(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】細胞傷害性自然リンパ球系細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20250107BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20250107BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250107BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250107BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20250107BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20250107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/09 100
A61K35/26
A61P35/00
A61K31/436
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535829
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 US2022081886
(87)【国際公開番号】W WO2023115049
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523190284
【氏名又は名称】ウモジャ バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】オハラ サマンサ
(72)【発明者】
【氏名】シャレンバーグ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】クリスマン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド テイシャ
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】コニング ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ガルベ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリーデ デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リュー ビョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA46
4C086AA01
4C086AA02
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
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4C087BB37
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
制御された拡大増殖および/または活性のために操作された、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞を含む細胞集団のための組成物および方法が提供され、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞は、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含む。本願のサイトカイン受容体は、第1の二量体化ドメイン、第1の膜貫通ドメインおよびインターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとしての合成ガンマ鎖ポリペプチドと、第2の二量体化ドメイン、第2の膜貫通ドメイン、ならびにインターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとしての合成ベータ鎖ポリペプチドとを含み得る。本願の非生理学的リガンドは、細胞傷害性自然リンパ球系細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された拡大増殖および/または活性のために操作された、操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞であって、該操作されたリンパ球または前駆細胞が、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含み、
該サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む、合成ガンマ鎖ポリペプチド、および
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインまたはインターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RA)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む、合成アルファ鎖ポリペプチドまたは合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
該合成サイトカイン受容体への該非生理学的リガンドの結合が、該操作されたCIL細胞内で該合成サイトカイン受容体を活性化して、細胞集団内の該操作されたCIL細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する、
前記操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞。
【請求項2】
前記サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む、合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む、合成ベータ鎖ポリペプチド
を含む、請求項1記載の操作されたCIL細胞。
【請求項3】
前記第1の二量体化ドメインおよび前記第2の二量体化ドメインが細胞外ドメインである、請求項1または請求項2記載の操作されたCIL細胞。
【請求項4】
前記合成ガンマ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、前記第1の二量体化ドメインと、前記第1の膜貫通ドメインと、前記インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含み、前記合成ベータ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、前記第2の二量体化ドメインと、前記第2の膜貫通ドメインと、前記細胞内ドメインとを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項5】
前記IL-2RG細胞内ドメインが、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:1に記載のポリペプチド配列を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項6】
前記第1の膜貫通ドメインが、前記IL-2RG膜貫通ドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項7】
前記IL-2RG膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8もしくは31と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:8もしくは31に記載のポリペプチド配列を含む、請求項6記載の操作されたCIL細胞。
【請求項8】
前記ベータ鎖細胞内ドメインが、前記IL-2RB細胞内ドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項9】
前記IL-2RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:2と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:2に記載のポリペプチド配列を含む、請求項8記載のCIL細胞。
【請求項10】
前記ベータ鎖細胞内ドメインが、前記IL-7RB細胞内ドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項11】
IL-7RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:3と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:3に記載のポリペプチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項12】
前記ベータ鎖細胞内ドメインが、前記IL-21RB細胞内ドメインを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項13】
前記IL-21RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:4と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:4に記載のポリペプチド配列を含む、請求項12記載の操作されたCIL細胞。
【請求項14】
前記合成アルファ鎖ポリペプチドが、前記IL-9RA細胞内ドメインを含む、請求項2~7のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項15】
前記IL-9RA細胞内ドメインが、SEQ ID NO:51と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:51に記載のポリペプチド配列を含む、請求項14記載の操作されたCIL細胞。
【請求項16】
前記第2の膜貫通ドメインが、前記細胞内ドメインと同じポリペプチド由来の膜貫通ドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項17】
前記第2の膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:35もしくは36と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:35もしくは36に記載のポリペプチド配列を含む、IL-2RBの膜貫通ドメインである、請求項1~9および16記載の操作されたCIL細胞。
【請求項18】
前記合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:8または31に記載の配列を含むIL-2RG TMドメインと、SEQ ID NO:1に記載の配列を含むIL-2RG細胞内ドメインとを含有し、
前記合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:35または36に記載の配列を含むIL-2RB TMドメインと、SEQ ID NO:2に記載の配列を含むIL-2RB細胞内ドメインとを含有する、
請求項1~9、16および17のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項19】
前記第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
前記非生理学的リガンドが、ラパマイシンもしくはラパログである、
請求項1~18のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項20】
前記第1の二量体化ドメインがFKBPであり、かつ前記第2の二量体化ドメインがFRBである、請求項19記載の操作されたCIL細胞。
【請求項21】
前記第1の二量体化ドメインがFRBであり、かつ前記第2の二量体化ドメインがFKBPである、請求項19記載の操作されたCIL細胞。
【請求項22】
前記FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、請求項19~21のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項23】
前記FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7に記載のポリペプチド配列を含む、請求項19~21のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項24】
前記第1の二量体化ドメインおよび前記第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびカルシニューリンドメインから選択されるから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
前記非生理学的リガンドが、FK506もしくはその類似体である、
請求項1~18のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項25】
前記FKBPドメインが、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:30と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項26】
前記FKBPドメインが、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:30に記載のポリペプチド配列を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項27】
前記合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有し、かつ前記合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1~9および16~26のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項28】
前記合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列を有し、かつ前記合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1~9および16~27のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項29】
前記第1の二量体化ドメインおよび前記第2の二量体化ドメインが、
(i)サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP);
(ii)シクロフィリンA(CypA);または
(iii)ジャイレースB(CyrB)
から選択されるホモ二量体化ドメインであり、
かつ前記非生理学的リガンドが、それぞれ
(i)FK1012、AP1510、AP1903もしくはAP20187もしくはその類似体;
(ii)シクロスポリン-A(CsA)もしくはその類似体;または
(iii)クーママイシンもしくはその類似体
である、請求項1~18のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項30】
前記CIL細胞が、ラパマイシン媒介性mTOR阻害に対して耐性である、請求項1~29のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項31】
前記細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、前記非生理学的リガンドに結合する細胞質ゾルポリペプチドを発現し、任意で、該細胞質ゾルポリペプチドが細胞質ゾルFRBドメインである、請求項1~30のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項32】
前記非生理学的リガンドが、ラパマイシンまたはラパログであり、かつ前記細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、細胞質ゾルFRBドメインまたはその変異体を発現する、請求項1~31のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項33】
前記細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、請求項26または請求項27記載の操作されたCIL細胞。
【請求項34】
前記細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも98%同一のポリペプチド配列を含む、請求項26または請求項27記載の操作されたCIL細胞。
【請求項35】
前記CIL細胞が、FKBP12の発現を減少させる破壊されたFKBP12遺伝子を含む、請求項1~34のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項36】
前記CIL細胞がFKBP12遺伝子のノックアウトを含む、請求項1~35のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項37】
前記CIL細胞のゲノムに挿入された、前記合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列を、前記CIL細胞が含む、請求項1~36のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項38】
前記合成サイトカイン受容体をコードする前記ヌクレオチド配列が、前記CIL細胞のゲノム内の非標的遺伝子座に挿入される、請求項37記載の操作されたCIL細胞。
【請求項39】
前記合成サイトカイン受容体をコードする前記ヌクレオチド配列が、前記CIL細胞の内因性遺伝子に挿入される、請求項37記載の操作されたCIL細胞。
【請求項40】
前記挿入が、前記遺伝子座内の前記内因性遺伝子の発現を減少させる、請求項39記載の操作されたCIL細胞。
【請求項41】
前記挿入が、前記遺伝子座内の前記内因性遺伝子をノックアウトする、請求項39または請求項40記載の操作されたCIL細胞。
【請求項42】
前記挿入が、相同組換え修復によるものである、請求項39~41のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項43】
前記内因性遺伝子が、ハウスキーピング遺伝子、血液系統特異的遺伝子座または免疫関連遺伝子である、請求項39~42のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項44】
前記内因性遺伝子がハウスキーピング遺伝子であり、かつ該ハウスキーピング遺伝子が、真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ユビキチンC(UBC)およびアクチンベータ(ACTB)から選択される、請求項43記載の操作されたCIL細胞。
【請求項45】
前記内因性遺伝子が血液系統特異的遺伝子座であり、かつ該血液系統特異的遺伝子座が、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型(PTPRC)、IL2RGおよびIL2RBから選択される、請求項43記載の操作されたCIL細胞。
【請求項46】
前記免疫関連遺伝子が、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子、T細胞受容体アルファ定常(TRAC)遺伝子およびシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPA)遺伝子から選択される、請求項43記載の操作されたCIL細胞。
【請求項47】
前記CIL細胞がB2Mノックアウトを含む、請求項1~46のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項48】
前記CIL細胞がB2MノックアウトおよびFKBP12ノックアウトを含む、請求項1~47のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項49】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む、請求項1~48のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞。
【請求項50】
前記CARが抗FITC CARである、請求項49記載の操作されたCIL細胞。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか一項記載の操作されたCIL細胞を含む細胞集団。
【請求項52】
(i)内因性遺伝子内の標的部位を標的とするガイドRNA(gRNA)と、(ii)RNAガイド付エンドヌクレアーゼと、(iii)非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと、CIL細胞の集団を接触させる工程であって、それによって、該ヌクレオチド配列を該内因性遺伝子に挿入する、工程
を含む、合成サイトカイン受容体を発現するようにCIL細胞を遺伝的に操作する方法であって、
該サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む、合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む、合成ベータ鎖ポリペプチド
を含む、
前記方法。
【請求項53】
前記ヌクレオチド配列が、相同組換え修復(HDR)を介して挿入される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記ベクターが、5'から3'に向かって、(a)前記標的部位の上流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列と、(b)非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列と、(c)下流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列とを含む核酸を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記ヌクレオチド配列が、非相同末端結合(NHEJ)を介して挿入される、請求項52記載の方法。
【請求項56】
前記RNAガイド付エンドヌクレアーゼが、Casエンドヌクレアーゼ、MadエンドヌクレアーゼおよびCpf1エンドヌクレアーゼから選択される、請求項52~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
前記RNAガイド付エンドヌクレアーゼが、Cas9またはMad7である、請求項52~56のいずれか一項記載の方法。
【請求項58】
前記内因性遺伝子が、B2M、TRACおよびSIRPAから選択される、請求項52~57のいずれか一項記載の方法。
【請求項59】
前記内因性遺伝子がB2Mである、請求項52~58のいずれか一項記載の方法。
【請求項60】
前記gRNAが、SEQ ID NO:18に記載の配列を含む、請求項52~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
前記標的部位の上流に位置する領域と相同な前記ヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含み、かつ下流に位置する領域と相同な前記ヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項54~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
前記合成サイトカイン受容体をコードする前記ヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:37に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、ガンマ鎖をコードする第1の核酸配列と、SEQ ID NO:38に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、ベータ鎖をコードする第2の核酸配列とを含む、請求項52~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
前記第1の核酸配列および第2の核酸配列が、切断可能なリンカーまたはIRESによって分離される、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記切断可能なリンカーが、任意でSEQ ID NO:42に記載の、タンパク質定量レポーターリンカー(PQR)である、請求項63記載の方法。
【請求項65】
非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードする前記ヌクレオチド配列が、異種プロモーターの機能的な制御下にある、請求項52~64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
前記異種プロモーターが、EF1αプロモーターまたはMNDプロモーターである、請求項65記載の方法。
【請求項67】
前記合成サイトカイン受容体をコードする前記ヌクレオチド配列が、ポリアデニル化配列を含む、請求項52~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
前記組換えベクターが、SEQ ID NO:40に記載の配列、またはSEQ ID NO:40に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項52~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
ラパマイシン媒介性mTOR阻害に対して耐性であるようにCIL細胞の前記集団を操作する工程を含む、請求項52~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
ラパマイシンに対して耐性であるようにCIL細胞の前記集団を操作する工程が、FKBP12遺伝子をノックアウトすることを含む、請求項69記載の方法。
【請求項71】
CIL細胞の前記集団を、前記FKBP12遺伝子内の標的部位を標的とするガイドRNA(gRNA)と接触させる工程をさらに含む、請求項69記載の方法。
【請求項72】
前記gRNAが、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:21に記載の配列を含むgRNAから選択される1つまたは複数のgRNAを含む、請求項69記載の方法。
【請求項73】
前記gRNAが、2または3つのgRNAを含む、gRNAのプールである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
キメラ抗原受容体(CAR)をCIL細胞の前記集団に導入する工程をさらに含む、請求項52~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
前記CARが抗FITC CARである、請求項74記載の方法。
【請求項76】
請求項52~75のいずれか一項記載の方法によって産生された細胞集団。
【請求項77】
請求項1~37および76のいずれか一項記載の細胞集団を含む薬学的組成物。
【請求項78】
操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)を拡大増殖させる方法であって、請求項1~50のいずれか一項記載のCILを、前記合成サイトカイン受容体の前記非生理学的リガンドと接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項79】
対象の癌を治療する方法であって、請求項1~50のいずれか一項記載の操作されたCIL、請求項76記載の細胞集団、または請求項77記載の薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項80】
対象の癌を治療する方法であって、請求項1~50のいずれか一項記載の操作されたCIL、請求項76記載の細胞集団、または請求項77記載の薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項81】
前記CIL、CILの集団、または前記薬学的組成物を投与する前記工程の前に、前記対象がリンパ球枯渇療法を施されたことがない、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記CILが、前記対象において癌細胞を標的とするCARを発現する、請求項80または請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記CARが抗FITC CARであり、かつ前記対象における癌細胞をタグ付けするために前記対象にFITC-リガンドが投与されており、該リガンドが、腫瘍上に発現される分子に特異的に結合する、請求項82記載の方法。
【請求項84】
前記FITC-リガンドがFITC-フォレートである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記非生理学的リガンドがラパマイシンまたはラパマイシン類似体であり、任意で、該ラパマイシン類似体がラパログである、請求項84記載の方法。
【請求項86】
前記非生理学的リガンドが、5nM~200nM、5nM~150nM、5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~20nM、5nM~10nM、10nM~200nM、10nM~150nM、10nM~100nM、10nM~50nM、10nM~20nM、20nM~200nM、20nM~150nM、20nM~100nM、20nM~50nM、50nM~200nM、50nM~150nM、50nM~100nM、100nM~200nM、100nM~150nM、および150nM~200nMの濃度で接触させられる、請求項78~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
前記非生理学的リガンドが、10nMまたは約10nMの濃度で接触させられる、請求項78~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
前記非生理学的リガンドが、100nMまたは約100nMの濃度で接触させられる、請求項78~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
請求項1~50のいずれか一項記載の操作されたCIL、請求項76記載の細胞集団、または請求項77記載の薬学的組成物と癌細胞を接触させる工程を含む、癌細胞を殺傷するまたは癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項90】
対象においてインビボで行われる、請求項89記載の癌細胞を殺傷するまたは癌細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項91】
請求項1~50のいずれか一項記載の操作されたCIL、請求項76記載の細胞集団、または請求項77記載の薬学的組成物と、その必要がある対象に投与するための説明書とを含むキット。
【請求項92】
前記非生理学的リガンドを含む容器と、前記細胞集団の投与後に前記非生理学的リガンドを前記対象に投与するための説明書とをさらに含む、請求項91記載のキット。
【請求項93】
前記対象が癌を有する、請求項91または92記載のキット。
【請求項94】
前記非生理学的リガンドが、1mg~100mg、任意で10~100mg、任意で10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mgもしくは約10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、または前述のいずれかの間の任意の値の用量で投与される、請求項89もしくは請求項90記載の方法または請求項91~93のいずれか一項記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/291,235号、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/291,237号、2022年7月27日に出願された米国仮出願第63/392,862号、2022年7月27日に出願された米国許出願第63/392,864号、2022年9月28日に出願された米国仮出願第63/411,056号、2022年9月28日に出願された米国仮出願第63/411,063号、2022年11月4日に出願された米国仮出願第63/422,848号、2022年11月4日に出願された米国仮出願第63/422,830号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
配列表の参照による組入れ
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は、2022年12月16日に作成された260132000140SeqList.xmlと題されたファイルとして提供され、そのサイズは85,737バイトである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
技術分野
本発明は、細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)などの操作されたリンパ球、そのような細胞を作製する方法、および免疫療法にそれらを使用する方法に一般に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)は、癌免疫療法を含む免疫療法に使用され得る免疫細胞のクラスである。CILの一種には、細胞表面タンパク質CD56(CD56+)および他のマーカーについて陽性であり、かつ細胞傷害活性を有すると一般に同定されている細胞の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞がある。
【0005】
免疫療法に使用するためのCIL細胞(例えば、NK細胞)は、末梢血または臍帯血などの一次供給源から得ることができる。CIL細胞の人工供給源には、適切な分化条件に供した場合に無制限の増殖と他の細胞型への分化とが可能になるように誘導された、体細胞(一般に線維芽細胞または末梢血単核細胞[PBMC])に由来する細胞である人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性幹細胞、およびヒト胚性幹細胞(hESC)が含まれる。CIL細胞は、iPSCを造血幹細胞(HSC)とも呼ばれる造血前駆細胞(HPC)に、HPCを共通リンパ球系前駆細胞(CLP)に、次いで、CLPをiPSC由来細胞傷害性自然リンパ球系細胞(iPSC-CIL)と呼ばれるCIL細胞に順次分化させることによって、iPSCから誘導され得る。一般に、iPSC-CIL細胞は、NK細胞と同様に、CD56を発現し、細胞傷害活性を有するが、iPSC-CIL細胞は、表現型および他の点でNK細胞と異なり得る。
【0006】
初代CIL細胞またはiPSC-CIL細胞は、得られた後に、患者への投与前にエクスビボで拡大増殖され得る。CIL細胞をエクスビボで拡大増殖させる方法は、細胞をサイトカインであるインターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン15(IL-15)と接触させることを含む。公知の拡大増殖プロトコルは、IL-2またはIL-15を外因性可溶性因子、ビーズ結合因子またはフィーダー細胞と一般に組み合わせる。
【0007】
製造目的のためのCIL細胞拡大増殖のための効果的な方法では、そのような因子またはフィーダー細胞が必要とされることが公知である。そのような方法は、拡大増殖を促進するための他の因子をCIL細胞にさらに提供し得る。例えば、抗原提示細胞(APC)は、人工APC(aAPC)を作製するように遺伝的に操作され得る。拡大増殖は、インターロイキン15(IL-15)もしくはインターロイキン21(IL-21)を分泌するように、または組換え膜結合IL-15(mbIL-15)もしくは膜結合IL-21(mbIL-21)を提示するようにaAPCを操作することによって一般にさらに増強される。要約して言えば、効果的なCIL細胞拡大増殖のための公知の方法は、多様な外因性可溶性因子およびフィーダー細胞に基づく因子に一般に依存する。
【0008】
胚様体(EB)、またはフィーダー細胞を用いた単一細胞iPSCの培養のいずれかを使用して、iPSCをCD34+HPCに分化させる方法が公知である。次いで、幹細胞因子(SCF)、骨形成タンパク質4(BMP4)および血管内皮増殖因子(VEGF)の組合せを従来通り用いて、CD34+HPCをCLPに分化させてもよい。CLPからCILへの公知の分化方法は、CLPをSCF、インターロイキン17(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)および任意でインターロイキン(IL-3)と接触させることを一般に伴う。次いで、既に記載された方法を使用して、得られたiPSC-CIL細胞を拡大増殖させてもよい。
【0009】
操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞に関連する組成物および方法、そのような細胞を作製する方法、ならびにそれらを免疫療法に使用する方法が当技術分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、本発明者らによる、合成サイトカイン受容体を発現するように操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞(例えば、NK細胞)などのリンパ球の予想外の特性の驚くべき発見に部分的に基づく。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体を発現するように操作されたCIL細胞(例えば、NK細胞)などのリンパ球は、受容体の同族非生理学的リガンドに応答して拡大増殖し、他の供給源由来のCIL細胞などの操作されていないリンパ球以上の機能活性などの他の望ましい特徴を有し得る。
【0011】
本明細書において記載される方法によれば、CIL細胞などのリンパ球は、初代細胞、または細胞傷害性自然リンパ球系(iPSC-CIL)細胞などのiPSC由来リンパ球由来の所望の機能的特徴を有して大量に生成され得る。ある特定の態様の非限定的な利点には、本明細書において記載されるCIL細胞(例えば、NK細胞)などの操作されたリンパ球が、外因性因子を使用せずに、例えば、IL-2、IL-7、IL-15および/またはIL-21を用いずに拡大増殖される能力が含まれ得る。CIL細胞(例えば、NK細胞)の拡大増殖は、CIL細胞に対する様々な外因性刺激を有することに一般に依存することが関連技術分野において周知であるため、本明細書において記載されるように、これらの刺激のうちの1つまたは複数を省略する操作されたCIL細胞の拡大増殖は驚くべきことであり、予想外である。ある特定の態様では、本明細書において開示される方法は、操作されたCIL細胞などの操作されたリンパ球に他の拡大増殖因子を提供することによって拡大増殖をさらに増強し得る。本明細書において記載される操作されたCIL細胞などの操作されたリンパ球、および関連する組成物は、エクスビボ拡大増殖を用いた免疫療法に使用され得る。
【0012】
本明細書において記載されるさらなる非限定的な利点には、合成サイトカイン受容体を発現しないリンパ球(例えば、NK細胞などのCIL細胞)と比較して、増殖能力、老化に対する耐性、細胞傷害活性の増加が含まれ得る。場合によっては、利点には、NK細胞に特徴的な表面マーカーの発現の改善も含まれ得る。
【0013】
提供される態様の中には、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含む操作されたリンパ球または前駆細胞があり、サイトカイン受容体は、(i)第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、および(ii)第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインまたはインターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RA)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成アルファ鎖ポリペプチドまたは合成ベータ鎖ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、操作されたリンパ球または前駆細胞内の合成サイトカイン受容体の操作は、操作された細胞の制御された分化および/または拡大増殖をもたらす。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体への非生理学的リガンドの結合は、操作されたリンパ球または前駆細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、細胞集団内の操作されたリンパ球および/または前駆細胞の分化および/または拡大増殖を誘導する。
【0014】
いくつかの態様では、操作された細胞は、造血前駆細胞(HPC;造血幹細胞(HSC)とも呼ばれる)または共通リンパ球系前駆細胞(CLP)である操作された前駆細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、細胞傷害性自然リンパ球(CIL)、NK細胞またはT細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、γδ T細胞またはαβ T細胞である。特定の態様では、操作された細胞は、NK細胞などのCILである。
【0015】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含む操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞が本明細書において提供され、サイトカイン受容体は、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、および第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインまたはインターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RA)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成アルファ鎖ポリペプチドまたは合成ベータ鎖ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体は、操作されたCILの制御された拡大増殖および/または活性のために、操作されたCIL細胞に入るように操作される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体への非生理学的リガンドの結合は、操作されたCIL細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、細胞集団内の操作されたCIL細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する。
【0016】
提供される態様のいずれかによる操作されたリンパ球または前駆細胞を含有する細胞集団も本明細書において提供される。提供される態様のいずれかによる操作されたCIL細胞を含有する細胞集団も本明細書において提供される。合成サイトカイン受容体をコードする核酸またはベクターを細胞に導入することによって、合成サイトカイン受容体を発現するように細胞を遺伝的に操作する方法も本明細書において提供される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、細胞内の内因性遺伝子に挿入される。そのような態様では、方法は、リンパ球または前駆細胞、例えば、CIL細胞の集団を、内因性遺伝子内の標的部位を標的とするガイドRNA(gRNA)、(ii)RNAガイド付エンドヌクレアーゼ、および(iii)非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと接触させる工程であり、それによって、ヌクレオチド配列を内因性遺伝子に挿入する、該工程を含む。本明細書において記載されるいずれかを含む、合成サイトカイン遺伝子の遺伝子編集および挿入のための任意の方法を使用することができる。いくつかの態様では、挿入方法は、相同組換え修復(HDR)によるものである。提供される方法のいずれかによって産生される細胞集団も提供される。
【0017】
提供される操作された細胞のいずれかを合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドと接触させることによって、操作されたCIL細胞などの操作されたリンパ球を拡大増殖させる方法も提供される。提供される操作された細胞集団のいずれかを合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドと接触させることによって、操作されたCIL細胞などの操作されたリンパ球を拡大増殖させる方法も提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体である。
【0018】
提供される操作された細胞、例えば、操作されたCILのいずれかを含有する薬学的組成物も本明細書において提供される。いくつかの態様では、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含有する。
【0019】
いくつかの態様では、提供される操作された細胞または操作された細胞集団のいずれかの治療方法および使用も本明細書において提供される。提供される薬学的組成物のいずれかの治療方法および使用も本明細書において提供される。そのような方法および治療、ならびにそのような治療方法を行うための医薬品の調製における提供される操作された細胞、操作された細胞集団または薬学的組成物のいずれかの使用が本明細書において提供される。いくつかの態様では、方法は、疾患もしくは病態もしくは障害を有する、有していた、または有すると疑われる対象に、操作された細胞またはそれを含む組成物を投与することによって行われる。いくつかの態様では、方法は、それによって、対象の疾患または病態または障害を治療する。いくつかの態様では、方法は、任意の疾患または病態の治療に使用され得、疾患または病態を治療するために、養子細胞療法による免疫療法を使用することができる。いくつかの態様では、操作された細胞は、疾患または病態に関連する細胞上の抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を発現する。いくつかの態様では、疾患または病態は癌である。例示的な方法および使用を本明細書において記載する。
【0020】
ある特定の態様では、エクスビボで生成されたリンパ球(例えば、NK細胞などのCIL細胞)による免疫療法に使用するための治療方法、キットおよび薬学的組成物が本明細書において提供される。ある特定の態様では、本明細書において記載される操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞が生成され、任意でエクスビボで拡大増殖され、次いで、免疫療法を必要とする対象に投与される。
【0021】
好ましい態様では、合成サイトカイン受容体はラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。RACRは、ラパマイシンまたはその誘導体(ラパログ)のいずれかによって活性化され得る。
【0022】
リンパ球、例えば、CIL細胞(例えば、NK細胞)は、iPSC、共通リンパ球系前駆細胞(CLP)、または他の幹細胞もしくは前駆細胞に由来し得る。合成サイトカイン受容体を発現するように操作されたCLP、およびCLPをサイトカイン受容体に対する同族非生理学的リガンドと接触させることによって、操作されたCLPをCIL細胞に分化させる方法が本明細書においてさらに提供される。
【0023】
本開示はまた、限定されることなく、薬学的組成物、治療方法、キットなどを含む他の組成物および方法を提供する。前述の利点は、本明細書において記載される態様のすべてではなく一部に存在してもよく、本明細書において記載される組成物および方法の他の利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞)の拡大増殖を示す態様の図である。
【
図1B】
図1Bは、操作された幹細胞または前駆細胞の分化を示す態様の図である。
【
図2A】
図2Aは、CD19 CAR血液由来NK(bdNK)細胞のRACR拡大増殖を示すグラフのパネルである。上部パネルは、実験の時系列を示す。各群の経時的なCAR発現パーセントを左パネルに示し、経時的な総CAR+NK細胞を右パネルに示す。
【
図2B】
図2Bは、フローサイトメトリーによるCAR発現分析を示すグラフのパネルである。IL-2(1000U/ml)またはAP21967(20nM)のいずれかの存在下で拡大増殖させたbdNK細胞について、CAR発現を上部パネルに示す。CAR+細胞のCD56およびCD16の発現を下部パネルに示す。
【
図2C】
図2Cは、RACR拡大増殖血液由来NK細胞が腫瘍細胞を認識し標的とする能力を示すグラフのパネルである。上部パネルは、実験の時系列を示す。形質導入後31日目のCAR発現を示すフローサイトメトリープロットを右上パネルに示す。96ウェルプレート内の100μlのRPMI培地中、ブレフェルジンA、モネンシンおよび抗CD107の存在下で、1×10
5個のNK細胞を1×10
5個のK562細胞、Nalm6細胞またはNalm6 CD19ノックアウト細胞とともに5時間インキュベートした。AP21967拡大増殖CAR+細胞(AP-20)または非形質導入対照におけるCD107a発現レベル(左パネル)およびIFNγ発現レベル(中央パネル)を示す。各ウェル内の生存cell trace violet+細胞の総数を非エフェクター対照ウェルと比較することによって死亡%(右パネル)を計算した。様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比でNKエフェクター細胞を加えた。
【
図3A】
図3Aは、iPSC由来CIL細胞(例えば、NK細胞)生成プロセスの図である。
【
図3B】
図3Bは、分化プロセスの12日目の細胞選択および分析の前および後のCD34+細胞%を示すグラフである。
【
図3C】
図3Cは、分化プロセスの12日目のフローサイトメトリー分析によるCD34+選択を示すグラフのパネルである。
【
図3D】
図3Dは、白血球中のCD45+細胞の割合と、前駆細胞およびCIL細胞(、NK細胞)中の白血球の割合とを示すグラフである。CD45+細胞の割合を白血球%としてプロットし、CD7+細胞を前駆細胞としてプロットし、CD56+細胞をCIL細胞としてプロットする。
【
図3E】
図3Eは、分化した白血球(CD45+)、前駆体(CD45+/CD5-/CD7+)およびCIL細胞(CD45+/CD5-/CD7+/CD56+)のフローサイトメトリー分析を示すグラフのパネルである。
【
図3F】
図3Fは、40日目の白血球またはCIL細胞の%(左パネル)と、40日目の分化細胞のフローサイトメトリー分析(右パネル)とを示すグラフのパネルである。
【
図3G】
図3Gは、採取され、マーカー:CD16、IL7R、KIR、NKp30およびNKp46の検出のためにフローサイトメトリーによって免疫表現型検査されたiCIL細胞の割合(左パネル)と、様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比についてK562細胞の4H溶解%によって測定した細胞傷害性とを示すグラフのパネルである。
【
図4B】
図4Bは、実験の過程にわたるCD56+細胞およびTagCAR(抗フルオレセインイソチオシアネート(FITC)キメラ抗原受容体(CAR))濃縮の代表的なフローサイトメトリー分析を示すプロットのパネルである。x軸はFITC-AF647によるTagCAR検出であり、y軸は側方散乱である。「モック」形質導入後、形質導入後32日目、35日目、38日目および42日目に分析した細胞。
【
図4C】
図4Cは、BXS細胞株について、経時的なTagCAR細胞のRACR濃縮(左パネル)と、総細胞数(中央パネル)と、経時的なCD45およびCD56を発現する細胞の割合(右パネル)とを示すグラフのパネルである。
【
図4D】
図4Dは、NHS細胞株について、経時的なTagCAR細胞のRACR濃縮(左パネル)と、総細胞数(中央パネル)と、経時的なCD45およびCD56を発現する細胞の割合(右パネル)とを示すグラフのパネルである。
【
図5】
図5Aは、サイトカイン分化モックCIL細胞(BXS株)およびRACR-iCIL細胞(BXS株およびNH5株)の異なる活性化マーカーを示すヒストグラムのパネルである。細胞をCD45+CD7+CD5-についてゲーティングし、次いで、活性化マーカーCD56、CD16、NKp30、NKp40およびNKG2Dについてプロットした。
図5Bは、サイトカイン分化モックCIL細胞(BXS細胞株)およびRACR-iCIL細胞(BXS細胞株およびNH5細胞株)によるMDA-mCherry腫瘍細胞株の殺傷を示す細胞傷害性アッセイのグラフである。
【
図6B】
図6Bは、IL-2、IL-15、IL-21、IL-18、IL-7(サイトカインミックス)を含有する拡大増殖培地を用いて処理した細胞、またはA/C Heterodimerizer AP21967(AP 100nM)を用いて処理した細胞について、経時的なRACR iCIL細胞%と、経時的なRACR iCIL細胞の総数とを示すグラフである。
【
図6C】
図6Cは、mCherryによって検出された、CD56クローンHCD56陽性細胞およびRACR-FRB陽性細胞について染色された細胞を示すフローサイトメトリープロットのパネルである。
【
図6D】
図6Dは、TagCAR-RACR-FRB(206)およびFRB-RACR-TagCAR(205)を含有するウイルス構築物を形質導入された細胞について、経時的なFITC-CAR iCIL細胞%(上部パネル)と、経時的なFLCAR iCIL細胞の総数(下部パネル)とを示すグラフのパネルである。
【
図6E】
図6Eは、CD56クローンHCD56陽性細胞およびFLCAR陽性細胞について染色された細胞を示すフローサイトメトリープロットのパネルである。
【
図7A】
図7Aは、CD56およびTag-CARについて染色された細胞を示すフローサイトメトリープロットのパネルである。
【
図7B】
図7Bは、TagCAR+RACR拡大増殖iCIL細胞、モックIL2拡大増殖CIL細胞、および未染色細胞における、NKp30、NKp46、NKG2D、NKG2AおよびCD57を含む、活性化および細胞傷害性の様々なマーカーを示すヒストグラムのパネルである。
