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特表2025-501226試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20250109BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20250109BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K45/00
C12N15/113 Z ZNA
C07K7/08
A61K38/10
A61K48/00
A61P25/28
A61P25/00
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539486
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2022143119
(87)【国際公開番号】W WO2023125744
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111635028.9
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524243871
【氏名又は名称】上海魁特迪生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー カイチェン
(72)【発明者】
【氏名】リー ヂェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウ プー
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA18
4C084CA59
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045EA21
(57)【要約】
プロトンポンプ調節剤、及び試薬の調製における前記プロトンポンプ調節剤の使用であって、前記試薬は、学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療に使用される。また、ATP6V1B2調節剤、及び学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用。
【請求項2】
認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用。
【請求項3】
神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用。
【請求項4】
前記試薬は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の転写レベル及び/又はプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを含む、
請求項4~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項4~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項4~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する低分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するプローブ及びプロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される、
請求項4~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記試薬は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、
請求項10、11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項10~12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項10~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される、
請求項10~14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記プロトンポンプ調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含む、
請求項1~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記プロトンポンプ調節剤は、小胞型プロトンポンプアゴニストを含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含む、
請求項1~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる、
請求項1~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
プロトンポンプ調節剤は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項1~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
プロトンポンプ調節剤は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項1~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記プロトンポンプ調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含む、
請求項1~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記プロトンポンプ調節剤は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる、
請求項1~22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む、
請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記プロトンポンプ調節剤は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる、
請求項1~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む、
請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項1、4~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む、
請求項1、4~27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項1、4~28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項29~30のいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
前記対象は、哺乳動物を含む、
請求項4~31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記対象は、ヒトを含む、
請求項4~32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む、
請求項4~33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む、
請求項4~34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
前記対象は、アルツハイマー病患者を含む、
請求項4~35のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
前記対象は、高齢期段階にある、
請求項4~36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む、
請求項2、4~37のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む、
請求項2、4~38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項2、4~39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む、
請求項3~40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む、
請求項3~41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項3~42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
前記試薬は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される、
請求項1~43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
前記試薬は、静脈内注射に適するように調製される、
請求項1~44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項46】
学習能力の改善におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用。
【請求項47】
認知障害の治療におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用。
【請求項48】
神経変性疾患の治療におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用。
【請求項49】
前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する、
請求項46~48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記ATP6V1B2は、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項46~49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する能力を有する、
請求項46~50のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ATP6V1B2の切断体を含む、
請求項46~51のいずれか1項に記載の使用。
【請求項53】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む、
請求項46~52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む、
請求項46~53のいずれか1項に記載の使用。
【請求項55】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号10又は11に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項46~54のいずれか1項に記載の使用。
【請求項56】
前記核酸分子は、配列番号9又は17に示されるヌクレオチド配列を含む、
請求項46~55のいずれか1項に記載の使用。
【請求項57】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項46、49~56のいずれか1項に記載の使用。
【請求項58】
前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む、
請求項46、49~57のいずれか1項に記載の使用。
【請求項59】
前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項46、49~58のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項59~60のいずれか1項に記載の使用。
【請求項62】
前記対象は、哺乳動物を含む、
請求項58~61のいずれか1項に記載の使用。
【請求項63】
前記対象は、ヒトを含む、
請求項58~62のいずれか1項に記載の使用。
【請求項64】
前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む、
請求項58~63のいずれか1項に記載の使用。
【請求項65】
前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む、
請求項58~64のいずれか1項に記載の使用。
【請求項66】
前記対象は、アルツハイマー病患者を含む、
請求項58~65のいずれか1項に記載の使用。
【請求項67】
前記対象は、高齢期段階にある、
請求項58~66のいずれか1項に記載の使用。
【請求項68】
前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む、
請求項47、49~67のいずれか1項に記載の使用。
【請求項69】
前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む、
請求項47、49~68のいずれか1項に記載の使用。
【請求項70】
前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項47、49~69のいずれか1項に記載の使用。
【請求項71】
前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む、
請求項48~70のいずれか1項に記載の使用。
【請求項72】
前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む、
請求項48~71のいずれか1項に記載の使用。
【請求項73】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項48~72のいずれか1項に記載の使用。
【請求項74】
学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用。
【請求項75】
認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用。
【請求項76】
神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用。
【請求項77】
前記試薬は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項74~76のいずれか1項に記載の使用。
【請求項78】
前記ATP6V1B2調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
請求項74~77のいずれか1項に記載の使用。
【請求項79】
前記発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、
請求項74~78のいずれか1項に記載の使用。
【請求項80】
前記活性の向上は、プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させることを含む、
請求項77~79のいずれか1項に記載の使用。
【請求項81】
前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項77~80のいずれか1項に記載の使用。
【請求項82】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項77~81のいずれか1項に記載の使用。
【請求項83】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される、
請求項77~82のいずれか1項に記載の使用。
【請求項84】
ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含む、
請求項74~83のいずれか1項に記載の使用。
【請求項85】
ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる、
請求項74~84のいずれか1項に記載の使用。
【請求項86】
ATP6V1B2調節剤は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項74~85のいずれか1項に記載の使用。
【請求項87】
ATP6V1B2調節剤は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項74~86のいずれか1項に記載の使用。
【請求項88】
前記ATP6V1B2調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含む、
請求項74~87のいずれか1項に記載の使用。
【請求項89】
前記ATP6V1B2調節剤は、小胞型プロトンポンプアゴニストを含む、
請求項74~88のいずれか1項に記載の使用。
【請求項90】
前記ATP6V1B2調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含む、
請求項74~89のいずれか1項に記載の使用。
【請求項91】
前記ATP6V1B2調節剤は、ポリペプチド又はその変異体を含む、
請求項74~90のいずれか1項に記載の使用。
【請求項92】
前記ポリペプチド又はその変異体特異性は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる、
請求項91に記載の使用。
【請求項93】
前記ポリペプチド又はその変異体は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる、
請求項91~92のいずれか1項に記載の使用。
【請求項94】
前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む、
請求項93に記載の使用。
【請求項95】
前記ポリペプチド又はその変異体は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる、
請求項91~94のいずれか1項に記載の使用。
【請求項96】
前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
請求項95に記載の使用。
【請求項97】
前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項91~96のいずれか1項に記載の使用。
【請求項98】
前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項91~97のいずれか1項に記載の使用。
【請求項99】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項74、77~98のいずれか1項に記載の使用。
【請求項100】
前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む、
請求項74、77~99のいずれか1項に記載の使用。
【請求項101】
前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項74、77~100のいずれか1項に記載の使用。
【請求項102】
前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項101に記載の使用。
【請求項103】
前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する、
請求項101又は102のいずれか1項に記載の使用。
【請求項104】
前記対象は、哺乳動物を含む、
請求項77~103のいずれか1項に記載の使用。
【請求項105】
前記対象は、ヒトを含む、
請求項77~104のいずれか1項に記載の使用。
【請求項106】
前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む、
請求項77~105のいずれか1項に記載の使用。
【請求項107】
前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む、
請求項77~106のいずれか1項に記載の使用。
【請求項108】
前記対象は、アルツハイマー病患者を含む、
請求項77~107のいずれか1項に記載の使用。
【請求項109】
前記対象は、高齢期段階にある、
請求項77~108のいずれか1項に記載の使用。
【請求項110】
前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む、
請求項75、77~109のいずれか1項に記載の使用。
【請求項111】
前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む、
請求項75、77~110のいずれか1項に記載の使用。
【請求項112】
前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項75、77~111のいずれか1項に記載の使用。
【請求項113】
前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む、
請求項76~112のいずれか1項に記載の使用。
【請求項114】
前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む、
請求項76~113のいずれか1項に記載の使用。
【請求項115】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項76~114のいずれか1項に記載の使用。
【請求項116】
前記試薬は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される、
請求項74~115のいずれか1項に記載の使用。
【請求項117】
前記試薬は、静脈内注射に適するように調製される、
