(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】バイアルまたは他の減圧容器から、薬物を再構成、回収、及び移動させるための圧力補償デバイス、ならびにこのデバイスを備えた装置
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539440
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2022059123
(87)【国際公開番号】W WO2023126699
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】102021000033080
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102022000008273
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524242830
【氏名又は名称】パオロ ゴッビ フラッティーニ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】カスパーニ,ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴッビ フラッティーニ,パオロ ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047HH01
4C047HH03
4C047HH06
4C047HH07
(57)【要約】
バイアルから、または軸方向圧力によって孔開け可能な密閉プラグを伴う他の減圧容器から、薬物を再構成、回収、及び移動させる装置のための、圧力補償デバイス(1)は、独特の撓み可能な壁(3)と、無菌空気を包含した内部空間(4)とを伴う、三次元補償バッグ(2)を備える。三次元補償バッグ(2)は、バイアル(16)の閉鎖プラグを引っ掛けて孔を開けるデバイス(5)と、端部コネクタ(6)との間に挿置される。端部コネクタ(6)は、ニードレスシリンジ(21)のルアー部(25)を用いて適用される軸方向圧力によって開放可能な密閉弁、または他の抽出手段を伴い、上記の圧力が停止したときに、自動的に再密閉可能である。引っ掛け及び孔開けデバイス(5)は、引っ掛け及び保持カウリング(7)、軸方向の内部通路(49)を伴う孔開けステム(11)、及び封止要素(12)、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアル(16)または他の減圧容器から、薬物(17)を再構成、回収、及び移動させる装置のための、圧力補償デバイス(1)であって、前記バイアル(16)は、
薬物に占有された第1の部分及び薬物に占有されない第2の部分を伴う、内部区画(53)と、軸方向圧力によって孔開け可能な密閉プラグ(18)と、を有し、
前記デバイス(1)は、無菌空気を包含した、弾性的に撓み可能な(3)補償バッグ(2)を備え、前記補償バッグ(2)は、前記バイアル(16)の前記閉鎖プラグ(18)を引っ掛けて孔を開けるデバイス(5)と、シリンジのルアー部におけるコネクタ(6)と、の間に軸方向に挿置され、
ここで、前記補償バッグ(2)は、側方に圧縮可能な三次元内部壁(3)と、薬物によって占有されていない部分の前記バイアル(16)の内部区画(53)における容量以上である無菌空気量で充填された、内部空間(4)と、を有すること、
前記コネクタ(6)は、密閉制御弁(45)を伴う軸方向通路(54)によって横断され、前記密閉制御弁(45)は前記バッグの外側からの軸方向圧力によって開放可能で、前記軸方向圧力が停止したときに自動的に再密閉可能であること、ならびに
前記引っ掛け及び孔開けデバイス(5)は、引っ掛けて保持するカウリング(7)と、軸方向内部通路(49)を伴う孔開けステム(11)と、封止要素(12)と、を備えることを特徴とする、圧力補償デバイス(1)。
【請求項2】
前記コネクタ(6)の前記軸方向通路(54)を完全に開閉するための、手動手段も備えることを特徴とする、請求項1に記載の圧力補償デバイス(1)。
【請求項3】
前記コネクタ(6)は、軸方向に穴を開けられたステム(22)を備え、前記ステム(22)は、前記補償バッグ(2)から一体で突出し、かつ前記補償バッグ(2)の前記内部区画(4)と連通した管(23)の中に、強制的に入れられ、外部ネジ山端部(25)を伴う外部本体(24)は、前記ステム(22)と共に一体化で作られ、そこに、前記密閉制御弁(45)を含んだ、軸方向に穴を開けられた内部本体(26)が収容されることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧力補償デバイス(1)。
