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特表2025-501195アミノピリミジン系化合物の塩及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】アミノピリミジン系化合物の塩及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 7/12 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/517
A61P43/00 111
A61P11/00
A61P31/12
A61P37/08
A61P25/28
A61P35/00
A61P29/00
A61P11/06
A61P1/18
A61P13/12
A61P31/00
A61P37/06
A61P9/00
A61P7/12
A61P7/00
A61P25/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539350
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2022141345
(87)【国際公開番号】W WO2023125275
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111620875.8
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲習▼ ▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲暁▼波
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲敏▼雄
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼ 学金
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA13
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA60
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、アミノピリミジン系化合物の塩及びその用途に関する。具体的には、本発明は、(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンの塩及び上記塩を含む医薬組成物に関し、さらにPI3Kキナーゼ異常関連疾患を治療及び予防する医薬品の製造におけるそれらの用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩である、式(I)で表される化合物の塩。
【化1】
【請求項2】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.90°±0.2°、11.82°±0.2°、16.51°±0.2°、20.50°±0.2°及び25.95°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、11.54°±0.2°、13.79°±0.2°、21.99°±0.2°、25.99°±0.2°及び26.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、7.41°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、16.62°±0.2°、19.32°±0.2°、22.27°±0.2°及び24.38°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、10.04°±0.2°、11.71°±0.2°、14.10°±0.2°、17.86°±0.2°、20.84°±0.2°及び21.87°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.20°±0.2°、6.90°±0.2°、11.82°±0.2°、16.51°±0.2°、16.60°±0.2°、19.18°±0.2°、20.10°±0.2°、20.50°±0.2°、21.64°±0.2°、25.95°±0.2°及び29.63°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、8.75°±0.2°、11.54°±0.2°、13.06°±0.2°、13.64°±0.2°、13.79°±0.2°、16.24°±0.2°、17.11°±0.2°、21.99°±0.2°、25.99°±0.2°、26.32°±0.2°、26.90°±0.2°及び27.91°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、7.41°±0.2°、9.27°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、12.02°±0.2°、13.30°±0.2°、16.62°±0.2°、19.32°±0.2°、20.69°±0.2°、22.27°±0.2°、24.38°±0.2°、26.58°±0.2°、27.87°±0.2°及び28.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、9.51°±0.2°、10.04°±0.2°、10.51°±0.2°、10.72°±0.2°、11.71°±0.2°、14.10°±0.2°、14.94°±0.2°、16.82°±0.2°、17.86°±0.2°、20.84°±0.2°、21.87°±0.2°、26.20°±0.2°及び28.26°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の塩。
【請求項4】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.20°±0.2°、6.90°±0.2°、8.74°±0.2°、10.77°±0.2°、10.99°±0.2°、11.82°±0.2°、12.45°±0.2°、15.61°±0.2°、16.51°±0.2°、16.60°±0.2°、17.08°±0.2°、17.57°±0.2°、17.91°±0.2°、18.62°±0.2°、19.18°±0.2°、20.10°±0.2°、20.50°±0.2°、20.91°±0.2°、21.64°±0.2°、22.24°±0.2°、23.31°±0.2°、23.70°±0.2°、23.83°±0.2°、24.41°±0.2°、24.87°±0.2°、25.18°±0.2°、25.59°±0.2°、25.95°±0.2°、27.15°±0.2°、27.55°±0.2°、27.98°±0.2°、28.19°±0.2°、28.51°±0.2°、29.63°±0.2°、30.19°±0.2°、31.83°±0.2°、36.11°±0.2°及び41.55°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、8.75°±0.2°、11.54°±0.2°、13.06°±0.2°、13.64°±0.2°、13.79°±0.2°、14.19°±0.2°、14.70°±0.2°、16.24°±0.2°、17.11°±0.2°、18.10°±0.2°、18.59°±0.2°、19.48°±0.2°、19.68°±0.2°、21.20°±0.2°、21.52°±0.2°、21.99°±0.2°、23.25°±0.2°、24.05°±0.2°、24.57°±0.2°、25.57°±0.2°、25.99°±0.2°、26.32°±0.2°、26.90°±0.2°、27.08°±0.2°、27.91°±0.2°、28.61°±0.2°、29.48°±0.2°、31.02°±0.2°、32.88°±0.2°、33.53°±0.2°、35.20°±0.2°、38.45°±0.2°、39.52°±0.2°、40.58°±0.2°、41.72°±0.2°及び43.81°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.02°±0.2°、5.95°±0.2°、7.41°±0.2°、8.15°±0.2°、9.27°±0.2°、9.93°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、12.02°±0.2°、12.82°±0.2°、13.30°±0.2°、14.87°±0.2°、16.62°±0.2°、17.09°±0.2°、18.11°±0.2°、19.32°±0.2°、19.79°±0.2°、20.69°±0.2°、21.22°±0.2°、22.27°±0.2°、23.41°±0.2°、24.38°±0.2°、25.47°±0.2°、26.58°±0.2°、27.43°±0.2°、27.87°±0.2°、28.32°±0.2°、29.45°±0.2°、30.34°±0.2°、31.62°±0.2°及び33.79°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、9.51°±0.2°、10.04°±0.2°、10.51°±0.2°、10.72°±0.2°、11.71°±0.2°、12.65°±0.2°、13.20°±0.2°、14.10°±0.2°、14.35°±0.2°、14.94°±0.2°、15.88°±0.2°、16.44°±0.2°、16.82°±0.2°、17.21°±0.2°、17.86°±0.2°、18.34°±0.2°、19.08°±0.2°、19.57°±0.2°、20.17°±0.2°、20.65°±0.2°、20.84°±0.2°、21.26°±0.2°、21.87°±0.2°、22.27°±0.2°、22.44°±0.2°、22.84°±0.2°、23.19°±0.2°、23.55°±0.2°、24.25°±0.2°、24.81°±0.2°、25.59°±0.2°、26.21°±0.2°、26.91°±0.2°、27.38°±0.2°、27.93°±0.2°、28.26°±0.2°、28.82°±0.2°、29.16°±0.2°、29.61°±0.2°、30.19°±0.2°、31.30°±0.2°、31.90°±0.2°、32.44°±0.2°、33.21°±0.2°、33.94°±0.2°、35.32°±0.2°、36.44°±0.2°、37.30°±0.2°、37.61°±0.2°、38.59°±0.2°、39.54°±0.2°、42.25°±0.2°、44.61°±0.2°及び47.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩。
