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特表2025-500975電子顕微鏡、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法
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  • 特表-電子顕微鏡、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法 図1
  • 特表-電子顕微鏡、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法 図2
  • 特表-電子顕微鏡、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電子顕微鏡、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/073 20060101AFI20250107BHJP
   H01J 37/065 20060101ALI20250107BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20250107BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20250107BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01J37/073
H01J37/065
H01J37/141 Z
H01J37/18
H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538076
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022078535
(87)【国際公開番号】W WO2023117173
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】17/557,700
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501493587
【氏名又は名称】アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アダメツ パヴェル
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB01
5C101BB03
5C101BB07
5C101BB10
5C101CC04
5C101CC05
5C101DD06
5C101DD14
5C101DD18
5C101DD23
5C101DD25
5C101EE04
5C101EE13
5C101EE14
5C101EE19
5C101EE26
(57)【要約】
電子顕微鏡(100)が記載されている。この電子顕微鏡は、電子ビームを発生させるための電子源(110)と、電子源の下流で電子ビームをコリメートするためのコンデンサレンズ(130)と、電子ビームを試料(16)上に集束させるための対物レンズ(140)とを備える。この電子源は、放出先端(112)を備える冷陰極電界放出型エミッタと、光軸(A)に沿って伝搬させるために電子ビーム(105)を冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極(114)であり、第1のビーム絞り開孔として構成された第1の開口(115)を有する、引出し電極(114)と、放出先端(112)を、放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置(121)と、引出し電極(114)を、引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置(122)とを備える。さらに、そうした電子顕微鏡を動作させる方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源(110)であって、
放出先端(112)を備える冷陰極電界放出型エミッタ、
光軸(A)に沿って伝搬させるために電子ビーム(105)を前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極(114)であり、第1のビーム絞り開孔として構成された第1の開口(115)を有する、前記引出し電極(114)、
前記放出先端(112)を、前記放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置(121)、および
前記引出し電極(114)を、前記引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置(122)
を備える、前記電子源(110)と、
前記電子源の下流で前記電子ビームをコリメートするためのコンデンサレンズ(130)と、
前記電子ビームを試料上に集束させるための対物レンズ(140)と
を備える、電子顕微鏡(100)。
【請求項2】
前記第1の洗浄装置(121)が、前記放出先端と熱接触した加熱フィラメント(125)を備え、前記放出先端が、前記加熱フィラメントに取り付けられているか、または結合されている、請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項3】
前記第2の洗浄装置(122)が、前記引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤ(126)を備え、前記加熱ワイヤ(126)が、1500℃以上の温度まで加熱されるように構成されている、請求項1または2に記載の電子顕微鏡。
【請求項4】
前記加熱ワイヤが、前記引出し電極の前記第1の開口(115)を少なくとも部分的に取り囲むように配置されている、請求項3に記載の電子顕微鏡。
【請求項5】
前記加熱ワイヤ(126)がタンタルを含み、またはタンタルでできている、請求項3または4に記載の電子顕微鏡。
【請求項6】
洗浄コントローラ(128)を備え、前記洗浄コントローラ(128)が、
第1の洗浄モードにおいて、前記放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、前記放出先端と熱接触した加熱フィラメント(125)に電流が流れることを可能にするように構成されており、ならびに/または
第2の洗浄モードにおいて、前記引出し電極を少なくとも部分的に500℃よりも高い温度まで加熱すること、および前記引出し電極の表面で電子刺激脱離を生じさせることのうちの少なくとも一方のために、前記第2の洗浄装置の加熱ワイヤ(126)に電流が流れることを可能にするように構成されている、
請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項7】
前記放出先端(112)と前記引出し電極(114)の前記第1の開口(115)との間の距離が5mm以下、特に1mm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項8】
前記コンデンサレンズ(130)が、第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する磁気コンデンサレンズであり、前記放出先端と前記第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)が、前記放出先端と前記第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離(D2)よりも大きい、請求項1~7のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項9】
前記対物レンズ(140)が、第2の内側磁極片および第2の外側磁極片を有する磁気対物レンズであり、前記第2の内側磁極片とサンプルステージとの間の第3の軸方向距離が、前記第2の外側磁極片と前記サンプルステージとの間の第4の軸方向距離よりも大きい、請求項1~8のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項10】
前記電子ビームを5keV以上のエネルギーまで加速するための加速セクションであって、前記コンデンサレンズの上流にあるか、または前記コンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、前記加速セクションと、
前記電子ビームを前記5keV以上のエネルギーから2keV以下の入射エネルギーまで減速するための減速セクションであって、前記対物レンズの下流にあるか、または前記対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、前記減速セクションと
を備える、請求項1~9のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項11】
前記第1のビーム絞り開孔が、第1の差動排気開孔として機能するように配置されている、請求項1~10のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項12】
前記コンデンサレンズ(130)と前記対物レンズ(140)との間に第2のビーム絞り開孔(132)をさらに備え、前記第2のビーム絞り開孔(132)が、第2の差動排気開孔として機能するように配置されている、請求項1~11のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項13】
前記放出先端(112)が第1の真空領域(10a)に配置されており、前記コンデンサレンズ(130)が第2の真空領域(10b)に配置されており、前記電子顕微鏡が、前記第1の真空領域(10a)を排気するためのイオンゲッタポンプ(13)および非蒸発型ゲッタポンプ(14)を備える、請求項1~12のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項14】
走査偏向器をさらに備え、前記電子顕微鏡が、高スループットウエハ検査用の走査電子顕微鏡(SEM)として構成されている、請求項1~13のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項15】
電子顕微鏡用の電子源であって、
放出先端を備える冷陰極電界放出型エミッタと、
光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極と、
前記放出先端を、前記放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置と、
前記引出し電極を、前記引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置と
を備える、電子源。
【請求項16】
冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を有する電子顕微鏡を動作させる方法であって、
第1の洗浄モードにおいて、前記冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、前記放出先端を加熱することによって洗浄すること、
第2の洗浄モードにおいて、前記電子源の引出し電極を、前記引出し電極を加熱することによって洗浄すること、ならびに
動作モードにおいて、
光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すことであり、前記電子ビームが、前記引出し電極に提供された第1の開口によって整形される、前記引き出すこと、
コンデンサレンズを用いて前記電子ビームをコリメートすること、および
対物レンズを用いて前記電子ビームを試料上に集束させること
