(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】アプリケータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20250107BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A61L2/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537096
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 IB2022062475
(87)【国際公開番号】W WO2023119122
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ビノッド ピー.メノン
(72)【発明者】
【氏名】マックス エー.クルジキ
(72)【発明者】
【氏名】アスンプタ エー.ジー.ベナース-エイデン
【テーマコード(参考)】
4C058
4C267
【Fターム(参考)】
4C058AA14
4C058BB07
4C058JJ08
4C058JJ23
4C267AA62
4C267BB02
4C267BB32
4C267BB40
4C267CC01
4C267CC06
4C267GG05
4C267GG16
4C267GG46
4C267HH10
(57)【要約】
液体を表面に塗布するための液体アプリケータ。アプリケータは、閉鎖端及び開放端を有する内部チャンバを画定する壁を含む中空本体を備える。アプリケータは、中空本体の開放端に連結されたフェルト化ポリウレタン発泡体と、ポリウレタン発泡体内に分散されたアルコール系消毒溶液と、を更に含む。ポリウレタン発泡体は、少なくとも1.0lbf*in/(発泡体のin2)のフラットワイズ引張強度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を表面に塗布するための液体アプリケータであって、前記アプリケータは、
閉鎖端及び開放端を有する内部チャンバを画定する壁を含む中空本体と、
前記中空本体の前記開放端に連結されたフェルト化ポリウレタン発泡体と、
前記ポリウレタン発泡体内に分散されたアルコール系消毒溶液と、を備え、
前記ポリウレタン発泡体のフラットワイズ引張強度が1.0lb
f*in/(発泡体のin
2)以上である、液体アプリケータ。
【請求項2】
前記フェルト化ポリウレタン発泡体は、連続気泡ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン発泡体を含む、請求項1に記載の液体アプリケータ。
【請求項3】
フェルト化前の、パッドの空隙率は、1リニアインチ当たり10~150個の細孔である、請求項1又は2に記載の液体アプリケータ。
【請求項4】
前記消毒溶液は、ヨウ素、ヨウ素錯体、クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩、C2~C5低級アルキルアルコール、グリセリン及びプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル、C12~C22疎水性物質及び第四級アンモニウム基を含むポリマー、ポリ第四級アミン、第四級アンモニウムシラン、銀、銀塩、酸化銀、スルファジアジン銀、メチル、エチル、プロピル若しくはブチルパラベン、オクテニデン、又は過酸化物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体アプリケータ。
【請求項5】
前記消毒溶液は、ヨウ素、ヨウ素錯体、クロルヘキシジン、又はクロルヘキシジン塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体アプリケータ。
【請求項6】
哺乳動物の皮膚上の部位を準備する方法であって、前記方法は、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液体アプリケータを提供することと、
前記部位を前記フェルト化ポリウレタン発泡体で少なくとも1分間擦り洗うことと、を含む、方法。
【請求項7】
前記哺乳動物の前記皮膚上の前記部位は、手術部位を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フェルト化ポリウレタン発泡体を製造する方法であって、前記方法は、
ポリウレタン発泡体を提供することと、
前記発泡体を前記発泡体の初期厚さの半分(1/2)から20分の1(1/20)に圧縮することと、
