(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ガス混合物からジフルオロメタンを選択的に除去するための分離物品及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/32 20060101AFI20250109BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20250109BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20250109BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20250109BHJP
C08F 16/32 20060101ALI20250109BHJP
C08F 34/02 20060101ALI20250109BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D71/32
B01D53/22
B01D69/10
B01D69/12
C08F16/32
C08F34/02
C08J5/18 CEW
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539499
(86)(22)【出願日】2022-12-29
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 US2022082504
(87)【国際公開番号】W WO2023129989
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514100164
【氏名又は名称】クロミス ファイバーオプティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516385790
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ カンザス
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】ジャンク,クリストファー ピー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ウィットニー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シフレット,マーク ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ハーダーズ-ディーデリッヒ,アビー ノエル
【テーマコード(参考)】
4D006
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA08
4D006MA09
4D006MA10
4D006MA25
4D006MB11
4D006MB15
4D006MC28X
4D006MC87
4D006MC88
4D006NA10
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB70
4F071AA26
4F071AF08
4F071BC01
4J100AE65P
4J100AR32Q
4J100AR32R
4J100BA02R
4J100BB18R
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA39
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC25
4J100JA15
4J100JA24
(57)【要約】
本開示は、ジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)及びペンタフルオロエタン(HFE-125、C2F5H)を含む2以上の成分を含むガス混合物から少なくとも1つを分離する、例えば、フィルム、膜等の分離物品に関する。本開示の物品は、ガス混合物から分離される所望の成分を選択的に透過する「選択層」を含む。選択層は、非晶質フッ素化コポリマーから構成される。任意で、物品は、例えば、多孔質支持層、浸透ガスが最も少ない抵抗において選択層から多孔質層に通過し得る「ガター層」、及び、汚れから選択層を保護する保護層等の様々な目的を奏する他の層を有し得る。本明細書で開示する分離物品及びそれらの製造及び使用方法における各構成要素については、以下で説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面及び第2表面と、該第1表面又は該第2表面の少なくとも一方に隣接する選択層とを含む分離物品であり、該選択層は、ガス混合物からジフルオロメタン(HFC-32、CH
2F
2)を選択的に除去するための非晶質フッ素化コポリマーを含む、分離物品。
【請求項2】
非晶質フッ素化コポリマーは、2以上のフッ素化非ジオキソラン環状モノマーを共重合することにより製造される、請求項1に記載の分離物品。
【請求項3】
フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、2以上の以下の化合物:
【化1】
[式中:
R
1及びR
2は、独立して、F、CF
3、CF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;
R
3及びR
4は、独立して、F、CF
3、又はCF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;及び
R
9は、F、CF
3、又はCF
2CF
3である。]
を含む、請求項2に記載の分離物品。
【請求項4】
非晶質フッ素化コポリマーは、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)[PDD]のコポリマーを含む、請求項1に記載の分離物品。
【請求項5】
非晶質フッ素化コポリマーは、約20mol%~約90mol%のPBVE含有量、及び、約20mol%~約90mol%のPDD含有量を有する、請求項4に記載の分離物品。
【請求項6】
非晶質フッ素化コポリマーは、約40mol%~約60mol%のPBVE含有量、及び、約40mol%~約60mol%のPDD含有量を有する、請求項4に記載の分離物品。
【請求項7】
選択層は、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)[PDD]からなる非晶質フッ素化コポリマーである、請求項1に記載の分離物品。
【請求項8】
非晶質フッ素化コポリマーは、約150℃~約260℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項9】
非晶質フッ素化コポリマーは、約10kDa~約2,000kDaの数平均分子量(Mn)を有する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項10】
非晶質フッ素化コポリマーは、約10,000g/mol~約3,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項11】
ガス混合物は、ジフルオロメタン(HFC-32)及びペンタフルオロエタン(HFC-125)を含む、請求項1に記載の分離物品。
【請求項12】
非晶質フッ素化コポリマーは、約5~約50のHFC-125に対するHFC-32の理想的選択性を有する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項13】
非晶質フッ素化コポリマーは、約10~約200のHFC-125に対するHFC-32の拡散率の割合を有する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項14】
物品は、フィルム、膜、チューブ又は繊維を含む、請求項1に記載の分離物品。
【請求項15】
物品は、非晶質フッ素化コポリマーのコーティングを含む、請求項14に記載の分離物品。
【請求項16】
物品は、微孔性支持層に隣接して非晶質フッ素化コポリマーを含む非対称膜を含む、請求項1に記載の分離物品。
【請求項17】
物品は、ガター層に隣接して非晶質フッ素化コポリマーを含む非対称膜を有し、該ガター層は、微孔性支持層に隣接する、請求項1に記載の分離物品。
【請求項18】
物品は、複数の中空繊維膜を含む膜ユニットを有し、該膜ユニットは、供給側及び透過側を有し、該中空繊維は、非晶質フッ素化コポリマーを含む、請求項1に記載の分離物品。
【請求項19】
2以上のフッ素化ガスを含むガス混合物から第1ガス成分を分離する方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の分離物品にガス混合物を通すことを含み、該ガス混合物は選択層に接触する、方法。
【請求項20】
(a)供給側及び透過側を有する分離物品にガス混合物を通す工程であって、該分離物品は、少なくとも第1ガス成分を選択的に透過する選択層を有し、該選択層は、非晶質フッ素化コポリマーを有する工程;
(b)分離物品の供給側から透過側までガス混合物の少なくとも一部を透過するために十分な推進力を供給する工程であって、その結果、分離物品の透過側においてガス透過流れが、分離物品の供給側においてガス保持流れが、それぞれ生じ、ガス透過流れは第1ガス成分を含む工程、
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ガス混合物は、ジフルオロメタン(HFC-32、CH
2F
2)及びペンタフルオロエタン(HFC-125、C
2F
5H)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ガス混合物からジフルオロメタン(HFC-32、CH
2F
2)を選択的に除去する、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年12月30日に出願された米国仮出願第63/295,108号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[背景技術]
