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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】統合型自動化細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250107BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537572
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 CN2022141081
(87)【国際公開番号】W WO2023116833
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,433
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513285011
【氏名又は名称】基亜生物科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MEDIGEN BIOTECHNOLOGY CORP.
【住所又は居所原語表記】14F, No.3, Yuancyu St., Nangang District Taipei City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】張 順浪
(72)【発明者】
【氏名】林 杰良
(72)【発明者】
【氏名】楊 智雅
(72)【発明者】
【氏名】劉 俊賢
(72)【発明者】
【氏名】張 世忠
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA12
4B029BB11
4B029CC02
4B029DF01
4B029DF04
4B029DF06
4B029DG01
4B029DG04
4B029DG08
4B029DG10
4B029FA10
4B029FA15
4B029HA05
(57)【要約】
本発明は、本体と、蓋体と、栓と、給気モジュールと、温度制御モジュールと、少なくとも一つのスライドレール部と、袋挟み部品とを含む、統合型自動化細胞培養装置であって、本体が、その底部が培養袋の載置に供する培養室を囲み、蓋体が、培養室の開口部に覆うように設置され、管路を通すための栓が、本体の収容溝に詰めるように設置され、給気モジュールが、培養室内の二酸化炭素濃度を検出するほかに、培養室内に給気するように外部気体源を制御し、温度制御モジュールが、培養室内の温度を検出するほかに、培養室を選択的に加熱し、スライドレール部が、培養室の底部に設置され、袋挟み部品が、培養袋内の液体を片側に集中させるよう、スライドレール部にスライド可能に設置されて培養袋を留める、統合型自動化細胞培養装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、蓋体と、栓と、給気モジュールと、温度制御モジュールと、少なくとも一つのスライドレール部と、袋挟み部品と、を含む統合型自動化細胞培養装置であって、
前記本体は、培養室を囲み、前記本体の上部に前記培養室に接続する開口部を有し、前記本体の側面に前記培養室に接続する収容溝を更に有し、前記培養室の底部が、培養袋を置くために用いられ、
前記蓋体は、前記培養室を閉鎖するために、前記本体の前記開口部に取り外し可能に覆うように設置され、
前記栓は、前記収容溝に詰めるように設置され、前記栓を貫通するように少なくとも一つの貫通孔が設置され、前記少なくとも一つの貫通孔が、前記培養室と外部とを繋ぐように延びている少なくとも一つの管路を通すためのものであり、前記少なくとも一つの管路の一端が、前記培養袋に接続し、
前記給気モジュールは、二酸化炭素センサーと給気コネクターとを含み、前記二酸化炭素センサーが、前記培養室内に設置され、前記給気コネクターに電気接続し、前記給気コネクターが、前記培養室内に気体を供給するために、外部の気体源に接続するように前記本体に設置され、
前記温度制御モジュールは、前記本体と前記蓋体の少なくともいずれか一方に設置され、加熱器と温度センサーとを含み、前記温度センサーが、前記加熱器に電気接続し、前記培養室内の温度を検出するほかに、前記培養室を選択的に加熱するように前記加熱器を制御し、
前記少なくとも一つのスライドレール部は、スライド方向に沿って延びるように前記培養室に設置され、前記袋挟み部品は、前記少なくとも一つのスライドレール部にスライド可能に設置され、前記培養袋内の液体が前記培養袋の片側に流れないよう前記培養袋を留めるものであり、前記培養袋の上をスライドできる、ことを特徴とする、統合型自動化細胞培養装置。
【請求項2】
