(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】巻取型電極組立体およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20250109BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20250109BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20250109BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M10/0587
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539355
(86)(22)【出願日】2023-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2023013877
(87)【国際公開番号】W WO2024058592
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0116882
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0104698
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テク・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ホ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・ユン
(72)【発明者】
【氏名】シン・ウク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ゴン・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA03
5H050FA02
5H050HA02
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、巻取型電極組立体およびそれを含むリチウム二次電池に関するものであって、上記巻取型電極組立体は、電極組立体の巻取中心を基準として負極集電体の両面に設けられた負極活性層の離隔度合いに応じて負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度を制御することにより電極組立体の均一な充電性能を具現し得るのみならず、長時間充放電時の負極集電体のしわ、解け、座屈などによる性能劣化を改善し得るので、それを含む二次電池は、長時間充放電性能に優れるという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に配置された分離膜を含む巻取型電極組立体において、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の両面にそれぞれ炭素系負極活物質を含んで形成された第1負極活性層および第2負極活性層と、を含み、かつ前記第1負極活性層は、前記第2負極活性層より電極組立体の巻取中心から離隔するように位置し、
前記第1負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(S
ex60/0)が、前記第2負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度(S
in60/0)より小さいことを特徴とし、
[式1]
S
60/0=I60
B/A/I0
B/A
[式2]
I60
B/A=I60
B/I60
A
[式3]
I0
B/A=I0
B/I0
A
前記式1~前記式3において、
S
60/0は、近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時に、X線の入射角が0°であるときのピーク強度割合(I0
B/A)に対するX線の入射角が60°であるときのピーク強度割合(I60
B/A)の値を表し、
I60
Aは、X線の入射角が60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I60
Bは、X線の入射角が60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0
Aは、X線の入射角が0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0
Bは、X線の入射角が0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表す、巻取型電極組立体。
【請求項2】
前記第1負極活性層は、下記式4で表される整列度(O.I
1st)が前記第2負極活性層の整列度(O.I
2nd)より小さいことを特徴とし、
[式4]
O.I=I
004/I
110
前記式4において、
I
004は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(004)結晶面を示すピークの面積積分値を表し、
I
110は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(110)結晶面を示すピークの面積積分値を表す、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項3】
前記第1負極活性層の整列度(O.I
1st)は0.1~2.0であり、
前記第2負極活性層の整列度(O.I
2nd)は、前記第1負極活性層の整列度(O.I
1st)を基準として101%~150%の割合を有する、請求項2に記載の巻取型電極組立体。
【請求項4】
前記第1負極活性層は、電極組立体の最外殻での整列度(O.I
1st)が電極組立体の巻取中心での整列度(O.I
1st)を基準として101%~150%の割合を有することを特徴とする、請求項2に記載の巻取型電極組立体。
【請求項5】
前記第1負極活性層は、CuKα線を用いてXRD測定時の(004)結晶面を示すピークの強度と(002)結晶面を示すピークの強度との割合(I
004/I
002)が0.04以上であることを特徴とする、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項6】
前記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛のうち1種以上を含む、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項7】
前記炭素系負極活物質の球形度が0.75以上である、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項8】
前記第1負極活性層および前記第2負極活性層は、それぞれ250mg/25cm
2~500mg/25cm
2のローディング量を有する、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項9】
前記正極は、正極集電体の両面に設けられる正極活性層を含み、前記正極活性層は、下記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上の正極活物質を含み、
[化学式1]
Li
x[Ni
yCo
zMn
wM
1
v]O
2
[化学式2]
LiM
2
pMn
1-pO
4
前記化学式1および前記化学式2において、
M
1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoのうち1種以上の元素であり、
x、y、z、w、およびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
M
2はNi、CoまたはFeであり、
pは0.05≦p≦1.0である、請求項1に記載の巻取型電極組立体。
【請求項10】
前記正極活物質は、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.2O
2、LiNi
0.9Co
0.05Mn
0.05O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.1Al
0.1O
2、LiNi
0.6Co
0.2Mn
0.15Al
0.05O
2、LiNi
0.7Co
0.1Mn
0.1Al
0.1O
2、LiNi
0.7Mn
1.3O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
0.3Mn
1.7O
4、LiFePO
4、LiFe
0.8Mn
0.2PO
4、およびLiFe
0.5Mn
0.5PO
4のうち1種以上を含む、請求項9に記載の巻取型電極組立体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の巻取型電極組立体を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月16日付の韓国特許出願第10-2022-0116882号および2023年8月10日付の韓国特許出願第10-2023-0104698号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、巻取型電極組立体およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯型電子機器などの小型装置のみならず、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリーパックまたは電力貯蔵装置などの中大型装置にも二次電池が広く適用されている。
【0004】
リチウム二次電池では、正極と負極との間をリチウムイオンが往来することによって充電および放電が行われる。このようなリチウム二次電池は多様な形態で製造され得る。その例として、シート状電極を巻取させた形態の電極体(すなわち、巻取型電極組立体)を備える構造が挙げられる。
【0005】
具体的には、巻取型電極組立体は、例えば、負極活物質を含む負極活物質層が負極集電体の両面に支持された構造を有する負極シートと、正極活物質を含む正極活物質層が正極集電体の両面に支持された構造を有する正極シートが、分離膜シートを介して渦巻き状に巻取されて形成される。
【0006】
ここで、巻取型電極体10の負極13は、
