IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浙江極▲け▼智能科技有限公司の特許一覧 ▶ 威睿電動汽車技術(寧波)有限公司の特許一覧 ▶ 浙江吉利控股集団有限公司の特許一覧

特表2025-500962電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体
<>
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図1
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図2
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図3
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図4
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図5
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図6
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図7
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図8
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図9
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図10
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図11
  • 特表-電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/04 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
H02P23/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537494
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022108470
(87)【国際公開番号】W WO2024020914
(87)【国際公開日】2024-02-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523284985
【氏名又は名称】浙江極▲け▼智能科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG ZEEKR INTELLIGENT TECHNOLOGY CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523284996
【氏名又は名称】威睿電動汽車技術(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】VIRIDI E-MOBILITY TECHNOLOGY (NINGBO) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 198, Yinwan East Rd., Hangzhou Bay New Zone, Ningbo, Zhejiang China
(71)【出願人】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 克清
(72)【発明者】
【氏名】馬 迎国
(72)【発明者】
【氏名】陳 啓苗
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB04
5H505GG02
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505JJ22
5H505KK06
5H505LL01
5H505LL38
5H505LL41
5H505LL42
5H505PP01
(57)【要約】
本願は、電気自動車両の分野に属し、具体的には、電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。本願の電気自動車のモータ制御方法は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップと、相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するステップであって、相対変形量が第1の閾値であることは駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、ステップと、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップと、出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するステップと、を含む。これにより、モータ及び伝動系に大きな振動や騒音が発生するという問題を低減ないし回避する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータ制御方法であって、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップと、
前記相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するステップであって、前記相対変形量が第1の閾値であることは、前記駆動歯と前記伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯と前記被動歯との離脱時点で前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記離脱時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、ステップと、
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップと、
前記出力トルクによって、前記駆動歯を前記被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するステップと、を含む、
ことを特徴とする電気自動車のモータ制御方法。
【請求項2】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の速度差分値と、前記離脱時点から前記駆動歯と前記被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、
前記第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、前記出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
前記第1のトルクと前記第2のトルクとは、向きが逆であり、前記第1のトルクは、前記離脱時点から前記モータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、前記第2のトルクは、前記変換時点から前記接触時点までの時間間隔における必要なトルクである、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記第1のトルク及び前記第2のトルクは、以下のようにして決定され、
前記変換時点で、前記予め設定されたバックラッシ値、前記第1の速度差分値及び前記第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、前記第2の車輪端の換算回転速度は、前記変換時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、
前記第2の速度差分値及び前記第2の車輪端の換算回転速度によって、前記変換時点で前記駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、
前記第2の駆動歯の回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、前記離脱時点と前記変換時点との継続時間長、及び前記第2の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、前記第1のトルクを決定し、
前記第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、前記変換時点と前記接触時点との継続時間長、及び前記第3の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、前記第2のトルクを決定し、前記第3の駆動歯の回転速度は前記接触時点で前記駆動歯の回転速度である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
前記第1の積が前記予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、前記第1の速度差分値と、前記離脱時点から前記変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、前記出力トルクが前記第1のトルクと前記第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
前記第1のトルクと前記第2のトルクとは、向きが同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項5】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、前記第3の車輪端の換算回転速度は、前記目標時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、前記目標時点は、前記第2の時間長における前記駆動歯と前記被動歯とが再接触する時点である、ステップと、
前記第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び前記離脱時点と前記目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、前記第3のトルクは、前記離脱時点から前記目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、前記出力トルクは、前記第3のトルクを含む、ステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御方法。
【請求項6】
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するステップは、さらに、
現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、
前記第3の速度差分値に基づいて、前記駆動歯と前記被動歯との相対変位を決定するステップと、
前記相対変位に基づいて、前記相対変形量を決定するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項7】
電気自動車のモータ制御装置であって、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュールと、
前記相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、前記相対変形量が第1の閾値であることは前記駆動歯と前記伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯と前記被動歯との離脱時点で前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記離脱時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュールと、
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュールと、
前記出力トルクによって、前記駆動歯を前記被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュールと、を含む、
ことを特徴とする電気自動車のモータ制御装置。
【請求項8】
プロセッサ、及び前記プロセッサと通信可能に接続されたメモリを含む電気自動車であって、
前記メモリは、コンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行して、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現する、ことを特徴とする電気自動車。
【請求項9】
コンピュータ実行命令が記憶された、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、
ことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~6のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気自動車両の分野に関し、特に電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車両の技術の発展に伴い、電気自動車両の適用範囲が広くなってきている。ユーザにとって、運転快適性は、電気自動車両を選択する要因の一つである。一方、電気自動車両の駆動中に、モータの出力トルクが正負トルクに変化すると、モータの歯車噛み合い向きが変化することで歯打ちが発生し、ユーザが目立つ振動や騒音が発生し、乗り心地に影響する。また、歯打ちは、歯車やスプライン等の伝動機構に損傷を与える可能性もある。
【0003】
従来、上記の問題を解決するために、モータの出力トルクに対して正負トルクを変化させる際に、出力トルクをフィルタ処理方法(例えば、トルク平滑化処理方法)で処理して振動や騒音を低減することが一般的であった。しかし、この方法ではまだ大きな振動や騒音が存在するため、ユーザの運転体験が悪いことを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、電気自動車の走行中、モータ及びその伝動系に大きな振動や騒音が発生するという問題を解決する電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本願の実施例は、電気自動車のモータ制御方法を提供し、このモータ制御方法は、
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップと、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するステップであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、ステップと、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップと、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するステップと、を含む。
【0006】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、
第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、
第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0007】
1つの可能な実施形態では、第1のトルク及び第2のトルクは、以下のようにして決定され、
変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、
第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、
第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、
第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0008】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、
