(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】補体因子B阻害剤の塩形態、結晶形、並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/06 20060101AFI20250109BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250109BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 7/08 20060101ALI20250109BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20250109BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250109BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20250109BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250109BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250109BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61P13/02
A61P13/12
A61P27/02
A61P7/08
A61P19/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P1/16
A61P17/00
A61P21/00
A61P21/04
A61P9/00
A61P11/00
A61K31/454
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539274
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2023072834
(87)【国際公開番号】W WO2023143293
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210096073.X
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211104894.X
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116410
【氏名又は名称】上海美悦生物科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI MEIYUE BIOTECH DEVELOPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3333 SHENJIANG ROAD, BUILDING 1, FLOOR 5, BLOCK A, PUDONG NEW DISTRICT, SHANGHAI 200120, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】欒林波
(72)【発明者】
【氏名】田勇
(72)【発明者】
【氏名】姚元山
(72)【発明者】
【氏名】陳永凱
(72)【発明者】
【氏名】王朝東
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC21
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA14
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA52
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
(57)【要約】
下記式Iの化合物の薬学的に許容される塩形態、結晶形、並びにその製造方法及び使用である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩であって、
【化1】
前記薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と酸又は塩基と形成される塩であり、
前記酸は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ナイアシン、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、L-酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸から選ばれる1種であり、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、L-酒石酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ラウリン酸、安息香酸、及びベンゼンスルホン酸のうちの1種であり、
前記塩基は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、その塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、L-酒石酸塩及びシュウ酸塩から選ばれる1種であり、
より好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と塩酸と形成される塩であり、更に好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と塩酸と形成される一塩酸塩である、
式Iの化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩の製造方法であって、前記製造方法は、式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含み、
好ましくは、前記製造方法は、溶媒で式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含み、
好ましくは、前記溶媒は、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、前記溶媒の2種以上の組み合わせ、或いは上記溶媒又は組み合わせのそれぞれと水との混合物から選ばれ、
好ましくは、前記アルコール系は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ネオペンチルアルコール、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの1~8個の炭素原子を有するアルコールから選ばれ、前記ケトン系は、アセトン、ブタノン、ペンタノン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの3~10個の炭素原子を有するケトンから選ばれてもよく、前記エステル系は、ギ酸メチル、酢酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの有機カルボン酸エステルから選ばれてもよく、前記エーテル系は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエーテル若しくは環状エーテル系化合物であってもよく、
好ましくは、式Iの化合物と前記酸又は塩基とのモル比は、1:0.8~1:1.5であり、
前記酸又は塩基は、互いに独立して、請求項1に記載の定義を有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の単結晶であって、前記単結晶の単位胞パラメータは以下の通りである、
斜方晶系、空間群P2
12
12
1、
a = 9.4704 (18) Å、
b = 15.324 (4) Å、
c = 17.437 (4) Å、
V = 2530.5 (10) Å
3、
Z = 4、
ことを特徴とする単結晶。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Aであって、前記結晶形AはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、23.46±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、16.84±0.20°、18.10±0.20°、19.64±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、24.96±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表1】
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物であり、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図2に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図3に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Aの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図4に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形A。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Bであって、前記結晶形BはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、10.78±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.18±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表2】
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図5に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、式Iの化合物の一塩酸塩の一水和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の水和物であり、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図6に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図7に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Bの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図8に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形B。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cであって、前記結晶形CはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°、33.48±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表3】
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図9に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物であり、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図10に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図11に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Cの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図12に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形C。
【請求項7】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Dであって、前記結晶形DはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、15.74±0.20°、16.58±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、20.24±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、12.60±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、19.80±0.20°、21.98±0.20°、22.66±0.20°、23.18±0.20°、23.82±0.20°、24.94±0.20°、26.24±0.20°、26.80±0.20°、27.50±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表4】
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図13に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、式Iの化合物の一塩酸塩のジクロロメタン溶媒和物、式Iの化合物の一塩酸塩のモノジクロロメタン溶媒和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物であり、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図14に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図15に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Dの粒径は10 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図16に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形D。
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Eであって、前記結晶形EはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、18.78±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°、26.04±0.20°、27.86±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表5】
好ましくは、前記結晶形Eは、基本的に
図17に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、式Iの化合物の一塩酸塩の一イソプロパノール溶媒和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物である、
ことを特徴とする結晶形E。
【請求項9】
請求項4~8の何れか一項に記載の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、又は結晶形Eの製造方法であって、
前記結晶形Aの製造方法は、以下の方法から選ばれる1種を含み、
製造方法一は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、HClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでノルマルアルカンを加えて結晶化し、前記結晶形Aを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mLであり、
好ましくは、前記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/Lであり、
製造方法二は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒及びノルマルアルカンで加熱撹拌し、溶解して清澄化した後に結晶化して、前記結晶形Aを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mLであり、
好ましくは、前記加熱の温度は45~75℃であり、
前記結晶形Bの製造方法は、請求項4に記載の結晶形Aを高湿条件に置いて結晶形Bを得ることを含み、
好ましくは、前記高湿条件は、温度が30~50℃であり、湿度が60%~98%であり、
好ましくは、前記高湿条件は、温度が40℃であり、湿度が75%~95%であり、
前記結晶形Cの製造方法は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、次いでHClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでエーテル系溶媒又はエステル系溶媒を加えて結晶化し、結晶形Cを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記エーテル系溶媒は、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテルから選ばれ、
