(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコア
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20250107BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20250107BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20250107BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20250107BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20250107BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/60
C21D9/46 501A
C21D8/12 A
H01F1/147 183
H02K1/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538215
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2022020963
(87)【国際公開番号】W WO2023121294
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184608
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スビン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユンス
【テーマコード(参考)】
4K033
5E041
5H601
【Fターム(参考)】
4K033AA01
4K033CA00
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5E041AA02
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5H601AA09
5H601AA26
5H601EE33
5H601HH07
5H601HH18
5H601KK10
(57)【要約】
【課題】無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコアを提供する。
【解決手段】本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下、およびSb:0.02%以下含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足する鋼板母材と、鋼板母材上に位置する絶縁被膜とを含み、応力除去焼鈍前には下記式2を満足し、応力除去焼鈍後には下記式3を満足することを特徴とする。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足する鋼板母材と、前記鋼板母材上に位置する絶縁被膜とを含み、
応力除去焼鈍前には下記式2を満足し、応力除去焼鈍後には下記式3を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量(重量%)を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【請求項2】
前記鋼板母材は、C、N、S、Ti、Nb、およびVのうちの1種以上を0.005重量%以下でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記鋼板母材は、Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、およびZr:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項4】
前記応力除去焼鈍前に平均結晶粒粒径が60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項5】
前記応力除去焼鈍後の鉄損W10/800(W/kg)が下記式4を満足することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
〔式4〕
W10/800≦25+60×t
(式4中、tは、鋼板の厚さ(mm)を示す。)
【請求項6】
前記応力除去焼鈍は、800℃~900℃の温度、および窒素、水素および一酸化炭素のうちの1種以上を含み、露点が0℃以下の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項7】
重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足するスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、
前記熱延板の表面に存在するスケールを除去する段階と、
前記スケールが除去された熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、
