(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20250109BHJP
C07C 13/44 20060101ALI20250109BHJP
C07C 2/00 20060101ALI20250109BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C08F8/00
C07C13/44
C07C2/00
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544632
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2023095136
(87)【国際公開番号】W WO2024113697
(87)【国際公開日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】202211699345.1
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523279110
【氏名又は名称】武漢迪賽環保新材料股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN DESYTEK ENVIRONMENTAL PROTECTION & NEW MATERIALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 204, 2/F, R & D Building, No. 220 Checheng Avenue, Wuhan Economic And Technological Development Zone Wuhan, Hubei 430000
(74)【代理人】
【識別番号】100194526
【氏名又は名称】叶野 徹
(72)【発明者】
【氏名】雷 玉平
(72)【発明者】
【氏名】程 潔
(72)【発明者】
【氏名】鄒 玲
(72)【発明者】
【氏名】王 琴
(72)【発明者】
【氏名】田 孝華
(72)【発明者】
【氏名】郭 文勇
(72)【発明者】
【氏名】陸 ▲びあお▼
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AD17
4H006BA25
4H006BA48
4H006BB21
4H006BC10
4H006BC19
4H006BC31
4H039CA41
4H039CD10
4H039CD20
4H039CG20
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100BC12H
4J100BC48H
4J100CA01
4J100CA11
4J100CA12
4J100CA31
4J100HA37
4J100HA61
4J100HB06
4J100HB17
4J100HB37
4J100HC04
4J100HC27
4J100HC45
4J100HC63
4J100HC75
4J100HC91
4J100HE05
4J100HE14
4J100HE41
4J100JA38
4J100JA44
(57)【要約】
本発明は、高性能樹脂の技術分野に属し、アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂及びその他の製造方法を提供する。本発明の樹脂の構造式は下記式であり、ただし、R
1、R
2及びR
3は、ベンゾシクロブテン基又は水素原子であり、そのうち少なくとも1つはベンゾシクロブテン基であり、R
4、R
5及びR
6は、アルキル基、ビニル基または水素原子であり、且つ、R
4、R
5及びR
6は同じである。その製造方法は、分子量の異なる不飽和樹脂とハロゲン化ベンゾシクロブテンがHeck反応により製造され得ることである。前記ベンゾシクロブテン樹脂の製造条件は温和で調製が容易であり、さらに昇温して開環重合硬化させた後形成される樹脂は、架橋密度が高く、耐熱性が高く、樹脂平滑性が良好で、誘電率と誘電損失が極めて低く、優れた光電材料である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が以下であるアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂。
【化1】
ただし、R
1、R
2及びR
3は、ベンゾシクロブテン基又は水素原子であり、R
1、R
2及びR
3のうち少なくとも1つはベンゾシクロブテン基であり、R
4、R
5及びR
6は、アルキル基、ビニル基または水素原子であり、且つ、R
4、R
5及びR
6は同じであり、0<n<5000。
【請求項2】
前記nは、0<n<1000の範囲にあり、好ましくは2<n<200の範囲にあり、より好ましくは5<n<100の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
不飽和樹脂、ハロゲン化ベンゾシクロブテン、触媒、配位子、酸結合剤及び反応溶媒を窒素ガス雰囲気下で、加熱攪拌して反応させ、得られた反応液を処理してアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂を得る。
【請求項4】
前記不飽和樹脂は、鎖内にアルケニル結合を有する不飽和ポリマーであり、1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレンのいずれか一つを含むが、これらに限定されなく、
前記1,2-ポリブタジエンは、アイソタクチック1,2-ポリブタジエン若しくはシンジオタクチック1,2-ポリブタであり、又は、アイソタクチック1,2-ポリブタジエンとシンジオタクチック1,2-ポリブタとの混合物であり、
前記不飽和樹脂の平均分子量は100~100000であることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化ベンゾシクロブテンは、4-ヨードベンゾシクロブテン、4-ブロモベンゾシクロブテン、4-クロロベンゾシクロブテンの1種または複数種の混合物であり、