を含む、方法。
【請求項17】
前記第1の洗浄モードにおいて、前記放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、前記放出先端が結合した加熱フィラメントに電流が流れる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の洗浄モードにおいて、電子刺激脱離および熱ガス放出のうちの少なくとも一方または両方によって前記引出し電極を洗浄するために電子を前記加熱ワイヤから熱放出させるために、前記引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤに電流が流れる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記動作モードでの所定の期間の後に前記動作モードから前記第1の洗浄モードに切り替わること、特に、所定の動作間隔で前記第1の洗浄モードに自動的に切り替わることを含む、請求項16~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記放出先端が第1の真空領域に配置されており、前記コンデンサレンズが、前記第1の真空領域の下流の第2の真空領域に配置されており、前記第1の開口が、前記第1の真空領域と前記第2の真空領域との間の差動排気開孔として機能し、前記方法が、
前記第1の真空領域および前記第2の真空領域を差動排気することを含み、前記第2の真空領域の下流に配置された第3の真空領域を、前記第2の真空領域と前記第3の真空領域との間に配置された第2の差動排気開孔を介して差動排気することを含んでもよい、
請求項16~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記動作モードにおいて、
加速セクション内で前記電子ビームの電子を5keV以上のエネルギーまで加速することであって、前記加速セクションが、前記コンデンサレンズの上流にあるか、または前記コンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、前記加速すること、
第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する前記コンデンサレンズを用いて前記電子ビームをコリメートすることであって、前記放出先端と前記第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離が、前記放出先端と前記第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離よりも大きい、前記コリメートすること、ならびに
減速セクション内で前記電子ビームの前記電子を3keV以下の入射エネルギーまで減速することであって、前記減速セクションが、前記対物レンズの下流にあるか、または前記対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、前記減速すること
をさらに含む、請求項16~20のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載された実施形態は、検査もしくは撮像システム用途、試験システム用途、リソグラフィシステム用途または他の同様の用途の電子装置、特に電子顕微鏡、とりわけ走査電子顕微鏡(SEM)に関する。詳細には、本明細書に記載された実施形態は、高分解能および高スループット用途の高輝度電子ビームを提供する冷陰極電界放出型エミッタ(cold field emitter)を備える電子顕微鏡に関する。より詳細には、高スループットウエハ検査SEMが記載されている。本明細書に記載された実施形態は、電子顕微鏡用の電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡は、限定はされないが、半導体基板、ウエハおよび他の試料の検査または撮像、限界寸法測定、欠陥調査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置ならびに試験システムを含む複数の産業分野における多くの機能を有する。試料をマイクロメートルおよびナノメートル規模で構造化、試験、検査および撮像することに対する大きな需要がある。電子顕微鏡は、高分解能撮像および検査を可能にする優れた空間分解能、例えば光子ビームに比べて優れた空間分解能を提供する。
【0003】
電子顕微鏡は、試料に衝突する電子ビームを発生させる電子源または「電子銃」を含む。熱電界放出型エミッタ、ショットキーエミッタ、熱支援電界放出型エミッタおよび冷陰極電界放出型エミッタを含むさまざまなタイプの電子源が知られている。冷陰極電界放出型エミッタ(cold field emitter)(CFE)は、動作中も冷たい(=加熱されていない)放出先端(emission tip)を含み、この放出先端は、放出先端と引出し電極(extractor electrode)との間に高静電界を印加することによって電子を放出する。熱電界放出型エミッタは通常、高電流電子ビームを提供することができるが、冷陰極電界放出型エミッタは、高分解能を達成するのに適した高輝度電子ビームプローブを提供するポテンシャルを有する。
【0004】
しかしながら、CFEは汚染に関して特に敏感であり、したがって、CFEは、真空排気された(evacuated)銃ハウジング内の極めて良好な真空条件下で、詳細には超高真空条件下で動作させるべきである。それでも、真空排気された銃ハウジング内には、不必要なイオン、イオン化分子または他の汚染粒子が存在しうる。例えば、帯電した汚染粒子は、放出先端が機械的に変形しうるようなまたは他のやり方で負の影響を受けうるような態様で、エミッタに向かって加速されうる。さらに、エミッタ表面または電子源の他の表面での粒子の蓄積は、ノイズおよび他のビーム不安定性を導入しうる。
【0005】
詳細には、電子銃のこの領域の汚染粒子は、不安定なまたはノイズの多い電子ビームにつながることがあり、例えば、変動するビーム電流または可変のビーム断面につながることがある。したがって、電子顕微鏡内の真空条件、詳細にはCFEを収容した銃ハウジング内の真空条件が決定的に重要である。
【0006】
以上のことを考慮すれば、電子顕微鏡内の電子ビームのビーム安定性を向上させること、および銃ハウジング内の汚染粒子の量を低減させることは有益であろう。詳細には、獲得可能な分解能およびスループットをさらに向上させうる向上した安定性を有する高輝度電子ビームを放出するCFE電子銃を備えるコンパクトな電子顕微鏡を提供することは有益であろう。さらに、向上したビーム安定性を有する高輝度電子ビームを提供するように電子顕微鏡を動作させる方法を提供することも有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
以上のことを考慮して、独立請求項による電子顕微鏡、電子源、および電子顕微鏡を動作させる方法が提供される。追加の態様、利点および特徴は、従属請求項、本明細書の説明および添付図面から明らかである。
【0008】
一態様によれば、電子顕微鏡が提供される。この電子顕微鏡は、電子源、コンデンサレンズおよび対物レンズを含む。電子源は、放出先端を備える冷陰極電界放出型エミッタ(CFE)と、光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極であって、第1のビーム絞り開孔(beam limiting aperture)として構成された第1の開口を有する、引出し電極と、放出先端を、放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置(cleaning arrangement)と、引出し電極を、引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置とを含む。コンデンサレンズは、電子源の下流で電子ビームをコリメートするためのレンズであり、対物レンズは、電子ビームを試料上に集束させるためのレンズである。
【0009】
一態様によれば、本明細書に記載された電子顕微鏡用の電子源が提供される。この電子源は、放出先端を備える冷陰極電界放出型エミッタ(CFE)と、光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極と、放出先端を、放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置と、引出し電極を、引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置とを含む。この電子源は、本明細書に記載された電子顕微鏡または高輝度電子銃を使用する別の電子装置で使用することができる。
【0010】
別の態様によれば、冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を有する電子顕微鏡を動作させる方法が提供される。この方法は、第1の洗浄モードにおいて、冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、放出先端を加熱することによって洗浄すること、第2の洗浄モードにおいて、電子源の引出し電極を、引出し電極を加熱することによって洗浄すること、ならびに、動作モードにおいて、光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを冷陰極電界放出型エミッタから引き出すことであって、この電子ビームが、引出し電極に提供されていてもよい第1の開口によって整形される、引き出すこと、コンデンサレンズを用いて電子ビームをコリメートすること、および対物レンズを用いて電子ビームを試料上に集束させることを含む。
【0011】
別の態様によれば、冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を洗浄する方法が提供される。この方法は、第1の洗浄モードにおいて、冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、放出先端を加熱することによって洗浄すること、および第2の洗浄モードにおいて、電子源の引出し電極を、引出し電極を加熱することによって洗浄することを含む。第1および第2の洗浄モードでの洗浄の後、電子ビームを発生させるため、例えば本明細書に記載された電子顕微鏡内で電子ビームを発生させるために、電子源を動作させることができる。
【0012】
電子顕微鏡を第1の洗浄モードにセットするため、例えば電子顕微鏡を動作させる所定の間隔の後に電子顕微鏡を第1の洗浄モードにセットするため、および/もしくは電子顕微鏡を第2の洗浄モードにセットするため、例えば空気を用いた銃ハウジングのフラッディング(flooding)の後に電子顕微鏡を第2の洗浄モードにセットするため、またはビーム安定性を向上させるために、洗浄コントローラが提供されてもよい。
【0013】
実施形態は、開示された方法を実行するための装置も対象としており、記載されたそれぞれの方法特徴を実行するための装置部分を含む。これらの方法特徴は、ハードウェアコンポーネント、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、これらの2つの任意の組合せ、または他の任意の手段によって実行することができる。さらに、実施形態は、記載された装置を製造する方法、記載された装置を動作させる方法、および記載された電子顕微鏡を用いて試料を検査または撮像する方法も対象としている。この方法は、記載された装置のあらゆる機能を実行するための方法特徴を含む。
【0014】
上に挙げた本開示の特徴を詳細に理解することができるようにするため、実施形態を参照することによって、上で概要を簡単に示したより詳細な説明を得ることができる。添付図面は本開示の実施形態に関係し、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書に記載された実施形態による、冷陰極電界放出型エミッタを含む電子源を備える電子顕微鏡の概略断面図である。
