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特表2025-500974メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの複素環阻害剤
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  • 特表-メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの複素環阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの複素環阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20250107BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C07D487/04 147
A61K31/519
A61P1/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538073
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022140380
(87)【国際公開番号】W WO2023116696
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111571838.2
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111571406.1
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】521330404
【氏名又は名称】南京正大天晴制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING CHIA TAI TIANQING PHARMACEU TICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 昌友
(72)【発明者】
【氏名】黄 丹丹
(72)【発明者】
【氏名】呉 叶彬
(72)【発明者】
【氏名】蘇 進財
(72)【発明者】
【氏名】馬 力
(72)【発明者】
【氏名】代 清宇
(72)【発明者】
【氏名】左 鋭
(72)【発明者】
【氏名】裴 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】苗 雷
(72)【発明者】
【氏名】呉 艦
(72)【発明者】
【氏名】徐 丹
(72)【発明者】
【氏名】朱 春霞
(72)【発明者】
【氏名】田 舟山
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は構造が一般式Iで示されるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの複素環阻害剤を提供する。各置換基は、本明細書に記載される通りに定義される。その調製方法をさらに提供する。前記一般式Iで示される化合物は、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの阻害活性が顕著で、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A媒介疾患の治療に有用である。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(ただし、
Xは、CR又はNから選択され、Yは、CR又はNから選択され、Zは、CR又はNから選択され、Wは、CR又はNから選択され、
ここで、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、シアノ、C2~C6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、(C1~C6アルキル)-S-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、6~10員アリール、C2~C6アルケニル、又はC3~C6シクロアルケニルから選択され、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C3~C6シクロアルキル、又はC3~C6シクロアルケニルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、-NR、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、ここで、前記C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、又はNOによって任意に置換され、
、及びRは、それぞれ独立して、6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルから選択され、前記6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、H又はC1~C6アルキルから選択され、
条件として、W、X、Y及びZのうち多くとも2つは同時にNである。)
【請求項2】
式I化合物は式IIで示される構造を有する、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
(ただし、R、R、R、R、及びRの定義は式I化合物における定義と同様である。)
【請求項3】
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、又は-NRによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、
好ましくは、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲンによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、
より好ましくは、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、水素、C1~C6アルキル、又はC3~C6シクロアルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はC1~C6アルキルから選択され、より好ましくは、Rは、水素、メチル又はシクロプロピルから選択され、さらに好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、最も好ましくは、Rは、水素から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
は、水素又はC1~C6アルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、より好ましくは、Rは、水素から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、好ましくは、Rは、水素、塩素、ヒドロキシ、シクロプロピル、CFCHO-、CHFO-、CFCHNH-、4-ジフルオロメトキシフェニル、又はCHCHO-から選択され、より好ましくは、Rは、シクロプロピル、CFCHO-、CFCHNH-、又はCHCHO-から選択され、さらに好ましくは、Rは、シクロプロピル、CFCHO-、又はCFCHNH-から選択され、最も好ましくは、Rは、シクロプロピルから選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化3】
ここで、前記基は、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換され、好ましくは、R、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化4】
ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、Hから選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
は、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化5】
ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化6】
より好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化7】
【請求項9】
は、フェニル又は以下の式で示されている基から選択され、
【化8】
ここで、前記基は、(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化9】
より好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化10】
【請求項10】
以下の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化11】
【請求項11】
治療有効量の請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項12】
MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療する薬物の調製における、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩又は請求項11に記載の医薬組成物の使用であって、好ましくは、前記MAT2A媒介疾患又は病態はMAT2A過剰発現により媒介される、使用。
【請求項13】
MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療するための方法であって、
これを必要とする個体に有効量の請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩又は請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療するための請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩又は請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2Aの複素環阻害剤、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)(S-アデノシルメチオニン合成酵素とも呼ばれる)は、メチオニンとATPからのS-アデノシルメチオニン(SAM又はAdoMet)の合成を触媒する細胞酵素であり、メチオニンサイクルの律速段階と考えられている。SAMはポリアミン生合成におけるアミノプロピル基供与体であり、DNAメチル化に用いられる主要なメチル供与体であるほか、遺伝子の転写、細胞増殖や二次代謝産物の生成に関与する。MATの3種類のヒトアイソザイムはMAT1、MAT2、及びMAT3を含み、その中でMAT1とMAT3は肝組織中に発現し、メチオニンアデノシントランスフェラーゼ2A(MAT2A)はMAT2の亜型の1種であり、ヒト細胞タイプに広く発現し、しかも、ヒト癌中の主要な形式であり、SAMの生成にも重要な役割を果たしている。
【0003】
MTAP(メチルチオアデノシンホスホリラーゼ)は正常組織に広く発現している酵素で、メチルチオアデノシン(MTA)からアデニンと5-メチルチオリボース-1-リン酸への変換を触媒し、アデニンはアデノシン一リン酸に変換され、5-メチルチオリボース-1-リン酸はメチオニンとギ酸塩に変換される。MTAは、例えば、代謝拮抗物質により、プリン合成がブロックされた場合に、代替プリン源として有用である。
【0004】
MTAPをコードする遺伝子は9番染色体上の1つの部位にあり、がん患者では、中枢神経系、膵臓、食道膀胱や肺の細胞から欠失することが多い。MTAPが失われると、MTAPを発現している細胞と比較してMTAが蓄積されるため、MTAPが欠失した細胞はSAMの産生により依存し、したがって、MAT2A活性により依存する。約400のがん細胞株のスクリーニングにおいて、MAT2AノックダウンによりMTAPが欠失した細胞は、正常にMTAPを発現している細胞に比べて、活力がより多くの割合で失われていた。さらに、MAT2Aタンパク質の誘導性ノックダウンは、生体内の腫瘍の成長を低下させる。これらの結果は、MAT2A阻害剤がMTAP欠失腫瘍患者に新たな治療法を提供する可能性を示唆している。
【0005】
現在、中国特許出願CN109890822Aには、ピラゾロピリミジノン系MAT2A阻害剤が開示されており、WO2020123395A1には、MAT2A阻害剤として2-オキソキナゾリン誘導体が開示されており、本発明には、新規な複素環系メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A阻害剤が提供される。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
(ただし、Xは、CR又はNから選択され、Yは、CR又はNから選択され、Zは、CR又はNから選択され、Wは、CR又はNから選択され、
ここで、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して水素、シアノ、C2~C6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、(C1~C6アルキル)-S-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、6~10員アリール、C2~C6アルケニル、又はC3~C6シクロアルケニルから選択され、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C3~C6シクロアルキル、又はC3~C6シクロアルケニルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、-NR、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、ここで、前記C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、又はNOによって任意に置換され、
、及びRは、それぞれ独立して、6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルから選択され、前記6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、H又はC1~C6アルキルから選択され、
条件として、W、X、Y及びZのうち多くとも2つは同時にNである。)
【0007】
いくつかの実施態様では、Xは、CRから選択される。
【0008】
いくつかの実施態様では、Yは、CRから選択される。
【0009】
いくつかの実施態様では、Zは、CRから選択される。
【0010】
いくつかの実施態様では、Wは、Nである。
【0011】
いくつかの実施態様では、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、又は-NRによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される。
【0012】
いくつかの代表実施態様では、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲンによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される。
【0013】
いくつかの代表実施態様では、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される。
【0014】
いくつかのより代表的な実施態様では、Rは、水素、C1~C6アルキル、又はC3~C6シクロアルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はC1~C6アルキルから選択される。
【0015】
いくつかのより代表的な実施態様では、Rは、水素、メチル又はシクロプロピルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、より好ましくは、Rは、水素から選択される。
【0016】
いくつかのより代表的な実施態様では、Rは、水素又はC1~C6アルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、より好ましくは、Rは、水素から選択される。
【0017】
いくつかのより代表的な実施態様では、Rは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される。
【0018】
いくつかのより代表的な実施態様では、Rは、水素、塩素、ヒドロキシ、シクロプロピル、CFCHO-、CHFO-、CFCHNH-、4-ジフルオロメトキシフェニル、又はCHCHO-から選択され、好ましくは、Rはシクロプロピル、CFCHO-、CFCHNH-、又はCHCHO-から選択され、より好ましくは、Rは、シクロプロピル、CFCHO-、又はCFCHNH-から選択され、最も好ましくは、Rは、シクロプロピルから選択される。
【0019】
いくつかの実施態様では、R、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、ここで、前記基は、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換される。
【化2】
【0020】
いくつかの実施態様では、R、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換される。
【化3】
【0021】
いくつかの実施態様では、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、Hから選択される。
【0022】
いくつかの実施態様では、Rは、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換される。
【化4】
【0023】
いくつかの実施態様では、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化5】
好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される。
【化6】
【0024】
いくつかの実施態様では、Rは、フェニル又は以下の式で示されている基から選択され、ここで、前記基は、(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、ハロゲンによって任意に置換される。
【化7】
【0025】
