(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】水平陰極を備える電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/01 20210101AFI20250109BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
C25B9/01
C25B11/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528498
(86)(22)【出願日】2022-12-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022052469
(87)【国際公開番号】W WO2023129359
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524180048
【氏名又は名称】ヴェルデエン ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERDEEN CHEMICALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ヴィピン ティヤギ
(72)【発明者】
【氏名】アモル ナイク
(72)【発明者】
【氏名】バスカー クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルヴィンディル クマール
(72)【発明者】
【氏名】ニシチェイ チャダ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011DA11
4K021CA01
4K021CA05
4K021CA08
4K021CA09
4K021DA02
4K021DA09
4K021EA07
(57)【要約】
本明細書は、金属含有混合物または溶液の電気分解を行うために、懸架された陽極の下に配置された水平陰極を備える電解装置を開示する。水平陰極は、金属成分、電解質、および/または補助化学物質の混合物または溶液を収容するためのコンパートメントの底面を構成することができる。水平陽極は、コンパートメント内の混合物または溶液の上面と係合することができる。ゲートを通してコンパートメント(および水平陰極の表面)から混合物または溶液の最終製品を容易に除去するための除去機構も使用することができる。これらの実装形態は、製錬を必要とせずに鉛蓄電池(LAB)のリサイクルに使用でき、また、様々な異なる電解操作に適用することもできる。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解のために電解スラリー(150)を配置可能な表面を有する水平陰極(120)と、
電気分解のために前記電解スラリー(150)を物理的に係合させるために前記水平陰極(120)の上方に懸架された陽極(110)と、
を備える、電解装置(100)。
【請求項2】
前記電解スラリー(150)を前記水平陰極(120)上に収容するための複数の垂直収容面(122)と、
電気分解によって生じた最終製品(132)を前記陰極(120)から除去することができる、前記垂直収容面(122)内のゲート(124)と、
を更に備える、請求項1に記載の電解装置(100)。
【請求項3】
電気分解によって生じた最終製品(132)を前記水平陰極(120)から除去するための除去機構(160)を更に備える、請求項2に記載の電解装置(100)。
【請求項4】
前記陽極(110)は、電気分解によって生じたガス状化合物を通過させることができる複数の通気孔(114)を備える、請求項3に記載の電解装置(100)。
【請求項5】
電気分解中の電流を1つ以上のレベルで、電気分解中の1つ以上の期間に制御するための直流電源および電力コントローラを更に備える、請求項4に記載の電解装置(100)。
【請求項6】
前記陽極(110)は、電気分解中、前記水平陰極(120)と実質的に平行であり、前記水平陰極(120)の上方40mm~140mmの間に位置する、請求項5に記載の電解装置(100)。
【請求項7】
前記電解スラリー(150)を前記水平陰極(120)上に配置するためのスラリーライン(144)を更に備える、請求項1に記載の電解装置(100)。
【請求項8】
電気分解のために電解スラリー(150)を配置することができる表面を有する水平陰極(120)と、
前記水平陰極(120)の上方に懸架された陽極(110)であって、電気分解のために前記電解スラリー(150)の上面と物理的に係合するための水平面を含む、前記陽極(110)と、
を備える、電気分解を行うための機器(100)。
【請求項9】
前記電解スラリー(150)を前記水平陰極(120)上に収容するための複数の垂直収容面(122)と、
電気分解から生じた最終製品(132)を前記陰極(120)から除去することができる、前記垂直収容面(122)内のゲート(124)と、
を更に備える、請求項8に記載の機器(100)。
【請求項10】
電気分解から生じた最終製品(132)を前記水平陰極(120)から除去するための除去機構(160)を更に備える、請求項9に記載の機器(100)。
【請求項11】
前記陽極(110)は、電気分解から生じたガス状化合物を通過させることができる複数の通気孔(114)を備える、請求項8に記載の機器(100)。
【請求項12】
前記陽極(110)は、電気分解中、前記水平陰極(120)と実質的に平行であり、前記水平陰極(120)の上方40mm~140mmの間に位置する、請求項8に記載の機器(100)。
【請求項13】
電気分解のために前記電解スラリー(150)を配置することができる表面を有する水平陰極(120)と、
電気分解によって生じた最終製品(132)を前記水平陰極(120)から除去するための除去機構(160)と、
を備える、電解スラリー(150)に対して電気分解を行うためのシステム(100)。
【請求項14】
電気分解するため、前記電解スラリー(160)を物理的に係合するために前記水平陰極(120)の上方に懸架された陽極(110)を更に備え、前記陽極(110)は、電気分解中、前記水平陰極(120)と実質的に平行であり、前記水平陰極(120)の上方40mm~140mmの間に位置する、請求項13に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記陽極(110)は、電気分解によって生じたガス状化合物を通過させることができる複数の通気孔(114)を備える、請求項14に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年12月31日に出願された米国実用特許出願第17/567046号に対する優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池(LAB)は現在広く使用されており、他の種類の電池とは異なり、ほぼ完全にリサイクル可能であるため、鉛蓄電池(LAB)は、現在最もリサイクルされている商品となっている。鉛のリサイクルは経済的に重要であり、なぜなら、LABの生産は世界中で年々増加し続けているが、鉛を多く含む鉱床の枯渇により、新しい鉛の生産はますます困難になっているからである。しかしながら、現在、工業規模でのLABからの鉛のリサイクルはほぼ全て、高温冶金法である製錬に基づいており、このプロセスでは、鉛、鉛酸化物、および他の鉛化合物を約1600°F~2200°F(900°C~1200°C)に加熱し、その後、様々な還元剤と混合して、酸素、硫酸塩、およびその他の非鉛物質を除去する。
【0003】
残念ながら、鉛製錬は、空中浮遊する廃棄物(例えば、鉛粉塵、ヒ素、二酸化炭素、および二酸化硫黄)、固形廃棄物(例えば、鉛および他の重金属の有害化合物を含むスラグ)、および液体廃棄物(例えば、硫酸、ヒ素、並びに他の重金属およびその酸化物)を大量に発生させるため、非常に汚染が高い。実際、製錬から発生する汚染は非常に高いため、環境を保護するために米国やその他の西側諸国の多くの製錬所が閉鎖を余儀なくされている。より規制の少ない国への製錬の移転や拡大により、それらの国では大規模な汚染や人体への鉛汚染が高レベルで発生しているが、時が経ち、新しい技術が利用可能になるにつれて、それらの国でも同様の削減措置が講じられることが予想される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示される様々な実装形態は、金属含有混合物または溶液の電気分解を行うために、懸架された陽極の下に配置された水平陰極を備える電解装置に関する。いくつかのそのような実装形態では、水平陰極は、金属成分、電解質、および/または補助化学物質の混合物または溶液を収容するコンパートメントの底面と、コンパートメント内の混合物または溶液の上面と係合するための水平陽極と、混合物または溶液からの最終製品の除去を容易にするためのコンパートメントの一方の側壁に対応するゲートと、および/またはゲートを通してコンパートメント(および水平陰極の表面)からの混合物または溶液の最終製品の除去を容易にするための除去機構と、を含むことができる。本明細書に開示される特定の実装形態は、精錬なしで鉛蓄電池(LAB)をリサイクルするための使用に特化されているが、本明細書は、様々な実装形態をLABリサイクルまたは鉛回収のみに限定することを意図するものではなく、むしろ、本明細書に開示される様々な実装形態は、様々な異なる電解操作に適用することができる。
