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特表2025-500920A/M/X結晶材料、太陽光発電デバイス及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】A/M/X結晶材料、太陽光発電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20250107BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20250107BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20250107BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20250107BHJP
   H10K 30/40 20230101ALI20250107BHJP
   H10F 10/174 20250101ALI20250107BHJP
   H10F 10/00 20250101ALI20250107BHJP
   H10K 30/87 20230101ALI20250107BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K85/50
H10K71/12
H10K71/40
H10K30/40
H01L31/06 520
H01L31/04 422
H10K30/87
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536231
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2021140788
(87)【国際公開番号】W WO2023115449
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲蘇▼ ▲碩▼▲剣▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 召▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】王 燕▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】王 言芬
(72)【発明者】
【氏名】郭 永▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 国▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 楚英
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA03
5F251AA07
5F251AA20
5F251CB13
5F251CB14
5F251CB15
5F251CB24
5F251DA04
5F251DA20
5F251FA02
5F251FA06
5F251GA03
5F251XA01
5F251XA53
5F251XA61
(57)【要約】
本出願は、A/M/X結晶材料、太陽光発電デバイス及びその製造方法を提供し、光活性結晶材料層を含み、光活性結晶材料層は、貫通結晶粒を含み、貫通結晶粒は、光活性結晶材料層を貫通する結晶粒であり、貫通結晶粒の数が、光活性結晶材料層の結晶粒総数に占める比率p≧80%であり、且つ光活性結晶材料層は、バックライト側とバックライト結晶粒とを含み、バックライト結晶粒は、バックライト側に露出する結晶粒であり、バックライト結晶粒は、バックライト側に露出するバックライト結晶面を有し、ここで、バックライト側の少なくとも一つの領域が平均平坦係数Ravg≦75を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電デバイスであって、光活性結晶材料層(103)を含み、前記光活性結晶材料層(103)は、第1の領域を含み、
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層(103)は、貫通結晶粒(313)を含み、前記貫通結晶粒(313)は、前記光活性結晶材料層(103)を貫通する結晶粒であり、前記貫通結晶粒(313)の数が前記光活性結晶材料層(103)の前記第1の領域における結晶粒総数に占める比率p≧80%であり、任意選択的に、p≧90%であり、且つ
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層(103)は、バックライト側(113)とバックライト結晶粒(31、32、33)とを含み、前記バックライト結晶粒(31、32、33)は、少なくとも一つの面が前記バックライト側(113)に露出する結晶粒であり、前記バックライト結晶粒(31、32、33)の前記バックライト側(113)に露出する面は、バックライト結晶面であり、
ここで、前記バックライト側(113)は、平均平坦係数Ravgを有し、Ravg≦75であり、任意選択的に10≦Ravg≦70であり、
ここで、前記バックライト側(113)のRavgは、以下の式によって算出され、
【数5】
ここで、Rは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)の平坦係数であり、Rは、以下の式によって算出され、
=d/h
ここで、dは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の幅であり、
ここで、hは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の突起高さであり、
ここで、nは、前記第1の領域内のすべてのバックライト結晶粒(31、32、33)の数である、太陽光発電デバイス。
【請求項2】
前記光活性結晶材料は、A/M/X結晶材料を含み、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、任意選択的に、aは、1、2、3、4、5又は6であり、
bは、1~6であり、任意選択的に、bは、1、2、3、4、5又は6であり、
cは、1~18であり、任意選択的に、cは、3、6、9、又は18である、請求項1に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項3】
(1)前記一種又は複数種の第1のカチオンがCa2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+、Eu2+、Bi3+、Sb3+、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+又はTe4+から選択され、
任意選択的に、前記一種又は複数種の第1のカチオンがCu2+、Pb2+、Ge2+又はSn2+から選択されることと、
(2)前記一種又は複数種の第2のカチオンが、Cs、(NR、(RN=CR、(RN-C(R)=NR又は(RN-C(NR)=Rから選択され、ここで、R、R、R、R、RとRが、それぞれ独立してH、置換されたか又は置換されていないC1-20アルキル基、又は置換されたか又は置換されていないアリール基から選択され、
任意選択的に、前記一種又は複数種の第2のカチオンがCs、(CHNH、(HN-C(H)=NHから選択されることと、
(3)前記ハロゲンアニオンがCl、Br又はIから選択されることとのうちの一つ又は複数の特徴を有する、請求項2に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項4】
前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、FAPbBr、FAPbCl、FAPbF、FAPbBr3-x、FAPbBrCl3-x、FAPbIBr3-x、FAPbICl3-x、FAPbClBr3-x、FAPbI3-xCl、CsPbI、CsPbBr、CsPbCl、CsPbF、CsPbBr3-x、CsPbBrCl3-x、CsPbIBr3-x、CsPbICl3-x、CsPbClBr3-x、CsPbI3-xCl、FA1-yCsPbI、FA1-yCsPbBr、FA1-yCsPbCl、FA1-yCsPbF、FA1-yCsPbBr3-x、FA1-yCsPbBrCl3-x、FA1-yCsPbIBr3-x、FA1-yCsPbICl3-x、FA1-yCsPbClBr3-x、FA1-yCsPbI3-xCl、又はその組み合わせを含み、
ここで、x=0~3であり、y=0.01~0.25である、請求項2又は3に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項5】
前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、CsPbI、FA1-yCsPbI、又はその組み合わせを含み、ここで、y=0.01~0.25である、請求項2~4のいずれか一項に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項6】
前記光活性結晶材料層の厚さは、100nm以上であり、任意選択的に100~1000nmであり、任意選択的に300~700nmである、請求項2~5のいずれか一項に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項7】
第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)とをさらに含み、前記光活性結晶材料層(103)は、前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)との間に位置し、
前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項8】
第1の電極(105)と第2の電極(101)とをさらに含み、前記電子輸送層、正孔輸送層と光活性結晶材料層は、前記第1の電極(105)と第2の電極(101)との間に位置し、
任意選択的に、前記第1の電極(105)は、透明導電性酸化物を含み、
任意選択的に、前記第2の電極(101)は、金属を含む、請求項7に記載の太陽光発電デバイス。
【請求項9】
A/M/X結晶材料を製造する方法であって、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、例えばa=1であり、
bは、1~6であり、例えばb=1であり、
cは、1~18であり、例えばc=3であり、
前記方法は、基体上に前駆体組成物を設置することを含み、前記前駆体組成物は、
(a)少なくとも一種の前駆体化合物、
(b)溶媒、
(c)界面活性剤、及び
(d)アミノ系化合物という成分を含む、A/M/X結晶材料を製造する方法。
【請求項10】
(1)前記界面活性剤が両性界面活性剤を含むことと、
