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特表2025-500843放射性せん断減粘生体材料組成物および使用方法
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  • 特表-放射性せん断減粘生体材料組成物および使用方法 図1A
  • 特表-放射性せん断減粘生体材料組成物および使用方法 図1B
  • 特表-放射性せん断減粘生体材料組成物および使用方法 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】放射性せん断減粘生体材料組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/06 20060101AFI20250107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250107BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250107BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250107BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 49/04 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K51/06 100
A61P35/00
A61K51/08 100
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/46
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/02
A61K49/04
A61K49/00
A61K49/04 210
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535369
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022052777
(87)【国際公開番号】W WO2023114255
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,468
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジャバルザデ、エフサン
(72)【発明者】
【氏名】モガダム、サラ エスランボルチ
(72)【発明者】
【氏名】ダビン、カレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD27
4C076EE05A
4C076EE06A
4C076EE22A
4C076EE23A
4C076EE24A
4C076EE26A
4C076EE30A
4C076EE31A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE38A
4C076EE41A
4C076EE42A
4C076EE43A
4C076EE57A
4C084AA12
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085HH01
4C085HH05
4C085JJ01
4C085KA36
4C085KB07
4C085KB47
4C085LL18
(57)【要約】
本発明は、ベータまたはアルファ放出放射線源、ポリマーマトリックス、および/または放射線不透過性剤を含有するせん断減粘生体材料組成物を利用して固形腫瘍を治療するための方法およびデバイスである。本明細書に開示される新規な放射性組成物は、局所領域治療のために、経皮的にまたは経カテーテル血管経路を介して標的環境に注入され得る。本発明は、放射性同位体源と組み合わせた場合に、腫瘍部位に局所的に治療線量の放射線を提供して、周囲組織への損傷のリスクを最小限にすることができるせん断減粘生体材料で構成されている。デバイスは、原発性腫瘍治療として、または原発性腫瘍の切除後の残存がん細胞の治療のためのいずれかで使用され得る。本発明は、せん断減粘放射性生体材料組成物を作製するための方法、ならびに治療方法の一部として組成物を利用するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマーと、
シリケートナノ粒子と、
水と、
放射性核種と、
を含む、固形腫瘍を治療するのに適した組成物。
【請求項2】
前記生体適合性ポリマーが、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、絹、寒天、多糖、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-(l)-乳酸(PLLA)、ポリ(d)-乳酸(PLDA)、アガロース、デンプン、リグニン、ケラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにそれらのコポリマー、ターポリマーおよび組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約0.5%~約20%(w/w)の前記生体適合性ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリケートナノ粒子が、合成シリケートナノ粒子(ラポナイト)および天然シリケートナノ粒子(フィロシリケート、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイト-スメクタイト)からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
