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特表2025-500847各光アンテナが大きな放射面積を有する位相回折格子アンテナアレイ光電子エミッタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】各光アンテナが大きな放射面積を有する位相回折格子アンテナアレイ光電子エミッタ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/295 20060101AFI20250107BHJP
   G02B 6/34 20060101ALI20250107BHJP
   G02B 6/124 20060101ALI20250107BHJP
   G02B 27/44 20060101ALI20250107BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20250107BHJP
   G01S 7/481 20060101ALN20250107BHJP
【FI】
G02F1/295
G02B6/34
G02B6/124
G02B27/44
G02B5/18
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535404
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2022085254
(87)【国際公開番号】W WO2023110684
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2113381
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバー シルヴェイン
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィロ レオポルド
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2H249
2K102
5J084
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137BC25
2H137BC27
2H147AB04
2H147AB11
2H147BA09
2H147BC03
2H147BC05
2H147BC07
2H147BE13
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14A
2H147EA14B
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA51
2H249AA62
2H249AA65
2H249AA66
2K102BA07
2K102BB04
2K102BB08
2K102DA04
2K102DC08
2K102DC09
2K102EB08
2K102EB20
5J084BA03
5J084BB14
5J084BB34
5J084BB40
(57)【要約】
本発明は、複数の光アンテナ(7)を含む光電子エミッタ(1)に関し、各アンテナは、入射導波路(11)と水平面において光学モードを抽出するように構成された横方向回折格子(12)とで形成された横方向放射導波構造(10)と、垂直放射導波構造(30)とを備え、垂直放射導波構造は、回折格子(12)によって抽出された光学モードを受けるように構成された放射導波路(31)と、放射導波路(31)を通って進む光学モードを自由空間へ抽出するように構成された垂直回折格子(32)で形成される。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェーズドアレイアンテナを備えた光電子エミッタ(1)であって、
-レーザ光源(2)に接続されるように構成されたスプリッタ(3)と、
-入射導波路(11)と称される複数の導波路であって、前記スプリッタ(3)に接続され、かつ、主平面において長手方向軸に沿って延在し、前記光電子エミッタのアーム(4)を形成する、複数の導波路と、
-前記アーム(4)内に配置された複数の移相器(6)及び複数の光アンテナ(7)とを備え、各光アンテナ(7)は、
-前記入射導波路(11)と、
-垂直放射導波構造(30)と称される導波構造であって、前記入射導波路(11)が発した光学モードを受信するように構成され、
-放射導波路(31)と称される、前記入射導波路(11)よりも幅の広い導波路と、
-前記放射導波路(31)に接続され、前記放射導波路(31)を流れる光学モードを自由空間へ抽出するように構成された垂直回折格子(32)と、
によって形成された導波構造とを備え、
-各光アンテナ(7)は、
-水平放射導波構造(10)と称される導波構造であって、
-前記入射導波路(11)と、
-前記入射導波路(11)に接続された横方向回折格子(12)であって、前記入射導波路(11)を流れる光学モードを主要面において前記放射導波路(31)に向けて抽出する横方向回折格子(12)とを備えた、
光電子エミッタ(1)。
【請求項2】
屈折率分布型の媒質で形成され、前記水平放射導波構造(10)と前記垂直放射導波構造(30)との間に配置され、前記横方向回折格子(12)と前記放射導波路(31)とを光結合するように構成された接続構造(20)を備える、請求項1に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項3】
前記接続構造(20)は、
横方向回折格子(12)に対向するように横方向に配置された基本的な接続部(21)のアレイを備え、
前記レーザ光源(2)によって放射される光学モードの主波長よりも短い横方向の寸法を有し、または、
開口を備えた第1の屈折率を有する媒質で形成され、
前記開口は、前記レーザ光源(2)によって放射される光学モードの主波長よりも短い横方向の寸法を有し、前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する媒質で満たされた、
請求項2に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項4】
前記接続構造(20)の長さは、その全幅以下である、請求項2又は3に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項5】
前記放射導波路(31)及び前記垂直回折格子(32)はそれぞれ、前記接続構造(20)の全幅と少なくとも同じ幅を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項6】
前記光アンテナ(7)は、前記入射導波路(11)の前記長手方向軸に直交する軸に沿ってピッチΛa,yで周期的に配置され、
前記垂直回折格子(32)は、抽出長ltot,rvと称される、前記ピッチΛa,yの50%又は80%以上の全長を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項7】
前記光アンテナ(7)は、前記入射導波路(11)の前記長手方向軸に沿ってピッチΛa,xで周期的に配置され、
前記垂直回折格子(32)は、前記ピッチΛa,xの50%又は80%以上の幅wtot,rvを有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項8】
前記横方向回折格子(12)は、前記入射導波路(11)の長手方向軸に直交する主要面における軸に対して放射角φrlで前記光学モードを抽出するように構成され、
前記垂直放射導波構造(30)は、前記放射角φrlに平行な長手方向軸に沿って配置された、請求項1~7のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項9】
抽出長ltot,rlと称される前記横方向回折格子(12)の長さは、前記入射導波路(11)の幅よりも大きく、
前記放射導波路(31)の幅は、前記横方向回折格子(12)の抽出長ltot,rlと少なくとも同じである、請求項1~8のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項10】
前記入射導波路(11)の幅は、1μm以下であり、
