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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】エッジ官能化グラフェン熱ナノ流体
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20250107BHJP
【FI】
C01B32/194
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538130
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 AU2022051569
(87)【国際公開番号】W WO2023115143
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2021904251
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222593
【氏名又は名称】シコナ・バッテリー・テクノロジーズ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Sicona Battery Technologies Pty Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100227916
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 麻理奈
(72)【発明者】
【氏名】ライダー,グレゴリー マイケル
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AB01
4G146AB07
4G146AC16B
4G146AC20A
4G146AC20B
4G146AC22B
4G146AC26B
4G146AD20
4G146AD23
4G146AD26
4G146BA01
4G146BA02
4G146BB04
4G146CA16
(57)【要約】
本開示は、熱流体として使用するための組成物を提供し、組成物は、グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層がベース層上に積層され、少なくとも1つの不連続層は、ベース層よりも小さい表面積を有し、ベース層及び少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、分散性グラフェンプレートレットと、一定量の水を含む分散媒を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱流体として使用するための組成物であって、前記組成物は、
a)グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層が前記ベース層上に積層され、前記少なくとも1つの不連続層は、前記ベース層よりも小さい表面積を有し、前記ベース層及び前記少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、分散性グラフェンプレートレットと、
b)一定量の水を含む分散媒を含む、
組成物。
【請求項2】
前記分散性グラフェンプレートレットの量は、前記組成物の約0.1~約6重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分散媒は、グリコール、アルコール、界面活性剤、染料、消泡剤、酸、塩基などから選択される1つ以上の共溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散媒は、水及び前記1つ以上の共溶媒を約50:50~80:20の重量比で含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記プレートレットは、最大700mg/mLの濃度で、水中で安定した分散液を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記プレートレットの導電率は、約900S/cmである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記プレートレットは、前記官能化されたエッジまたは表面の少なくとも1つにFe、Cu、Co及びSnから選択される金属イオンを追加することによってさらに官能化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
熱流体として使用するための組成物であって、前記組成物は、
a)ポリマーと、グラフェンのベース層を含む分散性グラフェンプレートレットとを含む、一定量のポリマーマトリックス複合材料であって、少なくとも1つの不連続グラフェン層が前記ベース層上に積層され、前記少なくとも1つの不連続層は、前記ベース層よりも小さい表面積を有し、前記ベース層及び前記少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、ポリマーマトリックス複合材料と、
b)一定量の水を含む分散媒を含む、
組成物。
【請求項9】
前記分散性グラフェンプレートレットの量は、前記組成物の約0.1~約6重量%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記分散媒は、グリコール、アルコール、界面活性剤、染料、消泡剤、酸、塩基などから選択される1つ以上の共溶媒をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記分散媒は、水及び前記1つ以上の共溶媒を約50:50~80:20の重量比で含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記プレートレットは、最大700mg/mLの濃度で水中で安定した分散液を形成することができる、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記プレートレットの導電率は、約900S/cmである、請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
前記プレートレットは、前記官能化されたエッジまたは表面の少なくとも1つに金属イオンを追加することによってさらに官能化される、請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーは、アルギン酸塩、キトサン、PVA、PEG、PU、PEI、PVDF、PDMSまたはPEDOT PSSから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項17】
熱流体として使用するための組成物の生成方法であって、前記方法は、
a)グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットを形成するステップであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層が前記ベース層上に積層され、前記少なくとも1つの不連続層は、前記ベース層よりも小さい表面積を有し、前記ベース層及び前記少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、有機ニトリル(アセトニトリルなど)、エステル(酢酸エチルなど)及び水を含む溶液中にグラファイトまたはグラフェンを懸濁することによって少なくとも部分的に官能化され、懸濁したグラファイトまたはグラフェンを含む前記溶液を酸化剤(四酸化ルテニウムなど)と反応させて、前記グラファイトまたはグラフェンのエッジ領域を少なくとも部分的に官能化する、ステップと、
b)一定量の水を含む分散媒を形成するステップと、
c)前記一定量の分散性グラフェンプレートレットと前記一定量の水とを混合し、それによって実質的に均質な組成物を生成するステップを含む、方法。
【請求項18】
ステップbで得られた前記溶液を20000rpmで2時間まで均質化するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップbで得られた前記溶液を超音波処理するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ステップbで得られた前記溶液を濾過して、濾過固体を生成するステップと、前記濾過固体を洗浄するステップと、前記濾過固体を真空中で乾燥させて、乾燥粉末を生成するステップと、前記乾燥粉末を凍結乾燥するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を最長48時間静置して、固体と上澄みを生成し、前記上澄みをデカントして濾過してグラフェン粉末を生成する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を遠心分離して、固体と上澄みを生成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウムと、懸濁したグラフェンまたはグラファイトを含む前記溶液に追加された塩化ルテニウムとの反応によって得られる、四酸化ルテニウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記グラフェンまたはグラファイトは、層間間隔が増加した拡張グラファイトの形態で提供される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
次いで、前記グラフェン粉末を、Fe、Cu、Co及びSnから選択される金属イオンを含む溶液中に分散させて、金属イオンを前記プレートレットの表面または官能化されたエッジの少なくとも1つに結合させる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
熱流体として使用するための組成物の生成方法であって、前記方法は、
a)ポリマーと、グラフェンのベース層を含む分散性グラフェンプレートレットとを含む、一定量のポリマーマトリックス複合材料を形成するステップであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層が前記ベース層上に積層され、前記少なくとも1つの不連続層は、前記ベース層よりも小さい表面積を有し、前記ベース層及び前記少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、ステップと、
b)一定量の水を含む分散媒を形成するステップと、
c)前記一定量の分散性グラフェンプレートレットと前記一定量の水とを混合し、それによって実質的に均質な組成物を生成するステップを含む、方法。
【請求項27】
