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特表2025-501150モータ及びギアボックス流体配合物並びにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】モータ及びギアボックス流体配合物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20250109BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 105/34 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 105/36 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 105/38 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 107/34 20060101ALN20250109BHJP
   C10M 105/06 20060101ALN20250109BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20250109BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20250109BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20250109BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M101/02
C10M107/02
C10M105/34
C10M105/36
C10M105/38
C10M107/34
C10M105/06
C10N20:02
C10N40:04
C10N40:00 D
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538965
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 US2023010203
(87)【国際公開番号】W WO2023133200
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/296,959
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイブス,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ウェンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジアジェン
(72)【発明者】
【氏名】ラン,ハイ
(72)【発明者】
【氏名】シルバ ロドリゲス,ディエゴ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ベルマール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ティボー,エリック
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB32A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104EA02A
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104LA20
(57)【要約】
車両ドライブトレインにおいて使用され得る、低トラクション流体、低粘度モータ流体及び高圧粘度係数流体配合物を含む流体配合物が、本明細書に記載される。流体配合物は、基油及び添加剤を含む。流体配合物は、電気自動車のドライブトレインに効率上の利点を提供することができる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体配合物であって、
添加剤と、
基油と、を含み、前記基油は、米国石油協会(API)グループII油、APIグループII+油、APIグループIII油、APIグループIII+油、APIグループIV油、APIグループV油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、流体配合物。
【請求項2】
前記基油は、パラフィン、ナフテン、ポリ-α-オレフィン(PAO)、モノエステル、ジエステル、アルキル化ナフタレン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記パラフィンは、イソパラフィン、直鎖パラフィン、シクロパラフィン、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の配合物。
【請求項4】
前記配合物は、約70~95重量%の前記基油を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
前記基油は、100℃で1.7~2000cStの粘度を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
前記添加剤は、減摩添加剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、黄色金属不活性化剤、分散剤、清浄剤、消泡剤、シール膨潤剤、溶解促進剤、染料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
前記添加剤は、硫黄、リン、カルシウム、ホウ素、ケイ素、窒素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前記添加剤は、HiTEC 3491K、HiTEC 5769、HiTEC 35750、HiTEC 2571、HiTEC 4780、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤配合物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記配合物は、約5~15重量%の前記添加剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
粘度指数向上剤を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
前記配合物は、約1~20重量%の前記粘度指数向上剤を含む、請求項10に記載の配合物。
【請求項12】
前記粘度指数向上剤は、100℃で約40~20000cStの粘度を有する、請求項10に記載の配合物。
【請求項13】
前記配合物の粘度は、100℃で約2~30cStである、請求項1~12のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項14】
配合物の粘度は、-20℃で約300~20000cStである、請求項1~13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
前記流体配合物は、低トラクション流体配合物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
前記低トラクション流体配合物のトラクション係数は、約0.005~0.06である、請求項15に記載の配合物。
【請求項17】
前記低トラクション流体配合物の圧力-粘度係数は、40℃で約10~20GPa-1である、請求項15に記載の配合物。
【請求項18】
前記流体配合物は、高圧粘度係数流体配合物である、請求項1~14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
前記高圧粘度係数流体のトラクション係数は、約0.005~0.15である、請求項18に記載の配合物。
【請求項20】
前記高圧粘度係数流体の圧力-粘性係数は、40℃で約12~30GPa-1である、請求項18に記載の配合物。
【請求項21】
車両駆動ユニットであって、
モータと、
前記モータと流体連通しているモータ流体システムと、
ギアボックスと、
前記ギアボックスと流体連通しているギアボックス流体システムと、を備え、前記ギアボックス流体システムは、請求項1~20のいずれか一項に記載の流体配合物を含む、車両駆動ユニット。
【請求項22】
前記ギアボックス流体システムは、約0.2~20LPMの速度で流体をポンピングするように構成されている、請求項21に記載の駆動ユニット。
【請求項23】
前記モータ流体システムは、前記ギアボックス流体システムと流体連通している、請求項21又は22に記載の駆動ユニット。
【請求項24】
前記モータ流体システムは、前記流体配合物を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項25】
