(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】バイオベースの接着剤による水中接着
(51)【国際特許分類】
C09J 189/00 20060101AFI20250107BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250107BHJP
C09J 193/00 20060101ALI20250107BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C09J189/00
C09J11/06
C09J193/00
C09J11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535748
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022052880
(87)【国際公開番号】W WO2023114321
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ウィルカー,ジョナサン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,グドラン
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ,ローガン ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA012
4J040BA151
4J040HA096
4J040HB07
4J040HB40
4J040JA01
4J040JB03
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA08
(57)【要約】
ゼインおよびタンニン酸を、単独で、またはFeCl3、無機充填剤、天然ポリマー、もしくはそれらの任意の組み合わせとさらに組み合わせて含む、水中接着剤組成物、およびそれらを作製する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ゼイン、および(ii)タンニン酸を含む水中接着剤組成物であって、約30~80wt%のタンニン酸を含む、水中接着剤組成物。
【請求項2】
ゼインのタンニン酸に対する比が、乾燥固体中約42wt%:58wt%である、請求項1に記載の水中接着剤組成物。
【請求項3】
塩化第二鉄(FeCl
3)をさらに含む、請求項1または2に記載の水中接着剤組成物。
【請求項4】
アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、請求項1に記載の水中接着剤組成物。
【請求項5】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)無機充填剤を含む、水中接着剤組成物。
【請求項6】
塩化第二鉄(FeCl
3)をさらに含む、請求項5に記載の水中接着剤組成物。
【請求項7】
前記無機充填剤が、天然粘土、合成粘土、炭酸カルシウム、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項5または6に記載の水中接着剤組成物。
【請求項8】
前記無機充填剤が、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);モンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am);ラポナイトRD;および炭酸カルシウムから選択される、請求項7に記載の水中接着剤組成物。
【請求項9】
無機充填剤の量が、乾燥固体組成物中約6wt%である、請求項5または6に記載の水中接着剤組成物。
【請求項10】
アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、請求項5に記載の水中接着剤組成物。
【請求項11】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、および(iv)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物。
【請求項12】
FeCl
3をさらに含む、請求項11に記載の水中接着剤組成物。
【請求項13】
前記無機充填剤が、天然粘土、合成粘土、炭酸カルシウム、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項11または12に記載の水中接着剤組成物。
【請求項14】
前記無機充填剤が、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);モンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am);ラポナイトRD;および炭酸カルシウムから選択される、請求項13に記載の水中接着剤組成物。
【請求項15】
前記天然ポリマーがタンパク質または多糖である、請求項11または12に記載の水中接着剤組成物。
【請求項16】
前記タンパク質が、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項15に記載の水中接着剤組成物。
【請求項17】
前記多糖がセルロース誘導体である、請求項15に記載の水中接着剤組成物。
【請求項18】
前記セルロース誘導体が、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、メチルセルロース、α-セルロース、およびアビセルpH-101から選択される、請求項17に記載の水中接着剤組成物。
【請求項19】
前記無機充填剤および前記天然ポリマーが、約1:1wt/wtの比である、請求項11または12に記載の水中接着剤組成物。
【請求項20】
アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、請求項11に記載の水中接着剤組成物。
【請求項21】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物。
【請求項22】
FeCl
3をさらに含む、請求項21に記載の水中接着剤組成物。
【請求項23】
前記天然ポリマーがタンパク質または多糖である、請求項21または22に記載の水中接着剤組成物。
【請求項24】
前記タンパク質が、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項23に記載の水中接着剤組成物。
【請求項25】
前記多糖がセルロース誘導体である、請求項23に記載の水中接着剤組成物。
【請求項26】
前記セルロース誘導体が、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、メチルセルロース、α-セルロース、およびアビセルpH-101から選択される、請求項25に記載の水中接着剤組成物。
【請求項27】
アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、請求項21に記載の水中接着剤組成物。
【請求項28】
ゼインおよびタンニン酸を含む水中接着剤組成物を調製する方法であって、
a.アルコールの存在下でゼイン保存液をタンニン酸と混合して、高粘性の配合物を得るステップ、
b.pHを約8~11に調節するステップ、および
c.アルコールの存在下で、前記高粘性の配合物を、無機充填剤、天然ポリマー、またはそれらの組み合わせと混合して、コアセルベートまたはペーストまたはパテ様接着剤組成物を得るステップ
を含む、方法。
【請求項29】
ステップ(a)においてFeCl
3を添加するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ゼイン保存液が、ゼインを、アルコールおよび水を含有する溶液と混合し、前記ゼイン溶液のpHを8~11に調節することにより調製される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記アルコールがエタノールである、請求項28または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年12月16日出願の米国仮特許出願第63/290,087号に基づく優先権を主張し、かかる出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利
