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特表2025-500936ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20250107BHJP
   C07C 31/38 20060101ALI20250107BHJP
   C07C 29/70 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C01B21/086
C07C31/38
C07C29/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536455
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022086648
(87)【国際公開番号】W WO2023117899
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21306857.0
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブイジーネ, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, エティエンヌ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB81
4H006AC41
4H006BE10
4H006FE11
4H006FE19
(57)【要約】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩(NHFSI)をフッ素含有アルコキシドと反応させるステップを少なくとも含むビス(フロオロスルホニル)イミド塩(MFSI)の製造プロセスに関する。本発明はまた、フッ素含有アルコキシドの調製プロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[F-SO-N-SO-F]M (I)
(式中、
Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド(MFSI)塩の製造方法であって、
前記方法が、
- 式(II):
[F-SO-N-SO-F]NH (II)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩(NHFSI)を、式(III)又は(III*):
RO (III)
[RO][nROH] (III*)
のフッ素含有アルコキシドと反応させることを含み、
ここで、
・ 各Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から独立して選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択され、
・ nは、1~10の範囲の整数であり、
・ NHFSI塩は、任意選択的に、
- 50~99.9重量%のNHFSI塩と、
- 0.1~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から好ましくは選択される少なくとも1種の溶媒S
を含む溶媒和物の形態にある、
方法。
【請求項2】
フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)において、各Rが、独立して、式R-L(式中:
- Rは、C~Cパーフルオロアルキル、C~Cパーフルオロアルケニル及びC~Cパーフルオロアルキニルからなる群から選択され、
- Lは、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン及びC~Cアルキニレンからなる群から選択される)
に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)において、各Rが、独立して、式R-L(式中:
- Rは、C~Cパーフルオロアルキル基であり、
- Lは、C~Cアルキレンである)
に従う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素含有アルコキシド(III)において、各Rが、独立して、式R-L(式中:
- Rは、CFであり、
- Lは、CHである)
に従う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
NHFSIを式(IIIa):
[CFCHLi][2CFCHOH] (IIIa)
のフッ素含有アルコキシドと反応させでビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)を得るステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
反応が、式ROH(式中、Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から選択される)に従う溶媒中で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
反応が、0~200℃の温度で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応が、0.01~1気圧で変わる圧力で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
NHFSIをアルコキシド(III)又は(III*)と反応させるステップの前に、NHFSIを溶媒中に可溶化するステップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
NHFSIをアルコキシド(III)又は(III*)と反応させるステップの後に、MFSIを減圧下で濃縮するステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
NHFSI(II)をアルコキシド(III)又は(III*)と反応させるステップの前に、
- ビス(クルロスルホニル)イミドのアンモニウム塩(NHCSI)をフッ素化剤と反応させること、又は
- ビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)を、式NHF(HF)(式中、pは、0~10の数を表す)のフッ素化剤と反応させること