【請求項5】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図1に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図4に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図7に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図10に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の塩。
【請求項6】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、105.07℃±3℃及び185.08℃±3℃の吸熱ピークと、233.00℃±3℃の発熱ピークとを含むことを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、196.02℃±3℃の吸熱ピークと、201.85℃±3℃及び246.30℃±3℃の発熱ピークとを含むことを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、リン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、205.70℃±3℃の発熱ピークを含むことを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、73.89℃±3℃の吸熱ピークと、231.68℃±3℃の発熱ピークとを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩。
【請求項7】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とし、
硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図5に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図8に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図11に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の塩。
【請求項8】
前記硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図3に示すような熱重量減少分析パターンを有することを特徴とし、
前記硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図6に示すような熱重量減少分析パターンを有することを特徴とし、
前記リン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図9に示すような熱重量減少分析パターンを有することを特徴とし、或いは、
前記p-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図12に示すような熱重量減少分析パターンを有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の塩。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩又は請求項9に記載の医薬組成物の、PI3Kキナーゼ異常関連疾患を予防、処置、治療又は軽減する医薬品の製造における用途。
【請求項11】
前記PI3Kキナーゼ異常関連疾患は、呼吸器疾患、ウイルス感染、非ウイルス気道感染、アレルギー疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、血液悪性疾患、神経変性疾患、膵炎、多臓器不全、腎疾患、血小板凝集、癌、移植拒絶、肺損傷又は疼痛である、請求項10に記載の用途。
【請求項12】
前記PI3Kキナーゼ異常関連疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、ウイルス性気道感染、ウイルス性呼吸器疾患悪化、アスペルギルス病、リーシュマニア症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、血液悪性疾患、神経変性疾患、膵炎、多臓器不全、腎疾患、血小板凝集、癌、移植拒絶、肺損傷、全身炎症性疼痛、糖尿病性神経障害、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、ヘアリーセル白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、B細胞リンパ腫、胸腺縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、脾辺縁帯リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、形質細胞白血病、髄外性形質細胞腫、くすぶり型骨髄腫、単クローン性ガンマグロブリン症又はB細胞種リンパ腫である、請求項10に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、アミノピリミジン系化合物の塩及びその用途に関し、具体的には、(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンの塩及び上記塩を含む医薬組成物に関し、さらに医薬品の製造におけるそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イノシトールリン酸3-キナーゼ(PI3Kキナーゼ又はPI3Ks)は、脂質キナーゼのファミリーとして、多くの細胞プロセス、例えば細胞の生存、増殖及び分化において重要な調節作用を発揮する。PI3Ksは、受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)及びGタンパク質共役受容体(GPCRs)の下流伝達における主な影響因子として、リン脂質を生成することにより、様々な成長因子及び因子からのシグナルを細胞内に伝達して、セリン-スレオニンプロテインキナーゼAKT(プロテインキナーゼB(PKB)とも呼ばれる)及び他の下流経路を活性化する。癌抑制遺伝子又はPTEN(ホスファターゼ・テンシン・ホモログ)は、PI3Kシグナル伝達経路において最も重要な逆調節剤である(「Small-molecule inhibitors of the PI3K signaling network.」Future Med Chem.2011、3(5)、549-565)。
【0003】
これまで、8種類の哺乳動物のPI3Ksは、同定されており、遺伝子配列、構造、アダプター分子、発現、活性化機構及び基質の違いによって3種類(I、II及びIII)に分けられる。そのうち、種類IのPI3Ksは、シグナル伝達経路及び調節タンパク質によってIA及びIBの2種類に分けられる。種類IAのPI3Ks(PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kδ)は、触媒サブユニットp110(それぞれp110α、p110β及びp110δ)と調節サブユニットp85(例えば、p85α、p85β、p55δ、p55α及びp50α)とからなるヘテロ二量体複合体である。触媒活性を有するサブユニットp110にATPリン酸化ホスファチジルイノシトール(PI、PtdIns)、PI4P及びPI(4,5)P2が用いられる。これらのシグナル応答は、一般的に、受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)により伝達される。種類IBのPI3Kγのシグナルは、Gタンパク質共役受容体(GPCRs)により伝達され、触媒サブユニットp110γからなり、p110γに関連する調節サブユニットは、種類IAのサブタイプと異なる。
【0004】
PI3Kδシグナル伝達は、B細胞の生存、遊走及び活性化に関連付けられている(Puri、Frontiers inImmunology、2012、3(256)、1-16、ページ1~5、及びClayton、J Exp Med、2002、196(6):753-63)。 例えば、PI3Kδは、B細胞受容体で駆動される抗原依存性B細胞の活性化に必要なものである。PI3Kδ阻害は、B細胞の付着、生存、活性化及び増殖を遮断することにより、B細胞のT細胞に対する活性化能力を阻害して、その活性化を阻害し、かつ自己抗体及び炎症促進性サイトカインの分泌を減少させる。したがって、PI3Kδ阻害剤は、B細胞の活性化を阻害する能力により、類似の方法(例えば、B細胞をリツキシマブにより除去する)で治療できるB細胞媒介性疾患を治療することが期待される。実際、PI3Kδ阻害剤は、リツキシマブを用いて治療できる複数の自己免疫疾患(例えば、関節炎)を有するマウスモデルに適用できることが示される(Puri(2012))。また、p110δ遺伝子を欠くマウスにおいてMZ及びB-1細胞がほとんど存在しないため、自己免疫に関連する先天的B細胞は、PI3Kδ活性に敏感である(Puri(2012))。PI3Kδ阻害剤は、自己免疫疾患に関与するMZ及びB-1細胞の輸送及び活性化を低減することができる。
【0005】
