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特表2025-500928血管新生促進増殖因子結合ポリペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】血管新生促進増殖因子結合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/22 20060101AFI20250107BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250107BHJP
【FI】
C07K16/22 ZNA
C12N15/13
C12N15/85 Z
A61K38/18
A61P29/00
A61P37/02
A61P35/00
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536293
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 CU2022050011
(87)【国際公開番号】W WO2023109982
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】CU-2021-0101
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】304012895
【氏名又は名称】セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス モヤ、イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ベケト ロメロ、モニカ
(72)【発明者】
【氏名】アヤラ、アビラ マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ガビロンド コウレイ、ホルヘ、ビクトール
(72)【発明者】
【氏名】モレラ、ディアス、ヤネリス
(72)【発明者】
【氏名】ムニョス ポソ、ヤスミアナ
(72)【発明者】
【氏名】カナン - ヘイデン アヤラ、カミラ
(72)【発明者】
【氏名】ラムダン オルダス、ハンベルト
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ブランコ、ソニア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB21
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084MA56
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA961
4C084ZB071
4C084ZB111
4C084ZB151
4C084ZB261
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸配列中にVHHシングルドメイン抗体の少なくとも1つのフラグメントを含む血管新生促進増殖因子結合ポリペプチド、及び血管新生促進増殖因子結合ポリペプチドをコードするベクターに関する。本発明はさらに、前記ポリペプチド又は血管新生促進増殖因子結合ポリペプチドをコードする前記ベクターを含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、医薬を製造するための血管新生促進増殖因子結合ポリペプチドの使用、又は前記ポリペプチドをコードするベクターの使用に関する。本発明はさらに、少なくとも1つの血管新生促進増殖因子結合ポリペプチド又は前記ポリペプチドをコードするベクターを含む治療有効量の医薬組成物が投与される、治療を必要とする対象において血管新生、炎症又は免疫抑制の増加を示す病態の治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号23若しくは配列番号24として特定されるアミノ酸配列、又は配列番号23及び配列番号24として特定されるアミノ酸配列に対して95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのシングルドメイン抗体フラグメント(VHH)をアミノ酸配列中に含む、血管新生促進増殖因子に結合するポリペプチド。
【請求項2】
血管新生促進増殖因子がヒト血管内皮増殖因子(VEGF)又は塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
2つ以上のヒトVEGF又はbFGF分子に結合する、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
少なくともi)2つのVEGF分子、ii)2つのbFGF分子、又はiii)1つのVEGF分子及び1つのbFGF分子と結合する、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びにヒト免疫グロブリンのアルブミン結合部位又はFcドメインに対応するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
Fcドメインがヒト免疫グロブリンIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4由来である、請求項6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
配列番号31~配列番号36として特定されるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
血管新生促進増殖因子に結合するポリペプチドをコードするベクターであって、ポリペプチドが配列番号23~配列番号28及び配列番号31~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、上記ベクター。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項9に記載のベクター、及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
全身経路、粘膜経路又は硝子体内経路による投与のために製剤化される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
医薬の製造のための、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項9に記載のベクターの使用。
【請求項13】
薬物が、血管新生、炎症又は免疫抑制の増加を引き起こす病態の治療に有用である、請求項12に記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
薬物が癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性又は関節リウマチの治療に有用である、請求項13に記載のポリペプチドの使用。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項9に記載のベクターを含む治療有効量の医薬組成物を特徴とする、治療を必要とする個体において血管新生、炎症又は免疫抑制の増加に伴って起こる病態を治療する方法。
【請求項16】
病態が癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性又は関節リウマチである、請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が、全身経路、粘膜経路又は硝子体内経路によって投与される、請求項15に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及びヒトの健康分野に関する。本発明は、ヒト血管内皮増殖因子(VEGF)又は塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のような血管新生促進増殖因子に結合し、それらの生物学的効果を阻害するポリペプチドを提供する。これは、血管新生、炎症、及び免疫抑制の増加に伴って起こる病態の治療に使用される、前記ポリペプチドを含む医薬組成物の生成のための基盤を提供する。
【背景技術】
【0002】
「de novo」血管新生プロセスは、現在、複数の疾患の調査において中心的な位置を占めており、血管新生は、現在、新薬の発見における組織原理として記載されている(Folkman、Nat Rev Drug Discov、2007:6:273-86)。この10年間で、内皮増殖阻害剤並びに血管構造の集合及び透過性の調節剤に基づく複数の治療法がヒトでの使用について承認された。これらの治療法は3つの基本的な群:I)小さいポリペプチドを使用するもの、及びチロシンキナーゼ阻害剤のタイプのもの、II)抗体、そのフラグメント及び変異体に基づくもの、III)ウイルスベクターに挿入された抗体、そのフラグメント又は変異体をコードするデオキシリボ核酸(DNA)の配列を使用するもの(Apteら、Cell、019:176:1248-64)に分けられる。
【0003】
完全なモノクローナル抗体及び抗原結合部位を保持するそのフラグメントは、臨床試験の進行段階で見られる。モノクローナル抗体の治療的成功にもかかわらず、製造の観点からは一連の欠点を示している。高分子量(150,000Da)、ヘテロ四量体組成、及び約15個のジスルフィド結合の存在は、細菌での生産を容易にせず、真核細胞での生産を困難にしている。加えて、分子量が高いために組織への浸透性が損なわれ、作用部位での位置にも影響を及ぼす(Jovcevska y Muyldermans、BioDrugs、2020:34:11-26)。そのため、モノクローナル抗体の抗原結合部位を利用して、より分子サイズの小さいポリペプチドを生成する技術的プラットフォームが開発されてきた。
【0004】
この文脈では、VHとしても知られるシングルドメイン抗体は、抗原を特異的に認識できる天然に存在する最小の抗体フラグメント(15~17kDa)である。これらはラクダ科の重鎖抗体の可変領域に由来する。さらに、これらのポリペプチドは高温、極端なpH、及びプロテアーゼに耐性がある(Muyldermans、FEBS J、2021:288:2084-102)。VHのサイズが小さいことは、治療には不利であり得る。しかし、VHの高い効率及び水性環境での高い溶解性、組織及び腫瘍への優れた浸透性、及び優れた安全性プロファイル並びに低い免疫原性により、様々な免疫学的応用において有望視されている(Sunら、Int J Nanomedicine、2021:16:2337-56)。
【0005】
過去10年間、VHは様々な科学研究分野でその可能性を示してきた(Jovcevska y Muyldermans、BioDrugs、2020:34:11-26)。最近、最初のVHがヒトへの使用承認を取得し、他の2つのポリペプチドが第II相及び第III相臨床試験中である(Scullyら、New England Journal of Medicine、2019:380:335-46)。他の分子は、前臨床試験及び臨床試験の様々な段階を進行中である。
【0006】
ファージディスプレイ技術は、大規模で多様なライブラリーから数週間以内に複数の高親和性ポリペプチドを回収する効率的なストリンジェント選択を可能にする(McCaffertyら、Nature、1990:348:552-4)。VH選択のために、VHの3種類のライブラリー:免疫ライブラリー、非免疫(ナイーブ)ライブラリー、及び合成ライブラリーが使用できる。このうち、合成ライブラリーだけが真正のユニバーサルライブラリーを提供でき、これによりほとんど全ての抗原に特異的なVHを得ることが可能になる(Knappikら、Journal of Molecular Biology、2000:296:57-86)。
【0007】
近年、血管新生プロセスのメディエーターに特異的な種々のVH又はそれに由来するポリペプチドが作製、選択、及び評価されている。抗VEGF/VEGFR薬に対する抵抗性の機構において、bFGF/FGFR軸が支配的な役割を果たすとする研究が増えている。しかし、bFGFに対する特異的VHは今のところ存在しない(Wangら、Molecular Cancer Therapeutics、2012:11:864-72、Roncaら、Expert Opin.Ther.Targets 2015:19:1-17、Zahraら、Cancers(Basel)、2021:13:1422)。