前記冷延板を冷延板焼鈍する段階とを含み、
前記スケールを除去する段階は、ショットボールを15~35kg/(min・m
2)の量で鋼板に投射してスケールを除去する段階を含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
(式1中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量(重量%)を示す。)
【請求項8】
前記ショットボールの平均粒度は、0.1~1mmであり、1秒~60秒間投射することを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記ショットボールの材料は、Fe系合金であることを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記冷延板焼鈍する段階は、700~1100℃の温度で10~1000秒間焼鈍することを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記スケールを除去する段階の前に、熱延板焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記冷延板焼鈍する段階の後、応力除去焼鈍する段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項13】
複数の無方向性電磁鋼板を積層してなる回転子と、複数の無方向性電磁鋼板を積層してなる固定子とを含み、
回転子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式2を満足し、
固定子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式3を満足することを特徴とするモータコア。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【請求項14】
前記固定子および前記回転子内に含まれる無方向性電磁鋼板は、同一コイルに由来することを特徴とする請求項13に記載のモータコア。
【請求項15】
前記固定子および前記回転子内に含まれる前記無方向性電磁鋼板間のSi、AlおよびMn含有量の差が0.20重量%以下であることを特徴とする請求項13に記載のモータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコアにかかり、より詳しくは、Sn、Sbの含有量を適切に調節し、スケール除去時のショットボールの投射量を高めて、応力除去焼鈍中に絶縁被膜へのMn拡散を防止することによって、絶縁被膜の密着性を向上させた無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換させるモータに主に用いられるが、その過程で高い変換効率を発揮するために無方向性電磁鋼板の優れた磁気的特性が要求される。特に、最近では、環境にやさしい技術が注目されるにつれ、電気エネルギー使用量全体の過半を占めるモータの効率を増加させることが非常に重要であると考えられており、そのために優れた磁気的特性を有する無方向性電磁鋼板の需要が増大している。
無方向性電磁鋼板の磁気的特性は、主に鉄損と磁束密度で評価する。鉄損は、特定の磁束密度と周波数で発生するエネルギー損失を意味し、磁束密度は、特定の磁場の下で得られる磁化の程度を意味する。鉄損が低いほど同一の条件でエネルギー効率が高いモータを製造することが可能であり、磁束密度が高いほどモータを小型化させ、銅損を減少させることができるので、低い鉄損と高い磁束密度を有する無方向性電磁鋼板を作ることが重要である。
【0003】
モータの作動条件により考慮しなければならない無方向性電磁鋼板の特性も異なる。モータに用いられる無方向性電磁鋼板の特性を評価するための基準としてモータが商用周波数50Hzで1.5Tの磁場が印加された時の鉄損であるW15/50を最も重要に考えている。しかし、多様な用途のモータがすべてW15/50鉄損を基準に考えているわけではなく、主な作動条件により異なる周波数や印加磁場での鉄損を評価したりする。特に、最近の電気自動車の駆動モータに用いられる無方向性電磁鋼板では1.0Tまたはそれ以下の低磁場と400Hz以上の高周波で磁気的特性が重要な場合が多いため、W10/400などの鉄損で無方向性電磁鋼板の特性を評価する。
【0004】
無方向性電磁鋼板からモータまたは変圧器などの製品を製造するためには、無方向性電磁鋼板を特定の形状にスリッティングしなければならない。この過程で無方向性電磁鋼板に応力が与えられ、この応力を除去するために応力除去焼鈍を行う。
