(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】核酸増幅方法及び装置、並びに核酸検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20250109BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20250109BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/34 D
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024539278
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2021142714
(87)【国際公開番号】W WO2023123134
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502326864
【氏名又は名称】長庚大學
【氏名又は名称原語表記】CHANG GUNG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.259, Wenhua 1st Rd., Guishan Dist., Taoyuan, 333 Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ミンシェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チーユー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
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4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、核酸増幅方法及びその装置、並びに核酸検出方法及びその装置に関する。 核酸増幅装置は、反応ユニット、エネルギー励起ユニット、操作ユニット、補助冷却部を備える。 反応ユニットは、被検物質、1つ以上の固相担体、および核酸増幅反応液を含む。 各固相担体は、標的被検物質の精製と分離および核酸増幅反応を実行するために官能化された特定の表面リガンドを備えています。 エネルギー励起ユニットのエネルギー出力と開閉タイミングを制御することで、反応温度(熱)サイクルが生成され、このサイクル中に各固相担体の周囲にその場環境(in-situ environment)が形成され、その場環境で反応して増幅反応産物を生成します。 本発明は、上記装置を用いて核酸増幅方法を実施するものであり、また、核酸検出方法及びその装置を用いて増幅反応産物を検出するものである。
【選択図】
図1(b)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被検物質、少なくとも1つの核酸増幅反応液、および少なくとも1つの固相担体を反応ユニット内に配置し、前記反応ユニットおよびその内部は冷却環境を形成し、所定の冷却温度を維持することと、
外部エネルギーの出力とその開閉タイミングを制御すると同時に、前記冷却環境の前記所定の冷却温度を通じて核酸増幅反応が起こるのに必要な1つ以上の反応温度サイクルを形成し、各反応温度サイクルにおいて、すべての前記固相担体が外部エネルギーによって同時に励起されてその場環境(in-situ environment)を形成するか、または各固相担体が前記外部エネルギーの受け取りを停止してその場環境が徐々に消散することと、
前記固相担体と前記被検物質と前記核酸増幅反応液は、その場環境の形成と消失の中で核酸増幅反応を行い、増幅反応生成物を生成することと、を備える核酸増幅方法。
【請求項2】
各反応温度サイクルの開始中に、前記反応ユニット内のすべての前記固相担体が同時に励起され、各固相担体の周囲にその場環境が形成され、各固相担体で前記増幅反応生成物が生成され、前記増幅反応生成物の一部は各固相担体に保持され、一方、前記増幅反応生成物の他の一部は前記核酸増幅反応液中に放出され、さらに、各反応温度サイクルのシャットダウン期間中に、各固相担体の励起は停止され、それぞれの場環境が前記冷却環境の前記冷却温度によって徐々に消散することを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項3】
すべての前記固相担体の合計体積と前記核酸増幅反応液の体積との比率は、1:200~1:1×109であることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項4】
前記固相担体のサイズは8~2,000,000 nmであることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項5】
前記冷却温度は-10~50℃であることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項6】
前記反応ユニットまたは前記核酸増幅反応液は、前記冷却温度まで予冷されるか、または外部補助冷却ユニットに収容され、予冷された前記反応ユニットまたは前記外部補助冷却ユニットによって前記冷却温度に維持され得り、前記反応温度サイクルを 1 回以上実行することを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項7】
前記被検物質は、細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、原生生物、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項8】
前記固相担体は、多機能なボディ、少なくとも1つの濃縮リガンド、及び少なくとも1つの増幅リガンドを含むことと、
前記濃縮リガンドは前記多機能なボディの表面に結合され、前記濃縮リガンドは前記被検物質を結合するために使用されることと、
前記少なくとも1つの増幅リガンドが前記多機能なボディの表面に結合され、前記増幅リガンドは生物学的物質を結合するために使用されることと、を備えることを特徴とする、請求項7に記載の核酸増幅方法。
【請求項9】
前記生物学的物質は、前記被検物質から放出されるデオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、あるいは前記増幅リガンドが複製された後に前記核酸増幅反応液中に放出される増幅反応生成物であることを特徴とする、請求項8に記載の核酸増幅方法。
【請求項10】
前記固相担体の一部は、濃縮体および少なくとも1つの濃縮リガンドを含み、前記濃縮リガンドは前記濃縮体の表面に結合され、前記濃縮リガンドは前記被検物質を結合するために使用されることと、
前記固相担体の別の部分、増幅本体および少なくとも1つの増幅リガンドを含み、前記増幅リガンドは前記増幅本体の表面に結合され、前記増幅リガンドは前記被検物質から放出される生物学的物質を結合するために使用されることと、を備えることを特徴とする、請求項7に記載の核酸増幅方法。
【請求項11】
前記生物学的物質は、前記被検物質から放出されるデオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、あるいは前記増幅リガンドが複製された後に前記核酸増幅反応液中に放出される増幅反応生成物であることを特徴とする、請求項10に記載の核酸増幅方法。
【請求項12】
前記被検物質は、遊離のDNAまたはRNA物質であることを特徴とする、請求項1に記載の核酸増幅方法。
【請求項13】
前記各固相担体は、増幅本体および少なくとも1つの増幅リガンドを含み、各増幅リガンドは前記増幅本体の表面に結合され、各増幅リガンドは前記被検物質を結合するために使用されることを特徴とする、請求項12に記載の核酸増幅方法。
【請求項14】
反応ユニットと、補助冷却ユニットと、外部エネルギー励起ユニットと、統合ドライバーとを備え、
前記反応ユニットは、反応液、被検物質、核酸増幅反応液および少なくとも1つの固相担体を収容し、
前記補助冷却ユニットは、予め冷却温度まで冷却された前記核酸増幅反応液、または前記反応ユニットの周囲に配置された外部補助冷却ユニットであり、前記外部補助冷却ユニットは、前記核酸増幅反応液が前記予め冷却温度を維持するように前記反応ユニットを冷却し続け、
前記外部エネルギー励起ユニットは、前記固相担体を励起して熱を発生させ、
前記統合ドライバーは、前記外部エネルギー励起ユニットのエネルギー出力と、開閉タイミングとを制御し、外部エネルギー校正器と温度検出ユニットに基づいてエネルギー出力を実行し、前記外部補助冷却ユニットをフィードバック制御し、核酸増幅反応に必要な1つ以上の反応温度サイクルを形成する迅速核酸増幅システム。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の核酸増幅方法が完了した後、以下の手順で核酸検出を行う核酸検出法であって、
前記固相担体に結合した前記増幅反応生成物を操作ユニットにより精製、分離、濃縮することと、
検出モジュールを利用して、前記固相担体に結合した前記増幅反応生成物によって生じる光学的変化、熱感知変化、電気化学的変化、磁気的変化、または質量変化のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを検出することと、を備える核酸検出法。
【請求項16】
前記増幅反応生成物に光学的変化を生じさせる方法は、
核酸ラベルを前記増幅反応生成物に混合し、光度計を使用して光強度を検出するすること、
酵素免疫吸着法を使用して、前記増幅反応生成物に生じる光学的変化または化学発光変化を検出するすることすること、あるいは、
前記固相担体と前記増幅反応生成物の結合により生じるスペクトル変化のことのうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項15に記載の核酸検出法。
【請求項17】
前記増幅反応生成物に光学的変化を生じさせる方法には、前記検出モジュールが生成された光学的変化を検出するために使用される核酸ラテラルフローストリップまたはラテラルフロー免疫測定ストリップであることを特徴とする、請求項16に記載の核酸検出法。
【請求項18】
前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップに加え、熱センサー検出、表面プラズモン共鳴分光法、またはそれらの任意の組み合わせを使用し、前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップの検出の感度を高めることを特徴とする、請求項17に記載の核酸検出法。
【請求項19】
前記増幅反応生成物に電気化学式変化を生じさせる方法は、電気化学的検出と酵素結合免疫吸着検定法、電気インピーダンス分光法(EIS)検出のうちの1つまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の核酸検出法。
【請求項20】
前記増幅反応生成物に磁気変化を生じさせる方法は、交流磁化測定法による周波数依存の交流磁化率の検出と巨大磁気抵抗測定のうちの1つまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の核酸検出法。
【請求項21】
前記増幅反応生成物の電気的質量の変化を生成する方法は、水晶微量天秤を使用して実行されることを特徴とする、請求項15に記載の核酸検出法。
【請求項22】
操作ユニットと検出モジュールを含む迅速核酸検出装置であって、
前記操作ユニットは、請求項1~13に記載の方法により製造された増幅反応生成物の精製、分離、濃縮をすることと、
前記検出モジュールは、前記増幅反応生成物上で生じた光学的変化、熱感知変化、電気化学的変化、磁気的変化、または質量変化のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを検出することと、を備える迅速核酸検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示で開示される発明は、核酸増幅方法及び装置、並びに核酸検出方法及び装置に関し、特に、固相担体の周囲にその場環境(in-situ environment)を形成して核酸を増幅する方法及び装置に関する。 さらに、本開示で開示される発明は、その場環境での核酸増幅完了後の核酸検出方法および装置である。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅検査 (Nucleic acid amplification tests, NAAT) は、感染性病原体診断、遺伝子検査、法医学、農業、臨床医学などの分子診断で広く使用されている。核酸増幅検査は、検出される核酸断片が核酸増幅されるため、被検物質中に含まれる被検物質が微量であっても高感度かつ特異的である。ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) は、標的核酸を増幅するために使用される一般的な方法です。新しいデオキシリボ核酸 (DNA) 鎖を生成する増幅には、ステップ(a)からステップ (c) までの合計3つのステップが必要である。ステップ(a) では、温度を上げて二本鎖核酸鎖を鋳型として一本鎖 DNA (ssDNA) に変性する。ステップ (b) では、温度が低下し、特定のプライマーが DNA 配列の相補性を通じて一本鎖DNA(ssDNA) に接着します。ステップ(c)では、結合したプライマーの後端でポリメラーゼによって新しい DNA 鎖が合成され、二本鎖DNA(dsDNA) 生成物が生成される。これはPCRの温度 (熱) サイクルであり、全体の温度には2~3つの温度間隔が含まれており、生成されるDNA分子の数はサイクルとともに幾何級数的に増加する。しかし、従来の PCR 機器は一般にサイズが大きく、機器が高価で、エネルギー消費量が高く (電気加熱モジュールを使用する)、操作時間が長くなる (通常は1時間以上)。
【0003】
さらに、既存の等温核酸増幅技術(Isothermal Nucleic Acid Amplification Technologies, iNAATs)は、一定の比較的穏やかな温度で核酸分子を増幅できるので、従来の核酸増幅検査 (NAAT) を置き換えることができる。従来の核酸増幅検査と比較して、iNAATs は、核酸増幅に必要な複雑な温度 (熱) サイクル、関連する複雑な機器、および長い操作時間を大幅に削減できる。iNAATs は複雑な温度 (熱) サイクル設計を必要としないため、加熱プレートやオーブンウォーターバスなどの単純な機器を使用して iNAATs 反応を実行できる。さまざまな iNAATs方法または技術の中で、ループ媒介等温増幅 (LAMP) が最も広く使用されている理由は、LAMPがDNA ポリメラーゼを阻害する物質(ヘモグロビン、免疫グロブリンIgG、または IgM など)に対して、耐性が高いことである。また、LAMP核酸増幅は、特異性が高く、感度が高く、増幅効率が高いという特徴を持っている。これは、LAMPには、部分的に処理された、または未処理の生体サンプルから標的 DNA またはリボ核酸 (RNA) を直接増幅する可能性があることを意味する。
【0004】
従来の定量的 PCR (qPCR) または PCR と比較すると、「ループ媒介等温増幅 (LAMP) - 配列特異的検出方法のレビューと分類」というタイトルの論文の内容によれば、LAMP ベースの核酸増幅と検出感度は10~100倍に向上する。上記の論文は、2020 年 2 月 14 日に Analytical Methods に掲載された。著者は、Lisa Becherer、Nadine Borst、Mohammed Bakheit、Sieghard Frischmann、Roland Zengerle、Felix von Stetten である。
【0005】
さらに、「Reduced False positives and Enhanced Reporting of Loop-Mediated Isothermal Amplification using Quenched Fluorescent primers」というタイトルの論文の内容によれば、2 つのプライマーを使用する従来の PCR と比較して、LAMP の特異性は、核酸増幅反応に4~6個の標的特異的プライマーを使用する場合に優れている。さらに、LAMP は等温条件下で 1 時間以内に 109 個を超える DNA アンプリコンを生成することができ、大量の DNA 増幅産物や LAMP 反応の副産物を直接または間接的に検出することで、サンプルの中で検出対象が存在するかどうかを確認できる。 ただし、LAMP ベースの核酸増幅および検出技術は偽陽性率が高く、識別力が低いため、ポイントオブケア検査への適用が制限される可能性がある。上記の論文は、Patrick Hardinge および James A. H. Murray によって、2019 年 5 月 14 日に Scientific Reports に掲載された。