(2)前記アミノ化合物が、ニトリルアミン系化合物、アミノ酸系化合物(例えばスルファミン酸系化合物)、ヒドラジン系化合物、尿素系化合物(例えば尿素、尿素ホルムアルデヒド、ビウレット、トリウレット)、グアニジン系化合物、又はその塩又は水和物を含むこととのうちの一つ又は複数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記界面活性剤は、ドデシルアミノプロピオン酸塩、ドデシルエトキシスルホベタイン、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、双性イオンポリアクリルアミド、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、テトラデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシド、ドデシルベタイン、L-α-ホスファチジルコリン、3-(N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム)プロパンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、又はその組み合わせを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記アミノ化合物は、尿素ホルムアルデヒド(C)、イソブチルアルデヒド縮合尿素(C14)、ヒドラジン(H)、グアニジン(CHO)、ニトリルアミン(CH)、スルファミン酸(HNOS)、又はその組み合わせを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体組成物は、第1の溶媒と第2の溶媒とを含み、前記第1の溶媒の沸点は、40~165℃であり、前記第2の溶媒の沸点は、170~250℃である、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(1)前記第1の溶媒がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、2-メトキシエタノール、アセトニトリル(ACN)のうちの一種又は複数種から選択されることと、
(2)前記第2の溶媒がジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)のうちの一種又は複数種から選択されることと、
(3)前記第1の溶媒と第2の溶媒との体積比が(4~10):1であることとのうちの一つ又は複数を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記前駆体組成物は、
第1のカチオンを含有する第1の前駆体化合物と、
第2のカチオンを含有する第2の前駆体化合物とを含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(1)前記第1の前駆体化合物がハロゲンアニオンを含有することと、
(2)前記第2の前駆体化合物がハロゲンアニオンを含有することとのうちの一つ又は複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(1)前記第1の前駆体化合物がヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、又はその組み合わせを含むことと、
(2)前記第2の前駆体化合物がホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)、ホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)、ヨウ化セシウム(CsI)、臭化セシウム(CsBr)、又はその組み合わせを含むこととのうちの一つ又は複数を含む、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
基体の表面に設置される前駆体組成物に対して硬化処理を実施するステップをさらに含み、
任意選択的に、前記硬化処理は、真空処理、エアナイフ処理、赤外光処理又はその組み合わせを含む、請求項9~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
硬化処理された生成物に対してアニーリング処理を行うことをさらに含み、
任意選択的に、前記アニーリング処理の温度は、100℃~170℃であり、
任意選択的に、前記アニーリング処理の時間は、5min~60minである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
太陽光発電デバイスを製造する方法であって、前記太陽光発電デバイスは、第1の電極(105)と、第2の電極(101)と、前記第1の電極(105)と第2の電極(101)との間に位置する第1の電荷輸送層(104)及び第2の電荷輸送層(102)と、前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)との間に位置するA/M/X結晶材料層とを含み、
前記方法は、
表面に第1の電荷輸送層(104)が設置されている第1の電極(105)を提供することと、
請求項9~19のいずれか一項に記載のA/M/X結晶材料の製造方法に従って、前記第1の電荷輸送層(104)の表面に前記A/M/X結晶材料層を形成することと、
前記A/M/X結晶材料層上に第2の電荷輸送層(102)を形成することと、
前記第2の電荷輸送層(102)上に第2の電極(101)を形成することとを含み、
ここで、前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層(104)と第2の電荷輸送層(102)は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である、太陽光発電デバイスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、太陽光発電の技術分野に関し、特にA/M/X結晶材料、太陽光発電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト太陽光発電デバイスは、光活性ペロブスカイト構造材料を光活性結晶材料層として光電変換を行う太陽光発電デバイスである。
【0003】
典型的な光活性ペロブスカイト構造材料は、有機金属ハロゲン化物であり、AMXという一般式を有し、一般的には八面体又は立方体構造である。典型的なペロブスカイト結晶において、Aイオンは、立方単位格子の中心に位置し、12個のXイオンに取り囲まれて配位立方八面体をなしており、三次元の周期性構造を形成し、Mイオンは、立方単位格子の頂点に位置し、そのまわりに6個のXイオンが配位分布して八面体対称構造をなす。
【0004】
光活性ペロブスカイト構造材料は、光の照射で、二種のキャリア、即ち電子と正孔を形成し、二つの電極によって電子と正孔をそれぞれ収集して、光誘起電流が得られる。ペロブスカイト構造の性質は、太陽光発電デバイスのエネルギー変換効率(PCE)を左右する重要な要素である。
【発明の概要】
【0005】
本出願の目的は、エネルギー変換効率がより高い太陽光発電デバイスを提供することである。
【0006】
本出願の第1の態様は、太陽光発電デバイスを提供し、このデバイスは、光活性結晶材料層を含み、前記光活性結晶材料層は、第1の領域を含み、
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層は、貫通結晶粒を含み、前記貫通結晶粒は、前記光活性結晶材料層を貫通する結晶粒であり、前記貫通結晶粒の数が前記光活性結晶材料層の前記第1の領域における結晶粒総数に占める比率p≧80%であり、任意選択的に、p≧90%であり、且つ
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層は、バックライト側とバックライト結晶粒とを含み、前記バックライト結晶粒は、少なくとも一つの面が前記バックライト側に露出する結晶粒であり、前記バックライト結晶粒の前記バックライト側に露出する面は、バックライト結晶面であり、
ここで、前記バックライト側は、平均平坦係数Ravgを有し、Ravg≦75であり、任意選択的に10≦Ravg≦70であり、
ここで、前記バックライト側のRavgは、以下の式によって算出され、
【数1】
ここで、Rは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒の平坦係数であり、Rは、以下の式によって算出され、
=d/h
ここで、dは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒のバックライト結晶面の幅であり、
ここで、hは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒のバックライト結晶面の突起高さであり、
ここで、nは、前記第1の領域内のすべてのバックライト結晶粒の数である。
【0007】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記光活性結晶材料は、A/M/X結晶材料を含み、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、任意選択的に、aは、1、2、3、4、5又は6であり、
bは、1~6であり、任意選択的に、bは、1、2、3、4、5又は6であり、
cは、1~18であり、任意選択的に、cは、3、6、9、又は18である。
【0009】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記一種又は複数種の第1のカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+、Eu2+、Bi3+、Sb3+、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+又はTe4+から選択され、
任意選択的に、前記一種又は複数種の第1のカチオンは、Cu2+、Pb2+、Ge2+又はSn2+から選択される。
【0011】
(2)前記一種又は複数種の第2のカチオンは、Cs、(NR、(RN=CR、(RN-C(R)=NR又は(RN-C(NR)=Rから選択され、ここで、R、R、R、R、RとRは、それぞれ独立してH、置換されたか又は置換されていないC1-20アルキル基、又は置換されたか又は置換されていないアリール基から選択され、
任意選択的に、前記一種又は複数種の第2のカチオンは、Cs、(CHNH、(HN-C(H)=NHから選択される。
【0012】
(3)前記ハロゲンアニオンは、Cl、Br又はIから選択される。
【0013】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、FAPbBr、FAPbCl、FAPbF、FAPbBr3-x、FAPbBrCl3-x、FAPbIBr3-x、FAPbICl3-x、FAPbClBr3-x、FAPbI3-xCl、CsPbI、CsPbBr、CsPbCl、CsPbF、CsPbBr3-x、CsPbBrCl3-x、CsPbIBr3-x、CsPbICl3-x、CsPbClBr3-x、CsPbI3-xCl、FA1-yCsPbI、FA1-yCsPbBr、FA1-yCsPbCl、FA1-yCsPbF、FA1-yCsPbBr3-x、FA1-yCsPbBrCl3-x、FA1-yCsPbIBr3-x、FA1-yCsPbICl3-x、FA1-yCsPbClBr3-x、FA1-yCsPbI3-xCl、又はその組み合わせを含み、