応力除去焼鈍の過程で鋼板中のMn成分が絶縁被膜に拡散し、これは鋼板と絶縁被膜との密着性の低下の原因になる。Sb、Sn添加およびAl、Mn間の含有量の関係を調節してMnの拡散を抑制しようとする試みがなされたが、このような試みには限界が存在した。表面偏析元素層および表面酸化層の形成によるMnの拡散抑制は効果がわずかであり、これによって、絶縁コーティング層と母材との間の結合力の低下をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコアを提供することにある。具体的には、Sn、Sbの含有量を適切に調節し、熱延板のスケール除去時のショットボールの投射量を適切に調節して、応力除去焼鈍中に絶縁被膜へのMnの拡散を防止することによって、絶縁被膜の密着性を向上させた無方向性電磁鋼板およびそれを含むモータコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足する鋼板母材と、鋼板母材上に位置する絶縁被膜とを含み、応力除去焼鈍前には下記式2を満足し、応力除去焼鈍後には下記式3を満足することを特徴とする。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【0007】
鋼板母材は、C、N、S、Ti、Nb、およびVのうちの1種以上を0.005重量%以下でさらに含むことができる。
鋼板母材は、Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、およびZr:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
応力除去焼鈍前に平均結晶粒粒径が60μm以下であることがよい。
【0008】
応力除去焼鈍後の鉄損W10/800(W/kg)が下記式4を満足することが好ましい。
〔式4〕
W10/800≦25+60×t
(式4中、tは、鋼板の厚さ(mm)を示す。)
応力除去焼鈍は、800℃~900℃の温度、および窒素、水素および一酸化炭素のうちの1種以上を含み、露点が0℃以下の雰囲気で行われることがよい。
【0009】
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1を満足するスラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板の表面に存在するスケールを除去する段階と、スケールが除去された熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を冷延板焼鈍する段階とを含み、スケールを除去する段階は、ショットボールを15~35kg/(min・m2)の量で鋼板に投射してスケールを除去する段階を含むことを特徴とする。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
(式1中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量(重量%)を示す。)
【0010】
ショットボールの平均粒度は、0.1~1mmであり、1秒~60秒間投射することができる。
ショットボールの材料は、Fe系合金であることがよい。
冷延板焼鈍段階は、700℃~1100℃の温度で10~1000秒間焼鈍することが好ましい。
【0011】
スケールを除去する段階の前に、熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。
冷延板焼鈍する段階の後、応力除去焼鈍する段階をさらに含むことがよい。
応力除去焼鈍段階は、800℃~900℃の温度、および窒素、水素および一酸化炭素のうちの1種以上を含み、露点が0℃以下の雰囲気で行われることが好ましい。
【0012】
本発明のモータコアは、複数の無方向性電磁鋼板を積層してなる回転子と、複数の無方向性電磁鋼板を積層してなる固定子とを含み、
回転子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式2を満足し、
固定子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式3を満足することを特徴とする。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【0013】
固定子および回転子内に含まれる無方向性電磁鋼板は、同一コイルに由来する無方向性電磁鋼板であることができる。
固定子および前記回転子内に含まれる前記無方向性電磁鋼板間のSi、AlおよびMn含有量の差が0.20重量%以下であることがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本発明の無方向性電磁鋼板は、Sn、Sbを一定範囲に含み、スケール除去時のショットボールの投射量を適切に調節することによって、応力除去焼鈍過程中に鋼板母材に含まれているMn成分が絶縁被膜に拡散するのを防止して、応力除去焼鈍後にも絶縁被膜と鋼板母材との間の結合力を維持させることができる。
これにより、環境にやさしい自動車用モータ、高効率家電用モータ、スーパープレミアム級電動機の性能を応力除去焼鈍により追加的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使われるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使われる。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと読み替えられてもよい。