による、NHFSI(II)の調製のステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法から得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩(MFSI)。
【請求項13】
式(III)又は(III*):
RO (III)
[RO][nROH] (III*)
(式中、
・ 各Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から独立して選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から好ましくは選択される、アルカリ金属を表し、
・ nは、1~10の範囲の整数である)
のフッ素含有アルコキドの、
式(I):
[F-SO-N-SO-F]M (I)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩(MFSI)を製造するための使用。
【請求項14】
式(III*)の前記フッ素含有アルコキシが、式(IIIa):
[CFCHLi][2CFCHOH] (IIIa)
に従い、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩が、式(Ia):
[F-SO-N-SO-F]Li (Ia)
に従うリチウム塩である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
式(III)又は(III*):
RO (III)
[RO][nROH] (III*)
(式中、
・ 各Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から独立して選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から好ましくは選択される、アルカリ金属を表し、
・ nは、1~10の範囲の整数である)
のフッ素含有アルコキシドの調製方法であって、
前記方法が、式(IV):
ROH (IV)
のアルコールを、式(V)
MOH (V)
のアルカリ水酸化物、又はそれの水和物と反応させるステップを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2021年12月20日出願の欧州特許出願第21306857.0号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩(NHFSI)をフッ素含有アルコキシドと反応させるステップを少なくとも含むビス(フルオロスルホニル)イミド塩(MFSI)の製造プロセスに関する。本発明はまた、そのようなフッ素含有アルコキシドの調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びそれの塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)は、様々な技術分野における有用な化合物である。ビス(フルオロスルホニル)イミド及びそれらの塩は、バッテリー電解質においてとりわけ有用である。バッテリーでの使用のために、不純物の存在を限定することが非常に重要である。
【0004】
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びそれの塩の製造は、文献に記載されている。記載されている様々な技術の中で、大部分は、溶媒中でフッ素化剤を用いるフッ素化反応を使用している。その後のステップは、通常、カチオン交換反応、もっと正確に言えば、LiFSIが調製されるべきである場合リチウム化ステップである。
【0005】
とりわけ、国際公開第2017/090877号パンフレット(CLS)は、(1)ビス(クロロスルホニル)イミドを溶媒中でフッ素化試薬と反応させ、引き続きアルカリ試薬で処理し、それによってアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドを生成するステップと、(2)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドをリチウム塩基と反応させるステップとを含む、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法を記載している。リチウム化は、溶媒としての酢酸ブチル中で、リチウム塩基としての水酸化リチウム水和物(LiOH・HO)で行われる。反応の完了後に、水層は分離され、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドは、濃縮、再結晶及び分離ステップによって製造される。水を除去するこのプロトコルは、時間がかかるので低い生産性という欠点があり、且つ新鮮な溶媒を必要とする。
【0006】
国際公開第2020/099527号パンフレット(Solvay SA)は、a)ビス(クロロスルホニル)イミド又はそれの塩をフッ化アンモニウムと反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を生成するステップと、b)少なくとも1種の沈殿溶媒を添加することによってビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を結晶化させ、分離するステップと、c)結晶化したビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ塩と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得るステップとを含む、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩の製造方法を開示している。実施例3において、アルカリ塩は、LiOH・HOの水溶液である。フッ素含有水酸化物の開示は、この文書では行われていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、MFSI塩(ここで、Mは金属を示し、MFSI塩は好ましくはLiFSIである)の製造プロセスであって、時間が少ししかかからない及び追加の溶媒を必要としないプロセスを提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、プロセスが進行するときに水を発生しないMFSI塩の製造プロセスを提供することである。
