(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】高分子固体電解質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20250109BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250109BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01B13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537150
(86)(22)【出願日】2023-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2023016323
(87)【国際公開番号】W WO2024090903
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0138015
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒャウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・キュ・キム
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H029AJ06
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ09
5H029EJ12
5H029HJ02
5H050AA12
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、高分子固体電解質、その製造方法及びそれを含む全固体電池に関し、より詳しくは、単一イオン伝導体(single ion conductor)に液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)を混合して、高分子鎖の流動性を向上させることにより、高分子固体電解質の安全性及びイオン伝導性を同時に改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一イオン伝導体(SIC)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS);を含む高分子固体電解質。
【請求項2】
前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンは、前記単一イオン伝導体に含まれた高分子鎖によって形成された内部空間に含まれている、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項3】
前記単一イオン伝導体は、パーフルオロスルホン酸(PFSA)系高分子を含み、前記パーフルオロスルホン酸系高分子に含まれたスルホン酸基(-SO
3H)の水素がリチウムカチオン(Li
+)で置換された構造を有するものである、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項4】
前記高分子固体電解質は、リチウム塩をさらに含み、
前記リチウム塩は、(CF
3SO
2)
2NLi(LiTFSI)、(FSO
2)
2NLi(LiFSI)、LiNO
3、LiOH、LiCl、LiBr、LiI、LiClO
4、LiBF
4、LiB
10Cl
10、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CO
2、LiAsF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li、LiSCN及びLiC(CF
3SO
2)
3からなる群から選択された1種以上を含むものである、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項5】
前記単一イオン伝導体と前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンとの重量比は1:1~1:2である、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項6】
前記高分子固体電解質は、フリースタンディングフィルム状であるものである、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項7】
前記高分子固体電解質は、液体電解質をさらに含む、請求項1に記載の高分子固体電解質。
【請求項8】
(S1)単一イオン伝導体(SIC)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)を含む高分子固体電解質形成用溶液を形成するステップ;
(S2)前記高分子固体電解質形成用溶液を基材上に塗布し、塗布膜を形成するステップ;及び
(S3)前記塗布膜を乾燥させるステップ;を含む、高分子固体電解質の製造方法。
【請求項9】
前記高分子固体電解質形成用溶液の形成するステップにおいて、リチウム塩をさらに添加するものである、請求項8に記載の高分子固体電解質の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の高分子固体電解質を含む、全固体電池。
【請求項11】
前記全固体電池は、正極層、負極層及び前記正極層と負極層の間に形成された固体電解質層を含み、
前記正極層、負極層及び固体電解質層のうち少なくとも1つは、前記高分子固体電解質を含む、請求項10に記載の全固体電池。
【請求項12】
請求項10に記載の全固体電池を含む、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年10月25日付韓国特許出願第10-2022-0138015号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、高分子固体電解質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウム二次電池は、分離膜によって負極と正極が区画される構造により、変形や外部衝撃で分離膜が損なわれると短絡が発生することがあり、これにより過熱や爆発などの危険につながる可能性がある。したがって、リチウム二次電池分野で安全性を確保できる固体電解質の開発は非常に重要な課題であると言える。
