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特表2025-501069炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法
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  • 特表-炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G21C9/016
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534566
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 RU2022000400
(87)【国際公開番号】W WO2023128809
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2021139690
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516233088
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー アトムエネルゴプロエクト
【氏名又は名称原語表記】JOINT STOCK COMPANY ATOMENERGOPROEKT
【住所又は居所原語表記】ul. Bakuninskaya,7,str.1 Moscow,105005 Russia
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】シドロフ,アレクサンドル・スタレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シドロヴァ,ナデジダ・ヴァシリエヴナ
(72)【発明者】
【氏名】チカン,クリスティン・アレサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネドレゾフ,アンドレイ・ボリソヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002BA07
(57)【要約】
本発明は、原子力発電所の安全を確保するシステムを製造する技術に関する。炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法であって、片持ちトラスの2つの対称部分が形成され、各部分は、外側、中間、内側のハーフシェルで構成され、これらのハーフシェルは、放射状および平行な支承リブ、上部および下部の半円形フォースプレートによって溶接により接続されて、平行および放射状の複数のセクターが形成されている。その後、2つの対称部分は、上部の水平ジョイントにより上部の各半円形フォースプレートが接続され、下部の水平溶接ジョイントにより下部の各半円形フォースプレートが接続され、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントにより外側、内側、中間の各ハーフシェルが接続されるように、一つの直交軸上に位置する2つの平行なセクター部分で溶接によって相互に接続される。このようにすることで炉心溶融キャッチ装置や炉心冷却設備の信頼性が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法であって、
片持ちトラスの2つの対称部分が形成され、
各部分は、外側、中間、内側のハーフシェルで構成され、これらのハーフシェルは、放射状および平行な支承リブ、上部および下部の半円形フォースプレートによって溶接により接続されて、平行および放射状の複数のセクターが形成されており、
その後、2つの対称部分は、上部の水平ジョイントにより上部の各半円形フォースプレートが接続され、下部の水平溶接ジョイントにより下部の各半円形フォースプレートが接続され、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントにより外側、内側、中間の各ハーフシェルが接続されるように、一つの直交軸上に位置する2つの平行なセクター部分で溶接によって相互に接続されることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
上部と下部の水平溶接ジョイント、および外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントの厚さが、卑金属および他の溶接ジョイントの厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントが部分的に作られ、外側と内側の垂直溶接ジョイントおよび上部と下部の水平溶接ジョイントにカバープレートを取り付けることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心溶融キャッチ装置(以下、CMLDという)の製造技術、特にCMLD用の片持ちトラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最大の放射線危害は、炉心冷却設備の多重故障時に起こりうる炉心溶融事故である。
【0003】
このような事故では、炉心溶融物(コリウム)が原子炉内構造物と原子炉容器を溶かし、限界を越えて流れ出る。原子炉内に残る残留発熱により、環境へ放射性物質が放出する際に最後の障壁となる原子力発電所の密閉シェルの完全性が破壊される可能性がある。
【0004】
これを避けるために、原子炉容器から流れる出る炉心溶融物(コリウム)を留め、完全に結晶化をするまで連続冷却を確実に行う必要がある。この機能が炉心溶融キャッチ装置によって行われ、この装置が原子力発電所の密閉シェルへの損傷を防ぎ、原子炉の重大事故時に発生する放射線被曝から住民と環境を守る。
【0005】
