(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20250109BHJP
D21H 23/10 20060101ALI20250109BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250109BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20250109BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
D21H21/14 Z
D21H23/10
B65D65/40 D
C08L1/02
C08L79/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536991
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 FI2022050803
(87)【国際公開番号】W WO2023118645
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518361011
【氏名又は名称】ケミラ・オーワイジェイ
【氏名又は名称原語表記】Kemira Oyj
【住所又は居所原語表記】Energiakatu 4,FI-00180 HELSINKI,Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クヴィスト マーカス
(72)【発明者】
【氏名】プットネン サミ
(72)【発明者】
【氏名】ロバートセン リーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヒエタニエミ マッティ
【テーマコード(参考)】
3E086
4J002
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AB01
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3E086CA22
4J002AA033
4J002AA034
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4L055GA48
(57)【要約】
成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を改善する方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーを含む組成物を繊維原料に導入し、繊維原料を成形することを含む。成形繊維製品、及び、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を改善するための組成物の使用も提供される。繊維成形品の製造方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させる方法であって、
セルロース系繊維を含む繊維原料を得ることと;
前記繊維原料に組成物を導入することと;
を含み、前記組成物は
・ 少なくとも 100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記方法は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入することと;
前記繊維原料を成形することと;
を含む、方法。
【請求項2】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維原料に顔料が導入される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維原料はシートに成形される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記シートが3次元製品に形成又は成形される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維原料が3次元製品に成形される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記繊維原料が湿潤成形され、前記湿潤成形された繊維原料が3次元製品に成形される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記成形が、湿潤形成、湿潤成形、真空形成、真空成形、押出形成、押出成形、熱形成、乾式成形、熱プレス、熱プレス乾燥、ホットモールディング、熱プレス成形、熱成形、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と、前記組成物とが、前記繊維原料に順次導入される、請求項1から8のいずれかに記載の方法、
【請求項10】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物は、前記組成物を前記繊維原料に導入する前に、前記繊維原料に導入される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が前記繊維原料に導入され、それに続いて、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入される、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアニオン性ポリマー及び前記カチオン性ポリマーが前記繊維原料に順次導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記アニオン性ポリマーを導入する前に、前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーが前記繊維原料に導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーが前記繊維原料に導入され、続いて前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーが導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーと、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン、又はこれらの混合物とが、順次、前記繊維原料に導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーと前記カチオン性ポリマーとが前記繊維原料に順次導入され、その後にポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入され、続いて前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーと前記カチオン性ポリマーとが前記繊維原料に順次導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーが前記繊維原料に導入され、続いてポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入され、その後に前記カチオン性ポリマーが前記繊維原料に導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記カチオン性ポリマーが前記繊維原料に導入され、続いてポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が前記繊維原料に導入され、その後に前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーが前記繊維原料に導入される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は、前記繊維原料の乾燥重量に基づいて、5~50kg/t、好ましくは10~40kg/t、より好ましくは20~30kg/tの量で導入される、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が、前記繊維原料の乾燥重量に基づいて1~8kg/t、好ましくは2~6kg/t、より好ましくは2~4kg/tの量で導入される、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを前記繊維原料に導入する前に、前記繊維原料のpHを、pH値5~9、好ましくは7~8に調整する、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを前記繊維原料に導入する前に、前記繊維原料の導電率を、0.05mS/cm~6mS/cm、好ましくは0.1mS/cm~1mS/cmに調整する、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを前記繊維原料に導入した後又は導入する前に、糊付け剤、フィックス剤、湿潤強度増強剤、水切り助剤又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する、請求項1から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
