(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】取得ユニットの電力供給
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20250107BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20250107BHJP
【FI】
B60L1/00 A
B60L3/00 C
B60L3/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537436
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021087381
(87)【国際公開番号】W WO2023117090
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521205102
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヌッシュ トム
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド ドミニク パスカル
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125AC02
5H125AC14
5H125BB09
5H125FF30
(57)【要約】
本発明は、鉄道車両に配置された消費機器に電力を供給するための電力供給装置(1)に関し、この電力供給装置(1)は、導体(4)に印加される電圧から消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成される。送信用電子部品(5)と、送信用電子部品(5)を介して消費機器(2)に電気伝導するように接続されたバイパス導体(6)とが備えられ、送信用電子部品(5)は、バイパス導体(6)と消費機器(2)との間で切り替えられ、バイパス導体(6)は、2つの固定接合部(8)によって導体(4)に電気伝導するように接続され、バイパス導体(6)が出力電圧を生成するように、固定接合部(8)とバイパス導体(6)の間に電位差が存在するように構成され、送信用電子部品(5)は出力電圧から消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に配置された消費機器に電力を供給するための電力供給装置(1)であって、前記消費機器は、好ましくは鉄道車両をモニタリングするための、特に動作ユニット(3)をモニタリングするための取得ユニット(2)であり、前記鉄道車両は少なくとも1つの導体(4)を有し、前記電力供給装置(1)は前記導体(4)に印加される電圧から前記消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成され、
特徴は、
送信用電子部品(5)と、前記送信用電子部品(5)を介して前記消費機器(2)に電気伝導するように接続されたバイパス導体(6)とを備え、前記送信用電子部品(5)は前記バイパス導体(6)と前記消費機器(2)との間で切り替えられ、前記バイパス導体(6)は、2つの固定接合部(8)によって鉄道車両の導体(4)に、特に集電装置(7)に電気伝導するように接続され、
前記固定接合部(8)間に電位差が存在するとともに前記バイパス導体(6)は前記導体(4)における前記固定接合部(8)間の電位差よりも低い出力電圧を生成するように構成され、前記送信用電子部品(5)は、前記バイパス導体(6)の出力電圧から前記消費機器(2)の電源電圧を生成するように構成されている
ことである電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が電圧変換用部品(9)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が整流用部品(10)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が、少なくとも1つの蓄電用部品、好ましくは少なくとも1つのコンデンサ(13)を備えた充電用電子部品(12)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
電圧変換用部品(9)をモニタリングするためのモニタリング用電子部品(14)が設けられていること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
前記バイパス導体(6)が、主に真っ直ぐな導電体として構成されていること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
前記バイパス導体(6)及び/または前記消費機器(2)の入力抵抗が、前記導体(4)の内部抵抗よりも大きいこと
を特徴とする電力供給装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
発電ユニット、特に燃料電池、光電発電機、圧電発電機、動力発電機及び/または熱電発電機が構成されていること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電力供給装置(1)と、取得ユニット(2)として構成され、鉄道車両をモニタリングするために、特に集電装置(7)、接地ブラシ、潤滑装置、接触ストリップ、接点装置、接点ブラシなどの動作ユニット(3)をモニタリングするために用いられる消費機器とを有するモニタリングシステム(15)であって、
取得装置(2)によって、対応する動作ユニット(3)の異なる特性についてデータが取得されること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(2)が、対応する動作ユニット(3)または前記鉄道車両に固定配置されたセンサ装置(16)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(2)が、対応する動作ユニット(3)または前記鉄道車両(11)に固定配置された送信装置(17)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(2)が、時間センサと位置センサを有し、対応する動作ユニット(3)の取得時間と位置を検出可能であること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
