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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-17
(54)【発明の名称】太陽電池の処理及び製造の方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 10/166 20250101AFI20250109BHJP
   H10F 10/00 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 440
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539520
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022085156
(87)【国際公開番号】W WO2023126152
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2119066.5
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523246639
【氏名又は名称】レック ソーラー プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モク,ヨン スン
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ヨン シン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,シュー ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ユー ハオ
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA05
5F251CA15
5F251CB11
5F251CB18
5F251CB24
5F251CB27
5F251CB28
5F251DA07
5F251EA10
5F251EA16
5F251FA04
5F251FA06
5F251GA04
5F251GA14
(57)【要約】
少なくとも1つの切断された太陽電池の処理方法であって、方法が、少なくとも1つの太陽電池を提供するステップであって、当該電池が、以前に切断プロセスを施されている、ステップと、電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップと、を含む、方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの切断された太陽電池の処理方法であって、
前記少なくとも1つの太陽電池を提供するステップであって、前記電池が、以前に切断プロセスを施されている、ステップと、
前記電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記太陽電池が、ヘテロ接合太陽電池である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャリア注入処理が、光ベースのキャリア注入処理、又は電荷ベースのキャリア注入処理から選択される少なくとも1つの処理を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリア注入処理が、
i.前記電池の少なくとも前記切断端部を、10000lm~60000lmの範囲の光束(lm)を有するハロゲンランプから放射された光に曝露するステップを含むハロゲンランプ処理、
ii.前記電池の少なくとも前記切断端部を、80~180sunの光強度でLEDランプから放射された光に曝露するステップであって、1sunがAM1.5での標準照明に相当する、ステップを含むLEDランプ処理、並びに/又は
iii.少なくとも前記電池の前記切断端部を、指定された所定の波長及び1000~4000Wの範囲の電力を有するレーザーから放射された光に曝露するステップを含むレーザー処理、から選択される光ベースのキャリア注入処理である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キャリア注入処理が、光ベースのキャリア注入処理であり、処理されている前記電池と前記処理で使用される光源との間の距離が、5~40cmの範囲にある、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア注入処理が、前記少なくとも1つの切断された太陽電池に電圧を印加して、電流が流れるようにするステップを含む、電荷ベースのキャリア注入処理を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記電荷ベースのキャリア注入処理が、4~10Aの印加電流で実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア注入処理が、複数の別個のキャリア注入処理ステップを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア注入処理の1つ以上のパラメータが、前記別個のキャリア注入処理ステップ間で変化させられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記処理が、5秒~1時間の合計時間で実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリア注入処理は、電池温度が前記キャリア注入処理中に100℃~300℃の範囲にあるように実行される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数の切断された太陽電池が同時に処理される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
太陽電池の製造方法であって、
(a)結晶性シリコン(c-Si)ウェハを提供するステップと、
(b)前記結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させるステップと、
(c)前記前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層上に、それぞれ、前及び裏透明導電性酸化物(TCO)層を堆積させるステップと、
(d)前記前及び/又は裏TCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために、金属化を実行するステップと、
(e)前記太陽電池を切断するステップと、
(f)前記電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップと、を含み、
前記太陽電池を切断する前記ステップ(e)が、ステップ(a)の後からステップ(d)の後までの任意の時点で実行され、前記電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップ(f)が、ステップ(b)及び(e)の両方が実行された後の任意の時点で実行される、方法。
【請求項14】
前記電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップ(f)は、ステップ(a)~(d)の各々が実行された後に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリア注入処理が、光ベースのキャリア注入処理、又は電荷ベースのキャリア注入処理から選択される少なくとも1つの処理を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させる前記ステップ(b)が、
(i)前記結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏真性非晶質シリコン(a-Si(i))層を堆積させるサブステップと、
(ii)前記前及び裏真性非晶質シリコン(a-Si(i))層の各々の上に、pドープ又はnドープ水素化非晶質シリコン(a-Si(n)、a-Si(p))層を堆積させるサブステップと、を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させる前記ステップ(b)が、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)を使用して実行される、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層上に、それぞれ、前及び裏透明導電性酸化物(TCO)層を堆積させる前記ステップ(c)が、物理蒸着(PVD)を使用して実行される、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記前及び/又は裏TCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために、金属化を実行する前記ステップ(d)が、前記前及び/又は裏TCO層に金属化材料を適用するサブステップと、前記金属化材料から前記1つ以上の金属電極を形成するために熱処理を実行するサブステップと、を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記太陽電池を切断する前記ステップ(e)が、レーザーベースの又はレーザー支援の切断プロセスによって実行される、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~12のいずれか一項に記載の処理方法を施されている、又は請求項13~20のいずれか一項に記載の方法に従って製造された、切断された太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の処理方法、太陽電池の製造方法、及び当該方法に従って処理又は製造される太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(光起電力電池とも称される)は、光起電力効果によって太陽光から電気エネルギーを提供するために使用される。既存の太陽電池技術の技術開発に対する主な原動力のうちの2つは、(i)電池の効率を増加させたいという願望、及び(ii)電池の製作コストを減少させたいという願望である。