アニオン性基とカチオン性基の両方を有するポリマー、好ましくは両性ポリマー及び/又は相互浸透性ポリマーネットワーク材料が、好ましくは前記組成物の代わりに前記繊維原料に導入され、ここで前記両性ポリマー及び/又は前記相互浸透性ポリマーネットワーク材料が前記電荷密度を提供する、請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
組成物を含む成形繊維製品であって、前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と;
実施形態によっては顔料と;
を含み、
請求項1から25のいずれかに記載の方法で製造される、組成物。
【請求項27】
食品パッケージ、食品サービス品、飲料パッケージ、商品パッケージ、好ましくはオーブン可能トレイ、電子レンジ可能トレイ、クラムシェルボックス、その他の食品ボックス、スープカップ、生肉及び鶏肉トレイ、皿又はカップ蓋を含む、請求項24に記載の成形繊維製品。
【請求項28】
組成物の使用であって、前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、更に、
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と;
実施形態によっては、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させるために、顔料を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、一般に、繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させる方法に関する。限定するものではないが、本開示は、特に、繊維原料を成形することによって繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させる方法に関する。
【背景】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
使い捨てのプラスチック容器や包装材による汚染は蔓延しており、世界の景観を傷つけ、繊細な生態系とそこに生息する生命体を脅かしている。使い捨ての容器は、発泡スチロールや発泡ポリスチレン(EPS)包装、持ち帰り容器、ボトル、薄いフィルムバッグ、光分解プラスチックペレットなどの形で、水路から海へと移動している。プラスチック汚染を削減するための持続可能な解決策が勢いを得ている。しかし、これを継続的に採用するには、これらの解決策が環境に良いだけでなく、性能とコストの両面から化石燃料由来のプラスチックに対して競争力を持つことが必要である。
【0004】
背景を簡単に説明すると、紙パルプの成型品(繊維成型品)は、1930年代から容器やトレイなどのパッケージに使われてきたが、化石燃料由来の発泡プラスチック包装が登場した1970年代には衰退した。紙パルプは、古い新聞紙や段ボール箱、その他の植物繊維から製造することができる。今日、成形パルプ包装は、電子機器や家庭用品、自動車部品、医療製品に広く使用されており、電子部品やその他の壊れやすい部品を輸送する際のエッジ/コーナープロテクターやパレットトレイとしても使用されている。
【0005】
セルロース繊維をベースとする包装製品は、生分解性で堆肥化可能であり、化石燃料由来のプラスチックとは異なり、海洋に移行しない。しかし、現在知られている繊維技術は、肉や鶏肉、調理済み食品、製造済み食品、電子レンジで温められる食品、ホットコーヒーなどの飲料容器の蓋としての使用には適していない。
【0006】
成形パルプの用途によって、油、グリース、水、水蒸気、酸素及び/又はその他の気体や液体に対するバリア性が、さまざまな製品タイプで必要とされる。適切なスラリー薬品の使用は、プロセス効率、機械的特性、バリア性、及び/又は表面コーティング性の向上をもたらし、その結果、成形パルプ製品の製造を、平面ボードから製造される製品に対してより競争力のあるものにすることができる。
【摘要】
【0007】
第1の捉え方によれば、本発明は、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を改善する方法を提供する。この方法は、
セルロース系繊維を含む繊維原料(fiber stock)を得ることと;
前記繊維原料に組成物を導入することと;
を含み、前記組成物は
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、少なくとも100kDaの分子量を有する前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記方法は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入することと;
前記繊維原料を成形することと;
を含む。
【0008】
第2の捉え方によれば、本発明は、組成物を含む成形繊維製品を提供する。前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、少なくとも100kDaの分子量を有する前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と;
実施形態によっては顔料と;
を含み、ここで前記成形繊維製品は、本発明による方法で製造される。
【0009】
第3の捉え方によれば、本発明は、組成物の使用を提供する。前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、少なくとも100kDaの分子量を有する前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを含むと共に、
実施形態によっては、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させるために、顔料を含む。
【0010】
少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1種のアニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーとを含む組成物であって、特別な電荷密度を有する組成物を含有する成形繊維製品(例えば熱成形された繊維製品)が、驚くべきことに、優れた耐油性を有することが、いま見出された。驚くべきことに、この組成物は、繊維製品中でオイルバリアとして作用することが見出された。また、この組成物は、繊維製品中でグリースバリアとしても作用すると考えられる。
【0011】
本組成物は、オリーブオイルについて優れた耐油性を示すことが判明した。すなわち本組成物は、本組成物を含まない成形繊維製品と比較して、成形繊維製品の浸透時間を約60分増加させることが判明した。また、グリースの浸透時間及び/又は取り込みという点での耐グリース性も、油の取り込みと同様に増加すると考えられる。
【0012】
また、驚くべきことに、この組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを含む成形繊維製品は、更に優れた耐油性を有することが判明した。また、耐グリース性も更に優れていると考えられる。
