(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】新規のコンジュゲートされた核酸分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20250107BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20250107BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20250107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61K31/713
A61K31/7125
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536248
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2022086199
(87)【国際公開番号】W WO2023111203
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】317016006
【氏名又は名称】ヴァレリオ・セラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】VALERIO THERAPEUTICS
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ザンダネル
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ルメートル
(72)【発明者】
【氏名】ロイク・ルー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA19
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、特にがんの治療における使用のための、治療の対象とする新規の核酸分子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンジュゲートされた核酸分子又はその薬学的に許容される塩であって、分子が16又は17塩基対の二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端を含み、二本鎖核酸部分が以下の配列
【化1】
配列番号1及び2
を有し、
idNが反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
Nのそれぞれの出現が独立にT又はUであり、
ヌクレオチド間連結「s」がホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドが2'-修飾ヌクレオチドであり、
ループが
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
(ここでr及びsは独立に整数0又は1であり、g及びhは独立に1~7の整数であり、合計g+hは4~7であり、
Xは-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、
Kは
【化2】
又は-CH
2-CH(L
f-J)-であり、
i、j、k、及びlは独立に0~6、好ましくは1~3の整数であり、Lはリンカーであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである)、又は
-O-P(X)OH-O-[(CH
2)
d-C(O)-NH]
b-CHR-[C(O)-NH-(CH
2)
e]
c-O-P(X)OH-O- (II)
(ここでb及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、
d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、Rは-L
f-Jであり、
Xは-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、Lはリンカーであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである)
であり、
分子が、1) Uである少なくとも1つのN、及び/又は2) 存在する少なくとも1つのidNを有し、及び/又は3) ループが、
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s- (I)
であり、Kが-CH
2-CH(L
f-J)-である、コンジュゲートされた核酸分子又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Jがエンドサイトーシスを容易にする分子であり、エンドサイトーシスを容易にする分子が、コレステロール、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、受容体媒介エンドサイトーシスを可能にする細胞受容体を標的とするリガンド、又はトランスフェリンからなる群から選択され、好ましくはコレステロールである、請求項1に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項3】
ループが、
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
であり、rが1であり、sが0であり、gが5~7の整数、好ましくは6である、請求項1又は2に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項4】
Kが
【化3】
(ここでi及びjは1であり、k及びlはいずれも1又は2である)
又は-CH
2-CH(L
f-J)-である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項5】
fが1であり、L-Jが-C(O)-(CH
2)
m-NH-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
p-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
m-NH-C(O)-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
p-J、-C(O)-(CH
2)
m-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
p-J、-C(O)-(CH
2)
m-NH-C(O)-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
p-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
m-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
p-C(O)-J、及び/又は-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
m-NH-(CH
2)
p-C(O)-Jからなる群において選択され、mが0~10の整数、好ましくは4~6の整数、より好ましくは5であり、nが0~15の整数であり、pが0~3の整数である、請求項1から4のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項6】
ループが式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
を有し、
Xが-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにSであり、rが1であり、gが6であり、sが0であり、i及びjが1であり、k及びlが2であり、
fが1であり、L-JがC(O)-(CH
2)
5-NH-[(CH
2)
2-O]
3-(CH
2)
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-[(CH
2)
2-O]
3-(CH
2)
3-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
5-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
9-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
13-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-J、又は-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
6-(CH
2)
3-NH-CH
2-C(O)-Jである、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項7】
ループが、
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
であり、
Kが-CH
2-CH(L
f-J)-であり、fが1であり、L-Jが-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
m-NH-(CH
2)
p-C(O)-Jであり、mが3であり、nが3であり、pが0である、請求項1から5のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項8】
2'修飾ヌクレオチドが独立に、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル(2'-OMe)、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)修飾、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)、及び2'架橋ヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項9】
2'修飾ヌクレオチドが、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である、請求項8に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項10】
核酸分子が、
【化4】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNが反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」がホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、
分子は、1) Uである少なくとも1つのN、及び/又は2) 存在する少なくとも1つのidNを有する)
又はその薬学的に許容される塩
である、請求項1から6及び8から9のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項11】
核酸分子が、
【化5】
配列番号17及び18
(ここで下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)、又は
【化6】
配列番号9及び10
(ここでidTは5'末端及び3'末端に存在し、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)である)、又は
【化7】
配列番号11及び12
(ここで下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、
idTは5'末端及び3'末端に存在する)
である、請求項10に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項12】
核酸分子が、
【化8】
配列番号1及び2
又は
【化9】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、idNは好ましくは反転したチミジンidTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である、請求項1から5及び7から9のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項13】
核酸分子が、
【化10】
配列番号7及び8
(ここで下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)、又は
【化11】
配列番号7及び8
(ここで下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
である、請求項12に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項14】
核酸分子が、
【化12】
配列番号19及び20
(ここでヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)である)
である、請求項1から5、7から9、及び12のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子を含み、任意選択で、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤を更に含む、医薬組成物又は獣医学用組成物。
【請求項16】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体を更に含む、請求項15に記載の医薬組成物又は獣医学用組成物。
【請求項17】
薬物としての使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子、又は請求項15若しくは16に記載の医薬組成物若しくは獣医学用組成物。
【請求項18】
がんの治療のための使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子、又は請求項15若しくは16に記載の医薬組成物若しくは獣医学用組成物。
【請求項19】
がんが、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、並びに頭頚部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、脳、結腸直腸、肝、内膜、及び子宮頸部のがんから選択される、請求項18に記載の使用のためのコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物若しくは獣医学用組成物。
【請求項20】
好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤と組み合わされた、請求項17から19のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項21】
追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である、請求項20に記載の使用のためのコンジュゲートされた核酸分子。
【請求項22】
がんが、相同組換え欠損腫瘍である、請求項18から21のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物若しくは獣医学用組成物。
【請求項23】
がんが、相同組換え有能腫瘍である、請求項18から21のいずれか一項に記載の使用のためのコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物若しくは獣医学用組成物。
【請求項24】
有効量の請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子又は請求項15若しくは16に記載の医薬組成物若しくは獣医学用組成物を投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法。
【請求項25】
がんが、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、並びに頭頚部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、脳、結腸直腸、肝、内膜、及び子宮頸部のがんから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される有効量の追加の治療剤を投与する工程を更に含む、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
がんが、相同組換え欠損腫瘍である、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
がんが、相同組換え有能腫瘍である、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
がんの治療のための医薬の製造のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のコンジュゲートされた核酸分子又は請求項15若しくは16に記載の医薬組成物若しくは獣医学用組成物の使用。
【請求項31】
がんが、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、並びに頭頚部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、脳、結腸直腸、肝、内膜、及び子宮頸部のがんから選択される、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤と組み合わせた使用のための、請求項30又は31に記載の使用。
【請求項33】
追加の治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
がんが、相同組換え欠損腫瘍である、請求項30から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
がんが、相同組換え有能腫瘍である、請求項30から33のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学、特に腫瘍学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA損傷応答(DDR)はDNAの傷害を検出し、その修復を促進する。DNAの傷害の型には広い多様性があるので、ミスマッチ修復(MMR)、塩基切除修復(BER)、ヌクレオチド切除修復(NER)、一本鎖切断修復(SSB)、及び二本鎖切断修復(DSB)等の多数の大きく区別できるDNA修復機構が必要である。例えば、SSBの修復には本質的にポリアデニルリボースポリメラーゼ(PARP)が関与する一方、DNAにおけるDSBを修復するには2つの主要な機構、即ち非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換え(HR)が用いられる。PARP-1は、DNAの損傷を検出する最初のレスポンダーとして作用し、次いで修復経路の選択を容易にする。NHEJにおいてはDSBがKuタンパク質によって認識され、これが次にプロテインキナーゼDNA-PKcsに結合してこれを活性化し、エンドプロセシング酵素の動員及び活性化がもたらされる。治療によって誘導されたDNAの損傷を修復するがん細胞の能力は、治療の有効性に影響を与えることが実証されてきた。
【0003】
このことが、DNA修復経路及びタンパク質を標的として、伝統的な遺伝毒性治療(化学療法、放射線療法)に対する感受性を増大する抗がん剤を開発することに繋がってきた。がん療法に対する合成の致死的なアプローチにより、がん細胞を特異的に標的とする一方、非がん細胞には傷害を与えず、それにより治療に付随する毒性を低減する新規な機構が提供されてきた。
【0004】
これらの合成の致死的なアプローチの中でも、Dbait分子は二本鎖DNAの傷害を模倣する核酸分子である。これらはDNA損傷シグナル伝達酵素であるPARP及びDNA-PKの「おとり」として作用し、「偽の」DNA損傷シグナルを誘導して、究極的にはDSB及びSSB経路に関与する多くのタンパク質の損傷部位への動員を阻害する。
【0005】
Dbait分子はPCT特許出願、WO2005/040378、WO2008/034866、WO2008/084087、WO2011/161075、WO2017/013237、WO2017/148976、及びWO2019/175132に広範に記載されている。Dbait分子は、その治療活性に必要ないくつかの特徴、例えばKuを含むKuタンパク質複合体とDNA-PKcsタンパク質との適切な結合を可能にするために十分である限り、変動してもよい最小の長さによって定義され得る。即ち、そのようなKu複合体への結合を確実にし、DNA-PKcsの活性化を可能にするために、Dbait分子の長さは20bp、好ましくは約32bpより長くなくてはならない。
【0006】
そのようなDbait分子を用いる治療のための可能性のある予測バイオマーカーを特徴解析した。Dbait分子に対する感受性はまさに、PCT特許出願WO2018/162439に記載された小核(MN)を伴う細胞の高い自発的頻度に随伴していた。種々の組織からの43種の固形腫瘍細胞株並びに細胞由来及び患者由来の異種移植片の16種のモデルにおけるバリデーションに続くDbait分子による治療のための予測マーカーとして、MNの高い基礎的レベルを提案した。
【0007】
更に、小核(MN)がDMAの損傷によって誘導される免疫応答の一部として重要なプラットフォームを提供することが最近提案された(Gekara J Cell Biol. 2017年10月2日;216(10):2999~3001頁)。最近の研究によって、DNAの損傷によって誘導される免疫活性化におけるMNの形成の役割が実証された。興味あることに、サイトゾルDNA感知経路はまさに、DNAの損傷と先天免疫との間の主要なリンクとして現れてきた。DNAは通常、核及びミトコンドリアに存在し、したがって、細胞質中におけるDNAの存在は免疫応答を誘発する危険随伴分子パターン(DAMP)として働く。環状グアノシン一リン酸(GMP)-アデノシン一リン酸(AMP)シンターゼ(cGAS)は、DNAをDAMPとして検出し、I型インターフェロン及び他のサイトカインを誘導するセンサーである。DNAは配列に依存せずにcGASに結合し、この結合はcGASの触媒中心のコンフォメーション変化を誘導し、それによりこの酵素はグアノシン三リン酸(GTP)及びATPを二次メッセンジャー環状GMP-AMP(cGAMP)に変換することができる。このcGAMP分子はアダプタータンパク質、即ちIFN遺伝子の刺激剤、即ちSTINGのための内因性高親和性リガンドである。STING経路の活性化は、次いで、例えば炎症性サイトカインの刺激であるIP-10(CXCL10としても知られている)並びにCCL5又は受容体NGK2及びPD-L1を含み得る。
【0008】
最近の証拠は、抗腫瘍免疫応答の誘導におけるSTING(インターフェロン遺伝子の刺激剤)経路の関与を示している。したがって、STINGアゴニストは現在、がん療法の新たなクラスとして広範に開発されている。がん細胞におけるSTING依存性経路の活性化は、免疫細胞による腫瘍の浸潤及び抗がん免疫応答の調節をもたらし得ることが示されてきた。
【0009】
STINGは、先天免疫シグナル伝達(細菌又はウイルス等の病原体を含むがこれらに限定されない環境からの攻撃と闘う迅速で非特異的な免疫応答)を容易にする小胞体アダプターである。STINGはNF-kB、STAT6、及びIRF3転写経路を活性化してI型インターフェロン(例えばIFN-α及びIFN-β)の発現を誘導し、発現後に強力な抗ウイルス状態を発揮することが報告された。しかし、これまでに開発されたSTINGアゴニストは全ての細胞型においてSTING経路を活性化することができ、樹状細胞におけるそれらの活性化にリンクした重大な副作用を誘発することがある。その帰結として、STINGアゴニストは局所投与されている。
【0010】
がん細胞は、急速な増殖を支持するための特有のエネルギー代謝を有する。正常な酸素条件下での嫌気的解糖に対する選好性は、がん代謝の特有の特質であり、Warburg効果と命名されている。解糖の強化はまた、がん細胞の分裂の建築ブロックとしてのヌクレオチド、アミノ酸、脂質、及び葉酸の生成を支持する。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、解糖を含むいくつかの代謝経路における酸化還元反応を媒介する補酵素である。NADレベルの増大は解糖を促進し、がん細胞にエネルギーを与える。これに関連し、NADレベルの枯渇は、引き続いて解糖、トリカルボン酸(TCA)サイクル、及び酸化的リン酸化等のエネルギー産生経路の阻害によってがん細胞の増殖を抑制する。NADはまた、いくつかの酵素の基質として働き、これらの酵素によってDNAの修復、遺伝子の発現、及びストレス応答を調節する。このように、NADの代謝はエネルギー代謝を超えてがんの発症機序に関与していると考えられ、特にDNA修復遺伝子の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDH(イソシトレート脱水素酵素)の変異によるNADの欠如を呈するがん細胞におけるがん治療のための有望な治療目標と考えられる。
【0011】
PARPタンパク質を捕捉するために開発されたオリゴヌクレオチドの占有のPlatON(商標)プラットフォームを用いて設計された新世代の製品OX400が生成された。OX400化合物は、腫瘍細胞におけるSTING経路を特異的に活性化することが示されている。OX400化合物、特にOX401化合物は、PCT特許出願WO 2020/127965に広範に記載されている。
【0012】
がん治療のための療法、特にいくつかの機構、特にDNA修復経路及びSTING経路活性化剤に依拠する薬物、並びにより多くの患者及びより広範囲のがんについて作用するチェックポイント阻害剤を助け得る薬物に対するニーズがなお存在する。
【0013】
治療に対するがん細胞の耐性を出現させることなく、がん細胞集団に成功裏に対処する新規の治療方法に対するニーズもなお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2005/040378
【特許文献2】WO2008/034866
【特許文献3】WO2008/084087
【特許文献4】WO2011/161075
【特許文献5】WO2017/013237
【特許文献6】WO2017/148976
【特許文献7】WO2019/175132
【特許文献8】WO2018/162439
【特許文献9】WO 2020/127965
【特許文献10】WO2009/126933
【特許文献11】WO2007/040469
【特許文献12】WO2008/022309
【特許文献13】US2004/242582
【特許文献14】米国特許第8,008,449号
【特許文献15】WO2006/121168
【特許文献16】WO2009/114335
【特許文献17】米国特許第8,354,509号
【特許文献18】WO2009/101611
【特許文献19】米国特許第8,609,089号
【特許文献20】米国公開第2010028330号
【特許文献21】米国公開第20120114649号
【特許文献22】米国特許第9,205,148号
【特許文献23】WO2012/145493
【特許文献24】WO2015/112800
【特許文献25】WO2016/092419
【特許文献26】WO2015/085847
【特許文献27】WO2014/179664
