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特表2025-500982電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法
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  • 特表-電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/00 20060101AFI20250107BHJP
   C21D 8/12 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 23/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C23C22/00 B
C21D8/12 A
C22C38/00 303U
C22C38/60
C22C30/00
C22C16/00
C22C21/00 Z
C22C23/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538196
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022020906
(87)【国際公開番号】W WO2023121269
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185101
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ミン ソク
(72)【発明者】
【氏名】パク,セ‐ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,フォン‐ジョ
【テーマコード(参考)】
4K026
4K033
【Fターム(参考)】
4K026AA03
4K026AA22
4K026BA03
4K026BB05
4K026CA16
4K026CA18
4K026CA23
4K026CA39
4K026DA02
4K033AA01
4K033CA02
4K033CA03
4K033CA06
4K033CA09
4K033FA01
4K033FA10
4K033FA13
4K033FA14
4K033GA00
4K033HA01
4K033HA03
4K033HA05
4K033JA01
4K033KA03
4K033QA02
4K033RA03
4K033RA09
4K033RA10
4K033SA03
4K033SA04
4K033TA03
(57)【要約】
【課題】電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする。
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板基材と、電磁鋼板基材の表面上に位置する絶縁被膜と、を含み、前記絶縁被膜は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部および
ジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項2】
樹脂は、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項3】
前記繰り返し単位構造は、下記の化学式1で表されることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
(前記化学式1で、Xは、芳香族環または脂肪族環を2個以上含む2価の有機基であり、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、カルボキシ基またはハロゲンを示す。)
【請求項4】
前記化学式1で、Xは、ビスフェノール構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造およびジシクロペンタジエン構造のうち1種以上含むことを特徴とする請求項3に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項5】
前記ジルコニウムリン酸塩は、5質量%以下が結晶相であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項6】
マグネシウムリン酸塩を0.1ないし100重量部さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項7】
無機ナノ粒子を0.1ないし100重量部さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項8】
前記無機ナノ粒子は、SiO、Al、MgO、ZnO、ZrO、TiO、Mn、およびCaOのうち1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項9】
前記無機ナノ粒子は、平均粒径が1ないし100nmであることを特徴とする請求項7に記載の電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
【請求項10】
電磁鋼板基材と、
前記電磁鋼板基材の表面上に位置する絶縁被膜と、を含み、
前記絶縁被膜は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする電磁鋼板。
【請求項11】
