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特表2025-500884変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、ならびにそのコード遺伝子およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、ならびにそのコード遺伝子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/04 20060101AFI20250107BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20250107BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20250107BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C12N9/04 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/04
C12N15/53
C12N5/10
C12N15/29
C12N15/31
A01H1/00 A
A01M21/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535757
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 CN2021138425
(87)【国際公開番号】W WO2023108495
(87)【国際公開日】2023-06-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517284463
【氏名又は名称】ベイジン ダーベイノン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオ シャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン チンファン
(72)【発明者】
【氏名】タオ チン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ツァイホン
【テーマコード(参考)】
2B121
4B065
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CC05
2B121EA26
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA47
(57)【要約】
本発明は、変異させたヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)ポリペプチド、ならびにそのコード遺伝子およびその使用に関する。変異させたHPPDポリペプチドは、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸のホモゲンチジン酸またはホモゲンチセートへの転換を触媒する活性を保持しており、HPPD阻害除草剤に対する感受性が野生型HPPDよりも低い。配列番号1に示すアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列は、以下の部位におけるアミノ酸変異、すなわちF372部位がA、GまたはVによって置換され、かつF383部位がWによって置換されているアミノ酸変異を含む。本発明は、様々な種の供給源由来のHPPDポリペプチドの372部位および383部位における組合せ変異が、HPPD阻害除草剤に対する相乗的耐性を植物に賦与し得ることを初めて開示しており、植物におけるその施用の見込みは広範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-ヒドロキシフェニルピルビン酸のホモゲンチジン酸またはホモゲンチセートへの転換を触媒する活性を保持し、HPPD阻害除草剤に対する感受性が野生型HPPDよりも低い変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列の位置に対応する位置における以下のアミノ酸変異、すなわち、372位のFをA、GまたはVに置換、かつ383位のFをWに置換したアミノ酸変異を含むことを特徴とし、
好ましくは、前記変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の位置に対応する以下の位置におけるアミノ酸変異、すなわち、372位のFをAに置換、かつ383位のFをWに置換したアミノ酸変異を含む、
変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド。
【請求項2】
前記変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドが第2の変異をさらに含むことを特徴とし、
好ましくは、前記第2の変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の位置に対応する位置における以下のアミノ酸変異、すなわち、A106G、A107欠失、A111T、またはK351Nのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド。
【請求項3】
前記変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドが、配列番号173、配列番号182、配列番号185、配列番号188、配列番号191、配列番号194、配列番号197、配列番号200または配列番号203に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド。
【請求項4】
前記変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドが、植物または微生物の野生型HPPDに由来することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
効果的に連結された制御配列の制御下にある請求項5に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、発現カセットまたは組換えベクター。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド以外の少なくとも1つの除草剤耐性タンパク質と共に発現させることを含むことを特徴とする、植物が耐性を有する除草剤の範囲を拡大する方法。
【請求項8】
前記除草剤耐性タンパク質が、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase:EPSPS)、グリホサート酸化還元酵素、グリホサート-N-アセチル基転移酵素、グリホサート脱炭酸酵素、グルホシネートアセチル基転移酵素、アルファ-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ、ジカンバモノオキシゲナーゼ、アセト乳酸合成酵素、チトクロム様タンパク質、および/またはプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼであることを特徴とする、請求項7に記載の、植物が耐性を有する除草剤の範囲を拡大する方法。
【請求項9】
形質転換植物細胞を選択する方法であって、請求項5に記載のポリヌクレオチドで複数の植物細胞を形質転換することと、前記ポリヌクレオチドを発現する前記形質転換細胞の増殖を可能にするある濃度のHPPD阻害除草剤の下で前記細胞を培養する一方で、非形質転換細胞を死滅させるか、または非形質転換細胞の増殖を阻害することとを含むことを特徴とし、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
形質転換植物細胞を選択する方法。
【請求項10】
雑草の防除方法であって、標的植物が植栽されている圃場に有効量のHPPD阻害除草剤を施用することを含み、前記標的植物は請求項5に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とし、
好ましくは、前記標的植物はグリホサート耐性植物であり、前記雑草はグリホサート抵抗性雑草であり、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
雑草の防除方法。
【請求項11】
HPPD阻害除草剤によって生じる損傷から植物を保護するか、またはHPPD阻害除草剤に対する耐性を植物に付与する方法であって、請求項5に記載のポリヌクレオチドまたは請求項6に記載の発現カセットまたは組換えベクターを植物に導入し、導入後の前記植物に十分な量の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを産生させて、前記HPPD阻害除草剤によって生じる損傷から前記植物を保護することを含むことを特徴とし、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
方法。
【請求項12】
HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物の作製方法であって、請求項5に記載のポリヌクレオチドを前記植物のゲノムに導入することを含むことを特徴とし、
好ましくは、前記導入の方法は、遺伝子形質転換、ゲノム編集、または遺伝子変異法を含み、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
作製方法。
【請求項13】
HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物の栽培方法であって、
請求項5に記載のポリヌクレオチドをゲノムが含有する植物繁殖体を少なくとも1つ植栽することと、
前記植物繁殖体を植物に生育することと、
少なくとも前記植物を含む植物生育環境に有効量の前記HPPD阻害除草剤を施用し、請求項5に記載のポリヌクレオチドがない他の植物と比較して、植物損傷が低減しかつ/または植物収量が増加した前記植物を収穫することと
を含むことを特徴とし、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
栽培方法。
【請求項14】
加工農産物を得る方法であって、請求項13に記載の方法によって得られたHPPD阻害除草剤耐性植物の収穫物を処理して加工農産物を得ることを含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
雑草の生育を防除する植栽システムであって、HPPD阻害除草剤と、少なくとも1つの標的植物が存在する植物生育環境とを含み、前記標的植物は請求項5に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とし、
好ましくは、前記標的植物はグリホサート耐性植物であり、前記雑草はグリホサート抵抗性雑草であり、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
植栽システム。
【請求項16】
HPPD阻害除草剤に対する耐性を植物に付与するための請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの使用であって、
好ましくは、前記HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含み、より好ましくは、前記ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、前記イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、前記トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、そのコード遺伝子およびその使用に関し、特に、HPPD阻害除草剤に対して耐性がある変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、そのコード遺伝子およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(hydroxyphenylpyruvate dioxygenase、HPPDと略す)は、鉄イオン(Fe2+)と酸素の存在下で、チロシン分解生成物である4-ヒドロキシフェニルピルビン酸(hydroxyphenylpyruvic acid、HPPと略す)が、トコフェロールおよびプラストキノン(plastoquinone、PQと略す)の植物内前駆体であるホモゲンチジン酸/ホモゲンチセート(homogentisate、HGと略す)に変換される反応を触媒する酵素である。トコフェロールは膜関連の抗酸化物質として作用する。PQは、PSIIとシトクロムb6/f複合体との間の電子伝達体として作用するだけでなく、カロテノイドの生合成に関与するフィトエンデサチュラーゼの必須補因子としても作用する。
【0003】
HPPDを阻害することによって作用する除草剤としては、主に、トリケトン類、イソキサゾール類、およびピラゾリネート類の3つの化学ファミリーが挙げられる。HPPDを阻害すると、植物中のチロシンからのPQの生合成が阻止され、そのため、PQが枯渇し、カロテノイドが欠乏する。HPPD阻害除草剤は、光に曝露された新しい成長点および葉を白く出現させる植物師部移動性の漂白剤である。カロテノイドは光防御に不可欠である。カロテノイドの非存在下では、クロロフィルの合成と機能が紫外線と活性酸素中間体によって妨害されるため、植物の生育が抑制され、さらには枯死につながる。
【0004】
HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物を提供する方法としては、以下のものが挙げられる。1)HPPD酵素の阻害剤が存在してもその機能性酵素を必要なだけ利用可能にするために、HPPD阻害除草剤との関係において十分な量のHPPD酵素が植物中で産生されるようにHPPD酵素を過剰発現させる。2)標的HPPD酵素を、除草剤またはその活性代謝産物に対する感受性が低いがHGへの変換能力を保持している機能性HPPDに変異させる。従来技術ではいくつかの変異HPPDポリペプチドが報告されており、変異HPPDポリペプチドは、それらが由来する元の野生型配列に対して1つまたは複数の位置にアミノ酸変異を有し、1つまたは複数のHPPD阻害除草剤に対して向上した耐性を示す。さらに、従来技術では、2つのアミノ酸変異を組み合わせることによって得られた変異HPPDポリペプチドは、その2つのアミノ酸変異のいずれかを単独で有するHPPDポリペプチドよりも、HPPD阻害除草剤に対して高い耐性を示すことがさらに報告されている。しかし、様々な種に由来し、エンバク(Avena sativa)野生型HPPDポリペプチドの372位および383位における変異の組合せを含むHPPDポリペプチドにより、HPPD阻害除草剤に対して、相乗的に向上した耐性を植物が示し得る可能性があることはまだ報告されてない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、新規の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、そのコード遺伝子およびその使用を提供することである。変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、HPPD酵素活性を有するだけでなく、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドをコードする遺伝子で形質転換された植物が、HPPD阻害除草剤に対して相乗的に向上した耐性を示すことを可能にする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸をホモゲンチジン酸またはホモゲンチセートに変換する反応を触媒する活性を保持し、HPPD阻害除草剤に対する感受性が野生型HPPDよりも低い変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列の以下の位置におけるアミノ酸変異、すなわち、372位のFをA、GまたはVに置換、かつ383位のFをWに置換したアミノ酸変異を含む変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを提供する。
【0007】
好ましくは、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の以下の位置におけるアミノ酸変異、すなわち、372位のFをAに置換、かつ383位のFをWに置換したアミノ酸変異を含む。
【0008】
上記の技術的解決法に基づいて、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、第2の変異を含むことができる。
【0009】
好ましくは、第2の変異は、配列番号1に記載のアミノ酸配列の位置に対応する位置における以下のアミノ酸変異、すなわち、A106G、A107欠失、A111T、またはK351Nのうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
特に、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、配列番号173、配列番号182、配列番号185、配列番号188、配列番号191、配列番号194、配列番号197、配列番号200または配列番号203に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0011】
さらに、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドは、植物または微生物の野生型HPPDに由来する。
【0012】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク(Avena sativa)、コムギ(Triticum aestivum)、オオムギ(Hordeum vulgare)、キビ(Setaria italica)、トウモロコシ(Zea mays)、モロコシ(Sorghum bicolor)、ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyo)、イネ(Oryza sativa)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、アルファルファ(Medicago sativa)、ダイズ(Glycine max)、ヒヨコマメ(cicer arietinum)、ピーナッツ(Arachis hypogaea)、テンサイ(Beta vulgaris)、キュウリ(Cucumis sativus)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アブラナ(Brassica napus)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、またはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)である。
【0013】
好ましくは、前記微生物はシュードモナス・フルオレセンスである。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、効果的に連結された制御配列の制御下にある前記ポリヌクレオチドを含む発現カセットまたは組換えベクターを提供する。
【0016】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを、前記変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド以外の少なくとも1つの除草剤耐性タンパク質と共に発現させることを含む方法であって、植物が耐性を有する除草剤の範囲を拡大する方法を提供する。
【0017】
さらに、前記除草剤耐性タンパク質は、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase:EPSPS)、グリホサート酸化還元酵素、グリホサート-N-アセチル基転移酵素、グリホサート脱炭酸酵素、グルホシネートアセチル基転移酵素、アルファ-ケトグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ、ジカンバモノオキシゲナーゼ、アセト乳酸合成酵素、チトクロム様タンパク質、および/またはプロトポルフィリノーゲンオキシダーゼである。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、形質転換植物細胞を選択する方法であって、複数の植物細胞を前記ポリヌクレオチドで形質転換することと、前記ポリヌクレオチドを発現する形質転換細胞の増殖を可能にするある濃度のHPPD阻害除草剤の下で前記細胞を培養する一方で、非形質転換細胞を死滅させるか、または非形質転換細胞の増殖を阻害することとを含む方法を提供する。
【0019】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。
【0020】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、形質転換ダイズ植物細胞を選択する方法は、複数のダイズ植物細胞を前記ポリヌクレオチドで形質転換することと、前記ポリヌクレオチドを発現する形質転換細胞の増殖を可能にし、非形質転換細胞を死滅させるか、または非形質転換細胞の増殖を阻害するある濃度のHPPD阻害除草剤で前記細胞を培養することとを含み、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールである。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、雑草の防除方法であって、標的植物が植栽されている圃場に有効量のHPPD阻害除草剤を施用することを含み、標的植物は前記ポリヌクレオチドを含有する防除方法を提供する。
【0022】
好ましくは、標的植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、標的植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。さらに好ましくは、標的植物はグリホサート耐性植物であり、前記雑草はグリホサート抵抗性雑草である。
【0023】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、雑草の防除方法は、ダイズ植物が生育されている圃場に有効量のHPPD阻害除草剤を施用することを含み、ダイズ植物は前記ポリヌクレオチドを含み、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールである。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、HPPD阻害除草剤によって生じる損傷から植物を保護するか、またはHPPD阻害除草剤に対する耐性を植物に付与する方法であって、前記ポリヌクレオチドまたは発現カセットまたは組換えベクターを植物に導入し、導入後のその植物に十分な量の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを産生させて、HPPD阻害除草剤によって生じる損傷から前記植物を保護することを含む方法を提供する。
【0025】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。
【0026】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、HPPD阻害除草剤によって生じる損傷から植物を保護するか、またはHPPD阻害除草剤に対する耐性をダイズ植物に付与する方法は、ポリヌクレオチドまたは発現カセットまたは組換えベクターをダイズ植物に導入し、その結果、ポリヌクレオチドまたは発現カセットまたは組換えベクターを導入したダイズ植物をHPPD阻害除草剤の損傷から保護するのに十分な量の変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドを生じることを含み、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールである。上記目的を達成するために、本発明はさらに、HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物の作製方法であって、前記ポリヌクレオチドを前記植物のゲノムに導入することを含む作製方法を提供する。
【0027】
好ましくは、導入の方法は、遺伝子形質転換、ゲノム編集、または遺伝子変異法を含む。
【0028】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。
【0029】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、HPPD阻害除草剤に対して耐性があるダイズ植物の生成方法は、前記ポリヌクレオチドをダイズ植物のゲノムに導入することを含み、HPPD阻害剤除草剤は、トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールである。
【0030】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物の栽培方法であって、
前記ポリヌクレオチドをゲノムが含有する植物繁殖体を少なくとも1つ植栽することと、
前記植物繁殖体を植物に生育することと、
少なくとも前記植物を含む植物生育環境に有効量のHPPD阻害除草剤を施用し、前記ポリヌクレオチドがない他の植物と比較して、植物損傷が低減しかつ/または植物収量が増加した前記植物を収穫することと
を含む栽培方法を提供する。
【0031】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。
【0032】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、HPPD阻害除草剤に対して耐性があるダイズ植物の栽培方法は、前記ポリヌクレオチドをゲノム中に含む少なくとも1つのダイズ植物種子を植栽することと、前記ダイズ植物種子をダイズ植物に生育することと、少なくとも前記ダイズ植物を含む植物生育環境に有効量のHPPD阻害除草剤を施用し、前記ポリヌクレオチドを含まない他のダイズ植物と比較して、植物損傷が低減し、かつ/または植物収量が増加した前記ダイズ植物を収穫することとを含み、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールである。
【0033】
本発明はまた、加工農産物を得る方法であって、上記方法によって得られたHPPD阻害除草剤耐性植物の収穫物を処理して加工農産物を得ることを含む方法を提供する。
【0034】
上記目的を達成するために、本発明はさらに、雑草の生育を防除する植栽システムであって、HPPD阻害除草剤と、少なくとも1つの標的植物が存在する植物生育環境とを含み、標的植物は前記ポリヌクレオチドを含有する植栽システムを提供する。
【0035】
好ましくは、標的植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、標的植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。さらに好ましくは、標的植物はグリホサート耐性植物であり、前記雑草はグリホサート抵抗性雑草である。
【0036】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、雑草の生育を防除する植栽システムは、HPPD阻害除草剤と、少なくとも1つのダイズ植物が存在する植物生育環境とを含み、ダイズ植物は前記ポリヌクレオチドを含有し、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、イソキサフルトール、またはメソトリオンである。上記目的を達成するために、本発明はさらに、HPPD阻害除草剤に対する耐性を植物に付与するための変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの使用を提供する。
【0037】
好ましくは、前記植物は単子葉植物および双子葉植物を含む。より好ましくは、前記植物は、エンバク、コムギ、オオムギ、キビ、モロコシ、ミナトカモジグサ、イネ、タバコ、ヒマワリ、アルファルファ、ダイズ、ヒヨコマメ、ピーナッツ、テンサイ、キュウリ、ワタ、アブラナ、ジャガイモ、トマト、またはシロイヌナズナである。
【0038】
好ましくは、HPPD阻害除草剤は、ピラゾリネート類、トリケトン類および/またはイソキサゾール類のクラスのHPPD阻害除草剤を含む。より好ましくは、ピラゾリネート類のHPPD阻害除草剤はトプラメゾンであり、イソキサゾール類のHPPD阻害除草剤はイソキサフルトールであり、トリケトン類のHPPD阻害剤除草剤はメソトリオンである。特に好ましくは、HPPD阻害除草剤に対する耐性をダイズ植物に付与するための変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの使用において、HPPD阻害除草剤は、トプラメゾン、イソキサフルトール、またはメソトリオンである。
【0039】
本明細書で用いる「a」および「an」という冠詞は、1つまたは1つ超(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例えば、「要素(an element)」とは、1つまたは複数の要素(elements)(構成要素(components))を意味する。さらに、「comprise」という用語、または「comprises」もしくは「comprising」などの変形語は、記載された要素、整数もしくは工程、または、要素、整数もしくは工程の群を含むことを意味するが、他のいかなる要素、整数もしくは工程、または、要素、整数もしくは工程の群も除外することを意味しないと理解すべきである。
【0040】
本発明の文脈において、「ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)」、「4-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)」および「p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(p-HPPD)」という用語は、同義である。