前記放射導波路(31)及び前記垂直回折格子(32)の幅は、それぞれ10μm以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項11】
全抽出長ltot,rvと称される前記垂直回折格子(32)の長さは、10μm以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項12】
前記横方向回折格子(12)は、
前記入射導波路(11)内に設けられた周期的な複数の凹部によって形成され、または、
前記入射導波路(11)から離れた位置に配置された周期的な複数のパッドによって形成された、請求項1~11のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項13】
前記入射導波路(11)は、所定の関数pに従って、その幅を表す少なくとも1つのパラメータの長手方向の変化を有し、
前記横方向回折格子(12)は、所定の関数qに従って、周期構造(13)の配列のピッチΛrlの長手方向の変化を有し、
前記関数p及び前記関数qは、前記横方向回折格子(12)によって抽出された光放射の所定の遠方界目標放射プロファイルSrl,c(x)の関数、及び所定の目標放射角φrl,cの関数として、予め定義される、請求項1~12のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項14】
前記垂直回折格子(32)は、所定の関数に従って、周期構造(33)の少なくとも1つの次元パラメータの長手方向の変化を有し、
前記所定の関数は、前記垂直回折格子(32)によって抽出された光放射の所定の遠方界目標放射プロファイルSrv,c(x)の関数、及び所定の目標放射角φrv,cの関数として、予め定義される、請求項1~13のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【請求項15】
前記横方向放射導波構造(10)及び前記垂直放射導波構造(30)を含むシリコンオンインシュレータ(SOI)型フォトニックチップを備えた、請求項1~14のいずれか1項に記載の光電子エミッタ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、好適にはフォトニックオンシリコン型のフォトニックチップ上に製造されるフェーズドアレイアンテナ型光電子エミッタの技術分野である。本発明は、特に、LIDAR(Light Detection and Ranging)の分野に応用できる。
【0002】
先行技術
フェーズドアレイアンテナ(又は光フェーズドアレイ(OPA,Optical Phased Array))を有する光電子エミッタは、光電子装置であり、単色光放射を自由空間に指向的に放射することを可能にする。これらは、特に、レーザ(LIDAR)を用いて距離を検出及び推定する分野に応用できるが、自由空間光通信の分野、ホログラフィックスクリーンの分野、及びメディカルイメージングの分野にも応用できる。
【0003】
図1Aは、このような光電子エミッタ1の動作原理を概略的に示す。レーザ光源2は、光信号を放射し、この光信号は、光電子エミッタ1のアーム4のパワースプリッタ3によって分配される。各アーム4は、移相器6と、光アンテナとも称される基本的なエミッタ7とを含む。各光アンテナ7は、例えば、回折によって光信号を自由空間に放射し、そして、これらの光信号は、干渉によって組み合わされて光放射を形成する。この光放射は、遠方界(far-field)放射パターンを有し、これは特に、移相器6によって、アーム4内を伝搬する光信号に適用される相対位相Δγによって決まる。
【0004】
このような光電子エミッタは、集積フォトニクス技術を用いて製造することができ、すなわち、その様々な光学部品(導波路、パワースプリッタ、光アンテナ等)は、同じフォトニックチップ上に製造され、また、同じフォトニックチップから製造される。この点に関し、図1Bは、Hulme等の論文、タイトル“Fully integrated hybrid silicon two dimensional beam scanner”、Opt. Express 23 (5)、5861-5874 (2015)に記載されている、そのような光電子エミッタ1の一例を概略的かつ部分的に示す。この光電子エミッタ1は、レーザ光源2を備えており、III-V型の場合、同じフォトニックチップ上に製造される。したがって、それは、半導体レーザ光源2に加えて、パワースプリッタ3と、(アーム4を形成する)入射導波路5と称される導波路と、移相器6と、アーム4に配置された光アンテナ7とを備える。この例では、III-V材料を(SOI型の)フォトニックチップに移し、利得媒質を形成するように材料を構築することにより、レーザ光源2が作られる。
【0005】
井上等の論文、タイトル“Demonstration of a new optical scanner using silicon photonics integrated circuit”、Opt. Express 27(3)、2499-2508 (2019)には、それぞれが自由空間内に大きな放射表面積を有する複数の光アンテナの2次元の周期的な配列を備えた光電子エミッタの一例が記載されている。より詳細には、各光アンテナは、入射導波路と、入射導波路よりも幅の広い導波路と垂直回折格子で形成された垂直放射導波構造と、フレア型導波路(テーパ)で形成され、入射導波路及び垂直放射導波構造を光結合する接続構造とで形成される。このような光アンテナの構成は特に、Mekis等の論文、“A Grating-Coupler-Enabled CMOS Photonics Platform”、IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics、Vol. 17、No. 3、pp. 597-608、May-June 2011に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、より大きな放射表面積を有する光アンテナを有する光電子エミッタを提供して、放射された光放射の遠方界における発散を低減する要求が存在する。
【0007】
本発明の目的は、従来技術の課題を、少なくとも部分的に解決することであり、より詳細には、自由空間における光放射のための大きな放射表面積を有する光アンテナを備えたフェーズドアレイアンテナを備えた光電子エミッタを提案することであり、これにより、放射された光放射の遠方界における発散を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明の対象は、フェーズドアレイアンテナを備えた光電子エミッタであり、これは、レーザ光源に接続されるように構成されたスプリッタと、入射導波路と称される複数の導波路であって、スプリッタに接続され、主平面において長手方向軸に沿って延在し、光電子エミッタのアームを形成する複数の導波路と、アームに配置された複数の移相器及び光アンテナとを備える。
【0009】
各光アンテナは、入射導波路と、垂直放射導波構造と称される導波構造と備えており、垂直放射導波構造は、入射導波路が発した光学モードを受信するように構成され、また、放射導波路と称される、入射導波路よりも幅が広い導波路と、放射導波路に接続される垂直回折格子とによって形成され、垂直回折格子は、放射導波路を通って流れる光学モードを自由空間へ抽出するように構成される。
【0010】
本発明によれば、各光アンテナは、水平放射導波構造と称される、入射導波路によって形成される導波構造と、横方向回折格子とを備え、横方向回折格子は、入射導波路に接続され、入射導波路を通って流れる光学モードを、主平面において放射導波路に向かって抽出するように構成される。
【0011】
この光電子エミッタのいくつかの好適で非限定的な態様は、以下の通りである。
【0012】
光電子エミッタは、屈折率分布型の媒質によって形成された接続構造を備えることができ、これは、水平放射導波構造と垂直放射導波構造との間に配置され、横方向回折格子及び放射導波路を光結合するように構成される。
【0013】
