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特表2025-501215レーダ再帰反射デバイスへの電磁吸収体の適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】レーダ再帰反射デバイスへの電磁吸収体の適用
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20250109BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
H01Q15/14 B
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539429
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2022062884
(87)【国際公開番号】W WO2023126876
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/266,185
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,レイモンド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サリバン,ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブロヴォルド,シャウン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】メッシーナ,マシュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】ホイル,チャールズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ケネス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,ディパンカー
(72)【発明者】
【氏名】ル,ツォンファ
(72)【発明者】
【氏名】サイナティ,ロバート エー.
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA04
5J020BA01
5J020BA06
5J020BD02
5J020BD03
5J020DA03
5J020EA04
5J020EA05
(57)【要約】
電磁吸収体を含むレーダ再帰反射(R3)デバイスが提供される。電磁吸収体は、デバイスの再帰反射を実質的に低減することなく鏡面反射を低減するために、デバイスの選択された領域上に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面とは反対側の第2主面を含む誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1主面上に配置された電磁(EM)素子のアンテナアレイであって、入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている、電磁素子のアンテナアレイと、
前記誘電体基板の前記第1主面上に配置された、又は前記第1主面内に埋め込まれた電磁吸収体と、
を備える、レーダ再帰反射(R3)デバイス。
【請求項2】
前記電磁吸収体の少なくとも一部分が、前記アンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んでいる前記誘電体基板の外縁部上に配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電磁吸収体が、1つ以上のセラミックフィラー材料と、任意選択的に、ポリマーマトリックス中に1つ以上の導電性フィラー材料とを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電磁吸収体が、導電性金属層を各々が有する熱伝導性粒子を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記電磁吸収体上に反射防止膜を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記反射防止膜が、前記電磁吸収体の誘電率及び誘電正接よりも相対的に低い誘電率及び誘電正接を有する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電磁吸収体が、前記入射EM波の前記再帰反射角を10度以下だけシフトする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電磁吸収体が、前記入射EM波の前記第1主面からの再帰反射を3dB以下だけ低減する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記入射EM波の前記第1主面からの反射を少なくとも3dBだけ低減する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アンテナアレイが、Van Atta反射体アレイを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている電磁(EM)素子のアンテナアレイを誘電体基板の第1主面上に配置することと、
