(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】歩行速度推定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B5/11 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539019
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 KR2022020054
(87)【国際公開番号】W WO2023128391
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0194313
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524241604
【氏名又は名称】プラン ビー4ユー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504314133
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒャン チュン
(72)【発明者】
【氏名】ペ、チョン ビン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA12
4C038VB01
4C038VC20
(57)【要約】
一実施形態によれば、歩行速度推定方法において、歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定し、前記被測定者の身体データを取得するステップと、前記被測定者に対して臨床評価を行うステップと、前記被測定者に対して歩行評価を行って測定された歩行データを取得するステップと、前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発するステップとを含み、前記歩行速度推定モデルは、前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む歩行速度推定方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行速度推定方法において、
歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定し、前記被測定者の身体データを取得するステップと、
前記被測定者に対して臨床評価の実施結果データを取得するステップと、
前記被測定者に対して歩行評価を行って測定された歩行データを取得するステップと、
前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発するステップとを含み、
前記歩行速度推定モデルは、前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む、歩行速度推定方法。
【請求項2】
前記被測定者N人を決定することは、
母集団で歩行に影響を及ぼす可能性のある疾患があるか、またはバランス能力評価が予め設定されたスコア未満である人を除く人を被測定者N人として決定する、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項3】
前記臨床評価は、予め設定された診断基準に従って精神疾患を診断し、認知障害の全体的な重症度を決定し、バランス能力評価(PerformanceOrientedMobilityAssessment,POMA)を用いて歩行及びバランス能力を評価することである、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項4】
前記測定された歩行データを取得するステップは、
身体重心に付着された加速度計および既存の歩行測定装置を用いて被測定者の歩行特徴値を取得する、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項5】
前記加速度計は、所定の接着物質で前記被測定者の腰部に付着される慣性計測装置(inertialmeasurementunit、IMU)であって、3軸方向の加速度を測定できる装置である、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項6】
前記歩行速度推定モデルを開発するステップは、
ロール角度、ヨー角度および体重を歩行パラメータとして含む線形回帰分析を実行する第1モデルと、
前記被測定者をNSLに基づいて複数のサブグループに分離し、前記サブグループ別に前記線形回帰分析を実行する第2モデルと
を含む、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項7】
前記NSLは下記の式で算出され、
前記式で、l
lは脚の長さ、l
sは歩幅、α
1は人の脚/高さ比、β
1は脚曲げ係数、aは角度変位である、請求項6に記載の歩行速度推定方法。
【請求項8】
開発された前記歩行速度推定モデルを統計分析するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項9】
開発された前記歩行速度推定モデルを用いて、歩行速度推定対象者の歩行速度を算出するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の歩行速度推定方法。
【請求項10】
前記歩行速度を算出するステップは、
前記歩行速度推定対象者の年齢、体重及び足の長さデータを入力して取得し、慣性計測装置(inertialmeasurementunit、IMU)からケイデンス、VHD(Verticalheightdisplacement)、ロール角度及びヨー角度を取得し、取得した値を前記歩行速度推定モデルに代入して歩行速度を算出する、請求項9に記載の歩行速度推定方法。
【請求項11】
歩行速度推定装置として、
プロセッサと、
メモリとを含み、
前記プロセッサは、
歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定し、前記被測定者の身体データを取得し、前記被測定者に対して臨床評価を行い、前記被測定者に対して歩行評価を行って測定された歩行データを取得し、前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発し、前記歩行速度推定モデルは、前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む歩行速度推定装置。
【請求項12】
請求項1に記載の方法をコンピュータで実行するためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、歩行速度推定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の歩行は筋肉と感覚の退化によって変化する。高齢者は歩行を変化させる様々な老化関連問題をある程度持っていることがある。以前の研究では、人体運動学と筋肉の弱化は歩幅を変える主な関心事だった。退行性の変化が多い人は、長く歩くほど歩行効率が低下するため、脚の長さが短くなることがある。また、歩幅と体重ともに歩行速度と曲線線形関係を示すという研究結果もあった。
【0003】
