(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ハロゲン化キサンテン含有局所抗グラム陽性菌眼科用組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/352 20060101AFI20250109BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20250109BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250109BHJP
A61K 41/00 20200101ALN20250109BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K31/365
A61P27/02
A61P31/04
A61K41/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538697
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022054076
(87)【国際公開番号】W WO2023129542
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510293969
【氏名又は名称】プロヴェクタス ファーマテック,インク.
(71)【出願人】
【識別番号】512018287
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ミチオ クロス
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ブイ. パーシング
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ホロヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン 三世、 レイシー
(72)【発明者】
【氏名】エリック エー. ワクター
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ピー. ガムソン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086CA01
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、グラム陽性菌に感染した哺乳動物の眼を治療するための局所眼科システムを考慮する。このシステムは、水性眼科用担体に溶解又は分散され、約0.2μg/mLから約50μg/mLの抗菌性角膜炎治療に有効な濃度で存在するハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む眼科用組成物を含む。眼科用組成物は、pH値が約6.5から約7.6、粘度が約10から約300cps、浸透圧が約270mOsm/kgから約340mOsm/kgである。眼科用組成物は、化学線に対して不透明な容器内に存在する。また、眼科用組成物を感染した眼に投与し、治療した眼を約3時間から約12時間、実質的に化学線のない状態に維持することによって、眼のグラム陽性菌感染症に罹患している哺乳動物を治療する方法も考慮される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の眼のグラム陽性菌感染症の治療に必要な局所眼科システムであって、
前記システムは、水性点眼剤中に溶解又は分散されたハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む眼科用組成物を含み、該組成物は約0.2μg/mLから約50μg/mLの細菌性角膜炎治療に有効な濃度で存在し、
約6.5から約7.6のpH値と、約10から約300cpsの粘度と、約270mOsm/kgから約340mOsm/kgの浸透圧を有し、化学線に対して不透明な容器内に存在する局所眼科システム。
【請求項2】
前記組成物が更に、グリセリン又はプロピレングリコール又はグリセリン及びプロピレングリコールの両方を最大で前記組成物の合計2.5重量パーセント含む、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項3】
少なくとも一部の前記浸透圧が、1つ以上の水溶性のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの塩化物、リン酸塩、及び硝酸塩の存在によって与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項4】
前記粘度が、前記組成物の前記pH値でイオン電荷のない1つ以上のポリマーによって少なくとも部分的に与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項5】
前記組成物の前記pH値でイオン電荷のない前記ポリマーが、PEG400、PEG1000、デキストラン、デキストリン、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリ(ビニルアルコール)のうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項4に記載の局所眼科システム。
【請求項6】
前記粘度が、前記組成物の前記pH値でアニオン電荷を帯びる1つ以上のポリマーによって少なくとも部分的に与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項7】
前記組成物の前記pH値でアニオン電荷を帯びる前記ポリマーが、a)ヒアルロン酸、b)各架橋剤が1分子当たり平均して少なくとも3つのアリル基を含む、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋された水溶性の部分的に中和された架橋アクリル酸、メタクリル酸及び共重合体、c)水膨潤性であるが非水溶性の部分的に中和された、少なくとも80重量パーセントのモノエチレン性不飽和カルボキシ官能性モノマーと約0.05から約1.5重量パーセントの3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエン又は2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンである架橋剤との共重合反応生成物、及びd)部分的に中和されたカルボキシメチルセルロースのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項6に記載の局所眼科システム。
【請求項8】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式1及び/又は式2の一方又は両方の化学式を有し、
【化1】
式中、R
1が独立してF、Cl、Br、I、H又はC
1-C
4アルキルであり;
R
2、R
3、R
4、及びR
5が独立してCl、H又はIであり、R
2、R
3、R
4、R
5から選択される少なくとも1つの置換基がIであり;
R
6が独立してH又はC
1-C
4アルキルであり;R
11がH又はC
1-C
4アルキルであり;R
12がH又はC
1-C
7アシルであり;すべての(a)互変異性型、(b)アトロプ異性体、(d)式2に示すラクトン型の光学異性体、及び(e)それらの薬学的に許容される塩、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項9】
前記式1及び式2の前記ハロゲン化フルオレセインのR
1がクロロ又はブロモ置換基のいずれかである一方、それらの式のR
2、R
3、R
4、及びR
5のそれぞれが、以下の式I及び式IIに存在するヨウド置換基であり、Xが酸素又は窒素であり、「n」がゼロ又は1であり、Xが
【化2】
酸素である場合、nがゼロであり、R
7が存在せず芳香族エステルを形成するのに対して、Xが窒素である場合、nが1であり、R
7が存在して芳香族アミドを形成し、
Xが酸素である場合、R
7が、水素(H)、薬学的に許容されるカチオンであるM
+、C
1-C
4アルキル、及び芳香環含有置換基からなる群から選択され、
前記芳香環含有置換基が、独立して窒素、酸素若しくは硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む、5若しくは6員を含む単環、又は5,6若しくは6,6縮合芳香環系であり、
Xが窒素である場合、R
7及びR
8が同じか又は異なり、水素、C
1-C
4アルキル、芳香環含有置換基又は5若しくは6員環を形成するアミド窒素原子と共にアミド窒素原子R
7及びR
8と共に含んでなる群から選択される、請求項8に記載の局所眼科システム。
【請求項10】
前記芳香族エステル又は芳香族アミドの前記芳香環含有置換基が非置換であり、次のものからなる群から選択され、
【化3】
である、請求項9に記載の局所眼科システム。
【請求項11】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式Ia及び/又は式IIbの一方又は両方の化学式を有し、
【化4】
式中、M
+が薬学的に許容されるカチオンである、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項12】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルがローズベンガルジナトリウムである、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項13】
角膜炎を示すグラム陽性菌に感染した眼を有する哺乳動物対象を治療する方法であって、水性眼科用担体に溶解又は分散されたハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む眼科用組成物であって、前記組成物中に約0.2μg/mLから約50μg/mLの細菌性角膜炎治療に有効な濃度で存在し、約6.5から約7.6のpH値と、約10から約300cpsの粘度と、約270mOsm/kgから約340mOsm/kgの浸透圧を有する眼科用組成物を前記菌に感染した眼に投与することによって前記菌に感染した眼を治療するステップと、前記治療した眼を実質的に化学線のない状態に約3時間から約12時間維持するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記治療が前記実質的に化学線のない状態で実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記眼科用組成物が、前記投与の前に化学線に対して不透明な容器に保持される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式1及び/又は式2の一方又は両方の化学式を有し、
【化5】
式中、R
1が独立してF、Cl、Br、I、H又はC
1-C
4アルキルであり;
R
2、R
3、R
4、及びR
5が独立してCl、H又はIであり、R
2、R
3、R
4、R
5から選択される少なくとも1つの置換基がIであり;
R
6が独立してH又はC
1-C
4アルキルであり;R
11がH又はC
1-C
4アルキルであり;R
12がH又はC
1-C
7アシルであり;すべての(a)互変異性型、(b)アトロプ異性体、(d)式2に示すラクトン型の光学異性体、及び(e)それらの薬学的に許容される塩、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記式1及び式2の前記ハロゲン化フルオレセインのR
1がクロロ又はブロモ置換基のいずれかである一方、それらの式のR
2、R
3、R
4、及びR
5のそれぞれが、以下の式I及び式IIに存在するヨウド置換基であり、Xが酸素又は窒素であり、「n」がゼロ又は1であり、Xが
【化6】
酸素である場合、nがゼロであり、R
7が存在せず芳香族エステルを形成するのに対して、Xが窒素である場合、nが1であり、R
7が存在して芳香族アミドを形成し、
Xが酸素である場合、R
7が、水素(H)、薬学的に許容されるカチオンであるM
+、C
1-C
4アルキル、及び芳香環含有置換基からなる群から選択され、
前記芳香環含有置換基が、独立して窒素、酸素若しくは硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む、5若しくは6員を含む単環、又は5,6若しくは6,6縮合芳香環系であり、
Xが窒素である場合、R
7及びR
8が同じか又は異なり、水素、C
1-C
4アルキル、芳香環含有置換基又は5若しくは6員環を形成するアミド窒素原子と共にアミド窒素原子R
7及びR
8と共に含んでなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記芳香族エステル又は芳香族アミドの前記芳香環含有置換基が非置換であり、次のものからなる群から選択され、
【化7】
である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式Ia及び/又は式IIbの一方又は両方の化学式を有し、
【化8】
式中、M
+が薬学的に許容されるカチオンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルがローズベンガルジナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2021年12月28日に出願された米国出願第63/294252号の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
角膜疾患は、世界的に単眼盲の主な原因であり、特に社会的に疎外された人々に影響を与えている。主に伝染性角膜炎によって引き起こされる角膜混濁は、世界的に失明の第4位の原因であり、世界で最も資源の少ない国々における回避可能な視力障害の10%を占める。インドだけで、毎年約200万人が角膜潰瘍を発症している。米国では、伝染性角膜炎はコンタクトレンズの装用に関連することが多いが、資源の乏しい国では、農作業中に受けた眼外傷が原因であることが多い。[Austin et al., Ophthalmology 124(11):1678-1689(2017).]
【0003】
角膜潰瘍、角膜炎は角膜にできる開放創であり、よく見られる人間の眼の疾患である。外傷、特に植物質による外傷のほか、化学傷害、コンタクトレンズ、感染症などによって引き起こされる可能性がある。内反、二重まつ毛、角膜ジストロフィー、乾性角結膜炎(ドライアイ)など、他の眼疾患も角膜潰瘍の原因となる可能性がある。
【0004】
多くの微生物が感染性角膜潰瘍の原因となる。その中には、細菌、真菌、ウイルス、原生動物、クラミジアなどがある。
【0005】
細菌性角膜炎は、黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌、大腸菌、腸球菌、緑膿菌、ノカルジア菌、淋菌を含む多くの細菌及びその他の細菌によって引き起こされる可能性がある。多剤耐性(MDR)グラム陽性菌の出現の増加は、公衆衛生上の大きな脅威である[Bassetti et al., Annal. Clinic. Microbiol. Antimicrob. 12:1-15(2013);Butler et al., J. Antibiot. 66:571-591(2013);及びWoodford et al., J. Infect. 59:S4-16(2009)]。特に、ブドウ球菌、腸球菌、及び連鎖球菌種のMDR株は、罹患率と死亡率に大きな影響を与える[Dupont et al., J. Antimicrob. Chemother. 66:2379-2385(2011)].
【0006】
真菌性角膜炎は、深くて重度の角膜潰瘍を引き起こす。これは通常、アスペルギルス種、フザリウム種、カンジダ種、またクモノズカビ、ケカビ、及びその他の真菌によって引き起こされる。真菌性角膜炎の典型的な特徴は、発症が遅く、進行が緩徐であることであり、兆候は症状よりもはるかに多くなる。潰瘍の周りの小さな周辺病巣は真菌性角膜炎の一般的な特徴であり、眼の前房の炎症細胞を伴う疾患(前房蓄膿)が観察される。
【0007】
ウイルス性角膜炎は角膜潰瘍を引き起こす。これは、単純ヘルペス、帯状疱疹、及びアデノウイルスによって最も一般的に引き起こされる。コロナウイルスや他の多くのウイルスによっても引き起こされる可能性がある。
【0008】
ヘルペスウイルスは樹枝状潰瘍を引き起こし、これは個人の生涯にわたって再発する可能性がある。単純ヘルペスウイルス(HSV)角膜炎は、米国では推定50万人、世界では推定150万人に影響を与えている。これは、先進国の多くで片側性感染性角膜失明の最も一般的な原因である。[Austin et al., Ophthalmology 124(11):1678-1689(2017).]