【0006】
従来の PCR プラットフォームは主にペルチェ素子などの電気加熱素子を使用してプログラムされた加熱と冷却を実行し、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な温度 (熱) サイクルを生成する。 この方法は電熱体の表面と反応液との間で熱を伝導させる方法ですが、昇温・降温速度が比較的遅い(1.5~3℃/秒)ため、時間がかかる場合がある。「次世代分子診断のための超高速核酸増幅技術の出現」と題された論文の内容によると、超高速PCRを実現するための重要な要素には、急速な熱サイクル、低熱容量の材料、高い熱伝導率、および高速重合酵素が含まれる。 上記の論文は、2019 年 6 月 18 日に Biosensors and Bioelectronics に掲載された。著者は、Sang Hun Lee、Seung-min Park、Brian N. Kim、Oh Seok Kwon、Won-Yep Rho、Bong-Hyun Jun) である。第 2 世代の高速 DNA ポリメラーゼの開発に伴い、KAPA Biosystems は独自の直接分子進化タンパク質工学技術を使用して、多数の DNA ポリメラーゼ変異体を複数ラウンドでスクリーニングし、第 2 世代の高速合成効率を備えるKAPA2G Fast DNA ポリメラーゼを選別した。この方法の伸長速度は 1Kb/ 秒にも達するため、DNA ポリメラーゼ伸長に必要な時間が大幅に短縮される。さらに、急速な温度(熱)サイクルを実現するために、既存の技術では、キャピラリー LightCycle 2.0 Carousel-Based System (Roche Diagnostics Co., Ltd. が販売する迅速 PCR 検出装置) またはマイクロ流体ポリメラーゼ連鎖反応を使用している。反応体積は数ナノリットルからマイクロリットル (nL~μL) に制限されるため、表面積と体積の比率が増加し、熱伝導の効果が高まる。さらに、既存の技術では、低熱容量の材料も加熱に使用されている。たとえば、LightCycler 2.0 カルーセルベースのシステムは、加熱と冷却に低熱容量の空気を使用することで、急速な温度 (熱) サイクルを実現する。しかし、この方法は核酸増幅反応全体を数分以内に完了させることができるが、アンプリコン収率の低さ、微量の反応溶液の蒸発と気泡の発生、プラットフォームの拡張性、熱管理の難しさなどの多くの技術的問題も引き起こす。したがって、迅速な核酸増幅は、単に迅速な温度(熱)サイクリングを実現するだけでなく、核酸増幅反応に悪影響を与えることなく迅速な温度(熱)サイクリングを実現できる核酸増幅戦略でもある。
【0007】
上記の問題に対して、多くの研究チームが改善方法を提案している。例えば、マギル大学(Royal Institution for the Advancement of Learning McGill University)の米国発明特許公開番号 US10,604,798B2 (発明名: HEATING MECHANISM FOR DNA AMPLIFICATION, EXTRACTION, OR STERILIZATION USING PHOTO-THERMAL NANOPARTICLES) には、光熱ナノ粒子の使用が提案されている。このナノスケールヒーターを用いて、外部光源の刺激下で接触・非接触方式により反応液を加熱する。この光熱法では、異なるエネルギーによる外部エネルギー励起によって異なる温度範囲が生成され、これを滅菌と光熱溶解に使用して、核酸の抽出と特定の核酸断片の増幅を実現します。カリフォルニア大学(The Regents of the University of California)の米国特許公開第 US11,130,993B2号(発明名: LED 駆動プラズモニック加熱装置、核酸増幅用)の要旨には、特定の厚さの金膜の3D構造として記載されている。特定波長の発光ダイオード(LED;発光ダイオード)によるプラズマ加熱方式を採用し、微細立体構造反応槽内にPCR反応に必要な温度(熱)サイクルを迅速に発生させる。又は、シカゴ大学の米国特許公開番号 US11,045,874B2(発明名: BIPYRAMID-TEMPLATED SYNTHESIS OF MONODISPERSE NOBLE METAL NANOCRYSTALS)では、二重ピラミッド構造の合成金ナノ粒子を使用し、特定の波長の発光ダイオードの励起により生成されたプラズマを加熱することにより、PCR反応に必要な温度(熱)サイクルを微小反応槽内に急速に発生させる。上記の方法はすべて、貴金属材料と特殊な構成を使用して、特定の波長光源の励起光下で局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の形で光エネルギーを熱エネルギー(反応時間が100 ピコ秒を超える)に変換する。この光熱変換特性は高速かつリアルタイムな応答とみなすことができる。 このナノスケールヒーターのコンセプトは、PCR 熱サイクルでの加熱速度が速く、ナノ粒子の濃度と入射光のエネルギー強度を調整することで温度制御を簡単に実現できる。しかし、上記の方法にはまだいくつかの課題と克服する必要のある問題がある。例えば、第一は、マイクロ反応タンク内の反応液の蒸発の問題である。第二は、温度 (熱) サイクルにおける冷却効果が明らかではなく、冷却効果を達成するには依然として外部デバイス (ファンなど) が必要である。 第三は、局在表面プラズモン共鳴に必要な入射光源の波長範囲は、一部の有機蛍光色素のスペクトルと重複する可能性があり、蛍光定量 PCR への応用が制限される可能性がある。
【0008】
上述した光熱ナノ粒子のプラズモニック加熱法の他に、交番磁場を印加して磁気ナノ粒子を発熱させる方法もあり、PCRの核酸増幅技術でも用いられている。たとえば、国立成功大学の(▲謝▼▲達▼斌)チームによる米国発明特許公開番号 US10,913,069B2 (発明名: METHOD AND DEVICE FOR POLYMERASE CHAIN REACTION) では、特許請求書に核酸を増幅する方法が記載されている。この方法は、標的核酸を含む反応混合物が、反応ユニット内で遷移金属材料の粒子と接触することと、約200kHz~500THzの周波数の電磁放射(EMR)を使用して遷移金属材料粒子を照射し、PCR核酸増幅に必要な温度(熱)サイクルを生成することと、を含む。既存技術の中でも、Australian Bio Molecular Systems (BMS) は、電磁熱を熱源として使用する「Mic qPCR」という世界初の qPCR 装置を製造・販売した。
【0009】
上述した光熱ナノ粒子や磁気ナノ粒子を用いた加熱方法、あるいは、従来のPCR法で電気加熱部品を用いてPCR反応液を加熱する方法は、いずれも「容積加熱」(volumetric heating)(つまり、加熱によって反応液全体の温度が上昇する)。
【0010】
これとは異なり、ドイツの分子診断会社(GNA Biosolutions GmbH)は、独自の「パルス制御増幅(PCA)技術」を用いて超高速PCR反応を実現している。このパルス制御による核酸増幅技術は、領域の「局所加熱」を制御する技術であり、「ポイントオブケア検査のための超高速 PCR 技術」というタイトルの論文(Journal of Laboratory Medicineに掲載され、発行日は2017 年 10 月 12 日であり、発行者はLars Ullerich、Stephanie Campbell、Frank Krieg-Schneider、Federico Buersgens、Joachim Stehrである)および米国特許番号 US9,382,583B2(発明名はナノ粒子の熱伝達を利用した核酸の増幅方法であり、関連出願公開はDE102012201475B4、CN107604052A、EP2809806B1、WO2013113910A 1である)に公開された。本技術は、光熱変換特性を有する(プライマー機能化)ナノ粒子とレーザー光源、冷却用の大量の反応液を利用し、短時間のレーザー光パルス照射(レーザー光の励起間隔は10ナノ秒~500ミリ秒)により行う技術である。レーザー光が金ナノ粒子の一部を照射するたびに、PCR 反応に必要な特別な熱放射場が生成される。この方法によって生成される熱放射場は非常に高速である。さらに、この方法は、結合したプライマーまたはアンプリコンを含む金ナノ粒子の表面積の小さな環境のみを効果的に加熱する。レーザー光がナノ粒子への照射を停止すると、これらのナノ粒子は(その高い比表面積特性により)周囲の核酸増幅反応溶液の温度まで急速に冷却される。PCR 反応プロセス全体 (つまり、温度サイクルの繰り返し) の間、ナノ粒子が存在する周囲の核酸増幅反応溶液の温度はほとんど変化しない。以上より、PCA技術により、PCRなどの核酸増幅に必要な温度(熱)サイクルを高速に実現できることがわかった。この技術は、前述の「体積加熱」によって引き起こされる可能性のある反応液の蒸発の問題(その後の検出作業の精度に影響を与える)を大幅に改善するだけでなく、従来の核酸増幅 (PCR など) プロセスにおける特殊で精密に制御された冷却装置 (ファンや温度フィードバック制御など) の必要性を減らすこともできますが、以下で詳しく説明する欠点がまだある。
【0011】
また、前述の「パルス制御増幅技術」を用いて「局所加熱」を実現する現象について、この技術は「光熱粒子」を利用して上記の局所加熱を実現するだけでなく、他の原理またはメカニズムを使用して、「局所加熱」現象を生成することもできる。GNA Biosolutions社の欧州発明特許公報第EP3733292A1号(発明名はポリメラーゼ連鎖反応を実施する方法及びその方法を実施するための装置であり、関連出願公報はUS2019/0249168A1である)および「パルス制御増幅-リソースが限られた状況下での現場診断のための新しい強力なツール」と題された論文 (PLOS NEGLECTED TROPICAL DISEASESに掲載され、発行日は2021 年 1 月 29 日であり、発表者はKatharina Mueller、Sarah Daβen、Scott Holowachuk、Katrin Zwirglmaier、Joachim Stehr、Federico Buersgens、Lars Ullerich、Kilian Stoeckerである)に掲載するのは、高速エネルギーパルス加熱マイクロサーキュレーターを利用した核酸増幅技術(核酸増幅反応に小型の金属加熱部品を直接埋め込む)により、数マイクロ秒で電気を加熱することで、小型金属発熱体の表面エリア(設計された核酸増幅反応領域)のみに熱輻射場が瞬時に発生し、上記通電状態が解除された後、金属発熱体は周囲に存在する大量の反応液によって瞬時に冷却される。この設計は、上記の温度場を繰り返し制御して生成することにより、核酸増幅反応(PCRなど)に必要な温度(熱)サイクルを迅速に生成することができ、迅速な核酸増幅の目的を達成する。
【0012】
前述の特許文献や非特許文献からもわかるように、GNA Biosolutions 独自の「Pulse Controlled Amplification Technology」(Pulse Controlled Amplification, PCA)は、超高速な核酸増幅反応(PCRなど)とその後の核酸分子検出を実現することができる。 この技術は、従来の PCR 反応における「体積加熱」によって引き起こされる反応液の蒸発の問題を大幅に改善できるし、従来の核酸増幅 (PCR など) プロセスで必要とされる特別な冷却設計や装置の必要性も減らすこともできる。
【0013】
しかし、この技術は主に、高出力レーザー光が10ナノ秒から500ミリ秒の間隔でPCR反応ゾーンを通過するように、レーザー光とPCR反応ゾーンの相対位置を動的に制御する。これにより、PCR 反応ゾーン内の金ナノ粒子の一部を選択的かつ特異的に照射し、核酸増幅反応に必要な温度場を生成する (前述のとおり)。基本的に、この種の動作制御には技術的な困難がある。さらに、PCA テクノロジーを冷却するために使用されるターゲットPCR反応溶液の量 (100~500μL) は比較的大量である。そして、PCA核酸増幅反応の核酸産物(DNAなど)は、PCR反応液中に遊離の一本鎖DNA(ssDNA)の形で存在する。増幅された核酸分子の検出方法は以下のとおりである。例えば、欧州発明特許公開番号EP2481817A1(発明名:核酸を検出するための方法)および欧州発明特許公開番号EP3733292A1およびMullerら(2020)によれば、(プライマー官能化)光熱ナノ粒子と増幅した遊離の一本鎖 DNAによって形成されるポリマーを検出し、650 ナノメートル (nm) の波長におけるスペクトルの差、または TaqManプローブによって生成される蛍光シグナルにより、増幅された核酸分子の検出が実現される。上記の核酸検出法では、PCR 反応液を大量(100~500μL)に使用すると(濃度希釈効果により)、核酸増幅シグナルを蓄積するためにより多くの核酸増幅時間が必要となり、この欠点がさらに全体的な核酸の増幅と検出に必要な時間に影響を及ぼする。
【0014】
また、前述の GNA Biosolutions の特許文献に記載されているPCA核酸増幅方法および装置については、依然として改善の必要な部分が多く、要約すると以下のとおりである。
【0015】
既存の局所加熱法は、懸濁相中の光熱ナノ粒子と大量の PCR 反応溶液を使用する。この方法は、「超高速核酸増幅」に必要な「超高速温度(熱)サイクル」を実現することができ、超高速核酸増幅プロセス中にPCR反応液の温度が大きく変化することがない。これにより、マイクロ PCR 反応溶液の温度 (熱) サイクル中に「従来の高速核酸増幅」技術によって引き起こされる PCR 反応溶液の蒸発の問題 (検出精度に影響を与える) を改善できる。しかし、この技術は主に、高出力レーザー光が10ナノ秒から500ミリ秒の間隔でPCR反応ゾーンを通過するように、レーザー光とPCR反応ゾーンの相対位置を動的に制御する。これにより、PCR 反応ゾーン内の金ナノ粒子の一部を選択的かつ特異的に照射し、核酸増幅反応に必要な温度場を生成する (前述のとおり)。基本的に、この種の動作制御には技術的な困難がある。
【0016】
前述の GNA Biosolutions の特許事件に関しては、PCA 核酸増幅反応に使用される PCR では 2 段階の温度プログラムが採用されており、そのうちの 1 つは二本鎖 DNA 分子を変性するのに95℃が必要であり、もう 1 つは、プライマーの結合とポリメラーゼの伸長に必要な 65℃であり。この技術は、金ナノ粒子の温度を95℃から65℃に下げるための冷却媒体として大量のPCR反応液を使用するが、その温度差はわずか30℃であるため、その冷却速度は主張されている「リアルタイム冷却」効果ほど良くない可能性がある。
【0017】
この技術では、大量のPCR反応液を冷却媒体として使用し、加熱されたナノ粒子を冷却する。しかし、PCA核酸増幅反応の核酸産物は、遊離の一本鎖DNA(ssDNA)の形でPCR反応液中に生成するため、PCR反応液の量が多くなる(即ち、希釈効果)。この欠点により、核酸増幅シグナルを蓄積する回数が増加し、全体の核酸増幅と検出に必要な時間にさらに影響を及ぼす。
【0018】
従来の PCR 核酸増幅では、二重プライマー設計が使用される。非常に複雑な核酸被検物質に直面すると、一部の核酸断片に部分的な配列の類似性があると、結合プロセス中に部分的なハイブリッド ペアリングが発生し、非特異的なキメラ副産物が生成され、非特異的な核酸配列の増幅を引き起こし、最終的には定点検査装置などの誤った判断につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、簡便かつ迅速な核酸増幅検出を実現する上で、上記の技術的課題を回避することが現在の緊急の課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従来技術で前記問題を解決するために、本発明は、操作及び制御が容易で、核酸増幅反応に必要な温度(熱)サイクルを迅速に形成することができる核酸増幅方法及び装置を提供する。更に、核酸増幅反応中に、増幅された核酸分子の一部が固相担体の表面に固定化される。また、本発明の検出・分析方法および装置は、固相担体の表面に位置する核酸を迅速に精製、分離、濃縮することができ、それにより後続の標的核酸分子の特異性および感度を向上させることができる。
【0021】
本発明の核酸増幅方法は、少なくとも1つの被検物質、少なくとも1つの核酸増幅反応液、および少なくとも1つの固相担体を反応ユニット内に配置し、前記反応ユニットおよびその内部は冷却環境を形成し、所定の冷却温度を維持することと、
