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特表2025-500990高保磁力ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用
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  • 特表-高保磁力ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-15
(54)【発明の名称】高保磁力ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20250107BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20250107BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20250107BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20250107BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20250107BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20250107BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20250107BHJP
   B22F 3/04 20060101ALI20250107BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20250107BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20250107BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01F1/057
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/02 M
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F3/02 R
B22F3/04 B
B22F3/24 B
B22F3/24 K
B22F3/24 L
C21D6/00 B
B22F3/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539035
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 CN2022134599
(87)【国際公開番号】W WO2023124687
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111619345.1
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522310502
【氏名又は名称】烟台正海磁性材料股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】于永江
(72)【発明者】
【氏名】安仲▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉磊
(72)【発明者】
【氏名】張聰聰
(72)【発明者】
【氏名】耿国強
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB09
4K017BB12
4K017BB13
4K017BB18
4K017CA07
4K017DA04
4K017EA03
4K017EA09
4K017EA11
4K018AA27
4K018BA18
4K018BB04
4K018CA02
4K018CA04
4K018CA08
4K018CA11
4K018CA23
4K018DA18
4K018DA21
4K018DA22
4K018DA32
4K018FA06
4K018FA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB06
5E040HB11
5E040NN17
5E040NN18
5E062CD04
5E062CE04
5E062CF03
5E062CG02
5E062CG05
5E062CG07
(57)【要約】
本発明は、高保磁力のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用を開示する。上記永久磁石は、磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の4%以上を占めること、磁石内粒界におけるREリッチ相が均一で微細に分布すること、周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦30%であること、という特徴のうちの少なくとも1種を有する。本発明で製造した磁石は、粒界拡散磁石基材として使用される場合、優れた拡散効果を有する。磁石内のREリッチ相が粒界に沿って連続的に分布し、拡散に多くのチャネルを提供するため、拡散源から磁石内部への拡散深さを向上させるのに役立ち、磁石内部の拡散源の分布均一性を向上させるのに役立ち、拡散磁石内部組織成分の一致性を向上させるのに役立ち、それにより、拡散磁石の磁気性能を更に向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石であって、
磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の4%以上を占めること、
磁石内粒界におけるREリッチ相が均一で微細に分布すること、
周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦30%であること、という特徴のうちの少なくとも1種を有する、
ことを特徴とするネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項2】
前記REはネオジム(Nd)を含み、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)という希土類元素から選ばれる少なくとも1種を更に含むことができ、
好ましくは、磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の6%以上を占め、
好ましくは、周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦15%、より好ましくは≦10%、更に好ましくは≦7%であり、
好ましくは、前記主相はRFe14B構造を有し、
好ましくは、前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の主相結晶粒の平均粒径は5~10μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項3】