ステップbで得られた前記溶液を20000rpmで2時間まで均質化するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ステップbで得られた前記溶液を超音波処理するステップと、濾過固体を洗浄するステップと、前記濾過固体を真空中で乾燥させて、乾燥粉末を生成するステップと、前記乾燥粉末を凍結乾燥するステップとをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を最長48時間静置して、固体と上澄みを生成し、前記上澄みをデカントして濾過してグラフェン粉末を生成する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフェン粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を遠心分離して、固体と上澄みを生成する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記酸化剤は、過ヨウ素酸ナトリウムと、懸濁したグラフェンまたはグラファイトを含む前記溶液に追加された塩化ルテニウムとの反応によって得られる、四酸化ルテニウムである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記グラフェンまたはグラファイトは、層間間隔が増加した拡張グラファイトの形態で提供される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
次いで、前記グラフェン粉末を、Fe、Cu、Co及びSnから選択される金属イオンを含む溶液中に分散させて、金属イオンを前記プレートレットの表面または官能化されたエッジの少なくとも1つに結合させる、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
請求項17に記載の方法によって生成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項35】
請求項26に記載の方法によって生成される、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月23日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2021904251号に対する条約優先権を主張する。AU’251の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、出願人の新規なエッジ官能化グラフェンの使用、より具体的には、サーバファームなどを冷却するための熱流体としてのその使用に関する。
【0003】
以下、本発明をその好ましい実施形態を参照して説明するが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲は他の多くの形態で具体化できることが理解されるであろう。
【背景技術】
【0004】
本明細書全体にわたる先行技術に関するいかなる考察も、そのような先行技術が広く知られているか、または当分野において共通の一般的な知識の一部を形成していることを容認するものとは、決して見なされるべきではない。
【0005】
新規なエッジ官能化グラフェンは、PCT/AU2019/051076及び関連する国内段階出願に記載されており、それぞれ現在本出願人に譲渡されている。
【0006】
PCT/AU2019/051076は、分散性グラフェンプレートレット及びその製造方法を教示する。グラフェンプレートレットの構造は、上に少なくとも1つのグラフェンの不連続層が積層されたグラフェンのベース層を含み、ベース層上のグラフェンの各層は、それが上に積層された層よりも小さい表面積を有する。ベース層とその上に積層された不連続層のエッジは全て少なくとも部分的に官能化され、ベース層によるグラフェンのような特性と、各プレートレットの官能化基の量の増加による比較的高い分散性を備えた構造を提供する。他の使用の中でも、プレートレットは、電極または複合材料の生成に有用であると考えられていた。
【0007】
一般的には、グラフェンは、1原子層の厚さの炭素膜であり、高い熱伝導率や導電率、高い機械的強度など、多くの望ましい特性を有する。従って、グラフェンは、エネルギー貯蔵、生物学的センシング、及び」濾過、ならびに改良された電気機器や医療機器のような幅広い用途にとって有望な材料である。しかし、現在、グラフェンの望ましい特性を維持しながら、工業規模での製造のためにグラフェンまたはナノプレートレットやナノリボンなどのグラフェン誘導体を大量に生成及び保管することが難しいため、これらの用途でのグラフェンの使用は制限される。グラフェンという用語は、1~10原子層の厚さの炭素膜(及び関連材料)を指すものとして一般に受け入れられている。従って、本明細書全体を通じて、グラフェンは最大10原子層の炭素膜を指すことが理解されるであろう。10原子層を超える炭素膜は、通常、グラファイトと呼ばれる。
【0008】
グラフェンは、粘着テープを使用してバルクグラファイトからグラフェンの層を剥がす「スコッチテープ」法による機械的劈開によって最初に単離されて以来、工業規模で大量のグラフェンを生成する効率的な方法を提供することを目的として、化学蒸着やボールミルなどの多くの加工ルートが研究されてきたが、現在では実行可能であることが証明されるものはほとんどない。
【0009】
酸化グラファイトを生成するために1950年代に開発されたハマー法は、大量の酸化グラフェンを生成できるように改良された。還元によって酸化グラフェンをグラフェンに変換する試みがなされてきた。しかし、現在、酸化グラフェンは、グラフェンに還元することに成功しておらず、大量に生成することは可能であるが、天然グラフェンと比較すると最適以下の特性を持っている。
【0010】
有望な生成ルートの1つは液相剥離である。この方法では、多くの場合超音波処理を使用して、液体媒体中でグラファイトがグラフェンに剥離される。グラフェンの層は弱いファンデルワールス力によって相互に保持されるため、超音波はグラフェンの層を分解することができる。これは、シート間のポテンシャルエネルギー障壁を減少させるために溶媒または安定剤を含むように液体媒体の組成を変更することによってさらに改善することができる。
【0011】
液相剥離によって生成されるグラフェンの問題は、グラフェン構造の分散性が低いため、大量の溶媒が必要になることである。例えば、純粋なグラフェンは、0.01g/L未満の濃度でのみ純水に分散でき、この限界は、界面活性剤の追加または一定の撹拌によって大幅に改善されない。これらの濃度を超えると、グラフェンは凝集し、再びグラファイト構造に積み重なる傾向がある。従って、大量の溶媒が必要となるため、グラフェンを長期間保存することは現実的ではない。従って、導電性などのグラフェンの有益な特性を保持しながら、水中でのより安定した分散を可能にするグラフェンの形態が望まれている。
【0012】
グラフェン構造は凝集する傾向があるため、複合材料でグラフェン構造を使用する際にも課題が生じる。多くの場合、強度や導電率などのマトリックス材料の特性を向上させるために、ポリマーなどの別の材料のマトリックス内にグラフェンなどの分散相が均一に分布することが好ましい。グラフェン構造の安定した分散により、より高濃度の分散相を含むグラフェン複合材料の製造が容易になり、複合材料の材料特性をより細かく調整できるようになる。
【0013】
グラフェン構造の分散性を高める手段は、グラフェンシートのエッジを官能化することである。これにより、分散性を高めながら、構造が天然グラフェンの特性を実質的に保持できるようになる。これらの構造は、上述したように、エッジ官能化グラフェンと呼ばれることがよくある。
【0014】
PCT/AU2019/051076において出願人によって記載された方法とは別に、エッジ官能化グラフェンを生成するための別の方法がDing et al.Sci.Rep.8:5567(2018)によって記載された。この方法は、グラファイト粉末を脱気水に加えることと、混合物を超音波処理して、黒色グラファイトスラリーを生成することと、加熱下で機械的に撹拌してスラリーを蒸気剥離してプレートレットのエッジを官能化することと、得られた混合物を冷却、希釈、超音波処理して精製することとを含む。これにより、エッジにヒドロキシル基を備えた数層の厚さのナノプレートレットが生成された。これらのエッジ基により、プレートレットを最大0.55g/mLの濃度で水中に分散させることができる。これはグラフェン構造の分散性の向上を示すが、依然として大量の溶媒が必要である。従って、より優れた分散性を有するグラフェン構造は、PCT/AU2019/051076において出願人によって正式に教示された。
【0015】
熱流体は、プロセスの片側での冷却、熱エネルギーの輸送と貯蔵、プロセスの他側での加熱の媒介として機能することにより、熱伝導性を促進する気体または液体である。熱流体は、加熱または冷却を必要とする無数の用途や工業プロセスで、通常は閉回路及び連続サイクルで使用される。例えば、冷却水は、エンジンを冷却し、温水暖房システムの加熱水は、室内のラジエータを加熱する。水は、その経済性、高い熱容量及び有利な輸送特性により、最も一般的な熱流体である。しかし、システムの圧力に応じて、0℃未満では凍結し、高温では沸騰するため、有用な温度範囲が制限される。不凍液添加剤を使用すると、凍結の問題をある程度軽減できる。しかし、他にも多くの熱流体が開発され、多種多様な用途に使用される。
【0016】
高温の場合、オイル、合成炭化水素、またはシリコーンベースの流体は蒸気圧が低くなる。溶融塩及び溶融金属が、有機流体が分解し始める300~400℃超の温度で熱を伝達及び蓄えるために使用され得る。水蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素などの気体は、液体が適さない場合に熱流体として使用されてきた。気体の場合、低いポンプ能力でより高い流量を促進するには、通常、圧力を上げる必要がある。
【0017】
サーバファームは、熱流体に対する現代の課題を表す。サーバファームは、通常、単一マシンの能力をはるかに超えるサーバ機能を提供するために組織によって維持されるコンピュータサーバの集合である。サーバファームは多くの場合、数千台のコンピュータで構成されており、実行するには大量の電力が必要で、大量の熱が発生し、また、効率を維持するためにサーバファームを冷却するためにも大量の電力が必要になる。サーバファーマーは通常、コンピュータ、ルータ、電源及び関連電子機器をサーバルームまたはデータセンタの19インチラックに取り付ける。スペースは貴重であるため、サーバラックはできるだけ互いに近くに収納する必要がある。しかし、これにより、空気の流れ、加熱及び冷却に重大な問題が発生する。
【0018】