【請求項4】
前記引っ掛け及び孔開けデバイス(5)は、バイアル(16)の前記閉鎖プラグを引っ掛けてしっかりと保持するよう意図された歯状部(8)を伴うカウリング(7)、で構成された引っ掛け部分と、環状カラー(10)を伴う平坦プレート(9)から前記カウリング(7)の中に延び、かつ上に軸方向に圧縮可能な管状キャップ(12)が挿入される、軸方向穴(49)を伴う先端が尖ったステム(11)で構成された、孔開け部分と、を備え、前記キャップが、前記デバイス(5)をバイアル(16)の前記閉鎖プラグ(18)に引っ掛けたときに、前記キャップは、前記プラグ(18)自体によって軸方向に圧縮され、前記カラー(10)の中及び前記ステム(11)の周りに、保持リングを形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力補償デバイス(1)。
【請求項5】
前記引っ掛け及び孔開けデバイス(5)は、前記バイアル(16)の前記閉鎖プラグ(18)を引っ掛けるよう意図された、外周に配分された歯状領域(38)を伴うカウリング(37)、で構成された引っ掛け部分と、内側に穴を開けられた通路(40)を伴う、軸方向に穴を開けられたステム(39)で構成された、接続部分であって、前記ステム(39)は、前記補償バッグ(2)から一体で突出して前記補償バッグ(2)の前記内部空間(4)と連通した管(15)の中に、強制的に入れられる、接続部分と、を備え、前記ステム(39)も前記カウリング(37)の中に延び、かつ前記バイアル(16)の前記閉鎖プラグ(18)に孔を開けるための、軸方向に穴を開けられた先が尖った端部(41)で終端すること、を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧力補償デバイス(1)。
【請求項6】
バイアル(16)または他の減圧容器から、薬物(17)を再構成、回収、及び移動させるための装置であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の圧力補償デバイスを備えることを特徴とする、装置。
【請求項7】
アダプタ(32)の端部(31)を固定できるルアー部(29)が設けられた、薬物吸引シリンジ(27)を備え、前記アダプタ(32)は、前記コネクタ(6)の内部通路(54)を開放するために、前記補償デバイス(1)のコネクタ(6)に固定できる別の端部(34)を有することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルまたは他の減圧容器から、薬物を再構成、回収、及び移動させるための装置の、圧力補償デバイスと、このデバイスを備えた装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬分野において、多少複雑な装置が知られている。それらは、密閉プラグを伴うバイアルから、薬物を再構成、回収、及び移動させるのを可能にする。このバイアルは、後で患者に投与するために、減圧下で活性薬物物質を包含かつ保存する。活性薬物物質は、液体、ゲル、または粉末の形態である場合があり、この事例において、投与されることになる薬物を再構成するため、初めに希釈する必要がある。
【0003】
このような装置は、特に細胞毒性薬物の場合、閉鎖形式に、すなわち考えられる薬物痕跡の漏洩を排除するよう、外部環境との如何なる連通もないようにするべきである。この漏洩は、患者のために薬物療法を準備する医療従事者の健康に対して、重大な危険となる場合がある。
【0004】
このような閉鎖システムにおいて、一旦バイアルが、閉鎖プラグに孔を開ける先端部を伴う引っ掛けデバイスによって接触されたときに、システムの内部圧力を補償ための必要性が存在する。
【0005】
現在市場にある装置は、バイアルの引っ掛けデバイスにおけるフィルタによって、慣例的に圧力補償が生じる。それは、無菌の空気がバイアルの中に入ること、及び有害な薬物粒子を伴わずにバイアルから外側に出ること、を可能にする。これらのフィルタ装置は、「閉鎖システム」として分類することができない。なぜなら、特に濾過特性を損ねる液体薬物と接触した場合、たとえ少量の薬物痕跡でも、フィルタにとどめることはできないためである。
【0006】
市場における別のソリューションは、バイアルの引っ掛けデバイスに適用され、かつ引っ掛けデバイスの孔開け先端部における特定のチャネルと連通した、閉鎖アンプルを含む。
