語および/または記号の説明は、本開示をより良く記述するため、および本開示の実施において当業者を導くために、提供される。単数形「1つの(ある)(a)」、「1つの(ある)(an)」および「その(該)(the)」は、そうではないことを特に文脈が明示しない限りは、1つまたは複数を指す。用語「または(もしくは)(あるいは)」は、そうではないことを特に文脈が明示しない限りは、記載された選択的要素のうちの1つの要素、または2つ以上の要素の組合せを指す。本明細書において使用される場合、「含む(comprise)」は「含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含む(comprise)」は、追加の要素を排除することなく、「A、B、またはAおよびBを含む(include)」を意味する。すべての参考文献(本明細書において引用されている特許および特許出願を含む)は、参照により援用される。
【0022】
特に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、分子量、パーセンテージ、温度、回数などを表すすべての数は、用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、特に明示的または黙示的に示さない限り、示される数的パラメータは、探求される望ましい特性および/または標準的試験条件/試験方法下での検出限界に依存し得る概数である。議論されている先行技術から実施形態を直接的かつ明示的に区別する場合、用語「約」が明記されない限り、その実施形態の数は概数ではない。
【0023】
特に説明しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と同様または同等な方法および材料が本開示の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料は以下に記載される。それらの材料、方法、および例は例示に過ぎず、限定することは意図されない。本明細書において開示されるどの官能基も、本明細書においてそれに反する指示がない限りは、置換されてもよく置換されなくてもよい。
【0024】
当業者は、化合物が互変異性、立体異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示し得ることを理解する。例えば、開示されているある特定の化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含み得、結果として、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体、ジアステレオマー、およびそれらの混合物(例えば、ラセミ混合物)として存在し得る。別の例として、開示されているある特定の化合物は、いくつかの互変異性型(エノール型、ケト型、およびそれらの混合物が挙げられる)で存在し得る。本明細書ならびに特許請求の範囲内の種々の化合物名、式および化合物の図は可能な互変異性型、立体異性型、光学異性型、または幾何異性型のうちの1つだけを示し得るので、当業者は、開示されている化合物が、本明細書において記載されている化合物のあらゆる互変異性型、立体異性型、光学異性型、および/または幾何異性型、ならびにこれらの種々の異なる異性型の混合物を含むことを理解する。別々の異性型の混合物(鏡像異性体および/または立体異性体の混合物が挙げられる)は、特に本開示の助けを得て、当業者に公知の技術を使用して個別の鏡像異性体および/または立体異性体の各々を提供するように分離され得る。例えば、アミド結合の周りまたは直接連結された2つの環(例えば、ピリジニル環、ビフェニル基など)の間での限定的回転の場合、アトロプ異性体もまた可能であり、それもまた、本明細書において開示されている化合物に具体的に含まれる。
【0025】
どの実施形態においても、化合物中またはその化合物内の特定の基もしくは部分中に存在するいずれかもしくはすべての水素は、重水素またはトリチウムによって置換され得る。したがって、アルキルという記載は、存在する水素のうちの1個~最大数が重水素によって置換された状態であり得る、重水素化アルキルを含む。例えば、メチルとは、CH、または1個~3個の水素が重水素によって置換されたCH(例えば、CD3-x)の両方を指す。
【0026】
本開示の種々の実施形態の概説を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される。
【0027】
投与する(または投与すること、または投与: 対象を本開示の製剤の実施形態(その任意の成分を含む)に曝露すること。投与の様式は本明細書において議論され、それとしては、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、もしくは髄腔内)、局所、眼内、経口、頬側、全身、経鼻、経皮(例えば、浸透剤(例えば、DMSO)と混合することによる)、直腸、腟内、吸入もしくは吹送による投与に適した形態、移植に適した形態、またはそれらの任意の組合せが挙げられ得るが、それらに限定はされない。本明細書において使用される投与とは、曝露される対象がその投与を実行する自己投与もまた企図する。
【0028】
薬学的に受容可能な賦形剤: LNGBの製剤に含まれる活性成分(例えば、LNGB)以外の物質。本明細書において使用される場合、賦形剤はLNGBの粒子内に組み込まれ得、または賦形剤はLNGBの粒子と物理的に混合され得る。賦形剤はまた、溶液、懸濁物、エマルションなどの形態であり得る。賦形剤は、例えば、活性成分を希釈するため、および/または医薬組成物の特性を改変するために、使用され得る。賦形剤としては、湿潤剤、分散剤、増粘剤、付着防止剤(antiadherent)、結合剤、コーティング剤、腸溶コーティング剤、崩壊剤、矯味矯臭剤(flavoring)、甘味料、着色剤、滑沢剤、流動化剤(glidant)、吸着剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、アジュバント、キャリア、媒体、等張化剤、充填剤、薬学的に受容可能な溶媒、安定剤、凝集剤、懸濁剤、電解質、抗酸化剤、キレート剤、またはそれらの任意の組合せが挙げられ得るが、それらに限定はされない。代表的な賦形剤が本明細書において記載されている。さらなる追加の代表的な賦形剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物ステアリン、スクロース、ラクトース、デンプン、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS、またはTPGSとしても知られている)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セレン、システイン、メチオニン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、糖、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、タートラジン、アスパルテーム、ゴマ油、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、ラノリン、またはそれらの任意の組合せが挙げられ得る。薬学的に受容可能な賦形剤として水が含まれる場合、それは典型的には滅菌注射用水(「WFI」)(USPグレード)である。
【0029】
薬学的に受容可能な塩: 当業者に公知であるとおり種々の有機対イオンおよび無機対イオンに由来する、本明細書において記載されているLNGBならびに/または他の化合物および/もしくは製剤の成分の薬学的に受容可能な塩であり、単なる例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、テトラアルキルアンモニウムなどが挙げられ;その分子が塩基性官能基を含む場合は、有機酸の塩または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩など。「薬学的に受容可能な酸付加塩」は、酸パートナーによって形成されると同時にその遊離塩基の生物学的有効性を保持する、「薬学的に受容可能な塩」の部分集合である。特に、製剤の成分は、種々の薬学的に受容可能な酸(無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、ならびに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられるが、それらに限定はされない)と塩を形成する。「薬学的に受容可能な塩基付加塩」は、無機塩基に由来する「薬学的に受容可能な塩」(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミ塩など)の部分集合である。代表的な塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。薬学的に受容可能な有機塩基に由来する塩としては、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンが挙げられる)、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂など)の塩が挙げられるが、それらに限定はされない。代表的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。(例えば、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、1977;66:1~19(これは参照により本明細書に援用される)を参照のこと))。