好ましくは、前記エステル系溶媒は、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びエーテル系溶媒又はエステル系溶媒の質量対体積比は、1 g:(2~8) mL:(20~40) mLであり、
好ましくは、前記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/Lであり、前記式Iの化合物とHClがアルコール系溶媒にある溶液との質量比は、1 g:(0.5~1.5) gであり、
前記結晶形Dの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をハロゲン化アルカンに室温で懸濁撹拌して結晶を形成させ、結晶形Dを得ることを含み、
好ましくは、前記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素から選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩とハロゲン化アルカンとの質量対体積比は、1 g:(15~35) mLであり、
前記結晶形Eの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒中で室温で懸濁撹拌して結晶を形成し、結晶形Eを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩とアルコール系溶媒との質量対体積比は、1 g:(15~35) mLである、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
医薬組成物であって、請求項1~8の何れか一項に記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩、結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形Eの少なくとも1種、及び任意選択的に薬学的に許容される補助剤を含み、
好ましくは、前記医薬組成物は、製剤の形態である、
医薬組成物。
【請求項11】
補体因子B媒介性疾患又は病症の予防及び/又は治療用薬物の製造における、請求項1~8の何れか一項記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩、結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E、又は請求項10に記載の医薬組成物の少なくとも1種の使用であって、
好ましくは、前記補体因子B媒介性疾患又は病症は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、原発性糸球体腎炎(IgAN)、膜性腎症(MN)、C3糸球体腎炎(C3G)、加齢黄斑変性症(AMD)、地理的萎縮症(GA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、糖尿病性網膜症病変(DR)、血液透析合併症、溶血性貧血又は血液透析、神経脊髓炎(NMO)、関節炎、リューマチ性関節炎、肝臓系炎症、皮膚筋炎と筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症(MG)、呼吸系疾患及び心臓血管などの疾患から選ばれる少なくとも1種である、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2022年1月26日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号が202210096073.X、発明名称が「補体因子B阻害剤の塩形態、結晶形、並びにその製造方法及び使用」である、並びに、2022年9月9日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号が202211104894.X、発明名称が「補体因子B阻害剤の塩形態、結晶形、並びにその製造方法及び使用」である、という先行出願の優先権を主張する。当該先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬分野に属し、具体的に、補体因子B阻害剤の塩形態、結晶形、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
補体は、免疫系における可溶性パターン認識分子の一種であり、複数種のエフェクター機能を実行することができる。自然条件下で、補体成分は不活性なチモーゲンの形で存在し、複数種の特異的と非特異的免疫学的機序によってこれらの不活性なチモーゲンが分解され、活性な大断片と小断片が形成される。そのうち、大断片は通常、病原体又は細胞の表面にとどまり、後者を熱分解させるか、又はそのクリアランスを加速させ、小断片は、細胞の表面から離れ、複数種の炎症反応を仲介する。補体の活性化は緊密に繋がっている2つのプロセスで構成され、且つ、それにより補体活性化のカスケード反応を形成する。現在既知の補体活性化経路には、主に古典経路、レクチン経路、第2経路の3つが含まれている。3つの補体活性化経路は、開始機序と活性化順序が異なっているが、共通の末端経路を有する。そのうち、第2経路の活性化は抗原抗体複合体に依存せず、通常は細胞の表面に堆積したC3bがB因子と結合し、血清中のD因子によって分解されやすい状態になり、このプロセスではB因子がBaとBbに分解され、その後、C3bとBbが複合体を形成し、第2経路中のC3インベルターゼC3bBbになり、このプロセスでは、補体因子Bが補体カスケードの第2経路活性化において初期と中心的な役割を果たす。ここで、C3bは、C3インベルターゼがC3を分解した後に現れた生成物であるだけでなく、第2経路C3インベルターゼの構成部分でもあり、それにより古典経路と第2経路が相互に影響を及ぼすフィードバック増幅機序が形成される。現在の研究では、血液性、自己免疫性、炎症性及び神経変性などの複数種の疾患が補体系の機能異常に繋がることが見出されている。
【0004】
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、持続的溶血性慢性疾患であり、病因は、1つ又は複数の造血幹細胞が後天性体細胞PIG-Aで遺伝子突然変異して引き起こされた非悪性のクローン性疾患であり、超希少血液疾患に属する(Medicine(Baltimore)1997, 76(2): 63-93)。当該疾患の経過は、様々な程度の溶血の悪化(発作性)、慢性又は再発性の急性血管内溶血又はその後の静脈/動脈血栓の形成に表れ、最終的に進行性の末端器官の損傷や死亡になり、患者のほとんどはよく非典型的であり、潜行性に発症し、疾患の経過が長く、疾患の重症度が様々である。
【0005】
赤血球の表面には、補体経路の活性化を阻害するタンパク質が10数種あり、何れもグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)によってその細胞膜にアンカーされており、GPI-アンカー型タンパク質(AP)と総称され、現在、PNHの発症機序は、まず、造血幹細胞が一定の条件下で突然変異が起こり、且つグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)が欠損したPNHクローンを産生し、次に、何らかの要因(現在、免疫要因とよく考えられている)によって造血機能損傷又は造血機能衰弱が起こり、PNHクローンは正常なクローンよりも増殖上の優位性を獲得すると考えられている。GPIに接続される複数種の抗原も、PNH細胞の生物学的挙動への解釈の複雑さを引き起こし、そのうち、補体経路の活性化を阻害する最も重要なタンパク質C3インベルターゼ崩壊促進因子CD55及び膜攻撃複合体(MAC)阻害因子CD59とPNHとは、発症機序、臨床所見、診断及び治療において密接に関連している(Frontiers in Immunology 2019, 10, 1157)。CD59は、C5b-8複合体へのC9の侵入を阻止することで、膜攻撃単位の形成を阻止し、補体端末の攻撃応答を阻害する作用を果たすことができる。現在、PNHの典型的な所見である血管内溶血及び血栓は、CD59欠乏によって引き起こされると考えられている。先天性CD59欠乏症患者は、多くのPNHの典型的な症状、例えば、血管内溶血、ヘモグロビン尿及び静脈血栓などを表すことが報告されている。PNH患者では、GPI合成欠損によりCD59が赤血球の細胞膜に結合できないことで、補体経路の活性化を阻害する機能が失われるため、補体経路の異常な活性化が発生され、且つ赤血球へ攻撃することになり、血管内溶血、ヘモグロビン尿及び平滑筋機能障害などの複数種の臨床所見が引き起こされてしまう。現在、造血幹細胞移植による正常な造血機能の回復以外に、PNHの有効な治療法はまだない。造血幹細胞移植には一定のリスクがあり、且つPNHが良性のクローン性疾患であるため、溶血発症の制御は、依然としてこの疾患の臨床治療の主な対策である。現在、エクリズマブ(Eculizumab)のみがPNHの治療薬として承認されている。しかし、エクリズマブにより治療されても貧血現象が現れる患者が多く、そして、依然として持続的な輸血を必要とする患者が多い。また、投与方式において、エクリズマブは静脈注射しなければならない。従って、PNH用の補体経路の新規阻害剤の開発は、重要な意味をもっている。
【0006】
IgANは、最もよく見られる原発性糸球体腎炎であり、当該疾患は、免疫蛍光によりメサンギウム区域にIgA堆積を有することが示されることを特徴とする。当該疾患の臨床所見は様々であり、通常の所見は、反復発作される顕微鏡的又は肉眼的血尿である。既存の資料によると、IgANの発生は、先天性又は後天性免疫調整異常に関連している。ウィルス、細菌及び食物タンパク質などによる気道又は消化管への刺激作用により、粘膜IgA1合成が増加され、又はIgA1を含む免疫複合体がメサンギウム区域に堆積され、且つ補体第2経路が活性化され、糸球体の損傷が引き起こされることになる。ヒトIgA分子は、IgA1とIgA2の2つのアイソフォームに分けられ、そのうち、IgA1は、健康な個体の血液循環の主な形態(約85%を占める)であり、IgAN患者の糸球体メサンギウム区域に堆積された主な成分でもある。IgA分子は、単量体と多量体の2つの形で存在することができる。IgA1分子は、第1と第2の定常区域の間に特別な重鎖ヒンジ区域を持っており、O-結合型グリカン基の結合部位のドメインとすることができる。近年の研究では、IgAN患者の血清中及び糸球体メサンギウム区域に沈着するIgA分子は、主にグリコシル化欠陥IgA1(gd-IgA1)であることが見出された。現在、IgANの発症機序の開始部分は、gd-IgA1に発生された異常の増加であると考えられている。
【0007】
90%を超えたIgAN患者は、糸球体メサンギウム区域に補体C3の堆積を伴っている。75%~100%のIgAN患者は、腎組織内にプロパーディンとIgA、C3の共堆積が存在し、30%~90%のIgAN患者は、腎組織に補体因子H、IgA、C3の共堆積が存在している。腎組織内での堆積以外に、幾つかの研究では、また、IgAN患者の血漿中の補体第2経路のマーカーレベルもIgANの活動性に関連することが見出された(J Nephrol 2013, 26(4): 708-715)。研究によると、腎組織と尿中のC3a及び腎組織中のC3a受容体は、腎損傷の活動性及び重症度に顕著に関連することが確認された(J clin Immunol 2014, 34(2): 224-232)。別の研究によると、体外条件下で、IgAは補体第2経路を活性化できることが確認された。このプロセスでは、IgAヒンジ区域の異常は決定的な役割を果たさず、IgA多量体の形成はその肝心な部分となっている(Eur J Immunol 1987, 17(3): 321-326)。現在、糸球体メサンギウム区域における補体C3の堆積は、既にIgANの補助的な診断マーカーの一つとなっている。163例のIgAN患者の腎組織に対してC3c及びC3d免疫蛍光検出を行った研究の結果、C3cの堆積強度がC3dの堆積強度よりも高いIgAN患者は、糸球体ろ過率が更に低く、糸球体毛細血管内増殖の発生率が更に高く、血尿も更にひどいことが示され、糸球体C3cの堆積がIgANの活動性病変に関連することが示唆されている(Am J Nephrol. 2000, 20(2):122-128)。現在、臨床的に、IgANを治療するための特効薬はなく、主にジェネリック薬であるレニンアンジオテンシン阻害剤(ACEI又はARB)、グルココルチコイド及び様々な免疫阻害剤などである。また、このような薬物の安全性も無視できない問題となり、例えば、グルココルチコイドはタンパク尿の低下作用があるが、STOP-IgAN試験とTESTING-I試験により、グルココルチコイドの潜在的な副作用が明らかに確認された(IgA nephropathy 2019, 95, 4, 750-756)。
【0008】
関節炎はよく見られる慢性疾患であり、炎症、感染、退行、創傷又はその他の要因によって引き起こされた炎症性疾患であり、臨床所見は、関節の発赤、腫れ、熱、痛み、機能障害及び関節変形であり、人に激痛、動きの制限及び体の変形をさせることが多く、重症の場合、後遺障害を引き起こし、患者の生活品質に影響を与える。研究によると、K/BxNのマウス血清は補体B因子が欠損したマウスに関節炎を誘発することができないが、野生型マウスはK/BxNマウスの血清の誘発によって関節炎疾患が発症されることが見出された(Immunity, 2002, 16, 157-168)。これは、補体系がK/BxNマウス血清誘発関節炎モデルで重要な病原性作用を果たし、補体B因子が関節炎を治療する潜在的な標的であることが示されている。
【0009】
補体カスケードに関連する他の疾患は、膜性腎症(MN)、C3糸球体腎炎(C3G)、加齢黄斑変性症(AMD)、地理的萎縮症(GA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、血液透析合併症、溶血性貧血又は血液透析、神経脊髓炎(NMO)、肝臓系炎症、炎症性腸疾患、皮膚筋炎と筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症(MG)、呼吸系疾患及び心臓血管などの疾患を更に含む。
【0010】
現在、臨床治療用の補体因子B阻害剤の小分子薬物はまだ存在しておらず、現在既知及び研究中のプロジェクトとして、IONIS Pharmaceuticals Inc.によって開発されたオリゴヌクレオチド薬物は、補体因子B(CFB)の特異的阻害剤として補体第2経路障害に関連する疾患を治療、予防又は緩和する(WO2015038939)。Novartis AG社によって開発された小分子補体因子B阻害剤は、加齢黄斑変性症(AMD)などの疾患の治療に用いられ(WO2013164802、WO2013192345、WO2014143638、WO2015009616、WO2015066241)、又はC3GとIgANなどの疾患の治療に用いられる(WO2019043609A1)。Achillion Pharmaceuticals Inc.によって開発された小分子補体因子B阻害剤は、加齢黄斑変性症(AMD)などの疾患の治療に用いられる(WO2018005552)。
【0011】
炎症と免疫性に関連する疾患は、多様性、難治性という特徴をもっており、市販されているPNH疾患の薬物はエクリズマブしかないが、値段が高いため、患者に多大な負担を与えると同時に、エクリズマブにより治療された後でも貧血現象が示される患者が多く、また、依然として持続的な輸血が必要な患者が多く、更に、投与方式では、エクリズマブは静脈注射しなければならない。一方、IgANなどの幾つかの疾患は、今まで特効性の治療薬がない。このような分野では、満たされていない臨床ニーズがあり、医学的治療のために新しい小分子薬物の開発が必要となる。
【0012】
従って、現在、上記技術問題を改善するために、高効率、低毒性、及び/又は長時間作用型の薬学的に許容される活性成分を開発することが求められている。
【発明の概要】
【0013】
上記技術問題を改善するために、本発明は、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を提供し、
【0014】
【0015】
上記薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と酸又は塩基と形成される塩であり、好ましくは式Iの化合物と酸と形成される塩から選ばれる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、上記酸は、無機酸又は有機酸から選ばれてもよく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ナイアシン、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、L-酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸である。実例として、上記酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、L-酒石酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ラウリン酸、安息香酸及びベンゼンスルホン酸から選ばれる1種である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、上記塩基は、無機塩基から選ばれてもよく、例えば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物であり、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、その塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、L-酒石酸塩及びシュウ酸塩から選ばれる1種である。