図1に示したように、負極集電体13aの両面に負極活性層13bおよび13cを備え得る。このとき、電極体10の巻取中心を基準として内側に位置する第2負極活性層13bは、隣接する第1正極活性層11acと比較して大きな面積率を有し、電極体の巻取中心を基準として外側に位置する第1負極活性層13cは、隣接する第2正極活性層11bbと比較して小さい面積率を有することになる。これにより、第1負極活性層13cは、第2正極活性層11bbからリチウムイオンが移動する移動速度(2
nd kinetics)が、リチウムイオンが第1正極活性層11acから第2負極活性層13bに移動する移動速度(1
st kinetics)より大きくなるので、第1負極活性層13cと比較して充電終了時点が短縮されることになる。
【0007】
すなわち、1つの負極に備えられた負極活性層であっても、その位置によって隣接する正極活性層との面積率が異なり、負極活性層と正極活性層との間でリチウムイオンの移動速度差が発生する。このようなリチウムイオンの移動速度差は、負極集電体を基準として外側に位置する負極活性層の低い充電性能を誘発する原因となる。
【0008】
一方、負極に用いられる負極活物質としては、天然黒鉛などの黒鉛材料が挙げられる。このような黒鉛は層状構造を有しており、炭素原子が網目構造を形成して平面型に広がった層が多数積層することにより形成されている。このような黒鉛層のエッジ面(層が重なっている面)では、二次電池の充電時にリチウムイオンが侵入し、層間に拡散する。また、上記黒鉛層のエッジ面では、放電時にリチウムイオンが脱離して放出され得る。また、黒鉛層は、面方向の電気抵抗率が黒鉛層の積層方向より低いので、層の面方向に沿って迂回した電子の伝導経路が形成される。
【0009】
これに関連して、従来黒鉛を用いたリチウム二次電池において、巻取型電極組立体の充電性能を改善するために負極に含有された黒鉛を磁場配向させる技術が提案されている。具体的には、負極の活性層形成時に磁場を印加して黒鉛の(002)結晶面が負極集電体に対してほぼ水平に近い傾きを有するように配向させ、それを固定する構成を有する。この場合、黒鉛層のエッジ面が正極活性層に向かうので、リチウムイオンの挿入脱離が円滑に行われると同時に、電子の伝導経路が短縮され得る。これにより、負極の電子伝導性は向上するので、それを含む二次電池の充電性能を改善し得る。
【0010】
しかしながら、磁場によって配向された黒鉛を有する巻取型電極体は、長時間充放電が繰り返されるにより、負極集電体のしわ、解け、座屈などが起こる。このような負極集電体の形態変形は、負極自体の耐久性を低下させるのみならず、負極集電体上に配置された負極活性層の性能劣化を誘導する限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、負極に含有された黒鉛の配向を誘導し、充電性能に優れるのみならず、長時間充放電を行うときに負極集電体のしわ、解け、座屈などの負極集電体の形態変形による性能劣化が改善された巻取型電極組立体およびそれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述された問題を解決するために、本発明は一実施形態において、
正極、負極、および上記正極と上記負極との間に配置された分離膜を含む巻取型電極組立体において、
上記負極は、負極集電体と、上記負極集電体の両面にそれぞれ炭素系負極活物質を含んで形成された第1負極活性層および第2負極活性層と、を含み、かつ第1負極活性層は、第2負極活性層より電極組立体の巻取中心から離隔するように位置し、
上記第1負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(S60/0)が、第2負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度(S60/0)より小さいことを特徴とする巻取型電極組立体を提供する。
【0013】
[式1]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0014】
[式2]
I60B/A=I60B/I60A
【0015】
[式3]
I0B/A=I0B/I0A
【0016】
式1~式3において、
S60/0は、近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時に、X線の入射角が0°であるときのピーク強度割合(I0B/A)に対するX線の入射角が60°であるときのピーク強度割合(I60B/A)の値を表し、
I60Aは、X線の入射角が60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I60Bは、X線の入射角が60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Aは、X線の入射角が0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Bは、X線の入射角が0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表す。
【0017】
このとき、上記第1負極活性層は、下記式4に係る整列度(O.I1st)が第2負極活性層の整列度(O.I2nd)より小さいことがあり得る。
【0018】
[式4]
O.I=I004/I110
【0019】
上記式4において、
I004は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(004)結晶面を示すピークの面積積分値を表し、
I110は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(110)結晶面を示すピークの面積積分値を表す。
【0020】
具体的には、上記第1負極活性層の整列度(O.I1st)は0.1~2.0であり、上記第2負極活性層の整列度(O.I2nd)は、第1負極活性層の整列度(O.I1st)を基準として101%~150%の割合を有し得る。
【0021】
また、上記第1負極活性層は、電極組立体の最外殻での整列度(O.I1st)が電極組立体の中心での整列度(O.I1st)を基準として101%~150%の割合を有し得る。
【0022】
また、上記第1負極活性層は、CuKα線を用いてXRD測定時の(004)結晶面を示すピークの強度と(002)結晶面を示すピークの強度との割合(I004/I002)が0.04以上であり得る。
【0023】
また、第1負極活性層および第2負極活性層は、それぞれ250mg/25cm2~500mg/25cm2のローディング量を有し得る。
【0024】
一方、上記炭素系負極活物質は、天然黒鉛および人造黒鉛のうち1種以上を含み得、0.75以上の球形度を有し得る。
【0025】
vまた、上記電極組立体に含まれた正極は、正極集電体の両面に設けられ、下記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上の正極活物質を含む正極活性層を含み得る。
【0026】
[化学式1]
Lix[NiyCozMnwM1
v]O2
【0027】
[化学式2]
LiM2
pMn1-pO4
【0028】
上記化学式1および化学式2において、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoのうち1種以上の元素であり、
x、y、z、w、およびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
M2はNi、CoまたはFeであり、
pは0.05≦p≦1.0である。
【0029】
一つの例として、上記正極活物質は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2、LiNi0.7Mn1.3O4、LiNi0.5Mn1.5O4、およびLiNi0.3Mn1.7O4のうち1種以上を含み得る。
【0030】
さらに、本発明は一実施形態において、
上述された本発明に係る巻取型電極組立体を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る巻取型電極組立体は、電極組立体の巻取中心を基準として負極集電体の両面に設けられた負極活性層の離隔度合いに応じて負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度を制御することにより電極組立体の均一な充電性能を具現し得る。さらに、上記電極組立体は、長時間充放電時の負極集電体のしわ、解け、座屈などによる性能劣化を改善し得るので、それを含む二次電池は、長時間充放電性能および寿命特性に優れるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る巻取型電極組立体の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る巻取型電極組立体の構造を示す断面図である。
【
図3】負極活性層形成時の負極スラリーに対する磁場印加の有無による黒鉛のab軸結晶面の整列を示すイメージであって、(a)は磁場が印加されず、黒鉛の結晶面が整列されない場合であり、(b)は磁場が印加されて黒鉛の結晶面が整列された場合を示す。
【
図4】近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時のX線の入射角による各軌道の種類および位置別吸収ピークの傾向を示すイメージであって、(a)は黒鉛の二重結合をなす軌道の種類および位置を示したものであり、(b)はX線入射時の各軌道の位置別ピーク形態を示したものである。
【
図5】本発明に係る一実施形態で製造された負極を対象に近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時のX線の入射角を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を詳細な説明に詳細に説明する。
【0034】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解され得る。
【0035】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解され得る。
【0036】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0037】
