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特表2025-500911強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20250107BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20250107BHJP
   C21D 8/00 20060101ALI20250107BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/58
C21D8/00 B
C21D9/00 L
C22C38/00 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536078
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 KR2022020718
(87)【国際公開番号】W WO2023121179
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0183538
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,デ‐ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ホン‐ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ベク,デ‐ウ
【テーマコード(参考)】
4K032
4K042
【Fターム(参考)】
4K032AA01
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA08
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA22
4K032AA23
4K032AA24
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA31
4K032AA35
4K032AA36
4K032CA02
4K032CA03
4K032CB02
4K032CF01
4K032CF02
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042CA03
4K042CA05
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042DA01
4K042DA02
4K042DC02
4K042DC03
4K042DE05
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材は、重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなり、旧オーステナイト結晶粒度が35μm以下であり、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残留フェライト又はパーライトを含む微細組織を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなり、
旧オーステナイト結晶粒度が35μm以下であり、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残留フェライト又はパーライトを含む微細組織を有し、前記低温変態相は15°以上の高傾角粒界を基準としてパケットサイズが15μm以下であり、
5~50nmの変形誘起NbC析出物を1μm当たり10個以上、及び100nm以上の粗大析出物を5個以下有し、且つ、
その表面から厚さ方向に3/8t~5/8tの領域である鋼材中心部の空隙率が0.05mm/g以下である、ことを特徴とするフランジ用極厚物鋼材。
【請求項2】
前記鋼材は、重量%で、Zr:0.001~0.15%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のフランジ用極厚物鋼材。
【請求項3】
前記鋼材は、200~500mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載のフランジ用極厚物鋼材。
【請求項4】
前記鋼材は、590~820MPaの引張強度、440MPa以上の降伏強度、及び-50℃シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー値が50J以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフランジ用極厚物鋼材。
【請求項5】
前記鋼材の最大表面クラックの深さは、0.1mm以下(0を含む)であることを特徴とする、請求項1に記載のフランジ用極厚物鋼材。
【請求項6】
重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを準備した後、これを1100~1300℃の温度範囲に加熱する段階と、
加熱された前記スラブを1.3~2.4の鍛造比で1次アップセットした後、1.5~2.0のブルーム鍛造を行う段階と、
前記ブルーム鍛造された素材を1100~1300℃の温度範囲に再加熱する段階と、
前記再加熱されたブルーム素材を1.3~2.3の鍛造比で2次アップセットした後、1.65~2.25の鍛造比でラウンド鍛造する段階と、
前記ラウンド鍛造された素材を、下記関係式1によって定義される再結晶温度以下の温度で累積圧下量が10%以上となるように2.0~2.8の鍛造比で3次アップセットする段階と、
前記3次アップセットされた素材を穴加工した後、1100~1300℃の温度範囲に再加熱し、次いで、1.0~1.6の鍛造比でリングフォージングする段階と、
前記リングフォージングされた素材を、その中心部の温度測定基準820~930℃の温度範囲に加熱して5~600分間保持した後、常温まで空冷し、次いで、550~700℃に昇温して保持する段階と、を含む、ことを特徴とするフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
[関係式1]
nr(℃)=887+464×C+890×Ti+363×Al-357×Si+(6445×Nb-644×Nb1/2)+(732×V-230×V1/2
(ここで、C、Ti、Al、Si、Nb、及びVは、重量%である。)
