(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】触媒によるCO2脱離プロセスおよび前記プロセスのための触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 21/06 20060101AFI20250107BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20250107BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20250107BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20250107BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B01J21/06 A
B01J37/04 102
B01J37/08
B01D53/14 220
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024538057
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022087421
(87)【国際公開番号】W WO2023118406
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クマール,パルビーン
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】セルス,バート
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】リアオ,ユヒ
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G169
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA32
4D002EA07
4D002EA08
4D002FA01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BC01
4D020BC10
4D020CB08
4D020CC12
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB12C
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC51C
4G169CA20
4G169DA05
4G169FC07
4G169FC09
(57)【要約】
本発明は、CO2吸収/脱離手順全体のCO2脱離プロセスに関する。本発明は、詳細には少なくとも1つのZr系触媒の存在下での触媒によるCO2脱離ステップのプロセスおよびシステムに関する。本発明は、CO2脱離プロセスに好適なZr系触媒およびこのような触媒を調製する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2脱離のためのZr系触媒を調製する方法であって、以下のステップ:
- 塩基性沈殿剤を含む溶液を、Zr源を含む溶液に混合し、それにより合成溶液を調製することと、
- 前記Zr系触媒を前記合成溶液から沈殿させ、それにより沈殿したZr系触媒を得ることと
を含む、方法において、
前記合成溶液のpHが少なくとも3、最大8、好ましくは少なくとも4、最大7、例えば約5であり、前記Zr系触媒がZr、OおよびHを含み、前記O:Zr原子比が、少なくとも2.1であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記Zr系触媒がZrO(OH)
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿したZr系触媒が、前記沈殿したZr系触媒の総重量と比較して少なくとも90重量%のZrO(OH)
2を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性沈殿剤が水酸化物であり、かつ/または前記Zr源がZrO(NO
3)
2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
以下のステップ:
- 前記沈殿したZr系触媒をか焼温度Tcでか焼すること
をさらに含み、
前記か焼温度Tcが最大400℃、好ましくは最大350℃、好ましくは最大300℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を用いて調製されるCO
2脱離のためのZr系触媒であって、O:Zr原子比が、少なくとも2.1であり、好ましくは前記Zr系触媒がZrO(OH)
2を含む、Zr系触媒。
【請求項7】
塩基性OHに対する酸性OHの比が少なくとも0.1、最大1.3である、請求項6に記載のZr系触媒。
【請求項8】
少なくとも-25mV、好ましくは少なくとも-5mVの表面電荷ゼータ電位を有する、請求項6または7に記載のZr系触媒。
【請求項9】
Hf、CeまたはZnを含む群から選択される他の金属を含み、好ましくは前記Zr系触媒中の前記他の金属と比較したZrの純度が、少なくとも90%である、請求項6~8のいずれか1項に記載のZr系触媒。
【請求項10】
アミン溶媒からのCO
2脱離プロセスであって、以下のステップ:
- アミン溶媒に吸収させたCO
2を含むCO
2含有アミン溶液を準備することと、
- 請求項6~9のいずれか1項に記載のZr系触媒を前記CO
2含有アミン溶液に供給することと、
- 前記Zr系触媒を含む前記アミン溶液を脱離温度Tdに加熱することと、
- 滞留時間中に前記Zr系触媒を含む前記アミン溶液からCO
2を脱離することと
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記Zr系触媒が可溶化しない不均一触媒として作用する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記アミン溶媒がモノエタノールアミン(MEA)または2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、好ましくはモノエタノールアミン(MEA)を含む、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記滞留時間が、少なくとも4時間、最大168時間、好ましくは少なくとも20時間、最大36時間である、請求項10~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
CO
2吸収および脱離プロセスであって、以下のステップ:
- CO
2をアミン溶媒に吸収させ、それによりCO
2含有アミン溶液を得ることと、
- 請求項10~13のいずれか1項に記載のプロセスを用いてCO
2を前記CO
2含有アミン溶液から脱離し、それにより前記アミン溶媒を再生することと
を含む、プロセス。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載のプロセスにおける、Zr系触媒、好ましくは請求項6~9のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2吸収/脱離手順全体のCO2脱離プロセスに関する。本発明は、詳細には少なくとも1つのZr系触媒の存在下での触媒によるCO2脱離ステップのプロセスおよびシステムに関する。本発明は、CO2脱離プロセスに好適なZr系触媒およびこのような触媒を調製する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の急速な上昇は、重大な気候変動を引き起こしている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書によると、CO2排出量を直ちに、急速かつ大規模に削減しない限り、温暖化を1.5℃近くに、または2℃に抑えることさえ現実的でなくなる。しかし、例えば核、バイオマス、太陽エネルギーなどの非化石エネルギー代替物のリスクおよびコストは、現在のエネルギー需要を満たすことができない。さらに、非化石エネルギー源への何らかの急速な変更は、可能な場合でも、世界経済への実質的な影響と共に既存のエネルギー供給インフラの大規模な崩壊につながる。エネルギー情報局によると、化石燃料エネルギーは主要なエネルギー源のままであると考えられる。この前提の下に、CO2回収貯留(CCS)およびCO2回収利用(CCU)は、CO2排出量の猛烈な増加を抑える有望な経路となる。しかし、いずれの経路も、CO2回収が常に最初のステップである。中長期のCO2削減目標を満たすためには、コスト効果のあるCO2回収技術を開発する必要がある。
【0003】
主要なCO
2排出源のうちの1つである発電所からのCO
2については、CO
2吸収剤としてアミン溶媒を用いる燃焼後回収(PCC)が、最も成熟した広範に用いられる技術である。さらに、燃焼後回収は、化石発電所からのCO
2排出量を低減するためのエネルギー効率がよく、適時の解決策を提供するのに最も有望な技術であると考えられる。典型的なアミンベースのCO
