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特表2025-501115空気支援型ポンピングシーケンスを有する腹膜透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】空気支援型ポンピングシーケンスを有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61M1/28 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537988
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022082450
(87)【国際公開番号】W WO2023129943
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/294,259
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファルマン, オスカル エリク フローデ スティルビョルン
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ヤンソン, オロフ クリステル
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB02
4C077CC09
4C077DD06
4C077DD08
4C077EE04
4C077HH21
4C077JJ02
4C077JJ05
(57)【要約】
本明細書では、空気支援型ポンピングシーケンスを有する腹膜透析(「PD」)システムが開示される。一実施例では、PDシステムは、ハウジングと、ハウジングに収容されたPD流体ポンプと、空気トラップと、空気トラップから延出する流体ラインと、流体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された、流体ラインバルブと、空気トラップの上部から延出する気体ラインと、気体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された、気体ラインバルブとを含む。システムはまた、流体ラインバルブを閉じ、気体ラインバルブを開き、PD流体ポンプに、患者排出後に空気トラップから気体ラインに気体を圧送させ、流体ラインに気体のポケットを形成させ、残留する使用済みPD流体を排出ラインに向かって押し進めさせるように構成された、制御ユニットを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(「PD」)システムであって、
PD流体ポンプと、
空気トラップと、
前記空気トラップから延出する流体ラインと、
前記流体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された、流体ラインバルブと、
前記空気トラップの上部から延出する、気体ラインと、
前記気体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された、気体ラインバルブと、
前記流体ラインバルブを閉じ、前記気体ラインバルブを開き、前記PD流体ポンプに、患者排出後に前記空気トラップから前記気体ラインに気体を圧送させ、前記流体ライン内に気体のポケットを形成させ、残留する使用済みPD流体を、排出ラインに向かって押し進めさせるように構成された、制御ユニットと
を備える、PDシステム。
【請求項2】
前記流体ラインは、前記空気トラップと前記PD流体ポンプとの間に延在する、請求項1に記載のPDシステム。
【請求項3】
前記気体ラインは、前記流体ラインに流体接続されている、請求項1又は2に記載のPDシステム。
【請求項4】
前記空気トラップの上流に配置された、少なくとも1つのPD流体ラインバルブを更に備え、前記PD流体ポンプは、前記空気トラップから気体を引き込み、前記制御ユニットは、前記空気トラップから気体を引き込まれている間に、新しいPD流体が前記空気トラップ内に圧送されるように、前記少なくとも1つのPD流体ラインバルブのうちの少なくとも1つを開くように更に構成される、請求項1、2、又は3に記載のPDシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記流体ラインバルブを開き、前記気体ラインバルブを閉じ、前記PD流体ポンプに、前記空気トラップから前記流体ライン内に新しいPD流体を圧送させ、前記気体のポケットを押し進めさせ、次いで、前記残留する使用済みPD流体を前記排出ラインに向かって押し進めさせるように更に構成される、請求項1、2、又は3に記載のPDシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記PD流体ポンプに、前記気体のポケットを維持するような方法で、新しいPD流体を圧送させるように更に構成される、請求項5に記載のPDシステム。
【請求項7】
前記空気トラップと共に動作可能なレベルセンサを更に含み、前記制御ユニットは、前記PD流体ポンプが前記気体のポケットを生成している間に、前記レベルセンサからの出力を監視するように更に構成される、請求項1、5、又は6に記載のPDシステム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記気体のポケットが所定の容積を有するように、前記PD流体ポンプを動作させるように構成される、請求項1、5、又は6に記載のPDシステム。
【請求項9】
前記所定の容積は、前記空気トラップ内に存在する気体の量に依存する、請求項8に記載のPDシステム。
【請求項10】
前記空気トラップ内に存在する気体は、殺菌又は消毒された供給源から到来するものである、請求項1、7、又は8に記載のPDシステム。
【請求項11】
前記PD流体ポンプは、前記空気ポケットが前記空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体から、残留する使用済みPD流体を分離する傾向があるように、前記制御ユニットによって制御される、請求項1、7、又は8に記載のPDシステム。
【請求項12】
前記PD流体ポンプは、前記空気ポケットが、前記残留する使用済みPD流体と、前記空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体とが混合することを防止する傾向があるように、前記制御ユニットによって制御される、請求項1、10、又は11に記載のPDシステム。
【請求項13】
前記PD流体ポンプは、前記空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体が層流を有するように、前記制御ユニットによって制御される、請求項1、10、又は11に記載のPDシステム。
【請求項14】
前記流体ライン内の前記気体のポケットは、前記流体ライン内に前記気体の一連のポケットを含む、請求項1、10、又は11に記載のPDシステム。
【請求項15】
腹膜透析(「PD」)システムであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから延出する、複数のPD流体供給ラインと、
前記ハウジングでアクセス可能な複数の消毒用コネクタであって、前記供給ラインのそれぞれの遠位端は、消毒シーケンスを実行するために、前記消毒用コネクタのうちの1つに接続される、複数の消毒用コネクタと、
前記消毒用コネクタのうちの1つ、又は、複数の前記PD流体供給ラインのうちの1つと流体連通するように置かれた、フィルタ付き通気口と
を備える、PDシステム。
【請求項16】
前記複数の消毒用コネクタのうちの少なくとも2つの間に延在する、少なくとも1つのバイパスラインを更に含み、
前記フィルタ付き通気口は、前記フィルタ付き通気口が処置中に患者から分離されるように、前記少なくとも1つのバイパスラインのうち1つと流体連通して置かれる、請求項15に記載のPDシステム。
【請求項17】
前記フィルタ付き通気口は、疎水性フィルタ膜を含む、請求項15又は16に記載のPDシステム。
【請求項18】
前記フィルタ付き通気口を通じて、空気を引き込むように構成された、制御ユニットを更に含み、前記空気は、消毒後に消毒流体を排出ラインに向かって押し進める、請求項15、16、又は17に記載のPDシステム。