【0004】
固体電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が向上し、電解液の漏れを防ぐことができるため、電池の信頼性が向上し、薄型の電池製作が容易であるという利点がある。また、負極としてリチウム金属を使用できるため、エネルギー密度を向上させることができ、小型二次電池と共に電気自動車用の高容量二次電池などへの応用が期待され、次世代電池として注目されている。
【0005】
固体電解質の中でも高分子固体電解質の原料としては、イオン伝導性材質の高分子材料を使用してもよく、高分子材料と無機材料が混合されたハイブリッド型の材料も提案されている。前記無機材料としては、酸化物又は硫化物のような無機材料を使用してもよい。
【0006】
このような従来の高分子固体電解質は、塗布膜を形成した後、高温乾燥する工程を通じて製造された。しかし、従来の高分子固体電解質の製造技術は、結晶性高分子(crystalline polymer)または半結晶性高分子(semi-crystalline polymer)が持つ高い結晶性のため、イオン伝導度が向上した高分子固体電解質を製造することが難しいという限界があった。
【0007】
また、一般的に高分子固体電解質は、リチウムカチオンとこれに対応するアニオンが全て流動的な二重イオン伝導体(dual-ion conductor)である。ここで、リチウムイオンは高分子マトリックスのルイス塩基位置(Lewis basic site)と結合するため、アニオンより流動性が低い。したがって、二重イオン伝導体のリチウムイオン輸送数は一般的に0.5以下になる。従来の高分子固体電解質において、リチウムイオンとこれに対応するアニオンは放電時に互いに反対方向に移動し、アニオンは負極側に蓄積する傾向があるため、濃度勾配とセル分極が起こり、この現象が続くと電池性能の劣化が現れることがある。
【0008】
一方、単一イオン伝導性(single-ion conducting)高分子固体電解質である単一イオン伝導体(single ion conductor)は、高分子鎖にアニオンが固定されており、ほぼ1に近いリチウムイオン輸送数を示すことができ、前記アニオン分極に有害な影響がないため、大きく注目されている。しかし、このような単一イオン伝導性高分子固体電解質も高いイオン伝導度と安全性を同時に有することは非常に難しい。
【0009】
したがって、最近注目されている単一イオン伝導性高分子固体電解質を用いてイオン伝導度と安定性を同時に確保できる技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許公報 第2017-0046995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、前記問題点を解決するために多角的に研究を行った結果、単一イオン伝導体(single ion conductor)に液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS)を添加して、高分子鎖の流動性(chain mobility)を向上させることで、高分子固体電解質の安全性とイオン伝導度が同時に改善されたことを確認した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、安全性とイオン伝導性に優れた高分子固体電解質及びその製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、安全性とイオン伝導度が改善された高分子固体電解質を含む全固体電池を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、前記全固体電池を含む電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、単一イオン伝導体(single ion conductor)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS);を含む高分子固体電解質を提供する。
【0016】
本発明はまた、(S1)単一イオン伝導体(single ion conductor)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS)を含む高分子固体電解質形成用溶液を形成するステップ;(S2)前記高分子固体電解質形成用溶液を基材上に塗布して塗布膜を形成するステップ;および(S3)前記塗布膜を乾燥させるステップ;を含む、高分子固体電解質の製造方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、前記高分子固体電解質を含む全固体電池を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記全固体電池を含む電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による高分子固体電解質は、単一イオン伝導体(single ion conductor)自体に高分子鎖が絡み合っている構造により、安全性とイオン伝導度に優れる効果を示す。
【0020】
また、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)に含まれたケージ(cage)構造により、前記高分子鎖の流動性(chain mobility)が向上することができるため、イオン伝導度がさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施態様による高分子固体電解質の内部構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の理解を助けるために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常または辞典的な意味に限定して解釈してはならず、発明者は、自らの発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に踏まえて、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈しなければならない。
