(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】連続ガラスリボン内に優先的な冷却又は加熱を施す制御冷却装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C03B 25/08 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
C03B25/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535898
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2022051791
(87)【国際公開番号】W WO2023129335
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,マオペイ
(72)【発明者】
【氏名】ハワード,スティーヴン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ルイ-シアン
(72)【発明者】
【氏名】マッカーティ,マーク デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ローヒット
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015CA01
4G015CA08
4G015CB01
4G015CC01
(57)【要約】
厚さが変化するガラスリボンを製造するためのガラスリボン処理装置は、ガラスリボンの幅の第1の部分をガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する第1のデバイスを含み、第1の部分は第2の部分より厚い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが変化するガラスリボンを製造するためのガラスリボン処理装置において、
前記ガラスリボンの幅の第1の部分を前記ガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する第1のデバイスであって、前記第1の部分が前記第2の部分より厚い、第1のデバイス
を備えている、装置。
【請求項2】
前記第1のデバイスが、前記ガラスリボンの上方又は下方かつ前記ガラスリボンの近くに配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のデバイスが、前記第1の部分から熱を抽出する熱交換器である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のデバイスが前記第1の部分へと空気を押し出す、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のデバイスが、前記第1の部分から熱を抽出し、前記第1の部分へと空気を押し出すように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のデバイスが、前記第1の部分へと押し出される前記空気を調整するバルブを備えている、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のデバイスがヒータを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ガラスリボンの幅の任意の部分を加熱する第2のデバイスをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のデバイスが前記第1の部分と前記第2の部分との界面を加熱する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のデバイスが、前記装置内で位置調整されるように構成されている複数の第1のデバイスである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ガラスリボンに熱処理を施すために少なくとも2つの加熱ゾーンを含むセクションヒータをさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
厚さが変化するガラスリボンを製造する方法であって、
前記ガラスリボンを搬送する工程と、
前記ガラスリボンの幅の第1の部分を前記ガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する工程であって、前記第1の部分が前記第2の部分より厚い、工程と
を含む、方法。
【請求項13】
