(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】金属コーティングジルコニア物品
(51)【国際特許分類】
A61B 5/263 20210101AFI20250109BHJP
【FI】
A61B5/263
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539277
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 IB2022062395
(87)【国際公開番号】W WO2023126757
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット エム.ボーゲル-マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリーン ツェー.ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル アール.ヘイ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エー.オー.オルソン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL02
4C127LL22
4C127LL30
(57)【要約】
金属コーティングジルコニア物品は、表面処理表面である少なくとも1つの表面を有する。表面処理表面は、リン酸塩処理表面である。表面処理表面の少なくとも一部は、金属の層により被覆されている。金属被覆部は、表面処理されていない同一の表面よりも表面処理表面の方に強く接着する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コーティング物品であって、
少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品であって、前記表面の少なくとも一部が、リン酸塩表面処理表面を含む表面処理表面を含む、前記ジルコニア含有物品と、
前記表面処理表面の少なくとも一部を被覆する金属の層であって、前記金属被覆部が、表面処理されていない同一の表面よりも前記表面処理表面の方に強く接着する、前記金属の層と
を含む、前記金属コーティング物品。
【請求項2】
前記ジルコニア含有物品が、非圧縮成形ジルコニア含有粒子を含む、請求項1に記載の金属コーティング物品。
【請求項3】
前記非圧縮成形ジルコニア含有粒子が、少なくとも1つの点を含む、請求項2に記載の金属コーティング物品。
【請求項4】
前記非圧縮成形ジルコニア含有粒子の少なくとも1つの寸法が、175~1,500マイクロメートルである、請求項3に記載の金属コーティング物品。
【請求項5】
前記金属が、銀、銅、亜鉛、金、アルミニウム、鉄若しくはニッケル、又はそれらの合金を含む、請求項1に記載の金属コーティング物品。
【請求項6】
前記金属コーティングが、20ナノメートル~2マイクロメートルの厚さを有する、請求項1に記載の金属コーティング物品。
【請求項7】
前記金属コーティングが導電性である、請求項1に記載の金属コーティング物品。
【請求項8】
電極を含む、請求項1に記載の金属コーティング物品。
【請求項9】
金属コーティング物品を調製する方法であって、
少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品を用意する工程と、
前記物品の前記少なくとも1つの主表面の少なくとも一部をリン酸塩表面処理により表面処理して、リン酸塩処理表面を生成する工程と、
前記表面処理表面の少なくとも一部の表面に金属の層を配設する工程と、
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記金属が、銀、銅、亜鉛、金、アルミニウム、鉄若しくはニッケル、又はそれらの合金を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
表面処理する工程が、前記ジルコニア含有表面を、リン酸、リン酸塩又はそれらの組合せ物の溶液により処理することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記表面処理表面の少なくとも一部の表面に金属の層を配設する工程が、化学的還元反応による金属溶液からの金属の堆積を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記金属が銀を含み、金属溶液に由来する金属の前記堆積がトレンス反応である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属が銀を含み、金属溶液に由来する金属の前記堆積が熱還元プロセスである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記表面処理表面の少なくとも一部の金属の層を配設する工程が、スパッタリング又は蒸着プロセスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ジルコニア含有物品が、非圧縮成形ジルコニア含有粒子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記非圧縮成形ジルコニア含有粒子が、少なくとも1つの点を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記非圧縮成形ジルコニア含有粒子の少なくとも1つの寸法が、175~1,500マイクロメートルである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属コーティングが導電性である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
金属コーティングジルコニア物品及び金属コーティングジルコニア物品を調製する方法が本明細書において開示される。
【0002】
一部の実施形態では、金属コーティングジルコニア物品は、少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品を含み、表面の少なくとも一部は、リン酸塩表面処理表面を含む表面処理表面と、表面処理表面の少なくとも一部を被覆する金属の層とを含む。金属被覆部は、表面処理されていない同一の表面よりも表面処理表面の方に強く接着する。