外部エネルギーの出力とその開閉タイミングを制御すると同時に、前記冷却環境の前記所定の冷却温度を通じて核酸増幅反応が起こるのに必要な1つ以上の反応温度サイクルを形成し、各反応温度サイクルにおいて、すべての前記固相担体が外部エネルギーによって同時に励起されてその場環境(in-situ environment)を形成するか、または各固相担体が前記外部エネルギーの受け取りを停止してその場環境が徐々に消散することと、
前記固相担体と前記被検物質と前記核酸増幅反応液は、その場環境の形成と消失の中で核酸増幅反応を行い、増幅反応生成物を生成することと、を備える。
【0022】
核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction、LCR)、または等温核酸増幅技術(Isothermal Nucleic Acid Amplification Technologies、iNAAT)を含む。
【0023】
本発明の核酸増幅方法は、核酸増幅方法各反応温度サイクルの開始中に、前記反応ユニット内のすべての前記固相担体が同時に励起され、各固相担体の周囲にその場環境が形成され、各固相担体で前記増幅反応生成物が生成され、前記増幅反応生成物の一部は各固相担体に保持され、一方、前記増幅反応生成物の他の一部は前記核酸増幅反応液中に放出され、さらに、各反応温度サイクルのシャットダウン期間中に、各固相担体の励起は停止され、それぞれの場環境が前記冷却環境の前記冷却温度によって徐々に消散する。
【0024】
酵素系はポリメラーゼであってもよく、ポリメラーゼはDNAポリメラーゼであってもRNAポリメラーゼであってもよい。さらに、酵素は、逆転写酵素 (RT)、リボヌクレアーゼ (RNase)、ヘリカーゼ、DNA リガーゼ (DNA リガーゼ) の 1 つまたは複数の組み合わせであってもよく、ポリメラーゼと相乗的に作用することができる。
【0025】
外部エネルギーが各固相担体を励起する方法は、接触励起或いは非接触励起である。
【0026】
非接触励起は光熱励起または磁気励起である。光熱励起は、レーザーおよび LED アレイの 1 つで、光エネルギーの波長は可視スペクトルから近赤外スペクトルに及び、その波長範囲は 380nmから1.4μmである。
【0027】
磁気励起では、交流磁場を使用して熱を生成します。交番磁場は交番磁場発生装置により形成され、固相担体が核酸増幅反応を起こすのに必要な温度などの場条件に応じて交番磁場の振幅と周波数が設定される。また、交番磁場の振幅は0.5~550kA/mであり、交番磁場の周波数は3~3500kHzである。
【0028】
接触励磁は電気発熱であり、電子回路と誘導磁束により電気エネルギーの伝送(ワイヤレス充電)が可能である。電気熱の発生は、ジュール加熱、熱電加熱、または表面弾性波 (SAW)。
【0029】
すべての前記固相担体の合計体積と前記核酸増幅反応液の体積との比率は、1:200~1:1×109である。
【0030】
前記固相担体のサイズは8~2,000,000nmである。光熱励起および磁気変化励起による発熱の場合の固相担体の好ましいサイズは8~1,000nmであり、電気熱励起の場合の好ましい固相担体のサイズは1,000~2,000,000nmである。
【0031】
各固相担体は、球、楕円、ディスク、星、棒、正方形、異方性突起、ナノシェル、ナノケージ、二重三角錐、マイクロフィラメントのうちの1つ、または2つ以上の任意の組み合わせである。
【0032】
各固相担体は、反応ユニット内に懸濁するか、または反応ユニットのキャビティの内壁に固定することができ、異なる実施形態では、それらのうちの1つまたはそれらの組み合わせとすることができる。
【0033】
冷却温度範囲は-10~50℃である。
【0034】
反応ユニットや核酸増幅反応液は予め冷却温度まで冷却しておいてもよいし、外部補助冷却ユニットに設置してもよい。1つ以上の反応温度サイクルは、予冷された反応ユニット、予冷された核酸増幅反応液、または外部補助冷却ユニットによって冷却温度が維持されながら実行される。
【0035】
外部補助冷却ユニットは、氷、高分子吸水性樹脂、化学吸熱反応物、冷却チップのいずれか、または任意の2つ以上の組み合わせである。高分子ポリマー吸水性樹脂はカルボキシメチルセルロースである。化学吸熱反応物質は、水に溶解した硝酸アンモニウムまたは水に溶解した尿素によって引き起こされる吸熱反応である。
【0036】
被検物質は、細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、原生生物、またはそれらの組み合わせである。各固相担体は、多機能なボディ、少なくとも1つの濃縮リガンド、および少なくとも1つの増幅リガンドを含む。各濃縮リガンドは多機能なボディの表面に結合して被検物質と結合する。各増幅リガンドは多機能なボディの表面に結合し、生物学的物質と結合する。生物学的物質は、被検物質から放出されるデオキシリボ核酸もしくはリボ核酸、あるいは増幅リガンドが複製された後に核酸増幅反応液中に放出される増幅反応生成物である。濃縮リガンドは、抗体、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド、タンパク質、多糖、またはそれらの組み合わせである。増幅リガンドは、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチドであり、第一アミン、ビオチン、チオール基修飾、またはそれらの組み合わせなど、固相支持体に結合するための官能基修飾を有する。ロックド核酸 (LNA)、ホスホロチオエート、モルホリノ修飾、またはそれらの組み合わせなど、オリゴヌクレオチドおよび生物学的物質を捕捉する特異性と安定性を高める修飾。
【0037】
被検物質は、細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、原生生物、またはそれらの組み合わせである。固相担体の一部は、濃縮体および少なくとも1つの濃縮リガンドを含み、各濃縮リガンドは濃縮体の表面に結合して被検物質と結合する。固相担体の別の部分は、増幅本体および少なくとも1つの増幅リガンドを含み、各増幅リガンドは、被検物質によって放出される生物学的物質に結合するために増幅本体の表面に結合する。生物学的物質は、被検物質から放出されるデオキシリボ核酸もしくはリボ核酸、あるいは増幅リガンドが複製された後に増幅反応液中に放出される増幅反応生成物である。エンリッチドオントロジーは、エンリッチドリガンドのみを持つ多機能なボディに相当する。増幅本体は、増幅リガンドのみを有する多機能なボディに相当する。
【0038】
被検物質は遊離の DNA または RNA 物質である。各固相担体は増幅本体および少なくとも1つの増幅リガンドを含み、各増幅リガンドは増幅本体の表面に結合して被検物質と結合する。
【0039】
本発明の迅速核酸増幅システムは、反応ユニットと、補助冷却ユニットと、外部エネルギー励起ユニットと、統合ドライバーとを備る。前記反応ユニットは、反応液、被検物質、核酸増幅反応液および少なくとも1つの固相担体を収容する。前記補助冷却ユニットは、予め冷却温度まで冷却された前記核酸増幅反応液、または前記反応ユニットの周囲に配置された外部補助冷却ユニットであり、前記外部補助冷却ユニットは、前記核酸増幅反応液が前記予め冷却温度を維持するように前記反応ユニットを冷却し続ける。前記外部エネルギー励起ユニットは、前記固相担体を励起して熱を発生させる。前記統合ドライバーは、前記外部エネルギー励起ユニットのエネルギー出力と、開閉タイミングとを制御し、外部エネルギー校正器と温度検出ユニットに基づいてエネルギー出力を実行し、前記外部補助冷却ユニットをフィードバック制御し、核酸増幅反応に必要な1つ以上の反応温度サイクルを形成する。
【0040】
本発明の核酸増幅方法は、前記核酸増幅方法が完了した後、以下の手順で核酸検出を行う。前記固相担体に結合した前記増幅反応生成物を操作ユニットにより精製、分離、濃縮する。検出モジュールを利用して、前記固相担体に結合した前記増幅反応生成物によって生じる光学的変化、熱感知変化、電気化学的変化、磁気的変化、または質量変化のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを検出する。前記検出モジュールは、さらに、固相担体に結合した増幅反応生成物を識別する。
【0041】
前記増幅反応生成物に光学的変化を生じさせる方法は、核酸ラベルを前記増幅反応生成物に混合し、光度計を使用して光強度を検出するすること、酵素免疫吸着法を使用して、前記増幅反応生成物に生じる光学的変化または化学発光変化を検出するすることすること、あるいは、前記固相担体と前記増幅反応生成物の結合により生じるスペクトル変化のことのうちの1つまたは複数を含む。
【0042】
前記増幅反応生成物に光学的変化を生じさせる方法には、前記検出モジュールが生成された光学的変化を検出するために使用される核酸ラテラルフローストリップまたはラテラルフロー免疫測定ストリップである。
【0043】
核酸検出法は、前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップに加え、熱センサー検出、表面プラズモン共鳴分光法、またはそれらの任意の組み合わせを使用し、前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップの検出の感度を高める。
【0044】
前記増幅反応生成物に電気化学式変化を生じさせる方法は、電気化学的検出と酵素結合免疫吸着検定法、電気インピーダンス分光法(EIS)検出のうちの1つまたはそれらの組み合わせである。
【0045】
前記増幅反応生成物に磁気変化を生じさせる方法は、交流磁化測定法による周波数依存の交流磁化率の検出と巨大磁気抵抗測定のうちの1つまたはそれらの組み合わせである。
【0046】
前記増幅反応生成物の電気的質量の変化を生成する方法は、水晶微量天秤を使用して実行される。
【0047】
本発明の迅速核酸検出装置は操作ユニットと検出モジュールを含み、固相担体上に結合した増幅反応生成物を検出することができる。前記操作ユニットは、前記増幅反応生成物の精製、分離、濃縮をする。前記検出モジュールは、前記増幅反応生成物上で生じた光学的変化、熱感知変化、電気化学的変化、磁気的変化、または質量変化のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを検出する。
【0048】
上記の件承知しました。本発明は既存の核酸増幅法とは異なり、以下の利点を有する。
【0049】
第一は、外部エネルギー励起の特性(エネルギーの大きさや周波数など)と反応ユニットの冷却効果を制御するだけで、核酸分子の増幅に必要な温度サイクルを固相担体表面のその場環境で迅速に発生させることができ、迅速な核酸増幅の目的を達成することができる。
【0050】
第二は、核酸増幅反応液自体を冷却温度まで下げるか、補助冷却装置を介して反応装置を冷却環境に置くことで、非標的プライマーの結合や非標的核酸の増幅を抑制し、核酸増幅反応を向上させることができ、標的核酸分子の増幅の特異性を向上させる。
【0051】
第三は、固相担体表面に固定化された増幅核酸分子は、固相担体表面の空間によって制限されるため、比較的短い操作時間(または比較的少数の核酸)で飽和に達することができる。これは、増幅された核酸分子のその後の検出に役立つ。
【0052】
第四は、固相担体が強い磁気を有する場合には、固相担体上に固定化された核酸増幅により生成した増幅反応生成物を、操作部の磁場操作によりさらに精製・濃縮することができる。この技術的特徴は、その後の増幅反応産物の検出(例えば、検出効率の向上)に有益である。
【0053】
第五は、核酸増幅反応液全体が低温に保たれるため、核酸増幅反応液の蒸発や気泡の発生といった問題を回避できるだけでなく、非特異的な核酸増幅を抑制または低減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1(a)】
図1(a)は、本発明の一実施形態による急速な温度上昇の概略図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、本発明の一実施形態による急速冷却の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における固相担体の構造および表面特性の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による核酸増幅システムの概略構成図である。
【
図4(a)】
図4(a)は、本発明の一実施形態における反応ユニットにおける核酸増幅反応液に混入された固相担体の懸濁状態を示す模式図である。
【
図4(b)】
図4(b)は、本発明の一実施形態において、固相担体が反応ユニットにおいて反応槽の底部に接着にて半固定されており、反応ユニットのキャビティの内壁に半浮遊状態で接着されている。
【
図4(c)】
図4(c)は、本発明の一実施形態における反応ユニットのキャビティの内壁に固定された固相担体の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行するために光熱変換能力を有する固相担体を使用する核酸増幅システムの概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による固相担体を精製するための操作ユニットの概略図である。
【
図7(a)-7(e)】
図7(a)~7(e)は、本発明の一実施形態における水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応(オンビーズPCR)の第1反応工程の模式図である。
【
図7(f)-7(g)】
図7(f)~7(g)は、
図7(a)~7(e)完了後の第2反応工程の模式図である。
【
図7(h)-7(k)】
図7(h)~7(k)は、7(f)~7(g)完了後の第3反応工程の模式図である。
【
図7(l)】
図7(l)は、複数の反応の完了を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の核酸増幅方法および検出方法のフローチャートである。
【
図9(a)】
図9(a)は、本発明の一実施形態によるループ媒介等温増幅反応(LAMP)用のプライマー対の概略図である。
【
図9(b)-9(e)】
図9(b)~9(e)は、
図9(a)を使用したビーズ上でのパルス水冷ループ媒介等温増幅反応(LAMP)の概略図である。
【
図10(a)】
図10(a)は、本発明の一実施形態において、60秒間励起後120秒間停止を10回連続して繰り返す固相担体の光熱変換温度測定の模式図である。
【
図10(b)】
図10(b)は、本発明の一実施形態における、異なる電力で励起された固相担体の温度測定の概略図である。
【
図11(a)】
図11(a)は、本発明の一実施形態において、磁気金ナノシェル(Magnetic Gold Nanoshells,MGNs)のマイクロスケール懸濁液に適用されるレーザー強度と磁気金ナノシェルの光熱変換温度との関係を示す図である。
【
図11(b)】
図11(b)は、異なる電力で励起した後のマイクロスケールの磁気金ナノシェル懸濁液の赤外線熱画像を示す。
【
図12(a)】
図12(a)は、本発明の補助冷却ユニットの一実施形態の外観を示す概略図である。
【
図12(b)】
図12(b)は、
図12(a)の補助冷却ユニットが、核酸増幅反応溶液に100回の外部レーザー励起サイクル(400mW/0.16cm2で1.25秒間照射すること、0.5秒間オフ、150mW/0.16cm2で7.5秒間照射すること)、単相磁気金ナノシェルを含む核酸増幅反応液の全体の温度変化の説明図である。
【
図13(a)】
図13(a)は、本発明の一実施形態による免疫側方流動試験ストリップを用いた水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の検出前の概略図である。
【
図13(b)】
図13(b)は、本発明の一実施形態による免疫側方流動試験ストリップを用いた水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の検出結果の概略図である。
【
図14(a)】
図14(a)は、固相キャリア核酸増幅の検出結果を検出するために免疫側方流動テストストリップを分析するためのプラズマ熱感知を使用する、
図13(b)の陽性反応の概略図である。
【
図14(b)】
図14(b)は、固相担体の核酸増幅を検出するために免疫側方流動試験ストリップを分析するためにプラズマ熱感知を使用する、
図13(b)の陰性反応の概略図である。
【
図15(a)】