【請求項7】
前記スラブは、連続鋳造工程、半連続鋳造工程、及びインゴットキャスティング(Ingot casting)のうち一つの工程を用いて製造されることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【請求項8】
前記1次アップセット時に打ち抜かれる鍛造面のサイズが最初700mm×1800mmである場合、1000~1200mm×1800~2000mmであることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【請求項9】
前記ブルーム鍛造の場合、鍛造完了時の鍛造面のサイズが最初1000~1200mm×1800~2000mmである場合、1450~1850mm×2100~2500mmであることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【請求項10】
前記2次アップセット及びラウンド鍛造を終了する場合、製品のサイズは1450~1850Φ×1300~1700mmであることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【請求項11】
前記3次アップセットを終了する場合、製品のサイズは2300~2800Φ×400~800mmであることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【請求項12】
前記鋼材で作製されたフランジの最大厚さは200~500mmであることができ、内径は4000~7000mmであり、外径は5000~8000mmであることを特徴とする、請求項6に記載のフランジ用極厚物鋼材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電タワー及びシステム等に使用可能な鋼材及びその製造方法に係り、より詳細には、強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電機は、環境にやさしい電気生産手段として脚光を浴びており、タワーフランジ(Tower Flange)、ベアリング及びメインシャフトなどの部品を含む。これらのうち、タワーフランジは、タワーの連結に必要な継ぎ目部品であって、通常、一つのタワーに5~7個のフランジが使用され、海上や極限地方にも設置されるため、高い耐久性が求められる。特に、大容量のエネルギー生産及び高効率化への要求に応えて、風力タワーも規模が増大しており、これに伴い、使用される鋼材も高強度化、高靭性化及び厚物化が継続的に要求されている実情である。素材の厚さが増大するほど総変形量が減少するため、微細組織が大きくなり、介在物や偏析など、材料内の欠陥により材質が劣化する傾向性を示す。したがって、鋼材の耐外部健全性(Soundness)を向上させるために、非金属介在物や偏析などの不純物の濃度を低減したり、表面及び材料内部のクラック、空隙などを極限的に制御したりする傾向にある。
【0003】
特に、厚さが200mmtを超える極厚物材の場合、素材中心部の変形量が多くないため、連鋳又は鋳造の際に発生する未凝固の収縮孔が鍛造工程で十分に圧着されないと、フランジの中心部に残留空隙の形態で残るようになる。
【0004】
このような残留空隙は、構造物において厚さの軸方向応力を受けたとき、クラックの開始点として作用し、結局、ラメラテア(Lamellar Tearing)形態で設備全体に破損を起こす可能性がある。したがって、変形量の少ないピアシング(穴あけ鍛造)及びリングフォージング(ring forging)鍛造(製品成形)の前に決して残留空隙が存在しないように中心空隙を十分に圧着する工程が必要である。
【0005】
これに関連する特許文献1は、厚板粗圧延工程において強圧下を適用する技術である。具体的に、圧延機の設計許容値(荷重及びトルク)に近接するように設定されたパス別の強圧下率から厚さ別の板噛み込みが発生する厚さ別の限界圧下率を決定する技術、粗圧延機の目標厚さを確保するために、パス別厚さ比の指数を調整して圧下率を分配する技術、そして厚さ別の限界圧下率に基づいて板噛み込みが発生しないように圧下率を修正する技術を活用したものであって、80mmtを基準として粗圧延の最終3パスにおける平均圧下率を約27.5%で印加することができる製造方法を提供する。しかし、上記圧延方法の場合、製品厚さ全体の平均圧下率を測定したものであって、最大厚さが200mmt以上である極厚物材の場合、残留空隙が存在する中心部まで高変形を印加させるには技術的困難が伴う。
【0006】
極厚物を製造する他の方法の一つは、圧延機よりもパス当たりの有効変形量が高い鍛造機を活用する方法である。特許文献2では、質量%で、C:0.08~0.20%、Si:0.40%以下、Mn:0.5~5.0%、P:0.010%以下、S:0.0050%以下、Cr:3.0%以下、Ni:0.1~5.0%、Al:0.010~0.080%、N:0.0070%以下、O:0.0025%以下を含有し、式1~2の関係を満たし、残部がFe及び不可避不純物で構成されたスラブを累積圧下量25%以上とする熱間鍛造を行い、Ac3点以上1200℃以下に加熱し、累積圧下量40%以上とする熱間圧延を行い、Ar3点以上の温度で350℃以下又はAr3点以下の低い温度まで急冷し、450~700℃の温度で焼戻し熱処理工程を通じて、板厚が100mmt以上であり、降伏強度が620MPa以上であり、-40℃での低温衝撃靭性評価時に吸収エネルギーが70J以上である厚肉高靭性高強度素材を製造することができると明示している。
【0007】
しかし、上記製造方法は、累積圧下量が高すぎる場合、局所的な変形集中により表面欠陥が発生する可能性があり、特に、鍛造前の鋳片状態で表層又は表層下の欠陥が存在する場合、鍛造過程で欠陥が伝播して圧延後の製品状態において表面品質がさらに劣化する可能性がある。また、パス当たりの鍛造圧下量が不足する場合、累積圧下量が高かったとしても、中心部に残留する空隙を十分に圧着することは困難であり、圧延工程も表層変形に比べて中心部の有効変形量が小さいため、極厚物材の中心部の空隙及び組織を制御する上で適切ではない。
【0008】
一方、特許文献3では、所定の合金組成で提供される素材を1200~1350℃に加熱し、累積圧下量を25%以上とする熱間鍛造を行い、Ac3点以上1200℃以下に加熱し、累積圧下量を40%以上とする熱間圧延を行い、Ac3点以上1050℃以下に再加熱し、Ac3点以上の温度で350℃以下又はAr3点以下の低い方の温度まで急冷し、450℃~700℃の温度で焼戻しを行う工程を通じて、降伏強度が620MPa以上である、100mmt以上の厚肉高強度鋼板を製造することができると開示している。