【0008】
血管新生プロセスにおけるVEGFの基本的な役割を考慮すると、VEGF特異的VHはラクダ科動物の免疫ライブラリーからのみ作製されている(Farajpourら、Journal of Biomolecular Screening、2014:19:547-55、Ebrahimizadehら、Applied Biochemistry and Biotechnology、2015:176:1985-95、Kazemi-Lomedashtら、Molecular Immunology、2015:65:58-67)。これらのVHは内皮細胞の増殖及び管状構造の形成を抑制する効果を示し、そのうちの1つではTC-1モデルにおいて抗腫瘍効果が確認されている。これらのVHは変性したコンフォメーションのVEGFを認識するため、ベバシズマブに類似した要素である線状セグメントに特異的でなければならない。(Kazemi-Lomedashtら、Iranian Journal of Basic Medical Sciences、2017:399-496)。
【0009】
これらのポリペプチドのさらなる治療開発にとって、放射性標識又は蛍光標識以外の基本的な欠点は、以下に関連している:
a)ラクダ科動物由来の配列の抗原性の可能性、
b)低分子であるため、腎臓からの排出が急速であるために生物学的利用能が制限されること、
c)病態が多因子性であるため、2つ以上の増殖因子/受容体系を標的とする必要があること。
【0010】
VEGF特異的VHのうちヒト化されているのは1つだけである(Kazemi-Lomedashtら、Iranian Journal of Basic Medical Sciences、2018:21:260-6)。これまでのところ、このタンパク質の「in vivo」系での挙動は不明である。部分的にヒト化され、BI836880として知られる二重特異性構築物の一部である抗VEGF VHが少なくとも1つ存在する(Kovalchukら、Clinical&Experimental Metastasis、2020:37:637-48)。このVHは、加齢黄斑変性(AMD)及び進行固形癌の転移病変を対象とした第II相臨床試験中である(www.http//clinicaltrials.gov)。
【0011】
他の分子標的に特異的なVHのサイズを増加させるために、アルブミン又は免疫グロブリンIgG1、IgG2、及びIgG4のFcセグメントのような血清タンパク質への結合部位も組み込んだ、二価の単特異性又は二重特異性ポリペプチドが記載されている。VEGF又はbFGFについては、VH型結合部位に免疫グロブリンFc又は他のタンパク質の結合部位を組み込んだ戦略は記載されていない。
【0012】
これまでのところ、bFGFを標的にしたヒト化された単特異性又は二重特異性な多価VH様ポリペプチドは記載されておらず、VEGFについては部分的にヒト化されたVHを用いた2つのアプローチのみが記載されている。加えて、上述した戦略のいずれも、ヒト化合成ライブラリーの使用によって生成され得る多様性を未だ利用していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、抗血管新生、抗腫瘍、抗転移、抗炎症、及び免疫回復効果が増強された、ヒトVEGF及びbFGFに対する新規で特異的な結合部位を有する治療用変異体を得る必要性が依然として存在する。これによって、それらの生物学的利用能及び組織アクセスのさらなる改善が可能になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、血管新生促進増殖因子に結合するポリペプチドを提供することにより、前述の問題を解決する。これらのポリペプチドは、配列番号23若しくは配列番号24として特定されるアミノ酸配列、又はこれらの配列と95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも1つのシングルドメイン抗体フラグメント(VH)をそのアミノ酸配列中に含む。前記ポリペプチドは、本発明のフレームワーク内で生成されたサブライブラリーから得られ、薬物の製剤化及び開発の観点から魅力的な物理化学的特性を示す。本発明の一実施形態において、前記ポリペプチドが結合する血管新生促進増殖因子は、ヒトVEGF又はbFGFである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態において、ヒトVEGF又はbFGF結合ポリペプチドは、少なくとも2つのVEGF又はbFGF分子、又は1つのVEGF分子及び1つのbFGF分子に結合する。特定の実施形態において、本発明は、配列番号12、配列番号13、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを提供する。
【0016】
本発明は、ヒト及びマウスのVEGFに結合し、VEGF受容体2型(VEGFR2)への結合を阻害するが、VEGF受容体1型(VEGFR1)への結合は阻害しない、Nb-V1と呼ばれるポリペプチドの取得を示す。前記ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号12として特定される。全長抗体とは異なり、Nb-V1は腫瘍に優先的に分布し、抗血管新生特性を有することが示された。Nb-V1はVEGFのVEGFR1への結合を阻害しないという点で他の抗VEGF抗体フラグメントとは異なる。この受容体は有効なシグナル伝達を持たないため、VEGFを細胞外マトリクスに貯蔵する方法としてしばしば説明されており、また複数の恒常性維持プロセスにおいても必須である(Shibuya、Cell structure and function、2001:26:25-35)。VEGF/VEGFR系の他の阻害剤によるその遮断は、腎臓及び肝臓の損傷の増加に関係しているため、VEGFR2の選択的阻害を達成することは、毒物学的観点から利点がある(Sullivanら、PLoS ONE 2010:5:7-8)。VEGFR2は、内皮細胞の増殖、遊走、及び管形成(Selvarajら、Cancer Cell、2015:27:780-96)、並びにTReg細胞及びMDSC細胞の誘引、並びにTリンパ球の老化誘導に対するVEGFの効果を媒介する(Bourhisら、Frontiers in Immunology、2021:12:616837)。
【0017】
本発明はまた、ヒト及びマウスのbFGFに結合し、FGFR1への結合を阻害し、そのアミノ酸配列が配列番号13として特定されることを特徴とするNb-F3と呼ばれるVHの取得も示す。この分子は、bFGFに対する特異性を有するVHが記載されていないため、そのクラスで特有である。Nb-F3ポリペプチドはin vitroで抗血管新生及び抗増殖特性を示した。
【0018】
一価及び単特異性のポリペプチドNb-V1及びNb-F3は、単量体の形で得られ、75℃で2時間処理しても、抗原認識及びそれぞれの受容体への結合遮断を70%以上維持した。さらに、VHの高濃度、異なるpHの様々な緩衝液中、及び単純及び複雑な製剤での安定性も証明された。VHのNb-V1及びNb-F3で得られた結果は、コンフォメーションと機能的観点からの熱安定性の観点から、ユニバーサルライブラリーと設計された成熟ライブラリーから、熱安定性及び溶解性の適切なプロファイルを有するポリペプチドを得ることが可能であることを示している。
【0019】
本発明によって開示されたNb-V1及びNb-F3 VHのサイズは約15kDaである。この特性は組織浸透性の観点からは有利であるが、腎臓から速やかに排出されることが条件となる(Cortez-Retamozoら、Int J Cancer、2002:98:456-62)。腎排出は、反復投与の必要性を課した。
【0020】
一実施形態において、循環における保持を増加させるために、本発明のポリペプチドは、a)配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列、並びにb)ヒト免疫グロブリンのアルブミン結合部位又はFcドメインに対応するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドである。本発明の一実施形態において、Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4免疫グロブリン由来である。
【0021】
スペーサー(リンカー)又はヒンジ領域を有する多量体の設計は、文献に広く記載されている。これらは、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Serの多量体のような合成のものであってもよく、又はヒト由来のヒンジ及びスペーサーの配列群、又はラクダ科由来の配列群から選択することもでき、これらは前記種の免疫グロブリン内でこの機能を果たす。(Nezlin、The Immunoglobulins、1998:3-73、Conrathら、Developmental and Comparative Immunology、2003:27:87-103、Saerensら、Anal Chem、2005:77:7547-55)。
【0022】
本発明は、VEGFR2との相互作用を阻害し、配列番号20として特定される配列を有する、Nb-VV6と呼ばれる、2つのVEGF分子を認識するポリペプチド(VEGFに対する2価の単特異性)の取得を明らかにする。また、FGFR1との相互作用を阻害し、配列番号21として特定される配列を有する、Nb-FF2と呼ばれる、2分子のbFGFを認識するポリペプチド(bFGFに対する2価の単特異性)の取得も明らかにされている。従来の他の分子とは異なり、Nb-VV6及びNb-FF2は、単量体の形で得られ、75℃で2時間処理しても、結合活性と受容体結合遮断活性の30%未満しか失われなかった。この戦略により、一価の変異体と比較して、それぞれのリガンドの認識において3倍の増加が達成され、これはin vitroでの抗血管新生効果の増加と相関した。生体内分布試験では、これらの単特異性二価ポリペプチドの腫瘍病巣への集積が、一価変異体で観察されたのと同様に示された。いくつかのin vivo研究において、黄斑又は腫瘍の新生血管モデルで解析した結果、これらの単特異性二価ポリペプチドの優れた効果が示された。
【0023】
これらのリガンド(bFGF又はVEGF)の一方を排他的に隔離しても、その誘導経路の冗長性のために、疾患に関連した血管新生プロセスを決定的に中和することはできない。(Haibeら、Frontiers in Oncology、2020:10:221)。2つ以上の血管新生促進因子の阻害は、黄斑疾患(Campa、Curr Drug Targets、2020:21:1194-200)及び肝腫瘍(Zahraら、Cancers(Basel)、2021:13:1422)の長期管理においてより効果的である。これを考慮し、本発明は、VEGF及びbFGFの両方に結合し、これらの因子とVEGFR2及びFGFR1受容体との相互作用をそれぞれ阻害する、Nb-VF3及びNb-FV1と命名された二重特異性一価ポリペプチドを提供する。これらの二重特異性ポリペプチドは、それぞれ配列番号18及び配列番号19として特定されるアミノ酸配列を有することによって特徴付けられる。興味深いことに、二重特異性ポリペプチド中の配列番号23及び配列番号24に対応するセグメントの順序に関係なく、VEGF及びbFGF抗原を認識し、それらの特異的受容体との相互作用を阻害することが観察された。これらの二重特異性VHは、親分子の一価バージョンについて記述された物理化学的及び生物学的特性を保存していた。いくつかのin vivo研究において、黄斑又は腫瘍の新生血管モデルにおける分析から、二重特異性ポリペプチドNb-FV1が単特異性変異体Nb-V1よりも優れていることが示された。
【0024】