2回収および再生プロセスは、
図1に示すようにアミン溶媒を用いるCO
2の吸収脱離サイクル全体を含む。CO
2含有煙道ガスストリームが、充填層の吸収剤カラムに導入され、そこでCO
2含有煙道ガスストリームはリーンアミンと接触するように向流で流れ、効率的な吸収を可能にする。吸収後、リッチアミン溶媒は、リッチ-リーン熱交換器を流れた後、熱再生のためにストリッパカラムに導入される。ストリッパカラムでは、加熱蒸気が供給されて、回収されたCO
2をストリッピング除去し、温度を上昇させる。次いで、この遊離(リーン)アミン溶媒は、新しい吸収サイクルのために吸収剤カラムに戻る。
【0004】
CO2回収のための典型的なアミン溶媒としては、モノエタノールアミン(MEA)のような1級アミン、ジエタノールアミン(DEA)のような2級アミンおよびメチルジエタノールアミン(MDEA)のような3級アミンが挙げられる。様々なアミン溶媒におけるCO2吸収機構を以下に示す。
【0005】
1級/2級アミン:
【0006】
【0007】
3級アミン:
【0008】
【0009】
MEAは、驚異的なCO
2吸収率、大容量、高い物質移動性能および低価格の特性により最も広く用いられるアミン溶媒である。MEA溶媒のCO
2吸収は、双性イオン機構に従う。1つのCO
2が吸収され、1つのカルバミン酸および1つのプロトン化MEAを形成する。
図2に示すように、MEAからのCO
2の脱離経路は、2つのステップ:(1)プロトン化アミンから水へのプロトンの移動およびH
3O
+からカルバミン酸へのプロトンの移動を含む、プロトン移動;(2)カルバミン酸の分解およびCO
2の放出を主に含む。低い温度でのプロトン移動ステップは好ましくなく、工業には、許容される溶媒再生効率のために高い脱離温度下で実行することが強要される。しかし、高い再生温度(100~140℃)は、PCCのエネルギーコスト全体の60%超を消費し、アミン溶媒の劣化および設備の腐食も引き起こす。
【0010】
1級アミンの溶媒再生ステップ中のエネルギーコストを低減するための広範な研究が行われた。新しいアミン溶媒および二相アミン溶媒は、相対的に高いCO2吸収率を維持しながら脱離中のエネルギーコストを大幅に低減できる。しかし、これらは、溶媒および複合反応器の価格が高いため依然として経済的に非効率である。
【0011】
触媒の観点から、適切な触媒の使用は、CO2脱離の活性化エネルギーを低減し、反応速度を向上させることができ、それによりストリッピング時間を低減し、溶媒再生効率を高める。さらに、一部の触媒は、100℃を下回る温度でのCO2脱離を可能にし、エネルギー消費および溶媒損失を大幅に低減できる。
【0012】
WO2011120138は、固体触媒をCO2吸収および脱離プロセスに適用する方法を開示する。H-ZSM-5のような酸触媒をストリッパで使用することにより、5M MEA溶媒からのCO2脱離が50℃を下回る温度で検出できることが報告された。低温での脱離の理由は、H-ZSM-5のブレンステッド酸(B酸)部位から炭酸へのプロトンの直接供与であると考えられる。H-ZSM-5およびγ-Al2O3によるB酸部位とルイス酸(L酸)部位との間の触媒性能も比較された。H-ZSM-5のようなB酸触媒は、γ-Al2O3のようなルイス酸触媒よりCO2リッチ段階(温度勾配段階)ではCO2脱離に対して良好な性能を示したが、CO2リーン段階(等温段階)では不良な性能を示した。アミン溶媒からのCO2脱離のためのHY、H-ベータ、CeSO4/ZrO2、CMK-3-SiO2、SO4
2-/ZrO2/SBA-15のような固体酸触媒の使用については以下のような報告がたくさんある。
【0013】
US2016030880A1は、3M MEAからのCO2脱離量を増加させる一連の金属酸化物を開示する。これは、アミン再生を補助するために酸性物質(金属酸化物、ゼオライト、プロトン交換樹脂)も使用した。金属酸化物は、周期表の3~5列目の金属を含有していた。V2O5、MoO3、WO3、Cr2O3、MgO、γ-Al2O3、VOX/Al2O3、MoOx/Al2O3、WOx/Al2O3、H-ゼオライト-Y、プロトン交換樹脂(アンバーリスト15(H))が試験された。他の物質では、MoO3が最高の触媒性能を示し、CO2脱離を40℃で開始し、CO2脱離量を27%増加させた。しかし、MoO3のほぼ96%が反応中に溶解した。溶解量は、助剤としてγ-Al2O3を使用した後68%に減少した。しかし、CO2脱離量も減少した。脱離の改善が、金属酸化物の溶解に高度に関係していると思われる。これにより、溶媒再生プロセス後の触媒分離の難しさが増し、これらの種類の触媒の適用が大きく制限された。
【0014】
US20160250591A1は、アミン溶媒からのCO2脱離のための効率的な触媒としてTiO(OH)2を報告する。TiO(OH)2は、88℃の低温の温度勾配段階でCO2飽和20%MEA溶液のCO2脱離率を劇的に100%改善することができ、これは調査された以前の触媒よりはるかに高かった。
【0015】
US2010/209323A1は、NOx化合物の還元のためのDeNOx触媒を開示し、多孔性触媒支持体材料が提供される。発明の触媒は、活性金属触媒成分と、a)二酸化チタンおよび/またはチタン/ジルコニウム混合酸化物を含む結晶相、b)ジルコニウムを含む非晶質相ならびにc)非晶質外側層に堆積した少量の1つまたは複数の金属酸化物または半金属酸化物を含む混合TiO2/ZrO2多孔性支持体粒子を含む。発明の触媒は、優位な活性およびアンモニア選択性を示す。
【0016】
報告された結果によると、固体触媒の使用は、アミン溶媒からの低温でのCO2脱離の若干の改善を既に示したが、不良な触媒の性能または触媒の溶解の問題の制約によって適用要件を依然として満たすことができない。良好で安定した触媒性能を有する溶解しない固体触媒は、PPCのアミン再生プロセスのエネルギー消費を低減するために強く必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、CO2脱離のための改善された触媒および改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
現在、上記の目的が、本明細書に開示される特定の十分に定義されたプロセスおよび触媒を使用することにより個々にまたは何らかの組合せのいずれかで達成できることが見出された。
【0019】
本出願人らは、ZrO(OH)2を好ましくは含むZr系触媒、および前記触媒を調製する方法を開発した。この触媒は、CO2脱離プロセスに適用した場合、有利な特性を示す。例えば、本発明およびその実施形態による触媒の触媒活性は、以前に報告されたあらゆる触媒よりはるかに優れている。触媒活性は、触媒負荷の増加と共に増加する。触媒作用は、触媒活性が数サイクルにわたって維持されるため確認される。本発明およびその実施形態は、脱離カラムの小型化も可能にし、より低いCAPEXをもたらす。本発明およびその実施形態は、CO2脱離温度の低下も可能にし、同様により低いエネルギー要件(OPEX)をもたらす。本発明およびその実施形態は、吸収プロセスにおける溶媒の再生コストも低減させる。
【0020】
より具体的には、本出願人らは、本発明またはその実施形態による精細な設計の溶解しない固体Zr系触媒が、アミンベースのCO2燃焼後プロセスの溶媒再生プロセスにおいて低温下でCO2脱離率を増加させることを見出した。触媒材料は特定のO:Zr原子比を好ましくは含む。触媒材料はZrO(OH)2を好ましくは含み、かつ/または好ましいpH下で好ましい塩基性沈殿剤と合成される。
【0021】
本出願人らは、本発明によるZr系触媒が、低温でCO2脱離率を向上することができることを実証した。合成方法は、酸性ヒドロキシル基と塩基性ヒドロキシル基の比および表面電荷特性に影響を与え、触媒性能のさらなる改善につながることが本明細書において実証される。
【0022】
本発明またはその実施形態に従って調製される触媒は、CO2回収プラントにおいてMEA溶媒および他のアミンで使用できる。触媒によるCO2脱離率の向上は、溶媒再生プロセスを低温下で実行することを可能にし、PPCのエネルギーコストを大幅に低減し、アミン溶液の劣化および蒸発を防ぐことができる。触媒はアミン溶媒中で安定であり、アミン溶媒に不溶化するため、分離および再生が簡単である。さらに、触媒は、伝統的な充填物の代わりに構造化支持体(不活性充填物)上に堆積させてもよく、または伝統的な充填物の代わりに固体構造体に成形されてもよい。
【0023】
第1の態様において、本発明は、CO2脱離のためのZr系触媒を調製する方法であって、触媒がZrO(OH)2を好ましくは含む、方法を提供する。方法は、以下のステップ:
- 塩基性沈殿剤を含む溶液を、Zr源を含む溶液に混合し、それにより合成溶液を調製することと、
- ZrO(OH)2を好ましくは含むZr系触媒を合成溶液から沈殿させ、それにより沈殿したZr系触媒を得ることと
を好ましくは含む。
【0024】
方法は、合成溶液のpHが少なくとも3、最大8、好ましくは少なくとも4、最大7、例えば約5であることを好ましくは特徴とする。