光源と受光部とを含み、前記培養袋が前記培養室に置かれる際に前記光源と前記受光部との間に位置するよう、前記光源が、前記培養室と前記蓋体の前記培養室に向く面の片方に設置され、前記受光部が、前記培養室と前記蓋体の前記培養室に向く面のもう片方に設置され、前記光源が、前記受光部に波長400~600nmの光線を発射し、前記光線が前記培養袋を透過して前記受光部に受けられることにより、前記受光部が前記培養袋内の液体の吸光度を算出し、ひいては前記培養袋内の細胞密度を算出する、光照射計数モジュールを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項3】
横方向で外に延びる観測部を有し、前記培養袋内の液体と細胞が前記観測部に自由に出入りすることができる、前記培養袋を更に含み、前記光源から発射された光線が前記観測部を介して前記培養袋を透過するよう、前記光源と前記受光部の位置が前記観測部に対応することを特徴とする、請求項2に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項4】
前記光源が、前記受光部に波長400nmの光線を発射することを特徴とする、請求項2に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項5】
前記蓋体の中央に観察窓が設置され、前記観察窓に加熱ガラスが覆うように設置され、前記加熱ガラスの前記培養室に面する側とは反対側に上開き可能な上開き蓋が覆うように設置され、前記上開き蓋が、外部から前記加熱ガラスを選択的に遮蔽し、前記加熱ガラスが、前記加熱器に該当し、前記温度センサーが、前記蓋体の前記培養室に向く面に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項6】
前記培養袋の一端を留めるための、少なくとも前記培養室の一端に設置される少なくとも一つの引っ張り機構を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項7】
前記給気モジュールと前記栓が、前記培養室の相対する両端にそれぞれ設置されることを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項8】
前記培養袋を置くための、前記培養室の底部に設置される通気スタンドを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項9】
前記培養袋の底部の通気性をよくするために、複数の透かし彫り部が、通気スタンドを貫通するように設置されることを特徴とする、請求項8に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【請求項10】
保冷ボックスと、ポンプとを更に含み、前記保冷ボックスは、少なくとも一つの培養液容器を収容するように前記本体内に設置され、前記ポンプは、前記本体に設置され、前記少なくとも一つの管路が、前記ポンプを介して前記少なくとも一つの培養液容器に接続することにより、前記培養袋内に液体を供給することを特徴とする、請求項1に記載の統合型自動化細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置に関する。特に、全機能統合型自動化細胞培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのがんの治療は、従来の化学薬物、放射線治療、又は手術による切除以外に、重篤な副作用を避けるために、遺伝子治療や細胞治療を利用する可能性もある。細胞治療について、患者自身の免疫細胞は、拒絶反応を起こさないため、他人から提供された免疫細胞と比べ、がん細胞をより効果的に攻撃できる上、患者の体への負担を軽減することができる。
【0003】
細胞治療を行うためには、自家細胞又は同種異系細胞を、体外培養し増殖させた後、再度患者の体内へ注射する必要がある。細胞培養は、通常、軟質の培養袋内で行い、増殖する細胞の数の増加に伴い、新しい培養液を徐々に注入する。そして、培養液を指定の温度及び湿度条件下の実験室環境に置く。
【0004】
その中で、細胞の培養状況を確認するためには、培養液を観測し、ひいては何度も手動で袋内の培養液を少量抽出し細胞の数を計算する必要があり、その細胞の数により、対応する量の培養液を注入する必要がある。細胞培養の全プロセスにおいて、手動による観測及び細胞計数の工程を何度も行う必要があるため、人的コストが高く、かつ細胞汚染のリスクや手動操作による誤差もあり、品質が安定しない。
【0005】
したがって、細胞培養は、培養プロセスの全自動化を達成できず、コストが非常に高くなり、一般患者が負担できないという状況を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、統合型設備で培養袋の観測及び培養操作を行うことにより、細胞培養の自動化レベルを向上させる、統合型自動化細胞培養装置を提供することを主な目的とする。