【0003】
太陽電池における主要な電子損失メカニズムのうちの1つは、電池内のキャリア再結合である。特に、高密度の再結合活性局在状態を特徴とする直接的な金属/シリコン界面の結果としての電気接点におけるキャリア再結合である。この高い表面状態密度は、界面におけるキャリア再結合速度を増加させる。シリコンヘテロ接合(HJT)太陽電池などの不動態化接触技術の使用は、これらの損失を低減又は最小化することが見出されている。HJT太陽電池は、典型的には、非晶質シリコン、一般的には、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)の前層及び裏層によって囲まれた結晶性シリコンウェハ、c-Si(「基板」と称されることもある)を備える対称構造を特徴とする。前及び裏a-Si層は、真性/ドープ層(層の真性部分は不動態化層を構築し、層のドープ部分はコレクタ層(例えば、電子又は正孔コレクタ層)を構築する)の組み合わせの場合がある。透明導電性酸化物(TCO)層は、典型的には、前及び裏a-Si層上に配設され、これら両方とも反射防止コーティングとして機能するだけでなく、前及び裏TCO層上に配設される金属電極への電荷輸送も可能にする。本明細書では、「前」及び「前方」という用語は、使用中の光源(例えば、太陽)に向かい、太陽電池の前面に直交する方向を指すために使用され、「裏」、「後」、及び「後方に」という用語は、前/前方方向とは反対の方向を指すことが意図されている。
【0004】
HJT太陽電池の太陽電池効率を更に増加させるためにいくつかの研究が行われている。Kobayashi et al.,“Increasing the efficiency of silicon heterojunction solar cells and modules by light soaking”,Solar Energy Materials and Solar Cells,Volume 173,2017,Pages 43-49,ISSN 0927-0248という論文において、シリコンヘテロ接合太陽電池の露光は、露光中の動作電圧、ひいてはそれらの変換効率を増加させることができることが提案されている。著者らは、この性能の改善はヘテロ界面(c-Si/a-Si)の不動態化の改善によるものであるとしている。
【0005】
US2015013758A1は、ホウ素を含まないn型光起電力電池を処理するためのプロセスを開示しており、このプロセスは、20~200℃の温度で実施される熱処理中にn型ヘテロ接合電池を照明するステップを含む。
【0006】
WO2020221399A1は、太陽電池を安定化するための方法を開示しており、安定化ステップは、200℃を上回る温度に太陽電池を加熱することと、光源からの照明を照射することと、を含む。ここで、光源は、2500nm未満の波長範囲の光を放射し、この波長範囲の光源によって放射される光量は、8000Ws/m2よりも多く、安定化ステップは、350℃を上回る温度を伴う最大で10秒の長い温度ピークを伴う温度処理を含む。
【0007】
上記の全ての研究は、例えば、c-Si層内、又はc-Si/a-Si界面でのバルク欠陥又は不純物による、HJT太陽電池の真性欠陥の低減による完全な太陽電池の効率の改善に焦点を当てている。
【0008】
本発明は、上記の考慮事項に照らして考案されている。
【発明の概要】
【0009】
既存の文献は、太陽電池における真性欠陥の低減に起因する完全な太陽電池の効率の改善に焦点を当てているが、本発明者らは、切断プロセス(例えば、半分に切断された電池の形成)を受ける太陽電池の場合、この切断プロセスは、切断後に半分の電池の表面及び端部(edge)における欠陥密度の増加をもたらす可能性があることを認識している。半分に切断された電池の使用は、改善された性能及び耐久性など、完全な電池よりも優れた利点を提供することができる。通常であれば当該電池を組み込む最終的な太陽モジュールの開放電圧及び曲線因子を低減する可能性のある、切断プロセス中にもたらされる欠陥の影響を低減又は最小化することが望ましい。
【0010】
本発明者らは、切断された電池への切断後処理の提供が、そのような処理を受けない切断された電池と比較して、それらの電池の性能を改善することができることを見出した。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの切断された太陽電池の処理方法を提供し、
少なくとも1つの太陽電池を提供するステップであって、電池が、以前に切断プロセスを施されている、ステップと、
電池の少なくとも切断端部(cut edge)にキャリア注入処理を実行するステップと、を含む。
【0012】
具体的には、本発明者らは、切断された太陽電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行することによって、そのような処理を受けていない電池と比較して、フォトルミネッセンス強度、モジュールVoc、及び/又はモジュール曲線因子%(FF%)のうちの1つ以上が有利に改善され得ることを見出した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、これらの性能指標のうちの1つ以上における改善が、以前に切断プロセスを施されていない電池に同じ処理を適用した場合に見られる比較改善よりも高い程度で改善され得ることを見出した。
【0013】
本発明者らは、この方法は、いくつかの異なるタイプの太陽電池に適用可能であり得ると考えており、例えば、太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池(HJT太陽電池)であり得る。代替的に、これは、P型モノラルPERC電池などのPERC太陽電池であり得る。
【0014】
好ましい実施形態では、太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池である。上で考察されたように、HJT太陽電池は、典型的には、非晶質シリコン(a-Si)、一般的には水素化された非晶質シリコン(a-Si:H)の前層及び裏層によって囲まれた結晶性シリコンウェハ、c-Siを備える対称構造を特徴とする。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、切断された電池にキャリア注入処理を適用することによって、注入されたキャリアは、バルク電池内及び切断端部の両方において、例えば、近くの界面状態の修復を助ける注入されたキャリアの再結合からのエネルギー解放の結果として、a-Si/c-Si界面での不動態化を改善し得ると仮定する。代替的又は追加的に、キャリア注入処理は、非晶質層の形成中に「捕捉」される水素ガスの移動度の増加を引き起こし得る。この増加した移動度は、水素が電池内の欠陥部位に移動し、それらを不動態化し、したがって全体的な欠陥密度を低減させ得る。
【0015】
キャリア注入処理は、光ベースのキャリア注入処理を含み得る。代替的に、キャリア注入処理は、電荷ベースのキャリア注入処理を含んでもよい。光ベースのキャリア注入処理は、例えば、ハロゲンランプ処理、LEDランプ処理、及び/又はレーザー処理を含み得る。電荷ベースのキャリア注入処理は、例えば、電子注入処理を含んでもよい。
【0016】
したがって、キャリア注入処理は、
-ハロゲンランプ処理、
-LEDランプ処理、
-レーザー処理、
-及び/又は電子注入処理から選択される少なくとも1つの処理を含んでもよい。
【0017】
いくつかの方法では、キャリア注入処理は、これらの4つのタイプの処理から選択される1つのタイプの処理からなる。他の方法では、これらのタイプのキャリア注入処理のうちの2つ以上は、組み合わせて、例えば、続いて又は同時に使用され得る。しかしながら、異なるタイプの処理を適用することからの利点は、一般に付加的ではないため、処理の複雑さを低減するために、上記のリストから単一のタイプの処理のみを使用することが好ましい場合がある。
【0018】
キャリア注入処理は、所定の処理パラメータ(実行されるキャリア注入処理のタイプに基づいて選択される)を使用して、所定の時間実行される単一の連続キャリア注入処理ステップを含み得る。
【0019】