【0013】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を上記組成物と一緒にすると、上記組成物及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド又はこれらの混合物を使用しない成形繊維製品と比較して、耐油性が向上することが見出された。すなわち、成形繊維製品(例えば熱成形された繊維製品)への浸透時間及び取り込みが約200分増加することが見出された。また、耐グリース性も向上していると考えられる。
【0014】
アニオン性成分とカチオン性成分を含む組成物を含有する成形繊維製品は、グリース成分及び油脂成分を捕捉、すなわち取り込み、すなわち吸収・吸着し、グリースバリア及び油脂バリアとして作用すると考えられる。この点、いかなる理論にも束縛されることはない。
【0015】
本発明の繊維製品は、少なくとも部分的に生分解性で堆肥化可能であり、好ましくは大部分が生分解性で堆肥化可能であり、より好ましくは生分解性で堆肥化可能である。
【0016】
また、驚くべきことに、耐油性及び/又は耐グリース性を有する繊維製品を、簡便かつ低コストな方法で製造することができることが見出された。耐グリース性及び/又は耐油性を有する繊維製品は、セルロース系繊維を含む繊維原料に、少なくとも1種のアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーを含む組成物であって、特殊な電荷密度を有する組成物を含有する繊維原料を導入し、当該繊維原料を成形(例えば熱成形)することによって、製造することができることが見出された。実施形態によっては、成形前に、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を導入する。
【0017】
驚くべきことに、上記組成物を多量に(繊維原料の乾燥重量に基づいて5~50kg/tなど)繊維原料に導入することにより、製造された成形品が、高い耐油性を有することが見出された。耐油性は、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を追加で繊維原料に導入すると、更に増大する。また、耐グリース性も向上すると考えられる。
【0018】
更に驚くべきことに、上に述べた成形繊維製品((例えば熱成形された繊維製品)は、上記組成物、又は上記組成物とポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを含んでいない成形繊維製品と比較して、改善された引張曲げ剛性(tensile bending stiffness)を有することが見出されている。改善された引張曲げ剛性は、成形繊維製品の厚さを減少させることができるので、成形繊維製品の単位面積当たりの質量を減少させることを可能にする。
【0019】
単位面積当たりの厚さと質量を減らすことができるので、繊維製品の重量を減らすことができ、したがって繊維原料のコストを削減することができる。
【0020】
また、上記組成物、又は上記組成物とポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを、ボードの製造工程の繊維原料に添加することで、ボードに耐グリース性及び耐油性が付与されると考えられる。
【0021】
また、上記組成物を繊維原料に点火する前に、顔料及び/又は他の添加剤を上記組成物に添加することにより、成形繊維製品の光沢、平滑性、塗工性及び/又はバリア性が改善されることも見出されている。
添付の特許請求の範囲は保護範囲を定義するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】500g/m
2又は400g/m
2の熱プレス乾燥2次元繊維成形品の40℃におけるオリーブオイル耐性を示す。繊維原料の化学的性質が異なる複数の繊維成形品の特性が示されている。
【
図2】500g/m
2の熱プレス乾燥2次元繊維成形品の乾燥引張特性を示す。繊維原料の化学的性質が異なる複数の繊維成形品の特性が示されている。
【
図3】500g/m
2の熱プレス乾燥2次元繊維成形品の高水分引張特性を示す。繊維原料の化学的性質が異なる複数の繊維成形品の特性が示されている。
【
図4】400g/m
2のホットプレス乾燥2次元繊維成形品の40℃におけるオリーブオイル耐性を示す。繊維原料の化学的性質が異なる複数の繊維成形品の特性が示されている。
【
図5】400 g/m
2の熱プレス乾燥2次元繊維成形品の乾燥引張特性を示す。繊維原料の化学的性質が異なる複数の繊維成形品の特性が示されている。
【
図6】真空成形された2次元繊維製品又は繊維シートを示す。
【詳細説明】
【0023】
第1の捉え方によれば、本発明は、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を改善する方法を提供する。この方法は、
セルロース系繊維を含む繊維原料を得ることと;
前記繊維原料に組成物を導入することと;
を含み、前記組成物は
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、少なくとも100kDaの分子量を有する前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記方法は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入することと;
前記繊維原料を成形することと;
を含む。
【0024】
前記組成物の前記アニオン性ポリマーと前記カチオン性ポリマーとは、当該組成物に電荷密度を与える。
【0025】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が、前記繊維原料に導入される。好ましくはポリアミドアミンエピクロロヒドリンが前記繊維原料に導入される。
【0026】
実施形態によっては、前記繊維原料に顔料が導入される。実施形態によっては、前記組成物を前記繊維原料に加える前に、前記繊維原料に前記顔料が導入される。実施形態によっては、前記組成物を前記繊維原料に加えた後に、前記繊維原料に前記顔料が導入される。実施形態によっては、前記組成物を前記繊維原料に加えると同時に、前記繊維原料に前記顔料が導入される。実施形態によっては、前記顔料と前記組成物は混合物として繊維原料に導入される。
【0027】
実施形態によっては、前記顔料は、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物を含む。
【0028】
成形、すなわち成形ステップ又は成形プロセスは、本願の技術分野で知られている任意の適切な方法とすることができる。
【0029】
実施形態によっては、成形は、湿潤形成、湿潤成形、真空形成、真空成形、押出形成、押出成形、熱成形、乾式成形、乾式形成、熱プレス、熱プレス乾燥、熱成形、熱プレス、熱形成、熱成形、又はこれらの組み合わせを含み、好ましくは熱成形、より好ましくは熱プレス、熱プレス乾燥又は熱成形を含む。
【0030】
実施形態によっては、前記繊維原料はシート状に成形される。
【0031】
実施形態によっては、前記繊維原料はシート状に成形される。好ましくは熱成形されてシートになる。
【0032】
繊維原料は、本願の技術分野で知られている任意の適切な方法でシートに熱成形することができる。適切な方法の例としては、繊維原料を挟んだ2枚の金属板に機械的圧力と高温を加える熱プレスがある。
【0033】
本願において、用語「シート」とは、長さ及び幅よりも小さな厚さを有する物品を意味する。
【0034】
本願において、「2次元製品」という用語は、もともと平面形状に作られ、長さ及び幅よりも小さい厚さを有する2次元製品を意味する。2次元製品は、3次元製品へと折り畳まれ、曲げられ、形成され、成形され得る。
【0035】
本願において、用語「3次元製品」「3D製品」は、3つの次元を有する製品を意味する。本願において、シートは3次元製品とはみなされない。
【0036】
実施形態によっては、シートは3次元製品に成形される。
【0037】
実施形態によっては、繊維原料は3次元製品に成形される。
【0038】