【請求項19】
前記制御ユニットは、前記空気によって、消毒されたライン及び構成要素から消毒流体を空にするように更に構成される、請求項18に記載のPDシステム。
【請求項20】
前記制御ユニットは、後続の処置のための始動手順の一部として、前記消毒されたライン及び構成要素を空にするように更に構成される、請求項19に記載のPDシステム。
【請求項21】
前記制御ユニットは、前記消毒されたライン及び構成要素が新しいPD流体を用いてフラッシングさせられるように更に構成される、請求項20に記載のPDシステム。
【請求項22】
前記制御ユニットは、PD流体ポンプを使用して、前記複数のPD流体供給ラインのうちの少なくとも1つを介して、少なくとも1つの流体容器から消毒流体が供給させられるように更に構成される、請求項18に記載のPDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に医療用流体処置に関し、特に、透析流体処置に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
様々な原因によって、人の腎臓系は機能しなくなる。腎不全によって、様々な生理的異常が引き起こされる。水分とミネラルのバランスをとること、又は、日々の代謝上の負荷を排出することが、もはや不可能となる。尿素、クレアチニン、尿酸といった代謝の有毒な最終生成物が、患者の血液や組織に蓄積するおそれがある。
【0003】
腎機能の低下、とりわけ腎不全は、透析によって処置される。腎臓が正常に機能していれば除去されるはずの老廃物、毒素、過剰な水分が、透析によって体外に排出される。腎臓の代替のための透析処置は、救命につながる処置であるため、多くの人にとって非常に重要なものである。
【0004】
腎不全療法の1つに血液透析(「HD」)があり、通常、拡散を利用して患者の血液から老廃物が除去される。血液と、透析流体と呼ばれる電解質溶液、又は拡散を引き起こす透析流体との間で、半透過性の透析器を介して、拡散勾配が生じる。
【0005】
血液濾過(「HF」)は、患者の血液から毒素を対流輸送することによる、代替的腎臓代替療法である。HFは、処置中に、体外回路に補充流体又は置換流体を加えることによって実現される。補充流体、及び処置中に患者に蓄積された流体は、HF処置の過程で限外濾過され、中分子及び大分子の除去に特に有益な、対流輸送メカニズムがもたらされる。
【0006】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流クリアランスと拡散クリアランスとを組み合わせた処置法である。HDFは、標準的な血液透析と同様に、透析器を流れる透析流体を用いて、拡散クリアランスをもたらす。更に、補充溶液を体外回路に直接供給して、対流クリアランスをもたらす。
【0007】
ほとんどのHD、HF、HDF処置は、センターで行われる。現在、一部で在宅血液透析(「HHD」)の動きがある。HHDは毎日実施することができ、通常2週間から3週間に1度実施されるセンター内での血液透析処置よりも、療法上の利点があるためである。研究により、処置回数は少ないが処置時間が長い患者よりも、処置回数が多い患者の方が、より多くの毒素及び老廃物が除去され、透析中の流体過多が少なくなることが示されている。より頻繁に処置を受ける患者は、処置前に2から3日分の毒素を蓄積しているセンター内の患者のように、ダウンサイクル(流体と毒素の変動)を経験することはない。地域によっては、最も近い透析センターが患者の自宅から何マイルも離れていることもあり、ドアツードアの処置時間に、1日の大部分を費やすことになる。患者の自宅に近いセンターでの処置であっても、患者の1日の大部分を費やすおそれがある。HHDは、夜間又は日中の、患者がリラックスしたり、仕事をしたり、その他の生産的活動をしている間に行われる。
【0008】
腎不全療法の他の方式は腹膜透析(「PD」)であり、透析流体とも呼ばれる透析溶液を、カテーテルを介して患者の腹膜腔に注入するものである。透析流体は、患者の腹膜腔で腹膜と接触する。老廃物、毒素、及び過剰な水分は、患者の血流から腹膜の毛細血管を通り、拡散及び浸透、すなわち腹膜にわたって起こる浸透圧勾配によって、透析流体に流れ込む。PD透析流体中の浸透剤によって、浸透圧勾配がもたらされる。使用済み、又は使い尽くされた透析流体は患者から排出され、老廃物、毒素、過剰な水分が患者から取り除かれる。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0009】
腹膜透析療法には、連続携行式腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、タイダル腹膜透析、持続注入腹膜透析(「CFPD」)など、様々な種類がある。CAPDは、手動式の透析処置である。ここでは、使用済み、又は使い尽くされた透析流体が腹腔から排出されるように、埋め込みカテーテルを、患者が手動で排出に接続する。その後、患者のカテーテルが新しい透析流体のバッグと連通するように、患者は流体連通を切り替え、新しい透析流体がカテーテルを通して患者に注入される。患者は新しい透析流体のバッグからカテーテルを取り外し、透析流体を腹腔内に滞留させ、そこで老廃物、毒素、過剰な水分の輸送が行われる。滞留時間の後、患者は手動での透析処置を、例えば1日に4回繰り返す。手動式の腹膜透析には、患者の多大な時間と労力が必要であり、改善の余地が十分に残されている。
【0010】
自動腹膜透析(「APD」)は、透析処置に排出、充填、及び滞留サイクルが含まれるという点で、CAPDと類似している。しかしながら、通常、患者が眠っている間に、APD装置によって自動的にこれらのサイクルが実行される。APD装置によって、患者が処置サイクルを手動で行う必要がなくなり、日中に医療品を運ぶことからも解放される。APD装置は、埋め込みカテーテル、新しい透析流体の供給源又はバッグ、及び流体排出に流体接続される。APD装置によって、透析流体供給源からカテーテルを通って、患者の腹膜腔に新しい透析流体が圧送される。また、APD装置によって、透析流体をチャンバ内に滞留させ、廃棄物、毒素及び過剰な水分の輸送を行うことができる。この供給源には、幾つかの溶液バッグを含む、数リットルの透析流体を含めることができる。
【0011】
APD装置によって、使用済み、又は使い尽くした透析流体が圧送され、カテーテルを介して、患者の腹腔から排出される。手動での透析処置と同様に、透析中に、排出、充填、及び滞留のサイクルが数回繰り返される。APD処置の最後に、「最終充填」が行われることがある。最終充填流体は、次の処置が始まるまで患者の腹膜腔に残っていてもよいし、日中のある時点で、手動で空にすることもできる。
【0012】
自動化装置を使用する上記の方法のいずれにおいても、自動化装置は、通常、使い捨てセットで作動し、1回の使用後に廃棄される。使い捨てセットの複雑さに依存して、1日あたり1セットを使用するコストが大きくなることもある。また、日々の使い捨て品には保管スペースが必要なため、家庭や企業にとっては厄介な存在になりかねない。更に、日々の使い捨て品を交換するには、患者や介護者が自宅又は診療所で、毎日セットアップする時間と労力が必要である。
【0013】
上記の各理由から、使い捨て廃棄物を低減するAPD装置を提供することが望ましい。そうすることで、使い捨てアイテムを無くし、流路を再利用するという点で、その流路をできる限り維持することが望ましい。したがって、再利用可能で、又は耐久性のあるPD流体システムの改良が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要約)
公知の自動腹膜透析(「PD」)システムには、典型的には、硬質部分、及び、圧送及びバルブ調節を行うために変形可能な軟質部分を有する、ポンピングカセットを受け入れて作動させる、装置又はサイクラが含まれる。硬質部分は、様々なバッグに延出するチューブに取り付けられる。在宅の患者にとって、使い捨てカセット及びそれに付随するチューブやバッグを、処置のために装填するのが面倒な場合がある。また、使い捨てアイテムが多いため、患者が入力する必要のあるセットアップ手順が多岐にわたり、手違いが起こるおそれがある。
【0015】
