(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】感光マトリックスアレイ型検出器及び感光検出器を作製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
G01T 7/00 20060101AFI20250109BHJP
G01T 1/24 20060101ALI20250109BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/24
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539309
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022087924
(87)【国際公開番号】W WO2023126423
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515004577
【氏名又は名称】トリクセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コムル,ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】マルコー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ビルト,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ゼクニニ,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】デュクラン,ティエリー
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188CC22
2G188CC29
2G188DD05
2G188DD44
(57)【要約】
本発明は、ピクセル(30)に編成される感光性マトリックスアレイ検出器(20)と、検出器を作製するためのプロセスとに関し、検出器は、貫通ビアによって互いに接続される複数の相互接続レベルを有する平坦基板(22)と、感光性検出器のピクセル(30)をグループ化する光検出器(24)であって、平坦基板(22)の第1の外面上に載置され、前記検出器が感知する放射線をピクセル(30)のそれぞれを介して電気信号に変換するよう構成される光検出器(24)と、ピクセルのそれぞれを駆動し、読み出すよう構成される半導体マイクロ回路(26)であって、マイクロ回路(26)は、ピクセル(30)のそれぞれに面して、又は基板(22)に垂直に隣接するピクセル間に載置され、各マイクロ回路(26)は、感光性検出器の平坦基板(22)から独立したマイクロ基板(27)によって支承され、マイクロ回路(26)は、平坦基板(22)の相互接続レベルのうちの1つに個々に接続される、半導体マイクロ回路(26)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピクセル(30、74;94;104)に編成されるマトリックス感光性検出器であって、
貫通ビア(16;72;84)によって互いに接続される複数の相互接続レベル(12、14)を有する平坦基板(10;22;62;92;102)と、
前記平坦基板(10;22;62;92;102)の第1の外面(22a)上に配置され、前記ピクセル(30、74;94;104)のそれぞれによって前記検出器が感知する放射線の電気信号への変換をもたらすよう構成される、前記感光性検出器の前記ピクセル(30、74;94;104)をグループ化する光検出器(24;44;64;94;104)と、
前記ピクセルのそれぞれを駆動し、読み出すよう構成される半導体マイクロ回路(26;66)であって、前記マイクロ回路(26;66)は、前記ピクセル(30、94;104)のそれぞれに面して、又は前記基板(10;22;62;92;102)に垂直な隣接するピクセル(74)間に配置され、各マイクロ回路(26;66)は、前記感光性検出器の前記平坦基板(10;22;62;92)から独立したマイクロ基板(27)上に担持され、前記マイクロ回路(26;66)は、その相互接続レベルのうちの1つにおいて前記平坦基板(10;22;62;92)に個々に接続される、半導体マイクロ回路(26;66)と、を備える、
マトリックス感光性検出器。
【請求項2】