実施形態によっては、繊維原料は、0.1mm~10mm、好ましくは0.3mm~2mmの厚さを有する2次元シートへと成形される。実施形態によっては、2Dシートは更に、3次元製品へと熱成形(すなわち乾式成形)され、好ましくは5cm~50cmの長さ及び幅、2cm~20cmの深さ、0.1mm~2mmの壁厚を有する3D製品となる。
【0039】
実施形態によっては、発泡体を含む又は含まない繊維原料が、真空成形又は押出成形され、湿式プレス及び/又は真空の助けによる水切り、無拘束式及び/又は拘束式の乾燥、1つ又は複数の方向への圧縮、ポリマー含浸、ポリマーラミネート、ポリマーコーティング又はこれらの組み合わせにより、0.1mm~10mm、好ましくは0.3mm~2mmの厚さを有する2次元シートへと成形される。実施形態によっては、2Dシートは更に、3次元製品へと熱成形(すなわち乾式成形)され、好ましくは5cm~50cmの長さ及び幅、2cm~20cmの深さ、0.1mm~2mmの壁厚を有する3D製品となる。
【0040】
実施形態によっては、繊維原料は湿潤成形され、湿潤成形された繊維原料は3次元製品に成形される。
【0041】
実施形態によっては、繊維原料は、真空成形すなわち湿潤成形されることにより、好ましくは、長さと幅が5cm~50cm、深さが2cm~20cmの3次元製品となり、次いで熱成形・乾燥され、好ましくは0.1mm~3mm、より好ましくは0.3mm~1.0mmの壁厚となる。
【0042】
実施形態によっては、ヒートプレス、ホットプレス、ホットプレス乾燥、熱成形又は熱成形における金型の温度は、100℃~400℃、好ましくは130℃~200℃である。
【0043】
実施形態によっては、ヒートプレス、ホットプレス、ホットプレス乾燥、又は熱成形において、繊維原料又は2次元又は3次元繊維製品に加えられる機械的圧力は、0.1bar~1000bar、好ましくは20barまでであり、製造技術、装置及び繊維成形品の用途に応じて、ヒートプレス、ホットプレス、ホットプレス乾燥、又は熱成形中に圧力が変化することがある。
【0044】
実施形態によっては、成形は、3次元製品への成形であり、熱成形、熱プレス、熱成形、湿式もしくは乾式成形、及び/又は湿式もしくは乾式成形、高密度化、又はこれらの組み合わせである。
【0045】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と、前記組成物とは、繊維原料に順次導入される。好ましくは、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物は、前記組成物を繊維原料に導入する前に、当該繊維原料に導入される。
【0046】
実施形態によっては、前記組成物を繊維原料に導入し、その後に、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0047】
実施形態によっては、少なくとも1つのアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーを、繊維原料に順次導入する。好ましくは、前記少なくとも1つのカチオン性ポリマーは、前記アニオン性ポリマーを前記繊維原料に導入する前に、前記繊維原料に導入される。
【0048】
実施形態によっては、前記アニオン性ポリマーを繊維原料に導入した後、前記少なくとも1種のカチオン性ポリマーを導入する。
【0049】
実施形態によっては、前記少なくとも1種のアニオン性ポリマー、前記カチオン性ポリマー、及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン、又はこれらの混合物を、順次、繊維原料に導入する。
【0050】
実施形態によっては、前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーと前記カチオン性ポリマーを繊維原料に順次導入し、その後にポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0051】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を繊維原料に導入し、続いて前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーと前記カチオン性ポリマーを前記繊維原料に順次導入する。
【0052】
実施形態によっては、前記少なくとも1つのアニオン性ポリマーを繊維原料に導入した後、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入し、その後、前記カチオン性ポリマーを前記繊維原料に導入する。
【0053】
実施形態によっては、前記カチオン性ポリマーを繊維原料に導入した後、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を繊維原料に導入し、その後、前記少なくとも1種のアニオン性ポリマーを前記繊維原料に導入する。
【0054】
前記組成物は、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの混合物を含む。水溶液としての前記組成物を繊維原料に添加する前に、すなわち単一溶液として添加する前に、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとを混合してもよい。前記混合は、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーを混合する任意の適切な方法で行うことができる。例えば、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとを乾燥形態又は水溶液として混合してもよい。あるいは乾燥形態のアニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーを他方の成分を有する水溶液に溶解してもよい。
【0055】
実施形態によっては、前記組成物は水溶液の形態であり、水性混合物として繊維原料に導入される。「水溶液」という用語は、ここでは真の溶液だけでなく、懸濁液や乳濁液も包含する。好ましくは、水溶液の形態の組成物は、完全に溶解しなかった残渣をほんの少量含むだけであるか、溶解しなかった残渣や固体を全く含まない。
【0056】
実施形態によっては、前記組成物は乾燥した粒子状物質の形態であってもよい。この場合、輸送中や保存中に組成物が劣化するリスクが低減され、保存性が向上する。特に、カチオン性ポリマーとしてのカチオンデンプンは、微生物学的分解に弱く、分解されれば性能を失うだろう。前記組成物は、好ましくは、固体微粒子アニオン性ポリマーと固体微粒子カチオン性ポリマーの混合物であってもよい。このような粒子状の混合物は、保存及び輸送が容易であり、経済的に有利である。乾燥微粒子材料の形態の前記組成物の含水率は、多くとも25重量%であるべきだろう。乾燥粒子状物質の粒径は、例えば5~2000ミクロンの間で様々であってもよい。
【0057】
前記組成物が乾燥粒子状物質の形態である場合、水性組成物を得るために水に溶解することができるが、それは、例えばロータ/ステータ式のミキサーのような効果的な高剪断溶解手段を使用して行ってもよく、実施形態によっては熱を加えてもよく、実施形態によってはジェットクッカー(jet cooker)を使用して行ってもよい。前記溶解は、例えば作業場所で行ってもよい。好ましい一実施形態によれば、乾燥粒子状物質の形態の前記組成物は、水性組成物を得るために、好ましくは高剪断溶解手段を使用して水に溶解される。次いで、実施形態によっては、得られた水性組成物を希釈し、その後、繊維原料に導入してよい。
【0058】
実施形態によっては、アニオン性基とカチオン性基の両方を有する両性ポリマーを、好ましくは前記組成物の代わりに、繊維原料に導入する。この両性ポリマーは、pH2.8で測定した場合に0.1~1.5meq/g電荷密度を与える。pH7.0で測定した場合には、-0.1~-3meq/g、好ましくは-0.3~-2.5meq/g、より好ましくは-0.5~-2.0meq/gの電荷密度を与える。
【0059】