また、本発明において、「主成分として含む」とは、全体の重量(または全体の体積)に対して定義された成分を50重量%以上(または50体積%以上)、60重量%以上(または60体積%以上)、70重量%以上(または70体積%以上)、80重量%以上(または80体積%以上)、90重量%以上(または90体積%以上)、または95重量%以上(または95体積%以上)含むことを意味し得る。例えば、「負極活物質として黒鉛を主成分として含む」とは、負極活物質全体の重量に対して、黒鉛を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、または95重量%以上含むことを意味し得、場合によっては、負極活物質全体が黒鉛からなり黒鉛が100重量%で含まれることを意味することもできる。
【0038】
また、本発明において、「断面構造」とは、巻取された電極組立体の巻取方向に垂直に切断した面が有する構造を意味する。このとき、切断された面は、負極製造時の工程方向に対して平行に切断された面、または負極活性層を形成するために塗布される負極スラリーの長手方向に切断された面と同一であり得る。また、上記断面構造は、巻取された負極活性層を厚さ方向に切断した面を含み、負極活性層の巻取中心と最外殻とを含み得る。
【0039】
また、本明細書において、「炭素系負極活物質が配向される」または「炭素系負極活物質が整列される」とは、負極活物質粒子を構成する炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のab軸結晶面)が負極集電体表面を基準として所定の傾きを有するように配列されることを意味するものであって、これは、炭素系負極活物質の粒子自体が負極活性層内部で特定の方向を有するように配列されることとは異なり得る。
【0040】
また、「炭素系負極活物質の配向性が高い」とは、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のab軸結晶面)が負極集電体表面を基準として所定の傾きを有する頻度が高いことを意味し得る。また、場合によっては、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の上記結晶面が負極集電体表面を基準として高い角度(例えば、垂直に近い角度、45°超、具体的には60°以上)に配列されたことを意味し得る。
【0041】
また、「炭素系負極活物質の整列度が高い」とは、本明細書で言及された「整列度(O.I)」が大きい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の二次元平面構造を示す特定の結晶面(例えば、黒鉛のab軸結晶面)が負極集電体表面を基準として低い角度(例えば、45°未満)に配列されたことを意味し得る。逆に、「炭素系負極活物質の整列度が低い」とは、「整列度(O.I)」が小さい値を有するものであり、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の上記結晶面が負極集電体表面を基準として高い角度(例えば、垂直に近い角度、45°以上、具体的には60°以上)に配列されたことを意味し得る。
【0042】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0043】
<リチウム二次電池用巻取型電極組立体>
本発明は一実施形態において、
正極、負極、およびこれらの間に配置された分離膜を含む巻取型電極組立体において、
上記負極は、負極集電体と、上記負極集電体の両面にそれぞれ炭素系負極活物質を含んで形成された第1負極活性層および第2負極活性層と、を含み、かつ第1負極活性層は、第2負極活性層より電極組立体の巻取中心から離隔するように位置し、
上記第1負極活性層は、下記式1で表される炭素系負極活物質の整列度(S60/0)が、第2負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度(S60/0)より小さいことを特徴とする巻取型電極組立体を提供する。
【0044】
[式1]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0045】
[式2]
I60B/A=I60B/I60A
【0046】
[式3]
I0B/A=I0B/I0A
【0047】
式1~式3において、
S60/0は、近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時に、X線の入射角が0°であるときのピーク強度割合(I0B/A)に対するX線の入射角が60°であるときのピーク強度割合(I60B/A)の値を表し、
I60Aは、X線の入射角が60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I60Bは、X線の入射角が60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Aは、X線の入射角が0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Bは、X線の入射角が0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表す。
【0048】
本発明に係る巻取型電極組立体は、それぞれシート状を有する正極、負極および分離膜を用意し、正極と負極との間に分離膜を配置した後に、これらを巻取することによって形成され得る。
【0049】
このとき、上記負極は、負極集電体の両面に炭素系負極活物質を含む負極活性層を含む。上記負極活性層とは、負極の電気的活性を具現する層をいう。上記負極活性層は、電池の充放電時に可逆的酸化還元反応を通じて電気的活性を具現するために負極活物質として炭素系負極活物質を含む。具体的には、上記炭素系負極活物質とは、炭素原子を主成分とする素材を意味し、このような炭素系負極活物質としては黒鉛を含み得る。上記黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛のうちいずれか1つ以上を含み得る。例えば、上記炭素系負極活物質は、天然黒鉛または人造黒鉛を単独で含み得、場合によっては、天然黒鉛と人造黒鉛を混合した形態で含み得る。この場合、天然黒鉛と人造黒鉛の混合割合は、重量を基準として5~40:60~95、または10~30:70~90であり得る。炭素系負極活物質は、天然黒鉛と人造黒鉛を上記のような混合割合で含むことにより、負極集電体と負極活性層との接着を強固にしながら負極集電体表面に対する炭素系負極活物質の配向性を高く具現し得る。
【0050】
また、上記炭素系負極活物質は、複数の鱗片状の黒鉛が集合して形成された球形の黒鉛造粒物であることが好ましい。鱗片状黒鉛としては天然黒鉛、人造黒鉛以外、タール・ピッチを原料としたメソフェーズ焼成炭素(バルクメソフェーズ)、コークス類(生コークス、グリーンコークス、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)などを黒鉛化したものなどが挙げられる。特に、結晶性が高い天然黒鉛を複数用いて組み立てられたものが好ましい。また、1つの黒鉛造粒物は、鱗片状の黒鉛が2~100個、好ましくは3~20個が集合して形成され得る。
【0051】
このような炭素系負極活物質、具体的には、黒鉛は球形の粒子形態を有し得、このとき、黒鉛粒子の球形度は0.75以上であり得、例えば0.75~1.0、0.75~0.95、0.8~0.95、または0.90~0.99であり得る。ここで、「球形化度」とは、粒子の中心を通る任意の直径のうち、最も長さが短い直径(短径)と最も長さが長い直径(長径)の割合を意味し得、球形化度が1である場合に、粒子の形態は球形であることを意味する。上記球形化度は、粒子形状分析器を介して測定するか、または走査型電子顕微鏡(SEM)やエネルギー分散分光計などを用いて粒子の形状を測定した後に、測定された結果を分析することにより判断され得る。
【0052】
本発明は、炭素系負極活物質の形状を球形に近く具現することにより、負極活性層の電気伝導度を高く具現し得るので、電池の容量を改善し得、負極活物質の比表面積を増加させ得るので、負極活性層と集電体との間の接着力を向上させ得るという利点がある。
【0053】
また、上記炭素系負極活物質は、0.5μm~10μmの平均粒径(D50)を示すことができ、具体的には2μm~7μm、0.5μm~5μm、または1μm~3μmの平均粒径(D50)を示すことができる。
【0054】
球形に近い炭素系負極活物質の平均粒径は、リチウムイオンの充電による粒子の膨張を防ぎ得るように、粒子それぞれに対する膨張方向の無秩序度を最大化するために粒径を小さくするほど有利であり得る。しかしながら、炭素系負極活物質の粒径が0.5μm未満である場合には、単位体積当たりの粒子数の増加により多量のバインダーが必要となり、球形化度および球形化収率が低くなり得る。一方、最大粒径が10μmを超えると、二次電池の充放電時の負極活物質の膨張率が著しく増加するので、充放電が繰り返されることにより負極活物質粒子間結着性、および負極活物質粒子と集電体との結着性が低下し、サイクル特性が大幅に減少し得る。
【0055】
このような炭素系負極活物質を含む負極活性層は負極集電体の両面に配置され、かつその位置に応じて炭素系負極活物質の配向性および/または整列度が一定に制御され得る。具体的には、
図1を参照すると、本発明に係る負極13は、負極集電体13aの両面に第1負極活性層13cと第2負極活性層13bとを含む。このとき、上記第1負極活性層13cは、負極集電体13aを基準として第2負極活性層13bより電極組立体の巻取中心から離隔するように位置する。これにより、第2負極活性層13bが正極活性層(例えば、第1正極活性層11ac)に相接する面積率は、第1負極活性層13cが正極活性層(例えば、第2正極活性層11bb)に相接する面積率と比較して小さい面積率を有することになる。一般的に、巻取型電極組立体の巻取中心を基準としてより離隔した第1負極活性層は、巻取中心により隣接する第2負極活性層と比較してリチウムイオンの移動速度が大きくなるので、充電性能が相対的に低いことがあり得る。しかしながら、本発明は、第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質のab軸結晶面を負極集電体に対して所定の角度を有するように配向させることにより、第1負極活性層13cにおける電極抵抗を第2負極活性層13bで発生する電極抵抗より低くし得る。これにより、本発明は、第1負極活性層13cの充電性能をより向上させ得る。
【0056】
