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特表2025-500967時計用ひげぜんまいを試験及び製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】時計用ひげぜんまいを試験及び製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/10 20060101AFI20250107BHJP
   G01N 29/12 20060101ALI20250107BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20250107BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20250107BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G04D7/10
G01N29/12
G01N29/24
G01N29/46
G04B17/06 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537602
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022083927
(87)【国際公開番号】W WO2023117350
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216760.5
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22185550.5
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502383535
【氏名又は名称】リシュモン アンテルナシオナル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガシェ、デビッド
(72)【発明者】
【氏名】スッバライエン、ケビン
(72)【発明者】
【氏名】トベナス、スザナ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC05
2G047BA04
2G047BC07
2G047CA04
2G047GD01
2G047GG12
2G047GG20
2G047GG32
2G047GG33
(57)【要約】
ひげぜんまい又はひげぜんまいを形成するように構成されたひげぜんまいブランクを試験するための方法であって、ひげぜんまいは、少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有する必要があり、試験方法が、以下の工程:
a.ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程と、
b.所定の周波数範囲にわたる振動励起中又は振動励起に応答して、共振ピークなどの、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程と、
c.ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクが欠陥によって影響を受けているか否かを判定するために、工程bで特定された共振周波数特性を予測機械にかける工程と、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひげぜんまい又はひげぜんまいを形成するように構成されたひげぜんまいブランクを試験するための方法であって、前記ひげぜんまいが、少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有する必要があり、前記試験方法が、以下の工程:
a.前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程と、
b.前記所定の周波数範囲にわたる前記振動励起中又は前記振動励起に応答して、共振ピークなどの、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程と、
c.前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクが欠陥によって影響を受けているか否かを判定するために、工程bで特定された前記共振周波数特性を予測機械にかける工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程c.が、工程b.で特定された前記特性が、前記所定の期待共振周波数の同じ特性から所定の差だけ逸脱する異常な特性であるかどうかを判定するように、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの振動周波数のスペクトルを基準スペクトルと比較する少なくとも1つの工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記ひげぜんまいが、少なくとも2つの所定の期待共振周波数を有し、前記周波数範囲が、前記少なくとも2つの所定の期待共振周波数をカバーするために予め定められる、請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす前記欠陥が、期待共振モードを変更する欠陥であり、
工程c.が、2つの期待される通常は隣接又は連続する共振ピークの間で異常な共振ピークを探索することからなる工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項5】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす前記欠陥が、前記期待共振モードの減衰又は増幅欠陥であり、
工程c.が、期待共振ピークの期待振幅と少なくとも30%異なる振幅を有する異常共振ピークを探索することからなる工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項6】
工程b.が、好ましくは、少なくとも部分的に工程a.の間に実行される、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅又は速度又は加速度の経時的な測定に基づく、請求項1~5のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項7】
前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクが、ベース平面内に含まれ、工程b.が、
-前記ベース平面に対して垂直な方向における前記ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅若しくは速度若しくは加速度を測定する工程b’、及び/又は
-前記ベース平面内に含まれる方向における前記ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅若しくは速度若しくは加速度を測定する工程b’’を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項8】
工程b.が、
-前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅又は速度の関数として、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振ピークを特定する工程を含む、請求項6又は7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記共振周波数の特性が、前記共振ピークの最大値の中間高さにおける前記共振ピークの幅に基づいて特定される、請求項8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記予測機械が、例えば、欠陥が、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクに影響を及ぼすか否かを予測するために、ニューラルネットワークによって実行される分類を実施する、請求項1~9のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項11】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの材料を考慮する工程、並びに前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの前記材料の関数として、前記振動励起の最大振幅及び/又は前記所定の周波数範囲の周波数範囲を調節することからなる予備工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項12】
前記周波数範囲が、0Hz~100kHz、好ましくは、0Hz~50kHz、より好ましくは、0Hz~40kHz、及び非常に好ましくは、10kHz~35kHzの周波数範囲に及ぶ、請求項1~11のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項13】
工程c.が、欠陥が前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクに影響を及ぼすと判定した場合、前記方法が、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクを特定する工程、又は分離する工程、又は再加工する工程、又は廃棄する工程からなる少なくとも1つの工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項14】
少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有するひげぜんまいを製造するための方法であって、
A/前記所定の期待共振周波数を得るために必要な所定の公差内の寸法を有する少なくとも1つのひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
B/請求項1~13のいずれか一項に記載の試験方法に従って、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクを試験する工程からなる工程を含む、方法。
【請求項15】
C/請求項1に記載の工程c.における前記欠陥特定に従って、工程A/の間に形成された前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを特定する工程、又は分離する工程、又は再加工する工程、又は廃棄する工程からなる工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ひげぜんまいブランクが、複数の他のひげぜんまいブランクをともにウェハ上に形成される、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の試験方法の工程c.を実施するための予測機械用の学習方法であって、
i-ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
ii-前記ひげぜんまいの各々又は前記ひげぜんまいブランクの各々に、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程、
iii-前記所定の周波数範囲の適用中に、各ひげぜんまい又は各ひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程、
iv’-各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を測定するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを設置する工程、
並びに/あるいは
