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特表2025-500952抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用
<図1A>
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図1A
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図1B
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図1C
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図2
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図3
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図4A
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図4B
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図4C
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図4D
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図4E
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図5
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図6
  • 特表-抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20250107BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250107BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537142
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2022141269
(87)【国際公開番号】W WO2023116861
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111592539.7
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】叶 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】姚 青青
(72)【発明者】
【氏名】金 薪盛
(72)【発明者】
【氏名】▲應▼ ▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】陶 ▲維▼康
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
抗DLL3抗体、その抗体-薬物複合体及びその医薬的使用である。一般式(Pc-L-D)で示される抗DLL3抗体-エクテイナシジン系薬物複合体に関し、そのうち、Pcは抗DLL3抗体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗DLL3抗体であって、
i)前記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号57のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
前記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、
そのうち、配列番号57はPLYXYGRSYNXVAYで示され、そのうち、XはY若しくはHであり、XはA若しくはGであり、又はii)前記重鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列HCDR3とを含み、及び
前記軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、
好ましくは、
前記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24、30若しくは31のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
前記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む、
抗DLL3抗体。
【請求項2】
マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、
請求項1に記載の抗DLL3抗体。
【請求項3】
i)前記重鎖可変領域は、配列番号50、14、51、52、53若しくは54に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、配列番号55、15若しくは56に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
ii)前記重鎖可変領域は、配列番号43、12、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42若しくは44に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は
前記軽鎖可変領域は、配列番号48、13、45、46、47若しくは49に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、
i)前記重鎖可変領域は配列番号50、51、52、53及び54から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖可変領域は配列番号55若しくは56のアミノ酸配列を含み、或いは
ii)前記重鎖可変領域は配列番号43、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42及び44から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖可変領域は配列番号48、45、46、47及び49から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含み、或いは
iii)前記重鎖可変領域は配列番号14のアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を含み、或いは
iv)前記重鎖可変領域は配列番号12のアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖可変領域は配列番号13のアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、
前記重鎖可変領域は配列番号50のアミノ酸配列を含み、かつ前記軽鎖可変領域は配列番号55のアミノ酸配列を含み、又は
前記重鎖可変領域は配列番号43のアミノ酸配列を含み、かつ前記軽鎖可変領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む、
請求項1又は2に記載の抗DLL3抗体。
【請求項4】
抗体断片であり、好ましくは、前記抗体断片はFab、Fab’、F(ab’)、Fab’-SH、Fd、Fv、scFv、dsFv、二重抗体又はドメイン抗体である、
請求項1~3の何れか一項に記載の抗DLL3抗体。
【請求項5】
重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含み、好ましくは、前記重鎖定常領域は配列番号28のアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖定常領域は配列番号29のアミノ酸配列を含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の抗DLL3抗体。
【請求項6】
重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、
前記重鎖は配列番号60に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖は配列番号61に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
前記重鎖は配列番号58に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は前記軽鎖は配列番号59に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、
前記重鎖は配列番号60のアミノ酸配列を含み、かつ前記軽鎖は配列番号61のアミノ酸配列を含み、或いは
前記重鎖は配列番号58のアミノ酸配列を含み、かつ前記軽鎖は配列番号59のアミノ酸配列を含む、
請求項5に記載の抗DLL3抗体。
【請求項7】
a)前記抗DLL3抗体は、ヒトDLL3又はそのエピトープに結合するKD値≦3 nM、≦2 nM又は≦1 nMであり、前記KD値がBiacoreにより測定されること、
b)前記抗DLL3抗体は、DLL3を発現するH1184細胞に結合するEC50≦3 nMであり、前記EC50がFACSにより検出されること、
c)前記抗DLL3抗体は、DLL3を発現する細胞によりエンドサイトーシス可能であること、及び
d)前記抗DLL3抗体は、DLL3又はそのエピトープに結合するEC50≦0.1 nMであり、前記EC50がELISAにより測定されること、という特性の中の少なくとも1つを有する、
請求項1~6の何れか一項に記載の抗DLL3抗体。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体をコードする、
単離した核酸。
【請求項9】
請求項8に記載の単離した核酸を含む、
宿主細胞。
【請求項10】
抗DLL3抗体を調製する方法であって、前記抗体の発現に適する条件下で請求項9に記載の宿主細胞を培養することを含む、
方法。
【請求項11】
抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、
請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体と、
薬物と、を含み、
好ましくは、前記薬物は、細胞毒性剤、放射性マーカー、蛍光団、発色団、現像剤、免疫調節剤、血管新生阻害剤、細胞成長阻害剤、アポトーシス促進剤及び細胞溶解酵素から選ばれる1つ又は複数である、
抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
一般式(Pc-L-Da)で示される構造を有し、
【化1】
そのうち、
Pcは、請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体であり、
Lはリンカーであり、
nは1~10であり、好ましくは、nは3~5である、
請求項11に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
一般式(Pc-L-D)で示される構造を有し、
【化2】
そのうち、
Pcは、請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体であり、
Lはリンカーであり、
nは1~10であり、好ましくは、nは3~5である、
請求項11又は12に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
前記リンカーは-L-L-L-L-であり、そのうち、
は、-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH-C(O)-NR-W-C(O)-及び-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC1-6アルキレン基、C1-6アルキレン-C3-6シクロアルキル基から選ばれ、そのうち、前記C1-6アルキレン基、C1-6アルキレン-C3-6シクロアルキル基は、それぞれ独立的に任意選択的にさらにハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CHCHO)CHCHC(O)-、-NR(CHCHO)CHC(O)-、-S(CHC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基から構成されるペプチド残基であり、そのうち、前記アミノ酸は、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれ、かつ任意選択的にさらにハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CR-、-C(O)NR、-C(O)NR(CH-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
、R及びRは同一又は異なり、かつそれぞれ独立的に水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは同一又は異なり、かつそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
好ましくは、

【化3】
であり、sは2~8の整数であり、
は化学結合であり、
はテトラペプチド残基であり、好ましくは、Lはグリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンを含むテトラペプチド残基であり、
は-NH(CH)t-であり、tは1又は2であり、
そのうち、前記L末端はPcに連結され、
より好ましくは、前記のリンカーは下記構造で示される、
【化4】
請求項12又は13に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記抗体-薬物複合体は、
【化5】
から選ばれる構造を有し、
そのうち、
Pcは請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体であり、nは1~10であり、
好ましくは、前記抗体-薬物複合体は、
【化6】
で示される構造を有し、そのうち、
Pcは請求項6に記載の抗DLL3抗体であり、
そのうち、nは1~8であり、より好ましくは、nは3~5である、
請求項11~14の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
医薬組成物であって、
請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体、或いは請求項11~15の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩と、
1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターと、を含む、
医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~7の何れか一項に記載の抗DLL3抗体、或いは請求項11~15の何れか一項に記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項16に記載の医薬組成物の、腫瘍又はがんを治療するための薬剤の調製における使用であって、好ましくは、前記腫瘍又はがんは、
肺がん、小細胞肺がん、大細胞肺がん、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、甲状腺髄様がん、悪性胸膜中皮腫、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸直腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、副腎がん、膠芽細胞腫、皮膚がん及び黒色腫から選ばれ、より好ましくは、前記腫瘍又はがんは小細胞肺がんである、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月23日に提出された中国特許出願(CN202111592539.7)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、抗DLL3抗体、その薬物複合体及びその調製方法に関する。同時に、本開示に記載の抗DLL3抗体又はそのADCは、疾患又は病状を治療する薬剤の調製に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0004】
小細胞肺がん(Small Cell Lung Cancer、SCLC)は、全肺がん症例の10%~15%を占める比較的悪性の肺がんタイプに属する。小細胞肺がんは、腫瘍の成長速度が速く、転移しやすく、5年生存率が7%未満である。小細胞肺がんの治療には、白金系/エトポシド併用の化学療法がよく使用されている。小細胞肺がん患者は、初期に化学療法によく反応するが、薬剤耐性及び再発を極めて起こしやすい。近年の免疫療法、例えば、PD-L1抗体とPD1抗体は、小細胞患者に対して効果を若干有するが、有効率が約15%である。特異的な標的治療薬は、未だ開発されていないことが現状である。
【0005】
DLL3は、Notchを阻害するリガンドである。正常な状態では、DLL3はゴルジ体にあり、がん細胞(例えば、小細胞肺がん細胞)においては、DLL3は細胞表面に到達し、Notchとシス結合し、細胞と細胞の結合及びNotchの標的細胞へのエンドサイトーシスを阻害することにより、Notchシグナル伝達経路を抑制し、腫瘍細胞の成長を促進する。DLL3は、SCLC、大細胞神経内分泌がん、消化管神経内分泌腫瘍、小細胞膀胱がん、多形性膠芽腫、転移性去勢性前立腺がん、黒色腫などを含む、神経又は神経内分泌腫瘍において主に発現される。特にSCLCについては、80%以上のSCLCにはDLL3の陽性発現があるが、正常な肺がん組織及び傍がん組織には発現されない。この発現の相違性により、DLL3は、SCLCを治療するための極めて潜在的な治療標的となる。
【0006】
エクテイナシジン誘導体、例えば、ルルビネクテジン(Lurbinectedin)は、DNA二重らせん構造における副溝に共有結合することにより、RNAポリメラーゼI及びミトコンドリアRNAポリメラーゼ活性にも、mRNAの正常な転写過程にも影響を与えずに、トランス活性化されたRNAポリメラーゼII媒介性の転写過程を選択的に阻害することができる、RNAポリメラーゼIIの阻害剤である。RNAポリメラーゼIIは、腫瘍細胞の転写中に過剰に活性化される傾向があり、ルルビネクテジンは、腫瘍細胞を有糸分裂中に異常化・アポトーシスし、最終的に細胞増殖を低下させることができる。腫瘍細胞は、高速で作動する転写過程によってその増殖を支持し、それらの腫瘍細胞は、特にルルビネクテジンに感受性が高く、SCLC、BRCA1/2変異乳がん、白金系薬剤耐性卵巣がん及び染色体転座による肉腫などを含む。
【0007】
抗体-薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片をリンカーを介して生物活性を有する薬物に連結し、抗体の正常細胞及び腫瘍細胞表面抗原に結合する特異性及び薬物(例えば、細胞毒性剤)の高効率を活用すると共に、抗体の治療効果が比較的に低く、薬物の毒性や副作用が大きすぎるといった欠陥を回避する。従来の化学療法薬と比べて、抗体-薬物複合体は、腫瘍細胞をより正確に殺傷すると共に、正常細胞への影響を低減させることができる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、抗DLL3抗体、そのADC、及びその医薬的使用に関する。より具体的には、本開示は、種々の配列の真新しい抗DLL3抗体、及び細胞毒性物質(例えば、エクテイナシジン系誘導体)とカップリングしたそのADCを提供する。
【0009】
幾つかの実施形態において、本開示は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗DLL3抗体を提供し、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号57のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、そのうち、配列番号57はPLYXYGRSYNXVAYで示され、そのうち、XはY若しくはHであり、XはA若しくはGであり、或いは
ii)上記重鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列HCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24、30若しくは31のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号22、配列番号23及び配列番号57で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号25、配列番号26及び配列番号27で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
そのうち、配列番号57はPLYXYGRSYNXVAYで示され、そのうち、XはY若しくはHであり、XはA若しくはGであり、或いは
ii)上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号16、配列番号17及び配列番号18で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、好ましくはヒト化抗体である。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、ヒト免疫グロブリンフレームワーク領域(FR領域)を含む。
【0016】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号57のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、そのうち、配列番号57はPLYXYGRSYNXVAYで示され、そのうち、XはY若しくはHであり、XはA若しくはGであり、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、49A及び94Sから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは43I復帰変異を含み、上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0017】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列HCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、27Y、30T、38K、43K、48I、67A、68A、69L、71V、73K、75S、76N及び93Aから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、36L、43S、44F、46G、69A、71Y及び85Dから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含む。上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0018】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号18のアミノ酸配列HCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、68A、69L、71V、73K、75S、76Nの復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、36L、46G、69A、71Y及び85Dの復帰変異を含み、上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0019】
一具体的な実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは1Eと94Sの復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0020】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24、30若しくは31のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、49A及び94Sから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、43I復帰変異を含む。上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0021】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、49A及び94Sから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、43I復帰変異を含む。上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0022】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、49A及び94Sから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、43I復帰変異を含む。上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0023】
一実施形態において、上記抗DLL3抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1と、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含み、かつ上記重鎖可変領域のFRは、1E、49A及び94Sから選ばれる1つ又は複数の復帰変異を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1と、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含み、かつ上記軽鎖可変領域のFRは、43I復帰変異を含む。上記復帰変異部位は、Kabat番号付け規則に従う。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、配列番号14、50、51、52、53若しくは54に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号15、55若しくは56に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する軽鎖可変領域を含み、或いは
ii)上記重鎖可変領域は、配列番号12、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43若しくは44に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号13、45、46、47、48若しくは49に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、配列番号14に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号15に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する軽鎖可変領域を含み、或いは
ii)上記重鎖可変領域は、配列番号50、51、52、53若しくは54に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号55若しくは56に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、或いは
iii)上記重鎖可変領域は、配列番号12に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号13に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、或いは
iv)上記重鎖可変領域は、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43若しくは44に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号45、46、47、48若しくは49に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、配列番号50に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号55に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、或いは
ii)上記重鎖可変領域は、配列番号43に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は
上記軽鎖可変領域は、配列番号48に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は配列番号14のアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は配列番号15のアミノ酸配列を含み、或いは
ii)上記重鎖可変領域は配列番号50、51、52、53及び54から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は55若しくは56のアミノ酸配列を含み、或いは
iii)上記重鎖可変領域は配列番号12のアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は配列番号13のアミノ酸配列を含み、或いは
iv)上記重鎖可変領域は、配列番号43、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42及び44から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖可変領域は、配列番号48、45、46、47及び49から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、