【0041】
「HPPD阻害除草剤」という用語は、直接的または間接的に作用してHPPDを阻害する除草剤を指し、この場合、この除草剤は漂白剤である。市販されているほとんどのHPPD阻害除草剤は、以下に列挙する3つの化学ファミリーのうちの1つに属する。(1)トリケトン類、例えばスルコトリオン(すなわち、2-[2-クロロ-4-(メチルスルホニル)ベンゾイル]-1,3-シクロヘキサン--ジオン)、メソトリオン(すなわち、2-[4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンゾイル]-1,3-シクロヘキサンジオン)、テンボトリオン(すなわち、2-[2-クロロ-4-(メチルスルホニル)-3-[(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル]ベンゾイル]--1,3-シクロヘキサンジオン);(2)イソキサゾール類、例えばイソキサフルトール(すなわち、(5-シクロプロピル-4-イソキサゾリル)[2--(メチルスルホニル)-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン);(3)ピラゾリネート類、例えば、トプラメゾン(すなわち、[3-(4,5-ジヒドロ-3-イソキサゾリル)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)フェニル](5-ヒドロキシ-1-メチル--ピラゾール-4-イル)メタノン)、ピラスルホトール(すなわち、(5-ヒドロキシ-1,3-ジメチルピラゾール-4-イル)(2-メチル--スルホニル-4-(トリフルオロメチルフェニル)メタノン)。
【0042】
本明細書で用いる場合、トプラメゾン(BAS-670Hとしても知られる)は、白色結晶性固体である[3-(4,5-ジヒドロ-3-イソキサゾリル)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)フェニル](5-ヒドロキシ-1-メチル-ピラゾール-4-イル)メタノンを指す。これは、通常の剤形である30%懸濁濃縮液において、茎および葉を出芽後処理するためのピラゾリネート類の浸透移行性の伝導型HPPD阻害除草剤である。トプラメゾンの市販製剤(トプラメゾンSCなど)は、1エーカーあたり5.6~6.7gで、イネ科雑草および広葉雑草の防除に使用することができる。効果的に防除することができる雑草としては、オニメヒシバ(Digitaria sanguinalis(Calathodes oxycarpa))、イヌビエ(Barnyard grass)、オヒシバ(Eleusine indica Gaertn)、ナルコビエ(Eriochloa villosa)、エノコログサ(Setaria viridis)(アキノエノコログサ(Giant foxtail))、シロザ(Chenopodium album)、タデ科(Polygonaceae)、イチビ(Abutilon avicennae)、イチビ(Abutilon theophrasti)、アカザ(Pigweed)、スベリヒユ(Portulaca oleracea)、オナモミ(Xanthium strumarium)、およびイヌホオズキ(Solanum nigrum)が挙げられるが、これらに限定されない。トプラメゾンSCとアトラジンとを組み合わせると、効果を著しく向上させることができる。前述の雑草に対する優れた効力とは別に、トプラメゾンはまた、極めて有害な広葉雑草、例えばセファラノプロス・セゲツム・キタム(Cephalanoplos segetum Kitam)(Cirsium segestum)、ソンクス・アルベンシス(Sonchus arvensis)、エノキグサ(Acalypha australis)、およびツユクサ(Commelina communis)(Asiatic dayflower)に対して良好な防除効果をもたらすことができ、特にメソトリオンによる防除が困難なエノコログサ、オニメヒシバ、オヒシバ、およびナルコビエを効果的に防除することができる。
【0043】
本明細書で用いる場合、「有効量」のトプラメゾンとは、25~200g ai/haの範囲、例えば25~50g ai/ha、50~100g ai/ha、100~150g ai/haまたは150~200g ai/haの量で使用されることを意味する。
【0044】
本明細書で用いる場合、イソキサフルトールは、白色から淡黄色の固体である5-シクロプロピル-4-イソキサゾリル)[2-(メチルスルホニル)-4-(トリフルオロメチル)フェニル]メタノンを指す。これは有機複素環式イソキサゾール類の選択的な浸透移行性の出芽前HPPD阻害除草剤であり、主として、若い雑草の根を介して吸収され移行することによって作用する。イソキサフルトールは主に、多様な一年生の広葉雑草、例えばイチビ、シロザ、ホウキギ、サルソラ・アルブシュラ(Salsola arbuscula)、イヌホオズキ、アオゲイトウ(Amaranthus retroflexus)、ポリゴヌム・ブンゲアヌム(Polygonum bungeanum)、コセンダングサ(Bidens pilosa)、スベリヒユ、ハコベ(Chickweed)、ナギナタコウジュ(Elsholtzia)、オナモミ、エノキグサ、ルリハッカ(Amethystea caerulea)、オオイヌタデ(Polygonum Lapathifolium)、およびイヌノフグリ(Veronica polita)を、乾燥地作物の圃場において防除するのに有用であり、また、いくつかの一年生のイネ科雑草、例えばオニメヒシバ、イヌビエ、オヒシバ、アゼガヤ(Leptochloa chinensis)、アキノエノコログサ(Setaria faberi)、およびエノコログサに対しても良好な防除効力を有する。
【0045】
本明細書で用いる場合、「有効量」のイソキサフルトールとは、35~280g ai/haの範囲、例えば35~70g ai/ha、70~140g ai/ha、140~200g ai/haまたは200~280g ai/haの量で使用されることを意味する。
【0046】
本明細書で用いる場合、「メソトリオン」とは、褐色または薄黄色の固体である2-[4-(メチルスルホニル)-2-ニトロベンゾイル]-1,3-シクロヘキサンジオンを指す。これは、植物における出芽前および出芽後両方の雑草防除を提供するトリケトン類の選択的な浸透移行性の伝導型HPPD阻害除草剤である。メソトリオンは、葉および根を通して植物に吸収され、上部から下部へ下向きに移行し、その結果、除草剤施用から3~5日後に成長点のクロロシス(黄変)の症状に続いてネクローシス(死滅組織)を生じさせ、さらに植物全体を枯死させることができる。メソトリオンは、植物における一年生広葉雑草およびイネ科雑草の出芽前および出芽後の防除に有用であり、防除することができる一年生の広葉雑草には、主に、オナモミ、イチビ、シロザ、アマランス(amaranth)、タデ科、イヌホオズキ、およびオオブタクサ(Ambrosia trifida)が含まれ、防除することができるイネ科雑草には、主に、幼齢のイヌビエ、オニメヒシバ、エノコログサおよびブラキアリア・デクンベンス(Brachiaria decumbens)が含まれる。
【0047】
本明細書で用いる場合、「有効量」のメソトリオンとは、52.5~420g ai/haの範囲、例えば52.5~105g ai/ha、105~210g ai/ha、210~300g ai/haまたは300~420g ai/haの量で使用されることを意味する。
【0048】
本明細書で用いる場合、「抵抗性」という用語は、遺伝性であり、通常の除草剤を用いた効果的な処理が所与の植物に行われる状況下でも、植物が生育し繁殖することを可能にする。当業者に認識されるように、除草剤で処理された所与の植物に、ある程度の損傷(小さなネクローシス、溶解またはクロロシスなどの損傷)があっても、少なくとも収量が著しく損なわれていなければ、植物は依然として「抵抗性である」とみなすことができる。言い換えれば、所与の植物は、除草剤によって誘発される多様な程度の損傷に抵抗する能力が高まっており、一般に、同じ用量の除草剤でも、同じ遺伝子型の野生型植物に対しては損傷が生じ得る。本発明における「耐性の」または「耐性」という用語は、「抵抗性」という用語よりも広義であり、「抵抗性」を含む。
【0049】
本明細書で用いる場合、「付与する」という用語は、特性または形質、例えば除草剤耐性および/またはその他の望ましい形質を植物に提供することを指す。
【0050】
本明細書で用いる場合、「異種」という用語は、別の供給源由来のものを意味する。DNAの文脈では、「異種」とは、同じ種の別の植物由来のものを含め、外来の任意の「非自己」DNAを指す。例えば、本発明において、遺伝子導入法によってダイズ植物で発現させることができるダイズHPPD遺伝子は、やはり「異種」DNAとみなされる。
【0051】
本明細書で用いる場合、「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを含み、特に明記しない限り、野生型ヌクレオチドの本質的特性を有し、野生型のヌクレオチドと同様の様式で一本鎖の核酸にハイブリダイズする既知の類似体(例えばペプチド核酸)を包含する。
【0052】
本明細書で用いる場合、「コードする」または「コードされた」という用語は、特定の核酸の文脈で用いられる場合、ヌクレオチド配列の特定のタンパク質への翻訳を指示するために、核酸が必要な情報を含むことを意味する。タンパク質がコードされた情報は、コドンの使用によって特定される。タンパク質をコードする核酸は、核酸の翻訳領域内に非翻訳配列(例えばイントロン)を含む場合もあれば、またはそのような介在非翻訳配列がない場合もある(例えばcDNA中のように)。
【0053】
本発明のタンパク質は、アミノ酸の置換、欠失、切断および挿入を含め、多様な方法で変えられてもよい。例えば、変異HPPDタンパク質のアミノ酸配列バリアントおよび断片は、DNAにおける変異によって調製することができる。ポリヌクレオチド変異の誘導方法は、当技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492、Kunkel et al.(1987)Methods in Enzymol.154:367-382、米国特許第4,873,192号、Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company、New York)、およびそれらに引用されている参考文献を参照されたい。目的のタンパク質の生物活性に多くの場合で影響を与えない適当なアミノ酸置換に関する指針が、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出され得る。1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸と交換するなどの保存的置換が最適であり得る。
【0054】
本明細書に記載するように、変異HPPDポリペプチドまたはそのバリアントおよびその断片は、HPPD酵素活性を有し、特定のクラスのHPPD阻害除草剤に対する耐性を植物に付与する。変異HPPDポリペプチドは、それらが由来する出発野生型配列に対して1つまたは複数の位置でアミノ酸が変化しており、1つまたは複数のHPPD阻害除草剤に対する向上した耐性を示す。少なくとも1つのHPPD阻害除草剤に対して向上した耐性を示すHPPD酵素は、類似した未変異の出発酵素に対し、特定の特徴を示すことによってその耐性を示している可能性がある。
【0055】
このような変異HPPDポリペプチドをコードするDNA配列は、未変異の出発酵素を同様に発現している類似植物と比較して、1つまたは複数のHPPD阻害除草剤に対する向上した耐性をもたらす本発明の植物、植物細胞および種子の提供において用いられる。
【0056】
このような変異HPPDポリペプチドをコードする植物HPPD遺伝子は、HPPD阻害除草剤に対して耐性がある植物を生成するのに有用である。上記のように修飾された植物HPPD遺伝子は、植物に除草剤耐性を付与するための植物内発現に特に適している。
【0057】
多くのHPPD配列が当技術分野で既知であり、これらを用いて、対応するアミノ酸において置換、欠失および/または付加を生じさせることにより、変異HPPD配列を生成することができる。基準である配列番号1に記載のエンバクの野生型HPPDアミノ酸配列のアミノ酸372位または383位を用いて、本発明の372位および383位が算出される。本発明による変異HPPDポリペプチドは、配列番号1の372位および383位に対応するアミノ酸位置における組合せ変異を含み、組合せ変異は、372位におけるFのA、GまたはVによる置換、および383位におけるFのWによる置換を含む。好ましくは、前記変異は、372位におけるFのAによる置換、および383位におけるFのWによる置換を含む。したがって、標準的な配列アライメントツールを用いて、既知のまたは疑われるHPPD配列を配列番号1に記載のアミノ酸配列とアライメントすることができ、本明細書に記載の配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対して対応するアミノ酸における置換または欠失は、既知のまたは疑われるHPPD配列において生じさせることができる。
【0058】
本発明は、変異HPPDポリペプチドであって、植物または微生物中のHPPDに由来し、HPPD酵素活性を有し、配列番号1に記載のアミノ酸配列の少なくとも372位および383位における組合せ変異を含み、任意選択でさらに、他の位置(HPPDポリペプチド中に存在する対応する位置)における変異と組み合わせて、例えば、以下の対応する位置における1つまたは複数の変異、すなわちエンバク由来のHPPDのアミノ酸配列におけるA106G、A107欠失、A111TまたはK351Nと組み合わせて、前記組合せ変異を含む変異HPPDポリペプチドを含む。上記の多様な実施形態において、372位および383位における組合せ変異は、F372A+F383W、F372G+F383W、またはF372V+F383Wであってもよい。372位および383位における組合せ変異と他の位置における変異とにおける組合せ変異は、F372A+F383W+A107欠失、F372A+F383W+A111T、F372A+F383W+A106G、F372A+F383W+A106G+K351N、F372A+F383W+A107欠失+K351N、またはF372A+F383W+A111T+K351Nを含む。さらに、本発明は、様々な種または同一種内の様々な生態型の植物または微生物のHPPDに由来する(置換、欠失および/または付加による)変異HPPDポリペプチドを含む。同一種内の様々な生態型由来の例示的なHPPDとしては、以下に限定されないが、以下の種内の生態型由来のHPPDが挙げられる。すなわち、受入番号がXP_003617391.2、AAX59006.1、XP_003617384.1、XP_013466115.1、AET00342.2、またはA0A396HWH5である様々な生態型のアルファルファ由来のHPPD;受入番号がA0A0D2PWQ6、A0A2P5SI66、A0A0D2LWN1、またはA0A0D2N7F6である様々な生態型のワタ由来のHPPD;受入番号がVDC64417.1、CDY10210.1、AFB74208.1、XP_013695640.1、XP_013695641.1、RID40406.1、RID48932.1、XP_009118533.1、XP_009119049.1、XP_013723237.1、AFB74218.1、またはAFB74207.1である様々な生態型のアブラナ由来のHPPD;受入番号がA5Z1N7、I1M6Z4、A0A088MGH9、またはI1M6Z5である様々な生態型のダイズ由来のHPPD;受入番号がXP_009770088.1またはXP_009587203.1である様々な生態型のタバコ由来のHPPD;受入番号がA3A3J1、B8AIH6、またはA0A0E0G1W2である様々な生態型のイネ由来のHPPD;受入番号がBAJ86732.1、BAJ95714.1、またはF2E412である様々な生態型のオオムギ由来のHPPDが挙げられる(これらの受入番号は、ジェンバンク・データベースまたはユニプロット・ナレッジベース(UniProt Knowledgebase)・データベースで入手可能である)。
【0059】
「372位」、「372番目」、または「372単一位置」という用語は、狭義で、配列番号1に記載のアミノ酸配列の372位のアミノ酸(フェニルアラニン)を指すだけでなく、広義で、標準的な配列アライメントツール(CLUSTALソフトウェアなど)を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列とアライメントすることができる既知のまたは疑われるHPPDアミノ酸配列において得られた、配列番号1に記載のアミノ酸配列の372位のアミノ酸に対応する位置も含み、これは、そのHPPDのアミノ酸配列の372位ではない場合がある。
【0060】
「383位」、「383番目」、または「383単一位置」という用語は、狭義で、配列番号1に記載のアミノ酸配列の383位のアミノ酸(フェニルアラニン)を指すだけでなく、広義で、標準的な配列アライメントツール(CLUSTALソフトウェアなど)を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列とアライメントすることができる既知のまたは疑われるHPPDアミノ酸配列において得られた、配列番号1に記載のアミノ酸配列の383位のアミノ酸に対応する位置も含み、これは、そのHPPDのアミノ酸配列の383位ではない場合がある。
【0061】
「415位」、「415番目」、または「415単一位置」という用語は、狭義で、配列番号1に記載のアミノ酸配列の415位のアミノ酸(フェニルアラニン)を指すだけでなく、広義で、標準的な配列アライメントツール(CLUSTALソフトウェアなど)を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列とアライメントすることができる既知のまたは疑われるHPPDアミノ酸配列において得られた、配列番号1に記載のアミノ酸配列の415位のアミノ酸に対応する位置も含み、これは、そのHPPDのアミノ酸配列の415位ではない場合がある。
【0062】
同様に、「372位」または「372番目」に関する上記の解釈は、他の位置のものにも適用される。
【0063】
「に対応する」とは、標準的な配列アライメントツールを用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列と、様々な種または同一種内の様々な生態型に由来するHPPDアミノ酸配列とをアライメントすることによって得た、配列番号1に記載のアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸に対応する位置を指し、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列の372位または383位のアミノ酸に対応する位置を指す。
【0064】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、それに対応する野生型アミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマー、ならびに野生型アミノ酸ポリマーに適用される。本発明のポリペプチドは、本明細書に開示する核酸から作製することができ、または標準的な分子生物学的技術によって作製することができる。例えば、本発明の切断タンパク質は、適当な宿主細胞における本発明の組換え核酸の発現によって、あるいは、プロテアーゼ消化および精製など、エクスビボ手順を組み合わせることによって作製することができる。
【0065】
したがって、本発明はまた、HPPDの酵素活性を有する変異HPPDポリペプチドであって、HPPDを阻害する特定のクラスの除草剤に対する耐性を植物内で付与する変異HPPDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子、ならびにそのバリアントおよび断片を提供する。一般に、本発明は、本明細書に記載の変異HPPDポリペプチドのいずれかをコードする任意のポリヌクレオチド配列、ならびに本明細書に記載の変異HHPDポリペプチドに対する保存的アミノ酸置換を1つまたは複数有するHPPDポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチド配列を含む。機能的に同様であるアミノ酸を提供する保存的置換体は、当技術分野で周知である。以下の五つの群はそれぞれ、互いに保存的置換体であるアミノ酸を含む。脂肪族:グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I);芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);イオウ含有:メチオニン(M)、システイン(C);塩基性:アルギニン(I)、リジン(K)、ヒスチジン(H);酸性:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。
【0066】
一実施形態において、本発明は、植物または微生物中のHPPDに由来するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を提供し、当該ポリペプチドは、HPPD酵素活性を有し、少なくとも配列番号1の372位および383位のアミノ酸に対応する位置における組合せ変異を含む。
【0067】
したがって、本発明の変異HPPDポリペプチドをコードする遺伝子にハイブリダイズし、HPPD阻害除草剤に対する耐性活性を有する配列が、本発明の中に含まれる。例示的な配列は、本発明の配列番号11~12、配列番号33~34、配列番号45~46、配列番号57~58、配列番号69~70、配列番号81~82、配列番号93~94、配列番号105~106、配列番号117~118、配列番号129~130、配列番号141~142、配列番号153~154、配列番号159~160、配列番号165~166、配列番号174~175、配列番号183~184、配列番号186~187、配列番号189~190、配列番号192~193、配列番号195~196、配列番号198~199、配列番号201~202、および配列番号204~205と少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含む。
【0068】
任意の従来の核酸ハイブリダイゼーションまたは核酸増幅法を用いて、本発明の変異HPPD遺伝子の存在を特定することができる。核酸分子またはその断片は、特定の状況下で、他の核酸分子と特異的にハイブリダイズすることが可能である。本発明において、2つの核酸分子が逆平行の二本鎖核酸構造を形成することができれば、これら2つの核酸分子は、互いに特異的にハイブリダイズし得るとみなすことができる。2つの核酸分子が完全な相補性を示せば、2つのうちの一方の核酸分子は、他方の核酸分子の「相補体」であると言う。本発明において、核酸分子の各ヌクレオチドが別の核酸分子の対応するヌクレオチドと相補的である場合、これら2つの核酸分子は「完全相補性」を示すと言う。2つの核酸分子が、少なくとも従来の「低ストリンジェンシー」条件下で互いにアニールし結合するのに十分な安定性で互いにハイブリダイズすることができれば、これら2つの核酸分子は「最小相補的」であると言う。同様に、2つの核酸分子が、従来の「高ストリンジェンシー」条件下で互いにアニールし結合するのに十分な安定性で互いにハイブリダイズすることができれば、これら2つの核酸分子は「相補的」であると言う。完全相補性からのずれは、このずれによって2分子が二本鎖構造を形成することを完全に妨げられない限り、許容される。核酸分子をプライマーまたはプローブとして作用可能にするためには、特定の溶媒および塩濃度の条件下で安定した二本鎖構造が形成されるように、分子がその配列において十分な相補性を有することを確保するだけである。
【0069】
本発明において、実質的に相同な配列とは、高ストリンジェンシー条件下で、適合した核酸分子の相補鎖に特異的にハイブリダイズすることができる核酸分子のことである。DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェントな条件は当業者に周知であり、例えば、適切なストリンジェントな条件は、約45℃の条件下で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(sodium chloride/sodium citrate:SSC)で処理し、次いで50℃の条件下、2.0×SSCで洗浄することによって達成され得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、約2.0×SSCで50℃の低ストリンジェンシー条件から、約0.2×SSCで50℃の高ストリンジェンシー条件までで選択することができる。また、洗浄工程の温度条件は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇させることができる。温度条件と塩濃度のどちらも変えることができ、その2つのうちの一方を変えずに、他方を変えることも可能である。好ましくは、本発明におけるストリンジェントな条件は、65℃の6×SSC、0.5%のSDS溶液中で、本発明の変異HPPD遺伝子に特異的にハイブリダイズさせ、次いで、2×SSC、0.1%のSDS、そして1×SSC、0.1%のSDSで1回ずつ、膜を洗浄することによって達成され得る。
【0070】
本明細書で用いる場合、「ハイブリダイズする」または「特異的にハイブリダイズする」という用語は、複雑な混合物(例えば、全細胞)のDNAまたはRNAの中に特定のヌクレオチド配列が存在する場合に、ストリンジェントな条件下で、その配列のみに分子が結合、二本鎖化、またはハイブリダイズすることを指す。
【0071】
遺伝コドンの縮重により、多様な異なるDNA配列が同じアミノ酸配列をコードする場合がある。同じかまたは実質的に同じタンパク質をコードするこれらの代替DNA配列を作製することは、当業者の技術範囲内である。これらの異なるDNA配列は、本発明の範囲に含まれる。「実質的に同じ」配列とは、除草剤耐性活性に実質的に影響を及ぼさない、アミノ酸の置換、欠失、付加または挿入がある配列を指し、除草剤耐性活性を保持している断片を含む。
【0072】
本発明における「機能的活性」または「活性」という用語は、本発明で使用するタンパク質/酵素(単独、または他のタンパク質と組み合わさった)が、除草剤を分解するか除草剤活性を低下させる能力を有することを意味する。本発明のタンパク質を産生する植物は、除草剤でその植物が処理される場合に、前記タンパク質の発現レベルが除草剤に対する完全または部分的な耐性をその植物に付与するのに十分であるように、好ましくは「有効量」の前記タンパク質を産生する(特に明記しない限り、一般的な量で)。除草剤は、標的植物を普通は枯死させる量、または通常の圃場の量および濃度で使用することができる。好ましくは、本発明の植物細胞および植物は、除草剤を用いた処理によって生じる生育抑制または損傷から保護される。本発明の形質転換された植物および植物細胞は、好ましくは、HPPD阻害除草剤に対して耐性があり、すなわち、形質転換された植物および植物細胞は、有効量のHPPD阻害除草剤の存在下で生育することができる。
【0073】
本発明における遺伝子およびタンパク質は、特定の例示的な配列を含むだけでなく、その特定の例示的なタンパク質に特徴的なHPPD阻害除草剤耐性活性を保持する部分および/または断片(全長タンパク質と比較した場合の内部欠失および/または末端欠失を含む)、バリアント、変異体、バリアントタンパク質、置換体(置換アミノ酸を有するタンパク質)、キメラおよび融合タンパク質を含む。
【0074】
本発明における「バリアント」という用語は、実質的に同様である配列を意味することを意図している。ポリヌクレオチドの場合、バリアントは、基準ポリヌクレオチド中の1つまたは複数の内部部位における1つまたは複数のヌクレオチドの欠失および/もしくは付加、ならびに/または、変異HPPDポリヌクレオチドの1つまたは複数の部位における1つまたは複数のヌクレオチドの置換を含む。本明細書で用いる場合、「基準ポリヌクレオチドまたはポリペプチド」という用語は、それぞれ変異HPPDヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む。本明細書で用いる場合、「野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチド」という用語は、それぞれ野生型ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む。ポリヌクレオチドの場合、保存的バリアントは、遺伝コードの縮重により、本発明の変異HPPDポリペプチドのうちの1つのアミノ酸配列をコードする上記の複数の配列を含む。上記のような野生型の対立遺伝子バリアントは、周知の分子生物学的技術を用いて、例えば、下記に概説するポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)およびハイブリダイゼーション技術を用いて特定することができる。バリアントポリヌクレオチドはまた、例えば部位指定変異誘発を用いて生成されたものの依然として本発明の変異HPPDタンパク質をコードするものなど、合成由来のポリヌクレオチドも含む。一般に、本発明の特定のポリヌクレオチドのバリアントは、配列アライメントのプログラムおよびパラメータによって決定されるその特定のポリヌクレオチドと、少なくとも約75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0075】