iv’’-シミュレーションツールにおいて、各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を計算するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクをモデル化する工程、
v-工程iiiで特定された前記共振周波数、及び/又は工程iv’で測定され、かつ/若しくは工程iv’’で計算された自由発振周波数の少なくとも1つの期待共振周波数を推定する工程、
vi-前記予測機械に、各ひげぜんまい又はブランクに関して:
-工程iii-で特定された前記共振周波数の前記特性、
-前記期待共振周波数の同じ特性を提供する工程からなる工程を含む、学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用部品の試験及び製造の分野に関する。より具体的には、本発明は、時計用の、別名振動子と呼ばれるひげぜんまいを試験及び製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式ウォッチの動きは、振動子、換言すれば、弾性変形可能な構成要素、を備える機械式調速器によって調速され、弾性変形可能な構成要素の発振がウォッチの動作を決定する。多くのウォッチは、例えば、てん輪の軸上に取り付けられ、脱進機によって発振し始める、振動子としてのひげぜんまいを備える調速器を含む。てん輪とひげぜんまいとの対の固有周波数は、ウォッチが調速されることを可能にし、特に、ひげぜんまいの剛性に依存する。
【0003】
より具体的には、慣性Iのてん輪に結合された剛性Rのひげぜんまいによって形成される調速機構の周波数fは、次式によって得られる。
【数1】
【0004】
ひげぜんまいの剛性はまた、固有振動数及び共振周波数などのその固有振動特性を定義する。本出願では、弾性システム(振動子単独又は振動子とてん輪との対)の固有周波数は、このシステムが自由に動作するとき、換言すれば励起力がないときに発振する周波数である。更に、励起力を受ける弾性システムの共振周波数は、局所最大値が、弾性システムの所与の点について変位の振幅を測定することができる周波数である。換言すれば、弾性システムが、経時的に変化する周波数で励起源によって励起される場合、変位振幅は、振動ノードに対応しない任意の点において、この共振周波数の前では上り勾配をたどり、その後は下り勾配をたどる。典型的には、そのような試験中、励起周波数の関数としての変位の振幅の記録は、共振周波数に関連付けられるか、又は共振周波数を特徴付ける変位の振幅におけるピーク又は共振ピークを有する。
【0005】
ひげぜんまい型振動子の剛性は、典型的には、振動子が作製される材料の特性、並びにその寸法、特に、そのバーに沿ったそのコイルの厚さ(換言すれば幅)に依存する。より具体的には、剛性は、次式によって得られ:
【数2】
ここで、
φは、ばねのねじれ角であり、
Mは、ひげぜんまいの復元トルクであり、
Mは、特定の材料から作製された一定断面を有するバーに対して、次式によって得られ:
【数3】
ここで、
Eは、バーに使用される材料のヤング率であり、
Lは、バーの長さであり、
hは、バーの高さであり、
eは、バーの厚さ又は幅である。
【0006】
慣性Iのてん輪に結合された剛性Rのひげぜんまいによって形成される調速機構の固有周波数は、特に、ひげぜんまいの剛性の平方根に比例する。ひげぜんまいの主な仕様は、その剛性であり、この剛性は、発振器の慣性要素を形成する、てん輪と対をなすことができるように、明確に定義された間隔内になければならない。この対形成作業は、機械的発振器の周波数を正確に調速するために必須である。
【0007】
ウォッチの動作を等しく安定させるために、発振器の特性が可能な限り安定していることが非常に重要である。現代の環境における磁場の重要性は、数年にわたって、金属ひげぜんまいよりも磁気外乱に対してより敏感でないシリコンひげぜんまいを使用するように時計工を駆り立ててきた。
【0008】
非常に有利なことに、微細加工技術を使用することによって、単一ウェハ上に数百個のシリコンひげぜんまいを製造することが可能である。特に、シリコンウェハにおいてフォトリソグラフィ及び機械加工/エッチング方法を使用することによって、非常に高い精度で複数のシリコン振動子を生成することが知られている。これらの機械振動子を製造するための方法は、通常、単結晶シリコンウェハを使用するが、他の材料で作製されたウェハ、例えば、多結晶シリコン若しくはアモルファスシリコン、他の半導体材料、ガラス、セラミック、炭素、カーボンナノチューブ、又はこれらの材料を含む複合材料を使用することもできる。一方、単結晶シリコンは、熱膨張の係数(アルファ)が等方性である立方晶クラスm3mに属する。
【0009】
シリコンは、その第1の熱弾性係数について高い負の値を有し、その結果として、シリコンで作製された振動子の剛性、したがって、その固有周波数は、温度に応じて大きく変化する。この欠点を少なくとも部分的に補償するために、文献欧州特許第1422436号、同第2215531号、及び国際公開第2016128694号には、単結晶シリコンで作製されたコア(又は国際公開第2016128694号の場合は、2つのコア)から生成され、そのためヤング率における温度の変化が、コア(又は複数のコア)を取り囲むアモルファス酸化シリコン(SiO2)の層によって補償されるひげぜんまい型機械振動子が記載され、後者は、正の熱弾性係数を有する数少ない材料のうちの1つである。
【0010】
ひげぜんまいが、ウェハ上の集合的な製造によってシリコン又は別の材料から生成されるとき、最終的な機能歩留まりは、剛性がペアリング間隔に対応するひげぜんまいの数をウェハ上のひげぜんまいの総数で割ることによって得られる。
【0011】
しかしながら、ウェハ上でのひげぜんまいの製造において使用される微細加工工程、より具体的には、エッチングは、典型的には、エッチングパターンが各ひげぜんまいについて同じであるにもかかわらず、同じウェハのひげぜんまいの寸法の著しい外形の分散、したがって、それらの剛性の著しい分散をもたらす。剛性の測定される分散は、通常、ガウス分布に従う。したがって、製造歩留まりを最適化するために、ガウス分布の平均を公称剛性値に集中させ、そのガウス分布の標準偏差を低減することも考慮される。
【0012】
更に、剛性の分散は、同じ方法仕様に従って異なる時間にエッチングされた2つのウェハのひげぜんまい間で更に大きくなる。この現象は図1に示されており、3つの異なるウェハ上のひげぜんまいの剛性分散曲線Rd1、Rd2、及びRd3が例解される。概して、各ウェハに関して、剛性Rの分布(この剛性を有するひげぜんまいの数Nに関して)は、正規又はガウスの法則に従い、各分散曲線は、そのそれぞれの平均値Rm1、Rm2、及びRm3を中心とする。
【0013】
文献国際公開第2015113973号及び欧州特許第3181938号は、所定の剛性を有するひげぜんまいを得るのに必要な寸法よりも大きい寸法を有するひげぜんまいを形成することと、所定の慣性を有するてん輪と結合することによって形成されたこのひげぜんまいの剛性を測定することと、所定の剛性を有するひげぜんまいを得るのに必要な寸法を得るために除去される材料の厚さを計算することと、ひげぜんまいからこの厚さを除去することによって、この問題を解決することを提案する。同様に、文献欧州特許第3181939号は、所定の剛性を有するひげぜんまいを得るために必要な寸法未満の寸法を有するひげぜんまいを形成することと、所定の慣性を有するてん輪と結合することによって形成されるこのひげぜんまいの剛性を判定することと、所定の剛性を有するひげぜんまいを得るために必要な寸法を得るために追加される材料の厚さを計算することと、この厚さの材料をひげぜんまいに追加することによって、この問題を解決することを提案する。
【0014】
このようにして、図2に例解されるように、所与のウェハ上の剛性の平均剛性Rm1、Rm2などにかかわらず、剛性分散曲線Rd1、Rd2などは、公称剛性値、Rnomに関して再度中心とすることができる。
【0015】
対照的に、ウェハ上でのひげぜんまいの製造は、いくつかのひげぜんまいにわたって欠陥を発生させる場合があり、この欠陥は、通常期待される挙動に関して、振動挙動における大きいばらつきにつながることが観察され得る。特に、コイルが接触したままであるか、又は互いに接合されることが生じ得る。ブリッジ現象はまた、不純物に起因してコイル間で観察され得るか、又はひげぜんまいの一部がウェハの他の部分と接触したままであることが観察され得る。明らかに、これらの現象は、振動挙動に強く影響を及ぼし、同じウェハの1つ以上のひげぜんまいをウォッチ機構での使用に適さなくする製造欠陥とみなすことができる。更に、これらの欠陥は、修正が容易ではなく、通常、問題の部品を廃棄しなければならないことにつながることに留意されたい。特に、上述した微細修正(酸化物層の製作、部品全体にわたる材料の追加又は除去)は、部品若しくはそのコイルの互いに対する、又は部品を支持するウェハとのそのような点接合欠陥若しくはブリッジ欠陥を修正するために使用することができない。
【0016】
本発明の目的は、上述の欠点がなく、生成フローがより速く、及び/又は汚染のリスクがより少なく、及び/又はサンプリングがより多く、及び/又はウォッチ機構における使用には禁止された欠陥を有するウェハのひげぜんまいの検出がより容易又は迅速であることを可能にする手法を提案することである。
【発明の概要】
【0017】
より具体的には、本発明の第1の態様は、ひげぜんまい又はひげぜんまいを形成するように構成されたひげぜんまいブランクを試験するための方法に関し、ひげぜんまいは、少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有する必要があり、試験方法は以下の工程、
a.ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程と、
b.所定の周波数範囲にわたる振動励起中又は振動励起に応答して、共振ピークなどの、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程と、
c.ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクが欠陥によって影響を受けているか否かを判定するために、工程bで特定された共振周波数特性を予測機械にかける工程と、を含む。
【0018】
上記の実施形態による方法は、問題のひげぜんまい又はブランクに影響を及ぼす顕著な欠陥を示す特性を特定することからなる工程を含む。例えば、得られた振動周波数のスペクトル中で特定された発散が、所定の閾値よりも大きい場合、問題のひげぜんまい又はブランクは、ウォッチ機構において使用可能であると判定される。それゆえ、本方法は、振動励起に応答して得られる振動スペクトルの単純な測定を用いて、欠陥がひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに、部品を使用不能及び再加工不可能にする程度まで著しく影響を及ぼすか否かを検出することができる。(単一又は「裸」又は「未加工」の完成又はブランク部品、換言すれば、例えば、仕上げ表面処理なし、及び/又はまだ組み立てられていないものに対して実行される)そのような測定は、ウェハから部品を取り外し、振動機構に部品を取り付ける前であっても、外観の解析又は単一測定なしに部品上の欠陥を特定することを可能にし、時間及び資源の節約を可能にする。換言すれば、依然としてウェハステージにある間に、ひげぜんまい又はブランクを、例えば、使用可能な部品又は可能な再加工のための部品の第1のカテゴリと、廃棄される欠陥部品の第2のカテゴリと、にカテゴリ化することが可能である。
【0019】