請求項74~116のいずれか1項に記載の使用。
【請求項118】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、
対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法。
【請求項119】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、
対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法。
【請求項120】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の転写レベル及び/又はプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを含む、
請求項118に記載の方法。
【請求項121】
前記向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項118又は120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項118、120~121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する低分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するプローブ及びプロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される、
請求項118、120~121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、
請求項119~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項119~124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される、
請求項119~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される、
請求項119~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項118~127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記投与は、経口及び/又は注射を含む、
請求項118~128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
前記投与は、静脈内注射を含む、
請求項118~129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を調節することができるポリペプチド又はその変異体。
【請求項132】
シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる、
請求項131に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項133】
前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む、
請求項132に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項134】
興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させる、
請求項131~133のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項135】
前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む、
請求項134に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項136】
ATP6V1B2タンパク質に結合することができる、
請求項131~135のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項137】
対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる、
請求項131~136のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項138】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、
請求項137に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項139】
前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項137又は138のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項140】
マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項131~139のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項141】
ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、
請求項131~140のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項142】
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項131~141のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項143】
配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項131~142のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項144】
多量体を含む、
請求項131~143のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項145】
前記多量体は、ホモ二量体を含む、
請求項144に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項146】
アミノ酸配列におけるシステインにスルフヒドリルブロッキング修飾がない、
請求項131~145のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項147】
アミノ酸配列におけるセリンにリン酸化修飾がない、
請求項131~146のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項148】
請求項131~147のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体を含む、
薬物の組み合わせ。
【請求項149】
請求項131~147のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体及び薬学的に許容される担体を含む、
医薬組成物。
【請求項150】
試薬の調製における請求項131~147のいずれか1項に記載のポリペプチド又はその変異体、請求項148に記載の薬物の組み合わせ及び/又は請求項149に記載の医薬組成物の使用であって、
前記試薬は、学習能力の改善、認知障害の治療及び/又は神経変性疾患の治療に使用される、使用。
【請求項151】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項150に記載の使用。
【請求項152】
前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む、
請求項150~151のいずれか1項に記載の使用。
【請求項153】
前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む、
請求項150~152のいずれか1項に記載の使用。
【請求項154】
前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項150~153のいずれか1項に記載の使用。
【請求項155】
前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む、
請求項150~154のいずれか1項に記載の使用。
【請求項156】
前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む、
請求項150~155のいずれか1項に記載の使用。
【請求項157】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項150~156のいずれか1項に記載の使用。
【請求項158】
前記ポリペプチド、前記薬物の組み合わせ及び/又は前記医薬組成物は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される、
請求項150~157のいずれか1項に記載の使用。
【請求項159】
前記ポリペプチド、前記薬物の組み合わせ及び/又は前記医薬組成物は、静脈内注射に適するように調製される、
請求項150~158のいずれか1項に記載の使用。
【請求項160】
ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、
非ヒト動物又はその一部。
【請求項161】
前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する、
請求項160に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項162】
前記ATP6V1B2は、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項160~161のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項163】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する能力を有する。
請求項160~162のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項164】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ATP6V1B2の切断体を含む、
請求項160~163のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項165】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む、
請求項160~164のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項166】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む、
請求項160~165のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項167】
前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号10又は11に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項160~166のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項168】
前記核酸分子は、配列番号9又は17に示されるヌクレオチド配列を含む、
請求項160~167のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項169】
前記非ヒト動物は、遺伝子編集された非ヒト動物であるか、又は遺伝子編集された非ヒト動物に由来する、
請求項160~168のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項170】
前記非ヒト動物は、遺伝子ノックイン非ヒト動物であるか、又は遺伝子ノックイン非ヒト動物に由来する、
請求項160~169のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項171】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記非ヒト動物ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される、
請求項160~170のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項172】
前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である、
請求項160~171のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項173】
前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる、
請求項160~172のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項174】
前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である、
請求項160~173のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項175】
前記一部は、前記非ヒト動物の器官、組織及び/又は細胞を含む、
請求項160~174のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項176】
前記一部は、体液を含む、
請求項160~175のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項177】
前記体液は、血液、血漿、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び脳脊髄液からなる群より選ばれる、
請求項176に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項178】
前記一部は、脳又はその一部を含む、
請求項160~177のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項179】
前記一部は、完全な非ヒト動物に発育することができない、
請求項160~178のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部。
【請求項180】
ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、
単離された細胞。
【請求項181】
前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する、
請求項180に記載の細胞。
【請求項182】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項180~181のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項183】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする遺伝子は、ホモ接合性又はヘテロ接合性である、
請求項180~182のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項184】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸分子は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む、
請求項180~183のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項185】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記細胞ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される、
請求項180~184のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項186】
非ヒト動物細胞である、
請求項180~185のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項187】
前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である、
請求項186に記載の細胞。
【請求項188】
前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる、
請求項180~187のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項189】
前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である、
請求項180~188のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項190】
完全な非ヒト動物に発育することができない、
請求項180~189のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項191】
ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、
組織。
【請求項192】
前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する、
請求項191に記載の組織。
【請求項193】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項191~192のいずれか1項に記載の組織。
【請求項194】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする遺伝子は、ホモ接合性又はヘテロ接合性である、
請求項191~193のいずれか1項に記載の組織。
【請求項195】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸分子は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む、
請求項191~194のいずれか1項に記載の組織。
【請求項196】
遺伝子編集された組織であるか、又は遺伝子編集された組織に由来する、
請求項191~195のいずれか1項に記載の組織。
【請求項197】
遺伝子ノックイン組織であるか、又は遺伝子ノックイン組織に由来する、
請求項191~196のいずれか1項に記載の組織。
【請求項198】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記組織ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される、
請求項191~197のいずれか1項に記載の組織。
【請求項199】
非ヒト動物の組織である、
請求項191~198のいずれか1項に記載の組織。
【請求項200】
前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である、
請求項199に記載の組織。
【請求項201】
前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる、
請求項191~200のいずれか1項に記載の組織。
【請求項202】
前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である、
請求項191~201のいずれか1項に記載の組織。
【請求項203】
体液を含む、
請求項191~202のいずれか1項に記載の組織。
【請求項204】
前記体液は、血液、血漿、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び脳脊髄液からなる群より選ばれる、
請求項203に記載の組織。
【請求項205】
脳又はその一部を含む、
請求項191~204のいずれか1項に記載の組織。
【請求項206】
完全な非ヒト動物に発育することができない、
請求項191~205のいずれか1項に記載の組織。
【請求項207】
細胞株又は細胞培養物であって、
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部に由来し、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞に由来し、及び/又は請求項191~206のいずれか1項に記載の組織に由来する、
細胞株又は細胞培養物。
【請求項208】
前記細胞培養物は、初代細胞培養物である、
請求項207に記載の細胞株又は細胞培養物。
【請求項209】
前記細胞培養物は、オルガノイドを含む、
請求項207~208のいずれか1項に記載の細胞株又は細胞培養物。
【請求項210】
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物を含む、
組成物。
【請求項211】
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物と、分析用緩衝液、対照物、基質、標準品、検出材料、実験室用品、設備、機器、細胞、器官、組織及びユーザーマニュアル又は説明書からなる群より選ばれる1つ又は複数の追加の成分と、を含む、
試薬キット。
【請求項212】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物に候補薬物を投与ことと、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える前記候補薬物の影響を測定することと、を含む、方法。