具体的には、上記第1負極活性層13cは、負極集電体13aの表面に対して60~120°の傾きを有するように、炭素系負極活物質のab軸結晶面が垂直に近く整列され得る。ここで、「炭素系負極活物質が負極集電体に対して垂直に近く整列される」とは、球形粒子を構成する炭素系負極活物質の結晶面、具体的には、黒鉛の結晶面のうち二次元構造を有する黒鉛の平面方向を示すab軸結晶面が負極集電体13aの表面に対して垂直に近い傾きで配列されたことを意味し得る。このとき、黒鉛の平面方向(すなわち、ab軸結晶面方向)は、負極集電体13aに対して60~120°の平均傾きを有し得、好ましくは70~110°、または80~100°の平均傾きを有し得る。これと比較して、上記第2負極活性層13bは、負極集電体13aの表面に対して60°未満および/または120°を超える傾きを有するように、炭素系負極活物質のab軸結晶面が整列され得る。
【0057】
また、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質は、第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質と同様に、ab軸結晶面が負極集電体13aの表面に対して所定の角度を有するように配向され得る。ただし、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質のab軸結晶面が負極集電体に対して有する角度は、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質のab軸結晶面が有する角度より低いことがあり得る。
【0058】
また、上記炭素系負極活物質の整列は、当業界で通常的に適用される方法であれば特に制限されずに適用され得る。しかしながら、好ましくは、上記炭素系負極活物質の整列は、負極製造時に炭素系負極活物質を含有する負極スラリーを負極集電体の両面に塗布した後に塗布された各負極活性層表面で磁場を印加することにより具現され得る。
【0059】
上記炭素系負極活物質の整列度は、印加される磁場の強度やさらされる時間などによって調節され得る。例えば、上記炭素系負極活物質を含む負極スラリー表面に磁場を1~10秒印加する場合に、1秒間磁場が印加された負極スラリーの炭素系負極活物質より、10秒間磁場が印加された負極スラリーの炭素系負極活物質のab軸結晶面が負極集電体表面に対する傾きが大きいことがあり得る。本発明の場合、負極スラリーに対する磁場印加は、0.5T~2.0Tの強度および1秒~60秒間行われ得る。具体的には0.8T~1.5T、または0.8T~1.2Tの強度で1秒~30秒、または1秒~20秒間行われ得る。また、負極スラリーに対する磁場印加時に使用される磁石は、負極スラリーの幅方向を基準として105%~200%の長さ割合を有し得る。具体的には、負極スラリーの幅方向長さを基準として110%~180%、110%~160%、110%~140%、110%~130%、130%~150%、または105%~120%の長さ割合を有し得る。
【0060】
本発明は、磁場印加時に第1負極活性層13cと第2負極活性層13bの位置別に磁場の強度および/または時間を異ならせて印加することにより、負極活性層の位置別炭素系負極活物質の配向を異ならせて誘導し得る。
【0061】
一つの例として、上記炭素系負極活物質を含む負極スラリー表面に磁場を0.5~2.0Tの強度で印加する場合に、第1負極活性層13cに該当する負極スラリー表面では、2.0Tの磁場を印加し、第2負極活性層13bに該当する負極スラリー表面では、0.5Tの磁場を印加することにより、第1負極活性層13cと第2負極活性層13bの配向度合いを異ならせて具現し得る。
【0062】
上記炭素系負極活物質(例えば、黒鉛)の整列度は、炭素系負極活物質に対する分子配向および/または結晶構造分析によって判断され得る。
【0063】
一つの例として、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度は、近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析により判断され得る。この場合、第1負極活性層13cは、炭素系負極活物質が負極集電体に対して垂直に近く整列され、下記式1に係る整列度(S60/0)が第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質の整列度(S60/0)より小さいことがあり得る。
【0064】
[式1]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0065】
上記式1において、S60/0は近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時に、X線の入射角が0°であるときのピーク強度割合(I0B/A)に対するX線の入射角が60°であるときのピーク強度割合(I60B/A)の値を表す。
【0066】
近端X線吸収微細構造(Near Edge X-ray Absorbance Fine Structure、以下、「NEXAFS」という)分光分析は、化合物を構成する原子間の結合エネルギーを測定するX線光電子分光(XPS)とは異なり、励起された内殻電子を含む炭素原子付近の局所構造と測定された炭素系負極活物質の粒子の表面構造のみを反映し得る。したがって、本発明は、負極活性層に対するNEXAFS分光分析により得られたスペクトルを用いることにより、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度を測定し得る。
【0067】
具体的には、炭素系負極活物質の炭素原子(C)にX線を照射すると、炭素原子の内殻準位(1s軌道)に存在する占有状態の電子(K殻内殻電子)がX線エネルギーを吸収して非占有状態である多様な空準位分子軌道に励起されるが、NEXAFS分光分析は、このとき観測される吸収スペクトルを用いる。ここで、上記空準位分子軌道としては、炭素系負極活物質が黒鉛である場合に、i)黒鉛の結晶性(基底面や配向性など)を反映するsp2結合の反結合性軌道に起因するπ*軌道、ii)結晶性の乱れ(エッジ面や無配向性など)を反映するsp3結合の反結合性軌道に起因するσ*軌道、iii)C-H結合やC-O結合などの反結合性軌道に起因するリュードベリ(Rydberg)軌道などがある。
【0068】
炭素系負極活物質、例えば黒鉛は、炭素原子がsp
2結合による六角網構造(
図4の(a)参照)が積層された結晶構造を有する。ここで、六角網面の二次元平面(ab軸結晶面)となっているのが基底面であり、六角網の端部が示されている面(c軸結晶面)がエッジ面である。炭素系負極活物質質のエッジ面では、末端炭素に-COOH、-C=Oなどが存在している可能性があるので、sp
3結合割合が高いことがあり得る。したがって、炭素系負極活物質の結晶面配向および/または整列を分析するためには、炭素系負極活物質の各結晶面における炭素原子が有するsp
2軌道の状態を分析することにより分かる。
【0069】
上記NEXAFS分光分析は、負極活性層に対して入射角が固定されたX線が負極活性層に照射され得る。上記分光分析は、照射するX線のエネルギーを280eV~320eVまで走査しながら、負極活性層表面から放出された光電子を補完するために負極活性層に流れる電流を計測する全電子収量法によって行われ得る。
【0070】
このとき、上記放射光は、磁場Eが印加されて直線偏光化されたX線であるので、X線の入射方向に応じて観測される吸収ピークの強度が異なり得る。具体的には、
図4の(a)を参照すると、炭素系負極活物質である黒鉛の場合に、炭素原子のsp
2結合(-C=C-)を介して六角網構造を有するが、上記sp
2結合は、sp
2結合と平行な方向に位置するσ軌道と、sp
2結合に垂直な方向に位置するπ軌道とを含む。ここで、上記σ軌道およびπ軌道は、それぞれ反結合性軌道であるσ
*軌道およびπ
*軌道と炭素原子の核位置にノード(node)を有する対称構造を有するので、σ
*軌道およびπ
*軌道は、σ軌道およびπ軌道と同じ方向性を有する。
【0071】
したがって、
図4の(b)に示したように、X線の入射方向がsp
2結合と平行である場合に、炭素の1s準位からπ
*準位に励起される吸収ピークの強度は大きくなり、逆にsp
2結合と直交する場合には吸収ピークの強度が小さくなる。一方、X線の入射方向がsp
2結合と平行である場合に、炭素の1s準位からσ
*準位に励起される吸収ピークの強度は小さくなり、逆にsp
2結合と直交する場合には吸収ピークの強度が大きくなる。このような特性により、
図3の(b)のように負極活性層に含有された黒鉛の配向性が高いと、負極活性層表面に位置する黒鉛の反結合性空準位分子軌道が均一に整列されているので、負極活性層に対するX線の入射角を変更すると、放出される光電子の補強、干渉などによりスペクトル形状が大きく変化する。これに対して、
図3の(a)のように負極活性層に含有された黒鉛の配向性が低いと、負極活性層表面に位置する黒鉛の反結合性空準位分子軌道が不均一に整列されるので、負極活性層に対するX線の入射角を変えてもスペクトル形状はほとんど変化しない。
【0072】
そこで、本発明は、負極活性層に含有される炭素系負極活物質の配向度合いを測定するために、負極活性層の表面に対してNEXAFS分光分析を行う。このとき、上記NEXAFS分光分析は、負極活性層に対する異なる入射角(0°および60°)でX線を入射させ、各入射角別に炭素の1s準位からπ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度に対する炭素の1s準位からσ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度の割合(IB/A)を求めた後に、入射角(60°および0°)間の強度割合の割合(S60/0=I60B/A/I0B/A)を算出することにより、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の配向性および/または整列度を定量的に測定し得る。
【0073】
すなわち、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の配向度合いは、i)式2で表されるように、まず、X線の入射角60°で測定された炭素の1s準位からπ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度(I60A)に対する炭素の1s準位からσ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度(I60B)の割合(I60B/A)を算出し得る。次に、ii)式3で表されるように、X線の入射角0°で測定された炭素の1s準位からπ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークA=287±0.2eV)強度(I0A)に対するC1s炭素の準位からσ*準位への遷移に起因する吸収ピーク(ピークB=293±0.2eV)強度(I0B)の割合(I0B/A)を算出し得る。最後に、iii)式1で表されるように、それらの割合(S60/0=I60B/A/I0B/A)を求めることによって評価され得る。