【特許文献28】WO2014/194302
【特許文献29】WO2014/209804
【特許文献30】WO2015/200119
【特許文献31】米国特許第8,735,553号
【特許文献32】米国特許第7,488,802号
【特許文献33】米国特許第8,927,697号
【特許文献34】米国特許第8,993,731号
【特許文献35】米国特許第9,102,727号
【特許文献36】米国特許第8,907,053号
【特許文献37】WO2010/027827
【特許文献38】WO2011/066342
【特許文献39】WO2013/079174
【特許文献40】米国特許第8,779,108号
【特許文献41】米国特許第7,943,743号
【特許文献42】WO2015/081158
【特許文献43】WO2015/181342
【特許文献44】WO2014/100079
【特許文献45】WO2016/000619
【特許文献46】WO2014/022758
【特許文献47】WO2014/055897
【特許文献48】WO2015/061668
【特許文献49】WO2013/079174
【特許文献50】WO2012/145493
【特許文献51】WO2015/112805
【特許文献52】WO2015/109124
【特許文献53】WO2015/195163
【特許文献54】米国特許第8,168,179号
【特許文献55】米国特許第8,552,154号
【特許文献56】米国特許第8,460,927号
【特許文献57】米国特許第9,175,082号
【特許文献58】WO2015/116539
【特許文献59】米国特許第9,505,839号
【特許文献60】WO2008/132601
【特許文献61】米国特許第9,244,059号
【特許文献62】WO2008/132601
【特許文献63】WO2010/019570
【特許文献64】WO2014/140180
【特許文献65】WO2015/116539
【特許文献66】WO2015/200119
【特許文献67】WO2016/028672
【特許文献68】米国特許第9,244,059号
【特許文献69】米国特許第9,505,839号
【特許文献70】WO2016/161270
【特許文献71】WO2016/111947
【特許文献72】WO2016/071448
【特許文献73】WO2016/144803
【特許文献74】米国特許第8,552,156号
【特許文献75】米国特許第8,841,418号
【特許文献76】米国特許第9,163,087号
【特許文献77】WO2009/077483
【特許文献78】米国特許第7,879,985号
【特許文献79】WO2018/035330
【特許文献80】WO2009/077483
【特許文献81】WO2010/017103
【特許文献82】WO2017/081190
【特許文献83】WO2018/035330
【特許文献84】WO2018/148447
【特許文献85】WO2010/080124
【特許文献86】WO2017/083545
【特許文献87】WO2017/083612
【特許文献88】WO2017/157895
【特許文献89】WO2014/140904
【特許文献90】WO2018/073648
【特許文献91】WO2008/084106
【特許文献92】WO2014/055648
【特許文献93】WO2005/003168
【特許文献94】WO2005/009465
【特許文献95】WO2006/072625
【特許文献96】WO2006/072626
【特許文献97】WO2007/042573
【特許文献98】WO2008/084106
【特許文献99】WO2010/065939
【特許文献100】WO2012/071411
【特許文献101】WO2012/160448
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Gekara J Cell Biol. 2017年10月2日;216(10):2999~3001頁
【非特許文献2】Goldsteinら、Ann. Rev. Cell Biol. 1985 1:1~39頁
【非特許文献3】Leamon & Lowe, Proc Natl Acad Sci USA. 1991, 88: 5572~5576頁
【非特許文献4】Hamid, O.ら、(2013) New England Journal of Medicine 369 (2): 134~44頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、DNA修復経路を標的とし、具体的にはがん細胞におけるSTING経路を刺激する新規のコンジュゲートされた核酸分子を提供する。より具体的には、核酸分子はDNA-PKを何ら活性化せずにPARPを活性化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、16~17塩基対(bp)の二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でループに連結されたエンドサイトーシスを容易にする分子を含むコンジュゲートされた核酸分子であって、
- 16~17塩基対(bp)の二本鎖核酸が以下の配列
【化1】
配列番号1及び2
を有し、
Nのそれぞれの出現が独立にT又はUであり、
idNが反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」がホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドが2'-修飾ヌクレオチドであり、
- ループが以下の式:
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
(ここでr及びsは独立に整数0又は1であり、g及びhは独立に1~7の整数であり、合計g+hは4~7であり、
Kは
【化2】
又は-CH
2-CH(L
f-J)-であり、
i、j、k、及びlは独立に0~6、好ましくは1~3の整数であり、Lはリンカーであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである)、又は
-O-P(X)OH-O-[(CH
2)
d-C(O)-NH]
b-CHR-[C(O)-NH-(CH
2)
e]
c-O-P(X)OH-O- (II)
(ここでb及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、
d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、Rは-L
f-Jである)
のうち1つから選択される構造を有し、
Xが-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、Lがリンカーであり、fが整数0又は1であり、Jがエンドサイトーシスを容易にする分子又はHであり、
分子が、1) Uである少なくとも1つのN、及び/又は2) 存在する少なくとも1つのidNを有し、及び/又は3) ループが
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s- (I)
であり、Kが-CH
2-CH(L
f-J)-である、コンジュゲートされた核酸分子に関する。
【0018】
特定の態様では、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子であり、エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロール、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、受容体媒介エンドサイトーシスを可能にする細胞受容体を標的とするリガンド、又はトランスフェリンからなる群から選択することができる。より具体的には、エンドサイトーシスを容易にする分子はコレステロールである。
【0019】
任意選択で、ループは式(I)を有し、rは1であり、sは0であり、gは5~7の整数、好ましくは6である。
【0020】
ループは式(I)を有してよく、i及びjが1で、k及びlがいずれも1又は2である場合、Kは
【化3】
又は-CH
2-CH(L
f-J)-である。
【0021】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、又は-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)-CH2-O]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J、又は-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは0~10の整数であり、nは0~6の整数であり、pは0~2の整数であり、t及びvは整数0又は1であり、t及びvのうち少なくとも1つは1である。
【0022】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J -C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、及び-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択され、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。
【0023】
任意選択で、mは4~6の整数、好ましくは5である。
【0024】
任意選択で、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
を有し、
XはSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、i及びjが1でk及びlが2である場合、Kは
【化4】
であり、
fは1であり、L-JはC(O)-(CH
2)
5-NH-[(CH
2)
2-O]
3-(CH
2)
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-[(CH
2)
2-O]
3-(CH
2)
3-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
5-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
9-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
13-CH
2-C(O)-J、-C(O)-(CH
2)
5-NH-C(O)-J、又は-CH
2-O-[(CH
2)
2-O]
n-(CH
2)
m-NH-(CH
2)
p-C(O)-Jである。
【0025】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)-CH2-O]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J、又は-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは0~10の整数であり、nは0~6の整数であり、pは0~2の整数であり、t及びvは整数0又は1であり、t及びvのうち少なくとも1つは1である。一態様では、mは4~6の整数、好ましくは5である。
【0026】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、及び-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択され、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。一態様では、mは4~6の整数、好ましくは5である。
【0027】
極めて特定の態様では、L-Jは、-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-J、又は-CH2-O-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-NH-C(O)-Jからなる群において選択することができる。
【0028】
別の特定の態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
を有し、
XはSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、i及びjは1であり、k及びlは2であり、fは1であり、L-JはC(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-J、又は-CH2-O-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-NH-C(O)-Jである。
【0029】
任意選択で、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(S)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s
を有し、
Xは-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、KはCH2-CH-(Lf-J)である。
【0030】
好ましい目的では、ループは-O-P(S)OH-O-[(CH2)2-O]6-P(O)OH-O-K-(O-P(S)OH-O)-であり、Kは-CH2-CH-(Lf-J)である。
【0031】
別の好ましい目的では、ループは-O-P(S)OH-O-[(CH2)2-O]6-P(S)OH-O-K-(O-P(S)OH-O)-であり、Kは-CH2-CH-(Lf-J)である。
【0032】
別の特定の態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
を有し、
Kは-CH2-CH(Lf-J)-であり、fは1であり、L-Jは-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは3であり、nは3であり、pは0である。
【0033】
任意選択で、2'修飾ヌクレオチドは独立に、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル(2'-OMe)、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)修飾、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)、及び2'架橋ヌクレオチド(LNA)からなる群から選択される。
【0034】
特定の態様では、2'修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)である。別の態様では、2'-修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である。
【0035】
特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化5】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、
分子は、1) Uである少なくとも1つのN、及び/又は2) 存在する少なくとも1つのidNを有する)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0036】
任意選択で、idNが存在する場合、idNは、好ましくは反転したチミジン、idTである。
【0037】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化6】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチド、好ましくは反転したチミジン、idTであり、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0038】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化7】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジン、idTであり、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0039】
一態様では、idNが存在しない場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX416:
【化8】
配列番号7及び8である。
【0040】
別の態様では、idNが存在し、
idNが存在して5'末端及び3'末端のidTである場合、NはTであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)であり、分子はOX421:
【化9】
配列番号9及び10
であり、idNが存在して5'末端及び3'末端のidTである場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX422:
【化10】
配列番号11及び12
である。
【0041】
別の特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化11】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジン、idTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0042】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化12】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTであり、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0043】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化13】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTであり、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0044】
好ましい態様では、idNが存在しない場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX423:
【化14】
配列番号7及び8である。
【0045】
別の特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化15】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0046】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化16】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTであり、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0047】
別の特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、
【化17】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTであり、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)又はその薬学的に許容される塩である。
【0048】
好ましい態様では、idNが存在しない場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX424:
【化18】
配列番号7及び8である。
【0049】
極めて特定の態様では、コンジュゲートした核酸分子は、OX425:
【化19】
配列番号19及び20であり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)である。
【0050】
本発明はまた、本開示によるコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物に関する。任意選択で、医薬組成物は好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤を更に含むか、これらと組み合わせることができる。特定の態様では、追加の治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である。
【0051】
本発明はまた、薬物としての使用のため、特にがんの治療における使用のための、本開示によるコンジュゲートされた核酸分子或いは医薬組成物又は獣医学用組成物に関する。本発明は更に、治療有効量の本発明によるコンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物を繰り返し又は長期的に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法に関する。任意選択で、本方法は繰り返しサイクルの治療、好ましくは少なくとも2サイクルの投与、更により好ましくは少なくとも3サイクル又は4サイクルの投与を含む。
【0052】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子の繰り返し投与又は長期的投与は、治療に対する耐性をがん細胞に発現させない。これは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤と組み合わせて、又は養子細胞移入(ACT)を含むT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞と組み合わせて、用いることができる。特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics)等の抗PD-1抗体。まさに、本発明によるコンジュゲートされた核酸分子を、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは抗PD-1抗体と組み合わせた場合、相乗効果が観察された。
【0053】
したがって、コンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物は、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)等のT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素から選択される追加の治療剤と組み合わせた、がんの治療における使用のためのものである。特定の態様では、追加の治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくは、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である。
【0054】
特定の態様では、がんは、白血病、リンパ腫、肉腫、黒色腫、並びに頭頚部、腎臓、卵巣、膵臓、前立腺、甲状腺、肺、食道、乳房、膀胱、脳、結腸直腸、肝、内膜、及び子宮頸部のがんから選択される。任意選択で、がんは、相同組換え欠損腫瘍である。或いは、がんは、相同組換え有能(homologous recombination proficient)腫瘍である。
【0055】
特定の態様では、本発明はまた、NAD+合成の欠如を有する腫瘍の患者のための可能な選択戦略又は臨床的層化戦略のための方法に関する。これらの患者、特にDNA修復経路の両方の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDHの変異を有する腫瘍の患者は、本発明による薬物治療のより良いレスポンダーとなり得る。
【0056】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子又は医薬組成物は、がんの治療におけるNAD+合成の欠如を有する腫瘍細胞に対する標的効果のための使用のためのものである。より詳細には、腫瘍細胞はERCC1若しくはATMの欠如又はIDHの変異から選択されるDNA修復経路の欠如を更に有する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】OX413誘導標的関与。OX413 (5μM)又はOX401 (5μM)で細胞を処理し、細胞のPAR化を測定することによってPARPの活性化を評価した。OX401又はOX413処理の48時間後のPAR化の代表的な画像。
【
図1B】OX413誘導標的関与。OX413 (5μM)又はOX401 (5μM)で細胞を処理し、細胞のPAR化を測定することによってPARPの活性化を評価した。PAR化シグナルによる陽性細胞%の定量(PAR+細胞)。
【
図2】OX413は高い抗腫瘍細胞毒性を呈する。MDA-MB-231細胞を増加する用量のOX401又はOX413で処理し、XTTアッセイを用いて細胞の生存率を評価した。細胞の生存率は、生存している処理細胞の生存している未処理細胞に対する比として計算した。IC
50はGraphPadPrismソフトウェアを用い、用量応答曲線に従って計算した。
【
図3】OX413は細胞質DNA集積を誘導し、先天免疫応答を誘発する。(A) OX413処理(200nM)の48時間後のPAR化の代表的な画像。(B, C) 小核(MN)を有する細胞(B)、又は細胞質クロマチン断片(CCF)を有する細胞(C)のレベルを、OX413 (50及び100nM)処理の48時間後の免疫蛍光によって解析した。(D、F、G) (D) pSTING、(F) PD-L1、及び(G) MIC-Aバイオマーカーのフローサイトメトリー解析。(E) OX413 (200nM)処理の48時間後に、分泌されたCCL5をELISAによって細胞上清中で分析した。
【
図4】OX413はin vivoでPARP及びSTINGの活性化を誘導する。6、24、又は72時間の間、OX413 (10mg/kg)で処置したEMT6細胞由来の異種移植腫瘍を抽出し、解離し、CD45+又はCd45- (大部分EMT6細胞)に選別した(A)。EMT6細胞において、(B) PARP、(D) PD-L1、及び(C) CCL5の発現を、それぞれの条件について解析した。(E) 腫瘍浸潤性白血球(TIL)のパーセンテージ(CD45+、CD3+、DC細胞、NK細胞)を、フローサイトメトリー解析によって決定した。
【
図5】OX413及びOX416はPARP標的関与及びSTING経路の活性化を誘導する。OX413 (EMT6では500nM、MDA-MB-231では100nM)又はOX416 (50nM)処理の24及び48時間後のPAR化(A、D)、STING (B、E)、及びpSTING (C、F)のフローサイトメトリー解析。EMT6細胞 (A、B、C)及びMDA-MB-231細胞 (D、E、F)における処理。
【
図6】OX413、OX421、及びOX422の薬物動態。i.p.薬物(OX413、OX422、又はOX423)投与の後のマウス血中のOX413 (A)、OX422 (B)、及びOX423 (C)の経時的な平均濃度。
【
図7】EMT-6
PARP high乳腺モデルにおけるOX413及びOX416の抗腫瘍有効性。OX413 (20mg/kg、2回/週)及びOX416 (20mg/kg、2回/週)処理は、EMT-6
PARP high乳腺腫瘍細胞を有するBalb/cマウスにおける腫瘍増殖を阻害した。
【
