(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートとATR阻害剤との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20250109BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20250109BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20250109BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250109BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20250109BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K47/68
A61K31/5377
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61P13/12
A61P13/08
A61P15/00
A61P1/18
A61P1/00
A61P11/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539259
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 IB2022062798
(87)【国際公開番号】W WO2023126823
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502097090
【氏名又は名称】アストラゼネカ ユーケー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【氏名又は名称】大栗 由美
(74)【代理人】
【識別番号】100155125
【氏名又は名称】池田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】サン,マシュー サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,アラン イン カイ
(72)【発明者】
【氏名】ワレス,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】メテタル 2世,ジェロム トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プロイア,テレサ アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ランドル,スザンヌ ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】アンダートン,マーク ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA52
(57)【要約】
ATR阻害剤と組み合わせて抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートを投与するための医薬生成物が提供される。抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式
(式中、Aは、抗TROP2抗体に対する接続位置を表す)によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化される、抗体-薬物コンジュゲートである。抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が組み合わせて対象に投与される治療的使用及び方法も提供される:
式(I)。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み合わせでの投与のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を含む医薬生成物であって、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、以下の式:
【化1】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化される抗体-薬物コンジュゲートである、医薬生成物。
【請求項2】
前記ATR阻害剤が、以下の式(I):
【化2】
(式中、
R
1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
R
2は、
【化3】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2A、R
2C、R
2E及びR
2Fは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2B及びR
2Dは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2Gは、-NHR
7及び-NHCOR
8から選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチルであり;
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素又はメチルであるか、又はR
4及びR
5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1つのヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6員複素環であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素又はメチルであり;
R
8は、メチルである)
によって表される化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である、請求項1に記載の医薬生成物。
【請求項3】
式(I)において、R
4及びR
5が、それらが結合されている原子と一緒に環Aを形成し、環Aが、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環である、請求項2に記載の医薬生成物。
【請求項4】
式(I)において、環Aが、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である、請求項2又は3に記載の医薬生成物。
【請求項5】
式(I)において、R
2Aが水素であり、R
2Bが水素であり、R
2Cが水素であり、R
2Dが水素であり、R
2Eが水素であり、R
2Fが水素である、請求項2~4の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項6】
式(I)において、R
1が、3-メチルモルホリン-4-イルである、請求項2~5の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項7】
前記式(I)の化合物が、式(Ia)の化合物:
【化4】
又は薬学的に許容可能なその塩である、請求項2~6の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項8】
式(Ia)において、
環Aがシクロプロピル環であり;
R
2が、
【化5】
であり;
nが、0又は1であり;
R
2Aが水素であり;
R
2Bが水素であり;
R
2Cが水素であり;
R
2Dが水素であり;
R
2Eが水素であり;
R
2Fが水素であり;
R
2Gが-NHR
7であり;
R
2Hがフルオロであり;
R
3がメチル基であり;
R
6が水素であり;
R
7が水素又はメチルである、
請求項7に記載の医薬生成物。
【請求項9】
前記ATR阻害剤が、以下の式:
【化6】
により表されるAZD6738又は薬学的に許容可能なその塩である、請求項2に記載の医薬生成物。
【請求項10】
前記抗TROP2抗体が、配列番号3により表されるアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号4により表されるアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号5により表されるアミノ酸配列からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6により表されるアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号7により表されるアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号8により表されるアミノ酸配列からなるCDRL3を含む軽鎖と、を含む抗体である、請求項1~9の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項11】
前記抗TROP2抗体が、配列番号9により表されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10により表されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む抗体である、請求項10に記載の医薬生成物。
【請求項12】
前記抗TROP2抗体が、配列番号12により表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体である、請求項11に記載の医薬生成物。
【請求項13】
前記抗TROP2抗体が、配列番号11により表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体である、請求項11に記載の医薬生成物。
【請求項14】
前記抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体分子あたりの薬物-リンカー複合単位の平均数が2~8の範囲である、請求項1~13の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項15】
前記抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体分子あたりの薬物-リンカー複合単位の平均数が3.5~4.5の範囲である、請求項14に記載の医薬生成物。
【請求項16】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、ダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)である、請求項15に記載の医薬生成物。
【請求項17】
個別の同時投与のための、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を含む組み合わせ調製物である、請求項1~16の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項18】
逐次又は個別の同時投与のための、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を含む組み合わせ調製物である、請求項1~16の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項19】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、6mg/kg体重の用量で投与されるものである、請求項1~18の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項20】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が、3週間に1回投与されるものである、請求項19に記載の医薬生成物。
【請求項21】
前記ATR阻害剤が、3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、請求項1~20の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項22】
前記ATR阻害剤が、3週サイクルの第3日~第17日に投与されるものである、請求項1~20の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項23】
癌を処置するためのものである、請求項1~22の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項24】
前記癌が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1つのものである、請求項23に記載の医薬生成物。
【請求項25】
前記癌が乳癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項26】
前記乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、請求項25に記載の医薬生成物。
【請求項27】
前記乳癌が、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性乳癌である、請求項26に記載の医薬生成物。
【請求項28】
前記癌が肺癌である、請求項27に記載の医薬生成物。
【請求項29】
前記肺癌が非小細胞肺癌である、請求項28に記載の医薬生成物。
【請求項30】
前記非小細胞肺癌が、アクショナブルなゲノム変化を伴う非小細胞肺癌である、請求項29に記載の医薬生成物。
【請求項31】
前記非小細胞肺癌が、アクショナブルなゲノム変化がない非小細胞肺癌肺癌である、請求項30に記載の医薬生成物。
【請求項32】
前記癌が結腸直腸癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項33】
前記癌が胃癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項34】
前記癌が膵臓癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項35】
前記癌が卵巣癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項36】
前記癌が前立腺癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項37】
前記癌が腎臓癌である、請求項24に記載の医薬生成物。
【請求項38】
前記癌が、相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠く、請求項24~37の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項39】
前記癌が、相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠いていない、請求項24~37の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項40】
前記癌が、PARP阻害剤での以前の処置に対して耐性を示すか又は不応性を示す、請求項24~37の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項41】
前記以前の処置が、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ及びベリパリブから選択されるPARP阻害剤によるものである、請求項40に記載の医薬生成物。
【請求項42】
前記癌の癌細胞が、SLFN11欠損型である、請求項24~37の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項43】
SLFN11発現が、患者の癌細胞において、前記患者のSLFN11発現非癌細胞と比較してより低い、請求項42に記載の医薬生成物。
【請求項44】
癌の処置での使用のための、請求項1~22の何れか1項に記載の医薬生成物。
【請求項45】
前記癌が、請求項24~43の何れか1項において定められる通りである、請求項44に記載の使用のための医薬生成物。
【請求項46】
癌を処置するための、ATR阻害剤との組み合わせでの使用のための薬剤の製造における抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの使用であって、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が、請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、使用。
【請求項47】
前記薬剤が、逐次投与による前記ATR阻害剤と組み合わせた使用のためである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記薬剤が、個別の同時投与による前記ATR阻害剤と組み合わせた使用のためである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
癌を処置するための、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のための薬剤の製造におけるATR阻害剤の使用であって、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が、請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、使用。
【請求項50】
前記薬剤が、逐次投与による前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためである、請求項49に記載の使用。
【請求項51】
前記薬剤が、個別の同時投与による前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためである、請求項49に記載の使用。
【請求項52】
前記癌が、請求項24~43の何れか1項において定められる通りである、請求項46~51の何れか1項に記載の使用。
【請求項53】
癌の処置におけるATR阻害剤との組み合わせでの使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が、請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、癌の処置におけるATR阻害剤との組み合わせでの使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項54】
前記癌が、請求項24~43の何れか1項において定められる通りである、請求項53に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項55】
前記使用が、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を逐次的に投与することを含む、請求項53又は54に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項56】
前記使用が、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が個別に及び同時に投与されることを含む、請求項53又は54に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項57】
対象における癌の処置での使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記処置が、i)前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとii)ATR阻害剤との前記対象への逐次又は個別同時投与を含み、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が、請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、対象における癌の処置での使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項58】
6mg/kg体重の用量で投与されるものである、請求項53~57の何れか1項に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項59】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が3週間に1回投与されるものである、請求項58に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項60】
前記ATR阻害剤が、3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、請求項53~59の何れか1項に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項61】
前記ATR阻害剤が、3週サイクルの第3日~第17日に投与されるものである、請求項53~59の何れか1項に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項62】
癌の処置における抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとの組み合わせでの使用のためのATR阻害剤であって、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとの組み合わせでの使用のためのATR阻害剤。
【請求項63】
前記癌が、請求項24~43の何れか1項において定められる通りである、請求項62に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項64】
前記使用が、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を逐次投与することを含む、請求項62又は63に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項65】
前記使用が、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を個別に及び同時に投与することを含む、請求項62又は63に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項66】