歩行速度は、老化、障害、転倒、認知低下および死亡率に関連している。しかし、ほとんどの以前の研究では、歩行速度はストップウォッチを使用して手動で測定されたため、人のミスと制限された精度があった。これにより、実験室ベースのモーションキャプチャシステムと計装化された歩道(instrumentedwalkways)が開発され、ストップウォッチを使用した手動測定よりも歩行速度に関するより正確で信頼性の高い推定値を提供するようになった。しかしながら、実験室ベースのモーションキャプチャシステムと計装化された歩道械は、空間的制約のために限られた数の歩数しか測定できず、初期費用が大きいという欠点がある。
【0004】
このような空間的、コスト的限界を克服するために、モーションキャプチャシステムや計装化された歩道よりも安価で空間制約が少なく、ストップウォッチよりも人のミスに敏感でないウェアラブル(wearable)加速度センサを使用して歩行速度を推定できる。しかし、ウェアラブル加速度センサは、歩行速度を直接測定することなく、加速度、運動学的モデリングおよび歩行動作補正、データの回帰モデリング、またはハイブリッド法などの直接的な統合によって間接的に推定するため、慣性センサによって推定された歩行速度の精度が高くないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩行速度を精巧に推定して老化および関連リスクを診断できる歩行速度推定方法および装置を提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、以上で述べた課題に限定されず、言及されていない本発明の他の課題及び利点は、以下の説明によって理解することができ、本発明の実施形態によってより明確に理解されるであろう。さらに、本発明が解決しようとする課題および利点は、特許請求の範囲に示される手段およびその組み合わせによって実現され得ることが理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、歩行速度推定方法において、歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定して前記被測定者の身体データを取得するステップと、前記被測定者に対して臨床評価の実施結果データを取得するステップと、前記被測定者に対して歩行評価を行って測定された歩行データを取得するステップと、前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発するステップとを含み、前記歩行速度推定モデルは、前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む歩行速度推定方法が提供される。
【0008】
本発明において、前記被測定者N人を決定することは、母集団で歩行に影響を及ぼし得る疾患があるか、バランス能力評価が予め設定されたスコア未満の人を除く人を被測定者N人と決定することができる。
【0009】
本発明において、前記臨床評価は、予め設定された診断基準に従って精神疾患を診断し、認知障害の全体的な重症度を決定し、バランス能力評価(PerformanceOrientedMobilityAssessment,POMA)を用いて歩行及びバランス能力を評価することであってもよい。
【0010】
本発明において、前記測定された歩行データを取得するステップは、身体重心に付着された加速度計および既存の歩行測定装置を用いて被測定者の歩行特徴値を取得することができる。
【0011】
本発明において、前記加速度計は、所定の接着物質で前記被測定者の腰に付着される慣性計測装置(inertialmeasurementunit、IMU)であって、3軸方向の加速度を測定できる装置であってもよい。
【0012】
本発明において、前記歩行速度推定モデルを開発するステップは、ロール角度、ヨー角度および体重を歩行パラメータとして含む線形回帰分析を実行する第1モデルと、前記被測定者をNSLに基づいて複数のサブグループに分離し、前記サブグループ別に前記線形回帰分析を実行する第2モデルとを含むことができる。
【0013】
本発明において、前記NSLは下記の式で算出され、
前記式において、l
lは脚の長さ、l
sは歩幅、α
1は人の脚/高さ比、α
1は脚曲げ係数、aは角度変位であり得る。
【0014】
本発明では、開発された前記歩行速度推定モデルを統計分析するステップをさらに含むことができる。
【0015】
本発明では、開発された前記歩行速度推定モデルを用いて歩行速度推定対象者の歩行速度を算出するステップをさらに含むことができる。
【0016】
本発明において、前記歩行速度を算出するステップは、前記歩行速度推定対象者の年齢、体重及び足の長さデータを入力して取得し、慣性計測装置(inertialmeasurementunit、IMU)からケイデンス、VHD(Verticalheightdisplacement)、ロール角度およびヨー角度を取得し、得られた値を前記歩行速度推定モデルに代入して歩行速度を算出することができる。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、歩行速度推定装置としてのプロセッサとメモリとを含み、前記プロセッサは、歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定して前記被測定者の身体データを取得し、前記被測定者に対して臨床評価を行い、前記被測定者について歩行評価を行って測定された歩行データを取得し、前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発し、前記歩行速度推定モデルは前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む歩行速度推定装置が提供される。
【0018】
さらに、本発明の方法をコンピュータで実行するためのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0019】
上述した本開示の課題を解決するための手段によれば、歩行速度を精巧に推定して老化および関連リスクを診断することができる。
【0020】
さらに、本開示の課題を解決するための手段によれば、追加の歩行パラメータとして体重、ロール角度およびヨー角度を用いて訓練誤差を低減し、正規化されたサブグループを用いて歩行速度推定モデルを発展させることができる。
【0021】
さらに、本開示の課題を解決するための手段によれば、本発明のモデルは、元の歩幅値の代わりにNSLを用いることによって、歩行速度推定に対する人口統計学的および人体測定学的影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、一実施形態によるユーザ端末と推定サーバとを含むシステム図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による歩行速度推定方法をフローチャートで示すものである。
【
図3】
図3は、一実施形態による被測定者の特徴を示す表である。
【
図4】
図4は、一実施形態による第0モデルと第1モデルとの比較を示す表である。
【
図5】
図5は、一実施形態による正規化された歩幅によって分類されたサブグループを表で示す実施形態である。
【
図6】
図6は、一実施形態による正規化された歩幅によって分類されたサブグループ別歩行速度推定方法を示す表である。