前記冷却が、前記ガラスリボンの上方又は下方かつ前記ガラスリボンの近くに配置されたデバイスによって施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却が、前記第1の部分から熱を抽出する熱交換器によって施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却が、前記第1の部分へと押し出される空気によるものである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2021年12月30日出願の米国仮特許出願第63/295137号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、連続ガラスリボン内に優先的な冷却又は加熱を施す制御冷却装置及び方法に関する。開示される装置及び方法は、既存のガラス処理に対する修正として提供することも、ガラス製品を製造するための新しい設計に使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
ある特定のスマートフォン及びモバイル機器の背面カバー、又は電子部品や筐体設計用のガラス本体が不均一な厚さを有し、その不均一な厚さが他の部分よりもカメラ領域で厚い場合、カメラレンズの設計を改善することが可能である(例えば、特許文献1参照)。一例として、ガラスの厚さは、厚い部分では1.5~3.0mm、他の部分では0.8mm未満でありうる。デバイスの背面カバー又は筐体のための厚い部分を製造するために、比較的厚いガラスシートを研削し、ラップ仕上げし、研磨して、厚いエリアと薄いエリアとを画成することができる。このような場合、厚い領域で1.6mmの厚さ、他の部分で0.6mmの公称厚さを有するガラス物品を作るには、1.9mmの厚さを有するガラスシートを使用することができる。すなわち、厚い部分からは0.3mmの材料が除去され、その他の薄い部分からは1.3mmの材料が除去されるであろう。この手法はガラスの利用率が不十分であり、時間がかかり、コストがかかり、非効率的であり、環境に優しくない。
【0004】
不均一な厚さのガラス物品を形成する代替的な方法では、2枚のガラス基板を融着することができよう(例えば、特許文献2参照)。例えば、25mm×25mm×1.0mmのガラス片を高温下で接着又はプレスすることにより、70mm×150mm×0.6mmのより大きいガラス片へと融着させることができる。この方法はガラスの利用率を向上させるが、エネルギーを大量に消費し、融着界面で泡が形成される可能性があり、コストがかかり、より時間がかかる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0364179号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0210111号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削プロセスが、費用対効果が低く、生じる廃棄物が多すぎる場合、及び2枚のガラス片の融着が実施可能な選択肢ではない場合、別の解決策は、所望の厚さの差を有する連続したガラスリボンを画成することである。厚さが変化するガラスリボンを製造するには、厚い部分と薄い部分との間に大きい温度差を生成する必要がありうる。したがって、応力及び反りの少ないこのようなガラスリボンを製造するためには、ベースリボン(又はガラスリボンの薄い部分)の冷却速度とは異なる所定の速度で厚い部分を優先的に冷却する機能が必要である。
【0007】
本開示は、この技術的課題に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を克服するために、本開示の実施形態は、厚い部分から薄い部分へ、及び上方から下方への温度勾配を管理することにより、ガラスリボンの厚い部分を薄い部分よりも速い速度で冷却することによって、厚さが変化するガラスシートの応力及び反りを最小限に抑える装置及び方法を提供する。冷却は、対流及び/又は放射を通じて、ガラスリボンの上部及び/又は下部から実施することができる。任意選択的に、局所加熱を優先冷却とともに使用して、ガラス内の所望の温度パラメータを制御することができる。
【0009】
記載される実施形態は、制御冷却装置(CCA)に適用することができる。CCAは、ガラスリボンを製造する改良型徐冷炉、又はローラ炉床式徐冷炉、又はローラキルンである。本開示は、厚さが変化するガラスリボンを製造するために克服しなければならない熱管理の課題に対する解決策を提供する。
【0010】
現在説明している熱管理方法なしでは、厚さが変化するガラスリボンに発生する応力が高くなりすぎるであろう。そのためには、シートをスコアリングしたり、シートから高応力部分を切り取ったり、又は追加の仕上げプロセスを施して、ガラスを所望のサイズ、形状、及び厚さへと製造する必要があろう。ガラスリボンの応力を軽減する別の方法としては、徐冷炉の長さを大幅に増やすか、又はアニーリング工程を追加することが挙げられよう。これらの方法はいずれも、かなりのコスト及びスペースを必要とする。