代替的に、キャリア注入処理は、複数の別個のキャリア注入処理サブステップを含み得る。言い換えれば、キャリア注入処理は、複数の別個の所定の期間にわたって実行され得る。別個のキャリア注入処理ステップの数は、特に限定されず、キャリア注入処理は、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上のサブステップを含み得る。複数の別個のキャリア注入処理サブステップを含むキャリア注入処理を実行することにより、処理される電池のより良好なスループットの利点が得られる。言い換えれば、そのような方法は、工業的効率を改善する可能性がある。
【0020】
合計キャリア注入処理時間は、実行されるキャリア注入処理のタイプに応じて変化し得る。例えば、光ベースのキャリア注入処理は、それらが電荷ベースの処理方法よりも相対的に高いエネルギー強度プロセスであり得るため、電荷ベースのキャリア注入処理よりも短い処理時間を必要とする可能性がある。
【0021】
合計キャリア注入時間は、5秒~1時間の範囲としてもよい。電池の効率のあらゆる有意な改善を観察するために、5秒以上の最小曝露時間が必要とされ得るため、合計キャリア注入処理時間は5秒以上であることが好ましい。処理の長さが増加すると、熱予算(所与の高温動作中に伝達される熱エネルギーの合計量)が増加するため、合計キャリア注入処理時間は1時間以下であることが好ましい。1時間を超える処理を行うことは、電池の劣化、ひいてはその効率の低下をもたらす可能性がある。更に、長時間の処理を提供することはまた、所与の期間に処理することが可能である電池のスループットを低下させ、それによってプロセス効率を低下させる可能性がある。
【0022】
キャリア注入処理が複数の別個のキャリア注入処理サブステップを含む場合、これらのサブステップの各々の間の処理時間は、各々、5秒~800秒としてもよい。光ベースのキャリア注入処理の場合、各サブステップ中の処理時間は、例えば、5~120秒、より好ましくは10~60秒としてもよい。電荷ベースのキャリア注入処理の場合、各サブステップ中の処理時間は、例えば、100~800秒、より好ましくは200~400秒としてもよい。この場合、合計キャリア注入処理時間は、全てのキャリア注入処理サブステップの実行の累積合計時間として計算することができる。例えば、4つの別個の処理ステップが実行され、各々が300秒間実行されている場合、合計処理時間は1200秒(20分)となる。
【0023】
キャリア注入処理は、処理中の電池の温度が、300℃、250℃、200℃、150℃、又は100℃を超えないように実行するようにしてもよい。いくつかの形態では、処理中の電池の温度は、100℃~300℃の範囲としてもよい。処理中の電池の温度が100℃よりも低い場合、より低い温度が少数種における水素の濃度を減少させる可能性があるため、a-Si/c-Si界面における水素不動態化は、それほど効果的ではない可能性がある。処理中の電池の温度が300℃よりも高い場合、これらのより高い温度は、以前に不動態化されたSi-H結合の解離を引き起こし、それによって、電池性能の低下をもたらす可能性がある。
【0024】
キャリア注入処理中の電池の最適な温度は、キャリア注入のタイプに依存する場合がある。
【0025】
光ベースのキャリア注入処理の場合、電池の温度は、約室温から上昇し、200℃以上の温度でピークに達し得る。照明の照射を除去すると、電池は、室温に急速に(例えば、数分又は数秒以内に)戻り得る。特に、光ベースのキャリア注入が単一の電池上で実行される場合、単一の電池は、単位体積当たり相対的に大きい有効表面積を有し得、それによって、処理の終了時に電池からの急速な熱伝達を可能にする。
【0026】
対照的に、電荷ベースのキャリア注入処理の場合、処理中及び処理後により遅い速度の加熱及び冷却が観察される場合がある。特に、これは、以下で更に詳細に考察されるように、複数の電池が同時処理のために積み重ねられている場合に当てはまることがある。なぜなら、熱伝達のための単位体積当たりの有効表面積が相対的に小さい場合があるためである。例えば、電荷ベースのキャリア注入処理が実行されるとき、電池の温度は、室温から上昇して、処理の期間中、約130℃程に維持され得る。処理を停止すると、室温に戻るように冷却するために20分ほどかかる場合がある。電荷ベースのキャリア注入処理のための冷却速度が光ベースの処理よりも遅い場合があるため、キャリア注入処理中のピーク温度は、高温への長時間の曝露によって引き起こされる電池への損傷を回避するために、光ベースの処理のためのピーク温度よりも相対的に低くなるように選択してもよい。
【0027】
処理温度は、キャリア注入処理を通して実質的に一定のままであり得る。代替的に、処理温度は、キャリア注入処理を通して変化させてもよい。キャリア注入処理が複数の別個のキャリア注入処理サブステップを含む場合、処理温度は、全てのサブステップにわたって実質的に同じであり得るか、又はサブステップ間で変化し得る。
【0028】
処理の印加電流、電力、及び/又は光強度(該当する場合)を含むがこれらに限定されない、キャリア注入処理の1つ以上の更なる処理パラメータは、キャリア注入処理を通して実質的に一定のままでもよい。代替的に、そのような処理パラメータのうちの1つ以上は、キャリア注入処理を通して変化させられ得る。特に、キャリア注入処理が複数の別個のキャリア注入処理サブステップとして実行される場合、印加電流、電力、及び/又は光強度(該当する場合)は、別個のキャリア注入処理サブステップの間で変化させてもよい。
【0029】
上記のキャリア注入処理(ハロゲンランプ処理、LEDランプ処理、電子注入処理、及び/又はレーザー処理)の各タイプについての適切な処理パラメータ(印加電流、電力、光強度など)の選択については、キャリア注入処理の各タイプに関連する更なる任意選択の特徴の説明とともに、以下でより詳細に説明する。
【0030】
キャリア注入処理が、電子注入処理などの電荷ベースのキャリア注入処理を含む場合、キャリア注入処理は、電池の切断端部を処理によって注入された電子に少なくとも曝露することを含んでもよい。
【0031】
いくつかの電荷ベースのキャリア注入方法では、電圧が1つ以上の電池に印加されて、電流が流れるようにしてもよい。1つの好適な配置では、電圧は、完全な回路を形成するために、プロセスユニットの2つの電極と電気的に接続された電池を配置することによって、1つ以上の電池に印加され得、次いで、プロセスユニットの電源ユニットは、電極間に電圧を印加し、電流が電池を通って流れるようにする。印加される電圧は、固定又はほぼ固定の電圧であってもよい。
【0032】
電荷ベースのキャリア注入処理は、任意の好適な所定の印加電流で実行してもよい。いくつかの形態では、処理は、4~10Aの印加電流で実行され得る。好ましい形態では、処理は、5~7A、例えば、約4.3A、約5A、約5.5A、約5.8A、約6A、又は約6.7Aの印加電流で実行してもよい。印加電流は、処理を通して同じであってもよい。代替的には、印加電流は、処理を通して変化させてもよい。例えば、処理が一連のサブステップとして実行される場合、第1のサブステップ中の印加電流は、第2のサブステップ中の印加電流とは異なってもよい。
【0033】
いくつかの好ましい方法では、電荷ベースのキャリア注入処理は、一連の4つのサブステップとして実行してもよく、各サブステップは、300秒の時間で実行され、合計処理時間は1200秒である。4つのサブステップの各々の間の印加電流は、例えば、4.3/6/6/6A、5.5/5.8/5.8/5.8A、6/6.7/6.7/6.7A、又は5/5/5/5Aであってもよい。
【0034】
処理プロセス中、電流が電池を通って流れると、電力が散逸し、結果として生じる熱が電池の温度を上昇させてもよい。処理されている1つ以上の電池の電池温度は、例えば、1つ以上の温度センサによって監視され得る。任意の好適な温度センサを使用してもよいが、特に好ましいタイプの温度センサは、非侵襲的な温度測定を可能にする赤外線センサである。次に、電池内で維持されるべき温度(「設定点温度」)を、処理のパラメータとして設定してもよい。1つの配置では、電池温度が設定点温度を超えることを温度センサが検出すると、フィードバックループが、電池温度を設定点温度に維持するために実行される1つ以上のアクションをトリガしてもよい。例えば、電池の温度が設定点温度を超えることを温度センサが検出すると、フィードバックループは、冷却メカニズムをトリガして、それによって電池の温度を低下させて、それを所望の設定点温度に維持し得る。例えば、1つの形態では、圧縮乾燥空気(CDA)供給源は、オンにされるようにトリガされ、それによって、圧縮乾燥空気を適用することによって、電池の温度を設定点温度に維持してもよい。
【0035】
1つの特に好ましい形態では、複数の電池が同時に処理してもよい。そのような形態では、複数の電池は、コインスタック内で一緒に積み重ねて、マガジンに装填してもよい。電池は、直列に積み重ね、1つの電池の負の側が隣接する電池の正の側と接触してもよく、逆もまた同様であってもよい。電荷ベースのキャリア注入処理を実行するために、電池スタックは、マガジン内の2つの金属プレートの間に挟まれ、プロセスユニットの2つの電極の間に配設されて完全な回路を形成するように配置される。次いで、プロセスユニット内の電源ユニットは、電極間に電圧を印加して、電流が複数の電池を通って流れるようにしてもよい。
【0036】