接続構造は、横方向回折格子に対向するように横方向に配置された複数の基本的な接続部の配列を備えることができ、また、レーザ光源によって放射される光学モードの主波長よりも短い横方向の寸法を有し、または、第1の屈折率を有する開口を備えた媒質によって形成でき、当該開口は、レーザ光源によって放射される光学モードの主波長よりも短い横方向の寸法を有し、第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を有する媒質で充填することができる。
【0014】
接続構造の長さlscは、その全体の幅Wtot,sc以下とし得る。
【0015】
放射導波路及び垂直回折格子はそれぞれ、接続構造の全体の幅wtot,scと少なくとも同じ幅wge及びwtot,rvを有することができる。
【0016】
複数の光アンテナは、入射導波路の長手方向軸に直交する軸に沿ってピッチΛa,yで周期的に配置することができ、垂直回折格子は、ピッチΛa,yの50%又は80%以上である抽出長ltot,rvと称される全体の長さを有する。
【0017】
光アンテナは、入射導波路の長手方向軸に沿ってピッチΛa,xで周期的に配置することができ、垂直回折格子は、ピッチΛa,xの50%又は80%以上である幅wtot,rvを有する。
【0018】
横方向回折格子は、主平面に位置し、かつ、入射導波路の長手方向軸に直交する軸に対して放射角φrlで、光学モードを抽出するように構成することができ、垂直放射導波構造は、必要に応じて、放射角φrlと接続構造に平行な長手方向軸に沿って配置される。
【0019】
抽出長ltot,rlと称される横方向回折格子の長さは、入射導波路の幅よりも大きくすることができる。放射導波路の幅wgeは、少なくとも横方向回折格子の抽出長ltot,rlと等しくすることができ、必要に応じて、接続構造の幅wscは、少なくとも抽出長ltot,rlと等しくすることができる。
【0020】
入射導波路の幅は、1μm以下にすることができ、放射導波路及び垂直回折格子の幅は、それぞれ10μm以上とし得る。
【0021】
全抽出長ltot,rvと称される垂直回折格子の全長は、10μm以上とし得る。
【0022】
横方向回折格子は、入射導波路内に設けられた周期的な凹部によって形成することができ、または、入射導波路から距離を置いて配置される周期的なパッドによって形成することができる。
【0023】
入射導波路は、所定の関数pに従って、その幅を表す少なくとも1つのパラメータの長手方向の変化(バリエーション)を有することができ、横方向回折格子は、所定の関数qに従って、周期構造の配列のピッチΛrlの長手方向の変化を有することができ、関数p及びqは、横方向回折格子によって抽出される光放射の所定の遠方界目標放射プロファイルSrl,c(x)及び所定の目標放射角φrl,cに応じて予め定められる。
【0024】
垂直回折格子は、所定の関数に従って、周期構造の少なくとも1つの次元パラメータの長手方向の変化を有することができ、この関数は、垂直回折格子によって抽出される光放射の所定の遠方界目標放射プロファイルSrv,c(x)及び所定の目標放射角φrv,cに応じて予め定められる。
【0025】
光電子エミッタは、SOI型フォトニックチップを備えることができ、これは、横方向放射導波構造と、接続構造と、必要に応じて、垂直放射導波構造とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の他の態様、目的、利点及び特徴は、本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明を読むことによってより明確になるであろう。これらの説明は、非限定的な例として提供され、添付の図面を参照する。
図1A図1Aは、既に説明した先行技術の一例に係るフェーズドアレイアンテナを備えた光電子エミッタの概略的かつ部分的な図である。
図1B図1Bは、既に説明した先行技術の一例に係る集積フォトニクス技術を用いて製造された光電子エミッタの概略的かつ部分的な上面図である。
図2図2は、一実施形態に係る光電子エミッタの概略的かつ部分的な上面図であり、この図では、光アンテナは、2次元の周期的な配列に配置され、それぞれが自由空間内に大きな放射表面積を有する。
図3A図3Aは、一実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの上面図としての概略的かつ部分的な図である。
図3B図3Bは、一実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの断面図としての概略的かつ部分的な図である。
図3C図3Cは、別の実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの概略的かつ部分的な上面図であり、この図では、接続構造及び垂直放射導波構造が、横方向回折格子のゼロでない放射角φrlによって画定される長手方向軸Aに沿って整列している。
図4A図4Aは、別の実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、横方向放射導波構造、接続構造及び垂直放射導波構造が、薄層から製造され、同じ連続する副層(スラブ)を共有する。
図4B図4Bは、光アンテナの横方向放射導波構造の入射導波路の様々な例の概略的かつ部分的な上面図である。
図4C図4Cは、光アンテナの横方向放射導波構造の入射導波路の様々な例の概略的かつ部分的な上面図である。
図4D図4Dは、光アンテナの横方向放射導波構造の入射導波路の様々な例の概略的かつ部分的な上面図である。
図5A図5Aは、横方向放射導波構造と垂直放射導波構造との間の接続構造の様々な例を示す光アンテナの概略的かつ部分的な上面図である。
図5B図5Bは、横方向放射導波構造と垂直放射導波構造との間の接続構造の様々な例を示す光アンテナの概略的かつ部分的な上面図である。
図5C図5Cは、横方向放射導波構造と垂直放射導波構造との間の接続構造の様々な例を示す光アンテナの概略的かつ部分的な上面図である。
図6A図6Aは、一実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの寸法を決定して製造する方法のステップを示すフローチャートであり、この図では、横方向放射導波構造がアポダイズされている。
図6B図6Bは、別の実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナの概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、垂直放射導波構造の垂直回折格子がアポダイズされている。
図7A図7Aは、複数の凹部の深さprlの長手方向の変化prl=p(x)の関数pの一例を示す。
図7B図7Bは、放射角φrlの漸進的な変化の一例を示す。
図7C図7Cは、ピッチΛrlと深さprlとの間の漸進的な変化Λrl=h(prl)の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面及び説明の残りの部分において、同じ参照符号は、同一又は類似の要素を表す。さらに、図を明確にするために、様々な要素はスケーリングされていない。さらに、様々な実施形態及び代替的な実施形態は、互いに排他的ではなく、また、互いに組み合わせることができる。別段の指示がない限り、「実質的に」、「ほぼ」、「程度」という用語は、約10%、好ましくは約5%を意味する。さらに、「...から...までの範囲」という用語及び同等の用語は、別段の指示がない限り、上限及び下限が含まれることを意味する。
【0028】
本発明は、光アンテナのアレイを有するフェーズドアレイアンテナを備えた光電子エミッタに関する。光アンテナは、フォトニックオンシリコン型のフォトニックチップ上に製造されることが好ましい。光電子エミッタは、所定の放射角で配向された、所定の遠方界放射プロファイル、例えば、一定のプロファイル又はガウス分布プロファイルで光を放射し、また、少なくとも光アンテナに平行な垂直面において、最小の発散で光を放射するように構成される。
【0029】
遠方界放射プロファイルは、放射角に配向された主軸を中心とする、光電子エミッタによって放射される遠方界光放射の強度の角度分布である。遠方界(フラウンホーファーゾーン)は、光放射の波長λに対する光アンテナの大きな寸法の2乗の比よりも大きい距離D(例えば、水平放射導波構造の長さLtot,rl図3A)に相当し、より詳細には、D>2Ltot,rl /λである。