【0005】
より具体的には、本明細書には、電気分解のために電解スラリーを配置することができる表面を有する水平陰極と、電気分解のために電解スラリーを物理的に係合させるための水平陰極の上方に懸架された陽極と、を備える電解装置のためのシステム、プロセス、機器、方法、コンピュータ可読命令、および他の実装形態に関する様々な実装形態が開示されている。このような実装形態のいくつかは、更に、電解スラリーを水平陰極上に収容するための垂直収容面と、電気分解によって生じた最終製品を陰極から除去することができる、垂直収容面内のゲートと、電気分解によって生じた最終製品を水平陰極から除去するための除去機構と、電気分解中の電流を1つ以上のレベルで、電気分解中の1つ以上の期間に制御するための直流電源および電力コントローラと、および/または電解スラリーを水平陰極上に配置するためのスラリーラインと、を含むことができる。特定のこのような実装形態では、懸架された陽極は、電気分解のために電解スラリーの上面に物理的に係合するための水平陽極面を含むことができる。水平陽極面は、電気分解によって生じたガス状化合物(「ガス」)が通過可能な複数の通気孔、溝、または穴を備えてもよく、および/または、水平陽極面は、電気分解中、水平陰極と実質的に平行であり、水平陰極の上方40mm~140mmの間に配置することができる。
【0006】
本明細書に開示されているいくつかの代替的な実装形態は、電気分解のために電解スラリーを配置することができる表面を有する水平陰極と、水平陰極の上方に懸架された陽極であって、電気分解のために電解スラリーの上面と物理的に係合するための水平面を含む陽極と、を備える、電気分解を行うための機器に関する。そのような実装形態のいくつかは、更に、水平陰極上に電解スラリーを収容するための垂直収容面と、電気分解によって生じた最終製品を陰極から除去することができる、垂直収容面内のゲートと、電気分解によって生じた最終製品を水平陰極から除去するための除去機構と、電気分解中の電流を1つ以上のレベルで、電気分解中の1つ以上の期間に制御するための直流電源および電力コントローラと、および/または、電解スラリーを水平陰極上に配置するためのスラリーラインと、を含むことができる。特定のそのような実装形態では、水平陽極面は、電気分解から生じたガス状化合物が通過可能な複数の通気孔、溝、または穴を含み、および/または、水平陽極面は、電気分解中、水平陰極と実質的に平行であり、水平陰極の上方40mm~140mmの間に配置される。
【0007】
本明細書に開示される他の代替的な実装形態は、電気分解のために電解スラリーを配置することができる表面を有する水平陰極と、電気分解のために電解スラリーを物理的に係合するための水平陰極の上方に懸架された陽極と、電気分解から生じた最終製品を水平陰極から除去するための除去機構と、を含む、電解スラリーに対して電気分解を行うためのシステムを対象としている。特定のそのような実装形態では、懸架された陽極は、電気分解のために電解スラリーの上面に物理的に係合するための水平陽極面を含み、および/または、水平陽極面は、電気分解から生じたガス状化合物が通過可能な複数の通気孔、溝、または穴を含む。
【0008】
この概要は、詳細な説明において以下に更に説明する概念の選択を簡略化した形態で紹介するために提供される。この概要は、請求されている主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、請求されている主題の範囲を制限するために使用されることを意図するものでもなく、本明細書で提供される情報のいずれかが、本明細書で説明する実装形態の先行技術であることを認めるものでもないものとする。
【0009】
前述の概要および例示的な実装形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより理解される。実装形態を説明する目的で、実装形態の例示的な構成が図面に示されているが、実装形態は開示された特定の方法および手段に限定されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セル100の斜視図である。
【
図1B】本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な
図1Aの電解セルの陽極の吹き出し斜視図および内部図である。
【
図2A】電気分解を行うための最初の使用準備が整った構成にある、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1Bの電解セルの切断側面図である。
【
図2B】電気分解のために電解物質が充填された後の、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1Bの電解セルの切断側面図である。
【
図2C】電気分解が行われ、液体成分が電解コンパートメントから排出された後の、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1Bの電解セルの切断側面図である。
【
図2D】電気分解の最終製品が水平陰極面から掻き取られ、電解コンパートメントから除去された後の、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1Bの電解セルの切断側面図である。
【
図3A】電気分解を行うための最初の使用準備が整った構成にある、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1Aに示すものと同様の代替的な電解セルの切断側面図である。
【
図3B】電気分解のために電解物質を充填した後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1Aに示すものと同様の代替的な電解セルの切断側面図である。
【
図3C】電気分解が行われ、液体成分が電解コンパートメントから排出された後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1Aに示すものと同様の代替的な電解セルの切断側面図である。
【
図3D】電気分解の最終製品が水平陰極面から掻き取られ、電解コンパートメントから除去された後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1Aに示すものと同様の代替的な電解セルの切断側面図である。
【
図4A】本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セルの垂直スタックの斜視図である。
【
図4B】本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セルの複数のスタックを含む横方向ラインの斜視図である。
【
図4C】各々が本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セルの複数のスタックを含む、複数の横方向ラインの平行アレイの斜視図である。
【
図5】本明細書に開示される様々な実装形態が鉛蓄電池(LAB)のリサイクルに利用される方法を示すプロセスフロー図である。
【
図6】本明細書に開示される様々な実装形態および態様のいずれかと組み合わせて使用可能な、例示的なコンピューティング環境のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に、金属含有混合物または溶液に対して電気分解を行う目的で、懸架された陽極の下に配置される水平陰極を含む電解装置に関する様々な実装形態を開示する。いくつかのそのような実装形態では、水平陰極は、金属成分、電解質、および/または補助化学物質の混合物または溶液を収容するためのコンパートメントの底面と、コンパートメント内の混合物または溶液の上面と係合するための水平陽極と、混合物または溶液からの最終製品の除去を容易にするためのコンパートメントの一方の側壁に対応するゲートと、および/またはゲートを通してコンパートメント(および水平陰極の表面)からの混合物または溶液の最終製品の除去を容易にするための除去機構と、を含むことができる。本明細書で開示される特定の実装形態は、製錬せずに鉛蓄電池(LAB)をリサイクルするための使用に特化しているが、本明細書は、様々な実装形態をLABリサイクルまたは鉛回収のみに限定することを意図するものではなく、代わりに、本明細書に開示される様々な実装形態は、様々な異なる電解操作に適用することができる。