【0009】
有利には、本発明のプロセスは、式ROのアルコキシドの又はその溶媒和物形態[RO][nROH](ここで、Rはフッ素原子を含有する部分である)の使用に基づいている。
【0010】
本発明は、式(I):
[F-SO-N-SO-F]M (I)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド塩(MFSI)の製造プロセスに向けられる。
【0011】
このプロセスは、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を調製するために今まで使用されている通常のアルカリ化剤に効果的に取って代わる、式ROのフッ素含有アルコキシドの、又はその溶媒和物形態[RO][nROH]の使用に基づいている。
【0012】
そのようなフッ素含有アルコキシドの使用は、有利にも、反応後の反応媒体中の水の生成を回避すること、結果として、そのような水を除去するための時間がかかる追加のステップを回避することを可能にする。
【0013】
本発明はまた、上記のプロセスにおいて使用されるフッ素含有アルコキシドの調製プロセスに、及びこのようにして得られるフッ素含有アルコキシドに向けられる。
【0014】
本発明はまた、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩(MFSI)を調製するためのそのようなフッ素含有アルコキシドの使用に向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の態様は、式(I):
[F-SO-N-SO-F]M (I)
(式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択される)
のビス(フルオロスルホニル)イミド塩(MFSI)の製造プロセスであって、
前記プロセスが、式(II):
[F-SO-N-SO-F]NH (II)
のビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩[NH4FSI塩]を、式(III):
RO (III)
のフッ素含有アルコキシドと反応させることを含み、
ここで、
・ Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択され、
・ NHFSI塩は、任意選択的に、
- 50~99.9重量%のNHFSI塩と、
- 0.1~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から選択される、少なくとも1種の溶媒S
を含む溶媒和物の形態にある、
プロセスに関する。
【0016】
式(III)のフッ素含有アルコキシドは、有利には、次のとおりの溶媒和物の形態にあることができ:
[RO][nROH] (III*)
nは、1~10の整数であり、
M及びRのそれぞれは、上で記載された同じ意味を有する。
【0017】
式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、有利には、NHFSI塩をアルカリ化するために使用される。言い換えれば、式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、そのアルカリ金属「M」をNHFSI塩に移すことができる。
【0018】
フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)は、固体状態で、液体状態で、又は有機溶液で本明細書に記載されるプロセスで提供され得る。
【0019】
式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、式RO(式中、Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニル、言い換えれば1~20個の炭素原子を有するフルオロアルキル、フルオロアルケニル及びフルオロアルキニル基からなる群から選択される)に従う。好ましくは、R基内の炭素原子の数は、1~12、より好ましくは1~8又は1~6、更により好ましくは1~3であり、この数は、特定の実施形態では2に等しい。好ましくは、Rはフルオロアルキル基である。
【0020】
いくつかの実施形態では、Rは、式R-L(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、C~Cパーフルオロアルケニル及びC~Cパーフルオロアルキニルからなる群から選択される一価基であり、Lは、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン及びC~Cアルキニレンからなる群から選択される二価基であり;好ましくはRはC~Cパーフルオロアルキル基であり、LはC~Cアルキレン基であり;より好ましくはRはCFであり、LはCHである)に従い、言い換えれば式(I)のアルコールは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)である。上記の式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、以下に詳細に記載されるプロセスによって調製され得る。
【0021】
本発明のプロセスに関与するNHFSI(II)は、実質的に純粋な塩の形態にあってもよいし、又はそれは、以下に記載されるような、溶媒和物の形態にあってもよい。それは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。それは、ビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)、又はそれの塩を、フッ素化剤、例えばフッ化アンモニウムでフッ素化することによって調製され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、NHFSI塩は、
- 50~98重量%のNHFSI塩と、
- 2~50重量%の、環状及び非環状エーテルからなる群から選択される、少なくとも1種の溶媒S
を含む、場合により結晶化形態の、溶媒和物[NHFSI溶媒和物]である。
【0023】
好ましくは、NHFSI溶媒和物は、51~98重量%、より好ましくは55~95重量%、又は78~83重量%のNHFSI塩を含む。