対象における癌の処置での使用のためのATR阻害剤であって、前記処置が、i)前記ATR阻害剤と、ii)抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとの、前記対象への逐次的又は個別の同時投与を含み、前記ATR阻害剤及び前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、請求項1~16の何れか1項において定められる通りである、対象における癌の処置での使用のためのATR阻害剤。
【請求項67】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが6mg/kg体重の用量で投与されるものである、請求項62~66の何れか1項に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項68】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が3週間に1回投与されるものである、請求項67に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項69】
3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、請求項62~68の何れか1項に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項70】
3週サイクルの第3日~第17日に投与されるものである、請求項62~68の何れか1項に記載の使用のためのATR阻害剤。
【請求項71】
癌を処置する方法であって、請求項1~16の何れか1項において定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を、組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項72】
前記癌が請求項24~43の何れか1項において定められる通りである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を逐次的に投与することを含む、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤を個別に又は同時に投与することを含む、請求項71又は72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リンカー構造を介して抗TROP2抗体に複合化された抗腫瘍薬を有する、特異的な抗体-薬物コンジュゲートをATR阻害剤と組み合わせて投与するための医薬生成物、並びに特異的な抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が組み合わせて対象に投与される治療的使用及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATR(毛細血管拡張性運動失調症及びrad3関連キナーゼ)は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼであり、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)ファミリーのメンバーである。正常なDNA複製中、ATRは、停止した複製フォークにおいて動員され、停止した複製フォークは、修復されないままであると、二本鎖切断に発展し得る。ATRは、DNA複製中の一本鎖DNAの損傷又は二本鎖切断の切除後、複製タンパク質A(RPA)で被覆された一本鎖DNAに動員される。ATRの動員及び活性化は、DNAが修復され、停止した複製フォークが分解されるS期での細胞周期停止又は核断片化及びプログラム細胞死(アポトーシス)の開始につながる。
【0003】
結果として、ATR阻害剤は、DNA修復についてATRに依存する腫瘍細胞、例えばATM欠損腫瘍における成長阻害を引き起こすことが期待される。こうした単剤療法活性に加えて、ATR阻害剤は、組み合わせて用いられる場合、(ATR依存的DNA修復プロセスの阻害を通じて)DNA損傷誘導療法の活性を増強することも予想される。ATR阻害剤の例は、例えば、国際公開第2011/154737号パンフレットで開示されている。
【0004】
癌細胞におけるシュラーフェン11(SLFN11)の不活性化は、DNA損傷及び複製ストレスを引き起こす抗癌剤に対する耐性をもたらすことも示されてきた。このため、SLFN11は、トポイソメラーゼI阻害剤を含むが限定されない様々なクラスのDNA損傷剤に対する感度の決定因子として働き得る。Zoppoli et al.,PNAS 2012;109:15030-35;Murai et al.,Oncotarget 2016;7:76534-50;Murai et al.,Mol.Cell 2018;69:371-84を参照されたい。
【0005】
抗体に複合化した細胞傷害性薬から構成される抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、選択的に癌細胞に対して薬物を送達し得、従って癌細胞内で薬物の蓄積をもたらし、癌細胞を死滅させることが期待され得る(Ducry,L.,et.al.,Bioconjugate Chem.(2010)21,5-13;Alley,S.C.,et al.,Current Opinion in Chemical Biology(2010)14,529-537;Damle N.K.Expert Opin.Biol.Ther.(2004)4,1445-1452;Senter P.D.,et al.,Nature Biotechnology(2012)30,631-637;Burris HA.,et al.,J.Clin.Oncol.(2011)29(4):398-405)。
【0006】
1つのこのような抗体-薬物コンジュゲートは、ダトポタマブ デルクステカンであり、これは、TROP2を標的とする抗体及びエキサテカンの誘導体から構成される。特に、国際公開第2015/098099号パンフレット及び国際公開第2020/240467号パンフレットは、ダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)を含む代表的なTROP2を標的とする抗体-薬物コンジュゲートの詳細を提供する。ダトポタマブ デルクステカンは、肺癌及び乳癌を含む複数の主要タイプで臨床的有効性を示した。しかし、それらの治療可能性を促進するためのダトポタマブ デルクステカンなどの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートに対する組み合わせパートナーを同定することが依然として必要とされている。
【0007】
ダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)及びATR阻害剤などの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの治療可能性にもかかわらず、既存の癌治療剤の有効性を増強し、治療応答の持続性を延長させ、患者について忍容性を改善し、用量依存的な毒性を軽減し、及び/又は以前の癌の処置、例えばオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ又はベリパリブなどのPARP阻害剤による以前の処置、に対して耐性又は不応性を示す癌の代替的な処置を提供し得る改善された治療組成物及び方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示で用いられる抗体-薬物コンジュゲート(成分としてトポイソメラーゼI阻害薬エキサテカンの誘導体を含む抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート)は、乳癌及び胃癌などの特定の癌の治療において、単独で投与された場合に、優れた抗腫瘍効果を示すことが確認されている。しかし、有効性の増強、治療応答の持続時間の延長及び/又は用量依存的な毒性の軽減などの、癌の処置での優れた抗腫瘍効果を得ることができる薬剤及び処置を提供することが望まれる。本開示の抗体-薬物コンジュゲートによって導入される複製ストレス及び二本鎖切断に対するDNA損傷応答を阻害することにより、ATR阻害剤は、抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて投与される場合、抗腫瘍効力を更に増強し得る。
【0009】
本開示は、ATR阻害剤と組み合わせた抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの投与を通じて、癌の処置において優れた抗腫瘍効果を示し得る医薬生成物を提供する。本開示は、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が組み合わせられて対象に投与される治療的使用及び方法も提供する。
【0010】
具体的には、本開示は、以下の[1]~[74]に関する。
[1]組み合わせでの投与のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を含む医薬生成物であって、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、以下の式:
【化1】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化される抗体-薬物コンジュゲートである、医薬生成物;
[2]ATR阻害剤が、以下の式(I):
【化2】
(式中、
R
1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され、
R
2は、
【化3】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2A、R
2C、R
2E及びR
2Fは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2B及びR
2Dは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2Gは、-NHR
7及び-NHCOR
8から選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチルであり;
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素又はメチルであるか、又はR
4及びR
5は、それらが結合されている原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6員複素環であり;
R
6は、水素であり、
R
7は、水素又はメチルであり;
R
8は、メチルである)
によって表される化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である、[1]に記載の医薬生成物;
[3]式(I)において、R
4及びR
5が、それらが結合されている原子と一緒に環Aを形成し、環Aが、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環である、[2]に記載の医薬生成物;
[4]式(I)において、環Aが、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である、[2]又は[3]に記載の医薬生成物;
[5]式(I)において、R
2Aが水素であり;R
2Bが水素であり;R
2Cが水素であり;R
2Dが水素であり;R
2Eが水素であり;R
2Fが水素である、[2]~[4]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[6]式(I)において、R
1が、3-メチルモルホリン-4-イルである、[2]~[5]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[7]式(I)の化合物が、式(Ia):
【化4】
の化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である、[2]~[6]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[8]式(Ia)において、
環Aが、シクロプロピル環であり;
R
2が、
【化5】
であり;
nが、0又は1であり;
R
2Aが、水素であり;
R
2Bが、水素であり;
R
2Cが、水素であり;
R
2Dが、水素であり;
R
2Eが、水素であり;
R
2Fが、水素であり;
R
2Gが、-NHR
7であり;
R
2Hが、フルオロであり;
R
3が、メチル基であり;
R
6が、水素であり;
R
7が、水素又はメチルである、
[7]に記載の医薬生成物;
[9]ATR阻害剤が、以下の式:
【化6】
により表されるセララセルチブ若しくはAZ13386215としても知られるAZD6738
又は薬学的に許容可能なその塩である、[2]に記載の医薬生成物;
[10]抗TROP2抗体が、配列番号3により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基50~54]からなるCDRH1、配列番号4により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基69~85]からなるCDRH2及び配列番号5により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基118~129]からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基44~54]からなるCDRL1、配列番号7により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基70~76]からなるCDRL2及び配列番号8により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基109~117]からなるCDRL3を含む軽鎖と、を含む抗体である、[1]~[9]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[11]抗TROP2抗体が、配列番号9により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~140]からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~129]からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む抗体である、[10]に記載の医薬生成物;
[12]抗TROP2抗体が、配列番号12により表されるアミノ酸配列からなるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~470]からなる(consisting of an amino acid sequence consisting of an amino acid sequence)重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む抗体である、[11]に記載の医薬生成物;
[13]抗TROP2抗体が、配列番号11により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~469]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む抗体である、[11]に記載の医薬生成物;
[14]抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体分子あたり複合化される薬物-リンカーの単位の平均数が2~8の範囲である、[1]~[13]の何れか1つに記載の医薬生成物
[15]抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体分子あたり複合化される薬物-リンカーの単位の平均数が3.5~4.5の範囲である、[14]に記載の医薬生成物;
[16]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、ダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)である、[15]に記載の医薬生成物;
[17]個別の同時投与のための、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を含む組み合わせ調製物である、[1]~[16]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[18]逐次投与のための、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を含む組み合わせ調製物である、[1]~[16]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[19]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、6mg/kg体重の用量で投与されるものである、[1]~[18]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[20]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が、3週間に1回投与されるものである、[19]に記載の医薬生成物;
[21]ATR阻害剤が、3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、[1]~[20]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[22]ATR阻害剤が、3週サイクルの第3日から第17日に投与されるものである、[1]~[20]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[23]癌を処置するためのものである、[1]~[22]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[24]癌が、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1つである、[23]に記載の医薬生成物;
[25]癌が乳癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[26]乳癌が、トリプルネガティブ乳癌である、[25]に記載の医薬生成物;
[27]乳癌が、ホルモン受容体(HR)-陽性、HER2-陰性乳癌である、[25]に記載の医薬生成物;
[28]癌が肺癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[29]肺癌が非小細胞肺癌である、[28]に記載の医薬生成物;
[30]非小細胞肺癌が、アクショナブルなゲノム変化がある非小細胞肺癌である、[29]に記載の医薬生成物;
[31]非小細胞肺癌が、アクショナブルなゲノム変化がない非小細胞肺癌肺癌(lung cancer lung cancer)である、[29]に記載の医薬生成物;
[32]癌が結腸直腸癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[33]癌が胃癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[34]癌が膵臓癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[35]癌が卵巣癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[36]癌が前立腺癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[37]癌が腎臓癌である、[24]に記載の医薬生成物;
[38]癌が、相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠く、[24]~[37]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[39]癌が、相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠いていない、[24]~[37]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[40]癌が、PARP阻害剤での以前の処置に対して耐性を示すか又は不応性を示す、[24]~[37]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[41]以前の処置が、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ及びベリパリブから選択されるPARP阻害剤によるものである、[40]に記載の医薬生成物;
[42]癌の癌細胞が、SLFN11欠損型である、[24]~[38]の何れか1つに記載の医薬生成物;
[43]SLFN11発現が、患者の癌細胞において、患者のSLFN11を発現する非癌細胞と比較してより低い、[42]に記載の医薬生成物;
[44]癌の処置における使用のための、[1]~[22]の何れか1つにおいて定められる通りの医薬生成物;
[45]癌が、[24]~[43]の何れか1つにおいて定められる通りである、[44]に記載の使用のための医薬生成物;
[46]癌を処置するための、ATR阻害剤と組み合わせた使用のための薬剤の製造における抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの使用であって、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、使用;
[47]薬剤が、逐次投与によるATR阻害剤と組み合わせた使用のためである、[46]に記載の使用;
[48]薬剤が、個別の同時投与によるATR阻害剤と組み合わせた使用のためである、[46]に記載の使用;
[49]癌を処置するための、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のための薬剤の製造におけるATR阻害剤の使用であって、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、使用;
[50]薬剤が、逐次投与による抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためである、[49]に記載の使用;
[51]薬剤が、個別の同時投与による、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためである、[49]に記載の使用;
[52]癌が、[24]~[43]の何れか1つにおいて定められる通りである、[46]~[51]の何れか1つに記載の使用;