図15(a)は、ラテラルフロー免疫アッセイストリップを使用して、808nm波長レーザーで水冷式ビーズ上ポリメラーゼ連鎖反応の異なる光子サイクル(すなわち、10~50サイクル)でMGN上に固定された増幅反応生成物を検出したことを示し、各光子サイクルは、400mW/0.16cm2で1.25秒間照射することと、150mW/0.16cm2で7.5秒間照射することと、を備える結果の概略図。
【
図15(b)】
図15(b)は、808nmの波長レーザーを使用して、最適なレーザー励起条件および最短の光子サイクル(400mW/0.16cm2で1.25秒間照射することと、150mW/0.16cm2で7.5秒間照射することと)下で水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行する本発明の例を示し、異なる光子サイクル(10~30回)における、磁気金ナノシェル上の増幅反応生成物と核酸増幅反応液中に残存する増幅反応生成物の電気泳動解析結果の模式図。
【
図16(a)】
図16(a)は、従来のポリメラーゼ連鎖反応を実行した後の単純なサンプル(被検物質)の電気泳動分析結果の概略図である。
【
図16(b)】
図16(b)は、水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応を行った後、免疫側方流動試験ストリップを用いて試験した単純サンプル(被検物質)の検出結果の模式図である。
【
図17(a)】
図17(a)は、従来のポリメラーゼ連鎖反応に供された複合サンプル(複数の病原性細菌由来の核酸および大腸菌核酸サンプルと混合)の電気泳動分析結果の概略図である。
【
図17(b)】
図17(b)は、被検物質(複合体試料)を水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応させ、免疫側方流動テストストリップで検出した検出結果の模式図である。
【
図18(a)】
図18(a)は、本発明の一実施形態において異なるレーザー出力を有する808nmの波長レーザーを使用して、濃縮体および増幅本体を混合された懸濁液を励起し、細菌細胞の光熱溶解反応を実行し、その後コロニーを形成するテスト結果の概略図。
【
図18(b)】
図18(b)は、本発明の一実施形態における、異なるレーザー出力で808nmの波長レーザーを使用して、濃縮体および増幅本体を混合された懸濁液の光熱溶解を引き起こし、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を引き起こし、その後、免疫側方流動テストストリップを使用したテスト結果の概略図。
【
図19(a)】
図19(a)は、本発明の一実施形態における2つの機能性磁気金ナノシェルの混合を示し、大腸菌懸濁液を被検物質として使用し、レーザー励起を使用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の検出効率と全体的な操作プロセスを評価する概略図。
【
図19(b)】
図19(b)は、本発明の実施形態における濃縮体と増幅本体の混合懸濁液であり、大腸菌懸濁液を被検物質として使用し、免疫側方流動試験ストリップを使用してレーザー誘発水冷却オンビーズ重合(on-bead PCR)の感度の検出結果を評価する模式図。
【
図20(a)】
図20(a)は、テストラインに配置された
図19(b)の免疫側方流動テストストリップの画像であり、画像分析ソフトウェア(Image J)を使用してピクセル強度分析を実行し、画像定量化の概略図を示す。
【
図20(b)】
図20(b)は、異なる808nmレーザーエネルギー(24mWおよび140mW) で免疫側方流動テストストリップを励起し、オンライン検出のテストに焦点を当てた赤外線レンズを使用した熱画像画像を示す。
【
図20(c)】
図20(c)は、
図20(b)の熱画像画像から環境内の背景温度を差し引いた後に上昇する温度差を定量的に示す図である。
【
図21(a)】
図21(a)は、異なるPCR反応開始温度におけるレーザー励起水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の温度変化の概略図である。
【
図21(b)】
図21(b)は、異なるPCR反応開始温度におけるレーザー励起水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の性能評価の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、および、そのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0056】
本発明の一実施形態に係る核酸増幅方法は、反応ユニット10内に、被検物質20、核酸増幅反応液30、及び少なくとも1つの固相担体40を備える。反応ユニット10の冷却環境は所定の冷却温度に維持されており、冷却温度は-10~50℃である。また、好ましい冷却温度は15~30℃、30~50℃である。なお、好ましい冷却温度は-10~0℃および2~15℃である。特に、外部エネルギー励起(例えば、エネルギーおよび周波数)の動作条件を制御し、反応ユニット10の冷却環境に冷却効果をもたらすことによって、固体担体40の表面の周囲にその場環境(in-situ environment)50が形成される。また、その場環境(in-situ environment)50では、核酸増幅反応に必要な温度(熱)サイクルがさらに行われるため、固相担体40は、各温度サイクルにおいてその位置 (in-situ)での核酸増幅が行われ、増幅反応生成物60を生成する。ここで、反応ユニット10内で核酸増幅反応を行うのに必要な温度(熱)サイクルとは、核酸分子を変性させ、プライマーを結合させ、ポリメラーゼを伸長させるのに必要な異なる温度を指す。温度(熱)サイクルはこの限りではありません。各固相担体40のサイズは8~2,000,000ナノメートル(nm)であるが、光熱および磁気加熱のための固相担体40の好ましいサイズは8~1,000ナノメートルで、電熱加熱のための固相担体40は1,000~2,000,000ナノメートルである。
【0057】
図1(a)および
図1(b)に示すように、本発明における「その場環境(in-situ environment)50」の定義は、固相担体40が反応ユニット10内に理想的な条件下で均一に分布している場合、外部エネルギー励起の動作条件(
図1(a)に示す)および反応ユニット10内の冷却環境の冷却温度を制御することにより、固相担体40の熱放射場の外方放射範囲の大きさを制御し、固相担体40表面の熱輻射場は互いに重ならず、独立した核酸増幅反応空間を形成する。あるいは、本発明のその場環境50は、固相担体40の局所的な加熱範囲と呼ぶこともできる(
図1(b)に示す)。また、外部エネルギーの励起が瞬間的に停止すると、反応ユニット10の冷却温度によっては固相担体40を急速に冷却させることができる。
【0058】
また、本発明におけるいわゆる「インサイチュ(in-situ)核酸増幅反応」とは、固相担体40の表面でその場環境50において核酸増幅反応が起こり、増幅反応生成物60が固相担体40の表面に固定化されることを意味する。増幅反応生成物60には、増幅された核酸分子が含まれるが、これに限定されず、インサイチュ核酸増幅反応によって生成された増幅反応生成物60の一部は、各固相担体40中に残り、また、増幅反応生成物60の他の部分は、核酸増幅反応液30中に放出される。
【0059】
本発明の一実施形態では、核酸増幅反応溶液30は、遊離のプライマー301、ヌクレオチド、酵素、および反応添加剤を含む。酵素系はポリメラーゼ302であってもよく、ポリメラーゼ302はDNAポリメラーゼであってもRNAポリメラーゼであってもよい。さらに、酵素は、逆転写酵素 (RT)、リボヌクレアーゼ (RNase)、ヘリカーゼ、DNA リガーゼ (DNA リガーゼ) の 1 つまたは複数の組み合わせであってもよく、ポリメラーゼと相乗的に作用することができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction, PCR)、リガーゼ連鎖反応(Ligase Chain Reaction, LCR)、または等温核酸増幅技術(Isothermal Nucleic Acid Amplification Technologies, iNAAT)を含む。多くの iNAAT 法の中でも、好ましいものはループ媒介等温増幅 (Loop-mediated isothermal Amplification, LAMP) である。ポリメラーゼ連鎖反応法で 2 段階の温度 (熱) サイクルプロセスが使用され、核酸の変性に使用される温度は 85 ~ 95℃であり、プライマー結合およびポリメラーゼ伸長の温度は60~65℃であり、ループ媒介等温増幅反応の温度は 60 ~ 65℃である。
【0061】
図2を参照すると、本発明の一実施形態では、固相担体は、多機能なボディ41、少なくとも1つの濃縮リガンド70、および少なくとも1つの増幅リガンド71を含む。各濃縮リガンド70は多機能なボディ41の表面に結合する。濃縮リガンド70は、抗体、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド、タンパク質、多糖、またはそれらの組み合わせである。増幅リガンド71は多機能なボディ41の表面に結合し、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチドであり、固相支持体に結合するための官能基修飾を有し、例えば第一アミン、ビオチン、チオール基修飾、タンパク質、多糖、またはそれらの組み合わせである。オリゴヌクレオチドおよび生物学的物質を捕捉する特異性と安定性を高める修飾は、ロックド核酸 (locked nucleic acid, LNA)、ホスホロチオエート(phosphorothioates)、モルホリノ(morpholino)修飾、またはそれらの組み合わせである。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0062】
この実施形態で選択される濃縮リガンド70は、被検物質20と一致することができる。被検物質20は、細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、原生生物、またはそれらの組み合わせである。特異的結合の後、分析物20は固相担体40の濃縮リガンド70に吸着される。
【0063】
この実施形態で、増幅リガンド71は、多機能なボディ41上に少なくとも1つ設けられており、核酸増幅反応液30中の遊離のプライマーと結合することができる。また、増幅リガンド71は、生体物質21と結合可能であり、生物学的物質21は、例えば、高温により放出される被検物質20の核酸分子、または、増幅リガンドが複製された後、増幅反応生成物60は核酸増幅反応液30中に放出される。また、増幅反応生成物60、核酸増幅反応液30中で標識を有するライマー301と結合することができ、プライマー301中の標識は核酸標識である。核酸マーカーには、放射性同位体(例えば、3H、14C、32Pなど)、ジゴキシン(digoxin,DIG)、ビオチン、蛍光標識3011(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate,FITC)、テキサスレッド(Texas Red)、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7、ローズレッドB(rhodamine B)など)、また、発光物質(例えば、アクリジニウムエステル(2',6'-ジメチルカルボニルフェニル-10-スルホプロピルアクリジニウム-9-カルボキシレート 4'-NHS Ester)(2',6'-DiMethylcarbonylphenyl-10-sulfopropylacridiniuM-9-carboxylate 4'-NHS Ester))等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0064】
この実施形態では、固相担体40の表面は、少なくとも1つ以上の手順によって処理されて、極めて高い特異性を有する官能化濃縮リガンド70および増幅リガンド71を形成し、それによって標的微量の被検物質20が分析される。
【0065】
本発明の別の実施形態では、被検物質20は、細胞、細胞小器官、細菌、ウイルス、原生生物、またはそれらの組み合わせである。固相担体40の一部は、濃縮体および少なくとも1つの濃縮リガンド70を含み、固相担体40の別の部分、増幅本体42および少なくとも1つの増幅リガンド71を含む。濃縮リガンド70は濃縮体の表面に結合され、濃縮リガンド70は被検物質20を結合するために使用される。増幅リガンド71は増幅本体42の表面に結合され、増幅リガンド71は被検物質20から放出される生物学的物質21を結合するために使用される。あるいは、増幅リガンド71が複製されて、核酸増幅反応液30中に放出された増幅反応生成物60に結合する。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態では、被検物質20は、例えば、遊離のDNAまたはリボ核酸物質である。さらに、遊離核酸には、遊離細胞核酸、遊離腫瘍核酸、またはそれらの組み合わせが含まれる。各固相担体40は、増幅本体42および少なくとも1つの増幅リガンド71を含む。増幅リガンド71は、増幅本体42に接続されており、被検物質20に結合する。あるいは、増幅リガンド71が複製されて、核酸増幅反応液30中に放出された増幅反応生成物と結合する。
【0067】
本発明の様々な実施形態では、固相担体40は、リアルタイム加熱のための光熱変換または高周波誘導電磁法などの異なる外部エネルギーで励起される。本発明の一実施形態では、固体担体40の表面構造を加熱するためにプラズマが使用される。本発明の別の実施形態では、固体担体40の表面層としての有機光熱コーティングを加熱するために光エネルギーが使用される。本発明の別の実施形態では、磁気のある固相担体40は、局所加熱によって加熱される。すなわち、磁気固相担体40は外部磁場中に置かれ、交番磁場の振幅が0.5 ~550 kA/mの範囲で制御され、交流磁場の周波数が 3~3,500 kHzの高周波範囲 (交流磁場)で制御され、核酸の変性、プライマーの接着、およびポリメラーゼの伸長に必要な温度範囲を達成する。
【0068】
本発明の一実施形態において、「光熱」によって励起される固相担体40の場合、固相担体40の本体は、例えば、金属または複合材料で形成された球体であり、磁気コア401と、中間サポート層402とを含む。中間支持層402は、外側光熱変換層の構造を安定化および維持するために使用され、シリコンシェルであってもよい。中間支持層402の全体形状は、球形、楕円形、ディスク形、星形、ロッド形、正方形、異方性凸面(ナノスターなど)、ナノシェル、ナノケージ、二重三角錐であってもよい。中間支持層402の全体形状は、それらの1つまたは2つ以上のマイクロフィラメントの組み合わせであるが、本発明はこの形態に限定されない。磁気コア401は、遷移金属またはその酸化物を含み、例えば、酸化第一鉄(FeO)、酸化鉄(Fe2O3)、四酸化三鉄(Fe3O4)、酸化水酸化鉄(FeO(OH))、水酸化第一鉄(Fe(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)3)、一酸化コバルト (CoO)、酸化水酸化コバルト(CoO(OH))、四酸化三コバルト(Co3O4)。しかし、本発明はその誘導体および混合物からなる群に限定されない。固体担体40の表面は、局所表面プラズモン共鳴(LSPR)効果を有する貴金属層(金、銀、パラジウム、白金、またはそれらの組み合わせなど)、または光熱変換効率を有する有機層から構成される。固体担体40の表面には、近赤外 (Near Infrared Spectroscopy,NIR) 吸収スペクトルを持つシアニン(cyanine)、ポリピロール(polypyrrole)、またはグラフェン(graphene)も追加できる。
【0069】
図3に示すように、本発明の実施形態による高速核酸増幅システムは、反応ユニット10、統合ドライバー11、エネルギー励起ユニット12、及び補助冷却ユニットを含む。反応ユニット10は、核酸増幅反応液30と複数の固相担体40とを収容する。固相担体40は、核酸増幅反応液30中に懸濁されているか(
図4(a))、あるいは反応ユニット10の空洞の内壁に半懸濁状態で結合されている(
図4(b))、または反応ユニット10の壁の空洞に固定される(
図4(c))。本発明の実施形態では、補助冷却ユニットは以下の形態であってもよい。
【0070】