【0009】
ウイルス性角膜炎は、慢性化したり再発したりする可能性がある点で、細菌性角膜炎や真菌性角膜炎とは異なる。痛みを伴い、視力を脅かす感染症であるだけでなく、HSV角膜炎は、患者が活動性感染症を経験していない場合でも、生活の質に重大な影響を与えることが示されている。ウイルス性角膜炎のあまり一般的ではない形態には、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)角膜炎やサイトメガロウイルス(CMV)角膜炎がある。[Austin et al., Ophthalmology 124(11):1678-1689(2017).]
【0010】
アカントアメーバ角膜炎などの原虫感染症は、激しい痛みを特徴とし、プールで泳ぐコンタクトレンズ使用者に関連する。
【0011】
表在性潰瘍は上皮の一部の喪失を伴う。深部潰瘍は実質に広がったり、実質を貫通したりして、重度の瘢痕や角膜穿孔を引き起こす可能性がある。潰瘍が実質を貫通すると、デスメ膜瘤が生じる。このタイプの潰瘍は特に危険であり、適切なタイミングで治療しない場合に、急速に角膜穿孔を引き起こす可能性がある。
【0012】
潰瘍の場所は原因によって多少異なる。中心潰瘍は通常、外傷、ドライアイ、又は顔面神経麻痺や眼球突出による曝露によって引き起こされる。内反、重度のドライアイ、及び睫毛乱生(睫毛の内反)は、周辺角膜の潰瘍を引き起こす可能性がある。免疫介在性眼疾患は、角膜と強膜の境界に潰瘍を引き起こす可能性がある。これらには、関節リウマチ、酒さ、及び全身性強皮症が含まれ、これらはモーレン潰瘍と呼ばれる特殊なタイプの角膜潰瘍を引き起こす。モーレン潰瘍は、角膜輪部の内側の周囲にクレーターのような陥没があり、通常は縁が張り出している。
【0013】
最適な治療には適切な診断が不可欠である。潰瘍の原因が感染性か非感染性かを判断する必要がある。
【0014】
細菌性角膜潰瘍では通常、感染症を治療するために集中的な強化抗生物質療法が必要である。真菌性角膜潰瘍では、局所性抗真菌薬の集中的な塗布が必要である。ヘルペスウイルスによって引き起こされるウイルス性角膜潰瘍は、1日に少なくとも5回点眼する局所アシクロビル軟膏などの抗ウイルス薬に反応することがある。これと並行して、鎮痛剤などの支持療法が通常行われ、これには瞳孔を散大させて毛様体筋の痙攣を止めるアトロピンやホマトロピンなどの局所毛様体筋麻痺薬が含まれる。
【0015】
表在性潰瘍は1週間足らずで治癒することがある。深部潰瘍やデスメ膜瘤には、結膜グラフトや結膜フラップ、ソフトコンタクトレンズ、又は角膜移植が必要になることがある。通常、タンパク質摂取やビタミンCなどの適切な栄養摂取が推奨される。角膜潰瘍がビタミンAの欠乏が原因となって引き起こされる角膜軟化症の場合、経口又は筋肉内経路でビタミンAを補給する。角膜潰瘍に通常禁忌である薬剤は、外用副腎皮質ホルモン剤[Alhassan et al., Cochrane Database Syst Rev.1(1):CD006131(2014)]及び麻酔薬であり、これらは、いかなる種類の角膜潰瘍にも使用すべきではない。なぜなら、治癒を妨げ、真菌や他の細菌との重複感染を引き起こすことがあり、多くの場合、症状を悪化させることになるためである。
【0016】
よく言及される問題は、「赤目」、「結膜炎」、「角膜潰瘍/角膜炎」などであった。結膜炎は、結膜血管の拡張を引き起こし、炎症を引き起こすよく見られる疾患である。ウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎はどちらも赤目を呈し、伝染性が高い。評価は、視力のチェックと懐中電灯又は細隙灯による検査を含む必要がある。角膜潰瘍又は感染の兆候を除外するために、フルオレセイン点眼薬を結膜嚢に点眼し、細隙灯又は眼底鏡のコバルトブルーの光で眼を観察する必要がある。
【0017】
ウイルス性結膜炎は、感染性結膜炎の最も一般的な原因である。この感染症は、子供よりも成人に多く見られる。ほとんどの症例はアデノウイルスが原因である。時には、単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹ウイルスが原因となることもある。ウイルス性結膜炎には特別な治療法がないため、一般的に患者にはウイルス性結膜炎は自己限定的であるとアドバイスされる可能性がある。
【0018】
細菌性結膜炎は、結膜炎の原因としては頻度が低いが、子供に多く見られる。最も一般的な細菌は、インフルエンザ菌、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌である。抗生物質点眼薬を使用すると、臨床的及び微生物学的寛解率が向上する。多くの場合、広域スペクトルの局所抗生物質が推奨される。
【0019】
角膜の感染症(細菌性角膜炎)は急速に進行する可能性があるため、応急手当が必要な眼科的緊急症である。これは、労働年齢の成人における視力障害の最も一般的な原因の1つである。米国では、毎年約30,000件の細菌性角膜炎が報告されている[Sharma et al., Ocul Surf 15:670-679(2017)]。
【0020】
細菌感染は伝染性角膜炎の最も一般的な原因である。一般的な病原細菌には、S.アウレウス、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、S.ニューモニエ、及び緑膿菌などがある[Teweldmedhin et al., BMC Ophthalmol 17:212(2017)]。P.エルギノーザは、コンタクトレンズ装用者の細菌性角膜炎に関係する最も一般的な微生物である。
【0021】
細菌性潰瘍は通常、以下で考察するように市販の局所抗生物質点眼薬による治療に反応するが、北米ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの抗生物質耐性感染症の割合が増加しており、懸念されている。米国疾病予防管理センター(CDC)は、毎年200万人が薬剤耐性菌に感染していると推定している。米国におけるMRSAの眼分離株の約80%は、最も一般的に処方される抗生物質クラスであるフルオロキノロンに耐性があると報告されている。[Austin et al., Ophthalmology 124(11):1678-1689(2017)。]
【0022】
局所抗生物質が現在の治療の中心であり、選択肢にはフルオロキノロンの単独療法(シプロフロキサシン0.3%又はオフロキサシン0.3%を1~2滴、48時間毎時、その後治癒するまで4時間毎)又は強化アミノグリコシド/セファロスポリンの併用療法(強化セファロチン5%とゲンタマイシン0.9%を1~2滴、48時間毎時、その後治療反応に応じて頻度を減らす)が含まれる。これらの投薬計画は同様の効果があるが、フルオロキノロンは化学性結膜炎と眼の不快感のリスクを軽減する。オフロキサシンと比較して、シプロフロキサシンは白色角膜沈殿物のリスクを高める。また、菌を根絶するか損傷を修復するのに角膜移植が必要になることがある。明らかに効果的であるが、1時間ごとの点眼治療は多くの患者にとって従うのが難しい投薬計画である。
【0023】
クロラムフェニコールは、充血した眼に処方される最も一般的な第一選択の抗生物質である。点眼薬としても眼軟膏としても、いくつかの市販製品が入手可能である。例として、クロラムフェニコールを0.25%及び0.5%含む点眼液と、クロラムフェニコールを1%含む眼軟膏が、PrPENTAMYCETIN(登録商標)の商品名でSandoz Canada Inc.から入手可能である。
【0024】
点眼液の用法及び用量の指示には、「患眼に3時間おきに点眼液を2滴、又は必要に応じてそれ以上の頻度で投与する」とだけ記載されている。眼軟膏の用法及び用量の指示には、「患眼に3時間おきに少量の軟膏を、又は必要に応じてそれ以上の頻度で投与する」と記載されている。ここでも、頻繁な反復投与が必要である。[処方情報、PrPENTAMYCETIN(登録商標)、PrPENTAMYCETIN/HC(登録商標)Sandoz Canada Inc.、改訂日:2018年6月14日。]
【0025】
天然に存在する染料及び合成染料が、抗菌剤又は抗原虫剤として適用されてきた[Zheng et al., BMC Microbiol 20(2020)]。例えば、メチレンブルーとクロファジミンは、依然として重要な希少疾病用医薬品であると考えられている[Ginimuge et al., J. Anaesthesiol. Clin. Pharmacol. 26:517-520(2010);及びAmmerman et al., J. Antimicrob. Chemother. 72:455-461(2017)]。
【0026】
ローズベンガル(RB)は、19世紀に初めて羊毛の染料として合成され、後に日本において食用色素(食用赤色105号)として使用された明るいバラ色のキサンテン誘導体化合物である。[Mizutani et al., J. Environ. Public Health. 2009, 953952]。より具体的には、RBはキサンテン化合物フルオレセインの誘導体である。フルオレセインと比較すると、RBは2種類の追加のハロゲン:4つの塩化物置換基及び4つのヨウ化物置換基を有する。
【0027】
RBを人間の眼表面損傷の視覚的診断(点眼による)に使用することは、1914年に初めて記述された[Feenstra et al., Ophthalmology99:606-617(1992)]。RBは後に、100mgの単回投与後のヒトの肝臓の機能的能力を評価するための静脈内投与の比較的迅速な診断補助薬として導入された[Wachter et al., Lasers Surg Med. 32:101-110(2003)]。1971年には、131I RB(Robengatope(登録商標)、ローズベンガルナトリウム131I注射液(USP)が、肝機能を判断する際の診断補助薬として使用するために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された[Baroyan et al., Eksperimental'naya Meditsina(Riga) 20:74-78(1985);及びMincev et al., Folia Medica(Plovdiv) 16:35-41(1974)]。
【0028】
2009年、Robengatopeの製造業者であるBracco Diagnostics Inc.は、肝臓画像診断のより新しい方法(コンピュータ断層撮影など)の出現により、RB診断薬を米国市場から正式に撤退させた。1974年、Barnes-Hind Pharmaceuticals Inc.(Barnes-Hind)は、角膜損傷の染色、角膜炎、角結膜炎、乾性角膜炎の診断、及び眼内異物の検出を目的とした1%RB水溶液の医療機器製品を導入した[Gilger et al., Vet. Ophthalmol. 16:192-197(2013)]。1981年、Barnes-Hindは同じ適応症に対して同じ濃度の眼科用ストリップを導入した。両診断薬は米国食品医薬品局(FDA)に販売が認められたものの、溶液及びストリップ機器もそれぞれの主張も、導入が正式なFDAの審査及び承認より前であったため承認されなかった。
【0029】
市販されている染料含有量が80%から95%のRB(総汚染物質と物質関連の不純物を含む)である商用グレードのRBは、1880年代にGnehmにより開発された歴史的プロセスを用いて製造される。診断用途に使用されるRBは、いくらかの不純物を含む商用グレードのRBであると考えられている[Paczkowski et al., Free Radic. Biol. Med. 1:341-351(1985)]。米国薬局方(USP)は以前、RBを分析標準としてリストしていた。RBは2019年にUSPから削除された。したがって、商用グレードのRBは、現代の診断設定及び治療設定との関連性を欠いている。したがって、RBをヒトの疾患の治療に適用することを検証することは、重大な規制上の課題をもたらす。
【0030】
Singer et al.の米国特許第8,530,675号、第9,273,022号及び第9,422,260号には、高度に精製されたローズベンガルの合成、及び異なるハロゲン置換基と異なる数のそれらのハロゲン置換基、並びにそれらのラクトン形態を含む同様に精製された類似化合物について説明及び特許請求されている。これらの化合物は、本明細書では「ハロゲン化キサンテン」と総称する。
【0031】