全ての4種類の種類IのPI3Kサブタイプは、炎症性疾患におけるこれらの潜在的な作用に加えて、癌においても作用を果たすことができる。p110αをコードする遺伝子は、一般的な癌(乳癌、前立腺癌、大腸癌及び子宮内膜癌を含む)において頻繁に突然変異する(Samuelsら、Science、2004、304(5670):554;Samuelsら、Curr Opin Oncol.2006、18(1):77-82)。これらの突然変異の80%は、上記酵素のヘリックス又はキナーゼドメインにおける3種のアミノ酸置換のうちの1種により表され、キナーゼ活性の顕著なアップレギュレーションを引き起こすため、細胞培養物及び動物モデルにおいて発癌性形質転換を生じる(Kangら、Proc Natl Acad Sci U S A.2005,102(3):802-7、Baderら、Proc Natl Acad Sci U S A.2006、103(5):1475-9)。他のPI3Kサブタイプにおいてこのような突然変異が同定されないが、それらが悪性腫瘍の発生及び発展を促進できる証拠がある。急性骨髄芽球性白血病においてPI3Kδの一貫した過剰発現が観察され(Sujobertら、Blood、2005、106(3):1063-6)、かつPI3Kδ阻害剤は、白血病細胞の成長を阻止することができる(Billottetら、Oncogene.2006、25(50):6648-59)。慢性骨髄性白血病においてPI3Kγの発現の増加が観察される(Hickeyら、J Biol.Chem.2006、281(5):2441-50)。また、脳腫瘍、大腸癌及び膀胱癌において、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3Kδの発現の変化が観察される(Benistantら、Oncogene、2000、19(44):5083-90、Mizoguchiら、Brain Pathol.2004、14(4):372-7、Knobbeら、Neuropathol Appl Neurobiol.2005、31(5):486-90)。
【0006】
国際特許出願WO2019143874A1には、PI3Kキナーゼの異常な発現に関連する疾患、例えば血液悪性疾患などを治療又は軽減することができる化合物(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(式(I)で表される化合物)が開示される。該化合物は、溶解性が低く、動物体内での吸収が不如意であり、安定性が低いなどの問題があり、これらの欠陥は、後続の製剤開発に多くの不都合をもたらす。
【化1】
【0007】
医薬活性成分の異なる塩又は固体形態は、異なる性質を有する可能性がある。異なる塩又は固体形態の性質を変化させることにより、配合方法の改善を提供することができ、例えば、合成又は処理を容易にし、溶出率を向上させるか又は安定性及び保存期間を向上させることができる。異なる塩又は固体形態による性質の変化は、最終的な製剤製品の薬理性質を改善することもでき、例えば、暴露量、生物学的利用率を向上させるか又は半減期を延長することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許出願第2019143874号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Small-molecule inhibitors of the PI3K signaling network.」Future Med Chem.2011、3(5)、549-565)
【非特許文献2】Puri、Frontiers inImmunology、2012、3(256)、1-16、ページ1~5
【非特許文献3】Clayton、J Exp Med、2002、196(6):753-63
【非特許文献4】Samuelsら、Science、2004、304(5670):554;
【非特許文献5】Samuelsら、Curr Opin Oncol.2006、18(1):77-82
【非特許文献6】Kangら、Proc Natl Acad Sci U S A.2005,102(3):802-7
【非特許文献7】Baderら、Proc Natl Acad Sci U S A.2006、103(5):1475-9
【非特許文献8】Sujobertら、Blood、2005、106(3):1063-6
【非特許文献9】Billottetら、Oncogene.2006、25(50):6648-59
【非特許文献10】Hickeyら、J Biol.Chem.2006、281(5):2441-50
【非特許文献11】Benistantら、Oncogene、2000、19(44):5083-90
【非特許文献12】Mizoguchiら、Brain Pathol.2004、14(4):372-7
【非特許文献13】Knobbeら、Neuropathol Appl Neurobiol.2005、31(5):486-90
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、式(I)で表される化合物の塩を提供する。具体的には、本発明は、式(I)で表される化合物の硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩及びp-トルエンスルホン酸塩を提供し、本発明に記載の塩は、高い安定性を有し、かつ優れた薬物動態学などの性質を有するため、より優れた製薬可能性を有する。
【0011】
具体的には、本発明は、式(I)で表される化合物の塩、及び前記塩を含む医薬組成物に関し、さらに、PI3Kキナーゼの異常な発現に関連する疾患を治療又は予防する医薬品の製造におけるそれらの用途に関する。本発明に記載の塩は、溶媒和物形態、例えば水和物形態であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において、本発明は、式(I)で表される化合物の塩を提供する。
【化2】
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩又はクエン酸塩などを含むが、これらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩は、式(I)で表される化合物の硫酸塩である。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形Aである。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.90°±0.2°、11.82°±0.2°、16.51°±0.2°、20.50°±0.2°及び25.95°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0017】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.20°±0.2°、6.90°±0.2°、11.82°±0.2°、16.51°±0.2°、16.60°±0.2°、19.18°±0.2°、20.10°±0.2°、20.50°±0.2°、21.64°±0.2°、25.95°±0.2°及び29.63°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0018】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.37°±0.2°、6.20°±0.2°、6.90°±0.2°、8.74°±0.2°、10.77°±0.2°、10.99°±0.2°、11.82°±0.2°、12.45°±0.2°、15.61°±0.2°、16.51°±0.2°、16.60°±0.2°、17.08°±0.2°、17.57°±0.2°、17.91°±0.2°、18.62°±0.2°、19.18°±0.2°、20.10°±0.2°、20.50°±0.2°、20.91°±0.2°、21.64°±0.2°、22.24°±0.2°、23.31°±0.2°、23.70°±0.2°、23.83°±0.2°、24.41°±0.2°、24.87°±0.2°、25.18°±0.2°、25.59°±0.2°、25.95°±0.2°、27.15°±0.2°、27.55°±0.2°、27.98°±0.2°、28.19°±0.2°、28.51°±0.2°、29.63°±0.2°、30.19°±0.2°、31.83°±0.2°、36.11°±0.2°及び41.55°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形Aである。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、11.54°±0.2°、13.79°±0.2°、21.99°±0.2°、25.99°±0.2°及び26.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0021】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、8.75°±0.2°、11.54°±0.2°、13.06°±0.2°、13.64°±0.2°、13.79°±0.2°、16.24°±0.2°、17.11°±0.2°、21.99°±0.2°、25.99°±0.2°、26.32°±0.2°、26.90°±0.2°及び27.91°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0022】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、6.81°±0.2°、8.75°±0.2°、11.54°±0.2°、13.06°±0.2°、13.64°±0.2°、13.79°±0.2°、14.19°±0.2°、14.70°±0.2°、16.24°±0.2°、17.11°±0.2°、18.10°±0.2°、18.59°±0.2°、19.48°±0.2°、19.68°±0.2°、21.20°±0.2°、21.52°±0.2°、21.99°±0.2°、23.25°±0.2°、24.05°±0.2°、24.57°±0.2°、25.57°±0.2°、25.99°±0.2°、26.32°±0.2°、26.90°±0.2°、27.08°±0.2°、27.91°±0.2°、28.61°±0.2°、29.48°±0.2°、31.02°±0.2°、32.88°±0.2°、33.53°±0.2°、35.20°±0.2°、38.45°±0.2°、39.52°±0.2°、40.58°±0.2°、41.72°±0.2°及び43.81°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩は、式(I)で表される化合物のリン酸塩である。