第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0009】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点である、ステップと、
第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む、ステップと、を含む。
【0010】
1つの可能な実施形態では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するステップは、さらに、
モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、
第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定するステップと、
相対変位に基づいて、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0011】
第2の態様では、本願の実施例は、電気自動車のモータ制御装置を提供し、このモータ制御装置は、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュールと、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュールと、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュールと、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュールと、を含む。
【0012】
第3の態様では、本願の実施例は、電気自動車を提供し、電気自動車は、プロセッサ及びプロセッサと通信可能に接続されたメモリを含み、
メモリは、コンピュータ実行命令を記憶し、
プロセッサは、メモリに記憶されるコンピュータ実行命令を実行して、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現する。
【0013】
第4の態様では、本願の実施例は、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供し、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータ実行命令が記憶され、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0014】
第5の態様では、本願の実施例は、コンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムを含み、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0015】
本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法、装置及び記憶媒体は、モータの駆動歯が噛み合い向きに変化する際の動的過程を解析し、モータの高精度な駆動歯位置及び回転速度の測定、及びモータのトルクの迅速調整という特徴を両立させ、モータの出力トルクの向きが変動しようとしていることが検出されたとき、駆動歯のトルクを制御することにより能動歯寄せ動作が行われ、駆動歯と被動歯とが離脱してから再接触する際の速度差分を小さくすることで、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ないし解消する。かつ、本願は、電気自動車の既存のハードウェアの変更や新たなセンサの追加を必要とせず、車輪端の回転速度、モータの駆動歯の回転速度、バックラッシの計算のみで、歯寄せる制御を実現する。本願は、出力トルクの向きが変動しようとした場合の出力トルクの低下スロープ又は上昇スロープに対するモータの制約を最大に開放することを可能にして、モータの出力トルクをユーザの操作や要望に追従させることが可能となり、関連技術においてモータの出力トルク低下スロープや上昇スロープの制限によるアクセル緩み後の加速感やアクセル踏み増しの応答性が悪いという問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来技術の説明において用いられる必要がある図面を簡単に紹介する。無論、以下の説明における図面は本願に係る実施例の一部であり、当業者は、創造性作業を行わないことを前提として、これらの図面に基づいて他の図面を得ることかできる。
図1】関連技術によって提供されるトルクフィルタリング方法の曲線概略図である。
図2】本願の実施例によって提供される電気自動車の構成概略図である。
図3】本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法のフローチャートである。
図4】本願の実施例によって提供される駆動歯及び被動歯の運動行程を示す概略図である。
図5】本願の実施例によって提供される駆動歯を歯寄せるように制御する曲線概略図である。
図6】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例1の概略図である。
図7】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例2の概略図である。
図8】本願の実施例によって提供される図7に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
図9】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例3の概略図である。
図10】本願の実施例によって提供される図9に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
図11】本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御装置の構成概略図である。
図12】例示的な実施例によって示される電気自動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例の図面を参照しながら、本願の実施例における技術案を明確に、完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本願における実施例に基づいて、当業者は、本実施例によって教示する他のすべての実施例は、本願の保護の範囲に属する。
【0018】
本願の明細書及び特許請求の範囲、及び上記の図面において、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」等の用語(ある場合)は、決定の順番又は前後順位を記述する必要はなく、類似物を区別するために用いられる。なお、ここで説明した本願の実施例は、ここで図示或いは記載した以外の順序で実施可能であることは、適宜組み合わせて用いられるデータが入れ替えられてもよいことを理解すべきである。また、用語「含む」、「有する」、及びそれらの任意の変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連の工程又は要素を包含する工程、方法、システム、製品、又は機器は、必ずしも明示的に記載されたものに限定されず、明示的に記載されていないもの又はそれらに固有の他の工程又は要素を包含するものを含んでも良い。
【0019】
以下、まず本願に係る名詞を解釈する。
【0020】
トルクは、物体を回転させる特殊なモーメントの一種である。モータトルクはモータの出力トルクである。
【0021】
バックラッシは、一対の歯車が噛み合う場合の歯面間のクリアランスである。バックラッシは、歯車の噛み合いの円滑運転に必要なパラメータである。
【0022】
相対変形は、非剛性材料が力を受けたときに生じる歪みであり、ねじれ、バイアスなどを含むが、これらに限定されない。
【0023】
背景技術で提供される関連技術には、少なくとも以下のような技術的問題がある。
【0024】
世界各国が炭素排出量を厳しく管理するとともに、CO排出ピークアウトとカーボンニュートラルの日付表を提出し、燃料車の販売禁止スケジュールを提出するとともに、新エネルギー自動車、すなわち電気自動車を大いに奨励し、支援する。現在の新エネルギー適用範囲の拡大傾向から、電気自動車の開発、生産、及び適用規模は、いずれも高速で増加している。電気自動車の駆動手順は、全車コントローラ又はモータコントローラによって決定された目標トルクに基づいて、モータの出力トルクを制御することにより実現される。モータが正負トルク変化、すなわちモータの出力トルク向きが変化すると、モータの歯車噛み合い向きが変化することにより、力を受ける向きが一致せず、歯打ちが発生し、ユーザが知覚できる振動や騒音が発生し、乗り心地に影響する。また、歯打ちは、歯車やスプライン等の伝動機構に損傷を与える可能性もある。
【0025】
上記の問題に対して、関連技術では、モータの出力トルクを正負トルク変化させた場合に、出力トルクをフィルタリング方法で処理することで振動や騒音を低減しているが、このフィルタリング方法は、トルク平滑化処理方法であってもよい。図1に示すように、モータの出力トルクが正トルクから負トルクに変化する過程を例にとると、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程で駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との速度差分を時間的に積分し、すなわち図中のシャドー面積であり、このシャドー面積はバックラッシ値である。図1において、駆動歯と被動歯の相対運動は、それぞれ図1における
(以下は1、2、3、4と省略して表記する)という4段階に分けることができ、このうち1段階は正トルク低下及び弾性圧力解放段階、2段階は駆動歯の歯寄せ過程、3段階は駆動歯と被動歯の接触及び圧縮過程、4段階はモータの負トルク増大及び弾性圧力圧縮段階である。図1におけるΔNは、駆動歯及び被動歯が離脱時点での、車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との速度差分値を示すために用いることができる。
【0026】
上記関連技術には以下の問題がある。1)出力トルクを平滑化処理することで、小さいトルク又は零トルクで出力するように駆動歯をバックラッシにゆっくり通過させ、駆動歯がバックラッシを突き抜けるのに時間がかかり、正負トルクの変換時間がかかり、ユーザは、運転フィーリング上、モータの出力トルク応答が不連続及び中断してしまい、動力出力の遅れが感知され、運転性体験が悪い。2)駆動歯と被動歯とが回転速度差分値の最大値で接触し、慣性衝撃や衝突騒音が依然として発生し、振動や騒音の改善が明らかでない。3)駆動歯及び被動歯の弾性圧力解放段階でのトルクスロープが過大であり、そのためΔNが大きく、駆動歯がバックラッシを乗り越える際に初速が大きくなり過ぎ、駆動歯と被動歯との再接触時に速度差分が大きくなり過ぎ、電気自動車には、大きな衝撃や連続的なブレが生じるため、弾性圧力解放段階トルクスロープの低下や上昇が制限され、ユーザがアクセルを緩めてから電気自動車に加速度が依然としていたり、ユーザがアクセルをかけて電気自動車が加速されなかったりし、そのため、電気自動車の動的応答が悪い。
【0027】
本願は、電気自動車のモータ制御方法を提案する。伝動系においてモータの駆動歯が噛み合い向きに変化する際の動的過程を解析し、モータの高精度な駆動歯位置及び回転速度の測定、及びモータのトルクの迅速調整という特徴を両立させ、モータの出力トルクの向きが変動することが検出されたとき、駆動歯を制御することにより能動歯寄せ動作が行われ、駆動歯と被動歯とが離脱してから再接触する際の速度差分を小さくすることで、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ないし解消する。
【0028】
1つの実施例では、1つの応用シーンにおいて電気自動車のモータ制御方法を応用することができる。図2は、本願の実施例によって提供される電気自動車の構成概略図であり、図2に示すように、当該電気自動車は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、略称ECU)、左前車輪、左前車輪速度センサ、左前プロペラシャフト、前モータロータリートランス、前モータ、前モータ制御駆動装置、前モータリダクションデフ、右前プロペラシャフト、右前車輪速度センサ、右前車輪、高圧バッテリ、左後車輪、左後車輪速度センサ、後モータロータリートランス、後モータ、後モータ制御駆動装置、後モータリダクションデフ、左後プロペラシャフト、右後プロペラシャフト、右後車輪速度センサ、右後車輪、を含む。
【0029】
上記のシーンにおいて、前モータの出力トルクは前モータリダクションデフを介して左前車輪及び右前車輪に伝達され、後モータの出力トルクは後モータリダクションデフを介して左後車輪及び右後車輪に伝達され、そして左前車輪速度センサ、右前車輪速度センサ、左後車輪速度センサ及び右後車輪速度センサを介して対応する車輪の車輪速度をそれぞれ収集する。左前車輪速度センサ、右前車輪速度センサ、左後車輪速度センサ、右後車輪速度センサが検出した速度値は、ECUにより収集して処理される。ECUは、取得した車輪速度により、前モータ及び後モータの出力トルクのトルク向きが変化したか否かを決定する。トルク向きが変化されるとき、駆動歯を制御して歯寄せ動作を行い、これにより、駆動歯の回転速度を能動的に制御することを実現する。これにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際に初速が大きく、時間がかかるという問題を低減ないし回避できる。そのため、動力出力の遅延や振動、騒音の問題を低減ないし回避することができ、
【0030】
上記のシーンを組み合わせて、以下、いくつかの具体的な実施例を通じて本願が提供する電気自動車のモータ制御方法の技術案を詳細に説明する。
【0031】
本願は、電気自動車のモータ制御方法を提供する。図3は、本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法のフローチャートであり、図3に示すように、この方法は、以下のステップを含む。
【0032】
S301、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出する。
【0033】
本ステップでは、モータの出力トルクの向きが変更しようとする際に、モータの駆動歯と伝動系の被動歯との噛み合い向きが変更しようとするか否かを決定することができる。すなわち、モータの出力トルクの向きが変わると、駆動歯と被動歯とが離脱しようとすることを示し、つまり、駆動歯と被動歯との間の弾性力が開放されて、弾性力が減少して、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量も減少する。
【0034】
オプションとして、モータの運転中において、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きを継続的に検出し、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を継続的に算出することで、モータの出力トルクの向きが変化しようとすることが検出された場合に、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するようにしてもよい。
【0035】
オプションとして、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形は、歯車変形及び軸変形を含んでもよい。
【0036】
S302、相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定する。
【0037】
本ステップでは、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である。相対変形量が第1の閾値であることは、相対変形量がゼロと等しいことであってもよく、その時点が駆動歯と被動歯との間の離脱を開始した離脱時点である。駆動歯と被動歯との離脱及び再接触の過程は図4に示すようにすることができる。図4は、本願の実施例1によって提供される駆動歯及び被動歯の運動的過程を示す概略図であり、図4において、この運動的過程は、固定座標系を座標(park)変換で回転座標系に変換した後、駆動歯と被動歯との間の運動分解過程であってもよい。ここで、回転座標系の周波数は、車輪速度を変換すること(車輪速度が相対的に安定しており、相対的に安定した座標系周波数を得ることができる)によって得られる。駆動歯と被動歯との間の相対運動は、解放弾性段階、駆動歯と被動歯との離脱開始時点、駆動歯の自由回転段階、駆動歯と被動歯との再噛み合い開始時点、駆動歯と被動歯との接触開始時点及び弾性圧縮段階という6段階ないし時期と等価である。