【0003】
同様に、金属コーティングジルコニア物品を調製するための方法が開示される。一部の実施形態では、金属コーティング物品を調製する方法は、少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品を用意する工程と、物品の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部をリン酸塩表面処理で表面処理してリン酸塩処理表面を生成する工程と、表面処理表面の少なくとも一部の上に金属の層を配設する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本出願は、添付の図面に関連して本開示のさまざまな実施形態の以下の詳細説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【
図1】本開示の金属コーティング物品の上面図である。
【
図2】本開示の金属コーティング粒子を組み込んだドライ電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
例示される実施形態の以下の説明では、本開示が実践され得るさまざまな実施形態が例示として示される、添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態を利用することができ、構造上の変更を行うことができることを理解されたい。図面は必ずしも縮尺どおりではない。図中で使用される同様の番号は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図における構成要素を指すための番号の使用は、同じ番号で標識された別の図における構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0006】
広範囲の物品をジルコニアから調製することができる。そのような物品の例は、成形非圧縮粒子及び広範囲の成形物品である。成形非圧縮粒子は、広範囲の用途に使用される。1つの最近の用途は、電極における成形非圧縮粒子の使用である。この使用では、粒子は、導電性金属で被覆されるか、又は少なくとも部分的に被覆される。ジルコニア粒子は、従来のコーティング技法によって導電性金属によりコーティングすることが困難である。
【0007】
銀などの金属をジルコニア基板上にコーティングするために検討されてきた1つの技術が、「Adhesion of Silver Films to Ion-Bombarded Zirconia」、R.A.Erck and G.R.Fenske in Lubrication Engineering,1991,Volume 47-8,pp.640-644に記載されている。この報告では、ジルコニア基板への銀層の接着は、イオン衝撃又はイオン衝撃とクロム又はチタンの薄い中間層との組合せ物を使用することによって増大される。これらの技法の使用は、金属コーティング物品の大規模生産には好適ではなく、特に、クロム中間層の使用は、ヒト皮膚に接触するよう設計されている医療用物品では問題がある。更に、これらの技法は、小型ジルコニア粒子を利用することが困難であるか、又は不可能である。したがって、金属コーティングを有するジルコニア含有物品、とりわけ、粒子を調製するための便利で、効率的で、かつ費用効果の高い方法が依然として必要とされている。金属コーティングジルコニア粒子を調製するためのそのような方法が本明細書において開示される。
【0008】
上記のように、非圧縮粒子、とりわけ金属コーティング非圧縮粒子は、広範囲の用途、とりわけ電極において有用である。そのような粒子が特に使用されることが見出されている電極の中には、例えば、PCT公開第2020/099965号に記載されているような、いわゆる「ドライ電極」がある。
【0009】
生体電位を測定するための電極は、現代の臨床的用途及び生物医学的用途において広く使用されている。その用途は、心電図検査(ECG)、脳波検査(EEG)、電気インピーダンストモグラフィ(EIT)、筋電図検査(EMG)及び電気眼球図検査(EOG)を含む多数の生理学的検査を包含する。これらのタイプの生理学的検査のための電極は、体内の電位又は生体電位を、従来の測定デバイス及び記録デバイスによって測定することができる電圧に変換することによって、変換器として機能する。
【0010】
一般に、そのような電極は、皮膚の表面に取り付けられる。皮膚の表面上に配置された電極に関する難題は、皮膚の外側層である角質層には水分が欠如しており、この水分の欠如が高いインピーダンスをもたらすことである。この高いインピーダンスは、角質層における水分の欠如が理由のイオン移動度の欠如に起因する。
【0011】
体内の導電は、金属導体に見られるような電子の移動よりはむしろ、イオンの移動に基づいている。身体からの電子信号を記録するために、電極はイオン伝導を電子伝導に変換しなければならない。今日、利用可能な電極の大多数は、銀/塩化銀還元/酸化反応の使用を通じてこの変換を達成する。皮膚に隣接するAg+及びCl-イオンを含有するヒドロゲルは、角質層に湿潤をもたらし、皮膚と電極との間のイオン移動を可能にする。変換は、ヒドロゲルと導電性材料(通常、金属スナップ又は導電性炭素複合材料の層)との界面における電極内で行われる。導電性材料は銀でコーティングされており、以下の可逆反応を可能にし、したがって体内の電気パルスの検出が可能となる。
【0012】
【0013】
ヒドロゲル含有電極の使用に伴う難題の1つは、ヒドロゲル中の水が蒸発しやすいことである。したがって、使用時に、ヒドロゲルは水を失い、無効になるおそれがある。更に、電極が保管及び輸送される際のヒドロゲルからの水の喪失は、重要な課題である。その使用前にヒドロゲルから水が失われるのを防止するため、ホイルで裏打ちされたエンベロープなどの高価なパッケージングを使用して、そのような電極の限られた貯蔵寿命を延長することが多い。
【0014】