前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(CeRHRL1-a-bFe100-x-y-zTMを有し、
そのうち、20≦x≦40、0.5≦y≦10、0.9≦z≦1.5、0.05≦a≦0.65、0≦b≦0.25であり、RH元素は、Dy、Tb、Ho、Gdのうちの少なくとも1種であり、RL元素は、Pr、Nd、La、Yから選ばれる少なくとも1種であり、且つ少なくともNdを含み、TM元素は、Co、Cu、Ga、Al、Zr及びTiのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、25≦x≦35、1≦y≦5、0.9≦z≦1.3、0.05≦a≦0.25、0.01≦b≦0.1である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の製造方法であって、
Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素を含む原料、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製粉、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得て、
好ましくは、前記方法は、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素、RH元素を含む原料から製粉、プレス成形、焼結が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることを含み、
好ましくは、前記方法において、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ホウ酸トリブチル、イソプロパノール、石油エーテルから選ばれる1種又は複数種の潤滑剤を更に添加し、好ましくは、前記潤滑剤の用量は粉体総重量の0.01~2wt%であり得る、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記方法は、(K1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、
そのうち、Ceを含まない主相合金フレークは、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造し、
Ceを含む補助相合金フレークは、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造することと、
(K2)ステップ(K1)のCeを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、合金粉末に製造し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含み、
好ましくは、前記方法は、(S1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、主相合金粉末及び補助相合金粉末に製造することと、
前記Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、上記の意味を有し、
(S2)ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含み、
好ましくは、ステップ(S2)において、ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を加え、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得て、
好ましくは、ステップ(S2)において、主相合金粉末と補助相合金粉末との質量比は(1~40):1である、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法は、前記合金粉末をビレットにプレス成形することを更に含み、
好ましくは、前記プレス成形は、配向プレス成形及び等方圧成形を含み、
好ましくは、前記配向磁場の磁場強度は、2~5Tであり、
好ましくは、前記等方圧成形の圧力は、150~260MPaであり、
好ましくは、前記ビレットの密度は、4~6g/cmである、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記焼結は、4段以上の焼結保温段階、例えば4~10段の焼結保温段階を有する真空液相焼結であり、焼結保温段階の温度は900~1150℃、複数の保温段階の保温温度は同じ又は異なり、保温時間は40~140minであり、
好ましくは、前記焼結保温段階の前に何れも、昇温速度を0.5~5℃/min、より好ましくは1~4℃/minとする昇温段階を含み、
好ましくは、各隣接する2段の焼結保温プロセスの間に、前段の焼結保温段階終了後に次の昇温保温プロセスを直接行うか、又は前段の焼結保温段階終了後に先に冷却し、更に次の昇温保温プロセスを行い、好ましくは、前段の焼結保温段階終了後に先に1~10段冷却し、更に次の昇温保温プロセスを行い、好ましくは、保温終了後の冷却温度が500~1050℃である、
ことを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記時効処理は、焼結処理冷却後に行われ、
好ましくは、前記時効処理は、昇温して温度を800~950℃とし、保温時間を160~300minとするように1回目の時効処理を行うことと、210℃以下に冷却した後、昇温して温度を450~600℃の間とし、保温時間を240~360minとするように2回目の時効処理を行うことと、を含む二次時効処理である、
ことを特徴とする請求項4~7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記方法は、焼結後に製造したネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の表面を研削処理した後、重希土類拡散源を塗布し、拡散処理後に粒界拡散ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を製造する、粒界拡散処理ステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項4~8の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
希土類永久磁石モータ、スマート消費電気製品、医療機器分野における、請求項1~3の何れか一項に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の応用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2021年12月27日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202111619345.1であり、名称が「高保磁力ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用」である先行出願の優先権を主張する。上記先行出願は全体として援用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、希土類永久磁石分野に属し、具体的には高保磁力ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石及びその製造方法並びに応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
