(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電気化学セルのためのプレリチウム化電極のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20250107BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20250107BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250107BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20250107BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250107BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/134
H01M10/0562
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535857
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022053344
(87)【国際公開番号】W WO2023114536
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521320667
【氏名又は名称】ソリッド パワー オペレーティング, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ローズ イー.ルーサー
(72)【発明者】
【氏名】イアン エー モッリセイ
(72)【発明者】
【氏名】クリステン ティー. ヒエタラ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE01
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL11
5H029AM11
5H029CJ03
5H029CJ15
5H029CJ30
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ15
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050CA01
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA08
5H050FA02
5H050GA03
5H050GA16
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA15
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本開示の態様は、電気化学セルが形成されかつサイクルされるときにリチウム損失を打ち消すように電気化学セルの電極をプレリチウム化することに関する。
【解決手段】1つの実施態様は、a)ケイ素含有材料、炭素系導電性添加剤、固体電解質、およびバインダを含む、リチウムイオン伝導性および拡散性を有する電極複合体を提供する工程;b)リチウムの連続薄層を電極複合体に近接して配置する工程;およびc)リチウムの連続薄層を電極複合体に圧力ラミネートする工程を含む方法を含むことができる。このプロセスによって、リチウムイオンの移動を助けるために従来使用されている液体媒体を使用することなく、リチウム金属フィルムを電極複合体と接触させることによって、リチウムが固体電極複合体に移動する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極スタックの電極複合体に隣接してリチウムの連続層を配置すること、及び
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けて、前記リチウムの連続層の少なくとも一部で前記電極複合体をプレリチウム化すること、
を含む、電池電極の製造方法。
【請求項2】
セパレータ層を、前記電極スタックに、プレリチウム化された前記電極複合体に隣接して配置することをさらに含み、前記セパレータ層が固体電解質を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けることが、
前記電極スタックを、第1のローラーと第2のローラーとを含むカレンダープレスを通して供給すること、を含み、
前記第1のローラーは、前記第2のローラーの上方に位置づけされ、かつプレス間隔によって離されており、前記プレス間隔は、前記電極スタックの少なくとも1つの層の厚さに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極複合体が、ケイ素含有材料、炭素系伝導性添加剤、固体電解質、およびバインダを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウムの連続層が、約1,500~100,000psiの圧力で前記電極複合体に押し付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウムの連続層が、0.01~60分の持続時間にわたって前記電極複合体に押し付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウムの連続層が、0.1~20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リチウムの連続層がリチウム合金を含み、
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けることによって、前記リチウム合金のリチウムイオンの少なくとも一部が前記電極複合体に移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウムの連続層を担体箔の上にキャストすること、及び
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けた後、前記リチウムの連続層から前記担体箔を除去すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担体箔が、銅箔を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウムの連続層が、前記電極複合体に隣接する不動態化層を含み、前記不動態化層は、前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けた後に残留する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電極複合体への前記リチウムの連続層の前記押し付けの間に前記電極複合体のリチウム化の状態を監視すること、及び
前記電極複合体のリチウム化の前記状態の前記監視に基づいて、前記電極複合体への前記リチウムの連続層の前記押し付けのパラメータを調整すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1の電極と、
前記第1の電極に隣接する固体電解質と、
前記固体電解質に隣接する第2の電極と、
を備える固体電気化学セルであって、
前記第2の電極は、リチウムの連続層を第2の電極複合体に乾式積層処理することによってプレリチウム化されたものである、
固体電気化学セル。
【請求項14】
前記第2の電極は、第1のローラーおよび第2のローラーを含むカレンダープレスを通して乾式積層処理されたものであり、前記第1のローラーは前記第2のローラーの上方に位置づけされかつプレス間隔によって離される、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項15】
前記リチウムの連続層の少なくとも一部が、前記第2の電極複合体に吸収され、それによって前記第2の電極がプレリチウム化されている、請求項12に記載の固体電気化学セル。
【請求項16】
前記リチウムの連続層が、乾式積層処理の前に0.1~20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項12に記載の固体電気化学セル。
【請求項17】
前記リチウムの連続層がリチウム合金を含む、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項18】