前記モータ流体システムは、モータ流体配合物を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項26】
前記モータ流体配合物は、低トラクション流体配合物又は高圧粘度係数モータ流体配合物である、請求項25に記載の駆動ユニット。
【請求項27】
前記モータは、電気モータである、請求項21~26のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項28】
請求項21~27のいずれか一項に記載の車両駆動ユニットを備える、車両。
【請求項29】
前記車両は、二次流体配合物を含む二次駆動ユニットを更に含む、請求項28に記載の車両。
【請求項30】
前記二次流体配合物は、二次低トラクション流体配合物又は二次高圧粘度係数流体配合物を含む、請求項29に記載の車両。
【請求項31】
前記駆動ユニットの前記ギアボックス流体システムは、前記低トラクション流体配合物を含み、前記二次駆動ユニットは、二次高圧粘度係数流体配合物を含む、請求項29又は30に記載の車両。
【請求項32】
車両駆動ユニットを使用する方法であって、
車両駆動ユニットを提供する工程であって、前記車両駆動ユニットは、
モータと、
前記モータと流体連通するモータ流体システムと、
ギアボックスと、
前記ギアボックスと流体連通するギアボックス流体システムと、を備え、前記ギアボックス流体経路システムは、請求項1~20のいずれか一項に記載の流体配合物を含む、工程と、
前記ギアボックス及び前記ギアボックス流体システムを通して前記流体配合物を流す工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年1月06日に出願された「MOTOR AND GEARBOX FLUID FORMULATIONS AND USES THEREOF」と題する米国仮特許出願第63/296959号の非仮出願であり、その優先権を主張するものであり、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、流体配合物に関する。より具体的には、本発明は、自動車(例えば、電気車両)駆動ユニット及び自動車ドライブライン用途のための低トラクション及び高圧粘度の流体配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
電気車両モータ及びギアボックスのための流体技術は、従来の燃焼車両プラットフォームのための自動変速機用の流体配合物に基づいている。かかるプラットフォームでは、流体配合物は、湿式クラッチ材料の摩擦要件及び滑り摩耗保護を満たすように最適化されている。しかしながら、特定の状況では、システム効率及び/又は耐久性を犠牲にすることなく、ギア及び軸受保護のギアボックス要件、対応する効率、連続動力モータ及び効率要件のバランスを取ることは実現可能ではない。分子構造のために、従来の流体配合物は、十分なモータ冷却、酸化安定性及び蒸発耐性を提供しない可能性がある。
【0004】
したがって、現在、高い駆動ユニット効率、長い流体寿命、及び適度なコストを同時に提供する市販の流体配合物は存在していない。更に、現在の低トラクションギア油製品は、電気車両駆動ユニットの潤滑及び冷却用途に適しておらず、低圧粘度係数、吸湿性、加水分解安定度、及び相溶性を含むがこれらに限定されない問題を有している。
【発明の概要】
【0005】
本開示及び従来技術に対して達成される利点を要約する目的で、本開示の特定の目的及び利点が本明細書に記載される。かかる目的又は利点の全てが、任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書に教示又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような1つの利点又は利点の群を達成又は最適化する様式で具現化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0006】
これらの実施形態の全ては、本明細書に開示される本発明の範囲内であることが意図される。これら及び他の実施形態は、添付の図面を参照して、好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は、開示される任意の特定の好ましい実施形態(複数可)に限定されない。
【0007】
一態様では、流体配合物が開示される。流体配合物は、添加剤と、基油と、を含み、基油は、米国石油協会(API)グループII油、APIグループII+油、APIグループIII油、APIグループIII+油、APIグループIV油、APIグループV油、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
一部の実施形態では、基油は、パラフィン、ナフテン、ポリ-α-オレフィン(PAO)、モノエステル、ジエステル、アルキル化ナフタレン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、パラフィンは、イソパラフィン、直鎖パラフィン、シクロパラフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、配合物は、約70~95重量%の基油を含む。一部の実施形態では、基油は、100℃で1.7~2000cStの粘度を含む。
【0009】
一部の実施形態では、添加剤は、減摩添加剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、黄色金属不活性化剤、分散剤、清浄剤、消泡剤、シール膨潤剤、溶解促進剤、染料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、添加剤は、硫黄、リン、カルシウム、ホウ素、ケイ素、窒素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。一部の実施形態では、添加剤は、HiTEC 3491K、HiTEC 5769、HiTEC 35750、HiTEC 2571、HiTEC 4780、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤配合物を含む。一部の実施形態では、配合物は、約5~15重量%の添加剤を含む。
【0010】
一部の実施形態では、流体配合物は、粘度指数向上剤を更に含む。一部の実施形態では、流体配合物は、約1~20重量%の粘度指数向上剤を含む。一部の実施形態では、粘度指数向上剤は、100℃で約40~20000cStの粘度を含む。一部の実施形態では、配合物の粘度は、100℃で約2~30cStである。一部の実施形態では、配合物の粘度は、-20℃で約300~20000cStである。一部の実施形態では、流体配合物は、低トラクション流体配合物である。
【0011】
一部の実施形態では、低トラクション流体配合物のトラクション係数は、約0.005~0.06である。一部の実施形態では、低トラクション流体配合物の圧力-粘度係数は、40℃で約10~20GPa-1である。一部の実施形態では、流体配合物は、高圧粘度係数流体配合物である。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体のトラクション係数は、約0.005~0.15である。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体の圧力-粘度係数は、40℃で約12~30GPa-1である。
【0012】
別の態様では、車両駆動ユニットが開示される。車両駆動ユニットは、モータと、モータと流体連通するモータ流体システムと、ギアボックスと、ギアボックスと流体連通するギアボックス流体システムと、を含み、ギアボックス流体システムは、流体配合物を含む。一部の実施形態では、ギアボックス流体システムは、約0.2~20LPMの速度で流体をポンピングするように構成される。一部の実施形態では、モータ流体システムは、ギアボックス流体システムと流体連通している。一部の実施形態では、モータ流体システムは流体配合物を含む。一部の実施形態では、モータ流体システムは、モータ流体配合物を含む。一部の実施形態では、モータ流体配合物は、低トラクション流体配合物又は高圧粘度係数モータ流体配合物である。一部の実施形態では、モータは電気モータである。
【0013】
別の態様では、車両が開示される。車両は、車両駆動ユニットを備える。一部の実施形態では、車両は、二次流体配合物を含む二次駆動ユニットを更に含む。一部の実施形態では、二次流体配合物は、二次低トラクション流体配合物又は二次高圧粘度係数流体配合物を含む。一部の実施形態では、駆動ユニットのギアボックス流体システムは、低トラクション流体配合物を含み、二次駆動ユニットは、二次高圧粘度係数流体配合物を含む。
【0014】
