(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】EGFR-cMET標的化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250107BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20250107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K51/10 100
A61K51/10 200
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537033
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 US2022082021
(87)【国際公開番号】W WO2023122588
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524230859
【氏名又は名称】フュージョン・ファーマシューティカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Fusion Pharmaceutical Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】300022113
【氏名又は名称】アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】アゲブリアン,サダフ
(72)【発明者】
【氏名】グリンシュタイン,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ダフィ,イアン アール
(72)【発明者】
【氏名】コステルニク,トーマス アイ
(72)【発明者】
【氏名】ブキャナン,アンドリュー グライアー
(72)【発明者】
【氏名】メイザー,ヤリブ
(72)【発明者】
【氏名】カストゥリランガン,スリナト
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,チュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュンニン
(72)【発明者】
【氏名】コマー,フランク アーバイン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA29
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB56
4C085KB82
4C085LL18
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA52
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
キレート部分又はその金属錯体、リンカー、並びにEGFR及びcMETの両方を標的とする抗体又はその抗原結合断片を含む化合物、例えば、放射性免疫抱合体。そのような化合物の医薬組成物、及びそのような化合物又は医薬組成物を使用した、病状、例えば、癌の治療方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を含む化合物、又はその薬学的に許容できる塩:
A-L
1-(L
2)
n-B
式I
(式中、
Aは、キレート部分又はその金属錯体であり;
Bは、抗体又はその抗原結合断片であり;
L
1は、結合、C=O、C=S、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
nは、1~5の整数(両端を含む)であり;
L
2は、それぞれ独立して式II:
-X
1-L
3-Z
1-
式II
(式中、
X
1は、-C(O)NR
1-*、-NR
1C(O)-*、-C(S)NR
1-*、-NR
1C(S)-*、-OC(O)NR
1-*、-NR
1C(O)O-*、-NR
1C(O)NR
1-、-CH
2-Ph-C(O)NR
1-*、-NR
1C(O)-Ph-CH
2-*、-CH
2-Ph-NH-C(S)NR
1-*、-NR
1C(S)-NH-Ph-CH
2-*、-O-、又は-NR
1-であり、式中、「*」は、L
3への接続点を示し、R
1は、水素、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
L
3は、任意選択的に置換されたC
1-C
50アルキル又は任意選択的に置換されたC
1-C
50ヘテロアルキルであり、
Z
1は、-CH
2-#、-C(O)-#、-C(S)-#、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR
2C(O)-#、-C(O)NR
2-#、又は-NR
2-#であり、式中、「#」は、Bへの接続点を示し、R
2は、水素、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル、任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである)の構造を有し、
前記抗体又はその抗原結合断片は、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することが可能な第1の抗原結合ドメイン;及びcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインを含み、
前記第1の抗原結合ドメインは、
i:以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3、
又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント;並びに
ii:以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3、
又はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアントを含む)。
【請求項2】
前記キレート部分が、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α、α’、α”、α’”-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DOTPA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラプロピオン酸)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTA-GA無水物(2,2’,2”-(10-(2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTMP(1,4,6,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7,10-テトラメチレンホスホン酸、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミドメチレンホスホン酸)、CB-TE2A(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、NOTP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ(メチレンホスホン酸)、TETPA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラプロピオン酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラ酢酸)、HEHA(1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-1,4,7,10,13,16-ヘキサ酢酸)、PEPA(1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N’’’,N’’’’-ペンタ酢酸)、H
4octapa(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、H
2dedpa(1,2-[[6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル]-メチルアミノ]エタン)、H
6phospa(N,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-メチル-1,2-ジアミノエタン)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N’’’,N’’’-六酢酸)、DO2P(テトラアザシクロドデカンジメタンホスホン酸)、HP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DTPA-BMA(ジエチレントリアミン五酢酸-ビスメチルアミド)、及びポルフィリンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、式I-a:
【化1】
(式中、Y
1は、-CH
2OCH
2(L
2)
n-B、-C(O)(L
2)
n-B、又は-C(S)(L
2)
n-Bであり、Y
2は、-CH
2CO
2Hであるか;又は
Y
1は、Hであり、Y
2は、L
1-(L
2)
n-Bである)によって表されるか、又はその金属錯体である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
L
1が、
【化2】
(式中、R
Lは、水素又は-CO
2Hである)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記金属錯体が、Bi、Pb、Y、Mn、Cr、Fe、Co、Zn、Ni、Tc、In、Ga、Cu、Re、ランタニド、及びアクチニドからなる群から選択される金属を含み、前記金属錯体が、
44Sc、
47Sc、
55Co、
60Cu、
61Cu、
62Cu、
64Cu、
67Cu、
66Ga、
67Ga、
68Ga、
82Rb、
86Y、
87Y、
89Zr、
90Y、
97Ru、
99Tc、
99mTc、
105Rh、
109Pd、
111In、
117mSn、
149Pm、
149Tb、
153Sm、
166Ho、
177Lu、
186Re、
188Re、
198Au、
199Au、
201Tl、
203Pb、
211At、
212Pb、
212Bi、
213Bi、
223Ra、
225Ac、
227Th、及び
229Thからなる群から選択される放射性核種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Y
1がHである、請求項3~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
X
1が-C(O)NR
1-*又は-NR
1C(O)-*であり、「*」がL
3への接続点を示し、R
1がHである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Z
1が-CH
2-である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
nが1であり、L
3が(CH
2CH
2O)
2-20を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
nが1であり、L
3が(CH
2CH
2O)
m(CH
2)
wであり、式中、m及びwは、それぞれ独立して0~10の整数(両端を含む)であり、m及びwの少なくとも1つは0でない、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、以下の構造:
【化3】
のうちの1つ、又はその金属錯体を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、以下の構造:
【化4】
、又はその金属錯体を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Aがキレート部分の金属錯体であり、前記金属錯体が放射性核種を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記放射性核種が、
68Ga、
111In、
177Lu、又は
225Acである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記放射性核種が、
225Acである、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
前記放射性核種が、アスタチン-211(
211At)、ビスマス-212(
212Bi)、ビスマス-213(
213Bi)、アクチニウム-225(
225Ac)、ラジウム-223(
223Ra)、鉛-212(
212Pb)、トリウム-227(
227Th)、及びテルビウム-149(
149Tb)、又はそれらの子孫からなる群から選択されるアルファ放射体である、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
前記アルファ放射体が、
225Ac又はその子孫である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記第1の抗原結合ドメインが、
i:以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii:以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記第1の抗原結合ドメインが、抗体QD6の前記重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列(それぞれ配列番号47及び48に記載)を含む抗原結合ドメインがヒトEGFRに結合することが可能な親和性よりも低い親和性で、ヒトEGFRに結合することが可能である、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
前記第1の抗原結合ドメインが、
a.配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
b.配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
前記第2の抗原結合ドメインが、以下:
i:以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3、
又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント;並びに
ii:以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3、
又はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント
を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記第2の抗原結合ドメインが、
i:以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii:以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3
を含む、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記第2の抗原結合ドメインが、
a.配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
b.配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、請求項21又は22に記載の化合物。
【請求項24】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
a.第1の抗原結合ドメインのVH領域と、第1の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第1の重鎖;
b.第1の抗原結合ドメインのVL領域と、第1の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第1の軽鎖;
c.第2の抗原結合ドメインのVH領域と、第2の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第2の重鎖;及び
d.第2の抗原結合ドメインのVL領域と、第2の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第2の軽鎖
を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
前記第1及び第2のCH領域が、それぞれ配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記第1及び第2の重鎖が、ヘテロ二量体を形成し、任意選択的に、前記第1及び第2の重鎖の一方が、位置354にシステイン(C)残基、位置366にトリプトファン(W)残基を含み、他方の重鎖が、位置349にシステイン(C)残基、位置407にバリン(V)残基、位置366にセリン(S)、及び位置368にアラニン(A)を含み、前記定常領域の番号付けはEUインデックスに従う、請求項24又は25に記載の化合物。
【請求項27】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
a.天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、改変CH領域;及び
b.改変CLが天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、対応する改変CL領域
を含み、
i:第1の重鎖は改変CH領域を含み、第1の軽鎖は対応する改変CL領域を含むか;又は
ii:第2の重鎖は改変CH領域を含み、第2の軽鎖は対応する改変CL領域を含み、
改変CH領域の置換システインと、対応する改変軽鎖の置換システインとは、ジスルフィド結合を形成することができる、請求項24~26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
前記改変CH領域が、位置126に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含み;前記対応する改変CL領域が、位置121に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含み、前記定常領域の番号付けはEUインデックスに従う、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
前記第1及び/又は第2のCH領域が、前記抗体又はその抗原結合断片の、1つ以上のFcγ受容体への結合を低減又は抑制する変異を含む、請求項24~28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
前記第1及び/又は第2のCH領域が、位置234にフェニルアラニン、位置235にグルタミン酸、及び位置331にセリンを含み、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う、請求項24~29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
a.前記第1のCH領域が、配列番号39に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
b.前記第2のCH領域が、配列番号40に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
c.前記第1のCL領域が、配列番号41に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
d.前記第2のCL領域が、配列番号34に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項24~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
a.配列番号35に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第1の重鎖;
b.配列番号36に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第2の重鎖;
c.配列番号37に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第1の軽鎖;及び
d.配列番号38に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第2の軽鎖
を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
a.前記第1の重鎖が、配列番号35に記載される配列を有するアミノ酸配列を含み;
b.前記第2の重鎖が、配列番号36に記載される配列を有するアミノ酸配列を含み;
c.前記第1の軽鎖が、配列番号37に記載される配列を有するアミノ酸配列を含み;
d.前記第2の軽鎖が、配列番号38に記載される配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
a.EGFRに結合することが可能な前記第1の抗原結合ドメインが、カニクイザルEGFRに結合することが可能であり;
b.EGFRに結合することが可能な前記第1の抗原結合ドメインが、マウスEGFRに結合することが可能であり;
c.cMETに結合することが可能な前記第2の抗原結合ドメインが、カニクイザルcMETに結合することが可能であり;
d.前記第1の抗原結合ドメインが、EGFRに特異的であり;
e.前記第2の抗原結合ドメインが、cMETに特異的であり;
f.前記抗体又はその抗原結合断片が、EGFR及びcMETに同時に会合することが可能であり;
g.前記抗体又はその抗原結合断片が、細胞内に内在化することが可能であり;
h.前記抗体又はその抗原結合断片が、インビトロ細胞生存率アッセイで測定した場合に細胞傷害活性を有し;且つ/又は
i.前記抗体又はその抗原結合断片が、EGFR及び/又はcMETのリガンド依存性シグナル伝達を遮断することが可能である、請求項1~33のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
(a)前記第1の抗原結合ドメインが、
i:以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii:以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3を含み;
(b)第2の抗原結合ドメインが、
i:以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii:以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
前記第1の抗原結合ドメインが、以下:
a.10~100nM;
b.20~80nM;
c.30~75nM;又は
d.35~50nM
のKdを有する親和性でヒトEGFRに結合することが可能である、請求項1~35のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項37】
前記第2の抗原結合ドメインが、以下:
a.10nM未満;又は
b.5nM未満
のKdを有する親和性でヒトcMETに結合することが可能である、請求項1~36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項38】
前記親和性が、表面プラズモン共鳴によって測定される、請求項19、36、及び37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
前記化合物が、以下の構造:
【化5】
(式中、
【化6】
は、請求項1に定義される抗体又はその抗原結合断片である)を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項40】
前記抗体又はその抗原結合断片が、リジン残基の側鎖アミノ基を介して、A-L
1-(L
2)
n-に連結している、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項42】
癌を治療する方法であって、前記方法が、治療を必要とする対象に、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物又は請求項41に記載の組成物を治療有効量で投与することを含む、方法。
【請求項43】
前記癌が、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜腺癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎細胞癌、唾液腺様嚢胞癌、精母細胞性セミノーマ、及びブドウ膜黒色腫からなる群から選択される固形腫瘍癌である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が、肺癌、大腸癌、膵臓癌、又は頭頚部癌である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
抗増殖剤、放射線増感剤、又は免疫変調剤を投与することをさらに含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
癌の治療方法における使用のための、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項47】
癌の治療のための薬剤の製造における、請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項41に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2021年12月20日に出願された米国仮特許出願第63/291,910号明細書に対する優先権を主張するものであり、その全内容はあらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
非小細胞肺癌(NSCLC)は、依然として世界中で癌関連死亡の主な原因となっている。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の開発により、進行性NSCLCの予後は特定の患者では大幅に改善されたが、長期生存する転移性NSCLC患者は依然としてまれである。Linらによる最近の研究では、エルロチニブ又はゲフィチニブで治療したEGFR変異転移性NSCLCを有する患者の5年生存率は、わずか14.6%であることが示されている。抗EGFR TKIは耐性の影響を受けやすく、その根本的な耐性メカニズムはEGFR変異及びcMET過剰発現の共存であることが長い間知られている。臨床試験されている有望なアプローチの1つは、非小細胞肺癌の治療について承認されているヒトEGFR-cMET二重特異性抗体であるアミバンタマブである。EGFR及びcMET受容体を標的とすることで、癌細胞に対する治療の特異性が高まる。
【0003】
一般的に、抗体の効力は、標的細胞の数に依存する。さらに、薬剤耐性は依然として標的癌治療が直面する大きな課題であり、新規耐性及び獲得耐性が標的治療の長期的有効性を制限している。耐性のメカニズムには、二次変異、発癌性下流シグナル伝達モジュールの活性化、リガンドの上方制御、代替成長因子受容体の増幅が含まれる。
【0004】
従って、上記の欠点なしにEGFR及びcMETの両方を標的とすることができる改良された治療剤(例えば、癌治療剤)の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、EGFR及びcMETの両方を標的とする化合物(例えば、放射性免疫抱合体)、その医薬組成物、及びそのような化合物又は医薬組成物を使用して癌を治療する方法に関する。ネイキッド抗体とは異なり、放射性免疫抱合体は治療効果を得るために受容体の機能を遮断する必要はなく、代わりに限られた範囲内の周囲の腫瘍細胞を標的とする放射性粒子(例えば、アルファ放射体)を放出し、それによりオフターゲットの関連毒性を防ぐ。EGFR及びcMET過剰発現癌に使用されるEGFR-cMET標的化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、抗体誘発性の内在化を起こすEGFR-cMET複合体の能力を利用して、標的化された放射性核種を癌細胞内に特異的に送達する。正常な健康組織/細胞上のいずれかの受容体への抗体の一価結合は、内在化を生じない。
【0006】
特定の実施形態では、提供される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、治療効果を維持しながら、現在公知のいくつかの放射線治療薬と比較して、排泄率(例えば、哺乳動物に投与後)の増加を示す。いくつかの実施形態では、より速い排泄は、化合物が対象内に留まる時間を制限することで、オフターゲット毒性を制限し得る。従って、いくつかの実施形態では、提供される化合物は、オフターゲット毒性が低減されていることを示す。
【0007】
一態様では、以下の構造、又はその薬学的に許容される塩を含む化合物が提供される:
A-L1-(L2)n-B
式I
(式中、
Aは、キレート部分又はその金属錯体であり;
Bは、抗体又はその抗原結合断片であり;
L1は、結合、C=O、C=S、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
nは、1~5の整数(両端を含む)であり;
L2は、それぞれ独立して式II:
-X1-L3-Z1-
式II
の構造を有し、式中、
X1は、-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-*、-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-*、-OC(O)NR1-*、-NR1C(O)O-*、-NR1C(O)NR1-、-CH2-Ph-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-Ph-CH2-*、-CH2-Ph-NH-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-NH-Ph-CH2-*、-O-、又は-NR1-であり、式中、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
L3は、任意選択的に置換されたC1-C50アルキル又は任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキルであり、
Z1は、-CH2-#、-C(O)-#、-C(S)-#、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR2C(O)-#、-C(O)NR2-#、又は-NR2-#であり、式中、「#」は、Bへの接続点を示し、R2は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり、
抗体又はその抗原結合断片は、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することが可能な第1の抗原結合ドメイン;及びcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインを含み、
第1の抗原結合ドメインは、以下を含む:
i.以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3、
又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント;並びに
ii.以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3、
又はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント)。
【0008】
いくつかの実施形態では、式Iの可変部Aは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α、α’、α”,α’”-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DOTPA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラプロピオン酸)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTA-GA無水物(2,2’,2”-(10-(2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTMP(1,4,6,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7,10-テトラメチレンホスホン酸、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミドメチレンホスホン酸)、CB-TE2A(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、NOTP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ(メチレンホスホン酸)、TETPA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラプロピオン酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラ酢酸)、HEHA(1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-1,4,7,10,13,16-ヘキサ酢酸)、PEPA(1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N’’’,N’’’’-ペンタ酢酸)、H4octapa(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、H2dedpa(1,2-[[6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル]-メチルアミノ]エタン)、H6phospa(N,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-メチル-1,2-ジアミノエタン)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N’’’,N’’’-六酢酸)、DO2P(テトラアザシクロドデカンジメタンホスホン酸)、HP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DTPA-BMA(ジエチレントリアミン五酢酸-ビスメチルアミド)、及びポルフィリンからなる群から選択される、キレート部分である。