ハイドロフルオロカーボン(HFCs)は、冷却及び空調システムで広く使用される化合物の1種である。これらの冷媒は、地球のオゾン層の破壊に繋がるクロロフルオロカーボン(chlorofluorocarbon、CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)冷媒を代替するために作り出された。1992年の気候変動に関する国際連合枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change)を延長する国際条約である京都議定書は、HFC1を含む温室効果ガスの削減目標を定めている。さらに、EU規則第517/2014号において、2030年までに2010年のフッ素化温室効果ガス排出量の最大3分の2まで削減することが施行されている2。最近では、COVID-19の大流行の結果可決された2020年の米国の緊急経済対策には、2035年までにHFC冷媒の生産及び輸入を85%削減する条項が含まれ、最大0.5℃の温暖化防止のためのキガリ改正(Kigali Amendment)の国際プラットフォームが実施される3。高GWP(Global Warming Potential、地球温暖化係数)のHFCの使用を制限する国際的及び国内的な取り組みにおいて、今後20年間で段階的に廃止される共沸冷媒混合物を効果的に処分及びリサイクルするために、エネルギー効率の良好な分離方法が必要とされる。
【0003】
HFC-32(CH2F2)50質量%及びHFC-125(CHF2CF3)50質量%からなる近共沸性冷媒混合物であるR-410Aは、HCFC-22の代替として開発され、業務用及び住宅用の空調用途で多く使用されている4。R-410Aは、2010年に新たな機器における使用が禁止されたHCFC-22(クロロジフルオロメタン(chlorodifluoromethane)、CHClF2)の代替として開発された。世界中で相当量のHFCが流通しており(世界中でHFC1000キロトンと推定される)、産業界がどのように未使用のR-410A及びHFC冷媒の余剰分を処理するかという問題は、共沸混合物の工業的に実現可能な分離方法が存在しないため、複雑化しているタイムリーな問題である5。R-410Aを構成する冷媒に分離することができないときには、冷媒の余剰在庫は、焼却される、又は、大気中に放出されることになる可能性が高い。未使用の冷媒を放出することは違法であるが、厳しい監視がなく行われている。高温焼却は、存在する唯一の処分方法であるが、費用がかかるだけでなくエネルギーを大量に消費する。したがって、R-410AからHFC-32を分離するために持続可能な方法の必要性は、冷媒混合物の既存及び今後の規制により極めて重要になるタイムリーな事項である。
【0004】
フッ素化冷媒ガスは、通常、蒸留により分離されるが、これは、主な分離メカニズムにおいて、成分の沸点及び蒸気圧の相違に依存する。場合によっては、しかしながら、成分が共沸又は近共沸であると、蒸留に基づく分離方法が実際的でないという重要な分離に関する問題が存在する。例えば、広く使用される冷媒R-410Aは、比較的地球温暖化係数が低いHFC-32及び比較的地球温暖化係数が高いHFC-125の2つの化合物の共沸混合物からなる。このような場合、再利用のためにより低いGWP値の成分を分離し、より高いGWP値の成分は焼却又は他の処分形態のために分離することが好ましい。
【0005】
膜系ガス(又は、膜ベース)分離方法は、膜の選択性層を介したガスの透過性の相違の原理に基づいて動作し、膜は多くの場合、ポリマーで形成される。このような分離プロセスの膜材料は、1つ以上のガスに対して非常に大きい透過性を提供し、他のガスに対して非常に低い透過性を提供するように選ばれる。混合ガス流れは、その後、膜の片側に導入され、透過性の大きいガスが優先的に膜を通過し、膜の反対側で「透過」ガス流れが生じる。この透過流れは、入力ガス流れと比較して、高透過性ガスに富む。一方、入力流れは、膜の入力側の表面から膜モジュールの出口に向けて進み、入力ガス流れと比較して低透過性の種類に富む。この流れは、「保持」流れ("retentate" stream)と呼ばれる[例えば、Baker, Membrane Technology and Applications, Wiley, West Sussex, 2012参照]。
【0006】
この膜系分離は操作するために膜を横切る圧力差のみを必要とすることから、比較的簡単かつ信頼性の高い装置で実現でき、通常は、主にコンプレッサー及び膜モジュールから構成される。同じ理由から、これは、通常、上記ガス分離方法よりも遥かに少ないエネルギーを必要とする。さらに、ガス分離の膜系分離方法において、化学吸着法でよく用いられるアルキルアミン等の有毒かつ腐食性物質の使用を回避し、通常資本コストも大幅に低くなる。
【0007】
さらに、膜系分離方法は、ポリマー膜における成分の透過性の相違に基づいて成分を分離することから、その分離特性は、通常、蒸留プロセスの分離特性とは大きく異なる。したがって、成分ガスの膜透過性が実質的に異なる共沸混合物は、蒸留方法では分離できない場合でも、膜方法により分離し得る。したがって、膜系分離方法は、冷媒又はその他のガスの特定の共沸混合物及び近共沸混合物に対して潜在的に期待できる分離方法である。
【0008】
[概要]
本明細書において、ガス、特に、ジフルオロメタン(HFC-32、CH2CF2)及びペンタフルオロエタン(HFC-125、C2F5H)の混合物、を分離するための物品及び方法について説明する。物品は、非晶質フッ素化コポリマーを含む選択層を有する。一の態様において、選択層は、ペンタフルオロエタンに対して小さな透過性を示すが、ジフルオロメタンに対して相対的に大きな透過性を示し、その結果高選択性の膜がもたらされる。本明細書に記載する物品の製造方法及び使用方法も提供する。
【0009】
本開示の他の方法、特徴、及び利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかとなる又は明らかになり得る。全ての追加システム、方法、特徴、及び利点は、全て本明細書に含まれ、本開示の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護される。さらに、記載された実施形態の全ての任意の及び好ましい特徴及び変更は、本明細書に記載する開示の全ての態様において使用可能である。さらに、従属請求項の個々の特徴、及び、記載された実施態様の全ての任意の及び好ましい特徴及び変更は、互いに組み合わせ可能であり、相互に置き換え可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の多くの態様は、以下の図面を参照することにより、よりよく理解し得る。図面の要素は、必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の原理を明確に示すことに重点を置いている。さらに、図面において、同じ参照番号は、複数の図面において対応する部分を示す。
【
図1】
図1は、本明細書で使用される例示的なPDD-co-PBVEコポリマーの
19F NMRを示す。
【
図2】
図2は、本明細書で開示される非晶質フッ素化コポリマーによるHFC-32及びHFC-125の透過性を測定する静的膜装置を示す。
【
図3】
図3は、35℃及び2barにおけるPBVE-co-PDDポリマーのHFC-32(〇)及びHFC-125(□)の透過性を示す。
【
図4】
図4は、35℃及び2barにおけるPBVE-co-PDDポリマーの理想的選択性を示す。
【
図5】
図5は、HFC-32及びHFC-125の混合ガス選択性を測定するために用いた混合ガス透過性装置を示す。
【
図6】
図6は、35℃及び2barにおけるPBVE-co-PDDポリマーのHFC-32(〇)及びHFC-125(□)の溶解度を示す。
【0011】
[詳細な説明]
本明細書に開示される多くの変更及び他の実施形態は、上述の説明及び関連する図面における教示の利点を有することが開示される組成物及び方法に関係する当業者は想到し得る。したがって、本開示は、開示される特定の実施形態に限定されず、変更及び他の実施形態も、添付の請求項の範囲内に含まれることを意図すると理解されたい。当業者は、本明細書に記載された態様について多数の変形例及び適用例を認識し得る。これらの変形例及び適用例は、本開示の教示に含まれ、請求項に包含されることを意図している。
【0012】
本明細書には、特定の用語が使用されるが、これらは、一般的かつ説明的な意味でのみ使用されるが、限定することを目的としたものではない。
【0013】
当業者であれば、本明細書を読むことにより明らかであるように、本明細書に記載及び図示されている各実施形態は、本開示の範囲又は概念から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に取り出し得る又は組み合わせ得る個々の要素及び特徴を有する。
【0014】
記載されている方法は、いずれも記載されている事象の順序で、又は、論理的に可能な他の順序で実施し得る。つまり、明示的に断らない限り、本明細書で説明されている方法又は態様は、その工程を特定の順で実施する必要があると解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項は、いずれも請求項又は明細書において工程が特定の順序に限定されることが具体的に断らない場合、いかなる点においても順序を暗示することを意図しない。これは、工程又は操作フローのアレンジメントに関する論理的な事項、文法構成又は句読法から導きだされる明白な意味、又は明細書に記載されている態様の数又は種類等を含む、解釈に関して非明示的な根拠の場合のいずれにも当てはまる。
【0015】
本明細書に記載されている全ての刊行物は、刊行物が引用されている方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で説明される刊行物は、本出願の出願日より前に開示されたものに対してのみ提供される。本明細書のいかなる開示も、先の発明によってそのような刊行物に本発明が先行しないことを認めるのもではないと解釈すべきである。さらに、本明細書で提供される刊行物の刊行日は、実際の刊行日と異なる場合があり、それぞれ確認が必要となる場合がある。
【0016】
本開示の態様は、システムの法律上の特定の分類(system statutory class)、例えばシステムの分類において説明及び特許請求できるが、これは便宜上のものにすぎず、当業者であれば、本開示の各態様はいかなる法定分類においても説明及び特許請求し得ることを理解するであろう。
【0017】