[53]癌の処置におけるATR阻害剤との組み合わせでの使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートであって、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、癌の処置におけるATR阻害剤との組み合わせでの使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[54]癌が[24]~[43]の何れか1つにおいて定められる通りである、[53]に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[55]使用が、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を逐次的に投与することを含む、[53]又は[54]に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[56]使用が、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を個別に及び同時に投与することを含む、[53]又は[54]に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[57]対象における癌の処置での使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートであって、前記処置が、前記対象へのi)前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びii)ATR阻害剤の逐次又は個別の同時投与を含み、前記抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及び前記ATR阻害剤が[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、対象における癌の処置での使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[58]6mg/kg体重の用量で投与されるものである、[53]~[57]の何れか1つに記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[59]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が3週間に1回投与されるものである、[58]に記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[60]ATR阻害剤が、3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、[53]~[59]の何れか1つに記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[61]ATR阻害剤が、3週サイクルの第3日~第17日に投与されるものである、[53]~[59]の何れか1つに記載の使用のための抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート;
[62]癌の処置における抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためのATR阻害剤であって、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、癌の処置における抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた使用のためのATR阻害剤;
[63]癌が、[24]~[43]の何れか1つにおいて定められる通りである、[62]に記載の使用のためのATR阻害剤;
[64]使用が、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を逐次的に投与することを含む、[62]又は[63]に記載の使用のためのATR阻害剤;
[65]使用が、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を個別に及び同時に投与することを含む、[62]又は[63]に記載の使用のためのATR阻害剤;
[66]対象における癌の処置での使用のためのATR阻害剤であって、前記処置が、i)前記ATR阻害剤と、ii)抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとの、前記対象への逐次又は個別の同時投与を含み、前記ATR阻害剤及び前記TROP2抗体-薬物コンジュゲートが、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りである、対象における癌の処置での使用のためのATR阻害剤;
[67]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが6mg/kg体重の用量で投与されるものである、[62]~[66]の何れか1項に記載の使用のためのATR阻害剤;
[68]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの用量が、3週間に1回投与されるものである、[67]に記載の使用のためのATR阻害剤;
[69]3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与されるものである、[62]~[68]の何れか1つに記載の使用のためのATR阻害剤;
[70]3週サイクルの第3日~17日に投与されるものである、[62]~[68]の何れか1つに記載の使用のためのATR阻害剤;
[71]癌を処置する方法であって、[1]~[16]の何れか1つにおいて定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を、組み合わせて、それを必要とする対象に投与することを含む、方法;
[72]癌が、[24]~[43]の何れか1つにおいて定められる通りである、[71]に記載の方法;
[73]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を逐次的に投与することを含む、[71]又は[72]に記載の方法;
[74]抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤を個別に及び同時に投与することを含む、[71]又は[72]に記載の方法。
【0011】
[開示の有利な効果]
本開示は、リンカー構造を介して抗TROP2抗体に複合化される抗腫瘍薬を有する抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとATR阻害剤とが組み合わせられて投与される医薬生成物、並びに抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートとATR阻害剤とが組み合わせられて対象に投与される治療的使用及び方法を提供する。従って、本開示は、癌の処置において優れた抗腫瘍効果を得ることができる薬剤及び処置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、抗TROP2抗体の重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す図表である。
【
図2】
図2は、抗TROP2抗体の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示す図表である。
【
図3】
図3は、重鎖CDRH1のアミノ酸配列(配列番号3[=配列番号1のアミノ酸残基50~54])を示す図表である。
【
図4】
図4は、重鎖CDRH2のアミノ酸配列(配列番号4[=配列番号1のアミノ酸残基69~85])を示す図表である。
【
図5】
図5は、重鎖CDRH3のアミノ酸配列(配列番号5[=配列番号1のアミノ酸残基118~129])を示す図表である。
【
図6】
図6は、軽鎖CDRL1のアミノ酸配列(配列番号6[=配列番号2のアミノ酸残基44~54])を示す図表である。
【
図7】
図7は、軽鎖CDRL2のアミノ酸配列(配列番号7[=配列番号2のアミノ酸残基70~76])を示す図表である。
【
図8】
図8は、軽鎖CDRL3のアミノ酸配列(配列番号8[=配列番号2のアミノ酸残基109~117])を示す図表である。
【
図9】
図9は、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号9[=配列番号1のアミノ酸残基20~140])を示す図表である。
【
図10】
図10は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号10[=配列番号2のアミノ酸残基21~129])を示す図表である。
【
図11】
図11は、重鎖のアミノ酸配列(配列番号11[=配列番号1のアミノ酸残基20~469])を示す図表である。
【
図12A-12B】
図12A及び12Bは、TROP2発現肺癌細胞株において、DS-1062をAZD6738(ATR阻害剤)と組み合わせるハイスループットスクリーンを用いて得られた組み合わせマトリクスを示す図表である。
【
図13A-13B】
図13A及び13Bは、TROP2発現乳癌細胞株において、DS-1062をAZD6738と組み合わせるハイスループットスクリーンを用いて得られた組み合わせマトリクスを示す図表である。
【
図14】
図14は、AZD6738と組み合わせたDS-1062で処理された細胞株における組み合わせEmax及びLoewe相乗効果スコアを示す図表である。
【
図15】
図15は、DS-1062若しくはAZD6738単独での、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062でのインビボ処置についての腫瘍体積を示すグラフである。点線はAZD6738投与期間の終了を示す。
【
図16A-16B】
図16Aは、DS-1062若しくはAZD6738単独での、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062でのインビボ処置についての腫瘍体積を示すグラフである。点線はAZD6738投与期間の終了を示す。
図16Bは、この試験からの各処置群で完全奏効を達成したマウスのパーセンテージのグラフである。
【
図17A-17B】
図17A及び17Bは、初代CD34+造血幹細胞及び赤血球系統に沿って分化させられる前駆細胞における、DS-1062とAZD6738とを組み合わせたハイスループットスクリーンで得られた組み合わせマトリクスを示す図表である。
【
図18】
図18は、DS-1062若しくはAZD6738単独での、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062でのインビボ処置についての腫瘍体積を示すグラフである。
【
図19】
図19は、DS-1062若しくはAZD6738単独での、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062でのインビボ処置についての腫瘍体積を示すグラフである。点線は投与期間の終了を示す。
【
図20】
図20は、DS-1062若しくはAZD6738単独での、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062でのインビボ処置についての腫瘍体積を示すグラフである。点線は、投与期間の終了を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示をより容易に理解し得るために、ある特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は、詳細な説明全体にわたり記載される。
【0014】
本開示を詳細に説明する前に、本開示は特定の組成又は方法段階に限定されず、故に変動し得ることを理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明確に指示されない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、複数の指示対象を含む。「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)という用語並びに「1つ又は複数」及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で互換的に使用され得る。
【0015】
更に、本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、他の特徴又は構成要素の有無に関わらず、2つの特定の特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示であると見なされるべきである。従って、本明細書における「A及び/又はB」などの語句において使用される場合の「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むものとする。同様に、「及び/又は」という用語は、「A、B及び/又はC」などの句で用いられる場合、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0016】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本開示が関連する技術分野の熟練者により通常理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、当業者に、本開示で使用される用語の多くの一般辞書を提供する。
【0017】
単位、接頭辞及び記号は、これらの国際単位系(SI)で認められている形態で表記される。数値範囲には、この範囲を画定する数字が含まれる。
【0018】
本明細書中で態様が「含む」という語と共に記載されるときは、常に「からなる」及び/又は「から本質的になる」という用語で説明される、他の点では類似の態様も提供されることを理解されたい。
【0019】
「阻害する」、「遮断する」及び「抑制する」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、生物学的活性のあらゆる統計学的に有意な減少(活性の完全遮断を含む)を指す。例えば、「阻害」は、生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の減少を指し得る。細胞増殖は、細胞分裂速度及び/又は細胞集団内において細胞分裂を起こす細胞の割合及び/又は最終分化又は細胞死に起因する細胞集団からの細胞損失率(例えばチミジン取込み)を測定する当技術分野で認められている技術を用いてアッセイされ得る。
【0020】
「対象」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むが限定されない、特定の処置のレシピエントとなるあらゆる動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、「対象」及び「患者」という用語は、ヒト対象に関連して、本明細書において交換可能に使用される。
【0021】
「医薬生成物」という用語は、全ての有効成分を含有する組成物(同時投与用)又はそれぞれが有効成分の少なくとも1つを含有するが全ては含有しない個別の組成物の組み合わせ(組み合わせ調製物)(逐次的投与又は同時投与用)の何れかとして有効成分の生物活性を可能にするような形態であり、且つ生成物が投与される対象に対して容認できないほどの毒性がある追加成分を含有しない、調製物を指す。このような生成物は、無菌であり得る。「同時投与」とは、有効成分が同時に投与されることを意味する。「逐次投与」とは、有効成分が、何れかの順序で、個々の投与間に時間間隔をおいて、1つずつ投与されることを意味する。時間間隔は、例えば、24時間未満、好ましくは6時間未満、より好ましくは2時間未満であり得る。
【0022】
「処置すること(treating)」若しくは「処置(treatment)」若しくは「処置する(to treat)」又は「緩和すること(alleviating)」若しくは「緩和する(to alleviate)」などの用語は、(1)診断された病態又は障害の症状を治癒させ、減速させ、軽減し、及び/又はその進行を停止させる治療的措置と、(2)標的とする病態又は障害の発症を予防し、及び/又は減速させる予防(prophylactic又はpreventative)措置と、の両方を指す。そのため、処置を必要とする者としては、既に障害を有する者、障害を有する傾向がある者及び障害を予防すべき者が挙げられる。特定の態様では、患者が、例えば、特定のタイプの癌の完全、部分的、又は一時的寛解を示す場合、本開示の方法に従って対象が癌に対して首尾よく「処置」される。
【0023】
「癌」、「腫瘍」、「癌性」及び「悪性」という用語は、典型的には、無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を指すか又は記載する。癌の例としては、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、食道胃接合部腺癌、胆道癌、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫が挙げられるが限定されない。癌としては、血液悪性腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫並びに固形腫瘍、例えば乳癌、肺癌、神経芽細胞腫及び結腸癌が挙げられる。
【0024】
本明細書において使用される場合、「細胞傷害剤」という用語は、広く定義され、細胞の機能を阻害若しくは防止し、及び/又は細胞の破壊(細胞死)を引き起こし、及び/又は抗新生物/抗増殖性効果を発揮する物質を指す。例えば、細胞傷害剤は、新生腫瘍細胞の発生、成熟又は拡散を直接又は間接的に防止する。この用語は、細胞増殖抑制効果のみを引き起こし、単なる細胞傷害性効果を引き起こさないような薬剤も含む。この用語は、下記に規定されるような化学療法剤並びに他のTROP2アンタゴニスト、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害薬、プロテインキナーゼA阻害薬、サイトカインファミリーのメンバー、放射性同位体及び毒素、例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素学的に活性な毒素を含む。「化学療法剤」という用語は、天然又は合成化合物を含む「細胞傷害剤」という用語の部分集合である。
【0025】
本開示の方法又は使用によれば、本開示の化合物を患者に投与して癌に関する正の治療応答を促進し得る。癌の処置に関する「正の治療応答」という用語は、疾患に伴う症状の改善を指す。例えば、疾患の改善は、完全奏効として特徴付けられ得る。「完全奏効」という用語は、何れの事前の試験結果も正規化して臨床的に検出可能な疾患が存在しないことを指す。或いは、疾患における改善は、部分奏効であるとしても分類可能である。「正の治療応答」は、癌の進行及び/又は持続期間の低減又は阻害、癌の重症度の低減又は改善及び/又は本開示の化合物の投与から生じる1つ又は複数のその症状の改善を包含する。具体的な態様において、このような用語は、本開示の化合物の投与後の1、2若しくは3つ又はそれを超える結果を指す:
(1)癌細胞集団の安定化、低減又は排除;
(2)癌成長の安定化又は低減;
(3)癌形成の低下;
(4)原発性、局所性及び/又は転移性の癌の根絶、除去又は制御;
(5)死亡率の低減;
(6)無病、無再発、無進行及び/又は全生存の持続期間又は割合の増加;
(7)奏効率、応答持続性又は応答若しくは寛解状態にある患者数の増加;
(8)入院率の低下、
(9)入院期間の短縮、
(10)癌のサイズが維持され、且つ拡大しないか又は拡大が10%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは2%未満であること、並びに
(11)寛解患者数の増加。
(12)他に癌の処置に必要となる補助療法剤(例えば、化学療法剤又はホルモン療法剤)の数の減少。
【0026】
臨床奏効は、スクリーニング技術、例えばPETなど、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、X放射線イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー若しくは蛍光活性化セルソーター(FACS)分析、組織学的検査、肉眼的所見及び血液化学検査、例えば、限定されないが、ELISA、RIA、クロマトグラフィーなどにより検出可能な変化を使用して評価し得る。これらの正の治療応答に加えて、治療を受けている対象は、疾患に伴う症状の改善の有益な効果を受け得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「SLFN11の発現レベル」がある量、例えば0%、であるとは、患者の癌組織における記述した量の癌細胞がSLFN11を発現していることを意味する。同様に、本明細書中で使用される場合、用語「SLFN11の発現レベルが<」ある量、例えば<10%、であるとは、患者の癌組織において記述した量未満の癌細胞がSLFN11を発現していることを意味する。SLFN11の発現レベルは、例えば、<25%、<20%、<15%、<10%、<9%、<8%、<7%、<6%、<5%、<4%、<3%、<2%、<1%又は0%であり得る。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「SLFN11欠損」という用語は、遺伝子と関連する正常な表現型を示すか又はタンパク質についてその生理機能を示すのに不十分である、関連する患者、動物、組織、細胞などにおけるSLFN11の発現レベルを指す。前臨床モデルの状況において、SLFN11遺伝子がノックアウト(KO)されている細胞又は動物は、「SLFN11欠損」の例である。
【0029】
本明細書中で、一般用語「Cp~qアルキル」とは、直鎖及び分岐鎖アルキル基の両方を含む。しかしながら、「プロピル」などの個々のアルキル基への言及は、直鎖バージョン(即ちn-プロピル及びイソプロピル)に対してのみ特有であり、「tert-ブチル」などの個々の分岐鎖アルキル基への言及は、分岐鎖バージョンに対してのみ特有である。
【0030】
Cp~qアルキル及び他の用語(p及びqが整数である場合)における接頭辞Cp~qは、その基に存在する炭素原子の範囲を示し、例えば、C1~4アルキルは、C1アルキル(メチル)、C2アルキル(エチル)、C3アルキル(n-プロピル及びイソプロピルとしてのプロピル)及びC4アルキル(n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びtert-ブチル)を含む。
