(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電池管理装置およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20250109BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20250109BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20250109BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/392
G01R31/387
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537918
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022018489
(87)【国際公開番号】W WO2023121006
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0186533
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヤン ジン
【テーマコード(参考)】
2G216
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216BB02
2G216CB13
(57)【要約】
一実施形態に係る電池管理装置は、電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、前記電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換し、設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータを用いて前記データを平滑化し、前記電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するコントローラと、を含む。これによると、電池の電圧データを微分信号に変換するために前処理する過程において、平滑化された微分信号曲線の振れを少なくしながらも、原本データとの適切なフィッティングを可能にする最適な平滑パラメータを決めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、
前記電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換し、設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータを用いて前記データを平滑化し、前記電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するコントローラと、
を含む、電池管理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、費用関数を最小化するアルゴリズムを用いて前記最適な平滑パラメータを決める、請求項1に記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータを用いて平滑化されたデータに基づいて、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得し、
前記微分信号セットそれぞれの曲線の長さ、および原本データと前記微分信号セットそれぞれの差に基づいて前記費用関数を算出する、請求項2に記載の電池管理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記平滑パラメータに対応する微分信号を指定された区間で線積分した値である第1変数と、前記原本データと前記平滑パラメータに対応する微分信号との差のRMS(root mean square)値である第2変数を乗じ、前記平滑パラメータに対応する費用関数値を算出する、請求項3に記載の電池管理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記少なくとも1つの平滑パラメータのうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決める、請求項4に記載の電池管理装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク値が指定された値を超過しない平滑パラメータである、請求項5に記載の電池管理装置。
【請求項7】
前記コントローラは、同一の電圧の大きさを有する前記電池セルの容量値を分類し、前記電圧の大きさ別に前記電池セルの容量値の平均値を算出することで、前記電圧に対するサンプリングを行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池管理装置。
【請求項8】
前記コントローラは、ハイパーパラメータが適用される平滑化アルゴリズムを活用し、
前記電池セルの電圧の傾きが連続性を満たすように平滑化する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池管理装置。
【請求項9】
前記微分信号に対して統計値を算出し、前記微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、前記電池セルに異常が発生したと診断する異常診断部をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池管理装置。
【請求項10】
前記微分信号は、前記電池セルの電圧-容量微分信号、または電圧-時間微分信号である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電池管理装置。
【請求項11】
電池セルの電圧を測定するステップと、
前記電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換するステップと、
設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータを用いて前記データを平滑化するステップと、
前記電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するステップと、