本発明では、配列番号23~配列番号28として特定されるポリペプチドの配列に、ヒトIgG1型免疫グロブリンのFc(CH1-CH2)フラグメントを組み込んだことに特に言及する。このエレメントは補体結合という点でエフェクター機能を組み込んでおり、これらのVHポリペプチドのサイズを60kDa以上増加させ、腫瘍性疾患での使用に望ましいエレメントである(Rath Tら、HHS Public Access.2016;35:235-254)。ヒトIgG1 Fcを付加して得られたポリペプチドを、Nb-V1_hFc、Nb-F3_hFc、Nb-VV6_hFc、Nb-FF2_hFc、Nb-FV1_hFc及びNb-VF3_hFcと呼び、それぞれ配列番号31~配列番号36として特定される配列を有する。それぞれの抗原の認識、及びそれらの受容体への結合の阻害の分析から、この末端カルボキシルセグメントの付加は、Fcセグメントのない対応物について記載されたものと比較して、生物学的特性に影響を与えないことが示された。さらに、このセグメントの導入は血漿中のVHの半減期を有意に増加させることが示され、これは腫瘍モデルにおけるそれらによる治療の抗腫瘍、抗血管新生、及び免疫回復効果と相関する。同様に、補体を活性化する能力の低い他の免疫グロブリンのCH2-CH3セグメントも取り込むことができ、これは、炎症現象を平行して誘導することなく、リガンド捕捉に有用であると考えられる。
【0025】
一方、トレーサーペプチドであるc-myc及びポリヒスチジンは、VHのような低分子の機能性を損なうことが記載されている。さらに、これらのトレーサーセグメントは腎臓に優先的に存在するため、この臓器は反復投与による毒性作用の標的となる。(Huyvetterら、Theranostics、2014:4)。
【0026】
そこで、ポリペプチドNb-V1、Nb-F3、Nb-VV6、Nb-FF2、Nb-FV1、及びNb-VF3のアミノ酸配列からカルボキシル末端を除去し、得られたポリペプチドをそれぞれNb-V1\cmycH6、Nb-F3\cmycH6、Nb-VV6\cmycH6、Nb-FF2\cmycH6、Nb-FV1\cmycH6、及びNb-VF3\cmycH6と命名した。これらのポリペプチドは、それぞれ配列番号23~配列番号28として特定されるアミノ酸配列を有する。これらのVHは、c-myc及びポリヒスチジンの対応物と同様の生物学的特性を示した。
【0027】
本発明は、VHを取得する、又は安定化させる特定の方法に限定されるものではない。これらは、例えばプロテインA親和性クロマトグラフィーによって取得及び分離することができ、これは組換え産物の製造のために広く受け入れられている戦略であり、さらに得られるポリペプチドの正しいフォールディングを保証するものである。同様に、VHはその化学的及び熱的安定性から、イオン交換と組み合わせた沈殿法を用いて精製することができる。
【0028】
ヌード動物を用いたin vivo試験では、VHの抗腫瘍効果及び抗血管新生効果が示され、腫瘍病巣に優先的に局在することが示された。血管密度の研究では、VHの様々な変異体で治療した動物において、腫瘍と転移病巣の有意な減少を示した。同種移植マウスモデルの抗腫瘍効果の解析から、免疫応答性マウスモデルと免疫不全マウスモデルを比較した場合の介入の優れた影響が示され、これは、これらの増殖因子の隔離による潜在的な免疫回復効果に関連している可能性がある。これらの効果はin vitro及びin vivoで検証された。
【0029】
治療的適用のために、本発明のポリペプチドは、当業者に公知の経路で、薬学的に有効な用量で、必要な個体に投与される。
【0030】
本発明のポリペプチドの投与は、肺癌、結腸癌及び腎癌を含む種々の起源の新生物の腫瘍増殖を有意に減少させた。これらの結果は、他の抗腫瘍治療の結果の臨床への移行に関連したモデルにおいて得られたものであり、このことは、癌治療における臨床シナリオへのこの戦略の適用可能性を示している。ポリペプチドの用量は、用量の増加に伴って生物学的効果の増大が観察されているため、所望の効果に応じて、各用途に使用される。
【0031】
本発明はまた、血管新生促進増殖因子に結合するポリペプチドをコードするベクターを提供し、ここでこのポリペプチドは配列番号23~配列番号28及び配列番号31~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。この戦略は血管新生促進増殖因子に結合するこれらのポリペプチドのin vivoでの永続性を増加させる。この点に関して、アデノ随伴ベクターの使用が記載されており、特に、硝子体内投与において有益性が証明されているポリペプチドをコードするベクターの、脈絡膜上投与又は硝子体内投与において記載されている(Antonioら、2021:2:151-7)。
【0032】
アデノ随伴ベクターAAV2の使用により、例14に示すように、目的のポリペプチドのin vitro及びin vivo発現が可能になった。
【0033】
本発明は、a)アミノ酸配列が配列番号23~配列番号28、配列番号31~配列番号36として特定されるポリペプチド、又はb)配列番号23~配列番号28及び配列番号31~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするベクター;及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を開示する。
【0034】
本発明において、リン酸緩衝生理食塩水は、ポリペプチド調製物のためのビヒクルとして好ましく使用されたが、その安定性は、広範囲の添加物において確認された。ポリペプチド又はベクターは、毒性がなく、治療効果を有しない医薬的使用について認められた賦形剤中で投与することができる。
【0035】
同様に、本発明の医薬組成物は特定の投与経路に限定されるものではなく、特定の製剤を用いずに、VHを硝子体内、静脈内、腹腔内、皮下、及び経鼻的に投与し、抗血管新生、抗腫瘍、抗炎症、及び免疫回復効果を生じさせることができることは明らかである。したがって、本発明の一実施形態において、医薬組成物は、全身経路、粘膜経路、又は硝子体内経路による投与のために製剤化される。
【0036】
本発明の他の目的は、薬物の製造のための、アミノ酸配列が配列番号23~配列番号28、配列番号31~配列番号36として特定されるポリペプチド;又は配列番号23~配列番号28及び配列番号31~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするベクターの使用である。本発明の一実施形態において、医薬は、血管新生、炎症、又は免疫抑制の増加を引き起こす病態の治療に有用である。本発明は、特定の疾患に対する医薬の使用を制限するものではない。本発明は、in vitroで得られた樹状細胞、T細胞、及びマクロファージの活性化の調節の結果に基づいて、本発明のポリペプチド、又はベクターを含む薬物療法が他の文脈でどのように有効であるかを描写する。本発明の特定の実施形態において、医薬は、癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性、又は関節リウマチの治療に有用である。
【0037】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする個体において、血管新生、炎症、又は免疫抑制の増加に伴って起こる病態を治療するための方法であって、アミノ酸配列が配列番号23~配列番号28、配列番号31~配列番号36として特定されるポリペプチド;又は配列番号23~配列番号28及び配列番号31~配列番号36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするベクターを含む医薬組成物の治療有効量を投与することを特徴とする方法を提供する。本発明の一実施形態において、前記治療方法において、病態は、癌、糖尿病性網膜症、黄斑変性、又は関節リウマチである。本発明の特定の実施形態において、前記治療方法において、前記医薬組成物は、全身経路、粘膜経路、又は硝子体内経路によって投与される。
【実施例
【0038】
詳細な実施形態/実現例
(例1)一般的方法
プラスミド、微生物、酵素、抗体、及び組換えタンパク質
pHG-1m、pACR-1K及びpVSJG-huFcベクター(Lamdan,Hら、国際公開第2008/052489号)、並びに大腸菌(Escherichia coli)由来のTG1株(K12_(lac-pro)、supE、thi、hsdD5/F’traD36、proA+B+、lacIq、lacZ_M15)及びBL21(F-ompT hsdS (rB-mB-) gal dcm met (DE3))は、CIGB株コレクションから入手した。ベクターpINFUSEはInvivoGen(EE.UU.)から入手した。KOD Hot Start Master MixはNovagen(EE.UU.)から入手し、酵素T4 DNAリガーゼ、アルカリホスファターゼ、ApaLI、NotI、NcoI、BglII、EcoRI、AflII、XbaI、及びTaq polimerase Master MixはPromega(EE.UU.)から供給された。Platinum PCR 2X Master MixはThermoScientific(EE.UU.)から購入した。
【0039】
繊維状ヘルパーファージM13K0、ストレプトアビジンタンパク質及び全てが酵素ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした、マウスで産生された抗ポリヒスチジン抗体、ウサギで産生された抗マウスIgG抗体及びヒツジで産生された抗ヒトIgG1抗体は、Sigma-Aldrich(USA)より供給された。(ファージPVIIIタンパク質に対する)HRPコンジュゲート抗M13抗体は、GE Healthcare(USA)から購入した。mAb 9E10(c-mycペプチドに特異的)及びHRP酵素にコンジュゲートしたプロテインAは、CIGB、Sancti-Spiritus(Cuba)より供給された。
【0040】
組換えヒトbFGFタンパク質、及びヒトIgG1 Fcに融合したVEGF受容体1型及び2型(Flt1-Fc及びKDR-Fc)は、Sigma(USA)より入手した。マウスbFGF及びbFGFの1型受容体は、SinoBiological(USA)より供給された。CHO-VEGFタンパク質は、ヒトVEGF121分泌用に形質転換したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の上清より得た。これは、記載されているように、金属イオンとの親和性により精製した(Sanchez Ramirezら、Journal of immunoassay & immunochemistry、2016:37:636-58)。GST-hVEGF及びGST-mVEGFタンパク質は、大腸菌で産生され、記載された手順に従って、グルタチオン親和性により精製された(Moreraら、Biotechnology and Applied Biochemistry、2006:44:45-53)。抗体フラグメントscFv CIGB-166a(Lamdanら、Journal of Biotechnology、2011:151:166-74)及び組換えタンパク質VEGFKDR-(Gavilondoら、Vaccine、2014:32:2241-50)は、CIGBの技術開発局(Havana(Cuba))から提供された。ベバシズマブ抗体及びscFv CIGB166aのビオチン化変異体は、Bevacizumab-biot及びCIGB166a-biotと命名され、製造業者の指示に従って実験室で調製された。
【0041】
VEGF又はbFGFに結合できるファージの選択
ライブラリーの中からVHを保有するファージを選択し、血管内皮増殖因子(VEGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の2つの抗原に結合させ、記載されるように実行した(Lamdanら、2011)。簡潔には、GST-hVEGFには10μg/mL、bFGFには5μg/mLの濃度を用いた。より親和性の高いクローンの選択を保証するため、コーティング中の濃度は各サイクルの間に50%ずつ減少させた。VEGFの場合、選択プロセス中の特異性を高めるため、遊離GSTを1mg/mLの濃度でファージ混合物に添加した(Moreraら、Biotechnology and Applied Biochemistry、2006:44:45-53)。選択の厳密さは、PBS-0.1%Tween(PBST)による選択の各ラウンドで、洗浄回数及び洗浄時間を増やすことで確保した(4時間あたり最大20回までの洗浄)。ラウンド2及び3から20~40クローンを無作為に選択し、以下に簡単に説明するファージELISAによって抗原免疫反応性を評価した。抗原につき各ライブラリーから10~20個の陽性クローンからプラスミドDNAを単離し、配列決定した(Microsith、Alemania)。
【0042】
ファージELISA:
VEGFの場合、マイクロタイタープレート(Costar、USA)をGST-hVEGF(10μg/mL)でコーティングし、bFGFについては5μg/mL溶液を用いた。無関係な抗原:10μg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)及びグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)によるコーティングを陰性対照として用いた。ファージ混合物を1:10~1:1000の間で希釈し、プレート上で25℃で1時間インキュベートした。結合したファージは、HRPコンジュゲート抗M13抗体を含む溶液で検出した。ペルオキシダーゼ酵素活性は基質溶液で検出し、マイクロタイタープレートリーダー(BMG、 Clariostar、Germany)で492nmの吸光度を測定した。標的抗原に対する吸光度が、無関係な抗原であるBSA及びGSTに対する吸光度より2倍高いファージ混合物を陽性と考えた。
【0043】
クローンのスクリーニング、生産及びファージの特性評価
大腸菌株TG1細菌に、選択サイクルの2サイクル目と3サイクル目から選択したファージを感染させた後、96ウェル細胞培養プレートで、単離されたコロニーから、記載された手順に従って、VHを保有するファージを産生した(Marksら、Journal of Molecular Biology、1991:222:581-97)。各ウェルの上清に含まれるファージディスプレイVHの免疫反応性をELISAによって評価した。
【0044】
抗原をより高度に認識するVHを提示する繊維状ファージを産生し、記載された手順(Marksら、Journal of Molecular Biology、1991:222:581-97)に従って50mLのスケールでポリエチレングリコールで沈殿させることにより精製した。得られた調製物中のファージ濃度を測定するために、増殖指数期の大腸菌株TG1細菌にファージ調製物を感染させ、2%グルコース(v/v)を含む2×YTA固体培養培地プレートにプレーティングした。37℃で16時間増殖させた。調製物中のファージ濃度(コロニー形成単位(cfu)/mL)は、コロニー計数によって決定した。1011cfu/mL濃度のファージ調製物をELISAによる評価に用いた。
【0045】
Hフラグメント及びその二価及び二重特異性構築物の発酵条件及び精製
各プラスミド構築物の代表コロニーをLBK液体培地(8g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、2.5g/L NaCl、50μg/mLカナマイシン、pH7.0-7.5)中で増殖させ、600nmでの吸光度が0.8に達した時点で、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG、Sigma)を培養培地に添加し、19時間誘導した。培養物を4500rpmで15分間遠心分離した。TES緩衝液(200mM Tris-HCl、1mM EDTA、500mMスクロース、pH8)と1:20の比率(g:mL)で4℃で16時間インキュベートした後、浸透圧ショックによって細胞沈殿物からペリプラズム画分を得た。培養上清又はペリプラズム抽出物を、精製プロセスを開始する前に、カップリング緩衝液(50mM NaH2PO4、300mM NaCl、pH7.8、又は1×リン酸緩衝液)で1:2の比率で希釈した。抗体フラグメントは、自動化AKTAPureシステムと事前に充填されたHisTrap FF 5mL又はHiTrap rProtein A FF(GE Healthcare、USA)カラムをそれぞれ用いて、製造業者のガイドラインに従い、金属親和性クロマトグラフィー又はプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。緩衝液をPBS 1×に変更後、タンパク質濃度をMicro Coomassie(BIORAD、USA)により評価した。
【0046】
Hの標的抗原認識についてのELISA
96ウェルプレートを、100μL/ウェルの、1×PBS中の20μg/mL濃度のGST-hVEGF121、GST-mVEGF120、若しくはGSTの溶液、又は10μg/mL濃度のVEGFKDR-の溶液、又は5μg/mL濃度のhFGF-2若しくはmFGF-2の溶液を用いて4℃で16時間コーティングした。プレートをPBS-5%スキムミルクで1時間ブロッキングした後、精製VHの1:2連続希釈液をPBS-0.5%スキムミルクで2μg/mLから開始して添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、数回洗浄した後、c-mycに特異的なモノクローナル抗体9E10を添加した。25℃で1時間インキュベートした後、プレートを十分に洗浄した。固相中の抗原へのフラグメントの結合は、100 μL/ウェルのTMBを用いたペルオキシダーゼ活性によって検出した。反応は50μL/ウェルの停止溶液で停止させ、450nmの吸光度をマイクロタイタープレートリーダーで決定した。
【0047】
親和性定数の決定
抗体フラグメントの親和性定数(Kaff)は、Beattyら(Beatty JD、Beatty BG、Vlahos WG. J Immunol Methods. 1987 Jun 26;100(1-2):173-9)に記載された方法で測定し、これには以前に記載された抗原認識ELISAアッセイのバリエーションが用いられた。この場合、目的の各抗原でコーティングするために2つの濃度を使用した(GST-hVEGFについては7.5μg/mL及び2.5μg/mL;並びにbFGFについては5μg/mL及び2.5μg/mL)。Kaffは以下の式を用いて計算した:
aff=(N-1)/2(N[Nb’]-[Nb])
式中、N=[Ag]/[Ag’]であり、[Ag]y[Ag’]はコーティング上の抗原の最大濃度及び最小濃度に対応し、[Nb]及び[Nb’]はそれぞれ、[Ag]及び[Ag’]のコーティングで50%の認識が達成されるVHの濃度に対応する。
【0048】
可溶型受容体とリガンドとの間の競合ELISA
Hがリガンドと結合する受容体を阻害する能力はELISAによって評価し、ここで、96ウェルプレート(NUNC、USA)をGST-hVEGF又はbFGFでコーティングし、前セクションで記載したようにブロッキングした。7500nMから46.8nMまでの精製VHの連続1:2希釈液をプレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。このステップでは、いくつかのウェルはPBS-ミルクのみを添加したままであった。次いで、Fc-VEGFR2、Fc-VEGFR1又はFc-FGFR1を添加し、PBS-ミルク中で、それぞれ最終濃度が6.25ng/mL、50ng/mL及び100ng/mLになるように希釈した。37℃で45分間インキュベートした後、プレートをPBS-0.05%Tweenで洗浄した。受容体結合を検出するため、HRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体を、PBS-0.5%ミルクで1:5000に希釈して添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBS-Tweenで洗浄し、TMBを添加した。反応は10分後に停止させた。抗体フラグメントを添加せずに受容体とインキュベートしたウェルは、競合物質非存在下での最大結合の参照とした。このアッセイでは、陽性対照としてVEGF/VEGFR軸の阻害の場合はCIGB166a抗体フラグメントを使用し、FGF/FGFR軸の場合は抗FGFポリクローナル抗体を使用した。リガンドに対する受容体の結合阻害パーセントは以下のように計算した:
阻害%=100-(吸光度450)/(吸光度Umax)×100
【0049】
サイトカイン及び増殖因子の組織及び血清濃度の分析
腫瘍組織及び転移組織に関連するタンパク質を溶解し、製造業者の指示に従って、OctoMacs Dissociator(Miltenyi、Germany)を用いて、Mチューブ(Miltenyi)及びRIPA溶液(SIGMA)に回収した。溶解液を遠心分離して残渣を除去し、BCA(Thermo Fisher Scientific、USA)によりタンパク質濃度を評価した。VH濃度は、既に記載したようにELISAによって評価した。動物の溶解液中及び血清中両方の血管新生促進因子の濃度を評価するために、MAGPMAG-24K(Millipore、USA)試薬セットを使用し、組織の場合、値を抽出物について以前に決定したタンパク質濃度で正規化した。nu/nuヌードマウスに移植したヒト腫瘍の場合、試薬セットDV001(R&D、Germany)のR&D説明書に従ってヒトVEGFをさらに定量化した。
【0050】
(例2)CDR3無作為化ヒト化合成ライブラリーの構築
ヒト化VH合成ライブラリーのために、Conrathらによって記載されたVHh-NbBCII10核酸配列を鋳型として選択した(Conrathら、Antimicrobial agents and chemotherapy、2001:45:2807-12)。抗原認識能力に影響を与えず、溶解度や安定性の点でポリペプチドの物理化学的特性に変化を与えることなくVHポリペプチドをヒト化するために、13の突然変異を組み込んだ(Vinckeら、Journal of Biological Chemistry、2009:284:3273-84)。所望の配列をDNAWorks Online Software(http://helixweb.nih.gov/dnaworks(Hoover、D.y Lubkowski、J.、2002)に入力し、オーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって選択した鋳型を合成するために、コドン使用を細菌用に最適化することによって18個のオリゴヌクレオチドセットを得た。CDR3に変異性を導入するために、FR3及びFR4フレームワーク領域のフラグメントを含む突然変異誘発オリゴヌクレオチドを設計し、CDR3については18アミノ酸の長さを維持した(配列番号1)。コドンはNNK配列に従って形成した(ここで、NはA、G、C、及びTの等モル混合物であり、KはG及びTの等モル混合物である)。ApaLI/NotI消化を行うために必要な制限部位をオリゴヌクレオチドに付加し(配列番号2及び配列番号3)、さらに無作為化したCDR3を有するDNAをファゴミドベクターpHG-1mに組み込んだ。
【0051】
CDR3のみの多様化を含む合成ライブラリーの構築には、Kunkeによって記載されたプロトコルを使用し(Kunkel、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、1985:82:488-92)、Cabanillas-Bernalら(Cabanillas-Bernalら、PLoS One、2019:14:e0213394)に従って若干の修正を加えた。ライブラリーのサイズは、エレクトロポレーション後に得られたコロニーの総数を数えることによって決定した。このために、10-2から10-10までの連続希釈を行った。12個のコロニーのサンプル中の挿入物の存在及びサイズは、クローニングされたVH遺伝子に隣接するベクターpHG-1mの配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって決定した。1.6×1012cfu/mLのライブラリーのサイズが推定され、検出された58.3%の多様性(12クローン中7クローンがモールド(mold)の異なる配列を有する)を調整した後の最終サイズは9.3×1011cfu/mLであった。
【0052】
(例3)異なる抗原に特異的なCDR3ユニバーサルライブラリーから特異的VHを提示するファージの選択
ライブラリーの選択には2つの抗原:VEGF及びbFGFを使用した。ファージ選択は、例1に記載したように行った。選択を行った抗原の認識において、特に選択手順のサイクル2及び3によって、有意な濃縮が観察された。VH提示ファージは、記載された手順に従って、3番目の選択サイクルの選択されたファージで大腸菌のTG1株の細菌を感染させた後、単離されたコロニーから産生された(Marksら、Journal of Molecular Biology、1991:222:581-97)。各ウェルの上清に含まれるファージ上に発現されたVHの免疫反応性を、上記のように、VEGF-及びbFGF-特異的ファージELISAによって評価した。したがって、陰性対照(GST又はBSA上)の少なくとも4倍の光学密度を有する、それぞれ20及び25の陽性VH産生クローンが特定され、多様性を評価するために配列決定された(Macrogen、 Korea)。