【0031】
Cp~qアルコキシという用語は、-O-Cp~qアルキル基を含む。
【0032】
Cp~qアルカノイルという用語は、-C(O)アルキル基を含む。
【0033】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含む。
【0034】
「カルボシクリル」は、環CH2基がC=O基で置換され得る、3~6個の環原子を含有する飽和、不飽和又は部分飽和の単環式環系である。「カルボシクリル」は、「アリール」、「Cp~qシクロアルキル」及び「Cp~qシクロアルケニル」を含む。
【0035】
「アリール」は、芳香族単環式カルボシクリル環系である。
【0036】
「Cp~qシクロアルケニル」は、少なくとも1個のC=C結合を含有し、環CH2基がC=O基で置換され得る、不飽和又は部分飽和の単環式カルボシクリル環系である。
【0037】
「Cp~qシクロアルキル」は、環CH2基がC=O基で置換され得る飽和単環式カルボシクリル環系である。
【0038】
「ヘテロシクリル」は、3~6個の環原子を含有し、そのうちの1、2又は3個の環原子が窒素、硫黄又は酸素から選択され、その環が炭素又は窒素連結され得、環窒素又は硫黄原子が酸化され得、環CH2基がC=O基で置換され得る、飽和、不飽和又は部分飽和の単環式環系である。「ヘテロシクリル」は、「ヘテロアリール」、「シクロヘテロアルキル」及び「シクロヘテロアルケニル」を含む。
【0039】
「ヘテロアリール」は、特に5又は6個の環原子を有し、そのうちの1、2又は3個の環原子が窒素、硫黄又は酸素から選択され、環窒素又は硫黄が酸化され得る、芳香族単環式ヘテロシクリルである。
【0040】
「シクロヘテロアルケニル」は、特に5又は6個の環原子を有し、そのうちの1、2又は3個の環原子が窒素、硫黄又は酸素から選択され、その環が炭素又は窒素連結され得、環窒素又は硫黄原子が酸化され得、環CH2基がC=O基で置換され得る、不飽和又は部分飽和の単環式ヘテロシクリル環系である。
【0041】
「シクロヘテロアルキル」は、特に5又は6個の環原子を有し、そのうちの1、2又は3個の環原子が窒素、硫黄又は酸素から選択され、その環が炭素又は窒素連結され得、環窒素又は硫黄原子が酸化され得、環CH2基がC=O基で置換され得る、飽和単環式複素環系である。
【0042】
本明細書は、複数の官能基を含む基を説明するために合成用語を使用し得る。本明細書で別段記載されない限り、こうした用語は、当技術分野で理解される通りに解釈されるものである。例えば、カルボシクリルCp~qアルキルは、カルボシクリルによって置換されるCp~qアルキルを含み、ヘテロシクリルCp~qアルキルは、ヘテロシクリルによって置換されるCp~qアルキルを含み、ビス(Cp~qアルキル)アミノは、同じであるか又は異なり得る2個のCp~qアルキル基によって置換されるアミノを含む。ハロCp~qアルキルは、1個又は複数のハロ置換基及び特に1、2又は3個のハロ置換基によって置換されるCp~qアルキル基である。同様に、ハロCp~qアルコキシなどのハロを含有する他の一般用語は、1個又は複数のハロ置換基及び特に1、2又は3個のハロ置換基を含有し得る。
【0043】
ヒドロキシCp~qアルキルは、1個又は複数のヒドロキシル置換基及び特に1、2又は3個のヒドロキシ置換基によって置換されるCp~qアルキル基である。同様に、ヒドロキシCp~qアルコキシなどのヒドロキシを含有する他の一般用語は、1個又は複数及び特に1、2又は3個のヒドロキシ置換基を含有し得る。
【0044】
Cp~qアルコキシCp~qアルキルは、1個又は複数のCp~qアルコキシ置換基及び特に1、2又は3個のCp~qアルコキシ置換基によって置換されるCp~qアルキル基である。同様に、Cp~qアルコキシCp~qアルコキシなどのCp~qアルコキシを含有する他の一般用語は、1個又は複数のCp~qアルコキシ置換基及び特に1、2又は3個のCp~qアルコキシ置換基を含有し得る。
【0045】
任意選択的な置換基が、「1又は2個」、「1、2又は3個」又は「1、2、3又は4個」の基又は置換基から選択される場合、この定義は、全ての置換基が特定の基の1つから選択されること、即ち全ての置換基が同じであること、又は置換基が特定の基の2つ以上から選択されること、即ち置換基が同じではないこと、を含むことを理解されたい。
【0046】
本開示の化合物は、コンピュータソフトウェア(ACD/Name バージョン10.06)を使用して命名された。
【0047】
任意のR基又はこうした基の任意の部分若しくは置換基に関する好適な値としては、以下が挙げられる:
C1~3アルキルの場合:メチル、エチル、プロピル及びイソプロピル;
C1~6アルキルの場合:C1~3アルキル、ブチル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル及びヘキシル;
C3~6シクロアルキルの場合:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル;
C3~6シクロアルキルC1~3アルキルの場合:シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル及びシクロヘキシルメチル;
アリールの場合:フェニル;
アリールC1~3アルキルの場合:ベンジル及びフェネチル;
カルボシルイル(carbocylyl)の場合:アリール、シクロヘキセニル及びC3~6シクロアルキル;
ハロの場合:フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード;
C1~3アルコキシの場合:メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びイソプロポキシ;
C1~6アルコキシの場合:C1~3アルコキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、1-エチルプロポキシ及びヘキシルオキシ;
C1~3アルカノイルの場合:アセチル及びプロパノイル;
C1~6アルカノイルの場合:アセチル、プロパノイル及び2-メチルプロパノイル;
ヘテロアリールの場合:ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、フラニル、ピリダジニル及びピラジニル;
ヘテロアリールC1~3アルキルの場合:ピロリルメチル、ピロリルエチル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル、ピラゾリルメチル、ピラゾリルエチル、フラニルメチル、フラニルエチル、チエニルメチル、チエニルエチル、ピリジニルメチル、ピリジニルエチル、ピラジニルメチル、ピラジニルエチル、ピリミジニルメチル、ピリミジニルエチル、ピリミジニルプロピル、ピリミジニルブチル、イミダゾリルプロピル、イミダゾリルブチル、1,3,4-トリアゾリルプロピル及びオキサゾリルメチル;
ヘテロシクリルの場合:ヘテロアリール、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼチジニル、モルホリニル、ジヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロピリジン及びテトラヒドロフラニル;
飽和ヘテロシクリルの場合:オキセタニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼチジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル及びテトラヒドロフラニル。
【0048】
詳細な説明において使用される用語について与えられる例が非限定的であることに留意すべきである。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という句は、処置しようとする症状及び/又は病態を有意且つ正に変化させる(例えば、正の臨床応答を提供する)ために十分である化合物又は組成物の量を意味する。医薬生成物での使用のための有効成分の有効量は、担当医の知識及び専門的技術内で、処置されている特定の病態、病態の重症度、治療の持続期間、同時療法の性質、使用されている特定の有効成分、利用される特定の薬学的に許容可能な賦形剤/担体などの因子により変動する。特に、抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせた癌の処置での使用のための式(I)の化合物の有効量は、その組み合わせが、ヒトなどの温血動物における癌の症状を緩和するか、癌の進行を遅延させるか、又は癌の症状を有する患者において悪化リスクを低下させるのに十分な量である。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という用語は、妥当な利益/リスク比と釣り合い、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答又は他の問題も合併症もなく、ヒト及び動物の組織との接触における使用に好適な、正当な医学的判断の範囲内である化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【0051】
式(I)の特定の化合物は、立体異性形態で存在可能である。本開示は、式(I)の化合物の全ての幾何異性体及び光学異性体並びにラセミ体を含むそれらの混合物を包含することが理解される。互変異性体及びその混合物も本開示の態様を形成する。
【0052】
溶媒和物及びその混合物も本開示の態様を形成する。例えば、式(I)の化合物の好適な溶媒和物は、例えば、水和物、例えば半水和物、一水和物、二水和物又は三水和物又はその代替的な量であり得る。
【0053】
上記で定義される通りの式(I)の化合物のあるものが、1個又は複数の非対称炭素原子又は硫黄原子のために、光学活性形態又はラセミ形態で存在し得る限り、本開示は、その定義において、上述の活性を有するこうした何れの光学活性形態又はラセミ形態も含むことを理解されたい。本開示は、本明細書中で定められるような活性を有する全てのそのような立体異性体を包含する。更に、キラル化合物(R,S)の名称は、あらゆるスカレミック(scalemic)混合物又はラセミ混合物を表し、(R)及び(S)はエナンチオマーを表すことも理解されたい。名称において(R,S)、(R)又は(S)が存在しない場合、名称は、あらゆるスカレミック(scalemic)混合物又はラセミ混合物を指し、ここでスカレミック(scalemic)混合物はR及びSエナンチオマーをあらゆる相対的割合で含有し、ラセミ混合物はR及びSエナンチオマーを50:50の比で含有することを理解されたい。光学活性形態の合成は、当技術分野で周知の有機化学の標準技術、例えば光学活性の出発材料からの合成によるか又はラセミ形態の分割により実施され得る。ラセミ体は、既知の手順を使用して個々のエナンチオマーに分離され得る(例えば、Advanced Organic Chemistry:3rd Edition:author J March,p104-107を参照されたい)。好適な手順は、ラセミ材料とキラル補助剤との反応によるジアステレオマー誘導体の形成と、それに続く、例えば、クロマトグラフィーによるジアステレオマーの分離、次いでこの補助分子種の開裂を含む。同様に、上述の活性は、標準的な実験室技術を使用して評価され得る。
【0054】
式(I)の化合物は、1個又は複数の同位体置換を伴う化合物を包含し得ることが理解されよう。例えば、Hは、1H、2H(D)及び3H(T)を含むあらゆる同位体形態であり得;Cは、12C、13C及び14Cを含むあらゆる同位体形態であり得;Oは、16O及び18Oを含むあらゆる同位体形などであり得る。
【0055】
本開示は、本明細書で定義される通りの式(I)の化合物並びにその塩を使用し得る。医薬生成物における使用のための塩は、薬学的に許容可能な塩であるが、他の塩が式(I)の化合物及び薬学的に許容可能なそれらの塩の生成に有用であり得る。
【0056】
本開示の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、こうした塩を形成するのに十分に塩基性である本明細書で定義される通りの式(I)の化合物の酸付加塩が挙げられ得る。こうした酸付加塩としては、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩及びマレイン酸塩並びにリン酸及び硫酸とともに形成される塩が挙げられるが限定されない。更に、式(I)の化合物が十分に酸性である場合、塩は、塩基性塩であり、例としては、アルカリ金属塩、例えばナトリウム若しくはカリウム、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム若しくはマグネシウム又は有機アミン塩、例えばトリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミン若しくはアミノ酸、例えばリジンなどが挙げられるが限定されない。
【0057】
式(I)の化合物は、インビボ加水分解性エステルとしても提供され得る。カルボキシ又はヒドロキシ基を含有する式(I)の化合物のインビボ加水分解性エステルは、例えば、ヒト又は動物体内で切断されて親酸又はアルコールを生成させる薬学的に許容可能なエステルである。このようなエステルは、例えば、試験動物に化合物を試験下で静脈内投与し、続いて試験動物の体液を試験することにより同定され得る。
【0058】
カルボキシに対する好適な薬学的に許容可能なエステルとしては、C1~6アルコキシメチルエステル、例えばメトキシメチル、C1~6アルカノイルオキシメチルエステル、例えばピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3~8シクロアルクカルボニルオキシ(cycloalkcarbonyloxy)C1~6アルキルエステル、例えば1-シクロヘキシルカルボニルオキシエチル、(1,3-ジオキソレン-2-オン)イルメチルエステル、例えば(5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オン)イルメチル及びC1~6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、1-メトキシカルボニルオキシエチルが挙げられ;本開示の化合物中の何れかのカルボキシ基において形成され得る。
【0059】
ヒドロキシに好適な薬学的に許容可能なエステルとしては、無機エステル、例えば、リン酸エステル(ホスホロアミダイト環状エステルを含む)及びα-アシルオキシアルキルエーテル及びエステル分解のインビボ加水分解の結果として親ヒドロキシ基を生じさせる関連化合物が挙げられる。α-アシルオキシアルキルエーテルの例としては、アセトキシメトキシ及び2,2-ジメチルプロピオニルオキシメトキシが挙げられる。ヒドロキシに対するインビボ加水分解性エステル形成基の選択物としては、C1~10アルカノイル、例えば、アセチル、ベンゾイル、フェニルアセチル、置換ベンゾイル及びフェニルアセチル;C1~10アルコキシカルボニル(炭酸アルキルエステルを生じさせるため)、例えばエトキシカルボニル;ジ-C1~4アルキルカルバモイル及びN-(ジ-C1~4アルキルアミノエチル)-N-C1~4アルキルカルバモイル(カルバメートを生じさせるため);ジ-C1~4アルキルアミノアセチル及びカルボキシアセチルが挙げられる。フェニルアセチル及びベンゾイル上の環置換基の例としては、アミノメチル、C1~4アルキルアミノメチル及びジ-(C1~4アルキル)アミノメチル及びベンゾイル環の3又は4位へのメチレン結合基を介して環窒素原子から連結されるモルホリノ又はピペラジノが挙げられる。他の興味深いインビボ加水分解性エステルとしては、例えば、RAC(O)OC1~6アルキル-CO-(式中、RAは、例えば、ベンジルオキシ-C1~4アルキル又はフェニルである)が挙げられる。このようなエステル中のフェニル基上の好適な置換基としては、例えば、4-C1~4アルキルピペラジノ-C1~4アルキル、ピペラジノ-C1~4アルキル及びモルホリノ-C1~4アルキルが挙げられる。
【0060】
式(I)の化合物は、ヒト又は動物の体内で分解されて式(I)の化合物を生じさせるプロドラッグの形態でも投与され得る。様々な形態のプロドラッグが当技術分野で公知である。こうしたプロドラッグ誘導体の例については、
a)Design of Prodrugs,H.Bundgaardにより編集、(Elsevier,1985)及びMethods in Enzymology,Vol.42,p.309-396,K.Widder,et.al.により編集(Academic Press,1985);
b)A Textbook of Drug Design and Development,Krogsgaard-Larsen及びH.Bundgaardにより編集、Chapter 5 “Design and Application of Prodrugs”,H.Bundgaard著 p.113~191(1991);
c)H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,8,1-38(1992);
d)H.Bundgaard,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,77,285(1988);及び
e)N.Kakeya,et al.,Chem Pharm Bull,32,692(1984)
を参照のこと。
【0061】
[実施形態の説明]
本明細書中で以後、本開示を実行するための好ましい形態を説明する。下記の実施形態は、本開示の典型的な実施形態の一例を説明するために示されているにすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。
【0062】
1. 抗体-薬物コンジュゲート
本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化7】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)
によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化されている、抗体-薬物コンジュゲートである。
【0063】
本開示では、抗体-薬物コンジュゲート中のリンカー及び薬物からなる部分構造は、「薬物-リンカー」と呼ばれる。薬物-リンカーは、抗体中の鎖間ジスルフィド結合部位(重鎖間の2つの部位及び重鎖と軽鎖との間の2つの部位)に形成されるチオール基(換言すると、システイン残基の硫黄原子)に接続される。
【0064】
本開示の薬物-リンカーは、エキサテカン(IUPAC名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-1,2,3,9,12,15-ヘキサヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10H,13H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオン、(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオンとしても表される))を構成成分として含み、これはトポイソメラーゼI阻害薬である。エキサテカンは、以下の式:
【化8】
により表される、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体である。
【0065】
本開示で用いられる抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化9】
によっても表され得る。
【0066】
ここで、薬物-リンカーは、チオエーテル結合を介して抗TROP2抗体(「抗体-」)に複合化される。nの意味は、複合化される薬物分子の平均数(DAR;薬物-抗体比)と呼ばれるものの意味と同じであり、1抗体分子あたり複合化される薬物-リンカーの単位の平均数を示す。
【0067】
癌細胞中に移行した後、本開示で使用される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、リンカー部分で切断され、以下の式:
【化10】
によって表される化合物を放出する。
【0068】
2. 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗TROP2抗体
本発明で用いられる抗体-薬物コンジュゲート中の抗TROP2抗体は、あらゆる種由来であり得、これは、好ましくは、ヒト、ラット、マウス又はウサギ由来の抗体である。抗体がヒト種以外の種由来である場合、これは、好ましくは、周知の技術を用いてキメラ化又はヒト化される。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし又はモノクローナル抗体であってもよく、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0069】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗体は、好ましくは、癌細胞を標的化可能な特徴を有する抗体であり、好ましくは、例えば癌細胞を認識可能な特性、癌細胞に結合可能な特性、癌細胞中に内在化する特性及び/又は癌細胞に対する細胞破壊活性を有する抗体である。
【0070】
癌細胞に対する抗体の結合活性は、フローサイトメトリーを用いて確認され得る。腫瘍細胞への抗体の内部移行は、(1)治療用抗体への二次抗体(蛍光標識されている)の結合を使用して、蛍光顕微鏡下で、細胞に取り込まれた抗体を可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation(2008)15,751-761)、(2)治療用抗体への二次抗体(蛍光標識されている)の結合を使用して、細胞中の取り込まれた蛍光強度を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell,Vol.15,5268-5282,December 2004)又は(3)治療用抗体への免疫毒素の結合を使用し、この毒素が細胞への取込み時に放出されて細胞増殖を阻害する、Mab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165,January 2000)を使用して確認し得る。免疫毒素として、ジフテリア毒素の触媒ドメインとプロテインGとの組み換え複合タンパク質が使用され得る。
【0071】
本抗体の抗腫瘍活性は、細胞成長に対する阻害活性を測定することによってインビトロで確認され得る。例えば、抗体に対する標的タンパク質を過剰発現する癌細胞株を培養し、培養系に抗体を様々な濃度で添加して、病巣形成、コロニー形成及び球状体増殖に対する阻害活性を測定する。例えば、標的タンパク質を高発現する癌細胞株を移植されたヌードマウスに抗体を投与し、癌細胞の変化を測定することにより、インビボで抗腫瘍活性が確認され得る。