を含む、電池管理装置の動作方法。
【請求項12】
前記データを平滑化するステップは、費用関数を最小化するアルゴリズムを用いて前記最適な平滑パラメータを決めるステップを含む、請求項11に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項13】
前記最適な平滑パラメータを決めるステップは、
予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータを用いて前記電圧に関するデータを平滑化するステップと、
前記平滑化されたデータに基づいて、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得するステップと、
前記微分信号セットそれぞれの曲線の長さ、および原本データと前記微分信号セットそれぞれの差に基づいて前記費用関数を算出するステップと、を含む、請求項12に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項14】
前記費用関数を算出するステップは、前記平滑パラメータに対応する微分信号を指定された区間で線積分した値である第1変数と、前記原本データと前記平滑パラメータに対応する微分信号との差のRMS値である第2変数を乗じ、前記平滑パラメータに対応する費用関数値を算出するステップを含む、請求項13に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項15】
前記最適な平滑パラメータを決めるステップは、前記少なくとも1つの平滑パラメータのうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決めるステップをさらに含む、請求項14に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク値が指定された値を超過しない平滑パラメータである、請求項15に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項17】
前記データを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換するステップは、
同一の電圧の大きさを有する前記電池セルの容量値を分類し、前記電圧の大きさ別に前記電池セルの容量値の平均値を算出することで、前記電圧に対するサンプリングを行うステップを含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項18】
前記データを平滑化するステップは、ハイパーパラメータが適用される平滑化アルゴリズムを活用し、
前記電池セルの電圧の傾きが連続性を満たすように平滑化するステップを含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項19】
前記微分信号に対して統計値を算出するステップと、
前記微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、前記電池セルに異常が発生したと診断するステップと、をさらに含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の電池管理装置の動作方法。
【請求項20】
前記微分信号は、前記電池セルの電圧-容量微分信号、または電圧-時間微分信号である、請求項11から16のいずれか一項に記載の電池管理装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年12月23日付けの韓国特許出願第10-2021-0186533号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
本文書に開示された実施形態は、電池管理装置およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池に関する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であり、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと、最近のリチウムイオン電池とをいずれも含む意味である。二次電池の中でも、リチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べて、エネルギー密度が遥かに高いという長所がある。また、リチウムイオン電池は、小型、軽量に作製することができるため、移動機器の電源として用いられる。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源にまでその使用範囲が拡張され、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。また、二次電池は、一般的に複数の電池セルが直列および/または並列に連結された電池モジュールを含む電池パックとして用いられる。そして、電池パックは、電池管理システムにより、状態および動作が管理および制御される。
【0003】
このような二次電池の場合、充電周期中に内部短絡(internal short)と疑われる異常電圧降下現象が観察されたりもする。このような現象を検出するために、電池の電圧に対する微分信号を用いることができる。この際、電池の電圧データを微分信号に変換するために平滑化(smoothing)処理を経るが、最適な結果を得るためには、微分信号曲線の振れが少なく、かつ、原本データと適切なフィッティング(fitting)をなし得る平滑パラメータ(smoothing parameter)を決める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本文書に開示された実施形態の一目的は、電池の電圧データを微分信号に変換するために前処理する過程において、設定されたアルゴリズムにより最適な平滑パラメータを決め、前記パラメータを適用して微分信号を取得する電池管理装置およびその動作方法を提供することにある。
【0005】
本文書に開示された実施形態の一目的は、電池の電圧に対する微分信号を用いて電池の充電中の内部短絡による異常電圧降下現象を検出することができ、さらには電池劣化の定量化、異常劣化の判別などの目的を実現することができる電池管理装置およびその動作方法を提供することにある。