図8】OX425はPARPを捕捉し、超活性化する。(A) 組換えPARP1タンパク質(rPARP1)及びゲルシフトアッセイを用いて、OX425とPARP1の相互作用を評価した。(B) 未処理(対照)又はOX425 (100~500nM)と24時間処理したMDA-MB-231及びMDA-MB-436細胞におけるPAR化の代表的な画像。PAR化のレベルを見積もるため、平均蛍光強度(MFI)を評価した。
【
図9A】OX425の有効性は腫瘍細胞に特異的である。様々な相同組換え(HR)修復状態(HR欠損(HRD)又はHR有能(HRP))を有する様々な腫瘍細胞株の増加する用量のOX425 (2μMまで)に対する感受性を、処理後6日目にXTTアッセイを用いて評価した。IC50はGraphPadPrismソフトウェアを用いて計算した。
【
図9B】OX425の有効性は腫瘍細胞に特異的である。様々なDNA修復阻害剤に対するPBMCの感受性を、処理後3日目に細胞計数によって評価した。
【
図10A】HRDとHRP細胞モデルにおけるOX425の有効性。UWB1.289 BRCA1変異卵巣がん細胞(UWB1.289)のOX425に対する感受性を、そのBRCA1相補カウンターパート(UWB1.289 BRCA1)と比較して、処理後6日目にXTTアッセイを用いて評価した。IC50はGraphPadPrismソフトウェアを用いて計算した。
【
図10B】HRDとHRP細胞モデルにおけるOX425の有効性。様々な変異状態にあるがん細胞株を、相同組換え欠損(HRD)又は相同組換え有能(HRP)細胞にグループ分けし、これら2つの群の解析を、アンペアードステューデントt検定を用いて実施したOX425又はオラパリブに対する感受性について比較した。ns:有意差なし、*:p<0.05。
【
図11A】オラパリブ処置の下で進行する腫瘍におけるOX425の効率。100mg/kg、5日/週のオラパリブ単独の連続的処置(緑色曲線、独立した10匹のマウスの平均)又はオラパリブの開始後30日目に導入したオラパリブ+ OX425 (10mg/kg、1×/週) (赤色曲線、独立した10匹のマウスの平均)の後のMDA-MB-436 CDX腫瘍サイズの変化。
【
図11B】オラパリブ処置の下で進行する腫瘍におけるOX425の効率。マウス(n=10)による0日目(処置開始)と比較した74日目(処置終了)における腫瘍サイズ変化の%。RECIST基準と同様、0日目と比較して+20%を超えて進行した腫瘍は進行性とみなし、+20%~-30%は安定とみなし、-30%~-99%は部分奏功とみなし、100%は完全奏功とみなす。
【
図11C】オラパリブ処理の下で進行する腫瘍におけるOX425の効率。0日目と比較した体重変化の%。
【
図11D】オラパリブ処理の下で進行する腫瘍におけるOX425の効率。MDA-MB-436細胞由来の異種移植片における相同組換え修復の機能性を、オラパリブ処置の開始の間、並びに早期及び後期の耐性の出現時に、RAD51 IHC染色アッセイを用いて解析した。HRD:相同組換え欠損、HRP:相同組換え有能。
【
図12A】OX425はSTING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02膵がん細胞をOX425で処理し、処理後24時間でPARP活性化を評価した。
【
図12B】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02膵がん細胞をOX425で処理し、処理後6日目に感受性を評価した。
【
図12C】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02膵がん細胞をOX425で処理し、処理後48時間でSTINGのリン酸化によってSTING経路の活性化を評価した。
【
図12D】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02膵がん細胞をOX425で処理し、処理後48時間でCCL5の放出によってSTING経路の活性化を評価した。
【
図12E】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02膵がん細胞をOX425で処理し、処理後48時間でPD-L1の過発現によってSTING経路の活性化を評価した。
【
図12F】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。PAN02由来の異種移植片におけるPARPの活性化も評価した。
【
図12G】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。腫瘍浸潤性リンパ球(TIL、CD45+細胞)におけるPARPの活性化も評価した。
【
図12H】OX425は、STING経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答を誘導する。25mg/kgのOX425で2×/週、3週間、処置した腫瘍における腫瘍増殖遅延の効果を評価した。
【
図13】OX425は腫瘍微小環境における免疫浸潤を増大させる。EMT6乳がん細胞由来の異種移植片を25又は100mg/kgのOX425で0日目、3日目、及び5日目に処理し、腫瘍微小環境の解析のため6日目に収穫した。腫瘍の解離及びCD45+細胞の選別の後、フローサイトメトリーによって様々な免疫集団(CD3、CD4、CD8、CD4+CD49b+)の%を解析した。(A) 腫瘍の解離の後、得られた腫瘍の総数によって正規化したCD45+及びCD3+の%。(B) 腫瘍浸潤性リンパ球(TIL) CD3+、CD4+、及びCD8+の%を定量した。(C) 腫瘍中の特定のTreg様集団 (CD45+ CD4+ CD49b+)の浸潤(n=6)。
【
図14】OX425は単独で又はPD-1ブロッケージとの組合せで、PD-1耐性のHR+HER2-乳がんモデルにおける単剤免疫治療活性を媒介する。MPA/DMBA駆動乳腺腫瘍を25又は5mg/kgのOX425で1週あたり2回(2×/w)又は週1回(1×/w)処置し、腫瘍の増殖及び動物の生存率を評価した。動物の生存率については統計的解析も実施した。ns:有意差なし。
【
図15】OX425は高い抗腫瘍活性を呈する。様々な相同組換え(HR)修復状態(HR欠損(HRD)又はHR有能(HRP))を有する様々な腫瘍細胞株の増加する用量(2μMまで)のOX425に対する感受性を、処置後6日目にXTTアッセイを用いて評価した。IC50はGraphPadPrismソフトウェアを用いて計算した。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、特異的にPARPを標的として活性化し、細胞NADの顕著な下方制御を誘導し、それにより、特にDNA修復遺伝子の欠如(例えばERCC1及びATMの欠如)又はIDH(イソシトレート脱水素酵素)変異によるNADの欠如を呈するがん細胞におけるがんの治療に特に応用される、コレステロール-核酸コンジュゲート等の、エンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた新規の核酸分子に関する。
【0059】
本発明は、DDR機構を標的とし、がんの最適の治療のために免疫チェックポイント療法(ICT)との組合せを可能にするSTINGアゴニストでもある、コレステロール-核酸コンジュゲート等の、エンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた新規の核酸分子に関する。
【0060】
本発明による新規のコンジュゲートされた核酸分子は、以下を提供する。
1) 本発明のコンジュゲートされた核酸分子による、DNA-PKの活性化を伴わないPARPの活性化は、単独の使用により、Dbait分子と比較して小核、細胞質クロマチン断片(CCF)、及び細胞毒性を有するがん細胞の増加に繋がる。
2) がん細胞における小核(MN)及び細胞質クロマチン断片(CCF)の特異的な増加は、炎症性サイトカイン(CCL5)の放出並びにがん細胞上におけるPD-L1及びNKG2Dリガンド(MIC-A)の発現の増大によって示されるように、STING経路活性化の早期の増大に繋がる。これらの効果はがん細胞に特異的である。そのようながん細胞特異性は、その後の有害な可能性のある副作用を伴う全身的かつ広範な炎症を排除する。
3) DNA修復経路の阻害並びに小核及びCCFの生成によるSTING経路の活性化は、特に先天免疫活性化によって腫瘍細胞中のSTING経路を特異的に活性化する極めて魅力的な方法を表す。
4) 本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、相同組換え欠損及び相同組換え有能な腫瘍の両方において、現行のPARP阻害剤と異なり、高い抗腫瘍活性を提供する。
5) 本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、多数の免疫刺激効果を媒介し、特に「コールドな」腫瘍において、免疫療法と組み合わされて興味ある治療戦略となる。コンジュゲートされた核酸分子が免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされて用いられた場合、相乗効果が観察された。
【0061】
これらの観察に基づき、本発明は
- 本明細書に記載するコンジュゲートされた核酸分子、
- 特にがんの治療における使用のための、本明細書に記載するコンジュゲートされた核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物、
- 薬物としての使用のための、特にがんの治療における使用のための、本明細書に記載するコンジュゲートされた核酸分子、
- 特にがんの治療における使用のための薬物の製造のための、本明細書に記載するコンジュゲートされた核酸分子の使用、
- 本明細書に開示する有効量のコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 特にがんの治療における使用のための本明細書に記載するコンジュゲートされた核酸分子、さらなる治療剤、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物、
- 特にがんの治療における同時、個別、又は連続的な使用のための組合せ調製物としての、(a)本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子、及び任意選択で(b)さらなる治療剤を含む製品又はキット、
- 特にがんの治療における同時、個別、又は連続的な使用のための、(a)本明細書に記載するヘアピン核酸分子、(b)さらなる治療剤を含む、組み合わされた調製物、
- さらなる治療剤と組み合わされたがんの治療における使用のための、本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物、
- さらなる治療剤と組み合わされたがんの治療のための医薬の製造のための、本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物の使用、
- a)有効量の本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子及びb)有効量のさらなる治療剤を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子を含む有効量の医薬組成物及び有効量のさらなる治療剤を投与する工程を含む、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法、
- 有効量の本明細書に開示するコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、それを必要とする患者における治療用抗腫瘍剤によるがんの治療の有効性を増大し、又は治療用抗腫瘍剤による治療に対する腫瘍の感受性を増強させる方法、
- 好ましくは少なくとも2回の投与サイクル、更により好ましくは少なくとも3回又は4回の投与サイクルの繰り返し治療サイクルによって、繰り返し又は長期的に、本明細書で開示するコンジュゲートされた核酸分子を投与する工程を含む、がんを治療する方法、
- NAD+合成における欠如、及び任意選択でERCC1若しくはATMの欠如又はIDH変異から選択されるDNA修復経路の欠如を有する腫瘍細胞を有する患者におけるがんを治療する方法
に関する。
【0062】
定義
本明細書全体の中では常に、「がんの治療」等は、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物に関して述べられ、a)がんを治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物を投与する工程を含む方法、b)がんの治療における使用のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物、c)がんの治療のための医薬の製造のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物の使用、並びに/又はd)がんの治療における使用のための本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物を意味する。
【0063】
本発明の文脈の中では、用語「治療」は、治療的、症状的、又は予防的な処置を意味する。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、がんの進行の初期及び末期の段階を含むがん又は腫瘍が存在するヒトにおいて用いることができる。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、がんを有する患者を必ずしも治癒させないが、疾患の進行を遅延し若しくは遅らせ、又は疾患のさらなる進行を防止し、それにより患者の病態を改善することになる。特に、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、哺乳動物宿主における腫瘍の進行を低減させ、腫瘍の負荷を低減させ、腫瘍の減縮を生成し、並びに/又は転移の発生及びがんの再発を防止する。がんの治療においては、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物は、治療有効量で投与される。
【0064】
用語「キット」、「製品」、又は「組み合わされた調製物」は、本明細書で使用される場合、上で定義した組合せの相手(a)及び(b)が独立に、又は組合せの相手(a)及び(b)の区別できる量の異なる固定された組合せを用いることによって、即ち同時に若しくは異なる時点で、投薬することができるという意味で、特に「パーツのキット」を定義する。「パーツのキット」の部品は、同時に、又は時系列的に互い違いに、即ち異なる時点で、「パーツのキット」の任意の部品について同等の若しくは異なる時間間隔で、投与することができる。組み合わされた調製物で投与されるべき組合せの相手(a)の全量の、組合せの相手(b)に対する比は、変動し得る。組合せの相手(a)及び(b)は、同一経路又は異なる経路によって投与することができる。
【0065】
「有効量」は、単独で、又は医薬組成物、キット、製品、若しくは組み合わされた調製物の他の活性成分と組み合わせて、ヒトを含む哺乳動物におけるがんの有害な影響を防止し、除去し、又は低減する本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わされた調製物の量を意味する。投与される用量は、患者、病理学、投与の様式等に従って当業者によって適合され得ることが理解される。
【0066】
用語「STING」は、TMEM173、ERIS、MITA、MPYS、SAVI、又はNET23としても知られる、インターフェロン遺伝子受容体の刺激剤(STtimulator of INterferon Genes receptor)を指す。本明細書で使用される場合、用語「STING」及び「STING受容体」は相互交換可能に使用され、STINGの異なるアイソフォーム及びバリアントを含む。ヒトの最長のアイソフォームであるSTINGアイソフォーム1についてのmRNA及びタンパク質の配列は、NCBI参照配列[NM_198282.3]及び[NP_938023.1]を有する。より短いアイソフォームであるヒトのSTINGアイソフォーム2についてのmRNA及びタンパク質の配列は、NCBI参照配列[NM_001301738.1]及び[NP_001288667.1]を有する。
【0067】
用語「STING活性化剤」は、本明細書で使用される場合、STING経路を活性化することができる分子を指す。STING経路の活性化は、例えばIFN-α、IFN-βを含む1型インターフェロン、3型インターフェロン、例えばIFN-λ等のインターフェロン類、IP-10(CXCL10としても知られているインターフェロン-γ誘導タンパク質)、PD-L1、TNF、IL-6、CXCL9、CCL4、CXCL11、NKG2Dリガンド(MIC A/B)、CCL5、CCL3、又はCCL8を含む炎症性サイトカインの刺激を含み得る。STING経路の活性化は、TANK結合キナーゼ(TBK)1リン酸化、インターフェロン制御因子(IRF)の活性化(例えばIRF3の活性化)、IP-10の分泌、又はその他の炎症性タンパク質及びサイトカインの刺激をも含み得る。STING経路の活性化は、例えばインターフェロン刺激アッセイ、リポーター遺伝子アッセイ(例えばhSTING wtアッセイ又はTHP-1デュアルアッセイ)、TBK-1活性化アッセイ、IP-10アッセイ、又は当業者には既知のその他のアッセイを用いて検出される、STING経路の活性化を刺激する化合物の能力によって決定され得る。STING経路の活性化は、STING又はSTING経路によって活性化されるタンパク質をコードする遺伝子の転写のレベルを増大させる化合物の能力によっても決定され得る。そのような活性化は、例えばRNAseqアッセイを用いて検出され得る。
【0068】
STING経路の活性化は、インターフェロン刺激アッセイ、hSTING wtアッセイ、THP-1デュアルアッセイ、TANK結合キナーゼ1(TBK1)アッセイ、インターフェロン-γ誘導タンパク質10(IP-10)分泌アッセイ、又はPD-L1アッセイから選択される1つ又は複数の「STINGアッセイ」によって決定することができる。
【0069】
より具体的には、分子がSTING発現細胞中で未処理のSTING発現細胞中より少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれ以上、1つ又は複数のSTING依存性サイトカインの産生を刺激することができるならば、その分子はSTING活性化剤である。好ましくは、STING依存性サイトカインは、インターフェロン、1型インターフェロン、IFN-α、IFN-β、3型インターフェロン、IFN-λ、CXCL10(IP-10)、PD-L1、TNF、IL-6、CXCL9、CCL4、CXCL11、NKG2Dリガンド(MIC A/B)、CCL5、CCL3、又はCCL8、より好ましくはCCL5又はCXCL10から選択される。
【0070】
コンジュゲートされた核酸分子
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子のいくつかのさらなる利点は、これらがオリゴヌクレオチドの固相合成を用いるのみで1つの分子として合成でき、それにより低いコスト及び高い製造スケールが可能になるという事実に基づいている。
【0071】
本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、16~17塩基対の二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でループに連結されたエンドサイトーシスを容易にする分子を含む。二本鎖核酸部分の他の末端は遊離している。
【0072】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、その治療活性に必要ないくつかの特徴、例えばその16~17bpの長さ、少なくとも1つの遊離末端の存在、並びに二本鎖部分、好ましくはホスホロチオエートヌクレオチド間連結の存在を伴う二本鎖DNA部分の存在、並びにヌクレオチドのリボースの2'位に対応するヌクレオチドの修飾によって定義され得る。ホスホロチオエートヌクレオチド間連結と2'-修飾ヌクレオチドとの特定の組合せは、驚くべきことに活性及び薬物動態の改善と関連している。
【0073】
コンジュゲートされた核酸分子はPARP-1タンパク質を活性化することができる。他方、コンジュゲートされた核酸分子はDNA-PKを活性化しない。
【0074】
本発明は、本発明のコンジュゲートされた核酸分子の薬学的に許容される塩にも関する。
【0075】
核酸分子
本発明の核酸分子は、二本鎖核酸部分、ループによって一緒に連結されている第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端を含み、コンジュゲートされた核酸分子の長さは16~17塩基対(bp)で、PARP (PARP-1)タンパク質の適切な結合及び活性化を可能にし、かつKuを含むKuタンパク質複合体とDNA-PKcsタンパク質との適切な結合を可能にするには不十分である。「bp」は、その分子が指示された長さの二本鎖部分を含むことを意図している。
【0076】
コンジュゲートされた核酸分子は、厳格な条件下ではヒトゲノムDNAとハイブリダイズしない。
【0077】
一態様では、チミジンは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノチミジンで置き換えることができ、グアノシンは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノグアノシンで置き換えることができる。シチジンは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノシチジンで置き換えることができ、又はアデニンは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノアデニンで置き換えることができる。
【0078】
別の実施形態では、ウリジンを2'-O-メチルウリジン(2'-OMe-ウリジン)で置き換えることができ、グアノシンを2'-O-メチルグアノシン(2'-OMe-グアノシン)で置き換えることができ、シチジンを2'-O-メチルシチジン(2'-OMe-シチジン)で置き換えることができ、アデニンを2'-O-メチルアデニン(2'-OMe-アデニン)で置き換えることができ、又はチミジンを2'-O-メチルチミジン(2'-OMe-チミジン)で置き換えることができる。
【0079】
ヌクレオチドの2'位とPARP-1との相互作用が特定されれば、ヌクレオチドは2'位において修飾をなんら受けない。ヌクレオチドのインタージャンクションとPARP-1との相互作用が特定されれば、ヌクレオチドにおける修飾は2'修飾である。ヌクレオチドがPARP-1との既知の相互作用をなんら有しなければ、これらのヌクレオチドのヌクレオチド間連結は、これらを分解から保護するためにホスホロチオエート(「s」)の導入によって化学的に修飾される。二本鎖核酸分子が16~17塩基対を有しているので、対称的な化学修飾が行われる。即ちそれぞれの鎖の5'末端に6個の2'-修飾ヌクレオチド、及びそれぞれの鎖の3'末端に3個の2'-修飾ヌクレオチドが存在し、2'-修飾ヌクレオチドのこれらのストレッチの間のヌクレオチドの大部分はホスホロチオエート連結を有する。
【0080】
一実施形態によれば、コンジュゲートされた核酸分子は、リボースの2位に対応する修飾を含む。例えば、コンジュゲートされた核酸分子は、例えば2'-デオキシ、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル(2'-OMe)、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DAMP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、若しくは2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)修飾を有する少なくとも1つの2'-修飾ヌクレオチド、又は例えば2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)を含み得る。別の実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、2'位に、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)及び2'-O-メチル(2'-OMe)に対応する修飾を含む。
【0081】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)を有する。別の態様では、2'-修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である。
【0082】
任意選択で、二本鎖核酸分子は、その5'遊離末端及び/又は3'遊離末端に、反転したヌクレオチド(idN)を有し得る。任意選択で、二本鎖核酸分子は、その5'遊離末端及び3'遊離末端に、反転したヌクレオチド(idN)を有し得る。反転したヌクレオチド(idN)は、反転したグアニジン、アデニン、シチジン、又はチミジンであってよい。好ましくは、反転したヌクレオチド(idN)は、反転したチミジン(idT)であってよい。より詳細には、5'遊離末端における反転したヌクレオチド(idN)は、5'-5'連結によって結合しており、3'遊離末端における反転したヌクレオチド(idN)は、3'-3'連結によって結合している。
【0083】
特定の態様では、二本鎖核酸部分は以下の配列
【化20】
配列番号1及び2
を有し、
Nのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチドである。
【0084】
任意選択で、全てのNはTである。任意選択で、全てのNはUである。
【0085】
任意選択で、idNは存在しない。任意選択で、idNは存在する。任意選択で、idNは5'末端に存在する。任意選択で、idNは3'末端に存在する。任意選択で、idNは5'末端及び3'末端に存在する。
【0086】
任意選択で、2'修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル(2'-OMe)、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)修飾、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)、及び2'架橋ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)及び2'-O-メチル(2'-OMe)からなる群から独立に選択される。
【0087】
特定の態様では、2'修飾ヌクレオチドは、2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)である。FANAはDNA様構造をとり、対象とするタンパク質によるコンジュゲートされた核酸分子の変更されない認識をもたらす。FANAは以下のピリミジン2'-フルオロアラビノヌクレオシド及びプリン2'-フルオロアラビノヌクレオシドを含む。
9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)アデニン(2'-FANA-A)、
9-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)グアニン(2'-FANA-G)、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)シトシン(2'-FANA-C)、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)ウラシル(2'-FANA-U)、及び