図2】本明細書に記載された実施形態による、冷陰極電界放出型エミッタを含む電子源を備える電子顕微鏡の概略断面図である。
図3】本明細書に記載された実施形態による、電子顕微鏡を動作させる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、さまざまな実施形態を詳細に参照する。それらの実施形態の1つまたは複数の例が図に示されている。以下の説明では、同じ参照符号が同じ構成要素を指す。一般に、個々の実施形態に関する違いだけが説明される。それぞれの例は、説明のために示されているのであり、限定を意図したものではない。さらに、1つの実施形態の部分として図示または記載された特徴を他の実施形態でまたは他の実施形態とともに使用して、追加の実施形態を与えることができる。この説明はそのような変更および変形を含むことが意図されている。
【0017】
電子顕微鏡では、サンプルステージ上に置かれた試料上に電子ビームを導く。詳細には、検査対象の試料の表面に電子ビームを集束させる。電子が試料に衝突すると、試料によって信号粒子が放出され、散乱し、および/または反射される。信号粒子は特に、2次電子および/または後方散乱電子、詳細には2次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)の両方を包含する。信号電子は、1つまたは複数の電子検出器によって検出され、試料を検査または撮像するために、対応するそれぞれの検出器信号がプロセッサによって処理または分析されることがある。例えば、信号電子に基づいて試料の少なくとも一部分の像を生成することができ、または、欠陥を決定するため、堆積させた構造体の品質を確認するため、および/もしくは限界寸法(CD)測定を実施するために試料を検査することができる。
【0018】
図1は、本明細書に記載された実施形態による電子顕微鏡100の概略図である。電子顕微鏡100は、電子ビーム105、例えば検査または撮像用途に使用することができる電子ビーム105を発生させるように構成された電子源110を含む。電子顕微鏡100は、電子ビームの発散を低減させる(本明細書ではこれを「コリメーション」と呼ぶ)ように構成されたコンデンサレンズ130、特に、試料16上に集束させるために光軸Aに沿って対物レンズ140に向かって伝搬する、わずかに発散しているだけの電子ビーム、平行な電子ビームまたは収束している電子ビームを提供するために電子ビームの発散を低減させるように構成されたコンデンサレンズ130をさらに含む。詳細には、コンデンサレンズ130と対物レンズ140の組合せ動作によって、サンプルステージ18上に置かれていてもよい試料16の表面に電子ビーム105を集束させてもよい。サンプルステージ18は可動であってもよい。
【0019】
本明細書に記載された実施形態によれば、電子源110は、放出先端112を有する冷陰極電界放出型エミッタ(CFE)を備える。CFEは、冷陰極電界放出によって電子ビームを放出するように構成されている。冷陰極電界放出型エミッタは特に、銃ハウジング内に超高真空が提供されることが有益であるような態様で、冷陰極電界放出型エミッタが配置された銃ハウジング内の汚染に敏感である。本明細書では、CFEを収容する銃ハウジングを「第1の真空領域10a」とも呼び、第1の真空領域10aは、差動排気(differential pumping)を可能にする1つまたは複数の追加の真空領域(例えば第2の真空領域10bおよび第3の真空領域10c)の上流に配置されていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、冷陰極電界放出型エミッタ(CFE)がタングステン先端を有していてもよい。他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施態様では、放出先端112が、尖った先端、特に、10nm~500nm、特に200nm以下、とりわけ100nm以下の範囲の最終半径(先端半径)を有する尖った先端となるようにエッチングされた結晶からなる。この結晶は通常、タングステン結晶、特に、光軸Aに沿って(3,1,0)結晶方位で配向したタングステン結晶であってもよく、とりわけタングステン単結晶であってもよい。小さな半径を有する尖った先端を放出先端が有する場合には、電子放出が起こる結晶面積が低減し、このことは、発生する電子ビームの輝度を向上させる。
【0021】
電子源110は、光軸Aに沿って伝搬させるために電子ビーム105を引き出すための引出し電極114をさらに含む。引出し電極114は、ビーム絞り開口として構成されていてもよい第1の開口115を有する。詳細には、第1の開口115は、第1の開口115のサイズおよび形状に従ったビーム断面を形成することができるような態様で、光軸Aの近くを伝搬している電子(「軸方向電子」)は通し、それらよりも光軸Aから離れた電子は遮るように設計されたサイズを有していてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の開口115が、電子ビーム105の回転対称のビーム断面を生成するように構成された円形の開口であってもよい。本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第1の開口115が、100μm以下、特に50μm以下、またはそれどころか20μm以下の直径を有していてもよい。小さな寸法を有する第1の開口115は、引出し電極114に向かって伝搬している電子ビームのサイズを低減させ、したがって電子-電子相互作用による輝度の損失を抑制する。
【0023】
この電子顕微鏡の動作中、引出し電極114は、放出先端112に対して正の電位にセットされていてもよく、例えば、放出先端112と引出し電極114との間の数キロボルト(kV)の範囲の電位差で、例えば5kV以上の電位差で、放出先端112の電位に対して正の電位にセットされていてもよい。この電位差は、放出先端112の表面で電界を発生させて冷陰極電界放出を引き起こすのに足る十分な大きさである。冷陰極電界放出型エミッタの主要な引出し機構は、先端表面の表面電位障壁を通り抜けるトンネリングである。このトンネリングは、引出し電極の引出し電界によって制御することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、放出先端112と引出し電極114との間の距離が0.1mm以上および3mm以下、特に1mm以下である。小さな距離は、電子-電子相互作用による輝度の損失を低減させることができるような態様で、放出された電子をコンデンサレンズ130に向かって急速に加速させる。
【0025】
電子顕微鏡100は、真空条件を改善するための、および冷陰極電界放出型エミッタが置かれた第1の真空領域10a内の汚染を低減させるためのいくつかの機構を含む。銃ハウジング内の優れた真空条件および低減された汚染は、電子ビーム105のビーム安定性および輝度を向上させ、このことは、CFEが使用される場合に特に有益である。高スループットEBIシステムでは高輝度電子ビームが特に有益である。
【0026】
電子顕微鏡100は、CFEの放出先端112を、放出先端112を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置121、および引出し電極114を、引出し電極114を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置122を含む。
【0027】
第1の洗浄装置121を用いて放出先端112を、放出先端112を加熱することによって、特に1500℃以上の温度まで加熱することによって洗浄するために、電子顕微鏡100は第1の洗浄モードに切り替わってもよい。第2の洗浄装置122を用いて引出し電極114を、引出し電極114を加熱することによって、特に500℃以上の温度まで加熱することによって洗浄するために、電子顕微鏡100は第2の洗浄モードに切り替わってもよい。いくつかの実施形態では、第1の洗浄装置121が、第1のヒータ、特に抵抗ヒータを含んでいてもよく、第1のヒータは、放出先端を加熱するために、特に、第1のヒータに電流が流れることを可能にすることによって放出先端を加熱するために、放出先端112と熱接触していてもよい。第1のヒータに電流が流れることを可能にすることによって、第1のヒータを、第1のヒータと熱接触した放出先端112とともに加熱してもよい。その代わりに、またはそれに加えて、第2の洗浄装置122が、第2のヒータ、特に加熱ワイヤ126(熱電子を放出するため本明細書ではこれを「洗浄エミッタ」とも呼ぶ)を含んでいてもよく、第2のヒータは、引出し電極114を加熱するため、特に、第2のヒータに電流が流れることを可能にすることによって引出し電極114を加熱するために、引出し電極114のすぐ近くに配置されていてもよい。
【0028】
電子は、動作中の冷陰極電界放出型エミッタの放出先端の非常に小さな表面部分から放出されるため、この放出は、放出表面の単一の汚染原子または少数の汚染原子に対してさえも非常に敏感である。放出表面に吸着しうる原子は、引出し電極などの周囲の表面に由来するものであることがあり、引出し電極では、電子ビームの電子が引出し電極に衝突することによって、例えば、引出し電極の第1の開口115を取り囲むエリアに衝突することによって、脱離が刺激されうる。したがって、放出先端の清浄度が高いことだけが有益なのではなく、引出し電極の清浄度が高いことも有益である。
【0029】
加熱ワイヤによって電子が熱放出され、引出し電極の表面に衝突して、引出し電極を加熱するような態様で、引出し電極114に隣接して配置された第2の洗浄装置122の加熱ワイヤ126を加熱することによって、第2の洗浄装置122を動作させてもよい。加熱ワイヤを1500℃以上、特に2000℃以上の温度まで加熱してもよく、これによって加熱ワイヤが電子の強力な熱放出を提供してもよい。これらの熱電子は、たとえ高真空条件下であっても引出し電極の表面に存在することがある分子および原子を脱離させる。言い換えると、加熱された加熱ワイヤによって放出された熱電子によって引き起こされる電子刺激脱離(electron stimulated desorption)によって、引出し電極を洗浄してもよい。例えば、引出し電極と別の電極との間、例えば引出し電極と抑制電極(supressor electrode)および/または放出先端との間に、対応するそれぞれの電位差を印加することによって、熱電子を引出し電極に向かって加速してもよい。さらに、熱ガス放出によっても引出し電極が洗浄されるような態様で、引出し電極に衝突した熱電子が引出し電極を加熱してもよい。いくつかの実施形態では、第2の洗浄装置122が、2つの洗浄機構、すなわち(1)熱ガス放出および(2)電子刺激脱離によって引出し電極を洗浄するように構成されている。
【0030】
さらに、任意選択で、銃ハウジング内の、例えば部分的に放出先端112と加熱ワイヤ126との間に、抑制電極113を配置してもよい。第2の洗浄モードにおいて(すなわち第2の洗浄装置122を用いた加熱中に)、加熱ワイヤ126によって放出された電子を引出し電極114に向かっておよび/または放出先端112から離れる方向に偏向させるのに適した所定の電位に、抑制電極113をセットすることができる。これは、第2の洗浄装置122の熱電子によって放出先端112を変形させるリスクを低減させることがあり、および/または、洗浄する、特に電子刺激脱離によって洗浄する引出し電極のエリアに向かって熱電子を導くのに役立つことがある。
【0031】