【0038】
オプションとして、駆動歯と被動歯とが離脱し始めることは、さらに、駆動歯と被動歯の間の弾性変形が回復過程において、相対変形回復量が弾性変形量に等しいことで決定されてもよい。
【0039】
オプションとして、相対変形量が第1の閾値であり、すなわち駆動歯と被動歯とが離脱し始めるときに、その時点で第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との速度差分値を定め、その速度差分値を第1の速度差分値と表記してもよい。これにより第1の速度差分値に基づいて、モータに必要な出力トルクを決定しやすい。
【0040】
S303、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定する。
【0041】
本ステップでは、第1の速度差分値が決定された後、第1の速度差分値によりモータの出力トルクが算出され得るが、図5に示すように、図5は、本願の実施例によって提供される駆動歯を歯寄せるように制御する曲線概略図である。図5では、モータの出力トルクが正トルクから負トルクに変わる例をとし、駆動歯と被動歯の相対運動は、3段階に分解可能となっており、ここで、1段階は正トルク低下及び弾性解放段階、2段階は駆動歯の歯寄せ段階、3段階は負トルク増大及び弾性圧縮段階である。
【0042】
図5では、
12は、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御するために必要な第1トルクを示すために用いられてもよく、その機能は、モータ軸が歯車隙間域を速やかに通過するようにモータロータ(駆動歯)を加速することである。
12は、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御するために必要な第2トルクを示すために用いられてもよく、その機能は、歯車噛み合い面接触時の回転速度差分値を減少させ、回転速度差分値による慣性衝撃を低減することである。
は、ユーザがアクセルを緩めたときに、モータの出力トルクが低下し始める時点を示すために用いられてもよい。
は、駆動歯と被動歯とが離脱し始める時点を示すために用いられてもよい。
は、T12の第1のトルクの作用の終了時点を示すために用いられてもよく、その時点で、駆動歯の回転速度が加速から減速に変化し、予め設定した時点であってよい。
は、T23の第2のトルクの作用の終了時点を示すために用いられてもよく、すなわち、駆動歯と被動歯とが再接触する時点である。
01は、ユーザがアクセルを緩めてから駆動歯と被動歯とが離脱し始めるまでの継続時間長を示すために用いられてもよい。
12は、T12の第1のトルクが作用した時間長を示すために用いられてもよい。
23は、T23の第2のトルクが作用した時間長を示すために用いられてもよい。
13は、t12+t23の合計時間、すなわち、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御する時間長を示すために用いられてもよい。
は、車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度を示すために用いられてもよく、車輪端の換算回転速度と略称する。
O1は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
O2は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
O3は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
は、モータロータの回転速度、すなわち駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
R1は、t01が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt時点で駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
R2は、t12が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt時点で駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
ΔNは、t時点でNO1とNR1との速度差分値、すなわち駆動歯と被動歯との離脱時点で車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差分値を示すために用いられてもよい。
ΔNは、t時点でNO2とNR2との速度差分値、すなわちT12の第1のトルクの作用の終了時点で車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差分値を示すために用いられてもよい。
【0043】
オプションとして、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程において駆動歯と被動歯との速度差分値を時間的に積分してもよく、すなわち図5におけるシャドー面積であり、当該シャドー面積はバックラッシ値である。第1の速度差分値、すなわち、ΔNを決定することにより、モータの出力トルク、すなわち、ΔT12及びT23が算出される。
【0044】
オプションとして、図5における1段階で、弾性解放変形の積分範囲は、ユーザがアクセルを緩めてから被動歯が追従離脱してから、モータの出力トルクが0であるか又は弾性解放変形の積分値が弾性変形プリセット値に等しくなるまでとしてもよい。ここで、弾性変形プリセット値は、出力トルクと弾性解放変形とのマッピングテーブルで示されることができ、弾性解放変形の積算積分値が弾性変形プリセット値に達したときに、弾性解放変形が終了したとみなされる。マッピングテーブルの予め設定された方法は、静的に、全車又は伝動系のアセンブリで、モータに異なる閉塞トルクを与え、この閉塞トルクでのモータ軸の回転角度を測定してもよい。
【0045】
図5における2段階で、バックラッシ積分範囲は、弾性解放変形が終了してから、バックラッシ積分値が予め設定されたバックラッシ値S又は自己学習バックラッシ値Sに達するまでとしてもよい。
【0046】
図5における3段階で、弾性圧縮変形の積分範囲は、バックラッシ積分が終了してから、駆動歯と被動歯とが再び噛み合うまでとしてもよい。
【0047】
オプションとして、積分計算式は以下のように示すことができる。
L=ΣΔω
Δω=ΔN×2π/60
サンプリング周波数がΔtの場合に、
=Lt-1+Δω×Δt
ここで、Lは駆動歯と被動歯の相対位置差の積分を示すために用いられてもよく、弾性変形積分及びバックラッシ積分をともにこの値で示すことができ、単位はラジアンradであり、ΔNは駆動歯と被動歯との速度差分を示すために用いられてもよく、単位は回転/分rpmであり、ωは単位換算した駆動歯と被動歯との速度差分を示すために用いられてもよく、単位はrad/sである。
【0048】
S304、出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御する。
【0049】
本ステップでは、駆動歯の回転速度に対する能動的な制御は、モータの出力トルクを制御することにより実現されるので、モータの出力トルクを制御することにより、駆動歯が被動歯に対して歯寄せ動作されるように制御され、これにより歯接触際の駆動歯と被動歯との速度差分を小さくして歯接触際の慣性衝撃を小さくし、振動や騒音を解消することができる。
【0050】
本実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法は、モータの出力トルクの変更時の弾性変形を引き込んで、弾性変形を算出し、弾性変形による相対初速度を識別し、初速度に応じて対応するモータの出力トルクの制御ポリシーを実施し、駆動歯を制御することにより能動歯寄せ動作を主動的に行うので、歯接触際の慣性衝撃を低減ないしは回避ないしは解消することができ、これにより、振動や騒音がキャンセルされる。また、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御することにより、トルク平滑化処理方法における接触及び圧縮段階を解消して、駆動歯がバックラッシを通過する時間を小さくして、歯噛み合い面の変更過程を小さくして、すなわち正トルクと負トルクの変更時間を小さくして、トルク応答を向上させることができ、より優れた運転性能を有する。
【0051】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0052】
この手段では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定する際に、第1の速度差分値と第1の時間長の積を先に決定してもよい。すなわち、ΔN×(t12+t23)であり、ΔN×(t12+t23)<2Sとなる場合(ここで、Sはデフォルトのバックラッシ値を示すために用いられてもよく、予め設定されたバックラッシ値を2Sとすることは最適手段である)では、第1の速度差分値で計算される第1のトルクT12と第2のトルクT23の向きが逆になり、このときの出力トルク曲線は、図5のように示すことができる。
【0053】
オプションとして、モータの出本トルクを決定した、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避する。駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることによって、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0054】
1つの実施例では、第1のトルク及び第2のトルクは、以下のようにして決定され、変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0055】
この手段では、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行うことができ、図6に示すように、図6に示す簡略化モデルにより、モータの出力トルクを決定することができ、
【0056】
簡略化モデルから分かるように、NO1、NR1、t12、t23が確定すると、NO2、NO3が確定値となり、NR2の時間成分が確定値となる。また、NO1、NO3、NR1、NR2の囲われた面積バックラッシ値Sも確定値となる。
【0057】
以上の条件から、ΔN、NR2の速度成分を求めることができ、そして、線分NR1R2に対する微分して速度変化率a12を求めることができ、線分NR203に対する微分して速度変化率a23を求めることができ、速度変化率a12とa23とから、第1のトルクT12及び第2のトルクT23を決定することができる。式で示すと次のようになる。
2S=ΔN×t12+ΔN×(t12+t23
ΔN=(2S-ΔN×t12)/(t12+t23
R2=NO2-ΔN=NO2-(2S-ΔN×t12)/(t12+t23
12=(NR2-NR1)/t12
23=(NO3-NR2)/t23
【0058】
モータロータの慣性モーメントは既知であり、第1のトルクT12及び第2のトルクT23は、モータロータの慣性モーメントIから求めることができ、式で示すと次のようになる。
12=I×a12+T
23=I×a23+T
【0059】
ここで、電気自動車の異なる運転モードに応じて1枚又は複数枚のテーブルを決定することができ、テーブル内に駆動歯の回転速度(又は車速)とt12、t23とのマッピング関係を記憶しておくことができるので、t12、t23はテーブルを照会して取得することができ、Tは現在の駆動歯の回転速度と温度で、駆動歯の回転中の摺動摩擦力を示すために用いられてもよく、ベンチテストにより得られることができる。
【0060】
オプションとして、車輪端の換算回転速度Nは、次式により決定することができる。
=N*i
【0061】
車速予測式は、次式により決定することができる。
V=V+a×Δt=V+a×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=(NO1+a×Δt)×2πr/K/i
K=N×2πr/V
【0062】
車速の加速度の式は、次式により決定することができる。
a=a-sinθ×g+F/m
【0063】
とすると、
×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=a×Δt×2πr/K/i
車輪速度の加速度式は、
=a/(Δt×2πr×K)=(-a-sinθ×g+F/m)/(2πr/K/i)
であり、
車輪速度予測式は、
OΔt=NO1+a×Δt=NO1+(-a-sinθ×g+F/m)×Δt/(2πr/K/i)
であり、
ここで、Kはタイヤスリップ係数を示すために用いられてもよく、Nは車輪速度を示すために用いられてもよく、Nはある時点での車輪速度を示すために用いられてもよく、Nは車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよく、Vは電気自動車の車速を示すために用いられてもよく、Vは電気自動車のある時点での車速を示すために用いられてもよく、aは車速の加速度を示すために用いられてもよく、Fは車輪端トルクを示すために用いられてもよく、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程でF=0となり、aは全車滑走抵抗(風抵抗+車輪端摩擦力+伝動系機械摩擦力)による減速度を示すために用いられてもよく、コースト曲線によって得られることができ、aは車輪速度の加速度を示すために用いられてもよく、rは車輪の半径を示すために用いられてもよく、θはスロープを示すために用いられてもよく、iは車輪とモータロータとの間の速度比を示すために用いられてもよく、Δtはある時間帯の時間長を示すために用いられてもよく、gは重力加速度を示すために用いられてもよく、mは電気自動車の質量を示すために用いられてもよい。
【0064】
オプションとして、t12、t23の決定により、モータの出力トルクを決定するにより駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御すること以外、所定のT12とT23の値により駆動歯の歯寄せ動作を完了してもよく、異なる運転モードに応じて1枚又は複数枚のテーブルを決定することができる。
【0065】
テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とT12、T23とのマッピング関係として記憶されており、つまり、T12、T23はテーブルを照会して取得することができ、T12、T23に対応する時間を確定すれば駆動歯の歯寄せ動作を完了することができ、式で次のように示すことができる。
12=I/T12
23=I/T23
2S=ΔN×t12+ΔN×(t12+t23
ΔN=ΔN-a13×t12+a12×t12
ΔN+a12×t12=a23×t23+a13×(t12+t23
23=(ΔN+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23
2S=ΔN×t12+(ΔN-a13×t12+a12×t12)×(t12+(ΔN+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23))
【0066】
ここで、a13は、線分NO1O3に対する微分して求める速度変化率を示すために用いられてもよい。
【0067】
第1のトルクT12に対応する時間t12及び第2のトルクT23に対応する時間t23、すなわち歯寄せ過程全体を上記式により決定することができる。
【0068】
オプションとして、NO1、NO3、NR1、NR2の囲われた面積がバックラッシSであると決定された場合、NO1及びNR1が決定されたものであり、T12、T23、t12、t23、t13のいずれか2つを決定することにより、歯寄せ過程全体を決定してもよい。
【0069】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクが変更しようとする向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることによって、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0070】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0071】