前記平坦基板(10;22;92)は、第2の外面(22b)と、前記第2の外面(22b)上に配置され、前記相互接続レベル(12、14)に接続される接続パッド(32)とを有し、前記マイクロ回路(26)は、前記第2の外面(22b)上に配置され、前記接続パッド(32)に接続される、請求項1に記載の感光性検出器。
【請求項3】
前記平坦基板(10;22;92;102)は、前記第1の外面(22a)上に配置され前記相互接続レベル(12、14)に接続される接続パッド(30;74)を有し、前記第1の外面(22a)の前記接続パッド(30;74)はそれぞれ、前記ピクセルのうちの1つの個別電極を形成する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光検出器(24;44;64)は、前記第1の外面(22a)の前記接続パッド(30;74)上に配置される連続層の形態である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光検出器は、それぞれが前記ピクセルのうちの1つを形成する個別の光検出構成部品(94;104)から形成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記光検出構成部品(104)は、前記平坦基板(102)に埋設される、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記マイクロ回路(66)は、前記平坦基板(62)内に配置される、請求項1に記載の感光性検出器。
【請求項8】
前記マイクロ回路(26;66)は、複数の隣接するピクセルに共通である、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記マイクロ回路(26;66)は、前記平坦基板(10;22;62;92;102)が主に延在する平面に垂直なビア(16)のみを介して前記感光性検出器の前記ピクセル(30、74;94;104)に接続される、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性検出器を作製するための方法であって、
貫通ビア(16;72;84)によって互いに接続される複数の相互接続レベル(12、14)を有する平坦基板(10;22;62;92)を作製するステップと、
それぞれが前記感光性検出器の前記平坦基板(10;22;62;92;102)から独立したマイクロ基板上にある、前記ピクセルのそれぞれを駆動し、読み出すよう構成される半導体マイクロ回路(26;66)を作製するステップと、
マイクロ回路(26;66)を前記相互接続レベル(12、14)のうちの1つに個々に接続することによって、前記各マイクロ回路(26;66)を前記平坦基板(10;22;62;92;102)に転写するステップと、を含む、
方法。
【請求項11】
更に、前記マイクロ回路(26;66)を前記感光性検出器の前記平坦基板(10;22;62;92;102)に転写する前に、前記マイクロ回路(26;66)を試験するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性検出器及びその作製方法に関する。本発明は、可視画像を生成するために用いられる感光性検出器を作製するために特に有用である。本発明は、この種の検出器を作製することに限定されるものではない。本発明は、圧力又は温度マップ、或いは、化学ポテンシャル又は電位の2次元表現を作成するための検出器を作製するために実装されてもよい。これらのマップ又は表現は、物理量の画像を形成する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、電離放射線、例えばX線又はガンマ線を採用する撮像デバイスにおける、例えば検出目的のために用いられるアクティブマトリックス検出器の作製に適用されてもよい。
【0003】
マトリックス検出器において、1つのピクセルは検出器の基本感応素子を表す。各ピクセルは、それが受ける物理現象を電気信号に変換する。様々なピクセルから来る電気信号は、マトリックス読み出し段階において収集され、次いで、画像を形成するために処理され、格納されることができるようにデジタル化される。ピクセルは、物理現象に敏感なゾーンから形成され、例えば電荷の流れを送出する。物理現象は、光子束を搬送する電磁放射線であってもよく、本発明をこの種の放射線によって以下で説明し、充電電流は、感受ゾーンによって受信される光子束に依存する。任意の種類のマトリックス検出器への一般的な適用は容易である。
【0004】