【
図7】
図7は、一実施形態による歩行速度推定モデルと他のモデルとの統計分析比較例である。
【
図8】
図8は、一実施形態による歩行速度推定モデルの歩行モデルである。
【
図9】
図9は、一実施形態による歩行速度推定装置のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態によれば、歩行速度推定方法において、歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定して前記被測定者の身体データを取得するステップと、前記被測定者に対して臨床評価の実施結果データを取得するステップと、前記被測定者に対して歩行評価を行って測定された歩行データを取得するステップと、前記測定された歩行データに基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発するステップとを含み、前記歩行速度推定モデルは、前記被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含む歩行速度推定方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の利点および特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に説明される実施形態を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、以下に提示される実施形態に限定されるものではなく、それぞれ異なる形態で実施することができ、本発明の精神および技術範囲に含まれるすべての変換、均等物ないし代替物を含むことと理解されるべきである。
【0025】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図していない。単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書に記載の特徴、数字、動作、構成要素、部品、またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたは複数の他の特徴、数字、動作、構成要素、部品、またはそれらを組み合わせたものの存在または追加の可能性を予め排除しないことと理解されたい。
【0026】
本開示の一部の実施形態は、機能的なブロック構成および様々な処理動作で表すことができる。そのような機能ブロックの一部または全部は、特定の機能を実行する様々な数のハードウェアおよび/またはソフトウェア構成で実装することができる。例えば、本開示の機能ブロックは、1つまたは複数のマイクロプロセッサによって実装されてもよく、または所定の機能のための回路構成によって実装されてもよい。また、例えば、本開示の機能ブロックは、様々なプログラミングまたはスクリプト言語で実装することができる。機能ブロックは、1つ以上のプロセッサで実行されるアルゴリズムで実装することができる。また、本開示は、電子的な環境設定、信号処理、および/またはデータ処理などのために従来技術を採用することができる。「メカニズム」、「要素」、「手段」および「構成」などの用語は広く使用されることができ、機械的で物理的な構成に限定されない。
【0027】
さらに、図面に示されている構成要素間の接続線または接続部材は、機能的な接続および/または物理的または回路的接続を例示的に示したものにすぎない。実際の装置では、代替可能または追加された様々な機能的接続、物理的接続、または回路接続によって構成要素間の接続を示すことができる。
【0028】
以下でユーザが実行する動作は、ユーザがユーザ端末を介して実行する動作を意味することができる。一例として、ユーザ端末に埋め込まれた、または追加的に接続された入力装置(例えば、キーボード、マウスなど)を介して、ユーザが実行する動作に対応する命令(command)をユーザ端末に入力することができる。別の例として、ユーザ端末のタッチスクリーンを介して、ユーザが実行する操作に対応する命令をユーザ端末に入力することができる。このとき、ユーザが実行する操作は所定のジェスチャーを含むことができる。例えば、ジェスチャーは、タップ、タッチ&ホールド、ダブルタップ、ドラッグ、パン、フリック、ドラッグ&ドロップなどを含むことができる。
【0029】
以下、添付の図面を参照して本開示を詳細に説明する。
【0030】
図1は、一実施形態によるユーザ端末と推定サーバとを含むシステム図である。
【0031】
一実施形態によるシステムは、複数のユーザ端末1000、推定サーバ2000、およびIMU10を含むことができる。
【0032】
ユーザ端末1000は、スマートフォン、タブレットPC、PC、スマートTV、携帯電話、ラップトップおよび他のモバイルまたは非モバイルコンピューティングデバイスであってもよい。また、ユーザ端末1000は、通信機能およびデータ処理機能を備えたメガネ、ヘッドバンドなどのウェアラブルデバイスであってもよい。ユーザ端末1000は、ネットワークを介して他の装置と通信を行うことができるあらゆる種類のデバイスを含むことができる。
【0033】
推定サーバ2000は、ネットワークを介して通信して命令、コード、ファイル、コンテンツ、サービスなどを提供するコンピュータ装置または複数のコンピュータ装置で実装することができる。
【0034】
ユーザ端末1000および推定サーバ2000はネットワークを用いて通信を行うことができる。推定サーバ2000は、ネットワークを介してユーザ端末1000と通信し、ユーザ端末1000に歩行速度推定モデルおよび推定結果を提供することができる。一実施形態では、推定サーバ2000は、IMU(inertialmeasurementunit)10から得られた値を用いてユーザの歩行速度を推定することができる。
【0035】
一方、別の実施形態では、ユーザ端末1000は、推定サーバ2000または図示されていない他の外部装置から本発明の歩行速度推定方法を実行することができるアプリケーションをダウンロードした歩行速度推定装置であってもよい。すなわち、本開示の歩行速度推定方法は、ユーザ端末1000で実行されてもよく、推定サーバ2000で実行されてもよい。以下では、説明の便宜上、ユーザ端末1000または推定サーバ2000を歩行速度推定装置と呼ぶ。
【0036】
IMU10は加速度測定装置であり、より詳細には3軸加速度測定装置であってもよい。本発明の一実施形態によれば、IMU10は、
図1に示すように人の身体重心に装着されることができる。より具体的には、IMU10は、所定の接着材料を用いて腰部に付着された3軸加速度計であってもよい。
【0037】
一方、ネットワークは、ローカル・エリア・ネットワーク(LocalAreaNetwork;LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WideAreaNetwork;WAN)、付加価値通信網(ValueAddedNetwork;VAN)、移動無線通信網(mobileradiocommunicationnetwork)、衛星通信網、およびそれらの相互組み合わせを含み、