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)チミジン(2'-FANA-T)。
【0088】
別の態様では、2'修飾ヌクレオチドは、2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である。より具体的には、ウリジンは2'-O-メチルウリジン(2'-Me-ウリジン)で置き換えることができ、グアノシンは2'-O-メチルグアノシン(2'-OMe-グアノシン)で置き換えることができ、シチジンは2'-O-メチルシチジン(2'-OMe-シチジン)で置き換えることができ、アデニンは2'-O-メチルアデニン(2'-OMe-アデニン)で置き換えることができ、又はチミジンは2'-O-メチルチミジン(2'-OMe-チミジン)で置き換えることができる。
【0089】
ループ
ループは、二本鎖部分の第1の鎖の5'末端及び相補鎖の3'末端、並びに任意選択でエンドサイトーシスを容易にする分子に連結されている。
【0090】
ループは好ましくは10~100原子、好ましくは15~25原子の鎖を含む。
【0091】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、任意選択でリンカーを介してループにコンジュゲートされる。エンドサイトーシスを容易にする分子をループに共有結合させるために、当技術で既知の任意のリンカーを使用することができる。例えば、WO09/126933は、38~45頁に便利なリンカーの広範な総説を提供している。リンカーは非包括的に脂肪族鎖、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素、又はその他のポリマー化合物(例えば2~10個のエチレングリコール単位、好ましくは3、4、5、6、7、又は8個のエチレングリコール単位、更により好ましくは6個のエチレングリコール単位を有するもののようなオリゴエチレングリコール類)であってよく、並びに化学的若しくは酵素的に切断され得る任意の結合、例えばジスルフィド連結、保護されたジスルフィド連結、酸に不安定な連結(例えばヒドラゾン連結)、エステル連結、オルソエステル連結、ホスホンアミド連結、生体切断可能なペプチド連結、アゾ連結、又はアルデヒド連結を組み込んでもよい。そのような切断可能なリンカーは、WO2007/040469の12~14頁、WO2008/022309の22~28頁に詳細に記載されている。
【0092】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、当業者には既知の任意の手段により、任意選択でオリゴエチレングリコールスペーサーを介して、ループに結合される。
【0093】
特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループとの間のリンカーは、C(O)-NH-(CH2-CH2-O)n又はNH-C(O)-(CH2-CH2-O)nを含み、ここでnは1~10の整数であり、好ましくは、nは3、4、5、及び6からなる群から選択される。極めて特定の実施形態では、リンカーはCO-NH-(CH2-CH2-O)4(カルボキサミドテトラエチレングリコール)又は13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコール基でもある。
【0094】
別の特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループ分子との間のリンカーは、ジアルキルジスルフィド{例えば(CH2)p-S-S-(CH2)q、ここでp及びqは1~10、好ましくは3~8の整数、例えば6}である。
【0095】
特定の実施形態では、ループはオリゴヌクレオチドの固相合成に適合するように開発されてきた。したがって、核酸分子の合成の間にループを組み込み、それにより合成を容易にし、そのコストを低減させることが可能である。
【0096】
ループは以下の式
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
(ここでr及びsは独立に整数0又は1であり、g及びhは独立に1~7の整数であり、合計g+hは4~7であり、
Kは
【化21】
であり、
i、j、k、及びlは独立に0~6、好ましくは1~3の整数であり、Lはリンカーであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである)
又は
-O-P(X)OH-O-[(CH
2)
d-C(O)-NH]
b-CHR-[C(O)-NH-(CH
2)
e]
c-O-P(X)OH-O- (II)
(ここでb及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、
d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、
Rは-L
f-Jである)
のうち1つから選択される構造を有することができ、
Xは-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン及び/又は任意選択でアミノ、アミド、及びオキソから選択される1つ若しくはいくつかの基によって任意選択で中断されているオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子又はHである。
【0097】
JがHの場合、分子はエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされた分子を調製するためのシントンとして用いることができる。或いは、分子はエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートすることなく、薬物として用いることもできる。
【0098】
第1の態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(X)OH-O}r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}s (I)
による構造を有する。
【0099】
XはO又はSである。Xは式(I)における-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにOとSの間で変動し得る。好ましくは、XはSである。
【0100】
合計g+hは好ましくは5~7、特に6である。したがって、rが0であれば、hは5~7であってよい(sを1として)。gが1であれば、hは4~6であってよい(r及びsを1として)。gが2であれば、hは3~5であってよい(r及びsを1として)。gが3であれば、hは2~4であってよい(r及びsを1として)。gが4であれば、hは1~3であってよい(r及びsを1として)。gが5であれば、hは1~2であってよい(rを1、sを0又は1として)。又はgが6又は7であれば、sは0である(rを1として)。
【0101】
好ましくは、i及びjは同じ整数であってよく、異なっていてもよい。i及びjは整数0、1、2、3、4、5、又は6から選択され、好ましくは1、2、又は3、更に詳細には1又は2、特に1であってよい。
【0102】
好ましくは、k及びlは同じ整数である。一態様では、k及びlは1、2、又は3から選択される整数であり、好ましくは1又は2、より好ましくは2である。
【0103】
したがって、Kは
【化22】
又はCH
2-CH-(L
f-J)
であってよい。
【0104】
【0105】
一特定態様では、ループは式(I)
-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
g-P(X)OH-O}
r-K-O-P(X)OH-O-{[(CH
2)
2-O]
h-P(X)OH-O-}
s (I)
を有し、XはSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、Kは
【化24】
である。
【0106】
別の態様では、KはCH2-CH(Lf-J)であってよい。
【0107】
特定の態様では、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J、-C(O)-(CH2)m-NH-[C(O)-CH2-O]t-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-[C(O)]v-J、又は-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~4の整数であり、t及びvは整数0又は1であり、t及びvのうち少なくとも1つは1である。
【0108】
より詳細には、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J、-C(O)-(CH2)m-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-J及び-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jからなる群において選択され、mは0~10の整数であり、nは0~15の整数であり、pは0~3の整数である。
【0109】
任意選択で、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-13-CH2-J、C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]3-13-CH2-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J及び-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]3-13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-J又は-CH2-O-[(CH2)2-O]3-13-(CH2)3-5-NH-CH2-C(O)-Jからなる群において選択される。
【0110】
例えば、fは1であってよく、L-Jは-C(O)-(CH2)5-NH-[(CH2)2-O]3-(CH2)2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]5-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]9-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-CH2-O-[(CH2)2-O]13-CH2-C(O)-J、-C(O)-(CH2)5-NH-C(O)-J又は-CH2-O-[(CH2)2-O]3-(CH2)3-NH-CH2-C(O)-Jからなる群から選択される。
【0111】
極めて特定の態様では、fは1であり、L-Jは-C(O)-(CH2)m-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは0~10、好ましくは4~6の整数、特に5であり、nは0~6の整数であり、pは0~2の整数である。特定の態様では、mは5であり、n及びpは0である。別の特定の態様では、mは5であり、nは3であり、pは2である。
【0112】
別の特定の態様では、ループは式(I)を有し、一態様ではループは-O-P(S)OH-O-{[(CH2)2-O]g-P(O)OH-O}r-K-O-P(S)OH-O-{[(CH2)2-O]h-P(X)OH-O-}sであり、Xは-O-P(X)OH-O-のそれぞれの出現ごとにO又はSであり、rは1であり、gは6であり、sは0であり、Kは-CH2-CH-(Lf-J)である。
【0113】
好ましい目的では、ループは-O-P(S)OH-O-[(CH2)2-O]6-P(O)OH-O-K-(O-P(S)OH-O)-であり、Kは-CH2-CH(Lf-J)-である。別の好ましい目的では、ループは-O-P(S)OH-O-[(CH2)2-O]6-P(S)OH-O-K-(O-P(S)OH-O)-であり、Kは-CH2-CH(Lf-J)-である。特定の態様では、fは1であり、L-Jは-CH2-O-[(CH2)2-O]n-(CH2)m-NH-(CH2)p-C(O)-Jであり、mは3であり、nは3であり、pは0である。
【0114】
特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループとの間のリンカーは、C(O)-NH-(CH2)3-(CH2-CH2-O)n又はNH-C(O)-(CH2)3-(CH2-CH2-O)nであるJを含み、nは1~10の整数であり、好ましくはnは3、4、5、及び6からなる群から選択される。極めて特定の実施形態では、リンカーはCO-NH-(CH2)3- (CH2-CH2-O)4 (カルボキサミドテトラエチレングリコール)又は13-O-[1-プロピル-3-N-カルバモイルコレステリル]-テトラエチレングリコール基でもある。
【0115】
別の特定の実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子とループ分子との間のリンカーは、ジアルキルジスルフィド{例えば、(CH2)p-S-S-(CH2)q、ここでp及びqは1~10、好ましくは3~8の整数、例えば6}である。
【0116】
本開示の第2の態様では、ループは式(II)
-O-P(X)OH-O-[(CH2)d-C(O)-NH]b-CHR-[C(O)-NH-(CH2)e]c-O-P(X)OH-O- (II)
による構造を有し、
XはO又はSであり、b及びcは独立に0~4の整数であり、合計b+cは3~7であり、d及びeは独立に1~3、好ましくは1~2の整数であり、
Rは-(CH2)1-5-C(O)-NH-Lf-J又は-(CH2)1-5-NH-C(O)-Lf-Jであり、
Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン又はオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1であり、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子である。
【0117】
b及び/又はcが2以上の場合、d及びeは[(CH2)d-C(O)-NH]又は-[C(O)-NH-(CH2)e]のそれぞれの出現ごとに異なってよい。
【0118】
一態様では、d及びeが2の場合には、合計b+cは3~5、特に4である。例えば、bが0でcは3~5、bが1でcは2~4、bが2でcは1~3、又はbが3~5でcは0である。
【0119】
一態様では、d及びeが1の場合には、合計b+cは4~7、特に5又は6である。例えば、bが0でcは3~6、bが1でcは2~5、bが2でcは1~4、又はbが3~6でcは0である。
【0120】
一態様では、b、c、d、及びeは、ループが10~100原子、好ましくは15~25原子を含むように選択される。
【0121】
非包括的な例のリストでは、ループは以下の1つであってよい。
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
-O-P(X)OH-O-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)-O-P(X)OH-O-、又は
-O-P(X)OH-O-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)-C(O)-NH-(CH2)-O-P(X)OH-O-
【0122】
特定の態様では、ループは以下の
-O-P(X)OH-O-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-CHR-C(O)-NH-(CH2)2-C(O)-NH-(CH2)2-O-P(X)OH-O-
であってよく、
ここでRはLf-Jであり、Lはリンカー、好ましくは直鎖状アルキレン及び/又は任意選択でアミノ、アミド、及びオキソから選択される1つ若しくはいくつかの基によって中断されているオリゴエチレングリコールであり、fは整数0又は1である。
【0123】
好ましくは、XはSである。
【0124】
Lは-(CH2)1-5-C(O)-J、好ましくは-CH2-C(O)-J又は-(CH2)2-C(O)-Jであってよい。
【0125】
或いは、L-Jは-(CH2)4-NH-[(CH2)2-O]n-(CH2)p-C(O)-Jであってよく、nは0~6の整数、pは0~2の整数である。特定の態様では、nは3であり、pは2である。
【0126】
エンドサイトーシスを容易にする分子
本発明の核酸分子は、任意選択で上の式でJと称されるエンドサイトーシスを容易にする分子にコンジュゲートされる。したがって、第1の態様では、Jはエンドサイトーシスを容易にする分子である。代替の態様では、Jは水素である。
【0127】
エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロール、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、又は葉酸及び葉酸誘導体若しくはトランスフェリン等の細胞受容体を標的として受容体媒介エンドサイトーシスを可能にするリガンド等の親油性分子であってよい(Goldsteinら、Ann. Rev. Cell Biol. 1985 1:1~39頁; Leamon & Lowe、Proc Natl Acad Sci USA. 1991, 88: 5572~5576頁)。脂肪酸は飽和又は不飽和でよく、C4~C28、好ましくはC14~C22、更により好ましくはC18、例えばオレイン酸又はステアリン酸であってよい。特に、脂肪酸はオクタデシル又はジオレオイルであってよい。脂肪酸は、グリセロール、ホスファチジルコリン、又はエタノールアミン等の適切なリンカーで連結され、又はコンジュゲートされた核酸分子に結合するために用いられるリンカーによって一緒に連結された、二重鎖形態として見出され得る。本明細書で使用される場合、用語「フォレート」は葉酸塩及び葉酸塩誘導体を意味し、プトレイン酸誘導体及び類似物を含む。本発明における使用に適した葉酸の類似物及び誘導体は、それだけに限らないが、葉酸代謝拮抗薬、ジヒドロフォレート、テトラヒドロフォレート、フォリン酸、プテロポリグルタミン酸、1-デアザ-、3-デアザ-、5-デアザ-、8-デアザ-、10-デアザ-、1,5-デアザ-、5,10-ジデアザ-、8,10-ジデアザ-、及び5,8-ジデアザ-フォレート、葉酸代謝拮抗薬、並びにプトレイン酸誘導体を含む。さらなるフォレート類似物は、US2004/242582に記載されている。
【0128】
したがって、エンドサイトーシスを容易にする分子は、一本鎖又は二本鎖の脂肪酸、葉酸塩、及びコレステロールからなる群から選択され得る。より好ましくは、エンドサイトーシスを容易にする分子は、ジオレオイル、オクタデシル、葉酸、及びコレステロールからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、エンドサイトーシスを容易にする分子は、コレステロールである。
【0129】
したがって、1つの好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、以下の式
【化25】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現はT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチドである)
又はその薬学的に許容される塩
を有する。
【0130】
好ましくは、分子は、1) Uである少なくとも1つのN、及び/又は2) 存在する少なくとも1つのidNを有する。或いは、分子はOX413ではない。
【0131】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0132】
極めて特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化26】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0133】
好ましくは、idNは分子中に存在する。或いは、分子はOX413ではない。特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0134】
別の特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化27】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0135】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0136】
idNが存在しない場合、NはTであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)であり、分子はOX413:
【化28】
配列番号13及び14
である。
【0137】
一態様では、idNが存在しない場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX416:
【化29】
配列番号7及び8
である。
【0138】
別の態様では、idNは存在し、
- idNがidTであって5'末端及び3'末端に存在する場合、NはTであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)であり、分子はOX421:
【化30】
配列番号9及び10であり、
- idNがidTであって5'末端及び3'末端に存在する場合、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX422:
【化31】
配列番号11及び12である。
【0139】
別の特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化32】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現はT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0140】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0141】
極めて特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化33】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0142】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0143】
極めて特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化34】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、存在するか又は存在せず、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0144】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0145】
好ましい態様では、idNは存在せず、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX423:
【化35】
配列番号7及び8
である。
【0146】
別の特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化36】
配列番号1及び2
(ここでNのそれぞれの出現は独立にT又はUであり、
idNは反転したヌクレオチドであり、5'末端及び/又は3'末端に存在し、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0147】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0148】
極めて特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化37】
配列番号3及び4
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、5'末端及び/又は3'末端に存在し、
NはTであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0149】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0150】
特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、
【化38】
配列番号5及び6
(ここでidNは反転したヌクレオチドであり、5'末端及び/又は3'末端に存在し、
NはUであり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付したヌクレオチドは、2'-修飾ヌクレオチド、好ましくは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(F-ANA)又は2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)である)
又はその薬学的に許容される塩
である。
【0151】
特定の態様では、idNが存在する場合、これは好ましくは反転したチミジンidTである。
【0152】
好ましい態様では、idNは存在せず、NはUであり、下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'O-メチルヌクレオチド(2'-OMe)であり、分子はOX424:
【化39】
配列番号7及び8
である。
【0153】
極めて特定の態様では、コンジュゲートされた核酸分子は、OX425:
【化40】
配列番号19及び20
であり、
ヌクレオチド間連結「s」はホスホロチオエートヌクレオチド間連結を指し、
下線を付した2'-修飾ヌクレオチドは2'-デオキシ-2'-フルオロアラビノヌクレオチド(FANA)である。
【0154】
或いは、エンドサイトーシスを容易にする分子は、トコフェロール、ガラクトース及びマンノース等の糖及びそのオリゴサッカライド、RGD及びボンベシン等のペプチド、並びにインテグリン等のタンパク質であってもよい。
【0155】
核酸分子の治療上の使用
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、PARPを活性化することができる。これらはがん細胞内における小核及び細胞毒性の増大をもたらす。これらはがん細胞に対する特異性を示し、それにより副作用が排除され又は限定され得る。更に、がん細胞における小核の特異的な増大は、STING経路の早期の活性化をもたらす。
【0156】
したがって、本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、薬物として、特にがんの治療のために用いることができる。
【0157】
したがって、本発明は、薬物としての使用のための本発明によるコンジュゲートされた核酸分子に関する。本発明は更に、特にがんの治療における使用のための本発明によるコンジュゲートされた核酸分子を含む医薬組成物に関する。本発明は更に、有効量の本発明によるコンジュゲートされた核酸分子又は本発明による医薬組成物若しくは獣医学用組成物を投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法に関する。