【0011】
本開示の一実施形態によれば、厚さが変化するガラスリボンを製造するためのガラスリボン処理装置は、ガラスリボンの幅の第1の部分をガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する第1のデバイスを備えており、ここで、第1の部分は第2の部分より厚い。
【0012】
一実施形態では、第1のデバイスは、ガラスリボンの上方又は下方かつガラスリボンの近くに配置される。一実施形態では、第1のデバイスは、第1の部分から熱を抽出する熱交換器である。一実施形態では、第1のデバイスは第1の部分へと空気を押し出す。一実施形態では、第1のデバイスは、第1の部分から熱を抽出し、第1の部分へと空気を押し出すように構成される。一実施形態では、第1のデバイスは、第1の部分へと押し出される空気を調整するバルブを備えている。一実施形態では、第1のデバイスはヒータを備えている。
【0013】
ガラスリボン処理装置は、ガラスリボンの幅の任意の部分を加熱する第2のデバイスをさらに含むことができる。
【0014】
一実施形態では、第2のデバイスは、第1の部分と第2の部分との界面を加熱する。
【0015】
一実施形態では、第1のデバイスは、装置内で位置調整されるように構成されている複数の第1のデバイスである。
【0016】
ガラスリボン処理装置は、ガラスリボンに熱処理を施すために少なくとも2つの加熱ゾーンを含むセクションヒータをさらに含むことができる。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、厚さが変化するガラスリボンを製造する方法は、ガラスリボンを搬送する工程と、ガラスリボンの幅の第1の部分をガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する工程とを含み、ここで、第1の部分は第2の部分より厚い。
【0018】
該方法では、冷却は、ガラスリボンの上方又は下方かつガラスリボンの近くに配置されたデバイスによって施される。一実施形態では、冷却は、第1の部分から熱を抽出する熱交換器によって施される。一実施形態では、冷却は、第1の部分へと押し出される空気によるものである。
【0019】
該方法では、第1のデバイスは、第1の部分から熱を抽出し、第1の部分へと空気を押し出すように構成される。該方法では、第1のデバイスはガラスリボンを加熱する。
【0020】
該方法は、第1の部分と第2の部分との界面を加熱する工程をさらに含むことができる。
【0021】
該方法は、ガラスリボンの幅をセクションで加熱する工程をさらに含むことができる。
【0022】
本発明の上記及び他の特徴、要素、特性、ステップ、及び利点は、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について以下に詳細に説明することによってさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】厚さが変化するガラスリボンのベースライン冷却曲線を示すグラフ
【
図6】冷却流量に対する応力及び反りのデータを示す図
【
図9】ストリップヒータを備えたエアボックスを示す図
【
図10A】エアボックスからの空気の流れの影響を示すモデル
【
図10B】エアボックスからの空気の流れの影響を示すモデル
【
図11A】ガラスリボンの厚い部分に対する冷却効果を表す図
【
図11B】ガラスリボンの厚い部分に対する冷却効果を表す図
【
図12A】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図12B】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図13A】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図13B】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図14】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図15】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【
図16】制御冷却装置のトンネルのさまざまな構成の断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1A~
図1Cは、本開示で説明する装置及び方法によって可能となるガラスリボンの形状の例である。示されている形状は、すべての可能な形状を反映するものではなく、特定の製品用に設計されている。
【0025】
図1A~
図1Cでは、明るい青色の部分はベースリボン又は薄い部分を表し、暗い青色の部分は厚い部分を表している。