図1に示す各ネットワーク構成主体が互いにスムーズに通信可能にする包括的な意味のデータ通信網であり、有線インターネット、無線インターネットおよびモバイル無線通信網を含むことができる。また、無線通信には、例えば、無線LAN(wi-fi)、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標)低エネルギー(Bluetooth(登録商標)lowenergy)、ZigBee(登録商標)、WFD(wi-fiDirect)、UWB(ultrawideband)、赤外線通信(IrDA、infraredDataAssociation)、NFC(NearFieldCommunication)などがあってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
図2は、一実施形態による歩行速度推定方法をフローチャートで示すものである。
【0039】
図2を参照すると、まず歩行速度測定の対象となる被測定者N人を決定して被測定者の身体データを取得する(S10)。
【0040】
次に、決定された被測定者に対して臨床評価を行う(S20)。
【0041】
次に、臨床評価に基づいて歩行評価を行う(S30)。
【0042】
次に、歩行評価に基づいて複数の歩行パラメータを有する歩行速度推定モデルを開発する(S40)。このとき、歩行速度推定モデルは、被測定者の身体重心に着用された加速度計を用いて測定されたロール(roll)角度、ヨー(yaw)角度および体重を歩行パラメータとして含むことができる。
【0043】
以下では、本発明の歩行速度推定方法についてより詳細に検討する。
【0044】
まず、本発明の測定対象となる被測定者は、以下のように特定することができる。
【0045】
図3は、一実施形態による被測定者の特徴を示す表である。
【0046】
図3の表に要約されているように、本発明は、老化と老衰に関する2つの既存のコホート研究、すなわち、第1研究および第2研究の参加者の合計N人の一部を被測定者として決定することができる。さらに、本発明は、被測定者の身体特徴データを取得する。例えば、被測定者の身体特徴データは、性別(sex)、年齢(Age)、ミニメンタルステート検査(MiniMentalStateExamination、MMSE)、バランス能力評価(PerformanceOrientedMobilityAssessment、POMA)、身長(Height)、体重(Weight)、過体重(Overweight)及び低体重(Underweight)比を含むBMI、足の長さ(Footlength)、垂直方向の高さ変位(Verticalheightdisplacement、VHD)、ケイデンス(Cadence)、歩行速度(Gaitspeed)、歩幅(Steplength)、ロール角度(Rollangle)、ヨー角度(Yawangle)などで、
図3の表の最初の列に記載することができる。より詳細には、VHDは、1つの歩行周期内の身体重心の最大および最小垂直高さの差の平均であり得る。なお、
図3の表に記載された歩行速度及び歩幅は、後述する既存の歩行分析装置(例えば、GAITRite
TM)を用いて得られたものであり、ロール角度は腰部に着用する加速度測定装置(waist-worninertialmeasurementunit)を用いて測定したものであってもよい。
【0047】
より具体的には、本発明の一実施形態によれば、第1研究と第2研究は、高齢の韓国人に対する人口ベースの予備コホート研究であってもよい。一実施形態によれば、第1の研究は、『OverviewoftheKoreanlongitudinalstudyoncognitiveaginganddementia』(J.W.Han,T.H.Kim,K.P.Kwak,K.Kim,B.J.Kim,S.G.Kim,J.L.Kim,T.H.Kim,S.W.Moon,andJ.Y.Park,Psychiatryinvestigation,vol.15,no.8,pp.767,2018.)であり、第2研究は『TheKoreanversionoftheFRAILscale:clinicalfeasibilityandvalidityofassessingthefrailtystatusofKoreanelderly』(H.-W.Jung,H.-J.Yoo,S.-Y.Park,S.-W.Kim,J.-Y.Choi,S.-J.Yoon,C.-H.Kim,andK.-i.Kim,TheKoreanjournalofinternalmedicine,vol.31,no.3,pp.594,2016.)であってもよいが、必ずしもこれに限定されず、本発明の被測定者は自由に変形されることができる。
【0048】
より詳細には、第1研究では、予め設定された周期で特定の地域の区域から抽出された高齢者層が追跡されることができる。より具体的には、第1研究では、2009年から2年ごとに韓国全国13の区域からランダムに標本抽出された60歳以上の韓国人6818人が追跡されることができる。第2研究では、予め設定された周期で特定の地域で追跡観察対象者による追跡観察が行われることができる。より具体的には、第2研究では、2016年から2020年までの2年ごとに70~84歳の韓国人ボランティア3000人が追跡観察を行うことができた。
【0049】
一方、前記第1及び第2研究の参加者M人のうち、主要精神疾患、神経認知障害など神経疾患を有する参加者を除いた共同体暮らしの健康な高齢者N人を被測定者として、本発明の歩行速度測定モデルを確立することができる。すなわち、本発明の一実施形態によれば、既存研究の参加者からなる母集団で精神疾患または神経疾患を有する人を除く人を被測定者N人と決定することができる。
【0050】
図3の実施形態を参照すると、男性74.8±5.0歳338人、女性73.3±4.5歳421人など、合計759人を被測定者として含めることができる。一実施形態によれば、基礎評価または後続の評価において歩行またはバランスに影響を及ぼす可能性のある脳卒中および筋骨格系疾患、ならびにバランス能力評価(TinettiPerformanceOrientedMobilityAssessment、POMA)のスコアが予め設定されたスコア(例えば、25点未満)の参加者は被測定者から除外される。
【0051】
次に、本発明の一実施形態によれば、決定された被測定者に対して臨床評価を行う(S20)。より具体的には、認知症研究の専門知識を持つ老年精神医または神経科医は、被測定者に面し、標準化された診断インタビュー、身体および神経検査、全血球計算(completebloodcounts)、化学プロファイル(chemistryprofiles)、梅毒血清学的検査(serologicaltestsforsyphilis)、心臓超音波検査、胸部X線などの実験室検査を行うことができる。
【0052】
さらに、本発明では、予め設定された診断基準に従って認知症および他の精神疾患を診断し、臨床的認知症尺度を用いて認知障害の全体的な重症度を決定することができる。また、上述したPOMAを用いて歩行とバランスを評価することができる。一実施形態では、POMAスコアが高いほど、より良い歩行およびバランスを示し、POMAの最大スコアは28点であることができる。
【0053】