電力計を有すること、特に前記取得ユニット(2)が電力計を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
少なくとも1つの動作ユニット(3)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項15】
鉄道車両に配置された消費機器(2)に電力を供給する方法であって、前記消費機器(2)は、特に鉄道車両をモニタリングするための取得ユニット(2)であり、
鉄道車両の導体(4)、特に集電装置(7)に、導体を通る電流の流れが発生させることによって第1の電圧が印加され、前記導体(4)における2つの固定接合部(8)間でバイパス導体(6)の出力電圧として前記バイパス導体(6)によって第2の電圧が取り出され、前記バイパス導体(6)の出力電圧は、前記消費機器(2)に電力を供給するために用いられる
電力供給方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電力供給方法において、
前記消費機器(2)によって必要とされる供給電圧は、前記バイパス導体(6)の出口電圧の電圧変換によって生成される
電力供給方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の電力供給方法において、
前記バイパス導体(6)の出口電圧が整流される
電力供給方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項に記載の電力供給方法において、
前記消費機器(2)の供給電圧が、蓄電用の少なくとも1つの部品(12)によってもたらされる
電力供給方法。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載の電力供給方法において、
走行電流が検出され、及び/または電気アークが検出され、及び/または走行プロファイルが記録される
電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に配置された消費機器(エネルギ消費機器、コンシューマ)に電力を供給するための電力供給装置に関する。消費機器は、好ましくは鉄道車両、特に鉄道車両の動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットであり、鉄道車両は、少なくとも1つの導体及びその導体に印加される電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成された電力供給装置と、送信用電子部品及びその送信用電子部品を介して消費機器に電気伝導するように接続されたバイパス導体とを有し、送信用電子部品はバイパス導体と消費機器との間で切り替えられ、バイパス導体は鉄道車両の導体に、特に集電装置に2つの固定接合部によって電気伝導するように接続され、固定接合部間に電位差が存在し、バイパス導体は、バイパス導体が固定接合部間の導体における電位差よりも低い出力電圧を生成するように構成され、送信用電子部品は、送信用電子部品がバイパス導体の出力電圧から消費機器の電源電圧を生成するように構成される。
【0002】
さらに、本発明は、電力供給装置と、電力を消費機器に供給するための方法とを含むモニタリングシステム、特に鉄道車両をモニタリングするための取得ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
基本的に、鉄道車両の消費機器に電力を供給するための装置及び方法と、鉄道車両及び/またはその動作ユニットをモニタリングするための装置と方法は知られている。公知の装置及び方法では、例えば鉄道車両及び/または動作ユニットに直接取り付けられるセンサによって動作ユニットの状態がモニタリングされ、且つ/または測定値及び/またはデータが測定される。例えば、圧縮空気で加圧されたラインをルーフ集電装置の接触ストリップの中に配置でき、圧縮空気は、接触ストリップが破断または完全に摩耗し、接触ストリップが接点ワイヤによって下降した場合にそのラインから抜け出す。あるいは、接点ワイヤに対する接触ストリップの押圧力、風速、またはその他の環境と、動作パラメータとを、適切に設置されたセンサによって測定し、鉄道車両の他のルーフ集電装置または動作ユニットを作動制御するために使用することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多数のセンサを使用して動作ユニットをモニタリングすることができ、センサは有線または無線で電力供給することができる。電力ネットワークから直接に電力を取り出す有線の電力供給は、一般に、高い材料コストと高い配線コストを伴うか、または電力供給要件のために除外される。例えば、列車、自動車、航空機などの移動手段内または移動手段上にセンサを備えた取得ユニットを使用するような移動用途では、その要件のために、有線の電力供給よりも、自己完結型、無線型またはオフグリッド給電が好まれることが多い。さらに、移動用途において特に鉄道車両で取得ユニットを使用する場合、鉄道車両の電源に直接接続することは不可能であるか、現在の車載電源に介入することは望ましくない。ワイヤレス電源を有する、すなわち電源に直接接続されていないセンサシステムを備えた公知の取得ユニットは、一般に、バッテリまたはアキュムレータでのみ電力が供給される。しかし、この場合、定期的にバッテリを交換するか、あるいはアキュムレータを再充電する必要があるため、取得ユニットをより多くメンテナンスする必要があるという欠点がある。さらに、外部からの影響はバッテリやアキュムレータの寿命に大きな影響を与える。例えば、温度変動により放電が速くなることがあり、または、時節や気候条件によっては特に寒冷地でメンテナンス間隔を短くする必要が生じる。特に、消費機器、取得ユニットまたは電源ユニットへのアクセスが困難な場合、これは労力の増大につながるため望ましくない。
【0005】