前記絶縁被膜は、重量%で、Zr:6ないし60%、C:7ないし70%、Si:1ないし40%、Al:1ないし40%、Mg:1ないし45%、P:1ないし70%およびB:0.01ないし9%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなることを特徴とする請求項10に記載の電磁鋼板。
【請求項12】
前記電磁鋼板基材は、重量%で、Si:2.0ないし6.5%、Mn:0.1ないし3.0%、Al:0.1ないし7.5%、B:0.1%以下、Sn:0.01ないし0.15%およびSb:0.01ないし0.15%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなることを特徴とする請求項10に記載の電磁鋼板。
【請求項13】
電磁鋼板基材を準備するステップと、
前記電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成するステップと、を含み、
前記絶縁被膜組成物は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法に係り、より詳しくは。繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂およびジルコニウムリン酸塩を用いて、応力除去焼鈍(SRA、Stress Relief Annealing)後の密着性および絶縁性を向上させた電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや変圧機などに用いられる無方向性電磁鋼板の絶縁被膜は、層間抵抗だけでなく色々な特性が要求される。例えば、加工成形時の容易性、保管、使用時の安定性などである。また、無方向性電磁鋼板は多様な用途に用いられるため、その用途によって色々な絶縁被膜の形態が開発されている。
例えば、無方向性電磁鋼板は、パンチング加工、せん断加工、ベンディング加工などを実施すると、残留変形によって磁気特性が劣化するため、劣化した磁気特性を回復させるために高温で応力除去焼鈍(SRA、Stress Relief Annealing)を実施する場合が多い。ここで、絶縁コーティングは、応力除去焼鈍時に剥離されないため、固有の電気絶縁性を維持する耐熱特性が必要である。
【0003】
従来より、無水クロム酸、酸化マグネシウム、アクリル系樹脂またはアクリル-スチレン共重合体樹脂を混合使用して耐食性と絶縁性の向上を図っているが、最近要求される無方向性電磁鋼板での応力除去焼鈍特性の水準を満足させるには限界がある。
また、金属リン酸塩を絶縁コーティングの主成分とする。応力除去焼鈍時の密着性を改善する方法が提案されている。しかし、前記のような方法は、耐吸性が強いリン酸塩の特性ため表面に白化欠陥が発生し、顧客会社で加工するとき、粉塵が発生するという問題があり、白化欠陥が発生した部位では耐熱性がむしろ劣るという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法を提供することにある。具体的には繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂およびジルコニウムリン酸塩を用いて、応力除去焼鈍後の密着性および絶縁性を向上させた電磁鋼板絶縁被膜組成物、電磁鋼板、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことを特徴とする。
【0006】
樹脂は、エポキシ樹脂であることがよい。
繰り返し単位構造は、下記の化学式1で表することができる。
(前記化学式1で、Xは、芳香族環または脂肪族環を2個以上含む2価の有機基であり、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、カルボキシ基またはハロゲンを示す。)
化学式1で、Xは、ビスフェノール構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造およびジシクロペンタジエン構造のうち1種以上を含むことができる。
ジルコニウムリン酸塩は、5質量%以下が結晶相であることがよい。
【0007】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、マグネシウムリン酸塩を0.1ないし100重量部さらに含むことがよい。
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、無機ナノ粒子を0.1ないし100重量部さらに含むことができる。
無機ナノ粒子は、SiO、Al、MgO、ZnO、ZrO、TiO、Mn、およびCaOのうち1種以上を含むことができる。
無機ナノ粒子は、平均粒径が1ないし100nmであることがよい。
【0008】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板は、電磁鋼板基材と、電磁鋼板基材の表面上に位置する絶縁被膜と、を含み、絶縁被膜は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含む。
絶縁被膜は、重量%で、Zr:6ないし60%、C:7ないし70%、Si:1ないし40%、Al:1ないし40%、Mg:1ないし45%、P:1ないし70%およびB:0.01ないし9%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。
【0009】
電磁鋼板基材は、重量%で、Si:2.0ないし6.5%、Mn:0.1ないし3.0%、Al:0.1ないし7.5%、B:0.1%以下、Sn:0.01ないし0.15%およびSb:0.01ないし0.15%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。