造影剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記造影剤が、造影剤の約10~約40重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記造影剤が、タンタル、タングステン、白金、金、およびイオヘキソールからなる群から選択される、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記放射性核種を約0.1~40重量パーセントの量で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
放射量が、医師によって決定されるように、特定の腫瘍および患者の条件に対して調整可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記放射性核種が、90Y、177Lu、32P、198Au、125I、131I、60Co、137Ce、および166Hoを含む放射性核種の群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリケートナノ粒子が、前記組成物の放射線増感剤として機能する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
複数の異なる放射性核種を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物が、カテーテルを介して血管内に送達されて、血管を塞栓すること、および腫瘍の壊死を引き起こすことの両方を行う、方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物が、腫瘍の部位に直接的に経皮的に送達される、方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物が、外科的に減量された腫瘍における残存空間を充填するために使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療用放射線およびがん治療に関する。より具体的には、本開示は、放射性物質を含むせん断減粘生体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、がん治療のための最も重要かつ有効な方法の1つとなっており、単独で、または外科手術、化学療法、および免疫療法と組み合わせて使用することができ、世界中の全てのがん症例のおよそ半分における標準治療である。様々な形態の放射線療法が存在するが、治療は一般に、電離放射線源として機能する放射性同位体(本明細書では放射性同位体、放射性核種および放射性薬剤とも呼ばれる)の使用に依存する。外部または内部供給源のいずれかからがん性標的に送達される電離放射線は、アポトーシスを誘導し得るDNAへの損傷を引き起こす。
【0003】
がんの種類に応じて、症状を軽減するための緩和治療として、または不治の症例において疾患の進行を制限するために、放射線療法を使用して局所的ながんを治療することができる。放射線療法はまた、任意の残留腫瘍細胞を排除するのを助けるために、手術中および手術後にアジュバント療法として使用され得る。
【0004】
外照射放射線療法は、臨床現場で使用される放射線療法の最も普及している形態であり、体外から特定の腫瘍部位への光子(例えば、X線、ガンマ線)、プロトン、または粒子放射線の形態の高エネルギー線を含む。この療法の1つの主な欠点は、外部投与を介してがん性腫瘍を直接標的化することが困難であることを考えると、オフターゲットの健康な組織を損傷する危険性である。さらに、外照射放射線は、より大きな腫瘍に対して限定された効力を有し、そして外部放射線が腫瘍領域の周りに望ましくない組織吸収を与えるので、深い腫瘍に対しては受け入れられない。予期されるように、外部放射線の使用は、患者が正確な位置に配置されるべきであり、身体の意図されない領域への照射および組織損傷を最小限にするように、放射線量が正確であるべきであるため、慎重な注意を必要とする。この注意をもってしても、外部照射は皮膚損傷を誘発することがあり、依然として腫瘍領域周辺の望ましくない組織吸収をもたらすことがある。
【0005】
これらの懸念を改善するために、体内放射線療法は、通常は腫瘍自体に隣接して、またはその中に直接、体内に配置された短距離放射性核種を使用して、腫瘍への治療用放射線のより局所的な投与を可能にする技術として存在する。
【0006】
近接照射療法は、密封された放射性源をがん組織に隣接して、またはがん組織内に配置することを含む内部放射線療法の一種である。放射性源が配置される位置は、治療のタイプ、例えば、腔内近接照射療法、組織内近接照射療法、管腔内/血管内近接照射療法、または表面近接照射療法を分類するために使用される。近接照射療法は、1時間当たり0.4~2グレイ(Gy.h-1)が低線量率(LDR)であり、2~12Gy.h-1が中線量率(MDR)であり、高線量率(HDR)は12Gy.h-1より大きいとみなされると述べている国際放射線単位委員会(International Commission on Radiation Units)を使用して、適用される線量率に従ってさらに分類することができる。HDR近接照射療法は、典型的には、放射性源の一時的な配置を含み、一方、LDRは、通常、永久的な移植を含む。多くの場合、近接照射療法は、従来の外照射放射線療法を使用して達成することができない非常に局所的な放射線量の送達を容易にする。