【0030】
プロドラッグ: 例えば、消化(GI)管(胃および腸が挙げられる)における酵素加水分解によって、最も典型的にはインビボで変換されて生理活性化合物(特に、親化合物(例えば、LNG))を生じる、本明細書において開示されている化合物の実施形態(例えば、LNGB)。プロドラッグ部分の一般的な例としては、カルボン酸部分ならびに/またはヒドロキシル基を保有する活性形態を有する化合物の薬学的に受容可能なエステル形態、炭酸塩形態、アミド形態、および/もしくはカルバミン酸塩形態が挙げられるが、それらに限定はされない。本開示の化合物の実施形態の薬学的に受容可能なエステルの例としては、リン酸基のエステルおよびカルボン酸のエステル、例えば、脂肪族エステル、特に、アルキルエステル(例えば、C1~6アルキルエステル、例えば、ブタン酸基)が挙げられるが、それらに限定はされない。他のプロドラッグ部分としては、リン酸エステル、例えば、-CH-O-P(O)(ORまたはその塩が挙げられ、Rは水素もしくは脂肪族(例えば、C1~6アルキル)である。受容可能なエステルとしてはまた、シクロアルキルエステルおよびアリールアルキルエステル(例えば、ベンジルであるが、それに限定はされない)が挙げられる。本開示の化合物の実施形態の薬学的に受容可能なアミドの例としては、一級アミド、ならびに二級アルキルアミドおよび三級アルキルアミド(例えば、1個と6個との間の個数の炭素を有する)が挙げられるが、それらに限定はされない。本開示にしたがう化合物の実施形態の開示されている代表的な実施形態のアミドおよびエステルは、従来の方法にしたがって調製され得る。プロドラッグの徹底的な考察が、T.HiguchiおよびV.Stella、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Series、第14巻、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987(これらの両方が参照によって本明細書に援用される)に提供されている。
【0031】
対象: 哺乳動物および他の動物、例えば、ヒト、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、ウサギなど)、有用動物(utility animal)、および食用動物(feed animal);したがって、開示されている方法は、ヒトの治療および獣医学的適用の両方に適用可能である。
【0032】
症状(または徴候): 疾患または対象の状態のなんらかの主観的証拠(例えば、その対象によって知覚されるような証拠);一部の身体状態または精神状態を示す、対象の状態における顕著な変化。「徴候」とは、対象の検査または評価において発見可能な、疾患を示すなんらかの異常である。徴候は、一般的には、疾患の客観的指標である。徴候としては、測定可能な任意のパラメータ、例えば、神経変性障害または神経変性疾患を検出するための検査が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0033】
追加の治療薬: いくらかのLNGBに追加して含まれる、本明細書において開示されているある特定の製剤の実施形態の任意選択成分。一部の実施形態において、その追加の治療薬は生理活性化合物である。代表的であるが非限定的な追加の治療薬としては、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(「GnRH」)アンタゴニストおよび/または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(「GnRH」)アゴニスト、E3ユビキチンリガーゼ動員リガンド(recruiting ligand)、抗がん薬(例えば、化学療法薬)、キナーゼアンタゴニストおよび/またはキナーゼアゴニスト、GPCRアンタゴニストおよび/またはGPCRアゴニスト、抗マラリア薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、免疫抑制薬、抗炎症薬、肺作用薬(pulmonary agent)などが挙げられ得る。
【0034】
治療有効量: 対象(特定の実施形態においては雌対象)において避妊効果を提供しまたは引き起こす(例えば、排卵を阻害する)ために;ならびに/あるいは特定の障害もしくは疾患を処置するため、またはその症状のうちの1つもしくは複数を軽減もしくは根絶するため、および/またはその疾患もしくは障害の発症を予防するために、十分なLNGBまたはその製剤の量。
【0035】
処置すること/処置: 関心のある疾患または状態を有する陸生哺乳動物(land mammal)(ヒト、イヌ、またはネコが挙げられるが、それらに限定はされない)におけるその関心のある疾患または状態の処置であり、それとしては、例として、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
(i)その疾患もしくは状態が対象において発症するのを予防するため、または必要とされる場合、特に、そのような対象がその状態になりやすいがその状態を有するとは未だに診断されていない場合に、その状態に関連する症状を軽減するための、予防的投与;
(ii)その疾患または状態を阻害すること、例えば、その進行を停止または遅延させること;
(iii)その疾患または状態を軽減すること、例えば、その疾患もしくは状態またはそれらの症状の後退を引き起こすこと;あるいは
(iv)その疾患または状態を安定化させること。
本明細書において使用される場合、用語「疾患」と「状態」とは交換可能に使用され得、または用語「疾患」と「状態」とは、特定の疾患もしくは状態が既知の原因因子を有しない可能性があり(その結果、病因が未だに決定されておらず、したがって、それが疾患として未だに認識されておらず望ましくない状態もしくは症候群として認識されており、多少の特定の組の症状が臨床家によって同定されているという点で、異なり得る。
【0036】
(導入)
【0037】
ブタン酸レボノルゲストレル(levonorgestrel butanoate)(「LNGB」)(当該分野においては17β-ブタン酸レボノルゲストレル(levonorgestrel 17β-butanoate)とも呼ばれる)は、広範に使用されているプロゲスチンであるレボノルゲストレル(levonorgestrel)(LNG)のブチルプロドラッグである。LNGBは、避妊のための長期作用性の注射可能な手段である。プロゲスチンとして、LNGの避妊効果の様式は、排卵を阻害することと、子宮頸管粘液が役割を有し得るのでおそらくは追加的な防御機構とを介する。LNGBは、静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの増加を伴わずに使用され得る、長期作用性の注射可能な化合物である。さらに、LNGBの注射は、それが皮下への自己投与によって実行され得るので、プロゲスチン単剤デイリーピルよりも服薬遵守を改善する。そのような投与の柔軟性は、1分未満しかかからない1回の注射のために使用者が診療所に行く必要がないので、使用者にとって大いに有益である。さらに、レボノルゲストレルは、体重増加に影響を与えると考えられる受容体である、グルココルチコイド受容体活性ではない。
【0038】
LNGB含有避妊組成物は、世界保健機関(WHO)によって開発された; しかし、この組成物はLNGB粒子の凝集を示し、これにより、製品の安定性および臨床バッチの再現性の損失をもたらす。この凝集/安定性の問題に取り組むことを試みた他の組成物が開発されてきた;しかし、そのような組成物の一つは、予期されたよりも短い活性持続期間を生じた。この製剤は、WHOの製剤と内容が類似していたが、WHOの製剤で観察された凝集を防止するために安定化賦形剤を含んだ。当該分野における他の組成物は、FDA臨床試験におけるそれらの使用を妨げる不純物の問題を示し、したがって、商業的製剤のための実行可能な選択肢を提示しない。
【0039】
改善されたLNGB製剤が当該分野において必要とされている。その理由は、LNGが、避妊のための使用において最も安全で最も有効な薬剤の一つであることが確立されているプロゲスチンであるからである。さらに、中程度の肥満または病的肥満、高血圧、および糖尿病などの健康状態を有する女性はEE含有避妊薬の使用を避けるように助言され得るが、妊娠に起因する彼女らのVTEリスクは、EE含有製品に関連するリスクを超えて顕著に増加する。上記のとおり、LNGBはVTEリスクを増加しないであろう。また、投与方法の秘匿性を助長する様式で投与され得る製剤もまた、必要とされる。例えば、注射可能な方法は、注射後に使用した証拠が使用者に何も残らないので、プライバシーの利点を有する。注射可能な方法は、比較的長期間作用し、混合型ホルモン経口避妊薬、パッチまたはプロゲスチン単剤ピル(「POP」)よりも低い典型的な失敗率を有する。POPは、毎日同じ時間に(またはデソゲストレルPOPと同様に、12時間以下の差で)POPを摂取することに対する厳格なアドヒアランスを必要とし、肥満女性では有効性が減少し得る。
【0040】
LNGBを含む改善された製剤の実施形態が本明細書において記載され、その実施形態は、望ましい活性を示し、投与のためにより小さい体積しか必要としないより長期継続する避妊効果を提供するより高濃度のLNGBを投与するために使用され得る。さらに、開示されている製剤は、皮下投与に適しており、したがって、それらの製剤は自己投与され得るので使用者が使いやすい。開示されている製剤の実施形態は、LNGB粒子の優れた安定性を示す。