バッテリまたはアキュムレータに依存しないセンサ用の電源供給を可能にするために、センサ用の様々なローカルの電流供給装置が従来技術で知られている。これに関連して、例えば、センサユニットに誘導で電力を供給可能にすることが提案されている。例えば、鉄道車両のモータにインバータを接続する第1導電体を、第2導電体に誘導結合することが従来技術で知られている。そして、第2導電体が、第2導電体に電気的に接続された消費機器を作動させるのに必要な作動電圧を発生させる。しかしながら、この解決手段は、交流電力ネットワークでしか使用できないという欠点がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、鉄道車両に配置された消費機器にローカルで電圧を生成して電力を供給するための電力供給装置と方法を提案することであり、電力供給装置を、バッテリ、アキュムレータ、または電力を供給する複雑なケーブル接続を必要とせずに直流電圧ネットワークでも交流電圧ネットワークでも動作可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を備えた電力供給装置によって達成される。
【0008】
鉄道車両に配置される消費機器に電力供給するための本発明に係る装置は、消費機器、好ましくは鉄道車両をモニタリングするための、特に動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットであり、鉄道車両は少なくとも1つの導体を有し、導体に印加される電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成される。消費機器に電力を供給するために、電力供給装置は、送信用電子部品と、送信用電子部品を介して消費機器に電気伝導するように接続されたバイパス導体とを備え、送信用電子部品はバイパス導体と消費機器との間で切り替えられる。バイパス導体は、2つの固定接合部によって鉄道車両の導体に、特に集電装置に電気伝導するように接続される。この点に関し、固定接合部は、導体に、好ましくは集電装置に可能な限り最大の電位差が固定接合部間に存在するように配置され、バイパス導体は固定接合部間の導体の電位差よりも低い出力電圧を生成するように構成される。バイパス導体を介して取り出されるバイパス導体のこの出力電圧から、送信用電子部品によって消費機器の供給電圧が生成される。このことにより、消費機器への電圧の生成と供給がローカルで、つまり消費機器のすぐ近くで可能になる。
【0009】
本発明では、消費機器は電力消費機器である。好ましくは、消費機器は取得ユニットとして構成される。本発明では、取得ユニットは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置されたセンサ装置を有するようにしてもよい。そして、センサ装置は、例えば対応する動作ユニットの機能及び動作時間を検出できるセンサを有してもよい。取得ユニットが送信装置も有していると、動作ユニットの名称やセンサによって検出された値のようなデータセットを上位のユニットに送信できる。
【0010】
本発明では、動作ユニットは、集電装置、接地ブラシ、潤滑装置、接触ストリップ、研磨装置、接点ブラシなどにすることができる。
【0011】
本発明では、集電装置は、ルーフ集電装置、ルーフ充電集電装置、反転型ルーフ充電集電装置、床下集電装置、またはサードレール集電装置として構成することができる。
【0012】
本発明では、導体は任意の導電体、例えばケーブルであり、バイパス導体を電気伝導するように接続することが可能であり、消費機器を動作させるために必要な供給電圧を消費機器に供給するのに十分大きな電圧降下が発生する。好ましくは、導体は主電流導体である。本発明では、主電流導体は、上位の送電ネットワークから鉄道車両に電流を供給する導体に関する。好ましくは、導体は、鉄道車両のモータを電流伝達ポイントに接続し、この電流伝達ポイントは、例えば集電装置と高電圧が供給されるカテナリとの間に形成される。したがって、集電装置は、主電流導体の一部及び/または鉄道車両の少なくとも1つの導体を有するようにしてもよい。また、主電流導体は、鉄道車両の駆動モータなどの鉄道車両の構成部品に高電圧を供給することが好ましい。独国で一般的に使用されているカテナリは、接地電位に対して15kVの高圧電位である。しかしながら、本発明に係る装置を他の既知の走行電流ネットワークで動作させることも考えられる。電源の種類、すなわち直流または交流、及び印加される電圧に応じて、数MWの程度の電力出力の鉄道車両は、この種のカテナリから最大で数1000Aに至る電流を引き出す。この鉄道車両への給電は、主導体と、それに接続される多数の導体を含み得る配電系統によって、伝達ポイントから行われる。高電位差による損傷を防止するため、特に鉄道車両のルーフの上に配置される場合、電力供給装置及び/または消費機器は、鉄道車両の車体に電気的に接続せずに、導体、特に主導体上で絶縁された状態で動作させることができる。
【0013】
固定接合部は、バイパス導体を鉄道車両の導体、好ましくは主導体に電気伝導するように固定するのに用いられ、固定接合部間には電位差が存在し、その電位差は、導体における固定接合部間の電位差よりも低い出口電圧を生成するためにバイパス導体で使用される。バイパス導体は、好ましくは導体の一部に沿って、好ましくは集電装置、接触ストリップ、摺動装置または接点ブラシに配置される。バイパス導体の抵抗は変更可能であり、それは送信用電子部品に伝達される出口電圧を変更できることを意味する。例えば、バイパス導体の抵抗は、導体の長さ、導体の材料、及び/または導体の断面積に基づいて調整することができる。本発明では、バイパス導体の抵抗と、消費機器による電流消費中の電圧降下とが相関することが分かっている。この点において、バイパス導体の抵抗を可能な限り小さくして、消費機器が電流を取り込む際にバイパス導体を横切る電圧降下が可能な限り小さくなるようにすべきであることも分かっている。固定接合部間の電位差は、例えば、2つの固定接合部間のバイパス導体の距離や長さを変えることによって変化させることもできる。また、バイパス導体及び固定接合部も、好ましくは高電位差で配置される。また、消費機器が鉄道車両のベースフレームに電気的に導通するように接続され、消費機器自体が第2の固定接合部として用いられる場合、バイパス導体に出口電圧を発生させるには、1つの固定接合部で十分であり、この出口電圧は、消費機器の供給電圧を発生させるのに使用される。
【0014】