また、本明細書で使用されている用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものでないことも理解されよう。特に規定されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、開示される組成物及び方法が属する技術分野における当業者が一般的に理解している意味と同じ意味を有する。さらに、一般的に使用されている辞書で定義されている用語等の用語は、本明細書及び関連技術の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的に規定されていない限り、理想的な又は適度に形式的な意味で解釈されるべきではないことも理解されよう。
【0018】
本開示の様々な態様の説明に先立って、以下の定義を設け、特に断わらない限り、それが用いられる。他の用語は、本開示の他の箇所で定義され得る。
【0019】
[定義]
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」又はこれらの変形用語は、非排他的な含有に及ぶことを意図する。例えば、リストアップされた要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素だけに限定されず、そのようなプロセス、方法、物品又は装置の明示的に列挙されていない又はそれらに固有の他の要素を含み得る。さらに、用語「含んでいる(comprising)」は、用語「本質的に構成されている(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」に含まれる例及び態様を含むことを意図する。同様に、用語「本質的に構成されている(consisting essentially of)」は、用語「からなる(consisting of)」に含まれる例を含むことを意図する。
【0020】
本明細書で使用される用語「約(about)」、「おおよそ(approximate)」、「ほぼ(at or about)」及び「実質的に(substantially)」は、問題としている量又は値が、特許請求の範囲に開示される又は本明細書にて教示されるのと同等の結果又は効果をもたらす値又は丁度のその値であり得ることを意味する。即ち、量、サイズ、配合、パラメータ、及びその他の量及び特性は丁度でなく、丁度である必要もないが、許容差、変換係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者に知られているその他の要因を反映して、同等の結果又は効果が得られるように、必要に応じて近似値であっても及び/又は大きく若しくは小さくてもよい。状況によっては、同等の結果又は効果をもたらす値を合理的に決定できないことがある。そのような場合、ここで使用されている「約」及び「ほぼ」は、特に断らない又は示唆しない限り、示された公称値±10%変動することを意味すると一般的に理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又はその他の数量又は特性は、明示的に記載されているかどうかによらず、「約」、「おおよそ」又は「ほぼ」である。「約」、「おおよそ」又は「ほぼ」が数量値の前に記載されている場合、特に断らない限り、パラメータには特定の数量値自体も含まれると理解される。
【0021】
本明細書で使用される用語「任意(optional)」又は「任意に(optionally)」は、その後に記載する事象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味し、これを用いる記載には、そのような事象又は状況が生じる場合及び生じない場合の両方が含まれることを意味する。
【0022】
本明細書及び請求項において、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上、明確に別段の定めがない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「フッ素化環状モノマー」、「コモノマー」又は「コポリマー」に言及する場合、そのようなフッ素化環状モノマー、コモノマー又はコポリマーの2つ以上の混合物又は組み合わせが含まれるが、それに限定されるものではない。
【0023】
本明細書で使用される用語「ガス」は、気体又は蒸気を意味する。
【0024】
本明細書で使用される用語「ポリマー」は、一般に、ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマー、ターポリマー等)並びにこれらの混合物及び変性体を含むが、これらに限定されない。さらに、特に限定されない限り、用語「ポリマー」は、全ての可能である幾何学的構造を含み得る。これらの構造には、アイソタクチック対称性及びアタクチック対称性が含まれるが、特に限定されない。
【0025】
用語「理想的選択性(ideal selectivity)」は、HFC-32の透過性をHFC-125の透過性で割った割合(αHFC-32/HFC-125)である。HFC-32及びHFC-125の透過性を測定するための例示的な方法は、本明細書の実施例2に示される。
【0026】
用語「拡散率の割合」は、HFC-32の溶解性をHFC-125の溶解性で割った割合(DHFC-32/DHFC-32)である。HFC-32及びHFC-125の溶解性を測定するための例示的な方法は、本明細書の実施例8に示される。
【0027】
本明細書で使用される用語「高度にフッ素化された」は、炭素に結合した水素(available hydrogen)の少なくとも50%がフッ素原子で置換されていることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される用語「完全にフッ素化された」及び「パーフルオロ化」は、互換可能であり、炭素に結合した水素(available hydrogen)の全てがフッ素原子で置換されている化合物を示す。
【0029】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、へキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等の分岐又は非分岐の1~24の炭素原子を有する飽和炭化水素基である。アルキル基は、環状又は非環状であり得る。アルキル基は、分岐又は非分岐であり得る。アルキル基は、置換又は非置換であり得る。例えば、アルキル基は、本明細書に記載のアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、エーテル、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シリル、スルホオキソ、又はチオールを含む1以上の基で置換され得るが、これらに限定されない。「低級アルキル」基は、1~6(例えば、1~4)の炭素原子を含むアルキル基である。用語アルキル基は、C1アルキル、C1-C2アルキル、C1-C3アルキル、C1-C4アルキル、C1-C5アルキル、C1-C6アルキル、C1-C7アルキル、C1-C8アルキル、C1-C9アルキル、C1-C10アルキル等、C1-C24アルキルまでを含むものであり得る。
【0030】
明細書を通じて、「アルキル」は、一般に、非置換アルキル基及び置換アルキル基の両方を示すために使用されるが、置換アルキル基とは、本明細書においてアルキル基に特定の置換基を規定することによるものを示す。例えば、用語「ハロゲン化アルキル」又は「ハロアルキル」は、具体的には、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等の1以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。あるいは、用語「モノハロアルキル」は、具体的には、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素等の1つのハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。用語「ポリハロアルキル」は、具体的には、2つ以上のハロゲン原子で独立して置換されたアルキル基を示し、即ち、各ハロゲン置換基は、他のハロゲン置換基と同じハロゲン置換基でなくてもよく、ハロゲン置換基の複数の例が同じ炭素上にある必要はない。用語「アルコキシアルキル」は、以下に具体的に説明するように1以上のアルコキシ基で置換されたアルキル基を示す。用語「アミノアルキル」は、具体的には、1以上のアミノ基で置換されたアルキル基を示す。用語「ヒドロキシアルキル」は、具体的には、1以上のヒドロキシ基で置換されたアルキル基を示す。ある例で「アルキル」が使用され、別の例で「ヒドロキシアルキル」等の特定の用語が使用される場合、用語「アルキル」は「ヒドロキシアルキル」等の特定の用語を示さないことを意味するものではない。
【0031】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」又は「オレフィン」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む構造式を有する、2~24個の炭素原子のフルオロカーボン基である。例えば、(A1A2)C=C(A3A4)等の非対称構造は、E及びZ異性体の両方を含むことを意図している。これは、非対称アルケン基又はオレフィンが存在する、又は、結合記号C=Cによって明示的に示され得る本明細書の構造式において推測され得る。一の態様において、「アルケニル」又は「オレフィン」化合物は、2つの炭素-炭素二重結合を含み得る(例えば、ジエンである)。
【0032】
割合、濃度、量、及びその他の数値データは、本明細書においては範囲形式で表現され得ることに留意すべきである。さらに、各範囲の端点は、他の端点と関連して、また、他の端点と独立して重要であることが理解されよう。本明細書において多くの数値が開示されており、各数値は、本明細書において、その値自体に加えて、「約」その特定の値として開示されることが理解されよう。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。範囲は、本明細書において、「約」ある特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までで示され得る。同様に、値が、先行詞「約」を使用して近似値として表現される場合、特定の値がさらなる態様を形成し得る。例えば、値「約10」が開示されると、「10」も開示される。