【0025】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、Zr、OおよびHを含む。好ましくは、O:Zr原子比は、少なくとも2.1、好ましくは少なくとも2.2、例えば少なくとも2.3、例えば少なくとも2.4、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも2.6、例えば少なくとも2.7、例えば少なくとも2.8、例えば少なくとも2.9である。一部の実施形態において、O:Zr原子比は、少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0である。
【0026】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒はZrO(OH)2を含む。好ましくは、沈殿したZr系触媒は、沈殿したZr系触媒の総重量と比較して少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%のZrO(OH)2を含む。
【0027】
一部の好ましい実施形態において、塩基性沈殿剤は、NaOH、NH4OH(NH3
*H2O)およびKOHを含む群から好ましくは選択される水酸化物である。好ましくは、塩基性沈殿剤はNaOHである。
【0028】
一部の好ましい実施形態において、Zr源はZrO(NO3)2である。
一部の好ましい実施形態において、方法は以下のステップ:
- 沈殿したZr系触媒をか焼温度Tcでか焼すること
をさらに含む。
【0029】
好ましくは、か焼温度Tcは最大400℃、好ましくは最大350℃、好ましくは最大300℃である。
【0030】
第2の態様において、本発明は、第1の態様およびその実施形態による方法を用いて調製されるCO2脱離のためのZr系触媒を提供する。好ましくは、O:Zr原子比は、少なくとも2.1である。好ましくは、Zr系触媒はZrO(OH)2を含む。
【0031】
第1の態様の(好ましい)実施形態は、第2の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0032】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒の塩基性OHに対する酸性OHの比は少なくとも0.1、最大1.3、好ましくは少なくとも0.2、最大1.2、好ましくは少なくとも0.5、最大1.2、好ましくは少なくとも0.8、最大1.1、好ましくは約1.0である。
【0033】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、少なくとも-25mV、好ましくは少なくとも-15mV、好ましくは少なくとも-5mV、例えば少なくとも0mV、例えば少なくとも5mVの表面電荷ゼータ電位を有する。
【0034】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、Hf、CeまたはZnを含む群から好ましくは選択される他の金属を含む。一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒中の他の金属と比較したZrの純度は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0035】
第3の態様において、本発明は、アミン溶媒からのCO2脱離プロセスを提供する。プロセスは、以下のステップ:
- アミン溶媒に吸収させたCO2を含むCO2含有アミン溶液を準備することと、
- 第2の態様およびその実施形態によるZr系触媒をCO2含有アミン溶液に供給することと、
- Zr系触媒を含むアミン溶液を脱離温度Tdに加熱することと、
- 滞留時間中にZr系触媒を含むアミン溶液からCO2を脱離することと
を好ましくは含む。
【0036】
第2の態様の(好ましい)実施形態は、第3の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0037】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は可溶化しない不均一触媒として作用する。
【0038】
一部の好ましい実施形態において、アミン溶媒は、1級アミン、2級アミンまたは3級アミンを含む。好ましくは、アミン溶媒は、モノエタノールアミン(MEA)または2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、好ましくはモノエタノールアミン(MEA)を含む。
【0039】
一部の好ましい実施形態において、滞留時間は、少なくとも4時間、最大168時間、好ましくは少なくとも8時間、最大72時間、好ましくは少なくとも16時間、最大48時間、好ましくは少なくとも20時間、最大36時間、例えば約24時間である。
【0040】
第4の態様において、本発明は、CO2吸収および脱離プロセスを提供する。好ましくは、プロセスは以下のステップ:
- CO2をアミン溶媒に吸収させ、それによりCO2含有アミン溶液を得ることと、
- 第3の態様またはその実施形態によるプロセスを用いてCO2をCO2含有アミン溶液から脱離し、それによりアミン溶媒を再生することと
を含む。
【0041】
第3の態様の(好ましい)実施形態は、第4の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0042】
第5の態様において、本発明は、第3もしくは第4の態様、またはそれらの実施形態によるプロセスにおけるZr系触媒、好ましくは第2の態様またはその実施形態による触媒の使用を提供する。
【0043】
第2、第3または第4の態様の(好ましい)実施形態は、第5の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2】1級および2級アミン溶媒からのCO
2脱離の反応経路を示す図である。
【
図3】ラボスケールのCO
2脱離装置を例示する図である。
【
図4】様々な触媒による5M CO
2飽和MEAにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間および(B)等温段階での動態研究を例示するグラフである。
【
図5】ZrO(OH)
2の様々な負荷量による5M CO
2飽和MEAにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間、(B)等温段階での動態研究、および(C)触媒反応速度定数(kCAT)と触媒負荷量との関係を例示するグラフである。
【
図6】固体触媒なしでの再利用MEA溶媒における(A)溶媒再利用実験の図、(B)CO
2負荷濃度対反応時間、および(C)等温段階でのkCATの動態研究を例示するグラフである。
【
図7】ZrO(OH)
2によるおよびZrO(OH)
2なしでの168時間の反応に対する5M CO
2飽和MEA溶液におけるCO
2脱離を例示するグラフである。
【
図8】(A)2種の触媒再生方法:洗浄再利用および直接再利用の図、(B)様々な方法により再生されたZrO(OH)
2による5M CO
2飽和MEAにおけるCO
2負荷濃度対反応時間を例示するグラフである。
【
図9】(A)様々なpH下で合成したZrO(OH)
2による5M CO
2飽和MEAにおけるCO
2負荷濃度対反応時間および(B)kCATとZrO(OH)
2の合成pHとの関係を例示するグラフである。
【
図10】様々な方法により合成したZrO(OH)
2による5M CO
2飽和MEAにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間および(B)等温段階での動態研究を例示するグラフである。
【
図11】N
2雰囲気下でのZrO(OH)
2触媒の熱重量分析(TGA)結果を例示するグラフである。
【
図12】塩基性OH、酸性OHおよび全OHのZrO(OH)
2の合成pHと密度との関係を例示するグラフである。
【
図13】kCATと酸性OH/塩基性OH比との関係を例示するグラフである。
【
図14】様々な温度下でか焼したZrO(OH)
2による5M CO
2飽和MEAにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間および(B)等温段階での動態研究を例示するグラフである。
【
図15】市販のZrO
2および様々な温度でか焼したZrO(OH)
2のXRD結果を例示するグラフである。
【
図16】様々なMZrO(OH)
2触媒による5M CO
2飽和MEAにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間および(B)等温段階での動態研究を例示するグラフである。
【
図17】pH9.3での様々なZrO(OH)
2系触媒のkCATとゼータ電位との関係を例示するグラフである。
【
図18】様々な触媒によるおよび触媒なしでの2.5M CO
2飽和AMPにおける(A)CO
2負荷濃度対反応時間および(B)等温段階での動態研究を例示するグラフである。
【
図19】連続CO
2脱離反応器を例示する図である。
【
図20】
図19に例示する連続CO