【0072】
抗体-薬物コンジュゲート中で複合化される化合物が抗腫瘍効果を発揮するので、抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが必須ではない。癌細胞に対して抗腫瘍化合物の細胞傷害活性を特異的に且つ選択的に発揮するという目的のために、本抗体は、癌細胞中に内在化して移行する特性を有するであろうことが重要であり、また好ましい。
【0073】
本発明で用いられる抗体-薬物コンジュゲート中の抗体は、当技術分野で公知の手順によって得られ得る。例えば、本発明の抗体は、抗原性ポリペプチドで動物に免疫付与し、インビボで産生された抗体を回収して精製することを伴う、当技術分野で通常実施される方法を用いて得られ得る。この抗原の起源はヒトに限定されず、動物に対して、マウス、ラットなどの非ヒト動物に由来する抗原で免疫付与し得る。この場合には、得られた異種抗原に結合する抗体と、ヒト抗原との交差反応性を試験して、ヒト疾患に適用可能な抗体についてスクリーニングし得る。
【0074】
或いは、当技術分野で既知の方法に従い、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞を(例えば、Kohler and Milstein,Nature(1975)256,p.495-497;Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibodies,p.365-367,Plenum Press,N.Y.(1980))に従って骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを確立し、次いで、このハイブリドーマから、モノクローナル抗体が得られ得る。
【0075】
抗原は、抗原タンパク質をコードする遺伝子を産生させるように宿主細胞を遺伝子操作することによって得られ得る。具体的には、抗原遺伝子を発現させることのできるベクターを調製し、これを宿主細胞に導入してこの遺伝子が発現されるようにする。こうして発現される抗原を精製し得る。本抗体は、上記の遺伝子操作された抗原発現細胞又は抗原を発現する細胞株で動物に免疫付与する方法によっても得られ得る。
【0076】
本発明で用いられる抗体-薬物コンジュゲート中の抗体は、好ましくは、キメラ抗体又はヒト化抗体など、ヒトに対する異種抗原性を低下させることを目的とした人工的修飾によって得られた組み換え抗体であるか、又は好ましくはヒトに由来する抗体、即ちヒト抗体の遺伝子配列のみを有する抗体である。これらの抗体は、既知の方法を使用して作製され得る。
【0077】
キメラ抗体として、抗体の可変領域及び定常領域が異なる種由来である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域がヒト由来抗体の定常領域に連結されるキメラ抗体が例示され得る(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,6851-6855,(1984))。
【0078】
ヒト化抗体としては、異種抗体の相補性決定領域(CDR)のみをヒト由来抗体に組み込むことによって得られる抗体(Nature(1986)321,pp.522-525)と、CDR移植法により、異種抗体のフレームワークのアミノ酸残基の一部並びに異種抗体のCDR配列をヒト抗体に移植することによって得られる抗体(国際公開第90/07861号パンフレット)及び、遺伝子変換突然変異誘発ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821337号明細書)が例示され得る。
【0079】
ヒト抗体としては、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いることによって作製された抗体(Tomizuka,K.et al.,Nature Genetics(1997)16,p.133-143;Kuroiwa,Y.et.al.,Nucl.Acids Res.(1998)26,p.3447-3448;Yoshida,H.et. al.,Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10,p.69-73(Kitagawa,Y.,Matsuda,T.and Iijima,S.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999;Tomizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97,p.722-727などを参照)が例示され得る。代替物として、ファージディスプレイにより得られた抗体、ヒト抗体ライブラリから選択された抗体(Wormstone,I.M.et.al,Investigative Ophthalmology & Visual Science.(2002)43(7),p.2301-2308;Carmen,S.et.al.,Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002),1(2),p.189-203;Siriwardena,D.et.al.,Ophthalmology(2002)109(3),p.427-431などを参照)が例示され得る。
【0080】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート中の抗体において、抗体の修飾バリアントも含まれる。修飾バリアントは、本発明による抗体を化学的又は生物学的修飾に供することによって得られるバリアントを指す。化学的な修飾バリアントの例としては、アミノ酸骨格への化学部分の結合を含むバリアント、N-結合又はO-結合炭水化物鎖への化学部分の結合を含むバリアントなどが挙げられる。生物学的な修飾バリアントの例としては、翻訳後修飾(例えば、N-結合若しくはO-結合グリコシル化、N末端若しくはC末端プロセシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化又はメチオニンの酸化)によって得られるバリアント及び原核生物宿主細胞中で発現させることによってメチオニン残基がN末端に付加されるバリアントが挙げられる。更に、本発明による抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするように標識化された抗体、例えば、酵素標識体、蛍光標識抗体及びアフィニティー標識抗体も修飾バリアントの意味において含まれる。本開示による抗体のそのような修飾バリアントは、抗体の安定性及び血液中保持の改善、その抗原性の低下、抗体又は抗原の検出又は単離などに有用である。
【0081】
更に、本発明による抗体に連結されるグリカンの修飾(グリコシル化、脱フコシル化など)を調節することにより、抗体依存性の細胞傷害活性を増強させることが可能である。抗体のグリカンの修飾を調節するための技術として、国際公開第99/54342号パンフレット、国際公開第00/61739号パンフレット、国際公開第02/31140号パンフレット、国際公開第2007/133855号パンフレット、国際公開第2013/120066号パンフレットなどが知られている。しかしながら、この技術は、これらに限定されない。本発明による抗体では、グリカンの修飾が調節される抗体も含まれる。
【0082】
培養される哺乳動物細胞中で産生される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリジン残基が欠失していることが既知であり(Journal of Chromatography A,705:129-134(1995))、培養される哺乳動物細胞中で産生される抗体の重鎖のカルボキシル末端で2個のアミノ酸残基(グリシン及びリシン)が欠失しており、このカルボキシル末端に新たに位置するプロリン残基がアミド化されていることも既知である(Analytical Biochemistry,360:75-83(2007))。しかしながら、重鎖配列のそのような欠失及び修飾は、本抗体の抗原結合親和性及びエフェクター機能(補体活性化、抗体依存性細胞傷害性など)に影響を及ぼさない。従って、本発明による抗体では、そのような修飾に供された抗体、及びこの抗体の機能的断片も含まれ、1つ又は2つのアミノ酸が重鎖のカルボキシル末端で欠失している欠失バリアント、欠失バリアントのアミド化により得られるバリアント(例えば、カルボキシル末端のプロリン残基がアミド化されている重鎖)なども含まれる。本発明による抗体の重鎖のカルボキシル末端に欠失がある欠失バリアントの種類は、抗原結合親和性及びエフェクター機能が保存されている限り、上記のバリアントに限定されない。本発明による抗体を構成する2本の重鎖は、完全長の重鎖と、上記で説明されている欠失バリアントと、からなる群から選択される1種であってもよいし、又はこれらから選択される2種の組み合わせであってもよい。各欠失バリアントの量の比は、本発明による抗体を産生する培養哺乳動物細胞のタイプ及び培養条件の影響を受け得るが、本発明による抗体中の2本の重鎖の両方のカルボキシル末端で1個のアミノ酸残基が欠失している抗体が好ましくは例示され得る。
【0083】
本発明による抗体のアイソタイプとして、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)が例示され得る。好ましくは、IgG1又はIgG2が挙げられ得る。
【0084】
本発明において、「抗TROP2抗体」という用語は、TROP2(TACSTD2:腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー2;EGP-1)に特異的に結合する抗体を指し、好ましくは、TROP2への結合により、TROP2発現細胞において内部移行活性を有する。
【0085】
抗TROP2抗体の例としては、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/098099号パンフレット)が挙げられる。
【0086】
3. 抗体-薬物コンジュゲートの作製
本発明による抗体-薬物コンジュゲートの作製での使用のための薬物-リンカー中間体は、下記式:
【化11】
により表される。
【0087】
薬物-リンカー中間体は、化学名N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミドとして表され得、国際公開第2014/057687号パンフレット、同第2015/098099号パンフレット、同第2015/115091号パンフレット、同第2015/155998号パンフレット、同第2019/044947号パンフレットなどでの記載を参照して作製され得る。
【0088】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、上記の薬物-リンカー中間体及びチオール基(或いはスルフィドリル基と呼ばれる)を有する抗TROP2抗体を反応させることによって、作製され得る。
【0089】
スルフィドリル基を有する抗TROP2抗体は、当技術分野で周知の方法により得られ得る(Hermanson,G.T,Bioconjugate Techniques,pp.56-136,pp.456-493,Academic Press(1996))。例えば、抗体内の鎖間ジスルフィドごとにトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)などの還元剤0.3~3モル当量を使用し、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート剤を含有する緩衝液中で抗体と反応させることにより、抗体内に部分的に又は完全に還元される鎖間ジスルフィドがあるスルフィドリル基を有する抗体が得られ得る。
【0090】
更に、スルフィドリル基を有する抗体1つあたり薬物-リンカー中間体2~20モル当量を使用することによって、1抗体分子あたり2~8個の薬物分子が複合化される抗体-薬物コンジュゲートが作製され得る。
【0091】
作製された抗体-薬物コンジュゲートの1抗体分子あたり複合化される薬物分子の平均数は、例えば、280nm及び370nmの2つの波長での抗体-薬物コンジュゲート及び複合化前駆体に対するUV吸収の測定に基づいて計算する方法(UV法)、又は抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理することにより得られた断片に対するHPLC測定を通じた定量に基づいて計算する方法(HPLC法)により決定され得る。
【0092】
抗体と薬物-リンカー中間体との間の複合化及び抗体-薬物コンジュゲートの1抗体分子あたり複合化される薬物分子の平均数の計算は、例えば国際公開第2015/098099号パンフレット及び同第2017/002776号パンフレット中の記載を参照して行われ得る。
【0093】
本発明において、「抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート」という用語は、本発明による抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が抗TROP2抗体であるような抗体-薬物コンジュゲートを指す。
【0094】
抗TROP2抗体は、好ましくは、配列番号3により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基50~54からなるアミノ酸配列]からなるCDRH1、配列番号4により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基69~85からなるアミノ酸配列]からなるCDRH2及び配列番号5により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基118~129からなるアミノ酸配列]からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基44~54からなるアミノ酸配列]からなるCDRL1、配列番号7により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基70~76からなるアミノ酸配列]からなるCDRL2及び配列番号8により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基109~117からなるアミノ酸配列]からなるCDRL3を含む軽鎖と、を含む抗体であり、
より好ましくは、抗体は、配列番号9により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~140からなるアミノ酸配列]からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~129からなるアミノ酸配列]からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含み、
更により好ましくは、抗体は、配列番号12により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~470からなるアミノ酸配列]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含むか、又は抗体は、配列番号11により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~469からなるアミノ酸配列]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む。
【0095】
抗TROP2抗体薬物コンジュゲートにおける1抗体分子あたりの薬物-リンカーコンジュゲートの平均単位数は、好ましくは2~8、より好ましくは3~5、更に好ましくは3.5~4.5、更により好ましくは約4である。
【0096】
抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第2015/098099号パンフレット及び国際公開第2017/002776号パンフレットにおける記載を参照して作製され得る。
【0097】
好ましい実施形態では、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートはダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)である。
【0098】
4. ATR阻害剤
本開示では、「ATR阻害剤」という用語は、ATR(毛細血管拡張性運動失調症及びrad3関連キナーゼ)を阻害する薬剤を指す。本開示のATR阻害剤は、キナーゼATRを選択的に阻害し得るか、又はATRを非選択的に阻害して、ATR以外のキナーゼも阻害し得る。本開示におけるATR阻害剤は、それが記載される特性を有する薬剤である限り特に限定されず、その好ましい例としては、国際公開第2011/154737号パンフレットに開示されるものが挙げられ得る。
【0099】
本開示に従って使用され得るATR阻害剤の他の例は、ベルゾセルチブ(M6620;VX-970)、M4344(VX-803)、BAY-1895344、ETP-46464及びVE-821である。
【0100】
好ましくは、本開示におけるATR阻害剤は、ATRを選択的に阻害する。
【0101】
本開示で用いられるATR阻害剤の好ましい実施形態によれば、ATR阻害剤は、以下の式(I):
【化12】
(式中、
R
1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
R
2は、
【化13】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2A、R
2C、R
2E及びR
2Fは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2B及びR
2Dは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2Gは、-NHR
7及び-NHCOR
8から選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチルであり;
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素若しくはメチルであるか、又はR
4及びR
5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6員複素環であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素又はメチルであり;
R
8は、メチルである)
によって表される化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0102】
好ましい実施形態では、ATR阻害剤は、式(I)(式中、
R
1は、3-メチルモルホリン-4-イルであり;
R
2は、
【化14】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2A、R
2C、R
2E及びR
2Fは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2B及びR
2Dは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2Gは、-NH
2、-NHMe及び-NHCOMeから選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチルであり;
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素又はメチルであるか、又はR
4及びR
5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6員複素環であり;
R
6は、水素である)
によって表される化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0103】
ATR阻害剤のさらなる実施形態は、環A、n、R1、R2、R4、R5、R6、R7及びR8が下記で定義される、式(I)の化合物及び薬学的に許容可能なその塩である。このような特定の置換基は、本明細書で定義される定義、特許請求の範囲又は実施形態のあらゆるものとともに適宜使用され得る。
【0104】
n
一実施形態では、nは、0である。
別の実施形態では、nは、1である。
【0105】
R
1
一実施形態では、R
1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択される。
更なる実施形態では、R
1は、3-メチルモルホリン-4-イルである。
更なる実施形態では、R
1は、
【化15】
である。
更なる実施形態では、R
1は、
【化16】
である。
【0106】
R
2
一実施形態では、R
2は、
【化17】
である。
別の実施形態では、R
2は、
【化18】
である。
別の実施形態では、R
2は、
【化19】
である。
別の実施形態では、R
2は、
【化20】
である。
【0107】
R2A
一実施形態では、R2Aは、水素である。
【0108】
R2B
一実施形態では、R2Bは、水素である。
【0109】
R2C
一実施形態では、R2Cは、水素である。
【0110】
R2D
一実施形態では、R2Dは、水素である。
【0111】
R2E
一実施形態では、R2Eは、水素である。
【0112】
R2F
一実施形態では、R2Fは、水素である。
【0113】
R2G
一実施形態では、R2Gは、NHR7及び-NHCOR8から選択される。
別の実施形態では、R2Gは、-NHR7である。
別の実施形態では、R2Gは、-NHCOR8である。
別の実施形態では、R2Gは、-NH2、-NHMe及び-NHCOMeから選択される。
本開示の別の実施形態では、R2Gは、-NH2である。
別の実施形態では、R2Gは、-NHMeである。
別の実施形態では、R2Gは、-NHCOMeである。
【0114】
R4及びR5
一実施形態では、R4及びR5は、水素である。
別の実施形態では、R4及びR5は、メチルである。
別の実施形態では、R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成する。
【0115】
環A
一実施形態では、環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル、シクロペンチル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル又はテトラヒドロピラニル環である。
別の実施形態では、環Aは、ピペリジニル環である。
別の実施形態では、環Aは、テトラヒドロピラニル環である。
別の実施形態では、環Aは、シクロプロピル環である。
【0116】
R6