別の態様では、車両駆動ユニットを使用する方法が記載される。方法は、モータと、モータと流体連通するモータ流体システムと、ギアボックスと、ギアボックスと流体連通するギアボックス流体システムとを備える車両駆動ユニットを提供することであって、ギアボックス流体経路システムは、流体配合物を含む、ことと、ギアボックス及びギアボックス流体システムを通して流体配合物を流すことと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】二重流体経路システム設計の概略図を示す。
【0016】
図1B】単一流体経路システム設計の概略図を示す。
【0017】
図2】比較配合物と比較した、一部の実施形態の低トラクション流体配合物の一部の駆動ユニット効率の向上を示す。
【0018】
図3】比較配合物と比較した、一部の実施形態の低トラクション流体配合物の駆動ユニット効率の向上を示す。
【0019】
図4A】第1の速度及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0020】
図4B】第2の速度及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0021】
図4C】第1の滑り転がり比及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0022】
図4D】第2の滑り転がり比及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0023】
図5A】第1の速度及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0024】
図5B】第2の速度及び負荷条件下で駆動ユニットにおいて使用される比較流体と比較した、一部の実施形態における流体のトラクションを示すグラフである。
【0025】
図6】一部の実施形態における低粘度流体及び低トラクション流体を種々の流量で利用する二重流体経路システムのポンプ出力消費量及び低温銅節約量を示すグラフである。
【0026】
図7】一部の実施形態において種々の条件で低トラクションギアボックス流体を利用する二重流体経路システムのステータ温度のモータダイノ調査を示すグラフである。
【0027】
図8】種々の温度における比較流体と比較した、一部の実施形態における流体の粘度を示すグラフである。
【0028】
図9】一部の実施形態における流体の粘度及び圧力粘性係数(PVC)を示すグラフである。
【0029】
図10A】比較流体の駆動ユニット効率に対する、一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニット効率を示す。
【0030】
図10B】比較流体の駆動ユニット効率に対する、一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニット効率を示す。
【0031】
図10C】比較流体の駆動ユニット効率に対する、一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニット効率を示す。
【0032】
図10D】比較流体の駆動ユニット効率に対する、一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニット効率を示す。
【0033】
図10E】比較流体に対する一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニットラムダ比の比較を示す。
【0034】
図10F】比較流体に対する一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニットラムダ比の比較を示す。
【0035】
図10G】比較流体に対する一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニットラムダ比の比較を示す。
【0036】
図10H】比較流体に対する一部の実施形態の低トラクション流体の駆動ユニットラムダ比の比較を示す。
【0037】
図11A】一部の実施形態における流体の高温損傷を示す画像である。
【0038】
図11B】一部の実施形態における流体の高温損傷を示す画像である。
【0039】
図11C】一部の実施形態における流体の高温損傷を示す画像である。
【0040】
図11D】一部の実施形態における流体の高温損傷を示す画像である。
【0041】
図12A】加水分解安定性試験前の比較流体のFT-IRスペクトルである。
【0042】
図12B】加水分解安定性試験前の比較流体の銅腐食試験の画像である。
【0043】
図12C】加水分解安定性試験後の比較流体のFT-IRスペクトルである。
【0044】
図12D】加水分解安定性試験後の比較流体の銅腐食試験の画像である。
【0045】
図13A】疲労摩耗試験後の比較流体を利用するギアトレインの画像である。
【0046】
図13B】疲労摩耗試験後の比較流体を利用するギアトレインの画像である。
【0047】
図13C】疲労摩耗試験後の一部の実施形態における流体を利用するギアトレインの画像である。
【0048】
図14A】一部の実施形態における、種々のモータ速度、モータトルク、及びポンプ速度で流体を利用するギアボックス流体システムを示すグラフである。Xはモータトルクであり、Yはモータ速度であり、Z(bar)はLPMでのポンプ流量である。
【0049】
図14B】種々のモータ速度、モータトルク、及びポンプ速度において、一部の実施形態における流体を利用するギアボックス流体システムを示す、3D座標系を伴うグラフである。Xはモータトルクであり、Yはモータ速度であり、Z(bar)はLPMでのポンプ流量である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本開示は、以下の詳細な説明を参照することによって理解することができる。説明を明確にするために、種々の図面中の特定の要素は、一定の縮尺で描かれていない場合があり、概略的又は概念的に表されている場合があり、又はそうでなければ、実施形態の特定の物理的構成に正確に対応していない場合があることに留意されたい。
【0051】
実施形態は、車両(例えば、電気自動車)、一部の実施形態では、車両ドライブトレインのための流体配合物に関する。一部の実施形態では、流体配合物は、低トラクション流体又は高粘度係数流体である。本開示の流体配合物は、駆動サイクル全体を通して、より高い駆動ユニット(例えば、電気モータ及び/又はギアボックス)効率を提供することができる。一部の実施形態では、これは、境界潤滑、混合潤滑、及び/又は弾性流体潤滑レジームを通してより低い摩擦及びトラクションを提供する低トラクション流体配合物に起因し得る。より低い流体摩擦及びトラクションは、例えば、境界及び混合潤滑レジーム摩擦低減(すなわち、平坦化ストライベック曲線)のために特別に設計された極性を有するより高い粘度の二次分子と結合された低トラクション分子設計などの、柔軟な流体設計の一部の実施形態において達成され得る。低トラクション流体は、改善された粘度、低トラクション、並びに境界及び混合潤滑レジーム摩擦低減を伴って設計することができる。かかる低トラクション流体は、改善されたギアトレイン保護、モータ冷却、及び駆動ユニット効率を可能にする。
【0052】
一部の実施形態では、流体配合物は、ギアボックスによって(例えば、潤滑及び/又は冷却のために)利用され、第2の流体は、モータによって(例えば、冷却及び/又は潤滑のために)利用される。一部の実施形態では、モータによって利用される第2の流体は、低トラクション流体、高粘度係数流体、油、及び/又は超低粘度油である。かかる二重流体潤滑及び冷却システム設計は、改善されたギアボックス効率及び信頼性を達成すると同時に、より低い導体温度を通してモータの最大連続電力及び効率を向上させるために、流体設計及び流体特性における柔軟性を提供することができる。
【0053】
更に、車両(例えば、電気自動車(EV))用の高圧粘度(HPV)係数を有する流体に関する実施形態が、本明細書に開示される。かかる高圧粘度係数流体は、耐久性を犠牲にすることなく駆動ユニットの効率を高めるのに役立つことができる。一部の実施形態では、低トラクション流体は、第1の駆動ユニット(例えば、一次駆動ユニット)によって利用され、高圧粘度係数流体は、二次駆動ユニットによって利用される。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、より高い効率を達成しながら、より低い流体粘度及びコストを必要とし、これは、より高い圧力粘度係数を有する流体によって達成され得る。
【0054】
流体配合物は、基油及び添加剤を含む。一部の実施形態では、基油及び/又は添加剤は、高圧粘度係数流体と比較して、低トラクション流体について(例えば、組成及び/又は量に関して)異なり得る。一部の実施形態では、流体配合物は、粘度指数向上剤を更に含む。流体配合物は、元素不純物を更に含んでもよい。
【0055】