2脱離反応器の図の拡大断面である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明を記載する場合、文脈上他の指示がない限り、用いられる用語は以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0046】
他に定義しない限り、技術および科学用語を含む本発明を開示するのに用いられるすべての用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるような意味を有する。さらなる指針によって、用語の定義は本発明の教示をより良く理解するために含まれる。
【0047】
以下の段落では、本発明の様々な態様をより詳細に定義する。そのように定義される各態様は、反することが明確に示されない限り、あらゆる他の1つまたは複数の態様と組み合わされてもよい。詳細には、好ましいまたは有利であると示されたいずれかの特徴は、好ましいまたは有利であると示されたあらゆる他の1つまたは複数の特徴と組み合わされてもよい。本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」の言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所における「一実施形態」または「実施形態」という表現の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではないが、そのような場合もある。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つのまたは複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるようないずれかの好適な方式で組み合わされてもよい。さらに、本明細書に記載される一部の実施形態は、他の実施形態に含まれる一部の特徴は含むが、他の特徴は含まず、当業者に理解されるように、様々な実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内であることが意味され、様々な実施形態を形成する。
【0048】
本明細書で使用する「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」および「で構成される(comprised of)」という用語は、「含むこと(including)」、「含む(includes)」または「含有すること(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない部材、要素または方法ステップを除外しない。本明細書で使用する「含むこと」、「含む」および「で構成される」という用語は、「からなること(consisting of)」、「構成する(consists)」および「からなる(consists of)」を含む。
【0049】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈上他の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例として、「ステップ(a step)」は、1つのステップまたは1超のステップを意味する。
【0050】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語は、当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0051】
終点による数値範囲の列挙は、範囲内に包含されるすべての整数、および適当な場合、分数を含む(例えば、1~5には、例えば要素の数を指す場合、1、2、3、4が含まれてもよく、例えば測定値を指す場合、1.5、2、2.75および3.80が含まれてもよい)。終点の列挙は、それ自体の終点の値も含む(例えば1.0~5.0は1.0と5.0の両方を含む)。本明細書に列挙されるあらゆる数値範囲は、その範囲に包含されるすべての下位範囲を含むことが意図される。
【0052】
本明細書で使用する「約」という用語は、例えばパラメーター、量、時間的持続期間などの測定可能な値を指す場合、開示された本発明を実施するのにそのような変動が適当である限り、特定された値のおよび特定された値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下の変動を包含することを意味する。「約」という修飾語が指す値自体も具体的に、かつ好ましくは開示されることが理解されるべきである。
【0053】
「重量%」、「体積%」または「モル%」という用語は、成分を含む材料の総重量、総体積または総モルに対する成分の重量パーセンテージ、成分の体積パーセンテージまたは成分のモルパーセンテージをそれぞれ指す。
【0054】
本発明を記載する場合、文脈上他の指示がない限り、用いられる用語は以下の定義に従って解釈されるべきである。
【0055】
本発明の好ましい特徴、実施形態および使用を本明細書で以下に示す。そのように定義される本発明の各実施形態は、反することが明確に示されない限り、あらゆる他の実施形態と組み合わされてもよい。詳細には、好ましいまたは有利であると示されたいずれかの特徴は、好ましいまたは有利であると示されたあらゆる他の1つまたは複数の特徴と組み合わされてもよい。本明細書には、本発明が、詳細には、以下の実施形態のいずれか1つ、または以下の実施形態のうちの1つもしくは複数とあらゆる他の態様および/もしくは実施形態とのいずれかの組合せにより取り込まれる。
【0056】
第1の態様において、本発明は、CO2脱離のためのZr系触媒を調製する方法であって、触媒がZrO(OH)2を好ましくは含む、方法を提供する。方法は、以下のステップ:
- 塩基性沈殿剤を含む溶液を、Zr源を含む溶液に混合し、それにより合成溶液を調製することと、
- ZrO(OH)2を好ましくは含むZr系触媒を合成溶液から沈殿させ、それにより沈殿したZr系触媒を得ることと
を好ましくは含む。
【0057】
方法は、合成溶液のpHが少なくとも3、最大8、好ましくは少なくとも4、最大7、例えば約5であることを好ましくは特徴とする。一部の実施形態において、合成溶液のpHは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、例えば少なくとも5である。一部の実施形態において、合成溶液のpHは、最大8、好ましくは最大7、例えば最大6である。
【0058】
このように調製される触媒は、実施例の項に例示するように、顕著な溶解なしにCO2脱離特性の顕著な改善をもたらすことが判明した。より具体的には、本合成方法は、酸性ヒドロキシル基と塩基性ヒドロキシル基の比および表面電荷特性に影響を与え、触媒性能のさらなる改善につながることが本明細書において実証される。
【0059】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、Zr、OおよびHを含む。好ましくは、O:Zr原子比は、少なくとも2.1、好ましくは少なくとも2.2、例えば少なくとも2.3、例えば少なくとも2.4、例えば少なくとも2.5、例えば少なくとも2.6、例えば少なくとも2.7、例えば少なくとも2.8、例えば少なくとも2.9、例えば約3.0である。一部の実施形態において、O:Zr原子比は、少なくとも3.0、例えば少なくとも3.5、例えば少なくとも4.0である。一部の実施形態において、O:Zr原子比は最大5.0、例えば最大4.9、例えば最大4.8、例えば最大4.7、例えば最大4.6、例えば最大4.5、例えば最大4.4、例えば最大4.3、例えば最大4.2、例えば最大4.1、例えば約4.0である。一部の実施形態において、O:Zr原子比は、少なくとも2.1、最大5.0、例えば少なくとも2.2、最大4.9、例えば少なくとも2.3、最大4.8、例えば少なくとも2.4、最大4.7、例えば少なくとも2.5、最大4.6、例えば少なくとも2.6、最大4.5、例えば少なくとも2.7、最大4.4、例えば少なくとも2.8、最大4.3、例えば少なくとも2.9、最大4.2、例えば少なくとも2.9、最大4.1、例えば約3.5である。
【0060】
この原子比を有する触媒は、CO2脱離特性の顕著な改善をもたらすことが判明した。
O:Zr原子比は、容積率として本明細書において定義され、重量損失がH2Oを形成するヒドロキシル基の損失に由来し、固体の残りの部分がZrO2であると仮定して、170℃~800℃での触媒の重量損失によって測定することができる。重量損失は、180℃の温度以降のすべての重量減少が水を形成し、600~800℃超の最終的な固体種がZrO2とみなされると仮定して、N2流および5~20℃/分、好ましくは10℃/分の温度速度下で試験される熱重量分析(TGA)によって測定することができる。
【0061】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒はZrO(OH)2を含む。好ましくは、沈殿したZr系触媒は、沈殿したZr系触媒の総重量と比較して少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%のZrO(OH)2を含む。
【0062】
この原子構造を有する触媒は、実施例の項に例示するように、CO2脱離特性の顕著な改善をもたらすことが判明した。