この手段では、算出した第1の積が予め設定されたバックラッシ値2S以上の場合、第1の速度差分値と第2の時間長との積を決定する必要がある。すなわち、ΔN×(t12+t23)≧2Sとなる場合、ΔN×t12を算出する必要がある。
【0072】
オプションとして、ΔN×t12<2Sであれば、そのとき、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行うことができ、図7に示すような簡略化モデルを得てもよく、このとき第1のトルクT12及び第2のトルクT23を決定する式は、前記ΔN×(t12+t23)<2Sの場合と同様であるが、ΔN×t12<2Sであれば、第1のトルクT12及び第2のトルクT23の向きが同じであり、出力トルク曲線は図8に示すようにしてもよい。
【0073】
オプションとして、図8において、破線Tは、出力トルクが低下した段階が可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。トルク曲線は、トルクダウンスロープu、駆動歯と被動歯との離脱時点t、駆動歯と被動歯との離脱時の初速度差分ΔNに依存する。ここで、uは、ユーザがアクセルを緩めたときに、モータの出力トルクが低下し始める時点から、駆動歯と被動歯とが離脱し始める時点まで(tからtまで)、トルクが低下する平均スロープ、すなわちトルクダウンスロープ、を示すために用いられてもよい。
【0074】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることにより、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0075】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む、ステップと、を含む。
【0076】
この手段では、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上の場合、すなわち、ΔN×t12≧2Sである場合、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行い、図9に示すような簡略化モデルを得てもよく、この場合、tからt2’までの時間長に必要なトルクを計算すればよく、すなわちt2’が目標時点であり、tからtまでの時間長に駆動歯と被動歯とが再接触する時点でもある。
【0077】
オプションとして、ΔN×t12≧2Sのときのモータの出力トルク(第3のトルク)の決定は、次式で表すことができる。
ΔN×t12'=2S
12'=2S/ΔN
O2'=NO1-a13×t12'
12'=(NO2'-NR1)/t12'
12'=I×a12'
【0078】
ここで、t12′はtからt2′までの時間長を、NO2′はt2′の時点で駆動歯と被動歯とが再接触したときの車輪速度の換算回転速度を、a12′は線分NO1O2′に対する微分して求める速度変化率を、T12′は第3のトルクを、それぞれ示すために用いられてもよい。
【0079】
オプションとして、ΔN×t12≧2Sのときに、出力トルク曲線は図10に示すようにしてもよい。図10において、破線Tは、出力トルクが低下した段階が可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。トルク曲線は、トルクダウンスロープu、駆動歯と被動歯との離脱時点t、駆動歯と被動歯との離脱時の初速度差分値ΔNに依存する。点線Tは、t12′時間長以降の選択可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。
【0080】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避し、駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることにより、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0081】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクの向きが変化したか否かを決定するステップと、出力トルクの向きが変化しようとするとき、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化しようとするか否かを決定するステップと、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化しようとするとき、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0082】
この手段では、駆動歯から車輪までの間の伝動系が伝達するトルクによって、駆動歯と車輪端との間の伝動系に相対変形が生じる。これに対して、駆動歯と車輪端との間の伝動系の変形による弾性力は出力トルク変化中に駆動歯の回転速度と車輪端の換算回転速度とに相対速度差分が生じてしまう。相対速度差分を認識することにより、異なる相対速度差分に対して異なる出力トルク制御ポリシーを実施する。関連技術に存在する「アクセルを緩めて依然として車両に加速度が存在したり、アクセルを踏み込んでも車両が加速しなく、車両の動的応答が悪いこと」を有効に低減ないし解消することができ、この手段により、弾性解放段階でのトルクスロープが大きくなり、これにより、正負のトルクの急な変動を実現し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0083】
オプションとして、モータの出力トルクの向きが変更しようとするか否か、出力トルクの向きが変更しようとするか否かを決定してもよい。出力トルクの向きが正から負、負から正、零正、零負など多様な状況が含まれてよい。出力トルクの向きが変更しようとする際に、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変更しようとするか否かを決定してもよい。そして、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化する際に、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定する。
【0084】
1つの実施例において、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するステップは、さらに、モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定するステップと、相対変位に基づいて、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0085】
この手段では、出力トルクが変更されると、後続の駆動歯及び被動歯の運動中に、駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値をリアルタイムに計算することができ、複数の連続する時間帯において各時間帯内の速度差分値を求めることができ、そして、時間帯毎の速度差分値と、対応する時間帯の時間長とにより、駆動歯と被動歯との相対変位を算出して得、これにより、駆動歯と被動歯との相対変形量を得る。
【0086】
オプションとして、異なる相対変形量による駆動歯の相対初速度が異なるため、異なる初速度に対して異なる出力トルク制御ポリシーを実施することで、正負のトルクの迅速な変換を実現し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0087】
本願によって提供される電気自動車のモータ制御方法は、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変わったときにモータの出力トルクを能動的に制御するによって、駆動歯と被動歯との再接触にかかる時間を小さくし、正負トルクの変換を速くし、動力出力遅れを短縮し、運転性をよくするとともに、駆動歯と被動歯の噛み合い向きが変わったときにモータの出力トルクを能動的に制御するによって、駆動歯と被動歯とが接触した際の速度差分を解消し、慣性衝突による騒音及び衝撃を解消する。また、減速トルクを加えて駆動歯と被動歯とが接触したときの速度差分を低減又は解消することにより、弾性解放段階トルクスロープを大きくすることができる。正負のトルクの迅速な変換を実現し、アクセルを緩めて依然として車両に加速度が存在したり、アクセルを踏み込んでも車両が加速しないという問題を低減ないし回避し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0088】
総合的に、本願によって提供される技術案は、電気自動車の運転性能の最適化を実現しつつ、慣性衝突による騒音及び衝撃の解消を実現することが可能な技術方法である。
【0089】
本願は、さらに、電気自動車のモータ制御装置を提供するものであり、図11は、本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御装置の構成概略図であり、図11に示すように、この電気自動車のモータ制御装置1100は、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュール1101と、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュール1102と、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュール1103と、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュール1104と、を含む。
【0090】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するときに、具体的に、第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定し、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するために用いられる。ここで、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0091】
オプションとして、この電気自動車のモータ制御装置1100は、さらに、第3の決定モジュール(示せず)を含み、この第3の決定モジュールは、具体的に、以下のようにして第1のトルク及び第2のトルクを決定し、変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0092】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するとき、さらに、具体的に、第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定し、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するために用いられる。ここで、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0093】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するとき、さらに、具体的に、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定し、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点であり、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するために用いられる。ここで、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む。
【0094】
オプションとして、第1の決定モジュール1101は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するとき、さらに、具体的に、モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定し、第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定し、相対変位に基づいて、相対変形量を決定するために用いられることができる。
【0095】
本願の実施例によって提供される電気自動車両のモータ制御装置は、前記方法の実施例における電気自動車両のモータ制御方法を実行する技術案であり、その実現原理及び技術的効果は同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0096】
本願の実施例は、さらに、電気自動車を提供するものであり、図12は、例示的な実施例によって示される電気自動車のブロック図であり、図12に示すように、この電気自動車1200は、
プロセッサ1211、メモリ1212、及びインタラクティブインタフェース1213を含み、
ここで、プロセッサ1211は、メモリ1212と通信可能に接続され、メモリ1212は、プロセッサ1211が実行可能なコンピュータ実行命令を記憶するために用いられ、
ここで、プロセッサ1211は、コンピュータ実行命令を実行することによって、前記電気自動車両のモータ制御方法の技術案を実行するように構成されている。
【0097】
オプションとして、メモリ1212は独立していてもよいし、プロセッサ1211と一体に集積されていてもよい。
【0098】
オプションとして、メモリ1212がプロセッサ1211とは別個のデバイスである場合、電子機器1200は、上記デバイスを接続するバスをさらに含んでもよい。
【0099】
オプションとして、メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMと略称)、リードオンリーメモリ(Read Only Memory、ROMと略称)、プログラマブルリードオンリーメモリ(Programmable Read-Only Memory、PROMと略称)、消去可能リードオンリーメモリ(Erasable Programmable Read-Only Memory、EPROMと略称)、電気的に消去可能リードオンリーメモリ(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory、EEPROMと略称)等であってもよいが、これに限られない。ここで、メモリは、プログラムを記憶し、プロセッサは、実行指示を受信すると、プログラムを実行する。上記メモリ内のソフトウェアプログラム及びモジュールは、オペレーティングシステムを更に含んでもよく、メモリ管理、メモリデバイス制御、電源管理などのシステムタスクを管理するための様々なソフトウェアコンポーネント及び/又はドライブを含んでもよい。各種のハードウェアやソフトウェアコンポーネントと通信可能であり、これによって他のソフトウェアコンポーネントの運行環境を提供する。
【0100】
オプションとして、プロセッサは、信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。上記プロセッサは、汎用プロセッサであってもよく、中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、ネットワークプロセッサ(Network Processor、NP)等を含む。本願の実施例に開示された各方法、手順、及び論理ブロック図は実現又は実行可能であり、汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよく、当該プロセッサは任意の通常のプロセッサであってもよい。
【0101】
本願の実施例は、さらに、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供するものであり、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータ実行命令が記憶され、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、前記方法の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0102】