【0024】
高分子固体電解質
本発明は、高分子固体電解質に関する。
【0025】
本発明による高分子固体電解質は、単一イオン伝導体(single ion conductor, SIC)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS);を含む。また、前記高分子固体電解質は、リチウム塩をさらに含み、イオン伝導度をさらに向上させることができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施態様による高分子固体電解質の内部構造を示す模式図である。
【0027】
図1を参照すると、高分子固体電解質(1)は、単一イオン伝導体(10)に含まれた高分子鎖が絡み合った構造を有するものであってもよい。また、前記高分子鎖によって形成された内部空間には、液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)(20)が含まれてもよく、リチウム塩(未図示)も前記内部空間に解離した状態で含まれてもよい。
【0028】
本発明において、前記単一イオン伝導体(single ion conductor)は、フッ素系高分子電解質膜であってもよい。
具体的には、前記単一イオン伝導体は、パーフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic acid, PFSA)系高分子を含み、前記パーフルオロスルホン酸系高分子に含まれたスルホン酸基(-SO3H)の水素がリチウムカチオン(Li+)で置換された構造を有する。前記単一イオン伝導体はリチウムカチオン(Li+)を含むため、イオン伝導性に優れている。
前記パーフルオロスルホン酸系高分子は、Nafion(Dupont社)、Flemion(Asahi Glass社)、Aciplex(KRAsahi Kasei社)、またはAquivion(Merck社)であってもよい。
【0029】
前記パーフルオロスルホン酸系高分子は、優れた機械的安定性、熱的安定性及び高いイオン伝導度により、高分子電解質膜として適している。
【0030】
また、前記単一イオン伝導体は、前記高分子固体電解質総重量を基準として20重量%~60重量%で含まれてもよく、具体的には、20重量%以上、25重量%以上または30重量%以上で含まれるか、または50重量%以下、55重量%以下または60重量%以下で含まれてもよい。前記単一イオン伝導体の含量が20重量%未満であれば、膜状の高分子固体電解質が形成されにくく、60重量%を超えると、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンの含量が相対的に減少し、イオン伝導度の改善効果が微々たる場合がある。
【0031】
本発明において、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)は、下記化学式1で表されるものであってもよい:
【0032】
【0033】
前記化学式1において、
Rは、互いに同一か又は異なり、それぞれ独立して下記化学式1-1~1-4で表される基からなる群から選択される:
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
前記化学式1-1~1-4において、
L1~L5は、C1~C30のアルキレン基であり、
R1~R4は、水素;ヒドロキシ基;アミノ基;チオール基;C1~C30のアルキル基;C2~C30のアルケニル基;C2~C30のアルキニル基;C1~C30のアルコキシ基;およびC1~C30のカルボキシ基;からなる群から選択され、
m及びnは、互いに同一か又は異なり、それぞれ独立して0~10の整数であり、
*は、結合位置である。
【0039】
また、前記化学式1-1~1-4において、L1~L5は、C1~C10のアルキレン基であり、R1~R4は、水素;ヒドロキシ基;またはC1~C30のアルキル基であり、m及びnは、互いに同一か又は異なり、それぞれ独立して0~10の整数である。
【0040】
また、前記化学式1において、Rは、ポリエチレングリコール基、グリシジル基、オクタシラン基及びメタクリル基からなる群から選択されるものである。
【0041】
好ましくは、前記ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)は、前記化学式1のRがポリエチレングリコール基(polyethylene glycol、PEG)である、ポリエチレングリコール-ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(PEG-POSS)であってもよい。
【0042】
また、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)は、高分子固体電解質総重量を基準として20重量%~60重量%で含まれてもよく、具体的には、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルスキオキサンの含量は、20重量%以上、25重量%以上、または30重量%以上であってもよく、または50重量%以下、55重量%以下、または60重量%以下で含まれてもよい。前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンの含量が20重量%未満であると、イオン伝導度の改善効果が微々たる場合があり、60重量%を超えると、前記単一イオン伝導体の含量が相対的に低下し、膜状の高分子固体電解質を製造することが難しい場合がある。
また、前述した重量範囲内で、前記単一イオン伝導体と液相のポリヘドラルオリゴメリックシルスキオキサンは、1:1~1:2の重量比で含まれてもよい。前記重量比が1:1を超えるとイオン伝導度の改善効果が微々たる可能性があり、1:2未満であると、相分離が発生する可能性がある。