本発明における「バリアントタンパク質」とは、変異HPPDタンパク質の1つまたは複数の内部部位における1つまたは複数のアミノ酸の欠失もしくは付加、および/または変異HPPDタンパク質の1つまたは複数の部位における1つまたは複数のアミノ酸の置換によって、基準タンパク質から誘導されるタンパク質を意味することを意図している。本発明に包含されるバリアントタンパク質は生物学的に活性であり、すなわち、それらは変異HPPDタンパク質の所望の生物活性、すなわち、本明細書に記載のHPPD酵素活性および/または除草剤耐性を引き続き有している。このようなバリアントは、例えば遺伝子多型または人為的な操作によって生じてもよい。本発明の変異HPPDタンパク質の生物学的に活性なバリアントは、配列アライメントのプログラムおよびパラメータによって決定される変異HPPDタンパク質のアミノ酸配列全体と、少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。本発明のタンパク質の生物学的に活性なバリアントは、本発明のタンパク質と、わずか1~15個のアミノ酸残基、わずか1~10個のアミノ酸残基、例えば6~10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個、またはただ1個のアミノ酸残基の数だけ異なっていてもよい。
【0076】
配列のアラインメントの方法は当技術分野で周知であり、Myers and Miller(1988)CABIOS 4:11-17のアルゴリズム、Smith et al.(1981)Adv.Appl.Math.2:482のローカル・アライメント・アルゴリズム、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443-453のグローバル・アライメント・アルゴリズム、および、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877において修正されたKarlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872264のアルゴリズムなどの数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。 これらの数学的アルゴリズムのコンピュータ実装を配列の比較に利用して、配列同一性を決定することができる。このような実装としては、PC/GeneプログラムのCLUSTAL(インテリジェネティクス、カリフォルニア州マウンテンビューから入手可能);GCGウィスコンシン・ジェネティクス・ソフトウェア・パッケージ、バージョン10のALIGNプログラム(バージョン2.0)ならびにGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTA(アクセルリス社、米国カリフォルニア州サンディエゴ、スクラントン・ロード9685番地から入手可能)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
実施例によっては、変異HPPDポリペプチドまたはHPPD酵素活性を保持するそのバリアントをコードするアミノ酸を、所望の形質の植物を作るために、目的のポリヌクレオチド配列の任意の組合せと積み重ねることができる。「形質」という用語は、特定の配列または配列群に由来する表現型を指す。例えば、変異HPPDポリペプチドまたはHPPD酵素活性を保持するそのバリアントをコードするアミノ酸/ポリヌクレオチドは、望ましい形質を付与するポリペプチドをコードする任意の他のポリヌクレオチと積み重ねられてもよく、望ましい形質としては、病害、昆虫および除草剤に対する抵抗性、熱および干ばつに対する耐性、作物が成熟するまでの時間の短縮、例えばデンプンまたはバイオマスを発酵可能な糖に転換する場合などの工業的処理の改善、ならびに、油分およびタンパク質を高含量にするなどの農学的品質の向上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
防除される雑草のスペクトルの向上、および/または野生型でより耐性のある種もしくは抵抗性のある雑草種の防除において、2つ以上の作用機序を組み合わせる利点を、HPPD耐性作物の他に、人為的方法(遺伝子導入または非遺伝子導入のいずれか)によって作物の除草剤耐性を可能にした化学物質にも拡大適用し得ることは、当業者に周知である。実際、以下の抵抗因子をコードする形質を単独で、または複数の組合せで重ね合わせて、除草剤に対する雑草の変化を効果的に防除または予防する能力を提供することができる。上記の抵抗因子とは、グリホサート抵抗因子(抵抗性植物または細菌由来のEPSPS、GOXおよびGATなど)、グルホシネート抵抗因子(PATおよびBarなど)、アセト乳酸合成酵素(acetolactate synthase:ALS)阻害剤に対する除草剤抵抗因子(イミダゾリノン、スルホニル尿素、トリアゾールピリミジン、スルホン化アニリン、ピリミジニルチオ安息香酸などの化学物質の抵抗性遺伝子など、例えば、AHAS、Csrl、およびSurA)、フェノキシオーキシン除草剤抵抗因子(アリールオキシアルカノエートジオキシゲナーゼ-12(aryloxyalkanoate dioxygenase-12:AAD-12)など)、ジカンバ除草剤抵抗因子(ジカンバモノオキシゲナーゼ(dicamba monooxygenase:DMO)など)、ブロモキシニル抵抗因子(bromoxynil:Bxnなど)、フィトエン不飽和化酵素(phytoene desaturase:PDS)阻害剤抵抗因子、光化学系II阻害剤に対する除草剤抵抗因子(psbAなど)、光化学系I阻害剤に対する除草剤抵抗因子、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼIX(protoporphyrinogen oxidase:PPO)阻害剤に対する除草剤抵抗因子(PPO-1など)、フェニル尿素除草剤抵抗因子(CYP76B1など)、およびジクロロメトキシ安息香酸分解酵素である。
【0079】
グリホサートは、非常に広域なスペクトルの広葉およびイネ科の雑草種を防除するので、広く使用されている。しかし、グリホサート耐性作物および非作物への施用においてグリホサートを反復使用することにより、雑草が、野生型でより耐性のある種やグリホサート抵抗性の生物型へ変化することを選択してきた(引き続きそうである)。ほとんどの除草剤抵抗性管理プログラムでは、抵抗性雑草の出芽を遅延させる手段として、タンク混合された複数の除草剤の同類物を有効量使用することが提案されており、除草剤の同類物とは、同じ種を防除するものの異なる作用機序を有するものである。本発明の変異HPPDポリペプチドをコードする遺伝子とグリホサート耐性形質(および/または他の除草剤耐性形質)とを重ね合わせることによって、グリホサート耐性作物において、グリホサート除草剤およびHPPD阻害除草剤(トプラメゾン、メソトリオン、またはイソキサフルトールなど)の同作物における選択的使用を可能にすることにより、グリホサート抵抗性雑草種(1つまたは複数のHPPD阻害除草剤によって防除される広葉雑草種)の防除を達成することができる。これらの除草剤は、作用機序の異なる2つ以上の除草剤を含有するタンク混合物で同時に施用することができ、または、単一の除草剤組成物において単独の逐次施用で(例えば、植栽前、または出芽前もしくは出芽後)(2時間から3ヶ月の範囲の施用間隔で)施用することができる。あるいは、これらの除草剤の施用は、施用可能な各化合物カテゴリーを代表する任意の数の除草剤を、任意の時期(作物の植栽後7ヶ月から、作物が収穫される時期(または、単一の除草剤については収穫前の間隔で、最も短い間隔))に組み合わせて使用することにより、施用することができる。
【0080】
広葉雑草の防除においては、施用時期、単一除草剤の施用量、頑固な雑草または抵抗性雑草を防除する能力の点から、柔軟性が非常に重要である。グリホサート抵抗性遺伝子/変異HPPD遺伝子と重ね合わせたグリホサートの作物における施用範囲は、250~2500g ae/haであり得る。HPPD阻害除草剤(1つまたは複数)の施用範囲は、25~500g ai/haであり得る。これらの施用に最適な時期の組合せは、特定の条件、種および環境に依拠する。
【0081】
除草剤製剤(例えば、エステル、酸もしくは塩の製剤、または可溶性濃縮物、乳化性濃縮物もしくは可溶性液体)、およびタンク混合添加剤(例えば、アジュバントまたは相溶化剤)が、所与の除草剤の雑草防除、または1つもしくは複数の除草剤を組み合わせた雑草防除に著しく影響を与える可能性がある。前述の除草剤のいずれかの任意の化学的組合せは、本発明の範囲内である。
【0082】
また、本発明の変異HPPDポリペプチドを単独で、または除草剤抵抗性作物の他の特性と積み重ねた状態でコードする遺伝子は、1つまたは複数の他の入力形質(例えば、昆虫抵抗性、真菌抵抗性もしくはストレス耐性など)、または出力形質(例えば、収量の増加、油量の向上、繊維品質の向上など)と積み重ねることができる。したがって、本発明を用いて、いかなる数の農業害虫も柔軟かつ経済的に防除する能力で作物の品質を向上させる完全な農業解決策を提供することができる。
【0083】
上記の積み重ねた組合せは任意の方法によって作ることができ、その方法としては、任意の従来法もしくはトップクロス法による交配植物、または遺伝子形質転換が挙げられるが、これらに限定されない。遺伝的に植物を形質転換することによって配列を積み重ねる場合、目的のポリヌクレオチド配列は、いつでもどのような順序でも組み合わせることができる。例えば、1つまたは複数の所望の形質を含む遺伝子導入植物を標的として用いて、その後の形質転換によってさらなる形質を導入することができる。その形質は、形質転換カセットの任意の組合せによって提供される目的のポリヌクレオチドと共に、共形質転換プロトコールで同時に導入することができる。例えば、2つの配列が導入される場合、それら2つの配列は、別々の形質転換カセット(trans)に含めることもできるし、または同じ形質転換カセット(cis)に含めることもできる。それらの配列の発現は、同じプロモーターまたは異なるプロモーターによって推進することができる。場合によっては、目的のポリヌクレオチドの発現を抑制する形質転換カセットを導入することが望ましいこともある。これを、他の抑制カセットまたは大量発現カセットの任意の組合せと組み合わせて、植物において所望の形質の組合せを生成してもよい。さらに、部位特異的組換え系を用いると、所望のゲノム位置にポリヌクレオチド配列を積み重ね得ることが認識されている。
【0084】
本発明による変異HPPDポリペプチドをコードする遺伝子は、HPPD阻害除草剤に対してより高い耐性を有し、このことは、除草剤耐性作物および選択性マーカー形質の可能性の重要な根拠である。
【0085】
本明細書で用いる「発現カセット」という用語は、適当な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる核酸分子を意味し、目的のヌクレオチド配列(すなわち、変異HPPDポリペプチドまたはHPPD酵素活性を保持するそのバリアントをコードするポリヌクレオチドであって、単独であるか、または望ましい形質を付与するポリペプチドをコードする1つまたは複数の付加的な核酸分子との組合せであるポリヌクレオチド)に効果的に連結されるプロモーターを含み、その目的のヌクレオチド配列は、終結シグナルに効果的に連結される。コード領域は普通、目的のタンパク質についてコード化しているが、目的の機能性RNA、例えばアンチセンスRNAまたは非翻訳RNAについても、センスまたはアンチセンスの方向でコード化していてもよい。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってもよく、このことは、その構成要素の少なくとも1つが、他の構成要素の少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットはまた、野生型のものであってもよいが、異種発現に有用な組換え型で得られたものである。しかし、通常は、発現カセットは宿主に対して異種であり、すなわち、発現カセットの特定のDNA配列は、宿主細胞において野生型で生じるのではなく、形質転換イベントによって新しい宿主細胞に導入されていなければならない。発現カセット中のヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、または、宿主細胞がいくつかの特定の外部刺激に曝された場合にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあってもよい。さらに、プロモーターはまた、特定の組織もしくは器官または発生段階に、特異的であり得る。
【0086】
本発明は、目的のポリヌクレオチド(すなわち、変異HPPDポリペプチドまたはHPPD酵素活性を保持するそのバリアントをコードするポリヌクレオチドであって、単独であるか、または望ましい形質を付与するポリペプチドをコードする1つまたは複数の付加的な核酸分子との組合せであるポリヌクレオチド)を発現することができる発現カセットを用いた植物の形質転換を包含する。発現カセットは、転写の5′-3′方向に、転写および翻訳の開始領域(すなわちプロモーター)ならびにポリヌクレオチド・オープン・リーディング・フレームを含む。発現カセットは、任意選択で、植物において機能的な転写および翻訳の終結領域(すなわち終結領域)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、発現カセットは、安定な形質転換体の選択を可能にする選択性マーカー遺伝子を含む。本発明の発現構築物はまた、リーダー配列、および/または目的のポリヌクレオチドの誘導性発現を可能にする配列を含んでもよい。
【0087】
発現構築物の制御配列は、目的のポリヌクレオチドに効果的に連結される。本発明における制御配列には、変異HPPDポリペプチドをコードする除草剤耐性遺伝子に作用可能に連結されたプロモーター、輸送ペプチド、ターミネーター、エンハンサー、リーダー配列、イントロンなどの制御配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
プロモーターは、植物発現性プロモーターである。「植物発現性プロモーター」とは、植物細胞において、そのプロモーターに連結されたコード配列の発現を確実にするプロモーターを指す。植物発現性プロモーターは、構成的プロモーターであり得る。植物において構成的発現を指示するプロモーターの例としては、カリフラワー・モザイク・ウイルスに由来する35Sプロモーター、トウモロコシUbiプロモーター、イネGOS2遺伝子プロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、植物発現性プロモーターは組織特異的プロモーターであり得、組織特異的プロモーターとは、すなわち、緑色組織などのいくつかの組織において、植物の他の組織よりも高いレベル(従来のRNA試験によって測定することができる)で、コード配列の発現を指示するプロモーターであり、例えば、PEPカルボキシラーゼプロモーターがある。あるいは、植物発現性プロモーターは、創傷誘導性プロモーターであり得る。創傷誘導性プロモーター、または創傷誘導性発現パターンを指示するプロモーターとは、力学的要因、または昆虫のかじり取りによって生じる創傷を植物が被った場合に、プロモーターの調節下にあるコード配列の発現が、通常の生育条件と比較して著しく向上することを意味する。創傷誘導性プロモーターの例としては、ジャガイモおよびトマトのプロテアーゼ阻害遺伝子(pin Iおよびpin II)、ならびにトウモロコシのプロテアーゼ阻害遺伝子(MPI)のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
輸送ペプチド(分泌シグナル配列またはターゲティング配列としても既知である)は、遺伝子導入産物を特定の小器官または細胞コンパートメントに導く。受容体タンパク質の場合、輸送ペプチドは異種であってもよく、例えば、葉緑体輸送ペプチドをコードする配列を用いて葉緑体をターゲティングするもの、または「KDEL」保持配列を用いて小胞体をターゲティングするもの、またはオオムギの植物性凝集素遺伝子のCTPPを用いて液胞をターゲティングするものがある。
【0090】
リーダー配列に含まれるものとしては、EMCVリーダー配列(脳心筋炎ウイルスの5′非コード領域)などの小型RNAウイルスリーダー配列、MDMV(トウモロコシ矮性モザイクウイルス(Maize Dwarf Mosaic Virus)リーダー配列などのジャガイモウイルスY群リーダー配列、ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、アルファルファ・モザイク・ウイルス(Alfalfa Mosaic Virus)のコートタンパク質mRNAの非翻訳リーダー配列(AMV RNA4)、およびタバコ・モザイク・ウイルス(Tbacco Mosaic Virus:TMV)リーダー配列があるが、これらに限定されない。
【0091】
エンハンサーに含まれるものとしては、カリフラワー・モザイク・ウイルス(Cauliflower Mosaic Virus:CaMV)エンハンサー、ゴマノハグサ・モザイク・ウイルス(Figwort Mosaic Virus:FMV)エンハンサー、カーネーション・エッチドリング・ウイルス(Carnation Etched Ring Virus:CERV)エンハンサー、キャッサバ葉脈モザイクウイルス(Cassava Vein Mosaic Virus:CsVMV)エンハンサー、ミラビリス・モザイク・ウイルス(Mirabilis Mosaic Virus:MMV)エンハンサー、ケストルム黄化葉巻ウイルス(Cestrum Yellow Leaf Curling Virus:CmYLCV)エンハンサー、ワタ葉巻ムルタンウイルス(Cotton Leaf Curl Multan Virus:CLCuMV)エンハンサー、ツユクサ黄色斑紋ウイルス(Commelina Yellow Mottle Virus:CoYMV)エンハンサー、およびピーナッツクロロティック条斑カリモウイルス(Peanut Chlorotic Streak Caulimovirus:PCLSV)エンハンサーがあるが、これらに限定されない。
【0092】
単子葉植物で用いられる場合、イントロンに含まれるものとしては、トウモロコシhsp70イントロン、トウモロコシ・ユビキチン・イントロン、Adhイントロン1、スクロース合成酵素イントロン、またはイネAct1イントロンがあるが、これらに限定されない。双子葉植物で用いられる場合、イントロンに含まれるものとしては、CAT-1イントロン、pKANNIBALイントロン、PIV2イントロン、および「スーパーユビキチン」イントロンがあるが、これらに限定されない。
【0093】
ターミネーターは、植物において機能する適切なポリアデニル化シグナル配列であり得、適切なポリアデニル化シグナル配列に含まれるものとしては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)ノパリン合成酵素(Nopaline Synthetase:NOS)遺伝子に由来するポリアデニル化シグナル配列、プロテアーゼ阻害剤II(pinII)遺伝子に由来するポリアデニル化シグナル配列、エンドウマメssRUBISCO E9遺伝子に由来するポリアデニル化シグナル配列、およびαチューブリン遺伝子に由来するポリアデニル化シグナル配列があるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明における「効果的に連結する」とは、核酸配列の1つが、それに連結される配列に必要な機能を提供することを可能にする核酸配列の結合を表す。本発明において「効果的に連結する」ことにより、プロモーターを目的の配列に連結することができ、その結果、目的の配列の転写がプロモーターによって制御および調節される。目的の配列がタンパク質をコードしており、そしてそのタンパク質の発現が所望される場合、「効果的に連結する」とは、生じる転写物が効果的に翻訳されるような様式で、プロモーターが前記配列に連結されることを意味する。プロモーターのコード配列への連結が転写物融合であり、そしてコードされたタンパク質の発現が達成される場合、そのような連結は、生じる転写物の最初の翻訳開始コドンがコード配列の開始コドンであるように作られる。あるいは、プロモーターのコード配列への連結が翻訳融合であり、そしてコードされたタンパク質の発現が達成される場合、そのような連結は、5′非翻訳配列に含有される最初の翻訳開始コドンが、生じる翻訳産物と所望のタンパク質をコードする翻訳オープン・リーディング・フレームとの関係がインフレームであるような様式で、プロモーターに連結されるように作られる。「効果的に連結され」得る核酸配列として挙げられるものには、遺伝子発現機能を提供する配列(すなわち、プロモーター、5′非翻訳領域、イントロン、タンパク質コード領域、3′非翻訳領域、ポリアデニル化部位および/または転写ターミネーターなどの遺伝子発現エレメント)、DNA転移および/または組込み機能を提供する配列(すなわち、T-DNA境界配列、部位特異的リコンビナーゼ認識部位、およびインテグラーゼ認識部位)、選択的機能を提供する配列(すなわち、抗生物質抵抗性マーカーおよび生合成遺伝子)、マーカースコアリング機能を提供する配列、インビトロまたはインビボにおける配列操作において補助する配列(すなわち、ポリリンカー配列および部位特異的組換え配列)、ならびに複製機能を提供する配列(すなわち、細菌性複製起点、自己複製配列、およびセントロメア配列)があるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明における植物、植物組織または植物細胞のゲノムとは、植物、植物組織または植物細胞の中の任意の遺伝物質を指し、細胞核、色素体およびミトコンドリアのゲノムが含まれる。
【0096】
本明細書で用いる場合、「植物部分」または「植物組織」という用語には、植物細胞、植物プロトプラスト、植物が再生され得る植物細胞組織培養物、植物カルス、植物凝集塊、および、植物または植物の部分において無傷である植物細胞が含まれ、植物の部分とは、胚、花粉、胚珠、種子、葉、花、枝、果実、穀粒、穂、コブ、外皮、茎、根、根端、葯などである。
【0097】
本発明の変異HPPDポリペプチドは、様々な種類の植物に施用することができる。双子葉植物に含まれるものとしては、アルファルファ、マメ、カリフラワー、キャベツ、ニンジン、セロリ、ワタ、キュウリ、ナス、レタス、メロン、エンドウマメ、コショウ、ズッキーニ、ダイコン、アブラナ、ホウレンソウ、ダイズ、カボチャ、トマト、シロイヌナズナ、ピーナッツ、またはスイカがあるが、これらに限定されない。好ましくは、双子葉植物は、キュウリ、ダイズ、シロイヌナズナ、タバコ、ワタ、ピーナッツ、アブラナを指す。単子葉植物に含まれるものとしては、イネ、モロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、キビ、サトウキビ、エンバク、またはシバクサがあるが、これらに限定されない。好ましくは、単子葉植物は、イネ、モロコシ、コムギ、オオムギ、キビ、サトウキビ、またはエンバクを指す。
【0098】
本明細書で用いる場合、「植物形質転換」という用語は、除草剤抵抗性または除草剤耐性の変異HPPDポリヌクレオチドを、単独で、または望ましい形質を付与するポリペプチドをコードする1つまたは複数の付加的な核酸分子と組み合わせて、発現系にクローニングした後、植物細胞に形質転換することを意味する。本発明のレセプターおよび標的発現カセットは、当技術分野で認識されている複数の手法で植物細胞に導入することができる。例えば目的のヌクレオチド構築物であるポリヌクレオチドの文脈における「導入」という用語は、ポリヌクレオチドが植物の細胞内部に到達するような手法において、ポリヌクレオチドの植物への提示を意味することを意図している。2つ以上のポリヌクレオチドを導入する場合、これらのポリヌクレオチドを、単一のヌクレオチド構築物の一部として、または別々のヌクレオチド構築物として組み立てることができ、同じかまたは異なる形質転換ベクターに配置することができる。したがって、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換イベントにおいて、別々の形質転換イベントにおいて、または、例えば植物では育種プロトコールの一部として、目的の宿主細胞に導入することができる。本発明の方法は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを植物に導入する特定の方法に依拠せず、(1つまたは複数の)ポリヌクレオチドが植物の少なくとも1つの細胞の内部に到達することのみに依拠する。1つまたは複数のポリヌクレオチドを植物に導入する方法は当技術分野で既知であり、その方法としては、一過性形質転換法、安定形質転換法、およびウイルス媒介法またはゲノム編集技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
「安定形質転換」という用語は、外来遺伝子が植物のゲノムに導入されて、その植物またはその植物のどの継代のゲノムにも安定的に組み込まれ、その結果、その外来遺伝子が安定的に遺伝することを意味する。
【0100】
「一過性形質転換」という用語は、核酸分子またはタンパク質が植物細胞に導入されて機能が実行されるものの、その植物のゲノムには組み込まれず、その結果、外来遺伝子が安定的に遺伝しないことを意味する。
【0101】
「ゲノム編集技術」とは、ゲノムを改変するために用いられる技術であって、ゲノム配列を正確に操作して、部位指定遺伝子の突然変異、挿入および欠失などの操作を実現することができる技術を指す。現在のところ、ゲノム編集技術としては主に、ホーミングエンドヌクレアーゼ(homing endonuclease:HE)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(Zinc-finger nuclease:ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease:TALEN)、およびクリスパー(Clustered regulatory interspaced short palindromic repeat(クラスター化した規則的間隔配置の短回文反復配列):CRISPR)の技術が挙げられる。
【0102】
植物の形質転換に利用可能な多数の形質転換ベクターが当業者に既知であり、本発明に関係する遺伝子は、任意のそのようなベクターと組み合わせて用いることができる。ベクターの選択は、好ましい形質転換技術、および形質転換のための標的種に依拠する。標的種によっては、異なる抗生物質または除草剤の選択マーカーが好ましい場合がある。形質転換で日常的に用いられる選択マーカーとして挙げられるのは、カナマイシンおよび関連する抗生物質または除草剤に対する抵抗性を付与するnptII遺伝子(Bevan et al.,Nature 304:184-187(1983)に発表された);除草剤グルホシネート(ホスフィノトリシンとも呼ばれる)に対する抵抗性を付与するpat遺伝子およびbar遺伝子(White et al.,Nucl.Acids Res 18:1062(1990)、Spencer et al.Theon.Appl.Genet.79:625-631(1990)ならびに米国特許第5,561,236号および5,276,268号明細書を参照されたい);抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggelmann,Mol.Cell.Biol.4:2929-2931);メトトレキサートに対する抵抗性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al.,EMBO J. 2(7):1099-1104(1983));グリホサートに対する抵抗性を付与するEPSPS遺伝子(米国特許第4,940,935号および第5,188,642号明細書);同じくグリホサートに対する抵抗性を付与するグリホサートN-アセチル基転移酵素(GAT)遺伝子(Castle et al.(2004)Science,304:1151-1154、米国特許出願公開第20070004912号、第20050246798号および第20050060767号明細書);ならびにマンノースを代謝する能力を提供するマンノース-6-リン酸イソメラーゼ遺伝子(米国特許第5,767,378号および第5,994,629号明細書)である。
【0103】
植物の再生方法もまた、当技術分野で周知である。例えば、Tiプラスミドベクターが外来DNAの送達に利用されており、DNAの直接的取込み、リポソーム、電気穿孔、微量注入、および微粒子銃も同様である。
【0104】
本発明における植栽システムは、1つまたは複数の除草剤に対する耐性を有する遺伝子導入植物および/または植物の様々な発生段階において利用可能な除草剤処理の組合せを含む。除草剤が施用される場合、前記植栽システムは、雑草の生育を効果的に防除し、収量がより高くかつ/または損傷がより少ない植物を作製し得る。
【0105】
本発明において、雑草とは、植物生育環境で栽培される標的植物と競合する植物を指す。
【0106】
本発明における「防除」および/または「予防」という用語は、雑草の発生を最小限に抑え、かつ/または雑草の生育を停止させるために、植物生育環境に有効量のHPPD阻害除草剤を少なくとも直接(例えば散布により)施用することを指す。同時に、栽培される標的植物は形態学的に正常であるべきであり、産物の消費および/または生成のために従来の方法で栽培することができる。好ましくは、栽培される植物は、非遺伝子導入野生型植物と比較して植物損傷が少なく、かつ/または植物収量が多い。植物損傷の低減には、茎の抵抗性の向上および/または穀物重量の増加などが含まれるが、これらに限定されない。変異HPPDポリペプチドの雑草に対する「防除」および/または「予防」の効果は独立して存在することができ、雑草を「防除」および/または「予防」することができる他の物質の存在により、減少および/または消失することはない。具体的には、(変異HPPDポリペプチドをコードする遺伝子を含有する)遺伝子導入植物のいずれかの組織が、変異HPPDポリペプチド、および/または雑草を防除し得る別の物質を、同時および/もしくは別々に有しかつ/または産生する場合、その別の物質の存在が変異HPPDポリペプチドの雑草に対する「防除」および/または「予防」の効果に影響を与えることもなければ、「防除」および/または「予防」の効果が、変異HPPDポリペプチドに関係なく、結果的にその別の物質によって完全および/または部分的にもたらされることもない。
【0107】
本発明における「植物繁殖体」には、植物有性繁殖体および植物栄養繁殖体が含まれるが、これらに限定されない。植物有性繁殖体としては植物の種子が挙げられるが、これに限定されず、植物栄養繁殖体とは、エクスビボ条件下で新しい植物を生成し得る植物の栄養器官または特定の組織を指す。栄養器官または特定の組織としては、限定されないが、根、茎、および葉が挙げられ、例えば、根を栄養繁殖体とする植物にはイチゴ、サツマイモなどが挙げられ、茎を栄養繁殖体とする植物にはサトウキビ、ジャガイモ(塊茎)などが挙げられ、葉を栄養繁殖体とする植物にはアロエ、ベゴニアなどが挙げられる。