いくつかの実施態様では、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化8】
好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される。
【化9】
【0026】
いくつかの実施態様では、前述式I化合物は式IIで示される構造を有する。
【化10】
(ただし、R、R、R、R、及びRの定義は式I化合物における定義と同様である。)
【0027】
別の態様では、本発明は、下記化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化11】
【0028】
いくつかの実施態様では、本発明は、治療有効量の前述化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
いくつかの実施態様では、本発明は、治療有効量の前述化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明の前記医薬組成物は、経口又は非経口(例えば、静脈内)など、任意の適切な経路又は方法によって投与されてもよい。前述化合物の治療有効量は、約1mg~1g/Kg体重/日である。
【0031】
経口経路投与の場合、本発明の医薬組成物は、通常、錠剤、カプセル剤又は溶液の形態で提供される。錠剤は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含んでもよい。前記担体は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤を含むが、これらに限定されない。
【0032】
非経口経路投与の場合、本発明の医薬組成物は、静脈内注射、筋肉内注射又は皮下注射によって投与されてもよい。通常、無菌水溶液又は懸濁液又は凍結乾燥粉末として提供され、pHや等張性が適切に調整される。
【0033】
別の態様では、本発明はまた、MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療する薬物の製造における、前述化合物又はその薬学的に許容される塩又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明はまた、これを必要とする個体に有効量の前述化合物、その薬学的に許容される塩又はその医薬組成物を投与することを含む、MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療するための方法を提供する。
【0035】
別の態様では、本発明はまた、MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療するための本発明の前述化合物、その薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物を提供する。前記MAT2A媒介疾患又は病態の例として、結腸直腸癌などが含まれる。
【0036】
いくつかの特定実施形態では、前記MAT2A媒介疾患は、MAT2A過剰発現媒介疾患である。
【0037】
別の態様では、本発明は、以下の合成スキームを含むが、これらに限定されない、式I又はII化合物の製造方法を提供する。
【化12】
(ただし、Xは、塩素、臭素、又はヨウ素から選択され、R、R、及びRの定義は、上記式Iの定義と同様であり、R、及びRは、それぞれ独立して、C1~C3アルキルから選択される。)
【0038】
いくつかの実施態様では、R、及びRは、それぞれ独立して、メチルから選択される。
【0039】
式1-1化合物と式1-2化合物を反応させて式1-3化合物を生成し、式1-3化合物からハロゲン化水素酸の作用により式1-4化合物を生成し、式1-4化合物をハロゲン化反応させて式1-5化合物を得、式1-5化合物と式1-6化合物とを反応させて式1-7化合物を生成し、式1-7化合物を環化反応させて式1-8化合物を得、式1-8化合物と式1-9a又は式1-9b化合物とを反応させて式1-10化合物を生成し、式1-10化合物と式1-11a又は式1-11b化合物とを反応させて式1-12化合物を生成し、又は式1-8化合物と式1-9a又は式1-9b化合物とを反応させて式1-13化合物を生成し、ここで、式1-13化合物では、R、及びRは同じである。
【0040】
いくつかの実施態様では、Xは、塩素から選択される。
【0041】
いくつかの実施態様では、R、及びRは、それぞれ独立して、以下の式で示されている基から選択され、Rは、シクロプロピルから選択される。
【化13】
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】テスト例3におけるHCT116 MTAP-/-移植腫瘍モデルの腫瘍抑制曲線である。
図2】テスト例3におけるHCT116 MTAP-/-移植腫瘍モデルの腫瘍内のSAM阻害結果である。
図3】テスト例4におけるKP-4移植腫瘍モデルの腫瘍抑制曲線である。
図4】テスト例4におけるKP-4移植腫瘍モデルの腫瘍内のSAM阻害結果である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義
特定の説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲において使用される次の用語は、次の意味を有する。
【0044】
「任意」又は「任意に」という用語は、後に説明されるイベント又は状況が発生する可能性がある、又は発生しない可能性があることを意味し、この説明は、イベント又は状況が発生する場合と、発生しない場合とを含む。
【0045】
本明細書における数値範囲は、与えられた範囲内の個々の整数を意味する。例えば、「C1~C6」とは、当該基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子又は6個の炭素原子を有し得ることを意味する。「C3~C6」とは、3個の炭素原子、4個の炭素原子、5個の炭素原子又は6個の炭素原子を有し得ることを意味する。
【0046】
「員」という用語は、環を構成する骨格原子又は原子団の数を意味する。例えば、「5~7員」とは、環を構成する骨格原子又は原子団の数が5個、6個又は7個であることを意味する。したがって、例えば、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン及びベンゼンは6員環であり、チオフェン及びピロールは5員環である。
【0047】
「置換される」という用語は、特定の基の価数が正常であり、置換された化合物が安定である限り、特定の基上の水素原子のいずれか1つ又は複数が置換基で置き換えられることを意味する。例えば、「ハロゲンで置換される」とは、特定の基の価数が正常であり、置換された化合物が安定である限り、特定の基の水素原子のいずれか1つ又は複数がハロゲンで置き換えられることを意味する。
【0048】
「アルキル」という用語は、示された炭素原子数を有する直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。例えば、「C1~C6アルキル」という用語は、C1アルキル、C2アルキル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル又はC6アルキルを含み、その例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル又は3-ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
「シクロアルキル」という用語は、ヘテロ原子や二重結合を持たない単環式飽和炭化水素系を指す。「3~6員シクロアルキル」という用語の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0051】
「アリール」という用語は、母体芳香環系の単一炭素原子から水素原子を1個除去することによって得られた共役π電子系を有する全炭素単環又は縮合二環の芳香環基を指す。飽和環、部分的不飽和環又は芳香族炭素環に縮合する二環式基を含む。その例には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、インデン、インダン、1,2-ジヒドロナフタレン、又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む1価のアリールを意味する。例えば、「5~7員ヘテロアリール」の例には、ピリジル、チエニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピリジル、フリル、ピラジニル、又はチアゾリルが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
「9~18員ベンゾヘテロシクリル」という用語は、ベンゼン環と複素環とが縮合して形成された9~18個の環原子又は環原子団を有する環系を指し、ベンゼン環と複素環は1対の隣接する環原子を共有し、母核構造との連結部位はベンゼン環部分に位置する。複素環部分は、環炭素原子と1~4個のシクロヘテロ原子又はヘテロ原子団とを有する5~12員の飽和、部分不飽和又は完全不飽和の環系であり、ヘテロ原子又はヘテロ原子団は、独立して、窒素、硫黄、酸素、スルホキシド、スルホン、以下の式で示されている基から選択される。
【化14】
複素環は、単環、二環、又は三環系であってもよく、2つ以上の環は、縮合環、スピロ環、又は架橋環の形態で存在する。その例には以下の式で示されている基が含まれるが、これらに限定されない。