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形Aである。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、7.41°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、16.62°±0.2°、19.32°±0.2°、22.27°±0.2°及び24.38°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0026】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、7.41°±0.2°、9.27°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、12.02°±0.2°、13.30°±0.2°、16.62°±0.2°、19.32°±0.2°、20.69°±0.2°、22.27°±0.2°、24.38°±0.2°、26.58°±0.2°、27.87°±0.2°及び28.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0027】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、5.02°±0.2°、5.95°±0.2°、7.41°±0.2°、8.15°±0.2°、9.27°±0.2°、9.93°±0.2°、11.06°±0.2°、11.27°±0.2°、12.02°±0.2°、12.82°±0.2°、13.30°±0.2°、14.87°±0.2°、16.62°±0.2°、17.09°±0.2°、18.11°±0.2°、19.32°±0.2°、19.79°±0.2°、20.69°±0.2°、21.22°±0.2°、22.27°±0.2°、23.41°±0.2°、24.38°±0.2°、25.47°±0.2°、26.58°±0.2°、27.43°±0.2°、27.87°±0.2°、28.32°±0.2°、29.45°±0.2°、30.34°±0.2°、31.62°±0.2°及び33.79°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩は、式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩である。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aである。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、10.04°±0.2°、11.71°±0.2°、14.10°±0.2°、17.86°±0.2°、20.84°±0.2°及び21.87°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0031】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、9.51°±0.2°、10.04°±0.2°、10.51°±0.2°、10.72°±0.2°、11.71°±0.2°、14.10°±0.2°、14.94°±0.2°、16.82°±0.2°、17.86°±0.2°、20.84°±0.2°、21.87°±0.2°、26.20°±0.2°及び28.26°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0032】
別のいくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折パターンは、6.49°±0.2°、9.51°±0.2°、10.04°±0.2°、10.51°±0.2°、10.72°±0.2°、11.71°±0.2°、12.65°±0.2°、13.20°±0.2°、14.10°±0.2°、14.35°±0.2°、14.94°±0.2°、15.88°±0.2°、16.44°±0.2°、16.82°±0.2°、17.21°±0.2°、17.86°±0.2°、18.34°±0.2°、19.08°±0.2°、19.57°±0.2°、20.17°±0.2°、20.65°±0.2°、20.84°±0.2°、21.26°±0.2°、21.87°±0.2°、22.27°±0.2°、22.44°±0.2°、22.84°±0.2°、23.19°±0.2°、23.55°±0.2°、24.25°±0.2°、24.81°±0.2°、25.59°±0.2°、26.21°±0.2°、26.91°±0.2°、27.38°±0.2°、27.93°±0.2°、28.26°±0.2°、28.82°±0.2°、29.16°±0.2°、29.61°±0.2°、30.19°±0.2°、31.30°±0.2°、31.90°±0.2°、32.44°±0.2°、33.21°±0.2°、33.94°±0.2°、35.32°±0.2°、36.44°±0.2°、37.30°±0.2°、37.61°±0.2°、38.59°±0.2°、39.54°±0.2°、42.25°±0.2°、44.61°±0.2°及び47.32°±0.2°の2θ角での回折ピークを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、105.07℃±3℃及び185.08℃±3℃の吸熱ピークと、233.00℃±3℃の発熱ピークとを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、196.02℃±3℃の吸熱ピークと、201.85℃±3℃及び246.30℃±3℃の発熱ピークとを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、205.70℃±3℃の発熱ピークを含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定パターンは、73.89℃±3℃の吸熱ピークと、231.68℃±3℃の発熱ピークとを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、100.06℃に加熱されると、6.408%重量減少し、100.06℃から205.23℃に継続して加熱されると、3.058%重量減少し、前記重量減少割合の許容誤差は、±0.1%である。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、137.49℃に加熱されると、6.869%重量減少し、137.49℃から215.40℃に継続して加熱されると、2.873%重量減少し、前記重量減少割合の許容誤差は、±0.1%である。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、119.39℃に加熱されると、3.294%重量減少し、前記重量減少割合の許容誤差は、±0.1%である。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、150.10℃に加熱すると、1.709%重量減少し、前記重量減少割合の許容誤差は、±0.1%である。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸塩は、硫酸塩の結晶形Aであり、前記硫酸塩の結晶形Aは、実質的に図3に示すような熱重量減少分析パターンを有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図4に示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図5に示すような示差走査熱量測定パターンを有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物の硫酸水素塩は、硫酸水素塩の結晶形Aであり、前記硫酸水素塩の結晶形Aは、実質的に図6に示すような熱重量減少分析パターンを有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図7に示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図8に示すような示差走査熱量測定パターンを有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のリン酸塩は、リン酸塩の結晶形Aであり、前記リン酸塩の結晶形Aは、実質的に図9に示すような熱重量減少分析パターンを有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図10に示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図11に示すような示差走査熱量測定パターンを有する。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩は、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aであり、前記p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、実質的に図12に示すような熱重量減少分析パターンを有する。
【0053】
別の態様において、本発明、本発明に記載の塩と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む医薬組成物に関する。
【0054】
一態様において、本発明は、前記塩又は前記医薬組成物の、患者のPI3Kキナーゼの異常な発現に関連する疾患を予防、治療又は軽減する医薬品の製造における用途に関する。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の疾患は、呼吸器疾患、ウイルス感染、非ウイルス気道感染、アレルギー疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、心血管疾患、血液悪性疾患、神経変性疾患、膵炎、多臓器不全、腎疾患、血小板凝集、癌、移植拒絶、肺損傷又は疼痛である。
【0056】