したがって、ヒドロゲルを利用しない「ドライ」電極の開発に多大な努力が費やされてきた。ドライ電極を作製するため、多くの試みは、乾燥角質層を水和させるためにヒドロゲルを使用することに対する代替法に焦点をあてており、これは、角質層を貫き、下にある皮膚のより水分の多い層にアクセスするために小型構造を使用することである。一般に、構造体は、水分の存在下で還元/酸化対(通常、銀及び塩化銀)を形成する材料でコーティングされる。使用されてきた、そのような小型構造の例としては、角質層を貫き、イオンの移動性がより高いより多くの水分を有する皮膚の一層深い層に至るよう、マイクロニードル又は類似の小さな尖った構造体が挙げられ、これによって伝導が可能となる。
【0015】
これらの電極を製造する方法は、通常、射出成形又は他の類似のプロセスを含み、その後に、形成されたマイクロニードル構造体をレドックス対でコーティングすることは、労働集約的で比較的コストの高いプロセスとなる。これらの製造問題により、ドライ電極がニッチ市場に限定されてきた。したがって、これらの電極が市場において比較的容易に製造されるウエット電極との競合を可能にする経済的な方法でドライ電極を調製するための新しいプロセスが必要とされる。
【0016】
本開示では、金属コーティングジルコニア含有物品を含む物品が記載されており、該物品は、表面処理表面上に金属コーティングを有するリン酸塩表面処理表面を備える。金属は、同一の非表面処理表面よりも、表面処理表面の方に強く接着する。多くの実施形態では、金属コーティング物品は、ジルコニアを含有する成形非圧縮粒子を含む。同様に、これらの金属コーティング物品、特にドライ電極の製造に使用するのに好適な金属コーティング成形非圧縮粒子を調製する方法も開示される。
【0017】
本明細書において使用する場合、用語「成形研磨粒子」及び「成形粒子」は互換的に使用され、粒子の少なくとも一部が成形前駆体粒子を形成するために使用される金型キャビティから複製される所定の形状を有する、研磨粒子として使用することができるセラミック粒子を指す。成形粒子は、成形粒子を形成するために使用された金型キャビティを実質的に複製する所定の幾何学的形状を一般に有する。本明細書において使用される成形粒子は、機械的粉砕操作によって得られる研磨粒子を除外する。
【0018】
本明細書において使用する場合、粒子を指す場合の「非圧縮性の」という用語は、400MPa(メガパスカル)を超える圧縮強度を有する非多孔質セラミック粒子を指す。一部の実施形態では、粒子は、600MPa、800MPa、1GPa又は2GPaさえ超える圧縮強度を有する。
【0019】
用語「室温」及び「周囲温度」は、20℃~25℃の範囲の温度を意味するために互換的に使用される。
【0020】
2つの層に言及するときに本明細書で使用される用語「隣接する」は、2つの層が、それらの間に介在する開放空間なしに互いに近接していることを意味する。それらは互いに直接接触していてもよく(例えば、一緒に積層されていてもよく)、又は介在層があってもよい。
【0021】
「ジルコニアをベースとする」という用語は、ジルコニア(すなわち、酸化ジルコニウム)しか含み得ないか、若しくは他の金属酸化物などの他の材料を任意選択で含んでもよい粒子又は物品を指す。それらが他の材料を含有する場合、ジルコニアは、少なくとも50重量%、より典型的には少なくとも70重量%の量で存在する。本明細書において使用される「ジルコニア含有」という用語は、ジルコニアベースである物品を指す。
【0022】
少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品を含む、金属コーティング物品であって、表面の少なくとも一部が、リン酸塩表面処理表面を含む表面処理表面と、表面処理表面の少なくとも一部を被覆する金属の層とを含む、金属コーティング物品が本明細書において開示されている。金属コーティングは、表面処理されていない同一の表面よりも表面処理表面の方に強く接着する。
【0023】
幅広い金属コーティングジルコニア含有物品が好適である。多くの実施形態では、ジルコニア含有物品は、非圧縮成形ジルコニア含有粒子を含む。広範囲の非圧縮成形ジルコニア含有粒子が好適であるが、多くの実施形態では、非圧縮成形ジルコニア含有粒子は、少なくとも1つの点を含む。好適な粒子の例としては、成形研磨粒子を作製するために使用される方法によって調製される粒子が挙げられ、粒子は、カルトロップなどの形状を含む幅広い形状を有することができる。粒子は非圧縮性であり、これは、粒子が400MPa、600MPa、800MPa、1GPa、又は2GPaさえ超える圧縮強度を有することを意味する。
【0024】
広範囲のサイズ及び形状が成形粒子に好適であるが、成形粒子の少なくとも1つの寸法は、175~1,500マイクロメートルである。一部の実施形態では、成形粒子の少なくとも1つの寸法は、175~750マイクロメートル、又は更には200~600マイクロメートルである。
【0025】
一部の実施形態では、非圧縮成形粒子はセラミック成形粒子を含む。好適なセラミック成形粒子の例は、米国特許第8,142,531号に記載されているような傾斜側壁を有する成形研磨粒子である。成形粒子を作製する工程は、当該技術分野において公知である。成形研磨粒子は、以下に記載されるように、公知の技術を用いて大量生産することができ、導電性コーティング材によりコーティングされて、少なくとも1つの点を有する粒子を形成することができるので、本開示の物品の形成に使用するのに特に望ましい。これらの尖った導電性粒子は、ドライ電極に形成されると、非圧縮性であり、角質層を貫くことが可能である。
【0026】
ジルコニア含有成形粒子の形成は、例えば、PCT公開第2016/140840号及び米国特許第9,878,954号及び同第10,550,627号に記載されている。ジルコニア含有成形粒子を形成するための多段階プロセスを、以下に簡単に要約する。
【0027】
通常、ジルコニア含有粒子を作製する方法は、(a)金型キャビティを有する金型を用意する工程と、(b)反応混合物を金型キャビティ内に配置する工程と、(c)反応混合物を重合させて、金型キャビティと接触している成形ゲル体を形成する工程と、(d)成形ゲル体を金型キャビティから取り出す工程であって、成形ゲル体が金型キャビティと実質的に同一のサイズ及び形状を保持する工程と、(e)溶媒媒体を除去することによって乾燥成形ゲル体を形成する工程と、(f)乾燥成形ゲル体を加熱して焼結体を形成する工程とを含む。
【0028】