本発明は、国防総省により認可されたHR0011-20-C-0019に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、湿潤表面および水中に好適なバイオベースの接着剤、およびそれらを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
このセクションは、本開示のより良好な理解を推進する助けとなりうる態様を紹介する。したがって、これらの記述はこの観点から読まれるべきであり、何が先行技術であり何がそうでないかについて認めるものと理解されるべきでない。
【0005】
接着剤にとっての水中接着は、大部分の接着剤が水中で機能しないことから非常に困難である。浸漬された基材に適用されると、接着剤はしばしば、基材との接着性の接合または接着剤のバルク中の凝集性の接合を形成する前に、水と相互作用する。水中で金属、プラスチック、または木材をつなぎ合わせることは、達成するのが困難である。最も一般的に使用される方法は、溶接および機械的留め具である。市販の接着剤はいくつかの他の欠点を有する。それらは、石油由来であること、毒性であること、および分解性でないことである。
【0006】
タンパク質ベースの接着剤は、それらの独自の生体適合性および各種官能基により、多大な関心を集めつつある。それらは、環境に優しくより高い強度を有する。しかし、これらのタンパク質ベースの接着剤も欠点を有する。大部分のタンパク質が多くの極性基を有し、それにより、タンパク質が境界層および界面接着として水を吸収するため、タンパク質ベースの接着剤は不十分な耐水性を有する。それに加えて、水は接着剤の完全性も損なう。乾燥接着における接着剤の有効性は、水中環境での接着における接着剤の有効性と直接相関しない。ゆえに、水中または湿潤表面接着は、これらのタンパク質ベースの接着剤についての大きな関心事である。
【0007】
ゆえに、水中または湿潤表面で機能する、環境に優しく、非毒性であり、分解性の接着剤組成物を開発する必要性が大いにある。そのような必要性を満たすことが、本開示の目的である。このおよび他の目的および利点、さらに発明の特性が、本明細書で与えられる詳細な記載から明らかとなるはずである。
【発明の概要】
【0008】
(i)ゼインおよび(ii)タンニン酸を含む水中接着剤組成物であって、約30~80wt%のタンニン酸を含む、水中接着剤組成物が提供される。
【0009】
一部の実施形態において、接着剤組成物は塩化第二鉄(FeCl3)をさらに含む。
【0010】
一部の実施形態において、ゼインおよびタンニン酸の量は、乾燥固体中約42wt%:58wt%の比で使用される。
【0011】
一部の実施形態において、組成物はアルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または組成物は固形である。
【0012】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)無機充填剤を含む、水中接着剤組成物が提供される。接着剤組成物は、FeCl3をさらに含んでいてよい。
【0013】
好適な無機充填剤の例は、天然粘土、炭酸カルシウム(CaCO3)、合成粘土、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。天然粘土の例は、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);およびモンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am)を含むがこれらに限定されない。ラポナイトRDは、合成粘土の非限定的な例である。
【0014】
例示的な実施形態において、接着剤組成物中に存在する無機充填剤の量は、乾燥固体組成物中約6wt%である。
【0015】
一部の実施形態において、組成物はアルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または組成物は固形である。
【0016】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、および(iv)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物がさらに提供される。接着剤組成物は、FeCl3をさらに含んでいてよい。
【0017】
一部の実施形態において、組成物はアルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または組成物は固形である。
【0018】
一部の実施形態において、接着剤組成物に使用される天然ポリマーは、タンパク質または多糖であってよい。多糖の例は、セルロース誘導体、例えば(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPM)、メチルセルロース(M Cell)、α-セルロース(α Cell)、およびアビセルPH-101を含むがこれらに限定されない。タンパク質の例は、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。ダイズタンパク質は、ダイズ粉、ダイズタンパク質単離物、およびダイズタンパク質酸加水分解物から選択されてよい。各種実施形態において、カゼインが好ましいタンパク質となりうる。
【0019】
例示的な実施形態において、無機充填剤および天然ポリマーは、約1:1wt/wtの比である。
【0020】
好適な無機充填剤の例は、天然粘土、炭酸カルシウム(CaCO3)、合成粘土、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。天然粘土の例は、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);およびモンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am)を含むがこれらに限定されない。ラポナイトRDは、合成粘土の非限定的な例である。
【0021】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物がさらに提供される。接着剤組成物はFeCl3をさらに含む。
【0022】
一部の実施形態において、組成物はアルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または組成物は固形である。
【0023】
接着剤組成物に使用される天然ポリマーは、タンパク質または多糖であってよい。多糖の例は、セルロース誘導体、例えば(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPM)、メチルセルロース(M Cell)、α-セルロース(α Cell)、およびアビセルPH-101を含むがこれらに限定されない。タンパク質の例は、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。ダイズタンパク質は、ダイズ粉、ダイズタンパク質単離物、およびダイズタンパク質酸加水分解物から選択されてよい。各種実施形態において、カゼインが好ましいタンパク質となりうる。
【0024】
ゼインおよびタンニン酸を含む水中接着剤組成物を調製する方法であって、
a.アルコールの存在下でゼイン保存液をタンニン酸と混合して、高粘性の配合物を得るステップ、
b.pHを約8~11に調節するステップ、および
c.アルコールの存在下で、高粘性の配合物を、単独のまたは天然ポリマーと組み合わせた無機充填剤と混合して、コアセルベートまたはペーストまたはパテ様接着剤組成物を得るステップ
を含む、方法がさらに提供される。
【0025】
方法は、ステップ(a)においてFeCl3を添加するステップをさらに含んでいてよい。例示的な実施形態において、ゼイン保存液は、ゼインを、アルコールおよび水を含有する溶液と混合し、ゼイン保存液のpHを8~11に調節することにより調製されてよい。アルコールは、任意の好適なアルコールであってよい。各種実施形態において、エタノールが好ましいアルコールとなりうる。