実施形態によっては、アニオン性基とカチオン性基の両方を有するIPN(Interpenetrating Polymer Network,相互浸透性ポリマーネットワーク)材料を、好ましくは前記組成物の代わりに、繊維原料に導入する。このIPN材料は、pH2.8で測定した場合に0.1~1.5meq/g電荷密度を与え、pH7.0で測定した場合には、-0.1~-3meq/g、好ましくは-0.3~-2.5meq/g、より好ましくは-0.5~-2.0meq/gの電荷密度を与える。
【0060】
実施形態によっては、アニオン性基とカチオン性基の両方を有するポリマー、好ましくは両性ポリマー及び/又は相互浸透性ポリマーネットワーク材料が、好ましくは組成物の代わりに、繊維原料に導入される。ここで、両性ポリマー及び/又は相互浸透性ポリマーネットワーク材料は、上記の電荷密度を提供する。
【0061】
実施形態によっては、 前記組成物は、繊維原料の乾燥重量に基づいて、5~50kg/t、好ましくは10~40kg/t、より好ましくは20~30kg/tの量で導入される。
【0062】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド又はこれらの混合物は、繊維原料の乾燥重量に基づいて、乾燥重量として1kg/t~8kg/t、好ましくは2kg/t~6kg/t、より好ましくは2kg/t~4kg/tの量で導入される。
【0063】
実施形態によっては、前記デンプンは、天然デンプン、調理済みデンプン、未調理デンプン、カチオンデンプン、天然化学修飾デンプン、物理修飾ポリマーグラフトデンプン、酵素修飾デンプン、アニオンデンプン、両性デンプン、架橋デンプン、プレゲル化デンプン、膨潤デンプン、若しくは顆粒デンプン、又はこれらの混合物を含む。
【0064】
実施形態によっては、デンプンは、繊維原料の乾燥重量に基づいて、乾燥重量として1kg/t~100kg/tの量で導入される。
【0065】
実施形態によっては、カチオンデンプンは、繊維原料の乾燥重量に基づいて、乾燥重量として1kg/t~20kg/tの量で導入される。
【0066】
実施形態によっては、非イオン性デンプンは、繊維原料の乾燥重量に基づいて、乾燥重量として1kg/t~100kg/tの量で導入される。
【0067】
実施形態によっては、前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを繊維原料に導入する前に、当該繊維原料のpHをpH値5~9、好ましくは7~8に調整する。
【0068】
実施形態によっては、前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを繊維原料に導入する前に、前記繊維原料の導電率を、0.05mS/cm~6mS/cm、好ましくは0.1mS/cm~1mS/cmに調整する。実施形態によっては、70%の酢酸カルシウム、20%の硫酸ナトリウム、10%の炭酸水素ナトリウムからなる物質で導電率を調整する。
【0069】
実施形態によっては、前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを繊維原料に導入した後又は導入する前に、糊付け剤(サイジングケミカル)、フィックス剤、湿潤強度増強剤、水切り助剤又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0070】
実施形態によっては、前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを繊維原料に導入する前に、糊付け剤、フィックス剤、湿潤強度増強剤、水切り助剤、又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0071】
実施形態によっては、前記組成物と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物とを繊維原料に導入した後に、糊付け剤、フィックス剤、湿潤強度増強剤、水切り助剤又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0072】
実施形態によっては、繊維原料に糊付け剤を導入する前に、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を前記繊維原料に導入する。
【0073】
実施形態によっては、糊付け剤と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン、又はこれらの混合物とを同時に、しかし別々に、繊維原料に導入する。
【0074】
実施形態によっては、糊付け剤と、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド又はこれらの混合物とを、混合物として繊維原料に導入する。
【0075】
実施形態によっては、前記糊付け剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジン又はこれらの混合物を含む。
【0076】
実施形態によっては、AKD、ASA、ロジン又はこれらの混合物、及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物は、混合物として繊維原料に導入される。好ましくは、前記組成物を前記繊維原料に導入する前に導入される。
【0077】
実施形態によっては、AKD、ASA、ロジン又はこれらの混合物、及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物は、混合物として繊維原料に導入される。好ましくは、前記組成物を前記繊維原料に導入した後に導入される。
【0078】
実施形態によっては、AKD、ASA、ロジン、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレートポリアクリルアミド、デンプン、又はこれらの混合物は、混合物として繊維原料に導入される。好ましくは、前記組成物を前記繊維原料に導入する前に導入される。
【0079】
実施形態によっては、AKD、ASA、ロジン、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレートポリアクリルアミド、デンプン、又はこれらの混合物は、混合物として繊維原料に導入される。好ましくは、前記組成物を前記繊維原料に導入した後に導入される。
【0080】
実施形態によっては、AKD、ASA、ロジン又はこれらの混合物は、繊維原料の乾燥重量に基づいて0.1~4%、好ましくは0.5~1.5%の量で導入される。
【0081】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド又はこれらの混合物は、繊維原料の乾燥重量に基づいて、乾燥重量として1~8kg/t、好ましくは2~4kg/tの量で導入される。
【0082】
実施形態によっては、前記フィックス剤、前記水切り助剤又はこれらの混合物は、硫酸アルミニウム(ALS)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDACMAC)、カチオン性ポリアクリルアミド(CPAM)又はこれらの混合物を含む。
【0083】
実施形態によっては、前記湿潤強度増強剤は、ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)、グリオキサレート化ポリアクリルアミド(GPAM)、デンプン又はこれらの混合物を含む。実施形態によっては、前記湿潤強度増強剤は、糊付け剤の添加後であるが、前記組成物を繊維原料に添加する前に添加される。
【0084】
実施形態によっては、セルロース系繊維を含む繊維原料が得られる。この繊維原料のコンシステンシー(濃度)は0.1%-10%、好ましくは、好ましくは0.2%-1.0%、より好ましくは0.2%-0.5%である。
【0085】
実施形態によっては、前記セルロース系繊維を含む繊維原料は、天然繊維、合成繊維又はこれらの混合物を含む。前記繊維は、好ましくは植物由来の繊維であり、リサイクルされたもの、化学的及び/又は機械的な広葉樹及び針葉樹パルプ、サトウキビ(バガスなど)、竹、大麦、小麦、トウモロコシ、オート麦、大麦、米、ライ麦、トマト、ソルガム、ナタネ、パーム油植物、亜麻、麻、ラミー、綿、ケナフ、ジュート、バナナ、大麻、泥炭、ミズゴケ、又はこれらの混合物を含む。