一方、本開示のAPDシステム及び関連する手法では、そのPDシステムの流体を運ぶ部分の多くが再利用可能な部品に変換され、それらは処置後に消毒される。装置又はサイクラ内の流体ラインは、再利用される。その他の使い捨てアイテムには、排出バッグ又は屋内排水管につながる排出ライン、及び1つ以上のPD流体容器又はバッグ、例えば、様々なブドウ糖又はグルコースレベルのPD流体容器、及び、例えば、イコデキストリンを含む最終バッグ容器、などがある。一実施形態では、患者に送達される前のPD流体濾過の最終段階を実現するために、患者ラインの遠位端に、使い捨てフィルタが置かれる。
【0016】
本開示のAPDシステムには、ハウジング付きのAPDサイクラが含まれる。少なくとも1本、おそらくは3本以上の再利用可能なPD流体ラインが、ハウジングから延出する。PD流体容器又はバッグに接続されていない場合、再利用可能なPD流体ラインは、ハウジングによって支持され提供される、消毒用コネクタに接続することができる。再利用可能なPD流体ラインは、例えば、ハウジングの前部から延出しており、PD流体ラインにすぐにアクセスできるようにハウジングの前部に設けられた、消毒用コネクタに接続することができる。PD流体容器又はバッグの、色分けされたコネクタ又はキー付きコネクタと一致するように、再利用可能なPD流体ラインを、色分けし、かつ/又はキー付きにすることができる。容器又はバッグには、1.36%グルコースPD流体、2.27%グルコースPD流体、及び/又は、イコデキストリンなどのPD流体の様々な製剤の最終バッグといった、様々なブドウ糖又はグルコースレベルのPD流体を保持することができる。
【0017】
ハウジングの内部では、再利用可能なチューブが、再利用可能なPD流体ラインのそれぞれから、PD流体ラインごとのPD流体ラインバルブを通って、PD流体のインラインヒータまで延びている。一実施形態では、APDサイクラの各バルブは、(例えば、非通電時に)PD流体を塞ぐ、又は、(例えば、通電時に)それ自体を通ってPD流体を流す、再利用可能なバルブ本体を有する、電気作動式バルブである。一実施形態では、PD流体のインラインヒータも電気的に作動するものであり、例えば、加熱のためにPD流体を受け入れる再利用可能なヒータ本体を有する、抵抗ヒータである。一実施形態におけるインラインヒータでは、少なくとも200ミリリットル(「ml」)/分の流量で、PD流体を室温から体温、例えば37℃まで加熱することができる。温度制御のためのフィードバックを提供するために、ヒータに隣接して、例えばヒータの下流に、温度センサが配置される。
【0018】
一実施形態では、再利用可能なチューブが、PD流体のインラインヒータの出口から、空気トラップまで延びている。サイクラのハウジング内のチューブはいずれも、ステンレス鋼といった金属製、あるいは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、又はポリエチレン(「PE」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)といった非PVC材料などの、プラスチック製にすることができる。一実施形態では、PD流体の所望のレベル、又は所望のレベル範囲が空気トラップ内で維持されるように、空気トラップに隣接して、1つ以上のレベルセンサが配置される。一実施形態では、空気トラップの下流の再利用可能な流体ラインに沿って、流体ラインバルブが配置され、本明細書で説明するように、気体ラインに沿って配置された、気体ラインバルブと協働して動作する。レベルセンサの出力によって要求されたときに空気トラップを排出するために、PD流体ラインバルブによって、空気トラップを上流で閉じることができる。
【0019】
再利用可能なPD流体ポンプは、サイクラハウジング内に配置され、圧送するためにPD流体を受け入れる、再利用可能なポンプ本体がそこに含まれる。すなわち、このポンプでは、チューブ又はカセットなどの使い捨てアイテム内に、PD流体を流す必要がない。PD流体ポンプは、電動式ピストンポンプにすることができ、これは本質的に正確であるため、バランスチャンバ、又は理想気体の法則を使用する装置といった、別個のPD流体容積制御装置は不要である。PD流体ポンプは、その代わりに、別個のPD流体容積制御装置で動作することができる、電動式のギアポンプ又は遠心ポンプにすることもできる。
【0020】
PD流体ポンプへの電流レベルを制御することによって、圧力限界以下で患者との間で圧送するように、PD流体ポンプを制御することができる。患者の正の圧力限界は、例えば、1~5psig(例えば、2psig(14kPa))であり得る。患者の負の圧力限界は、例えば、-1.0psig~-3.0psig(例えば、-1.3psig(-9kPa))であり得る。一実施形態では、PD流体ポンプは、双方向式かつ連続式であり、単一のポンプとすることができる。
【0021】
本開示によるAPDシステムのAPDサイクラには、圧力センサ、温度センサ、及び場合によっては導電率センサから信号又は出力を受信し、信号を処理する、又はフィードバックとして出力する、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のメモリを有する、制御ユニットが含まれる。この制御ユニットによって、圧力フィードバックを使用してPD流体ポンプが制御され、処置中には安全な患者圧力限界で、かつ消毒中には安全なシステム限界で、PD流体ポンプが稼働する。制御ユニットによって、温度フィードバックを使用してPD流体ヒータが制御され、新しいPD流体は、例えば体温まで加熱される。
【0022】
更に、制御ユニットによって、PD流体ポンプ及びヒータと協働してPD流体バルブを開閉することで、プライミングシーケンス、患者充填シーケンス、患者排出シーケンス、及びPD処置後の消毒シーケンスが実行される。ここで、少なくとも1つの再利用可能なPD流体ラインのそれぞれが、少なくとも1つの消毒用コネクタのうちの1つに接続され、再利用可能な患者ラインが、再利用可能な患者ライン用コネクタに接続される。消毒シーケンスは、次の処置のためにAPDサイクラを準備するものである。一実施形態では、未使用の新しいPD流体は、最終的な排出後に加熱され、消毒に使用される。
【0023】
一実施形態では、患者排出完了後の制御ユニットによって、気体ラインバルブが開かれ、流体ラインバルブが閉じられ、PD流体ポンプ70によって、少量(例えば、0.5ml以上)の空気、又は空気トラップの上部にある気体(又は混合物)が、空気トラップの上部から引き込まれる。PD流体ポンプは、所望の容積の気体を引き込むために、1つ以上のポンプストロークで動作することができる。また、制御ユニットによって排出ラインバルブが開かれ、PD流体ポンプに、再利用可能な流体ラインを介して、排出ライン用コネクタに向かって気泡を押し進めさせるようにする。移動する気泡によって、先行する患者排出による残留排出物、又は排出流体が、排出ライン用コネクタ、及び、屋内又は容器排水管に向かって押し進められる。
【0024】
空気トラップ内に負圧を生じさせないように、空気ポケットが空気トラップから除去されている間に、同じ容積の新しいPD流体が空気トラップに入ることができるようにするために、制御ユニットによって、1つ以上のPD流体ラインバルブを開くことが考えられる。制御ユニットによって、上部レベルセンサからの出力を監視しすることで、新しいPD流体が空気トラップから気体ラインに引き込まれないことを確実にすることも考えられる。空気ポケットの形成が進行中である間に、上部レベルセンサで空気が検出された場合、一実施形態における制御ユニットによって、気体ラインバルブは閉じられ、PD流体ポンプは停止される。
【0025】
気体ポケットが形成され、導入された後、制御ユニットによって、気体ラインバルブは閉じられ、流体ラインバルブは開かれ、(まだ開いていない場合)1つ以上のPD流体供給ラインバルブは開かれる。そして、PD流体ポンプによって気体ポケットが排出ラインコネクタに向かって押し進められ、それによって残留排出物又は使用済みPD流体を、排出ライン36、及び、屋内又は容器排水管に向かって押し進められる。ここで、新しいPD流体は気体ポケットの上流に位置し、残留する使用済みPD流体又は排出物は、気体ポケットの下流に位置する。制御ユニットによって、PD流体ポンプに、気体ポケット68を押し進める新しいPD流体を低速で圧送させて、気体ポケットの形成を妨げにくい、層流の流体を生成させることが考えられる。
【0026】