片持ちトラスは、CMLDのハウジングと内部構造が炉心溶融物によって破壊されないように保護し、原子炉ウェルに固定された片持ちトラスに静的・動的衝撃を伝えるガイドプレートを支える。また、片持ちトラスは、ガイドプレートが破壊された場合に操作性を確保する。
【0006】
CMLD用の片持ちトラスの製造方法として、異なる径の環状のシェルを形成し、それらを複数のリブによって相互に溶接してなる方法が知られている(ロシア連邦の特許第2576517号、IPC G21C 9/016、2014年12月16日付の優先権、ロシア連邦の特許第2576516号、IPC G21C 9/016、2014年12月16日付の優先権、ロシア連邦の特許第2575878号、IPC G21C 9/016、2014年12月16日付の優先権、ロシア型加圧水型原子炉VVER-1200を使用した原子力発電所用の炉心溶融キャッチ装置、「VVERを使用した原子力発電所の安全性確保」という第7回国際科学技術会議、I.A. シドロフ、開発設計局「GIDROPRESS」、ロシア連邦、2011年5月17~20日。)。上記の溶接構造体の上部と下部には、リングプレートが溶接されている。
【0007】
このようなCMLD用の片持ちトラスの製造方法の欠点は、溶接後、片持ちトラスの強度が半径方向の全てで同等になることである。これにより、炉心溶融物による熱機械的・熱化学的衝撃と、原子炉容器の破壊された底部からの衝撃とを同時に受けるガイドプレートの側面から設計を超える衝撃荷重が片持ちトラスに作用した場合、片持ちトラスは、特定の部分が破壊されるのではなく、製造プロセスと溶接接合部の熱処理の性質によって決まるランダムな部分で破壊が生じる。
【0008】
高強度な場合、このような衝撃は、CMLD用の片持ちトラスの耐荷重要素や原子炉ウェル内のCMLD用の片持ちトラスの支え要素に、設計された残留圧力を超え、原子炉容器内に設計を超える圧力が起きることにより破壊的な影響を与える。
【0009】
従って、原子炉容器の底部破壊時に設計基準を超える重大事故の管理への対応の結果として確立される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ロシア特許第2576517号明細書
【特許文献2】ロシア特許第2576516号明細書
【特許文献3】ロシア特許第2575878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の技術的結果は、炉心溶融キャッチ装置の信頼性を高めることである。
【0012】
本発明の目的は、設計基準を超える事故、原子炉ウェルへの振動の影響、ガイドプレート側面からの片持ちトラスへの衝撃の際に、耐荷重要素の破壊を予測可能なものとするCMLD用の片持ちトラスの製造方法を創り出すことである。この課題は、本発明に係る炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法により解決される。
【0013】
すなわち、炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法であって、片持ちトラスの2つの対称部分が形成され、各部分は、外側、中間、内側のハーフシェルで構成され、これらのハーフシェルは、放射状および平行な支承リブ、上部および下部の半円形フォースプレートによって溶接により接続されて、平行および放射状の複数のセクターが形成されており、その後、2つの対称部分は、上部の水平ジョイントにより上部の各半円形フォースプレートが接続され、下部の水平溶接ジョイントにより下部の各半円形フォースプレートが接続され、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントにより外側、内側、中間の各ハーフシェルが接続されるように、一つの直交軸上に位置する2つの平行なセクター部分で溶接によって相互に接続されることを特徴とする。
【0014】
CMLD用の片持ちトラスの製造方法を行うことで、耐荷重要素間の構造的不均一性を確保できる。その結果、熱膨張中に、片持ちトラスの2つの対称部分を接続する溶接ジョイントが位置する半径方向の軸に沿った2つの平行支承リブ間に片持ちトラスの最大の変形の発生を局在化させることができる。
【0015】
また、本発明に係る炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法を実施する際には、上部と下部の水平溶接ジョイント、および外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントの厚さを卑金属や他の溶接ジョイントの厚さよりも薄くする。その結果、片持ちトラスの耐荷重要素間の強度の不均衡を大きくすることができ、より厚みの薄い溶接ジョイントが位置する領域に応力を最大限に集中させることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法を実施する際には、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイントが部分的に作られ、外側と内側の垂直溶接ジョイントおよび上部と下部の水平溶接ジョイントにカバープレートが取り付けられる。
【0017】
本発明は、図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】片持ちトラス付き炉心溶融キャッチ装置を示す図である。
図2】炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスを示す図である。
図3】炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの2つの対称部分のうちの1つを示す図である。
図4】炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスを示す図である(2つの対称部分が接続された様子を示す。)。