一実施形態では、R6は、水素である。
【0117】
R7
一実施形態では、R7は、水素又はメチルである。
別の実施形態では、R7は、メチルである。
別の実施形態では、R7は、水素である。
【0118】
R8
一実施形態では、R12は、メチルである。
【0119】
式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の一実施形態では、
R1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
nは、0又は1であり;
R2Aは、水素であり;
R2Bは、水素であり;
R2Cは、水素であり;
R2Dは、水素であり;
R2Eは、水素であり;
R2Fは、水素であり;
R2Gは、-NHR7及び-NHCOR8から選択され;
R2Hは、フルオロであり;
R3は、メチルであり;
R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環であり;
R6は、水素であり;
R7は、水素又はメチルであり;
R8は、メチルである。
【0120】
別の実施形態では、
R1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
nは、0又は1であり;
R2Aは、水素であり;
R2Bは、水素であり;
R2Cは、水素であり;
R2Dは、水素であり;
R2Eは、水素であり;
R2Fは、水素であり;
R2Gは、-NH2、-NHMe及び-NHCOMeから選択され;
R2Hは、フルオロであり;
R3は、メチルであり;
R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環であり;
R6は、水素である。
【0121】
別の実施形態では、
R1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
nは、0又は1であり;
R2Aは、水素であり;
R2Bは、水素であり;
R2Cは、水素であり;
R2Dは、水素であり;
R2Eは、水素であり;
R2Fは、水素であり;
R2Gは、-NHR7及び-NHCOR8から選択され;
R2Hは、フルオロであり;
R3は、メチルであり;
R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル環であり;
R6は、水素であり;
R7は、水素又はメチルであり;
R8は、メチルである。
【0122】
別の実施形態では、
R1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
nは、0又は1であり;
R2Aは、水素であり;
R2Bは、水素であり;
R2Cは、水素であり;
R2Dは、水素であり;
R2Eは、水素であり;
R2Fは、水素であり;
R2Gは、-NH2、-NHMe及び-NHCOMeから選択され;
R2Hは、フルオロであり;
R3は、メチルであり;
R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、オキセタニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル環であり;
R6は、水素である。
【0123】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物:
【化21】
又は薬学的に許容可能なその塩であり、式中、
環Aは、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環であり;
R
2は、
【化22】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2Aは、水素であり;
R
2Bは、水素であり;
R
2Cは、水素であり;
R
2Dは、水素であり;
R
2Eは、水素であり;
R
2Fは、水素であり;
R
2Gは、-NHR
7及び-NHCOR
8から選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチル基であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素又はメチルであり;
R
8は、メチルである。
【0124】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩であり、式中、
環Aは、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環であり;
R
2は、
【化23】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2Aは、水素であり;
R
2Bは、水素であり;
R
2Cは、水素であり;
R
2Dは、水素であり;
R
2Eは、水素であり;
R
2Fは、水素であり;
R
2Gは、-NH
2、-NHMe及び-NHCOMeから選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチル基であり;
R
6は、水素である。
【0125】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩であり、式中、
環Aは、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環であり、
R
2は、
【化24】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2Aは、水素であり;
R
2Bは、水素であり;
R
2Cは、水素であり;
R
2Dは、水素であり;
R
2Eは、水素であり;
R
2Fは、水素であり;
R
2Gは、-NHR
7であり;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチル基であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素である。
【0126】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩であり、式中、
環Aは、シクロプロピル環であり、
R
2は、
【化25】
であり;
nは、0であり;
R
2Aは、水素であり;
R
2Bは、水素であり;
R
2Cは、水素であり;
R
2Dは、水素であり;
R
2Eは、水素であり;
R
2Fは、水素であり;
R
2Gは、-NHR
7であり;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチル基であり;
R
6は、水素であり;
R
7はメチルである。
【0127】
他の実施形態では、本開示で用いられるATR阻害剤は、
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[((R)-S-メチルスルホンイミドイル)メチル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-インドール;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-インドール;
1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-(-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン;
N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[4-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[4-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[4-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-インドール;
4-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
4-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
6-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
5-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
5-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
6-フルオロ-N-メチル-1-{4-[1-メチル-1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)エチル]-6-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
6-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
5-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
5-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
6-フルオロ-N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン
から選択される化合物
及び薬学的に許容可能なその塩である。
【0128】
他の実施形態では、本開示で用いられるATR阻害剤は、
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[(R)-(S-メチルスルホンイミドイル)メチル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-(R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン;
N-メチル-1-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-(S)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ベンゾイミダゾール-2-アミン
から選択される化合物
及び薬学的に許容可能なその塩である。
【0129】
好ましい実施形態では、本開示で用いられるATR阻害剤は、以下の式:
【化26】
によって表される、化合物AZD6738、4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0130】
AZD6738を含む式(I)の化合物などのATR阻害剤は、国際公開第2011/154737号パンフレットで開示されるものなど、当技術分野で公知の方法により調製され得る。
【0131】
5. 抗体-薬物コンジュゲートとATR阻害剤との組み合わせ
本開示の第1の組み合わせ実施形態では、ATR阻害剤と組み合わせられた抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式:
【化27】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化される抗体-薬物コンジュゲートである。
【0132】
別の組み合わせ実施形態では、第1の組み合わせ実施形態に関して上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、以下の式(I):
【化28】
(式中、
R
1は、モルホリン-4-イル及び3-メチルモルホリン-4-イルから選択され;
R
2は、
【化29】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2A、R
2C、R
2E及びR
2Fは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2B及びR
2Dは、それぞれ独立して、水素又はメチルであり;
R
2Gは、-NHR
7及び-NHCOR
8から選択され;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチルであり;
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素又はメチルであるか、又はR
4及びR
5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し;
環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC
3~6シクロアルキル又は飽和4~6員複素環であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素又はメチルであり;
R
8は、メチルである)
によって表される化合物
又は薬学的に許容可能なその塩であるATR阻害剤と組み合わせられる。
【0133】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定義される通りの式(I)によって表される化合物であるATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)中、R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し、環Aは、O及びNから選択される1個のヘテロ原子を含有するC3~6シクロアルキル又は飽和4~6複素環である。
【0134】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定義される通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)中、R4及びR5は、それらが結合される原子と一緒に環Aを形成し、環Aは、シクロプロピル、テトラヒドロピラニル又はピペリジニル環である。
【0135】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)中、R2Aは水素であり;R2Bは、水素であり;R2Cは水素であり;R2Dは、水素であり;R2Eは、水素であり;R2Fは、水素である。
【0136】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)中、R1は、3-メチルモルホリン-4-イルである。
【0137】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)の化合物は、式(Ia):
【化30】
の化合物
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0138】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物であり、式(Ia)において、
環Aは、シクロプロピル環であり;
R
2は、
【化31】
であり;
nは、0又は1であり;
R
2Aは、水素であり;
R
2Bは、水素であり;
R
2Cは、水素であり;
R
2Dは、水素であり;
R
2Eは、水素であり;
R
2Fは、水素であり;
R
2Gは、-NHR
7であり;
R
2Hは、フルオロであり;
R
3は、メチル基であり;
R
6は、水素であり;
R
7は、水素又はメチルである。
【0139】
別の組み合わせ実施形態では、上記で定められる通りの抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、上記で定められる通りのATR阻害剤と組み合わせられ、ATR阻害剤は、以下の式:
【化32】
によって表されるAZD6738
又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0140】
上記の組み合わせ実施形態のそれぞれの実施形態では、抗TROP2抗体は、配列番号3により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基50~54]からなるCDRH1、配列番号4により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基69~85]からなるCDRH2及び配列番号5により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基118~129]からなるCDRH3を含む重鎖と、配列番号6により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基44~54]からなるCDRL1、配列番号7により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基70~76]からなるCDRL2及び配列番号8により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基109~117]からなるCDRL3を含む軽鎖と、を含む。上記の組み合わせ実施形態のそれぞれの別の実施形態では、抗TROP2抗体は、配列番号9により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~140]からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号10により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~129]からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖と、を含む。上記の組み合わせ実施形態のそれぞれの別の実施形態では、抗TROP2抗体は、配列番号12により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~470]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む。上記の組み合わせ実施形態のそれぞれの別の実施形態では、抗TROP2抗体は、配列番号11により表されるアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~469]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む。
【0141】
本開示の特に好ましい組み合わせ実施形態では、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、ダトポタマブ デルクステカン(DS-1062)であり、ATR阻害剤は、以下の式:
【化33】
によって表される化合物であり、これは、AZD6738としても特定される。
【0142】
6. 治療的な組み合わせ使用及び方法
本開示による抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が組み合わせで投与される医薬生成物並びに治療的使用及び方法を以下で説明する。
【0143】
本開示の医薬生成物及び治療的使用及び方法は、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤が、異なる処方物中で有効成分として別個に含有され、同時に又は異なる時間に投与されることを特徴とし得る。
【0144】
本開示の医薬生成物及び治療的方法では、本開示で用いられる単一のATR阻害剤が、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて投与され得、2種以上の異なるATR阻害剤が抗体-薬物コンジュゲートと組み合わせて投与され得る。
【0145】
本開示の医薬生成物及び治療方法は、癌を処置するために使用され得、好ましくは、乳癌(トリプルネガティブ乳癌及びホルモン受容体(HR)-陽性、HER2-陰性乳癌を含む)、肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、結直腸癌(結腸及び直腸癌とも呼ばれ、結腸癌及び直腸癌を含む)、胃癌(胃腺癌とも呼ばれる)、食道癌、頭頸部癌(唾液腺癌及び咽頭癌を含む)、食道胃接合部腺癌、胆道癌(胆管癌を含む)、パジェット病、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌肉腫、尿路上皮癌、前立腺癌、膀胱癌、胃腸間質腫瘍、子宮頸癌、扁平上皮細胞癌腫、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、子宮体部癌腫、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多形性膠芽腫、骨肉腫、肉腫及び黒色腫からなる群から選択される少なくとも1種の癌を処置するために使用され得、より好ましくは、乳癌(好ましくはトリプルネガティブ乳癌及びホルモン受容体(HR)-陽性、HER2-陰性乳癌)、肺癌(好ましくは非小細胞肺癌、アクショナブルなゲノム変化がある非小細胞肺癌及びアクショナブルなゲノム変化がない非小細胞肺癌を含み、アクショナブルなゲノム変化は、EGFR、ALK、ROS1、NTRK、BRAF、RET及びMETエクソン14スキッピングを含む)、結直腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び腎臓癌からなる群から選択される少なくとも1種の癌を処置するために使用され得る。更に、本開示の医薬生成物及び治療方法は、好ましくは、相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠く癌又は相同組み換え(HR)依存的なDNA DSB修復活性を欠いていない癌を処置するために使用され得る。更に、本開示の医薬生成物及び治療方法は、好ましくは、PARP阻害剤での以前の処置(特にオラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ及びベリパリブから選択されるPARP阻害剤)に対して耐性を示すか又は不応性を示す癌を処置するために使用され得る。TROP2腫瘍マーカーの有無は、例えば、癌患者から腫瘍組織を採取して、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)検体を調製し、この検体を、例えば免疫組織化学(IHC)法、フローサイトメーター若しくはウエスタンブロット法による遺伝子産物(タンパク質)に関する試験、又は例えばインシトゥハイブリダイゼーション(ISH)法、定量PCR法(q-PCR)若しくはマイクロアレイ解析を用いる遺伝子転写に関する試験に供することにより、又は癌患者から無細胞循環腫瘍DNA(ctDNA)を回収し、ctDNAを、次世代シーケンシング(NGS)などの方法による試験に供することにより、判定され得る。
【0146】
本開示の医薬生成物及び治療方法は、好ましくは哺乳動物に対して使用され得、より好ましくはヒトに対して使用され得る。
【0147】