【0033】
範囲が示される場合、さらなる一の態様において、1つの特定の値から及び/又は別の特定の値までを含む。例えば、記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、含まれる限界値の一方又は両方を含まない範囲も開示に含まれる。例えば、語句「xからy」には、「x」から「y」までの範囲と、「x」より大きく「y」より小さい範囲とが含まれる。範囲は、例えば語句「約x、y、z、又はそれより少ない」のように上限値として記載され得ると、特定の範囲「約x」、「約y」及び「約z」、並びに、範囲「x未満」、「y未満」及び「z未満」も含むと解釈し得る。同様に、語句「約x、y、z、又はそれより大きい」は、特定の範囲「約x」、「約y」及び「約z」、並びに、範囲「xより大きい」、「yより大きい」及び「zより大きい」も含むと解釈し得る。さらに、語句「約『x』から『y』まで」(「x」及び「y」は数値)は、「約『x』から約『y』まで」を含む。
【0034】
このような範囲形式は、便宜上及び簡潔にするために使用されており、したがって、範囲の限界として明示的に記載されている数値だけでなく、各数値及びサブ範囲が明示的に記載されている場合にその範囲内又はサブ範囲に含まれるすべての個別の数値を含むと柔軟に解釈されるべきであると理解されよう。例えば、「約0.1~5%」の数値範囲は、明示的に記載されている約0.1%~約5%の値だけでなく、示された範囲内の個別の値(例えば、約1%、約2%、約3%、及び約4%)及びサブ範囲(例えば、約0.5%~約1.1%;約5%~約2.4%;約0.5%~約3.2%、及び約0.5%~約4.4%、及びその他の可能なサブ範囲)も含むように解釈されるべきである。
【0035】
本明細書で使用される用語「約(about)」、「おおよそ(approximate)」、「ほぼ(at or about)」及び「実質的に(substantially)」は、問題としている量又は値が、特許請求の範囲に開示される又は本明細書にて教示されるのと同等の結果又は効果をもたらす値又は丁度のその値であり得ることを意味する。即ち、量、サイズ、配合、パラメータ、及びその他の量及び特性は丁度でなく、丁度である必要もないが、許容差、変換係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者に知られているその他の要因を反映して、同等の結果又は効果が得られるように、必要に応じて近似値であっても及び/又は大きく若しくは小さくてもよい。状況によっては、同等の結果又は効果をもたらす値を合理的に決定できないことがある。そのような場合、ここで使用されている「約」及び「ほぼ」は、特に断らない又は示唆しない限り、示された公称値±10%変動することを意味すると一般的に理解される。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又はその他の数量又は特性は、明示的に記載されているかどうかによらず、「約」、「おおよそ」又は「ほぼ」である。「約」、「おおよそ」又は「ほぼ」が数量値の前に記載されている場合、特に断らない限り、パラメータには特定の数量値自体も含まれると理解される。
【0036】
本明細書に示される全てのパーセントは、特に断らない限り、体積基準である。特に断らない限り、本明細書に示される温度は大気圧(即ち、1気圧)基準である。
【0037】
本明細書において、ジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)及びペンタフルオロエタン(HFC-125、C2F5H)を含む2以上の成分を含むガス混合物から少なくとも1つの成分を分離する、例えばフィルム、膜等の分離物品について説明する。開示される物品は、ガス混合物から分離すべき所望の成分に対して選択的に透過性である「選択層」を含む。選択層は、非晶質フッ素化コポリマーから構成される。必要に応じて、物品は、例えば、多孔質支持層、透過ガスが選択層から多孔質層へと最小限の流れ抵抗で通過できるようにする「ガター層(gutter layer)」、及び選択層を汚れから保護する保護層等、種々の目的を奏する他の層を含み得る。ここで説明する分離物品の各構成要素、及びそれらの製造方法と使用方法を以下に示す。
【0038】
[非晶質フッ素化コポリマー]
本明細書に記載される分離物品は、1以上の非晶質フッ素化コポリマーを含む。一の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、2以上のフッ素化非ジオキソラン環状モノマーを共重合することによって生成される。以下に、コポリマーの成分及び生成方法を説明する。
【0039】
[フッ素化非ジオキソラン環状モノマー]
一の態様において、フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、オレフィン構造を有し得、モノマーは1以上の炭素-炭素二重結合を有する。他の態様において、フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、共役又は非共役ジエンであり得る。一の態様において、代表的なフッ素化環状モノマーには、以下のスキーム1に示す1以上のオレフィン化合物、並びにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
他の態様において、フッ素化環状モノマーには、重合するとフッ素化環を生成する1以上の非環式モノマーが含まれ得る。例えば、スキーム1に示す3番目の構造は、重合時に環化して5員環を生成し得る。
【0041】
・スキーム1:フッ素化非ジオキソラン環状モノマー
【化1】
R
1及びR
2は、独立して、F、CF
3、CF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;
R
3及びR
4は、独立して、F、CF
3、又はCF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;及び
R
9は、F、CF
3、又はCF
2CF
3である。
【0042】
一の態様において、フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、以下の構造を有し、ここでR
1及びR
2は、CF
3である。他の態様において、R
1はFであり、R
2はCF
3である。
【化2】
【0043】
他の態様において、フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、
【化3】
である。
【0044】
一の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、2以上のフッ素化非ジオキソラン環状モノマーの共重合により生成される。別の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)(perfluoro(butenyl vinyl ether、PBVE)、パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(perfluoro(2,2-dimethyl-1,3-dioxole、PDD)を含む少なくとも2つの異なるフッ素化非ジオキソランから生成される。
【0045】
・スキーム2:フッ素化非ジオキソランモノマー
【化4】
【0046】
一の態様において、本明細書に開示されるのは、PBVE及びPDDを含む2以上のモノマーを共重合して生成される非晶質コポリマーであり、(a)PBVEモノマーは、閉環重合して5員環及び6員環を形成し、(b)PDD及びPBVEモノマーは、両方とも共重合体にランダムに組み込まれ、PBVEコモノマーは約20mol%~約90mol%の量である。一の態様において、本明細書に記載されるコポリマーの生成のために使用するPBVEの量は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90mol%であり、いかなる値も範囲の下限値及び上限値となり得る(例えば、40mol%~60mol%、45mol%~55mol%等)。
【0047】
一の態様において、本明細書に記載されるコポリマーの生成のために使用するPDDの量は、約20mol%~約90mol%、又は約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又は90mol%であり、いかなる値も範囲の下限値及び上限値となり得る(例えば、40mol%~60mol%、45mol%~55mol%等)。別の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)[PDD]のみからなる。得られた共重合体の構造をスキーム3に示す。
【0048】
・スキーム3:PBVE-PDDコポリマー
【化5】
【0049】
一の態様において、本明細書に記載される非晶質フッ素化コポリマーは、溶液重合又は水性エマルジョン重合により合成し得る。別の態様において、溶液法を用いる場合、適切な溶媒は、例えば、パーフルオロオクタン、Vertrel(登録商標)XF(CF3CFHCFHCF2CF3)、又はFluorinert(登録商標)FC-43(パーフルオロトリ-n-ブチルアミン)等のポリ-又はパーフルオロ化合物であり得る。別の態様において、水性エマルジョン法を用いる場合、適切な界面活性剤が使用され得る。一の態様において、開示されるポリマーは、場合によりいかなる溶媒も用いずに重合し得る。さらに別の態様において、開始剤は、炭化水素過酸化物、フルオロカーボン過酸化物、炭化水素ペルオキシジカーボネート、及び過硫酸塩等の無機タイプのもの等のフルオロポリマーの場合に通常使用されるものから選択され得る。
【0050】
一の態様において、重合に用いるモノマーの相対的な反応性に応じて、これらは単一のプレチャージとして加えてもよく、又は、これらは所望の共重合体組成物を生成するために比率を調整した混合物として共供給する必要がある場合がある。
【0051】