前記ポリウレタン発泡体を、少なくとも5分間、430°F以上450°F以下の温度に供することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記ポリウレタン発泡体は、連続気泡ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン発泡体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物の皮膚上の部位を準備する方法であって、前記方法は、
請求項8又は9に記載の方法に従って調製されたフェルト化ポリウレタン発泡体を提供することと、
前記フェルト化ポリウレタン発泡体をハンドルに連結することと、
前記ポリウレタン発泡体にアルコール系消毒溶液を導入することと、
前記部位を少なくとも30秒間、前記フェルト化ポリウレタン発泡体で擦り洗うことと、を含む、方法。
【請求項11】
前記消毒溶液は、ヨウ素、ヨウ素錯体、クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩、C2~C5低級アルキルアルコール、グリセリン及びプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル、C12~C22疎水性物質及び第四級アンモニウム基を含むポリマー、ポリ第四級アミン、第四級アンモニウムシラン、銀、銀塩、酸化銀、スルファジアジン銀、メチル、エチル、プロピル若しくはブチルパラベン、オクテニデン、又は過酸化物を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体を表面に塗布するためのアプリケータ、例えば、外科用プレップアプリケータ(prep applicator)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による液体アプリケータの側面図を示す。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による発泡体及び比較例の発泡体の引張試験の結果を示す。
【
図3】フェルト化温度の関数としてのフェルト化発泡体の引張試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
外科手術、カテーテル法、又は針穿刺などの任意の侵襲的処置の前に皮膚を消毒して、感染のリスクを低減することは、先進工業国では標準的な慣行である。これらの製品は、スキンプレップ又は単に「プレップ」と呼ばれる場合が多い。このような処置のための患者の皮膚の消毒の準備は、従来、30秒間~10分間、患部を消毒石鹸溶液で擦り洗うことを伴う。これらの溶液は、多くの場合、先端が発泡体スポンジであるアプリケータを用いて塗布される。発泡体スポンジは、多くの場合、開放パンの溶液に発泡体スポンジを浸漬することによって、又は発泡体スポンジに流体的に連結されたハンドル内に含まれるリザーバからの溶液で飽和される。消毒溶液は、多くの場合、典型的に使用されるタイプの発泡体スポンジ(例えば、連続気泡ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン発泡体)の膨潤を引き起こす傾向があるアルコール系溶液である(発泡体スポンジの工業用途においてかなり一般的であり、そのような発泡体スポンジの膨潤を引き起こさない水系溶液とは対照的である)。具体的には、圧縮(又はフェルト化)されたポリウレタン発泡体は、アルコール系溶液中で約10~15%可逆的に膨潤することができる。この膨潤が発泡体の機械的安定性を損なうようなことは予想されていない。
【0004】
フェルト化とは、発泡体を2つの加熱されたプラテンの間に置き、圧縮が永続的になるまで発泡体を圧縮することによって、発泡体を永続的に圧縮する、発泡体生成後のプロセスを指す。一般的に、フェルト化プロセスは、毛管現象が増加し、その結果、発泡体が、同一の発泡体組成のフェルト化されていない発泡体よりも良好に流体を吸い上げることができると理解されている。しかしながら、従来の市販のフェルト化発泡体は、アルコール系溶液を含む上述の擦り洗いプロセス中に発泡体の剥離をもたらす不可逆的な過度の膨潤を示すことが発見された。より具体的には、皮膚上での使用中に、アルコール系溶液に浸漬された発泡体先端付きアプリケータで激しく擦り洗いすると、フェルト化発泡体の不可逆的な減圧を引き起こし、100%もの膨張をもたらし得ることが発見された。この減圧された発泡体は、擦り洗い中にこぶ状化(bunch)、及び波状化(roll)するので、皮膚を効率的に擦り洗う能力を失う。更に、適用中に膨潤した発泡体で擦り洗いすると、アプリケータへの発泡体の結合が損なわれる(しばしば層間剥離と呼ばれる)。
【0005】
したがって、改善された寸法安定性をもたらし、(アルコール系溶液に浸漬された場合であっても)激しい擦り洗い中に層間剥離を一貫して回避することができる発泡体物品及び関連する方法が所望されている。