【0024】
好ましくは、NHFSI溶媒和物は、2~49重量%、より好ましくは5~45重量%又は17~22重量%の少なくとも1種の溶媒Sを含む。
【0025】
少なくとも1種の溶媒Sは、好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、及び1,4-ジオキサン、並びにそれらの混合物からなる群から;より好ましくは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル t-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン及びそれらの混合物からなるリストから選択され;更に好ましくは1,3-ジオキサン又は1,4-ジオキサンである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明によるMFSI塩の製造プロセスは、以下のステップ:
)NHFSIの粗製塩を提供するステップと;
)NHFSIの粗製塩を少なくとも1種の溶媒Sに溶解させるステップと;
)少なくとも1種の溶媒SによってNHFSIの粗製塩を結晶化するステップと;
)好ましくは濾過によって、溶媒S及びSの少なくとも一部から、NHFSI塩を分離するステップと
によりNH4FSI溶媒和物を調製する予備ステップi)を含む。
【0027】
NHFSIの粗製塩は、80~97重量%、好ましくは85~95重量%、より好ましくは90~95重量%のNHFSIの塩を含み得る。
【0028】
溶媒Sは、好ましくは、アセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル、及びそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは2,2,2,-トリフルオロエタノールである。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態では、ステップi)は、NHFSI塩を、
- 99.9重量%超の溶媒S;及び
- 50~99重量%の少なくとも1種の溶媒S
から分離することに存する。
【0030】
NHFSI塩と、式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドとの間の反応は、1種又は2種以上の溶媒中で実施され得る。しかしながら、反応は、無溶媒であることができる。
【0031】
式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、それらが既に溶媒に溶解されている状態で提供され得る。この場合には、溶媒の添加は可能であるが、必ずしも必要ではない。この追加の溶媒は、ステップi)において使用された溶媒と同一であってもそれとは異なってもよい。
【0032】
式(III)又は(III*)のフッ素含有アルコキシドは、実質的に乾燥した固体状態で提供されても、本発明のプロセスにおける使用の前に溶媒に溶解されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、NHFSIと、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)との間の反応を実施するために溶媒が使用される(添加される)。アルコキシド(III)又は(III*)を調製するために使用されたものと同じ溶媒を選択することが好ましい。或いはまた、異なる溶媒が使用され得る。
【0034】
溶媒は、有利には、式ROH(式中、Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から選択される)に従い得る。Rは、好ましくは1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、更により好ましくは1~3個の炭素原子を有するフルオロアルキル、フルオロアルケニル及びフルオロアルキニル基からなる群から選択される。Rは、特定の実施形態では2個の炭素原子を有する。好ましくは、Rはフルオロアルキル基である。一実施形態によれば、Rは、式R-L(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、C~Cパーフルオロアルケニル及びC~Cパーフルオロアルキニルからなる群から選択される一価基であり、Lは、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン及びC~Cアルキニレンからなる群から選択される二価基であり;好ましくはRはC~Cパーフルオロアルキル基であり、LはC~Cアルキレン基であり;より好ましくはRはCFであり、LはCHである)に従う:言い換えれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドの塩の製造プロセスに使用される式(I)のアルコールは、2,2,2-トリフルオロエタノールである。
【0035】
そのような溶媒は、好ましくは、溶媒S又はSの中で選択され得る。
【0036】
反応剤、任意選択的に溶媒は、任意の順に接触され得る。特に、溶媒は、反応剤の前に、それの後に又はそれと同時に添加され得る。NHFSI(II)は、例えば、アルコキシド(III)又は(III*)を添加する前に溶媒に溶解され得る。モル比溶媒/NHFSIは、1~10、特に1~5、より特に1~2の範囲であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、無溶媒プロセスであり得る。言い換えれば、反応中に反応混合物に、溶媒/希釈剤が全く添加されないか、或いはまた非常に少量の溶媒/希釈剤が添加される。本プロセスは、溶媒の不在下で、又はプロセスに関与する反応混合物の総重量を基準として5重量%未満の溶媒の存在下で融解NHFSI塩で行われ得る。これらの実施形態によれば、本プロセスは、溶媒及び希釈剤の不在下に溶融物で行われる。もっと正確に言えば、融解NHFSI(II)は、反応剤を分散させるように働き、反応に関与する反応剤を接触させ、反応させ得る。
【0038】
本発明のプロセスが無溶媒である場合、融解NHFSI塩におけるアルコキシド(III)又は(III*)の添加は、順々に、漸進的に又は連続的に行われ得る。例えば、回分反応器、押出機及び混合混練機を本発明において用いることができる。耐酸食材料(例えばPTFE、PFA等)を、選択された反応器内にコートする(言い換えれば内張りする)ことができる。工業化溶融ミキサー又は溶融ブレンダーを挙げることができる。