ここで使われる専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使われる単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使われる「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0017】
ある部分が他の部分の「上」にあると言及した場合、これは直に他の部分の上にあるか、その間に他の部分が介在してもよい。対照的に、ある部分が他の部分の「真上」にあると言及した場合、その間に他の部分が介在しない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施例において追加元素をさらに含むとの意味は、追加元素の追加量だけ残部の鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0018】
他に定義しないが、ここに使われる技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
以下、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0019】
図1には、本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の断面を概略的に示した。
図1に示したとおり、無方向性電磁鋼板100は、鋼板母材10と、鋼板母材10の表面に位置する絶縁被膜20とを含む。鋼板母材10内には、母材の表面から内部方向に形成された表面部30が存在する。
本発明の一実施例による鋼板母材10は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなる。
以下、鋼板母材10の成分限定の理由から説明する。
【0020】
Si:2.0~6.5重量%
ケイ素(Si、シリコン)は、材料の比抵抗を高めて鉄損を低減する役割を果たし、過度に少なく添加された場合、高周波鉄損改善効果が不十分になる。逆に、過度に多く添加された場合、材料の硬度が上昇して冷間圧延性が極度に悪化して生産性および打抜性が低下する虞がある。したがって、前述した範囲でSiを添加することがよい。具体的には、2.0~5.0重量%含むことがよい。さらに具体的には、3.0~4.0重量%含むことが好ましい。
【0021】
Al:0.1~1.3重量%
アルミニウム(Al)は、材料の比抵抗を高めて鉄損を低くする役割を果たす。Alが過度に少なく添加されると、高周波鉄損の低減に効果がなく、窒化物が微細に形成されて磁性を低下させる虞がある。逆に、過度に多く添加されると、製鋼と連続鋳造などのすべての工程上に問題を生じて生産性を大きく低下させる虞がある。したがって、前述した範囲でAlを添加することがよい。具体的には、0.5~1.2重量%含むことがよい。さらに具体的には、0.7~1.0重量%含むことが好ましい。
【0022】
Mn:0.3~2.0重量%
マンガン(Mn)は、材料の比抵抗を高めて鉄損を改善し、硫化物を形成させる役割をする元素である。Mnが過度に少なく添加されると、硫化物が微細に析出して磁性を低下させる虞がある。逆に、Mnが過度に多く添加されると、磁性に不利な{111}集合組織の形成を助長して磁束密度が減少させる虞がある。したがって、前述した範囲でMnを添加することがよい。具体的には、Mnを0.5~1.5重量%含むことがよい。
本発明の一実施例において、比抵抗は、55~80μΩ・cmであることができる。
【0023】
Sn:0.03重量%以下、およびSb:0.02重量%以下
スズ(Sn)とアンチモン(Sb)は、結晶粒界に偏析元素として結晶粒界による窒素の拡散を抑制し、磁性に有害な{111}集合組織(texture)を抑制し、有利な{100}集合組織を増加させて磁気的特性を向上させるために添加する。SnとSbがそれぞれ過度に多く添加されると、結晶粒成長を妨げて磁性を低下させ、圧延性状が悪くなる。したがって、前述した範囲でSn、Sbを添加することがよい。具体的には、Sn:0.005~0.050重量%およびSb:0.005~0.050重量%含むことがよい。さらに具体的には、Sn:0.01~0.02重量%およびSb:0.01~0.02重量%含むことが好ましい。
【0024】
SnおよびSbは、下記式1を満足できる。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
(式1中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示す。)
本発明の一実施例において、SnまたはSbは、鋼板表面部30に濃化して、応力除去焼鈍時、鋼板表面部30から絶縁被膜20にMnが拡散することを妨げる。SnおよびSnの合計が0.005重量%より少なく含まれる時、Mnが多量絶縁被膜20に拡散して、密着性が低下する原因になる。逆に、Sn、Sbが過度に多く含まれる場合にも、Mnが絶縁被膜20に拡散することを過度に強力に妨げ、結果的に密着性が低下する原因になる。具体的には、式1の値は、0.010~0.025になることがよい。
【0025】