【0007】
いくつかの近接照射療法デバイスおよびシードは、より容易な取り扱いおよび送達を提供するために金属で密封された放射性核種である。このクラスの放射性シードの1つの主な欠点は、封入金属が、収容された放射性核種によって放出される低エネルギーベータ線および光子放射線のかなりの部分を吸収することである。従って、個別の封入された線源の使用に基づく近接照射療法の現在の実施は制限されている。永久的近接照射療法シードに関する1つの問題は、特定の例において、それらが外科的移植および除去を必要とし得ることである。他の場合には、金属封入材料は体内に永久的に残ることがあり、組織の他の部分への移動の可能性がある。移動を防止しながら低侵襲的に放射性シードを送達する戦略は、この療法の実施を改善することができる。
【0008】
放射線塞栓形成は、治療ビヒクルの移動を伴わない腫瘍の局所的な最小侵襲性治療のために探索されてきた1つの方法である。放射線塞栓形成は、一般に、選択的に腫瘍を照射するために、腫瘍血管系への塞栓としての放射性マイクロスフェアの送達を含む、内部放射線療法の最小侵襲性形態を提供する。腫瘍へのマイクロスフェアの近接は、腫瘍への致死量の放射線の局所送達をもたらす。同時に、マイクロスフェアは、血管を閉塞して腫瘍への血液および栄養の流れを妨げることによって、ある程度の塞栓を引き起こす。しかし、放射性マイクロスフェアは、放射線塞栓形成の最も一般的な機構であるが、それ自体の欠点に直面する。1つには、マイクロスフェアによる放射性塞栓形成は、腫瘍への血管アクセスを必要とするが、これは全ての場合に当てはまるわけではない。また、脈管構造が腫瘍の中および外に存在する場合、非標的組織および器官への逆流を含む、身体の他の部分へのマイクロスフェアの移動の可能性がある。さらに、マイクロスフェアは水性媒体中で送達されるので、マイクロスフェアは沈降し得、そして/または放射能の不均一な送達を生じ得る。
【0009】
従って、現在の放射線塞栓戦略の2つの主要な制限は、放射性マイクロスフェアが腫瘍部位から離れて移動する可能性、またはこのスフェアが液体分散物中に沈降して、不均一な照射を引き起こす可能性である。本開示は、生体材料内での放射性核種の固定化について記載する。塞栓として使用されるか、または経皮的に送達されるかにかかわらず、放射性核種は、封入化された粒子の放出および放射性核種とシリケートナノ粒子との間の相互作用を防止するヒドロゲルメッシュサイズに起因して固定化される。さらに、材料の粘度は沈降を防止し、デバイス全体の放射性核種の均質性を高める。
【0010】
言い換えると、本開示の実施形態は、放射性源を注入可能な半固体生体材料に組み込むことによって、現在の放射線塞栓戦略の制限を克服する。本明細書の組成物は、血管内カテーテルまたは経皮注入を介して腫瘍部位に送達されるが、腫瘍内に押し出されると、腫瘍に近接して適所に留まることを可能にするせん断減粘性を有する。さらに、生体材料は、腫瘍への血流を制限することによっても、放射線の抗腫瘍効果を増強する塞栓として機能することができる。生体材料のポリマー組成物は、放射線に対して非常に安定であり、放射性同位体の組み込みは、放射線送達の現在の方法を増強し得る。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、ベータまたはアルファ放射体放射線源、ポリマーマトリックス、および/または放射線不透過性物質を含むせん断減粘生体材料組成物を利用して固形腫瘍を治療するための方法およびデバイスを記載する。本開示は、カテーテルを介して血管部位に送達されるか、または腫瘍部位に経皮的に注入される放射性同位体を含む生体材料組成物に関する。一実施形態では、生体材料組成物は、固形腫瘍に血液を供給する血管を塞栓するため、ならびに血管および/または組織に治療レベルの放射線を提供するための新規な方法において使用される。別の実施形態において、生体材料は、組織に経皮的に注入され、放射性同位体を移動させる。
【0012】
本開示は、肝臓がん、腎臓がん、前立腺がん、脳腫瘍、および乳がんを含むがんの治療のためのデバイスおよび方法に関する。肺がん、膀胱がん、結腸がん、腎臓がん、膵臓がん、甲状腺がん、神経膠芽腫、頭頸部がん、および軟部組織肉腫を含む他のタイプのがんが、本明細書に記載される方法およびデバイスを使用して治療され得る。より具体的には、本開示は、いくつかの実施形態では、固形腫瘍の治療のためのデバイスおよび方法に関する。
【0013】
本開示は、様々な追加の利点を提供する。好ましい粘度を有するせん断減粘生体材料と組み合わされた高エネルギー放射線源は、カテーテルまたは経皮注入を介して放射線を優先的に送達する。高エネルギーベータまたはアルファ放射体のいずれかを介した放射線の組み込みは、放射線曝露のゾーンを腫瘍の近傍に集中させ、放射線レベルおよび健康な組織への損傷のリスクを減少させる。組成物のゆっくりとした吸収速度は、関心のある放射性核種の半減期を大きく超え、これは他の器官および組織への漏出のリスクを有利に減少させる。ゆっくりとした分解速度は、一旦放射性核種が完全に崩壊すると、繰り返しの治療を可能にし得る。