本発明に係る電力供給装置は、複数の消費機器に電力を供給するために使用することもできる。したがって、本発明に係る電力供給装置は、鉄道車両の異なるポイントでデータを取得する複数の取得ユニットに電力供給するために使用することもでき、したがって、バッテリまたはアキュムレータなしで動作させることができる。本発明では、バッテリは、電力を電気化学的形態でバッテリ内に完全に貯蔵する貯蔵装置である。本発明では、アキュムレータは充電可能なバッテリのことである。
【0015】
送信用電子部品は、送信用電子部品がバイパス導体の出口電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成されている。したがって、本発明に係る送信用電子部品により、消費機器自体を損傷せずに、または消費機器の動作を損なわずに、消費機器に電圧を供給できるように、バイパス導体の出口電圧を適合させることが可能になる。その理由は、バイパス導体の出口電圧が、例えば電圧変動する可能性があるから、且つ/または、消費機器に供給する過程で消費機器に伝わるべきでないピーク電圧を有する可能性があるからである。このように、本発明に係る電力供給装置では、メンテナンスの影響を受けやすいバッテリまたはアキュムレータを使用せずに、消費機器に電力を簡単且つ高信頼度で給電することが可能である。バイパス導体として機能する簡素な追加の導体を導体に取り付けることにより、異なる電位に起因する複雑な構造及び複雑な配線または実現できないような配線も回避される。本発明に係る電力供給装置のさらに他の効果は、バイパス導体が交流電圧または直流電圧の取り出しが可能であるため、電力供給装置が直流電圧及び交流電圧ネットワークの両方で作動し得ることである。電力供給装置、特にバイパス導体が、固定接合部を介して導体に直接、好ましくは高電位で接続されることにより、鉄道車両の内部電気系統へ介入する必要もなくなり、異なる鉄道車両での共通の使用も鉄道車両の運転者に関係なく可能になる。
【0016】
バイパス導体の出口電圧は、送信用電子部品により、消費機器に供給するための供給電圧として変更されずに用いることが考えられる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、送信用電子部品は、電流変換または電圧変換のための部品を有してもよく、この部品によって、バイパス導体の出口電圧と消費機器の供給電圧が異なるようにバイパス導体の出口電圧が変換される。本発明では、電流変換用部品または電圧変換用部品は、電流制限用部品または電圧制限用部品として、または電流低下用部品または電圧低下用部品として、または電流増大用部品または電圧増大用部品として構成することができる。電圧変換用部品は、例えば、AC(交流)電圧コンバータまたはDC(直流)電圧コンバータにすることができる。DC/DCコンバータは、入力に供給される直流電圧を、より高い電圧、より低い電圧、または電圧レベルが反転した直流電圧に変換する電気回路である。本発明では、交流電圧コンバータは、交流電圧コンバータの入力に存在する交流の入力電圧を、交流電圧コンバータの出力で取り出し可能な交流出力電圧に変換する電気部品である。交流電圧コンバータの出口電圧は、交流電圧コンバータの入口電圧に対して、小さくても、大きくても、等しくてもよい。好ましくは、出口電圧が入口電圧より常に大きい昇圧コンバータを用いて電圧が上げられる。バイパス導体の出口電圧は、好ましくは、出口電圧値がその入口電圧値よりも常に小さい降圧コンバータを用いて下げられる。例えば、0.35Vと16Vの間の電圧変換用部品の入口電圧は、電圧変換用部品によって3.8Vの出口電圧に変換できる。このようにして、消費機器の供給電圧を確実かつ効果的に供給できる。好ましくは、電圧変換用部品は直流電圧を供給する。さらに好ましくは、電圧変換用部品は3.8Vの低電圧を供給する。最も好ましくは、電圧変換用部品は、3.8Vの直流電圧を供給する。電圧変換は、整流の前または後に、整流とは別に行うことができる。
【0017】
送信用電子部品は整流用部品を有していてもよい。整流用部品は、バイパス導体から取り出された交流電圧を整流し、その後に直流電圧を供給電圧として消費機器に供給することができる。整流用部品として公知の整流器を使用することができる。半導体整流器が好ましい。整流用部品の代わりに、あるいは整流用部品に加えて、送信用電子部品は電流制限用部品または電圧制限用部品を有するようにしてもよい。このような電流制限用部品または電圧制限用部品により、簡単に過電圧または過大な電流に対する保護が可能になる。これにより、過電圧や過電流によって送信用電子部品または消費機器の下流の部品が損傷したり、その機能が損なわれたりしなくなる。別々の過電圧保護をもたらす抑制ダイオードまたはバリスタのような電子工学部品を電圧制限用部品として使用することができる。しかしながら、好ましくは、電流制限用部品または電圧制限用部品としてアクティブリミッタが使用される。このようなアクティブリミッタは、アクティブリミッタの供給ライン上で電圧または電流を連続的に測定し、過電圧及び/または過電流が流れた場合に下流の要素を絶縁する。アクティブ電圧リミッタが特に好ましい。
【0018】
導体が交流電圧ネットワークによって給電される場合、すなわち導体及びバイパス導体に交流電圧が存在する場合、交流電圧として存在するバイパス導体の出口電圧は、好ましくは整流器と組み合わせたアクティブリミッタを使用し、消費機器に供給される前に整流しなければならない。鉄道車両の導体が直流電圧ネットワークによって給電される場合、すなわち、導体及びバイパス導体に直流電圧が供給される場合、消費機器への供給に必要な直流電圧がすでにあるため、バイパス導体の出口電圧を整流する必要はなく、送信用電子部員の整流用部品を省略できる。送信用電子部品が整流用部品及び/または電流制限用部品もしくは電圧の制限用部品を有するため、本発明に係る電力供給装置は、直流電圧ネットワークで運転される鉄道車両と、交流電圧ネットワークで運転される鉄道車両の両方で使用できる。
【0019】