【0007】
また、本発明は、培養液を取り出して計算する必要がなく、培養環境に影響を与えない上、細胞密度をより迅速に知り、培養袋中の細胞密度を容易に観測できる、統合型自動化細胞培養装置を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、本体と、蓋体と、栓と、給気モジュールと、少なくとも一つのスライドレール部と、袋挟み部品とを含む、統合型自動化細胞培養装置を提供する。
【0009】
前記本体は、培養室を囲み、前記本体の上部に前記培養室に接続する開口部を有し、前記本体の側面に前記培養室に接続する収容溝を更に有し、前記培養室の底部が、培養袋を置くために用いられる。前記蓋体は、前記培養室を閉鎖するために、前記本体の前記開口部に取り外し可能に覆うように設置される。前記栓は、前記収容溝に詰めるように設置され、前記栓を貫通するように少なくとも一つの貫通孔が設置され、前記少なくとも一つの貫通孔が、前記培養室と外部とを繋ぐように延びている少なくとも一つの管路を通すためのものであり、前記少なくとも一つの管路の一端が、前記培養袋に接続する。前記給気モジュールは、二酸化炭素センサーと給気コネクターとを含み、前記二酸化炭素センサーが、前記培養室内に設置され、前記給気コネクターに電気接続し、前記給気コネクターが、前記培養室内に気体を供給するために、外部の気体源に接続するように前記本体に設置される。前記温度制御モジュールは、前記本体と前記蓋体の少なくともいずれか一方に設置され、加熱器と温度センサーとを含み、前記温度センサーが、前記加熱器に電気接続し、前記培養室内の温度を検出するほかに、前記培養室を選択的に加熱するように前記加熱器を制御する。前記少なくとも一つのスライドレール部は、スライド方向に沿って延びるように前記培養室に設置され、前記袋挟み部品は、前記少なくとも一つのスライドレール部にスライド可能に設置され、前記培養袋内の液体が前記培養袋の片側に流れないよう前記培養袋を留めるものであり、前記培養袋の上をスライドできる。好ましくは、前記培養袋の一端を留めるための、少なくとも前記培養室の一端に設置される少なくとも一つの引っ張り機構を更に含む。
【0010】
好ましくは、前記装置が、光照射計数モジュールを更に含む。前記光照射計数モジュールは、光源と受光部とを含み、前記培養袋が前記培養室に置かれる際に前記光源と前記受光部との間に位置するよう、前記光源が、前記培養室と前記蓋体の前記培養室に向く面の片方に設置され、前記受光部が、前記培養室と前記蓋体の前記培養室に向く面のもう片方に設置され、前記光源が、前記受光部に波長400~600nmの光線、波長400~500nmの光線、又は波長400nmの光線を発射し、前記光線が前記培養袋を透過して前記受光部に受けられることにより、前記受光部が前記培養袋内の液体の吸光度を算出し、ひいては前記培養袋内の細胞密度を算出する。
【0011】
ある場合には、前記培養袋が、横方向で外に延びる観測部を有し、前記培養袋内の液体と細胞が前記観測部に自由に出入りすることができ、前記光源から発射された光線が前記観測部を介して前記培養袋を透過するよう、前記光源と前記受光部の位置が前記観測部に対応する。
【0012】
ある場合には、前記蓋体の中央に観察窓が設置され、前記観察窓に加熱ガラスが覆うように設置され、前記加熱ガラスの前記培養室に面する側とは反対側に上開き可能な上開き蓋が覆うように設置され、前記上開き蓋が、外部から前記加熱ガラスを選択的に遮蔽し、前記加熱ガラスが、前記加熱器に該当し、前記温度センサーが、前記蓋体の前記培養室に向く面に設置される。
【0013】
ある場合には、前記給気モジュールと前記栓が、前記培養室の相対する両端にそれぞれ設置される。
【0014】
ある場合には、前記装置が、前記培養袋を置くための、前記培養室の底部に設置される通気スタンドを更に含む。好ましくは、前記培養袋の底部の通気性をよくするために、複数の透かし彫り部が、前記通気スタンドを貫通するように設置される。
【0015】
ある場合には、保冷ボックスと、ポンプとを更に含み、前記保冷ボックスは、少なくとも一つの培養液容器を収容するように前記本体内に設置され、前記ポンプは、前記本体に設置され、前記少なくとも一つの管路が、前記ポンプを介して前記少なくとも一つの培養液容器に接続することにより、前記培養袋内に液体を供給する。
【発明の効果】
【0016】
これにより、細胞培養環境に介入しないという前提の下、培養室内の環境を迅速に測定し、前記環境に対し手動又は自動化操作を行うことができる。更に、光照射計数モジュールにより培養袋内の細胞密度を測定することもできるため、これに基づいて細胞の成長状況を判断し、培養液、気体、温度、湿度等の成長条件を調整・制御する際の参考根拠にすることができ、ひいては安定した自動化細胞培養を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の統合型自動化細胞培養装置の斜視図である。