【0012】
様々な概念を理解することは、本明細書に開示される様々な実装形態をより広く、より完全に理解するのに役立ち、当業者は、これらの様々な概念が本明細書に開示される様々な実装形態の幅および深さに及ぼす影響を容易に理解するであろう。本明細書で使用される特定の用語は、本明細書で使用される他の用語と互換的に使用されてもよく、そのような用語は、明示的に別途記載されていない限り、可能な限り広く解釈されるべきである。例えば、本明細書で使用される電気分解、電解採取、および電解精製という用語は、互換可能な用語として扱われるべきであり、1つの用語が使用されている場合、他の用語も暗示されるため、電気分解という用語の使用は、明示的に区別されている場合を除き、電解採取および電解精製も含むと理解されるべきである。一方、「電解プロセス」という用語は、電気分解、電解採取、および電解精製を含み、包含することを明示的に意図している。更に、当業者には容易に理解され、よく理解されているように、ガス状酸素(O2)、水(H2O)等、通常は下付き数字を使用した化学組成で表すことができる物質は、本明細書では下付き数字なしで、即ち、ガス状酸素をO2、水をH2O等として代わりに表す場合がある。
【0013】
<電解プロセス>
【0014】
当業者にはよく知られ、容易に理解されるように、電気分解は、直流(DC)を使用して、自発的ではない化学反応を駆動する技術である。電解セルを使用することにより、電気分解を使用して要素を互いに分離することができる。より具体的には、電解プロセスでは、電流、具体的には直流(DC)が電解質を通過し、電極で化学反応を起こし、電解質内の物質を分解する。
【0015】
電気分解を達成するために必要な主要なコンポーネントは、電解質、電極、および外部電源である。電解質は、自由かつ可動イオンを含み、電流を伝導することができる化学物質である。電解質は、イオン伝導性ポリマー、溶液、またはイオン液体化合物であることができる。例えば、液体電解質は、「溶媒和」、即ち、溶質のイオンと溶媒(水等)との引き付けまたは会合によって生成され、イオンと溶媒分子との可動クラスターを生成する。
【0016】
電気分解を達成するために、電極(電源に適切に接続されている)を電解質に浸漬するが、十分な距離で互いに分離されているため、電解質を介して電極間を電流が流れ、電解質によって電気回路が完成する。この構成では、電源によって供給される直流電流が、それぞれ反対に帯電した電極に向かってイオンを引き付け、非自発的な反応を駆動する。
【0017】
各電極は、反対の電荷を有するイオンを引き寄せる。正に帯電したイオン(「カチオン」)は、電子を供給する負に帯電した陰極に向かって移動し、負に帯電したイオン(「アニオン」)は、電子を抽出する正に帯電した陽極に向かって移動する。実際には、電子は陰極で(反応物として)導入され、陽極で(所望の最終製品として)除去される。電子の損失は酸化と呼ばれ、電子の獲得は還元と呼ばれる。
【0018】
陰極は陽極と同じ材料で作製されることもあるが、通常は、陽極での酸化に起因して陽極の摩耗がより高くなるため、より反応性の高い材料で作製される。陽極は陰極と同じ材料で作製されることもあるが、多くの場合、陽極は陰極よりもより反応性の低い材料で作製され、なぜなら、電気分解中に陽極で生じる酸化に起因して、陽極の摩耗が陰極の摩耗よりも一般的に高くなるからである。
【0019】
中性の原子または分子が電子を獲得または損失すると(例えば、電極の表面にあるような電子)、それらはイオンになり、電解質に溶解して他のイオンと反応する。逆に、イオンが電子を獲得または損失して中性になると、それらは電解質から分離する化合物を形成する。例えば、正の金属イオンが層状に陰極上に堆積する。更に、イオンが中性にならずに電子を獲得または損失した場合、それでもなお、その過程で電子電荷が変化する。
【0020】
電気分解の重要なプロセスは、印加された直流電流から生じる電子の追加または除去を介して原子およびイオンを交換して、所望の最終製品(または、場合によっては複数の最終製品)を生成することである。電気分解の所望の最終製品は、電解質とは異なる物理的状態にあることが多く、いくつかの異なる物理的プロセスのいずれかによって、例えば、電極の上方からガス状の最終製品を収集することによって、電解質から溶解した最終製品を電着することによって、または電極の1つで蓄積した固体の最終製品を除去する(例えば、掻き取る)ことによって、除去することができる。
【0021】
電解質の分解電位は電気分解が発生するために必要な電圧であるが、電気分解から得られる最終製品の量は印加された電流に比例し、ファラデーの電気分解の法則によれば、2つ以上の電解セルが同じ電源に直列に接続されている場合、セルで生成される最終製品はそれらの当量重量に比例する。
【0022】
<固体電解>
【0023】
「固体電解」では、固体金属化合物または金属化合物の混合物(「活性物質」)を、電気分解を介して、活性物質を電解セルの陰極に直接接触させることにより、純粋な金属最終製品に還元することができる。しかしながら、様々な活性物質は自然な状態では接着しないため、活性物質を陰極表面上に配置(例えば、「ペースティング(pasting)」)することは困難となる可能性がある。
【0024】
通常、活性物質は、電解セル内の電解質から陰極を除去し、活性物質と電解質との混合物を陰極表面上に適用することによって、陰極上に直接ペースティングされる。この混合物を陰極上で乾燥させた後、続いて、陰極を再び電解セルの電解質中に懸濁する。しかしながら、工業規模の操作では、そのようなペースティングに必要な電極のサイズが一因となって、活性物質を陰極表面上にペースティングすることは時間を要し、費用もかかる。更に、電気分解中に、陰極上のドライペースティングされた活性物質が電解セル内の電解質から水分を吸収し、ペースティングされた物質が陰極から剥がれるまたは滑り落ちる可能性があり、結果的に、この吸収された水分の水型電気分解が生じ、これらが相まって、活性物質の所望の電気分解反応を効果的に代替する、および/または妨げる結果となり得る。更に、結果として生じる僅かな最終製品が陰極自体に蓄積して付着するのは自然なことであり、この最終製品を陰極から除去することは時間がかかり、非効率的かつ費用がかかる可能性がある。
【0025】
これらの固有の欠点により、固体電解は活性物質を工業規模で商業的に処理するために利用されておらず、そのような産業では、活性物質を所望の最終製品に精製するためのより伝統的なアプローチとして、例えば製錬等が代わりに選択されている。しかしながら、当業者によく知られ、広く理解されているように、製錬には独自の欠点があり、それ故、工業規模で同じことを実行するための代替的な精製プロセスおよび機械の必要性が残っている。
【0026】
<鉛蓄電池のリサイクル>
【0027】
本明細書にて先に簡単に説明したように、鉛蓄電池(LAB)は現在広く使用されており、他の種類の電池とは異なり、ほぼ完全にリサイクル可能であるため、鉛蓄電池は現在、唯一の最もリサイクルされているアイテムとなっている。鉛のリサイクルは経済的に重要であり、なぜなら、LABの生産は世界中で年々増加し続けているが、鉛を多く含む鉱床の枯渇に起因して、新しい鉛の生産がますます困難になっているからである。しかしながら、現在、工業規模でのLABからの鉛のリサイクルはほぼ全て、高温冶金法である製錬に基づいており、このプロセスでは、鉛、鉛酸化物、および他の鉛化合物を約1600°F~2200°F(900°C~1200°C)に加熱し、その後、様々な還元剤と混合して、酸素、硫酸塩、およびその他の非鉛物質を除去する。
【0028】
残念ながら、鉛製錬は、空中浮遊する廃棄物(例えば、鉛粉塵、ヒ素、二酸化炭素、および二酸化硫黄)、固形廃棄物(例えば、鉛および他の重金属の有害化合物を含むスラグ)、および液体廃棄物(例えば、硫酸、ヒ素、並びに他の重金属およびその酸化物)を大量に発生させるため、非常に汚染が高い。実際、製錬から発生する汚染は非常に高いため、環境を保護するために米国やその他の西側諸国の多くの製錬所が閉鎖を余儀なくされている。より規制の少ない国への製錬の移転や拡大により、それらの国では大規模な汚染や人体への鉛汚染が高レベルで発生しているが、時が経ち、新しい技術が利用可能になるにつれて、それらの国でも同様の削減措置が講じられることが予想される。
【0029】
当技術分野において、LABからの鉛リサイクルのアプローチは数多く知られているが、それらは全て、それらを非実用的にする1つ以上の欠点を抱えている。それ故、環境への影響や過度のコストを最小限に抑えながら鉛の回収を最大限に高めることができる、スケーラブルな、製錬所を必要としないLABリサイクルのための改良された装置および方法が依然として必要とされている。また、製錬作業から脱却し、より環境に優しい解決策を使用するためにいくつかの取り組みが行われてきたが、これまでのところ、様々な汚染問題から、収量および収益性の低さ、効果的または効率的にスケールアップできないラボタイプの解決策に至るまで、様々な理由で全て不十分な結果に終わっている。