【0019】
本発明のより好ましい実施形態によれば、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と塩酸と形成される塩であり、即ち、式Iの化合物の塩酸塩であり、好ましくは式Iの化合物の一塩酸塩である。
【0020】
本発明の実施形態によれば、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩において、式Iの化合物と上記酸又は塩基とのモル比は、上記塩における式Iの化合物のイオンと酸又は塩基とのイオン電荷が平衡であるという条件で、1:1、2:1、又は3:1から独立的に選ばれてもよい。例えば、上記酸(塩酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸など)においてイオン化可能な水素原子の数が1である場合、式Iの化合物と上記酸とのモル比は、1:1であり、上記酸(硫酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、L-酒石酸、シュウ酸など)においてイオン化可能な水素原子の数が2である場合、式Iの化合物と上記酸とのモル比は、1:1又は2:1であってもよく、上記酸(リン酸など)においてイオン化可能な水素原子の数が3である場合、式Iの化合物と上記酸とのモル比は、1:1、2:1又は3:1である。
【0021】
本発明は式Iの化合物の薬学的に許容される塩の製造方法を更に提供し、上記製造方法は、式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は、溶媒で式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含む。
【0023】
本発明の実施形態によれば、上記酸又は塩基は、互いに独立して上記定義を有する。
【0024】
本発明の実施形態によれば、上記溶媒は、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、上記溶媒のうちの2種以上の組み合わせ、或いは上記溶媒又は組み合わせのそれぞれと水との混合物から選ばれてもよい。
【0025】
本発明の実施形態によれば、上記アルコール系は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ネオペンチルアルコール、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの1~8個の炭素原子を有するアルコールから選ばれてもよく、上記ケトン系は、アセトン、ブタノン、ペンタノン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの3~10個の炭素原子を有するケトンから選ばれてもよく、上記エステル系は、ギ酸メチル、酢酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの有機カルボン酸エステルから選ばれてもよく、上記エーテル系は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエーテル若しくは環状エーテル系化合物であってもよい。
【0026】
本発明の実施形態によれば、上記式Iの化合物と上記酸又は塩基とのモル比は、1:0.8~1:1.5、好ましくは1:0.9~1:1.3、より好ましくは、1:1.0~1:1.1であってもよい。
【0027】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法において、反応の温度は、比較的広い範囲から選択でき、例えば、20℃~80℃、好ましくは、30℃~60℃である。
【0028】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は、反応終了後、ろ過及び/又は乾燥のステップを行って、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを更に含む。
【0029】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法において、乾燥の温度は、比較的広い範囲から選択でき、例えば、20℃~80℃、好ましくは、30℃~60℃であってもよい。
【0030】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法において、乾燥の圧力は、0~20 kPa、好ましくは0~10 kPa、より好ましくは5~10 kPaであってもよい。
【0031】
本発明は、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶、好ましくは単結晶を更に提供する。そのうち、上記単結晶の単位胞パラメータは以下の通りである。
【0032】
斜方晶系、空間群P212121、
a = 9.4704 (18) Å、
b = 15.324 (4) Å、
c = 17.437 (4) Å、
V = 2530.5 (10) Å3、
Z = 4。
【0033】
本発明は、上記式Iの化合物の一塩酸塩の結晶を更に提供し、式Iの化合物の一塩酸塩を溶媒Aに溶解させ、次いで溶媒Bの雰囲気に拡散させることを含む、その単結晶の製造方法を特に提供する。
【0034】
上記溶媒Aは、アルコール系溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどの2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
上記溶媒Bは、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、又はこれらの2種以上の組み合わせであってもよい。上記エステル系溶媒は、ギ酸メチル、酢酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの有機カルボン酸エステルから選ばれてもよく、上記エーテル系溶媒は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエーテル、環状エーテル系化合物又はこれらの2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
本発明は、以下に記載される結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、又は結晶形Eから選ばれる、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形態を更に提供する。
【0037】
Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、23.46±0.20°に特徴的なピークを有する、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Aである。
【0038】
好ましくは、上記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0039】
好ましくは、上記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0040】
好ましくは、上記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、16.84±0.20°、18.10±0.20°、19.64±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、24.96±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0041】
好ましくは、上記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、表1に示される特徴的なピークを有し、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0042】
【0043】
好ましくは、上記結晶形Aは、基本的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0044】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Aは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物である。
【0045】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)分析は、ピーク温度192.73℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度201.78℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示す。
【0046】
好ましくは、上記結晶形Aは、基本的に
図2に示されるDSCパターンを有する。
【0047】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Aの熱重量分析(TGA)は、90℃~180℃の範囲で約1.41%の重量損失を示す。
【0048】
好ましくは、上記結晶形Aは、基本的に
図3に示されるTGAパターンを有する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Aは、不規則な形態の結晶である。好ましくは、上記結晶形Aの粒径は20 μm以下である。
【0050】
好ましくは、上記結晶形Aは、基本的に
図4に示されるPLMパターンを有する。
【0051】
Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有する、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Bである。
【0052】
好ましくは、上記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0053】
好ましくは、上記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、10.78±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.18±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0054】
好ましくは、上記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、表2に示される特徴的なピークを有し、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0055】
【0056】
好ましくは、上記結晶形Bは、基本的に
図5に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0057】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Bは、式Iの化合物の一塩酸塩の一水和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の水和物である。
【0058】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Bの示差走査熱量測定(DSC)分析は、ピーク温度85.87℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度197.54℃付近に第2の吸熱ピークが現れ、ピーク温度205.68℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示す。
【0059】
好ましくは、上記結晶形Bは、基本的に
図6に示されるDSCパターンを有する。
【0060】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Bの熱重量分析(TGA)は、21.49℃~120℃に約3.42%の重量損失を有し、179.88℃~207.94℃に約0.49%の重量損失を有することを示す。
【0061】
好ましくは、上記結晶形Bは、基本的に
図7に示されるTGAパターンを有する。
【0062】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Bは、不規則な形態の結晶である。好ましくは、上記結晶形Bの粒径は20 μm以下である。
【0063】
好ましくは、上記結晶形Bは、基本的に
図8に示されるPLMパターンを有する。
【0064】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Aは、高湿条件で結晶形Bを得る。上記高湿条件は、40℃で、相対湿度75%~95%であることが好ましい。
【0065】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Bは、乾燥条件で結晶形Aを得る。上記乾燥条件は、40℃で真空乾燥であることが好ましい。
【0066】
Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°に特徴的なピークを有する、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cである。
【0067】
好ましくは、上記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0068】
好ましくは、上記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°、33.48±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0069】
好ましくは、上記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、表3に示される特徴的なピークを有し、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0070】
【0071】
好ましくは、上記結晶形Cは、基本的に
図9に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0072】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Cは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物である。
【0073】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Cの示差走査熱量測定(DSC)分析は、ピーク温度209.93℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度215.80℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示す。
【0074】
好ましくは、上記結晶形Cは、基本的に
図10に示されるDSCパターンを有する。
【0075】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Cの熱重量分析(TGA)は、21.62℃~120℃の範囲に約0.29%の重量損失を有し、173.94℃~216.60℃の範囲に約0.52%の重量損失を有することを示す。
【0076】
好ましくは、上記結晶形Cは、基本的に
図11に示されるTGAパターンを有する。
【0077】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Cは、不規則な形態の結晶である。好ましくは、上記結晶形Cの粒径は20 μm以下である。
【0078】
好ましくは、上記結晶形Cは、基本的に
図12に示されるPLMパターンを有する。
【0079】
Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、15.74±0.20°、16.58±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有する、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Dである。
【0080】
好ましくは、上記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、20.24±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0081】
好ましくは、上記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、12.60±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、19.80±0.20°、21.98±0.20°、22.66±0.20°、23.18±0.20°、23.82±0.20°、24.94±0.20°、26.24±0.20°、26.80±0.20°、27.50±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0082】