【0009】
特定の実施形態では、式Iの可変部Aは、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸)又はその金属錯体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、化合物は、式I-aによって表されるか、又はその金属錯体である:
【化1】
(式中、Y
1は、-CH
2OCH
2(L
2)
n-B、-C(O)(L
2)
n-B、又は-C(S)(L
2)
n-Bであり、Y
2は、-CH
2CO
2Hであるか;又は
Y
1は、Hであり、Y
2は、L
1-(L
2)
n-Bである)。特定の実施形態では、Y
1は、Hである。
【0011】
いくつかの実施形態では、L
1は、
【化2】
であり、R
Lは、水素又は-CO
2Hである。
【0012】
特定の実施形態では、X1は、-C(O)NR1-*又は-NR1C(O)-*であり、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、Hである。
【0013】
特定の実施形態では、Z1はCH2である。
【0014】
いくつかの実施形態では、L3は、(CH2CH2O)2-20を含む。いくつかの実施形態では、L3は、(CH2CH2O)m(CH2)wであり、式中、m及びwは、それぞれ独立して0~10の整数(両端を含む)であり、m及びwの少なくとも1つは0でない。
【0015】
いくつかの実施形態では、金属錯体は、Bi、Pb、Y、Mn、Cr、Fe、Co、Zn、Ni、Tc、In、Ga、Cu、Re、ランタニド、及びアクチニドからなる群から選択される金属を含む。いくつかの実施形態では、金属錯体は、44Sc、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga、68Ga、82Rb、86Y、87Y、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、105Rh、109Pd、111In、117mSn、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、201Tl、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、及び229Thからなる群から選択される放射性核種を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、可変部Aは、キレート部分の金属錯体である。そのようないくつかの実施形態では、金属錯体は、放射性核種を含む。いくつかの実施形態では、放射性核種は、アルファ放射体、例えば、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、アクチニウム-225(225Ac)、ラジウム-223(223Ra)、鉛-212(212Pb)、トリウム-227(227Th)、及びテルビウム-149(149Tb)、又はそれらの子孫からなる群から選択されるアルファ放射体である。いくつかの実施形態では、放射性核種は、68Ga、111In、177Lu、又は225Acである。いくつかの実施形態では、放射性核種は、225Ac又はその子孫である。
【0017】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下の構造のうちの1つ、又はその金属錯体を含む:
【化3】
【0018】
いくつかの実施形態では、化合物又はその薬学的に許容される塩は、以下の構造、又はその金属錯体を含む:
【化4】
【0019】
いくつかの実施形態では、式Iを参照すると、可変部Aは、キレート部分の金属錯体であり、金属錯体は、放射性核種を含む。特定の実施形態では、放射性核種は、68Ga、111In、177Lu、又は225Acである。特定の実施形態では、放射性核種は、225Acである。特定の実施形態では、放射性核種は、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、アクチニウム-225(225Ac)、ラジウム-223(223Ra)、鉛-212(212Pb)、トリウム-227(227Th)、及びテルビウム-149(149Tb)、又はそれらの子孫からなる群から選択されるアルファ放射体である。特定の実施形態では、アルファ放射体は、225Ac又はその子孫である。
【0020】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物に含まれる抗体又はその抗原結合断片を参照すると、第1の抗原結合ドメインは、以下を含む:
i.以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii.以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0021】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物に含まれる抗体又はその抗原結合断片を参照すると、第1の抗原結合ドメインは、以下を含む:
a.配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
b.配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域。
【0022】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物に含まれる抗体又はその抗原結合断片を参照すると、第2の抗原結合ドメインは、以下を含む:
i.以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3、
又はHCDR1、HCDR2、及びHCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント;並びに
ii.以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3、
又はLCDR1、LCDR2、及びLCDR3の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント)。
【0023】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物に含まれる抗体又はその抗原結合断片を参照すると、第2の抗原結合ドメインは、以下を含む:
i.以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii.以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0024】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物に含まれる抗体又はその抗原結合断片を参照すると、第2の抗原結合ドメインは、以下を含む:
a.配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
b.配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域。
【0025】
いくつかの実施形態では、本抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
a.以下を含む、上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することが可能な第1の抗原結合ドメイン:
i.以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii.以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3;及び
b.以下を含む、cMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメイン:
i.以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
ii.以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0026】
いくつかの実施形態では、本抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
a.第1の抗原結合ドメインのVH領域と、第1の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第1の重鎖;
b.第1の抗原結合ドメインのVL領域と、第1の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第1の軽鎖;
c.第2の抗原結合ドメインのVH領域と、第2の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第2の重鎖;及び
d.第2の抗原結合ドメインのVL領域と、第2の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第2の軽鎖。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のCH領域は、それぞれ配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の重鎖は、ヘテロ二量体を形成し、ここで、任意選択的に、第1及び第2の重鎖の一方は、位置354にシステイン(C)残基、位置366にトリプトファン(W)残基を含み、他方の重鎖は、位置349にシステイン(C)残基、位置407にバリン(V)残基、位置366にセリン(S)、及び位置368にアラニン(A)を含み、ここで、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う。
【0029】
いくつかの実施形態では、本抗体又はその抗原結合断片は、以下:
a.天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、改変CH領域;及び
b.改変CLが天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、対応する改変CL領域
を含み、ここで、
i.第1の重鎖は改変CH領域を含み、第1の軽鎖は対応する改変CL領域を含むか;又は
ii.第2の重鎖は改変CH領域を含み、第2の軽鎖は対応する改変CL領域を含み、
ここで、改変CH領域の置換システインと、対応する改変軽鎖の置換システインとは、ジスルフィド結合を形成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、改変CH領域は、位置126に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含み;対応する改変CL領域は、位置121に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含み、ここで、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のCH領域は、抗体又はその抗原結合断片の、1つ以上のFcγ受容体への結合を低減又は抑制する変異を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2のCH領域は、位置234にフェニルアラニン、位置235にグルタミン酸、及び位置331にセリンを含み、ここで、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う。
【0033】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下を特徴とする:
a.第1のCH領域が、配列番号39に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むこと;
b.第2のCH領域が、配列番号40に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むこと、
c.第1のCL領域が、配列番号41に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むこと;及び
d.第2のCL領域が、配列番号34に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むこと。
【0034】
いくつかの実施形態では、本抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
a.配列番号35に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第1の重鎖;
b.配列番号36に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第2の重鎖;
c.配列番号37に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第1の軽鎖;及び
d.配列番号38に記載される配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、第2の軽鎖。
【0035】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下を特徴とする:
a.第1の重鎖が、配列番号35に記載される配列を有するアミノ酸配列を含むこと;
b.第2の重鎖が、配列番号36に記載される配列を有するアミノ酸配列を含むこと;
c.第1の軽鎖が、配列番号37に記載される配列を有するアミノ酸配列を含むこと;及び
d.第2の軽鎖が、配列番号38に記載される配列を有するアミノ酸配列を含むこと。
【0036】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下を特徴とする:
a.EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインが、カニクイザルEGFRに結合することが可能であること;
b.EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインが、マウスEGFRに結合することが可能であること;
c.cMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインが、カニクイザルcMETに結合することが可能であること;
d.第1の抗原結合ドメインが、EGFRに特異的であること;
e.第2の抗原結合ドメインが、cMETに特異的であること;
f.抗体又はその抗原結合断片が、EGFR及びcMETに同時に会合することが可能であること;
g.抗体又はその抗原結合断片が、細胞内に内在化することが可能であること;
h.抗体又はその抗原結合断片が、インビトロ細胞生存率アッセイで測定した場合に細胞傷害活性を有すること;並びに/又は
i.抗体又はその抗原結合断片が、EGFR及び/又はcMETのリガンド依存性シグナル伝達を遮断することが可能であること。
【0037】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、第1の抗原結合ドメインが、以下のKdを有する親和性でヒトEGFRに結合することが可能であることを特徴とする:
a.10~100nM;
b.20~80nM;
c.30~75nM;又は
d.35~50nM。
【0038】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、第2の抗原結合ドメインが、以下のKdを有する親和性でヒトcMETに結合することが可能であることを特徴とする:
a.10nM未満;又は
b.5nM未満。
【0039】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、第1の抗原結合ドメインが、抗体QD6の重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列(それぞれ配列番号47及び48に記載)を含む抗原結合ドメインの親和性よりも低い親和性でヒトEGFRに結合することが可能であることを特徴とする。
【0040】
いくつかの実施形態では、上記の結合親和性は、表面プラズモン共鳴によって測定される。
【0041】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下の構造:
【化5】
を含み、式中、
【化6】
は、EGFR及びcMETの両方に特異的に結合することが可能である抗体又はその抗原結合断片(例えば、下記のEGFR-cMETモノクローナル二重特異性抗体RAA22/B09 DuetMab)である。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、リジン残基の側鎖アミノ基を介して、A-L
1-(L
2)
n-に連結している。
【0042】
別の態様では、本開示は、上記の化合物の1つと、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とを含む、医薬組成物にも関する。
【0043】
さらに、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に、上記の化合物又はそのそれぞれの組成物を治療有効量で投与することを含む、癌を治療する方法も本発明の範囲内である。
【0044】
いくつかの実施形態では、癌は、副腎皮質癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜腺癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、神経膠腫、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌又はHNSCC)、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌又はNSCLC)、神経芽細胞腫、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌(例えば、膵管腺癌又はPDAC)、胃癌、前立腺癌、腎細胞癌、唾液腺様嚢胞癌、精母細胞性セミノーマ、及びブドウ膜黒色腫からなる群から選択される固形腫瘍癌である。
【0045】
いくつかの実施形態では、癌は、肺癌、大腸癌、膵臓癌、又は頭頚部癌である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の治療方法は、抗増殖剤、放射線増感剤、免疫調節剤又は免疫変調剤を、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することをさらに含む。
【0047】
癌の治療方法における使用のための上記の化合物又は医薬組成物も、本開示の範囲内である。
【0048】
本発明はさらに、癌の治療のための医薬品の製造における、上記化合物又は医薬組成物の使用も包含する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1A-1B】
図1A及び1Bは、それぞれRAA22/B09-57及びQD6/B09-57 DuetMabのグラフ表示である。抗EGFR RAA22及びQD6のFab、抗cMETB09-57のFab、及びホール及びノブ重鎖が示される。構造レンダリングは、個々のドメイン構造の合成物である。
【
図2】
図2は、抗原捕捉構成を使用した同時結合試験がOctet分析によって実施されたことを示す。ヒトcMET抗原をロードしたセンサーは、最初に抗体、次いでヒトEGFR抗原との連続的な会合及び解離の相互作用に曝露された。Ass=会合;Diss=解離;NI-NTA=ニッケルニトリロ三酢酸。
【
図3A】
図3Aは、EGFRとc-Met種の交差反応性を示すELISAの結果を示す。高親和性単一特異性EGFR IgG、QD6及び一価二重特異性EGFR/cMET DuetMAb、QD6/B09は、ヒト、カニクイザル、及びマウスEGFRに結合した。親和性が低下した単一特異性EGFR IgG、RAA22は、QD6と比較して、ヒト、カニクイザル、及びマウスEGFRへの結合がより弱く、対応する一価二重特異性EGFR/c-Met DuetMAb、RAA22/B09は、二価親IgG、RAA22と比較して、ヒト及びカニクイザルEGFRへの結合がさらに弱く、マウスEGFRへの結合はわずかであった。単一特異性c-Met IgG、B09、及び全ての二重特異性バリアントは、ヒト及びカニクイザルのc-Metに対して同等の結合を示したが、マウスのc-Metに対しては検出可能な結合を示さなかった。
【
図3B】
図3Bは、EGFR及びc-Metファミリーの特異性を示すELISAの結果を示す。試験した抗体はいずれも、EGFR HERファミリータンパク質(HER2、HER3、又はHER4)又はc-Metファミリーメンバー(Ron(CD136)又はセマフォリン3a)のいずれにも認識できる結合を示さなかった。
【
図4】
図4は、RAA22/B09二重特異性mAbの内在化及び酸性化された細胞内区画への輸送が、pHAb pH感受性染料(Promega)で標識された抗体を使用して可視化されたことを示す。対照抗体には、R347アイソタイプ対照、並びに一価二重特異性対照抗体である抗EGFRRAA22/R347及び抗cMETB09/R347が含まれていた。pHAb標識抗体を、1.25μg/mLの濃度でNCI-H1975肺癌細胞とともに、37℃、5%CO2の加湿インキュベーター内でインキュベートした。蛍光画像は、Cy3フィルターを使用したOperetta High Content Imagingシステムで指定された時点で捕捉した。経時的な細胞蛍光強度の増加は、pH感受性蛍光によって測定される酸性細胞内区画への内在化及び輸送の証拠であるとみなされた。
【
図5】
図5は、RAA22/B09二重特異性mAbの内在化及び酸性化された細胞内区画への輸送が、pHAb pH感受性染料で標識された抗体を使用して可視化されたことを示すが、細胞はより低い0.625μg/mLの濃度の抗体で処理された。
【
図6A】
図6Aは、H1975細胞におけるQD6/B09及びRAA22/B09モノクローナル抗体(mAb)の内在化の動態を示す。(a)細胞質用CellTracker Blue CMAC(青)、及び2.5μg/mLのQD6/B09-AlexaFluor647(マゼンタ、上パネル)又は2.5μg/mLのRAA22/B09AlexaFluor-647(マゼンタ、下パネル)で標識した細胞の、内在化開始時及び1時間後の画像オーバーレイ。細胞をCellTracker Blue CMACで標識し、次いで、2~8°CでmAbs-AlexaFuor6457と結合させ、内部化条件:(37°C、湿度70%、5%CO2)に供した。
【
図6B】
図6Bは、H1975細胞におけるQD6/B09及びRAA22/B09モノクローナル抗体(mAb)の内在化の動態を示す。アルゴリズムを使用した動態画像の定量分析(材料及び方法)によって決定されたmAb-AlexaFluor647の内在化の時間経過。5分間隔で撮影された動態画像は、細胞質内の抗体の蓄積を決定するためのアルゴリズム(Vainshtein,2015)を使用して処理された。3つの独立した実験のうちの1つについて、QD6/B09-AlexaFluor647(赤)対RAA22/B09-AlexaFluor647(青)の、細胞内の抗体蛍光に対して正規化された細胞質内の抗体シグナル(細胞質内の割合)を示す。内在化速度定数(kint)は、式Fcyt(t)=(1-e
-kint.t)Fmax,cyt(式中、Fmax、cytは、細胞あたりの細胞質強度と細胞あたりの総強度の最大比)による曲線フィッティングを使用して、内在化の時間経過から計算された。kintから計算されたT1/2は、QD6/B09では37.5±10.6分、RAA22/B09では43.2±15.5分であった(n=3)。
【
図7A】
図7Aは、QD6/B09 DuetMab及びそのそれぞれのシングルアーム対照抗体の内在化プロファイルを示す。内部化プロファイルは、各構築物のそれぞれの膜及び細胞質シグナルの時間経過によって表示される。QD6/B09セットは、Opera共焦点蛍光顕微鏡を使用して取得された。
【
図7B】
図7Bは、RAA22/B09 DuetMab及びそのそれぞれのシングルアーム対照抗体の内在化プロファイルを示す。内部化プロファイルは、各構築物のそれぞれの膜及び細胞質シグナルの時間経過によって表示される。このセットは、Zeissスピニングディスク共焦点蛍光顕微鏡を使用して取得された。QD6/B09とQD6/IgGの同一プロファイルは、QD6/B09 DuetMabのEGFRアームによって駆動される内在化モードを示しているが、RAA22/B09 DuetMabでは、効率的な内在化のためにEGFR及びc-METアームの両方の会合が必要である。
【
図8A】
図8Aは、中程度及び高度の標的c-MET及びEGFR細胞表面受容体を発現する細胞におけるRAA22/B09の内在化プロファイルを示す。H1975細胞におけるRAA22/B09-AF647の膜、細胞質、及び総シグナルを示す。2の代表的な実験を1つ示す。H1975細胞は、総強度及び膜強度の同時低下を示し、これは細胞表面からの抗体の解離を示す。
【
図8B】
図8Bは、HCC827細胞におけるものである以外は、
図8Aと均等である。HCC827細胞は、実験の経過にわたって安定した総シグナルを有する。膜シグナルの減少は、抗体の内在化に由来する。
【
図9A】
図9Aは、HCC827細胞におけるRAA22/B09シングルアーム対照抗体の内在化を示す。RAA22/IgGシングルアームの強度プロファイルは、シングルアーム結合によるEGFRへの結合がより弱いため、RAA22/B09よりも約10倍低い。
【
図9B】
図9Bは、B09/IgGシングルアームが、経時的な総シグナル及び膜シグナルの同時低下によって示されるように、細胞膜から解離することを示す。
【
図10A】
図10Aは、キレート、リンカー、及び架橋基を含む二官能性キレートの一般構造を示す概略図である。
【
図10B】
図10Bは、キレート、リンカー、及び標的化部分を含む二官能性抱合体の一般構造を示す概略図である。
【
図10C-10D】
図10C及び
図10Dは、本明細書に開示される2つの例示的なEGFR-cMET放射性免疫抱合体である、[
177Lu]-DOTA-抗EGFR-cMET及び[
225Ac]-DOTA-抗EGFR-cMETの構造を示す概略図である。
【
図11】
図11は、二官能性キレート、4-{[11-オキソ-11-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)ウンデシル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物B)の合成を示す概略図である。化合物Bの合成は、実施例6に記載されている。
【
図12】
図12は、二官能性キレート、4-{[2-(2-{2-[3-オキソ-3-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)プロポキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物C)の合成を示す概略図である。化合物Cの合成は、実施例7に記載されている。
【
図13】
図13は、[
177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体(例えば、下記の化合物E及び化合物F)の合成のための抱合及び放射性標識を示す概略図である。実施例8を参照されたい。
【
図14A-14B】
図14A~14Bは、4μMの非標識抗体の不存在下(総結合)又は存在下(非特異的結合)における、EGFR及びc-METの発現レベルが異なる様々な細胞株への化合物Eの結合を示す。特異的結合は、総結合から非特異的結合を差し引いて計算された。示される値は、平均±SEM(n=3)である。実施例9を参照されたい。
【
図15】
図15は、EGFR及びc-METの発現レベルが異なるHCC827細胞、HT29細胞、H441細胞、及びH1975細胞における、化合物E(10nM)のインキュベーション後2時間及び24時間での内在化(又はインビトロ残留)の結果を示す。示される値は、平均±SEM(n=3)である。実施例10を参照されたい。
【
図16A-16E】
図16A~16Eは、様々な動物モデルにおける生体内分布試験の結果を表すプロットを示し、静脈内注射後の特定の時点で皮下異種移植を受けた雌性balb/cマウス(n=3)に化合物E(0.7MBq/2μg)を注射した。組織1グラムあたりの注入量の割合(%ID/g)がx軸にプロットされ、4、24、48、96、168時間での血液、骨、脳、心臓、腸、腎臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、胃、皮膚、尿及び膀胱、並びに腫瘍について示される。実施例11を参照されたい。
【
図17A-17C】
図17A~17Cは、化合物F(50~400nCi/2μg)、冷式抗体、及びビヒクルを静脈内注射した後の雌性balb/cマウス(n=5)の様々な動物モデルにおけるインビボ有効性試験の結果を表すプロットを示す。実施例12を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
放射性免疫抱合体は、疾患状態で上方制御されるタンパク質又は受容体を標的とし、放射性ペイロードを送達して対象の細胞を損傷及び死滅させるように設計されている(放射性免疫療法)。放射性ペイロードを送達すると、標的化されたアルファ、ベータ、ガンマ粒子、又はオージェ電子の放出が起こり、DNAに直接的な影響(一本鎖又は二本鎖DNAの切断など)が生じ、又はバイスタンダー効果若しくはクロスファイヤー効果などの間接的な影響が生じ得る。
【0051】
放射性免疫抱合体は、典型的には、生物学的標的化部分(例えば、EGFR及びcMETの両方に特異的に結合することが可能な抗体又はその抗原結合断片)、放射性核種(例えば、アルファ又はベータ放射体)、及びこれら2つを結合する分子を含有する。標的親和性を維持しながら構造変化が最小限に抑えられるように、二官能性キレートが生物学的標的化部分に付加されると、抱合体が形成される。放射性標識されると、最終的な放射性免疫抱合体が形成される。
【0052】
二官能性キレートは、キレート、リンカー、及び架橋基を構造的に含有する(
図10A)。新しい二官能性キレートを開発する場合、大半の取り組みは分子のキレート部分に集中する。標的化部分に抱合した様々な環状及び非環状構造を有する二官能性キレートの例がいくつか記載されている。[Bioconjugate Chem.2000,11,510-519;Bioconjugate Chem.2012,23,1029-1039;Mol Imaging Biol.2011,13,215-221,Bioconjugate Chem.2002,13,110-115.]
【0053】
安全で効果的な放射性免疫抱合体を開発するための重要な要素の1つは、正常組織におけるオフターゲット毒性を最小限に抑えながら有効性を最大化することである。これは新薬開発の主要理念の1つであるが、放射免疫療法への応用には新たな課題が伴う。放射性免疫抱合体は、治療効果を得るために、治療用抗体で必要とされるように受容体を遮断する必要はなく、抗体薬物抱合体(「ADC」)で必要とされるように細胞内に細胞傷害性ペイロードを放出する必要もない。しかし、毒性粒子の放出は一次(放射性)崩壊の結果として起こる事象であり、投与後に身体内の任意の箇所でランダムに発生し得る。放出が起こると、放出範囲内の周囲の細胞に損傷が生じ得、これによりオフターゲット毒性が生じ得る。従って、これらの放射の正常組織への曝露を制限することが、新しい治療用放射性免疫抱合体を開発するための鍵となる。
【0054】
オフターゲット曝露を低減するための1つの潜在的方法は、身体(例えば、体内の正常組織)から放射能をより効果的に除去することである。1つのメカニズムは、生物学的標的化剤のクリアランス率を増加させることである。このアプローチでは、生物学的標的化剤の半減期を短縮する方法を特定することが必要になると思われるが、これは生物学的標的化剤について十分に説明されていない。メカニズムにかかわらず、薬物クリアランスの増加は、身体からの薬物の除去がより速くなることで作用部位での有効濃度が低下し、その結果、より高い総用量が必要となり得、正常組織への総放射性用量を低減するという所望の結果が得られなくなるという点で、薬力学/有効性にも悪影響を及ぼす。
【0055】