【0053】
H保有ファージの作製及び特性評価
陽性クローンから、VHを提示する繊維状ファージを産生し、記載された手順に従って50mLのスケールで精製した(Marksら、Journal of molecular biology、1991:222:581-97)。免疫反応性プロファイルのELISAによる評価には、1011cfu/mLの濃度で使用した。その結果、それぞれ12及び18の陽性VH産生クローンが特定され、これらは陰性対照(GST又はBSA上)の少なくとも4倍のODを示した。白色抗原に対してより高い免疫反応性を示すファージクローンを用いて試験を継続した[VEGFについてはクローンpHG-1m_Nb-E7、及びbFGFについてはクローンpHG-1m_Nb-A5]。
【0054】
HのNb-E7及びNb-A5の入手及び特性評価
ポリペプチドNb-E7(配列番号4)及びNb-A5(配列番号5)のコード配列を、2つの選択されたファージクローン(pHG-1m _Nb-E7及びpHG-1m _Nb-A5)の精製DNAから出発して、オリゴヌクレオチド配列番号6及び配列番号7を用いたPCR反応によって増幅させた。
【0055】
PCR産物をQIAquick PCR精製キット(QIAGEN、Germany)を用いて精製し、NcoI/NotI消化した。pACR1-Kベクターを同じ酵素で消化し、酵素T4 DNAリガーゼを用いて事前に消化したバンドとライゲーションした。反応産物をコンピテントBL21 DE3細胞に形質転換した。各構築物からの代表的なコロニーを用いて、例1に記載したようにタンパク質を発現させた。ペリプラズム画分中のVHフラグメントの存在を15%SDS-PAGEによって評価した。その結果、見かけの分子量が(分子量標準と比較した場合)20~15kDaのタンパク質が発現していることが示され、これは全タンパク質の32%に相当した。カルボキシル末端の同一性及び完全性は、抗ポリヒスチジンWestern Blot(Sigma、USA)により確認した。
【0056】
Hの精製は、例1のセクションで詳述したように、製造業者の推奨(GE Healthcare、USA)に従って金属イオン親和性によって行った。そのプロセスの結果、純度95%を超えるNb-E7及びNb-A5と呼ばれるVHが得られた。両ポリペプチドに対する親和性を計算した結果、10-6~10-7Mの値が示されたが、これはこの種のポリペプチドとしては低いと考えられるため、CDR1及びCDR2を無作為化することにより親和性を熟成させた。
【0057】
(例4)親和性成熟ライブラリーの構築
親和性成熟用合成ライブラリーの構築では、ヒトVEGFを認識するクローンpHG-1m_Nb-E7 (配列番号4)及びbFGFを認識するクローンpHG-1m _Nb-A5(配列番号5)から精製したプラスミドDNAを鋳型とした。
【0058】
CDR3の無作為化された抗体フラグメントをコードするDNA配列は、酵素KOD DNAポリメラーゼ(Millipore、USA)を用いた2ステップPCRによって増幅された。反応AにおけるCDR1の無作為突然変異導入は、オリゴヌクレオチド配列番号2及び配列番号8を用いて行い、反応BにおけるCDR2の無作為化はオリゴヌクレオチド配列番号3及び配列番号9を用いて行う。これらの増幅のバンド産物(A:150bp及びB:270bp)を1:1で混合し(それぞれ10ng)、オリゴヌクレオチド配列番号2及び配列番号3を用いて、親DNAのそれぞれについて400bpのバンドを増幅する2回目の反応の鋳型とした。これらのバンドを、ApaLI及びNotI消化後、事前に同じ酵素で消化したpHG-1mベクター中でクローニングした。この産物を、2%グルコースを含む2×YTA固体培地上のTG1株にエレクトロポレーションにより形質転換した。コロニーは、24~26時間の増殖後、2×YT液体培養培地でフラッシュし、成熟サブライブラリーを形成し、抗体フラグメントを提示する繊維状ファージの生産源として、20%グリセロールの存在下、-70℃で保存した。
【0059】
サブライブラリーのサイズは、例2に記載したように決定した。Nb-E7突然変異サブライブラリーのサイズは7.5×1012cfu/mL、Nb-A5突然変異サブライブラリーのサイズは3×1012cfu/mLと推定された。
【0060】
目的の抗原に対する認識力が増大したVHを発現するファージの選択、生産、取得、及び特性評価は、例3に記載したように行った。ユニバーサルライブラリーについて記載したように、抗原に特異的なVHを提示するファージの濃縮は、2回目と3回目の選択サイクルの後に観察された。3回目の選択からの独立したクローンを分析すると、各抗原について多数の陽性クローンが検出された。標的抗原に対してより大きな免疫反応性を示したファージクローンを用いて試験を継続し[VEGFについてはクローンpHG-1m _Nb-V1、及びbFGFについてはクローンpHG-1m _Nb-F3]、その核酸配列はそれぞれ配列番号10及び配列番号11として特定される配列に対応する。
【0061】
(例5)VHフラグメントの大腸菌における発現、精製、及び特異的抗原の認識の特性評価。pACR1-KベクターにおけるVH Nb-V1及びNb-F3フラグメントのクローニング及び発現
pACR1-KベクターへのVH配列の挿入は、例3に記載したように行った。各構築物の代表的なコロニーを液体LBK培地で発現させた。ペリプラズム画分中のVHHフラグメントの存在を15%SDS-PAGEによって評価した。その結果、見かけの分子量が(標準分子量と比較した場合)15~20kDaのタンパク質が発現していることが明らかになり、これは全タンパク質の35%に相当した。カルボキシル末端の同一性及び完全性は、抗ポリヒスチジンWestern Blot(Sigma、USA)によって確認した。このフラグメントはNb-V1及びNb-F3と命名され、そのアミノ酸配列はそれぞれ配列番号12及び配列番号13として特定された。VHは、例1に記載されたように、金属イオンへの親和性によって精製され、可溶性画分及びペリプラズム画分を処理すると、それぞれ7mg/L及び25mg/Lの収量が得られた。これらの収量は、異なるヒト化戦略及び免疫ライブラリーを用いた他の著者らの報告(国際公開第2003/035694号)を上回るものであった。
【0062】
精製VH Nb-V1及びNb-F3フラグメントの免疫化学的特性評価
ヒト及びマウスVEGFの特異的認識
抗体及びその派生フラグメントの主な特性は抗原の認識であり、これが特異性及び親和性を決定する。VEGFに対する特異的結合は、「VHの標的抗原認識についてのELISA」(例1)のセクションで記載したように評価した。Nb-V1及びNb-E7と呼ばれるVHフラグメントの異なるVEGF-Aによる認識能を比較するために、50%の認識を生じるVHの濃度値を表すEC50(nM)を用いた。VH Nb-V1は、ヒトVEGFに対して4.734nMのEC50を示し、これは、Nb-E7(12.9nM)で検出されたものよりも3倍低い値であった。この結果は、VH Nb-E7と比較して、Nb-V1によるVEGFの特異的な認識が向上していることを示すものであり、これは親和性成熟プロセスの間、CDR1及び2に使用された無作為化手順と関連する要素である。この結果により、ベバシズマブ及びCIGB-166aのような開発中の他のポリペプチドとは異なり、Nb-V1は4,075nMのEC50でマウス増殖因子を認識することも示された。Nb-V1はまた、いわゆる80’ループにおいてアミノ酸R82、K84、及びH86がE82、E84、及びE86に置換された突然変異型変異体VEGF121をELISA系において認識した。この特性はCIGB166aと共通であるが、ベバシズマブとは異なる。加えて、VH Nb-V1は同様のELISAフォーマットでは他の抗原(GST、bFGF)を認識せず、この事実はその抗原特異性を示している。
【0063】
可溶性形態VEGF受容体1及び2(それぞれFc-VEGFR1及びFc-VEGFR2)とNb-V1との競合ELISA
VEGFの生物学的効果は、2つの基本的な受容体(VEGFR1とVEGFR2)への結合の結果であるため、VEGFに結合するポリペプチドが治療の場で有効であるためには、これらの相互作用を遮断しなければならない(Shibuya、Cell Structure and Function、2001:26:25-35)。Nb-V1がリガンド(VEGF)との結合において受容体1及び2と競合する能力は、上記のように固相リガンド競合ELISAによって評価された。このアッセイの結果は、VH Nb-V1によるVEGFへのVEGFR2-Fc結合の用量依存的阻害を示し、シグナルの50%阻害(IC50)は28.57nMの濃度で達成された。VH Nb-E7は同様の試験でIC50が4倍低かったため、親和性成熟後のこのパラメーターでも改善が検出された。
【0064】
ベバシズマブ及びCIGB166aについて報告されたものとは異なり、Nb-V1と呼ばれるVHはVEGFR1/VEGF相互作用の場合において用量依存的な阻害を示さなかった。同様の特性(VEGFR2に選択的に結合する)を有する抗体は、バリサクマブ又はr84と呼ばれる抗体しか報告されていない。r84抗体の長期使用では腎損傷は観察されず、この腎毒性がないことの原因要素はまさにVEGFR1を阻害しないことにあることが示唆されている(Sullivanら、PLos ONE 2010:5:7-8)。このことを考慮すると、本発明で開発されたVHは、市販されている他の類似薬物よりも誘導する副作用が少ない可能性がある。
【0065】
H Nb-V1とVEGF特異的抗体又は抗体フラグメントとの競合ELISA
モノクローナル抗体であるベバシズマブ及びscFv CIGB166aは、VEGF内の異なるエピトープを認識し、様々な実験モデルにおいて抗血管新生効果を示している。VEGFとの結合からの置換は、新しいポリペプチドがin vivoで所望の効果を媒介する可能性を示している可能性がある。抗VEGF VHがベバシズマブ抗体及びCIGB166a抗体フラグメントとそのリガンドへの結合を競合する能力は、記載されているように固相リガンド競合ELISA法のバリエーションによって評価した。96ウェルプレート(NUNC、Germany)をCHO細胞系で産生された1μg/mLのhVEGF121を用いてコーティングした。15,000nMから1,200nMまでの精製VHの連続希釈液を添加した。次にビオチン化ベバシズマブ又はビオチン化CIGB166aを添加し、それぞれ最終濃度が2.3ng/mL及び14.3ng/mLになるようにブロッキング溶液で希釈した。ビオチン化抗体の結合を検出するために、HRPにコンジュゲートしたストレプトアビジンを添加した。抗体フラグメントを添加せず、ビオチン化ベバシズマブ又はビオチン化CIGB166aとインキュベートしたウェルを、競合抗体非存在下での最大結合の参照とした。このアッセイでは、Fc-VEGFR2受容体キメラを陽性対照として用いた。ベバシズマブ、CIGB166a又はVEGFR2のリガンドへの結合の阻害パーセントは、上記の例1と同様に計算した。この試験の結果、Nb-V1と呼ばれる新規VHは、ベバシズマブ及びCIGB166aのVEGFへの結合を用量依存的に阻害することが示された。VEGF/ベバシズマブ又はCIGB166aの相互作用の50%阻害は、それぞれ930.9nM及び67.48nMで観察された。VH Nb-V1はベバシズマブとは異なるエピトープを認識することが示されたが、これらの結果は、認識するVEGF配列内のいくつかのアミノ酸残基を共有している可能性を示している。
【0066】
ヒト及びマウスFGFの塩基性アイソフォームの特異的認識
bFGFに対する特異的結合は、例1のbFGF認識ELISAに記載したように評価した。ポリペプチドNb-A5及びNb-F3について、ヒト由来のbFGFに対する結合の50%を生じるのに必要な濃度は、それぞれ58.61nM及び11.26nMであることが見出された。Nb-V1の場合と同様に、親和性成熟プロセスに対応して、5倍の認識増加が達成された。このVHはELISA系でもマウスbFGFを11.52nMのEC50で認識し、これは両種のポリペプチド間の高い相同性により、ヒトbFGFで得られたものと有意な違いはなかった。Nb-V1の場合と同様に、GST又はVEGFタンパク質の認識は観察されなかったため、Nb-F3フラグメントの抗原への結合の特異性の根拠が補強された。
【0067】