次に、本発明は、歩行評価を行って測定された歩行データを取得する(S30)。より具体的には、本発明は、身体重心(center-of-body-mass,CoM)に付着されたIMUおよび既存の歩行測定装置を用いて各被測定者の歩行を測定した結果を得ることができる。一例では、IMUはFITMET(登録商標)FitLifeIncであり得るが、必ずしもこれに限定されず、ActiGraph(登録商標)で置き換えることができる。さらに、一実施形態では、既存の歩行測定装置はGAITiteTM(CISystems、HAVERT)であってもよいが、必ずしもこれに限定されず、後述する本発明の歩行速度推定モデルの開発に必要な歩行データを生成する装置は、制限なく既存の歩行測定装置とすることができる。以下の明細書では、説明の便宜上、既存の歩行測定装置をGAITRiteと仮定する。
【0054】
一実施形態によれば、IMUは、縁が滑らかな六角形(35×35×13mm[14g]または30×40×10mm[17g])であり、IMUの一例として同様のデジタル3軸加速度計(例えば、BMA255、BOSH、ドイツ)およびジャイロスコープ(例えば、BMX055、BOSH、ドイツ)を使用することができる。例示した3軸加速度計は、250Hzで最大±8g(解像度0.004g)の3軸加速度と最大±1,000μ/s(解像度0.03μ/s)の3軸加速度を測定することができる。
【0055】
本発明の一実施形態による測定方法では、所定の接着剤(例えば、Hypafix)を用いて被測定者の3~4番目の腰椎ごとにIMUを固定することができる。また、実験の過程で被測定者は、14mの平坦な直線遊歩道を、楽に自ら選択した速度で往復3回歩き、14m線を越えた後に回転するように動線を設計することができる。また、一実施形態によれば、GAITRiteの電子マットを歩行路の中央に配置して定常状態歩行を測定することができる。
【0056】
一実施形態では、GAITRiteは、コンピュータのUSBポートに接続された100Hz単位の電子通路を介して時間的および空間的歩行パラメータを測定する携帯型歩行分析歩行装置であり得る。GAITRiteの電子マットの通路サイズは520(L)×90(W)×0.6cm(H)であり、活性検知面積は427(L)×61cm(W)であり得る。さらに、電子マットは、1.27cmの空間精度で配置された16,128個のセンサを含むことができる。
【0057】
次に、本発明は歩行速度推定モデルを開発する(S40)。一実施形態では、本発明は、被測定者の定常状態の歩行を測定するために、上述の歩行データ取得ステップで生成されたデータのうち、前後予め設定された長さだけの歩行区間を除去することができる。より詳細には、本発明の歩行速度推定装置は、被測定者の定常状態歩行を測定するために、基準点前及び各回転前の2m長の歩行区間を除去した後、残りの中間の10mのデータを分析することができる。さらに、本発明は、IMU信号を前処理し、特徴を選択した後の各ステップを識別することができる。このとき、本発明は、既存の他歩行測定装置(例えば、GAITRite)から取得した比較対象標準歩行速度を用いることができる。
【0058】
本発明は、得られた比較対象標準歩行速度に基づいて第0モデルを確立し、第0モデルに従ってIMU信号を用いて歩行速度を推定することができる。第0モデルでは、歩行速度は、年齢、性別、足の長さ、ケイデンス、および垂直方向の高さ変位(verticalheightdisplacement,以下VHD)およびケイデンス(cadence、歩行率)を含む回帰モデルと推定することができる。
【0059】
より具体的には、一実施形態によれば、第0モデルは、IMUセンサの加速度と角度を用いて健康な高齢者の歩行速度を推定するための回帰モデルであり得る。第0モデルでは、2つの人口統計学的特徴(年齢と性別)、人体測定学的特徴(足の長さ)、IMUによって測定された2つの特徴(VHDとケイデンス)が歩行速度を推定するための歩行パラメータとして用いられることができる。
【0060】
一方、歩行速度はケイデンスと歩幅(steplength)の積である。歩行速度推定に関して、IMUによって測定されたケイデンスは信頼できるので、歩行速度推定モデルに歩幅に関連する特徴が含まれる場合、モデルの精度を向上させることができる。
【0061】
以下の式(1)は、上述した
図2の実施形態で取得した被測定者の身体データに基づいて開発された第0モデルの数学的線形回帰式である。式(1)から、第0モデルの線形回帰式は歩行速度(Gaitspeed)を推定する歩行パラメータとして年齢、性別、ケイデンス、VHD、足の長さを含むことが分かり、各歩行パラメータに対応する係数を持つことができる。また、足の長さは両足の平均長であり、性別は男性の場合は1、女性の場合は2に設定することができる。
【0062】
[数1]
歩行速度[第0モデル]
=-113.2-0.388×年齢+3.06×性別+1.17×ケイデンス+12.1×VHD+3.25*足の長さ
【0063】
ただし、第0モデルは歩行速度が秒速100cm以下の人々には低い精度を示し、速度が減少して推定誤差は徐々に増加する問題点が存在した。したがって、本発明では、歩幅に関する特徴を追加して、歩行速度を推定するために第0モデルを補完し、正規化された歩幅(NormalizedStepLength,NSL)で階層化されたサブグループ内で本発明の歩行速度推定モデルを最適化できる。さらに、高齢者は健康状態によって歩行形態が異なる可能性があるが、線形回帰モデルは不均一なサンプルに対して脆弱な点を補うために、歩行速度の後続のサブグループ内で回帰モデルを開発し、モデルの精度をさらに向上させることができる。さらに、本発明の歩行速度推定モデルの精度と既存の他の歩行分析システムの精度とを比較した。
【0064】
以下では、本発明の一実施形態として上述した第0モデルを補完することができる歩行速度推定方法の第1モデル及び第2モデルについて説明する。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、身体重心のロール(roll)およびヨー(yaw)角度、そして体重を歩行パラメータとして第0モデルに加えて、本発明の歩行速度推定方法の第1モデルを開発することができる。
【0066】
一実施形態によれば、歩幅は胴体、膝および足の動きの産物であり、身体重心のロールおよびヨー角度は胴体と四肢の角度運動を反映することができる。より詳細には、身体重心のロールおよびヨー角度はIMUのセンサデータから算出され、ロールおよびヨー角度値はデカルト座標に変換(re-oriented)されてもよい。歩幅はまた、推力(thrustpower)に関連する体重に関連している。
【0067】
より詳細には、本発明の第1モデルの線形回帰モデルにおいてさらに選択された3つの特徴は、体重、CoMのロール角度およびヨー角度である。関連して、体重は、体重減少と増加の両方が筋力を減少させるか、または身体的弱点を誘導することによって歩行速度を減少させるという点で主な歩行パラメータである。また、高齢成人のサンプルでは、BMIが25以上の過体重が、18.5未満の低体重より多いため、これは本発明の歩行速度推定モデルにおいて体重を歩行パラメータとして追加する理由になることができ、回帰モデルの係数がマイナスになる理由でもある。
【0068】
さらに、体の回転は歩行パターンに関連している。ロール角度およびヨー角度は3次元歩行パターンを表す。体の上方から見ると、ヨー回転は、被験者が各脚が前方に移動する歩行で腰を回転させるとき、立脚(stanceleg)の前方の地面運動にCoM運動を追加することである。本発明の歩行速度推定モデルでは、ヨー角度係数はプラスであり、これは歩行速度が増加するにつれてヨー角度が増加する可能性があることを示してもよい。したがって、本発明は、以前に研究されていなかったCoMのヨー角度と歩行速度との間の関係を定義することができる。