ここで、x=0~3であり、y=0.01~0.25である。
【0015】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、CsPbI、FA1-yCsPbI、又はその組み合わせを含み、ここで、y=0.01~0.25である。
【0017】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記光活性結晶材料層の厚さは、100nm以上であり、任意選択的に100nm~1000nmであり、任意選択的に300nm~700nmである。
【0019】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層とをさらに含み、前記光活性結晶材料層は、前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層との間に位置し、
前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である。
【0021】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、第1の電極と第2の電極とをさらに含み、前記電子輸送層、正孔輸送層と光活性結晶材料層は、前記第1の電極と第2の電極との間に位置し、
任意選択的に、前記第1の電極は、透明導電性酸化物を含み、
任意選択的に、前記第2の電極は、金属を含む。
【0022】
上記方案による太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【0023】
本出願の第2の態様は、A/M/X結晶材料を製造する方法を提供し、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、例えばa=1であり、
bは、1~6であり、例えばb=1であり、
cは、1~18であり、例えばc=3であり、
前記方法は、基体上に前駆体組成物を設置することを含み、前記前駆体組成物は、
(a)少なくとも一種の前駆体化合物、
(b)溶媒、
(c)界面活性剤、及び
(d)アミノ系化合物という成分を含む。
【0024】
上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、両性界面活性剤を含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記アミノ化合物は、ニトリルアミン系化合物、アミノ酸系化合物(例えばスルファミン酸系化合物)、ヒドラジン系化合物、尿素系化合物(例えば尿素、尿素ホルムアルデヒド、ビウレット、トリウレット)、グアニジン系化合物、又はその塩又は水和物を含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、ドデシルアミノプロピオン酸塩、ドデシルエトキシスルホベタイン、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、双性イオンポリアクリルアミド、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、テトラデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシド、ドデシルベタイン、L-α-ホスファチジルコリン、3-(N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム)プロパンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記アミノ化合物は、尿素ホルムアルデヒド(C)、イソブチルアルデヒド縮合尿素(C14)、ヒドラジン(H)、グアニジン(CHO)、ニトリルアミン(CH)、スルファミン酸(HNOS)、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記前駆体組成物は、第1の溶媒と第2の溶媒とを含み、前記第1の溶媒の沸点は、40℃~165℃であり、前記第2の溶媒の沸点は、170℃~250℃である。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記第1の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、2-メトキシエタノール、アセトニトリル(ACN)のうちの一種又は複数種から選択される。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記第2の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)のうちの一種又は複数種から選択される。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記第1の溶媒と第2の溶媒との体積比は、(4~10):1である。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記前駆体組成物は、
第1のカチオンを含有する第1の前駆体化合物と、
第2のカチオンを含有する第2の前駆体化合物とを含む。
【0034】
上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記第1の前駆体化合物は、ハロゲンアニオンを含有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記第2の前駆体化合物は、ハロゲンアニオンを含有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記第1の前駆体化合物は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、又はその組み合わせを含み、
いくつかの実施形態では、前記第2の前駆体化合物は、ホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)、ホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)、ヨウ化セシウム(CsI)、臭化セシウム(CsBr)、又はその組み合わせを含む。
【0038】
上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0039】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料を製造する方法は、基体の表面に設置される前駆体組成物に対して硬化処理を実施するステップをさらに含み、
任意選択的に、前記硬化処理は、真空処理、エアナイフ処理(air blading)、赤外光処理又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0040】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料を製造する方法は、硬化処理された生成物に対してアニーリング処理を行うことをさらに含み、
任意選択的に、前記アニーリング処理の温度は、100℃~170℃であり、
任意選択的に、前記アニーリング処理の時間は、5min~60minである。
【0041】
上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を示す。
【0042】
本出願の第3の態様は、太陽光発電デバイスを製造する方法を提供し、前記太陽光発電デバイスは、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極との間に位置する第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層と、前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層との間に位置するA/M/X結晶材料層とを含み、
前記方法は、
表面に第1の電荷輸送層が設置されている第1の電極を提供することと、
上記いずれか一項に記載のA/M/X結晶材料の製造方法に従って、前記第1の電荷輸送層の表面に前記A/M/X結晶材料層を形成することと、
前記A/M/X結晶材料層上に第2の電荷輸送層を形成することと、
前記第2の電荷輸送層上に第2の電極を形成することとを含み、
ここで、前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層と第2の電荷輸送層は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である。
【0043】
上記方案に基づいて製造された太陽光発電デバイスは、向上したエネルギー変換効率を有する。
【有益な効果】
【0044】
本出願の一つ又は複数の技術案は、以下の一つ又は複数の有益な効果を示している。
【0045】
(1)太陽光発電デバイスは、顕著に向上した電力変換効率(Power Conversion Efficiency、PCE)を示し、
(2)光活性結晶材料層は、高い貫通結晶粒占有率pを有し、
(3)光活性結晶材料層は、低い平均平坦係数Ravgを有し、
(4)界面活性剤と窒素含有化合物は、光活性結晶層を製造する方法において、予期せぬ相乗効果を発揮し、
(5)製造方法はコストが低く、効率が高く、大規模化されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本出願のいくつかの実施形態の太陽光発電デバイスの概略図である。
図2】本出願のいくつかの実施形態の光活性結晶材料層の概略図である。
図3】(a)と(b)はそれぞれ本出願のいくつかの実施形態と比較実施形態の光活性結晶材料層の概略図である。