【0009】
しかし、上述した超高強度鋼板の場合、炭素当量(Ceq)及び硬化能指数(DI)が高く、鋳造中における表面クラックに脆弱であるだけでなく、焼ならし(Normalizing)熱処理で製造されるフランジ(Flange)用鋼材の場合、当該工程条件を容易に適用することができない。また、炭素当量(Ceq)と硬化能指数(DI)が高い場合、製鋼の2次冷却過程における表層硬質組織の生成により、鋳片表層のクラックが発生しやすく、鍛造過程でクラックが伝播することにより、最終製品の表面品質を劣化させる可能性がある。
【0010】
そこで、中心部の空隙を圧着して最終製品の内部健全性を向上させるために鍛造を行う方案が提案されているが、フランジ(Flange)用鋼材の適切な材質及び優れた表面品質を共に確保するための実質的な方案は提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2012-0075246号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10-2017-0095307号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2017-0095307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。通常の技術者であれば、本明細書の全体的な内容から本発明の更なる課題を理解する上で何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のフランジ用極厚物鋼材は、
重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなり、
旧オーステナイト結晶粒度が35μm以下であり、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残留フェライト又はパーライトを含む微細組織を有し、上記低温変態相は15°以上の高傾角粒界を基準としてパケットサイズが15μm以下であり、
5~50nmの変形誘起NbC析出物を1μm当たり10個以上、及び100nm以上の粗大析出物を5個以下有し、且つ、
その表面から厚さ方向に3/8t~5/8tの領域である鋼材中心部の空隙率が0.05mm/g以下である、ことを特徴とする。
【0015】
上記鋼材はZr:0.001~0.15%をさらに含む。
【0016】
上記鋼材は200~500mmの厚さを有する。
【0017】
また、鋼材は、590~820MPaの引張強度、440MPa以上の降伏強度、及び-50℃シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー値が50J以上である。
【0018】
上記鋼材の最大表面クラックの深さは0.1mm以下(0を含む)である。
【0019】
また、本発明のフランジ用極厚物鋼材の製造方法は、
重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなるスラブを準備した後、これを1100~1300℃の温度範囲に加熱する段階と、
上記加熱されたスラブを1.3~2.4の鍛造比で1次アップセットした後、1.5~2.0のブルーム鍛造を行う段階と、
上記ブルーム鍛造された素材を1100~1300℃の温度範囲に再加熱する段階と、
上記再加熱されたブルーム素材を1.3~2.3の鍛造比で2次アップセットした後、1.65~2.25の鍛造比でラウンド鍛造する段階と、
上記ラウンド鍛造された素材を下記関係式1によって定義される再結晶温度以下の温度で累積圧下量が10%以上となるように2.0~2.8の鍛造比で3次アップセットする段階と、
上記3次アップセットされた素材を穴加工した後、1100~1300℃の温度範囲に再加熱し、次いで、1.0~1.6の鍛造比でリングフォージングする段階と、
上記リングフォージングされた素材を、その中心部の温度測定基準820~930℃の温度範囲に加熱して5~600分間保持した後、常温まで空冷し、次いで、550~700℃に昇温して保持する段階と、を含む、ことを特徴とする。
【0020】
[関係式1]
nr(℃)=887+464×C+890×Ti+363×Al-357×Si+(6445×Nb-644×Nb1/2)+(732×V-230×V1/2
ここで、C、Ti、Al、Si、Nb、及びVは、重量%である。
【0021】
上記スラブは、連続鋳造工程、半連続鋳造工程、及びインゴットキャスティング(Ingot casting)のうち一つの工程を用いて製造する。
【0022】
上記1次アップセット時に打ち抜かれる鍛造面のサイズが最初700mm×1800mmである場合、1000~1200mm×1800~2000mmである。
【0023】
上記ブルーム鍛造の場合、鍛造完了時の鍛造面のサイズが最初1000~1200mm×1800~2000mmである場合、1450~1850mm×2100~2500mmである。
【0024】
上記2次アップセット及びラウンド鍛造を終了する場合、製品のサイズは1450~1850Φ×1300~1700mmである。
【0025】
上記3次アップセットを終了する場合、製品のサイズは2300~2800Φ×400~800mmである。
【0026】
上記鋼材で作製されたフランジの最大厚さは200~500mmであることができ、内径は4000~7000mm、外径は5000~8000mmである。
【発明の効果】
【0027】
上述のような構成の本発明は、鍛造工程を最適化することにより、鋼材中心部の空隙を圧着して最終製品の内部健全性を向上させることができ、強度だけでなく低温衝撃靭性に優れたフランジ用として利用可能な極厚物鋼材を効果的に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及び製品の製造方法に関するものであって、以下では、本発明の好ましい実現例について説明する。本発明の実現例は様々な形態に変形することができ、本発明の範囲は以下に説明される実現例に限定されるものとして解釈されてはならない。本実現例は、当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に本発明をより詳細に理解させるために提供されるものである。