焼結ネオジム鉄ボロンは、第3世代の希土類永久磁石材料として主に希土類PrNd、鉄、ボロンなどの元素で構成され、その優れた磁気性能及び高いコストパフォーマンスのため、各種の希土類永久磁石モータ、スマート消費電気製品、医療機器などの分野に広く適用されている。低炭素環境保護経済及びハイテクノロジーの急速な発展に伴い、ネオジム鉄ボロン系焼結磁石の需要が高まっており、希土類PrNd資源の消費が大幅に増加し、PrNdの価格が徐々に上昇する。Ceは、化学的性質がPrNdと近く、且つ貯蔵量が最も豊富な希土類元素として、Pr、Ndの代わりに焼結ネオジム鉄ボロンに適用することは、原材料のコストを低減できるだけでなく、希土類資源の均衡利用にも寄与する。
【0004】
しかし、Ceの混合価数特性のため、イオン半径の比較的小さいCeは、CeFe相を形成しやすく、このような相は、磁石内で単体の結晶粒の形態で存在するため、粒界に沿って分布するREリッチ相が主相結晶粒間に欠乏し、逆磁化ドメインは核形成及び拡散が容易となり、磁石は高保磁力を得ることが困難である。同時に、隣接する主相結晶粒間の直接接触により生じた磁気交換結合作用も、磁石の残留磁気誘導強度を明らかに低下させる。一方、NdFe相は、磁石中に形成しにくい。従って、高性能のCeリッチなネオジムセリウム鉄ボロン磁石の製造を実現するために、CeFe相が結晶粒形態で存在することを抑制し、ネオジムセリウム鉄ボロン磁石におけるREリッチ相の分布を最適化することは、解決すべき技術問題となる。
【0005】
〔発明の概要〕
上記技術問題を改善するために、本発明は、
磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の4%以上を占めること、
磁石内粒界におけるREリッチ相が均一で微細に分布すること、
周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦30%であること、という特徴のうちの少なくとも1種を有する、ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を提供する。
【0006】
本発明の実施形態によれば、3つ以上の主相結晶粒の交差部の団塊状粒界におけるREリッチ相及び周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の分布は、基本的に図3に示される。
【0007】
本発明の実施形態によれば、上記REはネオジム(Nd)を含み、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)などの希土類元素から選ばれる少なくとも1種を更に含むことができる。
【0008】
本発明の実施形態によれば、磁石内粒界におけるREリッチ相の面積は、全視野面積の6%以上を占める。
【0009】
本発明の実施形態によれば、周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦15%、より好ましくは≦10%、更に好ましくは≦7%である。
【0010】
本発明において、ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の垂直配向面を研磨し、電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)を用いて検出し、面積占有率はImage-Pro Plusソフトウェアにより分析される。
【0011】
本発明において、上記視野面積は、FE-EPMA又はSEMにより検出された画像表示範囲を指し、試験サンプル画像の拡大比率に対して限定せず、例示的に200、500、800、1000又は1500倍拡大する。
【0012】
本発明において、隣接する主相結晶粒は、粒界におけるREリッチ相に隣接する上記主相結晶粒を指す。
【0013】
本発明の実施形態によれば、上記主相はRFe14B構造を有する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の主相結晶粒の平均粒径は5~10μmである。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(CeRHRL1-a-bFe100-x-y-zTMを有し、
そのうち、20≦x≦40、0.5≦y≦10、0.9≦z≦1.5、0.05≦a≦0.65、0≦b≦0.25であり、RH元素は、Dy、Tb、Ho、Gdのうちの少なくとも1種であり、RL元素は、Pr、Nd、La、Yから選ばれる少なくとも1種であり、且つ少なくともNdを含み、TM元素は、Co、Cu、Ga、Al、Zr及びTiのうちの少なくとも1種である。
【0016】
本発明の実施形態によれば、RH元素は、好ましくはDyである。
【0017】
本発明の実施形態によれば、RL元素は、好ましくはPr、Ndである。
【0018】
本発明の実施形態によれば、TM元素は、Co、Cu、Ga、Al、Zr及びTiの混合物である。
【0019】
本発明の実施形態によれば、25≦x≦35、1≦y≦5、0.9≦z≦1.3、0.05≦a≦0.25、0.01≦b≦0.1である。
【0020】
本発明は、前述の上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の製造方法であって、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素を含む原料、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製粉、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得て、
そのうち、RL元素、TM元素、RH元素は上記の意味を有する、方法を更に提供する。
【0021】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素、RH元素を含む原料から製粉、プレス成形、焼結が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることを含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、各原料の添加量は、(CeRHRL1-a-bFe100-x-y-zTM化学量論比で添加する。
【0023】
本発明の実施形態によれば、上記永久磁石製造過程に、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ホウ酸トリブチル、イソプロパノール、石油エーテルなどから選ばれる1種又は複数種の潤滑剤を更に添加することができる。好ましくは、上記潤滑剤の用量は粉体総重量の0.01~2wt%であってもよく、例示的に0.01wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%である。