マトリックス画像検出器は、それぞれが1つの同じ行のピクセルを接続する行導体と、それぞれが1つの同じ列のピクセルを接続する列導体とを備える。列導体は、一般に「列基部」と呼ばれることがあるマトリックスの縁部に配置される変換回路に接続される。言うまでもなく、「行」及び「列」という名称は、純粋に慣習的なものであり、入れ替えられてもよい。
【0005】
各ピクセルは、一般に、例えばフォトダイオード、フォトレジスタ、又はフォトトランジスタであってもよい感光部品或いは光検出器を備える。行及び列に編成される数百万のピクセルを有してもよい大規模感光性マトリックスが存在する。各ピクセルは、更に、少なくとも1つのアクチュエータを備える電子回路を備える。電子回路は、更に、他のスイッチ、コンデンサ、抵抗器を備えてもよく、その下流にアクチュエータが位置する。感光性部品及び電子回路からなるアセンブリは、電気信号を生成し、それらを収集することを可能にする。電子回路は、一般に、ピクセルを読み出すために、転送後に各ピクセルにおいて収集される信号をリセットすることを可能にする。アクチュエータの役割は、感光性部品から受信する情報に基づいて電子回路によって収集される信号を列導体に転送又はコピーすることである。この転送は、アクチュエータが行導体からそれを実行するよう命令を受信する場合に実行される。アクチュエータの出力は、ピクセルの出力に対応する。
【0006】
X線検出器は、寸法上の制約を受ける。実際、この種の放射を偏向させる簡単な手段は存在しない。検出器は、従って、生成される画像の寸法を有する必要がある。例えば、医療放射線において、検出器は400mmを超える辺長を有することがある。かかる寸法を有する検出器を作製することは容易ではない。
【0007】
現在、X線マトリックス検出器には2つの主要な系統が存在する。第1の系統は、アモルファス、多結晶、又は微結晶状態のシリコン等の材料を用いる。これらの材料は、例えば、ガラス又はポリイミド製の基板上に薄層で堆積される。第2の系統は、単結晶材料を用いる。第2の系統は、第1の系統よりもはるかに良好な性能を達成することを可能にする。他方、第2の系統は、用いられるシリコン基板に起因して、寸法に関して制限がある。第2の系統において大規模な検出器を作製するために、検出器の部品が作製される複数の基板をつなぎ合わせる必要がある。
【0008】
その上、両方の系統の検出器において、検出器の製造中の不合格率が高い可能性がある。実際、ピクセル数が多ければ多いほど、少なくとも1つのピクセルが欠陥であるリスクが高まる。画像補正によって欠陥のある少数の孤立したピクセルを容認することは可能であるが、これは不完全な回避策であることに変わりはない。
【0009】
高い不合格率をもたらす重要なパラメータの1つは、各ピクセルに関連する電子回路の複雑さにある。実際には、電子回路が複雑になればなるほど、不合格率が上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少なくともピクセルのそれぞれを駆動し、読み出す機能を提供する電子回路が、それ自体の基板上にそれぞれ別々に実装され、それによって、電子回路及び検出器自体に対して異なる技術を有する基板を用いることを可能にするマトリックス感光性検出器を提案することによって、上述の問題の全て又は幾つかを克服することを目的とする。本発明はまた、電子回路が検出器の基板に転写される前に、各電子回路を個々に試験することも可能にする。これにより、検出器の信頼性を向上させることが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明の1つの主題は、ピクセルに編成されるマトリックス感光性検出器であって、
- 貫通ビアによって互いに接続される複数の相互接続レベルを有する平坦基板と、
- 平坦基板の第1の外面上に配置され、ピクセルのそれぞれによって検出器が感知する放射線の電気信号への変換をもたらすよう構成される、感光性検出器のピクセルをグループ化する光検出器と、
- ピクセルのそれぞれを駆動し、読み出すよう構成される半導体マイクロ回路であって、マイクロ回路は、ピクセルのそれぞれに面して、又は基板に垂直な隣接するピクセル間に配置され、各マイクロ回路は、感光性検出器の平坦基板から独立したマイクロ基板上に担持され、マイクロ回路は、その相互接続レベルのうちの1つにおいて平坦基板に個々に接続される、半導体マイクロ回路と、を備える、マトリックス感光性検出器である。
【0012】
有利には、平坦基板は、第2の外面と、第2の外面上に配置され、相互接続レベルに接続される接続パッドとを有し、マイクロ回路は、第2の外面上に配置され、接続パッドに接続される。
【0013】