【化15】
【0054】
以下に示す構造の、
【化16】
以下に示す構造は、化学結合の連結箇所を意味する。
【化17】
二環又は多環に以下に示す構造が出現し、かつ、連結位置が不定である場合、原子価が許容する限り、
【化18】
連結部位は以下に示す構造が存在する単環上の任意の原子に限定されることを意味する。
【化19】
例えば、以下の式で示されている基は、連結部位が二環中のベンゼン環にのみ位置する任意の炭素原子にあり、原子価結合の要件を満たすことを意味する。
【化20】
【0055】
「薬学的に許容される塩」という用語は、生物学的な悪影響を及ぼすことなく、特定の化合物の遊離酸と塩基の生物学的効力を維持する塩を指す。例えば、酸(有機酸及び無機酸を含む)付加塩や塩基付加塩(有機塩基及び無機塩基を含む)が含まれる。
【0056】
本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、酸又は塩基を含む母体化合物から合成することができる。一般的に、このような塩の調製方法は、水又は有機溶媒中で、又は両者の混合物中で、遊離の酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論的に適切な塩基又は酸と反応させることによって調製される。
【0057】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、毒性はないが期待される効果を達成するのに十分な量の薬物又は薬剤を意味する。
【0058】
「薬学的に許容される担体」という用語は、生体に対して明らかな刺激作用がなく、しかも当該活性化合物の生物活性及び性能を損なうことのない担体を指す。国家食品薬品監督管理局が許可した、人又は動物に使用可能な希釈剤、崩壊剤、結合剤、流動助剤、湿潤剤を含むが、これらに限定されない。
【0059】
特許請求の範囲及び明細書において使用される略称の意味は以下のとおりである。
M:mol/L
mM:mmol/L
μM:μmol/L
nM:nmol/L
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析技術
Brij35:ラウレスポリオキシエチレンエーテル
BSA:ウシ血清アルブミン
DMSO:ジメチルスルホキシド、
rpm:回転/分
Tris-HCl:トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩
OD620:波長620nmにおける吸光度
SAM:S-アデノシルメチオニン
【0060】
以下、本発明の化合物の製造方法をより具体的に説明するが、これらの具体的な製造方法は、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応時間などの反応条件は、以下の例に限定されない。
【0061】
本発明の化合物はまた、本明細書に記載された又は当該分野に知られている種々の合成方法を任意に組み合わせて容易に製造することができ、そのような組み合わせは当業者が容易に行うことができる。
【0062】
実施例
実施例1:2-シクロプロピル-7,9-ビス[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン
【化21】
【0063】
a)N-(5-メトキシピリダジン-3-イル)アセトアミドの調製
反応フラスコに3-クロロ-5-メトキシピリダジン(1g)、アセトアミド(0.61g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.32g)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン(0.40g)、炭酸セシウム(6.76g)を順次加え、次に、1,4-ジオキサン(100mL)を加え、窒素保護下、100℃で3時間撹拌し、減圧濃縮して、乾固まで蒸発し、残留物を得、酢酸エチル(3x50mL)で抽出し、有機相を合わせて飽和食塩水(1×50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して濾過し、濾液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:酢酸エチル/石油エーテル=10/1(V/V))により精製し、表題化合物780mgを得た。LCMS m/z= 168.05[M+1]
【0064】
b)6-アミノピリダジン-4(1H)-オンの調製
マイクロ波管にN-(5-メトキシピリダジン-3-イル)アセトアミド(500mg)、臭化水素水溶液(15mL)を加え、マイクロ波放射下、140℃で5時間撹拌し、減圧濃縮して、表題化合物360mgを得た。
LCMS m/z=111.95[M+1]
【0065】
c)6-アミノ-3,5-ジブロモピリダジン-4(1H)-オンの調製
反応フラスコに6-アミノピリダジン-4(1H)-オン(360mg)、N-ブロモスクシンイミド(1.73g)を加え、N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)中で、室温で2時間撹拌し、減圧濃縮して、乾固まで蒸発し、残留物を得、アセトニトリル(3×5mL)で洗浄し、表題化合物360mgを得た。
【0066】
d)6-アミノ-3,5-ジブロモ-1-[(1E)-3-シクロプロピル-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル]ピリダジン-4(1H)-オンの調製
反応フラスコに6-アミノ-3,5-ジブロモピリダジン-4(1H)-オン(430mg)、(2E)-3-クロロ-1-シクロプロピルプロパ-2-エン-1-オン(167.0mg)、炭酸カリウム(663.0mg)を加え、N,N-ジメチルホルムアミド(43mL)中で、25℃で一晩撹拌し、減圧濃縮して、混合物を得、1M塩酸で混合物のpHを2~3に調整し、水(3×10mL)で混合物を洗浄し、表題化合物335mgを得た。
【0067】
e)7,9-ジブロモ-2-シクロプロピル-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オンの調製
反応フラスコに6-アミノ-3,5-ジブロモ-1-[(1E)-3-シクロプロピル-3-オキソプロパ-1-エン-1-イル]ピリダジン-4(1H)-オン(355mg)を加え、次に、2mol/Lの塩化水素の1,4-ジオキサン(10mL)溶液を加え、25℃で1時間撹拌し、減圧濃縮し、乾固残留物を得、重炭酸ナトリウム水溶液(1×10mL)で洗浄し、濾過して濾過ケーキを集め、水(3×5mL)で洗浄し、表題化合物320mgを得た。
【0068】
f)2-シクロプロピル-7,9-ビス[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オンの調製
反応フラスコに7,9-ジブロモ-2-シクロプロピル-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン(60mg)、4-(ジフルオロメトキシ)フェニルボロン酸(98.1mg)、水(0.4mL)、1,4-ジオキサン(2mL)、リン酸カリウム(184.6mg)、及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(14.17mg)を加え、窒素保護下で、80℃で1時間撹拌し、減圧濃縮して、乾固残留物を得、分取して、表題化合物37mgを得た。分取の条件:クロマトグラフィーカラム:XBridge PrepOBD C18 カラム、30*150mm、5μm;カラム温度:25℃;移動相A:水(10mmol/LNHHCO)、移動相B:アセトニトリル;流速:60mL/min;溶離勾配:0~10minでは45%B~85%B溶離、10min以降では85%B溶離;検出波長:UV220nm;保持時間(min):7.32。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.72(d,J= 7.2Hz,1H),8.27-8.21(m,2H),7.64-7.58(m,2H),7.56-7.26(m,3H),7.21-7.11(m,3H),7.07(d,J=7.2Hz,1H),2.20(tt,J=8.1,4.5Hz,1H),1.18-1.10(m, 2H),1.01(p,J=3.8Hz,2H).
LCMS m/z=472[M+H]
【0069】
実施例2:7,9-ビス(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ-5-イル)-2-シクロプロピル-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン
【化22】
【0070】
ステップf)の4-(ジフルオロメトキシ)フェニルボロン酸をベンゾ[d][1,3]ジオキソ-5-イルボロン酸(以下の式で示されている基)に変更した以外、実施例1の調製方法を参照して調製した。
【化23】
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ8.69(d,J=7.2Hz,1H),7.88(dd,J=8.3,1.7Hz,1H),7.76(d,J=1.7Hz,1H),7.09-6.99(m,4H),6.93(d,J=8.0Hz,1H),6.11(s,2H),6.04(s,2H),2.18(td,J=8.0,4.1Hz,1H),1.12(dt,J=6.7,3.4Hz,2H),1.01(t,J=3.8Hz,2H).