【
図7C】
図7Cは、モックIL2拡大増殖CIL細胞およびTagCAR RACR拡大増殖iCIL細胞における抗原に応答したCD107a分泌を示すヒストグラムのパネルである。
【
図8】
図8は、融合タンパク質がレンチウイルス発現ベクターによってコードされ、「SP」がシグナルペプチドであり、CARが抗FITC CARであり、CD8αヒンジが存在し、膜貫通ドメインが存在し(「TM」)、共刺激ドメインが4-1BBであり、活性化シグナル伝達ドメインがCD3ζである、本開示の例示的なCARの図である。
【
図9】
図9は、iPSCからCIL細胞への移行に関与する分化因子を時系列とともに示す図である。分化の各段階に関与する分化因子を白抜きのボックスに示す。太字は、本開示の態様を例示する分化因子である。いくつかの態様では、4週目から開始して、細胞を、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729を含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに分化させる。6週目から開始して、これらの細胞を、IL7、IL15、SCF、FLT3L、UM729およびCD2/NKp46ビーズを含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに拡大増殖させる。いくつかの態様では、4週目から開始して、細胞を、SCF、FLT3LおよびUM729を含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに分化させる。6週目から開始して、これらの細胞を、SCF、FLT3L、UM729およびCD2/NKp46ビーズを含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに拡大増殖させる。いくつかの態様では、4週目から開始して、細胞を、IL7、IL15およびUM729を含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに分化させる。6週目から開始して、これらの細胞を、IL7、IL15、UM729およびCD2/NKp46ビーズを含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに拡大増殖させる。いくつかの態様では、4週目から開始して、細胞を、UM729を含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに分化させる。6週目から開始して、これらの細胞を、UM729およびCD2/NKp46ビーズを含む培地中で、任意でラパログを用いてまたは用いずに拡大増殖させる。
【
図10】
図10は、培養日の関数としてのRACR CD19-CAR陽性細胞の%を示すグラフである。血液由来NK細胞に、CD19-CAR-RACR(IL-2RG/IL-2RB)含有ウイルス、CD19-CAR-RACR(IL-2RG/IL-7RB)含有ウイルスまたはCD19-CAR-RACR(IL-2RG/IL-21RB)含有ウイルスを形質導入した。次いで、膜結合IL-21(mbIL-21)41BBLおよびK562フィーダー細胞を毎週加えた完全培地中、100IU/mLヒトIL-2または100nM AP219667中で細胞を拡大増殖させた。RACR(IL-2RG/IL-2RB)「RACR2」は、AP219667では最も高い拡大増殖を支持し、RACR(IL-2RG/IL-7RB)「RACR7」およびRACR(IL-2RG/IL-21RB)「RACR21」はともに、それよりも低い程度までRACR拡大増殖を支持した。
【
図11】
図11は、経時的なCAR発現細胞のRACR濃縮(左パネル)、前駆細胞の倍率変化(0~4週間)およびRACR-iCIL細胞の倍率変化(4~9週間)(中央パネル)、ならびに様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比について、iCIL細胞およびRACR-iCIL細胞によるK562細胞の殺傷%によって測定した細胞傷害性(右パネル)を示すグラフのパネルである。図の上部は、造血系統分化および対応する細胞培養の図を示す。
【
図12】
図12Aは、26日目に解凍した細胞、または形質導入後29日目に分析した細胞について、マーカーCD45+CD5-、CD45+CD5-CD7+、またはCD45+CD5-CD7+CD56+を含む細胞の%を示すグラフである。
図12Bは、26日目に解凍し、モック形質導入した細胞、またはウイルスベクター形質導入後29日目に分析した細胞について、マーカーCD45+CD5-、CD45+CD5-CD7+、またはCD45+CD5-CD7+CD56+を含むCAR+細胞の%を示すグラフである。
【
図13】
図13Aは、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729(Full Mix)、IL7、IL15およびUM729(IL7/IL15)、またはUM729(なし)を含む培地に入れた細胞の分析後のCAR+iCIL細胞の%を示すグラフである。各培地条件をラパログを用いてまたは用いずに処理した。
図13Bは、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729(Full Mix)、IL7、IL15およびUM729(IL7/IL15)、またはUM729(なし)を含む培地に入れた細胞の分析後のCAR+iCIL細胞%の倍率変化(FC)を示すグラフである。各培地条件をラパログを用いてまたは用いずに処理した。
図13Cは、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729(Full Mix)、IL7、IL15およびUM729(IL7/IL15)、またはUM729(なし)を含む培地に入れた細胞の分析後のCAR+iCIL細胞の総数を示すグラフである。各培地条件をラパログを用いてまたは用いずに処理した。
図13Dは、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729(Full Mix)、IL7、IL15およびUM729(IL7/IL15)、またはUM729(なし)を含む培地に入れた細胞の分析後のCAR+iCIL細胞の総数の倍率変化(FC)を示すグラフである。各培地条件をラパログを用いてまたは用いずに処理した。
【
図14】
図14Aは、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729(Full Mix)、SCF、FLT3LおよびUM729(SCF/FLT3L)、IL7、IL15およびUM729(IL7/IL15)、UM729(なし)を含む培地に入れたTagCAR+RACR-iCIL細胞、または未染色細胞におけるCD45、CD7およびCD56を含む様々なマーカーを示すヒストグラムのパネルである。各培地条件をラパログを用いてまたは用いずに処理した。
図14Bは、26日目の前駆細胞(CD56-)、ならびに40日目に分析した、IL7、IL15、SCF、FLT3LおよびUM729を含む培地(Full Mix)に入れた細胞(CD56+)におけるCD56マーカーを示すヒストグラムである。
【
図15A】
図15Aは、卵巣癌細胞を非刺激NK細胞、サイトカイン刺激NK細胞またはRACR刺激NK細胞とインキュベートした後の腫瘍細胞増殖を示すグラフを示す。NK細胞とインキュベートしていない卵巣癌細胞を太い黒線で示す。腫瘍細胞を50時間後に再導入した(すなわち、腫瘍細胞再負荷)。
【
図15B】
図15Bは、膀胱癌細胞を非刺激NK細胞、サイトカイン刺激NK細胞またはRACR刺激NK細胞とインキュベートした後の腫瘍細胞増殖を示すグラフを示す。NK細胞とインキュベートしていない膀胱癌細胞を太い黒線で示す。腫瘍細胞を50および100時間の時点で再導入した(すなわち、腫瘍細胞再負荷)。
【
図15C】
図15Cは、乳腺癌細胞を非刺激NK細胞、サイトカイン刺激NK細胞またはRACR刺激NK細胞とインキュベートした後の腫瘍細胞増殖を示すグラフを示す。NK細胞とインキュベートしていない乳腺癌細胞を太い黒線で示す。腫瘍細胞を40時間後に再導入した(別名、腫瘍細胞再負荷)。
【
図15D】
図15Dは、ラパマイシンもしくはサイトカインを用いず(非刺激NK)、ラパマイシンを用いて(RACR刺激NK)、またはサイトカインを用いて(サイトカイン刺激)インキュベートした後のRACR-NK細胞増殖を示すグラフを示す。
【
図16A】
図16Aは、RACR操作iCILを用いず(腫瘍のみまたはT)、RACR操作iCILを用いて、かつCAR抗原発現を有さず(R+NCA)、RACR操作iCILを用いて、かつ中程度のCAR抗原発現を有し(R+MCA)、またはRACR操作iCILを用いて、かつ高いCAR抗原発現を有して(R+HCA)インキュベートした腫瘍細胞における腫瘍細胞殺傷を示すグラフを示す。CAR抗原は、フォレートにコンジュゲートしたFITCに特異的であり、フォレートは、腫瘍細胞上のフォレート受容体に結合している。
【
図16B】
図16Bは、iPSC由来NK細胞ならびにCARおよびRACR操作iPSC由来CILの機能を示すグラフを示す。CAR-RACR-iCIL細胞は、細胞によって認識される抗原に応答してCD107aを分泌する。
【
図16C】
図16Cは、ラパマイシンもしくはサイトカインを用いず(非刺激NK)、ラパマイシンを用いて(RACR刺激NK)、またはサイトカインを用いて(サイトカイン刺激)インキュベートした後のRACR-CAR-NK細胞増殖を示すグラフを示す。
【
図17A】
図17Aは、乳癌のインビボマウスモデルに関する時系列を示す。実験開始の5日前に、マウスにMDA-231 mCherry/ルシフェラーゼ細胞を注射した。実験開始の1日前に、マウスにFITC-フォレートを2週間皮下注射した。実験の1日目に、マウスにRACR-TagCAR-NK-92細胞を腹腔内注射し、続いて、週3回ラパマイシンまたは週3回IL2/IL15を用いて処置した。
【
図17B】
図17Bは、3週間にわたって様々な処置を受けたマウスにおける腫瘍増殖と相関する発光の定量を示すグラフを示す。
【
図17C】
図17Cは、3週間にわたって様々な処置を受けたマウスにおける腫瘍増殖の生の発光画像を示す。
【
図18】
図18は、RACR iCILとMDA-MB-231乳腺癌細胞との共培養におけるインビトロでの腫瘍細胞殺傷を示す。乳癌細胞を単独で培養し、未処理のままにしたか、サイトカインもしくはラパログを用いて処理したか(左の凡例)、またはRACR iCILと共培養し、未処理のままにしたか、サイトカインもしくはラパログを用いて処理した(右の凡例)。
【
図19A】
図19Aは、乳癌のインビボマウスモデルに関する時系列を示す。実験開始の5日前に、マウスにMDA-231 mCherry/ルシフェラーゼ細胞を注射した。実験開始の1日前にマウスを撮像し、実験期間中、週に1回採血した。実験の1日目(D0)に、マウスにRACR-iCIL細胞を腹腔内注射し、続いて、週3回ラパマイシンまたは週3回IL2/IL15を用いて処置した。
【
図19B】
図19Bは、3週間にわたって様々な処置を受けたマウスにおける腫瘍増殖の生の発光画像を示す。
【
図19C】
図19Cは、乳癌のインビボマウスモデルに関する時系列を示す。実験開始の5日前に、マウスにMDA-231 mCherry/ルシフェラーゼ細胞を注射した。実験開始の1日前に、マウスを実験期間中、週に1回撮像した。実験の1日目(D0)に、マウスにRACR-iCIL細胞を注射し、続いて、週3回ラパマイシンまたは週3回IL2/IL15を用いて処置した。実験の27日目に、マウスにRACR-iCIL細胞を再度注射した。
【
図19D】
図19Dは、6週間にわたって様々な処置を受けたマウスにおける腫瘍増殖の生の発光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
人工多能性幹細胞(iPSC)は、細胞療法製造のための材料の再生可能、修飾可能かつ拡張可能な供給源である。しかし、細胞療法に対する現在のiPSCに基づく手法には大きな課題が存在する。具体的には、iPSCを治療的免疫細胞型に分化させるための現在の手法は、外因性増殖因子、場合によってはフィーダー細胞の存在を必要とする。
【0026】
iPSCは、成体細胞を胚性幹細胞に類似する細胞状態に再プログラミングすることによって作製され得る。iPSCは、人体に見られるあらゆる細胞型に分化することができ、無制限の拡大増殖能力を有すると考えられており、これは、それらが無限に複製および増殖し、出発材料をほぼ無限に供給することができることを意味する。さらに、iPSCは、精密な多重ゲノム編集に適しており、複数の遺伝子修飾の安全な導入を可能にする。これらの特性のために、iPSCは、プロセス中間体および最終細胞産物において一定したゲノム完全性を可能にする、単一細胞(クローン)に由来する一定した出発材料を提供する。
【0027】
細胞療法製造に対する現在の手法には、自己由来細胞出発材料または同種異系細胞出発材料のいずれかが含まれ、自己由来細胞出発材料または同種異系細胞出発材料のいずれかから疾患標的化治療用細胞産物が操作される。いくつかの態様では、同種異系細胞療法または「既製の」細胞療法は、細胞療法を個別化医療から常用的な治療に変える可能性を有する。ただし、現在の「既製の」細胞療法は、承認された自己由来細胞療法製品によって達成されているのと同じ、細胞の生着および持続性をインビボで示すのに苦労している。いくつかの局面では、これは、宿主免疫系によって認識および拒絶され得る同種異系要素、またはさらには自己由来細胞の操作された要素の外来性に起因する。今日まで、細胞療法は、細胞療法製品の投与前に与えられるリンパ球枯渇(lymphodepletion)(LD)と呼ばれる毒性の高い化学療法レジメンによって患者を治療することによって細胞生着を達成している。LDは、宿主免疫系を本質的に除去し、細胞療法製品に多くの利益を提供し、エクスビボ細胞療法製品のための遊離「恒常性サイトカイン」を最初に提供するほか、宿主免疫系による外来移植片に対する抗移植片応答を低下させる。しかし、LDは一過性の解決策であり、宿主免疫系は急速に再構成する。したがって、同種異系細胞曝露を持続するためには、複数回のLDおよび細胞注入が必要とされる。さらに、IL-2などの外因性サイトカインが投与されるが、これらのサイトカイン治療は曝露時間が短く、その使用に関連する毒性が高い。細胞持続性を高めるためのさらに良好な方法を見出すことは、持続的な腫瘍寛解を達成するための鍵であり、同種異系細胞療法分野の課題であることが証明されている。
【0028】
同種異系細胞は、ドナー由来細胞またはiPSC由来細胞にさらに分類することができる。ドナー由来細胞は、健康なドナーの循環血または臍帯血から一般に供給され、治療用細胞型(例えば、ナチュラルキラー細胞またはNK細胞)は、複数のサイトカイン、増殖因子、遺伝子操作およびフィーダー細胞を一般に含む複雑な細胞培養プロセスで選択され、続いて採取され、拡大増殖されて、多くの用量をもたらす。あるいは、複数の複雑な細胞培養条件も必要とするiPSC由来細胞では、意図された最終細胞産物(例えば、免疫エフェクター細胞)を最終的に得るために必要な前駆体段階を介して細胞を駆動するために、これらの条件が段階的に実施されなければならない。例えば、臨床規模の目的のためのCIL細胞拡大増殖のための有効な方法は、IL-2、IL-15および/またはIL-7、ならびに抗原分子、共刺激分子および/または細胞接着分子を含む外因性サイトカインを典型的に伴う。CIL細胞は、MHCクラスI分子の発現、サイトカインの放出をモニタリングすることによって自己と非自己とを区別し、非自己細胞または感染標的細胞を直接死滅させる能力を特徴とする細胞傷害性リンパ球である。CIL細胞は均一な集団でないことは当技術分野において公知である。むしろ、CIL細胞の多くの区別可能なサブセットが存在する。多くの試験では、これらの外因性因子は、CIL細胞のエクスビボ拡大増殖中、および/または対象へのCIL細胞の注入後に補充されている。現在公知の方法を使用して大量の多様な外因性因子に依存するCIL細胞を効果的に拡大増殖させるには、複雑で高価な製造プロセスを必要とすることが多い。当分野におけるさらなる困難は、癌患者が健康な患者と比較して顕著に低下したNK細胞活性を呈することを特に考慮すると、インビボで内因性CIL細胞の活性を調節することを伴う。
【0029】
さらに、細胞療法のゴールドスタンダードは、自己由来由来キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法である。1990年代の「第一世代」CAR T細胞療法から始まり、2017年にFDAの承認を受けた最初のCAR T細胞療法に至る数十年のCAR T細胞療法の試みでは、B細胞悪性腫瘍の治療が成功し、特定の患者集団の30~40%で長期寛解が達成された。重要なことに、CAR T細胞の有効性は、IL-15などの生存因子のための巣窟を排除するためにリンパ球枯渇化学療法を必要とする。CAR T細胞療法は悪性腫瘍(例えば、血液悪性腫瘍)の治療に革命をもたらしたが、大きな制限がその広範囲な適用を妨げている。同種異系CAR T療法分野は、有望な初期臨床結果を示しているが、持続的応答プロファイルは、絶えず増大する強度のLDレジメンの使用にもかかわらず、自己由来CAR T細胞療法と比較して概して不良であった。これは、製剤細胞型、製造プロセス、および治療用細胞に対する抗同種移植片応答という制限に起因する可能性が高い。したがって、血液悪性腫瘍におけるCAR T細胞の有望な臨床的有効性にもかかわらず、患者アクセス、複雑な製造、および高コストを含む重大な課題が残っている。提供される操作されたCIL細胞およびそれに関連する方法は、これらの課題を克服するための「既製の」癌治療を提供する。
【0030】
また、例えば、不均一な固形腫瘍微小環境を標的とすることに関連する課題を克服するために、CARを発現するようにCRISPRを介してiPSCを修飾することができる。
【0031】
全体として、iPSCに基づく細胞療法は、必要な中間前駆細胞を生成するのに一般に非効率的であり、その結果、治療用細胞型(例えば、細胞傷害性自然リンパ球(CIL)細胞)の初期収率が低くなり、次いで、フィーダー細胞によって促進される拡大増殖が必要とされる。このフィーダー細胞によって促進される拡大増殖では、最終的な細胞療法製品の増殖能力が劇的に低下する可能性がある。したがって、何らかの治療効果を有するために必要な生着を達成するためには、リンパ球枯渇化学療法の反復サイクルに加えて、高い細胞数(約10億個の細胞)と、反復投与とが必要とされる。
【0032】
合成サイトカイン受容体を発現するようにリンパ球、例えば、CIL(例えば、NK細胞)を遺伝的に修飾することによって、外因性サイトカインおよびフィーダー細胞の非存在下で免疫エフェクター細胞を拡大増殖させるためのプラットフォームが本明細書において提供される。いくつかの局面では、リンパ球は、初代細胞であり得るか、またはリンパ球系前駆細胞、もしくはリンパ球系前駆細胞から誘導されたかもしくは分化した細胞であり得る。いくつかの態様では、CILなどのリンパ球への分化の拡大増殖のために合成サイトカイン受容体を発現するようにiPSC由来前駆細胞(例えば、共通リンパ球系細胞)を遺伝的に修飾することによって、外因性サイトカインおよびフィーダー細胞の非存在下で免疫エフェクター細胞を拡大増殖させるためのプラットフォームが本明細書において提供される。合成小分子リガンド(例えば、ラパマイシン)は、受容体を活性化して免疫エフェクター細胞の拡大増殖を促進する。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、ラパマイシンまたは類似体、例えば、ラパログが関与することができるラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。いくつかの態様では、RACR誘導リンパ球は、分化および/または拡大増殖中のいずれかに、RACRによって促進されるリンパ球型である。そのような「RACR誘導」細胞の例には、細胞傷害性自然リンパ球(RACR-iCIL)、NK(RACR-iNK)、またはγδ T細胞もしくはαβ T細胞を含むT細胞(RACR-iT)が挙げられる。特定の態様では、RACR-iCILなどのRACR誘導細胞は、正常なサイトカイン経路の代わりに、例えば、前駆細胞(例えば、共通リンパ球系前駆細胞またはプレNK細胞(pre-NK cell))からの正常なサイトカイン経路の代わりに、分化または拡大増殖のためにRACRを使用した、結果として生じる細胞である。
【0033】
本明細書において提供される組成物および方法は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞(例えば、NK細胞)を含む。操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞(例えば、NK細胞)の非限定的な利点には、対象に投与した場合の優れた制御可能な拡大増殖、天然リンパ球(例えば、CIL細胞)と比較して同様の細胞傷害活性、iPSC由来細胞製造の改善、および抗腫瘍活性の増強が含まれる。
【0034】
細胞製造の改善。提供される局面では、本明細書において提供されるRACR操作プラットフォームは、細胞産生を制御することによって細胞療法製造を改善する。いくつかの局面では、本明細書において提供されるRACR操作プラットフォームは、細胞産生を制御することによってiPSC由来細胞製造を改善する。RACR活性化は高価な増殖因子、サイトカインおよび他の原材料を加える必要性を排除するため、RACR操作プラットフォームは製造コストも削減する。ある特定の態様では、本明細書において開示される方法は、本明細書において記載される操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞が、外因性因子を用いず、または低減した外因性因子を用いて、例えば、IL-2、IL-15および/またはIL-7を用いず拡大増殖する能力を介した拡大増殖をさらに増強し得る。RACR操作プラットフォームは、高純度の中間細胞産物および最終細胞産物の収率を増加させる。RACR操作プラットフォームは、製造プロセスがフィーダー細胞および異種細胞を完全に含まないため、細胞の患者適合性を高める。RACR操作プラットフォームはまた、懸濁液中の細胞に適合性があり、細胞産生の拡張性を促進する。
【0035】
抗腫瘍活性の増強。提供される局面では、本明細書において提供されるRACR操作プラットフォームは、細胞の生着、持続性およびエフェクター機能を増加させることによって、操作されたリンパ球、例えば、iPSC由来細胞を含むCILの抗腫瘍活性を改善する。本明細書において提供されるRACR操作プラットフォームはまた、ラパマイシン投与を介して宿主免疫応答を阻害することによって、操作されたリンパ球、例えば、iPSC由来細胞を含むCILの抗腫瘍活性を改善し、これにより、細胞(例えば、CIL)の生着をさらに可能にする。本明細書において提供されるRACR操作プラットフォームはまた、RACR細胞の拡大増殖および生存を選択的に支持するためにRACR系を活性化することによって毒性リンパ球枯渇(LD)の必要性を取り除くことによって、操作されたリンパ球、例えば、iPSC由来細胞を含むCILの抗腫瘍活性を改善する。
【0036】
いくつかの局面では、操作された合成サイトカイン受容体、およびラパマイシンまたはラパログによるその活性化を含む、リンパ球、例えば、CIL(例えば、NK細胞)に対するRACR系の利点の中には、即時前駆体を生成するのに効率的であり、最終細胞型に対する拡大増殖要件の最小化を特徴とする無制限の出発材料を操作する能力;細胞を効率的に編集する能力;フィーダー細胞を必要とせず、それによって、複雑な原材料を最小限に抑えること;RACR操作細胞を投与された対象におけるリンパ球枯渇を必要としない;サイトカイン放出症候群(CRS)または免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICAN)が少ないかまたはない;ならびにラパマイシンまたはラパログの投与による生着、拡大増殖および持続性の促進が含まれる。いくつかの態様では、RACR-iCILなどの操作されたリンパ球は、いくつかの局面では、低免疫操作要件を最小限に抑えるかまたは排除しながら達成され得る同種異系細胞療法のための細胞供給源を提供する。
【0037】
細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞、例えば、NK細胞の誘導を支持するために適用され得る合成サイトカイン受容体、例えば、RACRが本明細書において提供される。CIL細胞は、幹細胞または前駆細胞に由来し得、そのような細胞は、本明細書において「誘導された細胞傷害性自然リンパ球系」(iCIL)細胞と呼ばれる。iCIL細胞は、本明細書において記載されるような特徴的な細胞表面マーカーおよび機能的属性を共有する。本明細書において使用される場合、用語「誘導された細胞傷害性自然リンパ球系細胞」または「iCIL」は、前駆細胞の分化を誘導することによって作製されたCILを指す。本明細書において開示されるように、iCILは、合成サイトカイン受容体を幹細胞または前駆細胞に発現させ、非生理学的リガンドによって合成サイトカイン受容体を作用させることによって作製され得る、および/または拡大増殖され得る。そのようなプロセスは、合成サイトカイン受容体の活性化による、合成サイトカイン受容体を発現するように操作された前駆細胞(例えば、リンパ球系前駆細胞)の分化を伴い得る。該プロセスはまた、または代替的に、合成サイトカイン受容体の活性化による前駆細胞またはCILの拡大増殖を伴い得る。
【0038】
いくつかの態様では、NK細胞の誘導または拡大増殖を支持するために誘導され得る合成サイトカイン受容体、例えば、RACRが本明細書において提供される。内因性NK細胞に由来するNK細胞は、本明細書において初代NK細胞と呼ばれる。NK細胞はまた、幹細胞または前駆細胞に由来し得、そのような細胞は、本明細書においてiPSC由来ナチュラルキラー(iNK)細胞と呼ばれる。初代NK細胞およびiNK細胞は、特徴的な細胞表面マーカーおよび機能的属性を共有するが、必ずしも同一ではない。
【0039】
好ましい態様では、本開示は、小分子ラパマイシンまたはラパログによって活性化される合成サイトカイン受容体であるラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)を発現するように操作されたNK細胞などのCIL細胞を提供する。RACRを含み、ラパマイシンまたはラパログによって活性化されたCIL細胞は、本明細書において「RACR-iCIL」細胞、例えば、RACR-iNK細胞と呼ばれる。RACRは、フィーダーフリー製造プロセスでは、RACR-iCIL細胞の分化および/または拡大増殖を支持することが実証されている。RACR-iCIL細胞は、複数の自然腫瘍標的化受容体を発現し、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作されると、CAR誘導細胞溶解活性を発揮することができる。したがって、RACR-iCIL細胞は、「既製の」同種異系細胞療法を提供する。
【0040】
本開示は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞(例えば、NK細胞)などのリンパ球が、受容体の同族非生理学的リガンドに応答して拡大増殖し得るという本発明者らによる驚くべき発見に部分的に関する。操作されたCIL細胞は、他の供給源由来のCIL細胞以上の機能活性を有して大量に生成され得る。
【0041】
本開示は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作された共通リンパ球系前駆(CLP)細胞が、外因性因子を用いず受容体の同族非生理学的リガンドに応答してCIL細胞に分化し得、得られたCIL細胞が細胞傷害性表現型を示すという本発明者らによる驚くべき発見に部分的に関する。CIL細胞の拡大増殖が様々な外因性刺激を有することに一般に依存することは、関連技術分野において周知である。本明細書において記載される操作されたCIL細胞は、外因性因子を用いず、または低減した外因性因子を用いて、例えば、IL-2、IL-15および/またはIL-7を用いず拡大増殖される能力を有する。
【0042】
本明細書において記載される操作されたCIL細胞、および関連する組成物は、エクスビボ拡大増殖を用いた免疫療法に使用され得る。
【0043】
図1Aの図に示すように、末梢血から単離されたそのような初代細胞を含むCIL細胞(例えば、NK細胞)などの単離されたリンパ球に、RACRなどの合成サイトカイン受容体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターを形質導入してもよい。形質導入されたリンパ球細胞、例えば、CIL細胞を非生理学的リガンドと接触させると、サイトカイン受容体の細胞外ドメインは、非生理学的リガンドの相互結合によって二量体化する。この二量体化は、細胞、例えば、CIL細胞内で拡大増殖シグナルを生成し、これにより、表現型的に濃縮され、機能的に活性な操作された細胞、例えば、操作されたCIL細胞の集団が産生される。
【0044】
図1Bの図に示すように、幹細胞または前駆細胞に、RACRなどの合成サイトカイン受容体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むベクターを形質導入してもよい。形質導入された細胞を非生理学的リガンドと接触させると、サイトカイン受容体の細胞外ドメインは二量体化する。二量体化は、幹細胞または前駆細胞内に分化シグナルを生成し、これにより、NK細胞などのCIL細胞になるように順次分化が誘導される。
【0045】
CIL細胞は、iPSC、共通リンパ球系前駆細胞(CLP)、または他の幹細胞もしくは前駆細胞に由来し得る。合成サイトカイン受容体を発現するように操作された幹細胞または前駆細胞、および幹細胞または前駆細胞をサイトカイン受容体に対する同族非生理学的リガンドと接触させることによって、操作された幹細胞または前駆細胞をCIL細胞に分化させる方法が本明細書においてさらに提供される。
【0046】
ある特定の態様では、エクスビボで生成されたリンパ球が本明細書において提供される。いくつかの態様では、リンパ球または前駆細胞(共通リンパ球系前駆細胞またはプレNK細胞)は、提供される合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)を用いて操作される。そのような局面では、合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドをエクスビボでリンパ球または前駆細胞の拡大増殖および/または分化に使用して、エクスビボで生成されたリンパ球の集団を産生することができる。リンパ球には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などの細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)を含む自然リンパ球系細胞(ILC)が含まれる。いくつかの態様では、T細胞はαβ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はγδ T細胞である。
【0047】
ある特定の態様では、エクスビボで生成されたCIL細胞が本明細書において提供される。いくつかの態様では、CIL細胞または共通リンパ球系前駆細胞は、提供される合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)を用いて操作される。そのような局面では、合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドを使用して、細胞を拡大増殖または分化させて、エクスビボで生成されたCIL細胞を産生することができる。
【0048】
本明細書において記載される操作された細胞、および関連する組成物は、リガンド制御エクスビボ拡大増殖を用いた免疫療法に使用され得る。細胞を合成サイトカイン受容体に対する同族非生理学的リガンドと接触させることによって、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)を用いて操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞を拡大増殖させる方法が本明細書においてさらに提供される。さらに、本明細書において開示される操作されたリンパ球、例えば、操作されたCIL細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにさらに操作され、CARによって認識される抗原を発現するかまたはCARによって認識される抗原によって標識された細胞に対して、操作されたリンパ球、例えば、操作されたCIL細胞を標的化することを可能にしてもよい。
【0049】
いくつかの態様では、提供される操作されたリンパ球、例えば、操作されたCIL細胞、および既存の戦略と比較して改善された免疫療法のために提供される方法。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は血液悪性腫瘍の治療に革命をもたらしたが、大きな制限がそれらの広範囲な適用を妨げている。
【0050】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)の関与は、提供される操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞上の合成サイトカイン受容体の関与を通して細胞増殖を増加させ、拡大増殖を促進することができる。いくつかの局面では、iCIL細胞を含む提供される操作された細胞、および関連する方法を使用して、細胞療法製品の後に合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドを患者に投与する(例えば、患者にラパマイシンを投与する)ことによって、操作された細胞療法のインビボでの細胞増殖および拡大増殖を増加させることができる。いくつかの態様では、非生理学的リガンド(例えば、ラパマイシン)は、細胞を同時に拡大増殖させ、保護する。いくつかの態様では、拡大増殖は、JAK/STATシグナル活性化によって達成され、保護は、宿主抗移植片応答のラパマイシン抑制によって達成される。いくつかの態様では、リンパ球枯渇および外因性サイトカイン投与の必要性は必要とされない。いくつかの態様では、操作されたリンパ球、例えば、操作されたiCIL細胞を用いた投与および治療の提供される方法は、リンパ球枯渇を用いず(例えば、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンなどのリンパ球枯渇療法を投与する必要なく)行うことができる。いくつかの態様では、操作されたリンパ球、例えば、操作されたiCIL細胞を用いた投与および治療の提供される方法は、外因性サイトカイン投与を用いず(例えば、IL-2および/またはIL-15を投与する必要なく)行うことができる。
【0051】
したがって、ラパマイシンまたは類似体、例えば、ラパログが関与し得るラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)などの合成サイトカイン受容体系を使用する提供される態様は、単一の技術で細胞を保護し、拡大増殖させる。加えて、遺伝的破壊、例えば、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)などの特定の免疫遺伝子のノックアウトをさらに含めることにより、同種異系細胞療法にとって追加の利点を有する「ステルス」細胞を産生することができる。
【0052】
特許文書、科学論文およびデータベースを含めて、本出願において参照されるすべての刊行物は、あたかもそれぞれの個々の刊行物が個々に参照により組み入れられているかのように、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、特許出願、公開特許出願および他の刊行物において示される定義と相反するかまたは他の形で矛盾する場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義に優先する。
【0053】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、編成のみを目的としたものであり、記述されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本開示の範囲および趣旨の範囲内でいくつかの態様が可能であることを認識するであろう。以下の説明は、本開示を例示しており、当然のことながら、本明細書において記載される発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0054】
I. 定義
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりその全体が組み入れられる。
【0055】
文脈上別途示されない限り、本明細書において記載される様々な特徴は、本明細書において記載される任意の特徴または特徴の組合せと任意に組み合わせて使用され得、各特徴は、組合せから除外または省略され得る。
【0056】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別途示されない限り、複数形も含む。「および/または」という活用は、列挙された項目のうちの1つまたは複数のあらゆる可能な組合せを示す。
【0057】
本明細書において使用される「対象」は、操作されたCIL細胞または他の作用物質のレシピエントを指す。該用語は、哺乳動物、例えば、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタ、好ましくはヒトを含む。
【0058】
本明細書において使用される「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」は、患者の病態の改善(すなわち、1つまたは複数の症状の改善、低減または改良、および治療に対する部分的または完全な応答)を含む、疾患または障害を有する対象に利益を与える任意の種類の作用または投与を指す。
【0059】
用語「有効量」は、所望の生化学的応答、細胞的応答または生理学的応答をもたらすのに有効な量を指す。用語「治療有効量」は、所望の治療効果を引き起こすのに有効な治療の量、投与量または投与レジメンを指す。
【0060】
本明細書において使用される「ポリヌクレオチド」は、鎖内の1つのヌクレオチドのホスホリル基と次のヌクレオチドの糖成分のヒドロキシル基との間のエステル結合を介して共有結合した2つ以上のヌクレオチドモノマーから構成されるバイオポリマーを指す。DNAおよびRNAは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である。
【0061】
本明細書において使用される「ポリペプチド」は、タンパク質の一部(または全体)を形成する、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸残基からなるポリマーを指す。
【0062】
多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、遺伝暗号の縮重の結果として同じポリペプチドをコードし得ることが当業者によって理解されるであろう。さらに、当業者が、常用的な技術を使用して、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するように、本明細書において記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行ってもよいことを理解されたい。
【0063】
核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。それらは一本鎖または二本鎖であり得る。それらはまた、それらの中に合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる種類の修飾が当技術分野において公知である。これらには、メチルホスホネート骨格およびホスホロチオエート骨格、分子の3'および/または5'末端でのアクリジン鎖またはポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書において記載される使用のために、ポリヌクレオチドは、当技術分野において利用可能な任意の方法によって修飾され得ることを理解されたい。そのような修飾は、関心対象のポリヌクレオチドのインビボでの活性または寿命を増強するために行われ得る。
【0064】
用語「変異体」は、参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチドと比較して、その配列に少なくとも1つの置換、挿入または欠失を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。「機能的変異体」は、参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチドの1つまたは機能を保持する変異体である。
【0065】
本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する用語「配列同一性」または「同一性」は、2つの最適にアライメントされたポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が、参照配列の全長にわたってアライメント内の各位置で一致する程度を指す。「同一性パーセント」は、最適なアライメント内の一致した位置の数を、参照配列の長さ+アライメント内の参照配列内の任意のギャップの長さの和で割ったものである。最適なアライメントは、最大の同一性パーセントをもたらすアライメントである。同一性パーセントを決定するための配列のアライメントは、例えば、BLASTスイートまたはClustal Omega配列分析プログラム内のものなどの数学的アルゴリズムを使用することを含む、いくつかの周知の方法によって達成され得る。特に記載のない限り、特許請求の範囲における用語「配列同一性」は、デフォルトパラメータを使用してBLASTバージョン2.12.0によって計算される配列同一性を指す。また、特に記載のない限り、アライメントは、参照配列の全長にわたる関心対象のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全部または一部のアライメントである。
【0066】
本明細書において使用される場合、「小分子」は、低分子量(<1000ダルトン)の有機化合物を指す。小分子は、特定の生物学的巨大分子に結合し得、限定されることなく、細胞シグナル伝達分子、薬物、二次代謝産物または様々な他の作用様式を含む様々な生物学的な機能または用途を有することができる。
【0067】
小分子に関する用語「類似体」は、別の化合物と同様の構造および/または機能を有するが、特定の成分に関してそれとは異なる化合物を指す。類似体は、他の原子、基または部分構造によって置換された1つまたは複数の原子、官能基または部分構造の点で異なっていてもよい。類似体は、高い構造的および/または機能的な類似性にもかかわらず、異なる物理的、化学的、物理化学的、生化学的または薬理学的な特性を有することができる。
【0068】
用語「ラパログ」は、ラパマイシンと構造的および機能的な類似性を共有するラパマイシン類似体の当技術分野において認識されている類似体群である。特定のラパログは、ラパマイシンのすべてではないが一部の機能的属性を共有することが公知である。例えば、一部のラパログは、二量体化を促進するが、免疫抑制活性を実質的に有しないため(例えば、AP21967、AP23102またはiRAP)、非生理学的リガンドとして使用するのに適している。
【0069】
本開示の例示的なラパログは、AP21967
である。
【0070】
本開示の例示的なラパログは、AP23102
である。
【0071】
【0072】
用語「細胞集団」は、溶液に懸濁されたか、基材に付着されたか、または容器に保存された細胞の混合物を指す。細胞集団全体の特徴は、複数の細胞を有する試料体積のバルク測定を用いて試験され得る。バルク細胞集団測定で遭遇するバックグラウンド蛍光の問題を低減するために、フローサイトメトリー法を使用してもよい。
【0073】
本明細書において使用される場合、用語「細胞傷害性自然リンパ球系細胞」または「CIL細胞」は、自然免疫系の主要成分を構成する細胞傷害性リンパ球のクラスを指すために使用される。ヒトでは、細胞傷害性自然リンパ球系細胞は、表面マーカーCD16(FCyRIII)、CD56を通常発現し、CD127を発現する場合もある。それらは、CD45、CD94、CD122、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、NKP46、NKp80のうちの1つまたは複数を発現し得る。細胞傷害性自然リンパ球系細胞は、CD3を一般に発現しないか、またはCD3+T細胞よりも低レベルのCD3を発現する。CIL細胞は、細胞傷害性であり、特別なタンパク質、例えば、パーフォリン、およびグランザイムとして公知のプロテアーゼを含有する小さな顆粒を細胞質に含む。CIL細胞は、ウイルス感染細胞に対する迅速な応答をもたらし、形質転換細胞に応答する。パーフォリンは、殺傷する予定の細胞に近接して放出されると、標的細胞の細胞膜に細孔を形成し、その細孔を通じてグランザイムおよび関連分子が侵入することができ、アポトーシスが誘導される。CIL細胞は、抗腫瘍免疫および抗感染免疫では、リンパ球細胞集団のエフェクターとして作用し得る。いくつかの態様では、CIL細胞はNK細胞である。いくつかの態様では、CIL細胞は、血液由来NK細胞(bdNK)、iPSC由来NK細胞(iPSC-NK)または他の細胞傷害性自然リンパ球系細胞である。明確にするために、用語「CIL細胞」は、適応免疫細胞およびその前駆体を除外し、共通リンパ球系前駆細胞(CLP)を除外する。ただし、CILは、CLPに由来し得る。
【0074】
本明細書において使用される場合、用語「操作された」は、異種ポリヌクレオチドを安定に形質導入されているか、もしくは細胞内のポリヌクレオチドを導入するか、欠失させるかもしくは修飾するために遺伝子編集に供されている細胞、または細胞内に安定な表現型変化を引き起こすようにポリヌクレオチドを一過性に形質導入された細胞を指す。
【0075】
本明細書において使用される場合、用語「幹細胞」は、例えば、共通リンパ球系前駆体、細胞傷害性自然リンパ球系細胞および/またはNK細胞に分化することができる未分化表現型を有する細胞を表すために使用される。
【0076】
本明細書において使用される場合、用語「多能性」は、幹細胞が、少なくとも培養中に、生物の分化した細胞型の実質的に全部を形成することができることを意味する。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、すなわち、外胚葉、中胚葉および内胚葉の各々から細胞を形成することができる多能性幹細胞の一種である。
【0077】
本明細書において使用される場合、用語「人工多能性幹細胞」および「iPSC」は、多能性状態に再プログラムされ、増殖、選択可能な分化、および成熟が可能な、体細胞に由来する細胞を指すために使用される。iPSCは、3つ全部の胚葉または皮層、すなわち、中胚葉、内胚葉および外胚葉の組織に分化することができる細胞に誘導されるかまたは変化させられた、すなわち、再プログラムされた分化した成体細胞、新生児細胞または胎児細胞から産生される幹細胞である。産生されたiPSCとは、天然に見られるような細胞を指さない。
【0078】
本明細書において使用される場合、用語「造血幹細胞」は、ナチュラルキラー細胞、T細胞およびB細胞を含む成熟骨髄系細胞型および成熟リンパ球系細胞型の両方を生じさせることができる幹細胞を指す。造血幹細胞は、典型的にCD34+を特徴とする。
【0079】
用語「前駆体」は、所望の細胞型に部分的に分化した細胞を指す。前駆細胞は、ある程度の多能性を保持し、複数の細胞型に分化し得る。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「造血前駆細胞」は、血球系統に分化することができる中間細胞型の細胞を指し、造血前駆細胞は、共通骨髄系前駆細胞または共通リンパ球系前駆細胞のいずれかに分化し得る。造血前駆細胞は、典型的にCD34+およびCD45+を特徴とする。CD38も造血前駆細胞のマーカーと考えられている。CD45は造血系統マーカーと考えられている。
【0081】
本明細書において使用される場合、用語「リンパ球系前駆細胞」または「リンパ芽球」または「共通リンパ球系前駆体」は、リンパ球系細胞、例えば、CIL細胞およびNK細胞の前駆体である細胞を指す。リンパ球系前駆細胞は、分化のリンパ球系統に従う造血幹細胞の分化の第1段階である。本明細書において使用される場合、用語「リンパ球系前駆体」は、造血細胞型への造血性移行が可能な細胞を指す。リンパ球系前駆細胞は、CD45+CD7+CD5+/lo CD3-CD56-であることを特徴とし得る。リンパ球系前駆細胞は、CD45+CD5+/lo CD7+であることを特徴とし得る。
【0082】
本明細書において使用される場合、「分化する」または「分化した」は、未分化または未成熟(例えば、特殊化されていない)細胞が成熟(特殊化)細胞になる特徴を獲得し、それによって、特定の形態および機能を獲得するプロセスおよび条件を指すために使用される。幹細胞(特殊化されていない)は、該幹細胞の特定の分化系列決定または分化を誘導するために、様々な条件(例えば、増殖因子および形態形成因子)に曝露されることが多い。
【0083】
本明細書において使用される場合、「拡大増殖する」または「拡大増殖」は、限られた増殖能力を有する細胞、例えば、CIL細胞の有糸分裂による細胞集団内の細胞型の数および/または純度の増加を指す。
【0084】
本明細書において使用される場合、「活性」、「活性化する」または「活性化」は、細胞分裂、サイトカイン分泌(例えば、IFNγおよび/またはTNFα)、および/または細胞溶解性顆粒の放出をもたらして免疫応答を調節または補助する、細胞傷害性自然リンパ球系細胞上の活性化受容体の刺激を指す。
【0085】
II. 供給源細胞、および合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)操作された細胞
いくつかの局面では、合成小分子リガンド(例えば、ラパマイシン)などの非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含有する操作された細胞が本明細書において提供され、リガンドは、合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞の分化および/または拡大増殖を促進することができる。いくつかの態様では、操作された細胞は免疫エフェクター細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞はリンパ球である。いくつかの態様では、リンパ球には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などの細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)を含む自然リンパ球系細胞(ILC)が含まれる。いくつかの態様では、T細胞はαβ T細胞である。いくつかの態様では、T細胞はγδ T細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞は、リンパ球、例えば、CILまたはNK細胞に分化することができる前駆細胞、例えば、共通リンパ球系前駆細胞である。そのような操作されたリンパ球または前駆細胞から分化または拡大増殖するように誘導された細胞の結果として生じる集団も提供される。いくつかの態様では、細胞集団はiCILである。
【0086】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RA)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成アルファ鎖ポリペプチドまたは合成ベータ鎖ポリペプチドから構成される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体はRACR合成サイトカイン受容体である。例示的な合成受容体は、セクションVに記載されている。操作された細胞の集団を作製するおよび/または拡大増殖させる方法も本明細書において提供される。
【0087】
いくつかの態様では、操作された細胞の集団は、ポリヌクレオチド、または合成サイトカイン受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを供給源細胞に導入することによって得られる。供給源細胞は、限定されることなく、末梢血単核細胞(PBMC)または臍帯血(UCB)を含む一次供給源から得ることができる。操作され得る細胞の供給源はまた、幹細胞から分化した細胞、例えば、体細胞(一般に線維芽細胞または末梢血単核細胞[PBMC])に由来する細胞である多能性幹細胞(iPSC)、およびヒト胚性幹細胞(hESC)を含むことができる。いくつかの態様では、iPSCはヒトiPSCである。いくつかの態様では、幹細胞は、適切な分化条件に供された場合に他の細胞型に分化され、次いで、合成サイトカイン受容体を用いて操作され得る。いくつかの態様では、分化条件は、細胞をリンパ球系前駆細胞またはリンパ球、例えば、CILを含むILCに分化させるための適切な分化因子を含む。
【0088】
いくつかの態様では、操作された細胞はILCである。ILCは、ごく最近発見された自然免疫細胞のファミリーであり、共通リンパ球系前駆体(CLP)に由来する。ILCは、細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞または非細胞傷害性であり得る。CILの中には、ナチュラルキラー(NK)細胞がある。いくつかの局面では、ILCを他の免疫細胞と区別する特徴には、それらの規則的なリンパ球系形態、T細胞およびB細胞上に見られる再編成された抗原受容体の非存在、ならびに骨髄系細胞または樹状細胞上に通常存在する表現型マーカーが含まれる(Spits and Cupedo,Annual Review of Immunology.(2012)20:647-75)。
【0089】
いくつかの局面では、本明細書において提供される操作された細胞または細胞集団(例えば、リンパ球、例えば、ILC、例えばCIL)のいずれかを含む薬学的組成物が本明細書において提供される。なおさらなる局面では、操作された細胞を拡大増殖させる方法、操作された細胞を用いて対象を治療する方法、および操作された細胞を用いて癌細胞を殺傷または阻害する方法が本明細書において提供される。いくつかの局面では、本明細書において提供される操作された細胞のいずれかを含むキットが本明細書において提供される。
【0090】
いくつかの態様では、細胞は、末梢血細胞から操作される。本明細書において使用される場合、用語「末梢血細胞」は、循環血液に由来し、増殖、選択可能な分化、および成熟が可能な造血幹細胞を含む細胞を指すために使用される。したがって、末梢血NK細胞は、分化した血液由来NK細胞(bdNK)と代替的に呼ばれることもある。