【0108】
本発明により、新規な除草剤抵抗性形質が植物に付与され得、表現形質(収量など)への悪影響は観察されない。本発明における植物は、試験した少なくとも1つの除草剤の一般的な施用レベルの、例えば、0.5×、1×、2×、3×、4×、または8×に耐性を示し得る。これらの耐性レベルの向上は、本発明の範囲内である。例えば、所与の遺伝子の発現を増大させるために、当技術分野で既知の様々な技術について、予見可能な最適化とさらなる開発を行うことができる。
【0109】
本発明は、以下の利点を有する変異HPPDポリペプチド、そのコード遺伝子およびその使用を提供する。
【0110】
1.本発明は、様々な種由来のヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの372位+383位における組合せ変異が、ピラゾリネート類、トリケトン類およびイソキサゾール類のHPPD阻害除草剤に対する相乗的に向上した耐性を植物に付与し得、特に、4倍の圃場濃度のトプラメゾン、イソキサフルトールおよびメソトリオンに対する耐性を遺伝子導入ダイズ植物に付与し得ることを初めて開示する。したがって、本発明には、植物における広域施用の見込みがある。
【0111】
2.本発明のヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドにおいて、372位+383位における組合せ変異と他の位置における変異との組合わせは、372位+383位における組合せ変異のみによって産生されるHPPD阻害除草剤に対する相乗的に向上した耐性に影響を与えず、このことは、HPPDポリペプチドの372位+383位における組合せ変異によって付与されるHPPD阻害除草剤に対する植物の耐性の重要性および安定性を実証している。
【0112】
3.本発明のヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの372位+383位における組合せ変異に基づいて、HPPDアミノ酸配列のC末端を最適化することが、イソキサフルトールに対する植物の耐性を向上させるのに有益である。
【0113】
本発明の技術的解決法について、下記の図面および実施例により、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】本発明によるAsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターDBN11726の概略構造図である。
図2】本発明による対照組換え発現ベクターDBN11726Nの概略構造図である。
図3】本発明による様々な種由来のHPPDの系統樹である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本発明による変異ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチド、そのコード遺伝子およびその使用に関する実施形態について、具体的な実施例でさらに説明する。
【0116】
実施例1:組合せ変異(F372A+F383W)のためのAsHPPDの372位および383位の選択ならびにその変異効果の検証
1.AsHPPDおよびAsHPPDm-F372A-F383W遺伝子の獲得
エンバク(Avena sativa)野生型HPPDのアミノ酸配列(AsHPPD)を配列表の配列番号1として記載し、AsHPPDをコードするAsHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号2として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDをコードするAsHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号3として記載する。
【0117】
AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号4に記載のAsHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号5として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号6として記載する。
【0118】
AsHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号7に記載のAsHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号8として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号9として記載する。
【0119】
AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号10に記載のAsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号11として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号12として記載する。
【0120】
2.前述のヌクレオチド配列の合成
合成したAsHPPD-02ヌクレオチド配列(配列番号3)、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列(配列番号6)、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列(配列番号9)、およびAsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列(配列番号12)の5′末端および3′末端をそれぞれ、以下のユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結した。
5′末端用ユニバーサル・アダプター・プライマー1:配列表の配列番号230に記載の5′-agtttttctgattaacagactagt-3′。
3′末端用ユニバーサル・アダプター・プライマー1:配列表の配列番号231に記載の5′-caaatgtttgaacgatcggcgcgcc-3′。
【0121】
3.エンバクHPPD遺伝子(F372A-F383W)を含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターの構築
制限酵素Spe IおよびAsc Iを用い、植物発現ベクターDBNBC-01を二重消化して、その植物発現ベクターを線状化した。消化産物を精製して、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーン(ベクターバックボーン:pCAMBIA2301(CAMBIAから入手可能))を得、次いで、タカラIn-Fusionプロダクツ・シームレス・コネクション・キット(クロンテック、米国カリフォルニア州、CAT:121416)の説明書の手順に従い、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列と組換え反応を行って、図1に示す概略構造を有する組換え発現ベクターDBN11726を構築した(Spec:スペクチノマイシン遺伝子、RB:右境界、eFMV:ゴマノハグサ・モザイク・ウイルスの34Sエンハンサー(配列番号13)、prBrCBP:アブラナ真核生物伸長因子遺伝子1α(Tsf1)のプロモーター(配列番号14)、spAtCTP2:シロイヌナズナ葉緑体輸送ペプチド(配列番号15)、EPSPS:5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素遺伝子(配列番号16)、tPsE9:エンドウマメRbcS遺伝子のターミネーター(配列番号17)、prAtUbi10:シロイヌナズナのユビキチン10遺伝子のプロモーター(配列番号18)、AsHPPDm-F372A-F383W-02:AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列(配列番号12)、tNos:ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(配列番号19)、pr35S-01:カリフラワー・モザイク・ウイルス35Sプロモーター(配列番号20)、PAT:ホスフィノトリシンアセチル基転移酵素遺伝子(配列番号21)、t35S:カリフラワー・モザイク・ウイルス35Sターミネーター(配列番号22)、LB:左境界)。
【0122】
大腸菌T1コンピテント細胞を、以下の熱ショック条件下で熱ショック法を用いることにより、組換え発現ベクターDBN11726で形質転換した。大腸菌T1コンピテント細胞50μLとプラスミドDNA(組換え発現ベクターDBN11726)10μLとを42℃で30秒間水浴させ、37℃で1時間振盪培養し(振盪には振盪機を回転数100rpmで使用)、次いで、温度37℃の条件下で、スペクチノマイシン50mg/Lを含有するLB固体プレートで12時間培養した。白色の細菌コロニーを取り出し、LB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaClが10g/Lおよびスペクチノマイシン50mg/L;NaOHでpH7.5に調整)において、温度37℃の条件下で一晩培養した。細胞内のプラスミドをアルカリ法によって抽出した。菌液を回転速度12,000rpmで1分間遠心分離し、上清を除去し、沈殿した菌糸体を、氷で予冷した溶液I(25mMのTris-HCl、10mMのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)および50mMのグルコース、pH8.0)100μLに懸濁した。新たに調製した溶液II(0.2MのNaOH、1%のドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate:SDS)200μLを添加し、チューブを4回反転させて混合し、氷上に3~5分間置いた。氷冷した溶液III(3Mの酢酸カリウム、5Mの酢酸)150μLを添加し、直ちに均一に混合し、氷上に5~10分間置いた。温度4℃、回転数12,000rpmの条件下で混合物を5分間遠心分離し、2倍の体積の無水エタノールを上清に添加し、均一に混合し、室温で5分間置いた。温度4℃、回転数12,000rpmの条件下で混合物を5分間遠心分離し、上清を捨て、濃度70%(V/V)のエタノールで沈殿物を洗浄した後、風乾した。RNase(20μg/mL)を含有するTE(10mMのTris-HClおよび1mMのEDTA、pH8.0)30μLを添加して、沈殿物を溶解した。得られた産物を温度37℃で30分間水浴させてRNAを消化し、使用に備えて温度-20℃で保存した。抽出したプラスミドを配列決定法によって同定した。その結果、組換え発現ベクターDBN11726のSpe I部位とAsc I部位との間のヌクレオチド配列は、配列表の配列番号12に記載のもの、すなわちAsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列であることが示された。
【0123】
組換え発現ベクターDBN11726を構築する上記の方法に従い、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAsHPPD-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列およびAsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列をそれぞれ、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーンと組換え反応させて、組換え発現ベクターDBN11727、DBN11728およびDBN11729を順に構築した。それぞれの配列決定により、組換え発現ベクターDBN11727、DBN11728およびDBN11729におけるヌクレオチド配列が、それぞれ配列表の配列番号3に記載のヌクレオチド配列、配列番号6に記載のヌクレオチド配列、および配列番号9に記載のヌクレオチド配列を含んでおり、すなわち、AsHPPD-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、およびAsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列が正しく挿入されたことを確認した。
【0124】
対照組換え発現ベクターDBN11726Nを構築し、その構造を図2に示した(Spec:スペクチノマイシン遺伝子、RB:右境界、eFMV:ゴマノハグサ・モザイク・ウイルスの34Sエンハンサー(配列番号13)、prBrCBP:アブラナ真核生物伸長因子遺伝子1α(Tsf1)のプロモーター(配列番号14)、spAtCTP2:シロイヌナズナ葉緑体輸送ペプチド(配列番号15)、EPSPS:5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素遺伝子(配列番号16)、tPsE9:エンドウマメRbcS遺伝子のターミネーター(配列番号17)、pr35S-01:カリフラワー・モザイク・ウイルス35Sプロモーター(配列番号20)、PAT:ホスフィノトリシンアセチル基転移酵素遺伝子(配列番号21)、t35S:カリフラワー・モザイク・ウイルス35Sターミネーター(配列番号22)、LB:左境界)。
【0125】
4.シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
正しく構築された組換え発現ベクターDBN11726、DBN11727、DBN11728、DBN11729およびDBN11726Nをそれぞれ、液体窒素法を用い、以下の形質転換条件下でアグロバクテリウムGV3101に形質転換した。100μLのアグロバクテリウムGV3101および3μLのプラスミドDNA(組換え発現ベクター)を液体窒素に10分間入れ、37℃の温水に10分間浸した。形質転換したアグロバクテリウムGV3101をLBチューブに接種し、温度28℃、回転数200rpmの条件下で2時間培養し、リファンピシン50mg/Lおよびスペクチノマイシン50mg/Lを含有するLB固体プレートに広げて陽性単一クローンを増殖させ、単一クローンを取り出して培養し、そのプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドを配列決定法によって同定した。その結果、組換え発現ベクターDBN11726~DBN11729およびDBN11726Nの構造が、完全に正しいことが示された。
【0126】
5.遺伝子導入シロイヌナズナ植物の獲得
野生型シロイヌナズナの種子を0.1%(w/v)のアガロース溶液に懸濁した。同調的種子発芽を確実にするために、懸濁した種子を4℃で2日間保存して、休眠要求を満たした。バーミキュライトを馬糞堆肥土と混合し、その混合物を底部灌水して湿潤状態にし、混合土壌から24時間かけて水を排出した。上記の前処理した種子をその混合土壌に播種し、7日間保湿カバーで覆った。種子を発芽させ、恒温(22℃)、恒湿(40~50%)、光強度120~150μmol/m-1の長日光条件下(16時間明期/8時間暗期)の温室内で、植物を栽培した。最初はホーグランド栄養溶液で植物に灌水し、次いで脱イオン水で灌水して、湿っているが水はしみ通らない状態に土壌を保った。
【0127】
シロイヌナズナは、花浸漬法を用いて形質転換した。スペクチノマイシン(50mg/L)およびリファンピシン(10mg/L)を含有するLB培養液(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、およびNaClが10g/L;NaOHでpHを7.5に調整)の1つまたは複数の前培養物15~30mLに、取り出したアグロバクテリウムのコロニーを接種した。その前培養物を温度28℃、回転数220rpmで一晩、一定速度で振盪しながらインキュベートした。各前培養物を用いて、スペクチノマイシン(50mg/L)およびリファンピシン(10mg/L)を含有するLB培養液の培養物500mLを2つ接種し、その培養物を28℃で一晩、連続振盪しながらインキュベートした。回転数約4,000rpmで遠心分離を20分間、室温で行って細胞を沈殿させ、生じた上清を捨てた。細胞沈殿物を、1/2×MS塩/B5ビタミン、10%(w/v)スクロース、0.044μMのベンジルアミノプリン(10μL/L(1mg/mLの保存DMSO溶液))および300μL/LのSilvet L-77を含有する浸透圧培養液500mLに穏やかに再懸濁した。月齢約1ヵ月のシロイヌナズナ植物を、再懸濁した細胞を含有する浸透圧培養液に15秒間漬けて、最新の花序を確実に浸漬した。次いで、シロイヌナズナ植物を横向きに置いて蓋をし、24時間暗所で湿潤状態を保った。そのシロイヌナズナ植物を、22℃で明期16時間/暗期8時間の光周期で通常通りに栽培した。約4週間後に種子を収穫した。
【0128】
この新たに収穫した(AsHPPD-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、および対照組換え発現ベクターDBN11726N)T種子を、室温で7日間乾燥させた。この種子を26.5cm×51cmの発芽ディスクに播種し、ディスク1枚当たり200mgのT種子(約10,000粒)を入れた。ここでの種子は、同調的種子発芽を確実にするために、あらかじめ蒸留水に懸濁し、4℃で2日間保存して休眠要求を満たしたものとした。
【0129】
バーミキュライトを馬糞堆肥土と混合し、その混合物を底部灌水して湿潤状態にし、重力により水を排出した。ピペットを使用して、前処理した種子を混合土壌に均等に播種し、4~5日間保湿カバーで覆った。初期形質転換体を選択するために、(共形質転換PAT遺伝子の選択に使用した)グルホシネートを出芽後散布施用する1日前に、カバーを外した。
【0130】
リバティ(Liberty)除草剤(グルホシネート200g ai/L)の0.2%溶液を、植栽から7日後(days after planting:DAP)および11DAP(それぞれ子葉期および2~4枚の葉期)に、デビルビス圧縮空気ノズルにより、10mL/ディスク(703L/ha)の散布体積でT1植物に散布して、1回の施用につきグルホシネートの有効量280g ai/haを提供した。最終散布から4~7日後に生存植物(活発に生育している植物)を特定し、馬糞堆肥土およびバーミキュライトで準備した7cm×7cmの正方形の鉢に移植した(3~5株/ディスク)。移植した植物を3~4日間保湿カバーで覆い、22℃の培養庫に置くか、上記の温室に直接移した。次いで、カバーを外し、HPPD阻害除草剤耐性を提供する変異HPPD遺伝子の能力を試験する少なくとも1日前に、植物を温室内(22±5℃、50±30%RH、明期14時間:暗期10時間、最低500μE/m-1の野生型+補助光)で植栽した。
【0131】
6.AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する遺伝子導入シロイヌナズナ植物の除草剤耐性の検出
グルホシネート選択スキームを用いて、非形質転換種子からT形質転換体を最初に選択した。AsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AsHPPD-02)、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AsHPPDm-F372A-02)、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AsHPPDm-F383W-02)、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AsHPPDm-F372A-F383W-02)、対照組換え発現ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナT1植物(DBN11726N)、および野生型シロイヌナズナ植物(CK)(播種から18日後)に、トプラメゾンを3つの濃度(100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、200g ai/ha(8倍圃場濃度、8×)および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを3つの濃度(140g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、280g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)および0g ai/ha(水、0×))で、ならびにメソトリオンを3つの濃度(210g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、420g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))でそれぞれ散布して、除草剤に対するシロイヌナズナの耐性を判定した。散布から7日後(7DAT)に、除草剤によって生じた損傷の程度を、漂白葉の面積の割合(漂白葉の面積の割合=漂白葉の面積/全体の葉の面積×100%)に従って、各植物について測定した。基本的に漂白された表現型がない場合を等級0と定義し、漂白葉の面積の割合が50%未満の場合を等級1と定義し、漂白葉の面積の割合が50%超の場合を等級2と定義し、漂白葉の面積の割合が100%の場合を等級3と定義する。
【0132】
式X=[Σ(N×S)/(T×M)]×100に従って、各組換え発現ベクターの形質転換イベントの抵抗性能をスコアリングし(X-農薬損傷のスコア、N-損傷の等級が同じである植物の数、S-農薬損傷等級、T-植物の総数、M-農薬損傷の最大等級)、そのスコアに基づいて、高抵抗性植物(スコア0~15)、中抵抗性植物(スコア16~33)、低抵抗性植物(スコア34~67)、非抵抗性植物(スコア68~100)として抵抗性を評価した。その結果を表1に示した。
【0133】
【表1】
【0134】
表1の結果から、CKと比較して、シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は全て、4倍または8倍の圃場濃度のトプラメゾンに対して高抵抗耐性を示したが、AsHPPD-02およびDBN11726Nはどちらも、トプラメゾンに対する耐性を示さなかったことが示されている。
【0135】
【表2】
【0136】
表2の結果から以下のことが示されている。(1)CKと比較して、シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、異なる濃度のイソキサフルトールに対して程度が異なる耐性を示したが、AsHPPD-02およびDBN11726Nはどちらも、イソキサフルトールに対する耐性を示さなかった。(2)シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、2倍の圃場濃度のイソキサフルトールに対して、それぞれ中抵抗耐性、中抵抗耐性、および高抵抗耐性を示し、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)が、単一位置変異F372AまたはF383Wよりも良好な効果をもたしたことが示された。(3)シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、4倍の圃場濃度のイソキサフルトールに対して、それぞれ低抵抗耐性、低抵抗耐性、および高抵抗耐性を示し、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)が、単一位置変異F372AまたはF383Wよりも良好な効果をもたらし、さらに、除草剤耐性の効果を相乗的に向上させたことが示された。
【0137】
【表3】
【0138】
表3の結果から以下のことが示されている。(1)CKと比較して、シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、異なる濃度のメソトリオンに対して程度が異なる耐性を示したが、AsHPPD-02およびDBN11726Nはどちらも、メソトリオンに対する耐性を示さなかった。(2)シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、2倍の圃場濃度のメソトリオンに対して、それぞれ中抵抗耐性、中抵抗耐性、および高抵抗耐性を示し、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)が、単一位置変異F372AまたはF383Wよりも良好な効果をもたらしたことが示された(3)シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372A-02、AsHPPDm-F383W-02およびAsHPPDm-F372A-F383W-02は、4倍の圃場濃度のメソトリオンに対して、それぞれ低抵抗耐性、低抵抗耐性、および高抵抗耐性を示し、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)が、単一位置変異F372AまたはF383Wよりも良好な効果をもたらし、さらに、除草剤耐性の効果を相乗的に向上させたことが示された。
【0139】
上記の表2および表3により、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)が、相乗的に向上したHPPD阻害除草剤耐性の効果を有したことが十分に示されている。
【0140】
実施例2:様々な種由来のHPPDアミノ酸配列の372位および383位(F372A+F383W)における組合せ変異、ならびにその変異効果の検証
HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異の相乗効果をさらに検証するために、(図3に示す)様々な種由来のHPPDの系統樹について分析した。変異効果を検証するために、様々な枝の代表的な種由来のHPPDを選択し、アミノ酸配列の372位および383位のアミノ酸を変異(F372A+F383W)させた。
【0141】
1.様々な種由来のHPPDおよび変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
(1)シロイヌナズナ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)HPPD(AtHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号23に記載し、AtHPPDをコードするAtHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号24として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDをコードするAtHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号25として記載する。
【0142】
AtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号26に記載のAtHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号27として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号28として記載する。
【0143】
AtHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号29に記載のAtHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号30として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号31として記載する。
【0144】
AtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号32に記載のAtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号33として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号34として記載する。
【0145】
(2)アルファルファ由来の変異HPPD(F372AおよびF383W)の獲得
野生型アルファルファ(Medicago sativa)HPPD(MsHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号35として記載し、MsHPPDをコードするMsHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号36として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、MsHPPDをコードするMsHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号37として記載する。
【0146】
MsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号38に記載のMsHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。MsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号39として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、MsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号40として記載する。
【0147】
MsHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号41に記載のMsHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。MsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号42として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、MsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号43として記載する。