【0030】
図2は、一実施形態に係る光電子エミッタ1の概略的かつ部分的な上面図である。この光電子エミッタは、通常、レーザ光源2と、パワースプリッタ3と、移相器6及び光アンテナ7を備えた複数のアーム4とを備える。
【0031】
本発明によれば、各光アンテナ7は、
-水平放射導波構造10(すなわち、XY平面内)であって、入射導波路11と称される導波路(図1Bの参照符号「5」)と、Y軸に対して放射角φrvでXY平面において光学モードを抽出するように構成された横方向回折格子12とによって形成された、水平放射導波構造10と、
-放射導波路31と称される、垂直放射導波構造10に接続される導波路と、Z軸に対して放射角θrvで光学モードを抽出するように構成された垂直回折格子32とによって形成された、垂直放射導波構造30(すなわち、Z軸に実質的に平行な方向)と、を備える。
【0032】
本明細書及び説明の残りの部分では、直接的なXYZ直交座標系が規定され、XY平面は、フォトニックチップの平面に平行であり、X軸は、光アンテナ7の水平放射導波構造10の長手方向軸に沿って配向されており、Z軸は、光電子エミッタ1によって光が放射される自由空間に向かって配向される。用語「下側」及び「上側」は、支持基板からの+Z方向の距離に関する。
【0033】
この実施形態では、光電子エミッタ1は、例えば、「フォトニックオンシリコン」技術の文脈では、フォトニックチップ上に集積される。フォトニック集積回路(PIC)とも称されるフォトニックチップは、支持基板を備えており、この支持基板から、アクティブ(変調器、ダイオード等)及びパッシブ(導波管、マルチプレクサ又はデマルチプレクサ等)フォトニックコンポーネントを生成でき、これらは、互いに光結合される。フォトニックオンシリコン技術の文脈では、支持基板及びフォトニックコンポーネントは、シリコンから作られる。したがって、フォトニックチップは、SOI(シリコンオンインシュレータ)型とし得る。したがって、この例では、これらの構造10,20,30は、シリコンで作られる。しかしながら、対象とする用途及び光放射の波長に応じて、他の多くの技術的なプラットフォームを使用することができる。したがって、例えば、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、ドープ処理されたシリカ等から導波路を製造することができる。
【0034】
光電子エミッタ1は、波長λの単色の光パルス信号又は連続的な単色の光信号を放射するように構成されたレーザ光源2を備える。例示として、波長は、1,550nmとし得る。レーザ光源2は、特に、YZ平面において、又は垂直なZ軸及び長手方向軸Aに平行なAZ平面内において、光アンテナ7によって放射された光放射によって形成される、垂直なZ軸に対する放射角θrvを変更するために、波長を調整することができる(図3Cを参照)。波長の調整はまた、角度φrlを変化させる。レーザ光源2は、III/V化合物から製造された利得媒質によって形成されるハイブリッド源とすることができ、フォトニックチップの表面に接着され得る。したがって、ブラッグミラー型の光反射器を集積導波路内に設けて、利得媒質に接続することができる。代替的な実施形態として、フォトニックチップは、レーザ光源2を備えていなくてもよく、その場合、レーザ光源は、遠隔に配置されるため、フォトニックチップの表面に組み付けられない。そして、それは、特に回折格子の接続部により、フォトニックチップの集積導波路に接続することができる。
【0035】
パワースプリッタ3は、レーザ光源2の出力に接続される。したがって、これは、入力と、それぞれが光電子エミッタ1の導波路に接続される複数の出力とを備える。入射導波路11と称される導波路の数は、光電子エミッタ1のアーム4の数に対応する。この例では、パワースプリッタ3は、カスケード状に配置されたいくつかのMMI(Multimode Interferometer)型のスプリッタによって形成されるが、その他の種類の光学部品を用いてもよい(例えば、方向性接続部、Y型ジャンクション、スター接続部等)。
【0036】
光電子エミッタ1は、複数の入射導波路11を備え、これは、パワースプリッタ3の複数の出力の1つに接続された第1の端部と、反対側の第2の端部との間に延在し、光電子エミッタ1の複数のアーム4を形成する。したがって、各入射導波路11は、パワースプリッタ3が発した光信号を受信し、この光信号を光アンテナ7まで伝搬させるように構成される。
【0037】
光電子エミッタ1はまた、複数のアーム4に配置された複数の移相器6を備える。より詳細には、入射導波路11は、対象の入射導波路11を流れる光信号の位相を変更するように構成された少なくとも1つの移相器6に接続され、したがって、隣接する入射導波路11を流れる複数の光学モードの位相差Δγ、すなわち、相対位相を生成する。移相器6は、パワースプリッタ3と光アンテナ7との間に配置される。各入射導波路11は、移相器を備えることができ、または、入射導波路11の一部のみ、例えば、2つの入射導波路11のうちの一方のみが、移相器を備えることができる。さらに、基準入射導波路11は、移相器を備えていなくてもよい。
【0038】
移相器6は、電気屈折効果式移相器又は熱光学効果式移相器とし得る。いずれの場合も、位相は、対象の入射導波路11の屈折率ngiを変更することによって変更される。電気屈折効果式移相器の場合は自由キャリア密度を変更することにより、熱光学効果式移相器の場合は、適用される温度を変更することにより、屈折率のこのような変更が得られる。
【0039】
移相器6は、入射導波路11を伝搬する光学モードに対して所定の位相値Δγを適用するように構成されており、これにより、YZ平面又はAZ平面において、垂直なZ軸に対する主放射軸の決定されたゼロ以外の角度が得られる。しかしながら、異なる遠方界放射プロファイルを得るために、または、起こり得る位相誤差を考慮及び補償するために、相対位相Δγは、複数の入射導波路11で同じにしなくてもよい。これらの位相誤差は、時間の経過による光電子エミッタ1のいくつかの部品の劣化、製造方法における不均一性、製造方法のゼロ以外の公差、光電子エミッタ1の環境影響(例えば、基本的なエミッタを覆うパッケージ部品の起こり得る影響)によって生じる可能性がある。
【0040】
移相器6は、制御モジュール(図示せず)に接続されることが好ましい。移相器6は、制御モジュールが送信した制御信号に応じて、様々な入射導波路11を流れる光信号に所定の相対位相Δγを生成することができる。このような制御モジュールの一例は、Hulme等の論文、タイトル“Fully Integrated hybrid silicon two dimensional beam scanner”、Opt. Express 23 (5)、5861-5874 (2015)、または、国際公開2021/130149号に記載されている。
【0041】
光電子エミッタ1は、移相器6の下流に配置された複数の光アンテナ7を備えており、この場合、1つのアーム4につき1つの光アンテナ7を備える。光アンテナ7によって放射された複数の光信号の間の相対位相Δγは特に、光電子エミッタ1のYZ平面又はAZ平面における垂直なZ軸に対する、遠方界の光線の主放射軸によって形成される角度の値を決定する。
【0042】
複数の光アンテナ7は、互いに同じである。これらは、X軸及びY軸に沿って横方向に配置される(図2を参照)。これらは、λ/2~2λの範囲の距離で互いに離れて配置されることが好ましく、ここで、λは、レーザ光源2によって放射される光学モードの主波長である。参考のために、光アンテナ7の数は、約10~約1万の範囲とすることができ、これにより、X軸及びY軸に沿った遠方界の光放射の発散を制限することができる。
【0043】
この場合、光アンテナ7は、少なくとも1つの主軸に沿って、この場合はX軸及びY軸に沿って、周期的に配置され、ピッチΛa,x及びピッチΛa,yは、放射された光放射の遠方界放射プロファイルを放射軸の周りで対称にするために、同じ程度の大きさであることが好ましい。後述するように、各光アンテナの放射表面積は、光電子エミッタ1の遠方界放射プロファイルの2次ローブの強度を低減するために、ピッチΛa,y及びΛa,xそれぞれの50%以上、好適には70%、さらに好適には80%の寸法lrv、wtot、rvを有することが好ましい。