他の態様において、重合が完了したと判断される場合、ポリマーは、当該技術分野において公知の方法を用いて分離され得る。一の態様において、溶液法の場合、溶液(及び未反応のモノマー)は、大気圧又はより低い圧力で蒸留することにより除去し得る。いくつかの態様において、本開示のポリマーは典型的に高粘度かつ非晶質性であることから、残留溶媒を除去するために、さらに徹底した乾燥がしばしば求められる。別の態様において、これは、2~48時間、大気圧又はより低い圧力において200~300℃に加熱することを含み得る。他の態様において、水性エマルジョン法の場合、エマルジョンは、凍結/解凍、硝酸等の強鉱酸の添加、高せん断混合、又はこれらの方法の組み合わせを含むいくつかの方法によって崩され得る。
【0052】
実施例において、本明細書に記載するコポリマーを生成するための非限定的な手順を提供する。
【0053】
一の態様において、本明細書で用いられる非晶質フッ素化コポリマーの組成は、通常、19F NMR分光法により測定され得る。さらにこの態様において、ポリマーはパーフルオロベンゼンに容易に溶解し、重水素ベンゼン(C6D6)の挿入プローブは、ロックシグナルを与えるために用い得る。さらなる態様において、示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry、DSC)は、ガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)を測定するために使用し得、分子量分布は、屈折率、低角度光散乱及び直角光散乱検出器を含むマルチ検出器分析モジュールと組み合わせたペルフルオロ溶媒を用いたスチレン-ジビニルベンゼンカラムのゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)を用いて、又は、技術分野において既知の他の適切な装置及び/又は方法を用いて、測定し得る。必要に応じて、一の態様では、末端基の種類及び濃度は、ポリマーのフィルムをプレスし、透過モードで赤外線(infrared、IR)スペクトルを得ることにより測定し得る。
【0054】
一の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、約150℃~約260℃、又は約150℃、175℃、200℃、225℃、250℃又は260℃又は上記値のいずれかの組み合わせ、又は上記値のいずれかを含む範囲のガラス転移温度を有し得る。
【0055】
さらに他の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、約10kDa~約2,000kDa、又は10kDa、50kDa、100kDa、150kDa、200kDa、250kDa、300kDa、350kDa、400kDa、450kDa、500kDa、550kDa、600kDa、650kDa、700kDa、750kDa、800kDa、850kDa、900kDa、950kDa、1,000kDa、1,050kDa、1,100kDa、1,150kDa、1,200kDa、1,250kDa、1,300kDa、1,350kDa、1,400kDa、1,450kDa、1,500kDa、1550kDa、1,600kDa、1,650kDa、1,700kDa、1,750kDa、1,800kDa、1,850kDa、1,900kDa、1,950kDa、又は2,000kDa、又は上記値の組み合わせ、又は上記値のいずれかを含む範囲の数平均分子量(number average molecular weight、Mn)を有し得る。
【0056】
さらに別の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、約10,000g/mol~約3,000,000g/mol、又は10,000g/mol、50,000g/mol、100,000g/mol、200,000g/mol、300,000g/mol、400,000g/mol、500,000g/mol、600,000g/mol、700,000g/mol、800,000g/mol、900,000g/mol、1,000,000g/mol、1,100,000g/mol、1,200,000g/mol、1,300,000g/mol、1,400,000g/mol、1,500,000g/mol、1,600,000g/mol、1,700,000g/mol、1,800,000g/mol、1,900,000g/mol、2,000,000g/mol、2,100,000g/mol、2,200,000g/mol、2,300,000g/mol、2,400,000g/mol、2,500,000g/mol、2,600,000g/mol、2,700,000g/mol、2,800,000g/mol、2,900,000g/mol、又は3,000,000g/mol、又は上記値の組み合わせ、又は上記値のいずれかを含む範囲の重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)を有し得る。
【0057】
別の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、40mol%~60mol%のPBVE含有量及び40mol%~60mol%のPDD含有量、約250,000g/mol~約350,000g/molの重量平均分子量(Mw)、及び約150,000g/mol~約350,000g/molの数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0058】
[分離物品及びその適用]
本明細書では、非晶質フッ素化コポリマーを含む又は非晶質フッ素化コポリマーから形成される分離物品について説明する。一の態様において、物品は多層構造物品であり、構造の少なくとも1つの層は本明細書で説明するコポリマーを含む又はそのようなコポリマーから形成される。別の態様において、物品はフィルム、膜、チューブ又は繊維であり得る。
【0059】
さらに別の態様において、物品は、非晶質フッ素化コポリマーの層又はコーティングを含み得る。一の態様において、上記層又はコーティングは、1μm以下の厚さを有し、又は、約950、900、850、800、750、700、650、600、550、又は約500nm以下、又はこれらの数値のいずれかの組み合わせ、又はこれらの数値のいずれかを含む範囲の厚さを有する。他の態様において、上記層又はコーティングは、約50nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、又は1μm、又はこれらの数値のいずれかの組み合わせ、又はこれらの数値のいずれかを含む範囲の厚さを有する。
【0060】
さらに別の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、分離物品として使用するために必要な又は望ましい任意の形状に形成又は成形し得る。選択層に選ばれたコポリマーを、単層又は複数層のフィルム又は膜として成形する方法は数多く知られている。いくつかの態様において、選択層は、単層膜として、非晶質フッ素化コポリマーの支持されていないフィルム、チューブ、又は繊維を含み得る。いくつかの態様において、支持されていないフィルムは、膜を通過する望ましいガスフローの許容のためには厚すぎる場合がある。したがって、いくつかの態様において、膜は、はるかに大きい透過性を有する支持構造の上部に位置する(即ち、それに隣接又は接触する)非晶質フッ素化コポリマーの非常に薄い選択層を含み得る。例えば、一の態様において、膜は、より高密度の選択層が微孔性支持層の上に位置する、一体となった非対称膜を含み得る。このような膜は、もともとLoeb及びSourirajanによって開発され、平らなシート状又は中空繊維状の膜の製造は、例えば、Loebの米国特許No.3,133,132、並びに、Henis及びTripodiの米国特許No.4,230,463に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
いくつかの態様において、膜は、少なくとも1つの選択層を含む複数の層を含み得、各層はそれぞれ異なる目的を果たす。さらにこの態様では、そのような多層複合膜において、機械的強度を提供する微孔性支持層を有し得る。他の態様において、多層膜は、微孔性支持層上に例えばコーティングした(即ち、隣接した)非多孔性であるが、高透過性の「ガター」層を含み得る。さらにこの態様において、このガター層は、一般に選択性でなく、代わりに、膜の主要な選択機能を行う極めて薄い選択層を堆積する滑らかな表面を形成し得る。別の態様において、ガター層は、支持層の細孔に透過ガスを導き得る。追加の態様において、選択層は、保護層によって覆われ得る。一の態様において、保護層の主な目的は、ガス流れの特定成分による等、選択層の汚れを防ぐことにある。いくつかの態様において、開示される多層構造は、溶液キャスト法により形成されてもよいが、必ずしもそれによって形成されなくてもよい。このタイプの複合膜を製造するための一般的な製造技術は、例えば、Riley等による米国特許No.4,243,701に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。一の態様において、本明細書に開示されるのは、供給側及び透過側を含むガス分離膜であり、分離膜は、本明細書に開示されるコポリマーを含む、又は、該コポリマーから成る選択層を有する。
【0062】
一の態様において、多層複合膜は、平らなシート状、チューブ状、又は中空繊維状を取り得る。中空繊維状において、一の態様では、多層複合膜は、例えば、米国特許No.4,863,761、5,242,636、及び5,156,888に教示されているコーティング方法を用いて、又は、米国特許No.5,141,642及び5,318,417に示されているダブルキャピラリースピナレットを用いて、本明細書に記載された非晶質フッ素化コポリマーにより形成され得、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。一の態様において、複数の中空繊維は、分離ユニットに収容され得る。
【0063】
他の態様において、膜の選択層の厚さは、分離プロセスの1以上のパラメータに基づいて決定し得る。一の態様において、膜の選択層の厚さは、約1μm未満である。他の態様において、選択層はさらに薄くし得、例えば、選択層は0.5μm以下であり得る。選択層は、一の態様において、25℃の純水素ガスで測定した場合に、少なくとも100GPU(1GPU=1×10-6cm3(STP)/cm2s cm Hg)、好ましくは少なくとも400GPUの圧力規格化フラックス(pressure-normalized flux、圧力差あたりの透過流束)を提供し得るように膜は十分に薄い厚さを有する必要がある。