【0041】
(製剤の実施形態)
【0042】
ブタン酸レボノルゲストレル(「LNGB」)と1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む製剤の実施形態が、本明細書において開示される。特定の実施形態において、その製剤は、その1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせたLNGB粒子の水ベースの懸濁物である。LNGB粒子は、サイズが制御されており、凝集および/または分解を伴わずに高い安定性を示す。特定の実施形態において、その製剤の実施形態のLNGB粒子は、その製剤中のLNGB濃度を増加する能力を助長する粒径を示す。
【0043】
特定の実施形態において、その製剤は、LNGBを15mg/mLよりも大きい濃度、例えば、20mg/mL~100mg/mL、または20mg/mLよりも大きく100mg/mL未満、または20mg/mLよりも大きく90mg/mLまで、または20mg/mL~90mg/mL、または30mg/mL~90mg/mL、または40mg/mL~90mg/mL、50mg/mL~90mg/mL、または60mg/mL~90mg/mL、または70mg/mL~90mg/mL、または80mg/mL~90mg/mLで含む。特定の実施形態において、そのLNGB濃度は、30mg/mLから90mg/mL未満、または30mg/mLよりも大きく80mg/mL未満、または40mg/mL~80mg/mL、50mg/mL~80mg/mL、または60mg/mL~80mg/mL、または70mg/mL~80mg/mLの範囲である。特定の実施形態において、そのLNGBは、30mg/mL~100mg/mLの範囲の濃度、例えば、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、または100mg/mLで含まれる。
【0044】
一部の実施形態において、その製剤中に含まれるLNGBの量は、その製剤の総質量または総体積に基づいて、2%(w/v)よりも大きい範囲、例えば、3%(w/v)~15%(w/v)、または4%(w/v)~15%(w/v)、または5%(w/v)~15%(w/v)、または6%(w/v)~15%(w/v)、または7%(w/v)~15%(w/v)、または8%(w/v)~15%(w/v)、または9%(w/v)~15%(w/v)、または10%(w/v)~15%(w/v)、または11%(w/v)~15%(w/v)、または12%(w/v)~15%(w/v)、または13%(w/v)~15%(w/v)、または14%(w/v)~15%(w/v)であり得る。特定の実施形態において、その製剤中に含まれるLNGBの量は、2%(w/v)、5%(w/v)、7%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)、または15%(w/v)である。
【0045】
その製剤の実施形態は、LNGBを20mg~160mgの範囲、例えば、30mg~140mg、または30mg~120mg、または30mg~100mg、または30mg~80mgの投与量で送達するために製剤化され得る。一部の実施形態において、その投与量は、30mg~80mg、または40mg~80mg、または50mg~80mg、または60mg~80mg、または70mg~80mgの範囲であり得る。特定の実施形態において、その投与量は、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、100mg、120mg、140mg、または150mgである。代表的な実施形態において、投与量40mgがLNGB濃度20mg/mLで、または投与量40mgがLNGB濃度70mg/mLで、または投与量50mgがLNGB濃度70mg/mLで、または投与量60mgがLNGB濃度70mg/mLで、または投与量70mgがLNGB濃度70mg/mLで、投与される。
【0046】
その製剤中に含まれるLNGB粒子は、5μm~20μmの範囲、例えば、7μm~16μm、または9μm~16μm、または11μm~16μm、または12μm~16μm、または13μm~16μmのメディアン(D50)径を有し得る。代表的な実施形態において、そのLNGB粒子は、11μm~15μmの範囲、例えば、12μm~15μm、または12.6μm~15μm、または12μm~14μm(11.3μm、12.4μm、13.2μm、13.7μm、もしくは14.2μmを含む)のメディアン径を有する。独立した実施形態において、そのメディアン径は、6.3μm、6.4μm、6.6.μm、23.1μm、22.7μm、18.6μm、18.0μm、18.4μm、21.0μm、もしくは15.8μmではなく、またはこれら以外である。代表的な実施形態において、そのLNGB粒子は、11μm~13μmのメディアン径(例えば、11.3μmもしくは12.4μm);または13μm~15μmのメディアン径(例えば、13μm~14μm、もしくは13.2μm、13.7μm、もしくは14.2μm)を有する。一部のそのような実施形態において、そのLNGB粒子はその製剤中に20mg/mL~100mg/mLの範囲、例えば、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、または100mg/mLの濃度で含まれ得る。
【0047】
その製剤は、1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む。そのような薬学的に受容可能な賦形剤としては、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、緩衝剤、および/または保存剤が挙げられ得るが、それらに限定はされない。特定の実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤は、少なくとも1種の湿潤剤、少なくとも1種の分散剤、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の緩衝成分、および少なくとも1種の保存剤を含む。他の実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤としては、少なくとも1種の分散剤、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の緩衝成分、および少なくとも1種の保存剤を含む。代表的な実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤は、湿潤剤、分散剤、増粘剤、保存剤、2種の緩衝剤を含む緩衝成分、および任意選択の乳化剤を含む。なおさらなる代表的な実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤は、湿潤剤、2種の分散剤、増粘剤、保存剤、および2種の緩衝剤を含む緩衝成分を含む。なおさらなる代表的な実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤は、2種の分散剤、または分散剤および乳化剤;増粘剤;保存剤;ならびに2種の緩衝剤を含む緩衝成分を含む。一部の実施形態において、その薬学的に受容可能な賦形剤は、等張化剤、充填剤、溶媒、安定剤、滑沢剤、凝集剤、懸濁剤、電解質、抗酸化剤、キレート剤、またはそれらの任意の組合せをさらに含み得る。
【0048】
開示されている製剤の実施形態において使用され得る湿潤剤および分散剤としては、ソルビタン界面活性剤、例えば、ポリソルベート界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80);ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、またはそれらの組合せ);ポリアルキレンオキシド含有化合物(例えば、ポリオキシアルキル化脂肪、ポリオキシアルキル化グリセリド、ポリオキシアルキル化脂肪酸など);アルキルフェノール化合物;硫酸塩(sulfate)界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど);モノオレイン酸グリセリル;レシチン;ラウリン酸メチル;リノール酸化(linolizated)グリセリド(例えば、リノール酸化(linolizated)オレオトリグリセリドなど);およびそれらの組合せが挙げられ得るが、それらに限定はされない。特定の実施形態において、その湿潤剤は、ソルビタン界面活性剤、例えば、ポリソルベート界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80)である。特定の実施形態において、その分散剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン;硫酸塩(sulfate)界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);またはそれらの組合せである。代表的な実施形態において、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)とモノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)との組合せが、使用される。