上記重鎖可変領域は配列番号50のアミノ酸配列を含み、かつ上記軽鎖可変領域は配列番号55のアミノ酸配列を含み、
上記重鎖可変領域は配列番号43のアミノ酸配列を含み、かつ上記軽鎖可変領域は配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、上記抗DLL3抗体は抗体断片であり、そのうち、上記抗体断片はFab、Fab’、F(ab’)、Fab’-SH、Fd、Fv、scFv、dsFv、二重抗体又はドメイン抗体である。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常領域を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、λ鎖又はκ鎖の定常領域を含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、IgG1の重鎖定常領域とκ鎖の軽鎖定常領域を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、上記重鎖定常領域は配列番号28の配列を含み、及び/又は軽鎖定常領域は配列番号29の配列を含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、
上記重鎖は、配列番号60に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は上記軽鎖は、配列番号61に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、或いは
上記重鎖は、配列番号58に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含み、及び/又は上記軽鎖は、配列番号59に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、上記重鎖は配列番号60で示される配列を含み、及び/又は上記軽鎖は配列番号61で示される配列を含み、或いは
上記重鎖は配列番号58で示される配列を含み、及び/又は上記軽鎖は配列番号59で示される配列を含む。
【0037】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗体と競合してDLL3又はそのエピトープに結合する、単離した抗DLL3の抗体を提供する。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、そのうち、上記抗体は、下記特性の中の少なくとも1つを有する:
a)上記抗DLL3抗体は、ヒトDLL3又はそのエピトープに結合するKD値≦3 nM、≦2 nM、≦1 nM、≦0.9 nM、≦0.8 nM、≦0.7 nM、≦0.6 nM、≦0.5 nM、≦0.4 nMであり、上記KD値がBiacoreにより測定されること、
b)上記抗DLL3抗体は、DLL3を発現するH1184細胞に結合するEC50≦3 nM、EC50≦2 nM、EC50≦1 nM、EC50≦0.5 nM、EC50≦0.2 nM、EC50≦0.1 nM、EC50≦0.09 nM、EC50≦0.08 nM、EC50≦0.07 nM、EC50≦0.06 nMであり、上記EC50がFACSにより検出されること、
c)上記抗DLL3抗体は、DLL3を発現する細胞によりエンドサイトーシス可能であること、
d)上記抗DLL3抗体は、DLL3又はそのエピトープに結合するEC50≦0.1 nM(≦0.09 nM、≦0.08 nM、≦0.07 nM、≦0.06 nM、≦0.05 nM、≦0.04 nM)であり、上記EC50がELISAにより測定されること、及び
e)上記抗DLL3抗体と陽性抗体(例えば、BI-764532)は、異なるDLL3エピトープを認識すること。
【0039】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体をコードする、単離した核酸を提供する。
【0040】
別の態様において、本開示は、上記単離した核酸を含むベクターを提供する。
【0041】
さらなる態様において、本開示は、上記のベクター又は上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体を含む宿主細胞を提供する。
【0042】
一態様において、本開示は、DLL3に結合する抗体を調製する方法であって、上記抗体の発現に適する条件下で上記宿主細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0043】
さらなる態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体を含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0044】
さらなる態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体と、上記抗DLL3抗体にカップリングされる薬物とを含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、上記薬物は、細胞毒性剤、放射性マーカー、蛍光団、発色団、現像剤、免疫調節剤、血管新生阻害剤、細胞成長阻害剤、アポトーシス促進剤及び細胞溶解酵素のうちの1種又は複数種から選ばれる。
【0046】
幾つかの実施形態において、そのうち、上記薬物は、エクテイナシジンEt-743(Trabectedin、トラベクテジン)又はその誘導体である。幾つかの実施形態において、上記薬物は、エクテイナシジン誘導体、例えば、ルルビネクテジン(Lurbinectedin)である。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、それは、一般式(Pc-L-Da)で示される構造を有する:
【化1】
そのうち、Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、Lはリンカーであり、nは1~10(整数と小数を含む)であり、好ましくは、nは3~5である。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、それは、一般式(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩である:
【化2】
そのうち、Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、Lはリンカーであり、nは1~10であり、好ましくは、nは3~5である。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、nは各抗体の平均薬物モジュール数であり、整数でも小数でもよい。幾つかの実施形態において、nは1~10、又は1~9、又は2~10、又は2~9、又は1~8、又は2~8、又は2~7、又は2~4、又は1~4、又は1~3、又は3~8、又は3~7、又は3~6、又は3~5、又は4~7、又は4~6、又は4~5の平均値であり、幾つかの実施形態において、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、リンカー-L-はL-L-L-L-であり、そのうち、
は、-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH-C(O)-NR-W-C(O)-及び-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、WはC1-6アルキレン基、C1-6アルキレン-C3-6シクロアルキル基から選ばれ、そのうち、上記C1-6アルキレン基、C1-6アルキレン-C3-6シクロアルキル基は、それぞれ独立的に任意選択的にさらにハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CHCHO)CHCHC(O)-、-NR(CHCHO)CHC(O)-、-S(CHC(O)-及び化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2~7個のアミノ酸残基から構成されるペプチド残基であり、そのうち、上記アミノ酸は、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)及びアスパラギン酸(D)から選ばれ、かつ任意選択的にさらにハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アルキル基、クロロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
は、-NR(CR-、-C(O)NR、-C(O)NR(CH-及び化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
、R及びRは同一又は異なり、かつそれぞれ独立的に水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、
及びRは同一又は異なり、かつそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、リンカー-L-はL-L-L-L-であり、そのうち、

【化3】
であり、sは2~8の整数であり、2、3、4、5、6、7若しくは8を含むが、これらに限定されず、
は化学結合であり、
はテトラペプチド残基であり、好ましくは、Lはグリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシンを含むテトラペプチド残基であり、
は-NH(CH)t-であり、tは1又は2であり、
そのうち、上記L末端はPcに連結される。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、-L-は、
【化4】
である。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記から選択される構造を有する:
【化5】
そのうち、Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、nは1~10である。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記のような構造を有する:
【化6】
そのうち、
nは1~10であり、
Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、好ましくは、Pcは抗DLL3抗体であり、それは、
配列番号60で示される重鎖と配列番号61で示される軽鎖、又は
配列番号58で示される重鎖と配列番号59で示される軽鎖を含む。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記のような構造を有する:
【化7】
そのうち、
Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、好ましくは、Pcは抗DLL3抗体であり、それは、
配列番号60で示される重鎖と配列番号61で示される軽鎖、又は
配列番号58で示される重鎖と配列番号59で示される軽鎖を含み、
nは1~8である。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記のような構造を有する:
【化8】
そのうち、
Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、好ましくは、Pcは抗DLL3抗体であり、それは、
配列番号60で示される重鎖と配列番号61で示される軽鎖、又は
配列番号58で示される重鎖と配列番号59で示される軽鎖を含み、
nは3~5である。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記のような構造を有する:
【化9】
そのうち、
Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、好ましくは、Pcは抗DLL3抗体であり、それは、
配列番号60で示される重鎖と配列番号61で示される軽鎖、又は
配列番号58で示される重鎖と配列番号59で示される軽鎖を含み、
nは3.73~4.27である。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の一般式(Pc-L-Da)若しくは(Pc-L-D)で示される抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩であって、上記抗体-薬物複合体は下記のような構造を有する:
【化10】
そのうち、
Pcは上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体であり、好ましくは、Pcは抗DLL3抗体であり、それは、
配列番号60で示される重鎖と配列番号61で示される軽鎖、又は
配列番号58で示される重鎖と配列番号59で示される軽鎖を含み、
nは3.72~4.88である。
【0059】
本開示は、抗体-薬物複合体を調製する方法であって、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体を還元し、そして(L-D)若しくは(L-Da)で示される化合物とカップリング反応させ、本開示に記載の抗体-薬物複合体を得ることを含む方法をさらに提供する。
【0060】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩と、1種又は複数種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターとを含む医薬組成物を提供する。幾つかの実施形態において、上記単位用量の医薬組成物は、0.1~3000 mg又は1~1000 mgの上記抗DLL3抗体又は上記抗体-薬物複合体を含む。
【0061】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いはそれを含む医薬組成物の薬剤としての使用を提供する。
【0062】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは上記医薬組成物の、DLL3媒介性の疾患又は病状を治療するための薬剤の調製における使用を提供する。幾つかの実施形態において、そのうち、上記DLL3媒介性の疾患又は病状は、腫瘍又はがんである。幾つかの実施形態において、そのうち、上記DLL3媒介性の疾患又は病状は、DLL3を発現する疾患又は病状である。
【0063】
別の態様において、本開示は、上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、又は上記医薬組成物の、腫瘍又はがんを治療又は予防するための薬剤の調製における使用を提供し、好ましくは、そのうち、上記腫瘍又はがんは、
肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、大細胞肺がん)、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん)、悪性胸膜中皮腫、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸直腸がん(例えば、結腸がんと直腸がん)、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、副腎がん、膠芽細胞腫、皮膚がん及び黒色腫から選ばれ、より好ましくは、そのうち、上記腫瘍又はがんは小細胞肺がんである。
【0064】
より好ましくは、上記腫瘍又はがんは、DLL3を発現する腫瘍又はがんである。
【0065】
別の態様において、本開示は、さらに、腫瘍又はがんを治療及び/又は予防するための方法に関し、当該方法は、それを必要とする対象に治療有効量の上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは上記医薬組成物を投与することを含み、好ましくは、そのうち、上記腫瘍又はがんはDLL3を発現する腫瘍又はがんである。
【0066】
別の態様において、本開示は、さらに、腫瘍又はがんを治療又は予防するための方法に関し、当該方法は、それを必要とする対象に治療有効量の上記何れか1つに記載の抗DLL3抗体、或いは上記何れか1つに記載の抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩、或いは上記医薬組成物を投与することを含み、そのうち、上記腫瘍又はがんは、
肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、大細胞肺がん)、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん)、悪性胸膜中皮腫、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸直腸がん(例えば、結腸がんと直腸がん)、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、副腎がん、膠芽細胞腫、皮膚がん及び黒色腫から選ばれ、好ましくは、そのうち、上記腫瘍又はがんは小細胞肺がんである。
【0067】
別の態様において、本開示は、薬剤として、好ましくはがん又は腫瘍を治療する薬剤として、より好ましくはDLL3を発現するがん又は腫瘍を治療する薬剤としての上記抗DLL3抗体、又は上記抗体-薬物複合体をさらに提供する。
【0068】
本開示に提供される抗DLL3抗体及び抗体-薬物複合体は、細胞表面抗原との良好な親和性を有し、DLL3を発現する細胞により効果的にエンドサイトーシス可能であり、かつ腫瘍成長を阻害する効果が強いと共に、良好な安全性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1A】~
図1C】Hu6とHu100抗体の異なる種のDLL3への結合を示す。そのうち、図1Aは、Hu6とHu100抗体のH1184細胞への結合のFACS結果を示し、図1BはHu6とHu100抗体のcynoDLL3/CHO-s細胞への結合のFACS結果を示し、図1CはHu6とHu100抗体のratDLL3/CHO-s細胞への結合のFACS結果を示す。
図2】異なる抗DLL3抗体の競合的結合実験の結果を示す。その結果、Hu6とHu100は、BI-764532と競合しないので、抗体Hu6とHu100は、BI-764532とは異なるエピトープに結合することが示唆されている。
図3】Hu6とHu100抗体が細胞によりエンドサイトーシスされた結果を示し、その結果、Hu6とHu100は、何れも細胞によりエンドサイトーシス可能なことを示す。
図4A】~
図4E】ADC-1とADC-2の異なる細胞の成長への阻害作用を示す。そのうち、図4AはADC-1とADC-2のDLL3低発現DMS53細胞の成長への阻害結果を示し、図4BはADC-1とADC-2のDLL3高発現H1184細胞の成長への阻害結果を示し、図4CはADC-1とADC-2のDLL3非発現HT-29細胞の成長への阻害結果を示し、図4DはADC-1とADC-2のDLL3非発現U-2OS細胞の成長への阻害結果を示し、図4EはADC-1とADC-2のDLL3非発現CHO-K1細胞の成長への阻害結果を示す。
図5】ADC-1とADC-2によるバイスタンダー細胞毒性効果の結果を示す。
図6】ADC-1とADC-2によるマウスのDMS53細胞皮下移植腫瘍の成長への阻害結果を示す。
図7】ADC-1とADC-2によるマウスのH1184細胞皮下移植腫瘍の成長への阻害結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
一、用語
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を説明する。本明細書で特に明確な定義のない限り、本明細書に使用される技術・科学用語の全ては、当業者に一般的に理解された意味と同じ意味を持っている。
【0071】
特に逆の説明がない限り、明細書と特許請求の範囲に使用される用語は、下記の意味を有する。
【0072】
明細書及び特許請求の範囲に用いられる単数形である「1つ」、「1種」及び「上記」は、文脈でそうではないと明記しない限り、複数の指示対象を含む。
【0073】
文脈で特に明記のない限り、特許の明細書と特許請求の範囲において、「含有する」、「有する」、「含む」という言葉などは、排他的又は網羅的な意味ではなく、「含むが、これらに限定されない」という意味として理解すべきである。
【0074】
「及び/又は」という用語は、「及び」と「又は」という2つの意味を含むことを指す。例えば、「A、B及び/又はC」という語句は、A、B及びC、A、B又はC、A又はC、A又はB、B又はC、AとC、AとB、BとC、A(単独)、B(単独)及びC(単独)のそれぞれをカバーしようとする。本開示において商品名が使用される場合、当該商品名の製品の製剤、当該商品名の製品の薬剤及び活性薬物部分を含むことが意図されている。
【0075】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J.biol.chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0076】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸と合成したアミノ酸、及び天然に存在するアミノ酸と同じように作用するアミノ酸類似体とアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、コドンによってコードされるようなアミノ酸、及び後に修飾されるようなアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造(即ち、水素、カルボキシ基、アミノ基及びR基に結合したα炭素)を有する化合物を指し、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムである。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)又は修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じように作用する化学化合物を指す。
【0077】
「アミノ酸変異」という用語は、アミノ酸置換(アミノ酸置き換えとも呼ばれる)、欠失、挿入及び修飾を含む。最終構築体がFc受容体への結合を低減するなどの所望の特性を有すれば、置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合わせを行うことにより、最終構築体を実現することができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、ポリペプチド鎖のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端での欠失と挿入を含む。具体的なアミノ酸変異は、アミノ酸置換であってもよい。一実施形態において、アミノ酸変異は、非保存的アミノ酸置換であり、即ち、1つのアミノ酸を異なる構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換する。アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸又は20種の天然アミノ酸の誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置き換えを含む。アミノ酸変異は、この分野で公知の遺伝学的又は化学的方法により生成することができる。遺伝学的方法は、部位特異的変異導入、PCR、遺伝子合成などを含んでもよい。遺伝子工学以外のアミノ酸側鎖基を改変する方法、例えば、化学修飾も利用可能であろうと予測される。本明細書では、様々な名称で同一のアミノ酸変異を示すことができる。本明細書では、位置+アミノ酸残基という方式で特定の部位でのアミノ酸残基を示すことができ、例えば、366Wは、366部位でのアミノ酸残基がWであることを示す。T366Wは、366番目の部位でのアミノ酸残基がWで元のTを置換したことを示す。
【0078】
「抗体」という用語は、所望の抗原結合活性を示せば、最も広い意味で使用され、かつ種々の抗体構造をカバーしており、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体及び抗体断片(又は抗原結合断片、又は抗原結合部分)を含むが、これらに限定されない。完全抗体は、一般的に、2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む。N末端からC末端へ、それぞれの重鎖には、可変重鎖ドメイン、重鎖可変領域とも呼ばれる可変領域(VH)が1つあり、その次は3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)である。同様に、N末端からC末端へ、それぞれの軽鎖には、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)が1つあり、その次は1つの定常軽鎖ドメイン(軽鎖定常領域、CL)である。
【0079】
「全長抗体」、「完全抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書で入れ替えて使用されてもよく、天然抗体の構造とほぼ類似の構造を有するか又は重鎖にFc領域がある抗体を指す。天然完全抗体の軽鎖は、軽鎖可変領域VL及び定常領域CLを含み、VLは軽鎖のアミノ末端にあり、軽鎖定常領域はκ鎖及びλ鎖を含み、重鎖は可変領域VH及び定常領域(CH1、CH2及びCH3)を含み、VHは重鎖のアミノ末端にあり、定常領域はカルボキシ末端にあり、そのうち、CH3はカルボキシ末端に最も近く、重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプが含まれる)、IgA(IgA1とIgA2サブタイプが含まれる)、IgM及びIgEを含む任意のアイソタイプに属してもよい。
【0080】
抗体「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体の重鎖又は軽鎖における抗体の抗原への結合に関与するドメインである。本明細書では、抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)は、4つの保存的なフレームワーク領域(FR)及び3つの相補性決定領域(CDR)をそれぞれ含む。そのうち、「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、可変ドメインにおける抗原との結合を主に促進する領域を指し、「フレームワーク」又は「FR」は、CDR残基を除く可変ドメイン残基を指す。VHは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3という3つのCDR領域を含み、VLは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3という3つのCDR領域を含む。それぞれのVH及びVLは、アミノ末端(N末端とも呼ばれる)からカルボキシ末端(C末端とも呼ばれる)へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順に配列された3つのCDRと4つのFRとからなる。
【0081】
CDRのアミノ酸配列の境界は、様々な公知の方案、例えば、「Kabat」番号付け規則(Kabat et al.(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5th ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MDを参照)、「Chothia」番号付け規則、「ABM」番号付け規則、「contact」番号付け規則(Martin、ACR. Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains[J].2001を参照)及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc、M.P.et al.、Dev. Comp. Immunol.、27、55-77(2003)、Front Immunol. 2018 Oct 16、9:2278)などによって決定することができ、様々な番号付けシステム間の対応関係は当業者によく知られているものであり、例示的に、下記の表1に示す通りである。
【0082】
【表1】
【0083】
特に説明のない限り、本開示における可変領域及びCDR配列は何れも、Kabat番号付け規則に適用される。
【0084】
「抗体断片」という用語は、完全抗体とは異なる分子を指し、完全抗体の結合する抗原に結合する、完全抗体の一部を含む。抗体断片の実例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab′)、単一ドメイン抗体、単鎖Fab(scFab)、二重抗体、線形抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)及び抗体断片からなる多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。
【0085】
「Fc領域」又は「断片結晶化可能領域」という用語は、抗体重鎖のC末端領域を定義するためであり、天然Fc領域及び改変されたFc領域を含む。幾つかの実施形態において、Fc領域は、同一又は異なる2つのサブユニットを含む。幾つかの実施形態において、ヒトIgG重鎖のFc領域は、Cys226位置でのアミノ酸残基から、又はPro230からそのカルボキシ末端へ延びるように定義される。本明細書に記載の抗体に用いられる好適なFc領域は、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3及びIgG4のFc領域を含む。幾つかの実施形態において、Fc領域の境界は変えてもよく、例えば、Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによる残基447)の欠失、又はFc領域のC末端グリシンとリジン(EU番号付けシステムによる残基446と447)の欠失である。特に説明のない限り、Fc領域の番号付け規則はEU番号付けシステムであり、EUインデックスとも呼ばれる。
【0086】
「キメラ抗体」という用語は、抗体における重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種から誘導されるが、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が他の異なる供給源又は種から誘導される抗体を指す。