【0014】
せん断減粘生体材料組成物は、注入することができ、生理学的状態で無傷のままであり、放射線を注入点に近接して閉じ込めることができる。放射性核種は、いくつかの実施形態において、組成物中に均一に混合される。組成物は、沈殿または急速な分解を受けない。シリケートおよび/またはタンタルナノ粒子の存在は、以下に記載されるように放射線ポテンシャルを増大させ得る。
【0015】
本開示の利点には、腫瘍標的領域への直接的な局所送達を前提としたより良好な治療指数、周囲組織への損傷を制限しながらのより高い放射線量、放射性核種の放射線増感および固定化、ならびに治療部位における放射性核種のより均一な分布が含まれるが、これらに限定されない。本開示は、このような塞栓組成物のカテーテル送達、経皮注入、または別の適切な送達機構によって、他の方法では手術不可能な腫瘍の治療を可能にする方法を提供する。
【0016】
本開示では、放射性核種としてイットリウム-90が言及されているが、本開示の他の実施形態は、リン-32、銅64、銅-67、ヨウ素-131、ルテチウム-177、サマリウム-153、ホルミウム-166、レニウム-186、およびレニウム-188などの他のベータ放射体を含むがこれらに限定されない様々な放射性核種を含むことができる。本開示はまた、限定はしないが、アクチニウム-225、ビスマス-213、ビスマス-212、トリウム-227、ラジウム-223、アスタチン-211、およびテルビウム-149を含むアルファ放射体を含む実施形態を包含する。
【0017】
本開示は、造影剤またはスペックルなどのイメージング剤を含有することができる。イメージング材料の様々な例を利用することができる。放射性組成物は、送達部位に放射性物質を保持する空間充填半固体であり、健康な組織への移動を防止する。本開示の実施形態は、緩和的または治癒的治療として単独で、またはがん治療の他のモダリティと組み合わせて使用することができる。本開示の組成物は、造影剤と共に、または単独で、または放射線増感剤と組み合わせて使用して、放射線のポテンシャルを増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】せん断減粘生体材料が放射性核種と混合されている、例示的な実施形態による放射性せん断減粘生体材料の放射能シグナルを示す。
図1B】例示的な実施形態による、せん断減粘ポリマー組成物と混合した後の、放射性核種としてルテチウム-177を含有するシリンジの写真を示す。
図2A】超音波下のウサギ肝臓における、例示的な実施形態による放射性せん断減粘生体材料を示し、ここで、ルテチウム-177は、せん断減粘生体材料に組み込まれ、超音波下でウサギ肝臓に経皮的に送達された。
図2B】ウサギ肝臓における、例示的な実施形態による放射性せん断減粘生体材料の局所放射能のSPECT/CT画像を示し、ここで、ルテチウム-177は、せん断減粘生体材料に組み込まれ、超音波下でウサギ肝臓に経皮的に送達された。
図3】SPECT/CT下でのウサギ肝臓における、例示的な実施形態による放射性せん断減粘生体材料の全身画像である。SPECT/CT画像は、送達領域(すなわち、肝臓)において単離されたせん断減粘生体材料の放射能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語は、その実体の1つ以上を指し、すなわち、複数の指示対象を指し得る。したがって、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「1つ以上の」、および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において互換的に使用される。加えて、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による「要素(an element)」への言及は、その要素が1つだけ存在することを文脈が明確に要求しない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除しない。
【0020】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、その値を決定するために使用されるデバイスまたは方法に固有の誤差の変動、または測定される試料間に存在する変動を含むことを示すために使用される。特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、「約」という用語は、報告された数値の上または下10%以内を意味する(そのような数が可能な値の100%を超えるか、または0%を下回る場合を除く)。範囲または一連の値と併せて使用される場合、「約」という用語は、別段の指示がない限り、範囲の終点または一連の中に列挙された値の各々に適用される。本出願において使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、同意義のものとして使用される。
【0021】