図4】本出願のいくつかの実施例の光活性結晶材料層を含有する中間生成物の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を適当に参照しながら、本出願のA/M/X結晶材料、太陽光発電デバイス及びその製造方法を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0048】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定する。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲がリストアップされている場合、60~110と80~120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a~b」という数値範囲は、a~bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」の間のすべての実数がリストアップされていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、該パラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0049】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施形態及び選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0050】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0051】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、例えば順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいということを表す。例えば、以上で言及した前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいということは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいということを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよいなどである。
【0052】
特に説明しない場合、本出願で言及した「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含み又は包含してもよいということを表すことができる。
【0053】
特に説明しない場合、本出願では、用語「又は」は、包括的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)という条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)という条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)という条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0054】
[太陽光発電デバイス]
太陽光発電デバイス(ソーラーパネル又は太陽電池とも呼ばれる)は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するためのデバイスである。
【0055】
図1は、本出願のいくつかの実施形態の太陽光発電デバイスの概略図である。図2は、本出願のいくつかの実施形態の光活性結晶材料層の概略図である。
【0056】
図1~2を参照すると、いくつかの実施形態では、本出願は、太陽光発電デバイスを提供し、このデバイスは、光活性結晶材料層103を含み、前記光活性結晶材料層103は、第1の領域を含み、
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層103は、貫通結晶粒313(penetrating crystal)を含み、前記貫通結晶粒313は、前記光活性結晶材料層103を貫通する結晶粒(crystal)であり、前記貫通結晶粒313の数が前記光活性結晶材料層103の前記第1の領域における結晶粒総数に占める比率p≧80%であり、任意選択的に、p≧90%であり、任意選択的に、p≧95%であり、任意選択的にp≧99%であり、任意選択的にp=100%であり、且つ
前記第1の領域において、前記光活性結晶材料層103は、バックライト側113(backlight side)とバックライト結晶粒(31、32、33)(backlight crystal)とを含み、前記バックライト結晶粒(31、32、33)は、少なくとも一つの面が前記バックライト側113に露出する結晶粒であり、前記バックライト結晶粒(31、32、33)の前記バックライト側113に露出する面は、バックライト結晶面(backlight crystal face)であり、
ここで、前記バックライト側113は、平均平坦係数Ravg(Average Flatness Index)を有し、Ravg≦75であり、任意選択的に10≦Ravg≦70であり、任意選択的にRavgの値は、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60又は60~70であり、
ここで、前記バックライト側113のRavgは、以下の式によって算出され、
【数2】
ここで、Rは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)の平坦係数であり、Rは、以下の式によって算出され、
=d/h
ここで、dは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の幅であり、
ここで、hは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の突起高さであり、
ここで、nは、前記第1の領域内のすべてのバックライト結晶粒(31、32、33)の数である。
【0057】
上記方案において、発明者は、光活性結晶材料層の結晶粒の形状と配置を最適化することによって、太陽光発電デバイスのエネルギー変換効率を顕著に改善できることを意外に見出した。具体的に、発明者は、光活性化結晶材料層における貫通結晶粒313の数が前記光活性結晶材料層103の前記第1の領域における結晶粒総数に占める比率p≧80%であるとともに、光活性結晶材料層のバックライト側の少なくとも一部の領域のバックライト結晶粒(31、32、33)の平均平坦係数Ravg≦75である時、太陽光発電デバイスが顕著に向上した電力変換効率(Power Conversion Efficiency、PCE)を示すことを見出した。
【0058】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、平均平坦係数Ravgの測定と計算方案について、図2において詳細に記述されている。図2は、結晶材料層103を示しており、光活性結晶材料層103は、バックライト側113とバックライト結晶粒(31、32、33)とを含み、前記バックライト結晶粒(31、32、33)は、前記バックライト側113に露出する結晶粒であり、前記バックライト結晶粒(31、32、33)は、前記バックライト側に露出するバックライト結晶面を有し、
ここで、前記バックライト側113のRavgは、以下の式によって算出され、
【数3】
ここで、Rは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)の平坦係数であり、Rは、以下の式によって算出され、
=d/h
ここで、dは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の幅(d、d、d)であり、
ここで、hは、前記第1の領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の突起高さ(h、h、h)であり、
ここで、nは、前記第1の領域内のすべてのバックライト結晶粒(31、32、33)の数であり、
図2に示す光活性結晶層103の領域に対して、すべてのバックライト結晶粒(31、32、33)の数n=3であるため、iの値として1~3をトラバースする。
【0059】
いくつかの実施案では、nの値は、3以上であり、例えば5以上、例えば10以上、例えば50以上、例えば100以上、例えば500以上、例えば1000以上である。
【0060】
図3を参照すると、図3の(a)と(b)は、それぞれ二種類の光活性結晶材料層の概略図を示している。
【0061】
図3の(a)を参照すると、第1の光活性結晶材料層の概略図が示されている。図に示すように、該第1の光活性結晶材料層の貫通結晶粒313の数が前記光活性結晶材料層103の図示領域内における結晶粒総数に占める比率p=100%である。入射光151は、第1の光活性結晶材料層の受光面112に入射し、第1の光活性結晶材料層の結晶粒が貫通結晶粒313であるため、入射光151は、ほとんど遮られることなくバックライト面113に到達可能であり、これによって第1の光活性結晶材料層は、十分に入射光151の照射を受けることができる。
【0062】
図3の(b)を参照すると、比較光活性結晶材料層の概略図が示されている。図に示すように、該比較光活性結晶材料層の結晶粒は、すべて非貫通結晶粒323であり、貫通結晶粒の数が前記光活性結晶材料層103の図示領域内における結晶粒総数に占める比率p=0%である。入射光151は、比較光活性結晶材料層の受光面112に入射し、比較光活性結晶材料層313の結晶粒は、いずれも非貫通結晶粒323である。そのため、入射光151がバックライト面113に到達する前に結晶粒界325によって反射又は屈折され、これにより比較光活性結晶材料層は、入射光151の放射エネルギーを十分に吸収できなくなる。
【0063】
平坦係数は、結晶粒の表面の平坦度の係数である。平坦係数が高いほど、結晶粒のバックライト面がほぼ平面に近いことを示し、平坦係数が低いほど、結晶粒のバックライト面突出の程度が高いことを示す。
【0064】
図3の(a)を参照すると、第1の光活性結晶材料層のバックライト結晶粒(31、32、33)の平坦係数が低く(≦75)、即ちバックライト結晶粒(31、32、33)の幅と突起高さとの比の(d/h)の値が低く、バックライト結晶粒(31、32、33)は、突出する表面を有し、これによって比較光活性結晶材料層のバックライト側113は、大部分の反射光152を第1の光活性結晶材料層の層外へ反射するのではなく、層内に集束することができる。これにより第1の光活性結晶材料層は、光エネルギーを十分に利用可能になる。
【0065】
また図3の(b)を参照すると、図3の(b)には、比較光活性結晶材料層の概略図が示されており、図に示すように、該比較光活性結晶材料層のバックライト結晶粒(31、32、33)の平坦係数が高く(>1000)、即ちバックライト結晶粒(31、32、33)は、平坦なバックライト結晶面を有する。該平坦なバックライト表面は、大部分の反射光152を層外へ反射し、それによって比較光活性結晶材料層312は、光エネルギーを十分に利用することができない。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の領域とは、光活性結晶層103の層表面方向に沿う一部又は全部の領域を指す。
【0067】
いくつかの実施形態では、第1の領域の少なくとも一つの方向での寸法は、3μm以上であり、例えば10μm以上、例えば100μm以上、例えば1mm以上、例えば1cm以上、例えば10cm以上である。任意選択的に、第1の領域の少なくとも二つの互いに垂直な方向での寸法は、3×3μm以上であり、例えば10×10μm以上、例えば100×100μm以上、例えば1×1mm以上、例えば1×1cm以上、例えば10×10cm以上、例えば1m×1m以上である。
【0068】
いくつかの実施形態では、光活性結晶層の第1の領域内の結晶粒総数は、9個(3×3個)以上であり、例えば16個(4×4個)以上、例えば25個(5×5個)以上、例えば64個(8×8個)以上、例えば100個(10×10個)以上、例えば1000個以上である。