前記アンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んでおり、かつ前記入射EM波の前記第1主面からの再帰反射を実質的に低減することなく前記入射EM波の前記第1主面からの反射を低減するように構成されている電磁吸収体を前記誘電体基板の前記第1主面上に配置することと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記電磁吸収体が、前記アンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んで、前記第1主面の外縁部上に配置される、又は前記外縁部内に埋め込まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電磁吸収体が、前記入射EM波の前記第1主面からの前記再帰反射を3dB以下だけ低減する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記入射EM波の前記第1主面からの前記反射が、少なくとも3dBだけ低減される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アンテナアレイが、20GHz~130GHzの周波数範囲の前記入射EM波を再放射し返す、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
車両ベースのレーダシステムは、物体又は標識を検出するために広く使用されている。Van Attaアレイなどの受動再帰反射体は、無線システムにおいて逆指向性の能力を提供することによってますますアクセス可能になってきている。
【発明の概要】
【0002】
例えば、周囲の車両のレーダ信号及び車両又は物体による望ましくない反射信号からの干渉を低減するために、受動レーダ再帰反射体を最適化することが望まれている。本開示は、干渉を低減して逆指向性を強化するために、電磁吸収体材料を含むレーダ再帰反射(R3)デバイスを提供する。
【0003】
一態様では、本開示は、レーダ再帰反射(R3)デバイスについて説明する。デバイスは、第1主面及び第1主面とは反対側の第2主面を含む誘電体基板と、誘電体基板の第1主面上に配置された電磁(EM)素子のアンテナアレイであって、入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている、電磁素子のアンテナアレイと、誘電体基板の第1主面上に配置された電磁吸収体と、を含む。
【0004】
別の態様では、本開示は、入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている電磁(EM)素子のアンテナアレイを誘電体基板の第1主面上に配置することと、EM素子のアンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んでおり、かつ入射EM波の再帰反射を実質的に低減することなく入射EM波の反射を低減するように構成されている電磁吸収体を誘電体基板の第1主面上に配置することと、を含む方法を説明する。
【0005】
様々な予期せぬ結果及び利点が、本開示の例示的な実施形態において得られる。本開示の例示的な実施形態の1つのそのような利点は、EM吸収体をR3材料/デバイスに適用することによって、再帰反射性能を維持しながら、関連する鏡面反射が大幅に低減され得ることである。本明細書で説明される実施形態は、信号対雑音比(SNR)を改善することができ、より明確なレーダ物体検出を可能にする。
【0006】
以上が本開示の例示的な実施形態の様々な態様及び利点の概要である。上記の「発明の概要」は、本開示の特定の例示的な実施形態の、図示される各実施形態又は全ての実装形態を説明することを意図するものではない。以下の図面及び「発明を実施するための形態」は、本明細書に開示される原理を使用する特定の好ましい実施形態を、より詳細に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
図1】一実施形態による、レーダ再帰反射(R3)デバイスからの反射及び再帰反射を示す概略図である。
図2A】一実施形態による、レーダ再帰反射(R3)デバイスの上面図である。
図2B図2Aのデバイスの一部分の断面図である。
図3A】実施例1の側面斜視図である。
図3B】実施例1の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。
図4A】実施例2の側面斜視図である。
図4B】実施例2の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。
図5A】実施例3の側面斜視図である。
図5B】実施例3の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。
図6A】実施例4の側面斜視図である。
図6B】実施例4の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。
【0008】
図面では、同様の参照符号は、同様の要素を示す。上記に特定した図面は、縮尺通りに描かれていないことがあり、本開示の様々な実施形態を説明するが、「発明を実施するための形態」で指摘されるように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を表現することによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態による、レーダ再帰反射(R3)デバイスからの反射及び再帰反射を示す概略図である。レーダ再帰反射(R3)デバイス10は、ソース(図示せず)からの入射信号2をソース方向に向けて、すなわち、再帰反射信号4の再帰反射角5で実質的な到来方向に反射するように構成された、その主面11上に配置されたアナログ無線周波数(RF)構成要素を含む。許容再帰反射角5は、例えば、-40度~40度、又は-60度~60度の範囲であり得る。逆指向性は、誘電体基板上に配置された電磁(EM)素子のアンテナアレイによって達成され得る。逆指向性を達成するための1つの典型的なアンテナアレイは、Van Attaアレイであり、これは、等しい長さの伝送線又は導波される波長の倍数に等しい長さの差の伝送線によって対称対で接続されているアンテナのアレイを含み得る。Van Attaアレイの例示的な構造並びにその作製及び使用方法は、例えば、「Van Atta Reflector Array」、E.D.Sharp及びM.A.Diab、IRE Transactions on Antennas and Propagation、436~438頁、1960年、並びに米国特許第2908002号(L.C.Van Atta)に記載されている。