いくつかの実施形態では、引出し電極114、抑制電極113および/または放出先端112のうちの任意の1つまたは複数を、例えば洗浄中および/または動作中に所定の電位に接続するために、電圧源129が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2の洗浄装置122の加熱ワイヤ126が、引出し電極114のすぐ近くに、特に、引出し電極114から2mm以下またはそれどころか1mm以下の距離のところに配置されていてもよい。特に、加熱ワイヤ126は、第1の開口115を取り囲む引出し電極114のエリアの近くに配置されていてもよく、このエリアには通常、電子顕微鏡の動作中に電子ビーム105の電子が衝突する。
【0033】
いくつかの実施態様では、第2の洗浄装置122が、加熱のための電流をそこを通して送ることができる加熱ワイヤまたは加熱フィラメントを含んでもよい。詳細には、加熱ワイヤ126の第1の端部が電流源の第1の出力端子に接続されていてもよく、加熱ワイヤ126の第2の端部が、異なる電位にセットされた電流源の第2の出力端子に接続されていてもよい。目標とするやり方で第1の開口115の縁を第2の洗浄装置122によって加熱することができるような態様で、加熱ワイヤ126または加熱フィラメントは、引出し電極114の第1の開口115を少なくとも部分的に(例えば180°以上またはそれどころか270°以上の円周角だけ)取り囲んでもよい。例えば、加熱ワイヤ126は、第1の開口115の周囲に環または円の形状で延びていてもよい。
【0034】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第2の洗浄装置122の第2のヒータ、特に加熱ワイヤ126が、タングステンもしくはタンタル、特にタンタルを含んでいてもよく、またはタングステンもしくはタンタル、特にタンタルでできていてもよい。タンタルは、引出し電極を洗浄するための第2のヒータとして使用された場合に特に説得力のある洗浄結果を提供し、タンタルは、超高真空環境における熱電子エミッタとして特に適している。したがって、それらに限定されるわけではないが、本明細書に開示された実施形態では通常、第2の洗浄装置122内で、引出し電極114のすぐ近くに配置されたタンタルヒータ、特に、引出し電極114のすぐ近くに配置された、第1の開口115を少なくとも部分的に取り囲む加熱ワイヤの形態のタンタルヒータが使用される。
【0035】
引出し電極を少なくとも部分的に少なくとも500℃、特に少なくとも600℃の温度まで加熱するため、とりわけ600℃~800℃の間の範囲の温度まで加熱するために、この電子顕微鏡は、第2の洗浄モードにおいて第2の洗浄装置の第2のヒータに電流が流れることを可能にするように構成された洗浄コントローラ128をさらに含んでもよい。詳細には、第1の開口115を取り囲む引出し電極114のエリアを第2の洗浄装置によって加熱してもよい。先行する較正で、引出し電極の温度を500℃以上、特に600℃~800℃にするために第2のヒータに流す電流を識別し、記憶することができる。第2の洗浄モードに切り替わったときに、洗浄コントローラ128は次いで、対応するそれぞれの電流を第2の洗浄装置122に流してもよい。この加熱の間、第2のヒータ自体、特に加熱ワイヤ126は、1500℃以上、特に2000℃以上またはそれどころか2200℃以上の温度を有していてもよい。
【0036】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、第1の洗浄装置121が、放出先端112と熱接触した加熱フィラメント125を含む。放出先端112は、加熱フィラメント125に結合されていてもよく、または加熱フィラメント125に取り付けられていてもよい。特に、加熱フィラメント125はV字形の加熱フィラメントであってもよく、放出先端112は、V字形加熱フィラメントの屈折部に結合されていてもよい。V字形加熱フィラメントの2つの端部は、V字形加熱フィラメントに電流が流れることを可能にするために異なる電位にセットすることができる電流源の2つの出力端子に接続されていてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、加熱フィラメント125がタングステンフィラメントであり、および/または加熱フィラメント125に結合されたCFEの放出先端112がタングステン先端である。
【0038】
加熱フィラメント125に電流が流れると、加熱フィラメント125は、加熱フィラメント125と熱接触した放出先端112とともに加熱される。第1の洗浄装置121は、第1の洗浄モードにおいて、放出先端112を、1500℃以上、特に2000℃以上、とりわけ2000K以上の温度まで加熱するように構成されていてもよい。
【0039】
加熱フィラメント125を介して放出先端112を加熱すると吸着分子を蒸発させることができ、このことは放出先端112を洗浄し、より安定な電子ビーム放出の提供に役立つ。さらに、尖った先端を提供および/または維持することができるような態様で、放出先端の加熱が放出先端を整形してもよい。任意選択で、第1の洗浄モードにおける放出先端の加熱の間、引出し電極114を所定の電位にセットしてもよく、このことが、加熱中に放出先端が丸くなることもしくは平らになることを防ぎもしくは低減させることがあり、および/または尖った放出先端の維持を容易にすることがある。
【0040】
放出先端112を少なくとも1500℃、特に少なくとも2000℃の温度まで加熱するため、この電子顕微鏡は、第1の洗浄モードにおいて第1の洗浄装置121の加熱フィラメント125に電流が流れることを可能にするように構成された洗浄コントローラ128を含んでもよい。先行する較正段で、2000℃以上の放出先端112の温度を達成するために加熱フィラメント125に流す電流を識別することができる。第1の洗浄モードに切り替わったときに、洗浄コントローラ128は次いで、対応するそれぞれの電流を第1の洗浄装置121に流してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、図1に例示的に示されているように、第1の洗浄モードにおいて、放出先端を加熱するために加熱フィラメント125に電流が流れることを可能にするため、および第2の洗浄モードにおいて、引出し電極114を加熱するために加熱ワイヤ126に電流が流れることを可能にするために、1つの洗浄コントローラ128が提供されていてもよい。いくつかの実施形態では、第1および第2の洗浄装置に別個の洗浄コントローラが接続されていてもよい。この電子顕微鏡の動作の間、例えば、電流が流れないように、したがって放出先端の加熱が起こらないようにV字形加熱フィラメントの両端に同じ電圧を印加することによって、放出先端112を、引出し電極114に対して所定の電位にセットして、放出先端からの冷陰極電界放出を可能にしてもよい。
【0042】
第1の洗浄モードを「フラッシングモード」と呼ぶこともある。これは、吸着粒子および汚染を蒸発させるため、ならびにより安定な電子ビームを保証するために、放出先端が、比較的に短い期間の間に高温に加熱されるためである。洗浄コントローラ128は、電子顕微鏡の動作を開始する前に、および/または電子顕微鏡が動作している場合には所定の動作期間の後に、例えば規則的な間隔で(例えば1時間に1回)、電子顕微鏡100を第1の洗浄モードにセットするように構成されていてもよい。定期的に第1の洗浄モードに切り替えることによって、絶えず清浄で尖ったエミッタ先端を保証することができる。
【0043】
その代わりに、またはそれに加えて、洗浄コントローラ128は、電子顕微鏡の動作の前に、銃ハウジングが換気された後もしくは空気でフラッディングされた後に、および/または電子顕微鏡の保守もしくはサービス作業の間、ならびに/あるいは電子ビームが望ましくない不安定性を示した場合に、電子顕微鏡を第2の洗浄モードにセットするように構成されていてもよい。したがって、2回の第1の洗浄モード間の間隔は通常、2回の第2の洗浄モード間の間隔に比べて短い。
【0044】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、放出先端112と引出し電極114の第1の開口115との間の距離が、5mm以下、特に3mm以下、とりわけ1mm以下、および/または0.1mm以上であってもよい。したがって、放出先端112によって放出された電子は、引出し電極に向かう短い伝搬距離の間に非常に急速に加速され、このことが、電子-電子相互作用を低減させ、電子ビームの輝度を向上させる。
【0045】
電子顕微鏡100は、電子ビームを加速させるための加速セクション、例えば、電子ビームを5keV以上の電子エネルギーまで加速させるための加速セクションを含んでいてもよく、この加速セクションは、コンデンサレンズ130の上流に配置され、および/またはコンデンサレンズ130と少なくとも部分的に重なる。電子は、放出先端に対して正の電位にセットされた引出し電極114に向かって加速されてもよく、任意選択で、電子はさらに、引出し電極114の下流、例えば引出し電子とコンデンサレンズとの間またはコンデンサレンズの内部(図2に示されている)に配置されていてもよいアノードに向かって加速されてもよい。いくつかの実施形態では、電子が、10keV以上、30keV以上またはそれどころか50keV以上の電子エネルギーまで加速される。カラム内の高い電子エネルギーは、電子-電子相互作用の負の効果を低減させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、電子顕微鏡100が、電子ビームを5keV以上のエネルギーからそれよりも小さい入射エネルギー(landing energy)まで減速するための減速セクションを含んでいてもよく、この減速セクションは、対物レンズ140の下流にあってもよく、または対物レンズ140と少なくとも部分的に重なっていてもよい。例えば、電子を、3keV以下、特に2keV以下またはそれどころか1keV以下、例えば800eV以下の入射エネルギーまで減速してもよい。低い入射エネルギーを有する電子は、低い入射エネルギーが獲得可能な分解能を向上させることがあるような態様で、試料構造体との相互作用に関してより適している。例えば、サンプルステージの近くに配置されたプロキシ電極(proxy electrode)が、試料に衝突する前の電子にブレーキをかけてもよく、または試料をブレーキング電位にセットしてもよい。
【0047】
試料16から解放された信号粒子は、減速セクションに沿って対物レンズに向かって加速されることがあり、それらの信号粒子は、対物レンズを通り抜けて電子検出器(この図には示されていない)に向かって伝搬することがある。
【0048】
電子顕微鏡は、1つまたは複数の真空ポンプを用いて真空排気することができる第1の真空領域10a、特に、1つまたは複数の真空ポンプを用いて超高真空まで真空排気することができる第1の真空領域10aである銃ハウジングを含んでもよい。電子源110を収容する銃ハウジングは通常、電子顕微鏡のカラムの上流に配置される。
【0049】
この電子顕微鏡は、銃チャンバ内の真空条件を改善するために対応するそれぞれの差動排気開孔によって分離されたいくつかのいわゆる差動排気領域を使用してもよい。差動排気領域は、1つまたは複数の対応するそれぞれの真空ポンプによって別々に排気することができる真空領域であって、最も上流の真空領域の真空条件を改善するために対応するそれぞれのガス分離壁によって分離された真空領域であると理解してもよい。上流の差動排気セクションから下流の差動排気セクション内へ光軸に沿って電子ビームが伝搬することができるような態様で、ガス分離壁に、差動排気開孔、すなわち電子ビームのための小さな開口が提供されていてもよい。本明細書において使用される用語「下流」は、光軸Aに沿った電子ビームの伝搬方向における下流であると理解してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、引出し電極114の第1の開口115が、第1の差動排気開孔として機能するように、すなわち、銃ハウジングと銃ハウジングの下流の第2の真空領域10bとの間の差動排気を可能にするガス分離壁の開孔として機能するように配置されていてもよい。第1の開口115が、ビーム絞り開孔(すなわちビーム光学開孔(beam-optical aperture))と差動排気開孔の両方として機能するときには、銃ハウジング10a内の良好な真空条件、したがって良好なビーム安定性を容易にする、よりコンパクトな電子顕微鏡を提供することができる。図1に概略的に示されているように、第1の開口115を有する引出し電極114は、第1の真空領域10aと第2の真空領域10bとの間のガス分離壁の部分であってもよい。