【0043】
本発明において、前記リチウム塩は、前記単一イオン伝導体の高分子鎖内部空間に解離した状態で含まれ、高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させることができる。
【0044】
前記リチウム塩は、(CF3SO2)2NLi(Lithium bis(trifluoromethanesulphonyl)imide, LiTFSI)、(FSO2)2NLi(Lithium bis(fluorosulfonyl)imide, LiFSI)、LiNO3、LiOH、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、LiSCN及びLiC(CF3SO2)3からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0045】
また、前記リチウム塩は、高分子固体電解質総重量を基準として10重量%~30重量%で含まれてもよく、具体的には、前記リチウム塩の含量は、10重量%以上、13重量%以上または15重量%以上であってもよく、または20重量%以下、25重量%以下または30重量%以下で含まれてもよい。前記リチウム塩の含量が10重量%未満であれば、イオン伝導度の向上効果が微々たる可能性があり、30重量%を超えると含量増加による利益がない可能性がある。
【0046】
本発明において、前記高分子固体電解質は、フリースタンディングフィルム(free-standing film)状またはコーティング層(coating layer)状であってもよい。前記フリースタンディングフィルムとは、常温・常圧で別途の支持体なしにそれ自体でフィルム状を維持できるフィルムを意味する。前記コーティング層とは、基材上にコーティングして得られたレイヤーを意味する。
【0047】
前記フリースタンディングフィルムまたはコーティング層は、リチウムイオンを安定的に含有する支持体としての特性を有するため、高分子固体電解質として適した形態である。
【0048】
本発明において、前記高分子固体電解質は、液体電解質をさらに含んでもよく、前記液体電解質により、高分子固体電解質のイオン伝導度をさらに向上させることができる。前記液体電解質もまた、前記三次元構造体の内部空間に含まれてもよい。
【0049】
前記液体電解質は、当業界で通常使用される液体電解質であってもよく、前記液体電解質の組成は、リチウム二次電池に使用できるものであれば特に限定されない。例えば、前記液体電解質は、リチウム塩及び非水系溶媒を含んでもよい。前記リチウム塩は、前述したようなリチウム塩のいずれかであってもよい。また、前記非水系溶媒は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホランからなる群から選択された1種以上を含んでもよい。
【0050】
また、前記液体電解質は、前記高分子固体電解質総重量を基準として1~5重量%で含まれてもよい。前記液体電解質の含量が1重量%以下であれば、イオン伝導度の向上効果が微々たる可能性があり、5重量%を超えると安定性が低下する可能性がある。
【0051】
高分子固体電解質の製造方法
本発明はまた、固体電解質の製造方法に関し、前記固体電解質の製造方法は、(S1)単一イオン伝導体(single ion conductor)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane、POSS)を含む高分子固体電解質形成用溶液を形成するステップ;(S2)前記高分子固体電解質形成用溶液を基材上に塗布して塗布膜を形成するステップ;および(S3)前記塗布膜を乾燥させるステップ;を含む。前記(S1)ステップでリチウム塩をさらに使用して高分子固体電解質形成用溶液を得ることもできる。
【0052】
以下、各ステップ別に本発明による固体電解質の製造方法をより詳細に説明する。
【0053】
本発明において、前記(S1)ステップでは、単一イオン伝導体(single ion conductor)及び液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS)を含む高分子固体電解質形成用溶液を形成することができる。また、イオン伝導度を高めるためにリチウム塩をさらに添加してもよい。前記単一イオン伝導体、液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)及びリチウム塩の種類及び含量は前述した通りである。
【0054】
前記ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane, POSS)は常温で液相で存在するため、前記液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサンと単一イオン伝導体を混合して高分子固体電解質形成用溶液を形成してもよい。さらにリチウム塩を添加してもよい。
【0055】
本発明において、前記(S2)ステップでは、前記高分子固体電解質形成用溶液を基材上に塗布して塗布膜を形成することができる。
【0056】
前記基材は、前記高分子固体電解質形成用溶液が塗布される支持体としての役割を果たすことができるものであれば特に限定されない。例えば、前記基材は、SUS(Stainless Use Steel)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムであってもよい。
【0057】
また、前記塗布方法も、前記高分子固体電解質形成用溶液を前記基材上に膜状に塗布できる方法であれば特に限定されない。例えば、前記塗布方法は、バーコーティング(bar coating)、ロールコーティング(roll coating)、スピンコーティング(spin coating)、スリットコーティング(slit coating)、ダイコーティング(die coating)、ブレードコーティング(blade coating)、コンマコーティング(comma coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップコーティング(lip coating)または溶液流延法(solution casting)であってもよい。