【0029】
以下、本発明の強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材についてより詳細に説明する。
【0030】
本発明の強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材は、重量%で、C:0.05~0.2%、Si:0.05~0.5%、Mn:1.0~2.0%、Al:0.005~0.1%、P:0.01%以下、S:0.015%以下、Nb:0.005~0.07%、V:0.001~0.3%、Ti:0.001~0.05%、Cr:0.01~0.3%、Mo:0.01~0.12%、Cu:0.01~0.6%、Ni:0.05~4.0%、Ca:0.0005~0.004%を含み、残りがFe及びその他の不可避不純物からなり、旧オーステナイト結晶粒度が35μm以下であり、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残留フェライト又はパーライトを含む微細組織を有し、上記低温変態相は15°以上の高傾角粒界を基準としてパケットサイズが15μm以下であり、5~50nmの変形誘起NbC析出物を1μm当たり10個以上、及び100nm以上の粗大析出物を5個以下有し、且つ、その表面から厚さ方向に3/8t~5/8tの領域である鋼材中心部の空隙率が0.05mm/g以下である。
【0031】
以下では、本発明の合金組成についてより詳細に説明する。以下、特に断りのない限り、合金組成に関して記載された%及びppmは重量を基準とする。
【0032】
・炭素(C):0.05~0.20%
炭素(C)は、基本的な強度を確保する上で最も重要な元素であるため、適切な範囲内で鋼中に含まれる必要があり、このような添加効果を得るために0.05%以上の炭素(C)を添加することができる。好ましくは、0.10%以上の炭素(C)を添加することができる。一方、炭素(C)の含量が一定レベルを超えると、QT熱処理時に硬化能が過度に増大し、母材の強度及び硬度を過度に超える可能性があり、これにより鍛造加工中に表面クラックが発生し、最終製品における低温衝撃靭性特性が低下する可能性がある。したがって、本発明では、炭素(C)含量を0.20%に制限することができ、より好ましい炭素(C)含量の上限は0.18%であることができる。
【0033】
・シリコン(Si):0.05~0.50%
シリコン(Si)は置換型元素であって、固溶強化により鋼材の強度を向上させ、強力な脱酸効果を有するため、清浄鋼の製造に必須の元素である。したがって、シリコン(Si)は0.05%以上添加することができ、より好ましくは0.20%以上添加することができる。一方、シリコン(Si)が多量添加される場合、MA(Martensite-Austenite)相を生成させ、基地の強度を過度に増大させて極厚物製品の表面品質に劣化を招く可能性があるため、その含量の上限を0.50%に制限することができる。より好ましいシリコン(Si)含量の上限は0.40%であることができる。
【0034】
・マンガン(Mn):1.0~2.0%
マンガン(Mn)は、固溶強化により強度を向上させ、低温変態相が生成されるように硬化能を向上させる有用な元素である。したがって、590MPa以上の引張強度を確保するために、1.0%以上のマンガン(Mn)を添加することが好ましい。より好ましいマンガン(Mn)含量は1.1%以上であることができる。一方、マンガン(Mn)は、硫黄(S)と共に延伸された非金属介在物であるMnSを形成して靭性を低下させ、衝撃開始点として作用し得るため、製品の低温衝撃靭性を急激に低下させる要因となり得る。したがって、マンガン(Mn)含量は2.0%以下に管理することが好ましく、より好ましいマンガン(Mn)含量は1.5%以下であることができる。
【0035】
・アルミニウム(Al):0.005~0.1%
アルミニウム(Al)は、シリコン(Si)と共に製鋼工程における強力な脱酸剤の一つであり、このような効果を得るためには0.005%以上添加されることが好ましい。より好ましいアルミニウム(Al)含量の下限は0.01%であることができる。一方、アルミニウム(Al)含量が過剰な場合、脱酸の結果物として生成される酸化性介在物中のAlの分率が過度に増大し、そのサイズが粗大となり、精錬中に当該介在物の除去が難しくなるという問題があるため、低温衝撃靭性を低下させる要因となり得る。したがって、アルミニウム(Al)含量は0.1%以下に管理することが好ましい。より好ましいアルミニウム(Al)含量は0.07%以下であることができる。
【0036】
・リン(P):0.010%以下(0%を含む)、硫黄(S):0.0015%以下(0%を含む)
リン(P)及び硫黄(S)は、結晶粒界に脆性を誘発したり、粗大な介在物を形成させて脆性を誘発したりする元素である。したがって、脆性割れ伝播抵抗性を向上させるために、リン(P)を0.010%以下に制限し、硫黄(S)を0.0015%以下に制限することが好ましい。
【0037】
・ニオブ(Nb):0.005~0.07%
ニオブ(Nb)は、NbC又はNbCNの形態で析出して母材の強度を向上させる元素である。また、高温再加熱時に固溶したニオブ(Nb)は、鍛造時に再結晶温度以下で変形誘起の形態で非常に微細に析出してオーステナイトの成長を抑制するため、組織を微細化させる効果がある。したがって、ニオブ(Nb)は0.005%以上添加されることが好ましく、より好ましいニオブ(Nb)含量は0.01%以上であることができる。一方、ニオブ(Nb)が過剰に添加される場合、未溶解のニオブ(Nb)がTiNb(C、N)の形態で生成され、低温衝撃靭性を阻害させる要因となるため、ニオブ(Nb)含量の上限は0.07%に制限することが好ましい。より好ましいニオブ(Nb)含量は0.065%以下であることができる。
【0038】
・バナジウム(V):0.001~0.3%
バナジウム(V)は、再加熱時にほぼ全て再固溶するため、後続する圧延時に析出や固溶による強化効果は不十分であるが、極厚物鍛造材の場合、空冷速度が非常に遅いため、冷却過程又は焼戻し(Tempering)熱処理過程で非常に微細な炭窒化物として析出し、強度を向上させる効果がある。このような効果を十分に得るためには、0.001%以上のバナジウム(V)を添加する必要がある。より好ましいバナジウム(V)含量の下限は0.01%であることができる。一方、その含量が過剰な場合、高い硬化能によりスラブの表層硬度が過度に増大し、フランジの加工時に表面クラック等の要因として作用し得るだけでなく、製造コストが急激に上昇して商業的に有益ではない。したがって、バナジウム(V)含量は0.3%以下に制限することができる。より好ましいバナジウム(V)含量は0.25%以下であることができる。