hFGF塩基性アイソフォーム受容体1の可溶性形態(Fc-FGFR1)とVH Nb-F3との間の競合ELISA
FGFは、内皮細胞及び腫瘍細胞の表面に存在する、FGFR1~4と呼ばれる受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインに結合することで生物学的作用を媒介する。FGFR1は内皮細胞表面に頻繁に見出されるものであり、in vivoでのその阻害は腫瘍負担と血管系を有意に減少させることが示されている(Roncaら、Expert Opin.Ther.Targets 2015:19:1-17)。抗bFGF Nb-F3 VHのリガンドへの結合について受容体1と競合する能力を、固相リガンド競合ELISAにより評価した。このアッセイの結果により、VH Nb-F3が、Fc-FGFR1のbFGFへの結合を用量依存的に阻害することが示され、134.4nMのIC50が観察された。対照としてNb-A5を用いた結果、IC50は5倍高く、これは使用した手順による親和性成熟を裏付ける要素である。
【0068】
(例6)VHへの修飾の導入。VH V1及びF3フラグメントを用いた二重特異性及び二価ポリペプチドの構築
二重特異性ポリペプチド及び二価ポリペプチドを構築するために、酵素Platinum Hot Start DNAポリメラーゼ(Invitrogen、USA)及び対応するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、2ステップPCRを行った。オリゴヌクレオチドは最初のPCRで、2つのVH間のスペーサーとしてγ2Cと呼ばれる免疫グロブリンのヒンジ領域を組み込むように設計された。この領域では、望ましくない構造の形成を避けるために、システインをアラニンに置換した(Hmilaら、FASEB Journal、2010:24:3479-89)。セグメント1の増幅にはオリゴヌクレオチド配列番号14及び配列番号15を用い、セグメント2の増幅にはオリゴヌクレオチド配列番号16及び配列番号17を用いた。最初のPCRの産物を鋳型として第2のPCRを行い、二重特異性及び二価構築物を組み立てた。上述の酵素、並びに配列番号14及び配列番号17のプライマーを使用した。PCR産物を精製し、製造業者の指示に従ってNcoI/NotI消化した。pACR1-Kベクターを同じ酵素で消化し、酵素T4 DNAリガーゼ(Promega)を用いて事前に消化したバンドとライゲーションした。構築物のヌクレオチド配列は、自動配列決定(Microsynth AG、Germany)により確認した。
【0069】
配列番号18及び配列番号19として特定される配列を有する二重特異性Nb-VF3及びNb-FV1ポリペプチド、並びに配列番号20及び配列番号21として特定される配列を有する二価のNb-VV6及びNb-FF2は、例1に記載されたように発現及び精製された。全ての場合において、タンパク質の純度及び同一性は、SDS-PAGE 12%及び抗ポリヒスチジンWetern Blotによって確認された。4つのポリペプチド調製物において、重量標準と比較すると、30~40kDaの間を移動する、純度95%を超えるバンドが特定された。ポリペプチドの実験的質量及びジスルフィド結合の配置をESI/MS-MSにより確認した。各ポリペプチドの実験的質量及び理論的質量は、全ての場合で誤差0.0015%未満で一致し、C22~C101とC168~C247の間の分子内架橋の形成が確認された。アミノ末端の自動エドマン配列決定解析により、その完全性が実証された。ポリペプチドの生物学的活性は、VEGF及びbFGF抗原を認識についてのELISA、及びそれぞれのVEGFR2とFGFR1受容体に結合するVEGFとbFGFを置換する能力によって評価された。Nb-FV1及びNb-VF3と命名された二重特異性ポリペプチドの場合、親VHであるNb-V1及びNb-F3と比較すると、各抗原に対するEC50は変化しないことが示された。同様に、抗原の受容体による結合を置換する能力にも影響がないことが示された。一方、二価のポリペプチドNb-VV6及びNb-FF2については、VEGF及びbFGFに対するEC50が、それぞれNb-V1及びNb-F3で得られた値に比べて2倍低下した(表1)。Beattyら(Beatty JD、Beatty BG、Vlahos WG. J Immunol Methods. 1987 Jun 26;100(1-2):173-9)により記載される方法論に従って計算すると、認識能の向上と一致して、フラグメントのKDの低下が観察された。二価のポリペプチドの親和性がこのように明らかに増加したのは、第2のドメインが付加された際にそのアビディティが増加したためと考えられる。
【表1】
【0070】
c-mycトレーサーペプチド及びヒスチジンタグの除去
c-mycトレーサーペプチド及びヒスチジンテールを除去するために、各VH、又はそれらの二重特異性若しくは二価の構築物に対応するバンドを、酵素Platinum Hot Start DNAポリメラーゼ、及びポリペプチドの3’末端に向かって酵素BglIIの制限部位を導入する配列番号15及び配列番号22で定義されるプライマーのセットを用いて増幅した。PCR産物を精製し、NcoI/BglII(Promega)で消化した。pACR1-Kベクターを同じ酵素で消化し、酵素T4 DNAリガーゼを用いて事前に消化したバンドとライゲーションした。VHのヌクレオチド配列は、自動配列決定(Microsynth AG、Germany)により確認した。c-mycトレーサー配列がなく、ヒスチジンタグがないポリペプチドをNb-V1\cmycH6(配列番号23)、Nb-F3\cmycH6(配列番号24)、Nb-VV6\cmycH6(配列番号25)、Nb-FF2\cmycH6(配列番号26)、Nb-FV1\cmycH6(配列番号27)及びNb-VF3\cmycH6(配列番号28)と命名した。
【0071】
これらのポリペプチドの発現は、記載したように行った。精製には、VH抗体フラグメントがこのタンパク質に結合する能力を保持しているという事実を利用して、プロテインA親和性クロマトグラフィーを用いた(Crauwels M、Van Vaerenbergh N、Kulaya NBら、New Biotechnology 2020;57:20-28)。培養上清又はペリプラズム抽出物をPBS 1×中で、1:2の比率で希釈し、事前に充填したHiTrap rProtein A FFカラム(GE Healthcare)にアプライした。残りの精製は、製造業者の推奨に従って行った。このプロセスの結果、12%SDS-PAGEで分子量標準と比較すると、15~20kDa(Nb-V1\cmycH6及びNb-F3\cmycH6の場合)及び30~40kDa(Nb-VV6\cmycH6、Nb-FF2\cmycH6、Nb-FV1\cmycH6及びNb-VF3\cmycH6の場合)移動する、純度95%を超えるポリペプチドが得られた。トレーサー配列の正確な除去は、抗ポリヒスチジン及び抗c-myc Western Blotによって実証され、プロテインA-HRPが陽性対照として用いられた。アミノ末端の完全性の分析では、同じものの分解は検出されなかった。ESI/MS-MSの結果は、ポリペプチドの理論的サイズと実験的サイズの一致を示し、誤差は0.0019%以下であった。さらに、VH Nb-V1、Nb-F3、Nb-VV6、Nb-FF2、Nb-FV1、及びNb-VF3について観察されたのと同様のジスルフィド結合配置が示された。c-mycトレーサー配列がなく、ヒスチジンタグがないポリペプチドの生物学的活性は、VEGF及びbFGF抗原の認識、及びそれぞれのVEGFR2及びFGFR1受容体への結合の置換についてELISAによって評価した。表2は、50%の抗原認識又は50%の抗原/受容体複合体形成阻害を達成するのに必要なVH\cmycH6の濃度値として表した結果である。トレーサーペプチドを欠失したVHとその相同なVHとの間に、結合又は阻害の点で差異は検出されなかった。
【表2】
【0072】
ヒト免疫グロブリンのFc領域への融合
抗体のFc画分は、抗体依存性細胞傷害性及び補体依存性細胞傷害性などのエフェクター機能を媒介する。エフェクター活性を促進するポリペプチドの可能性を解析するために、VH Nb-V1、Nb-F3、及びそれらの二重特異性及び二価構築物をpVSJG-huFcベクター(国際公開第2012/089176号)に挿入した。このプラスミドは、ヒト由来のFc領域との融合ポリペプチドとしてタンパク質を取得するように設計された。VHのオリゴヌクレオチド配列は、酵素Platinum Hot Start DNA Polymerase及びpVSJG-huFc用の配列番号29及び配列番号30のオリゴヌクレオチドを用いて増幅させた。AflII及びXbaI酵素制限部位を組み込んだ。精製したPCR産物をpVSJG-huFcベクターと同様にこれらの酵素で消化した。事前に消化したバンド及びベクターを酵素T4 DNAリガーゼを用いてライゲーションした。ヌクレオチド配列は自動配列決定(Microsynth AG、Germany)により確認され、新しいポリペプチドはNb-V1_hFc(配列番号31)、Nb-F3_hFc(配列番号32)、Nb-VV6_hFc(配列番号33)、Nb-FF2_hFc(配列番号34)、Nb-FV1_hFc(配列番号35)、及びNb-VF3_hFc(配列番号36)と命名した。正しい配列を有するプラスミド構築物を、Superfect試薬(Qiagen、Germany)を用いてCHO細胞にトランスフェクトした。抗生物質G418(Invitrogen、USA)で選択した後、上清中の発現量が最も高いクローンを、抗ヒトIgGの検出コンジュゲートのみを変更した、既に記載したものと同様の抗原認識ELISAによって選択した。
【0073】
精製にはプロテインA親和性クロマトグラフィーを用いた。その結果、純度が95%を超え、12%SDS-PAGE上で、重量標準(Invitrogen、EE. USA)と比較した場合、見かけのサイズが40~60kDaのポリペプチドが得られた。その同一性はELISAによって確認した。アミノ末端の同一性の分析により、その分解は検出されず、ESI/MS-MSの結果、各ポリペプチドの実験的質量と理論的質量は一致し、全ての場合について誤差は0.0012%未満であった。hFc領域に融合したポリペプチドの生物学的活性を、VEGF及びbFGF抗原の認識、並びにそれぞれのVEGFR2及びFGFR1受容体への結合の置換についてELISAにより評価した。表3は、これらの試験の結果を、抗原認識の50%、又はELISA型のアッセイにおける抗原/受容体複合体形成の阻害の50%を表すVH_hFcの濃度値として表したものである。この場合、融合ポリペプチドのEC50は相同なVHと比較して2~4倍低下することが観察された。モノクローナル抗体のように、これらのポリペプチドはホモ二量体として組織化されているため、この認識の増加は価数の増加に対応している。抗原認識の増加と同程度に、抗原/受容体相互作用のIC50の低下が検出された。
【表3】
【0074】
(例7)VHの熱安定性試験
Hは、Fab又はscFvなどの他の抗体フラグメントとは異なり、高温に耐性を持つことが知られている。VH Nb-V1、Nb-VV6、Nb-F3、及びNb-FV1の異なる温度における耐性を決定するため、各フラグメント13μgを4、37、50、及び75℃でインキュベートする試験を行った。これらの免疫反応性は、2時間のインキュベート後にELISAによって評価し、4℃のインキュベート条件で得られたものを最大認識とした。このアッセイでは、CIGB-166a scFvフラグメントを対照として用いた。表4は、VEGF又はbFGF抗原による異なるフラグメントの認識能を、それぞれ-20℃で保存したタンパク質で得られた値を参照として、回復された活性のパーセントの点から示したものである。VH Nb-V1、Nb-VV6、及びNb-FV1によるVEGFの特異的認識は、75℃で2時間インキュベートした後でも70%近くを維持していることが観察された。この挙動は、抗原認識を失ったscFv CIGB-166aでは観察されなかった。bFGFの認識についてであるが、Nb-F3、Nb-FF2、及びNb-FV1についても、温度上昇に対して同じ耐性が検出された。
【表4】
【0075】
(例8)異なる緩衝液中及びチンチラウサギの硝子体液中におけるVHフラグメントの溶解性のex vivo試験