前記リチウムの連続層が、前記第2の電極複合体の、集電体とは反対側の表面に近接して配置される、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項19】
電池電極の製造方法であって:
電極複合体と、集電体と、前記電極複合体に隣接するリチウムの連続層とを含む電極スタックを圧縮すること、
を含み、
前記圧縮の間に前記リチウムの連続層の少なくとも一部が前記電極複合体によって吸収され、それによって前記電極複合体がプレリチウム化される、
方法。
【請求項20】
前記電極スタックの前記リチウムの連続層は、前記電極複合体と前記集電体との間に配置される、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項21】
前記電極スタックの前記電極複合体は、前記リチウムの連続層と前記集電体との間に配置される、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項22】
前記電極複合体が、1%~15%の範囲のプレリチウム化を含む、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項23】
前記電極複合体が、15%~30%の範囲のプレリウム化を含む、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される様々な態様は、固体一次および二次電気化学セル、電極および電極材料、電解質、ならびに電解質組成物、ならびにそれを作製および使用する対応する方法の分野に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本特許協力条約(PCT)出願は、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/265,669号「Prelithiated Negative Electrodes for Electrochemical Cells and Method for Making Same」に関連し、かつその優先権を主張し、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル装置の益々増加する数と多様性、ハイブリッド/電気自動車の進化、およびモノのインターネット装置(IoT)の開発は、改善された信頼性、容量(Ah)、熱特性、寿命、および再充電性能を有する電池技術のより大きな必要性を喚起している。
【発明の概要】
【0004】
現在、リチウム固体電池技術は、他のタイプの電池と比較して、安全性、パッケージング効率の潜在的な増大を提供し、かつ新たな高エネルギー化学を可能にするが、リチウム電池技術および他の固体電池技術の改善が必要とされている。
【0005】
本開示の態様は、とりわけこれらの観測を考慮して想到された。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本開示の態様による、カレンダープレスを使用したプレリチウム化電極の製造を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の態様による、電気化学セル用のプレリチウム化電極の簡略化された断面である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の態様による、電気化学セル用のプレリチウム化電極の簡略化された断面である。
【
図3】
図3は、本開示の態様による、電気化学セルのための電極複合体のプレリチウム化のための方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の態様による、カレンダープレスおよびピーラー装置を使用したプレリチウム化電極の製造を示す図である。
【
図5】
図5は、電気化学セルの放電容量対サイクル数のグラフを示し、第1のプレリチウム化アノードおよび第1の非プレリチウム化アノードの両方を含む。
【
図6】
図6は、電気化学セルの放電容量対サイクル数のグラフを示し、第2のプレリチウム化アノードおよび第2の非プレリチウム化アノードの両方を含む。
【
図7】
図7は、電気化学セルの放電容量対サイクル数のグラフを示し、第1のプレリチウム化アノード、第2のプレリチウム化アノード、および非プレリチウム化アノードを含む。
【
図8】
図8は、本開示の態様による、リチウム層に隣接する担体箔を含む電気化学セルのためのプレリチウム化電極を形成するためのプロセスにわたる電極スタックの代表的な断面を示す。
【
図9】
図9は、本開示の態様による、不動態化層を含む電気化学セルのためのプレリチウム化電極を形成するためのプロセスにわたる電極スタックの代表的な断面を示す。
【
図10】
図10は、本開示の態様による、電気化学セルの断面を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の態様は、電極(電気化学セルのアノードなど)内にリチウムイオンのリザーバ(貯蔵部)を提供して電気化学セルが充電・放電を繰り返すとき(サイクルされるとき)のリチウム損失を緩和することによって(本明細書では電極の「事前プレリチウム化(プレリチウム化)」とも呼ばれる)、電気化学セルのエネルギー密度およびサイクル寿命を改善するための、電気化学電極材料、アセンブリ、および処理に関する。したがって、いくつかの実装形態では、本開示は、電気化学セルのためのプレリチウム化電極複合体を合成する方法に関する。本方法は、(a)リチウムイオン伝導性および拡散性を有する電極複合体を提供すること、この電極複合体は、ケイ素含有材料、炭素系伝導性添加剤、固体電解質、およびバインダを含む、(b)リチウムの連続薄層を電極複合体に近接して配置すること、並びに(c)リチウムの連続薄層を電極複合体に加圧積層処理する(プレス積層処理する)こと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、電池電極の製造方法に関する。本方法は、電極スタックの電極複合体に隣接してリチウムの連続層を配置することと、リチウムの連続層を電極複合体に押し付けてリチウムの連続層の少なくとも一部分で電極複合体をプレリチウム化することとを含むことができる。
【0009】
本開示の別の態様は、固体電気化学セルに関する。固体電気化学セルは、第1の電極と、第1の電極に隣接する固体電解質と、固体電解質に隣接する第2の電極とを含むことができ、第2の電極は、リチウムの連続層を第2の電極複合体にドライ積層処理(乾式積層処理)することによってプレリチウム化されている。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、電池電極を製造する方法に関する。本方法は、電極複合体と、集電体と、電極複合体に隣接するリチウムの連続層とを含む電極スタックを圧縮する操作を含むことができ、リチウムの連続層の少なくとも一部が圧縮の間に電極複合体によって吸収されて、電極複合体がプレリチウム化される。
【0011】
いくつかの実施態様では、1,500~100,000psiの範囲の圧力の加圧積層処理を用いて、電極をプレリチウム化することができる。別の実施形態では、積層処理の圧力が、0.01~600分の持続時間にわたって維持される。さらに別の実施形態では、0.01~600分の持続時間にわたる加圧積層処理に続いて、1~60分の範囲の持続時間で、積層処理の圧力が除去される。
【0012】
一実施形態では、リチウムの積層された層が0.1~20ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0013】
一実施形態では、リチウムの積層された層がリチウム合金を含む。
【0014】
一実施形態では、リチウムの積層された層が、担体(キャリア)上に堆積される。担体は、銅箔を含むことができる。
【0015】
さらに別の実施形態では、本方法が、プレリチウム化電極複合体から担体箔を除去することをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、加圧積層処理が、0~180℃の範囲の温度で行われる。
【0017】
一実施形態では、本方法が、加圧積層処理中のリチウム化の状態を監視することをさらに含む。
【0018】
一実施形態では、加圧積層処理がロールツーロールカレンダー装置を介して実施される。
図面の簡単な説明
【0019】
本開示は、以下に簡潔に記載される図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって理解されうる。説明を明確にするために、図面中の特定の要素は、縮尺どおりに描かれていない場合があることに留意されたい。
【0020】
詳細な説明