鋼板母材10は、Cu:0.01~0.2重量%、P:0.100重量%以下、B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、およびZr:0.005重量%以下のうちの1種以上をさらに含むことができる。
【0026】
Cu:0.01~0.20重量%
銅(Cu)は、Mnと共に硫化物を形成させる役割を果たす。Cuがさらに添加される場合、過度に少なく添加されると、CuMnSが微細に析出して磁性を低下させる虞がある。Cuが過度に多く添加されると、高温脆性が発生して、連鋳や熱延時にクラックを形成する虞がある。具体的には、Cuを0.05~0.10重量%さらに含むことができる。
【0027】
P:0.100重量%以下
リン(P)は、材料の比抵抗を高める役割を果たすだけでなく、粒界に偏析して集合組織を改善して比抵抗を増加させ、鉄損を低くする役割を果たすので、追加的に添加することができる。ただし、Pの添加量が過度に多ければ、磁性に不利な集合組織の形成を招いて集合組織改善の効果がなく、粒界に過度に偏析して圧延性および加工性が低下して生産が困難になる虞がある。したがって、前述した範囲でPを添加することがよい。具体的には、Pを0.001~0.090重量%含むことがよい。さらに具体的には、Pを0.005~0.085重量%含むことが好ましい。
【0028】
B:0.002重量%以下、Mo:0.01重量%以下、Mg:0.005重量%以下、およびZr:0.005重量%以下
ホウ素(B)、モリブデン(Mo)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)の場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物および窒化物を形成して磁性に有害な影響を及ぼすので、これらの含有量を前述したように制限することがよい。
鋼板母材10は、C、N、S、Ti、Nb、およびVのうちの1種以上を0.005重量%以下でさらに含むことができる。
【0029】
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、多く添加された場合、オーステナイト領域を拡大し、相変態区間を増加させ、焼鈍時にフェライトの結晶粒成長を抑制して鉄損を高める作用を示し、また、Tiなどと結合し、炭化物を形成して磁性を低下させ、最終製品から電気製品に加工後の使用時に磁気時効によって鉄損を高める。したがって、前述した範囲でCを添加することがよい。さらに具体的には、Cを0.003重量%以下含むことがよい。
【0030】
S:0.005重量%以下
硫黄(S)は、母材の内部に微細な硫化物を形成して結晶粒成長を抑制して鉄損を劣化させるので、できるだけ低く添加することが好ましい。Sが多量含まれた場合、Mnなどと結合して析出物を形成したり、熱間圧延中の高温脆性を誘発する虞がある。したがって、Sを0.005重量%以下でさらに含むことがよい。具体的には、Sを0.0030重量%以下でさらに含むことがよい。さらに具体的には、Sを0.0001~0.0030重量%さらに含むことが好ましい。
【0031】
N:0.005重量%以下
窒素(N)は、Al、Tiなどと強く結合することによって、窒化物を形成し、結晶粒成長を抑制し、析出する場合、磁区移動を妨げるため、少なく含有させることが好ましい。したがって、前述した範囲でNを添加することがよい。具体的には、Nを0.003重量%以下で含むことがよい。
【0032】
Ti、Nb、V:0.005重量%以下
チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)なども強力な炭窒化物形成元素であるため、できるだけ添加されないことが好ましく、それぞれ0.01重量%以下で含まれるようにする。
【0033】
残部は、Feおよび不可避不純物を含む。不可避不純物については、製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入する不純物であり、これは当該分野で広く知られているので、具体的な説明は省略する。本発明の一実施例において、前述した合金成分以外に元素の追加を排除するわけではなく、本発明の技術思想を損なわない範囲内で多様に含まれてもよい。追加元素をさらに含む場合、残部のFeを代替して含む。
【0034】
本発明の一実施例では、鋼板母材10にSn、Sbの添加により応力除去焼鈍段階で絶縁被膜20へのMn拡散を抑制することができる。
絶縁被膜20へのMn拡散が多くなって、絶縁被膜のMn成分が過度に多くなれば、絶縁被膜の絶縁性が低下する虞がある。また、絶縁被膜と母材との間の結合力を弱化させる虞がある。
【0035】
鋼板母材10の表面から母材の内部方向に深さ50μmのMn濃度を[Mn50]、絶縁被膜20のMn濃度を[Mn被膜]とした時、応力除去焼鈍前には下記式2を満足し、応力除去焼鈍後には下記式3を満足する。
〔式2〕
0.01≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]≧1
応力除去焼鈍は、800℃~900℃の温度、および窒素、水素および一酸化炭素のうちの1種以上を含み、露点が0℃以下の雰囲気で行われることがよい。時間は、10分~300分であることがよい。