【0158】
本明細書で意図する医薬組成物は、活性成分に加えて薬学的に許容される担体を含み得る。用語「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の効果を妨害せず、これが投与される宿主に対して有毒でない任意の担体(例えば支持体、物質、溶媒、その他)を包含することを意味する。例えば、非経口投与のためには、活性化合物は生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液等のビヒクル中で注射用の単位用量形態で処方され得る。
【0159】
医薬組成物は、薬学的に適合する溶媒中の溶液として、又は好適な薬学的溶媒若しくはビヒクル中のエマルジョン、懸濁液、若しくは分散液として、又は当技術で既知の方法で固体ビヒクルを含むピル、錠剤、若しくはカプセルとして、処方することができる。経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、サシェット、錠剤、又はトローチとしての不連続単位の形態で、粉末又は顆粒の形態で、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液の形態で、又は水中油エマルジョン若しくは油中水エマルジョンの形態であってよい。非経口投与に適した製剤は、好ましくは受容者の血液と等張の、活性成分の無菌の油性若しくは水性の調製物を含むことが好都合である。そのような製剤はそれぞれ、例えば安定剤、抗酸化剤、結合剤、染料、乳化剤、又は香味物質等の他の薬学的に適合した非毒性の補助剤を含むこともできる。本発明の製剤は、そのため薬学的に許容される担体及び任意選択で他の治療用成分と併せて、活性成分を含む。担体は、製剤の他の成分と適合し、その受容者に対して有害でないという意味で、「許容され」なければならない。医薬組成物は、好適な無菌溶液の注射若しくは静脈内注入によって、又は消化管による経口用量として、有利に適用される。これらの化学療法剤の大部分の安全かつ効果的な投与の方法は、当業者には既知である。更に、これらの投与は標準的な文献に記載されている。
【0160】
本発明に記載した医薬組成物及び製品、キット、又は組み合わせた調製物は、対象におけるがんの治療のために用いることができる。
【0161】
用語「がん」及び「がん性」は、典型的には制御されない細胞の増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指し又は記述する。がんの例は、それだけに限らないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽腫及び網膜芽腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルシノイド腫瘍、ガストリノーマ、及びアイレット細胞がんを含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、及び白血病又はリンパ性悪性疾患を含む固形腫瘍及び血液がんを含む。そのようながんのより詳細な例は、扁平細胞がん(例えば上皮扁平細胞がん)、小細胞肺がん、進行期の小細胞肺がん(ES-SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む消化器がん、膵がん、膠芽腫、神経芽腫、頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、尿道がん、ヘパトーマ、子宮内膜がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓又は腎のがん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、腎細胞癌(RCC)、肝癌、肛門癌、陰茎癌、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、並びに頭頚部がんを含む。さらなるがんの適応症を本明細書に開示する。
【0162】
特定の態様では、がんは相同組換え欠損腫瘍である。或いは、がんは相同組換え有能腫瘍である。
【0163】
特定の実施形態では、「がん」は、例えばERCC1若しくはATMの欠如から選択されるNAD+の枯渇を有する腫瘍細胞、又はIDHの変異を有するがん細胞を指す。
【0164】
極めて特定の実施形態では、NAD+の合成の欠如を示す腫瘍を有する患者、特にNAD+の枯渇を有する腫瘍を有する患者について、臨床的な層化又はより良いレスポンダーの選択が可能である。
【0165】
最適の用量を決定することは一般に、本発明の治療の何らかのリスク又は有害な副作用に対して治療による利点のレベルのバランスをとることを含む。選択される用量レベルは、それだけに限らないが、コンジュゲートされた核酸分子の活性、投与の経路、投与の時間、化合物の排泄の速度、治療の継続期間、組み合わせて用いられる他の薬物、化合物、及び/又は材料、並びに患者の年齢、性別、体重、病態、一般的健康状態、及び以前の病歴を含む種々の因子に依存することになる。コンジュゲートされた核酸分子の量及び投与の経路は究極的には医師の裁量によるが、一般に用量は所望の効果を達成する作用部位における局所濃度を達成することになる。
【0166】
本明細書で開示するコンジュゲートされた核酸分子の投与経路は、経口、非経口、静脈内、腫瘍内、皮下、頭蓋内、動脈内、局所、直腸内、経皮、皮内、経鼻、筋肉内、腹腔内、骨内、その他であってよい。好ましい実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、治療すべき腫瘍の部位付近に投与又は注射すべきである。
【0167】
例えば、コンジュゲートされた核酸分子の効果的な量は、0.01~1000mg、例えば好ましくは0.1~100mgであってよい。もちろん、用量及びレジメンは、化学療法及び/又は放射線療法のレジメンを考慮して、当業者によって適合させることができる。
【0168】
本発明によるコンジュゲートされた核酸分子は、さらなる治療剤と組み合わせて用いることができる。さらなる治療剤は、例えば免疫チェックポイント阻害剤等の免疫調節剤、養子細胞移入(ACT)を含むT細胞ベースのがん免疫療法、キメラ抗原受容体細胞(CAR-T細胞)等の遺伝子改変されたT細胞若しくは操作されたT細胞、従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素であってよい。
【0169】
免疫調節剤/免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との組合せ
本発明者らは、STING経路の活性化及びPD-L1の発現の増大によって示唆される、コンジュゲートされた核酸分子と、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤等の免疫調節剤との組合せの高い抗腫瘍治療の可能性を実証した。即ち本発明は、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)等の免疫調節剤とともに、その前に、同時に、又はその後に、患者に投与する組合せ治療を提供する。
【0170】
したがって、本発明は、より詳細にはがんの治療における使用のための、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び免疫調節剤を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、同時の、個別の、又は連続的な使用のための、より詳細にはがんの治療における使用のための、組み合わされた調製物としての本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び免疫調節剤を含む製品に関する。好ましい実施形態では、免疫調節剤はPD-1/PD-L1経路の阻害剤である。
【0171】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を1つ又は複数の免疫調節剤(例えば共刺激性分子の活性化剤又は免疫チェックポイント分子の阻害剤のうち1つ又は複数)と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することによる、がんを治療する方法を提供する。好ましい実施形態では、免疫調節剤はPD-1/PD-L1経路の阻害剤である。
【0172】
共刺激性分子の活性化剤
ある特定の実施形態では、免疫調節剤は共刺激性分子の活性化剤である。一実施形態では、共刺激性分子のアゴニストは、OX40、CD2、CD27、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、4-1 BB (CD137)、GITR、CD30、CD40、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3又はCD83リガンドのアゴニスト(例えばアゴニスト性抗体若しくはその抗原結合性断片、又は可溶性融合物)から選択される。
【0173】
免疫チェックポイント分子の阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫調節剤は免疫チェックポイント分子の阻害剤である。一実施形態では、免疫調節剤はPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、NKG2D、NKG2L、KIR、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/又はTGFRベータの阻害剤である。一実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はPD-1、PD-L1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、若しくはCTLA-4、又はそれらの任意の組合せを阻害する。用語「阻害」又は「阻害剤」は、ある種のパラメーター、所与の分子、例えば免疫チェックポイント阻害剤の例えば活性の低減を含む。例えば、活性、例えばPD-1又はPDーL1の活性の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上の阻害がこの用語に含まれる。即ち、阻害は100%である必要はない。
【0174】
阻害分子の阻害はDNA、RNA、又はタンパク質のレベルで実施することができる。一部の実施形態では、阻害性核酸(例えばdsRNA、siRNA、又はshRNA)を用いて阻害性分子の発現を阻害することができる。他の実施形態では、阻害性シグナルの阻害剤は、ポリペプチド、例えば可溶性リガンド(例えばPD-1 Ig又はCTLA-4 Ig)、又は阻害性分子に結合する抗体若しくはその抗原結合性断片、例えばPD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、NKG2D、NKG2L、KIR VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及び/若しくはTGFRベータ、又はそれらの組合せに結合する抗体又はその断片(本明細書で「抗体分子」とも称する)である。
【0175】
一実施形態では、抗体分子は完全な抗体又はその断片(例えばFab、F(ab')2、Fv、又は一本鎖Fv断片(scFv))である。更に他の実施形態では、抗体分子は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEの重鎖定常領域から選択され、特に例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4の重鎖定常領域から選択され、より詳細にはIgG1又はIgG4(例えばヒトIgG1又はIgG4)の重鎖定常領域から選択される重鎖定常領域(Fc)を有する。一実施形態では、重鎖定常領域はヒトIgG1又はヒトIgG4である。一実施形態では、定常領域は、抗体分子の特性を改変するように(例えばFc受容体との結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞の機能、又は補体の機能のうち1つ又は複数を増大させ又は低減させるように)変化し、例えば変異する。ある特定の実施形態では、抗体分子は二重特異性又は多重特異性抗体分子の形態である。
【0176】
PD-1阻害剤
一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はPD-1阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、PDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)から選択される。
【0177】
例示的なPD-1阻害剤
一部の実施形態では、抗PD-1抗体はNivolumab (CAS Registry Number: 946414-94-4)である。Nivolumabの代替の名称はMDX-1106、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558又はOPDIVO(登録商標)を含む。NivolumabはPD1を特異的にブロックする完全にヒトのIgG4モノクローナル抗体である。Nivolumab(クローン5C4)及びその他のPD1と特異的に結合するヒトモノクローナル抗体は米国特許第8,008,449号及びPCT公開番号WO2006/121168に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0178】
他の実施形態では、抗PD-1抗体はPembrolizumabである。Pembrolizumab (商品名KEYTRUDA、以前はLambrolizumab、Merck 3745、MK-3475又はSCH-900475としても知られている)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。Pembrolizumabは、例えばHamid, O.ら、(2013) New England Journal of Medicine 369 (2): 134~44頁、PCT公開番号WO 2009/114335、及び米国特許第8,354,509号に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0179】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体はPidilizumabである。Pidilizumab (CT-011; CureTech社)はPD1に結合するヒト化IgG1 kモノクローナル抗体である。Pidilizumab及びその他のヒト化抗PD-1モノクローナル抗体はPCT公開番号WO2009/101611に開示されており、これは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0180】
その他の抗PD-1抗体は米国特許第8,609,089号、米国公開第2010028330号、及び/又は米国公開第20120114649号に開示されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。その他の抗PD-1抗体はAMP514 (Amplimmune社)を含む。
【0181】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、AMP-514としても知られるMEDI0680 (Medimmune社)である。MEDI0680及びその他の抗PD-1抗体は米国特許第9,205,148号及びWO 2012/145493に公開されており、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0182】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、Cemiplimabとしても知られるREGN2810 (Regeneron社)である。
【0183】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はPF-06801591 (Pfizer社)である。
【0184】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、BGB-108又はTislelizumabとしても知られるBGB-A317 (Beigene社)である。
【0185】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、INCSHR01210又はSHR-1210又はCamrelizumabとしても知られるINCSHR1210 (Incyte社)である。
【0186】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、ANB011又はDostarlimabとしても知られるTSR-042 (Tesaro社)である。
【0187】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子は、Sintilimabとしても知られるIBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)である。
【0188】
一実施形態では、抗PD-1ヒト化IgG4モノクローナル抗体分子は、Toripalimabとしても知られるJS 001である。
【0189】
一実施形態では、抗PD-1抗体分子はJTX-4014 (Jounce Therapeutics社)である。
【0190】
一実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体分子は、Spartalizumabとしても知られるPDR001 (Novartis社)である。
【0191】
一実施形態では、抗PD-1ヒト化IgG4モノクローナル抗体分子は、INCMGA00012又はRetifanlimabとしても知られるMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)である。
【0192】
更に知られている抗PD-1抗体は、WO2015/112800、WO2016/092419、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2014/194302、WO2014/209804、WO2015/200119、米国特許第8,735,553号、米国特許第7,488,802号、米国特許第8,927,697号、米国特許第8,993,731号、及び米国特許第9,102,727号に記載されているものを含み、これらは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0193】
一実施形態では、抗PD-1抗体は、本明細書に記載した抗PD-1抗体の1つと同じPD-1上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はこれに結合する抗体である。
【0194】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,907,053号に記載されたPD-1シグナル伝達経路を阻害するペプチドである。一部の実施形態では、PD-1阻害剤はイムノアドヘシン(例えば定常領域(例えば免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1阻害剤は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2010/027827及びWO2011/066342に開示されているAMP-224 (B7-DCIg (Amplimmune社)である。
【0195】
極めて特定の実施形態では、コンジュゲートされた核酸分子は、OX416、OX421、OX422、OX423、OX424、及びOX425からなる群から選択され、より好ましくはOX425であり、追加の治療剤は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)、好ましくはPD-1/PD-L1経路の阻害剤、より好ましくはPDR001 (Novartis社)、Nivolumab (Bristol-Myers Squibb社)、Pembrolizumab (Merck & Co社)、Pidilizumab (CureTech社)、MEDI0680 (Medimmune社)、REGN2810 (Regeneron社)、TSR-042 (Tesaro社)、PF-06801591 (Pfizer社)、BGB-A317 (Beigene社)、BGB-108 (Beigene社)、INCSHR1210 (Incyte社)、AMP-224 (Amplimmune社)、IBI308 (Innovent社及びEli Lilly社)、JS001、JTX-4014 (Jounce Therapeutics社)、PDR001 (Novartis社)、又はMGA012 (Incyte社及びMacroGenics社)等の抗PD-1抗体である。
【0196】
PD-L1阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はPD-L1の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、PD-L1阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤はFAZ053 (Novartis社)、Atezolizumab (Genentech/Roche社)、Avelumab (Merck Serono社及びPfizer社)、Durvalumab (Medlmmune社/AstraZeneca社)、又はBMS-936559 (Bristol-Myers Squibb社)から選択される。
【0197】
例示的なPD-L1阻害剤
一実施形態では、PD-L1阻害剤は抗PD-L1抗体分子である。一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MSB0010718Cとしても知られるAvelumab (Merck Serono社及びPfizer社)である。Avelumab及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2013/079174に開示されている。
【0198】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MEDI4736としても知られるDurvalumab (Medlmmune社/AstraZeneca社)である。Durvalumab及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,779,108号に記載されている。
【0199】
一実施形態では、抗PD-L1抗体分子は、MDX-1105又は12A4としても知られるBMS-936559 (Bristol-Myers Squibb社)である。BMS-936559及びその他の抗PD-L1抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第7,943,743号及びWO2015/081158に開示されている。
【0200】
更に知られている抗PD-L1抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2015/181342、WO2014/100079、WO2016/000619、WO2014/022758、WO2014/055897、WO2015/061668、WO2013/079174、WO2012/145493、WO2015/112805、WO2015/109124、WO2015/195163、米国特許第8,168,179号、米国特許第8,552,154号、米国特許第8,460,927号、及び米国特許第9,175,082号に記載されているものを含む。
【0201】
一実施形態では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載した抗PD-L1抗体の1つと同じPD-L1上のエピトープとの結合について競合し、及び/又はこれに結合する抗体である。
【0202】
CTLA-4 (細胞傷害性Tリンパ球随伴タンパク質4)阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はCTLA-4の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、CTLA-4阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、CTLA-4阻害剤はIpilimumabである。
【0203】
例示的なCTLA-4阻害剤
一実施形態では、CLTA-4阻害剤は抗CLTA-4抗体分子である。一実施形態では、抗CLTA-4抗体分子は、MDX-010としても知られるIpilimumab (Bristol-Myers Squibb社)である。
【0204】
LAG-3阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はLAG-3の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はLAG-3阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、LAG-3阻害剤は、LAG525 (Novartis社)、BMS-986016 (Bristol-Myers Squibb社)、TSR-033 (Tesaro社)、MK-4280 (Merck社)、REGN3767 (Regeneron社)、BI-754111 (Boehringer Ingelheim社)、SYM-022 (Symphogen社)、FS118 (F-star社)、又はMGD013 (MacroGenics社)から選択される。
【0205】
例示的なLAG-3阻害剤
一部の実施形態では、LAG-3阻害剤は抗LAG-3抗体分子である。一実施形態では、LAG-3阻害剤は、BMS986016又はレラトリマブとしても知られるBMS-986016 (Bristol-Myers Squibb社)である。BMS-986016及びその他の抗LAG-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2015/116539及び米国特許第9,505,839号に開示されている。
【0206】
一実施形態では、抗LAG-3抗体は、TSR-033 (Tesaro社)である。
【0207】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、IMP731又はGSK2831781 (GSK社及びPrima BioMed社)である。IMP731及びその他の抗LAG-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2008/132601及び米国特許第9,244,059号に開示されている。
【0208】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、Ieramilimabとしても知られるLAG525 (Novartis社)である。
【0209】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、Mavezelimabとしても知られるMK-4280 (Merck社)である。
【0210】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、Fianlimabとしても知られるREGN3767 (Regeneron社)である。