【0024】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、まずCe元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素、RH元素を含む原料を合金フレークに製造し、更に合金フレークに対して水素破砕、脱水素、研削が行われ、合金粉末を製造し、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることを含む。
【0025】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、(K1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、
そのうち、Ceを含まない主相合金フレークは、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造し、
Ceを含む補助相合金フレークは、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造することと、
(K2)ステップ(K1)のCeを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、合金粉末に製造し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、(K1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、
そのうち、Ceを含まない主相合金フレークは、RL元素、RH元素、Fe元素、TM元素及びB元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造し、
Ceを含む補助相合金フレークは、Ce元素、RL元素、RH元素、Fe元素、TM元素及びB元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造することと、
(K2)ステップ(K1)のCeを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、合金粉末に製造し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含むことができる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、ステップ(K2)において、ステップ(K1)のCeを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルが行われ、合金粉末に製造し、潤滑剤を加え、プレス成形、焼結が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得る。
【0028】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、(S1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、主相合金粉末及び補助相合金粉末に製造することと、
上記Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、上記の意味を有し、
(S2)ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含むことができる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、ステップ(S2)において、ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を加え、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得る。
【0030】
本発明の実施形態によれば、ステップ(S2)において、主相合金粉末と補助相合金粉末との質量比は(1~40):1であり、例示的には2.7:1、10:1である。
本発明の実施形態によれば、上記合金フレーク(主相合金フレーク及び補助相合金フレークを含む)の厚さは0.1~0.4mmであり、例示的には0.1mm、0.2mm、0.25mm、0.3mm、0.4mmである。
【0031】
本発明の実施形態によれば、上記合金フレーク(主相合金フレーク及び補助相合金フレークを含む)は、各原料から真空製錬後に鋳造して得られる。例示的に、上記合金フレークの製錬は、真空誘導炉内で行われる。
【0032】
好ましくは、上記製錬は、例えば、窒素ガス又はアルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気で、好ましくはアルゴンガス雰囲気で行われる。
【0033】
好ましくは、上記合金フレークの製錬過程の鋳造温度は1300~1500℃、例示的に1300℃、1400℃、1500℃である。
【0034】
好ましくは、上記合金フレークの鋳造過程は、溶融した原料液体を、回転する水冷銅ロールに鋳造することである。更に、上記回転する水冷銅ロールの回転速度は15~45rpm、例示的に15rpm、20rpm、25rpm、30rpm、40rpm、45rpmである。
【0035】
好ましくは、上記合金粉末(主相合金粉末及び補助相合金粉末を含む)の平均粒径は2~6μm、例示的に2μm、3μm、3.5μm、4μm、5μm、6μmである。例示的に、主相合金粉末の平均粒径は4~6μmであり、補助相合金粉末の平均粒径は3~5μmである。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は、上記合金粉末をビレットにプレス成形することを更に含む。
【0037】
本発明の実施形態によれば、上記プレス成形は、配向プレス成形及び等方圧成形を含み、好ましくは、まず配向プレス成形し、更に等方圧成形してビレットを製造することで、ビレットの密度を向上させる。更に、上記配向プレスは磁場で行われ、上記等方圧成形は等方圧プレス機で行われる。
【0038】
好ましくは、上記混合粉末は、窒素ガス又はアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素ガス雰囲気の保護で配向プレス成形が行われる。
【0039】
好ましくは、上記配向磁場の磁場強度は2~5T、例示的に2T、3T、4T、5Tである。
【0040】
好ましくは、上記等方圧成形の圧力は150~260MPa、例示的に150MPa、180MPa、185MPa、200MPa、220MPa、240MPa、260MPaである。
【0041】
好ましくは、上記ビレットの密度は4~6g/cm、例示的に4g/cm、4.2g/cm、4.6g/cm、5g/cm、6g/cmである。
【0042】
本発明の実施形態によれば、焼結処理前に、更にビレットを加熱処理し、加熱処理の温度は100~950℃、好ましくは150~900℃であり、加熱処理の保温時間は60~120minであり、例示的に、加熱処理の温度は3~6段であり、各段の加熱処理の保温温度は同じであってもよく異なってもよく、保温時間は同じであってもよく異なってもよく、加熱処理段階は不活性ガスで行われてもよく、真空状態で行われてもよい。例示的に、加熱処理の温度は4段であり、それぞれ100~200℃、200~550℃、550~700℃、700~950℃である。