【0036】
鋼板母材10にSn、Sbを添加することによって、鋼板母材10の表面から母材の内部方向にSn、SbおよびOが濃化した表面部30が形成される。つまり、鋼板母材10および絶縁被膜20の界面に表面部30が存在する。この表面部30は、鋼板母材10から絶縁被膜20にMnが拡散するのを妨げる役割を果たす。表面部30は、酸素含有量が5重量%以上の部分を意味し、製造工程で酸素に暴露されながら、雰囲気中の酸素が鋼板の内部に浸透して表面から内部方向に形成される。
このように区分された表面部30の厚さは、10~50nmであることがよい。
【0037】
表面部30が過度に薄く形成されると、前述したMn拡散を適切に防止しにくい。表面部30が過度に厚く形成されると、磁性が劣化する虞がある。したがって、前述した範囲の厚さに表面部30が存在することがよい。
絶縁被膜20は、鋼板母材10の表面上に位置する。絶縁被膜20は、無方向性電磁鋼板を積層して製品を製造する時に、無方向性電磁鋼板間を絶縁する役割を果たす。絶縁被膜20は、有機質、無機質および有機-無機複合被膜剤で処理されてもよいし、その他絶縁が可能な被膜剤で処理して形成することができる。
例えば、リン酸塩系絶縁被膜組成物を用いて絶縁被膜20を形成した場合、絶縁被膜は、P:5~50重量%、Mn:0.01重量%以下含むことができる。このように応力除去焼鈍前の絶縁被膜20は、Mnを少量含む。残部は、Oである。Siを1~10重量%さらに含むことができる。
【0038】
応力除去焼鈍前の絶縁被膜20は、下記式1を満足できる。
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
(式2中、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
一方、応力除去焼鈍後の絶縁被膜は、鋼板母材10中のMnが一部拡散して、2.0~25.0重量%含むことができる。さらに具体的には、2.0~17.0重量%含むことができる。残りの成分は、応力除去焼鈍前と同一であルことが好ましい。つまり、応力除去焼鈍後の絶縁被膜20は、下記式2を満足できる。
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式3中、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示す)
具体的には、式3の値が2.0~9.5であることがよい。さらに具体的には、式3の値が3.0~9.3であることが好ましい。
つまり、応力除去焼鈍後の絶縁被膜20は、P:5~50重量%、Mn2.0~10.0重量%含むことができる。残部は、Oであることがよい。Siを1~10重量%さらに含むことができる。
【0039】
絶縁被膜20へのMn拡散が適正量行われる場合、絶縁被膜の無機物の比率が高くなって、高温での安定性が改善される。この場合、応力除去焼鈍段階で安定性を確保して、以後にも母材および絶縁被膜20間の結合力を維持することができる。このような結果によって、応力除去焼鈍後、クロスカットテスト(ASTM D3559:Crosscut Test)の結果、5B以上の結合力を維持できる。
【0040】
応力除去焼鈍前に平均結晶粒粒径が60μm以下であってもよい。応力除去焼鈍前には平均結晶粒粒径が小さく、鋼板の機械的強度に優れている。
一方、応力除去焼鈍後には鉄損W10/800(W/kg)が下記式4を満足することができる。
〔式4〕
W10/800≦25+60×t
(式4中、tは、鋼板の厚さ(mm)を示す。)
応力除去焼鈍後、鉄損を向上させるために応力除去焼鈍を行う。
さらに具体的には、W10/800≦21+60×tを満足できる。
【0041】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階と、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階と、冷延板を焼鈍する冷延板焼鈍段階とを含む。
まず、スラブを熱間圧延する。
スラブの合金成分については、前述した無方向性電磁鋼板の合金成分において説明したので、重複する説明は省略する。無方向性電磁鋼板の製造過程で合金成分が実質的に変動しないので、無方向性電磁鋼板とスラブの合金成分は、実質的に同一である。
【0042】
具体的には、スラブは、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなる。スラブは、下記式1を満足する。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
(式1中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示す。)
その他の追加元素については、無方向性電磁鋼板の合金成分において説明したので、重複する説明は省略する。
【0043】
スラブを熱間圧延する前に加熱することができる。スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1100~1250℃に加熱することができる。スラブ加熱温度が過度に高ければ、磁性を損なう析出物が再溶解して熱間圧延後に微細に析出することがある。