【0074】
[式2]
I60B/A=I60B/I60A
【0075】
[式3]
I0B/A=I0B/I0A
【0076】
式2および式3において、
I60Aは、X線の入射角が60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I60Bは、X線の入射角が60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Aは、X線の入射角が0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Bは、X線の入射角が0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表す。
【0077】
ここで、上記式1(S60/0)は、1に近いほど負極集電体に対する炭素系負極活物質である黒鉛のab軸結晶面の配向性が低く整列度(O.I)が大きいことを意味し得る。また、上記式1(S60/0)は、0に近づくほど負極集電体に対する炭素系負極活物質である黒鉛のab軸結晶面の配向性が高く、整列度(O.I)が小さいことを意味し得る。
【0078】
本発明に係る第1負極活性層13cは、式1に係る値(S60/0)を1.0以下に満たし得、より具体的には0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.5以下、0.05~0.7、0.05~0.5、0.05~0.4、0.1~0.7、0.3~0.7、または0.5~0.8に満たし得る。また、上記第2負極活性層13bは、式1に係る値(S60/0)の平均が0.5を超えて満たし得、より具体的には0.5~1.5、0.5~1.2、0.7~1.0、0.8~1.0、または0.7~1.1を満たし得る。また、上記第2負極活性層13bは、第1負極活性層13cのS60/0に対して101%~150%の割合を有し得る。具体的には、上記第2負極活性層13bは、第1負極活性層13cのS60/0に対して101%~130%、または105%~115%の割合を有し得る。
【0079】
本発明は、第1負極活性層13cと第2負極活性層13bの各整列度(S60/0)を上記のように制御することにより、巻取型電極組立体の備えられた負極の第1負極活性層13cで発生する電極抵抗を、第2負極活性層13bで発生する電極抵抗より低くし得る。また、このような第1負極活性層13cの電気抵抗の減少は、電極組立体の充放電性能をより向上させ得、負極集電体の両面に配置された各負極活性層が劣化する速度差を減らし得るので、二次電池の寿命をより向上させ得る。
【0080】
他の一つの例として、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)分光分析により判断され得る。この場合、第1負極活性層13cは、炭素系負極活物質のab軸結晶面が負極集電体に対して垂直に近く整列され、下記式4で表される炭素系負極活物質の整列度(O.Isliding)が平坦部に含有された炭素系負極活物質の整列度(O.Iflat)より小さいことがあり得る。
【0081】
[式4]
O.I=I004/I110
【0082】
式4において、
I004は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(004)結晶面を示すピークの面積を表し、
I110は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(110)結晶面を示すピークの面積を表す。
【0083】
上記炭素系負極活物質の結晶面配向は、X線回折分光分析などの炭素系負極活物質に対する結晶面分析によって判断され得る。上記式4で表される炭素系負極活物質の整列度(O.I)は、X線回折測定時の炭素系負極活物質の結晶構造が整列された方向、具体的には、炭素系負極活物質の二次元平面構造を示すab軸結晶面が負極集電体表面に対して整列された程度を示す指標となり得る。例えば、負極活性層が炭素系負極活物質として黒鉛を含む場合に、負極活性層に対するX線回折測定時の黒鉛に対するピークである2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°、および77.5±0.2°を示す。これは、負極活性層に含有された黒鉛の結晶面のうち、(002)面、(100)面、(101)R面、(101)H面、(004)面、(110)面を示す。一般的に黒鉛の場合に、a軸およびb軸面にグラフェン層が置かれ、このようなグラフェン層がc軸に沿って積層され、六方晶(ヘキサゴナル、hexagonal)または菱面体晶(ロンボヘドラル、rhombohedral)の結晶構造を有することになる。ここで、上記結晶面ピークは、このような結晶構造の面特性を示すピークである。また、2θ=43.4±0.2°に現れるピークは、炭素系物質の(101)R面と電流集電体、例えばCuの(111)面に該当するピークが重複(overlap)して現れたとも考えられる。
【0084】
本発明は、(004)面を示す2θ=54.7±0.2°でのピークと(1,1,0)面を示す2θ=77.5±0.2°でのピークの面積割合、具体的には、上記ピークの強度を積分して得られる面積の割合で黒鉛の整列度(O.I)を測定し得る。また、X線回折はターゲット線としてCuK α線を用いて測定したものであり、ピーク強度解像度(Peak intensity resolution)の向上のために、モノクロメーター(monochromator)装置でターゲット線を抽出して測定した。このとき、測定条件は2θ=10°~90°およびスキャンスピード(°/s)が0.044~0.089、ステップサイズ(step size)は0.026°/ステップの条件で測定した。
【0085】
また、2θ=54.7±0.2°に現れる(004)面は、黒鉛層の二次元平面構造が積層された層状構造の厚さ方向特性(c軸方向特性)を示し、2θ=77.5±0.2°に現れる(110)面は、積層された黒鉛層の平面特性(ab軸方向特性)を示す。したがって、黒鉛層平面の厚さ方向特性を示す(004)面ピークが小さいほど、また、黒鉛層の平面特性を示す(110)面ピークが大きいほど、黒鉛の平面が負極集電体表面に対して高い角度で整列されることを示す。すなわち、上記整列度(O.I)は、その値が0に近いほど、負極集電体表面に対する黒鉛層平面の角度または傾きが90°に近く、その値が大きくなるほど、負極集電体表面に対する傾きが0°または180°に近いことを意味し得る。
【0086】
このような側面で、本発明に係る第1負極活性層13cは、炭素系負極活物質のab軸結晶面が負極集電体に対して垂直に近く整列されるので、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質と比較して相対的に低い整列度(O.I)を有し得る。
【0087】
具体的には、第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質の整列度(O.I1st)は0.1~2.0であり得、より具体的には0.1~1.5、0.1~1.0、0.2~1.5、0.5~1.5、0.8~1.5、1.0~2.0、0.3~1.2、0.6~1.2、0.15~0.8、0.15~0.6、0.15~0.5、0.2~0.5、0.2~0.4、0.25~0.45、0.3~0.5、0.3~0.8、0.4~0.7、または0.35~0.6であり得る。
【0088】
本発明は、第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質の整列度(O.I1st)を上述の範囲に制御することにより、電池の充放電時の負極端部におけるリチウムイオン移動度を向上させながら電極抵抗を減少させ得る。このような電極抵抗の減少は、電極組立体の充放電性能をより向上させ得、集電体の両面に配置された各負極活性層が劣化する速度差を減らし得るので、二次電池の寿命をより向上させ得る。
【0089】
また、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質は、第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質と共に配向され、負極集電体表面に対してab軸結晶面が所定の角度または傾きを有し得る。これにより、第2負極活性層13bに含有された炭素系負極活物質は、式4に係る整列度(O.I2nd)が所定範囲を満たし得る。具体的には、第2負極活性層の整列度(O.I2nd)は、第1負極活性層の整列度(O.I1st)を基準として101%~150%の割合を有し得、より具体的には101%~140%、101%~130%、101%~120%、101%~110%、105%~120%、105%~130%、105%~140%、110%~130%、110%~120%、115%~130%、または120%~140%の割合を有し得る。
【0090】
本発明は、第1負極活性層13cおよび第2負極活性層13bにそれぞれ含有された炭素系負極活物質の整列度(O.I1stおよびO.I2nd)を上記範囲を満たすように調節することにより、負極活性層13bおよび13c全体のリチウム移動度を高めながら、第1負極活性層13cの電気抵抗をより効果的に下げることができるので、負極のエネルギー密度を向上させ得る。また、第1負極活性層13cと第2負極活性層13bにそれぞれ含有された炭素系負極活物質の整列度(O.I1stおよびO.I2nd)の割合が上記範囲を満たして著しく増加する場合に、炭素系負極活物質の整列度(O.I1stおよびO.I2nd)の差が大きくなるので、負極活性層の位置別劣化が促進され、負極の寿命が短縮されるという問題がある。
【0091】
別の一つの例として、負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度は、X線回折(X-ray diffraction、XRD)分光分析により判断する場合に、第1負極活性層13cは下記式5で定義されるDD(Degree of Divergence)値を特定の範囲で満たし得、その値は第2負極活性層13bのDD値より大きいことがあり得る。
【0092】
[式5]
DD(Degree of Divergence)=(Ia/Itotal)×100
【0093】
上記式5において、
Iaは、CuKα線を用いてXRD測定時に、非平面角度に現れるピーク強度の合計を表し、
Itotalは、CuKα線を用いてXRD測定時に、すべての角度に現れるピーク強度の合計を表す。