別の態様において、本発明は、前記塩又は前記医薬組成物の、患者のPI3Kキナーゼの異常な発現に関連する疾患の少なくとも一部を予防、治療又は軽減する医薬品の製造における用途に関する。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明に記載の疾患は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ウイルス性気道感染、ウイルス性呼吸器疾患悪化、アスペルギルス病、リーシュマニア症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、血液悪性疾患、神経変性疾患、膵炎、多臓器不全、腎疾患、血小板凝集、癌、移植拒絶、肺損傷、全身炎症性疼痛、糖尿病性神経障害、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ヘアリーセル白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、B細胞リンパ腫、胸腺縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、脾辺縁帯リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、形質細胞白血病、髄外性形質細胞腫、くすぶり型骨髄腫、単クローン性ガンマグロブリン症(MGUS)又はB細胞種リンパ腫である。
【0058】
本発明の一態様に係る、患者のPI3Kキナーゼの異常な発現に関連する疾患を予防、治療又は軽減する方法は、本発明に記載の塩又は前記医薬組成物を薬学的に許容される有効量で患者に投与する工程を含む。
【0059】
別の態様において、本発明は、さらに式(I)で表される化合物の塩の製造方法に関する。
【0060】
本発明に記載の塩の製造方法に用いられる溶媒は、特に限定されず、出発原料をある程度で溶解し、かつその性質に影響を与えない任意の溶媒は、いずれも本発明に含まれる。なお、本分野の多くの類似の変更、同等置換、又は本発明に説明されたものと等しい溶媒、溶媒の組み合わせ、及び溶媒を組み合わせる様々な比率は、いずれも本発明の範囲内に含まれると見なされる。本発明は、各反応工程で用いられる好ましい溶媒を与える。
【0061】
本発明に記載の塩又はその結晶形の製造実験は、実施例の部分で詳細に説明する。また、本発明は、前記塩又はその結晶形の薬理測定実験(例えば、薬物動態学実験)及び安定性実験などを提供する。実験により、本発明に記載の塩又はその結晶形は、高い安定性及び薬物動態的性質を有することが証明される。
定義及び一般的な用語
【0062】
特に断りのない限り、本発明に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明の属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明に係る全ての特許及び公開出版物は、引用により全体として本発明に組み込まれている。本発明の実践又は試験において、本発明に記載のものと類似又は同様の任意の方法及び物質を用いることができるが、本発明に記載されたのは好ましい方法、装置及び物質である。
【0063】
「結晶形」又は「結晶形態」とは、高度に規則的な化学構造を有する固体を指し、単一成分又は多成分結晶、及び/又は化合物の結晶多形体、溶媒和物、水和物、包接化合物、共晶、塩、塩の溶媒和物、塩の水和物を含むが、これらに限定されない。物質の結晶形態は、本分野で知られている多くの方法で得ることができる。このような方法は、溶融結晶化、溶融冷却、溶媒結晶化、ナノポア又はキャピラリーなどの限定された空間における結晶化、ポリマーなどの表面又はテンプレートでの結晶化、共結晶反分子のような添加剤の存在下での結晶化、溶媒除去、脱水、急速蒸発、急速冷却、徐冷、蒸気拡散、昇華、反応結晶化、逆溶媒添加、研磨及び溶媒滴下粉砕などを含むが、これらに限定されない。
【0064】
「溶媒」とは、物質(典型的には液体)であり、他の物質(典型的には固体)を完全に又は部分的に溶解することができる物質を指す。本発明の実施に用いられる溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物などを含むが、それらに限定されない。
【0065】
「逆溶媒」とは、生成物(又は生成物前駆体)の溶媒からの沈殿を促進する流体を指す。逆溶媒は、低温ガス、又は化学反応により沈殿を促進する流体、又は溶媒中の生成物の溶解度を低下させる流体を含み得る。それは、溶媒と同じ液体であるが、異なる温度のものであってもよく、溶媒と異なる液体であってもよい。
【0066】
「溶媒和物」とは、表面、格子内、又は表面及び格子内に、溶媒を有する化合物を指し、上記溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン及びそれらの混合物などであってもよい。溶媒和物の1つの具体的な例は、水和物であり、表面、格子内、又は表面及び格子内の溶媒が水である。物質の表面、格子内、又は表面及び格子内において、水和物は、水以外の他の溶媒を有してもよく、有していなくてもよい。
【0067】
結晶形は、様々な技術手段、例えばX線粉末回折(XRPD)、赤外吸収スペクトル法(IR)、融点法、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析法(TGA)、核磁気共鳴法、ラマンスペクトル、X線単結晶回折、溶解熱量測定法、走査型電子顕微鏡(SEM)、定量分析、溶解度及び溶解速度などにより同定することができる。
【0068】
X線粉末回折(XRPD)は、結晶形の変化、結晶化度、結晶構造状態などの情報を測定することができ、結晶形を同定する一般的な手段である。XRPDパターンのピーク位置は、主に結晶形の構造により決められ、実験の詳細に対して相対的に感受性が低く、その相対ピーク高さは、試料の製造及び機器の幾何学的形状に関する多くの要因により決められる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形は、いくつかのピーク位置を有するXRPDパターンによって特徴付けられ、それは、実質的に本発明の図面に提供されるXRPDパターンに示すとおりである。また、XRPDパターンの2θの計測に実験誤差があってもよく、異なる機器及び異なる試料によるXRPDパターンの2θの計測はわずかに異なる可能性があるため、上記2θの数値は、絶対的なものと見なすことができない。本試験に用いられる機器の状況に従い、回折ピークの許容誤差は、±0.2である。
【0069】
示差走査熱量測定(DSC)は、手順制御下で、絶えず加熱するか又は降温することにより、試料と不活性参照物(一般的なα-Al)との間のエネルギー差の温度による変化を測定する技術である。DSC曲線の吸熱ピーク高さは、試料の製造及び機器の幾何学的形状に関する多くの要因により決められるが、ピーク位置は、実験の詳細に対して相対的に感受性が低い。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に記載の結晶形は、特徴的なピークの位置を有するDSCパターンによって特徴付けられ、それは実質的に本発明の図面に提供されるDSCパターンに示すとおりである。また、DSCパターンに実験誤差があってもよく、異なる機器及び異なる試料によるDSCパターンのピーク位置及びピーク値は、わずかに異なる可能性があるため、上記DSC吸熱ピークのピーク位置又はピークの数値は、絶対的なものと見なすことができない。本試験に用いられる機器の状況に従い、吸熱ピークの許容誤差は、±3°である。
【0070】
熱重量分析(TGA)は、手順制御下で、物質の質量の温度に伴う変化を測定する技術であり、結晶中の溶媒の喪失又は試料の昇華、分解の過程を検査することに適し、結晶中に結晶水又は結晶溶媒が含まれることを推測することができる。TGA曲線が示す質量変化は、試料の製造及び機器などの多くの要因により決められ、異なる機器及び異なる試料による、TGAによって検出される質量変化は、わずかに異なる。本試験に用いられる機器の状況に従い、質量変化の許容誤差は、±0.1%である。
【0071】
本発明の文脈において、X線粉末回折パターンにおける2θ値は、いずれも度(°)を単位とする。
【0072】
「実質的に図に示すような」という用語とは、X線粉末回折パターン、DSCパターン、ラマンスペクトルパターン又は赤外スペクトルパターンにおける少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%のピークがその図に表示されることを指す。
【0073】
スペクトル及び/又はグラフに示すデータについて言及する場合、「ピーク」とは、当業者がバックグラウンドノイズに起因しないと認識する特徴を指す。
【0074】
本発明は、上記(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンの塩及びその結晶形、例えば、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aに関し、これらは、実質的に純粋な結晶形で存在する。
【0075】
「実質的に純粋」とは、1つの結晶形が、他の1つ以上の結晶形を実質的に含まず、すなわち、結晶形の純度が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、若しくは少なくとも99.9%であること、又は、結晶形に他の結晶形を含むが、上記他の結晶形の、結晶形の総体積又は総重量に対する百分率は、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、若しくは0.01%未満であることを指す。
【0076】
「実質的に含まない」とは、結晶形の総体積又は総重量に対する、1つ以上の他の結晶形の百分率が20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満であることを指す。
【0077】
XRPDパターンにおける「相対強度」(又は「相対ピーク高さ」)とは、X線粉末回折(XRPD)パターンの全ての回折ピークのうちの第一に強いピークの強度を100%とする場合、第一に強いピークの強度に対する他のピークの強度の比を指す。
【0078】