【0091】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞を生成するために使用されるものなどのリンパ球は、当技術分野において周知の様々な手段によって(自己由来療法のために)ドナーまたは対象から得られてもよい。例えば、リンパ球は、患者から末梢血単核細胞(PBMC)を含む末梢血を収集し、その血液をフィコール密度勾配遠心分離および/または白血球アフェレーシスに供し、次いで、単離キットを使用して末梢血からリンパ球の集団を単離することによって得ることができる。例示的な一態様では、リンパ球の集団は、純粋な選択された細胞型である必要はなく、T細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞およびB細胞などの他の細胞型を含有してもよい。いくつかの態様では、収集される細胞集団は、少なくとも約90%の選択された細胞型、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約100%の選択された細胞型を含むことができる。
【0092】
いくつかの態様では、NK細胞は、NK細胞株から生成され得る。いくつかの態様では、NK細胞株は、本明細書において記載されるように操作することができる。いくつかの態様では、操作されたNK細胞は、操作されたNK細胞株を含む。いくつかの局面では、操作された細胞株は、対象に由来する少数のNK細胞を拡大増殖させる必要なく、さらに大量の細胞の産生を可能にする。操作された細胞株はまた、十分に特性評価されているという利点を有する。
【0093】
いくつかの態様では、細胞株はクローン細胞株である。いくつかの態様では、細胞株は、NK細胞白血病またはNK細胞リンパ腫を有する患者に由来する。いくつかの態様では、NK細胞株は、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である。
【0094】
NK-92細胞株は、大顆粒リンパ腫に罹患している対象の血液から最初に単離され、続いて、細胞培養で増殖させたNK様細胞株である。NK-92細胞株はこれまでに記載されている(Gong et al.,1994;Klingemann,2002)。NK-92細胞は、NK細胞に特徴的なCD3-/CD56+表現型を有する。それらは、CD16を除くあらゆる公知のNK細胞活性化受容体を発現するが、低レベルで発現されるNKG2A/CD94およびILT2/LIR1を除くあらゆる公知のNK細胞阻害受容体を欠く。さらに、NK-92は、血液から単離されたポリクローナルNK細胞とは異なり、タイプおよび細胞表面濃度の両方に関して一定した様式でこれらの受容体を発現するクローン細胞株である。同様に、NK-92細胞は、免疫原性でなく、ヒト対象に治療的に投与した場合、免疫拒絶反応を誘発しない。実際、NK-92細胞は、正常組織に対する公知の有害な影響を伴うことなく、ヒトでは十分に耐容性である。
【0095】
ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターへの操作された細胞のためのベクター。例えば、ウイルスを含まない方法、アデノウイルス、プラスミド、ミニサークルベクター、エピソームベクター、センダイウイルス、合成mRNA、自己複製RNA、レトロウイルス、レンチウイルス、PhiC31インテグラーゼ、切除可能なトランスポゾン、エピソームベクター、CRISPRに基づく遺伝子編集、または当技術分野において公知の方法。いくつかの態様では、操作のための供給源細胞には、CD34+および/もしくはCD45+であることを特徴とする造血幹細胞(HSC);CD45+CD7+CD56-であることを特徴とする共通リンパ球系前駆細胞(CLP);CD45+CD5-CD7+であることを特徴とするCIL前駆細胞;ならびに/またはCD45+CD56+CD3-、任意でCD5-および/もしくはCD7+であることを特徴とするCIL細胞が含まれる。
【0096】
いくつかの態様では、供給源細胞は、上記のいずれかを含む、リンパ球またはリンパ球系前駆細胞に分化することができるヒト胚性幹細胞(hESC)または人工多能性幹細胞(iPSC)であり得る。次いで、リンパ球またはリンパ球系前駆細胞は、前駆細胞(共通リンパ球系前駆細胞またはプレNK細胞)からの正常なサイトカイン経路の代わりに拡大増殖および/または分化を促進するために、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)を用いて操作され得る。免疫療法では、供給源細胞は、同種異系または自己由来であり、これは、それぞれドナーまたは対象由来であることを意味する。
【0097】
いくつかの態様では、CIL細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)から生成され得る。CIL細胞は、iPSCを造血幹細胞(HSC)とも呼ばれる造血前駆細胞(HPC)に、HPCを共通リンパ球系前駆細胞(CLP)に、次いで、CLPをiPSC由来細胞傷害性自然リンパ球系細胞(iPSC-CIL、またはiCIL)と呼ばれるCIL細胞に順次分化させることによって、iPSCから誘導され得る。
【0098】
iPSCは、胚性幹細胞の明確な特性を維持するために重要な遺伝子および因子の強制発現によって胚性幹細胞様状態に遺伝子的に再プログラムされた成体体細胞(例えば、線維芽細胞またはPBMC)に由来する多能性幹細胞の一種である。iPSCは、限定されることなく、皮膚、歯科組織、末梢血および尿を含む、体細胞を有する組織から生成され得る。iPSCを生成するために、体細胞は、限定されることなく、再プログラミング因子の一過性発現、ウイルスを含まない方法、アデノウイルス、プラスミド、ミニサークルベクター、エピソームベクター、センダイウイルス、合成mRNA、自己複製RNA、レトロウイルス、レンチウイルス、PhiC31インテグラーゼ、切除可能なトランスポゾン、CRISPRに基づく遺伝子編集、または組換えタンパク質を含む方法によって再プログラムされ得る。
【0099】
細胞療法産業では、特定の疾患適応症を治療するために遺伝子操作された患者由来細胞を使用するという、変形力のある可能性が実証されているが、限られた拡大増殖能力および拡張性、製造の複雑さ、高コスト、患者ごとの変動性、ならびに患者アクセスを含め、患者由来材料の使用には多くの課題が残っている。対照的に、iPSCは、多能性幹細胞であり、癌の治療に適用可能な細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞を含む任意の他の細胞型に分化することが理論的に可能な細胞の一種である。iPSCを使用して、CIL細胞のような、標的細胞と戦う(例えば、癌との戦い)細胞療法の拡張可能で単純化された製造を提供することが可能であるため、コストが削減され、細胞療法への患者アクセスが改善される。iPSCは、無限の拡大増殖能力を有し、これは、それらが無限に複製および増殖し、癌治療などの治療のための分化免疫細胞のほぼ無限の供給を潜在的にもたらし得ることを意味する。iPSCはまた、精密な多重ゲノム編集にも適しており、それらの疾患標的化能力と、それらが最終的になる免疫細胞の安全性とを高めるための複数の遺伝子修飾の導入を可能にする。iPSCは、同様に、患者自身の免疫系による同種異系拒絶からそれらを保護し、それらの初期拡大増殖と生着の持続時間とを改善することを目的として操作することができる。さらに、患者由来血液材料またはドナー由来血液材料はいずれも一定していないが、iPSCは、単一の細胞クローンに由来する一定した出発材料を提供し、これにより、最終細胞産物におけるゲノムの一定性および完全性が可能になり得る。
【0100】
CIL細胞の様々な分化プロトコルが当技術分野において公知である。幹細胞(例えば、iPSC)を多能性造血前駆細胞に分化させるための方法の例は、米国特許第9,624,470号、米国特許出願第2020/0080059号およびMesquitta et al.,Sci.Rep.9:6622(2019)に提供されており、その開示全体は参照により本明細書に組み入れられる。細胞をNK細胞に分化させるための方法の例は、国際特許出願番号WO 2013/163171およびWO 2020/124256、米国特許第9,260,696号および米国特許第10,626,372号、ならびにZhu and Kaufman,Methods Mol.Biol.2048:107-119(2019)およびMatsubara et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.515(1):1-8(2019)に提供されており、その開示全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0101】
概して、細胞を分化させるための技術は、ポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/または小分子に基づく手法を使用して、直接的または間接的に、特定の細胞経路を調節することを伴う。細胞の発生効力は、例えば、細胞を1つまたは複数のモジュレーターと接触させることによって調節され得る。いくつかの態様では、細胞は、細胞分化を誘導するための1つまたは複数の作用物質(例えば、小分子、タンパク質、ペプチドなど)の存在下で培養される。いくつかの態様では、1つまたは複数の分化作用物質は、インビトロ培養中に細胞に導入される。細胞は、細胞が所望の分化表現型を達成するのに十分な期間にわたって、1つまたは複数の作用物質を含む培養培地中で維持され得る。
【0102】
いくつかの態様では、幹細胞は、フィーダーフリー培養に適合される。本明細書において使用される場合、「フィーダーフリー」(FF)環境とは、フィーダー細胞もしくは間質細胞を本質的に含まない、および/またはフィーダー細胞の培養によってプレコンディショニングされていない培養条件、細胞培養物または培養培地などの環境を指す。「プレコンディショニングされた」培地とは、フィーダー細胞が一定期間にわたって、例えば、少なくとも1日にわたって培地内で培養された後に採取された培地を指す。プレコンディショニングされた培地は、培地中で培養されたフィーダー細胞によって分泌される増殖因子およびサイトカインを含む多くのメディエーター物質を含有する。
【0103】
いくつかの態様では、培養プラットフォームは、栄養素、抽出物、増殖因子、ホルモン、サイトカインおよび培地添加剤のうちの1つまたは複数を含む。例示的な栄養素および抽出物には、例えば、多くの異なる哺乳動物細胞の増殖を支持するために広く使用されている基礎培地であるDMEM/F-12(ダルベッコ改変イーグル培地/Nutrient Mixture F-12);KOSR(ノックアウト血清置換);L-glut;NEAA(非必須アミノ酸)が含まれ得る。培地添加剤には、限定されることなく、MTG、ITS、(ME、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)が含まれ得る。いくつかの態様では、本発明の培養培地は、以下のサイトカインまたは増殖因子、すなわち、上皮増殖因子(EGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、白血病抑制因子(LIF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子1(IGF-1)、インスリン様増殖因子2(IGF-2)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、神経増殖因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、骨形成タンパク質(BMP4)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)トランスフェリン、様々なインターロイキン(IL-1~IL-18など)、様々なコロニー刺激因子(顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)など)、様々なインターフェロン(IFNγなど)、ならびに幹細胞因子(SCF)およびエリスロポエチン(EPO)などの他のサイトカインのうちの1つまたは複数を含む。
【0104】
これらのサイトカインは商業的に入手されてもよく、天然または組換えのいずれかであり得る。いくつかの他の態様では、本開示の培養培地は、骨形成タンパク質(BMP4)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、造血増殖因子(例えば、SCF、GMCSF、GCSF、EPO、IL3、TPO、EPO)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)のうちの1つまたは複数と、白血病抑制因子(LIF)、IL3、IL6、IL7、IL11、IL15からの1つまたは複数のサイトカインとを含む。いくつかの態様では、増殖因子、マイトジェンおよびサイトカインは、経験的に決定されるか、または確立されたサイトカイン技術によって導かれる濃度に特異的な段階および/または細胞型である。外因性細胞培養培地添加剤およびサプリメントならびに細胞選択キット成分の例は、国際公開公報第2020/124256号に提供されており、その開示全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
いくつかの他の態様では、本開示の培養培地は、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)培地、cRPMI1640培地、ウシ胎児血清(FBS)、Glutamax、ペニシリン、ストレプトマイシン、Rosuvastatin、BX795、硫酸プロタミン、ブレフェルジンA、モネンシン、UM729、IL-2、IL-15、IL-21、IL-18、IL-7またはそれらの任意の組合せを含む。
【0106】
いくつかの態様では、本開示のCIL細胞を産生する方法は、幹細胞の凝集体を含む胚様体(EB)を形成する工程;第1の分化培地中で細胞を造血幹細胞に分化させる工程;第2の分化培地中で細胞をリンパ球系前駆細胞に分化させる工程;および/または第3の分化培地中で細胞を分化CIL細胞に分化させる工程を含む。
【0107】
いくつかの態様では、分化培地は、血清、抽出物、増殖因子、ホルモン、サイトカインなどのサプリメントを含有する。
【0108】
CIL細胞を生成するための細胞の分化には、培養培地中の刺激剤、または細胞の物理的状態を変化させるなど、培養系の変化が必要とされる。従来の戦略は、系統特異的分化を開始させるための共通の重要な中間体として胚様体の形成を利用する。胚様体は、環境刺激の変化(例えば、特定の分子/化学的因子の曝露および/もしくは除去;ならびに/または三次元構造による曝露/三次元構造との相互作用)によって分化するように誘導される幹細胞の凝集体である。胚様体の形成は、細胞を中胚葉特異化に分化させるように細胞を誘導する。
【0109】
多能性幹細胞凝集体は、選択された系統(例えば、リンパ球系)への誘発合図を提供する分化培地に移される。いくつかの態様では、EBが形成されると、それらは解離され、次いで、細胞の中胚葉特異性を誘導するために培地中で培養される。
【0110】
本発明のいくつかの局面では、上記の胚様体の誘導、および造血前駆細胞プラットフォームへの分化は、無血清条件下で行われ得る。細胞付着および/または誘導に適した市販の無血清培地の例には、Stem Cell Technologies(Vancouver,Canada)製のmTeSR(商標)1またはTeSR(商標)2、ReproCELL(Boston,Mass.)製のPrimate ES/iPS細胞培地、Invitrogen(Carlsbad,Calif.)製のStemPro(登録商標)-34、Invitrogen製のStemPro(登録商標)hESC SFM、およびLonza(Basel,Switzerland)製のX-VIVO(商標)が挙げられる。
【0111】
いくつかの態様では、中胚葉特異性誘導工程の培地は、骨形態形成タンパク質4(BMP4)、血管内皮増殖因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2としても知られるbFGF)のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、中胚葉特異性誘導工程の培地は、骨形態形成タンパク質4(BMP4)、血管内皮増殖因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、トロンボポエチン(TPO)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2としても知られるbFGF)および/またはROCK阻害剤のうちの1つまたは複数を含む。
【0112】
いくつかの態様では、方法は、中胚葉特定細胞を第1の分化培地中で造血幹細胞に分化させる工程を含む。
【0113】
いくつかの態様では、第1の分化培地中の造血幹細胞は、骨形態形成タンパク質4(BMP4)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-3(IL-3)、TGF-β阻害剤、PI3K阻害剤またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含む。
【0114】
いくつかの態様では、TGF-β阻害剤はGW788388である。いくつかの態様では、PI3K阻害剤はLY294002である。
【0115】
いくつかの態様では、幹細胞は、BMP4、FGF2およびVEGFを含む分化培地中で中胚葉系統に分化する。
【0116】
いくつかの態様では、中胚葉細胞は、BMP4、FGF2、VEGFおよびSCFを含む分化培地中で造血幹細胞に分化する。
【0117】
いくつかの態様では、造血幹細胞は、BMP4、FGF2、VEGFおよびSCFを含む分化培地中でリンパ球系前駆細胞に分化する。
【0118】
いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞は、非生理学的リガンド、SCF、FLT3LおよびUM729を含む分化培地中で細胞傷害性自然リンパ球系細胞に分化する。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログである。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンである。
【0119】
いくつかの態様では、第1の分化培地中で中胚葉特定細胞を造血幹細胞に分化させることは、中胚葉特定細胞がCD34+造血幹細胞になるのに十分な期間にわたって行われる。
【0120】
いくつかの態様では、方法は、造血幹細胞を第2の分化培地中でリンパ球系前駆細胞に分化させる工程を含む。
【0121】
いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞分化培地は、骨形態形成タンパク質4(BMP4)、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-3(IL-3)、TGF-β阻害剤、PI3K阻害剤またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含む。
【0122】
いくつかの態様では、造血幹細胞を第2の分化培地中でリンパ球系前駆細胞に分化させることは、造血幹細胞がLin-CD34+CD38-/lo CD45RA+CD90-リンパ球系前駆細胞になるのに十分な期間にわたって行われる。
【0123】
いくつかの態様では、第1の分化培地は本開示の非生理学的リガンドをさらに含み、および/または第2の分化培地は本開示の非生理学的リガンドをさらに含む。
【0124】
いくつかの態様では、第1の分化培地および/または第2の分化培地は、少なくとも1つのサイトカイン(例えば、IL-2、IL-15および/またはIL-7)を実質的に含まない。
【0125】
いくつかの態様では、分化培地は、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、Fms関連チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3L)、ピリミド-インドール誘導体、またはそれらの任意の組合せのうちの1つまたは複数を含む。ピリミド-インドール誘導体は、UM 729(ピリミド-[4,5-b]-インドール誘導体)である。
【0126】
いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞を分化培地中でCIL細胞に分化させることは、リンパ球系前駆細胞がCD3-CD56+CD45+CD94+CD122+/IL-2Rβ+CD127/IL-7Rα-FcγRIII/CD16+KIR+NKG2A+NKG2D+NKp30+NKp44+NKP46+NKp80+になるのに十分な期間にわたって行われる。いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞を分化培地中でCIL細胞に分化させることは、リンパ球系前駆細胞がCD45+CD56+になるのに十分な期間にわたって行われる。いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞を分化培地中でCIL細胞に分化させることは、リンパ球系前駆細胞がCD45+CD5-CD7+CD56+になるのに十分な期間にわたって行われる。
【0127】
いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞を分化培地中でCIL細胞に分化させることは、約8~約18日間にわたって行われる。いくつかの態様では、リンパ球系前駆細胞を分化培地中でCIL細胞に分化させることは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19または約20日間にわたって行われる。
【0128】
いくつかの態様では、CIL細胞分化培地は、インターロイキン-15(IL-15)を実質的に含まない。いくつかの態様では、CIL細胞分化培地は、インターロイキン-7(IL-7)を実質的に含まない。いくつかの態様では、CIL細胞分化培地は、インターロイキン-2(IL-2)を実質的に含まない。いくつかの態様では、CIL細胞分化培地は、IL-15、IL-7および/またはIL-2を実質的に含まない。
【0129】
いくつかの態様では、分化後、CIL細胞は、非生理学的リガンドおよびCD2/NKp46刺激を含む培地中で拡大増殖される。いくつかの態様では、CIL細胞拡大増殖培地は、CIL細胞を刺激および活性化するコンジュゲートされた抗CD2抗体および抗NKp46抗体を含む活性化ビーズを含む。
【0130】
いくつかの態様では、分化後、RACR-iCIL細胞は、非生理学的リガンドと、膜結合IL-21(mbIL21)と、41BBL K562開始フィーダー細胞とを含む培地中で拡大増殖される。
【0131】
誘導された細胞傷害性自然リンパ球系細胞(iCIL)
いくつかの態様では、CIL細胞は、iPSCを造血前駆細胞(HPC)に、HPCを共通リンパ球系前駆細胞(CLP)に、次いで、CLPを「iCIL」細胞と呼ばれるCIL細胞に順次分化させることによって、iPSCから誘導され得る。変形例では、CIL細胞は、HPCをCLPに、次いで、CLPをiCIL細胞に順次分化させることによって、HPCから誘導され得る。さらなる変形例では、CIL細胞は、CLPをiCIL細胞に分化させることによって誘導され得る。合成サイトカイン受容体を発現するように細胞を操作することは、分化プロセスのHPC、CLPまたはiCIL細胞段階で行われ得る。
【0132】
いくつかの態様では、iCIL細胞は、CD3-CD56+CD45+CD94+CD122+/IL-2Rβ+CD127/IL-7Rα-FcγRIII/CD16+KIR+NKG2A+NKG2D+NKp30+NKp44+NKP46+NKp80+であることを特徴とする。いくつかの態様では、iCIL細胞は、CD3-CD56+CD45+細胞であることを特徴とする。いくつかの態様では、iCIL細胞は、CD3-CD56+細胞であることを特徴とする。いくつかの態様では、iCIL細胞は、CD56+、CD45+、CD94+、CD122+/IL-2Rβ+、FcγRIII/CD16+、KIR+、NKG2A+、NKG2D+、NKp30+、NKp44+、NKP46+、NKp80+、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択される1つまたは複数の細胞マーカーを含む。iCIL細胞は、CD45+;CD45+CD5-;またはCD45+CD5-CD56+であり得る。
【0133】
いくつかの態様では、iCIL細胞は、CD45+CD7+CD56+/loであることを特徴とする。
【0134】
いくつかの態様では、iCIL細胞にCARを形質導入した後、該細胞は、該細胞の活性化を促進する条件下で培養される。
【0135】
培養条件は、培養培地の成分に対する反応性を考慮せずに細胞を患者に投与することができるようなものであり得る。例えば、培養条件は、ウシ血清アルブミンなどのウシ血清製品を省略してもよい。例示的な一局面では、活性化は、公知のアクチベーターを培養培地に導入することによって達成され得る。一局面では、iCIL細胞の集団は、活性化を促進する条件下で約1~約4日間にわたって培養され得る。一態様では、適切な活性化レベルは、細胞サイズ、増殖速度、またはフローサイトメトリーによって決定される活性化マーカーによって決定され得る。いくつかの態様では、本明細書において開示される培養方法のいずれかを使用して、iCIL細胞の活性化を促進してもよい。
【0136】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含む操作された細胞の集団を作製するおよび/または拡大増殖させる方法が本明細書において提供される。いくつかの態様では、方法は、
a. 任意で、合成サイトカイン受容体をコードするポリヌクレオチドを供給源細胞に導入することによって、合成サイトカイン受容体を含む操作された細胞を提供する工程、および
b. 非生理学的リガンドを含む培地中で、操作された細胞をインキュベートする工程
を含む。
【0137】
この態様では、サイトカイン受容体は、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RB)から選択される細胞内ドメインとを含む合成アルファ鎖ポリペプチドまたは合成ベータ鎖ポリペプチドを含み、非生理学的リガンドは、操作された細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する。
【0138】
この態様では、サイトカイン受容体は、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成ベータ鎖ポリペプチドを含み、非生理学的リガンドは、操作された細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する。
【0139】
いくつかの態様では、iPSCは、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。
【0140】
いくつかの態様では、HSCは、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。いくつかの態様では、血液前駆細胞は、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。いくつかの態様では、共通リンパ球系前駆細胞は、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。いくつかの態様では、NK前駆細胞は、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。いくつかの態様では、共通リンパ球系前駆(CLP)細胞は、レンチウイルスを使用して遺伝的に編集される。
【0141】
III. レトロウイルス粒子
レトロウイルスには、レンチウイルス、ガンマ-レトロウイルス、およびアルファ-レトロウイルスが含まれ、これらの各々は、当技術分野において公知の方法を使用してポリヌクレオチドを細胞に送達するために使用され得る。レンチウイルスは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、polおよびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複雑なレトロウイルスである。複雑性が高くなれば、潜伏感染の過程のように、ウイルスがその生活環を調節することが可能になる。レンチウイルスのいくつかの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1およびHIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。レトロウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重減衰させることによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失されて、ベクターが生物学的に安全になっている。
【0142】
例示的なレンチウイルスベクターには、各々参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Naldini et al.(1996)Science 272:263-7;Zufferey et al.(1998)J.Virol.72:9873-9880;Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-8471;米国特許第6,013,516号;および米国特許第5,994,136号に記載されているものが含まれる。一般に、これらのベクターは、ベクターを含有する細胞の選択、レンチウイルス粒子への外来核酸の組込み、および標的細胞への核酸の移入のための必須配列を有するように構成される。
【0143】
一般的に使用されるレンチウイルスベクター系は、いわゆる第3世代系である。第3世代レンチウイルスベクター系は、4つのプラスミドを含む。「移入プラスミド」は、レンチウイルスベクター系によって標的細胞に送達されるポリヌクレオチド配列をコードする。移入プラスミドは、長末端反復(LTR)配列に隣接する関心対象の1つまたは複数の導入遺伝子配列を一般に有し、これにより、宿主ゲノムへの移入プラスミド配列の組込みが促進される。安全上の理由から、移入プラスミドは、結果として生じるベクター複製を無効にするように一般に設計される。例えば、移入プラスミドは、宿主細胞内での感染性粒子の生成に必要な遺伝子エレメントを欠く。さらに、移入プラスミドは、ウイルスを「自己不活性化」(SIN)させる、3'LTRの欠失を伴って設計され得る。Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-71;Miyoshi et al.(1998)J.Virol.72:8150-57を参照されたい。ウイルス粒子はまた、3'非翻訳領域(UTR)および5'UTRを含み得る。UTRは、レトロウイルス粒子による細胞の接触後の細胞へのプロウイルスゲノムのパッケージング、逆転写および組込みを支持するレトロウイルス調節エレメントを含む。
【0144】
第3世代系はまた、2つの「パッケージングプラスミド」と、「エンベローププラスミド」とを一般に含む。「エンベローププラスミド」は、プロモーターに機能的に連結されたEnv遺伝子を一般にコードする。例示的な第3世代系では、Env遺伝子はVSV-Gであり、プロモーターはCMVプロモーターである。第3世代系は、1つはgagおよびpolをコードし、もう1つはさらなる安全機能、すなわち、いわゆる第2世代系の単一パッケージングプラスミドに対する改良としてrevをコードする2つのパッケージングプラスミドを使用する。第3世代系は、さらに安全ではあるが、使用するのがさらに煩雑であり、追加のプラスミドを加えることによりウイルス力価が低くなる可能性がある。例示的なパッキングプラスミドには、限定されることなく、pMD2.G、pRSV-rev、pMDLG-pRRE、およびpRRL-GOIが含まれる。
【0145】
多くのレトロウイルスベクター系は、「パッケージング細胞株」の使用に依存している。一般に、パッケージング細胞株は、移入プラスミド、パッケージングプラスミドおよびエンベローププラスミドを細胞に導入した場合に、細胞が感染性レトロウイルス粒子を産生することができる細胞株である。トランスフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、細胞にプラスミドを導入する様々な方法が使用され得る。場合によっては、パッケージング細胞株は、レトロウイルス粒子へのレトロウイルスベクター系の高効率パッケージングに適合される。
【0146】
本明細書において使用される場合、用語「レトロウイルスベクター」または「レンチウイルスベクター」は、ゲノムパッケージングに必要なレトロウイルスシス核酸配列またはレンチウイルスシス核酸配列と、標的細胞に送達される1つまたは複数のポリヌクレオチド配列とをコードする核酸を意味することが意図される。レトロウイルス粒子およびレンチウイルス粒子は、RNAゲノム(移入プラスミドに由来する)と、Envタンパク質が埋め込まれた脂質二重層エンベロープと、インテグラーゼ、プロテアーゼおよびマトリックスタンパク質を含む他のアクセサリータンパク質とを一般に含む。本明細書において使用される場合、用語「レトロウイルス粒子」および「レンチウイルス粒子」は、エンベロープを含み、レンチウイルスの1つまたは複数の特徴を有し、標的宿主細胞に侵入することができるウイルス粒子を指す。そのような特徴には、例えば、非分裂宿主細胞を感染させること、非分裂宿主細胞を形質導入すること、宿主免疫細胞を感染させるかもしくは形質導入すること、gag構造ポリペプチドのうちの1つもしくは複数を含むレトロウイルスビリオンもしくはレンチウイルスビリオンを含有すること、envコード糖タンパク質のうちの1つもしくは複数を含むレトロウイルスエンベロープもしくはレンチウイルスエンベロープを含有すること、複製、プロウイルスの組込み、もしくは転写において機能する1つもしくは複数のレトロウイルスシス作用配列もしくはレンチウイルスシス作用配列を含むゲノムを含有すること、レトロウイルスプロテアーゼもしくはレンチウイルスプロテアーゼ、逆転写酵素もしくはインテグラーゼをコードするゲノムを含有すること、またはTatもしくはRevなどの調節活性をコードするゲノムを含有することが含まれる。移入プラスミドは、米国特許第8,093,042号に記載されているようなcPPT配列を含み得る。
【0147】
系の効率は、ベクター操作では重要な関心事である。レトロウイルスベクター系またはレンチウイルスベクター系の効率は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)などによるベクターコピー数(VCN)もしくはベクターゲノム(vg)の測定、または感染単位/ミリリットル(IU/mL)単位のウイルスの力価を含む、当技術分野において公知の様々な方法で評価され得る。例えば、Humbert et al.Development of third-generation Cocal Envelope Producer Cell Lines for Robust Retroviral Gene Transfer into Hematopoietic Stem Cells and T-cells.Molecular Therapy 24:1237-1246(2016)に記載されているように、培養腫瘍細胞株HT1080に対して行われる機能アッセイを使用して力価を評価してもよい。連続的に分裂している培養細胞株に対して力価を評価する場合、刺激は必要とされないため、測定された力価はレトロウイルス粒子の表面操作による影響を受けない。レトロウイルスベクター系の効率を評価するための他の方法は、Gaererts et al.Comparison of retroviral vector titration methods.BMC Biotechnol.6:34(2006)に提供されている。
【0148】
いくつかの態様では、本開示のレトロウイルス粒子および/またはレンチウイルス粒子は、ゲーティングアダプター(gating adaptor)に特異的に結合する受容体をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、ゲーティングアダプターに特異的に結合する受容体をコードする配列は、プロモーターに機能的に連結される。例示的なプロモーターには、限定されることなく、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CAGプロモーター、SV40プロモーター、SV40/CD43プロモーター、およびMNDプロモーターが含まれる。
【0149】
いくつかの態様では、レトロウイルス粒子は、形質導入エンハンサーを含む。いくつかの態様では、レトロウイルス粒子は、タグタンパク質を含む。
【0150】
いくつかの態様では、レトロウイルス粒子の各々は、5'から3'の順序で、(i)5'長末端反復配列(LTR)または非翻訳領域(UTR)と、(ii)プロモーターと、(iii)リガンドに特異的に結合する受容体をコードする配列と、(iv)3'LTRまたは3'UTRとを含むポリヌクレオチドを含む。
【0151】
いくつかの態様では、レトロウイルス粒子は、標的宿主細胞上の表面マーカーに結合し、宿主細胞形質導入を可能にする細胞表面受容体を含む。ウイルスベクターは、シュードタイプ化ウイルスベクターをもたらす異種ウイルスエンベロープ糖タンパク質を含み得る。例えば、ウイルスエンベロープ糖タンパク質は、RD114もしくはその変異体の1つ、VSV-G、テナガザル白血病ウイルス(Gibbon-ape leukaemia virus)(GALV)に由来し得るか、または広宿主性エンベロープ、麻疹エンベロープもしくはヒヒレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質である。いくつかの態様では、細胞表面受容体は、球菌(Cocal)株由来のVSV Gタンパク質またはその機能的変異体である。
【0152】
様々な融合糖タンパク質が、シュードタイプレンチウイルスベクターに使用され得る。最も一般的に使用される例は水疱性口内炎ウイルス(VSVG)由来のエンベロープ糖タンパク質であるが、多くの他のウイルスタンパク質もレンチウイルスベクターのシュードタイピングに使用されてきた。Joglekar et al.Human Gene Therapy Methods 28:291-301(2017)を参照されたい。本開示は、様々な融合糖タンパク質の置換を企図する。特に、いくつかの融合糖タンパク質は、ベクター効率を増大させる。
【0153】
いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体のシュードタイピングは、限定されることなく、自然リンパ球系細胞、細胞傷害性自然リンパ球系細胞またはNK細胞を含む特定の細胞型の標的化形質導入を容易にする。いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp160、マウス白血病ウイルス(MLV)gp70、テナガザル白血病ウイルス(GALV)gp70、ネコ白血病ウイルス(RD114)gp70、広宿主性レトロウイルス(Ampho)gp70、10A1 MLV(10A1)gp70、狭宿主性レトロウイルス(Eco)gp70、ヒヒ白血病ウイルス(Baboon ape leukemia virus)(BaEV)gp70、麻疹ウイルス(MV)HおよびF、ニパウイルス(NiV)HおよびF、狂犬病ウイルス(RabV)G、モコラウイルス(MOKV)G、エボラザイールウイルス(EboZ)G、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)GP1およびGP2、バキュロウイルスGP64、チクングニアウイルス(CHIKV)E1およびE2、ロスリバーウイルス(RRV)E1およびE2、セムリキ森林ウイルス(SFV)E1およびE2、シンドビスウイルス(SV)E1およびE2、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)E1およびE2、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)E1およびE2、インフルエンザA、B、CもしくはD HA、トリペストウイルス(FPV)HA、水疱性口内炎ウイルスVSV-G、またはチャンディプラウイルスおよびピリウイルスCNV-GおよびPRV-Gの全長ポリペプチド、機能的断片、ホモログまたは機能的変異体である。
【0154】
いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体は、水胞性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、カラジャスベシクロウイルス(Carajas Vesiculovirus)(CJSV)、チャンディプラベシクロウイルス(CHPV)、球菌ベシクロウイルス(Cocal Vesiculovirus)(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンベシクロウイルス(Isfahan Vesiculovirus)(ISFV)、マラバベシクロウイルス(Maraba Vesiculovirus)(MARAV)、水疱性口内炎ニュージャージウイルス(VSNJV)、バスコンゴウイルス(Bas-Congo Virus)(BASV)のGタンパク質の全長ポリペプチド、機能的断片、ホモログまたは機能的変異体である。いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体は球菌ウイルスGタンパク質である。
【0155】
いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体は、水胞性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、カラジャスベシクロウイルス(Carajas Vesiculovirus)(CJSV)、チャンディプラベシクロウイルス(CHPV)、球菌ベシクロウイルス(Cocal Vesiculovirus)(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンベシクロウイルス(Isfahan Vesiculovirus)(ISFV)、マラバベシクロウイルス(Maraba Vesiculovirus)(MARAV)、水疱性口内炎ニュージャージウイルス(VSNJV)、バスコンゴウイルス(Bas-Congo Virus)(BASV)のGタンパク質の全長ポリペプチド、機能的断片、ホモログまたは機能的変異体である。いくつかの態様では、融合糖タンパク質またはその機能的変異体は球菌ウイルスGタンパク質である。
【0156】
本開示は、限定されることなく、ガンマ-レトロウイルスベクター、アルファ-レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターを含む様々なレトロウイルスベクターをさらに提供する。いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ガンマ-レトロウイルスベクターであり得る。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、VSV Gタンパク質またはその機能的変異体を含む。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、球菌Gタンパク質またはその機能的変異体を含む。
【0157】
IV. 核酸ベクター
本明細書において使用される場合、用語「核酸ベクター」は、関心対象の核酸を有するか、保有するか、または発現するように機能する任意の核酸を意味することが意図される。核酸ベクターは、例えば、発現、パッケージング、シュードタイピング、形質導入または配列決定などの特殊な機能を有することができる。核酸ベクターはまた、例えば、クローニングベクターまたはシャトルベクターなどの操作機能を有することができる。ベクターの構造は、特定の使用のために実現可能かつ望ましい任意の所望の形態を含むことができる。そのような形態には、例えば、プラスミドおよびファージミドなどの環状形態、ならびに線状形態または分岐状形態が含まれる。核酸ベクターは、例えば、DNAまたはRNAから構成され得るほか、部分的または完全にヌクレオチドの誘導体、類似体および模倣体を含有し得る。そのような核酸ベクターは、天然の供給源から得ることができるか、組換え生成され得るか、または化学的に合成され得る。
【0158】
本開示のベクター系の非限定的な例には、レトロウイルス、レンチウイルス、泡沫状ウイルスおよびスリーピングビューティートランスポゾンが挙げられる。
【0159】
V. 合成サイトカイン受容体複合体および合成サイトカイン受容体系
いくつかの態様では、免疫療法に使用され得る細胞を含む、細胞を操作するための合成サイトカイン受容体が本明細書において提供される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドに応答してシグナル伝達を開始するために二量体化することができる2つのポリペプチド鎖から構成される。特定の態様では、合成サイトカイン受容体はラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。
【0160】
外因性サイトカインを加える必要なく、サイトカインの供給源、またはサイトカインシグナル(例えば、JAK/STAT)を提供する任意の合成受容体系を使用することができる。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体または合成サイトカイン系は、共通サイトカイン受容体ガンマ鎖シグナル伝達を誘導する。共通サイトカイン受容体ガンマ鎖は、サイトカインIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21の受容体複合体に対するシグナル伝達鎖である。共通ガンマサイトカイン鎖を共有するサイトカインの例示的な例には、限定されることなく、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21およびIL-9が挙げられる。共通ガンマ鎖受容体に対する直交受容体(例えば、Kalbasi et al.Nature,2022 607:360;Zhang et al.Sci.Transl.Med.,2021 13(625):eabg6986)、例えば、公開された米国特許第20200172879号に記載されている、サイトカインの制御された発現または誘導性発現のための薬物応答性ドメイン(DRD)との操作されたサイトカイン融合物の薬物誘導性系;および二量体化の化学的誘導物質(CID)に応答性である二量体化ドメインを有する合成受容体を含む、様々な合成サイトカイン受容体系が公知であり、使用され得る。
【0161】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、CIDリガンドの二量体化ドメインを含有する。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、それぞれが二量体化ドメインに融合された、共通サイトカイン受容体ガンマシグナル伝達鎖およびアルファサイトカイン受容体シグナル伝達鎖またはベータサイトカイン受容体シグナル伝達鎖のいずれかのヘテロ二量体である。いくつかの態様では、二量体化ドメインは、FKBP、シクロフィリン受容体、ステロイド受容体、テトラサイクリン受容体、エストロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、ビタミンD受容体、カルシニューリンA、CyP-Fas、mTORのFRBドメイン、GyrB、GAI、GID1、Snap-tagおよび/もしくはHaloTag、またはそれらの部分もしくは誘導体に由来し得る。CIDおよび対応する二量体化ドメインの例は、当技術分野において公知である(例えば、米国特許出願公開第2016/0046700号、Clackson et al.(1998)Proc Natl Acad Sci U S A.95(18):10437-42;Spencer et al.(1993)Science 262(5136):1019-24;Farrar et al.(1996)Nature 383(6596):178-81;Miyamoto et al.(2012)Nature Chemical Biology 8(5):465-70;Erhart et al.(2013)Chemistry and Biology 20(4):549-57を参照)。いくつかの態様では、CIDは、エストロゲン、グルココルチコイド、ビタミンD、ステロイド、テトラサイクリン、シクロスポリン、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、FK1012、FK506、FKCsA、リミズシド(rimiducid)もしくはHaXS、またはその類似体もしくは誘導体である。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内であり得る。いくつかの態様では、CIDは、非生理学的リガンドまたは合成リガンドである。いくつかの態様では、CIDは、ラパマイシンまたはその類似体である。例示的な合成受容体二量体化系を以下に記載する。
【0162】
非生理学的リガンドは、細胞傷害性自然リンパ球系細胞などの操作されたリンパ球内で合成サイトカイン受容体を活性化して、細胞傷害性自然リンパ球系細胞などの操作された細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導し得る。好ましい態様では、非生理学的リガンドは、ラパマイシンまたはラパログ、ラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)と呼ばれるそのような合成サイトカイン受容体である。
【0163】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、操作されたリンパ球(例えば、CIL細胞)内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞の拡大増殖を誘導する。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体の活性化は、誘導されていない細胞と比較して、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約1500倍、少なくとも約2000倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約3000倍、少なくとも約3500倍または少なくとも約4000倍の数のリンパ球、例えば、CIL細胞をもたらす。
【0164】
いくつかの態様では、リンパ球、例えば、CIL細胞は、約10倍~約100倍、約50倍~約200倍、約100倍~約300倍、約200倍~約400倍、約300倍~約500倍、約400倍~約1000倍、約500倍~約1500倍、約1000倍~約2000倍、約1500倍~約2500倍、約2000倍~約3000倍、約2500倍~約3500倍、約3000倍~約4000倍、またはこれらの範囲の間の任意の値だけ増加する。
【0165】
A. 例示的な合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)
いくつかの態様では、本開示の合成サイトカイン受容体は、それぞれが二量体化ドメインを含む、第1の合成サイトカイン鎖(例えば、共通受容体ガンマシグナル伝達鎖を含有する合成ガンマ鎖)である第1の膜貫通受容体タンパク質と、合成サイトカイン鎖(例えば、サイトカイン受容体のアルファ鎖またはベータ鎖の細胞内シグナル伝達鎖をそれぞれ含有する合成アルファ鎖または合成ベータ鎖)である第2の膜貫通受容体タンパク質とを含む。二量体化ドメインは、非生理学的リガンドの存在下で制御可能に二量体化することができ、それによって、合成サイトカイン受容体のシグナル伝達を活性化する。
【0166】
いくつかの態様では、第1のサイトカイン鎖は、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチドである。いくつかの態様では、第2のサイトカイン鎖は、第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、サイトカイン受容体のアルファ鎖またはベータ鎖の細胞内ドメインとを含む。いくつかの態様では、第2のサイトカイン鎖は、インターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-9RA)細胞内ドメインの細胞内ドメインを含有する合成アルファ鎖である。いくつかの態様では、第2のサイトカイン鎖は、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインまたはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖である。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内(膜貫通ドメインに対してC末端、および細胞内ドメインに対してN末端またはC末端であり得る。
【0167】
いくつかの態様では、本開示の合成サイトカイン受容体は、それぞれが二量体化ドメインを含む合成ガンマ鎖および合成アルファ鎖を含む。二量体化ドメインは、非生理学的リガンドの存在下で制御可能に二量体化することができ、それによって、合成サイトカイン受容体のシグナル伝達を活性化する。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内(膜貫通ドメインに対してC末端、およびIL-2G細胞内ドメインに対してN末端またはC末端であり得る。合成アルファ鎖ポリペプチドは、第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL-2RA)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内(膜貫通ドメインに対してC末端、およびIL-9RA細胞内ドメインに対してN末端またはC末端)であり得る。
【0168】
いくつかの態様では、本開示の合成サイトカイン受容体は、それぞれが二量体化ドメインを含む合成ガンマ鎖および合成ベータ鎖を含む。二量体化ドメインは、非生理学的リガンドの存在下で制御可能に二量体化することができ、それによって、合成サイトカイン受容体のシグナル伝達を活性化する。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内(膜貫通ドメインに対してC末端、およびIL-2G細胞内ドメインに対してN末端またはC末端であり得る。合成ベータ鎖ポリペプチドは、第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインまたはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む。二量体化ドメインは、細胞外(膜貫通ドメインに対してN末端)または細胞内(膜貫通ドメインに対してC末端、およびIL-2RB細胞内ドメイン、IL-7RB細胞内ドメインまたはIL-21RB細胞内ドメインに対してN末端またはC末端)であり得る。
【0169】
いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、シグナルペプチドをコードする核酸配列によってコードされる。いくつかの態様では、合成アルファ鎖ポリペプチドは、シグナルペプチドをコードする核酸配列によってコードされる。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、シグナルペプチドをコードする核酸配列によってコードされる。当業者であれば、細胞内で発生期タンパク質を輸送するためのシグナルを提供することができるシグナルペプチドに容易に精通している。様々なシグナルペプチドのいずれかを使用することができる。
【0170】
いくつかの態様では、シグナルペプチドは、
として示されるCD8aシグナル配列である。
【0171】
いくつかの態様では、シグナルペプチドは、
として示されるシグナル配列である。
【0172】
1. 細胞内ドメイン
いくつかの態様では、第1の膜貫通受容体タンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインは、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL2Rg)ドメインを含む。いくつかの態様では、IL2Rgドメインは、SEQ ID NO:1に記載の配列を含む。いくつかの態様では、IL2Rg共通ガンマ鎖細胞内ドメインは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、または100%のアミノ酸同一性を有する。
【0173】
IL2RG共通ガンマ鎖細胞内ドメインの配列をSEQ ID NO:1:
に記載する。
【0174】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、IL-2RG細胞内ドメインを含む第1の膜貫通受容体タンパク質と、第1の二量体化ドメインと、IL-2RB細胞内ドメインを含む第2の膜貫通受容体タンパク質と、第2の二量体化ドメインとを含む。
【0175】
いくつかの態様では、合成ベータ鎖は、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL2RB)細胞内ドメインを含む。IL2RBは、IL15RBまたはCD122としても公知である。したがって、本明細書において言及される場合、IL2RBはIL15RBも意味し得る。すなわち、該用語は、本開示では区別なく使用される。いくつかの態様では、IL2RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:2に記載の配列を含む。いくつかの態様では、IL2RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:2に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、または100%のアミノ酸同一性を有する。
【0176】
IL2RB細胞内ドメインの配列をSEQ ID NO:2:
に記載する。
【0177】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、IL-2RG細胞内ドメインを含む第1の膜貫通受容体タンパク質と、第1の二量体化ドメインと、IL-7RB細胞内ドメインを含む第2の膜貫通受容体タンパク質と、第2の二量体化ドメインとを含む。
【0178】
いくつかの態様では、合成ベータ鎖は、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL7RB)細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、IL7RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:3に記載の配列を含む。いくつかの態様では、IL7RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:3に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、または100%のアミノ酸同一性を有する。
【0179】
IL7RB細胞内ドメインの配列をSEQ ID NO:3:
に記載する。
【0180】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、IL-2RG細胞内ドメインを含む第1の膜貫通受容体タンパク質と、第1の二量体化ドメインと、IL-21RB細胞内ドメインを含む第2の膜貫通受容体タンパク質と、第2の二量体化ドメインとを含む。
【0181】
いくつかの態様では、合成ベータ鎖は、インターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL21RB)細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、IL21RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:4に記載の配列を含む。いくつかの態様では、IL21RB細胞内ドメインは、SEQ ID NO:4に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、または100%のアミノ酸同一性を有する。
【0182】
IL21RB細胞内ドメインの配列をSEQ ID NO:4:
に記載する。
【0183】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、IL-2RG細胞内ドメインを含む第1の膜貫通受容体タンパク質と、第1の二量体化ドメインと、IL-9RA細胞内ドメインを含む第2の膜貫通受容体タンパク質と、第2の二量体化ドメインとを含む。
【0184】
いくつかの態様では、合成アルファ鎖は、インターロイキン-9受容体サブユニットアルファ(IL9RA)細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、IL9RA細胞内ドメインは、SEQ ID NO:51に記載の配列を含む。いくつかの態様では、IL9RA細胞内ドメインは、SEQ ID NO:51に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性、少なくとも85%のアミノ酸同一性、少なくとも90%のアミノ酸同一性、少なくとも95%のアミノ酸同一性、または100%のアミノ酸同一性を有する。
【0185】
IL9RA細胞内ドメインの配列をSEQ ID NO:51:
に記載する。
【0186】
2. 二量体化ドメイン
二量体化ドメインは、ラパマイシンまたはラパログの存在下で二量体化することが当技術分野において公知である、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)、およびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含むがそれに限定されるわけではないヘテロ二量体化ドメインであり得る。いくつかの態様では、FRBドメインは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。いくつかの態様では、FKBPドメインは、SEQ ID NO:5と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。いくつかの態様では、FKBPドメインは、SEQ ID NO:48と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。いくつかの態様では、FKBPドメインは、SEQ ID NO:30と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。いくつかの態様では、FKBPドメインは、SEQ ID NO:49と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。
【0187】
いくつかの態様では、例示的なFKBPドメインの配列をSEQ ID NO:5:
に記載する。
【0188】
いくつかの態様では、例示的なFKBPドメインの配列をSEQ ID NO:48:
に記載する。
【0189】
いくつかの態様では、例示的なFKBPドメインの配列をSEQ ID NO:30:
に記載する。
【0190】
いくつかの態様では、例示的なFKBPドメインの配列をSEQ ID NO:49:
に記載する。
【0191】
いくつかの態様では、例示的なFRBドメインの配列をSEQ ID NO:6:
に記載する。
【0192】
いくつかの態様では、変異体FRBドメイン(FRB変異型ドメイン)の配列をSEQ ID NO:7:
に記載する。
【0193】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:5に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:6に記載する。
【0194】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:48に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:6に記載する。
【0195】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:30に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:6に記載する。
【0196】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:5に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:7に記載する。
【0197】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:48に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:7に記載する。
【0198】
いくつかの態様では、第1の二量体化ドメインをSEQ ID NO:30に記載し、第2の二量体化ドメインをSEQ ID NO:7に記載する。
【0199】
あるいは、第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインは、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびカルシニューリンドメインであり得、これらは、FK506またはその類似体の存在下で二量体化することが当技術分野において公知である。
【0200】
いくつかの態様では、二量体化ドメインは、
(i)サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP);
(ii)(ii)シクロフィリンA(CypA);または
(iii)(iii)ジャイレースB(CyrB)
から選択されるホモ二量体化ドメインであり、
かつ対応する非生理学的リガンドは、それぞれ
(i)FK1012、AP1510、AP1903もしくはAP20187;
(ii)(ii)シクロスポリン-A(CsA);または
(iii)(iii)クーママイシンもしくはその類似体
である。
【0201】
いくつかの態様では、膜貫通受容体タンパク質の第1および第2の二量体化ドメインは、FKBPドメインおよびシクロフィリンドメインである。
【0202】
いくつかの態様では、膜貫通受容体タンパク質の第1および第2の二量体化ドメインは、FKBPドメインおよび細菌ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)ドメインである。
【0203】
いくつかの態様では、膜貫通受容体タンパク質の第1および第2の二量体化ドメインは、カルシニューリンドメインおよびシクロフィリンドメインである。
【0204】
いくつかの態様では、膜貫通受容体タンパク質の第1および第2の二量体化ドメインは、PYR1様1(PYL1)およびアブシシン酸非感受性1(ABI1)である。
【0205】
3. 膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜にまたがる合成サイトカイン受容体の配列である。膜貫通ドメインは、疎水性アルファヘリックスを含み得る。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ヒトタンパク質に由来する。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
いくつかの態様では、TMドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは、同じサイトカイン受容体に由来する。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、IL-2RG TMドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、IL-2RB TMドメインおよびIL-2RB細胞内ドメインを含有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、IL-7RB TMドメインおよびIL-7RB細胞内ドメインを含有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、IL-21RB TMドメインおよびIL-21RB細胞内ドメインを含有する。いくつかの態様では、合成アルファ鎖ポリペプチドは、IL-9RA TMドメインおよびIL-9RA細胞内ドメインを含有する。
【0212】
いくつかの態様では、サイトカイン受容体のTMドメインに直接隣接する外部ドメインの1つまたは複数の追加の連続するアミノ酸も、合成サイトカイン受容体の鎖のポリペプチド配列の一部として含まれ得る。いくつかの態様では、サイトカイン受容体のTMドメインに隣接する外部ドメインの1~20個の連続するアミノ酸が、合成サイトカイン受容体の鎖のポリペプチド配列の一部として含まれる。外部ドメインの部分は、TM配列に直接隣接する(例えば、TM配列に対してN末端)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸の連続配列であり得る。
【0213】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメイン、IL-2RB膜貫通ドメインおよびIL-2RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FRB二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FKBP12二量体化ドメイン、IL-2RB膜貫通ドメインおよびIL-2RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。
【0214】
いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:8に記載の配列を含むIL-2RG TMドメインと、SEQ ID NO:1に記載の配列を含むIL-2RG細胞内ドメインとを含有する。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:31に記載の配列を含むIL-2RG TMドメインと、SEQ ID NO:1に記載の配列を含むIL-2RG細胞内ドメインとを含有する。
【0215】
いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:36に記載の配列を含むIL-2RB TMドメインと、SEQ ID NO:2に記載の配列を含むIL-2RB細胞内ドメインとを含有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:35に記載の配列を含むIL-2RB TMドメインと、SEQ ID NO:2に記載の配列を含むIL-2RB細胞内ドメインとを含有する。
【0216】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメインおよびIL-2RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0217】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメインおよびIL-2RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成ガンマ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの態様では、合成ベータ鎖ポリペプチドは、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0218】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、SEQ ID NO:28に記載の合成ガンマ鎖ポリペプチドと、SEQ ID NO:33に記載の合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。
【0219】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメイン、IL-7RB膜貫通ドメインおよびIL-7RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FRB二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FKBP12二量体化ドメイン、IL-7RB膜貫通ドメインおよびIL-7RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。
【0220】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメイン、IL-21RB膜貫通ドメインおよびIL-21RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FRB二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FKBP12二量体化ドメイン、IL-21RB膜貫通ドメインおよびIL-21RB細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。
【0221】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FKBP12二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FRB二量体化ドメイン、IL-9RA膜貫通ドメインおよびIL-9RA細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、FRB二量体化ドメイン、IL-2RG膜貫通ドメインおよびIL-2RG細胞内ドメインを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチドと、FKBP12二量体化ドメイン、IL-9RA膜貫通ドメインおよびIL-9RA細胞内ドメインを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドとから構成される。
【0222】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、非生理学的リガンドラパマイシンまたはラパマイシン類似体によって結合され得る。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、非生理学的リガンドラパマイシンまたはラパマイシン類似体に応答性であり、合成サイトカイン受容体の二量体化ドメインへの非生理学的リガンドの結合は、JAK/STAT経路などを介して、細胞内でサイトカイン受容体媒介性シグナル伝達を誘導する。
【0223】
4. 非生理学的リガンド
本開示の組成物および方法の様々な態様では、系は、非生理学的リガンドを含む。リガンドとして有用な例示的な小分子には、限定されることなく、ラパマイシン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、4-[(6-メチルピラジン-2-イル)オキシ]安息香酸(aMPOB)、フォレート、ローダミン、アセタゾラミド、およびCA9リガンドが含まれる。
【0224】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、リガンドによって活性化される。いくつかの態様では、リガンドは非生理学的リガンドである。
【0225】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログである。
【0226】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンである。
【0227】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP21967である。
【0228】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはFK506である。
【0229】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはFK1012である。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP1510である。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP1903である。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP20187である。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはシクロスポリン-A(CsA)である。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはクーママイシンである。
【0230】
いくつかの態様では、フォレート、フルオレセイン、aMPOB、アセタゾラミド、CA9リガンド、タクロリムス、ラパマイシン、ラパログ(ラパマイシン類似体)、CD28リガンド、ポリ(his)タグ、Strep-タグ、FLAG-タグ、VS-タグ、Myc-タグ、HA-タグ、NE-タグ、ビオチン、ジゴキシゲニン、ジニトロフェノールまたはそれらの誘導体によって活性化される合成サイトカイン受容体複合体。
【0231】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、1000ダルトン未満の無機化合物または有機化合物であり得る。
【0232】
いくつかの態様では、リガンドは、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体(ラパログ)であり得る。いくつかの態様では、ラパログは、ラパマイシンに対する以下の修飾、すなわち、C7、C42および/またはC29のメトキシの脱メチル化、脱離または置換;C13、C43および/またはC28のヒドロキシの脱離、誘導体化または置換;C14、C24および/またはC30のケトンの還元、脱離または誘導体化;5員プロリル環による6員ピペコラート環の置換;ならびにシクロヘキシル環上の代替置換、または置換シクロペンチル環によるシクロヘキシル環の置換のうちの1つまたは複数を有する、ラパマイシンの変異体を含む。
【0233】
したがって、いくつかの態様では、ラパログは、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、テムシロリムス(CCI-779)、C20-メタリルラパマイシン、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)、AP21967(A/C Heterodimerizer、Takara Bio(登録商標))、ミコフェノール酸ナトリウム、塩酸ベニジピン、ラパミン(rapamine)、AP23573(リダフォロリムス)、AP1903(リミズシド)、またはそれらの代謝産物、誘導体および/もしくは組合せである。
【0234】
いくつかの態様では、リガンドは、FK1012(FK506の半合成二量体)、タクロリムス(FK506)、FKCsA(FK506とシクロスポリンとの複合体)、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、HaXS二量体化剤(HaloTagおよびSNAP-タグの化学二量体化剤)、TMP-HTag(トリメトプリムハロ酵素(haloenzyme)タンパク質二量体化剤)、またはABT-737もしくはその機能性誘導体を含む。
【0235】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、0nM~1000nMの量、例えば、0.05nM、0.1nM、0.5.nM、1.0nM、5.0nM、10.0nM、15.0nM、20.0nM、25.0nM、30.0nM、35.0nM、40.0nM、45.0nM、50.0nM、55.0nM、60.0nM、65.0nM、70.0nM、75.0nM、80.0nM、90.0nM、95.0nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、900nMもしくは1000nM、または上述の量のいずれか2つによって定義される範囲内の量などで存在するか、または提供される。
【0236】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP21967であり、10nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP21967であり、20nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP21967であり、50nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはAP21967であり、100nMで存在するかまたは提供される。
【0237】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンであり、1nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンであり、10nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンであり、20nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパマイシンであり、50nMで存在するかまたは提供される。
【0238】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログであり、1nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログであり、10nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログであり、20nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログであり、50nMで存在するかまたは提供される。いくつかの態様では、非生理学的リガンドはラパログであり、100nMで存在するかまたは提供される。
【0239】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、1nMで存在するか、または提供される。
【0240】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、10nMで存在するか、または提供される。
【0241】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、100nMで存在するか、または提供される。
【0242】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、1000nMで存在するか、または提供される。
【0243】
B. 細胞質ゾルFRB
いくつかの態様では、iCIL細胞を含む操作された細胞、例えば、リンパ球またはその前駆体を、遊離細胞質ゾルFRB(すなわち、可溶性FRB)と接触させることができる。本明細書において他の箇所でさらに詳細に記載されるように、ラパマイシンはFKBP12に通常結合し、次いで、FKBP12-ラパマイシン複合体はmTORのFRBサブユニットに結合し、mTORシグナル伝達を遮断する。したがって、細胞をラパマイシンと接触させると、場合によっては、細胞の増殖および拡大増殖が阻害または減少され得る。NK細胞の拡大増殖とは対照的に、特定の薬物はNK細胞に対して抑制効果を有することが公知である。小分子ラパマイシンは、Wai et al.Transplantation.85(1):145-149(2008)によって、NK細胞機能を抑制することが報告されている。いくつかの態様では、ラパマイシンと複合体を形成し、それによって、供給源細胞または操作された細胞、例えば、操作されたリンパ球、例えば、iCILのラパマイシン媒介性増殖阻害を排除または低減するために、細胞に遊離細胞質ゾルFRBを提供することによって細胞を「ラパマイシン耐性」にすることができる。
【0244】
いくつかの態様では、ラパマイシン媒介性増殖阻害を排除または低減するために、合成サイトカイン受容体を用いて操作された細胞、例えば、CIL(例えば、NK細胞)を含むリンパ球を含む記載される細胞に、可溶性FRBを微量注入することができる。いくつかの態様では、CILまたはNK細胞などの細胞に、可溶性FRBを含有するベクターを形質導入して、ラパマイシン媒介性増殖阻害を排除または低減することができる。いくつかの態様では、可溶性FRBを細胞培養培地に加えて、ラパマイシン媒介性増殖阻害を排除または低減することができる。
【0245】
可溶性FRBが幹細胞またはNK細胞に微量注入される態様では、可溶性FRBは、4mg/mL、4.5mg/mL、5mg/mL、5.5mg/mLまたは6mg/mLの濃度で注入される。可溶性FRBがCILまたはNK細胞などの細胞に微量注入される態様では、可溶性FRBは、1μMの濃度で注入される。
【0246】
FRBドメインは、mTORプロテインキナーゼに由来する約100アミノ酸のドメインである。FRBドメインは、自由に拡散可能な可溶性タンパク質として細胞質ゾル中で発現され得る。有利には、FRBドメインは、形質導入された細胞内でmTORに対するラパマイシンの阻害効果を減少させ、形質導入された細胞の一定した活性化を促進し、天然の細胞を超える増殖上の利点を細胞に与える。
【0247】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体複合体は、リガンドに結合する細胞質ゾルポリペプチド、またはリガンドを含む複合体を含む。
【0248】
いくつかの態様では、細胞質ゾルポリペプチドは、FRBドメインを含む。いくつかの態様では、細胞質ゾルポリペプチドはFRBドメインを含み、リガンドはラパマイシンである。細胞質ゾルFRBドメインは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。FRBドメインは、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を有するポリペプチドから本質的になる裸のFRBドメインであり得る。有利には、細胞質ゾルFRBは、非生理学的リガンド(例えば、ラパマイシンまたはラパログ)の免疫抑制作用に対する耐性を付与する。いくつかの態様では、細胞質ゾルFRBドメインは、SEQ ID NO:50と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を含み得る。いくつかの態様では、FRBドメインは、SEQ ID NO:50と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のポリペプチド配列を有するポリペプチドから本質的になる裸のFRBドメインであり得る。
【0249】
いくつかの態様では、細胞は、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するFRBドメインタンパク質と接触させられる。
【0250】
いくつかの態様では、細胞は、SEQ ID NO:7に記載の配列を有するFRBドメインタンパク質と接触させられる。
【0251】
いくつかの態様では、細胞は、SEQ ID NO:50に記載の配列を有するFRBドメインタンパク質と接触させられる。
【0252】
VI. 遺伝子編集
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞(例えば、iPSCまたはCIL)は、遺伝子編集によって修飾され得る。いくつかの態様では、記載される遺伝子編集されたiPSCは、CILへの分化のための供給源細胞として使用され得る。
【0253】
ゲノム編集とは、好ましくは正確な、望ましい、および/または所定の様式で、ゲノムのヌクレオチド配列を編集するかまたは変化させるプロセスを一般に指す。本明細書において記載されるゲノム編集の組成物、系および方法の例は、部位特異的ヌクレアーゼを使用して、ゲノム内の正確な標的位置でDNAを切断し、それによって、DNA内に二本鎖切断(DSB)を作り出す。そのような切断は、相同組換え修復(HDR)および/または非相同末端結合(NHEJ)修復などの内因性DNA修復経路によって修復され得る(例えば、Cox et al.,(2015)Nature Medicine 21(2):121-31を参照)。
【0254】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞(例えば、幹細胞、CIL)は、遺伝的に修飾される。いくつかの態様では、修飾は、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼもしくはRNAガイドヌクレアーゼを使用して1つもしくは複数の内因性遺伝子をノックアウトすること、ならびに/または関心対象の1つもしくは複数の外因性遺伝子をノックインすることを伴う。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は、関心対象の特定の遺伝子座にノックインされる。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は合成サイトカイン受容体複合体である。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体複合体は、ラパマイシンによって活性化される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体複合体はラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。いくつかの態様では、RACRは、関心対象の遺伝子座にノックインされる。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子はキメラ抗原受容体である。
【0255】
いくつかの態様では、修飾は、細胞をDNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼと接触させることを含む。いくつかの態様では、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼは、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列核酸(clustered regularly interspaced short palindromic nucleic acid)(CRISPR)、またはTALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を含む。いくつかの態様では、CRISPR-Cas9が使用される。いくつかの態様では、CRISPR-Mad7が使用される。
【0256】
細胞治療薬(例えば、CAR T細胞)の拒絶は、ドナーとレシピエントとの間のヒト白血球抗原(HLA)のミスマッチに少なくとも起因する。近年同定された1つの解決策が、この拒絶に関与する遺伝子、例えば、T細胞受容体アルファ定常(T cell receptor alpha constant)(TRAC)、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)およびシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPA)の発現を破壊することである。したがって、いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞(例えば、iPSC、CIL)は、B2M遺伝子座、TRAC遺伝子座および/またはSIRPA遺伝子座をノックアウトするように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、B2M遺伝子座をノックアウトするように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、TRAC遺伝子座をノックアウトするように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、SIRPA遺伝子座をノックアウトするように遺伝的に操作される。
【0257】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、ラパマイシン耐性であるように遺伝的に操作される。ラパマイシンは、細胞の増殖および拡大増殖に不可欠な経路であるmTOR経路を阻害する小分子薬物である。したがって、細胞をラパマイシンと接触させると、場合によっては、細胞の増殖および拡大増殖が阻害または減少され得る。いくつかの態様では、提供される方法を使用して供給源細胞またはCILのラパマイシン媒介性増殖阻害を排除または低減するために、提供される細胞では、ラパマイシン機能に関与する内因性遺伝子が破壊され、それによって、そのような細胞は「ラパマイシン耐性」になる。「ラパマイシン耐性」細胞への言及は、細胞の内因性mTOR経路がラパマイシンまたはラパマイシン類似体の存在によって影響を受けない能力を指すと理解される。ただし、「ラパマイシン耐性」細胞は、それにもかかわらず、mTORを伴わない経路を介して、例えば、本明細書において記載される合成RACRの活性化に起因して、ラパマイシンに応答性であり得ることがさらに理解される。
【0258】
いくつかの態様では、細胞は、ラパマイシン認識に関連する遺伝子を破壊するように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、細胞は、mTOR遺伝子を破壊するように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、mTOR遺伝子は、FKBP-12(FKBP-1A、FKBP1、FKBP12、PKC12、PKCI2、PPIASEとしても知られる)である。FKBP12は、ラパマイシンの不可欠なバインダーであり、その機能に必要とされる。いくつかの態様では、細胞は、FKBP12遺伝子を破壊するように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、細胞は、FKB12遺伝子をノックアウトしてラパマイシン耐性を誘導するように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、供給源幹細胞(例えば、iPSC)の内因性FKBP12遺伝子の破壊は、CRISPR-Cas系による遺伝的ノックアウトによるものである。FKBP12の遺伝的破壊を伴わない正常細胞では、FKBP12はラパマイシンの主要なバインダーであり、次いで、FKBP12-ラパマイシン複合体はmTORのFRBサブユニットに結合し、mTORシグナル伝達を遮断する。FKBP12ノックアウトなどによってFKBP12遺伝子の発現を破壊することによって、本明細書における結果からラパマイシン抑制活性の成功が実証されており、これは、ラパマイシンはFKBP1Aと最初に複合体化せず機能を有しないためである。したがって、遺伝子ノックアウトなどによるFKBP12の遺伝的破壊は、幹細胞(例えば、iPSC)をラパマイシン媒介性mTOR阻害に対して高度に耐性にし、高用量のラパマイシンの存在下であっても幹細胞(例えばiPSC)の堅牢な増殖を可能にする。いくつかの態様では、細胞をラパマイシン増殖抑制に対して耐性にする能力は、有害な影響を伴わず細胞分化中のラパマイシンによるRACRの関与を可能にする。さらに、FKBP12のノックアウトは、ラパマイシンへの結合についてFKBP12とRACRとの競合を回避する。したがって、いくつかの態様では、FKBP12ノックアウトによって細胞をラパマイシン増殖に対して耐性にする能力はまた、インビボでのRACR含有細胞の活性化を可能にし、宿主免疫系のmTOR抑制を介して潜在的な同種異系抗移植片応答を抑制する。
【0259】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列を内因性遺伝子に含むように遺伝的に操作される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、内因性遺伝子の発現が破壊されないように遺伝子に入るように操作される。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、セーフハーバー遺伝子座に入るように操作される。
【0260】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列をハウスキーピング遺伝子に含むように遺伝的に操作された、本明細書において記載される細胞。いくつかの態様では、ハウスキーピング遺伝子は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ユビキチンC(UBC)、またはアクチンベータ(ACTB)である。
【0261】
いくつかの態様では、内因性遺伝子座に挿入された関心対象の遺伝子は、合成サイトカイン受容体複合体である。いくつかの態様では、特定の遺伝子座の内因性プロモーターが使用される。いくつかの態様では、2つ以上のプロモーターが関心対象の外因性遺伝子の発現を促進するように、追加のプロモーターが含まれ得る。
【0262】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、合成サイトカイン受容体複合体をコードするヌクレオチド配列を破壊された遺伝子に含むように遺伝的に操作される。例えば、いくつかの態様では、細胞は、破壊されたB2M遺伝子と、破壊されたB2M遺伝子内の合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0263】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞(例えば、iPSC、CIL)は、(i)破壊されたB2M遺伝子座と、(ii)内因性B2MプロモーターおよびEEF1Aプロモーターの制御下にある、合成サイトカイン受容体複合体(例えば、RACR)をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0264】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞(例えば、iPSC、CIL)は、(i)破壊されたB2M遺伝子座と、(ii)内因性B2M遺伝子に挿入され、内因性B2MプロモーターおよびEEF1Aプロモーターの制御下にある、合成サイトカイン受容体複合体(例えば、RACR)をコードするヌクレオチド配列とを含む。
【0265】
いくつかの態様では、(i)破壊されたB2M遺伝子座と(ii)合成サイトカイン受容体複合体(例えば、RACR)をコードするヌクレオチド配列とを含む細胞は、以下に記載される方法のいずれかによって産生される。
【0266】
A. ゲノム編集のための系
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞を編集するための系は、CRISPR/Cas系などの部位特異的ヌクレアーゼと、任意でgRNAとを含む。いくつかの態様では、系は、操作されたヌクレアーゼを含む。いくつかの態様では、系は、部位特異的ヌクレアーゼを含む。いくつかの態様では、部位特異的ヌクレアーゼは、CRISPR/Casヌクレアーゼ系を含む。いくつかの態様では、CasヌクレアーゼはCas9である。いくつかの態様では、ヌクレアーゼはMad7である。いくつかの態様では、CRISPR/Cas系を含むガイドRNAは単一ガイドRNA(sgRNA)である。
【0267】
1. CRISPR/Casヌクレアーゼ系
天然に存在するCRISPR/Cas系は、原核生物では、獲得免疫の形態を提供する遺伝的防御系である。CRISPRは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)の略語であり、例えば、原核生物に感染または攻撃したウイルスによって細胞に以前に曝露された外来DNAと類似するDNAの断片(スペーサーDNA)を含有する細菌および古細菌のゲノムに見られるDNA配列のファミリーである。DNAのこれらの断片は、例えば、その後の攻撃中の類似のウイルスからの再導入時に類似の外来DNAを検出および破壊するために原核生物によって使用される。CRISPR遺伝子座の転写は、外来の外因性DNAを認識および切断することができるCas(CRISPR関連)タンパク質と会合し、これを標的とするスペーサー配列を含むRNA分子の形成をもたらす。多数のタイプおよびクラスのCRISPR/Cas系が記載されている(例えば、Koonin et al.,(2017)Curr Opin Microbiol 37:67-78を参照)。
【0268】
CRISPR/Cas系の操作されたバージョンは、他の種からの細胞のゲノムDNAを変異させるかまたは編集するために多くの形式で開発されている。CRISPR/Cas系を使用する一般的な手法は、ガイドRNA(gRNA)と組み合わせた部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ)を細胞内に異種発現させるかまたは導入し、正確な標的化可能な位置で細胞のゲノムDNAの骨格にDNA切断事象(例えば、形成一本鎖切断または二本鎖切断(SSBまたはDSB))をもたらすことを伴う。DNA切断事象が細胞によって修復される様式は、DNAヌクレオチドまたは配列(例えば、遺伝子)の付加、除去または修飾(置換)によってゲノムを編集する機会を提供する。
【0269】
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞を編集するための系は、細胞内の内因性標的遺伝子内でDNA切断を誘導することができるヌクレアーゼを含む。いくつかの態様では、DNA切断は、切断部位で二本鎖DNAの両方の鎖を切断することによってDSBを誘導することができるヌクレアーゼによって誘導される二本鎖切断(DSB)を含む。いくつかの態様では、DNA切断は、内因性標的遺伝子のセンス鎖またはアンチセンス鎖の切断部位に一本鎖切断(SSB)を含む。いくつかの態様では、DNA切断は、センス鎖の切断部位にSSBと、アンチセンス鎖の切断部位にSSBとを含み、それによってDSBをもたらす。いくつかの態様では、DSBは、異なる切断部位、例えば、標的遺伝子の一方の鎖の遺伝子変異体の上流の切断部位、および他方の鎖の遺伝子変異体の下流の切断部位で、対向するDNA鎖の一本鎖切断(SSB)をそれぞれ誘導することができる組換えヌクレアーゼ、例えば、ニッカーゼの対によって誘導される。いくつかの態様では、ニッカーゼの対のうちの第1のものは、一方の鎖、例えば、センス鎖への切断を標的とするために、第1のガイドRNA、例えば、第1のsgRNAと複合体を形成し、ニッカーゼの対のうちの第2のものは、他方の鎖、例えば、アンチセンス鎖への切断を標的とするために、第2のガイドRNA、例えば、第2のsgRNAと複合体を形成する。いくつかの態様では、DSBは、細胞内の内因性標的遺伝子の対向する鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖の各々に対するSSBを介して誘導される。
【0270】
一般に、遺伝子は、互いに相補的なセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖DNAに位置する。センス鎖は、その配列が、転写されるRNA配列のDNAバージョンであるため、コード鎖とも呼ばれる。アンチセンス鎖は、その配列が、転写されるRNA配列に相補的であるため、鋳型鎖とも呼ばれる。
【0271】
i. ガイドRNA(gRNA)
操作されたCRISPR/Cas系は、少なくとも2つの成分、すなわち、1)ガイドRNA(gRNA)分子と、2)相互作用してgRNA/Casヌクレアーゼ複合体を形成するCasヌクレアーゼとを含む。gRNAは、ヌクレオチド配列とCRISPR反復配列とを含む「スペーサー」と呼ばれる、少なくともユーザ定義の標的化ドメインを含む。操作されたCRISPR/Cas系では、gRNA/Casヌクレアーゼ複合体は、相補的な様式で特定の標的配列に結合することができるヌクレオチド配列を有するスペーサーを含むgRNAを生成することによって、標的核酸(例えば、ゲノムDNA分子)内の関心対象の特定の標的配列を標的とする(Jinek et al.,Science,337,816-821(2012)およびDeltcheva et al.,Nature,471,602-607(2011)を参照)。したがって、スペーサーは、gRNA/Casヌクレアーゼ複合体の標的化機能を提供する。
【0272】
天然に存在するII型CRISPR/Cas系では、「gRNA」は、2つのRNA鎖、すなわち、1)スペーサーおよびCRISPR反復配列を含むCRISPR RNA(crRNA)と、2)トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)とから構成される。II型CRISPR/Cas系では、CRISPR反復配列を含むcrRNAの一部と、tracrRNAの一部とがハイブリダイズして、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)と相互作用するcrRNA:tracrRNA二重鎖を形成する。本明細書において使用される場合、用語「スプリットgRNA(split gRNA)」または「モジュラーgRNA(modular gRNA)」は、2つのRNA鎖を含むgRNA分子を指し、第1のRNA鎖は、crRNA機能および/または構造を組み込んでおり、第2のRNA鎖は、tracrRNA機能および/または構造を組み込んでおり、第1および第2のRNA鎖は部分的にハイブリダイズする。
【0273】
したがって、いくつかの態様では、gRNAは、2つのRNA分子を含む。いくつかの態様では、gRNAは、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む。いくつかの態様では、gRNAはスプリットgRNAである。いくつかの態様では、gRNAはモジュラーgRNAである。いくつかの態様では、スプリットgRNAは、5'から3'に向かって、スペーサーおよび第1の相補性領域を含む第1の鎖と、5'から3'に向かって、第2の相補性領域を含む第2の鎖と、任意でテールドメインとを含む。
【0274】
いくつかの態様では、crRNAは、標的核酸(例えば、ゲノムDNA分子)上の標的配列に相補的な配列と相補的でありハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むスペーサーを含む。いくつかの態様では、crRNAは、tracrRNAの一部と相補的でありハイブリダイズする領域を含む。
【0275】
いくつかの態様では、標的核酸(例えば、内因性遺伝子)はB2Mである。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:18に記載のヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:18に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:18に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0276】
いくつかの態様では、標的核酸(例えば、内因性遺伝子)はFKBP12である。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:19、20および21のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:19、20および21のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:19、20および21のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:19に記載のヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:19に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:19に記載のヌクレオチド配列を含むいくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:20に記載のヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:20に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:20に記載のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:21に記載のヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:21に記載のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:21に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0277】
いくつかの態様では、tracrRNAは、天然に存在するCRISPR/Cas系由来の野生型tracrRNA配列の全部または一部を含み得る。いくつかの態様では、tracrRNAは、野生型tracr RNAの切断型変異体または修飾型変異体を含み得る。tracr RNAの長さは、使用されるCRISPR/Cas系に依存し得る。いくつかの態様では、tracrRNAは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、または100超のヌクレオチド長を含み得る。ある特定の態様では、tracrRNAは少なくとも26ヌクレオチド長である。追加の態様では、tracrRNAは少なくとも40ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、tracrRNAは、例えば、1つもしくは複数のヘアピンもしくはステムループ構造、または1つもしくは複数のバルジ構造などの特定の二次構造を含み得る。