有利には、平坦基板は、第1の外面上に配置され相互接続レベルに接続される接続パッドを有し、第1の外面の接続パッドはそれぞれ、ピクセルのうちの1つの個別電極を形成する。
【0014】
光検出器は、第1の外面の接続パッド上に配置される連続層の形態であってもよい。代替として、光検出器は、それぞれがピクセルのうちの1つを形成する個別の光検出構成部品から形成される。
【0015】
光検出構成部品は、平坦基板に埋設されてもよい。
【0016】
マイクロ回路は、平坦基板内に配置されてもよい。
【0017】
マイクロ回路は、複数の隣接するピクセルに共通であってもよい。
【0018】
本発明の別の主題は、感光性検出器を作製するための方法であって、
- 貫通ビアによって互いに接続される複数の相互接続レベルを有する平坦基板を作製することと、
- それぞれが感光性検出器の平坦基板から独立したマイクロ基板上にある、ピクセルのそれぞれを駆動し、読み出すよう構成される半導体マイクロ回路を作製することと、
- マイクロ回路を相互接続レベルのうちの1つに個々に接続することによって、各マイクロ回路を平坦基板に転写することと、
に存する方法である。
【0019】
有利には、本方法は、マイクロ回路を感光性検出器の平坦基板に転写する前に、マイクロ回路を試験することに存する。
【0020】
説明を添付図面によって示す、実施例として与えられる実施形態の詳細な説明を読むことによって、本発明をより良好に理解し、他の利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による感光性検出器の基板の複数の相互接続レベルを略図で示す。
【
図2a】本発明による感光性検出器の第1の実施形態の第1の変形例を示す。
【
図2b】本発明による感光性検出器の第1の実施形態の第1の変形例を示す。
【
図4a】本発明による感光性検出器の第2の実施形態の変形例を示す。
【
図4b】本発明による感光性検出器の第2の実施形態の変形例を示す。
【
図5a】マイクロ回路が検出器の複数の隣接するピクセルに共通である一変形例を示す。
【
図5b】マイクロ回路が検出器の複数の隣接するピクセルに共通である一変形例を示す。
【
図6a】マイクロ回路が本発明による感光性検出器の基板に集積される一変形例を示す。
【
図6b】マイクロ回路が本発明による感光性検出器の基板に集積される一変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
明確にするために、同じ要素は、様々な図において同じ参照符号を有する。
【0023】
本発明は、検出ゾーンに到達する光放射を検出することができる感光性マトリックス検出器に関する。感光性検出器は、検出ゾーンにわたって分散される感光性素子又は検出ピクセルのマトリックスを備える。
図1は、本発明による感光性検出器の基板10を略図で示している。基板10は、少なくとも検出ゾーンの表面積を有するプレートの形態である。感光性素子については後述する。基板は、2つの主な機能、機械的支持及び感光性素子の接続を果たす。機械的支持機能を提供するため、基板10は、例えば、ガラス、有機材料、プリント回路基板を作製するために用いられる他の任意の材料等のプレートから作製される。他の任意の種類の材料も、本発明の適用範囲内で用いられてもよい。選択される材料は、例えば、検出器が可撓性であることを可能にしてもよい。感光性素子は、一般に、少なくとも2種類の接続を必要とし、1つは駆動用であり、もう1つは感光性素子を読み出すためのものである。例えば、電力供給等の他の種類の接続も用いてもよい。感光性素子は、従って、基板を通して、検出ゾーンの外側に位置してもよい駆動モジュール及び読み出し回路に接続される。例えば、検出ゾーンの形状が矩形である場合、駆動モジュールは、矩形形状の一辺に位置してもよく、読み出し回路は、隣接する辺に位置してもよい。感光性素子を接続する機能を提供するため、基板は、次いで、駆動モジュールを感光性素子に接続するための行導体と、読み出し回路を感光性素子に接続するための列導体とを備えてもよい。言うまでもなく、「行」及び「列」という名称は、純粋に慣習的なものであり、入れ替えられてもよい。基板10において、行導体及び列導体は、接触することなく互いに交差しなければならない。この目的を達成するために、基板10は、2つの相互接続レベルを備え、一方は行導体12を備え、他方は列導体14を備える。感光性素子は、基板10の面のうちの1つの上に配置され、貫通ビア16は、導体12及び/又は14と感光性素子との間の接続を提供する。実際には、基板10は、様々な感光性素子の接続の必要性に応じて、2つを超える相互接続レベルを備えてもよい。相互接続レベルは、基板10の内部にあってもよく、又は基板10の外面上に配置されてもよい。