【0006】
本文書に開示された実施形態の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していないまた他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る電池管理装置は、電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、前記電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換し、設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータ(smoothing parameter)を用いて前記データを平滑化し、前記電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するコントローラと、を含む。
【0008】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、費用関数(cost function)を最小化するアルゴリズムを用いて前記最適な平滑パラメータを決めることができる。
【0009】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータを用いて平滑化されたデータに基づいて、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得し、前記微分信号セットそれぞれの曲線の長さ、および原本データと前記微分信号セットそれぞれの差に基づいて前記費用関数を算出することができる。
【0010】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、前記平滑パラメータに対応する微分信号を指定された区間で線積分した値である第1変数と、前記原本データと前記平滑パラメータに対応する微分信号との差のRMS(root mean square)値である第2変数を乗じ、前記平滑パラメータに対応する費用関数値を算出することができる。
【0011】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、前記少なくとも1つの平滑パラメータのうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決めることができる。
【0012】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク(peak)値が指定された値を超過しない平滑パラメータであってもよい。
【0013】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、同一の電圧の大きさを有する前記電池セルの容量値を分類し、前記電圧の大きさ別に前記電池セルの容量値の平均値を算出することで、前記電圧に対するサンプリングを行うことができる。
【0014】
一実施形態に係る電池管理装置において、前記コントローラは、ハイパーパラメータ(hyper parameter)が適用される平滑化アルゴリズム(例えば、平滑スプライン(smoothing spline))を活用し、前記電池セルの電圧の傾きが連続性を満たすように平滑化することができる。
【0015】
一実施形態に係る電池管理装置は、前記微分信号に対して統計値を算出し、前記微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、前記電池セルに異常が発生したと診断する異常診断部をさらに含むことができる。
一実施形態に係る電池管理装置において、前記微分信号は、前記電池セルの電圧-容量微分信号、または電圧-時間微分信号であってもよい。
【0016】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法は、電池セルの電圧を測定するステップと、前記電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換するステップと、設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータ(smoothing parameter)を用いて前記データを平滑化するステップと、前記電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するステップと、を含む。
【0017】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記最適な平滑パラメータを用いて前記データを平滑化するステップは、費用関数(cost function)を最小化するアルゴリズムを用いて前記最適な平滑パラメータを決めるステップを含むことができる。
【0018】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記最適な平滑パラメータを決めるステップは、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータを用いて前記電圧に関するデータを平滑化するステップと、前記平滑化されたデータに基づいて、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得するステップと、前記微分信号セットそれぞれの曲線の長さ、および原本データと前記微分信号セットそれぞれの差に基づいて前記費用関数を算出するステップと、を含むことができる。
【0019】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記費用関数を算出するステップは、前記平滑パラメータに対応する微分信号を指定された区間で線積分した値である第1変数と、前記原本データと前記平滑パラメータに対応する微分信号との差のRMS(root mean square)値である第2変数を乗じ、前記平滑パラメータに対応する費用関数値を算出するステップを含むことができる。
【0020】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記最適な平滑パラメータを決めるステップは、前記少なくとも1つの平滑パラメータのうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決めるステップをさらに含むことができる。