【0058】
本発明において、前記(S3)ステップでは、前記塗布膜を乾燥させて、高分子固体電解質を得ることができる。
【0059】
全固体電池
本発明はまた、前記高分子固体電解質を含む全固体電池に関する。前記全固体電池は、正極層、負極層、および前記正極層と負極層の間に形成された固体電解質層を含み、前記正極層、負極層、および固体電解質層の少なくとも1つは、前記高分子固体電解質を含むものであってもよい。
【0060】
前記正極層に高分子固体電解質をが含まれる場合、正極活物質層の片面に前記高分子固体電解質を形成してもよい。また、前記負極層に高分子固体電解質が含まれる場合、負極活物質層の片面に前記高分子固体電解質が形成されてもよい。前記正極層及び/又は負極層に高分子固体電解質が含まれる場合には、正極と負極の電気伝導度が改善される効果を発揮することができる。
【0061】
また、前記固体電解質層に前記高分子固体電解質が含まれる場合、それ自体で電解質の機能を果たすことができる。
【0062】
本発明において、前記全固体電池に含まれた正極は、正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、正極集電体の片面に形成されたものであってもよい。
【0063】
前記正極活物質層は、正極活物質、バインダー及び導電材を含む。
【0064】
また、前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することが可能な物質であれば特に限定されず、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、Li[NixCoyMnzMv]O2(前記式において、MはAl、GaおよびInからなる群から選択されるいずれか1種またはこれらのうち2種以上の元素であり;0.3≦x<1.0、0≦y、z≦0.5、0≦v≦0.1、x+y+z+v=1である)、Li(LiaMb-a-b’M’b’)O2-cAc(前記式において、0≦a≦0.2、0.6≦b≦1、0≦b’≦0.2、0≦c≦0.2であり、MはMnと、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、ZnおよびTiからなる群から選択される1種以上を含み;M’はAl、MgおよびBからなる群から選択される1種以上であり、AはP、F、SおよびNからなる群から選択される1種以上である。)などの層状化合物であるか、あるいは1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+yMn2-yO4 (ここで、yは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、yは0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-yMyO2(ここで、MはCo、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、yは0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、MはFe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
また、前記正極活物質は、前記正極活物質層総重量を基準として40~80重量%で含まれてもよい。具体的には、前記正極活物質の含量は、40重量%以上または50重量%以上であってもよく、70重量%以下または80重量%以下であってもよい。前記正極活物質の含量が40重量%未満であれば、湿式正極活物質層と乾式正極活物質層の連結性が足りなくなる可能性があり、80重量%を超えると物質伝達抵抗が大きくなる可能性がある。
【0066】
また、前記バインダーは、正極活物質と導電材等の結合及び集電体への結合を助力する成分として、スチレン-ブタジエンゴム、アクリル化スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリエチレンオキシド、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ラテックス、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロス、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、リチウムポリアクリレート、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデン及びポリ(フッ化ビニリデン)-ヘキサフルオロプロペンからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。好ましくは、前記バインダーは、スチレン-ブタジエンゴム、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸リチウムおよびポリフッ化ビニリデンからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0067】
また、前記バインダーは、前記正極活物質層総重量を基準として1重量%~30重量%で含まれてもよく、具体的には、前記バインダーの含量は、1重量%以上または3重量%以上であってもよく、15重量%以下または30重量%以下であってもよい。前記バインダーの含量が1重量%未満であれば、正極活物質と正極集電体との接着力が低下する可能性があり、30重量%を超えると接着力は向上するものの、その分正極活物質の含量が減少し、電池容量が低下する可能性がある。
【0068】