図1Aは、全幅が180~230mmのガラスリボンを表している。厚い部分は、ガラスリボンの左端から20~30mmのところから開始して40~55mmの幅を有し、中心がガラスリボンの中心から40~65mmのところに位置するものとして示されている。
【0026】
図1Bは、300~400mmの全幅を有するガラスリボンを表している。厚い部分は、180~110mmの幅を有するように示されており、ガラスリボンのほぼ中央に位置している。
【0027】
図1Cは、300~400mmの全幅を有するガラスリボンを表している。このリボンは、40~55mmの幅を有する2つの厚い部分を含み、一方の厚い部分はガラスリボンの左端から0~30mmの位置にあり、もう一方の厚い部分はガラスリボンの右端からら等距離に位置している。
【0028】
【0029】
表1には、ガラスリボンのだんだん薄くなる部分の厚さの値の可能な範囲を示す、幾つかの例示的なパラメータが含まれている。項目1~3は、完全に均一な厚さを有するガラスリボンも可能であることを示している。
【0030】
図2は、ベースガラスの厚さが2.0mm、CCA内の中心ストリップのデルタ厚さ変化が0.3mmである、厚さが変化するガラスリボン製品のベースライン冷却曲線を示すグラフである。この冷却曲線データは、CCA内で優先的な熱管理ツール又は技法を使用していない、厚さが変化するガラスリボンの初期製造試験で取得され、モデル化された。すなわち、CCAは、ガラスリボン全体の放射冷却にSiSiCプレートのみを使用した、標準の装置設定を有していた。SiSiCプレートを含むCCAの一部を示している
図4を参照されたい。SiSiCプレートは、低い熱膨張係数(CTE)と高い熱伝導率を有しており、CCAトンネル内のガラスリボンの上に均一な放射熱源を提供するのに適している。
【0031】
図2は、従来のプロセスにおける、ガラスリボンの温度を左の縦軸に、CCAトンネル内の距離を横軸にプロットしたものである。赤い曲線は、厚い部分の上面(A面)の中心線温度のモデルである。図に示されるように、厚い部分の温度は、CCAの入口で700℃、CCAの出口で556℃であった。青い曲線は、薄いベースガラスの温度のモデルである。図に示されるように、薄い部分の温度は、CCAの入口で660℃、CCAの出口で546℃であった。灰色のダイヤモンド形をしたデータ点(CCA SP)は、CCAトンネルに沿った位置でのSiSiCプレートの温度設定点を表している。灰色の曲線は、設定点を通過するSiSiCプレートの温度である。黒い四角形のデータ点及び示された値は、SiSiCプレートを通して測定されたガラスリボンの実際の高温測定温度である。
【0032】
黒い破線は、ガラスリボンの厚い部分と薄い部分との間のモデル化された温度差であるデルタT(DT)を表しており、右の縦軸にプロットされている。データから、ガラスリボンの厚い部分と薄いベース部分との間で、予想通りの冷却速度の不一致が明らかになった。
【0033】
CCA内の従来の熱管理では、制御された冷却セクション全体にわたって、厚い部分が薄いベースガラスよりも常に高温になる。リボン冷却中に存在する厚い部分と薄い部分との間のこの持続的な熱勾配は、この低デルタ厚さの製品ではCCA SPを制御することによってかなりうまく管理されていたが、成形後の製品に高い応力と反りを生じた。その後の試験から、厚い部分で質量が増し、さらにデルタ厚さが大きい製品では厚い部分と薄い部分とのDTがさらに悪化するという豊富な証拠があり、熱勾配を下げて結果として生じる応力を軽減するために、CCA内に優先的な熱管理ツールを設置する差し迫った必要性が示唆される。
【0034】
図3Aと
図3Bは、ガラスリボンの冷却曲線をモデル化したものであり、ガラスリボンの温度を左の縦軸に、CCAまでの距離を横軸にとり、優先冷却でのプロセスを比較している。ガラスリボンは、厚さ1.0mmの薄いベースガラスとデルタ厚さ1.4mmの中心ストリップ製品である。赤い曲線は厚い部分の中心線温度であり、青い曲線は薄いベースガラスの中心線温度である。黒く塗られた部分はCCA設定点温度である。
図3Aと
図3Bは、2つの異なるCCA機器設定による、厚さが変化する同じ製品の冷却曲線を比較している。
図3Aは、優先冷却のない、従来のCCA機器の結果を示している。すなわち、SiSiCプレートは、ガラスリボン全体の制御された放射加熱及び冷却に用いられる。
図3Bは優先的な冷却での結果を示しており、追加の冷却のために、ガラスリボンの厚い部分から10mm上に追加の放射冷却ストリップが配置されている。両方の図の黒い破線の曲線は、CCA内の厚い部分と薄い部分との温度差(DT)をプロットしたものである。図に示されるように、いずれのシナリオでも、厚い部分と薄い部分とのDTはゼロである。
【0035】
図3A及び
図3Bは、CCA内での局所的優先冷却プロセスが、冷却ガラスの粘弾性に起因して応力と反りが製品内の熱不均一性に最も敏感になる制御された冷却セクション全体にわたり、厚い部分と薄い部分とのDTをゼロに近づけ、最小限に抑えることができることを実証している。