本発明の文脈において、「約」、「おおよそ」などの語句が用いられているか否かにかかわらず、与えられた値又は範囲の10%以内に、好ましくは5%以内、特に1%以内にあることを意味する。或いは、当業者にとって、「約」又は「おおよそ」という用語は、平均値の許容可能な標準誤差の範囲内にあることを意味する。値Nを有する数が開示される場合、N+/-1%、N+/-2%、N+/-3%、N+/-5%、N+/-7%、N+/-8%又はN+/-10%以内の値を有する任意の数が明示的に開示され、ここで、「+/-」とは、プラス又はマイナスを指す。
【0079】
本発明において「室温」とは、約10C~約40Cの温度を指す。いくつかの実施例において、「室温」とは、約20C~約30Cの温度を指し、他のいくつかの実施例において、「室温」とは、20C、22.5C、25C、27.5Cなどを指す。
本発明に記載の化合物の塩の医薬組成物、製剤、投与及び用途
【0080】
本発明の医薬組成物は、式(I)で表される化合物の塩と、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤とを含むことを特徴とする。本発明の医薬組成物中の化合物の塩の量は、PI3Kキナーゼ異常関連疾患を効果的で検出可能に治療又は軽減することができる。
【0081】
本発明に説明されるように、本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤をさらに含み、本発明に用いられるこれらは、特定の目標剤形に適する任意の溶媒、希釈剤、又は他の液体賦形剤、分散剤又は懸濁剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、固体結合剤又は潤滑剤などのいずれかを含む。In Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st edition、2005、ed.D.B.Troy、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan、1988-1999、Marcel Dekker、New Yorkの文献に記載されているように、この文献の内容を総合すると、異なる担体は、薬学的に許容される組成物の製剤及びそれらの公知の製造方法に適用できることを示す。任意の通常の担体媒質が本発明の化合物の塩又はその結晶形Aに適合しない場合、例えば、いずれかの望ましくない生物学的効果を生じたり、薬学的に許容される組成物の他のいずれかの成分と有害な方式で相互作用したりする場合を除いて、それらの用途が本発明の範囲に含まれる。
【0082】
薬学的に許容される担体とする物質は、イオン交換剤、アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清タンパク質)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム及び亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン)、セルロース及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース)、ガムパウダー、麦芽、ゼラチン、タルク粉末、賦形剤(例えば、ココアバター及び坐薬ワックス)、油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油)、ジオール系化合物(例えば、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール)、エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、発熱物質を含まない水等張食塩液、リンゲル液、エタノール、リン酸緩衝溶液、他の無毒で適切な潤滑剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、調味剤、香料、防腐剤及び酸化防止剤を含むが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、丸剤、粉剤、粒剤及び水性懸濁液又は溶液であってもよく、経口投与、注射投与、噴霧吸入法、局所投与、経直腸投与、経鼻投与、舌下投与、膣内投与与又は埋込型薬液注入装置による投与という経路で投与することができる。
【0084】
経口投与は、錠剤、丸剤、カプセル、分散可能な粉末、顆粒又は懸濁液、シロップ、エリキシル剤などの形式で投与することができ、外用方式投与は、軟膏剤、ゲル、薬物含有テープなどの形式で投与することができる。
【0085】
本発明の塩又はその結晶形は、好ましくは、投与量の軽減及び用量の均一性のために製剤の配合方法に応じて投与単位剤型として製造される。ここでの「投与単位剤型」という用語は、患者の適切な治療に必要な医薬品の物理的に分離した単位を指す。しかしながら、本発明の式(I)の化合物の塩又はその結晶形、又は本発明の医薬組成物の一日の総投与量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることを理解すべきである。具体的な有効投与量レベルは、いずれかの特殊な患者又は有機体に対して、治療される病症及び病症の重症度、具体的な化合物の塩又はその結晶形の活性、用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別、食習慣、投与時間、投与経路、用いられる具体的な化合物の塩又は結晶形の排出速度、治療の持続時間、医薬品の併用投与又は特殊効果を有する化合物の塩又はその結晶形との併用、及び他のいくつかの薬学的分野に公知の要因を含む多くの要因により決められる。
【0086】
用いられる活性成分の有効投与量は、用いられる化合物の塩又はその結晶形、投与様式及び治療される疾患の重症度に応じて変化することができる。しかしながら、一般的には、本発明の化合物の塩又はその結晶形は、毎日おおよそ0.25~1000mg/kgの動物体重の投与量で投与される場合、望ましい効果を達成することができ、好ましくは、毎日2~4回に分けられた投与量で投与されるか、又は徐放方式で投与される。ほとんどの大型哺乳動物にとって、毎日の総投与量は、おおよそ1~100mg/kg、好ましくはおおよそ2~80mg/kgの活性化合物の塩又はその結晶形である。内服に適する投与量形態は、固体又は液体の薬学的に許容される担体と密接に混合された約0.25~500mgの活性化合物の塩又はその結晶形を含む。この投与量計画を調整することにより最適な治療応答を提供することができる。また、治療状況によって、毎日複数回に分けられた投与量で投与するか、又は投与量を比例的に減少させることができる。
【0087】
本発明に係る化合物の塩又はその結晶形、本発明の医薬組成物は、PI3Kキナーゼの活性を阻害することにより、PI3Kキナーゼの安定性及び/又は活性を調節し、かつPI3Kを活性化して遺伝子の発現を調節することができる。上記化合物の塩又はその結晶形又は上記医薬組成物は、PI3Kキナーゼ関連の病症を治療し、予備的に治療するか又はその発作若しくは発展を遅延させる方法に用いることができ、上記疾患は、血液悪性疾患を含むが、これに限定されない。
【0088】
具体的には、本発明に係る化合物の塩又はその結晶形は、PI3Kキナーゼの活性を阻害するために用いることができる。上記化合物の塩又はその結晶形を投与することにより、PI3Kキナーゼの異常な発現に関連する病症を予防し、予備的に治療するか又は治療することができ、該病症は、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ウイルス性気道感染、ウイルス性呼吸器疾患悪化、アスペルギルス病、リーシュマニア症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、血液悪性疾患、神経変性疾患、膵炎、多臓器不全、腎疾患、血小板凝集、癌、精子運動性、移植拒絶、肺損傷、全身炎症性疼痛、糖尿病性神経障害、慢性リンパ球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ヘアリーセル白血病、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、節外辺縁帯リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、骨髄線維症、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、脾辺縁帯リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、形質細胞白血病、髄外性形質細胞腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫とも呼ばれる)、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン症(MGUS)及びB細胞種リンパ腫を含む。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図2】式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
図3】式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形Aの熱重量減少分析(TGA)パターンである。
図4】式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図5】式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
図6】式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形Aの熱重量減少分析(TGA)パターンである。
図7】式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図8】式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
図9】式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形Aの熱重量減少分析(TGA)パターンである。