【0039】
本発明のプロセスは、好ましくは、水分の混入を回避するために不活性雰囲気下で実施される。本発明のプロセスは、例えば窒素又はアルゴン下で実施され得る。
【0040】
モル比アルコキシド(III)又は(III*)/NHFSI塩は、1~10、特に1~5、より特に1~2の範囲であり得る。
【0041】
本発明のプロセスは、100℃未満、例えば0℃~50℃、より好ましくは15℃~35℃の温度、更により好ましくは約室温で実施され得る。
【0042】
好ましくは、本発明のプロセスは、大気圧下で実施されるが、大気圧よりも下又は上、例えば5mbar~1.5bar、好ましくは5mbar~100mbarで作業することは、排除されない。
【0043】
本発明のプロセスの反応時間は、例えば使用される反応器、関係している反応温度及び反応剤量に応じて自由に選択することができる。反応時間は、1~12時間、特に1.5~10時間又は2~9時間であることが好ましい。
【0044】
MFSI塩は、NHFSI塩と、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)との間の反応の終わりに反応媒体中に得られる。
【0045】
MFSI塩を精製する/単離するために更なるステップが実施され得る。
【0046】
1つの特定の実施形態によれば、本発明のプロセスは、好ましくは減圧下で行われる、MFSI塩を濃縮する少なくとも1つの更なるステップを含む。
【0047】
このステップは、温度を下げることによって、圧力を下げることによって、又は両方によって行われ得る。温度は、特に、-10℃~10℃、好ましくは-5℃~5℃の範囲の、好ましくは約0℃である温度まで下げられ得る。
【0048】
圧力は、反応の終わりに反応媒体中に存在する化学種の性質に応じて調整され得;それは、特に、10-2mbar~大気圧、好ましくは1mbar~500mbar、好ましくは5mbar~100mbar、より好ましくは10~30mbarに含まれる値で調整され得る。
【0049】
操作は、塩を更に精製するために1回又は数回繰り返され得る。新鮮な溶媒が、その後の濃縮操作の前に、塩を含有する濃縮された反応媒体に添加される。
【0050】
前記溶媒内のビス(フルオロスルホニル)イミドの精製アルカリ塩の混合物を、それによって得ることができる。
【0051】
非常に純粋なビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を回収するために、更なる処理が実施され得る。追加のステップは、濾過、抽出、再結晶、クロマトグラフィーによる精製、乾燥及び/又は配合を含み得る。
【0052】
溶媒及び試薬などの、本明細書に記載されるプロセスにおいて使用される全ての原材料は、好ましくは、非常に高い純度判定基準を示す。好ましくは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Cr、Ni、Znなどの金属成分のそれらの含有量は、10ppm未満、より好ましくは2ppm未満である。
【0053】
加えて、本発明によるプロセスのステップのいくつか又は全てのステップは、有利には、腐食に耐えることができる装置中で実施される。この目的のために、反応媒体と接触することを意図される材料は、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンをベースとする合金、又は名称Inconel(登録商標)若しくはMonel(商標)で販売される、銅及び/若しくはモリブデンが添加されているニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より特にHastelloy C276又はInconel 600、625若しくは718合金などの、耐腐食性材料から選択される。オーステナイト鋼、より特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などの、ステンレス鋼も選択され得る。最大でも22重量%の、好ましくは6%~20%の、より優先的には8%~14%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼は、8%~12%で変動するニッケル含有量を有し、316及び316L鋼は、10%~14%で変動するニッケル含有量を有する。より特に、316L鋼が選択される。反応媒体による腐食に対して耐性があるポリマー化合物からなるか又はそれでコーティングされた装置も使用され得る。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン若しくはテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料が挙げられ得る。ガラス装置も使用され得る。同等の材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。反応媒体と接触するのに好適であることができる他の材料として、黒鉛誘導体も挙げられ得る。濾過用の材料は、使用される媒体に適合していなければならない。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(Viton(商標))、並びにポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿、及び他の適合性材料を使用することができる。
【0054】
本発明の第2の態様は、本発明のプロセスによって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドの金属塩(MFSI)に関する。
【0055】
MFSI塩は、有利には、以下の特徴:
19F NMRによって測定されるように、少なくとも98重量%、例えば99重量%~100重量%又は99.50~100%の純度、
- GC(或いはまたヘッドスペースGC)によって測定されるように、20重量%未満、10重量%未満、1重量%未満、好ましくは0重量%~1重量%の溶媒含有量、
- 例えばグローブボックス内で行われる、カールフィッシャー水滴定によって測定されるように、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は20ppm未満さえの水分含有量