電力供給装置の送信用電子部品は、少なくとも1つの蓄電用部品、好ましくは少なくとも1つのコンデンサを有する充電用電子部品を有するように構成できる。蓄電は、バイパス導体における電圧降下が低すぎるか存在しないためにバイパス導体が消費機器用の供給電圧を生成するための出口電圧をもたらさない場合の埋め合わせに使用できる。これにより、バイパス導体からの給電が不十分なときでも、例えば、車両基地での休止時間中や、運転中の短い制動状態の間でも、消費機器の確実な動作が保証される。蓄電用部品として好ましいのは、充電用電子部品を介して給電されるコンデンサである。さらには、充電用電子部品から給電される、いわゆるスーパーキャパシタを蓄電用部品として使用することが好ましい。電圧変換用部品及び/または整流用部品及び/または電流もしくは電圧制限用部品も、蓄電装置から電力供給することが考えられる。また、蓄電システムが完全に放電したときに、必要に応じて交換可能な追加の非常用バッテリによってシステムに給電することも考えられる。しかしながら、この非常用バッテリは例外的な場合にのみ使用されるため、メンテナンスと交換の間隔は比較的長い。
【0020】
電力供給装置は、電圧変換用部品、特に電圧変換器をモニタリングするためのモニタリング用電子部品を有するようにしてもよい。電圧変換用部品は、好ましくは蓄電用部品によって生成されるパルスにより初めに起動(イグニッション)することができる。電圧変換用部品をモニタリングするためのモニタリング用電子部品は、電圧変換用部品、好ましくは電圧変換器の特に初期動作をモニタリングし、例えばバイパス導体の出口電圧が不安定な場合に、不要な起動プロセスを防止する。このように、モニタリング用電子部品は、消費機器の安全な動作に寄与し、不要な起動プロセスを防止することにより蓄電用部品の不要な放電を防止する。
【0021】
バイパス導体は、主に真っ直ぐな導電体の形で構成できる。このことは、言い換えると、バイパス導体が好ましくは分岐しておらず且つ/または巻かれていない導体であることを意味する。これは、誘導によって電力を供給する場合に比べ、導体で電圧を取り出すために複雑に巻かれた導体が必要ないという効果をもたらす。また、バイパス導体は、好ましくはワイヤまたは撚り合わせたワイヤとして構成されるので、バイパス導体は市場で入手可能な標準化されたケーブルまたはワイヤから簡単に製造できる。
【0022】
バイパス導体及び/または消費機器の入力抵抗は、導体の内部抵抗よりも大きくすることができる。このことは、有利なことに、バイパス導体を流れる電流が小さくなると、電圧が著しく低くなることを意味する。好ましくは、導体の内部抵抗により2つの固定接合部間で最大100Vの電圧降下が生じ、バイパス導体において少なくとも0.2Vの電圧、ただし16V以下の電圧が発生する。
【0023】
固定接合部間の電位差が最大100Vであると効果的であることが分かっている。導体、特に主電流導体の電流伝達ポイント、例えば集電装置とカテナリの接点と接地電位との間の電位差は、通常数1000V、好ましくは15kVであるため、電力供給装置と消費機器の損傷を避けるために、バイパス導体によって2つの固定接合部間に低電圧を取り出すことが必要になる場合がある。このような損傷を避けるために、固定接合部間の電位差が最大100Vとなるように固定接合部を導体に配置して、バイパス導体によって取り出せる電圧も最大100Vとなるようにすることが考えられる。好ましくは、0.1Vと4Vの間、さらに好ましくは0.4Vのバイパス導体の出口電圧が、バイパス導体により生成される。
【0024】
バイパス導体の下流に接続された送信用電子部品によって給電できる消費機器の供給電圧は、好ましくは3.3Vである。充電用電子部品が設けられている場合、その入口電圧は好ましくは3.8Vであり、電圧変換用部品の入口電圧は好ましくは0.35Vから16Vである。供給電圧を消費機器の要求に合わせる必要があるため、バイパス導体で取り出せる電圧が比較的低く、消費機器に供給するのに必要な供給電圧よりも低い場合、バイパス導体で取り出せる電圧を上げる必要があることも考えられる。
【0025】
導体への電力の不十分な供給、ひいては消費機器への不十分な給電を補うために、電力供給装置が発電ユニットを有するようにしてもよい。発電ユニットは、燃料電池、光電発電機、圧電発電機、動力発電機及び/または熱電発電機として構成することが考えられる。例えば、風力発電、光起電力、動圧、例えば動作ユニットまたは動作ユニット部品の動作による運動エネルギ、温度勾配または圧力変化などの種々のエネルギ源からのエネルギを、発電ユニットで消費機器に電力を供給するために使用できる。電力供給装置は、バイパス導体に加えて発電ユニットを有するようにしてもよい。しかしながら、電力供給装置にバイパス導体を含まずに、電力供給装置を発電ユニットと送信用電子部品のみで構成して、外部の電力ネットワークに依存せずに完全に自己完結型の動作を可能にすることも考えられる。
【0026】
本発明に係るモニタリングシステムは、本発明に係る少なくとも1つの電力供給装置と、取得ユニットとして構成されるとともに鉄道車両のモニタリング、特に動作ユニットのモニタリングを行う消費機器とを備え、取得ユニットによって、対応する動作ユニットの様々な特性についてデータを記録することができる。取得ユニットによってモニタリングされる鉄道車両の動作ユニットは、例えば、集電装置、接地ブラシ、潤滑装置、接触ストリップ、摺動装置、接地ブラシ、シャフト接地装置などにすることができる。これに関連し、特性は、動作ユニットの対象固有の特性であると理解されるものである。特性は、動作ユニットの対象固有の性質である。特性は、識別子、製造年、車両、使用、走行時間、材料、摩耗、故障、損傷、位置、画像、音、記録時間などの特性の種類から選択できる。本発明では、データは、動作ユニットの摩耗を記録するための実測値などの特性の値を意味すると理解されるものである。データは、例えば、呼称、シリアル番号、年、日付、車両型式、測定値、故障説明、損傷説明、位置詳細、画像ファイル、音声ファイル、時間、期間等にすることができる。
【0027】
動作ユニットがルーフ集電装置及び/又はパンタグラフである場合、好ましくは以下の特性、すなわち集電ストリップの形式、集電ストリップの材料、初期高さ及び摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、集電装置のキロメートル単位での走行時間、第1の集電ストリップのミリメートル単位での摩耗の詳細、第2の集電ストリップのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0028】
動作ユニットがサードレール集電装置である場合、好ましくは次の特性、すなわちヒューズの形式、集電ストリップの形式、集電ストリップの材質、初期高さ及び摩耗高さ、キロメートル単位での車両の走行時間、キロメートル単位での集電装置の走行時間、ミリメートル単位での集電ストリップの摩耗の詳細を使用できる。