【0069】
さらに、ロール角度は中間横方向(medio-lateral,ML)安定性に関連する動きを示し、歩行速度に関連する。本発明の歩行速度推定モデルにおいて、ロール角度係数はプラスであり、これは、歩行速度が増加するにつれてロール角度が増加する可能性があることを示す。
【0070】
一方、性別(sex)は、本発明の歩行速度推定モデルの第1モデルおよび第2モデルでは歩行パラメータとして選択されなくてもよい。本発明のモデルに追加された3つの機能のうち、CoMのロール角度が歩行速度に対する性別の影響をある程度反映できるからである。すなわち、上述した
図3の表で見られるように、女性が男性よりもロール角度が大きい。対照的に、ヨー角度は性別間で統計的に変わらない。
【0071】
以下の式(2)は、上述した
図2の実施形態で取得した被測定者の身体データに基づいて開発された第1モデルの数学的線形回帰式である。式(2)から、第1モデルの線形回帰式は歩行速度を推定する歩行パラメータとして年齢、ケイデンス、VHD、足の長さ、体重、ロール角度及びヨー角度を含むことが分かり、各歩行パラメータに対応する係数を持つことができる。
【0072】
[数2]
歩行速度[第1モデル]
=-106.0-0.328×年齢+1.10×ケイデンス+10.1×VHD+3.29×足の長さ-0.115×体重+1.01×ロール角度+0.647×ヨー角度
【0073】
本発明の一実施形態によれば、開発された第1モデルを用いて歩行速度推定対象者の歩行速度を正確に算出することができる。すなわち、本発明の歩行速度推定装置は、歩行速度を算出したい対象者の年齢、体重、足の長さデータを入力して取得するか、他の端末またはサーバから取得することができる。また、歩行速度推定装置は、歩行速度推定対象者がIMUを着用して歩行する間にIMUが測定した値であるケイデンス、VHD、ロール角度およびヨー角度をIMUから取得する。また、歩行速度推定装置は、取得した歩行パラメータの値を第1モデルの線形回帰式に代入して歩行速度を算出してもよい。本発明の一実施形態によれば、開発された第1モデルを用いて歩行速度を推定する場合、歩行測定装置(例えば、GAITRite)が存在しなくても、IMUだけで簡単に歩行速度の精巧な推定が可能である。
【0074】
図4は、一実施形態による第0モデルと第1モデルとの比較を示す表である。
【0075】
図4を参照すると、本発明の第1モデルは、性別とロール角度、ヨー角度、体重を歩行パラメータとして含み、残りの歩行パラメータは第0モデルの歩行パラメータを用いることができる。
図4の表において、VIFは分散拡大係数(variationinflationfactor)である。
【0076】
さらに、Gaitriteによって測定された値と比較すると、第0モデルは高レベルの歩行速度推定値を有するが(R=0.935、R2=0.875、adjustR2=0.874、F=1051、p<0.001)、第1モデルの歩行速度の推定値がより正確であることが分かる(R=0.953、R2=0.908、adjustR2=0.908、F=10.001、p<0.001)。
【0077】
また、本発明は、K平均法を用いて正規化された歩幅(normalizedsteplength,NSL)に分類されたサブグループ内で、上述した第1モデルに含まれる歩行パラメータを有するサブグループ別回帰モデルである第2モデルを設定できる。本発明の第2モデルの回帰モデルでは、分散拡大係数(variationinflationfactor,VIF)が2.5未満の特徴のみが含まれることができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、NSLは歩幅を身長で割って得て、歩幅は第1モデルで分かった歩行速度をケイデンスで割って得ることができる。以下では、上述した第1モデルと第2モデルとを合わせて本発明の歩行速度推定モデルと呼ぶことができる。
【0079】
図5は、一実施形態による正規化された歩幅によって分類されたサブグループを表に示す実施形態である。
【0080】
図5を参照すると、3つのNSLサブグループの特性が
図5の表に要約されている。より具体的には、NSLサブグループは、短いNSL(shortNSL)、中間NSL(mediumNSL)、長いNSL(longNSL)を有することができる。本発明の一実施形態によれば、短いNSL、中間NSL、長いNSLサブグループを区別する基準値は、被測定者の特性に応じて異なるように設定することができ、サブグループの数も3個より多いか少ないように設定することができる。
図5は、本発明の一実施形態によって予め設定された基準値によって分類されたNSLサブグループ別被測定者の身体特徴データを示している。
【0081】
より詳細には、
図5を参照すると、本発明は、各サブグループ別に被測定者の性別(Sex)、年齢(Age)、身長(Height)、体重(Weight)、足の長さ(Footlength)、歩行速度(Gaitspeed)、ケイデンス(Cadence)、VHD、ロール角度(Rollangle)、ヨー角度(Yawangle)、POMA値を取得することができる。VHDおよびPOMAは
図3の説明で述べたものと同じであり、ロール角度およびヨー角度はIMUから取得し、足の長さおよび歩行速度も
図3で述べたようにGAITRiteから取得することができる。残りの値も
図3と重複する説明は省略する。また、一実施例によれば、
図3で、統計値(statistics)はBonferronによる事後比較(posthoccoparison)に基づく分散分析を統計分析に用いたが、他の実施形態では統計分析方法が変更されてもよいことは勿論である。
【0082】
一実施形態によるNSLサブグループ別歩行速度推定方法を示す表である。
【0083】
図6を参照して、第1モデルに含まれる歩行パラメータを用いてNSLサブグループ別の歩行速度推定モデルである第2モデルを開発したとき、すべての歩行パラメータはすべてのNSLサブグループにおける歩行速度の有意な歩行パラメータとして選択されており、低いVIFを有することがわかる。
【0084】
図6を参照すると、一実施形態によるNSLサブグループ別モデル(第2モデル)は、第0モデルおよび第1モデルよりも正確に推定された歩行速度(R=0.955、R
2=0.912、p<0.001)を出力することができ、すべてのNSLサブグループでの歩行速度推定値は適切であってもよい。より詳細には、第2モデルによって推定された歩行速度の統計値はNSLサブグループ別で、短いNSL(
図6のshortNSL)サブグループについてR
2=0.828、F=195.545、p<0.001の統計値を有し、中間NSL(
図6のMediumNSL)サブグループについてはR
2=0.801、F=217.135、p<0.001の統計値を有し、長いNSL(
図6のlongNSL)サブグループについてはR
2=0.836、F=140.971、p<0.001の統計値を有することができる。
【0085】
なお、下記の式(3-1)~式(3-3)は、上述した
図2の実施形態で取得した被測定者の身体データに基づいて開発された、