【0148】
MsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号44に記載のMsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。MsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号45として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、MsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするMsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号46として記載する。
【0149】
(3)ワタ由来の変異HPPD(F372AおよびF383W)の獲得
野生型ワタ(Gossypium hirsutum)HPPD(GsHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号47として記載し、GsHPPDをコードするGsHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号48として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GsHPPDをコードするGsHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号49として記載する。
【0150】
GsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号50に記載のGsHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。GsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号51として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号52として記載する。
【0151】
GsHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号53に記載のGsHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。GsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号54として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号55として記載する。
【0152】
GsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号56に記載のGsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。GsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号57として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするGsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号58として記載する。
【0153】
(4)アブラナ由来の変異HPPD(F372AおよびF383W)の獲得
野生型アブラナ(Brassica napus)HPPD(BnHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号59として記載し、BnHPPDをコードするBnHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号60として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、BnHPPDをコードするBnHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号61として記載する。
【0154】
BnHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号62に記載のBnHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。BnHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号63として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、BnHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号64として記載する。
【0155】
BnHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号65に記載のBnHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。BnHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号66として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、BnHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号67として記載する。
【0156】
BnHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号68に記載のBnHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。BnHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号69として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、BnHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするBnHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号70として記載する。
【0157】
(5)ダイズ由来の変異HPPD(F372AおよびF383W)の獲得
野生型ダイズ(Glycine max)HPPD(GmHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号71として記載し、GmHPPDをコードするGmHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号72として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GmHPPDをコードするGmHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号73として記載する。
【0158】
GmHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号74に記載のGmHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。GmHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号75として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GmHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号76として記載する。
【0159】
GmHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号77に記載のGmHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。GmHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号78として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GmHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号79として記載する。
【0160】
GmHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号80に記載のGmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。GmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号81として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、GmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするGmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号82として記載する。
【0161】
(6)タバコ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型タバコ(Nicotiana tabacum)HPPD(NtHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号83として記載し、NtHPPDをコードするNtHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号84として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、NtHPPDをコードするNtHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号85として記載する。
【0162】
NtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号86に記載のNtHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。NtHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号87として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、NtHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号88として記載する。
【0163】
NtHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号89に記載のNtHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。NtHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号90として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、NtHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号91として記載する。
【0164】
NtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号92に記載のNtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。NtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号93として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、NtHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするNtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号94として記載する。
【0165】
(7)イネ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型イネ(Oryza sativa)HPPD(OsHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号95として記載し、OsHPPDをコードするOsHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号96として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、OsHPPDをコードするOsHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号97として記載する。
【0166】
OsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号98に記載のOsHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。OsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号99として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、OsHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号100として記載する。
【0167】
OsHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号101に記載のOsHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。OsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号102として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、OsHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号103として記載する。
【0168】
OsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号104に記載のOsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。OsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号105として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、OsHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするOsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号106として記載する。
【0169】
(8)モロコシ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型モロコシ(Sorghum bicolor)HPPD(SbHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号107として記載し、SbHPPDをコードするSbHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号108として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、SbHPPDをコードするSbHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号109として記載する。
【0170】
SbHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号110に記載のSbHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。SbHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号111として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、SbHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号112として記載する。
【0171】
SbHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号113に記載のSbHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。SbHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号114として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、SbHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号115として記載する。
【0172】
SbHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号116に記載のSbHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。SbHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号117として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、SbHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするSbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号118として記載する。
【0173】
(9)オオムギ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型オオムギ(Hordeum vulgare)HPPD(HvHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号119として記載し、HvHPPDをコードするHvHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号120として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HvHPPDをコードするHvHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号121として記載する。
【0174】
HvHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号122に記載のHvHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。HvHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号123として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HvHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号124として記載する。
【0175】
HvHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号125に記載のHvHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。HvHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号126として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HvHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号127として記載する。
【0176】
HvHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号128に記載のHvHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。HvHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号129として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HvHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするHvHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号130として記載する。
【0177】
(10)トウモロコシ由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型トウモロコシ(Zea mays)HPPD(ZmHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号131として記載し、ZmHPPDをコードするZmHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号132として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、ZmHPPDをコードするZmHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号133として記載する。
【0178】
ZmHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号134に記載のZmHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。ZmHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号135として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、ZmHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号136として記載する。
【0179】
ZmHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号137に記載のZmHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。ZmHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号138として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、ZmHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号139として記載する。
【0180】
ZmHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号140に記載のZmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。ZmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号141として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、ZmHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするZmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号142として記載する。
【0181】
(11)シュードモナス・フルオレセンス由来の変異HPPD(F372A+F383W)の獲得
野生型シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)HPPD(PfHPPD)のアミノ酸配列を配列表の配列番号143として記載し、PfHPPDをコードするPfHPPD-01ヌクレオチド配列を配列表の配列番号144として記載し、シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、PfHPPDをコードするPfHPPD-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号145として記載する。
【0182】
PfHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号146に記載のPfHPPDm-F372Aアミノ酸配列を得た。PfHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号147として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、PfHPPDm-F372Aアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号148として記載する。
【0183】
PfHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号149に記載のPfHPPDm-F383Wアミノ酸配列を得た。PfHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号150として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、PfHPPDm-F383Wアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号151として記載する。
【0184】
PfHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号152に記載のPfHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列を得た。PfHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F372A-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号153として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、PfHPPDm-F372A-F383Wアミノ酸配列をコードするPfHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号154として記載する。
【0185】
2.様々な種由来の変異HPPD(F372A+F383Wの組合せ変異、単一位置変異F372Aまたは単一位置変異F383Wを有する)を含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターの構築
上の実施例1の項目3に記載の、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11726の構築方法に従って、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAtHPPD-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、MsHPPD-02ヌクレオチド配列、MsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、MsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、MsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、GsHPPD-02ヌクレオチド配列、GsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、GsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、GsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、BnHPPD-02ヌクレオチド配列、BnHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、BnHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、BnHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、GmHPPD-02ヌクレオチド配列、GmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、GmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、GmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、NtHPPD-02ヌクレオチド配列、NtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、NtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、NtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、OsHPPD-02ヌクレオチド配列、OsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、OsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、OsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、SbHPPD-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、HvHPPD-02ヌクレオチド配列、HvHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、HvHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、HvHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、ZmHPPD-02ヌクレオチド配列、ZmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、ZmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、ZmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、PfHPPD-02ヌクレオチド配列、PfHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、PfHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、およびPfHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列をそれぞれ、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーンと組換え反応させて、組換え発現ベクターDBN11730~DBN11773を順に得た。配列決定法により、前述の各ヌクレオチド配列が、組換え発現ベクターDBN11730~DBN11773に正しく挿入されたことを確認した。