本開示の態様は、電気化学セル(セルのアノードなど)の電極をプレリチウム化して、電気化学セルが充電・放電を繰り返すとき(サイクルされるとき)に生じうるリチウム損失を緩和することに関する。従来の液体電解質電気化学セルにおける従来の電極リチウム化技術は、組み立てられたセルの初期サイクル又は複数のサイクルの間に形成ステップを実行することを含む。形成の間に、リチウムは、充放電を伴う1回以上の形成サイクル中に、セルのカソードから電解質を通ってアノードに移動する。しかしながら、電気化学セルの構成要素の化学組成に起因して、アノードに堆積されたリチウムイオンの一部が失われ、これは、しばしば、電気化学セルの第1サイクル効率と呼ばれる。形成工程中に生じるリチウム損失は、電気化学セルの全体的な効率を低下させる;なぜならば、放電中に電解質を通って移動するリチウムイオンの数はセルの効率に直接的な影響を及ぼすからである。
【0021】
本開示は、固体リチウムイオン電気化学セルのための電極複合体のプレリチウム化のための方法およびシステムを記載する。一般に、本方法は、リチウムを電気化学デバイスの電極に移動させて、電極をリチウムでプレリチウム化することを含むことができる。場合によっては、リチウム金属の薄い(典型的には<10ミクロン)フィルムをリチウム源として使用することができる。リチウムは、リチウム金属フィルムを電極複合体と接触させることによって、固体電極複合体(固体状電極複合体)に移される。このプロセスは、固体セルへの組み立て前に電極に対して行われる。さらに、このプロセスは、液体電解質を必要とせず、又はより一般的には、液体電解質セル内のリチウムイオンの移動を補助するために従来使用される液体媒体の使用を必要としない。フィルムは、電極に押し付けられてもよい。一例では、本システムが、フィルムが電極に押し付けられるカレンダー加工プロセスを含み、それによって、金属フィルムのリチウムが電極へ移動することが促進される。有利には、固体電極複合体(固体状電極複合体)が、固体電解質を含有することができ、それにより、液体を含まないリチウムイオンの良好な伝導体となってよい。固体電極複合材料のこの特性は、広い面積にわたって均一なプレリチウム化の拡張性をサポートする、プレリチウム化のための独特で迅速な乾式プロセスを可能にする。
【0022】
一実施形態では、本方法は、(a)リチウムイオン伝導性および拡散性を有する電極複合体(例えば、アノード)を提供すること、(b)電極複合体に近接してリチウムの連続薄層を配置すること、並びに(c)電極複合体にリチウムの連続薄層を加圧積層処理すること、を含むことができる。
【0023】
図1は、本開示の態様による、カレンダープレス装置104を使用してプレリチウム化電極102を製造するためのシステムを示す
図100である。カレンダープレスを含む実施形態が記載されている一方で、リチウムを電極に押し込む他の機構、例えば、液圧プレス、機械プレス、空気圧プレス、電気機械プレス、または他の種類プレスが可能である。一実装形態では、プレリチウム化電極102は、電極複合体106、金属集電体108、およびリチウム含有層110を含むことができる。留意されるべき点として、セルに使用される電極は、リチウム含有層からのリチウムでプレリチウム化された電極複合体と、集電体とを含み、リチウム含有層は最終的に除去されることが認識される。
【0024】
いくつかの実施態様では、電極複合体106が、例えば、複合材料を含んでよく、これは、ケイ素金属でできた活物質、固体電解質材料、炭素系伝導性添加剤、およびバインダ(結合剤)としての1つ以上のポリマーを含む。集電体層108は、銅またはステンレス鋼などの薄い金属箔を含むことができる。リチウム含有層110は、リチウム金属またはリチウム金属合金の供給源であってよく、薄いシートまたは箔を含む。場合によっては、リチウム含有層110は、銅箔または他の物質などである担体材料の上に堆積されたリチウム金属または合金であってよく、リチウムは担体材料と合金を形成しない。電極複合体106も、場合によっては、銅箔または他の物質などの薄い担体フィルム(キャリアフィルム)上にコーティングされてもよい。層の他の組合せおよび層の組成を含む、より多いまたはより少ない層が、他のタイプの電極のために使用されうる。さらに、本明細書に記載の電極は、電気化学デバイスの負極(若しくはアノード)または正極(若しくはカソード)であってよい。
【0025】
プレリチウム化電極102を製造するために、上述の層は、リチウム-電極-集電体の層スタックで、カレンダープレス装置104を通して供給されてよい。いくつかの実装形態では、プレリチウム化電極102が、電極-リチウム-集電体の層スタックを有してよい。種々のプレリチウム化電極スタックを、
図2A~2Bを参照して以下でより詳細に説明する。カレンダープレス104は、第1のローラー114と第2のローラー116とを備えてよく、それらの間をプレリチウム化電極102が通過してよい。それぞれのローラー114、116の対向する円筒面は、プレリチウム化電極102に圧縮締め付け力を加えて、層を一緒に押圧する。一実装形態では、スタック102に加えられる圧力が、リチウム層の少なくとも一部を電極層106内に吸収させてよく、それによって、電極層がプレリチウム化される。スタックに加えられる圧力を介した電極層のプレリチウム化は、上述の従来の形成ステップを変更または排除することができる。言い換えれば、電極106は、電気化学デバイスの充放電中に電気化学デバイス内の上記リチウムイオンの保存が維持されるように、リチウムイオンでプレリチウム化されることができる。
【0026】
スタック102に加えられる圧力は、スタックの温度などの他の要因の中でも、第1のローラー114と第2のローラー116との間の間隔118に相関しうる。間隔は、場合により、固定されてもよく、または調節可能であってもよく、制御部によって調節可能であってもよい。例えば、制御部は、ローラー114、116間の距離を増加または減少させて、リチウム含有層110による電極層106のプレリチウム化を確実にすることができる。例えば、より厚いリチウム含有層110および/または電極層106は、カレンダープレスロール114、116間の間隔の増加に対応しうる。より薄い電極スタック102の層は、カレンダープレスロール間の間隔の減少に対応しうる。いくつかの場合では、カレンダープレス104の間隔がローラー114、116またはプレリチウム化電極102の製造に関連する他のセンサ要素(力測定、層の厚さ測定、層の温度など)から受信されるフィードバック情報に基づいて調整可能でありうる。
【0027】
図2Aおよび2Bは、プレス前(押し付け前)の電気化学セルのための例示的な電極スタック102の簡略化された断面である。プレス後(押し付け後)、リチウム含有層からのリチウムの少なくとも一部が電極複合材料層に吸収されてよく、それによって、電極複合材料層がプレリチウム化される。
図2Aの例示的な電極200は、集電体210と、電極複合体220と、リチウム含有層230とを備え、集電体-電極-リチウムの構成で積スタックされている。
図2Bの例示的な電極250は、集電体260と、電極複合体280と、リチウム含有層270とを備え、集電体-リチウム-電極の構成である。電極200と250とは同様であるが、層の配置、具体的にはリチウム含有層の相対的な配置が異なる。しかしながら、いずれの場合も、リチウム含有層は、リチウム含有層からのリチウムイオンがスタックのカレンダー加工の前、最中、または後のいずれかに電極複合体層に吸収されうるように、電極層に隣接してよい。特に、リチウム含有層のリチウムイオンの一部は接触の際に電極複合体層に吸収されうる一方で、カレンダー加工は、電極複合体層中へのリチウムイオンのさらなる分散を助けうる。
【0028】
いくつかの実装形態では、集電体210および260が銅またはステンレス鋼などの薄い金属箔でありうる。電極複合体220および280は、例えば、ケイ素金属でできた活物質、固体電解質材料、炭素系伝導性添加剤、およびバインダとしての1つ以上のポリマーを含む複合材料であってよい。電極複合体220、280の組成は、一般に、複合体の、特にはケイ素系材料の迅速なリチウム化を支援するのに十分に高いイオン伝導性および電子伝導性を複合体に提供する。ケイ素材料はリチウム化するにつれて元の非リチウム化体積の300%まで膨張し得るので、1若しくは複数のポリマーおよび/または1若しくは複数のバインダが、プレリチウム化の際に複合体の継続的な凝集を支持するために使用されうる。電極複合体220、280は、所望のイオン伝導性および電子伝導性、100,000psiまでの積層処理圧力ならびに電極複合体が含まれる電気化学セルの使用の間のサイクル中に電極複合体が受けるであろう膨張および収縮に耐えるための構造的一体性、を支持するように配合されうる。