図6に例示した第2モデルの数学的線形回帰式である。式(3-1)~式(3-3)から、第2モデルの各NSLサブグループ別線形回帰式は、歩行速度を推定する歩行パラメータとして、年齢、ケイデンス、VHD、足の長さ、体重、ロール角度ヨー角度を含むことが分かり、各歩行パラメータに対応する係数を有することができる。また、短いNSLサブグループはNSLが0.347以下のグループであり、中間NSLサブグループはNSLガ0.347を超え0.394以下のグループであり、長いNSLサブグループはNSLガ0.394を超えるグループに設定され得る。
【0086】
[数3-1]
歩行速度[第2モデル、NSL≦0.347]
=-95.6-0.462×年齢+1.06×ケイデンス+13.3×VHD+3.24×足の長さ-0.154×体重+1.27×ロール角度+0.550*ヨー角度
【0087】
[数3-2]
歩行速度[第2モデル、0.347<NSL≦0.394]
=-117.8-0.327×年齢+1.14×ケイデンス+11.8×VHD+3.26×足の長さ-0.122×体重+1.14×ロール角度+0.828×ヨー角度
【0088】
[数3-3]
歩行速度[第2モデル、0.394<NSL]
=-121.4-0.272×年齢+1.15×ケイデンス+9.90×VHD+3.68×足の長さ-0.179×体重+1.04×ロール角度+0.620×ヨー角度
【0089】
本発明の一実施形態によれば、開発された第2モデルを用いて歩行速度推定対象者の歩行速度を各NSLサブグループ別に正確に算出することができる。すなわち、本発明の歩行速度推定装置は、歩行速度を算出したい対象者の年齢、体重、及び足の長さデータを入力して取得するか、他の端末またはサーバから取得することができる。また、歩行速度推定装置は、歩行速度推定対象者がIMUを着用して歩行する間にIMUが測定した値であるケイデンス、VHD、ロール角度およびヨー角度をIMUから取得する。歩行速度推定装置は、上述した第1モデルの利用段階で取得された歩行パラメータの値を第2モデルでも用いることができる。
【0090】
また、歩行速度推定装置は、第1モデルで算出された歩行速度を用いて、歩行速度推定対象者のNSLサブグループを決定してもよい。このとき、歩行速度推定対象者のNSLはNSL=(第1モデルの歩行速度)/(ケイデンス/60)/身長で算出され、算出されたNSLを用いてNSLサブグループを決定することができる。また、歩行速度推定装置は、取得した歩行パラメータの値を第2モデル線形回帰式(対応するNSLサブグループの回帰式)に代入して歩行速度を算出してもよい。本発明の一実施形態によれば、開発された第2モデルを用いて歩行速度を推定する場合、歩行測定装置(例えば、GAITRite)が存在しなくても、IMUだけで簡単にNSLサブグループ別に歩行速度の精巧な推定が可能である。
【0091】
次に、本発明は、開発された歩行速度推定モデルを統計分析することができる。一実施形態によれば、本発明は、スチューデントのt検定(Student′st-test)または分散分析(analysisofvariance,ANOVA)を用いて連続変数を比較し、グループ間カイ二乗検定を用いてカテゴリ変数を比較できる。この統計分析法を用いて、本発明は、Gaitriteによって推定された統計値と本発明の歩行速度推定モデルによって推定された統計値とを比較することができる。より詳細には、比較される統計値は、級内相関係数(intraclasscorrelationcoefficient,ICC)、平均誤差(meanerror、ME)、平均絶対誤差(meanabsoluteerror、MAE)、二乗平均平方根誤差(rootmeansquareerror、RMSE)であてもよい。
【0092】
さらに、本発明は、歩行速度推定モデル間の推定歩行速度のICC、ME、MAEおよびRMSEを反復測定ANOVAを用いて比較することができる。本発明は、社会科学統計パッケージバージョン25.0(InternationalBusinessMachinesCorporation、Armonk、NY)を用いてすべての統計分析を実行することができる。本発明の一実施形態では、本発明の歩行速度推定モデルの第0モデルを既存の技術に設定し、第1モデルおよび第2モデルを開発された技術に設定して統計分析を実行することができる。
【0093】
図7は、一実施形態による歩行速度推定モデルと他のモデルとの統計分析比較例である。
【0094】
図7を参照すると、本発明は、GAITRiteによって測定された歩行速度を比較基準として用いて、本発明の歩行速度推定方法のモデル間精度を比較することができる。
図7を参照すると、すべての被測定者について、第1モデルと第2モデルは、第0モデルよりも低いMAE、ME、およびRMSEとより良いICCを示すことが分かる。さらに、第2モデルは第1モデルより低いMAEを示すことが分かる(p=0.007)。
【0095】
また、
図7を参照すると、本発明の第2モデルによるGAITRiteに基づいた歩行速度を用いて被測定者を3つのサブグループ(遅い(Slow)、中間(Medium)、速い(Fast))歩行にグループ化することができる。遅い歩行は平均(17.9m/s)以下の標準偏差と定義され、速い歩行は平均(114.4m/s)以上の標準偏差として定義された。
【0096】
第0モデルによって推定された歩行速度は、速いNSLサブグループ(p<0.001)ではGAITRiteによって測定されたものよりも遅い傾向がある一方、遅いNSLサブグループ(p<0.001)ではより速い傾向があった。これは、第1モデルと第2モデルによって推定された歩行速度でも同様であるが、IMUとGAITRiteTMとの間の歩行速度測定値の差が早いNSLサブグループで減少したことを確認することができる(p<0.001)。
【0097】
まとめると、本発明の一実施形態による線形回帰による歩行速度推定は、本質的に人間の歩行速度の数学的表現の近似値を算出するためのことである。本発明のモデルにおける線形回帰は、仮想真式(virtualtrueexpression)の単純化されたテイラー展開(Taylorexpansion)の形態であり、より高い次数(degree)および変数の数を含み得る。さらに、本発明は、線形回帰モデルにおいて追加の歩行パラメータを用いて、NSLサブグループで線形回帰モデルを最適化することによって、IMUを用いた歩行速度推定の精度を向上させることができる。
【0098】
さらに、本発明の歩行速度推定モデルは、サブグループ別モデルを開発するためにNSLを用いることができる。年をとるにつれて歩幅が減少するため、歩幅は高齢者の歩行パターンを反映することができる。上述した
図5に示すように、人体測定学的測定値は3つのNSLサブグループ間で異なり、3つのサブグループはそれぞれ異なる人体測定学的特性に関連する異なる歩行パターンを有することができる。
【0099】
図8は、一実施形態による歩行速度推定モデルの歩行モデルである。
【0100】
本発明のモデルは、元の歩幅値の代わりにNSLを用いることによって、歩行速度推定に対する人口統計学的および人体測定学的影響を最小限に抑えることができる。立脚期(stancephase)の間の人間の歩行は、
図8のようなばねが取り付けられた倒立振子(invertedpendulum)としてモデル化されることができる。この時、CPは接触点(ContactPoint)である。立脚期の脚の長さは、以下の式(4)のように表すことができる。ここで、l
lは脚の長さ、β
1は脚曲げ係数である。
【0101】
【0102】