本願の実施例は、さらに、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供するものであり、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、前記方法の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0103】
当業者であれば、上記の各方法の実施形態を実現するためのすべて又は一部のステップは、プログラム命令に関連するハードウェアによって達成することができることを理解することができる。前記のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムは、実行時に、上記の各方法の実施例を含む手順を実行するが、前記の記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、又は光ディスクなどの各種のプログラムコードを記憶可能な媒体を含む。
【0104】
なお、上記の各実施例は、本願発明の説明のためのものであり、その限定はない。前記各実施例を参照して本願を詳細に説明しているにもかかわらず、当業者は、前記各実施例に記載された技術的手段を依然として修正し得ることを理解すべきである。又は、これらの技術的特徴の一部又は全部に対して、同一の置換えをしてもよく、これらの修正又は置換えは、当該技術的手段の本質を、本願の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気自動車両の分野に関し、特に電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車両の技術の発展に伴い、電気自動車両の適用範囲が広くなってきている。ユーザにとって、運転快適性は、電気自動車両を選択する要因の一つである。一方、電気自動車両の駆動中に、モータの出力トルクが正負トルクに変化すると、モータの歯車噛み合い向きが変化することで歯打ちが発生し、ユーザが目立つ振動や騒音が発生し、乗り心地に影響する。また、歯打ちは、歯車やスプライン等の伝動機構に損傷を与える可能性もある。
【0003】
従来、上記の問題を解決するために、モータの出力トルクに対して正負トルクを変化させる際に、出力トルクをフィルタ処理方法(例えば、トルク平滑化処理方法)で処理して振動や騒音を低減することが一般的であった。しかし、この方法ではまだ大きな振動や騒音が存在するため、ユーザの運転体験が悪いことを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、電気自動車の走行中、モータ及びその伝動系に大きな振動や騒音が発生するという問題を解決する電気自動車及びそのモータ制御方法、装置及び記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本願の実施例は、電気自動車のモータ制御方法を提供し、このモータ制御方法は、
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップと、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するステップであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、ステップと、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップと、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するステップと、を含む。
【0006】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、
第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、
第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0007】
1つの可能な実施形態では、第1のトルク及び第2のトルクは、以下のようにして決定され、
変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、
第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、
第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、
第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0008】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、
第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0009】
1つの可能な実施形態では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点である、ステップと、
第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む、ステップと、を含む。
【0010】
1つの可能な実施形態では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップは、さらに、
モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、
第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定するステップと、
相対変位に基づいて、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0011】
第2の態様では、本願の実施例は、電気自動車のモータ制御装置を提供し、このモータ制御装置は、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュールと、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュールと、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュールと、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュールと、を含む。
【0012】
第3の態様では、本願の実施例は、電気自動車を提供し、電気自動車は、プロセッサ及びプロセッサと通信可能に接続されたメモリを含み、
メモリは、コンピュータ実行命令を記憶し、
プロセッサは、メモリに記憶されるコンピュータ実行命令を実行して、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現する。
【0013】
第4の態様では、本願の実施例は、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供し、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータ実行命令が記憶され、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0014】
第5の態様では、本願の実施例は、コンピュータプログラム製品を提供し、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムを含み、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、第1の態様の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0015】
本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法、装置及び記憶媒体は、モータの駆動歯が噛み合い向きに変化する際の動的過程を解析し、モータの高精度な駆動歯位置及び回転速度の測定、及びモータのトルクの迅速調整という特徴を両立させ、モータの出力トルクの向きが変動しようとしていることが検出されたとき、駆動歯のトルクを制御することにより能動歯寄せ動作が行われ、駆動歯と被動歯とが離脱してから再接触する際の速度差分を小さくすることで、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ないし解消する。かつ、本願は、電気自動車の既存のハードウェアの変更や新たなセンサの追加を必要とせず、車輪端の回転速度、モータの駆動歯の回転速度、バックラッシの計算のみで、歯寄せる制御を実現する。本願は、出力トルクの向きが変動しようとした場合の出力トルクの低下スロープ又は上昇スロープに対するモータの制約を最大に開放することを可能にして、モータの出力トルクをユーザの操作や要望に追従させることが可能となり、関連技術においてモータの出力トルク低下スロープや上昇スロープの制限によるアクセル緩み後の加速感やアクセル踏み増しの応答性が悪いという問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下に実施例又は従来技術の説明において用いられる必要がある図面を簡単に紹介する。無論、以下の説明における図面は本願に係る実施例の一部であり、当業者は、創造性作業を行わないことを前提として、これらの図面に基づいて他の図面を得ることかできる。
図1】関連技術によって提供されるトルクフィルタリング方法の曲線概略図である。
図2】本願の実施例によって提供される電気自動車の構成概略図である。
図3】本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法のフローチャートである。
図4】本願の実施例によって提供される駆動歯及び被動歯の運動行程を示す概略図である。
図5】本願の実施例によって提供される駆動歯を歯寄せるように制御する曲線概略図である。
図6】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例1の概略図である。
図7】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例2の概略図である。
図8】本願の実施例によって提供される図7に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
図9】本願の実施例によって提供される図5のシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行う実施例3の概略図である。
図10】本願の実施例によって提供される図9に対応するモータの出力トルクの曲線概略図である。
図11】本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御装置の構成概略図である。
図12】例示的な実施例によって示される電気自動車のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本願の実施例の図面を参照しながら、本願の実施例における技術案を明確に、完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではない。本願における実施例に基づいて、当業者は、本実施例によって教示する他のすべての実施例は、本願の保護の範囲に属する。
【0018】
本願の明細書及び特許請求の範囲、及び上記の図面において、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」等の用語(ある場合)は、決定の順番又は前後順位を記述する必要はなく、類似物を区別するために用いられる。なお、ここで説明した本願の実施例は、ここで図示或いは記載した以外の順序で実施可能であることは、適宜組み合わせて用いられるデータが入れ替えられてもよいことを理解すべきである。また、用語「含む」、「有する」、及びそれらの任意の変形は、排他的でない包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連の工程又は要素を包含する工程、方法、システム、製品、又は機器は、必ずしも明示的に記載されたものに限定されず、明示的に記載されていないもの又はそれらに固有の他の工程又は要素を包含するものを含んでも良い。
【0019】
以下、まず本願に係る名詞を解釈する。
【0020】
トルクは、物体を回転させる特殊なモーメントの一種である。モータトルクはモータの出力トルクである。
【0021】
バックラッシは、一対の歯車が噛み合う場合の歯面間のクリアランスである。バックラッシは、歯車の噛み合いの円滑運転に必要なパラメータである。
【0022】
相対変形は、非剛性材料が力を受けたときに生じる歪みであり、ねじれ、バイアスなどを含むが、これらに限定されない。
【0023】
背景技術で提供される関連技術には、少なくとも以下のような技術的問題がある。
【0024】
世界各国が炭素排出量を厳しく管理するとともに、CO排出ピークアウトとカーボンニュートラルの日付表を提出し、燃料車の販売禁止スケジュールを提出するとともに、新エネルギー自動車、すなわち電気自動車を大いに奨励し、支援する。現在の新エネルギー適用範囲の拡大傾向から、電気自動車の開発、生産、及び適用規模は、いずれも高速で増加している。電気自動車の駆動手順は、全車コントローラ又はモータコントローラによって決定された目標トルクに基づいて、モータの出力トルクを制御することにより実現される。モータが正負トルク変化、すなわちモータの出力トルク向きが変化すると、モータの歯車噛み合い向きが変化することにより、力を受ける向きが一致せず、歯打ちが発生し、ユーザが知覚できる振動や騒音が発生し、乗り心地に影響する。また、歯打ちは、歯車やスプライン等の伝動機構に損傷を与える可能性もある。
【0025】
上記の問題に対して、関連技術では、モータの出力トルクを正負トルク変化させた場合に、出力トルクをフィルタリング方法で処理することで振動や騒音を低減しているが、このフィルタリング方法は、トルク平滑化処理方法であってもよい。図1に示すように、モータの出力トルクが正トルクから負トルクに変化する過程を例にとると、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程で駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との速度差分を時間的に積分し、すなわち図中のシャドー面積であり、このシャドー面積はバックラッシ値である。図1において、駆動歯と被動歯の相対運動は、それぞれ図1における
(以下は1、2、3、4と省略して表記する)という4段階に分けることができ、このうち1段階は正トルク低下及び弾性圧力解放段階、2段階は駆動歯の歯寄せ過程、3段階は駆動歯と被動歯の接触及び圧縮過程、4段階はモータの負トルク増大及び弾性圧力圧縮段階である。図1におけるΔNは、駆動歯及び被動歯が離脱時点での、車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との速度差分値を示すために用いることができる。
【0026】
上記関連技術には以下の問題がある。1)出力トルクを平滑化処理することで、小さいトルク又は零トルクで出力するように駆動歯をバックラッシにゆっくり通過させ、駆動歯がバックラッシを突き抜けるのに時間がかかり、正負トルクの変換時間がかかり、ユーザは、運転フィーリング上、モータの出力トルク応答が不連続及び中断してしまい、動力出力の遅れが感知され、運転性体験が悪い。2)駆動歯と被動歯とが回転速度差分値の最大値で接触し、慣性衝撃や衝突騒音が依然として発生し、振動や騒音の改善が明らかでない。3)駆動歯及び被動歯の弾性圧力解放段階でのトルクスロープが過大であり、そのためΔNが大きく、駆動歯がバックラッシを乗り越える際に初速が大きくなり過ぎ、駆動歯と被動歯との再接触時に速度差分が大きくなり過ぎ、電気自動車には、大きな衝撃や連続的なブレが生じるため、弾性圧力解放段階トルクスロープの低下や上昇が制限され、ユーザがアクセルを緩めてから電気自動車に加速度が依然としていたり、ユーザがアクセルをかけて電気自動車が加速されなかったりし、そのため、電気自動車の動的応答が悪い。
【0027】
本願は、電気自動車のモータ制御方法を提案する。伝動系においてモータの駆動歯が噛み合い向きに変化する際の動的過程を解析し、モータの高精度な駆動歯位置及び回転速度の測定、及びモータのトルクの迅速調整という特徴を両立させ、モータの出力トルクの向きが変動することが検出されたとき、駆動歯を制御することにより能動歯寄せ動作が行われ、駆動歯と被動歯とが離脱してから再接触する際の速度差分を小さくすることで、慣性衝撃による駆動歯と被動歯との間の振動や騒音を低減ないし解消する。