【0186】
3.シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
上の実施例1の項目4に記載の、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換法に従って、正しく構築された組換え発現ベクターDBN11730~DBN11773、および実施例1の項目3で構築された対照組換え発現ベクターDBN11726Nをそれぞれ、液体窒素法を用い、アグロバクテリウムGV3101に形質転換した。その結果を配列決定法によって確認したところ、組換え発現ベクターDBN11730~DBN11773およびDBN11726Nの構造が、完全に正しいことが示された。
【0187】
4.様々な種由来の変異HPPD(F372A+F383Wの組合せ変異、単一位置変異F372Aまたは単一位置変異F383Wを有する)を導入したシロイヌナズナ植物の除草剤耐性の検出
本実施例2で構築した組換え発現ベクターDBN11730~DBN11773および実施例1の項目3で構築した対照組換え発現ベクターDBN11726NにおけるT-DNAをシロイヌナズナ染色体に導入するために、上の実施例1の項目5に記載の方法に従い、本実施例の項目3に記載のアグロバクテリウムの溶液にシロイヌナズナ花序を浸漬することによって、それぞれに対応する遺伝子導入シロイヌナズナ植物を得た。すなわち、AtHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AtHPPD-02)、AtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AtHPPDm-F372A-02)、AtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AtHPPDm-F383W-02)、AtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(AtHPPDm-F372A-F383W-02)、MsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(MsHPPD-02)、MsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(MsHPPDm-F372A-02)、MsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(MsHPPDm-F383W-02)、MsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(MsHPPDm-F372A-F383W-02)、GsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GsHPPD-02)、GsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GsHPPDm-F372A-02)、GsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GsHPPDm-F383W-02)、GsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GsHPPDm-F372A-F383W-02)、BnHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(BnHPPD-02)、BnHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(BnHPPDm-F372A-02)、BnHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(BnHPPDm-F383W-02)、BnHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(BnHPPDm-F372A-F383W-02)、GmHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GmHPPD-02)、GmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GmHPPDm-F372A-02)、GmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GmHPPDm-F383W-02)、GmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(GmHPPDm-F372A-F383W-02)、NtHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(NtHPPD-02)、NtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(NtHPPDm-F372A-02)、NtHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(NtHPPDm-F383W-02)、NtHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(NtHPPDm-F372A-F383W-02)、OsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(OsHPPD-02)、OsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(OsHPPDm-F372A-02)、OsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(OsHPPDm-F383W-02)、OsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(OsHPPDm-F372A-F383W-02)、SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(SbHPPD-02)、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(SbHPPDm-F372A-02)、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(SbHPPDm-F383W-02)、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(SbHPPDm-F372A-F383W-02)、HvHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(HvHPPD-02)、HvHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(HvHPPDm-F372A-02)、HvHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(HvHPPDm-F383W-02)、HvHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(HvHPPDm-F372A-F383W-02)、ZmHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(ZmHPPD-02)、ZmHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(ZmHPPDm-F372A-02)、ZmHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(ZmHPPDm-F383W-02)、ZmHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(ZmHPPDm-F372A-F383W-02)、PfHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(PfHPPD-02)、PfHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(PfHPPDm-F372A-02)、PfHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(PfHPPDm-F383W-02)、PfHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT1植物(PfHPPDm-F372A-F383W-02)、および、対照組換え発現ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナT1植物(DBN11726N)を得た。
【0188】
上の実施例1の項目6に記載の方法に従い、前述のシロイヌナズナT1植物および野生型シロイヌナズナ植物(CK)(播種から18日後)に、トプラメゾンを3つの濃度(25g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを3つの濃度(35g ai/ha(半倍圃場濃度、0.5×)、70g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、および0g ai/ha(水、0×))で、ならびにメソトリオンを3つの濃度(52.5g ai/ha(半倍圃場濃度、0.5×)、105g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、および0g ai/ha(水、0×))でそれぞれ散布して、除草剤に対するシロイヌナズナの耐性を検出した。実験結果を表4~表6に示す。
【0189】
【表4】
【表5】
【0190】
表4の結果から以下のことが示されている。(1)未変異のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物と比較して、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子、および372位における単一変異(F372A)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、トプラメゾンに対する耐性の程度が異なっており、383位における単一変異(F383W)を有するいくつかの種(モロコシ、オオムギおよびトウモロコシ)由来のHPPD遺伝子のみが、シロイヌナズナ植物にトプラメゾンに対する耐性を付与することができたが、CK植物および対照ベクターDBN11726N植物は、トプラメゾンに対する耐性がなかった。
【0191】
(2)抵抗性評価の観点から、トプラメゾンに関しては、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する(アルファルファ以外の)様々な種由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。
【0192】
(3)スコアの観点から、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有するアルファルファ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物よりも耐性スコアが低かった。さらに、4倍圃場濃度のトプラメゾンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異を有するアルファルファ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の約50%は、損傷レベルが等級0または等級1であり、372位における単一変異を有するアルファルファ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の25%は、損傷レベルが等級0または等級1であり、383位における単一変異を有するアルファルファ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の中で、損傷レベルが等級0または1のシロイヌナズナ植物の数は0であった。このことは、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有するアルファルファ由来のHPPD遺伝子は、シロイヌナズナ植物に相乗的に向上した除草剤耐性を付与し得たことを示している。
【0193】
【表6】
【表7】
【表8】
【0194】
表5の結果から以下のことが示されている。(1)未変異のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物と比較して、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子、および372位における単一変異(F372A)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、イソキサフルトールに対する耐性の程度が異なっており、383位における単一変異(F383W)を有するいくつかの種(モロコシ、オオムギおよびトウモロコシ)由来のHPPD遺伝子のみが、シロイヌナズナ植物にイソキサフルトールに対する耐性を付与することができるが、CK植物および対照ベクターDBN11726N植物は、イソキサフルトールに対する耐性がなかった。
【0195】
(2)抵抗性評価の観点から、イソキサフルトールに関しては、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来(トウモロコシ以外)のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。
【0196】
(3)スコアの観点から、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有するトウモロコシ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物よりも耐性スコアが低かった。さらに、1倍圃場濃度のイソキサフルトールで処理した場合、372位および383位における組合せ変異を有するトウモロコシ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の約69%は、損傷レベルが等級0または等級1であり、372位における単一変異を有するトウモロコシ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の6%は、損傷レベルが等級0または等級1であり、383位における単一変異を有するトウモロコシ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物の中で、損傷レベルが等級0または等級1のシロイヌナズナ植物の数は0であった。このことは、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有するトウモロコシ由来のHPPD遺伝子は、シロイヌナズナ植物に相乗的に向上した除草剤耐性を付与し得ることを示している。
【0197】
【表9】
【表10】
【表11】
【0198】
表6の結果から以下のことが示されている。(1)未変異のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物と比較して、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子、および372位における単一変異(F372A)を有する様々な種由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、メソトリオンに対する耐性の程度が異なっており、383位における単一変異(F383W)を有するいくつかの種(オオムギおよびトウモロコシ)由来のHPPD遺伝子のみが、シロイヌナズナ植物にメソトリオンに対する耐性を付与することができるが、CK植物および対照ベクターDBN11726N植物は、メソトリオンに対する耐性がなかった。
【0199】
(2)抵抗性評価の観点から、メソトリオンに関しては、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来(タバコ以外)のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。
【0200】
(3)スコアの観点から、半倍または1倍の圃場濃度のメソトリオンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有するタバコ由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wのシロイヌナズナ植物よりも耐性スコアが低く、さらに、相乗的に向上した除草剤耐性の効果を示した。
【0201】
以上のことから、表4~表6の結果により、372位および383位における組合せ変異(F372A+F383W)を有する様々な種由来の全てのHPPD遺伝子が、相乗的に向上した除草剤耐性の効果を植物に付与し得ることが示されている。
【0202】
実施例3:HPPDアミノ酸配列の372位および383位における異なる変異(組合せ変異F372G+F383WまたはF372V+F383W)、ならびにその変異効果の検証
1.遺伝子AsHPPDm-F372G-F383WおよびAsHPPDm-F372V-F383Wの獲得
(1)AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からグリシン(G)に変異させて、配列表の配列番号155に記載のAsHPPDm-F372Gアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372Gアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372G-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号156として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372Gアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372G-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号157として記載する。
【0203】
AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からグリシン(G)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号158に記載のAsHPPDm-F372G-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372G-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372G-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号159として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372G-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372G-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号160として記載する。
【0204】
(2)AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からバリン(V)に変異させて、配列表の配列番号161に記載のAsHPPDm-F372Vアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372Vアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372V-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号162として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372Vアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372V-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号163として記載する。
【0205】
AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からバリン(V)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号164に記載のAsHPPDm-F372V-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372V-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372V-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号165として記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372V-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372V-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号166として記載する。
【0206】
2.エンバクHPPD遺伝子(F372G+F383WまたはF372V+F383W)を含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターの構築
上の実施例1の項目3に記載の、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11726の構築方法に従って、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAsHPPDm-F372G-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372G-F383W-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372V-02ヌクレオチド配列、およびAsHPPDm-F372V-F383W-02ヌクレオチド配列をそれぞれ、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーンと組換え反応させて、組換え発現ベクターDBN11774~DBN11777を順に得た。配列決定法により、前述の各ヌクレオチド配列が、組換え発現ベクターDBN11774~DBN11777に正しく挿入されたことを確認した。
【0207】
3.シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
上の実施例1の項目4に記載の、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いてアグロバクテリウムを形質転換する方法に従って、正しく構築された組換え発現ベクターDBN11774~DBN11777、ならびにAsHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11727、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11729、および実施例1の項目3で構築した対照組換え発現ベクターDBN11726Nをそれぞれ、液体窒素法を用いてアグロバクテリウムGV3101に形質転換した。その結果を配列決定法によって確認したところ、組換え発現ベクターDBN11774~DBN11777ならびにDBN11727、DBN11729およびDBN11726Nの構造が、完全に正しいことが示された。
【0208】
4.AsHPPDm-F372G-F383W-02またはAsHPPDm-F372V-F383W-02のヌクレオチド配列を導入した遺伝子導入シロイヌナズナ植物の除草剤耐性の検出
本実施例の項目2で構築した組換え発現ベクターDBN11774~DBN11777、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11727、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11729、および実施例1の項目3で構築した対照組換え発現ベクターDBN11726NにおけるT-DNAをシロイヌナズナ染色体に導入するために、上の実施例1の項目5に記載の方法に従い、シロイヌナズナ花序を本実施例の項目3に記載のアグロバクテリウムの溶液に浸漬することによって、それぞれに対応する遺伝子導入シロイヌナズナ植物を得た。すなわち、AsHPPDm-F372G-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372G-02)、AsHPPDm-F372G-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372G-F383W-02)、AsHPPDm-F372V-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372V-02)、AsHPPDm-F372V-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372V-F383W-02)、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物、AsHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物、および対照組換え発現ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナT植物を得た。
【0209】
5.F372G+F383WまたはF372V+F383Wの相乗効果の検証
上の実施例1の項目6に記載の方法に従い、前述のシロイヌナズナT植物および野生型シロイヌナズナ植物(CK)(播種から18日後)に、トプラメゾンを3つの異なる濃度(すなわち、100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、200g ai/ha(8倍圃場濃度、8×)、および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを3つの異なる濃度(すなわち、140g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、280g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、ならびにメソトリオンを3つの異なる濃度(すなわち、210g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、420g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))でそれぞれ散布して、シロイヌナズナの除草剤耐性を検出した。実験結果を表7~表9に示す。
【0210】
【表12】
【0211】
表7の結果から、CKと比較して、4倍または8倍の圃場濃度のトプラメゾンで処理した場合、シロイヌナズナ遺伝子型AsHPPDm-F372G-02、AsHPPDm-F383W-02、AsHPPDm-F372G-F383W-02、AsHPPDm-F372V-02およびAsHPPDm-F372V-F383W-02は全て高抵抗耐性を示したが、AsHPPD-02および対照ベクターDBN11726Nの植物は、トプラメゾンに対する耐性を示さなかったことが示されている。
【0212】
【表13】
【0213】
【表14】
【0214】