【0278】
a. 単一ガイドRNA(sgRNA)
操作されたCRISPR/Casヌクレアーゼ系は、多くの場合、crRNAとtracrRNAとを、これらの成分間にリンカーを付加することによって、本明細書において「単一ガイドRNA」(sgRNA)と呼ばれる単一のRNA分子に組み合わせる。理論に束縛されるものではないが、二重鎖のcrRNAおよびtracrRNAと同様に、sgRNAは、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)と複合体を形成し、Casヌクレアーゼを標的配列に導き、標的核酸(例えば、ゲノムDNA)を切断するためにCasヌクレアーゼを活性化する。したがって、いくつかの態様では、gRNAは、機能的に連結されたcrRNAおよびtracrRNAを含み得る。いくつかの態様では、sgRNAは、tracrRNAに共有結合したcrRNAを含み得る。いくつかの態様では、crRNAおよびtracrRNAは、リンカーを介して共有結合している。いくつかの態様では、sgRNAは、crRNAとtracrRNAとの間の塩基対形成を介してステムループ構造を含み得る。いくつかの態様では、sgRNAは、5'から3'に向かって、スペーサーと、第1の相補性領域と、連結ドメインと、第2の相補性領域と、任意でテールドメインとを含む。
【0279】
sgRNAは、修飾されていなくてもよいか、または修飾されていてもよい。例えば、修飾されたsgRNAは、1つまたは複数の2'-O-メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含むことができる。
【0280】
例示として、CRISPR/Cas系に使用されるガイドRNA、または他のさらに小さいRNAは、本明細書において例示され、当技術分野において記載されるように、化学的手段によって容易に合成され得る。化学的合成手順は絶えず拡大しているが、高速液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を回避するHPLC)などの手順によるそのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチドの長さが100ヌクレオチド程度を超えて著しく増加するにつれて、さらに困難になる傾向がある。さらに長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、一緒にライゲーションされる2つ以上の分子を生成することである。Cas9エンドヌクレアーゼをコードするものなどのはるかに長いRNAは、酵素的にさらに容易に生成される。RNAの化学合成および/もしくは酵素生成中またはその後に、様々なタイプのRNA修飾、例えば、当技術分野において記載されているように、安定性を向上させ、自然免疫応答の可能性もしくは程度を低下させ、および/または他の属性を増強する修飾を導入することができる。
【0281】
b. スペーサー
いくつかの態様では、gRNAは、スペーサー配列を含む。スペーサー配列は、標的核酸(例えば、DNA)の標的部位を規定する配列である。標的核酸は二本鎖分子であり、一方の鎖はPAM配列に隣接する標的配列を含み、「PAM鎖」と呼ばれ、第2の鎖は「非PAM鎖」と呼ばれ、PAM鎖および標的配列に相補的である。gRNAスペーサーおよび標的配列はともに、標的核酸の非PAM鎖に相補的である。いくつかの態様では、PAM配列に隣接する標的配列に対応するスペーサー配列は、標的核酸の非PAM鎖に相補的である。したがって、いくつかの態様では、PAM配列に隣接する標的配列に対応するスペーサー配列は、PAM鎖と同一である。gRNAスペーサー配列は、相補鎖(例えば、標的核酸/標的部位の非PAM鎖)にハイブリダイズする。いくつかの態様では、スペーサーは、Casヌクレアーゼを標的核酸に対して標的化するために、標的配列(例えば、非PAM鎖)の相補鎖に十分に相補的である。いくつかの態様では、スペーサーは、標的核酸の非PAM鎖に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%相補的である。いくつかの態様では、スペーサーは、標的核酸の非PAM鎖に100%相補的である。いくつかの態様では、スペーサーは、標的核酸の非PAM鎖と相補的でない1、2、3、4、5、6またはそれ以上のヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、スペーサーは、標的核酸の非PAM鎖と相補的でない1つのヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、スペーサーは、標的核酸の非PAM鎖と相補的でない2つのヌクレオチドを含む。
【0282】
いくつかの態様では、gRNAの最も5'側のヌクレオチドは、スペーサーの最も5'側のヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、スペーサーは、crRNAの5'末端に位置する。いくつかの態様では、スペーサーは、sgRNAの5'末端に位置する。いくつかの態様では、スペーサーは約15~50、約20~45、約25~40、または約30~35ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、スペーサーは約19~22ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、スペーサーは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29または約30ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、スペーサーは19ヌクレオチド長である。いくつかの態様では、スペーサーは20ヌクレオチド長であり、いくつかの態様では、スペーサーは21ヌクレオチド長である。
【0283】
いくつかの態様では、スペーサーのヌクレオチド配列は、コンピュータプログラムを使用して設計または選択される。コンピュータプログラムは、予測融解温度、二次構造形成、予測アニーリング温度、配列同一性、ゲノム状況、クロマチン接近可能性、%GC、(例えば、同一であるかまたは類似しているが、ミスマッチ、挿入または欠失の結果として1つまたは複数のスポットにおいて異なる配列の)ゲノム出現頻度、メチル化状態、および/またはSNPの存在などの変数を使用することができる。
【0284】
いくつかの態様では、スペーサーは、本明細書において記載されるものなどの少なくとも1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含む。本開示は、核酸塩基ウラシル(U)を含み得るスペーサーを含むgRNA分子を提供し、核酸塩基ウラシル(U)を含むスペーサーを含むgRNAをコードする任意のDNAは、対応する位置に核酸塩基チミン(T)を含む。
【0285】
ii. gRNAの作製方法
gRNAを作製する方法は当業者に公知であり、それには、限定されることなく、インビトロ転写(IVT)、合成および/もしくは化学合成方法、またはそれらの組合せが含まれる。酵素(IVT)合成方法、固相合成方法、液相合成方法、複合合成方法、小領域合成およびライゲーション方法が利用される。一態様では、gRNAは、IVT酵素合成方法を使用して作製される。IVTによってポリヌクレオチドを作製する方法は、当技術分野において公知であり、国際出願PCT/US2013/30062に記載されている。したがって、本開示はまた、本明細書において記載されるgRNAをインビトロで転写するために使用されるポリヌクレオチド、例えば、DNA、構築物およびベクターを含む。
【0286】
いくつかの態様では、非天然修飾核酸塩基は、合成中または合成後にポリヌクレオチド、例えば、gRNAに導入される。ある特定の態様では、修飾は、ヌクレオシド間結合、プリン塩基もしくはピリミジン塩基、または糖上にある。いくつかの態様では、修飾は、化学合成またはポリメラーゼ酵素を用いて、ポリヌクレオチドの末端に導入される。修飾された核酸およびそれらの合成の例は、PCT出願番号PCT/US2012/058519に開示されている。修飾されたポリヌクレオチドの合成も、Verma and Eckstein,Annual Review of Biochemistry,vol.76,99-134(1998)に記載されている。
【0287】
いくつかの態様では、標的化剤または送達剤、蛍光標識、液体、ナノ粒子などの様々な官能性部分とポリヌクレオチドまたはそれらの領域をコンジュゲートするために、酵素的または化学的なライゲーション方法が使用される。ポリヌクレオチドおよび修飾されたポリヌクレオチドのコンジュゲートは、Goodchild,Bioconjugate Chemistry,vol.1(3),165-187(1990)に概説されている。
【0288】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書において記載されるgRNAをコードする核酸、例えば、ベクターを提供する。いくつかの態様では、核酸はDNA分子である。他の態様では、核酸はRNA分子である。いくつかの態様では、核酸は、crRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAをコードするヌクレオチド配列は、天然に存在するCRISPR/Cas系由来の反復配列の全部または一部に隣接するスペーサーを含む。いくつかの態様では、核酸は、tracrRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、crRNAおよびtracrRNAは、2つの別個の核酸によってコードされる。他の態様では、crRNAおよびtracrRNAは、単一の核酸によってコードされる。いくつかの態様では、crRNAおよびtracrRNAは、単一の核酸の対向する鎖によってコードされる。他の態様では、crRNAおよびtracrRNAは、単一の核酸の同じ鎖によってコードされる。
【0289】
いくつかの態様では、本開示によって提供されるgRNAは、当技術分野において記載されている任意の手段によって化学的に合成される(例えば、国際公開公報第2005/01248号を参照)。化学的合成手順は絶えず拡大しているが、高速液体クロマトグラフィー(PAGEなどのゲルの使用を回避するHPLC)などの手順によるそのようなRNAの精製は、ポリヌクレオチドの長さが100ヌクレオチド程度を超えて著しく増加するにつれて、さらに困難になる傾向がある。さらに長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、一緒にライゲーションされる2つ以上の分子を生成することである。
【0290】
いくつかの態様では、CRISPR/Casヌクレアーゼ系とともに複数のガイドRNAを使用することができる。各ガイドRNAは、CRISPR/Cas系が複数の標的核酸を切断するように、異なる標的化配列を含有し得る。いくつかの態様では、1つまたは複数のガイドRNAは、Cas9 RNP複合体内の活性または安定性などの同じまたは異なる特性を有し得る。複数のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは、同じまたは異なるベクター上にコードされ得る。複数のガイドRNAの発現を促進するために使用されるプロモーターは、同じであるかまたは異なる。
【0291】
ガイドRNAは、crRNAの標的化配列(例えば、スペーサー配列)を介して関心対象の任意の配列を標的とし得る。いくつかの態様では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列との間の相補性の程度は、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%または約100%である。いくつかの態様では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列とは100%相補的である。他の態様では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列とは、少なくとも1つのミスマッチを含有し得る。例えば、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のミスマッチを含有し得る。いくつかの態様では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列とは、1~6個のミスマッチを含有し得る。いくつかの態様では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列とは、5または6個のミスマッチを含有し得る。
【0292】
標的化配列の長さは、CRISPR-Cas系および使用される成分に依存し得る。例えば、異なる細菌種由来の異なるCas9タンパク質は、様々な最適な標的化配列長を有する。したがって、標的化配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、または50超のヌクレオチド長を含み得る。いくつかの態様では、標的化配列は、18~24ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの態様では、標的化配列は、19~21ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの態様では、標的化配列は、20ヌクレオチド長を含み得る。
【0293】
本開示のいくつかの態様では、CRISPR/Casヌクレアーゼ系は、少なくとも1つのガイドRNAを含む。いくつかの態様では、ガイドRNAおよびCasタンパク質は、リボ核タンパク質(RNP)、例えば、CRISPR/Cas複合体を形成し得る。ガイドRNAは、Casタンパク質を標的核酸分子(例えば、ゲノムDNA分子)上の標的配列に導き得、Casタンパク質は標的核酸を切断する。いくつかの態様では、CRISPR/Cas複合体はCpf1/ガイドRNA複合体である。いくつかの態様では、CRISPR複合体はII型CRISPR/Cas9複合体である。いくつかの態様では、Casタンパク質はCas9タンパク質である。いくつかの態様では、CRISPR/Cas9複合体はCas9/ガイドRNA複合体である。いくつかの態様では、CRISPR/Cas複合体は、操作されたクラス2 V型CRISPR系である。いくつかの態様では、エンドヌクレアーゼはMad7である。
【0294】
iii. Casヌクレアーゼ
いくつかの態様では、本開示は、部位特異的ヌクレアーゼを含む組成物および系(例えば、操作されたCRISPR/Cas系)を提供し、部位特異的ヌクレアーゼはCasヌクレアーゼである。Casヌクレアーゼは、ガイドRNA(gRNA)と相互作用する少なくとも1つのドメインを含み得る。さらに、Casヌクレアーゼは、ガイドRNAによって標的配列に導かれる。ガイドRNAは、Casヌクレアーゼが標的配列に導かれた後に標的配列を切断することができるように、Casヌクレアーゼおよび標的配列と相互作用する。いくつかの態様では、ガイドRNAは標的配列の切断に対する特異性を提供し、Casヌクレアーゼは、ユニバーサルであり、様々な標的配列を切断するために様々なガイドRNAと対になる。
【0295】
いくつかの態様では、CRISPR/Cas系は、I型系、II型系またはIII型系に由来する成分を含む。CRISPR/Cas遺伝子座について更新された分類スキームでは、I型~V型またはVI型を有するクラス1およびクラス2のCRISPR/Cas系が定義されている(Makarova et al.,(2015)Nat Rev Microbiol,13(11):722-36;Shmakov et al.,(2015)Mol Cell,60:385-397)。クラス2 CRISPR/Cas系は、単一のタンパク質エフェクターを有する。II型、V型およびVI型のCasタンパク質は、本明細書において「クラス2 Casヌクレアーゼ」と呼ばれる単一タンパク質RNAガイド付エンドヌクレアーゼである。クラス2 Casヌクレアーゼには、例えば、Cas9タンパク質、Cpf1タンパク質、C2c1タンパク質、C2c2タンパク質およびC2c3タンパク質が含まれる。Cpf1ヌクレアーゼ(Zetsche et al.,(2015)Cell 163:1-13)は、Cas9と相同であり、RuvC様ヌクレアーゼドメインを含有する。
【0296】
いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、II型CRISPR/Cas系に由来する(例えば、CRISPR/Cas9系由来のCas9タンパク質)。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR/Cas系に由来する(Cas9タンパク質またはCpf1タンパク質などの単一タンパク質Casヌクレアーゼ)。Cas9およびCpf1ファミリーのタンパク質は、DNAエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素であり、本明細書においてさらに記載されるように、適切なガイドRNAを設計することによって所望の核酸標的を切断するように導かれ得る。
【0297】
II型CRISPR/Cas系成分は、IIA型系、IIB型系またはIIC型系に由来する。Cas9およびそのオルソログが包含される。Cas9ヌクレアーゼまたは他の成分が由来する非限定的な例示的な種には、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、フランシセラ・ノビサイダ(Francisella novicida)、ウォリネラ・サクシノゲネス(Wolinella succinogenes)、ステレラ・ワズワーセンシス(Sutterella wadsworthensis)、ガンマプロテオバクテリア、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、フィブロバクター・スクシノゲン(Fibrobacter succinogene)、ロドスピリルム・ルブラム(Rhodospirillum rubrum)、ノカルディオプシス・ダソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス・プリスチネスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランギウム・ロゼウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランギウム・ロゼウム(Streptosporangium roseum)、アリシクロバシラス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バシラス・シュードミコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バシラス・セレニチレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム・シビリカム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス・デルブリュッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、トレポネーマ・デンチコーラ(Treponema denticola)、ミクロシラ・マリーナ(Microscilla marina)、ブルクホルデリアレス(Burkholderiales)細菌、ポラロモナス・ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス(Polaromonas)種、クロコスフェラ・ワツゥオニ(Crocosphaera watsonii)、シアノテセ(Cyanothece)種、アオコ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス(Synechococcus)種、アセトハロビウム・アラバチクム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェックス・デゲンシ(Ammonifex degensii)、カルディセルロシルプトー・ベクシ(Caldicelulosiruptor becscii)、カンディダツス・デスルホルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、フィネゴルディア・マグナ(Finegoldia magna)、ナトラネロビウス・サーモフィルス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム・サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバシラス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバシラス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター(Marinobacter)種、ニトロソコッカス・ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワツゥオニ(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス・ハロプランクチス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、テドノバクター・ラセミフェル(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスチガタム(Methanohalobium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノデュラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストック(Nostoc)種、アースロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アースロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アースロスピラ(Arthrospira)種、リングビア(Lyngbya)種、ミクロコレウス・クトノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア(Oscillatoria)種、ペトロトガ・モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、ストレプトコッカス・パスツリアヌス(Streptococcus pasteurianus)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、パルビバキュラム・ラバメンチボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)またはアカリオクロリス・マリーナ(Acaryochloris marina)が含まれる。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(SpCas9)に由来する。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(StCas9)に由来する。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(NmCas9)に由来する。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、スタフィロコッカス・アウレウス(SaCas9)に由来する。いくつかの態様では、Cas9タンパク質は、カンピロバクター・ジェジュニ(CjCas9)に由来する。
【0298】
いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、複数のヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、少なくとも1つのRuvC様ヌクレアーゼドメイン(例えば、Cpf1)と、少なくとも1つのHNH様ヌクレアーゼドメイン(例えば、Cas9)とを含み得る。いくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼは、DSBを標的配列に導入する。いくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼは、ただ1つの機能的ヌクレアーゼドメインを含有するように修飾される。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、その核酸切断活性を低下させるために、ヌクレアーゼドメインのうちの1つが変異されるか、または完全にもしくは部分的に欠失されるように修飾される。いくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼは、機能的RuvC様ヌクレアーゼドメインを含有しないように修飾される。他の態様では、Cas9ヌクレアーゼは、機能的HNH様ヌクレアーゼドメインを含有しないように修飾される。ヌクレアーゼドメインのうちの1つのみが機能的であるいくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼは、一本鎖切断(「ニック」)を標的配列に導入することができるニッカーゼである。いくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼドメイン内の保存されたアミノ酸は、ヌクレアーゼ活性を低下または変化させるために置換される。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼニッカーゼは、RuvC様ヌクレアーゼドメインにアミノ酸置換を含む。RuvC様ヌクレアーゼドメイン内の例示的なアミノ酸置換には、D10A(S.ピオゲネスCas9ヌクレアーゼに基づく)が含まれる。いくつかの態様では、ニッカーゼは、HNH様ヌクレアーゼドメインにアミノ酸置換を含む。HNH様ヌクレアーゼドメイン内の例示的なアミノ酸置換には、E762A、H840A、N863A、H983AおよびD986A(S.ピオゲネスCas9ヌクレアーゼに基づく)が含まれる。いくつかの態様では、本明細書において記載されるヌクレアーゼ系は、ニッカーゼと、それぞれ標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖に相補的なガイドRNAの対とを含む。ガイドRNAは、標的配列の対向する鎖上にニックを生成することによって(すなわち、ダブルニッキング)、DSBを標的とし導入するようにニッカーゼを導く。タンパク質の1つのドメインまたは領域が異なるタンパク質の一部によって置換されているキメラCas9ヌクレアーゼが使用される。例えば、Cas9ヌクレアーゼドメインは、Fok1などの異なるヌクレアーゼ由来のドメインによって置換される。Cas9ヌクレアーゼは、修飾されたヌクレアーゼである。
【0299】
いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、I型CRISPR/Cas系に由来する。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、I型CRISPR/Cas系のカスケード複合体の成分である。例えば、CasヌクレアーゼはCas3ヌクレアーゼである。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、III型CRISPR/Cas系に由来する。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、IV型CRISPR/Cas系に由来する。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、V型CRISPR/Cas系に由来する。いくつかの態様では、Casヌクレアーゼは、VI型CRISPR/Cas系に由来する。
【0300】
いくつかの態様では、CasヌクレアーゼはMadエンドヌクレアーゼである。CRISPR/Mad系は、Cas酵素のクラス2ファミリーのV型(Cpf1様)と密接に関連している。いくつかの態様では、CRISPR-Mad系は、ユーバクテリウム・レクタレ(Eubacterium rectale)Mad7エンドヌクレアーゼまたはその変異体を使用する。Mad7-crRNA複合体は、PAM 5'-YTTNの同定によって標的DNAを切断する。
【0301】
2. 操作されたヌクレアーゼ
いくつかの態様では、本明細書において記載される細胞は、部位特異的ヌクレアーゼを用いて遺伝的に操作され、部位特異的ヌクレアーゼは操作されたヌクレアーゼである。例示的な操作されたヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ)、ZFN、TALENおよびmegaTALである。
【0302】
天然に存在するメガヌクレアーゼは、約12~40塩基対の二本鎖DNA配列を認識し切断し得、5つのファミリーに一般的に分類される。いくつかの態様では、メガヌクレアーゼは、LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、HNHファミリー、His-Cysボックスファミリー、およびPD-(D/E)XKファミリーから選択される。いくつかの態様では、メガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、その同族標的配列以外の配列を認識し、それに結合するように操作される。いくつかの態様では、メガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、異種ヌクレアーゼドメインに融合される。いくつかの態様では、ホーミングエンドヌクレアーゼなどのメガヌクレアーゼは、「megaTAL」タンパク質などのハイブリッドタンパク質を作り出すために、TALモジュールに融合される。メガTALタンパク質は、メガヌクレアーゼのDNA結合ドメインの標的配列と、TALモジュールの標的配列とを認識することによって、改善されたDNA標的化特異性を有する。
【0303】
ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン(「ジンクフィンガー」または「ZF」)およびヌクレアーゼドメインを含む融合タンパク質である。各天然に存在するZFは、3つの連続する塩基対(DNAトリプレット)に結合し得、ZFリピートは、DNA標的配列を認識し、十分な親和性を提供するために組み合わされる。したがって、操作されたZFリピートは、さらに長いDNA配列、例えば、9bp、12bp、15bpまたは18bpなどを認識するために組み合わされる。いくつかの態様では、ZFNは、制限エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインに融合したZFを含む。例えば、制限エンドヌクレアーゼはFokIである。いくつかの態様では、ヌクレアーゼドメインは、ヌクレアーゼが二量体化して活性になる場合などに二量体化ドメインと、ZFリピートを含むZFNの対とを含み、ヌクレアーゼドメインは、DNA分子の対向する鎖上の各ZFリピートによって認識される2つの半分の標的配列を含み、その間に相互接続配列(文献ではスペーサーと呼ばれることもある)を有する標的配列を標的とするように設計される。例えば、相互接続配列は5~7bp長である。対の両ZFNが結合すると、ヌクレアーゼドメインは二量体化し、相互接続配列内にDSBを導入し得る。いくつかの態様では、ヌクレアーゼドメインの二量体化ドメインは、二量体化を促進するためのノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)モチーフを含む。例えば、ZFNは、FokIの二量体化ドメインにノブ・イントゥ・ホールモチーフを含む。
【0304】
TALENのDNA結合ドメインは、可変数の34または35アミノ酸反復(「モジュール」または「TALモジュール」)を通常含み、各モジュールは、単一のDNA塩基対、A、T、GまたはCに結合する。各モジュールの位置12および13の隣接残基(「リピート-可変ジ残基」またはRVD)は、モジュールが結合する単一のDNA塩基対を指定する。Gを認識するために使用されるモジュールはまた、Aに対する親和性を有し得るが、TALENは、単純な認識コード(4つの塩基の各々に対して1つのモジュール)から利益を得、これにより、特定の標的配列を認識するDNA結合ドメインのカスタマイズが大幅に単純化される。いくつかの態様では、TALENは、制限エンドヌクレアーゼ由来のヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、制限エンドヌクレアーゼはFokIである。いくつかの態様では、ヌクレアーゼドメインは二量体化して活性になり得、TALENSの対は、DNA分子の対向する鎖上の各DNA結合ドメインによって認識される2つの半分の標的配列を含み、その間に相互接続配列を有する標的配列を標的とするように設計される。例えば、各半分の標的配列は10~20bpの範囲内にあり、相互接続配列は12~19bp長である。対の両TALENが結合すると、ヌクレアーゼドメインは二量体化し、相互接続配列内にDSBを導入し得る。いくつかの態様では、ヌクレアーゼドメインの二量体化ドメインは、二量体化を促進するためのノブ・イントゥ・ホールモチーフを含み得る。例えば、TALENは、FokIの二量体化ドメインにノブ・イントゥ・ホールモチーフを含み得る。
【0305】
3. 標的部位
いくつかの態様では、本明細書において記載される部位特異的ヌクレアーゼは、標的核酸分子(例えば内因性遺伝子)に導かれ、それを切断する(例えば、DSBを導入する)。いくつかの態様では、標的核酸分子はハウスキーピング遺伝子である。いくつかの態様では、ハウスキーピング遺伝子は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ユビキチンC(UBC)、またはアクチンベータ(ACTB)である。いくつかの態様では、標的核酸分子は血液系統遺伝子である。いくつかの態様では、血液系統遺伝子は、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型(PTPRC)、IL2RGまたはIL2RBである。いくつかの態様では、標的核酸は、ラパマイシン応答に関連する遺伝子である。いくつかの態様では、標的核酸はFKBP12である。いくつかの態様では、標的核酸は、B2M、TRACまたはSIRPAである。
【0306】
標的核酸分子は、細胞にとって内因性または外因性である任意のDNA分子である。本明細書において使用される場合、用語「内因性配列」は、細胞にとって天然の配列を指す。いくつかの態様では、標的核酸分子は、細胞由来または細胞内のゲノムDNA(gDNA)分子または染色体である。いくつかの態様では、標的核酸分子の標的配列は、細胞由来または細胞内のゲノム配列である。いくつかの態様では、標的配列は、遺伝子のコード配列、遺伝子のイントロン配列、遺伝子の転写制御配列、遺伝子の翻訳制御配列、または遺伝子間の非コード配列に位置し得る。いくつかの態様では、遺伝子はタンパク質コード遺伝子であり得る。他の態様では、遺伝子は非コードRNA遺伝子であり得る。いくつかの態様では、標的配列は、疾患関連遺伝子の全部または一部を含み得る。
【0307】
いくつかの態様では、標的配列は、クロマチン構成の局面を制御する、ゲノム内の非遺伝子機能部位、例えば、スキャフォールド部位または遺伝子座制御領域に位置し得る。いくつかの態様では、標的配列は、遺伝的セーフハーバー部位、すなわち、安全な遺伝子修飾を容易にする遺伝子座であり得る。
【0308】
いくつかの態様では、標的配列は、CRISPR/Cas複合体によって認識される短い配列であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接していてもよい。いくつかの態様では、PAMは、標的配列の3'末端の1、2、3もしくは4つのヌクレオチドに隣接していてもよいか、またはその中にあってもよい。いくつかの態様では、標的配列は、PAMを含み得る。PAMの長さおよび配列は、使用されるCasタンパク質に依存し得る。例えば、PAMは、参照により本明細書に組み入れられるRan et al.,(2015)Nature,520:186-191(2015)の
図1に開示されているものを含む、特定のCasヌクレアーゼまたはCasオルソログに対するコンセンサス配列または特定のPAM配列から選択され得る。いくつかの態様では、PAMは、2、3、4、5、6、7、8、9または10ヌクレオチド長を含み得る。非限定的な例示的なPAM配列には、NGG(SpCas9 WT、SpCas9ニッカーゼ、二量体dCas9-Fok1、SpCas9-HF1、SpCas9 K855A、eSpCas9(1.0)、eSpCas9(1.1))、NGANまたはNGNG(SpCas9 VQR変異体)、NGAG(SpCas9 EQR変異体)、NGCG(SpCas9 VRER変異体)、NAAG(SpCas9 QQR1変異体)、NNGRRTまたはNNGRRN(SaCas9)、NNNRRT(KKH SaCas9)、NNNNRYAC(CjCas9)、NNAGAAW(St1Cas9)、NAAAAC(TdCas9)、NGGNG(St3Cas9)、NG(FnCas9)、NAAAAN(TdCas9)、NNAAAAW(StCas9)、NNNNACA(CjCas9)、GNNNCNNA(PmCas9)、およびNNNNGATT(NmCas9)が含まれる(例えば、Cong et al.,(2013)Science 339:819-823;Kleinstiver et al.,(2015)Nat Biotechnol 33:1293-1298;Kleinstiver et al.,(2015)Nature 523:481-485;Kleinstiver et al.,(2016)Nature 529:490-495;Tsai et al.,(2014)Nat Biotechnol 32:569-576;Slaymaker et al.,(2016)Science 351:84-88;Anders et al.,(2016)Mol Cell 61:895-902;Kim et al.,(2017)Nat Comm 8:14500;Fonfara et al.,(2013)Nucleic Acids Res 42:2577-2590;Garneau et al.,(2010)Nature 468:67-71;Magadan et al.,(2012)PLoS ONE 7:e40913;Esvelt et al.,(2013)Nat Methods 10(11):1116-1121を参照(ここで、Nは任意のヌクレオチドとして定義され、WはAまたはTのいずれかとして定義され、Rはプリン(A)または(G)として定義され、Yはピリミジン(C)または(T)として定義される)。いくつかの態様では、PAM配列はNGGである。いくつかの態様では、PAM配列はNGANである。いくつかの態様では、PAM配列はNGNGである。いくつかの態様では、PAMはNNGRRTである。いくつかの態様では、PAM配列はNGGNGである。いくつかの態様では、PAM配列はNNAAAAWであり得る。
【0309】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼ、例えばCas9によって認識されるPAM配列は、特定のヌクレアーゼと、それが由来する細菌種とに応じて異なる。いくつかの態様では、SpCas9によって認識されるPAM配列は、ヌクレオチド配列5'-NGG-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドである。いくつかの態様では、SaCas9によって認識されるPAM配列は、ヌクレオチド配列5'-NGRRT-3'またはヌクレオチド配列5'-NGRRN-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「R」はプリン(例えば、グアニンまたはアデニン)である。いくつかの態様では、NmeCas9によって認識されるPAM配列は、ヌクレオチド配列5'-NNNNGATT-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドである。いくつかの態様では、CjCas9によって認識されるPAM配列は、ヌクレオチド配列5'-NNNNRYAC-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「R」はプリン(例えば、グアニンまたはアデニン)であり、「Y」はピリミジン(例えば、シトシンまたはチミン)である。いくつかの態様では、StCas9によって認識されるPAM配列は、ヌクレオチド配列5'-NNAGAAW-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「W」はアデニンまたはチミンである。
【0310】
いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9であり、PAM配列は、ヌクレオチド配列:(a)5'-NGG-3';(b)5'-NGRRT-3'、もしくは5'-NGRRN-3';(c)5'-NNNNGATT-3';(d)5'-NNNNRYAC-3';または(e)5'-NNAGAAW-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「R」はプリン(例えば、グアニンまたはアデニン)であり、「Y」はピリミジン(例えば、シトシンまたはチミン)であり、「W」はアデニンまたはチミンである。いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9、例えば、SpCas9であり、PAM配列は5'-NGG-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドである。いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9、例えば、SaCas9であり、PAM配列は5'-NGRRT-3'、または5'-NGRRN-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「R」はプリン、例えば、グアニンまたはアデニンである。いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9、例えば、NmeCas9であり、PAM配列は5'-NNNNGATT-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドである。いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9、例えば、CjCas9であり、PAM配列は5'-NNNNRYAC-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「R」はプリン、例えば、グアニンまたはアデニンであり、「Y」はピリミジン、例えば、シトシンまたはチミンである。いくつかの態様では、組換えヌクレアーゼはCas9、例えば、StCas9であり、PAM配列は5'-NNAGAAW-3'であり、ここで、「N」は任意のヌクレオチドであり、「W」はアデニンまたはチミンである。
【0311】
4. リボ核タンパク質
いくつかの態様では、部位特異的ポリペプチド(例えば、Casヌクレアーゼ)およびゲノム標的化核酸(例えば、gRNAまたはsgRNA)はそれぞれ、細胞または対象に別個に投与され得る。いくつかの態様では、部位特異的ポリペプチドは、1つもしくは複数のガイドRNA、または1つもしくは複数のsgRNAと予め複合体化され得る。このような予め複合体化された材料は、リボ核タンパク質粒子(RNP)として公知である。いくつかの態様では、ヌクレアーゼ系は、リボ核タンパク質(RNP)を含む。いくつかの態様では、ヌクレアーゼ系は、gRNAと複合体を形成した精製Cas9タンパク質を含むCas9 RNPを含む。いくつかの態様では、ヌクレアーゼ系は、gRNAと複合体を形成した精製Mad7タンパク質を含むMad7 RNPを含む。Cas9およびMad7タンパク質は、当技術分野において公知の任意の手段によって発現および精製され得る。リボ核タンパク質は、インビトロで構築され、当技術分野において公知の標準的なエレクトロポレーション技術またはトランスフェクション技術を使用して細胞に直接送達され得る。
【0312】
B. 相同組換え修復(HDR)
いくつかの局面では、提供される態様は、標的核酸配列、例えば、内因性遺伝子での核酸配列、例えば、ドナー鋳型の標的化された組込みを伴う。いくつかの態様では、標的核酸分子はハウスキーピング遺伝子である。いくつかの態様では、ハウスキーピング遺伝子は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ユビキチンC(UBC)、またはアクチンベータ(ACTB)である。いくつかの態様では、標的核酸は、B2M、TRACまたはSIRPAである。いくつかの態様では、標的核酸はB2Mである。
【0313】
いくつかの態様では、DNA修復機構は、(i)各鎖にSSBが存在し、それによって、一本鎖オーバーハングを誘導する2つのSSB、または(ii)両鎖の同じ切断部位に生じ、それによって、平滑末端切断を誘導するDSBの後に、ヌクレアーゼによって誘導され得る。
【0314】
いくつかの態様では、HDRは、1つまたは複数の標的核酸分子(例えば、内因性遺伝子)への核酸配列、例えば、ドナー鋳型の標的化された組込み、または挿入に利用される。いくつかの態様では、HDRは、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)を含むドナー鋳型を標的核酸分子(例えば、内因性遺伝子)に組み込むために使用され得る。例えば、HDRは、RACRをコードするドナー鋳型をB2M遺伝子座に組み込むために使用され得る。
【0315】
Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、TALENおよびZFNなどのDSBを誘導することができる作用物質は、前のセクションで説明されたように、内因性遺伝子、例えば、B2Mなどの標的核酸分子内の切断部位でDSBを誘導することによってゲノム編集を促進する。
【0316】
ニックと呼ばれることもある、SSBを誘導することができる作用物質には、ニッカーゼ活性を有する組換えヌクレアーゼ、例えば、Cas9、例えば、前のセクションに記載されたものなどが含まれる。ニッカーゼ活性を有する作用物質の例には、例えば、D10A、H840A、H854AおよびH863Aからなる群より選択される変異を含むストレプトコッカス・ピオゲネス由来のCas9が挙げられる。
【0317】
これらの作用物質のうちの1つによる切断時に、SSBまたはDSBを有する標的内因性遺伝子、例えば、B2Mは、DNA損傷修復のための2つの主要経路:(1)エラープローン非相同末端結合(NHEJ)経路または(2)高忠実度の相同組換え修復(HDR)経路のうちの1つを経る。
【0318】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼを含む1つまたは複数の作用物質によってSSBまたはDSBが以前に誘導された細胞が得られ、標的内因性遺伝子、例えば、B2MへのHDR、およびドナー鋳型の組込みをもたらすために、ドナー鋳型、例えば、ssODNが導入される。
【0319】
一般に、修復鋳型、例えば、ドナー鋳型、例えば、ssODNの非存在下では、NHEJプロセスは、切断されたDNA鎖の末端を再びライゲーションし、これにより、切断部位でのヌクレオチドの欠失および挿入がもたらされることが多い。
【0320】
標的内因性遺伝子座、例えば、B2M遺伝子座での核酸配列の変化は、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする外因的に提供されるドナー鋳型を組み込むことによってHDRによって生じ得る。HDR経路は、カノニカルなHDR経路または代替的なHDR経路によって生じ得る。別段の指定がない限り、本明細書において使用される用語「HDR」または「相同組換え修復」は、カノニカルなHDRおよび代替的なHDRの両方を包含する。
【0321】
カノニカルなHDRもしくは「カノニカルな相同組換え修復」またはcHDR」は、区別なく使用され、相同核酸(例えば、内因性相同配列、例えば、姉妹染色分体、または外因性核酸、例えば、ドナー鋳型)を使用してDNA損傷を修復するプロセスを指す。カノニカルなHDRは、DSBで顕著な切除があった場合に典型的に作用し、DNAの少なくとも1つの一本鎖部分を形成する。正常細胞では、カノニカルなHDRは、切断の認識、切断の安定化、切除、一本鎖DNAの安定化、DNAクロスオーバー中間体の形成、クロスオーバー中間体の分割、およびライゲーションなどの一連の工程を典型的に伴う。カノニカルなHDRプロセスは、RAD51およびBRCA2を必要とし、相同核酸、例えば、ドナー鋳型は、典型的には二本鎖である。カノニカルなHDRでは、標的内因性遺伝子座内の標的化配列に相同な配列を含み、標的化配列に直接組み込まれるか、またはドナー鋳型の配列もしくは配列の一部を標的内因性遺伝子、例えば、B2Mに挿入するための鋳型として使用される二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、二本鎖ドナー鋳型が導入される切断時の切除後、修復は、様々な経路、例えば、ダブルホリデイジャンクションモデル(double Holliday junction model)(二本鎖切断修復経路またはDSBR経路とも呼ばれる)によって、または合成依存性鎖アニーリング(SDSA)経路によって進行し得る。
【0322】
ダブルホリデイジャンクションモデルでは、二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、二本鎖ドナー鋳型内の相同配列に対する標的化配列の2つの一本鎖オーバーハングによって鎖侵入が起こり、これにより、2つのホリデイジャンクションを有する中間体が形成される。ジャンクションは、新しいDNAが侵入鎖の末端から合成されて切除から生じるギャップを埋めるにつれて移動する。新たに合成されたDNAの末端が、切除された末端にライゲーションされ、ジャンクションが分割され、標的化配列、または遺伝子変異体を含む標的化配列の一部に挿入される。ポリヌクレオチド、例えば、ドナー鋳型とのクロスオーバーは、ジャンクションの分割時に生じ得る。
【0323】
SDSA経路では、ただ1つの一本鎖オーバーハングがポリヌクレオチド、例えば、ドナー鋳型に侵入し、新しいDNAが侵入鎖の末端から合成されて切除から生じるギャップを埋める。次いで、新たに合成されたDNAは、残りの一本鎖オーバーハングにアニールし、ギャップを埋めるように新しいDNAが合成され、鎖がライゲーションされて修飾されたDNA二重鎖が生成される。
【0324】
代替的なHDRもしくは「代替的な相同組換え修復」または「代替的なHDR」は、区別なく使用され、いくつかの態様では、相同核酸(例えば、内因性相同配列、例えば、姉妹染色分体、または外因性核酸、例えば、ドナー鋳型)を使用してDNA損傷を修復するプロセスを指す。代替的なHDRは、このプロセスがカノニカルなHDRとは異なる経路を利用し、カノニカルなHDRのメディエーターであるRAD51およびBRCA2によって阻害され得るという点で、カノニカルなHDRとは異なる。さらに、代替的なHDRは一本鎖鋳型またはニック相同核酸鋳型、例えば、ドナー鋳型の関与によっても区別されるが、カノニカルなHDRは二本鎖相同鋳型を一般に伴う。代替的なHDR経路では、一本鎖鋳型ポリヌクレオチド、例えば、ドナー鋳型が導入される。所望の標的部位、例えば、標的内因性遺伝子、例えば、B2Mを変化させるための切断部位でのニック、一本鎖切断またはDSBは、ヌクレアーゼ分子、例えば、本明細書において記載されるヌクレアーゼのいずれかによって媒介され、切断での切除が起こって、一本鎖オーバーハングが明らかにされる。DNAの標的部位を変化させるための鋳型ポリヌクレオチド、例えば、ドナー鋳型の配列の組込みは、本明細書において記載されるように、SDSA経路によって典型的に生じる。
【0325】
いくつかの態様では、HDRは、DSBを誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、本明細書において記載されるもののいずれかと、ドナー鋳型、例えば、ssODN、例えば、本明細書において記載されるもののいずれかとを細胞に導入することによって行われる。導入は、本明細書において記載されるもののいずれかなどの任意の好適な送達手段によって行われ得る。HDRを生じさせることができる条件は、細胞内でHDRを行うのに適した任意の条件であり得る。
【0326】
いくつかの態様では、HDRは、各スタンド内でSSBを誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、本明細書において記載されるもののいずれかと、ドナー鋳型、例えば、ssODN、例えば、本明細書において記載されるもののいずれかとを細胞に導入することによって行われる。導入は、本明細書において記載されるもののいずれかなどの任意の好適な送達手段によって行われ得る。HDRを生じさせることができる条件は、細胞内でHDRを行うのに適した任意の条件であり得る。
【0327】
ドナー鋳型
いくつかの態様では、提供される方法は、ドナー鋳型、例えば、標的遺伝子、例えば、B2M内の標的化配列の一部に相同な合成サイトカイン受容体、例えば、RACRをコードするドナー鋳型の使用を含む。いくつかの態様では、標的化配列は、センス鎖内に含まれる。いくつかの態様では、標的化配列は、アンチセンス鎖内に含まれる。いくつかの態様では、本明細書において提供される方法に使用するための、例えば、RACRをコードする核酸配列のHDR媒介性組込みのための鋳型としてのドナー鋳型も提供される。
【0328】
いくつかの態様では、ドナー鋳型は、DNA切断、例えば、SSBまたはDSBを誘導することができる1つまたは複数の作用物質とともに使用される。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列を標的内因性遺伝子座(例えば、B2M)にノックインするように、DSBおよびガイドRNA、例えば、sgRNAを誘導することができる1つまたは複数の作用物質とともに使用される。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列を標的内因性遺伝子座(例えば、B2M)にノックインするように、SSBを誘導することができる1つまたは複数の作用物質、第1のガイドRNA、例えば、第1のsgRNA、および第2のガイドRNA、例えば、第2のsgRNAとともに使用される。
【0329】
いくつかの態様では、ドナー鋳型は、標的遺伝子、例えば、B2M内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、標的遺伝子、例えば、B2Mのセンス鎖内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、標的遺伝子、例えば、B2Mのアンチセンス鎖内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、標的遺伝子、例えば、B2Mはセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、センス鎖は標的化配列を含む。いくつかの態様では、標的遺伝子、例えば、B2Mはセンス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は標的化配列を含む。