【0007】
国際公開第2020/221594号は、有害な製薬流体を移動させるための閉鎖回路装置を開示しており、それは、無菌空気が充填された内部空間を伴う円筒形ベローズと、圧縮可能かつアコーディオンのような方法で長手方向に拡張可能な、弾性材料で作られた波形の外壁と、から構成された、補償チャンバを備える。シリンジのルアー部の接続に好適な第1のコネクタは、補償チャンバの第1の端部に一体で固定される。この第1のコネクタは、軸方向の内部通路を有し、そこには第1の弁が挿入される。第1の弁は、このような内部通路の開放位置と閉鎖位置との間で、手動により可動である。バイアル、または他のタイプの有害液体の薬物容器への接続に好適な、第2のコネクタは、同様に、第1の端部の反対側にある、補償チャンバの第2の端部に一体で固定される。第2の容器は、2つの同軸の長手方向チャネルを伴うニードルと共に終端し、バイアルまたは他の薬物容器の閉鎖プラグに孔を開けるために好適である。小さい中央スリットを伴う、第2の弾性膜状弁は、補償チャンバと第2のコネクタとも間に位置付けられ、2つの両端面に作用する圧力に応じて、チャンバと第2のコネクタとの間の連通を、自動的に開閉する。
【0008】
薬物自体を包含したバイアルから、薬物用量を回収することが必要となったとき、一旦第1の弁が閉鎖されると、第2のコネクタは、薬物バイアルに引っ掛けられ、それによって2つのチャネルの孔開けニードルが、バイアルの閉鎖プラグに貫入する。頂部にバイアルと共に配置された回収デバイスと、底部に関連した第1の弁を伴う第1のコネクタと、を用いて、ベローズは軸方向に圧縮されて、ベローズの内部空間における容積の減少をもたらし、同様に補償チャンバからバイアルまで、挿置された弾性膜の、強制的に開放位置にされた中央スリットを通過し、かつ孔開けニードルにおける2つのチャネルの内一方を通過して、無菌空気の移動をもたらす。それによって、バイアルに包含された液体薬物は、孔開けニードルの他方のチャネル及び弾性膜の中央スリットを通過して、バイアルから補償チャンバまでの移動を強いられる。基本的に、バイアルから補償チャンバまでの、薬物のポンプ圧送は、場合によっては繰り返して実施される。
【0009】
それまでに成されていない場合、次にシリンジのルアー部は、第1のコネクタの端部にねじ込められ、第1の弁は開放位置まで移動される。それによって所望の薬物用量を、補償チャンバから抽出し、吸引によってシリンジまで移動させることができる。次に第1の弁は閉鎖され、薬物用量を伴うシリンジを、患者への薬物投与のために分離することができる。
【0010】
国際公開第2020/221594号に記載されたデバイスは、本発明が解決することを目的とする、いくつかの欠点を有する。これらの欠点は:
a)圧縮中における、波形壁を伴う円筒形ベローズの、不十分な取扱い;
b)不確実な用量をもたらす、回収の終了におけるシリンジのプランジャの不安定性;
c)オペレータの注意不足または不正確な操作による、補償チャンバから薬物が漏洩する可能性をもたらす、第1のコネクタの非自動閉鎖;
d)オペレータの注意不足または不正確な操作による、シリンジのルアー部からの、薬物漏洩の可能性、
である。
【0011】
欠点b)、c)、及びd)は、毒性の有害薬物の場合、危機的な影響を生じさせることは、特に明白である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、圧力補償デバイスと、圧力補償デバイスを伴う装置とを提供することであり、それらは、閉鎖モードのバイアル、すなわち粒子、蒸気、もしくはエアロゾルが漏洩する危険のないバイアル、に包含された薬物を、再構成、及び/または回収、ならびに移動させることを可能にする。その一方で、容易な操作、回収した薬物の投薬における絶対精度、及び望ましくない薬物漏洩の如何なる可能性も回避する確実性、を保証する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、この目的は、請求項1に定義された圧力補償デバイスと、請求項6に定義された、圧力補償デバイスを伴う装置と、によって実現される。
【0015】
本発明による圧力補償デバイスの、重要で有利な効果は、一旦バッグが正確な量の無菌空気で充填されると、引っ掛け及び孔開けデバイス、ならびにシリンジのルアー部におけるコネクタの封止閉鎖が、バッグの内部と外部との間における如何なる連通も遮断し、それによって、バッグからの無菌空気の漏洩と、周囲の空間の空気を伴う、無菌空気自体の汚染と、の両方を防止することである。
【0016】