好ましくは、上記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、表4に示される特徴的なピークを有し、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0083】
【0084】
好ましくは、上記結晶形Dは、基本的に
図13に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0085】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Dは、式Iの化合物の一塩酸塩のジクロロメタン溶媒和物、式Iの化合物の一塩酸塩の一ジクロロメタン溶媒和物(又は、モノジクロロメタン溶媒和物と称する)などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物である。
【0086】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Dの示差走査熱量測定(DSC)分析は、ピーク温度196.53℃付近に加熱すると、第1の発熱ピークが現れることを示す。
【0087】
好ましくは、上記結晶形Dは、基本的に
図14に示されるDSCパターンを有する。
【0088】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Dの熱重量分析(TGA)は、22.07℃~120℃の範囲で約6.31%の重量損失を示す。
【0089】
好ましくは、上記結晶形Dは、基本的に
図15に示されるTGAパターンを有する。
【0090】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Dは、不規則な形態の結晶である。好ましくは、上記結晶形Cの粒径は10 μm以下である。
【0091】
好ましくは、上記結晶形Dは、基本的に
図16に示されるPLMパターンを有する。
【0092】
Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有する、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Eである。
【0093】
好ましくは、上記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0094】
好ましくは、上記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、18.78±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°、26.04±0.20°、27.86±0.20°に特徴的なピークを有する。
【0095】
好ましくは、上記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、表5に示される特徴的なピークを有し、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0096】
【0097】
好ましくは、上記結晶形Eは、基本的に
図17に示されるX線粉末回折パターンを有する。
【0098】
本発明の実施形態によれば、上記結晶形Eは、式Iの化合物の一塩酸塩の一イソプロパノール溶媒和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物である。
【0099】
本発明は、式Iの化合物の一塩酸塩の上記結晶形の製造方法を更に提供する。
【0100】
結晶形Aの製造方法一は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、HClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでノルマルアルカンを加えて結晶化し、上記結晶形Aを得ることを含む。
【0101】
上記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、好ましくはイソプロパノールである。
【0102】
上記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、好ましくはn-ヘプタンである。
【0103】
上記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mL、好ましくは1 g:(15~25) mL:(15~25) mLである。
【0104】
上記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/L、例えば2 mol/Lである。
【0105】
上記加熱の温度は45~75℃、好ましくは48~60℃である。
【0106】
結晶形Aの製造方法二は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒及びノルマルアルカンで加熱撹拌し、溶解して清澄化した後に結晶化して、上記結晶形Aを得ることを含む。
【0107】
上記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、好ましくはイソプロパノールである。
【0108】
上記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、好ましくはn-ヘプタンである。
【0109】
上記式Iの化合物の一塩酸塩、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mL、好ましくは1 g:(15~25) mL:(15~25) mL、例えば、1 g:20 mL:20 mLである。
【0110】
上記加熱の温度は45~75℃、好ましくは48~60℃である。
【0111】
本発明の実施形態によれば、結晶形Aの製造方法一又は二は、降温、ろ過、乾燥のステップを更に含む。
【0112】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結晶形Aの製造方法は、式Iの化合物をイソプロパノールに溶解し、HClのイソプロパノール溶液を加え、混和溶解後、n-ヘプタンを加えて撹拌し、ろ過し、乾燥し、上記結晶形Aを得ることを含む。
【0113】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結晶形Aの製造方法は、イソプロパノールとn-ヘプタンとの混合溶媒に式Iの化合物の一塩酸塩を加え、加熱撹拌し、常温に降温し、ろ過し、真空乾燥し、上記結晶形Aを得ることを含む。
【0114】
上記式Iの化合物の一塩酸塩、イソプロパノール及びn-ヘプタンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mL、例えば1 g:20 mL:20 mLである。
【0115】
結晶形Bの製造方法は、上記結晶形Aを高湿条件に置いて結晶形Bを得ることを含む。
【0116】
本発明の実施形態によれば、上記高湿条件は、温度が30~50℃であり、湿度が60%~98%である。
【0117】
上記高湿条件は、40℃で、湿度75%~95%であることが好ましい。
【0118】
結晶形Cの製造方法は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、次いでHClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでエーテル系溶媒又はエステル系溶媒を加えて結晶化し、結晶形Cを得ることを含む。
【0119】
本発明の実施形態によれば、結晶形Cの製造方法は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、HClがアルコール系溶媒にある溶液を加え、撹拌し、ろ過し、ろ液にエーテル系溶媒又はエステル系溶媒を滴下し、撹拌し、ろ過し、乾燥して結晶形Cを得ることを含む。
【0120】
上記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールから選ばれ、好ましくはメタノールである。
【0121】
上記エーテル系溶媒は、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、又はメチルtert-ブチルエーテルから選ばれ、好ましくはメチルtert-ブチルエーテルである。
【0122】
上記エステル系溶媒は、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルから選ばれる。
【0123】
上記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びエーテル系溶媒の質量対体積比は、1 g:(2~8) mL:(20~40) mL、好ましくは1 g:(3~6) mL:(20~30) mL、例えば1 g:4 mL:25 mLである。
【0124】
上記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/L、例えば1.5~2.5 mol/L、例示的には1.8 mol/Lであり、上記式Iの化合物とHClがアルコール系溶媒にある溶液との質量比は、1 g:(0.5~1.5) g、例えば1 g:(0.8~1.2) gである。
【0125】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結晶形Cの製造方法は、式Iの化合物をメタノールに溶解した後、HClのメタノール溶液を加え、撹拌し、ろ過し、ろ液にメチルtert-ブチルエーテルを加え、ろ過し、乾燥し、結晶形Cを得ることを含む。
【0126】
結晶形Dの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をハロゲン化アルカンに室温で懸濁撹拌して結晶を形成させ、結晶形Dを得ることを含む。
【0127】
本発明の実施形態によれば、結晶形Dの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をハロゲン化アルカンに加え、撹拌し、得られた懸濁液を分離し、分離された固体を乾燥し、得られた固体を結晶形Dとすることを含む。
【0128】
上記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素から選ばれ、好ましくはジクロロメタンである。
【0129】
上記式Iの化合物の一塩酸塩とハロゲン化アルカンとの質量対体積比は、1 g:(15~35) mL、好ましくは1 g:(18~25) mL、例えば、1 g:20 mLである。
【0130】
上記分離は、既知の分離方式で分離するが、遠心分離方式で分離することが好ましい。
【0131】
上記乾燥は、加熱の条件で減圧真空乾燥することであり、40℃で減圧真空乾燥することが好ましい。
【0132】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結晶形Dの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をジクロロメタンに加え、室温で撹拌した後、固体を分離して結晶形Dを得ることを含む。
【0133】
結晶形Eの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒中で室温で懸濁撹拌して結晶を形成し、結晶形Eを得ることを含む。
【0134】
本発明の実施形態によれば、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒に加え、撹拌し、得られた懸濁液を分離し、分離された固体を乾燥し、得られた固体を結晶形Eとする。
【0135】
上記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールから選ばれ、好ましくはイソプロパノールである。
【0136】
上記式Iの化合物の一塩酸塩とアルコール系溶媒との質量対体積比は、1 g:(15~35) mL、好ましくは1 g:(18~25) mL、例えば、1 g:20 mLである。
【0137】
上記分離は、既知の分離方式で分離するが、遠心分離方式で分離することが好ましい。
【0138】
上記乾燥は、加熱の条件で減圧真空乾燥することであり、40℃で減圧真空乾燥することが好ましい。
【0139】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記結晶形Eの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をイソプロパノールに加え、室温で撹拌した後、固体を分離して結晶形Eを得ることを含む。
【0140】
本発明は、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば上記塩酸塩、例えば上記塩酸塩の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E)のうちの少なくとも1種、及び任意選択的に薬学的に許容される補助剤を含む、医薬組成物を更に提供する。好ましくは、上記医薬組成物は、製剤の形態である。
【0141】
本発明は、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩、結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形Eのうちの少なくとも1種、及び任意選択的に薬学的に許容される補助剤を含む、製剤を更に提供する。
【0142】
本発明は、補体因子B媒介性疾患又は病症の予防及び/又は治療用薬物の製造における、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば上記塩酸塩、例えば上記塩酸塩の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E)、又は上記医薬組成物のうちの少なくとも1種の使用を更に提供する。
【0143】
本発明の実施形態によれば、上記補体因子B媒介性疾患又は病症は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、原発性糸球体腎炎(IgAN)、膜性腎症(MN)、C3糸球体腎炎(C3G)、加齢黄斑変性症(AMD)、地理的萎縮症(GA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、糖尿病性網膜症病変(DR)、血液透析合併症、溶血性貧血又は血液透析、神経脊髓炎(NMO)、関節炎、リューマチ性関節炎、肝臓系炎症、皮膚筋炎と筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症(MG)、呼吸系疾患及び心臓血管などの疾患から選ばれる少なくとも1種である。
【0144】
本発明は、補体因子B阻害剤に関連する疾患の予防及び/又は治療方法であって、上記式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば上記塩酸塩、例えば上記塩酸塩の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E)、又は上記医薬組成物の少なくとも1種の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を更に提供する。
【0145】
本発明の実施形態によれば、上記補体因子B阻害剤に関連する疾患又は病症は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、原発性糸球体腎炎(IgAN)、膜性腎症(MN)、C3糸球体腎炎(C3G)、加齢黄斑変性症(AMD)、地理的萎縮症(GA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、糖尿病性網膜症病変(DR)、血液透析合併症、溶血性貧血又は血液透析、神経脊髓炎(NMO)、関節炎、リューマチ性関節炎、肝臓系炎症、皮膚筋炎と筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症(MG)、呼吸系疾患及び心臓血管などの疾患から選ばれる少なくとも1種である。
【0146】
本発明の治療方法は、本発明の式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば上記塩酸塩、例えば上記塩酸塩の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E)又は上記医薬組成物を、単独で投与すること、及び本発明の式Iの化合物の薬学的に許容される塩(例えば上記塩酸塩、例えば上記塩酸塩の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形E)又は上記医薬組成物の1種、2種又はそれ以上と、1種、2種又はそれ以上の他の化学療法剤と組み合わせて投与することを含んでもよい。複数種の薬物の投与は、同時に又は順次に行ってもよい。
【0147】
本明細書の文脈において、「以上」、「以下」、「以内」は、本数を含むものと理解されるべきである。実例として、「少なくとも1種」は、「1種、2種、又はそれ以上」として理解されるべきである。別の例として、「2種以上」は、「2種又はそれ以上」、例えば、「2種、3種、4種、又はそれ以上」と理解されるべきである。