【0064】
一の態様において、本明細書に記載の分離物品は、機械的に堅固であり、さらに高い熱安定性、及び高い耐薬品性を有する。別の態様において、選択層を形成する本明細書に記載の非晶質フッ素化コポリマーは、典型的にはペルフルオロ溶媒のみに溶解する。さらに別の態様において、これらは、酸、アルカリ類、オイル類、低分子量エステル類、エーテル類及びケトン類、脂肪族及び芳香族炭化水素類、及び酸化剤に浸漬された場合にも、典型的に長年に渡って安定である。さらに別の態様において、これらは、また、ガラス転移温度未満の温度において、長年に渡って熱的に安定である。
【0065】
一の態様において、本明細書に記載の分離物品は、任意の適切な装置にて使用し得る。例えば、膜は、通常、任意の公知の形態に調製され、かつ、任意の適当なタイプのハウジング及び分離ユニットに収容された膜を含むモジュール形態で使用される。任意の数の膜モジュールは、ガス流れを処理するために、(例えば、直列に、又は並列に)組み合わせて使用し得る。膜モジュールの数は、例えば、必要な又は所望の流量、流れの組成、及び分離プロセスの他の動作パラメータを含む1又はそれより多いファクターに基づいて定め得る。分離プロセスにおいて、一の態様において、膜は、ガス混合物を含む流れているガス状供給組成物に晒される。別の態様において、このガスの流れは、膜の供給/保持側(retentate side)を加圧すること、又は、膜の透過側を真空とすることのいずれかにより、膜を挟んで生じる圧力差によって生じる。ガス流れの成分の分離は、一の態様において、膜を介して起こり、ガス混合物のより透過性の成分に富む組成のガス流れをもたらす。逆に、別の態様において、膜の供給/保持側における、モジュールから排出されるガス流れは、ガス混合物のより透過性の成分が少なく、ガス混合物の透過性のより低い成分(又は複数の成分)に富む組成を有する。
【0066】
一の態様において、本開示は、ガス混合物から少なくとも1つの成分を分離するための装置及び方法に関する。他の態様において、開示される装置は、ガス混合物から分離すべき所定の成分に対して選択的に透過性となるように構成された「選択層」を有する、本明細書に記載の分離物品(例えば、膜)を含む。任意に、一の態様において、膜は、多孔質支持層、最小限の流れ抵抗で選択層から多孔質層へガス透過物を通過させる「ガター層」、及び選択層を汚れから保護する保護層等の様々な目的を果たす1以上の他の層を含み得る。
【0067】
本明細書に記載の分離物品は、ガス分離の分野において有用である。一の態様において、本明細書に開示されるのは、ガス混合物から第1ガス成分を分離する方法であり、この方法は、本明細書に記載の分離物品をガス混合物が通過することを含む。一の態様において、分離物品は、本明細書に記載の非晶質フッ素化コポリマーからなる選択層を有する膜である。いくつかの態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、選択層を生成するために層上に溶液をキャストし得る。一の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、1以上の溶媒に溶解できる。逆に、通常溶媒における溶解度が無視し得るほどの結晶性フッ素ポリマーは、好ましくない。別の態様において、結晶性ポリマーは、通常、非晶質ポリマーと比べて低いガス透過性を有する。
【0068】
一の態様において、本明細書に記載の分離物品は、ガス混合物からジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)を除去するのに有効であり、該ガス混合物は、HFC-32及び1以上の追加のフッ素化ガスを含む。一の態様において、本明細書に記載の分離物品は、ペンタフルオロエタン(HFC-125、C2F5H)を除去せずに、ジフルオロメタン(HFC-32、CH3F)を除去するのに有効である。
【0069】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本明細書に記載の分離物品に存在する非晶質フッ素化コポリマーは、HFC-32に対して高透過性を有するが、他のフッ素化ガス、例えば、HFC-125に対しては透過性を有しない。一の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、HFC-125に対するHFC-32の理想的選択性が、約5~約50、又は5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50であり、いずれかの値が範囲の下限値及び上限値となり得る(例えば、20~35)。他の態様において、非晶質フッ素化コポリマーは、HFC-125に対するHFC-32の拡散率が約10~約200、又は10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、又は200であり、いずれかの値が範囲の下限値及び上限値(例えば50~100)となり得る。
【0070】
一の態様において、ガス混合物から第1成分を分離する方法は、開示される膜にガス混合物を含む供給流れを導入することを含む。さらに、該態様において、膜は、第1側、第2側、及び第1成分に対して選択的に透過可能な選択層を有する。即ち、第1成分は、ガス混合物の他の成分よりも選択層を介するより大きい透過性を有する。一の態様において、供給流れは膜の第1側に導入される。さらに、この態様において、推進力(例えば圧力差)は、ガス混合物の少なくとも一部を膜の第1側から第2側に透過させ、膜の第2側に透過流れがもたらされる。さらなる態様において、結果として得られる透過流れは、第1成分に富む。別の態様において、第1成分が減った残留又は保持流れは、膜の第1側から回収され得る。
【0071】
一の態様において、本明細書に開示されるガス分離方法において、該方法は少なくとも以下の工程を含む:
(a)供給側及び透過側を有する分離物品にガス混合物を通す工程であって、該分離物品は、少なくとも第1ガス成分に対して選択的に透過性である選択層を有し、前記選択層は、非晶質フッ素化コポリマーを有する工程;及び
(b)分離膜の供給側から透過側へガス混合物の少なくとも一部を膜を横切って透過させるのに十分な推進力を供給する工程であって、その結果、分離膜の透過側においてガス透過流れを、また、分離膜の供給側においてガス保持流れが生じ、ガス透過流れは第1ガス成分を含む工程。
【0072】
別の態様において、透過流れは、保持流れにおける第1成分の濃度よりも大きい第1成分の濃度を有する。
【0073】
さらに別の態様において、方法は、分離物品の透過側から透過流れを取り出す工程を含む。さらなる態様において、方法は、さらに分離膜の供給側から保持流れを取り出す工程を含む。
【0074】
一の態様において、ガス混合物は、1以上のフッ素化冷媒ガスを含む。別の態様において、ガス混合物は、共沸又は近似共沸ガス混合物を含む。他の態様において、ガス混合物は、共沸又は近似共沸ガス混合物を含み、その成分の1つ以上はフッ素化冷媒である。別の態様において、ガス混合物は、ジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)及びペンタフルオロエタン(HFC-125、C2F5H)を含む。一の態様において、本明細書にて説明する物品及び方法は、HFC-32及びHFC-125を含む混合物からHFC-32を除去することにおいて有効である。一の態様において、ガス混合物におけるHFC-32の約50、55、60、65、70、76、80、86、90超、又は約95%超が分離物品の選択層を透過し、ガス混合物から除去される。
【0075】
[態様]
態様1:第1表面及び第2表面と、該第1表面又は該第2表面の少なくとも一方に隣接する選択層とを含む分離物品であり、該選択層は、ガス混合物からジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)を選択的に除去するための非晶質フッ素化コポリマーを含む、分離物品。
【0076】
態様2:非晶質フッ素化コポリマーは、2以上のフッ素化非ジオキソラン環状モノマーを共重合することにより製造される、態様1に記載の分離物品。
【0077】
態様3:フッ素化非ジオキソラン環状モノマーは、2以上の以下の化合物:
【化6】
を含む、態様2に記載の分離物品
[式中:
R
1及びR
2は、独立して、F、CF
3、CF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;
R
3及びR
4は、独立して、F、CF
3、又はCF
2CF
3、CF
2H、CF
2CF
2H、CFHCF
3、CFHCF
2Hであり;及び
R
9は、F、CF
3、又はCF
2CF
3である。]。
【0078】
態様4:非晶質フッ素化コポリマーは、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)[PDD]のコポリマーを含む、態様1に記載の分離物品。
【0079】
態様5:非晶質フッ素化コポリマーは、約20mol%~約90mol%のPBVE含有量、及び、約20mol%~約90mol%のPDD含有量を有する、態様4に記載の分離物品。
【0080】
態様6:非晶質フッ素化コポリマーは、約40mol%~約60mol%のPBVE含有量、及び、約40mol%~約60mol%のPDD含有量を有する、態様4に記載の分離物品。
【0081】
態様7:選択層は、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)[PBVE]及びパーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)[PDD]からなる非晶質フッ素化コポリマーである、態様1に記載の分離物品。
【0082】
態様8:非晶質フッ素化コポリマーは、約150℃~約260℃のガラス転移温度を有する、態様1~7のいずれか1つに記載の分離物品。
【0083】
態様9:非晶質フッ素化コポリマーは、約10kDa~約2,000kDaの数平均分子量(Mn)を有する、態様1~8のいずれか1つに記載の分離物品。
【0084】
態様10:非晶質フッ素化コポリマーは、約10,000g/mol~約3,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、態様1~9のいずれか1つに記載の分離物品。