【0330】
いくつかの態様では、ドナー鋳型、例えば、ssODNは、標的化配列内のPAM配列と相同なPAM配列を含む核酸配列を含む。
【0331】
いくつかの態様では、ドナー鋳型は一本鎖である。いくつかの態様では、ドナー鋳型は一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN)である。いくつかの態様では、ドナー鋳型は二本鎖である。
【0332】
いくつかの態様では、ssODNは、5'ssODNアームおよび3'ssODNアームを含む。いくつかの態様では、5'ssODNアームは、3'ssODNアームに直接連結される。いくつかの態様では、5'ssODNアームは、切断部位のすぐ上流にある標的遺伝子、例えば、B2Mの配列と相同であり、3'ssODNアームは、切断部位のすぐ下流にある標的遺伝子の配列と相同である。
【0333】
いくつかの態様では、5'ssODNアームおよび/または3'ssODNアームは、250~750ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、5'ssODNアームは、250~750ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、3'ssODNアームは、250~750ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、5'ssODNアームおよび3'ssODNアームの各々は、250~750ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、5'ssODNアームおよび/または3'ssODNアームは、約500ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、5'ssODNアームは、約500ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、3'ssODNアームは、約500ヌクレオチド長である長さを有する。いくつかの態様では、5'ssODNアームおよび3'ssODNアームの各々は、約500ヌクレオチド長である長さを有する。
【0334】
いくつかの態様では、標的遺伝子はB2Mであり、ドナー鋳型は、B2M遺伝子内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、B2M標的遺伝子のセンス鎖内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、ドナー鋳型は、B2M標的遺伝子のアンチセンス鎖内の切断部位に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、ドナー鋳型はssODNであり、5'ssODNアームは、切断部位のすぐ上流にあるB2M標的遺伝子の配列と相同であり、3'ssODNアームは、切断部位のすぐ下流にあるB2M標的遺伝子の配列と相同である。
【0335】
いくつかの態様では、5'ssODNアームは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様では、5'ssODNアームは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列を含む。
【0336】
いくつかの態様では、3'ssODNアームは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含むいくつかの態様では、3'ssODNアームは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列を含む。
【0337】
いくつかの態様では、5'ssODNアームは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列を含み、3'ssODNアームは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列を含む。
【0338】
単離された核酸、例えば、本明細書において記載されるドナー鋳型、例えば、ssODNもしくはその一部、例えば、または5'ssODNアーム、または3'ssODNアームのいずれかの核酸配列を含む標的遺伝子(例えば、B2M)に合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をノックインする方法に使用するための単離された核酸も本明細書において提供される。いくつかの態様では、5'ssODNは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列を含む。いくつかの態様では、3'ssODNアームは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列を含む。
【0339】
いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:18に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含み、5'ssODNアームは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含み、3'ssODNアームは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの態様では、crRNAは、SEQ ID NO:18のいずれか1つに記載の核酸配列を含み、5'ssODNは、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列を含み、3'ssODNは、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列を含む。
【0340】
いくつかの態様では、ドナー鋳型、例えば、ssODNは、合成サイトカイン受容体をコードする導入遺伝子配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、ラパマイシンまたは類似体(例えば、ラパログ)に応答性であるラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、合成サイトカイン受容体の両ポリペプチドをコードするタンデムカセットである。
【0341】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする導入遺伝子は、その発現が組込み部位で内因性プロモーター、例えば、内因性B2M遺伝子の発現を促進するプロモーターによって促進されるように挿入され得る。配列をコードするポリペプチドがプロモーターレスであるいくつかの態様では、組み込まれた導入遺伝子の発現は、次いで、関心対象の領域内の内因性プロモーターまたは他の制御エレメントによって促進される転写によって確実にされる。例えば、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)の一部をコードする導入遺伝子は、プロモーターを用いないが、組み込まれた導入遺伝子の発現が組込み部位で内因性プロモーターおよび/または他の調節エレメントの転写によって制御されるように内因性遺伝子座(例えば、B2M遺伝子座)のコード配列とインフレームで挿入され得る。いくつかの態様では、導入遺伝子の発現が内因性プロモーターに機能的に連結されるように、マルチシストロン性エレメントが内因性遺伝子座(例えば、B2M遺伝子座)の内因性オープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームに配置されるように、導入遺伝子の上流にリボソームスキップエレメント/自己切断エレメント(例えば、2Aエレメントまたは配列内リボソーム進入部位(IRES))などのマルチシストロン性エレメントが配置される。
【0342】
いくつかの態様では、「タンデム」カセット内の合成サイトカイン受容体のポリペプチドをコードする各核酸は、調節エレメントによって独立して制御されるか、またはマルチシストロン性(例えば、バイシストロン性)発現系としていずれも制御される。他の態様では、「タンデム」カセット内の合成サイトカイン受容体のポリペプチドをコードする各核酸は、同じであっても異なっていてもよいプロモーターに機能的に連結され得る。いくつかの態様では、核酸分子は、2つ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を促進するプロモーターを含有することができる。いくつかの態様では、そのような核酸分子はマルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性、例えば、米国特許第6,060,273号を参照)であり得る。いくつかの態様では、転写単位は、単一のプロモーターからのメッセージによる遺伝子産物の共発現を可能にするIRES(配列内リボソーム進入部位)を含有するバイシストロン性単位として操作され得る。あるいは、場合によっては、単一のプロモーターは、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)内に、本明細書において記載される切断可能なリンカーをコードする配列によって互いに分離された2つのポリペプチドを含有するRNAの発現を導き得る。したがって、ORFは、翻訳中または翻訳後に個々のポリペプチド鎖にプロセシングされる単一のポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、プロモーターは、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(例えば、SEQ ID NO:24、25または26に記載される)の中から選択される。いくつかの態様では、プロモーターはMNDプロモーター(例えば、SEQ ID NO:27に記載される)である。
【0343】
いくつかの態様では、ドナー鋳型、例えば、ssODNは、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列は、5'ssODNアームと3'ssODNアームとの間に位置する。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列は、EF1-アルファプロモーター(例えば、SEQ ID NO:24、25または26)を含む。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体(例えば、RACR)をコードする核酸配列は、MNDプロモーター(例えば、SEQ ID NO:27)を含む。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体はラパマイシン活性化サイトカイン受容体(RACR)である。RACRは、セクションVなどに記載されているいずれかであり得る。いくつかの態様では、核酸分子は、RACRの第1のポリペプチド配列およびRACRの第2のポリペプチド配列をコードするタンデムカセットである。
【0344】
いくつかの態様では、RACRをコードする第1の核酸配列は、RACR-ガンマ鎖(例えば、SEQ ID NO:28)をコードする核酸配列と、RACR-ベータ鎖(例えば、SEQ ID NO:33)をコードする核酸配列とを含む。いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するRACR-ガンマ鎖をコードする。いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:28に記載のRACR-ガンマ鎖配列をコードする。いくつかの態様では、RACR-ガンマ鎖をコードする核酸配列は、発現された場合にタンパク質の輸送を促進するために、発生期タンパク質のN末端にシグナルペプチドをさらにコードする。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:29に記載の配列を有する。いくつかの態様では、第2の核酸配列は、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するRACR-ベータ鎖をコードする。いくつかの態様では、第2の核酸配列は、SEQ ID NO:33に記載のRACR-ベータ鎖をコードする。いくつかの態様では、RACR-ベータ鎖をコードする核酸配列は、発現された場合にタンパク質の輸送を促進するために、発生期タンパク質のN末端にシグナルペプチドをさらにコードする。いくつかの態様では、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:34に記載の配列を有する。
【0345】
いくつかの態様では、RACR-ガンマ鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:37に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、RACR-ガンマ鎖をコードする第1の核酸配列は、SEQ ID NO:37に記載の配列を有する。いくつかの態様では、RACR-ベータ鎖をコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:38に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの態様では、RACR-ベータ鎖をコードする第2の核酸配列は、SEQ ID NO:38に記載されている。
【0346】
いくつかの態様では、RACR-ガンマ鎖をコードする核酸配列と、RACR-ベータ鎖をコードする核酸配列とは、切断可能なリンカーをコードする核酸配列によって分離される。いくつかの態様では、切断可能なリンカーをコードするさらなる核酸配列は、RACR-ベータ鎖をコードする核酸配列の下流に位置する。
【0347】
いくつかの態様では、リンカーは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるカナダ特許出願番号CA2970093に記載されているいずれかを含む、タンパク質定量レポーターリンカー(PQR;例えば、SEQ ID NO:42)である。いくつかの態様では、PQRリンカーは、SEQ ID NO:42に記載の配列を有する。いくつかの態様では、PQRリンカーは、SEQ ID NO:41に記載のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0348】
いくつかの態様では、切断可能なリンカーは、2Aリボソームスキップエレメントなどの自己切断ペプチドである。場合によっては、切断可能なリンカー、例えば、T2Aは、リボソームに2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせ(リボソームスキップ)、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらすことができる(例えば、de Felipe.Genetic Vaccines and Ther.2:13(2004)およびdeFelipe et al.Traffic 5:616-626(2004)を参照)。多くの2Aエレメントが公知である。本明細書において開示される方法および核酸に使用され得る2A配列の例、限定されることなく、米国特許出願公開第20070116690号に記載されているように、口蹄疫ウイルス(F2A、例えば、SEQ ID NO:43)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A、例えば、SEQ ID NO:44)、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A、例えば、SEQ ID NO:45または46)およびブタテッショウウイルス-1(P2A、例えば、SEQ ID NO:47または48)由来の2A配列。
【0349】
いくつかの態様では、第1の核酸配列と第2の核酸配列との間に位置する切断可能エレメントにより、RACRをコードする核酸配列の発現は、第1のペプチド(すなわち、RACR-ガンマ鎖)と、別個の第2のペプチド(すなわち、RACR-ベータ鎖)とを生じる。
【0350】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、転写終結および/またはポリアデニル化シグナルに必要な配列も含み得る。いくつかの局面では、例示的なポリアデニル化シグナルは、SV40、hGH、BGHおよびrbGlobの転写終結配列および/またはポリアデニル化シグナルから選択される。いくつかの態様では、導入遺伝子は、SV40ポリアデニル化シグナルを含む。いくつかの態様では、転写終結配列および/またはポリアデニル化シグナルは、導入遺伝子内に存在する場合、典型的には導入遺伝子内の最も3'側の配列であり、相同アームの1つに連結されている。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、SEQ ID NO:39に記載のポリアデニル化配列を含む。
【0351】
いくつかの態様では、ssODNは、5'ssODNアーム、EF1-アルファプロモーター、RACR-ガンマ鎖をコードする核酸配列、切断可能なリンカー(例えば、PQRリンカー)をコードする核酸配列、RACR-ベータ鎖をコードする核酸配列、ポリA配列、および3'ssODNアームを順に含む。
【0352】
いくつかの態様では、ssODNは、SEQ ID NO:40に記載の配列、またはSEQ ID NO:40に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様では、ssODNは、SEQ ID NO:40に記載されている。
【0353】
いくつかの態様では、標的遺伝子へのssODNの組込み後、標的遺伝子はノックアウトされる。いくつかの態様では、標的遺伝子はヒトB2Mであり、B2MへのssODNの組込み後、B2Mはノックアウトされる。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体をコードする核酸配列は、B2M遺伝子座に組み込まれる。いくつかの態様では、操作されたiPSCおよびCILは、B2M遺伝子のノックアウトと、合成サイトカイン受容体をコードする核酸の標的化された組込みによるノックインとによって内因性B2M遺伝子が遺伝的に破壊されている修飾されたB2M遺伝子座を有する。いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体は、EF1-アルファプロモーター、RACR-ガンマ鎖をコードする核酸配列、切断可能なリンカー(例えば、PQRリンカー)をコードする核酸配列、RACR-ベータ鎖をコードする核酸配列、およびポリA配列を順に含有する核酸配列によってコードされるRACRである。いくつかの態様では、B2M遺伝子座に組み込まれた、RACRをコードする核酸配列は、SEQ ID NO:32に記載の配列、またはSEQ ID NO:32に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列を有する。いくつかの態様では、B2M遺伝子座に組み込まれた、RACRをコードする核酸は、SEQ ID NO:32に記載されている。
【0354】
VII. キメラ抗原受容体
場合によっては、本開示の操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むかまたはそれを形質導入され、それによって、CARを発現するリンパ球、例えば、CIL細胞を生成し得る。
【0355】
いくつかの態様では、本開示は、癌を有する対象の治療に使用するためのキメラ抗原受容体(CAR)系を企図する。いくつかの態様では、本開示の操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞は、CAR配列を含む(CAR-CIL細胞またはCAR-iCIL細胞)。
【0356】
いくつかの態様では、CIL細胞などのリンパ球は、CAR構築物をコードする発現ベクターによって細胞集団をトランスフェクトすることによってCAR構築物を発現するように操作される。トランスフェクトされ得る細胞集団の例示的な例には、HSC、血液前駆細胞、共通リンパ球系前駆細胞またはCIL細胞が挙げられる。選択されたCAR構築物を発現するリンパ球、例えば、CIL細胞の形質導入された集団を調製するための適切な手段は当業者に周知であり、それには、いくつかの例を挙げると、レトロウイルス、レンチウイルス(ウイルス媒介性CAR遺伝子送達系)、スリーピングビューティーおよびピギーバック(非ウイルス媒介性CAR遺伝子送達系を含むトランスポゾン/トランスポザーゼ系)が含まれる。いくつかの態様では、本開示において企図される形質導入方法のいずれかを使用して、CAR発現CIL細胞を生成してもよい。
【0357】
A. CARのための標的化剤
従来、CARは、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインをコードするポリヌクレオチドの5'末端に、VL、VHまたはscFvをコードするポリヌクレオチドを融合し、必要に応じて、そのポリヌクレオチドと対応するVHまたはVLとを細胞に形質導入することによって生成される。当技術分野において周知のCARの多数の変形例、および本開示は、公知の変形例のいずれかを使用することを企図する。さらに、無数のハプテンに対するVL/VH対およびscFvは、当技術分野において公知であるか、または従来の方法によって常用的に生成され得る。したがって、本開示は、任意の公知のハプテン結合ドメインを使用することを企図する。
【0358】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第2020/0123224号を含め、CARおよびCAR発現細胞を標的とする様々な方法が当技術分野において記載されている。例えば、フルオレセインまたはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)部分は、所望の標的細胞(癌細胞など)に結合する作用物質にコンジュゲートされ得、それによって、抗フルオレセイン/FITCキメラ抗原受容体を発現するCAR-CIL細胞は、コンジュゲートによって標識された標的細胞を選択的に標的とし得る。変形例では、CARによって認識される他のハプテンが、フルオレセイン/FITCの代わりに使用されてもよい。CARは、当技術分野において公知の様々なscFv配列、または従来の常用的な方法によって生成されたscFv配列を使用して生成され得る。フルオレセイン/FITC、および他のハプテンに関するさらなる例示的なscFv配列は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2021/076788号に提供されている。
【0359】
いくつかの態様では、本開示のCAR系は、治療されている対象の細胞によって産生または発現されない部分を標的とするCARを利用する。したがって、このCAR系は、癌細胞などの標的細胞へのCIL細胞の集中的な標的化を可能にする。CAR発現CIL細胞などのCAR発現細胞とともに小さなコンジュゲート分子を投与することによって、操作された細胞の細胞応答は、腫瘍受容体を発現する細胞のみを標的とし、それによって、オフターゲット毒性を低下させることができ、操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞の活性化は、小さなコンジュゲート分子の急速なクリアランスのためにさらに容易に制御され得る。追加の利点として、CAR発現CIL細胞などのCAR発現リンパ球は、別個のCAR構築物を調製する必要なく、多種多様な腫瘍を標的とする「ユニバーサル」細胞傷害性細胞として使用され得る。CARによって認識される標的部分もまた、一定のままであり得る。系が、異なる同一性の癌細胞を標的とすることを可能にするために変化させる必要があるのは、小さなコンジュゲート分子のリガンド部分のみである。
【0360】
一態様では、本開示は、このコンジュゲート分子/CAR系の例示を提供する。
【0361】
いくつかの態様では、本開示のCAR系は、CAR発現細胞と標的癌細胞との間の架橋としてコンジュゲート分子を利用する。コンジュゲート分子は、ハプテンおよび細胞標的化部分、例えば、任意の好適な腫瘍細胞特異的リガンドを含むコンジュゲートである。CARによって認識され、結合され得る例示的なハプテンには、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、NHS-フルオレセイン、およびペンタフルオロフェニルエステル(PFP)誘導体およびテトラフルオロフェニルエステル(TFP)誘導体、ノッチン、センチリン(centyrin)ならびにDARPinを含むフルオレセインおよびその誘導体とともに、DNP(2,4-ジニトロフェノール)、TNP(2,4,6-トリニトロフェノール)、ビオチンおよびジゴキシゲニンなどの低分子量有機分子が含まれる。それ自体がCARのハプテンとして作用し得る好適な細胞標的化部分には、ノッチン(Kolmar H.et al.,The FEBS Journal.2008.275(11):26684-90を参照)、センチリンおよびDARPin(Reichert,J.M.MAbs 2009.1(3):190-209を参照)が含まれる。
【0362】
いくつかの態様では、細胞標的化部分は、ナノモル親和性(KD=14nM;Kularatne,S.A.et al.,Mol Pharm.2009.6(3):780-9を参照)でPSMA陽性ヒト前立腺癌細胞によって結合されたリガンドであるDUPA(DUPA-(99m)Tc)である。一態様では、DUPA誘導体は、標的化部分に連結された小分子リガンドのリガンドであり得、DUPA誘導体は、参照により本明細書に組み入れられる国際公開公報第2015/057852号に記載されている。
【0363】
いくつかの態様では、細胞標的化部分は、CCK2R陽性癌細胞(例えば、甲状腺、肺、膵臓、卵巣、脳、胃、消化管間質および結腸の癌;Wayua.C.et al.,Molecular Pharmaceutics.2013.ePublicationを参照)によって結合されたリガンドであるCCK2Rリガンドである。
【0364】
いくつかの態様では、細胞標的化部分は、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、肺癌、腎癌、脳癌、乳癌、結腸癌および頭頸部癌の癌を含む癌の細胞上のフォレート受容体によって結合されたフォレート、葉酸またはその類似体、リガンドである。Sega,E.I.et al.,Cancer Metastasis Rev.2008.27(4):655-64を参照されたい)。
【0365】
いくつかの態様では、細胞標的化部分はNK-1Rリガンドである。NK-1Rリガンドに対する受容体は、例えば、結腸および膵臓の癌上に見出される。いくつかの態様では、NK-1Rリガンドは、参照により本明細書に組み入れられる国際特許出願番号PCT/US2015/044229に開示されている方法に従って合成され得る。
【0366】
いくつかの態様では、細胞標的化部分はペプチドリガンドであり得、例えば、リガンドは、NK1受容体に対する内因性リガンドであるペプチドリガンドであり得る。いくつかの態様では、小さなコンジュゲート分子リガンドは、タキキニン受容体を標的とするタキキニンのファミリーに属する調節ペプチドであり得る。そのような調節ペプチドには、サブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(サブスタンスK)およびニューロキニンB(ニューロメジンK)が含まれる(Hennig et al.,International Journal of Cancer:61,786-792を参照)。
【0367】
いくつかの態様では、細胞標的化部分はCAIXリガンドである。例えば、腎癌、卵巣癌、外陰癌および乳癌に見られる、CAIXリガンドに対する受容体。CAIXリガンドは、本明細書においてCA9とも呼ばれ得る。
【0368】
いくつかの態様では、細胞標的化部分は、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼのリガンドである。トランスペプチダーゼは、例えば、卵巣癌、結腸癌、肝癌、星状芽細胞腫、黒色腫および白血病に過剰発現される。
【0369】
いくつかの態様では、細胞標的化部分はCCK2Rリガンドである。とりわけ、甲状腺、肺、膵臓、卵巣、脳、胃、消化管間質および結腸の癌に見られるCCK2Rリガンドに対する受容体。
【0370】
一態様では、細胞標的化部分は、約10,000ダルトン未満、約9000ダルトン未満、約8,000ダルトン未満、約7000ダルトン未満、約6000ダルトン未満、約5000ダルトン未満、約4500ダルトン未満、約4000ダルトン未満、約3500ダルトン未満、約3000ダルトン未満、約2500ダルトン未満、約2000ダルトン未満、約1500ダルトン未満、約1000ダルトン未満または約500ダルトン未満の質量を有し得る。別の態様では、小分子リガンドは、約1~約10,000ダルトン、約1~約9000ダルトン、約1~約8,000ダルトン、約1~約7000ダルトン、約1~約6000ダルトン、約1~約5000ダルトン、約1~約4500ダルトン、約1~約4000ダルトン、約1~約3500ダルトン、約1~約3000ダルトン、約1~約2500ダルトン、約1~約2000ダルトン、約1~約1500ダルトン、約1~約1000ダルトン、または約1~約500ダルトンの質量を有し得る。
【0371】
例示的な一態様では、本明細書において記載されるコンジュゲート内の連結は、直接連結(例えば、FITCのイソチオシアネート基と小分子リガンドの遊離アミン基との間の反応)であり得るか、または連結は中間リンカーを介し得る。一態様では、存在する場合、中間リンカーは、当技術分野において公知の任意の生体適合性リンカー、例えば、二価リンカーであり得る。例示的な一態様では、二価リンカーは、約1~約30個の炭素原子を含むことができる。別の例示的な態様では、二価リンカーは、約2~約20個の炭素原子を含むことができる。他の態様では、さらに低い分子量の二価リンカー(すなわち、約30~約300Daのおおよその分子量を有するもの)が使用される。別の態様では、好適なリンカー長には、限定されることなく、2、3、4、5、6、7、8、9.10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37.38、39もしくは40個またはそれ以上の原子を有するリンカーが含まれる。
【0372】
いくつかの態様では、ハプテンおよび細胞標的化部分は、FITCのイソチオシアネート基と小さなリガンド(例えば、フォレート、DUPAおよびCCK2Rリガンド)の遊離アミン基との間の反応などの手段によって直接コンジュゲートされ得る。ただし、2つの分子を接続するための連結ドメインの使用は、柔軟性および安定性を提供することができることから有用であり得る。好適な連結ドメインの例には、1)ポリエチレングリコール(PEG);2)ポリプロリン;3)親水性アミノ酸;4)糖;5)非天然ペプチドグリカン;6)ポリビニルピロリドン;7)プルロニックF-127が挙げられる。好適なリンカー長には、限定されることなく、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40個またはそれ以上の原子を有するリンカーが含まれる。
【0373】
いくつかの態様では、リンカーは、1つまたは複数のスペーサーを含み得る二価リンカーであり得る。
【0374】
本開示の例示的なコンジュゲートはFITC-フォレート
である。
本開示の例示的なコンジュゲートはFITC-CA9
である。
【0375】
本開示の例示的なコンジュゲートには、以下の分子が含まれる:FITC-(PEG)-12-フォレート、FITC-(PEG)-20-フォレート、FITC-(PEG)-108-フォレート、FITC-DUPA、FITC-(PEG)12-DUPA、FITC-CCK2Rリガンド、FITC-(PEG)12-CCK2Rリガンド、FITC-(PEG)11-NK1Rリガンド、およびFITC-(PEG)2-CA9。
【0376】
リガンドおよび癌細胞受容体が結合する親和性は様々であり得、場合によっては低い親和性結合が好ましい場合があるが(約1μMなど)、リガンドおよび癌細胞受容体の結合親和性は、一般に、少なくとも約100μM、少なくとも約1nM、少なくとも約10nMまたは少なくとも約100nM、好ましくは少なくとも約1pMまたは少なくとも約10pM、さらになお好ましくは少なくとも約100pMである。
【0377】
コンジュゲートおよびそれらを作製する方法の例は、いずれも参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願US 2017/0290900、US 2019/0091308およびUS 2020/0023009に提供されている。
【0378】
B. CAR構築物
いくつかの態様では、CAR構築物は、細胞外結合部分と、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含有する。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または活性化シグナル伝達ドメインを含有する。いくつかの態様では、CAR構築物は、細胞外結合部分と、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含有する。いくつかの態様では、CAR構築物は、細胞外結合部分と、膜貫通ドメインと、活性化シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含有する。いくつかの態様では、CAR構築物は、細胞外結合部分と、膜貫通ドメインと、共刺激シグナル伝達ドメインおよび活性化シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含有する。
【0379】
本明細書において記載される任意の態様では、CARの結合部分は、例えば、抗体の一本鎖断片可変領域(scFv)、Fab、Fv、Fc、または(Fab')2断片などであり得る。CARにおけるまたはCARとしてのIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEなどの変化していない(すなわち、フルサイズ)抗体の使用は、本発明の範囲から除外される。
【0380】
いくつかの態様では、共刺激ドメインは、CARが標的部分に結合すると、リンパ球の増殖および生存を増強するのに役立つ。共刺激ドメインの同一性は、CARによる標的部分の結合時に細胞の増殖および生存活性化を増強する能力を有するという点でのみ限定される。好適な共刺激ドメインには、限定されることなく、CD28(例えば、Alvarez-Vallina,L.et al.,Eur J Immunol.1996.26(10):2304-9を参照);腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーであるCD137(4-1BB)(例えば、Imai,C.et al.,Leukemia.2004.18:676-84を参照);および受容体のTNFRスーパーファミリーのメンバーであるCD134(OX40)(例えば、Latza,U.et al.,Eur.J.Immunol.1994.24:677を参照)が含まれる。当業者であれば、これらの共刺激ドメインの配列変異体を使用することができ、変異体は、それらがモデル化されているドメインと同じまたは類似の活性を有することを理解するであろう。様々な態様では、そのような変異体は、それらが由来するドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約99.5%の配列同一性を有する。
【0381】
本発明のいくつかの態様では、CAR構築物は、2つの共刺激ドメインを含む。特定の組合せは、4つの記載されたドメインのあらゆる可能な変形例を含むが、具体的な例には、1)CD28+CD137(4-1BB)、および2)CD28+CD134(OX40)が挙げられる。
【0382】
いくつかの態様では、活性化シグナル伝達ドメインは、CARが標的部分に結合すると、細胞を活性化するのに役立つ。活性化シグナル伝達ドメインの同一性は、CARによる標的部分の結合時に、選択された細胞の活性化を誘導する能力を有するという点でのみ限定される。好適な活性化シグナル伝達ドメインには、CD3ζ鎖およびFc受容体γが含まれる。当業者であれば、これらの記載された活性化シグナル伝達ドメインの配列変異体が、本発明に悪影響を及ぼすことなく使用され得、変異体は、それらがモデル化されているドメインと同じまたは類似の活性を有することを理解するであろう。そのような変異体は、それらが由来するドメインのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%。少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約99.5%の配列同一性を有し得る。
【0383】
いくつかの態様では、CARは、追加のエレメント、細胞表面への融合タンパク質の適切な輸送を確実にするそのようなシグナルペプチド、融合タンパク質が内在性膜タンパク質として維持されることを確実にする膜貫通ドメイン、および認識領域に柔軟性を付与し、標的部分への強力な結合を可能にするヒンジドメインを含み得る。
【0384】
CARによって操作されたリンパ球、例えば、CAR-CIL細胞に適した例示的なCAR構築物を以下に提供する:
(1)scFv-CD8TM-4-1BBIC-CD3ζ(例えば、Liu E,Tong Y,Dotti G,et al.,Leukemia.2018;32:520-531を参照);
(2)scFv-CD28TM+IC-CD3ζ(例えば、Han J,Chu J,Keung CW et al.,Sci Rep.2015;5:11483;Kruschinski A,Moosmann A,Poschke I et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2008;105:17481-17486;およびChu J,Deng Y,Benson DM et al.,Leukemia.2014;28:917-927を参照);
(3)scFv-DAP12TM+IC(例えば、Muller N,Michen S,Tietze S et al.,J Immunother.2015;38:197-210を参照);
(4)scFv-CD8TM-2B4IC-CD3ζ(例えば、Xu Y,Liu Q,Zhong M et al.,J Hematol Oncol.2019;12:49を参照);
(5)scFv-2B4TM+IC-CD3ζ(例えば、Altvater B,Landmeier S,Pscherer S et al.,Clin Cancer Res.2009;15:4857-4866を参照);
(6)scFv-CD28TM+IC-4-1BBIC-CD3ζ(例えば、Kloss S,Oberschmidt O,Morgan M et al.,Hum Gene Ther.2017;28:897-913を参照);
(7)scFv-CD16TM-2B4IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(8)scFv-NKp44TM-DAP10IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(9)scFv-NKp46TM-2B4IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(10)scFv-NKG2DTM-2B4IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(11)scFv-NKG2DTM-4-1BBIC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(12)scFv-NKG2DTM-2B4IC-DAP12IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(13)scFv-NKG2DTM-2B4IC-DAP10IC-CD3ζ(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);
(14)scFv-NKG2DTM-4-1BBIC-2B4IC-CD3ζS(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照);および
(15)scFv-NKG2DTM-CD3ζS(例えば、Li Y,Hermanson DL,Moriarity BS Kaufman DS,Cell Stem Cell.2018;23:181-192を参照)。
【0385】
いくつかの態様では、CARの結合部分は、細胞上でのその過剰発現、または癌などの疾患もしくは病態との関連などのために、標的とされることが望ましい任意の抗原に導かれ得る。
【0386】
いくつかの態様では、CARの結合部分は、腫瘍抗原に特異的である。抗原結合ドメインの選択は、治療される癌の特定のタイプに依存する。腫瘍抗原は当技術分野において周知であり、それには、例えば、神経膠腫関連抗原、癌胎児性抗原(CEA)、EGFRvIII、IL-11Ra、IL-13Ra、EGFR、FAP、B7H3、Kit、CA LX、CS-1、MUC1、BCMA、bcr-abl、HER2、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、ALK、CD19、CD123、サイクリンB1、レクチン反応性AFP、Fos関連抗原1、ADRB3、サイログロブリン、EphA2、RAGE-1、RU1、RU2、SSX2、AKAP-4、LCK、OY-TES1、PAXS、SART3、CLL-1、フコシルGM1、GloboH、MN-CA IX、EPCAM、EVT6-AML、TGS5、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、プリシアル酸(plysialic acid)、PLAC1、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ、lewisY、sLe、LY6K、mut hsp70-2、M-CSF、MYCN、RhoC、TRP-2、CYPIBI、BORIS、プロスターゼ(prostase)、前立腺特異抗原(PSA)、PAX3、PAP、NY-ESO-1、LAGE-la、LMP2、NCAM、p53、p53変異型、Ras変異型、gplOO、プロステイン、OR51E2、PANX3、PSMA、PSCA、Her2/neu、hTERT、HMWMAA、HAVCR1、VEGFR2、PDGFR-ベータ、サバイビンおよびテロメラーゼ、レグマイン、HPV E6、E7、精子タンパク質17、SSEA-4、チロシナーゼ、TARP、WT1、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、ML-IAP、MAGE、MAGE-A1、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MelanA/MART 1、XAGE1、ELF2M、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、好中球エラスターゼ、肉腫転座切断点、NY-BR-1、ephnnB2、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD97、CD171、CD179a、アンドロゲン受容体、FAP、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGFII、IGF-I受容体、GD2、o-アセチル-GD2、GD3、GM3、GPRCSD、GPR20、CXORF61、フォレート受容体(FRa)、フォレート受容体ベータ、ROR1、Flt3、TAG72、TN Ag、Tie 2、TEM1、TEM7R、CLDN6、TSHR、UPK2ならびにメソテリンが含まれる。腫瘍抗原の非限定的な例には、分化抗原、例えば、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、および腫瘍特異的多系列抗原、例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pi 5;過剰発現された胚抗原、例えば、CEA;過剰発現された癌遺伝子および変異した腫瘍抑制遺伝子、例えば、p53、Ras、HER-2/neu;染色体転座から生じる固有の腫瘍抗原;例えば、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR;ならびにウイルス抗原、例えば、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVAおよびヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7が挙げられる。他の大きなタンパク質系抗原には、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、IL13Ra2、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p 15、p 16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテイン、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG1 6、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、GPC3、MUC16、LMP1、EBMA-1、BARF-1、CS1、CD319、HER1、B7H6、L1CAM、IL6、およびMETが含まれる。
【0387】
当業者であれば、多様な腫瘍抗原に対するCARに容易に精通している。そのようなCARのいずれか1つをCARとして使用することができる。多数のCARがFDAによって承認されており、それには、限定されることなく、抗CD19 CAR T細胞および抗BCMA CAR T細胞、例えば、チサゲンレクルユーセル(Kymriah)、アキシカブタゲンシロルユーセル(Yescarta)、ブレクスカブタゲンオートルユーセル(Tecartus)、リソカブタゲンマラルユーセル(Breyanzi)またはイデカブタゲンビクルユーセル(Abecma)が含まれる。所望の腫瘍抗原を特異的に標的とするために同様の構築物を生成することは、当業者のレベルの範囲内である。
【0388】
いくつかの態様では、CARの結合部分は、別個のCAR構築物を調製する必要なく、多種多様な腫瘍を標的とするユニバーサル抗原に導かれ得る。CARによって認識される標的部分もまた、一定のままであり得る。いくつかの態様では、標的細胞との相互作用と、CARの結合部分との相互作用とを可能にするために、リガンドが対象に投与され得る。系が、異なる同一性の癌細胞を標的とすることを可能にするために変化させる必要があるのは、小さなコンジュゲート分子のリガンド部分のみである。例示的なユニバーサルCAR系は、上記のセクションに記載されている。
【0389】
いくつかの態様では、CARは抗FITC CARであり、リガンドは、所望の標的細胞(癌細胞など)に結合する作用物質にコンジュゲートされたフルオレセイン部分またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)部分から構成される。例示的なリガンドは、上記のセクションに記載されている。いくつかの態様では、リガンドはFITC-フォレートである。
【0390】
本開示の例示的なCARは
図8に示されており、
図8では、融合タンパク質がレンチウイルス発現ベクターによってコードされ、「SP」がシグナルペプチドであり、CARが抗FITC CARであり、CD8αヒンジが存在し、膜貫通ドメインが存在し(「TM」)、共刺激ドメインが4-1BBであり、活性化シグナル伝達ドメインがCD3ζである。
【0391】
CARをコードする例示的なヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:13を含み得る。
【0392】
例示的なCARアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14を含み得る。
【0393】
例示的なヌクレオチドインサートは、SEQ ID NO:15を含み得る。
【0394】
いくつかの態様では、CARは、細胞内のCARの輸送をシグナル伝達するためのシグナルペプチドをコードする核酸配列によってコードされ得る。典型的には、シグナルペプチドがタンパク質から除去されることが理解される。
【0395】
シグナルペプチドを有しない例示的なCARアミノ酸配列は、SEQ ID NO:16を含み得る。
【0396】
例示的なCARアミノ酸配列シグナルペプチドは、SEQ ID NO:17を含み得る。
【0397】
様々な態様では、SEQ ID NO:13または15の核酸を含むCAR発現細胞が提供される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:14を含むキメラ抗原受容体ポリペプチドが企図される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:16を含むキメラ抗原受容体ポリペプチドが企図される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:13または15を含むベクターが企図される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:13または15を含むレンチウイルスベクターが企図される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:14は、ヒトアミノ酸配列もしくはヒト化アミノ酸配列を含み得るか、またはそれらからなり得る。いくつかの態様では、SEQ ID NO:16は、ヒトアミノ酸配列もしくはヒト化アミノ酸配列を含み得るか、またはそれらからなり得る。
【0398】
いくつかの態様では、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16に対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約99.5%の配列同一性を有する変異体核酸配列または変異体アミノ酸配列が企図される。
【0399】
リンパ球によって発現されるCARが標的部分に結合する親和性は様々であり得、場合によっては低い親和性結合が好ましい場合があるが(約50nMなど)、標的リガンドに対するCARの結合親和性は、一般に、少なくとも約100nM、少なくとも約1pMまたは少なくとも約10pM、好ましくは少なくとも約100pM、少なくとも約1fMまたは少なくとも約10fM、さらになお好ましくは少なくとも約100fMである。
【0400】
VII. 合成サイトカイン受容体を発現するiCIL細胞の特徴
いくつかの態様では、CIL細胞は、CD3-CD5-、CD16+、CD56+、CD57+、NKp30+、NKp46+、NKG2A+、および/またはNKG2D+である。
【0401】
いくつかの態様では、操作された細胞の集団は、40%~60%のCD16+、50%~70%のCD16+、60%~80%のCD16+、70%~90%のCD16+、80%~100%のCD16+、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の割合である。
【0402】
いくつかの態様では、操作された細胞の集団は、60%~80%のCD56+、65%~85%のCD56+、70%~90%のCD56+、75%~95%のCD56+、80%~99%のCD56+、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の割合である。
【0403】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団はCD56loである。いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団はCD56highである。
【0404】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、60%~80%のCD16+CD56+、65%~85%のCD16+CD56+、70%~90%のCD16+CD56+、75%~95%のCD16+CD56+、80%~99%のCD16+CD56+、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の割合である。
【0405】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、少なくとも40%のCD16+、少なくとも50%のCD16+、少なくとも60%のCD16+、少なくとも70%のCD16+、少なくとも80%のCD16+、少なくとも90%のCD16+、または100%のCD16+である。
【0406】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、少なくとも80%のCD56+、少なくとも85%のCD56+、少なくとも90%のCD56+、少なくとも95%のCD56+、または100%のCD56+である。
【0407】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、少なくとも40%のCD16+CD56+、少なくとも50%のCD16+CD56+、少なくとも60%のCD16+CD56+、少なくとも70%のCD16+CD56+、少なくとも80%のCD16+CD56+、少なくとも90%のCD16+CD56+、または100%のCD16+CD56+である。
【0408】
いくつかの態様では、CIL細胞は、CD45+CD56+であることを特徴とする。
【0409】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、40%~60%のCD45+、50%~70%のCD45+、60%~80%のCD45+、70%~90%のCD45+、80%~100%のCD45+、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の割合である。
【0410】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、60%~80%のCD45+CD56+、65%~85%のCD45+CD56+、70%~90%のCD45+CD56+、75%~95%のCD45+CD56+、80%~99%のCD45+CD56+、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の割合である。