【0036】
図3Aでは、制御された冷却セクションにおける1.4mmのデルタ厚さのガラスリボン製品の冷却曲線が示されており、ここで、CCAは、
図2にプロットされたデータを生成するために使用したものと同様の従来の機器設定で構成されている。異なる結果は、異なるCCA設定点と、試験間のDTの差に起因する。
図3Bは、同じガラスリボン製品と、厚い部分の10mm上に局所放射冷却ストリップを含む同じCCA設定の冷却曲線を示している。黒い破線で示される2つの事例の厚い部分と薄い部分とのDT(第二y軸の値)を比較すると、従来の冷却を使用したプロセスと局所優先的な冷却ストリップを使用したプロセスとの間には、明らかな熱の影響が見られる。
【0037】
図3Aに示されるように、従来の冷却での厚い部分と薄い部分との冷却速度の不一致に起因して、厚い部分と薄い部分とのDTは、CCAの入口から出口まで累積的に増加している。
図3Bに示されるように、厚い部分の上に冷却ストリップを配置し、表面温度をSiSiCプレートの温度に対して最適化するプロセスを使用すると、CCA内において、厚い部分と薄い部分とのDTをゼロに近づけ、最小限に抑えることができる。CCA内の優先的な熱ツールは、この特定の放射冷却方法を使用すること、又はガラスリボンのいずれかの面を冷却することに限定されないことを理解する必要がある。実施形態では、優先的な熱ツールは、ガラスリボン製品の上部(A面)及び/又は底部(B面)への対流及び/又は放射の組合せ又は単独の使用であってもよい。
【0038】
重要な要素は、優先的な熱ツールによって追加の冷却が提供され、それにより、ガラスリボンが厚い部分と薄い部分でほぼ同じ温度を達成し、CCA内の厚い部分と薄い部分とのDTがゼロ近くで維持されることである。厚い部分の追加冷却のためのこのような優先的熱ツールの1つが
図4にモデル化されており、冷却曲線、CCA SP、及び冷却ストリップ(緑の曲線)の温度が
図3Bに示されている。ガラスリボンの厚い部分の優先的な冷却は、薄い部分の優先的な加熱と組み合わせることができ、特に、薄い部分の温度が所定の目標値よりも低い場合は、CCAより前のモジュール又はセクションで行われる。薄い部分の加熱は、局所加熱ツールを使用するか、又はCCAモジュール全体の温度を薄い部分の温度よりも高く保つことでによって実現することができる(その間、冷却ツールは薄い部分を優先的に冷却する)。
【0039】
図4は、CCA内の優先的な冷却のための機器構成を示す概念モデルである。厚さが変化するガラスリボンの一部がローラ上に載って示されており、SiSiCプレートからの放射によって上から均一に加熱されている。ローラの下の白い格子構造は、効率的な均一加熱を維持するのに役立てるための断熱材を表している。ガラスリボンの中央に位置する厚い部分の10mm上に、均一な温度で能動冷却される放射冷却ストリップを配置し、厚い部分に追加の冷却を提供する。このモデルは、優先的な熱ツールを使用してCCA内の厚い部分と薄い部分とのDTを最小限に保つことができるという数値的概念実証を示しており、これは、成形後の製品の応力と反りを最小限に抑えるための鍵となる。
【0040】
図5A及び
図5Bは、強制対流によって連続ガラスリボンの厚い中央領域を優先的に冷却するという概念を試験するように変更されているCCAの画像である。画像に示されるように、エアボックス500がローラ510の下に設置されており、これにより、穴の配列によって冷媒空気の流れがガラスリボンの下側(B側)の必要な場所に正確に供給できる。この場合、
図6に例示されているように、複屈折マップによって提供されるフィードバックに基づいて、ボックスをプロセス左及び/又はプロセス右に移動してそれらを位置合わせすることができる。利用可能な空気供給量は、約30m/秒の速度、ガラスリボンの背面から約0.5インチ(約1.27cm)の距離からで、0(ゼロ)から35(三十五)scfm(0から約59.5m
3/時)の範囲であった。
【0041】
図6の冷却流量と応力及び反りのデータとの比較は、厚い部分が冷却されて、厚い部分と薄い部分との温度差が小さくなると、ガラスリボンの応力も低下することを示している。データから、穴のサイズ、穴の間隔、カバー範囲、エアボックスのリボンからの距離、及び他の幾何学的特徴は、特定の用途と所望される結果に基づいて最適化できることに留意されたい。
【0042】
冷却は、強制空気(対流)と放射との任意の組合せを使用して施すことができる。冷却システムの設計には、放射率、理想気体の法則、及び加熱された空気の膨張、建物からの加熱された空気の除去、並びに居住者の安全性などの要素の考慮が含まれる。ガラスリボンに直接空気を強制的に吹き付ける必要がない又は望ましくない幾つかの用途又は温度範囲では、強制空冷は、