ローズベンガル(RB)染料(4,5,6,7-テトラクロロ-2',4',5',7'-テトラヨードフルオレセイン)は、黒色腫やその他の固形癌の治療のために臨床的に研究されている[Maker et al., J. Clin. Cell. Immunol. 6:343-349(2015;Liu et al., Oncotarget. 7:37893-37905(2016);Patel et al., J. Clin. Oncol. 38:3143(2020);Kim et al., J. Control. Release. 156:315-322(2011);及びQin et al., Cell Death Dis. 8:e2584(2017)]。RBの光力学的抗菌特性は散発的に報告されている[Perez-Laguna et al., Photodiagnosis Photodyn. Ther. 21:211-216(2018);Uekubo et al., Laser Ther. 25:299-308(2016);Anju et al., Photodiagnosis Photodyn. Ther. 24:300-310(2018);Gavara et al., Front. Med. 8:494(2021);Joanna et al., Front. Microbiol. 9:1949(2018);Hirose et al., Arch. Oral Biol. 122:105024(2021);Dai et al., Photodiag. Photodyn. Ther. 6:170-188(2009);Ghorbani et al., Laser Ther. 27:293-302(2018);Kim et al., J. Food Sci. 73:C540-545(2008);Manoi et al., J. Photochem. Photobiol. B. 162:258-265(2016);Nakonieczna et al., Front. Microbiol. 9:1949(2018);Sabbhi et al., Appl. Water Sci. 8:56(2018);Santos et al., Antibiotics 8:211(2019): 及びWorzella et al., In Cancer Cell Culture; Humana Press: Totowa, NJ, USA, 285-291.(2011)]。
【0032】
例えば、Dees et al.の米国特許第8,974,363号は、10~100μM(すなわち、10μg/mLから100μg/mL)のRBの局所製剤を500~600nmの波長帯の緑色光照射と組み合わせて、グラム陽性及びグラム陰性の抗生物質耐性菌に使用することを教示しているが、光源、その強度又は照射時間についての詳細は記載されていない。
【0033】
Naranjo et al., Am J Ophthalmol 208:387-396(2019)は、標準治療に反応しない進行性伝染性角膜炎の患者18人の眼にローズベンガル光線力学抗菌療法(RB-PDAT)を使用したことを報告した。0.1又は0.2%のローズベンガル(RB)を含む組成物を脱上皮化角膜に30分間塗布し、その後LED光源からの5.4ジュール/cm2の緑色光を15分間照射した。最も頻繁に検出された微生物は、アカントアメーバ(アメーバ)(10/17;59%)で、次いでフザリウム種(真菌;4/17;24%)、緑膿菌(グラム陰性菌;2/17;12%)及びカーブラリア種(真菌;1/17;6%)であった。1人の患者は微生物学的診断が確定しなかった。RB-PDATの成功(治療的角膜移植の回避)は症例の72%で達成されたと報告され、臨床的解決(再上皮化及び浸潤の解消による痛みと炎症の軽減)までの平均時間はRB-PDAT後46.9±26.4日であった。
【0034】
Amescua et al., Cornea 36(9):1141-1144(2017)は、375nm又は518nmで15分間照射して光活性化した約0.1%のローズベンガル(RB)が、多剤耐性フザリウムケラトプラスティクムの真菌増殖をin vitroで抑制できたことを教示している。複数の連続した抗真菌薬治療の後、上記の濃度のRBをフザリウムケラトプラスティクムに感染したヒト患者の角膜上皮剥離部に30分間滴下し、その後518nmの光を使用した照射によって0.9J/cm2の総エネルギーを供給する研究が行われた。照射後36時間で痛みが解消し、その後2週間あまりで角膜浸潤は縮小した。治療の4日後に、浸潤は全方向に約1mm小さくなった。
【0035】
照射処理後13日目に浸潤はほぼ治まり、2回目のローズベンガルRB照射処理(1.8J/cm2)が実施された。局所コルチコステロイド治療の後、最初のRB治療から246日目までに、患者は治療した眼の眼表面が健康かつ穏やかで、角膜が透明であることを示した。治療した患者の眼の追跡研究が、Martinez et al., Cornea 37(10):e46-e48(2018)に報告されている。
【0036】
Halili et al., Am J Ophthalmol 166:194-202(2016)は、暗闇、周囲の室内光下で30分間、及び5.4J/cm2を得るためにLED緑色光照射下で34分間、高純度水に溶解した0.1%及び0.03%のRBを使用して、寒天培地における患者から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のin vitro研究を報告した。その後、サンプルは遮光ボックス内のインキュベータにおいて72時間培養された。両方のMRSA株の完全な増殖阻害が、(1)周囲光及び緑色LED照射下での両方のローズベンガル濃度について、及び(2)暗闇での0.1%ローズベンガルについて実証された。暗状態での0.03%ローズベンガルは、株2の完全な阻害を示したが、株1の阻害は不完全であった。
【0037】
Arboleda et al., Am J Ophthalmol 158(1):64-70(2014)は、とりわけ、照射(518nm;5.4J/cm2)及び暗状態でRBを使用し、その後3日間のインキュベーションを行った真菌性角膜炎患者の分離株のin vitro増殖阻害について報告した。フザリウムソラニ、アスペルギルスフミガーツス、カンジダアルビカンスの分離株が調査された。この研究のデータを以下の表にまとめる。
【0038】
【0039】
以下に開示されるように、本発明は、必要に応じて穏やかでより容易に使用できる治療を提供する。更に、この治療は、治療対象が眼を閉じて眠っているときのように、物質(化学線)と相互作用するときに、識別可能又は測定可能な変化をもたらす光が実質的にない場合の使用を想定している。
【発明の概要】
【0040】
一態様では、本発明は、水性眼科用担体に溶解又は分散され、組成物中に約0.2μg/mLから約50μg/mL(又は約0.00002から約0.005重量%)の細菌性角膜炎の治療に有効な濃度で存在する、ローズベンガルなどのハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの局所眼科用組成物を含む、化学線不透明容器の眼科システムを意図している。好ましい実施では、組成物は、通常の涙のpH値である約6.5から約7.6、好ましくは約7.0から約7.4のpH値を有する。意図される組成物は、好ましくは増粘剤及び電解質を更に含む。より好ましくは、ヒアルロン酸も存在する。
【0041】
本発明の別の態様では、必要としている哺乳動物対象が、片眼につき1滴又は2滴などの、角膜炎治療に有効な量の上記組成物を、実質的に化学線がない状態で、対象の微生物感染した眼の角膜表面に投与することによって、上記局所眼科用組成物で治療され、その後、そのように治療された対象は、約3から約12時間、化学線のない状態で維持される。治療は、通常、哺乳動物対象が就寝する直前に行われる。この治療レジメンは、通常、微生物感染が克服されるまで複数回繰り返される。
【0042】
本明細書で使用される「化学線」という語句は、局所眼科用組成物の1つ以上の成分の光化学反応を引き起こし得る光を意味する。この定義によれば、化学線は、組成物のレシピエント分子によって吸収される波長を有し、吸収するレシピエントハロゲン化フルオレセイン分子に又はそれにより誘発される検出可能な化学反応を引き起こすのに十分な吸収波長の光子束がある。例示的な化学反応には、分解及び光感作が含まれる。
【0043】
「化学線が実質的に存在しない」という用語は、本明細書において、感染した眼に塗布した後、組成物が約2分未満の間、周囲光にさらされることを意味するのに用いられる。したがって、塗布後、瞼を閉じ、処置した眼に遮光パッチを置き、周囲光を遮断したりする。同様に、吸収される波長の光子束が不十分であるため、吸収するレシピエントハロゲン化フルオレセイン分子に又はそれにより誘発される検出可能な化学反応が引き起こされる。
【0044】
微生物感染源は、細菌、ウイルス、真菌又はアメーバである可能性がある。好ましくは、感染源は細菌であり、感染細菌は好ましくはグラム陽性菌である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、一態様において、水性眼科用担体に溶解又は分散され、局所眼科用組成物中に約0.2μg/mLから約50μg/mL(又は約0.00002から約0.005重量%)の角膜炎治療に有効な濃度で存在する、ローズベンガルなどのハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルの局所眼科用組成物を含む、化学線に対して不透明な容器の眼科システムを検討する。好ましくは、ハロゲン化フルオレセイン(キサンテン)の濃度は約0.5μg/mLから約20μg/mLである。好ましい実施では、組成物は、通常の涙のpH値である約6.5から約7.6、より好ましくは約7.0から約7.4のpH値を有する。検討される組成物は、好ましくは更に増粘剤及び電解質を含む。
【0046】
なお、検討される組成物は、先に考察したNaranjo et al.、Amescua et al.、Martinez et al.、Halili et al.、及びArboleda et al.の論文で使用されているローズベンガルの濃度と比較して、約10分の1から約1,000分の1の濃度のハロゲン化キサンテンを含む。
【0047】
より好ましくは、交互β-(1→4)及びβ-(1→3)グリコシド結合を介して結合した、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンからなる二糖類のポリマーであるヒアルロン酸も存在する。ヒアルロン酸は、組成物にいくらかの増粘、緩衝及び張性を与え、塗布された組成物の水分が眼の表面との接触状態を維持するのを助ける。
【0048】
本発明の別の態様では、必要としている哺乳動物対象が、片眼につき1滴又は2滴などの、角膜炎治療に有効な量の上記組成物を、更に供給される化学線がない状態で、対象の微生物感染した眼の表面に投与することによって、上記局所眼科用組成物で治療され、その後、そのように治療された対象は、約3から約12時間、化学線のない状態で維持される。治療は、通常、哺乳動物対象が就寝する直前に行われる。投与後に治療された対象が化学線の存在下にある又はあると予想される場合、投与後に治療された眼を覆うために化学線を通さない眼帯を使用することもできる。この治療レジメンは、通常、微生物感染が克服されるまで複数回繰り返される。
【0049】
局所眼科用医薬組成物
【0050】
水性眼科用担体
検討される組成物は、主として(重量比で)他の成分が溶解又は分散されている水性眼科用担体である。組成物の主成分は、滅菌水、例えばUSP注射用滅菌水である。
【0051】
検討される組成物は、粘度が約10から約300cps、好ましくは約30から約120cps、より好ましくは約50から約80cpsとなるような十分なレベルで存在する、少なくとも1つのビルダー又は増粘剤を有する。典型的な増粘剤はポリマーであるが、グリセリンやプロピレングリコールなどの溶剤も組成物に増粘作用を与えることができる。
【0052】
グリセリン及びプロピレングリコールは、単独又は組み合わせて組成物の0から約2.5重量パーセントを占めることができる。より好ましくは、一方又は両方が一緒になって約0.4から約2重量パーセントで存在する。グリセリン及びプロピレングリコールのそれぞれは水と混ざる。
【0053】
検討される局所眼科用組成物は、薬剤組成物の浸透圧(Osm)が約270mOsm/kgから約340mOsm/kgの組成物を提供するのに十分な1つ以上の溶解した溶質を含み、好ましくは約300mOsm/kgから325mOsm/kgの浸透圧が提供され、これはほぼヒトの涙が示す浸透圧の範囲である。
【0054】
その浸透圧の少なくとも一部は、水溶性のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの塩化物、リン酸塩、及び硝酸塩の存在によって与えられる可能性がある。塩化ナトリウムの形態などのナトリウムは、その固有の生理学的適合性のため電解質として好ましい実施形態である。そのような電解質は、組成物中に約0.1から約2パーセントの濃度で、より好ましくは約0.5から約1.5パーセントの濃度で、より好ましくは約0.8から約1.2パーセントの濃度で、最も好ましくは約0.9パーセントの濃度で存在するのが好ましい。0.9N塩化ナトリウム水溶液の浸透圧は308mOsmol/リットルである。