【0044】
図3A及び図3Bは、一実施形態に係る光電子エミッタの光アンテナ7の上面図(図3A)及び断面図(図3B)としての概略的かつ部分的な図である。
【0045】
したがって、この目的のために、各光アンテナ7は、水平放射導波構造10を備え、水平放射導波構造10は、入射導波路11を流れる光学モードを抽出し、それをXY平面において垂直放射導波構造30に向けて放射するように構成されており、垂直放射導波構造30は、水平放射導波構造10によって放射された光放射を受け、それをYZ平面又はAZ平面において、自由空間に放射するように構成される。各導波構造10,30は、導波路と、回折格子とを備える。
【0046】
この例では、各光アンテナ7はさらに、2つの導波構造10,30の間の光結合を最適化する屈折率分布型(グレーデッドインデックス)の接続構造20を備える。この接続構造は、任意であるが、光電子エミッタ1の性能を向上させるため有利である。
【0047】
図3Cは、別の実施形態に係る光アンテナ7の概略的かつ部分的な上面図である。この例では、接続構造20及び垂直放射導波構造30は、横方向放射導波構造10の放射角φrlに応じたXY平面に配向される。したがって、接続構造20及び垂直放射導波構造30は、Y軸に対してφrlと同じ角度を形成する長手方向軸Aに沿って延在する。この場合、導波構造30の放射角θrvは、垂直なZ軸に対して規定され、また、それは、長手方向軸A及び垂直なZ軸を通るAZ平面に含まれることに留意すべきである。しかしながら、明確にするために、垂直放射導波構造30の遠方界放射プロファイルSrv(y)及び放射角θrv(y)は、横座標yに依存すると共に、より詳細には、長手方向軸Aに沿って規定される横座標に依存することに留意すべきである。
【0048】
この場合、角度φrlの値は、横方向回折格子11のピッチΛrlによって設定されること、また、各光アンテナ7の放射角θrvの値は、(複数の光アンテナ7の間の位相シフトΔγではなく)垂直回折格子31のピッチΛrvによって設定されることに留意すべきである。これら2つのパラメータは、光アンテナ7が放射する放射線によって形成される包絡線の放射方向を制御する。その部分についての複数の光アンテナ7の間の位相シフトΔγは、光電子エミッタ1によって放射された光線の向きを変えることができ(光アンテナ7によって放射された光線の干渉によって生じる)、これは、必然的に光アンテナ7の包絡線内に位置する。この例では、光電子エミッタ1の放射角は、アンテナの包絡線が非常に狭い限り、(光アンテナ7の放射表面積が大きいため)実際には光アンテナ7の放射角θrvに近い。
【0049】
この場合、光アンテナ7は、この場合はフォトニックオンシリコン技術を用いて、フォトニックチップ内に形成される。このチップは、この場合はシリコンで形成される支持基板と(図示せず)、導波路の金属被膜(クラッディング)を形成するのを助ける埋込み酸化膜(BOX,buried oxide)の下層40と、シリコン層内に設けられた複数の回折格子と、金属被膜の形成を助けるシリコン酸化物で形成された上層42とによって形成される。図3Bの例では、横方向放射導波構造10及び接続構造20は、物理的に別個であり、したがって、この場合は導波路の金属被膜を画定するのを助けるシリコン酸化物により、XY平面において離れている。
【0050】
図4Aは、別の実施形態に係る光アンテナ7の概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、導波構造10,30及び接続構造20は、ベース又はスラブと称される、3つの構造10,20,30に共通の連続した下側副層41を備え、リブと称される上側副層によって覆われ、これらの構造を画定するように構成される。したがって、ベース41は、特に横方向放射導波構造10と接続構造20との間の光結合を改善することができる。
【0051】
したがって、横方向放射導波構造10は、レーザ光源2によって放射された光学モードを受信し、XY平面において接続構造20に向かって抽出するように構成される。この目的のために、横方向放射導波構造10は、入射導波路11と、横方向回折格子12とを備える。その幅は、その抽出長と比べて非常に小さく、例えば、少なくとも10倍小さく、又は少なくとも100倍小さいという意味で、XY平面において基本的に一次元、すなわち、線形である。
【0052】
一例として、その幅(入射導波路11の幅wgi)は、抽出長ltot,rl(横方向回折格子12の長さ)と比べて、例えば、1μm以下、例えば、0.5μm程度とすることができ、この抽出長は、少なくとも10μmと同じ、例えば、60μm以上(100μm以上)程度である。さらに、抽出長は、横方向回折格子の長さltot,rlとして定義され、この場合、垂直放射導波構造30の放射導波路31の入口面の幅wge以下程度の大きさである。
【0053】
入射導波路11は、パワースプリッタ3からの光学モードを伝達するものである。これは、物理的パラメータ、例えば、導波路の(すなわち、導波路のコアの)屈折率ngi、金属被膜の屈折率ngg、Z軸に沿った厚さegiの横方向の寸法、及びY軸に沿った幅wgiの横方向の寸法等によって決まる。厚さegiは、長手方向軸Xに沿って一定とすることが好ましく、幅wgiは、一定の値を保つことができる。代替的な実施形態として、後述するように、幅wgiは、長手方向軸Xに沿って、例えば、上流の最大値と下流の最小値の間で変化させることができ、それにより、特に、抽出された光放射の遠方界放射プロファイルSrl(x)が、所定の目標プロファイルSrl,c(x)を有する。
【0054】
横方向回折格子12は、入射導波路11を介して、XY平面において接続構造20に向かって流れる光学モードを抽出するように構成される。光学モードは、遠方界放射プロファイルSrl(x)に従って、放射角φrl(x)でXY平面で抽出される。放射プロファイルSrl(x)は、目標プロファイルSrl,c(x)と同じであり、また、放射角φrl(x)が一定で、目標値φrl,cと同じであることが好ましい。この目標値は、長手方向軸Xに直交するY軸に対して、予め定められる。横方向回折格子12は、光学モードのほぼ全て又は全てを抽出するのに十分な長さを延在することが好ましい。この抽出長は、横方向回折格子12の寸法ltot,rlであり、これは、接続構造20の全幅wtot,scより小さいことが好ましい。
【0055】
横方向回折格子12は、例えば、複数の凹部として入射導波路11内に設けることができ、または、例えば、低屈折率の金属被膜に囲まれた高屈折率の複数のパッドの形で、入射導波路から離れた位置に設けることができる。したがって、それは、長手方向軸Xに沿った入射導波路11に沿って配置された周期構造13(複数の凹部又はパッド)を備える。
【0056】
それは、入射導波路11を流れる光学モードの回折(したがって、抽出)を表す物理パラメータによって決まる。それは、特に、配置ピッチΛrlと、X軸に沿った長さlrlの寸法及びY軸に沿った深さ又は幅prlの寸法と、使用される材料の屈折率の充填係数ffrl=lrl/Λrlと、任意で、入射導波路11に対する、それらの間隔drl図4Cを参照)を含む。
【0057】
横方向放射導波構造10がベース41を備えていない場合、周期構造13は、入射導波路11の厚さ全体において、凹部として設けることができる。さらに、横方向放射導波構造10がベース41を備えている場合、それらは、リブの厚さにのみ設けることができる。さらに、それらは、Y軸に沿って、入射導波路11の一方側及び/又は他方側に配置できる。この場合、それらは、垂直なZ軸に沿って、入射導波路11に対向して配置されない。この点に関し、図3A及び図3Cは、横方向回折格子12の一例を示しており、この場合、周期構造13は、入射導波路11に形成されたスロット(矩形の凹部)の形態の凹部であり、この場合、接続構造20の反対側に位置する。
【0058】
図4Bは、横方向回折格子12の別の例の概略的かつ部分的な上面図であり、この図では、周期構造13は、入射導波路11に形成された矩形のスロットの形態の凹部によって形成され、入射導波路11の両側に位置し、この場合、X軸に沿って非対称に配置される。
【0059】