【0039】
・チタン(Ti):0.001~0.05%
チタン(Ti)は、再加熱時にTiNとして析出して高温における旧オーステナイト結晶粒の成長を抑制し、低温靭性を大きく向上させる成分である。このような効果を得るためには、0.001%以上のチタン(Ti)を添加することが好ましい。一方、チタン(Ti)が過剰に添加される場合、連鋳ノズルの目詰まりや中心部の晶出による低温靭性が減少する可能性がある。また、チタン(Ti)は、窒素(N)と結合して厚さ中心部に粗大なTiN析出物を形成し、製品の伸び率を低下させるため、鍛造過程において均一伸び率を低下させて表面クラックを引き起こす可能性がある。したがって、チタン(Ti)含量は0.05%以下であることができる。好ましいチタン(Ti)含量は0.03%以下であることができ、より好ましいチタン(Ti)含量は0.018%以下であることができる。
【0040】
・クロム(Cr):0.01~0.30%
クロム(Cr)は、セメンタイトの球状化速度を遅らせることで強度の低下を防止する効果があり、冷却過程において焼入れ性を向上させる成分である。このような効果のために、0.01%以上のクロム(Cr)を添加することができる。一方、クロム(Cr)含量が過剰な場合、M23等のようなCr-Rich粗大炭化物のサイズ及び分率が増大して製品の衝撃靭性が低下し、製品内のニオブ(Nb)の固溶度及びNbCのような微細析出物の分率が減少するため、製品の強度低下が問題となる可能性がある。したがって、本発明では、クロム(Cr)含量の上限を0.30%に制限することができる。好ましいクロム(Cr)含量の上限は0.25%であることができる。
【0041】
・モリブデン(Mo):0.01~0.12%
モリブデン(Mo)は、粒界強度を増大させて硬化能を増大させ、析出物内に固溶して強度を向上させる元素であって、製品の強度及び延性の増大に効果的に寄与する元素である。また、モリブデン(Mo)は、リン(P)などの不純物元素の粒界偏析による靭性低下を防止する効果がある。このような効果のために、0.01%以上のモリブデン(Mo)を添加することができる。但し、モリブデン(Mo)は高価な元素であり、過度に添加する場合、製造コストが大きく上昇する可能性があるため、モリブデン(Mo)含量の上限を0.12%に制限することができる。
【0042】
・銅(Cu):0.01~0.60%
銅(Cu)は、フェライト内の固溶強化により基地相の強度を大きく向上させることができる元素である。このような効果のために0.01%以上の銅(Cu)を含むことができる。より好ましい銅(Cu)含量は0.03%以上であることができる。但し、銅(Cu)の含量が過剰な場合、鋼板の表面にスタークラックを誘発する可能性が高くなり、銅(Cu)は高価な元素であって、製造コストが大きく上昇するという問題が生じる可能性がある。したがって、本発明では、銅(Cu)含量の上限を0.60%に制限することができる。好ましい銅(Cu)含量の上限は0.5%であることができる。
【0043】
・ニッケル(Ni):0.05~4.00%
ニッケル(Ni)は、低温で積層欠陥を増大させ、転位の交差スリップ(Cross slip)を容易にして衝撃靭性を向上させ、焼入れ性を向上させるとともに固溶強化度を向上させて、強度向上に効果的に寄与する元素である。このような効果のためには、0.05%以上のニッケル(Ni)を添加することができる。好ましいニッケル(Ni)含量は0.10%以上であることができる。一方、ニッケル(Ni)が過剰に添加される場合、高いコストにより製造コストも上昇させる可能性があるため、ニッケル(Ni)含量の上限を4.00%に制限することができる。好ましいニッケル(Ni)含量の上限は3.5%であることができる。
【0044】
・カルシウム(Ca):0.0005~0.0040%
アルミニウム(Al)による脱酸後、カルシウム(Ca)を添加すると、MnS介在物を形成する硫黄(S)と結合してMnSの生成を抑制するとともに、球状のCaSを形成して水素誘起割れによるクラックの発生を抑制する効果がある。不純物として含有される硫黄(S)をCaSとして十分に形成させるためには、0.0005%以上のカルシウム(Ca)を添加することが好ましい。但し、その添加量が過剰になると、CaSを形成して残ったカルシウム(Ca)が酸素(O)と結合して粗大な酸化性介在物を生成することになり、これは、鍛造時に延伸及び破壊され、伸び率及び低温衝撃靭性特性を低下させる要因 となり得る。したがって、カルシウム(Ca)含量の上限を0.0040%に制限することができる。
【0045】
・ジルコニウム(Zr):0.001~0.15%
本発明の鋼材は、選択的にZrを0.001~0.15の範囲で含むことができる。ジルコニウム(Zr)は強い炭化物生成元素であって、ZrC形態で存在することができ、VCやNbCのように析出強化の形態で基地相の強度を向上させることができる。このような効果のために、0.001%以上のジルコニウム(Zr)を添加することができる。しかし、過剰に添加される場合、高いコストにより製造コストも上昇させる可能性があるため、Zr含量の上限は0.15%であることができる。
【0046】
本発明の強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材及びその製品は、上述した成分以外に、残りのFe及びその他の不可避不純物を含むことができる。但し、通常の製造過程では原料又は周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入する可能性があるため、これを全面的に排除することはできない。これらの不純物は、本技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも分かるものであるため、本明細書では、その全ての内容について特に言及してはいない。さらに、前述した成分以外に、有効な成分の更なる添加が全面的に排除されるものではない。
【0047】
一方、本発明の極厚物鋼材は、旧オーステナイト結晶粒度が35μm以下であり、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残部フェライト又はパーライトを含む微細組織を有する。