一部の実施形態では、流体配合物の粘度は、100℃で、1cSt、2cSt、3cSt、4cSt、5cSt、6cSt、8cSt、10cSt、12cSt、15cSt、20cSt、25cSt、30cSt、35cSt、40cSt若しくは50cSt、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。一部の実施形態では、低トラクション流体の粘度は、-20℃で、500cSt、550cSt、600cSt、650cSt、700cSt、750cSt、800cSt、900cSt、1000cSt、1200cSt、1500cSt、2000cSt、2200cSt、若しくは2500cSt、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。
【0056】
一部の実施形態では、低トラクション流体のトラクション係数は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.008、0.01、0.015、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.15、0.2若しくは0.3、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。一部の実施形態では、低トラクション流体の圧力-粘度係数は、40℃で、4GPa-1、5GPa-1、6GPa-1、7GPa-1、8GPa-1、9GPa-1、10GPa-1、11GPa-1、12GPa-1、13GPa-1、14GPa-1、15GPa-1、16GPa-1、17GPa-1、18GPa-1、19GPa-1、20GPa-1、21GPa-1、22GPa-1、23GPa-1、24GPa-1、25GPa-1、若しくは28GPa-1、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらである。
【0057】
一部の実施形態では、高圧粘度係数流体のトラクション係数は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.008、0.01、0.015、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3.0.35若しくは0.4、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体のトラクション係数は、本明細書に開示される低トラクション流体のトラクション係数よりも高い。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体の圧力-粘度係数は、40℃で、8GPa-1、9GPa-1、10GPa-1、11GPa-1、12GPa-1、13GPa-1、14GPa-1、15GPa-1、16GPa-1、17GPa-1、18GPa-1、19GPa-1、20GPa-1、21GPa-1、22GPa-1、23GPa-1、24GPa-1、25GPa-1、26、GPa-1、27GPa-1、28GPa-1、29GPa-1、30GPa-1、31GPa-1、32GPa-1、333GPa-1、34GPa-1、35GPa-1、37GPa-1、39GPa-1、40GPa-1、42GPa-1、44GPa-1、46GPa-1、48GPa-1、若しくは50GPa-1、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらである。
【0058】
一部の実施形態では、高圧粘度係数流体の圧力-粘性係数は、低トラクション流体の圧力-粘性係数よりも高い。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体の粘度は、同じ圧力下で低トラクション流体の粘度よりも低い。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体は、低トラクション流体配合物の粘度よりも低い、10%、12%、15%、17%、20%、22%、25%、27%、30%、33%、35%若しくは40%、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらの粘度を有する。
【0059】
一部の実施形態では、低トラクション流体の銅腐食定格係数は、1A、1B、2A、2B、2C、2D、2E、3A、3B若しくは4A、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、又はそれら以下である。一部の実施形態では、低トラクション流体のΔTANは、0.1mgKOH/g、0.2mgKOH/g、0.3mgKOH/g、0.5mgKOH/g、0.8mgKOH/g、1mgKOH/g、1.5mgKOH/g、2mgKOH/g、2.5mgKOH/g、3mgKOH/g若しくは5mgKOH/g、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。
【0060】
・基油
流体配合物(すなわち、低トラクション流体及び/又は高圧粘度係数流体)は、少なくとも1つの基油を含んでもよい。一部の実施形態では、基油は、米国石油協会(API)グループII(「GII」)油、APIグループII+(「GII+」)油、APIグループIII(「GIII」)油、APIグループIII+(「GIII+」)油、APIグループIV(「GIV」)油、APIグループV(「GV」)油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、GIII+油はパラフィンを含む。一部の実施形態では、GIV油は、ポリアルファオレフィン(PAO)を含む。一部の実施形態では、GV油は、モノエステル、ジエステル、アルキル化ナフタレン、ポリオールエステル、及びポリアルキレングリコールのうちの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、基油は、パラフィン、ナフテン、ポリ-α-オレフィン(PAO)、モノエステル、ジエステル、アルキル化ナフタレン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、パラフィンは、分枝鎖パラフィン(例えば、イソパラフィン)、直鎖パラフィン、シクロパラフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。基油化合物の化学構造の例を本明細書の表Aに示している。
【表A】
【0061】
一部の実施形態では、流体配合物は、約50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%若しくは98重量%、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらの基油を含む。一部の実施形態では、基油は、100℃で、約1.5cSt、1.7cSt、2cSt、5cSt、10cSt、15cSt、20cSt、30cSt、40cSt、50cSt、100cSt、150cSt、200cSt、300cSt、400cSt、500cSt、600cSt、800cSt、1000cSt、1200cSt、1500cSt、1800cSt、2000cSt若しくは2200cSt、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下の粘度を有する。
【0062】
一部の実施形態では、低トラクション流体は、GVエステル油(例えば、モノエステル、ジエステル、又はポリオールエステル)を含む基油を含み、配合物は、60~85重量%の基油を含み、基油は、100℃で2.8~6cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GIV油(例えば、低粘度C~C16 PAOモノマー、ここで、オリゴマーは、二量体、三量体、及び/又は四量体であってもよい)を含む基油を含み、配合物は、30~85重量%の基油を含み、基油組成物は、100℃で1.7~6cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GII+油、GIII油及び/又はGIII+を含む基油を含み、配合物は、基油の合計を60~85重量%含み、基油組成物は、100℃で3~6cStの粘度を有する。
【0063】
一部の実施形態では、低トラクション流体は、GIV油(例えば、PAO)を含む基油を含み、配合物は、1~50重量%の基油を含み、基油は、100℃で6~10cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GII+油、GIII油、及び/又はGIII+油を含む基油を含み、配合物は、1~40重量%の基油を含み、基油は、100℃で5.5~8cStの粘度を有する。
【0064】