図7に示されるように、エアボックスから穴を取り除くか又は完全に排除することによって、放射と組み合わせることができ、あるいは放射によって施すことができる。例えば、温度が600℃を超えるCCAの最初の3分の1では、放射は温度低下を効果的に生じさせると同時に、ガラスリボンへのストレスを軽減することができるが、温度が600℃未満のCCAの後半の3分の2では、強制対流の方が有益でありうる。
【0043】
図7は、ガラスリボンの側面を冷却するために用いられる放射部材700の設計を示している。本明細書では、放射部材700は、ガラスリボンに空気が当たる開口部のない入口710及び出口720を含む。すなわち、入口710から入った、より冷たい空気は、放射部材700内の通路及び/又はバッフルを通って移動し、より高い温度で出口720から出て、より高温のガラスリボンに近接しているために吸収された熱を放射部材700から抽出する。熱交換器として、例えば適切なガス、水、又は別の適切な液体など、空気以外の任意の冷却剤を使用して、入口710に入り、出口720から出て、放射部材700から熱を取り除くことができる。
【0044】
あるいは、CCAに複合デュアルモード冷却部材を設けることもできる。例えば、
図8に示されるように、複合部材800は、異なる時間又は複合部材800の異なる位置で対流冷却及び/又は放射冷却を提供するように構成することができる。エアボックスとして、複合部材800には、冷却を強化する必要がある正確な位置でガラスリボンに空気を導くノズル又は出口820を含めることができる。それほど強力でない冷却が必要な場合は、複合部材800をバルブ(手動又は電気機械式)で切り替えてノズル820を閉じ、放射冷却モードにすることができる。
【0045】
図8は、複合部材800に2つの空気入口を含めることができることを示している。従来の空気入口810は、ノズル820を通じてガラスリボンへと押し出される対流冷却空気を複合部材に提供する。任意選択的に、複合部材800には、対応するバルブ(図示せず)を使用して空気を通過又は遮断するように個別に構成することができる複数のノズルを含めることができる。図に示されるように、放射空気入口830により、入力放射冷却空気が複合部材800を通って移動し、より高温で出口840から出て、より高温のガラスリボンに近接しているために吸収された熱を複合部材800から抽出する。任意選択的に、上で論じたように、空気以外の冷却剤を使用して放射冷却を提供することもできる。
【0046】
例えば、放射冷却では、冷却効果と効率を向上させるために、気体ヘリウムを含むがこれに限定されない特殊な冷却媒体を使用することができる。空気の熱伝導率は0.0257W/(m-K)であるが、ヘリウムの場合は0.1513W/(m-K)である。同等の材料は、0.173W/(mK)の綿実油と、0.588W/(mK)の水である。気体ヘリウムを使用する場合、システムファンを使用することができ、冷却は、油又は水による冷却に伴う問題がなく、空気を使用するよりもはるかに効率的になるであろう。冷却システムは、ヘリウムを貯蔵したバックアップ容器を備えた放射エアボックスを介した密閉ループにすることができる。任意選択的に、冷却媒体は、100%純粋な気体ヘリウム未満である、空気とヘリウムの混合物とすることができる。
【0047】
任意の数の放射部材700及び複合部材800を提供して、ガラスリボンの厚い部分を薄い部分とは異なる速度で冷却するために使用することができる。部材700、800のいずれかを、それが配置されているCCAの残りの部分よりも低い温度に維持し、ガラスリボンの厚い部分の表面からより短い距離に配置することができる。任意選択的に、ガラスリボンの上部、下部、又は両側から冷却することができる。
【0048】
別の実施形態では、エアボックスは、冷却に加えて加熱も提供することができる。加熱機能を使用して、ガラスリボンの厚い部分と薄い部分との界面で生じる温度勾配を減じることができる。
図9に示される一構成では、2つのストリップヒータ920を、エアボックス900上のエアノズルのアレイ910の2つの側部に沿って延在するように配置することができる。ストリップヒータ920は、ガラスリボンに熱を放射して熱を保持するか、又は厚い部分と薄い部分との界面が存在する正確な位置を再加熱して、この界面におけるガラスリボンの応力を低減する。
【0049】
ヒータには、薄い部分及び/又は厚い部分を異なる速度で加熱するためのセクション加熱ゾーンを含めることができる。セクションヒータは、可動エアボックスと組み合わせて使用して、ガラスリボンの正確に制御された熱処理を提供することができる。あるいは、CCAモジュールをリボンの薄い部分の温度よりも高い温度に維持して、そのようなセクションを加熱しつつ、局所冷却ボックスで厚い部分を冷却することもできる。
【0050】