【0086】
実施形態によっては、前記アニオン性ポリマーは、少なくとも100kDa、好ましくは少なくとも300、より好ましくは100kDaから10000kDa、更に好ましくは100kDaから700kDa、更に好ましくは100kDaから600kDaの分子量を有する。
【0087】
実施形態によっては、前記アニオン性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ミクロフィブリル化セルロース、ミクロフィブリル化リグノセルロース、アニオンデンプン、キトサン、ペクチン、脂肪酸エステル、他のアニオン性及びアニオン性誘導体化多糖又はこれらの混合物を含み、好ましくは、アニオンデンプン、カルボキシメチルセルロース、ミクロフィブリル化セルロース、ミクロフィブリル化リグノセルロース又はこれらの混合物を含む。
【0088】
実施形態によっては、前記カチオン性ポリマーは、ヒドロキシプロピル化デンプン、ナノセルロース、ミクロフィブリル化セルロース、リグノセルロースベースの誘導体、キトサン、アルファグルカン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳酸、カチオンデンプン又はこれらの混合物などのデンプン誘導体を含み、好ましくは、カチオンデンプン、キトサン、ナノセルロース、ミクロフィブリル化セルロース、リグノセルロースベースの誘導体又はこれらの混合物を含む。
【0089】
既知のように、多糖は高分子炭水化物分子から形成される天然ポリマーであり、共有結合によって結合した繰り返し単位としての単糖単位の長鎖を含む。多糖は様々な植物源、微生物などから抽出される。多糖鎖は水素結合可能な複数のヒドロキシル基を含む。
【0090】
本明細書において、「アニオンで誘導体化された(anionically derivatized)」という用語は、多糖構造中に共有結合したアニオン性基をもたらす反応による多糖の化学的修飾を意味するだけでなく、組成物に電荷密度のような所望の特性を与える、多糖構造とのアニオン性基の十分な会合も意味すると理解されたい。このようなアニオン性基の十分な会合は、例えば吸着によって達成することができる。あるいは、機械的処理など、多糖出発物質の他の処理によっても達成することができる。機械的加工のような他の加工と化学修飾を組み合わせることによって、アニオンで誘導体化された多糖(アニオン誘導体化多糖)を得ることも可能である。多糖の化学修飾は、本発明での使用に適したアニオン誘導体化多糖を提供するために好ましい。アニオン性基は、例えば、カルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基(それらの塩の形態を含む)、又はこれらの組み合わせを多糖構造に組み込むことによって提供されてもよい。アニオン性基は、カルボキシメチル化、酸化、硫酸化、スルホン化、リン酸化などの適切な化学修飾によって、多糖構造に導入されてもよい。
【0091】
実施形態によっては、本発明での使用に好適なアニオン誘導体化多糖は、pH7で測定して、-0.05~5.0meq/gの範囲の電荷密度値を有することができる。例えば-0.3~5.0meq/g又は-0.5~5.0meq/g、好ましくは-0.7~4.5meq/g、より好ましくは-1.0~4.0meq/gの範囲の電荷密度値を有することができる。測定される電荷密度の値は、乾燥重量当たりで計算されている。
【0092】
アニオン誘導体化多糖は、水溶性及び/又は懸濁性のアニオン誘導体化多糖を含んでもよい。本明細書において、アニオン誘導体化多糖の水溶液は、真の溶液だけでなく、アニオン誘導体化多糖の懸濁液も含む。好ましくは、アニオンで誘導体化された多糖は水溶性であり、水不溶性物質は多くとも30重量%、好ましくは多くとも20重量%、より好ましくは多くとも15重量%、更に好ましくは多くとも10重量%しか含まない。水溶性は、多糖の官能基の利用可能性を向上させ、それによって、組成物のカチオンデンプンなどのカチオン性ポリマー、及び繊維原料中に存在する他の成分との相互作用を改善することができる。
【0093】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、アニオンで誘導体化されたセルロース、アニオンで誘導体化されたデンプン、又はこれらの組み合わせを含む。これらにはヒドロキシエチルセルロースなどの修飾セルロース及びデンプンを含み、例えば、ヒドロキシエチルスターチ、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルスターチなどである。
【0094】
実施形態によっては、アニオン誘導体化多糖は、セルロース、好ましくはカルボキシメチル化セルロース、更に好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。アニオン誘導体化多糖は、例えば精製カルボキシメチルセルロース又はテクニカルグレードのカルボキシメチルセルロースを含んでもよい。カルボキシメチルセルロースは、当該技術分野で知られている任意のプロセスによって製造することができる。前記組成物がセルロースを含むアニオン誘導体化多糖を含む場合、多糖の骨格構造はパルプ中のセルロース系繊維、すなわち骨格中に1,4-βグリコシド結合を示す構造と類似していると考えられる。この一致した構造は、組成物と繊維との間に、より強い相互作用をもたらす可能性がある。
【0095】
実施形態によっては、アニオン誘導体化された多糖は、カルボキシメチル化セルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。このセルロースは、カルボキシメチル置換度が0.2以上、好ましくは0.3~1.2、より好ましくは0.4~1.0又は0.5~1.0の範囲にあり、その場合、水溶性が更に向上する。ある好ましい実施形態では、カルボキシメチル化セルロースは0.5~0.9の範囲のカルボキシメチル置換度を有することができ、これによりカルボキシメチル化セルロースは本質的に完全な水溶性を提供する。
【0096】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、カルボキシメチル化セルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。このカルボキシメチルセルロースは、pH7で測定した場合で-1.1meq/g未満の電荷密度を有してもよく、好ましくは-1.6~-4.7meq/g、より好ましくは-2.1~-4.1meq/g、更に好ましくは-2.5~-3.8meq/gの電荷密度を有する。測定される全ての電荷密度の値は、乾燥重量当たりで計算されている。
【0097】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、カルボキシメチル化セルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。このカルボキシメチルセルロースは、BrookfieldLVDV1を用いて25℃で2重量%水溶液から測定した粘度が100~30000mPas、好ましくは200~20000mPas、より好ましくは500~10000mPasの範囲にありうる。
【0098】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、カルボキシメチル化セルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。
【0099】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、少なくとも部分的にミクロフィブリル状である。
【0100】
好ましくは、アニオンで誘導体化された多糖は、アニオン性ミクロフィブリルセルロースを含む。ミクロフィブリルセルロースはナノセルロースと呼ばれることもあるが、本明細書で使用する場合、ミクロフィブリルセルロース又はナノセルロースとは、例えば微結晶セルロース(MCC)、ナノ結晶セルロース(NCC)、又はセルロースナノウィスカーとして知られる結晶セルロース誘導体を意味しない。つまり、結晶セルロース誘導体はアニオン性ミクロフィブリルセルロースから除外される。又はそれらのミクロフィブリルは、2~60nm、好ましくは4~50nm、より好ましくは5~40nmの平均直径と、数μm、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、より好ましくは2~200μm、更に好ましくは10~100μm、最も好ましくは10~60μmの平均長さを有することができる。ミクロフィブリル化セルロースは、多くの場合、10~50本のミクロフィブリルの束を含む。
