IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インフィニット パワー カンパニー ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-発電機システム 図1
  • 特表-発電機システム 図2
  • 特表-発電機システム 図3
  • 特表-発電機システム 図4
  • 特表-発電機システム 図5
  • 特表-発電機システム 図6
  • 特表-発電機システム 図7
  • 特表-発電機システム 図8
  • 特表-発電機システム 図9
  • 特表-発電機システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】発電機システム
(51)【国際特許分類】
   G21H 1/06 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
G21H1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536109
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 AU2022051512
(87)【国際公開番号】W WO2023108220
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2118322.3
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226564
【氏名又は名称】インフィニット パワー カンパニー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトヘッド スティーヴン クリストファー
(57)【要約】
放射性核種材料(7)、及びサンドイッチ構造を含む発電機システムであって、前記サンドイッチ構造が、n型半導体材料の層(5)と、真性n型半導体材料の層(4)と、p型半導体材料の層(3)と、金属電極(2、6)であって、一方の電極6が前記n型半導体材料と直接接触し、他方の電極2が前記p型半導体材料と接触し、それらの間に金属-半導体接合部を形成し、前記放射性核種材料から受け取られた放射線放射は、前記金属-半導体接合部において電気エネルギーに変換される、金属電極と、負荷に接続されたときに前記電気エネルギーが容易に流れるようにする、前記電極に接続された電気コンタクトと、を含む、発電機システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種材料、及びサンドイッチ構造を含む発電機システムであって、前記サンドイッチ構造が、
n型半導体材料の層と、
真性n型半導体材料の層と、
p型半導体材料の層と、
金属電極であって、一方の電極が前記n型半導体材料と直接接触し、他方の電極が前記p型半導体材料と接触し、それらの間に金属-半導体接合部を形成し、前記放射性核種材料から受け取られた放射線放射は、前記金属-半導体接合部において電気エネルギーに変換される、金属電極と、
負荷に接続されたときに前記電気エネルギーが容易に流れるようにする、前記電極に接続された電気コンタクトと、
を含む、発電機システム。
【請求項2】
前記発電機システムは、前記サンドイッチ構造の複数の反復を含み、その結果、前記放射性核種材料からの前記放射線放射は、前記金属-半導体接合部の前記複数の反復を通過するようになる、請求項1に記載の発電機システム。
【請求項3】
前記真性n型半導体材料は、酸化亜鉛である、請求項1又は請求項2に記載の発電機システム。
【請求項4】
前記n型材料は、アルミニウム亜鉛酸化物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発電機システム。
【請求項5】
前記アルミニウム亜鉛酸化物は、約98Zn対2Alの原子比を有する、請求項4に記載の発電機システム。
【請求項6】
前記サンドイッチ構造の10以上の反復は、ユニットに配置され、複数のそのようなユニットは、遮蔽された空洞内に配置され、前記空洞は、また放射性材料の1つ以上の区分を含む、請求項2に記載の発電機システム。
【請求項7】
前記サンドイッチは、基板上に形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の発電機システム。
【請求項8】
前記酸化亜鉛の薄層は、150~1500nmの厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の発電機システム。
【請求項9】