【0087】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト抗体の反応性を維持すると共に、ヒトにおいて低い免疫原性を有する抗体である。例えば、非ヒトCDR領域を保持すると共に、そのヒト対応物(即ち、定常領域及び可変領域のフレームワーク領域部分)で抗体の残りの部分を置換することにより達成してもよい。
【0088】
「ヒト抗体」、「ヒト化抗体」、「全ヒト抗体」、「完全ヒト抗体」という用語は入れ替えて使用されてもよく、可変領域及び定常領域がヒト配列である抗体を指す。当該用語は、ヒト遺伝子に由来するが、例えば、可能性のある免疫原性が低減され、親和性が増加され、望ましくないフォールディングを引き起こし得るシステイン又はグリコシル化部位が除去されたなどの配列を有する抗体をカバーしている。当該用語は、非ヒト細胞(ヒト細胞の特徴を有しないグリコシル化を付与し得る)において組換えて産生されるような抗体をカバーしている。当該用語は、ヒト免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニックマウスで既に飼育された抗体もカバーしている。ヒト抗体の定義には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0089】
「親和性」という用語は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合リガンド(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の全強度を指す。特に明記のない限り、本明細書に使用されるように、結合「親和性」は、内部結合親和性を指し、結合ペア(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の相互作用を反映する。分子XによるそのリガンドYへの親和性は、一般的に、解離定数(KD)で示すことができる。親和性は、この分野で既知の通常の方法(本明細書に記載の方法を含む)により測定することができる。
【0090】
本明細書に使用されるように、「kassoc」又は「ka」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指し、「kdis」又は「kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。「KD」という用語は解離定数を指し、kdとkaの比率(即ち、kd/ka)から得られ、かつモル濃度(M)で示される。抗体のKD値は、この分野で公知の方法により測定することができる。例えば、表面プラズモン共鳴をシステムなどのバイオセンシングシステムによって測定し、又は溶液平衡滴定法(SET)によって溶液中の親和性を測定する。
【0091】
「エフェクター機能」という用語は、抗体Fc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列が変異したFc領域)によるものとすることができると共に、抗体のアイソタイプによって変えられる生物学的活性を指す。抗体のエフェクター機能の例は、C1q結合と補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、貪食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション及びB細胞の活性化を含むが、これらに限定されない。
【0092】
「モノクローナル抗体」という用語は、基本的に均質な抗体の集団を指し、即ち、当該集団に含まれる抗体分子のアミノ酸配列は、少し存在し得る天然変異を除き、同じである。それに対して、ポリクローナル抗体製剤は、一般的に、その可変ドメインにおいて、一般的に異なるエピトープに特異的である異なるアミノ酸配列を有する複数種の異なる抗体を含む。「モノクローナル」は、任意の特定の方法により抗体を産生しなければならないと解釈すべきではない。
【0093】
幾つかの実施形態において、本開示に提供される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0094】
「抗原」という用語は、例えば、抗原結合タンパク質(例えば、抗体を含む)の選択的結合剤により結合可能な分子又は分子部分を指す。抗原は、異なる抗原結合タンパク質(例えば、抗体)と相互作用することができる1つ又は複数のエピトープを有してもよい。
【0095】
「エピトープ」という用語は、抗体又はその抗原結合断片と特異的に結合可能な抗原上の領域(area又はregion)を指す。エピトープは、連続的なアミノ酸列(線状エピトープ)によって形成され、又は、例えば抗原のフォールディング(即ち、三次フォールディング)により空間的に近接した非連続的なアミノ酸(配座エピトープ)を含んでもよい。配座エピトープと線状エピトープは、変性溶媒の存在下で、抗体の配座エピトープへの結合が検出できないという点で異なっている。エピトープは、独特な空間配座にある少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、又は8~10個のアミノ酸を含む。特定のエピトープに結合する抗体(即ち、同じエピトープに結合するようなもの)のスクリーニングは、この分野における通常の方法により行うことができ、例えば、アラニンスキャンニング、ペプチドブロット、ペプチド切断解析、エピトープ切除、エピトープ抽出、抗原の化学修飾(Prot. Sci. 9(2000)487-496を参照)と交差阻害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
「抗DLL3抗体」及び「DLL3に結合する抗体」という用語は、十分な親和性でDLL3又はそのエピトープに結合可能な抗体を指す。一実施形態において、抗DLL3抗体の無関係タンパク質への結合程度は、当該抗体のDLL3への結合の少なくとも約10%未満であり、上記結合は、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴測定法により測定することができる。
【0097】
「特異的に結合可能」、「特異的に結合」又は「結合」という用語は、他の抗原又はエピトープに比べて、抗体がより高い親和性で、ある抗原又はそのエピトープに結合できることを指す。一般的に、抗体は、約1×10-7 M以下(例えば、約1×10-8 M以下)の平衡解離定数(KD)で抗原又はそのエピトープに結合する。幾つかの実施形態において、抗体の抗原に結合するKDは、当該抗体の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するKDの10%以下(例えば、1%)である。KDは、既知の方法により測定することができ、例えば、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴測定法により測定される。しかし、抗原又はそのエピトープに特異的に結合する抗体は、他の関連抗原に交差反応性を有する可能性があり、例えば、他の種(相同)(例えば、ヒト、又はカニクイザル(Macaca fascicularis)(cynomolgus、cyno)、チンパンジー(Pan troglodytes)(chimpanzee、chimp)などのサル)又はマーモセット(Callithrix jacchus)(commonmarmoset、marmoset)由来の対応する抗原に対して交差反応性を有する。
【0098】
「核酸」という用語は、本明細書において「ポリヌクレオチド」という用語と入れ替えて使用されてもよく、かつ単鎖若しくは二本鎖の形態を呈するデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそのポリマーを指す。上記用語は、既知のヌクレオチド類似体又は修飾を含む骨格残基又は連結核酸をカバーする。上記核酸は合成した、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照核酸と類似の結合特性を有すると共に、参照ヌクレオチドと同じように代謝される。このような類似体の実例は、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスフェート、キラル-メチルホスフェート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)を含むが、これらに限定されない。「単離した」核酸は、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離した核酸は、下記の細胞に含まれる核酸分子を含み、上記細胞は一般的に当該核酸分子を含むが、当該核酸分子は染色体外に存在し、又はその天然染色体位置とは異なる位置に存在する。ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする単離した核酸は、ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにある1つ以上の核酸分子と、宿主細胞における1つ以上の位置に存在する1つ以上の核酸分子とを含む。特に説明のない限り、特定の核酸配列は、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)と相補配列及び明記した配列も暗黙的にカバーしている。具体的に、以下詳述するように、縮重コドン置換は、1つ又は複数の選ばれた(又は全ての)コドンの3番目が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を産生することにより得ることができる。
【0099】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で入れ替えて使用されてもよく、アミノ酸残基のポリマーを指し、そのうち、1つ又は複数のアミノ酸残基は、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマーに適用され、かつ天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。特に説明のない限り、特定のポリペプチド配列は、その保存的に修飾された変異体をさらに暗黙的にカバーしている。
【0100】
配列「同一性」という用語は、2つの配列のアミノ酸/核酸が等価位置で相同である程度(百分率)を指し、2つの配列に対して最適アラインメントを行う場合、最大の同一性の百分率が得られるように、必要に応じてギャップを導入し、かつ何れの保存的置換も配列同一性の一部とは見なされない。配列同一性の百分率を測定するために、アラインメントは、この分野の技術で既知の技術、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に取得可能なコンピュータソフトウェアにより、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、測定アラインメントに適用されるパラメータを決定することができる。
【0101】
「ベクター」という用語は、それに連結された別のポリヌクレオチドを輸送可能なポリヌクレオチド分子を指す。1種のベクターは「プラスミド」であり、付加されたDNAセグメントに連結可能な環状二本鎖DNA環を指す。もう1種のベクターはウイルスベクターであり、例えば、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV又はAAV2)であり、その中で、別のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結可能である。あるベクターは、それらが導入された宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーマル哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入された後、宿主細胞のゲノムに整合されることで、宿主ゲノムと共に複製することができる。「発現ベクター」又は「発現構築体」という用語は、宿主細胞を形質転換することができると共に、それと操作可能に連結された1つ又は複数の異種コード領域の発現を教示及び/又は制御する核酸配列を含有するベクターを指す。発現構築物は、転写、翻訳を影響又は制御すると共に、イントロンがある場合にそれと操作可能に連結されたコード領域のRNAスプライスを影響する配列を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0102】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」という用語は、入れ替えて使用されてもよく、かつ外因性核酸が導入された細胞を指し、このような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、継代数を考慮せず、初代の形質転換された細胞及びそれより誘導された子孫を含む。子孫は、核酸内容物が親細胞と完全に同じでなくてもよく、変異を含んでもよい。本明細書では、初代形質転換細胞からスクリーニング又は選択された細胞と同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。宿主細胞は、原核及び真核宿主細胞を含み、そのうち、真核宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞株の植物細胞及び真菌細胞を含むが、これらに限定されない。例示的な宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、HepG2)、A549細胞、3T3細胞及びHEK-293細胞、ピキア・パストリス(Pichiapastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)である。
【0103】
「抗体-薬物複合体」(antibody drug conjugate、ADC)は、抗体(又はその抗原結合断片)を直接又はリンカーを介して薬物に連結した複合体である。
【0104】
「薬物(Drug、略語:D)」は、生物活性又は検出可能活性を有する任意の物質(例えば、治療剤、検出可能標識、結合剤など)及びインビボで活性剤に代謝される任意のプロドラッグである。治療剤の実例としては、細胞毒性剤、化学療法剤、細胞成長阻害剤及び免疫調節剤が含まれる。化学療法剤は、がんの治療に使用可能な化学化合物である。代表的な治療剤は、細胞毒素、細胞毒性剤及び細胞成長阻害剤を含む。
【0105】
細胞毒性効果とは、標的細胞の欠失、除去及び/又は死滅である。細胞毒性薬剤は、細胞に対する細胞毒性及び/又は細胞成長阻害効果を有する薬剤を指す。細胞成長阻害効果とは、細胞増殖の阻害である。細胞成長阻害剤は、細胞に対して細胞成長阻害効果を有することにより、細胞の特定のサブグループの成長及び/又は増殖を阻害する薬剤を指す。
【0106】
追加の代表的な治療剤は、放射性同位体、化学療法薬、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、アポトーシス促進剤及び細胞溶解酵素(例えば、RNAse)を含む。これらの薬剤の説明用語は、互いに排他的ではないので、上記用語の1つ又は複数で治療剤を説明することができる。例えば、選択される放射性同位体は、細胞毒素でもある。治療剤は、上記何れか1つの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体として調製されてもよい。一般的に、薬剤として放射性同位体を有する複合体は放射性免疫複合体と呼ばれ、薬物として化学療法剤を有する複合体は化学免疫複合体と呼ばれる。
【0107】
細胞毒性剤の実例としては、アントラサイクリン、オーリスタチン、CC-1065、ドラスタチン(dolastatin)、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン(geldanamycin)、メイタンシン(maytansine)、ピューロマイシン、タキサン、ビンブラスチン、SN-38、チューブリシン(tubulysin)、hemiasterlin、エリブリン、Trabectedin、Lurbinectedin及びその立体異性体、アイソスター、類似体又は誘導体を含むが、これらに限定されない。化学療法剤、植物毒素、他の生物活性タンパク質、酵素(即ち、ADEPT)、放射性同位体、光増感剤(即ち、光線力学治療用)が使用されてもよい。
【0108】
「標識」という用語は、本明細書に使用される場合、「標識された」抗体が生成されるように抗体に直接的又は間接的に複合される検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能なもの(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)であってもよく、又は酵素標識の場合、標識は、基質化合物若しくは組成物の検出可能な化学変化に触媒作用を及ぼすことができる。放射性同位体標識は、例えば、I-131、I-123、I-125、Y-90、Re-188、Re-186、At-211、Cu-67、Bi-212及びPd-109を含む。標識は、毒素などの検出不可能な実体であってもよい。
【0109】
「リンカーユニット」、「リンカー」という用語は、一端が抗体に連結され、他端が薬物に連結された化学構造の断片又は結合を指し、他のリンカーに連結された上で抗体又は薬物に連結されてもよい。リンカーの抗体への結合は、例えば、表面リジン、酸化炭水化物への還元的カップリング、鎖間ジスルフィド結合の還元によって放出されたシステイン残基、特定の部位で改変された反応性システイン残基、及びアシルドナーグルタミンを含むタグ又はトランスグルタミナーゼ及びアミンの存在下でのポリペプチドの改変により反応性になる内因性グルタミンを介するといった複数種の方法で達成されてもよい。複数種のADC連結システムは、この分野で既知のものであり、ヒドラゾン-、ジスルフィド-及びペプチド-に基づく連結を含む。
【0110】
リンカーは、1種又は複数種のリンカー要素を含んでもよい。例示的なリンカー要素は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロピオニル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」又は「vc」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」、本明細書では、「MCC」とも呼ばれる)及びN-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(「SIAB」)を含む。
【0111】
リンカーは、伸長体、スペーサー及びアミノ酸ユニットという要素又はその組み合わせから選ばれてもよい。リンカーは、例えば、US20050238649A1に記載されたようなこの分野で既知の方法により合成することができる。リンカーは、細胞において薬剤を放出しやすくする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.、Cancer Research 52:127-131(1992)、米国特許No.5、208、020)を使用してもよい。
【0112】
リンカー要素は、下記のものを含むが、これらに限定されない:
次のような構造を持つ、MC=6-マレイミドカプロイル:
【化11】
Val-Cit又は「vc」=バリン-シトルリン(プロテアーゼ切断可能リンカーにおける例示的なジペプチド)、
シトルリン=2-アミノ-5-ウレイドペンタン酸、
PAB=p-アミノベンジルオキシカルボニル(「自己犠牲」リンカー要素の例)、
Me-Val-Cit=N-メチル-バリン-シトルリン(そのうち、カテプシンBにより切断されないように、リンカーペプチド結合は修飾されている)、
MC(PEG)6-OH=マレイミドカプロイル-ポリエチレングリコール(抗体システインに付着可能)、
SPP=N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエ一卜、
SPDP=N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、
SMCC=スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート、
IT=イミノチオラン。
【0113】
「L-D」は、薬物(D)をリンカー(L)に結合して産生したリンカー-薬物部分である。
【0114】
「薬物担持量」は、薬物抗体比(Drug-to-Antibody Ratio、DAR)とも呼ばれ、即ち、ADC中のそれぞれの抗体にカップリングされた薬物の平均数量である。それは、例えば、それぞれの抗体が約1~約10個の薬物にカップリングされる範囲内にあってもよく、また、ある実施例において、それぞれの抗体が約1~約8個の薬物にカップリングされる範囲内にあり、好ましくは、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、1~3、3~4、3~5、5~6、5~7、5~8及び6~8の範囲から選ばれる。本開示に係るADCの一般式は、上記一定の範囲内での抗体-薬物複合体の集合を含む。本開示の実施形態において、薬剤担持量はnで表されてもよく、小数又は整数である。薬物担持量は、UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験、HIC及びRP-HPLCなどの通常の方法により測定することができる。
【0115】
本開示の一実施形態において、薬物は、リンカーを介して抗体の反応性基(例えば、メルカプト基)にカップリングされる。
【0116】
ADCの薬物担持量は、
(1)連結試薬とモノクローナル抗体とのモル比を制御することと、
(2)反応時間と温度を制御することと、
(3)異なる反応試薬を選択することと、
を含む非限定的な方法により制御することができる。
【0117】
「アルキル基」という用語は、飽和の直鎖又は分岐鎖付きの脂肪族炭化水素基を指し、それは、1~20個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の炭素原子を有する(即ち、C1-20アルキル基)。上記アルキル基は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基(即ち、C1-12アルキル基)が好ましく、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(即ち、C1-6アルキル基)がより好ましい。非限定的な実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基及びその種々の分岐鎖異性体などを含む。アルキル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0118】
「アルキレン基」という用語は、2価アルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記に定義された通りであり、それは、1~20個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の炭素原子を有する(即ち、C1-20アルキレン基)。上記アルキレン基は、1~12個の炭素原子を有するアルキレン基(即ち、C1-12アルキレン基)が好ましく、1~6個の炭素原子を有するアルキレン基(即ち、C1-6アルキレン基)がより好ましい。非限定的な実例は、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-CHCH-、-CH(CHCH)-、-CHCH(CH)-、-CHC(CH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などを含む。アルキレン基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0119】
「アルケニル基」という用語は、分子に少なくとも1つの炭素-炭素二重結合が含まれるアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記に定義された通りであり、2~12個(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個)の炭素原子を有する(即ち、C2-12アルケニル基)。上記アルケニル基は、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基(即ち、C2-6アルケニル基)が好ましい。非限定的な実例は、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基などを含む。アルケニル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、アルコキシ基、ハロゲン、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0120】
「アルキニル基」という用語は、分子に少なくとも1つの炭素-炭素三重結合が含まれるアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記に定義された通りであり、2~12個(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個)の炭素原子を有する(即ち、C2-12アルキニル基)。上記アルキニル基は、2~6個の炭素原子を有するアルキニル基(即ち、C2-6アルキニル基)が好ましい。非限定的な実例は、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基などを含む。アルキニル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、アルコキシ基、ハロゲン、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0121】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)を指し、ここで、アルキル基は上記に定義された通りである。非限定的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基を含む。アルコキシ基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数が好ましい。
【0122】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式全炭素環(即ち、単環式シクロアルキル基)又は多環系(即ち、多環式シクロアルキル基)を指し、3~20個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、3~20員シクロアルキル基)。上記シクロアルキル基は、3~12個の環原子を有するシクロアルキル基(即ち、3~12員シクロアルキル基)が好ましく、3~8個の環原子を有するシクロアルキル基(即ち、3~8員シクロアルキル基)がより好ましく、3~6個の環原子を有するシクロアルキル基(即ち、3~6員シクロアルキル基)が最も好ましい。
【0123】
上記単環式シクロアルキル基は、非限定的な実例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基及びシクロオクチル基などを含む。
【0124】
上記多環式シクロアルキル基は、スピロシクロアルキル基、縮合シクロアルキル基及び架橋シクロアルキル基を含む。
【0125】
「スピロシクロアルキル基」という用語は、環同士が1つの炭素原子(スピロ原子という)を共有する多環系を指し、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、或いはその環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子を含んでもよく(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、ただし、少なくとも1つの全炭素環が含まれ、かつ連結点が当該全炭素環にあり、それは、5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、5~20員スピロシクロアルキル基)。上記スピロシクロアルキル基は、6~14個の環原子を有するスピロシクロアルキル基(即ち、6~14員スピロシクロアルキル基)が好ましく、7~10個の環原子を有するスピロシクロアルキル基(即ち、7~10員スピロシクロアルキル基)がより好ましい。上記スピロシクロアルキル基は、モノスピロシクロアルキル基又はポリスピロシクロアルキル基(例えば、ビススピロシクロアルキル基など)を含み、好ましくはモノスピロシクロアルキル基又はビススピロシクロアルキル基であり、より好ましくは3員/4員、3員/5員、3員/6員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/3員、5員/4員、5員/5員、5員/6員、5員/7員、6員/3員、6員/4員、6員/5員、6員/6員、6員/7員、7員/5員又は7員/6員モノスピロシクロアルキル基である。非限定的な実例は、
連結点が何れの位置にあってもよい
【化12】
などを含む。
【0126】
「縮合シクロアルキル基」という用語は、環同士が隣接する2つの炭素原子を共有する多環式系を指し、それは、単環式シクロアルキル基が1つ又は複数の単環式シクロアルキル基と縮合されたもの、又は単環式シクロアルキル基がヘテロシクリル基、アリール基又はヘテロアリール基のうちの1つ又は複数と縮合されたものであり、そのうち、連結点は単環式シクロアルキル基にあり、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、かつ5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、5~20員縮合シクロアルキル基)。上記縮合シクロアルキル基は、6~14個の環原子を有する縮合シクロアルキル基(即ち、6~14員縮合シクロアルキル基)が好ましく、7~10個の環原子を有する縮合シクロアルキル基(即ち、7~10員縮合シクロアルキル基)がより好ましい。上記縮合シクロアルキル基は、二環式縮合シクロアルキル基及び多環式縮合シクロアルキル基(例えば、三環式縮合シクロアルキル基、四環式縮合シクロアルキル基など)を含み、好ましくは二環式縮合シクロアルキル基又は三環式縮合シクロアルキル基であり、より好ましくは、3員/4員、3員/5員、3員/6員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/3員、5員/4員、5員/5員、5員/6員、5員/7員、6員/3員、6員/4員、6員/5員、6員/6員、6員/7員、7員/5員又は7員/6員二環式縮合シクロアルキル基である。非限定的な実例は、
連結点が何れの位置にあってもよく、