本開示のシステムの代替実施形態では、空気を環境から引き込むことができ、不要な気体(例えば、CO、空気、又はそれらの混合物)を環境に排出することができる、フィルタ付き通気口が追加される。一実施形態におけるフィルタ付き通気口には、フィルタ付き通気口を通って入る環境空気を殺菌濾過するように構成された、例えば0.2ミクロンの、疎水性フィルタ膜が含まれる。
【0027】
フィルタ付き通気口は、複数の処置にわたって使用されるが、本明細書で説明する患者ラインの使い捨てフィルタセットに関連するフィルタ膜よりも微生物の危険性が高いため、例えば、サービスの合間に交換される。したがって、患者充填又は患者排出のいずれかのために、フィルタ付き通気口に通じる通気口ラインを、処置中の患者回路の一部ではない、システムの流体位置と連通させることが考えられる。本開示のシステムでは、複数の可能な位置、すなわち、消毒用コネクタ間に延在するバイパスラインが提供される。以下に図示及び説明するバイパスラインは、処置中に分離され、患者に流体接続されることがない。
【0028】
PD処置の合間に消毒が行われるまで、再利用可能なPD流体供給ラインの遠位端を、(バイパスラインが流体接続される)PD装置又はサイクラのハウジングに配置された消毒用コネクタと流体密に接続することによって、バイパスラインが消毒ループに入ることはない。ここで、フィルタ付き通気口の濾過膜を通過するおそれのある、あらゆる病原体が、消毒処置によって死滅される。本システムの制御ユニットによって、必要に応じて装置のバルブを開いて並べ、PD流体ポンプに、フィルタ付き通気口を通じて、例えば消毒シーケンスの最後に濾過された空気を引き込ませて、消毒流体を排出させることが考えられる。そのような空気を、インラインヒータによって加熱して、サイクラの消毒された再利用可能なチューブ類を乾燥させるのに役立てることができる。その代わりに、又は加えて、制御ユニットを使用して、必要に応じてバルブを開いて並べ、PD流体ポンプに、消毒中に形成された気体を、フィルタ付き通気口を介して環境に押し進めさせることができる(消毒中に形成された気体は、例えば、消毒流体が重炭酸塩を含有しており、加熱される場合、COである)。
【0029】
本明細書に記載の開示に照らして、本開示を何ら限定するものではないが、本開示の第1の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、腹膜透析システムは、PD流体ポンプと、空気トラップと、空気トラップから延出する流体ラインと、流体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された流体ラインバルブと、空気トラップの上部から延出する気体ラインと、気体ラインと共に動作するように位置決め及び配列された気体ラインバルブと、流体ラインバルブを閉じ、気体ラインバルブを開き、PD流体ポンプに、患者排出後に空気トラップから気体ライン内に気体を圧送させ、流体ライン内に気体のポケットを形成させ、残留する使用済みPD流体を排出ラインに向かって押し込ませるように構成された、制御ユニットとを含む。
【0030】
本開示の第2の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、流体ラインは、空気トラップとPD流体ポンプとの間に延在する。
【0031】
本開示の第3の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、気体ラインは、流体ラインに流体接続される。
【0032】
本開示の第4の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、空気トラップの上流に配置された、少なくとも1つのPD流体ラインバルブを更に含み、PD流体ポンプは、空気トラップから気体を引き込み、制御ユニットは、新しいPD流体が空気トラップ内に圧送されるように、空気トラップから気体を引き込みつつ、少なくとも1つのPD流体ラインバルブのうちの少なくとも1つを開くように更に構成される。
【0033】
本開示の第5の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、制御ユニットは、流体ラインバルブを開き、気体ラインバルブを閉じ、PD流体ポンプに、新しいPD流体を空気トラップから流体ライン内に圧送して気体のポケットを押し進めさせ、次いで残留する使用済みPD流体を、排出ラインに向かって押し進めさせるように、更に構成される。
【0034】
本開示の第6の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、制御ユニットは、PD流体ポンプに、気体のポケットを維持するような方法で新しいPD流体を圧送させるように更に構成される。
【0035】
本開示の第7の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、空気トラップと共に動作可能なレベルセンサを含み、制御ユニットは、PD流体ポンプが気体のポケットを形成している間に、レベルセンサからの出力を監視するように更に構成される。
【0036】
本開示の第8の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、制御ユニットは、気体のポケットが所定の容積を有するように、PD流体ポンプを動作させるように構成される。
【0037】
本開示の第9の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、所定の容積は、空気トラップ内に存在する気体の量に依存する。
【0038】
本開示の第10の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、空気トラップ内に存在する気体は、殺菌又は消毒された供給源から到来するものである。
【0039】
本開示の第11の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PD流体ポンプは、空気ポケットが、空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体から、残留する使用済みPD流体を分離する傾向があるように、制御ユニットによって制御される。
【0040】
本開示の第12の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PD流体ポンプは、空気ポケットが、残留する使用済みPD流体と、空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体とが混合することを防止する傾向があるように、制御ユニットによって制御される。
【0041】
本開示の第13の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PD流体ポンプは、空気ポケットを前進させるために使用される新しいPD流体が層流を有するように、制御ユニットによって制御される。
【0042】
本開示の第14の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、腹膜透析(PD)システムは、ハウジングと、ハウジングから延出する複数のPD流体供給ラインと、ハウジングでアクセス可能な複数の消毒用コネクタであって、各供給ラインの遠位端が消毒シーケンスを実行するために消毒用コネクタのうちの1つに接続される、複数の消毒用コネクタと、複数の消毒用コネクタのうちの少なくとも2つの間に延在する、少なくとも1つのバイパスラインと、処置中に患者から分離できるように、少なくとも1つのバイパスラインのうちの1つと流体連通して置かれた、フィルタ付き通気口とを含む。
【0043】
本開示の第15の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタ付き通気口には、疎水性フィルタ膜が含まれる。
【0044】
本開示の第16の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、フィルタ付き通気口を通じて空気を引き込むように構成された制御ユニットを含み、空気は、消毒後に消毒流体を排出ラインに向かって押し進める。
【0045】
本開示の第17の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、制御ユニットは、空気によって、消毒されたライン及び構成要素から消毒流体を空にするように構成される。