【0028】
1つの実施例では、1つの応用シーンにおいて電気自動車のモータ制御方法を応用することができる。図2は、本願の実施例によって提供される電気自動車の構成概略図であり、図2に示すように、当該電気自動車は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit、略称ECU)、左前車輪、左前車輪速度センサ、左前プロペラシャフト、前モータロータリートランス、前モータ、前モータ制御駆動装置、前モータリダクションデフ、右前プロペラシャフト、右前車輪速度センサ、右前車輪、高圧バッテリ、左後車輪、左後車輪速度センサ、後モータロータリートランス、後モータ、後モータ制御駆動装置、後モータリダクションデフ、左後プロペラシャフト、右後プロペラシャフト、右後車輪速度センサ、右後車輪、を含む。
【0029】
上記のシーンにおいて、前モータの出力トルクは前モータリダクションデフを介して左前車輪及び右前車輪に伝達され、後モータの出力トルクは後モータリダクションデフを介して左後車輪及び右後車輪に伝達され、そして左前車輪速度センサ、右前車輪速度センサ、左後車輪速度センサ及び右後車輪速度センサを介して対応する車輪の車輪速度をそれぞれ収集する。左前車輪速度センサ、右前車輪速度センサ、左後車輪速度センサ、右後車輪速度センサが検出した速度値は、ECUにより収集して処理される。ECUは、取得した車輪速度により、前モータ及び後モータの出力トルクのトルク向きが変化したか否かを決定する。トルク向きが変化されるとき、駆動歯を制御して歯寄せ動作を行い、これにより、駆動歯の回転速度を能動的に制御することを実現する。これにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際に初速が大きく、時間がかかるという問題を低減ないし回避できる。そのため、動力出力の遅延や振動、騒音の問題を低減ないし回避することができる。
【0030】
上記のシーンを組み合わせて、以下、いくつかの具体的な実施例を通じて本願が提供する電気自動車のモータ制御方法の技術案を詳細に説明する。
【0031】
本願は、電気自動車のモータ制御方法を提供する。図3は、本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法のフローチャートであり、図3に示すように、この方法は、以下のステップを含む。
【0032】
S301、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出する。
【0033】
本ステップでは、モータの出力トルクの向きが変更しようとする際に、モータの駆動歯と伝動系の被動歯との噛み合い向きが変更しようとするか否かを決定することができる。すなわち、モータの出力トルクの向きが変わると、駆動歯と被動歯とが離脱しようとすることを示し、つまり、駆動歯と被動歯との間の弾性力が開放されて、弾性力が減少して、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量も減少する。
【0034】
オプションとして、モータの運転中において、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きを継続的に検出し、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を継続的に算出することで、モータの出力トルクの向きが変化しようとすることが検出された場合に、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するようにしてもよい。
【0035】
オプションとして、駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形は、歯車変形及び軸変形を含んでもよい。
【0036】
S302、相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定する。
【0037】
本ステップでは、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である。相対変形量が第1の閾値であることは、相対変形量がゼロと等しいことであってもよく、その時点が駆動歯と被動歯との間の離脱を開始した離脱時点である。駆動歯と被動歯との離脱及び再接触の過程は図4に示すようにすることができる。図4は、本願の実施例1によって提供される駆動歯及び被動歯の運動的過程を示す概略図である。図4において、この運動的過程は、固定座標系を座標(park)変換で回転座標系に変換した後、駆動歯と被動歯との間の運動分解過程であってもよい。ここで、回転座標系の周波数は、車輪速度を変換すること(車輪速度が相対的に安定しており、相対的に安定した座標系周波数を得ることができる)によって得られる。駆動歯と被動歯との間の相対運動は、解放弾性段階、駆動歯と被動歯との離脱開始時点、駆動歯の自由回転段階、駆動歯と被動歯との再噛み合い開始時点、駆動歯と被動歯との接触開始時点及び弾性圧縮段階という6段階ないし時期と等価である。
【0038】
オプションとして、駆動歯と被動歯とが離脱し始めることは、さらに、駆動歯と被動歯の間の弾性変形が回復過程において、相対変形回復量が弾性変形量に等しいことで決定されてもよい。
【0039】
オプションとして、相対変形量が第1の閾値であり、すなわち駆動歯と被動歯とが離脱し始めるときに、その時点で第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との速度差分値を定め、その速度差分値を第1の速度差分値と表記してもよい。これにより第1の速度差分値に基づいて、モータに必要な出力トルクを決定しやすい。
【0040】
S303、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定する。
【0041】
本ステップでは、第1の速度差分値が決定された後、第1の速度差分値によりモータの出力トルクが算出され得るが、図5に示すように、図5は、本願の実施例によって提供される駆動歯を歯寄せるように制御する曲線概略図である。図5では、モータの出力トルクが正トルクから負トルクに変わる例をとし、駆動歯と被動歯の相対運動は、3段階に分解可能となっており、ここで、1段階は正トルク低下及び弾性解放段階、2段階は駆動歯の歯寄せ段階、3段階は負トルク増大及び弾性圧縮段階である。
【0042】
図5では、
12は、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御するために必要な第1トルクを示すために用いられてもよく、その機能は、モータ軸が歯車隙間域を速やかに通過するようにモータロータ(駆動歯)を加速することである。
23 は、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御するために必要な第2トルクを示すために用いられてもよく、その機能は、歯車噛み合い面接触時の回転速度差分値を減少させ、回転速度差分値による慣性衝撃を低減することである。
は、ユーザがアクセルを緩めたときに、モータの出力トルクが低下し始める時点を示すために用いられてもよい。
は、駆動歯と被動歯とが離脱し始める時点を示すために用いられてもよい。
は、T12の第1のトルクの作用の締切時点を示すために用いられてもよく、その時点で、駆動歯の回転速度が加速から減速に変化し、予め設定した時点であってよい。
は、T23の第2のトルクの作用の締切時点を示すために用いられてもよく、すなわち、駆動歯と被動歯とが再接触する時点である。
01は、ユーザがアクセルを緩めてから駆動歯と被動歯とが離脱し始めるまでの継続時間長を示すために用いられてもよい。
12は、T12の第1のトルクが作用した時間長を示すために用いられてもよい。
23は、T23の第2のトルクが作用した時間長を示すために用いられてもよい。
13は、t12+t23の合計時間、すなわち、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御する時間長を示すために用いられてもよい。
は、車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度を示すために用いられてもよく、車輪端の換算回転速度と略称する。
O1は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
O2は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
O3は、t時点で車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよい。
は、モータロータの回転速度、すなわち駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
R1は、t01が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt時点で駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
R2は、t12が終了するときの駆動歯の回転速度、すなわちt時点で駆動歯の回転速度を示すために用いられてもよい。
ΔNは、t時点でNO1とNR1との速度差分値、すなわち駆動歯と被動歯との離脱時点で車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差分値を示すために用いられてもよい。
ΔNは、t時点でNO2とNR2との速度差分値、すなわちT12の第1のトルクの作用の締切時点で車輪端の換算回転速度と駆動歯の回転速度との回転速度差分値を示すために用いられてもよい。
【0043】
オプションとして、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程において駆動歯と被動歯との速度差分値を時間的に積分してもよく、すなわち図5におけるシャドー面積であり、当該シャドー面積はバックラッシ値である。第1の速度差分値、すなわち、ΔNを決定することにより、モータの出力トルク、すなわち、ΔT12及びT23が算出される。
【0044】
オプションとして、図5における1段階で、弾性解放変形の積分範囲は、ユーザがアクセルを緩めてから被動歯が追従離脱してから、モータの出力トルクが0であるか又は弾性解放変形の積分値が弾性変形プリセット値に等しくなるまでとしてもよい。ここで、弾性変形プリセット値は、出力トルクと弾性解放変形とのマッピングテーブルで示されることができ、弾性解放変形の積算積分値が弾性変形プリセット値に達したときに、弾性解放変形が終了したとみなされる。マッピングテーブルの予め設定された方法は、静的に、全車又は伝動系のアセンブリで、モータに異なる閉塞トルクを与え、この閉塞トルクでのモータ軸の回転角度を測定してもよい。
【0045】
図5における2段階で、バックラッシ積分範囲は、弾性解放変形が終了してから、バックラッシ積分値が予め設定されたバックラッシ値S又は自己学習バックラッシ値Sに達するまでとしてもよい。
【0046】
図5における3段階で、弾性圧縮変形の積分範囲は、バックラッシ積分が終了してから、駆動歯と被動歯とが再び噛み合うまでとしてもよい。
【0047】
オプションとして、積分計算式は以下のように示すことができる。
L=ΣΔω
Δω=ΔN×2π/60
サンプリング周波数がΔtの場合に、
=Lt-1+Δω×Δt
ここで、Lは駆動歯と被動歯の相対位置差の積分を示すために用いられてもよく、弾性変形積分及びバックラッシ積分をともにこの値で示すことができ、単位はラジアンradであり、ΔNは駆動歯と被動歯との速度差分を示すために用いられてもよく、単位は回転/分rpmであり、ωは単位換算した駆動歯と被動歯との速度差分を示すために用いられてもよく、単位はrad/sである。
【0048】
S304、出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御する。
【0049】
本ステップでは、駆動歯の回転速度に対する能動的な制御は、モータの出力トルクを制御することにより実現されるので、モータの出力トルクを制御することにより、駆動歯が被動歯に対して歯寄せ動作されるように制御され、これにより歯接触際の駆動歯と被動歯との速度差分を小さくして歯接触際の慣性衝撃を小さくし、振動や騒音を解消することができる。
【0050】
本実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法は、モータの出力トルクの変更時の弾性変形を引き込んで、弾性変形を算出し、弾性変形による相対初速度を識別し、初速度に応じて対応するモータの出力トルクの制御ポリシーを実施し、駆動歯を制御することにより能動歯寄せ動作を主動的に行うので、歯接触際の慣性衝撃を低減ないしは回避ないしは解消することができ、これにより、振動や騒音がキャンセルされる。また、駆動歯を、歯寄せさせるように能動的に制御することにより、トルク平滑化処理方法における接触及び圧縮段階を解消して、駆動歯がバックラッシを通過する時間を小さくして、歯噛み合い面の変更過程を小さくして、すなわち正トルクと負トルクの変更時間を小さくして、トルク応答を向上させることができ、より優れた運転性能を有する。
【0051】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0052】
この手段では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定する際に、第1の速度差分値と第1の時間長の積を先に決定してもよい。すなわち、ΔN×(t12+t23)であり、ΔN×(t12+t23)<2Sとなる場合(ここで、Sはデフォルトのバックラッシ値を示すために用いられてもよく、予め設定されたバックラッシ値を2Sとすることは最適手段である)では、第1の速度差分値で計算される第1のトルクT12と第2のトルクT23の向きが逆になり、このときの出力トルク曲線は、図5のように示すことができる。
【0053】
オプションとして、モータの出力トルクを決定し駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避する。駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることによって、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0054】
1つの実施例では、第1のトルク及び第2のトルクは、以下のようにして決定され、変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0055】
この手段では、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行うことができ、図6に示すように、図6に示す簡略化モデルにより、モータの出力トルクを決定することができる。
【0056】
簡略化モデルから分かるように、NO1、NR1、t12、t23が確定すると、NO2、NO3が確定値となり、NR2の時間成分が確定値となる。また、NO1、NO3、NR1、NR2の囲われた面積バックラッシ値Sも確定値となる。
【0057】
以上の条件から、ΔN、NR2の速度成分を求めることができ、そして、線分NR1R2に対する微分して速度変化率a12を求めることができ、線分NR203に対する微分して速度変化率a23を求めることができ、速度変化率a12とa23とから、第1のトルクT12及び第2のトルクT23を決定することができる。式で示すと次のようになる。
2S=ΔN×t12+ΔN×(t12+t23
ΔN=(2S-ΔN×t12)/(t12+t23
R2=NO2-ΔN=NO2-(2S-ΔN×t12)/(t12+t23
12=(NR2-NR1)/t12
23=(NO3-NR2)/t23
【0058】
モータロータの慣性モーメントは既知であり、第1のトルクT12及び第2のトルクT23は、モータロータの慣性モーメントIから求めることができ、式で示すと次のようになる。
12=I×a12+T
23=I×a23+T
【0059】
ここで、電気自動車の異なる運転モードに応じて1枚又は複数枚のテーブルを決定することができ、テーブル内に駆動歯の回転速度(又は車速)とt12、t23とのマッピング関係を記憶しておくことができるので、t12、t23はテーブルを照会して取得することができ、Tは現在の駆動歯の回転速度と温度で、駆動歯の回転中の摺動摩擦力を示すために用いられてもよく、ベンチテストにより得られることができる。