【0148】
有益な効果
本発明の式Iの化合物の塩(特に塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩)は安定性が高く、水溶解度が高く、経口投与時の吸収能力を顕著に増強し、生物の利用効率を高める。且つ、本発明の式Iの化合物の塩酸塩の結晶形は、安定性が高く、溶解度が良く、吸湿性が低く、創薬の見通しが良好である。更に、本発明の式Iの化合物の塩及び結晶形の製造方法は、操作が簡単で、制御が容易で、再現性が良く、反応条件が温和で、製品収率が高く、工業化生産に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【
図1】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形AのXRPDパターンである。
【
図2】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形AのDSCパターンである。
【
図3】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形AのTGAパターンである。
【
図4】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形AのPLMパターンである。
【
図5】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形BのXRPDパターンである。
【
図6】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形BのDSCパターンである。
【
図7】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形BのTGAパターンである。
【
図8】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形BのPLMパターンである。
【
図9】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形CのXRPDパターンである。
【
図10】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形CのDSCパターンである。
【
図11】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形CのTGAパターンである。
【
図12】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形CのPLMパターンである。
【
図13】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形DのXRPDパターンである。
【
図14】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形DのDSCパターンである。
【
図15】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形DのTGAパターンである。
【
図16】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形DのPLMパターンである。
【
図17】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形EのXRPDパターンである。
【
図18】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形Cは、加速、高温条件で1か月間に置かれた後のXRPD結果パターンである。
【
図19】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形Cは、高温、高湿で1日間に曝した後のXRPD結果パターンである。
【
図20】式Iの化合物の一塩酸塩結晶形Cは、高温、高湿で3日間に曝した後のXRPD結果パターンである。
【
図21】生物学的実施例におけるカニクイザルの血中薬物濃度曲線の実験データ(ng/mL)である。
【
図22】生物学的実施例におけるカニクイザルの血清AP活性曲線の実験データ(0 hに対する%)である。
【
図23】生物学的実施例における連鎖球菌により誘導されたラットリューマチ性関節炎の実験データである。
【
図24】式Iの化合物の一塩酸塩の単結晶図である。
【発明を実施するための形態】
【0150】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0151】
特に説明のない限り、下記の実施例に使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0152】
実験機器パラメータ
X線粉末回折(XRPD)
設備はShimadzu XRD-6000であり、サンプルは以下のパラメータで走査した。
【0153】
線源をCu~Kαターゲット(1.54056 Å)とした。
【0154】
光管の最低動作電圧と電流はそれぞれ40 kVと30 mAであり、
サンプル走査範囲の2-Theta値は、2o~50oであった。スキャン速度を5 deg/minとした。
【0155】
熱重量分析(TGA)
約5 mgのサンプルをるつぼに秤量し、窒素ガス保護下、30℃から300℃まで昇温し、昇温速度は20℃/minで、300℃で1 min保持した。
【0156】
示差走査熱量計(DSC)
粉末サンプルを約1~5 mg秤量し、密閉アルミるつぼに置いて、るつぼの蓋にピンホールを開けた。窒素ガス保護下、30℃から300℃まで昇温して示差熱量走査を行い、300℃で1 min保持した。昇温速度は20℃/minであった。
【0157】
偏光顕微鏡(PLM)
サンプルを媒体中に分散させ(シリコーンオイル)、10X接眼レンズ、10X対物レンズを用いてサンプルを観察し、画像をカメラコンピュータシステムで記録した。
【0158】
動的水分吸着(DVS)
0%~95%~0%相対湿度(RH)サイクルで、10 mgぐらいのサンプルを秤量し、25℃の条件で、以下のパラメータを用い、吸湿/脱着特性試験を行った。
【0159】
【0160】
単結晶試験装置及び条件
機器型番:D8 Venture
機器パラメータ:
光源:Moターゲット X線:Mo-Kα(=0.71073 Å)
検出器:CMOS面検出器 分解能:0.80 Å
電流電圧:50 kV、1.4 mA 露光時間:10 s
面検出器からサンプルまでの距離:40 mm 試験温度:170(2)K
略語の説明
40℃/75% RHとは、40℃で湿度75%の条件を意味する。
【0161】
40℃/75% RH-closedとは、40℃で湿度75%の条件で、密閉放置したことを意味する。
【0162】
40℃/75% RH-openとは、40℃で湿度75%の条件で、開放放置したことを意味する。
【0163】
60℃-closedとは、60℃で、密閉放置したことを意味する。
【0164】
40℃/75% RH-closed-2 wksとは、40℃で湿度75%の条件で、2週間密閉放置したことを意味する。
【0165】
40℃/75% RH-open-2 wksは、40℃で湿度75%の条件で、2週間開放放置したことを意味する。
【0166】
60℃-Closed-2 wksとは、60℃で、2週間密閉放置したことを意味する。
【0167】
Initialとは、初期状態を意味する。
【0168】
SGFとは、胃液を模擬することを意味する。
【0169】
FaSSIFとは、絶食状態の腸液を模擬することを意味する。
【0170】
FeSSIFとは、摂食状態の腸液を模擬することを意味する。
【0171】
1 dとは、1日間を意味し、3 dとは、3日間を意味する。
【0172】
製造例1:式Iの化合物の製造
式Iの化合物及び中間体bの合成の反応式
【0173】
【0174】
中間体bの製造
250mLの単口フラスコにおいて、ジクロロメタン(50 mL)、5-メトキシ-7-メチル-1H-インドール(3 g)、Boc酸無水物(5.68 g)、4-ジメチルアミノピリジン(227 mg)及びトリエチルアミン(2.26 g)を順に加え、室温で16時間反応させた。反応終了後、反応液に飽和塩化アンモニウム溶液(5 mL)を加えてクエンチし、ジクロロメタン(20 mL)で3回抽出し、合併した有機相を水(5 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)により精製して中間体aを得た(4.6 g、収率:94%)。MS m/z (ESI): 262.0[M+1]。
【0175】
250 mLの単口フラスコにおいて、ジクロロメタン(80 mL)、N-メチルホルムアニリド(3.8 g)及び塩化オキサリル(3.6 g)を順に加え、室温で3時間撹拌しながら反応させた。次に反応を-14℃に降温し、中間体a(2.5 g)を加え、反応系を室温に自然昇温して室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応液を氷水(100 mL)に注入し、ジクロロメタン(100 mL)で3回抽出し、合併した抽出相を水(10 mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1)により精製して中間体bを得た(1.3 g、収率:47%)。
【0176】
MS m/z (ESI): 290.0[M+1]。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 10.65 (s, 1H), 7.65 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 6.76 (s, 1H), 3.98 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 1.65 (s, 9H)。
【0177】
式Iの化合物の製造
ステップ1:
3 Lの三口フラスコにおいて、テトラヒドロフラン(150 mL)と4-ブロモベンゾニトリル(50 g)を順に加え、窒素ガス保護でイソプロピル塩化マグネシウム塩化リチウム錯体(1.3 M、210 mL)を反応系に徐々に加え、室温で2時間反応させた。次に反応系に無水テトラヒドロフラン(500 mL)を加えて希釈し、-5℃に降温し、4-メトキシピリジン(25 mL)を加え、クロロギ酸ベンジル(35 mL)を徐々に滴下し(系温度を0℃以下に維持していた)、滴下完了後に0℃で2時間撹拌しながら反応させ、その後、室温に昇温して室温で引き続き16時間反応させた。反応終了後、6 Mの塩酸(150 mL)を加えて30 min撹拌し、水(1000 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(500 mL)で2回抽出し、合併した抽出相を飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を濃縮した後に得られた粗製品をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1~1:1)により精製して化合物1を得た(23 g、収率:23%)。
【0178】
MS m/z (ESI): 333.0[M+1]。
【0179】
ステップ2:
ステップ1の2つのバッチで製造された46 gの化合物1を(28 g)取り出し、亜鉛粉末(55 g)及び酢酸(200 mL)を500 mLの単口フラスコに順に加え、反応を100℃に加熱して当該温度下で16時間撹拌した。反応終了後にろ過し、ろ液に水(500 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(500 mL)で抽出し、抽出相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500 mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(100 mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を減圧濃縮して化合物2を得た(26 g、収率:73%)。
【0180】
MS m/z (ESI): 334.8[M+1]。
【0181】
ステップ3:
500 mLの単口フラスコにおいて、テトラヒドロフラン(100 mL)、エタノール(100 mL)及び化合物2(26 g)を順に加え、次に水素化ホウ素ナトリウム(2 g)を数回に分けて加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、システムを0℃に降温し、昇温しなくなるまで飽和塩化アンモニウム水溶液(30 mL)を加え、水(500 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(200 mL)で2回抽出し、合併した抽出相を飽和食塩水(500 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を減圧濃縮して化合物3を得た(25 g、収率:76%)。
【0182】
MS m/z (ESI): 336.9[M+1]。
【0183】
ステップ4:
ジクロロメタン(200 mL)を500 mLの単口フラスコに加え、次に化合物3(25 g)、イミダゾール(6.6 g)及びtert-ブチルジフェニルクロロシラン(25 g)を順に加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、反応液を水(500 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)により精製して化合物4を得た(5.7 g、収率:13%、Rf=0.55、トランス異性体Rf=0.50)。
【0184】
MS m/z (ESI): 597.0[M+23]。
【0185】
ステップ5:
250 mLの単口フラスコにおいて、化合物4(5 g)とテトラブチルアンモニウムフルオロテトラヒドロフラン溶液(1 M、30 mL)を順に加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、水(100 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(50 mL)で3回抽出し、合併した有機相を飽和食塩水(100 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1~0:1)により精製してラセミ体を得て、当該ラセミ体をSFC(Apparatus:SFC Thar prep 80、Column:CHIRALPAK AD-H、250 mm×20 mm、5 μm、Modifier:35%のメタノール(0.2%のアンモニア水)、カラム温度:40℃、カラム圧:60 bar、波長:214/254 nm、流速:40 g/min、Rt=4.78 min)によりキラル分離して化合物5を得た(1.2 g、収率:41%)。
【0186】
MS m/z (ESI): 358.8[M+23]。
【0187】
ステップ6:
化合物5(1200 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド(10 mL)溶液に、イミダゾール(486 mg)及びtert-ブチルジメチルクロロシラン(593 mg)を加え、室温で2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応混合物に水(100 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(50 mL)で抽出し、抽出相を飽和食塩水(50 mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を直接濃縮して化合物6を得た(600 mg、収率:90%)。
【0188】
MS m/z (ESI): 472.8[M+23]。
【0189】
ステップ7:
室温でステップ6の2つのバッチの1.2 g化合物6から化合物6(700 mg)を取り出し、ジクロロメタン(10 mL)に加え、窒素ガスの保護と-78℃の条件下で、反応液にシクロプロパンカルボキシアルデヒド(110 mg)及びトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(35 mg)を加え、反応系を-78℃に維持して1時間撹拌し、次にトリエチルシラン(180 mg)を加え、室温に自然昇温して反応させ、当該温度下で引き続き16時間撹拌した。反応終了後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加えてクエンチし、水(10 mL)を加えて希釈し、ジクロロメタン(10 mL)で抽出し、有機相を水(10 mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)により精製して化合物7を得た(400 mg、収率:46%)。
【0190】
MS m/z (ESI): 390.9[M+1]。
【0191】
ステップ8:
50 mLの単口フラスコに化合物7(400 mg)、イソプロパノール(2 mL)、水(3 mL)及び水酸化ナトリウム(400 mg)を順に加え、反応混合物を100℃に加熱して当該温度下で16時間撹拌した。反応終了後、反応液に氷浴下で希塩酸(1 M)を加えてpHを5~6に調節し、水(5 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(5 mL)で抽出し、有機相を飽和食塩水(5 mL)で1回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ろ液を45℃で濃縮して化合物8を得た(200 mg、収率:33%)。