の少なくとも1つ(好ましくは全て)を示す。
【0056】
本発明のMFSI塩は、有利には、以下の特徴:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、又はより好ましくは2ppm未満の塩化物(Cl-)含有量;
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは40ppm未満、より好ましくは30ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F-)含有量;及び
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、又はより好ましくは2ppm未満の硫酸塩(SO 2-)含有量
の少なくとも1つ(好ましくは全て)を示す。
【0057】
フッ化物及び塩化物の含有量は、例えば、イオン選択電極(又はISE)を使用する銀滴定による滴定によって測定され得る。硫酸塩含有量は、或いはまた、イオンクロマトグラフィーによって又は比濁法によって測定され得る。
【0058】
好ましくは、本発明のMFSI塩は、金属元素の以下の含有量:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の鉄(Fe)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のクロム(Cr)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のニッケル(Ni)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のマンガン(Mg)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のナトリウム(Na)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のカリウム(K)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の(Pb)含有量
の少なくとも1つ(好ましくは全て)を示す。
【0059】
元素不純物含有量は、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ)によって測定され得;より具体的には、Na含有量は、AAS(原子吸光分光法)によって測定することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明のMFSI塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩、Li(FSO(LiFSI)である。ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩は、以下の不純物プロファイル:
19F NMRによって測定されるように、少なくとも99.90重量%の、99.90重量%~100重量%で変動する純度、及び
- カールフィッシャー水滴定によって測定されるように、50ppm未満の水分含有量
で特徴付けられ得る。
【0061】
本発明の第3の態様は、式(III)又は(III*):
RO (III)
[RO][nROH] (III*)
(式中、
・ 各Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から独立して選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から好ましくは選択される、アルカリ金属であり、
・ nは、1~10の範囲の整数である)
のフッ素含有アルコキシドの、
式(I):
[F-SO-N-SO-F]M (I)
のビス(フルオロスルホニル)イミドの金属塩(MFSI)を製造するための使用に関する。
【0062】
MFSIの金属塩を製造するために本発明のプロセスにおいて使用されるフッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)は、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニル、言い換えれば1~20個の炭素原子を有するフルオロアルキル、フルオロアルケニル及びフルオロアルキニルからなる群から選択される、R部分を含有する。好ましくは、R基内の炭素原子の数は、1~12、より好ましくは1~8又は1~6、更により好ましくは1~3の範囲であり、この数は、特定の実施形態では2に等しい。好ましくは、Rはフルオロアルキルである。
【0063】
いくつかの実施形態では、Rは、式R-L(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、C~Cパーフルオロアルケニル及びC~Cパーフルオロアルキニルからなる群から選択される一価基であり、Lは、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン及びC~Cアルキニレンからなる群から選択される二価基であり;好ましくはRはC~Cパーフルオロアルキル基であり、LはC~Cアルキレン基であり;より好ましくはRはCFであり、LはCHである)に従い、言い換えれば、式(I)のアルコールは2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)である。
【0064】
本発明の第4の態様は、本発明のプロセスにおいて使用されるフッ素含有アルコキシド式(III)又は(III*)の調製プロセスであって、式(IV):
ROH (IV)
のアルコールを、式(V)
MOH (V)
のアルカリ水酸化物、又はそれの水和物と反応させるステップを含み、
ここで、R及びMは、上に定義されたとおりである、
プロセスに関する。
【0065】
好ましくは、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrからなる群から選択されるアルカリ金属を表す。
【0066】
「水和物」は、通常、しかし必ずしもそうとは限らず、重量で確定された含有量の水の、HO分子の形態で水を含有する式(V)の任意の化合物を示すことを意図する。
【0067】
好ましくは、金属Mは、Li、Na、K及びCsからなる群から選択され;より好ましくはMはLiである。