あらゆるタイプの冷却(従来型、放射型、及び組合せ)、加熱、又は加熱/冷却エアボックスを提供して、それぞれを独立して移動させ、ガラスリボンの任意の部分に位置合わせするように位置決めすることができる。エアボックスは、ガラスリボンの中央にまとめて配置して、より幅の広い厚い部分を覆うことも、ガラスリボンの端部に向かって間隔を空けて配置して、より狭い端部ストリップ構成を覆うこともできる。エアボックスは、ガラスリボンに対して、使用していないときは上、下、横、又は邪魔にならない場所に独立して配置することができ、手動で、又は自動電気機械式位置決めシステムによって、所定の位置に配置することができる。任意選択的に、加熱及び/又は冷却する任意の数のエアボックスの任意の数の位置を自動化によって配置し、予めプログラムして、ガラスリボンのプロセスのさまざまな構成を繰り返すことができるようにすることができる。
【0051】
図10A及び
図10Bは、エアボックスからの空気の流れがガラスリボンの上面に空気を押し出す効果を示すモデルである。厚い部分と薄い部分とを含むガラスリボンの一部が、リボンのその部分の周囲の空気量内に示されている。図示されていないが、エアボックスは厚い部分のすぐ上に、近接して配置されるであろう。
図10Aのモデルは、より冷たい強制空気がガラスリボンの厚い部分を冷却することを示している。
図10Bは、空気流の増加によって、厚い部分がさらに冷却されることを示している。
【0052】
図11A及び
図11Bは、エアボックスからガラスリボンまでの距離が変化する際のガラスリボンの厚い部分に対する冷却効果を表す図である。
図11Aの左側と右側との比較は、エアボックスから厚い部分までの距離が増加するにつれて、強制空気がエアボックスから広がるため、冷却効果がより広くなる、又はより分散されることを示している。
【0053】
図11Bは、空冷するコールドゾーンとホットゾーンとを位置合わせするための制御ロジックを示している。Corning社の温度監視システムは、ホットゾーン(リボン上、とりわけ通常は厚いストリップ上の熱フラックスが遅いゾーン)と、コールドゾーン(エアボックスの冷却効果に近い場所)の位置を測定及び分析することができる。ホットゾーンの中心とコールドゾーンの中心との距離は、Corning社が開発した方法で計算され、その結果を使用して間隙が自動的に調整され、ホットゾーンが最小化される。青い長方形のゾーンは空冷ゾーンであり、空冷制御によって、計算及び予測可能である。赤い不規則なゾーンは、サーマルカメラ又は他の測定ツールで測定した温度分布の性質である。制御システムは、コールドゾーンの中心及びホットゾーンの中心線を計算し、それに応じてこれら2つの間の距離を最小化する。
【0054】
図12~16は、エアボックスの異なる構成及び位置を有するCCAトンネルの断面図である。
図12~16に示されている赤いボックスは、上で論じたように、加熱及び/又は冷却に使用することができる任意のタイプのエアボックスの位置を表している。CCAトンネル構成に関連付けられたガラスリボンの構成の表現が、CCAトンネルの周りに示されており、ここで、
図1A~
図1Cに示されているものと同様に、濃い青は厚い部分を示しており、薄い青は薄い部分を示している。簡潔にするため、同様の機能の説明は繰り返さない。
【0055】
図12A及び
図12Bは、ローラ1210に乗って移動するガラスリボンを支持するように構成されたローラ1210を示す、CCAトンネル1200の断面図である。
図12Aでは、2つのエアボックス1020がローラ1210の上に互いに隣接しており、ガラスリボンの中心を冷却するように配置されている。ガラスリボンの表現は、CCAトンネルの上に提供されており、
図1Bに示されている構成に似ている。
図12Bでは、2つの冷却ボックス1220がローラ1210の上に互いに離れて配置され、ガラスリボンの2つの外側部分を冷却するように配置されている。ガラスリボンの表現は、CCAトンネルの上に提供されており、
図1Cに示されている構成に似ている。
【0056】
図13A及び
図13Bは、CCAトンネルの断面図であり、エアボックスをガラスリボンの下に配置して、CCAトンネルの底部から制御することができることを示している。
図13Aは、エアボックスを
図8に関して説明したように構成することができることを示す、追加の図を含んでいる。
【0057】
図14は、垂直方向に調整可能なCCAトンネル内のエアボックスを示している。CCAトンネルの全幅を、機械幅方向にはしっかりと固定されているが、昇降させることができるエアボックスで埋めることが可能である。このような構成では、オペレータは、どのボックスに空気を吹き込むかを決定し、それらのボックスをガラスリボンから適切な距離になるように上昇させ、加熱及び/又は冷却を適切に集中させることができる。必要のないエアボックスは低い位置に残し、電源をオフにすることができる。
【0058】
図15は、ガラスリボンの上下にエアボックスが位置づけられたCCAトンネルを示している。
図15には、追加の局所ヒータ1510も示されている。
図16には、ガラスリボンの上下両方エアボックスが配置されたCCAトンネルと、