【0029】
電極複合体220、280は、一般に、ケイ素またはその化合物、炭素系伝導性添加剤、固体電解質、および/またはバインダ材料を含むことができる。比例してかつ一例において、電極複合体220、280は、少なくとも30重量%のケイ素またはその化合物;0重量%~15重量%の炭素系伝導性添加剤;0重量%~70重量%の固体電解質;および0重量%~20重量%のバインダを含み得る。例示的な電極複合体220、280において、固体電解質は、活物質(Si)、伝導性添加剤(炭素)、およびバインダ(ポリマー/バインダ)以外は完全に存在しなくてもよい。
【0030】
より具体的には電極複合体220、280に含まれるケイ素またはその化合物は、元素ケイ素、二酸化ケイ素、被覆ケイ素、および被覆二酸化ケイ素を含むことができる。ケイ素またはケイ素化合物のための被覆(コーティング)は、炭素ベースのシェル、酸化物がAl2O3、ZrO2などである酸化物ベースのシェル、および、硫化物がLi2Sである硫化物ベースのシェル、またはLi3PS4、Li7P3S11、若しくはLi6PS5Clなどの硫化物電解質を、含み得る。本明細書に記載されるように、複合体の形態学的変化の発生および持続は、ケイ素系材料の体積膨張およびバインダの凝集保持性に依存する。体積膨張および同様の化学的適合性を支持するために、ケイ素と同様の体積膨張を示す他の材料を、ケイ素の代わりに置換することができる。ゲルマニウム(Ge)とスズ(Sn)は、リチウム化プロセスによって同様の体積膨張を受け、Geが約280%膨張し、Snが約257%膨張する。これらの材料または他のインターカレーションベースの材料(層間系材料)は、ケイ素ベースの材料の代わりに、完全にまたは部分的に置き換えられてもよい。
【0031】
電極複合体220、280に含めるのに有用なバインダまたはポリマーは、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)などのフッ素含有バインダの1つ以上であってもよい。別の実施形態では、バインダは、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、およびそれらの誘導体などのフッ素樹脂を構造単位として含有してよい。その具体例としては、ホモポリマー、ポリ(ビニレンジフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(PVdF-HFP)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)など、並びに、二元コポリマー、VdFおよびHFPのコポリマーなど、が挙げられる。さらに別の実施形態ではバインダは、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、およびポリ塩化ビニルなどであるがこれらに限定されない、熱可塑性物質から選択される1つ以上であってもよい。さらなる実施形態では、バインダは、熱可塑性エラストマー、例えば、限定されないが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンスチレンコポリマー(SBS)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)コポリマー(SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)コポリマー(SEBS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ニトリル-ブチレンゴム(NBR)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(メタクリレート)ニトリル-ブタジエンゴム(PMMA-NBR)などから選択される1つ以上であってもよい。さらに別の実施形態では、バインダは、アクリル樹脂、例えば、限定されないが、ポリメチルメタクリレート(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせから選択される1つ以上であってもよい。任意の特定のバインダまたは組合せおよび複合体内のその濃度は、全体的に均一なセグメント化および破壊発生、ならびに電子/イオン移動度を確実にするためにサイクル下での複合体の長期間の凝集、を支援するように調節されうる。バインダ選択は、また、集電体への複合体の密着性を支持し、スラリーのレオロジー特性を部分的に決定する。
【0032】
電極複合体220、280の炭素系伝導性添加剤は、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、天然黒鉛または人造黒鉛などの黒鉛(グラファイト)、およびグラフェン、のうちの1つ以上であってもよい。炭素系伝導性添加剤は、固体電解質材料と協働して、複合体の体積全体にわたって電子の分布を調節することによって、複合体全体にわたって電荷密度を均一に分布させる。
【0033】
固体電解質は、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-GeS2、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-S-SiS2-LiI、Li2S-S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZnSn(式中、m及びnは正の数であり、ZはGe、Zn又はGaである)、Li2S-GeS2、Li2S-S-SiS2-Li3PO4、及びLi2S-S-SiS2-LixMOy(式中、xおよびyは正の数であり、MはP、Si、Ge、B、Al、GaまたはInである)。特定の例示的な電解質材料は、Li3PS4、Li4P2S6、Li6PS7、Li7P3S11、Li10GeP2S12、Li10SnP2S12のうちの1つ以上であってもよい。別の実施形態では電解質材料がLi6PS5Cl、Li6PS5Br、Li6PS5I、またはLi7-yPS6-yXyのうちの1つ以上であってもよく、式中、「X」は少なくとも1つのハロゲン元素および/または擬ハロゲンを表し、0<y≦2. 0であり、ハロゲンはF、Cl、Br、Iのうちの1つ以上であってよく、擬ハロゲンは、N、NH、NH2、NO、NO2、BF4、BH4、AlH4、CN、およびSCNの1つ又はであってよい。さらに別の実施形態では、電解質材料が、Li8-y-zP2S9-y-zXyWzの1つまたは複数であってよく、式中、「X」および「W」は、少なくとも1つのハロゲン元素および/または擬ハロゲンを表し、0≦y≦1および0≦z≦1であり、ハロゲンはF、Cl、Br、Iのうちの1つまたは複数であってよく、擬ハロゲンは、N、NH、NH2、NO、NO2、BF4、BH4、AlH4、CN、およびSCNの1つ又はであってよい。さらなる実施形態では、電解質材料が、Li4PS4X、Li4GeS4X、Li4SbS4X、およびLi4SiS4Xのうちの1つまたは複数であってよく、式中、「X」は、少なくとも1つのハロゲン元素および/または擬ハロゲンを表し、ハロゲンは、F、Cl、Br、Iのうちの1つまたは複数であってよく、擬ハロゲンは、N、NH、NH2、NO、NO2、BF4、BH4、AlH4、CN、およびSCNの1つ又はであってよい。固体電解質材料は、バインダと混合されると、可撓性マトリックスを形成することができる。次いで、炭素添加剤およびケイ素含有材料をこのマトリックス中に懸濁させることができる。可撓性マトリックスは、ケイ素含有材料(シリコン含有材料)がサイクルの下で膨張および収縮する間、粒子間接触を維持する能力を複合体に提供する。
【0034】