【請求項213】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、
(i)請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物に候補薬物を投与することと、(ii)対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える前記候補薬物の影響を測定することと、(iii)前記候補薬物を投与した後、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にすることと、を含む、方法。
【請求項214】
前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、
請求項212~213のいずれか1項に記載の方法。
【請求項215】
前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む、
請求項212~214のいずれか1項に記載の方法。
【請求項216】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む、
請求項212~215のいずれか1項に記載の方法。
【請求項217】
前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む、
請求項212~216のいずれか1項に記載の方法。
【請求項218】
前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む、
請求項212~217のいずれか1項に記載の方法。
【請求項219】
前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項212~218のいずれか1項に記載の方法。
【請求項220】
前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む、
請求項212~219のいずれか1項に記載の方法。
【請求項221】
前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む、
請求項212~220のいずれか1項に記載の方法。
【請求項222】
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項212~221のいずれか1項に記載の方法。
【請求項223】
同定及び/又はスクリーニングシステムの製造における、請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物の使用であって、
前記システムは、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物及び/又はバイオマーカーのスクリーニングに使用される、使用。
【請求項224】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物及び/又はバイオマーカーのスクリーニングに使用される、
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織、及び/又は請求項207~209のいずれか1項に記載の細胞株又は初代細胞培養物。
【請求項225】
請求項160~179のいずれか1項に記載の非ヒト動物又はその一部、請求項180~190のいずれか1項に記載の細胞、請求項191~206のいずれか1項に記載の組織を調製する方法であって、
非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法。
【請求項226】
疾患モデルを作製する方法であって、
非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法。
【請求項227】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項225~226のいずれか1項に記載の方法。
【請求項228】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸配列をトランスフェクトすることを含む、
請求項225~227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項229】
前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸配列は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む、
請求項228に記載の方法。
【請求項230】
前記トランスフェクトは、前記核酸配列を含むアデノ随伴ウイルスをトランスフェクトすることを含む、
請求項228又は229のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生物医薬分野に関し、具体的には、試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、一般にシナプス及びニューロン損傷、神経回路の構造及び機能の異常によって引き起こされる。現在、シナプス及びニューロン損傷のメカニズムがまだ不明であるため、ADの効果的な予防・治療方法の進展が非常に遅い。
【0003】
ATP6V1B2遺伝子によってコードされるATP6V1B2タンパク質は、ATP加水分解によって駆動されるプロトンポンプの重要な構造タンパク質である。それは、ヒト組織において広く分布されているが、脳組織、腎臓、破骨細胞などの部分での分布がより豊富である。それは、シナプス伝達及びリソソームの酸性化などのプロセスにおいて重要な機能を果たす。その遺伝子変異は、DOORS症候群(爪形成不全を伴う感受性常染色体優性先天性難聴症候群)を引き起こす可能性がある。ATP6V1B2タンパク質発現の低下は、ADの発症に関連する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本願は、対象の学習能力を改善する方法を提供し、本願は、ATP6V1B2が対象の学習能力を改善する潜在的な標的であることを見出すことで、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上することができる試薬及び/又は対象の学習能力を改善する潜在的な薬物として使用可能なプロトンポンプ調節剤を更に見出す。
【0005】
一態様において、本願は、学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0006】
別の態様において、本願は、認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0007】
別の態様において、本願は、神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の転写レベル及び/又はプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する低分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するプローブ及びプロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、小胞型プロトンポンプアゴニストを含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ調節剤は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0034】
幾つかの実施形態において、前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0035】
幾つかの実施形態において、前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0036】
幾つかの実施形態において、前記対象は、哺乳動物を含む。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記対象は、ヒトを含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、前記対象は、アルツハイマー病患者を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、前記対象は、高齢期段階にある。
【0042】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む。
【0045】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される。
【0049】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、静脈内注射に適するように調製される。
【0050】
別の態様において、本願は、学習能力の改善におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用を提供する。
【0051】
別の態様において、本願は、認知障害の治療におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用を提供する。
【0052】
別の態様において、本願は、神経変性疾患の治療におけるATP6V1B2、その機能活性断片又はそれらをコードする核酸分子の使用を提供する。
【0053】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する。
【0054】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0055】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する能力を有する。
【0056】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ATP6V1B2の切断体を含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む。
【0058】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む。
【0059】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号10又は11に示されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、前記核酸分子は、配列番号9又は17に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0061】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0062】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む。
【0063】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0064】
幾つかの実施形態において、前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0065】
幾つかの実施形態において、前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0066】
幾つかの実施形態において、前記対象は、哺乳動物を含む。
【0067】
幾つかの実施形態において、前記対象は、ヒトを含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む。
【0069】
幾つかの実施形態において、前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む。
【0070】
幾つかの実施形態において、前記対象は、アルツハイマー病患者を含む。
【0071】
幾つかの実施形態において、前記対象は、高齢期段階にある。
【0072】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む。
【0074】
幾つかの実施形態において、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む。
【0078】
別の態様において、本願は、学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0079】
別の態様において、本願は、認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0080】
別の態様において、本願は、神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0081】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0082】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる。
【0083】
幾つかの実施形態において、前記発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む。
【0084】
幾つかの実施形態において、前記活性の向上は、プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させることを含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0086】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0087】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される。
【0088】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含む。
【0089】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0091】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0092】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含む。
【0093】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、小胞型プロトンポンプアゴニストを含む。
【0094】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含む。
【0095】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2調節剤は、ポリペプチド又はその変異体を含む。
【0096】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体特異性は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。
【0097】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。
【0098】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0099】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。
【0100】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0101】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0102】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含む。
【0105】
幾つかの実施形態において、前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0106】
幾つかの実施形態において、前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0107】
幾つかの実施形態において、前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価する。
【0108】
幾つかの実施形態において、前記対象は、哺乳動物を含む。
【0109】
幾つかの実施形態において、前記対象は、ヒトを含む。
【0110】
幾つかの実施形態において、前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含む。
【0111】
幾つかの実施形態において、前記対象は、神経変性疾患患者及び/又は認知障害患者を含む。
【0112】
幾つかの実施形態において、前記対象は、アルツハイマー病患者を含む。
【0113】
幾つかの実施形態において、前記対象は、高齢期段階にある。
【0114】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む。
【0115】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む。
【0116】
幾つかの実施形態において、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む。
【0117】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む。
【0118】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む。
【0119】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む。
【0120】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される。
【0121】
幾つかの実施形態において、前記試薬は、静脈内注射に適するように調製される。
【0122】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法を提供する。
【0123】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法を提供する。
【0124】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の転写レベル及び/又はプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを含む。
【0125】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0126】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0127】
幾つかの実施形態において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する低分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するプローブ及びプロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される。
【0128】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む。
【0129】
幾つかの実施形態において、ここで、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0130】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、qPCR、qRT-PCR、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色及び質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定される。
【0131】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定される。
【0132】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0133】
幾つかの実施形態において、前記投与は、経口及び/又は注射を含む。
【0134】
幾つかの実施形態において、前記投与は、静脈内注射を含む。
【0135】
別の態様において、本願は、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を調節することができるポリペプチド又はその変異体を提供する。
【0136】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。
【0137】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0138】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。
【0139】
幾つかの実施形態において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加することを含む。
【0140】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。
【0141】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0142】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む。
【0143】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0144】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0145】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。
【0147】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列を含む。