【0085】
態様11:ガス混合物は、ジフルオロメタン(HFC-32)及びペンタフルオロエタン(HFC-125)を含む、態様1~10のいずれか1つに記載の分離物品。
【0086】
態様12:非晶質フッ素化コポリマーは、約5~約50のHFC-125に対するHFC-32の理想的選択性を有する、態様1~11のいずれか1つに記載の分離物品。
【0087】
態様13:非晶質フッ素化コポリマーは、約10~約200のHFC-125に対するHFC-32の拡散率の割合を有する、態様1~11のいずれか1つに記載の分離物品。
【0088】
態様14:物品は、フィルム、膜、チューブ又は繊維を含む、態様1~13のいずれか1つに記載の分離物品。
【0089】
態様15:物品は、非晶質フッ素化コポリマーのコーティングを含む、態様14に記載の分離物品。
【0090】
態様16:物品は、微孔性支持層に隣接して非晶質フッ素化コポリマーを含む非対称膜を含む、態様1~13のいずれか1つに記載の分離物品。
【0091】
態様17:物品は、ガター層に隣接して非晶質フッ素化コポリマーを含む非対称膜を有し、該ガター層は、微孔性支持層に隣接する、態様1~13のいずれか1つに記載の分離物品。
【0092】
態様18:物品は、複数の中空繊維膜を含む膜ユニットを有し、該膜ユニットは、供給側及び透過側を有し、該中空繊維は、非晶質フッ素化コポリマーを含む、態様1~13のいずれか1つに記載の分離物品。
【0093】
態様19:2以上のフッ素化ガスを含むガス混合物から第1ガス成分を分離する方法であって、態様1~18のいずれか1つに記載の分離物品にガス混合物を通すことを含み、該ガス混合物は選択層に接触する、方法。
【0094】
態様20:以下を含む、態様19に記載の方法。
(a)供給側及び透過側を有する分離物品にガス混合物を通す工程であって、該分離物品は、少なくとも第1ガス成分を選択的に透過する選択層を有し、該選択層は、非晶質フッ素化コポリマーを有する工程;
(b)分離物品の供給側から透過側までガス混合物の少なくとも一部を透過するために十分な推進力を供給する工程であって、その結果、分離物品の透過側においてガス透過流れが、分離物品の供給側においてガス保持流れが、それぞれ生じ、ガス透過流れは第1ガス成分を含む工程。
【0095】
態様21:ガス混合物は、ジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)及びペンタフルオロエタン(HFC-125、C2F5H)を含む、態様19又は20に記載の方法。
【0096】
態様22:ガス混合物からジフルオロメタン(HFC-32、CH2F2)を選択的に除去する、態様21に記載の方法。
【実施例】
【0097】
以下の実施例は、本願の請求項に記載される化合物、組成物、物品、デバイス及び/又は方法がどのように製造され及び評価されるかに関する十分な開示及び説明を当業者に提供するために記載しており、開示の単なる例示を意図し、発明者が開示とみなす範囲を制限することを意図していない。(例えば、量、温度等の)数値に関して正確さを確保する努力を行っているが、多少の誤差及び偏差は考慮されるべきである。特に断りがない限り、部は重量部であり、温度は℃である又は室温(又は周囲温度)であり、圧力は大気圧又は大気圧に近い値である。
【0098】
[実施例1]
PDD-co-PBVEコポリマーの合成
【化7】
【0099】
パーフルオロオクタン溶媒(480mL、854g)を、マグネチックスターラーバーとともにデュランガラスジャー(Duran glass jar、1000mL)に加えた。蓋を取り付け、アルゴン源及び真空(30Torr)用のバルブを接続した。真空/アルゴンのバックフィルを4回繰り返し、溶媒を脱気した。新たに蒸留したPDD(35.0mL、56.0g)を、シリンジを用いて加え、続いてPBVEコモノマー(35.0mL、44.7g)を加えた。重合は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマーパーオキサイド(hexafluoropropylene oxide dimer peroxide、HFPO-DP、[CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO]
2)溶媒(3.0mL、Vertrel XF中0.16M)を加えることにより開始した。溶媒は22℃で20時間撹拌することにより完全にゲル化した。ゲルは真空オーブン(275℃、200milliTorr)で15時間乾燥させ、白いコポリマー55gを得た。
19F NMR(
図1)により測定したところ、組成は81/19mol% PDD/PBVEであった。TgはDSCにより182℃と測定した。パーフルオロオクタンを用いたGPCにより、Mn=220,000g/mol及びMw=297,000g/molであった。PDD及びPBVE量を変えることにより、異なるPDD及びPBVE含有量のコポリマーを合成した。
【0100】
[実施例2]
50%PBVE/50%PDDにおけるHFC-32及びHFC-125の単一ガス透過性
HFC-32及びHFC-125の透過性(又は透過係数)を、静的膜装置(static membrane apparatus)及び圧力上昇法(pressure rise method)を用いて測定した。透過性測定装置の概略図を
図2に示す。装置は、H
2Oを除去するために、モレキュラーシーブドライヤー(W.A. Hammond Drierite Company Ltd.、L68NP303)を備えたドラフトチャンバー内に設置される。真空/ターボポンプ(Pfeiffer HiCube 80 Eco, TC 110を有するHiPace 80 Turbo Pump、DN 63 ISO-K)は、透過性測定前に、低真空度(10
-4torr)で装置及びサンプルを脱気するためにドラフトチャンバー内に設置される。温度制御システム(Cal Controls 3300 Series Temperature Controller)は、293.15~373.15kでサンプルを加熱及び温度測定し得る。
【0101】
静的膜装置は、真鍮ディスクに接着されたポリマーフィルムを通過するガスの透過係数を測定する。真鍮ディスクは既知面積の孔(1.28cm
2)を有し、既知の厚さのポリマーフィルムがエポキシ瞬間接着剤を用いて接着される。ポリマーフィルムの厚さは、デジタルマイクロメーター(Starrett Digital IP67 Outside Micrometer、No. 796.1)を用いて測定する。装置を組み立てる時、接着フィルムを設けた真鍮ディスクは、焼結金属支持ディスク上に設けられる。焼結金属ディスクの底面は装置の下流側であり、透過率の計算式に使用される既知の容積を有する。下流側の容積は、容積を得るために、既知の質量及び密度の液体を下流側に加えて測定した。ポリマーフィルムを通過する種(species)の透過性は、式(1):
【数1】
を使用することにより計算される。
【0102】
フッ素ポリマーは、真鍮ディスクとの接着性を高めるために、まずエッチング溶液(FluoroEtch(登録商標)、安全性溶媒)で処理された。単一ガスの浸透性データは、
図3に示すように、35℃及び2barにおいてHFC-32及びHFC-125の両方において採取した。透過テストは、定常状態の透過に達するまで行った。50%PBVE/50%PDDコポリマーフィルムにおけるHFC-32及びHFC-125の透過性の結果は表1に記載され、28±7の高選択性が示される。
【0103】
【0104】
[実施例3]
様々な組成のPBVE-co-PDDにおけるHFC-32及びHFC-125の単一ガス透過性
HFC-32及びHFC-125の純ガス透過性(透過係数)を、
図3に示すように、PBVE-co-PDD膜の5つの異なる組成(89/11%、50/50%、30/70%、5/95%、100/0%)において測定した。HFC-125に対するHFC-32の透過率の比率(つまり、理想的選択性)は、50%PDD組成にて最高値となり、PDD比率が低い場合及び高い場合には低くなる。
【0105】
[実施例4]
50%PDD/50%PBVEにおけるHFC-32及びHFC-125の単一ガス透過性に対する温度の影響
50%PDD/50%PBVEにおけるHFC-32及びHFC-125の単一ガス透過性を50℃で測定した。実施例2と同じ手順で、様々な温度において単一ガスの透過性を測定した。装置は、測定用のフィルムで透過性測定を行う前に、少なくとも12時間、測定温度にて10-4torrまで真空引きした。透過性の温度依存性は表2に示され、温度が高くなっても選択性に大きな変化が生じないことが分かる。
【0106】
【0107】
[実施例5]
PBVE-co-PDDの組成の変動におけるHFC-32及びHFC-125の単一ガス透過性
100%PBVE、89%PBVE-11%PDD、50%PBVE-50%PDD、30%PBVE-70%PDD、及び5%PBVE-95%PDDからなるポリマーフィルムにおけるHFC-32及びHFC-125の透過性を測定し、
図3及び表3に示した。
【0108】
理想的選択性は、HFC-125の透過性で除したHFC-32の透過性の割合である。α
HFC-32/HFC-125=約28である理想的選択性の最大値は、
図4及び表3に示すように、50%PBVE-50%PDDコポリマー組成において得られる。
【0109】
【0110】
[実施例6]
PBVE-co-PDDポリマーにおけるHFC-32及びHFC-125の混合ガスの選択性
50mol%PBVE-50mol%PDD及びその他のPBVE-co-PDDポリマーにおけるHFC-32及びHFC-125の混合ガスの選択性は、真鍮ディスク上に膜の小片を接着し、これを
図5に示す混合ガス透過性装置に取り付けて測定した。サンプルは、揮発性不純物を除去するために、少なくとも12時間10
-4toorに真空引きした。装置の上流側の面の圧力は、HFC-32及びHFC-125の上流側の組成を一定に保つために、膜の表面を流れるR-410Aにより一定の圧力約10barに維持された。得られた保持物(retentate)は、その後、HFC-32及びHFC-125の分析用に調整され質量分析計(Hiden Isochema Ltd.、IGA 003、Warrington、United Kingdom)により測定された。分析は、選択性の安定性を確認するために4日間行った。混合ガスの選択性の結果を、表4に示す。テストした組成の混合ガスの選択性の測定値は、表3に示すHFC-32/HFC-125の算出された理想的選択性と特に一致する。