前記ハロゲン化ベンゾシクロブテンと前記不飽和樹脂の投入重量比は、前記ハロゲン化ベンゾシクロブテン:前記不飽和樹脂=(0.1~10):1であることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記触媒はパラジウム塩であり、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、Pd/C、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの1種を含むが、これらに限定されなく、その用量は、ハロゲン化ベンゾシクロブテンのモル数の0.001~10.0%であり;
前記配位子はトリフェニルホスフィンまたはトリ(o-メチルフェニル)ホスフィンであり、その用量は、触媒モル数の1~50倍であることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記酸結合剤は無機塩基または有機塩基であり、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムのいずれか一つを含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンのいずれか一つであることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記加熱攪拌の反応温度は室温~150℃、好ましくは70~100℃であり、
前記撹拌の反応時間は3~35時間であることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記反応液の処理方法は、反応液を非極性溶媒に添加して、濾過を行い、中性まで水洗をしてから、濃縮して、カラムクロマトグラフィーにて分離精製することによって、無色または淡黄色透明の油状物を得ることであることを特徴とする請求項3に記載のアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能樹脂の技術分野に属し、具体的にはアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾシクロブテンは、独特な非極性四元環構造を有するため、適切な温度条件下で四元環を開き、化合物自体が自己重合反応を起こし、それによって重合硬化反応を起こすことができ;他のオレフィン含有官能基とDiels-Alder反応を起こし、次いで重合硬化することもできる。ベンゾシクロブテンの開環重合硬化の過程ではいかなる小分子化合物も発生せず、その硬化物は加工しやすく、優れた耐熱性能、低い熱膨張係数、低い吸湿性、良好な平坦性、良好な機械性能、極めて低い誘電率と誘電損失などの利点を有する。ベンゾシクロブテン樹脂は航空宇宙、マイクロ電子パッケージ、電工電気絶縁、フォトレジストなどの分野に広く応用されている。
【0003】
ベンゾシクロブテンは炭素元素と水素元素のみからなり、硬化後で低い誘電率を持っているが、ベンゾシクロブテンは常温で液体であり、成型加工が容易ではなく、誘導体化反応を行って他の官能基を加える必要がある。このような樹脂は、一般的にまずにベンゾシクロブテン誘導体を合成して、さらに、予備重合反応を経て一定分子量のプレポリマーになることによって、材料の成型プロセスを行うことが可能になる。例えば、ダウ・ケミカル社が開発した一連のCYCLOTENE Advanced Electronics Resinsフォトレジストは、DVS(1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン)と4-ブロモベンゾシクロブテンとのHeck反応により製造された小分子化合物が、さらに予備重合反応を経って得られたプレポリマーである。そのため、目前よく見られているベンゾシクロブテン樹脂は、合成が比較的複雑であり、生産コストが高く、応用の普及が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、合成工程が複雑で、生産コストが高く、応用の普及が難しいなどのベンゾシクロブテン樹脂における既存問題点を解決し、性能に優れ、製造が便利なアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂及びその他の製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の第1の態様は、下記式I
【化1】
(ただし、R
1、R
2及びR
3は、ベンゾシクロブテン(
)基及び水素原子であり、そのうち少なくとも1つはベンゾシクロブテン基である;R
4、R
5及びR
6は、アルキル基、ビニル基または水素原子のいずれか一つであり、且つ、R
4、R
5及びR
6は同じである。)
で示されるアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂を提供する。
【0006】
前記ベンゾシクロブテン基の構造式は下記式
【化2】
(ただし、破線があるところは置換基の位置を表す。)
で示された通りである。
【0007】
前記ベンゾシクロブテン樹脂の重合度は0<n<5000、好ましくは2<n<3000、より好ましくは5<n<1000である。
【0008】
本発明の他の態様は、本発明の第1の態様に記載のアルケニル結合含有結合ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法を提供する。
【0009】
本発明に提供された、式Iで表される樹脂の製造方法は、以下の工程を含む:
【0010】
不飽和樹脂、ハロゲン化ベンゾシクロブテン、触媒、配位子、酸結合剤及び反応溶媒を窒素ガス雰囲気下で加熱攪拌して反応させ、得られた反応液を処理してベンゾシクロブテン樹脂を得る。