【化13】
などを含む。
【0127】
「架橋シクロアルキル基」という用語は、環同士が直接連結されていない2つの炭素原子を共有する全炭素多環式環系を指し、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、かつ5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の炭素原子を有する(即ち、5~20員架橋シクロアルキル基)。上記架橋シクロアルキル基は、6~14個の炭素原子を有する架橋シクロアルキル基(即ち、6~14員架橋シクロアルキル基)が好ましく、7~10個の炭素原子を有する架橋シクロアルキル基(即ち、7~10員架橋シクロアルキル基)がより好ましい。上記架橋シクロアルキル基は、二環式架橋シクロアルキル基及び多環式架橋シクロアルキル基(例えば、三環式架橋シクロアルキル基、四環式架橋シクロアルキル基など)を含み、好ましくは二環式架橋シクロアルキル基又は三環式架橋シクロアルキル基である。非限定的な実例は、
【化14】
を含み、
その連結点が何れの位置にあってもよい。
【0128】
シクロアルキル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基とヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0129】
「ヘテロシクリル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式複素環(即ち、単環式ヘテロシクリル基)又は多環式複素環系(即ち、多環式ヘテロシクリル基)を指し、その環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる少なくとも1つ(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子を含み(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、かつ3~20個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、3~20員ヘテロシクリル基)。上記ヘテロシクリル基は、3~12個の環原子を有するヘテロシクリル基(即ち、3~12員ヘテロシクリル基)が好ましく、3~8個の環原子を有するヘテロシクリル基(即ち、3~8員ヘテロシクリル基)がより好ましく、3~6個の環原子を有するヘテロシクリル基(即ち、3~6員ヘテロシクリル基)がさらに好ましく、5又は6個の環原子を有するヘテロシクリル基(即ち、5又は6員ヘテロシクリル基)が最も好ましい。
【0130】
上記単環式ヘテロシクリル基は、非限定的な実例として、ピロリジニル基、テトラヒドロピラニル基、1,2,3,6-テトラヒドロピリジル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基とホモピペラジニル基などを含む。
【0131】
上記多環式ヘテロシクリル基は、スピロヘテロシクリル基、縮合ヘテロシクリル基と架橋ヘテロシクリル基を含む。
【0132】
「スピロヘテロシクリル基」という用語は、環同士が1つの原子(スピロ原子という)を共有する多環式複素環系を指し、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、かつその環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる少なくとも1つ(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子を含み(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、ただし、少なくとも1つの単環式ヘテロシクリル基が含まれ、かつ連結点が当該単環式ヘテロシクリル基にあり、それは、5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、5~20員スピロヘテロシクリル基)。上記スピロヘテロシクリル基は、6~14個の環原子を有するスピロヘテロシクリル基(即ち、6~14員スピロヘテロシクリル基)が好ましく、7~10個の環原子を有するスピロヘテロシクリル基(即ち、7~10員スピロヘテロシクリル基)がより好ましい。上記スピロヘテロシクリル基は、モノスピロヘテロシクリル基及びポリスピロヘテロシクリル基(例えば、ビススピロヘテロシクリル基など)を含み、好ましくはモノスピロヘテロシクリル基又はビススピロヘテロシクリル基であり、より好ましくは、3員/4員、3員/5員、3員/6員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/3員、5員/4員、5員/5員、5員/6員、5員/7員、6員/3員、6員/4員、6員/5員、6員/6員、6員/7員、7員/5員又は7員/6員モノスピロヘテロシクリル基である。非限定的な実例は、
【化15】
などを含む。
【0133】
「縮合ヘテロシクリル基」という用語は、環同士が隣接する2つの原子を共有する多環式複素環系を指し、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、かつその環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる少なくとも1つ(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子を含み(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、それは、単環式ヘテロシクリル基が1つ又は複数の単環式ヘテロシクリル基と縮合されたもの、又は単環式ヘテロシクリル基がシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基のうちの1つ又は複数と縮合されたものであり、ここで、連結点は単環式ヘテロシクリル基にあり、かつ5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、5~20員縮合ヘテロシクリル基)。上記縮合ヘテロシクリル基は、6~14個の環原子を有する縮合ヘテロシクリル基(即ち、6~14員縮合ヘテロシクリル基)が好ましく、7~10個の環原子を有する縮合ヘテロシクリル基(即ち、7~10員縮合ヘテロシクリル基)がより好ましい。上記縮合ヘテロシクリル基は、二環式及び多環式縮合ヘテロシクリル基(例えば、三環式縮合ヘテロシクリル基、四環式縮合ヘテロシクリル基など)を含み、好ましくは二環式縮合ヘテロシクリル基又は三環式縮合ヘテロシクリル基であり、より好ましくは、3員/4員、3員/5員、3員/6員、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/3員、5員/4員、5員/5員、5員/6員、5員/7員、6員/3員、6員/4員、6員/5員、6員/6員、6員/7員、7員/5員又は7員/6員二環式縮合ヘテロシクリル基である。非限定的な実例は、
【化16】
などを含む。
【0134】
「架橋ヘテロシクリル基」という用語は、環同士が直接連結されていない2つの原子を共有する多環式複素環系を指し、その環内に1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、かつその環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる少なくとも1つ(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子を含み(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、それは、5~20個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個)の環原子を有する(即ち、5~20員架橋ヘテロシクリル基)。上記架橋ヘテロシクリル基は、6~14個の環原子を有する架橋ヘテロシクリル基(即ち、6~14員架橋ヘテロシクリル基)が好ましく、7~10個の環原子を有する架橋ヘテロシクリル基(即ち、7~10員架橋ヘテロシクリル基)がより好ましい。構成する環の数によって、二環式架橋ヘテロシクリル基と多環式架橋ヘテロシクリル基(例えば、三環式架橋ヘテロシクリル基、四環式架橋ヘテロシクリル基など)に分けることができ、好ましくは二環式架橋ヘテロシクリル基又は三環式架橋ヘテロシクリル基である。非限定的な実例は、
【化17】
などを含む。
【0135】
ヘテロシクリル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基とヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0136】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する単環式全炭素芳香環(即ち、単環式アリール基)又は多環式芳香環系(即ち、多環式アリール基)を指し、6~14個(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個)の環原子を有する(即ち、6~14員アリール基)。上記アリール基は、6~10個の環原子を有するアリール基(即ち、6~10員アリール基)が好ましい。上記単環式アリール基は、例えば、フェニル基である。上記多環式アリール基は、非限定的な実例として、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などを含む。上記多環式アリール基は、フェニル基がヘテロシクリル基又はシクロアルキル基のうちの1つ又は複数に縮合されたもの、又はナフチル基がヘテロシクリル基又はシクロアルキル基のうちの1つ又は複数に縮合されたものをさらに含み、ここで、連結点はフェニル基又はナフチル基にあり、かつこの場合、環原子の数は、依然として多環式芳香環系中の環原子の数を示し、非限定的な実例としては、
【化18】
などを含む。
【0137】
アリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、オキソ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基とヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0138】
「ヘテロアリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する単環式複素芳香環(即ち、単環式ヘテロアリール基)又は多環式複素芳香環系(即ち、多環式ヘテロアリール基)を指し、その環内に窒素、酸素及び硫黄から選ばれる少なくとも1つ(例えば、1、2、3又は4個)のヘテロ原子を含み(上記窒素は任意選択的に酸化され、即ち、窒素酸化物を形成してもよく、上記硫黄は任意選択的にオキソ基で置換され、即ち、スルホキシド又はスルホンを形成してもよいが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-を含まない)、それは、5~14個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個)の環原子を有する(即ち、5~14員ヘテロアリール基)。上記ヘテロアリール基は、5~10個の環原子を有するヘテロアリール基(即ち、5~10員ヘテロアリール基)が好ましく、5又は6個の環原子を有するヘテロアリール基(即ち、5又は6員ヘテロアリール基)がより好ましい。
【0139】
上記単環式ヘテロアリール基は、非限定的な実例として、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、フラザニル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリドニル基、N-アルキルピリドン基(例えば、
【化19】
など)、ピラジニル基、ピリダジニル基などを含む。
【0140】
上記多環式ヘテロアリール基は、非限定的な実例として、インドリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチエニル基、キナゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、カルバゾリル基などを含む。上記多環式ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基が1つ又は複数のアリール基に縮合されたものをさらに含み、ここで、連結点は芳香環にあり、かつこの場合、環原子の数は、依然として多環式複素芳香環系中の環原子の数を示す。上記多環式ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基がシクロアルキル基又はヘテロシクリル基のうちの1つ又は複数に縮合されたものをさらに含み、ここで、連結点は単環式複素芳香環にあり、かつこの場合、環原子の数は、依然として多環式複素芳香環系中の環原子の数を示す。非限定的な実例は、
【化20】
などを含む。
【0141】
ヘテロアリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合、それは、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、置換基は、D原子、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、ヘテロシクリルオキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基とヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数であることが好ましい。
【0142】
「アミノ保護基」という用語は、分子の他の部位が反応する時に、アミノ基が変化されないように、アミノ基に導入される脱離され易い基を指す。非限定的な実例は、(トリメチルシリル)エトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、トリメチルシリルエトキシカルボニル基(Teoc)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フタロイル基(Pht)、p-トルエンスルホニル基(Tos)、トリフルオロアセチル基(Tfa)、トリチル基(Trt)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、アセチル基、ベンジル基、アリル基、p-メトキシベンジル基などを含む。
【0143】
「ヒドロキシ保護基」という用語は、ヒドロキシ基に導入される脱離され易い基を指し、ヒドロキシ基を遮断又は保護するために、化合物の他の官能基において反応を行う。非限定的な実例は、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、tert-ブチルジメチルシリル基(TBS)、tert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)、メチル基、tert-ブチル基、アリル基、ベンジル基、メトキシメチル基(MOM)、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基(THP)、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-ニトロベンゾイル基などを含む。
【0144】
「シクロアルキルオキシ基」という用語は、シクロアルキル-O-を指し、ここで、シクロアルキル基は上記に定義された通りである。
【0145】
「ヘテロシクリルオキシ基」という用語は、ヘテロシクリル-O-を指し、ここで、ヘテロシクリル基は上記に定義された通りである。
【0146】
「アリールオキシ基」という用語は、アリール-O-を指し、ここで、アリール基は上記に定義された通りである。
【0147】
「ヘテロアリールオキシ基」という用語は、ヘテロアリール-O-を指し、ここで、ヘテロアリール基は上記に定義された通りである。
【0148】
「アルキルチオ基」という用語は、アルキル-S-を指し、ここで、アルキル基は上記に定義された通りである。
【0149】
「ハロアルキル基」という用語は、アルキル基が1つ又は複数のハロゲンで置換されたものを指し、ここで、アルキル基は上記に定義された通りである。
【0150】
「ハロアルコキシ基」という用語は、アルコキシ基が1つ又は複数のハロゲンで置換されたものを指し、ここで、アルコキシ基は上記に定義された通りである。
【0151】
「重水素化アルキル基」という用語は、アルキル基が1つ又は複数の重水素原子で置換されたものを指し、ここで、アルキル基は上記に定義された通りである。
【0152】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は、アルキル基が1つ又は複数のヒドロキシ基で置換されたものを指し、ここで、アルキル基は上記に定義された通りである。
【0153】
「メチレン基」という用語は、=CHを指す。
【0154】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0155】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OHを指す。
【0156】
「メルカプト基」という用語は、-SHを指す。
【0157】
「アミノ基」という用語は、-NHを指す。
【0158】
「シアノ基」という用語は、-CNを指す。
【0159】
「ニトロ基」という用語は、-NOを指す。
【0160】
「オキソ」又は「オキソ基」という用語は、「=O」を指す。
【0161】
「カルボニル基」という用語は、C=Oを指す。
【0162】
「カルボキシ基」という用語は、-C(O)OHを指す。
【0163】
「カルボン酸エステル基」という用語は、-C(O)O(アルキル基)、-C(O)O(シクロアルキル基)、(アルキル基)C(O)O-又は(シクロアルキル基)C(O)O-を指し、ここで、アルキル基及びシクロアルキル基は上記に定義された通りである。
【0164】
化学式における「Me」という略称は、メチル基である。
【0165】
化学式における「Ph」という略称は、フェニル基である。
【0166】
「THF」という用語は、テトラヒドロフランを指す。
【0167】
「EtOAc」という用語は、酢酸エチルを指す。
【0168】
「MeOH」という用語は、メタノールを指す。
【0169】
「DMF」という用語は、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。
【0170】
「DIPEA」という用語は、ジイソプロピルエチルアミンを指す。
【0171】
「TFA」という用語は、トリフルオロ酢酸を指す。
【0172】
「MeCN」という用語は、アセトニトリルを指す。
【0173】
「DMA」という用語は、N,N-ジメチルアセトアミドを指す。
【0174】
「EtO」という用語は、ジエチルエーテルを指す。
【0175】
「DCE」という用語は、1,2-ジクロロエタンを指す。
【0176】
「DIPEA」という用語は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指す。
【0177】
「NBS」という用語は、N-ブロモスクシンイミドを指す。
【0178】
「NIS」という用語は、N-ヨードスクシンイミドを意味する。
【0179】
「Cbz-Cl」という用語は、クロロギ酸ベンジルを指す。
【0180】
「Pd(dba)」という用語は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを指す。
【0181】
「Dppf」という用語は、1,1’-ビスジフェニルホスフィノフェロセンを指す。
【0182】
「HATU」という用語は、2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートを指す。
【0183】
「KHMDS」という用語は、カリウムヘキサメチルジシラジドを指す。
【0184】
「LiHMDS」という用語は、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドを指す。
【0185】
「MeLi」という用語は、リチウムメチドを指す。
【0186】
「n-BuLi」という用語は、n-ブチルリチウムを指す。
【0187】
「NaBH(OAc)」という用語は、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを指す。
【0188】
「DCM」という用語は、ジクロロメタンを指す。
【0189】
「DMAP」という用語は、4-ジメチルアミノピリジンを指す。
【0190】
「DMBOH」という用語は、2,4-ジメトキシベンジルアルコールを指す。
【0191】
「EDCI」という用語は、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを指す。
【0192】
「MTBE」という用語は、メチルtert-ブチルエーテルである。
【0193】
「DMF」という用語は、N,N-ジメチルホルムアミドを指す。
【0194】
「DMTMM」という用語は、4-(4,6-ジメトキシトリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩酸塩を指す。
【0195】
「EtOAc」という用語は、酢酸エチルを指す。
【0196】
本開示に係る化合物は、特定の立体異性体の形態があってもよい。「立体異性体」という用語は、構造が同じであるが、原子の空間的配列が異なる異性体を指す。それは、シスとトランス(又はZとE)異性体、(-)-と(+)-異性体、(R)-と(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-と(L)-異性体、互変異性体、アトロプ異性体、配座異性体及びその混合物(例えば、ラセミ体、ジアステレオマーの混合物)を含む。本開示に係る化合物における置換基は、他の不斉原子があってもよい。このような立体異性体及びそれらの混合物は、何れも本開示の範囲に含まれる。キラル合成、キラル試薬又は他の通常の技術により、光学活性の(-)-と(+)-異性体、(R)-と(S)-エナンチオマー及び(D)-と(L)-異性体を調製することができる。本開示のある化合物の1つの異性体は、不斉合成又はキラル助剤により調製することができ、或いは、分子に塩基性官能基(例えば、アミノ基)又は酸性官能基(例えば、カルボキシ基)が含まれる場合に、適当な光学活性の酸又は塩基と共にジアステレオマーの塩を形成し、そしてこの分野における公知の通常の方法によりジアステレオマー分割を行い、異性体の純品を得る。さらに、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、一般的にクロマトグラフィーにより完成される。
【0197】
本開示に記載される化合物の化学構造において、
【化21】
という結合は配置が指定されていないことを示し、即ち、化学構造にキラル異性体が存在する場合、
【化22】
という結合は
【化23】
又は
【化24】
であってもよく、或いは
【化25】
及び
【化26】
という2種類の配置を同時に含んでもよい。
【0198】
本開示に係る化合物は、異なる互変異性体形態で存在してもよく、そしてこのような形態の全ては本開示の範囲内に含まれる。「互変異性体」又は「互変異性体形態」という用語は、平衡に存在すると共に、異性体形態が容易に一方から他方に変換される構造異性体を指す。それは、あらゆる可能な互変異性体を含み、即ち、単一異性体の形態又は上記互変異性体の任意の比率である混合物の形態で存在する。非限定的な実例は、ケト-エノール、イミン-エナミン、ラクタム-ラクチムなどを含む。ラクタム-ラクチムの平衡は、以下の通りである:
【化27】
【0199】
例えば、ピラゾリル基に言及する場合は、以下の2種の構造のうちの何れか1種又は2種の互変異性体の混合物を含むと理解すべきである:
【化28】
【0200】
全ての互変異性体形態は本開示の範囲にあり、かつ化合物の命名は、何れの互変異性体も排除しない。
【0201】
本開示に係る化合物は、その化合物の全ての好適な同位体誘導体を含む。「同位体誘導体」という用語は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を持つが原子質量が異なる原子で置換された化合物を指す。本開示に係る化合物に導入可能な同位体の実例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素などの安定と放射性の同位体を含み、例えば、それぞれH(重水素、D)、H(三重水素、T)、11C、13C、14C、15N、17O、18O、32p、33p、33S、34S、35S、36S、18F、36Cl、82Br、123I、124I、125I、129I及び131Iなどであり、重水素が好ましい。
【0202】
重水素化されていない薬剤と比べて、重水素化薬剤は、毒性と副作用を減らし、薬剤の安定性を高め、治療効果を向上させ、薬剤の生物学的半減期を延長するといった利点を有する。本開示に係る化合物の全ての同位体組成の変換は、放射性の有無を問わず、本開示の範囲内に含まれる。炭素原子に連結される各利用可能な水素原子は、独立的に重水素原子で置換可能であり、ここで、重水素の置換は部分的又は完全であってもよく、部分的な重水素置換は、少なくとも1つの水素が少なくとも1つの重水素で置換されることを意味する。
【0203】
1つの位置が特に「重水素」又は「D」と指定される場合、当該位置は、重水素の存在度が重水素の天然存在度(0.015%である)よりも少なくとも1000倍高い(即ち、少なくとも15%の重水素が組み込まれた)と理解すべきである。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも1000倍高い(即ち、少なくとも15%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも2000倍高い(即ち、少なくとも30%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも3000倍高い(即ち、少なくとも45%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも3340倍高い(即ち、少なくとも50.1%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも3500倍高い(即ち、少なくとも52.5%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも4000倍高い(即ち、少なくとも60%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも4500倍高い(即ち、少なくとも67.5%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも5000倍高い(即ち、少なくとも75%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも5500倍高い(即ち、少なくとも82.5%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも6000倍高い(即ち、少なくとも90%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも6333.3倍高い(即ち、少なくとも95%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも6466.7倍高い(即ち、少なくとも97%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも6600倍高い(即ち、少なくとも99%の重水素が組み込まれた)。幾つかの実施形態において、それぞれの指定された重水素原子は、重水素の存在度が重水素の天然存在度よりも少なくとも6633.3倍高い(即ち、少なくとも99.5%の重水素が組み込まれた)。
【0204】
「置換」又は「置換される」とは、基における1つ又は複数の水素原子、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。当業者は、それほど努力をせずに(実験又は理論で)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基は、不飽和結合を有する炭素原子(例えば、オレフィン)に結合される場合に、不安定になり得る。
【0205】
本開示は、様々な重水素化形態の式(Pc-L-Da)又は(Pc-L-D)の抗体-薬物複合体をさらに含む。炭素原子に連結される各利用可能な水素原子は、独立的に重水素原子で置換されてもよい。当業者は、関連文献を参照して重水素化形態の式(Pc-L-Da)又は(Pc-L-D)の抗体-薬物複合体を合成することができる。重水素化形態の式(Pc-L-Da)又は(Pc-L-D)の抗体-薬物複合体は、調製する場合、市販の重水素化出発物質を使用してもよく、又は、通常の技術により重水素化試薬で合成してもよく、重水素化試薬は、重水素化ボラン、三重水素化ボランテトラヒドロフラン溶液、重水素化水素化アルミニウムリチウム、重水素化ヨードエタン及び重水素化ヨードメタンなどを含むが、これらに限定されない。
【0206】
「任意選択的に」又は「任意に」とは、その次に記載される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合という2つが含まれる。例えば、「任意選択的に(任意に)ハロゲン又はシアノ基で置換されたアルキル基」は、アルキル基がハロゲン又はシアノ基で置換された場合と、アルキル基がハロゲンとシアノ基で置換されていない場合とを含む。
【0207】
「医薬組成物」という用語は、1種又は複数種の本明細書に記載される化合物又はその生理学的に/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物と、生理学的に/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の成分とを含むものを示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0208】