図4Cは、横方向回折格子12の別の例の概略的かつ部分的な上面図であり、この図では、周期構造13は、入射導波路11から距離drlに位置する複数のパッドによって形成される。このパッドは、高屈折率の材料、例えば、この場合はシリコン又は窒化シリコンから作られ、また、低屈折率の材料、この場合は酸化シリコンによって囲まれる。これらは、入射導波路11の両側に、対向するように配置される。別の実施形態として、パッドは、入射導波路11の一方側又は他方側にのみに対向するように配置され得る。この場合、これらは、長手方向軸Xに沿って非対称に配置される。この場合、これらは、入射導波路からゼロでない距離drlに配置され、したがって、酸化シリコンにより、入射導波路から離れて配置される。これらをゼロの距離drlに配置してもよく、したがって、入射導波路11に接続してもよい。距離drlは、周期的なパッドに対向する面と導波路との間の距離として定義される。これらの例では、横方向回折格子12は、光学モードのエバネセント部分にのみ影響を与え、これにより、抽出率の値を小さくできるため、抽出長ltot,rlを大きくできる点に留意すべきである。
【0060】
図4Dは、横方向回折格子12の別の例の概略的かつ部分的な上面図であり、この図では、周期構造13は、入射導波路11に形成された凹部であり、三角形である。これらは、接続構造20の反対側に位置する。また、この場合、それらは、三角形(この場合は直角三角形)の斜辺によって形成される、長手方向軸Xに対する角度βによって画定される。もちろん、この場合の三角形の形状は概略的に示されており、実際には、技術的な製造上の制約により、(特に角において)若干異なることがある。この場合、回折格子は、ブレーズド格子(エシェレット格子)であり、角度βはブレーズ角である。この角度は、回折格子が反射(全内部の反射レジーム)で動作するように選択され、例えば、30°とすることができる。
【0061】
この場合、一般に、回折格子は、導波路を流れる光学モードについての抽出率αを有し、この抽出率は、放射強度又は散乱強度と称され得る。Zhao等の論文、タイトル“Design principles of apodized grating couplers”、Journal of Lightware Technology、Vol. 38、No. 16、pp. 4435-4446、2020に示されているように、抽出された局所的な光パワーは、放射プロファイルS(x)を規定し、S(x)~α(x)×P(x)の関係により、光学モードP(x)の局所的な光パワー(または、該当する場合には、エバネセント部分の局所的な光パワー)と抽出強度α(x)の局所的な光パワーに依存する。
【0062】
以下に説明するように、入射導波路11及び横方向回折格子12は、所定の関数に従って長手方向に変化する寸法パラメータを有することが好ましく、その結果、遠方界放射プロファイルSrl(x)は、所定の目標プロファイルSrl,c(x)と同じであり、長手方向軸Xに沿って、一定の目標値φrl,cと同じ放射角φrl(x)で配向される。これらの寸法パラメータは、横方向回折格子12の深さprl及び/又は幅wgi、並びにピッチΛrlとし得る。
【0063】
光アンテナ7は、また、横方向放射導波構造10と垂直放射導波構造30とを光結合するように構成された接続構造20を備える。したがって、それは、2つの導波構造10,30の間に配置される。横方向回折格子の抽出長ltot,rlが、放射導波路31の幅wgeと同じ程度の大きさである限り、接続構造20は、XY平面において光学モードの空間分布を調整する必要はないが、基本的に平均屈折率(従って、光学モードの実効屈折率)を、金属被膜の屈折率に近い最小値と、放射導波路31の屈折率と同じ最大値との間で、調整する必要がある。
【0064】
この場合、一般に、導波路によって支持される光学モードに関連する実効屈折率neffは、伝搬定数βとλ/2πの積として定義されることに留意すべきである。伝搬定数βは、光学モードの波長λに依存すると共に、導波路の特性、すなわち、この場合は接続構造(コアと金属被膜の屈折率と横方向の寸法)に依存する。光学モードの実効屈折率neffは、光学モードによって「見える」導波路の屈折率に、ある程度対応する。それは、通常、導波路の屈折率と金属被膜の屈折率との間である。
【0065】
したがって、接続構造20は、勾配屈折率光学構造であり、光学モードの実効屈折率を調整することができ、したがって、光学モードは、入射導波路11と放射導波路31との間を伝達される。それは、伝達される光学モードの波長よりも小さいパターンを有しており、したがって、サブ波長格子屈折率分布型構造(SWG GRIN:sub-wavelength grating graded index structure)である。それは、例えば、異なる屈折率を有する少なくとも2つの材料によって形成され、平均屈折率が長手方向軸Aに沿って、(横方向回折格子12の方を向いた)その上流面から、(放射導波路31の方を向いた)その下流面に向かって単調に変化するように、構成される。平均屈折率は、その幅に沿って、すなわち、XY平面に含まれる、長手方向軸Aに直交する軸に沿って、変化し得る。それは、対象の横軸に関する接続構造20の全幅wtot,scにおける接続構造の材料の屈折率の一次平均として、長手方向軸Aの任意の横軸上で規定され得る。
【0066】
接続構造20は、軸Aに直交する軸に沿った全幅wtot,scと、この場合は軸Aに沿った、長さltot,scとを有し、この例では、長さltot,scは、その全幅wtot,scよりも小さく、限られた接続長で、横方向回折格子12を放射導波路31に効果的に接続できる。これにより、上述した従来技術の例のように、入射導波路11と放射導波路31とを接続するためのテーパを用いる必要がなくなり、これにより、導波構造10と導波構造30との間の接続長を大幅に短くすることができるため、光アンテナ7の自由空間放射表面積を大きくすることができる。
【0067】
図5Aは、第1の例に係る接続構造20を有する光アンテナ7の概略的かつ部分的な図である。この場合、接続構造20は、サブ波長寸法を有するテーパ型の台形又はチップのような基本的な接続部21の配列によって形成される。これらは、放射導波路31と一体的に作られる。基本的な接続部21は、この場合は約250nmのピッチΛscに沿って横方向に分布し、上流側の幅が約50nmであり、下流側の幅が約200nmであり、長さlscが約500nmである。この場合、これらは、入射導波路11から、約500nmの距離dscだけ離れている。
【0068】
図5Bは、別の例に係る接続構造20を有する光アンテナ7の概略的かつ部分的な図である。この場合、接続構造20は、基本的な接続部21が、幅が約50nmの狭い導波路22によって入射導波路11に直接接続されるという点で、図5Aの接続構造とは基本的に異なる。さらに、接続構造20は、入射導波路11からゼロの距離dscに位置する。
【0069】
図5Cは、別の例に係る接続構造20を有する光アンテナ7の概略的かつ部分的な図である。この場合、接続構造20は、高屈折率材料、この場合はシリコンの層の一部によって形成され、入射導波路11を放射導波路31に直接接続し、また、低屈折率の媒質(シリコン酸化物)で充填されたサブ波長寸法の開口23の2次元の配列を有し、これは、高屈折率(シリコン)の連続する媒質24に形成される。
【0070】
垂直放射導波構造30は、放射導波路31と称される、入射導波路11よりも幅の広い導波路と、垂直回折格子32とを備える。放射導波路31は、接続構造20によって伝達され、かつ、横方向回折格子12によって入射導波路11から抽出された光学モードを受信するように構成される。垂直回折格子32は、放射導波路31を流れる光学モードを抽出し、放射方向θrvにおいて自由空間に放射するように構成される。
【0071】
その幅が、その抽出長と同じ程度の大きさであり、10μm以上、例えば、60μm程度であるという意味で、XY平面において基本的に2次元的な構成であることが好ましい。いずれにしても、放射導波路31の幅wgeは、入射導波路11の幅wgiよりも遙かに大きく、例えば、100倍大きい。この場合、放射表面積は、垂直回折格子32の全幅wtot,rvと全長ltot,rvの積であり、この例では、60μm×60μm程度である。
【0072】