【0029】
動作ユニットが接地ブラシである場合、好ましくは以下の特性、すなわち集電リングの材質、ブラシの材質、ブラシの断面積、初期高さ及び摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、接地ブラシのキロメートル単位での走行時間、複数のカーボンブラシのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0030】
動作ユニットがシャフト接地システムである場合、好ましくは以下の特性、すなわち平行送り材料、ファイバの材質、ファイバの断面積、初期断面積と摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、接地システムのキロメートル単位での走行時間、第1ファイバと第2ファイバのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0031】
動作ユニットが車輪フランジ潤滑システムである場合、好ましくは以下の特性、すなわち潤滑ピンの材質、初期長さ及び摩耗長さ、車両のキロメートル単位での走行時間、潤滑ピンのキロメートル単位での走行時間、ミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0032】
本発明に係るモニタリングシステムは、同一及び/または異なる形式の複数の動作ユニットを有する鉄道車両のモニタリングに使用することもできる。モニタリングシステムが、動作ユニットからのデータを記録するための複数の取得ユニットを有することも考えられる。複数の取得ユニットのそれぞれを個別の電力供給装置に接続してもよいし、1つの独立した電力供給装置が複数の取得ユニットに電力を供給するようにしてもよい。
【0033】
有利には、動作ユニットの異なる特性について取得ユニットによって記録されるデータを、それらの特性に割り当てることができる。データは、値、文字、またはファイルで表すことができる。特性は、割り当てられたデータとともに、それぞれの取得ユニットからモニタリングユニットに送信できるデータセットを形成する。モニタリングユニットは、モニタリングシステムの一部にしてもよく、上位ユニット及び/または下位ユニットとして別のシステムに属するようにしてもよい。モニタリングシステムが複数の取得ユニットを有し、そのデータセットを少なくとも1つの個別のモニタリングユニットに送信してそのユニットで統合することも考えられ、複数のモニタリングユニットを例えば異なる用途のために存在させることもできる。データセットはモニタリングユニットのデータベースに保存され、モニタリングユニットの評価装置によって連続的または必要に応じて処理される。モニタリングユニット及び/または評価装置は、ソフトウェアアプリケーションがインストールされたコンピュータで形成できる。データセットを相互に関連させるために、評価装置によってデータセットのパターン分析を行い、出力装置、例えばスクリーンを用いて出力することができる。このパターン分析により、データセット間に相互関係が存在する場合は、その相互関係を求めることができる。そして、相関関係から因果関係を一定間隔で導き出して、その因果関係を用いてモニタリング対象の鉄道車両の運転を最適化できる。例えば、ある特定種類の動作ユニットの故障の発生を、ある特定種類の鉄道車両と相互に関連付けることができる。このことにより、故障の原因及び/または鉄道車両と故障との因果関係を特定し、的を絞って故障を排除することが可能になる。
【0034】
モニタリングシステムは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置されたセンサ装置を備えた取得ユニットを有するようにしてもよい。そして、センサ装置は、例えば、対応する動作ユニットの機能及び運転時間を測定可能なセンサを有するようにしてもよい。例えば、センサ装置は、動作ユニットの部品の摩耗に関するデータを記録するために使用できる。センサ装置は、好ましくは集電装置の摩耗を検出するために使用され、より好ましくは集電装置の接触ストリップの摩耗を検出するために使用される。
【0035】
モニタリングシステムの取得ユニットは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置された送信装置を有するようにしてもよい。そして、この送信装置は、データセット、特にセンサ装置によって記録されたデータを、好ましくはモニタリングユニットに送信することができる。例えば、送信装置は、動作ユニットの形式指定と、センサによって測定された値と、さらに運転時間とからなるデータセットを送信できる。そして、送信装置は、センサについて記録されたデータを、対応する特性に割り当てる。動作ユニットまたは鉄道車両の製造番号や製造年などの送信されるデータセットを送信装置がすでに記憶している場合もある。データは、データ接続部を介して送信することができる。原則として、データ接続部はケーブル接続部で形成することができる。さらに、データ接続部は無線接続部や他の適切な種類のデータ接続部にすることもできる。データ接続は、連続して、一定間隔で、または事象ベースで成立させることができる。全体としては、データ接続の種類に関係なく、例えば評価のために動作ユニットのデータセットを送信するための送信装置を使用することが可能になる。データ接続は、外部ネットワークを介して成立させることが考えられる。データ接続は、モバイルネットワーク、WLAN、衛星接続、インターネット、その他の無線規格を、単独で、または組み合わせて成立させることができる。送信装置によって送信されるデータの送信先、例えばモニタリングユニットまたは評価装置は、動作ユニット、鉄道車両、及び/または送信装置から空間的に離れていてもよい。特に、このことにより、鉄道車両のデータセットを集中的に評価することが可能になる。
【0036】