また、前記導電材は、全固体電池の内部環境での副反応を防止し、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ優れた電気伝導性を有するものであれば特に限定されず、代表的には、黒鉛または導電性カーボンを使用してもよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック等のカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化炭素;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ(whisker);酸化チタンなどの導電性酸化物;およびポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独で、または2種以上を混合して使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。
【0069】
前記導電材は、通常前記正極活物質層総重量を基準として0.5重量%~30重量%で含まれてもよく、具体的には、前記導電材の含量は0.5重量%以上または1重量%以上であってもよく、20重量%以下または30重量%以下であってもよい。前記導電材の含量が0.5重量%未満で少なすぎると、電気伝導性の向上効果を期待し難いか、電池の電気化学的特性が低下する可能性があり、30重量%を超えて多すぎると、比較的に正極活物質の量が少なくなり、容量及びエネルギー密度が低下する可能性がある。正極に導電材を含有させる方法は特に制限されず、正極活物質へのコーティングなど、当該分野に公知の通常の方法を使用してもよい。
【0070】
また、前記正極集電体は、前記正極活物質層を支持し、外部導線と正極活物質層の間で電子を伝達する役割を果たすものである。
【0071】
前記正極集電体は、全固体電池に化学的変化を誘発せず、高い電子伝導性を有するものであれば特に限定されない。例えば、前記正極集電体として、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使用してもよい。
【0072】
前記正極集電体は、正極活物質層との結合力を強化させるために、正極集電体の表面に微細な凹凸構造を有するか、三次元多孔質構造を採用することができる。これにより、前記正極集電体は、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を含んでもよい。
【0073】
前記のような正極は、通常の方法に従って製造することができ、具体的には、正極活物質と導電材及びバインダーを有機溶媒上で混合して製造した正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布及び乾燥し、選択的に電極密度の向上のために集電体に圧縮成形して製造することができる。この時、前記有機溶媒としては、正極活物質、バインダー及び導電材を均一に分散させることができ、容易に蒸発するものを使用することが好ましい。具体的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0074】
本発明において、前記全固体電池に含まれる前記負極は、負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極集電体の片面に形成されたものであってもよい。
【0075】
前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含んでもよい。
【0076】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入できる物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であってもよい。前記リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質は、例えば、酸化スズ、チタニウムナイトレート(titanium nitrate)またはシリコンであってもよい。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群から選択される金属の合金であってもよい。
【0077】
好ましくは、前記負極活物質はリチウム金属であってもよく、具体的には、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であってもよい。
【0078】
前記負極活物質は、前記負極活物質層総重量を基準として40~80重量%で含まれてもよい。具体的には、前記負極活物質の含量は40重量%以上または50重量%以上であってもよく、70重量%以下または80重量%以下であってもよい。前記負極活物質の含量が40重量%未満であれば、湿式負極活物質層と乾式負極活物質層の連結性が足りなくなる可能性があり、80重量%を超えると物質伝達抵抗が大きくなる可能性がある。
【0079】
また、前記バインダーは、前記正極活物質層で前述した通りである。
【0080】
また、前記導電材は、前記正極活物質層で前述した通りである。
【0081】
また、前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、前記負極集電体は、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使用してもよい。また、前記負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を使用してもよい。
【0082】
前記負極の製造方法は特に限定されず、負極集電体上に当業界において通常使用される層または膜の形成方法を用いて負極活物質層を形成して製造してもよい。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いてもよい。また、前記負極集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組み立てた後、初期充電によって金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0083】
電池モジュール
また、本発明は、前記全固体電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0084】