【0010】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板基材を準備するステップと、電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成するステップと、を含む。絶縁被膜組成物は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、本発明の電磁鋼板絶縁被膜組成物は、特定の化学構造の有機化合物およびジルコニウムリン酸塩を含むことによって、応力除去焼鈍後の密着性および絶縁性が向上する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る電磁鋼板の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1、第2および第3等の用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにだけ使用される。したがって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及されることがある。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外するものではない。
【0014】
ある部分が他の部分の「の上に」または「上に」あると言及する場合、これは直に他の部分の上にまたは上にあるか、その間に他の部分が存在する可能性がある。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在されない。
本明細書で基(原子団)の表記において、置換および無置換を記載しない表記は、置換基を有しないものと共に置換基を有するものも含むことである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)だけでなく、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)も含むことである。
本明細書で、「置換」とは、別途の定義がない限り、化合物のうちの少なくとも一つの水素がC1ないしC30アルキル基;C2ないしC30アルケニル基、C2ないしC30アルキニル基、C1ないしC10アルキルシリル基;C3ないしC30シクロアルキル基;C6ないしC30アリール基;C1ないしC30ヘテロアリール基;C1ないしC10アルコキシ基;シラン基;アルキルシラン基;アルコキシシラン基;アミン基;アルキルアミン基;アリールアミン基;エチレンオキシル基またはハロゲン基で置換されたことを意味する。
本明細書で、「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選択される原子を意味する。
【0015】
本明細書で、「アルキル(alkyl)基」とは、別途の定義がない限り、いかなるアルケニル(alkenyl)基やアルキニル(alkynyl)基を含んでいない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」;または少なくとも一つのアルケニル基またはアルキニル基を含んでいる「不飽和アルキル(unsaturated alkyl)基」を全て含むことを意味する。前記「アルケニル基」は、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素二重結合をなしている置換基を意味し、「アルキン基」は、少なくとも二つの炭素原子が少なくとも一つの炭素-炭素三重結合をなしている置換基を意味する。前記アルキル基は、分枝型、直鎖型または環状であってもよい。
前記アルキル基は、C1ないしC20のアルキル基であってもよく、具体的にC1ないしC6の低級アルキル基、C7ないしC10の中級アルキル基、C11ないしC20の高級アルキル基であってもよい。
【0016】
例えば、C1ないしC4アルキル基は、アルキル鎖に1ないし4個の炭素原子が存在することを意味し、これは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択されることを示す。
典型的なアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
「ヘテロ環基」とは、環基内にN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子が含まれる環基ことを意味する。前記ヘテロ環基はそれぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1ないし3個含んでもよい。ヘテロアリール基も、ヘテロ環基に含まれる。
【0017】
本明細書で別途の定義がない限り、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基は置換または非置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基またはアミノアルキル基を意味する。
異なって定義してはいないが、ここに使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一な意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0018】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、色々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂100重量部およびジルコニウムリン酸塩20ないし150重量部含む。