前記酸化亜鉛の薄層の厚さは、1250nm以下である、請求項15に記載の発電機システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の発電機システムを包囲するハウジングを含む電力供給デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電の分野に関し、特に、放射性放出からのエネルギーから生成される電気エネルギーに関する。本発明の実用的な用途は、パワーセルデバイスの形成及び他の用途において見出すことができる。
【背景技術】
【0002】
パワーセルは、外部負荷を駆動するための自己完結型の電気エネルギー源を提供する。パワーセルの一般的な例は、電気化学電池である。電気化学電池は、比較的低コストで、ある期間にわたって電力ニーズを提供するのに有効であるが、制限因子は、材料の種類及び重量によって定義される利用可能なエネルギーである。それらの質量に関する電気化学電池のエネルギー貯蔵及びエネルギー密度に限界があるので、代替パワーセル、例えば、エネルギー密度のより高い理論的限界により、放射性同位体によって電力供給される電池等を生産するための種々の試みが行われてきた。
【0003】
放射性同位体駆動電池には、いくつかの異なるタイプがある。そのようなタイプの一つは、放射性物質の崩壊中に生成された熱を使用して電気エネルギーを生成する放射熱発生器(RTG)である。これらのデバイスは、熱エネルギーの電気エネルギーへの変換効率が低い。したがって、RTGは、概して、Pu-238等の非常に高エネルギーの放射性同位体とともに使用され、電力源を生成するので、通常、実質的な遮蔽を必要とする。さらに、出力される電力も低い。
【0004】
放射性同位体駆動パワーセルの別のタイプは、放射性同位体、発光材料及び光電池を使用する間接変換デバイスである。放射性同位体によって放出される崩壊粒子は、発光材料を励起する。発光材料によって放出された光は、光電池によって吸収されて電気を生成する。このタイプの電池は、一般に、二段階変換のため効率が低く、発光材料が放射による放射線損傷を受けるため寿命が比較的短い。
【0005】
放射性同位体駆動パワーセルの別の例は、放射性同位体及び半導体材料を使用する直接変換デバイスである。従来の半導体は、放射性同位体の崩壊生成物による副次的な放射線損傷を受けるので、この用途では限られた用途しかない。特に、入射する高エネルギーベータ粒子は、半導体中の欠陥を生成し、生成された電荷キャリアを散乱させて、捕捉する。この損傷は、蓄積するので、経時的に電池の性能が低下する。
【0006】
特許文献1は、付随して熱が発生する比較的高エネルギーの放射線源と、放射性同位体に応答して欠陥が発生することを特徴とするAlGaAs等のバルク結晶質半導体とを備える固体核電池を開示している。材料は、電池の高温動作温度でアニールすることによって、放射線損傷が修復されるように選択される。このデバイスは効率が低いため、高エネルギー放射線源の使用を必要とし、また、機能するために高い動作温度を必要とすることにも悩まされている。
【0007】
特許文献2は、GalnAsP等の結晶性半導体材料の基板を含む固体放射性同位体駆動半導体電池を教示している。この電池は、好ましくは、寿命を最大にすることを目的として、半導体材料の劣化を最小にするために低エネルギー粒子のみを放出する放射性同位体を使用する。低エネルギー源材料を使用することの効果は、最大電力出力が低くなることである。
【0008】
さらなるそのようなデバイスは、特許文献3に開示されており、ここでは、イコサヘドラルホウ化物化合物、ベータ放射線源、及び電気エネルギーを外部負荷に伝達するための手段を組み込んだベータセルを記載している。ヒ化ホウ素及びリン化ホウ素の製造は高価なため、これらのタイプのデバイスを製造するコストが高くなる。さらに、そのようなデバイスの製造では、ヒ化物及びリン化物材料の取り扱いに関連する健康、安全及び環境上のリスクが高くなる。
【0009】
特許文献4(Kinetic Energy Australia Pty Ltd)は、半導体としてZnOを使用する放射性同位体発電機を開示しており、エネルギーは金属-半導体接合部で発生する。これによって、耐久性を良くして、電力生産を比較的高くすることができる。しかしながら、開示された装置(arrangement)は、主にベータ粒子を放出する放射性同位体源には特に効果的であるが、x線及びガンマ線エミッタにはあまり効果的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5260621号明細書
【特許文献2】米国特許第5859484号明細書