【0030】
<電解プロセス>
【0031】
銅、金、銀、亜鉛、および他の多くの金属と同様に、鉛(Pb)は、様々な鉛含有材料、特に鉛蓄電池(LAB)から回収された鉛ペーストから、電解プロセス(例えば、電気分解)によって回収することができる。通常、鉛ペーストは電解質に溶解され、得られた溶液を陰極で元素鉛の電解回収にかける。
【0032】
しかしながら、概念的には小規模で単純かつ容易に実施できるものの、実際には、電気分解によって環境に優しい方法で鉛を電池ペーストから経済的に回収することは、十分な収率および純度で回収するとなると依然として難しい。更に、鉛回収用の電極材料は高価であることが多く、電極での動作条件は望ましくない副産物の形成を促進する傾向がある。例えば、既存の電解アプローチでは、二酸化鉛は酸化能力が更に高まるため、陽極で頻繁に生成されるが、大量の不溶性二酸化鉛が電流を制限し、動作効率を低下させるため、このような酸化は問題になる可能性がある。同様に、酸性電解質から陰極で生成される鉛は、陰極に膜として堆積し、陰極から除去するのが困難になるか、または電流(即ち、電気分解を実行するための電力供給)が停止された場合に電解質に再溶解する可能性がある。
【0033】
<水平陰極を備えた電解セル>
【0034】
本明細書に開示される様々な実装形態は、水平陰極とその上に懸架された水平陽極とを含む電解セルに関する。いくつかのそのような実装形態では、水平陰極は、例えば、スラリーの形態の活性物質と電解質との混合物が導入され、保持され、処理される電解コンパートメントのベースを形成し得る。そのような実装形態では、陽極が電解コンパートメントに保持されている活性物質と電解質との混合物の上面に物理的に係合する一方、陰極が電解コンパートメントに保持されている活性物質の混合物の底面に自然に係合するように、水平陽極は電解コンパートメントの上部で陰極の上方に懸架される。陽極には、電気分解によって生じたガス状酸素(O2)および/または他のガス状物質が(前記陽極の下に閉じ込められ、電流抵抗を生じさせる代わりに)無害に逃げることができるように、通気孔、溝、穴等の形態の小さな開口部(本明細書では単に「呼吸穴」と呼ぶこともある)を陽極の表面にわたって設けることもできる。
【0035】
これらの様々な実装形態では、活性物質と電解質とのスラリー混合物に添加される追加の補助化学物質(以下で更に説明する)の使用と組み合わせて、活性物質と電解質との混合物を介して陰極から陽極に直流電流を流して、所望の最終製品を生成し、その所望の最終製品を陰極の表面に沈殿させることができる。(特定のこのような実装形態では、最終製品は、電解質および/または補助化学物質の一部を保持するスポンジ状の純粋な鉛であり得る。)より具体的には、直流電流によって、活性物質内の金属イオンが効果的に還元され、それらの対イオン(水(H2O)およびガス状酸素(O2)を形成することができる酸化物イオンおよび水素イオン等)から分離され、純粋な形態になった金属は、重力(金属はスラリー内の他の成分よりも重い)および電気分解中に混合物内で発生する自然なイオン対流によって部分的に促進されることにより、水平陰極面上に引き寄せられ、沈殿する。
【0036】
一旦、電気分解が完了すると、本明細書に開示されているいくつかの実装形態では、電解コンパートメントは、電解質(補助化学物質および電気分解中に生成された追加のH2Oを含む)および最終製品の金属を除去するための開口可能な側面を更に備えてもよい。まずは、この開口可能な側面は部分的にのみ開口され、最初に、純粋な液体成分、即ち、残りの電解質、補助化学物質、および電解中に生成された追加の水(H2O)の大部分が電解コンパートメントから排出され、特定の実装形態では、開口可能な側面の底部にある小さな流路溝を介して排出され得るようする。いくつかの実装形態では、液体成分が電解コンパートメントの開口可能な側面から排出された後、この流路溝が開口可能な側面から離れた保管位置(例えば、電解コンパートメントの下)に移動してもよい。
【0037】
液体成分が排出された後、または、代替的な実装形態では、最初に液体成分を別個に排出せずに、開口可能な側面を完全に開口して、より固体の成分、即ち、最終製品の金属に加えてそれに付着している残留液体成分を電解コンパートメントから物理的に除去することができる。選択された実装形態では、除去は、電解コンパートメントの幅にわたって延在し、開口可能な側面の反対側から始まる垂直方向の掻き取り機構によって実行され、前記掻き取り部品は、電解コンパートメントの陰極面全体および隣接する側面に物理的に接触して穏やかに掻き取るが、陽極面のすぐ下で(物理的に接触することなく)動作する。このように、掻き取り機構は、より固体の成分を電解コンパートメントから押し出し、更なる処理のために収集容器または搬送機構(例えば、コンベアベルト)に押し込むことができる。
【0038】
このように、本明細書に開示される様々な実装形態は、上記の固体電解に対する既存のアプローチの欠点を以下のように克服することができる。即ち、(1)活性物質を陰極にドライペースティングする必要がないため、時間および労力が節約され、(2)電気分解中にドライペースティングされた活性物質によって吸収された水の蓄積や、その結果として生じる所望の最終製品の製造が妨げられることを完全に回避することができ、および/または(3)(上述したように)陰極の平坦な表面が掻き取り動作を容易にし、補助化学物質が最終製品の固化または最終製品の陰極への付着を防ぐのに役立つため、陰極での最終製品の蓄積の除去がより容易になる。
【0039】
更に、本明細書に開示される様々な実装形態では、本明細書で説明されるタイプの複数の電解セルを、各電解セル間に適切な間隔を置いて垂直に積み重ねることができ、複数の電解セルから単一の収集容器または単一の搬送機構に押し出される最終製品のための単一の垂直落下スペースを共有することができる。更に、複数の電解セルを含むいくつかの垂直スタックを一列に配置し、更に単一の細長い収集容器または単一の細長い搬送機構を共有することができる。更に、処理を継続できるように生成された最終製品を統合して、複数列の垂直スタックを配置することもできる。
【0040】
注目すべきことに、本明細書で開示されたものとは別に、出願人は、本明細書で説明される電解効果の達成は、スラリーに電解質および活性物質とともに混合される特定の化学物質の利用に依存することを発見した。本出願は、これらの発見された化学物質のいずれの組成にも向けられたものではないが、本明細書で開示される様々な実装形態は、秘密であるかまたは独占的であるか(あるいは、その点では広く使用され、よく知られているか)に関わらず、任意の特定の化学添加剤の使用に限定されるものでは決してない。
【0041】
図1Aは、本明細書で開示される様々な実装形態の代表的な電解セル100の斜視図である。
図1Bは、本明細書で開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aの電解セル100の陽極110の吹き出し斜視図および内部図である。便宜上、
図1Aおよび
図1Bは、本明細書では総称して
図1と呼ばれることがある。
【0042】
図1に示すように、電解セル100は、電気分解を行うのに適した距離に、水平陰極120の上方に懸架された陽極110を含むことができる。電解セル100は、垂直収容面122および少なくとも1つのゲート124も含むことができ、これらは水平陰極120とともに、例えば、スラリーの形態の活性物質と電解質との混合物を導入、保持、および処理することができる電解コンパートメント126を形成し、提供する。垂直収容面122およびゲート124、または少なくとも電解コンパートメント126の内容物に対するそれらの内面は、非導電性であることができる。
【0043】
図示のように、陽極110は水平陽極として構成することができるが、例えば、一連の陽極ロッド、ストリップ、グリッド、または陰極上に置かれた電解スラリーの上面に物理的に係合することができる他の構造等、他の形態の陽極も利用することができる。いずれにしても、陽極が電解コンパートメントに保持されている活性物質と電解質との混合物の上面に物理的に係合する一方、陰極が電解コンパートメントに保持されている活性物質混合物の底面に自然に係合するように、陽極110は、電解コンパートメント126の上部で陰極120の上方に懸架することができる。水平陽極を特徴とする実装形態の場合、陽極110は、その表面にわたって小さな開口部または通気孔114(即ち、「呼吸穴」)を備えることで、電気分解によって生じたガス状酸素(O2)が(前記陽極の下に蓄積される代わりに)無害に逃げることができるようにしてもよい。陽極110は、開口部112も含むことができ、この開口部112を通して、電解スラリーを電解コンパートメント内および水平陰極120上に、前記電解スラリーの上面が懸垂された陽極110と同時に物理的に係合し、それによって、電気分解の目的で、陰極120と陽極110との間に流れる電流の回路が完成するのに十分な量で配置することができる。