本発明の一実施例に係る絶縁被膜組成物は、応力除去焼鈍後の密着性および絶縁性を画期的に改善するために特有の化学構造を有する樹脂化合物およびジルコニウムリン酸塩を含む。
【0019】
以下、本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物を各成分ごとに詳しく説明する。
まず、本発明は、電磁鋼板用絶縁被膜の繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を含む。
繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂は、芳香族環または脂肪族環構造を2個以上含有していて耐熱性に優れる。芳香族環または脂肪族環を1個だけ含む、または含まない場合、顧客会社での熱処理過程で、コーティング剥離の面で問題が発生する。より具体的に、樹脂は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個ないし5個含むことがよい。組成物内に2種類以上の樹脂を含むことができ、この場合、環の個数は組成物内の樹脂の数平均で求めることができる。組成物内の全体樹脂が繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含むことができる。
樹脂は、エポキシ樹脂であることがよい。エポキシ樹脂とは、繰り返し単位構造内のエポキシ構造に由来する化学構造を有するものでる。エポキシ樹脂は、ウレタン樹脂など他の樹脂に比べて、ジルコニウムおよび無機ナノ粒子と混用するとき溶液安定性の面で有利である。
【0020】
より具体的に、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂は、下記の化学式1で表することができる。
(前記化学式1で、Xは、芳香族環または脂肪族環を2個以上含む2価の有機基であり、Rは、水素、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、カルボキシ基またはハロゲンを示す。)
【0021】
より具体的に、前記化学式1で、Xは、ビスフェノール構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造およびジシクロペンタジエン構造のうち1種以上を含むことができる。
より具体的に、Rは、水素、アルキル基、アリール基、カルボキシ基またはハロゲンを示す。
より具体的に、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂として、ビスフェノールAエポキシ樹脂(Bisphenol A Epoxy Resin)、ビスフェノールFエポキシ樹脂(Bisphenol F Epoxy Resin)、フェノールノボラックエポキシ樹脂(Phenol Novolac Epoxy Resin)、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(Cresol Novolac Epoxy Resin)が挙げられる。より具体的に、Bisphenol A propoxylate diglycidyl ether(製品番号475750)、Poly[(phenyl glycidyl ether)-co-formaldehyde](製品番号406775、406767)の使用が可能である。
【0022】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、ジルコニウムリン酸塩を樹脂100重量部に対して、20ないし150重量部含む。
ジルコニウムリン酸塩は、被膜の絶縁性および密着性を付与する役割を果たす。
金属リン酸塩として、Al、Mg、Ni、Mn、Sr、Br、Ca、Co、Znなど多様なリン酸塩が知られている。
【0023】
本発明の一実施例では、これらのうちのジルコニウムリン酸塩を用いる。ジルコニウムリン酸塩は、他のリン酸塩に比べて繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂と高温で安定的に反応して、応力除去焼鈍(SRA)後の密着性および絶縁性を向上させることに寄与する。
ジルコニウムリン酸塩は樹脂100重量部に対して、20ないし150重量部含む。ジルコニウムリン酸塩を過度に少なく含む場合、コーティング剥離の問題が発生する虞がある。ジルコニウムリン酸塩を過度に多く含む場合、溶液の粘度が急激に増加してコーティング厚さの偏差が発生する虞がある。より具体的に、ジルコニウムリン酸塩を樹脂100重量部に対して、50ないし135重量部を含むことがよい。本発明で、重量部とは、樹脂に対する相対的な重量比率を意味する。
【0024】
ジルコニウムリン酸塩は、ジルコニウムリン酸塩の100質量のうち5質量%以下がリン酸塩の結晶相であることがよい。リン酸塩の結晶相とは、ジルコニウムおよびリン酸粒子が規則的に配列されたことを意味し、XRD測定法を活用して分析が可能である。リン酸塩の結晶相が複数形成されるほど気孔が形成され、高温密着性の面で不利であり、その上限を限定する。芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂と混合して化学的安定性を確保することによって、リン酸塩の結晶相を減少させることができる。