図10】式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形AのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図11】式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
図12】式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの熱重量減少分析(TGA)パターンである。
図13】式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下、実施例の態様によって本発明をさらに説明するが、本発明は、上記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0091】
本発明に用いられるX線粉末回折分析方法は、以下のとおりである。Empyrean回折装置でCu-Kα放射(45KV、40mA)を用いてX線粉末回折パターンを得る。単結晶シリコン試料ホルダ上で粉末状試料を薄層にし、回転試料ステージに置き、3°~40°の範囲内で0.0168°のステップサイズで分析する。Data Collectorソフトウェアでデータを収集し、HighScore Plusソフトウェアでデータを処理し、Data Viewerソフトウェアでデータを読み取る。
【0092】
本発明に用いられる示差走査熱量測定(DSC)の分析方法は、以下のとおりである。熱分析コントローラ付きのTA Q2000モジュールを用いて示差走査熱量測定を行う。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。おおよそ1~5mgの試料を正確に計量してカバー付きの特製アルミニウムるつぼに入れ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで試料を分析する。使用中、DSCセルを乾燥窒素ガスでパージする。
【0093】
本発明に用いられる熱重量減少分析(TGA)方法は、以下のとおりである。熱分析コントローラ付きのTAQ500モジュールを用いて熱重量減少分析を行う。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。おおよそ10mgの試料を正確に計量して白金試料ディスクに入れ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで試料を分析する。使用中、TGA炉室を乾燥窒素ガスでパージする。
【0094】
式(I)で表される化合物(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オンは、国際出願WO2019143874A1における実施例34の合成方法を参照して得られる。
実施例
実施例1 式(I)で表される化合物の硫酸塩の結晶形A
1、硫酸塩の結晶形Aの製造
【0095】
(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(0.50g、1.01mmol、実施例5を参照して製造されたもの)のメタノール(4.0mL)溶液に硫酸(0.11g、1.14mmol)の水(0.3mL)溶液を添加し、さらに水(0.2mL)で硫酸秤量瓶をリンスした後、系に添加した。系を還流になるまで加熱し20min撹拌し、メタノール(6.0mL)を添加し、4h還流撹拌し続け、系を溶解する過程で透明にすることができなかった。室温まで冷却し、濾過し、濾過ケーキを60℃で12h送風乾燥させて、白色の固体の硫酸塩の結晶形A(0.46g、収率77%)を得た。
2、硫酸塩の結晶形Aの同定
【0096】
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定について、Cu-Kα放射を用いて、5.37°、6.20°、6.90°、8.74°、10.77°、10.99°、11.82°、12.45°、15.61°、16.51°、16.60°、17.08°、17.57°、17.91°、18.62°、19.18°、20.10°、20.50°、20.91°、21.64°、22.24°、23.31°、23.70°、23.83°、24.41°、24.87°、25.18°、25.59°、25.95°、27.15°、27.55°、27.98°、28.19°、28.51°、29.63°、30.19°、31.83°、36.11°及び41.55°の角度2θで表される特徴的なピークを有し、許容誤差が±0.2°であった。
【0097】
(2)TA Q2000による示差走査熱量測定(DSC)分析同定について、走査速度が10℃/分間であり、得られたDSC曲線は、実質的に図2に示すように、105.07℃と185.08℃の吸熱ピークと、233.00℃の発熱ピークとを含み、許容誤差が±3℃であった。
【0098】
(3)TA Q500による熱重量減少分析(TGA)同定について、昇温速度が10℃/分間であり、得られたTGA曲線は、実質的に図3に示すように、100.06℃に加熱すると、6.408%の重量減少を含み、100.06℃から205.23℃に継続して加熱すると、3.058%の重量減少を含み、許容誤差が±0.1%であった。
実施例2 式(I)で表される化合物の硫酸水素塩の結晶形A
1、硫酸水素塩の結晶形Aの製造
【0099】
(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(0.50g、1.01mmol、実施例5を参照して製造されたもの)のアセトニトリル(4.0mL)溶液に硫酸(0.11g、1.12mmol)の水(0.3mL)溶液を添加し、さらに水(0.2mL)で硫酸秤量瓶をリンスした後、系に添加した。系を還流になるまで加熱し20min撹拌し、アセトニトリル(6.0mL)を添加し、4h還流撹拌し続け、系を溶解する過程で透明にした。室温まで冷却し、濾過し、アセトニトリル(2.0mL)でリンスし、濾過ケーキを60℃で12h送風乾燥させて、淡黄色の固体の硫酸水素塩の結晶形A(0.60g、収率100%)を得た。
2、硫酸水素塩の結晶形Aの同定
【0100】
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定について、Cu-Kα放射を用いて、6.49°、6.81°、8.75°、11.54°、13.06°、13.64°、13.79°、14.19°、14.70°、16.24°、17.11°、18.10°、18.59°、19.48°、19.68°、21.20°、21.52°、21.99°、23.25°、24.05°、24.57°、25.57°、25.99°、26.32°、26.90°27.08°、27.91°、28.61°、29.48°、31.02°、32.88°、33.53°、35.20°、38.45°、39.52°、40.58°、41.72°及び43.81°の角度2θで表される特徴的なピークを有し、許容誤差が±0.2°であった。
【0101】
(2)TA Q2000による示差走査熱量測定(DSC)分析同定について、走査速度が10℃/分間であり、得られたDSC曲線は、実質的に図5に示すように、196.02℃の吸熱ピークと、201.85℃及び246.30℃の発熱ピークとを含み、許容誤差が±3℃であった。
【0102】
(3)TA Q500による熱重量減少分析(TGA)同定について、昇温速度が10℃/分間であり、得られたTGA曲線は、実質的に図6に示すように、137.49℃に加熱すると、6.869%の重量減少を含み、137.49℃から215.40℃に継続して加熱すると、2.873%の重量減少を含み、許容誤差が±0.1%であった。
実施例3 式(I)で表される化合物のリン酸塩の結晶形A
1、リン酸塩の結晶形Aの製造
【0103】
(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(0.50g、1.02mmol、実施例5を参照して製造されたもの)のアセトニトリル(4.0mL)溶液に硫酸(0.11g、1.16mmol)の水(0.3mL)溶液を添加し、さらに水(0.2mL)でリン酸秤量瓶をリンスした後、系に添加した。系を還流になるまで加熱し20min撹拌し、アセトニトリル(6.0mL)を添加し、4h還流撹拌し続け、系を溶解する過程で透明にすることができなかった。室温まで冷却し、濾過し、アセトニトリル(2.0mL)でリンスし、濾過ケーキを60℃で12時間送風乾燥させて、白色の固体のリン酸塩の結晶形A(0.57g、収率95%)を得た。
2、リン酸塩の結晶形Aの同定
【0104】
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定について、Cu-Kα放射を用いて、5.02°、5.95°、7.41°、8.15°、9.27°、9.93°、11.06°、11.27°、12.02°、12.82°、13.30°、14.87°、16.62°、17.09°、18.11°、19.32°、19.79°、20.69°、21.22°、22.27°、23.41°、24.38°、25.47°、26.58°、27.43°、27.87°、28.32°、29.45°、30.34°、31.62°及び33.79°の角度2θで表される特徴的なピークを有し、許容誤差が±0.2°であった。
【0105】
(2)TA Q2000による示差走査熱量測定(DSC)分析同定について、走査速度が10℃/分間であり、得られたDSC曲線は、実質的に図8に示すように、205.70℃の発熱ピークを含み、許容誤差が±3℃であった。
【0106】
(3)TA Q500による熱重量減少分析(TGA)同定について、昇温速度が10℃/分間であり、得られたTGA曲線は、実質的に図9に示すように、119.39℃に加熱すると、3.294%の重量減少を含み、許容誤差が±0.1%であった。
実施例4 式(I)で表される化合物のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形A
1、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの製造
【0107】