【0069】
いくつかの実施案では、第1の領域の面積は、光活性結晶層側の面積の10%以上に相当し、例えば50%以上、例えば70%以上、例えば90%以上、例えば100%に相当する。
【0070】
いくつかの実施形態では、光活性結晶層103は、複数の結晶粒を含む。前記光活性結晶材料層103を貫通する結晶粒は、貫通結晶粒313である。少なくとも一つの面が前記バックライト側113に露出する結晶粒は、バックライト結晶粒(31、32、33)である。理解すべきこととして、ある結晶粒は、貫通結晶粒313に属するとともにバックライト結晶粒(31、32、33)に属してもよい。また、ある結晶粒は、貫通結晶粒313に属せずにバックライト結晶粒(31、32、33)にのみ属してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、用語「結晶」とは、結晶化合物を意味し、それは、延在する3D結晶構造を持つ化合物である。結晶化合物は、一般的に結晶の形式として存在し、又は、多結晶化合物の場合、微結晶(即ち1μm以下の粒径を有する複数の結晶)の形式として存在する。結晶同士は、層を形成することが多い。結晶材料の結晶は、任意のサイズであってもよい。結晶が一次元又は多次元で1nm~1000nm範囲内の寸法を有する時、ナノ結晶と呼ばれてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、用語「層」とは、基本的に層状である任意の構造を指す(例えば基本的に二つの垂直な方向に延伸するが、第3の垂直方向での延伸が制限される)。層は、該層の延在する範囲内で変化する厚さを有してもよい。一般的には、層が有する厚さは、ほぼ一定である。本明細書で使用される層の「厚さ」は、層の平均厚さを指す。層の厚さは、容易に測定することができ、例えば顕微鏡法、例えばフィルム横断面の電子顕微鏡測定法を使用し、又は表面輪郭測定法、例えばスタイラス輪郭測定機を使用する。
【0073】
いくつかの実施形態では、用語「受光面」とは、太陽光発電デバイスの作動時に光源に対向する面を指し、用語「バックライト面」とは、太陽光発電デバイスの作動時に光源に背を向ける面を指す。
【0074】
いくつかの実施形態では、本出願で使用される用語「結晶粒」とは、「単結晶の結晶粒」を指す。例えば、一つの結晶粒とは、一つの単結晶の結晶粒を指し、結晶粒の数は、単結晶の結晶粒の数を指す。用語「単結晶の結晶粒」(single crystal)は、ASTM F1241に記載のように、「大角度の境界又は双晶境界を含まない結晶材料の単結晶」(a single crystal body of crystalline material that contains no large-angle boundaries or twin boundaries)と定義されてもよい。
【0075】
いくつかの実施案では、用語「貫通」とは、光活性結晶層の一方側から他方側へ、例えば受光側からバックライト側へということを意味する。
【0076】
いくつかの実施案では、バックライト結晶面の突起高さは、光活性結晶材料層の横截面の顕微鏡写真を観察し測定することによって取得される。上記横截面の顕微鏡写真において、バックライト面の基準平面に対してバックライト結晶面の輪郭が突出する高さは、バックライト結晶面の突起高さと定義され、バックライト面の基準平面に対してバックライト結晶面の輪郭が突出する幅は、バックライト結晶面の幅と定義される。バックライト面の基準平面とは、ほぼ各バックライト結晶面の最低点を貫通する連続的でほぼ平らな表面を指す。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記光活性結晶材料は、A/M/X結晶材料を含み、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、任意選択的に、aは、1、2、3、4、5又は6であり、
bは、1~6であり、任意選択的に、bは、1、2、3、4、5又は6であり、
cは、1~18であり、任意選択的に、cは、3、6、9、又は18である。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記一種又は複数種の第1のカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+、Eu2+、Bi3+、Sb3+、Pd4+、W4+、Re4+、Os4+、Ir4+、Pt4+、Sn4+、Pb4+、Ge4+又はTe4+から選択される。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記一種又は複数種の第1のカチオンは、Cu2+、Pb2+、Ge2+又はSn2+から選択される。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記一種又は複数種の第2のカチオンは、Cs、(NR、(RN=CR、(RN-C(R)=NR又は(RN-C(NR)=Rから選択され、ここで、R,R,R,R,RとRは、それぞれ独立してH、置換されたか又は置換されていないC1-20アルキル基、又は置換されたか又は置換されていないアリール基から選択される。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記一種又は複数種の第2のカチオンは、Cs、(CHNH、(HN-C(H)=NHから選択される。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記ハロゲンアニオンは、Cl、Br又はIから選択される。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、FAPbBr、FAPbCl、FAPbF、FAPbBr3-x、FAPbBrCl3-x、FAPbIBr3-x、FAPbICl3-x、FAPbClBr3-x、FAPbI3-xCl、CsPbI、CsPbBr、CsPbCl、CsPbF、CsPbBr3-x、CsPbBrCl3-x、CsPbIBr3-x、CsPbICl3-x、CsPbClBr3-x、CsPbI3-xCl、FA1-yCsPbI、FA1-yCsPbBr、FA1-yCsPbCl、FA1-yCsPbF、FA1-yCsPbBr3-x、FA1-yCsPbBrCl3-x、FA1-yCsPbIBr3-x、FA1-yCsPbICl3-x、FA1-yCsPbClBr3-x、FA1-yCsPbI3-xCl、又はその組み合わせを含み、
ここで、x=0~3であり、y=0.01~0.25である。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記A/M/X結晶材料は、FAPbI、CsPbI、FA1-yCsPbI、又はその組み合わせを含み、ここで、y=0.01~0.25である。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料は、ペロブスカイト材料である。任意選択的に、A/M/X結晶材料は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。用語「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」とは、式に少なくとも一種の金属カチオンと少なくとも一種のハロゲンアニオンが含まれるペロブスカイトを指す。任意選択的に、A/M/X結晶材料は、混合ハロゲン化物ペロブスカイトである。用語「混合ハロゲン化物ペロブスカイト」とは、少なくとも二つのタイプのハロゲンアニオンを含むペロブスカイト又は混合ペロブスカイトを指す。任意選択的に、A/M/X結晶材料は、混合カチオンペロブスカイトである。用語「混合カチオンペロブスカイト」とは、少なくとも二つのタイプのAカチオンを含む混合ペロブスカイトであるペロブスカイトを指す。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、用語「ペロブスカイト」とは、CaTiOの三次元結晶構造に関連する三次元結晶構造を有する材料を指し、又はCaTiOの構造に関連する構造を有する層材料を含む。CaTiOの三次元結晶構造に関連する構造を有する材料は、「3Dペロブスカイト構造」を有するペロブスカイトと呼ばれてもよく、又は「3Dペロブスカイト」と呼ばれる。CaTiOの構造は、式AMXで表すことができ、ここで、AとMは、大きさが異なるカチオンであり、且つXは、アニオンである。単位格子において、カチオンAは、(0,0,0)の位置にあり、カチオンMは、(1/2,1/2,1/2)の位置にあり、そしてアニオンXは、(1/2,1/2,0)の位置にある。カチオンAは、一般的にはカチオンMよりも大きい。当業者であれば理解できるように、A、MとXが変化する時、異なるイオン寸法により、ペロブスカイト材料の構造は、CaTiOが持つ構造から歪みが発生して対称性の低い歪み構造に変形する可能性がある。ペロブスカイト材料層を含む材料は、公知である。例えば、KNiF-型構造を採用する材料の構造は、ペロブスカイト材料層を含む。これは、当分野において「2D層状ペロブスカイト」と呼ばれ、その構造上では上記3Dペロブスカイトとは異なる。2D層状ペロブスカイトは、式[A][M][X]で表すことができ、ここで、[A]は、少なくとも一種のカチオンであり、[M]は、カチオン[A]の大きさと異なる少なくとも一種のカチオンであり、そして[X]は、少なくとも一種のアニオンである。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記光活性結晶材料層の厚さは、100nm以上であり、任意選択的に100~1000nmであり、任意選択的に300~700nmである。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102とをさらに含み、前記光活性結晶材料層103は、前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102との間に位置し、
前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、第1の電極105と第2の電極101とをさらに含み、前記電子輸送層、正孔輸送層と光活性結晶材料層は、前記第1の電極105と第2の電極101との間に位置し、
任意選択的に、前記第1の電極105は、透明導電性酸化物を含み、
任意選択的に、前記第2の電極101は、金属を含む。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本出願は、A/M/X結晶材料を製造する方法をさらに提供し、前記A/M/X結晶材料は、以下の一般式を有し、
[A][M][X]
[M]は、一種又は複数種の第1のカチオンを含み、前記第1のカチオンは、金属イオン、メタロイドイオン、又はその組み合わせを含み、
[A]は、一種又は複数種の第2のカチオンを含み、
[X]は、一種又は複数種のハロゲンアニオンを含み、