【0021】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク(peak)値が指定された値を超過しない平滑パラメータであってもよい。
【0022】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記データを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換するステップは、同一の電圧の大きさを有する前記電池セルの容量値を分類し、前記電圧の大きさ別に前記電池セルの容量値の平均値を算出することで、前記電圧に対するサンプリングを行うステップを含むことができる。
【0023】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記データを平滑化するステップは、ハイパーパラメータ(hyper parameter)が適用される平滑化アルゴリズム(例えば、平滑スプライン(smoothing spline))を活用し、前記電池セルの電圧の傾きが連続性を満たすように平滑化するステップを含むことができる。
【0024】
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法は、前記微分信号に対して統計値を算出するステップと、前記微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、前記電池セルに異常が発生したと診断するステップと、をさらに含むことができる。
一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、前記微分信号は、前記電池セルの電圧-容量微分信号、または電圧-時間微分信号であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
一実施形態によると、電池の電圧に関するデータを微分信号に変換するために前処理する過程において、平滑化された微分信号曲線の振れを少なくしながらも、原本データとの適切なフィッティング(fitting)を可能にする最適な平滑パラメータを決めることができる。
【0026】
さらに、最適な平滑パラメータを用いて電池の電圧に対する微分信号(例えば、電圧-容量微分信号、電圧-時間微分信号など)を取得し、それに基づいて電池の内部短絡による異常電圧降下現象を正確かつ容易に検出することができ、電池劣化の定量化、異常劣化の判別などの目的を実現することができる。
この他に、本文書により、直接的または間接的に把握される多様な効果が提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本文書に開示された実施形態または従来技術の技術的解決策をより明らかに説明するために、実施形態に関する説明に必要な図面が以下に簡単に紹介される。以下の図面は、本明細書の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定するためのものではないことを理解しなければならない。また、説明の明瞭性のために、図面の一部の構成要素に対する表現が誇張または省略されることがある。
【0028】
【
図1】電池制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る電池管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3a】電池の測定電圧のローデータを示すグラフである。
【
図3b】
図3aの電圧ローデータの微分信号を示すグラフである。
【
図4】電池電圧データの重複信号を除去するためにサンプリングを行う方法を示す図である。
【
図5a】電池電圧データに対してサンプリングおよび平滑化により前処理を行った結果を示すグラフである。
【
図5b】電池電圧データの前処理段階別の微分の概形を示すグラフである。
【
図6a】一実施形態に係る電圧-容量微分信号の原本データおよび平滑パラメータ値に応じた信号形態の変化を示すグラフである。
【
図6b】微分信号曲線の長さ(L)および原本データとの差(rms)の変化を平滑パラメータ値に応じて示すグラフである。
【
図7a】1秒間隔でサンプリングする場合の平滑パラメータ値に応じた費用関数(L*rms)の変化を示すグラフである。
【
図7b】60秒間隔でサンプリングする場合の平滑パラメータ値に応じた費用関数(L*rms)の変化を示すグラフである。
【
図8】一実施形態に係る電池管理装置の動作方法を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、データを平滑化するステップの詳細な過程を示すフローチャートである。
【
図10】他の実施形態に係る電池管理装置の動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本文書に開示された実施形態を例示的な図面により詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付するに際し、同一の構成要素に対しては他の図面上に表示される際にも可能な限り同一の符号を付するようにしていることに留意しなければならない。また、本文書に開示された実施形態を説明するに際し、関連した公知の構成または機能に関する具体的な説明が本文書に開示された実施形態に対する理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0030】
本文書で用いられる用語は、機能を考慮しつつ可能な限り現在広く用いられる一般的な用語を選択したが、これは、当該分野に携わる技術者の意図または慣例または新しい技術の出現などに応じて異なり得る。また、特定の場合、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該明細書の説明部分にその意味を記載する。したがって、本文書で用いられる用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語が有する実質的な意味および本文書の全般にわたった内容に基づいて解釈しなければならないことを明らかにしておく。
【0031】
本文書で用いられた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。