【0211】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、Miptenalimabとしても知られるBI-754111 (Boehringer Ingelheim社)である。
【0212】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子はSYM-022 (Symphogen社)である。
【0213】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子はFS118 (F-star社)である。
【0214】
一実施形態では、抗LAG-3抗体分子は、Tebotelimabとしても知られるMGD013 (MacroGenics社)である。
【0215】
更に知られている抗LAG-3抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO 2008/132601、WO2010/019570、WO2014/140180、WO2015/116539、WO2015/200119、WO2016/028672、米国特許第9,244,059号、米国特許第9,505,839号に記載されているものを含む。
【0216】
TIM-3阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はTIM-3の阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、TIM-3阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、TIM-3阻害剤は、MGB453 (Novartis社)、TSR-022 (Tesaro社)、BMS-986258 (Bristol-Myers Squibb社)、SHR-1702、RO7121661 (La Roche社)、MBG453 (Novartis社)、Sym023 (Symphogen社)、INCAGN2390 (Agenus社)、又はLY3321367 (Eli Lilly社)である。
【0217】
例示的なTIM-3阻害剤
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はTSR-022 (AnaptysBio社/Tesaro社)である。
【0218】
一実施形態では、抗TIM-3抗体は、APE5137又はAPE5121である。APE5137、APE512、及びその他の抗TIM-3抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2016/161270に開示されている。
【0219】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子は、ONO 7807としても知られるBMS-986258 (Bristol-Myers Squibb社)である。
【0220】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はSHR-1702である。
【0221】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はRO7121661 (La Roche社)である。
【0222】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子は、Sabatolimabとしても知られるMBG453 (Novartis社)である。
【0223】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はSym023 (Symphogen社)である。
【0224】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はINCAGN2390 (Agenus社)である。
【0225】
一実施形態では、抗TIM-3抗体分子はLY3321367 (Eli Lilly社)である。
【0226】
更に知られている抗TIM-3抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2016/111947、WO2016/071448、WO2016/144803、米国特許第8,552,156号、米国特許第8,841,418号、及び米国特許第9,163,087号に記載されているものを含む。
【0227】
NKG2D阻害剤
ある特定の実施形態では、NKD2D/NKG2DL経路の阻害剤は、NKG2Dの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、NKG2D阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、NKG2Dの阻害剤は、抗NKG2D抗体NNC0142-0002 (NN 8555、IPH2301又はJNJ-4500としても知られている)等の抗NKG-2D抗体分子である。
【0228】
例示的なNKG2D阻害剤
一実施形態では、抗NKG-2D抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2009/077483及び米国特許第7,879,985号に記載されているNNC0142-0002(Novo Nordisk社)である。
【0229】
別の実施形態では、抗NKG2D抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2018/035330に開示されているJNJ-64304500 (Janssen社)である。
【0230】
一部の実施形態では、抗NKG2D抗体は、米国特許第7,879,985号に記載されているように産生され、単離され、構造的及び機能的に特徴解析されたヒトモノクローナル抗体16F16、16F31、MS、及び21F2である。更に知られている抗NKG2D抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2009/077483、WO2010/017103、WO2017/081190、WO2018/035330及びWO2018/148447に記載されているものを含む。
【0231】
一部の他の実施形態では、NKG2D阻害剤はイムノアドヘシン(例えば定常領域(例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2010/080124、WO2017/083545及びWO2017/083612に開示されている免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したNKG2DLの細胞外又はNKG2D結合部分を含むイムノアドヘシン)である。
【0232】
NKG2DL阻害剤
一部の実施形態では、NKG2D/NKG2DL経路の阻害剤は、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、又はRAET1ファミリーのメンバー等のNKG2DLの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子はNKG2DL阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、NKG2DL阻害剤は抗MICA/B抗体等の抗NKG2DL抗体分子である。
【0233】
例示的なMICA/MICB阻害剤
一実施形態では、抗MICA/B抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2017/157895に開示されているIPH4301 (Innate Pharma社)である。
【0234】
更に知られている抗MICA/B抗体は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2014/140904及びWO2018/073648に記載されているものを含む。
【0235】
KIR阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はKIRの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、KIR阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、KIR阻害剤はLirilumabである(以前はBMS-986015又はIPH2102とも称された)。
【0236】
例示的なKIR阻害剤
一実施形態では、抗KIR抗体分子は、参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2008/084106及びWO2014/055648に開示されているLirilumab (Innate Pharma社/AstraZeneca社)である。
【0237】
更に知られている抗KIR抗体は、例えば参照により全体として本明細書に組み込まれるWO2005/003168、WO2005/009465、WO2006/072625、WO2006/072626、WO2007/042573、WO2008/084106、WO2010/065939、WO2012/071411及びWO2012/160448に記載されているものを含む。
【0238】
TIGIT阻害剤
ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤はTIGITの阻害剤である。一部の実施形態では、本発明のコンジュゲートされた核酸分子は、TIGIT阻害剤と組み合わせて投与される。一部の実施形態では、TIGIT阻害剤は、MK-7684、Etigilimab、Tiragolumab、又はBMS-986207である。
【0239】
例示的なTIGIT阻害剤
一実施形態では、TIGIT阻害剤は、抗TIGIT抗体分子である。一実施形態では、抗TIGIT抗体分子は、MK-7684 (Merck Sharp & Dohme社)、Etigilimab (OncoMed Pharmaceuticals社、Mereo BioPharma社)、Tiragolumab (Genentech社、Roche社)、又はBMS-986207 (Bristol-Myers Squibb社)から選択される。
【0240】
一実施形態では、抗TIGIT抗体分子は、Vibostolimabとしても知られるMK-7684 (Merck Sharp & Dohme社)である。
【0241】
一実施形態では、抗TIGIT抗体分子はEtigilimab (OncoMed Pharmaceuticals社、Mereo BioPharma社)である。
【0242】
一実施形態では、抗TIGIT抗体分子は、RO7092284としても知られるTiragolumab (Genentech社、Roche社)である。
【0243】
一実施形態では、抗TIGIT抗体分子はBMS-986207 (Bristol-Myers Squibb社)である。
【0244】
従来の化学療法、放射線療法、血管新生阻害剤との組合せ
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子が、手術若しくは放射線治療と同時に、その前に、若しくはその後に用いられ、又は従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、若しくは標的免疫毒素とともに、その前に、若しくはその後に患者に投与される組合せ治療を提供する。
【0245】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートされた核酸分子を、従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することによる、がんを治療する方法を提供する。本発明はまた、より詳細にはがんの治療における使用のための、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、同時の、分離された、若しくは連続的な使用のための、より詳細にはがんの治療における使用のための組み合わせた調製物としての、本発明のコンジュゲートされた核酸分子及び従来の化学療法、放射線療法、若しくは血管新生阻害剤、又は標的免疫毒素を含む製品に関する。
【0246】
本発明のさらなる態様及び利点を以下の実験の部に開示する。これは説明的なものであり、本出願の範囲を限定しないとみなされたい。本明細書でいくつかの参照文献を引用するが、これらの引用した参照文献のそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0247】
(実施例1)
核酸分子の合成
材料及び方法
OX401
一部の例では、OX401は対照分子として用いる。OX401は、修飾されたホスホジエステル骨格、より詳細にはそれぞれの鎖に3つのホスホロチオエート連結を有する合成コレステロールコンジュゲート16塩基対二重らせんDNAである。
【0248】
OX401の合成は、固相ホスホロアミダイト化学(dA(Bz); dC(Bz); dG(Ibu); dT (-))、HEG及びChol6ホスホロアミダイトを用いる標準的な固相DNA合成に基づいた。
【化41】
配列番号15及び16
【0249】
脱トリチル化工程はトルエン中3%のDCAで実施し、酸化はピリジン/水(9/1)中50mMのヨウ素で実施し、硫化はピリジン/ACN(1/1)中50mMのDDTTで実施した。キャッピングは2,6-ルチジン/ACN(40/60)中20%のAc2OとともにACN中20%のNMIで行った。切断及び脱保護はそれぞれ、ホスフェート/チオホスフェート上のシアノエチル保護基を除去するために25分間、ACN中20%のジエチルアミンで、及び45℃で18時間、濃縮アンモニア水で実施した。
【0250】
粗溶液を調製用AEX-HPLCカラム(TSKゲルSuperQ 5PW20)に装荷した。次いで20体積%のアセトニトリルを含むpH12の臭化ナトリウムの塩勾配で溶出して精製を実施した。分画をプールした後、再生セルロース上のTFFによって脱塩を実施した。
【0251】
OX401の純度:AEX-HPLCにより91.8%、ESI-MSによる分子量:11046.5Da
【0252】
HEGホスホロアミダイト(ヘキサエチレングリコールホスホロアミダイト) (No CLP-9765、ChemGenes Corp社)
【化42】
【0253】
Chol6 ホスホロアミダイト(N°51230、AM Chemicals社)
【化43】
【0254】
Chol4 ホスホロアミダイト(3-O-(N-コレステリル)-3-アミノプロピル)トリエチレングリコール-グリセリル)
【0255】
OX413、OX416、OX421、OX422、OX423、及びOX424
Axolabs社(Germany)からのOX413、OX416、OX421、OX422、OX423、及びOX424の合成は、ホスホロアミダイト化学、HEG、及びChol6又はChol4ホスホロアミダイトを用いる標準的な固相DNA合成、続いて脱トリチル化、硫化、キャッピング、及び精製の工程に基づいた。
OX413の純度:AEX-HPLCにより93.8%、ESI-MSによる分子量:11434.9 Da。
OX416の純度:AEX-HPLCにより85.3%、ESI-MSによる分子量:11596.0 Da。
OX421の純度:AEX-HPLCにより85.1%、ESI-MSによる分子量:12042.6 Da。
OX422の純度:AEX-HPLCにより95.1%、ESI-MSによる分子量:12203.4 Da。
OX423の純度:AEX-HPLCにより94.5%、ESI-MSによる分子量:11601.9 Da。
【0256】
OX425
OX425の合成は、Axolabs社(Germany)により、オリゴヌクレオチドの合成における従来のアプローチに従って行った。オリゴヌクレオチドの製造は5つの工程、即ち固相合成、切断及び脱保護、バルク精製及びモックプーリング、限外濾過及び透析濾過、並びに凍結乾燥(ライオフィライゼーション)からなっている。固相合成は、適切な長さ及び配列のオリゴヌクレオチドが産生されるまで、3'末端から5'末端へのヌクレオチドの付加の反復サイクルによる固体支持体上の化学合成によって行った。この二本鎖オリゴヌクレオチドのそれぞれの鎖合成は、4つの工程、即ち脱トリチル化、カップリング、酸化、及びキャッピング(最後の塩基を除く)を含む。次いでオリゴヌクレオチドは固体支持体レジンから切断され、保護基がヘテロ環塩基及びホスホジエステル骨格から除去される。オリゴヌクレオチドのバルクが精製され、正しい分画がさらなる精製のためにプールされる。限外濾過及び透析濾過の工程において、溶液中のオリゴヌクレオチド生成物が更に精製され、塩が除去される。凍結乾燥(ライオフィライゼーション)工程において、溶液は薬物の無菌性を保証するために最初にPES膜で濾過され、次いで凍結乾燥サイクルによって水が除去される。最終のオリゴヌクレオチド生成物は白色~淡黄色の粉末として得られる。
OX425の純度:IP-RP-LC-UVにより85%;ESI-MSによる分子量:11458.2 Da。
【0257】
(実施例2)
OX413はPARPを活性化する。
材料及び方法
細胞培養
ATCCからのトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231を細胞モデルとして用いた。10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中で供給者の指示書に従って細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0258】
免疫蛍光解析によるPAR化の定量
細胞を2×104細胞の濃度でLabTekチャンバー(Fischer scientific社)上に播種し、37℃で24時間インキュベートした。次いで細胞を5μMのOX401又はOX413で処理した。処理の6時間後、24時間後、及び48時間後に細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS 1×中で20分固定し、0.5%のTriton X-100中で10分透徹し、10%のFBSで15分ブロッキングし、一次抗体(抗Pan-ADP-リボース結合剤、1/300、Millipore社)と室温で1時間インキュベートした。Alexa-488とコンジュゲートした二次ヤギ抗ウサギIgG(Molecular Probes社)を1/200の希釈で、室温、45分で用い、DNAを6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。陽性細胞(ポリADP-リボースポリマー、PAR化を示す)の頻度を、細胞の総数に対する陽性細胞の数として推定した。それぞれの試料について少なくとも100個の細胞を解析した。
【0259】
結果
本発明者らは、二本鎖切断を模倣するOX413又はOX401オリゴヌクレオチド部分の結合の後のMDA-MB-231細胞におけるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化を解析した。OX401で処理したMDA-MB-231細胞は、処理後24時間から開始し、24時間後で約10%、処理後48時間で20%のPAR化細胞を伴うポリ(ADP-リボース) (PAR)ポリマーの集積(PAR化、PARP活性化の結果)を示した(
図1A、
図1B)。OX413で処理した細胞は、OX401で処理した細胞と比較してより高いPARPの活性化を示し、特に処理後48時間ではPAR化細胞は40%を超えた(
図1A、
図1B)。即ち、本発明者らは、OX401と比較して、偽のDNA損傷シグナル伝達(PAR化)によって示されるMDA-MB-231細胞における高いOX413標的関与を観察した。
【0260】
(実施例3)
OX413は高い抗腫瘍活性を呈する。
材料及び方法
細胞培養
ATCCからのトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231を細胞モデルとして用いた。10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中で供給者の指示書に従って細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0261】
薬物処理及び細胞生存の測定
MDA-MB-231(5×103細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、+37℃で24時間インキュベートして、7日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物への曝露の後、XTTアッセイ(Sigma Aldrich社)を用いて細胞の生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で5時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(BMG Fluostar、Galaxy社)を用いて490nm及び690nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表す)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0262】
結果
OX413の抗腫瘍有効性を評価するため、MDA-MB-231腫瘍細胞をOX413(黒色)又はOX401(暗灰色)で1週間処理してIC
50 (阻害濃度中央値)を推定し、処理の7日後にXTTアッセイを用いて生存率を測定した(
図2)。興味あることに、OX413はOX401と比較して高い抗腫瘍活性を呈し、IC
50値はOX401の30分の1以下であった(
図2)。
【0263】
(実施例4)
OX413は細胞質DNA集積を誘導し、先天免疫応答を誘発する。
材料及び方法
細胞培養
ATCCからのトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231を細胞モデルとして用いた。10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中で供給者の指示書に従って細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0264】
免疫蛍光解析によるPAR化の定量
細胞を2×104細胞の濃度でLabTekチャンバー(Fischer scientific社)上に播種し、37℃で24時間インキュベートした。次いで細胞をOX413(200nM)で処理した。処理の48時間後で、細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS 1×で20分固定し、0.5%のTriton X-100中で10分透徹し、10%のFBSで15分ブロッキングし、一次抗体(抗Pan-ADP-リボース結合剤、1/300、Millipore社)と室温で1時間インキュベートした。Alexa-488とコンジュゲートした二次ヤギ抗ウサギIgG (Molecular Probes社)を1/200の希釈で、室温、45分で用い、DNAを6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。
【0265】
小核(MN)及び細胞質クロマチン断片(CCF)の検出
MDA-MB-231細胞を6ウェルプレート中、適切な密度で、5E4細胞でカバースリップ(Menzel社、Braunschweig、Germany)上に播種し、次いでOX413(50nM又は100nM)と、又はそれなしで、48時間処理した。処理の後、細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS 1×で20分固定し、0.5%のTriton X-100中で10分透徹し、10%のFBSで15分ブロッキングした。次いで細胞をPBSで洗浄し、ピコグリーン(Invitrogen社、CCFの検出のため)及び/又はDAPI (MNの解析のため)で5分染色した。MNのパーセンテージは、全細胞数の中でMN構造を提示する細胞の数として推定した。それぞれの条件について約150個の細胞を解析した。
【0266】
フローサイトメトリー解析
MDA-MB-231細胞を2E5細胞/mLでT25フラスコに播種し、次いで200nMのOX413ありとなしで、48時間処理した。細胞内染色(pSTING解析)のため、細胞を洗浄し、次いでPBS/70%エタノール中、4℃で少なくとも1時間固定した。次いで細胞を洗浄し、PBS/0.2% TritonX-100溶液で、室温で10分透徹し、PBS/2%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液で、室温で10分飽和させた。次いで細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリー解析(Guava EasyCyte 12H、Luminex社、Germany)の前にAlexa488コンジュゲート抗pSTING抗体(cell signaling社、Netherlands、1/200)と1時間インキュベートした。細胞表面受容体の染色のため、細胞を収穫し、処理終了後に直接洗浄して、Alexa-488連結抗MIC-A抗体(R&D System社、1/200)及びAPE連結抗PD-L1抗体(Abcam社、1/200)で、4℃で1時間インキュベートした。染色された細胞を次にPBSで洗浄し、Guava EasyCyte 12Hフローサイトメーター(Luminex社、Germany)によって蛍光強度を取得した。データは、FlowJoソフトウェア(Tree Star社、CA)を用いて解析した。
【0267】
CCL5を検出するためのELISA
MDA-MB-231腫瘍細胞を、Tリンパ球ありとなし、及びOX413 (500nM)ありとなしで、24時間及び48時間処理した。次いで細胞培養上清を収穫し、1,500×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep CCL5 ELISA Kit-Abcam社-ab174446)に含まれる96ウェルプレートストリップは、直ちに使用可能で供給された。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートし、その後プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加えて、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、暗所で10分インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分100μlの停止剤を各ウェルに加え、得られた発光シグナルをマイクロプレートリーダー(Enspire(商標) Perkin-Almer社)で測定した。
【0268】
結果
最適化されたOX413分子の有効性を確認するため、本発明者らは、化学修飾がPARP1タンパク質を固定化するOX413分子の能力に影響しないかを試験した。OX413処理したMDA-MB-231細胞におけるPARPタンパク質の超活性化を、PAR化の免疫蛍光解析によって評価した(
図3A)。OX413で処理した細胞は、「偽の」核PAR化シグナル伝達について陽性であり、標的関与が確認された(
図3A)。
【0269】
この高い抗腫瘍有効性が細胞のストレス及びDNA修復に対するより強力な効果によるものか否かを検討するため、本発明者らは、小核(MN)及び細胞質クロマチン断片(CCF)の定量により、(50及び100nMの用量の)OX413処理によって誘導される細胞質の未修復のDNAの量を免疫染色によって研究した。OX413は、MN (