図2】本発明の統合型自動化細胞培養装置の斜視図である。
図3】本発明の統合型自動化細胞培養装置の分解斜視図である。
図4】本発明の統合型自動化細胞培養装置の一部断面図である。
図5】本発明の統合型自動化細胞培養装置の正面図である。
図6】本発明の第一実施例における光源波長と吸光度との関係図である。
図7】本発明の第一実施例における290nmの光源照射での吸光度と細胞密度との関係図である。
図8】本発明の第二実施例における光源波長と吸光度との関係図である。
図9】本発明の第二実施例における290nmの光源照射での吸光度と細胞密度との関係図である。
図10】本発明の第三実施例における光源波長と吸光度との関係図である。
図11】本発明の第三実施例における290nmの光源照射での吸光度と細胞密度との関係図である。
図12】本発明の第三実施例における異なる波長の光源照射での吸光度と細胞密度との関係図である。
図13】本発明の第三実施例における異なる波長の光源照射での吸光度と細胞密度との関係表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図5を参照する。本発明は、少なくとも本体10と、蓋体20と、栓30と、給気モジュール40と、温度制御モジュールと、培養袋位置決め構造と、光照射計数モジュールとを含み、好ましくは、通気スタンド70と、培養液供給機構とを更に含む統合型自動化細胞培養装置を提供する。
【0019】
前記本体10は、概ね箱状にすることができ、その内側に培養室11を囲み、前記本体10の上部に前記培養室11に接続する開口部を有し、前記本体10の側面に前記培養室11に接続する収容溝12を更に有する。好ましくは、前記収容溝12が、切り欠き状で前記本体10の開口部近傍に形成される。また、前記培養室11の底部が、培養袋を置くために用いられ、前記培養袋が前記培養室11の底部に水平に置かれる。
【0020】
前記蓋体20は、前記培養室11を閉鎖し、その内部環境を一定かつ制御可能に維持するために、前記本体10の前記開口部に取り外し可能に覆うように設置される。具体的に、本実施例では、前記蓋体20の周りと、前記本体10の開口部の周りにそれぞれ対応する留め金が設置されるため、前記蓋体20が前記本体10の開口部に覆うように設置されると、これらの留め金をきっちりと掛けることにより培養室11と外部が連通しないことを確保できる。
【0021】
前記栓30は、前記収容溝12に詰めるように設置され、前記栓30を貫通するように少なくとも一つの貫通孔31が設置され、前記少なくとも一つの貫通孔31が、前記培養室11と外部とを繋ぐように延びている少なくとも一つの管路90を通すためのものであり、前記少なくとも一つの管路90の一端が、前記培養袋に接続する。これにより、管路を事前に前記栓に取り付けた後、栓をそのまま収容溝に詰めればよいため、前記本体に直接管路を挿入することと比べ、モジュール化された栓のほうがより簡単かつ迅速な取り付けを実現できる。
【0022】
前記給気モジュール40は、二酸化炭素センサーと給気コネクターとを含み、前記二酸化炭素センサーが、前記培養室11内に設置され、前記給気コネクターに電気接続し、前記給気コネクターが、前記培養室11内に気体を供給するために、外部の気体源に接続するように前記本体10に設置される。好ましくは、前記給気モジュール40が、前記本体10の側面に設置される。本実施例では、前記給気モジュール40と前記栓30が前記培養室11の相対する両端にそれぞれ設置される。
【0023】
前記温度制御モジュールは、前記本体10と前記蓋体20の少なくともいずれか一方に設置され、加熱器と温度センサー24とを含み、前記温度センサー24が、前記加熱器に電気接続し、前記培養室11内の温度を検出するほかに、前記培養室11内の温度を人体の体温に近い好適な培養温度に一定に維持させるよう、前記培養室11を選択的に加熱するように前記加熱器を制御する。具体的に、本実施例では、前記加熱器が、加熱ガラス22であり、前記蓋体20の中央に培養袋のサイズに対応するサイズの観察窓21が設置され、前記加熱ガラス22が、前記観察窓21に覆うように設置され、前記加熱ガラス22の前記培養室11に面する側とは反対側に上開き可能な上開き蓋23が覆うように設置され、前記上開き蓋23が、外部から前記加熱ガラス22を選択的に遮蔽しており、ユーザーは培養室11の内部状況を観察するために開けることができるが、大抵の状況では、細胞の培養環境に影響を与えないよう、外部の光線を遮蔽できるようになっている。前記温度センサー24については、前記蓋体20の前記培養室11に向く面に設置可能であるが、これに限定されない。その他の可能な実施例では、前記培養室の底部に、培養袋の下から加熱する加熱器が設置されてもよい。