キャリア注入処理がLEDランプ処理を含む場合、LEDランプ処理は、電池の少なくとも切断端部を、80~180sunの光強度でLEDランプから放射される光に露出させるステップを含む。ここで、1sunは、AM1.5での標準的な照明に相当する。AM1.5グローバルスペクトルは、平坦プレートモジュール用に設計されており、ASTM G-173-03(国際規格ISO9845-1、1992)に定義されているように、1000W/m(100mW/cm)の積算電力を有する。光強度は、場合によっては、90sun以上、100sun以上、110sun以上、120sun以上、130sun以上、140sun以上、又は150sun以上であってもよい。光強度は、場合によっては、180sun以下、170sun以下、160sun以下、又は150sun以下であってもよい。
【0037】
処理されている電池と照明光源との間の距離は、5~40cmの範囲であってもよい。例えば、処理されている電池と照明光源との間の距離は、5cm以上、10cm以上、15cm以上、又は20cm以上であってもよい。処理されている電池と照明光源との間の距離は、40cm以下、35cm以下、30cm以下、又は25cm以下であってもよい。
【0038】
1つの好適な方法では、電池は、白色LED光(全スペクトル-AM1.5グローバルスペクトルに相当)を放射するように構成された1つ以上のLEDランプパネルを備える浸漬チャンバ内に搬送されるようにしてもよい。処理時間の長さ(露光時間又は処理時間と称されることもある)は、コンベア速度及び浸漬チャンバの長さによって決定されるようにしてもよい。
【0039】
浸漬プロセス中、電池の温度は、200℃以上の温度まで上昇する場合がある。好ましくは、電池は、上記の理由により、300℃よりも高い温度まで加熱しない方がよい。電荷ベースのキャリア注入プロセスに関連して上述したのと同様の方法で、処理されている1つ以上の電池の電池温度は、例えば、処理中の1つ以上の温度センサによって監視してもよい。また、電池内で維持される温度(「設定点温度」)は、処理のパラメータとして設定してもよく、例えば、電池温度が設定点温度を超えることを温度センサが検出すると、電池温度を設定点温度に維持するために実行されている好適なアクションによって維持されるようにしてもよい。
【0040】
キャリア注入処理がハロゲンランプ処理を含む場合、ハロゲンランプ処理は、電池の少なくとも切断端部を、10000lm~60000lm、より好ましくは約20000lm~約30000lm、より好ましくは約22000lm~約24000lmの範囲の光束(lm)を有するハロゲンランプから放射される光に曝露するステップを含んでもよい。
【0041】
1つの便利な選択肢は、約23400lmの光束を有する市販の1000Wハロゲンランプである。これにより、処理時に電池の好適な性能向上を提供することが見出されている。しかしながら、1ワット当たり1ルーメン~1ワット当たり637ルーメンのルーメン/電力比を有し得る他の市販のハロゲンランプが利用可能である。これらの他の市販のランプは、本発明によるキャリア注入処理を実行するのに好適である場合もある。
【0042】
処理されている電池と照明光源との間の距離は、5~40cmの範囲にあってもよい。例えば、処理されている電池と照明光源との間の距離は、5cm以上、10cm以上、15cm以上、又は20cm以上であってもよい。処理されている電池と照明光源との間の距離は、40cm以下、35cm以下、30cm以下、又は25cm以下であってもよい。
【0043】
1つの好適な方法では、電池は、白色光(全スペクトル-AM1.5グローバルスペクトルに相当)を放射するように構成された1つ以上のハロゲンランプパネルを備える浸漬チャンバ内に搬送されるようにしてもよい。処理時間の長さ(露光時間又は処理時間とも称されることもある)は、コンベア速度及び浸漬チャンバの長さによって決定されてもよい。
【0044】
浸漬プロセス中、電池の温度は、200℃以上まで上昇する場合もある。好ましくは、電池は、上記の理由により、300℃よりも高い温度まで加熱しない方がよい。電荷ベースのキャリア注入プロセスに関連して上述したのと同様の方法で、処理されている1つ以上の電池の電池温度は、例えば、処理中の1つ以上の温度センサによって監視してもよい。また、電池内で維持される温度(「設定点温度」)は、処理のパラメータとして設定してもよいく、例えば、電池温度が設定点温度を超えることを温度センサが検出すると、電池温度を設定点温度に維持するために実行されている好適なアクションによって維持されるようにしてもよい。
【0045】
キャリア注入処理がレーザー処理を含む場合、レーザー処理は、電池の少なくとも切断端部を、指定された所定の波長及び電力を有するレーザーから放射される光に曝露するステップを含んでもよい。
【0046】
照明均一性を有意に改善することができ、処理されている電池へのエネルギー伝達がより効率的かつ効果的になる可能性があるため、レーザーベースのキャリア注入処理の使用は、他の光ベースのキャリア注入処理の使用よりも好ましい場合がある。
【0047】
レーザーは、赤外線範囲の波長を有してもよい。言い換えれば、レーザーは、約700nm~約1mmの範囲の波長を有してもよい。より好ましくは、波長は、780nm~1300nm、より好ましくは780nm~1000nmの範囲にあってもよい。約1000nmの波長を有するレーザーの使用が特に好ましい場合がある。
【0048】
レーザーは、1000~4000Wの範囲、より好ましくは、2000W~3000Wの範囲の電力を有してもよい。場合によっては、レーザーは、約2800Wの電力を有してもよい。
【0049】
そのような処理の実行に使用するのに好適であることが見出されているレーザーの一例は、Dr LaserによるK1-LIA-Y9000レーザーである。
【0050】
処理されている電池と照明光源との間の距離は、10~20cmの範囲としてもよい。例えば、処理されている電池と照明光源との間の距離は、10cm以上、又は15cm以上であってもよい。処理されている電池と照明光源との間の距離は、20cm以下、又は15cm以下であってもよい。
【0051】
レーザーベースのキャリア注入処理中、電池は、実質的に静止したままでとしてもよい。
【0052】
レーザー光を電池に照射すると、電池の温度は、約150℃~250℃の範囲内の温度に上昇する場合がある。好ましくは、電池は、上述した理由により、300℃よりも高い温度には加熱しない方がよい。電荷ベースのキャリア注入プロセスに関連して上述したのと同様の方法で、処理されている1つ以上の電池の電池温度は、例えば、処理中の1つ以上の温度センサによって監視してもよい。また、電池内で維持される温度(「設定点温度」)は、処理のパラメータとして設定してもよく、例えば、電池温度が設定点温度を超えることを温度センサが検出すると、電池温度を設定点温度に維持するために実行されている好適なアクションによって維持されるようにしてもよい。
【0053】
本発明による方法は、その処理の前には切断プロセスを施されている単一の切断された太陽電池の処理を含んでもよい。しかしながら、好ましい方法では、複数の切断された太陽電池の電池が同時に処理される。同時に処理される電池の数は、利用可能な処理装置の実用的な考慮事項によって以外、特に限定されない。したがって、本方法は、2個以上、5個以上、10個以上、20個以上、30個以上、40個以上、50個以上、100個以上、200個以上、300個以上、又は400個以上の切断された太陽電池電池を同時に処理することを含んでもよい。単一の処理方法で複数の太陽電池を処理することは、処理プロセスの効率を劇的に改善し、処理された太陽電池の製造コストを低下させることができる。しかしながら、処理プロセス中の電池の過熱を回避するために、いずれか1つの時点において処理される電池の合計数を400電池以下に制限することが好ましい場合がある。
【0054】
複数の電池を同時に処理するために、複数の切断された電池を積み重ねてもよく、積み重ねた電池に対して、キャリア注入処理を同時に実行してもよい。電池は、電池の切断端部が互いに実質的に整合するように積み重ねてもよい。このようにして、キャリア注入処理を複数の切断端部に同時により容易に実行することができる。複数の電池の切断端部が実質的に整合していることが好ましいが、少量のずれは許容してもよい。
【0055】
したがって、方法は、
複数の太陽電池を提供することであって、電池の各々が以前に切断プロセスを施されている、ステップと、
電池の各々の切断端部が複数の太陽電池の残りの切断端部と実質的に整合するように、複数の太陽電池を積み重ねるステップと、
複数の太陽電池の切断端部にキャリア注入処理を同時に実行するステップと、を含んでもよい。
【0056】
処理方法は、独立した方法、例えば、市販されている電池に対して実行してもよい。
【0057】
代替的に、処理方法は、ヘテロ接合太陽電池の製造方法の一部を形成してもよい。好ましい実施形態では、太陽電池は、ヘテロ接合太陽電池である。
【0058】
したがって、第2の態様では、本発明は、太陽電池の製造方法を提供し、方法は、
(a)結晶性シリコン(c-Si)ウェハを提供するステップと、
(b)結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させるステップと、
(c)前及び裏非晶質シリコン(a-Si)層上に、それぞれ、前及び裏透明導電性酸化物(TCO)層を堆積させるステップと、
(d)前及び/又は裏TCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために、金属化を実行するステップと、
(e)太陽電池(又は部分的に製造された太陽電池)を切断するステップと、