【0094】
ここで、上記非平面角度とは、CuKα線を用いてXRD(X-ray diffraction)測定時に、2θ=42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、77.5±0.2°を表し、これは(100)面、(101)R面、(101)H面、(110)面を示すものである。
【0095】
上記式5に係るDD値は、XRD分光分析時に炭素系負極活物質が有するすべての正面のうち、二次元構造を有する黒鉛の結晶面の割合を表すものであって、上記二次元構造は、電気的物性に直接的に関連する黒鉛の層状構造を意味する。すなわち、上記式5は、電気的物性を向上させる黒鉛の二次元構造が負極集電体13aに対して整列された程度を表すものであって、その値が大きいほど黒鉛が負極集電体13aに対して垂直配向されたことを示す。
【0096】
本発明の第1負極活性層は、このような式5に係るDD値を第2負極活性層のDD値より大きく有することにより、電極組立体全般に均一な充電性能を有し得る。
【0097】
一つの例として、上記第1負極活性層のDD値が20~60であり得、上記第2負極活性層は第1負極活性層のDD値を基準として1%~95%の割合である小さいDD値を有し得る。より具体的には、上記第1負極活性層は25~40、または40~55のDD値を有し得、この場合、第2負極活性層は5~20、または20~45のDD値(第1負極活性層のDD値を基準として60~85%の割合)を有し得る。
【0098】
さらに、上記巻取型電極組立体は、長方形の正極および分離膜と共に巻取された負極を含む。したがって、上記負極内に含まれた第1負極活性層13cは、巻取型電極組立体内でその位置が異なり得、第1負極活性層13cの位置によって含有された炭素系負極活物質の整列度が異なり得る。具体的には、
図2に示したように、巻取型電極組立体は、負極集電体13aの両面に第1負極活性層13cと第2負極活性層13bとが設けられた長方形の負極13が巻取中心を基準として巻かれた形態(rolled up form)で含まれた構造を有する。
【0099】
このような巻取型電極組立体は、長時間二次電池の充放電が行われると、リチウムイオンが負極活物質に挿入および脱離が連続的に行われるので、負極活物質の収縮と膨張が繰り返し発生する。このとき、リチウムイオンの挿入と脱離は、負極活性層に含有された炭素系負極活物質のab軸結晶面整列を低下させる。また、負極活物質の収縮と膨張は負極集電体に応力を加えるので、負極集電体のしわ、解け、座屈などを誘導し、炭素系負極活物質のab軸結晶面整列の低下をより促進させる。特に、
図2に示したように、巻取された電極組立体の巻取中心を基準として内側Aより外側Bに位置する負極集電体の部位は、しわ、解け、座屈などの現象が強く誘導される。したがって、負極活性層は、1つの層をなしても、巻取後の電極組立体内の位置に応じて、炭素系負極活物質のab軸結晶面の整列の損傷程度が大きく発生し得る。
【0100】
しかしながら、本発明は、巻取中心を基準として第2負極活性層13bより外側に位置する第1負極活性層13cの領域別炭素系負極活物質の整列度(S60/0、O.I1stおよび/またはDD)を制御することにより、二次電池の長時間充放電後にも炭素系負極活物質の配向性損傷および/または損失を最小化し得る。
【0101】
具体的には、本発明は、第1負極活性層に含有された炭素系負極活物質の配向性を電極組立体の巻取中心を基準として内側から外側に向かうにつれて制御し、かつ巻取された負極の最外殻での整列度が巻取中心での整列度に対して上述の割合を有するようにし得る。この場合、
図2に示したように、巻取された負極の最外殻に含まれた炭素系負極活物質は、巻取中心に含まれた炭素系負極活物質と比較して、相対的に結晶面が負極集電体と低い傾きを有することになる。この場合、リチウムイオンの挿入により体積膨張時に各領域で発生する応力の方向が異なり、互いに相反することになる。これにより、負極集電体に加えられる総応力と最外殻で発生する応力の量を低減させ得る。これにより、二次電池の長時間充放電時に発生する炭素系負極活物質の配向性損傷および/または損失を最小化し得るという利点がある。
【0102】
このために、本発明は、第1負極活性層に含有された炭素系負極活物質のab軸結晶面の負極集電体に対する傾きが電極組立体の巻取中心を基準として内側から外側に向かうにつれて上述の割合で低くなるように、第1負極活性層の整列度(S60/0、O.I1stおよび/またはDD)を制御し得る。
【0103】
一つの例として、上記第1負極活性層13cは、電極組立体の最外殻での整列度(Sex60/0)が電極組立体の巻取中心での整列度(Sin60/0)を基準として101%~150%の割合を有し得、具体的には101%~140%、101%~130%、101%~120%、101%~110%、105%~120%、105%~130%、105%~140%、110%~130%、110%~120%、115%~130%、または120%~140%の割合を有し得る。
【0104】
他の一つの例として、上記第1負極活性層13cは、電極組立体の最外殻での整列度(O.Iex1st)が電極組立体の巻取中心での整列度(O.Iin1st)を基準として101%~150%の割合を有し得、具体的には101%~140%、101%~130%、101%~120%、101%~110%、105%~120%、105%~130%、105%~140%、110%~130%、110%~120%、115%~130%、または120%~140%の割合を有し得る。
【0105】
別の一つの例として、上記第1負極活性層13cは、電極組立体の最外殻でのDDex1st値が、電極組立体の巻取中心でのDDin1st値を基準として50%~99%の割合を有し得、具体的には95%~75%、または80%~95%であり得る。
【0106】
第1負極活性層13cの巻取中心と最外殻にそれぞれ含有された炭素系負極活物質の整列度割合は、当業界で通常的に適用可能な方式で具現され得る。本発明の場合、上記整列度割合は、(1)第1負極活性層13cに含有された炭素系負極活物質の結晶面配向時の配向条件を制御するか、または(2)製造された負極を正極および分離膜と共に巻取するときの巻取条件を制御することにより具現し得る。ここで、巻取条件とは、電極の巻取速度、巻取厚さなどを意味し得る。電極組立体の巻取時の巻取速度や巻取された電極組立体の厚さは、負極に含まれた負極集電体に加えられる応力に影響を及ぼし得る。応力が加えられた負極集電体は、表面に整列された負極活性層の炭素系負極活物質に配列を下げることができる。したがって、電極組立体の巻取時に負極集電体に加えられる応力を制御することにより、第1負極活性層13cの巻取中心と最外殻の炭素系負極活物質の整列度割合を具現し得る。
【0107】
一つの例として、本発明は、炭素系負極活物質を含む負極スラリーを負極集電体の両面に塗布した後に、第1負極活性層および第2負極活性層に該当する各負極スラリーに異なる強度の磁場を印加し得る。このとき、第1負極活性層に該当する負極スラリーに加えられる磁場は、その強度が一定ではなく所定の割合で強くなったり弱くなったりすることにより、負極スラリー内の炭素系負極活物質の領域別(例えば、負極活性層の巻取中心領域と最外殻領域)の整列度差を具現し得る。
【0108】
他の一つの例として、本発明は、炭素系負極活物質を含む負極スラリーを負極集電体の両面に塗布した後に、第1負極活性層および第2負極活性層に該当する各負極スラリーに異なる強度の磁場を印加し、乾燥および圧延して負極を製造し得る。そして、製造された負極を正極および分離膜と巻取して巻取型電極組立体を製造し、かつ巻取開始後に巻取速度が徐々に速くなるように制御することにより、第1負極活性層13cと第2負極活性層13bの配向度合いを異ならせて具現し得る。
【0109】
また、本発明に係る巻取型電極組立体は、負極のローディング量が所定の範囲を満たすように調節され得る。例えば、上記巻取型組立体に備えられた負極は、それぞれ250mg/25cm2~500mg/25cm2のローディング量を有する第1負極活性層および第2負極活性層を含み得る。より具体的には、上記負極に含まれた第1負極活性層と第2負極活性層は、それぞれ250mg/25cm2~450mg/25cm2、250mg/25cm2~400mg/25cm2、250mg/25cm2~350mg/25cm2、250mg/25cm2~300mg/25cm2、270mg/25cm2~380mg/25cm2、300mg/25cm2~500mg/25cm2、380mg/25cm2~450mg/25cm2、または400mg/25cm2~500mg/25cm2のローディング量を有し得る。
【0110】
また、本発明の巻取型電極組立体は、直径が30mm以上であり得る。具体的には、電極組立体の直径は下限値が35mm以上、37.5mm以上、40mm以上、42.5mm以上、または45mm以上であり得、上限値は100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下、または50mm以下であり得る。
【0111】
一つの例として、本発明に係る巻取型電極組立体は、35mm~75mmの直径を有し得、より具体的には35mm~70mm、35mm~65mm、35mm~60mm、38mm~55mm、40mm~50mm、42mm~48mmの直径を有し得る。
【0112】
本発明は、巻取型電極組立体の直径と巻取型電極組立体に備えられる負極のローディング量を上述の範囲に制御することにより電極組立体のエネルギー密度および出力を著しく高めることができ、同時に二次電池の充放電時の負極の体積変化を効果的に抑制し得るので、それによる問題を改善することが容易であるという利点がある。
【0113】
さらに、上記第1負極活性層は、X線回折分光(XRD)測定時の(004)結晶面を示すピークの強度と(002)結晶面を示すピークの強度割合(I004/I002)を一定範囲に制御し得る。具体的には、上記第1負極活性層は、上記割合(I004/I002)を0.04以上に制御し得、より具体的には0.04~0.09、0.04~0.07であり得る。本発明は、上記ピークの強度割合(I004/I002)を上記範囲に制御することにより直流内部抵抗が増加することを抑制し得るので、電極組立体の巻取中心部で充放電性能と外殻部の充放電性能を均一に具現し、電極組立体の不均衡な退化を防止し得る。
【0114】
一方、本発明に係る負極活性層は、負極活物質と共に、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0115】
上記導電材は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを1種以上含み得るが、これに制限されるものではない。