上記の実施形態による方法は、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの振動励起の工程と、次いで、予測によって、欠陥がひげぜんまい又はブランクに影響を及ぼすか否かを推定するための共振周波数の特定工程と、を含む。てん輪又は別の構成要素の組立がなく、時間が節約される。更に、測定は、ひげぜんまい又はブランクのみに対して実行され、これは、他の構成要素又は構成要素の組立体によって誘発される誤差並びに汚染の可能性を制限する。測定精度は、他の構成要素又は汚染に起因する変動源がより少なくなるため改善される。換言すれば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクのみが試験される。振動励起は、てん輪、ウェイト、又は発振システムのいずれにも結合されずに、部品又は単一ブランクに加えられる。本方法は、単体自由部品の試験を可能にし、生成性向上(発振システムとの組立がない)、品質向上(部品の汚染がない)、及び精度向上(発振システムの他の構成要素に結び付けられた誤差がない)の点で利点を提供する。
【0020】
一実施形態によれば、欠陥は以下:
隣接するコイルに、又は例えば、絶縁支持体などのウェハの残りの部分に接合されるか又は架橋された1つ以上のコイル、
材料又は酸化物の局所的又は非局所的な多孔性、
空隙、剥離、不規則性などを有するシリコンコアと酸化物層との間の界面、
酸化物等の不規則な又は断続的な厚さ、
例えば、浸透欠陥などの材料の欠陥又は局所的な不足、
例えば、マスキング欠陥に関連する材料の余剰、
材料(シリコン、酸化シリコン)の不均一性、
ひげぜんまいを形成するバーの横方向スライスの平坦度欠陥(平滑化)、
ひげぜんまいを形成するバーの横方向スライスの垂直性欠陥(面のテーパ又はアンダーカット)、
変形しているか、波打っているか、又は理論上の位置と比較して中心からずれているコイルなどであり得る。
全ての上記欠陥は、概して、修正可能ではなく、有益でなければならない工業的状況において、その後の処理又は外形補正を想定することができないことに留意すべきである。その結果として、そのような欠陥の検出は、特定された部分の廃棄につながる。特に、上記の欠陥は、例えば、ひげぜんまいスタッドにおいて、発振器内のひげぜんまいの取り付け長さを調節することによって、発振器レベルで補償、マスキング、又は修正することができない。
これらの欠陥は、意図的に得られたものではなく、したがって、比較されるか、又は同化することができず、例えば、部品の目標剛性及び/又は熱補償を有する部品を得るために、剛性及び/又は後続の酸化の全体的な修正を可能にするために、意図的により高い若しくはより低い全体的及び/又は均一な寸法を有する部品(例えば、シリコン製のひげぜんまい)を製造することを包含しないことに留意されたい。
換言すれば、これらの欠陥は、例えば、剛性の具体的な測定の関数として、部品(又は同じシリコンウェハの全ての部品)を修正することができるように、特に意図的に厚すぎる又は薄すぎる部品によってそのような欠陥が引き起こされる場合、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの剛性欠陥ではなく、またひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの剛性欠陥を包含しないことに留意されたい。
【0021】
一実施形態によれば、振動励起は、自由端(典型的には、中央ひげ玉)を有するひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに印加される。機械的観点から、振動励起は、ばね(ひげぜんまいの弾性部分)によって基準(単一のひげぜんまいのための把持プライヤ、又は、例えば、シリコン製であり取り外されていないブランク用の基板又はウェハの残部)に接続された(ひげぜんまいの重心に位置する)質量に印加されると概略的に考えることができる。振動励起は、懸架された質量を運動させる。
【0022】
また、試験された部品が、欠陥のために分離されるか又は廃棄されなければならないと決定された場合、これは、何も分解せずに単一の部品に対して行われ得ることに留意されたい。
【0023】
したがって、上記の実施態様による方法は、製造中にひげぜんまいブランクを試験することを可能にし、汚染又は取り付け誤差のリスクを制限する。製造の進んだ段階での欠陥の特定が可能である。上記の実施態様による方法はまた、例えば、最終的な適合性チェックを実行するために、完成したひげぜんまいの試験を可能にする。
【0024】
当然のことながら、得られたスペクトルの周波数範囲は、振動励起源だけでなく、使用される測定機器のセンサに依存する。それゆえ、周波数範囲は、励起の周波数範囲と、発振の振幅を測定するための機器(振動計など)が敏感である周波数範囲との両方にリンクされる。しかしながら、励起の周波数範囲は、試験されるひげぜんまい又はブランクの少なくとも1つの共振周波数を含むように選択される。
【0025】
仕上げられたひげぜんまいが有するべき所定の共振周波数は、目標値の周りの公差によって定義される目標固有周波数若しくは目標共振周波数、又は目標固有周波数範囲、又は目標共振周波数範囲であり得る。
【0026】
上記方法において、共振周波数の特性は、少なくとも1つの共振周波数を含む、所定の周波数範囲にわたって測定された発振応答の特性である。そのような特性は、典型的には、生の測定信号(例えば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの特定の点の変位の振幅、速度又は加速度の測定)を処理した後に特定され、処理は、例えば、共振ピーク、このため共振周波数を特定するためのフーリエ変換を含み得る。
【0027】
特に、特定された特性は、共振周波数値、共振ピークの幅、共振ピークの振幅、共振ピークの存在又は不在、共振ピークの形状(いくつかの勾配反転を有する間隔の狭いピークなど)であり得る。このため、欠陥の特定は、
-振動励起に応答して得られるひげぜんまい又はブランクの振動周波数のこのスペクトルから得られる特性(共振周波数、共振ピークの幅、共振ピークの振幅、共振ピークの存在又は不在、共振ピークの形状など)と、
-較正された部品、試験平均及び/又はシミュレーション若しくは数値計算から構築されたスペクトルであり得る、基準スペクトルから得られる同じ特性(共振周波数、共振ピークの幅、共振ピークの振幅、共振ピークの存在又は不在、共振ピークの形状など)との間の比較に基づく。
【0028】
一実施形態によれば、工程c.は、工程b.で特定された特性が、所定の期待共振の同じ特性から所定の差だけ逸脱する異常な特性であるかどうかを判定するように、工程a.に応答して得られたひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの振動周波数のスペクトルを基準スペクトルと比較する少なくとも1つの工程を含む。
【0029】
上記の実施態様によれば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの振動励起工程に応答して、ひげぜんまい又はブランクの振動応答の測定、及び基準スペクトルで得られた振動周波数のスペクトルとの比較による共振周波数の異常特性の検出によって、欠陥がひげぜんまい又はブランクに影響を及ぼすか否かを予測によって推定することが可能になる。
【0030】
一実施形態によれば、工程aにおいて、周波数範囲は、複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに同時に適用される。振動励起は、典型的には、例えば、ウェハに依然として取り付けられている数百個のひげぜんまいブランクを支持するウェハ上に課すことができるので、迅速性が改善される。
【0031】
一実施形態によれば、周波数範囲は、
-所定の共振周波数を中心とし、かつ
-所定の共振周波数の少なくとも30%、換言すれば、所定の共振周波数の±15%の範囲を有する、少なくとも1つの周波数範囲を包含するために予め判定される。例えば、所定の共振周波数が1kHzである場合、周波数範囲は、850Hz~1150Hzとなる。
【0032】
一実施形態によれば、ひげぜんまいは、少なくとも2つの所定の期待共振周波数を有し、周波数範囲は、少なくとも2つの所定の期待共振周波数をカバーするために予め定められる。広範囲の周波数をカバーするか又は走査することによって、複数の共振ピーク(又は共振周波数)を測定することが可能であり、より高い精度を提供することができる。
【0033】
一実施形態によれば、工程a.は、ひげぜんまいブランクを支持するウェハのスライス上に、又は好ましくは、特に励起されるひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの上又は更には下に、音響励起を誘発するか又は課すことを可能にする圧電源などの源の使用を含む。
【0034】
一実施形態によれば、音響源は、少なくとも1つのひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを励起するために選択された励起円錐に結合することができる。好ましくは、ウェハが複数のひげぜんまいブランクを支持する場合、音響源は、ひげぜんまいブランクの少なくとも一部分、好ましくは、全てを励起するために選択された励起円錐に結合され得る。
【0035】
一実施形態によれば、音響源は、所定の周波数範囲:
-ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅、速度又は加速度を測定するための手段によって検出されるのに十分なひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの振幅の振動を発生させるのに十分な振幅を有し、及び/又は
-ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの振動スペクトルを推定するのに十分な持続時間の間、をカバーするために経時的に変化する振動励起を発生させるために、選択及び/又は調節することができる。
【0036】
一実施形態によれば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす欠陥は、期待共振モードを変更する欠陥であり、
工程c.は、2つの期待される通常は隣接又は連続する共振ピークの間で異常な共振ピークを探索することからなる工程を含む。本出願人は、接合されたコイルの欠陥、材料の不足、コイルをともに連結する不純物、又は他の欠陥が、ひげぜんまい又はブランクに、準拠したひげぜんまいでは観察されない共振モードを有させ得ることに気付いた。したがって、この方法は、期待周波数スペクトルに通常は存在しない共振ピークの存在を特定することを意図している。欠陥が新しい共振モードの発生を引き起こす場合、本方法は、他の共振ピークが正しい場合であっても、欠陥を検出することを可能にする。
【0037】
一実施形態によれば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす欠陥は、期待共振モードの減衰又は増幅欠陥であり、
工程c.は、期待共振ピークの期待振幅と少なくとも30%異なる振幅を有する異常共振ピークを探索することからなる工程を含む。本出願人は、接合されたコイルの欠陥、材料の不足、又はコイルをともに連結する不純物が、ひげぜんまい又はブランクに、準拠したひげぜんまいで観察され得る共振モードとは著しく異なる共振モードを有させ得ることに気付いた。したがって、本方法は、得られた周波数スペクトルにおける共振ピークの振幅と、基準スペクトルにおける同じ共振ピークの振幅との間の差を定量化することに関心がある。代替的に、得られた共振ピーク下の面積を計算し、基準スペクトルのピーク下の面積と比較することができ、面積が、例えば、30%の差を有する場合、欠陥があると宣言することが可能である。
【0038】
一実施形態によれば、本方法は、工程c.において特定された欠陥をカテゴリ化することからなる工程d.を含む。例えば、異常な特性が、期待外共振ピークの存在である場合、又は異常な特性が、期待共振ピークの強い減衰である場合、予測機械は、欠陥部品をカテゴリ化するために、1つの欠陥を特定して別の欠陥と区別することができる。欠陥のカテゴリは、例えば、接合されたコイル、材料欠陥、さもなければブランクとウェハの残りの部分との間の意図しない接触であり得る。
【0039】
一実施形態によれば、工程bは、好ましくは、少なくとも部分的に工程aの間に実行される、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位の振幅又は速度又は加速度の経時的な測定に基づく。