【0024】
前記光照射計数モジュールは、光源51と受光部52とを含み、前記培養袋が前記培養室11に置かれる際に前記光源51と前記受光部52との間に位置するよう、前記光源51が、前記培養室11と前記蓋体20の前記培養室11に向く面の片方に設置され(本実施例では、前記蓋体20の前記培養室11に向く面に設置され)、前記受光部52が、前記培養室11と前記蓋体20の前記培養室11に向く面のもう片方に設置され(本実施例では、前記培養室11に設置され)、前記光源51が、前記受光部52に波長400~600nmの光線、波長400~500nmの光線、又は波長400nmの光線を発射し、前記光線が前記培養袋を透過して前記受光部52に受けられることにより、前記受光部が前記培養袋内の液体の吸光度を算出し、ひいては前記培養袋内の細胞密度を算出する。吸光度と細胞密度の換算については、後の段落で詳しく説明する。
【0025】
特に説明したいのは、光源と受光部は、光線が培養袋を透過できる位置に設置する必要があり、即ち培養袋の上方と下方に設置する必要があるが、培養袋内の大半の細胞の活性や成長が光線に影響されないよう、培養袋が、横方向で外に延びる観測部を更に有することができる。観測部は、例えば指状又は耳状の突出部であり、培養袋内の液体と細胞が観測部に自由に出入りすることができ、光源と受光部の位置が前記観測部に対応し、光線が前記観測部のみを透過することにより、培養袋の他の部分に対する影響を低減させる。
【0026】
前記培養袋位置決め構造は、少なくとも一つのスライドレール部61と、袋挟み部品62とを少なくとも含み、前記少なくとも一つのスライドレール部61が、スライド方向に沿って延びるように前記培養室11に設置され(例えば、スライドレール部が、袋挟み部品と直接連結するように培養室の底面に直接設置されてもよいし、スライドレール部が、培養室の底にある滑らかな表面及び培養室の下方に設置される磁石もしくは電磁石を含むことで、磁力で袋挟み部品を吸引して滑らかな表面でスライドするように動かせることもできる)、前記袋挟み部品62は、前記少なくとも一つのスライドレール部61にスライド可能に設置され、前記培養袋内の液体が前記培養袋の片側に集中するよう前記培養袋を留めるものであり、前記培養袋の上をスライドできる。本実施例では、前記培養袋位置決め構造が二つの前記スライドレール部61を含み、前記二つのスライドレール部61がそれぞれ前記培養室11の底部の相対する両側に設置され、互いに平行に延びる。前記袋挟み部品62は、両端がそれぞれ前記二つのスライドレール部61にスライド可能に設置され、かつ互いに間を空けて設置される二つの横棒を含む。培養袋が前記二つの横棒の間に延びており、かつ前記二つの横棒に挟まれる。前記袋挟み部品62が前記二つのスライドレール部に沿ってスライドすると、前記二つの横棒が前記培養袋の上をスライドして培養袋内の液体を一端に押し込み、培養袋内の液体が培養袋の片側に集中する。
【0027】
また、前記培養袋位置決め構造は、少なくとも一つの引っ張り機構63を更に含むことができる。前記少なくとも一つの引っ張り機構63は、少なくとも前記培養室の一端に設置され、前記培養袋の一端を解放可能に固定することにより、培養袋を端部から引っ張って、袋挟み部品62の移動による培養袋の変形を回避できる。具体的に、引っ張り機構63は、例えば培養袋を端部から挟んで固定するクリップであるが、フック又は止めピンとして配置され、対応するフック又は掛け穴を有する培養袋と組み合わせて使用することもできる。又は、引っ張り機構が固定支柱とマグネットを有し、マグネットが磁力で固定支柱に吸着し、培養袋をマグネットと固定支柱の間に挟んで固定することができる。
【0028】
前記通気スタンド70は、前記培養袋を置くために、前記培養室11の底部に取り外し可能に設置される。前記培養袋の底部の通気性をよくし、培養袋の頂部と底部の培養環境がほぼ一致することを確保するために、複数の透かし彫り部が、通気スタンド70を貫通するように設置される。
【0029】
前記培養液供給機構は、少なくとも保冷ボックス81と、ポンプ82とを含む。前記保冷ボックス81は、少なくとも一つの培養液容器を収容するように前記本体10に設置され、これにより培養液を低温保存する。前記ポンプ82は、前記本体10に設置され、前記少なくとも一つの管路90が、前記ポンプ82を介して前記少なくとも一つの培養液容器に接続することにより、適切に低温保存された培養液を前記培養袋内に供給する。また、培養液の供給の有無と供給量の制御を自動化するために、前記ポンプ82を更に制御機構に接続することができる。
【0030】