【0043】
本発明の実施形態によれば、上記焼結は、4段以上の焼結保温段階、例えば4~10段の焼結保温段階を有する真空液相焼結であり、焼結保温段階の温度は900~1150℃、好ましくは950~1100℃であり、例示的には900℃、950℃、1000℃、1010℃、1015℃、1030℃、1040℃、1050℃、1070℃、1100℃であり、複数の保温段階の保温温度は同じであってもよく異なってもよい。保温時間は40~140min、好ましくは50~100minであり、例示的には40min、50min、60min、70min、80min、90min、110minであり、保温時間は同じであってもよく異なってもよい。焼結保温段階は不活性ガスで行われてもよく、真空状態で行われてもよい。
【0044】
好ましくは、上記焼結保温段階の前に何れも、昇温速度を0.5~5℃/min、より好ましくは1~4℃/minとする昇温段階を含み、各段の昇温段階の昇温速度は同じであってもよく異なってもよい。
【0045】
本発明の実施形態によれば、各隣接する2段の焼結保温プロセスの間に、前段の焼結保温段階終了後に次の昇温保温プロセスを直接行ってもよく、前段の焼結保温段階終了後に先に冷却し、更に次の昇温保温プロセスを行ってもよく、前段の焼結保温段階の温度より低い限り、冷却の温度は限定されず、必要な冷却温度に達する限り、冷却の段数は特に限定されず、即ち、各隣接する2段の焼結保温プロセスの間に、任意のランダムなプロセスを設けることができる。例えば、前段の焼結保温段階終了後、先に1~10段の冷却を行い、更に次の昇温保温プロセスを行い、1~10段の冷却温度は相同又は相異であってもよい。例示的に、保温終了後の冷却温度は500~1050℃である。
【0046】
本発明の実施形態によれば、上記時効処理は、焼結処理冷却後に行われる。例示的に、時効処理は、焼結完了後に室温まで冷却し、更に昇温処理を行うことを含む。
【0047】
好ましくは、上記時効処理は、昇温して温度を800~950℃とし、保温時間を160~300minとするように1回目の時効処理を行うことと、210℃以下に冷却した後、昇温して温度を450~600℃の間とし、保温時間を240~360minとするように2回目の時効処理を行うことと、を含む二次時効処理である。
【0048】
本発明の実施形態によれば、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の製造方法は以下のステップを含む。
【0049】
ステップ1、(CeRHRL1-a-bFe100-x-y-zTMの成分及び配合比に従って原料を秤量し、真空誘導炉を用いてArガス雰囲気の保護で製錬し、熔化した溶解液を、回転する急冷ロールに鋳造し、冷却ディスクにストリップキャスティングして冷却した後、合金フレークを製造する。
【0050】
ステップ2、合金フレークを水素破砕、脱水素、ジェットミル処理した後、合金粉末を製造する。
【0051】
ステップ3、合金粉末を磁場で配向プレスしてビレットを得て、等方圧プレス機でプレスし、ビレットの密度を更に向上させる。
【0052】
ステップ4、ビレットは、焼結炉内でN(4≦N≦10)段の焼結保温段階を有する焼結、時効処理が行われ、製造してネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得る。
【0053】
本発明の実施形態によれば、上記方法は、焼結後に製造したネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の表面を研削処理した後、重希土類拡散源を塗布し、拡散処理後に粒界拡散ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を製造する、粒界拡散処理ステップを更に含む。
【0054】
好ましくは、上記拡散処理は、拡散材料を磁石表面に施し、真空加熱拡散処理、拡散冷却及び拡散時効処理を行うことを含む。
【0055】
本発明の実施形態によれば、スプレー塗布の方法を用いて、ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の表面に重希土類RH(Dy、Tb)の純金属、合金、化合物などの1種又は複数種を付着することができる。例示的に、Dy及び/又はTbの純金属、Dy及び/又はTbの水素化物、Dy及び/又はTbの酸化物、Dy及び/又はTbの水酸化物、Dy及び/又はTbのフッ化物などのうちの少なくとも1種であり、例示的にフッ化ジスプロシウムである。
【0056】
本発明の実施形態によれば、真空熱処理炉内で拡散処理を行うことができる。
【0057】
好ましくは、真空加熱拡散処理の温度は800~980℃であり、真空加熱拡散処理の時間は5~45hである。
【0058】
好ましくは、拡散冷却の温度は100℃未満である。
【0059】
好ましくは、上記拡散時効処理の温度は420~650℃、例えば550℃であり、上記拡散時効処理の時間は3~10hである。
【0060】
本発明の実施形態によれば、焼結プロセス後、拡散処理前、ビレットを目標サイズに加工することもできる。
【0061】
本発明は、希土類永久磁石モータ、スマート消費電気製品、医療機器などの分野における、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の応用を更に提供する。
【0062】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0063】
本発明は、ネオジムセリウム鉄ボロンの基材配合、製造方法及び焼結システムを調製することにより、ネオジムセリウム鉄ボロンの主相結晶粒表面の固液界面から固相への移動距離を減少させ、主相結晶粒の溶融を遅らせ、主相結晶粒の成長を抑制すると同時に、粒界のキャピラリー作用力を強化し、溶融したREリッチ相を粒界に沿って分布させ、周囲の3つ以上の全ての隣接する結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比を減少させ、全視野面積を占める磁石内のREリッチ相の面積比率を減少させ、且つ均一で微細に分布する。同時に、連続的で滑らかな薄層粒界におけるREリッチ相を形成することにより、主相結晶粒を分断して取り囲み、粒界欠陥を修復し、それにより逆磁化ドメインの核形成を抑制し、逆磁化ドメイン壁の移動を阻害し、主相結晶粒間の磁気交換結合作用を効果的に遮断し、更に永久磁石に比較的高い磁気性能を備えさせる。
【0064】
Ceの添加により、磁石内粒界相の成分及び構造形態を変化させ、REリッチ相の融点を低下させ、磁石の焼結及び時効温度を低下させると同時に、粒界におけるREリッチ相を団塊状に分布させる傾向がある。Ce含有量の増加に伴って、粒界相が団塊状に分布する傾向が更に顕著となり、これにより、粒界欠陥が増加し、主相結晶粒間が互いに接触して、磁気性能を低下させる。従って、本発明は、更に焼結周期を延長し、保温時間を増加させることで、溶融したREリッチ相が主相結晶粒間に沿って分布することを促進し、二粒子粒界におけるREリッチ相の比率を向上させ、磁石に均一で微細に分布させ、欠陥を減少させ、逆磁化ドメインの核形成を抑制し、磁石ミクロ組織及び磁気性能を最適化する目的を実現する。