【0055】
治療を必要とする対象が角膜の腫れを呈している場合、約2パーセントから約5パーセントの塩化ナトリウムを含む高張組成物を使用して、感染症を治療しながら角膜の腫れを軽減することができる。2%及び5%の塩化ナトリウムを含む眼治療組成物の浸透圧は、それぞれ684mOsm及び1711mOsmと計算された。[Yorek et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 57:2412-2419(2016)]。これらの例示的な製品は、商標Muro128(登録商標)の下でBausch & Lomb(ニュージャージー州ブリッジウォーター)によって販売されている。
【0056】
PEG400やPEG1000などの低分子量ポリ(エチレングリコール)(PEG)は、組成物に潤滑性を与え、ドライアイの症状をいくらか緩和することができる。これらのポリマーはまた、イオン電荷がないため、比較的少量の浸透圧を加える。検討される組成物中に存在する他の溶質に応じて、低分子量PEGが存在しないか、約1から約10mg/mLで存在する可能性がある。
【0057】
デキストランは、微生物由来の複雑な分岐した非イオン帯電ポリ-α-d-グルコシドで、主にC-1→C-6のグリコシド結合を有し、α-1,3結合から分岐している。デキストラン鎖は長さがさまざまである(約3から約2000キロダルトン)。一般的に使用されている2つのデキストランは、分子量がそれぞれ約40,000及び70,000kDaであることから、デキストラン40及びデキストラン70と呼ばれている。
【0058】
デキストリンは、α-1,4又はα-1,6結合でつながれた水溶性の直鎖ポリグルコースである。デキストリンは、デンプンとグリコーゲンの加水分解によって生成される混合物であり、イオン電荷がない。特徴的な分岐により、デキストランは、α-1,4又はα-1,6結合でつながれた直鎖グルコースポリマーであるデキストリンと区別される。
【0059】
PEGと同様に、荷電されていないため、検討される組成物中に存在するデキストラン及びデキストリンは、組成物の浸透圧を大きく変化させる傾向はない。デキストランは、眼にいくらかの潤滑性を与える可能性があり、存在しない又は約0.5から約2mg/mLで存在する可能性がある。
【0060】
ポビドンとして市販されていることが多いポリ(ビニルピロリドン)は、デキストランと同様に、眼科用薬剤における静脈内使用の血液増量剤として使用されている別の非イオン帯電ポリマーであり、存在する場合、検討される組成物の浸透圧をそれほど変化させない。ポビドンは、存在する場合、約1から約2mg/mLで、より好ましくは約7から約15mg/mLで存在する。
【0061】
更に有用な非イオン性ポリマーは、ヒプロメロースとして市販されているヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。米国特許第5,679,713号は、ドライアイ治療活性剤であるコリン作動性化合物を、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、又はヒアルロン酸とともに医薬組成物に使用し得ることを教示している。上記の特許の結果のない例では、0.5から1重量パーセントのメチルセルロース及び1.4重量パーセントのポリ(ビニルアルコール)を使用した。
【0062】
別の水溶性非イオン性ポリマー増粘剤はヒドロキシエチルセルロース(HEC)である。この物質は、存在する重量パーセントあたりの増粘量が異なるいくつかの分子量で入手可能である。Natrosol(登録商標)250という名前で販売されるHECの1つの供給元は、ケンタッキー州コビントンのAshland Specialty Chemicals社である。
【0063】
Refresh(登録商標)Tears(登録商標)及びRefresh(登録商標)Relieva(商標)という商標名で販売されている市販のドライアイ治療薬はいずれも、活性成分としてアニオン性カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.5%含み、Refresh(登録商標)Relieva(商標)には、活性成分としてグリセリンも0.9パーセント含まれている。活性成分は、精製水に溶解した複数の不活性成分とともに存在する。これらの製品は、AbbVie社の子会社であるAllergan, Inc.(イリノイ州ノースシカゴ)によって販売されている。
【0064】
ヒアルロン酸(HA)は、結合組織、上皮組織、神経組織全体に広く分布するアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンである。これは、交互β-(1→4)及びβ-(1→3)グリコシド結合を介して結合された、D-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンからなる繰り返し単位のポリマーである。これは、硫酸化されておらず、分子量が数百万ダルトンになる可能性があるため、グリコサミノグリカンの中では特異である。HAはアニオン性であり、通常、1分子あたり数個のカルボキシル基を含むため、検討される組成物の浸透圧に比較的大きな影響を与える可能性がある。
【0065】
別のアニオン性増粘ポリマーは、部分的に中和された水分散性カルボキシメチルセルロースである。この材料は、多くの供給元から水中の所定の重量パーセント当たりの粘度が異なる、異なる分子量のものが入手可能である。
【0066】
「部分的に中和された」という語句は、カルボキシル官能基が塩基と反応してアニオン荷電カルボキシレート基を形成し、ポリマーに水溶性又は分散性を与えるのに役立つカルボキシル基含有ポリマーに関連して使用される。
【0067】
部分的に中和された架橋アクリル酸、メタクリル酸、及び米国特許第3,074,852号、第3,330,729号及び第4,226,848号の1つ以上の、商標CARBOLOL(登録商標)934P NF又は974P NFのもとにオハイオ州ウィクリフのLubrizol Corp.社によって販売される材料によって例示される水溶性架橋アクリレートポリマーなどのコポリマーなどの、追加のアニオン性増粘剤も使用することができる。これらの材料は、アリルスクロースやアリルペンタエリスリトールなどのポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸ホモポリマーで、各架橋剤が1分子あたり平均して少なくとも3つのアリル基を含んでいる。両ポリマーは水溶性であると報告されており、0.5重量パーセントで存在する場合にpH値7.5で粘度をもたらす。934P NFはベンゼンで重合され、974P NFは溶媒として酢酸エチルで重合される。
【0068】
もう1つの有用なクラスの増粘剤は、水膨潤性だが非水溶性の架橋アクリルポリマーで、これは米国特許第3,202,577号及び第4,615,697号に記載されており、文献ではポリカルボフィル及び生体接着剤と呼ばれることがよくある。これらのポリマーは、少なくとも80重量パーセントのモノエチレン性不飽和カルボキシ官能性モノマーと、約0.05から約1.5重量パーセントの3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエン又は2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンである架橋剤との共重合反応生成物と定義することができる。このポリマーのカルボキシル基も、組成物のp値で少なくとも部分的に中和されている。
【0069】
これらの生体接着性ポリマーには、先に考察したポリアルケニルポリエーテル架橋剤が含まれていない。モノマーの100重量パーセントを構成するために存在し得る残りのモノマーについては、以下で考察する。
【0070】
上記の2つの成分に加えて、生体接着性ポリマーには、次のような重合されたモノエチレン性不飽和繰り返し単位も含まれる可能性がある。ヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート及びメチルクロトネートなどの上記酸の1種以上のC1-C6アルキルエステル;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、及びテトラエチレングリコールモノアクリレートなどの、2~3個の炭素原子を含む1分子あたり平均1から約4個のオキシアルキレン基を含む上記酸のヒドロキシアルキレン官能性エステル;メタクリルアミド、アクリルアミド、及びN-メチルアクリルアミド、N-ブチルメタクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドなどのC1-C6モノ及びジアルキル誘導体;スチレン;並びに上記カルボキシル官能基含有モノマー及び架橋剤と共重合可能であることが当技術分野で知られている同様のもの。生体接着性ポリマーは、最も好ましくはモノエチレン性不飽和カルボキシ官能性モノマー及び架橋剤のみから調製される。
【0071】
本明細書で有用な生体接着剤は、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの開始剤を使用する従来のフリーラジカル重合技術によって調製することができ、水性溶媒中で重合することもでき、蒸気作用によって凝集されない。有用な生体接着剤の例示的な調製は、すぐ上で引用した2つの特許に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
前述のように、生体接着剤は水性溶媒中で重合される可能性がある。好ましい実施では、水性溶媒は硫酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩の飽和溶液である。
【0073】
アルカリ土類金属塩は少なくとも2つの機能を果たす。第1に、重合した生体接着剤が水性溶媒の表面に浮かび、そこから容易に除去できるように、重合媒体の密度を増大させる。第2に、特に硫酸マグネシウムの使用により、重合及び回収が容易になるように水性溶媒中の生体接着剤の膨潤を低減する。生体接着剤は、通常、ポリマーを数回水で洗い流した後、約0.5から約1パーセントのアルカリ土類金属イオンを含む。
【0074】
米国特許第5,221,722号は、いわゆる強化ポリカルボフィルの調製を教示している。このポリマーは、アセトン及びアルキル基に1から6個の炭素原子を含むアルキルアセテートから選択される溶媒中で、適切な開始剤及び3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエンなどのジビニルグリコール架橋剤の存在下で調製される。この方法で調製されたポリカルボフィルは、生体接着の特性を有するとともに、粉砕しなくても粒子サイズが小さく、水中で1重量%の粘液を測定した場合の粘度が20,000cPsを上回ると言われている。
【0075】
ポリマーのゲル化を防ぎ、重合中に個別の粒子形成を促進するために、カルボキシル基の少なくとも一部を、水酸化物、酸化物、又は炭酸塩などの形態のIA族金属化合物で中和することが教示されている。これらの例としては、ナトリウム、カリウムなどがあり、また、アンモニア及びモルホリン、モノ、ジ、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、及び部分的ポリマー塩が反応媒体に溶解しにくいその他のアミンを含む特定のアミンとの反応も含まれる。好ましくは、モノマー上のカルボキシル基の0.1重量%超が中和されるか、又は上に挙げた物質の塩に形成される。より好ましくは、カルボキシル基の1重量%超かつ最大10重量%、特に5%未満が、重合前に中和又は同等の塩に変換される。
【0076】
上記の合成により、粒子がメッシュNo.635(ASTM-E11)を通過することになる平均粒子サイズが10μ未満のポリマーが得られたと報告されている。1つの商業的供給業者は、上記のLubrizol Corporationで、Noveon(登録商標)AA-1という名前で、医療用のポリマー、ポリカルボフィル、USPを販売している。
【0077】
上記のポリマーの具体的な量は、増粘剤及び/又は生体接着剤としてのポリマーの効果ほど重要ではない。したがって、使用されるポリマーの量は、増粘及び生体接着能力が異なるため、通常、ポリマー間で異なる。一般的に言えば、増粘効果及び/又は生体接着効果のある量が使用される。
【0078】
ハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)