【特許文献3】米国特許第6479919号明細書
【特許文献4】国際公開第2016/074044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特にx線及びガンマ線を放射する放射線源に対して、耐久性と電力出力との間のバランスの改善された放射性同位体パワーセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
広義の形態では、本発明は、放射性核種材料、n型半導体層、真性n型材料、p型材料層及び金属電極を含む多層構造を有する発電機を提供する。
【0013】
一態様によれば、本発明は、
放射性核種材料、及びサンドイッチ構造を含む発電機システムを提供し、前記サンドイッチ構造は、
n型半導体材料の層と、
真性n型半導体材料の層と、
p型半導体材料の層と、
金属電極であって、一方の電極が前記n型半導体材料と直接接触し、他方の電極が前記p型半導体材料と接触し、それらの間に金属-半導体接合部を形成し、前記放射性核種材料から受け取られた放射線放射は、前記金属-半導体接合部において電気エネルギーに変換される、金属電極と、
負荷に接続されたときに前記電気エネルギーが容易に流れるようにする、前記電極に接続された電気コンタクトと、
を含む。
【0014】
好ましい形態では、発電機は、放射性核種のエネルギーの効果的な捕捉を増加させるように、層の複数のセットを含む。好ましい形態では、放射性核種からの支配的な放射線は、x線及び/又はガンマ線放射の形態である。
【発明の効果】
【0015】
好適な実装形態では、本発明によって、好適なx線及び/又はガンマ線放出放射性同位体からのエネルギーの効果的な生成が可能になり、またそのようなデバイスに固有の一定の照射にもかかわらず、長期にわたって効果的な動作を継続することができる構造を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の例示的な実施形態について、以下で図面を参照して説明する。
【0017】
図1】本発明による単一発電構造の実施の断面図である。
図2】本発明による多層発電構造の実施態様の断面図である。
図3】第一の試験例における電圧性能を示すグラフである。
図4】第二の試験例において発生する電流を示すグラフである。
図5】第三の試験例において発生する電流を示すグラフである。
図6】ガンマ生成構造の単一セットの断面図である。
図7図5によるセットのアレイの断面図である。
図8】実際のシステムの実施形態の外観図である。
図9図7の設計に対する断面図である。
図10図7の設計に対する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について、主に、特定の例示的な実施例を参照して説明する。本発明の原理は、図示され説明された特定の実装形態の特徴の変形形態を使用して実装され得ることは理解される。本発明の性質は、したがって、本発明の原理を使用して多くの可能な実装、例えば、層の数、追加の層、代替の放射性同位体(又はそれらの組み合わせ)等がることを想定することができる。
【0019】
本発明は、本発明者による特許文献4に記載される発明と共通のいくつかの原理を使用する。この特許文献4の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。特に、この特許文献4は、真性n型半導体材料としてZnOを使用することの重要性及び利点を教示している。
【0020】
しかしながら、本発明は、特に(他の放射性同位体を排除するものではないが)、x線及びガンマ線を生成する放射性同位体を用いた電気エネルギーの生成に主に関連する。
【0021】
本発明者らの半導体材料に衝突するときのベータ粒子のメカニズム又は作用様式は、x線及びガンマ線光子のメカニズム又は作用様式とは非常に異なる。全ての事項が等しい場合、典型的なエネルギーにおけるベータ衝突は、x線及びガンマ線光子よりも原子構造に対してはるかに大きな影響を有する。ベータ粒子は、典型的には、電子及び原子を取り除き、電子を励起するが、x線及びガンマ線光子は、原子を取り除く可能性は低いが、電子を取り除き、電子を励起する。
【0022】
本発明者らは、ガンマボルタ構造が、いくつかの点で、標準的な光起電材料とほぼ同様の方法で機能することを観察した。しかしながら、個々の光子のエネルギーは、赤外線、可視光線、又は紫外線による数eVから、x線及びガンマ線光子によるkeV及びMeVまで劇的にシフトする。そのような条件下では、典型的な光起電半導体構造は、放射線誘起損傷に起因して性能が低下し、比較的急速に機能しなくなる。
【0023】