他の代表的な実施形態において、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)とモノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)とモノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20)との組合せが、使用される。なお追加の実施形態において、モノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)とラウリル硫酸ナトリウムとの組合せが、使用される。なお追加の実施形態において、モノラウリン酸ソルビタン(Span(登録商標)20)が使用される。その製剤で使用され得る湿潤剤および/または分散剤の総量は、0.1%w/v~11%w/vの範囲、例えば、0.2%w/v~10.5%w/v、または0.4%w/v~10.5%w/v、または0.9%w/v~10.5%w/v、または6%w/v~10.5%w/v、または7%w/v~10.5%w/v、または10%w/v~10.5%w/vであり得る。特定の実施形態において、使用される湿潤剤および/または分散剤の総量は、0.2%w/v、0.4%w/v、0.9%w/v、6.2%w/v、7.2%w/v、または10.2%w/vである。これらの実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、湿潤剤の総量は、単一の湿潤剤、または湿潤剤と分散剤との組合せ、または2種以上の分散剤の組合せを使用することによって、提供され得る。湿潤剤と分散剤と(例えば、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)とモノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)と)が使用される一部の実施形態において、その湿潤剤と分散剤との比は、2:0.1~6:0.1の範囲、例えば、3:0.1~5:0.1(ポリソルベート80:モノパルミチン酸ソルビタン)であり得る。独立した実施形態において、ポリソルベート80とモノパルミチン酸ソルビタンとがその製剤で使用される場合、それらは1:1ではない比または1:1以外の比で含まれる。特定の代表的な実施形態において、ポリソルベート80が、0.1%w/v~10%w/vの範囲、例えば、0.2%w/v~10 %w/v、または6%w/v~10%w/v、または6%w/v、7%w/v、8%w/v、9%w/v、または10%w/vの量で使用される。さらなる代表的な実施形態において、モノパルミチン酸ソルビタンが、0.05%w/v~0.2%w/vの範囲、例えば、0.1%w/v~0.2%w/vの量で使用される。さらなる代表的な実施形態において、モノラウリン酸ソルビタンが、0.0.5%w/v~0.2%w/vの範囲、例えば、0.1%w/v~0.2%w/vの量で使用される。さらなる代表的な実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムが、0%w/vよりも大きく0.7%w/vまでの範囲、例えば、0.1%w/v~0.7%w/vの量で使用される。
【0049】
開示されている製剤の実施形態で使用され得る増粘剤としては、セルロースベースの物質、例えば、カルボキシメチルセルロース(もしくはその塩形態(カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルボキシメチルセルロースカルシウムが挙げられる))、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/もしくはその架橋形態;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アラビアゴム(acacia);ゼラチン;またはそれらの組合せが挙げられ得るが、それらに限定はされない。特定の実施形態において、その増粘剤は、カルボキシメチルセルロース化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。開示されている製剤の実施形態で使用され得る増粘剤の量は、0.4%w/v~2%w/vの範囲、例えば、0.5%w/v~2%w/v、または1%w/v~2%w/v、または0.5%w/v、0.6%w/v、0.7%w/v、0.8%w/v、0.9%w/v、または1%w/vであり得る。
【0050】
開示されている製剤の実施形態で使用され得る乳化剤としては、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤が挙げられ得るが、それらに限定はされない。一部の実施形態において、その乳化剤は、ポリアルキレンオキシドベースの非イオン性界面活性剤、例えば、ポリアルコキシル化ヒマシ油化合物(例えば、ポリオキシル-35ヒマシ油[もしくは「Kolliphor(登録商標)EL」])および/またはポリアルキレンオキシド水酸化脂肪酸(例えば、ポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラート[「Kolliphor(登録商標)HS」]);あるいはそれらの組合せである。開示されている製剤の実施形態に含まれ得る乳化剤の量は、0%w/vよりも大きく8%w/vまでの範囲、例えば、2%w/v~7.5%w/v、または3%w/v~7 w%w/v、または4%w/v~7%w/v、または4.4%w/v~7%、または5%w/v~7%w/v、または3%%w/v、4%%w/v、4.4%%w/v、5%%w/v、6%%w/v、または7%w/vであり得る。
【0051】
開示されている製剤の実施形態で使用され得る保存剤としては、パラベン化合物、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなど;フェニル水銀化合物、例えば、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀など;ベンジル化合物、例えば、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムなど;芳香族化合物、例えば、チメロサール(thiomerosal)、フェノール、m-クレゾールなど;ならびにハロゲン化アルキル、例えば、クロロブタノールが挙げられるが、それらに限定はされない。代表的な実施形態において、その保存剤はベンジルアルコールである。開示されている製剤の実施形態で使用され得る保存剤の量は、0%w/vよりも大きく5%w/vまでの範囲、例えば、0.5%w/v~2%w/v、または1%w/v~2%w/v、または1.03%w/vであり得る。
【0052】
本明細書において開示されている製剤の実施形態で使用され得る緩衝成分としては、リン酸緩衝液、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、など;酢酸緩衝液、例えば、酢酸ナトリウム、トリス酢酸塩、酢酸トリエチルアンモニウムなど;クエン酸緩衝液、例えば、クエン酸ナトリウムなど;酒石酸緩衝液、例えば、酒石酸二ナトリウム二水和物、酒石酸ジアンモニウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム四水和物など;およびアミンベースの緩衝液、例えば、トリエタノールアミンなど;またはそれらの組合せが挙げられ得るが、それらに限定はされない。代表的な実施形態において、その緩衝成分は、2種の緩衝液(例えば、リン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム二水和物と)の組合せを含む。開示されている製剤の実施形態で使用され得る緩衝成分の総量は、0%w/vよりも大きく2%w/vまでの範囲、例えば、0.2%w/v~2%w/v、または1%w/v~2%w/v、または1.5%w/v~2%w/v、または0.3%w/v、1.49%w/v、または1.79%w/vであり得る。
【0053】
その製剤の実施形態は、その製剤の最終体積で例えば100%に達するために差分の滅菌水(例えば、注射に適した滅菌水(例えば、滅菌WFI USP))をさらに含む。
【0054】
特定の実施形態において、その製剤は、10μm~16μmの範囲(例えば、13.2μm、13.7μm、もしくは15.4μm)のメディアン径を有するLNGBと;湿潤剤(例えば、ポリソルベート80)と;分散剤(例えば、モノパルミチン酸ソルビタン)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0055】
特定の実施形態において、その製剤は、LNGBと;湿潤剤(例えば、ポリソルベート80)と;分散剤(例えば、モノラウリン酸ソルビタン)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0056】
なお追加の実施形態において、その製剤は、10μm~17μmの範囲(例えば、11.6μm、13.6μm、14.2μm、もしくは16.3μm)のメディアン径を有するLNGBと;2種の分散剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびモノパルミチン酸ソルビタン)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝剤化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0057】