検討される局所眼科用組成物のハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)化合物は、以下の式1の化合物である可能性があり、式中、R1は独立してF、Cl、Br、I、H又はC1-C4アルキルであり;R2、R3、R4、及びR5は独立してCl、H又はIであり、R2、R3、R4、R5から選択される少なくとも1つの置換基がIであり;R6は独立してH又はC1-C4アルキルであり;R11はH又はC1-C4アルキルであり;R12はH又はC1-C7アシルであり;並びにすべての(a)互変異性型、(b)アトロプ異性体、(c)式2(下記)に示す閉環ラクトン型、(d)式2に示すラクトン型の光学異性体、及び(e)それらの薬学的に許容される塩。
【0079】
【0080】
検討されるハロゲン化キサンテンは、フルオレセインがキサンテンの誘導体であるため、より正確にはハロゲン化フルオレセインと呼ばれると考えられる。好ましい実施では、上記式1及び2のハロゲン化フルオレセインの各R1は、クロロ又はブロモ置換基のいずれかであり、一方、それらの式のR2、R3、R4、及びR5のそれぞれは、以下の式I及びIIに存在するようなヨウド置換基である。以下の式において、Xは酸素又は窒素であり、「n」はゼロ又は1であり、Xが
【0081】
【0082】
酸素の場合、nはゼロでR7は存在しないのに対して、Xが窒素の場合、nは1でR7は存在する。Xが酸素である場合、R7は、水素(H)、薬学的に許容されるカチオンであるM+、C1-C4アルキル、及び後に本明細書で定義される芳香環含有置換基からなる群から選択される。Xが窒素の場合、R7及びR8は同じか又は異なり、水素、C1-C4アルキル、芳香環含有置換基又は5若しくは6員環を形成するアミド窒素原子R7及びR8と共に、及び芳香環含有置換基からなる群から選択される。芳香環含有置換基は、独立して窒素、酸素若しくは硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む、5若しくは6員を含む単環、又は5、6若しくは6、6縮合芳香環系である。
【0083】
説明を簡単にするために、芳香族エステル又は芳香族アミドは、まとめて芳香族誘導体と呼ぶ。したがって、それらの誘導体は、好ましくは一置換の、独立して窒素、酸素又は硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む単一の5若しくは6員芳香環、又は5、6若しくは6、6縮合芳香環系を有するアルコール又はアミンから形成される。
【0084】
例示的な芳香環置換基の構造式を以下に示す。
【0085】
【0086】
ローズベンガル(RB)は、本明細書で使用するための好ましい化合物であり、そのジナトリウム塩であるローズベンガルジナトリウム(RBD)は、最も好ましいRB化合物である。これらの化合物は、本明細書ではRB化合物の群として例示的に使用される。
【0087】
ローズベンガルの化学名は、4,5,6,7-テトラクロロ-2',4',5',7'-テトラヨード-フルオレセインである。好ましい形態であるローズベンガルジナトリウム(RBD)は、次の構造式Iaを有する。
【0088】
【0089】
ローズベンガル(上記式Ia)やテトラブロモテトラヨード類似体(上記式IIb)などの高度に精製されたハロゲン化フルオレセイン分子の調製については、米国特許第8,530,675号、第9,273,022号及び第9,422,260号で考察されている。光化学的誘発治療へのRBDの使用については、米国特許第5,998,597号、第6,331,286号、第6,493,570号、第7,390,668号及び第8,974,363号に開示されている。好ましくは、上記構造式におけるカチオンM+はナトリウム(Na+)又はカリウム(K+)である。
【0090】
それらの種々の文法的な形態における「生理学的に許容される塩」及び「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野で既知の方法で調製され得る、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム及びプロタミン亜鉛塩を含む、製薬業界で一般的に使用されるアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアンモニウム塩などの非毒性カチオンを指す。そのような塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウム水酸化物を使用して、検討されるハロゲン化フルオレセインの酸形態を中和するか、又はイオン交換樹脂の水酸化物形態と混合することによって有効に調製される。そのようにして形成されたカチオンハロゲン化フルオレセイン塩は、最終的に製剤化された局所眼科用組成物に溶解することが好ましい。
【0091】
検討されるカチオンは、組成物に溶解するキサンテン(フルオレセイン又はフルオレセイン酸塩)塩を提供する。好ましくは、塩は、一塩基性塩又は二塩基性塩の形態のナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウムである。医薬化合物と生理学的に許容される塩を形成する、一般的に使用される生理学的に(又は薬学的に)許容される酸及び塩基のリストについては、Berge, J. Pharm. Sci. 1977 68(1):1-19を参照のこと。
【0092】
ハロゲン化フルオレセインは、角膜炎治療有効濃度で組成物中に存在する。通常、角膜炎治療有効濃度は、局所眼科用組成物中、DRBとして測定して約50μg/mLから約3,000μg/mL、好ましくは約100μg/mLから約2,000μg/mL、更に好ましくは約500μg/mLから約1,500μg/mLである。
【0093】
したがって、DRB以外のハロゲン化フルオレセインを使用する場合、使用量はDRBの分子量、つまり1017.6g/モルに基づく。例えば、4つのクロロ置換基を4つのブロモ置換基に置き換えると、分子量は1195.2g/モルになる。分子量の差は約17.45パーセントである。したがって、使用するテトラブロモテトラヨードフルオレセインの等量は、DRBの所定量と比較して約17.45パーセント大きくなる。
【0094】
ローズベンガルなどの検討されるハロゲン化フルオレセイン化合物は二塩基性であり、pKa値は2.52と1.81である。いくつかの考えられるハロゲン化フルオレセインのpKa値の決定は、Batsitela et al., Spectrochim Acta Part A 79(5):889-897(2011年9月)に見られる。
【0095】
ハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)医薬組成物のpH値は、当業者に知られている任意の適切な手段によって制御又は調整することができる。酸又は塩基などの添加によって組成物を緩衝化したり、pH値を調整したりすることができる。ハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)、又はその生理学的に許容される塩は弱酸であるため、ハロゲン化キサンテン(フルオレセイン)濃度及び/又は電解質濃度によっては、組成物のpH値に緩衝剤及び/又はpH値調整剤の使用を必要としないことがある。しかし、組成物は緩衝化されず、投与されると涙液などの生物学的環境に順応することが特に好ましい。
【0096】
Abelson et al., Arch Ophthalmol 99(2):301(1981)は、44人の健常者から得た下盲嚢内の涙液のpH値を測定したところ、pH値は約6.5から約7.7で、平均値は約7.0であったと報告した。したがって、検討される組成物は、好ましくは約6.5から約7.6、好ましくは約7.0から約7.4のpH値を有する。
【0097】
また、医薬組成物には防腐剤が含まれないことも好ましい。防腐剤の多くは、医薬組成物又はその製剤に有害な干渉を及ぼす可能性がある、又はハロゲン化キサンテン組成物の有効成分と錯体を形成したり別の相互作用をしたり、その有効成分の送達を妨害したりすることがある。防腐剤が使用される限り、イミド尿素は、医薬組成物中又は投与時にハロゲン化キサンテンと相互作用しないため、好ましい防腐剤である。
【0098】
検討される治療方法は、それを必要とする哺乳動物対象を治療するのに利用される。「治療を必要とする哺乳動物」とは、細菌、ウイルス、真菌又はアメーバ感染などの眼感染症を呈する哺乳動物である。そのような感染症は、通常、細菌感染症である傾向があり、感染細菌は典型的にはグラム陽性菌である。
【0099】
治療するグラム陽性菌の例としては、薬剤感受性及び薬剤耐性のS.アウレウス、S.エピダーミス、E.フェカーリス及びE.フェシウムのうちの1つ以上、並びに枯草菌、セレウス菌、及び唾液連鎖球菌のうちの1つ以上が挙げられる。グラム陽性菌は、感染した眼が治療される(細胞と接触する)とき、眼の哺乳動物細胞内又は細胞上に存在する。
【0100】
一部のグラム陽性菌株が、本明細書において「耐性」若しくは「薬剤耐性」又は耐性の他の文法上の変形と呼ばれる。ここで言う「耐性」とは、その種類の細菌に対して既知の濃度及び細菌細胞密度で殺菌性があると通常みなされる1つ以上の抗菌医薬品による治療に対する細菌の耐性である。したがって、黄色ブドウ球菌(S.アウレウス)、表皮ブドウ球菌(S.エピダーミス)、エンテロコッカスフェカーリス(E.フェカーリス)、及びエンテロコッカスフェシウム(E.フェシウム)などの細菌の「薬剤感受性」及び「薬剤耐性」株の両方が存在する。いくつかの一般的な細菌株が耐性となった薬剤の例として、バンコマイシン、メチシリン及びゲンタマイシンが挙げられる。
【0101】
同様の方法が、好ましくはバークホルデリア、サルモネラ、及びプロテウスのうちの1つ以上であるグラム陰性菌を治療するのにも検討される。ここで、上記RB化合物は、水性医薬組成物中に、約10μg/mLから約100μg/mL、好ましくは約20μg/mLから約50μg/mLの濃度で溶解又は分散して存在する。
【0102】
本明細書中で使用される「投与」という語は、組成物を感染した眼の外面に塗布する治療計画の開始を意味するのに使用される。したがって、投与は、通常、本明細書に記載の眼科用組成物の投与量を、眼の表面上、又は下眼瞼を引き下げることによって形成されるポケット又は袋内に置き、次いで眼瞼を閉じて、眼科用組成物を治療する眼球の外面上に行き渡らせることを伴う。
【0103】
治療方法
検討される治療方法は、必要とする対象の角膜表面を、抗グラム陽性菌量のハロゲン化フルオレセイン化合物を含む組成物と接触させることを含む。そのような化合物の例としてローズベンガルを使用して、抗グラム陽性殺菌有効量のRBを、必要とする哺乳動物対象に投与し、先に考察したように、粘度の高い水性液体、ゲル、又は他の形式を使用して製剤化することができる。
【0104】
治療された眼は、その後、約3時間から約12時間の間、実質的に化学線のない状態に維持される。したがって、例えば、塗布後、眼瞼を閉じ、治療した眼の上に遮光パッチを置き、周囲光を遮断したりする。おそらく最も容易には、レシピエントが夜就寝する直前に眼を治療する。
【0105】
一実施形態では、グラム陽性菌細胞は、対象哺乳動物の表面又は内部に存在する(例えば、感染している)。例示的に、対象哺乳動物は、化膿連鎖球菌などの皮膚グラム陽性菌感染症に罹患している可能性があり、特に開放創の局所治療の場合には、現在の感染症の治療薬として、またその後のグラム陽性菌感染症の予防薬として用いられる可能性がある。
【0106】
治療対象となる哺乳動物は、ヒトなどの霊長類、チンパンジーやゴリラなどの類人猿、カニクイザルやマカクなどのサル、ラット、マウス若しくはうさぎなどの実験動物、犬、猫、馬などのコンパニオンアニマル、又は雌牛若しくは去勢雄牛、羊、子羊、豚、山羊、ラマなどの食用動物などである可能性がある。
【0107】
それぞれの検討される組成物投与は、一般的には、治療される細菌性疾患(感染症)が検出できないなど、所望の程度まで減少するまで繰り返される。したがって、必要とする哺乳動物対象への投与は、治療医の指示に従って、1日、毎日、毎週、毎月又は数ヶ月から数年にわたって複数回行われる可能性がある。
【0108】
治療に携わる医療関係者の指示に従って、感染症、例えば角膜潰瘍を取り囲む部位の角膜上皮を、検討中の組成物の投与前にデブライドして、脱上皮エリアを得てローズベンガルの吸収を高めることができる。
【0109】
結果
【0110】
医薬品グレードのローズベンガル(RB)
テネシー州ノックスビルのProvectus Biopharmaceuticals, Inc.(Provectus)は、商用グレードのRBを使用して、製剤原料として純粋な形のRBを調製するための製造プロセスを探していた。しかしながら、染料製造プロセス中に商用グレードの反応が発生すること、及びヨウ化物置換基の1つ以上が失われた他の副産物が原因で、RBの精製にはいくつかの課題が見つかった。