【0065】
また、本発明で製造した磁石は、粒界拡散磁石基材として使用される場合、優れた拡散効果を有する。磁石内のREリッチ相が粒界に沿って連続的に分布し、拡散に多くのチャネルを提供するため、拡散源から磁石内部への拡散深さを向上させるのに役立ち、磁石内部の拡散源の分布均一性を向上させるのに役立ち、拡散磁石内部組織成分の一致性を向上させるのに役立ち、それにより、拡散磁石の磁気性能を更に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】比較例2の磁石内の粒界相及び主相の走査型電子顕微鏡画像である。
図2】実施例1の磁石内の粒界相及び主相の走査型電子顕微鏡画像である。
図3】本発明の3つ以上の主相結晶粒の交差部の団塊状粒界におけるREリッチ相及び周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の分布図である。
【0067】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0068】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0069】
本発明の以下の実施例において、PrNdは合金の形態で添加し、残りの金属は何れも単体の形態で添加し、BはB-Fe砂により提供される。
【0070】
実施例1
(1)成分100質量%に対して、PrNd:29wt.%、Ce:3.7wt.%、Dy:0.4wt.%、Co:1.2wt.%、Cu:0.3wt.%、Ga:0.1wt.%、Al:0.53wt.%、Zr:0.12wt.%、Ti:0.12wt.%、B:0.99wt.%、Fe残部の設計配合比に従って、原材料を秤量し、真空誘導製錬炉を用いてArガス雰囲気の保護で製錬し、溶融した液体を、回転速度32rpmの急冷ロールに鋳造し、液体鋳造の温度は1400℃であり、平均厚さ0.25mmの合金フレークを製造した。
【0071】
(2)合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルが行われ、平均粒径3.7μmの合金粉を製造し、N2雰囲気の保護で合金粉重量が0.05wt%を占めた潤滑剤ステアリン酸亜鉛を添加し、撹拌して均一に混合した。
【0072】
(3)N2雰囲気の保護でステップ(2)の混合粉末をプレス機金型キャビティに充填し、配向磁場の強度3Tで配向成形プレスし、その後、等方圧プレス機内で、185MPaの圧力、8s圧力保持して等方圧処理し、密度4.2g/cmのビレットを得た。
【0073】
(4)ビレットを焼結炉に入れ、真空雰囲気で加熱処理し、150℃、260℃でそれぞれ100min保温して脱潤滑剤処理を行い、600℃、900℃でそれぞれ90min保温して脱ガス処理を行い、次に4段の焼結保温プロセスを実行し、且つ各段の焼結保温段階終了後に先に1000℃に降温した後、更に昇温し、次の昇温プロセスを行い、具体的な焼結プロセスは表1に示され、4段目の焼結保温終了後に室温に直接冷却し、焼結体を得た。
【0074】
(5)時効処理:上記焼結体を取り、900℃に昇温して180min保温した後に200℃に冷却し、次に、更に530℃に昇温して240min保温し、保温終了後に室温に冷却し、時効処理後の磁石を得て、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(Ce0.11RH0.01RL0.8833.1Fe63.56TM2.350.99を有した。
【0075】
RH元素はDyであり、RL元素はPr、Ndであり、TM元素はCo、Cu、Ga、Al、Zr及びTiであった。
【0076】
図2は、実施例1の磁石内粒界相及び主相の走査型電子顕微鏡画像である。図2から分かるように、REリッチ相の分布が均一で微細であった。
【0077】
実施例2
実施例2は、実施例1と同じ配合、製錬、製粉、プレス成形、時効プロセスを用いて、その違いは、5段の焼結保温プロセスを用いるのみであり、具体的な焼結プロセスは表1に示された。
【0078】
比較例1
比較例1と実施例1の違いは、従来の焼結プロセスに従って昇温して1回の保温焼結処理を行うといった、焼結プロセスのみであり、具体焼結プロセスは表1に示された。
【0079】
比較例2
比較例2と実施例1の違いは、比較例2が3段の焼結保温プロセスを用いて、且つ各段の焼結保温段階終了後に先に1000℃に降温した後、更に昇温して次の昇温プロセスを行うのみであり、具体的な焼結プロセスは表1に示された。
【0080】
比較例3
比較例3は実施例1と比較して、その違いは、PrNd:32.2wt.%、Ce:0.5wt.%、Dy:0.4wt.%、Co:1.2wt.%、Cu:0.3wt.%、Ga:0.1wt.%、Al:0.53%、Zr:0.12wt.%、Ti:0.12wt.%、B:0.99wt.%、Fe残量であるといった成分設計配合比のみである。製造方法は実施例1と完全に同じであり、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(Ce0.02RH0.01RL0.9733.1Fe63.56TM2.350.99を有した。
【0081】
RH元素はDyであり、RL元素はPr、Ndであり、TM元素はCo、Cu、Ga、Al、Zr及びTiであった。
【0082】
図1は、比較例2の磁石内粒界相及び主相の走査型電子顕微鏡画像であり、図1から分かるように、REリッチ相の分布が粗大で不均一であった。
【0083】
比較例4
比較例4と比較例3の違いは、3段の焼結保温プロセスを用いるのみであり、具体的な焼結プロセスは表1に示された。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
実施例3
実施例3は、実施例1の焼結時効後の磁石を選用し、長さ20mm、幅20mm、厚さ5mmのシート製品に加工し、浸漬塗布プロセスにより、磁石表面に厚さ1mmのフッ化ジスプロシウムの薄膜を加え、次に900℃で15時間保温して拡散処理を行い、拡散温度を100℃未満に冷却した後、更に550℃に昇温して5時間の時効処理を行い、製造して粒界拡散ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得た。最終的な磁石について磁気性能試験を行った。
【0087】
比較例5
実施例5は、比較例2の焼結時効後の磁石を選用し、長さ20mm、幅20mm、厚さ5mmのシート製品に加工し、浸漬塗布プロセスにより、磁石表面に厚さ1mmのフッ化ジスプロシウムの薄膜を加え、次に900℃で15時間保温して拡散処理を行い、拡散温度を100℃未満に冷却した後、更に550℃に昇温して5時間の時効処理を行い、製造して粒界拡散ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得た。最終的な磁石について磁気性能試験を行った。
【0088】
実施例4