aは、1~6であり、例えばa=1であり、
bは、1~6であり、例えばb=1であり、
cは、1~18であり、例えばc=3である。
【0091】
前記方法は、基体上に前駆体組成物を設置することを含み、前記前駆体組成物は、
(a)少なくとも一種の前駆体化合物、
(b)溶媒、
(c)界面活性剤、及び
(d)アミノ化合物(Organic nitrogen-containing compounds)という成分を含む。
【0092】
上記方案において、発明者は、界面活性剤とアミノ化合物とを連携してA/M/X結晶材料の前駆体組成物の製造に用いることで、製造されたA/M/X結晶材料が高い貫通結晶粒比と低い平坦係数を兼備し、該A/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスが改善されたエネルギー変換効率を有することを意外に見出した。
【0093】
いくつかの実施案では、前駆体組成物における少なくとも一種の前駆体化合物の濃度は、0.5mol/L~2.5mol/Lであり、例えば0.5mol/L~1.5mol/L、1.5mol/L~2.5mol/Lである。
【0094】
いくつかの実施案では、前駆体組成物における界面活性剤の濃度は、0.05wt%~0.5wt%であり、例えば0.1wt%~0.2wt%、0.2wt%~0.3wt%、0.3wt%~0.4wt%、又は0.4wt%~0.5wt%である。
【0095】
いくつかの実施案では、前駆体組成物におけるアミノ化合物の濃度は、1wt%~10wt%であり、例えば2wt%~4wt%、4wt%~6wt%、6wt%~8wt%、又は8wt%~10wt%である。
【0096】
いくつかの実施形態では、用語「界面活性剤」とは、親水性と親油性部分を含む任意の両親媒性化合物(分子又はイオン)を指す。界面活性剤は、一般的には油-水の界面で蓄積することで作用を果たして、親水部分が水相に、親油部分が疎水相に配向するようにし、それによって表面張力を低下させる。適切な界面活性剤は、水不溶性界面活性剤、水分散性界面活性剤及び水溶性界面活性剤を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、両性界面活性剤を含む。
【0098】
用語「両性界面活性剤」とは、同じ分子に連結されるカチオンとアニオン中心を有する化合物を指す。特に、カチオン部分は、第1級、第2級、第3級又は第4級アンモニウムカチオンに基づく。アニオン部分は、カルボン酸塩、スルホン酸塩及びリン酸塩を含むが、それらに限らない。さらに特に、該「両性界面活性剤」は、C(O)O-、SOH又はSO-官能基と結合するN-O-官能基、第4級N官能基を有する化合物、及びC(O)OH、C(O)O-、SOH又はSO-官能基と結合して第3級N官能基を有する化合物を指す。
【0099】
両性界面活性剤及びその特性の説明については、両性界面活性剤、第2版、E.G.Lomax編集、1996、マーセルデッカー出版社(Amphoteric Surfactants,2nd ed.,E.G.Lomax,Ed.,1996,Marcel Dekker)を参照してもよい。この種類の界面活性剤は、脂肪族アルキルベタイン、脂肪族アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、及びイミダゾリン由来のベタインのようなベタインと、脂肪族アルキルアミンオキシド、脂肪族アルキルアミドアミンオキシドのようなアミンオキシドと、両性グリシン塩及び両性プロピオン酸塩と、いわゆる「平衡の」両性ポリカルボキシグリシン塩及び両性ポリカルボキシプロピオン酸塩とを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記アミノ化合物は、アミノニトリル系化合物、アミノ酸系化合物、ヒドラジン系化合物、尿素系化合物(例えば尿素、尿素ホルムアルデヒド、ビウレット、トリウレット)、グアニジン系化合物、又はその塩又は水和物を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、用語「アミノ系化合物」(amino compounds)とは、少なくとも一つの第1級、第2級、第3級又は第4級アンモニウム基を含有する任意の化合物を指す。
【0102】
いくつかの実施形態では、アミノ系化合物は、C1-C20化合物であり、例えばC1-C15化合物、例えばC1-C10化合物、例えばC1-C5化合物、C15-C20化合物である。
【0103】
いくつかの実施形態では、用語「アミノニトリル系化合物」とは、少なくとも一つの「アミノ-メチル-シアノ」を含有する化合物を指す。任意選択的に「アミノニトリル系化合物」は、アミノニトリル(AAN)、イミノジアセトニトリル(IDAN)、又はエチレンジアミンジアセトニトリル(EDN)を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、用語「アミノ酸」とは、少なくとも一つのアミノ基と少なくとも一つのカルボキシ基を有する分子を指す。
【0105】
いくつかの実施形態では、用語「スルファミン酸系化合物」とは、少なくとも一つのアミノ基と少なくとも一つのスルホ基を含有する分子を指す。
【0106】
いくつかの実施形態では、用語「ヒドラジン系化合物」は、ヒドラジンと置換されたヒドラジンを含む。
【0107】
いくつかの実施案では、置換とは、置換される化合物のH原子が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びヘテロ環基のうちの一つ又は複数の基によって置換されることを意味する。
【0108】
いくつかの実施形態では、用語「尿素系化合物」とは、-NR-C(=S)-NR-基を有する化合物を指し、各R、R、RとRは、独立してH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びヘテロ環基から選択される。任意選択的に尿素系化合物は、ウレア(尿素)、チオ尿素、尿素ホルムアルデヒド、ビウレット、トリウレット及びそれらの置換体を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、ドデシルアミノプロピオン酸塩、ドデシルエトキシスルホベタイン、ドデシルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、双性イオンポリアクリルアミド、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、テトラデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシド、ドデシルベタイン、L-α-ホスファチジルコリン、3-(N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム)プロパンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、ドデシルベタイン、3-(N,N-ジメチルテトラデシルアンモニウム)プロパンスルホン酸塩、ラウラミドプロピルアミンオキシド、L-α-ホスファチジルコリン、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記アミノ系化合物は、尿素ホルムアルデヒド(C)、イソブチルアルデヒド縮合尿素(C14)、ヒドラジン(H)、グアニジン(CHO)、ニトリルアミン(CH)、スルファミン酸(HNOS)、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づき、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記アミノ系化合物は、グアニジン、スルファミン酸、尿素、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、前記前駆体組成物は、第1の溶媒と第2の溶媒とを含み、前記第1の溶媒の沸点は、40℃~165℃(例えば40℃~60℃、60℃~80℃、80℃~100℃、100℃~120℃、120℃~140℃、又は140℃~160℃)であり、前記第2の溶媒の沸点は、170℃~250℃(例えば170℃~190℃、190℃~210℃、210℃~230℃、又は230℃~250℃)である。該方案において、特定の沸点の第1の溶媒と特定の沸点の第2の溶媒とを組み合わせて使用することで、A/M/X結晶材料の成膜のカバレッジと結晶品質を効果的に改善することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、前記第1の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、2-メトキシエタノール、アセトニトリル(ACN)のうちの一種又は複数種から選択される。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、前記第2の溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)のうちの一種又は複数種から選択される。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、前記第1の溶媒と第2の溶媒との体積比は、(4~10):1である。特定の沸点の第1の溶媒と特定の沸点の第2の溶媒とを上記特定の比率で組み合わせて使用することで、A/M/X結晶材料の成膜のカバレッジと結晶品質を効果的に改善することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、前記前駆体組成物は、
第1のカチオンを含有する第1の前駆体化合物と、
第2のカチオンを含有する第2の前駆体化合物とを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、前記第1の前駆体化合物は、ハロゲンアニオンを含有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、前記第2の前駆体化合物は、ハロゲンアニオンを含有する。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0120】
いくつかの実施形態では、前記第1の前駆体化合物は、ヨウ化鉛(PbI)、臭化鉛(PbBr)、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、前記第2の前駆体化合物は、ホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)、ホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)、ヨウ化セシウム(CsI)、臭化セシウム(CsBr)、又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0122】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料を製造する方法は、基体の表面に設置される前駆体組成物に対して硬化処理を実施するステップをさらに含み、