【0068】
式(V)の金属水酸化物は、好ましくは水酸化リチウムである。特に、一実施形態では、本発明のプロセスにおいて使用されるフッ素含有アルコキシドの製造プロセスで使用される式(V)の金属水酸化物は、LiOH・HOである。
【0069】
本発明のフッ素含有アルコキシド(III)は、上記の式(III*)で表されるような溶媒和物の形態、すなわち、結晶集合内部に溶媒の分子を含有する結晶性固体にあることができる。結晶溶媒和物は、好ましくは、溶媒の助けを借りて結晶化プロセスで形成され得る。
【0070】
式(IV)のアルコールと式(V)の金属水酸化物又はそれの水和物とは、様々な方法で接触させることができる。それらは、好ましくは、不活性雰囲気、典型的には窒素又はアルゴン雰囲気下で接触される。モル比アルコール/金属水酸化物は、好ましくは、1~30、好ましくは1~20、より好ましくは2~10、更により好ましくは3~6の範囲である。反応剤としてのその役割に加えて、アルコールが溶媒として機能するために、金属水酸化物(V)をアルコール(IV)中へ可溶化させることが有利である。金属水酸化物(V)は、好ましくは、アルコール(IV)中高濃度にある。アルコール(IV)中の金属水酸化物(V)の溶解を容易にするために、反応媒体は、少なくとも30分、例えば30分~6時間、特に30分~3時間、例えば約1時間中であり得る、十分な期間撹拌され得る。反応は、少なくとも5℃、例えば5~200℃、好ましくは10~100℃、より好ましくは15~50℃、更により好ましくは15~30℃の範囲の温度で実施することができる。反応は、好ましくは、経済的に有利である、周囲温度で実施することができる。好ましくは、反応は、大気圧下で実施されるが、大気圧よりも下又は上、例えば5mbar~1.5bar、好ましくは5mbar~100mbarで作業することは、排除されない。
【0071】
上で記載されたプロセスから得られるような、本明細書で記載されるフッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)は、上で記載されたビス(フルオロスルホニル)イミド塩(MFSI)の製造プロセスにおいてそのようなものとして使用され得る。本明細書で記載されるフッ素含有アルコキシドはまた、その貯蔵及びプロセスへの実行を容易にするために、固体形態及び/又は精製形態で提供され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の製造プロセスは、例えば式(IV)のアルコールの一部を蒸発させることによる、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の濃縮のステップを更に含む。この濃縮は、反応混合物を加熱することによって及び/又は圧力を下げることによって実施され得る。一実施形態によれば、濃縮ステップは、0℃~120℃、好ましくは5℃~80℃、より好ましくは10℃~70℃に含まれる温度での式(I)のアルコールの蒸留に存し得る。圧力は、式(I)のアルコールの性質に応じて、典型的には大気圧~10-2mbar、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarで調整され得る。蒸留は、当業者に公知の任意の典型的な手段によって、連続プロセス方式で又は不連続/バッチ方式で、例えば連続バッチ方式溶媒蒸発、バッチ式蒸留、ショートパスの連続フロー蒸留、又は薄膜エバポレーターで行われ得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の製造プロセスは、結晶化及び分離の更なるステップを含む。結晶化は、残存アルコール(IV)の蒸発、貧溶媒又はドローンアウトとも呼ばれる、アルコール(IV)とは異なる、追加の溶媒の添加、溶媒レイヤリング又は昇華などの、当業者に利用可能な任意の好適な方法によって行われ得る。好ましい実施形態では、結晶化は、結晶(すなわち、結晶性固体)が生じる温度まで反応混合物の温度を下げることによって実施される。言い換えれば、温度は、アルコキシド(III)又は(III*)の溶解性の温度未満の値まで下げられ得る。好ましくは、反応混合物の温度は、式(IV)のアルコールの沸点~-20℃、より好ましくは70℃~-10℃、更により好ましくは30℃~0℃に含まれる値まで下げられる。温度の低下中に、圧力は、好ましくは、一定に保たれる。しかしながら、圧力を同時に下げることは、排除されない。それは、反応媒体からの式(IV)のアルコールの一部の蒸発を引き起こし得る。圧力は、10-2mbar~大気圧(1013.25mbar)、好ましくは1mbar~500mbar、より好ましくは5mbar~100mbarに含まれる値まで下げられ得る。低下した温度は、1~20時間、特に2~15時間、より特に3~10時間の範囲の時間維持され得る。
【0074】
フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の分離は、当業者に利用可能な任意の典型的な分離方法によって、例えば濾過によって行われ得る。濾過は、大気圧で、圧力下で又は真空下で実施され得る。濾過媒体のメッシュサイズは、2μm以下の、より好ましくは0.45μm以下の、更により好ましくは0.22μm以下のものであり得る。分離された生成物は、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)が不溶性であり、且つ式(IV)のアルコールが少なくとも部分的に可溶性である任意の溶媒などの、適切な溶媒で1回又は数回洗浄され得る。加えて、選択される溶媒は、蒸留又は相分離のような、当業者に公知の任意の手段によって式(IV)のアルコールから容易に分離されるべきである。選択される溶媒は、好ましくは、式(IV)のアルコールと共沸混合物を形成するべきである。
【0075】