【0025】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、マグネシウムリン酸塩を樹脂100重量部に対して、0.1ないし100重量部さらに含むことがふぇきる。前述したジルコニウムリン酸塩と共にマグネシウムリン酸塩は密着性を補助的に向上させる役割を果たす。ただし、前述のように、ジルコニウムリン酸塩を適正量含まないままマグネシウムリン酸塩を含む場合、被膜層が水分を吸湿して白化欠陥を引き起こして表面特性が劣ることになる。より具体的に、マグネシウムリン酸塩を樹脂100重量部に対して、1ないし50重量部さらに含むことがよい。
【0026】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、樹脂100重量部に対し、無機ナノ粒子を0.1ないし100重量部さらに含むことができる。
無機ナノ粒子は、絶縁被膜組成物の浸漬(precipitation)や凝集(agglomeration)現象を防止し、応力除去焼鈍(Stress relief Annealing)後の表面特性がより優れるように発現することに寄与する。
無機ナノ粒子は、樹脂の置換体と化学的に結合したものであることがよい。無機ナノ粒子を樹脂に結合させず、単独で添加する場合、無機ナノ粒子同士が凝集して、分散が適切に行われないことがある。樹脂の置換体と化学的に結合したという意味は、樹脂の置換体の置換基に無機粒子が置換され、結合したことを意味する。
【0027】
無機ナノ粒子は、SiO、Al、MgO、ZnO、ZrO、TiO、MnおよびCaOのうち1種以上を含むことができる。
無機ナノ粒子は、平均粒径が1ないし100nmであることがよい。前述した範囲で適切な分散性を確保することができる。より具体的に、10ないし50nmであることがよい。
無機ナノ粒子をさらに含む場合、樹脂100重量部に対して、無機ナノ粒子を0.1ないし100重量部さらに含むことができる。無機ナノ粒子を過度に多く添加すると、相対的に樹脂の含有量が少なくなり、密着性の面で問題が発生し易い。より具体的に、無機ナノ粒子を10ないし80重量部さらに含むことができる。
【0028】
本発明の一実施例に係る絶縁被膜組成物は、酸化促進剤をさらに含むことがよい。酸化促進剤の例としては、過ホウ酸ナトリウム(NaBO・4HO)が挙げられる。酸化促進剤は、樹脂100重量部に対して、5重量部以下で含まれることがよい。
前述した成分の外に絶縁被膜組成物は塗布が容易であり、成分を均一に分散させるための溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水、アルコールなどを用いることができる。溶媒の量は特に制限しないが、樹脂100重量部に対して、50重量部ないし1000重量部含むことができる。
【0029】
図1は、本発明の一実施例に係る電磁鋼板100の断面の概略図を示す。図1に示したように、本発明の一実施例に係る電磁鋼板100は、電磁鋼板基材10および電磁鋼板の基材10上に位置する絶縁被膜20を含む。
電磁鋼板基材10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なしに用いることができる。本発明の一実施例では、電磁鋼板基材10上に特別な成分の絶縁被膜20を形成することが主要構成であるので、電磁鋼板基材10に対する具体的な説明は省略する。図1には、電磁鋼板基材10の上面上に絶縁被膜20が存在するが、これに制限されず、電磁鋼板基材10の下面上にまたは上面および下面上に絶縁被膜20が存在してもよい。
【0030】
絶縁被膜20は、繰り返し単位構造内に芳香族環または脂肪族環を2個以上含む樹脂を100重量部およびジルコニウムリン酸塩を20ないし150重量部含む。
本発明の一実施例に係る電磁鋼板100の絶縁被膜20は、応力除去焼鈍後の密着性および絶縁性を画期的に改善するために特有の樹脂およびジルコニウムリン酸塩を含む。
絶縁被膜20の成分に対する内容は、前述した絶縁被膜組成物に関連して具体的に説明したので、重複する説明は省略する。絶縁被膜20形成過程で、一部樹脂の化学構造が変形することがあるが、ほとんどの樹脂は、その化学構造を維持する。絶縁被膜20形成過程で、溶媒などの揮発成分は除去されるので、絶縁被膜20内の成分比率は、絶縁被膜組成物内の樹脂に対する相対的な重量比率と実質的に同一である。
【0031】
絶縁被膜20は、重量%で、Zr:6ないし60%、C:7ないし70%、Si:1ないし40%、Al:1ないし40%、Mg:1ないし45%、P:1ないし70%およびB:0.01ないし9%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物を含むことがよい。より具体的に、C:7ないし70%、Zr:6ないし60%およびP:1ないし70%含み、Si:1ないし40%、Al:1ないし40%、Mg:1ないし45%、およびB:0.01ないし9%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。より具体的に、Zr:6ないし60%、C:7ないし70%、Si:1ないし40%、Al:1ないし40%、Mg:1ないし45%、P:1ないし70%およびB:0.01ないし9%含み、残部がFeおよび不可避な不純物を含むことができる。
【0032】
Cは、絶縁被膜組成物中の樹脂に由来してもよい。ZrおよびPは、絶縁被膜組成物中のジルコニウムリン酸塩に由来してもよい。
残りのSi、Al、Mg、Bなどは、電磁鋼板基材10から拡散するか、絶縁被膜組成物の追加成分に由来してもよい。
【0033】
絶縁被膜20は、前記元素以外にも絶縁被膜組成物および電磁鋼板基材10に由来する元素を含むことができる。