【0116】
一つの例として、上記負極活性層は、導電材としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを単独で含有するかまたは併用し得る。
【0117】
このとき、上記導電材の含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1~10重量部であり得、具体的には0.1~8重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、または0.5~2重量部であり得る。本発明は、導電材の含有量を上記のような範囲に制御することにより、低い含有量の導電材により負極の抵抗が増加して充電容量が低下することを防止し得る。また、過量の導電材により負極活物質の含有量が低下して充電容量が低下するか、または負極活性層のローディング量増加により急速充電特性が低下するという問題を予防し得る。
【0118】
また、上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、電極の電気的物性を低下させない範囲で好適に適用され得るが、具体的には、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化されたエチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレンブタジエンゴムおよびフッ素ゴムからなる群から選択されるいずれか1つ以上を含み得る。
【0119】
上記バインダーの含有量は、負極活性層全体100重量部に対して0.1~10重量部であり得、具体的には0.1~8重量部、0.1~5重量部、0.1~3重量部、または2~6重量部であり得る。本発明は、負極活性層に含有されたバインダーの含有量を上記範囲に制御することによって、低い含有量のバインダーにより活性層の接着力が低下するか、または過量のバインダーにより電極の電気的物性が低下することを防止し得る。
【0120】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得、銅やステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚さを考慮して1~500μmで好適に適用され得る。
【0121】
また、上記負極集電体は、22±2℃および300MPaの引張力条件下でクリープ速度(creep rate)測定時に、引張力を加えて2秒経過した時点の負極集電体の長さ変化量(C2)と60秒経過した時点の負極集電体の長さ変化量(C60)の時間に応じた割合が20~50μm/secを満たし得る。
【0122】
ここで、「クリープ速度(creep rate)」とは、時間に応じた負極集電体の変形度合いであって、特定の温度で一定の力を金属薄板に加えて時間経過に伴う負極集電体の長さ変化率を示したものであり、本発明は、負極集全体のクリープ速度を上記範囲を満たすように制御することによって、電池の充放電時の巻取型電極組立体の外殻で発生する負極集電体の応力を下げることができるので、負極のしわ、解け、座屈などを改善し得る。
【0123】
さらに、本発明に係る巻取型電極組立体は、正極集電体上に正極活物質を含む正極活性層を備える正極を含む。このとき、上記正極活性層は、正極活物質と共に必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0124】
上記正極活物質は、正極集電体上で電気化学的に反応を起こし得る物質であって、可逆的にリチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションが可能な下記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上を含み得る。
【0125】
[化学式1]
Lix[NiyCozMnwM1
v]O2
【0126】
[化学式2]
LiM2
pMnqPrO4
【0127】
上記化学式1および化学式2において、
M1は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、z、w、およびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
M2はNi、CoまたはFeであり、
pは0.05≦p≦1.0であり、
qは1-pまたは2-pであり、
rは0または1である。
【0128】
上記化学式1および化学式2で表されるリチウム金属酸化物は、それぞれニッケル(Ni)とマンガン(Mn)を高含有量で含有する物質であって、正極活物質として用いる場合には、高容量および/または高電圧の電気を安定的に供給し得るという利点がある。
【0129】
このとき、上記化学式1で表されるリチウム金属酸化物としては、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05O2、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2などを含み得、これらを単独で使用するか、または併用して使用し得る。また、上記化学式2で表されるリチウム金属酸化物は、LiNi0.7Mn1.3O4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiNi0.3Mn1.7O4、LiFePO4、LiFe0.8Mn0.2PO4、LiFe0.5Mn0.5PO4などを含み得、これらを単独で使用するか、または併用して使用し得る。
【0130】
また、上記正極活物質は、正極活性層の重量を基準として85重量部以上含まれ得、具体的には90重量部以上、93重量部以上、または95重量部以上含まれ得る。
【0131】
また、上記正極活性層は、正極活物質と共に導電材、バインダー、その他の添加剤などをさらに含み得る。
【0132】
このとき、上記導電材は、正極の電気的性能を向上させるために用いられるものであって、当業界で通常的に用いられるものを適用し得るが、具体的には天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される1種以上を含み得る。
【0133】
また、上記導電材は、各正極活性層の重量を基準として0.1~5重量部で含み得、具体的には0.1~4重量部、2~4重量部、1.5~5重量部、1~3重量部、0.1~2重量部、または0.1~1重量部で含み得る。
【0134】
また、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材を互いに結着するようにする役割を果たし、このような機能を有するものであれば特に制限されずに使用され得る。具体的には、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなる群から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一つの例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0135】
また、上記バインダーは、各正極活性層の重量を基準として1~10重量部で含み得、具体的には2~8重量部、または1~5重量部で含み得る。
【0136】
上記正極活性層の総厚さは特に制限されるものではないが、具体的には50μm~300μmであり得、より具体的には100μm~200μm、80μm~150μm、120μm~170μm、150μm~300μm、200μm~300μm、または150μm~190μmであり得る。
【0137】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものを使用し得る。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得、アルミニウムやステンレススチールの場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚さを考慮して3~500μmで好適に適用され得る。
【0138】
さらに、各単位セルの正極と負極との間に介在される分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性薄膜であって、当業界で通常的に使用されるものであれば特に制限されない。具体的には、上記分離膜は、耐化学性および疎水性のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレン-プロピレン共重合体のうち1種以上の重合体を含むものを使用し得る。上記分離膜は、上述された重合体を含むシートや不織布などの多孔性高分子基材形態を有し得る。場合によっては、上記分離膜は、上記多孔性高分子基材上に有機物または無機物粒子が有機バインダーによりコーティングされた複合分離膜の形態を有してもよい。また、上記分離膜は、気孔の平均直径が0.01~10μmであり得、平均厚さは5~300μmであり得る。
【0139】
本発明に係る巻取型電極組立体は、上述された構成を有することにより電極組立体の均一な充電性能を具現し得るのみならず、長時間充放電時の負極集電体のしわ、解け、座屈などによる性能劣化を改善し得る。したがって、それを含む二次電池は寿命特性に優れ、長時間充放電性能に優れるという利点がある。
【0140】
<リチウム二次電池>
さらに、本発明は一実施形態において、
上述された本発明の巻取型電極組立体を含むリチウム二次電池を提供する。
【0141】
本発明に係るリチウム二次電池は、それぞれ長方形の正極、分離膜および負極が順次配置されて巻取された電極組立体を含む。このとき、上記電極組立体は、上述された本発明に係る巻取型電極組立体を含むことにより、電極組立体の均一な充電性能を具現し得るのみならず、長時間充放電時の負極集電体のしわ、解け、座屈などによる性能劣化を改善し得る。したがって、それを含む二次電池は寿命特性に優れ、長時間充放電性能に優れるという利点がある。
【0142】
上記巻取型電極組立体は、上述された本発明の巻取型電極組立体と同一の構成を有するので、具体的な説明は省略する。
【0143】
また、上記リチウム二次電池は、上記電極組立体と共に、リチウム塩が非水系有機溶媒に溶解された形態を有する電解質組成物を含む。
【0144】
上記電解質組成物は、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
具体的には、上記電解質は有機溶媒およびリチウム塩を含み得る。
【0146】