【0044】
電解槽セル100は、更に、除去機構160を含むことができる。様々な実装形態では、この除去機構160は、電解コンパートメント126の幅にわたって延在し、ゲート124の反対側から始まる、垂直方向の表面を含むことができ、この表面は、陰極120の表面全体および電解コンパートメント126の隣接する側面に物理的に接触し、優しく掻き取ることができ、陽極110の表面の下で動作することができる。除去機構、または少なくとも電解コンパートメント126の内容物に曝露されるその部分は、非導電性であることができる。
【0045】
図2Aは、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、電気分解を行うための最初の使用準備が整った構成にある、
図1Aおよび
図1Bの電解セル100の切断側面図である。
図2Aに示すように、電解コンパートメント126は空であるが、充填する準備ができており、除去機構160は設定位置にあり、ゲート124は閉口されている。この構成では、次に、電解スラリーを陽極110の開口部112を貫通するスラリーライン144を介して、電解コンパートメント126内および水平陰極120上に配置することができる。
図2Aには、収容側面172を備え、電気分解が完了した後に、電解コンパートメント126の内容物を除去する際に使用するための搬送機構としてゲート124の下に配置されるコンベアベルト170も示されている。
【0046】
図2Bは、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1B(並びに
図2A)の電解セル100の、電気分解のために電解物質150を充填した後の切断側面図である。
図2Bに示すように、電解物質150は、活性材料130と電解質140との混合物およびその中に散在する補助化学物質を含む。電解物質150の底面は、水平陰極120と物理的に係合(即ち、物理的に接触)する一方、電解物質(具体的には、その電解成分)の上面は、陽極110と物理的に係合する。(様々な実装形態では、陰極と陽極との間で固体材料の接触が発生することで、電気的ショートが生じたり、陰極プレートが化合物から鉛イオンを還元するのを妨げたりするのを防ぐため、電解物質に電解物質の上面を形成するのに十分な電解質を含める。)次に、陽極110および陰極120を介して電解物質150に電流を流すことができ、電解質140内の可動イオンによって電気回路が完成し、それに応じて前記電解物質150で電気分解が行われる。
【0047】
図2Cは、電気分解が行われ、液体成分を回収するために、前記液体成分が電解コンパートメント126からコンベアベルト170に通過するのに十分なスペースを提供するように、ゲート124を第1の位置に開口することによって、液体成分142が電解コンパートメント126から排出された後の、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図2B(並びに、
図2Aおよび
図2B)の電解セル100の切断側面図である。一方、電気分解の所望の最終製品132は、水平陰極120上に残り、電解コンパートメント126から除去されるのを待っている。
【0048】
図2Dは、電気分解によって生じた最終製品132が水平陰極120表面および電解コンパートメントから除去された後の、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な、
図1Aおよび
図1B(並びに、
図2A、
図2B、および
図2C)の電解セル100の切断側面図である。
図2Dに示すように、ゲート124は第2の全開位置に移動され、除去機構160は電解セル100の内部を横断し、最終製品132は電解セル100からコンベアベルト170上に除去されている。図示するように、除去機構160がこの展開位置にあり、ゲート124が全開である場合、電解セル128の空の内部はもはや電解コンパートメント126ではないが、(例えば、
図2Aに示すように)除去機構160が元の位置に戻り、ゲート124が閉口された後、再び電解コンパートメント126となる。便宜上、
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dを、本明細書では総称して
図2と呼ぶことがある。
【0049】
図3Aは、電気分解を行うための最初の使用準備が整った構成で示されている、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1A(並びに、
図1Bおよび
図2Aに実質的に対応する)に示すものと同様の代替的な電解セル100´の切断側面図である。
図3Bは、電気分解のための電解物質150が充填された後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1A(並びに、
図1Bおよび
図2Bに実質的に対応する)に示すものと同様の代替的な電解セル100´の切断側面図である。
図3Cは、電気分解が行われ、液体成分142が電解コンパートメントから排出された後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1A(並びに、
図1Bおよび
図2Cに実質的に対応する)に示すものと同様の代替的な電解セル100´の切断側面図である。
図3Dは、電気分解の最終製品132が水平陰極120表面および電解コンパートメントから除去された後の、本明細書に開示される様々な代替的な実装形態の代表的な、
図1A(並びに、
図1Bおよび
図2Dに実質的に対応する)に示すものと同様の代替的な電解セル100´の切断側面図である。
【0050】
図3A、
図3B、
図3C、および
図3D(便宜上、本明細書では総称して
図3と呼ぶ)は、ヒンジで作動して邪魔にならないようにスイングするゲート124´を備え、更に、液体成分142をコンベアベルト170(図示のように縮小された収容側面174を有することができる)上に堆積させずに、電解コンパートメント126から除去することを容易にする可動式流路溝162を備え、前記流路溝162は、(
図3Dに示すように)最終製品132のその後の除去の邪魔にならないように格納位置に移動される。
図3の代替的な電解セル100´は、それ以外の点では
図2に示した動作と同様に動作し、本明細書に開示される様々な電解セルの多数の異なる構成および代替形態を代表する。
【0051】
図4Aは、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セル100の垂直スタック102の斜視図である。
図4Aに示すように、複数の電解セル100を単一のコンベアベルト170(図面ではブロック移動矢印で更に区別されている)上に垂直に配置することで、全体の容量を増やし、床面積(または設置面積)を最小限に抑え、コンベアベルト170の利用率を高める(およびコンベアベルト170の拡張を最小限に抑える)ことができる。
【0052】
図4Bは、本明細書に開示される様々な実装形態の代表的な電解セル100の複数の垂直スタック102を含む横方向ライン104の斜視図である。
図4Bに示すように、複数のスタックを単一のコンベアベルト170上に直線的に配置して、全体の容量を更に増加させることができる一方、各スタック102に個別のコンベアベルトが必要であるのに対して、コンベアベルト170の利用率を更に高める(かつ、コンベアベルト170の拡張を最小限に抑える)ことができる。更に、特定の実装形態では、複数のスタック102をコンベアベルト170の両側に配置して、二重ライン(図示せず)を形成することができる。
【0053】
図4Cは、本明細書に開示される様々な実装形態を代表する電解セル100の複数のスタック102をそれぞれが含む、複数の横方向ライン104の平行アレイ106の斜視図である。
図4Cに示すように、複数の横方向ライン104およびそれらに対応するコンベアベルトを配置して、統合されたクロスコンベアベルト176に供給される電解セルの3次元アレイ106を形成することができる。更に、特定の実装形態では、複数のライン104からのコンベアベルト170をクロスコンベアベルト176の両側に指向して、二重アレイ(図示せず)を形成することができる。更に、このような平行アレイ106の特定の高さ、長さ、および幅は、ほぼあらゆる3次元空間に最適に適合するように構成することができるが、代替的または付加的なコンベアベルト構成が必要になる場合がある。
【0054】
図5は、本明細書に開示される様々な実装形態が鉛蓄電池(LAB)のリサイクルに利用される方法を示すプロセスフロー
図500である。