【0026】
上記のおよび他の本発明の目的、特性、および利点が、以下の記載および図と合わせればより明らかとなるはずであり、図において、可能な場合には、図に共通した同一の特性を指定するのに、同一の参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1aは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)エタノールおよび水を含む溶液形態の水中接着剤組成物の、接着剤性能を示す図である。アルミニウム、ステンレス鋼、および青銅を基材として使用した。接着剤組成物を海水中で基材上に適用し、ラップせん断試験前に24時間放置した。図は、接着強さ(y軸)対タンニン酸組成(x軸:タンニン酸含有量)を示す。x軸は、乾燥固体中の、wt%でのタンニン酸濃度を表す。ゼロタンニン酸は、ゼイン単独対照を表す。接着における傾向は試験された基材全てについて同様であり、接着最大値が、ゼインおよびタンニン酸が同じ組成付近で観察される。
図1bは、(i)ゼイン、および(ii)タンニン酸を含み、タンニン酸の濃度が乾燥固体中58~60重量%の付近でありうる、最も強力な接着剤組成物の水中接着剤性能を示す図である。接着剤組成物、およびゼインのみを含む対照組成物を、海水中で基材上に適用し、ラップせん断試験前に24時間そこに放置した。7種の基材を、同じ最も強力な接着剤組成物および同じゼイン単独対照について、互いに比較した。y軸は接着強さを表し、x軸は基材を表す。
【
図2】(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)炭酸カルシウム(CaCO
3)、(iv)カゼイン、および(v)FeCl
3を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。青銅を基材として使用した。ラップせん断試験を実施する前に、試料を海水中に、24時間(丸)、1週間(四角形)、および2週間(三角形)放置した。図は、接着強さ(y軸)対、「試料番号」により列挙される多様な接着剤組成物(x軸)および対照について記載する。「試料番号」は、表1に列挙される組成物に対応する。
【
図3】
図3aは、試料調製直後の、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)CaCO
3、(iv)カゼイン、および(v)FeCl
3を含む接着剤組成物を示す図であり、接着剤組成物ペーストが塩水中に押し込まれると、「硬化」から内部の組成物を保護する膜が、糊の周囲に即座に形成される。このペーストは水中で基材に適用可能である。塩水中での数日後、糊は固く脆性となる。
図3bは、塩水中で青銅に適用された接着剤組成物を示す図である。ラップせん断試験後、接着剤組成物が被着材の両側に留まり、凝集破壊を示唆した。
【
図4】
図4aは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、および(iv)FeCl
3を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。青銅を基材として使用した。ラップせん断試験を、塩水中での24時間、1週間、および2週間後に行った。図は、接着強さ(y軸)対接着剤組成物に使用された無機充填剤の名称および種類(x軸)について記載する。
図4bは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)モンモリロナイト粘土、例えばMMT-am、および(iv)FeCl
3を含む接着剤組成物の、水(塩水)中性能を示す図である。MMT-amの濃度を、約0.1g~約0.45gで変動させた。ラップせん断試験を、各種基材、例えば木材、スチール、青銅、アルミニウム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリプロピレン(PP)を使用して、塩水中での24時間および1週間後に行った。
【
図5】様々な種類の水の中での、乾燥固体中ゼイン42wt%:乾燥固形分中タンニン酸58wt%の比、エタノール、および水を含む接着剤組成物の水中接着剤性能を示す図である。基材は青銅であり、温度は21℃に維持した。y軸は接着強さの値を表し、x軸は水の種類および「水中で費やした時間」を表す。
【
図6】
図6aは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)タンパク質、例えばダイズ誘導体を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。
図6bは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)多糖、例えばセルロース誘導体を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。
【
図7】
図7aは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、ならびに(iii)タンパク質、例えばカゼイン、アルブミン、ゼラチン、およびムチン、ならびに(iv)FeCl
3を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。
図7bは、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、ならびに(iii)無機充填剤、例えば様々に処理されたラポナイト粘土、モンモリロナイト粘土、および炭酸カルシウムの種類を含む接着剤組成物の、水中接着剤性能を示す図である。
【
図8】海水中で基材に適用され、ラップせん断試験前に24時間放置された接着剤組成物、および卓上で適用され、次いで即座に水中に配置され、24時間そこに維持された接着剤組成物の、水中接着剤性能の比較を示す図である。試験された基材は、木材、スチール、青銅、PP、PTFE、および石灰石を含む。
【
図9】海水中での、ゼイン42wt%:タンニン酸58wt%(乾燥固形分)の比、およびエタノール/水を含む接着剤組成物の、温度依存性の水中接着剤性能を示す図である。基材は青銅であり、温度は約5~60℃の範囲であった。接着強さの値(y軸)対水の温度が示される。海水中で24時間維持された試料のラップせん断試験からデータを得た。接着剤は水中で適用した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の原理の理解を促進する目的で、図において例示される実施形態に対しここで言及がなされ、特定の言い回しが、実施形態について記載するのに使用される。これらの実施形態についての記載により、範囲が限定されることは意図されない。反対に、本開示は、添付の請求項によって規定される、本出願の趣旨および範囲内に含まれうる代案、改変、および同等物を網羅することが意図される。
【0029】
用語「約」は、値または範囲のある程度の可変性、例えば、明記される値、または範囲の明記される上下限の、10%以内、5%以内、または1%以内を可能にする。
【0030】
用語「実質的に」は、値または範囲のある程度の可変性、例えば、明記される値、または範囲の明記される上下限の、90%以内、95%以内、または99%以内を可能にする。
【0031】
用語「a」、「an」、または「the」は、文脈が明確に別途定めない限り、1つまたは1つ超を含むのに使用される。用語「または」は、別途示されない限り、非独占的な「または」を指すのに使用される。それに加えて、別途定義されない、本明細書で利用される専門表現または専門用語は、記載のためだけのものであり、限定のためのものではない。セクション見出しの任意の使用は、文書の読解を助けることを意図され、限定的なものと解釈されるべきでない。さらに、セクション見出しに関連した情報が、その特定のセクション内またはセクション外に登場することがある。用語「含むこと(including)」および「有すること(having)」は、含むこと(comprising)(すなわち、オープンな言い回し)と同様にオープンエンドな用語である。