【0040】
一実施形態によれば、工程bは、
-ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の動作変形又は様式変形の関数として、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振周波数を特定する工程を含む。動作変形又は様式変形は、典型的には、励起周波数の関数としての変位振幅若しくは速度、又は加速度及び発振方向(特定の平面の外側又は特定の平面内)によって定義される。
【0041】
一実施形態によれば、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクは、ベース平面内に含まれ、工程bは、
-ベース平面に対して垂直な方向におけるひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位の振幅、速度若しくは加速度を測定する工程b’、及び/又は
-ベース平面内に含まれる方向におけるひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位の振幅、速度若しくは加速度を測定する工程b’’を含む。
【0042】
いくつかの方向における変位又は速度の測定は、ピーク及び共振周波数のより良好な特定を可能にする。
【0043】
一実施形態によれば、
-第1の所定の共振周波数について、ベース平面に対して垂直な方向におけるひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位若しくは速度を測定する工程b’のみが実行され、
及び/又は
-第2の所定の共振周波数について、ベース平面内に含まれる方向におけるひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位若しくは速度を測定する工程b’’のみが実行される。
【0044】
共振周波数に応じて、測定誤差を最小限に抑えるために、可能な限り最大の変位又は速度を測定するように、1つの方向又は別の方向で測定する選択がなされ得る。より具体的には、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの幾何学的形状の関数として、振動励起に応答した振動のモード(典型的には、振動の方向)は、変化し得る。
【0045】
一実施形態によれば、工程b.は、
-ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅又は速度の関数として、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振ピークを特定する工程を含む。
【0046】
一実施形態によれば、共振周波数の特性は、共振ピークの最大値の中間高さにおける共振ピークの幅に基づいて特定される。この処理方法は、その最大値によって定義されるピークの周波数位置の特定のみに基づく場合に、行われ得る計算誤差を制限することを可能にする。
【0047】
一実施形態によれば、予測機械は、ひげぜんまいをてん輪に結合することなく、かつ部品の振動励起以外の試験を単独で行うことなく、1つ以上の測定された共振周波数に基づいて、欠陥の存在を予測、したがって事前に与えるか又は計算することを可能にするデバイスであり得る。ユーザによって得られる出力は、試験方法のユーザに表示されるか又は送信され得る欠陥の存在/性質又は適合性/非適合性に関する情報である。予測機械は、以下のように提供され得る:
-数学的モデル(例えば、1つ以上の共振周波数を剛性などの固有のパラメータと結び付ける多項式)に基づく、
-出力として、欠陥の存在を与えるために、振動測定スペクトルから取得された値又はグラフを入力として受信するためにニューラルネットワークを使用し、
-人工知能を使用してシステムを実施する。
換言すれば、予測機械は、発振器の調整工程中に、測定値及び目標値との比較に応答して共振周波数を調節するための、調整又は自己調整又はフィードバックループシステムではない。
【0048】
一実施形態によれば、予測機械は、欠陥がひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼすか否かを予測するために、例えば、ニューラルネットワークによって実行される分類を実施する。
【0049】
一実施形態によれば、方法は、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの材料を考慮することと、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの材料の関数として、振動励起の最大振幅及び/又は所定の周波数範囲の周波数範囲を調節することからなる予備工程を含む。
【0050】
一実施形態によれば、周波数範囲は、0Hz~100kHz、好ましくは、0Hz~50kHz、より好ましくは、0Hz~40kHz、非常に好ましくは、10kHz~35kHzの周波数範囲に及ぶ。本出願人は、予測精度が、高周波数範囲内に位置するピーク又は共振周波数についてより良好であることを観察した。より具体的には、剛性に焦点を当てると、共振周波数に対するその影響は、高周波数範囲(例えば、10kHz~35kHz)においてより強く、そのため感度及び精度は、この特定の範囲にわたってより良好である。
【0051】
一実施形態によれば、工程a.及び工程b.が同期される。そのような同期は、位相シフト、又は減衰、又は結合を検出する可能性を与え、それを考慮すると、予測の精度を改善することができるか、又は振動励起源を調節するか若しくは再較正することを可能にする。
【0052】
一実施形態によれば、工程c.が、欠陥がひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼすと判定した場合、方法は、ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクを特定すること、又は分離すること、又は再加工すること、又は廃棄することからなる少なくとも1つの工程を含む。
【0053】
本発明の第2の態様は、少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有するひげぜんまいを製造するための方法に関し、方法は、
A/所定の期待共振周波数を得るために必要な所定の公差内の寸法を有する少なくとも1つのひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
B/第1の態様の試験方法に従って、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを試験する工程からなる工程を含む。
【0054】
一実施形態によれば、製造方法は、
C/第1の態様の工程c.の欠陥特定に従って、工程A/の間に形成されたひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを特定する工程、又は分離する工程、又は再加工する工程、又は廃棄する工程からなる工程を含む。
【0055】
一実施形態によれば、ひげぜんまいブランクは、複数の他のひげぜんまいブランクとともにウェハ上に形成される。
【0056】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の試験方法の工程c.を実施する予測機械を訓練するための方法に関し、方法は、
i-ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
ii-ひげぜんまいの各々又はひげぜんまいブランクの各々に、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程、
iii-所定の周波数範囲の適用中に、又は所定の周波数範囲の適用に応答して、各ひげぜんまい又は各ひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程、
iv’-各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を測定するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを設置する工程、
並びに/あるいは
iv’’-シミュレーションツールにおいて、各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を計算するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクをモデル化する工程、
v-工程iiiで特定された共振周波数、及び/又は工程iv’で測定され、かつ/若しくは工程iv’’で計算された自由発振周波数の少なくとも1つの期待共振周波数を推定する工程、
vi-予測機械に、各ひげぜんまい又はブランクに関して:
-工程iii-で特定された共振周波数の特性、
-期待共振周波数の同じ特性を提供する工程からなる工程を含む。
【0057】
この学習段階は、欠陥の探索を伴う予測/生成段階中の後の比較のための較正された基準データを構築することができる。特に、学習は、例えば、基準スペクトルを構築するために、基準部品又は並行して試験/シミュレーションされる部品の試験データを得ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の他の詳細は、添付の図面を参照して行われる以下の説明を読むことでより明確になるであろう。
図1】3つの異なるウェハ上のひげぜんまいの未補正剛性分散曲線を示す。
図2】公称値付近の1つのウェハ上の剛性の平均のセンタリングを示す。
図3A】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図3B】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図3C】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図3D】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図3E】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図3F】ウェハ上の機械的振動子、ここではひげぜんまいを製造するための方法の簡略図である。
図4】ひげぜんまいのトルクの評価を可能にするデバイスを表す。
図5】振動解析によるひげぜんまいの剛性の評価の実施態様を概略的に表す。
図6】振動励起を課すためにひげぜんまいブランクを支持するシリコンウェハに印加される周波数の例を表す。
図7図6の課された周波数範囲に応じて、ひげぜんまいブランクの点の変位の振幅を測定する例を表す。
図8図7の特定の周波数で特定される共振ピークを詳細に表す。
図9】欠陥のない部品について、図8の特定の周波数について測定されかつ重ね合わされた共振ピークを表す。
図10】欠陥のない部品に関する、図9から抽出されたデータから構築された予測モデルの例を表す。
図11】欠陥のない部品及び欠陥部品を含む部品のセットに対して実行された測定の第1の例を表す。
図12】欠陥のない部品及び欠陥部品について実行された測定の第2の例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図3A図3Fは、ウェハ10上に機械振動子100を製造する方法の簡略図である。振動子は、特に、時計部品の調速機構を装備するように意図されており、この例によれば、機械式時計ムーブメントのてん輪を装備するように意図されたシリコン製のひげぜんまい100の形態である。
【0060】
ウェハ10は、図3AにおいてSOI(silicon on insulator)(「シリコンオンインシュレータ」)ウェハとして例解され、酸化シリコン(SiO)の犠牲層30及び単結晶シリコン層40の層を有する基板又は「ハンドラ」20を含む。一例として、基板20は、500μmの厚さを有することができ、犠牲層30は、2μmの厚さを有することができ、シリコン層40は、120μmの厚さを有することができる。単結晶シリコンの層40は、任意の結晶方位を有することができる。