【0192】
MS m/z (ESI): 431.8[M+23]。
【0193】
ステップ9:
炭酸カリウム(135 mg)及びヨードメタン(140 mg)を化合物8(200 mg)のアセトニトリル(5 mL)溶液に加え、反応液を50℃に加熱して当該温度下で16時間撹拌した。反応終了後、反応液を直接濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)により精製して化合物9を得た(180 mg、収率:40%)。
【0194】
MS m/z (ESI): 445.8[M+23]。
【0195】
ステップ10:
化合物9(180 mg)のテトラヒドロフラン(3 mL)溶液にパラジウム/炭素(50 mg)を加え、反応液は水素ガス雰囲気と室温で接触水素化反応を2時間行った。反応終了後、反応液をろ過し、濾液を直接濃縮して化合物10を得た(120 mg、収率:54%)。
【0196】
MS m/z (ESI): 290.0[M+1]。
【0197】
ステップ11:
化合物10(120 mg)を中間体b(119 mg)の1,2-ジクロロエタン(5 mL)溶液に加え、反応を室温で8時間撹拌しながら、次に酢酸水素化ホウ素ナトリウム(261 mg)を加えて室温で引き続き16時間撹拌した。反応終了後、反応液を直接濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=20:1)により精製して化合物11を得た(200 mg、収率:26%)。
【0198】
MS m/z (ESI): 562.8[M+1]。
【0199】
ステップ12
50 mLの単口フラスコにおいて、メタノール(2 mL)、水(2 mL)、化合物11(200 mg)及び水酸化ナトリウム(150 mg)を順に加え、反応混合物を75℃に加熱して当該温度下で3時間撹拌した。反応終了後、反応液に氷浴下で希塩酸(1 M)を加えてpHを7に調節し、次に直接濃縮してPrep-HPLCにより精製して(カラム:Gemini-C18、150×21.2 mm、5 μm、流動相:アセトニトリル-水(0.1%のギ酸)、勾配:20~40%)式Iの化合物を得た(30.6 mg、収率:18%、0.5当量のギ酸含有)。
【0200】
MS m/z (ESI): 448.9[M+1]。
【0201】
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ8.18 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.69 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.32 (s, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.34 (s, 1H), 4.88-4.61 (m, 1H), 4.44-4.07 (m, 2H), 3.95-3.81 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.63-3.47 (m, 1H), 3.46-3.33 (m, 3H), 2.50 (s, 3H), 2.35-2.14 (m, 2H), 2.13-1.94 (m, 2H), 1.23-1.04 (m, 1H), 0.58 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 0.28 (d, J = 3.8 Hz, 2H)。
【0202】
以下に記載する式Iの化合物は何れも、特に断りのない限り、上記方法又は上記方法を繰り返すことによって製造される式Iの化合物である。
【0203】
実施例1 式Iの化合物の一塩酸塩の製造方法
【0204】
【0205】
式Iの化合物を複数バッチで製造した後、400 mgの式Iの化合物を取り、8 mLのイソプロパノールを加え、50℃で加熱溶解した。その後、460 μLの塩化水素イソプロパノール溶液(濃度が2 mol/L)をゆっくり滴下し、30 min撹拌し、更に8 mLのn-ヘプタンを加え、2時間撹拌を続けた。ろ過し、ろ過ケーキを50℃で減圧真空乾燥し、390 mgの式Iの化合物の一塩酸塩I-1を収率90%で得た。
【0206】
50 mgの式Iの化合物の一塩酸塩I-1を4 mLのサンプル瓶に取り出し、0.5 mLのメタノールを加えて化合物を溶解させた。次いで、サンプル開口部を、5 mLの酢酸エチルを入れた40 mLのサンプルバイアルに入れ、40 mLのサンプルバイアルを密閉したままにした。静置し、2種の溶媒を徐々に拡散させて単結晶を得て、単結晶構造図を
図24に示す。上記単結晶を試験し、式Iの化合物の一塩酸塩I-1の単結晶データを以下のように得た。
【0207】
【0208】
実施例2 式Iの化合物のリン酸塩の製造方法
式Iの化合物を複数バッチで製造し、440 mgの式Iの化合物を取り、5 mLのアセトンを加え、40℃まで加熱して超音波で溶解した。その後、460 μLの2 mol/Lのリン酸メタノール溶液をゆっくり滴下した。粘稠な固体が見出され、更に5 mLのアセトンを加え、室温で4時間撹拌した。ろ過し、洗浄し、ろ過ケーキを50℃で減圧真空乾燥し、462 mgの式Iの化合物のリン酸塩を収率87%で得た。
【0209】
実施例3 式Iの化合物のマレイン酸塩の製造方法
式Iの化合物を複数バッチで製造し、400 mgの式Iの化合物を取り、15 mLの酢酸エチルを加え、50℃まで加熱して化合物を溶解した。その後、109 mgのマレイン酸粉末を加え、室温で2~3時間撹拌した。ろ過し、ろ過ケーキを50℃で減圧真空乾燥し、470 mgの式Iの化合物のマレイン酸塩を収率91%で得た。
【0210】
実施例4 式Iの化合物の一塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩の安定性試験
式Iの化合物、実施例1の式Iの化合物の一塩酸塩、実施例2の式Iの化合物のリン酸塩、実施例3の式Iの化合物のマレイン酸塩について安定性の考察を行った。
安定性の考察条件:40℃/75% RH-closed、40℃/75% RH-open、60℃-closed、安定性の考察内容:関連物質及び結晶形変化の状況。
【0211】
関連物質の検出:約6~7 mgのサンプルをそれぞれ10 mLのメスフラスコに秤量し、50%アセトニトリル水溶液を加えて溶解し、目盛りまで希釈し、10 μLのサンプルを注入した。クロマトグラフィー条件を表6に示す。
【0212】
式Iの化合物及びその塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩の安定性の考察の実験結果を表7に示す。
【0213】
【0214】
【0215】
表7の結果から、式Iの化合物及びその一塩酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩は何れも安定であり、特に式Iの化合物の一塩酸塩の安定性が更に優れていることがわかる。
【0216】
実施例5 式Iの化合物及びその塩酸塩、リン酸塩の溶解度試験
式Iの化合物、式Iの化合物の一塩酸塩、式Iの化合物のリン酸塩が水、SGF、FaSSIF、FeSSIFにおける37℃条件での溶解度を考察した。
実験方法:30 mg(水中)又は15 mgのサンプルを4 mLのバイアルに秤取し、3 mLの測定待ち媒体(水、SGF、FaSSIF、FeSSIF)を加え、37℃条件で撹拌を続け、1 h、24 hでそれぞれ0.5 mLをサンプリングし、12000 rpmで、10 min遠心分離し、上清液を50%アセトニトリル水溶液で適宜倍数で希釈した後、その濃度を測定した。溶解性試験のクロマトグラフィー条件を表8に示す。
【0217】
対照品及び線型:10 mgの式Iの化合物を50 mLのメスフラスコに秤取し、50%アセトニトリル水溶液を加えて溶解し、目盛りまで希釈し、2つを並行して調製した。式Iの化合物の対照品を取り、50%アセトニトリル水溶液で100 μg/mL、50 μg/mL、10 μg/mLに希釈し、5 μLのサンプルを注入し、標準曲線を描いた。
【0218】
式Iの化合物及びその塩酸塩、リン酸塩の溶解度試験の結果を表9に示す。
【0219】
【0220】
【0221】
表9から明らかなように、式Iの化合物は、塩を形成した後、水中の溶解度が向上している。
【0222】
対照化合物
【0223】
【0224】
50 mLの単口フラスコにメタノール(3 mL)、水(1 mL)、中間体1(160 mg)及び水酸化ナトリウム(230 mg)を加えた。室温で16時間反応させた。反応終了後、水(10 mL)を加えて希釈し、希塩酸溶液(1 M)でpH=7~8に調節し、減圧して溶媒を除去し(水浴:45℃)、残留物を高速液体分取クロマトグラフィー(カラム:Gemini-C18、150×21.2 mm、5 μm、流動相:アセトニトリル-水(0.1%のギ酸)、勾配:15~30%)により精製して対照化合物を得た(29 mg、収率:24%)。MS m/z (ESI): 423.1 [M+1]. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.17 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.33 (t, J = 2.8 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H), 6.35 (s, 1H), 4.82-4.67 (m, 1H), 4.40-4.17 (m, 2H), 3.90-3.81 (m, 1H), 3.77 (s, 3H), 3.62 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.57-3.50 (m, 1H), 3.45-3.35 (m, 1H), 2.52 (s, 3H), 2.32-2.22 (m, 2H), 2.14-1.96 (m, 2H), 1.32 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
生物学的実施例1
1.光学表面プラズモン共鳴(SPR)結合力の検出
SPR実験は、25℃の条件下で、0.05%(v/v)のP20と5%のDMSOが補充されたPBS緩衝液を泳動用緩衝液としており、使用された分析機器はGE HealthcareのBiacore 8Kである。400 mMのEDCと100 mMのNHSは、30 μL/minの流速でCM7チップ(GE Healthcare)を420 s活性化した。補体B因子を10 mMの酢酸ナトリウム(pH 4.0)で50 μg/mLに希釈し、次に10 μL/minの流速で1200 sカップリングすることで、補体B因子を検出チップに共有結合で固定し(タンパク質固定化レベルは25000 RUである)、次に検出チップに1 Mの塩酸エタノールアミンにより10 μL/minの流速で300 s作用してチップを封止した。測定待ちの化合物の濃度は500 μM、結合時間は120 s、分離時間は300 sであった。データ分析は、1:1のbinding結合モデルを使用して分析した(Biacore Insight Evalution Software、Version2.0.15.12933)。
【0225】
実験結果:
実験結果は表10に示される。500 μMの濃度で、式Iの化合物は、標的タンパク質とより顕著な結合能力を有し、対照化合物より顕著に優れており、式Iの化合物は標的タンパク質と比較的良い結合能力を有することが示されている。
【0226】
【0227】
2.TR-FRET結合力の検出
Cy5蛍光で標識された小分子阻害剤をプローブとした競合的結合実験により、化合物のヒト補体因子Bに対する阻害活性をスクリーニングした。補体因子BとEZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-LC-Biotinは、1:2の比率で氷上で1時間インキュベートした後に1 MのTris(pH7.5)を加えて反応を終了させた。続いて、2 mLのZebaTM desalt spin columnで2回精製してビオチンで標識された補体因子Bを得た(EZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-Biotin説明書)。実験する時、最終濃度が10 nMであるビオチンで標識された補体因子Bと様々な濃度の化合物を取って緩衝液において室温で1時間プレインキュベートした。最終濃度がそれぞれ75 nMと5 nMであるCy5蛍光で標識されたプローブ及びユウロピウムキレート化合物で標識されたストレプトアビジン(石油エーテルrkin Elmer、#AD0060)を加え、反応を開始した。マイクロプレートリーダー(337 nmで光を励起し、665 nmで光を放出し、70 μsのtime-gated)で動態読取を実行し、時間依存性蛍光エネルギー移動(TR-FRET)のデータを読み取り、IC50を決定した。
【0228】
3.補体系によるC3加水分解活性の検出
試験化合物の試験濃度は、10 μMから始め、3倍希釈し、7つの濃度ポイントであり、ウェルごとに検出した。96ウェルプレートにおいて、DMSOにより試験化合物を最終濃度が1000倍の溶液に希釈し、更にDiluent(WIESLAB(登録商標) COMPLEMENT SYSTEM ALTERNATIVE PATHWAY AP330)により最終濃度が5倍の溶液に希釈した。96ウェルプレートに30 μLを移し、120 μLの予備血清を加え、室温で15 minインキュベートした。陽性対照ウェルに5‰のDMSO 30 μL及び予備血清120 μLを加え、陰性対照ウェルに5‰のDMSO 30 μL及びDiluent 120 μLを加えた。(3)反応プレートに100 μLを加え、37℃で60 minインキュベートした。ウェル内の液体を捨て、各ウェルを300 μLの洗浄液で3回洗浄した。各ウェルごとに100 μLのConjugate(WIESLAB(登録商標) COMPLEMENT SYSTEM ALTERNATIVE PATHWAY AP330)を加え、室温で30 minインキュベートした。ウェル内の液体を捨て、各ウェルを300 μLの洗浄液で3回洗浄した。次に各ウェルごとに100 μLの基質を加え、室温で30 minインキュベートした。マイクロプレートリーダー(Perkin Elmer、EnSight)により検出し、OD405値を読み取った。4.補体溶血活性の検出
溶血実験は、Xuan Yuan et al.、Haematologica(2017)102:466-475における記載を参照し、実験前に、ウサギ赤血球(RE)の100%熱分解を達成するために必要な正常なヒト血清(NHS)の最適濃度は滴定試験によって得られた。当該実験において、NHSは、10 mMのMg-EGTAを含有するGVB0緩衝液(0.1%のゼラチン、5 mMのVeronal、145 mMのNaCl、0.025%のNaN3、pH7.3、Complement technology)で希釈され、且つ様々な濃度勾配の試験化合物と共に37℃で15 minインキュベートされた。10 mMのMg-EGTAを含有するGVB0緩衝液に新しく懸濁されるRE(健康なジャパニーズホワイトラビットから取った)を、1×108細胞/mLの最終濃度に達するまで加え、且つ37℃で30 minインキュベートした。陽性対照群(100%熱分解)は、NHS及びREを含むが、試験化合物を含まない、10 mMのMg-EGTAを含有するGVB0緩衝液で構成され、陰性対照群(0%熱分解)は、不活性化されたNHS(56℃で30 min加熱するか、又は65℃で5 min加熱する)及びREを含むが、試験化合物を含まない、10 mMのMg-EGTAを含有するGVB0緩衝液で構成された。サンプルを2000 gで5 min遠心分離した後、上清を収集した。415 nmでの吸光度(A415)は、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、SpectraMax i3X)により検出された。IC50値は、非線形回帰により、試験化合物濃度の関数である溶血百分率から算出された。
【0229】
実験結果:
実験結果は表11に示される通りであり、そのうち、式Iの化合物は、ヒト血清中の補体B因子に対する阻害活性が対照化合物より顕著に優れており、本発明の化合物は、ヒト血清中の補体B因子活性を比較的良く阻害し、ウサギ赤血球への攻撃による溶血を防止できることが示されている。
【0230】
【0231】
5.肝臓ミクロソーム安定性実験
(1)緩衝液の調製
0.1 Mのリン酸水素二カリウム蒸留水溶液(1 mMのエチレンジアミン四酢酸を含む)を取り、次に0.1 Mのリン酸二水素カリウム蒸留水溶液(1 mMのエチレンジアミン四酢酸を含む)でpH7.4に調節した。
【0232】
(2)ミクロソーム供給源及び作動液の調製
ミクロソーム供給源:
ラット:SD Rat Liver Microsomes、Cat. No.:LM-DS-02M、RILD瑞徳肝臓疾患研究(上海)有限公司。
【0233】
サル:Cynomolgus Monkey Liver Microsomes、Cat. No.:LM-SXH-02M、RILD瑞徳肝臓疾患研究(上海)有限公司。
【0234】
ヒト:Pooled Human Liver Microsomes(Mongolian)、Cat. No.:LM-R-02M、RILD瑞徳肝臓疾患研究(上海)有限公司。
【0235】
作動液の調製