マイクロスフェア治療に関して、イットリウム-90(90Y)マイクロスフェア放射線塞栓形成が、肝臓がんを有する患者の管理のために出現した。この放射線塞栓形成術には、塞栓形成と近接照射療法の2つの部分がある。90Yは、64.2時間すなわち2.7日の物理的半減期を有するベータ放射体であり、90Yマイクロスフェア放射線量の94%までが、治療後の最初の11日間に送達され得、その後、安定なジルコニウムに崩壊する。ベータ放射線の臨床的利点は、隣接する(非標的)健康な組織への線量を最小限にしながら、比較的高い線量を腫瘍に処方し、送達する腫瘍医の能力である。90Yは、一次ガンマ放出のない高エネルギーのβ放出放射性核種である。90Yβ粒子スペクトルの最大エネルギーは約2.3MeVである。医療内部被曝線量(MIRD)の原理により、1kgの組織全体に均一に分布した90Yの1ギガベクレル(GBq)は、約50Gyの吸収線量を提供する。がんの病期、腫瘍のサイズおよびタイプに基づいて、送達される放射線の量は異なる。
【0022】
現在、放射線塞栓形成は、生活の質を維持するとともに生存率を改善する目的で、局所的に進行した原発性がんおよび転移性がんの両方の治療に適応されている。現在、放射線塞栓形成に使用される2つの市販のFDA認可90Y含有製品が存在するが、そのようなアプローチは、上記で概説されるように、治療領域から非標的組織および器官への移動のリスクを上昇させ得、非標的組織および器官への逆流のリスクを上昇させ得、有効であるために血管系への送達を必要とし得る。
【0023】
生体材料は、周囲の健康な組織への毒性を低減し、治療の有効性を高めるために、放射線療法のより正確な標的化を可能にするように開発されてきた。これらの独特な生体材料は、ポリマー、ガラス、およびセラミックから開発されてきた。放射線ブーストを生じる周囲組織の放射線増感を達成するか、または放射線防護剤として作用し得るかのいずれかであるナノ粒子を送達するために、放射線療法のための生体材料を利用することは、関心のある分野であり続けている。様々な生体材料の構造上または構造内への放射性核種の組み込みは、がん組織への放射線療法の標的化および持続送達を容易にすることができる。各放射性核種は、それ自体の特徴的なエネルギースペクトルおよび粒子放出を有する。生体材料は、放射線送達の現在の方法を増強するために使用され得、そして多くの場合、それらの使用は、現在の治療プロトコルに統合され得る。
【0024】
もちろん、放射線療法の主な課題は、腫瘍が、放射線損傷のリスクがある正常な組織および器官の近くに位置することが多く、標的組織に安全に送達することができる放射線量を制限することである。従って、放射線増感剤と呼ばれる、電離放射線に対して腫瘍を優先的に増感させる薬剤は、放射線腫瘍学において大きな関心を集めている。タンタル系ナノ粒子は、放射線療法のための放射線増感または相乗的細胞死滅効果において役割を果たすことができる。タンタルは、X線などの電離放射線を減衰させる高い能力を示しており、腫瘍に直接送達される照射能力を高めることができる。また、シリケートナノ粒子は、標的組織の外側の放射線量を制限するための放射線増感剤および放射能の閉じ込めとして有益であり得る。さらに、シリケートナノ粒子は、シリケートの酸素原子との相互作用に起因する放射性核種の固定化の手段を提供し、これは、本発明者らのせん断減粘生体材料が治療領域に放射能を保持する能力を増強し得る。
【0025】
上記を考慮して、本開示は、経カテーテル投与、経皮注入などを介した血管固形腫瘍への送達のための組成物に関する。
本開示は、放射線を腫瘍組織または血管部位に送達する一方で、放射性核種の均一な分布を有する配置領域において無傷である、せん断減粘生体材料の能力に依存する。材料の経カテーテル送達に関して、せん断減粘生体材料は、塞栓剤としても機能し、より大きな治療効果のために治療される腫瘍への血流を制限する。組成物は、針またはカテーテルシステムによって腫瘍または他の病変に導入することができる。この組成物は、腫瘍または病変の腔または切除部位を満たし得るか、または脈管構造腫瘍を塞栓し得るか、または固形組織に直接送達され得る。放射性同位体の半減期または全有効期間にわたるゆっくりとした吸収は、放射能の継続的な送達を可能にする。本開示は、非標的組織への放射性源の浸出を防止しながら、化学療法/免疫療法薬物、増感材料、および異なる送達方法の組み込みを可能にする。
【0026】
本開示は、好ましい粘度を有するせん断減粘生体材料と組み合わされた高エネルギー放射線源を組み合わせ、それによって、カテーテル、経皮注入、および/または他の適切な送達経路を介して優先的に放射線を送達する内部放射線療法の方法を提供する。高エネルギーベータまたはアルファ放射体のいずれかを介した放射線の組み込みは、放射線曝露のゾーンを腫瘍の近傍に集中させ、放射線レベルおよび周囲の健康な組織への損傷のリスクを減少させる。組成物のゆっくりとした吸収は、関心のある種々の放射性核種の半減期を大きく超え、これは他の器官および組織への漏出のリスクを有利に減少させる。ゆっくりとした分解は、一旦放射性核種が完全に崩壊すると、繰り返しの治療を可能にし得る。
【0027】
示されるように、本開示のせん断減粘生体材料組成物は、注入することができ、生理学的条件下で無傷のままであり、放射線を注入点に閉じ込めることができる。放射性核種は、組成物中に均一に混合することができる。組成物は、早期に沈殿または分解しない。シリケートおよび/またはタンタルナノ粒子の存在は、放射線ポテンシャルを増大させ得る。本発明の利点には、腫瘍標的領域への直接的な局所送達を前提としたより良好な治療指数、周囲組織への損傷を制限しながらのより高い放射線量、放射性核種の放射線増感および固定化、ならびに治療部位における放射性核種のより均一な分布が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