【0006】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、その内容が明らかに他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施形態で使用される場合、「又は」という用語は、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含む意味で大略的に使用される。
【0007】
本明細書で使用される場合、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5を含む)。
【0008】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表すすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでないと示されない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の一覧に記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。少なくとも、特許請求される実施形態の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、液体を表面に塗布するためのフェルト化発泡体パッドに関する。全般的には、特定のフェルト化プロセス条件が、改善された寸法安定性及び激しい擦り洗い中のアプリケータハンドルからの層間剥離に対する耐性を示す発泡体物品をもたらすことが発見されている。より具体的には、ポリウレタン発泡体をフェルト化するための特定の熱ウインドウは、アルコール系溶液で浸漬された発泡体の寸法安定性を大幅に改善することが確認されている。改良されたフェルト化発泡体パッドは、擦り洗い手順中に、過度の膨潤及びアプリケータからの発泡体パッドの確率論的な剥離を示さない。
【0010】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による液体アプリケータ100を示す。図示されるように、液体アプリケータ100は、壁160を含む(ユーザのためのハンドルとして機能し得る)細長い中空本体110を含んでもよい。壁160は、閉鎖端172及び開放端174を有するチャンバ170を画定し得る。閉鎖端172は、チャンバ内に含有される流体が閉鎖端を通って漏出することを阻止又は防止するために、種々の公知の方法のうちのいずれかで封止されてもよい。例えば、圧入、ねじ込み、又は他の方法で取り付けることができるキャップが、閉鎖端172を形成するチャンバを封止することができる。開放端174は、流体がチャンバ170から流出することを可能にする1つ以上のオリフィスを含んでもよい。パッド178は、オリフィスを通って流れる流体がパッド178に直接的又は間接的に接触するように、開放端174に流体的に連結され得る。パッド178は、従来の締結機構(例えば、接着剤又は超音波溶接)によって中空本体に(直接的又は間接的に)連結されてもよい。本開示を特定のアプリケータ100に関して説明してきたが、本開示の物品及び方法は、発泡体パッドがハンドル(中空であってもなくてもよい)に連結されて、その中に保持された消毒溶液を有することができる発泡体パッドによる表面(例えば、皮膚)の擦り洗いを容易にするための、任意のアプリケータと共に使用されてもよいことを理解されたい。
【0011】
いくつかの実施形態では、アルコール系(すなわち、溶液の総重量に対して少なくとも50重量%の量で存在する(複数の)アルコールを有する溶液)消毒溶液を、チャンバ170内に含有することができる。好適な消毒溶液の例としては、米国特許第4584192号に記載された溶液及び米国特許第4542012号に記載された溶液が挙げられる。他の有用な流体としては、消毒調製物、例えば、3Mから市販されている「Duraprep(商標)Surgical Solution」などのヨードフォア皮膚チンキ剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、消毒溶液は、ヨウ素、ヨウ素錯体(例えば、ヨードフォア)、クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩(例えば、クロルヘキシジングルコン酸塩及びクロルヘキシジン二酢酸塩)、又はそれらの組み合わせなどの抗菌剤を含むことができる。