【0111】
商用グレードのRBは、FDAやその他の世界的な医薬品規制機関によって、臨床開発と登録をサポートするのに十分な量の医薬品グレードの材料を効率的に生産することができないと結論が下された。RBを合成及び製造するための新しい多段階アプローチがProvectusによって確立された[Singer et al.,米国特許第8,530,675号、第9,273,022号及び第9,422,260号]。その研究の重要な要素は、重要な歴史的不純物の形成につながる条件を排除する能力であった。
【0112】
それらの合成及び精製方法は適正製造基準(GMP)に適用され、医薬品グレードのRBが製造されている。このRB、PV-10(登録商標)は、Provectusから入手可能な0.9%生理食塩水中のローズベンガルジナトリウム(RBD)の滅菌10%溶液であり、医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドラインに従って製造され、注射用医薬品として適用されるように設計されている。医薬品グレードのRBDは、PH-10(登録商標)と呼ばれる異なる処方の局所用薬剤[米国特許第9,422,260号;Innamarato et al., BMC Cancer 21:756(2021);Thompson et al., Melanoma Res. 31:232-241(2021);Swift et al., Onco Targets Ther. 12:1293-1307(2019)]にも存在する。どちらの製剤も、構造式が先に示されているローズベンガルジナトリウム(RBD)を有効成分として使用する。ローズベンガルの多くの可溶性塩は、ジナトリウム塩に加えて使用できるため、本明細書では「RB」はローズベンガルの薬学的に許容される塩の名称として使用するが、「RBD」という名称はローズベンガルジナトリウムを具体的に指す。
【0113】
微生物
微生物感染源は、細菌、ウイルス、真菌又はアメーバである可能性がある。通常、感染源は細菌であり、感染細菌は好ましくはグラム陽性菌である。
【0114】
光線力学的アプローチによるRBの抗菌活性は、いくつかの研究グループによって研究されてきた[Kurosu et al., Molecules 27:322(2022)及びその中の引用文献を参照]。RBの光線力学的療法の応用は、蜂巣炎、丹毒、膿痂疹、毛嚢炎、せつ及び癰を含む皮膚感染症に限定されない。しかしながら、RBの活性スペクトル、殺菌率、及びバイオフィルム破壊活性は散発的に報告されている。
【0115】
マイコバクテリウム種を含むグラム陽性、グラム陰性好気性菌を含む一連の微生物に対する医薬グレードのRBの殺菌活性は、異なる光源(蛍光、LED、及び太陽光)下及び暗状態で、上記のKurosu et al.によって再調査されている。興味深いことに、化学線による照射はより即効性を示したが、RBは暗所でも抗菌活性を示した。
【0116】
本発明は、暗闇でのその抗菌活性を本発明で利用する。したがって、細菌性眼感染症のヒトなど、治療を必要とする哺乳動物対象には、就寝して眼を閉じる前のゼロから約5分以内に、抗菌有効量の検討中の医薬組成物が塗布される。
【0117】
上記のKurosu et al.の論文の暗条件から、アルミホイルで覆われた96ウェルプレートを使用して、暗室で24時間(h)液体希釈法及び寒天希釈法で得られた最小発育阻止濃度(MIC、μg/mL)を以下の表(テーブル1A、テーブル1B)にまとめる。テーブル1A,テーブル1Bで使用されているRBは、Provectus Biopharmaceuticals, Inc.(米国テネシー州ノックスビル)から提供されたPV-10(登録商標)の希釈形態である[Singer et al.、米国特許第8,530,675号、第9,273,022号及び第9,422,260号]。
【0118】
【0119】
【0120】
RBの殺菌活性は、テーブル1A、テーブル1Bの異なるSCCmec型(エントリ5~11)の7つのメチシリン耐性S.アウレウス(MRSA)のパネルに対して検査された[Zuo et al., Sci. Rep. 11:Article 5447(2021)]。テーブル1A、テーブル1BでテストされたすべてのMRSA株が、蛍光灯又はLEDライトの下で0.78~3.1μg/mLの濃度でRBによって殺された。RBは更に、4つのバンコマイシン耐性S.アウレウス株(エントリ12~16)に対して検査され、すべてのバンコマイシン耐性株が、どちらの照明条件下でも1.0μg/mL未満の濃度で殺された。
【0121】
表皮ブドウ球菌は嫌気性菌であるが、好気性条件下でもよく成長する。好気性条件下でRBによって効果的に殺された(エントリ16)。薬剤感受性及び薬剤耐性のエンテロコッカスフェカーリス(バンコマイシン耐性株を含む)は、RBによって殺された(エントリ17~21)。唾液連鎖球菌はRBに対して感受性があった(エントリ23)が、肺炎連鎖球菌はRBに対して耐性を示した(エントリ24)。その耐性の根拠は現在のところ不明である。
【0122】
そして、暗条件下では、RBは25.0~100μg/mLの濃度で、エントリ1~23(テーブル1A,テーブル1B)にリストされているすべてのグラム陽性菌に対して抗菌活性を示した。暗条件下では、RBは高濃度で抗菌活性を示すことが知られている。テーブル1A,テーブル1Bで分析したすべてのグラム陰性菌は暗条件下でRBに対して感受性がなかった。これらのデータは、RBが三重項酸素の励起メカニズムを介して細胞毒性活性酸素種を生成する以外に、細菌の増殖を阻害する1つ以上の未知のメカニズムを有するという考えを裏付ける。
【0123】
5種のマイコバクテリウム属菌に対するRBの抗菌活性を検査した(エントリ25~29)。興味深いことに、暗条件下では、これらのマイコバクテリウムは、照明条件下で観察されたものと同様のMICで殺された。RBは、サッカロマイセスセレヴィシエの増殖を、暗条件下では細菌よりも高い濃度で阻害した(エントリ30)。
【0124】
寒天希釈法で測定したRBのMIC値は、液体希釈法で測定した値と異なった(テーブル1)。寒天希釈法で測定したMIC値の選択例を、分析した微生物に番号を付け直すことによって示した表(テーブル2)にまとめた。
【0125】
【0126】
B.サブチリス、B.セレウス、及びS.アウレウスなどのグラム陽性菌の増殖は、約25から約125μg/mLの濃度(テーブル2のエントリ1~4)で阻害され、これは液体希釈法で測定したMIC値よりも高い。M.スメグマチス(ATCC607TM)を、薬剤を含む寒天プレート(又はウェル)上で液体中よりも低い濃度で殺した(エントリ29、テーブル1;エントリ5、テーブル2)[Lelovic et al., J. Antibiot 73:780-789(2020)]。
【0127】
暗条件下では、寒天希釈法で測定したRBのMICは、液体希釈法で測定した値と良好な一致を示した。選択した細菌に対するRBの最小殺菌濃度(MBC)も上記のテーブル2にまとめられている。
【0128】
処理及び殺菌の対象となるグラム陽性菌の例としては、薬剤感受性及び薬剤耐性のS.アウレウス、S.エピダーミス、E.フェカーリス及びE.フェシウムのうちの1つ以上、同様に枯草菌、セレウス菌、及び唾液連鎖球菌のうちの1つ以上が挙げられる。
【0129】
医薬品グレードRB(HP-RBf)の抗バイオフィルム活性
前のセクションで観察されたRBの抗菌特性は、グラム陽性菌におけるRBの抗バイオフィルム効果の評価を促した。上でまとめたデータは、RBが顕著な薬剤親和性又はグラム陽性菌に対する浸透性を有することを示している。
【0130】
抗菌及び抗真菌光線力学療法が、バイオフィルム条件下で光増感剤を使用して研究されてきたが、RBを使用して検査された細菌バイオフィルムの数は限られている[Perez-Laguna et al.、Photodiagnosis Photodyn. Ther. 21:211-216(2018)]。
【0131】
ここで、薬剤感受性S.アウレウス6508(商標)、薬剤耐性S.アウレウス71080(VRS8)及びE.フェシウムNR-32065のバイオフィルムに対するRBの有効性を蛍光灯及び暗条件下で検討した。リネゾリドはグラム陽性菌のバイオフィルムを根絶するのに効果的な薬剤ではないが、バイオフィルム形成の予防に有益な効果があるため[Reiter et al., J. Med. Microbiol. 62:394-399(2013)]、対照として使用した。
【0132】
Kurosu et al., Molecules 27:322(2022)により報告されたバイオフィルムアッセイにおいて、リネゾリドを陽性対照として600μg/mL(浮遊細胞の場合は100×MIC超)の非常に高い濃度で適用した。それらの著者は、試験したすべての株がポリスチレンウェルプレート上で強力なバイオフィルムを形成することを確認したと報告した。蛍光灯下では、RBは30.0μg/mL(38×MIC)の濃度でS.アウレウス6508(商標)のバイオフィルムを7対数減少で根絶する可能性があり、これはリネゾリド(600μg/mL)で観察されたのと同じレベルの有効性を示した(上記のKurosu et al.、
図3)。
【0133】
RBは、光下及び暗状態の両方で用量依存的にバイオフィルム根絶活性を示した。より高い濃度が必要であるが、RBは暗条件下でバイオフィルム根絶活性を示した。50.0μg/mL(暗下で2×MIC)の濃度では、RBは生菌の数を大幅に減らした。500μg/mL(20×MIC)の濃度では、約110から約150CFU/mLしか観察されなかった。1,000μg/mLの濃度では生菌は現れなかった(N.D.)。同様の傾向は、薬剤耐性S.アウレウス71080(VRS8)及びE.フェシウムNR-32065のバイオフィルムで、はるかに低いRB濃度で観察された。
【0134】
RBの抗菌メカニズム
RBの抗菌光線力学療法については、いくつかの論文で報告されている。RBが細菌細胞壁を透過し、細胞膜に結合して活性酸素種を生成することは、照明条件下での殺菌メカニズムである可能性が高い[Nsubuga et al., Nanoscale Adv. 3:1375(2021);及びLambert et al., Photochem. Photobiol. 66:15-25(1997)]。比較的高い濃度が必要であるが、RBは暗状態でマイコバクテリウム種を含むグラム陽性菌の大部分を殺す。また、(上記)グラム陽性菌のバイオフィルムを効果的に根絶する。暗状態でのRBの抗菌活性は、まだ完全に解明されているとは言えない[Nakonechny et al., Int. J. Mol. Sci. 29:3196(2019);及びKim et al., J. Enzyme. Inhibit. Med. Chem. 35:1414-1421(2020)]。
【0135】
RBは、照明状態では12.5~25.0mg/mLで、暗状態では25.0~50.0mg/mLでマイコバクテリア種を殺す(表1)。両状態において、RBは5つのマイコバクテリア種をグラム陽性菌よりも遅い速度で殺す。RBはマイコバクテリア細胞壁の透過性が低いと見られる。RBは暗状態でもグラム陽性菌に対して迅速な殺菌効果を発揮するため、グラム陽性菌のRB耐性変異体の生成は極めて困難な課題である。
【0136】
我々は、MIC値が200mg/mLのM.スメグマチスのRB耐性変異体の生成に成功した[Lelovic et al., J. Antibiot. 73:780-789(2020)]。RB耐性株は、ほとんどの結核治療薬[アミカシン、カプレオマイシン、リファンピシン、アミノウリジルフェノキシピペリジニルベンジルブタンアミド(APPB)、及びエチオナミド]に感受性を示した(下記テーブル3)。
【0137】
【0138】
しかし、イソニアジド(INH)に交差耐性を示した。INHはカタラーゼペルオキシダーゼファミリーに属する酵素KatGによる酸化的活性化を必要とするプロドラッグである。KatGはINHを酸化して求電子種であるイソニコチノイルラジカル分子を形成し、これがマイコバクテリアのミコール酸の生合成に関与する酵素であるNADH依存性エノイル-ACP(アシル担体タンパク質)還元酵素と反応する(下記スキーム1)[Vilcheze et al., Microbiol. Spectr. 2:MGM2-0014-2013(2014);及びMorlock et al., Antimicrob. Agents Chemother 47:3799-3805(2003)]。
【0139】
【0140】
RB耐性M.スメグマチス株は中程度のINH耐性を獲得したが、エチオナミド(ETH)に対する耐性は示さなかった。INH耐性の主なメカニズムはkatGの変異であり、ETHはモノオキシゲナーゼEthAによって活性化される[Laborde et al., Org. Biomol. Chem. 14:8848-8858(2016)]。これらの観察は、RBの抗菌メカニズムが1つ以上のINH代謝酵素を共有して殺菌種を形成することを示唆している可能性がある。