一実施形態では、せん断減粘生体材料と混合した後のせん断減粘生体材料組成物内の放射性物質の相対位置は、せん断減粘生体材料を流す(例えば注入する)前、流している間、流した後で変化しないままである。換言すれば、せん断減粘生体材料組成物内の放射性物質の均一な分布は、移植の前後および/または治療部位への注入の間に存在する。
【0029】
一実施形態によれば、本開示の組成物は(1)放射線療法の伝達のための放射性核種を変化させること(これには、アルファまたはベータ放出放射性核種が含まれる);(2)粘度を制御することで、経皮送達のために組織への拡散を調節し、放射性核種を濃縮させ、腫瘍中に残存させること;および(3)他の薬物(例えば、化学療法剤および免疫療法化合物)を組み込み、制御された様式で標的組織(例えば、腫瘍)内にそれらを放出することによって調節され得る。
【0030】
一実施形態では、本明細書に開示されるせん断減粘組成物は、(1)高エネルギーの純粋なベータ放射体(90Yなど)を使用すること、(2)放射性源を腫瘍に閉じ込めること、(3)ベータ放射体を腫瘍内に可能な限り均一に分布させること、および(4)放射線増感剤として作用すること、によって治療効果を増大させることによって、治療可能比について最適化することができる。本明細書中に開示される注入可能な組成物は、腫瘍における放射性核種の保持を増加させ、そして漏出および全身毒性を減少させるためのキャリアとして使用され得る。本明細書の組成物は、せん断減粘性を有し、注入のために容易に流動する一方で、腫瘍内に押し出されるとその場に留まる。さらに、組成物には、任意の他のタイプの放射性物質を装填することができる。
【0031】
本開示による組成物は、放射線に対して非常に安定であり、放射性同位体の組み込みは、放射線送達の現在の方法を増強し得る。さらに、組成物は、化学療法または免疫療法薬を組み込むことができる。
【0032】
一実施形態によれば、本開示は、1)生体材料を作製するステップと、2)得られた組成物を放射性同位体と混合するステップとを含む、放射性せん断減粘生体材料を調製する方法に関する。従って、本開示の組成物は、生体適合性ポリマーと、合成シリケートナノ粒子と、生体適合性溶媒と、約0.5マイクロキュリー~約100ミリキュリーの放射能含有量を有する約0.1重量パーセント~約25重量パーセントの放射性同位体と、を含み得る。一実施形態では、組成物は、非放射性造影剤をさらに含み得る。
【0033】
組成物の生体材料は、生体適合性ポリマー、合成シリケートナノ粒子、および生体適合性溶媒の混合物であってもよい。混合物は、例えば、0.1%~50%の濃度の範囲のシリケートナノ粒子と、0.5%~20%の濃度の範囲の生体適合性ポリマーと、残部としての溶媒とを含み得る。別段の指示がない限り、本明細書で表される百分率(%)は、重量パーセントである。混合物は、シリケートナノ粒子を、0.1%~0.2%~0.5%~1%~2%~5%~10%~15%~20%~30%~40%~50%のいずれかの範囲(換言すれば、前述の値のいずれか2つの間の範囲)の量で含み得る。混合物は、例えば、0.5%~1%~2%~5%~10%~15%~20%のいずれかの範囲の量の生体適合性ポリマーを含み得る。
【0034】
放射性せん断減粘生体材料は、生体適合性ポリマー、合成シリケートナノ粒子、放射性核種、および生体適合性溶媒の混合物を含み得る。放射性せん断減粘生体材料は、例えば、0.1%~50%の濃度の範囲のシリケートナノ粒子と、0.5%~20%の濃度の範囲の生体適合性ポリマーと、0.1%~40%の濃度の範囲の放射性核種と、残部としての溶媒とを含み得る。放射性せん断減粘生体材料は、シリケートナノ粒子を、0.1%~0.2%~0.5%~1%~2%~5%~10%~15%~20%~30%~40%~50%のいずれかの範囲の量で含み得る。放射性せん断減粘生体材料は、例えば、生体適合性ポリマーを、0.5%~1%~2%~5%~10%~15%~20%のいずれかの範囲の量で含み得る。放射性せん断減粘生体材料は、例えば、放射性核種を、0.1%~0.2%~0.5%~1%~2%~5%~10%~15%~20%~30%~40%のいずれかの範囲の量で含み得る。
【0035】
好ましい実施形態において、放射性同位体の量および放射能含有量は、約200~約100,000ラド[2~1000グレイ(Gy)]の移植部位での累積電離放射線量を提供するのに十分である。
【0036】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載される組成物は、固形腫瘍の少なくとも一部の壊死をもたらすために使用される。従って、この組成物は、例えば、固形腫瘍に直接送達されるか、または固形塊腫瘍中もしくはその近くにあるように選択された血管部位に送達され、そしてこの組成物中に使用される放射性同位体の量および放射能含有量は、このような壊死をもたらすのに十分である。
【0037】
一実施形態では、放射性同位体組成物を作製するための本発明の方法は、せん断減粘生体材料を、水不溶性または閉じ込められた放射性同位体と混合することを含む。一実施形態では、既に活性化された放射性同位体が、所望の用量に基づく投与のために生体材料に組み込まれる。別の実施形態では、放射性核種前駆体が生体材料に組み込まれ、続いて中性子衝撃によって活性化される。別の実施形態において、放射性内容物は、天然に放出する放射性内容物である。
【0038】