【0032】
図1は、一実施形態に係る電池制御システムの構成を示すブロック図であり、電池パック1と、上位システムに含まれている上位制御器2と、を含む電池制御システムを概略的に示す。電池パック1は、ESS(Energy Storage System)または車両などに用いられる構成であってもよいが、このような用途に限定されるものではない。
【0033】
図1を参照すると、電池パック1は、充放電可能な1つ以上の電池セルで構成された電池モジュール10と、電池モジュール10の+端子側または-端子側に直列に連結され、電池モジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング素子14と、電池パック1の電圧、電流、温度などをモニターし、過充電および過放電などを防止するように制御管理する電池管理装置20と、を含む。
【0034】
ここで、スイッチング素子14は、電池モジュール10の充電または放電に対する電流の流れを制御するための半導体スイッチング素子であり、例えば、少なくとも1つのMOSFETを用いることができる。
【0035】
また、電池管理装置20は、電池パック1の電圧、電流、温度などをモニターするために、半導体スイッチング素子のゲート、ソース、およびドレインなどの電圧および電流を測定または計算することができ、半導体スイッチング素子14に隣接して備えられたセンサ12を用いて、電池パックの電流、電圧、温度などを測定することができる。
【0036】
電池管理装置20は、上述した各種パラメータを測定した値の入力を受けるインターフェースであり、複数の端子、およびこれらの端子と連結され、入力を受けた値の処理を行う回路などを含むことができる。また、電池管理装置20は、スイッチング素子14のON/OFFを制御することもでき、電池モジュール10に連結され、電池モジュール10の状態を監視することができる。
【0037】
上位制御器2は、電池管理装置20に電池モジュールに対する制御信号を伝送することができる。これにより、電池管理装置20は、上位制御器から印加される信号に基づいて動作が制御されることができる。
【0038】
図2は、一実施形態に係る電池管理装置の構成を示すブロック図である。
図2を参照すると、一実施形態に係る電池管理装置20は、電圧測定部210およびコントローラ220を含むことができ、選択的に異常診断部230をさらに含むことができる。
【0039】
電圧測定部210は、電池セルの電圧を測定して電圧データを取得する。例えば、
図1の電池パック1に備えられたセンサ12を介して、電池モジュール10に含まれた1つ以上の電池セルの電圧を一定時間間隔で測定するように構成されることができる。
【0040】
コントローラ220は、電池セルの電圧データ(例えば、時間の流れに沿った電圧信号)を前処理し、電池セルの電圧が一定区間で微分可能となるように変換することができる。
図3aのグラフに例示されているように、一般的に測定された電池の電圧データは、重複信号と不連続区間などにより微分分析が不可能な場合が発生し得る。したがって、コントローラ220は、微分信号の変換以前に電池セルの電圧データを前処理し、電池セルの電圧が予め設定された区間で微分可能となるように変換することができる。
【0041】
具体的に、コントローラ220は、電圧データに対するサンプリングにより、電池セルの電圧を単調増加(すなわち、一定区間で減少することなく増加する)または単調減少(すなわち、一定区間で増加することなく減少する)形態のデータに変換することができる。例えば、コントローラ220は、同一の電圧の大きさ(V)を有する電池セルの容量値(Q)を分類し、電圧の大きさ別に電池セルの容量値の平均値を算出することで、電圧に対するサンプリングを行うことができる。それについては、
図4を参照して後述することにする。
【0042】
また、コントローラ220は、サンプリングされたデータに平滑化(smoothing)処理を経て、電池セルの電圧データの傾きの曲線を緩やかな形態に変換することができる。これにより、一定区間で隣接したデータ間の連続性を満たし、微分可能となるようにすることができる。この際、適用する平滑パラメータ(smoothing parameter)値に応じて傾き曲線の緩やかな程度が異なり得る。例えば、一実施形態に係る平滑化技法の場合、パラメータ値が大きくなるほど、曲線が緩やかになるものの、原本データとの差が大きくなり、パラメータ値が小さくなるほど、原本データに近づくものの、曲線の振れが大きくなる。したがって、最適な平滑パラメータを決めるに際し、このようにトレードオフ(trade off)関係にある変数を適切に考慮する必要がある。それについては、
図6a~6bを参照して後述することにする。
【0043】
コントローラ220は、前処理(サンプリングおよび平滑化)が完了した電池セルの電圧データを微分信号に変換することができる。この場合、コントローラ220は、電池セルの容量と電圧に関して微分信号(例えば、dQ/dV、dV/dQ、dV/dtなど)を算出することができる。一実施形態によると、最適な平滑パラメータを決めるために、コントローラ220は、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれに対応する微分信号セットを取得し、前記微分信号セットに対して2以上の変数(例えば、微分信号曲線の緩やかな程度、原本データとの差など)を考慮して最適な平滑パラメータを決めることができる。
【0044】
異常診断部230は、変換された微分信号に対して統計値を算出することができる。この際、コントローラ220により算出された微分信号の統計値は、スライディングウィンドウ(Sliding Window)(または、ムービングウィンドウ(Moving Window))方式で電池の異常挙動を判別するためのものである。例えば、微分信号に対する統計値は、標準偏差を含むことができる。
【0045】
異常診断部230は、コントローラ220により変換された微分信号に基づいて、電池セルの異常を診断することができる。具体的に、異常診断部230は、電池電圧の微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、電池セルに異常電圧降下が発生したと診断することができる。
【0046】