任意選択的に、前記硬化処理は、真空処理、エアナイフ処理(air blading)、赤外光処理又はその組み合わせを含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料を製造する方法は、硬化処理された生成物に対してアニーリング処理を行うことをさらに含む。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0124】
いくつかの実施案では、前記アニーリング処理の温度は、100℃~170℃(例えば100℃~120℃、120℃~140℃、140℃~160℃、又は160℃~170℃)である。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0125】
いくつかの実施案では、前記アニーリング処理の時間は、5min~60min(例えば5min~15min、15min~25min、25min~35min、35min~45min、又は45min~55min)である。上記方案に基づいて製造されたA/M/X結晶材料を太陽光発電デバイスに用いると、太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、本出願は、太陽光発電デバイスを製造する方法をさらに提供し、前記太陽光発電デバイスは、第1の電極105と、第2の電極101と、前記第1の電極105と第2の電極101との間に位置する第1の電荷輸送層104及び第2の電荷輸送層102と、前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102との間に位置するA/M/X結晶材料層とを含み、
前記方法は、
表面に第1の電荷輸送層104が設置されている第1の電極105を提供することと、
上記いずれか一項に記載のA/M/X結晶材料の製造方法に従って、前記第1の電荷輸送層104の表面に前記A/M/X結晶材料層を形成することと、
前記A/M/X結晶材料層上に第2の電荷輸送層102を形成することと、
前記第2の電荷輸送層102上に第2の電極101を形成することとを含み、
ここで、前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102は、それぞれ電子輸送層と正孔輸送層であり、又は
前記第1の電荷輸送層104と第2の電荷輸送層102は、それぞれ正孔輸送層と電子輸送層である。上記方案に基づいて製造された太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、以下の順で、
・第1の電極(例えば透明導電性酸化物を含む)層と、
・第1の電荷輸送材料層(例えば正孔輸送材料層)と、
・光活性結晶材料層と、
・第2の電荷輸送材料層(例えば電子輸送材料層)と、
・第2の電極(例えば単体金属を含む)層とを含んでもよい。上記方案に基づいて製造された太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、太陽光発電デバイスは、以下の順で、
・第1の電極(例えば透明導電性酸化物を含む)層と、
・第1の電荷輸送材料層(例えば電子輸送材料層)と、
・光活性結晶材料層と、
・第2の電荷輸送材料層(例えば正孔輸送材料層)と、
・第2の電極(例えば単体金属を含む)層とを含んでもよい。上記方案に基づいて製造された太陽光発電デバイスは、改善されたエネルギー変換効率を有する。
【0129】
[光活性結晶材料層]
いくつかの実施形態では、「光活性結晶材料」とは、光を吸収して自由キャリア(例えば電子と正孔)を生成できる材料を指す。
【0130】
いくつかの実施形態では、光活性結晶材料は、一般的に光スペクトルの可視光領域の光子、例えば可視光スペクトルの青色光領域における光子を吸収及び/又は放射することができる。そのため、光活性結晶材料は、光放射材料(即ち発光できる材料)又は光吸収材料(即ち光を吸収できる材料)と記述されてもよい。例えば、光活性結晶材料は、例えば波長が450~700nm、例えば450~650nmにある少なくとも一種の光子を放射及び/又は吸収することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、光活性結晶材料は、5wt%以上のA/M/X結晶材料を含んでもよい。例えば、光活性結晶材料は、80wt%以上のA/M/X結晶材料、例えば95wt%以上のA/M/X結晶材料、例えば99wt%以上のA/M/X結晶材料を含む。光活性結晶材料は、A/M/X結晶材料から構成されてもよく、又は基本的にA/M/X結晶材料から構成されてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、光活性結晶材料は、例えば固体である。
【0133】
いくつかの実施形態では、光活性結晶材料層は、A/M/X結晶材料のフィルムを含む。一般的に、A/M/X結晶材料が多結晶であるため、それに応じて光活性結晶材料は、多結晶のA/M/X結晶材料を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、光活性結晶材料層は、複数の層を含んでもよい。各層は、部分的又は全体的にA/M/X結晶材料を含んでもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、A/M/X結晶材料は、光活性結晶材料層全体において均一又は不均一に分布してもよい。例えば、光活性結晶材料は、層を含んでもよく、前記層は、基本的にA/M/X結晶材料から構成されるか、又はA/M/X結晶材料のみから構成される層である。代替的に又は追加的に、光活性結晶材料は、基板上にA/M/X結晶材料がある前記基板(例えば粉末の形態で又はフィルムの形態で)を含んでもよい。
【0136】
[電子輸送層]
いくつかの実施形態では、電子輸送層は、電子輸送材料(n型半導体材料とも呼ばれる)を含有する層である。電子輸送材料は、単一種類の電子輸送化合物又は単体材料、又は二種類以上の電子輸送化合物又は単体材料の混合物であってもよい。電子輸送化合物又は単体材料は、ドープされていなくてもよく、又は一種又は複数種のドーピング元素がドープされていてもよい。
【0137】
電子輸送材料の実例は、当業者にとって既知である。
【0138】
電子輸送材料は、フラーレン又はフラーレンの誘導体、例えばC60、C70、PCBM、PC71BM、ビス[C60]BM(即ち、ビス-C60-酪酸メチル)、ICBA(CAS:1207461-57-1)を含んでもよい。
【0139】
電子輸送材料は、有機電子輸送材料、例えばペリレン又はその誘導体、P(NDI2OD-T2)(CAS:1100243-40~0)、又はバソクプロイン(BCP)を含んでもよい。
【0140】
電子輸送材料は、無機電子輸送材料、例えば金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、非晶質シリコン、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体及びn型II-V族半導体を含んでもよく、そのうちの任意の一つは、ドープされていても、ドープされていなくてもよい。
【0141】
[正孔輸送層]
いくつかの実施形態では、正孔輸送層とは、正孔輸送(p型半導体材料とも呼ばれる)材料を含有する層を指す。
【0142】
正孔輸送材料の実例は、当業者にとって既知である。正孔輸送材料は、単一種類の正孔輸送化合物又は単体材料、又は二種類以上の正孔輸送化合物又は単体材料の混合物であってもよい。正孔輸送化合物又は単体材料は、ドープされていなくてもよく、又は一種又は複数種のドーピング元素がドープされていてもよい。
【0143】
有機正孔輸送材料として、例えばスピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBT、ポリ-TPD、スピロ環(TFSI)とPVKを含んでもよい。
【0144】
無機正孔輸送材料として、ニッケル(例えばNiO)、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、CuO、CuO又はCIS、ペロブスカイト、非晶質シリコン、p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体及びp型II-V族半導体を含んでもよく、これらの無機材料は、ドープされていても、ドープされていなくてもよい。
【0145】
[電極]
用語「電極」とは、電極材料から構成されるか又は基本的に電極材料から構成される領域又は層を意味する。
【0146】
本出願の太陽光発電デバイスは、さらに第1の電極と第2の電極とを含んでもよい。
【0147】
第1の電極は、金属(例えば銀、金、アルミニウム又はタングステン)、有機導電性材料(例えばPEDOT:PSS)、又は透明導電性酸化物(例えばフッ素がドープされたスズ酸化物(FTO)、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)又はインジウムがドープされた酸化スズ(ITO))を含んでもよい。一般的に、第1の電極は、透明電極である。そのため、第1の電極は、一般的に透明導電性酸化物を含み、例えばFTO、ITO又はAZOである。第1の電極の層の厚さは、例えば10nm~1000nmであり、また例えば40nm~400nmである。
【0148】
第2の電極は、以上の第1の電極に対する限定を行ってもよく、例えば、第2の電極は、金属(例えば銀、金、アルミニウム又はタングステン)、有機導電性材料((例えばPEDOT:PSS)、又は透明導電性酸化物(例えばフッ素がドープされたスズ酸化物(FTO)、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)又はインジウムがドープされた酸化スズ(ITO))を含んでもよい。一般的に、第2の電極は、金属(例えば単体金属)を含むか又は基本的に金属(例えば単体金属)から構成される。第2の電極の材料が金属を含んでもよく又は基本的に金属から構成されてもよい実例として、例えば銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム又はタングステンが挙げられる。第2の電極は、真空蒸発によって堆積し形成することができる。第2の電極材料層の厚さは、例えば10~1000nmであり、例えば50nm~150nmである。
【0149】
[実施例]
以下、具体的な実施例と比較例を結び付けながら本出願の技術案を詳細に説明する。特に断らない限り、本出願で用いた試薬、方法及び機器は、当分野における一般的な食品グレードの試薬、方法及び機器である。特に断らない限り、本出願の実施例で用いた試験条件は、当分野における一般的な試験条件である。特に断らない限り、本出願の実施例で用いた試薬は、いずれも市販品である。
【0150】
一部の原料と試薬のCAS番号は、以下のとおりである。
【0151】
【化1】
【0152】
実施例1