(1)成分100質量%に対して、PrNd:32.6wt.%、Dy:0.4wt.%、Co:1.3wt.%、Cu:0.38wt.%、Ga:0.1wt.%、Al:0.6wt.%、Ti:0.14wt.%、Zr:0.1wt.%、B:0.99wt.%、Fe残部の設計配合比に従って、主相合金原料を秤量し、真空誘導製錬炉を用いてArガス雰囲気の保護で製錬し、溶融した液体を、回転速度32rpmの水冷銅ロールに鋳造し、液体鋳造の温度は1400℃であり、平均厚さ0.27mmの主相合金フレークを製造した。
【0089】
(2)成分100質量%に対して、PrNd:19.3wt.%、Ce:13.7wt.%、Dy:0.4wt.%、Co:1.3wt.%、Cu:0.1wt.%、Ga:0.1wt.%、Al:0.35wt.%、Ti:0.1wt.%、Zr:0.1wt.%、B:0.99wt.%、Fe残部の設計配合比に従って、補助相合金原材料を秤量し、真空誘導製錬炉を用いてArガス雰囲気の保護で製錬し、溶融した液体を、回転速度36rpmの水冷銅ロールに鋳造し、液体鋳造の温度は1400℃であり、平均厚さ0.25mmの補助相合金フレークを製造した。
【0090】
(3)主相合金フレーク及び補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、平均粒径が5μm及び3.5μmの合金粉を製造し、N雰囲気の保護で質量比2.7:1で混合し、合金粉が0.05wt%を占めた潤滑剤ホウ酸トリブチルを添加し、撹拌して均一に混合した。
【0091】
(4)N雰囲気の保護で混合粉末をプレス機金型キャビティに充填し、配向磁場の強度3Tで配向成形プレスし、その後、等方圧プレス機内で、185MPaの圧力で8s等方圧処理し、密度4.2g/cmのビレットを得た。
【0092】
(5)ビレットを焼結炉に入れ、真空雰囲気で加熱処理し、150℃、260℃でそれぞれ100min保温して脱潤滑剤処理を行い、600℃、900℃でそれぞれ90min保温して脱ガス処理を行い、次に4段の焼結保温プロセスを実行し、且つ各焼結保温段階終了後に先に990℃に降温した後、更に昇温して次の昇温プロセスを行い、具体的な焼結プロセスは表2に示され、4段目の焼結保温終了後に室温に直接冷却し、焼結体を得た。
【0093】
(6)時効処理:上記焼結体を取り、900℃に昇温して180min保温した後に200℃に冷却し、次に、更に530℃に昇温して240min保温し、保温終了後に室温に冷却し、時効処理後の磁石を得て、上記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(Ce0.11RH0.01RL0.8833.1Fe63.56TM2.350.99を有した。
【0094】
RH元素はDyであり、RL元素はPr、Ndであり、TM元素はCo、Cu、Ga、Al、Zr及びTiであった。
【0095】
比較例6
比較例6と実施例4の違いは、比較例6が3段の焼結保温プロセスを用いるのみであり、具体的な焼結プロセスは表2に示された。
【0096】
実施例5
実施例5と実施例4の違いは、製粉ステップ(3)が異なるのみであり、実施例5において、主相合金フレーク及び補助相合金フレークを質量比2.7:1で混合した後、水素破砕、脱水素、ジェットミルが行われ、平均粒径3.7μmの合金粉を製造し、N雰囲気の保護で合金粉が0.05wt%を占めた潤滑剤ホウ酸トリブチルを添加し、撹拌して均一に混合した。
【0097】
比較例7
比較例7と実施例5の違いは、比較例7が3段の焼結保温プロセスを用いるのみであり、具体的な焼結プロセスは表2に示された。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
各実施例1~5及び比較例1~7の時効処理後の磁石の全てを規格φ10-10サンプルカラムに加工し、BH装置を用いて磁石の性能を測定し、具体的な磁気性能試験の結果。
【0101】
NIM-62000永久磁石材料精密測定システムにより、上記実施例1~5及び比較例1~7で製造した磁石の磁気性能をそれぞれ測定し、電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)により検出され、面積占有率はImage-Pro Plusソフトウェルを用いて分析し、結果は下記表3に示された。
【0102】
そのうち、全視野面積を占めるREリッチ相の面積の比率は、面積比S1と表記された。
【0103】
周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積の和に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の和の比の平均値はS2であった。
【0104】
平均粒径は主相結晶粒の平均粒径であった。
【0105】
【表5】

実施例1と比較例1との比較から分かるように、4段の焼結保温プロセスを用いることで、団塊状粒界相におけるREリッチ相の面積比を効果的に減少させ、粒界相におけるREリッチ相を更に微細にし、磁石の磁気性能を顕著に向上させた。
【0106】
実施例1と実施例2、比較例2との比較から分かるように、5段の焼結保温プロセスを用いることで、磁石性能を更に向上させることができ、改善効果は限られている。しかし、4段の焼結保温プロセスによる性能改善効果(実施例1を参照)は、3段の焼結保温プロセス(比較例2を参照)よりも明らかに優れた。
【0107】
実施例1と比較例2の間の磁気性能、S1、S2の改善幅は、比較例3と比較例4の間の磁気性能、S1、S2の改善幅よりも明らかに優れ、高Ce含有量の磁石の4段焼結保温プロセスによる性能向上効果は、低Ce含有量の磁石よりも明らかに優れることを示した。
【0108】
実施例3と比較例5との比較から分かるように、4段の焼結保温プロセスを用いることで粒界相分布を最適化することができるため、磁石の拡散効果を顕著に向上させることができる。
【0109】
実施例4と比較例6、実施例5と比較例7の比較から分かるように、4段焼結保温プロセスを用いた二合金磁石の磁気性能は、同様に3段の焼結保温プロセスよりも優れた。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則の範囲内でなされた何れの修正、同等置換、改良なども、本発明の請求範囲内に含まれるものとする。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石であって、
磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の4%以上を占めること、
磁石内粒界におけるREリッチ相が均一で微細に分布すること、
周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦30%であること、という特徴のうちの少なくとも1種を有する、
ことを特徴とするネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項2】
前記REはネオジム(Nd)を含み、セリウム(Ce)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)及びホルミウム(Ho)という希土類元素から選ばれる少なくとも1種を更に含むことができ、
好ましくは、磁石内粒界におけるREリッチ相の面積が全視野面積の6%以上を占め、
好ましくは、周囲の3つ以上の全ての隣接する主相結晶粒の総面積に対する3つ以上の主相結晶粒の交差部に位置する団塊状粒界におけるREリッチ相の面積の比の平均値≦15%、より好ましくは≦10%、更に好ましくは≦7%であり、