(f)電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップと、を含み、
太陽電池を切断するステップ(e)が、ステップ(a)の後からステップ(d)の後までの任意の時点で実行され、電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップ(f)が、ステップ(b)及び(e)の両方が実行された後の任意の時点で実行される。
【0059】
結晶性シリコン(c-Si)ウェハを提供するステップ(a)は、市販の供給源から結晶性シリコン(c-Si)ウェハを得る(例えば、購入することによって)ことを含み得る。代替的に、例えば、チョクラルスキー(CZ)法を介して単結晶シリコンインゴット又はブールを成長させることによって、任意の好適な様式で結晶性シリコン(c-Si)ウェハを製造し、当該技術分野で周知の様式でこれをウェハに切断することを含んでもよい。
【0060】
c-Siウェハはまた、本明細書では、太陽電池基板と称してもよい。基板は、n型半導体であってもよく、又は基板は、p型半導体であり得る。基板がn型半導体である場合、半導体材料は、蛍光体(P)、ヒ素(As)、及びアンチモン(Sb)などのV族元素の不純物を含むように構成してもよい。基板がp型半導体材料である場合、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)などのIII族元素の不純物を含有してもよい。好ましい形態では、基板は、n型単結晶シリコンウェハを含む。n型c-Siは、p型単結晶シリコンウェハと比較してヘテロ接合太陽電池の一部として使用されるとき、より長い寿命特性を示することがある。
【0061】
方法は、ステップ(a)の後、例えば、ステップ(a)とステップ(b)との間で、結晶性シリコン(c-Si)ウェハをテクスチャ加工するステップを含んでもよい。当該テクスチャ加工は、不均一な表面又は不均一な特性を有する表面を形成してもよい。c-Siウェハのテクスチャ加工は、光反射率を低減し、太陽電池表面での光捕捉を向上させ、したがって、太陽電池の効率を増加させることができる。テクスチャ加工は、例えば、(111)平面にエッチングすることによって、(100)シリコンウェハ表面上にピラミッド状テクスチャを形成するための異方性湿式化学エッチングによって、任意の従来の方法で実行してもよい。
【0062】
いくつかの方法では、テクスチャ加工するステップは、有機表面汚染のc-Si基板を洗浄するサブステップと、必要な反射率を達成するためにKOHと添加剤との混合物を適用することによってテクスチャ加工を実行するサブステップと、有機及び金属汚染(存在する場合)並びに表面酸化物を除去するためにc-Si基板を洗浄するサブステップと、を含んでもよい。
【0063】
いくつかの形態では、太陽電池の構成層(例えば、基板、正孔コレクタ層、電子コレクタ層、不動態化層及び/又は透明導電性層)の各々は、それらが不均一な表面を有するか、又は不均一な特性を有するようにテクスチャ加工されるようにしてもよい。
【0064】
ステップ(b)で堆積される非晶質シリコン(a-Si)は、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)であってもよい。結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏の非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させるステップ(b)は、
(i)結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏真性非晶質シリコン(a-Si(i))層を堆積させるサブステップと、
(ii)前及び裏の真性非晶質シリコン(a-Si(i))層の各々の上に、pドープ又はnドープ非晶質シリコン(a-Si(n)、a-Si(p))層を堆積させるサブステップと、を含んでもよい。
【0065】
非晶質シリコン層が水素化非晶質シリコンを含む場合、これらのサブステップは、したがって、
(i)結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏真性水素化非晶質シリコン(a-Si(i))層を堆積させることと、
(ii)前及び裏の真性水素化非晶質シリコン(a-Si(i))層の各々の上に、pドープ又はnドープ水素化非晶質シリコン(a-Si:H(n)、a-Si:H(p))層を堆積させることと、を含んでもよい。
【0066】
このようにして、前及び裏の真性非晶質シリコン(a-Si(i))層は、不動態化層として機能し、前及び裏のp-又はn-ドープ非晶質シリコン(a-Si(n)、a-Si(p))層は、コレクタ層(例えば、正孔コレクタ層又は電子コレクタ層)として機能する。これらは、従来、「エミッタ」層と称してもよい。これらのコレクタ/エミッタ層のうちの1つは、基板と結合して、p-n接合部を形成する。他のコレクタ/エミッタ層は、基板から電荷キャリアを収集するように機能する。
【0067】
太陽電池の動作中、複数の電子-正孔対は、基板上に入射する光によって生成される。基板がn型の場合、p-n接合部の一部を形成するコレクタ層はp型であり、分離された正孔は、そのコレクタ層に移動し、分離された電子は、基板に移動する。したがって、正孔は、そのコレクタ層の大部分のキャリアになる。また、電子は、基板内の大部分のキャリアになり、その後、他のコレクタ層によって収集される。
【0068】
ドープ非晶質シリコンがn型半導体である場合、半導体材料は、蛍光体(P)、ヒ素(As)、及びアンチモン(Sb)などのV族元素の不純物を含むように構成してもよい。ドープ非晶質シリコンがp型半導体材料である場合、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)などのIII族元素の不純物を含有してもよい。
【0069】
結晶性シリコンウェハの前側及び裏側に、それぞれ、前及び裏の非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させるステップ(b)は、任意の好適な様式で実行してもよい。好ましい方法では、このステップは、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)を使用して実行される。PECVDは、多種多様なフィルムの堆積のための十分に確立された技法であり、従来の様式で適用して非晶質シリコン(a-Si)層を堆積させることができる。好適な方法の一例は、シランガス及び水素ガスをプロセスチャンバ内に流入させ、プラズマを利用して非晶質シリコン層を形成することを伴うPECVD堆積プロセスである。ドーピングガスは、ドープn/p層を形成するために、必要に応じて、シラン及び水素ガスに加えて導入してもよい。
【0070】
後のn層及びp層を別々のプロセスステップで堆積させることが好ましいが、前方のi/n層を一緒に/順次堆積させることが好ましい。これにより、c-Si及びa-Si:H(p)界面でのホスフィン汚染の影響を低減してもよい。
【0071】
前及び裏の非晶質シリコン(a-Si)層上に、それぞれ、前及び裏の透明導電性酸化物(TCO)層を堆積させるステップ(c)は、物理蒸着(PVD)を使用して実行してもよい。PVDは、多種多様なフィルムの堆積のための十分に確立された技法であり、従来の方法で適用してTCO層を堆積させることができる。PVDプロセスは、PDプロセスのための従来の様式で、支持トレイ上で輸送されている間に、TCOを不動態化されたウェハ上に衝突させ、スパッタするイオン化されたアルゴンガスである回転式TCOターゲットを使用してもよい。次いで、このプロセスは、不動態化されたウェハの両側に対して繰り返してもよい。
【0072】
TCO層を形成するために使用される特定のTCO材料は、特に限定されないが、好ましい方法では、TCO層は、酸化インジウムスズ(ITO)を含んでもよい。TCO層は、反射防止表面を提供するためにテクスチャ加工され得る。この場合、TCO層は、効果的に、太陽電池に入射する光の反射率を低減し、所定の波長帯域の選択性を増加させ、それによって太陽電池の効率を増加させる反射防止層として機能することができる。
【0073】
前及び/又は裏のTCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために金属化を実行するステップ(d)は、当該技術分野で従来から知られている任意の好適な様式で実行するようにしてもよい。しかしながら、好ましい形態では、ステップ(d)は、
前及び/又は裏のTCO層に金属化材料を適用するサブステップと、
熱処理を実行して金属化材料から1つ以上の金属電極を形成するサブステップと、を含む。
【0074】
金属化材料を適用するステップは、印刷プロセスを使用して、例えば、スクリーン印刷によって実行してもよい。金属化材料を適用するための印刷プロセスを用いると、微細(すなわち、幅が狭く深さが小さい)電極の形成が可能になる。
【0075】
金属化材料から1つ以上の金属電極を形成するために熱処理が行われる場合、熱処理は、250℃よりも高くない温度で実行してもよく、例えば、熱処理は、180℃~200℃の範囲の温度、例えば、約185℃、約190℃、又は約195℃で実行してもよい。250℃よりも低い温度で熱処理を実行することは、プロセス中の下層の非晶質シリコン層の劣化を低減又は防止することができる。金属化材料からの金属電極の完全な又は好適な形成を確実にするために、180℃よりも高い温度で熱処理を実行することが必要としてもよい。