対照化合物と試験化合物をそれぞれDMSOで10 mMの溶液に製造し、次に10 μLを取って190 μLのアセトニトリルに加えて0.5 mMの母液に調製した。0.5 mMの化合物の母液1.5 μLを取り、18.75 μMの肝臓ミクロソーム20 mg/mL及び緩衝液479.75 μLを加えた。(実際の調製量は使用状況に応じて調整することができる)。
【0236】
(3)実験過程
緩衝液で10 mg/mLの還元型補酵素II(NADPH)を調製した。1つの96ウェルプレートを氷上に置き、各化合物のそれぞれに異なる時点の対応するウェル(0、10、30、60、90 min、Non-NADPH)を設置し、各ウェルごとに30 μLの作動液を加えた。0 minのウェルにまず155 μLの氷アセトニトリル溶液(内部標準濃度は1 μMである)を加え、ピペットで均一に混合した後に15 μLのNADPH(10 mg/mL)を加えた。反応開始前、96ウェルプレートを恒温マイクロウェルプレート振とう器(37℃)にて5 minプレインキュベートし、そして各ウェルごとに15 μLのNADPH(10 mg/mL)を加えて代謝反応を開始した。10、30、60、90 min反応させた後、対応するウェルにそれぞれ155 μLの氷アセトニトリル溶液(内部標準濃度は1 μMである)を加えて反応を停止させた。Non-NADPH系に90 min後、155 μLの氷アセトニトリル溶液(内部標準濃度は1 μMである)を加えて反応を停止させた。反応終了後、96ウェルプレートをマイクロウェルプレート振とう器(600 rpm)で10 min振とうし、次に4℃と4000 gで15 min遠心分離し、上清50 μLを取って1つの新しい2 mLの96ウェルプレートに加え、更に300 μLの脱イオン水を加え、AB SCIEX ExionLC-Triple Quad 5500高速液体クロマトグラフィ質量分析計で分析し、使用されたソフトウェアはAnalyst 1.6.3であった。その結果を表12に示す。
【0237】
【0238】
実験結果:データによると、式Iの化合物は、顕著な肝臓ミクロソーム安定性を有することが示されている。
【0239】
6.ラット単回胃内投与のPK実験
実験方法:
6~9週齢のWistar han雄ラット(上海西普爾-必凱実験動物有限公司)を使用し、一晩絶食させ、1群当たり3匹で、胃内投与し、それぞれ対照化合物、式Iの化合物を3 mg/kgずつ投与し、投与体積が10 mL/kgで、頸静脈から血液を採取し、各時点で0.2 mLであり、EDTA-K2で抗凝固処理した後、直ちに4000 rpm*5 min、4℃の条件下で遠心分離し、上清を取り、サンプルを検出まで-80℃の冷蔵庫に保存した。採血時点:投与前、5 min、15 min、30 min、1 h、2 h、4 h、7 h、24 h。投与後、動物の状態を随時観察し、全時点での採血完了後に動物を安楽死させた。血漿サンプルはLC-MS/MSで測定し、データはWinNonlinソフトウェアで動態パラメータを算出した(Tmax、Cmax、T1/2、AUC)。
【0240】
実験結果:
試験結果を表13に示す。
【0241】
【0242】
7.カニクイザル単回胃内投与のPK/PD実験
実験方法:
カニクイザルを使用し、1群当たり3匹で対照化合物3 mpk、対照化合物30 mpk、式Iの化合物3 mpk、式Iの化合物30 mpkを胃内投与により投与し、薬物濃度分析及び補体活性検出のために異なる時点で採血し、血漿化合物濃度はLC-MS/MSで測定し、血清補体活性はwieslab assay(Svar Life Science AB、COMPL AP330 RUO)キットで検出し、そのうち、Normal Human Serum(Complement Technology、NHS)であった。
【0243】
実験結果:
検出される濃度と時間範囲内で、同じ用量下で、式Iの化合物の血中薬物濃度の平均値は、対照化合物より明らかに高い。カニクイザルの血中薬物濃度曲線は
図21に示され、カニクイザルの血清AP活性の阻害は
図22に示されている。
図22は、式Iの化合物がカニクイザルの血清AP活性を効果的に阻害できることを示している。
【0244】
8.連鎖球菌誘発性のラットリューマチ性関節炎(RA)モデル
実験方法:
実験では、6~9週齢のLewis雌ラット(北京維通利華)を使用し、1群当たり6匹のラットであり、D1に腹腔内注射により連鎖球菌及び他の幾つかの細菌の細胞壁ペプチドグリカン複合体(ラット1匹当たり2~3 mg)を投与し、対照化合物(15 mpk)及び式Iの化合物(15 mpk)を25日間連続的に毎日胃内投与し、異なる時間にラットに対して関節炎を採点した。採点基準は次の通りである。病変のそれぞれの程度(発赤と腫脹)によって0~4点の基準で採点し、個々の肢体の最高評点は4点、個々の動物の全四肢の最高評点は16点である。採点基準は次の通りである。0点は発赤と腫脹なし、1点は1~2個の指節間関節の発赤と腫脹、2点は3~4個の指節間関節の発赤と腫脹、3点は4個以上の指節間関節の発赤と腫脹、4点は足の指や手の指から足首関節や手首関節までの重度の発赤と腫脹である。
【0245】
実験結果:
実験結果は
図23に示されており、データによると、式Iの化合物は関節炎に対する採点を改善することができ、且つその効果は対照化合物より顕著に優れていることが示されており、式Iの化合物は連鎖球菌誘発性のラットリューマチ性関節炎をより効果的に改善できることが証明されている。
【0246】
実施例6 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Aの製造方法
400 mgの式Iの化合物を取り、8 mLのイソプロパノールを加え、50℃で加熱溶解した。その後、460 μLの塩化水素イソプロパノール溶液(濃度が2 mol/L)をゆっくり滴下し、30 min撹拌し、更に8 mLのn-ヘプタンを加え、2時間撹拌を続けた。ろ過し、ろ過ケーキを50℃で減圧真空乾燥し、390 mgの式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Aを収率90%で得た。
【0247】
結晶形Aを、XRPD、DSC、TGA及びPLMによって特徴付けた。
【0248】
上記結晶形Aは無水物であった。XRPD特徴的なピークの位置及び強度を表1に示し、XRPDパターンを
図1に示す。
【0249】
DSCは、ピーク温度192.73℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度201.78℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示し、
図2に示す。
【0250】
TGAは、90℃~180℃の範囲で約1.41%の重量損失を示し、
図3に示す。
【0251】
PLMパターンは、サンプルが20 μm以下の不規則な形態の結晶であり、
図4に示す。
【0252】
結晶形AのXRPDパターンは、2θ角で表されるX線粉末回折パターンにおいて、回折ピークの2θ角及び相対強度が表Aに示され、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0253】
【0254】
実施例7 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Bの製造方法
結晶形Aは、加速条件(40℃/75% RH)で開口状態で72 h放置され、結晶形Bに変換された。当該結晶形Bは、式Iの化合物一塩酸塩の一水和物である。
【0255】
結晶形Bを、XRPD、DSC、TGA及びPLMによって特徴付けた。
【0256】
XRPD特徴的なピークの位置及び強度を表2に示し、XRPDパターンを
図5に示す。
【0257】
DSCは、ピーク温度85.87℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度197.54℃付近に第2の吸熱ピークが現れ、ピーク温度205.68℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示し、
図6に示す。
【0258】
TGAは、21.49℃~120℃の区間内に約3.42%の重量損失を有し、179.88℃~207.94℃の区間内に約0.49%の重量損失を有することを示し、
図7に示す。
【0259】
PLMパターンは、サンプルが20 μm以下の不規則な形態の結晶であり、
図8に示す。
【0260】
結晶形BのXRPDパターンは、2θ角で表されるX線粉末回折パターンにおいて、回折ピークの2θ角及び相対強度が表Bに示され、そのうち、上記2θ角の誤差範囲は±0.20°である。
【0261】
【0262】
実施例8 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cの製造方法
式Iの化合物(3.15 g)を三口フラスコに加え、メタノール(12.6 mL)を加えて撹拌し、完全に溶解した。常温で1.8N HClのメタノール溶液(3.05 g)を滴下し、10 min撹拌した後にろ過した。ろ液を三口フラスコに入れ、メチルtert-ブチルエーテル(78.75 mL)を常温で滴下し、2時間撹拌し、ろ過し、ろ過ケーキを乾燥して結晶形C(3.06 g)を得て、収率は90%であった。
【0263】
結晶形Cは無水物であり、結晶形Cを、XRPD、DSC、TGA及びPLMによって特徴付けた。
【0264】
XRPD特徴的なピークの位置及び強度を表3に示し、XRPDパターンを
図9に示す。
【0265】
DSCは、ピーク温度209.93℃付近に加熱すると、第1の吸熱ピークが現れ、ピーク温度215.80℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示し、
図10に示す。
【0266】
TGAは、21.62℃~120℃の区間内に約0.29%の重量損失を有し、173.94℃~216.60℃の区間内に約0.52%の重量損失を有することを示し、
図11に示す。
【0267】
PLMパターンは、サンプルが20 μm以下の不規則な形態の結晶であり、
図12に示す。
【0268】
結晶形CのXRPDパターンは、2θ角で表されるX線粉末回折パターンにおいて、回折ピークの2θ角及び相対強度が表Cに示される。
【0269】
【0270】
実施例9 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Dの製造方法
400 mgの式Iの化合物の一塩酸塩を取り、8 mLのジクロロメタンを加え、常温で24時間撹拌した。得られた懸濁液を遠心分離により分離し、固体を40℃で減圧真空乾燥し、上記固体は結晶形Dであった。
【0271】
上記結晶形Dは、式Iの化合物の一塩酸塩の一ジクロロメタン溶媒和物(又は、モノジクロロメタン溶媒和物と称する)であった。
【0272】
結晶形Dを、XRPD、DSC、TGA及びPLMによって特徴付けた。
【0273】
XRPD特徴的なピークの位置及び強度を表4に示し、XRPDパターンを
図13に示す。
【0274】
DSCは、ピーク温度196.53℃付近に第1の発熱ピークが現れることを示し、
図14に示す。
【0275】
TGAは、22.07℃~120℃の範囲で約6.31%の重量損失を示し、
図15に示す。
【0276】
PLMパターンは、サンプルが10 μm以下の不規則な形態の結晶であり、
図16に示す。
【0277】
結晶形DのXRPDパターンは、2θ角で表されるX線粉末回折パターンにおいて、回折ピークの2θ角及び相対強度が表Dに示される。
【0278】
【0279】
実施例10 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Eの製造方法
400 mgの式Iの化合物の一塩酸塩を取り、8 mLのイソプロパノールを加え、常温で72時間撹拌した。得られた懸濁液を遠心分離により分離し、固体を40℃で減圧真空乾燥し、上記固体は結晶形Eであった。
【0280】
上記結晶形Eは、式Iの化合物の一塩酸塩の一イソプロパノール溶媒和物である。
【0281】
結晶形EをXRPDによって特徴付け、XRPDパターンを
図17に示す。
【0282】
結晶形EのXRPDパターンは、2θ角で表されるX線粉末回折パターンにおいて、回折ピークの2θ角及び相対強度が表Eに示される。
【0283】
【0284】
実施例11 式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cの安定性の考察
式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cを40℃/75% RH-closed(密閉)、40℃/75% RH-open(開口)、60℃-open(開口)の条件におき、1か月に取り出し、その結晶形について安定性の考察を行った。
【0285】
クロマトグラフィー条件の試験を表14に示す。
【0286】
安定性サンプル関連物質の測定方法:約6 mgのサンプルを40 mLの清浄なガラス瓶に秤取し、10 mLの50%アセトニトリル水溶液を加え、超音波により完全に溶解させ、10 μLのサンプルを注入して関連物質の試験を行い、表15に示す。XRPDパターンは
図18に示し、そのうち、HCl-salt Form3-initial(以下initialと呼ぶ)は、実施例8で製造された結晶形CのXRPDパターンを表す。
【0287】
【0288】
【0289】
以上のデータから、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cは40℃/75% RH、60℃で1か月放置し、その化学的安定性が良好であることがわかる。また、
図18から、式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cの結晶形は変化していないことがわかる。
【0290】
実施例12 高温、高湿による結晶形Cへの影響
式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cを、60℃、80% RH、92.5% RHの条件で開口状態に置き、結晶形が著しく変化したかどうかを評価した。そのXRPDを、それぞれ1 d、3 dでサンプリングして試験した。XRPDを
図19、20に示す。
【0291】
図19、
図20から、式Iの化合物一塩酸塩の結晶形Cは、高温高湿の条件に1日、3日曝した後も、結晶形Cが変化していなかったことがわかる。
【0292】
実施例13 式Iの化合物、結晶形A及びBの混合物、結晶形Cの溶解度試験
バイアルに適量の試験サンプルを秤取り、3 mLの媒体(水、SGF、FaSSIF、FeSSIFなど)を加え、37℃で撹拌し、それぞれ1 h、24 hに適量のサンプルを取り、12000 rpm、10 min遠心分離し、上清を50%アセトニトリル水溶液で適当倍数に希釈した後、その濃度を測定した。溶解性試験のクロマトグラフィー条件を表16に示す。
【0293】
対照品及び線型:10 mgの式Iの化合物を50 mLのメスフラスコに秤取し、50%アセトニトリル水溶液を加えて溶解し、目盛りまで希釈し、2つを並行して調製した。対照品を取り、50%アセトニトリル水溶液で100 μg/mL、50 μg/mL、10 μg/mLに希釈し、5 μLのサンプルを注入し、標準曲線を描いた。
【0294】
試験結果は表17に示す。
【0295】
【0296】
【0297】
以上の実験結果から、結晶形Cは、結晶形A及びBの混合物に比べて水への溶解度が低いことがわかる。
【0298】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。しかし、本願の請求範囲は、上記例示的な実施形態に限定されてはならない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲内で、当業者により行われた何れの修正、同等置換、改善なども、全て本願の特許請求の範囲の内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩であって、
【化1】
前記薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と酸又は塩基と形成される塩であり、
前記酸は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、ピロ硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、カンファー酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ナイアシン、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、L-酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、ヘミ硫酸又はチオシアン酸から選ばれる1種であり、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、L-酒石酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ラウリン酸、安息香酸、及びベンゼンスルホン酸のうちの1種であり、
前記塩基は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物から選ばれ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、その塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、L-酒石酸塩及びシュウ酸塩から選ばれる1種であり、