【0051】
図1に概略的に示されているように、電子顕微鏡100は、銃ハウジングの下流に第2の真空領域10bを含んでいてもよく、第2の真空領域10bはコンデンサレンズ130を収容していてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、この電子顕微鏡が、コンデンサレンズ130と対物レンズ140との間に第2のビーム絞り開孔132をさらに含んでもよい。コンデンサレンズ130は、電子ビームのビーム発散を調整するように構成されていてもよく、したがって、第2のビーム絞り開孔132を通って伝搬する電子ビームの部分を調整するように構成されていてもよい。したがって、コンデンサレンズ130の励磁を使用して、第2のビーム絞り開孔132の下流の電子ビームのビーム電流を調整してもよい。
【0053】
任意選択で、第2のビーム絞り開孔132は、第2の差動排気開孔として機能するように配置されていてもよい。言い換えると、第2のビーム絞り開孔132は、第2の真空領域10bと第2の真空領域10bの下流の第3の真空領域10cと間のガス分離壁に、前記領域間の差動排気を可能にするように配置されていてもよい。銃ハウジング内の真空条件をさらに改善することができ、汚染をさらに低減させることができる。例えば、第2のビーム絞り開孔132は、100μm以下、特に50μm以下、とりわけ20μm以下、またはそれどころか10μm以下の直径を有していてもよい。
【0054】
したがって、上記の差動排気の概念の結果として、冷陰極電界放出型エミッタが置かれた第1の真空領域10aの真空条件をさらに改善することができ、第1の真空領域に、極めて低い圧力、例えば10-11ミリバール以下の極めて低い圧力を提供することができ、この極めて低い圧力を、電子顕微鏡が動作している間、維持することができる。たとえ、試料16が置かれた真空領域10d内の圧力が、10-6ミリバール以上または10-5ミリバール以上および/または10-3ミリバール以下の圧力、特に、10-3ミリバール~10-6ミリバールの間の圧力であるなど、前記圧力よりも大幅に高い可能性がある場合であっても、銃ハウジング内において前記圧力を維持することができる。
【0055】
本明細書に記載されたいくつかの実施形態によれば、第1の開口115および第2のビーム絞り開孔132がともにビーム光学開孔である。すなわち、動作中に、両方の開孔が、電子ビーム105の形状および/または寸法に影響を与える。加えて、第1の開口115と第2のビーム絞り開孔132の両方が、圧力段開孔として機能するように構成されていてもよい。言い換えると、両方の開孔は、銃ハウジング10a内の真空条件を改善するために配置されているだけでなく、電子ビームに影響を与えるビーム光学システムの部分でもある。したがって、第1の開口115および第2のビーム絞り開孔132を、「ビーム光学圧力段開孔」または「ビーム画定圧力段開孔」と呼ぶこともできる。
【0056】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、この電子顕微鏡が、第2の差動排気開孔と対物レンズ140との間に少なくとも1つの第3の差動排気開孔133をさらに含む。詳細には、この少なくとも1つの第3の差動排気開孔133は、第3の真空領域10cと第3の真空領域10cの下流の第4の真空領域10dとの間のガス分離壁に配置されていてもよく、このことは、銃ハウジング10aから、第2および第3の真空領域を横切って、対物レンズが配置されていてもよい第4の真空領域10dまでの差動排気を可能にする。銃ハウジング内の真空条件をさらに改善することができる。第3の真空領域10cに、少なくとも1つまたは複数のビーム光学部品、例えば、第2のコンデンサレンズ、収差補正器、電子ビームから信号電子を分離するためのビーム分離器、および/または信号電子を検出するための電子検出器のうちの1つまたは複数が配置されていてもよい。対物レンズ140は、第4の真空領域10d(または、第4の真空の領域が提供されていない場合にはその代わりに第3の真空領域)に配置されていてもよい。
【0057】
第1の真空領域10a、第2の真空領域10b、第3の真空領域10cおよび第4の真空領域10d(存在する場合)の各々に、真空ポンプを取り付けるための排気ポート11が提供されていてもよい。排気ポート11は、イオンゲッタポンプなどの真空ポンプを対応するそれぞれの真空領域に取り付けるように構成されていてもよい。
【0058】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、放出先端112が第1の真空領域10aに配置されており、コンデンサレンズ130が第2の真空領域10bに配置されている。放出先端112が配置された第1の真空領域10aを真空排気するために、イオンゲッタポンプ13および非蒸発型ゲッタ(non-evaporable getter)(NEG)ポンプ14が提供されていてもよい。例えば、イオンゲッタポンプ13および非蒸発型ゲッタポンプは、第1の真空領域10aの排気ポート11に取り付けられていてもよく、または、イオンゲッタポンプが、非蒸発型ゲッタポンプとは別に配置されていてもよく、例えば第1の真空領域10aの別の排気ポートに配置されていてもよい。放出先端の位置における真空条件をさらに改善することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、この電子顕微鏡が走査電子顕微鏡(SEM)である。この電子顕微鏡は、走査偏向器152、例えば対物レンズ140の近くにまたは対物レンズ140内に配置された走査偏向器152を含んでもよい。詳細には、この電子顕微鏡は、電子ビーム検査システム(electron beam inspection system)(EBIシステム)であってもよく、特に、高スループット電子ビーム検査用のSEM、例えば、ウエハまたは他の半導体基板の高スループット電子ビーム検査用のSEMであってもよい。より詳細には、この電子顕微鏡が、ハイスループットウエハインスペクションSEM(High Throughput Wafer Inspection SEM)であってもよい。
【0060】
本明細書に記載された実施形態によれば、CFE電子源を備える高性能電子顕微鏡であって、試料、特にウエハおよび他の半導体サンプルを高輝度電子ビームを用いて高い分解能および高いスループットで検査することを可能にする高性能電子顕微鏡が提供される。例えば、ウエハおよび他の試料を高い分解能で迅速に検査することができる。本明細書に記載された第1および第2の洗浄装置を提供し、動作させることによって、真空条件が改善され、汚染が低減するため、電子ビームの高い輝度を提供および維持することができる。さらに、銃ハウジング内の優れた真空条件のため、この電子顕微鏡のコンパクトさにもかかわらず、高い輝度が可能になる。これは、電子-電子相互作用が低減するためである。
【0061】
本明細書に記載された別の態様によれば、高性能電子装置用の電子源110が提供され、この電子源は、それぞれ本明細書に記載された第1および第2の洗浄装置によって洗浄することができる放出先端112および引出し電極114を備える冷陰極電界放出型エミッタを含む。
【0062】
図2は、本明細書に記載された実施形態による、冷陰極電界放出型エミッタを含む電子源110を備える電子顕微鏡200の概略断面図である。図2の電子顕微鏡200は、上記の説明を参照することができるような態様で、図1の電子顕微鏡100のいくつかの特徴または全ての特徴を含んでいることがあり、それらの説明をここで繰り返すことはしない。
【0063】
詳細には、電子顕微鏡200は、第1の洗浄モードにおいて第1の洗浄装置121を用いて加熱することによって洗浄することができる放出先端112と、第2の洗浄モードにおいて第2の洗浄装置122を用いて加熱することによって洗浄することができる引出し電極114とを備える冷陰極電界放出型エミッタを含む。
【0064】
引出し電極114の第1の開口115は、電子ビームを整形するためのビーム絞り開孔として機能してもよく、さらに、任意選択で、第1の真空領域10aと第2の真空領域10bとの間の差動排気を可能にする差動排気開孔として機能してもよい。
【0065】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、コンデンサレンズ130が磁気コンデンサレンズである。特に、この磁気コンデンサレンズは、第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を含んでいてもよく、エミッタ先端112と第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)は、エミッタ先端112と第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離(D2)よりも大きい。外側磁極片が内側磁極片よりも電子源に向かってさらに突き出たこのような磁気レンズは、磁極片間に、軸方向に延びるギャップを有し、したがって「アキシャルギャップレンズ(axial gap lens)」と呼ばれることもある。アキシャルギャップ磁気レンズは、アキシャルギャップを超えて1つの領域内へ延びる磁界、すなわち外側磁極片を軸方向に超えて電子源に向かう磁界を発生させることがある。言い換えると、このアキシャルギャップコンデンサレンズは界浸レンズであってもよく、コンデンサレンズのコリメーション効果が電子源110の近くの電子ビーム105または電子源110の内側の電子ビーム105に作用することがあるような態様の、電子源に向かって延びる磁気相互作用領域を提供してもよい。よりコンパクトな電子顕微鏡を提供することができ、電子-電子相互作用の負の効果を低減させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、放出先端112とコンデンサレンズの第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)が20mm以下、特に15mm以下である。いくつかの実施形態では、放出先端112とコンデンサレンズとの間の第2の軸方向距離(D2)が15mm以下、いくつかの実施形態では8mm以下である。
【0067】
電子を5keV以上、特に10keV以上のエネルギーまで加速するためのこの電子顕微鏡の加速セクションは、コンデンサレンズの磁気相互作用領域と部分的に重なっていてもよく、このことは、電子顕微鏡内の全体のビーム伝搬距離を短くする。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、対物レンズ140は、第2の内側磁極片および第2の外側磁極片を有する磁気対物レンズであり、第2の内側磁極片とサンプルステージ18との間の第3の軸方向距離(D3)は、第2の外側磁極片とサンプルステージ18と間の第4の軸方向距離(D4)よりも大きい。特に、この磁気対物レンズは、外側磁極片の端部と内側磁極片の端部との間にアキシャルギャップが形成されるような形で外側磁極片が内側磁極片よりもサンプルステージ18に向かって突き出たアキシャルギャップレンズであってもよい。この磁気対物レンズによって提供される磁気相互作用領域は、磁気対物レンズの磁極片を軸方向に超えて、サンプルステージ18上に置かれていてもよい試料16に向かって延びていてもよい。このことは、対物レンズが短い焦点距離を有すること、および対物レンズがサンプルステージ18の近くに置かれることを可能にする。