サーバの性能は向上しているが、集積回路の低電力設計の努力にもかかわらず、サーバの消費電力も増加している。例えば、最も広く使用されているサーバプロセッサの1つは、最大95ワットで動作する。別のサーバプロセッサは、110~165ワットで動作する。しかし、プロセッサは、サーバの一部にすぎず、ストレージデバイスなどのサーバ内の他の部品が追加の電力を消費し、全ての部品が全体的な発熱に寄与する。
【0019】
サーバ、特にファンレスサーバを確実に動作させるには、データセンタルームを許容可能な温度と湿度に維持する必要がある。最新のプロセッサを搭載したサーバを密に積み重ねたラックの消費電力は、7000~15,000ワットになる場合がある。その結果、サーバラックは非常に集中した熱負荷を生成する可能性がある。ラック内のサーバによって放散される熱は、データセンタルーム内に排出される。密集しているラックにより全体として生成される熱は、ラック内の機器が冷却を周囲の空気に依存しているため、ラック内の機器の性能と信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、暖房、換気、空調(HVAC)システムは、多くの場合、効率的なデータセンタの設計の重要な部分を占める。
【0020】
データセンタルームでは、通常、サーバラックは、コールドアイルとホットアイルが交互になるように列状に配置される。全てのサーバは、ラックの前にあるコールド列から調整済みの空気を吸い込み、ラックの後ろのホット列から熱を排出する、前から後ろへのエアフローパターンを実現するようにラック内に取り付けられる。高床の部屋の設計が、床下の空気分配システムに対応するために一般的に使用され、コールドアイルに沿った上げ床の通気口から冷気が供給される。
【0021】
データセンタを効率的に冷却するための重要な要素は、データセンタ内の空気の流れと循環を管理することである。コンピュータルームエアコン(CRAC)ユニットは、ラック間の通気口を含む床タイルを通して冷気を供給する。サーバに加えて、CRACユニットも大量の電力を消費する。1台のCRACユニットは5馬力のモータを最大3台搭載し得、データセンタを冷却するには最大150台のCRACユニットが必要になる場合がある。CRACユニットは、データセンタ内で全体として大量の電力を消費する。例えば、ホット列とコールド列構成を備えたデータセンタルームでは、ホット列からの熱気がホット列の外に移動し、CRACユニットに循環される。CRACユニットは、空気を冷却する。CRACユニットのモータによって駆動されるファンは、高くした下地床によって画定される床下プレナムに冷却された空気を供給する。冷却された空気を床下プレナムに送り込むことによって生成される圧力は、冷却された空気を下地床の通気口を通って上向きに押し上げ、サーバラックが面しているコールドアイルに供給する。十分な空気流量を実現するために、一般的なデータセンタルーム全体に数百台の強力なCRACユニットが取り付けられ得る。しかし、CRACユニットは通常、データセンタルームの隅に取り付けられるため、空気流量を効率的に増加させる能力が悪影響を受ける。一般に高床の建設コストは高く、データセンタルーム内の空気の移動が非効率であるため、一般に冷却効率が低くなる。さらに、床通気口の位置については、供給空気の短絡を防止するために、データセンタの設計と建設全体を通じて慎重に計画する必要がある。
【0022】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服もしくは改善すること、あるいは有用な代替案を提供することである。
【0023】
本発明の特に好ましい形態の目的は、例えば、データセンタ、ラジエータまたはエアコンの冷却に使用するための熱流体としての使用に適した組成物を提供することである。水のコスト及び好ましい熱特性により、水が組成物の主成分を構成すべきであると考えられる。
文脈が別段明らかに要求しない限り、説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などの単語は、排他的または徹底的な意味ではなく、包括的な意味、すなわち、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるものとする。
本発明を特定の例を参照して説明するが、本発明が他の多くの形態で具体化され得ることが当業者には理解されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】PCT/AU2019/051076
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Ding et al.Sci.Rep.8:5567(2018)
【発明の概要】
【0026】
本発明者らは、驚くべきことに、PCT/AU2019/051076に記載されているタイプのエッジ官能化グラフェンが、約0.25~1.0重量%の水または水・グリコールと組み合わされると効率的な熱流体を形成することを発見した。驚くべきことに、この特徴の組み合わせは、組成物を冷却するのに必要なエネルギーを大幅に低減し、組成物が熱を輸送する効率を高めるのに効果的であることが見出された。
【0027】
エッジ官能化グラフェンを使用すると、組成物への熱の透過性が高まることが見出された。エッジ官能化グラフェンは、周囲の水分子と水素結合して、実質的に均一な溶液を形成することを可能にする。このような溶液は熱をより効率的に輸送できるため、短縮された時間枠で溶液が吸収できる熱量が増加し、必要なときに溶液から熱を除去するために必要なエネルギーが削減される。
【0028】
効果を誘発するために必要なエッジ官能化グラフェンの量はわずか0.01重量%であるが、その効果は約5~6重量%を超えると頭打ちになる。理想的な範囲は0.25~1重量%であることが見出された。
【0029】
さらに、エッジ官能化グラフェンの濃度が増加すると、全てではないにしてもほとんどの冷却システムでの使用に影響を与えるほどではないものの、組成物の粘度が増加する可能性があることが見出された。
【0030】
エッジ官能化グラフェン混合物を冷却システムに使用すると、エネルギー使用量を最大50%削減できる可能性がある。適切な商業的文脈においては、たとえ2%の効率向上であっても、状況を一変させる可能性がある。
【0031】
組成物は、プロピレングリコール、エチレングリゴール、エタノール、メタノール、プロパノールなどの他の成分を含み得る。これらは、任意の混合物中に約0.01重量%~50重量%、好ましくは30重量%まで存在することができる。他の成分は、アルコール、界面活性剤、染料、または弱酸もしくは弱塩基を含み得る。他の成分の目的は、沸点の上昇を高め、凝固点の降下を減らし、漏れの場合に混合物を容易に識別できるようにすること、または成分のいずれかを可溶化/それから塩を作ることである。
【0032】
最後に、エッジ官能化グラフェンは、溶液中では安定するが、界面活性剤/安定剤は、特に時間の経過とともに安定性を高める可能性がある。
【0033】
本発明の第1態様によれば、熱流体として使用するための組成物が提供され、組成物は、
a)グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層がベース層上に積層され、少なくとも1つの不連続層は、ベース層よりも小さい表面積を有し、ベース層及び少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される分散性グラフェンプレートレットと、
b)一定量の水を含む分散媒を含む。
【0034】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットは、画定された中央領域及びエッジ領域を含み、エッジ領域は、少なくとも部分的に官能化され、中央領域は、少なくとも部分的に官能化されない。
【0035】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.1~約6重量%である。
【0036】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または約6重量%である。
【0037】
一実施形態では、水は、組成物の総重量に基づいて任意の望ましい量、好ましくは1~99重量%であり得、これは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、85、90、95、96、97、98、99重量%を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。より好ましくは、水の量は94~99.9重量%、最も好ましくは99~99.9重量%の範囲である。好ましくは、水は、蒸留及び/または脱イオンされる。好ましくは、水は、組成物の他の成分と接触する前に脱イオンされる。
【0038】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.1~約1重量%である。
【0039】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.2~約0.9重量%、約0.3~約0.8重量%、約0.4~約0.7重量%、または約0.5~約0.6重量%である。
【0040】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.25~約1重量%である。
【0041】
一実施形態では、分散媒は、1つ以上の共溶媒をさらに含む。
【0042】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジ-プロピレングリコールまたはグリセリンなどのグリコールから選択され、その中でも、化学的安定性と低コストの点でエチレングリコール及びプロピレングリコールが好ましい。
【0043】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、グリコールと同様の効果を引き出すことができるグライム、ジグライムなどであり得る。
【0044】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、ヘキサン酸、ヘプタン酸及びそれらの塩、ならびにC~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩の中から選択される少なくとも1つの成分から選択される。ヘキサン酸、ヘプタン酸及びそれらの塩は、それぞれ優れたアルミニウム及び鉄の腐食防止特性を有し、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩の群から選択される少なくとも1種の成分と協働して、冷却システムにおけるキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0045】