【0024】
図1に示す基板10は、各感光性素子に関連する単一の行導体及び単一の列導体のみを備える。無論、各感光性素子に関連する複数の行導体及び/又は複数の列導体を設けることも可能である。
【0025】
図2a及び2bは、感光性検出器20の第1の実施形態の第1の変形例を、基板の平面に対して垂直な平面における部分断面で示している。
図2aは、互いに離間される、検出器20の3つの構成部品、即ち、
図1に示す基板22と、光検出器24と、基板22から独立したマイクロ基板27によって担持されるマイクロ回路26とを示している。独立とは、別々に製造されてもよいことを意味すると理解される。光検出器24は、基板22の第1の面22aに面して配置され、マイクロ回路26は、基板22の第2の面22bに面して配置される。第2の面22bは、第1の面22aの反対側にある。検出器20の3つの構成部品は、別々に作製され、次いで組み立てられて、
図2bに示すような感光性検出器20を形成してもよく、光検出器24は、面22a上に配置され、マイクロ回路26は、面22b上に配置される。
【0026】
基板22は、その面22a上に導電性パッド30を備え、その面22b上に導電性パッド32を備える。導電性パッド30及び32は、
図2a及び2bには示していない様々な相互接続レベルに接続される。幾つかのビア16のみを例として示している。相互接続レベルは、基板22の内部層上又は外面22a及び22b上に配置されてもよい。マイクロ回路26は、例えば、マイクロ基板27上に存在し、基板22のパッド32と当接するパッド28を介して基板22の相互接続レベルに接続される。
【0027】
単一のマイクロ回路26が、
図2a及び2bにおいて示されている。ここでは2つの隣接する感光性素子に共通であり、従って2つのパッド30に接続される。代替として、マイクロ回路26は、ただ1つの感光性素子と、又は2つを超える感光性素子、
図5a及び5bの助けを借りて後に示すように4つの感光性素子と関連付けられてもよい。マイクロ回路の数は、感光性素子の数に比例する。マイクロ回路は、半導体を含み、感光性素子のそれぞれを少なくとも駆動し、読み出すよう構成される。導入部で示したように、感光性素子の動作は、一般に、電子スイッチが閉じられる場合に、例えば電荷の形態でフォトダイオードに蓄積された信号を列導体に転送することによって感光性素子を読み出すための少なくとも1つの電子スイッチを必要とする。スイッチは、行導体によって制御される。先行技術において、スイッチ及びフォトダイオードは、マイクロエレクトロニクス技術を用いて基板上に直接作製される。幾つかの感光性素子は、例えば3つのトランジスタを有する、より複雑な回路を用いる。読み出しスイッチの機能を果たすトランジスタが存在し、これには、フォトダイオードに固定電位を印加するためのリセットトランジスタと共に、フォトダイオードと読み出しトランジスタとの間に配置されるフォロワトランジスタが追加されている。リセットトランジスタを制御するには、リセットトランジスタを特定の行導体に接続する必要がある。トランジスタが検出器の基板上に直接作製される先行技術において、回路を各フォトダイオードに関連付ける必要性が、数百万個のピクセルを有する検出器の信頼性リスクを呈するため、より複雑な制御回路を作製することはほとんど不可能である。特に、CMOS又はIGZO技術として公知のものを用いて作製される検出器において、複雑な回路を作製することが想定されている。CMOSオンシリコン技術は、相補的なn型及びp型構成部品を組み合わせることによって、金属酸化物半導体電界効果トランジスタを用いる。この技術は、その頭字語CMOS:相補型金属酸化膜半導体によって公知である。IGZO技術は、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物ベースの半導体を用いており、その頭字語IGZO:インジウムガリウム亜鉛酸化物によって公知である。
【0028】