医薬組成物は、滅菌注射用水溶液の形態であってもよい。許容可能な溶媒と溶剤には、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液があってもよい。滅菌注射用製剤は、その中の活性成分が油相に溶解された滅菌注射水中油型マイクロエマルジョンであってもよい。例えば、活性成分を大豆油とレシチンとの混合物に溶解する。次に、油溶液を水とグリセリンとの混合物に加え、処理してマイクロエマルジョンを形成する。局所で大量に注射することにより、注射液又はマイクロエマルジョンを対象の血流に注入することができる。又は、本開示に係る化合物の一定のサイクル濃度を維持可能な方法により、溶液及びマイクロエマルジョンを投与する。このような一定の濃度を維持するために、連続静脈内投与装置を使用することができる。このような装置の例は、Deltec CADD-PLUS. TM. 5400型の静脈注射ポンプである。
【0209】
医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与に使用される滅菌注射水又は油懸濁液の形態であってもよい。当該懸濁液は、既知の技術に従って、上記のような適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて調製することができる。滅菌注射用製剤は、無毒の胃腸外に許容可能な希釈剤又は溶媒において調製された滅菌注射溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールにおいて調製された溶液であってもよい。また、滅菌固定油を溶媒又は懸濁媒体として便利に用いることができる。このために、合成されたモノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の配合用固定油を用いることができる。また、油酸などの脂肪酸も、注射剤を調製することができる。
【0210】
「薬学的に許容される塩」又は「薬用可能な塩」という用語は、本開示に係る抗体又は抗体-薬物複合体の塩を指し、このような塩は、対象に用いられる場合、安全性及び有効性を有すると共に、所望の生物活性を有する。一例として、本開示に係る抗体又は抗体-薬物複合体は、少なくとも1つのアミノ基を含むため、酸と共に塩を形成することができ、薬用可能な塩の非限定的な例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、ソルビン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、サリチル酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩を含む。
【0211】
「薬学的に許容されるベクター」という用語は、薬学的配合剤において活性成分とは異なり、対象に無毒な成分を指す。薬学的に許容されるベクターは、緩衝剤、安定剤又は防腐剤を含むが、これらに限定されない。
【0212】
「賦形剤」という用語は、医薬製剤における活性成分以外の付加物であり、添加物と呼ばれてもよい。例えば、錠剤中の結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、半固体製剤である軟膏剤やクリーム剤中の基質部分、液体製剤中の防腐剤、酸化防止剤、矯味剤、芳香剤、共溶媒、乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整剤、着色剤などは何れも、賦形剤と呼ばれてもよい。
【0213】
「希釈剤」という用語は充填剤とも呼ばれ、錠剤の重量及び体積を増加させることがその主な使用である。希釈剤の加入により、一定の体積の大きさが確保されるだけでなく、主成分の用量偏差が低減され、薬剤の圧縮成形性などが改善される。錠剤の薬剤に油性成分が含まれる場合、「乾燥」状態を維持して錠剤への調製に寄与するために、吸収剤を加えて油性物質を吸収する必要がある。例えば、澱粉、乳糖、カルシウムの無機塩、微結晶セルロースなどである。
【0214】
「対象」又は「個体」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物は、全ての脊椎動物(例えば、哺乳動物及び非哺乳動物)、例えば、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、ヒツジ、イヌ、ウシ、トリ、両生類及び爬虫類動物を含む。指摘のない限り、「患者」又は「対象」という上記用語は、本明細書において入れ替えて使用されてもよい。本明細書に使用されるように、「カニクイザル(cyno)」又は「カニクイザル(cynomolgus)」という用語は、カニクイザル(Macaca fascicularis)を指す。ある実施形態において、個体又は対象はヒトである。
【0215】
「投与」又は「与える」は、動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織、臓器や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物と動物、ヒト、対象、細胞、組織、臓器や生物流体との接触を意味する。
【0216】
「試料」という用語は、対象から単離された流体、細胞又は組織の採取物及び対象の体内にある流体、細胞又は組織を指す。例示的な試料は生物流体であり、例えば、血液、血清と漿膜液、血漿、リンパ液、尿液、唾液、嚢胞液、涙液、排せつ物、痰、分泌組織と臓器の粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、胸膜、心膜、腹膜、腹腔と他の体腔の流体、気管支洗浄液から収集された流体、滑液、対象若しくは生体源に接触した液体溶液、例えば、細胞と臓器培地(細胞又は臓器馴化培地が含まれる)、洗浄液など、組織生検試料、細針吸引組織、手術で切除した組織、臓器培養物又は細胞培養物である。
【0217】
「治療(treatment又はtreat)」及び「処理」(とその文法的変形)は、治療される個体の病理過程の変更を図る臨床的介入を指し、かつ予防のために、又は臨床病理学的過程において実施することができる。治療の所望の効果は、疾患の発生又は再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の軽減/減少、転移の予防、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善又は軽減及び予後の退縮又は改善を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、本開示の抗体を使用することで、疾患の形成を遅延させるか、又は疾患の進行を遅延させる。
【0218】
「有効量」は、一般的に、症状の重症度及び/又は頻度の低減、これらの症状及び/又は潜在的な病因の除去、症状及び/又はその潜在的な病因の出現の予防、及び/又は疾患状態による若しくはそれに関連する損傷の改良又は改善に十分な量である。幾つかの実施形態において、有効量は、治療有効量又は予防有効量である。「治療有効量」は、疾患の状態若しくは症状、特に当該疾患の状態に関連する状態若しくは症状の治療、又は他の方式による当該疾患の状態若しくは当該疾患に関連する任意の他の望ましくない症状の進行の予防、阻害、遅延若しくは逆転に十分な量である。「予防有効量」は、対象に与えると、当該疾患状態の発症(又は再発)の予防若しくは遅延、又は当該疾患状態若しくは関連症状の発症(又は再発)可能性の低減などの所定の予防効果が付与される量である。完全治療又は予防効果は必ずしも1つの用量が与えられると生じるわけではなく、一連の用量が与えられた後に生じる可能性がある。従って、治療又は予防有効量は、1回又は複数回与える方式で投与することができる。「治療有効量」及び「予防有効量」は、例えば、個体の疾患状態、年齢、性別と体重及び治療剤又は治療剤の組み合わせが個体において所望の応答を引き起こす能力のような様々な要因によって変化することができる。有効治療剤又は治療剤の組み合わせの例示的な指標は、例えば、患者の改善された健康状態を含む。
【0219】
二、具体的な実施形態の説明
A. 例示的な抗DLL3の抗体
一態様において、本開示は、DLL3に結合する抗体を提供する。一態様において、DLL3に結合する単離した抗体を提供する。一態様において、本開示は、DLL3に特異的に結合する抗体を提供する。
【0220】
ある実施形態において、上記抗DLL3抗体は、下記特性の中の少なくとも1つを有する:
a)上記抗DLL3抗体は、ヒトDLL3又はそのエピトープに結合するKD値≦3 nM、≦2 nM、≦1 nM、≦0.9 nM、≦0.8 nM、≦0.7 nM、≦0.6 nM、≦0.5 nM、≦0.4 nMであり、上記KD値がBiacoreにより測定されること、
b)上記抗DLL3抗体は、DLL3を発現するH1184細胞に結合するEC50≦3 nM、EC50≦2 nM、EC50≦1 nM、EC50≦0.5 nM、EC50≦0.2 nM、EC50≦0.1 nM、EC50≦0.09 nM、EC50≦0.08 nM、EC50≦0.07 nM、EC50≦0.06 nMであり、上記EC50がFACSにより検出されること、
c)上記抗DLL3抗体は、DLL3を発現する細胞によりエンドサイトーシス可能であること、
d)上記抗DLL3抗体は、DLL3又はそのエピトープに結合するEC50≦0.1 nM(≦0.09 nM、≦0.08 nM、≦0.07 nM、≦0.06 nM、≦0.05 nM、≦0.04 nM)であり、上記EC50がELISAにより測定されること、及び
e)上記抗DLL3抗体と陽性抗体(例えば、BI-764532)は、異なるDLL3エピトープを認識すること。
【0221】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、以下から選ばれる群を含む:
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号57のアミノ酸配列を含むHCDR3、(iv)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(v)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(vi)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3であって、そのうち、配列番号57はPLYXYGRSYNXVAYで示され、そのうち、XはY若しくはHであり、XはA若しくはGであること、又は
(i)配列番号16のアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号18のアミノ酸配列HCDR3、(iv)配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR1、(v)配列番号20のアミノ酸配列を含むLCDR2、(vi)配列番号21のアミノ酸配列を含むLCDR3。
【0222】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、以下から選ばれる群を含む:
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号24のアミノ酸配列を含むHCDR3、(iv)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(v)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(vi)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号30のアミノ酸配列を含むHCDR3、(iv)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(v)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(vi)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3、又は
(i)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR1、(ii)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR2、(iii)配列番号31のアミノ酸配列を含むHCDR3、(iv)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(v)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び(vi)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3。
【0223】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、配列番号14の重鎖可変領域中のHCDRs及び配列番号15の軽鎖可変領域中のLCDRsを含み、又は
それは、配列番号12の重鎖可変領域のHCDRs及び配列番号13の軽鎖可変領域のLCDRsを含み、又は
それは、配列番号52の重鎖可変領域のHCDRs及び配列番号15の軽鎖可変領域のLCDRsを含み、又は
それは、配列番号53の重鎖可変領域のHCDRs及び配列番号15の軽鎖可変領域のLCDRsを含む。
【0224】
幾つかの実施形態において、上記CDRs配列は、この分野で公知の番号付け方法により得られ、上記番号付け規則は、Kabat、Chothia、IMGT、AbMとContactを含むが、これらに限定されない。
【0225】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、
配列が配列番号22で示され、又は配列番号22に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR1と、
配列が配列番号23で示され、又は配列番号23に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR2と、
配列が配列番号24で示され、又は配列番号24に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR3と、
配列が配列番号25で示され、又は配列番号25に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR1と、
配列が配列番号26で示され、又は与配列番号26に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR2と、
配列が配列番号27で示され、又は与配列番号27に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR3と、
を含む。
【0226】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、
配列が配列番号22で示され、又は配列番号22に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR1と、
配列が配列番号23で示され、又は配列番号23に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR2と、
配列が配列番号30で示され、又は配列番号30に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR3と、
配列が配列番号25で示され、又は配列番号25に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR1と、
配列が配列番号26で示され、又は与配列番号26に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR2と、
配列が配列番号27で示され、又は与配列番号27に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR3と、
を含む。
【0227】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、
配列が配列番号22で示され、又は配列番号22に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR1と、
配列が配列番号23で示され、又は配列番号23に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR2と、
配列が配列番号31で示され、又は配列番号31に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR3と、
配列が配列番号25で示され、又は配列番号25に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR1と、
配列が配列番号26で示され、又は与配列番号26に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR2と、
配列が配列番号27で示され、又は与配列番号27に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR3と、
を含む。
【0228】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは、
配列が配列番号16で示され、又は配列番号16に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR1と、
配列が配列番号17で示され、又は配列番号17に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR2と、
配列が配列番号18で示され、又は配列番号18に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むHCDR3と、
配列が配列番号19で示され、又は配列番号19に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR1と、
配列が配列番号20で示され、又は配列番号20に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR2と、
配列が配列番号21で示され、又は配列番号21に比べて3、2若しくは1個のアミノ酸変異を含むLCDR3と、
を含む。
【0229】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号22、配列番号23と配列番号24で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号25、配列番号26と配列番号27で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0230】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号22、配列番号23と配列番号30で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号25、配列番号26と配列番号27で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0231】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号22、配列番号23と配列番号31で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号25、配列番号26と配列番号27で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0232】
一態様において、本開示は抗DLL3の抗体を提供し、それは重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号16、配列番号17と配列番号18で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、及び
上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号19、配列番号20と配列番号21で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む。
【0233】
別の態様において、抗DLL3抗体の重鎖可変領域は、配列番号14、50、51、52、53若しくは54から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列を含む。ある実施形態において、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失があるが、当該配列を含む抗DLL3抗体は、DLL3に結合する能力を保持する。ある実施形態において、置換、挿入又は欠失は、CDR以外の領域内(即ち、FR内)に行われる。
【0234】
別の態様において、抗DLL3抗体の軽鎖可変領域は、配列番号15、55若しくは56から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列を含む。ある実施形態において、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失があるが、当該配列を含む抗DLL3抗体は、DLL3に結合する能力を保持する。ある実施形態において、置換、挿入又は欠失は、CDR以外の領域内(即ち、FR内)に行われる。
【0235】
別の態様において、抗DLL3抗体の重鎖可変領域は、配列番号12、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43若しくは44から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列を含む。ある実施形態において、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失があるが、当該配列を含む抗DLL3抗体は、DLL3に結合する能力を保持する。ある実施形態において、置換、挿入又は欠失は、CDR以外の領域内(即ち、FR内)に行われる。
【0236】
別の態様において、抗DLL3抗体の軽鎖可変領域は、配列番号13、45、46、47、48若しくは49から選ばれる何れか1つのアミノ酸配列に対してそれぞれ少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する配列を含む。ある実施形態において、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失があるが、当該配列を含む抗DLL3抗体は、DLL3に結合する能力を保持する。ある実施形態において、置換、挿入又は欠失は、CDR以外の領域内(即ち、FR内)に行われる。
【0237】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号50、14、51、52、53若しくは54の何れか1つで示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号55、15若しくは56の何れか1つで示される軽鎖可変領域を含む。
【0238】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号43、12、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42若しくは44の何れか1つで示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号48、13、45、46、47若しくは49の何れか1つで示される軽鎖可変領域を含む。
【0239】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号14で示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号15の何れか1つで示される軽鎖可変領域を含む。
【0240】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号50、51、52、53と54から選ばれる何れか1つで示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号55若しくは56の何れか1つで示される軽鎖可変領域を含む。
【0241】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号12で示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号13で示される軽鎖可変領域を含む。
【0242】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号43、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42と44から選ばれる何れか1つで示される重鎖可変領域、及び/又は配列番号48、45、46、47と49から選ばれる何れか1つで示される軽鎖可変領域を含む。
【0243】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は配列番号50で示される重鎖可変領域、及び配列番号55で示される軽鎖可変領域を含む。
【0244】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体は、配列番号43で示される重鎖可変領域、及び配列番号48で示される軽鎖可変領域を含む。
【0245】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む。
【0246】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、その重鎖定常領域の配列は配列番号28で示される。
【0247】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、その軽鎖定常領域の配列は配列番号29で示される。
【0248】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、
上記重鎖は配列番号60に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖は配列番号61に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
上記重鎖は配列番号58に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/又は上記軽鎖は配列番号59に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0249】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、配列番号60で示される重鎖、及び配列番号61で示される軽鎖を含む。
【0250】
幾つかの実施形態において、上記抗DLL3抗体であって、それは、配列番号58で示される重鎖、及び配列番号59で示される軽鎖を含む。
【0251】
B. 抗体の構造
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体は、全長抗体である。
【0252】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。
【0253】
一実施形態において、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH又はF(ab’)断片、特にFab断片である。「Fab」は、VL、VH、CLとCH1ドメインからなる1価断片である。「Fab断片」は、抗体がパパインプロテアーゼにより溶解されることで産生されてもよい。「Fab’」は、VL、CL及びVHとCH1を含み、CH1とCH2ドメイン間の領域をさらに含むことで、2つのFab’断片の両重鎖間に鎖間ジスルフィド結合を形成して、F(ab’)2分子を形成することが可能になる。「Fab’-SH」は、その中の定常領域のシステイン残基が遊離メルカプト基を有するFab’断片である。「F(ab’)」は、ヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含む2価断片である。
【0254】
別の実施形態において、抗体断片は、二重抗体、三重抗体又は四重抗体である。二重抗体は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片であり、当該断片は、同一のポリペプチド鎖(VH-VL)に、連結されたVHとVLを含む。短すぎるリンカーを使用することにより、同一の鎖上の2つのドメイン同士のペアリングを妨げ、これらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインとペアリングすることを余儀なくされることで、2つの抗原結合部位が産生され、2つの抗原は同一でも異なってもよい。
【0255】
別の実施形態において、抗体断片は、単鎖Fab断片である。「単鎖Fab断片」又は「scFab」は、VH、CH1、VL、CLとリンカーからなるポリペプチドであり、そのうち、上記各ドメイン及び上記リンカーは、N末端からC末端への方向に、a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLという順序の1つを有する。一実施形態において、上記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸を有するポリペプチドである。別の実施形態において、上記リンカーは、32~50個のアミノ酸を有するポリペプチドである。上記単鎖Fab断片は、CLとCH1との天然ジスルフィド結合によって安定化される。また、システイン残基(例えば、重鎖可変領域における44位及び軽鎖可変領域における100位、Kabatによる番号)を挿入することで鎖間ジスルフィド結合が産生され、これらの単鎖Fab分子は、さらに安定化されることができる。
【0256】
別の実施形態において、抗体断片は、単鎖可変断片(scFv)である。「scFv」は、軽鎖可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片とを含む融合タンパク質であり、そのうち、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、短いフレキシブルペプチドリンカーによって連続的に連結され、単鎖ポリペプチドとして発現可能であり、かつここで、scFvは、それが由来する完全抗体の特異性を保持する。特に明記のない限り、本明細書において、scFvは、何れか1つの順序でVL及びVH可変領域を有してもよく、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に対して、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよく、又はVH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0257】