図3B)及びCCF (
図3C)を含む細胞の顕著な増加を誘導した。OX413によって誘導される細胞質DNAの集積がSTING経路を活性化し得るか否かを検討するため、本発明者らは、リン酸化及び活性化された形態のSTING (pSTING)をフローサイトメトリーによって解析した。OX413は、処理後48時間でSTINGの活性化を誘導した(未処理細胞の35と比較して平均蛍光57.4) (
図3D)。STING経路の活性化を確認するため、本発明者らはまた、OX413処理された細胞の上清中のCCL5ケモカインの分泌を解析した。OX413は、処理後48時間でCCL5の分泌の増加を誘導した(
図3E)。腫瘍細胞におけるSTING経路活性化の帰結の中には、おそらく免疫システムに対して保護する反応であるPD-L1 (プログラム死リガンド1)の上方制御がある。本発明者らは、OX413処理細胞における細胞表面随伴PD-L1のレベルを解析した。OX413は、未処理の細胞と比較して2倍の膜随伴PD-L1の増加を誘導した(
図3F)。いくつかの報告はまた、腫瘍STING活性化は腫瘍細胞上でNK細胞リガンド、例えばNKG2Dリガンド(MIC-A、MIC-B、ULBP1/6)を増加させ得ることを示している。したがって、OX413処理された細胞の表面におけるMIC-Aの発現を解析した。興味あることに、OX413で処理された細胞は、細胞表面MIC-A発現の2倍を超える増加を示した(
図3G)。
【0270】
これらの結果により、OX401の安定性を向上させることによってその構造を最適化することにより、標的に到達する分子の量を増加させ、それにより、抗腫瘍有効性及び抗腫瘍免疫応答を増大させることができることが確認された。
【0271】
(実施例5)
OX413はin vivoで腫瘍内PARP及びSTING経路活性化を誘導し、腫瘍浸潤性白血球のレベルの増大をもたらす。
材料及び方法
CCL5を検出するためのELISA
腫瘍微小環境(TME)中のCCLのレベルを定量するため、腫瘍を解離した後の上清を収穫し、1,500×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep CCL5 ELISA Kit-Abcam社-ab174446)に含まれる96ウェルプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートし、その後プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加えて、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、暗所で10分インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分100μlの停止剤を各ウェルに加え、得られた発光シグナルをマイクロプレートリーダー(Enspire(商標) Perkin-Almer社)で測定した。
【0272】
in vivo実験、腫瘍の消化、細胞選別、及びフローサイトメトリー
EMT6細胞由来の異種移植片(CDX)を、4×105個の細胞を6~8週齢の成体Balb/c雌(Janvier社)の右側腹部に注射することによって得た。動物は、腫瘍の移植の前に、明暗(12時間/12時間)、相対湿度(55%)、及び温度(21℃)の制御された条件下で、少なくとも1週間、飼育した。腫瘍の増殖はキャリパーを用いて週3回評価し、腫瘍体積は以下の式:(長さ×幅×幅)/2を用いて計算した。全ての実験は、地元の動物実験倫理委員会の承認を得た。
【0273】
移植した腫瘍が150~300mm3に達したときにマウスをランダム化した。OX413 (10mg/kg)は腹腔内投与した。指示された時間(処置後6、24、又は72時間)でマウスを犠牲死させ、EMT6 CDXを摘出し、微細に刻み、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec社、130-096-730)を用い、製造者の指示書に従ってgentleMACS octo dissociator (Miltenyi Biotec社)とブレンドした。解離した腫瘍細胞をDMEM培地で洗浄し、赤血球をRBC溶解緩衝液(Miltenyi Biotec社、130-094-183)で溶解した。次いで腫瘍浸潤性白血球(TIL)を、CD45マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-110-618)及びMultiMACS Cell24 Separator plus (Miltenyi Biotec社)を用いて富化した。
【0274】
CD45+細胞をFACS緩衝液(2% BSA及び2mM EDTAを含むPBS)中に再懸濁し、抗体パネル(抗CD45-VioBlue、CD3-FITC、CD8a-PE-Vio770、CD4-APC-Vio770、CD49b-PE、CD335-APC、CD11c-PerCP-Vio700)又は対応するアイソタイプで、4℃、30分染色した。本質的にEMT6腫瘍細胞を含むCD45-細胞を、抗PD-L1-PE抗体で染色し(30分、4℃)、次いで固定して、FoxP3/転写因子染色緩衝液セット(ThermoFisher社、00-5523-00)を用い、製造者のガイドラインに従って透徹し、抗ポリ(ADP)-リボース抗体(クローン10H; MERCK社、MABC547)と、4℃で30分インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、PBS中に再懸濁し、Guava EasyCyte 12HTフローサイトメーター(Luminex社)を用いて解析した。補償は単一染色及びアイソタイプ対照を用いて手動で実施した。シグナル閾値の定義は、全染色、未染色、及びアイソタイプ対照を用いて定義した。解析はFlowJoソフトウェア上で実施した。
【0275】
結果
本発明者らは、同種乳腺腫瘍モデルEMT6由来の異種移植片におけるOX413の有効性を評価した。EMT6細胞由来の異種移植片をビヒクル又はOX413 (200μg)で処置し、処置の6、24、又は72時間後に腫瘍を収穫した(
図4A)。OX413の腫瘍への取り込み及び標的関与を確認するため、本発明者らは、解離した腫瘍から選別したEMT6細胞中で、PARPの活性化及び細胞表面上のPD-L1レベルを解析した。OX413処置は、処置の6時間後から開始する顕著なPARP活性化を誘導し、腫瘍による取り込み及び標的関与を示した(
図4B)。このOX413によって誘導されるPAR化は、処置後72時間で基礎的レベルに復帰し、高い標的関与を維持するために処置を週2回繰り返す必要があることが示された(
図4B)。in vitroの実験で観察されたように、このPAR化がSTING経路活性化に付随しているかを検討するため、本発明者らは、腫瘍微細環境(TME)における腫瘍CCL5の放出を定量した。興味あることに、TME-CCL5はPAR化と同様の様式で増加し、処理後24時間でピークに達して72時間で減少した(
図4C)。腫瘍細胞表面のPD-L1も処理後に増加し、本発明者らの以前のin vitroの結果及びPARP活性の無効化とPD-L1の増加との関連が確認された。これらは免疫抑制に寄与している可能性がある(
図4D)。
【0276】
本発明者らは次に、免疫微小環境に対するOX413の効果を定義することを考えた。腫瘍浸潤性白血球(TIL、CD45+細胞)のフローサイトメトリー解析は、OX413が、CD45染色によって測定して、処理の早くも3日後に、全TILを顕著に増加させることを示した(
図4E)。CD45+細胞中のT細胞(CD3+)の割合は、OX413処置に応答して顕著に増加した(
図4E)。OX413はT細胞の腫瘍浸潤(CD45+、CD3+)を強化するだけでなく、ナチュラルキラー(NK)細胞も強化し(全浸潤性NK細胞:CD3-、CD49b+ ; 活性化された浸潤性NK細胞:CD3-、CD49b+、CD335+、
図4E)、先天性と適応性の両方の免疫応答の活性化を示唆している。更に、TMEはOX413処置の後、樹状細胞(DC)に集積した(CD45+、CD11c+)。
【0277】
総合すると、これらの結果は、先天性及び適応性の免疫細胞動員を増大させ、生産的な抗腫瘍免疫応答を強化する、腫瘍におけるOX413によって誘導されるPARP及びSTING経路の効果的な活性化を実証している。
【0278】
(実施例6)
OX413及びOX416はPARP活性化を誘発し、先天免疫応答を誘導する。
材料及び方法
細胞培養
MDA-MB-231ヒトトリプルネガティブの乳がん細胞株及びマウスEMT6乳がん細胞株(ATCCより)を細胞モデルとして用いた。10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したL15 Leibovitz培地中で供給者の指示書に従ってMDA-MB-231細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。EMT6細胞は、10% FBSを添加したRPMI培地中で増殖させ、CO2 5%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0279】
細胞中へのOX416のトランスフェクションは、JetPRIME (JetP)試薬(Polyplus社)で実施した。手短に述べれば、50nMのOX416 (200μLのjetPRIME緩衝液中で希釈)と2μlのjetPRIMEトランスフェクション試薬を室温でインキュベートすることにより、OX416/JetP複合体をその場で調製した。次いで複合体を、2mlの完全培地中に(6ウェルプレートのウェルに)播種した細胞に加えた。
【0280】
フローサイトメトリーによるPAR化及びSTING経路活性化の定量
MDA-MB-231又はEMT6細胞を2E5細胞/mLでT25フラスコに播種し、次いでOX416/JetP (50nM)又はOX413 (それぞれ100nM及び500nM)又は処理なし(NT)で、24時間及び48時間処理した。処理後、細胞を収穫して洗浄し、PBS/70%エタノールで少なくとも1時間、4℃で固定し、次いで洗浄し、PBS/0.2% TritonX-100溶液で、室温で10分透徹し、PBS/ 2%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液で、室温で10分飽和させた。次いで細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメトリー解析(MACSQuant10、Miltenyi社、Germany)の前に、Alexa488コンジュゲート抗pSTING抗体(cell signaling社、Netherlands、1/200)及びAlexa647コンジュゲート抗PAR抗体(Merck Millipore社、1/200)と1時間インキュベートした。データは、FlowJoソフトウェア(Tree Star社、CA)を用いて解析した。
【0281】
結果
本発明者らは最初に、MDA-MB-231及びEMT6細胞におけるOX413及びOX416によるポリ-(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化を解析した。この酵素は、二本鎖切断を模倣するOX416又はOX413オリゴヌクレオチド部分の結合の後で活性化される。
【0282】
データは、処理した条件(OX413又はOX416)及び未処理の条件(NT)の示差蛍光の平均倍率変化として提示する。OX413で処理した腫瘍細胞は、処理後24時間から開始し、EMT6細胞では処理後48時間でプラトーに達するが、MDA-MB-231細胞では極めて過渡的な、ポリ(ADP-リボース) (PAR)ポリマーの集積(PAR化、PARP活性化の結果)を示した(
図5A、
図5D)。OX416で処理した細胞は、処理後24時間でPARPの活性化を示し、処理後48時間で顕著な減少を示した。これはおそらく、この時点における顕著な薬物誘導細胞死による(
図5A、
図5D)。これらの結果により、最適化されたOX416分子の効率、及び化学修飾がPARP-1タンパク質に結合するその能力に影響しないことが確認される。
【0283】
PARPのハイジャック及び超活性化の両方が、STING経路を活性化する可能性がある細胞質の未修復DNAの高い集積をもたらす。OX413及びOX416分子がSTING経路活性化を誘発するか否かを検討するため、本発明者らは、STINGタンパク質(
図5B、
図5E)並びにSTINGのリン酸化及び活性化された形態であるpSTING(
図5C、
図5F)の総量をフローサイトメトリーによって解析した。両方の細胞株において、OX413及びOX416は、処理後24時間で開始するSTING経路の活性化を誘導した。
【0284】
(実施例7)
薬学的特性/PK
材料及び方法
雌BAL/CマウスはJanvier-labs社から購入した。1mgのOX413、OX416、OX421、OX422、及びOX423を腹腔内(i.p.)経路によりマウスに注射し、様々な時間、即ち15分、30分、1時間、2時間、4時間、及び24時間で血液を採取した。血液採取は、最初の5時点については下顎静脈穿刺により、24時間の時点については深いガス麻酔下での心臓内終末穿刺によって実施した。血液は抗凝固剤(K2-EDTA)入りのチューブに採取し、+4℃、1,200gで15分遠心分離して血漿を回収した。血漿試料はプロピレンチューブ中、80℃で保存した。
【0285】
5μLのプロテイナーゼK sol > 20mg/mL、20μLの緩衝液(400μLのCaCl2 0.5M、100μlのHEPES 1M、500μlの水)及び75μLのMilliQ水を希釈することによって、プロテイナーゼK (solK)の溶液を調製した。固定された体積の試料(約10μL)を同じ体積のプロテイナーゼK溶液(solK)で希釈し、55℃で1時間加温して、Waters社 BEH C18カラムを備えた高圧液体クロマトグラフィーに直接注入した。トリエチルアミン(TEA)/ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)相に対するアセトニトリルのパーセンテージを経時的に増加することによって勾配を実施した。
【0286】
結果
マウスのi.p.経路による1mgの用量のOX413、OX422、又はOX423の注射により、化合物の高い血漿中最大濃度(Cmax)がもたらされる(
図6)。HPLC法によって測定したOX422及びOX423のCmax値(それぞれ196.0μg/mL及び154.7μg/mL、
図6B、
図6C)は、2時間でOX413のCmax値(69.26μg/mL) (
図6A)より高かった。
【0287】
血漿中薬物濃度-時間曲線下の測定された面積(AUC)は、OX422又はOX423を投与した場合(それぞれ1480μg.h/mL及び1700μg.h/mL)、OX413 (179μg.h/mL)と比較して顕著に高かった。
【0288】
OX413、OX422、及びOX423のi.p.投与の後のCmax及びAUC値を、下のTable 1 (表1)に示す。
【表1】
【0289】
2'OMe修飾を有する化合物は、FANA修飾を有する化合物と比較して、改善された薬学的特性を有している。
【0290】
(実施例8)
会合/解離の速度及び相互作用の強さ(KD)
材料及び方法
OX413及びOX416とヒトポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼ1タンパク質(PARP-1) (115kDa)の相互作用を、GE Healthcare Life Sciences社のBiacore T100装置及びThermofisher社から購入したヒトHisタグ付きPARP-1タンパク質を用いるSPR手法によって特徴解析した。PARP1/ヘアピン相互作用の評価のため、PARP1-Hisを、カルボキシメチル化チップの表面に固定化した抗His抗体に捕捉した。
【0291】
結果
OX413及びOX416の会合(kon)及び解離(koff)の速度並びに相互作用の強さ(KD)を、下のTable 2 (表2)に報告する。
【表2】
【0292】
OX416は、OX413と比較して良好なPARP-1タンパク質との相互作用を有する。
【0293】
(実施例9)
OX413及びOX416は高い抗腫瘍活性を呈する。
材料及び方法
細胞培養
マウス乳癌EMT-6細胞株はAmerican Type Culture Collection, USAから購入した。EMT-6腫瘍細胞をオラパリブのin vitro圧に供して、PARPを過発現し、EMT-6 PARP high細胞株をもたらす腫瘍細胞株を得た。細胞は、10%のウシ胎児血清及び1%のペニ-ストレプトマイシン(Gibco社)が添加され、2mMのL-グルタミンを含むWaymouth中、37℃、5% CO2雰囲気中で培養した。
【0294】
EMT-6
PARP high乳腺腫瘍細胞を担持した免疫能のあるBalb/cマウス、薬物処置、及び腫瘍増殖の測定
6~8週齢の雌Balb/c (Balb/cByJ)マウスは、Janvier社(Saint-Berthevin, France)から入手した。EMT-6
PARP high細胞(200μlのWaymouth培地中5×10
5細胞/マウス)を、マウスの側腹部に皮下移植した。平均腫瘍体積がほぼ25~40mm
3に達したとき、動物をランダム化し、下のTable 3 (表3)に記載したように7匹のマウスのコホートに以下の処置を施した。
【表3】
【0295】
結果
OX413(実線、灰色の円)とOX416(点線、灰色の円)化合物のいずれも、OX413又はOX416処置の19日後に、未処置群(NT、黒四角)と比較して腫瘍増殖の顕著な阻害を誘導した(
図7)。
【0296】
(実施例10)
OX425はPARPを捕捉し、超活性化する。
材料及び方法
細胞培養
ATCCからのトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231及びMDA-MB-436を細胞モデルとして用いた。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS、Biowest社、Cat#:S1810-100)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco社、Cat#:15140-122)を添加したL15 Leibovitz培地(Gibco社、Cat# 11570396)中で供給者の指示書に従って増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。更に、MDA-MB-436細胞株については、L15 Leibovitz培地に10μg/mlのインスリン(Sigma社、Cat# I9278)、16μg/mlのグルタチオン(Sigma社、Cat# Y0000517)を添加した。
【0297】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
OX425とその標的であるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1 (PARP1)タンパク質の相互作用を確認するため、EMSA法を実施した。この目的のため、1pmolのOX425 (Axolabs社、バッチ#K1K2)を、組換えPARP1タンパク質(Active Motif社、Cat# 81037)の添加ありとなしで、10mMのEDTA緩衝液中に溶出させた。2つの異なる比、1:1及び1:5 (薬物:組換えタンパク質)を試験し、THERMO MIXER C (Eppendorf社)を用いて最終体積40μLで、37℃で30分インキュベートした。インキュベーション時間の後、1×のDNA負荷色素(ThermoFisher社、Cat#R0631)をチューブに直接加えた。15μLの試料をNovex(商標)TBE 20% ポリアクリルアミドゲル(Thermofisher社、Cat#EC63155BOX)に装荷した。電気泳動は1×TBE緩衝液(Thermofisher社、Cat#15581044)で実施し、180Vで80分行った。リーダーとしてOrange 5bp DNA leader (ThermoFisher社、Cat#SM1303)を用いた。泳動の終了時に、ゲルを蒸留水で洗浄し、SyberGold (蒸留水中1/10000)で20分染色した。ゲルをUVトランスルミネーター(PERKIN ELMER社、ENSPIRE ALPHA 2390)で解析した。
【0298】
免疫蛍光分析によるPAR化の定量
細胞を2×104細胞の濃度でLabTekチャンバー(Fischer scientific社)上に播種し、37℃で24時間インキュベートした。次いで細胞を1、2.5、及び5μMのOX425 (Axolabs社、バッチ#K1K2)で処理した。処理の24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS 1×中で20分固定し、0.5%のTriton X-100で10分透徹し、10%のFBS (Sigma社、Cat# F0685)で15分ブロッキングし、一次抗体(抗Pan-ADP-リボース結合剤、1/300、Millipore社、Cat# MABE1016)と室温で1時間インキュベートした。Alexa-488とコンジュゲートした二次ヤギ抗ウサギIgG (Molecular Probes社、Cat# 10453272)を1/200の希釈で、室温、45分で用い、DNAを6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Life Technologies社、Cat#:62248)で染色した。陽性細胞(ポリADP-リボースポリマー、PAR化を示す)の頻度を、細胞の総数に対する陽性細胞の数として推定した。それぞれの試料について少なくとも100個の細胞を解析した。
【0299】
結果
ゲルシフトアッセイを用い、OX425処理細胞におけるPARP活性化状態を検討して、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1 (PARP1)とOX425の相互作用を解析することによって、OX425のデコイ効果が実証された。
図8Aに示すように、OX425はPARP1と用量依存的に相互作用し、ポリ(ADP-リボース) (PAR)ポリマーの集積(PAR化、PARP活性化の結果)を検出する免疫蛍光法によって評価されるように、MDA-MB-231及びMDA-MB-436乳がん細胞株における超活性化をもたらす。OX425で処理した細胞は、処理後24時間から開始するPARポリマーの顕著な増加及びPARPの活性化を示した(
図8B)。
【0300】
(実施例11)
OX425は多数のがん細胞モデルで強力な抗腫瘍活性を実証する。
材料及び方法
細胞培養
前立腺がん細胞株22Rv1及びPC-3、卵巣がん細胞株OVCAR3、ATCCからのトリプルネガティブの乳がん細胞株MDA-MB-231及びMDA-MB-436並びにBC227 (Institut Curieから恵与)を細胞モデルとして用いた。細胞は供給者の指示書に従って増殖させた。BC227は、10%のウシ胎児血清(FBS、Gibco社、Cat#:10270-106)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco社、Cat#: 15140-122)、及び10μg/mlのインスリン(Sigma社、Cat# I9278)を添加したDulbeccoの改変Eagle培地DMEM (Gibco社、Cat#:31966-021)中で培養した。
【0301】
薬物処理及び細胞生存率の測定
MDA-MB-231及びMDA-MB-436 (2.103細胞/ウェル)、22Rv1 (1.103細胞/ウェル)、PC-3、OVCAR3及びBC227 (5.102細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートして、6日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物曝露の後、XTTアッセイ(Thermo社、Cat#:X12223)を用いて細胞生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(VICTOR Nivo Plate Reader、Perkinelmer社)を用いて485nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の、生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表す)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0302】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の単離及び細胞毒性試験
全血(健康なドナー、Blood French establishment (EFS)により提供)からのPBMCの単離は、EasySep Magnet (StemCell社、Cat# 19654及びCat# 18103)による直接的免疫磁気ネガティブ選択により、メーカーのプロトコルに従って実施した。単離した新鮮なPBMCを活性化し、IL-2を添加したT細胞アクチベーターカクテルを用い、メーカーの推奨する指示書(StemCell社、Cat# 10981、# 10970、及び# 78036.2)に従って、5% CO2中、37℃で3日間培養した。
【0303】
細胞毒性試験のため、2.5×105の完全に活性化したPBMC細胞を、OX425及びその他の阻害剤(オラパリブ(Olaparib) (Clinisciences社、Cat#:A10111-10)、タラゾパリブ(Talazoparib) (Sigma社、Cat#: P57204)、アダボセルチブ(Adavosertib) (Selleckhem社、Cat#:MK-1775)、及びセララセルチブ(Ceralasertib) (Selleckhem社、Cat#:AZD6738))で3日間処理した。細胞の生存率及び増殖は、Acridine Orange/Propidium Iodide Stain (Logos Biosystems社、Cat# F23011)で計数することによって評価した。
【0304】
結果
がん細胞の生存率に対するOX425処理の効果を、OX425がPARPに対してデコイアゴニスト効果(捕捉及び超活性化)を示す濃度で解析した。様々な型のがん細胞(乳房、卵巣、前立腺)をOX425で6日間処理し、XTT生存率アッセイを用いて生存率を測定した。OX425は高い抗腫瘍活性を誘導し、IC50の大部分は10~300nMの範囲であった(
図9A)。興味あることに、健康な細胞に対して有意な毒性を示した他のDNA損傷応答阻害剤(WEE1、ATR、又はPARP阻害剤)と比較して、健康な血液細胞において細胞生存率に対する有意な効果は観察されなかったので、この活性は腫瘍細胞に特異的であった(
図9B)。
【0305】
(実施例12)
OX425は相同組換え欠損及び相同組換え有能な細胞において強固な抗腫瘍活性を実証する。
材料及び方法
細胞培養
前立腺がん細胞株22Rv1及びPC-3、結腸直腸がん細胞株HT29及びHCT116、卵巣がん細胞株UWB1.289、UWB1.289 BRCA1、A2780、及びOVCAR3、乳がん細胞株MDA-MB-231、MDA-MB-436、BT-549、HCC38、HCC1143、ATCCからの肺がん細胞株A549、並びにBC227 (Institut Curieから恵与)を、細胞モデルとして用いた。細胞は供給者の指示書に従って増殖させた。BC227は、10%のウシ胎児血清(FBS、Gibco社、Cat#:10270-106)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco社、Cat#: 15140-122)、及び10μg/mlのインスリン(Sigma社、Cat# I9278)を添加したDulbeccoの改変Eagle培地DMEM (Gibco社、Cat#:31966-021)中で培養した。