【0063】
一部の実施形態において、沈殿剤を含む溶液は、少なくとも1.00M、最大1.50M、例えば約1.25Mの沈殿剤を含む。
【0064】
一部の好ましい実施形態において、塩基性沈殿剤は、NaOH、NH4OH(NH3
*H2O)およびKOHを含む群から好ましくは選択される水酸化物である。好ましくは、塩基性沈殿剤はNaOHである。
【0065】
一部の実施形態において、Zr源を含む溶液は、少なくとも2.00M、最大4.00M、例えば約3.00MのZr源を含む。
【0066】
一部の好ましい実施形態において、Zr源はZrO(NO3)2である。ZrO(NO3)2は一般的なZr源であり、Zr(NO3)4と比較してより簡単にZrO(OH)2を形成することができる。
【0067】
一部の実施形態において、合成溶液は、沈殿剤を含む溶液を、Zr源を含む溶液に撹拌しながら滴下することにより調製される。これは、最終的なpHをより簡単に制御することを可能にする。さらに、沈殿剤を含む溶液へのZr源を含む溶液の滴下は、塩基性環境のZrO2により近い沈殿物を不可逆的に形成することができる。
【0068】
一部の実施形態において、共沈法が用いられる。
一部の好ましい実施形態において、方法は以下のステップ:
- 沈殿したZr系触媒をか焼温度Tcでか焼すること
をさらに含む。
【0069】
好ましくは、か焼温度Tcは最大400℃、好ましくは最大350℃、好ましくは最大300℃である。
【0070】
高すぎる温度でのか焼ステップはOH基を除去し、触媒をZrO2に還元し、それにより実施例の項に例示するように触媒活性を著しく低減することが判明した。
【0071】
第2の態様において、本発明は、第1の態様およびその実施形態による方法を用いて調製される、CO2脱離のためのZr系触媒を提供する。好ましくは、O:Zr原子比は、少なくとも2.1または本明細書に記載される他の値である。好ましくは、Zr系触媒は、好ましくは本明細書に記載されるパーセンテージでZrO(OH)2を含む。
【0072】
第1の態様の(好ましい)実施形態は、第2の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0073】
このような触媒は、実施例の項に例示するように、顕著な溶解なしにCO2脱離特性の顕著な改善をもたらすことが判明した。
【0074】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒の塩基性OHに対する酸性OHの比は少なくとも0.1、最大1.3、好ましくは少なくとも0.2、最大1.2、好ましくは少なくとも0.5、最大1.2、好ましくは少なくとも0.8、最大1.1、好ましくは約1.0である。
【0075】
塩基性OHに対する酸性OHの比の制御は、実施例の項に例示するように、CO2脱離特性の顕著な改善をもたらすことが判明した。
【0076】
塩基性OHに対する酸性OHの比は、例えばTA Instruments製のTGA Q500で行われる熱重量分析(TGA)によって好ましくは測定される。TGAは、10mL/分のN2雰囲気下で、遊離水がすべて放出されたことを確認するために30分間で50℃から150℃、次いで800℃への温度勾配で実施されてもよい。温度勾配速度は10℃/分であってもよい。
【0077】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、200~300℃までの周囲/不活性での加熱/か焼時に非晶質相のままである。本発明者らは、最高性能の触媒は200~300℃までの周囲/不活性での加熱/か焼時に正方晶t-ZrO2相を示さず、非晶質層のままであるが、劣性の触媒は同じ熱処理時にt-ZrO2相を明らかに形成する(例えば実施例の項に例示するように、伝統的な技術水準の粉末X線回折を用いて測定した)ことを驚くべきことに見出した。一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、200~300℃までの周囲/不活性での加熱/か焼後、最大20.0重量%、好ましくは最大10.0重量%、好ましくは最大5.0重量%、好ましくは最大2.0重量%、好ましくは最大1.0重量%の正方晶結晶t-ZrO2相を含み、本質的には正方晶結晶t-ZrO2相を含まない。
【0078】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、少なくとも-25mV、好ましくは少なくとも-15mV、好ましくは少なくとも-5mV、例えば少なくとも0mV、例えば少なくとも5mVの表面電荷ゼータ電位を有する。
【0079】
このように高い表面電荷を有する触媒は、実施例の項に例示するように、CO2脱離特性の改善をもたらすことが判明した。
【0080】
ゼータ電位は、Particulate Systems製の自動滴定装置を備えたNanoPlus HDで好ましくは測定される。典型的には、40mgの十分に粉砕された試料粉末は、40gの超純水と混合され、続いて20分間超音波処理され得る。微分散した試料溶液が試験に用いられ得る。ゼータ電位は、9.3±0.2のpH下で試験され得る。0.1M HClおよび0.1M NaOHが、pH調整に用いられ得る。
【0081】
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は、Hf、CeまたはZnを含む群から好ましくは選択される他の金属を含む。Zr以外の他の金属が、コストおよび/または安定性の理由で用いられてもよい。一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒中の他の金属と比較したZrの純度は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0082】
このような触媒は、好適な触媒活性も提供することが判明した。
第3の態様において、本発明は、アミン溶媒からのCO2脱離プロセスを提供する。プロセスは、以下のステップ:
- アミン溶媒に吸収させたCO2を含むCO2含有アミン溶液を準備することと、
- 第2の態様およびその実施形態によるZr系触媒をCO2含有アミン溶液に供給することと、
- Zr系触媒を含むアミン溶液を脱離温度Tdに加熱することと、
- 滞留時間中にZr系触媒を含むアミン溶液からCO2を脱離することと
を好ましくは含む。
【0083】
第2の態様の(好ましい)実施形態は、第3の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0084】
本発明は、吸収/脱離プロセスにおける溶媒の再生コストを低減させる。
一部の好ましい実施形態において、Zr系触媒は可溶化しない不均一触媒として作用する。触媒は典型的にはアミン溶媒中で安定であり、アミン溶媒に不溶化するため、分離および再生が簡単である。
【0085】
一部の好ましい実施形態において、アミン溶媒は、1級アミン、2級アミンまたは3級アミンを含む。好適なアミンの例としては、モノエタノールアミン(MEA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、ジエタノールアミン(DEA)、ジグリコールアミン(DGA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ピペラジン(PZ)、アンモニア、アミン、アルカノールアミン、これらの誘導体および/または組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アミン溶媒は、モノエタノールアミン(MEA)または2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、好ましくはモノエタノールアミン(MEA)を含む。
【0086】
一部の実施形態において、アミン溶媒は、共溶媒として2種以上のアミン、例えばAMPとPZの組合せを含む。アミンの組合せは、吸収率および循環能力を高めて、再生エネルギー(熱負荷)を低減し、高いアミン溶液濃度を適用し、劣化を最小化することができる。
【0087】
AMP/PZ(3M/1.5M)比は、好ましい比であるとみなされる。AMP/PZの適切な比は、PZの沈殿を回避しながら、吸収率および循環能力を高めることができる。
【0088】
一部の実施形態において、アミン溶媒は、少なくとも1M、最大10M、好ましくは少なくとも2M、最大8M、好ましくは少なくとも4M、最大6Mのモル濃度、例えば約5Mの濃度でアミン溶液中に存在する。
【0089】
これらの濃度は、実施例の項に例示するように、最適な結果をもたらすことが判明した。
【0090】
一部の実施形態において、Zr系触媒は、100mLのアミン溶液あたり少なくとも1.0g~最大8.0g、好ましくは少なくとも2.0g~最大6.0g、好ましくは少なくとも2.5g~最大4.0g、例えば約3.0gのZr系触媒の濃度で提供される。
【0091】
これらの量は、実施例の項に例示するように、最適な結果をもたらすことが判明した。
一部の実施形態において、脱離温度Tdは、最大500K、好ましくは最大450K、好ましくは最大400K、好ましくは最大380K、好ましくは約361Kである。
【0092】