一部の実施形態では、低トラクション流体は、GIV油(例えば、高粘度PAO及び/又はmPAO)を含む基油を含み、配合物は、1~40重量%の基油を含み、基油は、100℃で65~300cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GV油(例えば、高粘度エステル)を含む基油を含み、配合物は、0~20重量%の基油を含み、基油は、100℃で125~2000cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GV油(例えば、低粘度エステル)を含む基油を含み、配合物は、1~5重量%の基油を含み、基油は、100℃で1~6cStの粘度を有する。一部の実施形態では、低トラクション流体は、GV油(例えば、アルキル化ナフタレン)を含む基油を含み、配合物は、1~20重量%の基油を含み、基油は、100℃で5~12cStの粘度を有する。
【0065】
一部の実施形態では、高圧粘度係数流体は、GIII基油、GII+基油及びGII基油を含む基油を含む。一部の実施形態では、高圧粘度係数流体の圧力粘性係数は、一般的な動作条件において15.6~19.2GPa-1である。
【0066】
・添加剤
流体配合物(すなわち、低トラクション流体及び/又は高圧粘度係数流体)は、少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。一部の実施形態では、添加剤は、減摩添加剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、黄色金属不活性化剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、シール膨潤剤、溶解力増進剤、染料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、配合物は、0.001重量%、0.005重量%、0.01重量%、.%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、、又はそれらの間の任意の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらの添加剤を含む。一部の実施形態では、添加剤及び基油の量は合計で約100重量%になる。
【0067】
添加剤は、硫黄、リン、カルシウム、ホウ素、ケイ素、窒素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む。一部の実施形態では、添加剤は、500ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1200ppm、1400ppm、1600ppm、1800ppm、2000ppm、2200ppm、2400ppm、2500ppm、3000ppm、3500ppm若しくは4000ppm、又はそれらの間の任意の値の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下の硫黄を含む。一部の実施形態では、添加剤は、50ppm、60ppm、80ppm、100ppm、120ppm、150ppm、200ppm、250ppm、260ppm、280ppm、300ppm、320ppm、350ppm、400ppm、450ppm、500ppm若しくは600ppm、又はそれらの間の任意の値の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下のリンを含む。一部の実施形態では、添加剤は、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、80ppm、100ppm、120ppm、140ppm、150ppm、160ppm、180ppm、200ppm、250ppm、300ppm若しくは400ppm、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下のカルシウムを含む。一部の実施形態では、添加剤は、約10ppm、20ppm、30ppm、40ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、110ppm、120ppm、140ppm、150ppm、若しくは200ppm、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下のホウ素を含む。一部の実施形態では、添加剤は、0ppm、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm若しくは50ppm、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下のケイ素を含む。一部の実施形態では、添加剤は、500ppm、600ppm、700ppm、800ppm、900ppm、1000ppm、1100ppm、1200ppm、1300ppm、1400ppm、1500ppm、1700ppm、2000ppm、若しくは3000ppm、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下の窒素を含む。
【0068】
一部の実施形態では、添加剤は、HiTEC 3491K、HiTEC 5769、HiTEC 35750、HiTEC 2571、HiTEC 4780、及びそれらの組み合わせから選択される添加剤配合物を含む。
【0069】
・粘度指数向上剤
流体配合物(すなわち、低トラクション流体及び/又は高圧粘度係数流体)は、粘度指数向上剤を含んでもよい。一部の実施形態では、配合物は、粘度指数向上剤を、約0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、0.8重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、10重量%、12重量%、14重量%、16重量%、18重量%、20重量%、22重量%、25重量%、若しくは30重量%、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下で含む。
【0070】
一部の実施形態では、粘度指数向上剤の粘度は、100℃で、約10cSt、20cSt、30cSt、40cSt、50cSt、100cSt、200cSt、300cSt、500cSt、700cSt、1000cSt、1500cSt、2000cSt、2500cSt、3000cSt、4000cSt、5000cSt、6000cSt、8000cSt、10000cSt、12000cSt、14000cSt、15000cSt、17000cSt、19000cSt、20000cSt、21000cSt、22000cSt、23000cSt、24000cSt、25000cSt、28000cSt、若しくは30000cSt、又はそれらの間の値の任意の範囲であるか、略それらであるか、それら以下であるか、又は略それら以下である。
駆動ユニット、車両及び使用
【0071】
図1Aは、ギアボックス流体経路102及びモータ流体経路122を備える、一部の実施形態による二重流体経路システム100の概略図を示している。ギアボックス流体経路102は、ギアボックスポンプ106と流体連通するギア流体を含むギアサンプ104を含み、ギアポンプは、ギア流体をギアボックスフィルタ108に通して熱交換器136に送る(例えば、圧送する)。次に、熱交換器136からのギア流体は、ギアシステム110に送られ、ギアシステムは、ギア流体をギアサンプ104に戻す。ギアシステム110は、車両の車軸112に機械的に接続される。モータ流体経路122は、モータポンプ126と流体連通するモータ流体を含むモータサンプ124を含み、モータポンプは、モータ流体をモータフィルタ128に通して熱交換器136に送る。次に、熱交換器136からのモータ流体は、ステータ131及びロータ132を含むモータシステム130に送られ、このモータシステムは、モータ流体をモータサンプ124に戻す。モータシステム130は、接続部134を介してギアシステム110に機械的に接続される。熱交換器136は、熱交換器136を通って流れ、ギア流体及びモータ流体と熱交換するように構成された冷却剤流体経路138を備える。
【0072】
一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体のうちの少なくとも1つは、流体配合物(すなわち、低トラクション流体及び/又は高圧粘度流体)を含む。一部の実施形態では、ギア流体は、第1の流体配合物(すなわち、低トラクション流体又は高圧粘度流体)を含み、モータ流体は、第2の流体配合物(すなわち、低トラクション流体又は高圧粘度流体)を含む。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、異なる流体配合物である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、異なる低トラクション流体配合物である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、異なる高圧粘度流体配合物である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体のうちの一方は、低トラクション流体配合物であり、他方は、高圧粘度流体配合物である。二重油システムは、低トラクション流体又は高圧粘度流体設計を可能にするために必要ではないが、一部の実施形態では、二重油システムは、低トラクション流体及び/又は高圧粘度流体を利用する流体システムに追加の利点を提供することができる。