また、異常診断部230は、電池の電圧に対する微分信号の統計値に対して、スライディングウィンドウ方式で電池セルの異常を診断することができる。このように、異常診断部230がスライディングウィンドウ方式で電池セルの異常を診断する場合、ウィンドウのサイズは、ユーザにより任意に設定されることができる。この際、電池電圧の微分信号に対する統計値は、標準偏差を含むことができる。
【0047】
図示してはいないが、一実施形態に係る電池管理装置20は、メモリ部およびアラーム部をさらに含むことができる。この場合、メモリ部は、電圧測定部210により測定された電池セルの電圧、およびコントローラ220により算出された電圧の微分信号などを格納することができる。また、アラーム部は、異常診断部230により電池セルに異常が発生したと判断されると、警告アラームを発生させることができる。この際、警告アラームは、電池制御システムと連結されたディスプレイ部(図示せず)上にメッセージ形態で提供されるか、または光や音響信号として提供されることができる。
【0048】
また、図示してはいないが、異常診断部230の他にも、電池劣化の定量化、異常劣化の判別などの機能を実行可能な付加的な装置またはシステムが含まれることができる。
【0049】
以下、図面を参照して、電圧データを微分可能な信号に変換するための前処理過程について詳しく説明する。
一実施形態によると、コントローラ220は、電池セルの電圧に関するデータを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換することができる。
【0050】
図3aは、電池の測定電圧のローデータを示すグラフであり、
図3bは、
図3aの電圧ローデータの微分信号を示すグラフである。この際、
図3aの横軸は、電池の容量(Ah)を示し、縦軸は、電池の測定電圧(V)を示す。また、
図3bの横軸は、電池の電圧(V)を示し、縦軸は、電池の容量と電圧に対する微分信号(dQ/dV)を示す。
【0051】
図3aを参照すると、電池の測定電圧データは、電圧センサ自体のエラーによるノイズや重複電圧信号などが現れ得る。したがって、
図3bに示したように、電圧または電流データに対する微分信号を分析することが困難な場合が発生し得る。
【0052】
図4は、電池電圧データの重複信号を除去するためにサンプリングを行う方法を示す図である。
図4を参照すると、それぞれの時間に対する電池の容量と電圧の測定データが示されている。ここで、電池の容量が43Ah、44Ah、46Ahの区間では電圧が3.23Vと同一であり、電池の容量が45Ah、47Ahの区間では電圧が3.24Vと同一である。したがって、
図3aおよび3bに示したように、電圧データの重複信号が発生して微分分析が不可能となり得る。
【0053】
この場合、電池の容量と電圧データに対して特定の大きさの電圧を基準として電池の容量値を分類し、その平均値を計算することで、電池電圧データをサンプリングすることができる。例えば、
図4に示したように、重複して現れる電池電圧である3.23Vと3.24Vを基準として、各電圧に該当する容量値の平均値を計算することができる。例えば、電圧が3.23Vである場合には、電池容量43Ah、44Ah、46Ahの平均値である44.3Ahを容量値に決め、電圧が3.24Vである場合には、電池容量45Ah、47Ahの平均値である46Ahを容量値に決めることができる。
【0054】
このように、一実施形態に係るコントローラ220は、電圧データを指定された単位でサンプリングし、測定電圧を基準として電圧データを単調増加または単調減少形態に変換することができる。
【0055】
一実施形態によると、コントローラ220は、サンプリング処理したデータが予め設定された区間で微分可能となるように平滑化(smoothing)を行うことができる。
【0056】
図5aは、電池電圧データに対してサンプリングおよび平滑化により前処理を行った結果を示すグラフであり、
図5bは、電池電圧データの前処理段階別の微分の概形を示すグラフである。この際、
図5aの横軸は、電池の容量(Ah)を示し、縦軸は、電池の測定電圧(V)を示す。また、
図5bの横軸は、電池の電圧(V)を示し、縦軸は、電池の容量と電圧に対する微分信号(Ah/V)を示す。
【0057】
図5aに示したように、電圧のローデータの場合、重複信号およびノイズが発生しているが、
図4によりサンプリング処理した電圧データの場合、単調増加形態を示すことが分かる。
【0058】
一方、電圧のローデータに対してサンプリング処理を行っても、隣接したデータ間の傾き差により微分が不可能な区間が現れ得る。それに関し、
図5bを参照すると、単に電圧のローデータにサンプリング処理だけを行った場合には、完全な微分信号値が示されないことが分かる。
【0059】
そこで、コントローラ220は、サンプリング処理した電圧データを平滑化することで、電池の電圧データの傾きが連続性を満たすように変換することができる。一実施形態によると、平滑スプライン(Smoothing Spline;S.S)技法が適用可能であり、平滑スプラインの計算式は次のように示すことができる。
【0060】
【0061】
前記平滑スプライン計算式により、サンプリングされた電圧データの傾きが急激に変化するのを防止し、連続的な曲線に変換することができる。この際、平滑パラメータのλ値が大きくなるほど、曲線がさらに緩やかになる。例えば、λ値は、それぞれ0.001(V)および0.01(Q)であってもよい。
【0062】
一方、本文書に開示された実施形態に係るデータ前処理方法は、平滑スプライン技法以外のハイパーパラメータ(モデリングする際にユーザが入力する変数値)が適用される他の全てのデータ平滑化アルゴリズムを用いることができる。それぞれの平滑化技法に適用される最適な平滑パラメータを以下に説明する実施形態に応じて決めることができる。
【0063】
再び
図5aを参照すると、サンプリング処理された電圧データに平滑スプライン(S.S)を適用した場合、電圧データの傾きの連続性を満たしながらも微分可能な形態に変換されることが分かる。また、
図5bに示したように、サンプリング処理に平滑スプラインをさらに行った微分信号の場合、グラフがノイズなしに緩やかに示されることを確認することができる。
【0064】
前述したように、平滑パラメータ(λ)値に応じて微分信号曲線の緩やかな程度が異なり、パラメータ値が大きくなるほど、曲線が緩やかになるものの、原本データとの差が大きくなり、パラメータ値が小さくなるほど、原本データに近づくものの、曲線の振れが大きくなる。したがって、開示された実施形態は、トレードオフ(trade off)関係にある2つの要素を考慮した費用関数を用いて、最適な平滑パラメータを決めるアルゴリズムを提供する。