【0306】
薬物処理及び細胞生存率の測定
MDA-MB-231、MDA-MB-436、BT549、HCC38、及びHCC1143 (2×103細胞/ウェル)、22Rv1、UWB1.289、及びUWB1.289 BRCA1 (1×103細胞/ウェル)、PC-3、OVCAR3、HT29、HCT116、A2780、及びBC227 (5×102細胞/ウェル)がん細胞株を96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートして、6日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物への曝露の後、XTTアッセイ(Thermo社、Cat#:X12223)を用いて細胞の生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で4時間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(VICTOR Nivo Plate Reader, Perkinelmer社)を用いて485nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表す)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0307】
結果
PARP阻害剤は、相同組換え修復欠損(HRD、例えばBRCAの変異によって誘導される)を有するがん患者において顕著な恩恵を示してきた。しかし、これらは活性又は有能な修復(HRP)を有する腫瘍においては有効性を示さない。OX425はPARPを標的とするので、本発明者らは、これがHRD腫瘍細胞においてHRP細胞と比較して高い活性を示すか否かを検討することを望んだ。UWB1.289 (BRCA1変異を有する卵巣がん細胞株、HRD)及びその野生型BRCA1相補カウンターパート(UWB1.289 BRCA1、HRP)をオラパリブ又はOX425で6日間処理し、XTTアッセイを用いて細胞生存率を評価した。予想されたように、オラパリブは、HRP細胞と比較してHRD細胞の生存において高い効果を示した。しかし、OX425は相同組換え修復の状態に関わらず、細胞の生存率に対して同様の効果を示した(
図10A)。これは様々な腫瘍組織学を表す多種の細胞株にあてはまることが見出された。即ち、HRD細胞において顕著に高い有効性を示すオラパリブと比較して、HRDとHRPの腫瘍細胞株の間で、OX425に対する感受性において有意差は観察されなかった(
図10B)。
【0308】
(実施例13)
OX425は同所性乳がん腫瘍におけるオラパリブに対する獲得耐性の出現を遅延させる。
材料及び方法
動物モデル
全ての動物は、特定病原体を含まない設備で、ガイドラインに従って飼育し、維持した。本研究は、動物の試験及び研究のための関連する全ての倫理的規制を遵守しており、倫理委員会による倫理的承認を受けている。動物は随意に給水され、規則的に飼料を与えられた。実験はヌードNMRIマウス(免疫欠損モデル、供給者JANVIER Labs社)で実施した。様々なケージからの同腹の動物をランダムに実験群に割り付け、共通の微生物群に等しく曝露されるように、同居させるか、系統的に他の群の寝具に曝露した。
【0309】
トリプルネガティブの乳がん(TNBC) MDA-MB436細胞(2×106)を、L15 Leibovitz培地(Gibco社、Cat#:11570396)とBD Matrigel Matrix (BD Biosciences社、Cat#:356234)の1:1の比の混合物中に懸濁し、ヌードNMRIマウスに皮下注射した。オラパリブ(Clinisciences社、Cat#:A10111-10)を100mg/kgの用量でPO投与、又はOX425 (10mg/kg/IP、(Axolabs社、バッチ#K1K2))を週1回。動物は処置の間、毎日、及びフォローアップでは2日ごとに体重測定した。処置の有効性は、腫瘍体積に対する試験物質の効果に関して評価した。腫瘍の直径を週2回測定することになる。腫瘍の長さ及び幅をキャリパーで測定した。腫瘍の体積は式:腫瘍体積 = (長さ×幅2)/2によって推定することになる。マウスは実験の終了時に安楽死させ、腫瘍は引き続く解析のために凍結した。
【0310】
結果
本発明者らは、OX425が、BRCA1が変異し(HRD)、当初はオラパリブに対して高度に感受性であるMDA-MB-436モデルにおいて、in vivoでオラパリブ耐性復帰を誘発することができるか否かを探索した。本研究は、4つの群、即ち対照群、OX425単独療法群、オラパリブ単独療法群、及び30日間のオラパリブ単独療法処置の後に耐性の兆候が現れた場合にOX425をオラパリブ処置に追加する第4群からなっていた(
図11A)。興味あることに、オラパリブに対する獲得耐性は、in vitroモデルと同様に、処置の開始後、30~60日の間に開始した(データは示さない)。事実、MDA-MB-436 CDXsは当初、オラパリブに対して高度に感受性であり、次いで腫瘍の90%においてオラパリブ単独療法に対して侵攻性の耐性を促進する急速な増殖を受けた。以前の実験において、本発明者らは、この獲得耐性が、HRD-オラパリブ感受性からHRP-オラパリブ耐性の状態への切り替えを誘導する、このモデルにおけるHR修復経路の再活性化によるものであることを示した(
図11D)。OX425の導入は、腫瘍の相同組換え修復状態の切り替え及びオラパリブに対する耐性を顕著に無効化した(
図11B)。更に、処置の間、明らかな毒性又は体重減少は観察されなかった(
図11C)。
【0311】
(実施例14)
OX425は細胞質DNA集積を誘導し、先天免疫応答を誘発する。
材料及び方法
細胞培養
マウス膵腺癌Pan02細胞(ODS社、Lot#:8876)を、10%のFBS (FBS、Biowest社、Cat#:S1810-100)を添加したRPMI 1640 (Gibco社、Cat#:11530586)中で維持した。細胞培養は、CO2 5%、37℃の加湿インキュベーター中で維持した。
【0312】
免疫蛍光解析によるPAR化の定量
細胞を1×102細胞の濃度でLabTekチャンバー(Fischer scientific社)上に播種し、37℃で24時間インキュベートした。次いで細胞を1又は2μMのOX425 (Axolabs社、バッチ#K1K2)で処理した。処理の24時間後に細胞を4%パラホルムアルデヒド/PBS 1×で20分固定し、0.5%のTriton X-100中で10分透徹し、10%のFBS (Sigma社、Cat# F0685)で15分ブロッキングし、一次抗体(抗Pan-ADP-リボース結合剤、1/300、Millipore社、Cat# MABE1016)と室温で1時間インキュベートした。Alexa-488とコンジュゲートした二次ヤギ抗ウサギIgG (Molecular Probes社、Cat# 10453272)を1/200の希釈で、室温、45分で用い、DNAを6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI Life Technologies社、Cat#:62248)で染色した。陽性細胞(ポリADP-リボースポリマー、PAR化を示す)の頻度を、細胞の総数に対する陽性細胞の数として推定した。それぞれの試料について少なくとも100個の細胞を解析した。
【0313】
薬物処理及び細胞生存率の測定
Pan02 (1×102細胞/ウェル)を96ウェルプレートに播種し、37℃で24時間インキュベートして、6日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物曝露の後、XTTアッセイ(Thermo社、Cat#:X12223)を用いて細胞生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(VICTOR Nivo Plate Reader、Perkinelmer社)を用いて485nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の、生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表す)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0314】
フローサイトメトリー解析
Pan02細胞を2×105細胞/mlで播種し、次いで100又は200nMのOX425 (Axolabs社、バッチ#K1K2)ありとなしで、24時間又は48時間処理した。全ての染色、インキュベーションは、暗所、4℃で実施した。細胞外(PD-L1)のため、細胞を最初にトリプシン処理し、洗浄し、生存率測定のため、PBS中、VB-Viobility (Miltenyi Biotec社、130-130-420)を用いて15分染色した。洗浄後、新鮮なPBS/BSA 0.5%緩衝液中、PD-D1_PE (Abcam社、1/800)で30分細胞を染色した。次いで細胞を固定し、Transcription Factor Staining Buffer Set (Miltenyi Biotec社、130-122-981)を用いて1時間及び30分透徹した。細胞内染色の前に、細胞を染色緩衝液で15分飽和させた。細胞をPBS/BSA 0.5%緩衝液中、STING (Cell Signaling社、13647S、1/200)又はPan-ADP-リボース結合剤抗体(Merck社、MABE1016、1/500)で1時間染色した。洗浄後、同じ緩衝液を用いて30分二次染色AlexaFluor647 (Abcam社、ab150083、1/2000)抗体を用いた。最後に、染色された細胞を洗浄し、MACSQUANT8 (Miltenyi Biotec社)によって蛍光強度を取得し、Flowlogicソフトウェアを用いてデータを解析した。
【0315】
CCL5を検出するためのELISA
Pan02細胞を、Tリンパ球ありとなしで、1又は2μMのOX425 (Axolabs社、バッチ#K1K2)で48時間処理した。次いで細胞培養上清を収穫し、1,500×gで10分遠心分離してデブリを除去した。キット(Human SimpleStep CCL5 ELISA Kit、Abcam社ab174446)に含まれる96ウェルのプレートストリップは、直ちに使用可能で供給される。それぞれの上清50μlを50μlの抗体カクテルとともにデュプリケートで各ウェルに添加し、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、室温で1時間インキュベートし、その後プレートを1×洗浄緩衝液PTで洗浄した。次いで100μlのTMB基質を各ウェルに加えて、400rpmに設定したプレートシェーカーの上で、暗所で10分インキュベートした。次いでプレートシェーカー上で1分、100μlの停止剤を各ウェルに加え、得られた発光シグナルをマイクロプレートリーダー(Enspire(商標) Perkin-Almer社)で測定した。
【0316】
動物モデル
全ての動物は、特定病原体を含まない設備で、ガイドラインに従って飼育し、維持した。本研究は、動物の試験及び研究のための関連する全ての倫理的規制を遵守しており、倫理委員会による倫理的承認を受けている。動物は随意に給水され、規則的に飼料を与えられた。実験はヌードマウスで実施した。様々なケージからの同腹の動物をランダムに実験群に割り付け、共通の微生物群に等しく曝露されるように、同居させるか、系統的に他の群の寝具に曝露した。
【0317】
Pan02細胞(2×106)をPBS (100μl)中に懸濁し、C57BL/6マウスの右側腹部に皮下注射した。OX425 (25mg/kg/IP)は週2回投与した。動物は処置の間、毎日、及びフォローアップでは2日ごとに体重測定した。処置の有効性は、腫瘍体積に対する試験物質の効果に関して評価した。腫瘍の直径を週2回測定することになる。腫瘍の長さ及び幅をキャリパーで測定した。腫瘍の体積は式:腫瘍体積 = (長さ×幅2)/2によって推定することになる。マウスは実験の終了時に安楽死させ、腫瘍は引き続く解析のために凍結した。
【0318】
腫瘍の解離及びフローサイトメトリー解析
Pan02を異種移植した腫瘍を、処置の6日後に収穫し、次いで腫瘍を微細に刻み、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec社、130-096-730)を用い、製造者の指示書に従ってgentleMACS octo dissociator (Miltenyi Biotec社)とブレンドした。解離した腫瘍細胞をDMEM培地で洗浄し、赤血球をRBC溶解緩衝液(Miltenyi Biotec社、130-094-183)で溶解した。次いで腫瘍浸潤性白血球(TIL)を、CD45マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-110-618)及びMultiMACS Cell24 Separator plus (Miltenyi Biotec社)を用いて富化した。腫瘍中の生存CD45+細胞の%を決定するため、各工程で細胞を計数した。
【0319】
本質的にPan02腫瘍細胞を含むCD45-細胞を、生存率色素(Viobility-VB、Miltenyi社、130-130-420、1/100)抗体で15分染色し、固定し、透徹し(Miltenyi Biotec社、130-122-981)、飽和し、PBS/BSA 0.5%染色緩衝液中で、抗Pan-ADP-リボース結合剤(Merck社、MABE1016、1/500)と4℃で1時間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、MACS操作緩衝液中に再懸濁し、MACSQUANT8 (Miltenyi Biotec社)を用いて解析した。データはFlowlogicソフトウェアを用いて解析した。
【0320】
結果
OX425で処理した細胞におけるPARPタンパク質の超活性化を、PAR化の免疫蛍光解析によって評価した(
図12A)。OX425で処理した細胞は、「偽の」核PAR化シグナル伝達について陽性であり、100nM及び200nMの用量で未処理細胞と比較して2~6倍の標的関与の増大が確認された(
図12A)。細胞の生存率に対するOX425の効果を評価するため、PAN02膵がん細胞を増加する用量のOX425で6日間処理し、IC50を決定した。本発明者らは、OX425処理の下でPARPの超活性化が細胞の生存率の低下と相関し、IC50がほぼ150nMであることを見出した-
図12B。これが細胞のストレス及び細胞質における未修復のDNAの集積を誘導するDNA修復に対する効果によるものか否かを確認するため、本発明者らは、フローサイトメトリーを用いて、STINGのリン酸化及び活性化された形態(pSTING)を追跡することによってSTING経路の活性化を研究した。OX425は、処理後48時間でStingの活性化を誘導した(
図12C)。STING経路の活性化を確認するため、本発明者らはまた、OX425処理された細胞の上清中のCCL5ケモカインの分泌を解析した。OX425は、処理後48時間でCCL5の分泌の増加を用量依存的に誘導した(200nMで未処理細胞と比較して3.5倍の増加(
図12D))。腫瘍細胞におけるSting経路活性化の帰結の中には、おそらく腫瘍細胞中で免疫システムに対して保護するために誘導されるフィードバックループであるPD-L1 (プログラム死リガンド1)の上方制御がある。本発明者らは、OX425処理細胞における細胞表面随伴PD-L1のレベルを解析した。OX425は、対照と比較して5~6倍の膜随伴PD-L1の増加を誘導した(
図12E)。
【0321】
これらの知見をin vivoで確認するため、PAN02細胞由来の異種移植片を25mg/kgのOX425で処理し、標的関与並びに腫瘍浸潤性白血球(TIL、STING経路活性化の結果として)を、最後の投与の48時間後にフローサイトメトリーによって解析した。OX425処理された腫瘍はPARP活性化の傾向を示した(
図12F)。しかし、CD45+ TIL浸潤の顕著な増加が観察され(
図12G)、抗腫瘍作用を媒介することが知られているOX425誘導免疫効果が確認された。これらの観察と一致して、OX425単独療法は、この異種移植モデルにおける腫瘍増殖の顕著な遅延と関連していた(
図12H)。総合すると、これらの結果は、OX425が細胞質DNA断片の集積及びサイトカインの分泌によって先天免疫応答及びSting経路活性化を誘導することを実証している。
【0322】
(実施例15)
OX425は腫瘍微細環境における免疫細胞の浸潤を増大させる。
材料及び方法
動物モデル
全ての動物は、特定病原体を含まない設備で、ガイドラインに従って飼育し、維持した。本研究は、動物の試験及び研究のための関連する全ての倫理的規制を遵守しており、倫理委員会による倫理的承認を受けている。動物は随意に給水され、規則的に飼料を与えられた。実験はBALB/cマウスで実施した。様々なケージからの同腹の動物をランダムに実験群に割り付け、共通の微生物群に等しく曝露されるように、同居させるか、系統的に他の群の寝具に曝露した。
【0323】
EMT6細胞(0.5×106)を、2mMのL-グルタミンを含むWaymouthのMB 752/1培地(Sigma社、Cat#:W1625)とBD Matrigel Matrix (BD Biosciences社、Cat#:356234)の1:1の比の混合物中に懸濁し、BALB/cマウスに注射した(同所性モデル)。OX425 (25mg/kg又は100mg/kg/IP、 (Axolabs社、バッチ#K1K2))を6日間にわたって3回投与した。動物は処置の間、毎日、及びフォローアップでは2日ごとに体重測定した。処置の有効性は、腫瘍体積に対する試験物質の効果に関して評価した。腫瘍の直径を週2回測定することになる。腫瘍の長さ及び幅をキャリパーで測定した。腫瘍の体積は式:腫瘍体積 = (長さ×幅2)/2によって推定することになる。マウスは実験の終了時に安楽死させ、腫瘍は引き続く解析のために凍結した。
【0324】
腫瘍の解離及びフローサイトメトリー解析
最後の処置の24時間後にEMT6腫瘍を収穫し、次いで腫瘍を微細に刻み、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec社、130-096-730)を用い、製造者の指示書に従ってgentleMACS octo dissociator (Miltenyi Biotec社)とブレンドした。解離した腫瘍細胞をDMEM培地で洗浄し、赤血球をRBC溶解緩衝液(Miltenyi Biotec社、130-094-183)で溶解した。次いで腫瘍浸潤性白血球(TIL)を、CD45マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-110-618)及びMultiMACS Cell24 Separator plus (Miltenyi Biotec社)を用いて富化した。TILの%を決定するため、各工程で細胞を計数した。
【0325】
CD45+細胞をPBS中に再懸濁し、抗体パネル(Viobility色素、CD3-APC、CD8a-PE-Vio770、CD4-APC-Vio770、及びCD49b-VioBright515、Miltenyi Biotec社)、又は対応するアイソタイプで、PBS/BSA 0.5%中、4℃、30分染色した。補償は単一染色及びアイソタイプを用いて実施した。次いで細胞を洗浄し、MACS操作緩衝液に再懸濁し、MACSQUANT8 (Miltenyi Biotec社)を用いて解析した。データはFlowlogicソフトウェアを用いて解析した。最後に、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いて統計解析を行った。
【0326】
結果
OX425の免疫媒介効果を更に検討するため、本発明者らは、同系乳腺腫瘍EMT6異種移植片におけるOX425の有効性を評価した。EMT6細胞由来の異種移植片を、ビヒクル又は様々な用量(25及び100mg/kg、0日、3日、及び5日目における3回の投与)のOX425で処理し、最後の処理の6日後に腫瘍組織を収穫した。抗腫瘍免疫応答に対するOX425の効果を確認するため、本発明者らは腫瘍微小環境の免疫成分を解析した。腫瘍浸潤性白血球(TIL、CD45+細胞)のフローサイトメトリー解析は、OX425が、CD45染色によって測定して、処理開始の早くも6日後に、全TILを顕著に増加させることを示した(
図13A)。CD45+細胞中のT細胞(CD3+)の割合は、OX425処理に応答して顕著に増大した(
図13B)。OX425はT細胞の腫瘍浸潤の増大を誘導しただけでなく、T制御性細胞(CD3-、CD4+、CD49b+)の減少を誘発した(
図13C)。これらの効果は全て、25mg/kgという低い用量でも観察された。
【0327】
総合すると、これらの結果は、先天性及び適応性の免疫細胞動員を増大させ、生産的な抗腫瘍免疫応答を強化する、腫瘍におけるOX425によって誘導される効果的なPARP及びSTING経路活性化を実証している。
【0328】
(実施例16)
PD-1耐性HR+HER2-乳がんに対するOX425の免疫治療活性
材料及び方法
動物モデル
マウス
6~15週齢のC57BL/6マウスを採用した。マウスは、研究計画によって特定されない限り、特定病原体を含まない(SPF)標準的な収容条件(20±2℃、湿度50±5%、12時間-12時間の明暗サイクル、飼料及び水は随意)で維持した。動物実験はFederation of European Laboratory Animal Science Association (FELASA)のガイドラインに従い、EU Directive 63/2010 (プロトコル2012_034A)を遵守し、Gustave Roussy (no. 2016031417225217)、Centre de Recherche des Cordeliers (no. 2016041518388910)、及びWeill Cornell Medical College (no. 2017-0007及び2018-0002)の動物実験のための施設内倫理委員会の承認を得た。WT C57BL/6はTaconic Farms社から得た。全ての実験において、マウスを腫瘍増殖について日常的にモニターし、腫瘍表面が200~250mm2(倫理的なエンドポイント)に達するか、又は明白な苦痛の兆候(例えば瘤、食欲不振、腫瘍の潰瘍化)が存在すれば、安楽死させた。
【0329】
腫瘍形成
50mgの徐放(90日)MPAペレット(#NP-161、Innovative Research of America社)を、6~9週齢の雌マウスに手術によって皮下移植した(0日目)。MPAペレットの移植後、1、2、3、4、5、6、及び7週目に、週に1回、経口チューブによって、コーン油(#C8267、Millipore Sigma社)中の5mg/mLの7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA、#D3254、Millipore Sigma社より)溶液200μLをマウスに投与した。
【0330】
処置
OX425 (0.1mg又は0.5mg、5又は25mg/kg/IPと等価)を、週1回(1X)又は2回(2X)、投与した。動物は処置の間、毎日、及びフォローアップでは2日ごとに体重測定した。処置の有効性は、腫瘍体積に対する試験物質の効果に関して評価した。腫瘍の直径を週2回測定することになる。腫瘍の長さ及び幅をキャリパーで測定した。腫瘍の体積は式:腫瘍体積 = (長さ×幅2)/2によって推定することになる。マウスは実験の終了時に安楽死させ、腫瘍は引き続く解析のために凍結した。
【0331】
結果
ホルモン受容体(HR)+の乳がんはPD-1を標的とする免疫チェックポイントブロッカーへの反応が思わしくないコールド腫瘍であり、HR+の腫瘍微小環境を刺激してPD-1への感受性を回復させる治療戦略の開発が必要である。7,12-ジメチルベンズ[a]アントラセン(DMBA)経口チューブと組み合わせた皮下徐放メドロキシプロゲステロンアセテート(MPA)ペレットによって駆動される、任意選択でマウスPD-1阻害剤(互いに3日離れた200μg/マウスの2用量で腹腔内に送達される)と組み合わされた、週1回又は2回、5又は25mg/kgで腹腔内に送達されるOX425の治療有効性を検討するための、ヒトHR+HER2-乳がんの重要な免疫生物学的特徴を再現する独特の内因性マウスモデルを開発した。腫瘍の増殖、マウスに適合したRECISTスコア評価、無増悪生存率、全生存率、及びその他の臨床的に関係するパラメーターを、倫理的エンドポイントまでモニターした。
【0332】
図14及び以下の表に示すように、最大の投薬スケジュール(25mg/kg、週2回)におけるOX425には、処置したマウス全体にわたる体重減少(PD-1ブロッケージに関わらない)及びマウスの10%における早すぎる死が伴い、週2回の5mg/kgへの用量の低減が必要となった。他の全ての投与スケジュールではOX425はよく忍容され、MPA/DMBAに駆動される癌腫(これらは女性におけるHR
+乳がんと同様に本来、PD-1耐性である)を有するマウスにおける腫瘍増殖の制御及び全生存率の延長に効果的であった。OX425は二次腫瘍の進行を阻害するので、OX425を5mg/kgで週2回送達すると、PD-1をブロックすることによってOX425の治療活性が増大した。総合すると、これらの結果により、週2回の25mg/kg未満の用量のOX425がマウスによってよく忍容され、PD-1との相乗効果の可能性を伴ってPD-1耐性のHR
+HER2
-乳がんモデルにおける単剤免疫治療活性を媒介することが示された。
【表4】
【0333】
(実施例17)
OX425はOX401と比較して高い抗腫瘍有効性を呈する。
材料及び方法
細胞培養
ATCCからの乳がん細胞株MDA-MB-231、BT549、及びHCC38を細胞モデルとして用いた。10%のウシ胎児血清(FBS)を添加した完全培地中で供給者の指示書に従って細胞を増殖させ、CO2 0%、37℃の湿潤雰囲気中で維持した。
【0334】
薬物処理及び細胞生存率の測定
細胞を96ウェルプレートに播種し(2.103細胞/ウェル)、37℃で24時間インキュベートして、6日間、増加する濃度の薬物を添加した。薬物曝露の後、XTTアッセイ(Thermo社、Cat#:X12223)を用いて細胞生存率を測定した。手短に述べれば、細胞培養液を含む各ウェルにXTT溶液を直接加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(VICTOR Nivo Plate Reader、Perkinelmer社)を用いて485nmの吸光度を読み取った。細胞の生存率は、生存している処理済み細胞の、生存している模擬処理細胞に対する比として計算した。IC50(これは細胞の50%が生存する用量を表す)は、各細胞株について生存パーセンテージを薬物濃度のLogに対してプロットすることにより、GraphPad Prismソフトウェア(バージョン5.04)を用いる非線形回帰モデルによって計算した。
【0335】
結果
OX425の抗腫瘍有効性を評価するため、MDA-MB-231、BT549、及びHCC38乳がん細胞を増加する用量のOx425又はOX401で6日間処理し、IC50 (阻害濃度中央値)を推定した。興味あることに、OX425は、OX401より顕著に低いIC50を示した(
図15)。
【配列表】
【国際調査報告】