【0073】
図1Bは、単一の流体経路164を備える、一部の実施形態による単一の流体経路システム又は単一の流体システム150の概略図を示している。単一の流体経路164は、油ポンプ154と流体連通する流体を含む油サンプ152を含み、油ポンプは、流体を油フィルタ156に通して熱交換器162に送る。熱交換器162からの流体は、次に、流体を油サンプ152に戻すギアボックス158に送られる。単一の流体経路164において、熱交換器162からの流体はモータ160にも送られ、モータは流体を油サンプ152に戻す。ギアボックス158は、車両の車軸に機械的に接続される。モータ160は、接続を介してギアボックス158に機械的に接続される。熱交換器162は、熱交換器162を通って流れ、流体と熱交換するように構成された冷却流体経路を備えることができる。
【0074】
一部の実施形態では、ギア流体及び/又はモータ流体は、流体配合物である。一部の実施形態では、モータ流体は、冷却及び/又は潤滑のための低粘度油であり、流体配合物とは異なる。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、同じ流体である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、低トラクション流体である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、同じ低トラクション流体配合物又は異なる低トラクション流体配合物である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、高圧粘度係数流体である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、同じ高圧粘度係数流体配合物又は異なる高圧粘度係数流体配合物である。一部の実施形態では、ギア流体及びモータ流体は、異なる流体である。一部の実施形態では、ギア流体は低トラクション流体であり、モータ流体は異なる流体である。一部の実施形態では、ギア流体は、低トラクション流体であり、モータ流体は、異なる低トラクション流体、高圧粘度流体、又は低粘度油である。一部の実施形態では、ギア流体は高圧粘度係数流体であり、モータ流体は異なる流体である。一部の実施形態では、ギア流体は、高圧粘度係数流体であり、モータ流体は、異なる高圧粘度流体、低トラクション流体、又は低粘度油である。一部の実施形態では、単一流体経路システム内の流体は、低トラクション流体又は高圧粘度係数流体である。
【0075】
一部の実施形態では、ギアボックス流体システム及び/又は単一流体システムは、約0.01LPM、0.03LPM、0.05LPM、0.1LPM、0.15LPM、0.2LPM、0.3LPM、0.5LPM、1LPM、2LPM、3LPM、4LPM、5LPM、6LPM、7LPM、8LPM、9LPM、10LPM、12LPM、15LPM、18LPM、20LPM、22LPM、25LPM、27LPM、29LPM、若しくは30LPM、又はそれらの間の任意の値の範囲であるか、それらであるか、少なくともそれらであるか、又は少なくとも略それらの速度で流体をポンピングするように構成される。
【0076】
一部の実施形態では、車両は、第1の駆動ユニット(例えば、一次駆動ユニット)に加えて、二次駆動ユニットを備える。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、二次モータ(すなわち、ブーストモータ)を備える。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、二次ギアボックスを備える。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは二次流体を含む。一部の実施形態では、二次流体は二次流体配合物である。一部の実施形態では、二次流体配合物は、低トラクション流体配合物又は高圧粘度流体配合物である。一部の実施形態では、二次流体配合物は、第1の駆動ユニットのモータ流体と同じ流体配合物である。一部の実施形態では、二次流体配合物は、第1の駆動ユニットのギア流体と同じ流体配合物である。一部の実施形態では、二次流体配合物は、第1の駆動ユニットのモータ流体とは異なる流体配合物である。一部の実施形態では、第1の駆動ユニットのモータ流体は、低トラクション流体であり、二次流体配合物は、異なる低トラクション流体又は高圧粘度流体である。一部の実施形態では、第1の駆動ユニットのモータ流体は、高圧粘性流体であり、二次流体配合物は、異なる高圧粘性流体又は低トラクション流体である。一部の実施形態では、二次流体配合物は、第1の駆動ユニットのギアボックス流体とは異なる流体配合物である。一部の実施形態では、第1の駆動ユニットのギアボックス流体は、低トラクション流体であり、二次流体配合物は、異なる低トラクション流体又は高圧粘度流体である。一部の実施形態では、第1の駆動ユニットのギアボックス流体は、高圧粘度流体であり、二次流体配合物は、異なる高圧粘度流体又は低トラクション流体である。
【0077】
一部の実施形態では、二次流体は、低トラクション流体とは異なる。一部の実施形態では、二次流体は、低トラクション流体と比較してより低い粘度及びより高い圧力粘度係数を有する高圧粘度係数流体である。一部の実施形態では、二次流体の利用は、車両効率を更に増加させる。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、一次駆動ユニットと同じ低トラクション流体を利用する。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、低トラクション流体を利用しない。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、二次ギアボックス流体経路を備える。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、一次駆動ユニットと同じギアボックス流体経路を利用する。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、二次モータ流体経路を備える。一部の実施形態では、二次駆動ユニットは、一次駆動ユニットと同じモータ流体経路を利用する。一部の実施形態では、第1の駆動ユニットは、高圧粘度係数流体を含む。一部の実施形態では、二次ギアボックス流体システムは、流体配合物を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、同じ流体及び/又は流体配合物を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、高圧粘度係数流体を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、低トラクション流体を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、異なる流体を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、異なる低トラクション流体配合物を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムは、異なる高圧粘度係数流体配合物を含む。一部の実施形態では、二次モータシステム及び二次ギアボックス流体システムの一方は、低トラクション流体配合物を含み、他方は、高圧粘度係数流体配合物を含む。一部の実施形態では、一次駆動ユニットは低トラクション流体を含み、二次ユニットは高圧粘度係数流体を含む。一部の実施形態では、一次駆動ユニットのギアボックス流体システムは、低トラクション流体を含み、二次駆動ユニットのギアボックス流体システムは、高圧粘度係数流体を含む。
【0078】
一部の実施形態では、車両は、流体経路システム(例えば、単一又は二重流体経路システム)を備える。一部の実施形態では、車両は電気モータを備える。一部の実施形態では、車両は電気自動車である。一部の実施形態では、車両は、第1の駆動ユニット及び二次駆動ユニットを備える。
【0079】
・例
プロセス、材料及び/又は得られる生成物を含む本開示の例示的な実施形態は、以下の例に記載される。
【0080】
以下の表Bは、以下の例で考察される低トラクション流体配合物の例を示している。添加剤及び基油の量は、合計で約100重量%になる。
【0081】
以下の表Cは、以下の例で考察される高圧粘度(HPV)係数流体配合物の例を示している。一部の実施形態では、添加剤及び基油の量は、合計で約100重量%になる。
【表B】
【表C】
【0082】
・例1