LCMS m/z=428[M+1]
【0071】
実施例3:2-シクロプロピル-9-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-7-(2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン
【化24】
【0072】
a)9-ブロモ-2-シクロプロピル-7-(2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オンの調製
反応フラスコに7,9-ジブロモ-2-シクロプロピル-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン(50mg)、2-メチルインダゾール-5-イルボロン酸(28.06mg)、炭酸カリウム(60.09mg)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(11.81mg)、1,4-ジオキサン(0.5mL)、水(0.1mL)を順次加え、窒素保護下、60℃で1時間撹拌し、反応物を減圧濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:酢酸エチル/石油エーテル=4/1(V/V))により精製し、表題化合物40mgを得た。
H NMR(400MHz,DMSO)δ8.98(s,1H),8.81(d,J=7.1Hz,1H),8.54(s,1H),7.95 (d,J=8.9Hz,1H),7.66(d,J=9.1Hz,1H),7.14(d,J=7.1Hz,1H),4.20(s,3H),2.34(s,1H),1.46-1.10(m,4H).
LCMS m/z=396[M+1]
【0073】
b)2-シクロプロピル-9-[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル]-7-(2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オンの調製
反応フラスコに9-ブロモ-2-シクロプロピル-7-(2-メチル-2H-インダゾール-5-イル)-8H-ピリミド[1,2-b]ピリダジン-8-オン(35mg)、4-(ジフルオロメトキシ)フェニルボロン酸(24.90mg)、炭酸カリウム(36.62mg)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン錯体(7.20mg)、1,4-ジオキサン(1mL)、水(0.2mL)を順次加え、窒素保護下、80℃で1時間撹拌し、反応物を減圧濃縮し、分取して、表題化合物14.4mgを得た。分取の条件:クロマトグラフィーカラム:XBridge PrepOBD C18 カラム、30*150mm、5μm;カラム温度:25℃;移動相A:水(10mmol/LNHHCO)、移動相B:アセトニトリル;流速:60mL/min;溶離勾配:0~10minでは25%B~70%B溶離、10min以降では85%B溶離;検出波長:UV220nm;保持時間(min):6.8。
H NMR(400MHz,DMSO-d)8.97(s,1H),8.76(d,J=7.2Hz,1H),8.52(s,1H),7.97(dd,J=9.2,1.6Hz,1H),7.68-7.59(m,3H),7.31(t,J=74.4Hz,1H),7.22-7.16(m,2H),7.06(d,J=7.2Hz,1H),4.20(s,3H),2.19(dq,J=8.1,4.6,4.0Hz,1H),1.13(dd,J=7.8,3.5Hz,2H),1.02(t,J=3.8Hz,2H).
LCMS m/z=460[M+1]
【0074】
テスト例1:生物活性テスト
一、MAT2Aの方法
1.実験ステップ
a)まず、5×MAT2Aテスト緩衝液(250mM Tris-HCl、pH8.0;250mM KCl;75mM MgCl;0.025%BSA;0.05%Brij35;1.5mM EDTA)を調製し、部分的に1×まで希釈して、使用に備えた。
【0075】
b)MAT2A酵素(BPS、71401)の調製及び添加
1×MAT2Aテスト緩衝液を用いてMAT2A酵素を3.674ng/μL(1.67×、最終濃度2.20ng/μL)に調製し、BioTek(MultiFlo FX)自動分液計を用いて、化合物テストウェルと陰性対照ウェルにそれぞれ1.67×MAT2A酵素溶液15μLを加えるとともに、空白対照ウェルに1×MAT2Aテスト緩衝液15μLを加えた。
【0076】
c)化合物の調製及び添加
DMSOを用いて被験化合物を10mMのストック液から100μMに希釈し、陽性薬AGI-24512を同様の条件で希釈し、Tecan化合物滴定装置(D300e)を用いて、設定された濃度勾配に従って、各ウェルに自動噴射し、噴射する体積が極めて小さいため無視できる。濃度勾配は1μMから開始し、1/2 log希釈で、合計8つの勾配を設置した。2500rpmで30秒間遠心分離し、25℃で30分間インキュベートした。
【0077】
d)ATPの調製
1×MAT2Aテスト緩衝液を用いて10mM ATP(Sigma、A7699)を700μMに希釈して、使用に備えた。
【0078】
e)基質とATP混合液の調製及び添加
5×MAT2Aテスト緩衝液(3μL/ウェル)、750μM L-メチオニン(Adamas、01100469)(2.5μL/ウェル)、700μM ATP(2.5μL/ウェル)、再蒸留水(2μL/ウェル)。検出ウェル数に応じて必要な混合液の総量を調製し、BioTek(MultiFlo FX)自動ディスペンサーを用いてウェルごとに10μL加えた。2500rpmで30秒間遠心分離し、25℃で150分間反応させた。
【0079】
f)Biomol Green検出試薬の添加
BioTek(MultiFlo FX)自動ディスペンサーを用いてウェルごとにBiomol Green(Enzo、BML-AK111)50μLを加え、2500rpmで30秒間遠心分離し、25℃で20分間インキュベートした。
g)反応終了後、Perkin Elmer(Envision 2105)多機能プレートリーダーを用いてOD620を読み取った。
【0080】
2.データ分析
阻害率の計算式は以下のとおりである。
【数1】
【0081】
ただし、
ODサンプル:サンプルウェルのOD620
ODmin:酵素も被験化合物もない空白対照ウェルのOD620平均値を表す。
ODmax:酵素があるが化合物がない陰性対照ウェルのOD620平均値を表す。
GraphPad Prism 5ソフトウェアlog(inhibitor)vs.response-Variable slopeを用いて用量-反応曲線をフィッティングし、化合物によるMAT2A酵素阻害のIC50値を得た。
【0082】
二、細胞テスト方法
1.実験ステップ
HCT116 MTAP-/-細胞(Horizon Discoveryより購入):MTAP遺伝子欠損ヒト結腸直腸癌細胞株を、培地RPMI 1640+10%胎児ウシ血清(FBS:Fetal bovine serum)を用いて培養した。実験0日目には、対数成長期の上記細胞の生細胞密度を5000個/mLに調整し、100μL/ウェルの量で96ウェルプレートに接種し、平行に空白群を設置した。接種した細胞プレートを37℃に置き、5%COのインキュベータで一晩培養した。