図5において、502では、鉛ペーストを、まず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)または水酸化アンモニウム(NH4OH)またはアンモニア水溶液で処理することによって脱硫し、その結果得られる脱硫した鉛ペーストは、実質的に鉛成分(例えば、Pb、PbO、PbO2、およびPb(OH)2)を含む。504では、次に、この脱硫した鉛ペーストを電解質および補助化学物質と混合して、スラリー混合物(または、代替的な実装形態では、スラリー溶液)を形成する。506では、次に、このスラリーを電解セル100に導入し、508にて電気分解が行われる。510では、液体成分(残留補助化学物質を含み得る)を最初に排出し、512では、電気分解の結果生じた固体成分も除去するが、代替的な実装形態では、液体成分および固体成分を電解装置から同時に除去することもできる。いずれにせよ、514では、固体成分の最終製品(今となっては、実質的に純粋な鉛(Pb)を含む)を圧縮して、残留液体成分を除去し、実質的に純粋な鉛ブロックを形成し、次に、これを溶融して、残留水酸化ナトリウムおよびその他の微量不純物(硫酸バリウム等)を除去することで(前記溶融は、製錬に必要な温度よりもはるかに低い温度で行われる)、鉛ブロックを更に精製し、純粋な鉛インゴットを形成する。
【0055】
特に、
図5の要素506~512は、本明細書に開示される電解セル100の様々な実装形態を使用して実行されるが、本明細書は、このような実装形態の使用を鉛のリサイクルまたは鉛のリサイクルのこの部分だけに限定するものではなく、このような実装形態の他の使用も、このような実装形態によって予測されるものとする。例えば、本明細書に開示される様々な実装形態を使用して、溶融516中に除去されるドロスを更に処理することができる。同様に、本明細書に開示される様々な実装形態の全てに関して、水平陰極が代わりに水平陽極であり、懸架される陽極が代わりに懸架される陰極である、代替的な実装形態も想定される。更に、本明細書で開示される様々な実装形態によって実行されるプロセスの各ステップは、処理装置または他のコンピューティング環境によって実行および制御され、操作の各ステップのタイミング、異なる電解セル、スラリーライン、コンベアベルト等の間の調整、および電解プロセス全体を通じて利用される時間および電荷の変化、並びに進行中の電気分解からの電気抵抗およびその他の検出可能な事象からのフィードバックの受信および反応を含む(ただし、これらに限定されないものとする)。
【0056】
従って、本明細書に開示される様々な実装形態は、金属含有混合物または溶液に対して電気分解を行う目的で、懸垂された陽極の下に配置された水平陰極を含む電解装置に関する。いくつかのそのような実装形態において、水平陰極は、金属成分、電解質、および/または補助化学物質の混合物または溶液を収容するためのコンパートメントの底面と、コンパートメント内の混合物または溶液の上面と係合するための水平陽極と、混合物または溶液からの最終製品の除去を容易にするためのコンパートメントの一方の側壁に対応するゲートと、および/または、混合物または溶液の最終製品をコンパートメント(および水平陰極の表面)からゲートを通して除去しやすくするための除去機構と、を含むことができる。本明細書に開示される特定の実装形態は、製錬なしで鉛蓄電池(LAB)をリサイクルする際に使用することに特化しているが、本明細書は、LABリサイクルまたは鉛回収のみに様々な実装形態を制限することを意図するものではなく、代わりに、本明細書に開示される様々な実装形態は、様々な異なる電解操作に適用することができる。
【0057】
より具体的には、本明細書には、電気分解のために電解スラリーを配置できる表面を有する水平陰極と、電気分解のために電解スラリーを物理的に係合するための水平陰極の上方に懸架された陽極と、を含む電解装置のためのシステム、プロセス、機器、方法、コンピュータ可読命令、および他の実装形態に関する様々な実装形態が開示されている。このような実装形態のいくつかは、更に、電解スラリーを水平陰極上に収容するための垂直収容面と、電気分解によって生じた最終製品を陰極から除去することができる、垂直収容面内のゲートと、水平陰極から電気分解によって生じた最終製品を除去するための除去機構と、電気分解中の電流を1つ以上のレベルで、電気分解中の1つ以上の期間に制御するための直流電源および電力コントローラと、および/または電解スラリーを水平陰極上に配置するためのスラリーラインと、を含むことができる。このような特定の実装形態では、懸架された陽極は、電気分解のために電解質の上面に物理的に係合するための水平陽極面を含むことができ、水平陽極面は、電気分解により生じたガス状化合物(「ガス」)が通過できる複数の通気孔、溝、穴等(「呼吸穴」)を備えてもよく、および/または水平陽極面は、電解中に水平陰極と実質的に平行であり、水平陰極の上方40mm~140mmの間に位置することができる。
【0058】
本明細書に開示されるいくつかの代替的な実装形態は、電気分解のために電解スラリーを配置できる表面を有する水平陰極と、水平陰極の上方に懸架される陽極であって、電気分解のために電解スラリーの上面と物理的に係合するための水平面を含む陽極と、を備える電気分解を行うための機器に関する。そのような実装形態のいくつかは、更に、水平陰極上に電解スラリーを収容するための垂直収容面と、電気分解により生じた最終製品を陰極から除去することができる、垂直収容面内のゲートと、水平陰極から、電気分解により生じた最終製品を除去するための除去機構と、電気分解中の電流を1つ以上のレベルで、電気分解中の1つ以上の期間に制御するための直流電源および電力コントローラと、および/または、水平陰極上に電解スラリーを配置するためのスラリーラインと、を備えることができる。特定のそのような実装形態では、水平陽極面は、電気分解から生じるガス状化合物が通過できる複数の穴、通気孔、溝等(「呼吸穴」)を含み、および/または、水平陽極面は、電気分解中に水平陰極と実質的に平行であり、水平陰極の上方40mm~140mmの間に位置する。
【0059】
本明細書に開示される他の代替的な実装形態は、電気分解のために電解スラリーを配置することができる表面を有する水平陰極と、電気分解のために電解質と物理的に係合するための水平陰極の上方に懸架された陽極と、水平陰極から、電解から生じる最終製品を除去するための除去機構と、を含む、電解スラリーに対して電気分解を行うためのシステムに関する。特定のそのような実装形態では、懸架された陽極は、電気分解のために電解スラリーの上面と物理的に係合するための水平陽極面を含み、および/または水平陽極面は、電気分解によって生じたガス状化合物が通過できる複数の穴、通気孔、溝等を備える。
【0060】
図6は、本明細書に提示される他の図面に関して開示および説明されているような例示的な実装形態および態様と組み合わせて使用可能な例示的なコンピューティング環境のブロック図である。コンピューティングシステム環境は、適切なコンピューティング環境の一例にすぎず、使用範囲または機能に関していかなる制限も示唆するものではない。
【0061】
多数の他の汎用または特殊用途コンピューティングシステム環境または構成を使用することができる。使用に適した周知のコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例には、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバコンピュータ、ハンドヘルドまたはラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、組込み型システム、上記のシステムまたは装置のいずれかを含む分散コンピューティング環境等が含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
コンピュータによって実行されるプログラムモジュール等のコンピュータ実行可能命令を使用することができる。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行し、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。通信ネットワークまたは他のデータ伝送媒体によってリンクされた遠隔処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境を使用することもできる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールおよび他のデータが、メモリ記憶装置を含むローカルコンピュータ記憶媒体とリモートコンピュータ記憶媒体との両方に位置することができる。
【0063】