その他の取り組みは、放射性部分を含有する分子の部分の代謝を促進することに集中している。この目的のために、「切断可能リンカー」と呼ばれるものを使用して、生物学的標的化剤からの放射能の切断速度を高めるためのいくつかの取り組みが行われてきた。しかし、切断可能なリンカーは、放射性免疫抱合体に関しては異なる意味に解釈されてきた。Cornelissenらは、切断可能なリンカーを、還元システインを介して二官能性キレートが生物学的標的化剤に結合するものとして説明しており、一方、他の研究者らは、放射性免疫抱合体を切断剤/酵素と併用して放出する必要がある酵素切断可能なシステムの使用を説明している[MolCancerTher.2013,12(11),2472-2482;Methods Mol Biol.2009,539,191-211;Bioconjug Chem.2003,14(5),927-33]。これらの方法は、システイン連結の場合、生物学的標的化部分の性質を変更するか、又は、引用された記載の場合、2つの薬剤の投与を必要とするため、薬剤開発の観点(酵素切断可能なシステム)からは実用的ではない。
【0056】
本開示は、とりわけ、異化及び/又は代謝後に身体からより効果的に排出され、それによって治療効果を維持しながら身体から放射能をより効果的に排出する化合物、例えば放射性免疫抱合体を提供する。この予想外の優位性は、二官能性キレートのリンカー領域に改変を加えることによって達成される。
【0057】
開示された免疫抱合体は、いくつかの実施形態では、公知の二官能性キレートと比較した場合、例えば、完全な分子の薬物動態を維持しながら、異化/代謝産物の排泄の程度を増加させることによって、全身放射能の低減を達成し得る。いくつかの実施形態では、この放射能の減少は、結合特異性(インビトロ結合)、細胞保持、及びインビボでの腫瘍取り込みなどの他のインビトロ及びインビボ特性に影響を与えることなく、異化/代謝副産物のクリアランスによって生じる。従って、いくつかの実施形態では、提供される化合物は、オンターゲット活性を維持しながら、人体内の放射能を低減することを達成する。
【0058】
定義
本明細書で使用される場合、標的化部分の「結合(bind)」又は「結合している」という用語は、本明細書に記載される標的分子(例えば、ヒトEGFR-cMET)との少なくとも一時的な相互作用又は会合を意味する。
【0059】
本明細書で使用される「二官能性キレート」という用語は、キレート、リンカー、及び架橋基を含む化合物を指す。例えば、
図10Aを参照されたい。「架橋基」は、2つ以上の分子を結合すること、例えば、二官能性キレートと標的化部分を、共有結合によって結合することが可能な反応性基である。
【0060】
「二官能性抱合体」という用語は、本明細書で使用される場合、そのキレート又は金属錯体、リンカー、及び標的化部分、例えば、抗体又はその抗原結合断片を含む、化合物を指す。例えば、
図10Bを参照されたい。
【0061】
「癌」という用語は、本明細書で使用される場合、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などの、悪性腫瘍細胞の増殖によって引き起こされるあらゆる癌を指す。いくつかの実施形態では、本開示の癌は、肺癌、大腸癌、膵臓癌、又は頭頸部癌などであるが、これらに限定されない、EGFR及びcMETを発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)を含む。
【0062】
本明細書で使用される「キレート」という用語は、中心金属又は放射性金属原子に2つ以上の点で結合できる有機化合物又はその一部を指す。
【0063】
「抱合体」という用語は、本明細書で使用される場合、キレート基又はその金属錯体、リンカー基を含有し、任意選択的に標的化部分、例えば、抗体又はその抗原結合断片を含有する分子を指す。
【0064】
本明細書において、別段の記載がない限り、「定常領域」という語句は、抗体又はその断片(例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4定常領域)に関して使用される場合、野生型定常領域及びバリアント(例えば、野生型定常領域の参照配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する定常領域)の両方を包含することを意図している。
【0065】
本明細書で使用する場合、「化合物」という用語は、示される構造の全ての立体異性体、幾何異性体、及び互変異性体を含むことを意味する。
【0066】
本明細書に列挙又は記載される化合物は、非対称(例えば、1つ以上の立体中心を有する)であってもよい。別段の指定がない限り、エナンチオマー及びジアステレオマーなどの全ての立体異性体が企図される。本開示で考察される、非対称に置換された炭素原子を含有する化合物は、光学活性形態又はラセミ形態で単離することができる。光学活性出発物質から光学活性形態を調製する方法は、ラセミ混合物の分割又は立体選択的合成によるものなど、当技術分野で知られている。
【0067】
本明細書において、「検出剤」は、抗原を含有する細胞の位置を特定することによって疾患を診断するのに有用な分子又は原子を指す。検出剤によってポリペプチドを標識する様々な方法が当技術分野で知られている。検出剤の例には、放射性同位体及び放射性核種、染料(ビオチン-ストレプトアビジン複合体など)、造影剤、発光剤(フルオレセインイソチオシアネート又はFITC、ローダミン、ランタニド蛍光体、シアニン、及び近赤外線染料など)、及びガドリニウムキレートなどの磁性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
本明細書で使用する場合、「放射性核種」という用語は、放射性崩壊を起こすことが可能な原子(例えば、3H、14C、15N、18F、35S、44Sc、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、75Br、76Br、77Br、89Zr、86Y、87Y、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、105Rh、109Pd、111In、123I、124I、125I、131I、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、229Th、66Ga、67Ga、68Ga、82Rb、117mSn、201Tl)を指す。放射性核種、放射性同位体、又は放射性同位体という用語も、放射性核種を説明するために使用され得る。本明細書に記載されるように、放射性核種を検出剤として使用してもよい。いくつかの実施形態では、放射性核種は、治療剤、例えば、アルファ放射体放射性核種として使用され得る。
【0069】
薬剤(例えば、前述の抱合体のいずれか)の「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、臨床結果などの有益な結果又は望ましい結果をもたらすのに十分な量であり、従って、「有効量」はそれが適用される状況によって異なる。例えば、治療用途では、「有効量」は、障害及びその合併症の症状を治癒するか、又は少なくとも部分的に抑制するのに十分な量、及び/又は疾患又は病状に関連する少なくとも1つの症状を実質的に改善するのに十分な量であり得る。典型的には、本開示の文脈における「有効量」は、投与された患者の一部において少なくとも何らかの測定可能な治療応答又は所望の効果を生じる、本明細書に開示される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)、例えばAc-225放射性免疫抱合体の量である。例えば、癌の治療では、疾患又は病状の症状を軽減、予防、遅延、抑制、又は停止させる薬剤又は化合物が治療的に有効であり得る。治療有効量の薬剤又は化合物は、疾患又は病状を治癒させるために必要ではないが、例えば、疾患又は病状の発症を遅らせ、妨げ、又は予防する、疾患又は病状の症状を改善する、又は疾患又は病状の期間を変更するように、疾患又は病状に対する治療を提供し得る。例えば、疾患又は病状は、個体における重症度が軽減し得、且つ/又は回復が促進され得る。有効量は、単回用量又は複数回(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、又は少なくとも6回)用量の投与によって投与され得る。
【0070】
「免疫抱合体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体(又はその抗原結合断片)、ナノボディ、アフィボディ、又はフィブロネクチンIII型ドメインからのコンセンサス配列などの、標的化部分を含む抱合体を指す。いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、標的化部分あたり平均少なくとも0.10個の抱合体(例えば、標的化部分あたり平均少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、又は8個の抱合体)を含む。
【0071】
本明細書で使用される「放射性抱合体」という用語は、本明細書に記載される放射性同位体又は放射性核種のいずれかなどの放射性同位体又は放射性核種を含む、任意の抱合体を指す。
【0072】
本明細書で使用される「放射性免疫抱合体」という用語は、本明細書に記載される放射性同位体又は放射性核種のいずれかなどの放射性同位体又は放射性核種を含む、任意の免疫抱合体を指す。本開示で提供される放射性免疫抱合体は、典型的には、放射性同位体又は放射性核種から形成された金属錯体を含む二官能性抱合体を指す。
【0073】
本明細書で使用される「放射免疫療法」という用語は、放射性免疫抱合体を使用して治療効果を生み出す方法を指す。いくつかの実施形態では、放射性免疫療法は、それを必要とする対象への放射性免疫抱合体の投与を含み、ここで、放射性免疫抱合体の投与は、対象において治療効果を生じる。いくつかの実施形態では、放射性免疫療法は、放射性免疫抱合体の細胞への投与を含み、ここで、放射性免疫抱合体の投与により、細胞が殺傷される。放射免疫療法は、細胞の選択的殺傷を伴うが、いくつかの実施形態では、細胞は癌を有する対象の癌細胞である。
【0074】
「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化された本明細書に記載される放射性免疫抱合体を含有する組成物を表す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、哺乳動物における疾患の治療のための治療計画の一部として、政府規制当局の承認を得て製造又は販売される。医薬組成物は、例えば、単位剤形での経口投与用(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、又はシロップ);局所投与用(例えば、クリーム、ジェル、ローション、又は軟膏);静脈内投与用(例えば、粒子塞栓のない滅菌溶液として、及び静脈内使用に適した溶媒系で);又は本明細書に記載される他の任意の製剤で、製剤化することができる。
【0075】
「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載される化合物以外(例えば、活性化合物を懸濁可能又は溶解可能なビヒクル)であり、患者において無毒性及び非炎症性である特性を有する任意の成分を指す。賦形剤としては、例えば、抗付着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮補助剤、崩壊剤、色素(色)、皮膚軟化剤、乳化剤、注入剤(希釈剤)、フィルム形成剤若しくはコーティング、香味剤、香料、流動促進剤(流動促進物質)、滑沢剤、保存剤、印刷インク、放射線防護剤、吸着剤、懸濁化若しくは分散剤、甘味料、又は水和の水が挙げられ得る。代表的な賦形剤としては、アスコルビン酸、ヒスチジン、リン酸緩衝液、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、シェラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(トウモロコシ)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC及びキシリトールが挙げられるが限定されない。
【0076】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、又はアレルギー反応を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した、本明細書に記載される化合物の塩を表す。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、薬学的に許容される塩は:Bergeら,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離及び精製中にその場で調製することができるか、又は遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることによって個別に調製することができる。
【0077】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩として調製することが可能であるように、イオン化可能な基を有していてもよい。これらの塩は、無機酸又は有機酸を含む酸付加塩であってもよく、又は本発明の化合物の酸性形態の場合には、塩は無機塩基又は有機塩基から調製されてもよい。多くの場合、化合物は、薬学的に許容される酸又は塩基の付加生成物として調製される薬学的に許容される塩として調製又は使用される。好適な薬学的に許容される酸及び塩基は、当技術分野で周知であり、例えば、酸付加塩を形成するための塩酸、硫酸、臭化水素酸、酢酸、乳酸、クエン酸、又は酒石酸、及び塩基性塩を形成するための水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、様々なアミンなどである。適切な塩を調製するための方法は、当技術分野において十分に確立されている。
【0078】
代表的な酸付加塩としては、とりわけ、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アルパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンホレート、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトネート、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、硫酸ラウリル、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデンカン酸塩、吉草酸塩が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウム、並びに無毒性アンモニウム、四級アンモニウム及びアミンカチオン、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びエチルアミンを含むがこれらに限定されないものが挙げられる。
【0079】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合した一連の少なくとも2つのアミノ酸を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは少なくとも3~5個のアミノ酸を含み、各アミノ酸は少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合している。当業者であれば、ポリペプチドには、1つ以上の「非天然」アミノ酸、又はそれにもかかわらずポリペプチド鎖に組み込むことができる他の実体が含まれ得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはグリコシル化されていてもよく、例えば、ポリペプチドは、1つ以上の共有結合した糖部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、単一の「ポリペプチド」(例えば、抗体ポリペプチド)は、2つ以上の個別のポリペプチド鎖を含み得、これは、場合によっては、例えば1つ以上のジスルフィド結合又は他の手段によって、互いに連結され得る。
【0080】
「対象」は、ヒト又は非ヒト動物(例えば、哺乳類)を意味する。
【0081】
「実質的同一性」又は「実質的に同一である」とは、それぞれ参照配列と同じポリペプチド配列を有するポリペプチド配列、又は、2つの配列が最適に整列されている場合に参照配列内の対応する位置でそれぞれ指定された割合のアミノ酸残基が同じであるポリペプチド配列を意味する。例えば、参照配列と「実質的に同一」なアミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。ポリペプチドの場合、比較配列の長さは通常、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、75、90、100、150、200、250、300、又は350の連続したアミノ酸(例えば、全長配列)になる。配列同一性は、デフォルト設定の配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705)。を使用して測定してもよい。このようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、及びその他の変更について、相同性の程度を割り当てることによって、類似の配列を適合させ得る。
【0082】
本明細書で使用され、当技術分野でよく理解されているように、病状(例えば、癌などの本明細書に記載される病状)を「治療すること」又は病状の「治療」とは、臨床結果などの有益な又は望ましい結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の臨床結果としては、限定はされないが、検出可能であれ検出不能であれ、1つ以上の症状又は病態の軽減又は改善;疾患、障害又は病態の程度の縮小、疾患、障害又は病態が安定化している(即ち悪化していない)状態、疾患、障害又は病態の広がりを防ぐこと、疾患、障害又は病態の進行の遅延又は緩徐化、疾患、障害又は病態の改善又は緩和、及び寛解(部分的であれ全面的であれ)を挙げることができる。疾患、障害、又は症状を「緩和すること」は、治療の不存在下での程度又は経過と比較して、疾患、障害、又は病状の程度及び/又は望ましくない臨床所見が軽減され、且つ/又は進行の経過が遅くなるか又は長くなることを意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、定量的な値に関して使用される「約」又は「およそ」という用語は、特に別段の記載がない限り、記載された定量的な値自体を含む。本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、別段の指定がない限り、又は文脈から推測されない限り、記載された定量値からの±10%の変動を指す。
【0084】
本明細書で使用される「標的化部分」という用語は、所与の標的に結合することが可能な任意の分子又は分子の任意の部分を指す。「EGFR-cMET標的化部分」という用語は、EGFR及びcMETの両方に結合することが可能な標的化部分(例えば、抗体又はその抗原結合断片)、例えば抗EGFR-cMET抗体を指す。
【0085】
本明細書において、「断片」という用語は、EGFR又はcMET断片を指すために使用される場合、N末端及び/又はC末端が切断されたEGFR若しくはcMET、又はそのタンパク質ドメインを指す。別段の記載がない限り、本明細書に記載される実施形態に従って使用されるEGFR又はcMETの断片は、本開示に記載されるEGFR-cMET標的化部分によって認識及び/又は結合される全長EGFR又はcMETの能力を保持する。
【0086】
本開示を説明する文脈における(特に請求項の文脈における)用語「1つの」及び「その」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈すべきである。
【0087】
特に明記されていない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、包括的であり、「又は」及び「及び」の両方を包含すると理解される。
【0088】
本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、他方を含む又は含まない指定された特徴又は成分の各々の具体的な開示と解釈されるべきである。
【0089】
用語「含む」、「有する」、「包含する」及び「含有する」は、別途注記のない限り、非限定的用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるものである。「からなる」という用語は、限定的なものとして解釈すべきである。
【0090】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、そのアミノ酸配列が、指定された抗原又はその断片に特異的に結合する免疫グロブリン及びその断片を含む、ポリペプチドを指す。本発明による抗体は、任意のタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)又はサブタイプ(例えば、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)であり得る。当業者であれば、抗体の特徴的な配列又は部分には、抗体の1つ以上の領域(例えば、可変領域、超可変領域、定常領域、重鎖、軽鎖、及びそれらの組み合わせ)に見られるアミノ酸が含まれ得ることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗体の特徴的な配列又は部分には、1つ以上のポリペプチド鎖が含まれ、同じポリペプチド鎖又は異なるポリペプチド鎖に見られる配列要素が含まれ得ることを理解するであろう。
【0091】
本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」は、親抗体の結合特性の特異性を保持する抗体の部分を指す。
【0092】
本開示の抗体又はその抗原結合断片は、単離及び/又は実質的に精製され得る。
【0093】
化合物、例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体
一態様では、本開示は、以下の構造、又はその薬学的に許容される塩を含む化合物、例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体を提供する:
A-L1-(L2)n-B
式I
(式中、
Aは、キレート部分又はその金属錯体であり、
Bは、EGFR及びcMETの両方に結合することが可能な抗体又はその抗原結合断片であり、抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に開示される特徴を有し、
L1は、結合、C=O、C=S、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
nは、1~5の整数(両端を含む)であり;
L2は、それぞれ独立して式II:
-X1-L3-Z1-
式II
の構造を有し、式中、
X1は、-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-*、-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-*、-OC(O)NR1-*、-NR1C(O)O-*、-NR1C(O)NR1-*、-CH2-Ph-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-Ph-CH2-*、-CH2-Ph-NH-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-NH-Ph-CH2-*、-O-*、又は-NR1-*であり、式中、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、又は任意選択的に置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;
L3は、任意選択的に置換されたC1-C50アルキル又は任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキルであり、
Z1は、-CH2-#、-C(O)-#、-C(S)-#、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR2C(O)-#、-C(O)NR2-#、又は-NR2-#であり、式中、「#」は、Bへの接続点を示し、R2は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである)。
【0094】
アルキル、ヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールの典型的な置換基としては、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、OH、CN、ニトロ、アミノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、C1-6ヘテロアルキル、C1-6ヘテロシクロアルキル、ハロアルキル(例えば、CF3)、アルコキシ(例えば、OCH3)、アルキルアミノ(例えば、NH2CH3)、スルホニル、アリール、及びヘテロアリールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)は、以下に示す構造、又はその金属錯体:
【化7】
であり、式中、Bは、本明細書に開示されるEGFR-cMET抗体又はその抗原結合断片である。
【0096】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、以下の構造:
【化8】
のうちの1つ、又はその金属錯体を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、提供される化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)は、最大約25nM、最大約20nM、最大約15nM、最大約12.5nM、最大約10nM、最大約7.5nM、最大約7nM、最大約6.5nM、最大約6nM、最大約5nM、最大約4nM、最大約3.5nM、最大約3nM、又は最大約2.5nMのKd値で、異なるEGFR及びcMETの発現レベルの異なる細胞株に結合することが可能である。いくつかの実施形態では、提供される化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)は、約15nM、約12.5nM、約10nM、約7.5nM、約7nM、約6.5nM、約6nM、約5nM、約4mM、約3.5nM、約3nM、又は約2.5nMのKd値で、異なるEGFR及びcMETの発現レベルの異なる細胞株に結合することが可能である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書でさらに説明されるように、化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)は、キレート部分又はその金属錯体を含み、その金属錯体は、放射性核種を含み得る。いくつかのそのような化合物では、キレート部分とEGFR-cMET標的化部分(例えば、EGFR-cMET抗体)の平均率又は中央値比は、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、又は約1である。いくつかの化合物では、キレート部分とEGFR-cMET標的化部分(例えば、EGFR-cMET抗体)の平均率又は中央値比は約1である。
【0099】
いくつかの実施形態では、放射性免疫抱合体が哺乳動物に投与された後、腸経路、腎臓経路、又はその両方によって排泄される放射線の割合(投与される放射線の総量のうち)は、参照放射性免疫抱合体が投与された同等の哺乳動物によって排泄される放射線の割合よりも大きい。「参照免疫抱合体」は、少なくとも(1)異なるリンカーを有すること;(2)異なるサイズの標的化部分を有すること;及び/又は(3)標的化部分を欠くことにおいて、本明細書に記載される放射性免疫抱合体とは異なる公知の放射性免疫抱合体を意味する。いくつかの実施形態では、参照放射性免疫抱合体は、[90Y]-イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン(90Y))及び[111In]-イブリツモマブチウキセタン(ゼバリン(111In))からなる群から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、所与の経路又は経路セットによって排泄される放射線の割合は、参照放射性免疫抱合体を投与された同等の哺乳動物によって同じ経路で排泄される放射線の割合よりも、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%大きい。いくつかの実施形態では、排泄される放射線の割合は、参照放射性免疫抱合体を投与された同等の哺乳動物によって排泄される放射線の割合よりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は少なくとも10倍大きい。排泄の程度は、当技術分野で知られている方法、例えば、尿及び/又は糞便中の放射能を測定すること、及び/又は一定期間にわたる全身放射能を測定することによって、測定することができる。例えば、国際公開第2018/024869号パンフレットも参照されたい。
【0101】
いくつかの実施形態では、排泄の程度は、投与後少なくとも又は約12時間、投与後少なくとも又は約24時間、投与後少なくとも又は約2日、投与後少なくとも又は約3日、投与後少なくとも又は約4日、投与後少なくとも又は約5日、投与後少なくとも又は約6日、又は投与後少なくとも又は約7日の期間に測定される。
【0102】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が哺乳動物に投与された後、化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)は、参照化合物(例えば、参照抱合体、例えば、参照放射性免疫抱合体などの参照免疫抱合体)と比較して、オフターゲット結合効果(例えば、毒性)の減少を示す。いくつかの実施形態では、このオフターゲット結合効果の減少は、本明細書に記載されるように、より高い排泄速度も示す化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)の特徴である。
【0103】
標的化部分
標的化部分には、所与の標的(例えば、EGFR若しくはcMET、又はEGFR-cMET)に結合することが可能な(例えば、特異的に結合することが可能な、特異的に結合するなど)任意の分子又は分子の任意の部分が含まれる。いくつかの実施形態では、標的化部分は、タンパク質又はポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、標的化部分は、抗体又はその抗原結合断片、ナノボディ、アフィボディ、及びフィブロネクチンタイプIIIドメイン(例えば、センチリン又はアドネクチン)からのコンセンサス配列からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、部分は、標的化部分及び治療部分の両方であり、すなわち、部分は、所与の標的に結合することが可能であり、治療上の利益も付与する。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、少なくとも50kDa、少なくとも75kDa、少なくとも100kDa、少なくとも125kDa、少なくとも150kDa、少なくとも175kDa、少なくとも200kDa、少なくとも225kDa、少なくとも250kDa、少なくとも275kDa、又は少なくとも300kDaの分子量を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、EGFR及びcMETの両方に特異的に結合し、それらを阻害することが可能である。「阻害する」とは、標的化部分がEGFR、cMET、又はその両方の1つ以上の機能を少なくとも部分的に阻害することを意味する。いくつかの実施形態では、標的化部分は、EGFR、cMET、又はその両方の下流のシグナル伝達を障害し、例えば、様々なEGFR及びcMETの発現レベルを有する腫瘍細胞の増殖を抑制する。
【0106】
標的
EGFR
ヒトEGFR(プロトオンコジーンc-ErbB-1、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-1及びEC2.7.10.1としても知られる)は、UniProt P00533によって識別されるタンパク質である。ヒトEGFR遺伝子(ERBB、ERBB1及びHER1としても知られる)によってコードされたmRNAの選択的スプライシングにより、4つのアイソフォーム:アイソフォーム1(UniProt:P00533-1、v2(最終配列更新日:1997年11月1日));アイソフォーム2(UniProt:P00533-2、v1)(アイソフォーム1に対して置換F404L及びL405Sを含み、アイソフォーム1の位置406~1210に対応するアミノ酸配列を欠く);アイソフォーム3(UniProt:P00533-3、v1)(アイソフォーム1の位置628~705に置換を含み、アイソフォーム1の位置706~1210に対応するアミノ酸配列を欠く);及びアイソフォーム4(UniProt:P00533-4)(アイソフォーム1に対して置換C628Sを含み、アイソフォーム1の位置629~1210に対応するアミノ酸配列を欠く)が生じる。
【0107】
EGFRの構造及び機能は、例えば、Ferguson,Annu Rev Biophys.(2008)37:353-373.でレビューされている。EGFRは、上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーの受容体である膜貫通タンパク質である。受容体は、大きな細胞外領域、単一の膜貫通ドメイン、細胞内の膜近傍ドメイン、チロシンキナーゼドメイン、及びC末端調節領域を含む。EGFRがリガンドに結合すると、受容体の二量体化、及びEGFRのC末端調節領域のいくつかのチロシン残基(Y992、Y1045、Y1068、Y1148及びY1173)の自己リン酸化が誘導される。
【0108】
異常なEGFR発現/活性は、神経系障害及び多くの癌を含む多くの疾患に関係している。