他の例示的な抗菌剤としては、C2~C5低級アルキルアルコール、グリセリン及びプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル、(C12~C22)疎水性物質及び第四級アンモニウム基を含むポリマー、ポリ第四級アミン(例えば、ポリヘキサメチレンビグアナイド)、第四級アンモニウムシラン、銀、銀塩(例えば、塩化銀)、酸化銀及びスルファジアジン銀、メチル、エチル、プロピル及びブチルパラベン、オクテニデン(octenidene)、過酸化物(例えば、過酸化水素及び過酸化ベンゾイル)など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、パッド178は、広範囲の圧縮永久歪率(compression set ratio)(すなわち、密度)及び空隙率を有する様々な市販の材料から調製することができる。発泡体スポンジの圧縮永久歪率及び空隙率を変化させることによって、アプリケータは、種々の消毒溶液組成物、粘度、及び体積に適用するように構築され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、パッド178は、ポリウレタン発泡体(例えば、連続気泡ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン発泡体)を含んでもよい(又はそれから形成されてもよい)。ポリウレタン発泡体は、一般的に、例えば水などの発泡剤の存在下、1つ以上の活性水素含有化合物(すなわち、ポリオール)と、1種以上のポリイソシアネートと、通常少なくとも1種の反応触媒と、気泡安定剤との反応により調製される。ポリウレタン発泡体の気泡ポリマー構造は、気泡構造の輪郭を形成する比較的重いストランドの骨格フレームワークを有する。骨格フレームワークは、ウインドウと呼ばれる場合が多い、気泡壁を形成する、非常に薄い膜によって接続される。連続気泡発泡体では、各気泡において、ウインドウのいくつかは開かれているか、又は裂けている。そのため、流体流(液体又は気体)に対して開かれた相互接続ネットワークを形成する。いくつかの実施形態では、発泡体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6841586号又は米国特許第8247466号に記載された材料のタイプであり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、パッド178の空隙率は、液体が分配される表面に対してパッドが押し付けられたときにパッドが均一な量の液体を放出するように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、外科的準備の用途のために、フェルト加工前のパッドの空隙率は、1リニアインチ当たり約10~150個の細孔、又は1リニアインチ当たり約10~90個の細孔であってもよい。
【0015】
多種多様なパッド形状が知られている。概して、パッド178は、楕円形、正方形、又は長方形の形状であってもよく、厚さが均一(又は実質的に均一)であってもよい。いくつかの実施形態では、パッド178は、0.1インチ~5インチ又は0.2インチ~2インチの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、パッド178は、0.1平方インチ~2平方インチ又は0.25平方インチ~1.5平方インチの作業表面積(すなわち、擦り洗い中に皮膚に接触するように意図されたパッドの表面の面積)を有してもよい。これらの比較的小さい作業表面積は、剪断応力が表面積の関数として増加するので(一定の擦り洗い力を仮定して)、アプリケータハンドルからの発泡体パッドの層間剥離が懸念される状況において特に有用であり得る。
【0016】
上で言及したように、フェルト化は、発泡体が、従来、2つの加熱されたプラテン間にシートを配置し、圧縮が永続的になるまで発泡体を圧縮することによって永続的に圧縮される後プロセスを指す。一般に、フェルト化発泡体は、増加した毛管現象を有し、これは、発泡体が、同一の発泡体組成物のフェルト化されていない発泡体よりも良好に流体を吸い上げることを可能にすることが知られている。圧縮比は、フェルト加工後の厚さに対するフェルト加工前の厚さとして算出される。圧縮比は、一般に硬度と呼ばれる。例えば、元の厚さの3分の1に圧縮された発泡体は、硬度3のフェルトであり、圧縮比は、3である。元の厚さの5分の1に圧縮された発泡体は、硬度5のフェルトである。
【0017】