x線光子とガンマ線光子との相互作用はベータ粒子に比べて低いため、言い換えれば、放射線断面はより小さいため、本発明の実施は、p型材料を構造に加えることによって捕捉されるエネルギーを増加させることを追求する。そのようなサンドイッチ構造の多層が特に有利であることも本発明者らによって観察された。
【0024】
酸化亜鉛は固有のn型半導体であり、平衡状態で材料はn型半導体特性を示す。アルミニウム亜鉛酸化物(AlZnO)はn型半導体であり、亜鉛酸化物と同様であるが、アルミニウムは半導体のn型特性を増大させる。アルミニウムは、ドーパントとして、好ましくは約0.5%~約10%の範囲で添加される。ZnO層の厚さは、以下でさらに説明するように、AlZnO内のドーパントのレベルに応じて調整しなければならない。
【0025】
いくつかの理由から、n型材料とp型材料との間に真性ZnOの層を有することが好ましい。それは、構造のために調節可能なビルトイン電圧(Vb)を提供する。それは、また、n型からp型への、及びその逆へのドーパント材料の移動を防止する障壁としても作用する。このような移動が生じると、所望の固体構造に干渉し、構造の性能を低下させる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による発電構造を示す。放射性同位体材料7は、中央に配置される。どちらの側にも、放射性同位体からの放射線、好ましくはガンマ線及び/又はx線を受け取るために層が配置される。この実施態様では、これらは、上部コンタクト6、n型層5、真性n型層4、p型層3、底部コンタクト2、及び非導電性基板1である。構造の残部は、基質及び放射性同位体を配置するのに適した骨格材料から形成される。構造骨格材料は、典型的には鋼又はアルミニウムのシート、アングルバー、ロッド又はチューブである「構造的に一体なもの」と、セラミック又はポリマーのいずれかの非導電性材料であり、例として、Macor又はポリスチレンを含む「ラッキングシステム」とに分けることができる。
【0027】
上部コンタクト及び底部コンタクトは、金属、例えば、銅、アルミニウム、銅-アルミニウム合金、銅-鉄-アルミニウム合金、金、銀、ニッケル、コバルト、スズ、又はニッケル-バナジウム合金から形成される。
【0028】
n型層は、任意の適切な材料から、好ましくはアルミニウム亜鉛酸化物から形成され得る。Alは、最大10%であり得るが、好ましくは、約98Zn対2Alの原子比である。
【0029】
真性n型材料は、好ましくはZnOである。
【0030】
p型材料として、多種多様な材料、例えば、ニッケルバナジウム酸化物(93-7 Ni-V)、ニッケル酸化物、ニッケルコバルト酸化物(98-2 Ni-Co)、コバルト酸化物、コバルト銅酸化物(98-2 Co-Cu)、ニッケル銅酸化物(98-2 Ni-Cu)、銅酸化物、コバルトニッケル酸化物(98-2 Co-Ni)、ニッケルクロム酸化物(90-10 Ni-Cr)、ニッケル白金酸化物(98-2 Ni-Pt)、銅クロム酸化物(99-1 Cu-Cr)、コバルト白金酸化物(98-2 Co-Pt)、コバルトチタン酸化物(96-4 Co-Ti)が可能である。誤解を避けるために、これらの比は全て、重量パーセントではなく、100個中の原子の数として表される。原則として、代替アニオンを有する他の塩、例えば窒化物を使用することができるが、材料の選択は、分解生成物が構造に対して有害又は破壊的でないようにすることが好ましい。意図される放射線環境を考えると、アニオンの親元素への変換のレベルは少ないことが予想される。例えば、塩化物は推奨されず、酸化物が好ましい。
【0031】
基板は、任意の好適な放射線硬化性材料から、例えば、シリコン、石英、サファイア、フロートガラス、ショットボロフロートガラス(登録商標)、リン酸ガラス、フッ化カルシウムから形成されてもよい。
【0032】
放射性同位体材料は、単一の同位体、同位体の混合物であってもよく、あるいは放射性材料と安定な材料との混合物でさえあってもよい。単一の要素が好ましいが、その理由は、最終的な廃棄及び廃棄物管理を簡素化するからである。本発明の実施形態において使用することが可能な同位体としては、セシウム137、コバルト60、ユウロピウム152、ガドリニウム153、ゲルマニウム、イリジウム192、鉄55、クリプトン85、ルテニウム106、セレン75、ナトリウム22、ストロンチウム90、イッテルビウム169が挙げられる。これらの同位体は、本発明の実施形態における使用のために意図的に生成されてもよいし、あるいは他のプロセスからの副産物又は廃棄物であってもよい。経時的に、放射性崩壊が生じると、材料は、崩壊プロセスの結果として、異なる同位体の混合物を有するようになるので、これらの同位体の追加の同位体崩壊様式も材料内に存在し得ることが理解されるであろう。