【0046】
本開示の第18の態様は、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、制御ユニットは、後続の処置のための始動手順の一部として、消毒されたライン及び構成要素が空にさせられるように構成され、消毒されたライン及び構成要素は、新しいPD流体を用いて更にフラッシングされる。
【0047】
本開示の第19の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、図1から図3の1つ以上に関連して説明した特徴、機能性、及び代替案のいずれかを、図1から図3の他のいずれかに関連して説明した特徴、機能性及び代替案のいずれかと、組み合わせることができる。
【0048】
本明細書に記載の上記の態様及び本開示に照らして、本開示の利点は、システムの患者用ラインフィルタ上の粒子負荷をフィルタの粒子負荷容量内に維持することを確実にするのに役立つ、自動腹膜透析(「APD」)サイクラ用のシステムを提供することである。
【0049】
本開示の別の利点は、フラッシング、例えば、患者排出後の、使用済みPD流体又は排出物のフラッシングに必要な、新しいPD流体の量を低減することに役立つ、APDサイクラ用のシステムを提供することである。
【0050】
本開示の更なる利点は、自然に利用可能である、空気又は他の気体(又はそれらの混合物)を使用する、APDサイクラ用のシステムを提供することである。
【0051】
本開示の更に別の利点は、吸気及び排気の両方に使用することができる、環境への濾過されたアクセスを実現する、APDサイクラ用のシステムを提供することである。
【0052】
更なる特徴及び利点が、以下の詳細な説明及び図面に記載されており、これらから明らかになるであろう。本明細書に記載の特徴及び利点は、すべてを含むものではないが、特に、図面及び説明を考慮することで、多くの更なる特徴及び利点が、当業者には明らかであろう。また、どんな特定の実施形態も、本明細書に記載されるすべての利点を有する必要はなく、個々の有利な実施形態を個別に特許請求することが、明確に企図されている。更に、本明細書で使用される用語は、主に読みやすさ及び説明の目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本開示の自動腹膜透析(「APD」)装置又はサイクラ、及び関連システムの、一実施形態の概略図である。
【0054】
図2図2は、流体チューブを通って移動する、本開示の気体ポケットの一実施形態を示す、断面立面図である。
【0055】
図3図3は、図1に示すサイクラ及び関連するシステムで使用するための、フィルタ付き通気口及び通気口ラインの立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
(詳細な説明)
ここで図面、特に図1を参照すると、本開示の自動腹膜透析(「APD」)システム10及び関連する手法には、APD装置又はサイクラ20が含まれる。システム10及びサイクラ20は、使い捨てアイテムを可能な限り排除し、代わりに、その流体搬送部分の大部分を再利用可能な構成要素として提供しようとするものであり、これらは処置後に消毒される。装置又はサイクラ内の流体ラインは、再利用される。特に、図1は、サイクラ20には、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dがそこから延出する、ハウジング22が含まれることを示す。図1は、再利用可能な患者ライン26も、装置又はサイクラ20のハウジング22から延出することを更に示す。再利用可能な患者ライン26は、典型的には再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dよりも長く、再利用可能な患者ライン26が処置のために患者に接続されていないときには、スプール又はホースリール28によって、ハウジング内で巻き取る、又は丸めておくことができる。
【0057】
PD流体容器又はバッグに接続されていないとき、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24d及び患者ライン26は、ハウジングによって支持及び提供される、専用コネクタに接続することができる。再利用可能なPD流体ライン及び患者ラインは、例えば、ハウジングの前面から延出しており、PD流体ライン及び患者ラインに容易にアクセスできるように、同様にハウジングの前面に設けられた、コネクタに接続することもできる。図示の実施形態では、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dの遠位端24eは、ハウジング22に設けられた消毒用コネクタ30a~30dに、流体密に、かつ取外し可能に、それぞれ取り付けられる。再利用可能な患者ライン26の遠位端26dは、ハウジング22に設けられた患者ライン用コネクタ32に、流体密に、かつ取外し可能に取り付けられる。消毒用コネクタ30a~30d及び患者ライン用コネクタ32は、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24d及び再利用可能な患者ライン26がそれぞれ、コネクタから取り外される、又は接続されないときには、自動的に閉じる、又は遮断するように構成される。
【0058】
図1はまた、ハウジング22では、可動式、例えば回転可能又は摺動可能なカバー34cによって取外し可能に覆うことのできる、排出ライン用コネクタ34が提供されることを示している。排出ライン用コネクタ34には、処置のための使い捨て排出ライン36を受け取り、この排出ラインは、排出容器、又は排出バッグ、又は屋内排水管まで延びる場合がある。代替的な実施形態では、排出ライン36は、再利用可能であり、本明細書で説明する消毒ループに接続される。
【0059】
図1は、使い捨てPD流体又は溶液の容器又はバッグ38a~38dが、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dにそれぞれ接続されていることを更に示す。専用のPD流体容器又はバッグ38a~38dの、色分けされたコネクタ又はキー付きコネクタと一致するように、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dの遠位端24eを色分けし、かつ/又は、キー付きにすることができる。容器又はバッグには、同じレベル又は異なるレベルの、デキストロース又はグルコースのPD流体、例えば1.36%グルコースのPD流体、2.27%グルコースのPD流体、及び/又は、PD流体の様々な製剤の最後のバッグ、例えばイコデキストリンを保持することができる。
【0060】
単一の再利用可能なPD流体ライン及びPD流体容器、又は、2つ以上の再利用可能なPD流体ライン及びPD流体容器を含む、任意の数の再利用可能なPD流体ライン、及び、PD流体容器又はバッグを設けることができることを理解されたい。更なる代替的な実施形態では、PD流体容器又はバッグ38a~38dは、単一の再利用可能なPD流体ラインに接続され、それと流体連通する、オンラインPD流体生成源によって置き換えられる。
【0061】
使い捨て排出ライン36(及び使用される場合は関連する容器)、及び使い捨てPD流体容器又はバッグ38a~38dに加えて、一実施形態では、システム10の唯一の他の使い捨て構成要素は、患者への送達前にPD流体濾過の最終段階を実現するために、再利用可能な患者ライン26の遠位端26dで、患者によって取り外し可能に接続される、使い捨てフィルタセット40であることが考えられる。一実施形態では、使い捨てフィルタセット40は、再利用可能な患者ライン26の遠位端26dと、患者の移送セットとの間に接合され、患者の移送セットは、患者に挿入された留置PDカテーテルに通じる。
【0062】
再利用可能なPD流体供給ライン24a~24d、再利用可能な患者ライン26、消毒用コネクタ30a~30d、患者ライン用コネクタ32、排出ライン用コネクタ34、排出ライン36、PD流体容器又はバッグ38a~38d、及び患者ラインフィルタセット40のうちの、任意の1つ以上、又はすべては、例えば、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、若しくはポリエチレン(「PE」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリプロピレン(「PP」)、ポリカーボネート(「PC」)又はポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)といった非PVCの、任意の1つ以上のプラスチック製であると考えられる。