一実施形態では、ヘキサン酸及びヘプタン酸の塩は、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩であり得るが、その中でアルカリ金属塩が好ましい。好ましいアルカリ金属塩は、ナトリウム塩及びカリウム塩である。これらの化学薬品の複数が、本発明の組成物中に混合され得る。
【0046】
一実施形態では、ヘキサン酸、ヘプタン酸及び/またはそれらの塩は、本発明の組成物中に総量約0.1~5.0重量%で混合される。この範囲未満では金属腐食やキャビテーションの防止が不十分であり、この範囲を超えると不経済となる場合がある。
【0047】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩は、個別に金属腐食、特にアルミニウム及び鉄の腐食を抑制することができ、またヘキサン酸、ヘプタン酸及び/またはそれらの塩と協働して冷却システムにおけるキャビテーションを抑制することができる。さらに、冷却液中の硬水ミネラルによる沈殿を個別に抑制できる。
【0048】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸は、p-トルイル酸、p-エチル安息香酸、p-プロピル安息香酸、p-イソプロピル安息香酸、p-ブチル安息香酸、またはp-tertブチル安息香酸であり得る。C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸の塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などであり得、その中でナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましくなり、これらの塩は複数混合できる。
【0049】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及び/またはその塩は、本発明の組成物中に単独または複数を総量で約0.1~5.0重量%混合することができる。その範囲未満である場合、金属腐食及びキャビテーションの抑制において非効率となり、その範囲を超えると不経済となる可能性がある。
【0050】
一実施形態では、1つ以上のトリアゾールをさらに混合することもでき、冷却システム内の金属、特に銅やアルミニウムの腐食を効果的に抑制する。このようなトリアゾールは、好ましくは、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4-フェニル-1,2,3-トリアゾール及び2-ナフトトリアゾール、または4-ニトロベンゾトリアゾールから選択される。
【0051】
一実施形態では、トリアゾール(複数可)は、約0.05~1.0重量%の量で混合され得る。その範囲未満である場合、金属腐食の抑制が不十分であり、その範囲を超えると不経済となる場合がある。
【0052】
一実施形態では、本発明の組成物は、必要に応じて、ある特定の成分、すなわちアミン塩またはホウ酸塩が存在しないことを特徴としてもよい。アミン塩が存在しないことで冷却液中のニトロソアミンの生成が防止され、ホウ酸塩が存在しないことでアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食が軽減される。
【0053】
一実施形態では、組成物は、必要に応じて、かつ選択的に、泡立ち防止剤及び/または着色剤及び/またはモリブデン酸塩、タングステン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、メルカプトベンゾチアゾール、またはそれらのアルカリ金属塩などの従来の金属腐食防止剤を含み得る。
【0054】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコールまたはプロピレングリコールである。好ましくは、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコールである。
【0055】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約50:50の重量比で含む。
【0056】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約60:40の重量比で含む。
【0057】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約70:30の重量比で含む。
【0058】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約80:20の重量比で含む。
【0059】
一実施形態では、使用される1つ以上の共溶媒は、組成物の総重量に基づいて任意の望ましい量、好ましくは1~99重量%であり得、これは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、85、90、95、96、97、98、99重量%を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。
【0060】
一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1種のフッ素系界面活性剤を、組成物の総重量に基づいて0.001~50重量%の量でさらに含み、これは、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。フッ素系界面活性剤は、望ましくは、未処理の水/グリコール混合物と比較して接触角(例えば、液滴の高さ)の減少を引き起こし、液体もしくは固体の表面特性を改変し、または流体の表面張力もしくは2つの非混和性流体、例えば油と水の間の界面張力を減少させる。好ましくは、フッ素系界面活性剤は、水に溶ける。好ましいフッ素系界面活性剤は、Zonyl FSA、FSE、FSJ、FSP、TBS、FSO、FSH、FSN、FSD及びFSKを含むが、これらに限定されないZonylフッ素系界面活性剤(アニオン性、非イオン性及び両性フッ素化界面活性剤)、より好ましくは、非イオン性のZonylフッ素系界面活性剤、最も好ましくは、Zonyl FSH、FSNまたはFSP(典型的には、フルオロアルキルアルコールで置換されたポリエチレングリコールと水と、グリコールまたはジプロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテルとの混合物)を含むが、これらに限定されない。フッ素系界面活性剤は単独で使用することもできるし、必要に応じて他のフッ素系界面活性剤や非フッ素系界面活性剤と組み合わせて使用することもできる。
【0061】
一実施形態では、消泡剤が存在する場合、泡の蓄積を減らすか、泡を破裂させて閉じ込められた空気を放出することによって泡または閉じ込められた空気を減らすのに十分な量で消泡剤を使用することができる。好ましくは、消泡剤は、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で使用され、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。1つ以上の消泡剤が存在してもよい。好ましい消泡剤は、エチレングリコールn-ブチルエーテルベースの消泡剤、シリコーンエマルジョン、炭化水素油エマルジョン、EO/POコポリマー及び油溶性、水混和性消泡剤を含むが、これらに限定されない。
【0062】
一実施形態では、組成物は、本発明の組成物と接触する露出した金属表面の腐食を抑制または低減するのに十分な量、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で1つ以上の腐食防止剤を含み、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。好ましい腐食防止剤は、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アゾニトリル、リン酸二カリウム、安息香酸ナトリウム及びそれらの混合物を含む、従来または商業的に使用される任意の腐食防止剤を含むが、これらに限定されない。より好ましくは、腐食防止剤は、亜硝酸塩、硝酸塩及び水酸化ナトリウムの水溶液である。
【0063】
一実施形態では、組成物は、使用者が組成物を無色の液体、特に水と容易に区別できるようにするために、着色剤を含み得る。適切な着色剤は、任意の従来の着色剤であり得、オレンジ、青、緑、赤と黄色、及びそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の望ましい色であり得る。染料が存在する場合、必要な色を提供するために任意の量、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で染料を使用され得、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。1つ以上の染料が存在してもよい。より好ましくは、任意の光安定性の透明な水溶性有機染料が適しており、それは、特に好ましいアシッドレッド染料、メチレンブルー、ウラニン染料、ウールイエロー染料及びローダミン染料を含む、これらに限定されない。
【0064】
一実施形態では、組成物のpHは、必要に応じて調整され得る。pH活性である任意の化合物が適切に使用され、当技術分野で知られているものに従って選択され得る。pHは、3~11の範囲であってよく、これは、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。pH調整剤としては、アミノメチルプロパノールが好ましい。好ましくは、pHは、腐食防止剤または腐食防止剤組成物の予備アルカリ度の使用を回避するために調整される。
【0065】
一実施形態では、プレートレットは、最大700mg/mLの濃度で、水中で安定した分散液を形成することができる。
【0066】
一実施形態では、プレートレットの導電率は、約900S/cmである。
【0067】
一実施形態では、プレートレットは、官能化されたエッジまたは表面の少なくとも1つに金属イオンを追加することによってさらに官能化される。
【0068】
一実施形態では、前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される。
【0069】
本発明の第2態様によれば、熱流体として使用するための組成物が提供され、組成物は、
a)ポリマーと、グラフェンのベース層を含む分散性グラフェンプレートレットとを含む、一定量のポリマーマトリックス複合材料であって、少なくとも1つの不連続グラフェン層がベース層上に積層され、少なくとも1つの不連続層は、ベース層よりも小さい表面積を有し、ベース層及び少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、ポリマーマトリックス複合材料と、