【0061】
リソグラフィ工程が、図3B及び図3Cに示される。「リソグラフィ」という用語は、ウェハ10上又はその上方の画像又はパターンを後方に転写することを可能にする一連の動作を意味する。図3Bを参照すると、この例示的な実施形態では、層40は、例えば、重合性樹脂の保護層50で覆われている。この層50は、典型的には、紫外線光源と、例えば、フォトマスク(若しくは他のタイプの露光マスク)又はステッパ-レチクルシステムと、を使用するフォトリソグラフィ工程によって構造化される。このリソグラフィによる構造化は、図3Cに例解されるように、層50内に複数の振動子のためのパターンを形成する。
【0062】
その後、図3Dの工程において、パターンが機械加工、特にエッチングされて、層40内に複数の振動子100が形成される。エッチングは、深掘り反応性イオンエッチング技術(deep reactive ion etching、DRIE)によって実行することができる。エッチング後、保護層50の残りの部分が続いて除去される。
【0063】
図3Eでは、振動子は、犠牲層30を局所的に除去することによって、又は基板のシリコン若しくはハンドラ20の全部若しくは一部をエッチングすることによっても、基板20から解放される。エッチングされた表面の平滑化(図示せず)はまた、例えば、熱酸化工程と、それに続く、例えば、フッ化水素酸(hydrofluoric acid、HF)を使用する湿式エッチングからなる脱酸工程とによって、解放工程の前に行われてもよい。
【0064】
図3Fの製造方法の最後の工程において、シリコン振動子100のコイル110は、温度補償振動子を生成するために、典型的には、熱酸化工程を通して、酸化シリコン(SiO2)の層120で覆われる。概して、2~5μmの厚さを有するこの層120の形成はまた、振動子の最終的な剛性にも影響を及ぼし、したがって、所与のウォッチ機構においてひげぜんまい-てん輪対の特定の固有周波数を得ることを可能にするひげぜんまいの振動特性を得るために、先行する工程中に考慮されなければならない。
【0065】
上述したように、先行する温度補償層の生成の段階において、ウェハ内に形成された様々な振動子は、パターンを形成する工程及びこれらのパターンを通じて機械加工/エッチングする工程が全ての振動子について同じであるということにもかかわらず、概して、振動子の間に大きい外形分散を有し、したがって、振動子の剛性に大きい分散を有する。
【0066】
更に、剛性のこの分散は、同じ方法仕様が使用される場合であっても、異なる時間における2つのエッチングされたウェハのひげぜんまいの間で更に大きくなる。
【0067】
最後に、製造中に、より多くの点状の製造欠陥が生じ得ることに留意されたい。例えば、図3Dの機械加工工程中、材料は、2つの隣接するコイル間に残る可能性がある。図3Eに示されるものとは対照的に、材料残留物が、コイル又は基板の間に依然として存在する部品を見る可能性がある。材料ブリッジはまた、図3Fに表される酸化中に2つの隣接するコイル間に形成され得る。最後に、汚染は、2つのコイル間又はコイルと基板との間に付着したデブリ又は粒子によっても生じる可能性がある。これら全ての欠陥は、振動挙動に強く影響を及ぼし、従来技術において知られているように、一組の部品にわたって材料を追加するか、又は除去することによって修正することができない。
【0068】
上記の説明は、シリコン振動子100に関するが、ガラス、セラミックカーボンナノチューブ又は金属振動子でさえもまた可能である。特に、従来の鋼製ひげぜんまいが試験され得る。この場合、金属ひげぜんまいは、放射源及び変位測定装置に対向して金属ひげぜんまいを位置決めするツールを参照して挟持されるか又は採取される。
【0069】
知られている方法では、ひげぜんまいの剛性測定は、いわゆる静的な方法で、換言すれば、ひげぜんまいを発振させることなく、そのトルクを判定することによって実行することができる。例えば、文献欧州特許第3654111号を参照することができる。
【0070】
この最後の文献に記載された方法の代替法は、Anton Paarによって市販されているようなレオメータを使用してトルク測定を行うことからなる。この目的のために提供されたデバイスが、図4に例解される。有利なことに、それは、評価されるべきひげぜんまい200を取付台202上に配置し、ひげぜんまいが保持部材204によってその最後のコイルで固定され得るような様式で位置決めすることを可能にする。最後のコイルが固定されると、取付台202は、ひげぜんまい200から離れるように移動し、このため、ひげぜんまいは、いかなる弾性拘束からも完全に解放される。次いで、レオメータヘッド206を、ひげぜんまいのひげ玉に面して位置決めする。それは、非円形のひげ玉のカウンタ形状を有するが、低減されたサイズで、ひげぜんまいと接触することなく、制御可能な精度で、レオメータヘッドがひげ玉内で係合することを可能にする。次いで、レオメータヘッドを、ひげぜんまいの収縮方向に回転させる。ヘッドがひげ玉と接触するとき、ヘッドは、ひげ玉を駆動し、レオメータは、所与の角度にわたって、ひげぜんまいの弾性戻りによって及ぼされるトルクを測定する。しかしながら、そのような測定は、単体測定のままであり、破損、汚染等の多くのリスクを伴い、長い処理時間を必要とする。
【0071】
本発明は、工程3Eにおいて、少なくとも1つの特性に基づいて、ウェハ上の振動子100のサンプルの共振周波数、及び欠陥が部品上に存在するか否かを判定することを提案する。その場合、本発明は、従来技術の方法よりも効率的な方法に従って、試験サブアセンブリにおける分解又は測定をすることなく、問題の部品を特定することを提案する。
【0072】
それゆえ、本発明は、振動測定によって振動子のサンプルの共振周波数の少なくとも1つの特性を判定すること、及び当該振動測定の結果を存在する可能性のある欠陥の特定に結び付けるために、予測方法(例えば、数値モデル又は分類若しくはカテゴリ化の方法)を適用することを提案する。
【0073】
このため、ウェハに取り付けられたひげぜんまいの様式特性が利用される。学習段階中に、解析的及び数値的手法を通して、特定の具体的に選択された周波数(共振ピーク又は中間高さにおける幅と関連付けられた固有周波数又は共振周波数)に製造欠陥(結合、ブリッジ、汚染など)を結び付ける予測モデルを確立することによって、予測機械を配置することが可能である。
【0074】
学習段階が完了すると(利用されるモード及び励起周波数が決定されると)、生成されたウェハの振動子を試験し、いくつかの部品に欠陥があるか否かを予測するために、予測段階に移動し、予測モデルを利用することによって予測機械を使用し、適切な場合には、例えば、部品を廃棄するために欠陥を特定することが可能である。
【0075】
それゆえ、振動子が各々所与のウォッチ機構のてん輪に結合されると、必要に応じて、欠陥のない部品及び特定の所定の固有振動周波数を得るのに好適な部品から欠陥部品を分離するために、製造方法に試験方法を組み込むことが可能である。
振動励起
【0076】
振動子の振動応答の測定は、例えば、共振周波数の値など、共振周波数の少なくとも1つの特性を推定することを可能にする。詳細には、まずウェハに振動励起を印加する必要がある。いくつかのオプションが提供される。
a.周波数領域における測定:
1-特定の周波数f(連続的な単一周波数励起)で励起する、具体的に(好ましくは)励起されるひげぜんまいブランク200の上又は下で、ウェハのスライス上の圧電源(又は音響励起を誘発するか若しくは印加することを可能にする任意の他の源)を使用する。この代替例では、励起が維持される。
2-代替的に、所定の周波数範囲、例えば、0~100kHz、好ましくは、0~75kHz、好ましくは、0~50kHz、好ましくは、5kHz~50kHz、及び好ましくは、10~35kHzをカバーするために経時的に変化する周波数で励起する、具体的に(好ましくは)励起されるひげぜんまいブランク200の上又は下で、ウェハのスライス上の圧電源(又は音響励起を誘発するか若しくは課すことを可能にする任意の他の源)を使用することも可能である。周波数範囲全体は、数分の1秒~数秒の範囲の時間間隔で走査されるか又はカバーされ得る。例えば、周波数範囲の周波数の範囲は、0.5秒未満、1秒未満、又は1.5秒未満で走査されるか又はカバーされ得る。この代替例では、励起周波数は、連続的に変化する。
b.時間領域における測定:励起ハンマー(又はパルス音響励起を誘発することができる任意の他の源)を、ウェハのスライス上で、具体的に(好ましくは)励起されるひげぜんまいの上又は下で使用し、可能な限り短い音響パルスを与える(多周波数パルス励起)。この代替例では、励起は一時的であり、維持されない。
【0077】
更に、測定は、例えば、4、2又は1Hzのサンプリング範囲に従って、特定のサンプリングに続くことによって実行され得る。より具体的には、例えば、フーリエ変換に従って取得データを処理するための分解能は、この取得の持続時間に直接依存する。
【0078】
更に、周波数範囲が、例えば、50kHzまで拡張する場合、少なくとも100kHzの信号のサンプリング周波数を選択することができる。
【0079】
概して、最終的に、励起の方向、換言すれば、源によって課される運動の方向を変化させることも提供され得る(振動は、1つ以上の軸方向に課され得、この又はこれらの方向を経時的に変化させることができる)。複数の振動子を含むウェハが励起される場合、振動の方向は、以下で説明される変位振幅測定に応じて、振動子の一方又は他方に向かうように調節され得る。
【0080】
最後に、励起される振動子に向かって方向付けられた発散円錐に音響源を結合し、1つ以上の振動子の振動励起を課すのに十分な振幅を有し、選択された測定機器によって正確に検出及び測定されるのに十分な振幅を有する励起信号を放出するように音響源を順に調整することが提供され得る。
変位振幅、速度又は加速度の測定
【0081】
励起中、具体的に励起されたひげぜんまいの3つの方向X、Y(平面内)及びZ(平面外)における発振の(励起源に対する)振幅及び位相は、好適な測定手段を介して記録される。非限定的に、以下の可能な測定手段を引用することができる:
-干渉法による光学的方法:
a.3Dドップラー効果(レーザドップラー振動計)、
b.ホログラフィ、
-ストロボ光学方法、
-高解像度の一次的なクロマティック共焦点形状測定、
-光学反射率測定、
a.マルチダイヤル検出器又はカメラでのビーム偏向による振動解析、
b.時間相関TCSPC解析による解析、
-ドップラー超音波検査による音響方法。
【0082】
図5は、複数のひげぜんまいブランク200が形成されたシリコンウェハ25を概略的に表す。振動励起源400は、振動励起を課すためにウェハ25に結合される。その結果として、各ひげぜんまいブランク200が振動し、ここでは右側のひげぜんまいブランク200の点に焦点を合わせたレーザ振動計300が、測定点の振動振幅を経時的に測定することができる。ウェハ25の平面に対して垂直な方向の変位が測定され得るが、ウェハ25の平面に含まれる1つ以上の方向の変位を測定することもできる。
【0083】
特定の点が調査されると、レーザ振動計300は、ひげぜんまいブランク200の別の測定点上に、又はウェハ25の別のひげぜんまいブランク200に移動させることができる。もちろん、ひげぜんまいブランク200は、代替的に、レーザ振動計に対して変位させることができる。
【0084】
図6は、経時的な例示的振動励起を表す。所与の例では、励起周波数は、0Hz~50kHzとの間で経時的に変化し、一連の立ち上がりエッジを課すことができ、各立ち上がりエッジは、励起なしの休止期間によって離間される。ひげぜんまいブランク200上の各測定点に対して、複数の立ち上がり前部(2つの立ち上がり前部と60の立ち上がり前部との間)を課すことができ、各々、例えば、0.5秒~2秒続く。
測定すべき基準点の選択
【0085】
変位振幅測定に関して、学習段階中に、振動応答が有意な振動子の点を特定することからなる工程が、提供され得る。より具体的には、振動が課されるひげぜんまいの場合、特に周波数が経時的に変化する場合、振動応答は、ノードがひげぜんまい上に現れるようにする、換言すれば、変位振幅が低いか又はゼロであるひげぜんまいの特定の点上に現れるようにする。変位測定が、1つ以上の特定の周波数におけるノードであることが判明しているひげぜんまいの点で実行される場合、共振周波数の特性の特定が悪影響を及ぼす。