【0109】
本明細書において、「EGFR」は、任意の種のEGFRを指し、任意の種のEGFRアイソフォーム、断片、バリアント、又は相同体を含む。
【0110】
cMet
ヒトcMET(肝細胞成長因子受容体(HGFR)又はチロシンタンパク質キナーゼMetとしても知られる)は、UniProtP08581によって特定されたタンパク質である。ヒトMET遺伝子によってコードされるmRNAの選択的スプライシングにより、3つのアイソフォーム:アイソフォーム1(UniProt:P08581-1、v4(最終配列更新日:2009年7月7日));アイソフォーム2(UniProt:P08581-2)(アイソフォーム1の位置755にアミノ酸配列「STWWKEPLNIVSFLFCFAS」が挿入されたもの);及び可溶性metバリアント4としても知られるアイソフォーム3(UniProt:P08581-3)(アイソフォーム1の位置755~764に対応するアミノ酸配列が「RHVNIALIQR」に置換され、さらにアイソフォーム1の位置765~1390に対応するアミノ酸配列を欠く)が生じる。
【0111】
cMETの構造は、例えばGherardi,2003でレビューされており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。cMETは、ジスルフィド結合したアルファ鎖(50kDa)及びベータ鎖(145kDa)から構成されるヘテロ二量体である。cMETは、肝細胞成長因子(HGF)への結合を媒介するN末端Semaドメインと、細胞内キナーゼドメインを含む。細胞表面でのリガンド結合は、下流のシグナル伝達分子のドッキング部位、及びいくつかのシグナル伝達カスケードの活性化を提供する、その細胞内ドメイン上のcMETの自己リン酸化を誘導する。
【0112】
cMETは上皮細胞の表面の正常組織で発現する。cMETの過剰発現は多くのヒトの腫瘍及び癌で観察されており、転移性表現型及び予後不良と関連することがよくある。cMET発現レベルが高いことが観察されている癌の例としては、非小細胞肺癌、膵臓癌、大腸癌、頭頸部扁平上皮癌、乳癌及び食道胃癌が挙げられる。これらの癌では、EGFR及びcMETの共発現がよく観察される。
【0113】
抗体又はその抗原結合断片
「抗体」という用語は、天然に生成されたのか、又は部分的若しくは完全に合成によって生成されたのかに関わらない免疫グロブリンについて説明するものである。抗体は、ヒト又はヒト化抗体であってよい。抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。抗体の例には、免疫グロブリンG(IgG)などの免疫グロブリンのアイソタイプがあり、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4などのそれらのアイソタイプのサブクラス、並びにこれらの断片がある。
【0114】
従って「抗体」という用語は、本明細書で使用する場合、それらが関連する標的分子に結合することが示される限り、抗体断片を含む。抗体断片の例としては、Fv、scFv、Fab、scFab、F(ab’)2、Fab2、ダイアボディー、トリアボディー、scFv-Fc、ミニボディー及び単一ドメイン抗体(例えば、VhH)などが挙げられる。文脈上別の解釈を要する場合を除き、本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、従って「抗体又はその断片」に相当するものである。
【0115】
抗体及びそれらを構築する方法及びその使用は、当技術分野においてよく知られており、例えばHolliger & Hudson,Nature Biotechnology 23(9):1126-1136(2005)に記載されている。元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ分子を生成するために、モノクローナル抗体及び他の抗体を入手し、組換えDNA技術の技法を使用することが可能である。そのような技法には、1つの抗体のCDR又は可変領域を異なる抗体に導入することが含まれ得る(欧州特許出願公開第A-184187号明細書、GB2188638A号明細書、及び欧州特許出願公開第A-239400号明細書)。
【0116】
モノクローナル抗体技術に関連する現在の技法の観点から、大部分の抗原に対する抗体を調製することができる。抗原結合ドメインは、抗体の一部(例えば、Fab断片)であってもよく、又は合成抗体断片(例えば、単鎖Fv断片(scFv))であってもよい。選択された抗原に好適なモノクローナル抗体は、公知の技法、例えば、“Monoclonal Antibodies;A manual of techniques”,H Zola(CRC Press,1988)、及び“Monoclonal Hybridoma Antibodies;Techniques and Applications”,J G R Hurrell(CRC Press,1982)に記載されている技法によって調製してもよい。キメラ抗体については、Neuberger,1988で考察されている。
【0117】
本開示による抗体は、抗原結合ドメインを含む。「抗原結合ドメイン」は、標的抗原の全部又は一部と結合する分子の部分を表現する。抗原が大型である場合、抗体は抗原の特定部分のみと結合してもよく、その部分はエピトープと称される。抗体抗原結合部位は、1つ以上の抗体可変ドメインによって提供されてもよい。抗体の抗原結合部位は、好ましくは、軽鎖可変(VL)領域及び重鎖可変(VH)領域を含む。抗原結合ドメインのVH及びVL領域が一緒になってFv領域を構成する。
【0118】
抗原結合ドメインは、一般的に、6つの相補性決定領域(CDR)、つまり、VH領域に3つ(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、並びにVL領域に3つ(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)の相補性決定領域(CDR)を含む。6つのCDRが一緒になって、抗原結合ドメインのパラトープ(標的抗原に結合する抗原結合ドメインの部分)を定義する。
【0119】
VH領域及びVL領域は、各CDRの両側にフレームワーク領域(FR)を含み、これによってCDRに足場が提供される。N末端からC末端にかけて、VH領域は以下の構造:N末端-[HFR1]-[HCDR1]-[HFR2]-[HCDR2]-[HFR3]-[HCDR3]-[HFR4]-C末端から構成され、VL領域は、以下の構造:N末端-[LFR1]-[LCDR1]-[LFR2]-[LCDR2]-[LFR3]-[LCDR3]-[LFR4]-C末端を含む。
【0120】
抗体のCDR及びFRを定義するためには、Kabat,1991、Chothia,1987に記載されているもの、LeFranc,2015に記載されているIMGT番号付け、Retter,2005に記載されているVBASE2など、いくつかの異なる規則がある。本明細書に記載される抗体のVH領域及びVL領域のCDR及びFRは、Kabat(Kabat,1991)に従って定義した。
【0121】
少なくとも2つの抗原結合ドメインを含む抗体は、そのそれぞれが異なる標的に結合することが可能であり、「二重特異性抗体」と称し得る。対照的に、単一の標的(例えば、EGFR又はcMET)にのみ結合する抗体は、「単一特異性抗体」と呼ばれる。本発明は、EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメイン、及びcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインを含む、二重特異性抗体又はその抗原結合断片を含む化合物(例えば、放射性免疫抱合体)を提供する。
【0122】
抗EGFR抗原結合ドメイン
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、EGFRに結合することが可能な抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、EGFRに結合することが可能な抗体のFRをさらに含む。すなわち、いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、EGFRに結合することが可能な抗体のVH領域及びVL領域を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、EGFR結合抗体クローンRAA22のVH/VL領域であるか、又はそれに由来する、VH領域及びVL領域を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗EGFR抗体クローンRAA22の3つのHCDR又は3つのLCDR、好ましくは3つのVH CDR及び3つのVL CDRを含む。抗体RAA22のVH及びVLドメイン配列は本明細書に記載されており、従って、前記抗体の3つのVH及び3つのVLドメインCDRは、前記配列から決定され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、(1)に従うVH領域を含む:
(1)以下のCDRを含むVH領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3。
【0126】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、(1)に従うVH領域を含み、ここで、VH領域は、下記の(2)に従うFRをさらに含む:
(2)配列番号7のアミノ酸配列を有するHFR1
配列番号8のアミノ酸配列を有するHFR2
配列番号9のアミノ酸配列を有するHFR3
配列番号10のアミノ酸配列を有するHFR4、
又はHFR1、HFR2、HFR3、若しくはHFR4の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント。
【0127】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(3)に従うVH領域を含む:
(3)(1)に従うCDRと(2)に従うFRとを含む、VH領域。
【0128】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、(4)に従うVH領域を含む:
(4)配列番号15の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、VH領域。
【0129】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(5)に従うVL領域を含む:
(5)以下のCDRを含むVL領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0130】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(5)に従うVL領域を含み、ここで、VL領域は、下記の(6)に従うFRをさらに含む:
(6)配列番号11のアミノ酸配列を有するLFR1
配列番号12のアミノ酸配列を有するLFR2
配列番号13のアミノ酸配列を有するLFR3
配列番号14のアミノ酸配列を有するLFR4、
又はLFR1、LFR2、LFR3、若しくはLFR4の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント。
【0131】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(5)に従うCDRと上記の(6)に従うFRとを含む、VL領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(7)に従うVL領域を含む:
(7)配列番号16の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、VL領域。
【0133】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(1)~(4)のいずれか1つに従うVH領域、及び上記の(5)~(7)のいずれか1つに従うVL領域を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、(1)、(3)及び(4)のいずれか1つに従うVH領域、並びに(5)及び(7)のいずれか1つに従うVL領域を含む。
【0134】
抗cMET抗原結合ドメイン
cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、cMETに結合することが可能な抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、cMETに結合することが可能な抗体のFRをさらに含む。すなわち、いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、cMETに結合することが可能な抗体のVH領域及びVL領域を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるcMET結合抗体クローン(すなわち、抗cMET抗体クローンB09-GL)のVH/VL領域であるか、又はそれに由来する、VH領域及びVL領域を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、cMET結合抗体クローンB09-GLの3つのHCDR又は3つのLCDR、好ましくは3つのVH CDR及び3つのVL CDRを含む。抗体B09-GLのVH及びVLドメイン配列は本明細書に記載されており、従って、前記抗体の3つのVH及び3つのVLドメインCDRは、前記配列から決定され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(8)に従うVH領域を含む:
(8)以下のCDRを含むVH領域:
配列番号17のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号19のアミノ酸配列を有するHCDR3。
【0138】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(8)に従うVH領域を含み、ここで、VH領域は、下記の(9)に従うFRをさらに含む:
(9)配列番号23のアミノ酸配列を有するHFR1
配列番号24のアミノ酸配列を有するHFR2
配列番号25のアミノ酸配列を有するHFR3
配列番号26のアミノ酸配列を有するHFR4、
又はHFR1、HFR2、HFR3、若しくはHFR4の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント。
【0139】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(10)に従うVHを含む:
(10)(8)に従うCDRと(9)に従うFRとを含む、VH領域。
【0140】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(11)に従うVH領域を含む:
(11)配列番号31の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、VH領域。
【0141】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(12)に従うVL領域を含む:
(12)以下のCDRを含むVL領域:
配列番号20のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号21のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号22のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0142】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(12)に従うVL領域を含み、ここで、VL領域は、下記の(13)に従うFRをさらに含む:
(13)配列番号27のアミノ酸配列を有するLFR1
配列番号28のアミノ酸配列を有するLFR2
配列番号29のアミノ酸配列を有するLFR3
配列番号30のアミノ酸配列を有するLFR4、
又はLFR1、LFR2、LFR3、若しくはLFR4の1つ以上における1つ若しくは2つ若しくは3つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されたバリアント。
【0143】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(14)に従うVL領域を含む:
(14)(12)に従うCDRと(13)に従うFRとを含む、VL領域。
【0144】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、下記の(15)に従うVL領域を含む:
(15)配列番号32の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、VL領域。
【0145】
いくつかの実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記の(8)~(11)のいずれか1つに従うVH領域、及び上記の(12)~(15)のいずれか1つに従うVL領域を含む。
【0146】
二重特異性抗体の抗原結合ドメイン
本発明は、放射性ペイロードに抱合した抗体(すなわち二重特異性抗体)又はその抗原結合断片を含む、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)を提供し、ここで、放射性免疫抱合体の抗体又はその抗原結合断片は、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインのCDRを含む第1の抗原結合ドメイン、及びcMETに結合することが可能な抗原結合ドメインのCDRを含む第2の抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインのCDR及びFRを含み、第2の抗原結合ドメインは、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインのCDR及びFRを含む。すなわち、いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又は抗原結合断片は、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインのVH領域及びVL領域を含む、第1の抗原結合ドメインと、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインのVH領域及びVL領域を含む、第2の抗原結合ドメインとを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインは、EGFR結合抗体クローンRAA22のVH/VL領域であるか、又はそれに由来する、VH領域及びVL領域を含み、cMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインは、cMET結合抗体クローンB09-GLのVH/VL領域であるか、又はそれに由来する、VH領域及びVL領域を含む。このような二重特異性抗体は、「RAA22/B09」又は「RAA22/B09二重特異性抗体」と呼ばれ得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、以下:
上記の(1)~(4)のいずれか1つに従うVH領域、及び上記の(5)~(7)のいずれか1つに従うVL領域;
を含み、第2の抗原結合ドメインは、以下:
上記の(8)~(11)のいずれか1つに従うVH領域、及び上記の(12)~(15)のいずれか1つに従うVL領域を含む。
【0149】
特定の実施形態では、本発明の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、以下:
上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することが可能な第1の抗原結合ドメイン;及び
cMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメイン
を含む、抗体又はその抗原結合断片を含み、
ここで、第1の抗原結合ドメインは、以下を含む:
(i)以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域:
配列番号1のアミノ酸配列を有するHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を有するHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を有するHCDR3;及び
(ii)以下のCDRを含む軽鎖可変(VL)領域:
配列番号4のアミノ酸配列を有するLCDR1
配列番号5のアミノ酸配列を有するLCDR2
配列番号6のアミノ酸配列を有するLCDR3。
【0150】
特定の実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、以下:
配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含み、且つ/又は第2の抗原結合ドメインは、以下:
配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、及び
配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0151】
定常領域
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリン重鎖定常(CH)領域を含む。いくつかの実施形態では、CHは、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、又はIgMの重鎖定常配列であるか、又はそれに由来する。
【0152】
いくつかの実施形態では、CH領域は、ヒト免疫グロブリンG1の定常領域(IGHG1;UniProt:P01857-1(v1);配列番号33)又はその断片である。
【0153】
いくつかの実施形態では、CH領域は、配列番号39又は40の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載されるVH領域及び本明細書に記載されるCH領域を含むか、又はそれからなる、重鎖を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリン軽鎖定常(CL)領域又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、CL領域は、配列番号34に記載されるカッパCL領域であるか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態では、CL領域は、配列番号41に記載されるラムダCL領域であるか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:配列番号34に記載されるカッパCL領域であるか、又はそれに由来する、第1のCL領域;及び配列番号41に記載されるラムダCL領域であるか、又はそれに由来する、第2のCL領域。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
第1の抗原結合ドメインのVH領域と、第1の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第1の重鎖;
第1の抗原結合ドメインのVL領域と、第1の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第1の軽鎖;
第2の抗原結合ドメインのVH領域と、第2の重鎖定常(CH)領域又はその断片とを含む、第2の重鎖;及び
第2の抗原結合ドメインのVL領域と、第2の軽鎖定常(CL)領域又はその断片とを含む、第2の軽鎖。
【0157】
抗体又はその抗原結合断片が第1のVH領域及び第1のCH領域を含む場合、これらの領域が一緒になって抗体又はその抗原結合断片の第1の重鎖を形成し、すなわち第1のVH領域と第1のCH領域が互いに連結されていることが理解されるであろう。同様に、第2のVH領域と第2のCH領域は、抗体又はその抗原結合断片の第2の重鎖を形成し;第1のVL領域と第1のCL領域は、抗体又はその抗原結合断片の第1の軽鎖を形成し;第2のVL領域と第2のCL領域は、抗体又はその抗原結合断片の第2の軽鎖を形成する。
【0158】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、第1及び第2の重鎖を含み、ここで、
(i)第1の重鎖は、配列番号35に記載される重鎖の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
(ii)第2の重鎖は、配列番号36に記載される重鎖の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載されるVL領域及び本明細書に記載されるCL領域を含むか、又はそれからなる、軽鎖を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、第1及び第2の軽鎖を含み、ここで、
(i)第1の軽鎖は、配列番号37に記載される軽鎖の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;
(ii)第2の軽鎖は、配列番号38に記載される軽鎖の配列に対して少なくとも70%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか1つの配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0161】
本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片のCH、CL、重鎖及び/又は軽鎖は、例えば、Fcエフェクター機能を抑制又は低減するため、ヘテロ二量体抗体又はその抗原結合断片の形成を促進するため、同族の重鎖及び軽鎖の対合の有効性を高めるため、及び/又は以下でより詳細に説明されるように抱合体の形成を補助するための、1つ以上の改変を含み得る。改変されたCH、CL、重鎖、及び軽鎖は、それぞれ改変CH、CL、重鎖、及び軽鎖と称され得る。
【0162】
化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、抗体又はその抗原結合断片の、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIなどの1つ以上のFcγ受容体及び/又は補体への結合を低減又は抑制するために、重鎖のCH領域に変異を含み得る。このような変異は、Fcエフェクター機能を抑制又は低下させる。抗体と1つ以上のFcγ受容体及び補体との結合を低減又は抑制する変異は公知であり、例えばOrganesyan,2008に記載されるL234F/L235E/P331Sの「三重変異」又は「TM」が含まれる。抗体エフェクター機能を調節することが知られている他の変異については、例えばWang,2018に記載されている。
【0163】
三重変異を含むCH領域の例は、配列番号39及び40である。従って、いくつかの実施形態では、第1及び第2の重鎖の一方は、配列番号39に記載される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCH領域を含み、他方の重鎖は、配列番号40に記載される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCH領域を含み、CH領域の一方又は両方(好ましくは両方)は、位置234にフェニルアラニン、位置235にグルタミン酸、及び位置331にセリンを含み、ここで、番号付けはEUインデックスに従う。
【0164】
三重変異を含有するCH領域を含む本開示の重鎖の例は、配列番号35及び36である。従って、いくつかの実施形態では、第1及び第2の重鎖の一方は、配列番号35に記載される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、他方の重鎖は、配列番号36に記載される配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、重鎖(have chain)の一方又は両方(好ましくは両方)は、位置234にフェニルアラニン、位置235にグルタミン酸、及び位置331にセリンを含み、ここで、番号付けはEUインデックスに従う。
【0165】
VL及びCL領域、並びに化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片のVH領域及びCH1領域が一緒になってFab領域を構成する。化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片の残りの部分は、Fc領域を構成する。
【0166】
特に明記しない限り、本明細書に記載されるようなアミノ酸配列、置換、欠失及び挿入の位置を含む定常ドメインのアミノ酸残基の位置は、EU番号付け(Edelman,2007)に従って番号が付与される。
【0167】
二重特異性構成
本発明は、本明細書に開示される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)内の非対称IgG様二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。非対称二重特異性分子は、典型的には、各標的に対して一価である。例えば、Klein 2012に記載されているように、一価の二重特異性IgGの概念は、それらが(i)受容体のホモ二量体化が生じない、(ii)それぞれの抗原の結合力を失うことによって非標的組織の毒性を潜在的に減少させている、及び(iii)両方の抗原が選択的に制限されるか、又は標的細胞上で豊富に発現するかのいずれかである場合に、より良好な選択性を有するという点から、独自の治療上のニッチを有するものと考えられている。従って、いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、非対称IgG様二重特異性抗体又はその抗原結合断片である。
【0168】
非対称IgG様二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖のヘテロ二量体化と、同族の軽鎖及び重鎖の正確な対合とを伴う。重鎖のヘテロ二量体化は、ノブ・イントゥ・ホール、CH3の静電的ステアリング、改変ドメインとロイシンジッパーとを交換したCH3鎖などの、いくつかの技術によって対処することができる。正確な軽鎖及び重鎖の対合は、共通軽鎖の使用、CH1とCLとの間のドメインのクロスオーバー、重鎖及び軽鎖をリンカーで結合すること、2つの個別のモノクローナルからインビトロで重鎖-軽鎖二量体を会合すること、Fabドメイン全体の界面改変、又はCH1/CL界面のジスルフィド改変とともに、これらの重鎖ヘテロ二量体化技術のうちの1つを使用して確実に行うことができる。
【0169】
非対称IgG様二重特異性抗体の特定の代表的な構成を「DuetMab」と称する。DuetMab抗体は、2つの異なる重鎖をヘテロ二量体化するためにKIH技術を使用し、CH1-CL界面のうちの1つの天然のジスルフィド結合を改変ジスルフィド結合に置き換えることによって、同族の重鎖と軽鎖とを対合する効率を増大させるものである。DuetMabに関する開示は、例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第9,527,927号明細書及びMazor,2015に見出すことができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
(a)天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、改変重鎖;及び
(b)改変CLが天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含む、対応する改変CL領域
ここで、
(i)第1の重鎖は改変CH領域を含み、第1の軽鎖は対応する改変CL領域を含むか;又は
(ii)第2の重鎖は改変CH領域を含み、第2の軽鎖は対応する改変CL領域を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換から得られる、改変CH領域の置換システインと、天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換から得られる、対応する改変CL領域の置換システインとが、ジスルフィド結合を形成することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、改変CH領域は、位置126に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含み;対応する改変CL領域は、位置121に天然非システインアミノ酸からシステインへの置換を含み、ここで、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う。
【0173】
いくつかの実施形態では、改変CH領域は、位置126に天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換、及び位置219に天然システインアミノ酸から非システインアミノ酸、例えば、バリンへの置換を含み、対応する改変CL領域は、位置121に天然非システインアミノ酸からシステインへの置換、及び位置214に天然システインアミノ酸から非システインアミノ酸、例えば、バリンへの置換を含み、ここで、定常領域の番号付けはEUインデックスに従う。
【0174】
いくつかの実施形態では、本抗体又はその抗原結合断片は、第2のCH領域及び対応する第2の軽鎖を含み、ここで、第2のCH領域及び対応する第2のCLは、天然非システインアミノ酸からシステインアミノ酸への置換を含まず、天然システインから非システインアミノ酸への置換を含まない。