より好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と塩酸と形成される塩であり、更に好ましくは、前記式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、式Iの化合物と塩酸と形成される一塩酸塩である、
式Iの化合物の薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩の製造方法であって、前記製造方法は、式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含み、
好ましくは、前記製造方法は、溶媒で式Iの化合物を上記酸又は塩基と反応させ、式Iの化合物の薬学的に許容される塩を得ることを含み、
好ましくは、前記溶媒は、アルコール系、ケトン系、エステル系、エーテル系、前記溶媒の2種以上の組み合わせ、或いは上記溶媒又は組み合わせのそれぞれと水との混合物から選ばれ、
好ましくは、前記アルコール系は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ネオペンチルアルコール、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの1~8個の炭素原子を有するアルコールから選ばれ、前記ケトン系は、アセトン、ブタノン、ペンタノン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの3~10個の炭素原子を有するケトンから選ばれてもよく、前記エステル系は、ギ酸メチル、酢酸エチル、ギ酸イソブチル、酢酸イソプロピル、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの有機カルボン酸エステルから選ばれてもよく、前記エーテル系は、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチル-テトラヒドロフラン、又はこれらの2種以上の組み合わせなどの直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエーテル若しくは環状エーテル系化合物であってもよく、
好ましくは、式Iの化合物と前記酸又は塩基とのモル比は、1:0.8~1:1.5であり、
前記酸又は塩基は、互いに独立して、請求項1に記載の定義を有する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の単結晶であって、前記単結晶の単位胞パラメータは以下の通りである、
斜方晶系、空間群P2
12
12
1、
a = 9.4704 (18) Å、
b = 15.324 (4) Å、
c = 17.437 (4) Å、
V = 2530.5 (10) Å
3、
Z = 4、
ことを特徴とする単結晶。
【請求項4】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Aであって、前記結晶形AはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、23.46±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、18.10±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.66±0.20°、11.62±0.20°、16.08±0.20°、16.84±0.20°、18.10±0.20°、19.64±0.20°、21.30±0.20°、21.68±0.20°、23.40±0.20°、24.96±0.20°、25.42±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表1】
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図1に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物であり、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図2に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図3に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Aは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Aの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Aは、基本的に
図4に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形A。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Bであって、前記結晶形BはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.48±0.20°、10.78±0.20°、15.44±0.20°、18.10±0.20°、19.18±0.20°、19.80±0.20°、22.10±0.20°、30.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表2】
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図5に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、式Iの化合物の一塩酸塩の一水和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の水和物であり、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図6に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図7に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Bは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Bの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Bは、基本的に
図8に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形B。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Cであって、前記結晶形CはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、14.74±0.20°、17.80±0.20°、19.58±0.20°、20.08±0.20°、21.98±0.20°、22.94±0.20°、25.92±0.20°、33.48±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表3】
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図9に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、式Iの化合物の一塩酸塩の無水物であり、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図10に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図11に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Cは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Cの粒径は20 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Cは、基本的に
図12に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形C。
【請求項7】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Dであって、前記結晶形DはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、15.74±0.20°、16.58±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、20.24±0.20°、21.98±0.20°、23.82±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、10.16±0.20°、11.90±0.20°、12.60±0.20°、15.74±0.20°、16.58±0.20°、19.22±0.20°、19.80±0.20°、21.98±0.20°、22.66±0.20°、23.18±0.20°、23.82±0.20°、24.94±0.20°、26.24±0.20°、26.80±0.20°、27.50±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表4】
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図13に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、式Iの化合物の一塩酸塩のジクロロメタン溶媒和物、式Iの化合物の一塩酸塩のモノジクロロメタン溶媒和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物であり、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図14に示されるDSCパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図15に示されるTGAパターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Dは、不規則な形態の結晶であり、好ましくは、前記結晶形Dの粒径は10 μm以下であり、
好ましくは、前記結晶形Dは、基本的に
図16に示されるPLMパターンを有する、
ことを特徴とする結晶形D。
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの化合物の一塩酸塩の結晶形Eであって、前記結晶形EはCu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、22.10±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、7.20±0.20°、9.36±0.20°、15.22±0.20°、16.88±0.20°、18.78±0.20°、21.10±0.20°、22.10±0.20°、23.68±0.20°、26.04±0.20°、27.86±0.20°に特徴的なピークを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、Cu-Kα線を用い、2θ角で表されるX線粉末回折は、以下に示される特徴的なピークを有し、そのうち、前記2θ角の誤差範囲は±0.20°であり、
【表5】
好ましくは、前記結晶形Eは、基本的に
図17に示されるX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、前記結晶形Eは、式Iの化合物の一塩酸塩の一イソプロパノール溶媒和物などの、式Iの化合物の一塩酸塩の溶媒和物である、
ことを特徴とする結晶形E。
【請求項9】
請求項4~8の何れか一項に記載の結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、又は結晶形Eの製造方法であって、
前記結晶形Aの製造方法は、以下の方法から選ばれる1種を含み、
製造方法一は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、HClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでノルマルアルカンを加えて結晶化し、前記結晶形Aを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mLであり、
好ましくは、前記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/Lであり、
製造方法二は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒及びノルマルアルカンで加熱撹拌し、溶解して清澄化した後に結晶化して、前記結晶形Aを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、エタノール及び/又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記ノルマルアルカンは、n-ヘキサン及び/又はn-ヘプタンから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩、アルコール系溶媒、及びノルマルアルカンの質量対体積比は、1 g:(10~30) mL:(10~30) mLであり、
好ましくは、前記加熱の温度は45~75℃であり、
前記結晶形Bの製造方法は、請求項4に記載の結晶形Aを高湿条件に置いて結晶形Bを得ることを含み、
好ましくは、前記高湿条件は、温度が30~50℃であり、湿度が60%~98%であり、
好ましくは、前記高湿条件は、温度が40℃であり、湿度が75%~95%であり、
前記結晶形Cの製造方法は、式Iの化合物をアルコール系溶媒に溶解し、次いでHClがアルコール系溶媒にある溶液を加えて塩を形成し、次いでエーテル系溶媒又はエステル系溶媒を加えて結晶化し、結晶形Cを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記エーテル系溶媒は、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテルから選ばれ、
好ましくは、前記エステル系溶媒は、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物、アルコール系溶媒、及びエーテル系溶媒又はエステル系溶媒の質量対体積比は、1 g:(2~8) mL:(20~40) mLであり、
好ましくは、前記HClがアルコール系溶媒にある溶液の濃度は、1~3 mol/Lであり、前記式Iの化合物とHClがアルコール系溶媒にある溶液との質量比は、1 g:(0.5~1.5) gであり、
前記結晶形Dの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をハロゲン化アルカンに室温で懸濁撹拌して結晶を形成させ、結晶形Dを得ることを含み、
好ましくは、前記ハロゲン化アルカンは、ジクロロメタン、クロロホルム又は四塩化炭素から選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩とハロゲン化アルカンとの質量対体積比は、1 g:(15~35) mLであり、
前記結晶形Eの製造方法は、式Iの化合物の一塩酸塩をアルコール系溶媒中で室温で懸濁撹拌して結晶を形成し、結晶形Eを得ることを含み、
好ましくは、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選ばれ、
好ましくは、前記式Iの化合物の一塩酸塩とアルコール系溶媒との質量対体積比は、1 g:(15~35) mLである、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
医薬組成物であって、請求項1
及び3~8の何れか一項に記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩、結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形Eの少なくとも1種、及び任意選択的に薬学的に許容される補助剤を含み、
好ましくは、前記医薬組成物は、製剤の形態である、
医薬組成物。
【請求項11】
補体因子B媒介性疾患又は病症の予防及び/又は治療用薬物の製造における、請求項1
及び3~8の何れか一項記載の式Iの化合物の薬学的に許容される塩、結晶形A、結晶形B、結晶形C、結晶形D、結晶形
Eの少なくとも1種の使用であって、
好ましくは、前記補体因子B媒介性疾患又は病症は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、原発性糸球体腎炎(IgAN)、膜性腎症(MN)、C3糸球体腎炎(C3G)、加齢黄斑変性症(AMD)、地理的萎縮症(GA)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、糖尿病性網膜症病変(DR)、血液透析合併症、溶血性貧血又は血液透析、神経脊髓炎(NMO)、関節炎、リューマチ性関節炎、肝臓系炎症、皮膚筋炎と筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症(MG)、呼吸系疾患及び心臓血管などの疾患から選ばれる少なくとも1種である、
使用。
【国際調査報告】