【0032】
用語「ゼイン」は、トウモロコシに存在するアルコール可溶性タンパク質であるプロラミンを指す。
【0033】
用語「ラップせん断試験」は、物質の、作用したせん断力が2つの基材を反対方向に動かしている平面にかかる応力に耐える能力を測定する試験を指す。ラップせん断強さは、ASTM D1002試験手順に基づき評価される。
【0034】
用語「水中接着剤組成物」、「接着剤組成物」、および「接着剤」は、交換可能に使用される。
【0035】
用語「水中接着」は、両方の基材が水中にあるときに水中で接着剤を適用し、水中接着をもたらすことを指す。しかし、この用語が、湿潤条件下での、すなわち、両方の基材が濡れているが、一方または両方の基材が水中に浸漬されていない場合の、接着剤の適用、およびそのような湿潤条件下で接着をもたらすことを包含することが理解されるべきである。
【0036】
本開示は、水中で強力に接着する、タンパク質ベースの接着剤組成物に関する。組成物は、水中に完全に浸漬された基材および湿潤表面に対し強い接着をもたらす。これらは完全にバイオベースであり、化学合成を必要としない。
【0037】
乾燥環境で作用する接着剤組成物は、水中でまたは濡れた表面に適用された場合、作用しない。乾燥接着剤組成物が、水中でまたは濡れた表面に強い接着を示さないことは、当技術分野で周知である。
【0038】
(i)ゼインおよび(ii)タンニン酸を含む水中接着剤組成物であって、約30~80wt%のタンニン酸を含む、水中接着剤組成物が提供される。
【0039】
ゼインは任意の好適なゼインであってよい。例示的な実施形態において、ゼインは、トウモロコシから得られる疎水性タンパク質である。ゼインはアルコールおよび少量の水には可溶性であるが、水単独には不溶性である。ゼインは、高いパーセンテージの、プロリン、ロイシン、アラニン、およびグルタミンなどの非極性中性アミノ酸残基を有し、このことがゼインベースの接着剤に優れた耐水性をもたらす。
【0040】
一部の実施形態において、接着剤組成物は塩化第二鉄(FeCl3)をさらに含む。
【0041】
さらなる架橋および接着剤のより良好な取り扱いのために、FeCl3が添加されてよい。FeCl3由来のFe+3と、1つまたは複数のタンニン酸由来のヒドロキシル基との間の配位結合が、本開示の接着剤組成物の凝集および接着特性を増大させる可逆架橋につながりうる。このことが、金属支持体へのより良好な接着につながりうる。
【0042】
組成物は、アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であり、組成物の粘度は低度~高度に及ぶ。水中での硬化後、組成物は乾燥固形となる可能性があり、ある程度の水を含みうる。各種実施形態において、エタノールが好ましいアルコールとなりうる。
【0043】
接着剤組成物に使用されるタンニン酸の量は、ゼインより大きくてよい。ゼインは、タンニン酸分子に架橋しタンニン酸分子をまとめて保持するマトリックスまたは結合剤として作用しうる。タンニン酸濃度が高い組成物は、水中でまたは湿潤表面によく貼り付き、容易に除去することができない。
【0044】
表1は、ゼインおよびタンニン酸を様々な比で含む水中接着剤組成物を示す。接着剤組成物が、エタノールおよび水を含む濃厚なまたは薄い溶液形態である場合、ゼインおよびタンニン酸の量はグラムでありうるが、接着剤組成物が乾燥固形である場合、ゼインおよびタンニン酸の量は乾燥固形中のwt%でありうる。下線付きの太字の組成物が最大の接着を示す。
【0045】
【0046】
一部の実施形態において、タンニン酸は、組成物の乾燥固形分中約30wt%~約80wt%(例えば、約30wt%~80wt%、30wt%~約80wt%、または30wt%~80wt%)の範囲の量で存在していてよい。好ましい実施形態でありうる、ある特定の実施形態において、タンニン酸は、組成物の乾燥固形分中約58wt%(例えば、58wt%)の量で存在していてよい。一部の実施形態において、ゼインは、組成物の乾燥固形分中約70wt%~約20wt%(例えば、約20wt%~70wt%、20wt%~約70wt%、または20wt%~70wt%)の範囲の量で存在していてよい。好ましい実施形態でありうる、ある特定の実施形態において、ゼインは、組成物の乾燥固形分中約42wt%(例えば、42wt%)の量で存在していてよい。
【0047】
接着剤組成物が乾燥固形である場合などの一部の実施形態において、接着剤組成物は、乾燥固形分中約42wt%:58wt%、または乾燥固形分中42wt%:58wt%の、ゼインのタンニン酸に対する比を含んでいてよい。この組成物は、20℃で、青銅、アルミニウム、およびスチール基材に対し最良の接着性能を示した。
【0048】
接着剤組成物が濃厚なまたは薄い溶液形態である場合などの一部の実施形態において、接着剤組成物は、約2g:3g、または2g:3gの、ゼインのタンニン酸に対する比を含んでいてよい。この組成物は、20℃で、青銅、アルミニウム、およびスチール基材に対し最良の接着性能を示した。
【0049】
一部の実施形態において、ゼインおよびタンニン酸を含む水中接着剤組成物を調製するための方法が提供され、方法は、アルコールの存在下でゼイン保存液をタンニン酸と混合して、高粘性の配合物を得るステップを含む。
【0050】
ゼイン保存液は、ゼインを、アルコールおよび水を含有する溶液と混合し、無機塩基を使用してゼイン溶液のpHを8~11に調節することにより調製可能である。無機塩基は任意の好適な無機塩基であってよい。無機塩基は、NaOH、KOH、Na2CO3、CaCO3、K2CO3などから選択されてよい。各種実施形態において、エタノールが好ましいアルコールとなりうる。
【0051】
ゼイン保存液は、透明で高粘性であってよく、望ましくは透明で高粘性である。生じる水中接着剤組成物は、コアセルベートまたはペーストまたはパテ様または濃厚な溶液/分散体であってよく、望ましくはコアセルベートまたはペーストまたはパテ様または濃厚な溶液/分散体である。
【0052】
個々の構成要素の順序および添加が、接着剤組成物の質に影響を及ぼしうる。ゼインは水中で不溶性であるため、ステップ(a)におけるエタノールおよび水の溶液の使用は肝要な因子である。水がまず添加され次いでエタノールが添加された場合、そのことにより不均一な混合物またはスラリーがもたらされ、それによりゼイン塊が固化し、溶解させることが困難となる。
【0053】
調製されたゴム様接着剤組成物を塩水中で基材に適用し、支持体をラップせん断試験前に24時間そこに放置した。組成物は、塩水中で24時間後に固く/脆性となった。
【0054】
接着剤組成物が適用されうる基材の例は、青銅、アルミニウム、ステンレス鋼、木材、石灰石、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリプロピレン(PP)を含むがこれらに限定されない。
【0055】
接着剤組成物の接着強さは、金属基材とは無関係でありうる(
図1aを参照のこと)。全ての基材について、42wt%乾燥固体のゼインおよび58wt%乾燥固体のタンニン酸(すなわち、溶液形態中ゼイン2.2gおよびタンニン酸3.0g)を含む組成物で、接着最大値が観察された。例えば、アルミニウム基材で接着が最大であった一方で、タンニン酸がより少ない組成物では、接着強さが青銅で最大であった。接着剤は、他の金属よりも青銅基材に適用することがより容易である。組成物についての水中接着剤性能は、アルミニウムで最良であった。ステンレス鋼支持体は重く、接着剤が弱い場合には、ラップせん断試験データを収集するのがより困難であった。最大の接着が、約58wt%乾燥固体のタンニン酸(粘性溶液形態中3g)を含む接着剤組成物で得られた。
【0056】
図1bは、平均すると、木材基材が金属と同様に機能したことを示す。ポリマー、例えばPTFEおよびPP表面は弱い接着しか示さなかったが、測定および算出された値はそれでも、ゼイン単独対照より少し強力であった。石灰石については、ゼイン-タンニン酸配合物およびゼイン単独対照が、等しく十分に機能した。まとめると、これらのさらなるデータは、最良のタンニン酸-ゼイン配合物が、いかに良好にゼイン単独対照に匹敵するかを示す。
【0057】