従来、圧縮されている間、発泡体は、340~380°F(171~193℃)の温度に10~60分間加熱されて、フェルト化が達成される。得られたフェルト化発泡体は、優れた乾燥内部強度を示し、圧縮永久歪は、通常の機械的手段によって元に戻すことが困難である。温度を高くし、時間をかけることは、追加の価値を提供するとは考えられず、過度の熱分解をもたらし得るので、一般に望ましくないと考えられてきた。しかしながら、予期せぬことに、従来の温度範囲を超える温度でのフェルト化されていない発泡体の圧縮は、フェルト化強度及びアルコール系消毒溶液で擦り洗いするときの発泡体の減圧に対する耐性を大幅に改善することが発見された。具体的には、少なくとも1分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間の、430°F(430°F未満のフェルト化温度では、得られる発泡体は、所望の増加した内部強度を有さない)以上450°F(450°Fを超えるフェルト化温度では、発泡体は、分解し始める)以下の温度でのフェルト化されていない発泡体の圧縮は、大幅に改善されたフェルト化強度、及びアルコール系消毒溶液で擦り洗いするときの発泡体の減圧に対する耐性を有するフェルト発泡体パッドをもたらすことが発見された。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示の発泡体パッドは、上述の加熱条件下で、発泡体をその初期厚さの半分(1/2)から20分の1(1/20)まで、又はその初期厚さの3分の1(1/3)から8分の1(1/8)まで圧縮することによってフェルト化され得る。いくつかの実施形態では、2~4の圧縮比を有するフェルト化発泡体パッドは、流体処理能力と擦り洗い中の患者の皮膚上での快適性との望ましいバランスの結果として特に有用であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示の発泡体パッドは、二重フェルト化されてもよい。本明細書で使用される場合、二重フェルト化とは、従来の温度範囲(340~380°F(171~193℃)の温度で10~60分間)での第1のフェルト化プロセスと、本開示の温度範囲(少なくとも1分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間、430°F以上450°F以下)での第2のフェルト化プロセスに供されるパッドを指す。そのような二重フェルト化は、例えば、市販のフェルト化発泡体を、本開示の高温範囲を採用するフェルト化プロセスに供することによって達成され得る。
【0020】
内部フェルト化強度、又はフェルトの反転に対する抵抗は、発泡体の2つの面をフェルト化軸線方向に引き離すのに必要な力として説明することができ、フラットワイズ発泡体引張強度とも呼ばれる。本明細書で使用される場合、フラットワイズ発泡体引張強度を決定するための試験方法は、軟質発泡体との使用のためのASTM C297から適合された。
1.1.5×1.5インチのフェルト化発泡体片を、2枚の平坦な金属T字形プレートの間に接着する。プレートは、発泡体のフェルト化軸線がプレートの平坦面に対して垂直になるように接着される。
2.引張試験機を使用して、発泡体がそのフェルト化された厚さの125%に達するまで12インチ/分でプレートを引き離す力を測定する。
3.全仕事量、又は力対距離曲線の積分が計算される。結果を発泡体試料の断面積で除す。
2つの発泡体面を分離するのに必要な全仕事量は、所与の初期厚さ及びフェルト硬度においてより強いフェルトを有する発泡体に対してより高い。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示の試験方法によれば、フェルト化発泡体パッドは、少なくとも0.5lbf*in/(発泡体のin2)、少なくとも1.0lbf*in/(発泡体のin2)、又は少なくとも1.5lbf*in/(発泡体のin2)のフラットワイズ引張強度を有し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、上述の発泡体パッドを製造する方法に更に関し得る。本方法は、フェルト加工されていない又は従来のフェルト化されたポリウレタン発泡体、例えば、連続気泡ポリエステル又はポリエーテルポリウレタン発泡体を提供することを含んでもよい。次いで、本方法は、フェルト化されていない場合、フェルト化されていないポリウレタン発泡体を、(例えば、2つのプラテンの間に配置し、プラテンを介して押圧力を付与することによって)その初期厚さの1/2~1/20に圧縮することを含み得る。次いで、方法は、圧縮された発泡体を、少なくとも1分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、又は少なくとも30分間、430°F以上450°F以下の温度に供することを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、哺乳動物の皮膚上の部位(例えば、手術部位)を準備するために上述のアプリケータ100を使用する方法に更に関し得る。本方法は、(例えば、発泡体パッド178が溶液で飽和又はほぼ飽和されるように)アルコール系溶液を発泡体パッド178に導入することと、次いで、少なくとも30秒間、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも6分間、少なくとも7分間、少なくとも8分間、少なくとも9分間、又は少なくとも10分間、部位を発泡体パッドと接触させる(例えば、擦り洗いする)ことと、を含んでもよい。