図1を参照すると、図において矢印で光照射方向を示し、実施例1の太陽光発電デバイスは、順次積層されたベース106と、第1の電極105と、第1の電荷輸送層104と、光活性結晶材料層103と、第2の電荷輸送層102と、第2の電極101とを含む。
【0153】
実施例1の太陽光発電デバイスの製造方法は、以下のとおりである。
【0154】
(1)1362mgのホルムアミジンヨウ化水素酸塩(FAI)と、228.6mgのヨウ化セシウム(CsI)と、4056.9mgのヨウ化鉛(PbI)とを8mLの溶媒中に溶解させて、ペロブスカイト前駆体溶液を調製し、ここでFAIのモル濃度は、0.99mol/Lであり、CsIのモル濃度は、0.11mol/Lであり、PbI2のモル濃度は、1.1mol/Lである。溶媒は、体積比が7:1のDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)とNMP(N-メチルピロリドン)との混合物である。そして、上記溶媒にさらに界面活性剤と窒素含有化合物とを加え、両者の重量百分率は、それぞれ0.1wt%と5wt%である。実施例1において、界面活性剤は、ドデシルベタインであり、窒素含有化合物は、尿素である。
【0155】
(2)2cm×2cmのFTO導電ガラス(FTO導電ガラスは、表面にFTO導電層を被覆するガラスであり、FTOは、Fluorine doped tin oxideの省略表現である)を提供し、FTO導電ガラスは、ガラス板と、ガラス板上に堆積するFTO導電層とを含む。レーザー彫刻技術(laser engraving technique)を用いて、FTO導電ガラスの対向する二つのエッジから幅0.66cmのFTO導電層を除去し、FTO導電ガラス上において寸法2cm×1.34cmのFTO導電層を残し、ここで、ガラス板をベース106とし、FTO導電層を第1の電極105とした。
【0156】
(3)マグネトロンスパッタリング技術を用いて、第1の電極105(FTO導電層)上において第1の電荷輸送層104(酸化ニッケル層)を形成し、酸化ニッケル層の厚さは、約20nmである。第1の電荷輸送層104は、ここで正孔輸送層とした。
【0157】
(4)前駆体溶液を酸化ニッケル層上に塗布し、そしてサンプルを真空チャンバーに移し、100Paの真空度で120秒静置して前駆体溶液を硬化させ膜を形成した。硬化後のサンプルをホットステージ上に置いてアニーリング処理を行い、アニーリング処理の温度は、150℃であり、アニーリング処理の時間は、30minである。アニーリング処理した後に、酸化ニッケル層上に良好なA/M/X結晶材料層が形成された。本実施例において、A/M/X結晶材料の成分は、FA0.9Cs0.1PbIである。A/M/X結晶材料層は、ここで光活性結晶材料層103とした。
【0158】
(6)前のステップで得られたサンプルを蒸着システムに置き、光活性結晶材料層103上に第2の電荷輸送層102を堆積させ、ここで、第2の電荷輸送層102は、電子輸送層である。第2の電荷輸送層は、順次蒸着して形成された、厚さが30nmのC60(フラーレン)層と、厚さが8nmのBCP(バソクプロイン、bathocuproine)層とを含む。
【0159】
(7)依然として上記蒸着システムにおいて、第2の電荷輸送層102上に第2の電極101を形成し、第2の電極101は、厚さが100nmの金属銅層であり、実施例1の太陽光発電デバイスが得られた。
【0160】
実施例2~4
実施例2~4と実施例1との相違点は、前駆体溶液における界面活性剤及び/又は窒素含有化合物の種類が異なることである。
【0161】
界面活性剤と窒素含有化合物の相違点について、詳しくは、表1を参照されたい。
【0162】
比較例1~8
比較例1と実施例1との相違点は、前駆体溶液が界面活性剤と窒素含有化合物を含有しないことである。
【0163】
比較例2~8と実施例1との相違点は、前駆体溶液が界面活性剤を含有しないこと、及び窒素含有化合物の種類又は含有量が異なることである。
【0164】
界面活性剤と窒素含有化合物の相違点について、詳しくは、表1を参照されたい。
【0165】
分析と検出
1. 形態特徴:
(1)サンプルの準備:実施例4の方案に従って、ステップ(1)~(4)を実施し、ステップ(6)の生成物を観察サンプルとし、ガラスカッターを用いて、観察サンプルとしてのガラス板の一方側で1本の直線キズを入れ、そして太陽光発電デバイスを該キズに沿って二つに割って、断面を露出させた。
【0166】
(2)サンプルの観察:走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して断面を観察し、30000倍の倍率で写真を撮り、該写真は、図4に示すとおりである。該観察サンプルは、ベース106と、ベース106上に積層される第1の電極105と、第1の電極105上に積層される第1の電荷輸送層104と、第1の電荷輸送層104上に積層される光活性結晶材料層103とを含む。
【0167】
(3)光活性結晶材料層の結晶形態:
図4に示すように、写真の領域内において、光活性結晶材料層103の断面の長さは3.7μmであり、該領域内の完全な結晶粒総数は4である。
【0168】
第1に、光活性結晶材料層103は、貫通結晶粒313を含み、貫通結晶粒313は、光活性結晶材料層103を貫通する結晶粒であり、貫通結晶粒313の数が4であり、光活性結晶材料層103の図示領域内における結晶粒総数に占める比率p=100%である。
【0169】
第2に、光活性結晶材料層103は、バックライト側113とバックライト結晶粒とを含み、バックライト結晶粒は、前記バックライト側113に露出する結晶粒であり、バックライト結晶粒は、バックライト側113に露出するバックライト結晶面を有し、
写真の領域内において、バックライト側は、平均平坦係数Ravg=11.4を有し、
ここで、写真領域のRavgは、以下の式によって算出され、
【数4】
ここで、Rは、写真領域内のi番目のバックライト結晶粒の平坦係数であり、Rは、以下の式によって算出され、
=d/h
ここで、dは、写真領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の幅であり、
ここで、hは、写真領域内のi番目のバックライト結晶粒(31、32、33)のバックライト結晶面の突起高さであり、
ここで、nは、領域内のすべてのバックライト結晶粒の数であり、n=4である。
【0170】
実施例1~4及び比較例1~8の方案で得られたステップ(6)の生成物に対して、それぞれ走査型電子顕微鏡の観察を行い、長さが3.7μmの光活性結晶材料層の断面を収集し、
(1)貫通結晶粒313の、光活性結晶材料層の写真領域内の結晶粒総数に占める比率pと、
(2)バックライト側の平均平坦係数Ravgとを算出した。
【0171】
具体的な結果は、表1に示すとおりである。
【0172】
2. エネルギー変換効率の特徴付け
実施例1~4及び比較例1~8の方案で得られた太陽光発電デバイスに対して、標準擬似太陽光(AM1.5G、100mW/cm)の照射下で太陽光発電デバイスのエネルギー変換効率(PCE)をテストした。テスト方法について、具体的には文献Stabilizing perovskite-substrate interfaces for high-performance perovskite modules,Science 373,902(2021)を参照してもよく、テスト結果は、表1に示すとおりである。
【0173】
【表1】
【0174】
分析と結論:
(1)太陽光発電デバイスについて
実施例1~4の太陽光発電デバイスのエネルギー変換効率は20.1%~21.1%であり、比較例1~8の16%~18.9%より顕著に高い。
【0175】
実施例1~4の太陽光発電デバイスの顕著に向上したエネルギー変換効率は、該太陽光発電デバイスの光活性結晶層が以下の特徴a)とb)を同時に満たすことによるものである。
【0176】
a)貫通結晶粒313の、光活性結晶材料層の写真領域内の結晶粒総数に占める比率p≧80であり、例えばp=100にも達し、且つ
b)バックライト側が平均平坦係数Ravg≦75を有し、例えばRavg=16~59にも達した。
【0177】
(2)界面活性剤と窒素含有化合物との相乗効果について
比較例1~8と比べて、実施例1~4の前駆体溶液には前駆体化合物に加えて、界面活性剤と窒素含有化合物をさらに含有する。
【0178】
本出願は、貫通結晶粒313占有率p≧80の同時に平均平坦係数Ravg≦75というような光活性結晶材料層を取得することが困難であることを見出した。比較例1~8に示すように、前駆体溶液に界面活性剤と窒素含有化合物を添加せず、単独で界面活性剤を添加し、又は単独で窒素含有化合物を添加する場合、貫通結晶粒313占有率p≧80の同時に平均平坦係数Ravg≦75というような光活性結晶材料層を得ることができず、光吸収性質を改善した光活性結晶材料層を得ることができない。
【0179】
本出願は、前駆体溶液に界面活性剤と窒素含有化合物とを同時に添加することで、貫通結晶粒313占有率p≧80且つ平均平坦係数Ravg≦75の光活性結晶材料層を成功裏に取得可能になることを意外に見出した。
【0180】
強調すべきこととして、界面活性剤と窒素含有化合物は、相乗効果を奏しており、光活性結晶材料層の光電変換性能を顕著に改善した。表1の最後の列は、比較例1の光変換効率をブランク基準として、他の比較例及び実施例1~4の、比較例1の光変換効率に対する上昇率を算出した。以下のことが分かる。
【0181】
実施例1のPCE上昇率(26%)は、比較例4と6との上昇率の単純和(18%+3%=21%)よりも顕著に高く、
実施例2のPCE上昇率(28%)は、比較例2と5との上昇率の単純和(3%+2%=5%)よりも顕著に高く、
実施例3のPCE上昇率(31%)は、比較例3と7との上昇率の単純和(7%+8%=15%)よりも顕著に高く、
実施例4のPCE上昇率(32%)は、比較例4と8との上昇率の単純和(18+12%=30%)よりも顕著に高く、
界面活性剤と窒素含有化合物は、予期せぬ相乗効果を奏しているため、光活性結晶材料層の光吸収性質を顕著に改善した。具体的には、活性結晶材料層の貫通結晶粒313の占有率p≧80であり、それと同時に平均平坦係数Ravg≦75であり、さらにエネルギー変換効率が顕著に向上した太陽光発電デバイスを取得した。
【0182】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を加え、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築された他の形態も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0183】
ベース106、第1の電極105、第1の電荷輸送層104、光活性結晶材料層103、第2の電荷輸送層102、第2の電極101、貫通結晶粒(313)、バックライト結晶粒(31、32、33)、バックライト結晶粒の幅d、バックライト結晶粒の突起高さh、バックライト面113、
入射光151、反射光152、受光面112、結晶粒界325。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
【国際調査報告】