最終形態で準備された液体状態の薬物を、バイアルから回収するために、引っ掛け及び孔開けデバイスは、バイアル(または孔開け可能なプラグを伴う他のタイプの容器)のプラグに接続され、シリンジのルアー部(または他の抽出手段)はコネクタに接続され、軸方向の圧力によって開放可能な密閉弁の、開放をもたらす。
【0017】
バッグ壁を側方に圧縮することによって、無菌空気量は、バイアルの内部区画の中に強制的に入れられ、それによって前述の内部区画における減圧を、完全に補償する。
【0018】
圧力補償の前または後で、薬物を回収するために、この装置は上下逆に設置される。すなわちバイアルは上に、シリンジを伴うコネクタは下にして設置される。シリンジのプランジャを後退させることによって、次に薬物の投薬量をバイアルからバッグに吸引させ、最終的にシリンジの中に入れることができる。
【0019】
一旦装置が再びひっくり返されると、シリンジをバイアルから分離して、薬物を薬物集積及び投薬バッグまで、または患者に薬物を投与するための任意の他のデバイスまで、移動させることができる。
【0020】
他方では、バイアルに包含された活性物質が、粉末またはゲルである場合、引っ掛け及び孔開けデバイスは下にあるバイアルに接続され、それによって閉鎖プラグに孔を開けて、シリンジのルアー部は、頂部からバッグのコネクタに接続される。次に圧力は、補償バッグを側方に圧縮させることによって補償され、その結果無菌空気をバイアルの中に移動させる。シリンジのプランジャを押圧することによって、適切な希釈量がバッグの中に、次にバイアルの中に導入され、活性物質と混合されて、患者に投与される薬物を再構成する。再構成後、薬物の所望の用量をシリンジから吸引することができ、コネクタからの分離後に、薬物を薬物集積及び投薬バッグに、または患者に薬物を投与するための任意の他のデバイスに、移動させる準備ができる。
【0021】
両方の場合、クランプか、または、圧力補償のためにバッグを側方に圧縮するときに、コネクタの内部通路を完全に閉鎖できる他の類似のデバイスか、を必要とする。これが無ければ、シリンジの内側におけるプランジャの当初位置を変えることになる、バッグからシリンジまでの、無菌空気の望ましくない移動と、それによって実際に回収される用量の変化と、がこのようなステップで生じる。
【0022】
薬物の取扱いが、完全に閉鎖されたシステム内で行われ、それが医療従事者の完全な安全条件を保証し、その一方でオペレータの操作を容易にして実行スピードの増加をもたらすことは、明白である。
【0023】
端部コネクタにおいて、軸方向圧力によって開放可能で、この軸方向圧力が停止した際に自動的に再密閉する密閉弁の存在を伴う、圧力のトータル補償は、シリンジの中に吸引された薬物用量の正確な投薬を保証する、ということを言及することは特に価値がある。
【0024】
一旦シリンジが離されると、吸引されなかった薬物は、薬物自体の汚染物及び有害な粒子の、如何なる漏洩の可能性もなく、バイアルまたは補償バッグに残ることも、明白である。
【0025】
補償バッグのコネクタに別個で接続可能で、かつこのバッグのコネクタに接続したときのみ内部通路を開放し、この接続の終了時に閉鎖する弁デバイス、が設けられた好適なアダプタを、シリンジのルアー部に適用することで、シリンジが集積バッグまたは投与デバイスに接続されるまで、補償バッグの端部コネクタのものと類似の密閉制御弁を伴うコネクタによって、すなわち軸方向圧力によって開放可能なコネクタによって、一旦シリンジが取り外されると、確実に薬物の漏洩が生じないようにすることも可能である。
【0026】
本発明によるデバイス及び装置の実施形態は、添付の図面の非限定例によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】バイアルに引っ掛ける前、かつシリンジに適用する前の、圧力補償デバイスの正面図である。
【
図2】
図1のII-IIラインに沿った、
図1のデバイス装置における圧力補償バッグの断面図である。
【
図3】
図1のIII-IIIラインに沿った、
図1のデバイスの長手方向断面図である。
【
図5】既に組み立てられ、かつ活性薬物物質を包含するためのバイアルに引っ掛けられた、
図4の装置を示す図である。
【
図6】
図5のVI-VIラインに沿った、
図5の装置の長手方向断面図である。
【
図7】圧力補償デバイスを、活性薬物物質を包含するためのバイアルに引っ掛けた拡大詳細の、
図6と同様の長手方向断面図である。
【
図8】引っ掛け及び孔開け動作の前の、バイアルの引っ掛け及び孔開けデバイスの詳細図である。
【