b)一定量の水を含む分散媒を含む。
【0070】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットは、画定された中央領域及びエッジ領域を含み、エッジ領域は、少なくとも部分的に官能化され、中央領域は、少なくとも部分的に官能化されない。
【0071】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.1~約6重量%である。
【0072】
一実施形態では、分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.25~約1重量%である。
【0073】
一実施形態では、分散媒は、1つ以上の共溶媒をさらに含む。
【0074】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジ-プロピレングリコールまたはグリセリンなどのグリコールから選択され、その中でも、化学的安定性と低コストの点でエチレングリコール及びプロピレングリコールが好ましい。
【0075】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、ヘキサン酸、ヘプタン酸及びそれらの塩、ならびにC~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩の中から選択される少なくとも1つの成分から選択される。ヘキサン酸、ヘプタン酸及びそれらの塩は、それぞれ優れたアルミニウム及び鉄の腐食防止特性を有し、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩の群から選択される少なくとも1種の成分と協働して、冷却システムにおけるキャビテーションを効果的に防止することができる。
【0076】
一実施形態では、ヘキサン酸及びヘプタン酸の塩は、それらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩であり得るが、その中でアルカリ金属塩が好ましい。好ましいアルカリ金属塩は、ナトリウム塩及びカリウム塩である。これらの化学薬品の複数は、本発明の組成物中に混合され得る。
【0077】
一実施形態では、ヘキサン酸、ヘプタン酸及び/またはそれらの塩は、本発明の組成物中に総量約0.1~5.0重量%で混合される。この範囲未満では金属腐食やキャビテーションの防止が不十分であり、この範囲を超えると不経済となる場合がある。
【0078】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及びそれらの塩は、個別に金属腐食、特にアルミニウム及び鉄の腐食を抑制することができ、またヘキサン酸、ヘプタン酸及び/またはそれらの塩と協働して冷却システムにおけるキャビテーションを抑制することができる。さらに、冷却液中の硬水ミネラルによる沈殿を個別に抑制できる。
【0079】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸は、p-トルイル酸、p-エチル安息香酸、p-プロピル安息香酸、p-イソプロピル安息香酸、p-ブチル安息香酸、またはp-tertブチル安息香酸であり得る。C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸の塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などであり得、その中でナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましくなり、これらの塩は複数混合できる。
【0080】
一実施形態では、C~Cアルキルを有するアルキル安息香酸及び/またはその塩は、本発明の組成物中に単独または複数を総量で約0.1~5.0重量%混合することができる。その範囲未満である場合、金属腐食及びキャビテーションの抑制において非効率となり、その範囲を超えると不経済となる可能性がある。
【0081】
一実施形態では、1つ以上のトリアゾールをさらに混合することもでき、冷却システム内の金属、特に銅やアルミニウムの腐食を効果的に抑制する。このようなトリアゾールは、好ましくは、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4-フェニル-1,2,3-トリアゾール及び2-ナフトトリアゾール、または4-ニトロベンゾトリアゾールから選択される。
【0082】
一実施形態では、トリアゾールは、約0.05~1.0重量%の量で混合され得る。その範囲未満である場合、金属腐食の抑制が不十分であり、その範囲を超えると不経済となる場合がある。
【0083】
一実施形態では、本発明の組成物は、必要に応じて、ある特定の成分、すなわちアミン塩またはホウ酸塩が存在しないことを特徴としてもよい。アミン塩が存在しないことで冷却液中のニトロソアミンの生成が防止され、ホウ酸塩が存在しないことでアルミニウム及びアルミニウム合金の腐食が軽減される。
【0084】
一実施形態では、組成物は、必要に応じて、かつ選択的に、泡立ち防止剤及び/または着色剤及び/またはモリブデン酸塩、タングステン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、メルカプトベンゾチアゾール、またはそれらのアルカリ金属塩などの従来の金属腐食防止剤を含み得る。
【0085】
一実施形態では、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコールまたはプロピレングリコールである。好ましくは、1つ以上の共溶媒は、エチレングリコールである。
【0086】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約50:50の重量比で含む。
【0087】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約60:40の重量比で含む。
【0088】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約70:30の重量比で含む。
【0089】
一実施形態では、分散媒は、水及び1つ以上の共溶媒を約80:20の重量比で含む。
【0090】
一実施形態では、使用される1つ以上の共溶媒は、組成物の総重量に基づいて任意の望ましい量、好ましくは1~99重量%であり得、これは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、85、90、95、96、97、98、99重量%を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。
【0091】
一実施形態では、本発明の組成物は、少なくとも1種のフッ素系界面活性剤を、組成物の総重量に基づいて0.001~50重量%の量でさらに含み、これは、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。フッ素系界面活性剤は、望ましくは、未処理の水/グリコール混合物と比較して接触角(例えば、液滴の高さ)の減少を引き起こし、液体もしくは固体の表面特性を改変し、または流体の表面張力もしくは2つの非混和性流体、例えば油と水の間の界面張力を減少させる。好ましくは、フッ素系界面活性剤は、水に溶ける。好ましいフッ素系界面活性剤は、Zonyl FSA、FSE、FSJ、FSP、TBS、FSO、FSH、FSN、FSD及びFSKを含むが、これらに限定されないZonylフッ素系界面活性剤(アニオン性、非イオン性及び両性フッ素化界面活性剤)、より好ましくは、非イオン性のZonylフッ素系界面活性剤、最も好ましくは、Zonyl FSH、FSNまたはFSP(典型的には、フルオロアルキルアルコールで置換されたポリエチレングリコールと水と、グリコールまたはジプロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテルとの混合物)を含むが、これらに限定されない。フッ素系界面活性剤は単独で使用することもできるし、必要に応じて他のフッ素系界面活性剤や非フッ素系界面活性剤と組み合わせて使用することもできる。
【0092】
一実施形態では、消泡剤が存在する場合、泡の蓄積を減らすか、泡を破裂させて閉じ込められた空気を放出することによって泡または閉じ込められた空気を減らすのに十分な量で消泡剤を使用することができる。好ましくは、消泡剤は、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で使用され、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。1つ以上の消泡剤が存在してもよい。好ましい消泡剤は、エチレングリコールn-ブチルエーテルベースの消泡剤、シリコーンエマルジョン、炭化水素油エマルジョン、EO/POコポリマー及び油溶性、水混和性消泡剤を含むが、これらに限定されない。
【0093】
一実施形態では、組成物は、本発明の組成物と接触する露出した金属表面の腐食を抑制または低減するのに十分な量、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で1つ以上の腐食防止剤を含み、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。好ましい腐食防止剤は、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アゾニトリル、リン酸二カリウム、安息香酸ナトリウム及びそれらの混合物を含む、従来または商業的に使用される任意の腐食防止剤を含むが、これらに限定されない。より好ましくは、腐食防止剤は、亜硝酸塩、硝酸塩及び水酸化ナトリウムの水溶液である。
【0094】
一実施形態では、組成物は、使用者が組成物を無色の液体、特に水と容易に区別できるようにするために、着色剤を含み得る。適切な着色剤は、任意の従来の着色剤であり得、オレンジ、青、緑、赤と黄色、及びそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない、任意の望ましい色であり得る。染料が存在する場合、必要な色を提供するために任意の量、好ましくは、組成物の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で染料を使用され得、これは、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50重量%を含むそのその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。1つ以上の染料が存在してもよい。より好ましくは、任意の光安定性の透明な水溶性有機染料が適しており、それは、特に好ましいアシッドレッド染料、メチレンブルー、ウラニン染料、ウールイエロー染料及びローダミン染料を含む、これらに限定されない。