【0010】
図1に示されるように、望ましい再帰反射信号4に加えて、入射信号2をデバイス10から反射する際のデバイス10からの望ましくない反射信号4’も存在する。多くのケースでは、反射信号4’は、実質的な到来方向に反射されないことがあって検出されない場合があり、干渉を引き起こし得るため、反射信号4’は望ましくない場合がある。本開示は、例えば、周囲の車両のレーダ信号及び車両又は物体による望ましくない反射信号からの干渉を低減するためのデバイス及び方法を説明する。いくつかの実施形態では、アンテナアレイは、20GHz~130GHzの周波数範囲の入射EM波を再放射し返す。本明細書に記載されるレーダ再帰反射(R3)デバイスは、例えば、24GHz周波数帯域、76~77GHz周波数帯域、77~81GHz周波数帯域、79GHz周波数帯域などの任意の所望のレーダ周波数帯域に対して機能し得ることを理解されたい。
【0011】
様々な実施形態では、電磁吸収体は、R3デバイスからの入射EM波の再帰反射を実質的に低減することなく入射EM波の鏡面反射を低減するために、R3デバイスの選択された領域上に設けられている。電磁吸収体は、吸収によって鏡面反射を低減することができる一方で、電磁吸収体は、例えば、再帰反射の低減、再帰反射の角度のシフトなど、いくつかの副次的影響を有し得る。現在のいくつかの実施形態は、その副次的影響を克服する手段を提供する。いくつかの例では、電磁吸収体は、入射EM波のデバイスからの再帰反射を10dB以下、5dB以下、又は3dB以下だけ低減し得る。いくつかの例では、電磁吸収体は、入射EM波のデバイスからの反射を1.5dB以上、2dB以上、3dB以上、又は4dB以上だけ低減し得る。いくつかの例では、電磁吸収体は、入射EM波の再帰反射角を20度以下、15度以下、10度以下、又は5度以下だけシフトし得る。
【0012】
図2Aは、一実施形態による、レーダ再帰反射(R3)デバイス20の上面図である。図2Bは、図2Aのデバイスの一部分の断面図である。デバイス20は、第1主面221及び第1主面221とは反対側の第2主面222を含む誘電体基板22を含む。誘電体基板22は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はその複合材料などの任意の適切な誘電体材料を含み得る。
【0013】
電磁(EM)素子のアンテナアレイ24は、誘電体基板22の第1主面221上に配置されている、又は第1主面221内に埋め込まれている。EM素子は、透明又は不透明のいずれかであり得る任意の導電性パターンであり得る。いくつかの例では、アンテナアレイは、透明な導電パターンを含み得る。導電層26は、誘電体基板22の第2主面222上に配置されている。
【0014】
電磁素子24は、伝送線242によって電気的に相互接続されて、入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返す。例示的なアンテナアレイは、Van Atta反射体アレイを含む。図2Aに示される実施形態では、EM素子は、3対の列24a、24b、及び24cを形成するように接続されている。各対は、対称パターンを形成するように配置されている。アンテナのアレイは、等しい長さの伝送線又は導波される波長の倍数に等しい長さの差の伝送線によって対称な対で接続されている限り、すなわち、伝送線が入射波に追加の位相差を与えない限り、任意の数の対を含んでもよく、任意の所望のパターンで配置され得ることを理解されたい。
【0015】
電磁吸収体は、誘電体基板22の第1主面221の1つ以上の選択された領域上に配置されている、又は1つ以上の選択された領域内に埋め込まれている。図2Aに示されるように、誘電体基板22の第1主面221は、以下で説明されるように複数のタイプの領域2a、2b、2c、及び2dに分割され得る。誘電体基板22の外縁領域2aは、アンテナアレイ24を実質的に取り囲んでいる。外縁領域2aは、アンテナアレイ24の近傍(破線枠241によって示されている)から誘電体基板22の縁部223までのスペースの少なくとも一部分又は全部を指す場合がある。誘電体基板22のアンテナ領域2bは、電磁(EM)素子24のアンテナアレイ及びEM素子24を接続している伝送線242を直接支持する。第1のギャップ領域2cは、EM素子24の隣接する列の間に位置し、それらを分離している。第2のギャップ領域2dは、隣接する伝送線242の間に位置し、それらを分離している。いくつかの例では、基板上のアンテナアレイによって占有される連続領域は、アンテナ領域2b、第1のギャップ領域2c、及び第2のギャップ領域2dの合計を指す場合がある。外縁領域2aは、アンテナアレイの連続領域を実質的に取り囲むことができる。いくつかの例では、2a/(2b+2c+2d)の面積比は、例えば、2:1~1:10の範囲内であってもよく、これは、使用されているEM素子の所望のアレイに依存し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、電磁吸収体は、誘電体基板22の外縁領域2a上に配置されてもよく、又は外縁領域2a内に埋め込まれてもよい。