図15に示されているものと同様の追加の局所ヒータ1610も示されている。しかしながら、ヒータ1610は、異なる色のコイルで表されるセクションヒータ1620を含み、各セクションヒータ1620が個別に制御されて、ガラスリボンの薄い部分及び/又は厚い部分を異なる速度で加熱するという点で異なる。5つのセクションヒータが示されているが、任意の数が可能である。セクションヒータ1620は、可動エアボックスと組み合わせて使用して、ガラスリボンの正確に制御された熱処理を提供することができる。
【0059】
前述の説明は、本発明の例示に過ぎないものと理解されるべきである。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、さまざまな代替案及び修正案を考案することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る、このような代替案、修正案、及び変更案をすべて包含することが意図されている。
【0060】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0061】
実施形態1
厚さが変化するガラスリボンを製造するためのガラスリボン処理装置において、
前記ガラスリボンの幅の第1の部分を前記ガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する第1のデバイスであって、前記第1の部分が前記第2の部分より厚い、第1のデバイス
を備えている、装置。
【0062】
実施形態2
前記第1のデバイスが、前記ガラスリボンの上方又は下方かつ前記ガラスリボンの近くに配置される、実施形態1に記載の装置。
【0063】
実施形態3
前記第1のデバイスが、前記第1の部分から熱を抽出する熱交換器である、実施形態1又は2に記載の装置。
【0064】
実施形態4
前記第1のデバイスが前記第1の部分へと空気を押し出す、実施形態1又は2に記載の装置。
【0065】
実施形態5
前記第1のデバイスが、前記第1の部分から熱を抽出し、前記第1の部分へと空気を押し出すように構成される、実施形態1又は2に記載の装置。
【0066】
実施形態6
前記第1のデバイスが、前記第1の部分へと押し出される前記空気を調整するバルブを備えている、実施形態3から5のいずれかに記載の装置。
【0067】
実施形態7
前記第1のデバイスがヒータを備えている、実施形態1から6のいずれかに記載の装置。
【0068】
実施形態8
前記ガラスリボンの幅の任意の部分を加熱する第2のデバイスをさらに備えている、実施形態1から7のいずれかに記載の装置。
【0069】
実施形態9
前記第2のデバイスが前記第1の部分と前記第2の部分との界面を加熱する、実施形態8に記載の装置。
【0070】
実施形態10
前記第1のデバイスが、前記装置内で位置調整されるように構成されている複数の第1のデバイスである、実施形態1から7のいずれかに記載の装置。
【0071】
実施形態11
前記ガラスリボンに熱処理を施すために少なくとも2つの加熱ゾーンを含むセクションヒータをさらに備えている、実施形態1から10のいずれかに記載の装置。
【0072】
実施形態12
厚さが変化するガラスリボンを製造する方法であって、
前記ガラスリボンを搬送する工程と、
前記ガラスリボンの幅の第1の部分を前記ガラスリボンの幅の第2の部分とは異なる速度で冷却する工程であって、前記第1の部分が前記第2の部分より厚い、工程と
を含む、方法。
【0073】
実施形態13
前記冷却が、前記ガラスリボンの上方又は下方かつ前記ガラスリボンの近くに配置されたデバイスによって施される、実施形態12に記載の方法。
【0074】
実施形態14
前記冷却が、前記第1の部分から熱を抽出する熱交換器によって施される、実施形態12に記載の方法。
【0075】
実施形態15
前記冷却が、前記第1の部分へと押し出される空気によるものである、実施形態12に記載の方法。
【0076】
実施形態16
前記第1のデバイスが、前記第1の部分から熱を抽出し、前記第1の部分へと空気を押し出すように構成される、実施形態13に記載の方法。
【0077】
実施形態17
前記第1のデバイスが前記ガラスリボンを加熱する、実施形態13又は16に記載の方法。
【0078】
実施形態18
前記第1の部分と前記第2の部分との界面を加熱する工程をさらに含む、実施形態12に記載の方法。
【0079】
実施形態19
前記ガラスリボンの幅をセクションで加熱する工程をさらに含む、実施形態12に記載の方法。
【符号の説明】
【0080】
500 エアボックス
510 ローラ
700 放射部材
710 入口
720 出口
800 複合部材
810 従来の空気入口
820 ノズル
830 放射空気入口
840 出口
900 エアボックス
910 エアノズルのアレイ
920 ストリップヒータ
1200 CCAトンネル
1210 ローラ
1220 冷却ボックス
1510,1610 局所ヒータ
1620 セクションヒータ
【国際調査報告】