【0095】
一実施形態では、組成物のpHは、必要に応じて調整され得る。pH活性である任意の化合物が適切に使用され、当技術分野で知られているものに従って選択され得る。pHは、3~11の範囲であってよく、これは、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5を含むその間の全ての値及び部分的な範囲を含む。pH調整剤としては、アミノメチルプロパノールが好ましい。好ましくは、pHは、腐食防止剤または腐食防止剤組成物の予備アルカリ度の使用を回避するために調整される。
【0096】
一実施形態では、プレートレットは、最大700mg/mLの濃度で、水中で安定した分散液を形成することができる。
【0097】
一実施形態では、プレートレットの導電率は、約900S/cmである。
【0098】
一実施形態では、プレートレットは、官能化されたエッジまたは表面の少なくとも1つに金属イオンを追加することによってさらに官能化される。
【0099】
一実施形態では、前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される。
【0100】
一実施形態では、プレートレットは、最大700mg/mLの濃度で水中で安定した分散液を形成することができる。
【0101】
一実施形態では、プレートレットの導電率は、約900S/cmである。
【0102】
一実施形態では、プレートレットは、官能化されたエッジまたは表面の少なくとも1つに金属イオンを追加することによってさらに官能化される。
【0103】
一実施形態では、前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される。
【0104】
一実施形態では、ポリマーは、アルギン酸塩、キトサン、PVA、PEG、PU、PEI、PVDF、PDMSまたはPEDOT PSSから選択される。
【0105】
本発明の第3態様によれば、熱流体として使用するための組成物の生成方法が提供され、方法は、
a)グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットを形成するステップであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層がベース層上に積層され、少なくとも1つの不連続層は、ベース層よりも小さい表面積を有し、ベース層及び少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、有機ニトリル(アセトニトリルなど)、エステル(酢酸エチルなど)及び水を含む溶液中にグラファイトまたはグラフェンを懸濁することによって少なくとも部分的に官能化され、懸濁したグラファイトまたはグラフェンを含む溶液を酸化剤(四酸化ルテニウムなど)と反応させて、グラファイトまたはグラフェンのエッジ領域を少なくとも部分的に官能化するステップと、
b)一定量の水を含む分散媒を形成するステップと、
c)一定量の分散性グラフェンプレートレットと一定量の水とを混合し、それによって実質的に均質な組成物を生成するステップを含む。
【0106】
一実施形態では、方法は、分散性グラフェンプレートレットが全体に実質的に規則的に分布することを確保するために、得られた溶液を均質化するステップをさらに含む。
【0107】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を氷浴中で冷却するステップをさらに含む。
【0108】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を均質化するステップをさらに含む。
【0109】
一実施形態では、均質化は、20000rpmで最大2時間行われる。
【0110】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を超音波処理するステップをさらに含む。
【0111】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を濾過して、濾過固体を生成するステップをさらに含む。
【0112】
一実施形態では、方法は、濾過固体を洗浄するステップをさらに含む。
【0113】
一実施形態では、方法は、濾過固体をHCl及び水で洗浄することを含む洗浄をさらに含む。
【0114】
一実施形態では、濾過固体を、濾過固体を洗浄することによって得られた濾液が無色になるまでHClで洗浄し、次いで濾液が中性になるまで水で洗浄する。
【0115】
一実施形態では、濾過固体を、エタノールまたはアセトンなどの有機溶媒で洗浄する。
【0116】
一実施形態では、濾過固体を真空中で乾燥させて、乾燥粉末を生成する。
【0117】
一実施形態では、濾過固体を凍結乾燥して、乾燥粉末を生成する。
【0118】
一実施形態では、乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を最長48時間静置して、固体と上澄みを生成し、上澄みをデカントして濾過してグラフェン粉末を生成する。
【0119】
一実施形態では、グラフェン粉末を有機溶媒で洗浄し、乾燥させる。
【0120】
一実施形態では、乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を遠心分離して、固体と上澄みを生成する。
【0121】
一実施形態では、酸化剤は、四酸化ルテニウムである。
【0122】
一実施形態では、四酸化ルテニウムは、過ヨウ素酸ナトリウムと、懸濁したグラフェンまたはグラファイトを含む溶液に追加された塩化ルテニウムとの反応によって得られる。
【0123】
一実施形態では、グラフェンまたはグラファイトは、層間間隔が増加した拡張グラファイトの形態で提供される。
【0124】
一実施形態では、次いで、濾過固体を金属イオンを含む溶液中に分散させて、金属イオンをプレートレットの表面または官能化されたエッジの少なくとも1つに結合させる。
【0125】
一実施形態では、前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される。
【0126】
本発明の第4態様によれば、熱流体として使用するための組成物の生成方法が提供され、方法は、
【0127】
a)ポリマーと、グラフェンのベース層を含む分散性グラフェンプレートレットとを含む、一定量のポリマーマトリックス複合材料を形成するステップであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層が前記ベース層上に積層され、前記少なくとも1つの不連続層は、前記ベース層よりも小さい表面積を有し、前記ベース層及び前記少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、ステップと、
b)一定量の水を含む分散媒を形成するステップと、
c)一定量の分散性グラフェンプレートレットと一定量の水とを混合し、それによって実質的に均質な組成物を生成するステップを含む。
【0128】
一実施形態では、方法は、分散性グラフェンプレートレットが全体に実質的に規則的に分布することを確保するために、得られた溶液を均質化するステップをさらに含む。
【0129】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を氷浴中で冷却するステップをさらに含む。
【0130】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を均質化するステップをさらに含む。
【0131】
一実施形態では、均質化は、20000rpmで最大2時間行われる。
【0132】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を超音波処理するステップをさらに含む。
【0133】
一実施形態では、方法は、ステップbで得られた溶液を濾過して、濾過固体を生成するステップをさらに含む。
【0134】
一実施形態では、方法は、濾過固体を洗浄するステップをさらに含む。
【0135】
一実施形態では、方法は、濾過固体をHCl及び水で洗浄することを含む洗浄をさらに含む。
【0136】
一実施形態では、濾過固体を、濾過固体を洗浄することによって得られた濾液が無色になるまでHClで洗浄し、次いで濾液が中性になるまで水で洗浄する。
【0137】
一実施形態では、濾過固体を、エタノールまたはアセトンなどの有機溶媒で洗浄する。
【0138】
一実施形態では、濾過固体を真空中で乾燥させて、乾燥粉末を生成する。
【0139】
一実施形態では、濾過固体を凍結乾燥して、乾燥粉末を生成する。
【0140】
一実施形態では、乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を最長48時間静置して、固体と上澄みを生成し、上澄みをデカントして濾過してグラフェン粉末を生成する。
【0141】
一実施形態では、グラフェン粉末を有機溶媒で洗浄し、乾燥させる。
【0142】
一実施形態では、乾燥粉末を水に分散させ、最長30分間超音波処理し、得られた混合物を遠心分離して、固体と上澄みを生成する。
【0143】
一実施形態では、酸化剤は、四酸化ルテニウムである。
【0144】
一実施形態では、四酸化ルテニウムは、過ヨウ素酸ナトリウムと、懸濁したグラフェンまたはグラファイトを含む溶液に追加された塩化ルテニウムとの反応によって得られる。
【0145】
一実施形態では、グラフェンまたはグラファイトは、層間間隔が増加した拡張グラファイトの形態で提供される。
【0146】
一実施形態では、次いで、濾過固体を金属イオンを含む溶液中に分散させて、金属イオンをプレートレットの表面または官能化されたエッジの少なくとも1つに結合させる。
【0147】
一実施形態では、前記金属イオンは、Fe、Cu、Co及びSnから選択される。
【0148】
本発明の第5態様によれば、本発明の第3態様による方法によって生成される場合の、本発明の第1態様による組成物が提供される。
【0149】
本発明の第6態様によれば、本発明の第4態様による方法によって生成される場合の、本発明の第2態様による組成物が提供される。
【0150】
本発明の好ましい実施形態について、以下の代表的かつ非限定的な図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1】分散性グラフェンプレートレットの概略図を示す。
図2】単一の分散性グラフェンプレートレットの低倍率明視野TEM画像を示す。
図3】分散性グラフェンプレートレットのエッジの高倍率明視野TEM画像を示す。