リチウム含有層230、270は、薄いシートまたは箔の形態の、リチウム金属またはリチウム金属合金の供給源であってよい。層230、270はまた、銅箔または他の物質等の担体材料上に堆積されたリチウム金属または合金であってもよく、リチウムが担体材料と合金を形成しない。一例ではリチウム含有層230、270は担体としての銅箔の層上の0.1~35μm(ミクロン)の厚さの範囲のリチウムの層であってもよい。いくつかの特定の実装形態では、リチウム含有層230、270は、0.1~20ミクロンの範囲のリチウムの層でありうる。いくつかの例では、リチウムは、上述のカレンダープレス140を介するなどして4000~8000psiの範囲の圧力を加えることによって、電極複合体220、280に積層されてよい。さらに、この構成は、加圧積層処理中の電極複合体220、280とリチウム層230、270との間の界面の元の境界の外側へのリチウムの押出しを制限する。リチウムのために担体を使用することのさらなる利点は、積層力を印加している装置へのリチウムの付着またはそれとの反応が制限されうることである。例えば、リチウム含有層230、270のための担体箔は、スタック102の積層処理中にカレンダープレス104の上側ローラー114または下側ローラー116を防ぐことができる。電極複合材料層220、280のリチウム化の後、担体箔は、リチウム金属を含まなくてもよく、電極を損傷することなく、リチウム化電極複合体の表面から担体箔を除去することができる。いくつかの実施形態では、電極複合体層220、280のリチウム化は、担体から実質的に全てのリチウムを除去することができる。例えば、プレリチウム化後、担体からの99%以上のリチウムが電極に移動し、その結果、合計リチウムの1%以下が担体上に残る。別の実施形態では、担体箔は、ケイ素含有層のリチウム化後に、1%超5%未満のリチウムを含有してよい。したがって、いくつかの例では、担体上のリチウムの95%~99%が電極に移動する。リチウム含有層270が集電体260と電極複合体層280との間に位置する
図2Bでは、電極複合体がスラリーに形成され、銅上のリチウムのフィルム上にキャスティング/コーティングされうる。次いで、キャスト層を乾燥させて、スラリー中にあった任意の溶媒を除去し、積層/緻密化して、層の適切な圧縮を確実にし、リチウム化プロセスを開始することができる。
【0035】
図3は、本開示の態様による、電気化学セルのための電極複合体のプレリチウム化のための方法300のフローチャートである。操作302で開始し、電極調製および電極緻密化などであるがこれらに限定されない、上述の電極スタック102の様々な層の任意の必要なまたは所望の調製を行うことができる。1つの特定の例では、電極複合体が電極複合体層220、280を形成するために担体箔上にコーティングされてもよい。他の実装形態では、電極複合体層220、280は、担体箔を含まなくてもよい。電極複合体層220、280および/または担体箔の組成は、上記でより詳細に論じられている。さらに、いくつかの例では、リチウム含有層230、270を担体箔上にコーティングすることもできる。
【0036】
操作304において、リチウム含有層230、270および電極複合体層220、280を接触させてよい。具体的には、リチウム含有層230、270のリチウム保持表面と、電極複合体層220、280のケイ素含有表面とを接触させて、電極複合体層のリチウム化プロセスを促進することができる。接触が行われた後、電極複合体層220、280のリチウム化プロセスを容易にするために、接触された層に圧力が加えられうる。1つの特定の実施態様では、接触された層が、カレンダープレス装置104を通して供給されて、電極スタック102に圧力を加えることができる。いくつかの例では、リチウム含有層230、270のリチウムが電極複合体層220、280の表面に積層され、かつその中に押し込まれるように、カレンダー104から印加される圧力が、1,000psi~150,000psiの範囲の圧縮力を確立してよい。別の例では、圧力が2,000~125,000psiの範囲であってもよい。さらなる例では、圧力が3,000psi~100,000psiの範囲であってもよい。さらに別の例では、圧力が4,000psi~75,000psiの範囲であってもよい。さらに別の例では、圧力が4,500psi~50,000psiの範囲であってもよい。さらなる例では、圧力が5,000~25,000psiの範囲であってもよい。圧力は、電極スタック102に、接触された層のいずれかに対して一方向的に、または両方の接触された層もしくは中間表面に対して双方向に、印加(適用)されてもよい。多くの場合、圧力は、機械的に、油圧的に、または空気圧的に、任意の押圧装置(プレス処理装置)を介して印加されてよく、均一または空間的に変化されてよく、カレンダー装置104は、そのような圧力装置の一例である。一般に、1500psiを超える圧力は、電極複合体層220、280へのリチウムの拡散速度を高めることができる。この効果は、電極複合体層220、280内のケイ素材料、伝導性添加剤、および固体電解質の間のより大きな粒子-粒子接触に起因する、電極複合体のイオン伝導性および電子伝導性の増加によるものである。
【0037】
一般に、より高い圧力を使用して、リチウム含有層230、270と電極複合体層220、280との間の均一な接触を確実にして、より均一な初期リチウム化を支援することができる。さらに、ケイ素材料がリチウム化するにつれて、ケイ素材料はよりイオン伝導性になる。これは、リチウムが、層間の接触された表面付近の既にリチウム化されたケイ素を通って拡散する能力、及び電極複合体のさらに内部でケイ素との合金化を開始する能力を増加させることができる。このようにして、リチウムは電極複合体を通って伝播することができ、より速いリチウム化を可能にする。
【0038】
十分な圧縮力が加えられると、電極複合体220、280内のケイ素は、リチウム化を開始して、ケイ素-リチウム合金を形成することができる。いくつかの例では、電極複合体層220、280のリチウム化が起こることを可能にするために、待機期間を確立してよい。リチウム化プロセスの待機期間または他のパラメータは、予め決定されるか、または、リチウム化されている電極複合体の特性の監視に基づいて能動的に制御されてもよい。例えば、リチウム含有層230、270が透明基材上に堆積される場合、反応の進行は、透過測定または反射測定によって光学的に監視されてよい。リチウム化はまた、電極複合体層220、280の適切なリチウム化を決定するのを助けるために、渦電流感知および抵抗率測定を含むがこれらに限定されない、電気的方法によって監視されてもよい。
【0039】
リチウム化の程度、層の厚さ、および圧力に応じて、リチウム化は、1~600分の範囲で起こりうる。いくつかの実施形態では、リチウム含有層230、270と電極複合体層220、280との間の接触を確実にするために、電極スタック102が0.01~1分間にわたって圧力下にあってよく、その時点で、圧力を除去してよい。電極スタック102は、0.01分から600分、または所望のリチウム化度に達するまで静置されてもよい。別の実施形態では、電極スタック102が0.01~600分間にわたって加圧下にあってよく、リチウム含有層230、270と電極複合体層220、280との間の接触を確保し、かつ電極のリチウム化が起こることを可能にする。
【0040】
一例では、リチウム含有層230、270内にあるリチウムの全てが電極複合体層220、280内に移送されるように、接触された層を十分な時間にわたって圧力負荷してもよい。リチウム含有層230、270の厚さは、所望のレベルのプレリチウム化に達したときにリチウム含有層中の全てのリチウム金属が電極複合体層220、280中に消費されているように、選択されてよい。電極複合材料層220、280は、リチウム化されたケイ素(ケイ素-リチウム合金)および非リチウム化ケイ素(ケイ素金属)の両方を含むことができ、リチウム化ケイ素対非リチウム化ケイ素の割合は、どれだけのリチウムが電極複合体の表面に導入されるかによって制御することができる。増加した反応時間は、場合によっては、より高い圧力に置き換えてよく、それによって、電極複合体層220、280とのリチウム金属の完全な反応を確実にする。例えば、リチウムの同様の消費が、60秒の持続時間で約12,000psi、または180秒の持続時間で8,000psi、を使用して達成されうる。関連して、12,000psiを使用すると、リチウム消費は約3ミクロン/分でありうる。さらに、方法300の上記の操作は、約0~180℃の周囲温度または層温度範囲内で起こってよい。リチウム化は一般により高い温度でより高い速度で起こりうるが、プレリチウム化された電極複合体の処理時間の減少および得られる機械的特性基づいてリチウム化のための反応動力学のバランスをとるように、上記の操作を構成してよい。例えば、過度の温度は、プレリチウム化された電極複合体の機械的安定性の低下(亀裂)を伴う非常に急速なリチウム化をもたらし得る。あるいは、25~100℃、または25~75℃の温度範囲が使用されてもよい。
【0041】
独立したリチウム含有層230、270の使用の代替として、リチウム含有材料の薄フィルムは、蒸着(PVD、CVD、ALD)などの技術を使用して、電極複合体層220、280の表面上に直接堆積されてよい。あるいは、リチウム金属を、最初に、固体電解質セパレータ層上に堆積してよい。カレンダーまたはリニアプレスからの印加圧力を使用してセパレータが電極複合体に積層処理されるときに、リチウムが、固体電解質セパレータから電極複合体層220、280に移送されうる(以下でより詳細に論じる)。あるいは、リチウムがSLMP(安定化リチウム金属粉末)などの粒子の形態であってもよい。このSLMPは、電極複合体中に混合されてもよく、または電極複合体層の上にコーティングされてもよい。