別の実施形態において、抗体断片は、VH及びCH1ドメインからなるFd断片である。
【0258】
別の実施形態において、抗体断片は、抗体の単一アームのVH及びVLドメインからなるFv断片である。
【0259】
別の実施形態において、抗体断片はdsFvであり、dsFvは、その中の各VHとVLにおける1つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されたポリペプチドをシステイン残基間のジスルフィド結合で連結することで得られる。システイン残基で置換されるアミノ酸残基は、既知の方法(Protein Engineering.7:697(1994))により、抗体の3次元構造予測に基づいて選択することができる。
【0260】
別の実施形態において、抗体断片は単一ドメイン抗体であり、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全体若しくは一部を含む抗体断片である。
【0261】
別の実施形態において、抗体断片は、ドメイン抗体(domain antibody、dAb)であり、例えば、米国特許No.6,248,516が参照される。ドメイン抗体(dAb)は、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖の可変領域に対応する、抗体の機能的結合ドメインである。dABは、約13 kDaの分子量を有するか、又は完全抗体の大きさの10分の1未満である。dABは、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系を含む様々な宿主において良好に発現される。さらに、dAbは、例えば、凍結乾燥や熱変性のような過酷な条件下でも、非常に安定で活性が高い。例えば、米国特許6,291,158、6,582,915、6,593,081、6,172,197、米国シリーズNo.2004/0110941、欧州特許0368684、米国特許6,696,245、WO04/058821、WO04/003019及びWO03/002609が参照される。
【0262】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類から誘導される可変領域)及びヒト定常領域を含む。別の例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変更された「クラススイッチ」抗体である。
【0263】
ある実施形態において、抗体はヒト化抗体である。通常、非ヒト抗体は、ヒト化によりヒトに対する免疫原性が低減されると共に、親非ヒト抗体の特異性と親和性を保持する。一般的に、ヒト化抗体は、CDR又はその一部が非ヒト抗体から誘導され、FR又はその一部がヒト抗体から誘導される1つ又は複数の可変領域を含む。任意選択的に、ヒト化抗体は、ヒト定常領域の一部を含んでもよい。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体における幾つかのFR残基は、非ヒト抗体(例えば、CDR配列を提供する抗体)からの対応する残基で置換されてもよい。
【0264】
ヒト化抗体及びその生成方法については、Almagro and Fransson,Front. Biosci. 13:1619-1633(2008)などに概説され、さらにRiechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、Queen et al.,Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033(1989)、米国特許No.5,821,337,7,527,791,6,982,321と7,087,409、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異的決定領域(SDR)のグラフトについて記載)、Padlan,Mol. Immunol. 28:489-498(1991)(「リサーフェシング」(resurfuacing)について記載)、Dall’ Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」について記載)、及びOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)とKlimka et al.,Br. J. Cancer 83:252-260(2000)(FRシャッフリングの「誘導選択」方法について記載)などに記載されている。
【0265】
ヒト化に使用可能なヒトフレームワーク領域は、「最良適合(best-fit)」方法により選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.,J.Immunol. 151:2296(1993)参照)、軽鎖可変領域又は重鎖可変領域の特定サブクラスから誘導されたヒト抗体の共通配列のフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,89:4285(1992)とPresta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)参照)、ヒト成熟(体細胞変異の)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front.Biosci. 13:1619-1633(2008)参照)、及びFRライブラリーのスクリーニングにより得られたフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J. Biol. Chem. 272:10678-10684(1997)とRosok et al.,J. Biol. Chem. 271:22611-22618(1996)参照)を含むが、これらに限定されない。
【0266】
C. 抗体の修飾
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体のアミノ酸配列変異体をカーバーする。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれる。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列における残基の削除、及び/又は挿入、及び/又は置換を含む。最終的な構築体が抗原結合特性などの所望の特性を有すれば、最終的な構築体は、削除、挿入及び置換の任意の組み合わせを行うことで得ることができる。
【0267】
a)変異体の置換、挿入及び削除
ある実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗原変異体を提供する。置換変異誘発の関心部位は、CDR及びFRを含む。保存的置換は表2において、「好ましい置換」という見出しの下に示されている。より実質的な変化は表2において、「例示的な置換」という見出しの下に提供され、かつ以下アミノ酸側鎖分類を参照してさらに記載される通りである。アミノ酸置換を関心抗体に導入し、生成物について例えば、保持/改善された抗原結合、低下した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCなどの所望の活性をスクリーニングすることができる。
【0268】
【表2】
アミノ酸は、一般的な側鎖の特性によって、以下のように群分けすることができる:
(1)疎水性のもの:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性、親水性のもの:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性のもの:Asp、Glu、
(4)塩基性のもの:His、Lys、Arg、
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro、
(6)芳香族のもの:Trp、Tyr、Phe。
【0269】
非保存的置換には、これらの分類の1つにおけるメンバーで別の分類におけるメンバーを置換する必要がある。
【0270】
ある実施形態において、このような変化が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、置換、挿入又は欠失は、1つ又は複数のCDRにおいて行われてもよい。例えば、CDRに対して、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、保存的置換で、本明細書に提供されるように)を行うことができる。このような変化は、例えば、CDRにおける抗原接触残基の外部にあってもよい。上記に提供される変異体VHとVL配列のある実施形態において、各CDRは変化されていないか、又は1つ、2つ若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含む。
【0271】
抗体における変異誘発の標的部位となり得る残基又は領域を同定するために使用できる方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085により記載されるように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、1つの残基又は残基群(例えば、Arg、Asp、His、LysとGluのような荷電残基)を同定し、かつ中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、Ala又はポリアラニン)で置換することで、当該抗体と抗原との相互作用が影響を受けたか否かを確認する。初期置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置に、さらなる置換を導入することができる。また、抗原-抗体複合物の結晶構造を調べることにより、抗体と抗原との接触点を同定することができる。これらの接触残基及び隣接残基は、置換候補として標的化又は除去されてもよい。所望の特性が含まれるか否かを確認するために変異体をスクリーニングしてもよい。
【0272】
アミノ酸配列の挿入は、長さの範囲が1個の残基から100個以上の残基であるポリペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシル末端での融合、及び1つ又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN又はC末端と、酵素又は抗体の血清半減期を延長するポリペプチドとの融合体を含む。
【0273】
b)Fc領域の修飾
ある実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸修飾を本明細書に提供される抗体のFc領域に導入することができる。
【0274】
幾つかの実施形態において、上記1つ又は複数のアミノ酸修飾は、FcのFc受容体への結合、例えば、そのFcγ受容体への結合を減少させ、かつエフェクター機能を低減又は除去することができる。幾つかの実施形態において、改変したFc領域は天然Fc領域に比べて、Fc受容体への結合親和性が50%、80%、90%又は95%以上低減される。幾つかの実施形態において、上記Fc受容体はヒトFcγ受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIB、FcγRIIIaである。幾つかの実施形態において、改変されたFc領域は、天然Fc領域に比べて、C1qなどの補体への結合親和性も低減される。幾つかの実施形態において、改変されたFc領域は、天然のFc領域に比べて、新生児Fc受容体(FcRn)への結合親和性が強くなり、例えば、Fc領域にM252Y/S254T/T256E変異が導入される。幾つかの実施形態において、改変されたFc領域は、低減されたエフェクター機能を有し、上記低減されたエフェクター機能は、低減された補体依存性細胞毒性(CDC)、低減された抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、低減された抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、減少されたサイトカインの分泌、減少された免疫複合物媒介性の抗原提示細胞の抗原摂取、減少されたNK細胞への結合、減少されたマクロファージへの結合、減少された単球への結合、減少された多形核細胞への結合、減少された直接シグナル伝達誘導性の細胞アポトーシス、及び低減された樹状細胞の成熟又は減少されたT細胞による誘発のうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。IgG Fc領域については、238、265、269、270、297、327及び329などの位置でのアミノ酸残基置換により、エフェクター機能を低減することができる。幾つかの実施形態において、上記Fc領域はヒトIgG Fc領域であり、かつ、234と235位置でのアミノ酸残基はAであり、番号がEUインデックスに従って付けられる。IgG Fc領域については、228などの位置でのアミノ酸残基置換により、エフェクター機能を低減することができる。
【0275】
ある実施形態において、抗体は、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333及び/又は334位(EU番号付けシステムを用いる)での置換を含む。
【0276】
ある実施形態において、本明細書における抗体のFcドメインは、「ノブ・イン・ホール」変異を含む。「ノブ・イン・ホール」は、抗体重鎖ホモ二量体を工学的に改変してヘテロ二量化するため(例えば、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はシングルアーム抗体を効果的に生成するため)の設計戦略である。一般的に、このような技術は、突起が空洞に収容できるように、第1のポリペプチド(例えば、第1の抗体重鎖中の第1のCH3ドメイン)の界面に突起(「ノブ」)を導入し、かつ第2のポリペプチド(例えば、第2の抗体重鎖中の第2のCH3ドメイン)の界面の対応する箇所に空洞(「ホール」)を導入することにより、ヘテロ二量体の形成を促進するとと共に、ホモ二量体の形成を阻害することに関わっている。第1のポリペプチド(例えば、第1の抗体の重鎖中の第1のCH3ドメイン)の界面からの比較的小さいアミノ酸側鎖を比較的大きい側鎖(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン又はトリプトファン)で置換することにより、突起を構築する。比較的大きいアミノ酸側鎖を比較的小さい側鎖(例えば、アラニン、セリン、バリン又はトレオニン)で置換することにより、第2のポリペプチド(例えば、第2の抗体重鎖中の第2のCH3ドメイン)の界面に、突起と同様又は類似のサイズを有する補完的空洞を作成する。突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変更すること(例えば、部位特異的変異誘発)により、又はペプチド合成により生成されてもよい。幾つかの実施形態において、ノブ修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方におけるアミノ酸置換T366Wを含むが、ホール修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの他方におけるアミノ酸置換T366S、L368AとY407Vを含む。幾つかの実施形態において、Fcドメインのノブ修飾を含むサブユニットはさらにアミノ酸置換S354Cを含み、かつFcドメインのホール修飾を含むサブユニットはさらにアミノ酸置換Y349Cを含む。この2つのシステイン残基を導入することにより、Fc領域の2つのサブユニット間のジスルフィド架橋を形成し、それでさらに二量体を安定化する(Carter, J. Immunol. Methods 248:7-15(2001))。ノブ・イン・ホール変異の例示的な組み合わせは、表3に記載されるものを含むが、これらに限定されない。
【0277】
【表3】
【0278】
ノブ・イン・ホール技術についての詳細は、例えば、米国特許No.5,731,168、米国特許No.7,695,936、WO 2009/089004、US 2009/0182127、Marvin and Zhu,Acta Pharmacologica Sincia(2005)26(6):649-658、Kontermann,Acta Pharmacologica Sincia(2005)26:1-9、Ridgway et al.,Prot Eng 9:617-621(1996)、及びCarter,J Immunol Meth 248:7-15(2001)に記載されている。
【0279】
Fc領域のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよく、切断されたC末端であってもよく、例えば、上記切断されたC末端に1つ又は2つのC末端アミノ酸残基が既に除去された。一好ましい態様において、重鎖のC末端は、PGで終わる切断されたC末端である。従って、幾つかの実施形態において、完全抗体の組成物は、あらゆるK447残基及び/又はG446+K447残基を除去した抗体群を含んでもよい。幾つかの実施形態において、完全抗体の組成物は、K447残基及び/又はG446+K447残基を除去していない抗体群を含んでもよい。幾つかの実施形態において、完全抗体の組成物は、K447残基及び/又はG446+K447残基を持つ、及び持たない抗体混合物を含む。
【0280】
D. 組換え法
抗DLL3抗体は、組換え法により産生することができる。これらの方法に対して、抗体をコードする1つ以上の単離した核酸を提供する。
【0281】
一実施形態において、本開示は、上記のような抗体をコードする単離した核酸を提供する。このような核酸は、それぞれ独立的に上記何れか1つのポリペプチド鎖をコードすることができる。別の態様において、本開示は、このような核酸を含む1種又は複数種のベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。別の態様において、本開示は、このような核酸を含む宿主細胞を提供する。一実施形態において、抗DLL3抗体を調製する方法を提供し、そのうち、上記方法は、上記に提供されるように、発現に適する条件で、上記抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培地)から上記抗体を回収することとを含む。
【0282】
組換えて抗体を産生するために、抗体をコードする核酸を単離して1つ以上のベクターに挿入し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現に用いる。このような核酸は、通常の手順で容易に単離とシーケンスすることができ、或いは組換え法により産生され、又は化学合成により得られる。
【0283】
抗体をコードするベクターをクローニング又は発現するための適切な宿主細胞は、本明細書に記載される原核又は真核細胞を含む。例えば、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が不要な場合に、細菌において産生することができる。発現した後、可溶性画分において細菌細胞のペースト状物から単離することができ、かつさらに精製することができる。
【0284】
E. 測定
本明細書に提供されるポリペプチド又は融合タンパク質は、この分野で既知の種々の測定法により、その物理的/化学的特徴及び/又は生物学的活性を同定・スクリーニングし、又は特徴づけることができる。一態様において、例えば、ELISA、ウエスタンブロット法などの既知の方法により、本開示に係るポリペプチド又は複合体の活性を測定する。
【0285】
F. 治療方法及び投与経路
本明細書に提供される上記何れかの抗DLL3抗体、それを含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩は、疾患の治療に使用可能である。
【0286】
一態様において、本開示は、抗DLL3抗体、それを含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の、薬剤の調製における使用を提供する。幾つかの実施形態において、本開示は、抗DLL3抗体、それを含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の、腫瘍又はがんを治療するための薬剤の調製における使用を提供する。幾つかの実施形態において、上記腫瘍又はがんは、肺がん(例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、大細胞肺がん)、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん)、悪性胸膜中皮腫、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、肝がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸直腸がん(例えば、結腸がんと直腸がん)、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、副腎がん、膠芽細胞腫、皮膚がんと黒色腫から選ばれ、好ましくは、上記腫瘍又はがんは小細胞肺がんである。
【0287】
幾つかの実施形態において、本開示は、抗DLL3抗体、それを含む抗体-薬物複合体又はその薬学的に許容される塩の、DLL3関連疾患を治療するための薬剤の調製における使用を提供する。
【0288】
このような実施形態の1つにおいて、上記使用は、対象に治療有効量の少なくとも1種の別の治療剤(例えば、1種、2種、3種、4種、5種又は6種の別の治療剤)を投与することをさらに含む。
【0289】
さらなる態様において、上記抗DLL3抗体又はその薬物複合体を含む医薬組成物を提供し、例えば、それは、上記任意の製薬的使用又は治療方法に使用される。一実施形態において、医薬組成物は、本明細書に提供される任意のポリペプチド又は薬物複合体と、薬学的に許容されるベクターとを含む。別の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の別の治療剤をさらに含む。
【0290】
本開示に係る抗DLL3抗体又はその薬物複合体は、単独で、又は他の試薬と組み合わせて、治療のために使用されてもよい。例えば、本開示に係る抗体は、少なくとも1種の別の治療剤と共に投与することができる。
【0291】
本開示に係る抗DLL3抗体又はその薬物複合体は、非経口投与、肺内投与及び鼻内投与を含む任意の適切な手段により投与することができ、かつ局所治療が必要な場合、病巣内に投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内又は皮下投与を含む。投薬は、任意の適切な経路により、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができ、これは部分的に、投与が短期間か長期間かによって決められる。本明細書では、様々な投薬スケジュールが考慮されており、単回投与又は複数の時点での複数回投与、ボーラス投与及びパルス注入を含むが、これらに限定されない。
【0292】
本開示の抗DLL3抗体又はその薬物複合体は、良好な医療行為に適合するように調製、投薬及び投与される。この背景で考えられる要因は、治療される具体的な病状、治療される具体的な哺乳動物、個体患者の臨床状況、病状の起因、試薬の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医療従事者に既知の他の要因を含む。抗DLL3抗体又はその薬物複合体は、1つ以上の他の試薬と共に調製されてもよい。このような他の試薬の有効量は、医薬組成物に存在する量、病状又は治療の種類及び他の要因によって決められる。それらは、一般的に、本明細書の記載と同じ用量及び投与経路で使用され、又は本明細書に記載される用量の約1%~99%で使用され、又は別の用量で使用され、かつ経験的/臨床的に適切と決定された任意の経路で使用される。
【0293】
疾患を予防又は治療するために、本開示に係る抗DLL3抗体又はその薬物複合体(単独で使用されるか又は1種以上の別の治療剤と併用される場合)の好適な用量は、治療すべき疾患の種類、治療分子の種類、疾患の重症度及び疾患の経過、投与が予防のためか治療のためか、過去の治療、患者の臨床病歴及び治療分子に対する応答及び主治医の判断によって決められる。治療分子は、適当に1回又は一連の治療で患者に投与される。
【0294】
G. 製品
本開示の別の態様において、上記病状の治療、予防及び/又は診断に使用可能な材料を含む製品(例えば、キット)を提供する。当該製品は、容器と、容器上若しくは容器と組み合わせたラベル又は添付文書(package insert)とを含む。好適な容器は、例えば、瓶、バイアル、注射器、IV溶液バッグなどを含む。容器は、例えば、ガラスやプラスチックのような種々の材料から形成されてもよい。
【0295】
容器は、本開示の抗DLL3抗体又はその薬物複合体を単独で収容するか、或いは別の組成物と組み合わせる。容器は、滅菌したアクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1種の活性試薬は、本開示の抗DLL3抗体又はその薬物複合体である。ラベル又は添付文書は、当該組成物が選択された病状を治療するために使用されることを示す。
【0296】
さらに、製品は、(a)抗DLL3抗体又はその薬物複合体が収容された第1の容器と、(b)別の細胞毒性剤又は他の治療剤を含む組成物が収容された第2の容器とを含んでもよい。
【0297】
選択的に、又はさらに、製品は、薬学的に許容される緩衝液を含む第2(又は第3)の容器をさらに含んでもよい。ビジネス及びユーザーの観点から、それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、注射針及び注射器を含む必要な他の材料をさらに含んでもよい。
【0298】
実施例
以下、実施例と合わせて本開示をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0299】
本開示の実施例又は試験例における具体的な条件が明示されていない実験方法は、通常、一般的な条件、又は原料や商品メーカに勧められた条件に従う。Sambrookら,分子クローニング,実験室マニュアル,コールド・スプリング・ハーバー研究所、及び現代分子生物学方法,Ausubelら著,Greene出版協会,Wiley Interscience,NYが参照される。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0300】
一、抗体の調製
実施例1:DLL3抗原及び検出用タンパク質と安定形質転換細胞株の調製
異なる種のDLL3遺伝子及びヒトDLL1、DLL4遺伝子をチャイニーズハムスターの卵巣細胞CHO-s細胞(Invitrogen、R80007)にトランスフェクションし、異なる種のDLL3タンパク質を発現するCHO-s細胞株を構築し、後続きの抗体のスクリーニングと同定に使用した。関連するタンパク質のアミノ酸配列は、以下の通りである:
ヒトDLL3全長タンパク質(Uniprot、Q9NYJ7):
MVSPRMSGLLSQTVILALIFLPQTRPAGVFELQIHSFGPGPGPGAPRSPCSARLPCRLFFRVCLKPGLSEEAAESPCALGAALSARGPVYTEQPGAPAPDLPLPDGLLQVPFRDAWPGTFSFIIETWREELGDQIGGPAWSLLARVAGRRRLAAGGPWARDIQRAGAWELRFSYRARCEPPAVGTACTRLCRPRSAPSRCGPGLRPCAPLEDECEAPLVCRAGCSPEHGFCEQPGECRCLEGWTGPLCTVPVSTSSCLSPRGPSSATTGCLVPGPGPCDGNPCANGGSCSETPRSFECTCPRGFYGLRCEVSGVTCADGPCFNGGLCVGGADPDSAYICHCPPGFQGSNCEKRVDRCSLQPCRNGGLCLDLGHALRCRCRAGFAGPRCEHDLDDCAGRACANGGTCVEGGGAHRCSCALGFGGRDCRERADPCAARPCAHGGRCYAHFSGLVCACAPGYMGARCEFPVHPDGASALPAAPPGLRPGDPQRYLLPPALGLLVAAGVAGAALLLVHVRRRGHSQDAGSRLLAGTPEPSVHALPDALNNLRTQEGSGDGPSSSVDWNRPEDVDPQGIYVISAPSIYAREVATPLFPPLHTGRAGQRQHLLFPYPSSILSVK
配列番号1
カニクイザルDLL3全長タンパク質(Uniprot、A0A2K5WSR4):
MVSPRMSRLLSQTVILALIFIPQARPAGVFELQIHSFGPGPGPGAPRSPCSARGPCRLFFRVCLKPGLSEEAAESPCALGAALSARGPVYTEQPEAPAPDLPLPNGLLQVPFRDAWPGTFSLIIETWREELGDQIGGPAWSLLARVTRRRRLAAGGPWARDIQRAGAWELRFSYRARCELPAVGTACTRLCRPRSAPSRCGPGLRPCAPLEDECEAPPVCRAGCSLEHGFCEQPGECRCLEGWTGPLCMVPVSTSSCLGLRGPSSTTTGCLVPGPGPCDGNPCANGGSCSETPGSFECTCPRGFYGLRCEVSGVTCADGPCFNGGLCVGGADPDSAYICHCPPGFQGSNCEKRVDRCSLQPCRNGGLCLDLGHALRCRCRAGFAGPRCEHDLDDCAGRACANGGTCVEGGGAHRCSCALGFGGRNCRERADPCAARPCAHGGRCYAHFSGLVCACAPGYMGARCEFPVHPDGVSALPAAPPGLRPGDPQRYLLPPALGLLVAAGVAGAALLLVHVRRRGHAQDAGSRLLAGTPEPSVHALPDALNNLRTQEGPGDVPSSSVDWNRPEDVDSRGIYVISAPSIYAREVAMPLFPPLHTGRAGQRQNLLFPFPSSILSVK
配列番号2
ラットDLL3全長タンパク質(Uniprot、O88671):