本発明に係るモニタリングシステムの取得ユニットは、時間センサ及び位置センサを備えるようにして、対応する動作ユニットの取得時間とその位置(ローカル位置)を検出できるようにしてもよい。取得時間とローカル位置は、それぞれデータセットとしてデータベースに格納することもできる。ローカル位置により、例えば、衛星ナビゲーションにより鉄道車両及び/または関係する動作ユニットの位置を特定することができる。これにより、とりわけ、特定のデータセットがルート上のどの地点で記録されたかを判断することが可能になる。このことにより、ある事象及び/またはこの時点で記録されたデータセットに、関係するローカル位置を割り当てることが可能になる。パターン分析が実施されると、例えば、取得時間において記録されたローカル位置と、動作ユニットで検出されたエラーとの間で相関関係を成立させることができる。そして、例えば、相対的に増えた動作ユニットの摩耗または特定の故障を、季節や経路に割り当てることができる。
【0037】
本発明に係るモニタリングシステム、特に取得ユニットは、電力計を有するようにしてもよい。この電力計は、電流測定装置及び/または電圧測定装置として構成することが好ましい。バイパス導体は、導体での電圧降下を測定するために使用することが好ましく、電圧降下は導体の抵抗により電流に比例し、この電流により、主電源の電圧、特にカテナリ(カテナリ式電線)の主電源の電圧を介して、電力を決定することができる。電力計は、例えば主導体に印加される走行電流、及び/またはバイパス導体によって取り出される電圧、及び/または鉄道車両によってネットワークにフィードバックされる電力量、及び/またはバイパス導体によって送信用電子部品に伝達される電力、及び/またはバイパス導体によって取得ユニットに伝達される電力を検出するために使用することができる。さらに、このような電力計は、電圧変化、特に大きな電圧降下に起因するアーク放電、すなわち、例えばカテナリと集電装置の接触ストリップとの間の電気アークを検出するために使用することができる。さらに、鉄道車両の走行プロファイルを、エネルギ取得量を評価することによって記録し、モデル化することができる。走行電流、すなわち主導体を流れる電流の測定は、交流電流ネットワークにおける負の半波の記録及び/または高インピーダンスの電圧測定回路によって実施することが好ましい。
【0038】
エネルギ測定ユニットがアンロードバイパス導体を有するようにして、電圧または電流の正確な測定を可能にすることも考えられる。これに関し、アンロードバイパス導体とは、例えば消費機器の消費により電流が流れないバイパス導体をいう。これは、特に測定の間に、バイパス導体を一時的に無負荷に切り替えることによって行うことができる。これに代えて、またはこれに加えて、電力測定ユニット(エネルギ測定ユニット)を、取得ユニットに電力を供給するためのものに加えて、無負荷の別のバイパス導体として構成することも考えられる。
【0039】
モニタリングシステムは、少なくとも1つの動作ユニットを有するようにしてもよい。モニタリングシステムを、複数の動作ユニットを有するようにして、そのデータをデータセットとしてデータベースに保存することもできる。動作ユニットは、取得ユニット及び/またはデータ接続部を有する送信装置を介して上位の評価装置に接続することができる。例えば、モニタリングシステムは、集電装置、接地ブラシ、潤滑装置、接触ストリップ、摺動装置または接点ブラシを、動作ユニットとして有するようにしてもよい。好ましくは、モニタリングシステムは、集電装置、摺動装置または接点ブラシのような通電動作ユニットを備える。特に好ましくは、モニタリングシステムは、電力供給装置のバイパス導体が配置される動作ユニットとして集電装置を備える。モニタリングシステムは、複数の集電装置をモニタリングするための複数の取得ユニットを有するようにしてもよい。
【0040】
鉄道車両に配置された消費機器、特に鉄道車両をモニタリングするための取得ユニットに配置された消費機器、特に動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットに配置された消費機器に電力を供給するための本発明に係る方法では、導体を通る電流の流れを発生させることによって、鉄道車両の導体、特に集電装置に第1の電圧が印加され、導体における2つの固定接合部間でバイパス導体によって第2の電圧がバイパス導体の出口電圧として取り出され、このバイパス導体の出口電圧は消費機器に電力を供給するために用いられる。
【0041】
本発明に係る方法の特徴、特性、及び効果に関して不必要な繰り返しを避けるため、原則的に、本発明に係る電力供給装置及び本発明に係るモニタリングシステムについての前記開示を参照されたい。これは、原則的に、方法に関して開示され説明された特徴は、装置に関して説明され特許請求可能であるとみなされるべきであることを意味し、その逆も同様であることを意味する。
【0042】
好ましくは、消費機器は取得ユニットとして構成され、本発明に係る電力供給方法によって給電できる取得ユニットは、集電装置、接地ブラシ、潤滑装置、接点ブラシ、摺動装置、接点ブラシなどをモニタリングするために使用される。
【0043】
バイパス導体は、バイパス導体が導体の一部を介して導体から電圧を取り出して、消費機器の電力供給のためにバイパス導体の出口電圧を生成するように、導体に、好ましくは主導体に配置される。バイパス導体によって取り出される電圧は、固定インターフェース間の電位差によって決まり、そのため、バイパス導体の長さと固定インターフェース間の距離とを調整することによって、取り出される電圧を変えることができる。また、バイパス導体の抵抗を変えることによって、バイパス導体の出口電圧及び/またはバイパス導体を流れる電流を変化させるも考えられる。バイパス導体の出口電圧を消費機器の電力供給に用いるために、バイパス導体の出口電圧を消費機器の供給電圧として直接使用することができ、または送信用電子部品に供給して、この電子部品により、バイパス導体の出口電圧を変換、変更、安定化させ、及び/またはバイパス導体によって伝達される電力を蓄えることができる。
【0044】
有利には、消費機器が必要とする供給電圧は、出口電圧の電圧変換によって生成される。これは送信用電子部品内で行われる。電圧変換には、電圧変換器または電圧変成器などの電圧変換用の部品を使用することが好ましい。電圧を変換するステップにより、消費機器に必要な供給電圧を確実にもたらすことが可能になる。本発明では、「バイパス導体の出口電圧の変圧」という用語は、バイパス導体の出口電圧を制限すること、または低下もしくは上昇させることを意味する。電圧を制限することまたは低下させることにより、電圧ピークなどによって消費機器が損傷しないようにすることができる。しかしながら、出口電圧を上昇させることも考えられる。バイパス導体の出口電圧は、出口電圧が入口電圧よりも常に大きい昇圧コンバータを用いて上昇させることが好ましい。バイパス導体の出口電圧は、出口電圧が入口電圧よりも常に小さい降圧コンバータを用いて低下させることが好ましい。電圧変換は整流前でも整流後でも、整流とは別に行うことができる。