【0065】
一実施形態によると、コントローラ220は、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータ(例えば、λ1、λ2、…、λ5)を適用してデータを平滑化し、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得することができる。ここで、前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク(peak)値が指定された値を超過しない平滑パラメータであってもよい。
【0066】
図6aは、一実施形態に係る電圧-容量微分信号(dQ/dV)の原本データ(Vsample)および平滑パラメータ値(λ1、λ2、…、λ5)に応じた信号形態の変化を示すグラフである。
図6aを参照すると、平滑パラメータ値(λ)が増加するほど(すなわち、1-λが10-6、10-7、…、10-10に減少するほど)、曲線が緩やかになる一方、原本データとの差が大きくなることが分かる。
【0067】
費用関数は、微分信号セットそれぞれに対して、曲線の緩やかな程度および原本データとの差を同時に考慮して算出されることができる。一実施形態によると、前記曲線の緩やかな程度は、前記微分信号を一定区間(例えば、電圧の大きさが3.4V~4.2Vである区間)で線積分した値である第1変数で示し、原本データとの差は、前記原本データと前記微分信号との差のRMS(root mean square)値である第2変数で示すことができる。言い換えれば、平滑パラメータ値が増加するほど(1-λが小さくなるほど)、微分信号曲線が緩やかになり、曲線の長さを示す第1変数値が小さくなる。これに対し、平滑パラメータ値が増加するほど(1-λが小さくなるほど)、原本データとの差を示す第2変数値が増加する。
【0068】
図6bは、微分信号曲線の長さ(L)および原本データとの差(rms)の変化を平滑パラメータ(λ)値に応じて示すグラフである。
図6bを参照すると、平滑パラメータ(λ)値が増加するほど(すなわち、1-λが10-6、10-7、…、10-10に減少するほど)、曲線の長さ(L)が縮み、原本データとの差(rms)が増加することが分かる。
【0069】
一実施形態によると、コントローラ220は、前記第1変数(微分信号曲線の長さ)と第2変数(原本データとの差rms)を乗じ、それぞれの平滑パラメータに対応する費用関数値を算出することができる。また、前記平滑パラメータ(例えば、λ1、λ2、…、λ5)のうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決めることができる。費用関数を考慮して決められた最適な平滑パラメータは、生成されたデータ(例えば、dQ/dV、dV/dQ、dV/dtなどの微分信号)曲線の振れを少なくしながらも、原本データとのフィッティングが適切になされるようにするパラメータ値を意味する。
【0070】
図7aは、1秒間隔でサンプリングする場合の平滑パラメータ値に応じた費用関数(L*rms)の変化を示すグラフであり、
図7bは、60秒間隔でサンプリングする場合の平滑パラメータ値に応じた費用関数(L*rms)の変化を示すグラフである。このようなサンプリング差に応じて費用関数を最小化する平滑パラメータ値が異なることを確認することができる。すなわち、測定環境に応じて異なる平滑パラメータが適用されるが、これは、経験的な施行ではなく、一貫した基準を適用して最適な平滑パラメータを決めることができる。
【0071】
図8は、一実施形態に係る電池管理装置の動作方法を示すフローチャートである。電池管理装置の構造および構成要素については、
図1を参照して前述したとおりである。
【0072】
図8を参照すると、一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、先ず、電池セルの電圧を測定するステップ(S810)を行う。例えば、電池管理装置20の電圧測定部210は、備えられたセンサ12を介して電池セルの電圧を測定し、電圧データを取得することができる(
図1および
図2参照)。
【0073】
次に、電圧データを指定された単位でサンプリングして単調増加または単調減少形態のデータに変換するステップ(S820)を行う。電池管理装置20のコントローラ220は、電圧測定部210により測定された電池セルの電圧データをサンプリングし、一定区間で減少することなく増加するか(単調増加)、または一定区間で増加することなく減少する(単調減少)形態のデータに変換することができる(
図5a参照)。
【0074】
具体的な実施形態によると、前記ステップ(S820)は、同一の電圧の大きさを有する前記電池セルの容量値を分類し、前記電圧の大きさ別に前記電池セルの容量値の平均値を算出することで、前記電圧に対するサンプリングを行うステップを含むことができる(
図4参照)。
【0075】
次に、最適な平滑パラメータを用いてデータを平滑化するステップ(S830)を行う。コントローラ220は、サンプリングされたデータの傾きの曲線を緩やかな形態に変換する平滑化過程を経て、隣接したデータ間の連続性を満たすようにすることができる。ステップ830の詳細な過程は、
図9を参照して後述することにする。
【0076】
次に、電池セルの電圧に関するデータを微分信号に変換するステップ(S840)を行う。コントローラ220は、前処理ステップ(S820~S830)が完了した電池セルの電圧データを微分信号(例えば、電圧-容量微分信号dQ/dV)に変換することができる。電圧-容量微分信号は、電池セルの異常電圧降下現象を検出するのに用いることができる。
【0077】
図9は、一実施形態に係る電池管理装置の動作方法において、設定されたアルゴリズムを用いて最適な平滑パラメータを決め、それを用いてデータを平滑化するステップの詳細な過程を示すフローチャートである。
【0078】
図9を参照すると、先ず、予め設定された少なくとも1つの平滑パラメータを用いて電圧データを平滑化するステップ(S831)を行う。一実施形態によると、前記少なくとも1つの平滑パラメータそれぞれは、対応する微分信号のピーク(peak)値が指定された値を超過しない平滑パラメータであってもよい。