【0086】
それゆえ、ひげぜんまいの複数の所定の点、例えば、少なくとも10の所定の点、好ましくは、少なくとも20の所定の点、非常に好ましくは、少なくとも30の所定の点で変位を測定する予備工程を提供することが有利である。所定の点は、ひげぜんまいの平面内の正規直交座標系X-Y上に配置されるように選択することができる。
【0087】
所定の点上での予備振幅測定工程の最後に、共振周波数が、各測定点について特定され得、次いで、励起中の変位振幅の測定に関する基準点を選択する工程が、これらの共振周波数のノードが存在しないことを示す。換言すれば、特定されたノードは、少なくとも1つの共振周波数、ゼロ又は第1の閾値ピーク値未満の変位の振幅を有し、ノードを形成するこれらの点は、後続の測定のために考慮される基準点から離れる。基準点は、ウェハ25上のひげぜんまいブランク200の位置の関数として異なることにも留意することができる。
【0088】
典型的には、少なくとも2つの基準点が選択され、好ましくは少なくとも4つの基準点が選択されることが考えられる。振動子が半径Raを有し、その外部ピン止め端部によってウェハ上に固定されるか又は埋め込まれている場合、好ましくは、4つの基準点が、選択及び位置付けられ得る:
-0.20×Ra未満の第1のゾーン内(例えば、中心ひげ玉上)、又は
-0.05×Ra~0.30×Raの第2のゾーン内(例えば、ひげ玉から始まる第2のコイル上)、又は
-0.35×Ra~0.65×Raの第3のゾーン内(例えば、ひげぜんまいの中央に据えられたコイル上)、又は
-0.65×Ra~0.85×Raの第4のゾーン内(例えば、ひげぜんまいに沿って4分の3に据えられたコイル上)。
それゆえ、基準点は、ウェハ上に固定された部分から分離され、必然的に発振変位に対して有意な容量を有し、変位測定のより良好な精度を保証する。
【0089】
更に、変位はまた、例えば、位相シフト若しくは振動減衰、又は更には振動結合若しくはウェハから生じる共振を特定するか又は測定するために、ウェハの本体の点及び/又は励起源の点に対して測定され得る。これらの相補的な測定は、特定されたピークが実際にひげぜんまいのみのピークであることを保証することができる。変位振幅測定及び振動励起はまた、同期させることができる。
【0090】
代替的に、好ましくは、変形しない部品のゾーン上に据えられた、特定の点における変位/移動/振動のみを測定することが可能である。特に、ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクのひげ玉の点上の測定に向かうように提供され得る。より具体的には、ひげ玉は、振動励起中に変形不可能であると考えることができ、ひげ玉の全ての点は、同様の変位/移動/振動を有する。その結果として、ひげ玉上の測定点の場所における小さい誤差は、最終結果にほとんど影響を与えない。更に、部品上の特定の測定点を選択すると、剛性予測を行うために特定の周波数範囲を特定し、選択することが可能である。
【0091】
基板又はツールに依然として取り付けられている複数の部品が連続して試験される実施形態は、以下:
-試験される部品の画像を捕捉する工程、
-例えば、各部品タイプ及び/又は各部品の位置を認識するために、画像を解析する工程、
-各部品について測定される1つ以上の点を選択する工程、並びに/又は各部品及び/若しくは各選択された点について課される振動励起スペクトルを選択する工程、
-試験される各部品について、試験される部品を支持する基板又はツールを振動励起及び測定装置内に位置決めする工程を含むことができる。この実施態様によれば、ひげぜんまいブランクを依然として担持するウェハの場合、励起及び測定を自動化することができる:
-ウェハの1つ以上の画像が撮影される、
-各部品の少なくともX-Y位置を知るために自動画像解析が実行される(部品タイプ又はモデルの認識も行われ得る)、
-位置及び/又は認識された部品タイプの関数として、特定の予め確立された測定点が、(例えばひげ玉上で)特定されるか又は選択される、特定の励起サイクルはまた、部品タイプ又は特定のポイントの関数として選択することもできる、
-例えば、ウェハを搬送し、X-Yに移動することができるテーブルを備えるツールを用いて、各ひげぜんまいブランクは、正しい測定点に照準を合わせ、正しい励起仕様を適用することによって試験されるために、励起源及び測定装置に対向して自動的に、連続して配置される。
【0092】
一実施形態によれば、試験される部品上で選択される測定点の関数として、及び/又は励起周波数の関数として、及び/又は試験される部品のモデルの関数として、励起方向及び/又は測定方向に特定の配向を与えることからなる工程が提供され得る。この目的のために、励起方向(又は励起源の軸方向)は、静止している部品によって形成される平面に対して垂直な変位を最大化するために、試験される部品に対して垂直であることが選択され得る。励起方向(又は励起源の軸方向)は、静止している部品によって形成される平面に含められる変位を最大化するために、試験される部品に対して傾斜することが選択され得る。測定に関して、測定方向(又は測定装置のレーザビームの軸方向)は、静止している部品によって形成される平面に対して垂直な変位の測定精度を最大にするために、試験される部品に対して垂直であることが選択され得る。測定方向(又は測定装置のレーザビームの軸方向)は、静止している部品によって形成される平面に含まれる変位の測定精度を最大にするために、試験される部品に対して傾斜することが選択され得る。
【0093】
複数の部品がウェハなどの基板に取り付けられる実施形態によれば、サンプリングは、1つ以上の部品を単独で試験するために1つ以上の部品を取り外すことによって、並びに印加される特定の励起周波数、及び/又は使用される特定の測定点、及び/又は考慮される振動スペクトルの特定の範囲を導入することによって実行することができる。換言すれば、この予備サンプリングは、基板と一体化されたままである部品にとって最良の試験条件を選択するために、良好な条件(測定誤差及び干渉が制限される)下で単体部品を試験することを可能にする。
振動特性の判定
【0094】
励起のために事前に選択された範囲に応じて、複数のシナリオがある:
a.周波数領域における測定
1-励起を維持した代替例:
i.励起周波数fにおいて良好なスペクトル分解能を有するのに十分な長さで、振幅及び発振位相を経時的に積分する、
ii.周波数f+Δfで励起するために、デルタfによって発振周波数をオフセットし、積分工程iを繰り返す、
iii.励起周波数の関数として、振幅及び発振位相スペクトルを再構成する(場合によっては、複数の周波数において複数のピークを有する)。
2-周波数が経時的に変化する励起を伴う代替例:
i.周波数範囲の周波数走査の過程にわたって、時間に対して振動振幅及び位相を記録する、
ii.工程i-を少なくとも1回、好ましくは、少なくとも3回繰り返す、
iii.励起周波数の関数として、振幅及び発振位相スペクトルを再構成する(場合によっては、複数の周波数において複数のピークを有する)。
b.時間領域における測定:
i.例えば、数秒などの、十分に代表的な信号を得るために十分に長い持続時間にわたって、X、Y、及びZにおけるコイルの経時的な変位を記録する。
ii.他の部品上で測定された他の信号と比較される基準信号を作成するために、信号を記録するように選択することができる。記録された信号における共振周波数を特定するために、フーリエ変換タイプの信号の処理を行うように選択することも可能である。
【0095】
その結果として、少なくとも1つの共振ピークは、各励起された振動子に対して特定されることができ、共振ピークの先端、換言すれば、最大振幅に基づいてではなく、むしろ共振ピークの最大振幅値の25%~75%に位置する曲線の領域上で、例えば、中間高さにおけるその幅に基づいて、共振周波数を決定することが提案される。より具体的には、共振ピークの最大振幅値の25%~75%の曲線の部分に焦点を当てたこの処理方法は、最大振幅の点の特異点及び共振ピークの先端部分を再構築するための近似計算による誤差を制限することを可能にする。共振ピークの最大振幅値の25%~75%に位置する曲線の領域は、75%より大きい部分(典型的にはピーク)よりも良好な精度を有し、決定された正確な共振周波数に関してより良好な精度を提供する。例えば、問題のピークに関連する共振周波数を決定するために、共振ピークの中間高さにおいて2つの点を接続するセグメントの中間を取ることが可能である。
【0096】
図7は、欠陥がなく、10kHz~15kHzの図6の振動励起に応答して考慮される測定点の変位振幅の測定から再構成された、図5のひげぜんまいブランク200の点の振動スペクトルの例を表す。およそ11kHz、12.3 kHz、及び13.7 kHzにおける3つの振幅ピークの存在が注目され得る。示されていないが、振動励起が0Hz~50kHzの周波数範囲を走査する場合、典型的には、10~30の振幅ピークを特定することが可能である。各振幅ピークは、共振周波数を有し、最大振幅は、強力に変化する。
【0097】
図8は、欠陥のない部品の振幅ピーク、例えば、11kHzの振幅ピークに対して行うことができる処理を詳細に表す。その目的は、共振周波数を見つけ、それにできるだけ正確な値を与えることである。この処理をピークの最大値に基づかせる代わりに、出願人は、ピークの中間高さにおいて、曲線の上昇部分と下降部分とを接続するセグメントの長さを判定することによって、より良好な精度が達成され得ることに気が付いた。共振周波数は、典型的には、このセグメントの中間値である。しかしながら、精度を改善し、特に、共振ピークの実際の位置が、例えば、選択されたサンプリング周波数のためにシフトされる場合、中点ではないセグメント上の選択された点をシフトするために共振ピークの近傍の点に対して補間が実行され得る。
【0098】
図9は、およそ10kHzにおける振幅ピークの例について、試験され、欠陥がないおよそ10のひげぜんまいブランク200について構築された振幅ピークを表す。ひげぜんまいブランクごとに、振幅ピークの周波数位置が変化し(およそ9.8kHz~10.02kHz)、最大変位振幅が、およそ1~5の比で変化することに留意され得る。振幅ピークの先端は実際には対称ではないので、中間高さにおけるピークの幅に基づいて、共振周波数を決定することが賢明であり得る。中間高さにおけるピークの幅はまた、減衰を判定し、この減衰を基準値と比較するために使用することもできる。
【0099】
図9のこれらの試験では、以下の共振周波数を推定することが可能であった:
【表1】
試験された振動子のバーの剛性及び/又は実際の寸法の判定
【0100】
振動特性(典型的には共振周波数)を入力として受信し、剛性及び/又は寸法補正を出力として与えることができる予測モデルを確立するために、学習段階中に、試験された振動子のバーの実際の剛性及び/又は寸法に関するデータを供給することが必要である。この目的のために、ひげぜんまい-てん輪システムの固有周波数は、特定のウォッチ機構の環境と同様の環境において、事実上測定することができる。
【0101】
2つの代替例を実施することができる。第1の代替例によれば、ウェハに依然として取り付けられている振動子上に所定のてん輪を結合し、固有周波数を期待固有周波数と比較し、とりわけ、上記の式1~3に基づいて実際の剛性又は実際の寸法を計算するために、振動子-てん輪対の発振の固有周波数を測定することが可能である。第2の代替例によれば、振動子とてん輪との対の発振の固有周波数をここで再び測定するために、振動子をてん輪に個々に取り付けるか又は結合するために、試験される振動子の製造が、完了され得る。
【0102】