【0042】
銅などの担体材料がリチウム含有層230、270と共に使用された場合、担体(キャリア)は、操作308において、その後、電極スタックの表面から除去されうる。いくつかの例では、リチウム含有層のリチウムの一部が電極複合体層によって吸収されずに担体材料に接着されたままでありうる。そのような状況では、電極スタックの表面からの担体の除去が、カレンダー処理プロセス中に吸収されなかった残りのリチウム含有層230、270の一部または全部をさらに除去し得る。操作310では、露出したプレリチウム化(事前リチウム化)電極複合体層220、280をセパレータ層と接触させることができる。例えば、
図4は、カレンダプレス(カレンダープレス装置)およびピーラー装置(剥離装置)を使用してプレリチウム化電極(事前リチウム化電極)を製造することを示す図式400である。図式400のいくつかの要素は
図1を参照して上述したものと同様である。例えば、電極複合体106と、金属集電体108と、リチウム含有層110とを備える電極スタック102が示される。電極スタック102は、リチウム-電極-集電体の構成200(
図2Aに示すように)または電極-リチウム-集電体の構成250(
図2Bに示すように)で提供されうる。また、上述のように、電極スタック102は、カレンダープレス装置104を通して供給されてよく、それによって電極層106をリチウム含有層110でプレリチウム化することができる。カレンダープレス装置104は、上部ローラー114および下部ローラー116を含んでもよく、それによって、リチウム含有層110のリチウムの少なくとも一部を電極層106内に押し込み、そのようにしてリチウムイオンの一部を電極層内に移動させる。
図3の操作308に関連して上述したように、任意の残りのリチウム含有層110をスタックから除去することができ、ただしそのような操作は
図4に示されていない。
【0043】
いずれにせよ、プレリチウム化スタック406は、固体電解質層とも呼ばれるセパレータ層402と接触させることができる。一般に、セパレータ層402は、プレリチウム化電極複合体層の露出面410と接触させることができる。セパレータ層402は、場合によっては硫化物系固体電解質材料およびバインダを含んでもよい。さらに、いくつかの実装形態では、セパレータ層402がアルミニウム箔などの担体フィルム上に薄層としてコーティングされうるが、他の物質が使用されてもよい。セパレータ層402は、電池セルでの使用中にイオンを伝導するが電子を伝導しなくてよく、そのようにして、セパレータ層がプレリチウム化電極複合体層410のための電気的絶縁を提供するようにする。
【0044】
操作312において、プレリチウム化された電極層410と接触するセパレータ層402を有するプレリチウム化されたスタック406は、さらなるプレスのために第2のカレンダープレス404を通して供給されうる。第2のカレンダープレス404によって印加される圧力は、セパレータ層402をプレリチウム化電極層410に積層することができ、セパレータ層をプレリチウム化電極層に少なくとも部分的に接着する。いくつかの実装形態では、第2のプレス404が必要とされないように、プレリチウム化スタック406が第1のカレンダープレス104を通して供給されうる。それにもかかわらず、セパレータ層402を含む積層電極スタック414を、セルのアノードまたはカソードとして電気化学セルにおいて用いてよい。電極層410のプレリチウム化は、非プレリチウム化電極と比較して、電気化学セルの電極間のリチウム移動の効率を増加させながら、上述の形成ステップの必要性を排除しうる。
【0045】
例示の目的で、および本開示のある特定の実施形態を説明するために、以下に実施例を記載する。しかしながら、特許請求の範囲は、本明細書に記載の実施例によって決して限定されるものではない。開示された実施形態に対する様々な変更および修正が当業者には明らかであり、本開示の趣旨および添付の特許請求の技術的範囲から逸脱することなく、本開示の化学構造、置換基、誘導体、製剤、または技術に関するものを含むがこれらに制限されない、そのような変更および修正が行われうる。本明細書のスキーム中の構造中の変数の定義は、本明細書に提示される式中の対応する位置のものと同等である。
【0046】
第1の例では、本明細書に記載のシステムおよび方法に基づいてアノードをプレリチウム化し、次いで、プレリチウム化アノードを含む電気化学セルへと形成した。比較用のプレリチウム化されていないアノードも生成され、次いで、電気化学セルへと形成された。セルおよび関連するプレリチウム化アノード並びにプレリチウム化されていないアノードを有するセルの性能を測定した。表1は比較情報を提供する。
図5は、プレリチウム化アノード(ライン506)および非プレリチウム化アノード508(ライン508)を含む、電気化学セルの放電容量502対サイクル数504のグラフ500を示す。表1の性能データは
図5のグラフ500に示される結果を生成するために使用されたプレリチウム化アノード(および関連するセル)並びに非プレリチウム化アノード(および関連するセル)の様々な特性を示す。特に、表1は、
図5に示されるプレリチウム化アノードおよび非プレリチウム化アノードのそれぞれについて、ケイ素の重量パーセント、プレリチウム化の程度、放電容量、アノードの面積測定のカソードの面積測定に対する比(A:C比)、第1サイクル効率(FCE)、およびアノード中の固体電解質の重量パーセントを示す。1500PSIのスタック圧力が試料のそれぞれについてセルサイクル中に印加された。
【0047】
【0048】
グラフ500および表1に示されるサイクルデータから分かるように、本明細書に記載される方法を使用してプレリチウム化されたアノードは、プレリチウム化されていないアノードの放電容量508と比較して一貫してより高い放電容量506を有し、他はすべて等しい。さらに、プレリチウム化されたアノードはまた、プレリチウム化されていない類似のアノードと比較して、1500psiスタック圧力でのより良好な安定性および90%を超える第1サイクル効率を示した-5%超高い第1サイクル効率。
【0049】
図6は、非プレリチウム化アノード608を含むセルに対する、プレリチウム化アノード606を含む電気化学セルの放電容量602対サイクル数604の第2のグラフ及び例を示す。表2は、上記と同様に、
図6のグラフ600に示される結果を生成するために使用された、セルおよびプレリチウム化アノードならびにセルおよび非プレリチウム化アノードの様々な特性を示す。1500PSIのスタック圧力を、表2の試料のそれぞれについて、第1のセルサイクルの間に適用した。第1の例におけるセルのA:C比は1.5より大きく、第2の例におけるセルのA:C比は1.5より小さい(かつ1より大きい)。
【0050】
【0051】
第1の例と同様に、グラフ600に示されるサイクルデータに示されるように、本明細書に記載される方法を使用してプレリチウム化されたアノードを含むセルは、プレリチウム化されていないアノードを有するセルと比較して、一貫してより高い放電容量606を有していた。さらに、プレリチウム化されたアノードはまた、1500psiスタック圧力でより良好な安定性を示し、かつ、プレリチウム化されていない類似のアノード(90.7%)と比較してより高い第1サイクル効率を示した(93超)%。
【0052】
図7のグラフ700には第3の組の例が示されている。ここで、グラフは、第1のプレリチウム化アノード706、第2のプレリチウム化アノード708、および非プレリチウム化アノード710をそれぞれ含む電気化学セルの、放電容量702対サイクル数704を示す。以下の表3に示すように、第1のプレリチウム化アノード706は30%のプレリチウム化を含み、第2のプレリチウム化アノード708は15%のプレリチウム化を含み、非プレリチウム化アノードは0%のプレリチウム化を含む。プレリチウム化アノードおよび非プレリチウム化アノードの他の特性も表3に示す。上記と同様に、表2の試料のそれぞれについての第1のセルサイクル中のスタック圧力を1500psiで適用した。
図7および表3の例では、A:C比が、第1、第2および非プレリチウム化アノードを有するセルについて、それぞれ、1.21、1.13、および1.24である。
【0053】
【0054】