【0033】
本発明はまた、他のプロセスからの「廃棄物」x線又はガンマ線から電力を生成するために展開することができる。その場合、x線源又はガンマ線源は、中央ではなく、片側に配置される可能性が高い。
【0034】
各層の厚さは、選択された特定の材料及びシステム全体の幾何学的形状に応じて変化する。典型的な厚さは、以下の通りである:
・基板 0.25mm~10mm、
・底部金属コンタクト 0.2~5μm、
・p型層 0.2~5μm、
・真性層 0.2~2μm、
・n型層 0.2~5μm、
・上部金属コンタクト 0.2~5μm。
【0035】
本発明者は、一般に、n型層中のドーパントの割合を増やすと、固有ZnO層の厚さを厚くする必要があり、同様に、ドーパントを減らすと、ZnO層の厚さを薄くする必要があると判断した。これは、p型材料についても同様である。異なる層の適切な厚さは、材料特有であり、ドーパントと層材料との相互関係は重要な変数である。選択される材料に応じて、各層の最適な厚さを決定するために、任意の設計において選択される層に対して適切な試行が必要とされることが理解されるであろう。層の調製は、好ましくは、マグネトロンスパッタリング(DC及び/又はRF)によって行われる。
【0036】
図2は、ガンマ線光子及びx線光子との相互作用を可能にするために、構造を拡張して、複数の層を提供するための方法を示す。放射性同位体から離れる両方向に、n層の材料を配置することができる。層を追加することで、同じ放射線源から電力を生成するための機会が追加されることが理解されるであろう。実際には、構造の放射断面積は増加する。
【0037】
図6は、より大きなシステムの構成要素として使用するための、50層の発電構造10を有するカートリッジ20を示す。この構造では、図2のように一連の構造があるが、放射性同位体層7は除外されている。図2に示すような層の4つの反復の代わりに、この代替的な実装では、層のシーケンスの50の反復が存在する。
【0038】
図7図10は、図6のカートリッジ20の12個のユニットが6個のユニットの2つの層に配置され、放射性同位体が3つの開口部32、32A、32Bに密封線源として挿入される生成構造30を示す。
【0039】
図8は、発電構造30の外観図である。上部の同位体ローダ容器35によって、放射性源を発電構造30に確実かつ安全に装填することが可能になる。ローダを適切な位置に移動して、コアを各開口部に装填してもよい。これは、図9及び図10においてより明確に見ることができる。同位体ローダ容器35は、同位体コアを輸送容器からパワーユニットに安全かつ容易に移送するために使用される。同位体が装填されると、パワーセルユニットの構造は密封され、ローダ構造は除去され、したがって、別のユニットを装填するために使用するのに利用可能である。
【0040】
純粋なベータ放射同位体には、薄い遮蔽又は封じ込めが必要とされるが、ガンマ線及びx線放射には、より実質的な構造が必要とされることが理解されよう。図9及び図10に示すより大きな発電システムは、スタンドアロン発電ユニットとして、システムを使用するための適切な遮蔽を組み込んでいる。遮蔽は、劣化ウラン、タングステン、鉛、鋼又は鉄等の高密度材料、あるいはコンクリート又は水等の適切な厚さ/幅を有するより低密度材料の適切な選択及び厚さを必要とする。図9に示す発電ユニット30は、中央の1mの壁付き空洞の周囲に300mmの鋼/鉄封じ込めを組み込んでいる。上述のように、空洞は、複数のカートリッジ10及び3つの放射性同位体装填チャネルを保持する。図10に示すように、発電ユニット30は、ゲートトラック33、ガンマゲート36、カバープレート37、軸受カートリッジ38、及びボールねじ39も有する。
【0041】
代替的な実装形態は、寸法及び構造に対応する変更を伴って、異なる遮蔽材料を使用してもよい。例えば、図9の実施形態では、鋼/鉄封じ込めは、厚さ1.5mのコンクリート外側ケーシング、又は4m~5mのヘッド高さを有する水で置き換えることができる。図9のさらなる実施形態は、内部の1mの壁付き空洞の周囲から封じ込めを取り除き、封じ込めを別個の構造又は建物(壁)に組み込むもので、構造の好ましい材料は、厚さ1.5mのコンクリートである。
【0042】
上記の実施例における材料は、15メガラド(150,000グレイ)までの耐放射性を示した。
【0043】