【0148】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体多量体を含む。
【0149】
幾つかの実施形態において、前記多量体ホモ二量体を含む。
【0150】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体のアミノ酸配列におけるシステインにスルフヒドリルブロッキング修飾がない。
【0151】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド又はその変異体のアミノ酸配列におけるセリンにリン酸化修飾がない。
【0152】
別の態様において、本願は、本願に記載の試薬を含む及び/又は本願に記載のポリペプチド又はその変異体を含む、薬物の組み合わせを提供する。
【0153】
別の態様において、本願は、本願に記載の試薬を含む及び/又は本願に記載のポリペプチド又はその変異体及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0154】
別の態様において、本願は、試薬の調製における本願に記載のポリペプチド又はその変異体、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物の使用であって、前記試薬は、学習能力の改善、認知障害の治療及び/又は神経変性疾患の治療に使用される、使用を提供する。
【0155】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0156】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む。
【0157】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む。
【0158】
幾つかの実施形態において、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む。
【0159】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む。
【0160】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む。
【0161】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む。
【0162】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド、前記薬物の組み合わせ及び/又は前記医薬組成物は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製される。
【0163】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド、前記薬物の組み合わせ及び/又は前記医薬組成物は、静脈内注射に適するように調製される。
【0164】
別の態様において、本願は、ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、非ヒト動物又はその一部を提供する。
【0165】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する。
【0166】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する能力を有する。
【0168】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ATP6V1B2の切断体を含む。
【0169】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む。
【0170】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含む。
【0171】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の機能活性断片は、配列番号10又は11に示されるアミノ酸配列を含む。
【0172】
幾つかの実施形態において、前記核酸分子は、配列番号9又は17に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0173】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、遺伝子編集された非ヒト動物、又は遺伝子編集された非ヒト動物に由来する。
【0174】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、遺伝子ノックイン非ヒト動物、又は遺伝子ノックイン非ヒト動物に由来する。
【0175】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記非ヒト動物ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される。
【0176】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である。
【0177】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる。
【0178】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である。
【0179】
幾つかの実施形態において、前記一部は、前記非ヒト動物の器官、組織及び/又は細胞を含む。
【0180】
幾つかの実施形態において、前記一部は、体液を含む。
【0181】
幾つかの実施形態において、前記体液は、血液、血漿、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び脳脊髄液からなる群より選ばれる。
【0182】
幾つかの実施形態において、前記血漿は、エクソソームを含む。
【0183】
幾つかの実施形態において、前記一部は、脳又はその一部を含む。
【0184】
幾つかの実施形態において、前記脳の一部が含まれる脳の一部は、嗅球、扁桃体、基底神経節、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄及び小脳からなる群より選ばれる。
【0185】
幾つかの実施形態において、前記一部は、嗅粘膜を含む。
【0186】
幾つかの実施形態において、前記一部は、中枢神経系の一部、末梢神経系の一部、皮膚組織、筋肉組織及び/又は内臓器官を含む。
【0187】
幾つかの実施形態において、前記中枢神経系は、脊髄を含む。
【0188】
幾つかの実施形態において、前記一部は、細胞を含み、且つ前記細胞は、初代ニューロン、小型グリア細胞、星状グリア細胞、稀突グリア細胞、マクロファージ、血管周囲類上皮細胞、B細胞、T細胞、成体幹細胞、NK細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、誘導性多能性幹細胞及び配偶子からなる群より選ばれる細胞を含む。
【0189】
幾つかの実施形態において、前記配偶子は、精子及び/又は卵母細胞を含む。
【0190】
幾つかの実施形態において、前記一部は、完全な非ヒト動物に発育することができない。
【0191】
幾つかの実施形態において、子孫は、前記非ヒト動物を別の非ヒト動物とハイブリダイゼーションすることによって得られ、ここで、前記別の非ヒト動物は、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を発現してもよく、発現しなくてもよい。
【0192】
幾つかの実施形態において、前記子孫又はその一部は、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を含む及び/又は発現する。
【0193】
別の態様において、本願は、ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、単離された細胞を提供する。
【0194】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する。
【0195】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0196】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする遺伝子は、ホモ接合性又はヘテロ接合性である。
【0197】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸分子は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む。
【0198】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記細胞ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される。
【0199】
幾つかの実施形態において、前記的細胞は、非ヒト動物細胞である。
【0200】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である。
【0201】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる。
【0202】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である。
【0203】
幾つかの実施形態において、前記細胞は、神経芽細胞腫細胞、脳神経膠腫細胞、初代ニューロン、小型グリア細胞、星状グリア細胞、稀突グリア細胞、マクロファージ、血管周囲類上皮細胞、B細胞、T細胞、成体幹細胞、NK細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、誘導性多能性幹細胞及び配偶子からなる群より選ばれる細胞を含む。
【0204】
幾つかの実施形態において、前記配偶子は、精子及び/又は卵母細胞を含む。
【0205】
幾つかの実施形態において、前記細胞は、完全な非ヒト動物に発育することができない。
【0206】
別の態様において、本願は、ATP6V1B2、その機能活性断片及び/又はそれらをコードする核酸分子を含む及び/又は発現する、組織を提供する。
【0207】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2は、ヒトに由来する。
【0208】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0209】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする遺伝子は、ホモ接合性又はヘテロ接合性である。
【0210】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸分子は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む。
【0211】
幾つかの実施形態において、前記組織は、遺伝子編集された組織であるか、又は遺伝子編集された組織に由来する。
【0212】
幾つかの実施形態において、前記組織は、遺伝子ノックイン組織であるか、又は遺伝子ノックイン組織に由来する。
【0213】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片の発現は、前記組織ゲノムにおける対応する内因性調節要素によって調節される。
【0214】
幾つかの実施形態において、前記組織は、非ヒト動物の組織である。
【0215】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物である。
【0216】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる。
【0217】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である。
【0218】
幾つかの実施形態において、前記組織は、体液を含む。
【0219】
幾つかの実施形態において、前記体液は、血液、血漿、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び脳脊髄液からなる群より選ばれる。
【0220】
幾つかの実施形態において、前記血漿は、エクソソームを含む。
【0221】
幾つかの実施形態において、前記組織は、脳又はその一部を含む。
【0222】
幾つかの実施形態において、前記脳の一部が含まれる脳の一部は、嗅球、扁桃体、基底神経節、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄及び小脳からなる群より選ばれる。
【0223】
幾つかの実施形態において、前記組織は、嗅粘膜を含む。
【0224】
幾つかの実施形態において、前記組織は、中枢神経系の一部、末梢神経系の一部、皮膚組織、筋肉組織及び/又は内臓器官を含む。
【0225】
幾つかの実施形態において、前記中枢神経系は、脊髄を含む。
【0226】
幾つかの実施形態において、前記組織は、完全な非ヒト動物に発育することができない。
【0227】
別の態様において、本願は、本願に記載の非ヒト動物又はその一部に由来し、本願に記載の子孫に由来し、本願に記載の細胞に由来し、及び/又は本願に記載の組織に由来する、細胞株又は細胞培養物を提供する。
【0228】
幾つかの実施形態において、前記細胞培養物は、初代細胞培養物である。
【0229】
幾つかの実施形態において、前記細胞培養物は、オルガノイドを含む。
【0230】
別の態様において、本願は、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物を含む、組成物を提供する。
【0231】
別の態様において、本願は、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物と、分析用緩衝液、対照物、基質、標準品、検出材料、実験室用品、設備、機器、細胞、器官、組織及びユーザーマニュアル又は説明書からなる群より選ばれる1つ又は複数の追加の成分と、を含む、試薬キットを提供する。
【0232】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物に候補薬物を投与することと、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える前記候補薬物の影響を測定することと、を含む、方法を提供する。
【0233】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、(i)本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物に候補薬物を投与することと、(ii)対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える前記候補薬物の影響を測定することと、(iii)前記候補薬物を投与した後、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にすることと、を含む、方法を提供する。
【0234】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む。
【0235】
幾つかの実施形態において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上することを含む。
【0236】
幾つかの実施形態において、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含む。
【0237】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含む。
【0238】
幾つかの実施形態において、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含む。
【0239】
幾つかの実施形態において、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む。
【0240】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含む。
【0241】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含む。
【0242】
幾つかの実施形態において、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はハンチントン病(HD)を含む。
【0243】
別の態様において、本願は、同定及び/又はスクリーニングシステムの製造における、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物の使用であって、前記システムは、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物及び/又はバイオマーカーのスクリーニングに使用される、使用を提供する。
【0244】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物及び/又はバイオマーカーのスクリーニングに使用される、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の子孫、本願に記載の細胞、本願に記載の組織、及び/又は本願に記載の細胞株又は初代細胞培養物を提供する。
【0245】
別の態様において、本願は、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の細胞或いは本願に記載の組織を調製する方法であって、非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法を提供する。
【0246】
別の態様において、本願は、疾患モデルを作製する方法であって、非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法を提供する。
【0247】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0248】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸配列をトランスフェクトすることを含む。
【0249】
幾つかの実施形態において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能活性断片をコードする核酸配列は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含む。
【0250】
幾つかの実施形態において、前記トランスフェクトは、前記核酸配列を含むアデノ随伴ウイルスをトランスフェクトすることを含む。
【0251】
当業者であれば、以下の詳細な説明から本願の他の態様及び利点を容易に洞察することができる。以下の詳細な説明は、本願の例示的な実施形態のみが示され、説明される。当業者が理解されるように、本願の内容により、当業者は、本願がカバーする発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態に変更を加えることができる。対応的には、本願の図面及び明細書における説明は、例示的なのもにすぎず、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0252】
本願にかかる発明の具体的な特徴は、添付される特許請求の範囲に示される。以下に詳細に説明される例示的な実施形態及び図面を参照することで、本願にかかる発明の特徴及び利点をより良く理解することができる。図面に対する簡単な説明は以下の通りである。
図1a-1i】興奮性シナプス伝達に与える本願に記載のポリペプチドの影響を示す。
図2】本願に記載のポリペプチドは、強制経口投与によってADマウス新しい物体識別試験における認知行動を改善できることを示す。
図3】本願に記載のポリペプチドは、強制経口投与によってADマウス水迷路試験における学習能力を改善できることを示す。
図4】本願に記載のポリペプチドは、静脈内投与によってADマウス新しい物体識別試験における認知行動を改善できることを示す。
図5】本願に記載のポリペプチドは、静脈内投与によってADマウス水迷路試験における学習能力を改善できることを示す。
図6a-6b】本願に記載のポリペプチドとATP6V1B2タンパク質との免疫共沈降結果を示す。
図7a-7e】高齢動物海馬でのATP6V1B2タンパク質の過剰発現は、学習記憶機能を改善できることを示す。
図8】興奮性シナプス伝達に与える本願に記載のポリペプチドの二量体の影響を示す。
図9】興奮性シナプス伝達に与える本願に記載のシステイン修飾ポリペプチドの影響を示す。
図10】興奮性シナプス伝達に与える本願に記載のセリン修飾ポリペプチドの影響を示す。
図11】本願に記載のポリペプチドとATP6V1B2タンパク質又はその切断された断片との免疫共沈降結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0253】
以下、特定の具体的な実施例により、本願の発明の実施形態を説明し、当業者であれば、本明細書に開示された内容から本願の発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0254】
用語の定義
「ATP6V1B2」という用語は通常、ATP酵素H輸送V1サブユニットB2(ATPase H+transporting V1 subunit B2)タンパク質(又はATP6B2、DOOD、HO57、VATB、VPP3、Vma2又はZLS2とも呼ばれる)、及び当該タンパク質をコードする遺伝子を指す。前記ATP6V1B2は、真核細胞内の細胞小器官の酸性化を媒介するマルチサブユニット酵素であってもよい。前記ATP6V1B2は、タンパク質選別、チモーゲン活性化、受容体媒介性エンドサイトーシス及びシナプス小胞プロトン勾配生成などのプロセスに関与することができる。前記ATP6V1B2タンパク質は、細胞質V1ドメイン及び膜貫通V0ドメインを含むことができる。GenBankにおけるヒトATP6V1B2の登録番号は526である。UniProtにおけるヒトATP6V1B2の登録番号はP21281であってもよい。
【0255】