上記の2つの代替例では、各振動子の剛性を判定するために、次いで、試験される振動子のバーの実際の寸法を判定するために、中間工程が含まれ得る。換言すれば、基準てん輪に結合されたひげぜんまいの自由発振を解析することによって、固有周波数又は共振周波数を決定し、次いで振動子のバーの剛性又は寸法を決定することが可能である。この手法では、てん輪のアーム又はひげぜんまい担体に向けられたレーザが、てん輪のアーム又は位置付けピンのアームの通過時刻を記録する。次いで、これから周期が推定され、次いで周波数が推定され、最後に剛性が推定される。収集されたデータは、本質的に通過時間のポイントクラウドである。
【0103】
より具体的には、ウェハ上のひげぜんまいの剛性を評価するために、特に、M.Vermot et al.によるTraite de construction horlogere(2011)のページ178-179に記載されているような複数の解決策が提案される。例えば、ひげぜんまいを、慣性が既知である基準てん輪に結合することによって、動的評価を実行することができる。アセンブリの周波数の測定は、ひげぜんまいの剛性を正確に推定することを可能にする。この評価は、ウェハ上で、又はひげぜんまいをウェハから取り外すことによって実行することができる。上記の参考文献及び先行技術は、この方法に関する詳細を提供する。
【0104】
同様に、剛性はまた、レオメータを使用するひげ玉への反作用トルクの測定から推定することもできる。必要とされる信号は、振幅の関数としてトルク内の経時的な変化を表す。低振幅(線形部分)のこの曲線の勾配の解析は、振動子のバーの剛性、次いで寸法を推定することを可能にする。次いで、ひげぜんまいのバーの寸法を決定することができる。
【0105】
一方で、固有周波数及び/又は共振周波数及び/又は剛性は、ウェハ上で試験される各振動子について、シミュレーションによって推量することができる。この目的のために、数値モデリングによって振動子を再構築し、数値計算によって、課されたスペクトルに対するその振動応答をシミュレートし、更に振動子の剛性を見出すために、試験された各振動子について寸法測定を行うことができる。
【0106】
高解像度3DX線断層撮影手法は、ポイントクラウドが抽出されることを可能にし、ひげぜんまいの3D材料密度を与え、適切な画像再構成を使用して、ひげぜんまいのセクションのマッピングを与える。これらの異なるタイプのデータは、バーの寸法を推定し、幾何学的手法によってひげぜんまいの剛性を推量することを可能にする。
【0107】
別の手法は、脱進機を用いて基準てん輪上のひげぜんまいの強制発振を解析することからなる。上述したように、てん輪のアームの通過時間のレーザ測定(ポイントクラウド)は、周波数が測定され、剛性が周波数から推定されることを可能にする。代替案は、脱進機/アンカーシステムの様々な動作段階の衝撃を記録する音響取得(Witschiタイプマイクロフォン)に基づいて、可能である。測定されるデータは、てん輪のアームの通過時間のポイントクラウドか、又は音圧のレベルにおける経時的な変化のいずれかである。これらのタイプの実験データは、振動子のバーの周期、次いで周波数、次いで剛性、最後に寸法を推定することを可能にする。
【0108】
図9において上で考察された試験に戻ると、剛性の測定は、各ひげぜんまいブランク200を基準てん輪に結合することによって実行され、以下の剛性を推定することが可能であった:
【表2】
予測モデルの確立
【0109】
欠陥を検出することができるように、第一に、例えば、基準スペクトルなどの基準データが確立されるか又は構築されなければならない。学習段階中に、発振の振幅測定が、物理的振動子に対して実行され、共振周波数が特定される。その後、振動子上で測定された共振周波数を、作製される剛性及び/又は寸法(厚さ)の補正に結び付けることができるようにするために、予測モデルが構築される相関位相が提供される必要がある。
【0110】
上述した動作(振動測定、共振ピークの特定、中間高さにおける帯域幅、並びにその中間値又は修正値、バーの剛性及び/又は寸法の判定)は、ウェハ上のひげぜんまいの位置、スペクトル又は発振周期又は中間高さにおける帯域幅、及びその中間値又は修正値を、ひげぜんまいのバーの有効剛性及び/又は寸法と関連付けることができるデータベースを供給することを可能にする。上で見られるように、このデータベースは、ひげぜんまい有限要素モデルに関する数値シミュレーションから構築することができる。これらのシミュレーションは、剛性に関連するスペクトル又は基準発振周期を発生させることができる。このデータベースはまた、振動スペクトル、発振周期、及びウェハ上のひげぜんまいの位置、並びにそれらの関連する剛性を測定することによる実験的測定によって補足することもできる。この手法の利点のうちの1つは、学習データベースが、試験のコースにわたって強化されるという事実が進行するにつれて訓練データベースが強化されるという事実にある。これにより、ウェハ及びひげぜんまいに応じた適応モデルを有することが可能となり、ウェハ上の剛性における標準偏差の低減に寄与することができる。
【0111】
このデータベースは、予測モデルを構築するために使用することができ、複数の解決策が提供される。
【0112】
共振周波数の値の関数として、実際の厚さ、寸法補正又は実際の剛性を計算するために、数値モデル、例えば、多項式モデルを構築することができる。
【0113】
入力データ(振動測定の結果、典型的には、共振ピークの周波数)及び出力データ(振動子のバーの剛性及び/又は寸法)のk平均分割を実行し、一致を確立するためにそれらをともに結び付けることによってカテゴリ化を実行することも可能である。
【0114】
また、バーの剛性又は寸法に従って分類を実行するために例えば、パーセプトロンなどのニューラルネットワークを使用して共振ピークの画像を処理するために提供することができ、クラスは値の増分によって定義することができる。
【0115】
要約すると、学習段階は、試験段階(振動スペクトルを再構築し、共振周波数を特定するための振動特性の測定を伴う振動子の励起)を含む。振動子のバーの剛性及び/又は寸法の測定段階もまた実行される。有意なサンプルについての入力データ(共振周波数)及び出力データ(バーの剛性及び/又は寸法)が利用可能になると、予測モデルの構築段階が実行され得る。
【0116】
図9に関連して考察及び説明した例に戻ると、収集されたデータは、以下の通りである。
【表3】

線形回帰モデリングを、最初の6つの線についての上記データに対して実行し、以下の関係を確立することができた。
R=0.0015F-10.894
ここで、
Rは、10-7N.mm単位の剛性である。
Fは、Hz単位の共振周波数である。
したがって、剛性を予測し、以下の表に示されるように、測定された実際の剛性と比較することができ、最初の6つの線に関して、線形回帰を構築又は訓練するために使用されるデータであり、最後の4つの線に関して、予測のみである。
【表4】
4.40%の最大誤差を測定することができ、図10は、最初の6つの線からの値についての線形回帰直線を示す。
【0117】
確立された予測モデルが良好な感度を有すること、換言すれば、2つの異なる入力値について、モデルが2つの別個の出力値を与えることを検証することが有利であることが見られ得る。本出願人は、予測モデルの感度が全ての共振ピークについて同じではなかったことを観察した。特に、確立され、図10に表される予測式を参照すると、先行係数は、0.0015 10-7N.mm/Hzである。一方で、本出願人は、先行係数が高い共振周波数に対してより大きくなる可能性があり、近い共振周波数値に基づいてさえも、明確な剛性又は寸法補正値を予測するために、より良好な予測感度を提供することを観察した。学習段階中に、高周波数(例えば、5kHzを超える)における特定の共振ピークを考慮して選択することが好ましいことを検証/確認するために、その後、測定された振動応答の関数として剛性及び/又は寸法補正を、可能な限り精密に、予測するために、予測感度pを比較する工程を提供することが有利である。
【0118】
一方で、本出願人は、共振周波数が近い場合であっても、共振モード(特に、振動子の変形モード及び/又は変位モード)が有意に異なる可能性があり、これも剛性及び/又は寸法補正の予測の感度に影響を及ぼす可能性があることも観察した。学習段階中に、振動応答の関数として可能な限り精密に、剛性及び/又は寸法補正を予測するために、別の共振周波数ではなくこのような共振周波数を後に考慮することを選択するために、予測の感度を比較する工程を提供することが有利である。
【0119】
予測の感度を検討することに関する上記の見解から、学習段階中に、剛性及び/又は寸法補正の予測感度に従って特定された様々な共振ピークを分類することが提供され得る。次いで、最良の感度を与える少なくとも1つ以上のピーク又は共振周波数を含むために、(純粋な予測段階中に適用される)励起周波数範囲を定義することが提供され得る。それゆえ、このように予め定められた周波数範囲にわたって可変振動励起を課すことは、特定された共振ピークに対する正確な予測、又は互いに交差するか若しくは強化された特定された共振ピークの各々に対する予測を行うことができることを保証する。
【0120】
概して、学習段階は、高周波における共振ピーク及び/又は正確で信頼できる値を予測することを可能にする特定の共振モードに対応する共振ピークのいずれかを選択することを可能にし、周波数範囲は、可能な限り精密な単一の予測、又は複数の予測(関連があると判断される共振ピーク当たり1つ)のいずれかを行うことができるように、次いで、予測値のクロスチェック、平均化、又は調節を実行するために、少なくとも1つの共振ピーク、好ましくは、複数の共振ピークを含むように予め決定される。
【0121】
例えば、複数のピーク又は共振周波数に基づいて、複数の剛性又は寸法補正値を予測し、次いで、予測値に基づいて、各予測値に重みを割り当てることによって加重平均を行うことによって、最終値を計算することが可能であり、各重みは、各対応するピーク又は共振周波数について特定された感度の関数として判定されている。
【0122】
代替的にかつ好ましくは、入力として全てのピーク又は共振周波数を取り、剛性又は寸法補正を返す1つのモデルのみを有することが可能であり、モデルの学習段階は、入力ピーク又は共振周波数に対する重み付けを精密に計算するために使用される。
予測位相
【0123】
学習段階が終了すると、例えば、振動子を試験するための方法中、予測段階に進むことが可能である。典型的には、試験方法は、寸法補正が適用されるべきか否かを判定するために、サンプルのひげぜんまいのバーの剛性及び/又は寸法を推量するように、ウェハ上で生成され、このウェハに依然として取り付けられているひげぜんまいブランク上で行われ得る。
【0124】
モデルが訓練されると、導入される試験手順は、以下の通りであり得る。
1)ウェハ上のひげぜんまいの位置を特定し、スペクトル又は発振周期を振動測定する(上述の通り)、
2)予測モデルの適用によって、ひげぜんまいのバーの剛性及び/又は寸法を予測する、
3)固有周波数又は目標の剛性に到達するために必要な寸法補正であるか否かを判定する。
【0125】
試験方法中に、適用されるべき正確な補正を定量化することも可能であり、その結果、製造方法は、追加的に上記の試験を含むことができる。
1)モデル及び目標剛性及び/又はバーの目標寸法に従って推量されたひげぜんまいの有効剛性を知り、必要な補正適用量を適用する。
ひげぜんまいの剛性/寸法を試験するため、及び目標値が許容閾値内に到達したことを確認するために試験方法の工程1)及び工程2)を繰り返すか、又はモデルによって予測された剛性/寸法が目標値に到達するまでこれらの工程及び寸法補正を繰り返す。
サンプリング
【0126】
数百のひげぜんまいがウェハ上で生成され、生成されたひげぜんまいのバーの寸法がウェハの領域に従って変化し得ることが知られている。剛性評価が、単一のひげぜんまい上で実行され得る場合、実際には、ウェハ上に分散されたひげぜんまいのサンプル上で実行される。
【0127】
実行された評価から開始して、得られた結果がひげぜんまいごとに変化する場合、ウェハ全体に対して均一な様式で、又は領域ごとに区別して補正が実行され得る。このため、剛性の分散の標準偏差を低減させることが可能である。更に、剛性が、モデルの適用によって全てのひげぜんまいについて知られる場合、全体的な分散を低減させることができる最適な補正が決定され得る。
【0128】