第一は、核酸増幅反応液30(体積100μL以上)を補助冷却ユニットとして使用する。具体的には、外部補助冷却ユニット13は、核酸増幅反応液30を冷却温度まで冷却した後、反応ユニット10内に導入され、反応ユニット10内の核酸増幅反応液30が補助冷却ユニットとして使用される。このように、外部エネルギーを与えた後、核酸増幅反応液30は徐々に昇温し、反応中は冷却温度を維持し続けるため、以下の補助冷却ユニットに比べて核酸増幅反応の効率は悪くなるが、全体の操作時間は依然として従来のポリメラーゼ連鎖反応による核酸増幅反応よりも短いである。
【0071】
第二は、核酸増幅反応液30と外部補助冷却ユニット13とで補助冷却ユニットを構成する。外部補助冷却ユニット13は、反応ユニット10の周囲に配置され(
図5に示すように)、反応ユニット10内の核酸増幅反応液30の温度が低下するように(即ち、冷却温度が維持される)反応ユニット10の周囲に冷却温度を継続的に提供する。また、外部補助冷却ユニット13の温度変化をリアルタイムに検出し、温度をフィードバック制御する温度検出ユニット14(例えば、K型熱電対)を設けることもできる。反応ユニット10内の酸増幅反応液30は常に冷却温度に保たれており、迅速な核酸増幅反応が可能である。
【0072】
また、外部補助冷却ユニット13は、例えば、比熱容量の大きい氷や高分子吸水性樹脂(カルボキシメチルセルロース等)や冷却チップ(ペルチェクーラー等)である。本発明の他の実施形態において、外部補助冷却ユニット13は、水(0.5mL~1mL)または硝酸アンモニウム(溶液のモル熱(ΔHsol)=26.2KJ)、或いは尿素(溶液のモル熱ΔHsol)=15KJ)を含むこともできる。それらの結晶は水に溶解して化学吸熱反応を引き起こす。
【0073】
図3に示すように、エネルギー励起ユニット12は、外部エネルギーを固相担体40に直接かつ効率的に提供し、接触または非接触のエネルギー伝達方式で熱エネルギーに変換する。エネルギー励起ユニット12が固相担体40へのエネルギーの供給を停止すると、冷却温度を有する補助冷却ユニットが固相担体40の熱を急速に放散する。したがって、本発明は、エネルギー励起ユニット12と補助冷却ユニットとの間の相互作用および調節を通じて、固相担体40の周囲におけるその場環境50で核酸増幅反応に必要な温度(熱)サイクルを迅速に形成することができ、固相担体40の表面上でインサイチュ核酸増幅の方法によって核酸増幅反応を完了させる。
【0074】
本発明の実施形態では、接触励起は電熱発熱であり、電力伝送は電子回路と誘導磁束によって行うことができる(ワイヤレス充電)。電気熱の発生は、ジュール加熱(Joule heating)、熱電加熱(Thermoelectric heating)、または表面弾性波(surface acoustic waves, SAWs)による発熱である。
【0075】
本発明の実施形態において、固相担体40を非接触で励起する方法は、プラズマ加熱法であることが好ましい。
図3に示すように、統合ドライバ11(例えば、エネルギー励起ユニット12の動作を制御するコンピュータおよびLabVIEWドライバソフトウェアを含む)は、エネルギー励起ユニット12を駆動する。このようにして、エネルギー励起ユニット12(例えば、赤外線ファイバー結合レーザー)の出力エネルギー及びその開閉のタイミングが制御され、反応ユニット10内の固相担体40には、局所的な熱輻射場変化が生じる。
【0076】
本発明の実施形態において、エネルギー励起ユニット12は、光熱励起や加熱等の非接触で固相担体40を励起する。
図5に示すように、エネルギー励起ユニット12は、レーザコリメータ121とレーザエミッタ122とから構成され、LEDダイオード光源であってもよい。本発明の他の実施形態では、エネルギー励起ユニット12は磁気励起加熱方式(例えば、高周波磁場発生器)であるが、本発明はこれに限定されない。エネルギー励起ユニット12は、主に固相担体40自体とその近傍(距離は数百ナノメートル(nm)~数百マイクロメートル(μm))におけるその場環境50を加熱する。
【0077】
本発明の実施形態において、高速核酸増幅システムは、外部補助冷却装置13の温度フィードバックを検出するための温度検出ユニット14(例えば、K型熱電対)をさらに含む。補助冷却ユニットと固相担体40のエネルギー励起ユニット12の加熱とをバランスよく制御することにより、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な温度(熱)サイクルが迅速に実現され、核酸増幅反応が迅速に完了する。
【0078】
本発明の実施形態において、高速核酸増幅システムは、操作ユニット15をさらに備える。操作ユニット15は、永久磁石、電磁石、またはそれらの組み合わせで構成することができるが、本発明はこれに限定されない。本発明の実施形態において、ユニット15は、反応ユニット10内の固相担体40を精製および濃縮(濃縮)するための単純な磁気操作を実行するために使用され、これは、固相担体40に結合した増幅反応生成物60のその後の検出および分析(例えば、増幅反応生成物60の検出シグナルを増強する)に役立つが、本発明はこれに限定されない。
図6に示すように、その後の増幅反応生成物60の濃縮(濃縮)操作では、操作部15を介して磁気の固相担体40を磁気的に吸引するだけで、固相担体40と核酸増幅反応液30とを分離する。この精製および分離は、バックエンド核酸分子の検出における妨害物質(例えば、非特異的増幅核酸産物または遊離のプライマー301およびポリメラーゼ302など)を除去するだけでなく、この濃縮操作により、その後の核酸分子の検出効率(例えば,検出感度)をさらに向上させることができる。
【0079】
ここで特に注目しなければならないのは、本発明により温度制御装置を簡素化できることである。すなわち、単一のエネルギー励起ユニット12および外部エネルギー校正器16のみを温度制御に使用することができる。外部エネルギー校正器は、例えば光強度計であり、エネルギー励起ユニット12のエネルギー強度およびエネルギー励起時間を制御することにより固相担体40の周囲の温度を変化させ、すべての固相担体の周りにおいてその場環境50を生成する。これにより、本発明は、GNAの発明特許番号US9,382,583B2(発明名はナノ粒子の熱伝達を利用した核酸増幅方法である)に開示されている、2次元ミラースキャナーを用いてレーザー光を2次元に偏向し、10ナノ秒から500ミリ秒の間、PCRサンプル中のナノ粒子の一部に選択的かつ特異的にレーザーの焦点を合わせるステップを低減することができる。
【0080】
本発明の一実施形態において、被検物質20は、遊離DNA、リボ核酸物質、または被検物質20から放出される生物学的物質21であり、固相担体40は増幅本体42である。
図7(a)に示すように、各増幅リガンド71は増幅本体42の表面に結合しており、増幅リガンド71は被検物質20または生物学的物質21に結合している。
図7(b)に示すように、外部エネルギー源が固相担体40を励起してその場環境50を生成すると、核酸増幅反応液30中のポリメラーゼ302を利用して増幅リガンド71で第1の核酸増幅が行われ、増幅反応により増幅反応生成物60 が生成される。
図7(c)に示すように、外部エネルギー源が一時的にオフになり、固体担体40の周囲の熱場が補助冷却ユニットによって急速に冷却され、その場環境50が消散する。
図7(d)に示すように、外部エネルギー源を再度オンにして、再びその場環境50を形成して変性反応を起こさせ、被検物質20と増幅反応生成物60を分離する。
図7(e)に示すように、外部エネルギー源を一時的に遮断し、核酸増幅反応液30中の蛍光標識3011を有する遊離のプライマー301と増幅反応生成物60とを結合させ、被検物質20と固体担体40上の別の増幅リガンド71が結合する。
【0081】
図7(f)~(g)に示すように、外部エネルギー源をオンにした後、ポリメラーゼ302は、固体担体40上の増幅リガンド71に被検物質20または生物学的物質21を固定化し、増幅反応生成物60を鋳型として、さらに核酸増幅反応が行われ、増幅反応生成物60が生成される。
図7(h)~(k)は、エネルギー励起ユニット12をオン・オフして別の核酸増幅反応を行うサイクルを示す。
図7(l)は、複数のサイクルの後、固体担体40に担持された増幅反応生成物60が飽和に達することを示している。
【0082】
本発明の一実施形態では、固体担体40は「光熱」によって励起され、固体担体40の表面は金ナノシェル403(または、「磁気金ナノシェル」とも呼ばれる)である。 金ナノシェル403には磁気コアがあり、金ナノシェル403と磁気コア401の間には中間層402がある。本発明の一実施形態では、光熱励起は、レーザー、LEDアレイ、または両方の組み合わせのいずれかである。本発明の一実施形態では、外部エネルギー源はレーザーであり、レーザー波長は主に可視スペクトルから近赤外スペクトル(380nm~1.4μm)の範囲である。さらに、本発明の実施形態では、異なる濃度の磁気金ナノシェル懸濁液はいずれも、近赤外スペクトル領域(750nm~1.4μm)を吸収する特性を有することを示している。本発明の他の実施形態では、808nmレーザー励起下で、磁気金ナノシェルの表面に局在表面プラズモン共鳴(Localized surface plasmon resonance,LSPR)効果を生じさせ、それによってプラズマ加熱効果を生じさせることができる。
【0083】
また、本発明の別の実施形態では、固体担体40は「磁気変化」によって励起され、固体担体40は磁気コア401を含む。固体担体40が外部AC磁場にさらされると、誘導加熱効果は主に、ネール緩和機構(Neel relaxation;固体担体40の磁気モーメント回転)とブラウン緩和機構(Brown relaxation;水性媒体中での固体担体40の物理的回転)を含むナノ構造の磁化反転に起因する。この加熱能力は、平均サイズ、構成、磁化、磁気異方性などの特徴的なナノ構造、さらに印加される交流磁場の振幅 (Hac) と周波数 (f) に依存します。交番磁場は交番磁場発生装置により形成され、その振幅および周波数が各固体担体40の核酸増幅に必要な温度を発生する場の条件に応じて設定される。また、交番磁場の振幅は0.5~550キロアンペア/メートル(kA/m)であり、交番磁場の周波数は3~3500キロヘルツ(kHz)である。
【0084】
本発明の別の実施形態において、固体担体40は、懸濁液の形態で核酸増幅反応液30中に分散された安定なコロイド状単相磁気固体担体40であってもよい。単相とは、単一の分散した懸濁液を指し、固体担体40のサイズがナノスケールに達すると、その表面の電位により安定なコロイド状の単相溶液が形成される。本発明の一実施形態では、固体担体40は、例えば、強磁気または超常磁気酸化鉄の固体担体40(Superparamagnetic iron oxide Nanoparticles, SPIONs)、特にマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ- Fe2O3)である。本発明の別の実施形態では、固体担体40は、例えば、スピネル構造フェライトナノ材料であり、たとえば、MIIFe2O4(ここで、MII= Co2+、Ni2+、Zn2+、Mn2+など)を含むスピネルフェライトである。本発明の他の実施形態において、固体担体40は、遷移金属(例えば、Ni、Coなど)が添加されたフェライトナノ材料から構成されてもよく、これにより、より大きな飽和磁化値と安定した実効磁気異方性(The effective magnetic anisotropy;Keff)と外部交流磁場下でのより強い磁化損失が得られる。
【0085】
本発明の別の実施形態では、磁気変化によって励起される固体担体40のサイズは8~1000nmであり、その形状は、球(sphere)、ナノ立方体(nanocube)、ナノ八面体(nanoctahedron)、棒状(rod)、円盤状(disk)、中空球状(hollow sphere)、星型(star)、テトラポッド型(tetrapod)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。外部交流磁界の振幅(Hac)と周波数(f)は、周波数(3~3,500kHz)と磁界振幅(0.5~550kA/m)の広い範囲で調整可能である。
【0086】
上記の実施形態では、固体担体40の多機能なボディ41、濃縮体または増幅本体42の表面は、充填材料をさらに含む。充填材は、固体担体40の凝集を防止し、水溶液の安定性を高め、ポリメラーゼの吸着を阻害するために使用される。また、充填材は、非特異的なタンパク質やプライマー301が固体担体40に吸着することも防止する。さらに、充填材料は、分子量5~10キロダルトン(kDa)のポリエチレングリコール(polyethylene glycol,PEG)72およびウシ血清アルブミン(bovine serum albumin,BSA)73であってもよい。濃縮リガンドまたは増幅リガンド71は、架橋剤を使用して、カルボキシル基、アミン基、およびチオール基間の共有結合など、充填材料によって提供される官能基との安定した共有結合を形成する。
【0087】
図8に示すように、本発明でいう核酸増幅反応方法とは、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応または水冷オンビーズループ媒介等温増幅反応の2つの反応を指す。特に、水冷式とは、冷却に前述の補助冷却装置を用いることを指し、ビーズ式とは、固体担体40上でインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応を行うことを指す。本発明でいう核酸増幅反応方法は、以下の工程を含む。
【0088】
ステップS20では、反応ユニット10において、操作ユニット15は、少なくとも1つの分析物が遊離DNAである場合、またはリボ核酸物質が存在する場合、不純物を洗浄および除去し、被検物質20を濃縮(濃縮)するために使用され、ステップS51に直接進み、そうでない場合はステップS30に進む。
【0089】
ステップS30において、少なくとも1つのエネルギー励起ユニット12は、複数の固相担体40に外部エネルギー源を提供し、複数の固相担体40の温度が被検物質20の熱解離温度(例えば、80~95℃)まで上昇し、ステップS40に進む。
【0090】
ステップS40において、少なくとも1つの被検物質20が熱解離されて生物学的物質21(例えば、DNAまたはリボ核酸)が放出され、次いでステップS50が実行される。
【0091】
ステップS50において、エネルギー励起ユニット12は、核酸ハイブリダイゼーション温度に達するまで複数の固相担体40に外部エネルギー源を提供するように調整され、複数の固相担体40が少なくとも1つの生物学的物質21と結合する。操作ユニット15により、複数の固相担体40が精製、分離、濃縮され、ステップS60が実行される。
【0092】
ステップS51において、エネルギー励起ユニット12は、核酸ハイブリダイゼーション温度に達するまで複数の固相担体40に外部エネルギー源を提供するように調整され、複数の固相担体40が少なくとも1つの被検物質20と結合する。操作ユニット15により、複数の固相担体40が精製、分離、濃縮され、ステップS60が実行される。
【0093】
ステップS60では、予冷した核酸増幅反応液30(予冷した核酸増幅反応液30の温度は-10℃~4℃である)を反応ユニット10に添加し、外部補助冷却ユニット13が反応ユニット10に接続される。水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を行う場合は、直接ステップS70に進み、水冷オンビーズループ媒介等温増幅反応を行う場合は、直接ステップS71に進む。
【0094】
ステップS70において、エネルギー励起ユニット12は、複数の固相担体40に外部エネルギーを提供するように調整され、固相担体40の周りにその場環境50を、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な核酸変性温度(90~95℃)およびプライマー結合/ポリメラーゼ伸長温度(60~65℃)に到達させ、更に、複数の固相担体40上で少なくとも1つの酵素を介してインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応が行われる。検出段階に入るには、ステップS80に進む。
【0095】
ステップS71において、エネルギー励起ユニット12は、複数の固相担体40に外部エネルギーを提供するように調整され、その場環境50をループ媒介等温増幅反応に必要な温度(60~65℃)に到達させ、更に、複数の固相担体40上で少なくとも1つの酵素を介してインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応が行われる。検出段階に入るには、ステップS80に進む。検出段階に入るには、ステップS80に進む。
【0096】
ステップS80では、操作ユニット15を介して増幅本体42と上清とを分離する。
【0097】