【0101】
実施形態によっては、アニオンで誘導体化された多糖は、ミクロフィブリルセルロースを含まない。
【0102】
実施形態によっては、前記組成物は、天然由来のカチオンデンプンを含み、少なくとも80重量%のアミロペクチン含量を有する。アミロペクチンは枝分かれしたデンプン分子である。枝分かれは通常α(1→6)結合で起こり、α(1→4)結合を含むデンプン骨格のアンヒドログルコース単位の15~30個ごとに起こる。カチオンデンプンのアミロペクチン含量は、形成されるポリイオンコンプレックスのサイズが、良好な耐油性に必要な適切な寸法を有することを保証する。
【0103】
実施形態によっては、前記組成物のカチオンデンプンは、アミロペクチン含量が85重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上であることができる。前記組成物のカチオンデンプンは、ジャガイモ、ワキシーポテト、米、ワキシーコーン、サツマイモ、アロールートもしくはタピオカデンプン、又はこれらの任意の組み合わせに由来し得る。好ましくは、カチオンデンプンは、ワキシーコーンスターチ及び/又はワキシーポテトデンプンに由来する。
【0104】
カチオンデンプンは、デンプン単位、すなわちデンプン分子を含み、その少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、更に好ましくは少なくとも90重量%、場合によっては更に好ましくは少なくとも95重量%が、20000000g/molを超える平均分子量MWを有し、好ましくは50000000g/mol以上、より好ましくは100000000g/mol以上、場合によっては200000000g/mol以上、例えば200000000g/mol~500000000g/molのような平均分子量MWを有する。
【0105】
実施形態によっては、組成物はカチオンデンプンを含み、このカチオンデンプンはカチオン性の未粉デンプンを含む。カチオン性未粉デンプンは、アニオン誘導体化多糖、ならびに繊維原料の他の成分、例えば繊維及び/又は無機充填材との最適な相互作用を提供する。本明細書において、「未粉デンプン(non-degraded starch)」という用語は、グリコシド結合の加水分解又はデンプン分子若しくはデンプン単位の分解を引き起こすような、酸化的、熱的、酵素的及び/又は酸処理によって本質的に処理されていないデンプンを指す。デンプンが調理により可溶化される場合、調理時の温度は140℃未満、好ましくは120℃未満、しばしば110℃未満又は105℃未満である。
【0106】
例えば、可溶化後の未粉カチオンデンプンは、97℃で30分間加熱して可溶化した対応する天然デンプンの粘度の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%の粘度を有する。粘度測定はブルックフィールドLV-DVI粘度計を用い、固形分2%、室温で行う。
【0107】
前記組成物に使用するのに適したカチオンデンプンは、任意の適切な方法によりデンプンを、カチオン化することにより得ることができる。好ましくは、カチオンデンプンは、(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド又は(2,3-エポキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドを使用することにより得られる。また、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性アクリルアミド誘導体を用いて、デンプンをカチオン化することも可能である。デンプンをカチオン化するための様々な方法が当業者には知られている。
【0108】
実施形態によっては、カチオンデンプンは、デンプンの唯一の化学的誘導体化としてカチオン化(cationization )を用いて得られたものであり、従ってカチオンデンプンは非架橋、非グラフト化であるか、その他の化学的修飾を受けていない。
【0109】
前記組成物のカチオンデンプンは、0.025~0.3、好ましくは0.03~0.16、より好ましくは0.045~0.1の置換度を有することができる。置換度はデンプンのカチオン化度に対して相対的なものであり、置換度が高いほどカチオン化度が高いことを示す。比較的高い置換度、カチオン化度を有するカチオンデンプンは、さらなる利点を提供し得るので、前記組成物に使用するのに好ましい。
【0110】
ある好ましい実施形態では、前記組成物はカチオン性合成ポリマーを含まない。
【0111】
実施形態によっては、前記組成物、カチオンデンプン及び/又はアニオン誘導体化多糖は、防腐剤、殺生物剤、安定剤、酸化防止剤、pH調整剤などの補助剤又は添加剤を更に含んでもよい。
【0112】
実施形態によっては、前記組成物は、アニオン誘導体化多糖とカチオンデンプンを(乾燥)重量比で10:90~90:10、好ましくは30:70~70:30で含む。重量比は乾燥重量として与えられる。好ましくは、アニオンで誘導体化された多糖とカチオンデンプンとの重量比は、前記組成物が繊維原料のpHで正味アニオン性であるように選択される。
【0113】
第2の捉え方によれば、本発明は、組成物を含む成形繊維製品を提供する。前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
を含み、少なくとも100kDaの分子量を有する前記アニオン性ポリマーと、前記カチオン性ポリマーとは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、pH7.0の水溶液として測定した場合、-0.1~3meq/g、好ましくは-0.3~2.5meq/g、より好ましくは-0.5~2.0meq/gの範囲の電荷密度を前記組成物に与え、
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と;
実施形態によっては顔料と;
を含み、ここで前記成形繊維製品は、本発明による方法で製造される。
【0114】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物を含む。
【0115】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は顔料を含む。
【0116】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は、熱成形された繊維製品であり、好ましくは熱プレス、熱プレス乾燥、熱プレスされた繊維製品又は熱成形繊維製品である。
【0117】
実施形態によっては、前記成形繊維製品中の繊維の量は、前記成形繊維製品の乾燥重量を基準として、50wt.%-99wt.%、好ましくは70wt.%-97wt.%、より好ましくは90wt.%-97wt.%である。
【0118】
実施形態によっては、前記成形繊維製品中の前記組成物の量は、前記成形繊維製品の乾燥重量に基づいて、0.5wt.%~10wt.%、好ましくは1wt.%~3wt.%である。
【0119】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物の前記成形繊維製品中の量は、前記成形繊維製品の乾燥重量を基準として0.05wt.%~0.8wt.%、好ましくは0.2wt.%~0.4wt.%である。
【0120】
実施形態によっては、前記成形繊維製品中の顔料の量は、前記成形繊維製品の乾燥重量に基づいて、0.01wt.%~5wt.%、好ましくは0.5wt.%~4wt.%である。