グラフ700は、第1のプレリチウム化アノード706および第2のプレリチウム化アノード708を有するセルがプレリチウム化されていないアノード710を有するセルと比較して、一貫してより高い放電容量を有していたことを示す。さらに、第2のプレリチウム化アノード708は第1のプレリチウム化アノード(表3に示すように135.3mAh/gと比較して136.4 mAh/g)よりも高い放電容量を有したが、第1のプレリチウム化アノード706は、周期704の過程にわたって第2のプレリチウム化アノード708よりも一貫した放電容量を有し、最終的にはより高い放電容量を達成した。したがって、穏当に比較的低い初期のプレリチウム化割合は、電気化学の寿命にわたる、アノードのより一貫した(またはより望ましい)電気化学的性能に対応し得る。
【0055】
図8は、リチウム層に隣接する担体箔を含む電気化学セルのためのプレリチウム化電極を使用してセルを形成するプロセスによる、電極スタックの代表的な断面800を示す。上記で説明したように、電極スタックは、プレリチウム化プロセス800の段階A(810)に示すように、電極複合体層806に隣接する集電体層808と、リチウム含有層804とを含むことができる。集電体層808、電極複合体層806、およびリチウム含有層804は、それぞれの層について上述した材料を含むことができる。加えて、金属箔などの担体層802がリチウム含有層804に隣接してよく、かつ電極複合体層806に接触するリチウム含有層の表面の反対側にあってよい。段階B812において、リチウム含有層804は、電極複合体層806と接触して配置され、電極複合体層のプレリチウム化を開始することができる。上述のように、リチウム含有層804の少なくとも一部は電極複合体層806に吸収されてよく、場合によっては、リチウム含有層の全体が、段階814に示されるように、電極複合体層によって吸収されてよい。いくつかの実装形態では、電極複合体層806のプレリチウム化が、電極複合体806と接触しているリチウム含有層804を有する電極スタックを圧縮することを含んでよい。この圧縮中、リチウム含有層804からのリチウムは、電極複合体806の材料と合金化して、電極をプレリチウム化する。
【0056】
一般に、担体層802は、新たにリチウム化された電極層806を空気および水分から保護することができ、空気および水分は、リチウム化プロセスの間および後に、むき出しの電極表面を劣化させることがある。電気化学セルに含める前に、保護性担体層802は剥離プロセスによって電極複合体層806から除去されてもよく、段階D816に示される、スタックの残りの層を、電気化学セル内の電極として含ませてよい。
【0057】
図9は、不動態化層を含む電気化学セルのためのプレリチウム化電極を形成するためのプロセスにわたる、電極スタックの代表的な断面900を示す。断面900に示す電極スタックの層の多くは
図8に関して上述したものと同じである。特に、電極スタックは、電極複合体層906に隣接する集電体層908と、担体層902に隣接するリチウム含有層904とを含むことができる。しかしながら、この実装形態では、リチウム含有層904が一方の表面上で担体層902に隣接し、反対側の表面上で不動態化層920に隣接し得る。いくつかの実装形態では、不動態化層920がLi
2CO
3、Li
2O、Li
3N、またはLiOHのうちの1つまたは複数を含有してよい。図示のプロセスの段階B912では、(担体層902と不動態化層920との間に挟まれるか、またはそうでなければ配置される)リチウム含有層904は、電極複合体層906と接触させられ、不動態化層はリチウム含有層と電極複合体層との間に配置される。段階Cでは、リチウム含有層904が、段階C914に示されるように、不動態化層を介して電極複合体層906に吸収されうる。特に、スタックの圧縮中、リチウム含有層904からのリチウムは、不動態化層920通って拡散し、電極複合体材料と合金形成し、プレリチウム化電極層906がもたらされ、電極複合体層の上にリチウムに富む不動態化層920が位置する。担体層902はまた、電極複合体層906のリチウム化の後に残留してもよく、段階C914に示されるように、スタックから除去されてもよい。担体層906が除去されると、プレリチウム化された電極は、集電体層908とは反対側の電極906の外側表面を被覆する不動態化層920と共に残留する。この不動態化層920は新たにリチウム化された電極層906を空気および水分からさらに保護することができ、空気および水分は、リチウム化プロセスの間および後に、むき出しの電極表面を劣化させることがある。
【0058】
不動態化層920を含む電極スタックは、電気化学セルに使用されることができる。特に、
図10は、上述のプロセスによって生成された不動態化層を有するプレリチウム化アノードを含む電気化学セル1000の代表的な断面を示す。セル1000はいくつかの層、すなわち、カソード集電体1002、カソード電極1004、セパレータ層1006(例えば、固体電解質(SSE)層)、不動態化層1008、プレリチウム化アノード層1010、およびアノード集電体層1012を含む。この構成では、電気化学セルへと組み立てられたときに、不動態化層1008が、プレリチウム化アノード層1010とセパレータ層1006との間にある。いくつかの状況では、不動態化層1020は、リチウム化アノード層1010が固体電解質層1006と反応するのを防ぐことができる;なぜならば、不動態化層はアノードとセパレータ層との間で安定したままだからである。このようにして、保護性不動態化層1020は、セルの電極の一方または両方のための追加の保護バリアとして、電気化学セルのスタックに組み込まれうる。
【0059】
再び
図9を参照すると、いくつかの実施態様では、リチウム含有層904にリチウム合金を使用することができる。この場合、リチウム合金化成分(ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムなど)は、電極複合体材料と合金化しなくてもよい。代わりに、リチウムのみをリチウム合金から引き出して、電極複合体層904をプレリチウム化してよい。リチウムの全てがリチウム化プロセスを通して消費されるとき、残留するのは合金の他の成分の層である。この層920は、不動態化層と同様に、電極複合体層906の表面上に残留してよい。このアノードが電気化学セルへと組み立てられるとき、
図10の不動態化層1008はリチウム含有層904からの金属、例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムなどのうちの1つ以上を含有する金属合金層を含むことができる。この金属合金層は、アノード1010とセパレータ層1006との間に位置することができる。一般に、この金属層は、アノード1010の材料と合金化せず、アノードとセパレータ層1006との間の「柔らかい」界面層として作用して、層間のイオン接触を改善することができる。
【0060】
本開示の実施形態は、本明細書に記載される様々なステップ(工程)を含む。ステップは、ハードウェア構成要素によって実行されてもよく、または機械実行可能命令で具現化されてもよく、機械実行可能命令を用いて、命令でプログラムされた汎用又は専用プロセッサにステップを実行させることができる。代替として、ステップは、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの組合せによって実行されうる。
【0061】
本発明の範囲から逸脱することなく、論考した典型的な実施形態にさまざまな修正及び追加を施すことが可能である。例えば、上述の実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲には、異なる組み合わせの特徴を備える実施形態、及び、既述の特徴の全てを含んではない実施形態も含まれる。したがって、本発明の技術的範囲は、すべてのそのような代替、修正、および変形を、そのすべての同等物とともに包含することを意図する。
【0062】
特定の実装形態について説明するが、これは例示のみを目的として行われることを理解されたい。当業者は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の成分および構成が使用されうることを認識するのであろう。したがって、以下の説明および図面は例示的なものであり、限定として解釈されるべきではない。本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が説明される。しかしながら、場合によっては、説明を不明瞭にすることを避けるために、よく知られているまたは従来の詳細は説明されない。本開示における1つまたは1つの実施形態への基準は同じ実施形態または任意の実施形態への基準であり得、そのような基準は実施形態のうちの少なくとも1つを意味する。