【0083】
実験1日目に、一晩培養した細胞プレートを取り出し、上清を捨て、ウェルごとに無血清RPMI 1640培地を80μL加え、インキュベータに入れて4時間飢餓培養した。被験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethyl sulfoxide)に溶解し、10mM化合物母液を調製した。飢餓が終わった後、細胞プレートを取り出し、ウェルごとにRPMI 1640+20%FBS培地80μLを補充した。細胞プレートを自動培地ディスペンサーD300e(Tecan)に置き、投与プログラムを以下のように設定した。化合物は最大濃度30μMまでテストされ、DMSOを用いて3倍濃度勾配希釈を行い、合計10の濃度を設定し、各濃度に2つの重複ウェルを設置し、96ウェルプレートの各ウェルのDMSO最終濃度を0.3%(v/v)とした。予め調製された10mMの被験化合物母液を取り出し、上記投与プログラムを実行して投与した。投与終了後、細胞プレートをインキュベータに入れて120時間培養した。
【0084】
実験6日目に細胞プレートを取り出し、CellTiter-Glo(登録商標)(Promegaより購入)を1ウェルあたり50μL加え、説明書の手順に従ってEnvision(PerkinElmer)上で蛍光信号を測定した。
【0085】
2.データ分析
GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて用量-反応曲線:log(inhibitor)vs.response-Variable slopeをフィッティングし、化合物による細胞増殖阻害のIC50値を得た。阻害率の計算式は以下のとおりである。
【数2】
【0086】
ただし、
被検物の信号値:細胞+培地+化合物群の蛍光信号の平均値
空白群の信号値:培地群蛍光信号の平均値
陰性対照群の信号値:細胞+培地群の蛍光信号の平均値
【0087】
三、実験結果:
上記の実験方法により測定した結果、MAT2Aに対するAGI-24512の阻害IC50は26.79nMであった。
AGI-24512の構造:
【化25】
【0088】
本発明の化合物の実験結果を表1に示す。
【表1】
【0089】
テスト例2:ICRマウスの生体内薬物動態学的研究
1.実験ステップ
オスICRマウス(6~10週齢、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.)を、温度20~25℃、相対湿度40%~70%、明暗状態が各12時間SPF動物飼育室で飼育した。動物は自由に水を飲んだり、餌を取ったりした。少なくとも5日間正常に飼育した後、獣医にて検査した結果、徴候状況が良好なマウスを本実験に入選した。マウスごとに尾部に番号を付けた。
【0090】
実験前日、マウスを一晩断食させたが、水を自由に飲め、投与4時間後で給餌した。DMSOを用いて化合物を20mg/mLのストック液に調製し、20mg/mLのストック液を適切な体積をガラス瓶に正確にピペッティングし、適当な体積のPEG400を加えて、混合した後に、プロピレングリコール(PG)を加え、最終製剤中の溶媒の比率をDMSO:PEG400:PG(v/v/v)=5:65:30とし、濃度1mg/mLの各被験化合物の投与試験液を得た。
【0091】
マウスの体重を計量した後、以下の式で各マウスの理論投与体積を計算した。各マウスの実際の投与量と血液サンプルの採取時間は対応する表に詳細に記録する必要がある。
【数3】
【0092】
実験当日、各群のマウスに、各被験化合物の投与試験液を10mg/kgの用量で経口投与した。投与後、各時点でマウスの眼窩から約40μL採血し、EDTA-K2抗凝固チューブに入れた。全血サンプルを1500~1600gで10min遠心分離し、分離した血漿を-40~-20℃の冷蔵庫に保存し、生体サンプル分析に用いた。
【0093】
2.データ分析
実験により得られた生体サンプル中の化合物の濃度をLC-MS/MS分析法で測定した。Pharsight Phoenix 7.0のノンコンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメータを計算した。
【0094】
3.実験結果
薬物動態パラメータの計算結果を表2に示す。
【表2】
【0095】
テスト例3:HCT116 MTAP-/-ヌードマウス皮下異種移植腫の生体内薬効実験
1.実験ステップ
メスNu/Nuヌードマウス(6~8週齢、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.)を、温度20~25℃、相対湿度40%~70%、暗状態と明状態が各12時間のSPF動物飼育室で飼育した。動物は自由に水を飲んだり、餌を取ったりした。試験前に動物を適応的に飼育した。
【0096】
HCT116 MTAP-/-細胞(Horizon)を生体外培養して増殖させ、対数増殖期の細胞を無血清RPMI-1640培地に再懸濁させ、細胞濃度を6.0×10細胞/mLに調整した。1mL注射器で細胞懸濁液をヌードマウスの前右側腋窩皮下に1匹ごとに100μL注射し、定期的に動物の状態を観察し、移植腫瘍の成長状況をモニタリングした。
【0097】
腫瘍体積が100~300mmに達すると、腫瘍体積が大きすぎる、小さすぎる、又は腫瘍形成が不確定な動物を淘汰し、健康状態が良好で、腫瘍体積が近い腫瘍担持マウスを選び、ランダムブロック方式を用いて群分けした。AG-270投与群と被験化合物投与群は、毎日経口投与し(AG-270:50mg/kg、構造は以下のとおりである。被験化合物:5mg/kg)、対照群は、毎日同じ体積の空白溶媒を経口投与した。投与期間中に週2回腫瘍径を測定し、腫瘍体積を計算し、また動物の体重を計量し記録した。
【0098】
移植腫瘍内のSAMの検出
試験終了時にCOを用いて動物を安楽死させ、腫瘍組織を剥ぎ取り、冷たいPBSで洗浄し、重量を計量し、液体窒素で急速冷凍した後、低温で冷凍して保存し(-80℃)、使用に備えた。冷凍して使用に備えた腫瘍組織を取り出し、氷浴解凍後、80%メタノール水溶液(1Mギ酸を含む)を加え、腫瘍組織とメタノール水溶液(1Mギ酸を含む)の比率を1:10(w/v)とし、組織をホモジナイズした。ホモジナイズ後、ホモジネートを収集し、処理後、LC-MS/MSを用いてS-アデノシルメチオニン(SAM:S-adenosylmethionine)を検出した。
【0099】
AG-270の構造:
【化26】
【0100】
2.データ分析
腫瘍体積(TV:tumor volume)の計算式は、TV=1/2×a×bであり、ここで、aは腫瘍長径を示し、bは腫瘍短径を示す。
【0101】
相対腫瘍体積(RTV:relative tumor volume)の計算式は、RTV=TV/TVinitialであり、ここで、TVinitialは、群別に投与した場合に測定した腫瘍体積であり、TVは、投与期間中の測定ごとの腫瘍体積である。
【0102】
相対腫瘍成長率(T/C(%))の計算式は、T/C%=(RTV/RTV)×100%であり、ここで、RTVは、治療群の腫瘍相対体積を示し、RTVは、溶媒対照群の腫瘍相対体積を示す。
【0103】