【0175】
化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片の機能特性
結合親和性
本明細書に記載される放射性免疫抱合体の抗体又はその抗原結合断片は、EGFRに対して特定の親和性を有する、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメイン、及び/又はcMETに対して特定の親和性を有する、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインによって特徴付けられ得る。化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片の、ヒト、マウス、又はカニクイザルのEGFR又はcMETなどの同族抗原への結合親和性は、例えば、Biacoreを使用した表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定することができる。結合親和性は、抗体又はその抗原結合断片、例えば、EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインとcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含む二重特異性抗体の一部として、決定することができる。或いは、結合親和性は、EGFR又はcMETに対して単一特異性の抗体又はその抗原結合断片を使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、結合親和性は、本明細書で提供されるか、又は当技術分野で知られるBIACoreを使用して決定される。
【0176】
結合親和性は、典型的にKd(抗原結合ドメインとその抗原との間での平衡解離定数)によって測定する。十分に理解されているように、Kd値が低ければ低いほど、抗原結合ドメインの結合親和性が高くなる。例えば、10nMのKdで標的に結合することが可能な抗原結合ドメインは、100nMのKdで同じ標的に結合することが可能な抗原結合ドメインよりも高い親和性で前記標的に結合すると考えられる。
【0177】
ヒトEGFRへの言及は、配列番号42に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドなどの、EGFRの細胞外ドメインを含むポリペプチドを指し得る。マウスEGFRへの言及は、カタログ番号51091-M08HでSinoBiologicalから入手可能な分子から生成されたポリペプチドを指し得る。カニクイザルEGFRへの言及は、配列番号46に記載されるアミノ酸配列を指し得る。ヒトcMETへの言及は、配列番号43に記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し得る。マウスcMETへの言及は、カタログ番号50622-M08HでSinoBiologicalから入手可能な分子から生成されたポリペプチドを指し得る。カニクイザルcMETへの言及は、配列番号44に記載されるアミノ酸配列を指し得る。
【0178】
EGFR親和性
本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、低親和性でEGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインを含み得る。本明細書において、「低親和性」は、10nM以上の解離定数(Kd)でヒトEGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインを指す。このような低親和性EGFR抗原結合ドメインを含む、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又は抗原結合断片は、皮膚毒性などの正常組織におけるオンターゲット毒性の低下を示し得、従って、「より高い親和性」でヒトEGFRに結合することが可能なEGFR抗原結合ドメインを含む抱合体と比較して、改善された安全性プロファイルを有し得る。本明細書において、「より高い親和性」又は「高親和性」は、10nM未満のKdでヒトEGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインを指す。
【0179】
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、10nM、15nM、20nM、25nM、30nM、35nM、又は40nM以上のKdを有する親和性でヒトEGFRに結合し得る。或いは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、10~100nM、20~100nM、30~100nM、40~100nM、10~80nM、20~80nM、30~80nM、40~80nM、10~70nM、20~70nM、30~70nM、40~70nM、10~60nM、20~60nM、30~60nM、40~60nM、10~50nM、20~50nM、30~50nM、又は40~50nMのKdでヒトEGFRに結合し得る。
【0180】
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗体QD6の重鎖可変(VH)領域配列及び軽鎖可変(VL)領域配列(それぞれ配列番号47及び48に記載)を含む抗原結合ドメインの親和性よりも低い親和性で、ヒトEGFRに結合し得る。
【0181】
例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗体QD6の重鎖配列及び軽鎖配列(それぞれ配列番号47及び48に記載)を含む抗原結合ドメインがヒトEGFRに結合するKdよりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、又は7倍高いKdを有する親和性でヒトEGFRに結合し得る。例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗体QD6の重鎖配列及び軽鎖配列(それぞれ配列番号47及び48に記載)を含む抗原結合ドメインがヒトEGFRに結合するKdよりも2~10倍高い、3~10倍高い、4~10倍高い、5~10倍高い、6~10倍高い、7~10倍高い、2~9倍高い、3~9倍高い、4~9倍高い、5~9倍高い、6~9倍高い、7~9倍高い、2~8倍高い、3~8倍高い、4~8倍高い、5~8倍高い、6~8倍高い、7~8倍高いKdを有する親和性でヒトEGFRに結合し得る。
【0182】
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗体RAA22の重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列(それぞれ配列番号15及び16に記載)を含む抗原結合ドメインの親和性と同様の親和性で、ヒトEGFRに結合し得る。例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗体RAA22の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域(それぞれ配列番号15及び16に記載)を含む抗原結合ドメインがヒトEGFRに結合するKdよりも5倍差未満、4倍差未満、3倍差未満、2倍差未満、1倍差未満、又は0.5倍差未満のKdを有する親和性でヒトEGFRに結合し得る。
【0183】
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、カニクイザルEGFRにも結合することが可能であり得る。例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、700nM未満、600nM未満、500nM未満、400nM未満、300nM未満、又は250nM未満のKdを有する親和性でカニクイザルEGFRに結合し得る。或いは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、100~700nM、100~600nM、100~500nM、100~400nM、100~300nM、150~250nM、100~200nMのKdを有する親和性でカニクイザルEGFRに結合し得る。EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインがヒトEGFRに結合するKdよりも10、9、8、7、6、5、4、3倍以下高いKdでカニクイザルEGFRに結合し得る。
【0184】
EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、マウスEGFRにも結合することが可能であり得る。例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、1μM未満、900nM未満、800nM未満、700nM未満、600nM未満、又は650nM未満のKdを有する親和性でマウスEGFRに結合し得る。或いは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、100nM~1μM、200~900nM、300~800nM、400~700nM、400~600nM、又は450~550nMのKdでマウスEGFRに結合し得る。
【0185】
好ましくは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、ヒトEGFR及びカニクイザルEGFRに結合することが可能である。この交差反応性は、前臨床開発中にカニクイザルで抗体及び抱合体の投与量及び安全性の試験を実施できるため、有利である。さらに好ましくは、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、ヒトEGFR、カニクイザルEGFR、及びマウスEGFRに結合することが可能である。例えば、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記のKd値でヒトEGFR、カニクイザルEGFR、及びマウスEGFRに結合することが可能であり得る(例えば、10nM~100nMのKdでヒトEGFR、100nM~700nMのKdでカニクイザルEGFR、及び100nM~1μMのKdでマウスEGFR)。
【0186】
cMET親和性
cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、20nM、15nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM又は2.5nM未満のKdを有する親和性でヒトcMETに結合し得る。或いは、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、1~20nM、1~15nM、1~10nM、1~9nM、1~8nM、1~7nM、1~6nM、1~5nM、1~4nM、1~3nM、1~2.5nM、又は2~2.5nMのKdを有する親和性でヒトcMETに結合し得る。
【0187】
cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、カニクイザルEGFRに結合することが可能であり得る。例えば、cMETに結合することが可能であり得る抗原結合ドメインは、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、又は2.5nM未満のKdを有する親和性でカニクイザルcMETに結合し得る。或いは、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、1~20nM、1~15nM、1~10nM、1~9nM、1~8nM、1~7nM、1~6nM、1~5nM、1~4nM、1~3nM、1~2.5nM、又は2~2.5nMのKdを有する親和性でカニクイザルcMETに結合し得る。cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインがヒトcMETに結合するKdよりも10、9、8、7、6、5、4、3、2、1倍以下高いKdを有する親和性でカニクイザルcMETに結合し得る。
【0188】
好ましくは、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、ヒトcMET及びカニクイザルcMETに結合することが可能である。この交差反応性は、前臨床開発中にカニクイザルで抗体の投与量及び安全性の試験を実施できるため、有利である。例えば、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、上記のKd値でヒトcMET及びカニクイザルcMETに結合することが可能であり得る(例えば、1nM~20nMのKdでヒトcMET、及び1nM~20nMのKdでカニクイザルcMET)。
【0189】
特異的結合
本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、EGFRに特異的に結合することが可能な抗原結合ドメインを含み得る。本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又は抗原結合断片は、cMETに特異的に結合することが可能な抗原結合ドメインを含み得る。本明細書に記載される化合物の抗体又は抗原結合断片(例えば、放射性免疫抱合体)は、EGFRに特異的に結合することが可能な第1の抗原結合ドメインである、EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインと、cMETに特異的に結合することが可能な第1の抗原結合ドメインである、cMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含み得る。
【0190】
「特異的な」という用語は、抗原結合ドメインがその特異的な結合パートナー(ここでは、EGFR又はcMET)以外の分子に任意の有意な結合を示さない状態を意味し得る。そのような分子は、「非標的分子」と呼ばれる。「特異的」という用語は、抗体又はその抗原結合断片が、複数の抗原によって輸送されるEGFR又はcMET上のエピトープなどの特定のエピトープに対して特異的である場合にも適用され、その場合、抗体又はその抗原結合断片は、エピトープを輸送する様々な抗原に結合することができる。
【0191】
いくつかの実施形態では、例えば、ELISA、SPR、バイオレイヤー干渉法(BLI)、マイクロスケール熱泳動(MST)によって、又はラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定したときに、非標的分子に対する結合の程度が抗体又はその抗原結合断片の標的に対する結合の程度の約10%未満である場合、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片を非標的分子に任意の有意な結合を示さないとみなす。或いは、結合特異性は結合親和性の観点から反映され得、ここで、本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、別の非標的分子に対する親和性よりも少なくとも0.1桁大きい親和性で、EGFR及び/又はcMETに結合することが可能である。いくつかの実施形態では、本開示の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、別の非標的分子に対する親和性よりも少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、又は2.0のうちの1つの桁よりも大きい親和性で、EGFR及び/又はcMETに結合することが可能である。
【0192】
EGFRは、4つの近縁受容体チロシンキナーゼ:EGFR、HER2、HER3及びHER4のサブファミリーであるErbB受容体ファミリーのメンバーである。RAA22抗原結合ドメインはHER2、HER3及びHER4への結合を示さず、この抗原結合ドメインがEGFRに特異的に結合することが示された。従って、特定の実施形態では、EGFRに結合することが可能な抗原結合ドメインは、HER2、HER3若しくはHER4に結合しないか、又は有意な結合を示さない。
【0193】
cMETは、Ron及びSema 4aを含む、受容体チロシンキナーゼのサブファミリーのメンバーである。B09-GL抗原結合ドメインはRon及びSema4aへの結合を示さず、この抗原結合ドメインがcMETに特異的に結合することが示された。従って、特定の実施形態では、cMETに結合することが可能な抗原結合ドメインは、Ron、Sema4aに結合しないか、又は有意な結合を示さない。
【0194】
同時会合
本明細書に記載される、EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインとcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含む、本開示の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、両方の抗原結合ドメインがそれぞれのEGFR及びcMET標的に同時に会合する能力によって特徴付けられ得る。多数の腫瘍がEGFR及びcMETの両方を共発現することが知られており、従って本開示の化合物によって標的化できるため、EGFR及びcMETに同時に会合する能力を有する、本開示の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は有利であると予想される。従って、いくつかの実施形態では、本発明で開示される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、EGFR及びcMETに同時に会合することができる。
【0195】
同時会合を測定するこれらの方法のさらなる詳細は、実施例で見ることができる。
【0196】
抗体(又はその抗原結合断片)の内在化
本明細書に記載される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、効率的な内在化を媒介する能力によって特徴付けられ得る。
【0197】
抗体又はその抗原結合断片(又は前記抗体又はその抗原結合断片を含む化合物(例えば、放射性免疫抱合体))の細胞による内在化は、生細胞を抗体又はその抗原結合断片と接触させ、内在化に十分な時間の経過後に抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)を検出することによって分析することができる。内在化は、抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の局在化を検出することによって決定することができる。抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)が細胞表面に残留する場合(例えば、細胞表面で検出され、且つ/又は細胞内部で検出されない場合)、抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は内在化されていないと決定される。抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)が細胞内(例えば、細胞質又は細胞小器官に局在)で検出された場合、抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は内在化されたと決定される。
【0198】
抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)が効率的な内在化を媒介できるかどうかを視覚化する例示的な方法としては、酸性pHで蛍光を発するpH感受性染料で抗体を標識し、これらの標識された抗体又は抱合体を細胞に加えることが挙げられる。細胞への内在化は、蛍光をモニタリングすることで検出できる。観察される蛍光が、特定の期間、例えば48時間にわたって、標識された非結合対照抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の蛍光よりも大きい場合、抗体(又はその抗原結合断片)又は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、リソソームへの内在化及び送達を媒介できるとみなされる。抗体(又はその抗原結合断片)の内在化を視覚化するこの方法の詳細は、実施例で見ることができる。
【0199】
EGFRに結合することが可能な第1の抗原結合ドメインとcMETに結合することが可能な第2の抗原結合ドメインとを含む、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、EGFR又はcMET 単一特異性対照と比較した場合、より効率的な内在化を媒介するその能力によって特徴付けられ得る。この特性を示す化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の抗体又はその抗原結合断片は、両方の標的を共発現する腫瘍細胞に対してより高い選択性を示し、有意なレベルの共発現を示さない正常組織における抗体又はその抗原結合断片の影響を最小限に抑えることができるため、有利であると予想される。
【0200】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗体又は抗原結合断片を含む化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が本明細書に提供され、ここで、重鎖可変ドメインは、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含み、軽鎖可変ドメインは、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含み、ここで、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3は、以下に示す配列付録に記載される抗体のものである。
【0201】
いくつかの実施形態では、配列付録に示される抗体のバリアントである抗体又は抗原結合断片を含む化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が提供され、そのような抗体又は抗原結合断片は、配列付録に記載される抗体のCDR配列から、CDRあたり3つ以下のアミノ酸残基(例えば、3つ又は2つ又は1つのアミノ酸残基)だけ異なるCDR配列を有する。いくつかの実施形態では、配列付録に示される抗体のバリアントである抗体又は抗原結合断片を含む化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が提供され、そのような抗体又は抗原結合断片は、配列付録に記載される抗体のCDRから、合計で3つ以下のアミノ酸残基(例えば、3つ又は2つ又は1つのアミノ酸残基)だけ異なる配列を有する6つのCDRのセットを有する。
【0202】
いくつかの実施形態では、配列付録に記載される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変配列を含む、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗体又は抗原結合断片を含む化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が提供される。いくつかの実施形態では、配列付録に示される抗体のバリアントである抗体又は抗原結合断片を含む化合物(例えば、免疫抱合体又は放射性免疫抱合体)が提供され、そのような抗体又は抗原結合断片は、(1)配列付録に記載される抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも87.5%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖ドメイン;及び(2)配列付録に記載される同じ抗体の軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも87.5%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖ドメインを有する。
【0203】
配列付録
抗EGFR抗体クローンRAA22のCDR配列
HCDR1-DNDFS(配列番号1)
HCDR2-AIVAVFRTETYAQKFQD(配列番号2)
HCDR3-RLMSAISGPGAPLLM(配列番号3)
LCDR1-TGTSSDVGGYNYVS(配列番号4)
LCDR2-DVSKRPS(配列番号5)
LCDR3-SSYTSSDTLEI(配列番号6)
抗EGFR抗体クローンRAA22のFR配列
HFR1-QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFS(配列番号7)
HFR2-WVRQAPGQGLEWMG(配列番号8)
HFR3-RVKITADISTRTTYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号9)
HFR4-WGQGTLVTVSS(配列番号10)
LFR1-QSALTQPRSVSGSPGQSVTISC(配列番号11)
LFR2-WYQQHPGKAPKLMIY(配列番号12)
LFR3-GVPDRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYC(配列番号13)
LFR4-FGGGTKLTVL(配列番号14)
抗EGFR抗体クローンRAA22の重鎖可変(VH)領域のアミノ酸配列(配列番号15)
【化9】
抗EGFR抗体クローンRAA22の軽鎖可変(VL)領域のアミノ酸配列(配列番号16):
【化10】
抗c-Met抗体クローンB09-GLのCDR配列
HCDR1-DYYIH(配列番号17)
HCDR2-WMNPNSGNTGYAQKFQG(配列番号18)
HCDR3-GQGYTHS(配列番号19)
LCDR1-RASEGIYHWLA(配列番号20)
LCDR2-KASSLAS(配列番号21)
LCDR3-QQYSNYPPT(配列番号22)
抗c-Met抗体クローンB09-GLのFR配列
HFR1-QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFT(配列番号23)
HFR2-WVRQATGQGLEWMG(配列番号24)
HFR3-RVTMTRDTSISTAYMELSSLRSEDTAVYYCAR(配列番号25)
HFR4-WGQGTMVTVSS(配列番号26)
LFR1-DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITC(配列番号27)
LFR2-WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号28)
LFR3-GVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYC(配列番号29)
LFR4-FGGGTKLEIK(配列番号30)
抗c-Met抗体クローンB09-GLの重鎖可変(VH)領域のアミノ酸配列(配列番号31):
【化11】
抗c-Met抗体クローンB09-GLの軽鎖可変(VL)領域のアミノ酸配列(配列番号32):
【化12】
ヒト免疫グロブリンG1重鎖定常(CH)領域のアミノ酸配列(配列番号33):
【化13】
野生型ヒト免疫グロブリンカッパ定常領域のアミノ酸配列(配列番号34):
【化14】
「EGFR-cMET TM」抗体における抗EGFRの重鎖のアミノ酸配列(配列番号35):
以下の置換は太字及び下線で示される:
三重変異(TM;L234F、L235E、及びP331S)、「ノブ」変異(T366W);鎖間システイン変異(F126C及びC219V);安定化システイン変異(S354C)(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【化15】
「EGFR-cMET TM」抗体における抗cMETの重鎖のアミノ酸配列(配列番号36):
以下の置換は太字及び下線で示される:
三重変異(TM;L234F、L235E、及びP331S);「ホール」変異(T366S、L368A、及びY407V)及び安定化システイン変異(Y349C)(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【化16】
「EGFR-cMET TM」抗体における抗EGFRの軽鎖のアミノ酸配列(配列番号37):
以下の置換は太字及び下線で示される:
S121C及びC214V(番号付けはEUインデックスに従う)。
【化17】
「EGFR-cMET TM」抗体における抗cMETの軽鎖のアミノ酸配列(配列番号38):
【化18】
システイン挿入を伴わず、TMによって、「ノブ」変異、安定化ジスルフィド架橋を形成するシステインを含むように改変された、ヒト免疫グロブリンG1 CH領域のアミノ酸配列(配列番号39):
以下の置換は太字及び下線で示される:
三重変異(TM;L234F、L235E、及びP331S)、「ノブ」変異(T366W);鎖間システイン変異(F126C及びC219V);安定化システイン変異(S354C)(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【化19】
システイン挿入を伴わず、TMによって、「ホール」変異、安定化ジスルフィド架橋を形成するシステインを含むように改変された、ヒト免疫グロブリンG1 CH領域のアミノ酸配列(配列番号40):
以下の置換は太字及び下線で示される:
三重変異(TM;L234F、L235E、及びP331S);「ホール」変異(T366S、L368A、及びY407V)及び安定化システイン変異(Y349C)(残基の番号付けはEUインデックスに従う)。
【化20】
S121C及びC214V置換を含むように改変されたヒト免疫グロブリンラムダ定常領域のアミノ酸配列(配列番号41):
【化21】
ヒトEGFR細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列番号42):
【化22】
ヒトc-Met細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列番号43):
【化23】
カニクイザルc-Met細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列番号44):
【化24】
カニクイザルEGFR細胞外ドメインのアミノ酸配列(配列番号46):
【化25】
抗EGFR抗体クローンQD6のVH領域のアミノ酸配列(配列番号47):
【化26】
抗EGFR抗体クローンQD6のVL領域のアミノ酸配列(配列番号48):
【化27】
【0204】
キレート部分又はその金属錯体
キレート部分
好適なキレート部分の例としては、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α、α’、α”、α’”-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DOTPA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラプロピオン酸)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTA-GA無水物(2,2’,2”-(10-(2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTMP(1,4,6,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7,10-テトラメチレンホスホン酸、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミドメチレンホスホン酸)、CB-TE2A(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、NOTP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリ(メチレンホスホン酸)、TETPA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラプロピオン酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラ酢酸)、HEHA(1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-1,4,7,10,13,16-ヘキサ酢酸)、PEPA(1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N”,N’’’,N’’’’-ペンタ酢酸)、H4octapa(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、H2dedpa(1,2-[[6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル]-メチルアミノ]エタン)、H6phospa(N,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-メチル-1,2-ジアミノエタン)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N’’’,N’’’-六酢酸)、DO2P(テトラアザシクロドデカンジメタンホスホン酸)、HP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DTPA-BMA(ジエチレントリアミン五酢酸-ビスメチルアミド)、八配位HOPO(八配位ヒドロキシピリジノン)、又はポルフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0205】