本発明の実施形態は、半導体材料のサンドイッチと接触する金属電極を有するn型半導体材料を使用し、放射性核種材料からの放射線に装置(arrangement)を曝露する発電システムを提供する。放射性の放射は、電極とn型及びp型半導体材料との間に形成された金属-半導体接合部において電気エネルギーに変換される。生成された電気エネルギーを流すために、電極間に電位差があることが重要である。したがって、一方の電極において他方の電極に比較べ、より大きな電荷が生成されるように、電極間の金属対半導体接触面積に有意差がある必要がある。電荷蓄積の大きい方の電極が効果的に負端子となり、他方の電極が正端子となる。
【0044】
放射性同位体パワーセルにおける発電を最大にするために、比較的高いエネルギーレベルの放射線源及び高い活性密度を使用することが望ましい。しかしながら、ほとんどの半導体材料は、そのような高いエネルギーレベルに耐えることができず、曝露によって構造的に劣化する。
【0045】
実際の実験では、反応性DCマグネトロンスパッタ又は電気化学蒸着によって、基板上に酸化亜鉛の薄膜が形成され、蒸着された膜は、5cm×5cm~250cm×250cmの範囲の表面を有する。現在の堆積技術によって、より大きなパネル、例えば、1mを超えるパネルが可能になっている。
【0046】
基板は、ガラスの第一の層から構成された。基板は、ドープされた金属酸化物材料の層から更に構成され、これは、酸化亜鉛が堆積された表面を形成した。金属酸化物は、本質的にp型又はn型のいずれかであり、それにより、適切なドーピングを使用すると、酸化亜鉛薄膜の各平面に隣接するn型又はp型半導体材料のいずれかが提供される。
【0047】
電極としての適合性について、多くの金属材料及び金属合金、すなわち、アルミニウム、コバルト、コバルト-銅、コバルト-ニッケル、コバルト-白金、コバルト-チタン、銅、銅-クロム、ニッケル、ニッケル-コバルト、ニッケル-銅、ニッケル-クロム、ニッケル-白金、ニッケル-バナジウム及び亜鉛を試験した。さらに、異なる電極構成を調べ、第一の構成では、電極が酸化亜鉛層の表面全体を覆い、第二の構成では、櫛状又は指状のグリッド形成を酸化亜鉛表面上で使用した。金属電極材料の一般的な厚さは、100~1000nmの範囲であり、好ましくは250nmであった。この実施例における金属電極は、スパッタリング技術を使用して堆積された。
【0048】
試験結果は、アルミニウム、コバルト、コバルト-銅、コバルト-ニッケル、コバルト-白金、コバルト-チタン、銅、銅-クロム、ニッケル、ニッケル-コバルト、ニッケル-銅、ニッケル-クロム、ニッケル-白金、ニッケル-バナジウム及び亜鉛の全てが、金属-半導体接合部において線形及び対称の電流-電圧曲線を生成し、これらの金属とそれぞれのn型又はp型半導体材料との間の望ましい程度のオーム接触を示唆することを見出した。
【0049】
異なる構成に関して、結果における差は無視できることが認められた。これは、金属の使用量が少ない櫛状グリッド構成が実行可能な選択肢であることを示唆している。他の幾何学的形状及び構成も本発明の範囲内で企図されることが理解されるであろう。
【0050】
任意の適切な同位体を使用することができるが、現在、好ましい材料は、コバルト60、セシウム137又はユウロピウム152を含有する密封線源である。これらの材料の密封線源には、例えば、ロッド、鉛筆、又はパックといった多くの異なる形態及び形状が存在する。原理的に、本発明は、任意の形状の密封線源を使用して実施することができるが、図9の構造で使用するのに好ましい密封線源の形態は、ロッド又は鉛筆である。本発明者らの好ましい単一線源活性は、15000キュリーの最大活性を有し、10000キュリーの方が、より輸送しやすく、取り扱いが容易である。
【0051】
次に、発電機システムを用いた電力供給デバイスの具体例について、以下に説明する。実際のシステムにおける構成要素は、多くの異なる寸法を有してもよく、単層又は多層を有してもよく、あるいは50層以上の上記のカートリッジとして形成されてもよいことが理解されるであろう。基板(サンドイッチ)は、任意の好適な面積、例えば、75cm~62500cmが適切であることが分かっている。
【0052】
所望の電力レベルを提供するために複数のサンドイッチ構造を追加して、放射性核種の複数の層を有する構造を使用してもよいことが理解されるであろう。また、説明される構造は、概して、形状が正方形であるが、構造は、任意の所望の形状であり得、適切な間隔が維持され得ると仮定して、好適な実装において湾曲され得ることも理解されるであろう。
【0053】
本発明によるシステムの例の出力性能及び放射線曝露安定性を評価するために試験を行った。この試験のための構造は、約75cmの表面積を提供する直径100mmのウェーハであった。この構造は、250μmの金属電極、1.0μmのドープ金属酸化物(n型及びp型)及び0.5μmのZnOを使用した。Co7及びCo9として同定される2つの別々のアレイについて、別々の場合も、直列及び並列に一緒に接続する場合も含む様々な構成で試験を行った。