本明細書に開示される態様に関連して説明される様々な例示的なロジック、論理ブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、アナログ/デジタル変換器(ADC)、またはその他のプログラマブルロジック装置、個別のゲートまたはトランジスタロジック、個別のハードウェアコンポーネント、個別のデータ取得コンポーネント、または本明細書で説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせを使用して実装または実行することができる。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであることができるが、代替的に、プロセッサは任意の従来型プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってもよい。プロセッサは、コンピューティング装置の組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携した1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装されてもよい。更に、少なくとも1つのプロセッサは、上記のステップおよび/またはアクションのうちの1つ以上を実行するように動作可能な1つ以上のモジュールを備えてもよい。
【0064】
図6を参照すると、本明細書で説明されている態様を実装するための例示的なシステムは、コンピューティング装置600等のコンピューティング装置を含む。基本的な構成では、コンピューティング装置600は、通常、少なくとも1つの処理装置602およびメモリ604を含む。コンピューティング装置の正確な構成およびタイプに応じて、メモリ604は、揮発性(ランダムアクセスメモリ(RAM)等)、不揮発性(読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等)、またはこれら2つの組み合わせであってもよい。この基本構成は、
図6に破線606で示されており、総称して「コンピューティング」コンポーネントと呼ばれることがある。
【0065】
コンピューティング装置600は、追加の特徴/機能を有していてもよい。例えば、コンピューティング装置600は、磁気または光ディスクまたはテープを含むがこれらに限定されない追加のストレージ(取り外し可能および/または取り外し不可能)を含むことができる。このような追加のストレージは、
図6では、取り外し可能なストレージ608および取り外し不可能なストレージ610として示されている。コンピューティング装置600は、通常、様々なコンピュータ読み取り可能媒体を含む。コンピュータ読み取り可能媒体は、装置600がアクセス可能な任意の利用可能な媒体であることができ、揮発性および不揮発性媒体の両方、並びに取り外し可能な媒体および取り外し不可能な媒体の両方を含むことができる。
【0066】
コンピュータ記憶媒体は、揮発性媒体および不揮発性媒体、並びに取り外し可能な媒体および取り外し不可能な媒体を含み、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラムモジュールまたはその他のデータ等の情報を格納するための任意の方法または技術で実装される。メモリ604、取り外し可能なストレージ608、および取り外し不可能なストレージ610は全て、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体には、RAM、ROM、電気的に消去可能なプログラム読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、またはその他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気ストレージ装置、または情報の記憶に使用でき、コンピューティング装置600によってアクセス可能な任意の他の媒体が含まれるが、これらに限定されない。このようなコンピュータ記憶媒体はいずれも、コンピューティング装置600の一部であり得る。
【0067】
コンピューティング装置600は、装置を他の装置と通信可能にする通信接続612を含むことができる。コンピューティング装置600は、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置等の入力装置614も有することができる。ディスプレイ、スピーカー、プリンタ等の出力装置616も含まれてもよい。これらの装置は全て、当技術分野で周知であり、本明細書で詳しく説明する必要はない。コンピューティング装置600は、ネットワークによって相互接続された複数のコンピューティング装置600のうちの1つであってもよい。理解され得るように、ネットワークは任意の適切なネットワークであることができ、各コンピューティング装置600は、任意の適切な方法で通信接続612を介してネットワークに接続され、各コンピューティング装置600は、任意の適切な方法でネットワーク内の他のコンピューティング装置600のうちの1つ以上と通信してもよい。例えば、ネットワークは、組織内または家庭内等の有線または無線ネットワークであることができ、インターネット等の外部ネットワークへの直接的または間接的な接続を含むことができる。更に、PCI、PCIe、および他のバスプロトコルを、本明細書で説明する様々な実装形態を他のコンピューティングシステムに組み込むために利用してもよい。
【0068】
<本明細書の開示の解釈>
【0069】
本明細書に記載される様々な技術が、ハードウェアまたはソフトウェアに関連して、または適切な場合、それらの組み合わせと共に実装され得ることを理解されたい。従って、本開示の主題のプロセスおよび装置、またはその特定の態様または部分は、フロッピーディスク、CD-ROM、ハードドライブ、または任意の他の機械可読記憶媒体等の有形媒体に具体化されたプログラムコード(即ち、命令)の形態をとり得、プログラムコードがコンピュータ等の機械にロードおよび実行されると、機械は、本開示の主題を実施するための機器となる。
【0070】
プログラム可能なコンピュータ上でプログラムコードを実行する場合、コンピューティング装置は、一般に、プロセッサ、プロセッサによって読み取り可能な記憶媒体(揮発性および不揮発性メモリおよび/またはストレージ要素を含む)、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む。1つ以上のプログラムは、例えば、API、再利用可能な制御等の使用を通じて、本明細書に開示される主題に関連して説明されるプロセスを実装または利用し得る。そのようなプログラムは、コンピュータシステムと通信するために、高レベルの手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で実装され得る。しかしながら、プログラムをアセンブリまたは機械語で実装することができる。いずれの場合も、言語は、コンパイルされたまたは解釈された言語であり得、それは、ハードウェア実装形態と組み合わされ得る。
【0071】
例示的な実装形態は、1つ以上のスタンドアロンコンピュータシステムの状況において現在開示されている主題の態様を利用することを指す場合があるが、主題はそれには限定されず、むしろ、任意のコンピューティング環境、例えば、ネットワークまたは分散コンピューティング環境と関連して実装され得る。更に、現在開示されている主題の態様は、複数の処理チップまたは装置内またはそれらにわたって実装することができ、ストレージは、複数の装置にわたって同様に実施することができる。このような装置には、例えば、PC、ネットワークサーバ、およびハンドヘルド装置が含まれ得る。
【0072】
本明細書で説明されている特定の実装形態では、コンピューティング、処理、ストレージ、データ管理、アプリケーション、およびその他の機能を、コンピュータハードウェア、ソフトウェア等のスタンドアロン製品としてではなく、抽象的なサービスとして提供することをサポートするクラウドオペレーティング環境が使用され得る。サービスは、1つ以上のコンピューティング装置上の1つ以上のプロセスとして実装され得る仮想サーバによって提供することができる。いくつかの実装形態では、プロセスは、クラウドサービスを混乱させることなく、サーバ間で移転することができる。クラウドでは、共有リソース(例えば、コンピューティング、ストレージ)を、ネットワークを介して、サーバ、クライアント、および移動装置を含むコンピュータに提供することができる。様々なネットワーク(例えば、イーサネット、Wi-Fi、802.x、セルラ)を使用して、クラウドサービスにアクセスすることができる。クラウドと相互作用するユーザは、実際にサービス(例えば、コンピューティング、ストレージ)を提供している装置の詳細(例えば、位置、名称、サーバ、データベース等)を知っている必要はないこともある。ユーザは、例えば、ウェブブラウザ、シンクライアント、移動アプリケーション等を介して、またはその他の方法で、クラウドサービスにアクセスすることができる。ハードウェアおよびソフトウェアの物理コンポーネントが本明細書で説明されている限り、クラウドオペレーティング環境を介して提供される同等の機能も予測され、開示されるものとする。
【0073】