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱延板の厚さは、2~3.0mmになることができる。
【0044】
熱延板を製造する段階の後、熱延板を熱延板焼鈍する段階をさらに含むことができる。熱延板焼鈍は、相変態がない高級電磁鋼板を製造するにあたっては実施することが好ましく、最終焼鈍板の集合組織を改善して磁束密度を向上させるのに有効である。
この時、熱延板を焼鈍する段階は、850~1200℃の温度で焼鈍することが好ましい。熱延板焼鈍温度が過度に低く、850℃未満であれば、組織が成長しなかったり微細に成長して磁束密度の上昇効果を期待しにくくなる。熱延板焼鈍温度が過度に高くなると、むしろ磁気特性が劣化し、板形状の変形によって圧延作業性が悪くなる虞がある。熱延板焼鈍は、必要に応じて、磁性に有利な方位を増加させるために行われるものであり、省略も可能である。
【0045】
次に、熱間圧延された熱延板または熱延板焼鈍された熱延板の表面に存在するスケールを除去する。本発明の一実施例では、ショットボールの投射量を高めて、母材の表面にSn/Sb濃化層を形成することに寄与し、これによって絶縁被膜へのMn拡散を調節する。
スケールを除去する段階は、ショットボールを15~35kg/(min・m2)の量で鋼板に投射してスケールを除去する段階を含む。ショットボールの投射量が過度に少なければ、表面の残留酸化層がSn/Sb濃化層の形成を妨げてMnの拡散を調節しにくい。逆に、ショットボールの投射量が過度に多ければ、鋼板の表面が多量損傷するので、上限を適切に調節することができる。さらに具体的には、17~30kg/(min・m2)の量で鋼板に投射することができる。
【0046】
ショットボールの平均粒度は、0.1~1mmであり、1秒~60秒間投射することができる。さらに具体的には、ショットボールの平均粒度は、0.3~0.8mmであり、5秒~30秒間投射することができる。ショットボールの平均粒度およびショットボール投射時間も、Mnの絶縁被膜への拡散に影響を与える。
ショットボールの材料は特に制限されないが、Fe系合金を使用することが好ましい。
【0047】
次に、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する。冷間圧延は0.15mm~0.65mmの厚さに最終圧延する。必要時、一次冷間圧延と中間焼鈍後に二次冷間圧延することができ、最終圧下率は50~95%の範囲にすることができる。
次に、冷延板焼鈍する。冷延板焼鈍は、鋼板の断面での結晶粒サイズが20~150μmとなるように700~1100℃の範囲内で10~1000秒間実施する。冷延板焼鈍温度が過度に低ければ、結晶粒が小さくて鉄損が劣化する虞がある。温度が過度に高ければ、結晶粒が粗大化されて異常渦流損が大きくなって全体鉄損が高くなる。さらに具体的には、900~1050℃の範囲で焼鈍することが好ましい。
【0048】
冷延板焼鈍後の鋼板は、冷間圧延で加工された組織を全部(99%以上)再結晶することができる。
冷延板焼鈍時、均熱温度までの昇温速度は、30~150℃/秒であってもよい。昇温速度が適切に調節されてこそ、酸化層が薄くて緻密に形成されて、Mnの拡散を防止することができる。
冷延板焼鈍する段階は、冷延板を水素(H2)40体積%以下および窒素60体積%以上含み、露点が0~-40℃の雰囲気下で焼鈍することがよい。具体的には、水素0~10体積%および窒素90~100体積%含む雰囲気で焼鈍することがよい。焼鈍雰囲気が適切に調節されてこそ、酸化層が薄くて緻密に形成されて、Mnの拡散を防止することができる。
【0049】
次に、冷延板焼鈍後、絶縁被膜を形成することができる。前記絶縁被膜は、有機質、無機質および有機-無機複合被膜剤で処理されてもよいし、その他絶縁が可能な被膜剤で処理することも可能である。例えば、金属リン酸塩40~70重量%およびシリカ0.5~10重量%含む絶縁被膜形成組成物を塗布して形成することができる。絶縁被膜は、Pを5重量%以上含み、鋼板母材は、Pを5重量%未満含めて区分される。
次に、応力除去焼鈍する段階する。応力除去焼鈍段階は、700℃~850℃の温度で10分~300分の時間で行う。
【0050】
本発明の一実施例によるモータコアは、複数の無方向性電磁鋼板が積層してなる回転子と、複数の無方向性電磁鋼板が積層してなる固定子とを含む。
回転子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式2を満足する。
固定子内の無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0~6.5%、Al:0.1~1.3%、Mn:0.3~2.0%、Sn:0.03%以下(0%を除く)、およびSb:0.02%以下(0%を除く)含み、残部はFeおよびその他の不可避不純物からなり、下記式1および式3を満足する。
〔式1〕
0.030≧[Sn]+[Sb]≧0.005
〔式2〕
0.1≧[Mn被膜]/[Mn50]
〔式3〕
10≧[Mn被膜]/[Mn50]≧1