【0076】
金属電極が太陽電池の前面に位置する場合、それらは「前電極」と称してもよい。金属電極が太陽電池の裏面に位置する場合、それらは「裏電極」と称してもよい。
【0077】
前電極及び/又は裏電極は、各々、太陽電池のそれぞれの前面及び裏面上に配置された複数のフィンガー電極を備え得る。各フィンガー電極は、その幅よりも実質的に大きい軸方向の長さを有するように構成され得る。フィンガー電極の幅及び軸方向長さの両方は、太陽電池のそれぞれの表面の平面内で垂直方向に測定してもよい。フィンガー電極は、太陽電池の幅方向と平行な横方向に延在してもよい。
【0078】
複数の前フィンガー電極及び/又は裏フィンガー電極の各々内のフィンガー電極は、太陽電池のそれぞれの前面及び裏面にわたって離隔されて、フィンガー電極間の横方向に延在する空間を画定してもよい。フィンガー電極は、太陽電池の長さ方向と実質的に平行である長手方向に離隔してもよい。各複数のフィンガー電極は、互いに実質的に平行であってもよい。したがって、複数の裏フィンガー電極は、平行な長手方向に離隔された(例えば、等間隔に離隔された)フィンガー電極のアレイを形成してもよい。
【0079】
前電極及び/又は裏電極は、フィンガー電極と太陽電池を組み込む太陽モジュールの電気回路との間に電気的接続を形成するように構成された、1つ以上の更なる導電性素子(例えば、長尺バスバー、又は導電性ワイヤ部分)を備えてもよい。
【0080】
太陽電池を切断するステップ(e)は、レーザーベースの、又はレーザー支援の切断プロセスによって実行してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、太陽電池を切断するステップは、レーザーで電池をスクライブし、続いてスクライブされた線に沿って電池を機械的に分割するステップを含んでもよい。他の実施形態では、太陽電池を切断するステップは、レーザーで電池をスクライブし、線に沿って電池を加熱し、続いて別個の非レーザーメカニズムによって加熱領域を急速に冷却するステップを含んでもよい。このプロセスでは、スクライブは先端の亀裂端部を生成し、加熱及び急速冷却は、亀裂を伝播して電池を分割する応力をウェハに作り出す。
【0081】
代替的に、任意の他の好適な切断プロセス(例えば、完全に機械的な切断プロセス)が使用され得る。上述したように、太陽電池を切断するステップ(e)は、ステップ(a)の後からステップ(d)の後までの任意の時点で実行してもよい。すなわち、これは、キャリア注入処理を実行する前の任意の時点で実行してもよい。例えば、電池を切断するか、又は層状構造を備える部分的に製造された電池を切断することは、結晶性シリコン(c-Si)ウェハを提供するステップ(a)の直後に実行してもよい。代替的に、それは、提供されたc-Siウェハをテクスチャ加工するステップの直後に実行してもよい。代替的に、それは、層状構造の1つ以上の層のPECVD堆積を実行した直後に実行してもよい。代替的に、それは、層状構造の1つ以上の層のPVD堆積を実行した直後に実行してもよい。代替的に、それは、層状構造の金属化後に実行してもよい。
【0082】
上述したように、電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップ(f)は、ステップ(b)及びステップ(e)の両方が実行された後、すなわち、それぞれ、結晶性シリコンウェハの前側及び裏側に前及び裏の非晶質シリコン(a-Si)層が堆積された後、並びに電池(又は部分的に製造された電池)が切断された後、任意の時点で実行してもよい。これは、欠陥修復のメカニズムがa-Si及びc-Si界面を伴うために必要である。したがって、a-Si層は、キャリア注入処理を実行する前に、c-Siウェハ上に堆積されていなければならない。
【0083】
好ましい形態では、ステップ(a)~(d)の各々が実行された後、電池の少なくとも切断端部にキャリア注入処理を実行するステップ(f)が実行される。これにより、a-Si-c-Si界面、a-Si/TCO界面、及びTCO/電極界面を含む、太陽電池内の全ての界面の改善された不動態化が可能になる。ステップ(f)は、太陽電池製造プロセスの最後のステップであってもよい。
【0084】
キャリア注入処理を実行するステップ(f)は、光ベースのキャリア注入処理、又は電荷ベースのキャリア注入処理、例えば、ハロゲンランプ処理、LEDランプ処理、電子注入処理、及び/又はレーザー処理のうちの1つ以上から選択される少なくとも1つの処理を実行するステップを含む。キャリア注入処理の更なる任意選択の特徴は、本発明の第1の態様に関して上で考察され、これらは、本発明のこの態様に等しく適用される。
【0085】
第3の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の処理方法を施されている、又は本発明の第2の態様の製造方法に従って製造された切断された太陽電池を提供する。
【0086】
太陽電池は、フォトルミネッセンス強度(PL強度)を含むが、これらに限定されない1つ以上の性能メトリックによって評価してもよい。本発明による太陽電池は、本発明によらない電池を備えるモジュールと比較して、PL強度の改善を実証してもよい。
【0087】
第3の態様の切断された太陽電池は、太陽電池モジュールに組み込まれるようにしてもよい。したがって、第4の態様では、各々第3の態様による複数の太陽電池を備える太陽モジュールが提供される。太陽モジュールは、本発明の第3の態様による少なくとも第1の太陽電池及び第2の太陽電池を備えてもよい。好ましくは、太陽モジュールは、本発明の第3の態様による少なくとも第1及び第2の太陽電池と、第1及び第2の太陽電池を覆うように配置された外側ケーシングと、外側ケーシングと第1及び第2の太陽電池との間に介在する封入剤と、を含む。
【0088】
第1及び第2の太陽電池は、互いに電気的に結合してもよい。太陽モジュールは、複数の太陽電池を備えてもよい。太陽モジュールが複数の太陽電池を備える場合、これらは、アレイ状に配置され得る。太陽電池のアレイは、太陽モジュールの長手方向(例えば、長さ方向)及び/又は横方向(例えば、幅方向)に延在するアレイ内に配置されるようにしてもよい。太陽電池は、長方形又は正方形の格子パターンなどの格子状に配置されるようにしてもよい。
【0089】
複数の太陽電池が存在する場合、太陽電池のいくつか又は全ては、実質的に同じ平面内に配置されてもよい。したがって、太陽電池は、実質的に平面のアレイ内に配置されてもよい。太陽電池は、各々、それらが同じ参照平面内に整合するように配置されてもよい。例えば、第1の太陽電池は、第1の太陽電池の水平方向平面が第2の太陽電池の水平方向平面と整合するように配置され、例えば配向されてもよい。第1及び第2の太陽電池の基準面は、太陽モジュールの水平方向平面と実質的に整合され(例えば、平行であり)れてもよい。代替的に、太陽電池のいくつか又は全ては、こけら葺き状又はこけら葺き配置で配置してもよい。このように、第1の太陽電池は、第2の太陽電池と少なくとも部分的に重なるように配置してもよい。
【0090】
典型的には、モジュール内の1つ以上の太陽電池は、互いに直列に又は並列に電気的に接続される。いくつかの配置では、モジュール内の全ての太陽電池は、直列に接続してもよい。他の形態においては、選択された数の太陽電池は、太陽電池ストリングとして直列に接続してもよい。複数の太陽電池ストリングは、1つ以上のバイパスダイオードを介して並列に接続してもよい。複数の可能な太陽電池配置は当該技術分野で周知であり、任意の好適な形態を本モジュールで使用してもよい。
【0091】
封入剤は、1つ以上の太陽電池の封入を提供するように構成してもよい。一般に、これは、湿度、水分、雨、及び紫外線(UV)を含み得る外部環境条件から太陽電池を物理的に保護する手段として定義することができる。封入剤はまた、太陽モジュールの構成要素(例えば、太陽電池)をモジュール内の所定の位置に保持するように構成してもよい。封入剤は、ひねり又は曲げなどの機械的応力、及び雹又は誤った発射物によって引き起こされる低エネルギーの衝撃から太陽電池を保護するように構成してもよい。
【0092】
封入剤は、前封入剤層と、裏封入剤層と、を備えてもよい。前封入剤層は、太陽電池の前面側に直接的又は間接的に配設してもよい。裏封入剤層は、太陽電池の裏面側に直接的又は間接的に配設してもよい。前封入層及び裏封入層は、同じ材料から形成してもよい。代替的に、前封入層及び裏封入層は、異なる材料から形成してもよい。前及び/又は裏封入剤層の材料は、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィンエラストマー(POE)材料、又は当該技術分野において既知である任意の他の好適な封入剤材料から選択してもよい。
【0093】
封入剤は、その長さ及び幅よりも有意に小さい厚さを有してもよい。封入剤の側方の範囲は、モジュールの裏シートの側方の範囲と実質的に同じであってもよい。
【0094】
太陽モジュールの外側ケーシングは、太陽モジュールの前側上に配置された前シート又は前プレートと、太陽モジュールの裏側上に配置された裏シート又は裏プレートと、を備えてもよい。前シートは、ガラスなどの透明材料から形成され得る。裏シートは、絶縁材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー絶縁材料から形成してもよい。