【0011】
本発明に記載される不飽和樹脂としては、1,2-ポリブタジエン、1,2-ポリイソプレンのいずれか一つが挙げられるが、これらに限定されなく、好ましくは1,2-ポリブタジエンである;前記1,2-ポリブタジエンは、アイソタクチック1,2-ポリブタジエン若しくはシンジオタクチック1,2-ポリブタであってもよく、アイソタクチック1,2-ポリブタジエンとシンジオタクチック1,2-ポリブタとの混合物であってもよく、好ましくはアイソタクチック1,2-ポリブタジエンとシンジオタクチック1,2-ポリブタとの混合物であり、ここで、アイソタクチック1,2-ポリブタジエンの含有量は50%を超え、前記ポリブタジエンの平均分子量は100~100000、好ましくは200~50000、より好ましくは500~30000である。
【0012】
本発明に記載のハロゲン化ベンゾシクロブテンは、4-ヨードベンゾシクロブテン、4-ブロモベンゾシクロブテン、4-クロロベンゾシクロブテンの1種または複数種の混合物であり、好ましくは4-ブロモベンゾシクロブテンであり、前記ハロゲン化ベンゾシクロブテンと前記不飽和樹脂の投入重量比は、前記ハロゲン化ベンゾシクロブテン:前記不飽和樹脂=(0.1~10):1であり、好ましくは(0.3~5):1である。
【0013】
本発明に記載の触媒はパラジウム塩であり、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、Pd/C、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの1種を含むが、これらに限定されなく、その用量は、ハロゲン化ベンゾシクロブテンのモル数の0.001~10.0%である;前記配位子はトリフェニルホスフィンまたはトリ(o-メチルフェニル)ホスフィンであり、その用量は、触媒モル数の1~50倍の量である。
【0014】
本発明に記載の酸結合剤は無機塩基または有機塩基であり、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムのいずれか一つを含むが、これらに限定されなく、好ましくはトリエチルアミンである。
【0015】
本発明に記載の溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンのいずれか一つであり、好ましくはアセトニトリルである。
【0016】
本発明の前記加熱攪拌の反応温度は室温~150℃、好ましくは70~100℃である;前記撹拌反応時間は3~35時間である。前記反応液の処理方法は、反応液を非極性溶媒に添加して、濾過を行い、中性まで水洗をしてから、濃縮して、精製(例えば、カラムクロマトグラフィーによる分離精製)することによって、無色または淡黄色透明の油状物を得る。
【0017】
従来技術と比較したところ、本発明の利点および有益な効果は次のとおりである。
【0018】
(1)本発明の樹脂は、分子量既知の不飽和樹脂と4-ブロモベンゾシクロブテンとの反応により製造され、後処理を経て得られた生成物の分子量分布は原料における不飽和樹脂の分子量分布と類似し、均一性が比較的に良く(
図1参照)、予備重合反応が要らず、直接に次工程に使用することができる;同時に、必要に応じて原料における異なる分子量の不飽和樹脂を選択することによって、所望の目的生成物を製造することができる;他の方法で調製した樹脂と異なり、本発明で調製した樹脂は予備重合反応を省き、生産コストを大幅に削減する。
(2)本発明で調製した樹脂を用いて作製された積層板は、周波数10GHzで試験されたところ、誘電率(Dk)が2.50未満であり、誘電損失(Df)が0.001未満であり、優れた電気性能を有し、高速高周波PCBとパッケージ材料の要求に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1で製造された樹脂のGPC検出図である。
【0020】
【
図2】本発明の実施例1~8で製造された樹脂のIR図である。
【0021】
【
図3】:それぞれに、本発明の実施例1、実施例3、実施例5、および実施例6で製造された樹脂が硬化した後のIR図である。
【0022】
【0023】
【
図5】本発明の実施例1で製造された樹脂が硬化した後のDSC図である。
【0024】
【
図6】本発明の実施例1における硬化薄板のAFM像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、出願人は、具体的な実施例に基づき、本発明の技術案を詳細に説明する。
【0026】
実施例1
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0027】
【0028】
三口フラスコに順に4-ブロモベンゾシクロブテン101.6g(0.55mol)、ポリブタジエン(日本曹達B-3000、平均分子量3200、1,2-ビニル構造90%以上)150.0g、トリエチルアミン113g(1.1mol)、酢酸パラジウム1.24g(5.5mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン5.06g(0.0167mol)、アセトニトリル500mLを加え、窒素ガス雰囲気下で24時間加熱還流して反応させた。反応原理については上記式を参照し、反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製して、淡黄色透明油状物191gを得た。
【0029】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線1を参照し、この図面から3070、2962、2917、2841cm
-1に現れるピークはそれぞれにC=C-H、メチレン、メチン及びベンゾシクロブテン上のC-H伸縮振動に由来するものであり、1635、1597、1495、1448cm
-1に現れるピークはベンゼン環の特徴的な吸収ピークであることが分かり、調製された樹脂にベンゾシクロブテンが含まれていることが示された。硬化した樹脂のIRスペクトルについては