【0141】
潜在的な作用機序を解明するために、次世代DNA配列決定技術を用いてRB耐性M.スメグマチスATCC607株の全ゲノム配列解析を行った[Lei et al., Microbiol. Resour. Announc. 8:e00551(2019)]。同定された挿入変異の1つは、それぞれ抗シグマE因子遺伝子(rseA:TG:104vs.T:0で証明)とアクアポリンファミリータンパク質遺伝子(GCACCCT:71vs.G:0で証明)で発生した。
【0142】
その結果、これらの挿入変異は対応するタンパク質の読み枠の変化を引き起こし、親株と比較して短縮されたタンパク質を生成した。RseAがヒト型結核菌の特異的な抗シグマE因子として機能すること、及びシグマE因子(SigE)がマイコバクテリア生物がさまざまなストレス応答に耐えることを可能にすることが報告されている[Boldrin et al., Sci. Rep. 9:17643(2019);及びWu et al., J. Bacteriol. 179:2922-2929(1997)]。したがって、RB耐性変異体における非機能的RseAの発現はSigEの活性に影響を及ぼし、RBに対する細菌耐性を高めることがある。一方、アクアポリンファミリータンパク質はさまざまな生物に存在し、細胞膜を通過する水と非荷電溶質の双方向フラックスにおいて重要な役割を果たす。
【0143】
連鎖球菌アクアポリンホモログのヌル変異により細胞内のH2O2保持が増加することが報告されており、これは、アクアポリンが連鎖球菌種におけるH2O2の輸送を媒介することを示している[Tong et al., J. Biol. Chem. 294:4583-4595(2019)]。したがって、RBがアクアポリンの機能を阻害し、細菌細胞内へのH2O2の蓄積をもたらし得ると仮定する。興味深いことに、フレームシフト変異を引き起こす1つのヌクレオチド欠失が、RB耐性株のモリブドプテリン依存性酸化還元酵素(T:74vs.TC:0で証明)で観察された。
【0144】
酸化還元酵素系は、分子酸素の還元によってスーパーオキシドを、又は無機硝酸塩の還元によってNOを形成する可能性がある。RBは、ラジカルアニオン(RB'-)又はRB三重項状態を生成することになる酸化還元酵素の酸化還元において単一電子受容体として機能し、酸素との電子移動反応を起こすことがある。そのため、暗条件下でのRBの励起による活性酸素種又は活性窒素種の生成に、モリブドプテリン依存性酸化還元酵素が関与することを提案する(下記スキーム2)。スキーム2の酸化還元酵素は、モリブドプテリン依存性酸化還元酵素キサンチン脱水素酵素ファミリータンパク質である。スキーム2の「・OH+OH-」は、活性酸素種(ROS)又は活性窒素種である。
【0145】
【0146】
katG遺伝子はRB耐性株では無傷であった。そのため、INHとの交差耐性を与えるメカニズムを推測することは依然として困難である。しかし、KatGの発現レベルに影響を与え、INH活性化を抑制し得るRB耐性株のいくつかの転写制御因子の変異を観察した。これは、H2O2のフェントン反応を通じてヒドロキシラジカル(活性酸素種)を生成する。マイコバクテリア種を含むグラム陽性菌に対する殺菌活性を示すために比較的高濃度のRBが必要であることは、RBとカタラーゼの親和性が中程度であることを意味することがある。同様に、哺乳動物細胞におけるRBの細胞毒性機構が、以下のスキーム3に示すように説明されることがある。
【0147】
【0148】
RBは50年以上にわたって眼疾患や肝臓疾患の診断に使用されてきた。結膜疾患や眼瞼疾患などの特定の医療問題を診断する際の染色剤として有用であることが多い(上記参照)。これらの用途では、0.1~2.0%のRB(すなわち、1,000~20,000μg/mL)が使用されてきた。
【0149】
2.0%未満の濃度のRBは、自然光及び人工光下で安全であると考えられる[Whitcher et al., Am. J. Ophthalmol. 149:405-415(2010)]。健康な細胞株であるVero(アフリカミドリザルの腎臓)細胞を選択し、蛍光灯下でのRBのin vitro細胞毒性を調べた。
【0150】
ベロ細胞に対する抗菌剤と抗癌剤の細胞毒性に関する大規模なデータセットを生成しており、これにより新しい分子の毒性レベルを比較することができる[Siricilla et al., J. Med. Chem. 60:2869-2878(2017);及びSiricilla et al., J. Antibiot. 68:271-278(2015)]。暗闇下での24時間の試験で、RBはベロ細胞に対して300μM(292μg/mL)のIC50値を示した。
【0151】
RBの治療濃度は約0.1μMから約10μMである可能性が高い。したがって、これらのin vitro細胞毒性試験は、照明条件下では宿主細胞の細胞毒性を引き起こすことなく、皮膚感染症をRBで治療できることを示唆している。
【0152】
結論
Provectusは、cGMPとICHの両方の要件を満たす医薬品グレードRBの製造及び精製プロセスを確立した。我々は、照明及び暗状態における例示的なRB化合物である医薬品グレードRB配合製品(PV-10(登録商標))の抗菌活性と細胞毒性を評価した。ここでまとめた生理食塩水で希釈したPV-10(登録商標)によるRBの包括的なMICデータは、RBが、肺炎連鎖球菌種を除くほとんどのグラム陽性菌(MIC0.39~3.1μg/mL)を殺すのに非常に効果的であることを示す。
【0153】
S.ニューモニエは、抗グラム陰性菌薬であるコリスチン(ポリミキシンE)に感受性のある非常に数少ないグラム陽性菌の1つである。我々は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方におけるRBの殺菌効果とコリスチン耐性の関係を研究した。S.ニューモニエのRBに対する耐性メカニズムは、他の箇所で報告されることになる。
【0154】
我々は、RBが薬剤耐性株を含むグラム陽性菌のバイオフィルムを根絶する優れた薬剤であることを確認した。蛍光及び暗条件下では、RBは濃度依存的にS.アウレウス及びE.フェシウムの薬剤耐性株の生細胞数を大幅に減少させた。これらの研究は、RBがあらゆる増殖期に薬剤耐性菌を殺す潜在的な抗菌剤を有することを示している。
【0155】
材料及び方法
【0156】
抗生物質
すべての抗生物質は、商業的供給源から購入され[アミカシン二硫酸塩(Sigma Aldrich、A1774-1G)、硫酸カプレオマイシン(Sigma Aldrich、C4142-1G)、シプロフロキサシン塩酸塩一水和物(TCI、C2227)、エチオナミド(TCI、E0695)、イソニアジド(Sigma Aldrich、I3377-5G)、リネゾリド(Chem-Impex、29723)、メロペネム三水和物(Ark Pharm、AK161987)、リファンピシン(Sigma Aldrich、R3501-1G)]、特に記載のない限り、更に精製することなく使用した。APPB(アミノウリジルフェノキシピペリジニルベンジルブタンアミド)を、報告された手順に従って合成した。[(a)Mitachi et al., ACS Omega 2018、3:1726-1739;及び(b)Mitachi et al., MethodsX 2019、6:2305-2321.]
【0157】
生理食塩水中での医薬品グレードローズベンガルの製剤化(PV-10(登録商標))
ローズベンガルジナトリウム塩をProvectusの特許手順に従って合成した。詳細な手順は、米国特許第8,530,675号、第9,273,022号及び第9,422,260号に記載されたとおりである。
【0158】
細菌の取得
このプログラムで使用した薬剤感受性細菌及び酵母は、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション、バージニア州マナサス)から購入した。薬剤耐性株は、BEI Resources(NIAID)から取得した。
【0159】
対数期細菌培養
すべての液体細菌培養は、エアフィルタ付きの三角フラスコを用いて行った。細菌株の単一コロニーをATCCが推奨する条件に従って増殖させた。細菌の種培養及び大規模培養は、ATCCが推奨する培地を使用して得た。M.スメグマチス(ATCC607)は、0.5%のTween(登録商標)80 ミドルブルック 7H10ニュートリエント寒天培地(0.4%グリセロール)で培養した[46]。培養フラスコは、M.スメグマチス(ATCC607)の場合は3~4日間、M.ツベルクローシスH37Rvの場合は10~12日間、振とう培養器で37℃、振とう速度200rpmでインキュベートし、中間対数期(光学密度-0.5)まで培養した。光学密度は、96ウェルマイクロプレートリーダを使用して600nmでモニタされた。
【0160】
MICアッセイ
すべての試験は、臨床検査標準協会(CLSI)が定めたガイドラインに従う[「検査基準範囲の決定:CLSIガイドラインによりタスクが管理可能」、Lab. Med. 40:75-76(2009)]。最小発育阻止濃度(MIC)は、液体希釈マイクロプレートアラマーブルーアッセイ又はOD測定によって決定した。すべての化合物は、DMSO又は生理食塩水(1mg/100μL濃度)に保存した。この濃度は、すべてのMIC研究に貯蔵液として使用された。貯蔵液からの各化合物は、滅菌96ウェルプレートの第1のウェルに入れられ、培養液(総量10μL)で連続希釈を行った。対数期の細菌懸濁液(190μL)を各ウェル(総量200μL)に加え、37℃で24時間インキュベートした。各ウェルに20μLのレザズリン(0.02%)を加え、4時間インキュベートした(臨床研究所規格委員会(NCCLS)法(ピンク=増殖、青=目に見える増殖なし))。比色分析を行う前に、すべての実験でOD測定を行った。また、各ウェルの吸光度をUV-Visを介して570nm及び600nmで測定した。
【0161】
最小殺菌濃度(MBC)アッセイ
(寒天プレート上で増殖した)特定の細菌の単一コロニーを培養液に接種した。細菌培養物を一晩中(約18時間)増殖させた後、増殖支援培養液で1×105から1×109CFU/mLの間の濃度に希釈する。MIC値に基づいて、薬剤(MIC、2×~20×MIC)を含む寒天プレートを調製した。一連の薬剤含有寒天プレートに、等量の特定の細菌を接種した。寒天プレートを適切な温度と時間でインキュベートした。CFU/mLをカウントした。MBC値は、細菌の99.9%超の減少によって決定した。
【0162】
哺乳動物細胞株及び培養
ベロ細胞(ATCC(商標)CCL-81)はATCCから購入した。HEK細胞(SCCE020)はMilliporeSigmaから購入した。細胞株はサプライヤーが推奨するように培地で培養し維持した。
【0163】
ベロ細胞は、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(cellgro(登録商標)、30-002-CI)、1%HyClone(商標)MEM非必須アミノ酸溶液(100X)(GE Healthcare Life Sciences、SH30238.01)及び1%HyClone(商標)ピルビン酸ナトリウム100mM溶液(GE Healthcare Life Sciences、SH30239.01)が補充されたEagleのMinimum Essential Medium(MEM)(CORNING(登録商標)、10-009-CV)で培養し、湿度100%、CO25%の37℃インキュベータでインキュベートした。培養物は、増殖速度に応じて約5日かかる100%コンフルエンスに達するまで、2日ごとに新鮮な培地でリフレッシュした。
【0164】
ヒト表皮角化細胞、新生児(MILLIPORE(登録商標)、カタログ番号SCCE020)をEpiGRO(商標)ヒト表皮角化細胞完全培養培地キット(MILLIPORE(登録商標)、SCMK001)で培養し、湿度100%、CO25%の37℃インキュベータでインキュベートした。培養物が100%のコンフルエンスに達するまで、2日後及び週3回新鮮な培地でリフレッシュする。
【0165】
ベロ細胞を用いた細胞毒性分析
すべての試験は、若干の変更を含む臨床検査標準協会(CLSI)が定めたガイドラインに従う。PV-10の細胞毒性分析は、24ウェルプレートで実施した。各ウェル(1mL培地/ウェル)に、1μLの薬剤濃度を加えた。光下での室温(r.t.)での1、2、3及び4時間のインキュベーション後に、培地を除去し、細胞をPBSで(3回)洗浄した。培地(1mL/ウェル)を加えた後、10μLの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)溶液(PBS中5mg/mL)を加え、37℃(5%CO2)でもう3時間インキュベートした。培地を除去し、DMSO(1mL/ウェル)を添加した。生存率はMTTの紫色ホルマザン産物への細胞変換に基づいて評価した。着色したホルマザン産物の吸光度は、BioTek Synergy(商標)HT分光光度計によって570nmで測定した[Mitachiet al., J. Med. Chem. 63:10855-10878(2020)]。