MVSLQVSSLPQTLILAFLLPQALPAGVFELQIHSFGPGPGPGTPRSPCNARGPCRLFFRVCLKPGVSQEAAESLCALGAALSTSGPVYTEQPGVPAAALSLPDGLVRVPFLDAWPGTFSLIIETWREQLGERAAGPAWNLLARVAGRRRLAAGAPWARDVQRTGAWELHFSYRARCEPPAVGAACARLCRSRSAPSRCGPGLRPCTPFPDECEAPRESLTVCRAGCSPEHGYCEEPDECHCLEGWTGPLCTVPVSTSSCLNSRVSGPAGTGCLLPGPGPCDGNPCANGGSCSETPGSFECACPRGFYGPRCEVSGVTCADGPCFNGGLCVGGEDPDSAYVCHCPPAFQGSNCERRVDRCSLQPCQNGGLCLDLGHALRCRCRAGFAGPRCEHDLDDCAGRACANGGTCVEGGGARRCSCALGFGGRDCRERADPCASRPCAHGGRCYAHFSGLVCACAPGYMGVRCEFAVRPDGADAVPAAPRGLRQADSQRFLLPPALGLLAAAALAGAALLLIHVRRRGPGRDTGTRLLSGTREPSVHTLPDALNNLRLQDGAGDGPTSSADWNHPEDGDSRSIYVIPAPSIYAREA
配列番号3
マウスDLL3全長タンパク質(Uniprot、O88516):
MVSLQVSPLSQTLILAFLLPQALPAGVFELQIHSFGPGPGLGTPRSPCNARGPCRLFFRVCLKPGVSQEATESLCALGAALSTSVPVYTEHPGESAAALPLPDGLVRVPFRDAWPGTFSLVIETWREQLGEHAGGPAWNLLARVVGRRRLAAGGPWARDVQRTGTWELHFSYRARCEPPAVGAACARLCRSRSAPSRCGPGLRPCTPFPDECEAPSVCRPGCSPEHGYCEEPDECRCLEGWTGPLCTVPVSTSSCLNSRVPGPASTGCLLPGPGPCDGNPCANGGSCSETSGSFECACPRGFYGLRCEVSGVTCADGPCFNGGLCVGGEDPDSAYVCHCPPGFQGSNCEKRVDRCSLQPCQNGGLCLDLGHALRCRCRAGFAGPRCEHDLDDCAGRACANGGTCVEGGGSRRCSCALGFGGRDCRERADPCASRPCAHGGRCYAHFSGLVCACAPGYMGVRCEFAVRPDGADAVPAAPRGLRQADPQRFLLPPALGLLVAAGLAGAALLVIHVRRRGPGQDTGTRLLSGTREPSVHTLPDALNNLRLQDGAGDGPSSSADWNHPEDGDSRSIYVIPAPSIYAREDWLIQVLF
配列番号4
ヒトDLL1全長タンパク質(Uniprot、O00548):
MGSRCALALAVLSALLCQVWSSGVFELKLQEFVNKKGLLGNRNCCRGGAGPPPCACRTFFRVCLKHYQASVSPEPPCTYGSAVTPVLGVDSFSLPDGGGADSAFSNPIRFPFGFTWPGTFSLIIEALHTDSPDDLATENPERLISRLATQRHLTVGEEWSQDLHSSGRTDLKYSYRFVCDEHYYGEGCSVFCRPRDDAFGHFTCGERGEKVCNPGWKGPYCTEPICLPGCDEQHGFCDKPGECKCRVGWQGRYCDECIRYPGCLHGTCQQPWQCNCQEGWGGLFCNQDLNYCTHHKPCKNGATCTNTGQGSYTCSCRPGYTGATCELGIDECDPSPCKNGGSCTDLENSYSCTCPPGFYGKICELSAMTCADGPCFNGGRCSDSPDGGYSCRCPVGYSGFNCEKKIDYCSSSPCSNGAKCVDLGDAYLCRCQAGFSGRHCDDNVDDCASSPCANGGTCRDGVNDFSCTCPPGYTGRNCSAPVSRCEHAPCHNGATCHERGHRYVCECARGYGGPNCQFLLPELPPGPAVVDLTEKLEGQGGPFPWVAVCAGVILVLMLLLGCAAVVVCVRLRLQKHRPPADPCRGETETMNNLANCQREKDISVSIIGATQIKNTNKKADFHGDHSADKNGFKARYPAVDYNLVQDLKGDDTAVRDAHSKRDTKCQPQGSSGEEKGTPTTLRGGEASERKRPDSGCSTSKDTKYQSVYVISEEKDECVIATEV
配列番号5
ヒトDLL4全長タンパク質(Uniprot、Q9NR61):
MAAASRSASGWALLLLVALWQQRAAGSGVFQLQLQEFINERGVLASGRPCEPGCRTFFRVCLKHFQAVVSPGPCTFGTVSTPVLGTNSFAVRDDSSGGGRNPLQLPFNFTWPGTFSLIIEAWHAPGDDLRPEALPPDALISKIAIQGSLAVGQNWLLDEQTSTLTRLRYSYRVICSDNYYGDNCSRLCKKRNDHFGHYVCQPDGNLSCLPGWTGEYCQQPICLSGCHEQNGYCSKPAECLCRPGWQGRLCNECIPHNGCRHGTCSTPWQCTCDEGWGGLFCDQDLNYCTHHSPCKNGATCSNSGQRSYTCTCRPGYTGVDCELELSECDSNPCRNGGSCKDQEDGYHCLCPPGYYGLHCEHSTLSCADSPCFNGGSCRERNQGANYACECPPNFTGSNCEKKVDRCTSNPCANGGQCLNRGPSRMCRCRPGFTGTYCELHVSDCARNPCAHGGTCHDLENGLMCTCPAGFSGRRCEVRTSIDACASSPCFNRATCYTDLSTDTFVCNCPYGFVGSRCEFPVGLPPSFPWVAVSLGVGLAVLLVLLGMVAVAVRQLRLRRPDDGSREAMNNLSDFQKDNLIPAAQLKNTNQKKELEVDCGLDKSNCGKQQNHTLDYNLAPGPLGRGTMPGKFPHSDKSLGEKAPLRLHSEKPECRISAICSPRDSMYQSVCLISEERNECVIATEV
配列番号6。
【0301】
1.1 DLL3、DLL1及びDLL4を高発現する細胞株の構築
配列番号1~6を含むpCDHレンチウイルス発現ベクタープラスミド(GENEWIZ社で合成)、pCDHプラスミドをそれぞれpVSVG、pCMVレンチウイルスパッケージングベクターと共に、Lipofectamine 3000(Invitrogen、L3000015)トランスフェクション試薬により293T細胞(中国科学院細胞バンク、GNHu17)にトランスフェクションし、ウイルスを含む培地上清を収集し、ろ過して超高速で遠心分離し、上清を捨てた後、0.2 mLの滅菌PBSにより再懸濁した。濃縮されたウイルスでそれぞれチャイニーズハムスター卵巣細胞CHO-s(Invitrogen、R80007)、DMS53(ATCC、CRL-2062)とH82(ATCC、HTB-175)を感染させ、ピューロマイシンにより2~3週間スクリーニングし、FACSシングルセルソーティングを行った。選び出されたモノクローナル細胞株を拡大培養し、凍結保存した。
【0302】
1.2 抗原の調製
ヒトDLL3(Uniprot、Q9NYJ7)、カニクイザルDLL3(Uniprot、A0A2K5WSR4)及びマウスDLL3(Uniprot、O88516)配列をテンプレートとして、異なるタグを含むDLL3 ECD融合タンパク質を設計し、それぞれpTT5ベクターにクローニングし、293E細胞で発現した後、抗原を得た。関連するタンパク質のアミノ酸配列は、以下の通りである:
1)His-hDLL3(ECD):
【化29】
配列番号7
注記:点線部はシグナルペプチド配列であり、一重下線部はhisタグ及びリンカーであり、二重下線部はDLL3細胞外領域である。
【0303】
2)Fc-hDLL3(ECD):
【化30】
配列番号8
注記:点線部はシグナルペプチド配列であり、一重下線部はFcタグ及びリンカーであり、二重下線部はDLL3細胞外領域である。
【0304】
3)hDLL3(ECD)-strep twin:
【化31】
配列番号9
注記:点線部はシグナルペプチド配列であり、二重下線部はDLL3細胞外領域であり、一重下線部はstrep twinタグである。
【0305】
4)cynoDLL3(ECD)-strep twin:
【化32】
配列番号10
注記:点線部はシグナルペプチド配列であり、二重下線部はDLL3細胞外領域であり、一重下線部はstrep twinタグである。
【0306】
5)mouDLL3(ECD)-strep twin:
【化33】
配列番号11
注記:点線部はシグナルペプチド配列であり、二重下線部はDLL3細胞外領域であり、一重下線部はstrep twinタグである。
【0307】
実施例2:マウス抗ヒトDLL3モノクローナル抗体の調製
1. 免疫
抗ヒトDLL3モノクローナル抗体は、免疫マウスにより産生された。実験には、雌で6~8週齢のSJLマウス、(上海SLAC実験動物有限公司、動物生産ライセンス番号:SCXK(滬)2017-0005)が使用された。飼育環境:SPFグレード。マウスを購入した後、実験室環境で1週間飼育し、12/12時間で明/暗周期を調節し、温度が20~25℃、湿度が40~60%である。環境に馴れたマウスを、以下の計画で免疫した。
【0308】
免疫計画:
1群目のマウスの免疫抗原は、His-hDLL3(ECD)(配列番号7)である。アジュバントTiterMax(登録商標) Gold Adjuvant(Sigma Cat No. T2684)及びThermo Imject(登録商標) Alum(Thermo Cat No. 77161)で交差免疫した。アジュバントTiterMax(登録商標) Gold Adjuvantに対する抗原の比率は1:1であり、アジュバントThermo Imject(登録商標) Alumに対する抗原の比率は3:1であり、50 μg/匹/回(初回免疫)、25 μg/匹/回(追加免疫)である。抗原の乳化後に接種し、免疫時間は、0、7、14、21日目である。7、21日目に採血し、ELISA方法でマウス血清中の抗体価を決定した。4回目の免疫後に、血清中の抗体価が高くて安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行った。脾細胞融合の3日前に追加免疫を行い、生理食塩水で調製された抗原溶液を25 μg/匹で腹膜内(i.p.)に注射した。
【0309】
2群目のマウスの免疫抗原は、DLL3 CHO-s及びFc-hDLL3(ECD)(配列番号8)であり、免疫方法は、細胞とタンパク質抗原の交互免疫である。DLL3 CHO-s細胞の初回免疫前に、予めTiterMax(登録商標) Gold Adjuvant(Sigma Cat No. T2684)を0.1 mL/匹でマウスの腹膜内に注射し、半時間後、生理食塩水で10/mLの濃度に希釈された細胞液0.1 mLを各マウスの腹膜内に注射した。細胞を均一に吹き散らした後、0、14、28、42日目に接種した。Fc-hDLL3(ECD)抗原を、アジュバントTiterMax(登録商標) Gold Adjuvant(Sigma Cat No. T2684)及びThermo Imject(登録商標) Alum(Thermo Cat No. 77161)で交差免疫した。アジュバントTiterMax(登録商標) Gold Adjuvantに対する抗原の比率は1:1であり、アジュバントThermo Imject(登録商標) Alumに対する抗原の比率は3:1であり、50 μg/匹/回(初回免疫)、25 μg/匹/回(追加免疫)である。hDLL3-Fcの免疫時間は、7、21、35、49日目である。14、35、49日目に採血し、ELISA法でマウス血清中の抗体価を決定した。8回目の免疫後に、血清中の抗体価が高くて安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行った。脾細胞融合の3日前に追加免疫を行い、生理食塩水で調製されたhDLL3-Fcタンパク質抗原溶液を50 μg/匹で腹膜内(i.p.)に注射した。
【0310】
2. 脾細胞の融合
最適化された電気融合方法により、脾リンパ球を骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録商標) CRL-8287(登録商標))と融合してハイブリドーマ細胞を得た。
【0311】
融合したハイブリドーマ細胞を3~4×10/mLの密度で完全培地(20%のFBS、1×HAT、1×OPIを含むIMDM培地)を再懸濁し、150 μL/ウェルで96ウェルプレートに接種した。37℃、5%COで3~4日間インキュベートした後、上清を除去し、200 μL/ウェルのHT完全培地(20%のFBS、1×HTと1×OPIを含むIMDM培地)を加え、37℃、5%COで3日間培養した後、スクリーニング検出を行った。
【0312】
3. ハイブリドーマ細胞のスクリーニング及び抗体の配列決定
ハイブリドーマ細胞の成長密度によって、DLL3タンパク質に結合するELISA方法及びDLL3 CHO-s細胞に結合するFACS方法によりハイブリドーマ培養上清の検出を行った。ヒトDLL3タンパク質、サルDLL3タンパク質及びDLL3 CHO-s細胞に結合すると共に、野生型CHO-s細胞に結合しないクローンを選択し、単細胞クローンが得られるまで、適時に凍結保存、増幅、品種保存及び1~2回のサブクローニングを行った。上記実験によりスクリーニングしてハイブリドーマクローンmAb100及びmAb6を得た。
【0313】
ハイブリドーマクローンを拡大培養し、RNAを抽出し、mouse-Igの縮重プライマーを利用して反転写増幅(RT-PCR)を行った結果、抗体の可変領域配列を得た。
【0314】
mAb6重鎖可変領域:
【化34】
配列番号12
mAb6軽鎖可変領域:
【化35】
配列番号13
mAb100重鎖可変領域:
【化36】
配列番号14
mAb100軽鎖可変領域:
【化37】
配列番号15。
【0315】
【表4】
注記:VH/VLのCDRのアミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定されて注釈されている。
【0316】
マウス抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を、配列番号28で示されるヒトIgG1重鎖定常領域及び配列番号29で示されるκ軽鎖定常領域を含むpTT5ベクタープラスミドにそれぞれクローニングした後、HEK293細胞にトランスフェクションし、抗DLL3のキメラ抗体M6CHIとM100CHIを得た。
【0317】
ヒトIgG1重鎖定常領域:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号28
ヒトκ軽鎖定常領域:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号29。
【0318】
実施例3:マウス抗DLL3モノクローナル抗体のヒト化
Kabatヒト抗体重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子データベースをアラインメントし、それぞれ相同性の高い重鎖・軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子をテンプレートとして選択し、マウス抗体のCDRを対応するヒトテンプレートにそれぞれグラフト(graft)し、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4という順の可変領域配列を形成した。可変領域のアミノ酸を復帰変異させ、さらに定常領域と(例えば、配列番号28で示されるヒトIgG1重鎖定常領域及び配列番号29で示されるヒトκ軽鎖定常領域と)組換え、全長抗体を得た。
【0319】
mAb6抗体のヒト生殖細胞系軽鎖テンプレートはIGKV1-16*01であり、ヒト生殖細胞系重鎖テンプレートはIGHV1-3*01、IGHV7-4-1*02とIGHV3-73*01である。H100抗体のヒト生殖細胞系軽鎖テンプレートはIGKV1-27*01であり、ヒト生殖細胞系重鎖テンプレートはIGHV3-11*01である。
【0320】
さらに、mAb100重鎖可変領域のHCDR3:PLYYYGRSYNAVAY(配列番号24)中の4番目のアミノ酸残基をYからHに変異し、11番目をAからGに変異し、新たな
【化38】
HCDR3:PLYYGRSYNAVAY(配列番号30)

【化39】
PLYYYGRSYNVAY(配列番号31)
を得た。
【0321】
【表5-1】
【表5-2】
注記:表中のA100Gを例として、kabat番号による100E番目のAがGに変異されたことを示す。
【0322】
得られたヒト化抗体可変領域の配列は、以下の通りである:
hAb6 VH1(Q1E, R71V, T73K)
【化40】
配列番号32
hAb6 VH2(Q1E, I69L, R71V, T73K, S76N)
【化41】
配列番号33
hAb6 VH3(Q1E, M48I, V67A, I69L, R71V, T73K, S76N)
【化42】
配列番号34
hAb6 VH4(Q1E, Q43K,I69L, R71V, T73K, S76N)
【化43】
配列番号35
hAb6 VH5(Q1E, L71V, T73K, F69L)
【化44】
配列番号36
hAb6 VH6(Q1E, F69L, L71V, T73K, V75S, S76N)
【化45】
配列番号37
hAb6 VH7(F27Y, S30T, I69L, R71V, D73K,T93A)
【化46】
配列番号38
hAb6VH8 (Graft IGHV1-3*01)
【化47】
配列番号39
hAb6VH9 (Graft IGHV7-4-1*02)
【化48】
配列番号40
hAb6VH10 (Graft IGHV3-73*01)
【化49】
配列番号41
hAb6VH11(Q1E, F69L, L71V, T73K,V75S, S76N,R38K)
【化50】
配列番号42
hAb6VH12(Q1E,V68A,F69L, L71V, T73K, V75S, S76N)
【化51】
配列番号43
hAb6VH13(Q1E, R38K,V68A,F69L, L71V, T73K, V75S, S76N)
【化52】
配列番号44
hAb6 VL1(F36L, S46G)
【化53】
hAb6 VL2 (F36L, S46G, T69A, F71Y)
【化54】
hAb6 VL3(F36L, A43S, P44F, S46G, T69A, F71Y)
【化55】
配列番号47
hAb6 VL4(F36L, S46G, T69A, F71Y, T85D)
【化56】
配列番号48
hAb6VL5 (Graft IGKV1-16*01)
【化57】
配列番号49
hAb100 VH1(Q1E,R94S)
【化58】
配列番号50
hAb100 VH2(Q1E, S49A, R94S)
【化59】
配列番号51
hAb100 VH3(Q1E, S49A, R94S,Y98H)
【化60】
配列番号52
hAb100 VH4(Q1E, S49A, R94S, A100eG)
【化61】
配列番号53
hAb100VH5 (Graft IGHV3-11*01)
【化62】
配列番号54
hAb100 VL1(Graft IGKV1-27*01)
【化63】
配列番号55
hAb100 VL2(V43I)
【化64】
配列番号56。
【0323】
注記:一重下線部はCDR領域であり、二重下線部は変異部位である。
【0324】
【表6】
そのうち、XはY又はHであり、XはA又はGである。
【0325】
例示的なヒト化抗体の重鎖・軽鎖可変領域の組み合わせは、以下の通りである:
【表7】
注記:hAb6L1H1は、当該抗体に重鎖可変領域hAb6VH1と軽鎖可変領域hAb6VL1が含まれ、かつその重鎖定常領域の配列が配列番号28、軽鎖定常領域の配列が配列番号29であることを示し、その他はこのように類推する。
【0326】
【表8】
注記:hAb100L1H1は、当該抗体に重鎖可変領域hAb100VH1と軽鎖可変領域hAb100VL1が含まれ、かつその重鎖定常領域の配列が配列番号28、軽鎖定常領域の配列が配列番号29であることを示し、その他はこのように類推する。
【0327】
それぞれ上記抗体をクローニング・発現・精製し、タンパク質結合実験(試験例1)、細胞結合実験(試験例2)、Biacore(試験例4)を行った結果、活性の良いヒト化抗体を選び出した。例示的なヒト化抗体の重鎖・軽鎖アミノ酸配列は、以下の通りである:
Hu6(hAb6L4H12とも呼ばれる)重鎖:
【化65】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号58
【0328】
Hu6(hAb6L4H12とも呼ばれる)軽鎖:
【化66】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号59
【0329】
Hu100(hAb100L1H1とも呼ばれる)重鎖:
【化67】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号60
【0330】
Hu100(hAb100L1H1とも呼ばれる)軽鎖:
【化68】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号61。
【0331】
本開示に使用される陽性対照分子はBI-764532(WO2019234220A1を参照して構築)であり、陰性対照はC25であり、その配列はそれぞれ以下の通りである:
BI-764532重鎖:
【化69】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号62
【0332】
BI-764532軽鎖:
【化70】
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
配列番号63
【0333】
C25重鎖:
【化71】
配列番号64
【0334】
C25軽鎖:
【化72】
配列番号65。
注記:配列中の下線部は可変領域であり、イタリック体部は定常領域である。
【0335】
二、化合物の調製
本開示の実施例における具体的な条件が明示されていない実験方法は、通常、一般的な条件、又は原料や商品のメーカーに勧められた条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0336】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は質量分析(MS)によって決定される。NMRの測定には、核磁気装置Bruker AVANCE-400が利用され、測定溶媒が重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl)、重水素化メタノール(CDOD)であり、内部標準がテトラメチルシラン(TMS)であり、化学シフトが10-6(ppm)単位で示された。
【0337】
MSの測定には、質量分析計FINNIGAN LCQAd(ESI)(Thermo、型番:Finnigan LCQ advantage MAX)が使用された。
【0338】
UPLCの測定には、液体クロマトグラフ質量分析計Waters Acquity UPLC SQDが利用された。
【0339】
HPLCの測定には、高速液体クロマトグラフAgilent 1200DAD(Sunfire C18 150×4.6 mmカラム)及び高速液体クロマトグラフWaters 2695-2996(Gimini C18 150×4.6 mmカラム)が利用された。
【0340】
UV-HPLCの測定には、紫外線分光光度計Thermo NanoDrop 2000が利用された。
【0341】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとしては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートが利用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されるシリカゲルプレートの仕様は、0.15~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離精製に使用されるシリカゲルプレートの仕様は、0.4~0.5 mmである。
【0342】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に、煙台黄海200~300メッシュのシリカゲルをベクターとして利用した。
【0343】
本開示に係る既知の出発原料は、この分野での既知の方法を採用し、又はそれに従って合成してもよく、或いはABCR GmbH & Co.KG、Acros Organnics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社から購入してもよい。
【0344】
実施例において特に断りのない限り、反応は、何れもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気で行われた。
【0345】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0346】
水素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lの水素バルーンが連結されていることを指す。
【0347】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用された。
【0348】
水素化反応は、一般的に、真空引きして水素を充填する操作を3回繰り返した。
【0349】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用された。
【0350】
実施例において特に断りのない限り、反応中の溶液は水溶液を指す。
【0351】
実施例において特に断りのない限り、反応温度は室温であり、温度の範囲は20~30℃である。
【0352】
実施例におけるpH=6.5のPBS緩衝液の調製:8.5 gのKHPO、8.56 gのKHPO.3HO、5.85 gのNaCl、1.5 gのEDTAを取ってフラスコに入れ、2 Lに定容し、超音波でそれを完全に溶解させ、振り混ぜると得た。
【0353】
化合物の精製に用いられるカラムクロマトグラフィーの溶離剤の系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒の系は、A:ジクロロメタンとイソプロピルアルコール系、B:ジクロロメタンとメタノール系、C:石油エーテルと酢酸エチル系を含み、溶媒の体積比は、化合物の極性によって調整してもよく、少量のトリエチルアミン及び酸性又は塩基性試薬などを加えて調整してもよい。
【0354】
本開示の化合物の一部は、Q-TOF LC/MSによって特徴付けられた。Q-TOF LC/MSは、精密質量数四重極-飛行時間型質量分析計Agilent 6530及び超高速液体クロマトグラフAgilent 1290-Infinity(Agilent Poroshell 300SB-C8 5 μm、2.1 mm×75 mmカラム)が利用された。
【0355】
本開示の抗体-薬物複合体の薬物部分は、この分野で公知の細胞毒性薬物から選ばれてもよく、例示的な薬物は、WO2021218896A1(出願番号:PCT/CN2021089838)に記載されたエクテイナシジン系誘導体であり、援用により全体として本明細書に組み込まれている。
【0356】
本開示における例示的な抗体-薬物複合体の合成経路は、以下の通りである。
【0357】
実施例4-1. 化合物7の合成(リンカー)
【化73】
ステップ1
【化74】
化合物7-1(1.3g、WO2013106717A1に開示された方法で調製された)を50mLのアセトニトリルに溶かし、順に炭酸カリウム(6.2g)、臭化ベンジル(1.35mL)及びテトラブチルヨウ化アンモニウム(415mg)を加えた。室温で撹拌し、ろ過し、濃縮し、石油エーテル/酢酸エチルを展開溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して化合物7-2を得た。
【0358】
化合物7-2(121mg)及び7-3(180mg)を反応フラスコに入れ、4mLのテトラヒドロフランを加えた。窒素雰囲気下、氷水浴で0℃程度に降温し、カリウムt-ブトキシド(109mg、0.98mmol)を加え、室温に昇温して40分間撹拌した。10mLの氷水を加え、酢酸エチル(20mL×2)及びクロロホルム(10mL×5)で抽出し、有機相を合わせて濃縮した。得られた残留物を4mLのジオキサンに溶け、2mLの水を加え、炭酸水素ナトリウム(49.2mg、0.586mmol)及びクロロギ酸-9-フルオレニルメチル(126mg、0.49mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。20mLの水を加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。石油エーテル/酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して化合物7-4を得て、MS m/z(ESI):515.0[M+1]+。であった。
【0359】
化合物7-4 (20mg、0.038mmol)をテトラヒドロフランと酢酸エチル(V:V=2:1)の混合溶媒4.5mLに溶解し、パラジウム炭素(12mg、含有量10%、乾式)を加え、水素ガスで3回置換し、室温で1時間撹拌しながら反応させた。反応液を珪藻土でろ過し、ろ過ケーキを酢酸エチルですすぎ、ろ液を濃縮して、粗製品である表題化合物7-5(13mg)を得て、生成物を精製せずにそのまま次の反応に使用した。
MS m/z (ESI):424.9 [M+1]。
【0360】
ステップ2
【化75】
化合物7-5(8.00g、18.9mmol、1eq)を250mLの三口フラスコに入れ、窒素保護下、乾燥したジクロロメタン(100mL)を加え、撹拌しながら溶かして0Cに冷却し、順に4-ジメチルアミノピリジン(250mg、2.05mmol)、2,4-ジメトキシベンジルアルコール(4.45g、26.5mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(5.04g、28.6mmol)を加え、0Cのままにして4時間撹拌しながら反応させ、水(50mL)を加えて反応をクエンチして室温に昇温し、メチルtert-ブチルエーテル(100mL)で2回抽出し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥になるまで減圧下で濃縮し、化合物7-6の粗生成物(13.1g)を得た。
MS Calc:574.2、観測値:575.0[M+H]
【0361】
ステップ3
【化76】
化合物7-6の粗生成物(13.1g)を500mLの反応フラスコに入れ、DCM(160mL)を加え、撹拌しながら溶かし、ジエチルアミン(80mL)を加え、室温を15~18Cのままにして3時間反応させ、乾燥になるまで減圧下で濃縮し、粗生成物を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、所望の成分を収集した後、蒸発乾固して(水温<35C)化合物7-7の油状物(5.47g)を得て、2段階収率が82.2%であった。
MS Calc:352.2、観測値:353.1[M+H]
【0362】
ステップ4
【化77】