放射導波路31は、入射導波路11から発せられ、横方向回折格子12によって抽出され、接続構造20によって伝達された光を受ける。これは、物理的パラメータ、例えば、導波路の(すなわち、導波路のコアの)屈折率nge、金属被膜の屈折率ngg、Z軸に沿った厚さegeの横方向の寸法及び軸Aに直交する軸に沿った幅wgeの横方向の寸法等によって決まる。
【0073】
このように、放射導波路31は、その幅wgeが入射導波路11と異なり、幅wgeは、幅wgiよりも遙かに大きく、例えば、100倍である。さらに、その長手方向軸Aは、入射導波路11の長手方向軸Xと同一平面上にないが、直近の放射角φrlに対してほぼ直交している。
【0074】
垂直回折格子32は、自由空間において、放射導波路31を流れる光学モードを抽出するように構成される。光学モードは、遠方界放射プロファイルSrv(y)に従って、AZ平面において放射角θrv(y)で抽出される。放射プロファイルSrv(y)が目標プロファイルSrv,c(y)と同じであり、また、放射角θrv(y)が一定であることが好ましい。さらに、垂直回折格子32は、光学モードのほとんど又は全てを抽出するのに十分な長さに延在することが好ましい。この抽出長は、垂直回折格子32の寸法ltot,rvである。
【0075】
垂直回折格子32は、放射導波路31の上側に配置され、放射導波路32に設けられ、または、そこからの距離drv(ゼロ又はゼロ以外)に設けられる。また、厚さegeは、Z軸に沿った最大値として定義される。さらに、幅wgeは、一定にすることができ、または、長手方向軸Aに沿って変化してもよく、これにより、抽出された光放射の放射プロファイルSyz(y)は、所定の目標プロファイルを有する。
【0076】
この目的のために、垂直回折格子32は、放射導波路31に沿って配置された周期構造33を備える。したがって、それは、放射導波路32を通って流れる光学モードの回折(従って抽出)を表す物理パラメータによって決まる。それは、具体的には、配置ピッチΛrv、長手方向軸Aに沿った長さlrv寸法、高さ又は深さprv、充填係数ffrv=lrv/Λrv、及び、使用される材料の屈折率と、任意で、放射導波路31に対する、それらの間隔drvを含む。所望の目標放射プロファイルを得るために、少なくとも1つの次元パラメータは、所定の長手方向の変化、例えば、充填係数ffrvを有し、ピッチΛrvもまた、(充填係数ffrvの変化に関連する実効屈折率の変化を補償するために)放射角θrvを一定に保つために、所定の長手方向の変化を有し得る。
【0077】
図3Bは、垂直回折格子32の一例の概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、周期構造33は、その上面から、放射導波路31に形成された矩形スロットの形態の凹部である。もちろん、凹部は、矩形以外の形状が想定され得る。
【0078】
図4Aは、垂直回折格子32の別の例の概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、周期構造33は、酸化シリコンで作られた金属被膜に囲まれた高屈折率(例えば、シリコン又は窒化シリコン)の複数のパッドである。これらのパッドは、放射導波路31から距離drvに配置され、この距離は、この場合のようにゼロでなくてもよく、または、ゼロでもよい(したがって、パッドは、放射導波路31に接続される)。この例では、垂直回折格子32は、光学モードのエバネセント部分のみに影響を与え、これにより、抽出率の値を小さくできるため、抽出長を長くすることができる点に留意すべきである。
【0079】
したがって、入射導波路11を流れる光信号は、横方向回折格子12によって抽出され、接続構造20によって放射導波路31に伝送され、その後、垂直回折格子32によって抽出されて自由空間に放射される。このようにして、放射された光放射は、自由空間を伝搬し、干渉によって再び組み合わせされ、これにより、遠方界において、光電子エミッタ1によって放射された光放射を形成し、主放射軸の周りのその角度分布が定まり、光電子エミッタ1の遠方界放射プロファイルを規定する。
【0080】
したがって、光電子エミッタ1は、少なくともYZ又はAZ平面において、この場合はXZ平面においても、最小の発散で遠方界放射を放射できる。これは、各光アンテナ7の放射表面積が大きいことに起因し、入射導波路11と垂直放射導波構造30との光結合が、上述した従来技術の例のように、テーパによって水平方向に行われるのではなく、横方向回折格子12及び屈折率分布型の接続構造20によって横方向に行われることに起因する。
【0081】
光アンテナ7の変化しないピッチ値Λa,x及びΛa,yに関し、放射表面積が増加し得るという事実は、特に、光電子エミッタ1によって放射された光放射の遠方界放射プロファイルの2次ローブの放射強度を低減することができる。したがって、放射角θrvが小さい場合、すなわち、数度程度、例えば、15°以下又はそれ未満の場合、垂直回折格子32の幅wtot,rv(これは放射表面積の幅に相当する)が、ピッチΛa,xの少なくとも50%、好適には少なくとも80%程度であれば、XZ平面において放射された光放射の遠方界放射プロファイルの2次ローブを減少させ、または、除去することさえできる。同様に、垂直回折格子32の全長ltot,rv(これは放射表面積の長さに相当する)が、ピッチΛa,yの少なくとも50%、好適には少なくとも80%程度であれば、YZ平面において放射された光放射の遠方界放射プロファイルの2次ローブを減少させ、または、除去することさえできる。最後に、この場合、光アンテナ7の数を増やすことにより、放射された光放射の指向性を高めることができ、換言すると、遠方界放射プロファイルの中間高さの幅を減少させることができる点に留意すべきである。
【0082】
さらに、各光アンテナ7の遠方界放射プロファイルは、所定の目標プロファイルと同じにすることができ、また、所定の目標値と同じ放射角θrvで配向することができる。これは、横方向放射導波構造10及び/又は垂直放射導波構造30のアポダイズが可能であること、換言すると、所定の関数に従って長手方向に変化する寸法パラメータを有し得るという事実によって得られる。したがって、例えば、Mekis等の論文、タイトル“A Grating-Coupler-Enabled CMOS Photonics Platform”、IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics、Vol. 17、No. 3、pp. 597-608、May-June 2011に示されているように、創作者が周期構造の寸法を変更するだけの従来技術において行われ得るアポダイズとは異なり、入射導波路11の幅wgiを用いて、抽出率αrlの局所的な値を容易に調整できる。最後に、入射導波路11の幅wgi及び少なくとも横方向回折格子12のピッチΛrlを、長手方向に変更することにより、周期構造の寸法を決定する際の制約が限定される。この制約は、寸法を非常に小さくする可能性があり、そのため、製造方法において通常使用される従来の技術、例えば、フォトニックオンシリコン技術との互換性がほとんどなく、または、互換性がない可能性さえある。
【0083】
図6Aは、一実施形態に係る、横方向放射導波構造10の寸法を決定し、光電子エミッタ1の対応する光アンテナ7を製造する方法のフローチャートである。導波構造10の入射導波路11及び横方向回折格子12は、長手方向軸Xに沿って変化する寸法パラメータを有するため、放射プロファイルSrl(x)は、所定の目標プロファイルSrl,c(x)と同じであり、また、放射角φrl(x)は一定、かつ、所定の目標角φrl,c(x)と同じである。したがって、入射導波路11及び横方向回折格子12のアポダイズが参照され、これは、(対応するアンテナにおける)入射導波路11及び横方向回折格子12の全長を含み、または、その長さの一部のみを含み得る。
【0084】
この例では、横方向回折格子12は、図4Dに示すように、入射導波路11に設けられた三角形の複数の凹部によって形成される。これらの凹部は、所定の関数p(この場合は増加関数)に従って、深さprlの長手方向の変化prl=p(x)を有するため、遠方界放射プロファイルSrl(x)は、目標プロファイルSrl,c(x)と同じである。しかしながら、凹部の深さprlのこの長手方向の変化は、幅wgiと値prlとの差として定義される、最小幅wgi,min(x)の長手方向の変化をもたらす。入射導波路11の最小幅wgi,min(x)のこの長手方向の変化は、光学モードの実効屈折率の変化をもたらす。しかしながら、放射角θrl(x)は、以下の式に従って、実効屈折率の局所的な値に依存する。