「発現レベル」という用語は通常、特定の関連する遺伝子のタンパク質、RNA又はmRNAレベルを指す。当該分野で既知の任意の方法を用いて、関連する遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2遺伝子)の発現レベルを測定することができる。本願において、前記「発現」は通常、遺伝子によってコードされた情報を、細胞内に存在すると共に、細胞内で機能する構造に変換するプロセスを指す。例えばは、逆転写及び増幅分析(例えばPCR、RT-PCR連結又はRT-PCT定量)、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法(Northern blotting)、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色又は質量分析を含むことができる。生体サンプル又はサンプル中から単離されたタンパク質/核酸に対して直接分析することができる。
【0256】
「活性」という用語は通常、特定のタンパク質に関連する任意の活性を指す。本願において、前記活性は、例えばATP6V1B2タンパク質に関連する任意の活性を含むことができる。前記活性は、プロテアーゼに関連する酵素活性を含むことができる。幾つかの場合において、前記活性は、生物学的活性を含むことができる。幾つかの場合において、前記活性は、タンパク質と受容体との結合を含むことができ、例えば、当該結合は測定可能な下流エフェクターを生じる可能性がある。本願において、前記活性は、当業者によって当該タンパク質に起因する任意の活性を含むことができる。
【0257】
「プロトンポンプ調節剤」という用語は通常、プロトンポンプ活性及び/又は機能を調整することができる試薬を指す。
【0258】
「プロトンポンプアゴニスト」という用語は通常、プロトンポンプを活性化する試薬を指す。例えば、前記プロトンポンプアゴニストは、水素イオンポンプの活性を向上させることができる。
【0259】
「小胞型プロトンポンプアゴニスト」という用語は通常、小胞型プロトンポンプの活性作用を向上させることができる試薬を指す。小胞型又は液胞アデノシントリホスファターゼ(V-ATPase)は、ATPによって駆動されるプロトンポンプであり、ATP加水分解に使用されるサイトゾルV1複合体及びプロトン移動に使用される膜包埋Vo複合体で構成される。前記小胞型プロトンポンプは、真核生物細胞内の小胞、細胞小器官及び細胞外環境の酸性化において重要な役割を果たすことができる。
【0260】
「プロトンポンプ関連タンパク質」という用語は通常、プロトンポンプをコード及び/又は発現する関連タンパク質を指す。前記プロトンポンプは、生物膜における逆膜の両側の水素イオンの電気化学的電位差によって水素イオンを能動的に輸送するタンパク質であってもよい。前記プロトンポンプは、Na-Kポンプ、Ca2+ポンプ、H-ATPポンプ及びHピロリン酸ポンプを含むことができる。
【0261】
「学習能力」という用語は通常、学習/認知プロセスに関連するか、又は必要なあらゆる能力を指す。前記学習能力は、経験、学習又はトレーニングなどを含むプロセスによって新しい情報、知識及び/又はスキルを獲得する能力を含むことができる。前記学習能力は、想象力、注意力、知覚観察能力、読解能力、分析能力、操作能力、適応能力、要約能力、問題解決能力又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0262】
「認知能力」という用語は通常、知覚を通じて情報を処理する能力を指す。前記認知能力は、物事の構成、性能と他の物事との関係、発展の動機、発展の方向及び基本的な法則を把握する能力を含むことができる。
【0263】
「運動能力」という用語は通常、運動及びトレーニングに参加するために備えた能力を指す。前記運動能力は、有酸素運動能力、筋肉力量、身体的柔軟性、平衡能力及び反応能力を含むことができる。前記運動能力は、体型、資質、技術、スキル及び精神的能力などの様々な要素の総合的な表現であってもよい。
【0264】
「記憶能力」という用語は通常、客観的な物事に反映された内容や経験を記憶し、維持し、再理解し、再現する能力を指す。前記記憶能力は、感覚記憶能力、短期記憶能力及び長期記憶能力を含むことができる。
【0265】
「空間探索能力」という用語は通常、物体の形状及び/又は位置を探索する能力を指す。前記空間探索能力は、物体の形状及び/又は位置を観察し、思考し、想象し、認識及び/又は探索することを指す。
【0266】
「学習能力の評価点数」という用語は通常、対象の学習能力の定量的な評価点数を指す。前記学習能力の評価点数は、注意/実行機能の評価(例えば、ウェクスラー記憶テスト)、言語能力評価(例えば、言語スクリーニングテスト(the language screening test、LAST))、視空間及び構造能力の評価(例えば、視覚運動統合テスト、Hooper視覚組織テスト、物体組立テスト、図形配置テスト、時計描画テスト)、運用能力の評価、日常機能の評価(例えば、認知症障害の評価(disability assessment for dementia、DAD))及び/又は神経心理学的スケールから得られた点数によって得ることができる。幾つかの場合において、前記学習能力の評価点数は、簡単な精神状態検査(mini-mental state examination、MMSE)、モントリオール認知評価スケール(Montreal cognitive assessment、MoCA)、アルツハイマー病評価スケール-認知部分(Alzheimer disease assessment scale-cog、ADAS-cog)及び臨床認知症評価スケール(clinical dementia rating scale、CDR)の検出から得られた点数によって得ることができる。
【0267】
「新規物体認知試験」という用語は通常、動物(例えば、マウス)に特定の空間内の物体を識別させることによって、動物が新しい物体の識別を学習するのにかかる時間を検出する試験を指す。幾つかの場合において、前記新規物体認知試験は、Ennaceurら、Behav Brain Res 80 9~25、1996に記載された試験方法を参照することができる。例えば、前記新規物体認知試験は、2つの同じ物体を一定容量の容器に入れ、マウスを当該容器に入れてこの2つの物体を識別し、翌日、同一容器内の2つの物体のうちの1つを、形状の異なる新しい物体で置き換えるステップと、次に、マウスが新しい物体を探す時間を測定するステップと、を含むことができる。
【0268】
「水迷路試験」という用語は通常、動物(例えば、マウス)を強制的に泳がせることによって、水中に隠されたプラットフォームを見つける方法を学習する試験を指す。前記水迷路試験(例えば、Morris水迷路)は、マウスの空間位置感覚及び方向感覚に関する学習能力及び/又は記憶能力を試験することができる。前記水迷路試験は、後天性トレーニング、探索トレーニング、対位トレーニング又は対位探索トレーニングを含むこともできる。動物(例えば、マウス)が水中に入ってからプラットフォームを見つけるまでにかかる時間が短く、この間に移動する距離が短いほど、動物(例えば、マウス)の学習能力の評価点数は対応的に高い。水迷路評価試験は、学習能力を評価する重要な実験であってもよい。
【0269】
「神経変性疾患」という用語は通常、ニューロンの死及びグリア細胞平衡を含むニューロン構造及び機能の進行性喪失に起因する認知症などの認知障害を指す。幾つかの場合において、年齢(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD))やCNS細胞機能に影響を与える遺伝子変異(例えば、ハンチントン病、若年性AD若しくはPD、筋萎縮性側索硬化症(ALS))は前記神経変性疾患を引き起こすことができる。前記神経変性疾患は、タンパク質のミスフォールディング及び凝集、神経炎症(例えば、毒性刺激(タンパク質凝集など)、感染、外傷性損傷又は自己免疫などのシグナル刺激によるCNS炎症)、細胞シグナル伝達による変化、後天性加齢/細胞死(例えば、アポトーシスシグナル伝達の破壊、ミトコンドリア機能障害、オートファジーの障害及びネクロソームのストレス/炎症の活性化)、運動細胞損傷及びエピジェネティックな変化から選ばれる変化及び/又は病症を有することができる。
【0270】
「アルツハイマー病」という用語は通常、若年性認知症、老年認知症を指し、ゆっくりと発症し、時間の経過と共に悪化する神経変性疾患である。最も一般的な初期症状は、短期記憶の喪失(最近の出来事を思い出すのが困難)であり、疾患の進行につれて、言語障害、見当識障害(例えば、簡単に道に迷う)、気分不安定、モチベーション喪失、セルフケア不能及び行動問題といった症状のうちの少なくとも1種が現れる場合がある。アルツハイマー病の本当の原因は依然として不明であり、その進行は脳内の線維状アミロイドタンパク質プラーク及びTauタンパク質の沈着に関連する可能性がある。現在、病期の経過を止めたり逆転させたりできる治療法はないが、症状を一時的に軽減又は改善できる治療法は幾つかある。
【0271】
「軽度認知障害(MCI)」という用語は通常、正常な認知と認知障害との間の中間的な臨床状態を指す。幾つかの場合において、前記MCIは、認知症の基準を満たすものの、正常な加齢よりも進行している認知障害を含むことができる。MCIは、臨床症状、病因、予後及び罹患率において多様である。幾つかの場合において、MCIは、アルツハイマー病の病理学的段階であってもよい。幾つかの形態の認知障害は、最終的に認知症につながる神経変性疾患の初期症状と考えられる。
【0272】
「正常な加齢によって引き起こされる認知障害」という用語は通常、正常な加齢によって引き起こされる認知損害を指す。例えば、前記正常な加齢によって引き起こされる認知障害は、記憶喪失、馴染みのある場所の位置に関する混乱、日常の作業を完了するのに通常よりも時間がかかる、又は気分や性格の変化として現れることができる。
【0273】
「lews小体型認知症(LBD)」という用語は通常、Lewy Body Detmentia、レビー小体型認知症を指す。レビー小体型認知症の特徴は、タンパク質が異常に蓄積してレビー小体と呼ばれる塊になることである。レビー小体型認知症は、精神能力を徐々に低下させる。レビー小体型認知症の患者は、幻覚が現れる及び警戒心や注意力が変化する。その他の影響は、筋肉の硬直、動作の遅さ、歩行困難及び震えを含む。脳内にレビー小体型がある患者は、アルツハイマー病に関連したプラークやもつれが見られることもある。
【0274】
「前頭側頭型認知症」という用語は通常、tauタンパク質が脳の前頭葉と側頭葉のみに影響を及ぼす稀な進行性疾患であるピック病を指す。前頭側頭型認知症患者は、より高度な推論、言語の表現力、言語の認識及び記憶形成が困難である。前頭側頭型認知症患者の脳の前頭葉と側頭葉は、時間の経過と共に萎縮する場合がある。
【0275】
「血管性認知症」という用語は通常、脳の血液流動障害によって引き起こされる推論、判断及び記憶の問題を指す。例えば、前記血管性認知症は、高血圧及び高コレステロールなどの心臓病及び脳卒中の危険因子による認知症を含むことができる。
【0276】
「多発性梗塞型」という用語は通常、大きな脳動脈の単一の穿孔枝の閉塞によって引き起こされる小さな非皮質梗塞を指す。前記多発性梗塞型は、虚血性脳卒中とも呼ばれる特別なタイプの脳梗塞であってもよい。前記多発性梗塞型は、半側感覚障害、失語症、構音障害、動作の遅さ、不器用(特に、書くなどの細かい動作の困難)として現れることができる。
【0277】
「パーキンソン病」という用語は通常、進行性神経変性疾患を指す。前記パーキンソン病(PD)の臨床的特徴は、運動症状(例えば、振戦、運動緩慢、筋硬直及び姿勢不安定)、並びに神経精神性及びその他の非運動症状を含むことができる。例えば、前記非運動症状は、認知機能障害及び認知症、気分障害(例えば、うつ病、不安、無関心)及び睡眠障害を含むことができる。
【0278】
「エイズ」という用語は通常、後天性免疫不全症候群(AIDS)を指す。AIDSの臨床症状は、記憶力、集中力、注意力及び運動スキルの変化を含む。幾つかの場合において、AIDS患者に認知障害が発生し、例えば、約50%の感染者は、更にHIV関連神経認知機能障害症候群(HIV-associated neurocognitive disorders、HAND)を発症する可能性がある。
【0279】
「クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)」という用語は通常、ヒトに発生する伝染性海綿状脳症の一種を指す。CJDは、プリオン感染によって引き起こされる疾患である。CJD患者は、偏執的な行動、意識混乱、食欲と体重の減少、うつ病を引き起こす可能性があり、少数の患者は視覚又は聴覚の異常が示され、進行性の段階では、進行性の神経系病状悪化(例えば、感覚異常、言語障害、失語症)として現れる。
【0280】
「多発性硬化症(MS)」という用語は通常、脱ミエリン鞘性神経病変を指す。前記MS患者の脳又は脊髄内の神経細胞表面の絶縁物質(即ち、ミエリン鞘)が破壊され、神経系のシグナル伝達が損傷すると、一連の発生可能な症状を引き起こし、患者の活動、精神、更に精神状態にも影響を与える。これらの症状は、複視、片側視力障害、筋力低下、感覚鈍化、又は協調障害を含むことができる。
【0281】
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」という用語は通常、進行性且つ致死性の神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患である。ここで、少数のALS患者は、前頭側頭型認知症を発症する可能性がある。一部のALS患者の感覚、視覚、触覚、臭覚及び味覚が低下し、ごく少数の筋萎縮性側索硬化症患者は同時に認知症を発症する。
【0282】
「ハンチントン病(HD)」、即ちハンチントン舞踏病という用語は通常、脳細胞死を引き起こす遺伝性疾患を指す。HD患者は、疾患が進行につれて体の動きの不調和が更に明らかになり、能力が徐々に低下し、最終的には動作が困難になり、会話が不可能になる。精神能力が低下して認知症になることもよくある。
【0283】
「高齢期段階」という用語は通常、対象の老齢化段階を指す。例えば、人間の場合、前記高齢期段階は、60歳以上、70歳以上又は75歳以上であってもよく、マウスの場合、前記高齢期段階は、生後10か月以上であってもよく、例えば生後13か月以上又は18か月以上であってもよい。幾つかの場合において、前記高齢期段階の対象は、学習欠陥、記憶力障害、記憶力欠陥及び/又は脳機能障害の1種又は複数種の症状をゆうすることができる。
【0284】
「変異体」という用語は通常、親又は参照ポリペプチド(例えば、野生型ポリペプチド)のアミノ酸配列と少なくとも1つのアミノ酸残基が異なるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本願において、前記変異体は、前記親又は参照ポリペプチドに対して比較的高い(例えば、少なくとも80%)相同性を有することができる。前記相同性は、配列の類似性又は同一性を含むことができる。本願において、前記相同性は、当該分野で既知の標準技術によって決定することができ(例えば、Smith及びWaterman、Adv.Appl.Math.『応用数学進展』を参照)、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列によって共有される同一性パーセンテージは、分子間配列情報の直接比較によって測定され、前記比較は、配列アラインメントにより、当該分野で既知の方法を用いて同一性を決定する。配列類似性の決定に適するアルゴリズムの例はBLASTアルゴリズムである(Altschulら、J.Mol.Biol.『分子生物学雑誌』、215:403~410[1990]を参照)。BLAST分析に使用されるソフトウェアは、国家生物技術情報センター(NCBI)から開示的に得ることができる。
【0285】
「伝達物質放出」という用語は通常、神経伝達物質の放出、即ち、あるニューロンが小胞に包まれた神経伝達物質(Neurotransmitter)をシナプス隙間に放出し、別のニューロンに作用することで、情報を伝達するプロセスを指す。前記伝達物質放出プロセスにおいて、神経回路の基本構造であるシナプス(Synapse)に関与する可能性がある。幾つかの場合において、前記伝達物質放出は、シナプス伝達(Synaptic transmission)と呼ばれることができる。前記伝達物質放出の方法は、同期放出(Synchronous release)、非同期放出(Asynchronous release)及び自発放出(Spontaneous release)を含むことができる。
【0286】
「放出頻度」という用語は通常、活動電位の放出頻度を指す。活動電位は、興奮性細胞が刺激された時に静止電位に基づいて生成される膜両側の電位の迅速且つ可逆的な反転及び回復のプロセスを指すことができる。活動電位は、ピーク電位とアフター電位で構成され、それぞれ脱分極(Depolarisation)と過分極(Hyperpolarization)のプロセスに対応する。活動電位の発火は、パルス特性を持つ場合がある。幾つかの場合において、パルス発射の周波数は、時間に対するパルス発射数の比率である。
【0287】
本願において、「ニューロン」という用語は通常、神経系の主要な機能単位である神経細胞を指す。ニューロンは、細胞体とその神経突起、軸索、及び1つ又は複数の樹状突起で構成される。ニューロンは、シナプスで神経伝達物質を放出することによって、他のニューロン又は細胞にメッセージを送信することができる。
【0288】
「多量体」という用語は通常、共有結合、非共有結合、又は共有結合相互作用及び非共有結合相互作用の両方によって会合した2つ以上のポリペプチド鎖を有する分子を指す。前記多量体は、二量体を含むことができる。
【0289】
「ホモ二量体」という用語は通常、2つの同じモノマーから形成される分子を指す。この2つの同じモノマーは、共有結合及び/又は非共有結合の相互作用によって互いに凝集し、複合し、又は会合することができる。
【0290】
「メルカプトブロッキング」という用語は通常、遊離メルカプトがブロックされるため、分子内及び/又は分子間のジスルフィド結合を形成しにくいことを指す。本願において、前記メルカプトブロッキングは、システイン残基で発生することができる。前記メルカプトブロッキングにより、タンパク質のシステイン残基間にジスルフィド結合を形成することができないため、タンパク質の架橋又は修飾を防止する。前記メルカプトブロッキングは、還元剤であるブロック剤を使用することで実現することができる。前記ブロック剤は、ジチオスレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール(BME)及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP・HCl)を含むことができる。
【0291】
「セリンリン酸化」とう用語は通常、セリン残基で発生するリン酸化修飾を指す。前記セリンリン酸化は、供与体(例えば、ATP又はGTP)のリン酸基をセリン残基に移転するプロセスであってもよい。前記セリンリン酸化は、プロテインキナーゼを介して行うことができる。前記セリンリン酸化は、タンパク質活性の変化を引き起こす可能性がある。
【0292】
「約」という用語は通常、特定の値よりも20%多いか又は少ない数値範囲を指す。例えば、「約X」は、Xの±20%、±10%、±5%、±2%、±1%、±0.5%、±0.2%又は±0.1%の数値範囲を含み、ここで、Xは数値である。
【0293】
発明の詳細
一態様において、本願は、学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0294】
別の態様において、本願は、認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0295】
別の態様において、本願は、神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるプロトンポンプ調節剤の使用を提供する。
【0296】
別の態様において、本願は、学習能力の改善に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0297】
別の態様において、本願は、認知障害の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0298】
別の態様において、本願は、神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製におけるATP6V1B2調節剤の使用を提供する。
【0299】
本願において、前記対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する時、前記対象の前記学習能力は、顕著に向上することができる(例えば、前記認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力は、前記対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する前と比較して、顕著に向上することができる)。従って、ATP6V1B2は、学習能力を改善する潜在的な標的とすることができる。例えば、ATP6V1B2は、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)及び/又は認知障害を治療する潜在的な標的とすることができる。
【0300】
プロトンポンプ関連タンパク質、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性の向上
本願において、前記試薬は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0301】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0302】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0303】
本願において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質及び/又はその機能的活性断片の発現レベルを含むことができる。例えば、前記発現レベルは、特定の遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2遺伝子)ポリヌクレオチド、mRNA又はアミノ酸産物又はタンパク質の量を含むことができる。前記発現レベルは、特定の遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2遺伝子)によって転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片の量を含むことができる。