【0411】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、少なくとも40%のCD45+、少なくとも50%のCD45+、少なくとも60%のCD45+、少なくとも70%のCD45+、少なくとも80%のCD45+、少なくとも90%のCD45+、または100%のCD45+である。
【0412】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞の集団は、少なくとも40%のCD45+CD56+、少なくとも50%のCD45+CD56+、少なくとも60%のCD45+CD56+、少なくとも70%のCD45+CD56+、少なくとも80%のCD45+CD56+、少なくとも90%のCD45+CD56+、または100%のCD45+CD56+である。
【0413】
K562細胞は、インビトロ細胞傷害性自然リンパ球系細胞細胞傷害活性アッセイのための高感度標的である。該アッセイでは、CIL細胞は、CIL細胞媒介性細胞傷害性に感受性であることが公知のK562標的腫瘍細胞と様々な比で共インキュベートされる。標的細胞(K562)は、エフェクター細胞(CIL細胞)との区別を可能にするために、蛍光色素によって予め標識される。インキュベーション期間後、殺傷された標的細胞は、死細胞に特異的に浸透する核酸染色によって同定される。死亡%は、各実験アッセイウェル内の生存細胞の総数を非エフェクター対照ウェルと比較することによって計算される。本明細書において使用される場合、用語「活性」は、標的細胞に対するCIL細胞の細胞傷害能力の測定値を指す。
【0414】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞は、操作されたCIL細胞によって認識される抗原に応答してCD107aを分泌する。
【0415】
自然CIL細胞受容体刺激は、CD107aのCIL細胞分泌を引き起こす。CD107a発現は、サイトカイン分泌、および標的細胞のCIL細胞媒介性溶解の両方と相関するため、本明細書において使用される場合、CD107a分泌はCIL細胞機能活性のマーカーである。
【0416】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞は、操作されたCIL細胞によって認識される抗原に応答してインターフェロンガンマ(IFNγ)および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を分泌する。
【0417】
CIL細胞活性化は、CIL細胞の細胞傷害性を相乗的に増強するIFNγおよびTNF-αの分泌をもたらす。操作されたCIL細胞では、IFNγおよび/またはTNF-αの発現は、CIL細胞活性のマーカーである。
【0418】
上記のように、医学的治療に使用するための、非生理学的リガンドによって活性化される合成サイトカイン受容体複合体を使用してリンパ球系細胞に分化され得る造血幹細胞または造血前駆細胞、およびそれらの幹細胞または前駆細胞から産生される分化細胞が本明細書において提供される。分化細胞は、限定されることなく、iCIL細胞であり得る。態様の利点には、患者におけるエフェクター細胞の増殖が非生理学的リガンドの投与または投与の停止によって制御され得るように、豊富な細胞供給源(例えば、人工多能性幹細胞)に関して、非生理学的リガンドによって活性化される合成サイトカイン受容体複合体を発現するエフェクター細胞を生成する能力が含まれ得る。態様の他の利点には、限定されることなく、CIL細胞分化のために当技術分野において従来使用されているサイトカイン、例えば、IL-2、IL-7および/またはIL-15を実質的に含まない培地中で、供給源細胞からエフェクター細胞を生成する能力が含まれる。
【0419】
CIL細胞は、複数の供給源から生成されてもよく、例示的な例には、iPSC、PBMCまたはUCBが挙げられる。いくつかの態様では、CIL供給源細胞は自己由来細胞である。いくつかの態様では、CIL供給源細胞は同種異系細胞である。いくつかの態様では、CIL供給源細胞は異種細胞である。例えば、本開示の組成物を使用して治療されている対象が、対象の免疫系を破壊するために高用量の化学療法または放射線治療を受けている場合、同種異系細胞が使用され得る。
【0420】
いくつかの態様では、造血幹細胞は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作され得る。いくつかの態様では、血液前駆細胞(白血球)細胞は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作され得る。いくつかの態様では、共通リンパ球系前駆細胞は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作され得る。いくつかの態様では、CIL細胞は、合成サイトカイン受容体を発現するように操作され得る。
【0421】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、外因性サイトカインに加えて、またはその代わりに、分化を誘導し得る。いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、中胚葉形成、造血特異化、リンパ球系前駆体分化、CIL細胞分化のうちの1つまたは複数の最中に分化を誘導し得る。
【0422】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、IL-7および/またはIL-15シグナルを必要とする分化期の細胞と接触させられ得る。
【0423】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、IL-2シグナルを必要とする拡大増殖期の細胞と接触させられ得る。
【0424】
いくつかの態様では、合成サイトカイン受容体を発現するように細胞を操作し、非生理学的リガンドを用いて受容体を活性化することにより、外因性因子を使用せずに、分化および/または拡大増殖され得るCIL細胞の生成が可能になる。
【0425】
CIL細胞の分化および/または拡大増殖が様々な外因性刺激の存在に依存することは関連技術分野において周知であるため、本明細書において記載されるように、IL-2、IL-15およびIL-7のうちの1つ、2つまたは全部を用いない、操作されたCIL細胞の分化および/または拡大増殖は驚くべきことであり、予想外である。
【0426】
いくつかの態様では、操作された共通リンパ球系前駆体は、分化培地中でIL-15を用いずCIL細胞に分化される。
【0427】
いくつかの態様では、操作された共通リンパ球系前駆体は、分化培地中でIL-7を用いずCIL細胞に分化される。
【0428】
いくつかの態様では、操作された共通リンパ球系前駆体は、分化培地中でIL-15またはIL-7を用いずCIL細胞に分化される。
【0429】
いくつかの態様では、共通リンパ球系前駆体は、RACRなどの合成サイトカイン受容体を発現するように操作され、分化培地中でラパログを用いて、分化培地中でIL-15またはIL-7を用いずCIL細胞に分化される。
【0430】
いくつかの態様では、操作されたCIL細胞は、拡大増殖培地中でIL-2を用いず拡大増殖される。
【0431】
いくつかの態様では、CIL細胞は、RACRなどの合成サイトカイン受容体を発現するように操作され、拡大増殖培地中でラパログを用いて、拡大増殖培地中で組換えサイトカインを用いず拡大増殖される。
【0432】
いくつかの態様では、CIL細胞拡大増殖工程は、組換えサイトカインを実質的に含まない細胞培養培地中で行われる。
【0433】
いくつかの態様では、拡大増殖工程は、フィーダーフリー細胞培養で行われる。
【0434】
いくつかの態様では、CIL細胞拡大増殖工程は、CIL細胞拡大増殖のための組換えリガンドによってコーティングされていない培養容器内で行われる。
【0435】
いくつかの態様では、有効量の非生理学的リガンドを対象に投与する方法であって、非生理学的リガンドが、前述の態様のいずれかに従って共通リンパ球系前駆細胞をCIL細胞に分化させる方法が提供される。
【0436】
いくつかの態様では、有効量の非生理学的リガンドを対象に投与する方法であって、非生理学的リガンドが、前述の態様のいずれかに従って細胞を増殖させる方法が提供される。
【0437】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、エクスビボでCIL細胞の拡大増殖を引き起こすのに有効な量で存在するかまたは提供される。
【0438】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、エクスビボでCIL細胞サイトカイン分泌を引き起こすのに有効な量で存在するかまたは提供される。
【0439】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、エクスビボでCD107a、インターフェロンガンマ(IFNγ)および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)のCIL細胞分泌を引き起こすのに有効な量で存在するかまたは提供される。
【0440】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、腫瘍細胞殺傷を引き起こすのに有効な量で存在するかまたは提供される。
【0441】
いくつかの態様では、非生理学的リガンドは、治療有効量で存在するかまたは提供される。
【0442】
IX. 開示される組成物を用いて対象を治療する方法
本開示は、本明細書において開示される組成物、治療用組成物、細胞、ベクターおよびポリヌクレオチドを用いて、それを必要とする対象を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、開示される細胞の治療有効量を対象に投与する工程を含む、対象において癌を治療するおよび/または癌細胞を殺傷する方法を提供する。有効量の非生理学的リガンドを対象に投与する工程を含み、非生理学的リガンドが、前述の態様のいずれかに従って細胞を増殖させる、対象において腫瘍を治療するおよび/または腫瘍細胞を殺傷する方法も提供される。
【0443】
いくつかの態様では、悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫(PBMC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓周辺帯リンパ腫(SMZL)、慢性白血病もしくは急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ様白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ様白血病(「TALL」)、急性リンパ様白血病(ALL)のうちの1つもしくは複数、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、小細胞濾胞性リンパ腫もしくは大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄形成異常および骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(asymptomatic myeloma)(くすぶり型多発性骨髄腫または無症候性骨髄腫(indolent myeloma)))、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤立性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫および多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス(systemic amyloid light chain amyloidosis)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、Takatsuki病およびPEP症候群としても知られている)、またはそれらの組合せである。
【0444】
いくつかの態様では、本明細書において開示される方法は、前述の態様のいずれかに従って治療有効量の細胞を投与することによって、対象において癌を治療するおよび/または癌細胞を殺傷するために使用され得る。
【0445】
本開示はまた、前述の態様のいずれかの系を対象に投与する工程を含む、対象において癌を治療するおよび/または癌細胞を殺傷する方法を提供する。
【0446】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書において提供される組成物のいずれかを用いて癌を治療する方法を提供する。「癌」は、本明細書に照らして読まれる場合、その明白な通常の意味を有し、それには、限定されることなく、例えば、身体の他の部分に浸潤または拡散する可能性を有する異常な細胞増殖を伴う疾患群が含まれ得る。本明細書において記載される方法を使用して対処され得る対象には、限定されることなく、結腸癌、肺癌、肝癌、乳癌、腎癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫を含む)、骨癌および脳癌などを含む癌を有すると同定または選択された対象が含まれる。そのような同定および/または選択は、臨床評価または診断評価によって行われ得る。いくつかの態様では、腫瘍関連抗原または腫瘍関連分子、例えば、黒色腫、乳癌、脳癌、扁平上皮癌、結腸癌、白血病、骨髄腫および/または前立腺癌が公知である。例には、限定されることなく、B細胞リンパ腫、乳癌、脳癌、前立腺癌および/または白血病が挙げられる。いくつかの態様では、1つまたは複数の発癌性ポリペプチドは、腎癌、子宮癌、結腸癌、肺癌、肝癌、乳癌、腎癌、前立腺癌、卵巣癌、皮膚癌(黒色腫を含む)、骨癌、脳癌、腺癌、膵癌、慢性骨髄性白血病または白血病に関連する。いくつかの態様では、対象の癌を治療、改良または阻害する方法が提供される。いくつかの態様では、癌は、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵癌、前立腺癌、黒色腫、腎癌、膵癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、肉腫、肝癌、結腸癌、皮膚癌(黒色腫を含む)、骨癌または脳癌である。
【0447】
いくつかの態様では、標的細胞は腫瘍細胞である。いくつかの態様では、標的細胞は、腫瘍微小環境に存在する。
【0448】
いくつかの態様では、本開示は、対象を事前に調整することなく、本明細書において提供される組成物のいずれかを用いて癌を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、本開示の対象は、リンパ球枯渇療法を受ける必要がない。当業者であれば、化学療法などの利用可能な一般的なリンパ球枯渇療法を理解するであろう。いくつかの態様では、本開示の対象は、リンパ球枯渇療法を受けたことがない。いくつかの態様では、分化細胞は、リンパ球枯渇療法を受けたことがない対象に提供される。いくつかの態様では、対象は、分化細胞の投与前に1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日間にわたってリンパ球枯渇療法を受けたことがない。
【0449】
いくつかの態様では、分化細胞は、リガンド組成物の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、24、36、48、60もしくは72時間後、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の時間後に対象に提供される。いくつかの態様では、細胞は、リガンド組成物の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、20、24、36もしくは48時間前、または任意の2つの前述の値によって定義される範囲内の任意の時間前に対象に提供される。いくつかの態様では、細胞は、組成物を対象に提供する数秒または数分以内、例えば、1時間未満以内に対象に提供される。いくつかの態様では、細胞および/または組成物のブーストが対象に提供される。
【0450】
いくつかの局面では、本開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる国際公開公報第2019/144095号に記載されている、癌を治療する方法を提供する。
【0451】
いくつかの態様では、本開示は、キメラ抗原受容体細胞(例えば、NK細胞)を投与する工程を含み、CARが、E2抗フルオレセイン抗体断片を含む、癌を治療する方法を提供する。いくつかの態様では、癌を治療する方法は、リンカーによって標的化部分に連結された小分子を投与する工程をさらに含む。
【0452】
いくつかの態様では、標的化部分は、対象において治療されている癌のタイプによって決定される。一例として、フォレート受容体は、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、卵巣癌、子宮内膜癌、腎癌、肺癌、脳癌、膵癌、胃癌、前立腺癌、急性骨髄球性白血病および非小細胞肺癌を含む多種多様な固形腫瘍細胞の表面に高度に発現される。したがって、いくつかの態様では、標的化部分は、癌細胞または腫瘍細胞上に発現されるフォレート受容体に結合するであろうフォレートを含む。他の態様では、フォレートは、葉酸、葉酸類似体または任意のフォレート-受容体結合分子であり得る。いくつかの態様では、小分子は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、NHS-フルオレセイン、または任意の他のフルオロフォアを含む。いくつかの態様では、標的化部分に連結された小分子はFITC-フォレートである。
【0453】
いくつかの態様では、本開示は、癌を有する対象の治療に使用するための操作された幹細胞の生着を企図する。いくつかの態様では、iPSC由来の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞は、対象に安定に生着する。いくつかの態様では、iPSC由来の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞は、対象において長期間の生着を示す。いくつかの態様では、iPSC由来の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の投与は、対象内で生着およびさらなる分化を可能にした。いくつかの態様では、iPSC由来の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞はナチュラルキラー細胞である。
【0454】
いくつかの態様では、小分子、例えば、化学化合物、抗体療法、例えば、放射性核種、毒素もしくは薬物へのコンジュゲーション、手術、および/または放射線を伴うまたは伴わないヒト化モノクローナル抗体などの追加の癌治療が提供される。
【0455】
いくつかの態様では、対象は、癌治療薬、放射線、化学療法、または癌を治療するための薬物を含み得る追加の癌治療を受けるように選択される。いくつかの態様では、薬物は、アビラテロン、アレムツズマブ、アナストロゾール、アプレピタント、三酸化ヒ素、アテゾリズマブ、アザシチジン、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カバジタキセル、カペシタビン、カルボプラチン、セツキシマブ、化学療法薬の組合せ、シスプラチン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、デノスマブ、ドセタキセル、ドキソルビシン、エリブリン、エルロチニブ、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、イマチニブ、イミキモド、イピリムマブ、イクサベピロン、ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイプロリド、メスナ、メトトレキセート、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パロノセトロン、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、プレドニゾン、ラジウム-223、リツキシマブ、シプロイセル-T、ソラフェニブ、スニチニブ、タルク胸膜内、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、トラスツズマブ、ビノレルビンまたはゾレドロン酸を含む。
【0456】
投与様式
いくつかの態様では、本明細書において記載される合成サイトカイン受容体を用いて操作されたCIL細胞などの形質導入されたリンパ球は、ヒトなどの対象に導入される細胞集団に適した条件で増殖され得る。具体的な考慮事項には、ウシ血清などの動物性製品を欠く培養培地の使用が含まれる。他の考慮事項には、細菌、真菌およびマイコプラズマの汚染を回避するための滅菌状態が含まれる。いくつかの態様では、本開示において企図される細胞培養方法のいずれかを使用して、CAR発現リンパ球、例えば、CAR発現CIL細胞を増殖させてもよい。
【0457】
いくつかの態様では、トランスフェクション後、細胞を患者に直ちに投与することができるか、または例えば、細胞がトランスフェクションから回復する時間を可能にするために、細胞を少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10.少なくとも約11.少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18日間もしくはそれ以上、もしくは約5~約12日間、約6~約13日間、約7~約14日間、もしくは約8~約15日間にわたって培養することができる。好適な培養条件は、活性化を促進するために使用された作用物質の有無にかかわらず、細胞を活性化のために培養した条件と同様であり得る。いくつかの態様では、本開示において企図される操作されたリンパ球、例えば、CIL細胞を投与する方法のいずれかを使用して、CAR発現CIL細胞などのCAR発現リンパ球を患者に投与してもよい。
【0458】
開示される細胞は、局所的治療または全身的治療が望ましいかに応じて、いくつかの方法で投与され得る。
【0459】
養子細胞療法の場合、養子細胞療法のための細胞の投与方法は公知であり、提供される方法および組成物に関連して使用され得る。
【0460】
一般に、投与は、局所、非経口または経腸であり得る。本開示の組成物は、典型的には非経口投与に適している。本明細書において使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理的破損と、組織の破損を介した薬学的組成物の投与とを特徴とし、したがって、血流、筋肉または内臓への直接投与を一般にもたらす任意の投与経路を含む。したがって、非経口投与には、限定されることなく、組成物の注射による、外科的切開を介した組成物の適用による、組織貫通非外科的創傷を介した組成物の適用などによる薬学的組成物の投与が含まれる。特に、非経口投与は、限定されることなく、皮下、腹腔内、筋肉内、幹内(intrastemal)、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、滑膜内の注射または注入、および腎臓透析注入技術を含むことが企図される。一態様では、本開示の組成物の非経口投与は、静脈内投与を含む。
【0461】
非経口投与に適した薬学的組成物の製剤は、滅菌水または滅菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わせた活性成分を典型的に一般に含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で調製、包装または販売され得る。注射用製剤は、アンプル、または防腐剤を含有する複数回用量容器などの単位剤形で調製、包装または販売され得る。非経口投与のための製剤には、限定されることなく、懸濁液、溶液、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中のエマルジョン、ペーストなどが含まれる。そのような製剤は、限定されることなく、懸濁化剤、安定化剤または分散剤を含む1つまたは複数の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与用の製剤の一態様では、活性成分は、再構成された組成物の非経口投与の前に好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)を用いて再構成するための乾燥(すなわち、粉末または粒状)形態で提供される。非経口製剤はまた、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは3~9のpHまで)などの賦形剤を含有し得る水溶液を含むが、いくつかの用途では、それらは滅菌非水溶液として、または滅菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルとともに使用される乾燥形態としてさらに好適に製剤化され得る。例示的な非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコール水溶液またはデキストロース水溶液中の溶液または懸濁液が含まれる。そのような剤形は、所望であれば、好適に緩衝化され得る。有用な他の非経口投与可能な製剤には、微結晶形態またはリポソーム調製物中に活性成分を含むものが含まれる。非経口投与のための製剤は、即時放出および/または改良型放出であるように製剤化され得る。改良型放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出が含まれる。
【0462】
本発明の組成物は、薬学的組成物中に従来見られる他の補助成分をさらに含有し得る。したがって、例えば、組成物は、追加の適合性の薬学的活性材料、例えば、鎮痒薬、収斂剤、局所麻酔薬もしくは抗炎症剤を含有してもよいか、または様々な剤形の本発明の組成物を物理的に製剤化するのに有用な追加の材料、例えば、色素、香味剤、防腐剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤および安定剤を含有してもよい。ただし、そのような材料は、加えられる場合、本発明の組成物の成分の生物学的活性を過度に妨げるべきではない。製剤を滅菌し、所望であれば、補助剤、例えば、製剤の核酸と有害に相互作用しない潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝剤、着色剤、香味料および/または芳香族物質などと混合することができる。
【0463】
ウイルス粒子、アダプター分子および/または免疫細胞の本組成物は、疾患または病態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で投与され得る。いくつかの態様では、治療有効性または予防有効性は、治療された対象の定期的な評価によってモニタリングされる。数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、病態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで治療が繰り返される。ただし、他の投与レジメンが有用であり得、決定され得る。所望の投与量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって送達され得る。
【0464】
ある特定の態様では、本開示による分化細胞またはトランスジェニック分化細胞を注入することに関連して、対象には、約100万~約1000億個の細胞、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前述の値のいずれか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)の範囲、および/または対象の体重1キログラム当たりのそのような細胞数が投与される。例えば、いくつかの態様では、細胞または細胞集団の投与は、それらの範囲内の細胞数のあらゆる整数値を含めて、体重1kg当たり約103~約109個の細胞の投与を含むことができる。
【0465】
X. 例示的な態様
提供される態様の中には、以下のものがある:
1. 制御された拡大増殖および/または活性のために操作された、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞を含む細胞集団であって、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含み、
サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む、合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む、合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
非生理学的リガンドが、細胞傷害性自然リンパ球系細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する、
細胞集団。
2. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-2RB細胞内ドメインを含む、態様1の細胞集団。
3. IL-2RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:2と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:2に記載のポリペプチド配列を含む、態様2の細胞集団。
4. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-7RB細胞内ドメインを含む、態様1の細胞集団。
5. IL-7RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:3と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:3に記載のポリペプチド配列を含む、態様4の細胞集団。
6. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-21RB細胞内ドメインを含む、態様1の細胞集団。
7. IL-21RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:4と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:4に記載のポリペプチド配列を含む、態様6の細胞集団。
8. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが細胞外ドメインであり、
合成ガンマ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含み、
合成ベータ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含む、態様1~7のいずれか1つの細胞集団。
9. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインから選択されるから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
非生理学的リガンドが、ラパマイシンもしくはラパログである、
態様1~8のいずれか1つの細胞集団。
10. FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様9の細胞集団。
11. FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7に記載のポリペプチド配列を含む、態様9の細胞集団。
12. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびカルシニューリンドメインから選択されるから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
非生理学的リガンドが、FK506もしくはその類似体である、
態様1~8のいずれか1つの細胞集団。
13. FKBPドメインが、SEQ ID NO:5と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様1~12のいずれか1つの細胞集団。
14. FKBPドメインが、SEQ ID NO:5に記載のポリペプチド配列を含む、態様1~12のいずれか1つの細胞集団。
15. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、
(i)サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP);
(ii)シクロフィリンA(CypA);または
(iii)ジャイレースB(CyrB)
から選択されるホモ二量体化ドメインであり、
かつ非生理学的リガンドが、それぞれ
(i)FK1012、AP1510、AP1903もしくはAP20187もしくはその類似体;
(ii)シクロスポリン-A(CsA)もしくはその類似体;または
(iii)クーママイシンもしくはその類似体
である、態様1~8のいずれか1つの細胞集団。
16. 細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、非生理学的リガンドに結合する細胞質ゾルポリペプチドを発現する、態様1~15のいずれか1つの細胞集団。
17. 非生理学的リガンドが、ラパマイシンまたはラパログであり、細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、細胞質ゾルFRBドメインまたはその変異体を発現する、態様1~15のいずれか1つの細胞集団。
18. 細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様17の細胞集団。
19. 細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも98%同一のポリペプチド配列を含む、態様17の細胞集団。
20. 細胞傷害性自然リンパ球系細胞が一次細胞傷害性自然リンパ球系細胞である、態様1~19のいずれか1つの細胞集団。
21. 細胞傷害性自然リンパ球系細胞が血液由来細胞傷害性自然リンパ球系細胞である、態様1~19のいずれか1つの細胞集団。
22. 細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、誘導された細胞傷害性自然リンパ球系(iCIL)細胞である、態様1~19のいずれか1つの細胞集団。
23. 操作された細胞が、CD3-、CD5-、CD16+、CD56+、CD57+、NKp30+、NKp46+、NKG2A+、および/またはNKG2D+である、態様1~22のいずれか1つの細胞集団。
24. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の集団が、少なくとも40%のCD16+である、態様1~23のいずれか1つの細胞集団。
25. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の集団が、または少なくとも40%のCD56+である、態様1~24のいずれか1つの細胞集団。
26. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の集団が、少なくとも40%のCD16+CD56+である、態様1~23のいずれか1つの細胞集団。
27. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、IL-2を用いて拡大増殖させた対照細胞傷害性自然リンパ球系細胞と少なくとも同じレベルのCD16、CD56、CD57、NKG2A、NKG2Dおよび/またはCD57を発現する、態様1~26のいずれか1つの細胞集団。
28. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、IL-2を用いて拡大増殖させた対照細胞傷害性自然リンパ球系細胞よりも高いレベルでNKp30および/またはNKp46を発現する、態様1~27のいずれか1つの細胞集団。
29. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞によって認識される抗原に応答してCD107aを分泌する、態様1~28のいずれか1つの細胞集団。
30. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞によって認識される抗原に応答してインターフェロンガンマ(IFNγ)および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)を分泌する、態様1~29のいずれか1つの細胞集団。
31. 供給源細胞を、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターと接触させる工程であって、
それによって、供給源細胞を形質導入して、形質導入された細胞を含む細胞集団を生成する、工程と;
ここで、サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
細胞集団を非生理学的リガンドと接触させて合成サイトカイン受容体を活性化することによって、細胞集団内の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞を拡大増殖させ、
それによって、細胞集団内の操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞の拡大増殖を引き起こす工程と
を含む、制御された拡大増殖および/または活性のために、操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞を作製する方法。
32. 供給源細胞が一次細胞傷害性自然リンパ球系細胞である、態様31の方法。
33. 供給源細胞が、ヒト多能性幹細胞またはヒト胚性幹細胞を分化させることによって得られる造血前駆細胞もしくは造血幹細胞または共通リンパ球系前駆細胞である、態様31の方法。
34. 供給源細胞がヒト多能性幹細胞である、態様31の方法。
35. 形質導入された細胞を操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞に分化させている最中に、細胞集団を非生理学的リガンドと接触させる工程を含む、態様33または態様34の方法。
36. 拡大増殖工程が、組換えサイトカインを実質的に含まない細胞培養培地中で行われ、拡大増殖工程が、フィーダーフリー細胞培養物で行われ、および/または拡大増殖工程が、細胞傷害性自然リンパ球系細胞拡大増殖のための組換えリガンドによってコーティングされていない培養容器内で行われる、態様31~35のいずれか1つの方法。
37. 態様31~36のいずれか1つの方法によって産生された細胞集団。
38. 態様1~30または態様37のいずれか1つの細胞集団を含む薬学的組成物。
39. 態様1~30もしくは態様37のいずれか1つの細胞集団または態様38の薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象のための免疫療法の方法。
40. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞を対象において拡大増殖させるのに有効な量で非生理学的リガンドを対象に投与する工程を含む、態様39の方法。
41. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞にCD107aを提示させるか、またはインターフェロンガンマ(IFNγ)および/もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を分泌させるのに有効な量で非生理学的リガンドを対象に投与する工程を含む、態様39または態様40の方法。
42. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞に腫瘍細胞を殺傷させるのに有効な量で非生理学的リガンドを対象に投与する工程を含む、態様39~41のいずれか1つの方法。
43. 態様1~30もしくは態様37のいずれか1つの細胞集団、または態様38の薬学的組成物と、使用説明書とを含むキット。
44. 制御された拡大増殖および/または活性のために操作された、操作された細胞を含む細胞集団であって、操作された細胞が、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含み、
サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
非生理学的リガンドが、操作された細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する、細胞集団。
45. 操作された細胞がヒト多能性幹細胞である、態様44の細胞集団。
46. 操作された細胞が、造血幹細胞または造血前駆細胞である、態様44の細胞集団。
47. 操作された細胞が共通リンパ球系前駆細胞である、態様44の細胞集団。
48. 態様2~30または態様37のいずれか1つの細胞集団である、態様44~47のいずれか1つの細胞集団。
49. 態様44~48のいずれか1つの細胞集団を含む薬学的組成物またはキット。
50. 態様31~37のいずれか1つの方法に従って態様1の細胞集団を作製する方法。
51. 態様38~42のいずれか1つによる方法における態様50の細胞集団の使用。
52. a)任意で、合成サイトカイン受容体をコードするポリヌクレオチドを供給源細胞に導入することによって、合成サイトカイン受容体を含む操作された細胞を提供する工程、および
b)非生理学的リガンドを含む培地中で、操作された供給源細胞をインキュベートする工程
を含む、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含む操作された細胞の集団を作製するおよび/または拡大増殖させる方法であって、
サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
非生理学的リガンドが、操作された細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、操作された細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する、方法。
53. 供給源細胞が人工多能性幹細胞である、態様52の方法。
54. 供給源細胞が、造血幹細胞または造血前駆細胞である、態様52の方法。
55. 供給源細胞が共通リンパ球系前駆細胞である、態様52の方法。
56. 供給源細胞が細胞傷害性自然リンパ球系細胞である、態様52の方法。
57. ベクターがレンチウイルスベクターである、態様52の方法。
58. 非生理学的リガンドがラパログである、態様52の方法。
59. 制御された拡大増殖および/または活性のために操作された、操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞であって、操作されたCIL細胞が、非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体を含み、
サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む合成ベータ鎖ポリペプチド
を含み、
合成サイトカイン受容体への非生理学的リガンドの結合が、操作されたCIL細胞内で合成サイトカイン受容体を活性化して、細胞集団内の操作されたCIL細胞の拡大増殖および/または活性化を誘導する、操作された細胞傷害性自然リンパ球系(CIL)細胞。
60. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが細胞外ドメインである、態様59の操作されたCIL細胞。
61. 合成ガンマ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含み、合成ベータ鎖ポリペプチドが、N→C末端の順序で、第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含む、態様59または態様60の操作されたCIL細胞。
62. IL-2RG細胞内ドメインが、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:1に記載のポリペプチド配列を含む、態様59~61のいずれかの操作されたCIL細胞。
63. 第1の膜貫通ドメインが、IL-2RG膜貫通ドメインを含む、態様59~62のいずれかの操作されたCIL細胞。
64. IL-2RG膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:8もしくは31と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:8もしくは31に記載のポリペプチド配列を含む、態様63の操作されたCIL細胞。
65. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-2RB細胞内ドメインを含む、態様59~64のいずれかの操作されたCIL細胞。
66. IL-2RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:2と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:2に記載のポリペプチド配列を含む、態様65のCIL細胞。
67. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-7RB細胞内ドメインを含む、態様59~64のいずれかの操作されたCIL細胞。
68. IL-7RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:3と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:3に記載のポリペプチド配列を含む、態様59~64のいずれかの操作されたCIL細胞。
69. ベータ鎖細胞内ドメインが、IL-21RB細胞内ドメインを含む、態様59~64のいずれかの操作されたCIL細胞。
70. IL-21RB細胞内ドメインが、SEQ ID NO:4と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:4に記載のポリペプチド配列を含む、態様69の操作されたCIL細胞。
71. 第2の膜貫通ドメインが、同じベータ鎖細胞内ドメイン由来の膜貫通ドメインを含む、態様59~70のいずれかの操作されたCIL細胞。
72. 第2の膜貫通ドメインが、SEQ ID NO:35もしくは36と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、またはSEQ ID NO:35もしくは36に記載のポリペプチド配列を含む、IL-2RBの膜貫通ドメインである、態様59~66および71の操作されたCIL細胞。
73. 合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:8または31に記載の配列を含むIL-2RG TMドメインと、SEQ ID NO:1に記載の配列を含むIL-2RG細胞内ドメインとを含有し、
合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:35または36に記載の配列を含むIL-2RB TMドメインと、SEQ ID NO:2に記載の配列を含むIL-2RB細胞内ドメインとを含有する、
態様59~66、71および72のいずれかの操作されたCIL細胞。
74. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインから選択されるから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
非生理学的リガンドが、ラパマイシンもしくはラパログである、
態様59~73のいずれかの操作されたCIL細胞。
75. FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様74の操作されたCIL細胞。
76. FRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7に記載のポリペプチド配列を含む、態様74の操作されたCIL細胞。
77. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP)およびカルシニューリンドメインから選択されるから選択されるヘテロ二量体化ドメインであり、かつ/または
非生理学的リガンドが、FK506もしくはその類似体である、
態様59~73のいずれかの操作されたCIL細胞。
78. FKBPドメインが、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:30と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様59~74のいずれかの操作されたCIL細胞。
79. FKBPドメインが、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:30に記載のポリペプチド配列を含む、態様59~74のいずれかの操作されたCIL細胞。
80. 合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有し、かつ合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有する、態様59~66および71~79のいずれかの操作されたCIL細胞。
81. 合成ガンマ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:28に記載のアミノ酸配列を有し、合成ベータ鎖ポリペプチドが、SEQ ID NO:33に記載のアミノ酸配列を有する、態様59~66および71~80のいずれかの操作されたCIL細胞。
82. 第1の二量体化ドメインおよび第2の二量体化ドメインが、
(i)サイズ12kDのFK506-結合タンパク質(FKBP);
(ii)シクロフィリンA(CypA);または
(iii)ジャイレースB(CyrB)
から選択されるホモ二量体化ドメインであり、
かつ非生理学的リガンドが、それぞれ
(i)FK1012、AP1510、AP1903もしくはAP20187もしくはその類似体;
(ii)シクロスポリン-A(CsA)もしくはその類似体;または
(iii)クーママイシンもしくはその類似体
である、態様59~73のいずれかの操作されたCIL細胞。
83. CIL細胞がラパマイシン媒介性mTOR阻害に対して耐性である、態様59~82のいずれかの操作されたCIL細胞。
84. 細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、非生理学的リガンドに結合する細胞質ゾルポリペプチドを発現する、態様59~83のいずれかの操作されたCIL細胞。
85. 非生理学的リガンドが、ラパマイシンまたはラパログであり、細胞傷害性自然リンパ球系細胞が、細胞質ゾルFRBドメインまたはその変異体を発現する、態様59~84のいずれかの操作されたCIL細胞。
86. 細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を含む、態様85の操作されたCIL細胞。
87. 細胞質ゾルFRBドメインが、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:7と少なくとも98%同一のポリペプチド配列を含む、態様85の操作されたCIL細胞。
88. CIL細胞がFKBP12の発現を減少させる破壊されたFKBP12遺伝子を含む、態様59~87のいずれかの操作されたCIL細胞。
89. CIL細胞がFKBP12遺伝子のノックアウトを含む、態様59~88のいずれかの操作されたCIL細胞。
90. CIL細胞のゲノムに挿入された、合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列をCIL細胞が含む、態様59~89のいずれかの操作されたCIL細胞。
91. 合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列が、CIL細胞のゲノム内の非標的遺伝子座に挿入される、態様90の操作されたCIL細胞。
92. 合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列が、CIL細胞の内因性遺伝子に挿入される、態様90の操作されたCIL細胞。
93. 挿入が、遺伝子座内の内因性遺伝子の発現を減少させる、態様92の操作されたCIL細胞。
94. 挿入が、遺伝子座内の内因性遺伝子をノックアウトする、態様92または態様93の操作されたCIL細胞。
95. 挿入が、相同組換え修復によるものである、態様92~94のいずれかの操作されたCIL細胞。
96. 内因性遺伝子が、ハウスキーピング遺伝子、血液系統特異的遺伝子座または免疫関連遺伝子である、態様92~95のいずれかの操作されたCIL細胞。
97. 内因性遺伝子がハウスキーピング遺伝子であり、ハウスキーピング遺伝子が、真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ユビキチンC(UBC)およびアクチンベータ(ACTB)から選択される、態様96の操作されたCIL細胞。
98. 内因性遺伝子が血液系統特異的遺伝子座であり、血液系統特異的遺伝子座が、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型(PTPRC)、IL2RGおよびIL2RBから選択される、態様96の操作されたCIL細胞。
99. 免疫関連遺伝子が、ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子、T細胞受容体アルファ定常(TRAC)遺伝子およびシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPA)遺伝子から選択される、態様96の操作されたCIL細胞。
100. CIL細胞がB2Mノックアウトを含む、態様59~99のいずれか1つの操作されたCIL細胞。
101. CIL細胞がB2MノックアウトおよびFKBP12ノックアウトを含む、態様59~100のいずれかの操作されたCIL細胞。
102. キメラ抗原受容体(CAR)を含む、態様59~101のいずれか1つの操作されたCIL細胞。
103. CARが抗FITC CARである、態様102の操作されたCIL細胞。
104. 態様59~103のいずれかの操作されたCIL細胞を含む細胞集団。
105. (i)内因性遺伝子内の標的部位を標的とするガイドRNA(gRNA)と、(ii)RNAガイド付エンドヌクレアーゼと、(iii)非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと、CIL細胞の集団を接触させる工程であって、それによって、ヌクレオチド配列を内因性遺伝子に挿入する、工程
を含む、合成サイトカイン受容体を発現するようにCIL細胞を遺伝的に操作する方法であって、
サイトカイン受容体が、