一部の実施形態において、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、および(iv)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物が提供される。
【0058】
一部の実施形態において、接着剤組成物は、FeCl3をさらに含んでいてよい。
【0059】
接着剤組成物は、アルコールおよび水をさらに含んでいてよく、粘性であり、組成物の粘度が低~高に及ぶか、または組成物は固形である。
【0060】
無機充填剤の添加は、水中でのおよび湿潤表面に対する接着の強さを改善する助けとなりうる。例えば、無機充填剤は、タンパク質間の結合を形成することができる。無機充填剤は、接着剤組成物の粘度も増大させることができる。好適な無機充填剤の例は、天然粘土、炭酸カルシウム(CaCO3)、合成粘土、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。天然粘土の例は、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);およびモンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am)を含むがこれらに限定されない。ラポナイトRDは、合成粘土の非限定的な例である。
【0061】
MMT-DDAおよびMMT-TSAは、35~45wt%のジメチルジアルキルアミンおよび25~30wt%のトリメチルステアリルアンモニウムでそれぞれ修飾された表面を有する、天然のモンモリロナイト粘土である。CaCO3が、無機充填剤として使用可能である。CaCO3は、マーブル白色200石灰石(MW-200)およびマーブル白色325石灰石(MW-325)から選択されてよい。
【0062】
接着剤組成物に使用される天然ポリマーは、タンパク質または多糖であってよい。多糖の例は、セルロース誘導体、例えば(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPM)、メチルセルロース(M Cell)、α-セルロース(α Cell)、およびアビセルPH-101を含むがこれらに限定されない。タンパク質の例は、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。ダイズタンパク質は、ダイズ粉、ダイズタンパク質単離物、およびダイズタンパク質酸加水分解物から選択されてよい。各種実施形態において、カゼインが好ましいタンパク質となりうる。
【0063】
一部の実施形態において、CaCO3およびカゼインの量は、約0.1:10~約10:0.1の範囲の比で使用可能である。各種実施形態において、約1:1(例えば、1:1)の比が好ましいことがある。カゼインのリン酸基は、CaCO3との結合を形成することにより、組成物をまとめて保持する助けとなりうる。
【0064】
表2は、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、例えばCaCO3、(iv)タンパク質、例えばカゼイン、および(v)FeCl3を含む水中接着剤組成物を示す。組成物は、各種wt%で、ただし常に約1:1(例えば、1:1)の比で、CaCO3およびカゼインを含んでいてよい。
【0065】
【0066】
各種実施形態において、最も強力な水中接着剤組成物は、ゼイン:CaCO3:カゼインを、乾燥固体中約27.4wt%:乾燥固体中12.5wt%:乾燥固体中12.5wt%の比で含んでいてよい。
【0067】
この接着剤組成物は、金属基材に対し強い接着を示す。金属基材の例は、青銅、アルミニウム、およびステンレス鋼を含むがこれらに限定されない。好ましくは、使用される基材は青銅である。塩水に最も影響されにくい金属基材は青銅である。合成ポリマー、例えばPPおよびPTFEも、塩水中での基材として十分に作用しうる。
【0068】
図2は、表2に列挙される水中接着剤組成物の接着剤性能を示す。ラップせん断試験後、接着剤は被着材の両側に留まり(
図3bを参照のこと)、凝集破壊を示唆した。スパチュラ一杯の高粘性の接着剤が塩水中に押し込まれると、相分離および「硬化」過程から内部を保護する膜が、接着剤の周囲に即座に形成される(
図3a)。コアセルベート/ペースト/パテでありうる様々な接着剤組成物が、金属基材に対して、水中でまたは湿潤表面に容易に適用可能である。より粘性の小さい溶液(ペーストと比較して)は、ポリマー基材に対してより良好に適用可能である。塩水中での数日後、糊は固く脆性となる。
【0069】
一部の実施形態において、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)無機充填剤を含む、水中接着剤組成物がさらに提供される。
【0070】
一部の実施形態において、接着剤組成物は、FeCl3をさらに含んでいてよい。
【0071】
組成物は、アルコールおよび水をさらに含んでいてよく、粘性であり、組成物の粘度が低~高に及ぶか、または組成物は固形である。
【0072】
耐水性を改善し接着を向上させうる無機充填剤は、天然粘土、CaCO3、合成粘土、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。天然粘土の例は、MMT-K10、MMT-DDAまたはMMT-アミン、およびMMT-TSAまたはMMT-amを含むがこれらに限定されない。ラポナイトRDは、合成粘土の非限定的な例である。CaCO3の例の供給源は、マーブル白色石灰石MW-200またはMW-325を含むがこれらに限定されない。
【0073】
無機充填剤は、乾燥固形分中約0.1wt%~約60wt%、例えば約0.1wt%~60wt%、0.1wt%~約60wt%、または0.1wt%~60wt%の範囲の量で存在していてよい。各種実施形態において、乾燥固形分中約6wt%(例えば、6wt%)が好ましいことがある。
【0074】
表3は、各種wt%量の無機充填剤を含む水中接着剤組成物を示す。
【0075】
【0076】
接着剤組成物は、水性アルコール溶媒、例えばエタノール中で、ゼイン保存液、タンニン酸、無機充填剤、およびFeCl3を混合することにより調製可能である。ゼイン保存液は、ゼイン粉末をエタノールの水溶液(エタノール+水)中に溶解させ、pH調整剤、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を使用して、溶液のpHを約8~11に調節することにより調製可能である。
【0077】
接着剤組成物が適用される基材は、木材、金属基材、または合成ポリマーであってよい。金属基材の例は、青銅、ステンレス鋼、およびアルミニウムを含むがこれらに限定されない。好ましくは、金属基材は青銅である。青銅は、塩水に最も影響されにくい。合成ポリマーは、PPおよびPTFEから選択される。
【0078】
組成物が適用された基材を、塩水中で24時間、1週間、および2週間維持した後、ラップせん断試験を行った(
図4aを参照のこと)。ゼイン-タンニン酸-MMT-am粘土を含む接着剤組成物では、塩水中での2週間後の最大の接着剤性能がおよそ0.4Mpaであった。接着強さは、MMT-am粘土の濃度および基材の材質によって決まりうる。
図4aは、水中接着強さが、約6wt%までMMT粘土濃度とともに増大することを示す。その後接着強さは横這い状態となるように見受けられる。
【0079】
図4bは、ゼイン-タンニン酸-MMT-amから作製され、余剰なFeCl
3で架橋した接着剤の、濃度依存的かつ基材特異的な水(塩水)中性能を示す。組成物が適用された基材を、塩水中で24時間、1週間、および2週間維持した後、ラップせん断試験を行った。1つの個々の試料組成物についての接着強さの基材依存性は、接着剤適用前に木材を塩水中に浸したが、接着剤が木材に対して最もよく機能することを示唆する。接着剤は経時的により強力となり、塩水は1週間後も透明である。