【0048】
本発明において、最終製品の微細組織における旧オーステナイト結晶粒度は35μm以下である。このような旧オーステナイト結晶粒度が35μmを超えると、衝撃破断時にクラック経路(Crack Path)の長さが短くなり、DBTT(Ductile Brittle Transition Temperature)が増大して低温衝撃靭性が劣化する。したがって、旧オーステナイト結晶粒度は35μm以下であることが好ましい。
【0049】
また、本発明の鋼材は、ベイナイト及びマルテンサイトのうち1種以上を90面積%以上、残部フェライト又はパーライトを含む微細組織を有する。もし上記ベイナイト、マルテンサイトのような低温変態相の相分率が95面積%未満である場合、基地相の強度が低下するため、本発明において提示する引張強度590~820MPa及び降伏強度440MPa以上の材質を満たすことができない。
【0050】
また、本発明において、上記低温変態相は15°以上の高傾角粒界を基準としてパケットサイズが15μm以下である。Matrix基地組織がベイナイトやマルテンサイトである場合、衝撃試験時のクラックが高傾角粒界を基準としたパケットバウンダリに沿って伝播するため、パケットサイズが大きいと、DBTTが増大して衝撃靭性が劣化する可能性がある。したがって、本発明において要求される-50℃シャルピー衝撃試験の吸収エネルギー値を50J以上確保するためには、パケットサイズが15μm以下であることが適切である。
【0051】
また、本発明の鋼材は、その基地組織に5~50nmの変形誘起NbC析出物を1μm当たり10個以上、及び100nm以上の粗大析出物を5個以下有することができる。もし、上記5~50nmの変形誘起NbC析出物を10個未満有する場合、析出強化効果が弱くなり、また、上記100nm以上の粗大析出物の個数が5個を超える場合は、同様に、Pinning効果及び析出強化効果が失われるため、本発明において要求される590~820MPaの引張強度及び440MPa以上の降伏強度を確保することが容易ではない。
【0052】
さらに、本発明の鋼材は、その表面から厚さ方向に3/8t~5/8tの領域である鋼材中心部の空隙率が0.05mm/g以下である。
【0053】
また、本発明の極厚物鋼材は200~500mmの厚さを有することができる。
【0054】
また、本発明の極厚物鋼材は、590~820MPaの引張強度、440MPa以上の降伏強度、及び-50℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー値が50J以上であることができる。
【0055】
そして、上記鋼材の最大表面クラックの深さは0.1mm以下(0を含む)であることができる。
【0056】
次に、本発明の他の一側面である強度及び低温衝撃靭性に優れたフランジ用極厚物鋼材の製造方法について詳細に説明する。
【0057】
本発明の極厚物鋼材の製造方法は、上述したような組成成分を有するスラブを準備した後、これを1100~1300℃の温度範囲に加熱する段階と、上記加熱されたスラブを1.3~2.4の鍛造比で1次アップセットした後、1.5~2.0のブルーム鍛造を行う段階と、上記ブルーム鍛造された素材を1100~1300℃の温度範囲に再加熱する段階と、上記再加熱されたブルーム素材を1.3~2.3の鍛造比で2次アップセットした後、1.65~2.25の鍛造比でラウンド鍛造する段階と、上記ラウンド鍛造された素材を、下記関係式1によって定義される再結晶温度以下の温度で累積圧下量が10%以上となるように2.0~2.8の鍛造比で3次アップセットする段階と、上記3次アップセットされた素材を穴加工した後、1100~1300℃の温度範囲に再加熱し、次いで、1.0~1.6の鍛造比でリングフォージングする段階と、上記リングフォージングされた素材をその中心部の温度測定基準820~930℃の温度範囲に加熱して5~600分間保持した後、常温まで空冷し、次いで、550~700℃に昇温して保持する段階と、を含む。
【0058】
スラブ加熱
まず、本発明では、上記のような組成成分を有するスラブを準備した後、これを1100~1300℃の温度範囲に加熱する。
【0059】
鋳造中に形成されたチタン(Ti)やニオブ(Nb)の複合炭窒化物又はTiNb(C、N)粗大晶出物などを再固溶させるために、一定の温度範囲以上でスラブを加熱する必要がある。また、1次アップセット鍛造前にスラブを再結晶温度以上まで加熱させて保持することにより組織を均質化させ、鍛造終了温度を十分に高く確保し、鍛造過程で発生し得る表層クラックを最小化するために、一定の温度範囲以上でスラブを加熱することが好ましい。したがって、本発明のスラブ加熱は1100℃以上の温度範囲で行うことが好ましい。
【0060】
これに対し、スラブ加熱温度が過度に高い場合、高温酸化スケールが過度に発生する可能性があり、高温加熱及び保持により製造コストの増加が過度になる可能性がある。したがって、本発明におけるスラブの1次加熱は1300℃以下の範囲で行うことが好ましい。
【0061】
1次アップセット及びブルーム鍛造
次いで、本発明では、上記加熱されたスラブを1.3~2.4の鍛造比で1次アップセットした後、1.5~2.0のブルーム鍛造を行う。
【0062】
アップセット(Upsetting)は、長さ方向を軸として垂直に強塑性変形を行う方法であって、1次アップセット時の鍛造比は1.3~2.4が好ましく、より好ましくは1.5~2.0であることができる。ここで、鍛造比とは、鍛造により変化する断面積の割合をいう。このような1次アップセット時に、打ち抜かれる鍛造面のサイズが最初700mm×1800mmである場合、1000~1200mm×1800~2000mmであることができる。
【0063】
1次アップセット時の鍛造比が1.3未満である場合、スラブ中心部に残留するポロシティ(Porosity)を十分に圧着し難い。したがって、本発明の最終製品において要求される空隙率を、適切なレベルである0.05mm/g以下に制御し難いため、中心部の低温衝撃靭性を確保することが容易ではない。一方、1次アップセット時の鍛造比が2.4を超える場合、鍛造過程で座屈が発生するため、表面品質及びフランジ製品において要求される適切な形状制御を行うことが容易ではない。したがって、1次アップセット時の鍛造比は1.3~2.4が好ましい。
【0064】
そして、本発明では、上記1次アップセットされた素材に1.5~2.0の鍛造比でブルーム鍛造を行う。
【0065】