【0095】
太陽モジュールは、フレーム、又は1つ以上のフレーム素子を含んでもよい。フレームは、太陽モジュールの構成要素を所定の位置に保持し、外側ケーシング(例えば、前シート及び裏シート)の周りにシールを提供するように構成してもよい。太陽モジュールが前シート及び裏シートを備える場合、フレームは、当業者によって容易に理解されるように、太陽モジュールの構成要素を所定の位置に保持するために、前シートと裏シートとの間に圧縮力を適用してもよい。
【0096】
太陽モジュールは、短絡電流(ISC)、開路電圧(VOC)、曲線因子(FF)、及び電力変換効率(PCE)を含むがこれらに限定されない、1つ以上の性能メトリックによって評価してもよい。本発明による太陽モジュールは、本発明によらない電池を備えるモジュールと比較して、より高いモジュールVoc、及び/又は高いモジュール曲線因子%(FF%)を実証してもよい。
【0097】
当業者は、相互に排他的な場合を除き、上記の態様のいずれか1つに関連して記載された特徴又はパラメータが任意の他の態様に適用してもよいことを理解するものと思われる。更に、相互に排他的である場合を除き、本明細書に記載される任意の特徴又はパラメータは、任意の態様に適用してもよく、かつ/又は本明細書に記載される任意の他の特徴又はパラメータと組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
次に、本発明の原理を例解する実施形態及び実験について、添付の図面を参照して考察する。
【0099】
図1】本発明によるヘテロ接合太陽電池を通る概略断面を示す。
図2a】本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスを示すグラフ(1)である。
図2b】本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスを示すグラフ(2)である。
図2c】本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスを示すグラフ(3)である。
図2d】本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスを示すグラフ(4)である。
図2e】本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスを示すグラフ(5)である。
図3】本発明によるサンプル(T3B-00246グループ、T3B-00247グループ、T3B-00248グループ、及びT3B-00249グループ)のモジュールVoc(「maxvolt」)のボックス図を、参照サンプル(T3B-00244グループ、T3B-00245グループ)と比較して示す。
図4】本発明によるサンプル(T3B-00246グループ、T3B-00247グループ、T3B-00248グループ、及びT3B-00249グループ)のモジュールFF%(「Fillfactormaxval」)のボックス図を、参照サンプル(T3B-00244グループ、T3B-00245グループ)と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
次に、本発明の態様及び実施形態を、添付図面を参照して考察する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本明細書に言及された全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
図面では、太陽モジュールの様々な素子の相対的な寸法が概略的に示されており、縮尺通りではない。例えば、シート、層、フィルムなどの厚さは、明確にするために誇張されている。更に、層、フィルム、領域、又は基板などの素子が別の素子「上にある」又は「隣接している」ものとして言及又は図示される場合、それは他の素子上に直接存在し得るか、又は介在する素子もまた存在し得ることが理解できるものである。対照的に、素子が別の素子の「直接上にある」又は「直接隣接する」ものとして言及される場合、介在する素子は存在しない。
【0102】
図1は、本発明によるヘテロ接合太陽電池100を通る概略断面を示している。図1の上部の矢印は、使用時に太陽電池アセンブリに入射する太陽放射の方向を示している。太陽電池は、通常の使用で光が入射する前面2と、前面2の反対側の裏面4と、を有する。前面は、使用中に実質的に太陽を向くように構成される。
【0103】
太陽電池は、一般に対称である層状構造を備える。構造の「ベース」は、本明細書ではc-Si層又はc-Si基板とも称される結晶性シリコンウェハ6である。c-Si基板6は、n型単結晶シリコンウェハから形成される。それは、テクスチャ加工された層である。
【0104】
基板6の前面上に配置された第1のコレクタ層8、及び基板6の裏面上に配置された第2のコレクタ層10が存在する。第1のコレクタ層8は、p型水素化非晶質シリコン(a-Si:H(p))から形成され、p-n接合部において電荷分離場を生成するために結合する正孔コレクタ層も形成される。第2のコレクタ層10は、n型非晶質水素化シリコン(a-Si:H(n))から形成され、基板6から電荷キャリアを選択的に選別又は抽出するように構成された電子コレクタ層も形成される。
【0105】
不動態化層12a、12bは、基板6と、第1のコレクタ層8及び第2のコレクタ層10の各々との間に配置される。不動態化層12a、12bは、真性非晶質水素化シリコン(a-Si)から形成される。
【0106】
太陽電池は、不動態化及びコレクタ層によって構築された前及び裏水素化非晶質シリコン(a-Si:H)層の各々の上に形成されたTCO層14a、14bを更に備える。これらのTCO層は、インジウムスズ酸化物(ITO)から形成される。それらは、いくつかの反射防止機能を提供してもよい。
【0107】
太陽電池は、それぞれ、前及び裏面TCO層上に形成され、太陽電池100から光生成電荷キャリアを抽出するように構成される、前及び裏面電極16a、16bを更に含む。
【0108】
太陽電池の少なくとも1つの端部(edge)は、切断端部(cut edge)18、すなわち、太陽電池の製造中の切断プロセス中に形成されている端部である。製造中、この切断端部は、キャリア注入ステップを含む処理プロセスを施される。
【0109】
次に、本発明による一連の製造方法を、本発明による太陽電池の製造のための一連の可能な生産プロセスシーケンスをグラフで示す図2a~eに関連して説明する。
【0110】
これらの生産プロセスの各々は、様々な順序で以下のステップを含む。
-c-Si基板を提供するステップ(ステップ201)
-c-Si基板をテクスチャ加工するステップ(ステップ202)(注:いくつかの方法では、テクスチャ加工ステップを実行する必要はない場合がある。例えば、c-Si基板は、予めテクスチャ加工された基板として提供してもよい。したがって、このステップは任意選択的である)
-結晶性シリコンウェハの前側及び裏側上に、それぞれ、前及び裏水素化非晶質シリコン(a-Si:H)層をPECVD堆積させるステップであって、以下のサブステップを含む。
○後a-Si:H(i)層をPECVD堆積させるサブステップ(ステップ203)
○前a-Si:H(i/n)層をPECVD堆積させるサブステップ(ステップ204)
○後a-Si:H(p)層をPECVD堆積させるサブステップ(ステップ(205)
-前及び裏水素化非晶質シリコン(a-Si:H)層上に、それぞれ、前及び裏透明導電性酸化物(TCO)層を堆積させるステップであって、以下のサブステップを含む。
○前TCO層をPVD堆積させるサブステップ(ステップ206)
○後TCO層をPVD堆積させるサブステップ(ステップ207)
-レーザーで電池を半分に切断するサブステップ(ステップ208)
-前及び/又は裏TCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために、金属化を実行するステップであって、以下のサブステップを含む。
○Agフィンガーを印刷するサブステップ(ステップ209)
○層状構造を250℃未満で硬化させるサブステップ(ステップ210)
-キャリア注入処理を実行するサブステップ(ステップ211)
【0111】
これらのプロセスシーケンスから分かるように、太陽電池を切断するステップは、c-Si基板の提供後(ステップ201)から、前及び/又は裏TCO層上に1つ以上の金属電極を形成するために金属化を実行するステップ(ステップ209、210)の後までの任意の時点で実行される。
【0112】
キャリア注入処理を実行するステップは、結晶性シリコンウェハの前側及び裏側に、それぞれ、前及び裏水素化非晶質シリコン(a-Si:H)層をPECVD堆積させた後(ステップ203、204、205)、並びに電池の切断が実行された後(ステップ208)の任意の時点で実行されているが、好ましくは、それは、図2a~eの各々に示されるように、生産プロセスの最終ステップとして実行される。
【0113】
ここで、いくつかの実験例及び結果について説明する。
【0114】
測定されたフォトルミネッセンス強度(PL強度)に対するキャリア注入処理の影響
いくつかのサンプル(12)を、本発明の方法に従って処理して、測定されたフォトルミネッセンス強度に対する処理の効果を調べた。具体的には、これらのサンプルは、電荷ベースのキャリア注入処理を受けた。以前に切断プロセスを施されている(すなわち、半分に切断された電池)サンプル1~12を処理し、以前に切断プロセスを施されていない参照サンプル13及び14と比較した。