本発明は、例えばフォトダイオード、光導電体等によって形成される感光性素子自体と、それに関連する回路とを分離し、検出器の基板とは独立して、それ自体の基板上に別々に回路を作製することを提案する。この回路は小型で、例えば数μmのオーダーであるため、マイクロ回路と呼ばれる。マイクロ回路の大きさは、検出器自体の大きさに関して考慮されるべきである。検出器の基板22は、その一部として、完全な検出器の表面積に近い表面積を有してもよい。X線放射用途において、従来の検出器フォーマットは430mm×430mmである。マイクロ回路26は、検出器の主基板とは別に作製されるため、基板22に転写される前に個々に試験されてもよい。従って、個々の試験ステップに合格したマイクロ回路のみが検出器の基板に転写される。マイクロ回路の向上した信頼性により、1つ又は3つのトランジスタを有する上述の回路よりもはるかに複雑なものを想定することが可能になる。特に、複雑な計数、デジタル化等の機能を統合する回路を実装することが可能である。検出器の基板とマイクロ回路とを別々に作製することの別の利点は、異なる製造方法の使用を可能にすることである。例えば、作製温度が極めて大幅に高く、通常500~1000℃の範囲である高性能半導体材料を用いてマイクロ回路を作製することが可能である。一例として、既に上述したCMOS技術は、複雑で高性能な回路を作製することを可能にするが、ガラス又は有機材料に基づく基板によって許容され得る限界よりも高い作製温度を必要とする。
【0029】
図2a及び2bに示す実施例において、基板22は、その面22a上に導電性パッド30を備え、導電性パッドのそれぞれの表面は、感光性素子の表面を形成する。より正確には、パッド30は、感光性素子のそれぞれの個々の電極を形成する。言い換えれば、検出器は、パッド30と同数の感光性素子を備える。感光性検出器20は、ピクセルに編成されたマトリックス検出器である。この実施例において、各パッド30の表面はピクセルの感光面を形成する。光検出器24は、感光性検出器のピクセルをグループ化する。マイクロ回路26は、基板22に対して垂直なピクセルのそれぞれに面して、従って、これらの外面22a及び22bに面して配置される。実際には、基板22は可撓性であってもよく、僅かな曲率を有してもよい。垂直性は、次いで、基板22の曲率に接する平面に対して各ピクセルで局所的に定義される。
【0030】
マイクロ回路26を各ピクセルに対向して配置することにより、マイクロ回路26とピクセルとの間の接続長さを最小にすることができる。この最小化により、環境から来る擾乱に対する電磁感度を低減することが可能になる。その上、基板22が主に延在する平面に対して垂直なビア16のみが有利に用いられる。マイクロ回路26とピクセルとの間の接続は、光検出器24の全てのピクセルに対して全て同一である。従って、電磁擾乱が接続を妨害する場合、これらの擾乱は、光検出器24のピクセルの全てについて略同一である。
【0031】
実際には、X線放射線学において用いられる検出器に対して、感光性素子はそれぞれ、例えば、想定される用途に応じて50~200μmのオーダーの側面長さを有する正方形表面を有する。パッド30は、従って、この正方形形状を有し、5~10μmだけ離間される。感光性素子によって占有される表面を最大にするために、感光性素子間の距離を可能な限り小さくすることが有利である。これにより、検出器20の感度を最大にすることが可能になる。この実施形態において、パッド30間の行又は列導体をその上に配線するために外面22aを用いないことが有利である。行及び列導体は、次いで、面22b上及び基板22の内部の層において配線される。
【0032】
図2a及び2bに示す実施例において、光検出器24は、検出することが望まれる入射放射を直接変換する層を備える。X線放射線学において、パッド30によって形成される電極上に拡散する電荷へのX線光子の直接変換をもたらすために、セレン、テルル化カドミウム(CdTe)、ペロブスカイト族からの材料等に基づく材料を用いることが可能である。これらの材料は、面22aを被覆する層34の形態で堆積されてもよい。層34は、横方向の拡散が十分に低い場合には連続的であるか、又はピクセルに区切られていてもよい。連続層34を堆積することは、パッド30のそれぞれに面する層の横方向の位置決めを心配する必要がないという利点を有する。層34は、層34を堆積させるための方法が特に温度に関して基板22と適合していれば、基板22上に直接作製されてもよい。代替として、光検出器24のための第2の電極を形成する専用基板36上に層34を作製することが可能である。基板36と光検出器を形成する層34とによって形成されるアセンブリが、次いで、基板22に転写される。
【0033】
不連続層光検出器、即ちピクセル又はピクセル群に区切られる光検出器の基板22上への位置決めを容易にするため、基板36上にピクセルのそれぞれの検出面を形成する不連続層及び電極を作製することが可能である。これらの電極は、次いで、光検出器の電極の表面積よりも小さい表面積を有するパッド30と接触させられる。パッド30が小さければ小さいほど、位置決め公差は大きくなる。