絶縁被膜20の厚さは0.05ないし10μmであることができる。絶縁被膜20の厚さが過度に薄いと、耐熱性が低下して応力除去焼鈍後鉄損が劣るという問題が生じる。絶縁被膜20の厚さが過度に厚いと、占積率が低下してモータ特性が劣るという問題が生じる。したがって、絶縁被膜20の厚さを前述した範囲で調節することが好ましい。より具体的に、絶縁被膜20の厚さは0.1ないし5μmであることがよい。
【0034】
電磁鋼板基材10は、無方向性電磁鋼板または方向性電磁鋼板制限なしに用いることができる。具体的に無方向性電磁鋼板を用いてもよい。本発明の一実施例で、絶縁被膜20の成分によって絶縁特性が発生することであり、電磁鋼板の合金成分とは関係がないことがある。以下、一例として、電磁鋼板の合金成分について説明する。
【0035】
電磁鋼板基材10は、重量%で、Si:2.0ないし6.5%、Mn:0.1ないし3.0%、Al:0.1ないし7.5%、B:0.1%以下、Sn:0.01ないし0.15%およびSb:0.01ないし0.15%からなる群より選択される1または2以上を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。より具体的に、電磁鋼板基材10は、重量%で、Si:2.0ないし6.5%、Mn:0.1ないし3.0%、Al:0.1ないし7.5%、B:0.1%以下、Sn:0.01ないし0.15%およびSb:0.01ないし0.15%含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。
以下、電磁鋼板基材10成分の限定理由について説明する。
【0036】
Si:2.0ないし6.5重量%
シリコン(Si)は、鋼の非抵抗を増加させ、鉄損中の渦電流損失を減少させる成分であって、Siの含有量が過度に多い場合は、脆性が大きくなって冷間圧延が難しくなる問題が発生する。したがって、6.5重量%以下に制限することが好ましい。より具体的に、Siは、2.5ないし4.5重量%含まれることがよい。
【0037】
Mn:0.1ないし3.0重量%
マンガン(Mn)が0.1重量%未満で存在すると、微細なMnS析出物が形成され、結晶粒成長を抑制させるため磁性を悪化させる。したがって、0.1重量%以上存在する場合、粗大なMnSが形成され、また、S成分がより微細な析出物のCuSに析出されることを防げることになる。しかし、Mnが増加する場合、磁性が劣化するため、3.0重量%以下に制御する。より具体的に、0.5ないし2.0重量%含むことがよい。
【0038】
Al:0.1ないし7.5重量%
Alは、非抵抗を増加させ、渦流損失を下げることに有効な成分である。0.1重量%未満の場合、AlNが微細析出して磁性が劣り、また7.5重量%を超えた場合、加工性が劣化するので、7.5重量%以下に制限することが好ましい。より具体的に、0.5ないし3.0重量%含むことがよい。
【0039】
B:0.1重量%以下
Bは、BNなど析出物を形成し、磁性を劣化させることになるので、0.100重量%以下で含むことがよい。より具体的に、0.001ないし0.050重量%含むことがよい。
【0040】
Sb、Sn:それぞれ0.01ないし0.15重量%
Sb、Snは、表面析出元素であって、鋼板表層部に濃化して窒素の吸着を抑制し、結果的に結晶粒の成長を妨げることないため鉄損を下げる役割を果たす。Sb、Sn含有量が過度に多いと、結晶粒系偏析が激しく起こり、鋼板の脆性が大きくなって圧延時に板破断が発生する。より具体的に、Sn、Sbをそれぞれ0.05ないし0.10重量%含むことがよい。
【0041】
その他のC:0.01重量%以下、P:0.5重量%以下、S:0.005重量%以下、N:0.005重量%以下、Ti:0.005重量%以下をさらに含むことがよい。
【0042】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板の製造方法は、電磁鋼板基材を準備するステップと、電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成するステップと、を含む。
まず、ステップ(S10)では電磁鋼板基材を製造する。電磁鋼板基材の合金成分については具体的に説明したので、繰り返しの説明は省略する。
電磁鋼板基材を製造するステップは、スラブを熱間圧延して熱延板を製造するステップと、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造するステップと、冷延板を焼鈍するステップと、を含む。
まずスラブを加熱する。このとき、スラブ加熱は、1,200℃下で加熱することができる。
次いで、加熱されたスラブを熱間圧延して、熱延板を製造する。製造された熱延板を熱延焼鈍することができる。
次いで、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する。冷間圧延を1回実施するか、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を実施することができる。
【0043】
次いで、冷延板を焼鈍する。このとき、冷延板を焼鈍するステップは、冷延板に存在する圧延油を脱脂して1次焼鈍を行い、水素と窒素で構成された雰囲気で2次焼鈍することができる。また、最終焼鈍は、表面に酸化物が形成され、磁性が劣化することを防止するための目的で、露点温度を-5℃以下に管理することができる。
再び電磁鋼板の製造方法に対する説明に戻ると、次いで、ステップ(S20)は、電磁鋼板基材の表面に絶縁被膜組成物を塗布して絶縁被膜を形成する。絶縁被膜組成物については前述したものと同一であるので、重複する説明は省略する。
【0044】