成形ゲル物品を形成するために使用される反応混合物は、(a)ジルコニアベースの粒子、(b)少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒を含む溶媒媒体、(c)遊離ラジカル重合性基を有する第1の表面改質剤を含む重合性材料、及び(d)遊離ラジカル重合反応のための光開始剤を含む。
【0029】
上記のように、ジルコニアベースの粒子は、酸化ジルコニウム粒子以外の他の金属酸化物粒子を含んでもよい。ジルコニアベースの粒子の最大30モルパーセントが、Y2O3、La2O3、Al2O3、CeO2、Pr2O3、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Fe2O3、MnO2、Co2O3、Cr2O3、NiO、CuO、V2O3、Bi2O3、Ga2O3、Lu2O3、HfO2又はそれらの混合物とすることができる。
【0030】
溶媒媒体は、水を含有してもよく、少なくとも60重量%の、少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒も含有する。一部の実施形態では、溶媒媒体は、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%又は少なくとも99重量%の、少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒を含有する。
【0031】
有機溶媒は、多くの場合、グリコール若しくはポリグリコール、モノエーテルグリコール若しくはモノエーテルポリグリコール、ジエーテルグリコール若しくはジエーテルポリグリコール、エーテルエステルグリコール若しくはエーテルエステルポリグリコール、カーボネート、アミド又はスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)である。有機溶媒は、通常、1つ以上の極性基を有する。有機溶媒は、重合性基を有さない。すなわち、有機溶媒は、遊離ラジカル重合を受けることができる基を含まない。更に、溶媒媒体の構成成分は、遊離ラジカル重合を受けることができる重合性基を有さない。
【0032】
反応混合物は、遊離ラジカル重合を受けることができる重合性基を有する1種以上の重合性材料を含む(すなわち、重合性基は遊離ラジカル重合性である)。多くの実施形態では、重合性基は、式:-(CO)-CRb=CH2の基である(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和基であり、式中、Rbは、水素又はメチルである。
一部の実施形態において、重合性基は、(メタ)アクリロイル基ではないビニル基(-CH=CH2)である。重合性材料は、少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒に可溶性であるか、又はそれと混和性であるように通常、選択される。
【0033】
ゲル組成物を形成するために使用される反応混合物は、光開始剤を含有する。反応混合物は、有利には、化学線の適用によって開始される。すなわち、重合性材料は、熱的開始剤ではなく光開始剤を使用して重合される。驚くべきことに、熱的開始剤ではなく光開始剤の使用は、ゲル組成物全体にわたって一層均一な硬化をもたらす傾向があり、焼結物品の形成に関与する後工程において均一な収縮が確実となる。更に、硬化部分の外側表面は、熱的開始剤よりもむしろ光開始剤が使用される場合、一層均一であり、欠陥がより少ない。
【0034】
広範囲の光開始剤が当分野において公知である。一部の例示的な光開始剤は、ベンゾインエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル又はベンゾインイソプロピルエーテル)又は置換ベンゾインエーテル(例えば、アニソインメチルエーテル)である。好適な市販の光開始剤の例としては、IRGACURE651、ESACURE KB-1、IRGACURE184、IRGACURE819、IRGACURE2959、IRGACURE369、IRGACURE907及びDAROCUR1173が挙げられる。
【0035】
反応混合物の重合は、紫外線及び/又は可視光線に曝露すると起こり、反応混合物の重合(硬化)生成物であるゲル組成物の形成をもたらす。ゲル組成物は、金型(例えば、金型キャビティ)と同じ形状を有する成形ゲル物品である。ゲル組成物は、その中に液体が捕捉された固体マトリックス又は半固体マトリックスである。ゲル組成物中の溶媒媒体は、主に、少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒である。成形ゲル物品は安定であり、乾燥及び焼結に耐えるのに十分な強度を有する。
【0036】
重合後、成形ゲル物品を金型キャビティから取り出し、成形ゲル物品を処理して、少なくとも150℃に等しい沸点を有する有機溶媒及び存在し得る任意の他の有機溶媒又は水を除去する。これは、有機溶媒を除去するために使用される方法にかかわらず、ゲル組成物又は成形ゲル物品を乾燥させることと称することができる。200℃までの任意の所望の乾燥温度を使用することができる。キセロゲルは、有機溶媒除去のこのようなプロセスから生じる。
【0037】
溶媒媒体の除去後、得られたキセロゲルを加熱して、存在し得るポリマー材料又は任意の他の有機材料を除去し、高密度化によって強度を構築する。温度は、多くの場合、このプロセスの間、1000℃又は1100℃もの高さに昇温させる。このプロセスは、一般に、「有機燃焼」と呼ばれる。
【0038】
有機物燃焼後、物品は焼結される。焼結は、通常、例えば、少なくとも1200℃、少なくとも1250℃、少なくとも1300℃又は少なくとも1320℃などの、1100℃より高い温度で行われる。加熱速度は、通常、少なくとも100℃/時、少なくとも200℃/時、少なくとも400℃/時又は少なくとも600℃/時などの非常に急速であり得る。温度は、所望の密度を有する焼結物品を精製するために、任意の所望の時間、保持され得る。一部の実施形態では、温度は、少なくとも1時間、少なくとも2時間又は少なくとも4時間、保持される。温度は、所望の場合、24時間又はそれより長いことさえある間、保持することができる。
【0039】