本発明は、脱離温度を低く保つことができる顕著な利点を有する。触媒によるCO2脱離率の向上は、溶媒再生プロセスを低温下で実行することを可能にし、PPCのエネルギーコストを大幅に低減し、アミン溶液の劣化および蒸発を防ぐことができる。
【0093】
一部の好ましい実施形態において、滞留時間は、少なくとも4時間、最大168時間、好ましくは少なくとも8時間、最大72時間、好ましくは少なくとも16時間、最大48時間、好ましくは少なくとも20時間、最大36時間、例えば約24時間である。
【0094】
これらの滞留時間は、実施例の項に例示するように、最適な結果をもたらすことが判明した。
【0095】
第4の態様において、本発明は、CO2吸収および脱離プロセスを提供する。好ましくは、プロセスは以下のステップ:
- CO2をアミン溶媒に吸収させ、それによりCO2含有アミン溶液を得ることと、
- 第3の態様またはその実施形態によるプロセスを用いてCO2をCO2含有アミン溶液から脱離し、それによりアミン溶媒を再生することと
を含む。
【0096】
第3の態様の(好ましい)実施形態は、第4の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0097】
本発明は、吸収/脱離プロセスにおける溶媒の再生コストの低減を可能にする。
一部の実施形態において、プロセスはバッチプロセスである。一部のより好ましい実施形態において、プロセスは連続プロセスである。
【0098】
一部の実施形態において、プロセスは以下のステップ:
- Zr系触媒を該プロセスに再利用すること
をさらに含む。
【0099】
本発明の触媒は、特に触媒が可溶化しない不均一触媒として典型的には作用するため、簡単に再利用できる利点を有する。
【0100】
一部の実施形態において、Zr系触媒を再利用するステップは、以下のステップ:
- Zr系触媒およびアミン溶媒を分離なしでの再吸収ステップで使用することにより、Zr系触媒およびアミン溶媒を該プロセスに直接再利用すること
を含む。
【0101】
一部の実施形態において、Zr系触媒を再利用するステップは、以下のステップ:
- 好ましくは濾過によりZr系触媒をアミン溶媒から除去することと、
- Zr系触媒を水で洗浄することと、
- 任意にZr系触媒を遠心分離することと、
- Zr系触媒を乾燥することと、
- 乾燥した触媒をアミン溶媒に添加することと
を含む。
【0102】
第5の態様において、本発明は、第3もしくは第4の態様、またはそれらの実施形態によるプロセスにおけるZr系触媒、好ましくは第2の態様またはその実施形態による触媒の使用を提供する。
【0103】
第2、第3または第4の態様の(好ましい)実施形態は、第5の態様の(好ましい)実施形態でもあり、逆もまた同じである。
【0104】
本明細書に記載されるZr系触媒の使用は、脱離カラムの小型化も可能にし、より低いCAPEXをもたらす。本明細書に記載されるZr系触媒の使用は、CO2脱離温度の低下も可能にし、同様により低いエネルギー要件(OPEX)、および/またはより少ない溶媒劣化をもたらす。例えば、低温での脱離は、より少ないアミンの劣化を可能にする。
【0105】
実施例
以下の実施例は、本発明を単に例示するために利用し、何らかの方法でその範囲を限定すると解釈されるべきではない。本発明は、その形態のごく一部で示されているが、当業者であれば、本発明はそのように限定されず、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更および修飾を受けやすいことを理解するべきである。
【0106】
実験方法
溶媒再生(CO
2脱離)のための実験装置を
図3に示す。装置は温度計を備えた250mLの丸底フラスコ、温度制御装置によって制御されるヒータ、コンデンサ、磁場スターラからなる。典型的なCO
2脱離実験の実行のために、最初にCO
2を負荷した(0.52mol/mol)150mLの5M MEA溶液および3gの触媒を、コンデンサの上部から500mL/分のN
2流下で反応器中で混合する。次いで、溶液を50±5分で361.1Kに加熱し、500rpmの撹拌速度で180分間一定に保つ。溶液が361.1Kに達した時間は0分として注記される。長時間(168時間)のCO
2脱離実験では、6gのZrO(OH)
2を150mLの5M MEA中で使用する。溶液のCO
2濃度を、5%未満の平均絶対偏差でChittick装置によって分析する。典型的には、500μLのCO
2負荷アミン溶液をピペットによってフラスコに添加し、次いで1mLの1.5M H
2SO
4を、激しく撹拌しながら溶液に注入した。放出されたCO
2の体積に注意して、試料のCO
2濃度をさらに計算する。すべての試料を3回試験し、平均値を採用した。
【0107】
触媒を、2つの側面:温度勾配段階でのCO2堆積量および触媒反応速度定数(kCAT)で評価した。
【0108】
kCATを以下の通り計算した:
kCAT=koverall-kblank
koverallは、温度が安定した(等温段階)0分、30分、60分、90分、120分および180分後のCO2濃度から計算した全体の反応速度定数である。kblankは、等温段階での最初の3時間脱離中のいずれかの触媒なしでのMEA溶媒におけるCO2濃度の変化から計算される。具体的な説明がない場合、kblankの値は、-1.3*10-4分-1とみなされる。
【0109】
X線粉末回折(XRD)を、集束Ge(111)単色X線入射ビーム(λ=1.5406Å、Cu Kα源)を用いて伝送モードのハイスループットSTOE STADI P Combi回折計で行った。
【0110】
熱重量分析(TGA)を、TA Instruments製のTGA Q500で行った。典型的には、TGAを10mL/分のN2雰囲気下で、遊離水がすべて放出されたことを確認するために30分間で50℃から150℃、次いで800℃への温度勾配で実施した。温度勾配速度は10℃/分であった。
【0111】
ゼータ電位を、Particulate Systems製の自動滴定装置を備えたNanoPlus HDで試験した。典型的には、40mgの十分に粉砕された試料粉末を40gの超純水と混合し、続いて20分間超音波処理した。微分散した試料溶液を試験に使用した。ゼータ電位を、9.3±0.2のpH下で試験した。0.1M HClおよび0.1M NaOHをpH調整に使用した。
【0112】
本発明に従って調製した、様々なpHで合成したZr系触媒試料のO:Zr比は4.27、4.50、4.85、3.39、2.85および2.49であることが判明した。
【0113】
実施例1:様々な触媒によるCO
2脱離性能
様々な触媒の性能を
図4および表1に示す。これらの触媒のO:Zr比は3:1~5:1であった。ブランクと比較して、H-ZSM-5、TiO(OH)
2およびZrO(OH)
2の全3種は、温度勾配段階でCO
2脱離量の改善を示し、ZrO(OH)
2は、H-ZSM-5およびTiO(OH)
2と比較してCO
2脱離量の150%の改善を示す。温度が安定した後、H-ZSM-5によるCO
2脱離の顕著な改善は見られないが、TiO(OH)
2およびZrO(OH)
2はCO
2脱離率の顕著な改善を依然として示す。等温段階での動態研究は、H-ZSM-5のk
CAT値がほぼ0であり、ZrO(OH)
2が-3.1
*10
-4分
-1の最も高いk
CAT値を示し、これはTiO(OH)
2の値の2.4倍であることが判明した。MoO
3は、温度勾配段階でCO
2脱離量の増加が非常に高いことを示すが、等温段階ではCO
2脱離率がZrO(OH)
2より低いことを示す。MoO
3のk
CATはわずか-1.8
*10
-4分
-1であり、MoO
3の触媒効果がZrO(OH)
2の約58%でしかないことを意味する。注意されるべきは、MoO
3は、温度が88℃に達した後完全に溶解されるが、ZrO(OH)
2については顕著な溶解が見られないことである。ブランクMEA溶媒のk
overallが-1.3
*10
-4分
-1であることを考慮すると、ZrO(OH)
2の使用は、88℃でのMEAからのCO
2脱離の反応速度定数の238%の改善を提供する。
【0114】
【0115】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0116】
実施例2:様々な触媒量に対するCO
2脱離性能
様々なZrO(OH)
2量によるCO
2脱離性能を
図5および表2に示す。温度勾配段階でのCO
2脱離量は、触媒の量と共に増加した。等温段階のk
CATおよび触媒量は、触媒量が4g未満である場合、直線関係を示す。しかし、触媒量が6gに増加すると、k
CATはもはや直線的に増加するのではなく、物質移動制限により相対的に低くなる。
【0117】
【0118】
反応条件:150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0119】
ZrO(OH)
2の活性部位が可溶化した種ではなく固体相に由来することを確認するために、固体相ZrO(OH)
2を、典型的なCO
2脱離反応後、遠心分離することによりMEA溶液から除去し、残りのMEA溶液を回収し、CO
2を再吸収し、「溶媒再利用」として注記されるいずれかの触媒なしでの別の脱離試験を行った。実験スキームおよび結果を