【0079】
次に、平滑化された電圧データに基づいて、それぞれの平滑パラメータに対応する微分信号セットを取得するステップ(S832)を行う。この際、それぞれの微分信号曲線は、平滑パラメータ値に応じて微分信号曲線の緩やかな程度が異なり、パラメータ値が大きくなるほど、曲線が緩やかになるものの、原本データとの差が大きくなり、パラメータ値が小さくなるほど、原本データに近づくものの、曲線の振れが大きくなる。
【0080】
次に、微分信号セットそれぞれの曲線の長さ、および原本データを変換した原本微分信号と微分信号セットそれぞれの差に基づいて費用関数を算出するステップ(S833)を行う。コントローラ220は、微分信号曲線の緩やかな程度および原本データとの差を同時に考慮して費用関数を算出することができる。
【0081】
一実施形態によると、前記費用関数を算出するステップ(S833)は、前記平滑パラメータに対応する微分信号を指定された区間で線積分した値である第1変数と、前記原本データと前記平滑パラメータに対応する微分信号との差のRMS(root mean square)値である第2変数を乗じ、前記平滑パラメータに対応する費用関数値を算出するステップを含むことができる。
【0082】
次に、少なくとも1つの平滑パラメータのうち、対応する費用関数値が最小となる平滑パラメータを最適な平滑パラメータに決めるステップ(S834)を行う。このように費用関数を考慮して決められた最適な平滑パラメータは、生成されたデータ(例えば、dQ/dVデータ)曲線の振れを少なくしながらも、原本データとのフィッティングが適切になされるようにするパラメータ値を意味する。
【0083】
このように、ハイパーパラメータ(hyper parameter)が適用される任意の平滑化アルゴリズム(例えば、平滑スプライン(smoothing spline))を活用し、電池セルの電圧の傾きが連続性を満たすようにすることができる。
【0084】
図10は、他の実施形態に係る電池管理装置の動作方法を示すフローチャートである。
図10のステップ(S1010~S1040)は、
図8のステップ(S810~S840)と実質的に同様であるため、重複する説明は省略することにする。
【0085】
電池セルの電圧を微分信号に変換するステップ(S1040)に続き、前記微分信号に対して統計値を算出するステップ(S1050)を行う。この際、微分信号の統計値は、スライディングウィンドウ(Sliding Window)(または、ムービングウィンドウ(Moving Window))方式で電池の異常挙動を判別するために算出される。例えば、微分信号に対する統計値は、標準偏差を含むことができる。
【0086】
次に、微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、前記電池セルに異常が発生したと診断するステップ(S1060)を行う。具体的に、異常診断部230は、電池電圧の微分信号に対する統計値が予め設定された基準値以上である場合に、電池セルに異常電圧降下が発生したと診断することができる。
【0087】
図示してはいないが、測定された電池セルの電圧および微分信号などをメモリ部に格納するステップ、および/または電池セルに異常が発生したと判断されると、警告アラームを発生させるステップをさらに含むことができる。この際、警告アラームは、ディスプレイ部(図示せず)上にメッセージ形態で提供されるか、または光や音響信号として提供されることができる。
【0088】
上述した実施形態に係る電池管理装置の動作方法は、アプリケーションで実現されるか、または多様なコンピュータ構成要素を介して実行可能なプログラム命令語の形態で実現され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されることができる。前記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、プログラム命令語、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0089】
以上で説明した実施形態によると、電池の電圧データを微分信号に変換するために前処理する過程において、設定されたアルゴリズムにより決められた最適な平滑パラメータ、すなわち、平滑化された微分信号曲線の振れを少なくしながらも、原本データとの適切なフィッティング(fitting)を可能にする平滑パラメータを決めることができる。さらに、最適な平滑パラメータを用いて電池の電圧に対する微分信号(例えば、電圧-容量微分信号)を取得し、それに基づいて電池の内部短絡による異常電圧降下現象を正確かつ容易に検出することができ、電池劣化の定量化、異常劣化の判別などの目的を実現することができる。
【0090】
以上、実施形態を構成する全ての構成要素が1つに結合するかまたは結合して動作するものと説明されたからといって、このような実施形態に必ずしも限定されるものではなく、目的の範囲内であれば、全ての構成要素が1つ以上に選択的に結合して動作してもよい。また、以上に記載された「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在できることを意味するため、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいものと解釈されなければならない。
【0091】
以上の説明は本文書に開示された技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本文書に開示された実施形態が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本文書に開示された実施形態の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能である。
【0092】
したがって、本文書に開示された実施形態は本文書に開示された技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本文書に開示された技術思想の範囲が限定されるものではない。本文書に開示された技術思想の保護範囲は後述の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本文書の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】