ブルーム鍛造は、1次アップセットされた素材をより圧着してブルームの形態に加工する方法であって、上下面ともに幅又は長さの一定方向に加工しながら面積を広げる方法である。上記ブルーム鍛造の場合、鍛造完了時の鍛造面のサイズが最初1000~1200mm×1800~2000mmである場合、1450~1850mm×2100~2500mmであることができる。ブルーム鍛造の場合、鍛造比は1.5~2.0が好ましい。その理由は、もし上記鍛造比が1.5未満である場合、アップセット鍛造と同様に、本発明において要求される適切な空隙品質を確保し難く、2.0を超えると、表面クラックが発生する可能性があるためである。
【0066】
鍛造の進行方向は長さ方向及び幅方向のいずれも可能であるが、長さ方向の場合、鋳造組織がより緻密に構成されているため、表層組織の伸び率が高く加工性に優れることができる。したがって、表面クラックの観点から、長さ方向のブルーム鍛造が幅方向よりもさらに適切であり得る。
【0067】
再加熱
そして、本発明では、上記ブルーム鍛造された素材を1100~1300℃の温度範囲に再加熱する。
【0068】
上記ブルーム鍛造が終了する場合、ブルーム表層温度は950℃以下であり、加工を継続する場合、表面クラック又は素材破断が発生する可能性がある。したがって、ブルーム鍛造後、再び素材を1100~1300℃の温度範囲に加熱することができる。上述したように、晶出物の再固溶、組織均質化及び表面クラック防止などの理由から1100℃以上に加熱することが好ましく、スケール過剰、結晶粒の粗大化などの問題のため、1300℃以下に制御することが好ましい。
【0069】
2次アップセット-ラウンド鍛造
次いで、本発明では、上記再加熱されたブルーム素材を1.3~2.3の鍛造比で2次アップセットした後、1.65~2.25の鍛造比でラウンド鍛造する。
【0070】
すなわち、昇熱が終わったブルームに対して、1.3~2.3の鍛造比で2次アップセットを行い、次いで、ブルームをフランジ縁の円形に加工するために1.65~2.25の鍛造比でラウンド鍛造を行う。上記2次アップセット及びラウンド鍛造を終了する場合、製品のサイズは1450~1850Φ×1300~1700mmであることができる。
【0071】
上記2次アップセット及びラウンド鍛造の際、鍛造比が本発明において要求するレベル未満である場合、最終製品における中心部の空隙率を0.05mm/g以下に制御し難く、鋼材中心部の低温衝撃靭性を確保することが容易ではない。一方、本発明の鍛造比の基準を超える場合、座屈及び表面クラックの発生、形状不良などの問題のため、所望のフランジ製品形態に加工することができない。
【0072】
3次アップセット(変形誘起析出物の生成)
後続して、本発明では、上記ラウンド鍛造された素材を、下記関係式2によって定義される再結晶温度以下の温度で累積圧下量が10%以上となるように2.0~2.8の鍛造比で3次アップセットする。
【0073】
上記円柱状に加工された素材は、穴加工(ピアシング)前に3次アップセットによって適切なフランジの厚さに加工されることができる。上記3次アップセットを終了する場合、製品のサイズは2300~2800Φ×400~800mmであることができる。
【0074】
3次アップセットの鍛造比は2.0~2.8であることができ、鍛造比が不足又は超える場合は、上述した残留空隙の制御及び表面クラック/形状制御の不可等の問題が発生する可能性がある。
【0075】
このような3次アップセット過程において重要なのは、鋼材の再結晶温度(Recrystallization Temperature、Rst)以下の温度での累積圧下量であり、累積圧下量が10%以上となるように鍛造圧延を行う。このとき、再結晶温度は、下記関係式2によって計算することができる。
【0076】
[関係式2]
nr(℃)=887+464×C+890×Ti+363×Al-357×Si+(6445×Nb-644×Nb1/2)+(732×V-230×V1/2
ここで、C、Ti、Al、Si、Nb、及びVは、重量%である。
【0077】
もし、上記再結晶温度以下の温度で累積圧下量が10%未満である場合、5~50nmの変形誘起された超微細NbC又はNbCN析出物の生成が容易ではなく、1μm当たりの析出物の個数が10個未満であるか、又は析出物のサイズが100nm以上の粗大析出物の個数が5個を超える可能性がある。微細析出物の量が減少したり、サイズが増大したりした場合、析出強化効果が僅かであり、以後の焼入れ(Quenching)のための再加熱(Reheating)昇温時に、Pinning効果が減少するため、製品中心部の旧オーステナイト平均結晶粒度を35μm以下に確保することが容易ではない。したがって、再結晶温度以下の温度で累積圧下量を10%以上に制御することが好ましく、より好ましくは15%以上、最も好ましくは20%以上であることができる。
【0078】
穴加工及びリングフォージング
次いで、本発明では、上記3次アップセットされた素材を穴加工した後、1100~1300℃の温度範囲に再加熱し、続いて1.0~1.6の鍛造比でリングフォージングする。
【0079】
上記3次アップセットが終了した後、500~1000Φのパンチを用いて素材の中央部に穴を加工することができる。
【0080】
上記穴加工された素材は、再び前述の1100~1300℃の温度領域に再加熱され、以後、最終フランジリング(Ring)の形態に加工されることができる。上記鋼材で作製されたフランジの最大厚さは200~500mmであることができ、内径は4000~7000mm、外径は5000~8000mmであることができる。リングフォージングは、空隙圧着よりも最終形状及び寸法制御が重要な工程であるため、強塑性加工を適用しない。したがって、鍛造比は1.0~1.6であることができ、より好ましくは1.2~1.4であることができる。
【0081】
一方、本発明において、上記提示した全ての鍛造工程における変形速度は1/s~4/sであることができる。1/s未満の変形速度では、仕上げ鍛造の温度が低下し、表層クラックが発生する余地がある。これに対し、未再結晶域において4/s超の高変形速度を適用する場合、過度な局所加工硬化による伸び率の低下により表面クラックを誘発する可能性がある。
【0082】
焼入れ及び焼戻し熱処理
最後に、本発明では、上記リングフォージングされた素材を、その中心部(t/2)の温度測定基準820~930℃の温度範囲に加熱して5~600分間保持した後、常温まで空冷し、次いで、550~700℃に昇温して保持する焼入れ及び焼戻し熱処理を行う。