(S)-2-(1-((6-アミノ-5-(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)エチル)-5-(3-ヒドロキシプロパ-1-イン-1-イル)-3-フェニルキナゾリン-4(3H)-オン(38.00g、76.85mmol、実施例5を参照して製造されたもの)、エタノール(230mL)及び水(150mL)の懸濁溶液にp-トルエンスルホン酸一水和物(16.13g、84.80mmol)の水(60mL)溶液を添加し、水(20mL)で、酸液が盛られた瓶を洗浄した後、系に添加した。系を還流になるまで加熱し2h撹拌し、次に室温まで下げて30min撹拌し、水(690mL)を添加し、1h撹拌し続け、濾過し、反応フラスコをエタノール/水(v/v=1/4、50mL)で洗浄した後、洗浄液を共に濾過した。濾過ケーキを60℃で一晩越し送風乾燥させて、淡黄色の固体(45.8g、収率89.4%)を得た。
2、p-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの同定
【0108】
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定について、Cu-Kα放射を用いて、6.49°、9.51°、10.04°、10.51°、10.72°、11.71°、12.65°、13.20°、14.10°、14.35°、14.94°、15.88°、16.44°、16.82°、17.21°、17.86°、18.34°、19.08°、19.57°、20.17°、20.65°、20.84°、21.26°、21.87°、22.27°、22.44°、22.84°、23.19°、23.55°、24.25°、24.81°、25.59°、26.21°、26.91°、27.38°、27.93°、28.26°、28.82°、29.16°、29.61°、30.19°、31.30°、31.90°、32.44°、33.21°、33.94°、35.32°、36.44°、37.30°、37.61°、38.59°、39.54°、42.25°、44.61°及び47.32°の角度2θで表される特徴的なピークを有し、許容誤差が±0.2°であった。
【0109】
(2)TA Q2000による示差走査熱量測定(DSC)分析同定について、走査速度が10℃/分間であり、得られたDSC曲線は、実質的に図11に示すように、73.89℃の吸熱ピークと、231.68℃の発熱ピークとを含み、許容誤差が±3℃であった。
【0110】
(3)TA Q500による熱重量減少分析(TGA)同定について、昇温速度が10℃/分間であり、得られたTGA曲線は、実質的に図12に示すように、150.10℃に加熱すると、1.709%の重量減少を含み、許容誤差が±0.1%であった。
実施例5 式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2
1、式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2の製造
【0111】
国際出願WO2019143874A1における実施例34の合成方法を参照して得られた。
2、式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2の同定
【0112】
EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定は、Cu-Kα放射を用いた。本実施例の方法で製造された遊離塩基の結晶形2のX線粉末回折パターンは、実質的に図13に示すとおりである。
実施例6 本発明に記載の塩の薬物動態学実験
本発明に記載の塩及び遊離塩基の結晶形2のBeagle犬の体内での薬物動態測定実験方法
【0113】
本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩及び式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2をそれぞれカプセルに充填し、経口投与に用いた。
【0114】
8~12kgの雄性Beagle犬を2群に分け、1群に3匹とし、供試試料を入れたカプセルを経口投与し、投与量を10mg/kgとし、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0及び24hの時点で採血した。試料濃度に基づいて適切な範囲の標準曲線を確立し、AB SCIEX API4000型LC-MS/MSを用い、MRMモードで血漿試料中の供試試料の濃度を測定し、かつ定量分析を行った。薬物濃度-時間曲線に基づいて、WinNonLin 6.3ソフトウェアにより非コンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメータを計算した。実験結果を表1に示す。
表1 本発明に記載の塩及び遊離塩基の結晶形2のBeagle犬の体内での薬物動態学実験結果データ
【表1】
【0115】
結論について、本発明に記載の塩は、Beagle犬の体内で優れた薬物動態学的性質を有し、特にp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aのビーグル犬体内での暴露量が高く、薬物血中濃度も高く、優れた薬物動態学的性質を有する。
本発明に記載の塩及び遊離塩基の結晶形2のSDラットの体内での薬物動態測定実験方法
【0116】
PEG400を用いて本発明に記載の式(I)で表される化合物の塩及び式(I)で表される化合物の遊離塩基の結晶形2をそれぞれ懸濁液に配合し、SDラットに200mg/kgの供試試料を強制経口投与し、各群に3匹の動物とした。投与後に0.25、0.5、1.0、2.0、5.0、7.0及び24hの時点で採血する。試料濃度に基づいて適切な範囲の標準曲線を確立し、AB SCIEX API4000型LC-MS/MSを用い、MRMモードで血漿試料中の供試試料の濃度を測定し、かつ定量分析を行った。薬物濃度-時間曲線に基づいて、WinNonLin 6.3ソフトウェアにより非コンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメータを計算した。実験結果を表2に示す。
表2 本発明に記載の塩及び遊離塩基の結晶形2の雄性SDラットの体内での薬物動態学実験結果データ
【表2】
【0117】
実験結論について、
表2から分かるように、本発明に記載の塩は、SDラットの体内での暴露量が大きく、優れた薬物動態学的性質を有する。
実施例7 本発明に記載の塩の安定性実験
実験方法
【0118】
高温実験について、本発明に記載の式(I)で表される適量の化合物の塩をフラット秤量瓶に入れ、厚さが3mm以下の薄層に広げ、それぞれ60℃、40℃の2つの温度で30日間放置し、5、10及び30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCにより試料の純度を測定した。
【0119】
高湿実験について、本発明に記載の式(I)で表される適量の化合物の塩をフラット秤量瓶に入れ、厚さが3mm以下の薄層に広げ、それぞれ25℃、RH90%±5%及び25℃、RH75%±5%の2つの条件で30日間放置し、5、10及び30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCにより試料の純度を測定した。
【0120】
光照射実験について、本発明に記載の式(I)で表される適量の化合物の塩をフラット秤量瓶に入れ、厚さが3mm以下の薄層に広げ、開口したままに光照射試験用箱内(紫外線付き)に入れ、照度4500±500lx、紫外光≧0.7w/mの条件で30日間放置し、5、10及び30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCにより試料の純度を測定した。
【0121】
長期安定性試験について、試験される試料を単層PE内に入れ、アルミ箔袋で外に包装し、KD-20脱酸素剤を内蔵し、かつ真空引きして窒素ガスを充填した後、ヒートシールし包装するという条件で、5℃±3℃の低温で長期に試験し、試料の色の変化を観察し、HPLCにより試料の純度を測定した。
【0122】
実験結果を表3に示す。
表3 本発明に記載のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの安定性実験結果-高温、高湿、長期安定性
【表3】
【0123】
実験結果から分かるように、本発明に記載の塩は、高温及び高湿の条件下で安定し、特に本発明に記載のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの外観及び純度は、いずれも明らかに変化しない。
【0124】
長期安定性試験の条件下で、本発明に記載のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aの外観及び純度は、いずれも明らかに変化しない。
【0125】
以上より、本発明に記載のp-トルエンスルホン酸塩の結晶形Aは、安定性が高く、製薬用途に適する。
以上に記載の内容は、本発明の構想の基本的な説明であり、本発明の技術手段に基づいて行われた任意の等価変換は、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。
【0126】
本明細書の説明において、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」などの用語を参照する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に限定されない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、任意の1つ以上の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない場合、当業者であれば、本明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0127】
以上、本発明の実施例を示し、説明したが、理解できるように、上記実施例は、例示的なものであり、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者であれば、本発明の範囲で上記実施例に対して変更、修正、置換及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】