第1の二量体化ドメインと、第1の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG)細胞内ドメインとを含む、合成ガンマ鎖ポリペプチド、ならびに
第2の二量体化ドメインと、第2の膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットベータ(IL-2RB)細胞内ドメイン、インターロイキン-7受容体サブユニットベータ(IL-7RB)細胞内ドメインおよび/またはインターロイキン-21受容体サブユニットベータ(IL-21RB)細胞内ドメインから選択される細胞内ドメインとを含む、合成ベータ鎖ポリペプチド
を含む、
前記方法。
106. ヌクレオチド配列が、相同組換え修復(HDR)を介して挿入される、態様105の方法。
107. ベクターが、5'から3'に向かって、(a)標的部位の上流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列と、(b)非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列と、(c)下流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列とを含む核酸を含む、態様106の方法。
108. ヌクレオチド配列が、非相同末端結合(NHEJ)を介して挿入される、態様105の方法。
109. RNAガイド付エンドヌクレアーゼが、Casエンドヌクレアーゼ、MadエンドヌクレアーゼおよびCpf1エンドヌクレアーゼから選択される、態様105~108のいずれか1つの方法。
110. RNAガイド付エンドヌクレアーゼが、Cas9またはMad7である、態様105~109のいずれか1つの方法。
111. 内因性遺伝子が、B2M、TRACおよびSIRPAから選択される、態様105~110のいずれかの方法。
112. 内因性遺伝子がB2Mである、態様105~111のいずれかの方法。
113. gRNAが、SEQ ID NO:18に記載の配列を含む、態様105~112のいずれかの方法。
114. 標的部位の上流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:22に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含み、下流に位置する領域と相同なヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:23に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する核酸配列を含む、態様107~113のいずれかの方法。
115. 合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列が、SEQ ID NO:37に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、ガンマ鎖をコードする第1の核酸配列と、SEQ ID NO:38に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する、ベータ鎖をコードする第2の核酸配列とを含む、態様105~114のいずれかの方法。
116. 第1の核酸配列および第2の核酸配列が、切断可能なリンカーまたはIRESによって分離される、態様115の方法。
117. 切断可能なリンカーが、任意で、SEQ ID NO:42に記載のタンパク質定量レポーターリンカー(PQR)である、態様116の方法。
118. 非生理学的リガンドに対する合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列が、異種プロモーターの機能的な制御下にある、態様105~127のいずれかの方法。
119. 異種プロモーターが、EF1αプロモーターまたはMNDプロモーターである、態様118の方法。
120. 合成サイトカイン受容体をコードするヌクレオチド配列が、ポリアデニル化配列を含む、態様105~118のいずれかの方法。
121. 組換えベクターが、SEQ ID NO:40に記載の配列、またはSEQ ID NO:40に記載の核酸配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の配列同一性を有する配列を含む、態様105~120のいずれかの方法。
122. ラパマイシン媒介性mTOR阻害に対して耐性であるようにCIL細胞の集団を操作する工程を含む、態様105~111のいずれか1つの方法。
123. ラパマイシンに対して耐性であるようにCIL細胞の集団を操作する工程が、FKBP12遺伝子をノックアウトすることを含む、態様122の方法。
124. CIL細胞の集団を、FKBP12遺伝子内の標的部位を標的とするガイドRNA(gRNA)と接触させる工程をさらに含む方法、態様122の方法。
125. gRNAが、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20またはSEQ ID NO:21に記載の配列を含むgRNAから選択される1つまたは複数のgRNAを含む、態様122の方法。
126. gRNAが、2または3つのgRNAを含む、gRNAのプールである、態様125の方法。
127. キメラ抗原受容体(CAR)をCIL細胞の集団に導入する工程をさらに含む、態様105~126のいずれかの方法。
128. CARが抗FITC CARである、態様127の方法。
129. 態様105~128のいずれか1つの方法によって産生された細胞集団。
130. 態様59~90および129のいずれか1つの細胞集団を含む薬学的組成物。
131. 操作された細胞傷害性自然リンパ球系細胞(CIL)を拡大増殖させる方法であって、態様59~103のいずれかのCILを、合成サイトカイン受容体の非生理学的リガンドと接触させる工程を含む、前記方法。
132. 対象の癌を治療する方法であって、態様59~103のいずれか1つの操作されたCIL、態様129の細胞集団、または態様130の薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
133. 対象の癌を治療する方法であって、態様59~103のいずれかの操作されたCIL、態様129の細胞集団、または態様130の薬学的組成物の有効量を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
134. CIL、CILの集団、または薬学的組成物を投与する工程の前に、対象がリンパ球枯渇療法を施されたことがない、態様133の方法。
135. CILが、対象において癌細胞を標的とするCARを発現する、態様133または態様134の方法。
136. CARが抗FITC CARであり、かつ対象における癌細胞をタグ付けするために対象にFITC-リガンドが投与されており、リガンドが、腫瘍上に発現される分子に特異的に結合する、態様135の方法。
137. FITC-リガンドがFITC-フォレートである、態様136の方法。
138. 非生理学的リガンドがラパマイシンまたはラパマイシン類似体であり、任意で、ラパマイシン類似体がラパログである、態様137の方法。
139. 非生理学的リガンドが、5nM~200nM、5nM~150nM、5nM~100nM、5nM~50nM、5nM~20nM、5nM~10nM、10nM~200nM、10nM~150nM、10nM~100nM、10nM~50nM、10nM~20nM、20nM~200nM、20nM~150nM、20nM~100nM、20nM~50nM、50nM~200nM、50nM~150nM、50nM~100nM、100nM~200nM、100nM~150nM、および150nM~200nMの濃度で接触させられる、態様131~138のいずれかの方法。
140. 非生理学的リガンドが、10nMまたは約10nMの濃度で接触させられる、態様131~138のいずれかの方法。
141. 非生理学的リガンドが、100nMまたは約100nMの濃度で接触させられる、態様131~138のいずれかの方法
142. 態様59~103のいずれかの操作されたCIL、態様129の細胞集団、または態様130の薬学的組成物と癌細胞を接触させる工程を含む、癌細胞を殺傷するまたは癌細胞の増殖を阻害する方法。
143. 対象においてインビボで行われる、態様142の癌細胞を殺傷するまたは癌細胞の増殖を阻害する方法。
144. 態様59~103のいずれかの操作されたCIL、態様129の細胞集団、または態様130の薬学的組成物と、その必要がある対象に投与するための説明書とを含むキット。
145. 非生理学的リガンドを含む容器と、細胞集団の投与後に非生理学的リガンドを対象に投与するための説明書とをさらに含む、態様144のキット。
146. 対象が癌を有する、態様144または145のキット。
147. 非生理学的リガンドが、1mg~100mg、任意で10~100mg、任意で10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mgもしくは約10mg、20mg、25mg、30mg、40mg、50mg、または前述のいずれかの間の任意の値の用量で投与される、態様142~146のいずれかの方法。
【実施例】
【0466】
以下の実施例は、本明細書において記載される組成物および方法がどのように使用され、作製され、評価され得るかの説明を当業者に提供するために提示され、本発明を純粋に例示することを意図しており、本発明と見なされるものの範囲を限定することを意図していない。
【0467】
実施例1:高度に機能的なCD19CAR血液由来NK細胞のRACR拡大増殖
この実施例では、完全に分化した血液由来NK細胞(bdNK)におけるRACR機能が実証される。この実施例ではまた、RACRシグナルがNK細胞拡大増殖を促進することができることが実証される。実験の時系列を
図2Aに示す。
【0468】
RACR系は、第1の二量体化ドメイン(例えば、FKBPまたはFRB)と、膜貫通ドメインと、インターロイキン-2受容体サブユニットガンマ(IL-2RG、SEQ ID NO:1)鎖とを含有する合成ガンマ鎖ポリペプチド、および第2の二量体化ドメイン(例えば、FKBPおよびFRBの他方)と、膜貫通ドメインと、ベータ鎖を有するサイトカイン受容体(例えば、IL-2RB、SEQ ID NO:2)由来の細胞内ドメインとを含有する合成ベータ鎖ポリペプチドから構成される合成サイトカイン受容体である。RACRの例示的な配列は、SEQ ID NO:32に記載のポリヌクレオチドによってコードされる。RACR合成サイトカイン受容体をコードするポリヌクレオチド、ならびにFMC63由来抗原結合ドメインと4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含有する細胞内シグナル伝達ドメインとを含有するCD19指向性CARをコードするポリヌクレオチドとNK細胞を共操作した。
【0469】
-2日目に、Biolegend(登録商標)ヒトNK単離キットを使用して末梢血単核細胞(PBMC)からNK細胞を単離し、10%FBS、Glutamax、Pen-strep、IL-2(1000U/ml)、IL-21(20ng/ml)およびRosuvastatin(登録商標)(5μM)を含有するRPMI培地中で2日間インキュベートした。0日目に、細胞をRPMI培地中で洗浄し、IL-2(1000U/ml)、IL-21(20ng/ml)、BX795(6μM)および硫酸プロタミン(8μg/ml)の存在下、30のMOIでCD19-RACR/VSVGレンチウイルスベクターを形質導入した。3日後、培地を、IL-2(1000U/ml)およびIL-21(20ng/ml)を含有する新鮮なRPMI培地と交換した。5日目に、フローサイトメトリーによって、CD19 CAR発現について細胞を評価した。7日目に、細胞をTC-20細胞カウンター(Biorad(登録商標))を使用して計数し、膜結合IL-21および41BBLを発現する照射された(10,000ラド)K562細胞を用いて、約10フィーダーK562細胞:1 NK細胞の比で刺激した。10日目に、細胞を洗浄し、IL-2(1000U/ml)または様々な濃度のAP21967(5~100nM)(A/C Heterodimerizer-Takara(登録商標))のいずれかを含有する新鮮なRPMI培地に再懸濁した。18日目に、細胞を計数し、CAR発現をフローサイトメトリーによって評価し、10日目と同じ濃度を使用して、IL-2またはAP21967のいずれかを含有するRPMI培地中、10フィーダー細胞:1 NK細胞の比でK562フィーダー細胞を用いて、細胞を再び刺激した。細胞をさらに10日間培養し、計数し、フローサイトメトリーを使用してCAR発現を分析した。
図2Aに見られるように、各群の経時的なCAR発現パーセントを左パネルに示し、経時的な総CAR+NK細胞を右パネルに示す。RACR-NK細胞は、用量応答性AP21967によって促進されるフィーダーベースの拡大増殖を示し、高純度および高収率のRACR-NK細胞をもたらした。
【0470】
図2Bに見られるように、RACR拡大増殖後のNK細胞の活性を決定するために、RACR拡大増殖bdNK細胞と対比してIL-2の免疫表現型検査を行った。上記と同様のプロトコルを使用して、bdNK細胞をPBMCから単離し、K562フィーダー細胞、およびIL-2またはAP21967のいずれかの存在下で形質導入し、拡大増殖させた。形質導入の39日後、CAR発現をフローサイトメトリーによって分析した。IL-2(1000U/ml)またはAP21967(20nM)のいずれかの存在下で拡大増殖させたNK細胞について、CAR発現を上部パネルに示す。CAR+細胞上のCD56およびCD16の発現を下部パネルに示す。RACR拡大増殖NK細胞は、IL-2拡大増殖細胞と同様のCD56 high表現型を示し、CD16 high集団がわずかに減少した(81%対96%)(
図2B)。
【0471】
腫瘍細胞を認識し標的とする能力によって、RACR拡大増殖bdNK細胞と対比してIL-2の機能性を比較することを決定した(
図2C)。NK細胞は、形質転換された癌細胞上に過剰発現される自然ストレスリガンドを介して腫瘍を自然に標的とする。したがって、CD19-CAR-RACR拡大増殖bdNK細胞(AP-20)による腫瘍細胞の自然殺傷およびCAR媒介性殺傷を測定した。NK細胞をPBMCから単離し、形質導入し、AP21967およびK562フィーダー細胞を加えるタイミングをわずかに変化させて、上記と同様のプロトコルを使用して(
図2C-上部パネルの実験時系列)、K562フィーダー細胞およびAP21967(20nM)の存在下で拡大増殖させた。形質導入後31日目のCAR発現を右上パネルに示す。32日目に、腫瘍細胞刺激後の細胞内サイトカイン産生を使用してCAR+NK細胞機能を評価した。96ウェルプレート内の100μlのRPMI培地中、ブレフェルジンA、モネンシンおよび抗CD107の存在下で、1×10
5個のNK細胞を1×10
5個のK562細胞、Nalm6細胞またはNalm6 CD19ノックアウト細胞とともに5時間インキュベートした。CAR+NK細胞を生存CD3-、CD56+および2A+細胞についてゲーティングした。AP21967拡大増殖CAR+細胞(AP-20)または非形質導入対照に関するCD107a発現のレベル(
図2C下部左パネル)およびIFNγ発現のレベル(
図2C下部中央パネル)を示す。AP-20細胞は、IL-2拡大増殖NK細胞対照と同様に、高度に反応性のK562腫瘍株細胞からの自然受容体刺激に応答してCD107aを放出した。Nalm6細胞は、存在する自然刺激リガンドのレベルが低いため、K562細胞よりも低いCD107a分泌を誘導した。次いで、Nalm6細胞を使用して、CD19CAR標的化の機能を試験した。CD19を発現するNalm6細胞は、Nalm6 CD19 KO対照と比較して、CD19-CAR-RACR拡大増殖bdNK細胞(AP-20)からの高レベルのCD107a分泌を誘導し、AP-20 NK細胞における堅牢なCD19-CAR機能が示された。IFNγ放出もまた、CD19 KO対照と比較してCD19-Nalm6細胞に応答して増加し、AP-20拡大増殖NK細胞のCAR活性がさらに実証された。
【0472】
自然受容体およびCAR受容体の標的化の両方を介した腫瘍細胞の直接クリアランスを測定した。フローサイトメトリーに基づく殺傷アッセイを使用して、AP-20 CAR+NK細胞機能を評価した。標的Nalm6細胞または標的Nalm6-CD19ノックアウト細胞を、PBS中、0.5mM、37℃で20分間、Cell Trace Violetによって標識し、次いで、洗浄した。5×10
4個の標的細胞を96ウェルプレートに加え、NKエフェクター細胞を様々なエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比で総体積100μlで加えた。5時間後、5×10
4個のカウントビーズを正規化因子として各ウェルに加えた。細胞とビーズとの混合物を洗浄し、生存CD56-、Cell Trace Violet+細胞を分析した。各ウェル内の生存Cell trace violet+細胞の総数を非エフェクター対照ウェルと比較することによって、死滅%を計算した(
図2C下部右パネル)。AP-20 bdNK細胞は、細胞傷害性または機能の喪失を示さないIL-2拡大増殖非形質導入bdNK細胞と同様に、自然受容体標的化を介してNalm6細胞を認識し殺傷することができた。非形質導入対照またはCD19ノックアウト細胞と比較して、AP-20細胞ではCD19発現Nalm6細胞の殺傷の増加が観察され、自然殺傷およびCAR媒介性殺傷の両方による腫瘍の標的化の相乗的増加が示された。
【0473】
実施例2:iPSC由来CIL細胞の生成
未分化ヒトiPSCを、mTeSR Plus培地(STEMCELL(登録商標)Technologies)中、hESC-qualified Matrigel(Corning(登録商標))上で培養し、EDTA(Thermo Fisher Scientific(登録商標))を使用して継代した。製造業者の指示に従ってSTEMdiff NK Cell Kit(STEMCELL(登録商標)Technologies)を使用して、iPSCをCIL細胞に分化させた。要約すると、0日目に、未分化iPSCの単一細胞懸濁液をマイクロウェルに播種して(500細胞/マイクロウェル)、EB Supplement A(0~3日目)、次いで、EB Supplement B(3~12日目)を補充したSTEMdiff Hematopoietic-EB Basal Medium中で胚様体(EB)を生成した。5日目に、EBをマイクロウェルから採取し、非組織培養処理プレートに再播種した。12日目に、EBを採取し、単一細胞懸濁液に解離させ、EasySep Human CD34 Positive Selection Kit II(STEMCELL(登録商標)Technologies)を使用してCD34+細胞を選択し、フローサイトメトリーを使用して分析した。代表的なiPSC株であるATCC-BXS0114(ACS-1028)(ATCC)を使用して、例示的な選択(
図3B)およびフローサイトメトリー分析(
図3C)を示す。CD34+選択プロセスは、CD34+細胞の培養物を顕著に濃縮した。選択した細胞を、StemSpan(登録商標)Lymphoid Progenitor Differentiation Coatingによってコーティングした非組織培養処理プレートに再播種し、StemSpan(登録商標)Lymphoid Progenitor Expansion Supplement(12~26日目)を補充したStemSpan(登録商標)SFEM II培地を用いて培養した。15~19日目に、細胞を採取し、新たにコーティングしたプレートに再播種した。26日目に、リンパ球系前駆細胞を採取し、フローサイトメトリーを使用して分析した(
図3Dおよび
図3E)。この時点での細胞は主に白血球(CD45+)であることが見出され、この集団は、両前駆体(CD45+/CD5-/CD7+)およびCIL細胞(CD45+/CD5-/CD7+/CD56+)の比較的小さな集団を含有していた。細胞を組織培養処理した非コーティングプレートに再播種し、StemSpan(登録商標)Cell Differentiation SupplementおよびUM729(1μM)(26~40日目)を補充したStemSpan(登録商標)SFEM II培地を用いて培養した。40日目に、さらなる試験のためにCIL細胞を採取した。
【0474】
図3Fおよび
図3Gに見られるように、40日目に、iCIL細胞を採取し、以下の抗体を使用してフローサイトメトリーによって免疫表現型検査した:CD16 BUV496(368)、CD3 BUV661(UCHT1)、CD56 BV421(HCD56)、CD45 BV510(2D1)、CD5 BV605(L17F12)、NKG2D-BV785(1D11)、NKp30-BB700(p30-15)、CD7-PE(CD7-6B7)、NKp46-PECy7(9E2)、CD127-AF700(A019D5)、KIR-APCFire750(HP-MA4)。iCIL細胞を収集し、ペレット化し、ZombieUVに再懸濁し、PBSで希釈し、10分間染色した。次いで、細胞を、抗体を含有するBD FACs緩衝液に再懸濁し、4℃で20分間染色した。次いで、Beckman Coulter CytoFLEX LXフローサイトメーターを用いて細胞を処理した。BD FlowJo V10.8を使用して、得られたFCSファイルを分析した。CD45+細胞の割合を%白血球としてプロットし、CD56+細胞を%CIL細胞としてプロットする(
図3F)。
【0475】
得られたCIL細胞は、>90%のCIL純度を示した(
図3G左パネル、「BXS」)。CIL細胞は、主にCD56
brightであり、CD16発現は低かった(
図3F右パネル)。多くの活性化マーカーにわたって、iCIL細胞は血液由来NK細胞と同様の表現型を有することが分かった(
図3G左パネル、「BXS」)。CD16を発現する細胞の割合は、iCILと血液由来NK集団との間で同程度であった(
図3G左パネル、「BXS」)。ただし、血液由来NK細胞の方が、さらに未成熟かつ阻害性の表現型を示す多量のIL-7RBを発現するのに対して、40日目のiCIL細胞の方が、多量の活性化受容体NKp30およびNKp46を発現する。これらのマーカーはまた、iCIL細胞に関して細胞傷害能の増加を示唆している(
図3G左パネル、「BXS」)。
【0476】
形質転換細胞内で増加する自然ストレスリガンドの認識を介して腫瘍細胞を認識し、標的とする能力によって、iCILの機能性を評価した。cRPMI+IL-2(RPMI+10%FBS+1×Glutamax+1×P/S+100IUヒトIL-2)中、様々なエフェクター標的比(E:T比)で、K562-mCherry標的細胞とiCIL細胞を共培養した(
図3G右パネル)。細胞を37℃で4時間共培養し、続いて、CD56-BV421について抗体染色を行った。Precision Counting Beads:CIL共培養では#CD56-mCherry+標的細胞/#CD56-mCherry+標的細胞単独×100を使用して、溶解%を計算した。iCIL細胞は、iCIL細胞調製物にわたって高い再現性でK562腫瘍細胞を標的とし、クリアランスすることができ、堅牢な機能性を示した(
図3G右パネル)。
【0477】
以下の実施例は、上記のiPSC由来CIL細胞(iCIL細胞)を生成し、次いで、合成サイトカイン受容体、IL-2型ラパマイシン活性化細胞サイトカイン受容体(RACR2)を使用して操作して、外因性サイトカインによってこれらの細胞の拡大増殖を促進したことをさらに記載する。プロセスの図は、
図1Aおよび
図1Bに見出すことができる。
【0478】
実施例3:リンパ球系前駆体およびリンパ球系前駆細胞からのRACR-iCIL細胞の分化
iPSC由来CIL細胞(iCIL細胞)への分化のためにRACR系を利用した。実験の時系列を
図4Aに示す。上記の実施例2に記載されるように、26日目の時点まで、STEMdiff NK細胞キット(STEMCELL(登録商標)Technologies、#100-0170)によって、iPSC細胞株ATCC-BXS0117(ATCC #ACS-1031)をリンパ球系前駆体に分化させた。
図3Dでは、共通リンパ球系前駆体(CD45+/CD5+/CD7+)、CIL前駆体(CD45+/CD5-/CD7+)および初期CIL細胞(CD45+/CD5-/CD7+/CD56+)を含有する細胞の割合が見られ、細胞の約50%がCIL前駆体として現れ、全細胞の約25%が初期CIL細胞として現れている。この試験では、26日目の細胞をペレット化し、(完全RPMI培地:RPMI1640中のIL-2、IL-15、IL-21、IL-18、IL-7、10%FBS、1×Pen-Strep、および1×Glutamax)を含有するCIL拡大増殖培地に2×10
6細胞/mLで入れた。活性化ビーズ(#130-094-483)を2:1の比で細胞に加え、細胞を37℃のインキュベーターに一晩入れて、細胞の形質導入を増加させた。
【0479】
実施例1に記載されるようなRACR合成サイトカインをコードするポリヌクレオチドと、タグ(抗FITC)CAR(SEQ ID NO:13)と、操作された細胞内で拡散可能な可溶性タンパク質としてFRBを発現させるためのFRBドメインとを細胞を用いて操作し、切断可能なリンカーによって成分を分離した。ポリヌクレオチド構築物ペイロードをTag(抗FITC)CAR-P2A-FRB-P2A-RACRと命名する。27日目に、10μg/mLの硫酸プロタミンを用いて、MOI 10でTag(抗FITC)CAR-P2A-FRB-P2A-RACRのペイロードを有するVSV-Gレンチウイルスを細胞に形質導入するか、または10μg/mLもしくは硫酸プロタミン単独(モック)を用いて細胞を処理した。翌日、50%培地交換を行い、IL-2、IL-7およびIL-21を補充したcRPMI1640培地を細胞に与えた。34日目に、培地を除去し、CIL拡大増殖培地を補充したcRPMI1640培地にモック細胞を入れ、次いで、AP21967(A/C Heterodimerizer-Takara)を100nMで補充したcRPMI1640培地に、RACRを形質導入した細胞を入れて、RACRシグナル伝達を行った。その後、50%の培地交換を2×培地で毎週行った。細胞のアリコートを毎週収集し、Vicell Blu自動細胞カウンターを用いて計数し、FITC-AF647によってCD16クローン3G8、CD56クローンHCD56、CD45クローン2D1、CD5クローンL17F12、CD7クローンCD7-6B7、および抗FITC CAR(TagCAR)検出について染色した。
【0480】
ラパログ処理に応答して、RACR-iCIL細胞は、FITC-AF647陽性%の増加によって示されるように、TagCAR-RACR iCIL細胞の純度の増加と、TagCAR陽性細胞の総数によって示されるように、TagCAR-RACR iCIL細胞の拡大増殖(
図4B)と、
図4Cに示されるように、経時的なCD56陽性細胞の割合の増加によって示されるように、堅牢なiCIL細胞分化とを示した。このデータは、ラパログAP21967およびRACR系が、他のサイトカインシグナル伝達の非存在下でiCIL拡大増殖を促進するのに十分であることを実証している。追加のiPSC株(NH5 NIH iPSC細胞株)についても同様のプロセスに従ったところ、
図4Dに見られる結果は非常に類似していた。
【0481】
実施例4: 26日目に生成されたRACR-iCIL細胞は、サイトカイン生成iCIL細胞と同様の表現型および細胞傷害性を示す
図5Aに示すように、表現型マーカーCD7、CD5、CD45、CD56、NKG2D、NKp30、NKp46およびCD16について、RACR拡大増殖細胞および染色細胞に対して機能アッセイを行った。47日目に、実施例3に記載されるように生成したIL-2/IL-7/IL-21モックiCIL細胞およびRACR拡大増殖iCIL細胞を収集およびペレット化し、PBSで希釈したZombieUVに再懸濁し、10分間染色した。次いで、細胞を、抗体を含有するBD FACs緩衝液に再懸濁し、4℃で20分間染色した。次いで、細胞をBD FACs緩衝液2×中で洗浄し、Cytoflexフローサイトメーターを用いて分析した。
【0482】
RACR拡大増殖iCIL細胞は、サイトカイン拡大増殖モック細胞と同様の表現型を示し、CD56、NKp30、NKp46およびNKG2Dの高い発現を伴った(
図5A)。BXS細胞よりも低いCD16発現を示すNH5細胞株では、iPSC株の差が観察された。このデータは、RACR-iCIL細胞が、サイトカイン拡大増殖細胞と比較して、RACR拡大増殖による活性化受容体の減少を伴わずに高度に活性化された表現型を有することを実証している。
【0483】
MDA乳房腫瘍細胞株に対して、RACR拡大増殖細胞の細胞傷害性を試験した。モック拡大増殖細胞またはRACR拡大増殖iCIL細胞をMDA-mCherry細胞と24時間混合し、次いで、プレートを洗浄した後、Opera Phenix(登録商標)顕微鏡を用いて撮像した(
図5B)。Opera Phenix(登録商標)分析ツールを使用して、1ウェル当たりの総mCherryシグナルを計算した。グラフを非iCIL細胞ウェルに対して正規化して、殺傷された細胞の%を生成する。RACR拡大増殖細胞は、モックサイトカイン拡大増殖細胞と同等の毒性を示し、それらの高度に活性化された表現型および機能がさらに実証された(
図5B)。
【0484】
実施例5:RACR-iCIL細胞の拡大増殖
RACRがiCIL細胞の拡大増殖を促進する能力を検討するために、40日目に、分化後のiCIL細胞の形質導入および拡大増殖を調査した。実施例2に記載されるように、iCIL細胞を生成した。実験の時系列を
図6Aに示す。この実験では、実施例1に記載されるようなRACR合成サイトカインをコードするポリヌクレオチドと、操作された細胞内で拡散可能な可溶性タンパク質としてFRBを発現させるためのFRBドメインと、mCherry蛍光タンパク質とを用いて細胞を操作した。ポリヌクレオチド構築物ペイロードをRACR-FRB-mCherryと命名する。以下に記載するいくつかの実験では、構築物内のmCherryをTagCAR(例えば、SEQ ID NO:13)によって置換した。
【0485】
活性化ビーズ(#130-094-483)を2:1の比でCIL細胞に加え、細胞を37℃のインキュベーターに一晩入れて、細胞の形質導入を増加させた。42日目に、10μg/mLの硫酸プロタミンを用いて、MOI 10でRACR-FRB-mCherryのペイロードを有するVSV-Gレンチウイルスを細胞に形質導入するか、または10μg/mLの硫酸プロタミン単独(モック)を用いて細胞を処理した(
図6B)。翌日、50%培地交換を行い、完全RPMI培地:RPMI1640中のIL-2、IL-15、IL-21、IL-18、IL-7、10%FBS、1×Pen-Strep、および1×Glutamaxを含有するCIL拡大増殖培地を細胞に与えた。45日目に、培地を除去し、CIL拡大増殖培地を補充したcRPMI1640培地にモック細胞を入れ、次いで、AP21967(A/C Heterodimerizer-Takara(登録商標))を100nMで補充したcRPMI1640培地に、RACRを形質導入した細胞を入れて、RACRシグナル伝達を行った。50%培地交換を、それぞれ2×培地で毎週行った。細胞のアリコートを毎週収集し、Vicell Blu自動細胞カウンターを用いて計数し、CD56クローンHCD56について染色し、RACR-FRB陽性細胞をmCherryによって検出した(
図6C)。
【0486】
RACR-iCIL細胞は、AP21967拡大増殖によってそれらの純度および収率の両方を増加させた(
図6Bおよび
図6C)。上記と同様に調査した細胞を用いて実験を繰り返したが、TagCAR-RACR-FRB(206)およびFRB-RACR-TagCAR(205)を含有する異なるウイルス構築物が観察された(
図6Dおよび
図6E)。
【0487】
別の実験では、-1日目に、以前に単離した血液由来NK細胞を解凍し、10%FBS、Glutamax、Pen-strep、IL-2(100U/ml)を含有するRPMI培地に入れた。0日目に、細胞をRPMI培地中で洗浄し、IL-2(100U/ml)および硫酸プロタミン(8ug/ml)の存在下、20のMOIでCD19-RACR/VSVGレンチウイルスベクターを形質導入した。3つのRACR構築物、すなわち、RACR21(IL-2RG/IL-21RB)、RACR2(IL-2RG/IL-2RB)およびRACR7(IL-2RG/IL-7RB)を形質導入した。したがって、RACR構築物は、RACR2のIL-2RBがIL-21RB(RACR21;例えば、SEQ ID NO:4)またはIL-7RB(RACR7;例えば、SEQ ID NO:3))のいずれかに由来する細胞内ドメインによって置換されるように特定のベータ鎖が異なることを除いて、IL-2RB由来のベータ鎖をコードする、実施例1に記載の構築物と同様であった。3日後、培地を、IL-2(100U/ml)を含有する新鮮なRPMI培地と交換した。5日目に、フローサイトメトリーによって、CD19 CAR発現について血液由来NK細胞を評価した。7日目に、Vi-Cell(登録商標)細胞カウンター(Beckman)を使用して細胞を計数し、2つの等しい群に分けた。これらの2つの群は、各RACR形質導入構築物について異なる拡大増殖条件を表した。2つの群は、100U/mLのIL2、およびラパマイシンであった。次に、拡大増殖添加剤を培養物に加えた後、約2フィーダー細胞:1 NK細胞の比で、膜結合IL-21および41BBLを発現する照射された(10,000ラド)K562フィーダー細胞を用いて血液由来NK細胞を刺激した。10日目に、形質導入された細胞に対して半体積の培地交換を行い、2×IL-2(100U/ml)または2×ラパマイシンのいずれかを含有する新鮮なRPMI培地に、形質導入された細胞を再懸濁した。10日目から開始して、照射されたフィーダー細胞を用いて細胞を毎週刺激し、必要に応じて半体積の培地交換を行った。
【0488】
細胞計数およびRACR-CAR発現分析を毎週行った。CD19 FMC63(FITC)、IL7Ra(APC700)、CD56(BV421)、CD25(V660)、CD16(NUV525)およびZombie UV(NUV450)を含む混合物によって細胞を染色した。
図10に見られるように、ラパマイシンを用いて処理したRACR2が最も高いRACR拡大増殖を支持し、ラパマイシンを用いて処理したRACR7およびRACR21の両方が、それよりも低い程度までRACR拡大増殖を支持した。ただし、RACR構築物を形質導入し、ラパマイシンを用いて処理した3つの細胞培養物はいずれも、RACR構築物を形質導入し、IL-2を用いて処理した3つの細胞培養物と比較して、顕著に高い拡大増殖を示した(
図10)。
【0489】
実施例6:RACR-iCIL細胞の機能
IL-2中で拡大増殖させたiCIL細胞と比較して、40日目の拡大増殖させたRACR-iCIL細胞の機能性を検討するために、免疫表現型検査と、拡大増殖後のCD107a活性アッセイとを行った。実施例5に示すのと同じプロセスを用いて40日目のiCIL細胞を生成し、これらの細胞にTagCAR-RACR-FRB(206)を形質導入した。60日目まで、RACR-iCIL細胞を100nM AP21967中で拡大増殖させ、モックiCIL細胞を100IU/mL huIL-2中で拡大増殖させ、次いで、機能アッセイのために採取した。細胞をCD16、CD56、NKp46、NKp30、NKG2A、NKG2D、CD3、CD5およびCD57について染色し、フローサイトメトリー染色を上記のように行った。
【0490】
60日目のRACR拡大増殖iCIL細胞は高レベルのTagCARを発現し、これらの細胞は、CD56およびCD16の高発現を伴うIL-2拡大増殖モック細胞と同様の表現型を示した(
図7A)。RACR拡大増殖TagCAR iCIL細胞は、IL-2拡大増殖モックiCIL細胞よりも高レベルのNKp46およびNKp30を発現し、細胞傷害性が増大した表現型が示唆された(
図7B)。NKG2A、NKG2DおよびCD57の発現は、RACR-iCIL細胞とIL-2拡大増殖対照細胞との間で変化しなかった。
【0491】
抗原曝露に応答してCD107aを分泌するRACR-TagCAR発現細胞の能力を評価した。37℃で1時間かけて、5、0.5および0.05μg/mLのPBS中のTagCAR抗原を96プレートにコーティングした。プレートを洗浄し、次いで、cRPMI培地中の抗CD107a PEの存在下で、RACR-iCIL細胞およびIL-2モックiCIL細胞をウェルに加えた。細胞を1×モネシン(monesin)とともに4時間インキュベートし、続いて、CD56についてフローサイトメトリー染色を行った。細胞をペレット化し、BD FACs洗浄で洗浄し、次いで、Cytoflexフローサイトメーターを用いて収集した。RACR拡大増殖TagCAR iCIL細胞は、抗原に応答して堅牢なCD107a分泌を示し、RACR拡大増殖細胞の高い細胞傷害性が示された(
図7C)。
【0492】
これらのデータは、iCILの分化およびフィーダーフリー拡大増殖の過程にわたって、iCILの約3000倍の増加が観察されたことを示す(
図11)。合成受容体はIL-2またはIL-15と同様のシグナルを誘導するため、iCILは選択的な増殖上の利点を有し、高純度のiCIL集団をもたらす(
図3G、左パネル;
図4Bおよび
図7A)。iCILは、腫瘍標的細胞に対する細胞傷害活性を含む多機能特性を呈する(
図3G右パネルおよび
図11)。ラパログAP21967を用いて拡大増殖するように誘導されたiCILは、自然活性化受容体およびキメラ抗原受容体標的化の相乗的活性によって媒介される、IFNγおよびTNF-αの分泌も呈した(
図7B)。
【0493】
実施例7:共通ガンマ鎖サイトカインを置換するためのRACRシグナル伝達
CLPからCIL細胞への分化中に共通ガンマ鎖サイトカインを置換するRACRシグナル伝達の能力を検討するために、分化培地への曝露前の26日目にCLP細胞を形質導入した。CLPからCILへの移行は、分化因子SCF、FLT3LおよびUM729を有する共通ガンマ鎖サイトカインIL-7およびIL-15を一般に必要とする。実験の時系列を
図9に示す。
【0494】
上記のように、26日目の時点まで、STEMdiff(登録商標)細胞キット(STEMCELL Technologies、#100-0170)によって、iPSC株WTC11をリンパ球系前駆体に分化させた。共通リンパ球系前駆体(CD45+/CD7+)を含有する割合は、この調製物では49.4%であり、CD56を発現する細胞はごくわずかであった(約10%)(
図12A)。StemSpan(登録商標)Lymphoid Progenitor Expansion Supplementを補充したStemSpan(登録商標)SFEM II培地を使用して、50%培地交換を行った。次いで、26日目の細胞に、MOI 10で、実施例3に記載されるTagCAR-P2A-FRB-P2A-RACRのペイロードを有するVSV-Gレンチウイルスを形質導入し、10ug/mLの硫酸プロタミンを用いて処理するか、または形質導入せずに10ug/mLの硫酸プロタミン単独を用いて処理した(モック)。
【0495】
29日目に、前駆体の形質導入を測定したところ、CD45+細胞の約8%が構築物を含有することが分かった(
図12B)。CD56+細胞集団では形質導入は検出されなかった(
図12B)。
【0496】
CD45+細胞を収集し、4つの条件に再播種して、形質導入されたCLPからCIL細胞への分化を誘導した。4つの培養条件を調査した:(1)StemSpan(登録商標)SFEM II培地にSCF、FLT3L、IL7、IL15およびUM729を補充した(Full Mix);(2)StemSpan(登録商標)SFEM II培地にSCF、FLT3LおよびUM729を補充した(SCF/FLT3L);(3)StemSpan(登録商標)SFEM II培地にIL7、IL15およびUM729を補充した(IL7/IL15);ならびに(4)UM729のみ(なし)を含むStemSpan(登録商標)SFEM II培地。次いで、4nM AP21967を用いた(ラパログ)または用いない(0nMラパログ)2つの処理集団に細胞をさらに分割した。細胞をCARの発現についてモニタリングし、結果を
図13A~
図13Dに示した。AP21697のみ(なし)を伴う条件では、RACR-CAR+細胞の最大の倍率変化が観察され、細胞増殖に関してRACRシグナルに対する細胞の依存性が実証された(
図13Bおよび
図13D)。
【0497】
33日目に、50%ウェル体積の同じ培地を加え、次いで、34日目に50%培地交換を行った。40日目に、細胞のアリコートを収集し、FITC-AF647によってCD16クローン3G8、CD56クローンHCD56、CD45クローン2D1、CD5クローンL17F12、CD7クローンCD7-6B7、およびTagCAR検出によって染色して、CIL細胞分化およびTagCAR発現を分析した(
図14A)。AP21967(ラパログ)に応答したRACR-CAR+CD56+細胞の割合の増加がいずれの条件でも観察され、IL7/IL15を欠く条件で最も高い割合の増加が観察され、これは、それらの条件では、RACRが共通ガンマ鎖シグナルおよびRACR-CAR+細胞拡大増殖をもたらしたためである(
図14A)。いずれのRACR-CAR+細胞もCD45+であることが観察された。サイトカインを含有しない培地中で増殖させた細胞では、サイトカイン曝露細胞よりも低いレベルのCD7およびCD56が観察された(
図14A)。26日目に分析した前駆細胞は、40日目に分析した、Full Mixに曝露した細胞よりも低いレベルのCD56を示した(
図14B)。このデータは、ラパログAP21967およびRACR系が、共通リンパ球系前駆体からのiCIL分化中に共通ガンマ鎖サイトカインIL-7およびIL-15を置換し得ることを実証している。
【0498】
合成サイトカイン受容体系は、製造環境では免疫エフェクター細胞を生成するためにエクスビボで使用され得、インビボで、操作された細胞の選択的拡大増殖および生存を可能にする可能性を有する。これらのデータは、開示される方法および関連する組成物が、癌治療として顕著な能力を有する自然免疫エフェクター細胞を産生する可能性を実証している。この手法は、製造プロセスの制御と製品の一定性とを改善するほか、iPSCに基づく同種異系細胞療法の製造の複雑さを低減する可能性を有する。様々なタイプの合成受容体を合理的に設計および展開することにより、開示される方法および関連する組成物は、血液学的状況および固形腫瘍状況における治療適用のための免疫エフェクター細胞の産生に適している。
【0499】
実施例8:インビボ抗腫瘍活性
本開示の操作されたCIL細胞は、インビボでのiCIL細胞の抗腫瘍活性を評価するために、NSG MHCノックアウトマウスを対象として検討される。このヒト化マウスモデルは、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ株を保有する免疫不全NOD scidガンママウスである。異種移植腫瘍モデルを確立するために、腫瘍をマウスの腹腔内または皮下に注射する。その後、RACR-iCILを腹腔内または静脈内のいずれかに注射する。異種移植腫瘍に対するRACR-iCILの効果を分析するために、生物発光イメージング(BLI)によって経時的に腫瘍サイズを測定する。
【0500】
実施例9:RACR操作NKおよびCAR操作NKの生成、ならびに細胞傷害性殺傷活性の評価
NK細胞株(NK92)に、遊離FKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ならびにRACR(SEQ ID NO:32)および抗FITC CAR(TagCAR)を含有するレンチウイルスベクターを形質導入した。TagCARをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:13に記載されており、SEQ ID NO:14に記載のアミノ酸配列をコードする;それにおいて、CD8aシグナルペプチドのアミノ酸
は、細胞によって発現された際に除去される(例えば、公開されたPCT出願番号WO2019144095も参照)。
【0501】
細胞を100nMラパマイシンまたは100IU/mLのIL-2中で数ヶ月間拡大増殖させて、RACR+細胞を濃縮した。次いで、培地のみ(非刺激NK)、IL-2およびIL-15を補充した培地(サイトカイン刺激NK)、または100nMラパマイシンを補充した培地(RACR刺激NK)の存在下、T:E比10:1で、核蛍光タンパク質を発現する様々な固形ヒト腫瘍細胞とともにRACR-NK細胞をインキュベートした。
【0502】
RACR-NK細胞および腫瘍細胞をIncuCyte蛍光顕微鏡に入れ、最大150時間にわたる共培養中に2時間ごとに撮像した。腫瘍細胞の数を蛍光マーカーによって経時的に定量し、時間0と比較した腫瘍細胞の比としてグラフ化した(時間0は1に等しい)。共培養の約40時間、約50時間または約100時間の時点で、RACR-NK細胞を収集し、新鮮な培地に入れ、次いで、再負荷のために腫瘍細胞に再曝露した。RACR-NK細胞は、膀胱、ヘム、結腸、乳房、卵巣および子宮の固形腫瘍株を含む様々な固形腫瘍株の機能的殺傷を呈した。卵巣癌(
図15A)、膀胱癌細胞株(
図15B)および乳腺癌細胞株(
図15C)について、細胞傷害性殺傷に関する例示的な結果が示されている。特に再負荷後の腫瘍細胞殺傷の程度は、サイトカイン刺激NK細胞または非刺激NK細胞よりもRACR刺激NK細胞では実質的に大きかった。具体的には、腫瘍への最初の曝露時に、刺激にかかわらず全RACR-NK細胞がクリアランスされたが、腫瘍負荷を繰り返すと、ラパマイシンを介したRACR刺激は、はるかに高いレベルの殺傷を支持した。
【0503】
NK細胞増殖も共培養中に経時的にモニタリングした。膀胱癌細胞株の腫瘍殺傷中のNK細胞の拡大増殖を追跡すると、RACR刺激NK細胞が最大の増殖を呈し(
図15D)、これは、RACR刺激NK細胞が腫瘍細胞を連続的に殺傷する能力の増加に寄与し得ることが示された。
【0504】
RACR-NK細胞、標的細胞によって発現されるCARの活性を評価するために、腫瘍殺傷アッセイを行った。
図16Aに示すように、ラパマイシンを用いて刺激したRACR-NK細胞は、CAR抗原の非存在下(「CAR抗原なし」)であっても腫瘍細胞殺傷を呈した。殺傷活性は、腫瘍細胞上に発現したフォレート受容体に結合したフォレート-フルオレセインの存在下で実質的に増加し、活性のレベルは抗原発現と相関した(中程度、「中程度のCAR抗原発現」;または高、「高いCAR抗原発現。)(
図16A)。
【0505】
細胞殺傷の代替として、NK細胞機能活性の脱顆粒マーカーであるマーカーCD107aによってもNK細胞の機能活性をモニタリングすることができる。次いで、非刺激NK細胞またはCAR-RACR-NK細胞とともにCAR抗原発現標的細胞を培養した。
図16Bに示すように、CD107aの程度はCAR抗原のレベルと直接相関し、CAR-RACR-NK細胞のCAR特異的機能活性が示された。
【0506】
NK細胞増殖も共培養中に経時的にモニタリングした。標的細胞の腫瘍殺傷中のNK細胞の拡大増殖を追跡すると、CAR標的化がRACR-NK増殖をさらに増加させることが示され、RACRおよびCAR活性化が、相乗的に作用してRACR-NK増殖およびCAR媒介性標的化を増加させることができることが示唆された(
図16C)。
【0507】
実施例10:CAR-RACR-iCILは潜在的および特異的なCAR促進腫瘍殺傷および自然腫瘍殺傷を示す
マウスモデルを対象として、インビボでRACR刺激に応答する能力、および腫瘍を制御する能力について、実施例9に記載されるように生成したRACR-TagCAR-NK細胞を試験した(
図17A)。5日目に、5×10
6個のMDA-MB231 mCherry-FFLUC乳癌細胞をNSG-マウスの腹腔内領域に注射した。-1日目に、マウスに100nMフォレート-フルオレセインを注射して(フォレート-FITC;週2回SC注射)、フォレート受容体を介して腫瘍細胞をタグ付けした。マウスを腫瘍サイズについてランダム化し、0日目に、20×10
6個のRACR-TagCAR-NK細胞を腹腔内領域に注射し、マウスに刺激を与えないか、huIL-2+huIL-15(週3回IP注射)またはラパマイシン(週3回IP注射)のいずれかを与えた。腫瘍を生物発光イメージング(BLI)によって毎週撮像して、腫瘍の進行をモニタリングした。
【0508】
RACR-TagCAR-NK細胞を用いて処置したマウス以外の全対照マウスは、ラパマイシン投与にかかわらず、BLIイメージングによって示されるように急速な腫瘍増殖を有した(
図17Bに示す発光の定量、および
図17Cに示す生画像)。RACR-TagCAR-NK細胞を投与した群では腫瘍増殖が減少し、マウスの血液中および腹膜内で検出されたRACR-NK細胞が増加し(
図17Dおよび
図17E)、これにより、NK細胞が腫瘍を標的とする能力が示された。ただし、RACR-TagCAR-NK注射後7日目までに、ラパマイシン処置群は、非刺激群またはサイトカイン刺激群と比較して改善された腫瘍制御を示し始めた。このデータは、サイトカイン刺激の「ベストインクラス」と比較しても、インビボでの腫瘍殺傷を支持するRACR刺激の優れた能力を実証している。
【0509】
実施例11:RACR-iCILは早期かつ強力な腫瘍殺傷を実証する
実施例9で生成したRACR-iCILを使用して、インビトロ(
図18)およびインビボ(
図19Aおよび
図19B)でRACR-iCIL腫瘍殺傷能力を決定した。RACR-iCILを乳腺癌細胞株MDA-MB-231と共培養することによって、インビトロでの腫瘍殺傷を決定した。RACR-iCILを5:1の比でMDA-MB-231細胞と共培養し、未処理のままにしたか、サイトカインを用いて処理したか、またはラパログを用いて処理した。RACR-iCILのラパログ活性化およびサイトカイン活性化は、未処理RACR-iCILと比較して腫瘍殺傷を増強した(
図18)。
【0510】
マウスモデルを対象として、インビボでの腫瘍殺傷を決定した。実験の時系列を(
図19A)に示す。-5日目に、5×10
6個のMDA-MB-231 mCherry-FFLUC乳癌細胞をNSG MHC I/II DKOマウスの腹腔内領域に注射した。
【0511】
-1日目から開始して、マウスを週1回撮像し、実験終了までそれらの血液を週1回採取した。マウスを腫瘍サイズについてランダム化し、0日目に、40×106個のRACR-iCIL細胞を腹腔内領域に注射し、マウスに刺激を与えないか、IL-2/IL-15/IL-15Ra(週3回IP注射)またはラパマイシン(週3回IP注射)のいずれかを与えた。対照マウスには、MDA-MB-231細胞単独、MDA-MB-231細胞およびラパマイシン、またはMDA-MB-231細胞およびiCILのいずれかを投与した。腫瘍を生物発光イメージング(BLI)によって毎週撮像して、腫瘍の進行をモニタリングした。
【0512】
RACR-iCIL細胞を用いて処置したマウス以外の全対照マウスは、BLIイメージングによって示されるように、6日目までに急速な腫瘍増殖を有した(
図19Bの左から1番目および2番目のパネル)。RACR-iCILのみを投与したマウスでは腫瘍増殖が減少し(
図19Bの3番目のパネル)、これは、IL-2/IL-15/IL-15Ra、またはラパマイシンの投与により6日目にさらに減少した(
図19Bの4番目および5番目のパネル)。ただし、20日間にわたって、ラパマイシンの投与により腫瘍増殖の最大の減少が達成された。このデータは、インビボでの早期腫瘍殺傷を支持するRACR-iCIL刺激の優れた能力を実証している。このデータはまた、サイトカイン刺激の「ベストインクラス」と比較しても、インビボでの腫瘍殺傷を支持するRACR-iCIL刺激の優れた能力を実証している。
【0513】
別個の実験では、マウスモデルを対象としてインビボでの腫瘍殺傷を決定し、実験の初日および27日目にマウスに2回の別個の用量のRACR-iCILを投与した(
図19C)。RACR-iCIL細胞を用いて処置したマウス以外の全対照マウスは、BLIイメージングによって示されるように、6日目までに急速な腫瘍増殖を有した(
図19Dの左から1番目および2番目のパネル)。6日目にRACR-iCILのみを投与したマウスでは腫瘍増殖が減少し(
図19Dの3番目のパネル)、これは、IL-2/IL-15/IL-15Ra、またはラパマイシンの投与により6日目にさらに減少した(
図19Dの4番目および5番目のパネル)。ただし、41日間にわたって、ラパマイシンの投与により腫瘍増殖の最大の減少が達成された。さらに、RACR-iCILおよびラパマイシンを投与したマウスは、70日目に100%の生存率を有した(
図19E)。このデータは、インビボでの早期腫瘍殺傷を支持するRACR-iCIL刺激の優れた能力を実証している。このデータはまた、サイトカイン刺激の「ベストインクラス」と比較しても、インビボでの腫瘍殺傷を支持するRACR-iCIL刺激の優れた能力を実証している。
【0514】
実施例12:
この実施例は、RACR系が
の拡大増殖を促進する能力を実証する。0日目に、最初のインビトロ拡大増殖のために、RPMI1640と、10%FBSと、1×Pen-Strepと、1×Glutamaxとを含有する完全RPMI(cRPMI)培地中で、5μM ZometaおよびIL-2(500IU/mL)とともに37℃のインキュベーター内で末梢血単核細胞(PBMC)を培養した。5日目に、細胞をcRPMI中で洗浄し、RACR-FRB-mCherryを含有するレンチウイルスを細胞に形質導入した(実施例5に記載;IL-2(500IU/mL)の存在下、10のMOIで。500IU/mLのIL-2を含有するcRPMI培地中で2~3日ごとに細胞を分割した。アリコートを収集し、9日目にフローサイトメトリーを介してmCherryによって細胞の初期形質導入を評価した。
【0515】
次いで、IL-2(500IU/mL)、ラパマイシン(10nM)またはAP21967(A/C Heterodimerizer-Takara(登録商標)、10nM)のいずれかを含む新鮮なcRPMIを含有するウェル内で
を培養して、さらに5日間かけてRACRシグナル伝達を開始させた。14日目に、細胞のアリコートを回収し、洗浄し、
について染色し、RACR形質導入をmCherryによって測定した。フローサイトメトリーを介して
およびmCherryの検出によって、
のパーセントと、ならびにカウントビーズによって測定した形質導入
の数とを評価した。同様に、21日目に、フローサイトメトリーを介して
のパーセントおよび数について、細胞のアリコートを再度測定した。
【0516】
RACRを形質導入した細胞では、ラパマイシンまたはAP21967のいずれかと培養した場合に、14および21日目に、
の細胞の割合および総数の両方が増加した(
図20A~D)。対照的に、RACRを形質導入し、IL-2を用いて処理した細胞培養物では、14日目と比較して21日目に、形質導入された
の総数が少なかった(
図20A~D)。
【0517】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を説明するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図しない。記載される組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書における記載および教示から明らかになるであろう。そのような変形例は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0518】
【配列表】
【国際調査報告】