図3の曲線1を参照し、この図面から、3070cm
-1のC=C-H伸縮振動ピークと2841cm
-1のベンゾシクロブテンにおけるC-H伸縮振動ピークが消失したことが分かり、硬化の時、アルケニル結合とベンゾシクロブテンにおける四員環との両方が反応に関与することが説明された。本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂をGPCにより検出したところ、図面1を参照するように、Mp=4022であった;本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂を薄板(130×80mm、≦0.8mm)にプレスし、薄板の平坦性は非常に良好で、10GHzの周波数で測定され、測定データは下記表1に示された。樹脂が硬化した後のガラス転移温度は260℃を超えた(
図5参照)。硬化薄板のAFM画像を
図6に示した。
【0030】
実施例2
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0031】
三口フラスコに、順に4-ブロモベンゾシクロブテン152.4g(0.83mol)、ポリブタジエン(日本曹達B-3000、平均分子量3200、1,2-ビニル構造90%以上)150.0g、トリエチルアミン169.5g(1.67mol)、酢酸パラジウム1.89g(8.4mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン7.72g(0.025mol)、アセトニトリル750mLを加え、窒素ガス雰囲気下で24時間加熱還流して反応させた。反応原理は上記実施例1と同様であり、反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、無色透明油状物185.5gを得た。
【0032】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外ペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線1を参照した。本実施例で得られた硬化薄板のAFM画像は
図6と似ているため、省略された。
【0033】
実施例3
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0034】
三口フラスコに、順に4-ブロモベンゾシクロブテン169.3g(0.92mol)、ポリブタジエン(上海甄準バイオテクノロジー有限公司製、平均分子量5000、20%の1,2-ビニル構造、30%のシス-1,4-ブタジエン;50%のトランス-1,4-ブタジエン)150.0g、炭酸カリウム255.5g(1.85mol)、酢酸パラジウム1.64g(7.3mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン8.44g(0.028mol)、DMF840mLを加え、窒素ガス雰囲気下で加熱し、130℃で12時間反応させた。反応原理は上記実施例1と同様であり、反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物230.0gを得た。
【0035】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線3を参照し、樹脂が硬化した後のIRスペクトルについては
図3の曲線2を参照した。本実施例で得られた硬化薄板のAFM像は
図6と似ているため省略された。本発明の実施例1に平均分子量3200のポリブタジエンを原料として使用して得られる樹脂の硬化前後のIRスペクトルと比べて分析したところ、明らかな差はなかった。本実施例で調製したアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂が硬化させ薄板(130×80mm、≦0.8mm)を作製し、薄板の平坦性は非常に良好で、10GHzの周波数で測定され、測定データは下記表1に示された。本発明の実施例1と比べても明らかな差はなく、本実施例で使用した原料であるポリブタジエンの分子量が明らかに大きい場合にも、同様に、良好な誘電特性を有する樹脂を得ることができた。
【0036】
実施例4
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0037】
三口フラスコに、順に4-ブロモベンゾシクロブテン507.8g(2.77mol)、ポリブタジエン(上海甄準バイオテクノロジー有限公司製、平均分子量5000、20%の1,2-ビニル構造、30%のシス-1,4-ブタジエン;50%のトランス-1,4-ブタジエン)150.0g、トリエチルアミン561.3g(5.54mol)、酢酸パラジウム4.92g(0.022mol)、トリス(o-トリル)ホスフィン50.6g(0.167mol)、アセトニトリル2000mLを加え、窒素ガス雰囲気下で24時間加熱還流して反応させた。反応原理は上記実施例1と同様であり、反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物550gを得た。
【0038】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線4を参照した。本実施例で得られた硬化薄板のAFM像は
図6と似ているため、省略された。
【0039】
実施例5
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0040】
【0041】