電磁吸収体は、アンテナアレイ24を支持する領域2b(例えば、枠241の内側の領域)から一定の距離dだけ離れて配置されている。いくつかの例では、距離dは、λ/10~λの範囲内であってもよく、ここで、λは、入射EM波の波長である。図2Bに示される実施形態では、EM吸収体202は、誘電体基板22の縁部223に隣接する誘電体基板22の外縁領域2a上に配置されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、電磁吸収体は、EM素子24の隣接する列の間に位置してそれらを分離している第1のギャップ領域2c上に配置されてもよく、又は第1のギャップ領域2c内に埋め込まれてもよい。電磁吸収体は、EM素子24及び伝送線242に接触しない場合があることを理解されたい。図2Bに示される実施形態では、EM吸収体204は、隣接するEM素子24の間の第1のギャップ領域2c上に配置されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、電磁吸収体は、隣接する伝送線242の間に位置してそれらを分離している第2のギャップ領域2d上に配置されてもよく、又は第2のギャップ領域2d内に埋め込まれてもよい。電磁吸収体は、伝送線242に接触しない場合があることを理解されたい。
【0019】
本明細書に記載される電磁吸収体は、基板表面の選択された領域上に配置されている、又は選択された領域内に埋め込まれており、入射EM波の基板からの再帰反射を実質的に低減することなく入射EM波の基板からの鏡面反射を低減するように構成されている。電磁吸収体は、入射EM波を吸収して鏡面反射を低減するのに適したEM特性を有する。例示的な電磁吸収体材料は、例えば、米国特許出願公開第2020/0053920号(Ghosh)、米国特許第9704613号(Ghosh、Roy、及びSatarkar)、及び「Structural and high GHz frequency EMI(Electromagnetic Interference)properties of carbonyl iron and boron nitride hybrid composites」、Mater. Res.Express 6,106305(2019年)に記載されている。
【0020】
複素誘電率(ε=ε’-jε”)は、複合材料のマイクロ波吸収特性を決定し得る重要なパラメータであり、ここで、複素誘電率の実数部(ε’)は、電気エネルギーの貯蔵能力を表し、誘電率の虚数部(ε”)は、電気エネルギーの損失能力を記述する。誘電正接値は、tanδ=(ε”/ε’)であり、多くの場合、誘電材料の損失値を定量化するために使用される。一般に、所望の吸収性能を達成するために、誘電率の実数部ε’の値を低く維持しながら誘電正接(tanδ)値を高く維持して、反射を低下させることが有用である。
【0021】
いくつかの実施形態では、適切な複合材料は、対象の周波数帯域において、例えば、約0.05~約0.8、約0.1~約0.8、約0.2~約0.8、又は約0.25~約0.75の範囲内の誘電正接を有し得る。複合材料の高い誘電損失は、ハイブリッドセラミック及び導電性粒子(例えば、CuO及びカーボンブラック粒子)の高充填レベルに起因し得る。誘電体誘電率の好ましい値は、典型的には、対象の周波数範囲において10未満である。
【0022】
いくつかの実施形態では、適切な吸収体複合材料は、1つ以上のセラミックフィラー材料を含み得る。例示的なセラミックフィラー材料は、ポリマーマトリックス中に酸化銅(II)(CuO)又は酸化チタン(II)(TiO)のうちの少なくとも1つを含んでもよく、複合材料中のフィラー充填量は、50~約95重量%である。いくつかの実施形態では、EMI複合材料は、適切なマトリックス材料(例えば、ポリマー)中に分散された高充填レベルのセラミック粒子(例えば、CuO粒子)を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス材料は、例えば、シリコーン、エポキシ、環状オレフィンコポリマー(COC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせなどの、硬化ポリマー系を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、適切な吸収体複合材料は、セラミックフィラー材料及び導電性フィラー材料を含み得る。例示的な導電性フィラー材料は、カーボンブラック、カーボンバブル、カーボンフォーム、グラフェン、炭素繊維、グラファイト、カーボンナノチューブ、金属粒子、金属ナノ粒子、金属合金粒子、金属ナノワイヤ、ポリアクリロニトリル繊維、又は導電性被覆粒子のうちの少なくとも1つを含んでもよく、複合材料中の導電性フィラー充填量は、0.1~3重量%である。
【0024】
いくつかの実施形態では、電磁吸収体は、熱伝導性及び電磁吸収性粒子を含み得る。例示的な粒子は、二重層コア粒子を含み得る。例示的な粒子は、米国特許第5389434号(Griswoldら)及び国際公開第2021/198849A1号(Luら)に記載されている。例えば、粒子は、コアとしてAlを含んでもよく、中間層は、薄い導電性金属であり、最も外側の層は、Al絶縁層である。いくつかの例では、吸収体のEM特性は、複合材料中の粒子充填体積を制御することによって制御され得る。例えば、45体積%の粒子充填体積では、吸収体は、8以上のε’及び3以上のε”の誘電率を有し得る。
【0025】