図2及び図3は、本明細書に記載の低トラクション流体配合物を利用した駆動ユニット効率の向上を示している。図2は、比較配合物1に対する低トラクション流体配合物1の駆動ユニット効率の向上を示し、ここで、低トラクション流体配合物1は、比較配合物1に対して、ほとんどの領域で0.3%~0.8%の効率増加を示し、ほとんどの動作領域で0.3%~0.6%の効率増加を示したことが示されている。図3は、比較配合物1に対する低トラクション流体配合物2の駆動ユニット効率の向上を示し、低トラクション流体配合物2は、ほとんどの領域で0.2%~0.8%の効率増加を示し、ほとんどの動作領域で0.2%~0.6%の効率増加を示したことが示されている。
【0083】
・例2
図4A図4Dは、低トラクション流体配合物4(すなわち、「低トラクション流体(より低い基油粘度への切り替えのみ)」と表示)、低トラクション流体配合物3(すなわち、「低トラクション流体(異なる分子構造及び配合物設計)」と表示)、比較配合物1(すなわち、「従来技術のEV流体#1」と表示)、及び比較配合物2(すなわち、「従来技術のEV流体#2」と表示)の、異なる速度、負荷、及び滑り転がり比測定条件下での、種々の速度、負荷、及び滑り転がり比でのトラクション係数を示している。比較例と比較して、低トラクション流体の配合物3及び4は、種々の条件に応じて約30~50%のトラクション低減を示しており、これは、駆動ユニット効率の向上に直接つながる。トラクション係数は、低滑り転がり比領域における0.005未満から、高滑り転がり比及び低ラムダ比領域における0.06未満までの範囲であった。低トラクション流体の配合物3及び4は、全ての試験条件及び全ての駆動ユニット仕様点において、比較配合物1及び2よりも低いトラクション係数で、より低いトラクションを示した。
【0084】
図5A及び図5Bは、異なる速度及び負荷測定条件下での、低トラクション流体配合物1(すなわち、「低トラクション流体」と表示)及び比較配合物3(すなわち、「従来技術のEV流体」と表示)の種々の速度及び負荷でのトラクション係数を示している。低トラクション流体配合物3は、第2の基油及び添加剤系を含み、比較配合物3に対して境界及び混合潤滑下で約30~50%の低減を示した。
【0085】
・例3
図6は、低トラクション流体配合物を低粘度伝熱流体(HTF)(すなわち、「低粘度モータ油」と表示)と組み合わせて使用した場合の、種々の流量での高粘度ギア油(すなわち、「高粘度ギア油」と表示)と比較した、二重流体経路システムのポンプ出力消費量及び低温銅節約量を示している。低トラクションギアボックス流体と組み合わせた低粘度HTFは、二重油設計を通して、より低い導体温度(すなわち、より高い連続電力)及びより低いポンプ出力消費量を提供することが示された。例えば、10.3LPMを超えるポンプ速度でのハイウェイ巡航条件(8000rpm及び150Nm)下での低粘度HTFは、ポンプ出力消費量が低温銅節約量を上回ることを実証した。加えて、低トラクションギアボックス流体と組み合わせた低粘度HTFは、高粘度ギア油の半分未満のポンプ出力消費量を実証し、83cStの粘度を有する高粘度ギア油は、ポンプ出力消費量が6~9LPMの間の低温銅節約量を上回ることを実証した。
【0086】
図7は、低トラクションギアボックス流体を低粘度HTF(16cSt)と組み合わせて利用する二重流体経路システムのステータ温度のモータダイノ調査を示している。高粘度ギア油と比較して、低粘度HTF(粘度がギア油の1/5)は、5~15℃の銅板温度降下を示した。加えて、高粘度ギア油は15LPMの流量に達することができなかった。
【0087】
・例4
図8は、低温での比較ギア油流体(すなわち、「従来技術の流体」と表示)と比較した低トラクション流体配合物1の粘度を示している。低トラクション流体配合物1は、従来技術の流体よりも約7~10℃低い(電池加温のための)廃熱特徴を可能にすることが示されている。加えて、低トラクション流体配合物1は、少なくとも部分的には粘度の低下に起因して、低温での車両走行距離を増加させることも示されている。対照的に、従来技術の流体は、-5℃未満の温度では使用することができない。
【0088】
・例5
図9は、GIII+基油及びGIV(すなわち、PAO4)基油を有する比較流体配合物と比較した、GIII基油、GII+基油及びGII基油を有する、より高い車両効率のために二次駆動ユニット用に設計された低粘度、高圧粘度係数流体の粘度及び圧力粘度係数(PVC)を示している。実証されるように、比較流体配合物は、一般的な動作条件において約11.8~13.3GPa-1の範囲のPVCを有する。対照的に、低粘度高PVC流体は、一般的な操作条件において15.6~19.2GPa-1の範囲のPVCを有する。比較として、本明細書に記載される低トラクション一次流体は、一般的な動作条件において11.8~12.5GPa-1のPVCを有し得る。したがって、低粘度高PVC流体は、比較流体配合物に対して約33%のPVC向上をもたらすことが実証されている。かかる改善されたPVCは、約20%の粘度低減をもたらすことができ、これは、二次駆動ユニットのブーストモータにおいて使用されるときに寄生損失を低減することになる。HPV配合物1及び2は、かかる低粘度高PVC流体の更なる例である。
【0089】
・例6
図10A図10Dは、22cStの比較低トラクション流体配合物の駆動ユニット効率と比較した、27cSt(図10A)、33cSt(図10B)、46cSt(図10C)及び68cSt(図10D)の低トラクション流体配合物の駆動ユニット効率を示している。27cSt及び33cStを有する低トラクション流体は、効率及び耐久性に関して、本明細書において試験された駆動ユニットにおいて最大の改善を示した。
【0090】
図10E図10Hは、それぞれ、駆動ユニットA中の低トラクション配合物2、駆動ユニットB中の低トラクション配合物2、駆動ユニットB中の22cSt低トラクション流体配合物、及び駆動ユニットB中の32cSt低トラクション流体配合物の駆動ユニットラムダ比(潤滑関連部品寿命に関連する)を示している。図10E図10Hに示されるように、種々の駆動ユニット構成要素は、広範囲の潤滑条件を網羅する。
【0091】
・例7
低トラクション流体及び比較流体配合物の高温流体劣化耐性を試験した。温度損傷試験シミュレーションは、100万マイルの使用をエミュレートする加速試験を使用して実施された。試験パラメータは、CEC L-48-00に従い、流体は、100mLの流体を用いて、150℃及び5L/時の空気流量で600時間試験した。温度損傷試験シミュレーションの結果は、本明細書の表1に示されており、配合物1の低トラクション流体は、比較配合物1及び2よりも性能が優れていることが分かる。図11A図11Dは、加速試験における経時的な配合物1の低トラクション流体の高温損傷の画像を示している。
【表1】
【0092】
・例8
低トラクション流体配合物及び比較流体配合物の加水分解安定性を試験した。特定の基油(例えば、合成ポリアルキレングリコール及び高極性エステルなどのGV基油)の寿命を検証するためには、加水分解安定性試験が必要であり得る。なぜなら、一部の基油は、好ましい低トラクション特性を有し得るが、高い吸湿性のために潤滑及び冷却用途には適さない場合があるからである。かかる吸湿性基油は、加水分解される傾向があり、早期の油交換を必要とするか、又は構成要素の故障を引き起こす可能性がある。25mLの蒸留水とともに90℃で192時間連続的に撹拌した250mlの試験流体を用いて加水分解安定性を試験し、比較配合物1~3及び配合物1の結果を本明細書の表2に示している。図12A及び図12Bは、加水分解安定性試験前の比較配合物3のFT-IRスペクトル及び銅腐食試験画像をそれぞれ示し、図12C及び12Dは、加水分解安定性試験後の比較配合物3のFT-IRスペクトル及び銅腐食試験画像をそれぞれ示している。表2及び図12A図12Bは、比較配合物1~3が水を吸収する一方で、配合物1の低トラクション流体が改善された加水分解安定性を示すことを実証している。
【表2】
【0093】
・例9
低トラクション配合物1及び比較流体配合物についてのギアトレイン疲労摩耗保護を試験した。ギアトレインの疲労は、マクロピッチング(「ピッチング」)(すなわち、接触している表面上に形成される大きなピットであって、表面又は表面下で開始された亀裂が大きなスケールのピットに伝播することに起因し得る、大きなピット)、マイクロピッチング(すなわち、接触している表面上に形成される微視的なピットであって、ピットとの繰り返される周期的な接触応力によって引き起こされる凹凸スケールの塑性流動によって生成され得、代表的には、100ミクロン未満の幅であり、顕微鏡又は重量損失によって同定され得る、微視的なピット)、及びギアスカッフィング(すなわち、しばしばスカッフィングと称される、表面の局所的な損傷であって、高負荷条件及び高滑り速度における潤滑フィルム強度の低下によって形成され得る、局所的な損傷)を生じ得る。更に、かかる条件下でギア歯が係合及び係合解除するにつれて、それぞれ、溶着及び断裂が生じ得る。低トラクション流体の配合物1並びに比較配合物1及び2のピッチング及びマイクロピッチングを、400N下、60℃、3.5m/s(5570rpm)での運転、及び20%の滑り転がり比で、ギアトレインにおいて評価し、結果を表3に示している。図13A図13Cは、疲労摩耗試験後の、低トラクション流体の比較配合物1、比較配合物2及び配合物1をそれぞれ利用するギアトレインの画像を示している。