ステップS90では、検出モジュール17を使用して、増幅本体42上に位置する増幅反応生成物60の信号変化を識別し、増幅反応生成物60上の核酸を検出することにより生成される色の変化、発光の変化、またはそれらの組み合わせを標識する。
【0098】
一実施形態では、本発明の水冷オンビーズループ媒介等温増幅反応は、固相担体40の表面に少なくとも1対の特異的プライマー301を導入するものである。プライマー301は、増幅リガンド71 の増幅本体42をとして機能する(図 9(a) に示す)。この実施形態では、少なくとも1対の特異的プライマー301は、3対のプライマー301(FIP、BIP、LF、LB、B3およびF3)を含む。水冷ビーズオンループ媒介等温増幅反応が増幅本体42上で実行される。外部エネルギー源がオフになると、増幅本体42上の特異的プライマー301がDNAハイブリダイゼーションを通じて標的核酸配列を捕捉する。核酸配列が被検物質20または生物学的物質21(
図9(b)に示す)であり、外部エネルギー源がオンになると、増幅本体42はループ媒介等温増幅反応に適した温度範囲を生成し、ポリメラーゼ 302 によって予備伸長が行われます (図 9(c) に示す)。その後、外部エネルギー源がオフになると、温度は急速に低下し、ループ媒介等温増幅反応が停止する (図 9(d) に示す)。
図9(b)から
図9(d)のステップを複数サイクル行った後、増幅本体42上に担持された増幅反応生成物60は飽和に達する(
図9(e)に示すように)。反応終了後は、増幅本体42に加えて、操作部15を介して、増幅された増幅反応生成物60を濃縮(濃縮)、精製することができる。この増幅本体42による精製分離操作は、反応の増幅反応生成物60の特異的検出 (LAMP/RT-LAMP)にも役立つ。増幅される核酸フラグメントには、FIPとBIPの 3' 末端の間に真陽性(true positive)の増幅フラグメントのみが含まれており、LAMP/RT-LAMP 産物検出の特異性が向上し、偽陽性の発生が減少する。
【0099】
さらに、GNA Biosolutionsの米国特許第US9,382,583 B2号の開示によれば、固相担体40の「局所加熱」は、以下の条件に基づいて起こる。すなわち、エネルギー励起間隔がより短い場合、または、励磁間隔を t1 とすると、臨界励磁間隔 t1 は次の式で表すことができる。
t1=(s1×|x|)^2/D
t1は、平均ナノ粒子距離で熱が 1 つのナノ粒子から次のナノ粒子に拡散するのに必要な時間を表する。
s1は、スケーリング係数を表し、臨界励起間隔t1で固相担体40を照射したとき、熱力場によって生成される熱流の拡散距離の尺度、また、固相担体40が局所的に加熱されている場合、s1は1以下である。
|X|は固相担体40間の平均距離を表す。
Dは、固体担体40間の媒体の熱拡散係数を表す。
【0100】
前述の特許に開示されている条件によれば、二次元ミラースキャナを操作して、光熱粒子を含む核酸増幅反応液30を通して光を10ナノ秒(ns)~500ミリ秒(millisecond,ms)の周波数で走査しなければならない。したがって、前述の特許を実施する場合、光熱粒子の露光時間を正確に制御するために上記の動作を正確に制御する必要があり、これがこの技術の実現を成功させるための重要な要素である。
【0101】
対照的に、本発明は、比較的実施が容易な方法を使用して、固相担体40が外部エネルギー励起を受けて局所的な熱放射場現象を生成するように制御する。特に、本発明では、固相担体40の懸濁した核酸増幅反応液30を使用する。固相担体40の総体積と核酸増幅反応液30の体積との比率は、1:200~1:1×109である。一実施形態では、好ましい体積比は1:1×104~1:1×108である。これにより、上記固相担体40間の距離|X|および熱力場の熱流拡散距離s1が大幅に改善される。したがって、比較的長い臨界励起間隔t1を使用して、固相担体40を照射して励起し、局所的な加熱現象を生じさせることができる。
【0102】
さらに、核酸増幅反応液30は外部補助冷却ユニット13内に配置されており、外部補助冷却ユニット13は、固相担体40が生成するその場環境50を大きく閉じ込める冷却温度環境を提供することにより、理想的な状態は、他の固相担体40によって形成されるその場環境50と重ならない。このように、本発明は、エネルギー励起ユニット12と反応ユニット10との間の相対運動関係を制御する必要がなく、比較的長い励起時間(1秒から数十秒の間)を使用して反応ユニット10中のすべての懸濁または固定化固相担体40を励起することができる。さらに、エネルギー励起ユニット12が駆動されるたびに、エネルギー励起ユニット12と反応ユニット10との相対位置は移動しない。この特性も、本発明とGNA Biosolutionsの米国発明特許(米国 9,382,583 B2 出版番号)との間の明らかな違いを引き起こす。
【0103】
また、本発明の固相担体40は、体表面積率が高いため(前述したように)、被検物質20中の増幅反応生成物60を効率的に分離するステージとして利用できるだけでなく、被検物質20中の核酸増幅反応の阻害物質を除去するためにも使用できる。
また、固相担体40の表面に形成されたその場環境50においてインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応を行う場合、固相担体40の表面には固定化された増幅反応生成物60を担持できる空間が限られているため、したがって、比較的短い操作時間(または比較的少ない核酸増幅サイクル数)で、固相担体40の表面上の増幅反応生成物60が飽和状態に達することができ、これによりその後の増幅反応生成物60の検出が容易になる。
【0104】
本発明の一実施形態では、
図10(a)および
図10(b)に示すように、固相担体40の磁気金ナノシェルは良好な光熱変換特性および安定性を有し、レーザー光の波長が780~1,000 nmの間の場合、好ましくは 800~950 nmの間の場合、光エネルギー吸収効果はより良好である。
【0105】
本実施形態では、微量の核酸増幅反応液30(20 μL)に磁気金ナノシェルを添加して、微量の単相磁気金ナノシェル懸濁液を形成する。磁気金ナノシェルの濃度は 2.9×1010粒子/ml で、光熱変換と安定性の実験は 808 nm レーザーを使用して行われました。
図10(a)に示すように、統合ドライバー11は、808 nmファイバ結合レーザを駆動し、10回の連続レーザサイクル(レーザ出力は400ミリワット(mW)/0.16平方センチメートル(cm2)であり、最初に 60 秒間オンになり、その後 120 秒間オフになる)で、この微量の単相磁気金ナノシェル懸濁液を励起し、これによりこの微量の単相磁気金ナノシェル懸濁液の光熱変換の最高温度は、62.29±1.06℃に達することができ、その変動係数は1.70%である。この結果は、磁気金ナノシェルが安定した光熱変換特性を有し、高出力レーザー照射によって固相担体40の形状が変化しないことを示している。
図10(b)に示すように、
図10(a)の微量単相磁気金ナノシェル懸濁液を、異なるパワーの808 nmレーザーで励起した。本発明の実施形態では、使用される異なる電力には、200 mW/0.16 cm2、250 mW/0.16 cm2、300 mW/0.16 cm2、400 mW/0.16 cm2、500 mW/0.16 cm2、600 mW/0.16 cm2および700 mW/0.16 cm2が含まれる。さらに、対照群では、磁気金ナノシェルを含まないブランクサンプル溶液を1 W/0.16 cm2レーザーで励起し、微量の単相磁気金ナノシェル懸濁液を定常状態の温度まで局所的に光熱加熱してその温度をミクロスケールで測定し、その結果は、磁気金ナノシェルが良好な光熱変換特性を有し、光熱変換が安定状態に達する温度が入力レーザーパワーに直接比例することを示している。
【0106】
本発明の一実施形態では、
図11(a)および
図11(b)に示すように、光熱的に加熱して安定状態にした磁気金ナノシェル懸濁液(20μL)の温度をミクロスケールで測定し、レーザー出力強度と磁気金ナノシェル周囲のマイクロスケール環境温度との関係を確立する。磁気金ナノシェルのその場環境50の温度領域とレーザーのワット数との間の関係は、マイクロスケールの測定を通じて推定される。
図11(a)に示すように、テスト対象は、濃度 2.9×1010 (粒子数/ml) の 20 μL 磁気金ナノシェル懸濁液であり、図 10(b)に示すさまざまなレーザー出力の下で、テスト対象はマイクロスケールで光熱変換温度を直接測定し、安定状態での磁気金ナノシェルの光熱変換温度上昇曲線を確立する(その一次方程式は y=0.0778x+44.126; R2=0.9104)。
図11(a)で上の枠で囲まれた温度領域は、細胞溶解と DNA 変性に必要な温度範囲 (85~95℃) です。
図11(a)の下の枠で囲まれた温度領域は、ループ媒介等温増幅反応 (LAMP) のプライマー結合およびポリメラーゼ伸長操作に必要な温度範囲 (55~65℃)である。
図11(b)は、異なる808 nmレーザー出力(200 mW/0.16 cm2、250 mW/0.16 cm2、400 mW/0.16 cm2)下の定常状態における磁気金ナノシェル懸濁液の反応ユニット10の赤外線サーモグラフィー画像を示す。図 11(b)の上部は、ブランク サンプル溶液に 808 nm のレーザー出力 (200 mW/0.16 cm2、250 mW/0.16 cm2、400 mW/0.16 cm2) を照射した結果を示し、温度は 27.9 ~29℃である。本発明の一実施形態では、磁気金ナノシェル懸濁液が 200 mW/0.16 cm2レーザーで励起されて安定状態になると、コア温度は 51.6℃になる。本発明のさらに別の実施形態では、250 mW/0.16 cm2レーザーで安定状態まで励起すると、中心温度は 63.9℃になる。本発明のさらに別の実施形態では、400 mW/0.16 cm2のレーザーで安定状態まで励起すると、中心温度は79.1℃になる。
【0107】
図12(a)および
図12(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る補助冷却ユニットは、単相磁気金ナノシェルを含む核酸増幅反応液30に対して100回のレーザー励起サイクル(1サイクルには、最初に 400 mW/0.16 cm2で 1.25 秒間照射し、その後 0.5 秒間オフにして150 mW/0.16 cm2で 7.5 秒間照射する)を実行し、懸濁した単相磁気金ナノシェルを含む核酸増幅反応液30の温度変化を観察する。
図12(a)は、本実施形態の補助冷却部の構造構成を示しており、大容量(100μL)の核酸増幅反応液30とその外部補助冷却ユニット13 とを備えている。本実施形態では、外部補助冷却ユニット13は、比熱容量の大きい氷(体積550μLの水を凍らせた氷)であり、核酸増幅反応液30を収容する反応ユニット10の周囲を囲み、反応ユニット10内の核酸増幅反応液30の温度を冷却温度(2~10℃)に維持するために用いられる。
図12(b)に示すように、磁気金ナノシェルの粒子数(5.8×108粒子数)を固定し、異なる体積の核酸増幅反応液30(20μLと100μL)を用いて磁気金ナノシェル懸濁液を調製し、一部のグループが
図12(a)に示すように外部補助冷却ユニット13を使用する。また、対照群として核酸増幅反応液のみを含むブランクサンプル液を使用する。次に、100 回の外部レーザー励起サイクル (1サイクルには、最初に 400 mW/0.16 cm2で 1.25 秒間照射し、その後 0.5 秒間オフにして150 mW/0.16 cm2で 7.5 秒間照射する) を実行して、各グループの核酸増幅反応液30の温度変化を観察する。同時に、上記の運転条件の組み合わせにより、何回の外部レーザー励起サイクルで核酸増幅反応液30の温度を冷却温度(2~10℃)に維持できるか、または、外部レーザー励起サイクル数が変化しても、温度変化は大きく変化しないことについても評価する。この例では、一部のグループは 100 μL の磁気金ナノシェル懸濁液と外部補助冷却ユニット、一部のグループは 100 μL のブランクサンプル溶液と外部補助冷却ユニット 13、および一部のグループは 100 μL の磁気金ナノシェル懸濁液ですが、外部補助冷却装置はなく、一部のグループは 20 μL の磁気金ナノシェル懸濁液を使用していますが、外部補助冷却装置はない。レーザーサイクル周期は右側のY軸に対応し、右側のY軸はレーザーパワー(mW)を表す。この実施形態の結果が示されている(
図12(b))。具体的には、懸濁された単相磁気金ナノシェルを分散させるために100μLの核酸増幅反応液30を使用し、外部補助冷却ユニット13(氷の体積:550μL)を使用した場合、65回の外部レーザー励起サイクル(1サイクルには、最初に 400 mW/0.16 cm2で 1.25 秒間照射し、その後 0.5 秒間オフにして150 mW/0.16 cm2で 7.5 秒間照射する)後、左Y軸の核酸増幅反応液30の温度(℃)が冷却温度(2~10℃)に維持される。この結果も、この設計および操作条件下では、レーザーによって励起されたときの磁気金ナノシェルの加熱方法が「局所加熱」モードに属し、つまり加熱がその場環境50のみに限定されることを示している。核酸増幅反応液30全体の平均温度は冷却温度(2~10℃)に保たれる。
【0108】
図13(a)および
図13(b)は、本発明の実施形態を示しており、免疫側方流動テストストリップ171を使用して、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応によって生成される増幅反応生成物60を検出する。
図13(a)に示すように、レーザー励起を使用して水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行した後、磁力を備えた操作ユニット15を使用して、磁気金ナノシェルを精製および濃縮(濃縮)し、非特異的な核酸増幅反応によって生成される核酸分子生成物や、核酸増幅反応液30中のその他の物質(例えば、プライマー301、ポリメラーゼ302など)を除去する。同時に、特定のインサイチュ核酸増幅反応により生成された増幅反応生成物60が濃縮(濃縮)される。磁気金ナノシェルは、その場での核酸増幅反応によって生成された増幅反応生成物60と結合する。
図13(a)および
図13(b)に示すように、精製および濃縮された磁気金ナノシェルをTBST緩衝液で再懸濁した後、免疫側方流動テストストリップ171を用いて迅速な検出を行った。ここで、磁気金ナノシェルは増幅反応生成物60に結合し、増幅反応生成物60は核酸標識に結合する。次に、抗フルオレセインイソチオシアネート抗体をラテラルフローテストストリップのテストライン(test line)1711に結合させて、核酸標識ある増幅反応生成物60に結合される磁気金ナノシェルを識別および捕捉し、視覚的に検出可能なマークを形成する(例えば、テストライン 1711 で列を形成)。この反応は3~5分以内に完了することができ、コントロール ラインは従来の免疫側方流動テストストリップ171の品質管理に使用される。この実施形態における核酸標識は、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate,FITC)で標識されたプライマー301である。
【0109】
図14(a)および
図14(b)に示すように、本発明の別の実施形態は、プラズマ熱感知技術を使用して、免疫側方流動試験ストリップ171(
図13(b))の試験結果を解釈し、従来の免疫側方流動テストストリップ 171の検出感度を向上する。
図14(a)に示すように、磁気金ナノシェル上の増幅反応生成物60は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識のプライマー301と結合される。その後、ラテラルフローテストストリップのテストライン1711に結合した抗フルオレセインイソチオシアネート抗体は、プライマー301の核酸標識ある増幅反応生成物60に結合される磁気金ナノシェルを識別および捕捉する。ここで、磁気金ナノシェルは、レーザー複合赤外線熱センサー172によって励起されて熱を発生し、この熱はさらに熱画像化される。このプラズマ熱感知技術は、免疫側方流動テストストリップ 171の試験結果の解釈の感度を高めることができる。
図14(b)に示すように、
図13(b)の免疫側方流動テストストリップ 171は、核酸増幅を検出するためにプラズマ熱感知によって分析されるが、テストライン1711では固体担体40の捕捉されない(即ち、陰性反応)。
【0110】
図15(a)および