腫瘍成長抑制率(TGI(%):tumor growth inhibition)の計算式は、TGI=[1-(TV)t(T)-TVinitial(T))/(TVt(C)-TVinitial(C))]×100%であり、ここで、TVt(T)は、治療群における測定ごとの腫瘍体積を示し、TVinitial(T)は、群別に投与した場合の治療群の腫瘍体積を示し、TVt(C)は、溶媒対照群における測定ごとの腫瘍体積を示し、TVinitial(C)は、群別に投与した場合の溶媒対照群の腫瘍体積を示す。
【0104】
動物体重減少率の計算式は、動物体重減少率=100%×(BWinitial-BW)/BWinitialであり、ここで、BWは、投与期間中の測定ごとの動物体重を示し、BWinitialは、群別に投与した場合の動物体重を示す。
【0105】
腫瘍重量による腫瘍抑制率IR(%)の計算式は、IR=100%×(W-W)/Wであり、ここで、Wは、対照群の腫瘍重量を示し、Wは、治療群の腫瘍重量を示す。
【0106】
試験データはMicrosoft Office Excel 2007ソフトウェアで計算と関連統計学的処理を行った。データは特記を除き、平均±標準誤差(Mean±SE)で表し、両群間の比較にはt-検定を用いた。
【0107】
3.実験結果
HCT116 MTAP-/-移植腫瘍モデルの腫瘍抑制曲線と腫瘍内SAM阻害結果をそれぞれ図1図2に示す。
【0108】
テスト例4:KP-4マウス皮下異種移植腫の生体内薬効実験
1.実験ステップ
メスNOD SCIDマウス(6~8週齢、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.)を、温度20~25℃、相対湿度40%~70%、暗状態と明状態が各12時間のSPF動物飼育室で飼育した。動物は自由に水を飲んだり、餌を取ったりした。試験前に動物を適応的に飼育した。
【0109】
KP-4細胞(Cobioer Biosciences Co.,Ltd)を生体外培養して増殖し、対数増殖期の細胞を無血清RPMI-1640培地に再懸濁させ、細胞濃度を1.0×10細胞/mLに調整した。1mL注射器で細胞懸濁液をヌードマウスの前右側腋窩皮下に1匹ごとに100μL注射し、定期的に動物の状態を観察し、移植腫瘍の成長状況をモニタリングした。
【0110】
腫瘍体積が80~100mmに達した後、腫瘍体積が大きすぎる、小さすぎる、又は腫瘍形成が不確定な動物を淘汰し、健康状態が良好で、腫瘍体積が近い腫瘍担持マウスを選び、ランダムブロック方式を用いて群分けした。AG-270投与群と被験化合物投与群は、毎日経口投与し(AG-270:100mg/kg、被験化合物:2.5mg/kg)、対照群は、毎日同じ体積の空白溶媒を経口投与した。投与期間中に週2回腫瘍径を測定し、腫瘍体積を計算し、また動物の体重を計量し記録した。
【0111】
移植腫瘍内のSAMの検出
試験終了時にCOを用いて動物を安楽死させ、腫瘍組織を剥ぎ取り、冷たいPBSで洗浄し、重量を計量し、液体窒素で急速冷凍した後、低温で冷凍して保存し(-80℃)、使用に備えた。冷凍して使用に備えた腫瘍組織を取り出し、氷浴解凍後、80%メタノール水溶液(1Mギ酸を含む)を加え、腫瘍組織とメタノール水溶液(1Mギ酸を含む)の比率を1:10(w/v)とし、組織をホモジナイズした。ホモジナイズ後、ホモジネートを収集し、処理後、LC-MS/MSを用いてS-アデノシルメチオニン(SAM:S-adenosylmethionine)を検出した。
【0112】
2.データ分析
腫瘍体積(TV:tumor volume)の計算式は、TV=1/2×a×bであり、ここで、aは腫瘍長径を示し、bは腫瘍短径を示す。
【0113】
相対腫瘍体積(RTV:relative tumor volume)の計算式は、RTV=TV/TVinitialであり、ここで、TVinitialは、群別に投与した場合に測定した腫瘍体積であり、TVは、投与期間中測定ごとの腫瘍体積である。
【0114】
相対腫瘍成長率(T/C(%))の計算式は、T/C%=(RTV/RTV)×100%であり、ここで、RTVは、治療群の腫瘍相対体積を示し、RTVは、溶媒対照群の腫瘍相対体積を示す。
【0115】
腫瘍成長抑制率(TGI(%):tumor growth inhibition)の計算式は、TGI=[1-(TV)t(T)-TVinitial(T))/(TVt(C)-TVinitial(C))]×100%であり、ここで、TVt(T)は、治療群における測定ごとの腫瘍体積を示し、TVinitial(T)は、群別に投与した場合の治療群の腫瘍体積を示し、TVt(C)は、溶媒対照群における測定ごとの腫瘍体積を示し、TVinitial(C)は、群別に投与した場合の溶媒対照群の腫瘍体積を示す。
【0116】
動物体重減少率の計算式は、動物体重減少率=100%×(BWinitial-BW)/BWinitialであり、ここで、BWは、投与期間中の測定ごとの動物体重を示し、BWinitialは、群別に投与した場合の動物体重を示す。
【0117】
腫瘍重量による腫瘍抑制率IR(%)の計算式は、IR=100%×(W-W)/Wであり、ここで、Wは、対照群の腫瘍重量を示し、Wは、治療群の腫瘍重量を示す。
【0118】
試験データはMicrosoft Office Excel 2007ソフトウェアで計算と関連統計学的処理を行った。データは特記を除き、平均±標準誤差(Mean±SE)で表し、両群間の比較にはt-検定を用いた。
【0119】
3.実験結果
KP-4移植腫瘍モデルの腫瘍抑制曲線と腫瘍内SAM阻害結果をそれぞれ図3図4に示す。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
別の態様では、本発明は、以下の合成スキームを含むが、これらに限定されない、式I又はII化合物の製造方法を提供する。
【化12】
(ただし、は、塩素、臭素、又はヨウ素から選択され、R、R、及びRの定義は、上記式Iの定義と同様であり、R、及びRは、それぞれ独立して、C1~C3アルキルから選択される。)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
いくつかの実施態様では、は、塩素から選択される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
(ただし、
Xは、CR又はNから選択され、Yは、CR又はNから選択され、Zは、CR又はNから選択され、Wは、CR又はNから選択され、
ここで、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、シアノ、C2~C6アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、(C1~C6アルキル)-S-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、6~10員アリール、C2~C6アルケニル、又はC3~C6シクロアルケニルから選択され、前記C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C3~C6シクロアルキル、又はC3~C6シクロアルケニルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、-NR、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルによって任意に置換され、ここで、前記C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ、C2~C6アルケニル、又はC2~C6アルキニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、又はNOによって任意に置換され、