好ましくは、キレート部分は、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α、α’、α”、α’”-テトラメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DO3AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミドメチレンホスホン酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、及びHP-DO3A(10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸)からなる群から選択される。
【0206】
いくつかの実施形態では、キレート部分は、DOTAである。
【0207】
いくつかの実施形態では、化合物は、キレート部分の金属錯体を含む。例えば、キレート基は、マンガン、鉄、及びガドリニウムなどの金属、及び本明細書で考察される放射性同位体及び放射性核種のいずれかなどの同位体(例えば、一般的なエネルギー範囲60~10,000keVの同位体)との、金属キレートの組み合わせにおいて使用され得る。
【0208】
いくつかの実施形態では、キレート部分は検出剤として有用であり、従って、そのような検出可能なキレート部分を含む化合物は、診断剤又は治療剤として使用することができる。
【0209】
放射性同位体及び放射性核種
いくつかの実施形態では、金属錯体は、放射性核種を含む。好適な放射性同位体及び放射性核種の例としては、3H、14C、15N、18F、35S、44Sc、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、66Ga、67Ga、67Cu、68Ga、75Br、76Br、77Br、82Rb、89Zr、86Y、87Y、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、105Rh、109Pd、111In、123I、124I、125I、131I、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、117mSn、186Re、188Re、198Au、199Au、201Tl、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、及び229Thが挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
いくつかの実施形態では、金属錯体は、44Sc、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、66Ga、67Ga、68Ga、82Rb、86Y、87Y、89Zr、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、105Rh、109Pd、111In、117mSn、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、201Tl、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、及び229Thから選択される放射性核種を含む。
【0211】
特定の実施形態では、金属錯体は、68Ga、89Zr、90Y、111In、177Lu、及び225Acから選択される放射性核種を含む。特定の実施形態では、金属錯体は、177Lu又は225Acの放射性核種を含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、放射性核種は、アルファ放射体、例えば、アスタチン-211(211At)、ビスマス-212(212Bi)、ビスマス-213(213Bi)、アクチニウム-225(225Ac)、ラジウム-223(223Ra)、鉛-212(212Pb)、トリウム-227(227Th)、若しくはテルビウム-149(149Tb)、又はそれらの子孫である。いくつかの実施形態では、アルファ放射体は、アクチニウム-225(225Ac)又はその子孫である。
【0213】
特定の実施形態では、金属錯体は、225Acのアルファ放射体又はその子孫を含む。
【0214】
リンカー
本発明の化合物は、以下の式Iの構造:
A-L1-(L2)n-B
式I
を含み、ここで、各変数は、上記の概要セクションで定義される。
【0215】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、-L1-(L2)n-としてのリンカー部分を含み、式中、
L1は、結合、C=O、C=S、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールであり;
nは、1~5の整数(両端を含む)であり;
各L2は、独立して式:
-X1-L3-Z1-
式II
の構造を有し、式中、
X1は、-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-*、-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-*、-OC(O)NR1-*、-NR1C(O)O-*、-NR1C(O)NR1-*、-CH2-Ph-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-Ph-CH2-*、-CH2-Ph-NH-C(S)NR1-*、-NR1C(S)-NH-Ph-CH2-*、-O-*、又は-NR1-*であり、式中、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、又は任意選択的に置換されたアリール若しくはヘテロアリールであり;
L3は、任意選択的に置換されたC1-C50アルキル又は任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキル(例えば、CH2CH2O)2-20)であり、
Z1は、-CH2-#、-C(O)-#、-C(S)-#、-OC(O)-#、-C(O)O-#、-NR2C(O)-#、-C(O)NR2-#、又は-NR2-#であり、式中、「#」は、Bへの接続点を示し、R2は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである。
【0216】
いくつかの実施形態では、L
1は、任意選択的に置換されたC
1-C
6アルキル又は任意選択的に置換されたC
1-C
6ヘテロアルキルである。特定の実施形態では、L
1は、置換C
1-C
6アルキル又は置換C
1-C
6ヘテロアルキルであり、置換基は、ヘテロアリール基(例えば、窒素含有6員ヘテロアリール)を含む。いくつかの実施形態では、L
1は、C
1-C
6アルキル(alky)である。例えば、L
1は、-CH
2CH
2-である。いくつかの実施形態では、L
1は、結合である。いくつかの実施形態では、L
1は、
【化28】
であり、式中、R
Lは、水素又は-CO
2Hである。
【0217】
いくつかの実施形態では、X1は、-C(O)NR1-*、-NR1C(O)-*、又は-NR1-であり、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、X1は、-C(O)NR1-*であり、「*」は、L3への接続点を示し、R1は、水素である。
【0218】
いくつかの実施形態では、L3は、任意選択的に置換されたC1-C50アルキル(例えば、C3-C30アルキル、C3-C25アルキル、C3-C20アルキル、C3-C15アルキル、C3-C10アルキル、C5-C30アルキル、C5-C25アルキル、C5-C20アルキル、C5-C15アルキル、及びC5-C10アルキル)又は任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキル(例えば、C3-C30ヘテロアルキル、C3-C25ヘテロアルキル、C3-C20ヘテロアルキル、C3-C15ヘテロアルキル、C3-C10ヘテロアルキル、C5-C30ヘテロアルキル、C5-C25ヘテロアルキル、C5-C20ヘテロアルキル、C5-C15ヘテロアルキル、及びC5-C10ヘテロアルキル)である。例示的なC1-C50ヘテロアルキルは、C5-C30ポリエチレングリコール(例えば、C5-C25ポリエチレングリコール、C5-C20ポリエチレングリコール、C5-C15ポリエチレングリコール)である。特定の実施形態では、L3は、C5-C25ポリエチレングリコール、C5-C20ポリエチレングリコール、又はC5-C15ポリエチレングリコールである。
【0219】
いくつかの実施形態では、L3は、任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキル(例えば、C1-C40ヘテロアルキル、C1-C30ヘテロアルキル、C1-C20ヘテロアルキル、C2-C18ヘテロアルキル、C3-C16ヘテロアルキル、C4-C14ヘテロアルキル、C5-C12ヘテロアルキル、C6-C10ヘテロアルキル、C8-C10ヘテロアルキル、C4ヘテロアルキル、C6ヘテロアルキル、C8ヘテロアルキル、C10ヘテロアルキル、C12ヘテロアルキル、C16ヘテロアルキル、C20ヘテロアルキル、又はC24ヘテロアルキル)である。
【0220】
いくつかの実施形態では、L3は、1~20個のオキシエチレン(-O-CH2-CH2-)単位を含むポリエチレングリコール(PEG)部分(例えば、2オキシエチレン単位(PEG2)、3オキシエチレン単位(PEG3)、4オキシエチレン単位(PEG4)、5オキシエチレン単位(PEG5)、6オキシエチレン単位(PEG6)、7オキシエチレン単位(PEG7)、8オキシエチレン単位(PEG8)、9オキシエチレン単位(PEG9)、10オキシエチレン単位(PEG10)、12オキシエチレン単位(PEG12)、14オキシエチレン単位(PEG14)、16オキシエチレン単位(PEG16)、又は18オキシエチレン単位(PEG18))を含む、任意選択的に置換されたC1-C50ヘテロアルキルである。
【0221】
特定の実施形態では、L
3は、1~20個のオキシエチレン(-O-CH
2-CH
2-)単位又はその一部を含むポリエチレングリコール(PEG)部分を含む、任意選択的に置換されたC
1-50ヘテロアルキルである。例えば、L
3は、以下:
【化29】
に示すようにPEG3を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、L3は、(CH2CH2O)m(CH2)wであり、式中、m及びwは、それぞれ独立して0~10の整数(両端を含む)であり、m及びwの少なくとも1つは0でない。
【0223】
いくつかの実施形態では、L3は、置換C1-C50アルキル又は置換C1-C50ヘテロアルキルであり、置換基は、ヘテロアリール基(例えば、窒素含有6員ヘテロアリール)を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、Z1は、CH2、C=O、又はNR1であり、式中、R1は、水素、任意選択的に置換されたC1-C6アルキル、任意選択的に置換されたC1-C6ヘテロアルキル、任意選択的に置換されたアリール、又は任意選択的に置換されたヘテロアリールである。
【0225】
特定の実施形態では、A-L
1-(L
2)
n-Bは、式I-a:
【化30】
によって表されるか、又はその金属錯体であり得、式中、Y
1は、-CH
2OCH
2(L
2)
n-B、-C(O)(L
2)
n-B、又は-C(S)(L
2)
n-Bであり、Y
2は、-CH
2CO
2Hであるか;又はY
1は、Hであり、Y
2は、L
1-(L
2)
n-Bである。
【0226】
架橋基
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、キレート、リンカー、及び架橋基を含む、二官能性キレートを使用して合成される。化合物(例えば、放射性免疫抱合体)が形成されると、架橋基は化合物(例えば、放射性免疫抱合体)から存在しなくなり得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、標的化部分の代わりに、又は標的化部分に加えて、架橋基を含む(例えば、いくつかの実施形態では、式IのBは架橋基を含む)。
【0228】
架橋基は、2つ以上の分子を共有結合によって連結できる反応性基である。架橋基は、リンカー及びキレート部分を治療部分又は標的化部分に結合するために使用され得る。架橋基は、リンカー及びキレート部分をインビボで標的に結合するためにも使用され得る。いくつかの実施形態では、架橋基は、アミノ反応性、メチオニン反応性又はチオール反応性架橋基であるか、又はソルターゼ認識配列を含む。いくつかの実施形態では、アミノ反応性又はチオール反応性の架橋基は、ヒドロキシコハク酸イミドエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェノールエステル、4-ニトロフェノールエステル又はイミデート、無水物、チオール、ジスルフィド、マレイミド、アジド、アルキン、歪みアルキン、歪みアルケン、ハロゲン、スルホネート、ハロアセチル、アミン、ヒドラジド、ジアジリン、ホスフィン、テトラジン、イソチオシアネート、又はオキサジリジンなどの活性エステルを含む。いくつかの実施形態では、ソルターゼ認識配列は、末端グリシン-グリシン-グリシン(GGG)及び/又はLPTXGアミノ酸配列で構成され、ここで、Xは、任意のアミノ酸である。当業者であれば、架橋基の使用は本明細書に開示される特定の構成に限定されず、他の公知の架橋基も含まれ得ることを理解するであろう。
【0229】
医薬組成物
一態様では、本開示は、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、様々な薬物送達システムにおける使用のために製剤化することができる。適切な製剤のために、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤又は担体を医薬組成物に含めることもできる。本開示での使用に適合する好適な製剤の非限定的な例としては、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版,1985に記載されているものが挙げられる。薬物送達のための方法の簡潔なレビューについては、例えば、Langer(Science.249:1527-1533,1990)を参照されたい。
【0230】
医薬組成物は、本明細書で考察される様々な投与経路のいずれかについて製剤化され得る(例えば、本明細書の「投与及び投与量」サブセクションを参照)。持続放出投与は、デポ注射又は侵食性のインプラント若しくは成分などの手段によって企図される。従って、本開示は、許容される担体、好ましくは水性担体、例えば水、緩衝水、生理食塩水、又はPBSなどに溶解又は懸濁された、本明細書に開示される薬剤(例えば、放射性免疫抱合体)を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物には、とりわけ、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤、又は界面活性剤などの、生理学的条件に近づけるための薬学的に許容される補助物質が含有される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口送達用に製剤化され、錠剤又はカプセルなどの単位剤形の製剤化のために、結合剤又は充填剤などの不活性成分を任意選択的に含有し得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与用に製剤化され、クリーム、軟膏、ジェル、ペースト、又は点眼剤の製剤化のために、溶媒又は乳化剤などの不活性成分を任意選択的に含有し得る。
【0231】
いくつかの実施形態では、提供される医薬組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され、例えば、滅菌濾過されてもよい。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装してもよく、凍結乾燥してもよい。凍結乾燥製剤は、例えば、投与前に滅菌水性担体と組み合わせることができる。製剤のpHは、典型的には3~11、より好ましくは5~9又は6~8、最も好ましくは6~7、例えば6~6.5である。得られた固形の組成物は、例えば、錠剤又はカプセルの密封包装のように、それぞれが一定量の上記薬剤を含有する複数の単回用量単位で包装され得る。固形の医薬組成物は、局所適用できるクリーム又は軟膏用に設計された絞り出し可能なチューブなど、柔軟な量のための容器に包装することもできる。
【0232】
治療方法
一態様では、本開示は、本明細書に開示される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)を、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法を提供する。
【0233】
対象
いくつかの開示された方法では、治療(例えば、治療剤を含む)が対象者に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0234】
いくつかの実施形態では、対象は、癌を有するか又は癌を発症するリスクを有する。例えば、対象は、癌があると診断されている者であり得る。例えば、癌は、原発性癌であってもよく、転移性癌であってもよい。対象は、リンパ節関与を伴う又は伴わない、また、転移を伴う又は伴わない、ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIVなど、あらゆるステージの癌を有し得る。提供される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)及び組成物は、癌のさらなる増殖を予防又は軽減し、且つ/又は癌を改善(例えば、転移を予防又は軽減)し得る。いくつかの実施形態では、対象は癌を有しないが、例えば、環境曝露、1つ以上の遺伝子変異又はバリアントの存在、家族歴などの1つ以上のリスク要因の存在により、癌を発症するリスクがあると決定されている。いくつかの実施形態では、対象は癌と診断されていない。
【0235】
いくつかの実施形態では、癌は、EGFR及びcMETを発現する細胞を含む任意の癌である。特定の実施形態では、癌は、肺癌、大腸癌、膵臓癌、又は頭頚部癌である。
【0236】
投与及び投与量
本明細書に開示される化合物(例えば、放射性免疫抱合体)及びその医薬組成物は、全身投与経路及び局所投与経路を含む、様々な投与経路のいずれかによって投与され得る。
【0237】
全身投与経路には、非経口経路と及び経腸経路が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)又はその医薬組成物は、非経口経路、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、又は皮内で投与される。いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)又はその医薬組成物が静脈内投与される。いくつかの実施形態では、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)又はその医薬組成物は、経腸投与経路、例えば、経胃腸投与、又は経口投与によって投与される。
【0238】
局所投与経路としては、腫瘍周囲注射及び腫瘍内注射が挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
医薬組成物は、放射線治療計画、診断、及び/又は治療のために投与することができる。放射線治療計画又は診断の目的で投与される場合、化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、診断上有効な用量及び/又は治療有効量を決定するのに有効な量で対象に投与され得る。治療用途では、すでにある病状(例えば、癌)に罹患している対象(例えば、ヒト)に、疾患及びその合併症の症状を治癒するか、又は少なくとも部分的に抑制するのに十分な量の医薬組成物が投与され得る。この目的を達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義され、疾患又は病状に関連する少なくとも1つの症状を実質的に改善するのに十分な化合物の量である。例えば、癌の治療では、疾患又は病状の症状を軽減、予防、遅延、抑制、又は停止させる薬剤又は化合物が治療的に有効であり得る。治療有効量の薬剤又は化合物は、疾患又は病状を治癒させるために必要ではないが、例えば、疾患又は病状の発症を遅らせ、妨げ、又は予防する、疾患又は病状の症状を改善する、又は疾患又は病状の期間を変更するように、疾患又は病状に対する治療を提供し得る。例えば、疾患又は病状は、個体における重症度が軽減し得、且つ/又は回復が促進され得る。いくつかの実施形態では、対象は、放射線治療計画に有効な量の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)又は組成物の第1の用量が投与され、次いで、治療有効量の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)又は組成物の第2の用量又は用量のセットが投与される。
【0240】
EGFR及びcMETを発現する細胞を含む癌を治療するために、本発明の方法は、典型的には、放射線治療計画に有効な量の上記化合物又は組成物の初回用量を、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与し、続いて、治療有効量の上記化合物又は組成物のその後の用量を投与することを含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、第1の投与で投与される化合物又は組成物と第2の投与で投与される化合物又は組成物は、同じである。
【0242】
いくつかの実施形態では、第1の投与で投与される化合物又は組成物と第2の投与で投与される化合物又は組成物は、異なる。
【0243】
治療有効量は、疾患又は病状の重症度及び対象のその他の特性(体重など)によって異なり得る。開示された化合物(例えば、放射性免疫抱合体)及び組成物の対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に対する治療有効量は、個体差(例えば、対象の年齢、体重、及び病状の差)を考慮して、当業者によって決定することができる。
【0244】
いくつかの実施形態では、開示された化合物(例えば、放射性免疫抱合体)は、癌細胞を標的とする強化された能力を示す。いくつかの実施形態では、開示された化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の有効量は、非抱合及び/又は非放射性標識標的化部分の治療効果に対する同等の投与量よりも低い(例えば、約90%、75%、50%、40%、30%、20%、15%、12%、10%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.1%以下)。
【0245】
有効量を含む本明細書に開示された医薬組成物の単回又は複数回の投与は、治療医が選択した用量レベル及びパターンで実行することができる。投与量及び投与スケジュールは、対象の疾患又は病状の重症度に基づいて決定及び調整することができ、臨床医によって一般的に実施されている方法又は本明細書に記載されている方法に従って、治療過程全体にわたってモニタリングされ得る。
【0246】
以下の具体的な例は、単に例示として解釈されるべきであり、いかなる意味においても開示の残りの部分を制限するものではない。
【実施例】
【0247】
実施例1-RAA22/B09 DuetMabの設計及び構築
この例は、EGFR及びc-Metの両方に結合することが可能な二重特異性抗体分子の生成について説明する。
【0248】
1.1 抗cMET抗体0021U3-B09の単離及び同定
cMET特異的scFv抗体は、基本的に記載されているとおり(Vaughan,1996)、組換え哺乳動物発現ビオチン化モノマーヒトcMET(MedImmune)に対する一連の反復パニング選択サイクルで、大規模なナイーブヒトscFvファージディスプレイライブラリから単離された。選択アウトプットのラウンド2からのscFvは、細菌の周辺質で発現され、ヒトcMET受容体の結合を阻害する能力について、HGF:cMET HTRF(登録商標)(均一系時間分解蛍光)リガンド受容体阻害性結合アッセイにおいて、HGFリガンドを用いてスクリーニングされた。強い阻害効果を示す上位ヒットが選択され、DNA配列決定に供された。次いで、固有の遺伝子がヒト免疫グロブリンG2(IgG2)抗体に変換され、基本的に説明される通りに哺乳動物細胞で生成された(Persic;1997)。次いで、精製された抗体は、HGF:cMET HTRF(登録商標)結合アッセイにおける阻害効果に基づいてランク付けされた。最も強力な抗体0021U3-B09が、さらなる特性評価のために選択された。
【0249】
1.2 抗cMET抗体0021U3-B09の最適化。
潜在的な免疫原性を最小限に抑えるために、0021U3-B09の可変フレームワーク領域内の非Vernierフレームワーク残基(Foote and Winter 1992)が特に標的とされ、最も近いヒト生殖細胞系列配列と一致するように改変された。VH領域では、参照ヒト生殖細胞系列配列IGHV1-8*01とマッチするように7つのアミノ酸残基が変異した。VL領域では、参照ヒト生殖細胞系列配列IGKV1-5*03とマッチするように3つの残基が変異した。VH及びVL領域の全ての残基は、活性を失うことなく生殖細胞系列残基への変更に成功した。0021U3-B09は、基本的に記載されているように(Kunkel 1985)、ハイブリダイゼーションベースの変異誘発法を使用して親和性を最適化した。0021U3-B09配列から得られた大規模scFvライブラリは、標準的な分子生物学技術を使用して、VH相補性決定領域3(CDR3)のオリゴヌクレオチド誘導変異誘発によって作成された。ライブラリは親和性に基づく溶液相選択に供されて、ヒト及びカニクイザルのcMET抗原に対してより高い親和性を有するバリアントが選択された。CDR標的選択アウトプットからの粗scFv含有ペリプラズム抽出物を、HGF:cMET HTRF(登録商標)結合アッセイにおける阻害活性の改善についてスクリーニングした。親0021U3-B09と比較して有意に改善された阻害効果を示すバリアントは、DNA配列決定に供され、固有の遺伝子がヒトIgG2に変換された。次いで、精製された抗体は、その阻害効果に基づいてランク付けされた。最も強力な抗体B09-57が、さらなる特性評価のために選択された。
【0250】
1.3 抗EGFR抗体Tdev-0004の単離及び同定。
EGFR特異的scFv抗体は、基本的に記載されているとおり(Vaughan,1996)、組換え哺乳動物発現ビオチン化モノマーヒトEGFR(MedImmune)に対する一連の反復パニング選択サイクルで、大規模なナイーブヒトscFvファージディスプレイライブラリから単離された。選択アウトプットのラウンド3からのScFv表示ファージは、ELISAで、ヒト及びカニクイザルEGFRへのその結合についてスクリーニングされた。交差反応性を示す上位ヒットが選択され、DNA配列決定に供された。次いで、固有の遺伝子がヒト免疫グロブリンG1(IgG1)抗体に変換され、基本的に記載されているように(Persic;1997)、哺乳動物細胞で生成された。次いで、精製された抗体は、フローサイトメトリーによってEGFR発現細胞株A431への結合に基づいてランク付けされた。特異的な細胞結合を示す抗体Tdev-0004が、さらなる特性評価のために選択された。
【0251】
1.4 抗EGFR抗体Tdev-0004の最適化。
バリアントRAA22及びQD6は、抗EGFR Tdev-0004mAbを最適化することによって得られた。Tdev-0004のVLフレームワークは、参照ヒト生殖細胞系列配列IGLV2-11*01/IGLJ2と100%マッチしたが(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/igblast/Idlink.cgi?seqname=IGLV2-11*01&taxid=9606&dbname=IG_DB%2Fimgt.Homo_sapiens.V.f.orf.pを参照)、VHフレームワークは、最も近いヒト生殖細胞系列IGHV1-69*01/JH4と79%の相同性を示した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/igblast/Idlink.cgi?seqname=IGHV1-69*01&taxid=9606&dbname=IG_DB%2Fimgt.Homo_sapiens.V.f.orf.pを参照)。潜在的な免疫原性を最小化するために、VH領域は、13個の非生殖細胞系列フレームワーク残基全てを変異させることによって、最初に完全に生殖細胞系列化された。生殖細胞系列化により、完全に生殖細胞系列化されたバリアントの、カニクイザルEGFRへの結合は有意に障害された。カニクイザルEGFRへの結合を回復させるために、4つの非生殖細胞系列残基、K68、I73、R76及びT78が選択的に逆変異された。アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステム(Kabat and Wu 1991)によって番号付けされる。得られた部分的に生殖細胞系列化されたバリアント(H4と名付けた)は、親和性最適化のテンプレート配列として使用した。バリアントH4は、製造元の指示に従って、QuikChange Lightning Multi Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent)を使用して6つのCDR全てを簡素に変異誘発させることにより親和性が最適化された。単一アミノ酸変異VH及びVLライブラリを細菌内でFab断片として発現させ、ELISAでヒト及びカニクイザルEGFRへの結合の改善についてスクリーニングした。親H4と比較して結合の向上を示すバリアントはDNA配列決定に供され、固有の遺伝子がヒトIgG1に変換された。バリアントRAA22は、CDRH3における単一の変異によって同定された。親和性をさらに向上させるために、個々の陽性変異を組み合わせて、ヒト及びカニクイザルEGFRへの結合が強化されたバリアントをスクリーニングするコンビナトリアルライブラリを作成した。バリアントQD6は、CDRL2、CDRL3及びCDRH3の4つの組み合わせ変異によって同定された。
【0252】
1.5 一価二重特異性抗EGFR/cMET DuetMab抗体の生成。
抗cMET mAb B09-57及び抗EGFR mAb RAA22並びにQD6の可変ドメインは、DuetMabプラットフォーム(Mazor,2015)の骨格上での一価二重特異性抗EGFR/cMET抗体の構築に利用された。具体的には、抗cMET B09-57のVH遺伝子が、「ノブ」変異(T366W)と代替鎖間システイン変異(F126C及びC219V)を保有するヒトガンマ1定常重鎖に挿入された。B09-57のVL遺伝子は、「ノブ」重鎖と対になるように設計された、対応する代替鎖間システイン変異(S121C及びC214V)を保有するヒトカッパ定常ドメインにインフレームで挿入された。同様に、抗EGFR RAA22及び親和性最適化QD6のVH遺伝子は、「ホール」変異(T366S、L368A、及びY407V)を保有するヒトガンマ1定常重鎖に挿入され、RAA22及びB09-57のVL遺伝子は、「ホール」重鎖と対になるように設計されたヒトラムダ定常ドメインにインフレームで挿入された。さらに、「ノブ」及び「ホール」重鎖のCH3ドメインの2つの残基がシステインに変異して(「ノブ」ではS354C、「ホール」ではY349C)、安定化ジスルフィド架橋が形成された。Fcドメインは、マレイミド保有細胞傷害性薬の部位特異的抱合を可能にするために、セリン239の後にシステイン挿入を行うようにさらに設計された(C239i/「Maia」)(Dimasi,2017)。アミノ酸残基は、Kabat番号付けシステム(Kabat and Wu 1991)によって番号付けされる。組み立てられた一価二重特異性抗EGFR/cMET DuetMab抗体は、RAA22/B09-57及びQD6/B09-57と名付けた(
図1)。DuetMab抗体は、以前に説明されたように、哺乳動物細胞から生成された(Mazor,2017)。
【0253】
また、Fc骨格のエフェクター機能を低減又は除去すると、免疫毒性を軽減し、薬物動態を改善する可能性があり得ることも認識された。そのため、本発明者らは、抗体分子のFcエフェクター機能を低下させることが以前に示されたL234F/L235E/P331S(EU番号)の「トリプル変異体(TM)」も導入した(Organesyan,2008;Hay,2016)。これらのTM構築物は、c-METアームが「ホール」変異が、EGFRアームが「ノブ」変異を保有するように設計された。
【0254】
生成された「EGFR-cMETTM」DuetMabは、TMが導入されたRAA22及びB09の可変領域を含み、次の表に示すアミノ酸配列を有する。
【0255】
【0256】
実施例2-生化学的及び生物物理学的特性
この実施例では、RAA22、QD6及びB09-57モノクローナル抗体とRAA22/B09-57及びQD6/B09-57二重特異性抗体分子の様々な生化学的及び生物物理学的特性(それぞれEGFR及びc-Metへの結合親和性、及び両方の抗原に同時に結合するその能力を含む)を試験する。
【0257】
2.1 DuetMab及び親mAbsのEGFR及びcMETに対する結合親和性。