このとき、前記デバイスの具体例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle, EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle, HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle, PHEV)などを含む電気車;電動自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電動二輪車;電動ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示すが、以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0086】
下記実施例及び比較例では、下記表1に記載の組成に従って、高分子固体電解質を製造した。
【0087】
【0088】
実施例1
液相のポリエチレングリコール-ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(PEG-POSS)に単一イオン伝導体としてAquivion-Li(Merck社、25%水溶液、CAS No.1687740-67-5)を添加した後、混合して高分子固体電解質形成用溶液を得た。この時、単一イオン伝導体とPEG-POSSの重量比は1:2になるようにした。前記Aquivion-Liは、パーフルオロスルホン酸系高分子に含まれたスルホン酸基(-SO3H)の水素がリチウムカチオン(Li+)で置換された構造を有する単一イオン伝導体である。
【0089】
前記高分子固体電解質形成用溶液をSUS箔の上にドクターブレードで塗布して塗布膜を形成した。
【0090】
その後、100℃で1日間真空乾燥で熱処理し、高分子固体電解質を製造した。
【0091】
実施例2
液相のPEG-POSSにリチウム塩であるLiTFSIを1:0.4の重量比で均一に混合してリチウム塩を解離させた後、SICを混合したことを除いては、実施例1と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0092】
実施例3
SICと液相のPEG-POSSの重量比が1:1になるようにしたことを除いては、実施例2と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0093】
比較例1
液相のPEG-POSSを使用せず、乾燥も行わないことを除いては、実施例1と同様の方法で実施し、SIC溶液状態の液相電解質を得た。前記SICとして使用したAquivion-Li(Merck社、25%水溶液)は、それ自体が水溶液状態であるため、乾燥工程を経ずに液相電解質となるものである。
【0094】
比較例2
液相のPEG-POSSを使用しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で実施し、固体電解質を得た。
【0095】
比較例3
SICと液相のPEG-POSSの重量比が1:3となるようにしたことを除いては、実施例2と同様の方法で高分子固体電解質を製造した。
【0096】
実験例1:高分子固体電解質の物性評価
実施例及び比較例で製造された高分子固体電解質について、下記のような方法でイオン伝導度及び膜状態についてのテストを行い、その結果を下記表2に記載した。
【0097】
(1)イオン伝導度
1.7671cm2サイズの円形に前記高分子固体電解質を打ち抜き、二枚のステンレス鋼(stainless steel, SUS)の間に前記打ち抜かれた高分子固体電解質を配置してコインセルを製造した。常温で前記コインセルに交流電圧を印加し、印加条件は測定周波数500KHz~20MHzの振幅範囲に設定し、BioLogic社のVMP3を用いてインピーダンスを測定した。下記式1を用いて、測定されたインピーダンス軌跡の半円や直線が実収縮と交わる交点から高分子固体電解質の抵抗(Rb)を求め、前記高分子固体電解質の広さ(A)と厚さ(t)からイオン伝導度(σ)を計算した。
【0098】
【0099】
σ:高分子固体電解質のイオン伝導度
Rb:抵抗
A:高分子固体電解質の広さ
t:高分子固体電解質の厚さ
【0100】
(2) 膜状態
高分子固体電解質の膜状態は、肉眼で観察し、フィルム状に形成されているか否かについて判断した。
【0101】
【表2】
前記表2に示すように、実施例1は、単一イオン伝導体と液相のPEG-POSSを原料物質として乾燥工程を経ることにより、固相の膜状を有し、イオン伝導度に優れた高分子固体電解質を得ることができた。
【0102】
実施例2及び実施例3は、実施例1でリチウム塩を添加したものであり、リチウム塩によってイオン伝導度が向上したことが分かる。
【0103】
一方、比較例1は、それ自体が水溶液状態の単一イオン伝導体を塗布しただけで、液相電解質が製造された。
【0104】
また、比較例2は、比較例1で乾燥工程を追加実施したもので、固相の膜が得られたが、イオン伝導度は低いことがわかった。
【0105】
また、比較例3は、液相のPEG-POSSが単一イオン伝導体に比べて過剰に多く使用された場合で、液相の電解質が製造され、相分離も観察された。
【0106】
このように、単一イオン伝導体は、それ自体が高分子固体電解質形態としてLiイオンを含んでいるので、電解質に求められる適正イオン伝導度を示すことができるが、液相のPEG-POSSを適正重量比で添加する場合、高分子鎖の流動性が良くなり、イオン伝導度が改善される。また、リチウム塩を添加する場合、イオン伝導度をさらに向上させることができる。
【0107】
以上、本発明に対して、たとえ限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれにより限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0108】
1:高分子固体電解質
10:単一イオン伝導体(single ion conductor, SIC)
20:液相のポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)
【国際調査報告】