化合物7-7(4.36g、12.4mmol)、化合物7-8(7.03g、14.9mmol、6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)カプロイル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニン、特許出願「EP2907824B1」中の実施例73における方法で調製)を250mLの反応フラスコに入れ、窒素保護下、乾燥したN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)を加え、撹拌しながら溶かして0Cに冷却し、4-(4,6-ジメトキシトリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリン塩酸塩(4.80g、16.3mmol)を加え、18Cに昇温して1h撹拌しながら反応させた。氷水浴で降温し、水(150mL)を加えて反応をクエンチし、酢酸エチル(300mL)で2回抽出し、有機相を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、乾燥になるまで減圧下で濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して不純な淡黄色固体7-9(6.02g)を得て、上記固体をメチルtert-ブチルエーテル(60mL)でスラリー化して精製し、オフ・ホワイトの固体である化合物7-9(5.08g)を得て、収率が50.8%であった。
MS Calc:806.4、観測値:807.2[M+H]
【0363】
ステップ5
【化78】
化合物7-9(150mg、0.186mmol)を50mLの一口フラスコに入れ、窒素保護下、乾燥したジクロロメタン(6mL)、アニソール(60mg、0.558mmol)を加え、撹拌して0Cに冷却し、ジクロロ酢酸(0.24mL、2.9mmol)を加え、基質を溶かし、0Cのままにして3~4時間撹拌しながら反応させ、反応液にメチルtert-ブチルエーテル(18mL)を加え、0Cのままにしてスラリー化して30分間撹拌し、ろ過して吸引乾燥し、固体にメチルtert-ブチルエーテル(18mL)を加え、室温でスラリー化して30分間撹拌し、ろ過し、吸引乾燥して化合物7(120mg、0.183mmol)を得て、収率が98%であった。
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 12.56 (brs, 1H), 8.50 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 8.28 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 8.20-8.05 (m, 2H), 8.00 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.30-7.15 (m, 5H), 6.99 (s, 2H), 4.65-4.40 (m, 3H), 3.80-3.55 (m, 7H), 3.45 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 3.10-3.00 (m, 1H), 2.85-2.75 (m, 1H), 2.11 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.55-1.40 (m, 4H), 1.25-1.15 (m, 2H), 1.05-0.95 (m, 1H), 0.55-0.40 (m, 2H), 0.40-0.30 (m, 2H)。
MS Calc:656.3、観測値:679.2[M+Na]
【0364】
実施例4-2. L-9の合成
【化79】
ステップ1
【化80】
化合物8-6(50 mg、0.063 mmol、WO2021218896A1中の実施例8に記載された方法に従って合成)、化合物7(85 mg、0.13mmol)を秤量して反応フラスコに入れ、系を窒素で保護した。N-メチルイミダゾール(21 mg、0.25 mmol)の乾燥したMeCN(4 mL)溶液を加えた。系を氷水浴で冷却した後、TCFH(45mg、0.16mmol、N,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミジンヘキサフルオロリン酸塩)の乾燥したMeCN(1mL)溶液に滴下した。氷水浴で80分間反応させ、サンプリングしてLCMSにより、原料が完全に消費されたことを検出した。反応液をサンドコア漏斗で吸引ろ過した。ろ過ケーキを乾燥したMeCNで洗浄した。ろ液を合わせ、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、カラムクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン=1:25)により白色固体L-8-6約83mgを得て、収率が92.22%であった。
MS Calc:1430.6、観測値:1431.4[M+H]。
【0365】
ステップ2
【化81】
化合物L-8-6(81mg、0.057mmol)を計量し、乾燥したMeCN(7mL)に溶かした。AgNO(781mg、4.60mmol)の水(4.7mL)溶液を加えた。窒素保護下、暗所にて室温で21時間反応させ、サンプリングしてLCMSにより、原料が完全に消費されたことを検出した。反応液に飽和NaHCO水溶液(11.7mL)及び飽和NaCl溶液(11.7mL)を加え、30分間激しく撹拌し、珪藻土でろ過した。ろ液を(MeOH/CHCl=1/10、20mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、NaSOを加えて乾燥させ、ろ過し、乾燥になるまで減圧下で濃縮して粗生成物を得て、prep-HPLCにより精製し、白色固体L-9約52mgを得て、収率が64.6%であった。
H NMR (400 MHz, CDOD) δ 7.32-7.18 (m, 7H), 6.97 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.75 (s, 2H), 6.66 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 6.07 (s, 1H), 5.23 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.77 (s, 1H), 4.62-4.56 (m, 4H), 4.50 (dd, J = 6.0, 8.4 Hz, 1H), 4.41 (s, 1H), 4.18 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.87-3.55 (m, 12H), 3.45 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 3.27 (s, 3H), 3.22-3.17 (m, 2H), 3.05-2.88 (m, 3H), 2.79 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 2.65-2.59 (m, 2H), 2.39 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 2.24 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.12 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 2.03 (s, 4H), 1.63-1.50 (m, 4H), 1.31-1.23 (m, 2H), 1.01-0.95 (m, 1H), 0.44-0.22 (m, 3H), -0.09--0.14 (m, 1H)。
【0366】
三、ADCの調製
実施例5-1. ADC-1の調製
【化82】
37℃の条件で、抗体Hu6のPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、3.6mL、243.1nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP塩酸塩)の水溶液(10mM、67.5μL、675nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0367】
化合物L-9(3.46mg、2431nmol)を170μLのDMSOに溶かし、上記反応液に加え、水浴振とう器に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液)、表題生成物ADC-1のPBS緩衝液(2.83mg/mL、16.0mL)を得て、4℃で保存した。
【0368】
HIC法により各バッチのADC-1の薬物担持量を算出したところ、そのDAR値がn=3.73-4.27である。
【0369】
実施例5-2. ADC-2の調製
【化83】
37℃の条件で、抗体Hu100のPBS緩衝水溶液(pH=6.5である0.05MのPBS緩衝水溶液、10.0mg/mL、4.0mL、270.1nmol)に、調製されたトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP塩酸塩)の水溶液(10mM、75.1μL、751nmol)を加え、水浴振とう器に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0370】
化合物L-9(3.84mg、2701nmol)を190μLのDMSOに溶かし、上記反応液に加え、水浴振とう器に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液)、表題生成物ADC-2のPBS緩衝液(3.52mg/mL、16.0mL)を得て、4℃で保存した。
【0371】
HIC法により各バッチのADC-2の薬物担持量を算出したところ、そのDAR値はn=3.72-4.88である。
【0372】
ADC原液の薬物担持量の分析
ADCは、疾患の治療機序が抗体の標的性によって薬物を細胞に送達することで、細胞を死滅させるか又は細胞の成長を阻害する抗体-薬物複合体である。薬物の担持量は、薬効に決定的な役割を果たしている。
【0373】
本開示は、HIC法により薬物担持量を分析し、その過程が基本的に以下の通りである:
試薬及び機器:
硫酸アンモニウム:国薬製、500mg/瓶、イソプロピルアルコール:LCグレード、4L/瓶、Thermo Fisher製、無水リン酸二水素ナトリウム:国薬製、500mg/瓶。
【0374】
高速液体クロマトグラフ:Agilent 1260。
【0375】
溶液の調製:
移動相A(50mMの無水リン酸二水素ナトリウム溶液、pH7.0):メスシリンダーで1000mLの精製水を量り取り、6.49gの無水リン酸二水素ナトリウム固体を加え、撹拌して均一に混合してpHを7.0に調整した後、ろ過に使用し、2~8℃で14日間保存した。
【0376】
移動相B(2Mの硫酸アンモニウムを50mMの無水リン酸二水素ナトリウム溶液に溶かし、pH7.0):調製された無水リン酸二水素ナトリウム溶液50mMに264.3gの硫酸アンモニウム固体を加え、よく撹拌して均一に混合した後、ろ過して使用し、2~8℃で14日間保存した。
【0377】
移動相C(IPA):1 Lのイソプロピルアルコール。
【0378】
裸の抗体及び試験待ちの試料(濃度1mg/mL、約200μL)は、注入使用に備えた。
【0379】
クロマトグラフィーの条件:
カラム:TSKgel Butyl-NPR 4.6mm×10cm 2.5μm、
カラム温度:30℃、
DAD検出器、検出波長280nm(370nm)、
試料室の温度:4℃、流速:0.5mL/min、注入量:40μL、
クロマトグラフィーの勾配:A%(開始35%-15min75%-20min75%)、C%(開始5%-15min25%-20min25%)。
【0380】
【表9】
【0381】
データの分析:
試料と裸の抗体とのスペクトル比較により、DAR0、DAR2、DAR4、DAR6、DAR8の位置を区別し、そして検出試料のスペクトルに対して積分を行い、ピーク面積によってDAR値を算出した。計算式は、次の通りである:
DAR=Σ(連結薬物数×ピーク面積の百分率)/ピーク面積の総和。
【0382】
以下、生化学試験方法により本開示の抗体及びADCの活性を検証した。
【0383】
試験例1:タンパク質レベルのELISA結合実験
ストレプトアビジン(abcam、ab136200、1μg/mL)でプレートを100μL/ウェルで被覆し、4℃で一晩した。PBST溶液(0.1%のTween20を含むPBS)により250μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。5%のミルクにより250μL/ウェルでブロッキングし、37℃で2時間ブロッキングした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。ビオチン化したDLL3抗原(1μg/mL)(配列番号9)を加え、37℃で1時間インキュベートした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。抗体Hu6、Hu100、BI-764532及びC25(陰性抗体)(最高濃度100nM、4倍段階希釈)を調製し、37℃で1時間インキュベートした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを6回洗浄した。作業濃度のhuman IgG(H+L)-HRP(Jackson、109-035-003、1:4000で希釈)抗体を加え、100μL/ウェルで、37℃で1時間インキュベートした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを6回洗浄した。TMB(KPL、5120-0077)発色液を100μL/ウェルで加え、室温で5~10分間発色した。1MのHSOを100μL/ウェルで加え、発色を中止し、プレートリーダー(Molecular Devices、VERSA max)により450nmでの数値を読み取った。
【0384】
【表10】
【0385】
その結果から示されるように、抗体Hu6及びHu100は、何れもDLL3に優れた結合能力を有する。
【0386】
試験例2:細胞レベルのFACS結合実験
DLL3を発現した小細胞肺がん細胞株H1184(ATCC、製品番号CRL-5858)、DLL3/H82、cynoDLL3/CHO-s及びRatDLL3/CHO-s細胞を、FACS緩衝液(1%BSA+pH7.4のPBS)により、1×10/mLの細胞懸濁液に調製し、100 μL/ウェルで96ウェル円底プレート(Corning、3795)に加えた。300gで5分間遠心分離して上清を除去した。異なる濃度の測定待ちの抗体を100μL/ウェルで加えた。4℃の冷蔵庫に入れて暗所で1時間インキュベートした。300gで3回遠心洗浄した後、作業濃度のAPC抗ヒトIgG Fc(BioLegend、410712)又はPE F(ab’)2-ヒツジ抗ヒトIgG(invitrogen、H10104)を加え、4℃の冷蔵庫に入れて暗所で40分間インキュベートした。300gで3回遠心洗浄した後、Invitrogenフローサイトメーターにて幾何平均蛍光強度を検出し、DLL3発現細胞に対する抗体の結合EC50値を算出した。結果を表11-1、表11-2、表11-3及び図1A図1Cに示す。
【0387】
【表11】
【0388】
【表12】
【0389】
【表13】
【0390】
その結果から示されるように、本開示における抗体は、何れも細胞で発現したDLL3に特異的に結合することができ、そのうち、Hu6は、異なる種を発現したDLL3細胞の何れにも高い結合能力を有する。Hu100は、ヒト及びカニクイザルのDLL3を発現した細胞の何れにも優れた結合能力を有するが、Hu100はラットDLL3を発現した細胞に結合しない。BI-764532は、ヒト及びカニクイザルのDLL3を発現した細胞のみに結合能力を有し、かつその結合活性がHu6及びHu100よりも弱い。
【0391】
試験例3:DLL1とDLL4の結合実験
安定形質転換ヒトDLL1/CHO-sとヒトDLL4/CHO-s細胞をFACS緩衝液(1%のBSA及びpH7.4のPBSを含む)により、1×10/mLの細胞懸濁液に調製し、100μL/ウェルで96ウェル円形プレート(Corning、3795)に加えた。300gで5分間遠心分離して上清を除去した。検出待ちの抗体を100μL/ウェルで加え、4℃の冷蔵庫に入れて暗所で1時間インキュベートした。300gで3回遠心洗浄した後、作業濃度のPE F(ab’)2-ヒツジ抗ヒトIgG Fc二抗(invitrogen、H10104)を加え、4℃の冷蔵庫に入れて暗所で40分間インキュベートした。300gで3回遠心洗浄した後、Invitrogenフローサイトメーターにて幾何平均蛍光強度を検出した。
【0392】
その結果から示されるように、抗体Hu6とHu100は、何れもヒトDLL1及びDLL4に結合しない。
【0393】
試験例4:Biacore抗体の親和性の測定
Protein Aバイオセンサーチップ(Cat. # 29127556、Cytiva)により測定待ちの抗体を18秒間親和的に捕捉し、そしてチップの表面で抗原ヒトDLL3(ACRO、DLL3-H52H4)、カニクイザルDLL3(KACTUS、DLL-RM103)とマウスDLL3(KACTUS、DLL-MM103)を180秒間流した後、600秒間解離した。Biacore 8K(Cytiva)機器により反応シグナルをリアルタイムで検出して結合・解離曲線を得た。各実験のサイクル解離が完了した後、10mMのグリシン-塩酸溶液(pH1.5)(Cat. # BR-1003-54、Cytiva)によりバイオセンサーチップを洗浄して再生した。データフィッテイングモデルは、1:1のModelを採用した。結果を表12-1、表12-2及び表12-3に示す。
【0394】
【表14】
【0395】
【表15】
【0396】
【表16】
【0397】
その結果から示されるように、mAb100とmAb6のヒト化抗体及びキメラ抗体は、ヒトDLL3に特異的に結合することができると共に、親和性が高い。ここで、抗体Hu6は、ヒト、カニクイザル及びマウスのDLL3の何れにも高い親和性を有し、Hu100は、ヒト及びカニクイザルのDLL3に高い親和性を有するが、マウスのDLL3には結合しない。
【0398】
試験例5:抗体のエピトープ競合的結合実験
BI-764532抗体(1μg/mL)でプレートを100μL/ウェル被覆し、4℃で一晩した。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。5%のミルクにより250μL/ウェルでブロッキングし、37℃で2時間ブロッキングした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを3回洗浄した。ビオチン化したDLL3-Strep(0.1μg/mL、配列番号9)を加えた。競合抗体、BI-764532、Hu6及びHu100(最大濃度100μg/mL、4倍段階希釈)を調製し、37℃で1時間インキュベートした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを6回洗浄した。ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(1:2000で希釈)(Jackson Immuno Research,016-030-084)を100μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。PBST溶液により250μL/ウェルでプレートを6回洗浄した。TMB(KPL、5120-0077)発色液を100μL/ウェルで加え、室温で5~10min発色した。1MのHSOを100μL/ウェルで加え、発色を中止し、プレートリーダーにより450nmでの数値を読み取った。結果を図2に示す。
【0399】
その結果から示されるように、抗体Hu6及びHu100はBI-764532とは競合しないことで、抗体Hu6及びHu100は、BI-764532とは異なるエピトープに結合することが示唆されている。
【0400】
試験例6:抗DLL3抗体のエンドサイトーシス活性の検出
DT3Cは、組換え発現の融合タンパク質であり、ジフテリア毒素の断片A(毒素部分のみ)とG群連鎖球菌の3C断片(IgG結合部分)が融合してなるものであり、当該タンパク質は、抗体のIgG部分によく親和することができ、抗体がエンドサイトーシスされる場合に一緒に細胞に侵入し、細胞内フーリンの作用下で、毒性を有するDTを放出し、DTはEF2-ADPリボース化の活性を阻害し、タンパク質の翻訳過程を遮断して、最終的に細胞の死亡を引き起こすことができる。細胞に侵入していないDT3Cは、細胞を殺傷する活性を有しない。細胞殺傷状況によって、抗体の細胞にエンドサイトーシスされる活性を評価した。
【0401】
実験の手順
a. 20%のFBSを含む新鮮な細胞培地RPMI1640(GE、SH30809.01)によりDMS53/DLL3細胞懸濁液を調製し、2000細胞/50μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加え、1と12列目に細胞を播種せずに50μLの培地のみを加え、5%の二酸化炭素、37℃で16時間培養した。
【0402】
b. 無血清培地により4×濃度のDT3C(9600nM、上海磐超生物科技有限公司で発現・精製)溶液に調製し、かつ0.22μmのフィルターによりろ過した。無血清培地により4×濃度の抗体(1600nM)を調製し、80μLのDT3C溶液と80μLの抗体溶液を1:1の体積で均一に混合し、室温で30分間静置してインキュベートした。
【0403】
c. 無血清培地で当該混合物を5倍段階希釈し、合計9つの濃度にして、10番目のポイントを純培地とした。
【0404】
d. 希釈された抗体50 μLを細胞に加え、インキュベーターにて3日間インキュベートした。
【0405】
e. 各ウェルに50 μLのCTG(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay、Promega、G7573)を加え、室温で暗所にて10分間インキュベートし、Victor3にて化学発光を読み取った。
【0406】
結果を下記表13及び図3に示す。
【0407】
【表17】
【0408】
その結果から示されるように、抗体Hu6及びHu100は、何れもエンドサイトーシスされることができる。
試験例7:ADCによる異なるDLL3発現レベルの細胞毒性実験
実験の手順は、以下の通りである:
A. 10%のFBSを含む新鮮な細胞培地により細胞懸濁液を調製し、135μL/ウェルで96ウェル細胞培養プレート(Corning、3903)に加え、1と12列目に細胞を播種せずに135μLの培地のみを加え、5%の二酸化炭素、37℃で16時間培養した。
【0409】
b. ADC試料をPBSで最初のウェルの作動液(10×濃度)に調製し、それを初期濃度として、PBSで対応する倍率で段階希釈した。各ウェルに15μLの10×濃度ADC溶液を加え、5%の二酸化炭素、37℃で6日間培養した。
【0410】
c. 各ウェルに70μLのCTG(Promega、G7573)を加え、室温で暗所にて10分間インキュベートし、Victor3にて化学発光を読み取り、GraphPad Prism5によりデータを処理し、抗体又はADC濃度をX軸、光強度値をY軸としてプロットした。
【0411】
異なる細胞のプレートへの播種密度、最初のウェルの作業液濃度(10×濃度)、希釈倍率を表14に示す。
【0412】
【表18】
実験に使用された細胞は、以下の通りである:
ATCCから購入されたDMS53(+)、CRL-2062、
ATCCから購入されたH1184(+++)、CRL-5858、
ATCCから購入されたU-2OS(-)、HTB-96、
ATCCから購入されたHT-29(-)、HTB-38、
ATCCから購入されたCHO-K1(-)、CCL-61。
【0413】
そのうち、「+」はDLL3の発現量を示し、「-」はDLL3を発現しないことを示す。
【0414】
結果を表15及び図4A図4Eに示す。
【0415】
【表19】
【0416】
その結果から示されるように、ADC-1及びADC-2は、強い標的細胞殺傷活性を有し、DLL3を発現するDMA53及びH1184を殺傷することができるが、U-2OS、HT-29及びCHO-K1細胞はDLL3に対して陰性であることを示している。
【0417】
試験例8:バイパス殺傷活性実験
DMS53/DLL3high(DLL3を安定形質転換したDMS53細胞)及びU-2OS(ATCC、HTB-96)細胞をそれぞれRPMI1640+20%FBS+1×GlutamaxとMcCoy’s 5A+10%FBSにより培養し、細胞をパンクレアチンで消化し、新鮮な培地で中和し、1000rpmで3分間遠心分離した。上清を捨て、細胞をRPMI1640+20%FBS+1×Glutamaxで再懸濁した。細胞を計数した後、DMS53/DLL3high細胞密度を9×10個/mLに調整し、U-2OS細胞密度を3×10個/mLに調整した。12ウェルプレートの対応するウェルのそれぞれに500μLのDMS53/DLL3high細胞及び500μLのU-2OS細胞を加えた。12ウェルプレートの対応するウェルに500μLのU-2OS細胞及び500μLのRPMI1640+20%FBS+1×Glutamax培養液を加えた。5%の二酸化炭素、37℃で24時間培養した。試料を40×濃度の中間溶液(200nM)に調製した。上記ADC試料を25μLずつ取って12ウェルプレートの対応するウェルに加えた。溶媒対照群を設けた。5%の二酸化炭素、37℃で6日間培養した。12ウェルプレートにおける細胞をパンクレアチンで消化し、新鮮な培地で中和し、20μLの細胞を取り、20μLのトリパンブルーを加えて、計数した。細胞を1000rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を100μLのFACS緩衝液で1回洗浄し、1500rpmで3分間遠心分離し、上清を捨てた。100μLのFACS緩衝液で再懸濁し、2μg/mLの抗DLL3の陽性抗体を加え、氷上で60minインキュベートした。FACS緩衝液で1回洗浄し、1500rpmで3分間遠心分離し、二次抗体APC anti-human IgG Fc(100x)を加えて30分間インキュベートし、FACS緩衝液で1回洗浄した。200μLのFACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁し、FACSで検出した。FlowJoによりストリーミングデータを解析してDMS53/DLL3high比率を得て、DMS53/DLL3high及びU-2OSの総量を算出した。GraphPad Prism5によりデータをプロットし、異なる試料をX軸、算出された細胞数をY軸としてプロットし、結果を図5に示す。
【0418】
その結果から示されるように、ADC-1及びADC-2は、明らかなバイスタンダー細胞毒性効果を有する。
【0419】
インビボ活性の生物学的評価
試験例9:DMS53細胞CDXマウスモデルにおけるインビボ薬効の評価
ヒト小細胞肺がんDMS53細胞(5×10個、50%のマトリゲル/匹含有、ATCC、CRL-2062)を200μL/匹で、Balb/c右脇部皮下に接種した。21日間接種した後、腫瘍体積が約200mmになると、体重、腫瘍が過大又は過小であるものを除去し、腫瘍体積によってマウスを8匹/群で無作為に群分けし、当日から投与し始めた。ADCを腹腔内に注射し、用量が1.8mg/kgで、週1回、合計2回投与した。腫瘍の体積と体重を週2回測定し、データを記録した。平均値がavgで算出され、SD値がSTDEVで算出され、SEM値がSTDEV/SQRT(各群の動物数)で算出されるように、Excel統計ソフトウェアによりデータを記録し、GraphPad Prismソフトウェアによりプロットし、Two-way ANOVA又はOne-way ANOVAによりデータを統計的に分析した。
【0420】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L長×L短
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T)/(C-C)×100%で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T、Cは実験開始時の腫瘍体積である。
【0421】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0422】
結果を表16及び図6に示す。
【0423】
【表20】
【0424】
その結果から示されるように、1.8mpkの用量で、ADC-1及びADC-2は、何れもDMS53細胞皮下移植腫瘍の成長を顕著に阻害することができる。
【0425】
試験例10:H1184細胞CDXマウスモデルにおけるインビボ薬効の評価
ヒト小細胞肺がんNCI-H1184細胞(5×10個、50%のマトリゲル含有、ATCC、CRL-5858)を200μL/匹で、NDGマウス右脇部皮下に接種した。18日間接種した後、腫瘍体積が180mmになると、体重、腫瘍が過大又は過小であるものを除去し、腫瘍体積によってマウスを8匹/群で無作為に群分けし、当日から投与し始めた。ADCを腹腔内に注射し、投与量が1.8mg/kgである。週1回、3回投与した。週2回で腫瘍体積を測定し、体重を量り、データを記録した。
【0426】
平均値がavgで算出され、SD値がSTDEVで算出され、SEM値がSTDEV/SQRT(各群の動物数)で算出されるように、Excel統計ソフトウェアによりデータを記録し、GraphPad Prismソフトウェアによりプロットし、Two-way ANOVA又はOne-way ANOVAによりデータを統計的に分析した。
【0427】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L長×L短
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T)/(C-C)×100%で、そのうち、T、Cは実験終了時の治療群及び対照群の腫瘍体積であり、T、Cは実験開始時の腫瘍体積である。
【0428】
腫瘍阻害率TGI(%)=1-T/C(%)。
【0429】
結果を表17及び図7に示す。
【0430】
【表21】
【0431】
その結果から示されるように、1.8 mpkの用量で、ADC-1及びADC-2は、何れもH1184移植腫瘍の成長を顕著に阻害することができる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7
【配列表】
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【国際調査報告】