【0304】
本願において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベルと比較して、前記ATP6V1B2の発現レベルが少なくとも約10%向上することを含むことができる。例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することを含むことができる。
【0305】
本願において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子を特異的増幅するプライマー、ATP6V1B2遺伝子に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する核酸分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合する低分子、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するプローブ及びATP6V1B2タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定することができる。
【0306】
本願において、前記ATP6V1B2の発現レベルは、逆転写及び増幅分析(例えばPCR、RT-PCR連結又はRT-PCT定量)、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法(Northern blotting)、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色又は質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定することができる。例えば、qPCR、qRT-PCR、northernハイブリダイゼーション、westernハイブリダイゼーション及び/又はELISA検出によって本願に記載のATP6V1B2の発現レベルを測定することができる。前記ATP6V1B2の発現レベルは、生体サンプル又はサンプルから単離されたタンパク質/核酸に対する直接分析によって測定することもできる。
【0307】
本願において、前記ATP6V1B2は、ヒト又はマウスに由来することができる。
【0308】
本願において、前記ATP6V1B2は、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0309】
本願において、前記ATP6V1B2の機能的活性断片は、配列番号5に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する能力を有することができる。例えば、前記ATP6V1B2の機能的活性断片は、ATP6V1B2の切断体を含むことができる。例えば、前記ATP6V1B2の機能的活性断片は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含むことができる。例えば、前記ATP6V1B2の機能的活性断片は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列を含むことができる。
【0310】
本願において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片は、配列番号8、10、11、16のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0311】
本願において、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片をコードする核酸配列は、配列番号9又は17に示される核酸配列を含むことができる。
【0312】
本願において、前記ATP6V1B2の活性は、ATP6V1B2タンパク質及び/又はその機能的活性断片の生物学の活性を含むことができる(例えば、それによって引き起こされる測定可能な下流エフェクターを含むことができる)。例えば、前記ATP6V1B2の活性は、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性向上を含むことができる。
【0313】
本願において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の活性と比較して、前記ATP6V1B2の活性が少なくとも約10%向上することを含むことができる。例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することを含むことができる。
【0314】
本願において、前記試薬は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0315】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0316】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。
【0317】
本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の発現レベル、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子の転写レベル及び/又はプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを含むことができる。例えば、前記発現レベルは、特定の遺伝子(例えば、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子)ポリヌクレオチド、mRNA又はアミノ酸産物又はタンパク質の量を含むことができる。前記発現レベルは、特定の遺伝子(例えば、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子)によって転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片の量を含むことができる。
【0318】
本願において、前記向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルと比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルが少なくとも約10%向上することを含むことができる。例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することを含むことができる。
【0319】
本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子を特異的に増幅することができるプライマー、プロトンポンプ関連タンパク質をコードする遺伝子に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する核酸分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合する低分子、プロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するプローブ及びプロトンポンプ関連タンパク質に特異的に結合するポリペプチドからなる群より選ばれる物質を使用することによって測定することができる。
【0320】
本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、逆転写及び増幅分析(例えばPCR、RT-PCR連結又はRT-PCT定量)、ハイブリダイゼーション解析、RNAブロット法(Northern blotting)、ドットブロット法、in-situハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、カラムクロマトグラフィー、ウェスタンブロット法、免疫組織化学、免疫染色又は質量分析からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定することができる。例えば、qPCR、qRT-PCR、northernハイブリダイゼーション、westernハイブリダイゼーション及び/又はELISA検出によって本願に記載のプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルを測定することができる。前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベルは、生体サンプル又はサンプルから単離されたタンパク質/核酸に対する直接分析によって測定することもできる。
【0321】
本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質は、NADHデヒドロゲナーゼ、コエンザイムQ、コハク酸-コエンザイムQレダクターゼ、シトクロムc及び/又はコエンザイムQ-シトクロムcレダクターゼを含むことができる。
【0322】
本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の活性は、前記プロトンポンプ関連タンパク質の生物学的活性を含むことができる。
【0323】
前記プロトンポンプ関連タンパク質の活性は、水素/カリウムアデノシン三リン酸酵素系(水素/カリウムイオンATP酵素とも呼ばれ、即ちH/K ATPase)の活性レベル、及び/又はH受容体の活性レベルによって測定することができる。本願において、前記プロトンポンプ関連タンパク質の活性の向上は、前記対象における本来のプロトンポンプ関連タンパク質の活性と比較して、前記プロトンポンプ関連タンパク質の活性が少なくとも約10%向上することを含むことができる。例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することを含むことができる。
【0324】
学習能力
本願において、前記学習能力は、学習/認知過程に関連するか又は必要とする全ての能力を含むことができる。例えば、前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力を含むことができる。
【0325】
本願において、前記学習能力の改善は、対象の本来の学習能力の評価点数と比較して、改善された前記対象の学習能力の評価点数が少なくとも約50%向上することを含むことができる。例えば、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することを含むことができる。
【0326】
本願において、前記学習能力の評価点数は、注意/実行機能評価(例えば、ウェクスラー記憶テスト)、言語能力評価(例えば、言語スクリーニングテスト(the language screening test、LAST))、視空間及び構造能力評価(例えば、視覚運動統合テスト、Hooper視覚組織テスト、物体結合テスト、図形配置テスト、時計描画テスト)、運用能力評価、日常機能評価(例えば、認知症障害評価(disability assessment for dementia、DAD))及び/又は神経心理学的スケールで得られた点数によって得ることができる。例えば、前記学習能力の評価点数は、新しい物体認知試験及び水迷路試験からなる群より選ばれる試験を実施することによって測定することができる。
【0327】
本願において、前記新しい物体認知試験は、前記認知能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価することができる。本願において、前記新しい物体認知試験では、対象(例えば、マウス)が固定容器内で特定の形状の物体を探索して学習し、学習により得られた記憶に基づいて数日後に当該固定容器内に新しく表示される、前の物体の形状と異なる新しい物体を区別することができる。マウスが数日後に当該形状の異なる新しい物体を区別するための時間が短いほど、マウスの学習能力は対応的に高い。水迷路評価試験は、対象の学習能力を評価する重要な実験であり得る。
【0328】
本願において、前記水迷路試験は、前記記憶能力、運動能力及び/又は空間探索能力を評価することができる。本願において、前記水迷路試験(例えば、Morris水迷路)では、対象(例えば、マウス)を強制的に泳がせることで、水中に隠されたプラットフォームを見つける方法を学習し、更にマウスの空間位置の感覚及び方向感の空間探索能力及び/又は記憶能力を試験する。水迷路試験は、後天性トレーニング、探索トレーニング、対位トレーニング又は対位探索トレーニングを含むことができる。マウスが水に入ってからプロットフォームを見つけるまでの時間が短いほど、この間に移動する距離が短いほど、マウスの学習能力は対応的に高い。水迷路評価試験は、対象の学習能力を評価する重要な実験であり得る。
【0329】
対象及び適応症
本願において、前記対象は、哺乳動物を含むことができる。例えば、前記対象は、齧歯類動物及び/又は霊長類動物を含むことができる。例えば、前記対象は、ヒトを含むことができる。
【0330】
本願において、前記対象は、非認知障害患者及び/又は非神経変性疾患患者を含むことができる。例えば、前記対象は、正常なヒト及び/又は健常なヒトであり得る。例えば、前記対象は、その学習能力を更に向上させる需要及び/又は願望を持つことができる。
【0331】
本願において、前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含むことができる。例えば、前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含むことができる。
【0332】
本願において、前記対象は、神経変性疾患患者を含むことができる。例えば、前記対象は、アルツハイマー病患者を含むことができる。例えば、前記アルツハイマー病患者は、アルツハイマー病の前期、初期、中期又は後期にあることができる。
【0333】
本願において、前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害及び後期認知障害を含むことができる。例えば、前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症及び/又は血管性認知症を含むことができる。例えば、前記認知障害の誘導疾患は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含むことができる。
【0334】
本願において、前記対象は、認知障害患者を含むことができる。例えば、前記対象は、軽度認知障害(MCI)(例えば、短期記憶の喪失、抽象的なことを表現又は理解することの困難、不安定な気分や行動、新しいことを学ぶことや複雑な指示に従うことの困難、判断力の低下及び/又は基本的なセルフケアには他人からのリマインダーが必要であること)、中期認知障害(例えば、長期記憶と現実生活の状況の記憶との混乱、明確なコミュニケーション能力の欠如、行動や性格の変化若しくは不安定な気分及び/又はセルフケアには他人からの助けが必要であること)又は後期認知障害(例えば、記憶障害、身体活動や精神状態の低下、効果的な表現やコミュニケーションができない、セルフケアできない及び/又は体内時計の異常)を患っている可能性がある。本願において、前記対象は、前記認知障害を誘発できる疾患を患っている可能性がある。例えば、前記対象は、アルツハイマー病、多発性梗塞型、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を患っている可能性がある。
【0335】
本願において、前記対象は、高齢期段階にあることができる。例えば、前記対象は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害を示している。例えば、前記対象は、軽度認知障害(MCI)の症状を示している。例えば、前記対象は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)の症状を示している。
【0336】
ポリペプチド又はその変異体、試薬及び医薬組成物並びにその使用
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含むことができる。
【0337】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、小胞型プロトンポンプアゴニストを含むことができる。
【0338】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含むことができる。
【0339】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。例えば、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のリガンドを含むことができる。例えば、前記プロトンポンプ調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含むことができる。例えば、前記プロトンポンプ調節剤は、前記ATP6V1B2タンパク質における特定の位置(例えば、特定のエピトープ)に特異的に結合することができる。
【0340】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含むことができる。
【0341】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。
【0342】
本願において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することができる。
【0343】
本願において、前記プロトンポンプ調節剤は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。
【0344】
本願において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上増加することができる。
【0345】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2アゴニストを含むことができる。
【0346】
本願において、前記ATP6V1B2は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる。例えば、前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のリガンドを含むことができる。例えば、前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質のアゴニストを含むことができる。例えば、前記ATP6V1B2調節剤は、前記ATP6V1B2タンパク質における特定の位置(例えば、特定のエピトープ)に特異的に結合することができる。
【0347】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、プロトンポンプアゴニストを含むことができる。例えば、小胞型プロトンポンプアゴニストを含むことができる。
【0348】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体及び/又は低分子を含むことができる。
【0349】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。
【0350】
本願において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することができる。
【0351】
本願において、前記ATP6V1B2調節剤は、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。
【0352】
本願において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上増加することができる。
【0353】
別の態様において、本願は、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を調節することができるポリペプチドを提供する。
【0354】
本願において、前記ポリペプチドは、シナプス神経伝達物質の放出を増加させることができる。本願において、前記増加は、前記対象における本来のシナプス神経伝達物質の放出レベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することができる。
【0355】
本願において、前記ポリペプチドは、興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる。本願において、前記増加は、前記対象における本来の興奮性シナプス後電流の放出頻度のレベルと比較して、少なくとも約10%増加できることを含む。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上増加することができる。
【0356】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、ATP6V1B2タンパク質に特異的に結合することができる。例えば、前記ポリペプチド又はその変異体は、前記ATP6V1B2タンパク質と「リガンド-受容体」の関係を有することができる。
【0357】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、マウスATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、ヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる。
【0358】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、アミド結合(ペプチド結合とも呼ばれる)によって線形接続されたモノマー(アミノ酸)で構成された分子を含むことができる。前記ポリペプチドは、2つ又はそれ以上のアミノ酸を有する任意の鎖を含むことができ、また、特定の長さの産物を意図するものではない。前記変異体は、前記ポリペプチドに加えて1つ又は複数のアミノ酸置換、付加又は欠失を含むポリペプチドを含むことができる。前記変異体は、前記ポリペプチドに修飾が加えられた産物を含むことができ、例えば、前記修飾は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アシル化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質加水分解的切断、及び/又は非天然存在アミノ酸による修飾を含むことができる。