なおさらなる実施形態において、その製剤は、LNGB;湿潤剤(例えば、ポリソルベート80)と;2種の分散剤(例えば、モノパルミチン酸ソルビタンおよびモノラウリン酸ソルビタン)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0058】
なおさらなる実施形態において、その製剤は、10μm~15μmの範囲(例えば、11.3μmもしくは14.2μm)のメディアン径を有するLNGBと;分散剤、例えば、モノパルミチン酸ソルビタン;乳化剤(例えば、ポリオキシル-35ヒマシ油もしくはポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラート)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0059】
なおさらなる実施形態において、その製剤は、11μm~17μmの範囲(例えば、12.4μm、13.6μm、14.2μm、もしくは16.3μm)のメディアン径を有するLNGBと;湿潤剤(例えば、モノラウリン酸ソルビタン)と;乳化剤(例えば、ポリオキシル-35ヒマシ油もしくはポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラート)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0060】
なおさらなる実施形態において、その製剤は、11μm~15μmの範囲(例えば、12.4μm、13.6μm、もしくは14.2μm)のメディアン径を有するLNGBと;湿潤剤(例えば、モノラウリン酸ソルビタン)と;乳化剤(例えば、ポリオキシル-35ヒマシ油もしくはポリエチレングリコール(15)-ヒドロキシステアラート)と;増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(例えば、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(例えば、ベンジルアルコール)と;滅菌WFI USPとの組合せを含むか、その組合せから本質的になるか、またはその組合せからなる。
【0061】
その製剤が上記に列挙された成分から本質的になる実施形態のいずれかにおいて、対象にとって毒性であると当該分野で考えられている成分および/またはその粒子の安定性を(例えば、凝集もしくは分解を引き起こすことによって)減少させる成分を、その製剤は含まない。代表的な製剤の実施形態はまた、本明細書中の実施例の節においても記載される。
【0062】
(方法の実施形態)
【0063】
本明細書において記載されている製剤の実施形態を作製する方法の実施形態もまた、本明細書において開示される。本開示の方法の実施形態は大規模で従来どおり実行され、それらの実施形態は単一の製造場所で実行され得るが、当該分野における他の方法は、特殊な機械類および/または操作パラメータの必要性に起因して、別々の地理的場所の別々/別個の位置で別個の方法の工程を実行する必要がある。本明細書において開示されている方法の実施形態はまた、安定でかつ/またはより濃縮された粒子製剤が作製され得るようにそのLNGB粒子の粒径を制御する能力を提供する。
【0064】
特定の実施形態において、その方法は、そのLNGB粒子と1種または複数種の薬理学的に受容可能な賦形剤とを組み合わせる前に、そのLNGB粒子を作製する工程を含む。特定の実施形態において、そのLNGB粒子は、滅菌濾過と、その後の噴霧乾燥とを行って、制御されたメディアン径を有する滅菌した粒子を作製することによって調製される。滅菌濾過は、ブタン酸レボノルゲストレルを含む濾液を生成し、そのブタン酸レボノルゲストレルの粒子が、その濾液を噴霧乾燥することによってその濾液から作製され得る。独立した実施形態において、噴霧乾燥は、微粒子化(例えば、乾式もしくは湿式の製粉または粉砕)で置換され得る。独立したそのような方法の実施形態は、微粒子化の前に中間の乾燥工程または結晶化工程をさらに含み得る。しかし、本明細書において記載されている方法の実施形態は、滅菌工程(例えば、照射ベースの滅菌技術(例えば、ガンマ線照射または電子線照射))を使用することを含まない。その理由は、そのような技術は、製剤を対象への投与のために不適切にする不純物の生成をもたらすからである。本明細書において記載されている噴霧乾燥を含む方法の実施形態はまた、再結晶化工程も含まない。
【0065】
特定の実施形態において、その方法は、滅菌濾過および噴霧乾燥からなるか、または滅菌濾過および噴霧乾燥から本質的になる。特定の実施形態において、その方法は、滅菌濾過、乾燥および/もしくは再結晶化、ならびに微粒子化からなるか、または滅菌濾過、乾燥および/もしくは再結晶化、ならびに微粒子化から本質的になる。その方法が滅菌濾過および噴霧乾燥から本質的になる場合、その方法は、ガンマ線照射滅菌または電子線照射滅菌を使用することを含まない。その理由は、そのような滅菌技術は、その製剤を対象への投与のために不適切にする不純物の生成をもたらすからである。例えば、図1Aおよび図1Bを参照のこと。図1Aおよび図1Bは、LNGB粒子の最終照射滅菌(例えば、ガンマ線照射または電子線照射)が、不純物を生じ(図1A)、その不純物がLNGB粒子に黄色を有するようにさせる(図1B)ことを示す。これらの不純物はまた、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して同定される。代表的なそのようなHPLCのトレースが図3図5に示されており、これらは、それらの不純物が、不活性ガスでパージすることによってさえ、除去も防止もされ得ないことを示す。この色および不純物の存在が、そのLNGB粒子をFDAの要件および仕様の下での投与のために不適切にする。
【0066】
滅菌濾過は、溶媒(例えば、エーテルベースの溶媒)を使用してそのLNGBを濾過することを含み得る。一部の実施形態において、その溶媒は、テトラヒドロフラン(「THF」)、2-メチルTHFなどである。そのLNGBは、その溶媒を使用してオートクレーブ処理済みメンブランフィルターを通して濾過され、濾液として単離される。一部の実施形態において、そのメンブランフィルターは、0.2μm PTFEメンブランフィルターである。その濾過プロセス中に管が使用される場合、その管は、典型的には、濾過中に使用される溶媒に対して耐薬品性を示す耐薬品性の管である。
【0067】
特定の実施形態において、噴霧乾燥は、滅菌濾過から得られた濾液からLNGB粒子を作製するために流量、入口温度、噴霧圧、およびブロワ速度を利用することを含む。特定の実施形態において、その流量は、4mL/分~6mL/分の範囲、例えば、4mL/分、5mL/分、6mL/分、またはそれらの部分である。その噴霧乾燥入口温度は、120℃~145℃の範囲、例えば、130℃~140℃、または130℃~132℃である。その噴霧圧は、0.05mPa~0.1mPaの範囲、例えば、0.05mPa~0.08mPa、または0.06mPa、0.07mPa、または0.08mPaである。そのブロワ速度は、0.3m/分~0.6m/分の範囲、例えば、0.4m/分~0.55m/分、または0.45m/分~0.5m/分、または0.49m/分である。特定の実施形態において、その流量は5mL/分であり、その噴霧乾燥入口温度は132℃であり、その噴霧圧は0.07mPaであり、そのブロワ速度は0.49m/分である。
【0068】
その方法は、そのLNGB粒子と、本明細書において記載されている1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせる工程をさらに含む。一部の実施形態において、そのLNGB粒子は、その薬学的に受容可能な賦形剤のうちの1種または複数種を含む第1の溶液と、そのLNGB粒子を含む第2の溶液とを作製することによって、その薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせられる。一部の実施形態において、その第1の溶液は、増粘剤、保存剤、緩衝成分、またはそれらの任意の組合せと;滅菌水とを含み得る。一部の実施形態において、その第2の溶液は、LNGB粒子と;滅菌水と;任意の湿潤剤、分散剤、および/または乳化剤とを含み得る。その後、その第1の溶液と第2の溶液とは、任意の順序で(例えば、その第1の溶液をその第2の溶液に添加すること、またはその第2の溶液をその第1の溶液に添加することによって)組み合わせられて、その製剤を提供する。なお他の実施形態において、そのLNGB粒子と滅菌水と湿潤剤と分散剤と増粘剤と緩衝成分と保存剤と任意選択の乳化剤との単一の溶液。一部の実施形態において、その製剤および/またはその第1の溶液および/またはその第2の溶液はホモジナイズされて均一な分散物を提供し得る。
【0069】
その製剤の実施形態を使用する方法もまた、本明細書において開示される。特定の実施形態において、その方法は、長期継続する可逆的な避妊効果を対象(特に、雌対象)に提供するためにその製剤を避妊製剤として使用する工程を含む。開示されている製剤の実施形態は安定であり、その実施形態は、適切な避妊効果(例えば、排卵抑制)を少なくとも2か月間、より典型的には2か月間よりも長く、例えば、少なくとも3か月間、または4か月間、5か月間、それどころか6か月間も示す。さらに、開示されている製剤の実施形態は、処置中および/または回復中に肝機能に対していかなる顕著な負の影響も伴わずに、望ましい活性を示す。従来の避妊薬(例えば、Depo-Provera(登録商標))で典型的に観察される副作用は、特に避妊効果にはより少ないホルモンしか必要ではないという理由から、開示されている製剤の実施形態では回避され得、または少なくとも顕著に最小化され得る。そのような副作用としては、体重増加および気分変動が挙げられ得る。追加の実施形態において、その方法は、プロゲスチン関連疾患もしくはプロゲスチン関連障害(例えば、機能性子宮出血、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、子宮筋腫、月経前症候群、がん、および他の生殖器系/生殖組織/生殖器官の障害もしくは状態)を処置または予防するためにその製剤を使用する工程を含み得る。