【0060】
オプションとして、車輪端の換算回転速度Nは、次式により決定することができる。
=N*i
【0061】
車速予測式は、次式により決定することができる。
V=V+a×Δt=V+a×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=(NO1+a×Δt)×2πr/K/i
K=N×2πr/V
【0062】
車速の加速度の式は、次式により決定することができる。
a=a-sinθ×g+F/m
【0063】
とすると、
×Δt-sinθ×g×Δt+F/m×Δt=a×Δt×2πr/K/i
車輪速度の加速度式は、
=a/(Δt×2πr×K)=(-a-sinθ×g+F/m)/(2πr/K/i)
であり、
車輪速度予測式は、
OΔt=NO1+a×Δt=NO1+(-a-sinθ×g+F/m)×Δt/(2πr/K/i)
であり、
ここで、Kはタイヤスリップ係数を示すために用いられてもよく、Nは車輪速度を示すために用いられてもよく、Nはある時点での車輪速度を示すために用いられてもよく、Nは車輪端の換算回転速度を示すために用いられてもよく、Vは電気自動車の車速を示すために用いられてもよく、Vは電気自動車のある時点での車速を示すために用いられてもよく、aは車速の加速度を示すために用いられてもよく、Fは車輪端トルクを示すために用いられてもよく、駆動歯がバックラッシを乗り越える過程でF=0となり、aは全車滑走抵抗(風抵抗+車輪端摩擦力+伝動系機械摩擦力)による減速度を示すために用いられてもよく、コースト曲線によって得られることができ、aは車輪速度の加速度を示すために用いられてもよく、rは車輪の半径を示すために用いられてもよく、θはスロープを示すために用いられてもよく、iは車輪とモータロータとの間の速度比を示すために用いられてもよく、Δtはある時間帯の時間長を示すために用いられてもよく、gは重力加速度を示すために用いられてもよく、mは電気自動車の質量を示すために用いられてもよい。
【0064】
オプションとして、t12、t23の決定により、モータの出力トルクを決定するにより駆動歯の歯寄せ動作の完了を制御すること以外、所定のT12とT23の値により駆動歯の歯寄せ動作を完了してもよく、異なる運転モードに応じて1枚又は複数枚のテーブルを決定することができる。
【0065】
テーブル内には、駆動歯の回転速度(又は車速)とT12、T23とのマッピング関係として記憶されており、つまり、T12、T23はテーブルを照会して取得することができ、T12、T23に対応する時間を確定すれば駆動歯の歯寄せ動作を完了することができ、式で次のように示すことができる。
12=I/T12
23=I/T23
2S=ΔN×t12+ΔN×(t12+t23
ΔN=ΔN-a13×t12+a12×t12
ΔN+a12×t12=a23×t23+a13×(t12+t23
23=(ΔN+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23
2S=ΔN×t12+(ΔN-a13×t12+a12×t12)×(t12+(ΔN+a12×t12-a13×t12)/(a13+a23))
【0066】
ここで、a13は、線分NO1O3に対する微分して求める速度変化率を示すために用いられてもよい。
【0067】
第1のトルクT12に対応する時間t12及び第2のトルクT23に対応する時間t23、すなわち歯寄せ過程全体を上記式により決定することができる。
【0068】
オプションとして、NO1、NO3、NR1、NR2の囲われた面積がバックラッシSであると決定された場合、NO1及びNR1が決定されたものであり、T12、T23、t12、t23、t13のいずれか2つを決定することにより、歯寄せ過程全体を決定してもよい。
【0069】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクが変更しようとする向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避する。駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることによって、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0070】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0071】
この手段では、算出した第1の積が予め設定されたバックラッシ値2S以上の場合、第1の速度差分値と第2の時間長との積を決定する必要がある。すなわち、ΔN×(t12+t23)≧2Sとなる場合、ΔN×t12を算出する必要がある。
【0072】
オプションとして、ΔN×t12<2Sであれば、そのとき、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行うことができ、図7に示すような簡略化モデルを得てもよく、このとき第1のトルクT12及び第2のトルクT23を決定する式は、前記ΔN×(t12+t23)<2Sの場合と同様であるが、ΔN×t12<2Sであれば、第1のトルクT12及び第2のトルクT23の向きが同じであり、出力トルク曲線は図8に示すようにしてもよい。
【0073】
オプションとして、図8において、破線Tは、出力トルクが低下した段階が可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。トルク曲線は、トルクダウンスロープu、駆動歯と被動歯との離脱時点t、駆動歯と被動歯との離脱時の初速度差分ΔNに依存する。ここで、uは、ユーザがアクセルを緩めたときに、モータの出力トルクが低下し始める時点から、駆動歯と被動歯とが離脱し始める時点まで(tからtまで)、トルクが低下する平均スロープ、すなわちトルクダウンスロープ、を示すために用いられてもよい。
【0074】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避する。駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることにより、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0075】
1つの実施例では、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点である、ステップと、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む、ステップと、を含む。
【0076】
この手段では、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上の場合、すなわち、ΔN×t12≧2Sである場合、図5におけるシャドー面積に対して幾何モデル簡略化処理を行い、図9に示すような簡略化モデルを得てもよく、この場合、tからt2’までの時間長に必要なトルクを計算すればよく2’が目標時点であり、tから 2’ までの時間長に駆動歯と被動歯とが再接触する時点でもある。
【0077】
オプションとして、ΔN×t12≧2Sのときのモータの出力トルク(第3のトルク)の決定は、次式で表すことができる。
ΔN×t12'=2S
12'=2S/ΔN
O2'=NO1-a13×t12'
12'=(NO2'-NR1)/t12'
12'=I×a12'
【0078】
ここで、t12′はtからt2′までの時間長を、NO2′はt2′の時点で駆動歯と被動歯とが再接触したときの車輪速度の換算回転速度を、a12′は線分NO1O2′に対する微分して求める速度変化率を、T12′は第3のトルクを、それぞれ示すために用いられてもよい。
【0079】
オプションとして、ΔN×t12≧2Sのときに、出力トルク曲線は図10に示すようにしてもよい。図10において、破線Tは、出力トルクが低下した段階が可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。トルク曲線は、トルクダウンスロープu、駆動歯と被動歯との離脱時点t、駆動歯と被動歯との離脱時の初速度差分値ΔNに依存する。点線Tは、t12′時間長以降の選択可能なトルク曲線を示すために用いられてもよい。
【0080】
オプションとして、駆動歯の回転速度に対して、能動的制御、つまり、減速してから加速する(又はモータの出力トルクの変更向きに応じて、加速してから減速する)トルク制御を行うことにより、駆動歯がバックラッシを乗り越える際にかかる時間を低減し、動力応答が遅くなる問題を低減ないし回避する。駆動歯の回転速度を制御し、駆動歯と被動歯との再接触時の回転速度差分を小さくすることにより、理想的には、回転速度差分をゼロまで小さくすることができ、振動や騒音を完全になくすことができる。
【0081】
1つの実施例では、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップは、モータの出力トルクの向きが変化したか否かを決定するステップと、出力トルクの向きが変化しようとするとき、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化しようとするか否かを決定するステップと、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化しようとするとき、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0082】
この手段では、駆動歯から車輪までの間の伝動系が伝達するトルクによって、駆動歯と車輪端との間の伝動系に相対変形が生じる。これに対して、駆動歯と車輪端との間の伝動系の変形による弾性力は出力トルク変化中に駆動歯の回転速度と車輪端の換算回転速度とに相対速度差分が生じてしまう。相対速度差分を認識することにより、異なる相対速度差分に対して異なる出力トルク制御ポリシーを実施する。関連技術に存在する「アクセルを緩めて依然として車両に加速度が存在したり、アクセルを踏み込んでも車両が加速しなく、車両の動的応答が悪いこと」を有効に低減ないし解消することができる。この手段により、弾性解放段階でのトルクスロープが大きくなり、これにより、正負のトルクの急な変動を実現し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0083】
オプションとして、モータの出力トルクの向きが変更しようとするか否か、出力トルクの向きが変更しようとするか否かを決定してもよい。出力トルクの向きが正から負、負から正、零正、零負など多様な状況が含まれてよい。出力トルクの向きが変更しようとする際に、モータの駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変更しようとするか否かを決定してもよい。そして、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変化する際に、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定する。
【0084】
1つの実施例において、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップは、さらに、モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定するステップと、相対変位に基づいて、相対変形量を決定するステップと、を含む。
【0085】
この手段では、出力トルクが変更されると、後続の駆動歯及び被動歯の運動中に、駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値をリアルタイムに計算することができ、複数の連続する時間帯において各時間帯内の速度差分値を求めることができ、そして、時間帯毎の速度差分値と、対応する時間帯の時間長とにより、駆動歯と被動歯との相対変位を算出して得、これにより、駆動歯と被動歯との相対変形量を得る。
【0086】
オプションとして、異なる相対変形量による駆動歯の相対初速度が異なるため、異なる初速度に対して異なる出力トルク制御ポリシーを実施することで、正負のトルクの迅速な変換を実現し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0087】
本願によって提供される電気自動車のモータ制御方法は、駆動歯と被動歯との噛み合い向きが変わったときにモータの出力トルクを能動的に制御するによって、駆動歯と被動歯との再接触にかかる時間を小さくし、正負トルクの変換を速くし、動力出力遅れを短縮し、運転性をよくするとともに、駆動歯と被動歯の噛み合い向きが変わったときにモータの出力トルクを能動的に制御するによって、駆動歯と被動歯とが接触した際の速度差分を解消し、慣性衝突による騒音及び衝撃を解消する。また、減速トルクを加えて駆動歯と被動歯とが接触したときの速度差分を低減又は解消することにより、弾性解放段階トルクスロープを大きくすることができる。正負のトルクの迅速な変換を実現し、アクセルを緩めて依然として車両に加速度が存在したり、アクセルを踏み込んでも車両が加速しないという問題を低減ないし回避し、電気自動車の動的応答を最適化することができる。
【0088】
総合的に、本願によって提供される技術案は、電気自動車の運転性能の最適化を実現しつつ、慣性衝突による騒音及び衝撃の解消を実現することが可能な技術方法である。
【0089】
本願は、さらに、電気自動車のモータ制御装置を提供するものであり、図11は、本願の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御装置の構成概略図であり、図11に示すように、この電気自動車のモータ制御装置1100は、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュール1101と、
相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、相対変形量が第1の閾値であることは、駆動歯と伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、第1の駆動歯の回転速度は、駆動歯と被動歯との離脱時点で駆動歯の回転速度であり、第1の車輪端の換算回転速度は、離脱時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュール1102と、
第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュール1103と、
出力トルクによって、駆動歯を被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュール1104と、を含む。
【0090】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するときに、具体的に、第1の速度差分値と、離脱時点から駆動歯と被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定し、第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するために用いられる。ここで、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが逆であり、第1のトルクは、離脱時点からモータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、第2のトルクは、変換時点から接触時点までの時間間隔における必要なトルクである。
【0091】
オプションとして、この電気自動車のモータ制御装置1100は、さらに、第の決定モジュール(示せず)を含み、この第3の決定モジュールは、具体的に、以下のようにして第1のトルク及び第2のトルクを決定し、変換時点で、予め設定されたバックラッシ値、第1の速度差分値及び第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、第2の車輪端の換算回転速度は、変換時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、第2の速度差分値及び第2の車輪端の換算回転速度によって、変換時点で駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、第2の駆動歯の回転速度、第1の駆動歯の回転速度、離脱時点と変換時点との継続時間長、及び第2の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第1のトルクを決定し、第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、変換時点と接触時点との継続時間長、及び第3の駆動歯の回転速度での駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、第2のトルクを決定し、第3の駆動歯の回転速度は接触時点で駆動歯の回転速度である。