【0121】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は、糊付け剤、フィックス剤、湿潤強度増強剤、水切り助剤又はこれらの混合物を含む。実施形態によっては、前記成形繊維製品中の糊付け剤、フィックス剤又はこれらの混合物の量は、前記成形繊維製品の乾燥重量に基づいて、0.1wt.%~5wt.%、好ましくは0.5wt.%~2.5wt.%である。
【0122】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は、食品パッケージ、食品サービス物品、飲料パッケージ、飲料サービス物品、商品パッケージ又は商品サービス物品を含み、好ましくは、オーブン可能トレイ、電子レンジ可能トレイ、クラムシェルボックス、その他の食品ボックス、スープカップ、生肉・鶏肉トレイ、皿又はカップ蓋などの食品サービス・包装物品である。
【0123】
実施形態によっては、前記成形繊維製品は、本発明の方法で製造される。
【0124】
第3の捉え方によれば、本発明は、組成物の使用を提供する。前記組成物は、
・ 少なくとも100kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと;
・ カチオン性ポリマーと;
ここで、少なくとも100kDaの分子量を有するアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーは、pH2.8で測定した場合、0.1~1.5meq/gの範囲の電荷密度、pH7.0で、水溶液として測定した場合、-0.1~-3meq/g、好ましくは-0.3~-2.5meq/g、より好ましくは-0.5~-2.0meq/gの範囲の電荷密度を組成物に与え、更に
前記組成物は、実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と;
実施形態によっては、成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させるために、顔料を含む。
【0125】
実施形態によっては、前記組成物は、耐グリース性を向上させるために使用される。実施形態によっては、前記組成物は耐油性を向上させるために使用される。実施形態によっては、前記組成物は、耐油性及び耐グリース性を改善するために使用される。
【0126】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物が、熱成形繊維製品の耐油性を改善するために、前記組成物に加えて使用される。
【0127】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキザール化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と、前記組成物とに加えて、顔料が、熱成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させるために使用される。
【0128】
実施形態によっては、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、グリオキサレート化ポリアクリルアミド、デンプン又はこれらの混合物と、前記組成物と、前記顔料とに加えて、糊付け剤、フィックス剤又はこれらの混合物が、熱成形繊維製品の耐グリース性及び耐油性を向上させるために使用される。
〔実施例〕
【0129】
本発明による例1
【0130】
まず、0.3~0.5%のコンシステンシーを持つ繊維原料に、AKDを0.1~0.3%(乾燥重量)添加する。この繊維原料は、100%バーチのクラフトパルプから作られた。次に、0.2~0.4%(乾燥重量)のポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)を繊維原料に添加する。次に、0.2~0.4%(乾燥重量)のPDACMAC+CPAMを繊維原料に添加する。次に、少なくとも300~500kDaの分子量を有する少なくとも1つのアニオン性ポリマーと、カチオン性ポリマーと、実施形態によってはPAAEとを含む組成物を、1~3%(乾燥重量)、繊維原料に添加する。繊維原料に各薬剤を添加した後、次の薬剤を添加する前に、乱流条件下で少なくとも1分間混合する。
【0131】
例2、比較例
【0132】
例1と同じ方法と薬品を使用して、2次元成形品製品/シートの調製と特性の測定を行ったが、今度はPAAEとカチオンデンプンを単独で、また一緒に、試験した。一緒の場合は、最初にPAAE、次にカチオンデンプンを、繊維原料に添加した。分子量300~500kDaの少なくとも1つのアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーとPAAEとを含む組成物を、例1と同様に試験した。PAAEはまた、最初にPAAE、次にアニオン性ポリマーを繊維原料に添加することにより、組成物のアニオン性ポリマーと共に試験された。
【0133】
2次元(2D)成形品/シートの準備
【0134】
例1及び例2で説明した化学薬品を繊維原料に導入した後、繊維原料を、200~650mBarの真空下、直径10cmの平面円形で、200~400ミクロンの開口部を有する成形ワイヤーに対して、ダイナミックドレナージアナライザー(Dynamic Drainage Analyzer,DDA)を用いて、乾燥度20~30%まで真空成形する。乾燥重量200~800g/m
2の湿潤2D成形品/シートを、94~99%の乾燥度に達するまで、130~200℃の金属板の間でホットプレス乾燥し、0.2~1.2mmの厚さに熱成形する。熱プレス乾燥及び熱成形された2次元繊維成形品/シートを
図6に示す。
【0135】
2次元繊維成形品は、0.5g/cm3~1.5g/cm3、好ましくは1.0~1.2g/cm3の密度及び0.1~1.2mm、好ましくは0.3~0.8mmの厚さにホットプレス及び/又は熱成形することができる。
【0136】
3次元(3D)成形品の準備
【0137】
化学薬品を繊維原料に導入した後、吸引型(サクションモールド)付き3D成形ワイヤーを繊維原料に浸漬し、200~500ミクロンの開口部を持つ3Dワイヤーから、最大900mBarの真空下で、繊維原料を引き抜き、成形する。成形された3次元成形品は繊維原料から引き上げられ、真空吸引アシストにより液体成分の除去を行い、湿潤成形された3次元製品の乾燥度が平均33%になるまで続けられる。湿潤成形された3D成形品は、次に加熱されたカウンターモールド(130~200℃)に移され、ホットプレス乾燥され、0.2~1.2mm厚、最終乾燥度90~96%に熱成形される。乾燥した3D繊維成形品を
図7に示す。
【0138】
3D成形品は、肉厚が0.2mm-1.2mm(例えば0.5mm-0.8mm)、長さ5cm-50cm、幅5cm-50cm、深さ2cm-20cmに、ホットプレス乾燥され、熱成形されることができる。
【0139】
耐油・耐グリース試験
【0140】
油脂試験は、ASTMF119-82:2015規格に基づく試験方法を用いて実施した。グリース試験は、規格TAPPIT559:2012に基づく試験方法を用いて実施した。
【0141】
図1及び4から分かるように、本発明の熱成形品(2D成形品/シート)は、ゼロ試験(セルロース系繊維を含む繊維原料のみ、化学薬品無添加)及び比較熱成形品と比較して、向上した耐油性を示す。
図2及び
図5から分かるように、本発明の熱成形品(2D成形品/シート)は、増加した乾燥引張特性を示す。
図3から分かるように、本発明の熱成形品(2D成形品/シート)は、増加した高湿引張特性を示す。
【0142】
様々な実施形態を紹介してきた。「有する」や「備える」「含む」といった語句は、オープンエンドに解されるべきものであり、その他の要素の存在を排除するものではない。
【0143】
上の説明により、特定の実装形態および実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考えられている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段又は様々な実施形態の組み合わせを用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0144】
さらに、以上に開示した例示的実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】