【0070】
その製剤の実施形態は、種々の型の投与技術(注射法、例えば、皮下注射(もしくは「SC」注射)または筋肉内注射(もしくは「IM」注射)が挙げられるが、それらに限定はされない)に適している。その製剤の実施形態はまた、自己投与に適しているという利点を有する。特定の実施形態において、その製剤は、皮下注射によって投与された場合に、優れた避妊活性を示す。例えば、図6は、筋肉内注射から得られた結果と皮下注射から得られた結果とを比較するグラフを提示する。図6において観察され得るとおり、この実施例において評価された特定の製剤の実施形態は、皮下投与された場合に、筋肉内投与された場合と比較して長く継続する避妊効果(または「排卵の再開」時間)を示した。図6の製剤の実施形態は、10μm~16μmの範囲のメディアン径を有するLNGBと;湿潤剤および分散剤(すなわち、ポリソルベート80およびモノパルミチン酸ソルビタン)と;増粘剤(すなわち、カルボキシメチルセルロースナトリウム)と;2種の緩衝化合物(すなわち、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウム二水和物)と;保存剤(すなわち、ベンジルアルコールと;滅菌WFI USPとを含んだ。
【0071】
特定の実施形態において、その使用方法は、対象に避妊を提供する方法であり、その方法は、本開示の製剤の実施形態をその対象に注射によって投与することによってある投与量のブタン酸レボノルゲストレルを投与する工程を含む。一部の実施形態において、注射は皮下注射を含む。他の実施形態において、注射は筋肉内注射を含む。なお他の特定の実施形態において、その使用方法は、対象におけるプロゲスチン関連疾患もしくはプロゲスチン関連状態を処置または予防する方法であり、その方法は、本開示の製剤の実施形態をその対象に投与する工程を含む。
【0072】
(いくつかの実施形態の概要)
【0073】
医薬製剤の実施形態が本明細書において開示され、その医薬製剤は、10μm~16μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;湿潤剤と;分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せと;を含み、そのブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在し、ただし、その医薬製剤が湿潤剤と分散剤とを含む場合は、その湿潤剤とその分散剤とは2:0.1~6:0.1(湿潤剤:分散剤)の比で存在する。
【0074】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は、12.6μmよりも大きくメディアン径15μmまでの範囲のメディアン径を有する。
【0075】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は13μm~14μmのメディアン径を有する。
【0076】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は湿潤剤と分散剤とを含み、湿潤剤と分散剤との比は3:0.1~5:0.1である。
【0077】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は30mg~90mgの範囲の用量のブタン酸レボノルゲストレルを投与するために製剤化されている。
【0078】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は避妊効果を少なくとも2か月間~6か月間提供する。
【0079】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は避妊効果を少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、または少なくとも6か月間提供する。
【0080】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その湿潤剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、またはポリソルベート80から選択されるポリソルベート界面活性剤である。
【0081】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その分散剤は、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン;硫酸塩(sulfate)界面活性剤;またはそれらの任意の組合せから選択されるソルビタン界面活性剤である。
【0082】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は、カルボキシメチルセルロースおよび/もしくはその塩形態;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および/もしくはそれらの架橋形態;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;アラビアゴム(acacia);ゼラチン;またはそれらの任意の組合せから選択される増粘剤をさらに含む。
【0083】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、アミンベースの緩衝液、またはそれらの任意の組合せから選択される緩衝成分をさらに含む。
【0084】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は、パラベン化合物、フェニル水銀化合物、ベンジル化合物、芳香族化合物、ハロゲン化アルキル、またはそれらの任意の組合せから選択される保存剤をさらに含む。
【0085】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は13μm~14.5μmのメディアン径を有し;その湿潤剤はポリソルベート80であり;分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである。
【0086】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は13.5μm~14μmのメディアン径を有し;その湿潤剤はポリソルベート80であり;分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである。
【0087】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は13.7μmのメディアン径を有し;その湿潤剤はポリソルベート80であり;分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンである。
【0088】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤はカルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、およびベンジルアルコールをさらに含む。
【0089】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、乳化剤が存在しイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤である。
【0090】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その医薬製剤は、12μm~15μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;湿潤剤と;分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せと;増粘剤と;緩衝成分と;保存剤とを含み、そのブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在し、ただし、その医薬製剤が湿潤剤と分散剤とを含む場合、その湿潤剤とその分散剤とは3:0.1~5:0.1(湿潤剤:分散剤)の比で存在する。
【0091】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、医薬製剤は、13μm~14.5μmのメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子を含み;その湿潤剤はポリソルベート80であり;分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンであり;その増粘剤はカルボキシメチルセルロースナトリウムであり;その緩衝成分はリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム二水和物との組合せであり;その保存剤はベンジルアルコールである。