【0045】
バイパス導体の出口電圧は整流することができる。整流により、導体が交流ネットワークと直流ネットワークのどちらで動作しているかに関係なく、消費機器に直流電圧を供給することが可能になる。バイパス導体の出口電圧は整流された後に電圧変換されることが好ましい。さらに、バイパス導体の出口電圧は、制限され、整流された後に、電圧変換されることが好ましい。
【0046】
消費機器の供給電圧は、蓄電用の少なくとも1つの部品によって少なくとも一時的にもたらされる。これにより、導体への給電に関する故障や障害には関係なく、消費機器、特に取得ユニットに蓄電ユニットから給電できるという効果が得られる。好ましくは、バイパス導体で取り出された電圧が整流及び/または制限された後に電力が蓄電用部品に供給され、消費機器に給電するのに必要な供給電圧が蓄電用部品により得られる。
【0047】
本発明に係る方法の一部として、走行電流を測定し、及び/またはアークを検出し、及び/または走行プロファイルを記録することができる。バイパス導体を導体に、好ましくは主導体に配置する導体の固定接合部が分かっていると、それらの間の電位差を推測して、導体の走行電流及び電流曲線及び/または電圧曲線をバイパス導体の電位差と特性により決定できる。アークの特性により、バイパス導体における電圧を決定することによって簡単な方法でアーク検出が可能になる。アークが発生すると、例えば集電装置の接触ストリップとカテナリの間で、特徴的な電圧変化及び/またはバイパス導体を流れる電流の低下を検出することができる。このことにより、望ましくないアーク放電の発生を検出し、供給ネットワーク及び/または鉄道車両、特に集電装置を保守するための適切な措置を講じることができる。供給ネットワークから主導体を通る電力の消費がバイパス導体の電力取得量と相関するため、バイパス導体の電力取得量から鉄道車両の走行プロファイルを導き出すことができる。特に、鉄道車両のアクセル操作及びブレーキ操作を走行プロファイル内の時間データ及び/または位置データとリンクさせることができ、例えば、ルートの拡張、ルートの保守、またはルートのシミュレーションを改善することができる。走行プロファイルに必要なデータ、特に制動プロセス及び/又は加速プロセスに関連するデータは、バイパス導体の電力取得量から簡単な方法で導き出すことができ、加速プロセスではバイパス導体の電力取得量が増加して、主導体は増加した量の電力を伝達し、制動プロセスでは電力取得量が小さくなり、主導体は少量の電力しか伝達しない。
【0048】
この方法のさらなる有利な実施形態は、装置の請求項1の従属請求項及び装置の請求項10の従属請求項の特徴の説明から得られる。
【0049】
以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は、集電装置に配置された電力供給装置を有する本発明に係るモニタリングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、パンタグラフとして構成され、且つ主導体4として構成された鉄道車両の導体の一部を構成する集電装置7とともに、電力供給装置1を備えたモニタリングシステム15の概略図を示している。送信用電子部品5は、電力をバイパス導体6から取得ユニット2の形態の消費機器へ送信するために用いられる。電力を供給ネットワークから鉄道車両に供給するために集電装置7の接触ストリップを介して集電装置7が接続されるカテナリは図示されていない。また、集電装置7がルーフの上に配置され、システムの接地(アース、グランド)を構成するレール18の上を移動可能な鉄道車両も図示されていない。また、
図1は、電力供給装置1の固定接合部8が、固定接合部8間に最大100Vの電位差が存在するように、集電装置7上に配置されることを示している。これに対して、電流の伝達ポイント、つまり集電装置7の接触ストリップとカテナリ(図示せず)が接触するポイントと接地電位との間には15kVの電位差がある。バイパス導体6は、主導体4よりも小さい電流の流れで、電気バイパスラインを介して少なくとも0.2V、好ましくは0.4Vの電圧を発生させる。図示の実施形態によれば、バイパス導体6は交流電圧を発生させる。この交流電圧は整流用部品10で整流され、電圧はアクティブリミッタ11によって制限される。整流用部品10の出口電圧から3.8Vの電圧が電圧変換用部品9、この場合は電圧変換器により生成され、この電圧は0.35Vから16Vの間であってもよい。蓄電用部品13として用いられるコンデンサは、充電用電子部品12を介して給電されるため、鉄道車両が停止しているとき、または運転中の制動時にバイパス導体6の電圧降下が低くなりすぎるときでも、取得ユニット2に必要な3.3Vの電源電圧を供給することができる。したがって、
図1は、電流がバイパス導体6から整流用部品10及び電圧制限用部品11を通り、さらに電圧変換用部品9及び充電用電子部品12を通って取得ユニット2へ流れる実施形態を示している。図示された電力供給装置の構成により、集電装置7で取り出された交流電圧から、取得ユニット2を動作させるのに必要な直流電圧を安全かつ確実に取得ユニット2に供給することができる。取得ユニット2に加えて、アクティブリミッタ11、整流器10、電圧コンバータ9にも、充電用電子部品12の蓄電用部品13を介して給電される。電圧コンバータ9の初期の起動は、蓄電用部品13によって必要なエネルギも賄われるパルスによって行われる。蓄電用部品13の不要な放電を避けるために、電圧コンバータ9の起動(イグニッション)をモニタリング(監視)して、例えばバイパス電圧が不安定な場合に不要な起動プロセスを防止するモニタリング用電子部品14が設けられている。取得ユニット2は、鉄道車両に固定配置されて、この例では集電装置7である動作ユニット3をモニタリングするセンサ装置16を備え、取得ユニット2は集電装置7の種々の特性のデータを記録するために使用される。データは、送信装置17を用いて評価装置(図示せず)に送信することができる。例えば、集電装置7の接触ストリップの状態を判定し、接触ストリップの保守及び/または交換を適時に実施することができる。
【国際調査報告】