絶縁被膜を形成するステップは、100ないし680℃の温度で絶縁被膜組成物が塗布された鋼板を熱処理するステップを含むことができる。熱処理温度が過度に低いと、溶媒の除去が容易でなく、キレイな絶縁被膜が形成されにくい。熱処理温度が過度に高いと、密着性が劣るという問題が発生し得る。より具体的に、350ないし650℃の温度で熱処理することができる。熱処理時間は、5ないし200秒であることがよい。
絶縁被膜を形成するステップ以降、700ないし1000℃の温度で応力除去焼鈍するステップをさらに含むことがよい。本発明の一実施例では、応力除去焼鈍以降にも絶縁被膜の密着性および表面特性に優れるように維持することができる。応力除去焼鈍の温度が過度に低い場合、目的とする応力除去が円滑に行われないことがある。応力除去焼鈍の温度が過度に高い場合、電磁鋼板の磁性が劣ることがある。
【0045】
応力除去焼鈍するステップは、窒素雰囲気で行われることがよく、1ないし5時間行われることがよい。
以下、本発明の好ましい実施例、これに対比される比較例、およびこれらの評価例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であるだけで、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
製造例
【0046】
アクリレート基を含むエポキシ樹脂の製造
常温で500mlフラスコに下記の化学式の出発物質であるエポキシ樹脂20gをメチレンクロリド120mlに添加し、撹拌した。4℃でジイソプロピルエチルアミン9.88mlを添加し、直ちにアクリロイルクロリド9mlをゆっくり加えた。4℃で5時間反応した後、減圧条件で蒸発させて溶媒を除去した後に、アクリレート基を有するエポキシ樹脂を得た。
【0047】
サイドエポキシ基を含むエポキシ樹脂の製造
常温でフラスコにNaH1.6gを入れ、DMF40mlを加え、4℃でDMF20mlに溶解した下記の化学式の出発物質であるエポキシ樹脂10gをゆっくり加えた。4℃で10分間撹拌した後に、エピクロロヒドリン4.5mlをゆっくり入れた後、常温で24時間反応させた。有機層を分離した後、減圧条件で蒸発させて溶媒を除去し、サイドエポキシ基を有するエポキシ樹脂を得た。
実施例1
【0048】
シリコン(Si)を3.4重量%、アルミニウム(Al):0.80重量%、マンガン(Mn):0.17重量%チタン(Ti):0.0015重量%、錫(Sn):0.03重量%、ニッケル(Ni):0.01重量%、炭素(C):0.003重量%、窒素(N):0.0013重量%、リン(P):0.012重量%、硫黄(S):0.001重量%含み、残部はFeおよびその他の不可避な不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1130℃で加熱した後2.3mm厚さに熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板を650℃で巻取りした後、空気中で冷却して1040℃で2分間熱延板焼鈍を実施した後、水で急冷し、酸洗した後、0.25mm厚さに冷間圧延して、冷延板を製造した。
【0049】
冷延板を1040℃で50秒間、水素20%、窒素80%雰囲気で、露点温度を調節し、最終焼鈍を行って、焼鈍された鋼板を製造した。
絶縁被膜組成物として、製造例で製造した樹脂、ジルコニウムリン酸塩、SiO、マグネシウムリン酸塩を蒸溜水と混合し、スラリー形態に製造し、ロールを用いてスラリーを最終焼鈍された鋼板に塗布した後、650℃条件で30秒間熱処理して空気中で冷却した。電磁鋼板は、100%窒素雰囲気、750℃で2時間、応力除去焼鈍(SRA、Stress Relief Annealing)を行い、空気中で冷却した。
【0050】
絶縁被膜組成物内の樹脂、ジルコニウムリン酸塩、SiO、マグネシウムリン酸塩含有量を表1のように変更しながら実施した。
実施例および比較例で製造した電磁鋼板の特性を測定し、下記の表1にまとめた。
また、絶縁特性は、ASTM A717国際規格によりFranklin測定器を活用して絶縁被膜の上部を測定した。
また、密着性は、試片を10ないし100mmの円弧に接して180°曲げる時に被膜剥離がない最小円弧直径として示した。
【0051】
比較例1は、製造例で製造した樹脂の代わりに、1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン(1,2-Epoxy-3-phenoxypropane)を用いた。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示したように、樹脂およびジルコニウムリン酸塩の比率が適切に調節された実施例1ないし実施例10は、SRA前/後の絶縁特性およびSRA後の密着性に優れていることが確認できる。
これに対し、適切な樹脂を用いない比較例1は、SRA後の絶縁特性および密着性が劣ることが確認できる。
ジルコニウムリン酸塩を少なく用いた比較例2および比較例3は、SRA後の絶縁特性および密着性が劣ることが確認できる。
ジルコニウムリン酸塩を過量含んだ比較例4および比較例5は、SRA後の密着性が劣ることが確認できる。
【0054】
本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できるということを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであって、限定的ではないものと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0055】
100:電磁鋼板
10:電磁鋼板基材
20:絶縁被膜
図1
【国際調査報告】