図5】炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスを示す図である(接続された2つの対称部分における溶接ジョイントにカバープレートが配置されている様子を示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、炉心溶融キャッチ装置は、原子炉容器(2)の下に設置され、片持ちトラス(3)に載置されるガイドプレート(1)を含む。片持ちトラス(3)の下には、炉心溶融物の集散用のフィラー(7)を備えたハウジング(4)が設置されている。
【0020】
ハウジング(4)の上部には、過熱防止器(6)を備えたフランジ(5)がある。フィラー(7)は、お互いに重なり合わせて取り付けられた複数のカセット(8)で構成され、各カセットは、1つの中央穴といくつかの周辺穴(9)を含んでいる。
【0021】
炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法は以下の通りである。
【0022】
図2に示すように、CMLD用の片持ちトラスの2つの対称部分(28)のうちの1つは溶接によって製造される。他方も構造が同じなので、図2では、CMLD用の片持ちトラスの2つの対称部分のうちの1つだけを示す。
【0023】
CMLD用の片持ちトラスの各対称部分(28)は、以下の耐荷重要素で構成される。上部半円形フォースプレート(19)、下部半円形フォースプレート(20)、外側、内側、中間のハーフシェル(16)、(17)、(18)、支承リブ(15)である。これらの耐荷重要素は、CMLD用の片持ちトラスのフォースフレーム(13)を形成する。
【0024】
CMLD用の片持ちトラスにおいて形成された2つの対称部分は、溶接ジョイントで溶接されることによって連結される。上部の水平溶接ジョイント(26)は、2つの上部半円形フォースプレート(19)を連結し、下部の水平溶接ジョイント(27)は、2つの下部半円形フォースプレート(20)を連結し、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイント(12)、(22)、(24)は、それぞれ外側、内側、中間の2つのハーフシェル(16)、(17)、(18)を連結する。
【0025】
この場合、一断面に位置する水平溶接ジョイント(26)、(27)と、一断面に同様に位置する垂直溶接ジョイント(12)、(22)、(24)が、CMLD用の片持ちトラスの他の要素間の構造的不均一性を確保する。その結果、熱膨張時に、CMLD用の片持ちトラスの耐荷重要素の最大の変形の位置を、溶接ジョイントが位置する平行な支承リブ(15)間のセクターに局在化することを可能にする。
【0026】
発明の実施例としては、CMLD用の片持ちトラスの2つの対称部分(28)を連結する水平溶接ジョイント(26)、(27)と、垂直溶接ジョイント(12)、(22)、(24)の厚さ(B)は、各2つの対称部分(28)の製造に用いられる卑金属や他の溶接ジョイントの厚さ(A)よりも薄くされる。
【0027】
フォースフレーム(13)の衝撃強度を維持するには、溶接ジョイントの合計の厚さ(B)と溶接される卑金属の厚さ(A)との比に等しい係数(U)を、以下のようにする必要がある。
【0028】
0.8<(U=B/A)<1.0
U=1.0の値では、フォースフレーム(13)の熱膨張の局在化効果が強化されるが、U<0.8の場合では、フォースフレーム(13)の溶接ジョイントの衝撃強度が保証されない。
【0029】
発明の他の実施例では、2つの対称部分(28)からなるフォースフレーム(13)は、上部の水平溶接ジョイント(26)が上部半円形フォースプレート(19)を連結し、下部の水平溶接ジョイント(27)が下部半円形フォースプレート(20)を連結し、外側、内側、中間のハーフシェル(16)、(17)、(18)が垂直溶接ジョイントによって部分的に連結されるように溶接される。
【0030】
この場合、衝撃強度を維持するには、実際の上部、下部の水平溶接ジョイント(26)、(27)と、実際の垂直溶接ジョイント(12)、(22)、(24)とを含む実際の溶接ジョイントの総面積(F)と、上部と下部の半円形フォースプレート(19)、(20)と、外側、内側、中間のハーフシェル(16)、(17)、(18)をすべて連結し、閉ループ上に作られている潜在的な溶接ジョイントの理論上の総面積(Q)との比率である係数(W)の値が、以下を満たす必要がある。
【0031】
0.75<(W=F/Q)<1.0
W=1.0の値では、フォースフレーム(13)の熱膨張の局在化効果が強化されるが、W<0.75の場合では、フォースフレーム(13)の溶接ジョイントの衝撃強度が保証されない。衝撃強度を向上させ、0.75<W<1.0の基準を満たすために、カバープレート(11)が上から溶接ジョイント(12)、(22)、(26)、(27)に取り付けられ、フォースフレーム(13)の2つの対称部分(28)間の溶接ジョイントの面積を増加させる。
【0032】
図3図5に示すように、炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスのフォースフレーム(13)の2つの対称部分のそれぞれは、放射状支承リブ(14)、平行な支承リブ(15)、外側のハーフシェル(16)、内側のハーフシェル(17)、中間のハーフシェル(18)、上部半円形フォースプレート(19)および下部半円形フォースプレート(20)を備える。
【0033】
中間のハーフシェル(18)および上部半円形フォースプレート(19)には、蒸気孔(23)を含むことができる。外側ハーフシェル(16)の外側には、アンカーリブ(10)を備えた支持脚(21)が取り付けられている。
【0034】
本発明に係る製造方法によって製造された炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスは、以下のように機能する。