図9】引っ掛け及び孔開け動作の後の、バイアルの引っ掛け及び孔開けデバイスの詳細図である。
【
図10】引っ掛け及び孔開けデバイスの、考えられる変形の軸方向断面図である。
【
図11】ルアー部のアダプタを伴うシリンジの、圧力補償デバイスのコネクタに対する接続の拡大詳細の、
図6と同様の長手方向断面図である。
【
図12】薬物用量をバイアルから回収するときの、動作前の状況にある装置を示す図である。
【
図13】薬物用量を回収するときの、ひっくり返して配置された装置を示す図である。
【
図14】回収された薬物用量の、考えられる使用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全体的に参照番号1で表された、図面に示された圧力補償デバイスは、細長い三次元補償バッグまたはバッファ2を備え、それは、側方に圧縮可能で、かつ弾性的に撓み可能な外壁3と、無菌空気で充填された内部空間4と、を有する。バッグまたはバッファ2は、好ましくは
図2に示された断面形状を、すなわち丸みを帯びた角部を伴う矩形を有するが、バッグの形状は、三次元で、かつ2つの長い側面に適用される側方圧縮によって、バッグの内部空間における容積の変動を可能にする限り、変えることができる。
【0029】
如何なる形状であっても、補償バッグ2は、バイアルのため、または他のタイプの、軸方向圧力によって孔を開けることができる密閉プラグを伴う容器のための、引っ掛け及び孔開けデバイス5が一体で設けられた端部と、バッグ2をシリンジのルアー部または他の吸引手段に接続するための、軸方向圧力を用いて開放可能な密閉弁を伴うコネクタ6が、一体で設けられた反対側の端部と、を有する。
【0030】
図1~
図3において既に組み立てられて示された、圧力補償デバイスの3つの部分2、5、及び6を、使用者である彼自体/彼女自体が組み立てて無菌空気で充填することになる、分離した部品として使用者に提供できることに言及することは、価値がある。
【0031】
図3及び
図8に、より良好に示されるように、引っ掛け及び孔開けデバイス5は、実質的に欧州特許第3144244号明細書(EP3144244B1)に示されるタイプのものである。例として、外周に配分された歯状部8を伴うカウリング7で構成された、引っ掛け部分であって、歯状部8は、バイアル(またはファイアルもしくは他のタイプの容器)の閉鎖プラグを引っ掛けて保持するよう意図された、引っ掛け部分と、軸方向穴49を伴い先が尖ったステム11で構成された、孔開け部分であって、軸方向穴49は、環状カラー10を伴う平坦プレート9からカウリング7の中に一体で延び、かつ上に軸方向に圧縮可能な管状キャップ12が強制的に入れられて、ステム11の軸方向穴49を確実に閉鎖する、孔開け部分と、を備える。カウリング7は、環状カラー10を伴う平坦プレート9を備え、それはロッド47によって、終端リング48に接続され、終端リング48から歯状部8は突出する。同様に軸方向穴47を用いて、軸方向延長部14は、補償バッグ2から一体で突出した管15の中に強制的に入れられ、穴が開けられたステム11に対して反対方向にプレート9から延びる。
【0032】
図5~
図7、及び
図9は、引っ掛け及び孔開けデバイス5を示し、それは、活性粉末、ゲル、または液体物質17で部分的に充填された内部区画53を伴うバイアル16に適用され、減圧下に保たれ、かつ、例として欧州特許第2867132号明細書(EP2867132B1)に記載されたタイプの、軸方向圧力で孔を開けられることになるゴム製中間部分を伴う密閉プラグ18が設けられる。バイアル16は、引っ掛け及び孔開けデバイス5のカウリング7をプラグ18の周りに配置し、次に歯状部8をプラグ18の下に挿入することによって、引っ掛けられる。この引っ掛けによって、デバイス5の先が尖った軸方向ステム11によって、同時にプラグ21に孔を開ける。バイアルのプラグに孔を開けるのと同時に、管状キャップ12に軸方向に圧縮をもたらし、それが一旦後退すると、ステム9の上部分の外側かつカラー11の周りに、保持リングを作り出し、それはプラグ18のゴム部分と接触して、外部空間に向けた如何なる薬物の漏洩に対しても、デバイス5の引っ掛け部分の密閉を生じさせる。一旦引っ掛けが完了すると、歯状部8は、動かないようバイアル16を保持し、それによって如何なる解放の可能性も防止する。
【0033】
代替として、引っ掛け及び孔開けデバイス5は、