【表3】
【0094】
・例10
図14Aは、種々のモータ速度、モータトルク及びポンプ速度で低トラクション流体配合物を利用するギアボックス流体システムを示すグラフである。Xはモータ速度であり、Yはモータトルクであり、Z(bar)はLPMでのポンプ流量である。
【0095】
図14Bは、図14Aと同じデータを有する、種々のモータ速度、モータトルク及びポンプ速度で低トラクション流体配合物を利用するギアボックス流体システムを示す3D座標系でプロットされたグラフである。Xはモータトルクであり、Yはモータ速度であり、Z(bar)はLPMでのポンプ流量である。図14A及び図14Bは、低トラクション流体配合物が、更に効率改善を達成するためにギアボックス潤滑のための柔軟なポンプ流量と結合され、ポンプ流量は、用途に応じて、効率及び耐久性要件のために0.25LPM~20LPMの範囲であることを実証している。
【0096】
本発明の特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実際に、本明細書で説明される新規の方法及びシステムは、種々の他の形態で具現化され得る。更に、本明細書に記載のシステム及び方法において、開示の精神から逸脱することなく、さまざまな省略、置換、及び変更を行うことができる。付随する請求項及びその同等物は、本開示の範囲及び精神に含まれるような形態又は修正を網羅することを意図している。
【0097】
特定の態様、実施形態、又は例と併せて記載される特徴、材料、特性、又は群は、それと不適合でない限り、このセクション又は本明細書の他の箇所に記載される任意の他の態様、実施形態、又は例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの全ては、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つ、若しくは任意の新規の組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規の1つ、若しくは任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0098】
更に、別個の実装形態の文脈において本開示で説明される特定の特徴はまた、単一の実装形態において組み合わせで実装され得る。逆に、単一の実装形態の文脈で説明される種々の特徴はまた、複数の実装形態において別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装され得る。更に、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され得るが、請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、一部の場合では、組み合わせから削除されることができ、組み合わせは、部分的組み合わせ又は部分的組み合わせの変形例として請求されてもよい。
【0099】
更に、動作は、特定の順序で図面に示され、又は本明細書に記載され得るが、かかる動作は、所望の結果を達成するために、示された特定の順序で、又は連続した順序で実行される必要はなく、又は全ての動作が実行される必要はない。描写又は説明されていない他の動作が、例示的な方法及びプロセスに組み込まれることができる。例えば、1つ以上の追加の動作は、説明された動作のいずれかの前、後、同時、又は間に実行され得る。更に、動作は、他の実装形態では並べ替えられるか、又は並べ替えられ得る。当業者は、一部の実施形態では、図示及び/又は開示されるプロセスで行われる実際のステップが、図に示されるものと異なり得ることを理解するであろう。実施形態に応じて、上述のステップのうちの一部は削除されてもよく、他のステップが追加されてもよい。更に、上記で開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わされてもよく、それらの全ては本開示の範囲内に入る。また、上述の実装形態における種々のシステム構成要素の分離は、全ての実装形態においてかかる分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明した構成要素及びシステムは、概して、単一の製品に一緒に統合されるか、又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書で説明されるエネルギー貯蔵システムのための構成要素のうちのいずれかは、別個に提供されるか、又は一緒に統合され(例えば、一緒にパッケージ化されるか、若しくは一緒に取り付けられ)、エネルギー貯蔵システムを形成することができる。
【0100】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、及び新規の特徴が本明細書で説明される。必ずしも全てのかかる利点が、任意の特定の実施形態による達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点のグループを達成する方法で、本開示が具現化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0101】
「することができる(can)」、「することができた(could)」、「し得る(might)」、又は「してもよい(may)」などの条件付き言語は、別段に明記されていない限り、又は使用される文脈内で別段に理解されない限り、概して、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むが、他の実施形態はそれらを含まないことを伝えるものとする。したがって、かかる条件付き言語は、概して、特徴、要素、及び/又はステップが、1つ以上の実施形態のためにいかようにも要求されること、又は1つ以上の実施形態が、ユーザ入力又はプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/又はステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、若しくは行われるべきであるかどうかを判定するための論理を必然的に含むことを含意することを意図しない。
【0102】
「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」という句などの接続語は、別段に具体的に述べられていない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのいずれかであり得ることを伝えるために概して使用されるような文脈とともに理解される。したがって、かかる接続語は、概して、特定の実施形態がXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、及びZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを暗示するものではない。
【0103】
本明細書で使用される「約(approximately)」、「略(about)」、「概して(generally)」、及び「実質的に(substantially)」という用語など、本明細書で使用される程度の言語は、依然として所望の機能を実行するか、又は所望の結果を達成する、述べられた値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。例えば、「約」、「略」、「概して」、及び「実質的に」という用語は、所望の機能又は所望の結果に応じて、述べられた量の10%未満の範囲内、5%未満の範囲内、1%未満の範囲内、0.1%未満の範囲内、及び0.01%未満の範囲内の量を指し得る。
【0104】
本開示の範囲は、この節又は本明細書の他の箇所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、この節又は本明細書の他の箇所に提示されるか、又は将来提示される特許請求の範囲によって定義され得る。特許請求の範囲の文言は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例又は本出願の手続中に記載された例に限定されるものではなく、これらの例は非排他的なものとして解釈されるべきである。
【0105】
本明細書に提供される見出しは、もしあれば、便宜上のためだけであり、本明細書に開示されるデバイス及び方法の範囲又は意味に必ずしも影響を及ぼさない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
【国際調査報告】