、及びRは、それぞれ独立して、6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルから選択され、前記6~10員アリール、又は9~18員ベンゾヘテロシクリルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換され、
、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、H又はC1~C6アルキルから選択され、
条件として、W、X、Y及びZのうち多くとも2つは同時にNである。)
【請求項2】
式I化合物は式IIで示される構造を有する、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
(ただし、R、R、R、R、及びRの定義は式I化合物における定義と同様である。)
【請求項3】
、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、又は-NRによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、
好ましくは、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、ハロゲンによって任意に置換され、前記6~10員アリールは、ハロゲン置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、
より好ましくは、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、NH、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C1~C6アルキル、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
は、水素、C1~C6アルキル、又はC3~C6シクロアルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はC1~C6アルキルから選択され、より好ましくは、Rは、水素、メチル又はシクロプロピルから選択され、さらに好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、最も好ましくは、Rは、水素から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
は、水素又はC1~C6アルキルから選択され、好ましくは、Rは、水素又はメチルから選択され、より好ましくは、Rは、水素から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1~C6アルキル)-NR-、(C1~C6アルキル)-O-、C3~C6シクロアルキル、又は6~10員アリールから選択され、ここで、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又はC3~C6シクロアルキルとして、フッ素によって任意に置換され、前記6~10員アリールは、フッ素置換C1~C3アルコキシによって任意に置換され、好ましくは、Rは、水素、塩素、ヒドロキシ、シクロプロピル、CFCHO-、CHFO-、CFCHNH-、4-ジフルオロメトキシフェニル、又はCHCHO-から選択され、より好ましくは、Rは、シクロプロピル、CFCHO-、CFCHNH-、又はCHCHO-から選択され、さらに好ましくは、Rは、シクロプロピル、CFCHO-、又はCFCHNH-から選択され、最も好ましくは、Rは、シクロプロピルから選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化3】
ここで、前記基は、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、-NR、NO、-NRC(O)R10、C1~C6アルキル、(C1~C6アルキル)-O-、-C(O)NR10又は5~7員ヘテロアリールによって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部又は5~7員ヘテロアリールとして、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、C1~C3アルキル、(C1~C3アルキル)-O-、又は-NRによって任意に置換され、好ましくは、R、及びRは、それぞれ独立して、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化4】
ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、Hから選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
は、フェニル、以下の式で示されている基から選択され、
【化5】
ここで、前記基は、C1~C6アルキル、又は(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、自体又は他の基の一部として、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化6】
より好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化7】
【請求項9】
は、フェニル又は以下の式で示されている基から選択され、
【化8】
ここで、前記基は、(C1~C6アルキル)-O-によって任意に置換され、前記C1~C6アルキルは、ハロゲンによって任意に置換され、好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択され、
【化9】
より好ましくは、Rは以下の式で示されている基から選択される、ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化10】
【請求項10】
以下の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化11】
【請求項11】
治療有効量の請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項12】
MAT2A媒介疾患又は病態を予防及び/又は治療するための請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容される塩又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記MAT2A媒介疾患又は病態は、MAT2Aの過剰発現によって媒介される、請求項12に記載の化合物、その薬学的に許容される塩又は請求項12に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】