抗体の硝子体内投与又は全身投与のいずれかにおいて凝集体を避けることが臨床的に重要であることを考慮し、異なる緩衝液中で予備的な安定性試験を行った。合計6種類を試験した。この緩衝液のうち3つは現在、硝子体内投与が承認されている(Giannosら、Pharmaceutical Research、2018:1-15):
i. ラニビズマブ薬物保存製剤(Lucentis B.):10%α(+)トレハロース、0.01%Tween 20及び1.98mg/mL L-ヒスチジナ、pH5.5。
ii. 製剤A:10%α(+)トレハロース、100mMリン酸緩衝液、10mM L-アルギニナ、0.3%NaCl及び0.04%、Tween 80、pH6.78。
iii. 製剤B:7.5%α(+)トレハロース、100mMリン酸緩衝液、10mM L-アルギニナ、0.3%NaCl及び0.04%、Tween 80、pH6.78。
【0076】
他の3つは、良好なVH安定性が期待される緩衝液である(Muyldermans、Annual Review of Biochemistry、2013:82:17.1-.23):
iv. PBS 1×、pH7.2
v. Tris 200mM、pH8.0
vi. Tris 50mM、pH8.0。
【0077】
Hは最大28mg/mLまで濃縮され、その後5mg/mLの濃度に調整された。VHは最大100μg/mL及び200μg/mLの濃度になるように異なる緩衝液中で希釈し、4℃で5日間インキュベートした。この期間後、その免疫反応性を測定した。CIGB-166a scFvフラグメントを対照として用いた。試験下の全てのポリペプチドについて、6種類の緩衝液で100%の活性が回復されたが、scFv CIGB-166aについてはラニビズマブ緩衝液でのみ100%の回復が観察され、残りの実験条件ではラニビズマブ緩衝液で20%を超える損失が観察された。
【0078】
Hフラグメントの硝子体液中への溶解性は、黄斑及び角膜状態の治療で使用される用量が硝子体液中の最終濃度0.125~0.5mg/mLに対して0.5~2mgの範囲であることを考慮し、ex vivoモデルで評価した(Giannosら、Pharmaceutical Research、2018:1-15)。37℃での速度論的試験では、光学顕微鏡(400×)での検査で沈殿現象の存在は示されなかった。6000rpmで遠心分離した後の上清の分析では、リガンド認識に関して生物学的活性の損失は認められなかった(リン酸緩衝液中のポリペプチドが最大の認識を示したのと比較して、全てのVH製剤について、活性の95~100%の回復)。ベバシズマブ(Bev)及びCIGB-166a scFvフラグメントをこのアッセイにおける対照として用いた。沈殿に起因し得る、活性の50%損失が観察されたscFv CIGB-166aを除き、試験下の全てのポリペプチドについて活性の100%が回復された。
【0079】
(例9)in vitro/ex vivo系への異なるポリペプチドの添加効果の評価
VEGF/VEGFR2又はbFGF/FGFR1依存的な方法で、細胞増殖、管状ネットワークの形成及び細胞遊走を複製する、以前に確立された条件において、連続希釈のポリペプチドの添加の影響を分析した。
【0080】
内皮細胞における増殖試験:
簡潔には、96ウェルプレート(COSTAR)に、10%血清を添加したMCDB131培地(SIGMA)100μLに、1ウェルあたり6000個のHDMEC細胞を播種した。12時間後、洗浄により培養培地から血清を除去し、MCDB131培地100μLを24時間添加した。VEGF(5ng/mL)、bFGF(10ng/mL)、又はVEGF/bFGF(それぞれ2.5ng/mL及び5ng/mL)の添加により、培養72時間後に有意な細胞増殖が誘導された。VHは、MCDB131培地中の増殖活性化剤に最終濃度300~0.5nMで37℃で1時間添加し、最終体積200μLで細胞に添加した。細胞増殖はAlamar Blue代謝から推定した。表5に示す濃度について、増殖の50%低下が観察された(IC50)。
【表5】
【0081】
Nb-V1、Nb-VV6、Nb-F3、Nb-FF2、Nb-FV1、及びNb-VF3を添加した結果、微小血管内皮細胞系HDMECのVEGF又はbFGF依存性増殖が減少した。両方の刺激を用いる場合、VEGF系及びbFGF系の二重標的化は協同効果を示した。これらの解析は、不死化マウス内皮細胞(H5V)及び初代内皮細胞(HUVEC)で再現され、同様の結果が得られた。
【0082】
不死化3T3A31及びNIH3T3線維芽細胞、並びにA549及びB16F10腫瘍細胞の増殖試験:
この場合、3T3A31及びNIH3T3細胞は10%FBS添加DMEM培地100μLにウェルあたり6000細胞の密度で播種し、A549及びB16F10細胞はウェルあたり2000細胞で使用した。VEGF活性化は陰性対照として用いた。アッセイは、最大増殖を生じるbFGF濃度(3T3A31及びNIH3T3は100ng/mL、A549及びB16F10は20ng/mL)の点で異なって展開された。bFGFに応答する増殖の有意な減少は、この増殖因子に特異性を有するポリペプチドを含む実験条件で観察され、増殖の50%阻害についての用量を表6に詳述する。
【表6】
【0083】
内皮ネットワーク形成試験:
これらの評価には、三次元Matrigelマトリクスに播種したHDMEC細胞を用いた(Montesano、R.、Pepper、M.S.、1998.En:Little、C.D.、Mironov、V.、Sage、E.H.(Eds.)、Vascular Morphogenesis:In vivo、In vitro、In mente.Birkhauser、Boston、pp.79-110)。簡潔には、1ウェル(SIGMA、USA)あたりMATRIGEL 2.5μLをTERASAKIプレートに4℃で添加し、37℃でゲル化させた。1ウェルあたり2000細胞のCFSE標識HDMEC細胞を10μlのMCDB131上に添加し、表7に示すように処理液を同体積で添加した。結果は6時間後及び24時間後に評価し、倒立蛍光顕微鏡(Olympus、Japan)で、位相差で得られた画像から定量化した。定量化は、既に記載した手順に従い、ImageJプログラム(http://rsb.info.nih.gov/ij; NIH、Bethesda、MD、EE.UU.)を使用して行った(D. Guidolin Microvascular Research 67(2004)117-124)。表7は、2.5%血清、100ng/mLのVEGF又は10ng/mLのbFGFの存在下、固定濃度の10μg/mLのVHに応答した、視野(100×)あたり検出された結節の平均を示している。
【表7】
【0084】
(例10)チンチラウサギにおけるin vivo試験
既に記載したように、本発明の対象となるVHの潜在的な用途の1つは、黄斑の血管状態の治療における使用である。増殖因子VEGF及びbFGFに依存する血管過多の治療におけるそれらの一部の使用の実現可能性を分析するために、Moreraら(Moreraら、Exp Eye Res、2014:122:102-9)によって記載されたように、チンチラウサギが使用された。50μL中2.5μgのVEGF又はbFGFの単回注射を用いて、血管損傷を誘導した。この手法は、10日間で異常な血管形成パターンを誘導するのに十分であることが証明されている。注射から72時間後、動物に50μLの生理食塩液中のVH Nb-V1、Nb-F3、Nb-VV6、及びNb-FV1を単回硝子体内注射した。血管新生促進因子の最初の硝子体内注射の1週間前と10日後に、手術用顕微鏡検査、カラー眼底写真、及びフルオレセイン血管造影(FA)を行った。全ての場合においてウサギは麻酔され、瞳孔は前述のように拡張された。各眼で少なくとも5枚の写真を撮った:視神経円板、側頭髄質翼、鼻髄質翼、円板上の網膜上方、及び円板下の網膜下方。耳縁静脈に静脈ラインを配置し、10%フルオレセインを0.2mL注射した。フルオレセイン注射直後に連続眼底写真を撮影した。後半の写真は実験開始10分後に撮影した。選択されたいくつかの場合では、前部セグメントの写真も撮影した。画像はHeidelberg Eye Explorerソフトウェアで処理した。
【0085】
右眼の硝子体にヒトVEGF及び/又はbFGFを注射すると、10日以内に網膜新生血管が形成され、円板の充血、血管の拡張及び湾曲、並びに視神経円板、髄質翼、及び前房(AC)におけるフルオレセインの漏出を伴った。VEGF及び/又はbFGFの非存在下でVHH製剤のみを注射した左眼、及び処置開始時の対応する画像を対照として使用した。これらの効果の半定量的評価を、ベースライン及び血管新生促進刺激とVHを受けなかった眼と比較して各動物及び処置について表8に示す。VEGF又はbFGFによって誘導された効果は、高い血管漏出で要約され、これは特定のVHを単回投与によって処置した動物では消失し、視神経円板又は前房では漏出を示さなかった。網膜血管は、全ての場合について対照群の動物と比較して、拡張及び湾曲が減少し、網膜毛細血管は減少した。VHのみを投与した眼球の分析によって、注射に関連した炎症現象が観察されなかったことから、処置の無害性が示された。
【表8】
【0086】
動物A1_Nb-VV6、A3_Nb-VV6、A1_Nb-FV1、A2_Nb-FV1、A3_Nb-FV1の場合、いかなる種類の血管損傷も検出されなかった。
【0087】
(例11)生体内分布
A673細胞又はA549細胞の接種によって生成した腫瘍に局在するVHの能力を、VEGF又はbFGFとの結合について陰性クローンから精製したVHと比較して評価した。ヒトA673腫瘍細胞はヒトVEGFを発現し、A549細胞はVEGF及びbFGFの両方を発現する。ポリペプチドをI131(Amersham、UK)で標識し、lodogen法(Fraker PJ、Speck JC Jr.1978 Biochem Biophys Res Comm 80:849-857)を用いて、それぞれ1.51MBq/5μg及び1.55MBq/5μgの比活性を得た。放射性標識生成物を薄層クロマトグラフィーで分析し、タンパク質の取り込みを決定し、全ての場合で92~95%の放射活性の値が検出された。放射性標識生成物が対応する抗原(VEGF及びヒトbFGF)を検出する能力は、ポリスチレンイムノチューブを組換えヒトVEGFアイソフォーム121(5μg/mL;Peprotech)又は組換えbFGF(5μg/mL;SinoBiological、USA)でコーティングした系で試験した。その後、ブロッキングし、対応する特異性の放射性標識フラグメントのサンプルを、その固相で捕捉できる量に調整して添加した。インキュベート及び洗浄の後、固相は全ての場合において放射活性の84.2%~87.3%を結合していることが確認され、放射性標識手順はVHの生物学的活性に有意な影響を及ぼさないことが示された。
【0088】
生体内分布を調べるために、126匹のnu/nuマウスを用いた。この動物にA673又はA549株のヒト腫瘍細胞5×10個を右背側領域に皮下接種した。腫瘍が280±20mmの体積に達した時点で、各腫瘍モデルについて9匹ずつ6群に無作為化し、処置を開始した。マウスは尾静脈から当該放射性標識製剤を注射され、24時間、48時間、及び72時間後に3群ずつ屠殺され、腫瘍と以下の正常組織:脾臓、肝臓、腎臓、腸、筋肉、骨髄及び血液が外科的に除去された。放射活性の蓄積は、組織1gあたりの注入線量に対するパーセントで表した。較正は、注入線量の標準サンプルを用いて行った。放射活性はガンマシンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0089】
表9は、これらの組織で行われた測定から計算された腫瘍中の放射活性値:血液中の放射活性値の比を示す。この試験によって、24時間から72時間の間に、VHは腫瘍組織に優先的に局在することが示され、これは非特異的Nb-Negには当てはまらない。A673腫瘍ではNb-V1及びNb-VV6ポリペプチドのより大きな集積、A549細胞の移植によって引き起こされる腫瘍ではNb-F3及びNb-FF2ポリペプチドのより大きな集積が観察され、これは、A673におけるVEGFの高発現、及びA549におけるbFGFの高発現に対応している。二重特異性構築物は、両方の種類の腫瘍で同程度のパーセントで、単特異性の一価及び二価の変異体よりも高い割合で蓄積した。VHH注射の48時間後、腫瘍以外の組織では放射性標識VHの特異的沈着は見られなかった。
【表9】
【0090】