好ましくは、前記主相はR2Fe14B構造を有し、
好ましくは、前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の主相結晶粒の平均粒径は5~10μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項3】
前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石は、化学式(CeaRHbRL1-a-b)xFe100-x-y-zTMyBzを有し、
そのうち、20≦x≦40、0.5≦y≦10、0.9≦z≦1.5、0.05≦a≦0.65、0≦b≦0.25であり、RH元素は、Dy、Tb、Ho、Gdのうちの少なくとも1種であり、RL元素は、Pr、Nd、La、Yから選ばれる少なくとも1種であり、且つ少なくともNdを含み、TM元素は、Co、Cu、Ga、Al、Zr及びTiのうちの少なくとも1種であり、
好ましくは、25≦x≦35、1≦y≦5、0.9≦z≦1.3、0.05≦a≦0.25、0.01≦b≦0.1である、
ことを特徴とする請求項1に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の製造方法であって、
Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素を含む原料、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製粉、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得て、
好ましくは、前記方法は、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素、B元素、RH元素を含む原料から製粉、プレス成形、焼結が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることを含み、
好ましくは、前記方法において、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ホウ酸トリブチル、イソプロパノール、石油エーテルから選ばれる1種又は複数種の潤滑剤を更に添加し、好ましくは、前記潤滑剤の用量は粉体総重量の0.01~2wt%であり得る、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記方法は、(K1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、
そのうち、Ceを含まない主相合金フレークは、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造し、
Ceを含む補助相合金フレークは、Ce元素、RL元素、Fe元素、TM元素及びB元素、並びに任意選択で存在するか又は存在しないRH元素の原料から製錬、凝縮が行われ、合金フレークに製造することと、
(K2)ステップ(K1)のCeを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、合金粉末に製造し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含み、
好ましくは、前記方法は、(S1)まず、Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークをそれぞれ製造し、水素破砕、脱水素、ジェットミルがそれぞれ行われ、主相合金粉末及び補助相合金粉末に製造することと、
前記Ceを含まない主相合金フレーク及びCeを含む補助相合金フレークは、上記の意味を有し、
(S2)ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を任意選択で加えるか又は加えず、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得ることと、を更に含み、
好ましくは、ステップ(S2)において、ステップ(S1)の主相合金粉末と補助相合金粉末とを混合し、潤滑剤を加え、プレス成形、焼結、時効処理が行われ、製造して前記ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を得て、
好ましくは、ステップ(S2)において、主相合金粉末と補助相合金粉末との質量比は(1~40):1である、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法は、前記合金粉末をビレットにプレス成形することを更に含み、
好ましくは、前記プレス成形は、配向プレス成形及び等方圧成形を含み、
好ましくは、前記配向磁場の磁場強度は、2~5Tであり、
好ましくは、前記等方圧成形の圧力は、150~260MPaであり、
好ましくは、前記ビレットの密度は、4~6g/cm3である、
ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記焼結は、4段以上の焼結保温段階、例えば4~10段の焼結保温段階を有する真空液相焼結であり、焼結保温段階の温度は900~1150℃、複数の保温段階の保温温度は同じ又は異なり、保温時間は40~140minであり、
好ましくは、前記焼結保温段階の前に何れも、昇温速度を0.5~5℃/min、より好ましくは1~4℃/minとする昇温段階を含み、
好ましくは、各隣接する2段の焼結保温プロセスの間に、前段の焼結保温段階終了後に次の昇温保温プロセスを直接行うか、又は前段の焼結保温段階終了後に先に冷却し、更に次の昇温保温プロセスを行い、好ましくは、前段の焼結保温段階終了後に先に1~10段冷却し、更に次の昇温保温プロセスを行い、好ましくは、保温終了後の冷却温度が500~1050℃である、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記時効処理は、焼結処理冷却後に行われ、
好ましくは、前記時効処理は、昇温して温度を800~950℃とし、保温時間を160~300minとするように1回目の時効処理を行うことと、210℃以下に冷却した後、昇温して温度を450~600℃の間とし、保温時間を240~360minとするように2回目の時効処理を行うことと、を含む二次時効処理である、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記方法は、焼結後に製造したネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の表面を研削処理した後、重希土類拡散源を塗布し、拡散処理後に粒界拡散ネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石を製造する、粒界拡散処理ステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項10】
希土類永久磁石モータ、スマート消費電気製品、医療機器分野における、請求項1~3の何れか一項に記載のネオジムセリウム鉄ボロン永久磁石の応用。
【国際調査報告】