上記の構造によれば、培養液と細胞を入れた培養袋を培養室内に設置し、管路で接続し、蓋体で培養室を閉鎖状態にすることで、細胞培養の自動化を達成できる。重要なのは、培養プロセスに必要な観測及び細胞密度の確認は、培養環境を破壊せずに各センサーと受光部を用いて検出し、吸光度から迅速な換算を行うことにより実現することができ、ひいてはこれに基づき培養液や気体の供給、又は培養室内の温度を調整することができる。
【0031】
上記の構造が迅速に細胞密度を得られる根拠は、吸光度と細胞密度の間の線形関係である。この点について、本発明では、代表的な三種類の細胞株に対し実験を行い、吸光度と細胞密度との間に確かに線形関係があることを証明した。この線形関係図によれば、吸光度を検出するのみで、細胞密度に容易に換算できる。
【0032】
以下の実験では、細胞数の計算は次のように行った。少なくとも3×l0の細胞又は7mLの細胞液を取り出し、細胞を遠心分離して沈殿物と上清液を収集し、上清液で細胞液の細胞濃度を3×l0に調整し、必要とする量は、合計lmLである。上清液で調製された細胞液を3倍段階希釈し、5つの濃度(3×l0、1×10、3.3×l0、1.1×10、3.7×l0)を得た。希釈された細胞液を200μL取って96ウェル平底プレートに入れた。各濃度につき、それぞれ三回ずつ行った。更に、細胞遠心分離工程の際に収集された上清液を対照群にし、1ウェルに200μLを入れ、計三回行った。その後、SpectraMax Paradigmマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて全波長(230~l000nm,10nm)スキャンを行い、最高濃度とバックグラウンドの吸光度の差が一番大きい波長を最適波長にし、吸光度と細胞濃度との関係図を作成した。
【0033】
まず、K562細胞株を実験対象とした図6図7(第一実施例)を参照する。そして図8図9は、GDT(Gamma delta T)細胞を実験対象とし(第二実施例)、図10図11は、NK(Natural Killer)細胞を実験対象とした(第三実施例)。図6図8図10から、三種類の細胞の吸光度は、いずれも波長290nmに極値があり、400nm、500nm、600nmにおいても顕著な吸光度が示され、これらの波長はいずれも細胞密度の検出に好適であることが分かった。しかし、図12図13に示すように、290nmの光線では比較的顕著な線形関係が現れたため、290nmの光源を選択して線形関係の実験を行うことにした。図7図9図11から、波長290nmの光線の照射下において、三種類の細胞の、細胞液の吸光度と実際の細胞密度との間には確かな線形関係があることが分かった。したがって、吸光度を細胞密度の換算の根拠にすることは信頼性が高いとも言える。
【0034】
上記の実験は、主に波長290nmで行われた。しかし、光線のエネルギーが高いと細胞の破損が発生したり、細胞の成長に悪影響を及ぼしたりする可能性があることを含めて考慮すると、実務上、波長400~600nmの光線で光照射計数を行うことが好ましい。図12に示すように、波長400~600nmの光線(波長400~500nmの光線がより好ましく、波長400nmの光線が更に好ましい)では、その吸光度と細胞密度との線形関係が依然として顕著である上、長波長の光線のエネルギーが比較的低く、光線のエネルギーが細胞の成長に対する影響が比較的少ないため、本発明の統合型自動化細胞培養装置に好適である。中でも、波長400nmの光線での吸光度がより顕著であるため、判断と解析が比較的しやすい。
【0035】
以上より、本発明が提供する統合型自動化細胞培養装置は、培養室ひいては培養袋を開けてサンプルを取る必要がなく、培養室内の環境要因と培養袋内の細胞密度とを簡単かつ迅速に検出できるため、培養環境の自動化調整の根拠になり得、ひいてはより高いレベルの自動化培養を達成し、コストを大幅に削減することができるほか、安定した培養環境を維持し、細胞培養の品質を向上させることができる。これは、関連業界及び医療業界が所望することである。なお、以上の実施例は、本発明の技術内容を説明及び解釈するためのものに過ぎない。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲により限定された内容に準ずる。
【符号の説明】
【0036】
10 本体
11 培養室
12 収容溝
20 蓋体
21 観察窓
22 加熱ガラス
23 上開き蓋
24 温度センサー
30 栓
31 貫通孔
40 給気モジュール
51 光源
52 受光部
61 スライドレール部
62 袋挟み部品
63 引っ張り機構
70 通気スタンド
81 保冷ボックス
82 ポンプ
90 管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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図12
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【国際調査報告】