電磁吸収体は、単一層又は複数層において基板の選択された領域上に形成され得る。電磁吸収体は、基板表面上に形成されてもよく、又は基板表面に隣接して基板内に埋め込まれてもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、単一層又は複数層における電磁吸収体は、例えば、0.01mm~10mm、0.02mm~5mm、又は0.05mm~2mmの範囲内の厚さを有し得る。電磁吸収体の厚さは、入射EM波の波長λに依存し得ることを理解されたい(例えば、最適化された厚さは四分の一波長であり得る)。
【0026】
いくつかの実施形態では、電磁吸収体からの反射を更に低減するために、反射防止(AR)材料が電磁吸収体上に設けられてもよい。再び図2Bを参照すると、反射防止材料206が、電磁吸収体204の上部に設けられている。適切な反射防止複合材料は、例えば、ポリマーマトリックス中に酸化銅(II)(CuO)などのセラミックフィラー材料を含み得る。いくつかの例では、AR複合材料は、そのポリマーマトリックス中に導電性フィラーを含まなくてもよい一方で、吸収体複合材料は、ハイブリッドフィラー、例えば、そのポリマーマトリックス中にセラミックCuOと導電性フィラーとの混合物を含有してもよい。
【0027】
本明細書に記載される電磁吸収体及び反射防止材料は、任意の適切な方法又はプロセスによって基板表面の選択された領域に適用され得る。一例では、電磁吸収体は、混合、硬化、プレスなどのプロセスによって調製され得るハイブリッドフィラー、例えば、50~80重量%のCuO及び0.6~1重量%のカーボンブラックを有するシリコーン複合材料を含み得る。一例では、反射防止材料は、混合、硬化、プレスなどのプロセスによって調製され得るセラミックフィラー、例えば、20~80重量%のCuOを有するシリコーン複合材料を含み得る。
【0028】
本開示の例示的な実施形態は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更が行われ得る。したがって、本開示の実施形態は、以下に記載の例示的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている限定及びこれらの任意の均等物により支配されるものであることは理解されたい。
【0029】
例示的な実施形態のリスト
例示的な実施形態を以下に列挙する。実施形態1~10及び実施形態11~15のいずれか1つは組み合わせられ得ることを理解されたい。
【0030】
実施形態1は、
第1主面及び第1主面とは反対側の第2主面を含む誘電体基板と、
誘電体基板の第1主面上に配置された電磁(EM)素子のアンテナアレイであって、入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている、電磁素子のアンテナアレイと、
誘電体基板の第1主面上に配置された、又は第1主面内に埋め込まれた電磁吸収体と、を備える、レーダ再帰反射(R3)デバイスである。
【0031】
実施形態2は、電磁吸収体の少なくとも一部分が、アンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んでいる誘電体基板の外縁部上に配置されている、実施形態1に記載のデバイスである。
【0032】
実施形態3は、電磁吸収体が、1つ以上のセラミックフィラー材料と、任意選択的に、ポリマーマトリックス中に1つ以上の導電性フィラー材料とを含む、実施形態1に記載のデバイスである。
【0033】
実施形態4は、電磁吸収体が、導電性金属層を各々が有する熱伝導性粒子を含む、実施形態1に記載のデバイスである。
【0034】
実施形態5は、電磁吸収体上に反射防止膜を更に含む、実施形態1に記載のデバイスである。
【0035】
実施形態6は、反射防止膜が、電磁吸収体の誘電率及び誘電正接よりも相対的に低い誘電率及び誘電正接を有する、実施形態5に記載のデバイスである。
【0036】
実施形態7は、電磁吸収体が、入射EM波の再帰反射角を10度以下だけシフトする、実施形態1に記載のデバイスである。
【0037】
実施形態8は、電磁吸収体が、入射EM波の第1主面からの再帰反射を3dB以下だけ低減する、実施形態1に記載のデバイスである。
【0038】
実施形態9は、入射EM波の第1主面からの反射を少なくとも3dBだけ低減する、実施形態1に記載のデバイスである。
【0039】
実施形態10は、アンテナアレイが、Van Atta反射体アレイを備える、実施形態1に記載のデバイスである。
【0040】
実施形態11は、
入射EM波を再帰反射角で実質的な到来方向に再放射し返すように電気的に相互接続されている電磁(EM)素子のアンテナアレイを誘電体基板の第1主面上に配置することと、
電磁吸収体であって、入射EM波の第1主面からの再帰反射を実質的に低減することなく入射EM波の第1主面からの反射を低減するように構成されている電磁吸収体を誘電体基板の第1主面上に配置することと、を含む、方法である。
【0041】
実施形態12は、電磁吸収体が、アンテナアレイを少なくとも部分的に取り囲んで、第1主面の外縁部上に配置される、又は外縁部内に埋め込まれる、実施形態11に記載の方法である。
【0042】
実施形態13は、電磁吸収体が、入射EM波の第1主面からの再帰反射を3dB以下だけ低減する、実施形態11に記載の方法である。
【0043】
実施形態14は、入射EM波の第1主面からの反射が、少なくとも3dBだけ低減される、実施形態11に記載の方法である。
【0044】
実施形態15は、アンテナアレイが、20GHz~130GHzの周波数範囲の入射EM波を再放射し返す、実施形態11に記載の方法である。
【実施例
【0045】
これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0046】