得られる粒子は、理論密度の少なくとも98.5、99、99.5、99.9又は更には99.99%となる密度を有する非多孔質結晶性粒子である。
【0040】
上記のように、ジルコニア含有物品は、ジルコニア含有物品の表面への金属の接着を強化するために表面処理される。この表面処理はリン酸塩表面処理である。表面処理は、ジルコニア含有物品の表面全体にて適用され得るか、又は金属でコーティングされるジルコニア含有物品の部分が表面処理されるかぎり、ジルコニア含有物品の一部だけに適用され得る。
【0041】
表面処理は、リン酸塩表面処理であり、これは表面処理剤がリン酸塩であることを意味する。表面処理は、リン酸、リン酸塩又はそれらの組合せ物の溶液でジルコニア含有物品の表面を表面処理することによって行われる。リン酸塩の例としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム及びリン酸アンモニウムが挙げられる。表面処理は、物品を表面処理溶液に浸漬することによって行われてもよく、又は物品表面に表面処理溶液が塗布されてもよい。通常、表面処理溶液を塗布した後、物品の表面を水又は水溶液ですすぎ、過剰な表面処理剤を除去する。すすいだ後、この物品は、空気乾燥又は熱の適用のいずれかによって、例えば物品をオーブン中に置くことによって乾燥され得る。
【0042】
本開示の金属コーティング物品はまた、金属コーティングを含有する。コーティングは、ジルコニア含有物品全体を被覆してもよく、又はより典型的には、ジルコニア含有物品の一部しか被覆していなくてもよい。好適な金属の例としては、銀、銅、亜鉛、金、アルミニウム、鉄若しくはニッケル、又はそれらの合金が挙げられる。通常、金属コーティングは、とりわけ、物品が電極として使用されることになる実施形態では、導電性である。ある範囲の導電性金属が可能であるが、銀が特に好適な金属である。幅広い範囲の厚さが好適である。通常、金属コーティングは、20ナノメートル~2マイクロメートルの厚さを有する。
【0043】
表面処理された物品に金属コーティングを適用するため、幅広い方法を使用することができる。方法の中には、化学堆積法、蒸着法、又は方法の組合せがある。
【0044】
一部の実施形態では、金属コーティングは、化学堆積によって生成される。化学堆積は、さまざまな方法で行うことができる。一部の実施形態では、表面処理された物品の表面上に金属塩が堆積され、金属コーティングであり、次に、金属塩の熱還元によって形成される。この方法では、通常、表面処理された物品は、AgNO3などの金属塩の溶液中に浸漬される。物品を金属塩溶液から取り出し、任意選択で、すすがれる、かつ/又は乾燥され、高温に加熱して、表面上の金属塩の熱還元を誘導することができる。AgNO3の例では、物品が400℃の温度まで30分間、加熱され得る。
【0045】
他の変形形態では、表面処理表面の少なくとも一部の表面に金属の層を配設する方法は、化学的還元反応による金属溶液からの金属の堆積を含む。金属が銀である場合、この化学的還元は、トレンス反応を用いて行うことができる。トレンス反応とは、銀鏡試験としても知られている、アルデヒドに対するトレンス試験の機構のことである。この試験は、銀(I)イオンを含有する溶液にある溶液を接触させることによって、そのある溶液がアルデヒドを含有するかどうかを判定することを含む。アルデヒドは、Ag+イオンを銀金属に還元し、それ自体が、カルボン酸に酸化される。この試験が表面処理表面の存在下で行われる場合、銀金属は表面に層を形成する。
【0046】
一部の実施形態では、金属層は、PVD(物理蒸着)によって表面処理されたジルコニウム含有物品の表面上に配設される。好適なPVD法の例としては、米国特許第8,664,149号に記載されているものなどの、スパッタコーティング技法及び他の蒸着技法が挙げられる。これらのプロセスは、当分野において十分に理解されており、幅広い範囲の厚さを有するコーティングを生成することができる。
【0047】
上記のように、一部の実施形態では、金属コーティング成形粒子を電極として使用することができる。これらの実施形態では、電極として物品を使用することを容易にするために追加の工程が実施されてもよい。一部の実施形態において、導電性金属コーティングは、多層コーティングであってもよく、例えば、導電性金属コーティングは、成形粒子の表面全体又は実質的に表面全体を被覆してもよく、銀コーティング又は銀/塩化銀コーティングなどの二次コーティングは、第1の導電性金属コーティングの全体又は一部の上に選択的にコーティングされてもよい。一部の実施形態では、金属コーティング粒子は、銀で完全にコーティングされた粒子を含み、このコーティングの一部が銀/塩化銀コーティングに変換されるか、又は銀コーティングの一部が塩化銀コーティングにより上塗りされ得る。
【0048】
同様に、金属コーティング物品を調製する方法が、本明細書において開示される。一部の実施形態では、本方法は、少なくとも1つの主表面を有するジルコニア含有物品を用意する工程と、物品の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部をリン酸塩表面処理で表面処理してリン酸塩処理表面を生成する工程と、表面処理表面の少なくとも一部の上に金属の層を配設する工程とを含む。
【0049】
好適なジルコニア含有物品、表面処理の方法及び表面処理表面上に金属の層を配設する方法が、上に記載されている。上記のように、一部の実施形態では、ジルコニウム含有物品は、非圧縮成形ジルコニア含有粒子、通常、少なくとも1つの点を含む粒子を含み、少なくとも1つの寸法は、175~1,500マイクロメートルである。一部の実施形態では、成形粒子の少なくとも1つの寸法は、175~750マイクロメートル、又は更には200~600マイクロメートルである。幅広い範囲の金属が好適であるが、多くの実施形態では、金属は銀を含み、金属コーティングは、導電性である。
【0050】
本開示は、図面から一層完全に理解され得る。
図1において、物品100は、非圧縮成形ジルコニア含有粒子である。粒子は、リン酸塩表面処理層110及び金属コーティング層120を有する。この実施形態では、リン酸塩表面処理層110は、物品100の表面全体を被覆するものとして示されており、金属コーティング層120は、リン酸塩表面処理層110の一部だけ被覆するものとして示されている。