【0035】
溶融物表面とガイドプレート(1)の両方から設計基準を超える熱暴露・機械的衝撃が加わった場合、フォースフレーム(13)に制御できない破壊が生じるおそれがある。この現象を解消するために、片持ちトラスのフォースフレーム(13)は、上部、下部の水平溶接ジョイント(26)、(27)と、外側、内側、中間の垂直溶接ジョイント(12)、(22)、(24)とで、2つの対称部分(28)が溶接されており、これらのジョイントの強度が、フォースフレーム(13)の各対称部分(28)の卑金属や溶接ジョイントの強度よりも低くなることが確保される。
【0036】
片持ちトラスを2つの対称部分(28)を使用して製造する場合、これらの部分(28)の両方を所定の位置に保持し、保持している機器と材料がCMLDのハウジング(4)内に崩れ落ちることを防ぐために、フォースフレーム(13)の両方の対称部分(28)が独立して固定され、その任意の動きが制限される。このために、フォースフレーム(13)の両方の対称部分(28)が支持脚(21)を使用して別々に固定される。
【0037】
高い衝撃強度が発生する際には、支持脚(21)の使用により、波荷重を受ける原子炉ウェル(25)のコンクリートと支持脚(21)との間に必要な相互作用領域が形成されるため、フォースフレーム(13)の側面から原子炉ウェル(25)への力の均一な分配が保証される。
【0038】
支持脚(21)を使用する場合、外側ハーフシェル(16)から支持脚(21)に伝達される波荷重は、原子炉ウェル(25)のコンクリートの体積に分散され、支持脚(21)自体は、局部波荷重に耐性があり、強い衝撃荷重を受けても破壊されず、原子炉ウェル(25)のコンクリートの強度の低下につながることはない。
【0039】
原子炉容器(2)が破壊されるときに、炉心溶融物が静水圧と残留圧力の影響を受けて片持ちトラス(3)により保持されているガイドプレート(1)の表面上に流れ始める。ガイドプレート(1)を流れる炉心溶融物は、ガイドプレート(1)を加熱し、部分的に溶融させる。
【0040】
炉心溶融物とガイドプレート(1)の相互作用の性質と結果は、原子炉容器(2)内の圧力に大きく依存し、設計基準圧力と設計基準を超える圧力という2つのカテゴリに分類される。設計基準圧力とは、原子炉容器(2)内の水蒸気・ガス媒体の圧力であり、設計を超える重大事故時に減圧に向けた対応を講じた後の残留圧力を超えない圧力である。
【0041】
設計基準を超える圧力とは、炉心破壊の場合に原子炉容器(2)への制御不能な水の流入によって、残留圧力を超えて発生する圧力、または減圧に向けた対応が不完全な場合に原子炉容器(2)内に発生する圧力である。
【0042】
原子炉容器(2)内における設計基準圧力では、より長い2段階の炉心溶融物の流出が生じる。第一段階は、主に炉心溶融物の金属部分の流出、次の第二段階では、その酸化物部分の流出である。ガイドプレート(1)上への炉心溶融物の比較的長い流れは、ガイドプレート(1)と片持ちトラス(3)のセクター破壊にはつながらない。
【0043】
原子炉容器(2)内において設計基準を超える圧力では、炉心溶融物が急速な一般ジェットヘッド圧力噴出により流出する可能性があり、原子炉容器(2)の溶融物流出孔から流出する炉心溶融物の軸方向への急速な増加を伴う。この場合、原子炉容器(2)の底部が早期に破壊されなければ、溶融金属と溶融酸化物の並流がガイドプレート(1)の水平面内で60°の高さのセクターを切断し、片持ちトラス(3)と直接相互作用する可能性がある。フォースフレーム(13)は、水平面内での片持ちトラス(3)の高さ60°セクターが垂直方向に貫通破壊の際に、片持ちトラス(3)の強度と安定性を確保する。
【0044】
溶融物表面からフォースフレーム(13)が莫大な熱暴露を受ける場合、最大の熱変形は、相互接続された2つの内側ハーフシェル(17)からなる内側フォースシェルと、相互接続された2つの半円形フォースプレート(19)からなる上部フォースプレートに発生する。
【0045】
放射状支承リブ(14)と平行な支承リブ(15)の交互配置によって方位角の非対称性が確保されることにより、フォースフレーム(13)は、平行な支承リブ(15)間のセクター内において、相互接続された2つの内側ハーフシェル(17)からなる内側ハーフシェルと、相互接続された半円形のフォースプレート(19)からなる上部フォースプレートに発生する熱変形を局在化させることができる。
【0046】
片持ちトラス(3)のフォースフレーム(13)の要素、即ち平行な支承リブ(15)、放射状支承リブ(14)、外側のハーフシェル(16)、内側のハーフシェル(17)、中間のハーフシェル(18)、上部半円形フォースプレート(19)および下部半円形フォースプレート(20)は、グレード09G2Sの鋼で作ることができる。
【0047】
フォースプレート(19)、(20)の厚さは、60mmである。
【0048】
片持ちトラスの2つの部分(28)の両側の水平溶接ジョイントの合計の厚さは、50mmであり、溶接ジョイント間のギャップは、10mmである。
【0049】
片持ちトラスの2つの部分(28)を接続する両側の垂直溶接ジョイント(22)の厚さは、50mmであり、溶接ジョイント間のギャップは、10mmである。
【0050】
カバープレート(11)の片側の垂直溶接ジョイント(12)、(24)の厚さは、2×30mmであり、対になっているプレートの溶接ジョイント間のギャップは、20~80mmである。
【0051】
カバープレート(11)の厚さは、20mmである。
【0052】
炉心溶融キャッチ装置用の片持ちトラスの製造方法を実施することで、設計基準を超える事故、原子炉ウェルへの地震の影響、ガイドプレート側面からの片持ちトラスへの衝撃が発生した場合に、片持ちトラスの耐荷重要素の破壊を予測可能にし、CMLDの信頼性を向上できる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】