更に、コントローラサービスはクラウドに存在し、処理を実行するためにサーバまたはサービスに依拠し、データを記憶するためにデータ記憶装置またはデータベースに依拠することができる。1つのサーバ、1つのサービス、1つのデータ記憶装置、および1つのデータベースが使用される場合もあるが、複数のサーバ、サービス、データ記憶装置、およびデータベースのインスタンスがクラウド中に存在することができ、従って、コントローラサービスによって使用される場合もある。同様に、様々な装置がクラウド中のコントローラサービスにアクセスでき、そのような装置は、コンピュータ、タブレット、ラップトップコンピュータ、デスクトップモニタ、テレビ、パーソナルデジタルアシスタント、およびモバイルデバイス(例えば、携帯電話、衛星電話等)を含むことができる(ただし、これらに限定されない)。異なる位置にて異なる装置を使用している異なるユーザが、異なるネットワークまたはインタフェースを介してコントローラサービスにアクセスすることもあり得る。1つの例では、コントローラサービスは、モバイル装置からアクセスすることができる。別の例では、コントローラサービスの一部が、モバイル装置上に存在していることもある。いずれにせよ、コントローラサービスは、例えば、セカンダリディスプレイにコンテンツを表示する、セカンダリディスプレイにアプリケーション(例えば、ブラウザ)を表示する、セカンダリディスプレイにカーソルを表示する、セカンダリディスプレイにコントロールを表示する、および/またはモバイルデバイスまたは他のサービスでの対話に応答してコントロールイベントを生成する等のアクションを実行することができる。特定の実装形態では、コントローラサービスは、本明細書で説明されている方法の一部を実行することができる。
【0074】
<予想される代替形態>
【0075】
本主題は、構造的な特徴および/または方法論的な行為に固有の言語で記載されているが、添付の特許請求の範囲に定義される主題は、必ずしも上記の特定の特徴または行為に限定されるわけではないことを理解されたい。むしろ、上記の特定の特徴および行為は、特許請求の範囲を実装する例示的な形態として開示される。更に、当業者には、上に開示された特定の詳細とは別の他の実装形態を実施できることは明らかである。
【0076】
上記の図面および以下の特定の構造および機能の記述は、発明したものの範囲、または添付の特許請求の範囲を制限するために示すものではない。むしろ、図面および記述は、特許権保護を請求する本発明を作製し、使用することを当業者に教示するために示している。当業者は、明瞭性と理解のために、本発明の商業的実装形態の特徴が全て説明または図示されているわけではないことを理解するであろう。当業者は、更に、本明細書のブロック図が本技術の原理を具体化する例示的な回路の概念図を示すことと、フローチャート、状態遷移図、擬似コード等は、コンピュータ可読媒体で具体化され、かつそのようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に示されているか否かに関わらず、コンピュータまたはプロセッサよって実行され得る様々なプロセスを表すことと、を理解されよう。機能ブロックを含む様々な要素の機能は、専用の電子ハードウェア、および適切なソフトウェアと連携してコンピュータプログラム命令を実行できる電子回路を使用して提供することができる。当業者はまた、発明の態様を組み込んだ実際の商業的実装形態の開発には、商業的実装形態の開発者の究極の目標を達成するための多数の実装形態固有の決定が必要であることを理解するであろう。このような実装形態固有の決定には、これらに限定される可能性は低いが、システム関連、ビジネス関連、政府関連、およびその他の制約への準拠が含まれる可能性があり、これらは特定の実装形態、場所、および時期によって異なり得る。開発者の努力は絶対的な意味では複雑で時間がかかるかもしれないが、これらの努力は、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な仕事である。
【0077】
また、本明細書で開示および教示される実装形態は、多数の様々な変更および代替的な形態が可能であることを理解されたい。従って、限定しないが「a」等の単数形の使用は、アイテムの数を制限することを意図するものではない。また、限定しないが「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「下」、「上」、「側面」等の関係用語の使用は、図面を具体的に参照して明確にするために書面による説明で使用されているものであり、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。ブロック図および/または方法の動作説明を参照して説明される特定の実装形態については、ブロック図および/または動作説明の各ブロック、およびブロック図および/または動作説明内のブロックの組み合わせは、アナログおよび/またはデジタルハードウェア、および/またはコンピュータプログラム命令によって実装され得ることを理解されたい。本明細書に開示された実装形態で使用されるコンピュータプログラム命令は、オブジェクト指向プログラミング言語、従来の手続き型プログラミング言語、またはアセンブリ言語および/またはマイクロコード等の低レベルコードで記述できる。プログラムは、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして、または別のソフトウェアパッケージの一部として、単一のプロセッサ上および/または複数のプロセッサ間で完全に実行することができる。このようなコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、ASIC、および/または他のプログラム可能なデータ処理システムのプロセッサに提供することができる。実行された命令は、前述のブロック図および/または操作図で指定されたアクションを実装するための構造および機能を作成することもできる。一部の代替的な実装形態では、図面に示されている機能/アクション/構造は、ブロック図および/または操作図で示されている順序とは別の順序で発生し得る。例えば、連続して発生するように図示されている2つの操作は、実際には、関連する機能/動作/構造に応じて、ほぼ同時に実行されてもよく、または逆の順序で操作が実行される場合もある。
【0078】
上で使用される「コンピュータ可読命令」という用語は、プロセッサおよび/または他のコンポーネントによって実行され得る任意の命令を指す。同様に、「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ可読命令を格納するために使用できる任意の記憶媒体を指す。このような媒体は、これらに限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む多くの形態をとることができる。不揮発性媒体には、例えば、記憶装置等の光ディスクまたは磁気ディスクが含まれ得る。揮発性媒体には、メインメモリ等のダイナミックメモリが含まれ得る。伝送媒体には、バスのワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバが含まれ得る。伝送媒体は、無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成される音波または光波の形態をとることもできる。コンピュータ可読媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、搬送波、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の媒体が挙げられる。
【0079】
前述の説明では、限定ではなく説明の目的で、特定のノード、機能エンティティ、技法、プロトコル、規格等の具体的な詳細が、記載される技術を理解するために提供される。他の例では、不要な詳細で説明を不明瞭にしないように、よく知られている方法、装置、技法等の詳細な説明は省略されている。原理、態様、実施形態、および実装形態、並びに特定の例を列挙する全ての記述は、構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図しており、そのような等価物は、構造に関係なく、現在知られている等価物と、将来開発される等価物との両方、即ち、同じ機能を実行するように開発された任意の要素を含むことが意図されている。開示された実装形態は、1つ以上の特定の実装形態を参照して説明されているが、当業者であれば、多くの変更が可能であることが理解されよう。従って、前述の実装形態およびその明らかな変形のそれぞれは、以下に示す特許請求の範囲に記載されている開示された実装形態の精神および範囲内に含まれるものと見なされる。
【0080】
<著作権に関する注意>
【0081】
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となるものが含まれている。著作権者は、この特許文献または特許開示の何者かによる複製が、特許商標庁の特許ファイルまたは記録にある限り、それに対して異議を唱えないが、そうでなければ、いかなる場合も全ての著作権を留保する。
【国際調査報告】