【0034】
第1の変形例において、検出は「直接」と呼ばれる。言い換えれば、検出器によって検出される入射放射線は、光検出器24において電気信号に直接変換される。「間接」検出と呼ばれ、
図3a及び3bに示す第2の変形例は、感光性検出器40を示している。基板22と、基板22の第2の面22bに面して配置されるマイクロ回路26とが、そこに見て取られる可能性がある。第1の変形例からの光検出器24は、シンチレータ46と、例えばフォトダイオード48等の光検出構成部品とから形成される光検出器44によって置き換えられる。第1の変形例と同様に、
図3aは、互いに離間する基板22、マイクロ回路26、及び光検出器44を示している。
図3bは、組み立てられた状態のこれらの同じ要素を示している。
【0035】
入射放射線は、シンチレータ46を通過し、その光子をフォトダイオード48に適合される波長帯域内の他の光子に変換する。この第2の変形例は、シンチレータがX線光子を可視光子に変換するX線の検出に良好に適している。例えば、略語GOS又はGADDOX等によって公知のタリウムドープヨウ化セシウム又はオキシ硫化ガドリニウム等の様々な材料が、シンチレータを作製するために用いられてもよい。
【0036】
光検出構成部品は、ここではフォトダイオード48である。代替として、シンチレータによって放出される光子を電気信号に変換することができる任意の種類の構成部品を用いることが可能である。一般的に言えば、フォトダイオードは、それが受け取る光子を電気信号に変換することができる光検出器層によって分離される2つの電極を備える。前述のように、電極の1つは、基板22に属するパッド30によって形成されてもよい。フォトダイオード48はまた、電極50及び光検出器層52を備える。電極50は、ここでは、シンチレータ46によって放出される光子に対して透過的である。電極50は、例えば、酸化スズ、インジウム-スズ酸化物等でできている。この種の電極は高い抵抗率を有する可能性があるため、電極50の表面のインピーダンスを低減するために金属メッシュ54を追加することが可能である。
【0037】
図3aは、連続する電極50及び光検出器層52を示している。第1の変形例と同様に、電極50及び光検出器層52を不連続に、即ち、ピクセル又はピクセル群に区切って作製することが可能である。前述のように、不連続層の場合、電極30は、光検出器層52上に直接作製されてもよい。これら2つの電極30及び50を備えるシンチレータ46及びフォトダイオード48によって形成されるアセンブリは、基板22の面22aのパッドに取り付けられる。
【0038】
図3bは、組み立てられた状態の基板22、マイクロ回路26、及び光検出器44を示している。それに関連するピクセルを駆動し、読み出すための回路に加えて、マイクロ回路26は、任意に、フォトダイオード48を飽和させるためにその方向に閃光を放出するための発光ダイオード56を備えてもよい。この種の照明は、任意の残留磁気を回避するために、フォトダイオード48が読み出された後に行われてもよい。発光ダイオード56が用いられる場合、電極30及び基板22は、発光ダイオード56によって放射される光放射に対して少なくとも部分的に透過性である。例えば熱又は機械センサ等の他の構成部品もまた、発光ダイオード56に加えて、又は発光ダイオード56の代わりに転写されてもよい。
【0039】
更に任意に、検出器40は、検出器40の検出表面全体にわたってマイクロ回路26を被覆する第2のシンチレータ58を備えてもよい。シンチレータ58は、シンチレータ46において変換されなかったX線光子を、それらのエネルギーを可視光子の形態でフォトダイオード48に戻すために回収することを可能にし、従って、検出器の感度を向上させるか、又はデュアルエネルギーモードで画像を生成することを可能にする。
【0040】
図4a及び4bは、本発明による感光性検出器の第2の実施形態の2つの変形例を示している。これら2つの変形例において、マイクロ回路は基板内に配置される。より正確には、それぞれが独立した基板上で作製されるマイクロ回路は、検出器の基板に転写される。
【0041】
図4aは、基板62と、光検出器64と、そのうちの1つを
図4aに示す複数のマイクロ回路66とを備える検出器60を断面で示している。基板62は、例えば、ビア72によって接続される2つの相互接続レベル68及び70を備え、そのうちの1つを
図4aに示している。相互接続レベル68及び70は、相互接続レベル68においてパッド74を露出させるように部分的に穿孔される誘電体材料内に埋設される。パッド72は、