【0359】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させることができる。ここで、前記ATP6V1B2の発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含むことができる。本願において、前記向上は、前記対象における本来のATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性と比較して、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が少なくとも約10%向上すること含むことができる。例えば、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%又はそれ以上向上することができる。
【0360】
本願において、前記ポリペプチドは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0361】
本願において、前記ポリペプチドは、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0362】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体は、多量体を形成することができる。例えば、ホモ二量体を形成することができる。本願において、前記ホモ二量体は依然として、ATP6V1B2タンパク質に結合する能力を有することができる。
【0363】
前記ホモ二量体は、2つの完全に同一の前記ポリペプチドの直列接続構造であり得る。例えば、前記ホモ二量体は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0364】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体アミノ酸配列におけるシステインは、スルフヒドリルブロッキング修飾を有しなくてもよい。例えば、前記ポリペプチド又はその変異体アミノ酸配列におけるシステイン残基がスルフヒドリル基によってブロックされる場合、ATP6V1B2タンパク質に結合する能力が失う場合がある。
【0365】
本願において、前記ポリペプチド又はその変異体アミノ酸配列におけるセリンは、リン酸化修飾を有しなくてもよい。例えば、前記ポリペプチド又はその変異体アミノ酸配列におけるセリン残基がリン酸化によって修飾される場合、ATP6V1B2タンパク質に結合する能力が失う場合がある。
【0366】
本願において、前記製剤(例えば、前記ポリペプチド又はその変異体)は、前記対象の学習能力を向上させる(例えば、前記ポリペプチド又はその変異体の投与前と比較して、前記対象の前記学習能力の評価点数を顕著に向上させる)ことができる。
【0367】
本願において、前記製剤(例えば、前記ポリペプチド又はその変異体)は、前記対象における前記学習能力関連遺伝子の発現量及び/又は活性を調節することができる。本願において、前記学習能力関連遺伝子は、APP遺伝子を含むことができる。APP遺伝子は、アミロイド前駆体タンパク質遺伝子(amyloid precursor protein)であり、当該遺伝子は、アルツハイマー病、例えば家族性アルツハイマー病(FAD)に関連することができる。また、前記学習能力関連遺伝子は、プレセニリン1遺伝子(presenilin1、PSEN1)及びプレセニリン2遺伝子(presenilin2、PSEN2)を含むことができる。例えば、前記学習能力関連遺伝子は、グルタミン酸受容体をコードする遺伝子を含むことができる。例えば、前記グルタミン酸受容体は、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)、カイニン酸受容体(KAR)及びα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾール受容体(AMPAR)を含むことができる。例えば、前記学習能力関連遺伝子は、メマンチン(例えば1-アミノ-3,5-ジメチルアマンタジン塩酸塩)の作用受容体をコードする遺伝子を含むことができる。例えば、前記メマンチンの作用受容体は、NMDA受容体を含むことができる。例えば、前記ポリペプチドは、この段落で上述した遺伝子の発現量及び/又は活性を低下させることができる。
【0368】
本願において、本願に記載の製剤、前記ATP6V1B2調節剤、前記プロトンポンプ調節剤、及び/又は本願に記載のポリペプチドは、学習能力を改善する潜在的な薬物とすることができる。本願に記載の製剤、前記ATP6V1B2調節剤、前記プロトンポンプ調節剤、及び/又は本願に記載のポリペプチドは、認知障害を治療する及び/又は神経変性疾患を治療する潜在的な薬物とすることができる。
【0369】
別の態様において、本願は、本願に記載の試薬である薬物の組み合わせを提供する。
【0370】
前記薬物の組み合わせは、薬物の使用(例えば、学習能力の改善、認知障害の治療及び/又は神経変性疾患の治療(例えば、アルツハイマー病))に適する薬物製品を含むことができる。
【0371】
別の態様において、本願は、本願に記載の試薬及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0372】
前記医薬組成物は、1種又は複数種の活性成分(例えば、本願に記載の製剤)及び1種又は複数種の不活性成分を含む組成物、並びに任意の2種又はそれ以上の成分の組み合わせ、複合又は凝集によって、或いは1種又は複数種の成分の解離によって、或いは1種又は複数種の成分の他の種類の反応又は相互作用によって直接的又は間接的に得られた任意の製品であり得る。
【0373】
前記薬学的に許容される担体は、滅菌水性又は非水性溶液、分散体、懸濁液又は乳濁液及び使用直前に滅菌注射用溶液又は分散体を再構成するための滅菌粉末を含むことができる。適切な水性及び非水性担体、希釈剤、溶剤又は溶媒の実例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)並びにオレイン酸エチル酢などの注射可能な有機酢を含むことができる。
【0374】
別の態様において、本願は、シナプス神経伝達物質放出を増加させる薬物の調製における、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0375】
別の態様において、本願は、学習能力を改善する薬物の調製における、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0376】
別の態様において、本願は、認知障害を治療する及び/又は神経変性疾患を治療する薬物の調製における、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0377】
本願において、本願に記載のポリペプチド、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物は、口服及び/又は注射投与に適するように調製することができる。本願において、本願に記載のポリペプチド、本願に記載の試薬、本願に記載の薬物の組み合わせ及び/又は本願に記載の医薬組成物は、静脈内注射投与に適するように調製することができる。
【0378】
薬物のスクリーニング方法
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、対象におけるプロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法を提供する。
【0379】
別の態様において、本願は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に与える候補薬物の影響を検出するステップを含み、ここで、前記候補薬物を投与した後、前記ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、前記候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、方法を提供する。
【0380】
幾つかの場合において、前記候補薬物は、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を調節することができる試薬を含むことができ、幾つかの場合において、前記候補薬物は、プロトンポンプ関連タンパク質の発現レベル及び/又は活性を調節することができる試薬を含むことができる。幾つかの場合において、前記候補薬物は、ATP6V1B2タンパク質に結合することができる試薬を含むことができる。
【0381】
本願において、前記投与は、口服及び/又は注射を含むことができる。
【0382】
本願において、前記投与は、静脈内注射を含むことができる。
【0383】
本願は、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を検出することができる検出試薬キットを更に提供する。前記検出試薬キットは、前記検出試薬キットを用いてプロトンポンプ関連タンパク質及び/又はATP6V1B2発現レベル及び/又は活性を検出する具体的なステップ、及び/又は検出結果を用いて前記候補薬物が対象の学習能力を改善できるかどうかを判断する具体的なステップが記載された説明書を含むことができる。
【0384】
本願において、前記検出試薬キットは、前記候補薬物が対象の学習能力を改善できるかどうかを判断する他の標的を検出することができる試薬を更に含むことができる。
【0385】
非ヒト動物、その子孫又はそれらの一部
本願の任意の態様において、前記非ヒト動物は、遺伝子編集された非ヒト動物であるか、又は遺伝子編集された非ヒト動物に由来することができる。例えば、前記非ヒト動物は、遺伝子ノックイン非ヒト動物であるか、又は遺伝子ノックイン非ヒト動物に由来することができる。
【0386】
例えば、前記非ヒト動物は、非ヒト哺乳動物であり得る。幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、齧歯類動物又は霊長類動物である。幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物は、マウス、ラット、ウサギ、類人猿、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、イヌ、アルパカ及びネコから選ばれる。
【0387】
本願の任意の態様において、前記非ヒト動物又はその子孫の一部は、その器官、組織及び/又は細胞を含むことができる。
【0388】
幾つかの実施形態において、前記部分は、体液を含むことができる。例えば、前記体液は、血液、血漿、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び脳脊髄液からなる群より選ばれることができる。幾つかの実施形態において、前記血漿にエクソソームが含まれる。幾つかの実施形態において、前記一部は、脳(例えば、脳組織)又はその一部を含む。前記脳の一部は、嗅球、扁桃体、基底神経節、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄及び小脳からなる群より選ばれる部分を含むことができる。幾つかの実施形態において、前記一部は、嗅粘膜を含む。幾つかの実施形態において、前記一部は、中枢神経系の一部、末梢神経系の一部、皮膚組織、筋肉組織及び/又は内臓器官を含む。例えば、前記中枢神経系は、脊髄を含むことができる。
【0389】
幾つかの実施形態において、前記部分は、細胞を含むことができる。前記細胞は、初代ニューロン、小型グリア細胞、星状グリア細胞、稀突グリア細胞、マクロファージ、血管周囲類上皮細胞、B細胞、T細胞、成体幹細胞、NK細胞、全能性幹細胞、単能性幹細胞、胚性幹細胞、誘導性多能性幹細胞及び配偶子からなる群より選ばれる細胞を含むことができる。例えば、前記配偶子は、精子及び/又は卵母細胞を含むことができる。
【0390】
幾つかの実施形態において、前記一部(例えば、前記器官、組織又は細胞)は、完全な非ヒト動物に発育することができない。
【0391】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物、その子孫又はそれらの一部は、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片を含む。例えば、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片は、当該動物、当該子孫又は当該細胞によって発現されるか、他のものに由来した後に前記動物、子孫又は細胞に導入(例えば、注射)することで、それらに当該ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片を含ませることもできる。
【0392】
幾つかの実施形態において、前記非ヒト動物、その子孫又はそれらの一部は、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片を発現する。
【0393】
前記ATP6V1B2の発現は、ATP6V1B2遺伝子の発現、ATP6V1B2遺伝子の転写物の発現及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現を含むことができる。例えば、前記発現は、特定の遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2遺伝子)ポリヌクレオチド、mRNA又はアミノ酸産物又はタンパク質の発現を含むことができる。前記発現は、特定の遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2遺伝子)によって転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片の発現を含むことができる。
【0394】
前記ATP6V1B2機能的活性断片の発現は、ATP6V1B2の機能的活性断片をコードする遺伝子の発現、ATP6V1B2の機能的活性断片をコードする遺伝子の転写物及び/又はATP6V1B2の機能的活性断片タンパク質の発現を含むことができる。例えば、前記発現は、特定の遺伝子(例えば、ヒトATP6V1B2の機能的活性断片(例えば、288位~512位のアミノ酸配列)をコードする)ポリヌクレオチド、mRNA又はアミノ酸産物又はタンパク質の発現を含むことができる。前記発現は、特定の遺伝子によって転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片の発現を含むことができる。
【0395】
調製方法
本願は、本願に記載の非ヒト動物又はその一部、本願に記載の細胞或いは本願に記載の組織を調製する方法であって、非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法を更に提供する。
【0396】
別の態様において、本願は、疾患モデルを作製する方法であって、非ヒト動物又はその一部、細胞又は組織に、ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片を含む及び/又は発現することを含む、方法を更に提供する。
【0397】
例えば、前記方法は、前記非ヒト動物又はその一部、前記細胞、組織、細胞株及び/又は細胞培養物に、前記ATP6V1B2、その機能的活性断片、前記ATP6V1B2をコードする核酸分子及び/又はATP6V1B2の機能的活性断片をコードする核酸分子を導入することを含むことができる。前記導入は、例えば、前記非ヒト動物、その一部、前記組織又は細胞に注射すること(例えば、タンパク質又は核酸分子を注射すること)を含むことができる。例えば、前記導入は、核酸分子トランスフェクション、ウイルス形質導入など、外因性タンパク質、外因性核酸分子などを細胞、組織又は動物体内に導入するその他の手段を更に含むことができる。例えば、前記トランスフェクションは、アデノ随伴ウイルスを使用したトランスフェクションを含むことができる。
【0398】
幾つかの実施形態において、前記方法は、前記非ヒト動物又はその一部、前記細胞、組織、細胞株及び/又は細胞培養物に前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片をコードする核酸配列をノックインすることを含むことができる。
【0399】
幾つかの実施形態において、当該方法は、ノックインされた異種核酸配列を含む修飾細胞又は非ヒト動物を同定することを更に含むことができる。
【0400】
異種核酸配列を含む供与体核酸分子は、5’相同アーム及び3’相同アームを含むこともできる。5’相同アーム及び3’相同アームは、前記ATP6V1B2及び/又はその機能的活性断片をコードする異種核酸配列の脇腹に位置することができる。供与体核酸分子における相同アーム(例えば、5’相同アーム又は3’相同アーム)は、内在性標的部位との相互作用を促進する十分な能力を有することができる。
【0401】
本願において、相同アーム及び標的遺伝子部位(即ち、内因性ATP6V1B2遺伝子部位内の相同遺伝子領域又は対応する領域)は、互いにマッチするか、又は互いに対応する。この場合、2つの局所配列の相互の一致性は、相同組換え反応の基礎として機能するのに十分である。「相同性」は、DNA配列が対応又はマッチする配列と同じであるか、或いは一定の配列一致性を有することを指す。特定の標的部位と供与体核酸分子内に見出された対応する相同アームとの間の配列一致性は、相同組換えの発生を可能にする任意の程度の配列一致性であり得る。例えば、配列の相同組換えを容易にするために、供与体核酸分子(又はその断片)の相同アーム及び標的部位(又は断片)によって共有される配列同一性の程度は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%であり得る。
【0402】
スクリーニング/同定/設計方法
例えば、前記装置は、医療装置を含むことができる。例えば、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療に効果的であると主張される医療機器である。
【0403】
本願に記載の同定、スクリーニング又は設計方法は、インビトロ法、エクスビボ法又はインビボ法であり得る。
【0404】
本願において、候補物質は、合成された化合物、ペプチド、タンパク質、DNAライブラリー又は当該ライブラリー内の核酸分子、動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル又はヒトなどの哺乳動物)組織抽出物又は細胞培養上清液、植物又は微生物の抽出物又は培養産物、或いは上記物質の任意の混合物であり得る。
【0405】
認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力も、例えば、動物行動分析を行うことによって、候補薬物を投与した治療群と対照群との間で比較することができる。例えば、対照群と比較して、候補薬物で処理した後、認知能力、運動能力、記憶能力及び/又は空間探索能力の顕著な改善が観察された場合、当該候補薬物は更なる研究のために選択する(例えば、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療のための潜在的な治療薬物とする)ことができる。
【0406】
幾つかの場合において、スクリーニングの方法は、ニューロン細胞、脳領域、AD病変を含む/対応する他の組織、或いはその一部の組織(例えば、嗅球、扁桃体、基底神経節、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、中枢神経系、末梢神経系、脊髄、小脳、皮膚組織、筋肉組織、及び/又は内臓器官)など、本願による非ヒト動物組織及び/又は細胞を使用することによって行うこともできる。例えば、インビトロ又はエクスビボ(ex vivo)で組織及び/又は細胞を培養した後、適切な期間(例えば、数時間、数日間、数週間、又は数か月)インキュベートした後、培養した組織及び/又は細胞に候補薬物を投与し、前述の方法を用いて処理された脳組織/細胞を検査する。
【0407】
幾つかの場合において、例えば、バイオマーカーのスクリーニング方法において、本願に由来する非ヒト動物、その一部、又はその子孫に神経系疾患又は病症に関連する兆候(例えば、Aβ沈着、ニューロン繊維絡み、形態又は機能異常(萎縮)シナプス、ニューロン細胞死、或いは記憶力及び学習機能障害)が示される前と後のサンプル(例えば、細胞、組織或いはDNA若しくはRNAを含む他のサンプル、タンパク質を含むサンプル、及び/又は代謝物を含むサンプル)を採取した後、サンプルからの遺伝子転写産物(転写群)、遺伝子翻訳産物(タンパク質群)、脂質(脂質群)又は代謝物(代謝群)を全面的に分析し、関連する兆候が示される前と後に変化する物質を同定することができる。幾つかの実施形態において、前記サンプルは、ラットの血液、血漿(エクソソームを含む血漿など)、血清、尿、汗、涙、唾液、精液及び/又は脳脊髄液などの前記非ヒト動物の体液を含むことができる。
【0408】
DNAマイクロアレイチップなどの核酸マイクロアレイチップ(microarray)を使用して遺伝子転写産物(転写群など)を分析することができる。ゲル電気泳動(二次元ゲル電気泳動など)又は質量分析(飛行時間質量分析、電子スプレー電離質量分析など)、キャピラリーHPLC/MS及びLC/MS/MSを使用して遺伝子翻訳産物(タンパク質群など)を分析することができる。NMR、キャピラリー電気泳動、LC/MS及びLC/MS/MSを使用して代謝物(代謝群)を分析することができる。
【0409】
ある物質の存在/含有量が関連する兆候が示される前と後に顕著な差異を示す場合、当該物質は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療のためのバイオマーカーと見なされることができる。
【0410】
如何なる理論によっても制限されることを意図するものではないが、以下の実施例は、本願の融合タンパク質、調製方法及び使用などを説明することのみを目的としており、本願の発明の範囲を限定するものではない。
【0411】
実施例
実施例1 ATP6V1B2タンパク質の過剰発現は学習記憶機能を改善することができる
試験ステップ:
生後15か月の老齢マウスを対照群及び実験群にランダムに群分けし、ATP6V1B2-mCherry融合タンパク質を持つアデノ随伴ウイルス(pAAV2/9-hSyn-ATP6V1B2-Myc-2A-mCherry、ここで、ATP6V1B2-mCherry融合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号6に示される)又はmCherryを持つ対照アデノ随伴ウイルスを実験群及び対照群のマウス脳両側背側海馬にそれぞれ注射して、実験群及び対照群のマウス脳両側背側海馬のニューロンATP6V1B2-mCherryタンパク質又はmCherryタンパク質をにそれぞれ過剰発現させた。術後1か月に、マウスに水迷路実験を行った。(試験ステップは実施例4を参照)
結果から、生後15か月の老齢マウスの海馬内でATP6V1B2タンパク質を過剰発現させる(図7a、bを参照)ことで、老齢マウスの水迷路行動実験における学習記憶能力を明らかに改善できる(図7c、d、eを参照)ことが分かった。
【0412】
実施例2 ATP6V1B2タンパク質を作用標的とするポリペプチド
試験ステップ(E.ハーロウD.ライアン、アメリカE.ハーロウD.ライアン、沈関心ら、抗体技術実験ガイドライン[J].科学出版社、2002を参照):
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列に従ってポリペプチドQD202を合成し、ポリペプチドアミノC’末端にビオチン標識を付加し、QD202のアミノ酸配列をランダムにシャッフルし、シャッフルされた対照QD201(アミノ酸配列は配列番号7に示される)を合成し、ポリペプチドのアミノC’末端にビオチン標識を付加した。PBSを用いてポリペプチドQD202及びQD201を溶解し、濃度500μMの原液を調製した。
(2)ビオチン標識QD202及びQD201を、6.25mg/kgの用量で2匹の生後8か月のC57BL/6マウスにそれぞれ静脈内投与した。4時間後にマウスを麻酔し、脳海馬組織を採取し、溶解緩衝液を加え、機械的研磨により組織を破砕し、遠心分離後に上清を収集した。上清にビオチン抗体及びProtein Gアガロースビーズを加えて免疫沈降を行い、試験ステップは2002年科学出版社の『抗体技術実験ガイドライン』を参照した。タンパク質注入緩衝液を用いてタンパク質を溶出した。
(3)SDS-PAGEタンパク質電気泳動ゲルを調製し、下層分離ゲルの濃度は10%、上層濃縮ゲルの濃度は4%であり、サンプルを注入ウェルに加え、SDS-PAGE電気泳動を行った。電気泳動終了後、分離ゲルを切り出してクマシーブリリアントブルーを使用して染色し、結果は図6aに示された。
(4)クマシーブリリアントブルー染色により示された分子量が約55kDaの特異的なバンドを切り出し、質量分析前処理を行い、タンパク質をペプチド断片に酵素分解し、脱塩処理を行った。サンプルは質量分析の質量分析器で質量数に従ってイオンフラグメントを分離し、検出器により質量スペクトルを得て、検索ソフトウェアによって、ウェスタンデータベースから、同定されたペプチド断片配列をアラインメントして、タンパク質の種類を同定した。
(5)シャッフル対照QD201との比較により、QD202に特異的に結合するタンパク質であるATP6V1B2を検出した。
(6)3’末端にmycタグを付加したマウスAtp6v1b2発現プラスミドを構築し、HEK 293細胞にプラスミドをトランスフェクトし、2日後に細胞を回収し、細胞タンパク質を抽出した。細胞溶解液にビオチン抗体及びProtein Gアガロースビーズを加えて免疫共沈降[1]を行い、タンパク質注入緩衝液を用いてタンパク質を溶出した。
(7)SDS-PAGEタンパク質電気泳動ゲルを調製し、下層分離ゲルの濃度は10%、上層濃縮ゲルの濃度は4%であり、サンプルを注入ウェルに加え、免疫ブロット法によりタンパク質を検出し、結果は図6bに示された。免疫共沈降の方法により、QD202がATP6V1B2タンパク質に特異的に結合することが分かった。
【0413】
結果から、タンパク質プロファイリング及び免疫共沈降の方法により、QD202がATP6V1B2タンパク質に結合することが分かった。結果は図6a、bに示された。
【0414】
実施例3 ポリペプチドの生物学的活性試験
試験ステップ:
配列番号1に示されるアミノ酸配列に従ってポリペプチドQD202を合成した。
【0415】
配列番号2に示されるアミノ酸配列に従ってポリペプチドQD202 N’-1を合成した。
【0416】
配列番号3に示されるアミノ酸配列に従ってポリペプチドQD202 C’-1を合成した。
【0417】
配列番号4に示されるアミノ酸配列に従ってポリペプチドQD202 C’-2を合成した。
【0418】
生後2~3か月のC57マウスに、20%のウライシン0.1~0.15mLを腹腔注射して麻酔した後、すぐ頭を切断して脳組織を剥離し、予め混合ガス(95%のOと5%のCO)を通じた人工脳脊液(ACSF)の氷水混合液体に入れ、2min放置した。ACSFの配合は、NaCl 11.7mM、KCl 0.36mM、NaHPO 0.12mM、CaCl 0.25mM、MgCl 0.12mM、NaHCO 25mM、グルコース11mMであった。振動ミクロトームを使用して350mの海馬冠状脳スライスを切り取った。海馬脳スライスを室温のACSFに30min以上放置して回復させ、次に脳スライスを記録タンクに入れ、混合ガスを通じたACSFを用いて2~2.5mL/minの速度で持続的に潅流し、Olympus BX51正立顕微鏡で、海馬CA1錐体ニューロンをブラインドシールし、Axon700Bアンプ及び1550Bデジタルアナログコンバータを用いて全細胞パッチクランプ記録を実行し、クランプ電圧が-70mVの状態で、電圧クランプで錐体ニューロンの自発興奮性シナプス後電流(sEPSC)を記録し、5minのsEPSC後に5μMのQD202又はQD202 N’-1,C’-1,C’-2などを投与してペプチドを5min合成し、次にACSFで10min潅流して洗浄した。Minianalysisソフトウェアによって、記録したデータを分析した。
【0419】
結果から、QD202は、海馬CA1ニューロンの自発興奮性シナプス伝達物質の放出を増加させることができることが分かり、主に興奮性シナプス後電流の放出頻度の増加に反映されるが、興奮性シナプス後電流の幅に影響を与えなかった(図1a、b、cを参照)。
【0420】
QD202による興奮性シナプス伝達の影響作用と比較して、N末端の1つのアミノ酸を除去する場合は、QD202と類似する作用効果が観察できず(図1d、eを参照)、C末端の1つのアミノ酸を除去しても、依然としてQD202と類似する作用効果が観察でき(図1f、gを参照)、C末端の2つのアミノ酸を除去する場合、QD202と類似する作用効果が観察できなかった(図1h、iを参照)。
【0421】
実施例4 ポリペプチドによる学習能力の改善作用
新しい物体識別テスト
新しい物体識別は、Leger,M.,et al.Object recognition test in mice.Nat Protoc.8、2531~2537(2013)に記載された行動試験計画を参照し、オープンフィールドボックス(40×40×35cm、青色の不透明なプラスチック製)を使用して新しい物体識別テストを行った。初日、マウスをオープンフィールドボックスに入れて10min適応させた。翌日、各マウスをボックスの中央に慎重に置き、中央領域に2つの類似する物体(単三電池)を置き、10min自由に探索させ、次にマウスを飼育ゲージに戻した。3h後、マウスを10min再びボックス(1つの電池を高さ10センチの人形玩具と交換した)に入れ戻して、記憶保持テストを行った。Etho Vision XT 14ソフトウェアを用いて録画を分析し、マウスが新しい/古い物体を探索するのにかかる時間を記録した。識別指数は(Tnovel-Tfamliar)/(Tnovel+Tfamiliar)として計算した。
【0422】
モリス水迷路テスト
モリス水迷路は、Qing-Feng Wuら、Fibroblast growth factor 13 is a microtubule-stabilizing protein regulating neuronal polarization and migration.Cell.149、1549~1564(2012)に記載された試験計画を参照した。テストは、固定環境室内で、水を満たした円形プール(直径120cm、深さ30cm、二酸化チタンを添加して不透明にし、21±1℃に維持)で行った。実験は、適応期間(1日)、トレーニング期間(5~6日)及びテスト期間(1日)に分けられた。適応期間:プラットフォームを、水面から0.5センチ離れた場所に置き、マウスをプラットフォームに誘導した。トレーニング日:プラットフォームを水中0.5センチに置き、プラットフォームを見つけるようにマウスをトレーニングした。マウスがプラットフォームに到達する時にタイミングを停止し、マウスが1分間以内にプラットフォームに到達しない場合、プラットフォームに誘導し、またプラットフォームに30s保持させた。1日4回トレーニングし、1日4回(8:00~16:00の間)トレーニングし、毎回異なる入水点からマウスを降ろし、毎回トレーニングの間隔は少なくとも30minとし、入水点の順序を毎日変えて合計6日間トレーニングした。実験日:トレーニング日終了の24時間後に実験を行った。プラットフォームを取り外し、マウスがトレーニングされていない入水点から水に入り、1分間録画した。Etho Vision XT 14ソフトウェアを使用して録画を分析し、記録パラメータは、目標象限に入るまでの回避待ち時間、プラットフォームを横切った回数、目標象限にある滞留時間を含んだ。
【0423】
4.1 ポリペプチドの経口投与
生後10か月のAPP/PS1遺伝子組換えマウス(南模生物から購入)を選択し、これらのマウスを3群に等分し、これらのマウスに、PBS緩衝液(群2)、QD202(群3、QD202の投与量が6.25mg/kg(ここで、QD202の濃度が500μM))及びメマンチン(群4、メマンチンの投与量が1.25mg/kg、ここで、メマンチンの濃度が1mM)をそれぞれ強制経口投与し、強制経口投与により如何なる試薬も与えなかった生後10か月のC57 BL/6マウスを対照(群1)とした。
【0424】
この4群のマウスについて、上記行動試験を行った。
【0425】
結果から、QD202を1週間連続的に強制経口投与した後、APP/PS1遺伝子組換えADマウスは、新しい物体識別(図2を参照)及び水迷路行動(図3を参照)の検出において、明らかな学習認知機能の改善を示したことが分かった。
【0426】
4.2 ポリペプチドの静脈内注射
生後10か月のAPP/PS1遺伝子組換えマウス(南模生物から購入)を選択し、これらのマウスを2群に等分し、これらのマウスに、PBS緩衝液(群2、PBSの濃度が500μM)、QD202(群3、QD202の投与量が1.25mg/kg、ここで、QD202の濃度が500μM)をそれぞれ静脈内注射し、静脈内注射により如何なる試薬も与えなかった生後10か月のC57 BL/6マウスを対照(群1)とした。
【0427】
この4群のマウスについて、上記行動試験を行った。
【0428】
結果から、QD202を1週間連続的に静脈内注射した後、APP/PS1遺伝子組換えADマウスは、新しい物体識別(図4を参照)及び水迷路行動(図5を参照)の検出において、明らかな学習認知機能の改善を示したことが分かった。
【0429】
これから分かるように、QD202は、学習能力、特に記憶能力及び認知能力に対して顕著な改善作用を有した。
【0430】
実施例5 修飾ポリペプチド、及び学習能力に対するその改善作用
5.1 二量体形態のポリペプチド
QD202二量体の調製:QD202を取り、10mg/mLの濃度で水に溶解し、希アンモニア水を加えてPH値を8~9の間に調節し、24時間撹拌しながら酸化させ、その間、HPLCにより反応終点を監視し、酸化が完了した後、更にHPLCにより精製されてQD202二量体を得た。QD202二量体は、配列番号18に示されるアミノ酸配列を含んだ。
【0431】
実施例4に記載された方法に従って、QD202二量体を使用してマウスの錐体ニューロンの自発興奮性シナプス後電流を検出した。ここで、対照は、人工脳脊液の正常な潅流中に記録した自発興奮性シナプス後電流結果を指す。
【0432】
結果は図8に示された。結果から、QD202二量体は、海馬CA1ニューロンの自発興奮性シナプス伝達物質の放出を増加させることができることを示し、主に興奮性シナプス後電流の放出頻度の増加、及び興奮性シナプス後電流の幅の増加に反映された。
【0433】
5.2 システイン修飾ポリペプチド
システイン修飾QD202の調製:Fmoc-Cys(CAm)-OHでFmoc-Cys(Trt)-OHを置き換え、QD202のアミノ酸配列に従って直接合成し、システイン修飾を含むQD202を得た。
【0434】
実施例4に記載された方法に従って、システイン修飾QD202を使用してマウスの錐体ニューロンの自発興奮性シナプス後電流を検出した。ここで、対照は、人工脳脊液の正常な潅流中に記録した自発興奮性シナプス後電流結果を指す。
【0435】
結果は図9に示された。結果から、システイン修飾QD202は、海馬CA1ニューロンの自発興奮性シナプス伝達物質の放出を増加させる活性が消失することを示し、主に興奮性シナプス後電流の放出頻度の減少、及び/又は興奮性シナプス後電流の幅の減少に反映された。
【0436】
5.3 セリン修飾ポリペプチド
セリン修飾QD202の調製:Fmoc-Ser(HPO3Bzl)-OHでFmoc-Ser(tbu)-OHを置き換え、QD202のアミノ酸配列に従って直接合成して、N末端から12位のセリン(S)がリン酸化修飾されたセリン修飾QD202を得た。
【0437】
実施例4に記載された方法に従って、セリン修飾QD202を使用してマウスの錐体ニューロンの自発興奮性シナプス後電流を検出した。ここで、対照は、人工脳脊液の正常な潅流中に記録した自発興奮性シナプス後電流結果を指す。
【0438】
結果は図10に示された。結果から、セリン修飾QD202は、海馬CA1ニューロンの自発興奮性シナプス伝達物質の放出を増加させる活性が消失することを示し、主に興奮性シナプス後電流の放出頻度の減少、及び/又は興奮性シナプス後電流の幅の減少に反映された。
【0439】
実施例6 ポリペプチドとATP6V1B2サブユニットとの結合部位
Mycタグを有するマウスATP6V1B2全長の1-286aa切断配列又は1-172aa切断配列を含む発現プラスミドをそれぞれ構築し、ここで、マウスATP6V1B2全長のアミノ酸配列は配列番号8に示され、マウスATP6V1B2 1-286aaのアミノ酸配列は配列番号10に示され、マウスATP6V1B2 1-172aaのアミノ酸配列は配列番号11に示され、これらのプラスミドはそれぞれ、ATP6V1B2全長発現プラスミド、ATP6V1B2 1-286aa発現プラスミド及びATP6V1B2 1-172aa発現プラスミドと呼ばれた。同時に、EGFPタグを有するQD202発現プラスミドを構築した。
【0440】
293細胞(中国科学院細胞バンク/幹細胞バンクから購入)において、QD202発現プラスミド、及びATP6V1B2全長発現プラスミド、ATP6V1B2 1-286aa発現プラスミド又はATP6V1B2 1-172aa発現プラスミドを同時にトランスフェクトし、48時間後に細胞溶解液を収集し、ATP6V1B2全長タンパク質、1-286aa切断配列又は1-172aa切断配列を濃化するために、溶解液にMyc抗体(Sigma-Aldrichから購入)を加えた。
【0441】
その後、Myc抗体と組み合わせたProtein Gアガロースビーズを加え、ATP6V1B2全長タンパク質、1-286aa切断配列又は1-172aa切断配列及び互いに結合するタンパク質を共沈降させ、最後に免疫ブロット法により、免疫共沈降したタンパク質が検出された。
【0442】
結果は図11に示され、ここで、Atp6v1b2-Myc、b2-286Δ-Myc及びb2-172Δ-Mycはそれぞれ、ATP6V1B2全長タンパク質、1-286aa切断配列又は1-172aa切断配列に対応した。結果から、全長ATP6V1B2タンパク質のみがQD202ポリペプチドに結合することができることを示し、このことから、ATP6V1B2とQD202との結合部位は、ATP6V1B2のN末端から288位~512位のアミノ酸の領域範囲内に位置することが分かった。
【0443】
前述した詳細な説明は、解釈や列挙により提供され、添付される特許請求の範囲を制限するものではない。現在、本願に列挙された実施形態の様々な変更は、当業者にとって明らかであり、且つ添付される特許請求の範囲及びその同等方法の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2025501226000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療に使用される試薬の調製に使用されるATP6V1B2調節剤を含む試薬であって、 前記試薬又はATP6V1B2調節剤は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上させる、
前記試薬。
【請求項2】
前記発現レベルは、ATP6V1B2遺伝子の発現レベル、ATP6V1B2遺伝子の転写レベル及び/又はATP6V1B2タンパク質の発現レベルを含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
前記ATP6V1B2調節剤は、ATP6V1B2タンパク質に結合可能であるか、及び/又は、マウス若しくはヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合可能である、請求項1に記載の試薬。
【請求項4】
前記ATP6V1B2調節剤は、核酸又はその変異体、ポリペプチド又はその変異体、及び/又は低分子を含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項5】
前記ポリペプチド又はその変異体は、シナプス神経伝達物質放出及び/又は興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる、請求項4に記載の試薬。
【請求項6】
前記ポリペプチド又はその変異体は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の試薬。
【請求項7】
前記学習能力は、認知能力、運動能力、記憶能力、及び/又は空間探索能力を含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項8】
前記対象は、哺乳動物を含む、請求項1に記載の試薬。
【請求項9】
前記対象はアルツハイマー病患者を含むか、及び/又は、前記対象は高齢期段階にある、請求項1に記載の試薬。
【請求項10】
(a)前記認知障害は、軽度認知障害(MCI)、中期認知障害、及び後期認知障害を含み、
(b)前記認知障害は、正常な加齢によって引き起こされる認知障害、lews身体的認知症(LBD)、前頭側頭型認知症、及び/又は血管性認知症を含み、
及び/又は、
(c)前記認知障害によって誘発される疾患が、アルツハイマー病、多発性梗塞症、パーキンソン病、エイズ及び/又はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を含む、
請求項1に記載の試薬。
【請求項11】
(a)前記神経変性疾患は、急性神経変性疾患及び慢性神経変性疾患を含み、(b)前記神経変性疾患は、ニューロンの死及びグリア細胞の恒常性によって引き起こされる神経変性疾患、加齢によって引き起こされる神経変性疾患、CNS細胞機能への影響によって引き起こされる神経変性疾患、細胞間の異常なコミュニケーションによって引き起こされる神経変性疾患及び/又は細胞運動損傷によって引き起こされる神経変性疾患を含み、
及び/又は、
(c)前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び/又はハンチントン病(HD)を含む、
請求項1に記載の試薬。
【請求項12】
前記試薬は、経口投与及び/又は注射投与に適するように調製されている、請求項1に記載の試薬。
【請求項13】
前記試薬は、静脈内注射に適するように調製されている、請求項1に記載の試薬。
【請求項14】
ATP6V1B2、その機能的活性断片又はそれらをコードする核酸分子を含む、学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療のための医薬組成物。
【請求項15】
対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする薬物をスクリーニングする方法であって、 当該方法は、対象におけるATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性に対する候補薬物の影響を検出するステップを含み、
前記ステップにおいて、対象に候補薬物を投与した後に、ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性が向上する場合、当該候補薬物は、対象の学習能力の改善、認知障害の治療、及び/又は神経変性疾患の治療を可能にする、
前記方法。
【請求項16】
ATP6V1B2の発現レベル及び/又は活性を向上することができるポリペプチド又はその変異体であって、該ポリペプチドは配列番号5に示されるアミノ配列を含む、ポリペプチド又はその変異体。
【請求項17】
前記ポリペプチド又はその変異体は、シナプス神経伝達物質の放出を増加させるか、及び/又は興奮性シナプス後電流の放出頻度を増加させることができる、請求項16に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項18】
前記ポリペプチド又はその変異体は、ATP6V1B2タンパク質に結合できるか、及び/又はマウス若しくはヒトATP6V1B2タンパク質の288位~512位のアミノ酸配列における少なくとも一部の配列に結合することができる、請求項16に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項19】
前記ポリペプチド又はその変異体は、多量体又はホモ二量体を含む、請求項16に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項20】
アミノ酸配列におけるシステインがスルフヒドリルブロッキング修飾されておらず、且つ、アミノ酸配列におけるセリンがリン酸化修飾されていない、請求項16に記載のポリペプチド又はその変異体。
【請求項21】
請求項16に記載のポリペプチド又はその変異体を含む、薬物の組み合わせ。
【請求項22】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項21に記載の薬物の組み合わせ
【国際調査報告】