【0092】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、医薬製剤は、13.5μm~14μmのメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子を含み;その湿潤剤はポリソルベート80であり;分散剤が存在しモノパルミチン酸ソルビタンであり;その増粘剤はカルボキシメチルセルロースナトリウムであり;その緩衝成分はリン酸水素二ナトリウムとリン酸二水素ナトリウム二水和物との組合せであり;その保存剤はベンジルアルコールである。
【0093】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は、11μm~15μmの範囲のメディアン径を有するブタン酸レボノルゲストレル粒子と;少なくとも1種の分散剤と;増粘剤と;緩衝成分と;保存剤とを含み、そのブタン酸レボノルゲストレルは、20mg/mLよりも大きく濃度100mg/mLまでの範囲の濃度で存在する。
【0094】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子は、11.3μmよりも大きくメディアン径14.2μmまでの範囲のメディアン径を有する。
【0095】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その分散剤はモノパルミチン酸ソルビタンである。
【0096】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤は30mg~90mgの範囲の用量のブタン酸レボノルゲストレルを投与するために製剤化されている。
【0097】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにしたがう医薬製剤を作製する方法の実施形態もまた開示されており、その方法は、ブタン酸レボノルゲストレルを滅菌濾過に供して、滅菌したブタン酸レボノルゲストレルを含む濾液を提供する工程;その濾液からブタン酸レボノルゲストレル粒子を作製する工程;およびそのブタン酸レボノルゲストレル粒子と、湿潤剤、分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;を含み、その方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない。
【0098】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その濾液からブタン酸レボノルゲストレル粒子を作製する工程はその濾液を噴霧乾燥することを含む。
【0099】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その濾液を噴霧乾燥することは、そのブタン酸レボノルゲストレル粒子のメディアン径を制御する。
【0100】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにしたがう医薬製剤を作製する方法の実施形態もまた開示されており、その方法は、ブタン酸レボノルゲストレルを微粒子化してブタン酸レボノルゲストレル粒子を提供する工程、およびそのブタン酸レボノルゲストレル粒子と、湿潤剤、分散剤、乳化剤、またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数とを組み合わせる工程;を含み、その方法は、いかなる滅菌のためにも照射を使用する工程を含まない。
【0101】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その方法は、ガンマ線照射または電子線照射を使用する工程を含まない。
【0102】
対象に避妊を提供する方法の実施形態もまた開示されており、その方法は、上記の製剤の実施形態のいずれかまたはすべての製剤をその対象に注射によって投与することによって、20mg~140mgの範囲の投与量のブタン酸レボノルゲストレルを投与する工程を含む。
【0103】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、注射は皮下注射を含む。
【0104】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、注射は筋肉内注射を含む。
【0105】
上記の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、その製剤中のブタン酸レボノルゲストレルの濃度は70mg/mLである。
【0106】
対象におけるプロゲスチン関連疾患もしくはプロゲスチン関連状態を処置または予防する方法の実施形態もまた開示されており、その方法は、上記の製剤の実施形態のいずれかまたはすべての製剤をその対象に投与する工程を含む。
【実施例
【0107】
(実施例)
【0108】
(実施例1)
【0109】
本実施例において、噴霧乾燥し微粒子化したLNGB粒子を調製した。そのLNGBは、ISO5クリーンルーム中で、Yamato Organic Solvent Recovery Unit GAS410とWatson Marlowペリスタポンプ520DiNと2方向ノズルシステム(0.4μm内径(ID))と特別設計した可撓性のフィルムアイソレータとを備え付けた、Yamato Versatile Spray Dryer GB-210Aを使用して、調製した。噴霧乾燥の前に、テトラヒドロフラン(THF)中5%のLNGBを、オートクレーブ済み0.2μm PTFEメンブランフィルターに通して滅菌濾過した。Gore(登録商標)Sta-Pure(登録商標)積層PTFE管を、THFに対する耐薬品性のために使用した。以下の制御した設定を使用した:流量 約5mL/分、噴霧乾燥入口温度 132℃、噴霧圧 0.07mPa、およびブロワ速度 0.49m/分。出荷基準は、元素不純物の分析(USP<232、233>(その関連部分は参照により本明細書に援用される)を使用する)、有効なGC法、粉末X線回折測定法(XRPD)による残留溶媒(USP<941>(その関連部分は参照により本明細書に援用される)を使用する)、粒径分布(USP<429>(その関連部分は参照により本明細書に援用される)を使用する)、および無菌性(USP<71>(その関連部分は参照により本明細書に援用される)を使用する)を含んだ。
【0110】
2種の製剤の実施形態を、上記のプロセスから得た噴霧乾燥したLNGB粒子を使用して作製した。それらの内容および量を以下の表1に提示する。
【表1-1】
【表1-2】
【0111】
(実施例2)
【0112】
本実施例において、代表的な第I相試験を、本明細書において開示されている製剤の実施形態の有効性を評価するために記載する。本実施例は2種の特定の製剤の実施形態を記載するが、本明細書において開示されている他の製剤の実施形態が同等に適用可能である。
【0113】
正常な体重(例えば、BMI<30kg/m)を有するかまたは肥満(例えば、BMI≧30kg/mかつ<40kg/m)である女性対象を、種々の濃度のLNGBを有する2種の製剤の実施形態を使用して5つの群に分割する。3つの群にはLNGBを皮下(SC)注射として与え、他の2つの群にはLNGBを筋肉内(IM)注射として与える。投与する初回用量は、20mg/mL濃度の2mLを使用して40mgである。この40mg SC投与の反復(または第2段階投与)を、20mg/mL濃度の2mLまたは70mg/mL濃度の0.57mLのいずれかを用いて行う。なお他の実施例では、別の用量50mgを、70mg/mL濃度の0.71mLを使用して投与する。なお他の実施例では、別の用量60mgを、70mg/mL濃度の0.86mLを使用して投与する。これらのSC注射を標準的な皮下注射手順にしたがって腹部の皮膚の下でゆっくり実施して、薬物が皮膚と筋肉との間の組織層に分散されることを確実にする。IM注射について、標準的な筋肉内注射手順にしたがってその製剤を三角筋にゆっくり注射して、血管中への注射を回避する;しかし、これらのSC注射は腹部とは異なる位置に行い得、これらのIM注射は三角筋とは異なる位置に行い得る。
【0114】
本実施例で使用する第1の製剤は、40mg/2mL(20mg/mL)の濃度のLNGB注射可能懸濁物である。この製剤は、13ミクロンのおよそのメディアン径を有する噴霧乾燥したLNGB粒子の懸濁物を含み、以下の薬学的に受容可能な賦形剤を含む水性媒体中にある:高度精製ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、噴霧乾燥したモノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、ベンジルアルコールおよびWFI(USP)。各バイアルは、総計40mgのために20mg/mLで2mLを含む。
【0115】
本実施例で使用する第2の製剤は、140mg/2mL(70mg/mL)の濃度のLNGB注射可能懸濁物である。このより高濃度の製剤は、13.7ミクロンのおよそのメディアン径を有する噴霧乾燥したLNGB粒子の懸濁物を含み、以下の薬学的に受容可能な賦形剤を含む水性媒体中にある:高度精製ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、噴霧乾燥したモノパルミチン酸ソルビタン(Span(登録商標)40)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、無水リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、ベンジルアルコールおよびWFI(USP)。各バイアルは、総計140mgのために70mg/mLで2mLを含む。40mgの用量は、上記の総計2mLのうちの0.57mLを使用して投与し得る。50mgの用量は、上記の総計2mLのうちの0.71mLを使用して投与し得る。60mgの用量は、上記の総計2mLのうちの0.86mLを使用して投与し得る。