【0080】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)MMT-am、および(iv)FeCl3を含む組成物の接着剤性能を、(i)カテコール、(ii)ゼイン、(iii)MMT-am、および(iii)FeCl3を含む組成物と比較した。カテコールを含む組成物では、塩水が24時間後に黒色に変わり、1週間後には、接着剤中のカテコールの少なくとも一部が漏れ出た。塩水中での24時間および1週間後にラップせん断試験を行った。カテコールでは、糊が経時的に黒ずむ。両方の組成物について、低い粘土濃度を有する低粘性の試料は、塩水中で青銅基材に適用するのがより困難である。糊が容易に流れ去るため、接着した一対を調製するにはより多くの糊が必要となった。同じ組成または成分比では、カテコールを含む接着剤組成物の性能は、タンニン酸を含む接着剤組成物と比較するとより弱い。タンニン酸は塩水中に漏れ出ない。粘土濃度を増大させると、塩水中でのより良好な性能がもたらされる。
【0081】
一部の実施形態において、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物が提供される。
【0082】
一部の実施形態において、接着剤組成物は、FeCl3をさらに含んでいてよい。
【0083】
接着剤組成物は、アルコールおよび水をまたさらに含んでいてよく、粘性であり、組成物の粘度が低~高に及ぶか、または組成物は固形である。
【0084】
接着剤組成物に使用される天然ポリマーは、タンパク質または多糖であってよい。多糖の例は、セルロース誘導体、例えば(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース(HPM)、メチルセルロース(M Cell)、α-セルロース(α Cell)、およびアビセルPH-101を含むがこれらに限定されない。タンパク質の例は、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。ダイズタンパク質は、ダイズ粉、ダイズタンパク質単離物、およびダイズタンパク質酸加水分解物から選択されてよい。
【0085】
表4は、(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)FeCl3、および天然ポリマーを各種比(接着剤組成物の、溶液形態ではグラムとして、乾燥固形ではwt%として)で含む水中接着剤組成物を示す。塩水中での適用後、接着剤は、ある程度のエタノールおよび水を含有しうる。
【0086】
【0087】
(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)天然ポリマーを含む水中接着剤組成物を、海水中で青銅基材に適用し、ラップせん断試験前に24時間そこに放置した。
図6a、
図6b、および
図7aは、ダイズ誘導体、セルロース誘導体、カゼイン、およびアルブミンそれぞれから選択されるポリマーを含む接着剤組成物についての接着強さを示す。x軸は、水中接着剤組成物中の、乾燥固体中の重量%としてのポリマーの量を表す。HPM、ダイズタンパク質、およびアルブミンが最大の接着強さを示す。ダイズタンパク質を含む組成物は最大の接着値約0.24MPaを有し、その一方でアルブミンを含む組成物は最大の接着値約0.31MPaを有した。
【0088】
ゼイン-タンニン酸ベースの水中接着剤組成物を調製する方法が提供され、方法は、
a.ゼインを、アルコールおよび水を含有する溶液と混合することにより、ゼイン保存液を調製するステップ、
b.ゼイン溶液のpHを8~11に調節するステップ、
c.アルコールの存在下でゼイン溶液をタンニン酸と混合して、高粘性の配合物を得るステップ、
d.任意選択でFeCl3を添加するステップ、および
e.アルコールの存在下で、高粘性の配合物を、無機充填剤、天然ポリマー、またはそれらの組み合わせと混合して、不透明な、コアセルベート、ペースト、またはパテ様混合物を得るステップ
を含む。
【0089】
水中または湿潤表面接着のための、ゼインおよびタンニン酸を含む接着剤組成物の親和性は、タンニン酸の量および多くの官能基、ならびにある程度、水中で可溶性でない最良のゼイン-タンニン酸組成に関連する可能性がある。例えば、粘性の接着剤小塊(例えば、スパチュラ一杯分)を水中で被着材表面に適用すると、ゼインは水溶性でないため、固く薄いポリマー膜が即座に形成された。膜は黄色であり、不透明であり、可視であった。水中で適用された全ての試料について、この膜は、被着材に付着した接着剤小塊の内部を保護する。小塊が2つの被着材対の間で押し潰されると、膜が破裂し、挟まれた接着剤が両方の支持体を覆いうる。挟まれた糊は、多量の水の存在なしに被着材表面と相互作用する時間を有する。液体接着剤は、水との境界面(すなわち、サンドイッチ周囲の端部)で硬化および固化し、次いで、糊付けされた範囲を通って水が浸透し、ゼインおよびタンニン酸と相互作用するにつれて、内部の糊もゆっくりと硬化および固化する。糊が塩水中で維持される24時間の期間は、糊の大部分を再現可能に固化させるのに十分である。試料が水中でより長く維持されるほど、より多くの糊が固化する。
【0090】
基材に対して、水中でまたは湿潤表面に接着剤組成物を適用した後、水が接着剤中にゆっくりと拡散し、接着剤組成物由来の溶媒、例えばエタノール/水が、水/接着剤境界面において接着剤から拡散する。粘性の接着剤組成物が水に曝露されると、固いゼイン-タンニン酸含有膜が、使用される水の種類に関係なく即座に形成される。この膜における拡散は、水中接着剤の溶媒含有量に影響を及ぼす。ゼインは水に可溶性でないため、液体接着剤はまず水との境界面において硬化および固化し、次いで水が糊の中に浸透し、ゼインと相互作用するにつれて、内部の糊が硬化/固化する。この固化効果により、被着材を水中で整列させることができ、糊付けされた表面範囲を所望のサイズに調節することができる。
【0091】
5種の様々な種類の水が試験された(
図5を参照のこと)。水の種類は、接着強さに大幅には影響を及ぼさないように見受けられた。しかし、水の色は変化した。水道水および脱イオン水浴は褐色で濁っており、塩水は汚れていたが透明なままであった。接着剤を水中で適用し、水中でそれぞれ24時間、1週間、および2週間維持した。スプーン一杯の接着剤(例えば、2cm直径の小塊)を塩水中で24時間適用し、次いで分裂させると、固く脆性の表面が形成され、これは容易に破壊されるが、ゴム様相および柔らかい粘性の内部を有することが観察された。中央部の糊は新たに調製されたように見えた。同様のサイズの小塊を塩水中に1週間放置した後、接着剤は完全に硬化し、全体にわたって脆性であった。
【0092】
図5は、接着強さ(MPa)対水の種類、および対その水の中に放置された時間を図示する。データは、使用された全ての種類の水について、接着強さが同様であることを示唆する。接着は、被着材が水中で放置された時間に伴って大幅に増大した。例えば、海水で観察された接着強さは、2週間後に3倍となった。インディアナの水道水は、接着を増大させることに対し同様の効果を有し、海水中の塩の追加の量が、接着強さに大幅には影響を及ぼさないことを示唆した。
【0093】
各被着材に対する、接着剤のパッチおよび「接着剤なし」範囲によるラップせん断試験後、凝集破壊および接着破壊の組み合わせが、全ての試料について観察された。水の種類は不足の様式に影響を及ぼさなかったが、被着材から除去された接着剤は、接着剤が水中により長く留められるほど、より固くより脆性となった。
【0094】
本開示の接着剤組成物は全て、水中の基材に適用されてもよく、卓上においてまず湿潤表面に適用され、次いでこれが水中に配置されてもよい。
図8は、金属および木材基材が、水中および卓上適用条件の両方において等しく十分に機能し、接着強さも同様であったことを示す。石灰石に対する接着はより弱く、金属基材に対する接着の強さの約半分であった。PPおよびPTFEに対する接着は他の表面とは大幅な差があり、接着剤がいかなる条件下で適用されても非常に弱かった。
【0095】
接着剤組成物を、水中でまたは濡れた表面に適用されて十分に機能するように設計した。しかし、一部の生成物は、接着剤が1つ超の方法で使用されることを必要とするため、水中および水の外での適用条件および温度条件の両方を比較し評価した。測定された最低温度では、接着剤を水の外で、すなわち、卓上で適用し、次いで被着材を5℃の海水中に24時間配置すると、水中での適用(中:0.11±0.02MPa)と比較して、より小さい接着強さ(外:0.04±0.01MPa)がもたらされた。驚くべきことに、約21℃では、接着剤の水中での適用(中:0.18±0.03MPa)対水の外での適用(外:0.19±0.03MPa)間で、大幅な差が観察されなかった。約60℃では、接着剤は、まず卓上で適用され、次いで海水中に配置された場合(外:0.12±0.08MPa)よりも、水中で適用された場合(中:0.30±0.13MPa)に、はるかにより良好に機能した。予期された通り、結果から、様々な温度で、水中で適用されるために特に配合された接着剤が、卓上で適用された場合に、同様に必ずしも機能するわけではないことが確認された。これらの結果は、特に文献から得られる水中接着データを比較する場合に、試料調製条件についての正確な記載がいかに重要であるかを示した。