【0092】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するとき、さらに、具体的に、第1の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、第1の速度差分値と、離脱時点から変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定し、第2の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するために用いられる。ここで、第1のトルクと第2のトルクとは、向きが同じである。
【0093】
オプションとして、処理モジュール1103は、第1の速度差分値によって、モータの出力トルクを決定するとき、さらに、具体的に、第2の積が予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定し、第3の車輪端の換算回転速度は、目標時点で電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、目標時点は、第2の時間長における駆動歯と被動歯とが再接触する時点であり、第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び離脱時点と目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するために用いられる。ここで、第3のトルクは、離脱時点から目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、出力トルクは、第3のトルクを含む。
【0094】
オプションとして、検出モジュール1101は、モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を決定するとき、体的に、モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を検出し、第3の速度差分値に基づいて、駆動歯と被動歯との相対変位を決定し、相対変位に基づいて、相対変形量を決定するために用いられることができる。
【0095】
本願の実施例によって提供される電気自動車両のモータ制御装置は、前記方法の実施例における電気自動車両のモータ制御方法を実行する技術案であり、その実現原理及び技術的効果は同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0096】
本願の実施例は、さらに、電気自動車を提供するものであり、図12は、例示的な実施例によって示される電気自動車のブロック図であり、図12に示すように、この電気自動車1200は、
プロセッサ1211、メモリ1212、及びインタラクティブインタフェース1213を含み、
ここで、プロセッサ1211は、メモリ1212と通信可能に接続され、メモリ1212は、プロセッサ1211が実行可能なコンピュータ実行命令を記憶するために用いられ、
ここで、プロセッサ1211は、コンピュータ実行命令を実行することによって、前記電気自動車両のモータ制御方法の技術案を実行するように構成されている。
【0097】
オプションとして、メモリ1212は独立していてもよいし、プロセッサ1211と一体に集積されていてもよい。
【0098】
オプションとして、メモリ1212がプロセッサ1211とは別個のデバイスである場合、電子機器1200は、上記デバイスを接続するバスをさらに含んでもよい。
【0099】
オプションとして、メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAMと略称)、リードオンリーメモリ(Read Only Memory、ROMと略称)、プログラマブルリードオンリーメモリ(Programmable Read-Only Memory、PROMと略称)、消去可能リードオンリーメモリ(Erasable Programmable Read-Only Memory、EPROMと略称)、電気的に消去可能リードオンリーメモリ(Electric Erasable Programmable Read-Only Memory、EEPROMと略称)等であってもよいが、これに限られない。ここで、メモリは、プログラムを記憶し、プロセッサは、実行指示を受信すると、プログラムを実行する。上記メモリ内のソフトウェアプログラム及びモジュールは、オペレーティングシステムを更に含んでもよく、メモリ管理、メモリデバイス制御、電源管理などのシステムタスクを管理するための様々なソフトウェアコンポーネント及び/又はドライブを含んでもよい。各種のハードウェアやソフトウェアコンポーネントと通信可能であり、これによって他のソフトウェアコンポーネントの運行環境を提供する。
【0100】
オプションとして、プロセッサは、信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。上記プロセッサは、汎用プロセッサであってもよく、中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、ネットワークプロセッサ(Network Processor、NP)等を含む。本願の実施例に開示された各方法、手順、及び論理ブロック図は実現又は実行可能であり、汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよく、当該プロセッサは任意の通常のプロセッサであってもよい。
【0101】
本願の実施例は、さらに、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供するものであり、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータ実行命令が記憶され、コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、前記方法の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0102】
本願の実施例は、さらに、コンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品を提供するものであり、コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、前記方法の実施例によって提供される電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる。
【0103】
当業者であれば、上記の各方法の実施形態を実現するためのすべて又は一部のステップは、プログラム命令に関連するハードウェアによって達成することができることを理解することができる。前記のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムは、実行時に、上記の各方法の実施例を含む手順を実行するが、前記の記憶媒体は、ROM、RAM、磁気ディスク、又は光ディスクなどの各種のプログラムコードを記憶可能な媒体を含む。
【0104】
なお、上記の各実施例は、本願発明の説明のためのものであり、その限定はない。前記各実施例を参照して本願を詳細に説明しているにもかかわらず、当業者は、前記各実施例に記載された技術的手段を依然として修正し得ることを理解すべきである。又は、これらの技術的特徴の一部又は全部に対して、同一の置換えをしてもよく、これらの修正又は置換えは、当該技術的手段の本質を、本願の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱するものではない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータ制御方法であって、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップと、
前記相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するステップであって、前記相対変形量が第1の閾値であることは、前記駆動歯と前記伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯と前記被動歯との離脱時点で前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記離脱時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、ステップと、
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップと、
前記出力トルクによって、前記駆動歯を前記被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するステップと、を含む、
ことを特徴とする電気自動車のモータ制御方法。
【請求項2】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、
前記第1の速度差分値と、前記離脱時点から前記駆動歯と前記被動歯との接触時点までの継続時間長である第1の時間長と、の積を第1の積として決定するステップと、
前記第1の積が予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、前記出力トルクが第1のトルクと第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
前記第1のトルクと前記第2のトルクとは、向きが逆であり、前記第1のトルクは、前記離脱時点から前記モータの加減速状態の変換時点までの時間間隔における必要なトルクであり、前記第2のトルクは、前記変換時点から前記接触時点までの時間間隔における必要なトルクである、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御方法。
【請求項3】
前記第1のトルク及び前記第2のトルクは、以下のようにして決定され、
前記変換時点で、前記予め設定されたバックラッシ値、前記第1の速度差分値及び前記第1の時間長に基づいて、現在の駆動歯の回転速度と第2の車輪端の換算回転速度との第2の速度差分値を決定し、前記第2の車輪端の換算回転速度は、前記変換時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、
前記第2の速度差分値及び前記第2の車輪端の換算回転速度によって、前記変換時点で前記駆動歯の回転速度である第2の駆動歯の回転速度を決定し、
前記第2の駆動歯の回転速度、前記第1の駆動歯の回転速度、前記離脱時点と前記変換時点との継続時間長、及び前記第2の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、前記第1のトルクを決定し、
前記第2の駆動歯の回転速度、第3の駆動歯の回転速度、前記変換時点と前記接触時点との継続時間長、及び前記第3の駆動歯の回転速度での前記駆動歯の摺動摩擦力に基づいて、前記第2のトルクを決定し、前記第3の駆動歯の回転速度は前記接触時点で前記駆動歯の回転速度である、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項4】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
前記第1の積が前記予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、前記第1の速度差分値と、前記離脱時点から前記変換時点までの継続時間長である第2の時間長と、の積を第2の積として決定するステップと、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値よりも小さい場合に、前記出力トルクが前記第1のトルクと前記第2のトルクとを含むと決定するステップと、を含み、
前記第1のトルクと前記第2のトルクとは、向きが同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御方法。
【請求項5】
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するステップは、さらに、
前記第2の積が前記予め設定されたバックラッシ値以上である場合に、目標時点で、第3の車輪端の換算回転速度を決定するステップであって、前記第3の車輪端の換算回転速度は、前記目標時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度であり、前記目標時点は、前記第2の時間長における前記駆動歯と前記被動歯とが再接触する時点である、ステップと、
前記第3の車輪端の換算回転速度、第1の駆動歯の回転速度、及び前記離脱時点と前記目標時点との継続時間長、に基づいて、第3のトルクを決定するステップであって、前記第3のトルクは、前記離脱時点から前記目標時点までの時間間隔における必要なトルクであり、前記出力トルクは、前記第3のトルクを含む、ステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ制御方法。
【請求項6】
前記モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するステップは、
前記モータの出力トルクの変化を検出したとき、現在の駆動歯の回転速度と被動歯の回転速度との第3の速度差分値を決定するステップと、
前記第3の速度差分値に基づいて、前記駆動歯と前記被動歯との相対変位を決定するステップと、
前記相対変位に基づいて、前記相対変形量を決定するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項7】
電気自動車のモータ制御装置であって、
モータの駆動歯と車輪端との間の伝動系の相対変形量を検出するために用いられる検出モジュールと、
前記相対変形量が第1の閾値である場合に、第1の駆動歯の回転速度と第1の車輪端の換算回転速度との第1の速度差分値を決定するために用いられる決定モジュールであって、前記相対変形量が第1の閾値であることは前記駆動歯と前記伝動系の被動歯とが離脱し始めることを示すために用いられ、前記第1の駆動歯の回転速度は、前記駆動歯と前記被動歯との離脱時点で前記駆動歯の回転速度であり、前記第1の車輪端の換算回転速度は、前記離脱時点で前記電気自動車の車輪端の回転速度が速度比で換算された回転速度である、決定モジュールと、
前記第1の速度差分値によって、前記モータの出力トルクを決定するために用いられる処理モジュールと、
前記出力トルクによって、前記駆動歯を前記被動歯に対して歯寄せ動作させるように制御するために用いられる制御モジュールと、を含む、
ことを特徴とする電気自動車のモータ制御装置。
【請求項8】
プロセッサ、及び前記プロセッサと通信可能に接続されたメモリを含む電気自動車であって、
前記メモリは、コンピュータ実行命令を記憶し、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行して、請求項1~のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現する、ことを特徴とする電気自動車。
【請求項9】
コンピュータ実行命令が記憶された、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行命令は、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、
ことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータプログラムあって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサにより実行されるとき、請求項1~のいずれか1項に記載の電気自動車のモータ制御方法を実現するために用いられる、
ことを特徴とするコンピュータプログラ
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11
【国際調査報告】