表8および表9の結果から以下のことが示されている。(1)CKと比較して、372位および383位における組合せ変異(F372G+F383WまたはF372V+F383W)を有するエンバク由来のHPPD遺伝子、372位における単一変異(F372GまたはF372V)を有するエンバク由来のHPPD遺伝子、および383位における単一変異(F383W)を有するエンバク由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、イソキサフルトールおよびメソトリオンのどちらに対しても耐性の程度が異なっていたが、未変異のHPPD遺伝子および対照ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナ植物は、イソキサフルトールとメソトリオンのどちらに対しても耐性がなかった。
【0215】
(2)抵抗性評価の観点から、2倍圃場濃度のイソキサフルトールまたはメソトリオンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異(F372G+F383WまたはF372V+F383W)を有するエンバク由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、372位における単一変異(中抵抗性)または383位における単一変異(中抵抗性)を有するHPPD遺伝子が導入されたシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性(高抵抗性)を示した。4倍の圃場濃度のイソキサフルトールまたはメソトリオンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異(F372G+F383WまたはF372V+F383W)を有するエンバク由来のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、372位における単一変異(低抵抗性)または383位における単一変異(低抵抗性)を有するHPPD遺伝子が導入されたシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性(高抵抗性)を示し、さらに除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。
【0216】
上記の表8および表9により、野生型HPPDアミノ酸配列の372位および383位における異なる組合せ変異(組合せ変異F372G+F383WまたはF372V+F383W)もまた、HPPD阻害除草剤に対する耐性を相乗的に向上させたことが実証されている。
【0217】
実施例4:HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異と他の位置における変異との組合せ、ならびにその変異効果
1.複数の位置に組合せ変異を有する配列の獲得
(1)HPPDm-1アミノ酸配列(AsHPPDm-A107-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の107位の元のアラニン(A)を欠失させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号167に記載のAsHPPDm-A107-F372Aアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-A107-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A107-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号168に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-A107-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A107-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号169に記載する。
【0218】
AsHPPDアミノ酸配列の107位の元のアラニン(A)を欠失させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号170に記載のAsHPPDm-A107-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-A107-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A107-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号171に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-A107-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A107-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号172に記載する。
【0219】
AsHPPDアミノ酸配列の107位の元のアラニン(A)を欠失させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号173に記載のHPPDm-1アミノ酸配列(AsHPPDm-A107-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-1アミノ酸配列をコードするHPPDm-1-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号174に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-1アミノ酸配列をコードするHPPDm-1-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号175に記載する。
【0220】
(2)HPPDm-2アミノ酸配列(AsHPPDm-A111T-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の111位のアミノ酸を元のアラニン(A)からトレオニン(T)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させて、配列表の配列番号176に記載のAsHPPDm-A111T-F372Aアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-A111T-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A111T-F372A-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号177に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-A111T-F372Aアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A111T-F372A-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号178に記載する。
【0221】
AsHPPDアミノ酸配列の111位のアミノ酸を元のアラニン(A)からトレオニン(T)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号179に記載のAsHPPDm-A111T-F383Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-A111T-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A111T-F383W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号180に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-A111T-F383Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-A111T-F383W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号181に記載する。
【0222】
AsHPPDアミノ酸配列の111位のアミノ酸を元のアラニン(A)からトレオニン(T)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号182に記載のHPPDm-2アミノ酸配列(AsHPPDm-A111T-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-2アミノ酸配列をコードするHPPDm-2-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号183に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-2アミノ酸配列をコードするHPPDm-2-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号184に記載する。
【0223】
(3)HPPDm-3アミノ酸配列(AsHPPDm-A106G-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の106位のアミノ酸を元のアラニン(A)からグリシン(G)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号185に記載のHPPDm-3アミノ酸配列(AsHPPDm-A106G-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-3アミノ酸配列をコードするHPPDm-3-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号186に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-3アミノ酸配列をコードするHPPDm-3-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号187に記載する。
【0224】
(4)HPPDm-4アミノ酸配列(AsHPPDm-A107-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の107位の元のアラニン(A)を欠失させ、351位のアミノ酸を元のリジン(K)からアスパラギン(N)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号188に記載のHPPDm-4アミノ酸配列(AsHPPDm-A107-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-4アミノ酸配列をコードするHPPDm-4-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号189に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-4アミノ酸配列をコードするHPPDm-4-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号190に記載する。
【0225】
(5)HPPDm-5アミノ酸配列(AsHPPDm-A111T-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の111位のアミノ酸を元のアラニン(A)からトレオニン(T)に変異させ、351位のアミノ酸を元のリジン(K)からアスパラギン(N)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号191に記載のHPPDm-5アミノ酸配列(AsHPPDm-A111T-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-5アミノ酸配列をコードするHPPDm-5-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号192に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-5アミノ酸配列をコードするHPPDm-5-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号193に記載する。
【0226】
(6)HPPDm-6アミノ酸配列(AsHPPDm-A106G-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)の獲得
AsHPPDアミノ酸配列の106位のアミノ酸を元のアラニン(A)からグリシン(G)に変異させ、351位のアミノ酸を元のリジン(K)からアスパラギン(N)に変異させ、372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号194に記載のHPPDm-6アミノ酸配列(AsHPPDm-A106G-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列)を得た。HPPDm-6アミノ酸配列をコードするHPPDm-6-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号195に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-6アミノ酸配列をコードするHPPDm-6-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号196に記載する。
【0227】
(7)HPPDm-7アミノ酸配列の獲得
AsHPPDm-A107-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列に基づいたエンバク由来のHPPDアミノ酸配列のC末端アミノ酸を変異させることによってHPPDm-7アミノ酸配列を得、そのHPPDm-7アミノ酸配列を配列表の配列番号197に記載する。HPPDm-7アミノ酸配列をコードするHPPDm-7-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号198に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-7アミノ酸配列をコードするHPPDm-7-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号199に記載する。
【0228】
(8)HPPDm-8アミノ酸配列の獲得
AsHPPDm-A111T-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列に基づいたエンバク由来のHPPDアミノ酸配列のC末端アミノ酸を変異させることによってHPPDm-8アミノ酸配列を得、そのHPPDm-8アミノ酸配列を配列表の配列番号200に記載する。HPPDm-8アミノ酸配列をコードするHPPDm-8-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号201に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-8アミノ酸配列をコードするPPDm-8-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号202に記載する。
【0229】
(9)HPPDm-9アミノ酸配列の獲得
AsHPPDm-A106G-K351N-F372A-F383Wアミノ酸配列に基づいたエンバク由来のHPPDアミノ酸配列のC末端アミノ酸を変異させることによってHPPDm-9アミノ酸配列を得、そのHPPDm-9アミノ酸配列を配列表の配列番号203に記載する。HPPDm-9アミノ酸配列をコードするHPPDm-9-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号204に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、HPPDm-9アミノ酸配列をコードするHPPDm-9-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号205に記載する。
【0230】
2.複数の位置に組合せ変異を有するHPPDを含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターの構築
上の実施例1の項目3に記載の、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11726の構築方法に従って、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAsHPPDm-A107-F372A-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-A107-F383W-02ヌクレオチド配列、HPPDm-1-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-A111T-F372A-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-A111T-F383W-02ヌクレオチド配列、HPPDm-2-02ヌクレオチド配列、HPPDm-3-02ヌクレオチド配列、HPPDm-4-02ヌクレオチド配列、HPPDm-5-02ヌクレオチド配列、HPPDm-6-02ヌクレオチド配列、HPPDm-7-02ヌクレオチド配列、HPPDm-8-02ヌクレオチド配列、およびHPPDm-9-02ヌクレオチド配列をそれぞれ、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーンと組換え反応させて、組換え発現ベクターDBN11778~DBN11790を順に得た。配列決定法により、前述の各ヌクレオチド配列が、組換え発現ベクターDBN11778~DBN11790に正しく挿入されたことを確認した。
【0231】
3.シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
上の実施例1の項目4に記載の、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いてアグロバクテリウムを形質転換する方法に従って、正しく構築された組換え発現ベクターDBN11778~DBN11790、およびAsHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11727、ならびに実施例1の項目3の対照組換え発現ベクターDBN11726Nをそれぞれ、液体窒素法を用いてアグロバクテリウムGV3101に形質転換した。その結果を配列決定法によって確認したところ、組換え発現ベクターDBN11778~DBN11790、DBN11727およびDBN11726Nの構造が、完全に正しいことが示された。
【0232】
4.複数の位置に組合せ変異を有するHPPDが導入されたシロイヌナズナ植物の除草剤耐性の検出
本実施例の項目2で構築した組換え発現ベクターDBN11778~DBN11790、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11727、および実施例1の項目3の対照組換え発現ベクターDBN11726NにおけるT-DNAをシロイヌナズナ染色体に導入するために、上の実施例1の項目5に記載の方法に従い、シロイヌナズナ花序を本実施例の項目3に記載のアグロバクテリウムの溶液に浸漬することによって、それぞれに対応する遺伝子導入シロイヌナズナ植物を得た。すなわち、AsHPPDm-A107-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-A107-F372A-02)、AsHPPDm-A107-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-A107-F383W-02)、HPPDm-1-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-1-02)、AsHPPDm-A111T-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-A111T-F372A-02)、AsHPPDm-A111T-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-A111T-F383W-02)、HPPDm-2-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-2-02)、HPPDm-3-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-3-02)、HPPDm-4-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-4-02)、HPPDm-5-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-5-02)、HPPDm-6-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-6-02)、HPPDm-7-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-7-02)、HPPDm-8-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-8-02)、およびHPPDm-9-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(HPPDm-9-02)、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPD-02)、ならびに対照組換え発現ベクターを導入したシロイヌナズナT植物(DBN11726N)を得た。
【0233】
上の実施例1の項目6に記載の方法に従い、前述のシロイヌナズナT植物および野生型シロイヌナズナ植物(CK)(播種から18日後)に、トプラメゾンを3つの異なる濃度(すなわち、100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、200g ai/ha(8倍圃場濃度、8×)、および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを3つの異なる濃度(すなわち、140g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、280g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、ならびにメソトリオンを3つの異なる濃度(すなわち、210g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、420g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))でそれぞれ散布して、シロイヌナズナの除草剤耐性を検出した。実験結果を表10~表12に示す。
【0234】
【表15】
【0235】
表10の結果から以下のことが示されている。(1)CKおよび未変異のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物と比較して、4倍または8倍の圃場濃度のトプラメゾンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異と他の位置における変異(A107欠失、A111T、A106G、A107+K351N、A111T+K351N、A106G+K351N、A107+K351N+C末端変異、A111T+K351N+C末端変異、またはA106G+K351N+C末端変異など)との組合せを有するHPPD遺伝子は全て、トプラメゾンに対する高抵抗耐性を植物に付与することができる。このことは、HPPDアミノ酸配列の372位+383位における組合せ変異と他の位置における変異との組合せが、372位+383位における組合せ変異単独のトプラメゾン耐性に影響を及ぼさなかったことを示しており、また、HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異によって付与されるHPPD阻害除草剤に対する植物の耐性の重要性と安定性を示している。対照的に、対照組換え発現ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナT植物は、トプラメゾンに対する耐性がなかった。
【0236】
【表16】
【0237】
【表17】
【0238】
表11および表12の結果から以下のことが示されている。(1)CKおよび未変異のHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物と比較して、2倍または4倍の圃場濃度のイソキサフルトールおよびメソトリオンで処理した場合、372位および383位における組合せ変異と他の位置における変異(A107欠失、A111T、A106G、A107+K351N、A111T+K351N、A106G+K351N、A107+K351N+C末端変異、A111T+K351N+C末端変異、またはA106G+K351N+C末端変異など)との組合せを有するHPPD遺伝子は全て、イソキサフルトールおよびメソトリオンに対する高抵抗耐性を植物に付与することができるが、対照組換え発現ベクターDBN11726Nを導入したシロイヌナズナT植物は、イソキサフルトールおよびメソトリオンに対する耐性がなかった。
【0239】
(2)抵抗性評価の観点から、4倍圃場濃度のイソキサフルトールまたはメソトリオンで処理した場合、HPPDm-1-02(AsHPPDm-A107-F372A-F383W-02)遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、AsHPPDm-A107-F372A-02遺伝子(低抵抗性)またはAsHPPDm-A107-F383W-02遺伝子(低抵抗性)を導入したシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性(高抵抗性)を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。同様に、HPPDm-2-02(AsHPPDm-A111T-F372A-F383W)遺伝子を導入したシロイヌナズナ植物は、AsHPPDm-A111T-F372A-02遺伝子(低抵抗性)またはAsHPPDm-A111T-F383W-02遺伝子(低抵抗性)を導入したシロイヌナズナ植物よりも良好な除草剤耐性(高抵抗性)を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。したがって、HPPDアミノ酸配列の372位+383位における合せ変異と他の位置における変異との組合せは、372位+383位における組合せ変異単独のHPPD阻害除草剤に対する相乗的に向上した除草剤耐性に影響を及ぼさなかった。さらに、HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異によって付与されるHPPD阻害除草剤に対する植物の耐性の重要性と安定性が示されている。
【0240】
(3)抵抗性スコアの観点から、4倍圃場濃度のイソキサフルトールで処理した場合、HPPDm-7-02~HPPDm-9-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物は、HPPDm-1-02~HPPDm-6-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物よりも抵抗性スコアが高く(0)、HPPDアミノ酸配列のC末端の最適化が、イソキサフルトールに対する植物の耐性を向上させるのに有利であることが示された。
【0241】
実施例5:HPPDアミノ酸配列の組合せ変異(組合せ変異F372A(F372G/F372V)+F383Wではない)およびその変異効果の検証
1.エンバクおよびシロイヌナズナ由来のHPPDアミノ酸配列の変異遺伝子(組合せ変異F372A(F372G/F372V)+F383Wではない)の獲得
(1)エンバク由来のHPPDの組合せ変異遺伝子(F372A+F415W)
AsHPPDアミノ酸配列の415位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号206に記載のAsHPPDm-F415Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F415Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F415W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号207に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F415Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号208に記載する。
【0242】
AsHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、415位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号209に記載のAsHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F415W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号210に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号211に記載する。
【0243】
(2)シロイヌナズナ由来のHPPDの組合せ変異遺伝子(F372A+F415W)