処置動物の血清中のVH濃度を分析した結果、15mg/kgに相当する300μgの単回投与の24時間後では、Fcに融合していないVH(Nb-V1、Nb-F3、Nb-VV6、Nb-FF2、及びNb-FV1)の濃度は5μg/mL未満であることが示された。Nb-FV1_Fcの場合、132μg/mLが検出され、VHの全身レベルを高く維持する上で、この構築物の血漿安定性が優れていることが示された。
【0091】
(例12)樹状細胞の成熟及びTリンパ球の活性化に対するVHの効果
VEGFは樹状細胞及びT細胞の成熟及び表現型をそれぞれ調節する(Bourhisら、Frontiers in immunology、2021:12:616837)。これらの系列の細胞に対するVHの潜在的な免疫調節効果を示すために、(A)20週齢のC57Bl/6動物の脾臓から、磁気ビーズ(Miltenyi、Germany)を用いた陰性選択プロセスから単離したCD8+細胞、及び(B)同じ動物の骨髄採取物から単離した1週齢のmFLT3分化未熟樹状細胞を用いてin vitro試験を行った。
【0092】
CD8+リンパ球を10μg/mLの抗CD3でコーティングしたプレートに添加し、VHの濃度を低下させながら2時間プレインキュベートし、50ng/mLのVEGF(Sigma、USA)と共に48時間インキュベートした。この時間後、Voronら(Voronら、J Exp Med、2015:212:139-48)の記載に従って細胞を標識し、その結果をSYSMEXフローサイトメーター(Germany)で解析した。濃度を増加させたVHで処置した結果、表10Aに示すように、CD8+細胞における老化マーカーPD1の発現が全ての場合において有意に低下した(p<0.05、Dunnetの事後検定)。
【表10A】
【0093】
IMDM培地(Gibco、USA)中のヒトVEGFとVHとの混合物を、VEGFの最終濃度が25ng/mL、及びVHの最終濃度が10、5、及び1μg/mLとなるように2時間プレインキュベートした。これらの混合物15マイクロリットルを、96ウェルプレートで1ウェルあたりFLT3で分化させた合計10個の樹状細胞に添加した。4時間のインキュベート後、50μLのリポ多糖(SIGMA、USA)を添加し、最終濃度を250ng/mLとした。18時間後、細胞を洗浄し、抗CD86 PE(Becton Dickinson、USA)及び抗MHCII I-A/I-E-V500(BD Horizon、USA)で標識し、固定数の20,000個の細胞をフローサイトメトリー(SYSMEX、Germany)で分析した。樹状細胞の培養物に濃度を増加させながらVHを添加し、表10Bに見られるように、VEGFの存在下、リポ多糖での刺激に対するこれらの細胞の応答は、全ての場合において有意及び用量依存的に回復した(p<0.05、Dunnetの事後検定)。
【表10B】
【0094】
(例13)マウスの固形腫瘍の処置におけるFcフラグメントのあり又はなしのNb-V1、Nb-VV6、Nb-F3、Nb-VF3による処置の抗腫瘍効果
抗腫瘍効果を評価するために、VHの同位体標識の非存在下、例11に示した試験の複製を行った。全ての場合において5匹のマウス群を用いた。動物は腫瘍チャレンジを受け、モデルの特性に従って、3日~7日後に処置を開始した。5mg/kgの用量のVH Nb-V1、Nb-VV6、及びNb-FV1を72時間ごとに使用して2週間処置した。最初の投与から15分後、2時間後、及び72時間後に、生体内分布解析のために約50μLの血液を採取した。投与開始から22日後、全血液サンプルを得るため、動物を致死量のケタミンで麻酔し、右心房のPBSによる灌流へと進んだ。血清を分離し、モデルによって原発性腫瘍、肝臓、腎臓、及び肺の重量を別々に測定した。全ての場合において直径10mm未満の原発性腫瘍、及び転移を有する組織を、全ての腫瘍層を含む3つの切片に分割した。それぞれの場合において、腫瘍又は転移を以下の方法で分析した:(a)CD34選択的標識による血管密度を分析するための免疫組織化学、(b)腫瘍組織中の白血球浸潤を定量化及び特性評価するためのフローサイトメトリー、及び(c)例1に記載する通りの、RIPA組織溶解液及び血漿中のVH、サイトカイン、及び増殖因子を定量化するためのELISA。
【0095】
MC-38結腸癌肝転移モデル:C57BL/6動物にMC-38マウス転移性結腸直腸癌細胞を肝内投与してチャレンジした。麻酔下で開腹手術を行い、上肝葉を露出させ、そこに20μLで合計10,000個の細胞を接種した。チャレンジの72時間後にポリペプチドを腹腔内投与した。
【0096】
RENCA転移性腎腫瘍モデル:BALB/c動物に20,000個のRENCAマウス転移性腎癌細胞を投与してチャレンジした。麻酔下で開腹手術を行い、腎臓を露出させ、被膜下領域に極細針を用いて20μLの細胞を接種した。ポリペプチドはチャレンジの72時間後に腹腔内投与した。
【0097】
CT26皮下腫瘍モデル:BALB/c又はnu/nu動物に、20,000個のCT26マウス結腸癌細胞を皮下投与してチャレンジした。処置は腫瘍径が7~8mmに達した際に腫瘍周囲から開始した。処置は72時間ごとに2週間行った。
【0098】
皮下A673又はA549腫瘍モデル:Nu/nu動物に5×10個のヒトA673又はA549細胞を皮下投与してチャレンジした。処置は腫瘍径が7~8mmに達した際に腫瘍周囲から開始した。72時間ごとに2週間投与を行った。これらのモデルでは、特にVH変異体Nb-FV1-hFcが同じ用量及び経路で評価された。
【0099】
CT26肺移植モデル:BALB/c動物に、極細針で20μL中20,000個のCT26細胞を後眼窩投与してチャレンジした。チャレンジの72時間後に経鼻投与によって、1鼻孔あたり25μL、総用量15mg/kgを用いて処置を開始した。
【0100】
病理組織学的解析
H処置が腫瘍の血管新生及び腫瘍細胞の生存に影響を及ぼすかどうかを調べるため、腫瘍切片を、Adinolfiら(Adinolfiら、2012:2957-69)によって記載されているように、ヘマトキシリン/エオジン染色及びマウス抗CD34抗体による免疫蛍光法により分析した。結果は、1mmあたりの血管数の関数として平均血管密度(MVD)で表した。
【0101】
表11、12、及び13は、陰性対照に対する腫瘍増殖阻害、腫瘍血管形成の病理組織学的試験、腫瘍溶解液中の濃度、特にVEGFの濃度の結果の要約を示す。
【表11】

【表12】

【表13】
【0102】
Nb-V1を異なる投与経路(腹腔内、腫瘍周囲、及び経鼻)によって使用した後、試験した腫瘍モデルにおいて有意な抗腫瘍効果が観察された(p<0.05 Studentのt検定)(表11)。この効果は、免疫応答性動物におけるマウスVEGFの血管性及び組織レベルの低下と相関し、ヌード動物ではヒトと相関していた(p<0.05;全ての場合についてPearson検定)(表12及び表13)。同様の用量のNb-VV6を使用した結果、Nb-V1と比較して有意に優れた効果が得られたが、これはこのVHのVEGFに対する高い親和性及びアビディティ、並びにより長い全身半減期と一致している(p<0.05;全ての場合でStudentのt検定)。一方、Nb-FV1の使用は、Nb-V1及びNb-VV6に対して抗腫瘍効果及び抗血管新生効果の増加をもたらしたが、これは第2の分子標的が組み込まれたこと、及び血管新生事象の誘導におけるVEGF/VEGFR及びbFGF/FGFR系の阻害の公知の協同性によるものであった(Asaharaら、Circulation、1995:92:II365-71)。ヒトIgG1のCH2-CH3セグメントをNb-FV1に組み込んだ結果、試験された皮下腫瘍モデルにおけるNb-FV1の使用に関して、抗腫瘍効果及び抗血管新生効果が増加した(p<0.05、Studentのt検定)。
【0103】
免疫応答性動物におけるCT26皮下モデルにおける処置を免疫不全動物と比較したところ、前者の方が優れた抗腫瘍効果を示した。この事実は、抗VEGF及び抗bFGF処置について記載された免疫増強及び抗炎症効果と関連している可能性がある。以前、VH Nb-V1、Nb-F3及びNb-FV1を、T細胞及び樹状細胞の表現型解析のためのin vitro系に添加すると、これらの白血球の機能性に対するVEGF及びbFGFの効果が阻害されることが示された(例12)。
【0104】
BALB/cマウスのCT26腫瘍浸潤CD3+細胞の分析から、VHH処置はT細胞の免疫回復に有意に成功したことが示された(表14A)。この同じサンプルにおいて、F4/80+GR1-マクロファージの集団もM1表現型マーカー:MHC II(MFIとして表示)の発現の観点から分析した。その結果、各実験モデルでNb-Negで処置した群と比較して、全ての処置でM1型マクロファージの機能性が上昇した(p<0.05 Dunnetの事後検定)(表14B)。Nb-FV1を処置として用いた群ではより高い上昇が検出されたが、これはImら(Imら、Nature communications、2020:11:1-14)によって報告されたように、bFGF阻害が免疫抑制のレスキューに追加的に寄与するという事実と関連し得る要素であった。
【表14A】

【表14B】
【0105】
腫瘍周囲経路で処置したBALB/c及びヌード動物の血清中のVHH濃度を解析した結果、VH Nb-V1、Nb-VV6及びNb-FV1の半減期は2時間より短いことが示され、Nb-V1と比較して二価又は二重特異性のVHについては血漿中の残存濃度が有意に増加した。一方、Nb-FV1のhFc融合変異体の解析では、3日を超える血漿中の安定性が示されたため、その濃度は複数回の投与により上昇した(表15)。
【表15】
【0106】
(例14)ウイルスベクターによるVHの遺伝子導入のin vitro機能評価
AMD及び癌に対する現在の治療法の臨床試験に含まれる送達戦略の1つは、治療用ポリペプチドの一時的な遺伝子導入である。この目的のために、Nb-VV6_hFc及びNb-FV1_hFcに対応する配列を、既に記載したプロトコルに従った、配列番号37及び配列番号38のオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって増幅させた。NotI/PmeI消化後、pAAVK-EIF2-MCSベクター及びバンドの両方をライゲーションし、DH5α株に形質転換した。新しいベクター:pAAVK-EIF2-Nb-VV6_hFc及びpAAVK-EIF2-Nb-FV1_hFcの配列を確認した後、これらを使用して、製造業者の指示に従って(GENEMEDI、China)、HEK-293細胞においてAVV2系でウイルス粒子をパッケージ化した。ウイルス粒子は、Hughesら(Hughesら、Molecular Therapy:Methods&Clinical Development、2019:13:86-98)によって記載されているように、72時間の培養によってコトランスフェクトしたHEK293細胞から単離及び濃縮した。qPCRによる滴定後、使用するまで-80℃で保存した(Aurnhammerら、Hum Gene Ther Methods、2012:23:18-28)。
【0107】
in vitro及びin vivoアッセイで、感染性及びポリペプチドの産生に成功する能力を評価した。6ウェルプレートフォーマットでウェルあたり5×10個の細胞の密度でHEK-293細胞を播種した。24時間後、200nMのグルタミンを添加した無血清培地1mL中の8×10のUG(Genome Units)を添加した。1時間接触させた後、20%FBS及びグルタミンを添加した培地1mLを培養物に添加した。培養上清は、37℃及び5%CO2で72時間インキュベートした後に回収した。In vivo翻訳を評価するため、C57BL/6マウスに8×10 UGを筋肉内経路によって単回注射した。チャレンジの14日後、組織中のVH_hFcの総量を、CHO細胞から精製及び特性評価した各VH_hFcの標準曲線を用いて、一般的方法に記載されているように、ELISAによって測定した。
【0108】
Nb-VV6_hFc及びNb-FV1_hFcポリペプチドの発現は、感染させたHEK-293細胞の培養上清で検出した(それぞれ125μg/mL及び220μg/mL)。筋肉組織では、処理1グラムあたり50~100μgのVH濃度が検出された。両発現フォーマットで検出された濃度は、AVV2系に充填されたウイルス粒子について文献で報告されているそれぞれの場合の濃度と一致しており、全ての場合において、特異的抗原への結合及び受容体への結合の遮断という点でその機能性を示した。
【配列表】
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【国際調査報告】