本開示の医薬生成物及び治療方法の抗腫瘍効果は、例えば、試験動物に癌細胞が移植されるモデルを作製し、本開示の医薬生成物及び治療方法の適用による、腫瘍体積の減少、延命効果を測定することによって、確認され得る。更に、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤のそれぞれの単回投与の抗腫瘍効果との比較によって、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤の組み合わせられた効果が確認され得る。
【0148】
更に、本開示の医薬生成物及び治療方法の抗腫瘍効果は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumor (RECIST)評価法、WHOの評価方法、Macdonaldの評価方法、体重測定及び他の方法を用いて臨床試験で確認され得;完全奏効(CR)、部分的奏効(PR);進行疾患(PD)、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、無進行生存率(PFS)及び全生存率(OS)などの指標により判定され得る。
【0149】
前述の方法は、癌治療のための既存の医薬生成物及び処置方法と比較した、本開示の医薬生成物及び治療方法の抗腫瘍効果に関する優位性の確認を提供し得る。
【0150】
本開示の医薬生成物及び治療方法は、癌細胞の成長を遅延させ、その増殖を抑制し得、更には癌細胞を死滅させ得る。これらの効果は、癌患者が、癌によって引き起こされる症状から解放されることを可能にし得るか、又は癌患者のQOLの改善を達成し得、癌患者の生命を持続させることによる治療効果を果たし得る。医薬生成物及び治療方法が癌細胞の死滅を達成しない場合でも、これらは、癌細胞の増殖を阻害又は制御することにより、より長期間の生存を達成すると同時に、癌患者のQOLをより高め得る。
【0151】
本発明の医薬生成物は、全身療法として患者に適用することにより、更に、癌組織に局所適用することにより、治療効果を発揮することが期待され得る。
【0152】
本開示の医薬生成物及び治療方法は、別の態様において、電離放射線又は他の化学療法剤を用いた癌治療の補助剤としての使用を提供する。例えば、癌の処置において、この処置は、処置を必要とする対象に、治療有効量の医薬生成物を、電離放射線又は他の化学療法剤と同時に又は逐次的に投与することを含み得る。
【0153】
本開示の医薬生成物及び治療方法は、外科手術と組み合わせた補助化学療法として使用され得る。本開示の医薬生成物は、外科手術前に腫瘍サイズを縮小させる目的で投与され得る(術前補助化学療法又はネオアジュバント療法と呼ばれる)か、又は外科手術後に腫瘍の再発を防止する目的で投与され得る(術後補助化学療法又はアジュバント療法と呼ばれる)。
【0154】
更なる態様では、本開示の医薬生成物は、相同組み換え(HR)依存性DNA DSB修復活性が欠損している癌の処置のために使用され得る。HR依存性DNA DSB修復経路は、相同機序を介してDNAにおける二本鎖切断(DSB)を修復し、連続したDNAヘリックスを再形成する(K.K.Khanna and S.P.Jackson,Nat.Genet.27(3):247-254(2001))。HR依存性DNA DSB修復経路の成分としては、ATM(NM_000051)、RAD51(NM_002875)、RAD51L1(NM_002877)、RAD51C(NM_002876)、RAD51L3(NM_002878)、DMC1(NM_007068)、XRCC2(NM_005431)、XRCC3(NM_005432)、RAD52(NM_002879)、RAD54L(NM_003579)、RAD54B(NM_012415)、BRCA1(NM_007295)、BRCA2(NM_000059)、RAD50(NM_005732)、MRE11A(NM_005590)及びNBS1(NM_002485)が挙げられるが限定されない。HR依存性DNA DSB修復経路に関与する他のタンパク質としては、EMSYなどの調節因子が挙げられる(Hughes-Davies,et al.,Cell,115,pp523-535)。HR成分はまた、Wood,et al.,Science,291,1284-1289(2001)にも記載されている。HR依存性DNA DSB修復が欠損している癌は、正常細胞と比較して、その修復経路を通じてDNA DSBを修復する能力が低下又は消失している1つ又は複数の癌細胞を含み得るか又はそれらからなり得、即ち、HR依存性DNA DSB修復経路の活性は、1つ又は複数の癌細胞において低下又は消失させられ得る。HR依存性DNA DSB修復経路の1つ又は複数の成分の活性は、HR依存性DNA DSB修復が欠損している癌を有する個体の1つ又は複数の癌細胞において消失させられ得る。HR依存性DNA DSB修復経路の成分は当技術分野において十分に特徴付けられており(例えば、Wood,et al.,Science,291,1284-1289(2001)を参照)、上記に列挙された成分を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、癌細胞はBRCA1及び/又はBRCA2欠損表現型を有し得、即ち、癌細胞において、BRCA1及び/又はBRCA2活性が低下又は消失している。この表現型を有する癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2を欠き得、即ち、BRCA1及び/又はBRCA2の発現及び/又は活性は、例えばコード核酸における突然変異又は多型によって、又は調節因子をコードする遺伝子、例えばBRCA2調節因子をコードするEMSY遺伝子、における増幅、突然変異又は多型によって、癌細胞において低下又は消失し得る(Hughes-Davies,et al.,Cell,115,523-535)。BRCA1及びBRCA2は、その野生型対立遺伝子が、ヘテロ接合保因者の腫瘍において失われていることが多い既知の腫瘍抑制因子である(Jasin M.,Oncogene,21(58),8981-93(2002);Tutt,et al.,Trends Mol Med.,8(12),571-6,(2002))。BRCA1及び/又はBRCA2の突然変異と乳癌との関連は、当技術分野において十分に特徴が調べられている(Radice,P.J.,Exp Clin Cancer Res.,21(3 Suppl),9-12(2002))。BRCA2結合因子をコードするEMSY遺伝子の増幅も、乳癌及び卵巣癌と関連することが知られている。BRCA1及び/又はBRCA2における突然変異の保因者はまた、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、血液癌、消化管癌及び肺癌を含むある特定の癌のリスクも高い。いくつかの実施形態では、個体は、BRCA1及び/又はBRCA2、又はその調節因子において、1つ又は複数の多様性(例えば突然変異及び多型)についてヘテロ接合性である。BRCA1及びBRCA2における多様性の検出は当技術分野で周知であり、例えば、欧州特許第699754号明細書、同第705903号明細書、Neuhausen,S.L.and Ostrander,E.A.,Genet.Test,1,75-83(1992);Chappnis,P.O.and Foulkes,W.O.,Cancer Treat Res,107,29-59(2002);Janatova M.,et al.,Neoplasma,50(4),246-505(2003);Jancarkova,N.,Ceska Gynekol.,68{1),11-6(2003))に記載されている。BRCA2結合因子EMSYの増幅の決定は、Hughes-Davies,et al.,Cell,115,523-535)に記載されている。
【0156】
癌に関連する突然変異及び多型は、バリアント核酸配列の存在を検出することによって核酸レベルで、又はバリアント(即ち、突然変異体又は対立遺伝子バリアント)ポリペプチドの存在を検出することによりタンパク質レベルで、検出され得る。
【0157】
本開示の医薬生成物は、少なくとも1つの薬学的に適切な成分を含有する医薬組成物として投与され得る。薬学的に適切な成分は、本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びATR阻害剤の投与量、投与濃度などに応じて、当技術分野で一般的に使用される処方添加剤などから適切に選択及び適用され得る。例えば、本開示で使用される抗体薬物コンジュゲートは、ヒスチジン緩衝液などの緩衝液、スクロース又はトレハロースなどの賦形剤及びポリソルベート80又は20などの界面活性剤を含有する医薬組成物として投与され得る。本開示で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含有する医薬生成物は、好ましくは注射剤として使用され得、より好ましくは水性注射剤又は凍結乾燥注射剤として使用され得、更により好ましくは凍結乾燥注射剤として使用され得る。本開示で使用される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートを含有する医薬生成物が水性注射剤である場合、これは、好ましくは好適な希釈剤で希釈され、続いて静脈内注入剤として与えられ得る。希釈剤について、デキストロース溶液、生理食塩水などが例示され得、デキストロース溶液が好ましくは例示され得、5%デキストロース溶液がより好ましくは例示され得る。本開示の医薬生成物が凍結乾燥注射剤である場合、これは好ましくは注射用の水中で溶解され得、続いて必要とされる量が適切な希釈剤で希釈され得、次いで、静脈内点滴として与えられ得る。希釈剤について、デキストロース溶液、生理食塩水などが挙げられ得、デキストロース溶液が好ましくは挙げられ得、5%デキストロース溶液がより好ましくは挙げられ得る。
【0158】
本開示の医薬生成物を投与するために使用され得る投与経路の例は、静脈内、皮内、皮下、筋肉内及び腹腔内経路を含み、好ましくは静脈内経路を含む。
【0159】
本開示で使用される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、1~180日の間隔で1回ヒトに投与され得、好ましくは週に1回、2週間に1回、3週間に1回又は4週間に1回投与され得、更により好ましくは3週間に1回投与され得る。また、本発明で使用される抗体薬物コンジュゲートは、約0.001~100mg/kgの用量で投与され得、好ましくは0.8~12.4mg/kgの用量で、より好ましくは6mg/kgの用量で投与され得る。例えば、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、0.27mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、6.0mg/kg又は8.0mg/kgの用量で3週間に1回投与され得、好ましくは6.0mg/kgの用量で3週間に1回投与され得る。
【0160】
例えば、ヒトへの経口投与を意図した式(I)のATR阻害剤化合物の処方物は、一般に、例えば、1mg~1000mgの有効成分を含有し、それは全組成物の約5~約98重量パーセントで変動し得る適切且つ好都合な量の賦形剤とともに配合される。投与経路及び投与レジメンに関する更なる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistry(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board),Pergamon Press 1990のVolume 5におけるChapter 25.3を参照し得る。
【0161】
特定の病状の治療的処置に必要な用量のサイズは、処置される対象、投与経路及び処置される疾病の重症度に応じて必然的に変化する。0.1~50mg/kgの範囲のATR阻害剤の1日用量が使用され得る。例えば、ATR阻害剤は、好ましくは3週サイクルの第1週、第2週及び/又は第3週にわたり毎日投与され、例えば3週サイクルの第3日~17日に投与される。例えば、本開示で使用されるATR阻害剤が化合物AZD6738又は薬学的に許容可能なその塩である場合、ATR阻害剤は、好ましくは、1日2回、1投与あたり20mg、40mg、60mg、80mg、120mg、160mg、200mg又は240mgの用量で経口投与され得る。
【実施例】
【0162】
以下で示される実施例を考慮しながら本開示を具体的に説明する。しかしながら、本開示はこれらに限定されない。更に、これは、決して限定的に解釈されるべきではない。
【0163】
実施例1:抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの生成
国際公開第2015/098099号パンフレット及び同第2017/002776号パンフレットに記載の作製方法に従い、且つ抗TROP2抗体(配列番号12により表されるアミノ酸配列[配列番号1のアミノ酸残基20~470]からなる重鎖と、配列番号13により表されるアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]からなる軽鎖と、を含む抗体)を用いて、以下の式:
【化34】
(式中、Aは、抗体に対する接続位置を表す)によって表される薬物-リンカーがチオエーテル結合を介して抗TROP2抗体に複合化される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートが作製された(DS-1062:ダトポタマブ デルクステカン)。この抗体-薬物コンジュゲートのDARは、約4である。
【0164】
実施例2:ATR阻害剤の作製
国際公開第2011/154737号パンフレットに記載の作製方法に従い、式(I)のATR阻害剤が調製される。具体的には、4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン:
【化35】
は、国際公開第2011/154737号パンフレットの実施例2.02に従って調製され得る。
【0165】
実施例3:抗腫瘍試験
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とAZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
ハイスループット組み合わせスクリーニングを行い、6種類の肺癌及び5種類の乳癌細胞株(表1)をDS-1062及びAZD6738(ATR阻害剤)の組み合わせで処理した。
【0166】
【0167】
スクリーンの表示値は、6x6用量応答マトリクスとして実施された7日間のCellTiter-Glo細胞生存度アッセイであった(DS-1062に対しては5ポイントの対数連続希釈、及びAZD6738に対しては半対数連続希釈)。最大濃度は、AZD6738については3μMであり、DS-1062については10μg/mlであった。更に、エキサテカン(DNAトポイソメラーゼI阻害剤)もまた、AZD6738と並行してスクリーニングし、効果的な組み合わせの作用機序のデコンボリューションを支援した。組み合わせ活性は、組み合わせEmax及びLoewe相乗スコアの組み合わせに基づいて評価した。
【0168】
結果:
DS-1062+AZD6738の組み合わせに対する結果は、
図12A及び12B及び表2においてTROP2発現肺癌細胞株(NCIH1650、NCI-H322、NCI-H3255、HCC2935)に対して示され、
図13A及び13B及び表3においてTROP2発現乳癌細胞株(HCC70、HCC1806、MDA-MB-468、HCC38)に対して示される。
【0169】
図12A及び13Aは、測定された細胞生存度シグナルのマトリクスを示す。X軸は薬物A(DS-1062)を表し、Y軸は薬物B(AZD6738)を表す。ボックス内の値は、第7日における、DMSO対照と比較した、薬物A+Bで処理された細胞の比を表す。全ての値は、第0日における細胞生存値に対して正規化される。0~100の値は、増殖阻害のパーセンテージを表し、100を超える値は細胞死を表す。
【0170】
図12B及び13Bは、Loewe過剰マトリクスを示す。ボックス内の値は、Loewe相加モデルにより算出された過剰値を表す。
【0171】
表2及び3は、HSA及びLoewe相加スコア及び組み合わせEmaxを示す。
【0172】
【0173】
【0174】
注:
Loewe用量相加は、2つの化合物が同じ機序によって同じ分子標的に対して作用する場合の予想される応答を予測する。これは、化合物間のゼロ相互作用の推定に基づいて相加性を計算し、用量反応相関の性質に依存しない。
【0175】
HSA(最大単剤)[Berenbaum 1989]は、その対応する濃度における2つの単一化合物の効果のより高い方を定量化する。組み合わせた効果を、その組み合わせで用いられる濃度における各単剤の効果と比較する。最大単剤効果を超える過剰は、協同作用を示す。HSAは、化合物が同じ標的に影響することを必要としない。
【0176】
過剰マトリクス:濃度マトリクス中の各ウェルに関して、測定値又は当てはめ値を各濃度ペアに関して予測される非相乗値と比較する。この予測値は、選択されたモデルにより決定される。予測値と実測値との相違は、相乗作用又は拮抗作用を示し得、過剰マトリクスで示されている。過剰マトリクス値は、過剰量及び相乗効果スコアの組み合わせスコアによりまとめられる。
【0177】
組み合わせEmax:試験した組み合わせマトリクスで観察される最大抗増殖効果。全ての値は、第0日での細胞生存率の値に対して正規化される。0~100の値は、増殖阻害%を表し、100を超える値は、細胞死を表す。
【0178】
図14は、AZD6738と組み合わせられたDS-1062で処理された様々な細胞株における組み合わせEmax及びLoewe相乗スコアを示す。
【0179】
図12A及び12B並びに表2から分かるように、AZD6738はDS-1062と相乗的に相互作用し、また、TROP2発現肺癌細胞株中で細胞死を増加させた。
図13A及び13B並びに表3から分かるように、AZD6738はDS-1062と相乗的に相互作用し、また、Emax(3μMのAZD6738及び10μg/mlのDS-1062)で、TROP2乳癌細胞株で細胞死を増加させた。
図14から分かるように、8種類の細胞株において、AZD6738と組み合わせられたDS-1062による処理の結果、高い組み合わせEmax(>100)及び高いLoewe相乗効果スコア(>5)が得られた。
【0180】
実施例3における結果は、インビトロでTROP2を発現する肺及び乳癌細胞株において、AZD6738を用いたATR阻害が、DS-1062の抗腫瘍効力を増強させることを示す。実施例3において、DS-1062と組み合わせられたAZD6738は、4種類のTROP2発現肺癌細胞株(
図12A、12B、14及び表2)及び4種類のTROP2発現乳癌細胞株(
図13A、13B及び14及び表3)において組み合わせの有益性を示した。
【0181】
実施例4:抗腫瘍試験-インビボ-NCI-N87異種移植モデル
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
5~8週齢の雌ヌードマウス(Charles River)を使用し、7日間の順化後に、この試験に組み入れた。5x106個のNCI-N87腫瘍細胞(胃癌細胞株)(マトリゲル中1:1)を雌ヌードマウスの脇腹に皮下移植した。腫瘍が約250mm3に達したら、表4に示されるように、処置群に対して同等サイズの腫瘍をランダムに割り当てた。
【0182】
【0183】
各動物に対する化合物の用量を投薬日の個々の体重に基づいて計算した。DS-1062及びAZD6738は同じ日に投薬し、DS-1062はAZD6738のPO投与からおよそ5時間後に投与した。DS-1062を第1日に10mg/kgの単回用量として投与し、AZD6738を25mg/kgのQDで14日間投与した。投与期間は14日間であった。
【0184】
10mg/kgでのDS-1062の処方
DS-1062保存液(20.1mg/ml)を25mMのヒスチジン緩衝液、9%スクロース(pH5.5)中で希釈することによって、DS-1062に対する投薬溶液を投薬日に調製し、それぞれ3mg/kg及び10mg/kgの投薬溶液に対して、0.6mg/ml及び2mg/mlとした。ピペットを使用して各投薬溶液を十分に混合した後、5ml/kgの投薬体積でIV注射により投与した。
【0185】
25mg/kgでのAZD6738の処方
25mg/kgの投薬溶液を処方するために、濃度2.5mg/mlのAZD6738を調製し、PO投薬用に10ml/kgの投薬体積を得た。DMSO(合計ビヒクル体積の10%)を化合物に添加し、ペレット乳棒で十分に混合した。化合物を完全に溶解させるために、約5分間の超音波処理が必要であった。その後、プロピレングリコール(合計ビヒクル体積の40%)を添加し、磁気撹拌機を用いて十分に混合した。体積10mlの滅菌水をガラス製ウィートン(wheaton)バイアルに添加して、バイアルから残留する化合物を全てすすぎ落とし、続いてガラス瓶に移した。滅菌水の残量を全て(最終ビヒクル体積の50%)ガラス瓶に添加し、磁気撹拌機を使用して十分に混合した。投薬溶液を、最大で7日間、継続的に混合しながら、遮光し、室温に維持した。25mg/kgのAZD6738に対する最終投薬マトリクスは、僅かに黄色の色相を帯びた透明な溶液であった。
【0186】
測定
腫瘍増殖阻害(TGI)を以下の通りに算出した:
TGI%={1-(MTV処置/MTV対照)}*100
(式中、MTV=平均腫瘍体積)。
【0187】
最終測定日に、ビヒクル対照と比較して、(log(相対的腫瘍体積)=log(最終体積/開始時体積))の片側t検定を用いて統計学的有意性を評価した。
【0188】
結果
DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置についての腫瘍体積を
図15で示す。データは、処置群に対する経時的な腫瘍体積の変化を表す。
図15の点線は、投薬期間の終了を表す。全用量及びスケジュールの情報に関しては、上記の表4を参照されたい。示される値は、幾何平均±SEMであり;全処置群に対してn=8である。試験中にヒトエンドポイント(例えば大きな腫瘍量)に到達したマウスを群から排除し、残りのマウスをTGIの計算のために使用した。
【0189】
NCI-N87異種移植における、DS-1062又はAZD6738単独による処置又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置後のTGI応答(第33日のTGI%)を表5で示す。
【0190】
【0191】
10mg/kgのDS-1062での単剤療法は、処置後第33日で84.1%のTGI値を示した。AZD6738単剤療法では、処置後第33日にTGIが30.1%に達した。10mg/kgでのDS-1062とのAZD6738の組み合わせ処置は、処置後第33日にTGIが86.4%となり、個々の単剤療法よりも良好な応答を示した。