【0096】
全ての接着剤組成物の接着強さを、様々な温度で試験した。組成物は、より低温よりも室温でより良好な接着を示した。温度は、室温で必ずしも使用されるわけではない適用のための、水中または湿潤表面接着剤を設計することにおいて、重要な変数である。例えば、選択された試料を4℃で保存する包装適用において、冷蔵庫温度は、生成物の保存期間を増大させること、ならびに劣化およびカビの増殖を防止することにとって肝要となりうる。37℃での性能は、湿った皮膚に対して、または口腔環境において使用される生物医学的接着剤にとって重要である。40~60℃での性能は、暑い日の屋外での作用条件または適用に関連しうる。
【0097】
接着の結果は、様々な水中温度での接着剤の適用および硬化に使用されるステップの順序に強く依存する。
図9は、約5℃~約60℃の範囲の海水中の温度での、約42wt%ゼイン:58wt%タンニン酸(乾燥比)およびエタノール/水を含む接着剤組成物の、温度依存性の水中接着剤性能をまとめる。接着剤を、各々の温度において水中で基材に適用し、次いで24時間そこに放置した。各被着材対に、水から取り出された直後にラップせん断試験を行った。被着材をラップせん断試験のためにInstronに固定している間、挟まれた接着剤に圧縮応力をかけないように、特別な処理を行った。接着剤は固いが脆性であり、任意の種類の圧縮応力が、挟まれた糊にひび割れを誘導した。
【0098】
図9は、温度に伴う、0.10MPa~0.28Mpaでの接着強さのほぼ線形の増大、および接着最大値約0.28Mpaを示唆する。この最大の接着強さは、接着剤組成物についての最良の硬化条件に関連しうる。接着剤組成物を30℃の海水中に浸漬すると、粘度が即座に減少し、基材間に捕捉されていなければ試料が流れ去ることが観察された。数秒後、粘度が増大し、接着剤組成物は、不均一な低粘性およびより高粘性の部分からなるように見受けられた。この時点で、固化が始まる前に、接着剤組成物が適用され、基材と迅速に整列させられなければならない。接着強さは約35~40℃まで減少し、その後接着強さは再度増大した。接着の減少は、接着剤が海水に曝露されている間の、硬化条件の変化に関連しうる。最大温度(例えば、60℃)で観察された、それに続く接着の増大は、硬化の加速およびゼインタンパク質のより広範な変性におそらく影響を受けた。高温では、熱水中での接着剤の取り扱いが不快となるため、エラーバーがより大きかった。
【0099】
実験
以下の実施例は、本開示を例示するのに役立つ。実施例は、請求される発明の範囲を限定することを意図されない。
材料:
トウモロコシゼインタンパク質-Sigma、Flozein
タンニン酸(Sigma)
CaCO3(マーブル白色200石灰石A-17-274-31)
カゼイン(Sigma)
【0100】
ゼイン保存液
ゼイン粉末(55.5g)を、エタノール(45g、95%または99%)および水(23g、蒸留または水道水)を含有する溶液と勢いよく混合することにより、透明な琥珀色のゼイン保存液を調製した。ゼインは水中で溶解しないため、琥珀色で透明なゼイン溶液を得るために、エタノールおよび水の予め混合した溶液を調製した。まず水を、次いでエタノールを添加すると、容易に溶解しない、多くの固化したゼイン塊を有する不均一な混合物またはスラリーがもたらされるおそれがある。水酸化ナトリウム(4g、10M NaOH)溶液を、混合しながらゼイン溶液に添加して、pHを9~11に調節した。生じた高粘性のゼイン溶液は全て透明であり(透けており)、様々な濃淡の琥珀色を有していた。琥珀色の濃淡は、ゼインバッチ次第で変動する。
【0101】
A.ゼイン-タンニン酸接着剤組成物
1.調製されたゼイン保存液(乾燥ゼイン粉末約2.2gを含有する溶液5g)をタンニン酸粉末(1g)と混合することにより、ゼイン-タンニン酸接着剤配合物を調製した。高粘性のパテまたは濃厚なゲル様物質または濃厚な溶液/分散体を得るため、余剰なエタノールが、必要に応じて混合しながら添加されてもよい。接着剤は、繊維を引けば適用に対して準備ができている。
【0102】
2.調製されたゼイン保存液(乾燥ゼイン粉末約2.2gを含有する溶液5g)をタンニン酸粉末(3g)およびFeCl3(0.001g)と混合することにより、ゼイン-タンニン酸接着剤配合物を調製した。高粘性のパテまたは濃厚な溶液/分散体を得るため、余剰なエタノールが、必要に応じて混合しながら添加されてもよい。接着剤は、繊維を引けば適用に対して準備ができている。
【0103】
B.ゼイン-タンニン酸-CaCO3-カゼイン-FeCl3接着剤組成物
(i)まずゼイン保存液(5g)を、タンニン酸粉末(1g)およびFeCl3(0.001g、水中で溶解)と混合した。混合物が高粘性で半透明の琥珀色の溶液を形成するまで、エタノールを混合物に添加した。pHを約9に調節した。(ii)CaCO3(1g)粉末を、高粘性のゼイン-タンニン酸溶液に、より多くのエタノールとともに添加して、粉末を湿らせ溶液中に手作業で混合させた。生じた混合物は、不透明な、コアセルベート様またはペースト様、またはパテ様である。(iii)カゼイン(1g)を、コアセルベート様またはペースト様、またはパテ様配合物に、より多くのエタノールとともに添加して、時間とともに(約10分)より粘性となる、濃厚な粘着性の分散体またはペーストを生じさせた。ペースト/パテを含有するゼイン-タンニン酸-CaCO3-カゼインの粘度は、より多くのエタノールを添加することにより調節可能である。接着剤のコアセルベート様の不均一な特徴が、より多量のエタノールを添加した後に観察された。生じた接着剤を、塩水中でスパチュラにより金属被着材に適用した。表1は、CaCO3およびカゼインの量を変動させることにより調製された接着剤組成物を示す。
【0104】
接着試験を行って、接着剤組成物の接着剤特性を評価した。
【0105】
C.ゼイン-タンニン酸-FeCl3-MMT-am接着剤組成物
(i)まずゼイン保存液(5g)を、タンニン酸粉末(1g)およびFeCl3(0.001g、水中で溶解)と混合した。混合物が高粘性で半透明の琥珀色の溶液を形成するまで、エタノールを混合物に添加した。pHを約8~9に調節した。(ii)モンモリロナイト粘土、MMT-am(0.20g、6wt%)粉末を、高粘性のゼイン-タンニン酸溶液に、より多くのエタノールとともに添加して、粉末を湿らせ溶液中に手作業で混合させた。生じた混合物は、不透明な、コアセルベート様またはペースト様、またはパテ様であった。
【0106】
D.ゼイン-タンニン酸-ポリマー物質
まずゼイン保存液(5g溶液)を、タンニン酸粉末(3g)と混合した。混合物が高粘性で半透明の琥珀色の溶液を形成するまで、エタノールを混合物に添加した。pHを約8~9に調節した。(ii)ポリマー粉末(0.1~5gの間)を、高粘性のゼイン-タンニン酸溶液に、より多くのエタノールとともに添加して、ポリマー粉末を湿らせ溶液中に手作業で混合させた。生じた混合物は、不透明な、コアセルベート様またはペースト様、またはパテ様である。混合物は、必要に応じてより多くのエタノールで希釈されてよい。ポリマーは、ダイズ誘導体またはセルロース誘導体、または別のポリマー、例えばカゼイン、ムチン、ゼラチン、またはアルブミンであってよい。
【0107】
基材に対する接着剤組成物の適用:
アルミニウム、ステンレス鋼、および青銅は、ラップせん断試験に使用された金属基材である(例えば、