【0063】
「一実施形態」または「実施形態」への基準は、実施形態に関連して説明される特定の特性、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。「1つの実施例において」という言い回しが説明の様々な場所に現れても、必ずしも同じ実施例について参照している訳ではなく、他の実施例を相互に除外した独立した、または二者択一的な実施例でもない。さらに、いくつかの実施形態によって示され、他の実施形態によっては示されない、様々な特徴が説明される。
【0064】
本明細書で使用される用語は一般に、本開示の文脈内で、および各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。代替の言語および同義語は本明細書で論じられる用語のうちの任意の1つまたは複数のために使用され得、用語が本明細書で詳述されるかまたは論じられるかどうかには特別な意味は置かれるべきではない。場合によっては、特定の用語の同義語が提供される。1つ以上の同義語の列挙は、他の同義語の使用を除外しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書の任意の場所での例の使用は、例示にすぎず、本開示または任意の例の用語の範囲および意味をさらに限定することを意図するものではない。同様に、本開示は、本明細書で与えられる様々な態様に限定されない。
【0065】
本開示の範囲を限定することを意図するものではないが、本開示の実施形態による器具、装置、方法、およびそれらの関連する結果の例が続いて示される。読者の利便性のために、タイトルまたはサブタイトルが実施例において使用されてもよく、これは、本開示の範囲を決して限定すべきではないことに留意されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。矛盾する場合には、定義を含めて、本明細書が優先する。
【0066】
本開示のさらなる特徴および利点は続く説明に記載され、一部はその説明から明らかになるか、または本明細書に開示される原理を実施することによって知ることができる。本発明の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される機器および組合せの手段によって実現および取得することができる。本開示のこれらおよび他の特徴は、続く説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または本明細書に記載の原理の実施によって知ることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極スタックの電極複合体に隣接してリチウムの連続層を配置すること、及び
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けて、前記リチウムの連続層の少なくとも一部で前記電極複合体をプレリチウム化すること、
を含む、電池電極の製造方法。
【請求項2】
セパレータ層を、前記電極スタックに、プレリチウム化された前記電極複合体に隣接して配置することをさらに含み、前記セパレータ層が固体電解質を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けることが、
前記電極スタックを、第1のローラーと第2のローラーとを含むカレンダープレスを通して供給すること、を含み、
前記第1のローラーは、前記第2のローラーの上方に位置づけされ、かつプレス間隔によって離されており、前記プレス間隔は、前記電極スタックの少なくとも1つの層の厚さに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電極複合体が、ケイ素含有材料、炭素系伝導性添加剤、固体電解質、およびバインダを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウムの連続層が、約1,500~100,000psiの圧力で前記電極複合体に押し付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウムの連続層が、0.01~60分の持続時間にわたって前記電極複合体に押し付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウムの連続層が、0.1~20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リチウムの連続層がリチウム合金を含み、
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けることによって、前記リチウム合金のリチウムイオンの少なくとも一部が前記電極複合体に移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウムの連続層を担体箔の上にキャストすること、及び
前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けた後、前記リチウムの連続層から前記担体箔を除去すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記担体箔が、銅箔を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記リチウムの連続層が、前記電極複合体に隣接する不動態化層を含み、前記不動態化層は、前記リチウムの連続層を前記電極複合体に押し付けた後に残留する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電極複合体への前記リチウムの連続層の前記押し付けの間に前記電極複合体のリチウム化の状態を監視すること、及び
前記電極複合体のリチウム化の前記状態の前記監視に基づいて、前記電極複合体への前記リチウムの連続層の前記押し付けのパラメータを調整すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1の電極と、
前記第1の電極に隣接する固体電解質と、
前記固体電解質に隣接する第2の電極と、
を備える固体電気化学セルであって、
前記第2の電極は、リチウムの連続層を第2の電極複合体に乾式積層処理することによってプレリチウム化されたものである、
固体電気化学セル。
【請求項14】
前記第2の電極は、第1のローラーおよび第2のローラーを含むカレンダープレスを通して乾式積層処理されたものであり、前記第1のローラーは前記第2のローラーの上方に位置づけされかつプレス間隔によって離される、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項15】
前記リチウムの連続層の少なくとも一部が、前記第2の電極複合体に吸収され、それによって前記第2の電極がプレリチウム化されている、請求項
13に記載の固体電気化学セル。
【請求項16】
前記リチウムの連続層が、乾式積層処理の前に0.1~20ミクロンの範囲の厚さを有する、請求項
13に記載の固体電気化学セル。
【請求項17】
前記リチウムの連続層がリチウム合金を含む、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項18】
前記リチウムの連続層が、前記第2の電極複合体の、集電体とは反対側の表面に近接して配置される、請求項13に記載の固体電気化学セル。
【請求項19】
電池電極の製造方法であって:
電極複合体と、集電体と、前記電極複合体に隣接するリチウムの連続層とを含む電極スタックを圧縮すること、
を含み、
前記圧縮の間に前記リチウムの連続層の少なくとも一部が前記電極複合体によって吸収され、それによって前記電極複合体がプレリチウム化される、
方法。
【請求項20】
前記電極スタックの前記リチウムの連続層は、前記電極複合体と前記集電体との間に配置される、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項21】
前記電極スタックの前記電極複合体は、前記リチウムの連続層と前記集電体との間に配置される、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項22】
前記電極複合体が、1%~15%の範囲のプレリチウム化を含む、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【請求項23】
前記電極複合体が、15%~30%の範囲のプレリウム化を含む、請求項19に記載の電池電極の製造方法。
【国際調査報告】