上記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質としての役割を果たし得るものであれば、特に制限なく使用され得る。例えば、上記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒、ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、R-CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)類などが使用され得る。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~9の体積比で混合して使用することが電解液の性能が優れて現われ得る。
【0147】
また、上記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供し得る化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、上記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用され得る。
【0148】
また、上記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用し得る。リチウム塩の濃度が上記範囲に含まれると、電解質が好適な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動し得る。
【0149】
上記電解質には、上記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、またはピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。このとき、上記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれ得る。
【0150】
一方、本発明に係るリチウム二次電池は、特に制限されるものではないが、巻取型電極組立体が適用され得る円筒型二次電池または角型二次電池であり得る。一つの例として、本発明に係るリチウム二次電池は角型二次電池であり得る。
【0151】
また、上記リチウム二次電池は優れた放電容量、出力特性および容量維持率を安定的に示すので、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0152】
以下、本発明を実施例および実験例によってより詳細に説明する。
【0153】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0154】
<製造例1~8.巻取用電極組立体用負極の製造>
天然黒鉛(球形度:0.9±0.2)を負極活物質として用意し、導電材としてカーボンブラックを用意し、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンゴム(SBR)を用意した。天然黒鉛95重量部、カーボンブラック1重量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5重量部およびスチレンブタジエンゴム(SBR)2.5重量部を固形分50%となるように水と混合して負極スラリーを形成した後に、ロールツロール移送されている銅薄板(厚さ:10μm)の両面に負極スラリーを同時にキャスティングした。
【0155】
その後、銅薄板の上部および下部のそれぞれに磁石を配置した。このとき、上記磁石は、負極スラリーの幅方向長さを基準として110~120%の長さ割合を有するように調節された。その後、上記磁石を用いて移動中の各負極スラリー(移動速度:1~3m/min)に磁場を印加して負極スラリー内の天然黒鉛の垂直配向を誘導した。このとき、上記磁場は下記の条件で印加された。
【0156】
【0157】
その後、負極スラリーが塗布された銅薄板を130℃の真空オーブンで乾燥させた後に、1.63±0.2g/ccの密度に圧延してスリッティングして負極を製造した。製造された各負極の第1負極活性層および第2負極活性層に含有された炭素系負極活物質の整列度を確認するために、i)第1負極活性層と第2負極活性層に対する近端X線蛍光分光計(NEXAFS)およびX線回折(XRD)をそれぞれ行い、スペクトルを測定した。このとき、各分光分析条件は下記の通りである。
【0158】
(1)近端X線吸収微細構造(NEXAFS)
- 加速電圧:1.0GeV~1.5GeV
- 蓄積電流:80~350mA
- 入射角:60°または0°
【0159】
(2)X線回折(XRD)
- ターゲット:Cu(Kα線)黒鉛単色化装置
- スリット(slit):発散スリット=1度、受信スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
【0160】
下記式1~式5を用いて得られた各スペクトルから天然黒鉛(すなわち、炭素系負極活物質)の整列度(S60/0、O.Iおよび/またはDD)を算出した。また、ii)第1負極活性層において巻取時の巻取中心となる領域と最外殻となる領域に対するX線回折(XRD)分光分析を追加で行い、最外殻となる領域と巻取中心となる領域にそれぞれ含有された炭素系負極活物質の整列度割合(O.Iex/O.Iin×100)を算出した。最後に、iii)第1負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時に得られたスペクトルから(004)面を示すピークの強度と(002)面を示すピークの強度の割合(I004/I002)を算出した。算出された結果を下記表2および表3に示した。
【0161】
[式1]
S60/0=I60B/A/I0B/A
【0162】
[式2]
I60B/A=I60B/I60A
【0163】
[式3]
I0B/A=I0B/I0A
【0164】
式1~式3において、
S60/0は、近端X線吸収微細構造(NEXAFS)分光分析時に、X線の入射角が0°であるときのピーク強度割合(I0B/A)に対するX線の入射角が60°であるときのピーク強度割合(I60B/A)の値を表し、
I60Aは、X線の入射角が60°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I60Bは、X線の入射角が60°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Aは、X線の入射角が0°であるときに、286±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表し、
I0Bは、X線の入射角が0°であるときに、292.5±1.0eVに存在するピークのうち強度が最も強かったピークの強度を表す。
【0165】
[式4]
O.I=I004/I110
【0166】
上記式4において、
I004は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(004)結晶面を示すピークの面積積分値を表し、
I110は、負極活性層に対するX線回折(XRD)分光分析時の(110)結晶面を示すピークの面積積分値を表す。
【0167】
[式5]
DD(Degree of Divergence)=(Ia/Itotal)×100
【0168】
上記式5において、
Iaは、CuKα線を用いてXRD測定時に、非平面角度に現れるピーク強度の合計を表し、
Itotalは、CuKα線を用いてXRD測定時に、すべての角度に現れるピーク強度の合計を表す。
【0169】
【0170】
【0171】
<実施例1~5および比較例1~3.巻取型電極組立体の製造>
正極活物質として粒子サイズ5μmのLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1O2を用意し、カーボン系導電剤およびバインダーとしてポリビニリデンフルオライドと94:3:3の重量割合でN-メチルピロリドン(NMP)に混合してスラリーを形成し、アルミニウム薄板上にキャスティングして、120℃の真空オーブンで乾燥させた後に圧延して正極を製造した。
【0172】
上記得られた正極と製造例1~8でそれぞれ製造された負極との間に18μmのポリプロピレンからなる分離膜を介在して巻取することによって巻取型電極組立体を製造した。このとき、各電極組立体に適用された負極の種類を下記表4に示した。
【0173】
【0174】
<実験例1>
本発明に係る巻取型電極組立体の長時間充放電後の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0175】
具体的には、実施例および比較例で製造された各巻取型電極組立体を円筒型電池缶に挿入し、非水系電解液を注入して二次電池を製作した。その後、45℃を維持した状態で製作された各円筒型二次電池をCC/CVモードで200回の充放電を行いながら、最初の充電容量と200回の充電時の容量を比較して充電容量維持率を算出することにより電極組立体の退化度を確認した。
【0176】
また、200回の充放電が行われた各二次電池を分解し、巻取された電極組立体の負極形態を肉眼で評価した。このとき、負極の形態変化がない場合は「×」で表し、負極にしわおよび/または座屈が発生したり、解け現象が現れたりする場合は「〇」で表した。その結果を下記表5に示した。
【0177】
【0178】
上記表5に示したように、本発明に係る巻取型電極組立体は、長時間充放電時の容量維持率が高く、負極の形態変化が抑制されることが分かる。これは、電池の長時間充放電時の巻取型電極組立体の巻取中心と外殻の充電性能が均一で退化が抑制され、負極の膨張応力に対するストレスが低減されることを示すものである。
【0179】
これらの結果から、本発明に係る巻取型電極組立体は、電極組立体の巻取中心を基準として負極集電体の両面に設けられた負極活性層の離隔度合いに応じて負極活性層に含有された炭素系負極活物質の配向度を制御することにより電極組立体の均一な充電性能を具現し得るのみならず、長時間充放電時の負極集電体のしわ、解け、座屈などによる性能劣化を改善し得ることが分かる。
【0180】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者または当該技術分野に通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させ得ることを理解し得る。
【0181】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の発明の概要に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】