図4】5000倍の倍率での分散性グラフェンプレートレットのSEM画像を示す。
図5A】グラフェンプレートレットのサンプルのラマンスペクトルを示す。
図5B】99.9999%グラファイトのラマンスペクトルを示す。
図6A】分散性グラフェンプレートレットのエッジのラマンスペクトルからの拡張2Dバンドを示す。
図6B】分散性グラフェンプレートレットの基底面のラマンスペクトルからの拡張2Dバンドを示す。
図7A】グラフェンプレートレットのサンプルのXRDスペクトルを示す。
図7B】99.9999%グラファイトとグラフェンプレートレットの両方のXRDスペクトルを示す。
図8】グラフェンプレートレットのサンプルのXPSスペクトルを示す。
図9】グラフェンプレートレットの分散液の滴定のグラフを示す。
図10】低倍率及び高倍率でのEFGのTEM画像を示す。a)画像にはいくつかのEFG NPが表示される。b)典型的なEFG NPの明視野画像。c)とd)1~4層の存在を確認する典型的なシートのエッジの高解像度画像。c)では、単層を示すEFGのエッジに留意されたい。一方、d)では、2層が見られる。典型的なEFGプレートレットの、エッジにおけるe)明視野(BF)画像とf)環状暗視野画像(HAADF)。(i)、(ii)、(iii)は、それぞれ単層、二重層、三層を示し、(iv)は、エッジの酸素が豊富な領域を表す。(i)~(iii)では、層数の増加によって回折が増加するが、エッジ(iv)では、より高い回折は、より重い原子(おそらくCOOH基を形成するために重なった2つの酸素原子)の存在の結果である。
図11】データファームの現在のモデリングに適用される参照データを示す。純粋なグラフェンのCは、約7~20J/kmolである。
図12】70:30の水:エチレングリコールでの0.25重量%のエッジ官能化グラフェンの熱分析レポートを示す。
図13】70:30の水:エチレングリコールでの0.5重量%のエッジ官能化グラフェンの熱分析レポートを示す。
図14】70:30の水:エチレングリコールでの0.75重量%のエッジ官能化グラフェンの熱分析レポートを示す。
図15A】出願人が実行したデータセンタ冷却モデリングの設計基準を示す。ラックあたり42台のサーバがあり、100個のラック、ラックあたり12kWの電力入力、4200台のサーバ、サーバごとに287Wの熱が発生し、各サーバラックで発生する総熱量が1205Wである。
図15B】出願人が実行したデータセンタ冷却モデリングの設計基準を示す。ラックあたり42台のサーバがあり、100個のラック、ラックあたり12kWの電力入力、4200台のサーバ、サーバごとに287Wの熱が発生し、各サーバラックで発生する総熱量が1205Wである。
図15C】出願人が実行したデータセンタ冷却モデリングの設計基準を示す。ラックあたり42台のサーバがあり、100個のラック、ラックあたり12kWの電力入力、4200台のサーバ、サーバごとに287Wの熱が発生し、各サーバラックで発生する総熱量が1205Wである。
図15D】出願人が実行したデータセンタ冷却モデリングの設計基準を示す。ラックあたり42台のサーバがあり、100個のラック、ラックあたり12kWの電力入力、4200台のサーバ、サーバごとに287Wの熱が発生し、各サーバラックで発生する総熱量が1205Wである。
図15E】出願人が実行したデータセンタ冷却モデリングの設計基準を示す。ラックあたり42台のサーバがあり、100個のラック、ラックあたり12kWの電力入力、4200台のサーバ、サーバごとに287Wの熱が発生し、各サーバラックで発生する総熱量が1205Wである。
図16】0~5重量%の濃度でのエッジ官能化グラフェン熱流体の熱性能を示す。データから、導電性構成要素のエッジ官能化グラフェンが熱遮断と熱性能の向上に重要な役割を果たすことがわかる。
図17A】約0~5重量%の間のエッジ官能化グラフェン濃度からの熱面積の推定減少(%)に対する熱係数の増加(%)をマッピングする。
図17B図17Aで行った推定を試験する。計算されたCと熱試験結果のCをプロットする。
図18】約100m/時間から約225m/時間までの流量における冷却ポンプの能力要求を示す。
図19】本シミュレーションの冷却塔のモデリングにおけるエンタルピーと温度の関係を示す。
図20】0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、2及び5重量%のエッジ官能化グラフェン濃度にわたる高レベルの冷却塔面積推定を示す。
図21】4000台のサーバのモデリングで実行された計算と、サーバ/メインフレームに対して36.58%と計算された電力出力の割り当てを示す。
図22図21と同様の電力割り当てを示しており、これに対して年間エネルギー節約データが計算された。
図23】本発明のエッジ官能化グラフェン熱流体を使用した場合に予想される消費電力の減少を示す。約0.25重量%と約1重量%との間の濃度において、節約率が最も顕著であることが明らかにわかる。これらのデータは、70:30の水/エチレングリコールの分散媒中でエッジ官能化グラフェンを使用して取得された。
【発明を実施するための形態】
【0152】
本発明は、熱流体として使用するための組成物を提供し、組成物は、
【0153】
a)グラフェンのベース層を含む、一定量の分散性グラフェンプレートレットであって、少なくとも1つの不連続グラフェン層がベース層上に積層され、少なくとも1つの不連続層は、ベース層よりも小さい表面積を有し、ベース層及び少なくとも1つの不連続層のエッジ領域は、少なくとも部分的に官能化される、分散性グラフェンプレートレットと、
b)一定量の水を含む分散媒を含む。
【0154】
分散性グラフェンプレートレットの量は、組成物の約0.1~約6重量%であるが、経験的にモデリングされたデータにより、約0.25~約1重量%が最適であることが示される。
【0155】
好ましくは、分散媒は、水であり、水とエチレングリコールまたはプロピレングリコールとの体積比が約70:30であり得る。
【0156】
上述したように、1つ以上の共溶媒を組成物に加えることができる。このような共溶媒は、グリコール、アルコール、界面活性剤、染料、消泡剤、酸、塩基などを含む。
【0157】
Thermal Analysis Labs(TAL)は、分散媒に関して上述したように、70:30の水/エチレングリコールでのエッジ官能化グラフェンの9つの組成物の熱量測定及び熱伝導率分析を実施した。そのデータは、以下の表1に示される。
【表1】
【0158】
上記で得られたデータは、添付の図11~23に示すように、データセンタに適用できる潜在的なエネルギー節約をモデリングするために使用された。特に、図23は、本発明に記載の熱流体を約0.25~約1重量%の範囲の濃度で使用すると、約10~約50%の年間エネルギー節約が達成可能であることを示す。約1重量%を超えるエッジ官能化グラフェンのエネルギー節約はそれほど顕著ではなく、70:30の水/エチレングリコールでのエッジ官能化グラフェンの最適濃度が約0.2~約1重量%であることを示唆する。
【0159】
データに基づいて、いくつかの結論に達し得る。エッジ官能化グラフェン組成の増加により、熱性能が向上し、おそらく最適な組成は、0.25~1重量%未満の範囲であると考えられ、エッジ官能化グラフェン熱流体は、冷却塔の範囲内で熱遮断を向上させ、それによってデータセンタのエネルギー使用量を削減し、推定年間エネルギー削減範囲は、約15%~約30%(エッジ官能化グラフェン濃度が0.25~0.75重量%の場合)であり、また、商業的に最も重要なことは、エッジ官能化グラフェンにより、従来及び将来のデータセンタ冷却システムが熱遮断性能、エネルギー節約、コスト削減の大幅な向上を達成することを可能にし得ることである。
【0160】
分散性グラフェンプレートレットは、ミクロンスケールのグラフェンのベース層を含む構造を有する。このベース層の表面には、不規則なナノメートルサイズのグラフェン層があり、ベース層の上に7~9層もの高さに積層することができる。別の言い方をすれば、この構造は、上に少なくとも1つのグラフェンの不連続層が積層されたグラフェンのベース層を含み、ベース層のグラフェンの各層は、それが上に積層された層よりも小さい表面積を有する。ベース層のエッジとその上に積層された不連続層は全て少なくとも部分的に官能化され、ベース層によるグラフェンのような特性と、各プレートレットの官能化基の量の増加による分散性の向上による構造を提供する。
【0161】
図1及び2~4は、それぞれ分散性グラフェンプレートレット10の概略図及び顕微鏡画像を示す。ベースグラフェン層1は、ミクロンレベルのサイズであり、そのエッジの周囲にヒドロキシル酸またはカルボン酸などの官能基5を特徴とする。プレートレット10は、ベース層1の表面に積層された不連続グラフェン層2をさらに含む。さらに不連続グラフェン層3及び4が層2の上に積層され、各不連続層の表面積はその下の層に比べて小さくなり得る。各不連続層のエッジは、官能化基5の形態である程度の官能化が施されることも特徴とする。
【0162】
好ましい実施形態では、RuOが、グラフェンプレートレットのエッジを官能化するための酸化剤として使用され得る。RuOは、強力かつ選択的な酸化効果により適しており、内部構造を修飾せずにグラフェン構造の最外環をカルボン酸またはフェノールに部分的に変換できる。RuOは、溶液中のRuClとNaIOの反応によってグラフェンまたはグラファイトに提供され得る。
【0163】
別の好ましい実施形態では、分散性グラフェンプレートレットを生成するために使用されるグラファイトは、溶液中に入れる前に、まず熱膨張させて層間間隔を増大させることができる。これは、非限定的な一例では、700~1000℃の温度で実行され得る。このように処理されたグラファイトは、一般に拡張グラファイトと呼ばれる。
【0164】
生成されたグラフェンプレートレット分散液は、導電性材料を生成するために使用され得る。例えば、これらのプレートレットを使用して、プレートレットの分散液とナフィオンまたはPVDFなどの結合剤との混合物を使用して電気化学プロセス用の電極を製造し、得られた混合物を電極表面にコーティングすることが望ましい場合がある。この方法で製造された電極は、電池またはCO削減などの電気化学プロセスに使用され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、生成されたグラフェンプレートレットは、プレートレットの官能化されたエッジまたは表面のいずれかに金属イオンを結合させることによってさらに官能化され得る。いくつかの好ましい実施形態では、金属イオンは、鉄、銅、コバルト、錫から選択される。
【0166】
本開示は、前述のグラフェンプレートレットを生成する方法の非限定的な実施形態の以下の例からよりよく理解されるであろう。
【0167】