【数1】
ここで、mは回折次数である。
【0085】
したがって、放射角φrl(x)を目標値φrl,cと同じにし、かつ、長手方向軸Xに沿って一定に保つべく、横方向回折格子12の寸法パラメータの長手方向の変化、例えば、所定の関数qに従うピッチΛrlの長手方向の変化Λrl=q(x)を決定することも重要である。各周期の寸法パラメータは、1からMまで変化する添え字iを用いて表すことができ、ここで、Mは、アポダイズされた部分における横方向回折格子の周期の数である。これにより、添え字iの周期についてのピッチΛrl(i)及び深さprl(i)が得られる。
【0086】
この例では、横方向放射導波構造10は、一方で、入射導波路11の最小幅wgi,minの長手方向の変化を表す、複数の凹部の深さprlの長手方向の変化prl=p(x)を有し、他方で、横方向回折格子12のピッチの長手方向の変化Λrl=q(x)を有する。これらの関数p及びqは、放射角φrlで配向される遠方界放射プロファイルSrl(x)が、角度φrl,cで配向される目標プロファイルSrl,cと同じになるように決定される。
【0087】
ステップ10では、各光アンテナ7の導波構造10によって放射された光放射の遠方界目標放射プロファイルSrl,c(x)が、目標放射角φrl,cと同様に決定される。一例として、放射プロファイルSrl,c(x)は、ガウス分布である。さらに、目標放射角φrl,cは、長手方向軸Xの任意の値xについて一定であり、この場合は5°である。この場合、光学モードの波長λは、例えば、1,550nmであると考えられる。
【0088】
また、導波構造10についても、同様の基準構造配置Csrefが決定される。この構造配置Csrefは、入射導波路11による光学モードの光伝達特性を規定する入射導波路11の物理パラメータPpgiを含み、換言すると、入射導波路11及び金属被膜の屈折率ngi及びnggと、導波路の厚さegiとを含み、したがって、Ppgi={ngi,ngg,egi}である。一例として、入射導波路11はシリコンから作ることができ、屈折率ngiは3.48であり、金属被膜はSiOから作ることができ、波長λが1.55μmのときの屈折率nggは1.45である。さらに、この場合、入射導波路11は、220nmと同じ一定の厚さeを有する。これらの物理パラメータPpgiのリストは、後で決定される、入射導波路11の最小幅wgi,minに影響する横方向回折格子の周期的な凹部の深さprlの長手方向の変化prl(x)によって補完される。
【0089】
構造配置Csrefはまた、横方向回折格子12による光学モードの光の回折特性を規定する横方向回折格子12の物理パラメータPprlの値を含む。したがって、物理パラメータPprlは、入射導波路11の屈折率ngi、金属被膜の屈折率ngg、この場合はSiOについて1.45、斜辺の傾斜角β、この場合は30°を含み得る。これらの物理パラメータPprlのリストは、後で決定される、横方向回折格子12のピッチΛrの長手方向の変化Λr(x)によって補完される。
【0090】
ステップ20では、基準構造配置Csrefを考慮し、この場合は凹部の三角形によって規定されるピッチΛrlについて、抽出率αrl(x)の長手方向の変化が、目標放射プロファイルSrl、c(x)と同じ遠方界放射プロファイルSrl(x)をもたらすように、横方向回折格子12の複数の凹部の深さprlの長手方向の変化prl=p(x)が決定される。より詳細には、複数の凹部が、三角形の斜辺の端部と、隣接する三角形のY軸に沿って配向された底面の端部との間において、長手方向軸Xに沿って間隔を空けることなく連続する。傾斜角βは、或る凹部から次の凹部まで一定であり、30°であることに留意すべきである。
【0091】
図7Aは、複数の凹部の深さprlの長手方向の変化prl=p(x)の関数pの一例を示す。この例では、関数pは、次の種類の関数prl(x)=prl,max×exp(-x/2σ)であり、ここで、prl,maxは、凹部の深さの所定の最大値、この場合は300nmであり、σは、目標放射プロファイルSrl,c(x)のガウス分散である。
【0092】
ステップ30では、基準構造配置Csrefの場合、放射角φrlの漸進的な変化が、深さprlの様々な値についてのピッチΛrlの関数として規定される。図7Bは、そのような漸進的な変化の一例を示す。この場合、ピッチは、650~750nmの範囲で変化し、また、いくつかのFDTDシミュレーションが、50nm、100nm等、最大値prl、maxの300nmまでの深さprlについて行われる。深さprlの値ごとに、関連する点を通る、複数の曲線が規定される。
【0093】
次に、ピッチΛrlと深さprlとの間の漸進的な変化Λrl=h(prl)が導出され、この場合、放射角φrlは、5°の目標角φrl、cと同じである。図7Cは、このような漸進的な変化の一例を示しており、この場合、関数hは、べき関数である。この曲線は、図7Bから生じる点を通る。最後に、長手方向の変化prl=p(x)及び関係Λrl=h(prl)を知ることにより、横方向回折格子12のピッチΛrlの長手方向の変化Λrl=q(x)を決定することができる。
【0094】
最後に、ステップ40では、全てが同じ構造配置Csrefを有する光アンテナ7のための導波構造10が得られ、したがって、この構造配置は、ちょうど決定された入射導波路の深さprlの長手方向の変化prl=p(x)と、横方向回折格子のピッチの長手方向の変化Λrl=q(x)によって補完される。これにより、光アンテナ7の導波構造10を作ることができる。
【0095】
この例は、図4Cに示す種類の横方向回折格子12にも適用され、これらは、
入射導波路11の一方側及び/又は他方側に距離を置いて配置されたパッドによって形成されることに留意すべきである。この場合、一例として、この方法は、入射導波路11の幅wgiの長手方向の変化wgi=p(x)と、横方向回折格子12のピッチの長手方向の変化Λrl=q(x)を決定することができる。他の物理的パラメータは、例えば、充填率、パッドの寸法等は変わり得る。
【0096】
放射プロファイルSrv(y)が、目標プロファイルSrv,c(y)と同じになり、かつ、長手方向軸Aに沿って一定の目標放射角θrv,cで配向されるように、導波構造30もまた、アポダイズされ得ることに留意すべきである。上述した方法と同様の方法を使用することができる。したがって、パラメータ、例えば、垂直回折格子32のピッチΛrv、複数の周期構造33の複数の寸法のいずれか1つ、又は充填率等は、長手方向軸Aに沿って、長手方向の変化を有し得る。この点に関し、図6Bは、導波構造30の概略的かつ部分的な断面図であり、この図では、垂直回折格子32が、所定の関数に従って長手方向に変化するピッチΛrvを有する。この場合、凹部の長さIrvは、所定の関数に従って長手方向に変化する。したがって、所定の関数に従って、長さIrv(したがって、充填率)を長手方向において変化させることにより、所望の放射プロファイルを得ることができ、また、別の所定の関数に従って、ピッチΛrvを長手方向において変化させることにより、放射角θrvを一定に保ち、目標値と同じにすることができる(したがって、長さlrvの変化によって生じる実効屈折率の変化を補償する)。
【0097】
したがって、この寸法を決定する方法及び製造方法により、アポダイズされた導波構造10を製造することができ、換言すると、これは、光アンテナ7の導波構造10の長さの少なくとも一部において、入射導波路11の幅wgiの長手方向の変化と、横方向回折格子12のピッチΛrlの長手方向の変化を有し、これにより、抽出された光放射が、所望の放射角で配向された所望の遠方界放射プロファイルを有する。この方法はまた、導波構造30に応用することができる。
【0098】
特定の実施形態について上述した。様々な代替的な実施形態及び変形例は、当業者にとって明らかであろう。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】