【0069】
いくつかの実施態様では、対物レンズ140とサンプルステージ18との間の距離(すなわち第4の軸方向距離(D4))が20mm以下、特に10mm以下、とりわけ5mm以下であってもよい。詳細には、対物レンズ140の焦点距離は10mm以下、またはそれどころか5mm以下であってもよい。いくつかの実施形態では、サンプルステージ18と対物レンズ140の第2の内側磁極片との間の第3の軸方向距離(D3)が、第4の軸方向距離(D4)よりも大きく、特に30mm以下、とりわけ10mm以下である。
【0070】
いくつかの実施形態では、コンデンサレンズ130および対物レンズ140がともにアキシャルギャップレンズであってもよく、コンデンサレンズ130と対物レンズ140は、光軸Aに沿って互いに対して対称に配置されていてもよい。詳細には、コンデンサレンズ130は、電子源110に向かって開いたアキシャルギャップを有していてもよく、対物レンズ140は、試料に向かって開いたアキシャルギャップを有していてもよく、これらのレンズはともに、反対方向を向いた界浸レンズとして構成されていてもよい。対応するレンズタイプをコンデンサレンズおよび対物レンズとして使用すると、試料上に小さなビームプローブを提供するのに適した、したがって良好な分解能を提供するのに適したコンパクトな電子顕微鏡を得ることができる。
【0071】
第1の洗浄装置121、第2の洗浄装置122および差動排気の詳細は、図1の電子顕微鏡100に関して記載されており、ここで繰り返すことはしない。
【0072】
図3は、本明細書に記載された実施形態による、電子顕微鏡を動作させる方法の流れ図を示している。
【0073】
この電子顕微鏡は、冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を収容した銃ハウジングであって、第1の真空領域を提供する銃ハウジングを有していてもよい。光軸に沿った第1の真空領域の下流に第2の真空領域が配置されていてもよく、任意選択で、光軸に沿った第2の真空領域の下流に、差動排気することができる第3の真空領域またはさらなる追加の真空領域が配置されていてもよい。第1の真空領域と第2の真空領域は、第1の差動排気開孔が形成された第1のガス分離壁によって分離されていてもよく、第2の真空領域と第3の真空領域は、第2の差動排気開孔が形成された第2のガス分離壁によって分離されていてもよい。
【0074】
この電子顕微鏡の電子源は、放出先端を備える冷陰極電界放出型エミッタと、光軸Aに沿って伝搬させるために電子ビームを冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極とを含む。
【0075】
図3のボックス310および320では、例えば、一番最初に電子顕微鏡を動作させる前、または電子顕微鏡の内部を空気でフラッディングした後、例えばサービス作業または保守の間に、2つの洗浄段で、電子顕微鏡を動作させる準備をする。
【0076】
ボックス310で、電子顕微鏡を第2の洗浄モードにセットする。このモードでは、電子源の引出し電極を、引出し電極を加熱することによって、特に500℃以上の温度まで加熱することによって、とりわけ600℃~800℃の間の温度まで加熱することによって洗浄する。詳細には、動作中に電子ビームがそこを通って伝搬する第1の開口を取り囲む引出し電極のエリアを、600℃~800℃の間の温度まで加熱する。
【0077】
第2の洗浄モードでは、引出し電極を、500℃よりも高い温度まで、特に600℃~800℃の間の温度まで加熱するために、引出し電極に隣接して配置された第2のヒータに電流を流してもよい。この第2のヒータは、第1の開口の近くに配置された加熱ワイヤ126であってもよく、加熱ワイヤ126は、任意選択で、引出し電極の上流の第1の開口の周囲に少なくとも部分的に延びていてもよい。いくつかの実施形態では、加熱ワイヤ126がタンタルワイヤまたはタンタルフィラメントであってもよい。
【0078】
第2の洗浄モードで流す電流は、先行する較正段で決定することができる。
【0079】
任意選択で、第2の洗浄モードにおいて、抑制電極および/または引出し電極を1つまたは複数の所定の電位にセットしてもよく、このことが、加熱ワイヤによって放出された熱電子を、引出し電極に向かっておよび/または放出先端から離れる方向に導くのに役立つことがある。
【0080】
ボックス320で、電子顕微鏡を第1の洗浄モードにセットする。このモードでは、冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、放出先端を加熱することによって、特に1500℃以上の温度まで加熱することによって、特に2000℃以上の温度まで加熱することによって、またはそれどころか2000K以上の温度まで加熱することによって洗浄する。
【0081】
第1の洗浄モードでは、放出先端を2000℃よりも高い温度まで加熱するために、放出先端が結合した加熱フィラメント、特にV字形の加熱フィラメントに電流を流してもよい。放出先端に付着した粒子を蒸発させることができ、放出表面を洗浄することができる。第1の洗浄モードで流す電流は、先行する較正段で決定することができる。
【0082】
任意選択で、第1の洗浄モードにおいて、抑制電極および/または引出し電極を1つまたは複数の所定の電位に、特に放出先端に比べて高電圧にセットしてもよく、このことが、尖った放出先端の維持を容易にすることがある。
【0083】
第1および第2の洗浄モードでの洗浄の後、電子顕微鏡を、ボックス330によって示されている動作モードにセットしてもよい。動作モードでは、光軸に沿って伝搬させるために電子ビームが冷陰極電界放出型エミッタから引き出され、この電子ビームは、引出し電極に提供されていてもよい第1の開口を通って伝搬することによって整形される。電子ビームは次いで、電子源の下流のコンデンサレンズによってコリメートされる。すなわち電子ビームの発散が低減する。特に、コンデンサレンズの励磁を調整することによって電子ビームの発散を調整してもよい。次いで、コリメートされた電子ビームを対物レンズを用いて試料上に集束させる。
【0084】
動作モードでは、電子ビームの電子を、加速セクションにおいて、5keV以上、特に10keV以上のエネルギーまで加速してもよく、この加速セクションは、コンデンサレンズの上流に配置されており、および/またはコンデンサレンズと少なくとも部分的に重なって配置されている。例えば、放出先端と引出し電極との間に加速セクションの第1の部分が延びていてもよく、引出し電極は、放出先端に比べて高電圧にセットされていてもよい。電子源の下流に、例えば引出し電極とアノードとの間に加速セクションの第2の部分が延びていてもよく、このアノードは、引出し電極に比べて高電圧にセットされていてもよい。このアノードは、コンデンサレンズの近くに配置されていてもよく、またはコンデンサレンズの内側に配置されていてもよい。したがって、加速セクションは、コンデンサレンズによって提供される磁気相互作用領域と重なっていてもよい。
【0085】
動作モードでは、コンデンサレンズを用いて電子ビームをコリメートしてもよい。コンデンサレンズは、第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する磁気レンズであってもよく、放出先端と第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離は、放出先端と第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離よりも大きくてもよい。詳細には、コンデンサレンズはアキシャルギャップレンズであってもよく、すなわち、コンデンサレンズの第1の外側磁極片は、コンデンサレンズの第1の内側磁極片よりも電子源に向かってさらに突き出ていてもよい。
【0086】
動作モードでは、電子ビームの電子を、減速セクションにおいて、3keV以下、特に1keV以下の入射エネルギーまで減速してもよく、この減速セクションは、対物レンズの下流にあり、または対物レンズと少なくとも部分的に重なっている。例えば、対物レンズの近くにまたは対物レンズの内側に配置された第1の電極と、試料に近くにまたは試料自体に配置されたプロキシ電極との間に、電位差を与えてもよい。したがって、減速セクションは、対物レンズによって提供される磁気相互作用領域と重なっていてもよい。
【0087】
電子ビームを試料上に集束させてもよく、発生した信号電子を、対物レンズに向かっておよび対物レンズを通して加速してもよく、試料を検査するため、例えば試料の像を生成するために、信号電子を、1つまたは複数の電子検出器(この図には示されていない)によって検出してもよい。
【0088】
本明細書に記載された他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、放出先端が第1の真空領域に配置されており、コンデンサレンズが、第1の真空領域の下流の第2の真空領域に配置されている。引出し電極の第1の開口は、第1の真空領域と第2の真空領域との間の差動排気開孔として機能してもよい。この方法は、第1の真空領域および第2の真空領域を差動排気することを含んでもよい。
【0089】
任意選択で、第2の真空領域の下流に第3の真空領域を提供してもよく、第2の真空領域と第3の真空領域との間のガス分離壁に第2の差動排気開孔を提供してもよい。この方法は、第1、第2および第3の真空領域、ならびに、任意選択で、第3の真空領域の下流の少なくとも1つの追加の真空領域を差動排気することをさらに含んでもよい。
【0090】
図3のボックス340によって概略的に示されているように、ボックス330の動作モードでの所定の時間の後に、例えば約1時間の動作の後に、この電子顕微鏡が再び第1の洗浄モードに切り替わってもよい。この第1の洗浄モードでは、安定な電子ビームを保証することができるような態様で、放出先端を洗浄してもよい。ボックス350で、電子顕微鏡が再び動作に切り替わってもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、この方法が、動作モードでの所定の期間の後に、例えば約1時間の動作の後に、動作モードから第1の洗浄モードに切り替わることを含む。特に、この電子顕微鏡は、所定の動作間隔の後に、例えば1時間以上および3時間以下の所定の動作間隔の後に、第1の洗浄モードに自動的に切り替わってもよい。所定の動作間隔の後に第1の洗浄モードに切り替えることによって、動作モードにおける絶えず安定した高輝度電子ビームを可能にすることができる。
【0092】
第2の洗浄モードは、より低い頻度で実施してもよく、例えば、空気を用いた銃ハウジングのフラッディングの後にだけ、および/または1か月よりも長くてもよい所定のサービス作業間隔で、および/または電子ビームが望ましくない不安定性もしくは低減された輝度を示している場合に、実施してもよい。
【0093】
特に、本明細書には以下の実施形態が記載されている。
【0094】
実施形態1:電子顕微鏡(100)であって、電子源(110)を備え、電子源(110)が、放出先端(112)を備える冷陰極電界放出型エミッタ、光軸(A)に沿って伝搬させるために電子ビーム(105)を冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極(114)であり、第1のビーム絞り開孔として構成された第1の開口(115)を有する、引出し電極(114)、放出先端(112)を、放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置(121)、および引出し電極(114)を、引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置(122)を備え、この電子顕微鏡が、電子源の下流で電子ビームをコリメートするためのコンデンサレンズ(130)と、電子ビームを試料上に集束させるための対物レンズ(140)とをさらに備える、電子顕微鏡(100)。