図15(b)に示すように、本発明の一実施形態では、808 nmレーザーが次のレーザーサイクル(1サイクルには、400mW/0.16cm2で1.25秒間照射し、更に、150mW/0.16cm2で7.5秒間照射する)で大腸菌(E.coli ATCC: 35218)のmalB遺伝子(malB gene)フラグメントを処理する。この例では、malB遺伝子フラグメントは、従来の大腸菌検出のためのポリメラーゼ連鎖反応の検出ターゲットであり、水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応は、異なるレーザーサイクル時間 (10~50サイクル) で、磁気金ナノシェル上での核酸増幅反応が実行される。インサイチュ(in-situ)核酸増幅反応終了後、免疫側方流動テストストリップ171及び尿素ゲル電気泳動を用いて、固相担体40及び核酸増幅反応液30に対して水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応で行われた核酸増幅の結果を順次解析する。
図15(a)に示すように、免疫側方流動テストストリップを、異なるレーザーサイクル周期(10~50サイクル)での検出に使用した。磁気金ナノシェル上のその場での核酸増幅反応が、時間の経過とともに増加することが判明した。レーザーサイクルの数が増加するにつれて、免疫側方流動テストストリップ171上のテストライン1711の信号強度も徐々に増加する。この結果は、短いレーザーサイクルによって形成される超増幅が、レーザーサイクル数を増やすことによって、核酸増幅反応サイクルにおける少量の核酸増幅の損失を補うことができることを示している。
図15(b)に示すように、操作部15によりインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応を完了した磁気金ナノシェルを分離した後に残った上清を、尿素寒天ガムからなる変性寒天コロイドを用いて電気泳動により分析した。DNA沈殿により上清に含まれるDNAを回収した後、高濃度尿素で加熱してDNAを変性させた後、尿素ゲル電気泳動により分析し、上清中に増幅反応生成物60が残存するかどうかを観察する。精製されたmalB-FITCフラグメントは、FITCで標識されたmalBの遺伝子フラグメントの増幅産物であり、増幅反応生成物60のポジティブコントロールグループとして使用される。B3-FITC キャリブレーションプライマーはFITC で標識されたB3プライマーであり、プライマーのポジティブコントロールグループとして使用される。その結果、異なるレーザーサイクル(10~30サイクル)後に分離された上清では、遊離のプライマー301のみが検出され、増幅反応産物60は存在しないことがわかった。この結果は、核酸増幅反応が磁気金ナノシェル上で起こっていることを間接的に証明するものでもある。
図15(b)では、DNA分子量を比較するための基準としてDNA分子量標準(DNAラダー)を追加している。DNA分子量標準はすべて「L」で表されている。なお、
図15(b)中、熱変性していないものを「N」で示し、熱変性したものを「D」で示している。
【0111】
図16(a)および
図16(b)に示すように、本発明の一実施形態では、単純なサンプルの条件下で、従来のポリメラーゼ連鎖反応と、808 nm レーザー励起を使用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応との間の核酸増幅および検出効率の違いを比較する。
図16(a)の上部に示すように、従来のポリメラーゼ連鎖反応の感度は、コピー数0、10、102、103、104、105および106の大腸菌malB遺伝子フラグメントを使用して同じ40 回の熱サイクル (1 回の熱サイクルは、最初は 95℃、15 秒、次に 60℃、30 秒) の操作を実行し、その後、アガリクスゲル電気泳動を使用して感度テストを実行する。結果は、単純なサンプルを検出するための従来の検出ポリメラーゼ連鎖反応の感度が、malB遺伝子フラグメントのコピー数10~102であることを示している。また、
図16(a)の下段は、主に対照群と後述する微生物株のゲノムDNAを個別サンプルとして使用する従来のポリメラーゼ連鎖反応の特異性を確認したものであり、一番左はDNA分子量標準品、その他は簡単なサンプルである。単純なサンプルは、左から右へ、テンプレートなしコントロール (no template control, NTC)、アシネトバクター バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、表皮ブドウ球菌 (Staphylococcus epidermidis)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus,美国典型培▲養▼物保藏中心(ATCC): BAA977)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、マイコバクテリウム・アブセサス(Mycobacterium abscessus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)および大腸菌(Escherichia coli,ATCC: 35218)である。
図16(a)下部の簡易試料を明示するため、左から右に1から12までの番号を付している。各簡易試料は大腸菌のmalB遺伝子フラグメントを検出対象とする。感度試験および特異性試験は、アガラゲル電気泳動を使用して実施される。その結果、大腸菌サンプルのみが検出シグナルを示したことがわかる。なお、
図16(a)の上部と
図16(a)の下部には、DNAの分子量比較の基準としてDNAの分子量標準が追加されており、DNAの分子量標準は全て「L」で表されている。同様に、
図16(b)に示すように、水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応では、同じ大腸菌のmalB遺伝子フラグメントを検出に使用する。これには、左から右にコピー数0、1、10、102、103、104の大腸菌のmalB遺伝子フラグメントは、それぞれ、 0、0.00675、0.0675、0.675、6.75、67.5ピコグラム (picogram,pg) の大腸菌のmalB遺伝子フラグメント相当する。増幅反応生成物60に結合したフルオレセインイソチオシアネートで標識されたプライマー301は、抗フルオレセインイソチオシアネート抗体を免疫側方流動試験ストリップ171のテストライン1711に結合させることによって検出される。その結果、その検出感度も10~102コピー数の範囲であることを示す。増幅反応生成物60は、磁気金ナノシェルに結合したmalB遺伝子フラグメントの増幅反応生成物である。
【0112】
図17(a)および
図17(b)に示すように、本発明の一実施形態では、複雑なサンプルの条件下で、従来のポリメラーゼ連鎖反応と、808 nm レーザー励起を使用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応との間の核酸増幅および検出効率の違いを比較する。複雑なサンプルは、前述の単純なサンプルである大腸菌 (ATCC: 35218) のゲノム DNA と、他の5つの一般的なヒト病原性微生物株のゲノムDNAの混合物を含み、例えば、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus,美国典型培▲養▼物保藏中心(ATCC): BAA977)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)およびエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)である。最初に、0、1、10、102、103、104、105および106コピー数の大腸菌ゲノム DNA をグループとし、さらに、上記の5つの一般的なヒト病原性微生物株のゲノムDNA混合物の106コピーを各グループに追加し、それは上記5つの一般的なヒト病原微生物株のゲノムDNA 6.75ナノグラム(ng)に相当する混合物。
図17(a)に示すように、従来のポリメラーゼ連鎖反応検出では、複雑なサンプルが使用され、同じ40回の熱サイクル (1 回の熱サイクルは、最初は 95℃、15 秒、次に 60℃、30 秒) の操作を実行し、その後、malB遺伝子に対して核酸増幅と検出感度テストを実行する。その結果は、特異的同定を達成するには従来のポリメラーゼ連鎖反応検出の感度が105コピー数まで低下し、検出感度が大幅に低下することを示している。また、
図17(b)に示すように、本発明の別の実施形態では、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行するためにレーザー励起が使用され、コピー数 10、102、103、および 104の大腸菌ゲノムDNAがグループとして追加され、これらはそれぞれ、0.0675、0.675、6.75、および 67.5ピコグラムの大腸菌ゲノムDNAに相当する。さらに、106コピーの上記5つの一般的なヒト病原性微生物株のゲノムDNAの混合物が各グループに追加され、これは6.75ナノグラムの上記5つの一般的なヒト病原性微生物株のゲノムDNAの混合物に相当する。次に、免疫側方流動テストストリップ171を使用して、磁気金ナノシェル上の増幅された核酸分子を検出するが、上述のような複雑なサンプルの条件下でも、検出感度は依然として10~102コピー数に維持される。この試験結果は、レーザー励起を使用した核酸増幅および水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の検出の感度が、複合核酸被検物質20の影響を受けないことを示している。
【0113】
図18(a)および
図18(b)に示すように、本発明の一実施形態では、混合された濃縮体および増幅本体42の懸濁液を使用して実験が行われ、濃縮体および増幅本体42は両方とも磁気金ナノシェルである。濃縮体は大腸菌を捕捉するために使用され、磁力ある操作ユニット15により精製・分離が行われ、濃縮体上に捕捉された被検物質20が光熱分解される。被検物質20は大腸菌混合物(Escherichia coli,ATCC: 35218)の混合物であり、大腸菌に生物学的物質21を放出させる。増幅本体42は、大腸菌が放出する生物学的物質21を捕捉するために用いられる。別の実施形態では、増幅本体42のみを含む懸濁液と大腸菌とが反応に使用される。具体的には、濃縮体懸濁液と増幅本体42とを混合し、濃縮体は大腸菌のO抗原およびK抗原を特異的に認識可能な抗体を濃縮リガンドとして有し、増幅本体42は、大腸菌に特有のmalB遺伝子フラグメントと特異的にハイブリダイズ可能なF3プライマー301(malB F3プライマー)を増幅リガンド71として有する。本発明の一実施形態では、濃縮体および増幅本体42の混合懸濁液20μLを大腸菌混合物1μLおよび1%BSAを含むTBST緩衝液19μLと混合する。1μLの大腸菌混合物は、8×103コロニー形成単位(CFU)を含み、室温(25℃)で20分間混合および反応させた後、磁気の操作ユニット15により濃縮体および増幅本体42を精製および濃縮した後、次いで、それをTBST緩衝液で洗浄する。洗浄終了後、操作ユニット15を用いて、洗浄に用いたTBSTバッファーを濃縮除去する。次に、洗浄した濃縮体および増幅本体42を20μLのTBST緩衝液に再懸濁して、大腸菌を捕捉するための低いバックグラウンドおよび高い特異性を達成する。本発明の別の実施形態では、上記のステップで濃縮体と増幅本体42とを混合した懸濁液を、増幅本体42のみを含む懸濁液に置き換え、同じステップを実行して、濃縮体が含まれていない場合の大腸菌の捕獲効率を確認する。
図18(a)の上部に示すように、番号1のシャーレは、大腸菌(OD600=0.01)1マイクロリットルをシャーレに塗抹して培養した結果の模式図を示す。番号2は、0.1マイクロリットルの大腸菌(OD600=0.01)をシャーレに塗抹した培養結果の模式図を示し、合計238個の大腸菌コロニーが培養された。番号3は、増幅本体42のみを含む懸濁液を1マイクロリットル取り、シャーレに塗抹した培養結果の模式図を示し、大腸菌コロニーは培養されなかった。番号4は、増幅本体42のみを含む懸濁液19マイクロリットルをシャーレに塗抹し、大腸菌コロニー1個を培養した培養結果の模式図を示す。番号5は、混合濃縮体と増幅本体42の懸濁液19μLをシャーレに塗抹し、大腸菌のコロニーを3個培養した培養結果の模式図を示す。番号6は、混合濃縮体と増幅本体42の懸濁液を19μLとりシャーレに塗抹し、大腸菌コロニー83個を培養した培養結果の模式図を示す。
図18(a)の結果から、この実施形態の上記のステップが、増幅本体のみを含む懸濁液を用いて実行される場合、大腸菌を効果的に捕捉することができず、また、濃縮体と増幅本体との混合物を含む懸濁液を用いて実行される場合には、大腸菌を効果的に捕捉することができることが分かる。図 18(a)の下部に示すように、捕捉された大腸菌の濃縮体を含む懸濁液を 808 nm レーザーで励起し、異なるレーザー出力で 5 分間励起を継続し、0 mW/ 0.16 cm2、300 mW/ 0.16 cm2、400 mW/ 0.16 cm2および500 mW/ 0.16 cm2が含まれる。各グループは、捕捉された大腸菌のある濃縮体を含む懸濁液1μLを取り出し、LB固体培地に塗布し、大腸菌の光熱溶解効率を細菌細胞の形成によって判断する。新しい細胞が生成できずに溶解した場合、400 mW/ 0.16 cm2 で5分間連続刺激すると大腸菌を溶解できることが結果からわかる。
図18(b)に示すように、大腸菌(ATCC: 35218)の光熱分解により分解された生物学的物質21中のmalB遺伝子フラグメントが増幅リガンド71を介して捕捉され、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応がレーザー励起によって実行され、その後、免疫側方流動テストストリップ171を使用して評価する。その結果は、400 mW/0.16 cm2で5分間の光熱溶解下で、大腸菌が光熱分解に成功し、生物学的物質21を放出し、生物学的物質21に含まれるmalB遺伝子フラグメントが増幅本体42によって捕捉され、その後、レーザー励起によって水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応が実行され、免疫側方流動テストストリップ171上のテストライン1711上でシグナルを検出できることを示す。
【0114】
図19(a)および
図19(b)に示すように、本発明の一実施形態では、濃縮体と増幅本体42の混合懸濁液を用いて実験が行われる。ここで、濃縮体は磁気金ナノシェルであり、濃縮リガンドは大腸菌のO抗原およびK抗原を特異的に認識できる抗体であり、増幅本体42は磁気金ナノシェルである。また、増幅リガンド71は、malB遺伝子フラグメントを認識可能なF3プライマー301(malB F3プライマー)であり、被検物質20としては、コロニー形成単位の異なる大腸菌(Escherichia coli,ATCC: 35218)が用いられる。本発明の実施形態では、0 CFU、8 CFU、8×10 CFU、8×102 CFUおよび8×103 CFUを含む、異なるコロニー形成単位が測定され、600 nmの波長での吸光度によってグループ化され、レーザー励起を使用して水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行し、次いで免疫側方流動テストストリップ171の感度を試験し、プロセス全体に必要な時間を評価する。
図19(a)に示すように、この統合プラットフォームの全体的な操作プロセスは下記の4つの主要なステップを含む。それらは、「被検物質20の捕捉と濃縮」、「被検物質の光熱解離と放出された生物学的物質21の捕捉」、「レーザー励起を利用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応」、および「免疫側方流動テストストリップ 171のテスト」。
【0115】
「被検物質20の捕捉と濃縮」のステップでは、濃縮体の懸濁液5μL、増幅本体42の懸濁液15μL、1μLの被検物質20、および1%牛血清アルブミンを含むTBST緩衝液19μLを混合して反応させる。さらに、増幅本体42を25℃で20分間振盪して混合し、増幅本体42上の増幅リガンド71に大腸菌を捕捉させた後、操作ユニット15により濃縮体と増幅本体42を濃縮して上清を除去し、TBSTバッファーで洗浄して不純物を除去し、その後、TBSTバッファーを除去する。これは25分以内に完了する。
【0116】
「被検物質の光熱解離と放出された生物学的物質21の捕捉」のステップでは、「被検物質20の捕捉と濃縮」のステップが完了して緩衝液で洗浄された濃縮体および増幅本体42は、20μLのTBSTバッファー中に再懸濁され、808 nmレーザーを利用して400mWで5分間の照射するによって光熱解離され、それにより被検物質20から遊離した生物学的物質21が増幅本体上の増幅リガンド71に捕捉される。次に、磁気の操作ユニット15を用いて濃縮体および増幅本体42を濃縮し、上清を除去した後、核酸増幅反応液30を100μL加えて再懸濁する。