本出願の目的のために、「擦り洗いすること」は、発泡体パッドが皮膚部位と接触している間に受ける任意の剪断作用を指す。例えば、「擦り洗いすること」は、皮膚部位に対して垂直(又は実質的に垂直)な方向に下向きの力を加えると同時に、皮膚部位に対して平行(又は実質的に平行)な方向にパッドを移動させること(例えば、前後運動、回転運動、前後運動と回転運動との組み合わせ)を指すことができる。上述したように、本開示のフェルト化発泡体のより強い「内部溶接」の結果として、そのような長期にわたる擦り洗いの間、本開示のフェルト化発泡体パッドは、減圧(又は逆のフェルト化)に抵抗し、したがって、フェルト化発泡体パッドのアプリケータハンドルからの層間剥離に抵抗する。
【0024】
本開示の動作は、以下の詳細な実施例に関して更に説明される。これらの例は、様々な実施形態及び技術を更に説明するために提供される。しかしながら、本開示の範囲内にとどまりながら、多くの変形及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【実施例】
【0025】
FXI Holdings,Inc.(「FXI」、Radnor、PA)製の製品コードFLTZ93MAを有する発泡体をすべての実施例に使用した。これらの発泡体の製造方法は、FXIに譲渡された米国特許第6371606号、第4欄、第3行~第5欄、第42行に見出される。簡単に説明すると、この方法は、触媒、発泡剤、発泡体安定剤、及び任意選択で他の発泡助剤の存在下でポリエーテルポリオールをポリイソシアネートと反応させることによって独立気泡ポリウレタン発泡体を形成することと、火炎処理によって発泡体を網状化することと、加熱プレート間で圧縮することによってフェルト化することと、を含む。
【実施例1】
【0026】
2つの異なる工程(FXIによって供給され、UFP Technologies,Inc.(Newburyport,MA、「UFP」)によってフェルト化された発泡体)からのフェルト化発泡体試料を実験のために選択した。これらの2つの発泡体試料を未処理発泡体と呼ぶ。両方の発泡体試料は、0.395インチ厚であり、1インチ当たり93個の細孔(pores per inch、ppi)の細孔密度を有していた。唯一の違いは、3.8及び4.0の圧縮比又は硬度でフェルト化が行われたことであった。
【0027】
発泡体を2枚のステンレス鋼板の間で0.12ポンド/平方インチ(PSI)の圧力で軽く圧縮し、455°Fに予熱したオーブンに入れることによって、発泡体を再びフェルト化(二重フェルト化)した。発泡体を45分間熱処理した。実験の終わりに、ステンレス鋼板の温度をIR銃を用いて測定し、約355°Fであると決定した。
【0028】
二重フェルト化発泡体は、厚さが約0.025~0.05インチ減少することが分かった。これは、平坦化された発泡体の気泡の内部溶融及び再焼結によるものと考えられる。二重フェルト化発泡体は、未処理発泡体よりもわずかに暗色であった。冷却後、ホットグルーガンを使用して、二重フェルト化発泡体を10.5mLのアプリケータに取り付けた。二重フェルト化発泡体にそれぞれ10.5mLの着色した70%イソプロパノール溶液を充填し、1インチ×5インチの面積を覆う前後及び左右の動きを用いて厚紙テンプレート上で2分間擦り洗いした。未処理の発泡体(第2の熱処理を受けなかった発泡体)は、5秒未満で非フェルト化し、波状化及びこぶ状化した。一方、二重フェルト化発泡体は、2分の擦り洗いの全体を通して保持された。処理された発泡体のこぶ状化又は目に見える非フェルト化は観察されなかったが、一部波状化が発生した。この試験を、擦り洗いの基材として切除したブタの皮膚を用いて繰り返し、同じ結果を得た。4.0でフェルト化された未処理の発泡体は約150%膨潤したが、二重フェルト化発泡体は11%しか膨潤しなかった。
【実施例2】
【0029】
図2に示されるように、z方向(発泡体の横軸又は短軸)における処理済みかつ二重フェルト化された発泡体(直径0.75インチの円形片)の引張試験は、二重フェルト化発泡体の試料が剛性(初期変形の勾配)及び降伏強度(勾配の急激な変化)の両方において実質的な改善を有することを示した。これらのデータは、未処理のフェルト化発泡体が、圧力下での熱後処理によって内部強度が実質的に改善されたことを示す。
【実施例3】
【0030】
単一の発泡体がFXIによって供給され、375°F、413°F、及び450°Fの温度で10分間、FXIによってフェルト化された。z方向(発泡体の横軸又は短軸)における発泡体(直径0.75インチの円形片)の引張試験は、