図10に示されるタイプにすることができる。すなわち、バイアルの閉鎖プラグを引っ掛けるよう意図された、外周に配置された歯状領域38、を伴うカウリング37で構成された、引っ掛け部分と、補償バッグ2から一体で突出した栓15の中に強制的に入れられる、内部に孔が開けられた通路40、を伴うステム39で構成された、接続部分と、を備えたタイプにすることができる。ステム39もカウリング37の中に延び、そこで、やはり軸方向に穴が開けられた、先が尖った端部41と共に終端する。先が尖った端部41は、バイアルの閉鎖プラグに孔を開けるよう意図される。破壊可能なネック部43を伴う閉鎖要素42は、ステム39の他方の端部において一体で接合され、ステム39の内部通路40と、栓15の内部通路との間の連通を、正常に閉鎖する機能として役立ち、ネック部43を破壊することによって閉鎖要素42を開放するのを可能にする。
【0034】
同様に
図1、
図3~
図6、及び
図11に示されるように、コネクタ6は実質的に、欧州特許第2667839号明細書(EP2667839B1)に記載されたタイプであり、例として軸方向に穴が開けられたステム22を備え、それは管23の中に強制的に入れられる。管23は、補償バッグ2から一体で突出し、かつ、このバッグの内部空間4と連通した内部通路54によって長手方向に横断される。より小さい径を有するネジ山端部25を伴う外部本体24は、やはりステム22と一体で作られ、その中に、軸方向に穴を開けられた内部本体26が収容される。軸方向に穴を開けられた内部本体26は、密閉弁45を含み、それは軸方向圧力によって開放可能であり、この軸方向圧力が停止した際に、自動的に弾性によって再閉鎖可能である。手動操作可能なクランプ44は、栓23の内部通路を一次的に閉鎖するために、栓23に適用される。
【0035】
次に
図5、
図6、及び
図10は、ネジ山付きルアー部29を伴うシリンダ28、及び摺動プランジャ30、で構成されたシリンジ27を示す。アダプタ32のネジ山端部31が、ルアー部29に接続される。アダプタ32は、コネクタ6のネジ山端部25にネジ止め可能である、別のネジ山端部34を伴う外部本体33と、一旦軸方向圧力によってネジ止めされたとき、コネクタ6の弁45を開放するために、外部本体33のネジ山端部34の外に突出する弁要素36を伴う、内部本体35と、を有する。
【0036】
閉鎖プラグ18を用いて、活性物質17をバイアル16から回収するために、圧力補償デバイス1を使用するとき、圧力補償デバイス1は、引っ掛け及び孔開けデバイス5によってバイアルに引っ掛けられ、同時にバイアルの閉鎖プラグに孔を開ける。ルアー部29に適用されたアダプタ32を伴うシリンジ27は、次に、コネクタ自体の弁45が開放するまで、同様にシリンジ27とバッグ2との間の流体通路が開放するまで、コネクタ6に接続される(
図12)。
【0037】
一旦クランプが閉鎖位置に設置されると、圧力は、バッグ2の可撓性壁における側方の圧縮によって補償され、無菌空気をバイアル16の中に導入させることができる。
【0038】
完全な圧力補償のために、初めにバッグ2に包含された空気量が、活性物質17によって占有されていないバイアルの部分の容積以上であることが、必須である。
【0039】
回収される活性物質が液体形態である場合、装置は、圧力補償の前後で逆に、すなわちバイアルを上部に、かつシリンジを伴う容器を底部にして設置される。
図13に示されるように、シリンジのプランジャを後退させることによって、投薬された薬物量をバイアルからバッグに吸引させ、最終的にシリンジの中に入れることができる。
【0040】
一旦装置が再びひっくり返されると、シリンジをバイアルから分離して、薬物を薬物集積及び投薬バッグ50まで、または患者に薬物を投与するための、任意の他のデバイス51まで、移動させることができる。移動は、アダプタ32を伴うシリンジ27を、補償及び回収デバイス1のコネクタ6よりも全体的に小さいコネクタ52に接続することによって、行われる。
【0041】
他方では、バイアルに包含された活性物質が、粉末またはゲルである場合、引っ掛け及び孔開けデバイス5は下にあるバイアルに接続され、それによって閉鎖プラグに孔を開けて、シリンジのルアー部は、頂部からバッグ2のコネクタ6に接続される。次に圧力は、バッグ2の壁を側方に圧縮させることによって補償され、結果として無菌空気をバイアルの中に移動させる。シリンジのプランジャを押圧することによって、適切な希釈量がバッグの中に、次にバイアルの中に導入され、活性物質と混合されて、患者に投与されることになる薬物を再構成する。再構成後、薬物の所望の用量をシリンジから吸引することができ、コネクタからの分離後に、薬物を薬物集積及び投薬バッグに、または患者に薬物を投薬するための任意の他のデバイスに、移動させる準備ができる。
【国際調査報告】