【0063】
図1は、再利用可能な供給チューブ52aが、各再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dから、それぞれPD流体ラインバルブ54a~54dを通って、PD流体インラインヒータ56まで延びることを更に示している。一実施形態では、PD流体ラインバルブ54a~54dを含む、APDサイクラ20のバルブのそれぞれは、再利用可能なバルブ本体を有する、電気的に作動するバルブである。これらのバルブによって、(例えば、フェールセーフ動作のために電力供給されていない場合に)本体を通るPD流体の流れが遮断され、又は、(例えば、電力が供給される場合に)本体を通ってPD流体を流すことができる。図示の実施形態では、バルブ54dは、再利用可能なPD流体供給ライン24b又は24cからPD流体を受け取るための常開型ポートと、再利用可能なPD流体供給ライン24dからPD流体を受け取るための常閉型ポートとを有する、三方向バルブである。一実施形態では、PD流体インラインヒータ56も電気的に作動し、例えば、処置及び消毒加熱のためにPD流体を受け入れる、再利用可能なヒータ本体を有する抵抗ヒータである。一実施形態におけるインラインヒータ56によって、少なくとも200ミリリットル(「ml」)/分までの流量で、(例えば、PD流体が低温環境に貯蔵されている場合に)室温又はより低温から体温、例えば37℃まで、PD流体を加熱することができる。
【0064】
第1の温度センサ58aが、ヒータ56に隣接して、例えばヒータの下流に配置され、そこから温度制御のためのフィードバックが提供される。必要に応じて、加熱アルゴリズムにおいて新しいPD流体の流入温度を考慮に入れることができるように、ヒータ56の上流に、第2の温度センサ(図示せず)を設けることができる。PD流体ポンプ70のすぐ下流には、第2の温度センサ58bが示されており、これは、例えば、PD流体ポンプ70を出る新しいPD流体が、処置のための所望の温度、例えば体温又は37°Cにあることの、第2の監視機能として提供される。
【0065】
図1に示す実施形態では、再利用可能なチューブ52bが、PD流体インラインヒータ56の出口から、空気トラップ60まで延びている。再利用可能なチューブ52a及び52bを含む、サイクラ20のハウジング内の再利用可能なチューブはいずれも、ステンレス鋼といった金属製、あるいは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、又はポリエチレン(「PE」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリプロピレン(「PP」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)といった非PVC材料などのプラスチック製にすることができる。一実施形態では、PD流体の所望のレベル又は所望のレベル範囲が、空気トラップ60内で維持されるように、1つ以上のレベルセンサ62a及び62bが、空気トラップに隣接して配置される。図示の実施形態では、空気トラップ60の下流に、流体ラインバルブ54eが配置され、本明細書で説明するように、気体ラインバルブ54fと協働して動作する。濾過済み空気を引き込むための、フィルタ付き通気口が設けられている場合、レベルセンサ62a又は62bの出力によって要求されたときに空気トラップを空にするために、PD流体ラインバルブ54a~54dによって、空気トラップ60を上流で閉じることができる。
【0066】
再利用可能な流体ライン52c及び気体ライン52rが、それぞれ流体ラインバルブ54e及び気体ラインバルブ54fと、サイクラ20のハウジング22内に配置された、PD流体ポンプ70との間に延びている。図示のように、気体ライン52rは、空気トラップ60の上部から延出する。PD流体ポンプ70には、(i)処置及びプライミングのためのPD流体、(ii)本明細書で論じられる理由のための空気、及び(iii)特定の時点で存在する場合の、PD流体と空気との混合物を受け入れる、再利用可能なポンプ本体が含まれる。すなわち、ポンプ70では、チューブ又はカセットなどの使い捨てアイテム内に、PD流体を流す必要がない。ポンプ70の再利用可能なポンプ本体自体に、PD流体が受け入れられる。PD流体ポンプ70は、例えばピストンポンプにすることができ、これは本質的に正確であるため、バランスチャンバ又は流量計といった、別個のPD流体の容積測定装置は不要である。その代わりに、PD流体ポンプ70は、様々なタイプのセルフプライミング式の、本質的に正確なポンプにすることができる。PD流体ポンプへの電流レベルを制御することによって、圧力限界以下で患者との間で圧送するように、PD流体ポンプ70を制御可能することができる。患者の正の圧力限界は、例えば、1~5psig(例えば、2psig(14kPa))であり得る。患者の負の圧力限界は、例えば、-1.0psig~-3.0psig(例えば、-1.3psig(-9kPa))であり得る。ポンプ70では、必要に応じて、例えば幼児又は乳児のために、より低い圧力を供給することもできる。PD流体ポンプ70は、一実施形態では双方向式かつ連続式であり、単一のポンプとすることができる。
【0067】
図1は、一実施形態において、新しいPD流体の患者ラインバルブ54gが、下流側の温度センサ58bとスプール又はホースリール28との間で、再利用可能な新しいPD流体患者チューブ又はライン52gに沿って配置されることを更に示す。新しいPD流体患者チューブ又はライン52gは、一実施形態では、ダブルルーメンの再利用可能な患者ライン26の、新しいPD流体ルーメンと流体連通する。使用済みPD流体の患者ラインバルブ54hは、一実施形態では、(十字形部64を介して)PD流体ポンプ70とスプール又はホースリール28との間で、再利用可能な使用済みPD流体患者チューブ又はライン52hに沿って配置される。使用済みPD流体患者チューブ又はライン52hは、一実施形態では、ダブルルーメンの再利用可能な患者ライン26の、使用済みPD流体ルーメンと流体連通する。排出ラインバルブ54iは、一実施形態では、下流側の温度センサ58bと排出ライン用コネクタ34との間で、再利用可能な排出チューブ又はライン52iに沿って配置される。
【0068】
第1の患者圧力センサ72aが、PD流体ポンプ70とスプール又はホースリール28との間で、新しいPD流体患者チューブ又はライン52gに沿って配置され、患者用PD流体の正の流体圧力が測定される。第2の患者圧力センサ72bが、気体ライン52rに沿って配置され、空気トラップ60内に存在する、気体の圧力が測定される。第3の圧力センサ72cが、再利用可能な消毒チューブ又はライン52dに沿って配置され、患者からPD流体ポンプ70に戻る、使用済みPD流体の負圧を測定するように位置決めされる。
【0069】
上述したように、患者ライン用コネクタ32が、APDサイクラのハウジング22に配置され、消毒中に、かつ通常は患者が処置を受けていない間に、ダブルルーメンの再利用可能な患者ライン26をそこに受け入れる。一実施形態における患者ライン用コネクタ32には、消毒流体、例えば加熱されたPD流体を、ダブルルーメンの患者ラインの一方のルーメンから、ダブルルーメンの患者ラインの他方のルーメンに流すことのできる、密封された流体のUターン又は180度の転換が含まれる。密封された流体のUターン又は180度の転換は、再利用可能な患者ライン用コネクタ32のキャップ部分として実現することができる。このキャップ部分は、患者ライン用コネクタ32の残りの部分に繋ぐことができ、又はそこから取外すことができる。これにより、ダブルルーメンの再利用可能な患者ライン26が、消毒ループに含まれる。
【0070】