(式1~式3中、[Sn]および[Sb]はそれぞれ、SnおよびSbの含有量を示し、[Mn被膜]は、絶縁被膜中の平均Mn含有量(重量%)を示し、[Mn50]は、鋼板母材および絶縁被膜の界面から鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量(重量%)を示す)
【0051】
回転子(rotor)の場合、磁性特性に比べて、機械的特性がより重要である。したがって、機械的特性が低下しうるSRA工程を省略することができる。
このため、SRA前の無方向性電磁鋼板の特性が導出される。無方向性電磁鋼板の鋼成分、Mn拡散および絶縁被膜中のMnについては、前述した無方向性電磁鋼板に関連して説明したので、重複する説明は省略する。
固定子(stator)の場合、機械的特性に比べて磁性特性がより重要で、打抜および積層後、SRAにより磁性の向上をはかることができる。したがって、SRA後、無方向性電磁鋼板の特性が固定子に現れる。無方向性電磁鋼板の鋼成分、Mnの拡散および絶縁被膜中のMnについては、前述した無方向性電磁鋼板に関連して説明したので、重複する説明は省略する。
【0052】
一方、固定子および回転子は、略ドーナッツまたはディスク状に打抜される。
固定子および回転子をそれぞれ別途の無方向性電磁鋼板のコイルから打抜して固定子および回転子を製造する場合、打抜された残りの部分はスクラップ処理され、これは工程費用の上昇と資源およびエネルギーの浪費につながる。固定子および回転子を同一コイルから打抜して製造する場合、スクラップ処理される部分が最小化できる。
【0053】
このため、本発明の一実施例において、固定子および回転子内に含まれる無方向性電磁鋼板は、同一コイルに由来する無方向性電磁鋼板であってもよい。本発明の一実施例において、同一コイルに由来するという意味は、固定子および回転子に含まれる無方向性内のSi、AlおよびMnなどの鋼成分が実質的に同一であることを意味する。具体的には、固定子および回転子の間にSi、AlおよびMn含有量の差がそれぞれ0.20重量%以下であることを意味する。具体的には、固定子および回転子の間にSi、AlおよびMn含有量の差が0.10重量%以下であることを意味する。さらに具体的には、固定子および回転子の間にSi、AlおよびMn含有量の差が0.05重量%以下であることを意味する。さらに具体的には、固定子および回転子の間にSi、AlおよびMn含有量の差が0.01重量%以下であることを意味する。Sn、Sbの場合、含有量の差がそれぞれ0.01重量%以下であることがよい。具体的には、0.005重量%以下であることがよい。さらに具体的には、0.001重量%以下であることが好ましい。絶縁被膜の成分も、固定子および回転子の間に実質的に同一であってもよい。
【0054】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、このような実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
実施例1
下記表1、表2および残部Feおよびその他不可避に混入される不純物で構成されたスラブを製造した。スラブを1150℃に加熱し、850℃で熱間仕上げ圧延して板厚さ2.3mmの熱延板を作製した。熱間圧延された熱延板は、1100℃で4分間焼鈍した後、下記表3にまとめたショットボール投射量でブラスティングしてスケールを除去した。その後、冷間圧延して板厚さを0.27mmにした後、100℃/秒で昇温し、窒素雰囲気で970℃で5分間最終焼鈍した。絶縁被膜は、Alリン酸塩50重量%およびシリカ5重量%含む絶縁被膜組成物を用いて0.5μmの厚さに形成した。
【0055】
その後、応力除去のために825℃の温度で1時間焼鈍した。これによって、最終的に応力が除去された無方向性電磁鋼板を製造した。深さ方向の成分は、グロー放電分析計(Glow discharge spectrometer)で3回測定して、Mn被膜とMn50の平均値を下記表3に実験条件により示した。
密着性は、クロスカットテスト(Crosscut Test:ASTM D3359)方法で測定した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
表1~表4に示したとおり、Sn、Sbを適正量含み、ショットボールの投射量を上方調節してMnの拡散を防ぐ実施例の場合、応力除去焼鈍を実施した後、絶縁被膜のMn成分および鋼板母材の内部方向に50μmの深さでのMn含有量が適切に調節されることを確認できる。これに対し、Sn、Sbの量が少ないNo.15~20の場合、Mnの拡散をうまく防止できず、絶縁被膜に多量のMnが存在し、Sn、Sbの量が多いNo.11~14および21~22の場合、絶縁被膜に少量のMnが存在することを確認できる。
一方、SnおよびSbを適正量含んでも投射量条件を満足できないNo.23~26は、絶縁被膜にMnが過剰または過小含まれることを確認できる。
【0061】
本発明は実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0062】
100:無方向性電磁鋼板、10:鋼板母材、20:絶縁被膜、30:酸化層
【国際調査報告】