結晶化及び分離ステップは、1回実施されても、又は分離されたフッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の純度を向上させるために必要ならば2回以上繰り返されてもよい。この手順を繰り返す場合、アルコキシド(III)又は(III*)は、初産出において使用されたものに好ましくは同一である、式(IV)の新鮮なアルコールに可溶化され得る。上で説明されたものと同じ条件(モル比アルコール/アルカリ水酸化物、時間、温度、圧力等)が適用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)の製造プロセスは、上で記載された結晶化及び分離ステップの後に、アルコキシド(III)又は(III*)を乾燥させることに存する、更なるステップを含む。実質的に乾燥した固体生成物は、貯蔵するのが及びビス(フルオロスルホニル)イミドの塩、特に本発明によるものを製造するための反応で使用するのがより容易である生成物を手に入れるという利点を全て取り入れて、そのような追加のステップから得られ得る。乾燥は、典型的には減圧下で及び/又は加熱によって及び/又は不活性ガス流、典型的には窒素若しくはアルゴン流を使って、当業者に利用可能な任意の方法によって実施され得る。
【0077】
好ましい実施形態によれば、アルコキシド(III)又は(III*)の乾燥は、減圧下で実施される。圧力は、特に、10-2mbar~大気圧(1013.25mbar)、好ましくは10-1mbar~500mbar、好ましくは1mbar~100mbar、より好ましくは1mbar~10mbarに含まれる値まで下げられ得る。温度は、5~50℃、好ましくは10~30℃に含まれ得る。有利には、アルカリ化剤の乾燥は、室温で行うことができる。乾燥時間は、1~20時間、好ましくは1~10時間の範囲であり得る。
【0078】
フッ素含有アルコキシド(III)又は(III*)は、上で記載されるプロセスの終わりに得られる。
【0079】
本発明の第5の態様は、式(III)又は(III*):
RO (III)
[RO][nROH] (III*)
(式中、
・ 各Rは、C~C20フルオロアルキル、C~C20フルオロアルケニル及びC~C20フルオロアルキニルからなる群から独立して選択され、
・ Mは、Li、Na、K、Rb、Cs及びFrから好ましくは選択される、金属を表し、
・ nは、1~10、好ましくは1~5、特に1~3の範囲の整数であり、とりわけそれは2に等しいことができる)
のフッ素含有アルコキシドに関する。
【0080】
式(III*)に表されるフッ素含有アルコキシドは、溶媒和物の形態、すなわち、フッ素核磁気共鳴(NMR)分析によって特性化されるように、それらの結晶集合内部に溶媒の分子を含有する(化学量論的に又は非価格量論的に)結晶性固体にある。
【0081】
好ましくは式(III)又は(III*)において、各Rは、1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3この炭素原子、とりわけ2個の炭素原子を有するフルオロアルキル、フルオロアルケニル及びフルオロアルキニル基から選択される。好ましくは、Rはフルオロアルキル基である。一実施形態によれば、Rは、式R-L(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、C~Cパーフルオロアルケニル及びC~Cパーフルオロアルキニルからなる群から選択される一価基であり、Lは、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン及びC~Cアルキニレンからなる群から選択される二価基であり;好ましくはRはCC2パーフルオロアルキル基であり、LはC~Cアルキレン基であり;より好ましくはRはCFであり、LはCHである)に従う。
【0082】
好ましくは式(III)又は(III*)のそれぞれにおいて、Mは、Li、Na、K及びCsからなる群から選択されるアルカリ金属を表し;より好ましくはMはLiである。
【0083】
1つの特定の実施形態によれば、式(III*)の化合物において、RはCF-CHであり、MはLiであり、n=2である、言い換えれば、リチウム2,2,2-トリフルオロエトキシド及び2,2,2-トリフルオロエタノールの溶媒和物である。好ましくは、この化合物は結晶性固体である。
【0084】
有利には、本発明で記載されるプロセスによって得られるアルコキシド(III)又は(III*)は、19F NMRによって測定されるように、非常に高い純度、とりわけ少なくとも98重量%、例えば99重量%~100重量%又は99.50重量%~100重量%の純度を有する。
【0085】
本発明によるプロセスによって得られる、MFSI塩、とりわけLiFSIは、有利には、バッテリー用の電解質組成物で使用され得る。
【0086】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0087】
本発明は、これから、本発明を限定する意図なく、実施例において更に記載される。
【実施例
【0088】
実施例1.式[CFCHLi][2CFCHOH]のアルコキシドの合成
窒素下に、7.7g(0.18mol)のLiOH一水和物を143g(1.43mol)の2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)と混合し、室温で1時間撹拌した。混合物をT=5℃に2時間冷却した。いくつかの結晶が曇った懸濁液中に観察された。結晶を濾過によって単離した。次いで、結晶を145g(1.45mol)の新鮮なTFEに室温で1時間溶解させ、T=5℃に2時間冷却した。固体を濾過によって得た。次いで、それを室温で5時間真空(P=5mbar)下に乾燥させた。NMR分析は、式[CFCHLi][2CFCHOH]の溶媒和化合物と一致している。
【0089】
実施例2.実施例1の溶媒和物アルコキシドを使用するビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩の合成
窒素雰囲気下で、6.9g(0.35mmol)アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NHFSI)の溶液を60g(0.60mol)のTFE中で調製した。次いで、10.6g(0.035mmol)の実施例1の固体アルコキシドを、撹拌下に、10分の期間にわたって室温で容器に添加した。そのとき、固体は、添加すると直ちに媒体に溶解した。NaOH滴定は、NH イオンの転化率が90%を上回っていることを示す。水は生成しなかった。媒体を減圧下で濃縮した(P=20mbar、T=0℃)。次いで、120mlのTFEを添加し、濃縮を2回同じ条件下で繰り返した。13gの粘稠な透明液体が得られた。19F NMRは、LiFSI、NHFSI及びTFE混合物と一致している。他のフッ素化化学種は検出されない。NaOH滴定は、LiFSIへの高い転化を示唆している。
【国際調査報告】