第1の実験では、純度99.9999%のグラフェン100mgを、2mLのMeCN、2mLのEtOAc及び2mLの水を含む溶液に懸濁した。222mg(0.125当量)のNaIO及び4mg(0.002当量)のRuCl・xHO。得られた混合物を、氷浴を使用して冷却し、20000rpmで1時間均質化した。この後、混合物を2時間超音波処理し、濾過し、濾液が無色になるまで水及び1M HClで洗浄した。次いで、濾液が中性になるまで濾液を水で洗浄した。次いで、濾液を凍結乾燥して、エッジ官能化グラフェンプレートレットを含む黒色粉末を生成した。
【0168】
第2実験では、グラファイト(20g、1.67mol)をMeCN(400mL)、EtOAc(400mL)及び水(600mL)に懸濁した。NaIO(71.2g、333mmol)及びRuCl・xHO(820mg、3.4mmol、約0.2mol%)を加え、得られた混合物を氷浴で冷却し、1時間均質化(約20000rpm)した。次いで、ホモジナイザーを取り外し、混合物を2時間超音波処理した。懸濁液を濾過し、次いで濾過固体を水(100mL)で洗浄して濾液が無色になるまで過剰の1M HClを除去し、次いで濾液が中性になるまで再度水で洗浄した。得られた固体を水に懸濁し、凍結乾燥するか、エタノールで洗浄して真空乾燥して、生成物を黒色粉末として得ることができる。
【0169】
これらの実験では、四酸化ルテニウムが過ヨウ素酸ナトリウムと塩化ルテニウムによって形成されたが、次亜塩素酸ナトリウムなどの他の酸化剤を代わりに使用できることが理解されるであろう。
【0170】
非分散性粒子を除去することによって、より長く持続する分散を達成できることも見出された。これは、乾燥粉末の水中分散液を最長30分間超音波処理し、得られた分散液を最長48時間静置するか、分散液を遠心分離することを含む、乾燥粉末に対する追加のプロセスによって行うことができる。次いで、分散液の上澄みをデカントして沈降粒子を除去し、次いで上澄みを濾過してグラフェン粉末を取得することができる。次いで、この粉末をエタノールやアセトンなどの有機溶媒で洗浄し、真空乾燥または凍結乾燥することができる。
【0171】
プレートレットの特徴を明らかにし、各層のエッジに官能基が存在することを確認するために、いくつかの実験が行われた。これらについては以下で説明する。
【0172】
ラマン分光法を使用して、生成されたグラフェンプレートレットの化学構造をバルクグラファイトの化学構造と比較した。図5A及び5Bに示すように、生成されたグラフェンプレートレットと99.9999%の純度のグラファイトのラマンスペクトルがそれぞれ示される。どちらのスペクトルも、Dバンド6、6’、Gバンド7、7’及び2Dバンド8、8’を示す。還元された酸化グラフェンによって生成されるグラフェン構造は、通常、Gバンドよりも大きなDバンドを示すが、生成されたプレートレットには当てはまらない。これは、プレートレットが実質的にグラフェンであることを示唆する。図6A及び6Bに示すように、グラフェンプレートのエッジと基底面のそれぞれの2Dラマンバンドの分析により、厚さ測定基準Mを決定することができ、これを使用して、式
【数1】
に従ってグラフェンフレークNあたりの単層の数を決定できる。これにより、グラフェンプレートレットのエッジに2層、基底面に最大6層があることが確認された。
【0173】
図7A及び7Bに示すように、これは、グラフェンプレートレットスペクトル9がグラファイト11のスペクトルと実質的に一致するX線回折の結果によってさらに裏付けられる。XRDは、結晶化度の尺度を提供し、多数のグラフェン層からなるグラファイトは、必然的に数層しか持たないグラフェンプレートレットよりもはるかに高い結晶化度を有するため、強度の低下が予想される。グラファイト11と比較してプレートレットスペクトル9のわずかなシフトは、層間距離を増加させるエッジの官能基に起因する。
【0174】
官能基の存在を、X線光電子分光法を使用して調査した。これは、やはりグラファイトと同様に、94%のCと約6%のOの組成を示した。図8に示すXPSスペクトルは、3つの異なるタイプのC原子、すなわち284.5eVの芳香族C(図8の14)、286.3eVのフェノール性C(図8の13)、及び289.8eVのカルボキシルC(図8の12)の存在を示し、カルボン酸及びフェノール基の存在を示唆する。熱重量分析を行ったところ、カルボン酸含量は、0.15ミリグラム当量/gと計算された。高角度環状暗視野(HAADF)走査型透過電子顕微鏡では、これらの位置に酸素原子が存在することに起因すると考えられる明るいエッジが示され、グラフェンプレートレットのエッジ官能化が成功したことが示唆された。カルボキシル基とフェノール基の両方の存在は、それぞれカルボキシル基及びフェノール基に起因する、pH=4.2及び8.0における2つのpKa値を示す図9に示すように、0.1M NaOH中のエッジ官能化グラフェンプレートレットの分散液を0.1M HClで滴定することによってさらに裏付けられた。
【0175】
プレートレットの構造が確立されたので、プレートレットの分散性と導電性、さらにポリマー複合材料に加工する能力を測定する実験が行われた。
【0176】
エッジ官能化グラフェンプレートレットは、以前の方法で達成された0.55mg/mLとは対照的に、最大700mg/mLの濃度で水に懸濁できることがわかった。最大10mg/mLのエッジ官能化グラフェンの水懸濁液は、少なくとも3か月間安定することがわかった。10mg/mLを超える懸濁液では、溶液中でプレートレットの沈降が観察されたが、溶液を短時間振盪することで再分散を達成できた。100mg/mLの懸濁液は水中で少なくとも6時間は安定することがわかっている。50mg/mLの懸濁液は、トルエン、エタノール、NMP、DMFなどの有機溶媒中で少なくとも6時間は安定することがわかっている。IPA、MeOH、CHCl、DMF、THFなどの他の溶媒でも分散性の向上が見られ、明示的に言及されない他の溶媒でもプレートレットの分散性が高い可能性があることが示唆される。
【0177】
溶媒に対するグラフェンプレートレットの割合が比較的高い懸濁液の場合、得られる溶液の性質が変化する可能性がある。水中で25重量%を超えるエッジ官能化グラフェンを含むエッジ官能化グラフェンプレートレットの懸濁液はペーストを形成することが見出されており、一方、水中に35重量%を超えるエッジ官能化グラフェンを含む懸濁液は、成形可能な生地を形成することが見出された。得られた生地の成形能力により、材料からほぼあらゆる形状を成形することができる。ペーストは、水、有機溶媒、イオン液体中で250mg/mLで観察される。生地は、水、有機溶媒及びイオン液体中で350~700mg/mLで観察される。
【0178】
エッジ官能化グラフェンプレートレットが、真空濾過を使用して自立紙に成形され、導電率を、4点プローブ導電率測定によって測定した。この自立紙は、900S/cmという非常に望ましい導電率を有することが見出された。
【0179】
あるいは、生成されたプレートレット分散液を使用して、例えばアルギン酸塩、キトサン、PVA、PEG、PU、PEI、PVDFまたはPEDOT PSSなどのポリマーを使用して複合材料を製造することもできる。第1の試験実験では、50mgのプレートレットと100mgのポリビニルアルコール(PVA)を150mLの水中で60℃で6~8時間、10~15mLに濃縮されるまで撹拌した。次に、ドロップキャスティングを使用して、PVA-グラフェンプレートレット複合材料の自立フィルムを生成した。別の複合材料製造の概念実証試験では、70%のグラフェンプレートレットと30%のキトサンを水に分散させた分散液を3D押出プリントして足場を形成した。
【0180】
生成されたプレートレット分散液は、金属官能化グラフェンプレートレットの製造にも使用された。0.1mg/mLの塩化鉄(FeCl)溶液と1mg/mLのグラフェンプレートレット分散液を混合することからなる概念実証試験を行った。次いで、混合物を室温で30分間撹拌した後、遠心分離し、水で洗浄して過剰の塩化鉄を除去し、次いで凍結乾燥した。これにより、XPS及びSEM画像で測定したところ、Fe官能化グラフェンプレートレットが得られ、XPSでは表面に0.4原子%の置換鉄ドーピングが示された。Fe官能化グラフェンプレートレットは、磁性挙動を示した。
【0181】
Fe官能化プレートレットをNガス下、750℃で1時間アニールすることによってさらなる官能化が達成され、プレートレット表面全体に鉄/酸化鉄ナノ粒子が分散した。塩化鉄の代わりに塩化銅及び塩化スズを使用した同様の試験では、銅/酸化銅及びスズ/酸化スズのナノ粒子がそれぞれプレートレットに結合する結果となった。
【0182】
ある特定の実施形態の前述の説明では、明確にするために特定の用語を使用している。しかし、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語には、同様の技術的目的を達成するために同様に機能する他の技術的等価物が含まれることを理解されたい。
【0183】
さらに、上記は、本発明(複数可)のいくつかの実施形態のみを説明しており、開示された実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、変更、修正、追加及び/または変化を行うことができ、実施形態は例示であって限定的なものではない。
【0184】
さらに、本発明(複数可)は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関連して説明しているが、本発明は開示された実施形態に限定されず、逆に、本発明(複数可)の精神及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図することを理解されたい。また、上述の様々な実施形態は、他の実施形態と併せて実施することができ、例えば、ある実施形態の態様を別の実施形態の態様と組み合わせて、さらに他の実施形態を実現することができる。さらに、任意のアセンブリのそれぞれの独立した特徴または構成要素は、追加の実施形態を構成することができる。
【0185】
産業上の利用可能性
本明細書で実証されるように、本発明のエッジ官能化グラフェン熱流体は、従来及び将来のデータセンタ冷却システムが、熱遮断性能、エネルギー節約及びコスト削減において大幅な改善を達成することを可能にし得る。
図1
図2
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図5A
図5B
図6A
図6B
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図7B
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図15A
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【国際調査報告】