【0054】
1つの実験では、Co7及びCo9を接続し、コバルト60線源に36時間曝露し、性能試験期間中にガンマ線の約15.12メガグレー(MGy)の線量率を照射した。使用したコバルト60線源は、70グレイ(Gy)/分(平均420000ラド(Rad)/時間)、すなわち1.2×1013光子/秒(各光子は>1.1MeVの平均エネルギーを有する)の平均ガンマ線量を試験チャンバ内に放出した。
【0055】
デバイスの電気的性能は比較的安定しており、この試験期間中は変化せず、放射前及び放射後の内部電圧は、約20mVであり、放射下での平均生成電圧VIRRは、約100mVであった。図3は、第一の試験例における電圧性能を示す。
測定された平均電流IIRRは、354mAであり、
測定された平均電圧VIRRは、100mVであり、
生成された平均電力PIRRは、35.4mWであり、
最大理論電力出力PMaxは、3.304Wと計算され、
変換効率=PIRR/PMax=35.4/3304=1.07%。
【0056】
そのような高ガンマ場に長時間にわたって暴露すると、典型的には、半導体材料を不可逆的な損傷を受ける。しかしながら、この試験では、デバイスは、150kGy(15MRad)で「耐放射性」を示した。電気出力は、曝露中も曝露後も実質的に変化しなかった。
【0057】
参考文献は、「Radiation Hardness Test for Gamma Probe; U. Wengrowicz, R. Seif, J. Nir, E. Gonen and D. Tirosh; Nuclear Research Center - Negev, P.O.Box 9001, Beer Sheva 84190, Israel)である。
【0058】
別の試験において、Co7及びCo9デバイスに、光子エネルギー/光子束100kV/4.5mA、100kV/9mA及び200kV/4.5mAのx線を、およそ10cmの距離で照射した。
【0059】
図4は、ウェーハに衝突するx線放射が3.446mJ・s-1である「暗」及びx線(200kV/4.5mA)照射の両方におけるCo7及びCo9のIVグラフを示す。両方の半導体ウェーハは、x線光子に対する強い応答を示した。Co7では、順バイアス及び逆バイアスの両方において、漏れ電流は無視できるほどであった。Co9では、暗条件下での漏れ電流が+3vを超えた。5vでは、Co7は、約30mAの電流を生成した。5vでは、Co9は、約15mAの電流を生成した。
【0060】
複数の個々の半導体ウェーハにわたって、5cmの距離では、電圧を100kVから200kVに2倍にすると、電圧が2倍になり、半導体によって生成される電流が1.9倍になることが観察された。したがって、光子電圧を2倍にすると、電力が3.8倍増加した。この増加は、約4.1倍で計算された差よりもわずかに低い。
【0061】
複数の個々の半導体ウェーハにわたって、5cmの距離では、電流を4.5mAから9mAに2倍にすると、電圧が1.2倍になり、半導体によって生成される電流の1.5倍の電流値になることが、観察された。したがって、光子束を2倍にすると、電力は1.8倍に増加した。この増加は、計算された差の約2倍よりもわずかに低い。
【0062】
半導体層を追加すると、電力出力が増加し、こうして、より高い電圧及び電流が達成され、これは、個々のセル性能試験の合計よりも大きくなることが観察された。
【0063】
層を直列及び並列に構成することは、半導体アレイの出力電流及び電圧を安定化するのに役立つ。
【0064】
別の別々の試験では、Co7及びCo9デバイスにコバルト60からのガンマ線光子を照射し、放射性同位体の活性は約535TBqであり、測定された線量率は76.3Gy/分であった。放射性同位体から半導体ウェーハまでの距離を測定し、10cmと推定した。アレイに衝突するガンマ線は、1.83×10-1J・s-1である。
【0065】
図5は、「暗」及びガンマ線光子照射の両方においてCo7及びCo9からなる並列アレイのグラフを示す。グラフに示すように、並列アレイは、x線光子に対する強い応答を示した。アレイの漏れ電流は、無視できるほどであった。5vでは、アレイは、約2.5mAの電流を生成した。
【0066】
より多くの半導体層を追加すると、全体的な電力出力が増加することが観察された。直列及び並列に層を構成することは、半導体アレイの出力電流及び電圧を安定化するのに役立つことも観察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】