【0095】
いくつかの実施形態では、放出先端が、タングステン先端、特に(3,1,0)方位のタングステン単結晶である。
【0096】
実施形態2:第1の洗浄装置(121)が、放出先端と熱接触した加熱フィラメント(125)を備え、放出先端が、加熱フィラメントに取り付けられているか、または結合されている、実施形態1に記載の電子顕微鏡。
【0097】
第1の洗浄装置は、放出先端を加熱することによって、特に、規則的な間隔で、例えば所定の動作時間の後に放出先端を加熱することによって、放出先端を洗浄するように構成されたフラッシュ洗浄装置であってもよい。放出先端は、1000℃よりも高い温度、特に2000℃よりも高い温度まで加熱してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、この加熱フィラメントがV字形の加熱ワイヤであり、放出先端が、V字形加熱ワイヤの屈折部分に結合されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、加熱フィラメントが金属フィラメント、特にタングステンフィラメントであり、放出先端がタングステン先端である。
【0100】
実施形態3:第2の洗浄装置が、引出し電極(114)に隣接して配置された第2のヒータ、特に、引出し電極(114)に隣接して配置された第2の加熱ワイヤ(126)を備える、実施形態1または2に記載の電子顕微鏡。第2のヒータは、1500℃以上、特に2000℃以上の温度まで加熱されるように、詳細には、第2のヒータに電流が流れることを可能にすることによって1500℃以上、特に2000℃以上の温度まで加熱されるように構成されていてもよい。
【0101】
実施形態4:加熱ワイヤが、引出し電極の第1の開口(115)を少なくとも部分的に取り囲むように配置されている、実施形態3に記載の電子顕微鏡。
【0102】
実施形態5:加熱ワイヤ(126)がタンタルを含み、またはタンタルでできている、実施形態3または4に記載の電子顕微鏡。
【0103】
実施形態6:洗浄コントローラ(128)を備え、洗浄コントローラ(128)が、第1の洗浄モードにおいて、放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、放出先端と熱接触した加熱フィラメント(125)に電流が流れることを可能にするように構成されている、実施形態1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。その代わりに、またはそれに加えて、洗浄コントローラが、第2の洗浄モードにおいて、引出し電極を少なくとも部分的に500℃よりも高い温度まで加熱すること、および引出し電極の表面で電子刺激脱離を生じさせることのうちの少なくとも一方のために、第2の洗浄装置の加熱ワイヤ(126)に電流が流れることを可能にするように構成されている。
【0104】
特に、第2の洗浄モードでは、特に引出し電極の熱ガス放出を生じさせるために、第1の開口を取り囲む引出し電極のエリアを500℃よりも高い温度まで加熱する。
【0105】
実施形態7:光軸に沿った放出先端(112)と引出し電極(114)の第1の開口(115)との間の距離が5mm以下、特に1mm以下である、実施形態1~6のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0106】
実施形態8:コンデンサレンズ(130)が、第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する磁気コンデンサレンズであり、放出先端と第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)が、放出先端と第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離(D2)よりも大きい、実施形態1~7のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0107】
特に、この磁気コンデンサレンズはアキシャルギャップレンズであってもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、放出先端と第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)が20mm以下、特に15mm以下である。いくつかの実施形態では、放出先端と第1の内側磁極片との間の第2の軸方向距離(D2)が15mm以下、またはそれどころか8mm以下である。
【0109】
実施形態9:対物レンズ(140)が、第2の内側磁極片および第2の外側磁極片を有する磁気対物レンズであり、第2の内側磁極片とサンプルステージとの間の第3の軸方向距離が、第2の外側磁極片とサンプルステージとの間の第4の軸方向距離よりも大きい、実施形態1~8のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0110】
特に、この磁気対物レンズはアキシャルギャップレンズであってもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、磁気コンデンサレンズと磁気対物レンズが、光軸に沿って互いに対してほぼ対称に配置されていてもよい。
【0112】
実施形態10:電子ビームを5keV以上のエネルギーまで加速するための加速セクションであって、コンデンサレンズの上流にあるか、もしくはコンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、加速セクション、および/または電子ビームを5keV以上のエネルギーから3keV以下の入射エネルギーまで減速するための減速セクションであって、対物レンズの下流にあるか、もしくは対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、減速セクションを備える、請求項1~9のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0113】
実施形態11:第1の開口(115)が、第1の差動排気開孔として機能するように配置されている、実施形態1~10のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0114】
実施形態12:コンデンサレンズ(130)と対物レンズ(140)との間に第2のビーム絞り開孔(132)をさらに備え、第2のビーム絞り開孔(132)が、第2の差動排気開孔として機能するように配置されている、実施形態1~11のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0115】
実施形態13:第2の差動排気開孔と対物レンズとの間に少なくとも1つの第3の差動排気開孔(133)をさらに備える、実施形態12に記載の電子顕微鏡。
【0116】
実施形態14:放出先端(112)が第1の真空領域(10a)に配置されており、コンデンサレンズ(130)が第2の真空領域(10b)に配置されており、電子顕微鏡が、第1の真空領域(10a)を排気するためのイオンゲッタポンプ(13)および非蒸発型ゲッタポンプ(14)を備える、実施形態1~13のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0117】
実施形態15:走査偏向器をさらに備え、電子顕微鏡が、高スループットウエハ検査用の走査電子顕微鏡(SEM)として構成されている、実施形態1~14のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【0118】
実施形態16:本明細書に記載された実施形態のいずれかに記載の電子顕微鏡の電子源。
【0119】
実施形態17:冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を有する電子顕微鏡を動作させる方法であって、第1の洗浄モードにおいて、冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、放出先端を加熱することによって洗浄すること、第2の洗浄モードにおいて、電子源の引出し電極を、引出し電極を加熱することによって洗浄すること、ならびに、動作モードにおいて、光軸(A)に沿って伝搬させるために電子ビームを冷陰極電界放出型エミッタから引き出すことであり、電子ビームが、引出し電極に提供された第1の開口によって整形される、引き出すこと、コンデンサレンズを用いて電子ビームをコリメートすること、および対物レンズを用いて電子ビームを試料上に集束させることを含む方法。
【0120】
実施形態18:第1の洗浄モードにおいて、放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、放出先端が結合した加熱フィラメントに電流が流れる、実施形態17に記載の方法。
【0121】
実施形態19:第2の洗浄モードにおいて、引出し電極を500℃よりも高い温度まで加熱するために、引出し電極に隣接して配置された第2のヒータ、特に、引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤ(126)に電流が流れる、実施形態17または18に記載の方法。
【0122】
実施形態20:第2の洗浄モードにおいて、電子刺激脱離および熱ガス放出のうちの少なくとも一方によって引出し電極を洗浄するために電子を加熱ワイヤから熱放出させるために、引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤに電流が流れる、実施形態17~19のいずれかに記載の方法。いくつかの実施形態では、加熱ワイヤを、1500℃以上の温度、特に2000℃以上の温度まで加熱する。
【0123】
実施形態21:動作モードでの所定の期間の後に動作モードから第1の洗浄モードに切り替わること、特に、所定の動作間隔で第1の洗浄モードに自動的に切り替わることを含む、実施形態17~20のいずれかに記載の方法。
【0124】
実施形態22:放出先端が第1の真空領域に配置されており、コンデンサレンズが、第1の真空領域の下流の第2の真空領域に配置されており、第1の開口が、第1の真空領域と第2の真空領域との間の差動排気開孔として機能し、この方法が、第1の真空領域および第2の真空領域を差動排気することを含み、第2の真空領域の下流に配置された第3の真空領域を、第2の真空領域と第3の真空領域との間に配置された第2の差動排気開孔を介して差動排気することを含んでもよい、実施形態17~21のいずれかに記載の方法。
【0125】
実施形態23:動作モードにおいて、(i)加速セクション内で電子ビームの電子を5keV以上のエネルギーまで加速することであって、加速セクションが、コンデンサレンズの上流にあるか、もしくはコンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、加速すること、(ii)第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有するコンデンサレンズを用いて電子ビームをコリメートすることであって、放出先端と第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離が、放出先端と第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離よりも大きい、コリメートすること、ならびに/または(iii)減速セクション内で電子ビームの電子を3keV以下の入射エネルギーまで減速することであって、減速セクションが、対物レンズの下流にあるか、もしくは対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、減速することのうちのいずれか1つまたは複数をさらに含む、実施形態17~22のいずれかに記載の方法。