【0111】
【0112】
[実施例7]
PBVE-co-PDDにおけるHFC-32及びHFC-125の溶解性
重量測定用マイクロ天秤(gravimetric microbalance、 Hiden Isochema Ltd., IGA 003, Warrington, United Kingdom)を使用して、ポリマーフィルムへのHFC-32及びHFC-125のガス吸収を測定した。重量マイクロ天秤は、ガス組成、温度、又は圧力の関数としてサンプルの質量の変化を測定でき、動的パラメータ及び吸着平衡の測定を可能にする6。重量マイクロ天秤の機器構成及び理論については、先の文献において詳細に説明されているが、手順に変更が加えられている7。ポリマーフィルム(300mg)の矩形のストリップ(4cm×1cm)を小さな銅フックに取り付け、タングステンの吊り下げワイヤーに吊り下げた。サンプルは、残留水分又は揮発性不純物を取り除くために、24時間測定温度にて真空(10-10MPa)下において脱ガス処理された。熱力学的平衡を確立するために、各圧力ポイントは、12時間の最も短い必須条件で完結した。平衡安定性及び動的吸着プロフィールは、HISorpソフトウエアプログラムにより測定された。マイクロ天秤は、静的モード又は動的モードの2つの異なるモードで操作され得る。静的モードでは、吸入及び排気バルブを用いてガスはサンプルから排出され、圧力が一定に維持される。動的モードでは、排気バルブにより設定圧力が制御され、ガスの連続的な流れがサンプルを通過する6。これらの実験において、平衡は静的モードで操作された。ジャケット付きウォーターバスは、サンプルの温度をコントロールするために用いられ、サンプル及びカウンターウエイトの温度は、誤差±0.1KのK型in-situ熱電対で測定した。熱電対は、±0.005Kの精度のプラチナ抵抗温度計(Hart Scientific SPRT model 5699及びSPRT module 2560を有する読み取り装置Hart Scientific Blackstack model 1560)を用いて検量した。IGAマイクロ天秤の分析能は、所定の温度及び圧力における吸収及び脱着測定について0.0001mgである6。PBVE及びPBVE-co-PDDフィルムにおけるHFC-125及びHFC-32の吸着等温線を測定した。
【0113】
ポリマーフィルムの透過ガスの吸着データから、各浸透物の溶解度は、式:
【数2】
を用いて計算した。ここで、Sは溶解度、Cは濃度、及びpは透過物圧力である。
【0114】
式(3)を用いて、各フィルムにおける各ペネトラント(permeate、浸透物)の溶解度を、圧力に対してプロットする。無限希釈における溶解度である溶解度係数S
∞は、以下のように定義される。
【数3】
ここで、cは圧力pにおける平衡ペネトラント濃度である。
【0115】
PBVE-co-PDDポリマーにおけるHFC-32及びHFC-125の溶解度は、
図6にPDD含有量の関数として示している。PDD量が増えると、ペネトラントの溶解度が大きくなる。HFC-32及びHFC-125の溶解度を、表5に示す。
【0116】
【0117】
[実施例8]
PBVE-co-PDDポリマーにおけるHFC-32及びHFC-125の拡散率
透過性は溶解度及び拡散率の関数であることから、ポリマーフィルムにおけるHFC-32及びHFC-125の時間依存性の吸収データは、308.15K及び0.2MPaにおいて重量マイクロ天秤を用いて集められた。拡散率は、式(4):
【数4】
に示すフックの第2法則を用いてモデル化された。
【0118】
出願人の分析において、システムを説明するために以下の仮定を設けた。
(1)浸透種は、一次元(水平)拡散プロセスにより溶解する。
(2)薄い境界層が浸透種とポリマーフィルムとの界面に存在し、そこでは、飽和濃度がすぐに形成される。
(3)浸透種及びポリマーフィルムの相互作用は物理的である。
【0119】
これらの仮定に基づき、システムを説明するために以下の境界条件及び初期条件が適用される。
【数5】
ここで、Cは時間の関数であるポリマー材料中の浸透種の濃度、C
sは飽和濃度、δは膜厚、xは水平位置、及びDは一定の拡張係数である。変数分離を用いて初期境界値の問題を解くと、次の解が得られる。
【数6】
ここで、Lはサンプルの厚さである。ポリマーフィルムにおける平均濃度を得るために、式(8)は0からLまで積分され、Lで除し得る。平均濃度は、式(9)で表される。
【数7】
【0120】
式(9)は無限和の項を含むが、最初の20項で十分な数値精度が得られる。特定の温度及び圧力においてポリマー材料中における種(species)の拡散係数を予測することを目的として、非線形回帰は、実験で得られた濃度に拡散モデルを適合させるために使用する。回帰における最もフィットするパラメータは、平衡濃度(CS)及び拡散係数(D)を定めるために使用する。
【0121】
HFC-32及びHF5-125の拡散率は、表6にPDD組成の関数として示す。一般に、拡散率はPDD含有量の増加とともに増加するが、HFC-125に対するHFC-32の拡散率の割合(DHFC-32/DHFC-125)は50mol%PBVE-50mol%PDD組成において最大となり、表6に示すように最大値DHFC-32/DHFC-125=83.8±3.8により示される拡散率の割合により推進される分離が示唆される。
【0122】
【0123】
本開示の上記実施形態は、開示の原理を明確に理解するために記載された実施の単なる可能な例に過ぎないことを強調しておく。開示の概念及び原理から実質的に逸脱することなく、上記実施形態に多くの変更及び変形を加えることができる。このようなすべての変形及び変更は、本開示の範囲内に含まれ、以下の請求項によって保護されることが意図される。
【0124】
[参考文献]
(1)京都議定書-第1約束期間の目標。UNFCCC https://unfccc.int/process-and-meetings/the-kyoto-protocol/what-is-the-kyoto-protocol/kyoto-protocol-targets-for-the-first-commitment-period(2021年1月11日にアクセス)
(2)Mota-Babiloni, A.; Navarro-Esbri, J.; Barragan-Cervera, A.; Moles, F.; Peris, B. 冷凍及びHVACシステムにおける高GWP冷媒の代替としての新しいHFC/HFO混合物に関するEU規則No517/2014に基づく分析(Analysis Based on EU Regulation No 517/2014 of New HFC/HFO Mixtures as Alternatives of High GWP Refrigerants in Refrigeration and HVAC Systems)。International Journal of Refrigeration. 2015. https://doi.org/10.1016/j.ijrefrig.2014.12.021.
(3)Epa. ハイドロフルオロカーボンの段階的削減ルールで提案されたハイドロフルオロカーボン使用の削減による気候保護:アメリカンイノベーション製造法に基づく配分及び取引プログラムの許可量の確立(Protecting Our Climate by Reducing Use of Hydrofluorocarbons Proposed Rule-Phasedown of Hydrofluorocarbons: Establishing the Allowance Allocation and Trading Program under the American Innovation and Manufacturing Act) 2021.
(4)Pardo, F.; Zarca, G.; Urtiaga, A. 冷媒混合物R410Aからジフルオロメタン(R32)を回収するためのPebax-イオン液体膜の供給圧力の影響と長期分離能(Effect of Feed Pressure and Long-Term Separation Performance of Pebax-Ionic Liquid Membranes for the Recovery of Difluoromethane (R32) from Refrigerant Mixture R410A.)。 Journal of Membrane Science 2021, 618, 118744. https://doi.org/10.1016/j.memsci.2020.118744.
(5)IIF-IIR; V., M.; D., C.; L., D. J. 冷凍部門の気候変動への影響(The Impact of the Refrigeration Sector on Climate Change)。 35th Informatory Note on Refrigeration Technologies.; IIF-IIR, 2017.
(6)Shiflett, M. B.; Yokozeki, A. イオン液体中の二酸化炭素の溶解度及び拡散率:[Bmim][PF6]及び[Bmim][BF4](Solubilities and Diffusivities of Carbon Dioxide in Ionic Liquids: [Bmim][PF6] and [Bmim][BF4])。 Industrial and Engineering Chemistry Research, 2005, 44 (12), 4453-4464. https://doi.org/10.1021/ie058003d.
(7)Minnick, D. L.; Turnaoglu, T.; Rocha, M. A.; Shiflett, M. B. レビュー記事:電子ビーム天秤を用いたガス及び蒸気吸着測定(Gas and Vapor Sorption Measurements Using Electronic Beam Balances)、 Journal of Vacuum Science & Technology A: Vacuum, Surfaces, and Films, 2018, 36 (5), 050801. https://doi.org/10.1116/1.5044552.
【国際調査報告】