上述したように、一実施形態では、排出ライン36は使い捨て可能であり、処置中にAPDサイクラ20のハウジング22から延出する、排出ライン用コネクタ34に接続される。処置後に、排出ライン36は取り外して廃棄され、排出ライン用コネクタ34は密閉して遮断される。排出ライン用コネクタ34には、消毒流体、例えば加熱されたPD流体が、再利用可能な排出チューブ又はライン52iから、複数の再利用可能な消毒チューブ又はライン52dのうちの1つに、又はその逆に流れることを可能にする、密封された流体のUターン又は180度の転換も含まれる。図1に示す再利用可能な消毒チューブ又はライン52dは、(i)消毒用バルブ54j及び54kを介して、再利用可能な使用済みPD流体患者チューブ又はライン52hまで延在し、かつ、(ii)消毒用バルブ54j及び54lを介して、再利用可能な供給チューブ52aまで延在する。再利用可能な消毒チューブ又はライン52dによって、消毒流体、例えば加熱されたPD流体が、(i)サイクラ20内、及び(ii)再利用可能なPD流体供給ライン24a~24d内、並びに、サイクラ20の外側に位置する再利用可能なダブルルーメン患者ライン26内の、すべての所望の消毒位置に到達することを可能にする、全体的な消毒ループが形成される。消毒用バルブ54j、54k及び54lは、消毒流体の流れ方向を制御するために、必要に応じて消毒中に並べられる。
【0071】
図1は、本開示のシステム10のAPDサイクラ20には、圧力センサ72a~72c、温度センサ58a及び58b、並びに、場合によっては導電率センサ(図示せず)からの信号又は出力を受信し、記憶し、かつ処理する、1つ以上のプロセッサ102、及び1つ以上のメモリ104を有する、制御ユニット100が含まれることを更に示す。制御ユニット100によって、圧力センサ72a及び72bからの圧力フィードバックを使用して、PD流体ポンプ70が制御され、安全な患者圧力限界で、かつ安全なシステム限界で、新しいPD及び使用済みPDが圧送される。制御ユニット100によって、温度センサ58aからの温度フィードバックを使用して、インラインPD流体ヒータ56が制御され、新しいPD流体は、例えば体温又は37°Cに加熱される。
【0072】
制御ユニット100によって、PD流体ポンプ70及びヒータ56と協働して、PD流体バルブ54a~54lを開閉することで、プライミングシーケンス、複数の患者充填シーケンス、複数の患者排出シーケンス、及びPD処置後の消毒シーケンスが実行される。消毒シーケンスでは、再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dのそれぞれが、対応する消毒用コネクタ30a~30dにそれぞれ接続され、再利用可能な患者ライン26は、再利用可能な患者ライン用コネクタ32に接続され、排出ライン用コネクタ34は、その一体型カバー34によって覆われる、又はキャップされる。消毒シーケンスは、次の処置のために、APDサイクラ20を準備するものである。一実施形態では、最終的な排出後に、残存する新しいPD流体が加熱され、消毒のための消毒流体として使用される。
【0073】
図1に示す制御ユニット100には、ユーザインターフェース108と相互作用する、ビデオコントローラ106も含まれる。ビデオコントローラ106には、タッチスクリーン及び/又はメンブレンスイッチといった、1つ以上の電気機械式ボタンで動作する、表示画面を含めることができる。ユーザインターフェース108には、警報、警告、及び/又は、音声ガイダンスコマンドを出力するための、1つ以上のスピーカを含めることもできる。ユーザインターフェース108は、図1に示すように、サイクラ20に備えることができ、かつ/又は、制御ユニット100で動作する、リモートユーザインターフェースとすることができる。制御ユニット100には、医師又は臨床医のコンピュータと接続して機能する、医師又は臨床医のサーバに処置データを送信し、医師又は臨床医のサーバから処方指示を受信するための、送受信装置(図示せず)、及びネットワーク、例えばインターネットへの有線又は無線接続を含めることもできる。
【0074】
一実施形態では、患者排出完了後の制御ユニット100によって、気体ラインバルブ54fが開かれ、流体ラインバルブ54eが閉じられ、PD流体ポンプ70に、少量(例えば、0.5ml)の空気、又は空気トラップ60の上部に存在する気体(又は混合物)を、空気トラップ60の上部から引き込ませる。PD流体ポンプ70は、所望の容積の気体を引き込むために、1つ以上のポンプストロークで動作することができる。また、制御ユニット100によって、排出ラインバルブ54iが開かれ、PD流体ポンプ70に、再利用可能な流体ライン52cを介して、排出ライン用コネクタ34に向かって気泡を押し進めさせる。移動する気泡によって、先行する患者排出による残留排出物又は排出流体は、排出ライン用コネクタ34、及び、屋内又は容器排水管に向かって押し進められる。
【0075】
排出物又は残留する排出流体を増加させるために、制御ユニット100によってPD流体ポンプ70を動作させ、気体ラインバルブ54fを開き、流体ラインバルブ54eを閉じて、複数の小容量空気ポケット(例えば、0.5ml)を並べ、それぞれが、ある容積の排出物又は残留する排出流体を、排出に向かって押し進めるようにすることが考えられる。あるいは、制御ユニット100によってPD流体ポンプ70を動作させ、気体ラインバルブ54fを開き、流体ラインバルブ54eを閉じて、より大きな容積の空気ポケット(例えば、5~10ml)を空気トラップ60に引き込み、かつ空気トラップ60から押し進めるようにプログラムすることがでる。それにより、より大きな容積の残留する排出物又は使用済みPD流体が、排出に向かって押し進められる。一実施形態において、1つ以上の空気ポケットを形成するために引き込まれ、使用される空気又は気体の量は、空気トラップ60内で利用可能な空気又は気体の量に依存する。1つ以上の空気ポケットの容積にかかわらず、本開示のシステム10の目標は、新しいPD流体と使用済みのPD流体との混合量を減少させることである。これにより、使用済みPD流体を排出及び排出ライン52iに運ぶライン52cの一部などの、再利用可能なラインをフラッシングするのに必要な、新しいPD流体の量が減少する。特にタイダルフローAPDといった特定のタイプのAPDでは、多くの患者との充填及び排出があり、フラッシングに必要な量の新しいPD流体が著しい値に積み上がるおそれがある。空気ポケット(複数可)が、新しいPD流体と使用済みPD流体との間の障壁(複数可)として作用することで、PD流体の混合が制限される。
【0076】
上記の空気除去及び空気ポケット形成の実施形態のいずれにおいても、空気トラップ内に負圧を生じさせないように、空気ポケット(複数可)が空気トラップから除去されている間に、同様の容積の新しいPD流体を空気トラップ60に入れることができるようにするために、制御ユニット100によって、1つ以上のPD流体ラインバルブ54a~54dを開くことが考えられる。上記の空気除去及び空気ポケット形成の実施形態のいずれにおいても、制御ユニット100によって、上部レベルセンサ62aからの出力を監視して、新しいPD流体が空気トラップ60から気体ライン52rに引き込まれないことを確実にすることも考えられる。空気ポケットの形成が進行中である間に、上部レベルセンサ62aで空気が検出されない(流体が検出される)場合、一実施形態における制御ユニット100によって、気体ラインバルブ54fを閉じ、流体ラインバルブ54eを開き、PD流体ポンプ70に、代わりに新しいPD流体を使用して、フラッシングを実施させる。代替の実施形態では、制御ユニット100は、上部レベルセンサ62aで読み取った値に関係なく、空気トラップ60の上部から空気を引き込もうと試みるようにプログラムされる(このことは、気体ラインバルブ54fを開く前、開いた後にかかわらず行うことができる)。
【0077】
代替又は追加の流体ラインをフラッシングするために、排出ライン36に加えて、空気ポケットを使用できることを理解されたい。システム10では、例えば、患者ライン26、PD流体供給ライン24a~24d、及び/又はライン52dをフラッシングするために、空気ポケットを使用することができる。制御ユニット100は、空気ポケット(複数可)を所望の患者ライン26、PD流体供給ライン24a~24d、及び/又はライン52dに導くために、1つ以上のバルブ54a~54lを開くように構成することができる。
【0078】