図6に示す。脱離性能はブランクとの顕著な差を示さず、触媒を除去すると、触媒効果がなくなる。脱離速度定数は、ZrO(OH)
2のものより90%超減少した。
【0120】
長時間の脱離実験(
図7)において、ZrO(OH)
2は、ブランクと比較して、24時間でCO
2脱離量をほぼ70%改善した。その後、熱力学的制約により、ZrO(OH)
2によるCO
2脱離率は抑制され、溶液のCO
2濃度は、ブランクに接近し、最終的に168時間後に同様のレベルに達した。これは、ZrO(OH)
2によるCO
2脱離が化学量論的反応ではなく、触媒反応であることも示す。
【0121】
触媒再生試験も、2つの方法:水洗浄再生および直接再利用で行った。2つの方法のスキームを
図8Aに示す。洗浄再利用については、使用済みZrO(OH)
2を水で洗浄し、遠心分離し、100℃で一晩乾燥し、次いで新しいCO
2脱離試験で使用する。直接再利用については、反応混合物(リーンMEA溶液およびZrO(OH)
2)に、再吸収、続いて脱離プロセスを直接行った。
図8Bに示すように、直接再利用ZrO(OH)
2と水洗浄再利用ZrO(OH)
2の両方が、未使用のZrO(OH)
2と同様のCO
2脱離性能を示す。結果は、ZrO(OH)
2が一回限りの触媒ではなく、簡単に再利用できることを示す。
【0122】
実施例3:触媒合成に対する合成pHの影響
典型的なZrO(OH)2を沈殿法により合成する。NaOH溶液を、激しく撹拌しながらpHが5に達するまでZrO(NO3)2溶液に滴下した。3時間の熟成後、沈殿物を遠心分離し、3回洗浄し、次いで100℃で48時間乾燥した。アミン溶媒からのCO2脱離に対するZrO(OH)2の卓越した触媒性能は、慎重に制御された合成プロセスおよび精細に設計された表面特性によるものである。
【0123】
塩基性沈殿剤の量を変更することにより、ZrO(OH)
2の合成pHを簡単に制御することができる。
図9および表3に示すように、様々なpH下で合成したZrO(OH)
2は非常に様々な触媒性能を示した。
【0124】
【0125】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0126】
kCATと合成pHの関係は、火山曲線を示し、kCATは合成pH5で最大の3.1*10-4分-1に到達する。合成pHが高くなるか、または低くなると、kCATの明らかな低下が見られる。注意されるべきは、pH3のように低いpH下で合成したZrO(OH)2は、温度勾配段階での高いCO2脱離量と非常に低い触媒効果(kCAT=-0.7*10-4分-1)を示すことであり、これは改善が合成プロセス中の残りの酸による可能性があることを示した。
【0127】
実施例4:触媒合成に対する合成方法の影響
この例は、本発明の実施形態による方法により合成したZrO(OH)2と金属ヒドロキシル酸化物の報告された合成方法から合成したZrO(OH)2の触媒性能を比較する。
【0128】
高性能TiO(OH)2の報告された合成方法後に、ZrO(OH)2(iso)触媒を合成した。ジルコニウムイソプロポキシドを脱イオン水に1400:1のH2O:Zrのモル比で添加し、続いて4時間撹拌した。沈殿した粉末を濾過し、脱イオン水およびエタノールで3回すすぎ、次いで100℃で約10時間乾燥した。
【0129】
ZrO(OH)2は水熱法でも合成できる。ZrO(NO3)2を水-エタノール溶媒に混合し、80℃で保持し、2時間循環させた。次いで、沈殿した粉末を濾過し、脱イオン水で3回すすぎ、100℃約10時間乾燥した。乾燥した粉末は、ZrO(OH)2(hydro)として注記される。
【0130】
【0131】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0132】
CO
2脱離について様々な方法により合成したZrO(OH)
2の触媒性能を表4および
図10に示す。ZrO(OH)
2(hydro)は、温度勾配段階では最も高いCO
2脱離量を示すが、0.9
*10
-4分
-1のk
CATを示し、これは等温段階でのCO
2脱離率に対してはさらにマイナスの影響を与える。ZrO(OH)
2(iso)はZrO(OH)
2と同様のCO
2脱離量の改善を示す。温度勾配段階でZrO(OH)
2(iso)のk
CAT値は、-1.6
*10
-4分
-1であり、これはZrO(OH)
2のわずか51%であるが、TiO(OH)のk
CAT値より依然として高い(1.3
*10
-4分
-1)。結果は、現在の合成方法の利点をさらに立証し、ZrO(OH)
2自体がTiO(OH)
2よりCO
2脱離により好適であることを示す。
【0133】
実施例5:ヒドロキシル基の影響
ZrO(OH)2のヒドロキシル基は、結合の種類に応じて酸性または塩基性のいずれかを示すと考えられる。モノ結合OHは、弱い塩基とみなすことができる。これはZrとの結合エネルギーが低く、低温(400℃未満)で除去することができる。架橋結合OH基については、Zrとの結合が強力であり、弱B酸とみなすことができる。架橋結合OHの除去温度は相対的に高い(400~600℃)。
【0134】
ヒドロキシル基は、温度の上昇と共にH
2Oとして放出しているため、ヒドロキシル基の量は、TGAによって定量できる。ZrO(OH)
2の典型的なTGAの結果を
図11に示す。200℃~400℃で放出される水は、弱い結合のOH(塩基性OH)によるものとみなされ、400℃~600℃で放出される水は、強い結合のOH(酸性OH)に由来するとみなされる。
【0135】
様々なpH値下で合成したZrO(OH)
2のヒドロキシル基の密度を
図12に示す。合成pHはOH基に顕著な影響を与えることが分かる。合成pHが3から5に上昇すると、ヒドロキシル基の合計密度は、25.7mmol/gから23.3mmol/gにごくわずかに低下し、塩基性OHが若干増加し(10.8から11.6mmol/gへ)、酸性OHが減少した(14.9から12.1mmol/gへ)。合成pHが5から7にさらに上昇すると、全OHと酸性OHの両方の密度が著しく低下するが、塩基性OHはほぼ変化しないままであった。pHが12にさらに上昇すると、両方の種類のOHの密度の低下が生じた。
【0136】
k
CATと塩基性/酸性OH比との火山曲線関係を
図13に示す。塩基性OHと酸性OHの比が1.0に近づくと、k
CATは頂点に達する。結果は、酸性OHと塩基性OHの間に相乗効果があることを示し、したがって触媒の塩基性OHと酸性OHの比の制御は、高性能ZrO(OH)
2にとって重大な因子のうちの一つであり得る。
【0137】
触媒のヒドロキシル基の重要性をさらに立証するために、ZrO(OH)
2を200℃から600℃にか焼して、OH基をZrO(OH)
2から部分的に除去する。
図14および表5から、温度勾配段階でのCO
2脱離量はか焼温度の上昇と共に減少したことが分かる。しかし、200℃および300℃でか焼したZrO(OH)
2のみ、触媒性能のわずかな低下を示す。か焼温度を400℃にさらに上昇させることにより、k
CATは-1.3
*10
-4分
-1にさらに低下する。XRDの結果(
図15)は、400℃未満のか焼で、ZrO(OH)
2が非晶質のままであり、400℃のか焼後、ZrO(OH)
2が結晶化し、30nmの結晶サイズのt-ZrO
2を形成したことを示す。しかし、市販のZrO
2と比較すると、ZrO(OH)
2(400°C)は2倍のk
CATを示す。ZrO
2と比較してZrO(OH)
2の良好な性能は、高密度のヒドロキシル基によるものであり得、これはZrO(OH)
2をZrO
2より良好な触媒にする。他方で、300℃の温度下でZrO(OH)
2をか焼することにより、より安定した触媒が、触媒性能のわずかな低下だけで得ることができる。ZrO(OH)
2(400°C)のO:Zr比は2.17:1であり、他の触媒については3:1より高かった。
【0138】
【0139】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0140】
実施例6:混合金属ヒドロキシル酸化物の触媒性能
混合金属ヒドロキシル酸化物をZrO(OH)2に基づき調査した。典型的には10%の金属硝酸塩をジルコニウム前駆体と、続いて同じ合成方法でZrO(OH)2と混合した。触媒は、10%ZrO(OH)2(M=Hf、Ce、Zn)として注記される。
【0141】
図16および表6に示すように、10%ZnZrO(OH)
2は、ブランクと比較してCO
2脱離量の25%の改善を示し、ZrO(OH)
2に対して10%改善した。しかし、10%ZnZrO(OH)
2のk
CATはわずか-1.6
*10
-4分
-1であり、これは10%HfZrO(OH)
2(-1.9
*10
-4分
-1)および10%CeZrO(OH)
2(-2.3
*10
-4分
-1)より低い。ZrO(OH)
2は-3.1
*10
-4分
-1の最も高いk
CATを依然として示す。注意されるべきは、10%ZnZrO(OH)
2である10%MZrO(OH)
2の最も低いk
CATでも、TiO(OH)
2のk
CATに対して25%の改善を依然として示すことである。
【0142】