放射性同位体という用語は、例えば、90イットリウム、192イリジウム、198金、125ヨウ素、137セシウム、60コバルト、32リン、52マグネシウム、55鉄、90ストロンチウム、異なるコバルトのみを含む、核医学において従来使用される天然または非天然の放射性同位体を指す。核医学で使用するために現在製造されている他の放射性核種には、例えば、81ルビジウム、206ビスマス、67ガリウム、77臭素、129セシウム、73セレン、72セレン、72ヒ素、103パラジウム、203鉛、111インジウム、52鉄、167ツリウム、57ニッケル、62亜鉛、61銅、123ヨウ素が含まれる。
【0039】
これらの組成物および方法において使用される生体適合性ポリマーは、生分解性ポリマーまたは非生分解性ポリマーのいずれかであり得るが、好ましくは生分解性である。生分解性ポリマーは、当該分野で開示されている。例えば、ゼラチン、コラーゲン、タンパク質、アルギネート、寒天、多糖、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、ならびにそれらのコポリマー、ターポリマーおよび組合せなどの直鎖ポリマー。
【0040】
造影剤という用語は、注入中に監視することができる生体適合性の放射線不透過性材料、例えばX線撮影を指す。造影剤の例としては、タンタル、酸化タンタル、金、タングステン、白金粉末、硫酸バリウム、およびOmnipaque(登録商標)(イオヘキソール)が挙げられる。
【0041】
一実施形態では、放射性同位体は、カテーテル送達中に組成物の可視化を可能にする造影剤として作用する。あるいは、可視化を確実にするために、非放射性造影剤が放射性同位体と組み合わせて使用される。
【0042】
一実施形態では、放射線不透過性であるように十分に高い原子番号を有する放射性同位体を使用して、蛍光透視下での検出のための放射線源および造影剤の両方として機能させることができる。
【0043】
別の実施形態において、別個の非放射性造影剤が、放射性同位体と組み合わせて使用される。
一実施形態によれば、放射性組成物はせん断減粘組成物である。せん断減粘性は、その粘度が歪みの下で減少する流体の非ニュートン挙動である。換言すれば、そのようなせん断減粘流体に特定の力(すなわち、せん断)が加えられると、流体はより容易に流れる。これは、せん断減粘組成物が、カテーテルを介して、経皮的になど、より容易に送達されることを可能にする。
【0044】
さらに、組成物は、移植時に組成物に近接する組織の機械的特性と同様の機械的特性を有し得る。例えば、組成物の貯蔵弾性率(G’)は、1kPa~1MPaであってもよい。いくつかの実施形態では、組成物の貯蔵弾性率(G’)は、1kPa~100kPaであってもよい。いくつかの実施形態では、組成物の貯蔵弾性率(G’)は、1kPa~40kPaである。理解され得るように、組成物の機械的特性は、部分的には、移植された組成物に近接すると期待される組織の予期される機械的特性によって決定される。
【0045】
実施形態では、組成物の降伏応力は、約1Pa~約200Paである。いくつかの実施形態では、組成物の降伏応力は、約1Pa~約100Paである。実施形態では、組成物の降伏応力は、約2Pa~約50Paである。実施形態では、組成物の降伏応力は、約1Pa~約25Paである。実施形態では、組成物の降伏応力は、約1Pa~約10Paである。実施形態では、組成物の降伏応力は、約1Pa~約5Paである。実施形態では、組成物は、降伏応力よりも大きい圧力を加えると流動する。
【0046】
一実施形態では、組成物の相転移特性は、とりわけ、組成物内の成分の比および/または組成物の全固形分によって決定される。成分の比(例えば、反対に荷電したポリマーおよびナノ粒子の比)は、静電相互作用に影響を与え得る。同時に、成分の比および全固形分は、組成物の粘弾性特性(例えば、せん断速度下で粘度がどのように変化するか、および回復/可逆性の程度)を決定する。
【0047】
組成物が化学療法剤または他の薬物または生物学的治療と統合される実施形態において、好ましい組成物は、治療と混合され得る。例えば、組成物をドキソルビシンと混合することができる。
【0048】
一実施形態によれば、上記の組成物は、固形腫瘍の治療に使用することができる。1つのこのような治療において、これらの組成物は、血管の針またはカテーテル補助塞栓形成のための方法において使用される。せん断減粘組成物の注入は、手術中または経皮的に行われてもよい。このような方法では、カテーテル送達の場合に血管が塞栓形成されるように、ある量の組成物が、蛍光透視下で針またはカテーテル送達を介して選択された血管に導入される。他の実施形態では、組成物は、固形腫瘍に直接注入される。
【0049】
一実施形態によれば、本明細書に記載される組成物は、例えば、固形塊腫瘍に至る血管または固形塊腫瘍内の血管の塞栓形成による固形腫瘍の壊死において有用である。血管を塞栓するために使用される場合、組成物中で使用される放射線のレベルはまた、腫瘍の少なくとも一部を切除するのに十分であることが好ましい。あるいは、この組成物は、固形腫瘍塊に直接送達され得、そしてその中に含まれる放射線は、腫瘍の壊死をもたらすために使用され得る。
【0050】
本明細書中に記載される組成物は、化学療法剤または免疫療法剤のためのキャリアとして使用され得るが、この薬剤は、固形腫瘍へのその後の放出のために送達されることが意図される。
【0051】