レーダ再帰反射(R3)材料/デバイスを設計し、市販の電磁モデリングツール、Dassault Systemes(Waltham,MA,USA)製のCST Microwave Studioを用いてシミュレーションした。図2Aに示されるような構成を有するR3デバイスを設計した。R3デバイスは、31.6mm×15.8cm×0.127mmのサイズを有する誘電体基板を有する。誘電体基板は、2.2の誘電率を有する。電磁(EM)素子のアンテナアレイは、基板表面上に設けられる。EM素子は、各々が8つの素子を有する6つの列として配置される。各EM素子は、1.13mm×1.263mmのサイズを有する。伝送線は、0.3mmの幅を有する。各列において隣接するEM素子を接続している伝送線は、1.371mmの長さを有する。隣接する列の隣接するEM素子間のギャップは、1.17mmである。
【0047】
R3デバイスの再帰反射を維持しながらR3デバイスの鏡面反射を低減するために、EM吸収体をR3デバイス上の選択された領域に適用した。EM吸収体は、8の誘電率及び0.25の損失正接(tanδ)を有する。EM吸収体の厚さは、0.1mmから0.5mmまで掃引された。4つの例(例1~4)が、R3材料/デバイスの上部の異なる適用領域において77GHzで計算された。
【0048】
実施例1
図3Aは、実施例1の側面斜視図である。EM吸収体を、アンテナアレイ(EM素子及びEM素子を接続している伝送線)の領域を除く表面全体に適用した。図2Aを参照すると、適用領域は、領域2a、2c、及び2dを含む。図3Bは、実施例1の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。図3Bに示されるように、反射が、0.3mm厚のEM吸収体で16dBだけ大幅に低減され、一方で、再帰反射もまた、6dBだけ低減された。再帰反射の角度もまた、(例えば、図2Aの領域2c上の)アレイ間のEM吸収体により5°~10°だけシフトされた。
【0049】
実施例2
図4Aは、実施例2の側面斜視図である。EM吸収体を、アレイの周辺領域及び中心ギャップ上に適用した。図2Aを参照すると、適用領域は、領域2a、領域2cの中央ギャップ、及び2dを含む。図4Bは、実施例2の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。図4Bに示されるように、反射が、0.3mm厚のEM吸収体で25dBだけ大幅に低減され、一方で、再帰反射は4dBだけしか低減されなかった。実施例1と比較して、再帰反射の角度のシフトがより少なかった。
【0050】
実施例3
図5Aは、実施例3の側面斜視図である。EM吸収体を、アンテナアレイ(EM素子及びEM素子を接続している伝送線)を取り囲んでいる周辺領域上に適用した。図2Aを参照すると、適用領域は、領域2a及び領域2dを含む。図5Bは、実施例3の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。図5Bに示されるように、反射が、0.3mm厚のEM吸収体で20dBだけ大幅に低減され、一方で、再帰反射は3dBだけしか低減されなかった。実施例1及び2と比較して、再帰反射の角度のシフトがより少なかった。
【0051】
実施例4
図6Aは、実施例4の側面斜視図である。EM吸収体を、アンテナアレイ(EM素子及びEM素子を接続している伝送線)を取り囲んでいる周辺領域上に適用した。図2Aを参照すると、適用領域は、領域2aのみを含む。図6Bは、実施例4の角度に対する反射及び再帰反射のプロットである。図6Bに示されるように、反射が、0.3mm厚のEM吸収体で8dBだけ大幅に低減され、一方で、再帰反射は0.5dBだけしか低減されなかった。実施例3と比較して、再帰反射強度は、EM吸収体による影響がより少ない。
【0052】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は原料、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストに記載される数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは特許請求される記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0053】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「ある実施形態」に対する言及は、「実施形態」という用語の前に、「例示的な」という用語が含まれているか否かにかかわらず、その実施形態に関連して説明される具体的な特徴部、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、又は「ある実施形態において」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態のうちの同一の実施形態に言及するものとは限らない。更に、具体的な特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。本明細書では特定の例示的な実施形態について詳細に説明してきたが、当業者には、上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の変更形態、変形形態、及び均等物を容易に想起できることが理解されよう。したがって、本開示は、ここまで説明してきた例示的な実施形態に過度に限定されるものではないことを理解されたい。更に、種々の例示的な実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】