【0192】
処置群は一般に忍容性が良好であり、全処置群の平均体重は試験中、安定なままであった。
【0193】
実施例5:抗腫瘍試験-インビボ-TNBC患者由来異種移植モデル
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
5~8週齢の雌ヌードマウス(Charles River)を使用し、7日間の順化後に、この試験に組み入れた。ヒト患者由来の異種移植(PDX)モデル、CTG-3303は、PARP阻害剤タラゾパリブでの処置時に再発したトリプルネガティブ乳癌(TNBC)患者の新鮮切除腫瘍の断片から確立された。適切な同意手順に従いこのPDXを得た。このTNBC PDXモデルをヌードマウスにおいて動物から動物へと断片としてインビボで皮下で継代した。腫瘍が約250mm3に達したら、表6に示されるように、処置群に対して同等サイズの腫瘍をランダムに割り当てた。
【0194】
【0195】
各動物に対する化合物の用量を投薬日に個々の体重に基づいて計算した。DS-1062及びAZD6738を同じ日に投薬し、DS-1062は、AZD6738のPO投薬から約5時間後に投与した。DS-1062を第1日に10mg/kgの単回用量として投与し、AZD6738を25mg/kgのQDで14日間投与した。投薬期間は14日間であった。
【0196】
10mg/kgでのDS-1062の処方
DS-1062保存液(20.1mg/ml)を25mMのヒスチジン緩衝液、9%スクロース(pH5.5)中で希釈することによって、DS-1062に対する投薬溶液を投薬日に調製し、それぞれ3mg/kg及び10mg/kgの投薬溶液に対して0.6mg/ml及び2mg/mlとした。ピペットを使用して各投薬溶液を十分に混合した後、5ml/kgの投薬体積でIV注射を介して投与した。
【0197】
25mg/kgでのAZD6738の処方
25mg/kgの投薬溶液を処方するために、濃度2.5mg/mlのAZD6738を調製し、その結果、PO投薬用に10ml/kgの投薬体積を得た。DMSO(合計ビヒクル体積の10%)を化合物に添加し、ペレット乳棒で十分に混合した。化合物を完全に溶解させるために、約5分間の超音波処理が必要であった。その後、プロピレングリコール(合計ビヒクル体積の40%)を添加し、磁気撹拌機を使用して十分に混合した。体積10mlの滅菌水をガラス製ウィートン(wheaton)バイアルに添加して、バイアルから残留する化合物を全てすすぎ落とし、続いてガラス瓶に移した。滅菌水の残量を全て(最終ビヒクル体積の50%)ガラス瓶に添加し、磁気撹拌機を使用して十分に混合した。投薬溶液を、最大で7日間、継続的に混合しながら、遮光して室温で維持した。25mg/kgのAZD6738の最終投薬マトリクスは、僅かに黄色の色相を帯びた透明な溶液であった。
【0198】
結果
DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置についての腫瘍体積を
図16Aで示す。データは、処置群に対する経時的な腫瘍体積の変化を表す。
図16A中の点線は、投与期間の終了を表す。全用量及びスケジュールの情報に関しては、上記表6を参照されたい。示される値は、幾何平均±SEMであり;全処置群に対してn=8である。試験中にヒトエンドポイント(例えば大きな腫瘍量)に到達したマウスを群から排除し、TGIの計算に対して残りのマウスを使用した。
【0199】
CTG-3303異種移植片における、DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置後のTGI応答(第46日のTGI%)を表7で示す。
【0200】
【0201】
10mg/kgのDS-1062での単剤療法は、処置後第46日で88.2%のTGI値を示した。AZD6738単剤療法では、処置後第46日にTGIが2.3%に達した。10mg/kgにおけるDS-1062とAZD6738との組み合わせ処置の結果、処置後第46日にTGIが89.9%となり、個々の単剤療法よりも良好な応答を示した。
【0202】
処置群は一般に忍容性が良好であり、全処置群の平均体重は試験中、安定なままであった。
【0203】
更に、処置後第93日に完全奏効(腫瘍体積=0mm
3として定義)に達した各処置群のマウスのパーセンテージを計算し、
図16Bで示した。10mg/kgのDS-1062での単剤療法により処置後第93日で完全奏効を達成したのは、8匹のマウス中0匹(0%)であった。AZD6738単剤療法により処置後第93日で完全奏効を達成したのは、8匹のマウス中0匹(0%)であった。10mg/kgでのDS-1062とAZD6738の組み合わせ処置により、8匹のマウス中2匹(25%)が処置後第93日で完全奏効を達成し、個々の単剤療法よりも完全奏効率が高くなった。
【0204】
実施例6:インビトロでの造血幹細胞及び始原細胞における抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738との組み合わせ投薬
方法:
凍結保存ヒト骨髄由来CD34+造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC;Lonza)を解凍し、5%のCO2を含む37℃の加湿インキュベーター中で、維持培地(25ng/mlのSCF、50ng/mlのTPO及び50ng/mlのFlt3-Lヒト組み換えタンパク質(全てPeprotech)を含有するStemSpan SFEM II(Stem Cell Technologies))中で、一晩回復させた。翌日、細胞10,000個/mlの濃度で、赤血球細胞分化を支持可能な培地中にて薬物の存在下で細胞を再懸濁した(Preferred Cell Systems,SEC-BFU1-40H)。6x6マトリクスパターンで、ATR阻害剤AZD6738(1、0.33、0.167、0.033、0.017、0μM)と組み合わせて200、70、20、8.3、3.3又は0μg/ml DS-1062(それぞれ1.333、0.467、0.133、0.056、0.022及び0μMと同等)を添加した壁面が黒色の透明底384ウェル組織培養プレート(Perkin Elmer)に細胞(30μl)を播種した。5%CO2の37℃加湿インキュベーター中で細胞を5日間培養した。
【0205】
PromegaからのCellTiter-Glo 2.0(3μl/ウェルの最適化体積を使用)を用いて生存度を決定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて発光を検出した。Genedata Screenerソフトウェア(Genedata)において、相対的発光シグナルを対照ウェル(両方の化合物が0μM)のパーセンテージに対して正規化し、対照ウェルは0に等しく、最大細胞死は100に等しい。相乗効果分析は、Loewe、Bliss及び最大単剤(HSA)モデルを使用して評価し、相乗効果スコア及び過剰マトリクスは、各組み合わせ用量ペアに対する非相乗的相互作用に基づいて、実測生存度と予測生存度との差を比較することによって判定した。
【0206】
結果:
赤血球系統に分化されるように誘導される初代CD34
+骨髄由来HSPCにおけるDS-1062とAZD6738との組み合わせ投薬で得られた結果は、
図17A及び17B及び表8で示す。
【0207】
図17Aでは、測定された細胞生存度シグナルが示され、X軸は薬物A(DS-1062)の濃度を表し、Y軸は薬物B(AZD6738)の濃度を表す。ボックス内の値は、薬物A+Bで処理された細胞の成長阻害%を表し、これは0に等しい対照値に対して正規化され、最大細胞死は100に等しい。
図17Bは、Loewe過剰マトリクスを示し、ボックス中の値は、Loewe相加モデルにより計算される過剰値を表す。表8は、HSA相乗スコア及びLoewe相加スコアを示す。
【0208】
【0209】
赤血球系統に分化させられる初代骨髄由来CD34+HSPCにおいて同時DS-1062及びAZD6738処理で相乗的毒性は見られず、単剤療法活性用量では組み合わせでの細胞死は予想されるLoewe相加的相互作用に従い起こった。
【0210】
実施例7:抗腫瘍試験-インビボ-用量最適化-NCI-N87異種移植モデル
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
5~8週齢の雌ヌードマウス(Envigo)を使用し、7日間の順化後に、この試験に組み入れた。5x106個のNCI-N87腫瘍細胞(胃癌細胞株)(マトリゲル中1:1)を雌ヌードマウスの脇腹に皮下移植した。腫瘍がおよそ250mm3に達したら、表9で示されるように、処置群に対して同等サイズの腫瘍をランダムに割り当てた。
【0211】
【0212】
各動物に対する化合物の用量を投薬日の個々の体重に基づいて計算した。表9で挙げられるようにDS-1062を第1日に10mg/kgの単回用量として投与し、AZD6738を25mg/kgのBIDで投与した。
【0213】
10mg/kgでのDS-1062の処方
DS-1062保存液(20.1mg/ml)を25mMヒスチジン緩衝液、9%スクロース(pH5.5)中で希釈することによって、DS-1062に対する投薬溶液を投薬日に調製し、10mg/kgの投薬溶液に対して2mg/mlとした。ピペットを使用して各投薬溶液を十分に混合した後、5ml/kgの投薬体積でIV注射を介して投与した。
【0214】
25mg/kgでのAZD6738の処方
25mg/kgの投薬溶液を処方するために、濃度2.5mg/mlのAZD6738を調製し、PO投薬用に10ml/kgの投薬体積を得た。DMSO(合計ビヒクル体積の10%)を化合物に添加し、ペレット乳棒で十分に混合した。化合物を完全に溶解させるために、約5分間の超音波処理が必要であった。その後、プロピレングリコール(合計ビヒクル体積の40%)を添加し、磁気撹拌機を用いて十分に混合した。体積10mlの滅菌水をガラス製ウィートン(wheaton)バイアルに添加して、バイアルから残留する化合物を全てすすぎ落とし、続いてガラス瓶に移した。滅菌水の残量を全て(最終ビヒクル体積の50%)ガラス瓶に添加し、磁気撹拌機を使用して十分に混合した。投薬溶液を、最大で7日間、継続的に混合しながら、遮光し、室温で維持した。25mg/kgのAZD6738に対する最終投薬マトリクスは、僅かに黄色の色相を帯びた透明な溶液であった。
【0215】
測定
腫瘍増殖阻害(TGI)を以下の通りに算出した:
TGI%={1-(MTV処置/MTV対照)}*100
式中、MTV=平均腫瘍体積である。
【0216】
最終測定日に、ビヒクル対照と比較して、(log(相対的腫瘍体積)=log(最終体積/開始体積))の片側t検定を用いて統計学的有意性を評価した。
【0217】
結果
DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置についての腫瘍体積を
図18で示す。データは、処置群に対する経時的な腫瘍体積の変化を表す。全用量及びスケジュールの情報に関しては、上記の表9を参照されたい。示される値は、幾何平均±SEMであり;全処置群に対してn=8である。試験中にヒトエンドポイント(例えば大きな腫瘍量)に達したマウスを群から排除し、TGIの計算のために残りのマウスを使用した。
【0218】
NCI-N87異種移植片における、DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置後のTGI応答(第42日のTGI%)を表10で示す。
【0219】
【0220】
10mg/kgのDS-1062での単剤療法は、処置後第42日で74.8%のTGI値を示した。AZD6738単剤療法は、処置後第42日にTGIが23.7%に達した。AZD6738とDS-1062との組み合わせ処置(第1日~14日)の結果、処置の42日後にTGIが92.9%となり、AZD6738とDS-1062との組み合わせ処置(第1日~7日)の結果、処置の42日後にTGIが89.5%となり、AZD6738とDS-1062との組み合わせ処置(第3日~17日)の結果、処置の42日後にTGIが89.6%となり、AZD6738とDS-1062との組み合わせ処置(第7日~21日)の結果、処置の42日後にTGIが87.2%となり、AZD6738とDS-1062との組み合わせ処置(第7日~14日)の結果、処置の42日後にTGIが80.4%となり、このことから、DS-1062投与後のAZD6738の投薬の遅れは、N87腫瘍モデルにおいて組み合わせ効力に影響しないことが示される。
【0221】
処置群は一般に、忍容性が良好であり、全処置群の平均体重は試験中、安定したままであった。
【0222】
実施例8:抗腫瘍試験-インビボ-CTG3718卵巣患者由来異種移植モデル
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
5~8週齢の雌ヌードマウス(Envigo)を使用し、7日間の順化後に、この試験に組み入れた。PARP阻害剤タラゾパリブでの処置時に再発した卵巣癌患者の新鮮切除腫瘍の断片から、ヒト患者由来異種移植(PDX)モデル、CTG-3718を確立した。適切な同意手順に従い、このPDXを得た。ヌードマウスにおいて動物から動物への断片として、この卵巣PDXモデルをインビボで皮下継代した。腫瘍が約250mm3に達したら、表11で示されるように、処置群に対して同等サイズの腫瘍をランダムに割り当てた。
【0223】
【0224】
各動物に対する化合物の用量を投薬日の個々の体重に基づいて計算した。DS-1062及びAZD6738は同じ日に投薬し、DS-1062は、AZD6738のPO投与から約5時間後に投与した。DS-1062を第1日に10mg/kgの単回用量として投与し、AZD6738を25mg/kgのBIDで14日間投与した。
【0225】
10mg/kgでのDS-1062の処方
DS-1062保存液(20.1mg/ml)を25mMヒスチジン緩衝液、9%スクロース(pH5.5)中で希釈することによってDS-1062に対する投薬溶液を投薬日に調製し、10mg/kgの投薬溶液に対して2mg/mlとした。ピペットを使用して投薬溶液を十分に混合した後、5ml/kgの投薬体積でIV注射を介して投与した。
【0226】
25mg/kgでのAZD6738の処方
25mg/kgの投薬溶液を処方するために、濃度2.5mg/mlのAZD6738を調製し、PO投薬用に10ml/kgの投薬体積を得た。DMSO(合計ビヒクル体積の10%)を化合物に添加し、ペレット乳棒で十分に混合した。化合物を完全に溶解させるために、約5分間の超音波処理が必要であった。その後、プロピレングリコール(合計ビヒクル体積の40%)を添加し、磁気撹拌機で十分に混合した。体積10mlの滅菌水をガラス製ウィートン(wheaton)バイアルに添加して、バイアルから残留する化合物を全てすすぎ落とし、続いてガラス瓶に移した。滅菌水の残量を全て(最終ビヒクル体積の50%)ガラス瓶に添加し、磁気撹拌機を用いて十分に混合した。投薬溶液を、最長で7日間、継続的に混合しながら、遮光し、室温で維持した。25mg/kgのAZD6738の最終投薬マトリクスは、僅かに黄色の色相を帯びた透明な溶液であった。
【0227】
結果
DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置に対する腫瘍体積を
図19で示す。データは、処置群に対する経時的な腫瘍体積の変化を表す。
図19の点線は、投薬期間の終了を表す。全用量及びスケジュールの情報に関しては、上記の表11を参照されたい。示される値は、幾何平均±SEMを表し;全処置群に対してn=8である。試験中にヒトエンドポイント(例えば大きな腫瘍量)に到達したマウスを群から排除し、残りのマウスをTGIの計算のために使用した。
【0228】
CTG-3718異種移植片における、DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置後のTGI応答(第22日のTGI%)を表12で示す。
【0229】
【0230】
10mg/kgのDS-1062での単剤療法は、処置後第22日で69.8%のTGI値を示した。AZD6738単剤療法は、処置後第22日にTGIが-25.7%に達した。10mg/kgにおけるAZD6738とDS-1062との組み合わせ処置の結果、処置後第22日にTGIが84.8%となり、個々の単剤療法よりも良好な応答が示された。
【0231】
処置群は一般に忍容性が良好であり、全処置群の平均体重は、試験中、安定なままであった。
【0232】
実施例9:抗腫瘍試験-インビボ-N87(胃癌細胞株)-DS-1062耐性モデル
抗体-薬物コンジュゲートDS-1062(ダトポタマブ デルクステカン)とATR阻害剤AZD6738(4-{4-[(3R)-3-メチルモルホリン-4-イル]-6-[1-((R)-S-メチルスルホンイミドイル)シクロプロピル]ピリミジン-2-イル}-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン)との組み合わせ
方法:
5~8週齢の雌ヌードマウス(Charles River)を使用し、7日間の順化後に、この試験に組み入れた。5x106個のN87-DS-1062耐性腫瘍細胞(胃癌細胞株)(マトリゲル中1:1)を雌ヌードマウスの脇腹に皮下移植した。腫瘍が約250mm3に達したら、表13で示されるように、処置群に対して同等サイズの腫瘍をランダムに割り当てた。
【0233】
【0234】
各動物に対する化合物の用量を投薬日の個々の体重に基づいて計算した。DS-1062及びAZD6738は同じ日に投薬し、DS-1062は、AZD6738のPO投与から約5時間後に投与した。DS-1062を第1日に10mg/kgの単回用量として投与し、AZD6738を25mg/kgのBIDで7日間投与した。
【0235】
10mg/kgでのDS-1062の処方
DS-1062保存液(20.1mg/ml)を25mMヒスチジン緩衝液、9%スクロース(pH5.5)中で希釈することにより、投薬日にDS-1062に対する投薬溶液を調製し、10mg/kgの投薬溶液に対して2mg/mlとした。ピペットを使用して投薬溶液を十分に混合した後、5ml/kgの投薬体積でIV注射により投与した。
【0236】
25mg/kgでのAZD6738の処方
25mg/kgの投薬溶液を処方するために、濃度2.5mg/mlのAZD6738を調製し、PO投薬用に10ml/kgの投薬体積を得た。DMSO(合計ビヒクル体積の10%)を化合物に添加し、ペレット乳棒で十分に混合した。化合物を完全に溶解させるために、約5分間の超音波処理が必要であった。その後、プロピレングリコール(合計ビヒクル体積の40%)を添加し、磁気撹拌機で十分に混合した。体積10mlの滅菌水をガラス製ウィートン(wheaton)バイアルに添加して、バイアルから残留する化合物を全てすすぎ落とし、続いてガラス瓶に移した。滅菌水の残量を全て(最終ビヒクル体積の50%)ガラス瓶に添加し、磁気撹拌機で十分に混合した。投薬溶液を、最大で7日間、継続的に混合しながら、遮光し、室温で維持した。25mg/kgのAZD6738の最終投薬マトリクスは、僅かに黄色の色相を帯びた透明な溶液であった。
【0237】
結果
DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置に対する腫瘍体積を
図20で示す。データは、処置群に対する経時的な腫瘍体積の変化を表す。
図20の点線は、投薬期間の終了を表す。全用量及びスケジュールの情報に関しては、上記の表13を参照されたい。示される値は、幾何平均±SEMであり;全処置群に対してn=8である。試験中にヒトエンドポイント(例えば大きな腫瘍量)に到達したマウスを群から排除し、残りのマウスをTGIの計算のために使用した。
【0238】
N87-DS-1062耐性腫瘍細胞異種移植片における、DS-1062若しくはAZD6738単独による処置、又はAZD6738と組み合わせたDS-1062による処置後のTGI応答(第21日のTGI%)を表14で示す。
【表14】
【0239】
10mg/kgのDS-1062での単剤療法は、処置後第21日で0.77%のTGI値を示した。AZD6738単剤療法では、処置後第21日にTGIが-9.8%に達した。10mg/kgにおけるAZD6738とDS-1062との組み合わせ処置の結果、処置後第21日にTGIが49.5%となり、個々の単剤療法よりも良好な応答が示された。これらのデータから、AZD6738を用いて本明細書中で明らかにされるATR阻害が、DS-1062処置に対してDS-1062耐性腫瘍を再感受性化し得ることが示唆される。
【0240】
処置群は一般に、忍容性が良好であり、全処置群の平均体重は試験中、安定なままであった。
【0241】
上記の記載された仕様は、当業者が実施形態を実施することを可能とするために十分であるとみなされる。上記の説明及び実施例は、特定の実施形態を詳細に説明し、発明者らにより企図される最良の形式を記載する。しかしながら、上記の記載がどれほど詳細に文章で記述されていようと、実施形態は多くの方法で実行することが可能であり、特許請求の範囲がその任意の均等物を含むことを理解されたい。
【0242】
配列表のフリーテキスト
配列番号1-抗TROP2抗体の重鎖のアミノ酸配列
配列番号2-抗TROP2抗体の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号3-重鎖CDRH1のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基50~54]
配列番号4-重鎖CDRH2のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基69~85]
配列番号5-重鎖CDRH3のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基118~129]
配列番号6-軽鎖CDRL1のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基44~54]
配列番号7-軽鎖CDRL2のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基70~76]
配列番号8-軽鎖CDRL3のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基109~117]
配列番号9-重鎖可変領域のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~140]
配列番号10-軽鎖可変領域のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~129]
配列番号11-重鎖のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~469]
配列番号12-重鎖のアミノ酸配列[=配列番号1のアミノ酸残基20~470]
配列番号13-軽鎖のアミノ酸配列[=配列番号2のアミノ酸残基21~234]
【配列表】
【国際調査報告】