また、歩幅は計算することができる。角運動量の保存と質点の仮定を考慮すると、接触後のエネルギー保存(Econ)は、以下の式(5)のように表すことができる。このとき、m1は質点、ω1は接触前の角速度、llは脚の長さ、lsは歩幅である。
【0103】
【0104】
したがって、動きの対称性を考慮すると、歩幅は以下の式(6]のように算出できる。
【0105】
【0106】
したがって、NSLは以下の式(7)のように計算できる。ここで、α1は人の脚/高さ比であり、aは歩行力学における角度変位である。
【0107】
【0108】
本発明の第1モデルでは、VHD係数は3つのNSLサブグループ間で互いに異なる。より詳細には、第2モデルでVHD係数は、短いNSLサブグループでは最も高く、長いNSLサブグループでは最も低いが、短いNSLサブグループではBが最も小さいので、短いNSLサブグループは他のNSLサブグループと比較して、動的な歩行と身体の回転が効果的ではないことが分かる。さらに、年齢の係数とB値は長いNSLサブグループでは最も低く、これは長いNSLサブグループの歩行が年齢によって影響を受けない可能性があることを示唆している。さらに、短いNSLサブグループではケイデンスが低く、短いNSLサブグループが他のサブグループと比較して、保守的な歩行パターンを持つことができることを示している。
【0109】
まとめると、本発明は、N人の高齢者の歩行パターンを分析した結果に基づいて歩行速度推定モデルを生成した。本発明は、訓練誤差を減らし、正規化されたサブグループを使用して推定方程式がさらに進歩するように、追加の歩行パラメータを使用して既存の速度推定モデルを改善することができる。
【0110】
本発明の一実施形態によれば、追加の歩行パラメータはロール角度、ヨー角度および重量であり、これは角度および推進の面で身体重心の下での動きに関連する。追加の歩行パラメータを加えることで、既存の研究の性別ベースの推定よりも優れた推定結果を導き出すことができる。さらに、NSLサブグループは、サイズに関係なく、それぞれ異なる歩行力学を持つ被験者を分けることによって生成されるため、歩行速度推定アルゴリズムは高精度に改善することができる。
【0111】
図9は、一実施形態による歩行速度推定装置のブロック図である。
【0112】
図9の歩行速度推定装置1100は、
図1の歩行速度推定装置であってもよい。
【0113】
図9を参照すると、歩行速度推定装置1100は、通信部1110、プロセッサ1120、及びDB1130を含むことができる。
図9の歩行速度推定装置1100には、実施形態に関連する構成要素のみが示されている。したがって、
図9に示す構成要素に加えて他の汎用構成要素をさらに含むことができることが当技術分野の当業者であれば理解することができる。
【0114】
通信部1110は、他のノードとの有線/無線通信を可能にする1つ以上の構成要素を含むことができる。例えば、通信部1110は、近距離通信部(図示せず)、移動通信部(図示せず)及び放送受信部(図示せず)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0115】
DB1130は、歩行速度推定装置1100内で処理される各種データを記憶するハードウェアであり、プロセッサ1120の処理及び制御のためのプログラムを記憶することができる。DB1130は、決済情報、ユーザ情報などを記憶することができる。
【0116】
DB1130は、DRAM(dynamicrandomaccessmemory)、SRAM(staticrandomaccessmemory)といったRAM(randomaccessmemory)、ROM(read-onlymemory)、EEPROM(electricallyerasableprogrammableread-onlymemory)、CD-ROM、ブルーレイまたは他の光ディスク記憶装置、HDD(harddiskdrive)、SSD(solidstatedrive)、またはフラッシュメモリを含むことができる。
【0117】
プロセッサ1120は、歩行速度推定装置1100の全般的な動作を制御する。例えば、プロセッサ1120は、DB1130に記憶されたプログラムを実行することにより、入力部(図示せず)、ディスプレイ(図示せず)、通信部1110、DB1130などを全般的に制御することができる。プロセッサ1120は、DB1130に記憶されたプログラムを実行することによって歩行速度推定装置1100の動作を制御することができる。
【0118】
プロセッサ1120は、ASICs(applicationspecificintegratedcircuits)、DSPs(digitalsignalprocessors)、DSPDs(digitalsignalprocessingdevices)、PLDs(programmablelogicdevices)、FPGAs(fieldprogrammablegatearrays)、コントローラ(controllers)、マイクロコントローラ(micro-controllers)、マイクロプロセッサ(microprocessors)、および他の機能を実行するための電気ユニットのうちの少なくとも1つを用いて実装することができる。
【0119】
本発明による実施形態は、コンピュータ上で様々な構成要素を介して実行することができるコンピュータプログラムの形態で実装することができ、そのようなコンピュータプログラムはコンピュータで読み取り可能な媒体に記録することができる。このとき、媒体は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープなどの磁気媒体、CD-ROMおよびDVDなどの光記録媒体、フロプティカルディスク(flopticaldisk)などの光磁気記録媒体(magneto-opticalmedium)および、ROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を記憶して実行するように特別に構成されたハードウェア装置を含むことができる。
【0120】
一方、前記コンピュータプログラムは、本発明のために特別に設計され構成されたものであってもよく、コンピュータソフトウェア分野の当業者に公知で利用可能なものであってもよい。コンピュータプログラムの例には、コンパイラによって作成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを使用してコンピュータによって実行することができる高水準言語コードも含まれ得る。
【0121】
一実施形態によれば、本開示の様々な実施形態による方法は、コンピュータプログラム製品(computerprogramproduct)に含まれて提供されてもよい。コンピュータプログラム製品は、商品として販売者および購入者との間で取り引きされることができる。コンピュータプログラム製品は、機器で読み取り可能な記憶媒体(例えば、compactdiscreadonlymemory(CD-ROM))の形態で配布されるか、またはアプリケーションストア(例えば、プレイストアTM)を介して、または2つのユーザ装置間で直接オンラインで配布(例えば、ダウンロードまたはアップロード)することができる。オンライン配布の場合、コンピュータプログラム製品の少なくとも一部は、製造元のサーバ、アプリケーションストアのサーバ、または中継サーバのメモリなどの機器で読み取り可能な記憶媒体に少なくとも一時的に記憶するか、臨時的に生成することができる。
【国際調査報告】