【0143】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和5M MEA、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0144】
実施例7:ZrO(OH)
2系触媒の表面電荷
ZrO(OH)
2系触媒の表面電荷を、脱離中のCO
2-MEA溶媒の典型的なpHであるpH9.3下でゼータ電位分析器によって試験した。ゼータ電位の値は、粒子表面の電荷特性を反映する。正のゼータ電位は、粒子表面が正に帯電していることを示し、ゼータ電位の絶対値は、電荷密度を反映する。
図17は、ZrO(OH)
2のk
CATとゼータ電位の明確な関係を示す。ゼータ電位が高ければ高いほど、高い触媒効果が達成される。ゼータ電位が高いと、触媒表面に吸着されるカルバミン酸種の濃度が高くなり、これはカルバミン酸の分解ステップに好ましく、高い触媒効果を示すことになる。
【0145】
実施例7:2.5M CO2飽和AMP溶液におけるZrO(OH)2によるCO2脱離性能
2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)は、吸収能力、吸収率、劣化耐性および再生エネルギーにおけるその利点により、商業的に魅力のある新しいCO2吸収剤として提案された。
【0146】
【0147】
反応条件:3gの触媒、150mLのCO2飽和2.5M AMP、コンデンサ上部から0.5L/分のN2流、88℃。CO2脱離量を温度勾配段階の最後で計算する。
【0148】
他のアミン溶媒におけるZrO(OH)
2触媒によるCO
2脱離性能を示すために、CO
2脱離実験をCO
2飽和2.5M AMP溶液で行った。CO
2脱離性能を
図18および表7に示す。AMPはいずれの触媒もなしで非常に高い脱離率を既に示した。AMPのk
blankは-4.8
*10
-4分
-1であり、これはMEAのk
blankと比較して約3倍である。しかし、ZrO(OH)
2は温度勾配段階と等温段階の両方で依然として改善を示す。さらにTiO(OH)
2(-1.3
*10
-4分
-1)と比較して、ZrO(OH)
2のk
CATは250%の改善を示した。結果は、ZrO(OH)
2がMEA溶媒中で十分に機能するだけでなく、他のアミン溶媒に適用されても低温下でCO
2脱離率を向上させることができることを立証した。
【0149】
実施例8:工業用脱離プロセス
連続脱離プロセスを工業においてシミュレーションするために、触媒を自作の連続反応器(
図19および拡大断面については
図20を参照のこと)でも試験する。CO
2リッチアミン溶液を85℃下で3.4mL分
-1の流速で底部から触媒層全体に供給した。アミン溶液から放出されたCO
2を、液面の上部から吹くN
2流により分析システムに運んだ。CO
2脱離の流速を、質量分析(MS)からのm/z=44の信号強度によって計算した。結果を、CO
2リーンアミン溶液を滴定することにより二重確認した。
【0150】
計算方法を以下に示す:
MSにより計算したCO2脱離率:
【0151】
【0152】
I:MSからのCO2信号強度
A:MS信号の較正係数(%)
CO2(%):CO2濃度(%)
FN2:N2流速(mL/分)
FCO2:放出されたCO2流速(mL/分)
CO2脱離率を、反応後の液体試料の滴定によっても確認する。これは、以下のように計算する:
FCO2=(ct-c0)×FMEA
ct:反応溶液中のCO2濃度(mLCO2/mLCO2)
c0:未使用の溶液中のCO2濃度(mLCO2/mLCO2)
FMEA:MEA溶液の流速
表8は、様々な触媒による連続反応器でのCO2脱離率の結果を示す。触媒なし(ブランクと呼ぶ)での試験は、触媒のものに匹敵するサイズのガラスビーズを含有しており、9.7mL/分の相対的に低いCO2脱離率を示した。TiO(OH)2を使用することにより、CO2脱離率は21.0mL/分に増加した。ZrO(OH)2によるCO2脱離率は、35.50mL/分であり、ブランクのCO2脱離率と比較して266%、TiO(OH)2と比較して69%の改善を示した。
【0153】
【0154】
反応条件:N2:100mL/分、CO2飽和MEA溶液流:3.4mL/分、85℃、3cmの触媒。
【0155】
図19および20は、以下の参照番号を使用する:101-液体サンプリング;111-リッチアミンタンク;112-リーンアミンタンク;121-ポンプ;122-Coriolis循環熱交換器;123-加熱トランスファーライン;124-排水弁;125-加熱実験浴;126-冷フィンガートラップ;127-処理冷却水;128-可変真空ポンプ;129-流量表示部;130-触媒;140-質量分析。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2脱離のためのZr系触媒を調製する方法であって、以下のステップ:
- 塩基性沈殿剤を含む溶液を、Zr源を含む溶液に混合し、それにより合成溶液を調製することと、
- 前記Zr系触媒を前記合成溶液から沈殿させ、それにより沈殿したZr系触媒を得ることと
を含む、方法において、
前記合成溶液のpH
が少なくとも4、最大7、例えば約5であり、前記Zr系触媒がZr、OおよびHを含み、前記O:Zr原子比が、少なくとも2.1であ
り、前記沈殿したZr系触媒が、前記沈殿したZr系触媒の総重量と比較して少なくとも90重量%のZrO(OH)
2
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記Zr系触媒がZrO(OH)
2を含
み、前記Zr系触媒の塩基性OHに対する酸性OHの比が少なくとも0.1、最大1.3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿したZr系触媒が、前記沈殿したZr系触媒の総重量と比較して少なくとも
95重量%のZrO(OH)
2を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性沈殿剤が水酸化物であり、かつ/または前記Zr源がZrO(NO
3)
2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
以下の
さらなるステップ:
- 前記沈殿したZr系触媒をか焼温度Tcでか焼すること
をさらに含み、
前記か焼温度Tc
が最大300℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を用いて調製されるCO
2脱離のためのZr系触媒であって、O:Zr原子比が、少なくとも2.1であり、好ましくは前記Zr系触媒がZrO(OH)
2を含
み、前記Zr系触媒が、前記Zr系触媒の総重量と比較して少なくとも90重量%のZrO(OH)
2
を含む、Zr系触媒。
【請求項7】
塩基性OHに対する酸性OHの比が少なくとも0.1、最大1.3である、請求項6に記載のZr系触媒。
【請求項8】
少なくとも-25mV、好ましくは少なくとも-5mVの表面電荷ゼータ電位を有する、請求項6または7に記載のZr系触媒。
【請求項9】
Hf、CeまたはZnを含む群から選択される他の金属を含み、好ましくは前記Zr系触媒中の前記他の金属と比較したZrの純度が、少なくとも90%である、請求項6~8のいずれか1項に記載のZr系触媒。
【請求項10】
アミン溶媒からのCO
2脱離プロセスであって、以下のステップ:
- アミン溶媒に吸収させたCO
2を含むCO
2含有アミン溶液を準備することと、
- 請求項6~9のいずれか1項に記載のZr系触媒を前記CO
2含有アミン溶液に供給することと、
- 前記Zr系触媒を含む前記アミン溶液を脱離温度Tdに加熱することと、
- 滞留時間中に前記Zr系触媒を含む前記アミン溶液からCO
2を脱離することと
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記Zr系触媒が可溶化しない不均一触媒として作用する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記アミン溶媒がモノエタノールアミン(MEA)または2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、好ましくはモノエタノールアミン(MEA)を含む、請求項10または11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記滞留時間が、少なくとも4時間、最大168時間、好ましくは少なくとも20時間、最大36時間である、請求項10~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
CO
2吸収および脱離プロセスであって、以下のステップ:
- CO
2をアミン溶媒に吸収させ、それによりCO
2含有アミン溶液を得ることと、
- 請求項10~13のいずれか1項に記載のプロセスを用いてCO
2を前記CO
2含有アミン溶液から脱離し、それにより前記アミン溶媒を再生することと
を含む、プロセス。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載のプロセスにおける、Zr系触媒、好ましくは請求項6~9のいずれか1項に記載の触媒の使用。
【国際調査報告】