組換えヒト、カニクイザル、及びマウスEGFR及びcMET抗原に対するEGFR-cMET DuetMAbsの運動速度定数(kon及びkoff)及び平衡解離定数(Kd)を、BIAcore T200装置(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)の抗体捕捉アッセイを使用して、SPRによって25℃で測定した。最終表面密度が約2000レゾナンスユニット(RU)のCM4センサーチップ上に、マウス抗ヒトIgGを固定化した。同一固定化プロトコルを使用して、標準フローセル表面もまた、このセンサーチップ上で調製された。試験及び対照品抗体は、装置緩衝液中の精製EGFR(ヒト0.27~200nM、カニクイザル0.4~900nM、及びマウス4~1000nM)又はcMETタンパク質(ヒト0.27~66nM、カニクイザル0.27~22nM)の3倍連続希釈液とともに、装置緩衝液(HBS-EP緩衝液;0.01M HEPES、pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、及び0.005%P-20)中で5~20nMに調製された。動態測定には逐次的手法を利用した。まず、抗体を10μL/分の流速で捕捉表面に注入した。捕捉された抗体の結合が安定したところで、単一濃度の分析物を75μL/分の流量で捕捉表面及び参照表面の両方に注入した。得られた結合反応曲線から会合相データを得た。分析物の注入後、次にフローを機器緩衝液に15分間戻して解離相データの収集を可能にし、続いて10mMグリシン、pH1.5の1分間パルスによりチップ上の抗体捕捉表面を再生させた。試験及び対照物質抗体に対する結合反応は、各濃度の分析物の二重注入から記録した。さらに、注入系列の全体にわたりいくつかの緩衝液注入を分散させた。選択緩衝液注入を参照細胞応答とともに使用して、生データセットの注入アーティファクト及び/又は非特異的結合相互作用を修正した(一般に「二重参照」と呼ばれる)。修正された結合データは、1:1結合モデルに全体的に適合した(Biacore T200 Evaluationソフトウェア2.0,GE Healthcare,Pittsburgh,PA)。計算された動態パラメータ(kon及びkoff)及びkoff/konとして決定されたKdを表1に示す。
【0258】
【0259】
【0260】
上記のデータから見られるように、二重特異性抗体分子QD6/B09-57は、ヒトcMetに高い親和性(約2nM Kd)で結合し、ヒトEGFRに高い親和性(約6nM Kd)で結合する一方、二重特異性抗体分子RAA22/B09-57は、ヒトc-Metに同様に高い親和性(約2nM Kd)で結合するが、QD6/B09-57と比較して低い親和性(約45nM Kd)でヒトEGFRに結合する。
【0261】
2.2 DuetMabのEGFR及びcMETへの同時結合。
組み換えヒトEGFR及びcMETタンパク質への同時結合試験は、基本的に記載されているように(Mazor、2015)、Octet384装置でのバイオレイヤー干渉法によって測定された。簡潔には、アッセイ緩衝液[PBS pH7.2、3mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、0.05%(v/v)Tween20]中の5μg/mLのHisタグ付きcMET抗原が最初にNI-NTAバイオセンサーで捕捉された。結合していないタンパク質を除去するための洗浄ステップの後、それぞれのロードされたバイオセンサーは、最初に66nMの抗体、次いで500nMのEGFR抗原との、連続的な会合及び解離の相互作用に曝露された。会合及び解離曲線は、Octet384ソフトウェアv.9.0を使用してデータの非線形適合から計算された。
図2に示すように、DuetMabは両方の抗原に同時に結合することが示されたが、親抗cMETIgGはcMETにのみ特異的な結合を示し、2つの抗EGFRIgGはcMETをロードしたセンサーに結合を示さなかった。
【0262】
2.3 EGFR及びcMetの特異性
EGFR及びcMET種のパラログ及び近縁ファミリーメンバーに対する特異性は、ELISAによって決定された。簡潔には、抗原溶液をPBSで1μg/mLに調製し、50マイクロリットルをELISAアッセイプレートの半分の面積にコーティングした。プレートを洗浄し、0.005%Tween-20(PBS-T)を含有するPBS中の1%BSAで、室温で1時間ブロッキングした。ウェルをPBS-Tで4回洗浄した。
図3に示されるように、使用した一次抗体は、R374(非結合IgG1アイソタイプ対照抗体)、B09(抗cMET抗体)、QD6(抗EGFR抗体)、RAA22(抗EGFR抗体)、QD6/B09(二重特異性EGFR/c-MET DuetMAb)、RAA22/B09(二重特異性EGFR/c-MET DuetMAb)、PaniX(抗EGFR抗体)、MetMab(抗cMET抗体)、及びMab11311(抗HER4抗体)である。ウェルは、10μg/mLで開始し0.002μg/mLで終了する1:3希釈系列でPBS-T中に希釈した、指定の一次抗体50μLでインキュベートした。ただし、HER4結合mAb対照であるMAB1131については、系列は1μg/mLで開始した。ウェルをPBS-Tで4回洗浄し、次いで、PBS-Tで1:5000に希釈したヤギ抗ヒトFab HRP標識二次抗体50μlを各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。50マイクロリットルのTMB基質溶液を全てのウェルに加え、陽性対照ウェルで強いシグナルが観察されるまで、室温で5~30分間インキュベートした。50マイクロリットルのTMB停止溶液を全てのウェルに加え、SpectraMax M5マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を読み取った。データをSoftMax Pro 5ソフトウェアで分析し、GraphPad Prism 7グラフ作成ソフトウェアを使用してプロットした。
【0263】
種の交差反応性を決定するために、上記のようにELISAアッセイを実行した。
図3Aに示すように、高親和性EGFR IgG、QD6及び一価二重特異性EGFR/cMET DuetMAb、QD6/B09は、ヒト、カニクイザル、及びマウスEGFRに結合し、ELISAアッセイで強力なシグナルを示した。対照的に、親和性が低下したEGFR IgG、RAA22は、QD6と比較して、ヒト、カニクイザル、及びマウスEGFRへの結合がより弱かった。マウスEGFRへの結合は弱いが、検出可能であった。対応する一価二重特異性EGFR/cMET DuetMAb、RAA22/B09は、二価親IgG、RAA22と比較して、ヒト及びカニクイザルEGFRへの結合がさらに弱く、マウスEGFRへの結合はわずかであった。cMET IgG、B09、及び全ての二重特異性バリアントは、ヒト及びカニクイザルcMETに対して同等の結合を示した。いずれの抗体もマウスcMETへの結合は検出されなかった。これらの結果は、BIAcore装置による表面プラズモン共鳴測定によって決定された結合速度と一致している(上記の表1)。
【0264】
図3Bに示すように、親IgG又は派生二重特異性抗体はいずれも、EGFR HERファミリータンパク質、HER2、HER3、又はHER4のいずれに対しても認識できる結合を示さなかった。同様に、いずれの抗体も、cMETファミリーメンバー、Ron(CD136)、又はセマフォリン3aに対して有意な結合を示さなかった。
【0265】
これらの結果は、親IgG及び得られた二重特異性抗体が、その同族標的に特異的に結合し、近縁ファミリー種への結合は検出されないことを示す。
【0266】
実施例3-pH感受性色素を使用した抗体の内在化及び酸性化区画への輸送のモニタリング
正常な非腫瘍組織における標的発現は、標的組織へのペイロード送達を減少させることで抗体抱合体の治療域を減少させる毒性をもたらし得る。本開示の化合物(例えば、放射性免疫抱合体)の二重特異性抗体又はその抗原結合断片の設計は、標的の共発現がほとんど又は全くない正常組織における抱合体の影響を最小限に抑えながら、2つの標的を共発現する腫瘍細胞への抗体分子(すなわち、ペイロード送達ビヒクル)の送達を最大化することを意図している。EGFR親和性が低下した二重特異性抗体RAA22/B09を使用した二重標的化が、単一標的会合と比較して選択性の利点を提供するかどうかを評価するために、本発明者らは、pH感受性染料で標識された抗体を使用して、二重特異性mAbと二重特異性を含む一価親抗体の内在化効率を比較する試験を実行した。
【0267】
pHAb pH感受性染料(Promega)で標識された抗体を使用することで、リソソーム及びエンドソームなどの酸性化細胞内区画への抗体の内在化及び輸送の可視化が容易になった。この染料はpH>7では非常に弱い蛍光を示すが、酸性pHでは強い蛍光を示し、およそpH5で最大に達する。簡潔には、抗体は、製造元の推奨に従ってpHAbアミン反応性染料で標識された。標識された抗体は、R347 IgG1アイソタイプ対照、一価二重特異性対照抗体 抗EGFR抗体RAA22/R347及び抗cMET B09/R347、並びにEGFR/cMET一価二重特異性抗体RAA22/B09であった。中程度のレベルのEGFR(相対受容体密度約33,000)及びcMET(相対受容体密度約50,000)を共発現するNCI-H1975肺癌細胞を、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI成長培地中、2×105細胞/mLの密度で、100マイクロリットル容量で、底が透明で壁が黒い96ウェルアッセイプレートに播種した。プレートを加湿インキュベーター内で、37℃、5%CO2で一晩培養した。次いで、プレートを氷上で30分間冷却し、その後、予め冷却された成長培地に様々な濃度のpHAb標識二重特異性抗体及び一価対照抗体を加えた。培養物をさらに30分間氷上で冷却し、次いで、Cy3フィルターを使用してOperetta High ContentImagingシステムで蛍光を読み取り、この最初の読み取りを時間0と指定した。プレートを37℃のインキュベーターに戻し、3、6、24、30及び48時間後に追加の読み取りを行った。
【0268】
NCI H1975細胞を処理するために1.25μg/mLのpHAb標識mAbsを使用した代表的な内在化実験を
図4に示す。非結合IgG1アイソタイプ対照抗体R347は、どの時点においても、検出可能な蛍光を示さなかった。EGFR/cMET二重特異性抗体RAA22/B09は、3時間までに細胞内蛍光を示し、蛍光強度は処理後48時間まで増加し続けた。一価EGFR結合対照抗体RAA22/R347は、24時間の時点から非常に弱い蛍光を示したが、これは48時間の時点まで劇的に増加しなかった。一価単一特異性cMET結合対照抗体B09/R347は、24時間で中程度の蛍光を示し、48時間までにさらに増加した。それにもかかわらず、単一特異性cMET抗体の蛍光シグナルの強度は二重特異性RAA22/B09と比較して中程度であり、これは、ここで試験した二重標的発現細胞株において、二重特異性抗体は単一特異性親抗体よりも高い内在化効率を有することを示唆している。細胞を0.625μg/mLのpHAb標識mAbsで処理した場合、二重特異性抗体と単一特異性対照の差はさらに顕著になった(
図5)。単一特異性抗体は48時間後でもほとんど蛍光を示さなかったが、二重特異性RAA22/B09抗体は3時間後までに再び細胞内蛍光を示し、蛍光強度は処理後48時間まで増加し続けた。これらの結果は、二重標的化二重特異性抗体がEGFRとcMETの両方を共発現する細胞への効率的な内在化を媒介するという仮説と一致している。同時に、単一特異性親抗体は、二重特異性抗体と比較して、取り込み及び蛍光強度が低下する。これらの結論を論理的に拡張すると、二重特異性抗体は、両方の標的ではなく1つの標的のみを発現する組織では、単一特異性抗体のように挙動し得ることが示唆され、これは、EGFRとcMETの場合に一般的に当てはまる。特に注目すべきは、pHAbで標識された親和性が低下したEGFR対照mAb、RAA22/R347が、ごくわずかな取り込み及び蛍光を示したことである。EGFRへの結合の減少により、有意なレベルのEGFRを発現しているがcMETはほとんど又は全く発現していない、皮膚などの正常組織における抗体抱合体の影響が最小限に抑えられ得る。
【0269】
実施例4-共焦点顕微鏡を使用した抗体内在化のモニタリング
標識されたDuetMabの内在化動態:RAA22/B09及びQD6/B09抗体は、生細胞共焦点蛍光顕微鏡を使用してインビトロで評価した。
【0270】
4.1 材料及び方法
H1975及びHCC827細胞は、ATCCから入手した。RAA22/B09、QD6/B09、及びシングルアーム誘導体は、MedImmuneから入手した。IgG Fabアームを有する、QD6/B09並びにシングルアーム特異的対照QD6/IgG及びB09/IgGは、非特異的ヒトIgG1 NMGCから得られ、MedImmuneから入手した。RAA22/B09並びに非特異的ヒトIgG1 R347由来のシングルアーム特異的対照RAA22/IgG及びB09/IgGは、MedImmuneから入手した。RPMI(11875-093)、HEPES(15630106)、ピルビン酸ナトリウム(11360070)、AlexaFluor(登録商標)647(A-20186)モノクローナル抗体標識キット、Zeba(商標)Spin Desaltingカラム(87767)、及びCellTracker(商標)Blue CMAC(C2110)は、Life Technologies(Carlsbad,CA)から入手した。Accutase Cell Detachment Solution(423201)は、BioLegend(San Diego,CA)から入手した。HyClone熱不活化ウシ胎児血清(SH30071.03HI)は、GE Life Sciences(Marlborough,MA)から入手した。PBS(21-040)は、Corning Incorporated(Corning,NY)から入手した。FcRブロッキング試薬(130-059-901)は、Miltenyi Biotec Inc.(Auburn,CA)から入手した。ポリプロピレン丸底チューブ(352063)は、BD Biosciences(San Jose,CA)から入手した。CellCarrier384ウェルマイクロプレートは、PerkinElmer Inc.(カタログ番号6007550,Waltham,MA)から入手した。
【0271】
AlexaFluor抱合体の調製
モノクローナル抗体は、製造元の指示に従って抗体標識キットを使用してAlexaFluor-647染料と抱合させた。簡潔には、pH=8.3の重炭酸ナトリウム緩衝液中の抗体50~100マイクログラムを、室温で1時間穏やかに撹拌しながら反応性色素試薬とともにインキュベートした。取り込まれなかった色素は、製造元の指示に従って1X PBSで平衡化した40K MWCOでZeba(商標)スピン脱塩カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。
【0272】
染色のための細胞の培養及び調製
接着性H1975又はHCC827細胞は、最初の播種後、CO2インキュベーター内のT-75フラスコで、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有する培地RPMI-1640を使用して80~90%の集密度になるまで培養した。実験の日に、T-75フラスコで増殖した接着単層を、Accutaseを使用して細胞懸濁液に分離した。剥離した細胞を1×PBSで、300×gで5分間の遠心分離を使用して2回洗浄した。次いで、細胞をフェノールフリーRPMIに2×106細胞/mLの濃度で再懸濁し、染色に使用した。
【0273】
イメージングのための細胞染色
2×106細胞/mLの細胞懸濁液を、フェノールフリーRPMIで調製した1μM CellTracker(商標)Blue CMACとともに、CO2インキュベーター中、37℃で30分間インキュベートした。取り込まれなかったCellTracker(商標)Blue CMAC染料は、フェノールフリーRPMIにより、4℃で5分間、300xgの遠心分離を使用して2回洗浄することで除去した。次いで、細胞を氷上で冷却し、1×106細胞あたり10ulのFcRブロッキング試薬で15分間ブロッキングした。2×105個の細胞を5mL丸底チューブに分注し、最終濃度2.5μg/mLの蛍光抗体とともにインキュベートした。4℃で遠心分離することによって結合していない蛍光試薬を除去した後、細胞を100mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、及び1%FBSを含有するフェノールフリーRPMIに再懸濁した。細胞は、384ウェルイメージングプレートの複数のウェルに1ウェルあたり5,000個の密度で移され、画像取得前に4℃で2分間、2,200rpmで短時間遠心分離した。
【0274】
共焦点蛍光顕微鏡を使用した細胞画像の取得
イメージングプレート(384ウェル形式)内の染色細胞は、以前に記載される(Vainshtein,2015)ようにOpera共焦点蛍光イメージングシステムでイメージングしたか、又は40X/1.2NA LCIPlan Apo対物レンズを備えたZeiss Axio Observer.Z1倒立顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy,Thornwood,NY)に移した。Zeiss顕微鏡を使用した実験では、インキュベーターXLmulti S DARK(PeCon Gmbh,Erbach,Germany)を使用して、イメージング環境を37℃、5%CO2、70%湿度に維持した。サンプルは、405、488、561、及び63nmの固体レーザー(Carl Zeiss Microscopy,Thornwood,NY)で照射された。一連の画像は、Yokogawa CSU-X1 Spinning Disk Unit(横河電機株式会社、東京)とEvolve 512 EMCCD(Photometrics,Tuscon,AZ)を使用して、指定の時間に取得された。画像を取得する前に、染色した細胞のアリコートを使用して、レーザー出力、露出時間、カメラゲインなどの露出パラメータを決定した。画像はZEN 2.3(Carl Zeiss Microscopy,Thornwood,NY)を使用して処理され、Columbusソフトウェア(PerkinElmer,Waltham,MA)を使用して分析された。
【0275】
内在化の画像解析のためのアルゴリズム
抗体の内在化の定量化に使用されるアルゴリズムは、以前に説明されている(Vainsthein,2015)が、以下の更新及び変更を伴う。反復画像処理に使用される参照チャネルは、細胞のCellTracker(商標)Blue CMAC(CTB)染色から生成された。シグナルチャネルは、イメージャーの抗体AlexaFluor-647チャネルからさらに得られる。画像は、アルゴリズム定義のパラメータを使用してアルゴリズムによって処理された。これらのパラメータは、最初にデフォルト値として設定され、次いで各細胞タイプ及び実験について最適化された。画像のCTB染色を使用して、閾値以下の蛍光強度シグナルを有する領域を除外することで、周囲よりも強度が高い画像上の領域を検出する閾値設定を使用して、細胞を識別した。残りの同定された細胞オブジェクトは、「TotalCell」とした。細胞は、形態特性領域(120~600μm2のオブジェクト)及び真円度(>0.5)についてフィルタリングされてさらに選択された。次いで、アルゴリズムで定義されたパラメータを使用して、許容された細胞内の「膜領域」及び「細胞質領域」がオブジェクトの境界の周囲に構築された。各領域の蛍光強度を使用して、抗体関連AlexaFluor-647シグナルをモニタリングした。各領域の蛍光強度は、許容された細胞内の全てのピクセルの合計の平均として報告された。
【0276】
細胞質中の抗体関連蛍光の蓄積を利用して、抗体内在化の動態を定量化した。細胞染色及び蛍光強度の変動による結果の比較可能性を確保するために、細胞質シグナルは各時点での総細胞シグナルによって正規化され、次の式を使用して内在化率として指定された:内在化率=強度(細胞質)/(強度(細胞質)+強度(膜))。内在化速度定数kintは、次の式を使用してデータの曲線フィッティングによって内在化の時間経過から計算された:Fcyt(t)=(1-e-kint・t)・Fmax,cyt(式中、Fmax、cytは、細胞あたりの細胞質強度と細胞あたりの総強度の最大比)。データの曲線フィッティングは、Graphpad Prism(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用して実施した。内在化の半減期(T1/2)は、ln(2)とkintの比として計算された。
【0277】
4.2 RAA22/B09及びQD6/B09のインビトロ内在化
AlexaFluor647(AF647)一次標識DuetMabの内在化動態:RAA22/B09及びQD6/B09抗体は、EGFR及びc-MET発現細胞株H1975を使用してインビトロで評価した。各抗体を細胞に予め結合し、生細胞共焦点蛍光顕微鏡を使用して細胞表面から細胞質への抗体の転移をモニタリングした。
図6は、両方の抗体が、内在化条件に供される前(T=0)には主に細胞表面に局在し、1時間後(T=1h)には細胞質領域(青)に移行したことを示す。動態画像は、内在化の経過にわたって5分ごとに撮影され、定量アルゴリズム(上記参照)を使用して処理されて、内在化の運動定数及び半減期が決定された。
図6Bは、QD6/B09及びRAA22/B09の非常に類似した内在化速度を示しており、半減期はそれぞれ37.5±10.6分及び43.2±15.5分である。
【0278】
抗体内在化のモードを評価し、各アームのDuetMabの全体的な内在化への寄与を調査するために、本発明者らは、EGFR及びc-METの両方を発現するH1975細胞において、デュエットQD6/B09に対するシングルアーム特異的対照抗体分子QD6/IgG及びB09/IgG、並びにデュエットRAA22/B09に対するRAA22/IgG及びB09/IgGの内在化を評価した。1つのアームのみが標的受容体に特異的であるため、対照抗体は1つの受容体を介してのみ内在化することができ、内在化のモードとして二重受容体標的化及び架橋が排除される。
【0279】
QD6/B09(
図7A)及びRAA22/B09(
図7B)の内在化プロファイルは、細胞質におけるmAb-AF647シグナルの増加を伴う、膜mAb-Fl647シグナルの一致した減少という非常に類似したパターンを示しており、これは内在化の典型的なプロファイルである。しかし、それらのシングルアーム構築物は、非常に異なる内在化プロファイルを示した。シングルアームQD6/IgGは、QD6/B09 DuetMabとほぼ同一の内在化時間経過を有しており(
図7A、左及び中央)、これは、QD6/B09デュエットの内在化は主に分子のEGFRアームによって促進され、B09アームの寄与は最小限であることを示す。実際に、B09/IgG構築物は、非常に低いレベルの内在化を示した(
図7B、右)。膜シグナルの急速且つ広範な減少は、細胞質シグナルの非常に緩やかな増加に対応しており、これはおそらく、細胞表面のc-MET受容体から予め結合したB09/IgGが広範囲に解離したことによるものと考えられる。その後、抗体の解離により、B09/IgGの中程度の内在化が生じた。これらの結果から、QD6/B09デュエットの内在化は主に分子のEGFRアームによって促進され、B09アームの寄与は最小限であることが明らかになった。
【0280】
対照的に、RAA22/B09 DuetMabは、そのシングルアーム対照抗体と比較した場合、非常に異なる内在化プロファイルを示した。
図7Bに示すように、RAA22/B09 DuetMabの細胞質強度値は、RAA22-IgG及びB09-IgGよりもそれぞれ10.98倍及び4.70倍高かった。B09/IgGの非効率的な内在化は、その顕著な解離(上記で説明)に起因し得るが、RAA22/IgGは急速に内在化した。しかし、EGFRアームの親和性が低いため、RAA22/IgG分子の数はRAA22-B09DuetMabよりも10.98倍少なくなっている(蛍光強度に基づく)。シングルアーム構築物とは対照的に、細胞質に入るデュエットRAA22/B09 mAbの量が著しく増加したことから、内在化を促進するには両方の抗体アームが標的受容体と会合する必要があることが示された。この発見は、QD6/B09とRAA22/B09 DuetMabsの内在化のメカニズムが異なり、QD6/B09は主にEGFRアームによって駆動されるのに対し、RAA22/B09は会合にEGFRアーム及びc-METアームの両方を必要とすることを示す。
【0281】
4.3 異なるレベルの標的受容体を有する細胞株におけるRAA22/B09の内在化
EGFR及びc-METの両方のアームが標的受容体に結合すると、H1975細胞におけるRAA22/B09受容体の内在化が促進されたため、EGFR及びc-MET受容体の数の増加が内在化特性に影響を与えるかどうかを調べた。ウエスタンブロット法で決定したそれぞれの受容体レベルは、H1975細胞ではEGFRが約33,000、c-METが約50,000、HCC827細胞ではEGFRが約790,000、c-METが約523,000であった。H1975(中受容体)及びHCC827(高受容体)細胞におけるRAA22/B09の内在化プロファイルは、HCC827細胞における内在化の顕著な増加を示す(
図8)。
【0282】
予想通り、EGFR及びc-MET RAA22/B09の全体レベルがそれぞれ23.9倍及び10.4倍増加したことに対応して、HCC827細胞への結合はH1975よりも平均8.9倍高かった(T=0、3.1x10
7MFI対3.5x10
6MFI)。内在化レベル(ピーク細胞質強度で判断)はHCC827細胞で21.7倍高く、これは、標的受容体を高レベルで発現している細胞において、有意に高い濃度の抗体が細胞質に入ることを示唆している。重要なことに、顕著に異なる強度に加えて、内在化プロファイル(経時的な膜及び細胞質のシグナル)もHCC827細胞とH1975細胞間で著しく異なっていた。高発現HCC827細胞では、RAA22/B09-AF647膜シグナルの減少は、RAA22-B09細胞質シグナルの逆数増加に対応し、総RAA22/B09シグナルは経時的に維持され、両方の受容体との強力なデュアルアーム抗体相互作用とそれに続く内在化を示す。H1975細胞では、総強度及び膜強度の同時低下があり、結合前の抗体の一部が細胞表面から解離し、細胞内に内在化できなかった可能性があることが示されている。HCC827細胞におけるRAA22/IgG及びB09/IgGの内在化について、解離を示す同様のプロファイルが観察されたが、シングルアームの会合では有効な結合が得られず、解離する傾向があった(
図9A及び9B)。このデータは、RAA22/B09がH1975細胞内に内在化される場合、受容体相互作用の混合モード(シングルアーム及びデュアルアーム会合)が存在することを示唆している。総合すると、これらのデータは、標的細胞受容体の発現レベルがRAA22/B09の内在化の程度及び効率を決定する重要な要因であることが示唆される。
【0283】
実施例5.放射性医薬品の一般的な材料及び方法
ルテチウム177は、0.05N塩酸溶液中のルテチウム三塩化物としてITMMedicalIsotopesから入手でき;インジウム111は、0.05N塩酸溶液中のインジウム三塩化物としてBWXTから入手でき;アクチニウム225は、Oak Ridge National Laboratoriesからアクチニウム225三硝酸塩として、又はCanadian Nuclear Laboratoriesからアクチニウム225三塩化物として入手できる。
【0284】
分析HPLC-MSは、Waters Acquity Binary Solvent Manager、Waters Acquity Sample Manager(サンプルは10℃に冷却)、Water Acquity Column Manager(カラム温度30℃)、Waters Acquity Photodiode Array Detector(254nm及び214nmでモニタリング)、エレクトロスプレーイオン化機能を備えたWaters Acquity TQD、及びWaters Acquity BEH C18、2.1×50(1.7μm)カラムで構成される、Waters Acquity HPLC-MSシステムを使用して実施できる。分取HPLCは、Waters 1525 Binary HPLCポンプ、Waters 2489 UV/Visible検出器(254nm及び214nmでモニタリング)、及びWaters XBridge Prepフェニル又はC18 19×100mm(5μm)カラムで構成されるWaters HPLCシステムを使用して実施できる。
【0285】
HPLC溶出法1:Waters Acquity BEH C18 2.1×50mm(1.7μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速=0.3mL/分;初期=90%A、3~3.5分=0%A、4分=90%A、5分=90%A。
【0286】
HPLC溶出法2:Waters XBridge Prep Phenyl 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=80%A、13分=0%A。
【0287】
HPLC溶出法3:Waters Acquity BEH C18 2.1×50mm(1.7μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速=0.3mL/分;初期=90%A、8分=0%A、10分=0%A、11分=90%A、12分=90%A。
【0288】
HPLC溶出法4:Waters XBridge Prep C18 OBD 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=80%A、3分=80%A、13分=20%A、18分=0%A。
【0289】
HPLC溶出法5:Waters XBridge Prep C18 OBD 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=90%A、3分=90%A、13分=0%A、20分=0%A。
【0290】
HPLC溶出法6:Waters XBridge Prep C18 OBD 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=75%A、13分=0%A、15分=0%A。
【0291】
HPLC溶出法7:Waters XBridge Prep C18 OBD 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=80%A、12分=0%A、15分=0%A。
【0292】
HPLC溶出法8:Waters XBridge Prep C18 OBD 19×100mm(5μm)カラム;移動相A:H2O(0.1%v/v TFA);移動相B:アセトニトリル(0.1%v/v TFA);流速:10mL/分、初期=90%A、12分=0%A、15分=0%A。
【0293】
分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、Waters 1525バイナリHPLCポンプ、Waters2489 UV/Visible検出器(280nmでモニタリング)、Bioscan Flow Countラジオディテクター(FC-3300)、及びTOSOH TSKgel G3000SWxl、7.8×300mmカラムで構成される、Watersシステムを使用して実施できる。アイソクラティックSEC法は、移動相が0.1Mリン酸、0.6M NaCl、0.025%アジ化ナトリウム、pH=7で、流量は、例えば、mL/分であり得る。
【0294】
MALDI-MS(陽イオン)は、MALDI Bruker Ultraflextreme分光計を使用して実施できる。
【0295】
ラジオ薄層クロマトグラフィー(ラジオTLC)は、Bioscan AR-2000イメージングスキャナーによって実施することができ、クエン酸緩衝液(0.1M、pH5.5)を使用して、iTLC-SGガラスマイクロファイバークロマトグラフィーペーパー(Agilent Technologies,SGI0001)プレート上で実行できる。
【0296】
実施例6.4-{[11-オキソ-11-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)ウンデシル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物B)の合成
二官能性キレート、4-{[11-オキソ-11-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)ウンデシル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物B)は、
図11に提供されるスキームに従って合成することができる。5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン酸(DOTA-GA-(tBu)
4、50mg、0.07mmol)のACN(2.0mL)溶液に、DSC(50mg、0.21mmol)を加え、続いてピリジン(0.20mL、2.48mmol)を加える。反応物を室温で1時間撹拌する。反応混合物に11-アミノウンデカン酸(70mg、0.36mmol)を加え、続いて室温でPBS溶液(1.0mL)を加える。反応物を室温で72時間攪拌した。反応混合物をシリンジフィルターで濾過し、方法6を使用して分取HPLCで直接精製して、中間体2-Aが得られる。
【0297】
中間体2-A(40mg、0.03mmol)、TFP(90mg、0.54mmol)及びEDC(40mg、0.27mmol)のACN(1.0mL)溶液に、室温でピリジン(0.05mL、50mg、0.62mmol)を加える。溶液を室温で24時間攪拌した。反応物は方法7を使用して分取HPLCで直接精製され、Biotage V10 Rapid Evaporatorを使用して濃縮した後、ワックスとして中間体2-Bが得られる。
【0298】
中間体2-BをDCM/TFA(1.0mL/2.0mL)に溶解し、室温で24時間撹拌する。反応物を空気流で濃縮し、方法8を使用して分取HPLCで直接精製し、濃縮後に透明ワックスとして化合物Bが得られる。アリコートをHPLC-MS溶出法3によって分析する。
【0299】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ 7.99-7.88(m,1H),7.82(t,J=5.5Hz,1H),3.78(broad s,4H),3.43(broad s,12H),3.08(broad s,4H),3.00(m,3H),2.93(broad s,3H),2.77(t,J=7.2Hz,2H),2.30(broad s,2H),1.88(broad s,2H),1.66(p,J=7.3Hz,2H),1.36(m,4H),1.32-1.20(m,9H).