図2a及び2bに示すパッド30と同じ機能を果たす。光検出器64はパッド74と当接している。各パッド74の表面は、ピクセルの感光面を形成する。マイクロ回路66は、2つの隣接するピクセルの間に配置される。
【0042】
図4bは、基板62とその2つの相互接続レベル68及び70とがビア72によって接続される検出器80を断面で示している。パッド74は、相互接続レベル68に位置し、検出器80のピクセルの検出表面を形成する。
図4aに示す検出器60において、マイクロ回路66は、相互接続レベル68の一方の面に位置し、
図4bに示す検出器80において、マイクロ回路66は、相互接続レベル68の対向する面に位置する。
図4bにおいて、マイクロ回路66はまた、2つの隣接するピクセルの間に配置される。検出器80の配置は、必要に応じて、パッド74に部分的に面し、従って検出器80のピクセルに面するマイクロ回路66を配置することを可能にする。加えて、必要に応じて、パッド82を基板62の面32b上に配置することができる。パッド82は、ビア84を介して相互接続レベル70に接続される。パッド82は、パッド32と同じ機能を果たし、検出器が必要とする場合には、別のマイクロ回路をそれに接続することを可能にする。
【0043】
より一般的には、検出器60及び80は、シンチレータ46と、光検出器64の代わりに例えばフォトダイオード48等の光検出構成部品とを備えてもよい。検出器60及び80は、各ピクセルに関連して、検出器の基板62の内部及び/又はその外面の1つの上に配置される1つ以上のマイクロ回路を備えてもよい。
【0044】
図5a及び5bは、
図1に示すような基板92と、マイクロ回路26と、ここではマイクロ回路26とは別個に作製される発光ダイオード56と、それらに加えて2つの部分、即ちシンチレータ46と、例えばフォトダイオード94のマトリックス等の光検出構成部品のマトリックスとで作製される光検出器とを備える、本発明による検出器90の変形例を、
図5aについては正面図で、
図5bについては断面図で示している。光検出構成部品のマトリックスは、別々の基板96上に作製され、次いで、相互接続基板92に転写されてもよいか、又は相互接続基板の一部を形成してもよい。前述のように、各フォトダイオード94は、ビアを介して相互接続レベルの1つにそれぞれ接続される2つの電極96及び98を備える。フォトダイオード94は、例えば、アモルファスシリコン又は有機半導体材料からできていてもよい。
【0045】
図示の実施例において、マイクロ回路26は、4つのフォトダイオード94に共通である。マイクロ回路26は、マイクロ回路26を種々のフォトダイオード94に接続するビアが相互接続基板92の平面に対して主に垂直に延在するように、4つのフォトダイオード94に部分的に面して配置される。
【0046】
例えば熱又は機械センサ等の他の構成部品もまた、発光ダイオード56に加えて、又は発光ダイオード56の代わりに転写されてもよい。これらの他の構成部品は、マイクロ回路26のように、各ピクセル又はピクセルの各群、例えば、4つのピクセルと個々に関連付けられてもよい。
【0047】
複数の隣接するピクセルに共通のマイクロ回路26をプールすることは、無論、本発明の全ての実施形態に適用されてもよい。
【0048】
図6a及び6bは、
図1に示すような基板102と、そのうちの1つを図示する複数のマイクロ回路26と、フォトダイオード104のマトリックスと、シンチレータ46とを備える本発明による検出器100の変形例を、
図6aについては正面図で、
図6bについては断面図で示している。検出器90とは異なり、検出器100において、フォトダイオード104、又はより一般的には光検出構成部品は、基板102に集積されている。
【0049】
図6a及び6bに示す検出器100において、マイクロ回路26は、1つのフォトダイオード104のみに関連付けられている。マイクロ回路26を複数の隣接するフォトダイオード104と関連付けることによって、マイクロ回路26をプールすることも可能である。
【0050】
光検出構成部品のマトリックスは、
図5a及び5bに示す検出器90と、
図6a及び6bに示す検出器100とにおいて不連続に作製される。光検出構成部品に対して複数の製造方法を用いることが可能である。例として、ガラス系基板上のアモルファスシリコンでできた光検出構成部品のマトリックスに対して一般的に用いられるフォトリソグラフィ法を挙げてもよい。導電性インク及び有機半導体材料を印刷する技術を用いることも可能である。
【国際調査報告】