ここで図2を参照すると、1つ以上の空気ポケットが形成され、導入された後、制御ユニット100によって、気体ラインバルブ54fは閉じられ、流体ラインバルブ54eは開かれ、(まだ開放していない場合)1つ以上のPD流体ラインバルブ54a~54dは開かれる。そして、PD流体ポンプ70に、1つ以上の気体ポケット68を排出ライン用コネクタ34に向かって押し進めさせ、それによって残留排出物又は使用済みPD流体を、排出ライン36、及び、屋内又は容器排水管に向かって押し進めさせる。残留する使用済みPD流体又は排出物を除去するための重要なラインは、PD流体ポンプ70の上流に位置する十字形部64と、PD流体ポンプ70の下流に位置するT字形部66との間に位置する、再利用可能な流体ライン52cである。図2は、再利用可能な流体ライン52c、再利用可能な排出チューブ若しくはライン52i、又は可撓性、例えば使い捨ての排出ライン36などのラインに沿って流れる、異なる時点における気体ポケット68(例えば、空気、CO又はそれらの混合物)を示す。図示の実施形態では、新しいPD流体は気体ポケット68の上流に位置し、一方、残留する使用済みPD流体又は排出物は、気体ポケット68の下流に位置する。
【0079】
気体ポケット68の形成を妨げにくい層流の流体流れを生成させるために、制御ユニット100によって、PD流体ポンプに、気体ポケット68を押し進める新しいPD流体を、低速、例えば100ml/分以下で圧送させることが考えられる。一実施形態におけるポンプ速度は、流体の流れを層流領域内に留まらせるべく、2300未満のレイノルズ数を生成するように選択することができる。PD流体ポンプ70を更に200ml/分で作動させ、関連する再利用可能なチューブが内径2mmであると仮定すると、約950のレイノルズ数が得られ、これは層流範囲の2300をはるかに下回るものである(チューブの直径は、より大きく、例えば、内径4mmであってもよく、200ml/分の流量で、依然として層流のままにすることができる)。しかしながら、図1は、再利用可能なチューブには、PD流体の流れをより乱流にする傾向がある、複数の構成要素の接続及び転換などが含まれることを示している。とはいえ、例えば、本明細書に記載の空気ポケットによるフラッシングを行うために、50~100ml/分の流量でPD流体ポンプ70を作動させることで、高度に層流化されたPD流体流が生じるであろう。
【0080】
ここで図3を参照すると、本開示のシステム10の、代替実施形態が示されている。図1のシステム10は環境に対して閉じられており、これは、空気トラップ60の上部で収集された気体が、おそらくはPD流体容器又はバッグ38a~38dから、又は、おそらく消毒による副産物(例えば、消毒流体が重炭酸塩を含有し、加熱される場合、CO)として、殺菌された場所から到来することを意味することを理解されたい。したがって、図1又は図2の実施形態における気体は、微生物の増殖を促進すべきでないという観点から、安全なものである。
【0081】
図3では、通気ライン52vの端部に、フィルタ付き通気口74を追加することが考えられている。これにより、空気を環境から引き込むことが可能となり、不要な気体(例えば、CO、空気、又はそれらの混合物)を環境に排出することができる。一実施形態におけるフィルタ付き通気口74には、フィルタ付き通気口74を通って入る環境空気を殺菌濾過するように構成された、例えば0.2ミクロンの、疎水性フィルタ膜が含まれる。PD流体がフィルタ付き通気口74に到達することを防止するために、一方向バルブ又はチェックバルブ76を、通気ライン52vに配置することができる。濾過された空気をシステム10内に選択的に取り込めるようにするために、制御ユニット100の制御下にあるソレノイド式通気バルブ78を、通気ライン52vに沿って配置することもできる。フィルタ付き通気口74が流体ラインに接続されている場合、バルブ78には、空気への選択的なアクセスを可能にする、三方向バルブを含めることができる。一実施形態では、三方向バルブ78は、空気トラップ60と気体ラインバルブ54fとの間の、流体ラインに沿って接続される。
【0082】
使い捨てフィルタセット40に関連するフィルタ膜は、同様に殺菌グレードの親水性膜である。これは、患者と連通する再利用可能な患者ライン26内に置かれるが、各処置後に廃棄され、交換される。一方、フィルタ付き通気口74は、複数の処置にわたって使用されるが、使い捨てフィルタセット40に関連するフィルタ膜よりも微生物の危険性が高いため、例えばサービスの合間に交換される。したがって、患者充填又は患者排出のいずれかのために、フィルタ付き通気口74に通じる通気ライン52vを、処置中の患者回路の一部ではない、システム10の流体位置と連通させることが考えられる。図1のシステム10は、通気口74をそこに接続することができる、いくつかの位置を示している。例えば、通気口74は、通気ライン52vを介して、消毒用コネクタ30aと30bとの間に延在するバイパスライン52y、並びに、30cと30dとの間に延在するバイパスライン52zに、それぞれ接続することができる。図1に示すようなバイパスライン52y又は52zは、処置中に分離され、患者と流体接続されることがない。
【0083】
再利用可能なPD流体供給ライン24a~24dの遠位端24eが、消毒用コネクタ30a~30dと流体密に接続されることによって、PD処置の合間の消毒が行われるまで、バイパスライン52y又は52zは、消毒ループに入れられない。ここで、フィルタ付き通気口74の濾過膜を通過するおそれのある病原体が、消毒処置によって死滅される。
【0084】
別の実施形態では、フィルタ付き通気口74は、消毒用コネクタ30a~30dのうちの1つと、又は、複数のPD流体供給ライン24a~24dのうちの1つと、流体連通して置かれる。場合によっては、フィルタ付き通気口74は、再利用可能な供給チューブ52a、又はPD流体ポンプ70と、流体連通して置かれる。
【0085】
更なる実施形態では、通気ライン52vを介したフィルタ付き通気口74を、空気トラップ60に接続することができる。システム10が殺菌された気体を受け取るように構成されていない場合、フィルタ付き通気口74を使用して、システム10内に外気を引き込むことができる。これらの実施形態では、フィルタ付き通気口74は、空気トラップ60の上部に流体結合されるか、又は、空気トラップ60と一体形成される。
【0086】
システム10の制御ユニット100によって、必要に応じてバルブを開いて並べ、PD流体ポンプ70に、フィルタ付き通気口74を通じて、例えば消毒シーケンスの最後に濾過済み空気を引き込ませて、消毒流体を排出させることが考えられる。そのような空気は、インラインヒータ56によって加熱されて、サイクラ20及びシステム10の消毒された再利用可能なチューブ類を乾燥させるのに役立てることができる。その代わりに、又は加えて、制御ユニット100を使用して、必要に応じてバルブを開いて並べ、PD流体ポンプ70に、消毒中に形成された気体を、フィルタ付き通気口74を介して環境に押し進めさせることができる(消毒中に形成された気体は、例えば、消毒流体が重炭酸塩を含有し、加熱される場合、CO)。
【0087】
上述したように、空気トラップ60に、フィルタ付き通気口を設けることが考えられる(制御ユニット100の制御下で、一方向バルブ76及びソレノイド式バルブ78を設けることもできる)。ここで、フィルタ付き通気口74は、処置中に使用される空気トラップ60とバルブ調整により流体連通しているため、消毒後に制御ユニット100によって、処置の終了時、又は新しい処置の始動手順の開始時に、システム10のPD装置又はサイクラ20の再利用可能な流体ライン及び構成要素から、流体が排出されると考えられる。このことは、バイパスライン52y及び52zに接続されたフィルタ付き通気口74の場合であっても、同様である。したがって、(例えば、通気口74でフィルタが損傷することで)再利用可能なラインに引き込まれた、意図せざる細菌又は病原体が、フラッシングされて排出される。処置の終了時に、このような排出を行うことで、細菌又は病原体を、可能な限り早く除去することが好ましい。新しい処置の開始時に、このような排出を行うことで、細菌又は病原体を、新鮮な、新しいPD流体で、更にフラッシングすることができる。
【0088】
本明細書に記載の、現在好ましい実施形態に対する様々な変形及び修正が、当業者には明らかであることを理解されたい。したがって、そのような変形及び変更は、添付の特許請求の範囲の対象となることが意図されている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】