図2)。全ての金属表面を、水中で接着剤を適用する前に研磨した。木材および石灰石は天然の基材であり、これらは受け取ったまま使用した。試験された合成ポリマー表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリプロピレン(PP)であった。ゼイン-タンニン酸接着剤溶液/分散体またはパテを、スパチュラを用いて水(例えば、海水)中で基材に対し直接適用した。通常、接着剤の0.7cmの大型の小塊を、水中に配置された被着材のうちの1つに対し塗り付けた。間に糊の1つの小塊を有する2つの基材を、重ね合わせ一緒に糊付けした。次いで被着材を整列させ、ラップせん断試験前に24時間水中に放置した。可能であれば、過剰の糊を、適用直後に被着材表面から除去した。適用後、塩水に曝露された、接着剤で覆われた端部が迅速に固化し、挟まれた接着剤はゆっくりと時間とともに固化した。24時間は、被着材間に挟まれた接着剤の大部分にとって、固くなるのに十分であった。水中での硬化後、被着材対を水浴から取り出し、被着材の側面で漏れ出たわずかに過剰の糊を取り除くことなく、ラップせん断について即座に試験した。6~10の被着材対を、試験される各配合物について調製した。水浴に使用された様々な種類の水(
図5を参照のこと)は、脱イオン水、インディアナの水道水、生理食塩水溶液、1/2海水(塩分が半分の海水)、および海水であった。海水の一般的なpHは、場所次第でpH7.5~8.1の範囲である。
【0108】
ラップせん断試験:
2000Nロードセル付きのInstron5544材料試験システムを、ラップせん断実験および接着強さを定量化するのに使用した。基材または被着材寸法は1.2cmx10cmであり、重複面積は大抵の場合1.2x1.2cmであった。基材を、1分ごとに2mm引き離した。全ての接着剤組成物および対照について、少なくとも5つの被着材対にラップせん断試験を行い、標準偏差とともに平均を報告した。接着剤を水中で適用したため、糊付けされた重複面積は、常に完全な1.2cmx1.2cm四角形ではなかった。これらの不完全な重複面積は、ラップせん断試験後に測定される必要があり、補正された面積を、各被着材対について接着強さを算出するのに使用した。
【0109】
さらに、以下の条項リストに記載される実施形態のうちのいずれかが、本発明の一部と考えられる。
【0110】
A.(i)ゼイン、および(ii)タンニン酸を含む水中接着剤組成物であって、約30~80wt%のタンニン酸を含む、組成物。
【0111】
B.ゼインのタンニン酸に対する比が、乾燥固体中約42wt%:58wt%である、条項Aの水中接着剤組成物。
【0112】
C.塩化第二鉄(FeCl3)をさらに含む、条項AまたはBの水中接着剤組成物。
【0113】
D.アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、条項Aの水中接着剤組成物。
【0114】
E.(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)無機充填剤を含む、水中接着剤組成物。
【0115】
F.塩化第二鉄(FeCl3)をさらに含む、条項Eの水中接着剤組成物。
【0116】
G.無機充填剤が、天然粘土、合成粘土、炭酸カルシウム、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、条項EまたはFの水中接着剤組成物。
【0117】
H.無機充填剤が、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);モンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am);ラポナイトRD;および炭酸カルシウムから選択される、条項Gの水中接着剤組成物。
【0118】
I.無機充填剤の量が、乾燥固体組成物中約6wt%である、条項EまたはFの水中接着剤組成物。
【0119】
J.アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、条項Eの水中接着剤組成物。
【0120】
K.(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、(iii)無機充填剤、および(iv)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物。
【0121】
L.FeCl3をさらに含む、条項Kの水中接着剤組成物。
【0122】
M.無機充填剤が、天然粘土、合成粘土、炭酸カルシウム、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、条項KまたはLの水中接着剤組成物。
【0123】
N.無機充填剤が、モンモリロナイト(MMT-K10);モンモリロナイト、ジメチルジアルキルアミン(MMT-DDAまたはMMT-アミン);モンモリロナイト、トリメチルステアリルアンモニウム(MMT-TSAまたはMMT-am);ラポナイトRD;および炭酸カルシウムから選択される、条項Mの水中接着剤組成物。
【0124】
O.天然ポリマーがタンパク質または多糖である、条項KまたはLの水中接着剤組成物。
【0125】
P.タンパク質が、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、条項Oの水中接着剤組成物。
【0126】
Q.多糖がセルロース誘導体である、条項Oの水中接着剤組成物。
【0127】
R.セルロース誘導体が、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、メチルセルロース、α-セルロース、およびアビセルpH-101から選択される、条項Qの水中接着剤組成物。
【0128】
S.無機充填剤および天然ポリマーが、約1:1wt/wtの比である、条項KまたはLの水中接着剤組成物。
【0129】
T.アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、条項Kの水中接着剤組成物。
【0130】
U.(i)ゼイン、(ii)タンニン酸、および(iii)天然ポリマーを含む、水中接着剤組成物。
【0131】
V.FeCl3をさらに含む、条項Uの水中接着剤組成物。
【0132】
W.天然ポリマーがタンパク質または多糖である、条項UまたはVの水中接着剤組成物。
【0133】
X.タンパク質が、カゼイン、アルブミン、ダイズ、ゼラチン、ムチン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、条項Wの水中接着剤組成物。
【0134】
Y.多糖がセルロース誘導体である、条項Wの水中接着剤組成物。
【0135】
Z.セルロース誘導体が、(ヒドロキシプロピル)メチルセルロース、メチルセルロース、α-セルロース、およびアビセルpH-101から選択される、条項Yの水中接着剤組成物。
【0136】
A’.アルコールおよび水をさらに含みかつ粘性であるか、または固形である、条項Uの水中接着剤組成物。
【0137】
B’.ゼインおよびタンニン酸を含む水中接着剤組成物を調製する方法であって、
a.アルコールの存在下でゼイン保存液をタンニン酸と混合して、高粘性の配合物を得るステップ、
b.pHを約8~11に調節するステップ、および
c.アルコールの存在下で、高粘性の配合物を、無機充填剤、天然ポリマー、またはそれらの組み合わせと混合して、コアセルベートまたはペースト、またはパテ様接着剤組成物を得るステップ
を含む、方法。
【0138】
C’.ステップ(a)においてFeCl3を添加するステップをさらに含む、条項B’の方法。
【0139】
D’.ゼイン保存液が、ゼインを、アルコールおよび水を含有する溶液と混合し、ゼイン溶液のpHを8~11に調節することにより調製される、条項B’の方法。
【0140】
E’.アルコールがエタノールである、条項B’またはD’の方法。
【0141】
記載される組成物、方法、および技術の使用についての各種改変および変更が、記載される技術の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであるはずである。本技術は特定の例示的な実施形態に関連して記載されてきたが、本発明は、請求される通りに、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでない。実際、当業者にとって明らかな、本発明を実施するための記載される様式の各種改変が、以下の請求項の範囲内に入ることが意図される。
【国際調査報告】