本開示の一実施形態では、せん断減粘生体材料は、ヒドロゲルが腫瘍部位に浸潤して放射線量を送達することを可能にし、それによって腫瘍部位への放射性核種の経皮送達を可能にする、針を通したシリンジ注入に適している。本明細書中に記載される組成物の高い粘度は、腫瘍組織全体にわたって送達される放射性核種の均一性を確実にする一方で、送達部位に放射性源を閉じ込めたままにする。これは、放射性核種の移動を介して周囲の健康な組織に放射線が影響を及ぼす機会を最小限にする。
【実施例
【0052】
実施例1
この実施例の目的は、本発明による組成物の調製を実証することである。この組成物は、(a)ゼラチン、(b)シリケートナノ粒子、および(c)水を含む。全ての成分を混合した後、この組成物を造影剤に添加し、得られた組成物をスピードミキサーによって完全に混合した後、硬化させた。硬化した組成物を放射性同位体と混合した。
【0053】
実施例2
この実施例の目的は、本発明による組成物の調製を実証することである。この組成物は、(a)ゼラチン、(b)シリケートナノ粒子、および(c)水を含む。全ての成分を混合した後、この組成物を硬化させた。硬化した組成物を放射性同位体、すなわち、ルテチウム-177と混合した。実施例2を図1A図3に示す。
【0054】
例えば、図1Aおよび図1Bは、ルテチウム-177放射性核種を、注入可能な固体としての本開示の生体適合性ポリマーと混合する例を示す。図1Aは、放射性せん断減粘生体材料の放射能シグナルを示す。図1Bは、混合後のルテチウム-177を含有するシリンジの写真を示す。
【0055】
図2Aおよび図2Bは、超音波(図2A)またはSPECT/CT(図2B)下でのウサギ肝臓における放射性せん断減粘組成物を示す。この図では、ルテチウム-177をせん断減粘生体材料に組み込み、超音波下で肝臓に経皮的に送達した。
【0056】
図3は、完全なウサギの状況におけるSPECT画像化下でのウサギ肝臓における放射性せん断減粘組成物を示す。SPECT/CT画像化は、放射能が送達の領域(すなわち、肝臓)において隔絶され、そして治療部位から離れて移動しないことを示す。
【0057】
実施例3
この実施例の目的は、本発明による組成物の調製を実証することである。この組成物は、(a)ゼラチン、(b)シリケートナノ粒子、および(c)水を含む。すべての成分を混合した後、この組成物を非放射性シードと混合し、混合物に衝撃を与えて活性化させる(例えば、中性子衝撃によって)と、放射性同位体が活性化される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマーと、
シリケートナノ粒子と、
水と、
放射性核種と、
を含む、固形腫瘍を治療するのに適した組成物。
【請求項2】
前記生体適合性ポリマーが、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、絹、寒天、多糖、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリヒドロキシセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ-(l)-乳酸(PLLA)、ポリ(d)-乳酸(PLDA)、アガロース、デンプン、リグニン、ケラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ならびにそれらのコポリマー、ターポリマーおよび組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約0.5%~約20%(w/w)の前記生体適合性ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリケートナノ粒子が、合成シリケートナノ粒子(ラポナイト)および天然シリケートナノ粒子(フィロシリケート、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイト-スメクタイト)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
造影剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記造影剤が、造影剤の約10~約40重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記造影剤が、タンタル、タングステン、白金、金、およびイオヘキソールからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記放射性核種を約0.1~40重量パーセントの量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
放射量が、医師によって決定されるように、特定の腫瘍および患者の条件に対して調整可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記放射性核種が、90Y、177Lu、32P、198Au、125I、131I、60Co、137Ce、および166Hoを含む放射性核種の群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリケートナノ粒子が、前記組成物の放射線増感剤として機能する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
複数の異なる放射性核種を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物
【国際調査報告】