【0166】
ベロ細胞[5×104細胞/ウェル(196μLの培養培地中)を96ウェルプレートに入れ、細胞培養物を4日間インキュベートして単層(100%コンフルエンス)を形成した。各ウェル中にRB(0~300mM)を添加した。
【0167】
画像は、IncuCyte(登録商標)生細胞イメージングシステム(Essen BioScience、ミシガン州アナーバー)を使用して1時間ごとに取得された。細胞増殖は、計算される細胞で覆われる視野の面積の測定値であるメトリック位相物体コンフルエンス(POC)を使用して定量化された。
【0168】
M.スメグマチス株の全ゲノム配列
RB耐性M.スメグマチス(ATCC607(商標))株は、以前に報告された手順に従って調製された[Kaser et al.、 Cold Spring Harb Protoc.(2010)]。細菌のRB耐性に寄与し得る一塩基変異多型(SNP)を同定するために、以前に報告された手順に従って、RB耐性変異体とその親対照株M.スメグマチス607(商標)の静置培養物からゲノムDNAを精製した[Lelovic et al., J. Antibiot. 73:780-789(2020)]。
【0169】
精製されたゲノムDNAはミネソタ大学ゲノムセンター(UMGC)に送られ、品質管理分析、ライブラリ調製、及び高度なIllumina MiSeq(商標)DNA-seqテクノロジを用いたDNA塩基配列決定が行われた。変異体及び対照からの配列読み取りは、FastQCを使用して品質が評価された。低品質のテール及びアダプタがTrimmomaticを使用して除去された[Lei et al., Methods Mol. Biol. 2069:125-138 (2020)]。M.スメグマチス株FDAARGOS_679の全ゲノム配列を参照として使用し、SNP又は欠失や挿入などの他の変異は、バイオインフォマティクスツールSnippy[https://github.com/tseemann/snippy]を使用して呼び出された。
【0170】
本明細書で引用した特許、特許出願及び論文は、それぞれ参照によって組み込まれる。冠詞「a」及び「an」(「1つの」)は、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すのに本明細書において使用される。
【0171】
前述の説明及び実施例は、例示を目的としたものであり、限定と捉えられるべきではない。本発明の趣旨及び範囲内で、更に他の変形も可能であり、当業者であれば容易に思いつくであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の眼のグラム陽性菌感染症の治療に必要な局所眼科システムであって、
前記システムは、水性点眼剤中に溶解又は分散されたハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含む眼科用組成物を含み、該組成物は約0.2μg/mLから約50μg/mLの細菌性角膜炎治療に有効な濃度で存在し、
約6.5から約7.6のpH値と、約10から約300cpsの粘度と、約270mOsm/kgから約340mOsm/kgの浸透圧を有し、化学線に対して不透明な容器内に存在する局所眼科システム。
【請求項2】
前記組成物が更に、グリセリン又はプロピレングリコール又はグリセリン及びプロピレングリコールの両方を最大で前記組成物の合計2.5重量パーセント含む、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項3】
少なくとも一部の前記浸透圧が、1つ以上の水溶性のナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムの塩化物、リン酸塩、及び硝酸塩の存在によって与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項4】
前記粘度が、前記組成物の前記pH値でイオン電荷のない1つ以上のポリマーによって少なくとも部分的に与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項5】
前記組成物の前記pH値でイオン電荷のない前記ポリマーが、PEG400、PEG1000、デキストラン、デキストリン、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒプロメロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリ(ビニルアルコール)のうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項4に記載の局所眼科システム。
【請求項6】
前記粘度が、前記組成物の前記pH値でアニオン電荷を帯びる1つ以上のポリマーによって少なくとも部分的に与えられる、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項7】
前記組成物の前記pH値でアニオン電荷を帯びる前記ポリマーが、a)ヒアルロン酸、b)各架橋剤が1分子当たり平均して少なくとも3つのアリル基を含む、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋された水溶性の部分的に中和された架橋アクリル酸、メタクリル酸及び共重合体、c)水膨潤性であるが非水溶性の部分的に中和された、少なくとも80重量パーセントのモノエチレン性不飽和カルボキシ官能性モノマーと約0.05から約1.5重量パーセントの3,4-ジヒドロキシ-1,5-ヘキサジエン又は2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンである架橋剤との共重合反応生成物、及びd)部分的に中和されたカルボキシメチルセルロースのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項6に記載の局所眼科システム。
【請求項8】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式1及び/又は式2の一方又は両方の化学式を有し、
【化1】
式中、R
1が独立してF、Cl、Br、I、H又はC
1-C
4アルキルであり;
R
2、R
3、R
4、及びR
5が独立してCl、H又はIであり、R
2、R
3、R
4、R
5から選択される少なくとも1つの置換基がIであり;
R
6が独立してH又はC
1-C
4アルキルであり;R
11がH又はC
1-C
4アルキルであり;R
12がH又はC
1-C
7アシルであり;すべての(a)互変異性型、(b)アトロプ異性体、(d)式2に示すラクトン型の光学異性体、及び(e)それらの薬学的に許容される塩、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項9】
前記式1及び式2の前記ハロゲン化フルオレセインのR
1がクロロ又はブロモ置換基のいずれかである一方、それらの式のR
2、R
3、R
4、及びR
5のそれぞれが、以下の式I及び式IIに存在するヨウド置換基であり、Xが酸素又は窒素であり、「n」がゼロ又は1であり、Xが
【化2】
酸素である場合、nがゼロであり、R
7が存在せず芳香族エステルを形成するのに対して、Xが窒素である場合、nが1であり、R
7が存在して芳香族アミドを形成し、
Xが酸素である場合、R
7が、水素(H)、薬学的に許容されるカチオンであるM
+、C
1-C
4アルキル、及び芳香環含有置換基からなる群から選択され、
前記芳香環含有置換基が、独立して窒素、酸素若しくは硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む、5若しくは6員を含む単環、又は5,6若しくは6,6縮合芳香環系であり、
Xが窒素である場合、R
7及びR
8が同じか又は異なり、水素、C
1-C
4アルキル、芳香環含有置換基又は5若しくは6員環を形成するアミド窒素原子と共にアミド窒素原子R
7及びR
8と共に含んでなる群から選択される、請求項8に記載の局所眼科システム。
【請求項10】
前記芳香族エステル又は芳香族アミドの前記芳香環含有置換基が非置換であり、次のものからなる群から選択され、
【化3】
である、請求項9に記載の局所眼科システム。
【請求項11】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式Ia及び/又は式IIbの一方又は両方の化学式を有し、
【化4】
式中、M
+が薬学的に許容されるカチオンである、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項12】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルがローズベンガルジナトリウムである、請求項1に記載の局所眼科システム。
【請求項13】
哺乳動物の眼のグラム陽性菌感染症の治療に使用する眼科用組成物であって、水性眼科利用担体に溶解又は分散されたハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルを含
み、前記組成物中に約0.2μg/mLから約50μg/mLの細菌性角膜炎治療に有効な濃度で存在し、約6.5から約7.6のpH値と、約10から約300cpsの粘度と、約270mOsm/kgから約340mOsm/kgの浸透圧を有
し、前記グラム陽性菌に感染した眼に投与する眼科用組成物。
【請求項14】
前記
投与が前記実質的に化学線のない状態で実行される、請求項13に記載の
眼科用組成物。
【請求項15】
前記眼科用組成物が、前記投与の前に化学線に対して不透明な容器に保持される、請求項13に記載の
眼科用組成物。
【請求項16】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式1及び/又は式2の一方又は両方の化学式を有し、
【化5】
式中、R
1が独立してF、Cl、Br、I、H又はC
1-C
4アルキルであり;
R
2、R
3、R
4、及びR
5が独立してCl、H又はIであり、R
2、R
3、R
4、R
5から選択される少なくとも1つの置換基がIであり;
R
6が独立してH又はC
1-C
4アルキルであり;R
11がH又はC
1-C
4アルキルであり;R
12がH又はC
1-C
7アシルであり;すべての(a)互変異性型、(b)アトロプ異性体、(d)式2に示すラクトン型の光学異性体、及び(e)それらの薬学的に許容される塩、請求項13に記載の
眼科用組成物。
【請求項17】
前記式1及び式2の前記ハロゲン化フルオレセインのR
1がクロロ又はブロモ置換基のいずれかである一方、それらの式のR
2、R
3、R
4、及びR
5のそれぞれが、以下の式I及び式IIに存在するヨウド置換基であり、Xが酸素又は窒素であり、「n」がゼロ又は1であり、Xが
【化6】
酸素である場合、nがゼロであり、R
7が存在せず芳香族エステルを形成するのに対して、Xが窒素である場合、nが1であり、R
7が存在して芳香族アミドを形成し、
Xが酸素である場合、R
7が、水素(H)、薬学的に許容されるカチオンであるM
+、C
1-C
4アルキル、及び芳香環含有置換基からなる群から選択され、
前記芳香環含有置換基が、独立して窒素、酸素若しくは硫黄である0、1又は2個のヘテロ環原子を含む、5若しくは6員を含む単環、又は5,6若しくは6,6縮合芳香環系であり、
Xが窒素である場合、R
7及びR
8が同じか又は異なり、水素、C
1-C
4アルキル、芳香環含有置換基又は5若しくは6員環を形成するアミド窒素原子と共にアミド窒素原子R
7及びR
8と共に含んでなる群から選択される、請求項16に記載の
眼科用組成物。
【請求項18】
前記芳香族エステル又は芳香族アミドの前記芳香環含有置換基が非置換であり、次のものからなる群から選択され、
【化7】
である、請求項17に記載の
眼科用組成物。
【請求項19】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが、次の式Ia及び/又は式IIbの一方又は両方の化学式を有し、
【化8】
式中、M
+が薬学的に許容されるカチオンである、請求項13に記載の
眼科用組成物。
【請求項20】
前記ハロゲン化フルオレセイン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルがローズベンガルジナトリウムである、請求項13に記載の
眼科用組成物。
【国際調査報告】