【0083】
焼入れ熱処理時に、加熱温度が820℃未満であるか、保持時間が5分未満である場合、鍛造後の冷却中に生成された炭化物や粒界に偏析した不純元素の再固溶が円滑に起こらず、熱処理後の鋼材の低温靭性が大きく低下する可能性がある。一方、加熱温度が930℃を超えるか、保持時間が600分を超える場合、旧オーステナイト結晶粒度が本発明において要求される35μmを超えるか、又はNb(C、N)、V(C、N)等の析出相の粗大化により、強度及び低温衝撃靭性が劣化する可能性がある。
【0084】
一方、冷却速度は、製品の中心部(t/2)を基準として0.5℃/s~30℃/sであることができる。冷却速度が0.5℃/s未満である場合、本発明において要求される低温変態組織であるベイナイト又はマルテンサイトの分率を90%以上確保することができないため、適切な強度を確保し難く、30℃/sを超えると、強度が過度に増大して低温衝撃靭性が劣化する可能性がある。したがって、焼入れ時の冷却速度は0.5℃/s~30℃/sであることが好ましい。
【0085】
一方、焼戻しは550~700℃の温度領域で5~600min保持されることができる。焼戻し温度が550℃以下である場合、焼入れ後に炭素の拡散が適切に起こらないため、強度が高くなりすぎ、これにより-50℃低温衝撃靭性が劣化する可能性がある。これに対し、焼戻し温度が700℃を超えると、二相域加熱によって空冷過程で生成されるFresh-Martensiteにより、やはり低温衝撃靭性が劣化する可能性がある。したがって、焼戻し温度は550~700℃であることが好ましい。
【0086】
焼戻しの保持時間が5min未満である場合、温度が低い理由と同様に、焼入れ以後の転位密度が適切に低くならず、炭素の拡散が十分に起こらないため強度が過度に高く、これにより低温衝撃靭性が低下する。また、600minを超えて保持する場合は、炭素が過度に球状化及び粗大化して衝撃靭性が劣化する。したがって、焼戻し熱処理の適切な保持時間は5~600minとすることが好ましい。
【実施例
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。
【0088】
【表1】
*表1において、成分元素の含量単位は重量%であるが、P、S及びCaの単位はppmである。そして、残りの成分はFeと不可避不純物である。
【0089】
上記表1の合金成分を有する厚さ700mmのスラブを製造した。このようなスラブを用いて、下記表2~3の工程条件である、スラブの準備、鍛造工程(再加熱及び1次アップセット、ブルーム鍛造、再加熱、2次アップセット-ラウンド鍛造、3次アップセット、再加熱及びリングフォージング)、並びに焼入れ及び焼戻し熱処理を経て、最終320mmtのフランジを製造した。このとき、ブルーム鍛造が完了した後、2次アップセットのための再加熱温度は1230℃±10℃であり、2次アップセット後のラウンド鍛造の鍛造比は2.0として同様に適用された。その他、下記表2~3に記載された工程以外の工程には、全て本発明の範囲を満たす工程条件を適用した。
【0090】
その後、上記製造された各試験片の物性値を測定し、下記表4に示した。
【0091】
ここで、旧オーステナイト結晶粒度及び低温変態相(ベイナイト及び/又はマルテンサイト)の分率は、QT熱処理後の中心部の組織試験片から試験片を採取し、イメージ自動分析器を用いて測定し、ベイナイトのパケットサイズはEBSD(Electron Back Scattered Diffraction)を通じてboundary conditionを15°に設定し、自動分析を行った。一方、本実施例において、発明例及び比較例ともにおける低温変態相を除いた残留組織は、フェライト及び/又はパーライトである。
【0092】
また、降伏/引張強度はASTM A370による常温引張試験によって評価され、降伏強度の場合、0.2%オフセットを適用した。また、各試験片に対する衝撃靭性は、シャルピーV-Notch Testを通じて、当該温度で3回ずつ測定された吸収エネルギー値の平均を使用した。
【0093】
なお、鋼材の断面で観察される5~50nmの変形誘起NbC析出物の個数等はTEMを活用して測定した。NbCの回折パターン及びEDXマッピングによりNbC析出物を確認し、1μmに位置するNbC析出物の個数をカウントした。
【0094】
そして、製品中心部の空隙率は、密度(g/mm)を測定して逆数(mm/g)をとることにより測定した。
【0095】
また、各試験片の表面を目視で観察した後、表面クラックが形成された地点で研削を行い、クラックがなくなるまでの研削長さを表面クラックの長さとして測定した。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
*表3において、a*は鋼材の断面で観察される5~50nmの変形誘起NbC析出物の1μm当たりの個数であり、b*は100nm以上の粗大析出物の個数を示す。
【0099】
上記表1~3から分かるように、本発明が提案する合金組成及び製造条件を満たす発明例1-5の場合、いずれも優れた強度及び-50℃での優れた低温衝撃靭性だけでなく、フランジ製品状態において良好な表面品質を確保できることが分かる。
【0100】
これに対し、比較例1~12は、本発明が提案する合金組成は満たしているものの、製造条件を満たしていない場合であり、本発明が提案するフランジ製品状態での旧オーステナイト粒度、低温変態相の分率及びパケットサイズ、空隙率などの特性を満たさないため、強度及び低温衝撃靭性値が低いレベルであることが分かる。また、材質が良好な場合であっても、鍛造の各段階で鍛造比の条件を満たさない場合には、表面クラック又は貫通クラックの発生により製品状態における不良な表面品質特性を確認することができる。
【0101】
一方、比較例13~16は、本発明が提案する製造条件は満たしているものの、合金組成を満たしておらず、強度超過(衝撃靭性が不足)又は強度不足など、品質レベルが低いことが分かる。
【0102】
上述したように、本発明の詳細な説明では、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の範疇から逸脱しない範囲内で、様々な変形が可能であることは言うまでもない。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、これと均等なものによって定められるべきである。

【国際調査報告】