【0116】
対象を、以下の薬物動態パラメータ/薬力学的パラメータを使用して評価する:
・LNGの薬物動態(PK)レベル;
・血清中のプロゲステロン(P4)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(E2)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、性ホルモン結合グロブリン(SHBG);
・経膣超音波検査によって評価した卵巣の卵胞活性;
・経膣超音波検査によって評価した子宮内膜の厚さ;ならびに
・出血プロファイル(その出血パターン(出血日数、微量出血、出血がないこと、最長エピソードの長さ、および出血の強度)を30日参照期間および90日参照期間にわたって分析する)。月経再開後に、月経周期の特徴を記録する(長さ、強度、出血期間、症状)。
【0117】
別個の送達経路(IMおよびSC)によるLNGB注射後のLNGレベルの間の関係を、数週間にわたるレベル低下としての排卵に対する影響とともに、評価する。評価し得る他の評価項目としては、排卵の再開および正常な月経周期が挙げられる。その後、卵巣機能およびホルモンプロファイルにおけるこれらの変化の評価を、そ
の注射の投与後に達成したLNG血漿中濃度レベルと関連付ける。試験結果に対するBMIの影響もまた評価する。特定の実施形態において、血小板、血球分類(RBC、WBC、ヘモグロビン、ヘマトクリット、好塩基球%、好酸球%、リンパ球%、単球%、好中球%、および血小板)、ならびに臨床化学(基礎代謝パネルおよび脂質プロファイル(グルコース、クレアチニン、カルシウム、カリウム、ナトリウム、塩化物、BUN、総コレステロール、HDL、LDL、およびトリリセリド)が挙げられる)を評価するための血液サンプルを決定する。さらに、肝機能検査(SGPT、SGOT、アルブミン、総タンパク、総ビリルビン、直接ビリルビン、およびGGT)を、収集した血液サンプルに対して完了する。ホルモンレベルもまた評価し、そのホルモンレベルとしては、プロゲステロンレベル、黄体形成ホルモン(LH)レベル、エストラジオール(E2)レベル、卵胞刺激ホルモン(FSH)レベル、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)レベル、およびLNG薬物動態(PK)レベルが挙げられる。また、経膣超音波検査を使用して、子宮内膜のストライプ(stripe)の厚さ、子宮内膜の外観、各卵巣における≧10mmのすべての卵胞の測定、および主席卵胞の評価を測定する。
【0118】
上記の測定基準の評価からの結果を、全身の定量的有害事象、主観的有害事象、および/または実験室検査の異常についてのグレード分けした尺度に基づいて評価し、この際、以下の尺度を使用する:
・軽度-事象は、最小限の処置しか必要としないかまたは処置を全く必要とせず、対象の日常活動を妨害しない。
・中程度-事象は、低レベルの不便をもたらすか、または治療手段に関する懸念をもたらす。中程度の事象は、いくらかの機能の妨害を引き起こし得る。
・重度-事象は対象の通常の日常活動を阻止し、事象は全身薬物治療または他の処置を必要とし得る。重度の事象は、通常は無能力化させるものである。
【0119】
代表的なグレード分けルーブリックを表2~表4に提示する。
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0120】
(実施例3)
【0121】
本実施例は、追加の代表的な製剤の実施形態を提供する。本実施例の製剤の実施形態の内容を表5および表6に記載する。実施例2で記載した評価技術を、これらの追加の製剤のために使用し得る。特定の実施例において、そのLNGB粒子をその製剤中に含み、その製剤が望ましい期間、均質なままである場合に、白色の均一な懸濁物を得る。
【表5】
【表6】
【0122】
(実施例4)
【0123】
本実施例において、排卵までのメディアン日数を、濃度および/または粒径の差に有する製剤の実施形態を使用し、ならびにこれらの製剤を使用して別個の投与経路を比較して、評価した。特に、実施例1からの製剤番号1および製剤番号2を対象において評価し、2つの投与経路(皮下および筋肉内)を使用して別個の製剤から得られた結果の間で比較を行った。結果を図6に示す。図6は、排卵までの日数を投与経路および濃度の関数として示すプロットであり、その投与経路は筋肉内ステージA(「IM-A」と呼ぶ)、皮下ステージB1(「SC-B1」と呼ぶ)、および皮下ステージB2(「SC-B2」と呼ぶ)を含んだ。図6に示す結果から得られた所見を、以下に提示する。
【0124】
図6において観察され得るとおり、排卵までのメディアン日数は、20mg/mLの濃度を有する製剤についての別個の投与経路を使用し、40mg用量を使用(SC-B1とIM-Aとについてデータ点を比較)すると、顕著に異なった。特に、SC-B1を使用した排卵までのメディアン日数は、IM-Aについての86日と比較して、115日に達した。これらの結果は顕著に異なり、これらの結果は、同一の注射体積、用量、濃度、および製剤を有する実施形態について、排卵まで29日の差を示し;その唯一の差は投与経路である。SC注射を使用してメディアン排卵に達するのにさらに29日長い期間は、非常に予想外であった。
【0125】
図6は、40mgという同一の用量を有するが濃度に差(すなわち、SC経路によって投与する70mg/mL、およびIM経路によって投与する20mg/mL)を有する2種の製剤について別個の投与経路を使用して、排卵までのメディアン日数における顕著な差をさらに示す。SC-B2とIM-Aとについてデータ点を比較することによって、排卵までのメディアン日数は、これらの別個の投与経路を使用すると顕著に異なったことが、観察され得る。特に、SC-B2を使用した排卵までのメディアン日数は、IM-Aについての86日と比較して、141日に達した。これらの結果は顕著に異なり、これらの結果は、同一の用量を有するが別個の投与経路(皮下と筋肉内との対比)および注射濃度(70mg/mLと20mg/mLとの対比)を有する実施形態について、排卵まで60日の差を示す。SC-B1とIM-Aとを比較した結果を考慮すると、メディアン排卵に達するのに(IM-Aと比較して)同じくさらに29日長い期間をSC-B2において観察するだろうと予期した;しかし、このSC注射経路を使用してメディアン排卵に達するのにさらに60日長い期間という結果は、非常に予想外であった。
【0126】
図6からまた観察され得るとおり、40mgという同一の用量を有し同じ投与経路を使用するが、濃度に差を有する製剤についての結果を比較(SC-B2とSC-B1とについてデータ点を比較)した場合、排卵までのメディアン日数において顕著な差を観察した。SC-B2を使用した排卵までのメディアン日数は、SC-B1についての115日と比較して、141日に達した。これらの結果は顕著に異なり、これらの結果は、同一の用量を有するが別個の濃度を有する実施形態について、排卵まで26日の差を示す。70mg/mLの製剤を使用する注射体積の減少は排卵までの日の顕著な遅延を示す。これは、非常に予想外であった。これらの結果はまた、このSC-B2製剤はSC-B1と比較して大きい平均粒径を有するLNGB粒子を含むので、粒径が排卵までのメディアン日数に対して効果を有し得ることを立証する。
【0127】
(比較例1)
【0128】
この比較例において、LNGB粒子のサンプルを、噴霧乾燥した粒子を滅菌するためにガンマ線照射工程を使用して調製した。そのLNGB粒子を噴霧乾燥によって取得し、その後、ガンマ線照射に供して、その粒子に対する照射の影響を評価した。得られた粒子は、ガンマ線照射後にそのサンプル中に存在する不純物に起因して、黄色を示した。図1Bは、ガンマ線照射前の開始時の白色/半透明の粒子(図1A)と比較して黄色のサンプルを示す。定量HPLCを実施して、照射前と照射後とでそのLNGB粒子のピークプロファイルを比較した。図2図5は、照射前(図2)および照射後(図3図5)のサンプルのHPLCのトレースを示す。照射サンプルは、3つの主要ピークA、D、およびEを>0.15%で、ならびに小さいピークCを約0.07%で生じた。ピークFおよびピークGを、パージしていない照射サンプルにおいて低量で観察した(図3)。Nでパージした照射サンプルおよびArでパージした照射サンプル(それぞれ、図4および図5)において、ピークFおよびピークGは、他のピーク(分解サンプルまたは勾配人工産物のいずれか)から分離されなかった。
【0129】
本開示の原理が適用され得る可能な多くの実施形態を考慮すると、例示されている実施形態は好ましい例に過ぎず、例示されている実施形態は本開示の範囲を限定するものとして見なされるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および趣旨の範囲内にあるすべてを本発明者らの発明として主張する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】