【0115】
以下のように処理を実行した。
【0116】
複数の電池を一緒にコインスタックに積み重ね、マガジンに装填した。電池は、直列に積み重ねられ、1つの電池の負の側が、隣接する電池の正の側と接触し、逆もまた同様である。次いで、マガジンは、最大で8つのプロセスユニットを備える電子注入機(Changzhou Shichuang Energy Co Ltd.モデル:抗LID6000)を使用して、電荷ベースのキャリア注入プロセスを使用して処理した。
【0117】
電池スタックを、マガジン内の2つの金属プレートの間に挟み、ブロック全体を各プロセスユニットの底部電極によって持ち上げ、その後、上部電極が、ブロックに接触して完全な回路を形成した。次に、各プロセスユニットの電源ユニットによって電圧を印加し、電流が流れるようにした。電流の量をパラメータとして選択した-選択した印加電流の詳細については、以下の表を参照されたい。
【0118】
処理中に電池が維持される温度である以下の表に示されるように、各処理についても設定点温度を選択した。この温度の維持は、赤外線温度計を使用して電池の温度を検出し、電池が設定点温度よりも高い温度にあることが検出されたときに、冷却メカニズムとして圧縮乾燥空気(CDA)の電池への送達を作動させることによって達成した。このようにして、電池の温度は、処理全体を通して設定点温度に実質的に一定に維持することができる。
【0119】
サンプル1~12を、それぞれ3つのサンプルを含む4つのグループ、すなわちグループG3、G4、G5、及びG6に各々分割した。各グループのキャリア注入処理パラメータを、以下の表に記載されるように変化させた。具体的には、処理期間、処理温度、及び処理中の印加電流を変化させた。
【0120】
次いで、各サンプルのフォトルミネッセント強度を、BT Imaging Pty Ltd.Device、モデル:LIS-R1を使用して測定した。フォトルミネッセンス強度を、「PL開回路画像測定」モードを使用して、以下の設定で決定した。露光時間=0.2秒、照明エリア=「大」、光源設定点=0.1sun。
【表1】
【0121】
このデータから、本発明による全てのサンプルのキャリア注入処理から生じるPL強度の平均増加(632.3+273.9+497.9-35.7)/4=342.1は、参照サンプルのPL強度の対応する増加、258.6よりも大きかったことが分かる。完全な電池サンプル13及び14に対して処理を実行しなかったが、第1の測定値と第2の測定値との間に、PL強度のわずかな増加が見られた。このわずかな増加は、単に未処理のサンプルについての時間経過に伴う測定ドリフトの結果であると仮定される。
【0122】
サンプル3、11、及び12は、処理後に不良な性能を示したことに留意されたい。これらの不良な結果は、処理中の電池の積み重ね配置に起因するキャリア注入処理中に起こりうる熱損傷に起因して観察されたと仮定される。実際、これらのサンプルを結果から除外し、PL強度の平均増加がサンプル1、2、4、5、6、7、8、9、及び10のみに基づいて計算する場合、PL強度の平均増加は558であり、標準サンプルのPL強度の対応する増加の2倍以上である。
【0123】
5.5/5.8/5.8/5.8Aのそれぞれの印加電流で、及び127.5℃の処理温度で、各々、300秒の4つの別個の電子注入処理ステップを受けたサンプル1及び2について、PL強度の最大の増加が見られた。したがって、これらの条件は、太陽電池のPL強度の増加を提供するための好ましい処理条件であり得る。
【0124】
モジュールV oc 及びFF%に対するキャリア注入処理の影響
本発明に従って処理された電池を組み込むモジュールの電流-電圧電気特性もまた、それらの電池を組み込むモジュールの測定されたモジュールVoc及びFF%に対する電池の処理の影響を決定するために調査した。試験モジュールを、サンプル1~12と同じ処理を経た電池を使用して構築した。これらを、切断プロセスを施されていない参照電池を使用して構築された比較試験モジュールと比較した。
【0125】
試験した(非参照)モジュールを、各モジュールに含まれる電池に対して実行される処理のタイプに基づいて、3つのうちの4つのグループ(「Shoporders」)、つまり、T3B-00246、T3B-00247、T3B-00248、及びT3B-00249に分割した(以下の表2を参照)。各グループのキャリア注入処理パラメータを、以下の表に記載されるように変化させた。具体的には、処理期間、処理温度、及び処理中の印加電流を変化させた。試験した参照モジュールは、「Shoporders」T3B-00244及びT3B-00245として示されている(以下の表2を参照されたい)。
【0126】
次いで、全てのモジュールについて、市販の太陽シミュレータ機械を使用して、モジュールVOC及びモジュールFF%を測定した。モジュールVOC及びモジュールFF%を測定するために、機械からのプローブをモジュール接点と接触させて置く。次に、太陽シミュレータ機械は、地球表面で受け取った太陽の放射スペクトルをシミュレートする閃光を生成する。モジュールは、光から電流を生成し、次いで、モジュールVOC及びモジュールFF%は、市販の太陽シミュレータによって出力される。
【表2】
表2:サンプル1~12(T3B-00246、T3B-00247、T3B-00248、及びT3B-00249)対比較試験モジュール(T3B-00244、T3B-00245)として同じ処理を経た電池を使用して構築された試験モジュールのモジュールVoc及びFF%を示すデータ
【0127】
このデータは、図3及び図4に一連のボックス図としても示されている。平均モジュールVoc及び平均FF%は、モジュール内の電池が以前に切断プロセスを施されている全てのモジュールグループ(shoporders T3B-00246、T3B-00247、T3B-00248、及びT3B-00249)について、以前に切断プロセスを施されたことがない電池を含むモジュール(shoporders T3B-00244、T3B-00245)と比較して良好であり、本発明による太陽電池処理が驚くほど改善された技術的性能をもたらすことを再び示していることが分かる。
【0128】
4.3/6/6/6Aのそれぞれの印加電流で、及び127.5℃の処理温度で、各々、600秒の4つの別個の電子注入処理ステップを受けたグループT3B-00249について、最高平均モジュールVoc及びFF%が観察された。したがって、これらの条件は、本発明による太陽電池を組み込むモジュールのモジュールVoc及びFF%の増加を提供するための好ましい処理条件としてもよい。
【0129】
前述の明細書、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、それらの特定の形態、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を得るための方法又はプロセスの観点から、必要に応じて、本発明をその多様な形態で実現するために、別々に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで利用してもよい。
【0130】
本発明は、上述した例示的な実施形態と併せて記載されてきたが、多くの均等な修正及び変形が、本開示が与えられるとき、当業者には明らかでると思われる。したがって、上述した本発明の例示的な実施形態は、限定するものではなく、例示的なものであると考えられる。説明される実施形態に対する様々な変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0131】
あらゆる疑義を避けるために、本明細書に提供される任意の理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的な説明のいずれかに縛られることを望まない。
【0132】
本明細書で使用される任意の章の見出しは、単に構成目的のためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0133】
文脈が別段の要求を必要としない限り、以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、単語「備える」及び「含む」、並びに「備える」、「備えている」、及び「含んでいる」などの変形は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループを含むことを意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループを除外することを意味しないと理解される。
【0134】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数参照を含むことに留意されたい。範囲は、本明細書において「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用により近似として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。数値に関連して、「約」という用語は任意選択的であり、例えば、+/-10%を意味する。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
【国際調査報告】