【0126】
いくつかの実施形態では、加速セクション内で電子ビームの電子を少なくとも10keV、特に少なくとも15keV、とりわけ少なくとも30keVのエネルギーまで加速する。
【0127】
いくつかの実施形態では、減速セクション内で電子ビームの電子を2keV以下、特に1keV以下の入射エネルギーまで減速する。
【0128】
以下に示す請求項の各々は、先行する1つまたは複数の請求項に関するものであることがあること、および本開示は、請求項の任意のサブセットの特徴を含むこのような実施形態を包含することを理解すべきである。以上の説明は実施形態を対象としているが、基本的な範囲を逸脱することなく他の実施形態および追加の実施形態が考案される可能性があり、それらの実施形態の範囲は、以下に示す請求項によって決定される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源(110)であって、
放出先端(112)を備える冷陰極電界放出型エミッタ、
光軸(A)に沿って伝搬させるために電子ビーム(105)を前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極(114)であり、第1のビーム絞り開孔として構成された第1の開口(115)を有する、前記引出し電極(114)、
抑制電極(113)、
前記放出先端(112)を、前記放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置(121)であり、前記放出先端と熱接触した加熱フィラメント(125)を備える、前記第1の洗浄装置(121)、および
前記引出し電極(114)を、前記引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置(122)であり、前記引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤ(126)を備える、前記第2の洗浄装置(122)
を備える、前記電子源(110)と、
前記電子源の下流で前記電子ビームをコリメートするためのコンデンサレンズ(130)と、
前記電子ビームを試料上に集束させるための対物レンズ(140)と
を備え、
前記第1のビーム絞り開孔が、第1の差動排気開孔として機能するように配置されており、
前記抑制電極(113)が、前記加熱ワイヤ(126)によって放出された電子を前記放出先端(112)から離れる方向に偏向させるための電位にセットされるように構成されている、
電子顕微鏡(100)。
【請求項2】
前記放出先端が、前記加熱フィラメントに取り付けられているか、または結合されている、請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項3】
前記加熱ワイヤ(126)が、1500℃以上の温度まで加熱されるように構成されている、請求項1に記載の電子顕微鏡。
【請求項4】
前記加熱ワイヤが、前記引出し電極の前記第1の開口(115)を少なくとも部分的に取り囲むように配置されている、請求項3に記載の電子顕微鏡。
【請求項5】
前記加熱ワイヤ(126)がタンタルを含み、またはタンタルでできている、請求項3に記載の電子顕微鏡。
【請求項6】
洗浄コントローラ(128)を備え、前記洗浄コントローラ(128)が、
第1の洗浄モードにおいて、前記放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、前記放出先端と熱接触した前記加熱フィラメント(125)に電流が流れることを可能にするように構成されており、または
第2の洗浄モードにおいて、前記引出し電極を少なくとも部分的に500℃よりも高い温度まで加熱すること、および前記引出し電極の表面で電子刺激脱離を生じさせることのうちの少なくとも一方のために、前記第2の洗浄装置の前記加熱ワイヤ(126)に電流が流れることを可能にするように構成されている、
請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項7】
前記放出先端(112)と前記引出し電極(114)の前記第1の開口(115)との間の距離が5mm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項8】
前記コンデンサレンズ(130)が、第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する磁気コンデンサレンズであり、前記放出先端と前記第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離(D1)が、前記放出先端と前記第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離(D2)よりも大きい、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項9】
前記対物レンズ(140)が、第2の内側磁極片および第2の外側磁極片を有する磁気対物レンズであり、前記第2の内側磁極片とサンプルステージとの間の第3の軸方向距離が、前記第2の外側磁極片と前記サンプルステージとの間の第4の軸方向距離よりも大きい、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項10】
前記電子ビームを5keV以上のエネルギーまで加速するための加速セクションであって、前記コンデンサレンズの上流にあるか、または前記コンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、前記加速セクションと、
前記電子ビームを前記5keV以上のエネルギーから2keV以下の入射エネルギーまで減速するための減速セクションであって、前記対物レンズの下流にあるか、または前記対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、前記減速セクションと
を備える、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項11】
前記抑制電極(113)が、前記加熱ワイヤ(126)によって放出された電子を前記引出し電極(114)に向かって偏向させるために前記電位にセットされるようにさらに構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項12】
前記コンデンサレンズ(130)と前記対物レンズ(140)との間に第2のビーム絞り開孔(132)をさらに備え、前記第2のビーム絞り開孔(132)が、第2の差動排気開孔として機能するように配置されている、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項13】
前記放出先端(112)が第1の真空領域(10a)に配置されており、前記コンデンサレンズ(130)が第2の真空領域(10b)に配置されており、前記電子顕微鏡が、前記第1の真空領域(10a)を排気するためのイオンゲッタポンプ(13)および非蒸発型ゲッタポンプ(14)を備える、請求項1~5のいずれかに記載の電子顕微鏡。
【請求項14】
電子顕微鏡用の電子源であって、
放出先端を備える冷陰極電界放出型エミッタと、
光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すための引出し電極と、
抑制電極(113)と、
前記放出先端を、前記放出先端を加熱することによって洗浄するための第1の洗浄装置であり、前記放出先端と熱接触した加熱フィラメントを備える、前記第1の洗浄装置と、
前記引出し電極を、前記引出し電極を加熱することによって洗浄するための第2の洗浄装置であり、前記第2の洗浄装置(122)が、前記引出し電極に隣接して配置された加熱ワイヤ(126)を備える、前記第2の洗浄装置と
を備え、
前記第1のビーム絞り開孔が、第1の差動排気開孔として機能するように配置されており、
前記抑制電極(113)が、前記加熱ワイヤ(126)によって放出された電子を前記放出先端(112)から離れる方向に偏向させるための電位にセットされるように構成されている、
電子源。
【請求項15】
冷陰極電界放出型エミッタを備える電子源を有する電子顕微鏡を動作させる方法であって、
第1の洗浄モードにおいて、前記冷陰極電界放出型エミッタの放出先端を、前記放出先端を加熱することによって洗浄すること、
第2の洗浄モードにおいて、前記電子源の引出し電極を、前記引出し電極を加熱ワイヤを用いて加熱することによって洗浄することであり、抑制電極が、前記加熱ワイヤを用いた前記加熱の間、前記加熱ワイヤによって放出された電子を前記放出先端から離れる方向に偏向させるための電位にセットされる、前記洗浄すること、ならびに
動作モードにおいて、
光軸に沿って伝搬させるために電子ビームを前記冷陰極電界放出型エミッタから引き出すことであり、前記電子ビームが、前記引出し電極に提供された第1の開口によって整形され、前記第1の開口が、第1の差動排気開孔として機能する、前記引き出すこと、
コンデンサレンズを用いて前記電子ビームをコリメートすること、および
対物レンズを用いて前記電子ビームを試料上に集束させること
を含む、方法。
【請求項16】
前記第1の洗浄モードにおいて、前記放出先端を1500℃よりも高い温度まで加熱するために、前記放出先端が結合した前記加熱フィラメントに電流が流れる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の洗浄モードにおいて、電子刺激脱離および熱ガス放出のうちの少なくとも一方または両方によって前記引出し電極を洗浄するために電子を前記加熱ワイヤから熱放出させるために、前記引出し電極に隣接して配置された前記加熱ワイヤに電流が流れる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記動作モードでの所定の期間の後に前記動作モードから前記第1の洗浄モードに切り替わることを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
前記放出先端が第1の真空領域に配置されており、前記コンデンサレンズが、前記第1の真空領域の下流の第2の真空領域に配置されており、前記第1の開口が、前記第1の真空領域と前記第2の真空領域との間の前記第1の差動排気開孔として機能し、前記方法が、
前記第1の真空領域および前記第2の真空領域を差動排気することを含み、前記第2の真空領域の下流に配置された第3の真空領域を、前記第2の真空領域と前記第3の真空領域との間に配置された第2の差動排気開孔を介して差動排気することを含んでもよい、
請求項15または16に記載の方法。
【請求項20】
前記動作モードにおいて、
加速セクション内で前記電子ビームの電子を5keV以上のエネルギーまで加速することであって、前記加速セクションが、前記コンデンサレンズの上流にあるか、または前記コンデンサレンズと少なくとも部分的に重なっている、前記加速すること、
第1の内側磁極片および第1の外側磁極片を有する前記コンデンサレンズを用いて前記電子ビームをコリメートすることであって、前記放出先端と前記第1の内側磁極片との間の第1の軸方向距離が、前記放出先端と前記第1の外側磁極片との間の第2の軸方向距離よりも大きい、前記コリメートすること、ならびに
減速セクション内で前記電子ビームの前記電子を3keV以下の入射エネルギーまで減速することであって、前記減速セクションが、前記対物レンズの下流にあるか、または前記対物レンズと少なくとも部分的に重なっている、前記減速すること
をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【国際調査報告】