【0117】
「レーザー励起を利用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応」のステップでは、「被検物質の光熱解離と放出された生物学的物質21の捕捉」のステップで核酸増幅反応液30に再懸濁した濃縮体及び増幅本体42に対して、808 nmのレーザーを用いて40回のレーザーサイクル(毎サイクルは400mW/0.16cm2で1.25秒間照射することと、150mW/0.16cm2で7.5秒間照射することとを含む)下で水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行する。次に、磁気の操作ユニット15を用いて濃縮体および増幅本体42を濃縮し、上清を除去した後、20μLのTBSTバッファーを加えて再懸濁する。これは6分以内に完了する。
【0118】
「免疫側方流動テストストリップ171のテスト」のステップでは、「レーザー励起を利用した水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応」のステップでTBSTバッファーに再懸濁した濃縮体及び増幅本体42を、免疫側方流動試験ストリップ171で検出する場合、免疫側方流動テストストリップ171上のテストライン1711の信号反応は、肉眼で直接観察することができ、または、レーザー複合赤外線熱センサー172を使用して検出する場合、3~5分で完了できる。プロセス全体は45分以内に完了できる。
【0119】
図 19(b) は、図 19(a) の手順を完了する場合、免疫側方流動試験ストリップを使用してレーザー誘発水冷却オンビーズ重合(on-bead PCR)の感度の検出結果を評価する模式図。その結果は、シグナル応答が8CFUのグループで免疫側方流動テストストリップ171の視覚的に観察できることを示す。これは、検出感度が8CFUの大腸菌を含む各反応の範囲内に収まることを意味する。
【0120】
図20(a)、
図20(b)、および
図20(c)に示すように、本発明の別の実施形態では、プラズモニック熱センシングと組み合わせた免疫側方流動テストストリップ 171と一般的な免疫側方流動テストストリップ171との検出感度を比較する。画像解析ソフトウェア(Image J)を使用して、図 19(b) に示す免疫側方流動テストストリップ 171でのテストライン1711の画像に対してピクセル強度解析を実行する。その画像定量化の結果は
図20(a)に示され、試験した大腸菌コロニー形成単位が、それぞれ0 CFU、8 CFU、8×10 CFU、8×102 CFUおよび8×103 CFUである。画像解析の検出感度は8CFUの大腸菌を含む各反応の範囲内に収まるが、反応に8 CFU~8×10 CFUを含む大腸菌の検出は視覚的に識別して判断することが困難である。本発明の実施形態では、プラズモニック熱感知と免疫側方流動試験ストリップ171を統合することによって、識別率を大幅に改善することができる。
図20(b)に示すように、免疫側方流動テストストリップ171は、それぞれ24 mWおよび140 mWの808 nmレーザーエネルギーで励起され、レーザー複合赤外線熱センサー172はテストライン1711に焦点を合わせ、検出後に表示される熱画像画像である。図 20(c)は、図 20(b)が24 mWおよび140 mWの808 nm レーザー エネルギーで励起した後に熱画像によって測定された温度を数値化するグラフである。この温度は、環境内のバックグラウンド温度(18.2℃)を差し引いた後に得られる環境温度上昇差(ΔT(℃))である。特に、0 CFU群で測定した上昇温度差の平均値に3つの標準偏差を加えた値を検出限界の境界とし、これより温度差が大きい場合に陽性と判定する。その結果、24 mWまたは140 mWの808 nm レーザー出力で励起された場合でも、熱イメージングの上昇温度差は、検出感度が反応あたり8 CFUの大腸菌の範囲内にあることを明確に示す。
【0121】
異なる冷却温度範囲でポリメラーゼ連鎖反応を実行する際に、水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の性能に対するレーザー励起の影響をさらに理解するために、本発明の実施形態では、保冷剤(ice pack)の装着の有無、保冷剤の拡大の有無、核酸増幅反応液30の容量によりグループ分けを行い、核酸増幅反応液30の上昇温度差(ΔT(℃))を条件を変えて試験する。各グループの磁気金ナノシェルの数は 2.8×108粒子である。グループには以下が含まれ、例えば、O1(アイスパック付、100μLの核酸増幅反応液30)、O2(アイスパック付、100μLの核酸増幅反応液30)、Non-1(保冷剤なし、100μLの核酸増幅反応液30)、Non-2(保冷剤なし、100μLの核酸増幅反応液30)、Non(2x)-1 (アイスパックなし、200μLの核酸増幅反応液30)、Non(2x)-2 (アイスパックなし、200μLの核酸増幅反応液30)、E1(予備アイスパック付き、100μLの核酸増幅反応液30)、E2(予備アイスパック付き、100μLの核酸増幅反応液30)。アイスパックには550μLの氷が含まれており、大きいアイスパックには2,200μLの氷が含まれている。各グループは、レーザー励起を使用して水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応を実行し、ビーズベースのELISAによって定量化され、レーザー励起を使用する水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応の性能に対する核酸増幅反応液30の各グループの影響を評価する。
図21(a)に示すように、190 nmの磁気金ナノシェル懸濁液を、上記でグループの異なる開始温度で50回のレーザーサイクル(最初に690 mWで1.25秒間照射し、次に360 mWで7.5秒間照射すること)に供し、核酸増幅反応液30の温度変化を熱電対を用いてリアルタイムに検出する。
図21(b)に示すように、ビーズベースのELISA定量化を通じて、各グループの核酸増幅反応液30について、水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応のレーザー励起効率を評価する。
図21(b)に示す左側の Y 軸は、散布線に対応し、レーザー励起による水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応後の核酸増幅反応液30の上昇温度変化の散布図である。このうち、O1の上昇時の温度差は11.2℃(3.8℃から15℃まで)、O2の上昇時の温度差は10.1℃(2.1℃から12.2℃まで)、Non-1の温度差は16.8℃(13.5℃から30.3℃まで)、Non-2の温度差は20.1℃(12.6℃から32.7℃まで)、Non(2x)-1の温度差は14.2℃(17.2℃から31.4℃まで)、Non(2x)-2の温度差は14.8℃(17.5℃から32.3℃まで)、E1の上昇時の温度差は9.8℃(1.1℃から10.9℃まで)、およびE2の上昇時の温度差は6.7℃(-8.7℃から-2℃まで)である。右側の Y 軸はヒストグラムに対応し、808 nm レーザーで励起された水冷ビーズポリメラーゼ連鎖反応のパフォーマンスを定量化して評価するためのビーズベースの酵素結合免疫吸着アッセイを使用した 450 nm での吸光度値を表する。このうち、O1の吸光度値は0.147、O2の上昇の吸光度値は0.168、Non-1の吸光度値は0.132、Non-2の吸光度値は0.120、Non(2x)-1 の吸光度値は 0.128、Non(2x)-2の吸収値は0.138、E1の吸光度値は0.148、E2の吸光度値は0.195である。吸光度の値が大きいほど、全体的な核酸増幅効率が高くなる。
【0122】
本発明の一実施形態では、水冷オンビーズポリメラーゼ連鎖反応がレーザーによって刺激される。レーザーサイクルは、反応期間の複数のサイクルを含み、固相担体40の周囲の温度サイクルプロセスを制御する。各サイクル反応期間は、核酸分子変性反応期間、プライマー接着期間、ポリメラーゼ伸長期間を含む。核酸分子を変性させる反応時間は0.5~5秒、好ましくは1~2.5秒である。レーザー出力は400~800mWである。核酸分子の変性反応時の温度は85~95℃、好ましくは95℃である。プライマー結合時間およびポリメラーゼ伸長時間は2~15秒、好ましくは5~15秒である。レーザー出力は100~400 mWであり、プライマー接着期間およびポリメラーゼ伸長期間中の温度は55~65℃、好ましくは60℃である。また、各サイクル反応期間中のレーザー照射サイクル時間は5~15分である。
【0123】
本発明は、上記各固相担体40が磁性を有しており、各固相担体40上でその場環境での核酸増幅が完了し、増幅反応生成物60が生成された後、以下の手順で核酸検出を行う。前記固相担体40に結合した前記増幅反応生成物60を操作ユニット15により精製、分離、濃縮する。なお、検出モジュール17を利用して、前記固相担体40に結合した前記増幅反応生成物60によって生じる光学的変化、熱感知変化、電気化学的変化、磁気的変化、または質量変化のうちの1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを検出する。
【0124】
本発明の実施形態において、各増幅反応生成物60に光学的変化を生じさせる方法は、核酸標識を有するプライマー301を用いて増幅反応生成物60に結合させ、輝度計を用いて光強度を検出することである。核酸標識は蛍光標識3011であってもよく、それによって生成される蛍光強度は蛍光光度計によって検出することができる。本発明の他の実施形態では、増幅反応生成物60によって生じる光学的変化または化学発光変化を検出するために、酵素結合免疫吸着検定法を使用することもできる。本発明の他の実施形態では、固相担体40と増幅反応生成物60の組み合わせによって引き起こされるスペクトル変化を検出するために、酵素結合免疫吸着検定法を使用することができる。
【0125】
本発明の実施形態において、増幅反応生成物60に光学的変化を生じさせる方法は、前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップ171を利用してその光学的変化を検出し、さらに、それに加えて熱センサー検出、表面プラズモン共鳴分光法、またはそれらの任意の組み合わせを使用し、前記核酸ラテラルフローストリップまたは前記ラテラルフロー免疫測定ストリップ171の検出の感度を高める。
【0126】
本発明の実施形態において、増幅反応生成物60に磁気変化を生じさせる方法は、交流磁気導入器検出(すなわち、交流磁化測定法による周波数依存の交流磁化率の検出と)巨大磁気抵抗測定のうちの1つまたはそれらの組み合わせである。
【0127】
本発明の実施形態において、増幅反応生成物60に電気化学式変化を生じさせる方法は、電気化学的酵素免疫吸着法、電気インピーダンス分光法(EIS)検出のうちの1つまたはそれらの組み合わせである。
【0128】
本発明の実施形態において、増幅反応生成物60の電気的質量の変化を生成する方法は、水晶微量天秤(Quartz Crystal Microbalance,QCM)を使用して実行される。
【0129】
上記によれば、本発明の実施形態に含まれる内容には、固相担体40に外部エネルギーを励起して急速な温冷温度サイクルプロセスを生成することと、その後、固相担体40上でのインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応によって生成された増幅反応生成物60の検出。さらに、本発明の実施形態に含まれる内容には、固相担体40上での外部エネルギー励起による核酸増幅に必要な温度範囲や、外部エネルギー励起パラメータ(エネルギー出力や照射周波数周期)も含まれる。これらすべての内容は、このケースが核酸増幅とバックエンド検出の目的を迅速かつ安定した状態で完了できることを証明している。さらに、実施可能な実施形態は、被検物質20のサンプル前処理に関しても提供され、迅速な核酸検出の目的を達成するためにバックエンドの迅速な核酸増幅および検出と接続することができる。したがって、本発明は、核酸検出に基づくポイント・オブ・ケア検査(Point of Care Testing,POCT)に適用することができる。全体として、本発明には次の利点がある。
【0130】
第一は、体積表面積比の高い固相担体40を使用しているため、用途に応じて柔軟にリガンドの組み合わせ(例:抗体、核酸アプタマー、オリゴヌクレオチド、タンパク質、多糖類、またはそれらの組み合わせ)を表面に修飾することができる。
【0131】
第二は、外部エネルギー励起の条件と低温反応溶液との間の関係を制御することにより、本発明は、固体担体40の表面上でその場環境50における細胞のインサイチュ溶解(または、解離)、標的核酸の捕捉、およびインサイチュ(in-situ)核酸増幅反応に必要な温度条件を迅速に作り出すことができる。
【0132】
第三は、固相担体40の表面におけるその場環境50により、インサイチュ(in-situ)核酸増幅反応は固相担体40の表面に限定される。固相担体40の周囲に冷却温度を有する核酸増幅反応液30は、固相担体40を急速に冷却するだけでなく、目的外の核酸の増幅反応を抑制することができ、核酸の増幅および検出(すなわち、核酸分子の検出)に有利である。さらに、この技術的特徴は、核酸の増幅および検出のための物理的(例えば、温度場など)の分割にもなり得り、仮想エマルジョンポリメラーゼ連鎖反応または液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応 (Droplet Digital PCR, ddPCR) と同様の核酸増幅および検出の形式が形成される。これにより、核酸の増幅および検出反応は、被検物質20の核酸の複雑さの影響を受け難くなる。
【0133】
第四は、全体的な低温核酸増幅反応液30を通じて、従来の小型核酸増幅装置における核酸増幅反応液30の蒸発と気泡の発生という技術的問題を大幅に改善することができる。
【0134】
第五は、核酸増幅反応に必要な温度(熱)サイクル、インサイチュ固相核酸増幅反応とその後の増幅された核酸分子の精製・分離・濃縮を超高速に実現することで、全体的な核酸の増幅と検出時間が大幅に短縮される。
【0135】
第六は、本発明が、温度制御装置および機器を大幅に簡素化する。
【0136】
第七は、被検物質20の前処理および増幅反応生成物60の検出を簡略化することである。固相担体40は、被検物質20、生物学的物質21、増幅反応生成物60等の精製や濃縮(濃縮)に応用することができる。また、本発明によれば、固相担体40を免疫側方流動テストストリップ171に用いて核酸検出用シグナル物質(例: ビジュアルイメージ、または、プラズマ熱センシングを通じて検出された熱画像)を増幅することもでき、被検物質20の前処理や増幅反応生成物60の採取・検出が容易となる。
【0137】
本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で、本発明に種々の改良および変形ができることは、当業者には明らかであろう。本発明を開示された特定の形態(単数または複数)に限定するように意図しておらず、逆に、その意図は、添付された特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲に該当する全ての修正物、代替構築物、および均等物を包括することである。従って、本発明は、添付された請求項およびそれらの均等物の範囲内にあるという条件で、この発明の修正物および変形に及ぶ、ということが意図される。
【符号の説明】
【0138】
10 反応ユニット、
11 統合ドライバー、
12 エネルギー励起ユニット、
121 レーザーコリメーター、
122 レーザーランチャー、
13 外部補助冷却ユニット、
14 温度検出ユニット、
15 操作ユニット、
16 外部エネルギー校正器、
17 検出モジュール、
171 免疫側方流動テストストリップ、
1711 テストライン、
1712 制御ライン、
172 レーザー複合赤外線熱センサー、
20 被検物質、
21 生物学的物質、
30 核酸増幅反応液、
301 プライマー、
3011 蛍光標識、
302 ポリメラーゼ、
40 固相担体、
401 磁気コア、
402 中間層、
403 金ナノシェル、
41 多機能なボディ、
42 増幅本体、
43 濃縮体、
50 その場環境、
60 増幅反応生成物、
70 濃縮リガンド、
71 増幅リガンド、
72 ポリエチレングリコール、
73 ウシ血清アルブミン、
ステップ S10~S90、
ステップ S100~S400
【国際調査報告】