【0051】
図2は、本開示の金属コーティングされた非圧縮成形ジルコニア含有粒子を利用するドライ電極の一実施形態を示す。
図2において、ドライ電極200は、導電性粒子201と、3つの副層231、232、233を有する支持層230とを有し、この場合、231及び233は接着層であり、232はフィルム層である。層240は、導電性層241及び任意選択のフィルム層242を含む導電性基板である。電気コネクタ250は、導電性基板240と電気接触している。
【実施例】
【0052】
これらの実施例は、単に例示の目的のためだけであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味しない。実施例及び明細書の残りの部分における全ての部、百分率、比などは、特に断りのない限り、重量によるものである。以下の略語を使用する:cm=センチメートル;in=インチ;mm=ミリメートル;sccm=標準立方センチメートル/分。「重量%(weight %)」、「重量%(% by weight)」及び「重量%(wt%)」という用語は、互換的に使用される。
【0053】
試験方法
銀層接着試験
ジルコニア表面上に堆積された銀の層の接着性を、テープを用いて試験した。テープを適用し、手の圧力により押圧して、銀堆積表面にテープを接着させた。次いで、テープを除去し、除去された銀の量を記録する。SCOTCH#600透明テープ接着剤、3M 8403HD接着剤、及びPOST-ITノート(すべて3M Company(St.Paul、MN)の製品)のさまざまなレベルの接着に選択した、3種のテープを試験に使用する。
【0054】
トレンス反応の説明
トレンス反応は、アルデヒドによる銀イオンの還元により作用する。この手順に使用される溶液において、銀イオンは、水酸化アンモニウムを含有する水溶液に硝酸銀を溶解することによって得られる。次に、すべての硝酸銀が溶解し、再び透明になるまで、溶液を撹拌した。この実験における還元剤(アルデヒド)は、糖を水に溶解することによって得られる。この2つの溶液を一緒に添加すると、アルデヒドはトレンス溶液によって酸化され、カルボン酸塩を形成する。次いで、カルボン酸塩は、正の銀イオンによって還元され、固体の銀が溶液中に形成される。
【0055】
実施例
A.トレンス反応の実施例
実施例1及び比較例CE1:ジルコニアディスク
実施例1:リン酸を用いたジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
焼結ジルコニアディスクを歯科用リン酸(SCOTCHBOND Universal Etchant、3M)でコーティングし、30秒後に脱イオン(DI)水ですすいだ。ディスクを乾燥し、次に、AgNO3溶液(Alfa Aesar、Haverhill、MA)中に一晩浸漬した。次に、このディスクをBLUE-M炉に入れ、80℃で乾燥した。乾燥後、ディスクをTHERMOLYNE1200(VWR International,LLC(Radnor、PA))中で400℃に加熱して、AgNO3のAgへの熱還元を誘導した。ディスク表面のわずかな色の変化が観察された。処理したディスク(実施例1)を、トレンス反応を用いて更に処理した。
【0056】
比較例CE1:表面処理されていないジルコニアディスク
a.ジルコニアディスクの表面処理:
比較例CE1の場合、表面処理を行わなかった。未処理ディスク(比較例CE1)を、トレンス反応を用いて更に処理した。
【0057】
b.トレンス反応による銀層の形成:
導電性銀シード層を、トレンス反応を用いて各表面上に堆積させた。ディスクを、0.58重量%の硝酸銀(AgNO3結晶、RQ,Ames Goldsmith(Elkton、Maryland))、1.18重量%の水酸化アンモニウム(VWR ACSグレードの水酸化アンモニウム、28~30%、Radnor、Pennsylvania)、及び0.26重量%の水酸化カリウム(≧85%ペレット、Honeywell(Charlotte、North Carolina))の水溶液に浸漬した。トレンス溶液とも呼ばれる。トレンス溶液を撹拌子で撹拌しながら、糖溶液(デキストロース、無水ACSグレード、EMD Millipore(Burlington、Massachusetts))をビーカーにゆっくり加えた。ビーカー中に視覚的な色の変化が見られ、すべての利用可能な硝酸銀が純粋な銀に変換されたことを示すまで、トレンス溶液と糖溶液を反応させた。
【0058】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0059】
実施例1の結果:試験テープのいずれによっても視覚的な銀は除去されなかった。
【0060】
比較例CE1の結果:多量の銀が、SCOTCH#600及び3M 8403HD接着テープによって除去された。
【0061】
実施例2:リン酸で処理したジルコニアスカロップ状四面体粒子:
a.ジルコニアスカロップ状四面体粒子の処理:歯科用リン酸をDI水で希釈した(0.5g歯科用エッチングゲル+25.28gのDI水)。
ジルコニア粒子を20マイクロメートルのポリマー製スクリーン材料に入れ、粒子を含むスクリーンをボトルに入れ、ボトルを閉じ、ボトルを超音波浴に浸漬することによって撹拌しながら、約10分間、酸に浸漬した。歯科用エッチングに由来する青色の色調が洗い落とされるまで、粒子を蒸留水ですすいだ。依然として湿っている間に、粒子をAgNO3溶液(1.23gのAgNO3+25.52gのDI水)に約10分間入れ、これと同時に、ボトルに入れ、閉じたボトルを約10分間、超音波浴に浸漬することによって撹拌した。
【0062】
粒子を含むスクリーンをボトルから取り出し、80℃のBlue-M炉に入れて乾燥した。乾燥後、粒子は比較的均一な褐色の外観を示した。乾燥した粒子をスクリーンから取り出し、磁製るつぼに入れた。るつぼをTHERMOLYNE1200に入れ、20℃/分で440℃まで加熱することによって熱処理し、440℃で30分間、保持し、次に、電源を切ることによって炉内で自然冷却した。熱処理後、粒子はわずかに灰色に見えた。光学顕微鏡画像は、四面体の表面上に小さな銀液滴があることを示した。
【0063】
実施例3:リン酸カリウムによるジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