三口フラスコに、順に4-ブロモベンゾシクロブテン56.3g(0.31mol)、ポリイソプレン(自製、平均分子量3000、1,2-ポリイソプレン含有量>40%)50.0g、トリエチルアミン49.5g(0.49mol)、酢酸パラジウム0.55g(2.4mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン2.23g(7.3mmol)、アセトニトリル350mLを加え、窒素ガス雰囲気下で、24時間加熱還流して反応させた。反応原理は上記式通りであり、反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物65gを得た。
【0042】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線5を参照し、この図面から、3070、2962、2917、2841cm
-1に現れるピークはそれぞれにC=C-H、メチル、メチレン、およびベンゾシクロブテン上のC-H伸縮振動に由来するものであり、1635、1597、1495、および1448cm
-1に現れるピークはベンゼン環の特徴的な吸収ピークであることが分かり、調製された樹脂にベンゾシクロブテンが含まれていることが示された;硬化した樹脂のIRスペクトルについては、
図3の曲線3を参照し、この図面から、3070cm
-1のC=C-H伸縮振動ピークと2841cm
-1のベンゾシクロブテンにおけるC-H伸縮振動ピークが消失したことが分かり、硬化の時、アルケニル結合とベンゾシクロブテンにおける四員環との両方が反応に関与することが説明された;本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂が硬化させ薄板(130×80mm、≦0.8mm)を作製し、薄板の平坦性は非常に良好で、10GHzの周波数で測定され、測定データは下記表1に示された。
【0043】
実施例6
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0044】
三口フラスコに、順に4-ヨードベンゾシクロブテン56.3g(0.24mol)、ポリイソプレン(自製、平均分子量5000、1,2-ポリイソプレン含有量>40%)50.0g、炭酸カリウム67.7g(0.49mol)、酢酸パラジウム0.55g(2.4mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン2.23g(7.3mmol)、DMF350mLを加え、窒素ガス雰囲気下で、130℃まで加熱し12時間反応させた。反応原理は上記実施例5と同様であった。反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物67.7gを得た。
【0045】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線6を参照し、樹脂が硬化した後のIRスペクトルについては
図3の曲線4を参照した。本発明の実施例5に平均分子量3000のポリイソプレンを原料として使用して得られる樹脂の硬化前後のIRスペクトルと比べて分析したところ、明らかな差はなかった。本実施例で調製したアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂が硬化させ薄板(130×80mm、≦0.8mm)を作製し、薄板の平坦性は非常に良好で、10GHzの周波数で測定され、測定データは下記表1に示された。
【0046】
実施例7
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0047】
三口フラスコに、順に4-ヨードベンゾシクロブテン56.3g(0.24mol)、ポリイソプレン(自製、平均分子量3000、1,2-ポリイソプレン含有量>40%)50.0g、トリエチルアミン49.5g(0.49mol)、塩化パラジウム0.43g(2.4mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン2.23g(7.3mmol)、DMF350mLを加え、窒素ガス雰囲気下で80℃までに加熱し16時間反応させた。反応原理は上記実施例5と同様であった。反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物60.2gを得た。
【0048】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線7を参照した。
【0049】
実施例8
アルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂の製造方法は次のとおりである。
【0050】
三口フラスコに、順に4-ブロモベンゾシクロブテン42.3g(0.23mol)、ポリブタジエン(自製、平均分子量3000、1,2-ポリイソプレン含有量>40%)50.0g、炭酸カリウム49.5g(0.36mol)、酢酸パラジウム0.52g(2.3mmol)、トリス(o-トリル)ホスフィン2.10g(6.9mmol)、DMF320mLを加え、窒素ガス雰囲気下で約150℃までに加熱して12時間還流反応させた。反応原理については上記実施例1を参照した。反応終了後、石油エーテルを加えて撹拌し、濾過し、中性になるまで水洗し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで分離精製し、淡黄色透明油状物58.6gを得た。
【0051】
本実施例で得られたアルケニル結合含有ベンゾシクロブテン樹脂に対して赤外スペクトル解析を行い、その検査結果については
図2の曲線8を参照した。
【0052】
本発明の実施例1~8で製造した樹脂を硬化して薄板を作成し、薄板の平坦性が非常に良好で、10GHzの周波数で測定されたところ、誘電率(Dk)が2.50未満であり、誘電損失(Df)が0.001未満であり、優れた電気性能を有し、同時に硬化後のガラス転移温度もより高く、目前主流的な誘電体材料(下記表1の比較例1~2参照、比較例1~2はそれぞれにODV樹脂とSEBS樹脂である)と比較して、誘電性能がより良く、5Gおよび6Gの高速・高周波電子材料への応用にさらに適していた。
【0053】
【国際調査報告】