図3に示されるように、剛性(初期変形の勾配)及び降伏強度(勾配の急激な変化)の両方における実質的な改善を示している。これらのデータは、発泡体の内部強度がフェルト化温度に比例して増加することを示している。
【実施例4】
【0031】
発泡体がFXIによって供給され、試料は、UFPによって375°Fで、又はFXIによって450°F度でフェルト化された(厚さ0.38~0.40インチ、硬度3.8~4.0、空隙率90~100ppi)。いくつかの修正を加えたASTM C297に従って、z方向における発泡体の引張試験を行った。手短に言えば、発泡体を1.375×1.375インチ平方に切断し、2枚の平坦な金属板の間に両面接着テープで接着し、フェルト化軸線における引張試験を12インチ/分の速度で0.5インチ変位まで実施し、値を発泡体の面積当たりの仕事量(力対変位曲線下面積)として報告した。発泡体は、乾燥又は70%イソプロパノールで飽和のいずれかで試験した。結果を表1に提示する。これらのデータは、発泡体がイソプロパノールに曝露された後に、高温フェルト化による増加した発泡体強度が維持されることを示している。
【0032】
【実施例5】
【0033】
発泡体は、FXI Corp.によって供給され、UFPによって375°Fで、又はFXIによって450°Fでフェルト化された。発泡体の試料(1.375×1.375インチ平方、厚さ0.38~0.40インチ、硬度3.8~4.0、空隙率90~100ppi)を、熱板溶接を用いてプラスチックアプリケータに取り付けた。取り付けた発泡体に10.5mLのイソプロパノールを充填し、厚紙基材上で最大3分間擦り洗いした。擦り洗いの終わりに、発泡体の厚さを測定し、擦り洗い前の発泡体の厚さと比較し、厚さの増加率を計算した。発泡体が3分前にアプリケータから分離(剥離)した場合、時間を記録した。結果を表2において提供する。
【0034】
【0035】
このデータは、フェルト化温度の上昇が、より少ない発泡体膨潤及びアプリケータからのより少ない発泡体層間剥離をもたらしたことを示している。
【実施例6】
【0036】
単一の発泡体がFXIによって供給され、様々な温度及び時間でFXIによってフェルト化された。発泡体は、厚さ0.38インチ、硬度4.0、及び空隙率90~100ppiを有していた。z方向における発泡体の引張試験を、ASTM C297に従って行った。手短に言えば、発泡体を1.375×1.375インチ平方に切断し、2枚の平坦な金属板の間に両面接着テープで接着し、フェルト化軸線における引張試験を12インチ/分の速度で0.5インチ変位まで実施し、値を発泡体の面積当たりの仕事量(力対変位曲線下面積)として報告した。結果を表3において提供する。
【0037】
【0038】
これらのデータは、10分のフェルト時間に対して、約413°Fのフェルト温度が、擦り洗い性能を増加させるために好ましいことを示している。より長いフェルト時間では、より低い温度が、10分のより高い温度のフェルト化と同様の発泡体内部強度を達成することができる。
【実施例7】
【0039】
様々な温度及び時間でフェルト化された発泡体(FXI Corp)の性能を評価するために、設計された実験を行った。条件を表4の発泡体タイプの下に示す。例えば、第1の発泡体は、3.8の硬度でフェルト化され、0.395インチの厚さを有し、フェルト化温度は375°Fであり、フェルト化時間は10分であった。
【0040】
発泡体をアプリケータに取り付け、使用して、10.5mLの70%イソプロパノールを、合計2分間、前後及び左右に激しく擦り洗いすることによって、ex-vivoのブタ皮膚の1×5インチ領域に局所的に適用した。擦り洗い時間の完了後、発泡体を膨潤、こぶ状化及び波状化について評価した。
【0041】
【0042】
フェルト化温度を上昇させること及びより低い温度で時間を長くすることにより、375°Fで30分間、413°Fで10~30分間、及び450°Fで10分間フェルト化された発泡体について、最小の膨潤(20%未満)を有する発泡体が得られた。結果を表4において提供する。二重フェルト化発泡体は、約12%の最小膨潤を示した。
【0043】
発泡体のこぶ状化及び波状化についてのデータは、膨潤データと同じ傾向に従った。より高い温度でフェルト化された発泡体は、こぶ状化又は波状化することなく完全に120秒間持続した。より低い温度(例えば、375°F)では、フェルト時間が増加するにつれて、こぶ状化及び波状化までの時間は、375°F/10分の20秒から375°F/30分の100秒をわずかに超えるまで延長された。より短い10分のフェルト時間で温度を413°Fに上昇させると、約60秒でこぶ状化及び波状化が発生した発泡体が得られた。二重フェルト化発泡体は、120秒では、こぶ状化及び波状化が発生しなかった。結果を表5において提供する。
【0044】
【国際調査報告】