1.03gの一リン酸カリウム(KH2PO4、Millipore-Sigma(St.Louis、MO、米国))を25.26gの蒸留水に溶解した。ジルコニアディスクを溶液中に30秒間、浸漬し、Kimwipeで軽く乾燥させ、蒸留水ですすぎ、80℃のBLUE-M Box Oven中で乾燥した。処理したディスクを、トレンス反応を用いて更に処理した。
【0064】
b.トレンス反応による銀層の形成:
導電性銀シード層を、トレンス反応を用いて各表面上に堆積させた。ディスクを、0.58重量%の硝酸銀(AgNO3結晶、RQ,Ames Goldsmith(Elkton、Maryland))、1.18重量%の水酸化アンモニウム(VWR ACSグレードの水酸化アンモニウム、28~30%(Radnor、Pennsylvania))、及び0.26重量%の水酸化カリウム(≧85%ペレット、Honeywell(Charlotte、North Carolina))の水溶液に浸漬した。トレンス溶液とも呼ばれる。トレンス溶液を撹拌子で撹拌しながら、糖溶液(デキストロース、無水ACSグレード、EMD Millipore(Burlington、Massachusetts))をビーカーにゆっくり加えた。ビーカー中に視覚的な色の変化が見られ、すべての利用可能な硝酸銀が純粋な銀に変換されたことを示すまで、トレンス溶液と糖溶液を反応させた。
【0065】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0066】
実施例3の結果:SCOTCH#600接着テープによって少量の銀が除去され、他の2種の接着剤によって銀は除去されなかった。
【0067】
実施例4:リン酸ナトリウムによるジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
1.01gのリン酸ナトリウム(NaH2PO4、Millipore-Sigma(St.Louis、MO、米国))を25.1gの蒸留水に溶解した。ジルコニアディスクを溶液中に30秒間、浸漬し、Kimwipeで軽く乾燥させ、蒸留水ですすぎ、80℃のBLUE-M Box Oven中で乾燥した。
【0068】
b.トレンス反応による銀層の形成:
導電性銀シード層を、トレンス反応を用いて表面上に堆積させた。ディスクを、0.58重量%の硝酸銀(AgNO3結晶、RQ,Ames Goldsmith(Elkton、Maryland))、1.18重量%の水酸化アンモニウム(VWR ACSグレードの水酸化アンモニウム、28~30%(Radnor、Pennsylvania))、及び0.26重量%の水酸化カリウム(≧85%ペレット、Honeywell(Charlotte、North Carolina))の水溶液に浸漬した。トレンス溶液とも呼ばれる。トレンス溶液を撹拌子で撹拌しながら、糖溶液(デキストロース、無水ACSグレード、EMD Millipore(Burlington、Massachusetts))をビーカーにゆっくり加えた。ビーカー中に視覚的な色の変化が見られ、すべての利用可能な硝酸銀が純粋な銀に変換されたことを示すまで、トレンス溶液と糖溶液を反応させた。
【0069】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0070】
実施例4の結果:3種の接着剤のいずれによっても目視可能な銀は除去されなかった。
【0071】
B.PVD実施例
比較例CE2:ジルコニアディスク
a.ジルコニアディスクの表面処理:
約10mm角のイットリア安定化ジルコニアディスクをイソプロパノール(IPA)中で洗浄し、150℃のオーブンに一晩入れて、表面上のいかなる水も除去した。表面処理は行わなかった。
【0072】
b.PVDスパッタリングによる銀層の形成:
ジルコニア基板を円筒形スパッタリング真空チャンバ内の特別に修飾されたプレート上に置いた。このプレートを、チャンバ壁内のBNCフィードスルーを介してKeithly247の2000ボルト電源に取り付けた。プレートは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の直径3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のプレートによって接地チャンバから絶縁した。円形3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のAgスパッタリングターゲット(99.99%純度、Kurt J Lesker Co.)を銀材料源として使用した。スパッタリング源は、基板に対して垂直に約30度に向けた。スパッタリング源は、基板から約8インチ(20cm)以内であった。3.8×10-6Torr(イオンゲージ)のベース圧力までポンプにより低下させた後、アルゴンガス(99.999%超高純度)を、100sccmの流量でMKS246流量コントローラを使用して真空チャンバに導入した。手動ゲートバルブをスロットルバルブとして使用し、真空チャンバのプロセス圧力を10mTorrに維持した。1.0キロワットをAgスパッタターゲットに30秒間、印加した。Agコーティングジルコニアディスクをチャンバから取り出した。
【0073】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0074】
比較例CE2の結果:3M 8403HD接着剤によって多量の銀が除去され、SCOTCH#600接着剤によって少量の銀が除去され、POST-IT接着剤によって銀は除去されない。
【0075】
実施例5:リン酸によるジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
約10mm角のイットリア安定化ジルコニアディスクをイソプロパノール(IPA)中で洗浄し、150℃のオーブンに一晩入れて、表面上のいかなる水も除去した。ディスクを歯科用リン酸(SCOTCHBOND Universal Etchant、3M)でコーティングし、30秒後に脱イオン(DI)水ですすいだ。
【0076】
b.PVDスパッタリングによる銀層の形成:
ジルコニア基板を円筒形スパッタリング真空チャンバ内の特別に修飾されたプレート上に置いた。このプレートを、チャンバ壁内のBNCフィードスルーを介してKeithly247の2000ボルト電源に取り付けた。プレートは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の直径3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のプレートによって接地チャンバから絶縁した。円形3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のAgスパッタリングターゲット(99.99%純度、Kurt J Lesker Co.)を銀材料源として使用した。スパッタリング源は、基板に対して垂直に約30度に向けた。スパッタリング源は、基板から約8インチ(20cm)以内であった。3.8×10-6Torr(イオンゲージ)のベース圧力までポンプにより低下させた後、アルゴンガス(99.999%超高純度)を、100sccmの流量でMKS246流量コントローラを使用して真空チャンバに導入した。手動ゲートバルブをスロットルバルブとして使用し、真空チャンバのプロセス圧力を10mTorrに維持した。1.0キロワットをAgスパッタターゲットに30秒間、印加した。Agコーティングジルコニアディスクをチャンバから取り出した。
【0077】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0078】
実施例5の結果:3種の接着剤のいずれによっても目視可能な銀は除去されなかった。
【0079】
実施例6:リン酸カリウムによるジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
約10mm角のイットリア安定化ジルコニアディスクをイソプロパノール(IPA)中で洗浄し、150℃のオーブンに一晩入れて、表面上のいかなる水も除去した。1.03gの一リン酸カリウム(KH2PO4、Millipore-Sigma(St.Louis、MO、米国))を25.26gの蒸留水に溶解した。ジルコニアディスクを溶液中に30秒間、浸漬し、Kimwipeで軽く乾燥させ、蒸留水ですすぎ、80℃のBLUE-M Box Oven中で乾燥した。
【0080】
b.PVDスパッタリングによる銀層の形成:
ジルコニア基板を円筒形スパッタリング真空チャンバ内の特別に修飾されたプレート上に置いた。このプレートを、チャンバ壁内のBNCフィードスルーを介してKeithly247の2000ボルト電源に取り付けた。プレートは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の直径3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のプレートによって接地チャンバから絶縁した。円形3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のAgスパッタリングターゲット(99.99%純度、Kurt J Lesker Co.)を銀材料源として使用した。スパッタリング源は、基板に対して垂直に約30度に向けた。スパッタリング源は、基板から約8インチ(20cm)以内であった。3.8×10-6Torr(イオンゲージ)のベース圧力までポンプにより低下させた後、アルゴンガス(99.999%超高純度)を、100sccmの流量でMKS246流量コントローラを使用して真空チャンバに導入した。手動ゲートバルブをスロットルバルブとして使用し、真空チャンバのプロセス圧力を10mTorrに維持した。1.0キロワットをAgスパッタターゲットに30秒間、印加した。Agコーティングジルコニアディスクをチャンバから取り出した。
【0081】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0082】
実施例6の結果:除去後、3M 8403HD接着剤上に少量の銀を観察することができる。他の2種の接着剤によっては、銀は除去されなかった。
【0083】
実施例7:リン酸ナトリウムによるジルコニアディスク処理
a.ジルコニアディスクの表面処理:
約10mm角のイットリア安定化ジルコニアディスクをイソプロパノール(IPA)中で洗浄し、150℃のオーブンに一晩入れて、表面上のいかなる水も除去した。1.01gのリン酸ナトリウム(NaH2PO4、Millipore-Sigma(St.Louis、MO、米国))を25.1gの蒸留水に溶解した。ジルコニアディスクを溶液中に30秒間、浸漬し、Kimwipeで軽く乾燥させ、蒸留水ですすぎ、80℃のBLUE-M Box Oven中で乾燥した。
【0084】
b.PVDスパッタリングによる銀層の形成:
ジルコニア基板を円筒形スパッタリング真空チャンバ内の特別に修飾されたプレート上に置いた。このプレートを、チャンバ壁内のBNCフィードスルーを介してKeithly247の2000ボルト電源に取り付けた。プレートは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の直径3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のプレートによって接地チャンバから絶縁した。円形3インチ×厚さ0.25インチ(8cm×0.6cm)のAgスパッタリングターゲット(99.99%純度、Kurt J Lesker Co.)を銀材料源として使用した。スパッタリング源は、基板に対して垂直に約30度に向けた。スパッタリング源は、基板から約8インチ(20cm)以内であった。3.8×10-6Torr(イオンゲージ)のベース圧力までポンプにより低下させた後、アルゴンガス(99.999%超高純度)を、100sccmの流量でMKS246流量コントローラを使用して真空チャンバに導入した。手動ゲートバルブをスロットルバルブとして使用し、真空チャンバのプロセス圧力を10mTorrに維持した。1.0キロワットをAgスパッタターゲットに30秒間、印加した。Agコーティングジルコニアディスクをチャンバから取り出した。
【0085】
c.銀層接着試験
上記の銀層接着試験を使用して、ディスクの銀接着について試験した。
【0086】
実施例7の結果:多量の銀がSCOTCH#600接着剤によって除去された。他の2種の接着剤によっては、銀は除去されなかった。
【国際調査報告】