これは非常に迅速に行われ、方法が自動化されることを可能にし得るので、特に、振動評価を用いて、ウェハの全てのひげぜんまいの評価に進むことも想定され得る。
【0129】
上記の例は、目標バーの寸法よりも大きい寸法の設置バーを有するひげぜんまいの製造に主に基づいて与えられているが、目標バーの寸法よりも小さい初期寸法の初期バーを有するひげぜんまいを生成することも提供され得る。補正工程は、例えば、前述の文献欧州特許第3181939号に記載されているような材料を追加することからなる。
【0130】
ひげぜんまいブランクのみに振動励起を課すことによって共振周波数を特定することからなる方法は、ひげぜんまいブランクのみが試験されるので測定誤差を制限しながら(その質量、その取り付け位置など、てん輪に結び付けられ得る誤差がない)、例えば、てん輪を取り付けるための作業を行う必要なく、測定データを迅速に得ることを可能にする。
【0131】
本出願人はまた、代替的に、予測段階が、ともに又は基板上に接合されるか又は架橋されたコイルなどの部品上の著しい欠陥を検出するための方法であり得ることを観察した。図11は、例えば、ウェハのブランク上で測定された周波数スペクトルを示し、補正された部分(その共振ピークは、一点鎖線の混合線を有する長方形によって囲まれ、「OK」とマークされている)と、P1、P2、P3、P4、P5、及びP6とマークされた不正確な部分と、を含む。
【0132】
より具体的には、試験中に、振動励起に応答して得られた各周波数スペクトルが、トレーサビリティによって特定の部品に接続され、共振ピークP1~P6が発生した部品の各々を検査すると、欠陥を有することが分かる。その結果として、これらの周波数スペクトルの各々を、学習段階中に以前に確立された基準スペクトルと比較することによって、有意な逸脱又は発散を観察することが可能になり、問題の部品を廃棄させる欠陥が明らかになる。
【0133】
この例では、本方法は、期待周波数スペクトルに関して過剰な共振ピークを探索し、特定する工程を含む。そのような過剰ピークは、期待されるノイズレベルを少なくとも30%超える場合に検出され得る。換言すれば、2つの通常は隣接又は連続する共振ピーク間の共振ピークの存在は、共振周波数の異常な特性を形成し、結合コイルの欠陥を有するひげぜんまい又はブランクを特定することを可能にする。このような欠陥は、容易に修正することができないので、部品は特定され、原則として廃棄される。
【0134】
図12は、基準スペクトルに関する異常特性の別の例又はタイプを示す。より具体的には、約24.1kHzでの期待される共振周波数において、単一の共振ピーク(「OK」とマークされている)を有する曲線の中で、太線で示されている曲線の存在が、「二重ピーク」共振とともに見ることができる。この場合、欠陥を検出するために、本方法は、(欠陥のない部分についての単一の最大値又は単一の勾配の変化の代わりに)記録された最大値の中間高さ又は中間より上に位置する曲線の部分における2つの頂点又は3つの勾配の変化点を探索しなければならない。
【0135】
それゆえ、図11のように通常存在しない基準スペクトルのピーク、又は図12のように期待されるピークと著しく異なる(傾き若しくは最大値のいくつかの変化、又は更に著しく異なる振幅を有する)共振ピークを探索することによって、接合されたコイル、基板とのブリッジ、材料の不均一性、ひげぜんまいの残留変形、微小亀裂、又は更には不慮の汚染を含む欠陥を有する部品を特定することができる。得られた各周波数スペクトルは、トレーサビリティによって試験される部品に割り当てられるか、又は結び付けられ、その結果、問題の部品を特定し、部品を分離又は廃棄することが可能になる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひげぜんまい又はひげぜんまいを形成するように構成されたひげぜんまいブランクを試験するための方法であって、前記ひげぜんまいが、少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有する必要があり、前記試験方法が、以下の工程:
a.前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程と、
b.前記所定の周波数範囲にわたる前記振動励起中又は前記振動励起に応答して、共振ピークなどの、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程と、
c.前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクが欠陥によって影響を受けているか否かを判定するために、工程bで特定された前記共振周波数特性を予測機械にかける工程と、を含む、方法。
【請求項2】
工程c.が、工程b.で特定された前記特性が、前記所定の期待共振周波数の同じ特性から所定の差だけ逸脱する異常な特性であるかどうかを判定するように、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの振動周波数のスペクトルを基準スペクトルと比較する少なくとも1つの工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記ひげぜんまいが、少なくとも2つの所定の期待共振周波数を有し、前記周波数範囲が、前記少なくとも2つの所定の期待共振周波数をカバーするために予め定められる、請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす前記欠陥が、期待共振モードを変更する欠陥であり、
工程c.が、2つの期待される通常は隣接又は連続する共振ピークの間で異常な共振ピークを探索することからなる工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項5】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに影響を及ぼす前記欠陥が、前記期待共振モードの減衰又は増幅欠陥であり、
工程c.が、期待共振ピークの期待振幅と少なくとも30%異なる振幅を有する異常共振ピークを探索することからなる工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項6】
工程b.が、好ましくは、少なくとも部分的に工程a.の間に実行される、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅又は速度又は加速度の経時的な測定に基づく、請求項1に記載の試験方法。
【請求項7】
前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクが、ベース平面内に含まれ、工程b.が、
-前記ベース平面に対して垂直な方向における前記ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅若しくは速度若しくは加速度を測定する工程b’、及び/又は
-前記ベース平面内に含まれる方向における前記ひげぜんまい若しくはひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅若しくは速度若しくは加速度を測定する工程b’’を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項8】
工程b.が、
-前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの少なくとも1つの点の変位振幅又は速度の関数として、前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの共振ピークを特定する工程を含む、請求項6又は7に記載の試験方法。
【請求項9】
前記共振周波数の特性が、前記共振ピークの最大値の中間高さにおける前記共振ピークの幅に基づいて特定される、請求項8に記載の試験方法。
【請求項10】
前記予測機械が、例えば、欠陥が、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクに影響を及ぼすか否かを予測するために、ニューラルネットワークによって実行される分類を実施する、請求項1に記載の試験方法。
【請求項11】
前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの材料を考慮する工程、並びに前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクの前記材料の関数として、前記振動励起の最大振幅及び/又は前記所定の周波数範囲の周波数範囲を調節することからなる予備工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項12】
前記周波数範囲が、0Hz~100kHz、好ましくは、0Hz~50kHz、より好ましくは、0Hz~40kHz、及び非常に好ましくは、10kHz~35kHzの周波数範囲に及ぶ、請求項1に記載の試験方法。
【請求項13】
工程c.が、欠陥が前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクに影響を及ぼすと判定した場合、前記方法が、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクを特定する工程、又は分離する工程、又は再加工する工程、又は廃棄する工程からなる少なくとも1つの工程を含む、請求項1に記載の試験方法。
【請求項14】
少なくとも1つの所定の期待共振周波数を有するひげぜんまいを製造するための方法であって、
A/前記所定の期待共振周波数を得るために必要な所定の公差内の寸法を有する少なくとも1つのひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
B/請求項1に記載の試験方法に従って、前記ひげぜんまい又は前記ひげぜんまいブランクを試験する工程からなる工程を含む、方法。
【請求項15】
C/請求項1に記載の工程c.における前記欠陥特定に従って、工程A/の間に形成された前記ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを特定する工程、又は分離する工程、又は再加工する工程、又は廃棄する工程からなる工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ひげぜんまいブランクが、複数の他のひげぜんまいブランクをともにウェハ上に形成される、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の試験方法の工程c.を実施するための予測機械用の学習方法であって、
i-ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを形成する工程、
ii-前記ひげぜんまいの各々又は前記ひげぜんまいブランクの各々に、所定の周波数範囲をカバーするために経時的に変化する振動励起を印加する工程、
iii-前記所定の周波数範囲の適用中に、各ひげぜんまい又は各ひげぜんまいブランクの共振周波数の少なくとも1つの特性を特定する工程、
iv’-各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を測定するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクを設置する工程、
並びに/あるいは
iv’’-シミュレーションツールにおいて、各ひげぜんまい又はひげぜんまいブランクに関する自由発振周波数を計算するように、所定の慣性を有する発振機構において複数のひげぜんまい又はひげぜんまいブランクをモデル化する工程、
v-工程iiiで特定された前記共振周波数、及び/又は工程iv’で測定され、かつ/若しくは工程iv’’で計算された自由発振周波数の少なくとも1つの期待共振周波数を推定する工程、
vi-前記予測機械に、各ひげぜんまい又はブランクに関して:
-工程iii-で特定された前記共振周波数の前記特性、
-前記期待共振周波数の同じ特性を提供する工程からなる工程を含む、学習方法。
【国際調査報告】