AtHPPDアミノ酸配列の424位のアミノ酸(配列番号1に記載のアミノ酸配列の415位に対応、すなわち415番目)を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号212に記載のAtHPPDm-F415Wアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F415Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F415W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号213に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F415Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号214に記載する。
【0244】
AtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、415位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からトリプトファン(W)に変異させて、配列表の配列番号215に記載のAtHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F415W-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号216に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F372A-F415Wアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号217に記載する。
【0245】
(3)エンバク由来のHPPDの組合せ変異遺伝子(F372A+F383Y)
AsHPPDアミノ酸配列の383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からチロシン(Y)に変異させて、配列表の配列番号218に記載のAsHPPDm-F383Yアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F383Yアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F383Y-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号219に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F383Yアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号220に記載する。
【0246】
AsHPPDアミノ酸配列の372位の位置のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からチロシン(Y)に変異させて、配列表の配列番号221に記載のAsHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列を得た。AsHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F383Y-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号222に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AsHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列をコードするAsHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号223に記載する。
【0247】
(4)シロイヌナズナ由来のHPPDの組合せ変異遺伝子(F372A+F383Y)
AtHPPDアミノ酸配列の392位のアミノ酸(配列番号1に記載のアミノ酸配列の383位に対応、すなわち383番目)を元のフェニルアラニン(F)からチロシン(Y)に変異させて、配列表の配列番号224に記載のAtHPPDm-F383Yアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F383Yアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F383Y-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号225に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F383Yアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号226に記載する。
【0248】
AtHPPDアミノ酸配列の372位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からアラニン(A)に変異させ、383位のアミノ酸を元のフェニルアラニン(F)からチロシン(Y)に変異させて、配列表の配列番号227に記載のAtHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列を得た。AtHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F383Y-01ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号228に記載する。シロイヌナズナ/ダイズ共通のコドン使用バイアスに基づいて得た、AtHPPDm-F372A-F383Yアミノ酸配列をコードするAtHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列を、配列表の配列番号229に記載する。
【0249】
2.変異HPPD遺伝子(組合せ変異F372A(F372G/F372V)+F383Wではない)を含有する、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターの構築
上の実施例1の項目3に記載の、AsHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11726の構築方法に従って、ユニバーサル・アダプター・プライマー1に連結したAsHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列、AsHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列、AtHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列、およびAtHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列をそれぞれ、線状化したDBNBC-01発現ベクターバックボーンと組換え反応させて、組換え発現ベクターDBN11791~DBN11798を順に得た。配列決定法により、前述の各ヌクレオチド配列が、組換え発現ベクターDBN11791~DBN11798に正しく挿入されたことを確認した。
【0250】
3.シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
上の実施例1の項目4に記載の、シロイヌナズナ用の組換え発現ベクターを用いてアグロバクテリウムを形質転換する方法に従って、正しく構築された組換え発現ベクターDBN11791~DBN11798、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11727、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を含有する実施例1の項目3の組換え発現ベクターDBN11728、AtHPPDm-02ヌクレオチド配列を含有する実施例2の項目2の組換え発現ベクターDBN11730、およびAtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を含有する実施例2の項目2の組換え発現ベクターDBN11731をそれぞれ、液体窒素法を用いてアグロバクテリウムGV3101に形質転換した。その結果を配列決定法によって確認したところ、組換え発現ベクターDBN11791~DBN11798、DBN11727、DBN11728、DBN11730およびDBN11731の構造が、完全に正しいことが示された。
【0251】
4.変異HPPD遺伝子(組合せ変異F372A(F372G/F372V)+F383Wではない)が導入されたシロイヌナズナ植物の除草剤耐性の検出
組換え発現ベクターDBN11791~DBN11798、DBN11727、DBN11728、DBN11730および実施例2で構築したDBN11731におけるT-DNAをシロイヌナズナ染色体に導入するために、上の実施例1の項目5に記載の方法に従い、本実施例の項目3に記載のアグロバクテリウムの溶液にシロイヌナズナ花序を浸漬することによって、それぞれに対応する遺伝子導入シロイヌナズナ植物を得た。すなわち、AsHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F415W-02)、AsHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372A-F415W-02)、AtHPPDm-F415W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-F415W-02)、AtHPPDm-F372A-F415W-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-F372A-F415W-02)、AsHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F383Y-02)、AsHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372A-F383Y-02)、AtHPPDm-F383Y-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-F383Y-02)、AtHPPDm-F372A-F383Y-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-F372A-F383Y-02)、AsHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPD-02)、AsHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AsHPPDm-F372A-02)、AtHPPDm-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-02)、およびAtHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したシロイヌナズナT植物(AtHPPDm-F372A-02)を得た。上の実施例1の項目6に記載の方法に従い、前述のシロイヌナズナT植物および野生型シロイヌナズナ植物(CK)(播種から18日後)に、トプラメゾンを3つの異なる濃度(すなわち、25 g ai/ha (1倍圃場濃度、1×)、100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを5つの異なる濃度(すなわち、35g ai/ha(半倍圃場濃度、0.5×)、70g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、140 g ai/ha(2倍圃場濃度、2×)、280 g ai/ha (4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))(それらのうち、シロイヌナズナ由来の変異HPPDを導入したシロイヌナズナT植物への散布には、0×、0.5×および1×の濃度のイソキサフルトールを使用し、エンバク由来の変異HPPDを導入したシロイヌナズナT植物への散布には、0×、2×および4×の濃度のイソキサフルトールを使用した)で、ならびにメソトリオンを5つの異なる濃度(すなわち、52.5g ai/ha(半倍圃場濃度、0.5×)、105g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、210 g ai/ha (2倍圃場濃度、2×)、420 g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)および0g ai/ha(水、0×))(それらのうち、シロイヌナズナ由来の変異HPPDを導入したシロイヌナズナT植物への散布には、0×、0.5×および1×の濃度のメソトリオンを使用し、エンバク由来の変異HPPDを導入したシロイヌナズナT植物への散布には、0×、2×および4×の濃度のメソトリオンを使用した)でそれぞれ散布して、シロイヌナズナの除草剤耐性を検出した。実験結果を表13~表15に示す。
【0252】
【表18】
【0253】
【表19】
【0254】
【表20】
【0255】
表13~表15の結果から、組合せ変異F372A+F415WまたはF372A+F383Yを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナT植物、および単一位置変異F372Aを有するHPPD遺伝子を導入したシロイヌナズナT植物は、HPPD阻害除草剤に対して実質的に異なる耐性を示さなかったことが示されている。したがって、HPPDアミノ酸配列の任意の2つの位置における全ての組合せ変異が、HPPD阻害除草剤に対する相乗的に向上した耐性を植物に付与できるわけではないことがわかり、また、本発明のHPPDアミノ酸配列の372位+383位における変異によって生じる相乗的に向上した技術的効果が予想外であることも示されている。
【0256】
実施例6:遺伝子導入ダイズ植物の獲得および検証
1.組換え発現ベクターを用いたアグロバクテリウムの形質転換
実施例2の項目2の、SbHPPD-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11758、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11759、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11760、およびSbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を含有する組換え発現ベクターDBN11761、ならびに実施例1の項目3の対照組換え発現ベクターDBN11726Nをそれぞれ、液体窒素法を用いてアグロバクテリウムLBA4404(インビトロジェン、米国シカゴ、CAT:18313-015)に形質転換した。この形質転換は以下の形質転換条件の下で行った。100μLのアグロバクテリウムLBA4404、および3μLのプラスミドDNA(組換え発現ベクター)を液体窒素に10分間入れ、37℃の温水に10分間浸した。形質転換したアグロバクテリウムLBA4404をLBチューブに接種し、温度28℃、回転数200rpmの条件下で2時間培養した後、リファンピシン50mg/Lおよびスペクチノマイシン50mg/Lを含有するLBプレートに広げて陽性単一クローンを増殖させ、単一クローンを取り出して培養し、そのプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドを配列決定法によって同定した。その結果、組換え発現ベクターDBN11758、DBN11759、DBN11760、DBN11761およびDBN11726Nの構造が、完全に正しいことが示された。
【0257】
2.遺伝子導入ダイズ植物の獲得
組換え発現ベクターDBN11758、DBN11759、DBN11760、DBN11761およびDBN11726NのT-DNA(ゴマノハグサ・モザイク・ウイルス34Sエンハンサー配列、アブラナ真核生物伸長因子遺伝子1α(Tsf1)プロモーター配列、シロイヌナズナ葉緑体輸送ペプチド配列、5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素遺伝子、エンドウマメRbcS遺伝子ターミネーター配列、シロイヌナズナユビキチン10遺伝子プロモーター配列、SbHPPD-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーター配列、カリフラワー・モザイク・ウイルス35Sプロモーター配列、ホスフィノトリシン-N-アセチル基転移酵素遺伝子、およびカリフラワー・モザイク・ウイルス35Sターミネーター配列を含む)をダイズ染色体に導入するために、従来のアグロバクテリウム感染法に従い、無菌培養したダイズ変種Zhonghuang13の子葉節組織を、本実施例の項目1に記載のアグロバクテリウムと共培養することにより、SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物、および対照ベクターDBN11726Nを導入したダイズ植物を得た。
【0258】
アグロバクテリウム媒介のダイズ形質転換では、簡単に述べると、ダイズ発芽培地(B5塩3.1g/L、B5ビタミン、スクロース20g/L、および寒天8g/L、pH5.6)でダイズ成熟種子を発芽させ、次いで、温度25±1℃、光周期(明期/暗期)16時間/8時間の条件下で培養した。発芽の4~6日後に、明緑色の子葉節で膨らんだダイズ無菌実生を採取し、子葉節から3~4ミリメータ下の胚軸を切り取り、子葉下軸を縦に切断し、頂芽、側芽、および種子根を除去した。メスの背を用いて子葉節に創傷を作り、創傷子葉節組織にアグロバクテリウム懸濁液を接触させた。ここで、アグロバクテリウムは、SbHPPD-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、またはSbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を、創傷子葉節組織に転移させることができる(工程1:感染工程)。この工程では、アグロバクテリウム懸濁液(OD660=0.5~0.8、感染培地(MS塩2.15g/L、B5ビタミン、スクロース20g/L、グルコース10g/L、アセトシリンゴン(acetosyringone:AS)40mg/L、2-モルホリンエタンスルホン酸(2-morpholine ethanesulfonic acid:MES)4g/L、およびゼアチン(zeatin:ZT)2mg/L、pH5.3))に子葉節組織を好ましくは浸漬して、接種を開始した。その子葉節組織を、アグロバクテリウムと一定期間(3日間)、共培養した(工程2:共培養工程)。好ましくは、感染工程の後、固体培地(MS塩4.3g/L、B5ビタミン、スクロース20g/L、グルコース10g/L、MES4g/L、ZT2mg/L、および寒天8g/L、pH5.6)で子葉節組織を培養した。この共培養段階の後、任意選択で「回収」工程を設けることができ、この工程では、アグロバクテリウムの増殖を阻害するために少なくとも1つの抗生物質(セファロスポリン150~250mg/L)を添加し、植物形質転換体のための選択剤を添加していない回収培地(B5塩3.1g/L、B5ビタミン、MES1g/L、スクロース30g/L、ZT2mg/L、寒天8g/L、セファロスポリン150mg/L、グルタミン酸100mg/L、およびアスパラギン酸100mg/L、pH5.6)を使用した(工程3:回収工程)。好ましくは、子葉節から再生された組織塊を、抗生物質を含有し選択剤を含有しない固体培地で培養して、アグロバクテリウムを排除し、感染細胞のための回収段階を提供した。その後、子葉節から再生された組織塊を、選択剤(グリホサート)を含有する培地で培養し、増殖途中の形質転換カルスを選択した(工程4:選択工程)。好ましくは、選択剤を含有するスクリーニング固体培地(B5塩3.1g/L、ビタミンB5、MES1g/L、スクロース30g/L、6-ベンジルアデニン(6-benzyladenine:6-BAP)1mg/L、寒天8g/L、セファロスポリン150mg/L、グルタミン酸100mg/L、アスパラギン酸100mg/L、およびN-(ホスホノメチル)グリシン0.25mol/L、pH5.6)において、子葉節から再生された組織塊を培養することによって、形質転換細胞を選択的に増殖させた。次いで、形質転換細胞から植物を再生させた(工程5:再生工程)。好ましくは、選択剤を含有する培地で増殖させた子葉節から再生された組織塊を、固体培地(B5分化培地およびB5発根培地)で培養して、植物を再生した。
【0259】
スクリーニングした抵抗性組織をB5分化培地(B5塩3.1g/L、B5ビタミン、MES1g/L、スクロース30g/L、ZT1mg/L、寒天8g/L、セファロスポリン150mg/L、グルタミン酸50mg/L、アスパラギン酸50mg/L、ジベレリン1mg/L、オーキシン1mg/L、およびN-(ホスホノメチル)グリシン0.25mol/L、pH5.6)に移し、分化のため25℃で培養した。分化した実生をB5発根培地(B5塩3.1g/L、B5ビタミン、MES1g/L、スクロース30g/L、寒天8g/L、セファロスポリン150mg/L、インドール-3-酪酸(indole-3-butyric acid:IBA)1mg/L)に移し、その発根培地において25℃で培養して高さ約10cmにした後、ガラス温室に移して結実させた。温室では、26℃で16時間、当該植物を培養し、次いで20℃で1日8時間培養した。
【0260】
SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、および対照ベクターDBN11726Nを導入したダイズT植物を、栽培し繁殖させるために温室内に移植して、それぞれに対応する遺伝子導入T植物を得た。
【0261】
3.TaqManを用いた遺伝子導入ダイズ植物の検証
SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、および対照ベクターDBN11726Nを導入したダイズT植物から葉100mgを試料として採取し、そのゲノムDNAをキアゲンのDNeasy Plant Maxi Kitを用いて抽出し、変異HPPD遺伝子のコピー数を決定するために、TaqManプローブ蛍光定量PCR法によりEPSPS遺伝子のコピー数を検出した。同時に、野生型ダイズ植物を対照として使用し、上述の方法に従って検出および解析を行った。実験には3回の繰り返しを設定し、平均化した。
【0262】
EPSPS遺伝子のコピー数を検出する具体的な方法は、以下の通りであった。
【0263】
工程11:SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、対照ベクターDBN11726Nヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、および野生型ダイズ植物から葉100mgを採取し、液体窒素を使用して乳鉢でホモジネートに粉砕し、各試料について3回の繰り返しを行った。
【0264】
工程12:キアゲンのDNeasy Plant Mini Kitを使用し、製品マニュアルに記載された特定の方法で、上述の試料のゲノムDNAを抽出した。
【0265】
工程13:NanoDrop 2000(サーモ・サイエンティフィック)を使用して、上述の試料のゲノムDNAの濃度を検出した。
【0266】
工程14:上述の各試料のゲノムDNAの濃度を、80~100ng/μLの範囲の同じ値に調整した。
【0267】
工程15:Taqmanプローブ蛍光定量PCR法を用いて、試料のコピー数を特定した。ここでは、コピー数が既知で特定されている試料を標準とし、野生型ダイズ植物の試料を対照とし、各試料について3回の繰り返しを行って平均化した。蛍光定量PCRプライマーおよびプローブの配列は、以下の通りであった。
【0268】
EPSPS遺伝子配列の検出には、以下のプライマーおよびプローブを使用した。
プライマー1:配列表の配列番号232に記載のctggaaggcgaggacgtcatcaata
プライマー2:配列表の配列番号233に記載のtggcggcattgccgaaatcgag
プローブ1:配列表の配列番号234に記載のatgcaggcgatgggcgcccgcatccgta
PCR反応系:
JumpStart(商標)Taq ReadyMix(商標)(シグマ) 10μL
50×プライマー/プローブ混合物 1μL
ゲノムDNA 3μL
水(ddHO) 6μL
50×プライマー/プローブ混合物は、濃度1mMの各プライマー45μL、濃度100μMのプローブ50μL、および1×TE緩衝液860μLを含み、アンバーチューブに入れて4℃で保存した。
PCR反応条件:
工程
温度
時間
21
95℃
5分
22
95℃
30秒
23
60℃
1分
24
工程22に戻り、40回繰り返す
ソフトウェアSDS2.3(アプライド・バイオシステムズ)を使用し、データを解析した。
【0269】
EPSPS遺伝子のコピー数に関する実験結果を解析することにより、さらに、SbHPPD-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列、および対照ベクターDBN11726Nが全て、検出されたダイズ植物の染色体に組み込まれており、SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、対照ベクターDBN11726Nヌクレオチド配列を導入したダイズT植物の全てが、単一コピーの遺伝子導入ダイズ植物となったことが実証された。
【0270】
4.遺伝子導入ダイズ植物のHPPD阻害除草剤に対する除草剤耐性の検出
SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、対照ベクターDBN11726Nヌクレオチド配列を導入したダイズT植物、および野生型ダイズ植物(実生段階のV3~V4)に、トプラメゾンを3つの異なる濃度(すなわち、25g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、100g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、イソキサフルトールを3つの異なる濃度(すなわち、70g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、280g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))で、ならびにメソトリオンを3つの異なる濃度(すなわち、105g ai/ha(1倍圃場濃度、1×)、420g ai/ha(4倍圃場濃度、4×)、および0g ai/ha(水、0×))でそれぞれ散布して、ダイズ植物の除草剤耐性を検出した。実施例1の項目6の方法に従って、散布の7日後(7DAT)に、除草剤による各植物の損傷度を統計的に解析し、それに応じてスコアリングおよび抵抗性評価を行った。SbHPPD-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物は合計2つの系統(S1およびS2)からなり、SbHPPDm-F372A-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物は合計2つの系統(S3およびS4)からなり、SbHPPDm-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物は合計2つの系統(S5およびS6)からなり、SbHPPDm-F372A-F383W-02ヌクレオチド配列を導入したダイズ植物は合計2つの系統(S7およびS8)からなり、対照ベクターDBN11726Nヌクレオチド配列を導入したダイズ植物は合計1つの系統(S9)からなり、野生型ダイズ植物は合計1つの系統(CK1)からなった。各系統から8株の植物を選択し、検出した。その結果を表16~表18に示す。
【0271】
【表21】
【0272】
【表22】
【0273】
【表23】
【0274】
表16~表18の結果から以下のことが示されている。(1)未変異のHPPD遺伝子を導入したダイズ植物および野生型ダイズ植物と比較して、ダイズ植物SbHPPDm-F372A-02、SbHPPDm-F383W-02およびSbHPPDm-F372A-F383W-02は、異なる濃度のHPPD阻害除草剤に対して程度が異なる耐性を産生することができたが、DBN11726Nは、HPPD阻害除草剤に対する耐性がなかった。(2)372位および383位に組合せ変異を有するHPPD遺伝子(F372A+F383W)を導入したダイズ植物は、単一位置変異F372AまたはF383Wを有するHPPD遺伝子を導入したダイズ植物よりも良好な除草剤耐性を示し、さらに、除草剤耐性の効果が相乗的に向上した。このことは、変異させたHPPD(F372A+F383W)が、HPPD阻害除草剤に対する相乗的に向上した耐性を遺伝子導入ダイズ植物に付与し得ることを示しており、さらに、HPPDアミノ酸配列の372位および383位における組合せ変異によって付与されるHPPD阻害除草剤に対する植物の除草剤耐性の重要性および安定性を示している。
【0275】
結論として、本発明は、様々な種由来のヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼポリペプチドの372位および383位における組合せ変異が、HPPD阻害除草剤のピラゾリネート類、イソキサゾール類およびトリケトン類に対する相乗的に向上した耐性を植物に付与し得、特に、4倍の圃場濃度のトプラメゾン、イソキサフルトールまたはメソトリオンに対する耐性を遺伝子導入ダイズ植物に付与し得ることを初めて開示する。したがって、本発明には、植物における広域施用の見込みがある。
【0276】
最後に、上記の全ての実施例は、本発明を限定するためではなく、本発明の実施形態を説明するためにのみ用いられていることに留意されたい。好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明の実施形態は、本発明の技術的解決法の趣旨および範囲から逸脱することなく、等価的に改変または置換され得ることを当業者は理解すべきである。
図1
図2
図3
【配列表】
2025500884000001.app
【国際調査報告】