【0300】
実施例7.4-{[2-(2-{2-[3-オキソ-3-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)プロポキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物C)の合成
二官能性キレート、4-{[2-(2-{2-[3-オキソ-3-(2,3,5,6-テトラフルオロフェノキシ)プロポキシ]エトキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}-2-[4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル]ブタン酸(化合物C)は、
図12に提供されるスキームに従って合成される。
【0301】
5-(tert-ブトキシ)-5-オキソ-4-(4,7,10-トリス(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)ペンタン酸(DOTA-GA(tBu)4、100mg、0.143mmol)のACN(8.0mL)溶液に、DSC(73mg、0.285mmol)及びピリジン(0.80mL、9.89mmol)を加える。反応混合物を周囲温度で90分間撹拌する。この溶液を100mL丸底フラスコ内のアミノPEG3酸の半溶液(DMF1.2mL中、63mg、0.285mmol)に加える。周囲温度で4時間後、反応物を空気流下で濃縮乾固することによってワークアップする。粗物質をHPLC溶出法2(粗物質を6mLの20%ACN/H2Oに溶解)で精製する。生成物を含有する画分をプールし、真空下で濃縮し、次いでACN(3×2mL)と共蒸発させる。
【0302】
中間体1-A(82mg、60μmol)を含むバイアルに、ACN(2mL)、NEt3(50μL、360μmol、6当量)、HBTU(23mg、60μmol、1当量)及びTFP溶液(50mg、300μmol、5当量、250μLのACNに溶解)を加える。得られた透明な溶液を環境温度で3時間撹拌した。反応物は、溶液を空気流下で濃縮乾固することによってワークアップされ、次いで、ACN/H2O(1:1、合計3mL)で希釈され、溶出法4を使用して分取HPLCで精製される。生成物を含有する画分をプールし、真空下で濃縮し、次いでACN(3×2mL)と共蒸発させる。中間体1-Bは、透明な残留物として得られる。
【0303】
中間体1-B(67mg、64μmol)を含有するバイアルにDCM(2mL)及びTFA(2mL)を加える。得られた溶液を環境温度で16時間撹拌した。さらにTFA(2mL)を加え、反応物を室温で6時間撹拌する。反応物を空気流下で濃縮乾固し、粗生成物を最終的にACN/H2O(10%ACN/H2O 1mL)に溶解する。次いで、粗反応物溶液を、溶出法5を使用した分取HPLCで精製する。生成物を含有する画分をプールし、凍結し、凍結乾燥する。化合物Cは、白色固体として得られる。アリコートをHPLC-MS溶出法3によって分析する。
【0304】
1H NMR(DMSO-d6,600MHz)δ 7.97-7.91(m,2H),3.77(t,2H,J=6.0Hz),3.58-3.55(m,2H),3.53-3.48(m,8H),3.44-3.38(m,10H),3.23-3.08(m,11H),3.02(t,2H,J=6.0Hz),2.93(broad s,4H),2.30(broad s,2H),1.87(broad s,2H).
【0305】
実施例8.EGFR-cMET抗体を含む放射性免疫抱合体の合成のための抱合及び放射性標識
8.1.免疫抱合体化合物Dの合成
【化31】
133mLの滅菌溶液容器に、EGFR-cMETモノクローナル二重特異性抗体RAA22/B09 DuetMabのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液(58.8mL;5.1mg/mL;300mg)を入れ、続いて5.88mLの炭酸緩衝液(1.0M、pH9.5)、及び化合物Cの0.001M HCl溶液2.83mL(7.7当量;3.00mL中17.3mg;この溶液は使用直前に調製)を入れた。得られた混合物のpHは、pHストリップによって約9.5~10であると測定された。反応は、室温で2時間反応させた。酢酸アンモニウム(28.1g)を反応混合物に加え、得られた溶液を5mL Cytiva HiTrap Butyl HP(HIC)カートリッジにロードした(HICカートリッジは最初に酢酸ナトリウム緩衝生理食塩水とTween(SABST;50mL)で前処理し、次に酢酸アンモニウム溶液(50mL;0.42g/mL)で前処理した)。HICカートリッジを酢酸アンモニウム溶液(10mL)で洗浄し、次いで、生成物をSABST(約10mL)で溶出した。生成物溶液をSABSTで約15mLに希釈し、SABST(250mL)で前処理したCytiva 15mL HiPrep 26/10脱塩カートリッジにロードした。生成物画分をSABST(約16mL)で溶出して、無色透明の液体を得、サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用した分析により、化合物D(15.9mL、14.8mg/mL、234.9mg、78%)の形成が示された。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析法を使用して、キレート対抗体比(CAR)5.3を決定し、EGFR-cMET抗体と免疫抱合体化合物Dの質量対電荷比の差から計算した。
【0306】
8.2 放射性免疫抱合体化合物Eの放射性合成
【化32】
1.5mLエッペンドルフチューブに化合物DのSABST溶液(0.100mL;2.00mg/mL;0.200mg)を入れ、続いて[
177Lu]LuCl
3の0.04M HCl溶液(2.2mCi)を入れた。室温で20分後、反応混合物のiTLC分析(シリカゲル(SG)プレート、移動相として0.02Mクエン酸緩衝液(5%MeOH))により、放射化学変換(RCC)が97%超であることが示された。精製は、Sephadex G50樹脂(SABSTで水和)を充填した1mLカラムを使用して実施した。生成画分を、SABSTを使用して溶出し、結合した。L-アスコルビン酸ナトリウム及びジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム塩水和物(DTPA)のSABST溶液を加え、得られた配合物(約10mML-アスコルビン酸ナトリウム、1mM DTPA)を合成終了時(EOS)にiTLC及びSEC-HPLCで分析したところ、化合物E(364μL、0.431mg/mL、10.1mCi/mgの比活性、放射化学的純度>95%、化学的純度>99%)の形成が示された。
【0307】
8.3 放射性免疫抱合体化合物Fの放射性合成
【化33】
1.5mLエッペンドルフチューブに化合物DのSABST溶液(0.193mL、2.07mg/mL、0.400mg)を入れ、続いて[
225Ac]Ac(NO
3)
3の0.001M HCl溶液(24μCi)を入れた。35℃で120分後、DTPA(0.1M SABST溶液2μL)を加えて反応をクエンチした。反応混合物のiTLC分析(SGプレート、移動相として0.02Mクエン酸緩衝液(5%MeOH))では、RCCが99%であることが示された。精製は、G50樹脂(SABSTで水和)を充填した1mLカラムを使用して実施した。生成画分を、SABSTを使用して溶出し、結合した。L-アスコルビン酸ナトリウム及びDTPAのSABST溶液を加え、得られた配合物(約10mML-アスコルビン酸ナトリウム、1mM DTPA)をEOSで、iTLC及びSEC-HPLCで分析したところ、化合物F(448μL、0.680mg/mL、0.053mCi/mg比活性、放射化学的純度>99%、化学的純度>99%)の形成が示された。
【0308】
実施例9.[177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体のインビトロ結合
4つの異なる細胞株:HCC827細胞、HT29細胞、H441細胞、及びH1975細胞を用いて、[177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体(すなわち、化合物E)の受容体結合親和性を評価する試験を実施した。この試験は、以下に説明する手順に従った。
【0309】
このアッセイの目的は、HT29、H441、HT29、HCC827、及びH1975を含むEGFR及び/又はcMET発現細胞株において、放射性免疫抱合体が天然抗体の結合特性を維持することを確認することであった。実験の1日前に、細胞(1.5~2×105)を500μLの補充培地中、48ウェルマイクロプレートに播種した。アッセイの開始時に、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、4μMの冷式抗体の存在下及び不存在下で、漸増濃度の化合物E(0.05nM~100nM)で処理した[それぞれ総結合(TB)及び非特異的結合(NSB)]。プレートを穏やかに振盪しながら、4℃で約3時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、1%Triton-X-100で溶解した。溶解物をガンマ計数チューブに移し、Wizard 1470ガンマカウンターで化合物E標準とともに分析し、各溶解物につき放射能量を1分あたりのカウント数(CPM)で測定した。各ウェルの残りの溶解物(25μL)は、標準的なタンパク質定量アッセイを使用してタンパク質含有量を分析するために使用した。
【0310】
総結合、特異的結合、非特異的結合の値(fmol/mg)を、
図14A~14Bに示すように、抱合体濃度に対してプロットした。Kd及びBmaxは、特異的結合データを単一部位双曲線モデル(Graph Pad Prismソフトウェア、バージョン9)に曲線フィッティングすることによって導かれた。結合データにより、Kdの望ましい値が明らかになった。最も高いBmax(fmol/mg)は、HCC827(2861±207)及びHT29(2351±237)で観察され、次いでH441(1195±153)及びH1975(498±42)であった。
【0311】
EGFR-cMET抱合体、すなわち化合物Eは、HCC827細胞で約9.9nM、HT29細胞で約5.7nM、H441細胞で約15.5nM、H1975細胞で約6.0nMという高い結合親和性を示すことが観察された。
【0312】
実施例10.[177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体の内在化評価
この内在化アッセイは、放射性標識リンカー抗体誘導体の細胞保持の程度を決定するために設計された。このアッセイは、抗体に結合したときに内在化するEGFR-cMET受容体の固有の能力、及び放射性標識化合物を追跡する能力に依存している。ここでは、一定量の放射性免疫抱合体を4つの異なる細胞株とともに一定時間インキュベートし、内在化された放射能の量を総細胞関連活性の割合として計算することによって残留率を決定する。
【0313】
下記のプロトコルに従って、[177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体、すなわち化合物Eの、HCC827細胞、HT29細胞、H441細胞、及びH1975細胞の4つの異なる細胞株での内在化を評価する試験が実行された。
【0314】
このアッセイは、放射性免疫抱合体化合物Eの細胞保持の程度を決定するために設計された。簡潔には、上記の細胞株を3つの24ウェルプレートに完全培地中3×105細胞/ウェルの濃度で播種した(0時間、2時間、24時間の培養時間)。翌日、培地をデカントし、細胞を滅菌PBSで1回洗浄し、化合物E(10nM)で、37℃で2~3時間処理した。インキュベーション後、全てのプレートを直ちに氷上に置き、培地を予めラベル付けした(結合していない)ガンマ計数チューブに捨てた。細胞を滅菌PBSで1回洗浄し、穏やかに振盪させ、(結合していないラベル付きの)ガンマチューブにデカントした。強酸洗浄緩衝液(pH2.5、500μL)を0時間の時点で4℃で5分間にわたって加え、次いで、緩衝液を予めラベル付けした(膜結合)ガンマ計数チューブに収集した。次いで、細胞を、300μLの1%Triton X-100で、室温で30分間穏やかに振盪させながら溶解した。250μLの細胞溶解物をガンマ計数チューブに移し、10分間計数した。弱酸洗浄緩衝液(pH4.6、500μL)を2時間及び24時間プレートに加え、4℃で15分間放置した。次いで、緩衝液を予めラベル付けした(膜結合)ガンマ計数チューブに収集した。温培地1mLをプレートに加え、さらに37℃でそれぞれ2時間及び24時間インキュベートした。規定の培養時間後、プレートを氷上に置き、以下の方法で処理した。培地をデカントし、予めラベル付けした(排出)ガンマチューブに収集した。次いで、プレートを1mLの冷PBSで1回洗浄し、排出チューブに加えた。強酸洗浄緩衝液を全てのウェルに加え、プレートを氷上で5分間インキュベートした。次いで、酸洗浄画分を、予めラベル付けした(リサイクル)ガンマチューブに収集した。細胞を、300uLの1%Triton X-100で、室温で30分間溶解した。250μLの細胞溶解物を、予めラベル付けした(保持)ガンマ計数チューブに移し、10分間計数した。25μLの細胞溶解物画分を、タンパク質定量(Pierce BCAタンパク質アッセイ)のために96ウェルプレートに移した。
【0315】
この内在化試験の結果を
図15に示す。残留率は、CPM(溶解)又はCPM(排出+リサイクル+溶解)として決定された。培養後24時間で最低の排出率が観察されたのはHCC827であり、続いてHT29、H441及びH1975であった(それぞれ約25%、30%、35%、45%)。この場合、EGFR+cMET受容体の発現レベルと細胞保持の間に相関性があるようである。
【0316】
実施例11.様々な動物モデルにおける[177Lu]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体のインビボ生体内分布
以下のプロトコルに従って、[177Lu]-DOTA-抗EGFR-cMET抱合体(すなわち、化合物E)のインビボ生体内分布を評価するために、5つの異なる細胞株異種移植マウスモデルを使用した。
【0317】
腫瘍接種:細胞をPBSで洗浄し、0.25%トリプシンEDTAで剥離した。採取した細胞は、PBSとマトリゲル(BD,Oakville ON)の1:1混合物に以下の濃度で再懸濁した:
HCC827:50×106細胞/mL
HT29:20×106細胞/mL
H1975:50×106細胞/mL
H292:30×106細胞/mL
H441:50×106細胞/mL
【0318】
5~7週齢の雌性Balb/cNCI無胸腺NCr-nu/nuマウス(Charles River Laboratories)の右側腹部に、100μLの混合物を皮下注射した。放射性物質の注射は、接種後3週間で同じサイズに達したHCC827異種移植片を除き、接種後約7~10日で腫瘍の体積が150~200mm3に達したときに開始した。
【0319】
生体内分布試験:皮下腫瘍(上記)を有する3匹のマウスの5つの群に、およそ0.74MBqの177Lu(抗体約2μg)を含有する化合物E200μLを側尾静脈から静脈内注射した。注射後指定された時点(4時間、24時間、48時間、96時間、及び168時間)で、各時点につき1群をイソフルランで麻酔し、心臓穿刺により失血させ、次いで解剖により血液及び異なる器官を採取するために安楽死させた。腫瘍及び器官は、残留血液をPBSですすぎ、水分を拭き取って、予め重量を測定したガンマ計数チューブに収集した。組織サンプルに含有される1分あたりの放射線計数はガンマカウンターを使用して測定され、次いで、較正標準を使用して、減衰補正された放射能のμCiに変換された。活性測定値及びサンプル重量を使用して、組織重量1グラムあたりの注入量の割合(%ID/g)を計算した。
【0320】
結果は組織1グラムあたりの注入量の割合(%ID/g)として表され、
図16A~16Eに示される。化合物Eの生体内分布試験では、IgGの典型的な生体内分布プロファイルが示され、正常な臓器における取り込みレベルは許容されるレベルであることが示された。最も高い腫瘍取り込み率(%ID/g)は、H292>H441>HT29及びH1975異種移植片で観察された[それぞれ約75%(96時間、168時間)、約35%(48時間、96時間)、約29%(48時間、96時間)、及び約20%(48時間、96時間)]。HCC827異種移植モデルでは、腫瘍の取り込み(%ID/g)は48時間でピークに達し、化合物Eは約25%であり、注射後96時間及び168時間で約17%に低下した。HCC827異種移植モデルは、腫瘍成長速度が遅いため、治療試験に進めなかった。
【0321】
実施例12.様々な動物モデルにおける[225Ac]-化合物C-抗EGFR-cMET抱合体のインビボ有効性
アクチニウム-225で標識された放射性免疫抱合体である化合物Fの異なる用量の有効性を、冷式抗体クローン及び/又はビヒクル対照と比較して評価する試験が設計された。
【0322】
有効性試験は、化合物F(
225Ac放射標識EGFR-cMET抗体)の4つの漸増用量で行い、冷抗体及び/又はビヒクル対照と比較した。治療効果試験は、H441、HT29及びH1975腫瘍異種移植片を使用して実行した。各研究では、担癌動物6~7群(n=5)に、側尾静脈から200μLの化合物を静脈内注射した。化合物Fは、20mMクエン酸ナトリウムpH5.5、0.82%NaCl、及び0.01%Tween-80緩衝液中に配合され、50~400ナノキュリー(nCi)の活性で投与された。対照として、研究で試験された化合物Fの最高放射能量に対応するタンパク質質量当量で、放射性標識されていない非抱合抗体が投与された。腫瘍の測定は、ノギスを使用して2次元で少なくとも60日間にわたり、週に2~3回行った。腫瘍の長さは最長寸法として定義され、幅は腫瘍の長さに対して垂直に測定された。同時に動物の体重も測定した。全体的な身体状態及び一般行動を毎日評価した。腫瘍体積(mm)は、キャリパー測定から楕円体として計算された。腫瘍成長は、X日目に測定された腫瘍体積を投与日に測定された腫瘍体積で割った相対的腫瘍体積(RTV)として表した。全てのモデルにおいて、200nCi及び400nCiは全てのマウスで長期的な腫瘍退縮を生じた(
図17A~17C)。最も良い反応はH441モデルで観察され、50nCi及び100nCiの両方の用量で複数のマウスにおいて腫瘍の抑制及び退縮を示した。H1975モデルでは、50nCiにより全てのマウスで腫瘍成長が有意に遅延し、100nCi投与群では腫瘍成長の遅延、腫瘍の抑制及び退縮を含む、混合的反応が見られた。HT29モデルでは、100nCiで腫瘍抑制を示したマウス1匹を除き、50nCi又は100nCiの用量では有効性は観察されなかった。
【0323】
参考文献
本開示及び本開示に関係する最新技術をより詳細に説明及び開示するために、多数の刊行物が上記で引用されている。これらの参考文献の完全な引用を以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれている。
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
【0328】
【0329】
【0330】
【0331】
標準的な分子生物学手法については、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3 ed.2001,Cold Spring Harbor,New York;Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0332】
その他の実施形態
本発明はその特定の実施形態に関連して記載されてきたが、さらなる修正が可能であり、本願は、概して本発明の原理に従う任意の変更、使用又は適用を包含することが意図され、本発明が属する技術の既知の又は慣習的な実践の範囲内となり、前述した本質的な特徴に適合し得る、本開示からのそのような逸脱を含むことが理解されるであろう。
【配列表】
【国際調査報告】